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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】活性センサーの身体的処理
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544676
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2020015823
(87)【国際公開番号】W WO2020160227
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/800,107
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520484025
【氏名又は名称】グリンプス バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】バティア, サンギータ
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン, エリック
(72)【発明者】
【氏名】バナジー, スルシェンドゥ ルーポム
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン, アンドリュー デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】カザナベ, ソフィー
(57)【要約】
本発明は、体内のプロセスを使用して、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達する方法および組成物を提供する。体内の特定の酵素が作用すると検出可能なレポーターを放出する活性センサーは、プロアナライトとして提供される。体内のプロセスは、活性センサーを活性型で関心対象の標的部位に送達する。例えば、体内の酵素または化学的環境は、活性センサーからブロッキング基を切断することがあるか、あるいは身体組織および器官は、活性センサーのサイズまたは組成に基づいて、標的部位で活性センサーを収集し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析方法であって、前記方法が、
プロアナライトを患者に投与するステップであって、体内でのインサイチュ処理により、前記患者の健康状態に比例して前記プロアナライトから検出可能なレポーターが富化されるステップと、
前記患者由来の試料中の前記検出可能なレポーターを測定するステップと、
前記測定されたレポーターを前記患者の前記健康状態に関連付けるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記プロアナライトが、複数の器官システムを介して処理され、その結果前記検出可能なレポーターが富化され、前記方法が、前記患者に関する健康情報を含むレポートを提供するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、呼気、尿、血液、唾液、便、組織、痰または非侵襲的画像化方法から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出可能なレポーターを測定するステップが、前記試料を画像化すること、および、前記画像化するステップで得られる画像をコンピュータで分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定するステップが、ELISAまたはラテラルフローアッセイのストリップに前記試料を分配するステップ、モバイルデバイスを使用して前記ストリップを画像化するステップ、および前記モバイルデバイス上のアプリを使用して前記分析ステップを実行するするステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記富化されるステップが、特定の疾患状態の存在下で前記検出可能なレポーターを放出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記疾患状態が器官または組織に特異的である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記疾患が、炎症性疾患、癌、神経学的疾患、線維性疾患、免疫関連疾患、肺疾患、および肝疾患から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記検出可能なレポーターが、前記疾患状態の存在下、プロアナライトからの切断によって放出される断片を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記切断が酵素的切断である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記レポーターが、ペプチド、核酸、脂質、炭水化物、およびその他の無機剤からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記測定するステップが、放出されたレポーターを定量化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記投与するステップが、第1のセットのプロアナライトを含む第1の組成物と、第2のセットのプロアナライトを含む第2の組成物を前記患者に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のセットのプロアナライトからの検出可能なレポーターの放出が、第1の器官、組織、または体内区画での活性を示し、前記第2のセットのプロアナライトからの検出可能なレポーターの放出が、第2の器官、組織、または体内区画での活性を示す、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者の非侵襲的分析を実行するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記プロアナライトが、1またはそれを超える前記検出可能なレポーターに連結されたリンカーを含む担体である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記担体が、マルチアームポリエチレングリコール足場、組織または器官を標的とする抗体、または代替合成担体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記検出可能なレポーターが、前記患者の状態特異的な化学反応または化学的環境を介して放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記状態特異的な化学反応が、疾患の存在下では過剰に起こるが、健康な器官では実質的に存在しない反応である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記化学反応が、疾患状態では存在するが、健康な条件では実質的に存在しない酵素によって触媒される酵素反応である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記化学反応または環境が、罹患細胞の細胞外マトリックスまたは膜に主に生じるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記プロアナライトが複数の第1の粒子であって、各第1の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第1の検出可能なレポーターを含む複数の第1の粒子;複数の第2の粒子であって、各第2の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第2の検出可能なレポーターを含む複数の第2の粒子;および複数の第3の粒子であって、各第3の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第3の検出可能なレポーターを含む複数の第3の粒子として投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記レポーターが、酵素のそれぞれの切断部位で前記粒子に結合されており、ここで、少なくとも1つの切断部位は、非疾患状態下よりも疾患状態下でより大きな活性を示す酵素によって切断される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の投与ステップと第2の投与ステップとの間の前記検出可能なレポーターの前記量の変化率を測定する前記ステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、一般に、体内に送達することができ、検出可能なレポーターの放出をもたらす生化学的/化学的反応を介して体内の活性を報告する、活性センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
現在、疾患を検出または診断するための手法では、一般に、体から試料を採取し、試料をさらに分析するために処理することが必要である。例えば、癌の検出およびモニタリングへのいくつかのアプローチは、腫瘍のDNAを配列決定して、癌に特異的な変異を検出することを含む。試料の入手には、さまざまな理由で問題がある。針生検は、疾患に罹患した細胞の試料を得るために患者に針を深く挿入することを必要とする。さらに、針生検で腫瘍を見逃し、健康な組織だけを回収した場合、この手順は偽陽性の結果を生じることになる。
【0003】
試料を入手することは、患者にとって苦痛であり、分析の失敗のポイントであるだけでなく、臨床的に作用可能な情報を生成するために必要な実験室作業の始まりにすぎない。癌特異的変異の分析には、DNAを抽出し、関連するDNA断片を分離し、DNAの配列決定に必要なアダプターおよび試薬でそれらの断片を増幅するための、広範な試料の調製が必要である。DNA試料プレップおよび配列決定が成功した場合、その結果が、基礎疾患の性質に関する洞察を提供する腫瘍特異的変異の報告を提供することが期待される。これらの技術のすべてにおいて、試料プレップが失敗の原因となり得る。したがって、診断試験の感度および特異度を向上させるために、最小限の試料プレップが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本発明は、患者自身の身体を使用して、分析用の試料を調製する方法を提供する。本発明の方法では、プロアナライト(pro-analyte)組成物が投与される。プロアナライト組成物は、体内の特定の状態下で富化される検出可能なレポーターを含む。本発明は、疾患の存在下での器官システムの実質的に固有の状態を利用して、疾患状態の存在下でのみバックグラウンドを超えて検出可能な量に富化される分析物を生成する。
【0005】
1つの好ましい実施形態では、プロアナライトは、検出のために富化された分析物に変換される。例えば、細胞膜を自由に通過する疎水性部分は、親水性部分に変換され、細胞内で濃縮(concentrated)および富化(enriched)させることができる。この変換は、酵素的によって行われることもあれば、細胞内の別の化学反応によって行われることもある。別の好ましい実施形態では、検出可能なレポーターは、罹患組織に存在するが健康な組織に存在しない条件下でプロアナライトから切断される。本発明が試料調製ビヒクルとして作用する身体の能力を利用する1つの方法は、特定の状態を有する器官システムに固有に存在する酵素によって切断されるプロアナライトを導入することによる。多くの疾患状態は、固有の酵素の存在または特定の酵素の産生の増加を特徴とする。放出された検出可能なレポーターは、尿、血液、喀痰、組織試料、唾液、さらには呼気(すなわち、呼気)などの身体試料から得られ、状態を特定するために測定される。検出可能なレポーターを定量的に測定することにより、患者の健康状態をより具体的に示すことができる。疾患状態の報告に加えて、プロアナライトは、器官システムに存在する酵素または他のバイオマーカーの健康レベルの兆候を含む、全体的な健康について報告するように調整することができる。それらがどのように使用されても、本発明は、身体が試料調製ステップを実行して測定可能な結果をもたらす方法および組成物を提供する。
【0006】
本発明のプロアナライト組成物は、特定の状態で発現することが公知の酵素のセットの基質を含む活性センサーの形態であり得る。この状態は、全体的な健康状態(すなわち、健康状態の良し悪しを示す)であり得るが、本発明の主な用途は、活性センサーと、特定の器官または体内区画における疾患特異的酵素との相互作用を介することであり、その結果、レポーター(reports)と活性センサーとの間のリンカーの切断を介して検出可能なレポーターが放出されることである。プロアナライトは、罹患した器官または体の区画で疾患に特異的な状態に遭遇した場合に検出可能なレポーターのみを放出するように設計および構成されている。例えば、特定の種類の癌が存在する場合に活性であることが公知のプロテアーゼの基質として働く複数のペプチドを含むようにプロアナライトを設計することにより、活性センサーは、特定の器官システムの癌を標的にすることができる。これらの酵素の存在下でのみ、プロアナライトは処理されて、大量の検出可能なマーカー(例えば、様々なペプチド断片)を放出する。したがって、患者由来の尿試料などの試料中のこれらのペプチド断片の検出は、その器官に癌が存在することを示している。
【0007】
「試料プレップとしての身体」を利用することにより、本開示の方法は、活性センサーを使用して、体内の組織または区画の生理学的状態を非侵襲的に調べる。関心対象の多数の生理学的状態、例えばさまざまな特定の疾患などは、疾患、症候群、または状態などの特定の健康状態に関連する酵素の活性に特徴付けられる。状態特異的な酵素が活性センサーを切断して検出可能なレポーターを放出する場合、身体由来の試料中でこれらのレポーターが検出されることは、組織の生理学的状態を示す。注目すべきことに、多くの疾患は、他の症候が現れるよりも前に酵素活性が調節不全になる作用機序を伴う。例えば、腫瘍性細胞は、細胞が検出可能な腫瘍に増殖する前に、そしてこれらの腫瘍細胞が液体細胞診によって検出され得る一定レベルの腫瘍DNA断片を放出する前に、細胞外組織リモデリング酵素を放出して細胞外マトリックスを切断するであろう。したがって、関心対象の特定の部位で細胞外プロテアーゼ活性を検出することにより、癌が他の方法で検出され得るよりもはるかに早く、初期の癌を検出することができる。活性センサーは、組織または体液の特定の生理学的状態を示す、活性の正確で精密なセンサーとして機能する。
【0008】
一部の態様では、本発明は、以下のステップ:患者にプロアナライトを投与するステップであって、患者の健康状態が、プロアナライトからの検出可能なレポーターの放出に関連しているステップ;患者由来の試料中の検出可能なレポーターを測定するステップ;および、測定されたレポーターを患者の健康状態の状態に関連付けるステップを含む、分析方法を提供する。プロアナライトは、好ましくは複数の器官システムを介して処理され、その結果、検出可能なレポーターが放出される。また、この方法は、患者に関する健康情報を含むレポートを提供することも含む。検出可能なレポーターは、特定の疾患状態の存在下で放出され得、前記疾患状態は器官特異的である。例えば、疾患は、炎症性疾患、癌、神経学的疾患、および肝疾患から選択され得る。必要に応じて、試料は、呼気、尿、血液、唾液、便、組織、および痰から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、検出可能なレポーターは、疾患状態の存在下、プロアナライトからの切断によって放出される断片を含む。この切断は酵素的切断であり得る。
【0010】
レポーターには、ペプチド、核酸、脂質、または炭水化物が含まれてよい。測定ステップは、好ましくは放出されたレポーターを定量化することを含む。
【0011】
特定の実施形態では、投与ステップは、患者に第1のセットのプロアナライトを含む第1の組成物を投与することと第2のセットのプロアナライトを含む第2の組成物を投与することを含む。第1のセットのプロアナライトからの検出可能なレポーターの放出は、第1の器官、組織、または体内区画での活性を示し得、第2のセットのプロアナライトからの検出可能なレポーターの放出は、第2の器官、組織、または体内区画での活性を示し得る。本発明の方法は、好ましくは、患者の非侵襲的分析を実行することによって進行する。
【0012】
一部の実施形態では、プロアナライトは、1またはそれを超える前記検出可能なレポーターに連結されたリンカーを含む担体である。担体は、例えば、マルチアームポリエチレングリコール足場であり得る。好ましくは、前記検出可能なレポーターは、患者の状態に特異的な化学反応または化学的環境を介して放出される。状態特異的化学反応は、疾患の存在下では過剰に起こるが、健康な器官では実質的に存在しない反応であり得る。必要に応じて、化学反応は、疾患状態では存在するが、健康な条件では実質的に存在しない酵素によって触媒される酵素反応である。化学反応または環境は、主に罹患細胞で起こるものであり得る。
【0013】
プロアナライトは、複数の第1の粒子であって、各第1の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第1の検出可能なレポーターを含む、複数の第1の粒子;複数の第2の粒子であって、各第2の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第2の検出可能なレポーターを含む、複数の第2の粒子;および複数の第3の粒子であって、各第3の粒子が、担体に放出可能に結合されている複数の第3の検出可能なレポーターを含む、複数の第3の粒子として投与されてよい。レポーターは、酵素のそれぞれの切断部位を含むペプチドによって粒子に結合されていてよく、この際、切断部位の少なくとも1つは、非疾患状態下よりも疾患状態下でより大きな活性を示す酵素によって切断されている。
【0014】
特定の態様では、本開示は、分析のための試料を調製する方法を提供する。これらの方法には、プロアナライトを患者に導入すること、および身体にプロアナライトを部位特異的に処理させて、検出可能なレポーターを放出させることが含まれる。試料は身体から採取され、これらの方法には、患者の状態を特定するために試料中の検出可能なレポーターを測定することが含まれる。検出可能なレポーターには、特定の状態下で体内の部位に存在するそれぞれの複数の酵素によるプロアナライトの切断によって放出される複数のペプチド断片が含まれていてよい。検出可能なレポーターは、試料中のペプチド断片を定量化することによって測定され得る。好ましくは、身体は、特定の疾患状態下で放出されるいくつかの細胞外プロテアーゼなど、測定されている状態に固有の複数の酵素を用いてプロアナライトを処理する。身体は、酵素的切断によってプロアナライトを処理して、検出可能なレポーターを放出し、検出可能なレポーターは、試料のアッセイによって検出可能な複数のペプチド断片であり得る。検出可能なレポーターは、アミノ酸、ペプチド、核酸、糖、炭水化物、脂質、または所定の状態下で放出可能であり、生体試料において検出可能な任意の他の分子であり得る。
【0015】
一部の実施形態では、状態は、具体的な疾患、症候群、または状態である。身体は、その部位でプロアナライトを処理し、仮に体内の他所でまたは疾患の不在下で検出可能なレポーターが放出されるとしても、その量とは明らかに異なる量で検出可能なレポーターを放出する。特定の実施形態では、プロアナライトは、複数の同族酵素の存在下で、検出可能なレポーターを放出する複数のナノ粒子活性センサーを含む組成物として投与される。好ましくは、検出可能なレポーターには、複数の別個のペプチド断片が含まれる。各活性センサーには、酵素の1つによって切断されて検出可能なレポーターを放出する複数のポリペプチドが含まれ得る。酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれ得る。また、酵素には、「対照」シグナルを与えるか、酵素活性のバックグラウンドレベルを確立するために、疾患状態に特異的でない少なくとも1つの酵素が含まれ得る。特定の実施形態では、各活性センサーには、そのそれぞれの同族酵素によって切断される唯一のポリペプチドのいくつかの(例えば、約2~約12の間の)コピーが含まれる。各ポリペプチドは、適した分子足場またはコアなどの担体に連結されていてもよい。一部の実施形態では、担体は、各ポリペプチドが共有結合しているマルチアームポリエチレングリコール(PEG)足場である。PEG足場担体は、約20~50kDaの間の質量を有してよく、別個のペプチド断片の各々は特徴的な質量対電荷比を有し得る。
【0016】
他の実施形態は、本開示の範囲内である。例えば、一部の実施形態は、プロアナライトを処理し、体内の標的部位で活性センサーの活性型を放出するための試料プレップとして身体を使用する。一部の実施形態では、組成物および方法は、体内のプロセスを使用して、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達する。体内の特定の酵素が作用すると検出可能なレポーターを放出する活性センサーは、プロアナライトとして提供される。体内のプロセスは、活性センサーを活性型で関心対象の標的部位に送達する。例えば、体内の酵素または化学的環境は、活性センサーからブロッキング基を切断することがあるか、あるいは身体組織および器官は、活性センサーのサイズまたは組成に基づいて、標的部位で活性センサーを収集することがある。別の例では、活性センサーは、標的部位に特徴的な受容体のリガンド、または標的腫瘍の抗原と同族の抗体ドメインを含み、標的部位での活性センサーの蓄積または細胞内取り込みを促進し得る。
【0017】
一部の態様では、本開示は、組織または体液内の標的部位の生理学的状態を評価するための方法を提供する。この方法には、少なくとも1つの活性センサーを含む組成物を対象に送達すること、体内プロセスを使用して活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達すること、および標的部位での活性センサーから放出された検出可能なレポーターなどのシグナルを検出し、それにより標的部位での身体の活性を感知することが含まれる。好ましくは、このプロセスは、例えば、活性センサーが切断可能な形で標的部位の酵素にレポーターを提示するために行う必要のある、身体の自然なプロセスである。このプロセスには、肝臓での活性センサーの収集、検出可能なレポーターを循環に放出するための肝臓の1またはそれを超える酵素による活性センサーの切断、および検出可能なレポーターを尿に放出するための糸球体濾過が含まれ得る。活性センサーには、担体に連結された検出可能なレポーターが含まれてよく、担体は、1またはそれを超えるポリマーサブユニットを含む。
【0018】
好ましくは、組成物は複数の活性センサーを含み、各活性センサーは、組成物が複数の同族酵素の存在下で検出可能なレポーターを放出するように、複数の検出可能なレポーターを含む。酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれ得る。酵素は、疾患状態に特異的ではない少なくとも1つの酵素をさらに含み得る。必要に応じて、各レポーターは、それぞれの同族酵素によって切断されているポリペプチドを含み、各レポーターは担体に連結されている。担体は、例えば、各レポーターが共有結合しているマルチアームポリエチレングリコール足場であってもよい(例えば、担体は、約20~50kDaの間の分子質量を有してよく、切断される各別個のポリペプチドは、特徴的な質量対電荷比を有していてもよい)。
【0019】
一部の実施形態では、活性センサーは、担体に連結された検出可能なレポーターを含み、腫瘍抗原に対する抗体に連結されている。このプロセスには、抗体と抗原との間の相互作用によって、活性センサーを腫瘍に収集することが含まれ得る。
【0020】
特定の実施形態では、活性センサーには、治療薬が含まれ、プロセスは標的部位で治療薬を放出する。組成物には、治療薬の投与の結果生じる活性を示すように設計された活性センサーが含まれ得る。例えば、治療薬にチェックポイント阻害剤が含まれている場合、活性センサーには、マトリックスメタロプロテアーゼなどの腫瘍から分泌される酵素の基質が含まれていることがある。腫瘍が活性化すると、酵素が活性センサーを切断し、ペプチド断片を検出可能なシグナルとして尿に放出する。チェックポイント阻害剤が有効になると、免疫細胞が腫瘍細胞の破壊を開始し、分泌された酵素の量および活性レベルが低下して、シグナルが弱まる。
【0021】
一部の実施形態では、活性センサーは、担体に連結された検出可能なレポーターを含み、さらに、活性センサーは炭水化物に連結されている。このプロセスには、特定の種類の細胞上の細胞表面受容体への炭水化物の結合、および特定の種類の細胞への活性センサーの取り込みが含まれ得る。
【0022】
特定の実施形態では、活性センサーは分子キャップに結合されており、プロセスには、分子キャップを切断し、活性な活性センサーを放出する酵素を体内に送達することが含まれる。
【0023】
一部の態様では、本開示は生物において活性を検出する方法を提供する。この方法には、プロアナライトを生物の中に導入すること;生物にプロアナライトを部位特異的な方法で処理させてシグナルを生成させること;および、シグナルを測定して生物における関心対象の生理学的状態に関連する活性を特定することが含まれる。活性には、検出可能なレポーターを放出するためのプロアナライトの酵素的切断が含まれ得る。必要に応じて、検出可能なレポーターには、関心対象の状態下の部位に存在する、それぞれの複数の酵素による切断によって放出される複数のペプチド断片が含まれる。
【0024】
生物は、ヒト対象であってよい。特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は非ヒト生物に使用され、農業または研究において有用である。研究用途の場合、生物は、例えば、タバコ植物(例えば、ニコチアナ・タバカム)、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ(ダニオ・レリオ)、ブタ(サス・スクロファ)、アフリカツメガエル、またはマウス(例えば、ムス・ムスクルス)であってよい。一部の農業の実施形態では、生物は、コーン、小麦、メイズ、菜種、大豆、ヒマワリ、大麦、ソルガム、ジャガイモ、またはイネなどの作物である。一部の農業の実施形態では、生物は、家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、および家禽)である。
【0025】
本開示の態様は、体内のプロセスによって作用を受けると、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達するプロアナライトを含む組成物を提供する。活性センサーは、体内の1またはそれを超える酵素による切断を受けやすく、体からの試料において検出され得る検出可能なレポーターを放出する。検出可能なレポーターが試料に存在することは、1またはそれを超える酵素の活性が体内の標的部位にあることを示す。好ましくは、プロアナライトは、活性センサーが切断可能な形で標的部位の酵素にレポーターを提示するために行う必要のある身体の自然なプロセスによって作用を受けるように設計されている。例えば、プロアナライトには、体内の分子種と相互作用する機能ドメインをもつ活性センサーが含まれ得る。そのような機能ドメインには、例えば、抗体または抗原、レクチンまたは炭水化物、細胞表面受容体のリガンド、または体内の酵素的または化学的切断のための基質が含まれ得る。プロアナライトは、プロセスが標的部位で治療薬を放出するような治療薬をさらに含み得る。
【0026】
特定の実施形態では、プロアナライトには、検出可能なレポーターが担体に連結されている活性センサーが含まれる。担体には、例えば、1またはそれを超えるポリマーサブユニットが含まれてよい。例えば、担体はマルチアームPEG足場(例えば、約40kDaの8アームPEG)であってよい。好ましくは、組成物は複数の活性センサーを含み、その各々は、組成物が複数の同族酵素の存在下で検出可能なレポーターを放出するように、複数の検出可能なレポーターを含む。必要に応じて、各活性センサーは、プロテアーゼによって切断されると、ポリペプチド側鎖の一部を検出可能なレポーターとして放出する、いくつか(例えば、8)の実質的に同一のポリペプチド側鎖を有する。組成物は、各々が1つのプロテアーゼに特異的なペプチド側鎖をもつ複数の活性センサーを有することにより、複数の異なる酵素の検出可能なレポーターを放出し得る。好ましくは、組成物は、複数の酵素に遭遇すると検出可能なレポーターを放出し、その酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれ得る。それらの酵素は、疾患状態に特異的ではない少なくとも1つの酵素をさらに含み得る。すなわち、組成物には、「対照」として、または疾患に特異的に関連しない1またはそれを超える酵素のベースライン活性を報告するために、特定の活性センサーが含まれてよい。
【0027】
特定の実施形態では、各レポーターは、そのそれぞれの同族酵素によって切断されているポリペプチドを含み、各レポーターは担体に連結されている。担体には、各レポーターが共有結合しているマルチアームポリエチレングリコール足場が含まれてよい。例えば、担体は、約20~50kDaの間の質量を有してよい。一部の実施形態では、切断される各別個のポリペプチドは、特徴的な質量対電荷比を有し、組成物からの生成物は質量分析により検出可能である。
【0028】
組成物は、試料プレップとして身体を利用するように設計されている。組成物の分子的特徴は、体の自然のプロセスによって、活性型の活性センサーが組織または体内区画の特定の部位に送達されるように設計されている。例えば、一部の実施形態では、担体およびレポーターは、活性センサーが肝臓に集まるような分子量を有するように設計されている。例えば、8つのポリペプチド側鎖をもつ8アーム、40kDaのPEG足場を使用することにより、組成物は肝臓内でプロテアーゼ基質を提示することができる。この基質は、肝臓疾患に特徴的なプロテアーゼに遭遇すると、切断されて検出可能なレポーターを放出する。したがって、一部の実施形態では、このプロセスには、肝臓での活性センサーの収集、検出可能なレポーターを循環に放出するための肝臓の1またはそれを超える酵素による活性センサーの切断、および検出可能なレポーターを尿に放出するための糸球体濾過が含まれる。
【0029】
活性センサーの送達には他の身体的プロセスが用いられてもよい。例えば、一部の実施形態では、各活性センサーは、担体に連結された検出可能なレポーターを含み、活性センサーは、腫瘍抗原に対する抗体にも連結されている。このプロセスには、抗体と抗原との間の相互作用によって、活性センサーを腫瘍に収集することが含まれる。
【0030】
特定の実施形態では、活性センサーは炭水化物に連結されている。このプロセスには、特定の種類の細胞上の細胞表面受容体への炭水化物の結合、および特定の種類の細胞への活性センサーの取り込みが含まれる。一部の実施形態では、活性センサーは、分子キャップまたはブロッキング基に結合している。ポリペプチド鎖は、プロテアーゼに遭遇すると検出可能なレポーターを放出するプロテアーゼ基質であるが、ブロッキング基がプロテアーゼへの鎖のアクセスを立体的に妨げている。組成物は体内に送達され、活性型の活性センサーは、分子キャップまたはブロッキング基が遊離するまで、標的部位または区画に提示されない。この実施形態は、体内の酵素活性を利用してキャップまたはブロッキング基を放出させたり、身体の化学的環境によってキャップまたはブロッキング基を遊離させたりすることができる(例えば、キャップは消化器系を通過する際にのみ酸触媒加水分解によって放出される)。あるいは、キャップまたはブロッキング基を遊離させる外因性酵素は、組成物と外因性酵素の両方が患者に送達されて、互いに相互作用するまで、活性型の活性センサーが存在しないように送達することができる。
【0031】
本発明の方法は、検出されたレポーターに基づいて、患者の健康状態を示すレポートを提供することをさらに含み得る。レポートには、診断またはその他の実用的な情報が含まれている場合もあれば、試料で特定された検出可能なレポーターを単に反映している場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、分析用の試料を調製する方法のステップを示す図である。
図2図2は、本開示の方法において有用な組成物を示す図である。
図3図3は、活性センサーの詳細図を示す図である。
図4図4は、活性センサーで使用されるマルチアームPEG足場を示す図である。
図5図5は、体内のサイズ濾過プロセスを示す図である。
図6図6は、本開示の組成物を決定するステップを示す図である。
図7図7は、検出可能なレポーターを測定することができるアッセイ結果を示す図である。
図8図8は、本開示の方法を使用して提供され得るレポートを示す図である。
図9図9は、ステージ2のNASHに特徴的な酵素を選択したデータを示す図である。
図10図10は、プロテアーゼの数に対する分類精度を示す図である。
図11図11は、検出可能なレポーターと分子リガンドを含む活性センサーを示す図である。
図12図12は、活性センサーを示す図である。
図13図13は、炭水化物に結合した組成物を示す図である。
図14図14は、ブロッキング基を含む組成物を示す図である。
図15図15は、脂質修飾組成物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
図1は、分析用の試料を調製する方法101のステップを示す図である。この方法は、体内で作用してシグナルを放出するプロアナライト活性センサーが使用されるという点で、身体を試料プレップとして使用する。そのシグナルの検出は、体内の部位での特定の活性または活性の組合せを示す。一部の実施形態では、活性センサーは、体内の特定の酵素によってのみ作用される。これらの酵素による活性は、活性センサーからレポーターを切断する、その結果、身体から採取した試料にこれらのレポーターが含まれる。活性センサーは、さまざまな競合する結合イベント、体内の化学的または機械的ストレスに関連する切断または立体構造変化、あるいは、翻訳後修飾に時々関連するグリコシル化またはリン酸化活性を含む修飾などの体内の多様な活性のいずれかを報告するために使用され得る。そのような活性により、体自体が試料を準備する。身体由来の試料でアッセイを実行すると、さまざまな個別のレポートが測定される。これは、体内で特定の活性が発生したことを示している。プロアナライトは、複数の酵素または状態の活性センサーを含むように設計されており、これらを総合すれば、関心対象の生理学的状態または疾患が示される。
【0034】
本開示の方法は、疾患状態で活性化する固有な一連の酵素を利用する。その疾患特異的な酵素のセットには、一般に、疾患に冒された体内の部位で活性が増加した酵素が含まれるが、このセットは活性が低下した1またはそれを超える酵素も含み得る。疾患特異的な酵素のセットは、活性センサーに作用して検出可能なレポーターを放出する。検出可能なレポーターのアイデンティティと量により、体内の器官、部位、または体内区画における特定の疾患または生理学的状態の存在または段階に関する高感度で正確なレポートが提供される。したがって、本開示は、身体を試料プレップビヒクルとして使用する方法101を提供する。
【0035】
方法101には、特定の器官または組織の部位または体内区画において疾患に特異的な活性レベルを提示する酵素のセットを決定105することが含まれる。これらの酵素の活性センサーを含むプロアナライト組成物が作製され、方法101には、プロアナライトを患者の身体に導入110することが含まれる。身体は、部位特異的な方法でインサイチュでプロアナライトを処理115して、検出可能なレポーターを放出することができ、方法101には、患者の身体から試料を採取117し、試料中の検出可能なレポーターを測定129して、患者の状態を特定することが含まれる。好ましくは、プロアナライトは、複数の活性センサーを含む組成物として導入110される。
【0036】
方法101には、本開示の活性センサーを使用して試験される活性または状態を決定するステップも含まれてよい。そのような活性または状態には、結合(例えば、競合的結合)イベントまたは条件;機械的、代謝的、または化学的条件に起因し得る細胞損傷;化学的、機械的、または代謝的条件に関連するタンパク質の立体構造変化;およびタンパク質修飾が含まれる。例えば、活性センサーは、同族受容体に結合するペプチド側鎖を含めることにより、競合的結合を調べることができる。過剰の天然に存在するリガンドの存在下では、活性センサーは結合せず、代わりにプロテアーゼによる切断が利用可能である。別の実施例では、活性センサーには、体内の条件に応じて異なる立体構造をとるペプチド側鎖が含まれる。第1の立体構造では、ペプチドは切断されてレポーターを放出し、第2の立体構造では、ペプチドは切断されない。このように、レポーターの検出は、組織内の局所的な条件を報告する。同様に、活性センサーは、翻訳後修飾の特定の特徴を調べることができる。例えば、活性センサーが広範囲にグリコシル化またはリン酸化されている場合、レポーターシグナルの検出がそのような修飾活性のレベルを示すことができるように、活性センサーを切断して、検出可能なレポーターを放出することができなくなることがある。
【0037】
図2は、本開示の方法において有用な組成物201を示す図である。この組成物には複数の活性センサー200が含まれる。好ましくは、組成物は複数の活性センサーを含み、その各々は、組成物が複数の同族酵素の存在下で検出可能なレポーターを放出するように、複数の検出可能なレポーターを含む。必要に応じて、各活性センサーは、プロテアーゼによって切断されると、ペプチド断片を検出可能なレポーターとして放出する、いくつか(例えば、8)の実質的に同一のポリペプチドを有する。組成物は、各々が1つのプロテアーゼに特異的なポリペプチドをもつ複数の活性センサー200を有することにより、複数の異なる酵素の検出可能なレポーターを放出し得る。好ましくは、組成物201は、複数の酵素に遭遇すると検出可能なレポーターを放出し、その酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれ得る。それらの酵素は、疾患状態に特異的ではない少なくとも1つの酵素をさらに含み得る。すなわち、組成物には、「対照」として、または疾患に特異的に関連しない1またはそれを超える酵素のベースライン活性を報告するために、特定の活性センサーが含まれてよい。組成物201はまた、必要に応じて、薬剤的に許容され得る溶液またはゲルなどの適した担体211も含む。
【0038】
図3は、本開示の実施形態による活性センサー200の詳細図を示す。各活性センサー200には、少なくとも1つの検出可能なレポーター210が含まれる。検出可能なレポーターは、担体205に連結されていてよい。検出可能なレポーターは、例えば、担体205に連結されていてよいポリペプチド207として提供され得る。ポリペプチド207には、好ましくは、切断部位221(例、プロテアーゼによる切断を受けやすい切断可能な結合)が含まれる。活性センサー200には、必要に応じて、体内のプロセスによって除去されるプロアナライト部分215が含まれる。
【0039】
好ましくは、活性センサー200は複数の検出可能なレポーター210を含み、検出可能なレポーターは、ポリペプチド207を切断部位221で切断する酵素の存在下、ペプチド断片として放出される。切断部位221が、疾患状態に関連して高い活性を示す酵素に特異的である場合、活性センサー200は、患者から採取され得る試料中に、検出可能なレポーター210を放出する。試料中にレポーターが検出されることは、酵素の活性を示し、したがって疾患を示す。上述のように、組成物201には、複数のセンサー200が含まれ得;各センサー200には、複数の検出可能なレポーター210が含まれ得;各レポーターには、そのそれぞれの同族酵素により切断されてペプチド断片を放出するポリペプチド207が含まれ得る。必要に応じて、各レポーター210は担体205に連結されている。担体205は、必要に応じて、例えば、例えばポリエチレングリコール、脂質、ポリ乳酸、複合炭水化物、ペプチドグリカン、アガロース、セルロース、その他の生体適合性ポリマー、またはそれらの組合せなどを含む任意の適した生体適合性ポリマーの1つの複合体などの1つまたは複数のポリマーサブユニットで構成されていてもよい。
【0040】
図4は、特定の実施形態において有用な担体301を示す。一部の実施形態では、担体は、約20~50kDaの間の質量を有するポリマーを含む。担体には、各レポーターが共有結合しているマルチアームポリエチレングリコール(PEG)足場が含まれてよい。示される担体には、8アーム、40kDaのPEG足場が含まれる。したがって、特定の実施形態では、本開示は、例えば、1つまたは複数のポリマーサブユニットを含む担体に検出可能なレポーターが連結されている活性センサーを含むプロアナライトを提供する。例えば、担体はマルチアームPEG足場(例えば、約40kDaの8アームPEG)であってよい。
【0041】
好ましくは、組成物201には複数の活性センサー200が含まれ、その各々には、組成物が複数の同族酵素の存在下で検出可能なレポーターをペプチド断片として放出するように、複数の検出可能なレポーターが含まれる。必要に応じて、各活性センサー200は、プロテアーゼによって切断されると、ペプチド断片を検出可能なレポーターとして放出する、いくつか(例えば、8)の実質的に同一のポリペプチド側鎖を有する。組成物は、各々が1つのプロテアーゼに特異的なペプチド側鎖をもつ複数の活性センサーを有することにより、複数の異なる酵素の検出可能なレポーターを放出し得る。好ましくは、組成物は、複数の酵素に遭遇すると検出可能なレポーターを放出し、その酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれ得る。それらの酵素は、疾患状態に特異的ではない少なくとも1つの酵素をさらに含み得る。すなわち、組成物には、「対照」として、または疾患に特異的に関連しない1またはそれを超える酵素のベースライン活性を報告するために、特定の活性センサーが含まれてよい。
【0042】
活性センサーは、体内の組織または体液の生理学的状態を調べるのに有用である。関心対象の多数の生理学的状態、例えばさまざまな特定の疾患などは特定の酵素の発現および活性よって特徴付けられる。一般に、本発明は体内の活性を検出する方法を提供する。この方法には、プロアナライトを患者の身体に導入すること;身体にプロアナライトを部位特異的な方法で処理させてシグナルを得ること;および、シグナルを検出して、患者内の1またはそれを超える活性を特定することが含まれる。シグナルには、身体がプロアナライトと相互作用する場合に提供される任意の検出可能なシグナルが含まれ得る。例えば、体内でプロアナライトを処理すると、ヌクレアーゼ磁気共鳴の読み取り値に特徴的な変化が現れたり、患者の心拍数の測定可能な変化が生じたりする場合がある。シグナルには、例えば、患者の呼吸、汗、または血液のクロマトグラフィーによって検出可能な化合物または分子が含まれ得る。例えば、吸入されたプロアナライトは、肺の中の特定の活性下で揮発性有機化合物(VOC)を放出し、そのVOCが呼気試験によって検出される場合がある。この方法には、患者の体から試料を採取し、試料中のシグナルを測定して、患者の活性を特定することが含まれ得る。
【0043】
これらの方法の特定の実施形態では、シグナルには、検出可能なレポーターのプロアナライトからの放出が含まれる。これらの検出可能なレポーターには、状態下で体内の部位に存在するそれぞれの複数の酵素によるプロアナライトの切断時に放出される複数のペプチド断片が含まれてよい(例えば、検出可能なレポーターの測定に、試料中のペプチド断片の定量化が含まれるように)。身体は、症状に固有の複数の酵素を用いてプロアナライトを処理してよい(例えば、酵素的切断によって検出可能なレポーターを放出する)。
【0044】
身体は、酵素的切断によってプロアナライトを処理して、検出可能なレポーターを放出し、検出可能なレポーターは、試料のアッセイによって検出可能な複数のペプチド断片であり得る。任意の適した試料を身体から採取し、レポーターについてアッセイすることができる。例えば、試料には、呼気、尿、血液、血漿、血清、リンパ液、唾液、便、痰、汗、毛髪、または任意のその他の適した物質が含まれ得る。好ましい実施形態では、試料は尿試料である。試料は、レポーターに適した任意の方法または技術によってアッセイされてよい。適したアッセイには、質量分析、電気泳動、免疫アッセイ、蛍光プローブ、その他のアッセイ、およびそれらの組合せが含まれる。
【0045】
一部の実施形態では、プロアナライトは、体内の他の作用または相互作用を示すシグナルを生じる。例えば、プロアナライトは、プロアナライト自体の投与によって起こる何かから生じる活性を示すシグナルを生じることがある。プロアナライトを投与することにより、免疫応答、1またはそれを超える結合イベント、凝固または他の架橋イベント、あるいはプロアナライトに対する立体的または化学的応答が誘発される可能性がある。一部の実施形態では、プロアナライトは、競合的結合イベントを報告するために使用される。例えば、活性センサーからのシグナルが活性の速度を与えることに留意して、酵素の反応速度論を推測したり、他の(例えば、天然に存在する)基質の競合的結合を、多数の測定で検出したりすることができる。これらの方法を使用してタンパク質修飾に関連する活性を検出してもよい。例えば、レポーターの糖化イベントまたはリン酸化(または内因性タンパク質/分子のリン酸化などの誘導)は、試料中で直接検出することもでき、例えば、修飾によって活性センサーが活性の影響を多少受けやすくなる場合には、推測することもできる。二次的な相互作用を使用して、特定の薬剤の細胞への影響などの特定の条件の読み出しを得ることができる。例えば、細胞を死滅させる活性(シグナルA)と、細胞が死滅することにより生じるシグナル(シグナルB)は、互いに非常に近接して起こる場合があり(シグナルA+シグナルBとなる)、これはAとBが空間的に異なる場合とは異なるシグナルである。特定の実施形態では、活性センサーは酵素によって体内で切断されて、ペプチド断片などの検出可能なレポーターをシグナルとして放出する。
【0046】
これらの酵素が活性センサーを切断して検出可能なレポーターを放出する場合、身体由来の試料中でこれらのレポーターが検出されることは、組織の生理学的状態の存在を示す。注目すべきことに、多くの疾患は、他の症候が現れるよりも前に酵素活性が調節不全になる作用機序を伴う。例えば、腫瘍細胞は、細胞が検出可能な腫瘍に増殖する前に、そしてこれらの腫瘍細胞が、液体細胞診によって検出可能であり得るレベルの腫瘍DNA断片を放出する前に、細胞外組織リモデリング酵素を放出して細胞外マトリックスを切断するであろう。したがって、特定の部位での細胞外プロテアーゼの正確な検出は、重要な生理学的状態を示す。
【0047】
本開示は、容易に検出可能な疾患マーカーを含む試料を提供するための試料調製ステップに身体を使用する分析方法を提供する。プロアナライト組成物が設計および作製または入手され、プロアナライト組成物が対象に投与される。次に、身体は、部位特異的な方法でインサイチュでプロアナライトを処理することができる。身体から採取した試料には、プロアナライトから放出された検出可能なレポーターが含まれる。検出可能なレポーターには、体内の罹患部位でプロアナライトが酵素処理された生成物が含まれる。
【0048】
本開示の方法には、罹患した組織または体内区画で酵素の疾患特異的パネルの基質をプロアナライトが提示するように、プロアナライトの組成を決定105することが含まれる。身体的処理は、それらの酵素が、罹患した組織または部位以外の場所の代表的な酵素グループでその疾患に特徴的な活性レベルを示さないという点で部位特異的である。例えば、調べた疾患が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を伴う場合、プロアナライトには、NASHで差次的に発現することが示されている複数のプロテアーゼの基質が含められるであろう。したがって、組成物には、いくつかの(例えば、5、または8、または10、または12の)FAP、MMP2、ADAMTS2、フーリン、MMP14、MMP8、MMP11、CTSD、CTSA、MMP12、MMP9、およびST14に特異的な活性センサーが含まれ得る。NASHに罹患した肝臓に入った場合にのみ、プロアナライトは、体内の部位特異的な方法でインサイチュで処理され、対応する基質が検出可能なレポーターとして身体から得られる試料中に放出される。
【0049】
さらに、下記のように、本開示の特定の実施形態は、体内のプロセスを使用して、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達する。任意の適した身体的プロセスを利用して、活性型の活性センサーの送達を助けることができる。例えば、ブロッキング基が切断されることもあり、活性センサーが特定の細胞または分子に結合することもあり、プロアナライトの形態が体内の内因性または外因性の酵素の作用を受けて、活性型の活性センサーに変換されることもある。特定の実施形態では、プロアナライトは体内で1またはそれを超える濾過ステップを受ける。
【0050】
図5は、肝臓515内の活性センサーの収集、および尿531内の検出可能なレポーターの収集を助ける体内のサイズ濾過プロセスを示す。示される実施形態では、活性センサーを含むプロアナライト501が対象に送達される。活性センサーには検出可能なレポーターが含まれ、活性センサーが肝臓に集まるような分子量を有するように設計されている。例えば、8つのポリペプチド側鎖をもつ8アーム、40kDaのPEG足場を使用することにより、組成物は肝臓内でプロテアーゼ基質を提示することができる。
【0051】
身体は、プロアナライト501をインサイチュで処理115することができる。その処理では、一連の疾患関連酵素が活性センサーを切断してペプチド断片を検出可能なレポーターとして放出する。肝臓の1またはそれを超える酵素により活性センサーを切断して検出可能なレポーター210を循環に放出した後、糸球体濾過により、検出可能なレポーターを尿531に放出する。予備的な結果は、尿531中の検出可能なレポーター210の検出が、組成物501を患者500に送達した後、数時間以内に行われ得ることを示している。身体による処理のために、身体からの採取117された試料を(例えば質量分析、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、またはそのような他の適したアッセイによって)直接アッセイして、検出可能なレポーターを測定し、疾患の存在および/またはステージを正確に報告することができる。
【0052】
図6は、本開示による組成物201を決定するステップを示す。好ましくは、組成物201は、活性センサー200の完全なセットを含むライブラリー605から引き出すことによって作製される。特定の実施形態では、ライブラリー605内の各活性センサー200には、複数の同一のポリペプチド207が含まれる。
【0053】
各ポリペプチド207は、体内処理によって切断されると、ペプチド断片を放出する。好ましい実施形態では、試料中の検出可能なレポーターには、状態下で体内の部位に存在するそれぞれの複数の酵素(ライブラリー605のメンバーに対応する)によるプロアナライトの切断時に放出される複数のペプチド断片が含まれる。好ましくは、検出可能なレポーターを測定することには、試料中のペプチド断片を定量化することが含まれる。これは、例えば、質量スペクトルのピーク高さを測定することによって行うことができる。組成物は、好ましくは、関心対象の疾患または症状に特異的であるように選択されたライブラリー605の複数のメンバーを含み、その結果、身体は、状態に固有の複数の酵素を用いてプロアナライトを処理する。身体は、酵素的切断によってプロアナライトを処理して、検出可能なレポーターを構成するペプチド断片を放出する。検出可能なレポーターは、試料のアッセイにより検出可能な複数のペプチド断片を含む。
【0054】
ライブラリー605内の各エントリーは、同一または本質的に同一であり得る任意の数(例えば、数千)のコピーによって表されてもよい。示されるように、ライブラリー605は、580個の固有の活性センサー200を有する。それぞれは、適した容器に保存された何千ものコピーで存在し得る。例えば、一部の実施形態では、各ライブラリーメンバーの数百または数千のコピーは、エッペンドルフ社(コネチカット州エンフィールド)によってEPPENDORF FLEX-TUBESの商標で販売されている1.5mLマイクロ遠心管などの遠心管のような独自の容器に保存される。関心対象の所与の生物学的または生理学的状態について、関連するプロテアーゼのプロファイル615が開発または取得される。
【0055】
関心対象の生理学的状態下で差次的に発現するこれらの酵素のプロファイル615が得られ、そのような酵素は、プロファイル615に含まれていることが好ましい。しかし、プロファイル615は、関心対象の組織または体内区画において構成的に発現し、活性であると想定される1またはそれを超える対照酵素などの他の酵素も含んでいてもよい。対照酵素は、疾患関連酵素の活性レベルを較正または正規化するためのバックグラウンド活性レベルを与えることができる。さらに、プロファイルには、関心対象の生理学的状態の頻繁なまたは可能性のある併存疾患に特異的であると理解されている1またはそれを超える酵素が含まれていてもよい。一例では、肝疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝細胞癌、および肝硬変)は、しばしば肥満に関連していることが理解されている。したがって、関心対象となる生理学的状態が肝臓疾患または肝臓疾患のステージである場合、プロファイル615には、肥満に関連して特異的かつ差次的に発現することが知られている酵素を含めることができる。また、プロファイル615には、妊娠または喫煙者の体内などの他の重要な条件下で差次的に発現する酵素を含めてもよい。
【0056】
ロファイル615内の酵素に特異的な活性センサー200は、一緒に構成されて本開示の組成物201を形成する。したがって、方法101は、組成物が複数の同族酵素の存在下で検出可能なレポーターを放出するように、各活性センサーが複数の検出可能なレポーターを含む活性センサー200を含む、組成物201を設計105することを提供する。身体でプロアナライトを処理することが可能になると、インサイチュでの処理により、体内の他所でまたは疾患の不在下で検出可能なレポーターが放出される量とは明らかに異なる量で検出可能なレポーターが放出される。最も好ましい実施形態では、プロアナライトは、複数の同族酵素の存在下で、検出可能なレポーターを放出する複数の活性センサーを含む組成物として投与される。検出可能なレポーターには、複数の別個のペプチド断片が含まれる。各活性センサーには、酵素によって切断されて検出可能なレポーターを放出する複数のポリペプチドが含まれることが好ましい。好ましくは、酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含められるが、疾患状態に特異的でない少なくとも1つの酵素を酵素に含めることも酵素に有益であり得る。これらの酵素には、疾患状態に関連して高い活性を示す1またはそれを超える酵素が含まれる。好ましい実施形態では、酵素には、疾患状態に特異的ではない少なくとも1つの酵素も含まれる。酵素によって活性センサーが切断されると、検出可能なレポーターが身体試料に放出される。
【0057】
任意の適した試料を採取し、任意の適したアッセイにより、検出可能なレポーターについてアッセイしてもよい。センサー200の局在性の性質に応じて、適した身体試料には、血液、尿、汗、リンパ液、生検、細針吸引液、呼気、スワブ(例えば、頬のスワブ)、涙、粘液、脳脊髄液、組織試料、切除した腫瘍試料、毛髪または爪のクリッピング、軟骨切除物、滑液(例えば、変形性関節症に罹患した、または罹患したと疑われる関節からのもの)、または当技術分野で公知の任意のその他の適した試料が含まれる。検出可能なレポーターを検出するための適したアッセイには、例えば、酵素結合免疫吸着測定法、その他の免疫ブロットアッセイ、質量分析、二次イオン質量分析、ゲル電気泳動、二次元電気泳動、クロマトグラフィー、HPLC、ビーズの捕捉および分離(例えば、検出可能なレポーターに結合する磁気ビーズを使用)、または任意のその他のアッセイが含まれる。ポリペプチド配列の設計により分析物がそれぞれ固有の質量を有する場合、尿試料で質量分析を実行して、患者内の生理学的状態の有無を示す質量スペクトルの有無を明らかにすることができる。
【0058】
図7は、検出可能なレポーター210を測定129することができる、アッセイ結果701を示す。図示される実施形態では、アッセイ結果701は、患者由来の試料から得ることのできる質量スペクトルである。鋸歯状の線は、活性センサー200から放出されたペプチド断片を表し、それぞれが特徴的な質量対電荷比(m/z)を有する。質量スペクトルに示されたピークの存在は、プロテアーゼが肝臓に存在していて、レポーターを切断したことを示している。
【0059】
特定の実施形態では、ELISAまたはラテラルフローアッセイでのディップスティックに見出され得る紙片のように、目に見える結果をもたらすアッセイが実行される。検出可能なレポーターを検出するのに適したアッセイには、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ、または他の免疫ブロットアッセイが含まれる。例えば、試料が尿の場合には、1つまたは複数の検出可能なレポーターの存在下で色の変化を受ける紙片を備えたディップスティックが提供され得る。そのような色の変化は、画像化を介して、例えば、そのようなアッセイの画像結果のコンピュータ分析によってさらに分析することができる。したがって、本開示の方法には、患者にプロアナライトを投与するステップが含まれてよく、この際、体内でのインサイチュでの処理により、患者の健康状態に比例してプロアナライトから検出可能なレポーターが富化される。次に、検出可能なレポーターを患者由来の試料中で測定し、その後、測定されたレポーターを患者の健康状態と相関させることができる。一部の実施形態では、検出可能なレポーターを測定することは、試料を画像化すること、および、画像化ステップで得られる画像を分析すること(例えば、コンピュータで)を含む。特定の実施形態では、測定するステップは、ELISAまたはラテラルフローアッセイのストリップに試料を分配すること、モバイルデバイスを使用してストリップを画像化すること、およびモバイルデバイス上のアプリを使用して分析ステップを実行することをさらに含む。したがって、本発明の方法は、プロアナライトを含む組成物を使用して、ELISA試験、ディップスティック、またはラテラルフローアッセイなどのエクスビボ検出アッセイ、およびスマートフォンアプリなどの画像解析ツールを実行することができる。アプリ付きのスマートフォンを使用して、エクスビボ検出アッセイ結果の写真を撮影し、その画像を分析してレポートを提供することができる。
【0060】
任意の適した疾患または生理学的状態は、例えば、癌、変形性関節症、病原体による感染、肝疾患、その他、およびそれらの組合せを含む方法に従って活性をマッピングされてよい。試料中の検出可能なレポーターの検出129は、決定された酵素が標的部位で活性であることを示す。好ましくは、方法101には、標的部位の1またはそれを超える酵素の活性または活性レベルを示すか、あるいは、生理学的状態または医学的状態を示すレポートを提供することが含まれる。
【0061】
図8は、本開示の方法101を使用して提供され得るレポート801を示す図である。好ましくは、読み出し情報701の結果は、コンピュータを使用して自動的に数値化される。読み出し情報の結果は、患者ファイルまたはデータベースに読み込まれてよい。コンピュータを使用して、患者の結果をレポート801に作成することができ、レポートは、紙出力、デジタルファイル、またはディスプレイとして提供され得る。
【0062】
本開示の組成物201は、好ましくは、関心対象の生理学的状態に特異的である複数の活性センサー200を含み、活性センサーのセットは、1つまたは複数の対照活性センサーまたは併存疾患のためのセンサーも含むことができる。本開示は、組成物に含まれるべき活性センサー200を決定する方法を含む。センサーを決定する方法は、関心対象の所定の生理学的状態下でどの酵素のセットが差次的に発現するかを決定することを含み、さらに、それらの差次的に発現する酵素の代表的なサブセットを特定することを含み得る。ここで、代表的なサブセットは関心対象の生理学的状態の特徴として統計的に裏付けられている。
【0063】
図9は、ステージ2のNASHに特徴的な酵素を選択したデータを示す図である。一連の実験では、ステージ2のNASHの影響を受けることがわかっている組織は、対照組織と同様にRNA-Seqによる発現プロファイリングを受けた。得られるコード配列をデータベースに対して検索し(例えば、GenBankに対するBLAST)、NASHのステージ2で差次的に発現するすべての細胞外プロテアーゼを特定した。そのリストには、34個のプロテアーゼが含まれた:FAP、MMP2、ADAMTS2、フーリン、MMP14、GZMB、PRSS8、MMP8、ADAM12、CTSS、CTSA、CTSZ、CASP1、ADAMTS12、CTSD、CTSW、MMP11、MMP12、GZMA、MMP23B、MMP28、MMP7、ST14、MMP9、MMP15、ADAMDEC1、ADAMTS1、GZMK、KLK11、MMP19、PAPPA、CTSE、PCSK5、およびPLAU。この完全なリストから、その存在で生理学的条件の存在を識別する酵素のサブセットを特定することができる。任意の適した方法を使用してサブセットを選択することができ、これには、例えば、単に上位のいくつか(例えば、上位8個、上位10個、上位12個)を抽出することが含まれる。その他の方法には、全リストからブートストラップ・サンプリングを行うこと、およびサンプリングされたリストを全リストの結果に対して検証することが含まれる。特定の実施形態では、既知の結果をもつ対象の訓練データで学習される機械学習(ML)分類子が構築される。ML分類子は、酵素のサブセットを選択するために使用される。
【0064】
図9に示されるように、34個のプロテアーゼの全リストを使用して、対応する34個の固有の活性センサー200(各々が数百または数千コピーで存在する)を含む組成物201を構築する場合、その組成物は、0.996の曲線下面積(AUC)に示されるように高感度でNASHステージ2の存在を示すために有用である。機械学習分類子は、閾値の感度および特異度で疾患を特定するプロテアーゼのサブセットを選択し、このサブセットは、プロテアーゼ基質の対応するセットが組成物201の活性センサー200に構築され得るほど小さく、患者に投与されると疾患組織で切断されて、疾患の存在を示す検出可能な分析物を放出する。ここで、ML分類子は12個のプロテアーゼ(FAP、MMP2、ADAMTS2、フーリン、MMP14、MMP8、MMP11、CTSD、CTSA、MMP12、MMP9、およびST14)を特定した。これらのプロテアーゼを含む組成物が患者に投与されると、患者由来の試料が、対応する検出可能なレポーター210についてアッセイされた。検出可能なレポーターの存在は、NASHステージ2の陽性の特定に相関していた。より少ないプロテアーゼ基質のサブセットを使用する場合でさえ、この組成物は、0.998のAUCを与える非常に高い特異度で疾患を同定するのに有用であった。統計調査の複製により、分類精度と組成物201に含めたプロテアーゼの数との関係が明らかになる。
【0065】
図10は、組成物201に含まれるプロテアーゼの数に対する分類精度を示す図である。その証拠は、プロテアーゼの数が約10に達すると精度が安定することを示す傾向がある。本開示の方法は、疾患特異的な方法で活性をマッピングするための分析方法を提供する。本開示の方法および組成物を使用して、様々な疾患または医学的状態のいずれかをマッピングすることができる。好ましい実施形態では、疾患組織において活性であり、正常組織と比較して差次的に発現しやすいプロテアーゼが特定され、それらのプロテアーゼの切断基質を含む活性センサー200が構築される。関心対象のいかなるプロテアーゼであっても、当業者は、そのプロテアーゼによって切断される基質を決定できる。プロテアーゼの同族基質は、学術文献または科学研究データベースから決定することができる。例えば、タンパク質データバンク(PDB)には重要なタンパク質のほとんどまたは全てのエントリーが含まれており、PDBのエントリーには、プロテアーゼの基質配列を示す完全なレポートへのリンクが含まれている。一例では、マトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)は、PDBのエントリー番号4JUであり、そのエントリーは、基質配列を含む。本開示の組成物201は、好ましくは、約10の(例えば、7、8、9、10、11、12の、またはそれを超える)プロテアーゼの活性を調べるように設計されており、ライブラリー1105から活性センサー200を選択することによって作製することができる。ライブラリー1105内の各活性センサー200は、プロテアーゼに特異的であってよく、PEGなどの1またはそれを超える生体適合性高分子などの足場に同族基質を連結することによって作製されてもよい。
【0066】
本開示は、体内の特定の部位または区画への標的化された活性センサーの効率的かつ特異的な送達のための組成物および方法を提供する。本開示の活性センサーは、プロアナライトの形態で対象に送達され、身体による処理を受けることができる。体内のプロセスは、活性型の活性センサーを、組織内の特定の部位または血液もしくはリンパ液などの体内区画に提示するのに役立つ。投与された組成物、すなわち、プロアナライトは、例えば、サイズ濾過、ブロッキング基を除去するための酵素的もしくは化学的切断、受容体結合、または例えばエンドサイトーシス経路による細胞取り込みをはじめとする、任意の1つまたは複数の身体的プロセスによる体内処理を受けやすい可能性がある。本開示の実施形態は、試料の調製に身体を採用する。組成物は、体内に送達されてよく、その後、自然の身体的プロセスが組成物の一部に作用するかまたは組成物の一部を変化させて、組成物は意図された場所で活性となる。
【0067】
さらなる特徴および実施形態は、本開示の範囲内である。例えば、本開示の一部の態様は、体内のプロセスを使用して、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達する方法を提供する。この方法には、検索される組織または身体区画内の標的部位と、標的部位で活性化している場合に疾患などの関心対象の症状または生理学的状態を示す、1またはそれを超える酵素とを決定することが含まれ得る。この方法は、組成物を対象の身体に送達することを含む。組成物には、好ましくは、決定された酵素が作用すると1またはそれを超える検出可能なレポーターを放出する(例えば、酵素の基質として生成する)少なくとも1つの活性センサーが含まれる。体内のプロセスは、活性型の活性センサーを標的部位に提示するために使用される。呼気試料、尿試料、または汗、血液、もしくは組織の試料などの試料が身体から採取され得る。試料中の検出可能なレポーターが検出されることは、決定された酵素が標的部位で活性であることを示す。好ましくは、方法には、標的部位の1またはそれを超える酵素の活性または活性レベルを示すか、あるいは、生理学的状態または医学的状態を示すレポートを提供することが含まれる。体内の特定の酵素が作用すると検出可能なレポーターを放出する活性センサーは、プロアナライトとして提供される。体内のプロセスは、活性センサーを活性型で関心対象の標的部位に送達する。このプロセスは、活性センサーが切断可能な形で標的部位の酵素にレポーターを提示するために行う必要のある身体の自然なプロセスである。
【0068】
活性センサーをプロアナライトの形態で送達し、「試料プレップとしての身体」を利用して、活性センサーの活性形態を標的部位に配置することにより、本発明の方法は、本発明の方法は、活性センサーの早期またはオフターゲット切断および検出可能なレポーターの放出を回避する。検出可能なレポーターのオフターゲット放出が回避されるため、レポーターは標的部位で酵素が作用した場合にのみ検出される。本開示の方法は、生理学的状態または症状が特定の酵素の活性によって特徴付けられる場合に、対象内の部位の生理学的状態または状態を決定するのに有用である。例えば、腫瘍は成長するためにプロテアーゼを周囲の組織に排出することが知られている。同様に、肝疾患のさまざまな病因は、病気が段階を経て進行するにつれて、肝臓のプロテアーゼ活性のレベルが高くなることを特徴とする。別の実施例では、変形性関節症の発症は、罹患した関節のプロテアーゼ活性の上昇によって示される。これらの例に共通するのは、本開示の組成物を使用して、関心対象の状態、すなわち、腫瘍の出現、肝疾患のステージ、または変形性関節症の発症を具体的に示し、特徴付けることができるということである。
【0069】
体内で発生する他のプロセスを使用して、活性センサーを収集し、関心対象の部位に送達することができる。例えば、体内で、本開示の組成物は、酵素的または化学的切断を受けて、ブロッキング基、特定の受容体もしくは分子への結合、または例えばエンドサイトーシス経路による細胞取り込みを除去することができる。
【0070】
図11は、本開示の方法において有用な活性センサーを示す図である。活性センサーには、分子足場(例えば、PEGなどの1またはそれを超える生体適合性分子サブユニット)などの担体1105に必要に応じて連結された、複数の検出可能なレポーター1110が含まれる。さらに、活性センサーは、体内の同族受容体分子に結合する1つまたは複数の分子リガンド1115を含むように変更される。例えば、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)のリガンドまたは、成長因子のような受容体チロシンキナーゼのリガンドを含む、任意の適切なリガンド1115が存在してもよい。同族受容体に結合することにより、ニューロンの表面およびその近くなど、関心対象の特定の細胞型に活性センサーを局在化させることができる。
【0071】
図12は、本開示の方法において有用な活性センサー1200を示す図である。図示される実施形態では、活性センサー1200には、担体1205に連結された検出可能なレポーター1210が含まれ、活性センサー1200も抗体1215に連結されている。活性センサー1200が抗体1215の抗原に遭遇すると、活性センサー1200は効果的に抗原に結合する。抗原が細胞上の細胞表面タンパク質である場合、活性センサーは細胞に効果的に結合する。抗原に対して抗体を産生させ得る方法は当技術分野で公知であり、抗腫瘍の兆候を有する抗体が当技術分野で公知である。活性センサー1200には、抗体1215として、固形腫瘍用のニモツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、またはトラスツズマブ、あるいはその他の悪性腫瘍用のリツキシマブ、イブリツモマブ・ティウキセタン、オファツムマブ、オビヌツズマブ、ブレンツキシマブベドチン、モガムリズマブ、またはブリナツモマブなどの市販の抗体が含まれ得る。抗体1215は、特定の腫瘍、細胞、腫瘍細胞、または抗原に対して産生された抗体であってよい。抗体は、ファージディスプレイ/ファージ選択によって、参照により組み込まれるSorenson,2011,Nature Protocols 6:509-522の「シャドースティックセレクション(shadow-stick selection)」プロセスによって、または当技術分野で公知の他の方法によって産生することができる。参照により組み込まれる、Sanches-Martin,2017,Selection strategies for anti-cancer antibody discovery,Trends Biotechnol 33(5):292-301を参照されたい。
【0072】
抗体1215を含めることにより、抗体が腫瘍抗原に結合するときに、活性センサー1200が腫瘍に局在する。このプロセスには、抗体1215と抗原との間の相互作用によって、活性センサーを腫瘍に収集することが含まれる。本開示の組成物に抗体1215を有する活性センサー1200が含まれる場合、組成物は腫瘍活性の高感度レポーターを提供し、本開示の方法は、抗体/腫瘍相互作用によって活性型の活性センサーを腫瘍に局在させることを提供する。試料は、身体から採取されてよく(例えば、腫瘍からの細針吸引液の形態)、試料中に存在する切断された検出可能なレポーター1210の量が、腫瘍関連プロテアーゼの活性レベルについて報告する。
【0073】
腫瘍は、腫瘍微小環境で細胞外マトリックスタンパク質を分解する細胞外プロテアーゼを発現および放出することによって、成長し、周囲組織に侵入することが理解されている。この分解により、腫瘍は組織に浸透し、増殖できる。いかなる機構にも拘束されないが、細胞外プロテアーゼ活性は、新生細胞によって示される最も初期の現象の一つであり、液体細胞診などの他の既存の方法が腫瘍特異的活性を示すことができるよりも前に、本開示の組成物を用いて腫瘍特異的活性を明らかにすることができるといる理論を立てることができ得る。他の実施形態は、本開示の範囲内である。
【0074】
図13は、活性センサーの細胞内取り込みを誘導するための本開示の方法において有用な炭水化物に連結された組成物1301を例示する。組成物1301は、好ましくは、各活性センサー1300が1またはそれを超える炭水化物1315に連結されている複数の活性センサー1300を含む。図示される実施形態では、炭水化物1315は、検出可能なレポーター1310に連結されている。検出可能なレポーター1310は、ポリマー足場などの担体1305にさらに連結されていてよい。図示される実施形態では、方法101のプロセスには、特定の種類の細胞上の細胞表面受容体への炭水化物1315の結合、および特定の種類の細胞への活性センサーの取り込みが含まれる。例えばエンドサイトーシス経路による細胞取り込みは、活性センサー1300のための細胞の基本的な取り込み機構を使用する。これらのセンサー1300は、エンドソーム脱出を容易にし、活性センサー1300のサイトゾル送達を確実にするために炭水化物1315を使用する。エンドソーム脱出を促進するために、エンドソーム膜の孔形成、pH緩衝、エンドソームの脂質二重層への融合などのさまざまな機構が提案されている。いくつかの細胞表面受容体と相互作用する炭水化物は、活性センサー1300の標的リガンドとして機能することができる。炭水化物は、炭水化物との内因性レクチン相互作用に基づくグリコールターゲティングを可能にする。各活性センサー1300には、強い結合強度を達成するために複数の相互作用する炭水化物が含まれ得る。一例は、ガラクトースまたはガラクトース模倣物を肝細胞表面で高度に発現するエンドサイトーシス細胞表面レクチン受容体であるアシアロ糖タンパク質受容体へのリガンドとして使用する。DC-SIGNは、樹状細胞によって優先的に発現されるC型レクチン受容体である。例えば、LexおよびManLAMの炭水化物を使用して、樹状細胞による活性センサーの結合および取り込みを強化することができる。参照により組み込まれる、Friedman、2013、The smart targeting of nanoparticles、Curr Pharm Des19(35):6315-6329を参照されたい。一部の実施形態では、炭水化物の代わりに、活性センサーには細胞透過性ペプチドとしてペプチド側鎖が含まれる。
【0075】
ここで、本開示の態様は、体内のプロセスによって作用を受けると、活性型の活性センサーを体内の標的部位に送達するプロアナライトを含む組成物を提供する。活性センサー1300は、体内の1またはそれを超える酵素による切断を受けやすく、体からの試料において検出され得る検出可能なレポーター1310を放出する。検出可能なレポーターが試料に存在することは、1またはそれを超える酵素の活性が体内の標的部位にあることを示す。好ましくは、プロアナライトは、活性センサーが切断可能な形で標的部位の酵素にレポーターを提示するために行う必要のある身体の自然なプロセスによって作用を受けるように設計されている。例えば、プロアナライトには、体内の分子種と相互作用する機能ドメイン1315をもつ活性センサー1300が含まれ得る。そのような機能的ドメインには、例えば、細胞透過性ペプチド(CPP)が含まれ得る。CPP-活性センサー複合体の細胞質ゾル内移行に寄与する細胞侵入経路には、直接の細胞膜透過、およびエンドソームへの侵入後にエンドソームからの脱出が必要なエンドソーム経路が含まれる。細胞膜の直接通過の発生は、CPPのみを使用する場合に起こると理解されている。
【0076】
Pep-1ファミリーペプチド(チャリオットペプチドとも呼ばれる)は、細胞膜脂質との相互作用時にらせん構造を形成し、脂質二重層に挿入することにより、非エンドサイトーシス機構を同様に介して細胞への活性センサーの取り込みを促進することができる。また、Pep-1は、積荷の取り込みを増加させ、実際にエンドサイト小胞からの脱出を促進することができるが、細胞膜上でのペプチド-タンパク質複合体の取り込み機構は、マクロピノサイトーシスやクラスリン媒介エンドサイトーシスという典型的なエンドサイトーシスの経路に従っている。そのため、一部のCPPは細胞膜を直接透過することによって積荷分子の内部移行を促進する可能性があり、活性センサーに結合した他のCPPはエンドサイトーシス機構を利用して細胞に侵入する可能性がある。参照により組み込まれる、Raagel,2010,Peptide-mediate protein delivery-which pathways are penetrable,Biochimica et Biophysica Acta 1798:2240-2248を参照されたい。他の実施形態は本開示の範囲内にあり、それには、例えば、活性センサーを活性化するために体内で(例えば、酵素的にまたは化学的に)切断されなければならない、ブロッキング基またはその他の分子キャップを有するプロアナライトとして送達される活性センサーなどがある。
【0077】
図14は、本開示の方法において有用な組成物1401を示す図である。組成物1401は、好ましくは、各活性センサー1400が1またはそれを超えるブロッキング基1415に連結されている複数の活性センサー1400を含む。図示される実施形態では、ブロッキング基1415は、検出可能なレポーター1410に連結されている。検出可能なレポーター1410は、ポリマー足場などの担体1405にさらに連結されていてよい。
【0078】
一部の実施形態では、活性センサーは、分子キャップまたはブロッキング基に結合している。ポリペプチド鎖は、プロテアーゼに遭遇すると検出可能なレポーターを放出するプロテアーゼ基質であるが、ブロッキング基がプロテアーゼへの鎖のアクセスを立体的に妨げている。組成物は体内に送達され、活性型の活性センサーは、分子キャップまたはブロッキング基が遊離するまで、標的部位または区画に提示されない。この実施形態は、体内の酵素活性を利用してキャップまたはブロッキング基を放出させたり、身体の化学的環境によってキャップまたはブロッキング基を遊離させたりすることができる(例えば、キャップは消化器系を通過する際にのみ酸触媒加水分解によって放出される)。あるいは、キャップまたはブロッキング基を遊離させる外因性酵素は、組成物と外因性酵素の両方が患者に送達されて、互いに相互作用するまで、活性型の活性センサーが存在しないように送達することができる。他の実施形態は、本開示の範囲内である。
【0079】
図15は、本開示の方法において有用な脂質修飾組成物1501を示す図である。組成物1501は、好ましくは、各活性センサー1500が1またはそれを超える脂質1515に連結されている複数の活性センサー1500を含む。図示される実施形態では、脂質1515、検出可能なレポーター1510に連結されている。検出可能なレポーター1510は、ポリマー足場などの担体1505にさらに連結されていてよい。脂質を使用すると、活性センサーを 主に水性の環境での隔離および崩壊から活性センサーを保護することができ、脂肪組織での活性センサーの蓄積を促進することができ、または免疫検出およびクリアランスの際に活性センサー1500を助けることができる。一部の実施形態では、組成物1501は脂肪組織に送達される。検出可能なレポーター1510は、肥満症と併存することが知られている既知の併存疾患に関連して、発現が上昇することが確立されている疾患関連酵素の存在下で切断されやすい。組成物1501は、糖尿病、肝疾患、心疾患などの他の疾患状態を検出する(または検出しない、したがって除外する)ことにより肥満患者の全体的な健康を評価するのに有用であり得る。
【0080】
本開示の組成物および方法は、好ましくは、本明細書に示されるかまたは開示されるプロアナライトの1つまたは任意の組合せを使用し、活性センサー上の開示される修飾または側鎖には、任意の組合せが含まれ得る。本開示の組成物および方法は、関心対象の生理学的状態に関連するさまざまな活性ならびに1またはそれを超える追加の併存疾患を検出し、明確に報告するために使用され得る。例えば、肝疾患は一般的に肥満症と併存することが理解されている。本開示の組成物は、肥満症と肝疾患の両方に特有の活性を明確に報告することができる。本開示の方法は、肥満症、糖尿病、肝疾患、心疾患、その他、およびそれらの組合せなどの併存疾患に関する情報を提供するのに有用である。測定は、身体のさまざまな部分で行われてよい。身体のさまざまな部分のデータの統合または比較を使用して、特異度を与えることができる。例えば、本開示の複数の組成物は、一度にまたは連続して投与され得る。組成物は、異なる組織、器官、または身体区画に投与することができる(例えば、一方は肝臓に、もう一方は脂肪組織に投与する)。複数の組成物から異なるシグナルが得られ、それらのシグナル間の違いにより、体内で起こっている活性の関連性のある違いが明らかになる。
【0081】
併存疾患を説明するために、本明細書の組成物および方法は、身体のさまざまな部分の活性のシグナルを検出するために使用することができる。組成物および方法を使用して、例えば、肝臓および脂肪組織の活性を検出することができる。シグナルの違いは、関心対象の生理学的状態について何かを明らかにする可能性があり、異なる人々に異なる効果を示す薬物の効果を明らかにする可能性もある。したがって、本開示は、応答部位および応答の種類を理解することを提供する。本明細書に記載の組成物および方法は、オフターゲット効果に関する情報を提供し、器官の画像などの他の信号に直交し得るシグナルを提供する。一部のNASH薬は、線維もしくは脂肪アポトーシス(NASH)作用の1つを処置する。そのような薬物は、抗線維化剤または抗NASH剤であり得る。本開示の組成物は、適切な治療法の選択する際の助けとなるように、所与患者においてどの作用機序が支配的であるかを示すために使用され得る。患者が1つの支配的な作用機序の影響を受ける場合、本開示の組成物によってそのことが明らかにない、適した処置を投与することができる。
【0082】
別の例では、腫瘍を有する患者がチェックポイント遮断で処置される場合、その後に、腫瘍のサイズが大きくなることが一般的であることが見出されることもある。しかし、サイズの増加は、チェックポイント遮断の有効性または無効性に直接起因する可能性がある。チェックポイント遮断が効果的である場合、腫瘍細胞が破壊されている間でさえ、免疫細胞の流入により腫瘍のサイズが大きくなることがある。チェックポイント遮断がその患者に対して効果的でない場合、腫瘍サイズの増加は、単に腫瘍細胞の継続的な増殖によって引き起こされる可能性がある。本開示の組成物および方法は、それらの可能な結果を区別する活性の迅速かつ低侵襲性の試験を提供する。したがって、本開示の組成物および方法は、シグナルの生成を提供する(これには、検出可能なレポーターの放出が含まれ得る)。シグナルは、体内の特定の活性の速度および位置を示し、画像化を補完するものでもあり、直交するものでもある。
【0083】
本開示の方法はさらに、組成物に含める活性センサーを決定し、すなわち、本開示の組成物を使用して関心対象のプロテアーゼのどのセットがアドレス可能であるかまたはアドレスされるべきかを決定する、したがって、検出可能なレポーターに含める関連ポリペプチド207を選択するためのフレームワークを提供する。組成物による調査が意図される各プロテアーゼに対して、1つの特定の活性センサー200が含められてよく、その活性センサーは、好ましくは切断部位221(例、そのプロテアーゼに切断されやすい切断可能な結合)を含む複数(例えば、8個の)のポリペプチド207に連結されている。活性センサー200には、必要に応じて、体内のプロセスによって除去されるプロアナライト部分215が含まれる。そのような活性センサー200を使用して、方法101は、標的部位の活活性センサーから放出された検出可能なレポーターを検出すること121を含み、それによって標的部位での身体の活性を感知する。
参照による組み込み
【0084】
他の文書、例えば特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどへの参照および引用は、この開示を通して行われた。そのような文書は全て、あらゆる目的のためにその全文が参照により本明細書に組み込まれる。
等価物
【0085】
本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明のさまざまな変更点およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書に引用された科学文献および特許文献への参照を含む本文書の全内容から当業者に明らかとなるであろう。本明細書の主題は、その様々な実施形態およびその等価物において、本発明の実践に適合させることのできる重要な情報、例示、および手引きを含む。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】