(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】モジュール式の家具システム
(51)【国際特許分類】
A47B 53/02 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
A47B53/02
A47B53/02 501Z
A47B53/02 502H
A47B53/02 502Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547791
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 EP2020051894
(87)【国際公開番号】W WO2020164894
(87)【国際公開日】2020-08-20
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521358981
【氏名又は名称】ハルター アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Halter AG
【住所又は居所原語表記】Hardturmstrasse 134, 8005 Zuerich Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセッキ, アレックス マリオ
(57)【要約】
モジュール式の家具システム(1)は、部屋内で電気によって互いに独立して移動可能な少なくとも2つの家具モジュール(2)を有し、各家具モジュール(2)は、家具システム(1)の制御コンピュータ(10)によって制御されるそれ自体の1つのモータ(8)を含む。モジュール式の家具システム(1)には、部屋の壁(15a)に沿って取り付けられた第1の駆動要素(3a)と、各家具モジュール(2)に取り付けられた第2の駆動要素(3b)と、を備える電動の直線駆動装置が設けられている。第1の駆動要素(3a)は第2の駆動要素(3b)と協働し、その結果、各家具モジュール(2)は、それ自体のモータ(8)と協働する直線駆動装置によって個別に移動可能である。家具システム(1)は、家具モジュール(2)を支持するためのレールシステム(4a)を更に含み、レールシステム(4a)は部屋の壁に配置されており、家具モジュール(2)の移動の際、家具モジュール(2)の支持要素(4b)はレールシステム(4a)の上に載っている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋内で電気によって互いに独立して移動可能な少なくとも2つの家具モジュール(2)を備えるモジュール式の家具システム(1)であって、
各家具モジュール(2)は、前記家具システム(1)の制御コンピュータ(10)によって制御されるそれ自体の1つのモータ(8)を含み、前記モジュール式の家具システム(1)には、前記部屋の壁(15a)に沿って取り付けられた第1の駆動要素(3a)と、各家具モジュール(2)に取り付けられた第2の駆動要素(3b)と、を備える電動の直線駆動装置が設けられており、前記第1の駆動要素(3a)は前記第2の駆動要素(3b)と協働し、その結果、各家具モジュール(2)は、それ自体の前記モータ(8)と協働する前記直線駆動装置によって個別に移動可能であり、
前記家具モジュール(2)を支持するためのレールシステム(4a)を更に含み、前記レールシステム(4a)は前記部屋の壁に配置されており、家具モジュール(2)の移動の際、前記家具モジュール(2)の支持要素(4b)は前記レールシステム(4a)の上に載っている、モジュール式の家具システム(1)。
【請求項2】
前記第1の駆動要素はラック(3a)であり、前記第2の駆動要素(3b)は前記ラック(3a)と噛み合うピニオン(3b)であり、前記家具モジュール(2)を移動させるために、前記ピニオン(3b)は前記モータと連結されているか、又は
前記直線駆動装置は、前記壁(15a)に沿って取り付けられたスピンドルを備えるスピンドルドライブであるか、又は
前記直線駆動装置は、ダイレクトドライブとして構成されている、
請求項1に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項3】
直線駆動装置とモータとの間に、歯車装置(5)、特に遊星歯車装置が設けられている、請求項1又は2に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項4】
前記レールシステムの前記レール(4a)は、リニアローラベアリングとして構成されており、部屋の床(15b)に対して実質的に平行である、請求項1~3のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項5】
前記家具モジュール(2)は、特に前記家具モジュール(2)のうち前記レールシステム(4a)の向かい側に配置された少なくとも1つのローラ(16b)によって、前記部屋の前記床(15b)の上に支持されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項6】
モータと直線駆動装置との間には、機械的な力制限器、特にトルク制限器、特にスリップクラッチが介在しており、当該力制限器は、所定のトルクが加えられると直ちにモータと直線駆動装置との間の連結を分離するよう構成されており、前記連結の前記分離は、前記制御コンピュータによって検出可能であり、それに基づいて、前記モータは、前記制御コンピュータによってスイッチオフ可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項7】
前記制御コンピュータは、各家具モジュールの速度を制御するために、モータコントローラと、前記モータの回転数を調整するための、前記モータと連結された第1のエンコーダと、を備え、特に、前記モータコントローラ(12)は、前記第1のエンコーダと電気的に接続されており、
前記制御コンピュータは、ユーザーインターフェースから受信したユーザーデータを処理するためのモジュールを更に備える、
請求項1~6のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項8】
位置検出のための絶対的な経路測定のためのシステムを更に含み、ワイヤーセンサーシステムは、固定基準点に取り付けられたワイヤーと、各家具モジュールに、位置信号を出力するための第2のエンコーダを備えると共に前記ワイヤーと協働するワイヤーセンサと、を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項9】
前記制御コンピュータは、前記機械的な力制限器によって直線駆動装置とモータとの間の前記連結の分離を検出するために、連続的に又は所定の時間間隔で、前記モータの前記回転数を前記第2のエンコーダの前記位置信号と比較し、偏差が所定の閾値を超えているかチェックするよう構成されている、請求項6~8のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項10】
各家具モジュールは、前記家具モジュールの移動の際に障害物を検出するための光電子センサ、特にライトグリッドを含み、前記光電子センサは光源及び受光器を含み、前記家具モジュールの全幅をカバーするように設計されており、前記光源及び前記受光器は、前記家具モジュールの前面又は後面から突出すると共に、それぞれバネによって保持されており、その結果、物体との衝突の際、バネ力に抗してそのために設けられた窪みに押し込まれることが可能であり、検出を引き起こす前記家具モジュールからの突出は、もはや生じない、請求項1~9のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項11】
各家具モジュールには機械的なクランクが連結され、当該クランクにより、前記家具モジュールは、前記クランクを回転させることにより手動で移動可能である、請求項1~10のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項12】
各家具モジュールには、互いに隣接するモジュールにおいて安全距離を保障するために、少なくとも1つの距離保持器が設けられている、請求項1~11のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項13】
2つの家具モジュールが設けられており、第1の家具モジュールはベッドモジュールであり、第2の家具モジュールはキャビネットモジュールであるか、又は
3つの家具モジュールが設けられており、第1の家具モジュールはオフィスモジュールであり、第2の家具モジュールは特に折り畳み式のベッドを備えるベッドモジュールであり、第3の家具モジュールはキャビネットモジュールである、
請求項1~12のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【請求項14】
各家具モジュールは、少なくとも1つの圧力センサ(13c)、特にプッシュスイッチ又は圧力スイッチを含み、前記圧力センサ(13c)は、支持台(16a)の、往復移動方向で見て前側の縁部のうちの一方又は両方の領域に配置されており、特に複数の圧力センサが、前記縁部に沿って配置されており、その結果、前記家具モジュール(2)が床に近い物体と衝突する際、前記圧力センサによって検出が引き起こされ得る、請求項1~13のいずれか1項に記載のモジュール式の家具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この文書は、2019年2月15日に提出されたスイス国特許出願番号0198/19の優先権を主張し、その全内容を参照によりここに援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、請求項1に記載のモジュール式の家具システムに関する。
【背景技術】
【0003】
移動可能な家具モジュールを備える家具システムが知られている。例えば、モジュール式の移動ラック(Rollregal)が、書類を保管するためのいわゆるコンパクトゥス設備(Kompaktusanlage)として開発された。そこでは、複数のモジュールが、相前後して配置されている。あるモジュールの書類にアクセスするために、モジュール(複数)は、関心のあるモジュールと隣接するモジュールとの間にアクセス空間が生じるまで、手動で移動される。このコンセプトは、更に、住居ユニットにも転用された。当該住居ユニットにおいては、家具モジュールが予め構成されており、個々のモジュールを移動させることにより、例えばリビングルーム又は寝室のような種々の目的に役立つ様々な空間を造り出すことができる。快適さに基づいて、家具モジュールが電気によって移動可能であるような解決策が開発された。
【0004】
そのようなモジュール式の家具システムは、スペースを節約すること、又は、部屋を最適に利用することに着目して開発された。その際に解決すべき課題は、家具システムを様々な部屋構成又は部屋構造に適合させることである
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、改良されたモジュール式の家具システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、部屋内で電気によって互いに独立して移動可能な少なくとも2つの家具モジュールを備えるモジュール式の家具システムによって解決される。各家具モジュールは、家具システムの制御コンピュータによって制御される、それ自体の1つのモータを含む。モジュール式の家具システムには、部屋の壁に取り付けられた第1の駆動要素と、各家具モジュールに取り付けられた第2の駆動要素と、を備える電動の直線駆動装置が設けられている。第1の駆動要素は第2の駆動要素と協働し、その結果、各家具モジュールは、それ自体のモータと協働する直線駆動装置によって個別に移動可能である。モジュール式の家具システムは、更に、部屋の壁に配置された、家具モジュールを支持するためのレールシステムを含む。家具モジュールの移動の際、家具モジュールの支持要素はレールシステムの上に載っている。
【0007】
本システムは、家具モジュールのガイドが壁側で行われるという利点を有する。したがって、家具モジュールをガイドしながら移動させるために、ガイド溝が床に埋め込まれている必要はなく、これにより組み立てコストが低減される。
【0008】
本発明の更なる構成、利点及び応用は、従属請求項及び図面に基づく以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による家具システムの概略的な斜視図である。
【
図2】
図1の本発明による家具システムの概略的な回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明による家具システム1を、斜視図で示している。モジュール式の家具システム1は、部屋内で電気によって互いに独立して移動可能な複数の家具モジュール2を有するが、そのうち、図においては、明確にするため、ただ1つのモジュール2が示されている。別のモジュール2が支持台又は土台16a上に配置されるであろうが、後方に配置されたモジュールの要素を視認可能とするために、それは図示されていない。本文脈において、用語「後方」は、壁15aに向かう方向を意味する。
【0011】
上述したように、各家具モジュール2は、家具システム1の制御コンピュータ10によって制御される、それ自体の1つのモータ8を含んでいる。モジュール式の家具システム1には、部屋の壁15aに沿って取り付けられた第1の駆動要素3aと、各家具モジュール2に取り付けられた第2の駆動要素3bと、を備える電動の直線駆動装置が設けられている。本明細書において、直線駆動装置は駆動系(Antriebsstrang)として、モータは駆動力として、それぞれ解釈されることを注記しておく。第1の駆動要素3aは第2の駆動要素3bと協働し、その結果、各家具モジュール2は、それ自体のモータ8と協働する直線駆動装置によって個別に移動可能である。制御コンピュータは、各家具モジュール2の速度を制御するために、モータコントローラ12と、モータ8の回転数を調整するための、モータ8と連結された第1のエンコーダ9と、を備えている。モータコントローラ12は、好ましくは2つのホールセンサを備えるエンコーダである第1のエンコーダ9と電気的に接続されている。モータコントローラ12は、本願の出願日において有効な版の規格IEC60335-1に対する認証を満たしている。モータコントローラ12は、更に、2つのホールセンサを備えるエンコーダのためのインターフェースを有する。
【0012】
有利な実施形態では、第1の駆動要素3aはラック3aであり、第2の駆動要素3bはラック3aと噛み合うピニオン3bである。その際、有利にはインボリュート歯が用いられる。というのは、これは静かであり、頑丈であり、容易に製造し得るからである。家具モジュール2を移動させるために、ピニオン3bはモータと連結されている。
【0013】
図示されていない更なる実施形態において、直線駆動装置は、壁に沿って取り付けられたスピンドルを備えるスピンドルドライブであることができる。
【0014】
図示されていない更なる代替例において、直線駆動装置は、ダイレクトドライブとして構成され得る。
【0015】
直線駆動装置とモータ8との間には、歯車装置7が設けられている。有利には、ここでは遊星歯車装置が用いられる。というのは、当該遊星歯車装置は静かであるという利点を有しているからであり、これは、人が住んでおり歯車の騒音が不快に感じられるような部屋での使用にとって、特に重要である。しかしながら、歯車装置を必要としないよう、ダイレクトドライブを使用することもできる。更に、直線駆動装置とモータ8との間には、機械的な力制限器、特にトルク制限器、特にスリップクラッチが介在している。機械的な力制限器は、所定のトルクが加えられると直ちにモータ8と直線駆動装置との間の連結を分離するよう、構成されている。この安全クラッチは、例えば、2つの隣接するモジュール2が互いに向かって移動している間、それらの間にユーザーがいるという状況を考慮している。モジュールが障害物に遭遇すると直ちに、モータ8を直線駆動装置から分離するスリップクラッチが使用される。その際、クラッチが作動すべき力の限界は、機械的に設定され得る。いずれにせよ、ここでは、操作者の重大な負傷が生じ得ず、現行の安全規則に適合する値が設定される。制御コンピュータ10は、機械的な力制限器6によって直線駆動装置とモータ8との間の連結の分離を検出するために、連続的に又は所定の時間間隔で、モータ8の回転数を第2のエンコーダの位置信号と比較し、偏差が所定の閾値を超えているかチェックするよう、構成されている。位置が変化していないか又は僅かしか変化しておらず、モータが(アイドルで)回転し続ける場合、これは、制御コンピュータ10によって、モータ8の直線駆動装置からの分離と解釈され得る。これに応答して、制御コンピュータは、モータ8をスイッチオフし、位置検出によって提供された静止位置をセーブすることができる。
【0016】
位置検出は、絶対的な経路測定のためのシステムによって実行される。このために、モジュール式の家具システム1には、各モジュールについて1つのワイヤーセンサーシステムが設けられており、当該ワイヤーセンサーシステムは、固定基準点に取り付けられたワイヤーを含んでいる。更に、ワイヤーセンサーシステムは、各家具モジュール2に、位置信号を出力するための第2のエンコーダを備えると共にワイヤーと協働するワイヤーセンサを含んでおり、当該位置信号は、モジュール2の移動中におけるワイヤーの展開又は巻き上げの結果として生じる。
【0017】
加速度は、特定の範囲内で調整可能であり、加速度の選択の限界は、スリップクラッチのリリーストルクによって与えられる。即ち、加速トルクは、スリップクラッチのリリーストルク未満でなければならない。障害物によってスリップクラッチが作動する場合、モジュールの次の始動においては、モジュール2の移動が位置センサによって検出される(スリップクラッチの噛み合い)まで、顕著な直線的な加速が実行される。
【0018】
モジュール2の制動においては、通常の制動プロセスと緊急制動プロセスとが区別される。制御コンピュータ10は、この区別を、それが受信する特定の信号に基づいて行う。緊急停止がユーザーによって開始された場合、モジュール2は、当該モジュール2の移動の際の通常の停止プロセスの場合よりも、何倍も速く制動される。この安全制動プロファイルの場合、緊急停止条件の検出後にトリガされ、その際、モジュールは短い距離内で停止に至らなければならない。したがって、この場合、好ましくは積極的に制動される。通常の制動プロセスにおいては、対応する条件の検出直後に制動が開始され、直線的に0cm/sへ制動される。もちろん、加速度値及び減速値は調整可能であり、モジュール2が進むべき距離に応じて及びモジュール重量に応じて、適合させることができる。
【0019】
更に、家具モジュール2を支持するためのレールシステム4aが設けられており、当該レールシステムは部屋の壁に配置されている。家具モジュール2の移動の際、家具モジュール2の支持要素4bはレールシステム4aの上に載っている。
【0020】
モジュール間には、常に安全距離が設けられている。それにより、一方では、例えば、抗力が小さいため場合によってはスリップクラッチにより障害物として検出可能ではないであろう指が挟み込まれ得ないことが保障される。他方では、それにより、2つの隣接するモジュールが衝突し、場合によっては互いに損傷を与えることが防止される。
【0021】
レールシステムのレール4aは、好ましくは、リニアローラベアリングとして構成されており、部屋の床15bに対して実質的に平行に配置されている。特に、それはボール循環リニアガイドである。この実施形態は、支持要素4aのより容易な摺動を可能とし、比較的静かであるため、有利である。支持要素4bによってレール上に支持される家具モジュール2は重いため、当該家具モジュール2は、付加的に、支持要素4bと強固に連結されているか又は一体である支持台16aの上に支持されている。支持台16aは、少なくとも1つのローラ16bによって、床15bの上に置かれている。好ましくは、このローラ16bは、家具モジュール2のうちレールシステム4aの向かい側に配置されている。しかしながら、例えば支持台16aのうちレールシステムの向かい側のコーナーに、複数のローラを設けることもできるであろう。ローラ16bを使用することによって、モジュール2の重量は、支持台16a及び支持要素4bから形成される支持システムの反対側の領域により良好に分配され、したがって、より高い安定性が達成される。この時点で、家具システム1の上述した中心的な利点が明らかになる:家具システムの駆動装置は壁側に配置されており、数点においてのみ床に固定されているので、家具システム1の構造は単純化される:既に述べたように、家具モジュールをガイドしながら移動させるために、連続した長いガイド溝が床に埋め込まれている必要はない。これは、床が、別々に考慮されなければならない異なる物理的特性を有する多数の材料から成ることができるので、有利である。この場合、場合によってはあり得る床暖房も、考慮される必要はない。更に、上述したローラ16bのみが床15b上を転がるので、床の起伏は、本家具システム1においては比較的小さな問題である。ローラ16bは、一方ではバネ効果を有し、他方ではより硬い材料とは対照的に床を傷つけない、適切なゴムから製造され得る。
【0022】
有利には、各家具モジュール2は、家具モジュール2の移動の際に障害物を検出するための光電子センサ13a、特にライトグリッド13bを含む。光電子センサ13aは、少なくとも1つの光源と、少なくとも1つの受光器とを含み、家具モジュール2の全幅をカバーするように設計されているが、これは、
図1において発散する線13bによって示されている。その際、光源及び受光器は、家具モジュール2の前面又は後面から突出すると共に、それぞれバネ(図示せず)によって保持されており、その結果、物体との衝突の際、又は、隣接するモジュールと一緒にされた際、バネ力に抗してそのために設けられた窪みに押し込まれることが可能であり、同様に検出を引き起こす家具モジュール2からの突出は、もはや生じない。光電子センサ13a用の窪みは、
図1において、13aで示された梁の背後の凹部によって示されている。光電子センサに加えて、各家具モジュール2用に少なくとも1つの圧力センサ13cが設けられている。圧力センサ13cは、例えばプッシュスイッチ又は圧力スイッチであることができ、支持台16aの、往復移動方向で見て前側の縁部のうちの一方又は両方の領域に配置されている。家具モジュールの実施形態においては、複数の圧力センサが、縁部に沿って配置されている。家具モジュール2が、場合によっては光電子センサのライトグリッドによって検出され得ない床に近い物体と衝突する際、圧力センサによって検出が引き起こされ得る。本明細書の文脈では、そのような検出は、引き続き、移動する家具モジュールの緊急停止が開始されることを意味する。
【0023】
特に緊急停止の場合、緊急停止条件がユーザーによって解除されるまで、いずれの家具モジュールの次の始動も制御コンピュータによって許容されないことが、有利である。
【0024】
駆動構成要素及び光電子センサは、壁接続部(Wandanbindung)に格納されており、当該壁接続部は、スクリーンとして整然とした視覚的印象を与え、家具システム1の移動される部分からユーザーを保護すると共に、家具システム1の構成要素を埃などから保護する。
【0025】
既に述べたように、家具システム1は電気によって駆動される。電力供給が遮断された場合又は故障の場合は、各家具モジュール2を個別に手動で制御することもできる。このために、各家具モジュール2には機械的なクランクが連結され、これにより、家具モジュール2は、クランクを回転させることにより手動で移動可能である(図示せず)。
【0026】
図2は、住居内で統合された典型的な構成の
図1の本発明による家具システム1の、概略的な回路図を示している。家具システム1は、複数の家具モジュール2(オフィス2a、キャビネット2b及びベッド2c)を含み、当該複数の家具モジュールは、x方向において往復移動可能である。更に、住居には、キッチン2e及びバスルーム2dが、移動不可に設けられている。更に、モジュールの前の領域に、リビングルームが設けられていてもよい。2つの家具モジュール、例えばベッドモジュール及びキャビネットモジュールのみが設けられていてもよいことを付言しておく。図から分かるように、最大限のスペース利用のために、より大きなオフィススペースを得るべく、オフィス2aはキッチン2eの傍へ移動されてもよい。逆に、キッチンがアクセス可能となるよう、オフィス2aは右へ移動されてもよい。換言すれば、本家具システムは、それ自体のモジュール間にスペースを作り出すだけでなく、住居の固定構成要素と関連する空間がモジュール式に使用され得るように配置されることもできる。しかしながら、例えば、シンク及び冷蔵庫が全ての作動モードにおいてアクセス可能であるようにすることもできる。
【0027】
ここで、モジュール式の構造は、モジュール2a~2cが操作インターフェース18によって左又は右へ移動され得るように機能する。例えば、ベッド2cが右へ移動され、キャビネットが左へ移動されると、キャビネットへのアクセスを有するベッドルームが生成される。ここで、キャビネットが右へ、オフィスモジュールが左へ移動されると、オフィスが形成され、キャビネットモジュール2bはベッドモジュールに密接し、もはやアクセス可能ではない。モジュール自体は、例えば上述した標準モジュールとして、様々な構成で納入することができ、又は、顧客の希望に適合させることができる。例えば、1つのモジュールに、例えばオフィスモジュール2a内の折り畳み式の又は引き出し可能なデスクのような、様々な折り畳み式の又は傾斜可能な家具要素が設けられていてもよい。上述した壁接続部を介して、各モジュール2には、電力網接続部22及び電力分配器21を介して電力が供給される。例えば、それによって、例えば読書灯若しくは作業用照明のようなランプ、又は、例えばTV装置17のような他の電気機器を、格納することができる。更に、モジュールは、複数の構成におけるそれぞれの機能を使用することができるよう、両側からアクセス可能であるように調製することができる。
【0028】
図には、制御コンピュータ10、直線駆動装置、位置センサ11及びモータコントローラ12を備えるモータ8も示されている。更に、制御コンピュータ及び電源との電気的な接続が示されている。これらは、家具モジュールの位置決めのための信号の接続、及び、例えばモジュール2の移動の際の場合によってはあり得る障害物に伴って現れる安全関連の信号である。可動部品に接続された全ての信号ケーブル又は電力ケーブルは、ケーブルドラッグチェーン(Schleppkette)によってガイドされ、その結果、信頼性のある接続が保証され、ケーブルは制御された態様でガイドされる。ケーブルドラッグチェーン14は、美的な理由及び保護の理由から、壁接続部にも配置されている。
【0029】
システムは、コンセント20と、ユーザーのためのネットワーク接続とを更に含む。ネットワーク接続は、一方では、ユーザーにインターネットアクセスを可能とするために、他方では、家具システム1自体をインターネットに接続するために、設けられている。それにより、例えば、故障の場合の遠隔診断を、故障確定のために簡単に呼び出すことが可能である。更に、それによって家具システムは、ユーザー自身によって遠隔制御され得る。例えば、ユーザーは、自分が帰宅する前にスマートフォンを用いて特定の家具構成を設定し、これを家具システム1に送信することができ、その結果、モジュールは、それに応じて自立して移動する。このために、制御コンピュータ10は、データが遠隔装置に由来するか又はユーザーインターフェースの直接的な操作によるかにかかわらず、ユーザーインターフェースから受信したユーザーデータを処理するためのモジュールを更に含む。制御コンピュータは、家具モジュール2を制御するためのソフトウェア以外に、パラメータを変更し様々な変数又は予め設定されたユーザープロファイルを設定するためのソフトウェアも含む。その際、個々のモジュールは、ただ1回ボタンを押すことによって独自に移動され得るだけでなく、対応する「左ボタン」又は「右ボタン」を所望の位置まで押したままにすることにより、モジュール2の中間位置に移動させることも可能である。
【0030】
家具システム1は、好ましくは、ホームオートメーションシステムに統合されることもでき、この目的のために、対応するインターフェースが制御コンピュータ10に設けられる。
【0031】
家具システム1の可動部品は、一方では安全上の理由から、他方では汚染の理由から、可能な限り周囲から遮蔽されている。有意義である限り、この目的のために、例えばブラシシールが使用され、当該ブラシシールは、一方では外部からの汚染を退け、他方では可動部品のシールに適している。特に、そのようなシールは、モジュールの移動の際に共にガイドされるケーブルの調整可能な長さに沿って壁接続部に、又は、ローラ16bの傍に、設けることができる。
【0032】
家具システムは、上述したように、既存の住居に統合することができる。その際、先ずレールシステムが駆動装置及び土台16aと共に取り付けられるよう、手順が進められる。引き続き、家具モジュール2が構築され、住居のアクセスオプションに応じて、モジュールは、事前に完全に製造され得るか、又は、部品の状態で住居内に輸送され、その後初めて組み立てられる。その後、システムは、電気、テレビ、及びWLANが存在しない場合にはネットワークのような必要なポートに接続される。最後に、家具システムがプログラムされ、テストされる。
【0033】
本発明の有利な実施形態を説明してきたが、本発明は、以下の請求項の範囲内において他の方法で実現され得ることを指摘しておく。その際、本明細書で使用された「有利には」、「特に」、「有利な」などの用語は、任意選択の例示的な実施形態にのみ関連する。
【国際調査報告】