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特表2022-523102電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス
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  • 特表-電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス 図1
  • 特表-電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス 図2
  • 特表-電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス 図3
  • 特表-電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス 図4
  • 特表-電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】電荷中性点の前後で動作し、量子キャパシタンスを調節するようにゲート電圧が選択される電荷感知デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/369 20110101AFI20220414BHJP
   H01L 29/66 20060101ALI20220414BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220414BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220414BHJP
   H01L 51/30 20060101ALI20220414BHJP
   H01L 29/24 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
H04N5/369
H01L29/66 L
H01L27/146 A
H01L29/06 601N
H01L29/28 250E
H01L29/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544559
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 EP2020052468
(87)【国際公開番号】W WO2020157299
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19382066.9
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】512117362
【氏名又は名称】フンダシオ インスティチュート デ サイエンセズ フォトニクス
(71)【出願人】
【識別番号】512171032
【氏名又は名称】インスティトゥシオ カタラナ デ レセルカ イ エストゥディス アヴァンカッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100206243
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貴士
(72)【発明者】
【氏名】スティン、グーセンス
(72)【発明者】
【氏名】フランク、コッペンス
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシモス、コンスタンタトス
【テーマコード(参考)】
4M118
5C024
【Fターム(参考)】
4M118AA02
4M118AA09
4M118AB01
4M118BA14
4M118CA06
4M118CA07
4M118CA09
4M118CA14
4M118CB05
4M118CB13
4M118CB20
4M118DB13
4M118DD03
4M118DD11
4M118DD12
5C024CX41
5C024CX43
5C024GX06
5C024GX07
5C024GX18
5C024HX47
(57)【要約】
本発明は、電子装置を備えるシステムに関し、電子装置は、電子デバイスであって、ゲート電極(G、BE)、ゲート電極(G、BE)の上に配置された誘電体(D)、および電荷感知構造(CE)とゲート電極構造(G、BE)との間のゲート・キャパシタンス(C)と、量子キャパシタンス(C)とを提供して、結果的に総キャパシタンス(Ctot)を生じさせるための2次元電荷感知層を有する電荷感知構造(CE)を備える、電子デバイスと、総キャパシタンス(Ctot)に蓄積された出力電圧(V)を検出する電圧検出器と、を備える。システムは、ゲート電極構造(G、BE)にゲート電圧(V)を印加する手段をさらに備え、ゲート電圧(V)は、前記電子デバイスを、電荷感知構造(CE)のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後で動作させ、かつ量子キャパシタンス(C)を調節する、ように選択される。本発明は、その量子キャパシタンスの調節を可能にするように適合された電子装置にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置を備えるシステムであって、前記電子装置が、
- 電子デバイスであって、
- ゲート電極構造(G、BE)、
- 前記ゲート電極構造(G、BE)の上に配置された誘電体構造(D)、および
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された少なくとも1つの2次元電荷感知層を備える電荷感知構造(CE)であって、前記電荷感知構造(CE)と前記ゲート電極構造(G、BE)との間にゲート・キャパシタンス(C)を提供するために前記誘電体構造(D)の上に構成および配置され、前記電荷感知構造(CE)は、前記ゲート・キャパシタンス(C)と直列の量子キャパシタンス(C)を示し、その結果、前記電荷感知構造(CE)と前記ゲート電極構造(G、BE)との間に総キャパシタンス(Ctot)が生じる、電荷感知構造(CE)、
を備える電子デバイスと、
- 前記総キャパシタンス(Ctot)に蓄積された前記感知された電荷を表す出力電圧(V)を検出するために、前記電荷感知構造(CE)または前記ゲート電極構造(G、BE)に電気的に接続された電圧検出器と、を備えるシステムにおいて、
前記システムが、前記ゲート電極構造(G、BE)にゲート電圧(V)を印加するように構成および配置された手段をさらに備え、前記ゲート電圧(V)が、
- 前記電子デバイスを、前記電荷感知構造(CE)のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後で動作させ、かつ
- 前記電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように前記量子キャパシタンス(C)を調節する、
ように選択されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記手段が、前記ゲート電圧(V)を生成する電圧源を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記手段が、前記ゲート電圧(V)を前記ゲート電極構造(G、BE)に印加すると共に前記ゲート電圧(V)の前記選択を行うように構成および配置された制御ユニット(CU)を備える、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ゲート電圧(V)が、DC電圧、AC電圧、またはDC電圧とAC電圧の組み合わせであり、前記制御ユニット(CU)が、前記ゲート電圧(V)の性質を、少なくともその大きさに関して選択するように構成される、請求項1、2、または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記制御ユニット(CU)が、動作モードに関する選択信号を受け取る選択入力を備え、前記制御ユニット(CU)が、前記選択入力を通じて受け取られる選択信号に応答して、前記ゲート電圧(V)を選択し前記ゲート電極構造(G、BE)に印加して、前記装置を選択された前記動作モードに従って動作させるように構成される、請求項1から4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記制御ユニット(CU)が、同じく前記選択入力を通じて受け取られる選択信号に応答して、前記ゲート電極構造(G、BE)に前記ゲート電圧(V)を印加しないように構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記動作モードが、少なくとも以下のモード:
- 前記制御ユニット(CU)が、前記量子キャパシタンス(C)を低減するか、増大させないか、または35%未満の割合だけ増大させるために、前記ゲート電圧(V)を前記ゲート電極構造(G、BE)に印加しないか、または絶対的大きさが(0.9-Vcnp)ボルト未満のゲート電圧(V)を選択して印加する高感度モードであって、V=q・n・A/Cであり、qは電子電荷であり、nは残留電荷キャリア密度であり、Aは面積であり、Cはゲートのキャパシタンスであり、VcnpはCが最も低くなる電圧である、高感度モード、
- 前記制御ユニット(CU)が、前記量子キャパシタンス(C)を45%を上回る割合に増大させるために、絶対的大きさが(1.1-Vcnp)ボルトを上回るゲート電圧(V)を選択して前記ゲート電極構造(G、BE)に印加する、高ダイナミック・レンジ・モード、および
- 前記制御ユニット(CU)が、前記量子キャパシタンス(C)を35%と45%との間の範囲の割合に増大させるために、絶対的大きさが0.9-(1.1-Vcnp)の間のボルト範囲であるゲート電圧(V)を選択して、前記ゲート電極構造(G、BE)に印加するトレードオフ・モード、
を含む、請求項5または6に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ユニット(CU)が、前記電圧検出器の出力またはそれに動作的に接続された読み出し回路(R)の出力に接続された調整入力をさらに備え、前記調整入力を通じて受け取られた検出された出力電圧(V)または読み出し信号(S)に基づいて前記ゲート電圧(V)を調整するための閉ループの調整プロセスを実施するように構成される、請求項1から7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記制御ユニット(CU)が、選択された前記動作モードにも基づいて前記閉ループの調整プロセスを実施するように構成される、請求項7に従属するときの請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記電圧検出器が、前記制御ユニット(CU)の制御下で前記総キャパシタンス(Ctot)を放電させるためのリセット回路を含み、前記装置が、前記検出された出力電圧(V)に基づく読み出し信号(S)を提供するために前記電圧検出器のoutに動作的に接続された読み出し回路(R)をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記電子デバイスが、前記電荷感知構造(CE)の上に配置された増感または官能化構造(S)をさらに備え、前記増感または官能化構造(S)は、前記電荷キャリアを誘起する、および/または前記外部の物理量によって誘起されたその中の電荷キャリア密度を変更するように構成され、前記増感または官能化構造(S)は、前記外部の物理量のみに感応する、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記増感または官能化構造(PS)が、照明されると正孔対を生成するように構成および配置された光活性構造であり、前記正孔対は、前記電荷感知構造(CE)と、前記光活性構造(PS)、または前記光活性構造(PS)の上部の上部ゲート電極、または前記電荷感知構造(CE)と前記光活性構造(PS)との間の中間層と、の間のショットキー接合によって作り出される電界により、分離されて、電子または正孔のいずれかが、前記誘起された電荷キャリアとして前記電荷感知構造(CE)に輸送される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
画素のアレイを備えるイメージ・センサを実装し、前記電子装置が複数の前記電子デバイスを備え、各々の前記電子デバイスが前記画素のアレイの1画素を構成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記電子デバイスが、前記電荷感知構造(CE)の上に配置された増感または官能化構造(S)を一切持たず、前記電荷感知構造は、自身で前記電荷キャリアを誘起する、および/または前記外部の物理量によって誘起されるその中の前記電荷キャリア密度を変更するように構成される、請求項1から10のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
電子装置であって、
- 電子デバイスであって、
- ゲート電極構造(G、BE)、
- 前記ゲート電極構造(G、BE)の上に配置された誘電体構造(D)、および
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された少なくとも1つの2次元電荷感知層を備える電荷感知構造(CE)であって、前記電荷感知構造(CE)と前記ゲート電極構造(G、BE)との間にゲート・キャパシタンス(C)を提供するために前記誘電体構造(D)の上に構成および配置され、前記電荷感知構造(CE)は、前記ゲート・キャパシタンス(C)と直列の量子キャパシタンス(C)を示し、その結果、前記電荷感知構造(CE)と前記ゲート電極構造(G、BE)との間に総キャパシタンス(Ctot)が生じる、電荷感知構造(CE)、
を備える電子デバイスと、
- 前記総キャパシタンス(Ctot)に蓄積され、前記感知された電荷を表す出力電圧(V)を検出するために、前記電荷感知構造(CE)または前記ゲート電極構造(G、BE)に電気的に接続された電圧検出器と、を備える電子装置において、
前記電子装置が、前記ゲート電極構造(G、BE)に電気的に接続され、それにゲート電圧(V)を印加するためにアクセス可能である入力端子(TV)を少なくともさらに備え、前記ゲート電圧(V)が、
- 前記電子デバイスを、前記電荷感知構造(CE)のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後で動作させ、かつ
- 前記電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように前記量子キャパシタンス(C)を調節する、
ように選択されることを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の態様において、電子装置を備えたシステムに関し、電子装置は電子デバイスを備え、電子デバイスは、電荷感知の目的に使用されるコンデンサであって、デバイスをフェルミ準位の最も感度の高い点の前後で動作させながらシステムによって調節可能な量子キャパシタンスを示すコンデンサを構成する。
【0002】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のシステムのもののような、量子キャパシタンスの調節を可能にするように適合された電子装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の請求項1のプリアンブル節の特徴を備えるシステムが当技術分野で知られており、すなわち、
- 電子デバイスであって、
- ゲート電極構造、
- 前記ゲート電極構造の上に配置された誘電体構造、および
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された少なくとも1つの2次元電荷感知層を備える電荷感知構造であって、電荷感知構造とゲート電極構造との間にゲート・キャパシタンスを提供するために前記誘電体構造の上に構成および配置され、前記電荷感知構造は、前記ゲート・キャパシタンスと直列の量子キャパシタンスを示し、その結果、電荷感知構造とゲート電極構造との間に総キャパシタンスが生じる、電荷感知構造、
を備える電子デバイスと、
- コンデンサCに蓄積された前記感知された電荷Qを表す出力電圧Voutを検出するために、電荷感知構造またはゲート電極構造に電気的に接続された電圧検出器と、を備える電子装置を備えるものである。
【0004】
出力電圧はVout=Q/Cである。出力電圧を最適化するために、キャパシタンスが最小化される必要がある。
【0005】
電荷感知構造およびゲート電極構造によって形成されるゲート・コンデンサの古典的なキャパシタンスCは、以下の式によって与えられる:
=εεA/d
【0006】
ここで、εは、誘電体材料の比誘電率であり、εは真空誘電率であり、Aはコンデンサの面積であり、dは誘電体材料の厚みである。
【0007】
デバイスの高い感度が要求される場合、キャパシタンスは可能な限り小さくなる必要があり、したがって、誘電体の厚みdは、所与の量の電荷Qに対する出力電圧を最大にするために可能な限り大きくなる必要がある。そのような高感度の用途には、ゲート電極構造および接点へのキャパシタンス、ならびに電圧検出器および存在し得る読み出し回路の寄生キャパシタンスは、出力電圧を検出できるように、またはそれに関連する出力信号を読み出すことができるように、最小化される必要がある。読み出し回路への寄生キャパシタンスを最小にする方式の1つは、検出器を、シリコン相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路に組み込むことである。
【0008】
2次元材料には、有限の状態密度に起因して考慮される必要がある別のキャパシタンスがある。これが上述の量子キャパシタンスCである。Cは、古典的なキャパシタンスと直列であり、よって、システムの総キャパシタンスCtotを低減させる(1/Ctot=1/C+1/C)。量子キャパシタンス効果により、出力電圧Vは、感知される必要のある特定の電荷Qについて向上され得る。
【0009】
例えば、2次元材料がグラフェンである場合、単位面積あたりの量子キャパシタンスC/Aは、
【数1】
と記述される。
【0010】
ここで、eは電子電荷であり、hはプランク定数であり、Vはグラフェンのフェルミ速度であり、nはグラフェン中の誘起されるキャリア密度であり、nは残留不純物濃度である。
【0011】
AIから作られた、10nmの厚さの典型的なゲート誘電体のCは、0.0053F/mである。室温における高電子品質のグラフェン層(n=7・1010cm-2)についての同誘電体厚みを有するコンデンサの最小量子キャパシタンスは、0.0012F/mになる。この場合、量子キャパシタンスは、出力電圧を5倍向上させることになる。
【0012】
しかし、それらの知られている装置は高い感度を提供するが、多くの用途には、この感度は十分に高くないか、またはダイナミック・レンジが十分に大きくない。
【0013】
また、量子キャパシタンスは総キャパシタンスに影響を及ぼすため、電子デバイスは、電荷感知構造のフェルミ準位の最も感度の高い点の前後、すなわち、2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点(cnp)の前後、で動作しなければならないが、それは本来起こらない。
【0014】
下記の文献は、外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された2次元の電荷感知層を含む、種々の従来技術の電子デバイスを開示する。
- Konstantatos, G., Badioli, M., Gaudreau, L. et al. Hybrid graphene-quantum dot phototransistors with ultrahigh gain. Nature Nanotech 7, 363-368 (2012).
- Schedin, F., Geim, A., Morozov, S. et al. Detection of individual gas molecules adsorbed on graphene. Nature Mater 6, 652-655 (2007).
- Wangyang Fu, Lingyan Feng, Gregory Panaitov, et al., Biosensing near the neutrality point of graphene, Science Advances 3, e1701247,(2017).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、上記に記載された特徴を含むが、上述された欠点を持たず、よって、感度レベルとダイナミック・レンジとの間の能動的な制御を主として提供することが可能であることにより、要求される感度レベルおよびダイナミック・レンジを同システムで実現するシステムを提供することにより、それらに見られるギャップを埋める現行技術の代替物を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そのために、本発明は、第1の態様において、電子装置を備えるシステムに関し、電子装置は、
- 電子デバイスであって、
- ゲート電極構造、
- 前記ゲート電極構造の上に配置された誘電体構造、および
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された(例えば上記で引用された従来技術の参考文献に記載されるように)少なくとも1つの2次元電荷感知層を備える電荷感知構造であって、電荷感知構造とゲート電極構造との間にゲート・キャパシタンスCを提供するために前記誘電体構造の上に構成および配置され、前記電荷感知構造は、(十分に低い状態密度を有することにより)ゲート・キャパシタンスCと直列の量子キャパシタンスCを示し、その結果、電荷感知構造とゲート電極構造との間に総キャパシタンスCtotが生じる、電荷感知構造、
を備える電子デバイスと、
- 総キャパシタンスCtotに蓄積された感知された電荷を表す出力電圧を検出するために、電荷感知構造またはゲート電極構造に電気的に接続された電圧検出器と、を備える。
【0017】
現行技術のシステムと対照的に、本発明によって提供されるものは、ゲート電極構造にゲート電圧を印加するように構成および配置された手段をさらに備え、前記ゲート電圧は、
- 電子デバイスを、電荷感知構造のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後、すなわち2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点(cnp)の前後、で動作させ、かつ
- 電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように量子キャパシタンスCを調節する、ように選択される。
【0018】
したがって、本発明の第1の態様のシステムは、印加されるゲート電圧に応じて、高感度の用途に、また高ダイナミック・レンジの用途にも、所望されるように動作するべく能動的に制御されることが可能な混合型のシステムを構成する。
【0019】
一実施形態では、前記手段は、前記ゲート電圧を生成する電圧源を備える。
【0020】
用語「電圧源」は、本発明では、例えば、1つまたは任意数の電圧を提供するために1つまたは複数のバッテリ・セル、1つまたは複数の電圧生成器等を備えるか、またはそれらによって形成されるものなどの、従来技術で知られている任意の種類の現実世界の電圧源(すなわち非ゼロの内部抵抗および出力インピーダンスをもつ)と解釈されなければならない。
【0021】
前記実施形態の一実装では、電圧源の出力は、ゲート電極構造にゲート電圧を印加するために、直接、またはスイッチを通じて、それに電気的に接続される。
【0022】
好ましい実施形態では、上述の手段は、ゲート電圧をゲート電極構造に印加すると共にゲート電圧の上述の選択を行うように構成および配置された制御ユニットを備える。
【0023】
ゲート電圧に関しての用語「選択する」および「選択」は、上述の目標、すなわち、
- 電子デバイスを、電荷感知構造のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後、すなわち2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点(cnp)の前後、で動作させ、かつ
- 電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように量子キャパシタンスCを調節すること、
を達成するために最良のまたは最適のゲート電圧値を入念に選択する動作を意味する。
【0024】
本発明のものに対して当業者が適すると考え得る任意の知られている選択プロセスが本発明のシステムによって包含され、それらには、利用可能なゲート電圧値のプールから直接ゲート電圧値を選択すること、またはそれを、他の種類の電気パラメータの利用可能な値のプールのうちから選択された前記他の種類の電気パラメータの値(電流値および/または電気抵抗値など)から計算することにより間接的に選択することが含まれる。
【0025】
前記実施形態の実装に応じて、制御ユニットは、ゲート電圧を生成するように構成された電圧源を含むかまたはそれへのアクセスを有する。
【0026】
種々の実施形態によれば、ゲート電圧は、DC電圧、AC電圧、またはDC電圧とAC電圧の組み合わせ(DCオフセットに重畳されたAC電圧、または任意の種類の周波数および/または時間的組み合わせなど)である。
【0027】
一実施形態では、制御ユニットが、ゲート電圧の性質を、少なくともその大きさに関して選択するように構成され、ゲート電圧がAC電圧を含む他の実施形態では、制御ユニットは、ゲート電圧の性質を、その周波数および/または位相に関しても選択するように構成され、制御電圧がDC電圧を含むさらなる実施形態では、制御ユニットは、制御電圧の性質を、その極性に関しても選択するように構成される。
【0028】
一実施形態によれば、制御ユニットは、動作モードに関する選択信号を受け取る選択入力を備え、制御ユニットは、その選択入力を通じて受け取られる選択信号に応答して、ゲート電圧を選択しゲート電極構造に印加して、装置を選択された動作モードに従って動作させるように構成される。
【0029】
有利には、制御ユニットは、同じく選択入力を通じて受け取られる選択信号に応答して、ゲート電極構造にゲート電圧を印加しないようにも構成され、そのため、制御ユニットは、感知される必要のある特定の電荷に対しては、電子デバイスによって元来提供される、従来感度のモードに従って電子デバイスを動作させるのにも適する。
【0030】
一実施形態では、動作モードは、少なくとも以下のモード:
- 制御ユニットが、前記量子キャパシタンスを低減するか、増大させないか、または35%未満の割合だけ増大させるために、前記ゲート電圧をゲート電極構造に印加しないか、または絶対的大きさが(0.9-Vcnp)ボルト未満のゲート電圧を選択して印加する高感度モードであって、V=q・n・A/Cであり、qは電子電荷であり、nは残留電荷キャリア密度であり、Aは面積であり、Cはゲートのキャパシタンスであり、VcnpはCが最も低くなる電圧である、高感度モード、
- 制御ユニットが、前記量子キャパシタンスを45%を上回る割合に増大させるために、絶対的大きさが(1.1-Vcnp)ボルトを上回るゲート電圧を選択して、ゲート電極構造に印加する、高ダイナミック・レンジ・モード、および
- 制御ユニットが、前記量子キャパシタンスを35%と45%との間の範囲の割合に増大させるために、絶対的大きさが(0.9-1.1-Vcnp)の間のボルト範囲であるゲート電圧を選択して、ゲート電極構造に印加する、トレードオフ・モード、を含む。
【0031】
一実施形態では、電圧検出器が、制御ユニットの制御下で総キャパシタンスCtotを放電させるためのリセット回路を含み、装置は、検出された出力電圧に基づく読み出し信号を提供するために電圧検出器のoutに動作的に接続された読み出し回路をさらに備える。
【0032】
一実施形態では、ゲート電極構造は、その上に配置された誘電体構造および電荷感知構造と共に、基板上に配置される。
【0033】
本発明の第1の態様のシステムの一実施形態によれば、制御ユニットが、電圧検出器の出力またはそれに動作的に接続された読み出し回路の出力に接続された調整入力をさらに備え、その調整入力を通じて受け取られた検出された出力電圧または読み出し信号に基づいて、および、好ましくは、検出された出力電圧または読み出し信号が比較される基準値または設定点値にも基づいて、ゲート電圧を調整するための閉ループの調整プロセスを実施するように構成され、それにより、所望の感度および/またはダイナミック・レンジが達成される。
【0034】
言い換えると、閉ループ構成が作られ、その実施形態には、制御ユニットの前記調整入力を、検出された出力電圧を提供する電圧検出器の出力、または読み出し信号を提供するために電圧検出器のoutに動作的に接続された読み出し回路の出力に、電気的に接続する。したがって、制御ユニットは、上記段落で説明されたように、すなわち、少なくともこの調整入力を通して受け取られる信号に基づいて、ゲート電圧を調整するように構成される。
【0035】
前記実施形態の一実装では、制御ユニットは、選択された動作モードにも基づいて閉ループの調整プロセスを実施するように構成され、そのため、達成されるべき所望の感度および/またはダイナミック・レンジが、選択された動作モードに応じて確立される。
【0036】
その実装には、調整入力を通じて受け取られる信号に加えて、デバイスを選択されたモードに従って動作させるために適切なゲート電圧を選択し、検出された出力電圧または読み出し信号により、デバイスが選択されたモードで実際に動作していること(これは、出力電圧または読み出し信号の値が選択された動作モードに適する範囲内にあるときに起こる)を確認し、デバイスが選択された動作モードに維持される(すなわち、出力電圧または読み出し信号の値が選択された動作モードに適する範囲内にある)ことを確実にするようにゲート電圧を調整するために、選択された動作モードが、制御ユニットによって実施される選択プロセスにおいて考慮される。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、本発明の第1の態様のシステムの電子装置の電子デバイスは、電荷感知構造の上に配置された増感または官能化構造をさらに備え、増感または官能化構造は、電荷キャリアを誘起する、および/または前記外部の物理量によって誘起されたその中の電荷キャリア密度を変更するように構成される。一般に、増感または官能性構造は、前記外部の物理量のみに感応する。
【0038】
用語「官能化する」は、本発明については、増感機能を提供するだけでなく別の機能を追加する種を電荷感知構造に追加することを意味する。例えば、Wangyang Fu による論文(Wangyang Fu, Lingyan Feng, Gregory Panaitov, et al., Biosensing near the neutrality point of graphene, Science Advances 3,e1701247,(2017).)では、pPNAリンカー分子がグラフェンの表面に追加されて、ssDNAがグラフェンに結合できるようにし、Tween20分子がグラフェン表面に追加されて、他の種がグラフェンの表面に取り付くことを阻止することにより、ssDNAの感知をより特異的にした。したがって、この場合は、pPNAリンカー分子が、グラフェンを官能化し、かつ増感する。
【0039】
用語「増感する」は、外部の物理量または被検体に対してそれを増感する、電荷感知構造の上部に追加される任意の種を言う。
【0040】
一実施形態では、前記増感または官能化構造は、照明されると正孔対を生成するように構成および配置された光活性構造であり、正孔対は、電荷感知構造と、光活性構造、または光活性構造の上部の上部ゲート電極、または電荷感知構造と光活性構造との間の中間層と、の間のショットキー接合によって作り出される電界により、分離されて、電子または正孔のいずれかが、前記誘起された電荷キャリアとして電荷感知構造に輸送され、それにより光電子装置が光検出器またはイメージ・センサを構成する。
【0041】
その実施形態の一実装では、本発明の第1の態様のシステムは、画素のアレイを備えるイメージ・センサを実装し、電子装置が複数の上述の電子デバイスを備え、各々の電子デバイスが前記画素のアレイの1画素を構成し、ローリング・シャッターおよびグローバル・シャッター等を含む、アレイの行および列の画素をアドレス指定して読み出すための種々の代替の読み出し方式を実施する。その実装の種々の変形例が本発明によって包含され、それらの一部では、共通のゲート電圧が電子デバイスのすべてまたは一部のゲート電極構造に同時に印加され、一方、他の変形例では、異なるゲート電圧が電子デバイスのすべてまたは一部のゲート電極構造に個々に印加される。
【0042】
代替実施形態によれば、電子デバイスは、電荷感知構造の上に配置された増感または官能化構造を一切持たず、電荷感知構造は、電荷キャリアの変化を受ける、および/または外部の物理量によって誘起されるその中の電荷キャリア密度を変更するように構成される。一切の増感または官能化構造の存在を必要としない種類の電子デバイスの例が、Schedin, F., Geim, A., Morozov, S. et al. Detection of individual gas molecules adsorbed on graphene. Nature Mater 6, 652-655 (2007)に与えられる。
【0043】
したがって、本発明は、概して、前記外部の物理量によって誘起される電荷感知構造内の電荷キャリアの変化および/または電荷キャリア密度の変化を感知することに依拠する感知デバイスに適用され、感知は、露出された電荷感知構造上で直接、または増感層(例えばPbSコロイド状量子ドットからなる光増感層などであり、その場合、光が電荷感知構造内で電荷キャリアを誘起することができ、または電荷感知構造にグラフトされたリンカー生体分子)の仲介を通じて、または電荷感知構造の官能化を通じて(例えば生体感知)、行われる。
【0044】
本発明の第1の態様のシステムの電子装置の電子デバイスの電荷感知構造は、例えば、グラフェン(純粋グラフェン、修飾グラフェン、または官能化グラフェン)、黒リン、MoS、WS、WSe等、の材料のうち1つまたは複数で作られた、1つまたは複数の2次元電荷感知層を備える。
【0045】
電荷感知構造内の電荷キャリアおよび/またはその中の電荷キャリア密度の変化を誘起する限り、光、気体分子、または神経信号の感知など、種々の物理量または被検体が本発明の第1の態様のシステムの電子装置によって感知され得る。対象の被検体は、電荷感知構造に電荷を伝達するか、またはその電荷キャリア密度を変更する電界を誘起する。
【0046】
別の用途は、生体内の電気信号を直接感知する、または特定の生体分子に対する選択性を向上させる化学的に結合したリンカー分子を使用する生体センサを実装するものである。対象の分子がリンカーに結合すると、それは、電荷感知構造に電荷を伝達するか、またはその中に電界を誘起し、それがその電荷キャリア密度を変更する。
【0047】
本発明の第2の態様は、電子装置に関し、この電子装置は、
- 電子デバイスであって、
- ゲート電極構造、
- 前記ゲート電極構造の上に配置された誘電体構造、および
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された少なくとも1つの2次元電荷感知層を備える電荷感知構造であって、電荷感知構造とゲート電極構造との間にゲート・キャパシタンスを提供するために前記誘電体構造の上に構成および配置され、電荷感知構造は、前記ゲート・キャパシタンスと直列の量子キャパシタンスを示し、その結果、電荷感知構造とゲート電極構造との間に総キャパシタンスが生じる、電荷感知構造、
を備える電子デバイスと、
- 前記総キャパシタンスに蓄積された前記感知された電荷を表す出力電圧を検出するために、電荷感知構造またはゲート電極構造に電気的に接続された電圧検出器と、を備える。
【0048】
現行技術で知られている電子装置と対照的に、本発明の第2の態様のものは、ゲート電極構造に電気的に接続され、それにゲート電圧を印加するためにアクセス可能である入力端子を少なくともさらに備え、ゲート電圧は、
- 電子デバイスを、電荷感知構造のフェルミ準位の最も感度が高い点の前後、すなわち2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点の前後、で動作させ、かつ
- 電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように量子キャパシタンスを調節する、ように選択される。
【0049】
本発明の第1の態様のシステムの電子装置に関して本文書に記載される実施形態は、本発明の第2の態様の電子装置の対応する実施形態の説明にも有効である。
【0050】
以下、本発明のいくつかの好ましい実施形態が添付図面を参照して説明される。それらは例示の目的のみで提供され、ただし本発明の範囲を制限することはない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】一実施形態についての本発明の第1の態様のシステムを概略的に示す図である。
図2】一実施形態についての本発明の第2の態様の電子装置および第1の態様のシステムの電子装置の電子デバイスの構造の概略側面図であり、電気接続が丸い円として示され、CE=電荷感知層電極およびBE=下部電極である。
図3】電子デバイスが光活性構造を備える一実施形態についての、本発明の第2の態様の電子装置およびシステムの電子装置の電子デバイスの概略側面図であり、図示される電荷の流れで示されるように、光活性構造は、照明されると正孔対を生成させ、正孔対は分離されて、それらの一方が電荷感知構造(CE)に輸送される。
図4】2つの金属板を有する従来の平行板コンデンサ(MIM:「金属-絶縁体-金属」)のキャパシタンスと、一方の板が2D材料の層である平行板コンデンサ(MI2D:「金属-絶縁体-2D材料」)の総キャパシタンス(量子キャパシタンスを含む)とのプロットである。
図5】本発明の第2の態様の電子装置および本発明の第1の態様のシステムの電子装置の電子デバイスのキャパシタンスのプロットであり、電荷中性点に対する、印加されたゲート電圧Vの関数としてのプロットである(d=10nm、ε=6、n=7・1010cm-2)。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、本発明の第1の態様のシステムの一実施形態を示し、ここでは、システムは電子装置を備え、電子装置は、点線の枠の中に描かれた構成要素、すなわち、
- ゲート電極構造Gと、
- ゲート電極構造Gの上に配置された誘電体構造Dと、
- 外部の物理量によって誘起される電荷および/または電荷密度の変化を感知するように構成された2次元電荷感知層を備える電荷感知構造CEであって、電荷感知構造CEとゲート電極構造Gとの間にゲート・キャパシタンスCを提供するために誘電体構造Dの上に構成および配置された電荷感知構造CEと、
を備える電子デバイスを備える。
【0053】
電荷感知構造CEは、ゲート・キャパシタンスCと直列の量子キャパシタンスCを提供するのに十分に低い状態密度を有し、その結果、電荷感知構造CEとゲート電極構造Gとの間で測定されたときに、値がCとCの間である総キャパシタンスCtotが生じる(Ctot=1/(1/C+1/C)。
【0054】
図1の同じく点線の枠内に示されるように、電子装置は、総キャパシタンスCtotに蓄積された感知された電荷を表す出力電圧Vを検出するための、電荷感知構造CEに入力が電気的に接続された増幅器Aによって形成される、電圧検出器をさらに備える。
【0055】
本発明の第1の態様のシステムは、図の実施形態では、ゲート電極構造Gにゲート電圧Vを印加するように構成および配置された制御ユニットCUを備える手段をさらに備え、ゲート電圧Vは、
- 電子デバイスを、電荷感知構造CEのフェルミ準位の最も感度が高い点の前後、すなわち2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点の前後、で動作させ、かつ
- 電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように量子キャパシタンスCを調節する、
ように、制御ユニットCUによって選択される。
【0056】
図1に示されるように、電圧検出器は、制御ユニットCUの制御下で(トランジスタFを閉じてCtotをゲート電極構造Gに接続することにより)総キャパシタンスCtotを放電させるために、トランジスタFによって形成されるリセット回路を含み、装置は、検出された出力電圧Voに基づく読み出し信号Sを提供するために電圧検出器のoutに動作的に接続された読み出し回路Rをさらに備える。
【0057】
図の実施形態では、電圧検出器は増幅器Aを含み、これは、低い入力キャパシタンス、したがって非常に高い入力インピーダンスを有する必要があるが、他の種の知られている電圧検出器も本発明に包含される。
【0058】
読み出しシーケンスは以下の通りである:
1.リセット・トランジスタFを閉じる
2.Vを印加する
3.Sを読み出す
4.リセット・トランジスタFを開いて電荷をドレインさせる。
【0059】
図1は、本発明の第2の態様の電子装置の一実施形態も示しており、これは、点線の枠の輪郭内に、またはそれと接触して描かれている構成要素、すなわち、本発明の第1の態様のシステムの電子装置の構成要素と、さらに、ゲート電極構造Gに電気的に接続され、それにゲート電圧Vを印加するためにアクセス可能な入力端子TVとを備え、ゲート電圧Vは、
- 電子デバイスを、電荷感知構造CEのフェルミ準位の最も感度が高い点の前後、すなわち2次元材料がグラフェンである場合には電荷中性点の前後、で動作させ、かつ
- 電子デバイスの感度およびダイナミック・レンジを変更するように量子キャパシタンスを調節する、ように選択される。
【0060】
この実施形態の一実装には、電子装置の構成要素は集積回路チップの中に埋め込まれ、それは、端子TVのための入力ピン、図のリセット端子TResetに接続するさらなる入力ピン、および端子TSに接続された出力ピンを有し、それにより、制御ユニットCEは、それらの入力ピンに接続されてゲート電圧Vおよびリセット信号を提供することができ、一方、Sは出力端子TSを通って出る。
【0061】
図2に、本発明のシステムおよび電子装置の一実施形態が示され、ここでは電子デバイスは光検出器であり、光検出器は、基板Sと、下部電極構造BE(上述のゲート構造と同様)と、電荷感知構造CE(例えば、単層または数層グラフェン、黒リン、MoS2、WS2、WSe2等によって形成される)の上に配置され、照明されると正孔対を生成するように構成および配置された光活性構造PS(コロイド状量子ドット、III-V半導体、ペロブスカイト、2D材料等によって形成される)からなる増感または官能化構造PSとを備え、正孔対は、電荷感知構造CEと光活性構造PSとの間のショットキー接合によって作り出される作り付け電界のために、分離されて、電子または正孔のいずれか(ショットキー結合の種類に応じて決まる)が、電荷感知構造CEに輸送される。次いで電圧がゲート・コンデンサCに蓄積する。光感受性層の場合、それは合計の光生成電荷:QPh=EQE tr A/E Iであり、(EQEは外部量子効率であり、qは電荷であり、Ttrは光生成電荷の捕獲時間であり、Iは放射照度であり、Aはデバイスの面積であり、Eは光子エネルギーである)。このプロセスが図3に示される。
【0062】
図4は、2つの金属板を有する従来の平行板コンデンサ(MIM)の総キャパシタンスと、一方の板が量子キャパシタンス効果を示す2D材料の層である平行板コンデンサ(MI2D)の総キャパシタンス(量子キャパシタンスを含む)とのプロットである。AI(εr=6)から作られた、10nmの典型的なゲート誘電体の厚みと、室温における同誘電体を有するコンデンサ内での高電子品質のグラフェン層(n=7・1010cm-2)についての最小量子キャパシタンス:0.0012F/mとが取られた。AIから作られた、10nmの典型的なゲート誘電体の厚みに対して、通常のキャパシタンスは0.0053F/m2である。この場合、信号は5倍向上されることになる。
【0063】
本発明では、とりわけ、高い検出器感度が要求されない場合、電子デバイスは、異なるVを印加して、より多くの光生成電荷(または光増感構造を含まない実施形態には、他の手段によって生成される電荷)が蓄積されることを許容し、よって、より大きいダイナミック・レンジを可能にすることにより、古典的なレジームに調節されることが可能である。この効果が、図2および図3の構成についての本発明のシミュレーションから得られた結果と共に図5に示されている。同図に示されるように、電荷中性点に対して3Vのゲート電圧を印加すると、3倍向上されたキャパシタンスが得られる。
【0064】
当業者は、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の範囲から逸脱することなく、記載の実施形態に変更および改変を導入することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】