(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】構造歪み監視のためのセンシングファイバ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20220414BHJP
B64C 3/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
G01B7/16 R
B64C3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546814
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2020050666
(87)【国際公開番号】W WO2020165670
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520335141
【氏名又は名称】メゾマット インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】フォウラー ポール
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング クレア リンジー
(72)【発明者】
【氏名】ダルノキ-ヴェレス カロリー ジェイ.ティー.
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC02
2F063EC05
2F063EC07
2F063EC08
2F063EC13
(57)【要約】
センシングファイバを伴う構造歪み監視のための例示的なシステム、装置及び方法が開示される。例示的なシステムは、構造体と、センシングファイバであって、この構造体を通って延び、このセンシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示すセンシングファイバとを含む。当該システムは、センシングファイバの電気抵抗を監視し、その電気抵抗に基づいて構造体が経験した構造歪みを決定し、その構造歪みの表示を出力するための処理ユニットをさらに含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
構造体と、
前記構造体を通って延びるセンシングファイバであって、前記センシングファイバは、前記センシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示すセンシングファイバと、
処理ユニットであって、
前記センシングファイバの前記電気抵抗を監視し、
前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した構造歪みを決定し、
前記構造歪みの表示を出力する
ための処理ユニットと
を含むシステム。
【請求項2】
前記処理ユニットが、前記センシングファイバの前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した前記構造歪みを決定するように訓練された機械学習モデルを適用することによって、前記構造体が経験した前記構造歪みを決定する請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センシングファイバが前記構造体に埋め込まれている請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記センシングファイバが、前記構造体の監視対象部に広がり、前記監視対象部が、前記構造体の関心のある寸法の大部分を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記センシングファイバが、前記構造体のセンシング強化セクションを少なくとも2回通過する、前記構造体を通る経路を辿る請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記構造体が航空機の翼を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記センシングファイバが、伸縮可能なファイバコアと、導電性メッシュとを含み、前記導電性メッシュが、前記センシングファイバにわたって電気を伝導するために、前記伸縮可能なファイバコアの周りにコーティングされた複数の高アスペクト比ナノ材料を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記構造体が複合材料の複数の層を含み、前記センシングファイバが前記複合材料の複数の層の間に埋め込まれている請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
装置であって、
構造体を通って延びるセンシングファイバであって、前記センシングファイバは、前記センシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示すセンシングファイバと、
処理ユニットであって、
前記センシングファイバの前記電気抵抗を監視し、
前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した構造歪みを決定し、
前記構造歪みの表示を出力する
ための処理ユニットと
を含む装置。
【請求項10】
前記処理ユニットが、前記センシングファイバの前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した前記構造歪みを決定するように訓練された機械学習モデルを適用することによって、前記構造体が経験した前記構造歪みを決定する請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記センシングファイバが、伸縮可能なファイバコアと、導電性メッシュとを含み、前記導電性メッシュが、前記センシングファイバにわたって電気を伝導するために、前記伸縮可能なファイバコアの周りにコーティングされた複数の高アスペクト比ナノ材料を含む請求項9に記載の装置。
【請求項12】
方法であって、
構造体を通って延びるセンシングファイバの電気抵抗を監視する工程であって、前記センシングファイバは、前記センシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示す工程と、
前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した構造歪みを決定する工程と、
前記構造歪みの表示を出力する工程と
を含む方法。
【請求項13】
前記構造歪みを決定する工程が、前記センシングファイバの前記電気抵抗に基づいて前記構造体が経験した前記構造歪みを決定するように訓練された機械学習モデルを適用することを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気抵抗を監視する前に、前記構造体を、前記センシングファイバが前記構造体の監視対象部を通って埋め込まれるように製造する工程をさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記構造体を、前記センシングファイバが前記監視対象部を通って埋め込まれるように製造する工程が、前記センシングファイバを、前記構造体のセンシング強化セクションを少なくとも2回通過させることを含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、構造健全性監視に関し、特に、構造歪みを監視するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
構造健全性監視は、大規模なインフラストラクチャ資産の構造疲労、故障、及び破壊の指標の監視を伴う。構造健全性監視は、加速度計、歪みゲージ、変位トランスデューサ等のセンサを使用して、構造体(例えば支柱、建物の屋根、航空機の翼等)に関するデータを収集することをともなってもよい。このようなデータは、構造体における歪み又は損傷を示すために分析されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の一態様によれば、構造歪み監視のためのシステムが提供される。このシステムは、構造体と、この構造体を通って延びるセンシングファイバとを含む。このセンシングファイバは、そのセンシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示す。当該システムは、このセンシングファイバの電気抵抗を監視し、その電気抵抗に基づいて上記構造体が経験した構造歪みを決定し、その構造歪みの表示を出力する処理ユニットをさらに含む。
【0004】
本開示の別の態様によれば、構造歪み監視のための装置が提供される。当該装置は、構造体を通って延びるセンシングファイバを含む。このセンシングファイバは、そのセンシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示す。当該装置は、このセンシングファイバの電気抵抗を監視し、その電気抵抗に基づいて上記構造体が経験した構造歪みを決定し、その構造歪みの表示を出力する処理ユニットをさらに含む。
【0005】
本開示の別の態様によれば、構造歪み監視の方法が提供される。当該方法は、構造体を通って延びるセンシングファイバの電気抵抗を監視する工程を含む。このセンシングファイバは、そのセンシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示す。当該方法は、上記電気抵抗に基づいて上記構造体が経験した構造歪みを決定する工程と、その構造歪みの表示を出力する工程とをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、センシングファイバを含む構造歪み監視のための例示的なシステムの模式図である。
【
図2】
図2は、例示的な構造歪み監視の方法のフローチャートである。
【
図3A】
図3Aは、構造歪みの異なる状況下にある例示的な構造体の模式図である。
【
図3B】
図3Bは、センシングファイバの変形とそのセンシングファイバが示す電気抵抗との関係を示す変形-抵抗プロットである。
【
図4】
図4は、センシングファイバを含む構造歪み監視のための別の例示的なシステムの模式図であり、このセンシングファイバは、導電性メッシュによって囲まれた伸縮可能なファイバコアを含む。
【
図5】
図5は、センシングファイバを有する例示的な構造体の断面の模式図である。
【
図6A】
図6Aは、構造体の表面に固定された複数のセンシングファイバを有する例示的な構造体を示す。
【
図6B】
図6Bは、複合材料の層と、その複合材料の層の間に埋め込まれたセンシングファイバとを有する例示的な構造体を示す。
【
図7A】
図7Aは、センシングファイバが埋め込まれた例示的な航空機の翼を示す。
【
図7B】
図7Bは、センシングファイバが埋め込まれた例示的な支柱を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
構造体が経験する構造歪みは、構造体の内部の又は構造体に沿った特定の場所に配置された1つ以上のポイントセンサ(例えば、歪みゲージ)を使用して監視されてもよい。ポイントセンサは、ポイントセンサが置かれた場所の周囲で起こる局所的な変形(曲げ、座屈等)を監視する。構造体のより広い範囲にまたがる大きな変形を引き起こす歪みを監視するために、複数のポイントセンサのグループが、より広い範囲に広がる複数の異なるポイントに配置されてもよい。
【0008】
このようなポイントセンサのグループは、構造体の広い範囲で発生する広範な構造歪みに関する限定的な情報を提供する可能性があるが、このようなセンサによって得られる構造歪み情報の完全性及び解像度は、ポイントセンサの物理的な守備範囲によって制限されることがある。例えば、ポイントセンサのグループでは、ポイントセンサ間の隙間で直接発生する構造歪みに関する情報が得られない場合がある。別の例として、構造体のより広い領域にまたがるより大きな歪みの場合でも、ポイントセンサ間の隙間にある構造体の領域には、より大きな歪みの特徴を説明する重要な構造歪み情報が含まれている可能性があり、この情報が見逃される可能性がある。
【0009】
構造体に埋め込まれたポイントセンサを使用することのさらなる欠点は、そのようなポイントセンサが構造体自体の構造的完全性を損なう可能性があるということである。従来から使用されているポイントセンサはサイズが大きいため、これらのポイントセンサは構造体の中に故障点、又は弱点を作る可能性がある。
【0010】
本開示は、ポイントセンサのグループよりも構造体が経験した歪みをより包括的に監視するために使用されてもよいセンシングファイバを提供する。本明細書に記載されているように、構造体は、構造体の一部分を通って延びるセンシングファイバを備えてもよい。センシングファイバは、センシングファイバの変形に伴って変化する電気抵抗を示す。構造歪みは、構造体が変形するのに伴ってセンシングファイバの電気抵抗を監視することによって決定される。
【0011】
センシングファイバは、その長さに沿ったあらゆる場所で発生する歪みに反応し、従って、構造体が経験した構造歪みが、センサ間の未監視の隙間を少なく、かつ/又は小さくして監視される可能性がある。センシングファイバは連続的なセンサであり、従って、その長さに沿って監視されない隙間がない。構造体のより広範な(すなわち、「グローバルな」)監視を提供するために、複数のセンシングファイバ(例えば、メッシュ状のもの)が構造体全体に(例えば、層状に)配置されてもよい。さらに、センシングファイバは、複合材料で使用される繊維(ファイバ)のサイズと同様のオーダーで、十分に小さいサイズであってもよく(すなわち、細くてもよく)、従って、センシングファイバは、複合材料に埋め込まれたときに、構造体の構造的完全性に対する影響を低減する可能性がある。
【0012】
図1は、構造歪み監視のための例示的なシステム100の模式図である。システム100は、壁、支柱、構造ケーブル、船の船体、車両の車体、航空機の翼、風力タービンのブレード、又は構造歪みを経験する可能性のある他の構造体等の構造体102を含む。
【0013】
システム100は、構造体102を通って延びるセンシングファイバ110をさらに含む。すなわち、センシングファイバ110は、構造体102の少なくとも一部を通って延びており、この一部を監視対象部と呼ぶことがある。センシングファイバ110は、構造体102に埋め込まれてもよい(すなわち、構造体102の製造時に構造体102の材料に埋め込まれてもよい)。構造体102は、センシングファイバ110が他の構造繊維と一緒に埋め込まれた構造繊維の複合材料から作製されていてもよい。センシングファイバ110は、それが埋め込まれている材料よりも柔らかくて(すなわち、低いヤング率であって)もよく、従って、その周囲の環境にほとんど構造的な影響を与えずに、その周囲の構造環境の受動的なレポーターとして機能してもよい。センシングファイバ110は、ポリマーベースのファイバコアを含んでもよく、従って、構造体102が経験したあらゆる変形とともに変形するように十分な柔軟性を有してもよい。
【0014】
センシングファイバ110は、構造体102の関心のある寸法(例えば、全長又は全幅)の大部分に広がって(渡って)いてもよい。例えば、構造体102が航空機の翼を含む場合、センシングファイバ110は、翼の基部から翼の先端までに広がっていてもよく、それゆえ、翼の長さに沿ってどこにでも現れるであろう構造歪みを監視してもよい。
【0015】
センシングファイバ110は、センシングファイバ110の変形に伴って変化する電気抵抗を示すことになっている。センシングファイバ110は、その全長に沿って導電性であり、従って、センシングファイバ110は、その長さに沿った任意の点で起こる変形を検出してもよい。
【0016】
構造体102が歪みを経験すると、構造体102が変形し、これによりセンシングファイバ110が変形し、センシングファイバ110が示す電気抵抗が変化する。センシングファイバ110の変形は、センシングファイバ110の長さの圧縮又は伸長を指してもよい。
【0017】
センシングファイバ110がセンシングファイバ110の変形に伴って変化する電気抵抗を示すという特性は、ピエゾ抵抗特性と呼ばれることがある。センシングファイバ110が示す電気抵抗の変化は、抵抗測定装置によって検出されうる信号を生成するのに十分な大きさであってもよい。例えば、センシングファイバ110の約10%の伸びは、約40%の電気抵抗の変化をもたらしてもよい。
【0018】
以下の
図3A~
図3Bを参照してより詳細に説明するように、電気抵抗の変化は、構造体102におけるセンシングファイバ110の位置と、構造体102が経験する歪みの種類とに依存してもよい。
【0019】
システム100は、処理ユニット120をさらに含む。この処理ユニットは、センシングファイバ110の電気抵抗を監視し、その電気抵抗に基づいて構造体102が経験した構造歪みを決定し、その構造歪みの表示を出力することになっている。
【0020】
いくつかの例では、処理ユニット120は、電気抵抗を監視するデータ取得ユニットを含んでもよく、構造歪みを決定し、構造歪みの表示を出力する1つ以上のコンピューティングデバイス(例えば、リモートサーバ)をさらに含んでもよい。従って、処理ユニット120は、プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び同様のものの任意の量及び組み合わせを含んでもよく、本明細書に記載されている機能を実行するために、メモリ(揮発性及び不揮発性の記憶装置)及び/又は通信インターフェース(例えば、ネットワークインターフェース)をさらに含んでもよい。
【0021】
処理ユニット120は、任意の適切な抵抗測定装置及びセンシングファイバ110と接触する電気リード線を介して、センシングファイバ110の電気抵抗を監視してもよい。電気抵抗は、そのような抵抗測定装置によって連続的又は周期的に監視されてもよい。電気抵抗測定値は、処理のために、又は処理のために遠隔装置に送信する前に一時的に保存するために、処理ユニット120に一時的に保存されてもよい。
【0022】
処理ユニット120は、センシングファイバ110の測定された電気抵抗とセンシングファイバ110の対応する変形との間の1つ以上の既知の関係に基づいて、構造歪みを決定してもよい。すなわち、センシングファイバ110は、変形量がどのように電気抵抗の変化量を引き起こすかを決定するために試験されたものであってもよく、又はセンシングファイバ110は、電気抵抗が変形によってどのように変化するかを定義する特定の仕様に従って製造されていてもよい。このように、変形に対する電気抵抗の感度は、様々な用途に合わせて調整されてもよい。このような関係は、数学関数(すなわち、センシングファイバ110の電気抵抗を変形の関数として計算する際に用いてもよい数学関数)、ルックアップテーブル、又は他の方法で表現されてもよい。
【0023】
さらに、処理ユニット120は、センシングファイバ110の変形と構造体102の対応する歪みとの間の1つ以上の既知の関係に基づいて、構造歪みを決定してもよい。すなわち、構造体102は、歪みの量がどのようにセンシングファイバ110に変形の量を引き起こすかを決定するために試験されたものであってもよく、又は構造体102は、歪みによって変形がどのように変化するかを定義する特定の仕様に従って製造されていてもよい。ここでも、そのような関係は、数学関数(すなわち、構造体102が経験した歪みを、センシングファイバ110の変形の関数として計算する際に用いてもよい数学関数)、ルックアップテーブル、又は他の方法で表現されてもよい。
【0024】
このように、センシングファイバ110の電気抵抗の変化は、センシングファイバ110の変形に関連していてもよく、ひいては、構造体102の歪みに関連していてもよい。
【0025】
センシングファイバ110の電気抵抗とセンシングファイバ110の変形量との関係はよく理解されている(すなわち、ラボテストされている)可能性があるが、センシングファイバ110の変形量(又は電気抵抗の変化)と構造体102が実際に経験する構造歪みの量との関係は、特定の構造体102に固有のものである可能性があり、又は少なくとも、センシングファイバ110によって監視されるべき各構造体102について直接計算するには過度に面倒である可能性がある。従って、いくつかの例では、処理ユニット120は、センシングファイバ110の電気抵抗に基づいて構造体102が経験した構造歪みを決定するように訓練された機械学習モデルを適用することによって、構造体102が経験した構造歪みを決定してもよい。
【0026】
実際には、センシングファイバ110を有する構造体102は、構造体102を(例えば、異なる強度及び/又は異なる方向の)既知の歪みの下に置く構造歪み試験を受けてもよく、その結果生じたセンシングファイバ110の電気抵抗が測定されてもよい。このようにして、センシングファイバ110の電気抵抗と構造体102の歪みとの関係が決定されてもよい。機械学習モデルを訓練する場合、歪みデータ(構造体102にかかる構造歪みを記述している)及び抵抗データ(それらの構造歪みの下で測定されたセンシングファイバ110の電気抵抗を記述している)が、機械学習モデルに供給されてもよい。これにより、機械学習モデルは、センシングファイバ110の電気抵抗に基づいて構造体102の構造歪みを予測するように訓練されてもよい。機械学習モデルは、処理ユニット120に格納されてもよく、それにより、構造体102が経験した構造歪みの予測を提供してもよい。
【0027】
このように、構造体102の変形は、センシングファイバ110の変形に反映され、構造体102の歪みとして検出されてもよい。さらに、センシングファイバ110を介した電気伝導性が失われた場合には、その電気伝導性の喪失が構造体102の破断、亀裂、又は破壊の兆候として解釈されてもよい。
【0028】
図2は、構造歪み監視のための例示的な方法200のフローチャートである。便宜上、方法200は、
図1のシステム100を参照して説明されており、方法200のブロックのさらなる説明のために、
図1のシステム100の説明が参照されてもよい。しかし、これは限定的なものではなく、方法200は他のシステムで実行されてもよい。
【0029】
ブロック202において、処理ユニット120は、センシングファイバ110の電気抵抗を監視する。上述したように、センシングファイバ110は、構造体102を通って延び、センシングファイバ110の変形に伴って変化する電気抵抗を示す。ブロック204において、処理ユニット120は、その電気抵抗に基づいて、構造体102が経験した構造歪みを決定する。ブロック206において、処理ユニット120は、その構造歪みの表示を出力する。
【0030】
方法200のブロックの1つ以上は、実行されるとコンピューティングデバイス(例えば、
図1の処理ユニット120)のプロセッサに方法200の1つ以上のブロックを実行させる非一時的な機械可読の記憶媒体に格納された命令で具現化されてもよい。従って、処理ユニット120は、方法200の1つ以上のブロックを実行するように構成されてもよい。
【0031】
図3A~
図3Bに目を向けると、上述したように、センシングファイバ110の電気抵抗の変化は、構造体102におけるセンシングファイバ110の位置と、構造体102が経験した歪みの種類とに依存してもよい。
図3Aは、構造歪みの3つの異なる状況下にある構造体302の模式的な表現を示す。構造体302は、
図1の構造体102と同様であり、
図1のセンシングファイバ110と同様のセンシングファイバ310(点線で示す)を含む。構造体302は、構造体302を長さ方向に第1の半分と第2の半分とに二分する中立面又は中央線301(破線で示す)を含む。センシングファイバ310は、構造体302の第1の半分に配置され、構造体302の長さに沿って中央線301と実質的に平行に走る。
【0032】
状況(A)では、構造体302は、構造体302の第1の半分の長さの圧縮を引き起こす歪みを受け(すなわち、上方に偏向又は曲げられ)、それによって、センシングファイバ310の長さの圧縮が引き起こされる。状況(B)では、構造体302は、歪みのない中立状態にあり、センシングファイバ310をその中立の長さに置いている。状況(C)では、構造体302は、構造体302の第1の半分の長さの伸長(又は構造体302の第2の半分の圧縮)を引き起こす歪みを受け(すなわち、下方に偏向又は曲げられ)、それによって、センシングファイバ310の長さの伸長が引き起こされる。
【0033】
図3Bは、
図3Aで説明した状況(A)、(B)及び(C)のそれぞれにおいて、センシングファイバ310の電気抵抗とセンシングファイバ310の変形との関係を説明する変形-抵抗曲線350を示す変形-抵抗プロットである。センシングファイバ310が示す電気抵抗は、センシングファイバ310の長さが増大する(すなわち、伸長される)と増加し、センシングファイバ310の長さが減少する(すなわち、圧縮される)と減少する。
【0034】
状況(B)に対応する点(B)では、構造体302には歪みがなく、センシングファイバ310は中立又は初期の長さにあり、センシングファイバ310は中立又は初期の電気抵抗を示す。状況(A)に対応するポイント(A)では、構造体302は歪みの下にあり、センシングファイバ310は圧縮された長さにあり、センシングファイバ310は、中立又は初期の電気抵抗よりも低い圧縮時の電気抵抗を示す。状況(C)に対応する点(C)では、構造体302は反対の歪みの下にあり、センシングファイバ310は伸長された長さにあり、センシングファイバ310は、中立又は初期の電気抵抗よりも高い伸長時の電気抵抗を示す。
【0035】
センシングファイバ310の長さの圧縮又は伸長の各増分に対して、センシングファイバ310が示す電気抵抗も増分され、この関係は、
図3Bに示される変形-抵抗曲線350によって記述される。変形-抵抗曲線350は、センシングファイバ310の変形とセンシングファイバ310の電気抵抗との間の既知の関係を表しており、与えられた任意の変形量におけるセンシングファイバ310の電気抵抗を決定するために使用されてもよい。変形-抵抗曲線350は、センシングファイバ310の電気抵抗を変形の関数として計算する際に用いてもよい数学関数で表現されてもよい。構造体302の長さについて説明しているが、上述の原理は、構造体302の任意の寸法(すなわち、長さ、幅、深さ)の任意の変形、又は実際に、変形したときにセンシングファイバ310の圧縮又は伸長を引き起こす構造体302を通る任意の経路に適用されることを理解されたい。いくつかの例では、センシングファイバ310は、上述したように、センシングファイバ310の電気抵抗に基づいて構造体302によって費やされる構造歪みを決定するための機械学習モデルの訓練のために、状況(A)、(B)及び(C)と同様の状況下で試験されてもよい。
【0036】
図示の例では、電気抵抗と変形との関係は非線形である。特に、センシングファイバ310の電気抵抗は、センシングファイバ310が圧縮されているときよりも、センシングファイバ310が伸長されているときの方が、変形に対して敏感である。しかしながら、これは例として示されているに過ぎず、電気抵抗と変形との関係は、所定の用途に合わせて調整されてもよい。
【0037】
図4は、構造歪み監視の別のシステム400の模式図である。システム400は、
図1のシステム100と同様であるが、同様の構成要素には「100」系列ではなく「400」系列の番号が付けられており、構造体402と、センシングファイバ410と、処理ユニット420とを含む。これらの構成要素のさらなる説明については、
図1のシステム100における同様の構成要素の説明が参照されてもよい。
【0038】
システム400では、センシングファイバ410は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT/IB2019/051634号に記載されているように、導電性メッシュ414によって囲まれた伸縮可能なファイバコア412を含む。導電性メッシュ414は、センシングファイバ410にわたって電気を伝導するために、伸縮可能なファイバコア412の周りにコーティングされた複数の高アスペクト比ナノ材料416を含む。センシングファイバ410の一部は、これらの構成要素をより明確に見るために拡大されている。そのようなセンシングファイバ410は、それらが埋め込まれている構造体402に対する構造的な影響を最小限にするように、特に薄い(例えば、10μm~1mmの直径を有する)ものであってもよい。
【0039】
伸縮可能なファイバコア412は、柔軟で弾性があり、従って、構造体402が変形すると、センシングファイバ410は可逆的に変形する。導電性メッシュ414は、高アスペクト比ナノ材料416が互いに引き離されると抵抗値が増加し、高アスペクト比ナノ材料416が近づけられると抵抗値が減少する。従って、センシングファイバ410の電気抵抗は、センシングファイバ410が伸長されると減少し、センシングファイバ410が圧縮されると減少する。
【0040】
伸縮可能なファイバコア412は、柔軟性があり、曲げることが可能であり、変形可能であるという点で伸縮可能であり、破損することなく実質的な程度まで伸長又は圧縮されてもよい。伸縮可能なファイバコア412は、例えば、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリオレフィン、アクリルポリマー、ナイロン(登録商標)、ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)のうちの1つ又は複数の組み合わせ等の、ポリマー材料を含んでもよい。伸縮可能なファイバコア412は、約1ミリメートル未満の半径を有するように製造されてもよい。
【0041】
高アスペクト比ナノ材料416は、幅又は直径よりも長さが実質的に大きい細長いナノ材料堆積物を含んでもよい。導電性メッシュ414に組み合わされると、高アスペクト比ナノ材料416は、一緒に圧縮されるとより徹底的に電気的に接続され(従って、より低い抵抗)、伸長されて離れるとより徹底的に電気的に接続されない(従って、より高い抵抗)。高アスペクト比ナノ材料416は、少なくとも約50:1、より好ましくは約500:1、なおより好ましくは約1000:1、なおより好ましくは10,000:1の平均長さ対直径のアスペクト比を有してもよい。約1,000,000:1以上の平均長さ対直径のアスペクト比を有する高アスペクト比ナノ材料416が使用されてもよい。高アスペクト比ナノ材料416は、約50ナノメートル未満の平均直径を有してもよい。高アスペクト比ナノ材料416は導電性であり、従って、ナノワイヤ形態の銅、銀、金、白金、鉄等の金属化合物又は金属元素、カーボンナノチューブ、他の高アスペクト比ナノ粒子、及び他の高アスペクト比ナノナノ材料を含んでいてもよい。
【0042】
センシングファイバ410は、電気絶縁材料で被覆されてもよい。この電気絶縁材料は、構造体402内の他の構成要素とセンシングファイバ410との干渉を抑制してもよい。電気絶縁材料は、センシングファイバ410が構造体402内の他のセンシングファイバ410と短絡することをさらに抑制してもよく、このような短絡は、抑制されなければ構造歪み監視を妨害する可能性がある。電気絶縁材料は、化学的に耐性があってもよい。そのような絶縁性材料は、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリオレフィン、アクリルポリマー、ポリウレタン又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含んでもよい。
【0043】
いくつかの例では、センシングファイバ410は、いくつかの他のセンシングファイバ410と一緒にヤーン(糸)に巻かれて、同様に構造体402に接して又は構造体402の中に配置されてもよい。センシングファイバ410のヤーンは、特に歪みを受けているときに、単独のセンシングファイバ410よりも堅牢で信頼性が高い可能性がある。
【0044】
図5は、センシングファイバ510を有する例示的な構造体502の断面の模式図である。これらの構成要素は、
図1の構造体102及びセンシングファイバ110と同様であっていてもよく、従って、これらの構成要素のさらなる説明については、
図1の同様の構成要素の説明が参照されてもよい。
【0045】
しかしながら、構造体502において、センシングファイバ510は、構造体502の一部分を少なくとも2回通過する、構造体502を通る経路を辿る。示されるように、センシングファイバ510は、3つのセンシング強化セクション506をそれぞれ少なくとも2回通過する。すなわち、センシングファイバ510は、これらのセンシング強化セクション506の「重なり合う」感知を提供するために、これらのセクション506を2回以上折り返したり、後戻りしたりする。製造中、センシングファイバ510が構造体502に埋め込まれるとき、センシングファイバ510は、このようなセンシング強化セクション506を少なくとも2回(すなわち、前後に)通過する経路に敷設されてもよい。
【0046】
これらのセンシング強化セクション506において構造体502に変形がある場合、センシングファイバ510は、それが一度だけ通過するセクションにおいて受けるよりも、より極端な変形を受けることになり、従って、センシングファイバ510は、これらのセンシング強化セクション506における構造体502の変形に応じて、それが一度だけ通過するセクションにおいて示すよりも、より大きな程度の電気抵抗の増加又は減少(場合によっては)を示すことになる。それゆえ、センシングファイバ510は、構造体502の他の場所での変形に比べて、これらのセンシング強化セクション506での変形に対してより敏感である。
【0047】
応用として、センシングファイバ510は、上述したように構造体502の中で、構造歪みに関するとりわけ敏感な情報を受け取ることが特に有用である重要性の高いセクションに配置されてもよい。このように、センシングファイバ510が特に感度の高いそのようなセンシング強化セクション506を設けることによって、構造歪み監視の感度が調整されてもよい。
【0048】
本明細書で論じたセンシングファイバは、いくつかの方法で構造体に組み込まれてもよい。例えば
図6Aに示すように、1つ以上のセンシングファイバ610Aが、構造体602Aの表面に固定(例えば、接着)されてもよい。
【0049】
図6Bに示すような別の例として、構造体602Bは、それぞれ複数のセンシングファイバ610Bが埋め込まれた、複合材料の複数の層を含んでいてもよい。センシングファイバ610Bは、複合材料で使用される繊維と同様のサイズ及び柔軟性を有してもよい。センシングファイバ610Bの敷設は、複合材料を調製するためのレイアップ手順に組み込まれてもよい。
【0050】
さらに別の例として、
図7Aに示すように、1つ以上のセンシングファイバ710Aは、航空機の翼として示されている構造体702A内に配置されてもよい。
【0051】
さらに別の例として、
図7Bに示すように、1つ以上のセンシングファイバ710Bは、支柱又はピラーとして示されている構造体702B内に埋め込まれてもよい。
【0052】
このように、センシングファイバは、構造健全性監視用途のために提供されてもよい。センシングファイバは、構造体に生じた構造歪みによって変形したときに電気抵抗が変化し、それによって構造歪みの測定値を提供してもよい。センシングファイバは、それが埋め込まれている複合材料の完全性に悪影響を与えない低モジュラス材料から作製されていてもよく、従って、大きな構造体の連続的な構造監視を提供しながら、構造体内に安全に埋め込むことができる。センシングファイバはまた、構造体の表面にわたって敷設されてもよく、同様に材料の変形を監視するために表面に接着されてもよい。
【0053】
上で提供された様々な例の特徴及び態様は、同じく本開示の範囲内に入るさらなる例へと組み合わせることができることを認識すべきである。特許請求の範囲は、上記の実施例によって限定されるべきではなく、全体として本明細書と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【国際調査報告】