(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】ポリマー複合フォトニック結晶コーティング
(51)【国際特許分類】
C08L 65/00 20060101AFI20220414BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220414BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220414BHJP
C08G 61/08 20060101ALI20220414BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220414BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220414BHJP
G02B 5/26 20060101ALN20220414BHJP
【FI】
C08L65/00
G02B5/20
C08K5/00
C08G61/08
B32B7/023
B32B27/00 A
G02B5/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544635
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 US2020015927
(87)【国際公開番号】W WO2020180427
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501001186
【氏名又は名称】コロラド・ステート・ユニバーシティ・リサーチ・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、マシュー デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ミヤケ、ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】ピアーソン、ライアン マイケル
【テーマコード(参考)】
2H148
4F100
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148FA03
2H148FA04
2H148FA07
4F100AA17A
4F100AA27A
4F100AH03A
4F100AH04A
4F100AH05A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100AL02A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA13A
4F100EH46A
4F100EJ86
4F100JD08
4J002CE001
4J002EA066
4J002EL096
4J002EU056
4J002EV316
4J002EV336
4J002FD096
4J002GP00
4J032CA36
4J032CA43
4J032CB08
4J032CC03
4J032CD02
4J032CE03
4J032CG03
4J032CG06
(57)【要約】
紫外線(<400nm)、可視(Vis、400nm~700nm)、または近赤外放射領域(NIR、700-2000nm)などの電磁スペクトルの特定の領域において高い反射率(>30%)を有し、電磁スペクトルの第2の異なる領域において比較的低い反射率(<20%反射率)を有するコーティングとして、ポリマー複合フォトニック結晶材料が開示される。驚くべきことに、配合および添加剤のアプローチにより、ポリマー複合フォトニック結晶膜の光学特性は、スプレー堆積を含む様々な異なるコーティング方法から選択的に変更できることを発見した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と式IAまたは式IBのブラシブロックコポリマー(BBCP)とを含むフォトニック結晶組成物であって、
【化1】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3であり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
J
1およびGは、それぞれ独立してCH
2またはC=Oであり、
各J
2は、独立してCH
2またはC=Oであり、
各Qは、独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~約1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~約1000であり、
ここでブロックa、b、xおよびyは、任意の順序であり、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である、フォトニック結晶組成物。
【請求項2】
前記顔料が、酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、アクリジン染料、リレン染料、硫黄染料、pH指示薬、食品染料、蛍光増白剤、アントラキノン染料、アリールメタン染料、トリアリールメタン染料、フタロシアニン染料、キノンイミン染料、アジン染料、インドフェノール染料、オキサジン染料、オキサゾン染料、チアジン染料、チアゾール染料、サフラニン染料、キサンテン染料、ペリレンジイミド染料、ローダミン染料、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記顔料が、アクリジン、ブロモチモール、カルミン、エオシンY、グアイアズレン、ペリレン、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
aおよびbがそれぞれ独立して1~約300であるか、またはxおよびyがそれぞれ独立して1~約300である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
x:aの比が約1:0.5~約1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
y:bの比が約1:0.5~約1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
BBCPの重量パーセントが約25%~約99.9%であり、前記顔料の重量パーセントが約0.1%~約10%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
金属酸化物、線状ポリマー添加剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
二酸化ジルコニウムナノ結晶をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
式IAの前記BBCPが、式ICまたは式IIのBBCPであって、
【化2】
式中、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、Hまたは非分岐もしくは分岐-(C
1-C
6)アルキルであり、
mおよびnは、それぞれ独立して、1~約100である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
mおよびnが、それぞれ独立して10~約50である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
式IAの前記BBCPが、式IIIのBBCPであり、
【化3】
式中、
R
5は、Hまたは非分岐もしくは分岐-(C
1-C
6)アルキルであり、
qおよびtは、それぞれ独立して、1~約100である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
基板の電磁放射反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整する方法であって、基板を請求項1に記載のフォトニック結晶組成物の膜でコーティングすることを含み、前記フォトニック結晶組成物中の顔料が、前記基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整し、前記コーティング基板によって反射される電磁放射が、対応する非コーティング基板よりも少なくとも5%増加する、方法。
【請求項14】
前記膜が、約0.25~約0.55の光学的厚みf比を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板の前記反射率、吸光度および透過率プロファイルが、約280ナノメートル~約400ナノメートルの波長の反射電磁放射を含むか、または
前記基板の前記反射率、吸光度および透過率プロファイルが、約400ナノメートル~約700ナノメートルの波長の反射電磁放射を含むか、または
前記基板の前記反射率、吸光度、および透過率プロファイルが、約700ナノメートル~約1600ナノメートルの波長の反射電磁放射を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
フォトニックコーティングを形成するための方法であって、
a)溶媒、顔料、およびブラシブロックコポリマー(BBCP)を組み合わせて混合物を形成する工程であって、BBCPが式ICのBBCPであり、
【化4】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3あり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~約1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~約1000であり、
ここで、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である、工程
b)前記混合物の層を基板に塗布する工程、および
c)前記層を乾燥させて膜を形成する工程を含み、
前記膜が前記基板上に前記フォトニックコーティングを形成する、方法。
【請求項17】
前記顔料が、酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、アクリジン染料、リレン染料、硫黄染料、pH指示薬、食品染料、蛍光増白剤、アントラキノン染料、アリールメタン染料、トリアリールメタン染料、フタロシアニン染料、キノンイミン染料、アジン染料、インドフェノール染料、オキサジン染料、オキサゾン染料、チアジン染料、チアゾール染料、サフラニン染料、キサンテン染料、ペリレンジイミド染料、ローダミン染料、またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記混合物が、前記顔料を約0.1重量%~約3重量%で含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記混合物中のBBCPの重量パーセントが約2.5%~約50%である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
BBCPが、約500kDa~約4000kDaの数平均分子量を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
工程a)が、金属酸化物、線状ポリマー添加剤、またはそれらの組み合わせを前記混合物に添加することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記混合物の層の基板への塗布が、前記基板への前記混合物のスプレー堆積、ドローダウンコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、スプレー堆積、または塗料ブラシ/ローラーを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、それぞれが参照として本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/798,760号(2019年1月30日出願)、第62/846,127号(2019年5月10日出願)、および第62/887,186号(2019年8月15日出願)の米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張する。
【0002】
政府支援
本発明は、米国エネルギー省によって授与された助成金番号DE-AR0000881およびDE-AE0001261の下、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する
【背景技術】
【0003】
電磁スペクトルの特定の範囲を、他の範囲の反射または透過を大幅に変更せずに、選択的に反射または透過することができるナノ構造材料の製造には課題が存在する。例えば、近赤外(NIR、700~2000nm)を有意に吸収せず高度に反射する一方で、可視光(Vis、400~700nm)および/または紫外線(UV、<400nm)放射の高い透過率(>60%)を可能にする材料が必要とされている(J.Am.Chem.Soc.2014,136,17374)。具体的には、これらの材料への容易な製造手順を用いたアクセスは、まだ実現されていない。従来の製造には多層膜の押出が含まれ(Polymer Engineering and Science,1969,9,393)、現在の最高水準の技術ではリソグラフィおよび交互積層集合などの集中的な製造プロセスが必要である。ブロックポリマー自己組織化などのボトムアッププロセスによって、エネルギー集約型製造および/またはデザイナー材料、例えば主成分としての貴金属酸化物などを必要とせずに、塗料ブラシ、ドローダウン、ワイヤバー、ドクターブレード、バードバー(bird bar)、ローラー塗布、スクリーン印刷、スプレーブラシ、またはスプレーガン塗布からナノ構造材料へアクセスすることができる。容易な塗布方法によって選択的に反射コーティングを塗布できることで、膜および他のトップダウン製造プロセスが使用され得ない粗面および曲面に塗布するための刺激的な可能性が広がる。
【0004】
現在の最高水準の技術は、多層押出薄膜(米国特許第6,208,466号および第6,696,142号)または交互積層堆積金属酸化物ナノ粒子または高分子電解質(Bioinspir.Biomim.2013,8,045005、および米国特許出願公開第2014/0218792号)に代表される。これらのアプローチの両方は、潜在的な高い材料コストに加えて、先進の製造機器/インフラストラクチャーおよび技術への多大な投資を必要とする。開示された材料に固有の反射特性は、容易にアクセスできる条件下、すなわち周囲温度またはわずかに上昇した温度、大気圧および酸素の存在下で急速に起こるBCPの自己組織化を介するボトムアッププロセスで確立される。自己組織化プロセスでは、ナノインプリントまたは電子ビームリソグラフィ、および交互積層堆積などの特殊な製造技術を必要としない。コーティングに使用されるポリマー構成要素、ポリマー添加剤、および非ポリマー添加剤は安価であり、好ましい実施形態では「コモディティ」材料であり得、低い材料コストを維持する。
【0005】
反射材料の調製のための現在のアプローチは、先進の製造機器および技術への多大な投資、ならびに高い材料コストを必要とする。したがって、よりコスト効果の高い反射材料の調製を可能にする代替組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ブラシブロックコポリマー(BBCP)と、無機添加剤系統群、有機添加剤系統群、またはその2つの何らかの組み合わせのいずれかとから構成される無機/有機複合材料の使用により、フォトニック結晶材料の光学的特徴、例えば、限定はされないが、反射率(%R)、最大反射(λmax)の波長(nm)、および反射ピークの半値全幅(FWHM)、および材料全体のヘイズ(%ヘイズ)を修正することができるという発見に関する。ここで、光学的特徴は、一次反射およびすべての高次反射のために調整することができ、その関係は、ブラッグ方程式:λm=2(n1d1+n2d2)から導かれる。具体的には、様々なモノマー単位で構成されるBBCPを無機粒子または有機ポリマー添加剤のいずれかとブレンドして高次反射ピークの相対強度を調整し、高いNIR反射および低いVis反射をもたらす。BBCP誘導フォトニック結晶材料の高次反射ピークの相対強度を直接調整するための外因性添加剤の使用は独特であり、選択的なNIR反射およびVis透過を必要とする用途におけるこれらの材料の展開を可能にする。
【0007】
したがって、本開示は、顔料と、式IAまたは式IBのブラシブロックコポリマー(BBCP)とを含むフォトニック結晶組成物を提供する。
【化1】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3であり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
J
1およびGは、それぞれ独立してCH
2またはC=Oであり、
各J
2は、独立してCH
2またはC=Oであり、
各Qは、独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~約1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~約1000であり、
ブロックa、b、xおよびyは、任意の順序であり、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である。
【0008】
本開示はまた、基板の電磁放射反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整する方法であって、基板を上述のフォトニック結晶組成物の膜でコーティングすることを含み、フォトニック結晶組成物中の顔料が基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整し、コーティング基板によって反射される電磁放射が、対応する非コーティング基板よりも少なくとも5%増加する方法を提供する。
【0009】
さらに、本開示は、フォトニックコーティングを形成するための方法であって、
a)溶媒、顔料、およびブラシブロックコポリマー(BBCP)を組み合わせて混合物を形成する工程であって、BBCPが、上記の式IAまたは式IB、または式ICのBBCPであり、
【化2】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3あり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~約1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~約1000であり、
ここで、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である、工程;
b)混合物の層を基板に塗布(適用)する工程;および
c)層を乾燥させて膜を形成する工程を含み、
膜が基板上にフォトニックコーティングを形成する、方法を提供する。
【0010】
本発明は、本明細書に開示される式I~IIIを含む新規な組成物、式I~IIIのポリマーを合成するための中間体、ならびに式I~IIIのポリマーを含む組成物を調製する方法を提供する。本発明はまた、他の有用なポリマーおよび組成物の合成のための中間体として有用な式I~IIIのポリマーを提供する。本発明は、反射コーティングの製造のための、式I~IIIのポリマーの使用を提供する。
【0011】
以下の図面は、明細書の一部を形成し、本発明の特定の実施形態または様々な態様をさらに実証するために含まれている。場合によっては、本発明の実施形態は、本明細書に提示されている詳細な説明と組み合わせて添付の図面を参照することによって、最もよく理解することができる。説明および添付の図面は、本発明のある特定の例、またはある態様を強調することができる。しかしながら、当業者は、例または態様の一部が、本発明の他の例または態様と組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】無機添加剤を含むPLA-b-PSフォトニック結晶膜(実線)、および無機添加剤を含まないPLA-b-PSフォトニック結晶膜を含むポリマー複合材コーティングガラス基板の反射率スペクトル。
【
図2A】ポリ(2-エチルヘキシルメタクリラート)添加剤を10重量%(実線)、および34重量%(破線)含む、PLA-b-PSフォトニック結晶膜含有ポリマー複合材コーティングガラス基板の反射率スペクトル。
【
図2B】10重量%のポリ(2-エチルヘキシルメタクリラート)含有自己組織化膜(
図2Aから)の反射率(実線)および透過率(破線)スペクトル。
【
図3】スプレー堆積自己組織化PLA-b-PSフォトニック結晶膜の反射率(実線)および透過率(破線)スペクトル(左)、膜の写真(右上)、ならびに膜のヘイズ、可視光透過率、太陽熱利得係数、および演色評価数の値(右下)。
【
図4】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜の反射率(実線)および透過率(破線)。
【
図5】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびアクリジン塩基を添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図6】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびカルミンを添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図7】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびペリレンを添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図8】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびアクリジン水和物を添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図9】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびグアイアズレンを添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図10】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびエオシンYを添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【
図11】PS-b-iBuMAフォトニック結晶膜、およびブロモチモールを添加したPS-b-iBuMAフォトニック結晶の反射率および透過率スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本出願は、ブロックコポリマー(BCP)と、無機添加剤系統群、有機添加剤系統群、またはその2つの何らかの組み合わせのいずれかとから構成される無機/有機複合材料の使用により、フォトニック結晶材料の光学的特徴、例えば、限定はされないが、反射率(%R)、最大反射(λmax)の波長(nm)、反射ピークの半値全幅(FWHM)、および得られるフォトニック結晶材料のヘイズ(%ヘイズ)を修正することができるという発見に関する。ここで、光学的特徴は、一次反射およびすべての高次反射に関して調整され、その関係は、式1から導出される(Polymer Engineering and Science 1973,13,216)。
式1:
λm=2(n1d1+n2d2)
式中、m=次数反射、n=屈折率、d=ドメインサイズである。
【0014】
具体的には、様々なモノマー単位で構成されるBCPを無機添加剤、小分子有機添加剤、および/またはポリマー添加剤のいずれかとブレンドして高次反射ピークの相対強度を調整し、場合によっては、高いNIR反射および低いvis反射をもたらす。BCP誘導フォトニック結晶材料の高次反射ピークの相対強度を直接調整するための外因性添加剤の使用は、そのアプローチにおいて独特であり、異なる電磁スペクトルの範囲での選択的な反射および透過を必要とする用途におけるこれらの材料の展開を可能にする。
【0015】
定義
明細書および特許請求の範囲が明確に一貫して理解されるために、以下の定義を含める。本明細書で使用される場合、列挙された用語は、以下の意味を有する。本明細書で使用される他のすべての用語および句は、当業者が理解するような、それらの通常の意味を有する。このような通常の意味は、R.J.Lewis、John Wiley&Sonsによる、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 14th Edition New York,N.Y.,2001などの技術辞書を参照することで得られる。
【0016】
本明細書における「一実施形態」、「ある実施形態」などへの言及は、説明された実施形態が、特定の態様、形質、構造、部分、または特徴を含み得るが、すべての実施形態が、必ずしもその態様、形質、構造、部分、または特徴を含むとは限らないことを示す。さらに、そのような語句は、必ずしもそうではないが、本明細書の他の部分で言及される同じ実施形態を指す場合がある。さらに、特定の態様、形質、構造、部分、または特徴が実施形態に関連して説明される場合、そのような態様、形質、構造、部分、または特徴が他の実施形態に影響を及ぼすまたは関連することは、明示的な説明の有無に関わりなく、当業者の知識の範囲内である。
【0017】
単数形「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、複数のそのような化合物を含み、その結果、化合物X(a compound X)は複数の化合物Xを含む。特許請求の範囲は、任意の随意要素を除外するように起草され得ることにさらに留意されたい。そのため、この記述は、本明細書に記載される任意の要素および/または特許請求要素の列挙に関連して、「単に」、「のみ」などの排他的な用語の使用、または「消極的」限定の使用ための先行詞として機能することが意図されている。
【0018】
「および/または」という用語は、この用語が関連付けられているアイテムのいずれか1つ、アイテムの任意の組み合わせ、またはアイテムのすべてを意味する。「1つ以上」および「少なくとも1つ」という語句は、特にそれが使用された文脈中で読めば、当業者には容易に理解される。例えば、この句は、1、2、3、4、5、6、10、100、または列挙された下限よりも約10倍、100倍、または1000倍大きい、任意の上限を意味する。例えば、フェニル環上の1つ以上の置換基は、例えばフェニル環が二置換されている場合、1~5個、または1~4個を指す。
【0019】
当業者によって理解されるように、成分の量、特性(分子量など)、反応条件などを表すものを含む、すべての数は概算であり、すべての場合において、「約」という用語で任意に変更されるものと理解される。これらの値は、本明細書の説明の教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて、変動する可能性がある。そのような値は本質的に、それぞれのテスト測定で見出される標準偏差から必然的に生じる変動性を含むこともまた、理解される。前置詞「約」の使用によって値が近似値として表される場合、修飾語「約」無しの特定の値も、さらなる態様を形成することが理解されよう。
【0020】
「約」および「およそ」という用語は、互換的に使用される。どちらの用語も、指定された値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を言及できる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45~55パーセント、または特定の請求項によって別に定義されるように変動し得る。整数の範囲の場合、「約」という用語は、範囲の各端に列挙された整数より大きいおよび/または小さい、1つまたは2つの整数を含むことができる。本明細書で別段の指示がない限り、「約」および「およそ」という用語は、個々の成分、組成物、または実施形態の機能に関して同等である、列挙された範囲に近い値、例えば重量パーセントを含むことが意図される。「約」および「およそ」という用語は、この段落で上述したように、列挙された範囲の終点を変更することもできる。
【0021】
当業者によって理解されるように、すべての目的のために、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に記載されるすべての範囲は、あらゆる可能な部分範囲およびその部分範囲の組み合わせ、ならびに範囲を構成する個々の値、特に整数値も含む。したがって、2つの特定の単数間の各単数も開示されていることが理解される。例えば、10~15が示されている場合、11、12、13、および14も個別に、範囲の一部として開示される。列挙された範囲(例えば、重量パーセンテージまたは炭素基)は、範囲内の特定の各値、整数、小数、または同一値を含む。列挙された範囲はいずれも、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、または10分の1に分割される同じ範囲を十分に説明し、有効にするものとして容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で論じる各範囲は、下3分の1、中3分の1、および上3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」、「より多い」、「以上」などのすべての文言は、列挙された数を含み、そのような用語は、上述したように後で部分範囲に分解することができる範囲を指す。同様に、本明細書に記載されているすべての比率には、より広い比率に含まれるすべての部分比率も含まれる。したがって、ラジカル、置換基、および範囲について列挙された特定の値は、例示のみを目的としており、それらは、ラジカルおよび置換基の別の定義された値または定義された範囲内の他の値を排除しない。さらに、各範囲の終点は、もう一方の終点との関係で、およびもう一方の終点とは無関係で、重要であることが理解されよう。
【0022】
本開示は、体積、質量、パーセンテージ、比などの変数に対する範囲、限界、および偏差を提供する。「数1」~「数2」などの範囲は、整数および小数を含む数値の連続範囲を意味することが当業者によって理解される。例えば、1~10は、1、2、3、4、5、…9、10を意味する。さらに、1.0、1.1、1.2、1.3、…、9.8、9.9、10.0を意味し、1.01、1.02、1.03なども意味する。開示された変数が、「数10」未満の数値である場合、上記のように、これは、数10未満の整数および小数を含む連続範囲を意味する。同様に、開示された変数が、「数10」超の数値である場合、これは、数10を超える整数および小数を含む連続範囲を意味する。これらの範囲は、「約」という用語によって修飾することができ、その意味は上記で説明されている。
【0023】
当業者はまた、メンバーがマーカッシュグループなどの一般的な方法で一緒にグループ化されている場合、本発明は、全体として列挙されたグループ全体だけでなく、個別にグループの各メンバー、およびメイングループの可能性のあるすべてのサブグループも包含することを容易に認識するであろう。さらに、すべての目的で、本発明は、メイングループだけでなく、1つ以上のグループメンバーが存在しないメイングループも包含する。したがって、本発明は、列挙されたグループのメンバーのいずれか1つまたは複数を明示的に除外することを想定している。したがって、但し書きは、開示されたカテゴリーまたは実施形態のいずれにも適用され、それにより、列挙された要素、種、または実施形態のいずれか1つ以上が、例えば、明示的な消極的限定での使用のために、そのようなカテゴリーまたは実施形態から除外され得る。
【0024】
「接触する」という用語は、例えば、生理学的反応、化学的反応、または物理的変化を引き起こすために、例えば溶液中、反応混合物中で接触する、接触させる、または例えば細胞レベルもしくは分子レベルで間近に隣接させる行為を指す。
【0025】
「有効量」は、列挙された効果をもたらすのに有効な量、例えば反応混合物中で生成物を形成するのに必要な量を指す。有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして、通常は当業者の能力の範囲内である。「有効量」という用語は、例えば、反応混合物中で生成物を形成するのに有効な、本明細書に記載の化合物もしくは試薬の量、または本明細書に記載の化合物または試薬の組み合わせの量を含むことが意図される。したがって、「有効量」は一般に、所望の効果を提供する量を意味する。
【0026】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、広義の用語であり、通常の意味で使用され、必ずしも完全ではないが、ほとんど指定されたものであることを、限定せずに含む。例えば、この用語は、100%完全な数値ではない場合がある数値を指すことができる。完全な数値は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、または約20%少なくなることがある。
【0027】
本開示は、本発明の化合物および組成物を製造する方法を提供する。化合物および組成物は、本明細書に記載される適用可能な技術のいずれかによって、場合により有機合成の標準的な技術と組み合わせて調製することができる。エーテル化およびエステル化などの多くの技術は、当技術分野で周知である。しかしながら、これらの技術の多くは、Compendium of Organic Synthetic Methods(John Wiley&Sons、New York)、Vol.1,Ian T.HarrisonおよびShuyen Harrison,1971;Vol.2,Ian T.HarrisonおよびShuyen Harrison,1974;Vol.3,Louis S.HegedusおよびLeroy Wade,1977;Vol.4,Leroy G.Wade,Jr.,1980;Vol.5,Leroy G.Wade,Jr.,1984;およびVol.6;ならびにM.B.SmithおよびJ.MarchによるMarch’s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th Ed.(John Wiley&Sons,New York,2001);Comprehensive Organic Synthesis.Selectivity,Strategy&Efficiency in Modern Organic Chemistry.In 9 Volumes,Barry M.Trost主筆(Pergamon Press,New York,1993出版);Advanced Organic Chemistry,Part B:Reactions and Synthesis,Second Edition,CaryおよびSundberg(1983);など、標準的な有機化学参照テキストに詳述されている。
【0028】
本明細書に記載の式および化合物は、保護基を使用して修飾することができる。適切なアミノおよびカルボキシ保護基は当業者に公知である(例えば、Protecting Groups in Organic Synthesis,Second Edition,Greene,T.W.,および Wutz,P.G.M.,John Wiley&Sons,New York、およびそこで引用されている参考文献;Philip J.Kocienski;Protecting Groups(Georg Thieme Verlag Stuttgart,New York,1994)およびそこで引用される参考文献);およびComprehensive Organic Transformations,Larock,R.C.,Second Edition,John Wiley&Sons,New York(1999)、およびそこで引用される参考文献を参照されたい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「置換」または「置換基」という用語は、「置換された」(または「置換基」)を使用する表現で示される基上の1つ以上(例えば、種々の実施形態では1~20、他の実施形態では1~10、1、2、3、4または5、いくつかの実施形態では、1、2、または3、他の実施形態では、1または2)の水素が、示される原子の正常の原子価を超えず、かつ置換が安定な化合物をもたらす場合に限り、示される基から選択されたもの、または当業者に公知の適切な基で置き換えられることを示すことを意図する。適切な示される基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、シクロアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロメチルチオ、ジフルオロメチル、アシルアミノ、ニトロ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、カルボキシ、カルボキシアルキル、ケト、チオキソ、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルおよびシアノが挙げられる。さらに、置換炭素(または他の)原子に結合することができる置換基の非限定的な例としては、F、Cl、Br、I、OR’、OC(O)N(R’)2、CN、CF3、OCF3、R’、O、S、C(O)、S(O)、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、N(R’)2、SR’、SOR’、SO2R’、SO2N(R’)2、SO3R’、C(O)R’、C(O)C(O)R’、C(O)CH2C(O)R’、C(S)R’、C(O)OR’、OC(O)R’、C(O)N(R’)2、OC(O)N(R’)2、C(S)N(R’)2、(CH2)0-2NHC(O)R’、N(R’)N(R’)C(O)R’、N(R’)N(R’)C(O)OR’、N(R’)N(R’)CON(R’)2、N(R’)SO2R’、N(R’)SO2N(R’)2、N(R’)C(O)OR’、N(R’)C(O)R’、N(R’)C(S)R’、N(R’)C(O)N(R’)2、N(R’)C(S)N(R’)2、N(COR’)COR’、N(OR’)R’、C(=NH)N(R’)2、C(O)N(OR’)R’、またはC(=NOR’)R’が挙げられ、式中、R’は、水素または炭素系部分であってもよく、炭素系部分自体がさらに置換されていてもよい。
【0030】
「ハロ」または「ハロゲン化物」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを指す。同様に、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を指す。
【0031】
「アルキル」という用語は、例えば1~20個の炭素原子、多くの場合1~12、1~10、1~8、1~6、または1~4個の炭素原子、または例えば、1~20個の範囲の炭素原子、例えば、2~6個、3~6個、2~8個もしくは3~8個の範囲の炭素原子を有する分岐または非分岐炭化水素を指す。本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、以下に定義される「シクロアルキル」も包含する。例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル(イソプロピル)、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル(イソブチル)、2-ブチル(sec-ブチル)、2-メチル-2-プロピル(t-ブチル)、1-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルは、非置換であってもよく、または例えば、以下に記載される置換基で置換されていてもよい。アルキルは、場合により部分的または完全に不飽和であってもよい。したがって、アルキル基の列挙は、アルケニル基およびアルキニル基の両方を含むことができる。アルキルは、上記で説明および例示したような一価の炭化水素ラジカルであってもよく、または二価の炭化水素ラジカル(すなわち、アルキレン)であってもよい。
【0032】
「シクロアルキル」という用語は、単一の環状環または複数の縮合環を有する、例えば3~10個の炭素原子の環状アルキル基を指す。シクロアルキル基には、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単環構造、またはアダマンチルなどの多環構造が含まれる。シクロアルキルは、非置換であっても置換されていてもよい。シクロアルキル基は、一価または二価であってもよく、アルキル基について記載されるように場合により置換されていてもよい。シクロアルキル基は、場合により、1つ以上の不飽和の部位を含むことができ、例えば、シクロアルキル基は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、例えば、1-シクロペント-1-エニル、1-シクロペント-2-エニル、1-シクロペント-3-エニル、シクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニルなどを含むことができる。
【0033】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、少なくとも1つの環に窒素、硫黄、酸素、好ましくは1~3個のヘテロ原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む飽和または部分飽和単環式、二環式または多環式環を指す。各環は、好ましくは3~10員、より好ましくは4~7員である。適切なヘテロシクロアルキル置換基の例としては、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3-ジアザパン、1,4-ジアザパン、1,4-オキサゼパン、および1,4-オキサチアパンが挙げられる。基は、末端基または架橋基であり得る。
【0034】
「アリール」という用語は、親芳香環系の単一の炭素原子から少なくとも1つの水素原子を除去することから誘導される、芳香族炭化水素基を指す。ラジカル結合部位は、親環系の飽和または不飽和炭素原子にあり得る。アリール基は、6~30個の炭素原子、例えば約6~10個の炭素原子を有することができる。他の実施形態では、アリール基は、6~60個の炭素原子、6~120個の炭素原子、または6~240個の炭素原子を有することができる。アリール基は、単環(例えば、フェニル)または複数の縮合(融合)環を有することができ、少なくとも1つの環は芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアントリル)である。典型的なアリール基には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されたラジカルが含まれるが、これらに限定されない。アリールは、非置換であっても、場合によって置換されていてもよい。
【0035】
「ヘテロアリール」という用語は、1、2または3個の芳香環を含み、芳香環に少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄原子を含む単環式、二環式または三環式環系を指す。ヘテロアリールは、非置換であってもよく、または例えば、「置換」の定義に記載されるように、1個以上、特に1~3個の置換基で置換されていてもよい。典型的なヘテロアリール基は、1個以上のヘテロ原子に加えて、環骨格中に2~20個の炭素原子を含む。ヘテロアリール基の例としては、これらに限定されないが、2H-ピロリル、3H-インドリル、4H-キノリジニル、アクリジニル、ベンゾ[b]チエニル、ベンゾチアゾリル、β-カルボリニル、カルバゾリル、クロメニル、シンノリニル、ジベンゾ[b,d]フラニル、フラザニル、フリル、イミダゾリル、イミジゾリル、インダゾリル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソキノリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサゾリル、ペルイミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリル、キノキサリニル、チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル、テトラゾリルおよびキサンテニルが挙げられる。一実施形態では、「ヘテロアリール」という用語は、炭素を含む5個または6個の環原子と、非過酸化物酸素、硫黄、およびN(Z)から独立して選択される1、2、3、または4個のヘテロ原子とを含む単環式芳香環を意味し、ここで、Zは存在しないか、またはH、O、アルキル、アリール、もしくは(C1-C6)アルキルアリールである。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、約8~10個の環原子の、それから誘導されるオルト縮合二環式複素環、特にベンズ(benz)誘導体、またはプロピレン、トリメチレン、もしくはテトラメチレンジラジカルを縮合することによって誘導されるものを示す。
【0036】
本明細書に記載の「溶媒」は、水または有機溶媒を含むことができる。有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、およびジクロロエタンなどの塩素化溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、およびジブチルエーテルなどのエーテル;アセトン、および2-ブタノンなどのケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどのエステル;アセトニトリルなどのニトリル;メタノール、エタノール、およびtert-ブタノールなどのアルコール;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)などの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。溶媒の他の例としては、ハロゲン化芳香族化合物またはハロゲン化フェニル化合物、例えばフッ素化または多フッ素化フェニル化合物、例えば4-クロロベンゾトリフルオリドが挙げられる。溶媒は単独で使用してもよく、または使用のためにそれらの2つ以上を混合して「溶媒系」を提供してもよい。
【0037】
「1つ以上」という語句は、特にそれが使用された文脈中で読めば、当業者には容易に理解される。例えば、フェニル環上の1つ以上の置換基は、例えばフェニル環が二置換されている場合、1~5個、または1~4個までを指す。ポリマーの1つ以上のサブユニット(すなわち、繰り返し単位またはブロック)は、約5~約100,000、または任意の数のサブユニットを指すことができる。
【0038】
本明細書に記載の化合物およびポリマーの置換基は、再帰的な程度まで存在してもよい。この文脈において、「再帰的置換基」は、置換基がそれ自体の別の例を列挙し得ることを意味する。そのような置換基の再帰的性質のために、理論的には、任意の所与の特許請求に多数が存在し得る。有機化学の当業者は、そのような置換基の総数が意図される化合物の所望の特性によって合理的に制限されることを理解する。そのような特性には、限定ではなく例として、分子量、溶解度またはlog Pなどの物理的特性、意図された標的に対する活性などの適用特性、および合成の容易さなどの実用的特性が含まれる。再帰的置換基は、本発明の意図される態様である。有機化学の当業者は、このような置換基の汎用性を理解している。本発明の特許請求に再帰的置換基が存在する程度まで、ポリマー例の繰り返し単位中の総数は、例えば、約1~50、約1~40、約1~30、約1~20、約1~10、または約1~5であり得る。
【0039】
本明細書で使用される「繰り返し単位(repeat unit)」、「繰り返し単位(repeating unit)」、または「ブロック」という用語は、反復性のあるポリマーの部分を指す。繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位x、繰り返し単位y、繰り返し単位a、繰り返し単位bなどと標識された1つ以上の繰り返し単位を含み得る。繰り返し単位x、y、aおよびbは、例えば、任意の順序で連結され、一緒に共有結合されて結合繰り返し単位を形成し得る。モノマーまたは1つ以上の異なるモノマーの組み合わせを結合させて、ポリマーまたはコポリマーの(結合された)繰り返し単位を形成することができる。
【0040】
本明細書に開示されるコポリマーの「分子量」という用語は、平均数分子量(Mn)を指す。対応する重量平均分子量(Mw)は、当業者に公知の方法によって(例えば、計算によって)他の開示パラメータから決定することができる。
【0041】
本明細書に開示されるコポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーを含むことができる。ランダムコポリマーは、コポリマーの繰り返し単位間の結合上の「r」によって示すことができる。したがって、x単位およびx-a単位の配置は、式Iのコポリマーの長さ全体にわたってランダムであり、x単位およびx-a単位の総数は、コポリマーの長さに沿ってランダムに配置される式Iのxおよびaによって定義される。
【0042】
様々な実施形態では、コポリマーの端部(すなわち、開始端部または終了端部)は、低分子量部分(例えば500Da未満)、例えば、H、OH、OOH、CH2OH、CN、NH2、または炭化水素、例えば、アルキル(例えば、開始および終了端部におけるブチルまたは2-シアノプロプ-2-イル部分)、アルケンもしくはアルキン、またはコポリマー中の最初および/もしくは最後の繰り返し単位での脱離反応の結果としての部分である。
【0043】
自己組織化は、既存の成分の無秩序なシステムが、外部の指示無しで、成分自体の間の特定の局所的相互作用に起因して組織化された構造またはパターンを形成するプロセスである。分子の自己組織化のために、最初に吸着分子は、表面上に低い分子密度で無秩序な分子の集団を形成するか、または秩序だった二次元「横たわり位相(lying down phase)」を形成し、数分から数時間にわたって、より高い分子被覆率で基板表面上に三次元形態を形成し始める。「ヘッド基」は基板上に集合するが、テール基は基板から遠くに集合する。密集した分子の領域は核となって、基板の表面が一つの単層で覆われるまで成長する。
【0044】
ブラシブロックコポリマー分子は、線状の非分岐側鎖を有する主鎖を含む分岐ポリマーの特別な形態である。ブラシは、多くの場合、グラフト鎖の高密度を特徴とする。このとき、限られた空間は、鎖の強力な伸長をもたらす。分岐は、モノマーサブユニット上の置換基、例えば水素原子をそのポリマーの別の共有結合鎖で、または、グラフトコポリマーの場合は、別のタイプの鎖で置換することによって発生する。分岐は、炭素-炭素または様々な他の種類の共有結合の形成から生じ得る。エステルおよびアミド結合による分岐は、典型的には縮合反応によるものである。
【0045】
「顔料」という用語は、染料と互換的に使用される。顔料は、波長選択吸収の結果として反射光または透過光の色を変化させる固体、溶液または液体などの材料である。顔料または染料は、有機化合物、有機金属化合物または無機化合物である。
【0046】
基板は、本明細書に開示される組成物でコーティングされる任意の材料であり得る。例えば、基板は、ガラス、金属、合金、ポリマー、複合材、木材、乾燥塗料、または任意の種類の表面であり得る。
【0047】
以下の略語は、当業者にとって通常の意味を有する。D=分散度、kDa=キロダルトン、Mn=数平均分子量、MW=重量平均分子量。
【0048】
本発明の実施形態
本開示は、顔料または染料と、式IAまたは式IBのブラシブロックコポリマー(BBCP)とを含むフォトニック結晶組成物を提供する。
【化3】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3であり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
J
1およびGは、それぞれ独立してCH
2またはC=Oであり、
各J
2は、独立してCH
2またはC=Oであり、
各Qは、独立して、アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~約1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~約1000であり、
ここで、ブロックa、b、xおよびyは任意の順序であり、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である。
【0049】
様々な実施形態では、窒素複素環は、上記に開示されるトリアゾールまたは複素環である。様々な追加の実施形態では、顔料は、酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、アクリジン染料、リレン染料、硫黄染料、pH指示薬、食品染料、蛍光増白剤、アントラキノン染料、アリールメタン染料、トリアリールメタン染料、フタロシアニン染料、キノンイミン染料、アジン染料、インドフェノール染料、オキサジン染料、オキサゾン染料、チアジン染料、チアゾール染料、サフラニン染料、キサンテン染料、ペリレンジイミド染料、ローダミン染料、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、顔料または染料は、アクリジン、ブロモチモール、カルミン、エオシンY、グアイアズレン、ペリレン、またはそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0050】
他の実施形態では、aおよびbは、それぞれ独立して、1~300、5~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、900~1000または1000~2000である。他の実施形態では、xおよびyは、それぞれ独立して、1~300、5~50、50~100、100~150、150~200、200~250、250~300、300~400、400~500、500~600、600~700、700~800、800~900、900~1000または1000~2000である。さらなる実施形態では、x:aの比は、約1:0.5~約1:1、1:1.5、1:2または1:2.5である。さらに他の実施形態では、y:bの比は、約1:0.5~約1:1、1:1.5、1:2、または1:2.5である。
【0051】
さらなる実施形態では、組成物は、青色、緑色、橙色、赤色を反射するか、または近赤外の波長を反射する。様々な実施形態では、BBCPは、約500kDa~約4000kDaの数平均分子量を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、組成物は、Mn=1110.3kDa、MW=1196.1kDa、D=1.08、およびa=x=y=b=約164の場合、式IまたはIIを含む組成物における青色を特徴とする。いくつかの実施形態では、好ましくは、a=x=y=b=140~180である。他の実施形態では、より好ましくは、a=x=y=b=150~170である。
【0053】
いくつかの実施形態では、組成物は、Mn=1275.7kDa、MW=1403.2kDa、D=1.10、およびa=x=y=b=約179の場合、式IまたはIIを含む組成物における緑色を特徴とする。いくつかの実施形態では、好ましくは、a=x=y=b=160~190である。他の実施形態では、より好ましくは、a=x=y=b=165~185である。
【0054】
いくつかの実施形態では、組成物は、Mn=1795.3kDa、MW=2010.4kDa、D=1.12、およびa=x=y=b=約252の場合、式IまたはIIを含む組成物における橙色を特徴とする。いくつかの実施形態では、好ましくは、a=x=y=b=230~270である。他の実施形態では、より好ましくは、a=x=y=b=240~260である。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、Mn=2063.1kDa、MW=2384.8kDa、D=1.16、およびa=x=y=b=約289の場合に、式IまたはIIを含む組成物における近赤外で反射される波長を特徴とする。いくつかの実施形態では、好ましくは、a=x=y=b=270~300である。他の実施形態では、より好ましくは、a=x=y=b=275~295である。
【0056】
様々な他の実施形態では、得られるコーティング中のBBCPの重量パーセントは、約25%~約99.9%であり、顔料または染料の重量パーセントは、約0.1%~約10%である。いくつかの実施形態では、BBCPの重量パーセントは、約85%。91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%である。さらに他の実施形態では、顔料または染料の重量パーセントは、約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%または15%である。
【0057】
さらなる実施形態では、組成物は、金属酸化物、線状ポリマー添加剤、またはそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、線状ポリマー添加剤は、線状ポリ(メタクリラート)、線状ポリ乳酸、線状ポリスチレン、またはそれらの組み合わせである。さらにいくつかの他の実施形態では、組成物は、二酸化ジルコニウムナノ結晶、酸化チタンナノ結晶、または酸化ハフニウムナノ結晶をさらに含む。
【0058】
さらなる実施形態では、式IAのBBCPは、式ICまたは式IIのBBCPであり、
【化4】
式中、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、Hまたは非分岐もしくは分岐-(C
1-C
6)アルキルであり、
mおよびnは、それぞれ独立して、1~100である。
【0059】
他の実施形態では、mおよびnは、それぞれ独立して、1~10、10~50、10~20、20~30、30~40、40~50または50~100である。
【0060】
さらなる実施形態では、式IのBBCPは、式IIIのBBCPであり、
【化5】
式中、
R
5は、Hまたは非分岐もしくは分岐-(C
1-C
6)アルキルであり、
qおよびtは、それぞれ独立して、1~100である。
【0061】
いくつかの実施形態では、qおよびtは、それぞれ独立して、1~10、10~50、10~20、20~30、30~40、40~50または50~100である。
【0062】
本開示はまた、基板の電磁放射反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整する方法であって、基板を本明細書に開示されたフォトニック結晶組成物の膜でコーティングすることを含み、フォトニック結晶組成物中の顔料または染料が、基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルを調整し、コーティング基板によって反射される電磁放射が、対応する非コーティング基板よりも少なくとも5%増加する方法を提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、コーティング基板によって反射される電磁放射は、対応する非コーティング基板よりも約5%~約25%、約25%~約50%、約50%~約75%、または約75%~約95%多い。
【0064】
様々な実施形態では、膜は、約0.25~約0.55の光学的厚みf比、または約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、もしくは0.9のf比を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルは、約280ナノメートル~約400ナノメートルの波長の反射電磁放射を含む。他の実施形態では、基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルは、約400ナノメートル~約700ナノメートルの波長の反射電磁放射を含む。さらに他の実施形態では、基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルは、約700ナノメートル~約1550ナノメートルの波長の反射電磁放射を含む。
【0066】
さらなる実施形態では、基板の反射率、吸光度および透過率プロファイルは、約200nm~約300nm、約300nm~約400nm、約400nm~約500nm、約500nm~約600nm、約600nm~約700nm、約700nm~約800nm、約800nm~約900nm、約900nm~約1000nm、約1000nm~約1100nm、約1100nm~約1200nm、約1200nm~約1300nm、約1300nm~約1400nm、または約1400nm~約1600nmの波長の反射電磁放射を含む。
【0067】
さらに、本開示は、フォトニックコーティングを形成するための方法であって、
a)溶媒、顔料または染料、およびブラシブロックコポリマー(BBCP)を組み合わせて混合物を形成する工程であって、BBCPが、上記の式IA、式IB、式IIもしくは式III、または式ICのBBCPであり、
【化6】
式中、
R
xは、-(C
2-C
6)アルキル-OC(=O)G
1であり、ここでG
1は、ポリアクリラート、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
yは、-(C
1-C
8)アルキル-G
2-G
3あり、ここでG
2は、-C(=O)O-または窒素複素環であり、G
3は、ポリスチレン、ポリアクリラート、ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル、ポリメタクリラートまたはポリ乳酸を含み、
R
1は、非分岐アルキルであり、
R
2は、分岐アルキルであり、
aおよびbは、それぞれ独立して、0~1000であり、
xおよびyは、それぞれ独立して、1~1000であり、
ここで、x:aの比は1:0~約1:3であり、y:bの比は1:0~約1:3である、工程;
b)混合物の層を基板に塗布する工程;および
c)層を乾燥させて膜を形成する工程を含み、
膜が基板上にフォトニックコーティングを形成する方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、溶媒は、4-クロロベンゾトリフルオリドである。様々な実施形態では、本方法は、上記の式IIまたは式IIIのBBCPを含む。さらなる実施形態では、顔料または染料は、酸性染料、塩基性染料、アゾ染料、アクリジン染料、リレン染料、硫黄染料、pH指示薬、食品染料、蛍光増白剤、アントラキノン染料、アリールメタン染料、トリアリールメタン染料、フタロシアニン染料、キノンイミン染料、アジン染料、インドフェノール染料、オキサジン染料、オキサゾン染料、チアジン染料、チアゾール染料、サフラニン染料、キサンテン染料、ペリレンジイミド染料、ローダミン染料、またはそれらの組み合わせである。さらなる実施形態では、顔料または染料は、アクリジン、ブロモチモール、カルミン、エオシンY、グアイアズレン、ペリレン、またはそれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0069】
さらなる実施形態では、顔料または染料の重量パーセントは、混合物中約0.1%~約3%、または混合物中約0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7&、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、4%、5%または10%である。他の実施形態では、BBCPの重量パーセントは、混合物中約2.5%~約50%、または混合物中約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%または40%である。
【0070】
組成物および方法の様々な他の実施形態では、BBCPは、約500kDa~約4000kDa、または約900kDa~約1100kDaの数平均分子量を有する。他の実施形態では、BBCPは、数平均分子量が約100kDa、200kDa、300kDa、400kDa、500kDa、600kDa、700kDa、800kDa、900kDa、1000kDa、1100kDa、1200kDa、1300kDa、1400kDa、1500kDa、1600kDa、1700kDa、1800kDa、1900kDa、2000kDa、2100kDa、2200kDa、2300kDa、2400kDa、2500kDa、2600kDa、2700kDa、2800kDa、2900kDa、3000kDa、3500kDa、4000kDa、4500kDaまたは5000kDaである。
【0071】
上記方法のさらに他の実施形態では、工程a)は、金属酸化物、線状ポリマー添加剤、またはそれらの組み合わせを混合物に添加することをさらに含む。様々な実施形態では、線状ポリマー添加剤は、線状ポリ(メタクリラート)、線状ポリ乳酸、線状ポリスチレン、またはそれらの組み合わせである。上記方法のさらなる実施形態では、混合物の層を基板に塗布することは、限定されないが、基板への混合物のスプレー堆積、または本明細書に開示される他の堆積方法、例えば、基板への混合物のドローダウンコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、スプレー堆積、または塗料ブラシ/ローラーを含む。
【0072】
本開示の様々な態様は、以下を含む。
【0073】
無機または有機添加剤のいずれかを含有し、少なくとも1つの無機または有機成分をポリマーベースフォトニック結晶、またはポリマー成分の組成と比較して異なるモノマー単位で構成される有機添加剤に添加することを含む、フォトニック結晶材料。
【0074】
フォトニック結晶は、線状ブロックポリマー、ブラシブロックポリマー、星型ポリマー、ポリマーコロイド結晶配列、または任意の繰り返し誘電体構造から形成される。
【0075】
ポリマーは、球、円柱、ジャイロイド、薄板、またはポリマー自己組織化によって利用可能な任意の周期構造へと組み立てられるか、または製造される。
【0076】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、ドローダウン、ワイヤバー、ドクターブレード、またはバードバー(bird bar)によって堆積される。
【0077】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、塗料ブラシまたはローラー塗布によって堆積される。
【0078】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、スクリーン印刷によって堆積される。
【0079】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、浸漬コーティングによって堆積される。
【0080】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、水圧転写(hydrographic printing)によって堆積される。
【0081】
ポリマー複合フォトニック結晶材料、または単独のブラシブロックコポリマーは、スプレーブラシ、スプレーガン、回転式ベルアトマイザー、または、これらに限定されないが、空気噴霧、エアレス、静電、大容量、低圧を含む他のスプレー塗布方法によって堆積される。
【0082】
フォトニック結晶コーティングは、高い近赤外反射率および低い可視反射率を有する。
【0083】
フォトニック結晶コーティングは、高い可視反射率および低い紫外線反射率を有する。
【0084】
無機成分は、アルカリ(土類)金属のナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0085】
無機成分は、チタン、ジルコニウム、もしくはハフニウムなどのIV族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とIV族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0086】
無機成分は、バナジウム、ニオブ、およびタンタルなどのV族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とV族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0087】
無機成分は、クロム、モリブデン、およびタングステンなどのVI族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とVI族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0088】
無機成分は、マンガン、テクネチウム、およびレニウムなどのVII族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とVII族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0089】
無機成分は、鉄、ルテニウム、およびオスミウムなどのVIII族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とVIII族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0090】
無機成分は、コバルト、ロジウム、およびイリジウムなどのIX族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とIX族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0091】
無機成分は、ニッケル、パラジウム、および白金などのX族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とX族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0092】
無機成分は、銅、銀、金などのXI族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とXI族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0093】
無機成分は、亜鉛、カドミウム、および水銀などのXII族金属、および/もしくはそれらの酸化物、または任意の元素とXII族金属および/もしくは酸化物との組み合わせのナノスケール形態(一般に分子錯体および微粒子を含む)である。
【0094】
無機成分は、表面配位子で官能化されている。無機成分が表面配位子で官能化されている場合、無機成分を表面ポリマーベースの配位子で官能化することができる。
【0095】
有機または無機添加剤成分は、BCPを構成するモノマー単位から誘導されるであろうホモポリマーに由来する、0.05より大きいまたは小さい屈折率を有する。
【0096】
有機または無機添加剤成分は、組成物のf値を0.50±0.03に変化させるために使用される。
【0097】
有機または無機添加剤成分は、組成物のf値を0.33±0.03に変化させるために使用される。
【0098】
無機または有機添加剤は、染料である。
【0099】
無機または有機添加剤は、顔料である。
【0100】
無機または有機添加剤は、紫外線AまたはB光(280~400nm)を吸収する。
【0101】
無機または有機添加剤は、紫外線AまたはB光領域(280~400nm)におけるフォトニック結晶の吸収率または透過率プロファイルを変化させる。
【0102】
無機または有機添加剤は、可視光(400~700nm)を吸収する。
【0103】
無機または有機添加剤は、可視光領域(400~700nm)におけるフォトニック結晶の吸収率または透過率プロファイルを変化させる。
【0104】
無機または有機添加剤は、近赤外、IR-A、光領域(700~1400nm)を吸収する。
【0105】
無機または有機添加剤は、近赤外、IR-A、光領域(700~1400nm)におけるフォトニック結晶の吸収率または透過率プロファイルを変化させる。
【0106】
結果および考察
無機材料を特定の重量パーセントで組み込むことは、ポリマーベースのフォトニック結晶からの(偶数番号)次反射の%Rを、1次および3次(奇数番号)反射の%Rを維持または増加させながら、選択的に減少させる効果を有することが見出された(
図1)。
図1で観察されるように、無機添加剤を使用することにより、二次%Rは、ヒトの目で緑色として容易に観察される519nmでの31%Rから、ヒトの目で容易に観察されない525nmでの4.7%Rまで選択的に減少する。
【0107】
明確に定義された1次、2次、3次...などの反射、および主反射ピークの外側の低い%Rによって証明されるように(
図2)、特定の重量パーセントで特定の有機材料を組み込むことは、ナノ構造材料の長距離秩序を増加させる効果を有することが分かった。
図2に観察されるように、有機材料添加剤を使用することによって、高いNIR反射率(>60%)、低いVis反射率(<10%)、および高いVis透過率(>85%)を達成することができる。
【0108】
両方の観察結果は、「f比」(f)と呼ばれる光学的厚みの操作を通して説明することができ、式2で定義することができる(Polymer Engineering and Science 1969,9,404)。
式2:
【数1】
【0109】
ここで、f値が0.5(同等の光学的厚み)に近いかまたは等しい場合、偶数次反射(m=2,4,6...)が抑制され、f値が0.33に近いかまたは等しい場合、奇数次反射(m=1,3,5,7...)が抑制される。BCPに適合する有機または無機成分を添加することによって、特定の波長領域(UV、Vis、NIR)で標的化し、%Rを調整することができる。見た目が透明なUVおよび/またはNIR反射コーティングの場合、可視領域内の%Rを抑制することができる。
【0110】
ポリマー材料自体、ポリマー複合混合物、およびこれらの材料が自己組織化して、塗料ブラシ、ドローダウン、ワイヤバー、ドクターブレード、バードバー(bird bar)、ローラー塗布、スクリーン印刷、スプレーブラシ、またはスプレーガン塗布などの様々な方法によって堆積された機能性光学コーティングを形成する容易なプロセスにおける革新により、最新技術を上回る重要な利点が存在する(
図3)。
【0111】
図1は、2つのPLA-b-PSフォトニック結晶膜の反射率を比較している。実線トレースは無機添加剤を含み、破線トレースは添加剤を含まない。異なるピークの強度(反射%)を比較すると、無機添加剤を含む場合、1次、2次および3次反射の相対強度が大幅に変化することが分かる。具体的には、無機添加剤を含むと、1次に対して3次反射が増加し、1次に対して2次反射が減少する。UVおよびNIR反射を維持しながら可視反射が選択的に抑制されるので、この結果は重要である。最も近い先行技術と比較すると、同様の光学的特徴は、異なるポリマー材料の多層共押出によって達成される。共押出とは対照的に、同様の光学特性は現在、単純な配合物および塗装によって利用可能である。
【0112】
図2は、2つのPLA-b-PSフォトニック結晶膜の反射率を比較している。破線のトレースは34重量%の充填量のPEHMAポリマー添加剤を含み、黒線のトレースは10重量%の充填量のPEHMAポリマー添加剤を含む。BBCPが組成物から除去される場合、反射はないことに留意されたい。
図1と同様に、
図2は、添加剤の添加によるポリマー複合フォトニック結晶膜の光学特性の変化を示す。具体的には、PEHMAの添加を充填量10重量%から34重量%に増加することによって、反射率を劇的に変化させることができる。
図2Bは、反射率に加えて透過率を示す。
【0113】
図3は、スプレー堆積ポリマー複合PLA-b-PSフォトニック結晶膜の透過率(破線)トレースおよび反射率(実線)トレースを示す。この結果は、第1のスプレー堆積ブラシブロックコポリマーフォトニック結晶膜を表すので、重要である。
【0114】
さらに、本開示は、ブラシブロックコポリマー(BBCP)から構成される自己組織化ポリマーフォトニック結晶コーティング、および外因的に添加された顔料または染料を使用して、得られるコーティングの光学特性を修正することができるという発見に関する。
【0115】
本明細書で開示されるポリマーベースの1D PCは、ポリ(スチレン)-ブロック-ポリ(イソブチルメタクリラート)ブラシブロックコポリマー(BBCP)を使用するモデル系から作製された。BBCPは、ノルボルネンベースのポリ(スチレン)およびポリ(イソブチルメタクリラート)マクロモノマーからの開環メタセシス重合によるグラフトスルーアプローチによって合成した。BBCPを溶液に完全に溶解して、25重量%の固形分にした。添加剤は含まないか、または総溶液質量に対して0.4重量%の顔料もしくは染料を添加した(
図4~
図11)。配合物の組成を表1に示す。
【表1】
【0116】
バードバー(bird bar)を使用して、膜を4.0ミルの湿潤膜厚でキャストした。
図4は、顕微鏡ガラススライド基板上のPC膜の反射率および透過率を示す。
図5~
図11では、膜は染料または顔料を含有し、
図4の対照と対比される。
図5~
図11では、染料または顔料が、光学特性、したがってガラス上のコーティングの外観を変化させる。
【0117】
以下の例は、上記の発明を例示することを意図しており、その範囲を狭めると解釈されるべきではない。当業者は、例が本発明を実施することができる多くの他の方法を示唆していることを容易に認識するであろう。本発明の範囲内に留まりながら、多くの変形および修正を行うことができることを理解されたい。
【0118】
例
例1.材料および方法
ポリマー複合材料の組成物は、ブラシブロックコポリマー、線状ポリ(乳酸)、線状ポリ(スチレン)、線状ポリ(2-エチルヘキシルメタクリラート)、二酸化ジルコニウムナノ結晶(平均直径7nm、Pixelligent Technologies LLCから)、またはそれらの組み合わせから調製した。線状ポリマー添加剤については、J.Am.Chem.Soc.2014、136、17374を参照されたい。米国特許出願公開第2018/0258230号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
ポリマー膜を顕微鏡ガラススライド上に堆積させ、拡散反射アクセサリを備えたCary 5000 UV-Vis-NIR分光光度計で反射率および透過率スペクトルを記録した。
線状ポリ(乳酸):
【化7】
【0120】
脱気し、窒素を充填し、3回火炎乾燥した200mLの撹拌棒装備シュレンクフラスコに、新たに昇華したラクチド(51.8g)および2-エチルヘキサン酸スズ(II)を添加し、最後に無水ヘキサノール(1.948mL)を注入した。反応物を135℃に加熱した。反応が先行したので、ラクチドがフラスコの側壁上で昇華し、これをヒートガンで溶融して溶液に戻し、モノマーの定量的消費を保証した。3.5時間後、反応物をジクロロメタン(DCM)で希釈し、セライトプラグを通して濾過し、メタノール中に沈殿させた。収率:75%、M
n=3,050Da、PDI=1.07。
線状ポリ(スチレン):
【化8】
【0121】
脱気し、窒素を充填し、3回火炎乾燥した1Lの撹拌棒装備シュレンクフラスコに、乾燥かつ脱気したトルエン(700mL)を添加した。反応フラスコを氷浴に入れ、シクロヘキサン中の1.4Mのsec-ブチルリチウム(25mL、2.24g、0.035mol、1当量)を撹拌されているトルエンに添加した。20分間溶液を撹拌した後、CaH2上で新たに乾燥させ、蒸留したスチレン(120mL、109g、1.05mol、29.9当量)を60mLシリンジによってかなり迅速な方法で添加した。有意な発熱は観察されず、溶液はすぐに透明から橙/赤色に変化した。2時間後、約50mLのメタノールを注入して反応をクエンチした。
【0122】
後処理:溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残りのトルエン、メタノール、シクロヘキサンおよびプロピレンオキシドを除去した。ポリマーをTHFに溶解し、撹拌しているメタノール溶液中に室温で沈殿させた。収率:98%、M
n=3,100Da、PDI=1.05
線状ポリ(2-エチルヘキシルメタクリラート):
【化9】
【0123】
脱気し、窒素を充填し、3回火炎乾燥した100mLの撹拌棒装備シュレンクフラスコに、DCM溶媒、2-エチルヘキシルメタクリラートモノマー、およびメチルトリメチルシリルジメチルケテンアセタールを添加した。TMS-トリフルイミド触媒を添加して重合を開始した。重合を室温で進行させ、3時間後、1H NMRによる>99%の変換が確認されたら、クエンチした。酸性化メタノールでクエンチした後、溶液をアルミナプラグに通して濾過し、残留触媒および分解した触媒生成物を除去し、減圧下で濃縮した。収率:89%、Mn=3,100Da、PDI=1.11。
【0124】
例2.ポリスチレンマクロモノマーの合成
【化10】
【0125】
アルコール末端ポリスチレン:脱気し、窒素を充填し、3回火炎乾燥した1Lの撹拌棒装備シュレンクフラスコに、乾燥かつ脱気したトルエン(700mL)を添加した。反応フラスコを氷浴に入れ、シクロヘキサン中の1.4Mのsec-ブチルリチウム(25mL、2.24g、0.035mol、1当量)を撹拌されているトルエンに添加した。20分間溶液を撹拌した後、CaH
2上で新たに乾燥させ、蒸留したスチレン(120mL、109g、1.05mol、29.9当量)を60mLシリンジによってかなり迅速な方法で添加した。有意な発熱は観察されず、溶液はすぐに透明から橙/赤色に変化した。2時間後、プロピレンオキシド(2.816mL、0.0403mol、1.15当量)を添加してポリスチレン鎖を終結させ、適切な官能性を提供した。この反応物を一晩撹拌した後、約50mLのメタノールを注入して反応物をクエンチした。後処理:溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、残りのトルエン、メタノール、シクロヘキサンおよびプロピレンオキシドを除去した。ポリマーをTHFに溶解し、撹拌しているメタノール溶液中に室温で沈殿させた。98%回収、M
n=3,153Da、PDI=1.05。
【化11】
【0126】
ポリスチレンアルコールとノルボルネンカルボン酸とのカップリング:脱気し、窒素を充填し、3回火炎乾燥した1Lの撹拌棒装備シュレンクフラスコに、プロピレンオキシド末端ポリスチレン(60.0g、0.019mmol、1当量)、ノルボルネンカルボン酸A(6.24、0.228mmol、1.2当量)、およびDMAP(2.32g、0.190mmol、1.0当量)を添加した。混合物を乾燥DCM約650mLに溶解し、氷浴上で30分間撹拌した。その後、正窒素流下で、DCC(7.87g、0.038mmol、2.0当量)を溶液に10分間にわたって添加した。反応物を一晩反応させた。
【0127】
後処理:24時間後、溶液を0℃に再冷却し、中程度のフリットに通して濾過し、ジシクロヘキシル尿素を除去した。次いで、濾過した溶液をもう一度-20℃に冷却し、残っているジシクロヘキシル尿素沈殿物を2回目で濾過した。濾過したら、溶液をロータリーエバポレーターで濃縮し、次いでTHFに溶解し、撹拌メタノール溶液中で室温で5回沈殿させた。収率=75%。
【0128】
例3.イソブチルメタクリラートマクロモノマーの合成
【化12】
【0129】
N-(エチルメタクリラート)-シス-5-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボキシイミドの合成:火炎乾燥し、窒素を3回充填した1Lのシュレンクフラスコに、N-(ヒドロキシエチル)-シス-5-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボキシイミド(83.4g、403mmol、1.0当量)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(29.5g、241mmol、0.6当量)、メタクリル酸(44.0mL、519mmol、1.3当量)、および650mLの無水DCMを添加した。不均一溶液を氷浴上で20分間混合させ、次いで、1-エチル-3-(d-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(93.8g、604mmol、1.5当量)を正窒素下でゆっくり添加した。反応を2日間進行させた後、有機層を0.5M HCl、飽和NaHCO
3溶液、水、ブラインで洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、次いで200gのアルミナに通してさらなるメタクリル酸を除去した。次いで有機層を、生成物が溶液中で感光性であるため、暗所で濃縮して白色固体を得た(46g、収率42%)。
【化13】
【0130】
グループトランスファー重合:24/40アダプターおよび撹拌棒を備えた250mLのエルレンマイヤーフラスコをオーブンで乾燥させ、高温のグローブボックスに入れた。グローブボックス内に、溶媒系からの75mLの無水DCMを添加した。これに、脱気したジメチルフェニルシラン(573μL、3.74mmol、1.03当量)を添加した後、一旦昇華したトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(18.6mg、0.0363mmol、0.01当量)を添加した。この溶液を1分間撹拌した後、10mLのDCM(0.5M)中のN-(エチルメタクリラート)-シス-5-ノルボルネン-エキソ-2,3-ジカルボキシイミド(1.00g、3.36mmol、1.0当量)の溶液を5分間にわたって滴加した(合計100滴を超える)。この溶液をさらに15分間撹拌し、ここで、CaH2で乾燥させ、蒸留されたメタクリル酸イブチル(10.49mL、0.0653mmol、18当量)を撹拌溶液に注入した。最後に、N-(トリメチルシリル)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(51μL、0.1456mmol、0.04当量)を加えた。Mn=2,940Da、PDI=1.07。
【0131】
例4.ブラシブロックコポリマー(BBCP)の合成
【化14】
【0132】
BBCP1:イソブチルメタクリラートマクロモノマー(200当量)および撹拌棒を含有するバイアルに、CH
2Cl
2を添加して0.05M溶液を得た。重合は、Grubbs第3世代触媒(1.0当量)の添加によって開始した。室温で1時間撹拌した後、CH
2Cl
2およびピリジン(1.0mM、5.0当量)の溶液を添加した。別のバイアルにおいて、スチレンマクロモノマー(200当量)をCH
2Cl
2(0.05M)に添加することによって、第2のブロックの溶液を調製した。プラスチックシリンジを使用して、第2のブロックを第1のブロック反応混合物にワンショットで導入した。得られた混合物を室温でさらに5時間撹拌した。反応物をエチルビニルエーテルの過剰な添加によってクエンチし、ブロックコポリマーを-78℃でメタノール中に沈殿させることによって単離した。
【化15】
【0133】
BBCP2(J.Am.Chem.Soc.2017,139,17683を参照):PLA-MM(1173mg、0.325mmol、Mn=3608Da)および撹拌棒を含む30mLの褐色バイアルに、d,x-DMEのCH2Cl2溶液(6.5mL中68.32mg、0.325mmol、0.05M)を加えた。共重合は、PLA170-r-DME170を標的とするGrubbsの第3世代触媒((H2IMes)-(pyr)2(Cl)2RuCHPh、1.91μmol)の添加によって開始した。室温で75分間撹拌した後、分析のためにアリコートを抽出して、ピリジンのCH2Cl2溶液を添加した(3.8mL、1.0mM)。別のバイアルにおいて、第2のブロックの溶液を、PS-MM(1138mg、0.325mmol、Mn=3500Da)をd,x-DiPEのCH2Cl2溶液(6.5mL中86.56mg、0.325mmol、0.05M)で溶解することによって調製した。次いで、12mLのプラスチックシリンジを使用して、第2のブロックを第1のブロック反応混合物にワンショットで導入した。得られた混合物を室温でさらに12時間撹拌した。0.5mLのエチルビニルエーテルを添加することによって反応を停止させ、-78℃でメタノール中に沈殿させることによってブロックコポリマーを単離した。Mn=1,020,000Da、PDI=1.09。収率:92%。
【0134】
特定の実施形態が、開示された実施形態および例を参照して上記で説明されたが、そのような実施形態は、単なる例示であり、本発明の範囲を限定しない。以下の特許請求の範囲で定義されるより広範な態様において、本発明から逸脱することなく、当業者によって変更および修正を行うことができる。
【0135】
すべての刊行物、特許、および特許文書は、あたかも個々に参照により組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示と矛盾する制限は、そこから認識されるべきではない。本発明は、様々な特定の好ましい実施形態および技術を参照して説明されてきた。しかしながら、本発明の精神および範囲内に留まりながら、多くの変更および修正がなされ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】