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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】金属基材用の腐食保護
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220414BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20220414BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220414BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20220414BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20220414BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/08
C09D7/61
C09D163/00
C23C26/00 A
C09D5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021546856
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 GB2020050273
(87)【国際公開番号】W WO2020165556
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】1901895.1
(32)【優先日】2019-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1901956.1
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521354031
【氏名又は名称】アプライド・グラフェン・マテリアルズ・ユーケー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED GRAPHENE MATERIALS UK LIMITED
【住所又は居所原語表記】Wilton Innovation Centre,Redcar TS10 4RF,GREAT BRITAIN
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リン・チコシャ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・デビッド・シャープ
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル・エドワード・ホワイトヘッド
(72)【発明者】
【氏名】ウイリアム・ウィーバー
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J038DA112
4J038DB001
4J038HA026
4J038HA036
4J038HA166
4J038HA296
4J038HA446
4J038HA556
4J038KA03
4J038KA05
4J038KA20
4J038LA06
4J038MA03
4J038MA14
4J038MA15
4J038NA03
4J038PA07
4J038PB05
4J038PC02
4K044AA02
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC02
4K044CA53
(57)【要約】
金属基材用の、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムにおいて用いられるタイコートコーティング組成物が開示される。システムは、金属基材の上にあるプライマコーティング層、プライマコーティング層の上にあるタイコートコーティング層、およびタイコートコーティング層の上にある仕上げコーティング層を有する。プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、タイコートコーティング層は、タイコート組成物から形成され、仕上げコーティング層は仕上げ組成物から形成される。プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤を含み、プライマ抑制剤は、流電カソード機構を有する。仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および外観を与えるように調合される。タイコート組成物は、タイコートキャリア媒質およびタイコート腐食抑制剤を含む。タイコート腐食抑制剤は、バリア機構を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材用の、前記金属基材の上にプライマコーティング層があり、前記プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、前記タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層があり、前記プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、前記タイコートコーティング層は、タイコート組成物から形成され、前記仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、前記プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤を含み、前記プライマ腐食抑制剤は、流電カソード機構を有し、前記仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合される、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムにおいて用いられるタイコートコーティング組成物であって、前記タイコート組成物は、タイコートキャリア媒質およびタイコート腐食抑制剤を含み、前記タイコート腐食抑制剤は、バリア機構を有するタイコートコーティング組成物。
【請求項2】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェンナノプレート、グラフェンオキシドナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層グラフェンオキシドナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、6~14層の炭素原子のグラフェン/グラファイトナノプレート、少なくとも1つのナノスケール寸法および40層以下の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および25~30層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および20~35層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、または少なくとも1つのナノスケール寸法および20~40層の炭素原子を有するグラファイトフレークのうちの1種類または混合物を含む、請求項1に記載のタイコート組成物。
【請求項3】
前記タイコート腐食抑制剤は、2D材料およびまたは層状2D材料のうちの1種類または混合物のナノプレートを含み、前記2D材料は、グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、シリセン、ゲルマネン、グラフィン、ボロフェン、ホスホレンのうちの1種類または混合物、あるいは前記材料のうちの2種類以上のものの2D面内ヘテロ構造体であり、前記層状2D材料は、グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、シリセン、ゲルマネン、グラフィン、ボロフェン、ホスホレン、または前記材料のうちの2種類以上のものの2D垂直ヘテロ構造体のうちの1種類または混合物である、請求項1または2に記載のタイコート組成物。
【請求項4】
前記タイコート腐食抑制剤は、45μm未満のD50粒径を有するグラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または2D材料のナノプレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項5】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または30μm未満のD50粒径を有する2D材料のナノプレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項6】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または15μm未満のD50粒径を有する2D材料のナノプレートを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項7】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%の範囲で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項8】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.6重量%の範囲で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項9】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項10】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%または0.5重量%の割合で存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項11】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%の割合で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項12】
前記タイコート組成物は、さらなるタイコート腐食抑制剤をさらに含み、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、不動態化機構を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項13】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%の範囲で存在する、請求項12に記載のタイコート組成物。
【請求項14】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.8重量%の範囲で存在する、請求項12または13に記載のタイコート組成物。
【請求項15】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.6重量%の範囲で存在する、請求項12~14のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項16】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項12~15のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項17】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%または0.5重量%の範囲で存在する、請求項12~16のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項18】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%の割合で存在する、請求項12~17のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項19】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、イオン交換された顔料、シリカ、カルシウム交換されたシリカ、マグネシウムのオキシアミノリン酸塩、および/または有機アミン、リン酸および/または無機リン酸塩および金属酸化物、金属水酸化物、クロム酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、タングステン酸亜鉛、バナジン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、クロム酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、タングステン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、ポリリン酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、クロム酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、バナジン酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウム、クロム酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、バナジン酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、亜リン酸ストロンチウム、ポリリン酸ストロンチウム、ホウ酸塩、メタホウ酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム、バナジン酸バリウム、リン酸バリウム、亜リン酸バリウム、ポリリン酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、クロム酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、タングステン酸アルミニウム、バナジン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウムおよび/またはメタホウ酸アルミニウムの混合物のうち少なくとも1種類を含む、請求項12または18のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項20】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、シリカを含む組成物である、請求項12~19のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項21】
前記タイコートキャリア媒質は、エポキシ樹脂、架橋性樹脂、非架橋性樹脂、熱硬化性アクリル、アミノプラスト、ウレタン、カルバミン酸エステル、ポリエステル、アルキドエポキシ、シリコーン、ポリウレア、ケイ酸塩、ポリジメチルシロキサン、ビニルエステル、不飽和ポリエステルならびにそれらの混合物および/または組み合わせのうち少なくとも1種類を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項22】
前記タイコートキャリア媒質は、硬化性樹脂を含む、請求項1~21のいずれか1項に記載のタイコート組成物。
【請求項23】
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む、請求項22に記載のタイコート組成物。
【請求項24】
前記硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂を含む、請求項22または23に記載のタイコート組成物。
【請求項25】
金属基材用の、前記金属基材の上にプライマコーティング層があり、前記プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、前記タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層がある、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムであって、前記プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、前記タイコートコーティング層は、請求項1~24のいずれか1項に記載のタイコート組成物から形成され、前記仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、前記プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤であって、流電カソード機構を有するプライマ腐食抑制剤を含み、前記仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合されるコーティングシステム。
【請求項26】
前記プライマ腐食抑制剤は、亜鉛、マグネシウムの無機塩およびまたはマンガンの無機塩のうちの1種類または混合物である、請求項25に記載のコーティングシステム。
【請求項27】
前記プライマ組成物は、ジンクリッチ組成物である、請求項25または26のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項28】
前記プライマ組成物の前記プライマキャリア媒質は、硬化性樹脂を含む、請求項25~27のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項29】
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む、請求項28に記載のコーティングシステム。
【請求項30】
前記硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂を含む、請求項28または29に記載のコーティングシステム。
【請求項31】
前記仕上げ組成物は、ポリウレタンである、請求項25~30のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項32】
前記プライマ腐食抑制剤は、前記プライマ組成物から形成された前記プライマコーティング層の前記プライマキャリア媒質中に入れられている、請求項25~31のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項33】
前記プライマ腐食抑制剤は、前記プライマコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項25~32のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項34】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物から形成された前記タイコートコーティング層の前記タイコートキャリア媒質中に入れられている、請求項25~33のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項35】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項25~34のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項36】
前記タイコート組成物は、さらなるタイコート腐食抑制剤を含み、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、不動態化機構を有し、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物から形成された前記タイコートコーティング層の前記タイコートキャリア媒質中に入れられている、請求項25~35のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項37】
前記タイコート組成物は、さらなるタイコート腐食抑制剤を含み、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、不動態化機構を有し、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項25~36のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材用の腐食保護に関する。詳しくは、本出願は、金属基材用の腐食保護に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の腐食は、グローバルな総生産(global Gross Domestic Product(GDP))の約3%を費やしていると見積もられ、グローバルな経済の重要な側面を構成する。新しい防食技術や改良された防食技術および、特に防食コーティングの開発に大きな関心が寄せられている。防食コーティングは、一般に、それらが作用する機構によって分類される。普通に用いられる機構は、基材のバリア保護、抑制または不動態化ならびに流電(galvanic)カソード保護である。
【0003】
バリア機構を使用するコーティング、いわゆるバリアコーティングは、水中または地中に沈められている構造物に用いられることがあり、多くの場合に用いられる。バリアコーティングは、雲母状酸化鉄、ガラスフレークおよびラメラアルミニウムなどの不活性顔料塗布の使用を典型とする。これらのシステムは、典型的には、高い顔料体積濃度(PVC:pigment volume concentration)のシステムとして用いられ、水やその他の攻撃的な化学種に対して顕著に低下した透過性を有する高密度コーティングを与える。保護のレベルは、コーティングの厚さ、コートの数に高度に依存し、コーティングの厚さがいくつかの薄いコートから構築されているとき最も高い性能を提供すると報告されている。
【0004】
バリアコーティング中に用いられる最も普通の顔料は、雲母状酸化鉄である。最適性能は、0.5%~1.5%の範囲のPVCで得られる。ラメラアルミニウムが顔料として用いられるとき、それは、典型的には、リーフィンググレードである。アルミニウム系の塗料またはコーティングは、陰極剥離に影響を及ぼすように最初のコートとして施用される必要がある。アルミニウムは、高pHおよび低pHでも腐食することがあり、従って、金属基材/コーティング界面において形成されるあらゆる電気化学セルのカソードで生成するヒドロキシル基との反応によって腐食することがある。ガラスフレークの使用は、典型的には、フレークの大きなサイズ(100μm~1000μm)に起因して非常に厚いコーティングに限られる。
【0005】
抑制または不動態化機構を使用するコーティング、いわゆる抑制コーティングは、コーティングの構成要素/顔料と金属基材との反応によって機能するため、主としてプライマとして施用される。これらのコーティングは、基材が大気腐食に曝されている場合に優先的に用いられ、水中または土壌中に沈められている場合には用いられない。抑制機構は、金属の不動態化と、不動態化反応の結果としての金属複合体の層の構築に依拠する。金属複合体は、Cl-もしくはH+イオンまたは溶存酸素などの攻撃的な化学種の基材の金属への輸送を妨げる。
【0006】
抑制コーティングの活性構成要素/顔料は、典型的には、わずかに水溶性であり、溶解すると陽イオンを発生する。リン酸塩が普通に用いられるが、クロム酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩も用いられる。活性成分の選択は、環境ならびに健康および安全性への懸念の増加に起因してますます規制圧力の対象となっている。
【0007】
現行の規制は、抑制コーティング中に用いることができる物質を制限する。クローム(Chrome)(VI)化合物は、REACH(2008年付則XIV)に基づいて認可の対象となっている。耐食顔料に関する他の法的措置は、2003年からの鉛顔料ならびに2007年からのプライマおよび前処理剤中のクローム(VI)の段階的廃止を見てきたELV(:Enc of Life Vehicle)(使用済み自動車)指令を含む。他の規制は、白物家電中のCr(VI)の使用を制限したWEEE(:Waste Electrical and Electronic Equipment Directive 2006)(2006年電気・電子廃棄物指令)およびRoHS(:Restriction of Hazardous Substances Directive 2002)(2002年有害物質使用制限)指令を含む。米国においては、OSHA(:Occupational Safety and health Administration regulation 2006)(2006年労働安全衛生庁規制)がCr(VI)への従業員許容曝露を52μg/m3から5μg/m3へ引き下げた。リン酸亜鉛も、それが水生生物に有毒であり、水性環境において長期の悪影響を生じ得ることから、懸念が増加しつつある。この物質の偶発的な摂取は、個人の健康に有害なことがある。可溶性亜鉛塩は、痛みを伴う消化管の炎症および消耗、ならびに嘔吐を発生させる。従って、そのような物質を耐食コーティングから減らすかまたは除くことは有益である。
【0008】
抑制的顔料の機構は、コーティング中に拡散した水による顔料の部分的溶解に基づく。金属基材の表面において、溶解したイオンは、金属と反応し、反応生成物を生成し、これが表面を不動態化する。抑制的顔料が反応用のイオンを放出するのに十分なほど可溶性であることが肝心である。しかし、高すぎる溶解性は、金属基材/コーティング界面におけるブリスタリングを生む結果となり得る。理想的な抑制的コーティングは、水および有害イオンに対するバリアを形成する一方で同時に十分な量の抑制剤イオンを放出するべきである。これら2つの要件は、原理上相反し、抑制的コーティングは、コーティングのバリア特性(透過性が低いほどバリア性が良い)と顔料の溶媒和する能力および作り出されたイオンのコーティング基材界面に移動する能力(透過性が高いほどイオンの溶媒和および移動が大きい)との間の均衡を必要とする。抑制的コーティング中に用いられる顔料は、金属基材/コーティング界面において形成される電気化学セルのアノード反応およびカソード反応への効果に従って分類されることがある。
【0009】
流電カソード抑制剤(典型的には高レベルの亜鉛(多くの場合に「ジンクリッチ」と呼ばれる)またはマグネシウムおよびマンガンの無機塩を用いる)は、分極に対するカソード抵抗を増加させる不溶性堆積物を形成するヒドロキシルイオンとの反応によってカソードにおける腐食を抑止する。アノード抑制剤は、同様に、アノードにおけるアノード分極を増加させることによって腐食の速度を低下させる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、金属基材用の、金属基材の上にプライマコーティング層があり、プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層があり、プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、タイコートコーティング層は、タイコート組成物から形成され、仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤を含み、プライマ腐食抑制剤は、流電カソード機構を有し、仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合される、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムにおいて用いられるタイコートコーティング組成物であって、タイコート組成物は、タイコートキャリア媒質およびタイコート腐食抑制剤を含み、タイコート腐食抑制剤は、バリア機構を有する、タイコートコーティング組成物が提供される。
【0011】
本発明によれば、金属基材用の、金属基材の上にプライマコーティング層があり、プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層がある、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムであって、プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、タイコートコーティング層は、上の段落によるタイコート組成物から形成され、仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤を含み、プライマ腐食抑制剤は、流電カソード機構を有し、仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合される、コーティングシステムも提供される。
【0012】
詳細な説明を理解するために有用である様々な実施例のより良好な理解のために、添付の図面が例としてのみ参照される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水蒸気透過速度の試験の結果を例示する。
図2】単一コート試料についてインピーダンスモジュラスの推移を例示する。
図3】3コートシステム試料についてインピーダンスモジュラスの推移を例示する。
図4(a)】3コート対照試料について位相シフトのボードプロットの選択を例示する。
図4(b)】高インピーダンス試料について位相角ボードプロットを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本開示の実施例は、金属基材用のコーティングシステムにおいて用いられるタイコートコーティング組成物を提供する。コーティングシステムは、少なくとも3つのコーティング層を含み、その中では金属基材の上にプライマコーティング層(すなわち第1のプライマコーティング層)があり、プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層(すなわち第2のタイコートコーティング層)があり、タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層(すなわち第3の仕上げコーティング層)がある。
【0015】
プライマコーティング層は、プライマ組成物(すなわち第1のプライマ組成物)から形成される。タイコートコーティング層は、タイコート組成物(すなわち第2のタイコート組成物)から形成される。仕上げコーティング層は、仕上げ組成物(すなわち第3の仕上げ組成物)から形成される。プライマ組成物は、プライマキャリア媒質(すなわち第1のプライマキャリア媒質)およびプライマ腐食抑制剤(すなわち第1のプライマ腐食抑制剤)を含む。プライマ腐食抑制剤は、流電カソード機構を有する。仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合される。タイコート組成物は、タイコートキャリア媒質(すなわち第2のタイコートキャリア媒質)およびタイコート腐食抑制剤(すなわち第2のタイコート腐食抑制剤)を含む。タイコート腐食抑制剤は、バリア機構を有する。
【0016】
タイコート腐食抑制剤は、水およびCl-またはH+などの腐食性イオンの金属基材への接近を減らすバリアを作り出す。保護のレベルは、タイコートコーティングの完全性、その疎水性、水への親和性およびコーティングの厚さに依存する。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%、0.05重量%~0.8重量%、0.05重量%~0.6重量%、または0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、タイコート組成物の0.1重量%または0.5重量%の割合で存在する。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、グラフェンナノプレート、グラフェンオキシドナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層グラフェンオキシドナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、6~14の炭素原子の層のグラフェン/グラファイトナノプレート、少なくとも1つのナノスケール寸法および40層以下の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および25~30層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および20~35層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、または少なくとも1つのナノスケールの寸法および20~40層の炭素原子を有するグラファイトフレークのうちの1種類または混合物を含む。
【0019】
グラフェンナノプレート、グラフェンオキシドナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層グラフェンオキシドナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、グラフェン/6~14の炭素原子の層のグラファイトナノプレート、ナノスケールの寸法および40層以下の炭素原子を有するグラファイトフレーク、ナノスケールの寸法および25~30層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、ナノスケールの寸法および20~35層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、またはナノスケールの寸法および20~40層の炭素原子を有するグラファイトフレークは、以後まとめて「グラフェン/グラファイトプレートレット」と呼ばれる。グラフェン、グラフェンオキシド、および/または還元グラフェンオキシドナノプレートは、典型的には、1~10層の炭素原子、典型的には0.3nm~3nmの間の厚さ、および大体100nm~100μmの範囲の面内寸法を有する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、2D材料およびまたは層状2D材料のうちの1種類または混合物のナノプレートを含む。
【0021】
2D材料(時には単層材料と呼ばれる)は、単一層の原子からなる結晶材料である。層状2D材料は、3次元構造体を形成するように弱く積み重ねられているかまたは束縛されている2D材料の層からなる。2D材料および層状2D材料のナノプレートは、ナノスケール以下の範囲の厚さを有し、その他の2つの次元は、一般に、ナノスケールより大きなスケールにある。
【0022】
本発明の組成物中に用いられる2D材料は、グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)、または前述の材料のうちの2種類以上の2D面内ヘテロ構造体のことがある。
【0023】
層状2D材料は、グラフェン(C)、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素(hBN)、二硫化モリブデン(MoS2)、二セレン化タングステン(WSe2)、シリセン(Si)、ゲルマネン(Ge)、グラフィン(C)、ボロフェン(B)、ホスホレン(P)の複数層、または前述の材料のうちの2種類以上の2D垂直ヘテロ構造体のことがある。
【0024】
本発明によるタイコート組成物中のタイコート腐食抑制剤としてのグラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートの使用は、グラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートの組み込みの濃度および施用された乾燥膜厚に依存して、タイコート層中にグラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートの複数の層を生じる結果となるだろう。それぞれのプレートレットまたはナノプレートは、潜在的に数原子層の厚さである。タイコート層中のグラフェンプレートレットの複数の層の存在は、水、水が運ぶあらゆる溶存酸素、およびまたはCl-またはH+などのあらゆる攻撃的イオンの侵入のための複雑かつ蛇行形の(迷宮のような)通り道を提供する。この迷宮のような通り道は、タイコート層を横切る水および水の中に溶解している物質の拡散速度を顕著に低下させる。このことは、2つのタイプの市販のグラフェン/グラファイトプレートレット(ともに英国のアプライドグラフェンマテリアルズUKリミテッド(Applied Graphene Materials UK Limited)から入手可能な6~14層の炭素原子を有するA-GNP35および25~35層の炭素原子を有するA-GNP10)および対照物(すなわちグラフェンが存在しない)を含むコーティングについての水蒸気透過速度の試験の結果によって立証される。図1に結果が示される。
【0025】
グラフェン/グラファイトプレートレットは、典型的には、0.3nm~12nmの間の厚さおよび大体100nm~100μmの範囲の面内寸法を有する。その結果として、かつグラフェン/グラファイトプレートレットの高い外側面および表面の面積のため、本発明によるタイコート組成物で構成されるコーティングは、雲母状酸化鉄、ガラスフレーク、および/またはアルミニウムフレークなどの他のバリア機構物質/顔料を含む同程度のコーティングより顕著に薄いことがある。さらに、グラフェンプレートレットの使用は、良好な接着強さおよび機械的性質を有するコーティングを生じる結果となることが見いだされた。本発明のいくつかの実施形態において、グラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートは、マスターサイザー(Mastersizer)3000で測定して45μm未満、30μm未満、または15μm未満のD50粒径を有する。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、プライマ腐食抑制剤は、亜鉛、マグネシウムの無機塩およびまたはマンガンの無機塩のうちの1種類または混合物である。
【0027】
耐食コーティングシステムが本発明による組成物を含むことがある。そのようなコーティングは、本発明の範囲内にある。そのようなコーティングは、耐食コーティングの調合および/または製造において使用されることが知られている他の構成要素をさらに含むことがある。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態において、タイコート組成物は、さらなるタイコート腐食抑制剤をさらに含み、さらなるタイコート腐食抑制剤は、流電カソード機構または不動態化機構を有する。本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%、0.05重量%~0.8重量%、0.05重量%~0.6重量%、または0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する。本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、第2の組成物(すなわちタイコート組成物)の0.1重量%または0.5重量%の割合で存在する。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、イオン交換された顔料、シリカ、カルシウム交換されたシリカ、マグネシウムのオキシアミノリン酸塩のうちの少なくとも1種類、および/または有機アミン、リン酸および/または無機リン酸塩および金属酸化物および/または金属水酸化物の混合物を含む。
【0030】
イオン交換された顔料、シリカ、カルシウム交換されたシリカ、およびマグネシウムのオキシアミノリン酸塩はすべて、一般に、危険でない物質であるとみなされている。有機アミン、リン酸および/または無機リン酸塩および金属酸化物および/または金属水酸化物の混合物は、一般に、用いられる金属に依存して危険でない物質であるとみなされている。そのような物質は、従って、これまで用いられた腐食抑制剤よりはるかに少ない環境懸念を及ぼす点で有益である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤、すなわち第3のタイコート腐食抑制剤は、クロム酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、タングステン酸亜鉛、バナジン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、クロム酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、タングステン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、ポリリン酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、クロム酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、バナジン酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウム、クロム酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、バナジン酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、亜リン酸ストロンチウム、ポリリン酸ストロンチウム、ホウ酸塩、メタホウ酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム、バナジン酸バリウム、リン酸バリウム、亜リン酸バリウム、ポリリン酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、クロム酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、タングステン酸アルミニウム、バナジン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、および/またはメタホウ酸アルミニウムのうちの1種類以上を含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態において、プライマおよびまたはタイコート組成物のキャリア媒質は、エポキシ樹脂である。よって、そのような実施形態において、タイコートキャリア媒質は、硬化性樹脂を含み、硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂のことがある。よって、そのような実施形態において、プライマキャリア媒質は、硬化性樹脂を含み、硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂のことがある。
【0033】
その結果、本発明のいくつかの実施形態によるプライマおよびまたはタイコート組成物から形成されたコーティングは、第1およびまたは第2の腐食抑制剤(すなわちプライマ腐食抑制剤および/またはタイコート腐食抑制剤)が入れられているエポキシ樹脂で構成されるだろう。よって、そのような実施形態において、プライマ腐食抑制剤は、プライマ組成物から形成されたプライマコーティング層のプライマキャリア媒質中に入れられている。そのような実施形態において、プライマ腐食抑制剤は、プライマコーティング層を通して実質的に均一に分散している。
【0034】
よって、そのような実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、タイコート組成物から形成されたタイコートコーティング層のタイコートキャリア媒質中に入れられている。そのような実施形態において、タイコート腐食抑制剤は、タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している。
【0035】
タイコート組成物がさらなるタイコート腐食抑制剤を含む実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、タイコート組成物から形成されたタイコートコーティング層のタイコートキャリア媒質中に入れられている。そのような実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、プライマおよびまたはタイコート組成物のキャリア媒質は、1種類以上の適当な架橋性樹脂、非架橋性樹脂、熱硬化性アクリル類、アミノ樹脂、ウレタン、カルバミン酸エステル、ポリエステル、アルキドエポキシ、シリコーン、ポリウレア、ケイ酸塩、ポリジメチルシロキサン、ビニルエステル、不飽和ポリエステルならびにそれらの混合物または組み合わせで構成される。
【0037】
プライマ組成物のキャリア媒質としての使用に適しているエポキシ樹脂およびその他の材料は、水または湿気への比較的短い期間の曝露の後に、水およびまたは溶存酸素およびまたは塩化ナトリウムからのCl-または水からのH+イオンなどの溶存イオンで飽和するだろう。水、酸素およびまたは溶存イオンは、プライマコーティングと金属基材との間の界面に達した場合、電気化学セルの創出を引き起こすことができ、それに続いて金属基材の湿食が起こることがある。そのような腐食の機構は、周知であり、本明細書において考察する必要はない。
【0038】
本発明によるタイコート層の使用は、タイコート腐食抑制剤からの結果としての水、酸素およびまたは溶存イオンの透過に対するバリアが、その水、酸素およびまたは溶存イオンが金属基材から離れたプライマ層の表面に達することを抑制するかまたは遅延させ、従って、水、酸素およびまたは溶存イオンによるプライマ層の飽和を抑制するかまたは遅延させるという利点を有する。
【0039】
グラフェンは、多くの形を有し、CVD(化学蒸着法)による膜の成長は、十分に理解され、1~3原子層のグラフェン膜を生じさせることができる。グラフェンと関連した実験においては、多くの場合、そのような膜が用いられる。そのような技法は、比較的小さな面積の膜が作り出されるかまたは基材が被覆されることしか可能にしないため、限られた実用上の利用可能性を有する。実用的な用途においては、グラフェンがグラフェンナノプレートレットの形で用いられる方が典型的である。グラフェンナノプレートレットは、グラファイトの剥離によるかまたは合成ソルボサーマルプロセス経由のどちらかによって製造されることがある。そのようなグラフェンナノプレートレットは、原子層の数、表面積、官能基およびsp2含有率がかなり変動することがある。そのような変動は、グラフェンの伝導率などのグラフェンの物理的性質に影響を及ぼす。同じように、ナノスケールの寸法および40層以下の炭素原子を有するグラファイトフレーク、ナノスケールの寸法および25~30層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、ナノスケールの寸法および20~35層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、またはナノスケールの寸法および20~40層の炭素原子を有するグラファイトフレークは、グラファイトの剥離または合成ソルボサーマルプロセス経由のどちらかによって製造されることがある。
【0040】
グラフェン/グラファイトプレートレットは、典型的には、0.3nm~12nmの間の厚さおよび大体100nm~100μmの範囲の面内寸法を有する。その結果、およびグラフェン/グラファイトプレートレットの高い外側面および表面の面積のため、本発明による組成物で構成されるコーティングは、雲母状酸化鉄、ガラスフレーク、および/またはアルミニウムフレークなどの他のバリア機構物質/顔料を含む同程度のコーティングより顕著に薄いことがある。さらに、グラフェンプレートレットの使用は、良好な接着強さおよび機械的性質を有するコーティングを生じる結果となることが見いだされた。本発明のいくつかの実施形態において、グラフェンプレートレットは、マスターサイザー3000で測定して45μm未満、30μm未満、または15μm未満のD50粒径を有する。
【0041】
金属、特に鋼は、鋼に金属亜鉛のコーティングを施用することによって急速な腐食の劣化作用から保護することができることは、周知である。コーティングは、鋼を溶融亜鉛中に浸漬すること(ガルバナイジング)によることがあるが、これは、常に可能というわけではない。第2の、多くの場合より実際的な手法は、鋼をジンクリッチコーティングで被覆することである。
【0042】
亜鉛は、大部分の条件下で鋼よりはるかに耐久性があるため、ガルバナイジングは、鋼を保護する。従って、亜鉛コーティングは、鋼を腐食剤から遮蔽する一方で非常にゆっくりとしか腐食しないバリアを鋼の表面に形成する。
【0043】
ジンクリッチコーティングによって鋼に与えられる腐食からの保護は、いくつかの経路で提供される。
【0044】
ジンクリッチコーティングの使用は、亜鉛の電気化学的または犠牲的作用によって鋼を保護する。この効果は、鋼とコーティングの亜鉛粒子とが電気的に結合し、伝導性の水溶液と接触しているとき起こる。そのような場合、亜鉛の電位が鋼(鉄)のものより十分に高く、電子の流れが鋼へ向かい、鋼表面の負電荷を維持し、酸化鉄(III)(錆)に至り得る第一鉄イオンの形成を妨げるため、鋼は、亜鉛を犠牲にして保護される。この効果は、亜鉛上の水酸化亜鉛の形成という結果となり、水酸化亜鉛は、今度は、周囲の環境中の塩素または二酸化炭素と反応して塩基性亜鉛塩を形成する。これらの塩基性亜鉛塩は、鋼表面に堆積する。亜鉛塩は、鋼に良好なバリア保護を提供する保護コーティングを形成する。この効果が発揮されるとき、ジンクリッチコーティング中の金属亜鉛は、塩形成によって消費されている。
【0045】
カソード保護は、亜鉛の溶解ならびに水酸化亜鉛および水亜鉛土の形成に続いて亜鉛粒子と鋼との間の電気接触が失われるような時点までしか起らないことが知られている。よって、ジンクリッチプライマの効率は、低く、亜鉛化合物の浸出を伴い、環境問題を作り出す。
【0046】
亜鉛粒子と鋼との電気接続性を改善し、従ってより低い亜鉛金属保持率および膜性能の改善を可能にするために、ジンクリッチコーティングに伝導性のカーボンブラックを組み込むことが知られている。伝導性のカーボンブラックのいくつかの代替物(カーボンナノチューブ、グラフェン)が評価され、成功のレベルは様々だった。
【0047】
理論に束縛されることなく、エポキシ樹脂などの第2の組成物(すなわちタイコート組成物)のキャリア媒質中にカプセル化され、ジンクリッチプライマを含む第1のコーティング層(すなわちプライマコーティング層)に、かつ第3のコーティング層(すなわち仕上げコーティング層)の下に、第2のコーティング層(すなわちタイコートコーティング層)として施用されたグラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートのバリア活性は、第1のコーティング層(すなわちプライマコーティング層)による水吸収の速度、その結果としてジンクリッチプライマの反応速度を低減する高度に効率的なバリアとして作用すると考えられる。
【0048】
こうして、3コーティング層コーティングシステムにおけるタイコートコーティング層(すなわち第2のコーティング層)としての本発明の第1の側面の組成物の使用によって生じる複数の利点がある。それらは、
a.全体としてのコーティングシステムの寿命の増加
b.ジンクリッチプライマの厚さを減らす潜在力
c.環境性能の改善を生じる結果となる、膜からの浸出により失われる亜鉛の量の低減
である。
【0049】
本発明による組成物(すなわちタイコート組成物)において、不動態化機構を有する少なくとも1種類の第3の腐食抑制剤(すなわちさらなるタイコート腐食抑制剤)を含むことは、腐食を防止するかまたは開始した腐食を抑制する助けとなる。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、少なくとも1種類のイオン交換顔料(IEP:ion exchange pigment)を含む。イオン交換顔料は、シリカ、カルシウム交換されたシリカ、およびアルミナを含む組成物を含むが、これに限定されるものではない。イオン交換顔料は、不動態化機構を有する腐食抑制剤である、比較的新しい種類の顔料である。これらの化合物は、大きな表面積を有する無機酸化物であり、表面ヒドロキシル基とのイオン交換によってイオン性腐食抑制剤を担持している。酸化物は、陽イオンまたは陰イオン交換体のどちらか(カチオン担体としてシリカ、アニオン担体にはアルミナが用いられる)を提供する、酸または塩基特性で選ばれる。プライマ腐食抑制剤の腐食保護挙動は、イオン交換顔料の溶解が原因となるイオン放出の速度によって支配される。
【0051】
カルシウム交換されたシリカイオン交換顔料は、クロムおよび亜鉛系のシステムへの環境友好的代替物を提供する。カルシウム交換されたシリカは、水および攻撃的イオンがコーティングに浸透するにつれて調節された拡散によって機能する。イオン交換顔料によって放出されたイオンは、不動態化と関連する公知の態様で金属基材と反応する。アノード反応とカソード反応との両方がある。コーティング中のpHに応じて、イオン交換顔料のシリカは、ケイ酸塩イオンとして溶解することができる。金属基材が低もしくは中もしくは高非合金化炭素鋼または低もしくは高合金鋼などの鉄合金であるとき。顔料のこの可溶性画分、ケイ酸塩イオンは、第2鉄イオンと反応することができる。これは、金属基材の表面において保護層が形成される結果となる。この反応と並行して、シリカ表面のカルシウムカチオンまたはその他の金属カチオンは、放出され、可溶性シリカとの反応によって、金属表面上のアルカリ性領域においてケイ酸カルシウム膜を形成する。これが、ケイ酸鉄と一緒に、金属表面上の混合酸化物層の形成によって保護膜を強化する助けとなる。同時に、カルシウムまたは他の金属カチオンが放出され、シリカは、ケイ酸カルシウム膜に進入する攻撃的なカチオンを捕獲する。膜および化合物形成のこれらの過程は、二重不動態化機構:金属基材上の攻撃的イオンの吸着および保護層の形成、によって腐食反応を抑制する結果となる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、少なくとも1種類のマグネシウムのオキシアミノリン酸塩を含む。マグネシウムのオキシアミノリン酸塩は、代替環境友好的耐食材料を構成する。マグネシウムのオキシアミノリン酸塩の水分への曝露の直後に、その塩のアミンは、公知の不動態化機構によって金属表面を不動態化する。その不動態化の結果、主として酸化マグネシウムで構成された保護層であって、大体25~50nmの厚さである層が金属基材の表面に堆積される。金属基材が鋼であるとき、保護層は、アノード抑制を提供することによって金属表面を不動態に保つ。金属基材がアルミニウムまたはアルミニウム合金であるとき、酸化マグネシウム層は、電位をアルミニウムまたはアルミニウム合金の腐食電位より高く保ち、従ってカソード抑制を提供する。
【0053】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)測定は、グラフェンがその天然状態において高いレベルの伝導率を有する一方で、プレートレットとしてエポキシ樹脂(エポキシ樹脂は、一般に、良好な絶縁体である)中に組み込まれると、この伝導率が顕著に低下することを示している。このことは、エポキシ樹脂が顔料および充填材などのその他の非晶質または結晶性の添加物を含有し、均一ではあるが高度に無秩序な母材を作り出すとき特にそうである。そのようなマトリックス中で、グラフェンプレートレットは、顕著な伝導率をまったく示さず、従って、金属基材の表面においてカソード保護を付与することも腐食電位への利点を提供することもまったくない。
【0054】
本発明によるタイコート組成物の利点は、タイコートおよびさらなるタイコート腐食抑制剤が互いに相乗的に作用することである。特に、同じキャリア媒質中のタイコートとさらなるタイコート腐食抑制剤との組み合わせは、本発明によるタイコート組成物からなるタイコート層の耐用年数を増加させる利点を有する。その増強は、顕著なものとすることができ、公知の防食コーティングの耐用年数の2倍、3倍または4倍を超えることがある。この文脈において、耐用年数は、コーティングの施用と最初に施用されたコーティングの分解を理由としてコーティングを再施用する必要との間の期間であると理解されるべきである。国際標準化機構標準4628-3:2005の用語では、耐用年数は、コーティングの施用からグレードRi3の錆評価が発生するまでの間の期間である。
【0055】
本発明の第1の側面による組成物(すなわちタイコート組成物)および本発明の第2の側面によるコーティングシステムのさらなる利点は、第1の側面のタイコートコーティング層が、仕上げコーティング層へのプライマコーティング層の接着強さ公知のシステムと比較して増強することである。
【0056】
理論に束縛されることを望むことなく、コーティングの耐用年数の増加は、以下の理由で実現されると理解される。
-プライマ腐食抑制剤は、プライマキャリア媒質中で実質的に均一に混合され、その結果、第1の腐食抑制剤の一部は、プライマコーティング層と金属基材との間の界面に近くなる。
-タイコート腐食抑制剤は、タイコートコーティング層としてともに施用されるタイコートキャリア媒質中で実質的に均一に混合される。
-任意選択のさらなるタイコート腐食抑制剤は、タイコートコーティング層としてともに施用されるタイコート腐食抑制剤を保持するタイコートキャリア媒質中で実質的に均一に混合される。
-プライマ腐食抑制剤の近傍の金属は、プライマコーティング層の施用時に経験する湿気および使用時の最終的な曝露から解離して、プライマ腐食抑制剤が亜鉛であるとき、水酸化亜鉛および水亜鉛土を形成することができる。
-タイコートキャリア媒質によって分配されたグラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートは、金属基材から離れたタイコートコーティング層の面とプライマコーティング層と隣り合うタイコートコーティング層の面との間に迷宮のような通り道を作り出す。
-グラフェン/グラファイトプレートレットおよびまたは2D材料のナノプレートによって作り出された迷宮のような通り道は、金属基材から離れたタイコートコーティング層の面からプライマコーティング層と隣り合うタイコートコーティング層の面への水、溶存酸素、および/または溶存イオンの拡散を抑制する。
-タイコートコーティング層中の迷宮のような通り道を通って水、溶存酸素、および溶存イオンが拡散したら、それらは、プライマコーティング層に進入し、プライマ腐食抑制剤と出会い、プライマ腐食抑制剤(すなわち第1の腐食抑制剤)が溶解し、反応する原因となる。
-タイコートコーティング層(すなわち第2のコーティング層)の迷宮のような通り道に沿った水、溶存酸素、および/または溶存イオンの遅い拡散は、プライマコーティング層中のプライマ腐食抑制剤(すなわち第1の腐食抑制剤)が完全に溶解するには相当な時間がかかり、その結果、プライマコーティング層中のプライマ腐食抑制剤が尽き、プライマ腐食抑制剤の利点が終わる前に、非常に長い期間があるという効果を有する。その期間は、公知の防食コーティングの場合より長く、従って、プライマコーティング層は、耐用年数の増加を有する。
【0057】
本発明によるタイコート組成物を含むコーティングの耐用寿命の増加は、腐食性コーティングの施用が労働と材料とのコストの両方の点で費用が高価であるがための顕著な経済的利点、ならびに、より少ないコーティングが用いられ、上記のように、コーティングの内容物が公知のコーティングより生態学的に良好なことがあるがための顕著な生態学的利点を有する。
【0058】
実験
グラフェンを含まないエポキシプロトタイプ基本コーティング(A部)を最初に調製し、表1に概略を示すように、標準的な実用中間コーティング層の代表となるように調合した。
【0059】
【表1】
【0060】
D3は、さらなるタイコート腐食抑制剤を含む。上記実施例において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、酸化カルシウムで修飾したシリカ製品(インヒビシル(Inhibisil);さらに詳しくは表2参照)である。他の実施例において、さらなるタイコート腐食抑制剤は、イオン交換された顔料またはその他の不動態化顔料のことがある。上記実施例において、さらなるタイコート腐食抑制剤、すなわちインヒビシルは、タイコート組成物の1重量%の割合で存在する。
【0061】
調合ステップは、以下の通りであった。
【0062】
高速オーバーヘッドミキサーに構成要素1~6を入れ、2000rpmで10分間混合した。その結果得られたゲルを調べてそれが均一であるか、および小片がないかを見た。該当しない場合はゲルが均一となり、かつ小片がなくなるまで混合を続けた。
【0063】
ミキサーに構成要素7および8を加え、2000rpmで15分間または挽き(最大粒径)が25μm未満になるまで混合した。これは、製造の挽き段階として知られている。
【0064】
構成要素9を加え、1000rpmで15分間混合した。これは、製造の減速段階として知られている。
【0065】
アミン低速硬化剤11を10重量%で加えれば、組成物は、バリア特性を有するタイコートコーティング層(すなわち第2のコーティング層)を形成する、プライマコーティング層(すなわち第1のコーティング層)への施用に向けて準備完了であった。
【0066】
上の表1に示したように、次に、エポキシプロトタイプ基本の場合と同じ初期調製ルートを用いて、最後のステップのエポキシ(形成成分10)を市販GNP含有分散用添加剤(調合成分9)で置き換えることにより、本発明による3種類の組成物D1、D2およびD3を調製した。
【0067】
表2に詳細を示すグラフェン分散用添加剤をマスターバッチとして効果的に取り扱い、それらのグラフェン含有量および末端コーティングにおいて指定される最終グラフェン含有量(表1、すなわちGNP担持率)に従って様々な量で加えた。
【0068】
【表2】
【0069】
用いたグラフェン分散用添加剤(例えばグラフェン/グラファイトプレートレット)は、アプライドグラフェンUKリミテッド、英国から25~35層の炭素原子を有するA-GNP10またはジェネーブル(Genable)(商標)1000、6~14層の炭素原子を有するA-GNP35またはジェネーブル(商標)1200、およびA-GNP10とインヒビシル(商標)との混合物であるジェネーブル(商標)3000として市販されていた。インヒビシルは、PPGインダストリーズオハイオ社(PPG Industries Ohio,Inc.)、米国から市販されている酸化カルシウム修飾シリカ製品である。
【0070】
コーティング施用の前に、アセトンを用いてすべての基材を脱脂した。グリットブラストした寸法150×100×2mmの軟鋼CR4グレードパネル(インプレスノースイースト社(Impress North East Ltd)から市販されている)に通常のスプレーガンを用いて各第1コートを施用した。多重コート試料の場合、オーバーコート間隔は、3時間であり、すべてのパネルに23℃(±2℃)で7日間の最終硬化期間を与えた。
【0071】
調製したコーティングの乾燥膜厚は、単一コート試料で50~60μ、多重コート試料では120~180μの範囲であった。調製したコーティングシステムのすべての詳細を表3に見ることができる。
【0072】
【表3】
【0073】
すべての基材を試験前に裏面補強し、縁を付けた。用いたジンクリッチプライマおよびポリウレタントップコートは、それぞれ標準的な市販のプライマおよびトップコートであった。
【0074】
中性塩スプレー(NSS)試験
【0075】
ISO 12944においてC4およびC5大気条件における性能を示す3種類の試験方法(ISO 12944からの抜粋である表4参照)が特定されている。
【0076】
【表4】
【0077】
これらは、水分凝縮、中性塩スプレーおよび循環エージング試験を含む。耐用年数の延長をもたらす潜在力を有するシステムを特定する予備的な作業として、中性塩スプレーを初期選別方法として選んだ。ジンクリッチエポキシプライマと同等以上の性能を示したグラフェン調合物について水分凝縮および循環老化試験を実行する。
【0078】
腐食チャンバーの中にパネルを置き、ISO 9227を最長720時間で行った。この試験方法は、35℃の温度における連続塩スプレーミストからなる。10日(240時間間隔)の時点でISO4628に従ってブリスタリング、腐食、および腐食クリープの徴候がないかパネルを評価した。これらの評価結果を同じ間隔で実行した電気化学的測定値で補った。
【0079】
電気化学的測定
【0080】
電気化学/NSS試験の前に、作用電極コネクタのための電気接点を提供するために少量のパネル背面補強材料をナイフブレードで取り除いた。電気化学試験の完了後、試料がNSS条件下にある間のいかなる腐食の可能性も低減するために、背面補強材料が取り除かれた区間を絶縁テープで被覆した。追加の事前ステップは、後続の電気化学測定のための試験区域の再配置において助けとなるように、試験区域を永続的マーカーでマークすることであった。
【0081】
1回あたり最大8個の試料の同時試験を可能にするために、ガムリ(Gamry)ECM8マルチプレクサと共にガムリ1000Eポテンシオスタットを用いてすべての電気化学的測定を記録した。被覆された金属基材の電気化学試験のために特に設計したガムリPCT-1塗料試験セルに個別の各チャンネルを接続した。
【0082】
各ペイント試験セル内で、従来の3電極システム、被覆された鋼試料が動作電極を表し、グラファイトロッドを対向電極として使用し、飽和カロメル電極(SCE)を参照電極として使用した。動作電極の試験面積は、14.6cm2であった。3.5重量%NaCl電解質を用いてすべての試験を行った。すべての試料について、電気化学試験は、腐食電位測定(Ecorr)、電気化学ACインピーダンス分光法(EIS)測定で構成される実験のサイクルからなっていた。
【0083】
AC EISおよびEcorr測定は、人工的な耐候試験を必要とする長い試験なしで、試料の耐食性に関連のあるいくつかの特性の定量的な決定を可能にする。
【0084】
corr-電気化学腐食電位(ECP)は、所定の環境に浸漬した金属と適切な標準参照電極(SRE)、または安定であり、かつ周知の電極電位を有する電極との間の電圧差である。電気化学腐食電位は、静止電位、開路電位または自由腐食電位としても知られ、方程式中ではEcorrによって表される。Ecorrの値が高いほど、低い腐食速度を示し、値が低いほど高い腐食速度を示す。
【0085】
すべてのEIS実験時に、1MHz~0.05Hzの周波数範囲にわたって0ボルトDCバイアスで10mVのAC電圧を試料に加えた。周波数10目盛ごとに10回の測定を記録した。測定あたり1秒の積分時間を使用し、各測定の間の遅延時間は0.2秒であった。所有権を有するガムリケムアナリスト(Gamry Echem Analyst)ソフトウェアパッケージを用いて、得られたデータへの等価回路フィッティングを行った。
【0086】
最初の事例において、上表3に記載した試料を、NSS下に置く前に試験した。次に、10日ごとに試料をNSSから回収し、電気化学的測定を行った。
【0087】
結果および考察
【0088】
単層コート
【0089】
より伝統的な重量測定方法および静電容量方法などの様々な異なる方法を用いて有機コーティング中の水吸収を測定し、定量することができる。静電容量方法は、有機コーティング中の水吸収に起因する時間の経過に伴うキャパシタの創出に依拠する。水は、大部分の有機コーティングのものの30倍前後の誘電率を有し、被覆された基材に水が入るにつれての静電容量の変化が、水吸収のレベルと関連する。そのような誘電タイプ静電容量情報は、EISデータから導くこともできるが、EISを用いる追加の利点がいくつかある。
【0090】
有機物系の保護防食コーティングの研究に適用すると、インピーダンス値は、元のままの形で腐食保護の指標を提供する。そのような値は、コーティングバリアタイプ性能を目指す初期スクリーニングとして用いられることがある。さらに、EISデータの適切な等価回路モデリングによって、コーティングが破られた場合の界面特性、例えば二重層容量とともに細孔抵抗およびコーティング静電容量など追加の重要な情報を得ることができる。
【0091】
インピーダンスへのコーティングの主な寄与は、より低い周波数領域、0.1Hzに近い周波数において起こる。この特徴は、適当な有機コーティングの選択において一種のスクリーニング方法として用いられることがある。パイプおよびタンクのライニング用の高速硬化エポキシの性能に関する総説において、オドナヒュー(O’Donoghue)ら(Journal of Protective Coatings and Linings(1998)、36~51頁)は、そのようなスクリーニングツール[参考文献]としてのEISの使用を記載している、材料をスクリーニングするために0.1Hzの周波数において測定したコーティングインピーダンスを用いることができる。オドナヒューらは、104Ωcm2のインピーダンス値を低品質のコーティング、1010Ωcm2のインピーダンス値を優れたコーティングに割り当てている。これらの値の間において、比較的良好なコーティングは、108Ωcm2のオーダーのインピーダンス値を割り当てられ、バリア保護は、106Ωcm2において始まっている。このバリア性能インピーダンス図は、オドナヒューらの論文の図5に示されている。オドナヒュー論文以後、いくつかの他の論文も、コーティング性能を測定するためにこのスクリーニング方法を使用した。
【0092】
図2は、0.1Hzで測定した単一コート試料についてのインピーダンスモジュラスの推移を示す、その間、すべての試料をNSS試験条件下に置いた。これらは、単一コート試料であり、従って、より厚い多層システムと比較すると本当に低い厚さ(50~60μ域)なので、インピーダンス値は、総じて、比較的低いことに気がつく。性能は、総括インピーダンス値ではなく相対値に基づいて判断される。市販の同等なコーティングは、低品質のバリア性を指し示す比較的低いインピーダンス値を示す。市販グラフェン含有分散物の任意のものを市販の同等なコーティング調合物(プロトタイプ)に加えると、インピーダンス値が様々な量増加し、すべての場合に、グラフェンナノプレートレットの包含は、基本コーティング(プロトタイプ)のバリア性能特性を増加するように作用していることを示す。
【0093】
720時間の時点における単一コートのNSS評価を表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
3コートシステム
【0096】
図3は、試料をNSS条件に付した時間にわたり0.1Hzで測定した3コートシステム試料についてのインピーダンスモジュラスの推移を示す。初期インピーダンス値(t=0において記録した)は、108~1010Ωcm2のオーダーの範囲にある。全体として、これらの値は、単層試料において観測した初期値より高い。これは、3コートシステムの厚さの増加に起因し、予想通りである。ジンクリッチプライマコート、市販等価物の層およびポリウレタントップコートからなる対照試料は、t=0点からのインピーダンスの減少のより高い速度の1つに加えて最も低い総括インピーダンス値を表示する。単一実体として試験すると、市販等価コートも試験の続行を通して最も低いインピーダンスを与えた。フルコーティングシステムに組み入れたときも観測された。中間層にグラフェンナノ粒子を導入すると、インピーダンスモジュラスは、実験の進行とともに様々な量で増加し、ここでも再び、グラフェンナノ粒子の包含が、全体としてのシステムのバリア性能特性を増加するように作用することを示唆する。総括インピーダンスの最も小さな増加は、中間層にD1分散物を組み入れたとき観測され、D1を単一コート実体として試験したときもこうである。D1中間層の場合、インピーダンスは、単一コート実体としてのD1の観測結果と同様に、3コートシステムの一部として試験すると、大体1桁の大きさで対照より大きい。単一コート試験において、分散物D2およびD3は、コントロール試料に対して大体同じレベルのインピーダンス上昇を与えた。これらの分散物を3コートシステムの中間層に組み入れたとき、D3中間層は、対照より大きさが2桁近い最終上昇を与え、D2中間層は、対照より大きさが5桁高い最終上昇を与えた。さらに、D2を組み入れた試料(ZRP/D2/PUTC)は、実験の進行中に、他の試料と比較して、インピーダンスの変化をほとんど示さなかった。このことは、D2中間層試料が、良好でない領域の少しだけ上で対照が終る実験全体を通じて、良好~優れたバリア性能を提供することを示唆している。
【0097】
優れたバリア特性を有する比較的高い厚さのコーティング、例えばC4/C5タイプ環境における使用のために設計されたものは、典型的には、曝露の開始においてと、理想的には、コーティングが過酷な環境に長期間曝露された後との両方で高インピーダンスである。より薄い施用または劣ったバリア特性に起因してより低い性能のコーティングも、比較的短い期間だけであれば高いインピーダンスを表示する。
【0098】
過酷なC4/C5タイプ環境への曝露の極めて初期における、そのような高インピーダンスコーティングのEIS応答は、容量挙動によって支配される。コーティングは、基本的に、理想タイプまたは非理想タイプの誘電タイプキャパシタとして動作する。確かに、それらの性質そのものに起因して、複雑な多層コーティングは、非理想タイプ静電容量を示す可能性が非常に高い。EISデータからの位相角プロットを見ると、-90°に接近する(または非理想の場合は、に近い)値は、純容量タイプ挙動の存在を示す。過酷な環境への露出の後に、コーティングに水が進入することがある。コーティングの固有の特性に依存して、水の誘電定数は、コーティングのものの20倍の領域にあり、水がコーティングに入るにつれての静電容量の増加を招く。従って、静電容量のこの変化は、コーティング中の水吸収に関連がある。
【0099】
さらに、水または腐食性化学種がコーティング細孔中に侵入し、イオン経路を成長させ、システムの全インピーダンスへの抵抗寄与(細孔抵抗)を作り出すと、純容量挙動からのさらなる逸脱が起ることがある。図4(a)は、3コート対照試料についてのNSS曝露の前~NSS曝露後720時間の位相シフトボードプロットの選択を示す。T=0測定値は、高周波数域においては-90°に近い値を示すが、低周波数域においてはこの値からのいくらかドリフトして離れることがあり、この初期段階においてもいくらかの水吸収を示唆する。72時間から、その後の時間の測定値は、理想的なキャパシタ値から比較的はるかに離れた位相変化値を示す。72時間以降の測定値は、まずまずまとまっており、コーティングがその飽和点に近づいていることを示唆している。これに対して、図4(b)に示すように、高インピーダンス試料、ZRP/D2/PUTCについての位相角ボードプロットは、-90°点の近くからの比較的わずかな偏移を示し、比較的わずかな水を吸収したコーティングと矛盾しない。前に考察したように、位相角がちょうど-90°にないという事実は、システムの非理想容量挙動に起因する。低周波数ドメインにおいてはいくらかの増加する偏移が観測され、システムは決して完全には飽和しないがシステムに水が進入し始めていることを示している。
【0100】
体積パーセント%vとしてのコーティング内の水吸収は、
【0101】
【数1】
【0102】
として計算されることがある。ここで、C0は、T=0における非理想コーティング静電容量であり、CXは、T=72、240、480および720時間における非理想コーティング静電容量である。表6は、3コートシステムについての水吸収値を示す。
【0103】
【表6】
【0104】
720時間における多重コートのNSS評価を表7に示す。
【0105】
【表7】
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材用の、前記金属基材の上にプライマコーティング層があり、前記プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、前記タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層があり、前記プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、前記タイコートコーティング層は、タイコート組成物から形成され、前記仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、前記プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤を含み、前記プライマ腐食抑制剤は、流電カソード機構を有し、前記仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合される、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムにおいて用いられるタイコートコーティング組成物であって、前記タイコート組成物は、タイコートキャリア媒質およびタイコート腐食抑制剤を含み、前記タイコート腐食抑制剤は、バリア機構を有し、前記タイコート組成物は、さらなるタイコート腐食抑制剤をさらに含み、前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、不動態化機構を有するタイコートコーティング組成物。
【請求項2】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェンナノプレート、グラフェンオキシドナノプレート、還元グラフェンオキシドナノプレート、二層グラフェンナノプレート、二層グラフェンオキシドナノプレート、二層還元グラフェンオキシドナノプレート、少数層グラフェンナノプレート、少数層グラフェンオキシドナノプレート、少数層還元グラフェンオキシドナノプレート、6~14層の炭素原子のグラフェン/グラファイトナノプレート、少なくとも1つのナノスケール寸法および40層以下の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および25~30層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、少なくとも1つのナノスケール寸法および20~35層の炭素原子を有するグラファイトフレーク、または少なくとも1つのナノスケール寸法および20~40層の炭素原子を有するグラファイトフレークのうちの1種類または混合物を含む、請求項1に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項3】
前記タイコート腐食抑制剤は、2D材料およびまたは層状2D材料のうちの1種類または混合物のナノプレートを含み、前記2D材料は、グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、シリセン、ゲルマネン、グラフィン、ボロフェン、ホスホレンのうちの1種類または混合物、あるいは前記材料のうちの2種類以上のものの2D面内ヘテロ構造体であり、前記層状2D材料は、グラフェン、グラフェンオキシド、還元グラフェンオキシド、六方晶窒化ホウ素、二硫化モリブデン、二セレン化タングステン、シリセン、ゲルマネン、グラフィン、ボロフェン、ホスホレン、または前記材料のうちの2種類以上のものの2D垂直ヘテロ構造体のうちの1種類または混合物である、請求項1または2に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項4】
前記タイコート腐食抑制剤は、45μm未満のD50粒径を有するグラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または2D材料のナノプレートを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項5】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または30μm未満のD50粒径を有する2D材料のナノプレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項6】
前記タイコート腐食抑制剤は、グラフェン/グラファイトプレートレットおよび/または15μm未満のD50粒径を有する2D材料のナノプレートを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項7】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%の範囲で存在する、請求項1~6のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項8】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.6重量%の範囲で存在する、請求項1~7のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項9】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項1~8のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項10】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%または0.5重量%の割合で存在する、請求項1~9のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項11】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%の割合で存在する、請求項1~10のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項12】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~1.0重量%の範囲で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項13】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.8重量%の範囲で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項14】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.05重量%~0.6重量%の範囲で存在する、請求項1~13のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項15】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%~0.5重量%の範囲で存在する、請求項1~14のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項16】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%または0.5重量%の範囲で存在する、請求項1~15のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項17】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物の0.1重量%の割合で存在する、請求項1~16のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項18】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、イオン交換された顔料、シリカ、カルシウム交換されたシリカ、マグネシウムのオキシアミノリン酸塩、および/または有機アミン、リン酸および/または無機リン酸塩および金属酸化物、金属水酸化物、クロム酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、タングステン酸亜鉛、バナジン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、ポリリン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、クロム酸マグネシウム、モリブデン酸マグネシウム、タングステン酸マグネシウム、バナジン酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、亜リン酸マグネシウム、ポリリン酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、クロム酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム、タングステン酸カルシウム、バナジン酸カルシウム、リン酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、メタホウ酸カルシウム、クロム酸ストロンチウム、モリブデン酸ストロンチウム、タングステン酸ストロンチウム、バナジン酸ストロンチウム、リン酸ストロンチウム、亜リン酸ストロンチウム、ポリリン酸ストロンチウム、ホウ酸塩、メタホウ酸ストロンチウム、クロム酸バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム、バナジン酸バリウム、リン酸バリウム、亜リン酸バリウム、ポリリン酸バリウム、ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、クロム酸アルミニウム、モリブデン酸アルミニウム、タングステン酸アルミニウム、バナジン酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウムおよび/またはメタホウ酸アルミニウムの混合物のうち少なくとも1種類を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項19】
前記さらなるタイコート腐食抑制剤は、シリカを含む組成物である、請求項1~18のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項20】
前記タイコートキャリア媒質は、エポキシ樹脂、架橋性樹脂、非架橋性樹脂、熱硬化性アクリル、アミノプラスト、ウレタン、カルバミン酸エステル、ポリエステル、アルキドエポキシ、シリコーン、ポリウレア、ケイ酸塩、ポリジメチルシロキサン、ビニルエステル、不飽和ポリエステルならびにそれらの混合物および/または組み合わせのうち少なくとも1種類を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項21】
前記タイコートキャリア媒質は、硬化性樹脂を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項22】
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む、請求項21に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項23】
前記硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂を含む、請求項21または22に記載のタイコートコーティング組成物。
【請求項24】
金属基材用の、前記金属基材の上にプライマコーティング層があり、前記プライマコーティング層の上にタイコートコーティング層があり、前記タイコートコーティング層の上に仕上げコーティング層がある、少なくとも3つのコーティング層を含むコーティングシステムであって、前記プライマコーティング層は、プライマ組成物から形成され、前記タイコートコーティング層は、請求項1~23のいずれか1項に記載のタイコートコーティング組成物から形成され、前記仕上げコーティング層は、仕上げ組成物から形成され、前記プライマ組成物は、プライマキャリア媒質およびプライマ腐食抑制剤であって、流電カソード機構を有するプライマ腐食抑制剤を含み、前記仕上げ組成物は、予め定められた表面組織および/または外観を与えるように調合されるコーティングシステム。
【請求項25】
前記プライマ腐食抑制剤は、亜鉛、マグネシウムの無機塩およびまたはマンガンの無機塩のうちの1種類または混合物である、請求項24に記載のコーティングシステム。
【請求項26】
前記プライマ組成物は、ジンクリッチ組成物である、請求項24または25のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項27】
前記プライマ組成物の前記プライマキャリア媒質は、硬化性樹脂を含む、請求項2426のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項28】
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む、請求項27に記載のコーティングシステム。
【請求項29】
前記硬化性樹脂は、液体硬化性樹脂を含む、請求項27または28に記載のコーティングシステム。
【請求項30】
前記仕上げ組成物は、ポリウレタンである、請求項2429のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項31】
前記プライマ腐食抑制剤は、前記プライマ組成物から形成された前記プライマコーティング層の前記プライマキャリア媒質中に入れられている、請求項2430のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項32】
前記プライマ腐食抑制剤は、前記プライマコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項2431のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項33】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物から形成された前記タイコートコーティング層の前記タイコートキャリア媒質中に入れられている、請求項2432のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項34】
前記タイコート腐食抑制剤は、前記タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項2433のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項35】
記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコート組成物から形成された前記タイコートコーティング層の前記タイコートキャリア媒質中に入れられている、請求項2434のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【請求項36】
記さらなるタイコート腐食抑制剤は、前記タイコートコーティング層を通して実質的に均一に分散している、請求項2434のいずれか1項に記載のコーティングシステム。
【国際調査報告】