(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】下降流反応器の炭化水素触媒転化方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
C10G 11/00 20060101AFI20220414BHJP
C10G 11/16 20060101ALI20220414BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C10G11/00
C10G11/16
C10G11/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544765
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 CN2020073675
(87)【国際公開番号】W WO2020156398
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】201910093270.4
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338628
【氏名又は名称】リー, チュンジュ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー, チュンジュ
(72)【発明者】
【氏名】リー, リー
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA01
4H129CA08
4H129CA10
4H129CA15
4H129CA25
4H129CA28
4H129CA29
4H129DA04
4H129KA02
4H129KB02
4H129KB10
4H129KC16Y
4H129NA20
4H129NA22
4H129NA26
4H129NA30
(57)【要約】
【課題】下降流反応器の炭化水素触媒転化方法及びその装置の提供。
【解決手段】本発明は下降流反応器の炭化水素触媒転化方法及びその装置を提供する。その具体的なプロセスとしては、予熱を行った後(又は予熱せず)に、炭化水素原料と再生剤冷却器からの低温再生剤が下降流反応器の入口端に入り、反応器に沿って下向きに流れて接触分解などの反応が発生し、反応オイルガスと触媒の混合物が反応器の末端に下降して迅速に分離し、触媒とオイルガスの迅速な分離を実現する。主な操作条件としては、反応温度は460~680℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒であり、触媒と原料の重量比(触媒/油比)は6~50である。分離された再生対象触媒(再生対象剤と略称する)は、ストリッピング装置によりストリッピングされた後、再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生温度は630~730℃に制御される。再生器からの再生剤が再生剤冷却器に入り200~720℃まで冷却され、下降流反応器に入り循環使用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器からの再生触媒は再生剤冷却器により冷却されて降温した後に下降流反応器に入り、炭化水素原料と入口端で混合し、接触し、下降流反応器内で炭化水素の触媒転化反応を行い、合流して下降流反応器の末端に下降して迅速に分離するようにされ、分離された再生対象触媒はストリッピングされた後に再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生された触媒は再生剤冷却器により冷却された後に下降流反応器に戻り循環使用されることを特徴とする下降流反応器の炭化水素触媒転化方法。
【請求項2】
前記下降流反応器の主な操作条件としては、反応温度は460~680℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒であり、触媒/油比は6~50であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
具体的なプロセスとしては、
1)予熱を行った後(又は予熱せず)に、炭化水素原料と再生剤冷却器からの低温再生剤が下降流反応器の入口端に入り、反応器に沿って下向きに流れて反応が発生し、反応オイルガスと触媒の混合物が反応器の末端に下降して迅速に分離し、触媒とオイルガスの迅速な分離を実現し、主な操作条件としては、反応温度は460~680℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒であり、触媒/油比は6~50であり、
2)分離された再生対象触媒は、再生対象剤ストリッピング装置によりストリッピングされた後、再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生温度は630~730℃に制御され、
3)再生器からの再生剤が再生剤冷却器に入り200~720℃まで冷却され、冷却後の再生剤が下降流反応器の入口端に入り循環使用されるか、又は、熱再生剤のバイパスが設けられ、一部の熱再生剤が前記冷再生剤と混合された後、混合再生剤が下降流反応器の入口端に入り循環使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記下降流反応器の反応温度は490~650℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.1~1.5秒であり、触媒/油比は8~40であることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
下降流反応器に入る再生剤の温度を調整することにより、下降流反応器の反応温度の最適化を実現することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記再生剤冷却器の下流に触媒混合緩衝空間が設置されており、前記触媒混合緩衝空間は、低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度は0.3m/s未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記下降流反応器の反応温度は、触媒/油比を調整することにより、又は/及び、冷再生剤の温度又は混合再生剤の温度を調整することにより制御されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記混合再生剤の温度は、冷熱再生触媒の比率を調整することにより独立して制御されるか、又は、前記冷再生剤の温度は、流動化媒体及び/又は加熱媒体の流量を調整することにより制御されるか、又は、流動化媒体及び/又は加熱媒体及び/又は再生器に戻る冷触媒の流量を調整することにより制御されることを特徴とする請求項5又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素原料は、水素化されたか又は水素化処理されていない任意の重油であり、直留ワックス油、コークス化ワックス油、水素化分解テールオイル、常圧残油、減圧残油、シェールオイル、合成油、原油、コールタール、サイクルオイル、オイルスラリー、脱アスファルト油、熱分解重油、粘度低下重油、ヘビーデューティディーゼル等のうちの一種、二種及び二種以上の混合物を含み、前記直留ワックス油又はコークス化ワックス油留分は、高密度シクロアルキル基又はシクロアルキル中間基ワックス油(留分油)を含み、フルカット又はそのうちの一部のナローカットであるか、又は軽質炭化水素原料であって製油所又は石油化学工場の様々なオレフィン含有炭化水素又は飽和液体軽質炭化水素であり、液化石油ガス、軽油等のうちの任意の一種又は一種以上の任意の割合の混合物を含み、前記液体軽質炭化水素はブテン、ペンテンを含有するC4、C5留分又はそれらの任意の割合の混合物であり、前記軽油はガソリン留分であり、直留ガソリン、凝縮油、接触分解ガソリン、熱分解ガソリン、粘度低下ガソリン、コークス化ガソリン、分解によるエチレンの製造におけるガソリンを含むガソリンのうちの一種、二種、複数種及びそれらの任意の割合の混合ガソリンを含み、フルカットのガソリン又はそのうちの一部のナローカットであるか、又はディーゼル留分であり、接触分解ディーゼルを含み、フルカットのディーゼル又はそのうちの一部のナローカットであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
単独で実施するか、又は、前記下降流反応器はライザー反応器と結合して、気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置又は気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置を採用することを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
下降流反応器、迅速分離装置、再生対象剤ストリッピング装置、再生器、再生剤冷却器を含み、前記下降流反応器は気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置であるか又は気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置であることを特徴とする下降流反応器の炭化水素触媒転化装置。
【請求項12】
前記再生剤冷却器の下流に触媒混合緩衝空間が設置されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本願は2019年1月30日に提出された「下降流反応器の炭化水素触媒転化方法及びその装置」という名称の中国特許出願CN201910093270.4の優先権を享受することを請求し、該出願の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<技術分野>
本発明は炭化水素の触媒転化方法に属し、特に下降流反応器を利用して炭化水素の触媒転化を行うことに関する。
【背景技術】
【0003】
原油価格の継続的な上昇、軽質油への需要の継続的な増加、環境規制の日々の強化により、接触分解技術を利用して重質原料油を加工することにより、よりクリーンな燃料製品を製造すると同時に接触分解装置自体の排出量を低減することは技術開発のホットスポットとなっている。
【0004】
ライザー接触分解反応過程において、予熱された原料は再生器からの高温再生触媒と接触し、気化して反応するようにされており、反応時間は約2~3秒である。研究によると、ライザーの出口での触媒活性は初期活性の1/3程度のみである。反応は1秒間程度行い、触媒の活性は50%程度低下する。ライザー反応過程で生成されたコークスが触媒表面及び活性中心に堆積するため、触媒の活性が急激に低下し、触媒作用が大幅に低下し、熱分解反応が多くなり、より多くのドライガス及びコークスを生成する。
【0005】
ライザー反応器及び下降流反応器はそれぞれ自身の利点を有する。ライザー反応器は触媒の濃度が高く、気固接触面積が大きく、気固接触効率が高いなどの利点を有するが、その気固が合流して重力場と逆向きに流動するため、ライザー内で軸径方向の流動が不均一であり、触媒の滑落と逆向混合が大きく、滞留時間の分布が不均一である。それに対して、下降流反応器は気固が合流して重力場に沿って流動し、径方向の流動がより均一であり、触媒が軸方向に逆向混合せず、粒子濃度及び速度の径方向分布が上昇流式のライザーより明らかに改善され、特に、残油の深度触媒転化、触媒熱分解、ガソリンの触媒分解によるオレフィン製造等のような超短接触(反応)時間(ライザーに比べて一般的に1~3倍短縮)、超大触媒/油比(ライザーに比べて一般的に1~3倍増大)の触媒転化反応に適し、触媒の初期活性を十分に利用し、軽油の収率を向上させ、ドライガスとコークスの生成を低下させることができる。
【0006】
そのため、国内外の研究は一般的に下降流反応器の入口構造の開発、気固の迅速分離及び結合ライザー反応器の開発、並びに高活性触媒の開発等の方面に集中し、原料と触媒の入口端での混合を強化し、反応の総転化率及び選択性を向上させるようにしている。特許文献1には、気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置が開示されている。特許文献2には気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置が開示されている。
【0007】
研究によると、下降流反応器中の触媒濃度を向上させると、下降流の触媒転化反応過程の転化率及び反応選択性を向上させることができ、それにより高い目的製品の収率が得られる。しかしながら、どのように触媒/油比を向上させるかという技術的解決手段又は措置の研究及び開発成果の報告がない。
【0008】
実際に、コークス燃焼効率及び再生効果を向上させるためには、一般的に高い再生温度(例えば700~730℃)を採用する必要があり、したがって再生触媒(再生剤と略称する)の温度がいずれも高く、下降流反応器システムの熱量バランスに必要な再生剤の温度よりもはるかに高くなる。すなわち、触媒/油比を大幅に向上させるためには、再生剤の温度を低下させなければならず、このようにしてはじめて反応システムの熱量バランスを維持することが可能になる。同時に、超短反応時間も超大触媒/油比により保証する必要がある。そうでなければ、反応温度を高めることにより超短反応時間での高転化率を実現しようとするのであれば、必ず熱分解等の非理想的な反応を進展させ、それによりコークス及びドライガスの収率の上昇、ガソリン及び軽質オレフィン等の目的製品の収率の低下をもたらすことになる。
【0009】
本発明の目的は、良好な再生効果を保証するという前提で、冷再生剤循環方法を採用し、大触媒/油比操作を実現し、下降流反応器に入る再生剤の温度を低下させ、下降流反応器システムの熱量バランスの制限を打破することにより、触媒の循環量を向上させ、下降流反応器における触媒濃度を向上させ、触媒活性及び活性中心数を向上させ、触媒転化、水素移動、異性化、芳香族化等の理想的な反応を促進し、熱分解等の非理想的な反応を低下させ、反応選択性を向上させ、それによりガソリン及び軽質オレフィン等の目的製品の収率を向上させ、コークス及びガスの収率を低下させることである。
【0010】
本発明の別の目的は、下降流反応器に入る再生剤の温度を調整することにより、下降流反応器の反応温度を最適化するという目的を実現し、適切な反応温度及び適切な触媒/油比で、下降流反応器の温度分布を最適化し、反応深さ及び製品分布を最適化し、それによりさらに反応選択性を向上させ、コークス及びガスの収率を低下させ、ガソリン及び軽質オレフィン等の目的製品の収率を向上させることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許第1113689号明細書(C)
【特許文献2】中国特許第1162514号明細書(C)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする技術的課題は、再生剤冷却技術を採用し、下降流反応器システムの熱量バランスの制限を打破し、大触媒/油比操作を確実に実現し、下降流反応器における触媒濃度及び触媒活性を向上させることである。同時に、適切な反応温度(相対的に低い0~50℃)を採用し、下降流反応器の温度分布を最適化し、反応深さの最適化制御を実現し、それにより反応選択性を向上させ、プロピレン等の軽質オレフィン及びガソリンの収率を向上させ、ガソリンにおける芳香族炭化水素の含有量を向上させ、ガソリンにおけるオレフィンの含有量を低下させ、同時にコークス及びドライガスの収率を低下させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下降流反応器の炭化水素触媒転化方法であって、再生器からの再生触媒は再生剤冷却器により冷却されて降温した後に下降流反応器に入り、炭化水素原料と入口端で混合し、接触し、下降流反応器内で炭化水素の触媒転化反応を行い、合流して下降流反応器の末端に下降して迅速に分離するようにされ、分離された再生対象触媒(再生対象剤と略称する)はストリッピングされた後に再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生された触媒は再生剤冷却器により冷却された後に下降流反応器に戻り循環使用される、下降流反応器の炭化水素触媒転化方法を提供する。その具体的なプロセスは以下のとおりである。
【0014】
1)予熱を行った後(又は予熱せず)に、炭化水素原料と再生剤冷却器からの低温再生剤が下降流反応器の入口端に入り、反応器に沿って下向きに流れて反応が発生し、反応オイルガスと触媒の混合物が反応器の末端に下降して迅速に分離し、触媒とオイルガスの迅速な分離を実現する。主な操作条件としては、反応温度は460~680℃(好ましくは480~660℃、最も好ましくは490~650℃)であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒(好ましくは0.1~1.5秒)であり、触媒と原料の重量比(触媒/油比)は6~50(好ましくは8~40)である。
【0015】
2)分離された再生対象触媒(再生対象剤と略称する)は、再生対象剤ストリッピング装置によりストリッピングされた後、再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生温度は630~800℃(好ましくは630~730℃、最も好ましくは650~730℃)に制御される。
【0016】
3)再生器からの再生剤が再生剤冷却器に入り200~720℃まで冷却され、冷却後の再生剤(冷再生剤と略称する)が下降流反応器の入口端に入り循環使用される。又は、熱再生剤(即ち再生器からの冷却されていない再生剤)のバイパスが設けられ、一部の熱再生剤が上記冷再生剤と混合された後、混合再生剤が下降流反応器の入口端に入り循環使用される。
【0017】
さらに、上記下降流反応器の反応温度は、主に触媒/油比を調整する(すなわち上記冷再生剤の輸送管にスライドバルブ、プラグバルブなどの制御手段を設置する)ことにより、又は/及び、主に冷再生剤の温度又は混合再生剤の温度を調整することにより、それぞれ最適値に保持するように制御される。
【0018】
上記下降流反応器に入る再生剤の温度を調整することにより、下降流反応器の反応温度を調整するという目的を達成し、さらに適切な反応温度及び適切な触媒/油比を採用し、下降流反応器の温度分布を最適化し、反応深さ及び製品分布を最適化し、それによりさらに反応選択性を向上させ、コークス及びガスの収率を低下させ、ガソリン及び軽質オレフィン等の目的製品の収率を向上させる。
【0019】
前記冷再生剤の温度は、再生剤冷却器に入る流動化媒体の流量及び/又は再生器に戻る冷触媒の流量及び/又は他のパラメータを調整することにより制御される。前記流動化媒体は空気、蒸気又は他のガス又はそれらの混合物であってもよく、加熱媒体は水、蒸気、空気又は他のガス、様々な油等又はそれらの混合物であってもよい。
【0020】
前記下降流反応器に入る混合再生剤の温度は、上記冷熱再生剤の比率を調整することにより独立して制御することができる。
【0021】
前記下降流反応器に入る冷再生剤の温度は、主に流動化媒体及び/又は加熱媒体の流量又は/及び他のパラメータを調整することにより制御される。又は、冷再生剤の温度は、主に流動化媒体及び/又は加熱媒体及び/又は再生器に戻る冷触媒の流量又は/及び他のパラメータを調整することにより制御される。したがって、下降流反応器の触媒/油比(再生触媒と原料との重量比)及び反応温度はいずれも独立して制御することができる。
【0022】
当然のことながら、多くの他の制御装置及び制御方法を有してもよく、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0023】
本発明の方法及びその装置は、さらに前記再生剤冷却器の下流に触媒混合緩衝空間を設置することができ、再生剤の混合を強化し、不均一な伝熱及び不均一な流動による径方向温度差を無くし(再生剤の温度を均衡にする)、下流反応温度制御の要求を満たすようにして、下流反応温度制御の正確性及び柔軟性を向上させる。同時に、再生剤の密度を向上させ、再生剤循環システムの推進力を向上させることにより、触媒/油比の増大による循環システムの抵抗の増大を克服し、大触媒/油比操作を実現することができる。
【0024】
前記触媒混合緩衝空間は、低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度(流動化媒体流量と装置の空塔断面との比)は0.3m/s未満(好ましくは0.0001~0.1999m/s)である。
【0025】
前記触媒混合緩衝空間の流動化媒体は、空気、蒸気又は他のガス又はそれらの混合物であってもよく(好ましくは蒸気である)、それにより循環触媒に混入された空気量を減少させ、ドライガス中の窒素ガス等の非炭化水素ガスの含有量を低下させ、ドライガスの発熱量を向上させ、リッチガス圧縮機の消費電力を低下させる。当業者はその具体的な構造、接続形式、操作及び制御過程についてよく知っており、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0026】
反応器に接続された上記再生剤冷却器は、再生器の外部に設置されてもよく、再生器の内部に設置されてもよい。上記再生剤冷却器は再生器、下降流反応器及び/又は触媒混合緩衝空間と一体に接続されてもよく、輸送管によりそれに接続されてもよい。当業者はその具体的な構造、接続形式、操作及び制御過程についてよく知っており、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0027】
触媒冷却器は成熟した工業設備であり、本発明の方法及びその装置は様々な構造形式(例えばアップフロー、ダウンフロー等)を採用することができ、触媒輸送通路も様々な具体的な接続構造(例えば内部循環管、Y型、U型外部輸送(循環)管等)を採用することができ、脱気(平衡)管を設置しても又は設置しなくてもよい。当業者はその具体的な構造、接続形式、操作及び制御過程についてよく知っており、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0028】
本発明でいう炭化水素原料は、水素化されたか又は水素化処理されていない任意の重油であってもよく、直留ワックス油(留分油)、コークス化ワックス油(留分油)、水素化分解テールオイル、常圧残油、減圧残油、シェールオイル、合成油、原油、コールタール、サイクルオイル、オイルスラリー、脱アスファルト油、熱分解重油、粘度低下重油、ヘビーデューティディーゼル等のうちの一種、二種及び二種以上の混合物を含む。前記ワックス油(留分油)留分は、高密度シクロアルキル基又はシクロアルキル中間基ワックス油(留分油)等を含む。前記ワックス油(留分油)留分はフルカット(full cut)であってもよく、例えば初留点~565℃程度の留分である。そのうちの一部のナローカット(narrow cut)であってもよく、例えば、450~520℃の留分である。
【0029】
本発明でいう炭化水素原料は軽質炭化水素原料であって、製油所又は石油化学工場の様々なオレフィン含有炭化水素又は飽和液体軽質炭化水素であってもよく、液化石油ガス、軽油等のうちの任意の一種又は一種以上の任意の割合の混合物を含む。前記液体軽質炭化水素は、主にブテン、ペンテンに富むC4、C5留分又はそれらの任意の割合の混合物であってもよい。前記軽油はガソリン留分であってもよく、直留ガソリン、凝縮油、接触分解ガソリン、熱分解ガソリン、粘度低下ガソリン、コークス化ガソリン、分解によるエチレンの製造におけるガソリンを含むガソリンのうちの一種、二種、複数種及びそれらの任意の割合の混合ガソリンを含み、例えば初留点から220℃程度までの留分のようなフルカットのガソリンであってもよく、又は例えば初留点から80℃までの留分のようなそのうちの一部のナローカットであってもよい。前記軽油はさらにディーゼル留分であってもよく、接触分解ディーゼルを含み、例えば初留点から365℃程度までの留分のようなフルカットのディーゼルであってもよく、又は例えば初留点から300℃までの留分のようなそのうちの一部のナローカットであってもよい。
【0030】
本発明の触媒転化方法は単独で実施してもよく、ライザー反応器と結合して使用してもよく、例えば、特許文献1に開示された気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置又は特許文献2に開示された気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置等を採用することができる。
【0031】
本発明の方法及びその装置は様々な反応再生形式を採用することができ、例えば第一再生器、第二再生器等を設置することができる。当業者はその組み合わせ形式、操作及び制御過程についてよく知っており、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0032】
本発明の方法及びその装置を採用する場合、その反応生成物の分離及び触媒の再生はいずれも従来の方法に応じて行われ、再生対象触媒は再生器において従来の触媒転換用の触媒の再生条件でコークス燃焼され再生され、一般的に、再生温度は650~800℃(好ましくは630~730℃、最も好ましくは650~730℃)に制御される。
【0033】
本発明の方法及びその装置は、任意の工業的に使用される触媒転化用の触媒及び助剤を採用することができ、プロピレンを多収するZSM触媒、超温度分子篩触媒等を含む。
【0034】
流動化触媒転化プロセス及び装置は成熟した工業プロセスであり、当業者はその組み合わせ形式、操作及び制御過程についてよく知っており、その操作条件(例えば供給温度、反応温度、反応圧力、接触時間、触媒/油比など)及び触媒の選択についてもよく知っており、いずれも本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0035】
触媒のコークス燃焼再生の適切な温度を保証し、反応再生システムの熱量バランスを維持するために、さらに以下の措置のうちの一種、二種又は複数種を単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0036】
1)再生器に可燃性固体、液体燃料又は気体燃料のうちのいずれか一種、二種、複数種及びそれらの混合物を注入することができる。
【0037】
2)再生器に入る主風(コークス燃焼空気)で再生煙道ガスと熱交換するか、又は、再生触媒冷却器の加熱媒体として再生剤と熱交換し、主風が再生器に入る時の温度を160~650℃(好ましくは200~520℃)向上させるようにすることができる。
【0038】
3)固体、液体又は気体燃料のうちの一種、二種、複数種及びそれらの混合物で主風を200~1800℃(好ましくは600~1500℃)に加熱昇温して再生器に入れることができる。
【0039】
従来技術に比べて以下の利点を有する。
本発明の触媒転化方法は、冷再生剤循環技術が採用され、反応器内の熱量バランス及び反応再生システムの熱量バランスを打破し、大触媒/油比を可能にすることにより、下降流反応器の操作条件を最適化することができ(例えば、超短反応時間及びより大きな触媒/油比を採用することができる)、適切な(相対的に低い)反応温度で、反応深さの最適化制御を効果的に実現し、触媒転化(分解)等の理想的な反応を大幅に促進し、熱分解等の非理想的な反応を抑制するにより、反応選択性を向上させる。
【0040】
1.触媒循環量を増大させ、触媒のコークス化率(すなわち再生剤と再生対象剤の炭素差)を低下させ、下降流反応器内の単位触媒の活性中心数を向上させる。
【0041】
2.触媒循環量を増大させ、下降流反応器内の触媒の濃度を向上させ、油-触媒接触面積を増大させ、油-触媒接触効果を改善する。同時に、単位原料が接触する触媒活性中心数を増加させ、接触分解、水素移動、異性化、芳香族化などの理想的な反応を大幅に促進する。
【0042】
3.触媒循環量を増大させ、下降流反応器内の出入口温度差が大幅に減少し、下降流反応器の温度分布状況を最適化し、熱分解などの非理想的な反応を効果的に抑制する。
【0043】
4.低温再生剤循環を採用し、再生剤の輸送過程(下降流反応器に到達する前)での水熱による不活性化を軽減し、再生触媒活性を向上させ、触媒消費を低下させる。
【0044】
5.本発明は低温再生剤循環を採用し、供給温度を向上させ、原料油の霧化効果を改善することができ、高活性触媒及び大触媒/油比及び適切な反応温度と相乗的に作用し、望ましくない生成物(例えばコークス及びガス等)の収率を大幅に低下させると同時に、ガソリン及び軽質オレフィン等の目的製品の収率を2.0~3.0ポイント大幅に向上させ、ガソリンオクタン価を0.5~2.0単位向上させ、それにより該技術の経済性を向上させる。
【0045】
6.下流触媒の混合緩衝空間を設置し、触媒の混合を強化することにより、再生剤の温度が均衡に達し、均一で安定し、下流反応温度制御の正確性及び柔軟性を向上させる。
【0046】
同時に、再生剤の密度及び緩衝能力を効果的に向上させ、再生剤循環システムの推進力を向上させ、それにより操作の安全性、信頼性、安定性、制御可能性及び柔軟性を向上させ、反応温度の最適化制御及び反応深さの最適化制御を実現する。
【0047】
7.流動化媒体は蒸気を採用し、循環触媒に混入された空気を除去し、ドライガス中の窒素ガス等の非炭化水素ガスを除去し、ドライガスの発熱量を向上させ、リッチガス圧縮機の電力消費を低下させ、ガス分離部分の装置サイズ及び消費を低下させる。
【0048】
8.本発明の下降流反応器の触媒転化プロセスは、反応温度、触媒/油比などの操作条件の調整が相対的に独立し、より柔軟であり、原料の種類及び市場状況に応じて柔軟に調整することにより、異なる製品の分布を実現することができる。例えば、
1)低い反応温度を採用し、低オレフィン高オクタン価のガソリンを製造することができる。
この時、反応温度が低くてもよく(例えば460~520℃、好ましくは490~510℃である)、接触分解、異性化、芳香族化などの理想的な反応を促進し、低オレフィン高オクタン価のガソリンを製造する。
2)高い反応温度を採用し、エチレン、プロピレンなどの軽質オレフィンを多収し、同時に芳香族炭化水素などの化学工業原料を製造することができる。
【0049】
軽質オレフィン及び芳香族炭化水素を多収する必要がある場合、反応温度が高くてもよく(例えば520~650℃、好ましくは540~630℃である)、オレフィン分解及び芳香族化等の反応が支配的になり、エチレン、プロピレン等の軽質オレフィンを多収し、同時に芳香族炭化水素含有量の高いガソリン調合成分を製造し、さらに芳香族炭化水素抽出により芳香族炭化水素等の化学工業原料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明の下降流反応器の触媒転化装置の典型的な概略図である。
【
図2】本発明の下降流反応器の触媒転化装置の典型的な概略図である。
【
図3】本発明の下降流反応器の触媒転化装置の典型的な概略図である。
【0051】
以下、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。図面は本発明を説明するために描かれたものであり、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0052】
図1は本発明の下降流反応器の触媒転化方法のブロックフローチャートである。
【0053】
図1に示すように、本発明の触媒転化方法は、下降流反応器の入口端1、下降流反応器2、迅速分離装置3、再生対象剤ストリッピング装置4、再生器5、再生剤冷却器6、触媒混合緩衝空間7、二次分離器8を含む。
【0054】
原料油は予熱昇温された後に原料ノズル内に入る。霧化蒸気の作用で霧化され、この時に原料油は微細液滴の形式で下降流反応器2内の混合部に入り、それと同時に、再生器5からの高温触媒は、再生剤冷却器6により冷却されて降温し、さらに下流(又は下部)の触媒混合緩衝空間7により混合緩衝されてその温度が均衡に達した後、下降流反応器の入口端1に入り、下降流反応器2内に入り霧化された原料油と混合する。気固二相は混合部内に迅速に接触して十分に混合された後、合流して反応器2に沿って下向きに流れ、同時に触媒転化反応を行う。反応生成物と触媒の混合物は、合流して下降流反応器2の末端の気固迅速分離装置3に下降して触媒と製品オイルガスを迅速に分離するようにするか、又は、製品であるオイルガスが急冷され(図示せず、二次反応の発生を回避する)、次に二次分離器8(例えばサイクロン分離器など)に入りさらに触媒を除去してから下流分留又は分離システムに入りさらに分離するようにすることにより、所望のガス製品及び液体製品を得る。主な操作条件としては、反応温度は460~680℃(好ましくは480~660℃、最も好ましくは490~630℃)であり、反応圧力は0.1l~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒(好ましくは0.1~1.5秒)であり、触媒と原料の重量比(触媒/油比)は6~50(好ましくは8~40)である。
【0055】
分離された再生対象剤は、再生対象剤ストリッピング装置4によりストリッピングされた後、再生器5に入りコークス燃焼再生を行い、再生温度は630~730℃(好ましくは650~730℃)に制御される。
【0056】
再生器5からの再生剤は、再生剤冷却器6に入り200~720℃に冷却されて下降流反応器2に直接的に戻り循環使用される。又は、再生剤冷却器6の下部又は底部から離れた冷再生剤は、さらに混合緩衝空間7により混合緩衝されてその温度が均衡に達した後、下降流反応器2に戻り循環使用される。流動化媒体は空気、蒸気又は他の気体又はそれらの混合物であってもよい(好ましくは蒸気である)。
【0057】
反応温度の最適化制御及び反応深さの最適化制御を実現するために、前記再生剤冷却器6の下流に触媒混合緩衝空間7を設置することで、再生剤の混合を強化し、下降流反応器2に入る前に再生剤の温度を均衡にすることにより、下流反応温度制御の要求を満たす。空間を節約し投資を節約することを実現するために、触媒混合緩衝空間7は、再生剤冷却器6と同じ直径の一体式構造(
図3に示す)を採用してもよい。触媒混合緩衝空間7は、低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度は0.3m/s未満(好ましくは0.0001~0.1999m/s)である。
【0058】
図2は本発明の下降流反応器の触媒転化装置の同軸式再生のフローチャートである。
【0059】
図2に示すように、本発明の触媒転化方法及びその装置は、下降流反応器の入口端1、下降流反応器2、迅速分離装置3、再生対象剤ストリッピング装置4、再生器5、再生剤冷却器6、触媒混合緩衝空間7、二次分離器8及び沈降器9を含む。
【0060】
再生器5は、再生剤輸送管により再生剤冷却器6に接続され、再生剤は再生剤冷却器6により冷却され降温し、さらに下流(又は下部)触媒混合緩衝空間7により混合緩衝された後、冷再生剤輸送管10により下降流反応器の入口端1に接続される。再生剤冷却器6から離れた冷再生剤の温度は、流動化媒体35(空気、蒸気等を含む)の流量を調整することにより制御される。制御弁21は、冷再生触媒の流量を制御しやすくするために設けられた具体的な制御手段である。輸送媒体35は、蒸気又はその他の気体、又はそれらの混合物であってもよい(好ましくは蒸気である)。加熱媒体37は水、蒸気、空気又は他の気体、各種油等又はそれらの混合物であってもよい。
【0061】
下降流反応器に入る再生剤の温度を制御しやすいために、さらに熱再生剤バイパス管(制御弁を含む)(図示せず)を設置して触媒混合緩衝空間7に直接接続するようにしてもよく、冷再生剤と熱再生剤をここで均一に混合した後にその温度が均衡になる。
【0062】
当然のことながら、多くの他の制御装置及び制御方法を有してもよく、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0063】
炭化水素原料と再生剤は、反応入口端1で混合された後に下降流反応器2に入り、触媒転化条件で反応を行い、主な操作条件としては、反応温度は460~680℃(好ましくは480~660℃、最も好ましくは490~630℃)であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒(好ましくは0.1~1.5秒)であり、触媒と原料の重量比(触媒/油比)は6~50(好ましくは8~40)である。
【0064】
反応オイルガスと触媒の混合物は合流して下降流反応器2の末端の迅速分離装置3に下降し、触媒と製品であるオイルガスを迅速に分離するようにするか、又は、高温製品であるオイルガスが急冷され(図示せず、二次反応の発生を回避する)、次に二次分離器8(例えばサイクロン分離器など)に入りさらに触媒を除去してから下流分留又は分離システムに入りさらに分離するようにすることにより、所望のガス製品及び液体製品を得る。
【0065】
再生対象剤は沈降器9を通過して再生対象剤ストリッピング装置4によりストリッピングされた後、再生対象剤輸送管13及び制御弁(図示せず)を通過して再生器5に入り、主風38(酸素含有ガスであり、空気等を含む)の存在下でコークス燃焼され再生する。再生剤は、再生器5の下部から引き出されて再生剤冷却器6に入った後に触媒混合緩衝空間7に入り均一に混合された後、冷再生剤は輸送管11により(又は熱再生剤と混合して)循環使用される(別の経路の触媒輸送管を設置して再生器に戻してもよい)。(当然のことながら、プロセスの必要に応じて個別の外部加熱器を設置してもよく、それにより複数の作業条件での柔軟な操作を実現する)。
【0066】
再生器5からの再生剤は、再生剤冷却器6に入り200~720℃に冷却される。再生剤冷却器6の下部又は底部から離れた冷再生剤は、さらに触媒混合緩衝空間7により混合緩衝されその温度が均衡になった後、下降流入口端1及び反応器2に戻り循環使用される。流動化媒体39は、空気、蒸気又はその他の気体、又はそれらの混合物であってもよい(好ましくは蒸気である)。
【0067】
反応温度の正確な制御及び最適化制御を実現するために、前記再生剤冷却器6の下流に触媒混合緩衝空間7を設置し、再生剤の混合を強化し、下降流入口端1及び反応器2に入る前に再生剤の温度を均衡にすることにより、下流反応温度の正確な制御の要求を満たす。空間を節約し投資を節約することを実現するために、触媒混合緩衝空間7は、再生剤冷却器6と同じ直径の一体式構造に設計されてもよい。触媒混合緩衝空間7は、低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度は0.3m/s未満(好ましくは0.0001~0.1999m/s)である。
【0068】
図3は本発明の下降流反応器の触媒転化装置の迅速層再生のフローチャートである。
【0069】
図3に示すように、本発明の触媒転化方法及びその装置は、下降流反応器の入口端1、下降流反応器2、迅速分離装置3、再生対象剤ストリッピング装置4、再生器5、再生剤冷却器6、触媒混合緩衝空間7、二次分離器8及び沈降器9を含む。
【0070】
再生器5は、再生剤輸送管により再生剤冷却器6に接続され、再生剤は再生剤冷却器6により冷却されて降温し、さらに下流(又は下部)の触媒混合緩衝空間7により混合緩衝され温度が均衡に達した後、冷再生剤輸送管10により下降流反応器の入口端1に接続される。再生剤冷却器6から離れた冷再生剤温度は、流動化媒体35(空気、蒸気等を含む)の流量を調整することにより制御される。制御弁21は、冷再生剤の流量を制御しやすくするために設けられた具体的な制御手段である。
【0071】
下降流反応器に入る再生剤の温度を制御しやすいために、さらに熱再生剤輸送管(制御弁を含むが、図示せず)を設置して再生剤混合緩衝空間7に直接接続するようにしてもよく、冷再生剤と熱再生剤をここで混合した後にその温度が均衡になる。
【0072】
当然のことながら、多くの他の制御装置及び制御方法を有してもよく、本発明の構想の任意の具体的な実施形態を限定するものではない。
【0073】
上記触媒冷却器は再生器、下降流と一体に接続されてもよく、パイプラインによりそれらに接続されてもよい。
【0074】
炭化水素原料と再生剤とが混合して下降流反応器に入り、触媒転化条件で反応を行い、主な操作条件としては、反応温度は460~680℃(好ましくは480~660℃、最も好ましくは490~630℃)であり、反応圧力は0.1l~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒(好ましくは0.1~1.5秒)であり、触媒と原料の重量比(触媒/油比)は6~50(好ましくは8~40)である。
【0075】
反応オイルガスと触媒の混合物は合流して下降流反応器2の末端の迅速分離装置3に下降し、中高温オイルガスは急冷され(二次反応の進行を回避する)、次に二次分離器8(例えばサイクロン分離器など)に入りさらに触媒を除去した後に中高温オイルガス急冷却器(二次反応の進行を回避する)に入り冷却した後、下流分留又は分離システムに入りさらに分離するようにすることにより、所望のガス製品及び液体製品を得る。
【0076】
分離された再生対象剤は、再生対象剤ストリッピング装置4によりストリッピングされた後、再生対象剤輸送管13及び制御弁20によりコークス燃焼タンク5Aに入り、主風38A(酸素含有ガスであり、空気等を含む)の存在下で迅速にコークス燃焼され、再生器5に上向きに輸送してさらにコークス燃焼され再生され、再生器5の底部に二次風38B(酸素含有ガスであり、空気等を含む)を補充する。再生剤は再生器5の下部から引き出され、再生剤冷却器6に入り、再生剤混合緩衝空間7及び冷再生剤は輸送管11を介して(又は熱再生剤と混合して)循環使用され、別の経路は輸送管12(輸送管12を設置しなくてもよい)を介して再生器に戻る(当然のことながら、プロセスの必要に応じて個別の外部加熱器を設置してもよく、それにより複数の作業条件での柔軟な操作を実現する)。
【0077】
再生器5からの再生剤は再生剤冷却器6に入り200~720℃に冷却される。再生剤冷却器6の下部又は底部から離れた冷再生剤は、さらに触媒混合緩衝空間7により混合緩衝されその温度が均衡になった後、下降流反応器の入口端と反応器2に戻り循環使用される。流動化媒体39は、空気であってもよいし、蒸気であってもよいし、これらの混合物(好ましくは蒸気)であってもよい。加熱媒体37は水、蒸気、空気又は他の気体、各種油等又はそれらの混合物であってもよい。輸送媒体36は空気、蒸気又は他の気体又はそれらの混合物であってもよい。
【0078】
反応温度の正確な制御及び最適化制御を実現するために、前記再生剤冷却器の下流に混合緩衝空間7を設置し、再生剤の混合を強化し、下降流反応器2に入る前に再生剤の温度を均一にすることにより、下流反応温度制御の要求を満たす。空間を節約し投資を節約することを実現するために、触媒混合緩衝空間7は再生剤冷却器6と同じ直径の一体式構造を採用する。触媒混合緩衝空間7は低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度は0.3m/s未満(好ましくは0.0001~0.1999m/s)である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明の具体的な実施形態をさらに説明する前に、本発明の保護範囲は下記特定の具体的な実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。本発明の実施例に使用される用語は特定の具体的な実施形態を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではないことをさらに理解されたい。
【0080】
実施例が数値範囲を示す場合、本発明が他に説明されない限り、各数値範囲の二つの端点及び二つの端点の間のいずれか一つの数値を選択することができることを理解されたい。特に定義しない限り、本発明に使用される全ての技術及び科学用語は当業者に一般的に理解される意味と同じである。実施例に使用される具体的な方法、装置、材料以外に、当業者の従来技術に対する把握及び本発明の記載に基づいて、さらに本発明の実施例に記載の方法、装置、材料と類似する又は同等の従来技術の任意の方法、装置及び材料を使用して本発明を実現することができる。
【0081】
実施例1
本発明の効果を検証するために、
図2又は
図3に示すプロセスフロー、表1に示す重油原料の性質及び表2に示す従来の技術と本発明のプロセス条件及びプロピレンを多収する分子篩触媒(CHP-1)を採用する。試験結果を表3に示す。
【0082】
表3の結果から分かるように、従来の下降流反応器の熱量バランスの制限のため、供給温度が230℃である場合、従来技術の触媒/油比が11.5に過ぎず、したがって下降流反応器に必要な大触媒/油比操作を実現することができない。本発明は、従来技術に比べて、コークス及びドライガスの収率が1.8ポイント低下し、総軽質収率(LPG+ガソリン+ディーゼル)が2.1ポイント向上し、総液体収率(総軽質+オイルスラリー)が1.8ポイント向上し、同時にディーゼルの収率が10ポイント低下し、良好な製品分布を有する。一セットの100万トン/年の重油接触分解装置に対して、年間の経済効果は約9000万元以上である。
【0083】
【0084】
【0085】
実施例2
実施例2に関して、下降流反応器の原料は接触分解ガソリンであり、下降流反応器は約30の超大触媒/油比を採用してはじめて、反応温度分布を最適化し、反応選択性を向上させ、プロピレン及びガソリンの収率を向上させ、ガソリン中の芳香族炭化水素の含有量及びオクタン価を向上させ、ガソリン中のオレフィン含有量を低下させるという目的を達成することができる。
【0086】
本実施例は
図2又は
図3に示すプロセスフロー、表4に示す従来技術及び本発明のプロセス条件及びプロピレンを多収する分子篩触媒(CHP-1)を採用する。ガソリン原料及び試験結果を表5に示す。
【0087】
表4に示す結果からわかるように、下降流反応器の熱量バランスの制限のため、従来の技術方案Bは供給温度が400℃である場合、熱量バランス下の触媒/油比が12.1に過ぎない。このような低い触媒/油比は下降流反応器の転化率及び選択性に深刻な影響を与える。方案Aは供給温度が40℃である場合、触媒/油比を25.9に向上させることができるが、これは装置の低温熱量の回収及び利用に深刻な影響を与える。
【0088】
表5の結果から分かるように、本発明は従来技術に比べて、高付加価値のプロピレンの収率が1.2ポイント向上し、コークスとドライガスの収率が相当し、総軽質収率が相当する。ガソリン中の芳香族炭化水素の含有量が3.7ポイント低下し、オレフィンの含有量が3ポイント低下し、オクタン価(RON)が0.8~2単位向上する。同時に、表4は、400℃の高温供給を採用するため、本発明はさらに廃熱回収効率を最大限に向上させることができることを示す。
【0089】
これらはいずれも本発明のガソリン触媒転化方法が顕著な有益な効果を有することが示されている。
【0090】
【0091】
【0092】
実施例3
実施例3に関して、下降流反応器の原料はオレフィンに富む混合炭素四である。本実施例は
図2又は
図3に示すプロセスフロー、表6に示す従来技術及び本発明のプロセス条件及びZSM-5分子篩触媒を採用する。
【0093】
下降流反応器は、一般的に、30より大きい超大触媒/油比操作を採用してはじめて、反応温度分布を最適化し、反応選択性を向上させ、エチレン、プロピレンの収率を向上させるという目的を達成することができる。しかしながら、表6の結果は、400℃の高温供給を採用する場合、下降流反応器の熱量バランスの制限のため、従来技術の熱量バランスでの触媒/油比が16.3に過ぎないことが示されている。このような低い触媒/油比は下降流反応器の転化率及び選択性に深刻な影響を与える。
【0094】
本発明が採用する混合炭素四原料及び試験結果を表7に示す。表7は高付加価値のプロピレンの収率が約47.2%であり、エチレンの収率が10.6%であることが示されており、本発明の混合炭素四触媒転化方法が顕著な有益な効果を有することを示す。
【0095】
【0096】
【0097】
上記実施例は、本発明の原理及びその効果を例示的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。当業者は本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上記実施例を修飾するか又は変更することができる。したがって、当業者が本発明に開示された精神及び技術的思想から逸脱することなく完了した全ての等価修飾又は変更は、依然として本発明の請求項に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生器からの再生触媒は再生
触媒冷却器により冷却されて降温した後に下降流反応器に入り、炭化水素原料と入口端で混合し、接触し、下降流反応器内で炭化水素の触媒転化反応を行い、合流して下降流反応器の末端に下降して迅速に分離するようにされ、分離された再生対象触媒はストリッピングされた後に再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生された触媒は再生
触媒冷却器により冷却された後に下降流反応器に戻り循環使用され
、前記再生触媒冷却器は下降流反応器中の触媒の濃度を向上させるために用いられることを特徴とする下降流反応器の炭化水素触媒転化方法。
【請求項2】
前記再生
触媒冷却器の下流に触媒混合緩衝空間が設置されており、前記触媒混合緩衝空間は、低速高密度相流動層操作が採用され、その見掛けガス速度は0.3m/s未満であることを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
下降流反応器に入る再生
触媒の温度を調整することにより、下降流反応器の反応温度の最適化を実現することを特徴とする請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前
記反応温度は460~680℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒であり、触媒/油比は6~50であ
り、前記再生触媒は200~720℃まで冷却されることを特徴とする請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記反応温度は480~660℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.1~1.5秒であり、触媒/油比は8~40であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前
記反応温度は490~650℃で
あることを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
具体的なプロセスとしては、
1)予熱を行った後(又は予熱せず)に、炭化水素原料と再生
触媒冷却器からの低温再生剤が下降流反応器の入口端に入り、反応器に沿って下向きに流れて反応が発生し、反応オイルガスと触媒の混合物が反応器の末端に下降して迅速に分離し、触媒とオイルガスの迅速な分離を実現し、主な操作条件としては、反応温度は460~680℃であり、反応圧力は0.11~0.4MPaであり、接触時間は0.05~2秒であり、触媒/油比は6~50であり、
2)分離された再生対象触媒は、再生対象剤ストリッピング装置によりストリッピングされた後、再生器に入りコークス燃焼され再生され、再生温度は630~730℃に制御され、
3)再生器からの再生剤が再生
触媒冷却器に入り200~720℃まで冷却され、冷却後の再生剤が下降流反応器の入口端に入り循環使用されるか、又は、熱再生剤のバイパスが設けられ、一部の熱再生剤が前記冷再生剤と混合された後、混合再生剤が下降流反応器の入口端に入り循環使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
熱再生剤のバイパスが設けられており、前記混合再生剤の温度は、冷熱再生触媒の比率を調整することにより独立して制御されるか、又は、前記冷再生剤の温度は、流動化媒体及び/又は加熱媒体の流量を調整することにより制御されるか、又は、流動化媒体及び/又は加熱媒体及び/又は再生器に戻る冷触媒の流量を調整することにより制御されることを特徴とする請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記下降流反応器の反応温度は、触媒/油比を調整することにより、又は/及び、冷再生剤の温度又は混合再生剤の温度を調整することにより制御されることを特徴とする請求項1
~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素原料は、水素化されたか又は水素化処理されていない任意の重油であり、直留ワックス油、コークス化ワックス油、水素化分解テールオイル、常圧残油、減圧残油、シェールオイル、合成油、原油、コールタール、サイクルオイル、オイルスラリー、脱アスファルト油、熱分解重油、粘度低下重油、ヘビーデューティディーゼル等のうちの一種、二種及び二種以上の混合物を含み、前記直留ワックス油又はコークス化ワックス油留分は、高密度シクロアルキル基又はシクロアルキル中間基ワックス油(留分油)を含み、フルカット又はそのうちの一部のナローカットであるか、又は軽質炭化水素原料であって製油所又は石油化学工場の様々なオレフィン含有炭化水素又は飽和液体軽質炭化水素であり、液化石油ガス、軽油等のうちの任意の一種又は一種以上の任意の割合の混合物を含み、前記液体軽質炭化水素はブテン、ペンテンを含有するC4、C5留分又はそれらの任意の割合の混合物であり、前記軽油はガソリン留分であり、直留ガソリン、凝縮油、接触分解ガソリン、熱分解ガソリン、粘度低下ガソリン、コークス化ガソリン、分解によるエチレンの製造におけるガソリンを含むガソリンのうちの一種、二種、複数種及びそれらの任意の割合の混合ガソリンを含み、フルカットのガソリン又はそのうちの一部のナローカットであるか、又はディーゼル留分であり、接触分解ディーゼルを含み、フルカットのディーゼル又はそのうちの一部のナローカットであることを特徴とする請求項1
~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
単独で実施するか、又は、前記下降流反応器はライザー反応器と結合して、気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置又は気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置を採用することを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
下降流反応器、迅速分離装置、再生対象剤ストリッピング装置、再生器、再生
触媒冷却器を含み、前記下降流反応器は気固合流する折り畳み式高速流動層反応装置であるか又は気固合流する下降流と上昇流が結合された接触分解反応装置であることを特徴とする下降流反応器の炭化水素触媒転化装置。
【請求項13】
前記再生
触媒冷却器の下流に触媒混合緩衝空間が設置されていることを特徴とする請求項
12に記載の装置。
【国際調査報告】