(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】きわめて低い露点を有する製品空気のための乾燥システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20220414BHJP
【FI】
B01D53/26 220
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553038
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020056055
(87)【国際公開番号】W WO2020178436
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521399995
【氏名又は名称】テェルボド エイピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オレセン、トーマス レンナウ
(72)【発明者】
【氏名】トフテガード、ラスマス
(72)【発明者】
【氏名】ヨルゲンセン、 イェスパー ルンド
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA08
4D052CB04
4D052DA02
4D052DA09
4D052DB01
4D052DB04
4D052GA01
4D052GB02
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
(57)【要約】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30、40、50)であって、3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、回転式乾燥剤乾燥器(2a、21a)は、順に配置され、再生空気を回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有している3ロータ乾燥システム(30、40、50)が、本明細書において詳述される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30、40、50)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項2】
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(6b)の前記吸気流路(6)上に配置された冷却器(33)をさらに備える、請求項1に記載の3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項3】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の上流の前記製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において前記戻り空気の混合点(1)と前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)との間に配置された混合空気の分割点(11)をさらに備え、前記分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を経由して前記再生流路(9)に沿った再生空気として分岐する、請求項1または2に記載の3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項4】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間(9c)の前記再生流路(9)上に配置された前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(40a)。
【請求項5】
前記共通の吸気流路(6、7)上に配置され、前記吸気から空気中の粒子を除去する少なくとも1つのフィルタ(41~43)をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(40b)。
【請求項6】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前の前記製品空気流路(7)上に配置された冷却器(32)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50)。
【請求項7】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の前記製品空気流路(7)上に配置された中間加熱器(51)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50a)。
【請求項8】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の前記製品空気流路(7)上に配置された冷却器(31)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乾燥システムの分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を低いエネルギーコストで生成するための乾燥システムが、本明細書において詳述される。そのようなシステムは、例えば、リチウム電池の製造のためのクリーンルームなどのきわめて水分に影響されやすい用途のための空調された空気の生成、または水分含有量がきわめて少ないガスの生成に、きわめて適する。
【背景技術】
【0002】
乾燥システムの分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を低いエネルギーコストで生成するための乾燥システムが、本明細書において詳述される。そのようなシステムは、例えば、リチウム電池の製造のためのクリーンルームなどのきわめて水分に影響されやすい用途のための空調された空気の生成、または水分含有量がきわめて少ないガスの生成に、きわめて適する。
【0003】
当技術分野において、-30℃以下の露点などのきわめて低い露点を有する生成空気を生み出すための乾燥システムを製造することが知られている。当技術分野において、きわめて低い露点を有する生成空気の生成に適した乾燥システムが知られている。しかしながら、一般に、これらのシステムは、工業用空気、すなわち技術的な目的のための大量かつ大流量の空気を生成することができず、たとえ使用可能であったとしても、妥当なエネルギーまたは運転コストで生成することはできない。したがって、本開示において、工業用空気は、いずれも適切に機能するために充分に指定された特性を有する大量かつ大流量の空気に依存する建物、クリーンルーム、または他の生産施設の集中空調、噴霧乾燥塔、流動床乾燥器、などの目的のための空気を包含する。したがって、本発明は、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を製造するための乾燥システムに関し、本明細書においてこの文脈で論じられる。
【0004】
本発明の文脈において、きわめて低い露点を有する工業用空気は、-30℃未満、好ましくは-40℃未満、-50℃未満、より好ましくは-55℃未満、さらにより好ましくは-60℃未満の露点を有する工業用空気を意味すると理解されるべきである。本発明のいくつかの実施形態において、得られる製品空気の露点は、-65℃未満、-70℃未満、-75℃未満、または-80℃未満であってよい。他の実施形態において、得られる製品空気の露点は、-100℃のさらに上、-95℃のさらに上、-90℃のさらに上、または-85℃のさらに上である。好ましくは、本発明の製品空気の露点は、-55℃~-80℃、-60℃~-75℃、または-65℃~-70℃である。
【0005】
乾燥工業用空気の製造の技術分野において、乾燥ホイールまたは回転式乾燥器とも呼ばれる回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システムを利用することが周知である。これらのシステムの利点は、工業目的のために、例えば1000m3/hを超える大量の吸気を迅速に除湿できることである。このような乾燥システムにおいては、乾燥させられるべき空気が、回転ホイールに埋め込まれた乾燥剤層を通過することにより、より乾燥し、より暖かくなり、その後に、回転式乾燥器の湿気を含んだセクタが、回転によって空気乾燥および乾燥剤再生のセクタへと送られ、吸収位置に再び戻される。吸気に応じて、このような回転式乾燥器は、0℃未満の広い範囲の露点を有する大量かつ大流量の工業用空気を生成することができる。
【0006】
-30℃未満などのきわめて低い露点を有する工業用空気の製造の技術分野においても、回転式乾燥剤乾燥器が、-40℃または-50℃未満の露点を有する工業用空気の供給に関しても、広く使用されている。
【0007】
しかしながら、-30℃以下の工業用空気を供給するために回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システムを運転する場合、乾燥システムを運転するためのエネルギーコストが大きな問題となる。例えば、リチウム電池の製造の分野において、エネルギーの主要なコストは、電池セルの品質に不可欠な種々の乾燥室の運転によるものと推定されている(Ellingsen et al.J.Industrial Ecology,Vol 18,No 1,pp 113-124)。
【0008】
図1、
図2A、および
図2Bが、例えばBryAirの国際公開第2011/161693号パンフレットで論じられている乾燥システムなど、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための先行技術の回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システム(10、20)を詳しく示している。
図1に詳しく示されている乾燥システムが、1ロータのシステムに基づいている一方で、
図2Aおよび
図2Bに詳しく示されている乾燥システムは、順次の2つの回転式乾燥剤乾燥器に基づく。きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の乾燥システムの特定の問題は、これらが、吸気の露点を下回るまでの予備冷却と、その後の冷却された吸気の乾燥剤ホイールによる乾燥とに依存していることであり、このプロセスは、エネルギーのコストが高く、微生物または細菌の汚染がリスクになる前に除去しなければならない凝縮水が生じるため、衛生の立場からも問題である。とくには、無菌性が関心事である場合に、凝縮水は歓迎されない課題を呈する。
【0009】
先行技術の問題を克服するために、本発明者らは、少なくとも3つの連続して配置された回転式乾燥剤乾燥器を備えるきわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための乾燥システムを考え出し、この本発明の乾燥システムは、液体水の生成および関連の生物学的汚染のリスクを回避しつつ、エネルギー効率を改善している。
【0010】
当技術分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための乾燥システムに、-90℃~-110℃のきわめて低い露点を有する工業用空気を得るための3つの連続する回転式乾燥剤乾燥器(特開2001-038137号公報を参照)を配置することが提案されており、この提案の乾燥システムは、吸気を同じ吸気の露点未満まで冷却するために、第1のロータの前に必須の冷却ユニットを備えており、再生空気は、吸気を再循環の製品空気と混合した後に回収される。
【0011】
本システムは、他の要素の中でもとりわけ、再生空気が吸気を再循環の製品空気と混合する前に回収されるという点で、先行技術とは異なる。これにより、再生空気が高価値の製品空気を含まず、エネルギーが節約され、吸気の露点を下回る冷却が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2011/161693号パンフレット
【特許文献2】特開2001-038137号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ellingsen et al.J.Industrial Ecology,Vol 18,No 1,pp 113-124
【発明の概要】
【0014】
本発明によれば、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)が、本明細書において開示される。
【0015】
本発明の乾燥システム(30、40、50)を設けることにより、きわめて低い露点を有する工業用空気を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)である。
【
図2A】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の2ロータ乾燥システム(20a)である。
【
図2B】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の2ロータ乾燥システム(20b)である。
【
図3】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(30)である。
【
図4】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(40a、40b)である。
【
図5】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(50a、50b)である。
【
図6】本発明の3ロータ乾燥システム(30)の効率のシミュレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aおよび
図1Bに、きわめて低い露点を有する工業用空気を生成し、生成された空気を使用場所(4)に供給するための先行技術の2つの1ロータ乾燥システム(10a、10b)がそれぞれ詳しく示されている。本開示の全体を通して、先行技術の乾燥システム(10、20)および本発明の乾燥システム(30、40、50)、したがって
図1の2つの乾燥システム(10a、10b)も、好ましくは、先行技術のシステムおよび本発明のシステムの背後にある動作原理を例示するために、部屋(4)の空調の文脈において詳述される。しかしながら、乾燥システム(10、20、30、40、50)からの製品空気の使用の場所または空間(4)が、一般に、部屋の空調に関して説明されるが、そのような説明が、単に例示の目的のためのものにすぎず、本発明の乾燥システムが、きわめて低い露点を有する工業用空気が望まれる空調以外の多数の他の状況における使用に適することを、理解すべきである。
【0018】
一般に、製品空気を、製品空気流路(7)を介して使用場所(4)へと供給し、同じ使用場所(4)から戻り空気流路(8)に沿って戻り空気として運び去ることができ、あるいは随意により、排気用のさらなる流路(4a)に沿って運び去ることができる。したがって、使用場所(4)は、本発明の乾燥システム(30、40、50)の一部を形成しない。
【0019】
しかしながら、本発明(30、40、50)および先行技術の乾燥システム(10、20)は、リチウム電池を製造するための製造ラインにおける使用に関する利点および欠点を例示および議論するために、部屋および生産施設の空調の文脈において説明される。
【0020】
リチウム電池の製造のためのクリーンルームまたは製造空間などのきわめて乾燥した空調された建物空間の維持に使用されるきわめて低い露点を有する工業用空気の供給は、リチウムの極端な吸湿性および水と接触したときの急激かつ爆発的にさえなり得る燃焼に起因して不具合を起こしやすいリチウム電池の製造のきわめて重要な態様である。生産用建物において使用するための工業用空気の製造の仕様は、現在の基準で-20℃~-60℃の間の露点の範囲である。これらの基準でさえも、全体としての生産ラインの効率は、とりわけ生産用建物およびクリーンルーム内の空気の湿度を制御することが困難であるがゆえに、理論上の最大値の約50%~60%にすぎないと推定される。
【0021】
きわめて低い露点を有する工業用空気の生成を、生成された工業用空気の使用の最中も維持するために、先行技術の乾燥システム(10a、10b、20a、20b)および本発明の乾燥システム(30、40、50)は、稼働中の製品空気の損失を補うために充分な周囲空気だけを吸気として乾燥システムに取り入れればよいように、除湿器と使用場所(4)との間の乾燥した空気の大部分の再循環に依存する。先行技術のシステム(10、20)および本発明のシステム(30、40、50)において、吸気は、乾燥システム(10、20、30、40、50)に除湿器として含まれる回転式乾燥剤乾燥器(2)のための再生空気としての役割を果たした後の排気としても排出される。通常は、製品空気は、例えば拡散による汚染物質の進入を防止するために建物空間の過圧を維持することによって、稼働中に制御可能ではあるが失われる。これは、
図1において、空調された部屋(4)を出る排気についてのハッチングされた流路(4a)によって示されている。
【0022】
先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)は、戻り空気のための混合点(1)の周りに構築され、混合点(1)へと吸気が吸気流路(6)に沿って供給され、混合点(1)において戻り流路(8)に沿ってもたらされる戻り空気と混合され、混合空気として、製品空気の除湿および乾燥剤の再生のために、製品空気の流路(7)および再生空気の流路(9)のそれぞれに沿って分配される。先行技術の乾燥システム(10a、10b)の通常の動作において、製品空気流路(7)、使用場所(4)、戻り空気流路(8)、および混合点(1)は、乾燥システム(10)の動作中に空気が実質的に一定の体積流量で循環する空気循環用の半閉ループを形成する。
【0023】
先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)を使用して、きわめて低い露点、すなわち-30℃未満を有する製品空気を生成するために、吸気は、最初に、混合点(1)への到達前に、吸気流路(6)に配置された冷却凝縮ユニット(3)において吸気に含まれる水の冷却および凝縮を被る。
【0024】
先行技術の乾燥システム(10)に含まれる冷却凝縮ユニット(3)は、充分に乾燥した吸気が混合点(1)において得られ、したがってこの乾燥した吸気が混合点(1)において戻り空気と混合されたときに、製品空気流路(7)へと分岐する混合空気が、製品空気流路(7)において混合点(1)と使用場所(4)との間に配置された回転式乾燥剤乾燥器(2)の乾燥セクタ(2a)にとって、製品空気において所与の目標の露点が充分に得られる程度まで混合空気中の残りの水を除去することができるように充分に乾燥しているように、充分な冷却および凝縮能力でなければならない。適切な冷却凝縮ユニット(3)を提供するために、高い運用コスト、頻繁な保守および点検(および、付随する生産停止)、および冷却凝縮ユニット(3)からの凝縮水の除去に関して、妥協を受け入れなければならないことが経験から示されている。
【0025】
先行技術の乾燥器(10)の混合点(1)において、上述のように、混合空気は2つの空気流に分割され、1つは製品空気流路(7)に沿った通過によって製品空気を得るための空気流であり、1つは再生空気流路(9)に沿った通過のための再生空気のための空気流である。両方の流路(7、9)に、乾燥セクタ(2a)、再生セクタ(2b)、およびパージセクタ(2c)を備える共有の回転式乾燥剤ホイール(2)が配置され、乾燥セクタ(2a)は、混合空気が乾燥セクタ(2a)を横切って乾燥剤ホイール(2)を横切ることで、きわめて低い露点を有する製品空気になるように、製品空気流路(7)上に配置され、再生セクタ(2b)およびパージセクタ(2c)は、混合空気が最初にパージセクタ(2c)、次いで再生セクタ(2b)において乾燥剤ホイール(2)を横切ることができるように、再生空気流路(9)上に配置される。パージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間において、混合空気は、パージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間(9b)の再生空気流路(9)上に配置された加熱器(5)で加熱され、再生空気となる。これにより、再生空気は、再生セクタ(2b)の通過時に乾燥剤ホイール(2)を再生することができ、その後に、先行技術の1ロータ乾燥器(10)では、使用後の再生空気は排気として廃棄される。すべての図において、乾燥剤ホイール(2)上に太い矢印が示されている場合、これらは、先行技術の乾燥システム(10a、10b)の稼働時の最適な回転方向、したがって好ましい回転方向を示している。
図1Aおよび
図1Bにおいて、最適な回転方向は、乾燥セクタ(2a)から再生セクタ(2b)へとパージセクタ(2c)までの方向である。
【0026】
1ロータ乾燥システム(10)において、再生空気が乾燥剤ホイール(2)の再生セクタ(2b)を通過した後に、加熱器(5)の通過後と比較して今や冷却されて湿った再生空気は、排気として廃棄される。先行技術の1ロータシステム(10a、10b)の特定の問題は、排気が加熱器(5)における加熱後と比較して冷却されているが、使用後の再生空気は、周囲空気または乾燥システム(10)の吸気と比べて依然として高温であることである。典型的には、乾燥セクタ(2a)の通過後に得られる製品空気がきわめて低い露点を有するという必要な仕様を満たす場合に、加熱器(5)の通過後の再生空気の温度は、1ロータ乾燥システム(10a、10b)において乾燥剤ホイール(2)の充分な再生を得るために、140℃~170℃の範囲内でなければならない。これにより、乾燥セクタ(2a)の通過後に製品空気がきわめて高温になるため、使用場所(4)での使用の前に製品空気を調整するために、1ロータ乾燥システム(10)の2つの変種(10a、10b)が開発された。
【0027】
第1の変種の1ロータ乾燥システム(10a)においては、冷却器(31)が、乾燥セクタ(2a)の通過(7b)後の製品空気流路(7)上に配置され、第2の変種の1ロータ乾燥システム(10b)においては、冷却器(32)が、混合点(1)と製品空気流路(7)上の乾燥セクタ(2a)との間(7a)に配置され、中間加熱器(51)が、乾燥セクタ(2a)の通過(7b)後の製品空気流路(7)上に配置される。乾燥システム(10b)および冷却器(32)は、乾燥剤乾燥器(2)の効率を高めるために追加の冷却が必要とされる場合に実施されることが多い。冷却器(31、32)は、冷却のみをもたらすことができるが、冷却凝縮ユニット(3)などの1つのユニット内の冷却器および凝縮器であってもよく、しかしながら、これは、吸気流路(6)に配置された冷却凝縮ユニット(3)とは対照的に必須ではない。
【0028】
上記の要素に加えて、乾燥システム(10)は、ポンプ、ベローズ、またはファンなどの1つ以上の空気移動手段(図示せず)を備え、この1つ以上の空気移動手段は、乾燥システムの必要性および用途に応じて乾燥システム内の空気を移動させるために流路(6~9)に配置される。
【0029】
本開示の全体を通して、すべての乾燥システム(10、20、30、40、50)およびその実施形態は、上記で詳述したような空気移動手段を含む。しかしながら、本開示の文脈において、当業者であれば、自身の一般的な知識に従って空気を移動させるための流路にそのような空気移動手段を適用することができると考えられ、したがって、含まれる空気移動手段は、本開示においてこれ以上は詳述されない。
【0030】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための1ロータ乾燥システム(10)は、運転コストは最も高いが、製造および設置があまり複雑でないと考えられ、したがって上記の問題にもかかわらず広く使用されている。しかしながら、プロセス経済性の理由から、それらは限界または限界の近くで動作するように作られており、必要な場合の追加の容量の余地がほとんどない。
【0031】
図2Aおよび
図2Bに示される乾燥システムなどの先行技術の2ロータ乾燥システム(20)は、1ロータ乾燥システム(10)と同じいくつかの欠点を抱えているが、広く使用されている。一般に、それらの構造は1ロータシステムよりも複雑であり、したがってより高価でもあるが、それらの運転コストは一般的により低く、先行技術の1ロータシステムと比較して余剰容量で設置することができる。
【0032】
先行技術のきわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための2ロータ乾燥システム(20a、20b)の各々は、2つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21)を備え、各々の回転式乾燥器(2、21)は、乾燥セクタ(2a、21a)および再生セクタ(2b、21b)を備え、これらの回転式乾燥器(2a、21a)は、順に配置され、再生空気を回転式乾燥器(2、21)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を除湿するために吸気を回転式乾燥器(2、21)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a)に通すための共通の吸気流路(6、7)とを共有する。戻り空気の混合点(1)が、2つの乾燥器(2、21)の間の共通吸気流路(6、7)上に配置されることで、戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)が定められ、戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、混合点(1)に吸気の空気をもたらすための吸気流路(6)であって、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)が定められる。混合空気の分割点(11)が、第1の乾燥器(2)の上流の製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において、戻り空気の混合点(1)と第1の乾燥器(2)との間に配置され、この分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を介して再生流路(9)に沿った再生空気として分岐される。混合点(1)と分割点(11)との間に、冷却器(32)が配置される。第1の乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および再生セクタ(2b)が、再生空気が最初にパージセクタ(2c)を横切り、その後にパージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間(9b)の再生流路(9)上に配置された加熱器(5)を経由して再生セクタ(2b)を横切るように、再生流路(9)上に配置される。さらに、第2の乾燥器(21)の再生セクタ(21b)が、再生流路(9)上で第1の乾燥器(2)の再生セクタ(2)の後ろに配置され、第1の乾燥器(2)と第2の乾燥器(21)との間(9c)の再生流路(9)上に、第2の乾燥器(21)の再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)が配置される。さらに、先行技術の2ロータ乾燥システムは、戻り空気の混合点(1)へと使用場所(4)からの戻り空気をもたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える。
【0033】
使用状況に応じて、先行技術の2ロータ乾燥システム(20a、20b)は、乾燥システム(20a)において第1の乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)に配置された加熱器(51)(
図2A)、または乾燥システム(20b)において第1の乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)に配置された冷却器(31)(
図2B)をそれぞれ備えることができる。両方の図において、排気用の追加の流路(4a)が存在してもよい。
【0034】
1ロータ乾燥システムにおいて観察されたように、使用時に、製品空気流路(7)、使用場所(4)、および再生流路(8)は、乾燥システム(20)の動作中に空気が実質的に一定の体積流量で循環する空気の循環のための半閉ループを形成する。空気の循環のための半閉ループの目的は、新鮮な吸気の必要性を、制御された損失を含むシステムの損失および回転式乾燥器の再生に関して必要な量まで低減することである。一般に、循環する戻り空気は、乾燥システムの目標露点に近い(したがって、吸気よりも高い値である)露点を有し、したがって混合点(1)における吸気との混合に先立つ強制的な処理を必要とせずに、再循環させることができる。
【0035】
一般に、先行技術の2ロータ乾燥システムは、吸気として使用するために約10℃の吸気を必要とし、したがって、周囲空気を先行技術の乾燥システム(20)の吸気として役立てることを可能にする前に、冷却が必要とされることが多い。したがって、第2の乾燥器(21)への吸気流路(6)の上流に配置された
図2Bに示される冷却凝縮ユニット(3)が、通常は、先行技術の両方のシステム(20a、20b)に存在する。それにもかかわらず、2ロータシステムの冷却器(52)における冷却は、乾燥剤の効率を高め、加熱器(5)を出る再生空気による加熱を補償するために充分に冷却された第1の回転式乾燥器(2)のパージセクション(2c)のための混合空気をもたらすために、相当に強力でなければならない。加熱器(5)を出た後の再生空気の温度は、依然として高く、約130℃~140℃であり、中間加熱器(52)を通過した後の再生空気の温度も、依然として高く、典型的には100℃を上回るはずである。
【0036】
本発明は、現時点において使用されている乾燥システム(10、20)について設置コストと運転コストとの間の適切なバランスが見出されていないという既存の設備についての本発明者らによる上記の観察に基づく。
【0037】
本発明の目的は、-30℃未満、-40℃未満、好ましくは-50℃未満、より好ましくは-55℃未満、さらにより好ましくは-60℃未満の露点を有するなど、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30、40、50)を導入することであり、本発明の乾燥システムの運転コストの低減において、3ロータシステムを使用することによる設置の追加コストを、約3年の期間内に償却することが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、得られる製品空気の露点は、-65℃未満、-70℃未満、-75℃未満、-80℃未満、または-85℃未満であってよい。これらのシステムは、水分含有量がきわめて少ない工業用ガスのその後の製造にとくに適するが、ガスの品質の向上は、除湿のためのエネルギー消費の増加という代償を払う。
【0038】
本発明は、中間加熱器(52)の100℃を超える再生空気温度と、加熱器(5)の130℃を超える再生空気温度とを得るために、高出力の電気、蒸気、燃焼ガス加熱、などの高エクセルギーの熱源が必要であり、これらの熱源が、典型的には、設置コストおよび運用コストの両方において高価であるという先行技術の乾燥システム(10、20)の共通の問題であるという本発明者らによる観察にさらに基づく。
【0039】
同様に、本発明は、低価値の吸気が前述の第1の回転式乾燥器(2)における最終的な除湿に先立って高価値の戻り空気と混合されることで、使用時に製品空気流路(7)、使用場所(4)、および再生流路(8)によって形成される空気循環のための半閉ループを循環する空気の汚染を引き起こすことが先行技術の乾燥システム(10、20)の共通の問題であるという本発明者らによる観察にさらに基づく。これにより、高価値の戻り空気がより多く半閉ループから再生空気に回されるがゆえに、第1の回転式乾燥器(2)の負荷が増加する。
【0040】
したがって、本発明によれば、以下が本明細書に開示される。
【0041】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)。
【0042】
本発明の乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、冷却器を備えることなく、とくには冷却凝縮ユニットを備えることなく運転することができるが、それでもなお、例えば-30℃未満のきわめて低い露点を有する製品空気をもたらすことができることである。
【0043】
根本的な理由は、部分的には、本発明が、使用時に製品空気流路(7)、使用場所(4)、および再生流路(8)によって形成される空気の循環のための半閉ループを循環する空気の再生空気汚染の問題を、再生空気を戻り空気の混合点(1)よりも前で分岐させることによって克服するとともに、湿気の大部分が吸気についてさらなる処理工程が行われる前に低コストで初期回転式乾燥剤乾燥器(22)によって除去され、最大の水分含有量を含む排気が乾燥プロセスの最後のステーションにおいて除去されることである。
【0044】
好ましい実施形態では、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)は、吸気に含まれる初期水分含有量の少なくとも90重量%を除去し、吸気に含まれる初期水分含有量の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、または好ましくは少なくとも98.5重量%を除去する。
【0045】
しかしながら、例えば-50℃未満などの最も低い露点を有する製品空気を得るためには、使用場所(4)が人間が使用するための部屋または建物空間である場合、製品空気品質および空調の両方のために冷却が必要な場合がある。
図3には、冷却器(33)を備える本発明の3ロータ乾燥システム(30)の好ましい実施形態が例示されている。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、3ロータ乾燥システム(30)は、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(6b)の吸気流路(6)上に配置された冷却器(33)をさらに備える。以下の実施例において、冷却器(33)を備える実施形態を実現する本発明の3ロータ乾燥システム(30)のシミュレーション値と、先行技術の対応する実施形態(10a、20b)の比較データとを提示する。
【0047】
冷却器(33)をさらに備える実施形態の特定の利点は、初期水分含有量の大部分が初期回転式乾燥器内での吸着によって吸気から除去されているため、冷却器(33)が、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、または35℃未満から例えば15℃~25℃または20℃の間などの室温までの冷却など、低強度の冷却を提供するだけでよいことである。
【0048】
とくに、本発明の利点は、きわめて低い露点を有する工業用空気の効率的な製造のために、予冷された吸気を必要としないことである。先行技術の乾燥システム(10、20)は、一般に、企業の規格に従って先行技術の乾燥システムへの進入前に10℃に冷却された予冷吸気を必要とする。本発明の乾燥システム(30、40、50)は、吸気が周囲温度にある場合でも機能的である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、本発明の乾燥システム(30、40、50)は、摂氏の温度差に基づいて、吸気の露点を15%上回るまで、吸気の露点を10%上回るまで、または吸気の露点を5%上回るまで吸気を冷却するなど、吸気の露点に近づくように吸気を冷却するための予冷器(3)を備える。
【0049】
同様に、本発明のこの乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、所与の使用場所(4)の製品空気について同じ目標露点が想定される場合に、吸気量を先行技術の乾燥システム(10、20)と比較して減らすことができることである。実施例2に、同じ体積流量に関して、本発明の乾燥システム(30、40、50)を使用することによる露点の改善が6~8℃の間である状況が示されており、したがって、本発明のシステムにおける体積流量を減らすことにより、この有益な露点の差の一部を使用して体積流量を減少させ、したがって先行技術と比較した本発明の乾燥システムの経済的利益を増加させることができる。
【0050】
冷却器(33)の通過後の温度は、さらなる2つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21)の通過によって著しくは上昇しないため、一般に、部屋または建物空間などの使用場所(4)への導入前に最終的な製品空気の温度を制御するためのさらなる冷却または加熱は、省略可能である。
【0051】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(30)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の上流の製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において戻り空気の混合点(1)と第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)との間に配置された混合空気の分割点(11)をさらに備え、分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を経由して再生流路(9)に沿った再生空気として分岐する。
【0052】
図3から観察できるとおり、本発明による分割点(12)が設けられる場合、空気を循環させるための半閉ループは、実際には閉ループであり得る。したがって、使用場所(4)の圧力上昇を防止するために、使用場所(4)は、排気用の流路(4a)を備えなければならず、あるいは、余分な循環空気を、混合空気の分割点(11)において、再生空気が第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)を通過する前の再生空気流路(9)の空気流路(9e)につながる混合空気流路(9a)に沿って分岐させることにより、余分な循環空気を再生空気に使用することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、混合空気の分割点(11)は、本発明の乾燥システム(30、40、50)における吸気の分割点(12)を置き換えることができる。これにより、例えば、本明細書で詳細に説明されるように配置される初期回転式乾燥剤乾燥器(22)を追加することによって、既存の2ロータ乾燥システムを改善することが可能になる。しかしながら、本発明のこの変種のシステムは、本明細書で詳しく説明される本発明の好ましいシステム(30、40、50)よりも効率的でない。
【0054】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(40a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間(9c)の再生流路(9)上に配置された第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)をさらに備える。その例示的な実施形態(40a)は、
図4Aに詳しく示される。
【0055】
一般に、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の再生セクタ(2b)から出る再生空気は、第1の回転式乾燥器(2)を再生した後であっても依然として高温かつきわめて乾燥しており、通常の動作下では、第1の回転式乾燥器(2)と第2の回転式乾燥器(21)との間に中間加熱器を設ける必要はないが、本発明の乾燥システム(40a)の限界に近づく動作が意図される場合には、上述の中間加熱器(52)を設けることがとくに有益となり得る。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、中間加熱器(52)は、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間に配置された中間加熱器(53)を置き換えることができる。これにより、例えば、本明細書で詳細に説明されるように配置される初期回転式乾燥剤乾燥器(22)を追加することによって、既存の2ロータ乾燥システムを改善することが可能になる。しかしながら、本発明のこの変種のシステムは、本明細書で詳しく説明される本発明の好ましいシステム(30、40、50)よりも効率的でない。
【0057】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(40b)は、共通の吸気流路(6、7)上に配置され、吸気から空気中の粒子を除去する少なくとも1つのフィルタ(41~43)をさらに備える。
図4Bに詳しく示されている本発明の例示的かつ好ましい実施形態(40b)において、本発明の乾燥システム(40b)は、少なくとも3つのフィルタ(41~43)を備え、それぞれのフィルタは、先行するそれぞれの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)の下流にフィルタクラスの昇順で配置されている。一般に、所与の技術仕様に応じて使用場所(4)にフィルタ処理された製品空気を供給することは、当業者の技能の範囲内であると考えられる。とくに好ましい実施形態(40b)において、フィルタ3(43)はクラスF6のフィルタであり、フィルタ2(42)はフィルタクラスF6~F9から選択されたフィルタであり、フィルタ1(41)はクラスF9のフィルタである。きわめて低い粒子クラスを必要とする使用場所(4)のための本乾燥システム(40b)の実施形態においては、HEPAフィルタがフィルタ1(41)の下流に配置される。
【0058】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(50)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前の製品空気流路(7)上に配置された冷却器(32)をさらに備える。
【0059】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(50a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)上に配置された中間加熱器(51)をさらに備える(
図5Aを参照)。本発明の別の実施形態において、3ロータ乾燥システム(50a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)上に配置された冷却器(31)をさらに備える(
図5Bを参照)。これにより、先行技術に従い、使用場所(4)に供給される製品空気を使用前に空調することができ、これは、クリーンルームなどの建物空間および部屋における製品空気の使用にとくに適する。
【0060】
回転式乾燥剤乾燥器の現在の技術水準によれば、乾燥剤ホイールに含まれる乾燥剤は、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナなど、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、本発明において使用するための回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、シリカゲル、ゼオライト、またはこれらの組み合わせから選択される乾燥剤を含み、とくに好ましくはシリカゲルである。本明細書において以下に提示される計算は、シリカゲルを含む回転式乾燥剤ホイールに基づく。
【0061】
吸気は周囲空気であってよいが、吸気は、好ましくは、例えば塵埃粒子、微生物または細菌汚染物質などを除去するために前処理された前処理済みの周囲空気である。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の乾燥システム(30、40、50)は、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前の吸気流路(6)上に配置された吸気をもたらすために空気を前処理するための手段を備えることができる。
【実施例】
【0062】
本発明の乾燥システム(30)の性能を、その最も広い態様において文書化するために、本乾燥システム(30)の全体的な性能を、先行技術の1ロータおよび2ロータ乾燥システムとともにシミュレートしたが、シミュレーションにおいては、ロータのサイズをそれぞれの乾燥システム間で一定に保った。同様に、吸気の体積流量および製品空気の目標体積流量も一定に保った。
【0063】
シミュレーションは、空気とロータ材料との間の動的な質量および熱の移動の計算に基づいており、計算においては、乾燥剤の収着等温線、ならびに動的な熱および質量の移動が、実験的に決定されたパラメータ、およびシミュレーションツールの製造者が独自に所有する入力データとともに考慮される。一貫性のために、2つの異なる製造者からの2つの異なるシミュレーションツールで試験を行った。6~8回の反復後に得られたデータが、2回の連続する反復の間で標準偏差1つ分以下のずれであった場合に、シミュレーションを収束したとみなした。
【0064】
シミュレーションの結果を、実施例1および
図6、ならびに実施例2および下記の表1に示す。
【0065】
実施例1:
製品空気が最後の回転式乾燥器(2)の通過後に-68℃というきわめて低い露点を有し、30,000m
3/hを循環させる半閉ループに対して1300m
3/hの空気を交換するための4300m
3/h、10℃@90% RH(7.6g/kg H
2O)という1ロータおよび2ロータのシステムの標準吸気仕様を使用し、本発明の最も広い態様における乾燥システム(30)のシミュレーションは、乾燥システム(30)内のあらゆる地点において73℃を超える加熱も、10℃を下回る冷却も、不要であることを示している(
図6を参照されたい)。実際、冷却器(33)を出る空気は、さらなる2つの回転式乾燥器(2、21)において最大1.1℃しか加熱されることがなく、したがって使用場所(4)が例えばリチウム電池の製造のためのクリーンルームまたは建物空間である場合に、使用場所(4)の空調に適している。
【0066】
本発明の乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、第1の回転式乾燥器(2)を再生するために、75℃を超えることはほとんどない低い温度の加熱のみが必要とされることである。したがって、システムは、再生のために、他の局所加熱、太陽エネルギー、地域加熱、などからの加熱水などの低熱源を利用することができる。
【0067】
吸気の高められた空気温度のさらなる重要な利点は、水の凝縮、熱/冷損失、外部への熱の逃げ道の問題が、ほぼ室温で本発明の乾燥システム(30、40、50)を動作させることができることによって大幅に最小化されることである。これにより、所望の動作温度を維持するために必要な断熱が少なくなるため、乾燥システム用のキャビネットの構築における節約がさらにもたらされる。
【0068】
実施例2-比較
上記の仕様を使用するが、吸気として48,000m3/hという空気のより現実的な生成流量を使用した1ロータ乾燥システム(10a)、2ロータ乾燥システム(20a)、および本発明の最も広い態様における本発明の乾燥システム(30)の間の比較研究。結果を以下の表1に報告する。
【0069】
比較データから観察することができるように、本発明の3ロータの解決策は、2年後にすでに1ロータよりも費用効率が高く、3年後にすでに1ロータおよび2ロータ乾燥システムの両方よりも費用効率が高いが、1ロータおよび2ロータ乾燥システムと比較して6~8℃低い露点を有する製品空気をもたらす。
【0070】
露点に関するこの追加の能力を、意図される使用場所(4)における製品空気の品質問題を最小限に抑えるためだけでなく、意図される使用場所(4)がリチウム電池の製造空間である場合に、電池の製造空間における爆発リスクをさらに軽減するためにも使用することができる。上述したように、本発明の乾燥システムを通る空気の総流量を減らすために使用することもできる。
【表1】
【0071】
実施例3-特開2001-038137号公報との比較
2つの異なるシステムにおける再生空気の分割点(12)に対する吸気と戻り空気との混合点(1)の配置の効果を調査すること、すなわち再生空気を混合点(1)の前または後で分岐させる効果を調査することを目的として、比較のために、実施例1および2に関して詳述したシミュレーションパラメータを使用して、本構成を特開2001-038137号公報の3ロータシステムに対して測定した。
【0072】
そのような比較の問題は、本システム(30、40、50)および先行技術のシステムが、元々は同一の製品空気をもたらすように構成されておらず、したがって比較を実行するためにいくつかの調整を行わなければならないことである。とくに、特開2001-038137号公報の3ロータシステムは、露点を下回る冷却用の予冷器(3)を備えるが、そのような予冷器は、予冷が使用されたとしても予冷が吸気の露点を決して下回らない本発明のシステムには存在しない。したがって、以下の比較は、本システムと先行技術のシステムとの直接的な比較ではなく、本3ロータシステムに対する混合点(1)の位置の影響を調べるにすぎない。
【0073】
したがって、本シミュレーションは、特開2001-038137号公報(ただし、詳述のとおり、予冷が実施されない場合を除く)に詳述されているすべての特徴、すなわち冷却器(33)および(32)、ならびにすべての加熱器(5、52、53)を実装する。
【0074】
上述したように、本システムは冷却器(32)なしでも動作可能であるが、これは特開2001-038137号公報に開示されたシステムには当てはまらない。同様に、本システムは、加熱器(52)なしでの使用にも適しており、これらの違いはどちらも、適切な品質の製品空気を得るための運用コストおよび投資の削減をもたらす(例えば、
図6を参照)。
【0075】
本比較は、本発明の意図に沿って吸気の予冷が行われない場合、および予冷された吸気の露点の5%以内までの予冷が行われる場合について、2つのシステムを比較する。
【0076】
これらの条件下で、混合点(1)の2つの位置によって相違する3ロータシステムを使用して得られた結果としての製品空気の比較は、以下のとおりである。
【表2】
【0077】
シミュレーション結果から分かるように、得られる製品空気が、同じシミュレーション条件下で調整された先行技術のロータと比較してより良好な仕様を有するだけでなく、消費された総エネルギーが12.5kW少ない。
【表3】
【0078】
シミュレーション結果から分かるように、得られる製品空気が、同じシミュレーション条件下で調整された先行技術のロータと比較してより良好な仕様を有する一方で、消費された総エネルギーはわずかに0.7kWだけ多い。
【0079】
この追加のエネルギー消費は、特定のシミュレーション制約のアーチファクトである。提示されたシミュレーションでは、使用場所(4)の通過後に戻り空気が24℃の戻り温度を有すると仮定され、これにより、調整された先行技術の3ロータシステムにおいて再生空気を加熱するためのエネルギー消費がわずかに少なくなる。しかしながら、使用場所(4)の通過後の温度がより低く、例えば20~22℃(通常は、快適さを求める場合)である場合、先行技術の調整された3ロータシステムにおいて加熱に費やされるエネルギーは、本発明の3ロータシステムと同等またはわずかに高くなると考えられる。
【0080】
一貫して、両方のシミュレーションにおいて、先行技術の調整された3ロータシステムと比較して、本発明の3ロータシステムを通って空気を運ぶために必要なエネルギーは10%少なく、これは一貫した結果であり、例えば加熱および冷却に費やされるエネルギーなどのパラメータに影響を及ぼす吸気の初期水分含有量などの吸気の空気組成に依存しない。
【0081】
しかしながら、とりわけ、本発明の主な利点は、予冷器(3)、冷却器(33)、および加熱器(5、53)のみを実装する本発明のシステムが、高品質の製品空気の供給に適し、冷却器(32)および加熱器(52)も実装する特開2001-038137号公報の調整された先行技術のシステムと同じ品質を有する高品質の製品空気の供給にすら適していることであり、
図6のシミュレーション結果を表2および表3のデータと比較し、したがって本発明のシステムは、より少ない運転コストおよび投資で適切な高品質の製品空気を得るように実現可能であることを証明している。
【0082】
結言
特許請求の範囲において使用されるとき、「・・・を含む/・・・を備える」という用語は、他の要素またはステップを排除しない。特許請求の範囲において使用されるとき、「a」または「a」という用語は、複数を排除するものではない。本発明を例示の目的で詳細に説明してきたが、そのような詳細はあくまでも例示の目的のためのものにすぎず、当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなく変更を行うことができることを、理解すべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乾燥システムの分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を低いエネルギーコストで生成するための乾燥システムが、本明細書において詳述される。そのようなシステムは、例えば、リチウム電池の製造のためのクリーンルームなどのきわめて水分に影響されやすい用途のための空調された空気の生成、または水分含有量がきわめて少ないガスの生成に、きわめて適する。
【背景技術】
【0002】
乾燥システムの分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を低いエネルギーコストで生成するための乾燥システムが、本明細書において詳述される。そのようなシステムは、例えば、リチウム電池の製造のためのクリーンルームなどのきわめて水分に影響されやすい用途のための空調された空気の生成、または水分含有量がきわめて少ないガスの生成に、きわめて適する。
【0003】
当技術分野において、-30℃以下の露点などのきわめて低い露点を有する生成空気を生み出すための乾燥システムを製造することが知られている。当技術分野において、きわめて低い露点を有する生成空気の生成に適した乾燥システムが知られている。しかしながら、一般に、これらのシステムは、工業用空気、すなわち技術的な目的のための大量かつ大流量の空気を生成することができず、たとえ使用可能であったとしても、妥当なエネルギーまたは運転コストで生成することはできない。したがって、本開示において、工業用空気は、いずれも適切に機能するために充分に指定された特性を有する大量かつ大流量の空気に依存する建物、クリーンルーム、または他の生産施設の集中空調、噴霧乾燥塔、流動床乾燥器、などの目的のための空気を包含する。したがって、本発明は、きわめて低い露点を有する工業用空気(すなわち、きわめて乾燥した工業用空気)を製造するための乾燥システムに関し、本明細書においてこの文脈で論じられる。
【0004】
本発明の文脈において、きわめて低い露点を有する工業用空気は、-30℃未満、好ましくは-40℃未満、-50℃未満、より好ましくは-55℃未満、さらにより好ましくは-60℃未満の露点を有する工業用空気を意味すると理解されるべきである。本発明のいくつかの実施形態において、得られる製品空気の露点は、-65℃未満、-70℃未満、-75℃未満、または-80℃未満であってよい。他の実施形態において、得られる製品空気の露点は、-100℃のさらに上、-95℃のさらに上、-90℃のさらに上、または-85℃のさらに上である。好ましくは、本発明の製品空気の露点は、-55℃~-80℃、-60℃~-75℃、または-65℃~-70℃である。
【0005】
乾燥工業用空気の製造の技術分野において、乾燥ホイールまたは回転式乾燥器とも呼ばれる回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システムを利用することが周知である。これらのシステムの利点は、工業目的のために、例えば1000m3/hを超える大量の吸気を迅速に除湿できることである。このような乾燥システムにおいては、乾燥させられるべき空気が、回転ホイールに埋め込まれた乾燥剤層を通過することにより、より乾燥し、より暖かくなり、その後に、回転式乾燥器の湿気を含んだセクタが、回転によって空気乾燥および乾燥剤再生のセクタへと送られ、吸収位置に再び戻される。吸気に応じて、このような回転式乾燥器は、0℃未満の広い範囲の露点を有する大量かつ大流量の工業用空気を生成することができる。
【0006】
-30℃未満などのきわめて低い露点を有する工業用空気の製造の技術分野においても、回転式乾燥剤乾燥器が、-40℃または-50℃未満の露点を有する工業用空気の供給に関しても、広く使用されている。
【0007】
しかしながら、-30℃以下の工業用空気を供給するために回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システムを運転する場合、乾燥システムを運転するためのエネルギーコストが大きな問題となる。例えば、リチウム電池の製造の分野において、エネルギーの主要なコストは、電池セルの品質に不可欠な種々の乾燥室の運転によるものと推定されている(Ellingsen et al.J.Industrial Ecology,Vol 18,No 1,pp 113-124)。
【0008】
図1、
図2A、および
図2Bが、例えばBryAirの国際公開第2011/161693号パンフレットで論じられている乾燥システムなど、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための先行技術の回転式乾燥剤乾燥器を備える乾燥システム(10、20)を詳しく示している。
図1に詳しく示されている乾燥システムが、1ロータのシステムに基づいている一方で、
図2Aおよび
図2Bに詳しく示されている乾燥システムは、順次の2つの回転式乾燥剤乾燥器に基づく。きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の乾燥システムの特定の問題は、これらが、吸気の露点を下回るまでの予備冷却と、その後の冷却された吸気の乾燥剤ホイールによる乾燥とに依存していることであり、このプロセスは、エネルギーのコストが高く、微生物または細菌の汚染がリスクになる前に除去しなければならない凝縮水が生じるため、衛生の立場からも問題である。とくには、無菌性が関心事である場合に、凝縮水は歓迎されない課題を呈する。
【0009】
先行技術の問題を克服するために、本発明者らは、少なくとも3つの連続して配置された回転式乾燥剤乾燥器を備えるきわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための乾燥システムを考え出し、この本発明の乾燥システムは、液体水の生成および関連の生物学的汚染のリスクを回避しつつ、エネルギー効率を改善している。
【0010】
当技術分野において、きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための乾燥システムに、-90℃~-110℃のきわめて低い露点を有する工業用空気を得るための3つの連続する回転式乾燥剤乾燥器(特開2001-038137号公報を参照)を配置することが提案されており、この提案の乾燥システムは、吸気を同じ吸気の露点未満まで冷却するために、第1のロータの前に必須の冷却ユニットを備えており、再生空気は、吸気を再循環の製品空気と混合した後に回収される。
【0011】
本システムは、他の要素の中でもとりわけ、再生空気が吸気を再循環の製品空気と混合する前に回収されるという点で、先行技術とは異なる。これにより、再生空気が高価値の製品空気を含まず、エネルギーが節約され、吸気の露点を下回る冷却が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2011/161693号パンフレット
【特許文献2】特開2001-038137号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Ellingsen et al.J.Industrial Ecology,Vol 18,No 1,pp 113-124
【発明の概要】
【0014】
本発明によれば、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生空気流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生空気流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生空気流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生空気流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生空気流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生空気流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)が、本明細書において開示される。
【0015】
本発明の乾燥システム(30、40、50)を設けることにより、きわめて低い露点を有する工業用空気を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)である。
【
図2A】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の2ロータ乾燥システム(20a)である。
【
図2B】きわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための先行技術の2ロータ乾燥システム(20b)である。
【
図3】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(30)である。
【
図4】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(40a、40b)である。
【
図5】本発明の例示的な3ロータ乾燥システム(50a、50b)である。
【
図6】本発明の3ロータ乾燥システム(30)の効率のシミュレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1Aおよび
図1Bに、きわめて低い露点を有する工業用空気を生成し、生成された空気を使用場所(4)に供給するための先行技術の2つの1ロータ乾燥システム(10a、10b)がそれぞれ詳しく示されている。本開示の全体を通して、先行技術の乾燥システム(10、20)および本発明の乾燥システム(30、40、50)、したがって
図1の2つの乾燥システム(10a、10b)も、好ましくは、先行技術のシステムおよび本発明のシステムの背後にある動作原理を例示するために、部屋(4)の空調の文脈において詳述される。しかしながら、乾燥システム(10、20、30、40、50)からの製品空気の使用の場所または空間(4)が、一般に、部屋の空調に関して説明されるが、そのような説明が、単に例示の目的のためのものにすぎず、本発明の乾燥システムが、きわめて低い露点を有する工業用空気が望まれる空調以外の多数の他の状況における使用に適することを、理解すべきである。
【0018】
一般に、製品空気を、製品空気流路(7)を介して使用場所(4)へと供給し、同じ使用場所(4)から戻り空気流路(8)に沿って戻り空気として運び去ることができ、あるいは随意により、排気用のさらなる流路(4a)に沿って運び去ることができる。したがって、使用場所(4)は、本発明の乾燥システム(30、40、50)の一部を形成しない。
【0019】
しかしながら、本発明(30、40、50)および先行技術の乾燥システム(10、20)は、リチウム電池を製造するための製造ラインにおける使用に関する利点および欠点を例示および議論するために、部屋および生産施設の空調の文脈において説明される。
【0020】
リチウム電池の製造のためのクリーンルームまたは製造空間などのきわめて乾燥した空調された建物空間の維持に使用されるきわめて低い露点を有する工業用空気の供給は、リチウムの極端な吸湿性および水と接触したときの急激かつ爆発的にさえなり得る燃焼に起因して不具合を起こしやすいリチウム電池の製造のきわめて重要な態様である。生産用建物において使用するための工業用空気の製造の仕様は、現在の基準で-20℃~-60℃の間の露点の範囲である。これらの基準でさえも、全体としての生産ラインの効率は、とりわけ生産用建物およびクリーンルーム内の空気の湿度を制御することが困難であるがゆえに、理論上の最大値の約50%~60%にすぎないと推定される。
【0021】
きわめて低い露点を有する工業用空気の生成を、生成された工業用空気の使用の最中も維持するために、先行技術の乾燥システム(10a、10b、20a、20b)および本発明の乾燥システム(30、40、50)は、稼働中の製品空気の損失を補うために充分な周囲空気だけを吸気として乾燥システムに取り入れればよいように、除湿器と使用場所(4)との間の乾燥した空気の大部分の再循環に依存する。先行技術のシステム(10、20)および本発明のシステム(30、40、50)において、吸気は、乾燥システム(10、20、30、40、50)に除湿器として含まれる回転式乾燥剤乾燥器(2)のための再生空気としての役割を果たした後の排気としても排出される。通常は、製品空気は、例えば拡散による汚染物質の進入を防止するために建物空間の過圧を維持することによって、稼働中に制御可能ではあるが失われる。これは、
図1において、空調された部屋(4)を出る排気についてのハッチングされた流路(4a)によって示されている。
【0022】
先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)は、戻り空気のための混合点(1)の周りに構築され、混合点(1)へと吸気が吸気流路(6)に沿って供給され、混合点(1)において戻り空気流路(8)に沿ってもたらされる戻り空気と混合され、混合空気として、製品空気の除湿および乾燥剤の再生のために、製品空気流路(7)および再生空気流路(9)のそれぞれに沿って分配される。先行技術の乾燥システム(10a、10b)の通常の動作において、製品空気流路(7)、使用場所(4)、戻り空気流路(8)、および混合点(1)は、乾燥システム(10)の動作中に空気が実質的に一定の体積流量で循環する空気循環用の半閉ループを形成する。
【0023】
先行技術の1ロータ乾燥システム(10a、10b)を使用して、きわめて低い露点、すなわち-30℃未満を有する製品空気を生成するために、吸気は、最初に、混合点(1)への到達前に、吸気流路(6)に配置された冷却凝縮ユニット(3)において吸気に含まれる水の冷却および凝縮を被る。
【0024】
先行技術の乾燥システム(10)に含まれる冷却凝縮ユニット(3)は、充分に乾燥した吸気が混合点(1)において得られ、したがってこの乾燥した吸気が混合点(1)において戻り空気と混合されたときに、製品空気流路(7)へと分岐する混合空気が、製品空気流路(7)において混合点(1)と使用場所(4)との間に配置された回転式乾燥剤乾燥器(2)の乾燥セクタ(2a)にとって、製品空気において所与の目標の露点が充分に得られる程度まで混合空気中の残りの水を除去することができるように充分に乾燥しているように、充分な冷却および凝縮能力でなければならない。適切な冷却凝縮ユニット(3)を提供するために、高い運用コスト、頻繁な保守および点検(および、付随する生産停止)、および冷却凝縮ユニット(3)からの凝縮水の除去に関して、妥協を受け入れなければならないことが経験から示されている。
【0025】
先行技術の乾燥器(10)の混合点(1)において、上述のように、混合空気は2つの空気流に分割され、1つは製品空気流路(7)に沿った通過によって製品空気を得るための空気流であり、1つは再生空気流路(9)に沿った通過のための再生空気のための空気流である。両方の流路(7、9)に、乾燥セクタ(2a)、再生セクタ(2b)、およびパージセクタ(2c)を備える共有の回転式乾燥剤ホイール(2)が配置され、乾燥セクタ(2a)は、混合空気が乾燥セクタ(2a)を横切って乾燥剤ホイール(2)を横切ることで、きわめて低い露点を有する製品空気になるように、製品空気流路(7)上に配置され、再生セクタ(2b)およびパージセクタ(2c)は、混合空気が最初にパージセクタ(2c)、次いで再生セクタ(2b)において乾燥剤ホイール(2)を横切ることができるように、再生空気流路(9)上に配置される。パージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間において、混合空気は、パージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間(9b)の再生空気流路(9)上に配置された加熱器(5)で加熱され、再生空気となる。これにより、再生空気は、再生セクタ(2b)の通過時に乾燥剤ホイール(2)を再生することができ、その後に、先行技術の1ロータ乾燥器(10)では、使用後の再生空気は排気として廃棄される。すべての図において、乾燥剤ホイール(2)上に太い矢印が示されている場合、これらは、先行技術の乾燥システム(10a、10b)の稼働時の最適な回転方向、したがって好ましい回転方向を示している。
図1Aおよび
図1Bにおいて、最適な回転方向は、乾燥セクタ(2a)から再生セクタ(2b)へとパージセクタ(2c)までの方向である。
【0026】
1ロータ乾燥システム(10)において、再生空気が乾燥剤ホイール(2)の再生セクタ(2b)を通過した後に、加熱器(5)の通過後と比較して今や冷却されて湿った再生空気は、排気として廃棄される。先行技術の1ロータシステム(10a、10b)の特定の問題は、排気が加熱器(5)における加熱後と比較して冷却されているが、使用後の再生空気は、周囲空気または乾燥システム(10)の吸気と比べて依然として高温であることである。典型的には、乾燥セクタ(2a)の通過後に得られる製品空気がきわめて低い露点を有するという必要な仕様を満たす場合に、加熱器(5)の通過後の再生空気の温度は、1ロータ乾燥システム(10a、10b)において乾燥剤ホイール(2)の充分な再生を得るために、140℃~170℃の範囲内でなければならない。これにより、乾燥セクタ(2a)の通過後に製品空気がきわめて高温になるため、使用場所(4)での使用の前に製品空気を調整するために、1ロータ乾燥システム(10)の2つの変種(10a、10b)が開発された。
【0027】
第1の変種の1ロータ乾燥システム(10a)においては、冷却器(31)が、乾燥セクタ(2a)の通過(7b)後の製品空気流路(7)上に配置され、第2の変種の1ロータ乾燥システム(10b)においては、冷却器(32)が、混合点(1)と製品空気流路(7)上の乾燥セクタ(2a)との間(7a)に配置され、中間加熱器(51)が、乾燥セクタ(2a)の通過(7b)後の製品空気流路(7)上に配置される。乾燥システム(10b)および冷却器(32)は、乾燥剤乾燥器(2)の効率を高めるために追加の冷却が必要とされる場合に実施されることが多い。冷却器(31、32)は、冷却のみをもたらすことができるが、冷却凝縮ユニット(3)などの1つのユニット内の冷却器および凝縮器であってもよく、しかしながら、これは、吸気流路(6)に配置された冷却凝縮ユニット(3)とは対照的に必須ではない。
【0028】
上記の要素に加えて、乾燥システム(10)は、ポンプ、ベローズ、またはファンなどの1つ以上の空気移動手段(図示せず)を備え、この1つ以上の空気移動手段は、乾燥システムの必要性および用途に応じて乾燥システム内の空気を移動させるために流路(6~9)に配置される。
【0029】
本開示の全体を通して、すべての乾燥システム(10、20、30、40、50)およびその実施形態は、上記で詳述したような空気移動手段を含む。しかしながら、本開示の文脈において、当業者であれば、自身の一般的な知識に従って空気を移動させるための流路にそのような空気移動手段を適用することができると考えられ、したがって、含まれる空気移動手段は、本開示においてこれ以上は詳述されない。
【0030】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための1ロータ乾燥システム(10)は、運転コストは最も高いが、製造および設置があまり複雑でないと考えられ、したがって上記の問題にもかかわらず広く使用されている。しかしながら、プロセス経済性の理由から、それらは限界または限界の近くで動作するように作られており、必要な場合の追加の容量の余地がほとんどない。
【0031】
図2Aおよび
図2Bに示される乾燥システムなどの先行技術の2ロータ乾燥システム(20)は、1ロータ乾燥システム(10)と同じいくつかの欠点を抱えているが、広く使用されている。一般に、それらの構造は1ロータシステムよりも複雑であり、したがってより高価でもあるが、それらの運転コストは一般的により低く、先行技術の1ロータシステムと比較して余剰容量で設置することができる。
【0032】
先行技術のきわめて低い露点を有する工業用空気を生成するための2ロータ乾燥システム(20a、20b)の各々は、2つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21)を備え、各々の回転式乾燥器(2、21)は、乾燥セクタ(2a、21a)および再生セクタ(2b、21b)を備え、これらの回転式乾燥器(2a、21a)は、順に配置され、再生空気を回転式乾燥器(2、21)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を除湿するために吸気を回転式乾燥器(2、21)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a)に通すための共通の吸気流路(6、7)とを共有する。戻り空気の混合点(1)が、2つの乾燥器(2、21)の間の共通吸気流路(6、7)上に配置されることで、戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)が定められ、戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、混合点(1)に吸気の空気をもたらすための吸気流路(6)であって、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)が定められる。混合空気の分割点(11)が、第1の乾燥器(2)の上流の製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において、戻り空気の混合点(1)と第1の乾燥器(2)との間に配置され、この分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を介して再生空気流路(9)に沿った再生空気として分岐される。混合点(1)と分割点(11)との間に、冷却器(32)が配置される。第1の乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および再生セクタ(2b)が、再生空気が最初にパージセクタ(2c)を横切り、その後にパージセクタ(2c)と再生セクタ(2b)との間(9b)の再生空気流路(9)上に配置された加熱器(5)を経由して再生セクタ(2b)を横切るように、再生空気流路(9)上に配置される。さらに、第2の乾燥器(21)の再生セクタ(21b)が、再生空気流路(9)上で第1の乾燥器(2)の再生セクタ(2)の後ろに配置され、第1の乾燥器(2)と第2の乾燥器(21)との間(9c)の再生空気流路(9)上に、第2の乾燥器(21)の再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)が配置される。さらに、先行技術の2ロータ乾燥システムは、戻り空気の混合点(1)へと使用場所(4)からの戻り空気をもたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える。
【0033】
使用状況に応じて、先行技術の2ロータ乾燥システム(20a、20b)は、乾燥システム(20a)において第1の乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)に配置された加熱器(51)(
図2A)、または乾燥システム(20b)において第1の乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)に配置された冷却器(31)(
図2B)をそれぞれ備えることができる。両方の図において、排気用の追加の流路(4a)が存在してもよい。
【0034】
1ロータ乾燥システムにおいて観察されたように、使用時に、製品空気流路(7)、使用場所(4)、および戻り空気流路(8)は、乾燥システム(20)の動作中に空気が実質的に一定の体積流量で循環する空気の循環のための半閉ループを形成する。空気の循環のための半閉ループの目的は、新鮮な吸気の必要性を、制御された損失を含むシステムの損失および回転式乾燥器の再生に関して必要な量まで低減することである。一般に、循環する戻り空気は、乾燥システムの目標露点に近い(したがって、吸気よりも高い値である)露点を有し、したがって混合点(1)における吸気との混合に先立つ強制的な処理を必要とせずに、再循環させることができる。
【0035】
一般に、先行技術の2ロータ乾燥システムは、吸気として使用するために約10℃の吸気を必要とし、したがって、周囲空気を先行技術の乾燥システム(20)の吸気として役立てることを可能にする前に、冷却が必要とされることが多い。したがって、第2の乾燥器(21)への吸気流路(6)の上流に配置された
図2Bに示される冷却凝縮ユニット(3)が、通常は、先行技術の両方のシステム(20a、20b)に存在する。それにもかかわらず、2ロータシステムの冷却器(52)における冷却は、乾燥剤の効率を高め、加熱器(5)を出る再生空気による加熱を補償するために充分に冷却された第1の回転式乾燥器(2)のパージセクション(2c)のための混合空気をもたらすために、相当に強力でなければならない。加熱器(5)を出た後の再生空気の温度は、依然として高く、約130℃~140℃であり、中間加熱器(52)を通過した後の再生空気の温度も、依然として高く、典型的には100℃を上回るはずである。
【0036】
本発明は、現時点において使用されている乾燥システム(10、20)について設置コストと運転コストとの間の適切なバランスが見出されていないという既存の設備についての本発明者らによる上記の観察に基づく。
【0037】
本発明の目的は、-30℃未満、-40℃未満、好ましくは-50℃未満、より好ましくは-55℃未満、さらにより好ましくは-60℃未満の露点を有するなど、きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30、40、50)を導入することであり、本発明の乾燥システムの運転コストの低減において、3ロータシステムを使用することによる設置の追加コストを、約3年の期間内に償却することが可能である。本発明のいくつかの実施形態において、得られる製品空気の露点は、-65℃未満、-70℃未満、-75℃未満、-80℃未満、または-85℃未満であってよい。これらのシステムは、水分含有量がきわめて少ない工業用ガスのその後の製造にとくに適するが、ガスの品質の向上は、除湿のためのエネルギー消費の増加という代償を払う。
【0038】
本発明は、中間加熱器(52)の100℃を超える再生空気温度と、加熱器(5)の130℃を超える再生空気温度とを得るために、高出力の電気、蒸気、燃焼ガス加熱、などの高エクセルギーの熱源が必要であり、これらの熱源が、典型的には、設置コストおよび運用コストの両方において高価であるという先行技術の乾燥システム(10、20)の共通の問題であるという本発明者らによる観察にさらに基づく。
【0039】
同様に、本発明は、低価値の吸気が前述の第1の回転式乾燥器(2)における最終的な除湿に先立って高価値の戻り空気と混合されることで、使用時に製品空気流路(7)、使用場所(4)、および戻り空気流路(8)によって形成される空気循環のための半閉ループを循環する空気の汚染を引き起こすことが先行技術の乾燥システム(10、20)の共通の問題であるという本発明者らによる観察にさらに基づく。これにより、高価値の戻り空気がより多く半閉ループから再生空気に回されるがゆえに、第1の回転式乾燥器(2)の負荷が増加する。
【0040】
したがって、本発明によれば、以下が本明細書に開示される。
【0041】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生空気流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生空気流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生空気流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生空気流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生空気流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生空気流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)。
【0042】
本発明の乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、冷却器を備えることなく、とくには冷却凝縮ユニットを備えることなく運転することができるが、それでもなお、例えば-30℃未満のきわめて低い露点を有する製品空気をもたらすことができることである。
【0043】
根本的な理由は、部分的には、本発明が、使用時に製品空気流路(7)、使用場所(4)、および戻り空気流路(8)によって形成される空気の循環のための半閉ループを循環する空気の再生空気汚染の問題を、再生空気を戻り空気の混合点(1)よりも前で分岐させることによって克服するとともに、湿気の大部分が吸気についてさらなる処理工程が行われる前に低コストで初期回転式乾燥剤乾燥器(22)によって除去され、最大の水分含有量を含む排気が乾燥プロセスの最後のステーションにおいて除去されることである。
【0044】
好ましい実施形態では、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)は、吸気に含まれる初期水分含有量の少なくとも90重量%を除去し、吸気に含まれる初期水分含有量の少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、または好ましくは少なくとも98.5重量%を除去する。
【0045】
しかしながら、例えば-50℃未満などの最も低い露点を有する製品空気を得るためには、使用場所(4)が人間が使用するための部屋または建物空間である場合、製品空気品質および空調の両方のために冷却が必要な場合がある。
図3には、冷却器(33)を備える本発明の3ロータ乾燥システム(30)の好ましい実施形態が例示されている。
【0046】
本発明の一実施形態によれば、3ロータ乾燥システム(30)は、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(6b)の吸気流路(6)上に配置された冷却器(33)をさらに備える。以下の実施例において、冷却器(33)を備える実施形態を実現する本発明の3ロータ乾燥システム(30)のシミュレーション値と、先行技術の対応する実施形態(10a、20b)の比較データとを提示する。
【0047】
冷却器(33)をさらに備える実施形態の特定の利点は、初期水分含有量の大部分が初期回転式乾燥器内での吸着によって吸気から除去されているため、冷却器(33)が、60℃未満、55℃未満、50℃未満、45℃未満、40℃未満、または35℃未満から例えば15℃~25℃または20℃の間などの室温までの冷却など、低強度の冷却を提供するだけでよいことである。
【0048】
とくに、本発明の利点は、きわめて低い露点を有する工業用空気の効率的な製造のために、予冷された吸気を必要としないことである。先行技術の乾燥システム(10、20)は、一般に、企業の規格に従って先行技術の乾燥システムへの進入前に10℃に冷却された予冷吸気を必要とする。本発明の乾燥システム(30、40、50)は、吸気が周囲温度にある場合でも機能的である。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、本発明の乾燥システム(30、40、50)は、摂氏の温度差に基づいて、吸気の露点を15%上回るまで、吸気の露点を10%上回るまで、または吸気の露点を5%上回るまで吸気を冷却するなど、吸気の露点に近づくように吸気を冷却するための予冷器(3)を備える。
【0049】
同様に、本発明のこの乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、所与の使用場所(4)の製品空気について同じ目標露点が想定される場合に、吸気量を先行技術の乾燥システム(10、20)と比較して減らすことができることである。実施例2に、同じ体積流量に関して、本発明の乾燥システム(30、40、50)を使用することによる露点の改善が6~8℃の間である状況が示されており、したがって、本発明のシステムにおける体積流量を減らすことにより、この有益な露点の差の一部を使用して体積流量を減少させ、したがって先行技術と比較した本発明の乾燥システムの経済的利益を増加させることができる。
【0050】
冷却器(33)の通過後の温度は、さらなる2つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21)の通過によって著しくは上昇しないため、一般に、部屋または建物空間などの使用場所(4)への導入前に最終的な製品空気の温度を制御するためのさらなる冷却または加熱は、省略可能である。
【0051】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(30)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の上流の製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において戻り空気の混合点(1)と第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)との間に配置された混合空気の分割点(11)をさらに備え、分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を経由して再生空気流路(9)に沿った再生空気として分岐する。
【0052】
図3から観察できるとおり、本発明による分割点(12)が設けられる場合、空気を循環させるための半閉ループは、実際には閉ループであり得る。したがって、使用場所(4)の圧力上昇を防止するために、使用場所(4)は、排気用の流路(4a)を備えなければならず、あるいは、余分な循環空気を、混合空気の分割点(11)において、再生空気が第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)を通過する前の再生空気流路(9)の空気流路(9e)につながる混合空気流路(9a)に沿って分岐させることにより、余分な循環空気を再生空気に使用することができる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態において、混合空気の分割点(11)は、本発明の乾燥システム(30、40、50)における吸気の分割点(12)を置き換えることができる。これにより、例えば、本明細書で詳細に説明されるように配置される初期回転式乾燥剤乾燥器(22)を追加することによって、既存の2ロータ乾燥システムを改善することが可能になる。しかしながら、本発明のこの変種のシステムは、本明細書で詳しく説明される本発明の好ましいシステム(30、40、50)よりも効率的でない。
【0054】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(40a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間(9c)の再生
空気流路(9)上に配置された第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)をさらに備える。その例示的な実施形態(40a)は、
図4Aに詳しく示される。
【0055】
一般に、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の再生セクタ(2b)から出る再生空気は、第1の回転式乾燥器(2)を再生した後であっても依然として高温かつきわめて乾燥しており、通常の動作下では、第1の回転式乾燥器(2)と第2の回転式乾燥器(21)との間に中間加熱器を設ける必要はないが、本発明の乾燥システム(40a)の限界に近づく動作が意図される場合には、上述の中間加熱器(52)を設けることがとくに有益となり得る。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態において、中間加熱器(52)は、第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間に配置された中間加熱器(53)を置き換えることができる。これにより、例えば、本明細書で詳細に説明されるように配置される初期回転式乾燥剤乾燥器(22)を追加することによって、既存の2ロータ乾燥システムを改善することが可能になる。しかしながら、本発明のこの変種のシステムは、本明細書で詳しく説明される本発明の好ましいシステム(30、40、50)よりも効率的でない。
【0057】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(40b)は、共通の吸気流路(6、7)上に配置され、吸気から空気中の粒子を除去する少なくとも1つのフィルタ(41~43)をさらに備える。
図4Bに詳しく示されている本発明の例示的かつ好ましい実施形態(40b)において、本発明の乾燥システム(40b)は、少なくとも3つのフィルタ(41~43)を備え、それぞれのフィルタは、先行するそれぞれの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)の下流にフィルタクラスの昇順で配置されている。一般に、所与の技術仕様に応じて使用場所(4)にフィルタ処理された製品空気を供給することは、当業者の技能の範囲内であると考えられる。とくに好ましい実施形態(40b)において、フィルタ3(43)はクラスF6のフィルタであり、フィルタ2(42)はフィルタクラスF6~F9から選択されたフィルタであり、フィルタ1(41)はクラスF9のフィルタである。きわめて低い粒子クラスを必要とする使用場所(4)のための本乾燥システム(40b)の実施形態においては、HEPAフィルタがフィルタ1(41)の下流に配置される。
【0058】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(50)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前の製品空気流路(7)上に配置された冷却器(32)をさらに備える。
【0059】
本発明の一実施形態において、3ロータ乾燥システム(50a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)上に配置された中間加熱器(51)をさらに備える(
図5Aを参照)。本発明の別の実施形態において、3ロータ乾燥システム(50a)は、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の製品空気流路(7)上に配置された冷却器(31)をさらに備える(
図5Bを参照)。これにより、先行技術に従い、使用場所(4)に供給される製品空気を使用前に空調することができ、これは、クリーンルームなどの建物空間および部屋における製品空気の使用にとくに適する。
【0060】
回転式乾燥剤乾燥器の現在の技術水準によれば、乾燥剤ホイールに含まれる乾燥剤は、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナなど、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。好ましくは、本発明において使用するための回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、シリカゲル、ゼオライト、またはこれらの組み合わせから選択される乾燥剤を含み、とくに好ましくはシリカゲルである。本明細書において以下に提示される計算は、シリカゲルを含む回転式乾燥剤ホイールに基づく。
【0061】
吸気は周囲空気であってよいが、吸気は、好ましくは、例えば塵埃粒子、微生物または細菌汚染物質などを除去するために前処理された前処理済みの周囲空気である。本発明のいくつかの実施形態において、本発明の乾燥システム(30、40、50)は、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前の吸気流路(6)上に配置された吸気をもたらすために空気を前処理するための手段を備えることができる。
【実施例】
【0062】
本発明の乾燥システム(30)の性能を、その最も広い態様において文書化するために、本乾燥システム(30)の全体的な性能を、先行技術の1ロータおよび2ロータ乾燥システムとともにシミュレートしたが、シミュレーションにおいては、ロータのサイズをそれぞれの乾燥システム間で一定に保った。同様に、吸気の体積流量および製品空気の目標体積流量も一定に保った。
【0063】
シミュレーションは、空気とロータ材料との間の動的な質量および熱の移動の計算に基づいており、計算においては、乾燥剤の収着等温線、ならびに動的な熱および質量の移動が、実験的に決定されたパラメータ、およびシミュレーションツールの製造者が独自に所有する入力データとともに考慮される。一貫性のために、2つの異なる製造者からの2つの異なるシミュレーションツールで試験を行った。6~8回の反復後に得られたデータが、2回の連続する反復の間で標準偏差1つ分以下のずれであった場合に、シミュレーションを収束したとみなした。
【0064】
シミュレーションの結果を、実施例1および
図6、ならびに実施例2および下記の表1に示す。
【0065】
実施例1:
製品空気が最後の回転式乾燥器(2)の通過後に-68℃というきわめて低い露点を有し、30,000m
3/hを循環させる半閉ループに対して1300m
3/hの空気を交換するための4300m
3/h、10℃@90% RH(7.6g/kg H
2O)という1ロータおよび2ロータのシステムの標準吸気仕様を使用し、本発明の最も広い態様における乾燥システム(30)のシミュレーションは、乾燥システム(30)内のあらゆる地点において73℃を超える加熱も、10℃を下回る冷却も、不要であることを示している(
図6を参照されたい)。実際、冷却器(33)を出る空気は、さらなる2つの回転式乾燥器(2、21)において最大1.1℃しか加熱されることがなく、したがって使用場所(4)が例えばリチウム電池の製造のためのクリーンルームまたは建物空間である場合に、使用場所(4)の空調に適している。
【0066】
本発明の乾燥システム(30、40、50)の特定の利点は、第1の回転式乾燥器(2)を再生するために、75℃を超えることはほとんどない低い温度の加熱のみが必要とされることである。したがって、システムは、再生のために、他の局所加熱、太陽エネルギー、地域加熱、などからの加熱水などの低熱源を利用することができる。
【0067】
吸気の高められた空気温度のさらなる重要な利点は、水の凝縮、熱/冷損失、外部への熱の逃げ道の問題が、ほぼ室温で本発明の乾燥システム(30、40、50)を動作させることができることによって大幅に最小化されることである。これにより、所望の動作温度を維持するために必要な断熱が少なくなるため、乾燥システム用のキャビネットの構築における節約がさらにもたらされる。
【0068】
実施例2-比較
上記の仕様を使用するが、吸気として48,000m3/hという空気のより現実的な生成流量を使用した1ロータ乾燥システム(10a)、2ロータ乾燥システム(20a)、および本発明の最も広い態様における本発明の乾燥システム(30)の間の比較研究。結果を以下の表1に報告する。
【0069】
比較データから観察することができるように、本発明の3ロータの解決策は、2年後にすでに1ロータよりも費用効率が高く、3年後にすでに1ロータおよび2ロータ乾燥システムの両方よりも費用効率が高いが、1ロータおよび2ロータ乾燥システムと比較して6~8℃低い露点を有する製品空気をもたらす。
【0070】
露点に関するこの追加の能力を、意図される使用場所(4)における製品空気の品質問題を最小限に抑えるためだけでなく、意図される使用場所(4)がリチウム電池の製造空間である場合に、電池の製造空間における爆発リスクをさらに軽減するためにも使用することができる。上述したように、本発明の乾燥システムを通る空気の総流量を減らすために使用することもできる。
【表1】
【0071】
実施例3-特開2001-038137号公報との比較
2つの異なるシステムにおける再生空気の分割点(12)に対する吸気と戻り空気との混合点(1)の配置の効果を調査すること、すなわち再生空気を混合点(1)の前または後で分岐させる効果を調査することを目的として、比較のために、実施例1および2に関して詳述したシミュレーションパラメータを使用して、本構成を特開2001-038137号公報の3ロータシステムに対して測定した。
【0072】
そのような比較の問題は、本システム(30、40、50)および先行技術のシステムが、元々は同一の製品空気をもたらすように構成されておらず、したがって比較を実行するためにいくつかの調整を行わなければならないことである。とくに、特開2001-038137号公報の3ロータシステムは、露点を下回る冷却用の予冷器(3)を備えるが、そのような予冷器は、予冷が使用されたとしても予冷が吸気の露点を決して下回らない本発明のシステムには存在しない。したがって、以下の比較は、本システムと先行技術のシステムとの直接的な比較ではなく、本3ロータシステムに対する混合点(1)の位置の影響を調べるにすぎない。
【0073】
したがって、本シミュレーションは、特開2001-038137号公報(ただし、詳述のとおり、予冷が実施されない場合を除く)に詳述されているすべての特徴、すなわち冷却器(33)および(32)、ならびにすべての加熱器(5、52、53)を実装する。
【0074】
上述したように、本システムは冷却器(32)なしでも動作可能であるが、これは特開2001-038137号公報に開示されたシステムには当てはまらない。同様に、本システムは、加熱器(52)なしでの使用にも適しており、これらの違いはどちらも、適切な品質の製品空気を得るための運用コストおよび投資の削減をもたらす(例えば、
図6を参照)。
【0075】
本比較は、本発明の意図に沿って吸気の予冷が行われない場合、および予冷された吸気の露点の5%以内までの予冷が行われる場合について、2つのシステムを比較する。
【0076】
これらの条件下で、混合点(1)の2つの位置によって相違する3ロータシステムを使用して得られた結果としての製品空気の比較は、以下のとおりである。
【表2】
【0077】
シミュレーション結果から分かるように、得られる製品空気が、同じシミュレーション条件下で調整された先行技術のロータと比較してより良好な仕様を有するだけでなく、消費された総エネルギーが12.5kW少ない。
【表3】
【0078】
シミュレーション結果から分かるように、得られる製品空気が、同じシミュレーション条件下で調整された先行技術のロータと比較してより良好な仕様を有する一方で、消費された総エネルギーはわずかに0.7kWだけ多い。
【0079】
この追加のエネルギー消費は、特定のシミュレーション制約のアーチファクトである。提示されたシミュレーションでは、使用場所(4)の通過後に戻り空気が24℃の戻り温度を有すると仮定され、これにより、調整された先行技術の3ロータシステムにおいて再生空気を加熱するためのエネルギー消費がわずかに少なくなる。しかしながら、使用場所(4)の通過後の温度がより低く、例えば20~22℃(通常は、快適さを求める場合)である場合、先行技術の調整された3ロータシステムにおいて加熱に費やされるエネルギーは、本発明の3ロータシステムと同等またはわずかに高くなると考えられる。
【0080】
一貫して、両方のシミュレーションにおいて、先行技術の調整された3ロータシステムと比較して、本発明の3ロータシステムを通って空気を運ぶために必要なエネルギーは10%少なく、これは一貫した結果であり、例えば加熱および冷却に費やされるエネルギーなどのパラメータに影響を及ぼす吸気の初期水分含有量などの吸気の空気組成に依存しない。
【0081】
しかしながら、とりわけ、本発明の主な利点は、予冷器(3)、冷却器(33)、および加熱器(5、53)のみを実装する本発明のシステムが、高品質の製品空気の供給に適し、冷却器(32)および加熱器(52)も実装する特開2001-038137号公報の調整された先行技術のシステムと同じ品質を有する高品質の製品空気の供給にすら適していることであり、
図6のシミュレーション結果を表2および表3のデータと比較し、したがって本発明のシステムは、より少ない運転コストおよび投資で適切な高品質の製品空気を得るように実現可能であることを証明している。
【0082】
結言
特許請求の範囲において使用されるとき、「・・・を含む/・・・を備える」という用語は、他の要素またはステップを排除しない。特許請求の範囲において使用されるとき、「a」または「a」という用語は、複数を排除するものではない。本発明を例示の目的で詳細に説明してきたが、そのような詳細はあくまでも例示の目的のためのものにすぎず、当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなく変更を行うことができることを、理解すべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
きわめて低い露点を有する工業用空気を製造するための3ロータ乾燥システム(30、40、50)であって、
3つの回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)を備えており、各々の回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、乾燥セクタ(2a、21a、22a)および再生セクタ(2b、21b、22b)を備え、前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)は、順に配置され、再生空気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの再生セクタ(2a、21b、22b)に通すための共通の再生空気流路(9)と、吸気を前記回転式乾燥剤乾燥器(2、21、22)のそれぞれの乾燥セクタ(2a、21a、22a)に通して前記吸気をきわめて低い露点を有する製品空気へと除湿するための共通の吸気流路(6、7)とを共有し、
戻り空気の混合点(1)が、第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間で前記共通の吸気流路(6、7)上に配置されることにより、
・前記戻り空気の混合点(1)の下流の使用場所(4)にきわめて低い露点を有する除湿された製品空気を供給するための製品空気流路(7)であって、前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前記乾燥セクタ(2a)が配置された製品空気流路(7)と、
・前記戻り空気の混合点(1)の上流に位置し、前記混合点(1)に吸気をもたらすための吸気流路(6)であって、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記乾燥セクタ(21a)が配置された吸気流路(6)と
が定められ、
吸気の分割点(12)が、前記吸気流路(6)の第1のセクション(6a)において、前記戻り空気の混合点(1)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間に配置され、前記分割点(12)から、吸気が前記再生
空気流路(9)に沿って再生空気として分岐し、
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)のパージセクタ(2c)および前記再生セクタ(2b)は、前記再生空気が空気流路(9e)を介して最初に前記パージセクタ(2c)を横切り、その後に前記パージセクタ(2c)と前記再生セクタ(2b)との間(9b)の前記再生
空気流路(9)上に配置された加熱器(5)を介して前記再生セクタ(2b)を横切るように、前記再生
空気流路(9)上に配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)は、前記再生
空気流路(9)上で前記第1の乾燥器(2)の前記再生セクタ(2)の後ろに配置され、
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記吸気流路(6)における上流かつ前記再生
空気流路(9)における下流に、初期回転式乾燥剤乾燥器(22)が配置され、前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(9d)の前記再生
空気流路(9)上に、前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)の前記再生セクタ(22b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(53)が配置され、
当該3ロータ乾燥システム(30)は、使用場所(4)からの戻り空気を前記戻り空気の混合点(1)へともたらすための戻り空気流路(8)と、1つ以上の空気移動手段とをさらに備える、3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項2】
前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)と前記初期回転式乾燥剤乾燥器(22)との間(6b)の前記吸気流路(6)上に配置された冷却器(33)をさらに備える、請求項1に記載の3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項3】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の上流の前記製品空気流路(7)の第1のセクション(7a)において前記戻り空気の混合点(1)と前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)との間に配置された混合空気の分割点(11)をさらに備え、前記分割点(11)から、混合空気が、混合空気流路(9a)を経由して前記再生
空気流路(9)に沿った再生空気として分岐する、請求項1または2に記載の3ロータ乾燥システム(30)。
【請求項4】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)と前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)との間(9c)の前記再生
空気流路(9)上に配置された前記第2の回転式乾燥剤乾燥器(21)の前記再生セクタ(21b)を横切る前の再生空気の中間加熱のための中間加熱器(52)をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(40a)。
【請求項5】
前記共通の吸気流路(6、7)上に配置され、前記吸気から空気中の粒子を除去する少なくとも1つのフィルタ(41~43)をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(40b)。
【請求項6】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の前の前記製品空気流路(7)上に配置された冷却器(32)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50)。
【請求項7】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の前記製品空気流路(7)上に配置された中間加熱器(51)をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50a)。
【請求項8】
前記第1の回転式乾燥剤乾燥器(2)の下流(7b)の前記製品空気流路(7)上に配置された冷却器(31)をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の3ロータ乾燥システム(50b)。
【国際調査報告】