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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】利得結合共振器ジャイロスコープ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/72 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
G01C19/72 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544673
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 US2020014768
(87)【国際公開番号】W WO2020159793
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/800,149
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/746,696
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディゴネット,ミシェル・ジェイ・エフ
(72)【発明者】
【氏名】グラント,マシュー・ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105BB13
2F105DD03
2F105DD13
2F105DE01
2F105DE21
2F105DE25
(57)【要約】
ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路と光学的に連通する第1の光共振器と、第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器とを備える。第1の光共振器および第2の光共振器の一方は、0より大きいパワー損失率Lを有し、第1の光共振器および第2の光共振器の他方は、0より大きいパワー利得率Gを有する。少なくとも1つの光導波路、第1の光共振器、および第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成される。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器をさらに含み、少なくとも1つの光導波路は、少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有する光を受信し、出力パワーPoutを有する光の少なくとも一部を少なくとも1つの光検出器に伝送するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャイロスコープであって、
第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路であって、前記第2の部分は前記第1の部分と前記第3の部分との間にある、少なくとも1つの光導波路と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分との入力パワー結合率κinを有し、損失率Lを有する、第1の光共振器と、
共振器間パワー結合率κを有し、利得率Gを有する、前記第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路、前記第1の光共振器、および前記第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成された第2の光共振器と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器であって、前記少なくとも1つの光導波路は、前記少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有するプローブ光を受信するように構成され、前記少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する前記受信プローブ光の少なくとも一部を前記少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される、光検出器と、を備える、ジャイロスコープ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光源はレーザを含む、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
前記第1の光共振器は損失リングを備える、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項4】
前記損失率Lは、前記第1の光共振器を回り伝播する前記プローブ光の光パワー損失率である、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項5】
前記第2の光共振器は利得リングを備える、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項6】
前記利得率Gは、前記第2の光共振器を回り伝播するプローブ光の光パワー利得率である、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項7】
除外点の共振器間パワー結合率κEPに対する前記共振器間フィールドパワー結合率κの比κ/κEPは、0.75より大きく0.99より小さい範囲にあり、前記除外点の共振器間パワー結合率κEPは、(L+κin+G)/2に等しい、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項8】
除外点の共振器間パワー結合率κEPに対する前記共振器間フィールドパワー結合率κの比κ/κEPは、1.01より大きく1.35より小さい範囲にあり、前記除外点の共振器間パワー結合率κEPは、(L+κin+G)/2に等しい、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項9】
除外点の共振器間パワー結合率κEPに対する前記共振器間フィールドパワー結合率κの比κ/κEPは、0.75より大きく1.35より小さい範囲にあり、前記除外点の共振器間パワー結合率κEPは、(L+κin+G)/2に等しい、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項10】
ジャイロスコープを動作させる方法であって、
ジャイロスコープを提供するステップであって、前記ジャイロスコープは、
第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路であって、前記第2の部分は前記第1の部分と前記第3の部分との間にある、少なくとも1つの光導波路と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分との入力結合率κinを有する、第1の光共振器と、
共振器間結合率κを有する、前記第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路、前記第1の光共振器、および前記第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成された第2の光共振器と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器であって、前記少なくとも1つの光導波路は、前記少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有する光を受信するように構成され、前記少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する前記光の少なくとも一部を前記少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される、光検出器と、を備える、ステップと、
0.75より大きく1.35未満の範囲内の除外点の共振器間結合率κEPに対する前記共振器間結合率κの比κ/κEPで前記ジャイロスコープを動作させるステップを含む、方法。
【請求項11】
前記第1の光共振器は損失率Lを有し、前記第2の光共振器は利得率Gを有し、前記除外点の共振器間結合率κEPは(L+κin+G)/2に等しい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の光共振器は利得率Gを有し、前記第2の光共振器は損失率Lを有し、前記除外点の共振器間結合率κEPは|L-κin+G|/2に等しい、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の光共振器は第1のリング共振器を含み、前記第2の光共振器は第2のリング共振器を含み、光は前記第1のリング共振器内を第1の方向に循環し、前記第2のリング共振器内を前記第1の方向と実質的に同じ第2の方向に循環する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の光共振器は第1のリング共振器を含み、前記第2の光共振器は第2のリング共振器を含み、光は前記第1のリング共振器内を第1の方向に循環し、前記第2のリング共振器内を前記第1の方向と実質的に反対の第2の方向に循環する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ジャイロスコープであって、
第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路であって、前記第2の部分は前記第1の部分と前記第3の部分との間にある、少なくとも1つの光導波路と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器であって、前記少なくとも1つの光導波路の前記第2の部分との入力パワー結合率κinを有する、第1の光共振器と、
共振器間パワー結合率κを有する、前記第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器であって、前記第1の光共振器および前記第2の光共振器の一方は0より大きいパワー損失率Lを有し、前記第1の光共振器および前記第2の光共振器の他方は0より大きいパワー利得率Gを有し、前記少なくとも1つの光導波路、前記第1の光共振器、および前記第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成される、第2の光共振器と、
前記少なくとも1つの光導波路の前記第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器であって、前記少なくとも1つの光導波路は、前記少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有する光を受信するように構成され、前記少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する前記光の少なくとも一部を前記少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される、光検出器と、を備える、ジャイロスコープ。
【請求項16】
前記第1の光共振器はパワー損失率Lを有し、前記第2の光共振器はパワー利得率Gを有し、除外点の共振器間パワー結合率κEPに対する前記共振器間パワー結合率κの比κ/κEPは0.75より大きく1.35より小さい範囲にあり、前記除外点の共振器間パワー結合率κEPは(L+κin+G)/2に等しい、請求項15に記載のジャイロスコープ。
【請求項17】
前記第1の光共振器はパワー利得率Gを有し、前記第2の光共振器はパワー損失率Lを有し、除外点の共振器間パワー結合率κEPに対する前記共振器間パワー結合率κの比κ/κEPは0.75より大きく1.35より小さい範囲にあり、前記除外点の共振器間フィールドパワー結合率κEPは|L-κin+G|/2に等しい、請求項15に記載のジャイロスコープ。
【請求項18】
前記第1の光共振器は第1のリング共振器を備え、前記第2の光共振器は第2のリング共振器を備え、前記第1のリング共振器は光を前記第1の方向に前記第1のリング共振器内を循環させるように構成され、前記第2のリング共振器は光を前記第1の方向と実質的に同じ第2の方向に前記第2のリング共振器内を循環させるように構成される、請求項15に記載のジャイロスコープ。
【請求項19】
前記第1の光共振器は第1のリング共振器を備え、前記第2の光共振器は第2のリング共振器を備え、前記第1のリング共振器は光を前記第1の方向に前記第1のリング共振器内を循環させるように構成され、前記第2のリング共振器は光を前記第1の方向と実質的に反対の第2の方向に前記第2のリング共振器内を循環させるように構成される、請求項15に記載のジャイロスコープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国仮特許出願に対する優先権の利益を主張する。2019年2月1日に出願された米国仮特許出願第62/800,149号および2020年1月17日に出願された米国非仮特許出願第16/746,696号に対する優先権の利益を主張する。前述の各出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、一般に、光学ジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
高精度光学ジャイロスコープは、回転するファイバの長さに沿って進む光に位相シフトを生成するサニャック効果に依存する。ファイバループを通る1回のラウンドトリップで蓄積されるサニャック位相は、ループによって定められる面積に比例する。航空機の慣性航法のための小さな回転速度(例えば、0.01°/h未満)の場合、サニャック位相シフトは非常に小さい。したがって、光ファイバジャイロスコープ(FOG)は、長いファイバ(例えば、典型的には100~1000メートルであり、複数の巻きで巻かれる)によって定められる非常に大きな面積を有するファイバコイルを使用してきた。付随するサイズ、重量、および材料コストは、これらのパラメータ、特にコンパクトさが重要である多くの大容量用途のFOGを不適格にする。例には、自動運転車、飛行車両、およびドローンの慣性ナビゲーションが含まれるが、これらに限定されない。
【0004】
広く研究されている1つの解決策は、FOGで使用されるサニャック干渉計の代わりにサニャック位相を測定するための光共振器の使用である。このような共振器では、光が何度も再循環し、各再循環でサニャック位相シフトをピックアップし、それにより、はるかに大きな全回転誘起位相シフトを蓄積し、測定がより容易なより強い信号を与える。したがって、共振型光ファイバジャイロスコープ(RFOG)は、はるかに短いファイバを利用し、サイズを小さくすることができるが、このファイバ長の短縮は依然として十分ではない。
【0005】
過去10年ほどの間に、いくつかの刊行物が、結合共振光導波路(CROW)を使用することによってサニャック効果を高めることを提案している(例えば、K.Zamani AghaieおよびM.J.F.Digonnetによる「Effect of periodic modulation of the coupling ratios on the sensitivity of a CROW gyroscope」、J.Opt.Soc.Am.B、vol.32、no.6、1120ページ、2015年およびその中の参考文献を参照)。CROWは、何らかの方法で光学的に結合された複数のリング共振器を有する。これらの刊行物の多くは、RFOGと比較して回転感度のかなり大きな改善を主張しているが、これらの主張のいくつかは後に誤りであることが証明された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
特定の実施形態では、ジャイロスコープは、第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路を備え、第2の部分は第1の部分と第3の部分との間にある。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源をさらに備える。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器をさらに備える。第1の光共振器は、少なくとも1つの光導波路の第2の部分との入力パワー結合率κinを有し、損失率Lを有する。ジャイロスコープは、共振器間パワー結合率κを有し、利得率Gを有する、第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器をさらに備える。少なくとも1つの光導波路、第1の光共振器、および第2の光共振器は、レージング(lasing)閾値を下回るように構成される。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器をさらに備える。少なくとも1つの光導波路は、少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有するプローブ光を受信するように構成される。少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する受信プローブ光の少なくとも一部を少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される。
【0007】
特定の実施形態では、ジャイロスコープを動作させる方法は、第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路を備えるジャイロスコープを提供することを含み、第2の部分は第1の部分と第3の部分との間にある。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源をさらに備える。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器をさらに備える。第1の光共振器は、少なくとも1つの光導波路の第2の部分との入力結合率κinを有する。ジャイロスコープは、共振器間結合率κを有する第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器をさらに備える。少なくとも1つの光導波路、第1の光共振器、および第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成される。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器をさらに備える。少なくとも1つの光導波路は、少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有する光を受信するように構成される。少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する光の少なくとも一部を少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される。本方法は、0.75より大きく1.35未満の範囲内の除外点(exceptional point)の共振器間結合率κEPに対する共振器間結合率κの比κ/κEPでジャイロスコープを動作させることをさらに含む。
【0008】
特定の実施形態では、ジャイロスコープは、第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路を備え、第2の部分は第1の部分と第3の部分との間にある。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源をさらに備える。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第2の部分と光学的に連通する第1の光共振器をさらに備える。第1の光共振器は、少なくとも1つの光導波路の第2の部分との入力パワー結合率κinを有する。ジャイロスコープは、共振器間パワー結合率κを有する第1の光共振器と光学的に連通する第2の光共振器を備える。第1の光共振器および第2の光共振器の一方は、0より大きいパワー損失率Lを有し、第1の光共振器および第2の光共振器の他方は、0より大きいパワー利得率Gを有する。少なくとも1つの光導波路、第1の光共振器、および第2の光共振器は、レージング閾値を下回るように構成される。ジャイロスコープは、少なくとも1つの光導波路の第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器をさらに備える。少なくとも1つの光導波路は、少なくとも1つの光源から、周波数ωの入力パワーPinを有する光を受信するように構成される。少なくとも1つの光導波路は、出力パワーPoutを有する光の少なくとも一部を少なくとも1つの光検出器に伝送するようにさらに構成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本明細書に記載の特定の実施形態による例示的な利得結合共振器ジャイロスコープを概略的に示す。
図1B】本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器が損失リング共振器を備え、第2の光共振器が利得リング共振器を備える、展開(unfolded)構成を有する例示的な利得結合リング共振器ジャイロスコープを概略的に示す。
図1C】本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器が利得リング共振器を備え、第2の光共振器が損失リング共振器を備える、展開構成を有する例示的な利得結合共振器ジャイロスコープを概略的に示す。
図1D】本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器が利得リング共振器を備え、第2の光共振器が損失リング共振器を備える、折り畳み(folded)構成を有する例示的な利得結合共振器ジャイロスコープを概略的に示す。
図2A】本明細書に記載の特定の実施形態による、様々な回転速度の除外点における透過スペクトルをプロットしている。
図2B】本明細書に記載の特定の実施形態による利得リングにおける循環パワーをプロットしている。
図3】本明細書に記載の特定の実施形態による除外点における回転感度を、図2Aで使用したものと同じパラメータ値の透過スペクトルと共にプロットしている。
図4】本明細書に記載の特定の実施形態による、第2のリング共振器内の利得Gの関数としての、除外点における回転感度増強係数および第2のリング共振器内を循環するパワーPをプロットしている。
図5】本明細書に記載の特定の実施形態による、G*の上下の、第2のリング共振器内の利得Gの関数としての最適化された回転感度増強係数および第2のリング共振器内を循環するパワーPをプロットしている。
図6】本明細書に記載の特定の実施形態による、0.1dBの固定された不飽和利得Gに対する正規化されたリング間結合率κ/κEPの関数としての回転感度増強係数および第2のリング共振器内を循環するパワーPをプロットしている。
図7】本明細書に記載の特定の実施形態による、正規化されたリング間結合率κ/κEPのいくつかの値について、0からG*までの利得Gの関数としての回転感度増強係数をプロットしている。
図8】本明細書に記載の特定の実施形態による、κ/κEP=0.99の比に対するG*の上下の、第2のリング共振器内の利得Gの関数としての最適化された回転感度増強係数および第2のリング共振器内を循環するパワーPをプロットしている。
図9】本明細書に記載の特定の実施形態による、κ/κEP=1.11の比に対するG*の上下の、第2のリング共振器内の利得Gの関数としての最適化された回転感度増強係数および第2のリング共振器内を循環するパワーPをプロットしている。
図10】本明細書に記載の特定の実施形態による、正規化されたリング間結合率κ/κEPのいくつかの値について、0からG*までの利得Gの関数としての回転感度増強係数をプロットしている。
図11】本明細書に記載の特定の実施形態による、EPにおける透過スペクトルの回転誘起変化を示す。
図12図1Cおよび図1DのPT対称結合リングジャイロスコープの折り畳み構成および展開構成の数値最適化を示す。
図13】他のすべてのパラメータを固定したκ/κEPに対する、展開構成におけるジャイロスコープの回転感度の改善をプロットしている。
図14】他のすべてのパラメータを固定したκ/κEPに対する、折り畳み構成におけるジャイロスコープの回転感度の改善をプロットしている。
図15図1Cの展開構成におけるジャイロスコープの出力パワーにおける経時的なシミュレートされた不安定性を示す。
図16】静止している2つのリング共振器の共振周波数ωに対するレーザ周波数の離調ω-ωに対する、展開構成のジャイロスコープの単一リングジャイロスコープに対するdT/dΩの増強をプロットしている。
図17】損失リングのラウンドトリップ損失(十字で示す)およびこの感度を達成するための利得(丸で示す)に対する、展開構成のジャイロスコープのEPにおける最適化された回転感度をプロットしている。
図18】各点における損失および正味損失(円で示す)に対する、展開構成のジャイロスコープの除外点における絶対感度(十字で示す)をプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
パリティ時間(PT)対称性を有する結合光共振器は、外部摂動に対して非常に敏感になる除外点を示し(例えば、Renらによる「Ultrasensitive micro-scale parity-time-symmetric ring laser gyroscope」、Opt.Lett.Vol.42、No.8、1556-1559ページ(2017年4月15日)(「Ren」)を参照)、したがって、センサ、特に高感度ジャイロスコープとしての研究において関心を集めている。1つの特定の物理的実施形態では、PT対称性は、各々が同一の共振周波数を有する2つのリング共振器を互いに結合し、一方のリングが他方のリングの損失に等しい利得を示すように一方のリングをポンピングすることによって達成される(例えば、B.Pengらによる「Parity-time-symmetric wispering-gallery microcavities」、Nat.Phys.、vol.10、no.5、394-398ページ、2014年(「Peng」)を参照)。
【0011】
以前の研究では、除外点(EP)で動作するそのような光学ジャイロスコープが、ほとんどのセンサがそうであるように、Ωとは対照的に、√Ωに比例して光学ジャイロスコープの共振周波数をシフトさせることによって、Ωの大きさの回転に応答することが提案されている。Ωが小さい場合、√ΩはΩよりもはるかに大きく、したがって、この√Ω応答は、サニャック周波数シフトの著しい向上をもたらすことができる。シミュレーションは、レーザとして動作するそのようなデバイスにおけるサニャック効果による回転誘起共振周波数シフトが、等価な非結合単一リングジャイロスコープのそれよりも10倍大きくなり得ることを予測している(例えば、Renを参照)。共振光学ジャイロスコープに対して100倍を超えるサニャック周波数シフトの向上は、その屈折率に周期的変調を有するリング共振器を備える全受動EPジャイロスコープで以前に予測されている(S.Sunadaによる「Large Sagnac frequency splitting in a ring resonator operating at an exceptional point、Phys.Rev.A、vol.96、no.3、2017年を参照)。EP感知の予備実験は、温度感度(例えば、共振周波数の温度誘起シフトとして定義される)がそれぞれ13倍および23倍向上した2次および3次EPを達成した(H.Hodaeiらによる「Enhanced sensitivity at higher-order exceptional points」、Nature、vol.548、no.7666、187-191ページ、2017年を参照)。さらに、2つの戦略的に配置された散乱体を有する損失補償リング共振器を構築し、EPで動作させて、粒子近接に対する感度の2倍の向上を実証した(W.Chenらによる「Exceptional points enhancessensing in an optical microcavity」、Nature、vol.548、192-196ページ、2017年を参照)。
【0012】
しかしながら、本明細書でより完全に説明されるように、そのようなシステムに関する以前の研究でなされた提案は、それらの物理的な仮定および特徴付けにおいていくつかの欠点を抱えている。第一に、回転に対する感度は、共振周波数のシフトとして定義されていたが、これは不完全な定義であり、実際の感度に影響を及ぼす他のパラメータ、すなわち、この周波数シフト以外の他のパラメータに対するジャイロスコープの出力の依存性(例えば、検出されたパワーの変化)を含まないため、センサの精度と直接相関しない可能性がある。例えば、感度はこの共振周波数シフトに依存するが、他の共振ジャイロスコープ(例えば、RFOG)でそうであるように、共振の線幅、ならびにデバイスがレージング閾値未満で動作する場合でも、利得飽和および増幅自然放出(ASE)などの他の要因にも依存し得る。さらに、本明細書でより完全に説明するように、共振ピークの形状は、このPT対称構造の回転下でも変化する可能性があり、形状のこの変化による寄与は、少なくともいくつかの場合で非常に重要であり得る。第二に、受動結合共振器の場合と同様に、このPT対称構造の回転感度は、周波数および線形のこれらの組み合わされた回転誘起変化を測定するために使用される読み出し技術(例えば、伝送の変化が実際にどのように測定されるか)にも依存する。例えば、共振光学ジャイロスコープは、検出されたパワーの変化を測定することによって間接的に共振周波数のシフトを測定するだけである(例えば、M.Terrelらによる「Performance comparison of slow-light coupled-resonator optical gyroscopes」、Laser Photonics Rev.、vol.3、no.5、452-465ページ、2009年、M.J.GrantおよびM.J.F.Digonnetによる「Double-Ring Resonator Optica lGyroscopes」、J.Light.Technol、vol.36、no.13、2708-2715ページ、2018年、K.Zamani AghaieおよびM.J.F.Digonnetによる「Effect of periodic modulation of the coupling ratio on the sensitivity of a CROW gyroscope」、J.Opt.Soc.Am.B、vol.32、no.6、1120-1124ページ、2015年、K.Zamani AghaieおよびM.J.F.Digonnetによる「Sensitivity limit of a coupled-resonator optical waveguide gyroscope with separate input/output coupling」、J.Opt.Soc.Am.B、vol.32、no.2、339-344ページ、2015年を参照)。いくつかの高速光レーザジャイロは、回転によって誘起されるレーザ発振線の広がりによって、その共振シフト増強がほぼ完全に相殺される(M.S.Shahriarらによる「Ultra high enhancement in absolute and relative rotation sensing using fast and slow light」、Phys.Rev.A、vol.75、no.5、053807ページ、2007年を参照)。第三に、PT対称構造が除外点またはその付近で動作するときの回転誘起周波数シフトは、構造の設計パラメータのいずれか、特に入力結合器および共振器対共振器結合器の結合比の小さな変動に非常に敏感であり、Renによって提案されたようなデバイスを実際に使用することを非常に困難にする。
【0013】
本明細書に記載の特定の実施形態は、有利には、それを可能にする感知機構または読み出し方式を備えた小型の高感度ジャイロスコープを提供する。
【0014】
図1Aは、本明細書に記載の特定の実施形態による例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10を概略的に示す。ジャイロスコープ10は、第1の部分、第2の部分、および第3の部分を備える少なくとも1つの光導波路20(例えば、光ファイバ)を備え、第2の部分は第1の部分と第3の部分との間にある。ジャイロスコープ10は、少なくとも1つの光導波路20の第1の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光源30(例えば、プローブレーザ、プローブ光の光源)と、少なくとも1つの光導波路20の第3の部分と光学的に連通する少なくとも1つの光検出器40とをさらに備える。少なくとも1つの光導波路20は、少なくとも1つの光源30から、入力パワーPinを有する光32(例えば、光信号、プローブ光)を周波数ωで受光し、出力パワーPoutを有する光の少なくとも一部42を少なくとも1つの光検出器40に伝送するよう構成される。少なくとも1つの光検出器40は、ジャイロスコープ10に加えられた回転によって生じる出力パワーPoutの変化を測定するように構成される。
【0015】
ジャイロスコープ10は、少なくとも1つの光導波路20の第2の部分と光学的に連通する、第1の共振周波数ωを有する第1の光共振器50をさらに備える。第1の光共振器50は、少なくとも1つの光導波路20の第2の部分との入力パワー結合率κinを有する。例えば、特定の実施形態では、第1の光共振器50は、半径Rおよび第1のリング共振器54の導波路モードの実効屈折率neffを有する第1のリング共振器54を備え、第1のリング共振器54は、入力パワー結合率κin=2πReffin/cであり、ここでcは真空中の光の速度であるように、パワー結合比Kinを有する入出力2×2方向性結合器70によって少なくとも1つの光導波路20の第2の部分に光学的に結合される。ジャイロスコープ10は、第1の光共振器50と光学的に連通する、第2の共振周波数ωを有する第2の光共振器60をさらに備える。第2の光共振器60は、第1の光共振器50との共振器間パワー結合率κを有する。例えば、特定の実施形態では、第2の光共振器60は、半径R(例えば、Rに等しい)および第2のリング共振器64の導波路モードの実効屈折率neffを有する第2のリング共振器64を備え、第2のリング共振器64は、共振器間パワー結合率κ=2πReffK/cであり、cは真空中の光の速度であるように、パワー結合比Kを有する入出力2×2方向性結合器80によって第1のリング共振器54に光学的に結合される。
【0016】
特定の実施形態では、第1の光共振器50および第2の光共振器60の一方は、0より大きいパワー損失率L(例えば、光共振器の周囲を伝播する光の光パワー損失率)を有し、第1の光共振器50および第2の光共振器60の他方は、0より大きいパワー利得率G(例えば、光共振器の周囲を伝播する光の光パワー利得率)を有する。特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、0より大きいパワー利得率Gを有する第1の光共振器50および第2の光共振器60の一方と動作可能に連通する少なくとも1つの励起源(図1A図1Dには示さず)を備える。例えば、少なくとも1つの励起源は、光励起信号(例えば、ポンプ光)を提供するように構成された光源(例えば、レーザ、ポンプレーザ)および/または電気励起信号(例えば、ポンプ電流)を提供するように構成された電流源(例えば、パワー供給)を備えることができ、光励起信号および/または電気励起信号は、光共振器がパワー利得率Gを示すように光共振器の利得媒体と相互作用する。
【0017】
特定の実施形態では、少なくとも1つの光導波路20、第1の光共振器50、および第2の光共振器60は、レージング閾値を下回るように構成される。例えば、レージング閾値は、プローブ光32の不在下で、励起信号(例えば、光励起信号、電気励起信号)の強度の関数としての出力パワーPoutが勾配の変化を示すジャイロスコープ10のパラメータの値(例えば、利得G、損失L、ならびに結合率κおよびκin)に対応する。特定の実施形態の少なくとも1つの光導波路20、第1の光共振器50、および第2の光共振器60がレージング閾値を下回るとき、出力パワーPoutは、利得媒体からの少量の自然放出のみに制限される(例えば、誘導放出光が実質的に生成されない)。対照的に、出力パワーPoutが大量の誘導放出を含む(例えば、誘導放出光は自然放出光よりも大きい)ように、ジャイロスコープがレージング閾値を超えて動作する他のジャイロスコープが開示されている(例えば、Renを参照)。
【0018】
例えば、特定の実施形態(例えば、図1Bを参照)では、第1の光共振器50は、0より大きいパワー損失率L(例えば、第1の光共振器50の周囲を伝播する光52の光パワー損失率)を有し、第2の光共振器60は、0より大きいパワー利得率G(例えば、第2の光共振器60の周囲を伝播する光62の光パワー利得率)を有する。別の例として、特定の他の実施形態(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)では、第1の光共振器50は、0より大きいパワー利得率G(例えば、第1の光共振器50の周囲を伝播する光52の光パワー利得率)を有し、第2の光共振器60は、0より大きいパワー損失率L(例えば、第2の光共振器60の周囲を伝播する光62の光パワー損失率)を有する。特定の実施形態では、損失率Lは、対応する光共振器におけるすべての損失(例えば、導波路吸収、散乱、曲げ損失、結合器損失など)を説明するが、光共振器(例えば、入出力2×2方向性結合器70または共振器間2×2方向性結合器80)から意図的に取り出された光の一部を含まない。すべての損失Lを導波路吸収または散乱としてモデル化すると、L=cα/neffであり、ここでαは光共振器の導波路のパワー損失係数であり、単位はm-1である。同様に、特定の実施形態では、利得率Gは、対応する光共振器内の光が受ける正味利得を説明する。例えば、Gは、利得機構によって光共振器に供給されるパワー利得率(例えば、シリカなどのホスト材料にドープされた三価エルビウムの誘導放出)から光共振器のすべての固有導波路損失(例えば、導波路吸収、散乱、曲げ損失、結合器損失など)を引いたものである。利得Gを、光共振器の導波路を伝播するにつれて指数関数的に増大する光としてモデル化すると、G=cα/neffであり、ここでαは導波路のパワー利得係数であり、単位はm-1である。出力パワーPoutは、第1の光共振器50の第1の共振周波数ωにおける回転誘導シフトおよび第2の光共振器60の第2の共振周波数ωにおける回転誘導シフトによるジャイロスコープ10の回転を示し、それによって第1および第2の光共振器50、60の各々におけるエネルギー量が変化する。
【0019】
図1Bは、本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器50が損失率Lを有する損失リング共振器54を備え、第2の光共振器60が利得率Gを有する利得リング共振器64を備える、展開構成を有する例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10を概略的に示す。図1Cは、本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器50が利得率Gを有する利得リング共振器54を備え、第2の光共振器60が損失率Lを有する損失リング共振器64を備える、展開構成を有する例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10を概略的に示す。図1Dは、本明細書に記載の特定の実施形態による、第1の光共振器50が利得率Gを有する利得リング共振器54を備え、第2の光共振器60が損失率Lを有する損失リング共振器64を備える、折り畳み構成を有する例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10を概略的に示す。特定の実施形態では、第2のリング共振器64は、第1のリング共振器54の下に折り畳まれ(例えば、図1Dに破線で概略的に示すように)、特定の他の実施形態では、第2のリング共振器64は、第1のリング共振器54の上に折り畳まれる。図1Dの折り畳み構成ではPT対称性はもはや存在しないが、この構成は依然として除外点を有する。少なくとも1つの光検出器40は、ジャイロスコープ10に加えられる回転(例えば、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の平面に実質的に垂直な軸を中心とした回転)によって生じる出力パワーPoutの変化を測定するように構成される。
【0020】
特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、共振器間結合率κが除外点の共振器間パワー結合率κEPに等しくないように構成される。第1の光共振器50が損失共振器であり、第2の光共振器60が利得共振器である特定のそのような実施形態(例えば、図1Bを参照)では、除外点の共振器間パワー結合率κEPは、(L+κin+G)/2に等しい。第1の光共振器50が利得共振器であり、第2の光共振器60が損失共振器である特定のそのような実施形態(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)では、除外点の共振器間パワー結合率κEPは、|L-κin+G|/2に等しい。κEPに関するこれら2つの表現におけるκinの符号は、入出力結合器70の存在が第1の光共振器50に損失機構を付加するため、反対である。したがって、ジャイロスコープ10に入射する光32が最初に損失リングに遭遇すると、図1Bのように、入出力結合器70は、第1の光共振器50の共振器損失を増加させる。逆に、ジャイロスコープ10に入射する光32が最初に利得リングに遭遇すると、図1Cおよび図1Dに示すように、入出力結合器70は、第1の光共振器50の共振器利得を減少させる。
【0021】
特定の実施形態では、除外点の共振器間結合率κEPに対する共振器間結合率κの比κ/κEPは、0.75から1.35の範囲内である。特定の実施形態では、比κ/κEPは0.99未満(例えば、0.75から0.95の範囲、0.80から0.90の範囲、0.80から0.95の範囲、または0.80から0.97の範囲)であるが、特定の他の実施形態では、比κ/κEPは1.01より大きい(例えば、1.05から1.35の範囲、1.08から1.25の範囲、1.08から1.22の範囲、または1.09から1.22の範囲)。例えば、比κ/κEPの値が小さいほど、損失共振器内のラウンドトリップあたり0.5dBの損失に対してさらに大きな回転感度をもたらすことができる。特定の実施形態の結合された第1および第2の光共振器50、60の回転誘起シフトは、加えられた回転の大きさ(例えば、√Ω)の平方根に比例する。この回転誘起シフトは、加えられた回転の大きさΩに比例する単一リング共振器の回転誘起シフトとは異なる。したがって、加えられた回転の大きさΩの単位あたりの共振周波数シフト率は、加えられた回転の大きさ(例えば、1/√Ω)の平方根の逆数に比例し、加えられた回転の大きさΩが極小の限界で無限大となる。Renは、ジャイロスコープがEPで動作するときにのみそのような大きな共振周波数シフトが達成可能であり、ジャイロスコープがEPから離れて動作する場合に回転感度が実質的に低下することを以前に示していた。そのような前述の教示に反して、本明細書に記載の特定の実施形態は、EPで動作するときよりもEPから離れて動作するときの方が高い感度を達成するジャイロスコープを開示する。
【0022】
一方、図1B図1Dの例示的なジャイロスコープ10の2つの光共振器50、60は、2つのリング共振器54、64、およびジャイロスコープ10の様々な特性は、2つのリング共振器54、64を備える特定の実施形態に関して本明細書で説明され、特定の他の実施形態では、リング共振器54、64の一方または両方は、他のタイプの光共振器またはキャビティ(例えば、ディスク、トロイド、球体など)で置き換えることができる。特定の実施形態では、第1の共振周波数ωおよび第2の共振周波数ωは、互いに実質的に等しい(ω=ω=ω)。第1のリング共振器54および第2のリング共振器64がそれぞれ実質的に円形である特定のそのような実施形態では、第1のリング共振器54の半径Rは、第2のリング共振器64の半径Rに実質的に等しい。特定の実施形態では、光源30は、角周波数ω、波長λ、および入力パワーPin=|αinを有する光信号32を生成するように構成されたレーザを含む。特定の実施形態では、結合された第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の共振周波数は、第1の共振周波数ωおよび第2の共振周波数ωとは異なる。特定の実施形態では、周波数ωは、第1の共振周波数ωおよび/または第2の共振周波数ωの±20%以内(例えば、±10%以内、±5%以内)である。
【0023】
それぞれ展開構成を有する図1Bおよび図1Cの例示的なジャイロスコープ10に示されるように、光52(例えば、光信号)は、第1のリング共振器54内を時計回りに循環し、この光(例えば、光62)の一部は、第2のリング共振器64に結合され、第2のリング共振器64内を反時計回りに循環し、光の一部は、第1のリング共振器54に結合されて戻る。これらの展開構成では、光は、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64内を反対方向に循環する。図1Bおよび図1Cに示すように、展開構成を有する特定の実施形態では、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の各々は実質的に平面であり、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64は実質的に同一平面上にあるか、または互いに実質的に平行であり、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64によって境界付けられる領域は実質的に互いに重ならない。
【0024】
折り畳み構成を有する図1Dの例示的なジャイロスコープ10では、光52(例えば、光信号)は、第1のリング共振器54内を時計回りに循環し、この光(例えば、光62)の一部は、第2のリング共振器64に結合され、第2のリング共振器64内を時計回りに循環し、光の一部は、第1のリング共振器54に結合されて戻る。この折り畳み構成では、光は、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64内を同じ方向に循環する。図1Dに示すように、折り畳み構成を有する特定の実施形態では、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の各々は実質的に平面であり、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64は互いに実質的に平行であり、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64によって境界付けられる領域は実質的に互いに重なり合う。例えば、展開構成の第2のリング共振器64は、光が第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の両方において同じ方向に循環するように、折り畳み構成を形成するために180度反転されることができる。
【0025】
出力パワーPout=|αoutは、少なくとも1つの光導波路20(例えば、結合比Kinを有する入出力2×2結合器70の出力ポートにおいて)で集められ、検出器40に伝送される。図1Bの例示的なジャイロスコープ10の場合、入出力結合器70および共振器間結合器80の結合率を含む第1のリング共振器54の総損失率はL+κin+κであり、共振器間結合器80の結合率を含む第2のリング共振器54の利得率はG-κである。図1Cの例示的なジャイロスコープ10の場合、入出力結合器70と共振器間結合器80との結合率を含む第1のリング共振器54の正味の利得率(例えば、利得率)はG-κin-κであり、第2のリング共振器の正味の損失率(例えば、損失率)は、L+κである。パラメータL、G、κinおよびκは、単位時間当たりのエネルギー損失、エネルギー利得またはエネルギー伝達の率に対応するので、単位はs-1である。
【0026】
特定の実施形態では、レーザ30は、1.5μm以上の範囲または1μm以上の範囲で動作するファイバレーザまたは半導体レーザである。特定の実施形態では、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の各々は導波路(例えば、シリカ系材料を含む光ファイバ、窒化ケイ素技術で製造された導波路、他の半導体材料を含む導波路)を備え、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の利得リング共振器は、Er3+(例えば、約1.5μmの利得を提供するために)またはNd3+(例えば、約1.08μmの利得を提供するために)などのイオンでドープすることができる。
【0027】
特定の実施形態では、例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10は、レージング閾値未満の共振器として動作する。特定の実施形態の例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10のそのような動作は、レージング閾値を超えて動作し、かつリング共振器内から光信号を生成する、Renによって開示されたジャイロスコープとは対照的である。特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、検出されたパワーの回転誘起変化を測定することによって感度を適切に測定および定量化するように構成された読み出し方式を使用する。特定の実施形態では、外部信号32がジャイロスコープ10に導入されてサニャック位相シフトを探査し、この信号が第1の共振器54および第2のリング共振器64(例えば、図1Cの第1のリング共振器54、図1Bの第2のリング共振器64)の利得リング共振器内を多数回再循環するので、利得リング共振器内の利得は強い再循環信号によって低減され得る(例えば、利得飽和によって)。利得飽和が存在する場合の図1A図1Dの例示的なジャイロスコープ10のモデル化はかなり複雑なので、システムパラメータおよび入力パワーは、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の利得リング共振器内を循環するパワーが利得媒体の飽和パワーよりもはるかに小さくなり得るように選択することができる。特定のそのような実施形態では、利得は、循環パワーから本質的に独立したままであり、これにより、この例示的なジャイロスコープ10の数学的解析が大幅に単純化される。
【0028】
特定の実施形態では、本明細書でより完全に説明するように、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の利得リング共振器における利得率は、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の損失リング共振器における損失率よりも小さい。特定の実施形態では、感度は、除外点で最大ではないが、ジャイロスコープ10が除外点から、除外点を生成する結合よりも強いリング間結合に向かって離調されるとき、感度は最大である。特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の損失リング共振器と同じリング半径および同じラウンドトリップ損失を有する単一リングジャイロスコープ(RFOG)の感度よりも著しく強い感度を示す。例えば、(例えば、ファイバ増幅器で典型的である)2mWの妥当な飽和パワーを仮定すると、同じリング半径およびラウンドトリップ損失を有する等価な単一リングジャイロスコープにわたる回転感度増強は、約250倍よりも大きくなり得る。
【0029】
このジャイロスコープ10の回転に対する感度は、|αが第1のリング共振器54に蓄積された総エネルギーであり、|αが第2のリング共振器64に蓄積された総エネルギーであるように、共振場が複素エネルギー振幅αおよびαによって特徴付けられる一時的結合モード理論(例えば、J.J.D.Joannopoulosらによる「Photonic crystals:molding the flow of light、2008年の第10章に記載)を使用してモデル化することができる。この形式は、ジャイロスコープ10の光共振器50、60またはキャビティのタイプ(例えば、ディスク、トロイド、球体、リングなど)とは無関係である。
【0030】
一般に、光デバイスは、その複素屈折率プロファイルがn(x、y、z)=n(-x、-y、-z)*を満たすとき、PT対称であると言われ、ここでx、y、およびzは、デバイスの主軸である(R.El-Ganainyらによる「Theory of coupled optical PT-symmetric structures」、Opt.Lett.、vol.32、no.17、2632ページ、2007年)。すなわち、屈折率の実部は偶数(P対称)であり、虚部は奇数(T対称)である(Pengを参照)。図1Aの利得結合共振器ジャイロスコープ10の場合、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の両方に同じ共振周波数(ω=ω=ω)を与えることによってP対称性が課され、第2のリング共振器64における利得率を、G=L+κinとなるように、入出力結合器70からの損失を含む第1のリング共振器54における損失率に等しく設定することによってT対称性が課される。図1Cの利得結合共振器ジャイロスコープ10の場合、第2のリング共振器64における損失率を、L=G-κinとなるように、第1のリング共振器54における利得率から入出力結合器70の入力結合率を引いたものに等しく設定することによってT対称性が課される。本明細書でより完全に説明するように、特定の実施形態では、回転に対する感度を高める目的で、利得結合共振器ジャイロスコープ10の正確なPT対称性の条件を緩和することができる。
【0031】
除外点
プローブレーザ30が最初に損失共振器に結合される図1Bの利得結合共振器ジャイロスコープ10の場合、蓄積されたエネルギー振幅の結合モードの式は以下のようにある(Renを参照)。
【0032】
【数1】
【0033】
ここでx(t)およびx(t)は、それぞれ損失リング共振器54および利得リング共振器64における平均共振場であり、|x(t)|および|x(t)|は、時間tにおいて対応するリング共振器に蓄積された総エネルギーである。プローブレーザが最初に損失共振器に結合される図1Cおよび1Dの利得結合共振器ジャイロスコープ10の場合、蓄積されたエネルギー振幅の結合モードの式は以下のようにある(Renを参照)。
【0034】
【数2】
【0035】
ここでy(t)およびy(t)は、それぞれ利得リング共振器50および損失リング共振器60における平均共振場であり、|y(t)|および|y(t)|は、対応するリング共振器に蓄積された総エネルギーである。特定の実施形態では、αin=exp(-iωt)√Pinであり、ここで、Pinは、ジャイロスコープ10に入射する光32のパワー(例えば、ジャイロスコープ10に入力される光32のパワー)であり、ωは、光32の角周波数である。
【0036】
従来の単一リングジャイロスコープを回転させると、リングの共振周波数がωからω+εにシフトし、ここでε=ωRΩ/cneffはサニャック周波数シフトであり、Ωは回転速度であり、Rはリングの半径である(H.C.Lefevreによる「The Fiber Optic Gyroscope」、第2版、Artech House、2014年の第2.2.2節を参照)。特定の実施形態では、折り畳まれていないリング(例えば、図1Bおよび図1Cを参照)を有する利得結合共振器ジャイロスコープ10に加えられる回転は、第1のリング共振器54の周波数をω=ωからω+εにシフトさせ、第2のリング共振器64の周波数をω=ωからω-εにシフトさせる。ωおよびωにおける周波数シフトは、光が第1のリング共振器54および第2のリング共振器64において反対方向に伝播しているため、互いに反対の符号を有し、したがって、サニャック位相シフトは反対の符号を有する。特定の実施形態では、折り畳みリング(例えば、図1Dを参照)を有する利得結合共振器ジャイロスコープ10に適用される回転において、シフトは互いに等しい。具体的には、第1のリング共振器54の周波数はω=ωからω+εにシフトし、第2のリング共振器64の周波数はω=ωからω+εにシフトする。これら2つのシフトの大きさは等しい。第1のリング共振器54および第2のリング共振器64内の光は互いに同じ方向に循環するので、これら2つのシフトも同じ符号を有する。
【0037】
特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、非常に大きくなる可能性があり、かつ飽和パワーを超える可能性がある、利得リング共振器内を循環する信号パワーに起因する利得枯渇を考慮するようにモデル化することができる(例えば、利得が損失程度である場合、M.J.GrantおよびM.J.F.Digonnetによる「Loss-gain coupled ring resonator gyroscope」、Opt.Opto-Atomic、Entanglement-Enhanced Precis.Metrol.、vol.10934、2019年3月参照)。利得機構がシリカなどのホスト材料にドープされた三価エルビウムの誘導放出であると仮定すると、利得枯渇の存在下では、利得率は一定ではなく、G=G/(1+P/Psat)に従って信号パワーに依存し、ここでGは小信号利得率であり、Pは利得リング共振器内を循環する平均パワーであり、Psatは増幅器の飽和パワーである。第1の光共振器50が損失を有し、第2の光共振器60が利得を有する場合(図1Bと同様に)、Pは、第2の光共振器60を循環するパワーによって与えられ、|x(t)|c/(neff2πR)に等しい。第1の光共振器50が利得を有し、第2の光共振器60が損失を有する場合(図1Cおよび1Dと同様に)、Pは、第1の光共振器50を循環するパワーによって与えられ、|y(t)|c/(neff2πR)に等しい。飽和パワーPsatは、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)に典型的な値である2mWに等しくすることができる。利得共振器内の循環パワーPが常に利得媒体の飽和パワーPsatよりもはるかに小さいままである特定の実施形態では、利得率Gは常に一定であり、式(1a)および(1b)は、いずれも明確な解析解決策を有する線形動的システムである。
【0038】
ジャイロスコープ10に回転が加えられておらず、ω=ω=ωである場合、固有周波数(例えば、結合された第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の共振周波数)は以下のようになる。
【0039】
【数3】
【0040】
光が最初に損失共振器に到達すると、式(1a)の固有周波数に関連付けられた固有ベクトルは、以下のようになる。
【0041】
【数4】
【0042】
光が最初に利得共振器に到達すると、式(1b)の固有周波数に関連付けられた固有ベクトルは、以下のようになる。
【0043】
【数5】
【0044】
ここで、κEPは除外点で動作するのに必要なκの値である。第1の光共振器50が損失を有する場合(例えば、図1Bを参照)、κEPは以下によって与えられる。
【0045】
【数6】
【0046】
第1の光共振器50が利得を有する場合(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)、κEPは以下によって与えられる。
【0047】
【数7】
【0048】
固有周波数は、光学システムの共振周波数の一般化である。固有周波数の実部は光共振周波数であり、虚部の負は共振の線幅である。
【0049】
κ=κEP点は除外点であり、これは、この条件下では、エネルギー振幅固有ベクトルxおよびxが(yおよびyと同様に)正確に平行になるためであり、xおよびx(または、利得共振器および損失共振器の順序が逆である場合はyおよびy)の2次元状態空間によって記述される系についてはただ1つの固有ベクトルしかない。したがって、κのこの値では、固有空間は次元性を失い、その次元は2から1に減少し、したがって不足し、これは除外点を定義する。除外点は、PT対称結合リングの固有ベクトルのそのような「合体」によって同等に定義されている(C.E.Ruterらによる「Observation of parity-time symmetry in optics」、Nat.Phys.、vol.6、no.3、192-195ページ、2010年)。しかしながら、PT対称性は、この除外点の存在に必要とされない(Ruter参照)。
【0050】
感知のために除外点を使用する背後にある動機は、例えばジャイロスコープ10を回転させることによってジャイロスコープ10に外部摂動を加えると容易に分かる。単一リングキャビティの場合、リングの平面に垂直な軸の周りの小さな回転速度Ωは、リングの共振角周波数を以下によってシフトさせる。
【0051】
【数8】
【0052】
ここでRはリングの半径、neffはリングの光学モードの有効指数、ωはプローブレーザの角周波数である(H.C.Lefevreによる「The Fiber Optic Gyroscope、第2版、Artech House、2014年の第2.2.2節を参照)。
【0053】
利得結合共振器ジャイロスコープ10が除外点(EP)で動作する特定の実施形態では、回転(例えば、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の平面に実質的に垂直な軸の周り)は、結合された第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の固有周波数を分割させる。この周波数分割は、式(1a)および(1b)によって与えられる結合方程式系の複素固有周波数を解くことによって計算することができる。固有周波数は以下のようになる(Renを参照)。
【0054】
【数9】
【0055】
εにおける最低次に対する図1Dの例示的な折り畳みジャイロスコープ10の除外点では、式(1b)の固有周波数は以下のようになる(Renを参照)。
【0056】
【数10】
【0057】
したがって、ジャイロスコープ10の展開構成における除外点(例えば、図1A図1Cを参照)における固有周波数の回転誘起シフトは、式(6a)と式(2)との差となる。
【0058】
【数11】
【0059】
式(7)の実数部は共振周波数の回転誘起シフトであり、虚数部は線幅の回転誘起変化である。Renにおいて指摘されているように、周波数シフトは回転速度に対する平方根依存性に追従し、これは、非常に小さいサニャック位相シフト(例えば、πよりもはるかに小さい)の場合回転に対して線形応答を示すRFOGまたはFOGなどのほぼすべての他のタイプのジャイロスコープとは対照的である(M.Terrelらによる「Performance comparison of slow-light coupled-resonator optical gyroscopes」、Laser Photonics Rev.、vol.3、no.5、452-465ページ、2009年を参照)(「Terrel」)。回転速度が小さい場合、応答は比例してはるかに大きくなるため、平方根応答は非常に重要である。実際、極小回転速度の限界では、平方根応答は無限に大きくなる。
【0060】
ただし、式(7)は、回転を適用することが、共振周波数をシフトさせるのと同程度に共振線幅に影響を及ぼし、共振周波数のみがシフトするRFOGとは非常に異なることを実証している。したがって、本明細書に記載の特定の実施形態による展開された利得結合共振器ジャイロスコープ10(例えば、図1A図1Cを参照)の共振は、回転に応答してシフトし、広くなるか狭くなるかのいずれかであり、これは、特定の実施形態においてジャイロスコープ10を使用して高い回転感度を提供する方法に大きく影響する。
【0061】
回転感度
特定の実施形態では、利得結合共振器ジャイロスコープ10は、式(6a)または(6b)によって表されるように、共振周波数および線幅の回転誘起変化から生じる出力パワーPoutの回転誘起変化δPoutを測定することによって動作する。特定のそのような実施形態では、入力レーザ周波数は、本明細書でより完全に説明するように、回転に対する感度を最大にするように選択される。共振周波数および線幅の回転誘起変化により、このインタロゲーション周波数における送信が最大限変化し、これにより、検出された出力パワーが最大限変化する。ジャイロスコープ10の出力におけるこのパワー変化の測定値(例えば、図1A図1Dに示す検出器40による)は、ジャイロスコープ10に加えられる回転速度の尺度を与える。この方式をRFOGに適用すると、RFOGで日常的に使用されている変調バイアス方式と名目上同じ回転感度が得られる。
【0062】
特定の実施形態では、最小検出可能回転速度は、ジャイロスコープの検出におけるノイズパワーに等しいδPoutを引き起こす最小回転速度Ωであるように定義される。最小検出可能回転速度は、感度(Ω~0の限界におけるプローブレーザ周波数で評価されたdT/dΩとして定義され、Tはジャイロスコープ10の出力伝達である)がその様々な自由パラメータの最適化時にとることができる最大可能値によって決定することができる。共振器ベースの光ジャイロスコープアーキテクチャの性能のための非常に良好なメトリックは、この最大可能回転感度を、等しい面積および損失のRFOGによって達成されるものと比較することである(Terrelを参照)。
【0063】
この感度の定義に基づいて、光共振器ジャイロスコープの全回転感度は、次のようになる(Terrelを参照)。
【0064】
【数12】
【0065】
ここでPinは少なくとも1つの光源30からの入力パワーであり、Poutは出力パワーであり、d/dΩはジャイロスコープ10に適用される回転速度に対する導関数であり、T=Pout/Pinはジャイロスコープ10を通るパワー伝送である。式(8a)のdT/dΩをω=ωで評価して、この読み出しシステムの回転感度(すなわち、図1A図1Dのジャイロスコープの信号Poutの回転に対する感度)を与える。
【0066】
共振周波数のシフトを測定するほとんどのタイプの従来のジャイロスコープ(RFOGなど)について、式(8a)は、以下のように書き直すことができる。
【0067】
【数13】
【0068】
式(8b)の右辺の第1の因子は、レーザ周波数ωでの共振の勾配である。式(8b)の右辺の第2の因子は、共振周波数が単位適用回転速度当たりに受けるシフト量(小さい回転速度の限界)であり、これは部分回転感度|dωres/dΩ|と等価であり、ここでωresはジャイロスコープの共振周波数である。レーザジャイロスコープ(例えば、Renによって開示されているものなど)の場合、共振周波数のこのシフトは、外部の高精度波長計(例えば、干渉計)を使用して測定することができる。外部波長計が光周波数で非常に小さい周波数シフトを測定する能力は、ジャイロスコープの全回転感度を実際に制限するので、ジャイロスコープの回転感度は、読み出しシステムの外部波長計の感度性能と無関係に定義することができない。EPセンサに関するほとんどの出版物では、この問題は対処されておらず、センサの出力を分析し、周波数分割を正確に回復するために、不特定の、おそらく高精度の機器が使用されるという暗黙の仮定がなされている。さらに、全感度は周波数分割に比例すると仮定されることが多く、これは、さらに示されるように、必ずしもそうとは限らない。
【0069】
従来の受動共振ジャイロスコープの場合、共振周波数の同様のシフトは、レーザからジャイロスコープに光信号を発射することによって測定することができる。レーザ周波数ωは、送信が最も急な勾配を有する共振の縁部と一致するように、ジャイロスコープの共振の1つから離調されるように選択することができる。回転などの小さな摂動を測定するために、ジャイロスコープの共振周波数がシフトし、共振の急なエッジを探査するレーザ信号は、伝送における大きな変化を受け、その結果ジャイロスコープによって伝送され、検出器によって検出される出力パワーPoutの大きな変化をもたらす。この読み出し方式は、ジャイロスコープ自体が周波数シフトを読み取る波長計であり、共振が鋭いときに正確なため便利であるが、それは、共振の最大勾配が非常に急であり、この読み出しシステムの小さい周波数シフトを識別する能力が向上するためである。
【0070】
従来のジャイロスコープでは、回転感度を最大化することは、共振の最大勾配の周波数に等しくなるように周波数ωを選択することを含む。以下に示すように、この一般的な読み出し方式は、図1Cおよび図1Dの例示的な結合リングジャイロスコープ10にも適用可能である。
【0071】
EPで動作する展開構成の場合(例えば、図1Cを参照)、周波数シフトは√Ωに比例し、部分感度|dωres/dΩ|は無限大である。折り畳み構成(例えば、図1Dを参照)の場合、部分感度|dωres/dΩ|はωR/cneffに等しく、これは単一リングジャイロスコープの場合とまったく同じである。折り畳み構成がEPで操作されても、回転がEPから折り畳み構成を押し出すことがないため、周波数シフトの向上はもたらされない。回転は、折り畳み構成のEPにおいてPT対称性の自発的な破壊を引き起こさない。しかしながら、折り畳み構成は、本明細書で説明するように、(式(8a)で定義されるように)回転に対する回転感度の向上を依然として提供し、これは、図1Cおよび図1Dの例示的なジャイロスコープ10では、感度の向上が周波数シフトの増加の結果としてのみ生じるわけではないことを示唆している。したがって、折り畳み構成と展開構成とを比較することにより、どのアーキテクチャがより敏感であるかを知らせることに加えて、EPで動作するジャイロスコープの感度を高める機構についての洞察を提供することができる。
【0072】
利得飽和が存在する特定の実施形態では、追加の機構が、図1A図1Dの例示的な結合リング共振器ジャイロスコープ10の変化を引き起こすことができる。各リング共振器の共振周波数の回転によって誘発される変化は、利得リング内を循環するパワーPの変化を誘発する可能性があり、これは次に利得の飽和レベルを変化させ、利得、したがって循環パワーを変化させる。したがって、中程度の利得飽和であっても、利得は回転速度に非常に強く依存することがある。したがって、利得飽和は、特定の実施形態の例示的な結合リング共振器ジャイロスコープ10の出力が回転に応答し、別の構成要素がその回転感度に応答する別の機構を導入する。一般に、2つの固有周波数のΩに対するこの依存性は、回転に応じて利得リング内を循環するパワーがどの程度変化するかに依存し、これは数値的に解くことができる。
【0073】
損失率を有する第1のリング共振器を有する展開構成
以下のセクションでは、損失率(例えば、図1Bを参照)を有する第1のリング共振器54を有する展開構成の様々な態様の説明が提供される。
【0074】
利得結合共振器ジャイロスコープの透過スペクトル
パワー伝達は、以下のように定義することができる。
【0075】
【数14】
【0076】
この限界が存在する場合、入力が光周波数ωおよび一定パワーPinのレーザである場合、αin=exp(-iωt)√Pinである。
【0077】
式(9)は、(Gが一定であると仮定することができる場合)まず式(1a)のエネルギー振幅x(t)およびx(t)を時間領域においてラプラス変換の方法を使用して解き、次いで、|αout(t)/αin(t)|について解くために出力関係αout=αin+x√κin(Joannopoulos参照)を使用することによって、図1Bの例示的なジャイロスコープ10について評価することができる。tの限界は、式(9)のように無限大になり、次いで、定常状態での透過スペクトルを得るために取り込むことができる(限界が存在する場合)。式(1b)中のy(t)およびy(t)が出力関係αout=αin+y√κinの代わりに解かれる以外、まったく同じ手順を使用して、図1Cおよび図1Dの例示的なジャイロスコープ10の式(9)を評価することができる。
【0078】
ラプラス変換を用いた定数Gについての方程式(1a)および(1b)を解くと、入力パワーが一定であるとき、x(t)、x(t)、y(t)、y(t)、および|αout(t)/αin(t)|はすべて、式(2)の固有周波数のうちの1つが正の虚数部を有するときはいつでも無限遠に発散することを実証する。この発散の場合は、過渡発振モード(S.Assawawarraritらによる「Robust wireless power transfer using a nonlinear parity-time-symmetric circuit」、Nature、vol.546、no.7658、387-390ページ、2017年)に対応し、Gを一定にするアーチファクトであり、これは利得を不飽和にする(例えば、無限の飽和パワーを有する)ことと等価である。実際のシステムでは、レーザ発振の開始後(例えば、利得リング内の循環パワーが大きく増加した後)に利得が最終的に飽和し、定数Gを用いて式(1a)および(1b)によって予測されるものとは非常に異なるダイナミクスが生じる(例えば、エネルギー保存によって決定されるように、出力パワーは所与の入力に対して有限である)。他のモデリング方法は、そのような飽和条件下でジャイロスコープ10を分析するのに有用であり得るが、Pが利得飽和パワーPsatよりもはるかに低いままである場合、Gを一定としてラプラス変換を用いることで、式(1a)および(1b)を正確に解くことができる。特定の実施形態のジャイロスコープ10の動作は、Pが典型的な光増幅器(例えば、数mWであり、正確な値はジャイロスコープの定性的挙動に影響を及ぼさない)のPsatよりもはるかに小さいパラメータ空間の領域に限定される。P<<Psatを保証するために、式(2)によって与えられる両方の固有周波数が負の虚数部を有する場合、レーザ発振は差し止められる。例示的な利得結合リング共振器ジャイロスコープ10の損失共振器が最初にある場合(例えば、図1Bを参照)、レーザ発振しない条件は、以下のように単純化される。
【0079】
【数15】
【0080】
利得共振器が最初にある場合(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)、レーザ発振しない条件は、以下のように単純化される。
【0081】
【数16】
【0082】
式(10a)および(10b)によると、特定の実施形態では、利得率は、全損失率(光共振器から光をタップする入出力結合器80からの損失を含む)よりも小さく、共振器間結合κは、利得率と損失率(入出力結合器80によって光共振器から意図的にタップされた光の一部を含む)との幾何平均よりも大きい。任意の小さな利得Gに対して、システムがレーザ発振する共振器間結合κの値の範囲が存在する。式(10a)または式(10b)のいずれかが定常状態において満たされる場合、特定の実施形態の利得結合共振器ジャイロスコープ10のパワー伝送を、2つの方法のうちの一方によって導出することができる。第1の方法は、Pengの「補足資料」の項に記載されており、第2の方法は、標準化され系統的なラプラス変換を用いて線形結合常微分方程式を解くことを含む。損失共振器が最初にある場合(例えば、図1Bを参照)、伝送は以下のようになる。
【0083】
【数17】
【0084】
利得共振器が最初にある場合(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)、伝送は以下のようになる。
【0085】
【数18】
【0086】
ここでΔ=ω-ω-εおよびΔ=ω-ω±εであり、リング共振器54、64が展開されている場合(例えば、図1Bおよび図1C)にプラス符号が適用され、リング共振器54、64が折り畳まれている場合(例えば、図1D)にマイナス符号が適用される。ω=ω=ωの場合、Δ=ω-ωは周波数離調である(例えば、本明細書で説明するように、レーザ周波数は、回転感度を最大にするためにωになるように選択されない)。
【0087】
式(10a)が満たされない場合、特定の実施形態のジャイロスコープ10は、式(11a)のプロットが正当なスペクトルを与えると思われても、式(11a)に従って挙動しない。同様に、式(10b)が満たされない場合、特定の実施形態のジャイロスコープ10は式(11b)に従って挙動しない。さらに、すべてのωに対してP<<Psatである場合、Gは定数であり、式(11a)および(11b)をωに対して容易にプロットすることができる。したがって、飽和が実際に無視できるかどうかを確認するためにPの式を有することが有用であり得る。例えば、式(10a)または式(10b)中の等式条件(例えば、レージング閾値)が近づくにつれ、ジャイロスコープ10の実効正味損失がゼロに近づき、循環パワーPが増加する。PがPsatよりもはるかに小さいままであるためには、Pがシステムパラメータ(例えば、L、G、κinおよびκ)の関数としてどのように発展するかを追跡することが有用であり得る。
【0088】
定数G近似を行うことができる場合、入力αin=exp(-iωt)√Pinを有する式(1a)の定常状態の解は、以下のようになる。
【0089】
【数19】
【0090】
および
【0091】
【数20】
【0092】
各リング共振器54、64に蓄積されたエネルギーは、以下のようになる。
【0093】
【数21】
【0094】
および
【0095】
【数22】
【0096】
結合された共振器が、モードとして実質的に一次元の循環波を有するリング共振器であるとみなされ、ラウンドトリップ損失および利得の両方が小さい場合、各リング共振器54、64における循環パワーは、以下のように表すことができる。
【0097】
【数23】
【0098】
図2Aは、本明細書に記載の特定の実施形態による、静止時のEPにあるときの、および同じ結合共振器を様々な回転速度で回転させたときの、結合共振器の透過スペクトルをプロットしている。図2Bは、ジャイロスコープ10が回転していないときの、本明細書に記載の特定の実施形態による利得リングにおける循環パワーをプロットしている。図2Aおよび図2Bのリング共振器のパラメータ値は、R=5mm、Psat=2mW、L=0.5dB、κin=0.2dB、G=0.15dB、入力パワーPin=1μW、κ=κEPである(式(4a)および(4b)を参照)。図2Aの透過スペクトルにおけるすべての周波数について、条件P≦Psat/10が成り立ち、定数G近似が正当化され、飽和による利得枯渇が小さく無視できる。図2Aでは、式(2)から、回転がゼロの場合、除外点では単一の共振が見られる。式(6a)から、回転(例えば、3000rad/s、6000rad/s)を適用すると、除外点における単一の共振が2つに分割され、図2Aに見られるように、共振の一方は広がり、他方は狭まり、共振の形状および線幅の両方が変化する。
【0099】
共振形状の回転誘起歪みは、ジャイロスコープ10の感度をどのように特徴付けるべきかに影響を及ぼす。RFOGの場合、回転は透過スペクトルをまったく歪みなくシフトさせ、その結果、回転単一リング共振器の透過スペクトルは、適切に異なる光路長を有する非回転単一リング共振器の透過スペクトルと区別できない(M.S.Shahriarらによる「Ultra high enhancement in absolute and relative rotation sensing using fast ans slow light」、Phys.、改訂A75、053807、(2007年))。固定された動作波長範囲では、RFOGの感度は、検出コイルの面積を増加させるか、またはその損失を低減することによってのみ向上させることができ、これは透過スペクトルの勾配を増加させる。透過スペクトルの勾配は、リングの光学モードの実効屈折率neffに比例するが、第2項は1/neffに比例するため、RFOG感度はモード実効屈折率とは無関係である。
【0100】
式(7)によって与えられる特定の実施形態の利得結合共振器の回転誘起共振シフトは、除外点の近くの小さい回転速度に対する応答(例えば、小さい周波数シフトε)が、小さい回転速度のΩよりもはるかに大きい√Ωに比例するので、同じサイズのRFOGの回転誘起共振シフトよりも数桁大きくなり得る(Renを参照)。RFOGにおけるサニャック位相シフトが増強され得る場合、RFOGの単一リング共振器において、サニャック効果は歪みのない透過スペクトルの並進として現れるので、回転感度は比例的に増強される。本明細書に記載の特定の実施形態の利得結合共振器ジャイロスコープ10では、サニャック効果はスペクトルの歪み(図2A参照)を伴うため、検出されるパワーにおける回転誘起変化は、回転誘起共振周波数シフトおよびスペクトル歪みの両方から生じる。
【0101】
利得結合共振器ジャイロスコープの回転感度の式
特定の実施形態では、P<<Psatに対する利得結合共振器ジャイロスコープ10の回転感度は、以下のように表すことができる。
【0102】
【数24】
【0103】
ここで、
【0104】
【数25】
【0105】
図3は、本明細書に記載の特定の実施形態による除外点における回転感度を、図2Aで使用したものと同じパラメータ値の透過スペクトルと共に(式(17)および(18)を使用して)プロットしている。条件P<<Psatは、スペクトル内のすべての周波数で満たされる。RFOGの場合、(この透過スペクトルはRFOGに対してプロットされなかったので、例として)図3のωmsで示すように、入力レーザ波長が最大透過勾配点(dT/dω)と一致するときに最大回転感度が達成される。その理由は、回転下では、RFOGの透過スペクトルは歪みなく周波数をシフトし、したがって、RFOGによって伝送されるパワーの変化は、伝送スペクトルがその最大勾配でプローブされるときに最大になるからである。特定の実施形態の利得結合共振器ジャイロスコープ10の場合、透過スペクトルはシフトして歪み(図2A参照)、その結果、最大回転感度は、勾配が最大である波長ではもはや得られない。その代わりに、図3のω*に示すように、必ずしも最大勾配と一致しない周波数で最大化される。特定の実施形態で使用されるインタロゲーション周波数ω*は、式(18)によって分析的に見ることができるが、本明細書でより完全に説明されるように、簡略化のために数値的手法を代わりに使用することができる。ジャイロスコープ10が最適周波数(ω*)でプローブされるときの感度の差は、少なくともいくつかの特定の例では、勾配が最大である周波数(ωms)でプローブされるときと比較して比較的小さくすることができる。例えば、感度は、ω*でωmsよりも(例えば、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも7%)大きくすることができる。
【0106】
数値最適化ルーチン
特定の実施形態では、利得結合共振器ジャイロスコープ10の回転感度は最大化され、最大化された利得結合共振器ジャイロスコープ10の回転感度は、やはり回転感度に対して独立して最適化されたRFOG(例えば、同じリング半径および損失を有するRFOG)の回転感度と比較することができる。例えば、RFOGリング半径は5mmとすることができ、そのラウンドトリップ損失は0.5dBとすることができ、利得結合共振器ジャイロスコープ10の損失リングも5mmの半径および0.5dBのラウンドトリップ損失を有することができ、利得リングも5mmの半径を有することができる。入力結合率κinおよび入力レーザ周波数ωは両方とも、(例えば、可能な限り高い回転感度を達成するために)回転感度を最大化するように最適化することができる。任意の所与の入力結合および損失に対して、RFOGで達成可能な最大回転感度は、RFOGの透過スペクトルの(例えば、図3に示すように、周波数ωmsにおいて)最も急な部分と一致するように入力レーザ周波数ωを選択することによって達成される。次に、入力結合率κinは、ωmsにおける透過勾配を最大にするように選択される。
【0107】
光が最初に損失リングに遭遇する特定の実施形態(例えば、図1Bを参照)では、同様の手法を使用して、回転感度について利得結合共振器ジャイロスコープ10を最適化することができる。例えば、第1のリング共振器54および第2のリング共振器64の半径は、RFOGの半径に等しくすることができ(例えば、R=R=5mm)、第1のリング共振器54のラウンドトリップ損失は、2つの結合器70、80によって第1のリング共振器54から取り出されるパワーの一部を除いて、RFOGのラウンドトリップ損失(例えば、0.5dBまたはL=7.21×10-1である)に等しくすることができる。シミュレーションの目的のために、入力パワーPinは1μWに等しくすることができる。残りの自由パラメータは、入力結合κin、入力レーザ周波数ω、第2のリング共振器64における利得率G、および共振器間結合率κである。ただし、除外点における動作を課した場合、κはκEP=(L+κin+G)/2(式(4a)参照)に対するκinおよびGの選択肢で固定される。さらに、図3に関連して説明したように、ωの最適値はもはや透過スペクトルの最も急な部分と一致しないため、感度を最大化するために、ωのより広範な探索を実行することができる。
【0108】
特定の実施形態では、Gは完全に自由なパラメータではないため、Gの最適化において微妙な複雑さが生じる可能性がある。κin、ω、G、およびκのいくつかの値は、Pについて非常に大きな値をもたらす(式(16)参照)。例えば、選択されたパラメータ値が、PがPsat程度であるようなものである場合、定数Gを有する式(1a)の線形化モデルはもはや十分な精度で適用されず、回転感度は式(17)および(18)で計算することができない。特定の実施形態では、P≒Psatの場合、例示的な利得結合共振器ジャイロスコープ10の利得率は飽和し、したがってGよりも低い値に低減され、この利得率はもはや一定ではない。特定の実施形態は、飽和によって枯渇する利得の状況を含む。この条件は、依然として自由パラメータであるが、循環パワーが飽和パワーに近づくかまたはそれを超える特定の値を超えることができない不飽和利得率Gを制限することができる。
【0109】
例えば、本明細書の説明では、入力パワーは1μWに等しくなるように固定され、飽和パワーPsatは2mWに等しく、不飽和利得率Gの十分に小さい値のみが考慮されるので、残りの自由パラメータ(κin、κ、ω)の最適化時に、循環パワーPは0.2mW以下である(例えば、P≦Psat/10である)。式(16)が無限の飽和パワーを有する利得媒体についてPを計算するので、P≦Psat/10の場合、利得率は、認識可能な飽和点に決して到達しない(例えば、定数G近似が正当化される)。特定の実施形態では、定常状態に達する前に過渡的にPsatに近いまたはPsatより大きいPに達することができ、その場合、利得は短期間の間かなり飽和し、利得結合共振器ジャイロスコープ10のダイナミクスに影響を及ぼす可能性があるが、この可能性は、十分に低い循環パワーを生成するために常により小さい入力パワーを使用することができるということに基づいて無視することができる。要約すると、関連するパラメータのすべての値に対するシミュレーションでは、循環パワーは、式(16)を使用して計算することができる。条件P≦Psat/10が満たされる場合、感度が計算され、条件が満たされない場合、無視できる利得枯渇の仮定に違反し、このパラメータセットに対して得られた感度は、有効な予測として保持されない。
【0110】
特定の実施形態では、感度増強係数は、所与のパラメータセットを有する利得結合共振器ジャイロスコープ10の性能指数として定義および使用することができる。感度増強係数は、本明細書で説明するように、所与のパラメータ値のセットを有する利得結合共振器ジャイロスコープ10の回転感度を評価し、この感度を等しいリング半径および損失のRFOGの可能な最大回転感度に正規化することによって計算することができる。
【0111】
利得の関数としての除外点における最大回転感度
図4は、本明細書に記載の特定の実施形態による、図1Bの構成について、第2のリング共振器64内の利得率Gの関数としての、除外点における回転感度増強係数および第2のリング共振器64内を循環するパワーPをプロットしている。図4の利得率Gの各値について、入力結合κinおよび入力レーザ周波数ωを細かいメッシュを横切って掃引し、式(18)および(19)を介して各点で回転感度を評価し、見いだされた最大の感度を図4にプロットした。Pinは、図4中で1μWで一定に保持された。図4の計算のために、すべての点でリング間結合κをκEP=(L+κin+G)/4に再チューニングすることによって、利得結合共振器ジャイロスコープ10を利得率Gのすべての値に対して除外点で動作させるように課した。κEPはGに依存し、異なるG値は回転感度を最大化するために異なるκin値を必要とし、κEPはκinに依存するため、図4ではリング間結合κは利得率Gごとに異なる。
【0112】
図4から、このように最適化された回転増強係数は、利得Gが大きくなるにつれて単調に大きくなることが分かる。図4の回転増強係数の最低値は、G=0で4.3である。図4の回転増強係数の最高値は約112であり、これは、これらの条件で利得結合共振器ジャイロスコープ10を動作させた場合、回転感度は、0.5dBの同じラウンドトリップ損失および5mmの同じリング半径を有するRFOGよりも約112倍大きいことを意味する。また、図4には、第2のリング共振器64(例えば、利得リング)を循環するパワーPも、利得率Gとともに単調に増加することが示されている。図4のシミュレーションでは、G*とラベル付けされた0.2136dBにおける利得率の値が存在し、ここでPは(κinおよびωの最適化時に)Psat/10に等しくなる。図4のこの値より上のグレーの領域は、第2のリング共振器64(利得リング)における循環パワーがPsat/10以上となるときの利得率Gの値を示す。
【0113】
図4は、除外点で動作するとき、(RFOGの回転感度と比較して)回転感度の非常に大きな向上が、利得結合共振器ジャイロスコープ10を用いて達成され得ることを実証している。利得率Gが0.2136dBの場合、除外点において回転感度増強係数は約112となる。利得がゼロ(G=0)であっても除外点では、回転感度増強係数は約4.3に過ぎない。Renにおいて指摘されているように、利得率Gの値が大きいほど、回転誘起シフトが増加し(式(7)参照)、したがって、シフトの増加に比例して回転感度を増加させることができる。しかしながら、利得率Gを0dBから0.2136dBに増加させると、回転誘起シフトは約7%しか増加しないが、回転感度は約20倍増加する。この観察は、本明細書に記載の特定の実施形態において利得結合共振器ジャイロスコープ10として動作するとき(Renによって開示されているようにレーザとして動作するのとは対照的に)、回転感度の向上のすべてではないにしても大部分が、より大きなκEPを有することによって達成される回転誘起共振周波数シフトの増強以外のメカニズムによるものであることを示している。
【0114】
図4から、利得率Gの増加に伴う循環パワーPの増加と、回転感度増強係数の増加との間に強い相関があることが分かる。より大きい利得率Gは、循環パワーPがより大きくなることを可能にし、これは、第2のリング共振器64(例えば、利得リング)における光のより多くの再循環、したがってより大きい総累積サニャック位相を意味する。例えば、図4に示すように、利得率Gが0.2dBの場合、循環パワーPはG=0の場合の約6.2倍となり、二点間の回転感度差(例えば、約20倍)程度となる。図4の回転感度増強係数曲線を図4の循環パワー曲線で除算すると、これら2つの量は互いに比例しないことが確認される。したがって、循環パワーPの向上(したがって、より多くの再循環)は、回転感度増強を完全には説明しないが、回転誘起周波数シフトのみの増加を超える大きな回転感度増加についてのより良い直感を提供する。また、回転誘起周波数シフトを最大化することは、一般に、回転感度を最大化しないことを示唆している。
【0115】
特定の実施形態では、図4にプロットされた値よりも大きい利得率Gの値は、さらに大きい回転感度増強係数を生成する。このような回転感度増強係数は、利得飽和の存在下で利得結合共振器ジャイロスコープ10のモデルを使用して決定することができ、構造がレーザ発振する前に利得率Gが最大可能値(例えば、0.5dB)に近づくにつれて、図4のグレー領域における回転感度増強係数の最適軌道を計算し、回転感度増強係数が112よりもどれだけ高くなり得るかを予測することができる。しかし、P=Psat/10という条件を課しながらも、このグレー領域を探索することが可能である。図4の回転感度増強係数曲線を生成するために、循環パワーPがPsat/10に等しいままであることを確実にしながら、パラメータκinおよびωを調整して回転感度を最大にした。Pinは、図4中で1μWで一定に保持された。図4のグレー領域において同じ最適化プロセスを適用すること、すなわち、回転感度増強係数が最大になるようにこれらの2つのパラメータを選択することが可能であり、同時に循環パワーPがPsat/10に等しいように課すことが可能である。
【0116】
図5は、本明細書に記載の特定の実施形態による、G*の上下の、第2のリング共振器64(例えば、利得リング)内の利得率γの関数としての最適化された回転感度増強係数(実線の中央の曲線)および第2のリング共振器64内を循環するパワーP(実線の上側の曲線)をプロットしている。2つの曲線は、G*を下回る利得率Gの値についての図4の曲線と同一である。特定の実施形態では、G*を上回る利得率Gの値について、循環パワーPはPsat/10にクランプされたままであるが、回転感度増強係数は増加し続ける。図5の破線の下側の曲線は、第1のリング共振器62(例えば、損失リング)内を循環するパワーPを示す。循環パワーPはPsat/10を超えないように制約されているため、G*よりも大きい利得率Gの値に対する回転感度の上昇速度は、G*を下回るほどで速くはない。利得率Gを飽和に近づけることができる特定の実施形態は、回転感度のより大きな値をもたらすことができる。例えば、図5に示すように、(例えば、結合されたリング共振器が0.5dBでレーザ発振し始める直前の)利得0.49dBでは、回転感度強調係数は約252であり、G*の利得率Gの2倍以上である。
【0117】
除外点から離れた最大回転感度
本明細書で説明するように、本明細書に記載の特定の実施形態の利得結合共振ジャイロスコープ10で達成可能な回転感度の大きな向上は、一般に、共振周波数の回転誘起シフトの向上によるものではない。除外点は、それらの大きなシフト増強のために回転感知の分野で関心を集めているが、除外点(例えば、シフトが最大である場所)での動作は、必ずしも回転感度が最大である場所ではない。
【0118】
特定の実施形態では、利得結合共振器ジャイロスコープ10は、除外点から離れて動作する。図6は、本明細書に記載の特定の実施形態による、0.1dBの固定された不飽和利得Gに対する正規化されたリング間結合κ/κEPの関数としての回転感度増強係数および第2のリング共振器64内を循環するパワーPをプロットしている。Pinは、図6中で1μWで一定に保持された。正規化されたリング間結合κ/κEP(例えば、除外点におけるリング間結合κEPに対するリング間結合κの比)の各値について、入力結合κinおよび周波数ωは、図4および図5で行われたように、可能な限り最大の回転感度に対して最適化される。リング間結合κの値は、循環パワーPがPsat/10となる値までしか低下しなかった。図6の灰色の陰影領域は、リング間結合κを低減することがこの条件にさらに違反し得る領域を表す。図6の2つの曲線は、回転感度増強係数および循環パワーPの両方がリング間結合κの単調減少関数であることを示している。図6から、回転誘起共振周波数シフトが除外点で最大であっても、除外点で回転感度が最大にならないことがわかる。例えば、回転感度増強係数は、κ/κEP=1の場合よりもκ/κEP<1の場合の方が大きい。κ/κEPが小さくなると、循環パワーPが大きくなり、回転感度も高くなる。回転感度は、回転誘起共振周波数シフトの大きさに追従するよりも、循環パワーP(例えば、再循環の回数)の大きさにより大きく追従する。図6に示すように、特定の実施形態で達成される灰色の陰影領域の境界(例えば、κ/κEP=0.84である場所)における回転感度増強係数は、約75である(例えば、除外点κ/κEP=1で達成される回転感度よりも約4倍大きい)。この最大回転感度増強係数の値は、利得Gが低い(例えば、図4のラウンドトリップあたり0.2136dBに対して図6のラウンドトリップあたり0.1dB)ためのみによって、図4の値よりも低い。特定の実施形態では、正規化されたリング間結合κ/κEPを陰影領域に減少させると、回転感度がさらに増加する。
【0119】
不飽和利得結合共振器ジャイロスコープにおける回転感度の最大値
図4は、より大きな利得率Gを使用することにより、より大きな回転感度およびより大きな循環パワーPが可能になることを実証している。図6は、より小さい正規化されたリング間結合κ/κEPを使用すると、(最適化時に)より大きな回転感度およびより大きな循環パワーPも生じることを実証している。図4および図6の両方は、循環パワーPに制限を設けて計算された(例えば、Psat=2mWの場合は0.2mW)。図7は、本明細書に記載の特定の実施形態による、正規化されたリング間結合κ/κEPのいくつかの値について、0からG*までの利得率Gの関数としての回転感度増強係数をプロットしている。
【0120】
図7は、入力結合κinおよび周波数ωの最適化中にP<Psat/10(Pinは1μWで一定に保持される)の条件を依然として受けながら、回転感度を最大にするための正規化されたリング間結合κ/κEPと利得率Gとの連帯的な最適な組み合わせに関する情報を提供する。比κ/κEPの各値について、最適化された回転感度増強係数は、利得率Gの増加と共に単調に増加する。図7の各曲線の右端点は、利得率G=G*に対応し、P=Psat/10である。比κ/κEPが大きくなると、回転感度増強係数の最大値は、まずκ/κEP=1.11まで増加し、その後減少する。図7に示すように、比κ/κEPの最適値は1.11であり、G*=0.3738dBであり、この利得で回転感度増強係数は約170である(例えば、利得結合共振器ジャイロスコープの回転感度は、同じサイズおよび損失のリング共振器を有するRFOGの回転感度の約170倍である)。図7の曲線の各々は、P=Psat/10も課すことによって利得率G=G*の点を超えて拡張することができ、これはさらに高い回転感度増強をもたらす。特定の実施形態では、利得結合共振器ジャイロスコープ10は、0から1の範囲、1.05から1.35の範囲、1.08から1.25の範囲、1.08から1.22の範囲、または1.09から1.22の範囲の比κ/κEPで動作する。例えば、κ/κEP<1であれば、入力レーザ周波数をω*から離調すると、大きな回転感度を得ることができる(例えば、ωがω*よりも共振からさらに離調されて、ωにおける循環パワーを減少させる場合)。例えば、利得率G=G*(約0.37dBに等しい)で利得結合共振器ジャイロスコープを比κ/κEP=1.11で動作させた場合の約170の回転感度増強係数は、利得率G=G*(約0.21dBに等しい)で利得結合共振器ジャイロスコープ10を比κ/κEP=1.00で動作させた場合の約112の回転感度増強係数の約1.5倍である。除外点(例えば、実用的な限り除外点に近い)で動作するように開示されている他のシステムとは対照的に、本明細書に記載の特定の実施形態は、除外点を回避するように動作する。さらに、特定のそのような実施形態を除外点から離れて動作させることによって、除外点で動作させたときよりも著しく(例えば、20%、30%、40%、50%、または50%超)大きい回転感度を達成することができる。
【0121】
特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、(例えば、除外点において)最大の回転誘起共振周波数シフトでは動作しない。代わりに、本明細書で説明するように、特定の実施形態のジャイロスコープ10は、除外点から離れて動作する(例えば、回転誘起共振周波数シフトが最大化されない場合)。
【0122】
図7に示すように、特定の実施形態では、利得結合共振器ジャイロスコープ10が除外点(例えばκ/κEP=1)で動作するときに最大回転感度は発生せず、これは、除外点で動作するときに特定の実施形態の利得結合共振器ジャイロスコープ10によって達成される共振周波数の増強した回転誘起シフトが回転感度の大きな増強の主な原因ではないという観察をさらに支持する。大きな回転感度増強のさらなる要因は、循環パワーPの大きな増強である。例えば、図7のすべてのプロットは、それぞれの端点(回転感度増強係数が最も大きい点)においてP=Psat/10の条件を満たしているが、最大回転感度増強係数は、プロットごとに依然として大きく異なる。第1(損失)リング共振器54における循環パワーPへの依存性も、リング間結合κの関数としての回転感度増強係数のこの変動を説明しない。
【0123】
図8は、本明細書に記載の特定の実施形態による、κ/κEP=0.99の比に対するG*の上下の、第2のリング共振器64内の利得率Gの関数としての最適化された回転感度増強係数および第2のリング共振器64内を循環するパワーPをプロットしている。図9は、本明細書に記載の特定の実施形態による、κ/κEP=1.11の比に対するG*の上下の、第2のリング共振器64内の利得率Gの関数としての最適化された回転感度増強係数および第2のリング共振器64内を循環するパワーPをプロットしている。図8および図9は、除外点(比κ/κEP=1)におけるG*の上下に、最適化された回転感度増強係数および循環パワーPを利得率Gの関数としてプロットした図5と比較することができる。
【0124】
図8に示された傾向は、図8の比κ/κEPを小さくすると、最大回転感度向上がわずかに大きくなる(253.4対251.8)ことを除いて、図5の傾向と同様である。図9では、図5と比較して最大回転感度強調が229.6まで低下している。これらの傾向は図6と一致しており、比κ/κEPが低いほど回転感度が高くなることを示した。ジャイロスコープをω*で動作させることにより、損失リングおよび入力パワーの選択された損失に対してκ/κEPの比を1より大きくすることができるが、κ/κEPの最適値は異なる入力パワーおよび損失に対して異なる。しかしながら、図7と同じ損失および入力パワーの選択の場合、特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、ω*では動作しない。なぜなら、ω*よりも共振からさらに離調された周波数では、循環パワーはより小さいからである(図2Bを参照)。ω*から十分に遠く離調することによって、循環パワーは、P<Psat/10を依然として維持しながら利得を増加させることができるほど十分に小さくなり、1未満のκ/κEPでより大きな感度を達成することができる(図5図8図9を参照)。特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、ω*から離調することなく動作することができる。例えば、ω*から離れて動作すると、検出パワーをはるかに小さくすることができるため、Pound-Drver-Hall技術(例えば、RFOGで行われる)は困難になる可能性があり、はるかに大きな利得が容易に利用できない可能性がある。
【0125】
図10は、本明細書に記載の特定の実施形態による、正規化されたリング間結合κ/κEPのいくつかの値について、0からG*までの利得率Gの関数としての回転感度増強係数をプロットしている。図10の各曲線は、入力結合κinおよび周波数ωの最適化の際に、P<Psat/10の条件に従う。図10は、図7の第1のリング共振器54の損失が0.5dBに等しく、図10の第1のリング共振器54の損失が0.25dBに等しいという点で図7とは異なり、したがって、図10は、第1のリング共振器54(例えば、損失リング)の損失の影響に関するいくつかの情報を提供する。図10の曲線は、図7の曲線と同じ傾向を示す。図10の最大回転感度はκ/κEP=1.11ではなくκ/κEP=1.20で発生しているが、図10の各曲線の最右端の回転感度増強係数の最大値は、図7のものよりも低い。例えば、κ/κEP=1.20の最大回転感度増強係数は、図7では0.5dBの損失が約170であるのに対して、図10では0.25dBの損失が約112である。
【0126】
損失率を有する第2のリング共振器による展開および折り畳み構成
以下のセクションでは、損失率(例えば、図1Cおよび図1Dを参照)を有する第2のリング共振器64を有する展開構成の様々な態様の説明が提供される。
【0127】
動作原理
√Ω依存性から完全に利益を得るために、ジャイロスコープ10は、ジャイロスコープ10の共振周波数の極めて小さいシフトを正確に測定する読み出しシステムを利用することができる。しかしながら、ほとんどの高精度受動共振ジャイロスコープは、周波数シフトを測定せず、この周波数シフトから生じる出力パワーの変化を測定する。この原理は、図1Cおよび図1Dの2つの例示的なジャイロスコープ10において使用することができる。ジャイロスコープ10は、コヒーレント光源30(例えば、プローブレーザ)によって提供される周波数ωの光信号32でプローブすることができる。結合リング54、64内を循環する信号の回転誘起周波数分割は、光導波路20の出力において伝送され、かつジャイロスコープ10の検出器40によって検出されるパワーPoutを変化させることができる。回転速度は、出力パワーのこの変化の測定値から推測することができる。
【0128】
図1Cおよび図1Dのジャイロスコープ10の感度は、ジャイロスコープ10の透過率の回転速度(またはε)に対する依存性についての式を導出し、次いで、式(8a)によって規定されるように、Ωに対するその導関数をとることによって計算することができる。図1Cおよび図1Dの両方の構成について、プローブレーザ周波数における透過率は、定常状態限界で式(1)を解くことによって取得できる。透過率は、以下によって与えられる。
【0129】
【数26】
【0130】
ここで、G∞は、G=G/(1+P/Psat)によって与えられるGの定常状態値(例えば、プローブレーザ30がオンにされて、2つのリング共振器54、64内を循環するパワーが平衡に達したのに十分な時間の後)およびPの定常状態値であり、Pは以下のようになる。
【0131】
【数27】
【0132】
式(19)および(20)は、レージング閾値未満でのみ成り立ち、それは式(10b)が満たされる場合である。
【0133】
以下に示す図1Cおよび図1Dの例示的なジャイロスコープ10の性能のシミュレーションは、ジャイロスコープ構造についての以下のパラメータ値を仮定して実行された:R=5mm、neff=1.44、ラウンドトリップあたり0.5dBの損失、およびω=ω=ω。入力パワーは、Pin=0.2μWであるように選択され、この値は、すべての利得飽和が信号に起因して発生し、増幅された自然放出からは発生しないと安全に仮定することができるのに十分な大きさであるように選択された。より大きなPinを使用することができるが、感度を低下させる可能性のあるより多くの利得枯渇が発生する可能性がある。
【0134】
図11は、本明細書に記載の特定の実施形態による、EPにおける透過スペクトルの回転誘起変化を示す。飽和が無視できることを確実にするために入力パワーは50nWであり、G∞≒Gであった。ゼロ回転下では、ωに1つの縮退共振がある(ゼロ離調を中心とする中央の曲線)。展開構成(例えば、図1C)では、図11の小さな摂動を与える速度(ε=3.8MHz)でリング共振器54、64が回転されると、2つの機構がスペクトルを変化させる、すなわち共振分割を引き起こし、2つの分割された共振の線幅が変化する。これらの複合効果は、シフト、およびスペクトルの明確な歪み(図11の右端の曲線)をもたらす。特に、共振はω±√κEPεに分裂し、2つの線幅は(L+κin-G∞)/2±√κEPε(例えば、一方の共振は狭くなり、他方の共振は広くなる)に変化し、これは、図11に見られる歪みを説明する。
【0135】
図11の最も左側の曲線は、回転速度が10倍高い(例えば、ε=38MHz)ことを除いて、すべての同じパラメータ値について、折り畳み構成(例えば、図1D)における同じ共振のスペクトルを示す。この構成では、共振の分裂はなく、歪みもない。透過スペクトルは、ジャイロスコープ10がそのEPから押し出されていないために、シフトされる(例えば、周波数に変換される)だけである(式(6b)を参照)。さらなるシミュレーションは、単一リング共振器ジャイロスコープと比較して周波数シフトの増強がないことを示している。したがって、展開構成の場合と同様のスペクトルのピーク周波数のシフトを誘導するために、回転速度は、折り畳み構成では10倍大きい。
【0136】
EPジャイロスコープの性能指数
ジャイロスコープ10の有用な性能指数は、測定可能であるのに十分な大きさの検出パワーの変化を引き起こす最小Ωとして定義される、その最小検出可能回転速度Ωminであり得る。最小検出可能出力パワー変化は、読み出しシステムのノイズパワーPnoiseに等しくすることができる。したがって、δPout=Pnoiseで式(8a)を使用して、検出可能な最小回転速度を以下のように表すことができる。
【0137】
【数28】
【0138】
新しいジャイロスコープアーキテクチャのすべての自由パラメータの最適化後に達成可能な最小(例えば、最良)可能Ωminは、等しい半径および損失の単一リングジャイロスコープで達成可能な最小可能Ωminと比較することができる。一般に、ノイズがいくつかのノイズ源(例えば、プローブレーザの選択に依存するRINまたはレーザ周波数ノイズ)を含み、その各々がジャイロスコープで使用される物理的構成要素の選択に依存し得るため、Ωminの最適化は複雑であり、汎用性がない。さらに、いくつかのノイズ寄与(例えば、相対強度ノイズまたはショットノイズ)は、それ自体が構成要素および動作点、特にジャイロスコープのレーザプローブ周波数に依存する検出パワーに依存する。したがって、雑音パワーPnoiseは、一般に、検出パワーに依存し、ジャイロスコープで使用される構成要素の多数の組み合わせに応じて何倍にも変化する可能性があり、標準的な比較を定義することを困難にする。
【0139】
特定の実施形態では、ジャイロスコープ10は、主なノイズ源に応じてΩminを最適化するために非常に異なって動作することができるが(式(21)を参照)、それは、結合比およびプローブレーザ30の周波数などの最適なデバイスパラメータの選択が、Pnoiseに影響を及ぼし得る検出パワーに影響を及ぼし得るからである。したがって、結合リングジャイロスコープ10を単一リングジャイロスコープと比較するための性能指数としてΩminを使用することは、デバイス構成要素の多くの組み合わせをモデル化および最適化することを利用し、これは面倒で時間がかかる。検出器ノイズが支配的である限界でΩminを比較することによって図1Cおよび図1Dの例示的なジャイロスコープの感度を最適化して比較することは、検出器ノイズが検出パワーとは無関係であるため、はるかに実用的で有益であり得る。この場合、ノイズは定数であり、感度を最大化することはΩminを最小化することと等価である。したがって、PT対称結合リング共振器ジャイロスコープ10の感度は、単一リング共振ジャイロスコープの可能な最大dT/dεと比較される。後者は、S1R=8ωR/(33/21Rcneff)を得るためにプローブレーザの周波数および入力結合に関してdT/dεを最適化することによって分析的に得られ、L1Rはリング共振器における損失率である(Terrelを参照)。
【0140】
除外点における最適化された感度
式(8a)に概説されている回転感度の一般的な定義に従って、PT対称結合リング共振器ジャイロスコープ10の回転感度を、以下のように表すことができる。
【0141】
【数29】
【0142】
ここで、プラス記号は折り畳み構成に適用され、マイナス記号は展開構成に適用される。第1の項∂T/∂εは、第2のリング共振器64内のサニャック位相からの感度への寄与であり、第2の項∂T/∂εは、第1のリング共振器54内のサニャック位相からの寄与である。項∂T/∂ε1,2は、受動共振器センサの感度に類似しており、これは、サニャック位相シフトによって誘起される共振周波数のシフトのみに対応する。項∂T/∂G・dG/dε1,2は、上述の飽和関連メカニズムに由来し、それを定量化したもので、これは、飽和利得を有する共振器に固有の回転を感知する新しい方法を表す。物理的には、飽和利得媒体では利得は増幅しているパワーに依存するため、サニャック位相がシフトすると、Pの定常状態値および利得が変化する。利得が変化すると、透過率が変化し、出力パワーが変化する。この新しい機構を利用して回転を感知することにより、損失補償および除外点近くでの動作によってもたらされる改善を超えて感度がさらに増強される。この追加の回転感度項は、利得率が飽和していない場合(例えば、G∞≒Gの場合)、0になる。
【0143】
式(22)の数値最適化は、図1Cおよび図1DのPT対称結合リングジャイロスコープ10の折り畳み構成および展開構成について実行された。最適化された感度は、等しい半径および損失の単一リングジャイロスコープの最大可能感度に対して正規化され、ジャイロスコープがそのEPで動作するときの損失補償|G/L|の関数として図12にプロットされている。各ジャイロスコープ10の感度は、Gの値を固定し、その後、各点でκをκEPに等しく保ちながらκinおよびωを細かいメッシュ上で掃引することによって最適化された。利得圧縮係数|G∞/G|は、G∞の値を推測し、その推測のPを計算することによって、各点で反復的に計算された。推測されたG∞は、それおよび計算されたPがG=G/(1+P/Psat)と一致する場合に受け入れられた。この方法は、マルチパラメータ数値最適化を実行するのに十分な計算速度であった。ASEは、図12の各点で利得飽和にあまり寄与しないことが確認された。
【0144】
図12の展開構成の曲線は、利得が増加するとジャイロスコープ10の展開構成の感度が増加することを示している。物理的な理由は、少なくとも部分的には、より多くの損失が補償され、信号が利得リングの周りでより多くの回数再循環し、より大きなサニャック位相シフトを蓄積して、出力パワーのより大きな変化をもたらすことである。例えば、|G/L|=0.83(曲線の右端)の場合、ジャイロスコープ10の展開構成の感度は、単一リングジャイロスコープの感度の650倍である。この同じ値|G/L|=0.83において、図12のジャイロスコープ10の折り畳み構成の感度増強は150倍であり、これは感度式が1√Ωに項を持たなくても依然として大きい(式(6a)および(6b)を参照)。
【0145】
単一リングジャイロスコープの感度は、共振器に増幅器を追加することによって同様に増強することができるが、結合リング共振器54、64は、利得を有するリング共振器よりも利得変動に対してはるかに堅牢である。例えば、単一リングジャイロスコープに増幅器を挿入してリング損失の99%を補償すると、フィネスが100倍向上し、したがって感度が100倍増強される(Lefevreを参照)。しかし、利得が0.1%しか変動しないとすると、感度が10%程度変動することになり、好ましくない。利得が1%しか変動しない場合、リングはレーザ発振し、これも望ましくない。したがって、損失補償単一リングジャイロスコープは、利得変動に対して非常に敏感である。対照的に、本明細書に記載の特定の実施形態のPT対称結合リングジャイロスコープ10は、それほど敏感ではない。
【0146】
除外点からの離調
EP感知の感度向上を解明するために、共振器間結合の結合がそのEP値κ=κEPから離調されたときのPT対称結合リングジャイロスコープ10の回転感度を計算した。図13および図14は、他のすべてのパラメータを固定し、異なる値の比|G/L|についての、κ/κEPに対するこれらのシミュレーションの結果、すなわち、展開構成および折り畳み構成におけるジャイロスコープ10の回転感度の改善をそれぞれプロットしている。κinおよびωの値は、EPでの回転感度を最大にするように選択し(κ/κEP=1の場合)、κが変化するにつれてこれらの値は変化しなかった(例えば、プロットの任意の他の点で最大感度についてそれらを最適化しようとする試みは行われなかった)。その結果、κ=κEP以外のすべての点において、感度向上は最大ではない。これにもかかわらず、図13および図14は、(i)EPから離れると、共振シフトが急速に減少し、(ii)κinおよびωはもはや最適化されないという事実にもかかわらず、κがκEP未満に減少するにつれて感度が単調に増加することを示している。図13より、|G/L|=0.8の場合、κがκEPから上記のように減少した結果、感度増強がEPで583倍から4370倍に増加していることがわかる。この4370倍の改善は、κinおよびωを最適化することによってさらに大きくすることができる。
【0147】
高飽和利得媒体
折り畳み構成および展開構成におけるジャイロスコープ10の感度は、|G/L|が図12にプロットされた0.83の最大値よりも大きい場合にさらに増加させることができるが、図12の曲線は、0.83より大きい|G/L|について、数値探索により、非常に大きいdT/dΩの値を有する不安定な動作点が見出されたため、その比で終了した。この不安定性は、図15に示すように、ジャイロスコープ10の出力パワーに発生し、図1Cの展開構成におけるジャイロスコープ10の出力パワーは、式(1)を数値的に解くために微分方程式ソルバ(MATLAB(登録商標)におけるODE45)を使用することによって時間に対してシミュレートされる。時間t=0において、図15では、ジャイロスコープは静止しており、リング共振器54、64のいずれにおいても光は循環せず、プローブレーザ30は、シミュレーション全体のPinの値である0.1μWの一定パワーで突然オンにされる。このシミュレーションに用いた残りのパラメータ値を図15に示す。
【0148】
図15では、共振器内のフィールドが急速に増大し、利得飽和を引き起こし、その結果パワーが増大し、2つのリング共振器54、64の間で交換されるにつれて、出力パワーに複雑な過渡現象が生じる。最終的に約500nsで定常状態に達する。1000nsで、小さな回転速度を適用して、出力パワーを新しい一定値に迅速に再調整する代わりに時間的に無期限に振動することを実証する。図15のシミュレーションは、プロットの終わりで1500nsよりもはるかに長く継続され、出力パワーは振動を継続することが確認されたが、振動の大きさは時間t=3700nsで一定の値に収束した。
【0149】
これらの不安定性は、無限大になり得る非常に大きな値のdT/dΩと一致する。図16は、静止している2つのリング共振器54、64の(同一の)共振周波数ω0に対するレーザ周波数の離調ω-ωに対する、展開構成のジャイロスコープの単一リングジャイロスコープ10に対するdT/dΩの増強をプロットしている。共振周波数の両側に2つのレーザ周波数があり、ここでdT/dΩは無限大に発散する。数値シミュレーションは、dT/dΩが非常に大きいレーザ周波数のこれらの狭い領域では、循環パワーおよび出力パワーが決して定常状態に到達しないことを確認する。
【0150】
感度の損失依存性
図17は、損失リングのラウンドトリップ損失(十字で示す)に対する、展開構成のジャイロスコープ10のEPにおける最適化された回転感度をプロットしている。回転感度を、プロットの損失の各値においてκinおよびωを最適化する数値探索を行うことにより最適化し、Pinを0.2μWで一定に保持した。この感度を達成するための利得も図17にプロットされている(円で示されている)。この利得は、ジャイロスコープが安定性を失う前に、可能な限り大きくなるように選択され、それによって感度を最大化した。図17に示すように、感度の絶対値は損失に強く依存しない。しかしながら、損失がより大きい場合、より多くの利得を使用して損失を補償し、したがってピーク回転感度を達成することができる。
【0151】
図18にプロットされた感度依存性は図17と同じであり、2つの図の間の唯一の違いは、右縦軸の量である。図18では、この量は正味損失L-Gである。損失リングにおける損失が大きいほど、感度を最大化する正味の損失が大きくなる。
【0152】
以上、種々の構成について説明した。本発明をこれらの特定の構成を参照して説明してきたが、説明は本発明を例示することを意図しており、限定することを意図していない。本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者には様々な修正および応用が思い浮かぶであろう。したがって、例えば、本明細書に開示された任意の方法またはプロセスにおいて、方法/プロセスを構成する行為または動作は、任意の適切な順序で実行されてもよく、必ずしも任意の特定の開示された順序に限定されない。上述した様々な実施形態および例からの特徴または要素を互いに組み合わせて、本明細書に開示された実施形態と互換性のある代替構成を生成することができる。実施形態の様々な態様および利点が、必要に応じて記載されている。そのような態様または利点のすべてが、任意の特定の実施形態に従って必ずしも達成されるとは限らないことを理解されたい。したがって、例えば、様々な実施形態は、本明細書で教示または示唆され得るような他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点または利点群を達成または最適化するように実行され得ることが認識されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】