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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/915 20130101AFI20220414BHJP
【FI】
A61F2/915
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547692
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2020055418
(87)【国際公開番号】W WO2020187550
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】19163172.0
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512238276
【氏名又は名称】バイオトロニック アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーフ、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ、ダーク
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA44
4C267AA45
4C267AA49
4C267AA50
4C267BB03
4C267BB06
4C267BB08
4C267BB11
4C267BB26
4C267GG01
4C267GG12
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH08
(57)【要約】
本発明は、長手方向Lに連続して配置され、相互に接続された複数の透かし彫りの中空円筒形のセグメント11、13から組み立てられた透かし彫りの中空円筒形の本体10を備えたインプラントに関する。各セグメントは、長手方向に配置された本体10の各端部にある末端セグメント11と、2つの末端セグメント11の間で長手方向Lに配置された少なくとも1つの内側セグメント13とを含み、各セグメント11、13は、最大点25及び最小点23を有して円周方向に延在する蛇行構造を一緒に形成する複数のバー21を含む。本体10は、圧縮状態及び拡張状態をとる。少なくとも1つの末端セグメント11の蛇行構造が、少なくとも1つの内側セグメント13よりも少数の最大点25及び最小点23を有し、圧縮状態又は拡張状態にあるこの少なくとも1つの末端セグメント11の内径又は外径は、同じ状態の少なくとも1つの内側セグメント13の内径又は外径と実質的に等しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向(L)に連続して配置され、相互に接続された複数の透かし彫りの中空円筒形のセグメント(11、13)から組み立てられた透かし彫りの中空円筒形の本体(10)を備え、各セグメントが、前記長手方向に配置された前記本体(10)の各端部にある末端セグメント(11)と、2つの前記末端セグメント(11)の間で前記長手方向(L)に配置された少なくとも1つの内側セグメント(13)とを含み、各セグメント(11、13)が、最大点(25)及び最小点(23)を有して円周方向に延在する蛇行構造を一緒に形成する複数のバー(21)を含み、前記本体(10)が、圧縮状態及び拡張状態をとる、インプラントであって、少なくとも1つの前記末端セグメント(11)の前記蛇行構造が、前記少なくとも1つの内側セグメント(13)よりも少数の最小点(23)を有することを特徴とする、インプラント。
【請求項2】
拡張状態における前記少なくとも1つの末端セグメントの外径が、前記少なくとも1つの内側セグメントの外径に対応することを特徴とする、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記末端セグメント(11)がどちらも、前記少なくとも1つの内側セグメント(13)よりも少数の最小点(23)を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のインプラント。
【請求項4】
前記本体(10)の少なくとも1つの末端セグメント(11)の前記蛇行構造上に、X線不透過性及び/又は放射線不透過性材料からなる機能要素を配置するための少なくとも1つの小穴(27)が設けられ、前記小穴(27)の内側開口部(28)が、好ましくは楕円形であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項5】
前記少なくとも1つの小穴(27)内にX線不透過性及び/又は放射線不透過性材料からなる機能要素が配置されていることを特徴とする、請求項4に記載のインプラント。
【請求項6】
少なくとも1つの前記末端セグメント(11)が、少なくとも1つの前記内側セグメント(13)のセグメント幅(b13)よりも大きいセグメント幅(b11)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項7】
末端セグメント(11)と隣接する内側セグメント(13)との間の距離(a11)が、2つの隣接する内側セグメント(13)の間の距離(a13)よりも大きいことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項8】
少なくとも1つの末端セグメント(11)のバー(21)が、少なくとも1つの内側セグメント(13)のバー(21)よりも小さい幅(s11)及び/又は厚さ、及び/又はエッジのより強い丸みを有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載のインプラント。
【請求項9】
隣接するセグメント(11、13)は、少なくとも1つの接続バー(15)によって互いに接続されており、前記少なくとも1つの接続バー(15)が、前記少なくとも1つの内側セグメント(13)の前記バー(21)及び/又は前記少なくとも1つの末端セグメントの前記バーよりも小さいバー幅(v)を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向に連続して配置され、互いに接続された複数の透かし彫りの中空円筒形のセグメントから組み立てられた透かし彫りの中空円筒形の本体を備え、各セグメントが、最小点及び最大点を有して円周方向に延在する蛇行構造を一緒に形成する複数のバーを有するインプラントに関する。インプラント又はその本体は、圧縮状態及び拡張状態をとり得る。
【背景技術】
【0002】
広範囲の用途のための多種多様な医療用インプラント(プロテーゼ)、特に管腔内内部プロテーゼが先行技術から知られている。
【0003】
インプラントとしてステントがよく使用されており、フォームの例は狭窄(血管狭窄)の治療に使用され得る。ステントは通常、両端が長手方向(即ち、長手方向軸の方向)に開口している、透かし彫りの中空円筒形(管状)の本体を有する。この種のインプラントは、カテーテルを使用して治療対象の血管に挿入されることが多く、比較的長期間(数か月から数年)にわたって本体を使用して血管を支持するために使用される。血管内の狭くなった領域は、ステントを使用することによって広げることができる。
【0004】
部分的又は全体的に生分解性材料で作られたインプラント、特にステントも既に知られている。生分解とは、生体内で加水分解、酵素、及びその他の代謝的に誘発される分解過程を意味すると理解されており、とりわけ、体液がインプラントの生分解性材料と接触することによって引き起こされ、生分解性材料を含むインプラントの構造の段階的な崩壊につながる。この過程の結果、インプラントはある時点で機械的完全性を失う。「生分解」という用語と同義語として「生物腐食」という用語が使用されることがよくある。「生体再吸収」という用語は、分解生成物のその後の生物による再吸収を含む。
【0005】
文献EP1974700A1は、半径方向に拡張可能な本体を有するステントの形態のインプラントを記載しており、本体は複数の支持セグメントを有している。各セグメントは、蛇行する支柱によって形成される。文献EP3034035A1もまた、柔軟性があり、同時にそれが挿入された血管を支持するのに十分な半径方向の剛性を有するそのようなインプラントを記載している。
【0006】
本体が長手方向に連続して配置された複数のセグメントから組み立てられている上記のような既知のインプラントは、多くの場合、各セグメントに複数の支柱を有し、支柱はそれぞれ円周方向に蛇行構造を形成する。この目的のための支柱は、構造の円弧状の最大点と最小点で互いに固定されるか、互いに遷移する。蛇行構造は、交互に最小点と最大点とを有し、本体の第1端の近くにある円弧は、セグメントの最小点と呼ばれ、一方、第1端の反対側の本体の端の近くにある他の円弧は、最大点と呼ばれる。
【0007】
本出願の範囲内で、セグメントは、インプラントの中空円筒部分を意味すると理解される。セグメントは、円周方向の蛇行構造を形成する複数の支柱と円弧とで構成されている。セグメントは円周方向に閉じられており、つまり、セグメントの支柱と円弧は、円周方向に閉じたリングを形成するように相互に接続される。ステントの場合、この種の実施例は、しばしばリング設計とも呼ばれる。
【0008】
一方では、既知のインプラントは、例えばカテーテルによって、治療される患者の体内に低侵襲的に導入され得る既に上述した圧縮状態を想定している。他方、インプラントは、例えばバルーン拡張によって、インプラントが留まらなければならない治療部位で拡張状態に移される。拡張状態では、インプラントは本体によって対象の血管を支持するか、関連する臓器又は他の体腔に固定される。本出願の範囲内で、拡張状態は、例えばバルーン拡張によって、拡張後に提供されるインプラントの状態を意味すると理解され、個々の埋め込み部位によってもたらされる個々の及び局所的な外部の影響(例えば、局所的に異なる血管直径、剛性、又は円形断面からの逸脱)は考慮されない。したがって、膨張状態は、開放空気における膨張後の状態に対応する。
【0009】
以下の説明の範囲内で、「血管」という用語は、治療のために一般的なインプラントが挿入され得る、治療される患者のすべての体内の管、器官又は他の体腔、特に血管を含むものとする。
【0010】
上述した本体を有するインプラントを血管内に挿入すると、この血管の体液がインプラント内を流れる。インプラントのない血管とインプラントのある血管との間の移行時に、流れの変化が起こり、体液の流れを妨げ、この移行の領域でこの体液の内容物の望ましくない沈着又は凝集を引き起こす可能性がある。動く管(例えば血管)の場合、治療部位に存在するインプラントも剛性に寄与するため、特定の血管の剛性もまた挿入されたインプラントの領域で変化する。この剛性の変化は、可能なら、突然であってはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP1974700A1
【特許文献2】EP3034035A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本開示の目的は、インプラントなしの血管からインプラントありの血管への移行時に、改善された流れ遷移及びより小さな剛性の変化を達成するインプラントを作成することにある。さらに、本発明によるインプラントは、同等の従来技術のインプラントよりも良好であり、より容易に埋め込み可能であることを要する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、請求項1に記載の特徴を有するインプラントによって達成される。
【0014】
特に、本発明によるインプラントは、上記のような蛇行構造で、長手方向に連続して配置された複数の透かし彫りの中空円筒形のセグメントを有し、セグメントはそれぞれ、長手方向に配置された本体の各端部にある末端セグメントと、2つの末端セグメントの間に長手方向に配置された少なくとも1つの内側セグメントとを含む。本発明によれば、少なくとも1つの末端セグメントの蛇行構造は、少なくとも1つの内側セグメントよりも少数の最小点を有する。
【0015】
セグメントは、好ましくは、最大点と同数の最小点を有する。このことは、好ましくは、末端セグメントと内側セグメントの両方に等しく当てはまる。
【0016】
拡張状態のこの少なくとも1つの末端セグメントの外径は、好ましくは、同じ状態の少なくとも1つの内部セグメントの外径に実質的に等しい。換言すれば、インプラントが拡張されると、内側セグメントと端部セグメントとの間で外径が異ならない中空円筒形の本体が生成される。本出願の範囲内で、「実質的に等しい外径」は、3%未満、好ましくは2%未満の直径の差を意味すると理解される。
【0017】
本発明による解決策により、本体が改善された埋め込み手順を可能にするインプラントが作成される。セグメントの構造が蛇行しているため、末端セグメントの最小点の数が減少することは、同時に最大点の数とバーの数が対応して減少することを意味する。このことは、末端セグメントが内側セグメントよりも小さい直径に圧縮される可能性があることを意味する。埋め込み時に、インプラントは頭から先に血管に挿入される。末端セグメントの圧縮直径が小さいことにより、末端セグメントが突き出て、挿入時に血管壁に衝突して損傷するリスクが最小限に抑えられる。さらに、末端セグメントの領域のバーの数が少ないため、流れ遷移が改善される。
【0018】
本発明の例示的な一実施例では、末端セグメントはどちらも、少なくとも1つの内部セグメントよりも少数の最小点を有する。
【0019】
さらなる例示的な実施例では、1つの末端セグメント又は両方の末端セグメントの最小点の数は、内側セグメントの最小点の数よりも1倍又は2倍少ない。内側セグメントが異なる数の最小点を有する場合、ある特定の実施例では、一方の末端セグメント又は両方の末端セグメントの最小点の数は、最小の数の最小点を有する内側セグメントの最小点の数よりも1倍又は2倍少なくなければならない。
【0020】
例えば、インプラントには、蛇行構造でそれぞれ6つの最小点を形成する内部セグメントがある。この例示的な実施例では、1つの末端セグメント又は両方の末端セグメントは、例えば、4つ又は5つの最小点を有する。他の最小点の数も上記の定義に含まれ、最小点の数は自然数である。
【0021】
1つの特定の実施例では、X線不透過性及び/又は放射線不透過性材料からなる機能要素を配置するための少なくとも1つの小穴が、少なくとも1つの末端セグメントの蛇行構造上に提供され、小穴の内部開口部は、好ましくは楕円形である。内側開口部が円形又は内側開口部が正方形又は長方形又は別の形である小穴も考えられる。本発明によるインプラントの場合、配置される領域での本体の圧縮又は拡張を妨げることなく、最小点の数を減らしてバーの数を減らすことによって必要な空間が作成されたため、従来のインプラントと比較して、比較的大きなX線不透過性及び/又は放射線不透過性機能要素の配置が可能である。小穴の外側の長さ、即ち長手方向の外寸は、ここでは末端セグメントの幅以下である。ここで、セグメントの幅(セグメント幅)は、本体の長手方向における特定の状態でのセグメントの外側の長さであると見なされる。この実施例では、圧縮状態での小径に関する本発明の利点が特に強調されている。最小点の数が低減されたため、機能要素のためにより多くの空間が作成され、インプラントが機能要素と一緒に全体としてより小さな直径に圧縮され得る。機能要素は、圧縮状態では直径を増加させない。これにより、この種のインプラントを挿入するためのカテーテル・システムのプロファイルが小さくなり、より簡単で外傷性の少ない埋め込みが可能になる。
【0022】
機能性元素は、例えば、白金、イリジウム、金、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、イットリウム、ジルコニウム、イッテルビウム又はこれらの金属の合金を含む群からの1つ又は複数のX線不透過性及び/又は放射線不透過性元素又は化合物で作製され得る。
【0023】
特定の例示的な実施例では、X線不透過性及び/又は放射線不透過性材料からなる機能要素が、少なくとも1つの小穴に配置される。この場合の機能要素は、例えば接着剤結合によって小穴に固定される。
【0024】
特定の例示的な実施例では、少なくとも1つの末端セグメントが、少なくとも1つの内側セグメントのセグメント幅よりも大きいセグメント幅を有するという点で、インプラントを備えた血管とインプラントを備えていない血管との間の剛性の変動のさらなる低減を達成することができる。少なくとも1つの末端セグメントのセグメント幅が大きいため、半径方向の剛性がさらに低下する。末端セグメントのセグメント幅は、例えば、1mmから2mmの間、好ましくは1.1mmから1.6mmの間であり得る。内側セグメントのセグメント幅は、例えば、同様の範囲にあり得る。内側セグメントは、有利には、0.01mmから0.3mmの間、好ましくは0.01mmから0.2mmの間、特に好ましくは0.07mmから0.12mmの間のより小さなバー幅を有する。
【0025】
さらなる例示的な実施例では、末端セグメントと隣接する内部セグメントとの間の距離は、2つの隣接する内部セグメントとの間の距離よりも大きい。これにより、関連する末端セグメントの領域の軸方向の剛性が低下し、したがって、改善された剛性遷移が作成される。ここで、2つのセグメント間の距離は、一方のセグメントの最小点を結ぶ線と、もう一方のセグメントの反対側の最大点を結ぶ線との間の縦方向の空間の最小の長さであると理解される。末端セグメントと隣接する内側セグメントとの間の長手方向の距離は、例えば、0.10mmから0.13mmの間、好ましくは0.11mmから0.12mmの間であり得る。長手方向の2つの隣接する内側セグメント間の距離は、例えば、0.08mmから0.12mmの間、好ましくは0.09mmから0.11mmの間であり得る。
【0026】
さらなる例示的な実施例では、少なくとも1つの末端セグメントのバーは、少なくとも1つの内側セグメントのバーよりも狭い幅及び/又はエッジのより強い丸みを有する。セグメントのバーのこの設計により、対象の末端領域の領域で材料の厚さが減少するため、インプラントの内部の方向へのさらに良好な流れ遷移が作成される。他方、対象の末端セグメントの領域における半径方向の剛性はさらに低下する。バーの幅は、中空円筒の円周上に伸びる本体を平面(展開平面)で展開したときに作成される平面で測定されたバーの幅であると理解される。ここで、対象のバーの幅は、この展開平面で、展開平面に垂直に横たわるバーの外面に垂直に測定される。バーのより狭い幅及び/又は末端セグメントのエッジのより強い丸みは、例えば、この領域での適切な電解研磨によって達成され得る。末端セグメントのバー幅は、例えば、0.135mmから0.155mmの間、好ましくは0.140mmから0.150mmの間であり得る。内側セグメントのバーのバー幅は、例えば、0.145mmから0.160mmの間、好ましくは0.150mmから0.155mmの間であり得る。エッジのより強い丸みは、本出願の範囲内で、丸みの弧のより大きな半径を有する丸みを帯びたエッジを意味すると理解される。
【0027】
本発明のさらなる例示的な実施例では、少なくとも1つの末端セグメントのバーは、少なくとも1つの内側セグメントのバーよりも厚さが薄い。バー幅の減少と同様に、バーの厚さの減少は、インプラント内部の方向の流れ遷移の改善及び半径方向の剛性の減少をもたらし、それにより、インプラントのない血管とインプラントのある血管との間の遷移の改善が達成される。本出願の範囲内のバーの厚さは、バーの幅に垂直なバーの断面を考慮して生じるバーの壁の厚さを意味すると理解されるであろう。対象の末端要素のより小さなバー幅は、同様に適切な電解研磨によって達成され得る。末端セグメントのバーの厚さは、例えば、内側のセグメントのバーの厚さよりも5μmから15μm薄くてもよい。
【0028】
上記の2つの実施例は、好ましくは組み合わされる。この好ましい組み合わせでは、少なくとも1つの末端セグメントのバーは、より小さな幅、より小さな厚さ、及び/又はより強いエッジの丸みを有する。
【0029】
さらなる例示的な実施例では、隣接するセグメントは、接続バーによって互いに接続され、少なくとも1つの接続バーは、少なくとも1つの内側セグメントのバー及び/又は少なくとも1つの末端セグメントのバーよりも小さいバー幅及び/又はバー厚さを有する。これにより、インプラントは、全体として、良好な軸方向の柔軟性及び良好な曲げの柔軟性を有利に達成する。接続バーのバー幅は、例えば、0.07mmから0.10mmの間、好ましくは0.08mmから0.09mmの間であり得、セグメントのバーの幅と同様に測定される。少なくとも1つの末端セグメントのバー及び少なくとも1つの内側セグメントのバーの例示的なバー幅については、上記の説明を参照することができる。
【0030】
本発明によるインプラントの本体は、全体的又は部分的に生分解性材料からなり得る。この種の生分解性材料は、特にマグネシウム又はマグネシウム合金、例えば、WE43、マグネシウム-亜鉛-アルミニウム、マグネシウム-アルミニウム又はマグネシウム-亜鉛-カルシウムに基づく金属生分解性材料である。ここでは、好ましくは、0~4重量%のZn及び2~10重量%のAl又は1.5~7重量%のZn及び0.5~3.5重量%のAlを含むマグネシウム-亜鉛-アルミニウム、例えば、5~10重量%のAl、特に5.5~7重量%、特に好ましくは、6.25重量%のアルミニウムを含むマグネシウム-アルミニウム、例えば、3~7重量%のZn及び0.001~0.5重量%のCa又は0~3重量%のZn及び0~0.6重量%のCaを含むマグネシウム-亜鉛-カルシウム、などの高純度のマグネシウム合金が使用される。この種の高純度マグネシウム合金は、前述の合金元素に加えて、0.006重量%未満の他の元素(Fe、Cu、Co、Siなどの不純物又は希土類)も含む。インプラント本体にこの種の高純度マグネシウム合金を使用すると、分泌物の形成を非常によく制御できるという利点がある。分泌物のサイズ、量、及び組成を制御することにより、インプラントの分解挙動を非常に正確に制御することができる。インプラントの劣化挙動は、その支持機能が血管への埋め込み後少なくとも90日間維持されるように設定されており、インプラントは、約1年後にほぼ完全に劣化、つまり、破壊される。
【0031】
適切な生分解性ポリマー化合物の例は、セルロース、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、多糖類(PSAC)、ポリラクチド(PLA)、ポリ-L-ラクチド(PLLA)、ポリグリコール(PGA)、ポリ-D、L-ラクチド-co-グリコリド(PDLLA-PGA)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリヒドロキシ吉草酸(PHV)、ポリアルキルカーボネート、ポリオルトエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリマロン酸(PML)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリアミノ酸及びそれらのコポリマー、並びにヒアルロン酸、のグループのポリマーである。ポリマーは、所望の特性に応じて、純粋な形態、誘導体化された形態、ブレンドの形態、又はコポリマーとして存在し得る。生分解性材料はまた、部分的に金属生分解性材料及び部分的にポリマー生分解性化合物からなり得る。
【0032】
代替の実施例では、インプラントの本体は、ステンレス鋼、チタン、コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金、白金又は同様の適切な金属合金などの非生分解性金属又は金属合金から全体的又は部分的に形成される。
【0033】
さらに好ましい実施例では、インプラントは、少なくとも部分的に有効成分含有ポリマーコーティングを含み、特に本体全体が均一にコーティングされている、即ち、端部セグメントと内部セグメントとの間にコーティングの違いがない。上記のポリマー、特にポリラクチド(PLA)又はポリ-L-ラクチド(PLLA)をポリマーとして使用することができる。
【0034】
抗増殖性、移住防止、抗血管新生、抗炎症薬、消炎剤、細胞増殖抑制性、細胞毒性及び/又は抗血栓性の有効成分、抗再狭窄有効成分、コルチコイド、性ホルモン、スタチン、エポチロン、プロスタサイクリン、血管新生誘導剤を有効成分として使用することができる。パクリタキセル及びその誘導体又はシロリムス及びその誘導体が特に好ましい。
【0035】
以下、例示的な実施例に基づいて、図面を参照して本発明を説明する。ここで、図面に記載及び/又は示されているすべての特徴は、特許請求の範囲又は請求項の依存関係の参照におけるそれらの要約とは無関係に、個別に又は任意の組み合わせで本発明の主題を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】上から見た展開面に示されている、電解研磨後の状態の本発明によるインプラントの本体を示す図である。
図2図1の詳細Dを別に示す拡大図である。
図3図1の詳細Cを別に示す拡大図である。
図4図1の詳細Bを別に示す拡大図である。
図5】電解研磨した後の状態の本発明によるインプラントを示す側面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、電解研磨後、圧縮前の状態のステントの形態の本発明によるインプラントの例示的な実施例の本体10を示しており、個々のセグメントに配置された複数のバーを備えた透かし彫り構造を有する本体10の改善された例示のために、転がり面で展開されている。図5は、本体10の構造を詳細に示さずに、これが展開されていないときの圧縮状態の本体10の中空円筒形を示している。
【0038】
電解研磨後の状態では、本体10は、拡張直径に近い直径を有するが、拡張状態での目標直径よりも小さい。ここで、本体の直径は、本体が製造された管の直径に実質的に対応する。
【0039】
本体10は、複数のセグメント11、13から組み立てられ、図1には、合計11個のセグメント11、13が完全に示されている。符号11のセグメントは、長手方向L(中空円筒本体10の縦軸方向;図5参照)に配置された本体10の端部に設けられているため、末端セグメントを形成している。他のセグメント13は、内部セグメントを形成する。
【0040】
各セグメント11、13は、2つの接続バー15によって隣接するセグメント11、13に接続されている。接続バー15は、図1の本体10の詳細Fで強調表示されている。接続バー15は、図示の例示的な実施例では、湾曲した形状又はS字形で延在するが、それらの中央部分で真っ直ぐに延在してもよい。代替の実施例では、隣接するセグメント11、13の接続のために、単一の接続バー又は2つより多い接続バーを提供することもできる。
【0041】
各セグメント11、13は、実質的に長手方向Lに、又はそれにわずかに傾斜して延びる複数のバーを有する。図2及び図4に参照記号21が付けられて提供されるバーは、真っ直ぐ又は円弧状又は湾曲して延在してもよく、異なる直線及び円弧状及び湾曲したバーを単一のセグメントに配置することができる。2つの隣接するバー21はそれぞれ円弧によって接続されているので、蛇行構造が作成される。円弧はそれぞれ、蛇行構造の最小点23又は最大点25のいずれかを形成する(図2及び図4を参照)。
【0042】
示される例示的な実施例(特に図1及び図2の詳細A、D及びEを参照)では、内側セグメント13はそれぞれ、12個の湾曲したバー21及び12個の円弧を有し、これらの円弧のうちの6つは最大点25を形成し、6つの円弧は最小点23を形成する。対照的に、末端セグメント11は、10本のバー21及び10個の円弧から組み立てられ、5つの円弧が最大点25を形成し、5つの円弧が最小点23を形成する。小穴27は、末端セグメント11のバー21上に配置され、図3に拡大スケールで示されている。ここで、本発明のステントは、電解研磨後の状態で、内側セグメント13の領域と末端セグメント11の領域の両方で同じ又は実質的に同じ外径を有し、この外径は、図5にDで示されている。拡張状態では、内側セグメント13は、端部セグメント11と同じ又は実質的に同じ内径を有する。末端セグメント11と内側セグメント13との間の外径Dのわずかな違いは、単に、内側セグメント13と末端セグメント11との異なる機械的特性のために、圧縮後又は膨張後の異なるスプリングバック挙動の結果として生じ得る。内側セグメント13及び末端セグメント11の外径Dは実質的に同じである。
【0043】
内側のセグメントと末端のセグメントにある他の数の最小点、最大点、及びバーも同様に考えられ、本発明によれば、末端セグメントの最小点の数は、内側セグメントの最小点の数よりも少なくとも1つ少ない。
【0044】
図3に詳細に示される小穴27は、ステントが体内に導入されるときにステントの視認性を確保するため、内側の連続的な開口部28に放射線不透過性及び/又はX線不透過性材料からなる機能要素を配置するために使用される。末端セグメントの最小点の減少により、機能要素の体積又は可視領域を増加させることが可能であり、その結果、ステントの可視性が改善される。ここで、小穴27とその内側開口部28は、ほぼ楕円形であり、他の形状に比べて面積が大きい。楕円は、その主軸が本体の長手方向Lに平行になるように本体10に配置されている。さらに、2つの末端セグメント11上に配置された2つの小穴27の楕円形の開口部28の主軸は、円周方向に長さeだけオフセットされている(図1を参照)。小穴27の開口部28の主軸o1の長さは、例えば、800μmであり、補助軸o2の長さは、例えば、350μmである。小穴のバー幅s27は、例えば100μmである。
【0045】
小穴27の開口部28の主軸o1の長さは、例えば、800μmであり、補助軸o2の長さは、例えば、350μmである。小穴のバー幅s27は、例えば100μmである。
【0046】
2つの末端セグメント11は、例えば、1.36mmのセグメント幅b11を有するが、内側セグメント13のセグメント幅b13は、例えば、1.25mmである(図1を参照のこと)。他のセグメント幅も考えられ、好ましくは、b11>b13である。これにより、末端セグメント11の半径方向の剛性がさらに低下する。
【0047】
セグメント間の距離も図1に示されている。参照記号a11は、末端セグメント11と隣接する内側セグメント13との間の距離を示し、一方、a13は、2つの内側セグメント13との間の距離を示す。遷移領域における軸方向の剛性を低減するために、インプラントの示されている例示的な実施例では、a11>a13、例えば、a11=115μm及びa13=95μmである。
【0048】
末端セグメント11のバー幅s11が内側セグメントのバー幅s13よりも小さい場合、ステントなしの血管からステント付きの血管への剛性のより良い移行も達成され、セグメントは、セグメント内で異なるバー幅s11、s13を有していてもよい。例えば、s11は135μmから149μmの間であり、s13は150μmから165μmの間である。同じことが、末端セグメント11のバーと内側セグメント13のバーとの間の異なるバーの厚さ(図示せず)にも当てはまる。
【0049】
さらに、インプラントの示された例示的な実施例では、ステント又は本体10の良好な軸方向の柔軟性及び良好な曲げの柔軟性を確保するために、接続バー15のバー幅vは、内側セグメント13のバーのバー幅s13及び末端セグメント11のバー幅s11よりも小さい。例えば、接続バー15のバー幅vは、80μmから90μmの間である。
【0050】
さらに、末端セグメント11のバー21、最大点25及び最小点23は、内側セグメント13の蛇行構造の同じ要素よりもエッジの丸みが強い。これにより、ステントへの移行時の体液の流れの乱れも減少する。
【0051】
本発明によるステントは、管状の半製品からのレーザー切断及びその後の電解研磨によって、既知の方法で製造することができる。次に、小穴の内部開口部28と同様に形成され、X線不透過性及び/又は放射線不透過性材料で作られた機能要素が、開口部28に挿入され、例えば接着結合によって小穴27に固定される。
【0052】
患者を治療するために、例えば、本発明によるステントは、カテーテルのバルーン(図示せず)に圧着され得る。次に、ステントは、カテーテルによって患者の体内に導入され得、そして例えば、血管に沿って治療されるべき点まで前進され得る。次に、ステントはバルーンによって拡張され、これにより血管の壁に固定される。ステントは、血管を開いたままにし、血管を支えるために使用される。ステントを血管に固定した後、カテーテルが抜去される。
【0053】
ステントの本体は、5.5~7重量%のアルミニウム(好ましくは6.25重量%のアルミニウム)、最大0.006重量%の他の元素(Fe、Cu、Co、Siなどの不純物又は希土類)及び残りの成分としてのマグネシウムを含む高純度のマグネシウム-アルミニウム合金で構成されている。ステントには、シロリムス含有PLLAコーティングも施されており、ステントの管腔側(内側)のコーティング(2~7μm)は、ステントの反管腔側(外側)のコーティング(10~15μm)よりも薄い。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】