(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ガラス組成物の処理中にクロムの酸化状態を還元する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 5/173 20060101AFI20220414BHJP
C03B 5/24 20060101ALI20220414BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20220414BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20220414BHJP
C03C 3/089 20060101ALI20220414BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C03B5/173
C03B5/24
C03C3/085
C03C3/083
C03C3/089
C03C3/091
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542419
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020013626
(87)【国際公開番号】W WO2020159704
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アシュトン-パットン,メリッサン マリー
(72)【発明者】
【氏名】キング,エレン アン
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
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4G062KK10
4G062MM12
4G062NN34
(57)【要約】
本明細書に開示されるガラス製造方法は、溶融ガラスを溶融槽に供給するステップと、バッチ材料を溶融して、約20ppm未満のCrO3を含む溶融ガラスを得るステップとを含む。これらの方法によって作製されるガラス物品も本明細書に開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製造方法であって、
バッチ材料を溶融槽内で溶融して、20ppm未満のCrO
3を含む溶融ガラスを得るステップ
を含み、前記溶融ガラス中のCrO
3含有量を、前記バッチ材料の構成または前記溶融槽内の条件の少なくとも一方を制御するステップにより前記バッチ材料中に存在するクロムの酸化状態を還元することによって減少させる、方法。
【請求項2】
前記酸化状態をCr
6+からCr
3+へと還元する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バッチ材料の第1のCr
6+/Cr
3+比が、前記溶融ガラスの第2のCr
6+/Cr
3+比よりも大きい、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記溶融ガラスの前記第2のCr
6+/Cr
3+比が1未満である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記溶融ガラスが1ppm未満のCrO
3を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記バッチ材料の構成を制御するステップが、0.6未満の光学的塩基度を有するバッチ材料が得られるようにガラス組成物を選択するステップ、および少なくとも1つの有機還元剤を前記バッチ材料に加えるステップを含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
溶融条件を制御するステップが、
(a)プリメルト浴ターゲット温度を±10℃の温度変動で維持するステップ、または
(b)理想的なガス/酸素の化学量論比を有する前記溶融槽内の雰囲気をおよそ0%の過剰酸素で維持するステップ
の少なくとも一方を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記プリメルト浴ターゲット温度が1500℃~1800℃の範囲である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記温度変動を、
(i)固定電源を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電圧および電流を変化させるステップ、
(ii)固定電流を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電力および電圧を変化させるステップ、または
(iii)プリメルトターゲット温度を維持するように溶融ガラスのバルク抵抗率をモニタリングし、制御するステップ
の少なくとも1つによって制御する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
50モル%~90モル%のSiO
2と、
0モル%~20モル%のAl
2O
3と、
0モル%~20モル%のB
2O
3と、
0モル%~25モル%のR
xOと、
0ppm~20ppmのCrO
3と
を含むガラス物品であって、RがLi、Na、K、RbおよびCsの1つ以上から選択され、かつxが2であるか、またはRがZn、Mg、Ca、SrおよびBaの1つ以上から選択され、かつxが1である、ガラス物品。
【請求項11】
70モル%~85モル%のSiO
2と、
0モル%~5モル%のAl
2O
3と、
0モル%~5モル%のB
2O
3と、
0モル%~10モル%のNa
2Oと、
0モル%~12モル%のK
2Oと、
0モル%~4モル%のZnOと、
約3モル%~約12モル%のMgOと、
0モル%~5モル%のCaOと、
0モル%~3モル%のSrOと、
0モル%~3モル%のBaOと、
0.01モル%~0.5モル%のSnO
2と
を含む、請求項10記載のガラス物品。
【請求項12】
前記ガラス物品のカラーシフトΔyが0.006未満である、請求項10または11記載のガラス物品。
【請求項13】
前記ガラス物品のCr
6+/Cr
3+比が1未満である、請求項10から12までのいずれか1項記載のガラス物品。
【請求項14】
1ppm未満のCrO
3を含む、請求項10から13までのいずれか1項記載のガラス物品。
【請求項15】
630nmでの前記ガラス物品の第1の吸収係数が、450nmでの前記ガラス物品の第2の吸収係数以上である、請求項10から14までのいずれか1項記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2019日1月29日に出願された米国仮特許出願第62/798164号明細書の優先権の利益を主張し、その内容が依拠され、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、ガラス形成プロセスにおいてガラス組成物中に存在する1つ以上の金属の酸化状態を還元する方法、より具体的には、ガラス組成物の溶融時のクロム等の混入金属の酸化状態を還元する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)およびプラズマディスプレイ等の高性能ディスプレイデバイスは、携帯電話、ラップトップ、電子式タブレット、テレビおよびコンピューター用モニター等の様々な電子機器において一般に使用されている。現在販売されているディスプレイデバイスは、例えば、幾つかの用途を挙げると、電子回路部品の基板、導光板(LGP)、カラーフィルターまたはカバーガラスとして1つ以上の高精度ガラス板を用いる場合がある。増大し続けるサイズおよび画像品質の要件を有する高性能ディスプレイに対する消費者需要により、大型、高品質、高精度のガラス板を作製する製造プロセスの改善の必要性が高まっている。
【0004】
例示的なLCDは、ディスプレイに光を供給するためにエッジライトまたはバックライト構成で光源に光学的に結合されたLGP、例えばガラスLGPを備え得る。様々な光学フィルムをガラスLGPの前面(ユーザーに面する)または背面(ユーザーの反対側を向く)に配置し、光源からの光を誘導、配向または別の形で変更することができる。光がガラスLGPおよび光学層と相互作用すると、散乱および/または吸収のために一部の光が失われる可能性がある。
【0005】
時間と共に、青色波長(例えば、約450~500nm)の吸収により、LCDに表示される画像の「カラーシフト」または変色が不必要に引き起こされる恐れがある。変色は高温、例えば通常のLCD動作温度内で加速する可能性がある。さらに、LED光源は、青色波長でのそれらの顕著な発光によりカラーシフトを悪化させる可能性がある。カラーシフトは、光がLGPに対して垂直に伝搬する場合には(例えばバックライト構成では)認識されにくい可能性があるが、光がLGPの長さに沿って伝搬する場合には(例えばエッジライト構成では)、より長い伝搬距離のために、より顕著となる可能性がある。LGPの長さに沿った青色光吸収は、青色光強度の著しい損失、ひいては伝搬方向に沿った色の著しい変化(例えば黄色のカラーシフト)を引き起こす可能性がある。場合によっては、ディスプレイの一方の端からもう一方の端まで、カラーシフトが人間の目で認識される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、カラーシフトが低減した、青色波長での吸収が赤色波長での吸収と比較してより低いガラス物品を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ガラス製造方法であって、バッチ材料を溶融槽に供給するステップと、バッチ材料を溶融して、20ppm未満のCrO3を含む溶融ガラスを得るステップとを含み、溶融ガラス中のCrO3含有量を、バッチ材料の構成および溶融槽内の条件の少なくとも一方を制御するステップによりバッチ材料中に存在するクロムの酸化状態を還元することによって減少させる、方法に関する。様々な実施形態によると、クロムの酸化状態をCr6+からCr3+へと還元することができる。或る特定の実施形態によると、バッチ材料の第1のCr6+/Cr3+比は、溶融ガラスの第2のCr6+/Cr3+比よりも大きい。例えば、溶融ガラスの第2のCr6+/Cr3+比は、1未満であり得る。付加的な実施形態では、溶融ガラスは、10ppm未満のCrO3、例えば1ppm未満のCrO3を含む。
【0008】
様々な実施形態によると、バッチ材料の構成を制御するステップは、0.6未満の光学的塩基度を有するバッチ材料が得られるようにガラス組成物を選択するステップを含む。代替的な実施形態では、バッチ材料の構成を制御するステップは、少なくとも1つの有機還元剤をバッチ材料に加えるステップを含む。有機還元剤は、例えば脂肪酸およびその塩から選択することができる。更なる実施形態では、溶融条件を制御するステップは、(a)プリメルト浴(pre-melt bath)ターゲット温度を±10℃の温度変動で維持するステップ、および(b)理想的なガス/酸素の化学量論比を有する溶融槽内の雰囲気をおよそ0%の過剰酸素で維持するステップの少なくとも一方を含み得る。プリメルト浴ターゲット温度は、例えば約1500℃~約1800℃の範囲であり得る。更なる実施形態によると、温度変動は、(i)固定電源を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電圧および電流を変化させるステップ、(ii)固定電流を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電力および電圧を変化させるステップ、ならびに(iii)プリメルトターゲット温度を維持するようにガラスのバルク抵抗率をモニタリングし、制御するステップの少なくとも1つによって制御され得る。
【0009】
本明細書に開示される方法に従って作製されるガラス物品が、本明細書にさらに開示される。例示的なガラス物品は、約50モル%~約90モル%のSiO2と、0モル%~約20モル%のAl2O3と、0モル%~約20モル%のB2O3と、0モル%~約25モル%のRxOと、0ppm~約20ppmのCrO3とを含み得るが、ここで、RはLi、Na、K、RbおよびCsの1つ以上から選択され、かつxは2であるか、またはRはZn、Mg、Ca、SrおよびBaの1つ以上から選択され、かつxは1である。様々な実施形態では、ガラス物品は、約70モル%~約85モル%のSiO2と、0モル%~約5モル%のAl2O3と、0モル%~約5モル%のB2O3と、0モル%~約10モル%のNa2Oと、0モル%~約12モル%のK2Oと、0モル%~約4モル%のZnO、約3モル%~約12モル%のMgOと、0モル%~約5モル%のCaOと、0モル%~約3モル%のSrOと、0モル%~約3モル%のBaOと、約0.01モル%~約0.5モル%のSnO2とを含み得る。ガラス物品は、或る特定の実施形態では、10ppm未満のCrO3および/または約1未満のCr6+/Cr3+比を含み得る。
【0010】
非限定的な実施形態によると、ガラス物品のカラーシフトΔyは約0.006未満である。或る特定の実施形態では、630nmでのガラス物品の第1の吸収係数は、450nmでのガラス物品の第2の吸収係数以上であり得る。ガラス物品はガラス板、例えばディスプレイデバイス内のガラス板であり得る。
【0011】
本開示の付加的な特徴および利点が以下の詳細な説明に記載され、一部はその説明から当業者に容易に明らかであり、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲および添付の図面を含む、本明細書に記載される方法を実施することによって認識される。
【0012】
上述の全般的な説明および以下の詳細な説明がどちらも本開示の様々な実施形態を提示し、特許請求の範囲の性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本開示の更なる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、本開示の様々な実施形態を示し、本明細書と共に、本開示の原理および作用を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むことで最もよく理解することができ、ここで、同様の構造は、可能であれば同様の参照番号で示される。
【
図1】例示的なガラス製造システムを示す図である。
【
図2】ガラス基板の青色対赤色の透過率の比率の関数としてのカラーシフトΔyのグラフ表示である。
【
図3】Cr
3+のみ、ならびにCr
3+およびCr
6+の両方を含むガラス基板の波長の関数としての吸収のグラフ表示である。
【
図4】Cr
3+のみ、ならびにCr
3+およびCr
6+の両方を含むガラス基板の波長の関数としての透過率のグラフ表示である。
【
図5】ガラス基板の光学的塩基度の関数としての吸収のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
方法
ガラス製造方法であって、バッチ材料を溶融槽に供給するステップと、バッチ材料を溶融して、約20ppm未満のCrO3を含む溶融ガラスを得るステップとを含み、溶融ガラス中のCrO3含有量を、バッチ材料の構成および溶融槽内の条件の少なくとも一方を制御するステップによりバッチ材料中に存在するクロムの酸化状態を還元することによって減少させる、方法が本明細書に開示される。
【0015】
本開示の実施形態を、例示的なガラス製造システムを示す
図1を参照して下記で論考する。以下の全般的な説明は、特許請求される方法の概要のみを提示することを意図する。本開示全体を通し、様々な態様を非限定的な実施形態を参照してより具体的に論考するが、これらの実施形態は、本開示との関連において互いに代替可能である。
【0016】
図1に、ガラスリボン200を作製するためのガラス製造システム100を示す。ガラス製造システム100は、溶融槽110、清澄槽120、溶融槽と清澄槽とを接続する第1の接続管115、混合槽130、清澄槽と混合槽とを接続する第2の接続管125、供給槽140、混合槽と供給槽とを接続する第3の接続管135、下降管150、ならびに入口管165、成形体170およびプルロールアセンブリ175を備え得るフュージョンドロー機(FDM)160を含み得る。
【0017】
ガラスバッチ材料Gを、矢印で示すように溶融槽110に導入し、溶融ガラスMを形成することができる。溶融槽110は、幾つかの実施形態では、耐火セラミックレンガ、例えば溶融ジルコニアレンガで構成される1つ以上の壁を備え得るか、または白金等の1つ以上の貴金属で構成され得る。溶融槽は少なくとも1つの電極105、例えば1対の電極または複数の電極、例えば2対以上の電極を備えていてもよい。
【0018】
清澄槽120は、第1の接続管115によって溶融槽110に接続される。清澄槽120は、溶融槽110から溶融ガラスを受け取り、溶融ガラスから気泡を除去することができる高温処理領域を備える。清澄槽120は、第2の接続管125によって混合槽130に接続される。混合槽130は、第3の接続管135によって供給槽140に接続される。供給槽140は、下降管150を通してFDM160に溶融ガラスを供給することができる。
【0019】
上記のように、FDM160は入口管165、成形体170およびプルロールアセンブリ175を備え得る。入口管165は、下降管150から溶融ガラスを受け取り、溶融ガラスは、そこから成形体170へと流れることができる。成形体170は、溶融ガラスを受け取る入口171を備えることができ、溶融ガラスは、続いてトラフ172に流れ込み、トラフ172の側面から溢れ出て、2つの対向する成形面173を流れ落ちた後、根元部174で融合して、ガラスリボン200を形成することができる。或る特定の実施形態では、成形体170は耐火セラミック、例えばジルコンまたはアルミナセラミックを含み得る。プルロールアセンブリ175は、付加的な任意の装置による更なる処理のために延伸ガラスリボン200を輸送することができる。
【0020】
例えば、機械式またはレーザースコアリングデバイス等のガラスリボンのスコアリングのためのスコアリングデバイスを備え得る移動式アンビル装置(traveling anvil machine)(TAM)を使用して、リボン200を個々の板に分割することができ、これを、当該技術分野で既知の様々な方法およびデバイスを用いて機械加工、研磨、化学強化および/または他の形で表面処理、例えばエッチングすることができる。本明細書に開示される装置および方法は、フュージョンドロープロセスおよびシステムに関して論考されるが、かかる装置および方法を他のガラス形成プロセス、例えば数例を挙げると、スロットドローおよびフロート法と併せて用いることもできることを理解されたい。
【0021】
ガラスバッチ材料Gの溶融は、幾つかの実施形態では、少なくとも1つの電極105に電流を流すことによって行うことができる。例えば、少なくとも1つの電極105は、電流を電極にバッチ材料Gを通して誘導するように構成される電源に接続され、それにより、バッチ材料を溶融して溶融ガラスMを得るのに十分な時間にわたって熱エネルギーを放出することができる。例示的な時間は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約1時間~約24時間、例えば約2時間~約12時間、約3時間~約10時間、約4時間~約8時間または約5時間~約6時間の範囲であり得る。電位は、バッチ材料Gの温度をそれらの融点より高く上昇させるのに十分な熱エネルギーを生成するように選択することができる。溶融槽110内での溶融は、任意の所望の用途に応じてバッチ式、連続的または半連続的に行うことができる。1つ以上のガスバーナー等の補助熱源を、電極を介した電気加熱と併せて使用してもよい。
【0022】
本明細書に開示される方法に従う例示的なガラスの作製に適切なバッチ材料Gとしては、例えばSiO2の供給源としての市販の砂;Al2O3の供給源としてのアルミナ、水酸化アルミニウム、アルミナの水和形態、ならびに様々なアルミノケイ酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物;B2O3の供給源としてのホウ酸、無水ホウ酸および酸化ホウ素;MgOの供給源としてのペリクレース、ドロマイト(CaOの供給源でもある)、マグネシア、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ならびに様々な形態のケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物;CaOの供給源としての石灰石、アラゴナイト、ドロマイト(MgOの供給源でもある)、ウォラストナイト、ならびに様々な形態のケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物;ならびにストロンチウムおよびバリウムの酸化物、炭酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物を挙げることができる。化学清澄剤が所望される場合、スズはSnO2として、別の主要なガラス成分との混合酸化物(例えばCaSnO3)として、または酸化条件ではSnO、シュウ酸スズ、ハロゲン化スズ、もしくは当業者に既知のスズの他の化合物として添加することができる。ディスプレイ用途に十分な品質のガラスを得るためにSnO2以外の化学清澄剤を用いることもできる。例えば、例示的なガラスは、清澄を促進するための意図的な添加物としてAs2O3、Sb2O3およびハロゲン化物のいずれか1つまたは組合せを用いる場合もある。
【0023】
ガラス基板の透過率を改善する方法は、クロム等の混入金属の濃度を無視し得るレベル(例えば<約20ppm)まで低下させることに焦点を合わせることができ、これにより、ガラス基板による青色波長の吸収を低減することができる。青色波長でのガラス透過率の改善によりガラス基板のカラーシフトを低減することもできる。ガラス基板におけるカラーシフトの大きさは、可視スペクトルにわたるその吸収曲線の形状によって決まり得る。例えば、カラーシフトは、色波長(例えば450nm)での吸収が赤色波長(例えば630nm)での吸収よりも低い場合に低減し得る。
【0024】
図2に、ガラス基板のカラーシフトに対する青色/赤色透過率比の影響を示す。プロットによって示されるように、カラーシフトΔyは、青色(450nm)透過率が赤色(630nm)透過率と比べて減少するにつれ、ほぼ直線的に増大する。青色透過率が赤色透過率と同様の値に近づくと(例えば、比率が1に近づくと)、カラーシフトΔyも同様に0に近づく。
【0025】
非限定的な実施形態では、本明細書に開示される方法は、溶融ガラス中のCr
6+(またはCrO
3)含有量を制御、すなわち低減することを含む。
図3および
図4に示されるように、ガラス基板中のCr
6+の存在により吸収が増大し、青色波長での透過率が減少し得る。
図3を参照すると、Cr
3+は、一方がおよそ450nm、一方がおよそ650nmの2つの吸収帯を有する(ガラスAを参照されたい)。Cr
6+の吸収帯は、およそ360nmに位置する(ガラスBを参照されたい)。Cr
6+吸収帯は広く、可視スペクトルの青色波長に尾を引く。このピークの幅の大きさは、ガラス基板中に存在するCr
6+イオンの濃度に左右される。高いCr
6+濃度を有する幾つかのガラス組成物では、360nm(Cr
6+)ピークは、450nm(Cr
3+)ピークと交差するほど広く、1つの大きな吸収帯を生じ、これがガラス基板のカラーシフトに悪影響を及ぼし得る。
図4を参照すると、ガラスA(Cr
3+のみを含む)およびガラスB(Cr
3+およびCr
6+の両方を含む)の透過率は、500nm以上の波長で比較的同一である。しかしながら、ガラス基板Bでは、Cr
6+の存在のために、約350nm~約500nmの範囲の波長で透過率が低下している。
【0026】
このため、本明細書に開示される方法によると、バッチ材料Gの構成を制御して、バッチ材料中のクロムの存在を制限し、かつ/またはクロムが溶融もしくは他の処理段階においてCr
6+等のより高い酸化状態へと酸化する可能性を低下させることができる。理論に束縛されることを望むものではないが、クロムの酸化還元平衡を還元状態へと、すなわちCr
6+からCr
3+へと向かわせ得る基礎ガラス化学が得られるようにバッチ材料を選択することができると考えられる。例示的な一実施形態では、バッチ材料を、得られるガラス組成物が望ましい光学的塩基度を有するように選択することができる。本明細書で使用される場合、「光学的塩基度」という用語は、ガラス組成物のガラスネットワーク中のカチオンの挙動を指すために用いられ、Journal of Non-Crystalline Solidsで公表されたDuffyおよびIngramの1976年の論文である「An Interpretation of Glass Chemistry in terms of the Optical Basicity Concept」(その全体を参照により本明細書に援用するものとする)に示されているように算出することができる。
図5に示されるように、ガラス組成物の光学的塩基度が減少するにつれ、青色波長(例えば450nm)での吸収が減少し、赤色波長(例えば630nm)での吸収が増大する。このため、光学的塩基度が減少すると、青色波長でのガラス基板の透過率を増大させることができ、ガラス基板のカラーシフトを低減することができる。様々な実施形態によると、バッチ材料は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.6未満、例えば約0.54未満、約0.53未満、約0.52未満、約0.51未満または約0.5未満の光学的塩基度を有するガラス組成物が得られるように選択することができる。
【0027】
溶融ガラス中のCr6+含有量の低減は、溶融時にCr6+状態のクロムをCr4+、Cr3+またはCr2+等のより低い酸化状態へと還元する1つ以上の添加剤でバッチ組成物を改良することによっても達成することができる。例示的な添加剤としては、有機還元剤または還元型の或る特定の半金属、例えばケイ素、ホウ素、アルミニウム、ヒ素、アンチモンもしくはゲルマニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。有機還元剤は、燃焼により炭素を生成する任意の化合物を含み得る。非限定的な例として、有機還元剤は脂肪酸およびその塩を含み得る。脂肪酸は、カルボン酸に結合した脂肪族鎖を含み、ここで、脂肪族鎖は飽和または不飽和、線形または分岐であり得る。或る特定の実施形態では、脂肪酸はC2~C30脂肪酸、例えばオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびそれらの組合せを含み得る。脂肪酸の塩、例えば脂肪酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウムまたはカルシウム塩を使用することもできる。或る特定の実施形態では、少なくとも1つの有機還元剤を、バッチ材料の総質量に対して少なくとも約0.1質量%、例えば、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.1質量%~約0.25質量%、約0.25質量%~約0.4質量%または約0.5質量%~約1質量%の範囲の量でバッチ材料に添加することができる。
【0028】
バッチ材料Gを溶融槽内で溶融し、溶融ガラスMを得ることができる。様々な実施形態によると、溶融条件および/または溶融槽内の雰囲気を制御して、バッチ材料中に存在する任意のクロムのより低い酸化状態への還元を促進することができる。そのため、様々な実施形態では、溶融ガラスMは約20ppm未満、例えば、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.5ppm~約15ppm、約1ppm~約14ppm、約2ppm~約12ppm、約3ppm~約10ppm、約4ppm~約9ppm、約5ppm~約8ppmまたは約6ppm~約7ppmの範囲のCr6+を含み得る。付加的な実施形態によると、バッチ材料Gの第1のCr6+/Cr3+比は、溶融ガラスMの第2のCr6+/Cr3+比よりも大きい可能性がある。例えば、溶融ガラスM(および得られるガラス物品)の第2のCr6+/Cr3+比は1未満、例えば、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.05~約0.9、約0.1~約0.8、約0.2~約0.7、約0.3~約0.6または約0.4~約0.5の範囲であり得る。
【0029】
様々な実施形態によると、溶融槽内の雰囲気を制御して、理想的またはほぼ理想的なガス対酸素の化学量論比を維持することができる。溶融時に利用可能な過剰酸素が殆どまたは全くなければ、Cr6+等のより高い酸化状態へのクロムの酸化を、電気ブーストに比例したガスの量(例えばG/E比)をモニタリングすることで低減または回避することができる。例えば、0.20~0.32または0.23~0.29のG/E比が、本明細書に記載される実施形態について十分であった。このため、1つ以上のガスバーナーを溶融プロセスに用い、燃焼時の酸素の消費を、適切なG/E比を用いて理想的またはほぼ理想的な条件に調整することによって、過剰酸素含有量を制御することができる。
【0030】
更なる実施形態では、Cr6+等のより高い酸化状態へのクロムの酸化を、例えばプリメルト浴(PMB)温度を厳密に制御することによって阻害するために溶融条件を制御することができる。本明細書で使用される場合、「プリメルト浴」および「PMB」温度という用語は、バッチ材料を溶融する温度を指す。理論に束縛されることを望むものではないが、より高いPMB温度は、溶融ガラス中のCr6+含有量の低減のために青色波長でのより高い光学透過率をもたらし得ると考えられる。様々な実施形態によると、PMB温度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約1500℃~約1800℃、例えば約1550℃~約1800℃、約1600℃~約1800℃、約1650℃~約1800℃、約1700℃~約1800℃または約1750℃~約1800℃の範囲であり得る。
【0031】
さらに、PMB温度の変動は、溶融ガラスのCr6+含有量に影響を及ぼす可能性があり、PMB温度の20℃の変化は、透過率のおよそ1%の変化をもたらす。そのため、本明細書に開示される方法は、PMBターゲット温度を±10℃の温度変動で維持するステップをさらに含み得る。溶融槽内の温度変動は、例えば固定電源を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電圧および電流を変化させるか、固定電流を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電力および電圧を変化させるか、またはプリメルトターゲット温度を維持するようにガラスのバルク抵抗率をモニタリングし、制御することによって制御することができる。上記の方法の組合せを用いて、所望の溶融条件および/または溶融ガラス中の所望のCr6+を達成することもできる。
【0032】
ガラス物品
本明細書に開示される方法は、有利な光学特性を有するガラス板等のガラス物品の製造に用いられ得る。本明細書に開示されるガラス物品は、様々な電子、ディスプレイおよび照明用途、ならびに建築、自動車およびエネルギー用途に使用することができる。幾つかの実施形態では、ガラス板を、例えばLCD内のLGPとしてディスプレイデバイスに組み込むことができる。
【0033】
約50モル%~約90モル%のSiO2と、0モル%~約20モル%のAl2O3と、0モル%~約20モル%のB2O3と、0モル%~約25モル%のRxOと、0ppm~約20ppmのCrO3とを含み、ここで、RはLi、Na、K、RbおよびCsの1つ以上から選択され、かつxは2であるか、またはRはZn、Mg、Ca、SrおよびBaの1つ以上から選択され、かつxは1である、ガラス物品が本明細書に開示される。
【0034】
本開示の実施形態を、例示的なガラス物品を参照して下記で論考する。以下の全般的な説明は、特許請求されるガラス物品およびそれらの組成の概要のみを提示することを意図する。様々な態様を非限定的な実施形態を参照してより具体的に論考するが、これらの実施形態は、本開示との関連において互いに代替可能である。
【0035】
本明細書に開示される方法に従って処理することができるガラス組成物は、アルカリ含有ガラスおよび無アルカリガラスの両方を含み得る。かかるガラス組成物の非限定的な例としては、例えばソーダ石灰ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、アルカリアルミノケイ酸塩、アルカリ土類アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、アルカリホウケイ酸塩、アルカリ土類ホウケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、アルカリアルミノホウケイ酸塩およびアルカリ土類アルミノホウケイ酸塩ガラスを挙げることができる。様々な実施形態によると、本明細書に開示される方法は、高性能ディスプレイガラス基板等のガラス板の作製に用いることができる。例示的な市販のガラスとしては、Corning IncorporatedのEAGLE XG(登録商標)、Lotus(商標)、Willow(登録商標)、Iris(商標)およびGorilla(登録商標)ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
ガラス物品は、幾つかの実施形態では、化学強化ガラス、例えばイオン交換ガラスを含み得る。イオン交換プロセスにおいて、ガラス板の表面のまたは表面近くのガラス板内のイオンが、例えば塩浴からのより大きな金属イオンと交換され得る。より大きなイオンがガラスに組み込まれることで、表面近くの領域に圧縮応力が生じることによって板を強化することができる。対応する引張応力が、圧縮応力との均衡を保つようにガラス板の中心領域内で誘導され得る。
【0037】
イオン交換は、例えば所定の時間にわたって溶融塩浴内にガラスを浸漬することによって行うことができる。例示的な塩浴としては、KNO3、LiNO3、NaNO3、RbNO3およびそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。溶融塩浴の温度および処理時間は様々であり得る。所望の用途に応じて時間および温度を決定することは当業者の能力の範囲内である。非限定的な例として、溶融塩浴の温度は約400℃~約800℃、例えば約400℃~約500℃の範囲であり、所定の時間は約4~約24時間、例えば約4時間~約10時間の範囲であり得るが、他の温度および時間の組合せも想定される。非限定的な例として、ガラスを、例えば約450℃のKNO3浴内に約6時間浸し、表面圧縮応力を与えるK富化層を得ることができる。
【0038】
様々な実施形態によると、ガラス組成物はSiO2、Al2O3およびB2O3等のガラス形成剤から選択される酸化物成分を含み得る。例示的なガラス組成物は、有利な溶融および形成属性を得るために融剤も含み得る。かかる融剤としては、アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O、Rb2OおよびCs2O)およびアルカリ土類金属酸化物(MgO、CaO、SrO、ZnOおよびBaO)を挙げることができる。一実施形態では、ガラス組成物は、60~80モル%のSiO2と、0~20モル%のAl2O3と、0~15モル%のB2O3と、5~20%のアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物またはそれらの組合せとを含み得る。他の実施形態では、ガラス板のガラス組成物は、B2O3を含まなくてもよく、63~81モル%のSiO2と、0~5モル%のAl2O3と、0~6モル%のMgOと、7~14モル%のCaOと、0~2モル%のLi2Oと、9~15モル%のNa2Oと、0~1.5モル%のK2Oと、微量のFe2O3、Cr2O3、MnO2、Co3O4、TiO2、SO3および/またはSeO3とを含み得る。
【0039】
本明細書に記載される幾つかのガラス組成物では、SiO2が基本的なガラス形成剤として機能し得る。或る特定の実施形態では、SiO2の濃度は、ガラスにディスプレイガラスまたは導光板ガラスに適した密度および化学的耐久性、ならびにガラスをダウンドロープロセス(例えばフュージョンプロセス)によって形成することを可能にする液相温度(液相粘度)を与えるために、60モルパーセント超であってもよい。上限に関しては、概して、SiO2濃度は、従来の大量溶融法、例えば耐火溶融槽内でのジュール溶融を用いてバッチ材料を溶融することを可能にするために、約80モルパーセント以下であり得る。SiO2の濃度が増大すると、200ポアズ(20Pa・s)温度(溶融温度)が概して上昇する。様々な用途において、ガラス組成物が1750℃以下の溶融温度を有するようにSiO2濃度を調整することができる。様々な実施形態では、SiO2の濃度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約60モル%~約81モル%、約66モル%~約78モル%、約72モル%~約80モル%または約65モル%~約79モル%の範囲であり得る。付加的な実施形態では、SiO2の濃度は、約70モル%~約74モル%または約74モル%~約78モル%の範囲であり得る。幾つかの実施形態では、SiO2の濃度は、約72モル%~73モル%であり得る。他の実施形態では、SiO2の濃度は、約76モル%~77モル%であり得る。
【0040】
Al2O3が、別のガラス形成剤として本明細書に開示されるガラス組成物に含まれていてもよい。より高濃度のAl2O3は、ガラスのアニーリング点および弾性率を改善することができる。様々な実施形態では、Al2O3の濃度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約20モル%、約4モル%~約11モル%、約6モル%~約8モル%または約3モル%~約7モル%の範囲であり得る。付加的な実施形態では、Al2O3の濃度は、約4モル%~約10モル%または約5モル%~約8モル%の範囲であり得る。幾つかの実施形態では、Al2O3の濃度は、約7モル%~8モル%であり得る。他の実施形態では、Al2O3の濃度は、約5モル%~6モル%または0モル%~約5モル%または0モル%~約2モル%であり得る。
【0041】
B2O3は、溶融を補助し、溶融温度を低下させる、ガラス形成剤および融剤の両方としてガラス組成物に含まれていてもよい。B2O3は、液相温度および粘度の両方に影響を及ぼす可能性があり、例えばB2O3の濃度が増大すると、ガラスの液相粘度が増大し得る。様々な実施形態では、本明細書に開示されるガラス組成物は、0.1モル%以上のB2O3濃度を有し得るが、一部の組成物は、無視し得る量のB2O3を有する場合もある。SiO2に関して上で論考したように、ガラスの耐久性がディスプレイ用途に非常に望ましい。耐久性は、アルカリ土類金属酸化物の濃度を上げることで幾らか制御することができ、B2O3含有量を上げると顕著に低下する可能性がある。B2O3を増加させるとガラスのアニーリング点も低下するため、B2O3含有量を低く抑えることが有用であり得る。このため、様々な実施形態では、B2O3の濃度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約15モル%、0モル%~約12モル%、0モル%~約11モル%、約3モル%~約7モル%または0モル%~約2モル%の範囲であり得る。幾つかの実施形態では、B2O3の濃度は、約7モル%~約8モル%であり得る。他の実施形態では、B2O3の濃度は無視し得るか、または0モル%~約1モル%であり得る。
【0042】
ガラス形成剤(SiO2、Al2O3およびB2O3)に加えて、本明細書に記載されるガラス組成物は、アルカリ土類金属酸化物も含み得る。非限定的な実施形態では、少なくとも3種のアルカリ土類金属酸化物、例えばMgO、CaOおよびBaO、ならびに任意にSrOがガラス組成物の一部である。アルカリ土類金属酸化物は、ガラスの溶融、清澄、形成および最終用途に関する様々な特性をガラスに与えることができる。一実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3比は、0~2の範囲であり得る。この比率が増大すると、粘度が液相温度よりも強く増大する傾向があるため、T35k-Tliqの適切に高い値を得ることがますます困難となる。このため、別の実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3は約2以下であり得る。幾つかの実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3比は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0~約1.0、約0.2~約0.6または約0.4~約0.6の範囲である。更なる実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3比は、約0.55未満または約0.4未満である。
【0043】
或る特定の実施形態によると、アルカリ土類金属酸化物は、粘弾性特性、液相温度および液相関係に対するそれらの影響がガラス形成酸化物SiO2、Al2O3およびB2O3よりも互いに定性的に類似しているため、単一組成成分として効果的に扱うことができる。しかしながら、アルカリ土類金属酸化物CaO、SrOおよびBaOは、長石鉱物、特に灰長石(CaAl2Si2O8)およびセルシアン(BaAl2Si2O8)、ならびにストロンチウムを含むその固溶体を形成することができるが、MgOは、これらの結晶には殆ど関与しない。したがって、長石結晶が既に液相である場合、MgOの追加は、結晶に対して液体を安定化することで、液相温度を低下させる働きをする可能性がある。同時に、粘度曲線は通例、より急勾配となり、低温粘度に殆どまたは全く影響を及ぼすことなく溶融温度が低下する。
【0044】
少量のMgOの添加は、溶融温度を低下させることでガラス溶融に有益である可能性があり、高いアニーリング点を維持しながら液相温度を低下させ、液相粘度を増大させることでガラス形成に有益である可能性がある。様々な実施形態では、ガラス組成物は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約10モル%、0モル%~約6モル%、約1モル%~約8モル%、0モル%~約8.72モル%、約1モル%~約7モル%、0モル%~約5モル%、約1モル%~約3モル%、約2モル%~約10モル%または約4モル%~約8モル%の範囲のMgO濃度を有し得る。
【0045】
理論に束縛されることを望むものではないが、ガラス組成物中に存在するCaOは、低い液相温度(高い液相粘度)、高いアニーリング点および弾性率、ならびにディスプレイおよびLGP用途に有利な範囲のCTEをもたらし得ると考えられる。CaOは、化学的耐久性にも有利に寄与する可能性があり、他のアルカリ土類金属酸化物と比較して、バッチ材料として比較的安価である。しかしながら、高濃度では、CaOは密度およびCTEを増大させる可能性がある。さらに、十分に低いSiO2濃度では、CaOは灰長石を安定化し、液相粘度を低下させる可能性がある。したがって、1つ以上の実施形態では、CaO濃度は、0モル%~約6モル%の範囲であり得る。様々な実施形態では、ガラス組成物のCaO濃度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約4.24モル%、0モル%~約2モル%、0モル%~約1モル%、0モル%~約0.5モル%または0モル%~約0.1モル%の範囲であり得る。他の実施形態では、CaO濃度は、約7モル%~約14モル%または約9モル%~約12モル%の範囲であり得る。
【0046】
SrOおよびBaOはどちらも低い液相温度(高い液相粘度)に寄与し得る。これらの酸化物の濃度は、CTEおよび密度の増大ならびに弾性率およびアニーリング点の低下が回避されるように選択することができる。SrOおよびBaOの相対的割合は、物理的特性および液相粘度の好適な組合せが得られ、ガラスがダウンドロープロセスによって形成され得るようにバランスを取ることができる。様々な実施形態では、ガラス組成物は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約8モル%、0モル%~約4.3モル%、0モル%~約5モル%、約1モル%~約3モル%または約2.5モル%未満の範囲のSrO濃度を有し得る。1つ以上の実施形態では、BaO濃度は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約5モル%、0モル%~約4.3モル%、0モル%~約2モル%、0モル%~約1モル%または0モル%~約0.5モル%の範囲であり得る。
【0047】
上記の成分に加えて、本明細書に記載されるガラス組成物は、ガラスの様々な物理的、溶融、清澄および形成属性を調整するために様々な他の酸化物を含み得る。かかる他の酸化物の例としては、TiO2、SnO2、MnO、V2O3、Fe2O3、ZrO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Y2O3、La2O3およびCeO2、ならびに他の希土類酸化物およびリン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、これらの酸化物のそれぞれの量は、2モル%以下であり、それらの合わせた総濃度は、5モル%以下であり得る。幾つかの実施形態では、ガラス組成物は、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約3.5モル%、0モル%~約3.01モル%または0モル%~約2モル%の範囲の濃度のZnOを含む。他の実施形態では、ガラス組成物は、約0.1モル%~約1.0モル%のTiO2と、約0.1モル%~約1.0モル%のV2O3と、約0.1モル%~約1.0モル%のNb2O5と、約0.1モル%~約1.0モル%のMnOと、約0.1モル%~約1.0モル%のZrO2と、約0.1モル%~約1.0モル%のSnO2と、約0.1モル%~約1.0モル%のCeO2と、その間の全ての範囲および部分範囲の上に挙げた金属酸化物のいずれかとを含む。本明細書に記載されるガラス組成物は、バッチ材料と関連し、かつ/またはガラスの作製に使用される溶融、清澄および/もしくは形成装置によってガラスに導入される様々な汚染物質を含む可能性もある。ガラスは、酸化スズ電極を用いたジュール溶融の結果として、かつ/またはスズ含有材料、例えばSnO2、SnO、SnCO3、SnC2O2および他の同様の材料のバッチ処理のためにSnO2を含有する可能性もある。
【0048】
本明細書に記載されるガラス組成物は、幾らかのアルカリ構成成分を含有していてもよく、例えば、ガラスは無アルカリガラスでなくてもよい。本明細書で使用される場合、「無アルカリガラス」は、0.1モル%以下の総アルカリ濃度を有するガラスであり、ここで、総アルカリ濃度は、Na2O、K2OおよびLi2O濃度の総和である。幾つかの実施形態では、ガラスは、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約8モル%、1モル%~約5モル%、約2モル%~約3モル%、0モル%~約1モル%、約3.01モル%未満または約2モル%未満の範囲のLi2O濃度を有する。他の実施形態では、ガラスは、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約3.5モル%~約13.5モル%、約3.52モル%~約13.25モル%、約4モル%~約12モル%、約6モル%~約15モル%、約6モル%~約12モル%または約9モル%~約15モル%の範囲のNa2O濃度を有する。幾つかの実施形態では、ガラスは、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、0モル%~約5モル%、0モル%~約4.83モル%、0モル%~約2モル%、0モル%~約1.5モル%、0モル%~約1モル%または約4.83モル%未満の範囲のK2O濃度を有する。
【0049】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるガラス組成物は、少なくとも1つの清澄剤を含み、以下の組成特性の1つ以上を有し得る:(i)その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約1モル%以下、約0.05モル%以下または約0.005モル%以下のAs2O3濃度、(ii)その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約1モル%以下、約0.05モル%以下または約0.005モル%以下のSb2O3濃度、(iii)その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約3モル%以下、約2モル%以下、約0.25モル%以下、約0.11モル%以下または約0.07モル%以下のSnO2濃度。
【0050】
スズ清澄は単独で、または必要に応じて他の清澄法と組み合わせて用いることができる。例えば、スズ清澄をハロゲン化物清澄、例えば臭素清澄と組み合わせることができる。他の考え得る組合せとしては、硫酸塩、硫化物、酸化セリウム、機械的バブリングおよび/または真空清澄と合わせたスズ清澄が挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の清澄法が単独で用いられ得ることが企図される。或る特定の実施形態では、(MgO+CaO+SrO+BaO)/Al2O3比および個々のアルカリ土類濃度を上で論考される範囲内に維持することで清澄プロセスの実施がより容易となり、より効果的となる。
【0051】
様々な実施形態では、ガラスはRxOを含み得るが、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csであり、かつxは2であるか、またはRはZn、Mg、Ca、SrまたはBaであり、かつxは1である。幾つかの実施形態では、RxO-Al2O3>0である。他の実施形態では、0<RxO-Al2O3<15である。幾つかの実施形態では、RxO/Al2O3は0~10、0~5、1超、または1.5~3.75、または1~6、または1.1~5.7、およびその間の全ての部分範囲である。他の実施形態では、0<RxO-Al2O3<15である。更なる実施形態では、x=2であり、R2O-Al2O3は<15、<5、<0、-8~0または-8~-1およびその間の全ての部分範囲である。付加的な実施形態では、R2O-Al2O3<0である。さらに付加的な実施形態では、x=2であり、R2O-Al2O3-MgOは>-10、>-5、0~-5、0~-2、>-2、-5~5、-4.5~4およびその間の全ての部分範囲である。更なる実施形態では、x=2であり、RxO/Al2O3は0~4、0~3.25、0.5~3.25、0.95~3.25およびその間の全ての部分範囲である。これらの比率は、ガラス物品の製造性に影響を及ぼすだけでなく、その透過性能も決定し得る。例えば、RxO-Al2O3がほぼゼロ以上のガラスは、より良好な溶融品質を有する傾向があるが、RxO-Al2O3の値が過度に大きくなると、透過曲線が悪影響を受ける。同様に、RxO-Al2O3(例えばR2O-Al2O3)が上記の所与の範囲内である場合、ガラスは、ガラスの溶融性を維持し、液相温度を抑制しながら、可視スペクトルで高い透過率を有する可能性がある。同様に、上記のR2O-Al2O3-MgOの値もガラスの液相温度の抑制に役立ち得る。
【0052】
1つ以上の実施形態では、上述のように、例示的なガラスは、ガラスマトリックス中にある場合に可視吸収を生じる低濃度の元素を有し得る。かかる吸収体としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCu等の遷移元素、ならびにCe、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、ErおよびTm等の部分的に満たされたf軌道を有する希土類元素が挙げられる。これらの中でも、Fe、CrおよびNiがガラス溶融に使用される従来の原料において最も豊富である。鉄は、SiO2の供給源である砂中の一般的な汚染物質であり、アルミニウム、マグネシウムおよびカルシウムの原料供給源中の典型的な汚染物質でもある。クロムおよびニッケルは通例、通常のガラス原料中に低濃度で存在するが、砂の様々な鉱石中にも存在する場合があり、低濃度に制御することができる。さらに、クロムおよびニッケルは、例えば原料またはカレットをジョークラッシャーで粉砕する場合のステンレス鋼との接触、鋼で内張りされたミキサーもしくはスクリューフィーダーの浸食、または溶融ユニット自体の構造用鋼との意図せぬ接触によって導入される可能性がある。鉄(Fe3+、Fe2+)の総濃度は、幾つかの実施形態では、約50ppm未満、例えば約40ppm未満、約25ppm未満または約15ppm未満であり得る。NiおよびCrの濃度は、それぞれ約5ppm未満、例えば約2ppm未満であり得る。更なる実施形態では、上に挙げた他の全ての吸収体の濃度は、それぞれ約1ppm未満であり得る。様々な実施形態では、ガラスは、1ppm以下のCo、NiおよびCr、または代替的には、1ppm未満のCo、NiおよびCrを含む。様々な実施形態では、遷移元素(V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCu)は、0.1質量%以下の濃度でガラス中に存在し得る。幾つかの実施形態では、Fe(Fe3+、Fe2+)の総濃度は<約50ppm、<約40ppm、<約30ppm、<約20ppmまたは<約10ppmであり得る。他の実施形態では、Fe+30Cr+35Niは<約60ppm、<約50ppm、<約40ppm、<約30ppm、<約20ppmまたは<約10ppmである。
【0053】
他の実施形態では、300nm~650nmの吸収を引き起こさず、<約300nmの吸収帯を有する或る特定の遷移金属酸化物の添加は、形成プロセスによるネットワーク欠陥を防ぎ、インク硬化時のUV曝露後の色中心(例えば、300nm~650nmの光の吸収)を防ぐことができる。これは、光によりガラスネットワークの基本的な結合が分解されるのではなく、ガラスネットワーク中の遷移金属酸化物による結合が光を吸収するためである。このため、例示的な実施形態は、UV色中心の形成を最小限に抑えるために、以下の遷移金属酸化物のいずれか1つまたは組合せを含み得る:上に挙げた遷移金属酸化物のいずれかについて、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.1モル%~約3.0モル%の酸化亜鉛、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化チタン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化バナジウム、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ニオブ、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化マンガン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ジルコニウム、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ヒ素、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化スズ、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化モリブデン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化アンチモン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化セリウム。幾つかの実施形態では、例示的なガラスは、0.1モル%~約3.0モル%未満または以下の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化ヒ素、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化アンチモンおよび酸化セリウムの任意の組合せを含有し得る。
【0054】
例示的なガラスに意図的に組み込まれる元素に加えて、周期表のほぼ全ての安定した元素が、原料における低レベルの汚染、製造プロセスにおける耐火物および貴金属の高温浸食、または最終ガラスの属性を微調整するための低レベルでの意図的な導入のいずれかによってガラス中に或る程度存在し得る。例えば、ジルコニウムが、ジルコニウムに富んだ耐火物との相互作用によって汚染物質として導入される可能性がある。更なる例として、白金およびロジウムが貴金属との相互作用によって導入される可能性がある。更なる例として、鉄が原料中の混入物として導入されるか、または気体包有物の制御を強化するために意図的に添加される可能性がある。更なる例として、マンガンが色を制御するか、または気体包有物の制御を強化するために導入される可能性がある。
【0055】
水素は、ヒドロキシルアニオンOH-の形態で存在する可能性があり、その存在を標準的な赤外分光法によって確認することができる。溶存ヒドロキシルイオンは、例示的なガラスのアニーリング点に顕著にかつ非線形的に影響を及ぼすため、所望のアニーリング点を得るためには、主要な酸化物成分の濃度を調整して補償することが有益であり得る。ヒドロキシルイオン濃度は、原料の選択または溶融システムの選択によって或る程度制御することができる。例えば、ホウ酸は、ヒドロキシルの主要な供給源であり、ホウ酸を酸化ホウ素に置き換えることは、最終ガラス中のヒドロキシル濃度を制御するのに有用な手段であり得る。同じ推論を、ヒドロキシルイオン、水和物、または物理吸着もしくは化学吸着水分子を含む化合物を含む他の潜在的な原料に当てはめることができる。ガスバーナーを溶融プロセスに使用する場合、ヒドロキシルイオンが、天然ガスおよび関連炭化水素の燃焼による燃焼生成物によって導入される可能性もあるため、溶融に使用されるエネルギーをガスバーナーから電極に移行させて補償することが望ましい場合がある。代替的には、主要な酸化物成分を調整する反復プロセスを代わりに用いて、溶存ヒドロキシルイオンの有害な影響を補償してもよい。
【0056】
硫黄は、天然ガス中に存在することが多く、同様に多くの炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物および酸化物原料における混入成分である。SO2の形態では、硫黄が気体包有物の厄介な供給源となる可能性がある。SO2に富んだ欠陥を形成する傾向は、原料中の硫黄レベルを制御し、低レベルの比較的還元された多価カチオンをガラスマトリックスに組み込むことによって、かなりの程度まで管理することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、SO2に富んだ気体包有物は、主にガラス中に溶存する硫酸塩(SO4
2-)の還元によって生じるようである。例示的なガラスのバリウム濃度の上昇は、溶融の初期段階でのガラスにおける硫黄残留を増大させるようであるが、上述のように、バリウムは低い液相温度、ひいては高いT35k-Tliqおよび高い液相粘度を得るために望ましい。原料中の硫黄レベルを意図的に低レベルに制御することは、ガラス中の(おそらくは硫酸塩としての)溶存硫黄を減少させる有用な手段である。特に、硫黄は、約200ppm未満、例えば約100ppm未満の濃度でバッチ材料中に存在し得る。
【0057】
還元多価イオン(multivalents)を用いて、例示的なガラスがSO2ブリスターを形成する傾向を制御することもできる。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの元素は、硫酸塩還元の起電力を抑制する潜在的な電子供与体として挙動し得る。硫酸塩還元は、SO4
2-→SO2+O2+2e-等の半反応を用いて表すことができ、ここで、e-は電子を表す。半反応の「平衡定数」は、Keq=[SO2][O2][e-]2/[SO4
2-]であり、ここで、角括弧は化学活性を表す。幾つかの実施形態では、SO2、O2および2e-から硫酸塩を生じるように反応を推進することが有利であり得る。硝酸塩、過酸化物または他の酸素に富んだ原料の添加は、有用な場合もあるが、溶融の初期段階での硫酸塩還元に逆に作用する場合もあり、そもそも、これらを添加することの利点を相殺する可能性がある。SO2は、殆どのガラスにおいて非常に低い溶解性を有するため、ガラス溶融プロセスへの添加は実用的ではない。或る特定の実施形態では、還元多価イオンによって電子を「付加」することができる。例えば、第一鉄(Fe2+)の適切な電子供与半反応は、2Fe2+→2Fe3++2e-と表すことができる。
【0058】
この電子の「活性」は、硫酸塩還元反応を左に進め、ガラス中のSO4
2-を安定化することができる。好適な還元多価イオンとしては、Fe2+、Mn2+、Sn2+、Sb3+、As3+、V3+、Ti3+および当業者によく知られている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。いずれの場合にも、ガラスの色に対する有害な影響を回避するため、またはAsおよびSbの場合に、エンドユーザーのプロセスにおいて廃棄物管理が複雑となるほど高いレベルでかかる成分を添加することを回避するために、かかる成分の濃度を最小限に抑えることが望ましい場合がある。
【0059】
例示的なガラスの主要な酸化物成分および上述の微量構成成分に加えて、ハロゲン化物が、原料の選択によって導入される汚染物質、またはガラス中の気体包有物を排除するために使用される意図的な成分として様々なレベルで存在し得る。清澄剤として、ハロゲン化物を約0.4モル%以下の濃度で組み込むことができるが、概して、オフガス処理装置の腐食を回避するために可能であればより少ない量を使用することが望ましい。幾つかの実施形態では、個々のハロゲン化物元素の濃度は、個々のハロゲン化物のそれぞれについて約200ppm未満、または全てのハロゲン化物元素の総和について約800ppm未満である。
【0060】
主要な酸化物成分、微量の酸化物成分、多価イオンおよびハロゲン化物清澄剤に加えて、所望の物理的、ソラリゼーション、光学または粘弾性特性を達成するために低濃度の他の無色酸化物成分を組み込むことが有用であり得る。かかる酸化物としては、TiO2、ZrO2、HfO2、Nb2O5、Ta2O5、MoO3、WO3、ZnO、In2O3、Ga2O3、Bi2O3、GeO2、PbO、SeO3、TeO2、Y2O3、La2O3、Gd2O3および当業者に知られている他のものが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なガラスの主要な酸化物成分の相対的割合を調整することによって、かかる無色酸化物を、アニーリング点、T35k-Tliqまたは液相粘度に許容し得ない影響を与えることなく、最大約2モル%~3モル%のレベルまで添加することができる。例えば、幾つかの実施形態は、UV色中心の形成を最小限に抑えるために、以下の遷移金属酸化物のいずれか1つまたは組合せを含み得る:上に挙げた遷移金属酸化物のいずれかについて、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.1モル%~約3.0モル%の酸化亜鉛、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化チタン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化バナジウム、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ニオブ、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化マンガン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ジルコニウム、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化ヒ素、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化スズ、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化モリブデン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化アンチモン、約0.1モル%~約1.0モル%の酸化セリウム。幾つかの実施形態では、例示的なガラスは、0.1モル%~約3.0モル%未満または以下の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化ヒ素、酸化スズ、酸化モリブデン、酸化アンチモンおよび酸化セリウムのいずれかの組合せを含有し得る。
【0061】
非限定的なガラス組成物は、約50モル%~約90モル%のSiO2と、0モル%~約20モル%のAl2O3と、0モル%~約20モル%のB2O3と、0モル%~約25モル%のRxOとを含み得るが、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2であるか、またはZn、Mg、Ca、SrもしくはBaであり、かつxは1である。幾つかの実施形態では、RxO-Al2O3>0;0<RxO-Al2O3<15;x=2かつR2O-Al2O3<15;R2O-Al2O3<2;x=2かつR2O-Al2O3-MgO>-15;0<(RxO-Al2O3)<25、-11<(R2O-Al2O3)<11かつ-15<(R2O-Al2O3-MgO)<11;および/または-1<(R2O-Al2O3)<2かつ-6<(R2O-Al2O3-MgO)<1である。幾つかの実施形態では、ガラスは、それぞれ1ppm未満のCo、NiおよびCrを含む。幾つかの実施形態では、総Fe濃度は<約50ppm、<約20ppmまたは<約10ppmである。他の実施形態では、Fe+30Cr+35Ni<約60ppm、Fe+30Cr+35Ni<約40ppm、Fe+30Cr+35Ni<約20ppmまたはFe+30Cr+35Ni<約10ppmである。他の実施形態では、ガラスは、約60モル%~約80モル%のSiO2と、約0.1モル%~約15モル%のAl2O3と、0モル%~約12モル%のB2O3と、約0.1モル%~約15モル%のR2Oと、約0.1モル%~約15モル%のROとを含み、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2であるか、またはZn、Mg、Ca、SrもしくはBaであり、かつxは1である。
【0062】
他の実施形態では、ガラス組成物は、約65.79モル%~約78.17モル%のSiO2と、約2.94モル%~約12.12モル%のAl2O3と、0モル%~約11.16モル%のB2O3と、0モル%~約2.06モル%のLi2Oと、約3.52モル%~約13.25モル%のNa2Oと、0モル%~約4.83モル%のK2Oと、0モル%~約3.01モル%のZnOと、0モル%~約8.72モル%のMgOと、0モル%~約4.24モル%のCaOと、0モル%~約6.17モル%のSrOと、0モル%~約4.3モル%のBaOと、約0.07モル%~約0.11モル%のSnO2とを含み得る。
【0063】
付加的な実施形態では、ガラス組成物は、0.95~3.23のRxO/Al2O3比を有することができ、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2である。更なる実施形態では、ガラス組成物は、1.18~5.68のRxO/Al2O3比を有することができ、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2であるか、またはZn、Mg、Ca、SrもしくはBaであり、かつxは1である。また更なる実施形態では、ガラス組成物は、-4.25~4.0のRxO-Al2O3-MgOを有することができ、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2である。更なる実施形態では、ガラス組成物は、約66モル%~約78モル%のSiO2と、約4モル%~約11モル%のAl2O3と、約4モル%~約11モル%のB2O3と、0モル%~約2モル%のLi2Oと、約4モル%~約12モル%のNa2Oと、0モル%~約2モル%のK2Oと、0モル%~約2モル%のZnOと、0モル%~約5モル%のMgOと、0モル%~約2モル%のCaOと、0モル%~約5モル%のSrOと、0モル%~約2モル%のBaOと、0モル%~約2モル%のSnO2とを含み得る。
【0064】
様々な実施形態では、ガラス組成物は、約72モル%~約80モル%のSiO2と、約3モル%~約7モル%のAl2O3と、0モル%~約2モル%のB2O3と、0モル%~約2モル%のLi2Oと、約6モル%~約15モル%のNa2Oと、0モル%~約2モル%のK2Oと、0モル%~約2モル%のZnOと、約2モル%~約10モル%のMgOと、0モル%~約2モル%のCaOと、0モル%~約2モル%のSrOと、0モル%~約2モル%のBaOと、0モル%~約2モル%のSnO2とを含み得る。或る特定の実施形態では、ガラス組成物は、約60モル%~約80モル%のSiO2と、0モル%~約15モル%のAl2O3と、0モル%~約15モル%のB2O3と、約2モル%~約50モル%のRxOとを含み得るが、ここで、RはLi、Na、K、Rb、Csのいずれか1つ以上であり、かつxは2であるか、またはZn、Mg、Ca、SrもしくはBaであり、かつxは1であり、Fe+30Cr+35Ni<約60ppmである。
【0065】
他の例示的なガラス組成物が、2018年4月19日に出願され、HIGH TRANSMISSION GLASSESと題する米国特許出願公開第15/769639号明細書、および2018年3月28日に出願され、HIGH TRANSMISSION GLASSESと題する国際公開第2018/183444号(どちらも、その全体を参照により本明細書に援用するものとする)に論考されている。
【0066】
非限定的な例として、ガラス組成物は、約70モル%~約85モル%のSiO2と、0モル%~約5モル%のAl2O3と、0モル%~約5モル%のB2O3と、0モル%~約10モル%のNa2Oと、0モル%~約12モル%のK2Oと、0モル%~約4モル%のZnOと、約3モル%~約12モル%のMgOと、0モル%~約5モル%のCaOと、0モル%~約3モル%のSrOと、0モル%~約3モル%のBaOと、約0.01モル%~約0.5モル%のSnO2とを含み得る。他の実施形態では、ガラス組成物は、約80モル%超のSiO2と、0モル%~約0.5モル%のAl2O3と、0モル%~約0.5モル%のB2O3と、0モル%~約0.5モル%のNa2Oと、約8モル%~約11モル%のK2Oと、約0.01モル%~約4モル%のZnOと、約6モル%~約10モル%のMgOと、0モル%~約0.5モル%のCaOと、0モル%~約0.5モル%のSrOと、0モル%~約0.5モル%のBaOと、約0.01モル%~約0.11モル%のSnO2とを含み得る。付加的な実施形態によると、ガラス組成物は、Al2O3およびB2O3を実質的に含まなくてもよく、約80モル%超のSiO2と、0モル%~約0.5モル%のNa2Oと、約8モル%~約11モル%のK2Oと、約0.01モル%~約4モル%のZnOと、約6モル%~約10モル%のMgOと、約0.01モル%~約0.11モル%のSnO2とを含み得る。更なる実施形態では、ガラス組成物は、約72.82モル%~約82.03モル%のSiO2と、0モル%~約4.8モル%のAl2O3と、0モル%~約2.77モル%のB2O3と、0モル%~約9.28モル%のNa2Oと、約0.58モル%~約10.58モル%のK2Oと、約0モル%~約2.93モル%のZnOと、約3.1モル%~約10.58モル%のMgOと、0モル%~約4.82モル%のCaOと、0モル%~約1.59モル%のSrOと、0モル%~約3モル%のBaOと、約0.08モル%~約0.15モル%のSnO2とを含み得る。更なる実施形態では、ガラス組成物は、約80モル%超のSiO2と、約8モル%~約11モル%のK2Oと、約0.01モル%~約4モル%のZnOと、約6モル%~約10モル%のMgOと、約0.01モル%~約0.11モル%のSnO2とを含む、実質的にアルミナを含まないケイ酸カリウム組成物であり得る。
【0067】
本明細書に開示される方法によって作製されるガラス物品は、非限定的な実施形態では、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0ppm~約20ppmのCrO3、例えば約1ppm~約18ppm、約2ppm~約16ppm、約3ppm~約15ppm、約4ppm~約14ppm、約5ppm~約12ppm、約6ppm~約11ppm、約7ppm~約10ppmまたは約8ppm~約9ppmのCrO3を含む組成を有し得る。他の実施形態では、CrO3含有量は、5ppm未満、例えば1、2、3または4ppmのCrO3であり得る。更なる実施形態では、ガラス物品中のCr6+/Cr3+の比率は約1以下、例えば、その間の全ての範囲および部分範囲を含めて、約0.05~約0.9、約0.1~約0.8、約0.2~約0.7、約0.3~約0.6または約0.4~約0.5の範囲であり得る。本明細書に開示されるガラス物品は、様々な実施形態では、上述の組成特徴のいずれかの任意の組合せを有し得る。
【0068】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるガラス物品は0.015未満、例えば約0.005~約0.015の範囲(例えば約0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.010、0.011、0.012、0.013、0.014または0.015)のカラーシフトΔyを有し得る。他の実施形態では、ガラス物品は、0.008未満のカラーシフトを有し得る。カラーシフトは、測色のCIE 1931標準を用いて長さLに沿ったxおよびy色度座標の変動を測定することによって特徴づけることができる。ガラスLGPについては、カラーシフトΔyをΔy=y(L2)-y(L1)として報告することができ、ここで、L2およびL1は、光源(source launch)から離れるパネルまたは基板方向に沿ったZ位置であり、L2-L1=0.5メートルである。例示的なガラス物品は、Δy<0.01、Δy<0.005、Δy<0.003またはΔy<0.001を有し得る。或る特定の実施形態によると、ガラス物品は、約420~750nmの範囲の波長に対して約4dB/m未満、例えば約3dB/m未満、約2dB/m未満、約1dB/m未満、約0.5dB/m未満、約0.2dB/m未満、またはさらに低い、例えば約0.2dB/m~約4dB/mの範囲の光減衰α1(例えば、吸収および/または散乱損失による)を有し得る。
【0069】
開示される様々な実施形態が、その特定の実施形態に関連して説明される特定の特徴、要素またはステップを含み得ることが理解される。特定の特徴、要素またはステップは、特定の一実施形態との関連で説明されるが、示されていない様々な組合せまたは順列で代替実施形態と置き換えまたは組み合わせられ得ることも理解される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「the」、「a」または「an」という用語が「少なくとも1つ」を意味し、明示的に反対の指示がない限り、「1つのみ」に限定すべきでないことも理解されたい。このため、例えば「成分(a component)」への言及は、文脈上明らかに他の指示がない限り、2つ以上のかかる成分を有する例を含む。
【0071】
範囲は、本明細書において「約」或る特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。かかる範囲を表す場合、例は或る特定の値から、かつ/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成すると理解される。それぞれの範囲の端点が他の端点との関連でも、また他の端点とは独立しても重要であることがさらに理解される。
【0072】
「実質的な」、「実質的に」という用語およびそれらの変化形は、本明細書で使用される場合、記載の特徴が或る値または記載に等しいか、またはほぼ等しいことに言及することを意図する。さらに、「実質的に同様の」は、2つの値が等しいか、またはほぼ等しいことを示すことを意図する。幾つかの実施形態では、「実質的に同様の」は、互いの約10%以内、例えば互いの約5%以内または互いの約2%以内の値を示し得る。
【0073】
特に明記しない限り、本明細書に記載される任意の方法が、そのステップを特定の順序で行う必要があると解釈されることは全く意図されない。したがって、方法クレームに、そのステップが従うべき順序が実際に挙げられていないか、または別の形で、ステップが特定の順序に限定されることが特許請求の範囲もしくは明細書に具体的に述べられていない場合、任意の特定の順序が推定されることは全く意図されない。
【0074】
特定の実施形態の様々な特徴、要素またはステップが「含む」という移行句を用いて開示される場合があるが、「からなる」または「から本質的になる」という移行句を用いて記載され得るものを含む代替的な実施形態が含意されることを理解されたい。このため、例えば、A+B+Cを含む方法に対して含意される代替的な実施形態は、方法がA+B+Cからなる実施形態および方法がA+B+Cから本質的になる実施形態を含む。
【0075】
本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本開示に様々な変更および変形を加えることができることは当業者には明らかである。本開示の趣旨および本質を組み込む開示の実施形態の変更の組合せ、部分的組合せおよび変形が当業者には想到され得ることから、本開示は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内の全てを含むと解釈すべきである。
【0076】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0077】
実施形態1
ガラス製造方法であって、
バッチ材料を溶融槽内で溶融して、約20ppm未満のCrO3を含む溶融ガラスを得るステップ
を含み、前記溶融ガラス中のCrO3含有量を、前記バッチ材料の構成および前記溶融槽内の条件の少なくとも一方を制御するステップにより前記バッチ材料中に存在するクロムの酸化状態を還元することによって減少させる、方法。
【0078】
実施形態2
前記酸化状態をCr6+からCr3+へと還元する、実施形態1記載の方法。
【0079】
実施形態3
前記バッチ材料の第1のCr6+/Cr3+比が、溶融ガラス物品の第2のCr6+/Cr3+比よりも大きい、実施形態1記載の方法。
【0080】
実施形態4
前記溶融ガラスの前記第2のCr6+/Cr3+比が1未満である、実施形態3記載の方法。
【0081】
実施形態5
前記溶融ガラスが約10ppm未満のCrO3を含む、実施形態1記載の方法。
【0082】
実施形態6
前記溶融ガラスが約1ppm未満のCrO3を含む、実施形態1記載の方法。
【0083】
実施形態7
前記バッチ材料の構成を制御するステップが、約0.6未満の光学的塩基度を有するバッチ材料が得られるようにガラス組成物を選択するステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0084】
実施形態8
前記バッチ材料の構成を制御するステップが、少なくとも1つの有機還元剤を前記バッチ材料に加えるステップを含む、実施形態1記載の方法。
【0085】
実施形態9
前記有機還元剤が、脂肪酸およびその塩から選択される、実施形態8記載の方法。
【0086】
実施形態10
溶融条件を制御するステップが、
(a)プリメルト浴ターゲット温度を±10℃の温度変動で維持するステップ、および
(b)理想的なガス/酸素の化学量論比を有する前記溶融槽内の雰囲気をおよそ0%の過剰酸素で維持するステップ
の少なくとも一方を含む、実施形態1記載の方法。
【0087】
実施形態11
前記プリメルト浴ターゲット温度が約1500℃~約1800℃の範囲である、実施形態10記載の方法。
【0088】
実施形態12
前記温度変動を、
(i)固定電源を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電圧および電流を変化させるステップ、
(ii)固定電流を用い、プリメルトターゲット温度を維持するように電力および電圧を変化させるステップ、ならびに
(iii)プリメルトターゲット温度を維持するようにガラスのバルク抵抗率をモニタリングし、制御するステップ
の少なくとも1つによって制御する、実施形態10記載の方法。
【0089】
実施形態13
約50モル%~約90モル%のSiO2と、
0モル%~約20モル%のAl2O3と、
0モル%~約20モル%のB2O3と、
0モル%~約25モル%のRxOと、
0ppm~約20ppmのCrO3と
を含むガラス物品であって、RがLi、Na、K、RbおよびCsの1つ以上から選択され、かつxが2であるか、またはRがZn、Mg、Ca、SrおよびBaの1つ以上から選択され、かつxが1である、ガラス物品。
【0090】
実施形態14
約70モル%~約85モル%のSiO2と、
0モル%~約5モル%のAl2O3と、
0モル%~約5モル%のB2O3と、
0モル%~約10モル%のNa2Oと、
0モル%~約12モル%のK2Oと、
0モル%~約4モル%のZnOと、
約3モル%~約12モル%のMgOと、
0モル%~約5モル%のCaOと、
0モル%~約3モル%のSrOと、
0モル%~約3モル%のBaOと、
約0.01モル%~約0.5モル%のSnO2と
を含む、実施形態13記載のガラス物品。
【0091】
実施形態15
前記ガラス物品のカラーシフトΔyが約0.006未満である、実施形態13記載のガラス物品。
【0092】
実施形態16
前記ガラス物品のCr6+/Cr3+比が約1未満である、実施形態13記載のガラス物品。
【0093】
実施形態17
約1ppm未満のCrO3を含む、実施形態13記載のガラス物品。
【0094】
実施形態18
630nmでの前記ガラス物品の第1の吸収係数が、450nmでの前記ガラス物品の第2の吸収係数以上である、実施形態13記載のガラス物品。
【0095】
実施形態19
前記ガラス物品がガラス板である、実施形態13から18までのいずれか1つ記載のガラス物品。
【0096】
実施形態20
実施形態19記載のガラス板を備えた、ディスプレイデバイス。
【国際調査報告】