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特表2022-523196FLNA結合化合物及びその塩酸塩の固体多形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】FLNA結合化合物及びその塩酸塩の固体多形
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/10 20060101AFI20220414BHJP
   A61K 31/438 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20220414BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
C07D471/10 102
C07D471/10 CSP
A61K31/438
A61P25/28
A61P35/00
A61P25/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549470
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 US2020019305
(87)【国際公開番号】W WO2020172584
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,609
(32)【優先日】2019-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521372079
【氏名又は名称】ペイン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ザムルート マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バービアー リンジィ バーンズ
(72)【発明者】
【氏名】クセラ ショーン アンソニー
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA16
4C065BB06
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH09
4C065JJ01
4C065KK09
4C065LL04
4C065PP03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA16
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基の結晶性多形及び溶媒和物並びにその一塩酸塩及び二塩酸塩及び溶媒和物、同様に二塩酸塩の非晶質多形の調製及び特性が開示されている。1つ又は複数の多形を含む医薬組成物及びその組成物を使用するための方法も開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式III:
【化1】
の化合物の固体状態形態であって、
(a)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態1;
(b)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態2;
(c)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩ジメチルアセトアミド溶媒和物、結晶性形態3;
(d)非晶質1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩、結晶性形態4;及び
(e)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態5
から選択される、式IIIの化合物の固体状態形態。
【請求項2】
(a)
8.0、13.0、13.8、19.1、及び20.2 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図1と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態1;
(b)
9.9、11.9、13.2、14.2、15.8、20.0、及び20.4 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図2と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態2;
(c)
5.5 2θ±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図3と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩ジメチルアセトアミド溶媒和物、結晶性形態3;
(d)
図4と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる非晶質1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩、形態4;並びに
(e)
22.4 2θ±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図5と実質的に類似するX線の粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態5
から選択される、請求項1に記載の式IIIの化合物の結晶性形態。
【請求項3】
式II:
【化2】
の化合物の結晶性形態であって、
(a)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態1;
(b)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態2;
(c)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態3;及び
(d)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態4
から選択される、式IIの化合物の結晶性形態。
【請求項4】
(a)
12.4、20.5、21.7、及び25.5 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図6と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態1;
(b)
10.5、13.8、及び22.7 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図7と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態2;
(c)
13.6、15.8、20.8、22.0、及び27.2 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図8と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態3;並びに
(d)
11.2、18.0、及び20.0 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図9と実質的に類似するX線の粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態4
から選択される、請求項3に記載の式IIの化合物の結晶性形態。
【請求項5】
式I:
【化3】
の化合物の結晶性形態であって、
(a)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態1;
(b)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態2;及び
(c)結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態3
から選択される、式Iの化合物の結晶性形態。
【請求項6】
(a)
24.1、26.3、及び27.3 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図10と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態1;
(b)
13.1及び16.8 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図11と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態2;並びに
(c)
10.1、14.1、及び19.3 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図12と実質的に類似するX線の粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態3
から選択される、請求項5に記載の式Iの化合物の結晶性形態。
【請求項7】
タウタンパク質リン酸化の低減又は阻害、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用の阻害、Aβ42とα7nAChRとの相互作用の阻害、がん細胞の成長の阻害、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、又は生存患者のアルツハイマー病の治療及び/又はアッセイに効果的な量で、医薬組成物に溶解することができるか又は分散されている、請求項1に記載の結晶性又は非晶質化合物。
【請求項8】
タウタンパク質リン酸化を低減又は阻害するための、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用を阻害するための、Aβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するための、がん細胞の成長を阻害するための、疼痛及び炎症の一方又は両方を低減するための、又は生存患者のアルツハイマー病を治療及び/又はアッセイするための方法であって、その宿主哺乳動物に、請求項7に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項9】
タウタンパク質リン酸化の低減又は阻害、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用の阻害、Aβ42とα7nAChRとの相互作用の阻害、がん細胞の成長の阻害、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、又は生存患者のアルツハイマー病の治療及び/又はアッセイに効果的な量で、医薬組成物に溶解することができるか又は分散されている、請求項3に記載の結晶性化合物。
【請求項10】
タウタンパク質リン酸化を低減又は阻害するための、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用を阻害するための、Aβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するための、がん細胞の成長を阻害するための、疼痛及び炎症の一方又は両方を低減するための、又は生存患者のアルツハイマー病を治療及び/又はアッセイするための方法であって、その宿主哺乳動物に、請求項9に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項11】
タウタンパク質リン酸化の低減又は阻害、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用の阻害、Aβ42とα7nAChRとの相互作用の阻害、がん細胞の成長の阻害、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、疼痛及び炎症の一方又は両方の低減、又は生存患者のアルツハイマー病の治療及び/又はアッセイに効果的な量で、医薬組成物に溶解することができるか又は分散されている、請求項5に記載の結晶性化合物。
【請求項12】
タウタンパク質リン酸化を低減又は阻害するための、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用を阻害するための、Aβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するための、がん細胞の成長を阻害するための、疼痛及び炎症の一方又は両方を低減するための、又は生存患者のアルツハイマー病を治療及び/又はアッセイするための方法であって、その宿主哺乳動物に、請求項11に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月21日に出願された米国特許出願第62/808,609号の優先権を主張するものであり、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明では、タンパク質フィラミン-A(FLNA)と強固に結合する化合物である1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オンの固体多形、又はこの化合物の一塩酸塩又は二塩酸塩の多形が企図される。
【背景技術】
【0002】
1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ[4.5]-デカン-2-オンは、その構造式が下記に示されており、
【化1】
当技術分野では化合物C0105及びC0105Mとしても知られており、タンパク質フィラミン-A(FLNA)と特異的に結合する。Wangら、PlosOne 3巻(2号):e1554(2008年)にて考察されている手順に従ってA7細胞又はSK-N-MC細胞から調製された膜における、化合物C0105によるトリチウム標識ナロキソン{[3H]NLX}結合の阻害の競合(置換)曲線は、識別された2つのそのような部位のうち親和性結合がより高い方の部位に対して、約10-12~10-13Mの範囲のEC50値を呈する。この膜調製物の代わりに、FLNAの配列に存在するNビオチン化ペンタペプチド(Bn-VAKGL;配列番号1)を使用しても、膜調製物で得られたものと同様の大きさのEC50値がもたらされ、このペンタマーには単一の親和性部位が存在することが示されている。
【0003】
化合物C0105は、米国特許第8,653,068号明細書で開示、合成、及び特許請求されている。化合物C0105の薬学的に許容される塩の調製も開示されたが、そのような塩は具体的には調製されておらず、この化合物は、HPLC及び1H-NMRにより、使用された調製物に応じて約86~約97%の純度であることが見出されたオレンジ色/黄色ゴム状物質として単離及び使用されたに過ぎない。
適切な細胞を化合物C0105と接触させることにより、とりわけ、炎症性応答を低減させることができ(米国特許第8,653,068号明細書)、タウタンパク質のリン酸化及びタウ含有プラークの形成を阻害することができ(米国特許第10,017,736号明細書)、米国特許第9,433,604号に開示されている通り、非がん性細胞に比べて増強された量の、リン酸化mTOR、Akt1、ERK2、及びセリン2152リン酸化フィラミンAの1つ又は複数を含むある特定のがん細胞の成長を阻害することができ、米国特許第10,222,368号明細書及び2020年2月7日にオンラインで発表されたWangら、J Prev Alz Dis、2020年で考察されている通り、アルツハイマー病を治療することができる。化合物C0105は、米国特許第9,354,223号明細書、同第9,500,640号明細書、同第10,222,368号明細書に教示されている通り、生存患者のアルツハイマー病(AD)を診断するための、AD療法の有効性を決定するための、及びADを治療するためのアッセイに使用することができる。
【0004】
医薬品有効成分(API、化合物、又は薬物)の医薬組成物を製剤化する場合、原薬は、取扱い及び処理を簡便に行うことができる形態であることが重要であり得る。これは、商業的に実現可能な製造プロセスを得るという観点からだけでなく、活性化合物を含む医薬製剤を後に製造するという観点からも重要であり得る。ゴム状物質は、そのような取扱い及び処理が簡便な形態ではない。
活性成分の化学的安定性、固体状態安定性、及び貯蔵寿命も重要な要因である。原薬及びそれを含む組成物は、活性成分の物理化学的特徴(例えば、その化学的組成、密度、吸湿性、溶解度)に著しい変化を呈することなく、かなりの期間にわたって効果的に保存することが可能であるべきである。
更に、できるだけ純粋な形態の薬物を提供することができることも重要であり得る。この点に関して、非晶質物質は、結晶性物質と比べて重大な問題を提示する場合がある。例えば、そのような物質は、典型的には、結晶性物質よりも取扱い及び製剤化が困難であり、信頼性の低い溶解度を提供し、不安定で化学的に不純であることが見出されることが多い。当業者であれば、医薬品有効成分(API)を安定結晶性形態で容易に得ることができれば、上記の問題は、解決しないまでも大幅に緩和されることが理解される。
従って、商業的に実現可能で薬学的に許容される薬物組成物を製造する際には、可能な限り、実質的に結晶性であり安定した形態のAPI提供することが望ましい。しかしながら、この目標は常に達成可能だとは限らないことに留意されたい。実際は、分子構造のみから化合物の結晶化及び結晶化後挙動を予測することは典型的には不可能であり、そのような挙動は経験的にしか決定することができないことが多い。
【発明の概要】
【0005】
本発明では、1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オンの固体多形、その溶媒和物、並びにこの化合物の一塩酸塩及び二塩酸塩の多形及びその溶媒和物が企図される。
1つの態様では、式III:
【化2】
の化合物及び薬学的に許容される溶媒和物の固体形態であって、そのX線粉末回折パターンが、
a)
8.0、13.0、13.8、19.1、及び20.2 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図1と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性一水和物形態1;
b)
9.9、11.9、13.2、14.2、15.8、20.0 及び20.4 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図2と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性一水和物形態2;
c)
5.5 2θ±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図3と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性ジメチルアセトアミド溶媒和物形態3;
(d)
図4と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる非晶質形態4;並びに
e)
22.4 2θ±0.2°2θにピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図5と実質的に類似するX線の粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性一水和物形態5
を規定する特徴ピークを呈する、固体形態。
【0006】
式II:
【化3】
の化合物の結晶性形態であって、
(a)
12.4、20.5、21.7、及び25.5 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図6と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態1;
(b)
10.5、13.8、及び22.7 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図7と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態2;
(c)
13.6、15.8、20.8、22.0、及び27.2 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図8と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態3;並びに
(d)
11.2、18.0、及び20.0 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図9と実質的に類似するX線の粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態4
から選択される結晶性形態。
【0007】
式I:
【化4】
の化合物の結晶性形態であって、
a)
24.1、26.3、及び27.3 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図10と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態1;
b)
13.1及び16.8 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図11と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態2;並びに
c)
10.1、14.1、及び19.3 2θ±0.2°2θから選択される少なくとも1つのピークを有するX線粉末回折パターン、又は
図12と実質的に類似するX線粉末回折パターン
により特徴付けられる結晶性形態3
から選択される結晶性形態。
【0008】
本発明の別の態様では、タウタンパク質リン酸化の低減若しくは阻害、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用の阻害、Aβ42とα7nAChRとの相互作用の阻害、上記で考察されている通りのがん細胞の成長の阻害、疼痛及び炎症の一方若しくは両方の低減、又は生存患者のアルツハイマー病の治療及び/若しくはアッセイの1つ又は複数に効果的な量で、生理学的に耐容性の担体又は希釈剤に溶解することができるか又は分散されている、式I、II、又はIIIの1つ又は複数の化合物の上記の結晶性形態又は非晶質形態を含む医薬組成物が企図される。
タウタンパク質リン酸化を低減又は阻害するための、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用を阻害するための、Aβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するための、がん細胞の成長を阻害するための、疼痛及び炎症の一方若しくは両方を低減するための、又は生存患者のアルツハイマー病を治療及び/若しくはアッセイするための方法であって、その宿主哺乳動物に上記に記載の医薬組成物を投与することを含む方法が企図される。
本開示の部分を形成する図面には、以下の図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態1のX線粉末回折パターンである。
図2】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図3】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩ジメチルアセトアミド溶媒和物、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図4】非晶質1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩、形態4のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図5】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態5のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図6】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態1のX線粉末回折パターンである。
図7】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態2のX線粉末回折パターンである。
図8】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図9】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態4のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図10】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態1のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図11】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
図12】結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、幾つかの利点及び優位性を有する。
1つの利点は、複数の結晶性安定形態のAPIを提供することである。
本発明の優位性は、1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オンの二塩酸塩のこうした結晶性安定形態の1つが、特に、固体経口組成物の調製に有用であることである。
本発明の別の利点は、特に、安定水和二塩酸塩を提供することである。
本発明の別の優位性は、二塩酸塩の非晶質多形を提供することである。
更に他の利点及び優位性は、当業者であれば、以下の説明及び特許請求の範囲から明らかだろう。
【0011】
本発明では、その構造式Iが下記に示されている化合物1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ[4.5]-デカン-2-オンの多形形態、
【化5】
並びにその一塩酸塩及び二塩酸塩及びその薬学的に許容される溶媒和物(薬学的に許容されるソルバトモルフ(solvatomorph))の多形が企図される。構造式Iのこの化合物は、当技術分野では化合物C0105(また、C0105M)としても知られている。その遊離塩基、一塩酸塩若しくは二塩酸、又は溶媒和物のこうした多形は、それらのX線粉末回折(XRPD)スペクトルのピークから識別される。
【0012】
分子の固体形態の多形は、通常、2シータ(°2θ)の散乱角位置の値±0.2°で表される1つ又は複数の特徴ピークにより規定される。各多形形態の更なる特徴データとしては、特定の°2θピークに関連する結晶性形態の分子の平面間の距離の尺度であるd間隔、及び最大強度のピークのパーセンテージとしての、識別ピークの各々の相対強度が挙げられる。
特定の結晶性多形を識別する特徴的散乱パターン(ディフラクトグラム)は、その特定の多形に固有の単一ピークのみを含んでいてもよい。3~5つのピークを使用することがより良好な慣習であるとみなされており、より好ましくは、特定の多形に識別には5つよりも多くのピークが使用される。従って、1つ又は2つのマーカーピークのみが特定の多形に固有であり、1つ又は複数の他のピークが別の多形により生成されるピークと共通(重複)している場合、固有のピークデータを、重複する1~5つのピークのデータと共に使用することにより、特定の多形の確定的なディフラクトグラムを提供することができる。
【0013】
好ましくは、最も強度の大きいピークの強度の少なくとも5%の相対強度を有する散乱ピークが、特徴的散乱パターンのメンバーとして報告される。しかしながら、少数の及び/又はより低い相対強度ピークが、特徴的散乱パターンについて観察及び報告されるものである場合。
遊離塩基並びにその二(ビス)塩酸塩及び一塩酸塩並びにその溶媒和物としての化合物C0105の12個の企図されている多形の、特徴的な2シータ位置、d間隔、及び強度パーセンテージが下記の表に提供されている。下記の表の各°2θ測定値は、±0.2°であるが、これは表の明瞭性を向上させるために表には示されていない。データは、典型的には、約20~約30°2θのおよその散乱角まで報告されている。
【0014】
最低で1つのXRPDマーカーピークを使用して、その遊離塩基、一塩酸塩若しくは二塩酸塩、又は溶媒和物であることが公知である化合物の特定の結晶性形態を識別することができる。好ましくは、少なくとも3つのXRPDマーカーピークが使用され、より好ましくは、ディフラクトグラムに存在する場合は、5つ又はそれよりも多くの更なるXRPDマーカーピークが使用される。本明細書の図から理解することができるように、分解可能なピークの数は、遊離塩基又は塩酸塩の種々の結晶性形態に応じて様々であり得る。
「マーカーピーク」は、特定の多形に固有のXRPDピークを識別するために使用され、その多形を識別するために使用することができる。「全X線粉末回折パターン」という語句は、マーカーピークであるか否かとは関わりなく、ディフラクトグラムで識別されるピークを記述するために使用される。「他の形態のピークとわずかに重複するピーク」という語句は、1つ又は複数のマーカーピークを使用して特定の多形を識別することができるピークである。
「薬学的に許容される溶媒和物」という語句は、企図されている多形の結晶マトリックスの部分を形成する溶媒分子を指すために使用される。溶媒和物は、水が溶媒和物である際に「水和物」という単語が使用される場合を除き、溶媒の名称の後に「溶媒和物」という単語を付けて命名される。「薬学的に許容される溶媒和物」は、米国ではFDAによるもの等の、地方又は国の医薬品法及び規制に準拠して医薬製品に存在していてもよい溶媒を含む。従って、例示的な溶媒和物としては、水和物、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物、イソプロパノール溶媒和物、及びジメチルアセトアミド溶媒和物等が挙げられる。
【0015】
医薬組成物は、有効量の企図されている多形又はその溶媒和物を、生理学的に耐容性の担体又は希釈剤に溶解又は分散させることにより調製することができる。「生理学的に耐容性の担体又は希釈剤」は、米国ではFDAによるもの等の、地方又は国の医薬品法及び規制に準拠して医薬製品に存在していてもよい希釈剤又は担体である。
多形は、「形態」という単語の後にアラビア数字を付けて参照される。数字の使用は、1つの多形を別の多形と区別するための便宜をはかるために過ぎず、他の意味は意図されていない。
【0016】
結晶性形態の特徴付け
図1は、Philips Pananalytical X’Pert粉末材料研究回折計(MRD)機械を、3°~35°2θのスキャン範囲にわたって0.013°2θ刻みで使用することにより得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態1のX線粉末回折パターン(XRPD)である。40kV及び40mAで動作させた銅アノードによりX線を発生させた。X線の波長は1.5406Åだった。表1には、図1の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。
ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図1と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。表2には、図1の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されており、こうしたピークは、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである。
【表1】

提示されているピークは、2シータ=25未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表2】
提示されているピークは、2シータ=25°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0017】
C0105ビスHCl塩一水和物:形態2
化学式:C1523Cl23O.H2
図2は、図1について記載されている通りに得られた結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
表3には、図2の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図2と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
【0018】
表4には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークであるピークイデント(peaks ident)が列挙されている。
【表3】

提示されているピークは、2シータ=30未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表4】

提示されているピークは、2シータ=25未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。ただし、その位置が固有だった*ピークは例外として提供した。
【0019】
C0105ビスHCl塩DMA溶媒和物:形態3
化学式:C1523Cl23O.C49NO
図3は、提示されているピークが検出可能だった全てのピークであることを除き、図1について記載されている通りに得られた結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩ジメチルアセトアミド溶媒和物、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【0020】
表5には、図3の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図3と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表6には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図3の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。
【表5】
提示されているピークは、試料が少数のピークしか呈さなかったため検出することができた全てのピークである。
【表6】
【0021】
C0105ビスHCl塩:形態4-非晶質
化学式:C1523Cl23
図4は、Siemens D5000回折計機械を使用して3°~30.0°2θのスキャン範囲にわたって0.02°2θ刻みで得られた非晶質1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩、形態4のX線粉末回折(XRPD)パターンである。40kV及び40mAで動作させた銅アノードによりX線を発生させた。非晶質固体状態形態を示すピークは観察されなかった。
【0022】
C0105ビスHCl塩一水和物:形態5
化学式:C1523Cl23O.H2
図5は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二塩酸塩一水和物、結晶性形態5のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
表7には、図5の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図5と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表8には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図5の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表9には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図5の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表7】

提示されているピークは、2シータ=30未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表8】
提示されているピークは、2シータ=30未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表9】

提示されているピークは、2シータ=30未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0023】
C0105一HCl塩:形態1
化学式:C1522ClN3
図6は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態1のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
表10には、図6の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図6と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表11には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図6の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表12には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図6の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表10】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表11】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表12】
提示されているピークは、2シータ=30未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0024】
C0105一HCl塩:形態2
化学式:C1522ClN3
図7は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
表13には、図7の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図7と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表14には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図7の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。
【表13】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表14】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0025】
C0105一HCl塩:形態3
化学式:C1522ClN3
図8は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。表15には、図8の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。
ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図8と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表16には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図8の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表17には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図8の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表15】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表16】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表17】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0026】
C0105一HCl塩:形態4
化学式:C1522ClN3
図9は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン一塩酸塩、結晶性形態4のX線粉末回折(XRPD)パターンである。表18には、図9の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図9と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表19には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図9の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表20には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図9の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表18】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表19】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表20】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0027】
C0105遊離塩基:形態1
化学式:C15213
図10は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態1のX線粉末回折(XRPD)パターンである。
表21には、図10の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図10と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表22には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図10の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表23には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図10の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表21】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表22】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表23】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0028】
C0105遊離塩基:形態2
化学式:C15213
図11は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態2のX線粉末回折(XRPD)パターンである。表24には、図11の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。
ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図11と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。表25には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図11の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。
表26には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図11の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表24】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表25】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表26】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0029】
C0105遊離塩基:形態3
化学式:C15213
図12は、提示されているピークが、最も強度の大きいピークの少なくとも5%の強度を有し、2θ=30°未満であるものが選択されたことを除いて図4について記載されている通りに得られた、結晶性1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン遊離塩基、結晶性形態3のX線粉末回折(XRPD)パターンである。表27には、図12の実験的XRPDパターンで識別されたピークの位置、°2θ±0.2°2θ、d間隔、及び相対強度が列挙されている。
ピークのリスト全体又はそれらの固有のサブセット、並びに図12と実質的に類似する(つまり、当業者であれば、この特徴付け方法等の特徴付け方法を使用して実験的変動性内で識別可能である)XRPDパターンにより、結晶性形態を十分に特徴付けることができる。
表28には、他の多形のXRPD回折パターンのピークと重複せず、結晶性形態を識別するための好ましいピークである、図12の実験的XRPDパターンで識別されたピークが列挙されている。表29には、他の多形のXRPD回折パターンのピークとわずかに重複し得る、図12の実験的XRPDパターンで識別された特徴ピークが列挙されている。
【表27】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表28】

提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【表29】
提示されているピークは、2シータ=30°未満であり、5%よりも大きな強度%のものを選択した。
【0030】
医薬組成物
企図されている化合物多形又はソルバトモルフはそれ自体、塩形態又は遊離塩基形態で使用するために提供することができる。塩の形態であるか否かに関わらず、及び溶媒和物であるか否かに関わらず、有効量の企図されている固体多形は、典型的には、多形が、そのAPI、典型的には唯一のAPIである医薬組成物を形成する生理学的に耐容性の担体又は希釈剤に溶解又は分散されている。そのような医薬組成物は、APIをFLNAに結合させ、例示として、タウタンパク質リン酸化を阻害するために、FLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用を阻害するために、並びにAβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するために、又は疼痛及び炎症の一方又は両方を低減するために、in vitro又はin vivoでCNS及び/又は他の細胞に投与される。
企図されている多形は、少なくとも、哺乳動物細胞及び哺乳動物細胞調製物でのタウタンパク質リン酸化阻害に有用である医薬(医薬組成物)の製造に使用することができる。企図されている固体多形化合物は、少なくとも、哺乳類細胞及び哺乳類細胞調製物にてFLNAとα7nAChR及びTLR4との相互作用だけでなくAβ42とα7nAChRとの相互作用を阻害するために、又は疼痛及び炎症の一方若しくは両方を低減するために有用な医薬の製造に使用される。
【0031】
企図されている医薬組成物は、生理学的に耐容性の担体又は希釈剤に溶解又は分散されている有効量の、以前に考察されている通りの企図されている固体API多形(遊離塩基多形、又は一塩酸塩若しくは二塩酸塩水和物、又は他のソルバトモルフ)を含む。そのような組成物は、細胞培養若しくはタンパク質結合研究の場合はin vitroで、又はそれを必要とする生存宿主哺乳動物の場合はin vivoで、哺乳動物細胞又は細胞調製物に投与することができる。
企図されている組成物は、典型的には、数日間、数週間、又は数か月間の期間にわたって、生存レシピエントに複数回投与される。より一般的には、企図されている組成物は、1日1回、2回、又はそれよりも頻繁に投与され、その投与が繰り返される。企図されている多形の投与が始まったら、その多形は、実施されている研究の継続期間中又はレシピエントの生涯にわたって等、慢性的に投与されることが企図される。
【0032】
企図されている遊離塩基多形は、in vitroでは、100フェムトモル濃度でFLNAに結合し、LPS刺激アストロサイトからのサイトカイン放出を効果的に阻害することができる。企図されている多形一塩酸塩又は二塩酸塩は、遊離塩基とほぼ同じモル濃度で、及び遊離塩基に基づく比例質量パーセンテージで結合する。企図されている多形は、より一般的には、ピコモル~マイクロモルの量で使用される。
従って、企図されている医薬組成物に存在する企図されている多形の有効量は、企図されている本発明の方法を実施した場合に、宿主動物の血流又はin vitro細胞培地に対して、約100フェムトモル~約10マイクロモルの濃度を提供する量である。より一般的な量は、約ピコモル~約マイクロモルである。更により一般的な量は、約ピコモル~約ナノモルである。当業者であれば、所望の量のFLNA結合を阻害するための、企図されている化合物の適切な投薬量レベルを容易に決定することができる。
企図されている医薬組成物は、必要に応じて、従来の非毒性で薬学的に許容される担体、アジュバント、及びビヒクルを含む製剤にて、経口で(経口的に)、非経口で、吸入噴霧により投与することができる。非経口という用語は、本明細書で使用される場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射、又は輸注技法を含む。薬物の製剤化は、例えば、Hoover,John E.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、イーストン、ペンシルベニア州、1975年並びにLiberman,H.A.及びLachman,L.編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、ニューヨーク、ニューヨーク州、1980年にて考察されている。
【0033】
注射用調製物の場合、例えば、無菌注射用水性又は油性溶液又は懸濁物を、好適な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して公知技術により製剤化することができる。また、無菌注射用調製物は、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌注射用溶液又は懸濁物であってもよい。
固体多形APIが溶液中に存在することが所望である場合、化合物は、典型的には、好ましくは液体を含まない固体として、又は固体API多形を溶解するために水性生理食塩水等の溶媒がそれに添加される非溶媒液体中の懸濁物として供給される。使用することができる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水、リンゲル液、及び等張性塩化ナトリウム溶液、リン酸緩衝生理食塩水がある。液体医薬組成物としては、例えば、非経口投与に好適な溶液が挙げられる。APIの無菌水溶液、又は水、エタノール、若しくはプロピレングリコールを含む溶媒中のAPIの無菌溶液は、非経口投与に好適な液体組成物の例である。
加えて、溶媒又は懸濁媒体として、無菌固定油が従来使用されている。この目的のためには、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の低刺激性固定油を使用することができる。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が、注射剤の調製に使用されている。ジメチル-アセトアミド、イオン性及び非イオン性洗剤(detergent)を含む界面活性剤(surfactant)、ポリエチレングリコールを使用することができる。上記で考察されているもの等の溶媒及び湿潤剤の混合物も有用である。
無菌溶液は、企図されている多形を所望の溶媒系に溶解し、次いで得られた溶液を膜フィルターに通して滅菌することにより、又は無菌化合物を以前に滅菌されている溶媒に無菌条件下で溶解することにより調製することができる。
【0034】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を挙げることができる。そのような固体剤形では、企図されている化合物は、通常、適応投与経路に適切な1つ又は複数の賦形剤と組み合わされている。経口投与の場合、化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、C1~C6-アルカン酸のセルロースエステル、セルロースC1~C6-アルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸及び硫酸のナトリウム及びカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、並びに/又はポリビニルアルコールと混合し、次いで投与の便宜をはかるために錠剤化若しくはカプセル化することができる。そのようなカプセル剤又は錠剤は、活性化合物をヒドロキシプロピルメチルセルロースに分散させたものとして提供することができるような制御放出製剤を含んでいてもよい。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は、クエン酸ナトリウム、炭酸マグネシウム若しくは炭酸カルシウム、又は重炭酸マグネシウム若しくは重炭酸カルシウム等の緩衝剤を更に含んでいてもよい。加えて、腸溶コーティングを有する錠剤、カプセル剤、及び丸剤を調製することができる。
【0035】
治療を必要とし、企図されている固体多形APIを含む医薬組成物又は溶解された多形APIを含む溶液が投与される哺乳動物は、ヒト等の霊長類;チンパンジー若しくはゴリラ等の類人猿;カニクイザル若しくはマカク等のサル;ラット、マウス、若しくはウサギ等の実験動物;イヌ、ネコ、ウマ等の伴侶動物;又はウシ若しくは去勢雄ウシ、ヒツジ、子ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ等の食用動物等であってもよい。in vitro哺乳動物細胞接触が企図される場合、以下に例示されているように、例示的な哺乳動物に由来する細胞のCNS組織培養が使用されることが多い。
好ましくは、医薬組成物は、単位剤形にされている。そのような形態では、組成物は、適切な量の活性作用剤を含む単位用量に分割されている。単位剤形は、パッケージ化製剤であってもよく、パッケージは、例えばバイアル又はアンプル中に個別の量の製剤を含む。
【0036】
分析手順
特定の化合物は、第三者機関により実施される、元素分析(CHN;ASTM D5291)、高分解能質量分析法(MS)、1H-NMR、13C-NMR、及び2D-NMR分光法、並びに赤外分光法(IR)等の標準的な化学分析を使用して識別した。同様に、物理的特性アッセイは、本明細書で詳細に考察されている通りの多形決定のためのX線粒子回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)による融点、及び熱重量分析(TGA、thermos gravimetric analysis)による質量喪失等の技法を使用して実施した。含水量は、カールフィッシャー分析により決定した。高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、化合物の純度をアッセイした。
【0037】
多形調製
二塩酸塩多形形態1水和物
調製1
一部の場合では、化合物C0105(C0105M)の合成を、米国特許第8,653,068号明細書に記載の通りに実施した。代替合成を、下記に表示及び考察されている反応スキームを使用して実施した。
【化6】
【0038】
1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、トリエチルアミン、及びエチルシアノ(ヒドロキシイミノ基)アセテートの存在下で、N-t-Bocグリシンをジクロロメタン中のベンジルアミンでアミド化(amidifyed)して、2-アミノ-N-ベンジルアセトアミドを形成した。次いで、その生成物を、2-プロパノール(イソ-プロパノール)中にてHClで処理することにより、その塩酸塩に変換した。
フラスコに、2-アミノ-N-ベンジルアセトアミドHCl塩及びイソプロパノール(8容積)を投入した。この懸濁物に、1-メチルピペリジン-4-オン(1.10当量)を添加し、続いてメタノール(2容積)ですすいだ。この不均質混合物を還流しながら20時間撹拌した。HPLC分析は、20時間後に94%が変換されたことを示した。溶液を45~55℃に冷却し、30%HCl(水溶液、1.5当量)を滴加して、沈殿物を得た。得られたスラリーを周囲温度に冷却し、3時間後にろ過した。単離した固形物を、MeOH(2×1容積)で洗浄し、固形物を空気乾燥して、多形形態1の二塩酸塩水和物を80%の収率で得た。そのX線粉末回折(XRPD)スペクトルは図1に示されている。エタノール、酢酸エチル、及びテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として使用することもできる。
【0039】
一HClの二HCl水和物塩への変換
HCl一塩を8mLの2-プロパノールと混合し、得られた懸濁物を約50℃で約1時間撹拌し、その時点で、1.6mLの2-プロパノール中37%HClの溶液(1.6mL、2当量)を添加した。次いで混合物を、まず周囲温度に冷却し、次いで平衡させた後で2~3℃に冷却した。冷却後、追加の5mLの2-プロパノールを試料に添加した。得られた白色沈殿物をろ過し、2-プロパノール(2×7mLアリコート)で洗浄した。単離した固形物を、周囲温度にて約24時間減圧乾燥した。およそ2gの一水和物形態1の固体物質を回収した(収率:66%)。この多形は、2-プロパノールの代わりに、エタノール、酢酸エチル、又はテトラヒドロフランを溶媒として使用して形成することもできる。
調製2
【化7】
【0040】
Boc保護グリシン及びベンジルアミンのアミドカップリング
N-t-boc-グリシン(0.808kg)及び酢酸エチル(EtOAc、3.615kg、5.0容積)を、窒素パージした反応器に投入し、透明溶液が得られるまで撹拌した。溶液を0~5℃に冷却し、冷却温度を維持しながら、ベンジルアミン(0.534kg、1.10当量)を反応器に投注した。投注バルブ(dosing bulb)を、EtOAc(0.50容積)ですすぎ、得られたEtOAc組成物を添加した。
トリエチルアミン(Et3N、2.2当量、Et3N)を、続いてEtOAc(0.50容積)すすぎ液を、反応器に投入した。温度を≦25℃に維持しながら、50%EtOAc中のプロパンホスホン酸無水物(T3P)(3.493kg、1.20当量)及びEtOAcのすすぎ液(0.50容積)を反応器に投注した。温度を20±5℃に維持しつつ、反応混合物を20時間撹拌した。HPLC分析は、ベニルアミン(benylamine)の91%変換を示した。
精製水(2.4kg、3.0容積)を投入して2相混合物を形成し、それを9分間撹拌した。下側水性層のpH測定値(目標pH≧7)はpH=8だった。静止状態で相分離を生じさせ、水性層を除去及び廃棄した。
精製水(2.4kg、3.0容積)中の塩酸水溶液(30%;0.032kg、0.03容積)を投入し、得られた2相混合物を8分間撹拌して、中間塩生成物を形成した。下側水性層のpH測定値(目標pH≦2)はpH=1だった。静止状態で相分離を生じさせ、水性層を除去及び廃棄した。HPLC分析は、単離した中間体N-Boc-2-アミノ-N-ベンジルアセトアミドの純度が97%だったことを示した。
撹拌しながら、反応混合物を減圧下40°±5℃で蒸留して、およそ6相対容積の揮発性物質を除去した。イソプロパノール(2.5kg、4容積)を反応器に投入した。反応混合物を40°±5℃で蒸留して、およそ4相対容積の揮発性物質を除去した。反応混合物を、20±5℃に冷却し、保持した。
【0041】
Boc保護基の切断
イソプロパノール(IPA)を空の反応器に投入した(3.2kg、5容積)。撹拌及び冷却しながら(15°~35℃)、およそ5当量がイソプロパノールに吸収されるまで、塩化水素ガスを反応器に加圧給送した。
反応器中の過剰な塩化水素ガス圧力をベントした。上記で調製した中間反応混合物を、撹拌しながら及び温度を20°±5℃に制御しながら反応器に投注した。投注バルブを、イソプロパノール(0.329kg、0.50容積)ですすぎ、イソプロパノール組成物を反応混合物に添加した。反応混合物温度を、20±5℃に制御し、20時間撹拌した。HPLC分析は、2-アミノ-N-ベンジルアセトアミド一HClへの99.4%変換を示した。
生成物スラリーをろ過して、固体中間生成物(2-アミノ-N-ベンジルアセトアミド一HCl)を収集した。ろ過ケーキをイソプロパノールで2回:洗浄1(0.633kg、1容積)、洗浄2(0.328kg、0.5容積)洗浄し、3回目:洗浄3(0.641kg、1容積)は、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で洗浄し、20°±5℃で18時間にわたって減圧乾燥した。それにより、0.760kgの乾燥一HCl中間生成物を得た。HPLC分析は、一HCl生成物の純度が100.0%であることを示した。構造を1H-NMRで確認し、乾燥中間生成物は、乾燥試験では喪失から0.23質量%の揮発性物質を保持していた。
【0042】
2-アミノ-N-ベンジルアセトアミド一HClと1-メチルピペリジン-4-オンとの環化
2-アミノ-N-ベンジルアセトアミド一HCl(0.5kg、1当量)及び無水エタノール(3.26kg、8.0容積、EtOH)を、窒素パージした反応器に投入し、激しく撹拌した。1-メチルピペリジン-4-オン(0.310kg、1.1当量)を反応器に投注し、無水エタノール(0.795kg、2容積)ですすぎ流した。反応器温度を65°±5℃に上昇させ、その温度で保持し、反応を18時間にわたって生じさせた。HPLC分析は、環化生成物1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オンへの91%変換を示した。中間生成物スラリーを20°±5℃に冷却し、次いで保持容器へとろ過し、続いて無水エタノールすすぎ液(0.207kg、0.50容積)を添加することにより、ゾルを提供した。
【0043】
2HCl・H2O多形形態1への環化生成物の変換
1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オンゾル及び無水エタノールすすぎ液(0.201kg、0.50容積)を、反応器に投入し、撹拌した。温度を50°±5℃に上昇させ、その温度で維持しつつ、塩酸水溶液30%(0.457kg、1.5当量)を31分間かけて反応器にゆっくりと投注し、続いて無水エタノールのすすぎ液(0.206kg、0.5容積)を投注した。
反応混合物を、2時間の時間をかけて20°±5℃へとゆっくり冷却し、温度を保持しつつ更に4時間撹拌した。温度を、2時間かけて-15°±5℃へとゆっくり冷却し、反応混合物を、温度を保持しつつ更に11時間撹拌した。得られたスラリー化生成物1-ベンジル-8-メチル-1,4,8-トリアザスピロ-[4.5]-デカン-2-オン二HCl H2Oをろ過により分離した。ろ過固形物を、15°±5℃にて、無水エタノールの3つのすすぎ液(各々約2容積)で洗浄し、次いでEtOAc中で2回スラリー化し(各々約2容積)、ろ過した。20°±5℃で23時間乾燥した後、最終生成物を回収した。
HPLC分析は、最終生成物の純度が100.0%であることを示した。構造を、1H-NMR、13C-NMR、及び2D-NMRで確認した。一水和生成物は、カールフィッシャー滴定法により決定したところ、5.5質量%の含水量を有していた。結晶性一水和生成物の多形形態1は、X線粉末回折(XRPD)により図1と比較して確認した。
【0044】
二塩酸塩多形形態2 一水和物
およそ9.6gの化合物C0105遊離塩基を、30mLの2-プロパノールと混合した。得られた懸濁物を50℃で約1時間撹拌し、続いて10mLの2-プロパノール中の37%HCl水溶液(9.3mL、3当量)を滴加した。白色懸濁物が得られ、それを50℃で約1時間、次いで周囲室温で1時間、最後に2℃で約1時間撹拌した。回収した固体物質を減圧ろ過し、アセトン/水の混合物(20%水、8mL)に懸濁した。得られたスラリーを、4時間サイクルで周囲温度~40℃の温度サイクルにかけた。得られた固形物をろ過した。乾燥後のXRPD分析は、新しい多形形態であることを示し、それを形態2二塩酸塩水和物と標記した。そのXRPDスペクトルは図2に示されている。
二塩酸塩多形形態3 DMA水和物
およそ25mgのHCl二塩(HCl一塩から二塩への変換の大規模化バッチに由来する)をバイアルに入れ、0.1mLアリコートのジメチルアセトアミドを添加した。各添加間で、混合物が溶解したことを確認し、溶解が明白でなかった場合、混合物を約50℃に加熱して再び確認した。2mLの溶媒が添加される(溶解が生じなくなる)まで、この手順を継続した。
次いで、スラリーを、約3日間又は4日間にわたって4時間サイクルで周囲温度(約22℃)~40℃の温度サイクルにかけた(4時間期間後の冷却/加熱速度は、1℃/分だった)。スラリーを、冷却し、ろ過し、分析前に、回収した固形物を周囲条件で乾燥させた。XRPDスペクトルは図3に示されている。
【0045】
二塩酸塩多形形態4 - 非晶質
約25mgの二HCl塩を、300~1000μLのヘプタン又はトルエンのいずれかでスラリー化した。次いで混合物を温度サイクルにかけた(40℃~RT)。得られた固形物をろ過し、減圧乾燥した。固形物の分析は、図4に見られるようにピークが含まれていなかった固有のXRPDスペクトルパターンを示した。それを形態4と標記した。
二塩酸塩多形形態5 一水和物
およそ20mLのメタノールを、約450mgの二HCl塩水和物(形態1)に添加した。得られた懸濁物を、50℃でおよそ3時間撹拌し、得られた溶液を周囲温度でろ過した。単離したゲル/固形物混合物を減圧乾燥し、約0.1mLのメタノールと混合した。得られたスラリーを、4時間サイクルで周囲温度~40℃の温度サイクルにかけた。次いで、得られた固形物をろ過し、減圧乾燥した。図5のスペクトルのXRPD分光分析は、新しい多形形態を示した。それを形態5一水和物と標記した。
一HCl塩形態1
およそ3.5gの化合物C0105遊離塩基を、約1mLの2-プロパノールに40℃で溶解し、1.9mLの2-プロパノール中1当量の37%HClの溶液(1.128mL)を、40℃で撹拌しながら混合物に滴加した。得られた混合物を、約1℃/分の速度で40℃から5℃まで冷却した。懸濁物を得、周囲室温で更に3時間撹拌した。得られた白色固形物をろ過し、分析前に周囲条件で乾燥した。約2.5gのこの新しい多形形態の物質を回収し、形態1と標記した。5℃で約24時間撹拌することにより、この調製物の母液から別の0.2gの固形物が得られ、34%の全収率がもたらされた。この固体多形化合物のXRPDスペクトルは図6に示されている。
【0046】
一HCl塩形態2
およそ500mgのC0105M遊離塩基を、6mLの2-プロパノールに溶解し、2mLの2-プロパノールに溶解した1当量のHCl(37%)と混合した。得られた溶液を、3日間にわたって温度サイクルにかけた(4時間サイクルで40℃~RT)。この固体多形のXRPDスペクトルは図7に示されている。
一HCl塩形態3
上記の形態2と同様に調製したが、固形物を減圧乾燥した。この固体多形体のXRPDスペクトルは図8に示されている。
一HCl塩形態4
上記の形態2の調製物から回収した母液及び固体物質を一緒に混合し、6mLの2-プロパノールに溶解された約500mgのC0105M遊離塩基から得られた約10mgのHCl塩と共に播種し、2mLの2-プロパノールに溶解された1当量のHCl(37%)と混合した。得られた溶液を、3日間にわたって温度サイクルにかけた(4時間サイクルで40℃~RT)。温度サイクルから得られた固形物を減圧乾燥した。次いで、その後に得られたスラリーを、24時間にわたって40℃~20℃の温度サイクルにかけ、10%刻みの0~90%RH及び90~0%RHのDVSにより分析した。この固体多形のXRPDスペクトルは図9に示されている。
【0047】
遊離塩基形態1
遊離塩基結晶形態1、2、及び3を調製するために使用した遊離塩基物質は、非晶質と考えられる黄色ゴム様固形物として受け取った。この物質は、「調製2」という見出し下にて上記で考察されている通りに調製し、示されている最終ステップで塩酸を最終的に添加する前に中止した。
およそ500mgのその遊離塩基物質を、0.5mLの酢酸エチルでスラリー化し、得られた混合物を、3日間にわたって温度サイクルにかけた(4時間サイクルで40℃~RT)。冷却しながら結晶多形を析出させ、回収した。これを本明細書では遊離塩基形態1と呼ぶ。この固体多形のXRPDスペクトルは図10に示されている。
遊離塩基形態2
2.4グラムのC0105M遊離塩基ゴム状物質を、8.4mLのメタノールに溶解し、100μLのアリコートを別々に96個のバイアルに移した。溶媒を周囲条件下で蒸発させ、96個のバイアルの各々におよそ25mgのC0105Mを残した。300マイクロリットルの酢酸エチルを添加し、それによりゴム状物質が生成された。約3日間又は4日間にわたって4時間サイクルで周囲温度(約22℃)~40℃の温度サイクルにかけることにより(4時間期間後の冷却/加熱速度は、1℃/分だった)、遊離塩基形態2結晶がもたらされた。この固体多形のXRPDスペクトルは図11に示されている。
遊離塩基形態3
受領時の遊離塩基ゴム状物質の表面をスパチュラで物理的に操作することにより、白色粘着性粉末がもたらされた。その粉末のHPLC分析は、それが96.5%純粋な遊離塩基化合物であることを示した。偏光顕微鏡(PLM)分析は、この物質が、偏光下で複屈折性であり、ブロック様形態学的特徴を有することを示した。XRPD分析は、このようにして得られた物質が結晶性であること示した。この多形のXRPDスペクトルは図12に示されている。
【0048】
結果
手順
X線粉末回折(XRPD)
Siemens D5000でXRPD分析を実施し、3~30°(又は入力物質の場合は50°)2シータ(2θ)で試料を走査した。<100mgの試料の場合、10~20mgの物質をガラスディスクに対して穏やかに圧縮し、XRPD試料ホルダに挿入した。<20mgの試料の場合、5~10mgの物質を、ゼロバックグラウンドディスクに対して穏やかに圧縮し、XRPD試料ホルダに挿入した。>100mgの試料の場合、約100mgの物質を、滑らかな試料表面を保証するようにプラスチック製XRPD試料ホルダへと、試料ホルダのレベルよりもわずか上方に穏やかに圧縮した。次いで、試料を、反射モードで稼働するSiemens D5000回折計又はPanalytical X’Pert回折計に負荷し、以下の条件を使用して分析した。
生データ起源 Siemens-binary V2(.RAW)
開始位置[°2θ] 3.0
終了位置[°2θ] 30.0(又は50.0)
ステップサイズ[°2θ] 0.020
走査ステップ時間[秒] 1
走査タイプ 連続
オフセット[°2θ] 0.0
発散スリットタイプ 固定
発散スリットサイズ[mm] 2.00
標本長[mm] 種々
受光スリットサイズ[mm] 0.2
測定温度[℃] 20.0
アノード材料 Cu
K-アルファ1[Å] 1.54060
K-アルファ2[Å] 1.54443
K-ベータ[Å] 1.39225
K-A2/K-A1比 0.50(名目)
発生装置設定 40mA、40kV
回折計タイプ D5000
回折計番号 0
ゴニオメーター半径[mm] 217.50
入射ビームモノクロメーター 無し
回折ビームモノクロメーター (グラファイト)
スピニング 無し
【0049】
Panalytical X’pert(PANalytical B.V.社、ウェストボロー、マサチューセッツ州)粉末で更なるXRPD分析を実施し、試料を3~35°2θで走査した。物質を穏やかに粉砕し、Kapton(登録商標)ポリイミドフィルム又はMylar(登録商標)ポリエステルフィルムを有する多ウエルプレートに負荷し、試料を支持した。次いで、多ウエルプレートを、トランスミッションモードで稼働するPANalytical回折計(ウェストボロー、マサチューセッツ州)に負荷し、以下の実験条件を使用して分析した。
生データ起源 XRD測定(*.XRDML)
走査軸 Gonio
開始位置[°2θ] 3.0066
終了位置[°2θ] 34.9866
ステップサイズ[°2θ] 0.0130
走査ステップ時間[秒] 18.8700
走査タイプ 連続
PSDモード: 走査
PSD長[°2θ] 3.35
オフセット[°2θ] 0.0
発散スリットタイプ 固定
発散スリットサイズ[mm] 1.0000
測定温度[℃] 25.0
アノード材料 Cu
K-アルファ2[Å] 1.54060
K-アルファ2[Å] 1.54443
K-ベータ[Å] 1.39225
K-A2/K-A1比 0.50
発生装置設定 40mA、40kV
ゴニオメーター半径[mm] 240.00
焦点発散スリット間距離(Dist. Focus Diverg. Slit)[mm] 91.00
入射ビームモノクロメーター 無し
スピニング 無し
【0050】
ゼロバックグラウンドディスクをXRPD試料ホルダに挿入したBruker D2 Phaserで更に他のXRPD分析を実施した。下記方法を使用した。
開始位置[°2θ] 5.0000
終了位置[°2θ] 30.0000
ステップサイズ[°2θ] 0.04° °2θ
走査ステップ時間[秒] 0.25
発生装置設定 10mA、30kV
スリットサイズ[mm] 0.6
【0051】
偏光顕微鏡法(PLM)
結晶化度(複屈折)の存在は、Motic(登録商標)カメラ及び画像キャプチャソフトウェア(Motic(登録商標)Images Plus 2.0)を備えたOlympus(登録商標)BX50偏光顕微鏡を使用して決定した。画像は全て、別様の記述がない限り、20×対物を使用して記録した。
熱重量分析(TGA)
およそ5mgの物質を、開放アルミニウムパンに量り取り、同時熱重量分析/示差熱分析装置(TG/DTA)に負荷し、室温で保持した。次いで、試料を、25℃から300℃まで10℃/分の速度で加熱した。その期間中、試料質量の変化を、あらゆる示差熱事象(DTA)と共に記録した。パージガスとしては、窒素を100cm3/分の流速で使用した。
示差走査熱量測定法(DSC)
およそ5mgの物質を、アルミニウムDSCパンに量り取り、穿孔アルミニウム蓋で非気密的に封止した。次いで、試料パンを、25℃に冷却及び保持されたSeiko DSC6200(冷却器を備える)に負荷した。安定した熱流応答が得られたら、試料及び参照を、10℃/分の走査速度で約240℃に加熱し、得られた熱流応答をモニターした。
1H核磁気共鳴法(NMR)
1H NMR研究は、Bruker AV400(1H周波数:400MHz)で実施した。各試料の1H NMR研究は、DMSO-d6又はCDCl3で実施し、試料は、約10mg/mLの濃度に調製した。
【0052】
赤外分光法(IR)
赤外分光法は、Bruker ALPHA P分光計で実施した。十分な物質を分光計のプレートの中心に配置し、以下のパラメーターを使用してスペクトルを得た。
分解能: 4cm-1
バックグラウンド走査回数: 16回走査
試料走査回数: 16回走査
データ収集: 4000~400cm-1
結果スペクトル: 透過率
ソフトウェア: OPUSバージョン6
動的蒸気収着法(DVS)
およそ10mgの試料を、ガラス蒸気収着天秤パンに入れ、Surface Measurement Systems社によるDVS-1動的蒸気収着天秤に負荷した。試料を、0%から90%まで10%刻みの相対湿度(RH)の勾配プロファイルに供し、安定質量が達成されるまで(99.5%でステップ完了)、試料を各ステップで維持した。収着サイクルの完了後、試料を、90%RHから10%RHまで同じ手順を使用して乾燥させた。収着/脱離サイクル中の質量変化をプロットし、試料の吸湿性質の決定を可能にした。
【0053】
カールフィッシャー電量滴定法(KF)
約10~15mgの固体物質を、バイアルへと正確に量り取った。次いで、固形物を、Mettler Toledo社製C30コンパクト滴定器の滴定セルへと手動で導入した。固形物を入れた後でバイアルを量り直し、入れた固形物の質量を機器に入力した。セルの試料が完全に溶解してから、滴定を開始した。含水量は、機器がパーセンテージとして自動的に算出し、データはプリントアウトされた。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
機器: Agilent(登録商標)110
カラム: Waters社製Sunfire(商標)C18 5Qm、150*4.6mm
流速: 1.0mL/分
検出波長: 214nm
カラム温度: 25℃
注入容積: 5Q/mL
移動相A: 水中0.03%TFA
移動相B(MPB): アセトニトリル中0.03%TFA
標準物質/試料調製: 水中1mg/mL
勾配:
時間 MPB%
0 5
16 95
18 95
【0054】
イオンクロマトグラフィー(IC)
機器: Thermo/Dionex(商標)ED40
電気化学検出器、 P50勾配ポンプ、AS1000
オートサンプラー、ASRS Utra 11 4mmサプレッサー
カラム: Dionex(商標)IonPac AG14A-5Qm、3×150mm
ガードカラム: Dionex(商標)IonPac AG14A-5Qm、3×30mm
移動相: 8mM Na2CO3/1mL NaHCO3
流速: 0.5mL/分
ランタイム: 15分間
検出器抑制: 50μS、必要に応じて水再液
カラム温度: 30℃
注入容積: 25μL(試料容積は必要に応じて調整することができる)
標準物質/試料調製: 水中0.003mg/mL
【0055】
pKa分析
pKa研究のための電位差測定法パラメーターは、Absorption Systems(登録商標)社が開発し、以下の通りに実施した。KClで0.15に調整されたイオン強度を有する水(ISA水)中で3回の滴定を実施した。pH値は3.0~11.5の範囲だった。
手順
化合物滴定を、22℃にてISA水中で実施した。量り取った量のTC(2.40mg)を滴定バイアルに入れた。ISA水(15mL)を、バイアルへと自動的に送達した。0.5M HClを自動的に添加することにより、溶液のpH値を3に調整した。0.5M KOHによる滴定を、11.5のpH値に到達するまで自動的に実施した。1滴定当たり追加の1mL ISA水を滴定バイアルに添加して、それぞれ第2の滴定及び第3の滴定を実施した。3回の滴定のデータセットを、Refinement Proプログラムで一緒にして、pKa計算のためのマルチセットを作成した。
まず、2つの塩基性イオン化可能基が存在すると仮定して、化合物C0105のpKa測定及び計算を実施した。より低い方の値はpH1.5であることが見出された。次いで、1つの塩基性イオン化可能群が存在すると仮定して、この化合物のpKa計算を実施した。各アミン窒素のpKa値は、下記に示されている通り8.0及び1.5であることが見出された。
【化8】
【0056】
調製したHCl一塩の評価
A. 安定性試験
形成された各塩を、40℃/75%RH(開放バイアル)、高温(80℃、開放バイアル)、及び環境光(閉鎖バイアル中で約22℃)の環境に1週間にわたって曝露して、化学的及び物理的安定性を評価した。得られた固形物を、X線粉末回折(XRPD)で分析して任意の変化が生じたか否かを確立し、HPLCで分析して純度を決定した。
B. 塩不均化研究
各塩を室温(約22℃)にて水でスラリー化し、1、24、及び48時間の時点で余分な固形物を取り出し、XRPDで分析した。上清のpH値もモニターした。
C. 水和研究
各塩のスラリーを、IPA:水混合物(95%:5%、90%:10%、及び60%:40%水)で作出し、周囲温度(約22℃)で約48時間撹拌した。次いで、得られた固形物をXRPDで分析して、スラリー化の際に結晶形態に任意の変化が生じたか否かを決定した。
D. 熱力学的溶解度研究
周囲温度(約22℃)で約48時間にわたって、異なる水性緩衝液媒体(PBS、FaSSIF、FeSSIF、及びSGF;Biorelevant.com)にて各塩のスラリー(約20mg)の作出を試みた。得られた試料は、緩衝液媒体では可溶性が高すぎて(>200mg/mL)研究を実施することができないことが見出された。緩衝液組成は、以下を参照されたい。
PBS
100mLの脱イオン水中、0.014gのKH2PO4、0.9gのNaCl、及び0.079gのNa2HPO4
絶食時小腸内模擬腸液(FaSSIF、Fasted-State Simulated Intestinal Fluid)
0.050mLの脱イオン水中、0.021gのNaOH、0.198gのNaH2PO4(一水和物)、0.309gのNaCl、及び0.112gのSIF粉末(Biorelevant.com Ltd社、ロンドン、英国)
非絶食時小腸内模擬腸液(FeSSIF、Fed-State Simulated Intestinal Fluid)
0.050mLの脱イオン水中、0.202gのNaOH、0.433gの氷酢酸、0.594gのNaCl、及び0.560gのSIF粉末(Biorelevant.com Ltd社、ロンドン、英国)
擬態胃液(SFG)
100mLの脱イオン水中、0.200gのNaCl及び0.006gのSIF粉末(Biorelevant.com Ltd社、ロンドン、英国)
【0057】
HCl二塩水和物の一次多形スクリーニング
A. 温度サイクル
物質を効率的に使用するために、溶媒溶解度スクリーニングから回収した試料を、一次多形スクリーニングにも使用した。溶媒溶解度スクリーニング中に懸濁物が得られた場合、混合物を、多形スクリーンに直接使用したが、溶液が得られた場合、スラリーを得るためにより多くの固体物質を添加した。次いで、懸濁物を、約3日間又は4日間にわたって4時間サイクルで周囲温度(約22℃)~40℃の温度サイクルにかけた(4時間期間後の冷却/加熱速度は、1℃/分だった)。混合物をろ過し、回収した固形物を、分析前に周囲条件で乾燥したが、母液を更なる研究のために保持した。
B. 2℃及び-18℃でのクラッシュ冷却(Crash Cooling)
クラッシュ冷却研究は、約2℃にて、24個の選択された溶媒系の各々にHCl二塩の飽和溶液を入れることにより実施した。72時間後に固体物質が回収されなかった場合、非水性溶液を最低でも72時間にわたって-18℃環境に入れた。次いで、あらゆる固体物質を回収し、XRPD及びPLMで分析した。
C. 緩徐蒸発
飽和溶液HCl二塩を周囲温度(約22℃)及び圧力で蒸発させることにより、緩徐蒸発研究を実施した。次いで、あらゆる固体物質を回収し、XRPD及びPLMで分析した。
D. 周囲環境及び2℃における逆溶媒(anti-solvent)添加
逆溶媒添加研究は、選択した逆溶媒(アセトン又はエタノール)を、周囲温度(約22℃)にて、24個の選択した溶媒系の各々中のHCl二塩の飽和溶液に添加することにより実施した。更なる析出がなくなるまで、又はより多くの逆溶媒を添加することができなくなるまで、逆溶媒の添加を継続した。また、固形物を生成しなかったクラッシュ冷却実験から回収した飽和溶液に対して、逆溶媒添加研究を低温(2℃)で実施した。あらゆる
E. HCl二塩水和物形態2の大規模化
およそ0.6mLのアセトン/水(20%水)混合物を、約450mgのHCl二塩(形態1)に添加した。得られたスラリーを、約4日間にわたって4時間サイクルで周囲温度(約22℃)~40℃の温度サイクルにかけた。固形物をろ過し、乾燥の前後にXRPD分析を実施した。
F. HCl二塩水和物形態5の大規模化
およそ20mLのメタノールを、約450mgのHCl二塩(形態1)に添加した。得られた懸濁物を、50℃でおよそ3時間撹拌し、得られた溶液をろ過し、周囲温度(約22℃)で蒸発させた。得られたゲル/固形物混合物を減圧乾燥し、約0.1mLのメタノールと混合した。蒸発で得られたスラリーを、約1日間にわたって4時間サイクルで周囲温度(約22℃)~40℃の温度サイクルにかけた。回収した固形物をろ過し、乾燥の前後にXRPD分析で分析した。
【0058】
HCl一塩(形態1)の完全な物理的な特徴付け
HPLC分析は、純度が98.8%であることを示した。
1H-NMR分析により、遊離塩基と比較して高磁場でのピークシフトが観察された。これは、塩の形成を示すものである。スペクトルには微量のIPAも観察された。
IC分析により、APIと塩素対イオンとの比が1:1であることが観察された。これは一塩の形成を示唆する。
TG/DT分析は、180℃未満で0.2%のわずかな質量喪失を示し、続いて約0.5%のわずかな質量喪失を示した。これは、DTトレースで観察された、184℃で発生する吸熱事象に対応する。分解の開始は190℃よりも高い温度で生じる。
KF分析は、約0.15%の含水量を示した。
DSC分析は、180℃で発生する大きな吸熱事象を示した。これは、溶融に対応する可能性が最も高い。
DVS分析は、この物質が、70%RHを超えると非常に吸湿性であることを示した。収着サイクルは、60%RHまで著しい質量増加を示さなかった(水取込みは約0.27%)。60%~70%RHで一定の質量増加が観察され(70%RHで2.55%の水取込み)、70%~90%RHで急激な質量増加が観察された(90%RHで68.57%の水取込み)。脱離サイクルは、90%~50%で54.25%の一定の質量減少を示し、10%~0%で6.10%の別の質量減少を示した。0%RHでは7.3%のヒステリシスが観察された。この物質は高RHで潮解した。
DVS後のXRPD分析は、この物質が、HCl一塩に関して以前に観察された形態のいずれとも一致しないことを示した。この知見は、この物質が分析中に潮解し、乾燥する際に新しい形態へと再結晶化したという観察を裏付ける。
【0059】
安定性研究(1週間)
HCl塩の安定性研究の結果及び観察は、下記の表に報告されている。
HPLC分析によると、安定性研究中に純度の著しい喪失は観察されなかった。
XRPD分析は、周囲温度及び80℃での1週間安定性研究中、この物質がその多形を保持していたことを示した。この物質は、40℃/75%RHでは1週間で潮解した。これは、DVS分析と一致する。安定性研究中には、結晶化度のわずかな喪失も観察された。
HCl一塩の1週間安定性研究の結果及び観察
【表30】
【0060】
HCl一塩の溶媒溶解度スクリーニング
HCl一塩の溶媒溶解度スクリーニングの結果は、以下の表に報告されている。このスクリーニングは、HCl一塩が、選択した溶媒系のほとんどに溶解し難いことを示す。しかしながら、メタノール、2-プロパノール:水(10%)、アセトン:水(20%)、及び水では、非常に高い溶解度が観察され、ジメチルスルホキシドでは高い溶解度が観察された。ジメチルアセトアミド、エタノール、アセトン:水(5%)でも、ある程度の溶解度が観察された。
一HCl - 溶解度スクリーニング結果
溶媒 40℃での溶解度(mg/mL)
アセトン <10
アセトニトリル <10
2-ブタノール <10
シクロヘキサン <10
1,2-ジクロロエテン <10
ジメチルアセトアミド 約10
ジメチルスルホキシド 約105
エタノール 約20
酢酸エチル <10
ヘプタン <10
酢酸イソプロピル <10
メタノール >200
酢酸メチル <10
メチルエチルケトン <10
メチルイソブチルケトン <10
2-MeTHF <10
2-プロパノール <10
2-プロパノール:水(10%) >200
tert-ブチルメチルエーテル <10
テトラヒドロフラン <10
トルエン <10
アセトン:水(5%) 約20
アセトン:水(20%) >200
水 >200
【0061】
HCl二塩水和物、形態1の物理的特徴付け
XRPDディフラクトグラムは、この物質が、得られた二塩と一致することを示した。
PLM分析は、この物質が、交差極間で複屈折性であり、ブロック様形態学的特徴を有することを示した。
HPLC分析は、純度が99.1%であることを示した。
1H-NMR分析は、入力物質と比較して、高磁場でのピークシフトを示した。これは塩形成を示す。スペクトルには、少量の溶媒(2-プロパノール)も観察された。更に、スペクトルは、受け取ったHCl二塩の分析と一致する。
TG/DT分析は、それぞれ<200℃で、以下の3つの連続質量喪失を示した。
1)5.4%、これは、81℃で発生するDTトレースの吸熱事象に対応する(一水和物では約5.2%が予想される)。
2)1.7%、これは、146℃で発生するDTトレースの吸熱事象に対応する。
3)0.6%、これは、170℃がピークのDTトレースの吸熱事象に対応する。
>200℃で分解が観察された。
KF分析では、約5.5%の水分含有量が観察された。これはTG分析と一致すると考えられた。
DVS分析では、この物質は、50%RHを超えると吸湿性であると考えられた。
収着サイクルは、0%~50%RHで約0.56%のわずかな質量増加を示し、50%~80%で一定の質量増加(80%RHで約3.53%の水取込み)を示し、80%~90%RHで急激な質量増加(90%RHで約8.26%の水取込み)を示した。
脱離サイクルは、90%~70%RHでは収着と同じ傾向に従うと思われ、次いで70%~0%で約2.33%の一定の質量減少が観察された。
湿度範囲全体にわたってわずかなヒステリシスが観察された。50%RHで最も大きなヒステリシスが観察され、収着プロファイルと脱離プロファイルとの間の水取込みの差は0.78%だった。最終乾燥質量(収着及び脱離プロファイル後の0%RHにて)は、初期乾燥質量よりも0.13%高いことが観察された。
XRPD分析によると、DVS後の多形形態に著しい差異は観察されなかった。
【0062】
HCl二塩水和物、形態1
安定性研究(1週間)
HCl二塩の安定性研究の結果及び観察は、下記の表に報告されている。
HPLC分析は、それぞれ、99.4%(周囲環境)、99.0%(40℃/75%RH)、及び99.4%(80℃)の純度を示した。
XRPD分析によるHCl二塩形態1の安定性研究中に、多形形態に著しい変化は観察されなかった。
HCl二塩水和物 - 形態1の1週間安定性研究の結果及び観察
【表31】
【0063】
HCl二塩水和物、形態1の溶媒溶解度スクリーニング
HCl二塩の溶媒溶解度スクリーニングの結果は、下記の表に報告されている。このスクリーニングは、HCl二塩が、選択した溶媒系のほとんどに溶解し難いことを示すが、ジメチルスルホキシド及び水では非常に高い溶解度が観察された。アセトン:水(20%)でも高い溶解度が観察された。2-プロパノール:水(10%)及びメタノールでは中程度の溶解度が観察された。
HCl二塩水和物 - 形態1の溶解度スクリーニング結果
溶媒 40℃での溶解度(mg/mL)
アセトン <10
アセトニトリル <10
2-ブタノール <10
シクロヘキサン <10
1,2-ジクロロエテン <10
ジメチルアセトアミド <10
ジメチルスルホキシド >200
エタノール <10
酢酸エチル <10
ヘプタン <10
酢酸イソプロピル <10
メタノール 約25
酢酸メチル <10
メチルエチルケトン <10
メチルイソブチルケトン <10
2-MeTHF <10
2-プロパノール <10
2-プロパノール:水(10%) 約25
tert-ブチルメチルエーテル <10
テトラヒドロフラン <10
トルエン <10
アセトン:水(5%) <10
アセトン:水(20%) 約85
水 >200
【0064】
HCl二塩水和物、形態1の一次多形スクリーニング
HCl二塩の一次多形スクリーニングの結果は下記に要約されている。一次多形スクリーニングでは、形態1結晶を、上記溶媒中で温度サイクルにかけ、HCl二塩を含有させたまま溶媒を蒸発させ、溶媒-HCl二塩組成物を、2℃にクラッシュ冷却するか又は-18℃にクラッシュ冷却し、逆溶媒を周囲温度で添加し、2℃で添加した。
5つの結晶形態、並びに2℃へとクラッシュ冷却することにより、追加した水を含むもの及びジメチルアセトアミドを除く全ての溶媒からもたらされた非晶質形態が識別された。
全体で5つの多形結晶形態が観察された。
形態1(水和物) - 入力物質、多数の研究で観察された。
形態2(水和物)
形態2(相純粋(phase pure)) - アセトン:水(20%)中での温度サイクル
形態2(混合物) - アセトニトリル、アセトン:水(10%)、及び2-プロパノール:水(10%)中での温度サイクル
形態3(溶媒和物) - DMA中での温度サイクル
形態4 - ヘプタン及びトルエン中での緩徐蒸発
形態5(水和物)
形態5(相純粋) - メタノール中での蒸発
形態5(混合物) - DMSO、2-プロパノール、及びアセトン:水(5%)中での蒸発、水中でのクラッシュ冷却、並びに水への逆溶媒の添加
形態1、2、及び5は、最高レベルの結晶化度を有すると考えられ、二次多形スクリーニングのために選択した。
【0065】
形態1、形態2、及び形態5の多形安定性研究
およそ20mgの形態1、形態2、及び形態5二HCl塩の各々を一緒に混合し、選択した溶媒系で懸濁して、スラリーを得た。次いで、得られた懸濁物を各々、異なる温度で約3日間撹拌した。研究詳細を含むリストは、下記の表にまとめられている。回収した固形物をろ過し、XRPD分析で分析して、回収した主要な多形形態を解明した。
【0066】
多形安定性研究の表
形態 溶媒 溶媒(μL) 温度
1+2 メタノール 100 周囲環境*
1+2 IPA/水(10%) 100 周囲環境*
1+2 シクロヘキサン 300 周囲環境*
1+5 メタノール 80 周囲環境*
1+5 IPA/水(10%) 80 周囲環境*
1+5 シクロヘキサン 200 周囲環境*
2+5 メタノール 60 周囲環境*
2+5 IPA/水(10%) 60 周囲環境*
2+5 シクロヘキサン 200 周囲環境*
1+2 メタノール 60 60℃
1+2 IPA/水(10%) 60 60℃
1+2 シクロヘキサン 200 60℃
1+5 メタノール 60 60℃
1+5 IPA/水(10%) 60 60℃
1+5 シクロヘキサン 200 60℃
2+5 メタノール 60 60℃
2+5 IPA/水(10%) 60 60℃
2+5 シクロヘキサン 200 60℃
*周囲環境=約22℃
【0067】
形態1、形態2、及び形態5の多形安定性研究
形態 溶媒 T℃ 観察
1+2 メタノール RT* 形態2(Tr#形態1)
1+2 IPA/水(10%) RT 形態2
1+2 シクロヘキサン RT 形態1+形態2
1+5 メタノール RT 形態5
1+5 IPA/水(10%) RT 形態2
1+5 シクロヘキサン RT 形態1(Tr形態5)
2+5 メタノール RT 形態5(Tr形態2)
2+5 IPA/水(10%) RT 形態5(Tr形態2)
2+5 シクロヘキサン RT 形態5
1+2 メタノール 60℃ 形態5(追加ピーク)
1+2 IPA/水(10%) 60℃ 形態2
1+2 シクロヘキサン 60℃ 形態1(Tr形態2)
1+5 メタノール 60℃ 形態5(追加ピーク)
1+5 IPA/水(10%) 60℃ 形態5
1+5 シクロヘキサン 60℃ 形態1(Tr形態5)
2+5 メタノール 60℃ 形態5(追加ピーク)
2+5 IPA/水(10%) 60℃ 形態5(追加ピーク)
2+5 シクロヘキサン 60℃ 形態5(部分的に結晶性)
【0068】
水を溶媒として使用した幾つかの研究を行った。化合物は水に非常に可溶性である。透明な溶液が得られた場合、溶媒を蒸発させるか又は緩徐冷却することにより形態1が形成された。十分な水が添加されず、従ってスラリーを攪拌できない場合、別の多形への変換は観察されなかった。
良好な撹拌可能懸濁物を得るためにある量の水を添加した場合、形態2が見出される。この懸濁物を冷却又は蒸発させると、良好な結晶性形態2がもたらされる。この懸濁物を得るためには、0.8容積のみの水を加える必要があり、0.7容積では濃厚なペーストが得られ、1.0容積では透明な溶液がもたらされる。イソプロパノール(IPA)等の他の水混和性溶媒を水と混合して、形態2多形がもたらされる、溶媒対固形物の有用な範囲を広げることができる。
【0069】
形態2の大規模化(10g)
大規模化は、HPLCによる純度99.4%の形態2を10g規模で再現することに成功した。しかしながら、乾燥時に結晶化度が幾らか喪失することが観察された。水和研究中に多形を変化させずに、DVS分析後に、並びに40℃及び75%RHでの安定性研究中に、結晶化度の向上が観察された。これは、結晶格子への水取込みによるものである可能性が高い。
この物質は、0%~50%RHでは形態1よりも吸湿性が低いが、>50%RHではDVS分析によると形態1よりも吸湿性が高いと考えられた。DVS分析によると、50%RHでは約0.2%の水取込みが観察され、90%RHでは24.9%が観察された(形態1では50%RHで約0.6%が観察され、80%RHで8.3%が観察された)。
また、形態2は、形態1よりも、より高い温度に対してより感受性であることが見出された。80℃での1週間安定性試験後に、色の変化(白からオフホワイト/オレンジ色)及びHPLC分析による約95.5%の純度が観察された。
【0070】
XRPD分析は、大規模化から得られた形態2が、元々見られた結果と一致すると考えられることを示した。しかしながら、乾燥時に結晶化度の喪失が観察された。これは、結晶格子から水が部分的に除去されることによる可能性がある。
PLM分析は、プレート/レーズ(lathe)様の形態学的特徴を示した。
TG/DT分析は、それぞれ、2つの連続した質量喪失を示した:0.7%、これは70.5℃で発生するDTトレースの吸熱事象に対応する;4.8%(一水和物では約5.2%が予想される)、これはDTトレースの128℃の吸熱事象に対応する。
KF分析は、約6.1%の含水量を示した。
DSC分析は、非結合溶媒(IPA又は/及びアセトン)による可能性が高い、76.9℃で発生するわずかな吸熱事象、続いて、水の喪失による可能性が高い、144.9℃での大きく幅広い吸熱事象、及びその後の164.6℃での発熱事象を示した。
DVS分析によると、この物質は、50%RHを超えると吸湿性であると考えられた。
収着サイクルは、0%~50%RHでは著しい質量増加を示さなかったが(50%RHで約0.2%の水取込み)、50%~80%RHで一定の質量増加が(80%RHで約9.9%の水取込み)、80%~90%RHで急激な質量増加(90%RHで約24.9%の水取込み)が観察された。
脱離サイクルは、90%~70%での収着と同じ傾向に従うと思われ、次いで70%~0%で6.77%の漸進的質量減少が観察された。
脱離時には、約0.4%RHのわずかなヒステリシス(つまり、水分の保持)が0%RHで観察された。
DVS後のXRPD分析は、乾燥入力物質と比較して、結晶化度が増加したことを示した。これは、結晶格子への水の再導入及び非晶質内容物の一部のその後の結晶化によるものである可能性がある。
HPLC分析により99.4%の純度が観察された。
IC分析は、HCl二塩の場合に予想される通り、API:塩酸比が約1:2であることを示した。
【0071】
形態2の1H-NMRスペクトルは、形態1と比較して幾つかの追加のピーク、特に、δ:8.91のマルチプレット、δ:8.14のブロードシングレット、並びにδ:4.35、3.61、及び2.84の3つのダブレットを示した。
参考としてFT-IR分析を得た。
【0072】
安定性研究(1週間)
HPLC分析は、99.5%(周囲環境)、99.8%(40℃/75%RH)、及び99.5%(80℃)の純度を示した。80℃で保存した試料には色の変化(白色からオフホワイト/オレンジ色へ)も観察された。これは、純度がより低い(95.5%)ことと一致する。色の変化及び純度の喪失という観察結果は両方とも、形態2が、形態1と比較して高温に対してより感受性であることを示すが、形態2は、周囲温度でより安定していると考えられる。
XRPD分析は、HCl二塩水和物形態2の安定性研究中、周囲環境及び80℃の両方で、多形形態の著しい変化を示さなかった。しかしながら、40℃/75%RHで結晶化度の増加が観察された(結晶格子への水取込み及び非晶質内容物の一部のその後の結晶化によるものである可能性が高い)。
【0073】
HCl二塩の1週間安定性研究の結果及び観察
【表32】
【0074】
水和研究
HCl二塩(形態2)の水和研究の結果及び観察は、下記の表に報告されている。
XRPD分析は、種々のIPA/水混合物中で24時間撹拌しても、形態変化が生じなかったことを示した。これにより、より高次の水和物が形成されなかったことが示された。乾燥入力物質と比較して結晶化度の向上が観察された。これは、結晶格子への水取込みによるものである可能性が高い。
【0075】
HCl二塩水和物(形態2)の水和研究の結果及び観察
【表33】
【0076】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的目的語の1つ又は1つよりも多くの(つまり、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、1つの要素又は1つよりも多くの要素を意味する。
上述の説明及び例は、例示であることが意図されており、限定として解釈されるべきではない。本発明の趣旨及び範囲内で更に他の変異が可能であり、当業者であればそれらを容易に提示するだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】