(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-21
(54)【発明の名称】繊維束を含浸するための方法および装置、ならびに三次元構造物を生成するための方法および設備
(51)【国際特許分類】
B29C 64/321 20170101AFI20220414BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20220414BHJP
B05C 3/09 20060101ALI20220414BHJP
【FI】
B29C64/321
B29C64/118
B05C3/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553815
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020053806
(87)【国際公開番号】W WO2020182407
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】102019106355.8
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597161838
【氏名又は名称】ドイチェス ツェントルム フュア ルフト- ウント ラウムファールト エー ファウ
【住所又は居所原語表記】Linder Hohe,D-51147 Koln,B.R.Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ティッツェ,マイク
【テーマコード(参考)】
4F040
4F213
【Fターム(参考)】
4F040AA26
4F040AB20
4F040BA47
4F040CC03
4F213AC02
4F213AD16
4F213AR12
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4F213WA57
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL16
4F213WL27
4F213WL32
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL96
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの繊維束(11)を高粘度プラスチック材料(13)で含浸するための方法に関する。前記方法は、以下のステップ、すなわち、 - 多数の連続した繊維から形成された含浸のための少なくとも1つの繊維束(11)を用意し、定められた使用温度で溶融され高粘度であるプラスチック材料(13)を用意するステップと、 - 溶融されたプラスチック材料(13)で充填された含浸キャビティ(12)を通って含浸のための繊維束を連続的に案内することによって、繊維束(11)をプラスチック材料(13)で含浸するステップとを含み、 - 繊維束の含浸中に、含浸キャビティ内の溶融されたプラスチック材料は、少なくとも1つの振動発生器(14)の表面(15)と、前記振動発生器によって含浸キャビティ内の溶融された高粘度プラスチック材料に音響エネルギーが導入されるように、接触される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの繊維束(11)を高粘性プラスチック材料(13)で含浸するための方法であって、前記方法は、下記のステップ、すなわち、
多数の無限繊維から形成された、含浸すべき少なくとも1つの繊維束(11)と、所定のプロセス温度で溶融され高粘性であるプラスチック材料(13)とを用意するステップと、
前記溶融されたプラスチック材料(13)で充填された含浸キャビティ(12)を通って、前記含浸すべき繊維束(11)を連続的に案内することによって、前記繊維束(11)を前記プラスチック材料(13)で含浸するステップとを含み、
前記繊維束(11)の含浸中に、前記含浸キャビティ(12)に位置する前記溶融されたプラスチック材料(13)は、少なくとも1つの振動発生器(14)の表面(15)と、前記振動発生器(14)によって前記含浸キャビティ(12)の前記溶融された高粘性プラスチック材料(13)に音響エネルギーが導入されるように、接触することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記高粘性プラスチック材料(13)が、熱可塑性材料であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記振動発生器(14)が、1μm~150μmの振動振幅、好ましくは最大で40μmの振動振幅、特に好ましくは最大で35μmの振動振幅を生じること、および/または前記振動発生器(14)が、100Hz~100kHzの振動周波数、好ましくは15kHz~60kHzの振動周波数、特に好ましくは20kHz~60kHzの振動周波数を生じることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記振動発生器(14)が、前記含浸キャビティ(12)の構造(17,18)の実固有モードおよび/または複素固有モードを誘発することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記音響エネルギーを導入するために、前記溶融されたプラスチック材料(13)と接触する前記振動発生器(14)の前記表面(15)が、微細構造化前処理、粗面化前処理、および/またはプラズマ前処理を受けているか、または前記振動発生器(14)の前記表面(15)の前記溶融されたプラスチック材料(13)との付着または濡れが改善されるように設けられていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記プラスチック材料(13)が、凝集力を低減するために物理的に修飾されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記振動発生器(14)の前記表面(15)が前記溶融された高粘性プラスチック材料(13)と接触するとともに、前記含浸キャビティ(12)内の前記繊維束(11)が、前記繊維束(11)を少なくとも部分的に包囲する前記振動発生器(14)の前記表面(15)を通って案内されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融されたプラスチック材料(13)が、前記繊維束(11)と共に、前記含浸キャビティ(12)を通って案内されるか、または流れることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記繊維束(11)の含浸中に、前記含浸キャビティ(12)内の前記溶融されたプラスチック材料(13)に圧力が加えられることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
三次元印刷設備の三次元印刷ヘッドによって2種以上の異なる材料から形成される三次元構造物を生成するための方法であって、前記方法は、下記のステップ、すなわち、
第1の材料として高粘性プラスチック材料(13)と、第2の材料として繊維材料の実質的に無限の繊維束(11)とを前記三次元印刷設備に供給するステップであって、
前記実質的に無限の繊維束(11)を高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)で含浸するために、2つの前記材料が前記三次元印刷設備の含浸キャビティ(12)に連続的に供給される、ステップと、
前記高粘性プラスチック材料(13)で含浸された前記繊維束(11)を前記三次元印刷ヘッドによって押し出すステップとを含む、方法において、
前記三次元構造物の生成中に、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって、前記実質的に無限の繊維束(11)が前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)で連続的に含浸されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
多数の無限繊維から形成された少なくとも1つの繊維束(11)を所定のプロセス温度で溶融され高粘性であるプラスチック材料(13)で含浸するための装置(10)であって、前記装置(10)は、前記高粘性プラスチック材料(13)が充填されているか、または充填され得る含浸キャビティ(12)を有し、前記含浸キャビティ(12)は、含浸のための繊維束(11)が前記含浸キャビティの前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)を通って案内され得るように、入口および出口を有し、前記装置(10)はまた振動発生器(14)を有し、前記振動発生器(14)の表面(15)は、前記含浸キャビティ(12)に位置する前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)と接触するか、または接触させることができ、前記振動発生器は前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)に音エネルギーを導入するように設計されていることを特徴とする、装置(10)。
【請求項12】
前記振動発生器(14)が、1μm~150μmの振動振幅、好ましくは最大で40μmの振動振幅、特に好ましくは最大で35μmの振動振幅を生じるように、かつ/または、100Hz~100kHzの振動周波数、好ましくは15kHz~60kHzの振動周波数、特に好ましくは20kHz~60kHzの振動周波数を生じるように設計されていることを特徴とする、請求項11に記載の装置(10)。
【請求項13】
前記振動発生器(14)が、前記含浸キャビティ(12)の構造(17,18)の実固有モードおよび/または複素固有モードが誘発されるように、振動を発生させるように構成されていることを特徴とする、請求項11または12に記載の装置(10)。
【請求項14】
前記音響エネルギーを導入するために、前記溶融されたプラスチック材料と接触するか、または接触させることができる前記表面(15)が、前記振動発生器(14)の前記表面(15)の前記溶融されたプラスチック材料との付着および/または濡れを改善するために、微細構造化処理、粗面化処置、および/またはプラズマ処理を有することを特徴とする、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項15】
前記繊維束(11)が前記含浸キャビティ(12)の前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)を通って案内されているときに、含浸すべき前記繊維束(11)が通って案内され得るキャビティを前記振動発生器(14)の前記表面(15)が有することを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項16】
前記振動発生器(14)の前記表面(15)の前記キャビティは、前記繊維束(11)が、前記高粘性の溶融されたプラスチック材料(13)で含浸されるために案内され得る管を形成し、前記管がモード振動構造および/または固有モードを有した振動構造を有することを特徴とする、請求項15に記載の装置(10)。
【請求項17】
2種以上の異なる材料から形成される三次元構造物を生成するための設備であって、前記設備は、繊維材料の実質的に無限の繊維束(11)を供給するための第1の材料供給部と、所定のプロセス温度で溶融され高粘性であるプラスチック材料(13)を供給するための少なくとも1つの第2の材料供給部とを有する三次元印刷ヘッドを有し、第1の材料供給部および第2の材料供給部は、前記繊維束(11)を前記溶融された高粘性プラスチック材料(13)で含浸するために、前記三次元印刷ヘッドの含浸キャビティ(12)に開口しており、前記含浸キャビティ(12)は、前記三次元印刷ヘッドの出口に連通して接続されており、前記出口は、前記三次元構造物を生成するために、含浸された前記繊維束(11)を押し出すように構成されている、設備において、前記三次元印刷ヘッドが請求項11から16のいずれか一項に記載の装置(10)を備えることを特徴とする、設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの繊維束を高粘性プラスチック材料で含浸するための方法に関する。本発明はまた、この目的のための装置に関する。本発明はさらに、2種以上の異なる材料から形成される三次元構造物を生成するための方法に関する。本発明はまた、そのような三次元構造物を生成するための設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の重量比強度(weight-specific strength)および剛性のために、繊維複合材料は、現代の材料として不可欠になってきている。しかしながら、三次元(3D)印刷における繊維材料とプラスチック材料との組み合わせはまた、複雑な構造物を生成するための新たな可能性をもたらし、この点について等方性材料を用いる必要がない。繊維複合材料からの繊維複合部品の生産および繊維強化材による3D印刷の双方において、一種の繊維束を構成し、フィラメントとも称される多数の無限繊維から形成される繊維ロービングが非常に頻繁に用いられる。
【0003】
例えば、DE102017124352.6は、2種以上の異なる材料を含む三次元構造物を生成するための設備を開示しており、プロセスにおいて、例えばロービングの形態にある事実上無限の繊維材料と熱可塑性材料との双方が3D印刷ヘッドに供給され、次に3D印刷ヘッドは、混合槽において繊維材料を熱可塑性材料で含浸するために、混合槽に開口している。このように形成された材料混合物は、次に、三次元構造物を生成するために、3D印刷ヘッドの出口を介して押し出される。
【0004】
しかしながら、事実上無限の繊維ロービングの熱可塑性材料による含浸は、現在のところ、熱可塑性材料の粘度が高く、また無限繊維の浸透性が低いことにより、特に繊維材料が連続的に搬送され押し出されることになっている場合は常に、満足できるものではない。
【0005】
実用上、繊維ロービングを最初に開繊する(spread open)、つまり、繊維ロービングを幅に関して広げることが知られており、広く普及している。この目的のために、繊維ロービングは、一般に、繊維束の断面が拡張され、したがって個々のフィラメント間の距離が増大されるように形作られたいくつかの特別に形作られたローラー上に案内される。このようにして、溶融されたプラスチック材料の必要とされる浸透深さが低減され、繊維の浸透性が増大される。次に、溶融されたプラスチック材料は、開繊された繊維に含浸するために、圧力の作用下で開繊された繊維と1つまたは複数の位置で比較的長時間にわたって接触させられる。
【0006】
例えば、EP0712716A1は、無限の繊維または繊維束を溶融された熱可塑性材料で含浸するための方法を開示しており、繊維またはロービングは、減衰波の形状を有する含浸ゾーンを通過する。
【0007】
米国特許出願公開第2012/0040106A1号は、繊維材料をマトリックス材料で含浸するための方法および装置を開示しており、この方法の場合、繊維材料が成形ツールに導入され、次いでマトリックス材料を注入される。繊維材料にマトリックス材料が注入されている間、含浸の結果を改善するために、ラウドスピーカまたはトーンジェネレータを用いて振動を生じさせる。
【0008】
DE102016107956A1は、繊維強化半完成品を生成することを目的とした無限繊維を含浸するための方法を開示しており、この方法では、最初に複数の個々の繊維がまとめられて共通繊維束を形成し、プラスチック材料で含浸される。プラスチック材料で含浸された繊維材料は、次に冷却されたローラー上に押し出され、ローラーは、ソノトロードがマトリックス材料を有する繊維材料中に超音波振動を誘発するように、ソノトロードに動作可能に接続されている。
【0009】
繊維材料、特に繊維束を、例えば熱可塑性材料などの高粘性プラスチック材料で含浸する従来技術から知られている方法は、様々な不都合を有する。例えば、開繊を伴う方法の場合、繊維が複数回偏向されなければならないため、比較的大きな構造空間が必要とされる。繊維が損なわれないためには、ここでは最大許容曲げ半径が考慮されなければならない。複数の偏向はまた摩擦を増大させ、したがって繊維に必要とされる引張力の程度を大きくする。これは、連続した繊維の案内が可能となるように、プロセスによって保証されなければならない。加えられる引張力は、繊維ロービングの個々のフィラメントの断裂を防止するために、ここで最大許容値を超えてはならない。開繊を行わないか、または開繊をごくわずかな程度だけ行って稼働するプロセスは、繊維への損傷の危険性を低減するが、十分な繊維含浸を行うためには長いプロセス時間を必要とする。
【0010】
音響エネルギーまたは震動エネルギーに基づく繊維含浸は、現在までのところ低粘性媒体についてのみ知られている。例えば、溶融された熱可塑性材料などの高粘性媒体の場合には、音響または震動エネルギーの媒体への結合に関して特定の課題が生じる。したがって、小さな構造空間のみが利用可能であり、繊維を高粘性材料で含浸しなければならない用途のためには、プロセスの点で信頼できる手法で繊維ロービングの深い含浸を可能にする利用可能な適当な方法が存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この背景に対して、本発明は、特に繊維ロービングを高粘性プラスチック材料で、プロセスの点で信頼できる手法で含浸することができ、このために大きな構造空間を利用可能にしたり、または長いプロセス時間を想定したりする必要のない、改善された方法および改善された装置を規定することを目的とする。同様に、本発明は、特に生成方法(generative method)の場合に、印刷中の含浸を可能にするために、繊維ロービングを高粘性プラスチック材料で連続的に含浸することができる、三次元構造物を生成する改善された方法および改善された設備を規定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、本発明によれば、繊維束を含浸する請求項1に記載の方法および請求項11に記載の装置によって達成される。上記目的は、本発明によれば、三次元構造物を生成する請求項10に記載の方法および請求項17に記載の設備によってもさらに達成される。本発明の有利な構成は対応する従属請求項に見られる。
【0013】
特許請求項1によって提案されるのは、少なくとも1つの繊維束を高粘性プラスチック材料で含浸するための方法であり、このために最初に、複数の無限繊維(フィラメントとして知られているもの)から形成された、含浸すべき少なくとも1つの繊維束と、所定のプロセス温度で溶融され高粘性であるプラスチック材料とが用意される。高粘性プラスチック材料は、ここでは特に、所定のプロセス温度で本質的に8000mPa・s(ミリパスカル秒)を超える粘度を有するプラスチック材料を意味するものと理解される。ここでは、300mPa・sまでの粘度を有する低粘性プラスチック材料と区別する必要がある。300mPa・s~8000mPa・sの平均粘度が参照される。ハイブリッド3D印刷においてよく見られるような熱可塑性材料は、多くの場合、300Pa・s~10000Pa・sの粘度を有する。プラスチック材料が繊維と接触するときにプラスチック材料が剪断される程度によって、粘度は通常のゼロせん断粘度(3000~10000Pa・s)よりも著しく低くなる可能性もある。所定のプロセス温度とは、プラスチック材料が含浸に用いられるプラスチック材料の温度を意味すると理解される。熱可塑性材料の場合、これは特に、プラスチック材料が溶融され、したがって、それに応じて繊維束に含浸することができる温度である。
【0014】
用意された繊維束は、次に、含浸キャビティを通って、含浸すべき繊維束、例えばロービングを連続的に案内することによって、プラスチック材料で含浸される。プロセスにおいて、温度制御され溶融された高粘性プラスチック材料は含浸キャビティに位置し、その結果、繊維束が含浸キャビティを通って案内されるときに、繊維束は含浸キャビティに位置する溶融されたプラスチック材料によって完全に包囲される。ここで、含浸キャビティは、含浸プロセス中に含浸キャビティに空気が存在しないように、プラスチック材料で充填され得る。この点について、連続した含浸作業を保証できるようにするために、繊維束の連続的な通過中に、新たなプラスチック材料もまた含浸キャビティに連続的に提供されることももちろん提供され得る。さらに、含浸キャビティを高粘性プラスチック材料の所定のプロセス温度に加熱するために、含浸キャビティが温度制御装置を有することももちろん提供され得る。よって、含浸キャビティを通る繊維束の連続的な通過中に、新たなプラスチック材料が含浸キャビティに連続的に加えられ、かつ/または前記プラスチック材料を特に所望のプロセス温度に維持するために、含浸キャビティに位置するプラスチック材料の温度が連続的に制御されると、有利である。
【0015】
本発明によれば、今度は、繊維束の含浸中に、含浸キャビティに位置する溶融された高粘性プラスチック材料が、少なくとも1つの振動発生器の表面と、振動発生器によって含浸キャビティの溶融された高粘性プラスチック材料に音響エネルギーが導入されるように、接触することが提供される。
【0016】
この目的のために、少なくとも1つの振動発生器は、含浸キャビティの溶融された高粘性プラスチック材料と直接接触する表面を有し、振動発生器は振動を発生させるように設計されており、振動は次に、プラスチック材料と接触した表面を介して、音響エネルギーの形態でプラスチック材料に伝えられる。振動発生器の振動は、このように溶融された高粘性プラスチック材料内において音波または圧力波を発生させ、これらの音波または圧力波により、次いで高粘性プラスチック材料がプロセスにおいて繊維束に深く浸透し、個々のフィラメントまたは無限繊維を濡らすことになる。特に、繊維束の個々のフィラメントまたは無限繊維の間の中間空間がここで高粘性プラスチック材料によって占められ、したがって、繊維束が含浸キャビティを通って連続的に案内される場合であっても、非常に高い含浸品位を達成することができる。
【0017】
この点について、本発明者は、高粘性の溶融されたプラスチック材料と表面が直接接触する振動発生器を用いて、結果として高品位の繊維束またはロービングが連続プロセスにおいて含浸され得るように、高粘性プラスチック材料に音響エネルギーを導入することができることを認識した。これに必要とされる構造空間は非常に小さく、したがって、本発明による方法は、特に無限繊維の3D印刷および連続堆積に適当である。構造空間をより小さくすることによって、特に、エンドエフェクタの場合には、動かされることになるエンドエフェクタの質量が低減され、これによりプロセスの精密度を全体として増大させることが可能となる。
【0018】
本発明者はさらにまた、溶融されたプラスチック材料の高粘度にもかかわらず、やはり、プラスチック材料と接触した振動発生器を用いて、繊維束がプラスチック材料で高品位に含浸されるように、プラスチック材料に音響エネルギーを導入することができることを認識した。したがって、溶融された高粘性プラスチック材料は、粘弾性効果により、機械的変形後にその形状を回復するために低粘性媒体よりも遥かに多くの時間を必要とするので、これは驚くべきことである。しかしながら、高い含浸性能は達成され得る。
【0019】
有利な一実施形態によれば、高粘性プラスチック材料は、プラスチック材料が溶融されて溶融物の形態で存在する所定のプロセス温度において、高粘性である、つまり8000mPa・sを超える粘度を有する熱可塑性材料である。
【0020】
さらに有利な実施形態によれば、振動発生器は、1μm~150μmの振動振幅、好ましくは最大で40μmの振動振幅、特に好ましくは最大で35μmの振動振幅、および/または100Hz~100kHzの振動周波数、好ましくは15kHz~60kHzの振動周波数、特に好ましくは19kHz~60kHzの振動周波数を生じる。これは、高粘性プラスチック材料に音響エネルギーを導入することを可能にし、この音響エネルギーは、高粘性媒体の技術的な課題にもかかわらず、非常に高い含浸性能を保証する。1つの特定の実施形態において、振動周波数は45kHz以下である。1つの特定の実施形態において、振動周波数は19.2kHz~19.7kHzである。
【0021】
さらに有利な実施形態によれば、振動発生器は、含浸キャビティの構造の実固有モード(real eigenmode)および/または複素固有モード(complex eigenmode)を誘発する。高粘性プラスチック材料の粘弾性効果にもかかわらず、しかしながら、高い含浸性能を達成するために、このようにして十分な音響パワーまたは音響エネルギーがプラスチック材料に導入され得ることが見出された。この実施形態では、振動発生器の表面の少なくとも一部は、特別な振動構造、好ましくはモード振動構造(modally vibrating structure)によって形成されており、振動発生器は、含浸キャビティのこの構造の実固有モードおよび/または複素固有モードを誘発することができる。そのような1つまたは複数の構造は、含浸キャビティのプラスチック材料によって、好ましくは完全に覆われる。そのような構造は、例えば、含浸キャビティにおけるモード振動プレートであってもよい。しかしながら、そのような構造が固有モードを有した管であってもよいことも考えられ、この管を通って、含浸すべき繊維束が案内される。これにより、高粘性プラスチック材料の場合にさえ、含浸性能を著しく改善することが可能となる。この点について、管自体が含浸キャビティを形成してもよいし、または含浸キャビティの一部であってもよい。
【0022】
その場合、生じる上記構造の振動極大および極小が、音響エネルギーを結合するための空間的に分布した発生器として作用する。
さらに有利な実施形態によれば、溶融されたプラスチック材料と接触する振動発生器の表面が、微細構造化前処理、粗面化前処理、および/またはプラズマ前処理を受けているか、または振動発生器の上記表面の溶融されたプラスチック材料との付着または濡れが改善されるように設けられていることが提供される。プラスチック材料と接触する振動発生器の表面を前処理するためのそのような手段により、繊維束の含浸のために必要な音響エネルギーを達成するために、高粘性プラスチック材料の粘弾性効果にもかかわらず、対応する音波または圧力波が溶融されたプラスチック材料に導入され得るように、溶融されたプラスチック材料との上記表面の付着または上記表面の濡れ性を改善することが可能となることが見出された。プラスチックと接触する振動発生器の表面の付着性を増大させる結果として、振動発生器の高い周波数および/または高い振幅においてさえ、振動発生器の表面と溶融されたプラスチック材料との間において、必要とされる音響パワーの伝達を阻止する空所の生成が防止される。
【0023】
さらに有利な実施形態によれば、プラスチック材料は凝集力を低減するために物理的に修飾され、その結果として振動発生器の表面の濡れが改善されることが可能であり、凝集力が低減される。
【0024】
さらなる実施形態によれば、振動発生器の表面が溶融された高粘性プラスチック材料と接触するとともに、含浸キャビティ内の繊維束が、繊維束を少なくとも部分的に包囲する振動発生器の表面を通って案内されることが提供される。ここで、繊維束は、針の穴または弧状のような振動発生器のキャビティを通って案内され、この領域において振動発生器は高粘性プラスチック材料に音響エネルギーを放出する。この点について、繊維束は特定の地点で振動発生器の表面と接触することができる。ここでの特定の幾何学的形状は、材料が流れ去るのを防止するか、または震動エネルギーもしくは音響エネルギーが改善された手法で過圧もしくは負圧のゾーンを通って結合されることを保証する。
【0025】
繊維束を含浸するための本発明による方法では、とりわけ、結果を改善するために、例えば、利用可能な構造空間によって許容されるように、繊維束が含浸キャビティの上流または含浸キャビティにおける適当な手段によって開繊されることが提供され得る。しかしながら、原則として、本発明による方法が用いられる場合には、繊維束の繊維の開繊をもたらす必要はない。
【0026】
一実施形態によれば、溶融されたプラスチック材料が繊維束と共に含浸キャビティを通って案内されるか、または流れることが提供される。この目的のために、含浸キャビティは、繊維束のための入口と、溶融されたプラスチック材料のための入口とを有してもよく、1つの好ましい実施形態では、繊維束および溶融されたプラスチック材料は、全く同一の入口を通って含浸キャビティ内に案内される。それに応じて、含浸キャビティは、繊維束のための出口と、溶融されたプラスチック材料のための出口を有してもよく、1つの好ましい実施形態では、繊維束および溶融されたプラスチック材料は全く同一の出口を通って含浸キャビティから外に案内される。
【0027】
これにより、例えば、出口の形態にあるノズルまたは押出機を通って繊維束および溶融されたプラスチック材料を案内することによって、例えばプラスチック-繊維半完成品(例えば熱可塑性物質-繊維半完成品)を生成することが可能となる。
【0028】
一実施形態によれば、含浸キャビティ内の溶融されたプラスチック材料に圧力が加えられるか、または溶融されたプラスチック材料が繊維束の含浸中に押される(imprinted)ことが提供される。この場合、溶融されたプラスチック材料は、周囲圧力より大きな圧力下にあり得る。したがって、溶融されたプラスチック材料は、0.5MPa~10MPa(5バール~100バール)の溶融圧力下にあり、適切な場合には40MPa(400バール)までの溶融圧力下にさえあることが考えられる。
【0029】
溶融されたプラスチック材料の圧力は、kHz範囲では発振せず、特に流路の幾何学的形状および搬送速度によって決定される付加的な圧力である。これは、溶融されたプラスチック材料(溶融物)への音の導入が圧力の変化も生じるためであり、しかしながら、この圧力は振動発生器に従ってkHz範囲で発振する。ここで意味される圧力は、音の導入とは無関係であり、音の導入に加えて導入される。したがって、音の導入または導入された音響エネルギーとは無関係である付加的な圧力が、含浸キャビティ内の溶融されたプラスチック材料に加えられる。溶融されたプラスチック材料は、したがって音響エネルギーの導入に加えて加圧される。
【0030】
ここで、溶融されたプラスチック材料は、出口もしくはノズル出口における出口圧力、または出口もしくはノズル出口の下流の出口圧力よりも大きな圧力下にあり得る。これにより、ノズルを圧力ベッドに対して非常にわずかなギャップのみで配置することが可能となる。この場合、溶融物が自由端部において出てくることができないため、例えばノズル出口では10MPa(100バール)の圧力があるが、これは含浸キャビティの圧力(例えば20MPa(200バール))よりも低い。
【0031】
溶融されたプラスチック材料を押すことは、例えば、溶融されたプラスチック材料が繊維材料と共に含浸キャビティからノズルまたは押出機を通って案内される前述の実施形態と併せて、行うことができる。これは、溶融されたプラスチック材料の入口と溶融されたプラスチック材料の出口との間における圧力勾配を達成することを可能にする。
【0032】
ここで、プラスチック材料の溶融圧力がキャビテーション閾値よりも低いと有利である。ここで、キャビテーション閾値に達するのに十分な音響エネルギーを溶融されたプラスチック材料に導入することも可能である程度までだけ、溶融圧力を増大させることが有利である。驚いたことに、振動発生器によるプラスチック材料中への音響エネルギーの導入と併せて、押されて溶融されたプラスチック材料中では、より多くの顕著なキャビテーション効果が生じて分散し、このキャビテーション効果が溶融されたプラスチック材料による繊維材料の改善された含浸をもたらすことが見出された。
【0033】
上記目的はまた、本発明によれば、2種以上の異なる材料から形成される三次元構造物を生成するための方法によってさらに達成され、結果として生じる混合材料は、3D印刷システムの3D印刷ヘッドによって噴射される。この点について、この方法は、下記のステップ、すなわち、
- 第1の材料として高粘性プラスチック材料と、第2の材料として繊維材料の実質的に無限の繊維束とを3D印刷設備に供給するステップであって、
- 実質的に無限の繊維束を高粘性の溶融されたプラスチック材料で含浸するために、2つの材料が3D印刷設備の含浸キャビティに連続的に供給される、ステップと、
- 高粘性プラスチック材料で含浸された繊維束を3D印刷ヘッドによって押し出すステップとを含み、
- 三次元構造物の生成中に、上述したような方法によって、実質的に無限の繊維束が高粘性の溶融されたプラスチック材料で連続的に含浸される。
【0034】
この方法において、高粘性プラスチック材料および繊維材料は含浸キャビティに供給され、2つの材料は次に、含浸キャビティにおいて繊維束またはロービングの形態にある繊維材料を高粘性プラスチック材料で含浸することによって、組み合わせられて材料混合物を形成する。次に、このように含浸された繊維束は、三次元構造物を生成するために3D印刷ヘッドから押し出される。
【0035】
さらに、上記目的はまた、少なくとも1つの繊維束を含浸するための装置によって達成され、この装置は、高粘性プラスチック材料が充填されているか、または充填され得る含浸キャビティを有し、含浸キャビティは、含浸のための繊維束が含浸キャビティの高粘性の溶融されたプラスチック材料を通って案内され得るように、入口および出口を有する。したがって、繊維束は入口によって含浸キャビティ内に導入され、また出口によって含浸キャビティから外に案内され、繊維束は含浸キャビティの出口から外に案内された後にプラスチック材料で含浸される。装置にはさらに振動発生器を有し、振動発生器の表面は、含浸キャビティに位置する高粘性の溶融されたプラスチック材料と接触するか、または接触させることができ、振動発生器は高粘性の溶融されたプラスチック材料に音響エネルギーを導入するように設計されている。
【0036】
この装置は、上述した繊維束を含浸するための方法を実行することができるように有利に設計されている。
特に、ここでは、溶融されたプラスチック材料と接触するか、または接触させることができる表面が、振動発生器の表面と溶融されたプラスチック材料との間の付着を改善するために、微細構造化処理、粗面化処置、および/またはプラズマ処理を有することが提供され得る。
【0037】
同様にここでは、繊維束が含浸キャビティの高粘性の溶融されたプラスチック材料を通って案内されているときに含浸すべき繊維束が案内され得るキャビティを、振動発生器の表面が有することが提供されてもよい。
【0038】
さらに有利な実施形態によれば、振動発生器の表面のキャビティは、繊維束が高粘性の溶融されたプラスチック材料で含浸されるために案内され得る管を形成し、管はモード振動構造および/または固有モードを有した振動構造を形成することが提供され得る。モード振動構造または固有モードを有した振動構造を用いることにより、媒体の高粘度および粘弾性効果にもかかわらず、含浸結果を著しく改善することが可能となることが見出された。しかしながら、そのような管はまた、それ自体が含浸キャビティを形成してもよく、その結果、ロービングは管の内側に案内され、また高粘性プラスチック材料は管の内側に存在する。
【0039】
上記目的はまた、三次元構造物を生成するための設備によってさらに達成され、この設備は、実質的に無限の繊維束を供給するための第1の材料供給部と、プラスチック材料を供給するための少なくとも1つの第2の材料供給部とを有する印刷ヘッドを有し、繊維束およびプラスチック材料の双方が印刷ヘッドに連続的に供給されるプロセスにおいて、繊維束を溶融された高粘性プラスチック材料で含浸するために、各材料供給部は、印刷ヘッドの共通含浸キャビティに開口しており、プラスチック材料は、物質のまだ固体の状態で供給され得る。次に、印刷ヘッドにある温度制御装置によって、供給されたプラスチック材料をその必要とされるプロセス温度にすることができ、プラスチック材料を溶融状態で存在させることができる。また、溶融され温度制御されたプラスチック材料が印刷ヘッドに既に供給されていることももちろん考えられる。含浸された繊維束は、次に印刷ヘッドの出口によって、印刷ヘッドから押し出されることが可能である。
【0040】
本発明によれば、印刷ヘッドは、繊維束を含浸するための装置を有し、この目的のために提供されるものは振動発生器であり、振動発生器の表面は、含浸キャビティに位置する高粘性の溶融されたプラスチック材料と接触するか、または接触させることができ、振動発生器は高粘性の溶融されたプラスチック材料に音響エネルギーを導入するように設計されている。
【0041】
本発明は、例として添付図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】含浸するための本発明による装置の概略図である。
【
図2】第1の実施形態における装置の概略図である。
【
図3】第2の実施形態における装置の概略図である。
【
図4】モード振動構造を有した装置の概略図である。
【
図5】固有モードを有した含浸キャビティの概略図である。
【
図6】出口ノズルを備えた含浸キャビティの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、含浸キャビティ12を通って案内される繊維束11を含浸するための装置10の非常に単純化した概略図を示している。ここで、含浸キャビティ12は、繊維束11が含浸されることになる高粘性の溶融されたプラスチック材料13で充填されている。
【0044】
さらに、装置10は、振動発生器14を有し、振動発生器14の表面15は溶融された高粘性プラスチック材料13と接触する。
図1に示される振動発生器14は、音響エネルギーを所定の周波数fで高粘性プラスチック材料13に導入するために、振幅sの形態で行程運動(stroke movement)を行う縦振動子である。この点について、
図1の中の例示的な実施形態において、行程運動の方向は、繊維束11に対して本質的に垂直である。
【0045】
振動発生器14の表面15が高粘性の溶融されたプラスチック材料13と直接接触するという事実によって、振動発生器14によって発生した振動が、繊維束11の含浸性能を改善するために、音響エネルギーの形態でプラスチック材料13に導入され得る。
【0046】
ここで、振動発生器14の表面15と溶融された高粘性プラスチック材料13との間の付着を改善するために、振動発生器13の表面15が、微細構造化前処理、粗面化前処理、および/またはプラズマ前処理を受けていることが提供され得る。これは、プラスチック材料13への振動発生器14の振動の結合を妨げるか、または完全に阻止さえする空所が振動中に振動発生器14の表面15とプラスチック材料13との間に生じないという効果を有する。
【0047】
図1の右側は、表面15として、振動発生器14によって発生した振動を高粘性プラスチック材料に結合するように意図された振動発生器14の様々な可能な断面形状を示している。
【0048】
図2は、装置10を概略的に示しており、この装置10の場合には、振動発生器14は凹所を有し、該凹所は、振動発生器が高粘性プラスチック材料と接触するその表面15の領域において、特に高粘性プラスチック材料と完全に接触して含浸キャビティを通って案内される繊維束を部分的にまたは完全に包囲する。よって、ロービング11は、特定の輪郭の幾何学的形状を有する縦振動子内の一種の「穴」を通って案内され、プロセスにおいて、ロービングの繊維は特定の地点で縦振動子14の表面と接触することができる。特定の幾何学的形状は、材料が遮断されるのを防止するか、または震動エネルギーが改善された手法で過圧および負圧のゾーンを通って結合されることを保証する。
【0049】
図3は、装置10のさらなる実施形態を概略的に示しており、この装置10の場合、相対物または相対物要素16は、繊維束11が振動発生器14の表面15と相対物16との間を通って案内されるように、振動発生器14に対向して位置している。
【0050】
相対物16は、例えば、反射要素であってもよく、反射要素は、含浸キャビティ12に配され、振動発生器14によって結合された音波を反射し、その結果として含浸プロセスに対する音波の影響または作用が改善され得る。
【0051】
また、相対物16が同様に音波を高粘性プラスチック材料に能動的に導入することができる振動発生器であることももちろん考えられ、2つの振動発生器14および16の周波数および振幅は、ロービングを含浸する効果をできるだけ大きくすることができるように適合させることができる。
【0052】
図4は、実施形態の非常に単純化した概略図を示しており、この実施形態の場合、わずかに開繊されたロービングが高粘性プラスチック材料を通って引き出され、含浸キャビティ12に位置するのは、振動発生器の形態で、対応する音響エネルギーを高粘性プラスチック材料に導入するように意図されたモード振動構造17である。ここで、生じる振動極大および振動極小は、空間的に分布した手法で、震動エネルギーを高粘性プラスチック材料に結合する。
【0053】
図5は、固有モードを有したモード振動構造18のさらに例示的な実施形態を示しており、モード振動構造18は、ロービング11を完全に包囲するように設計されている。この場合、振動発生器の表面はモード振動構造17および18によって形成され、振動発生器は、これらの構造17および18の実固有モードおよび/または複素固有モードが誘発され得るように設計されている。ここで、これらのモード振動構造17および18は含浸キャビティ12内に位置し、好ましくは高粘性プラスチック材料12によって完全に包囲され得る。これにより、含浸性能を改善するのに必要とされる音響エネルギーをプラスチック材料に非常に効果的に導入することが可能となる。加えて、この種の実施形態は、ごくわずかな構造空間のみを必要とし、よって特に生成方法に適している。
【0054】
しかしながら、
図5に示される管の形態にあるモード振動構造18が実際の含浸キャビティを形成し、したがって管18が含浸キャビティであることも考えられる。この目的のために、管18は入口19aおよび出口19bを有し、その結果、繊維材料11は入口19aを通って管の内部に案内され、また出口19bを通って外に案内される。さらに、管18の内側には溶融されたプラスチック材料が位置しており、固有モードを有したモード振動構造の形態にある管18によって、音響エネルギーが溶融されたプラスチック材料に導入される。この例示的な実施形態では、プラスチック材料は意図的に管の外部には位置せず、前記プラスチック材料は、繊維材料と共に、管内にのみ存在する。
【0055】
図6は、さらなる実施形態における装置10の非常に単純化した図を示している。装置10は含浸キャビティ12を備え、含浸キャビティ12を通って、繊維束11および高粘性プラスチック材料13が案内されている。さらに、ソノトロードの形態にある振動発生器14は、振動発生器14が、含浸キャビティ内の繊維束11と接触することなく、溶融されたプラスチック材料13と接触するように、含浸キャビティ12内に突出している。したがって、振動発生器14を用いて、溶融されたプラスチック材料13に音響エネルギーを導入することができる。
【0056】
繊維束11(含浸されていないもの、完全に含浸されていないもの、または十分に含浸されていないもの)および溶融されたプラスチック材料13の双方が、入口19aを介して装置10に導入され、その結果、繊維束11および溶融されたプラスチック材料13が含浸キャビティ12に導入され得る。プラスチック材料13で含浸された繊維束11は、次に出口19bから装置10の外へ案内される。
【0057】
この点について、出口19bは、プラスチック材料を成形し、統合するための押出機またはノズルの形態に設計されている。入口との対比により、出口19bをノズルまたは押出機の形態に形作ることによって、入口19aと出口19bとの間でプラスチック材料13に圧力勾配が生じ得る。ここで、溶融物圧力は1.5MPa~10MPa(15バール~100バール)であってもよく、適切な場合には40MPa(400バール)であってもよい。
【0058】
この点について、入口19aは、繊維束11および溶融されたプラスチック材料13の耐圧性に優れた(pressure-tight)供給のために設計されている。出口19bは、ここでは、特に溶融されたプラスチック材料に関して、耐圧性に優れるように設計され得る。
【0059】
この点について、振動発生器14は同様に、含浸キャビティ12に関して耐圧性に優れた手法で、装置10上に配される。
溶融されたプラスチック材料13を圧力で押すこと、または圧力勾配を形成することは、振動発生器14による音響エネルギーの導入と併せて、溶融されたプラスチック材料13中でキャビテーションが生じて分散し、このキャビテーションが含浸結果に著しい改善をもたらすという効果を有する。キャビテーションが分散するとき生成されるマイクロジェットおよび/または衝撃波(キャビテーション効果)が、特に高粘性プラスチック材料を用いる場合に、含浸に改善をもたらすことが見出された。
【0060】
案内要素20は、含浸キャビティ12を通る正しい位置で繊維材料11を案内するために、入口19aと出口19bの上流との間に位置する。この場合、ソノトロード14または振動発生器は、案内要素20の間に配される。
【0061】
ここで、振動発生器14は、耐圧性に優れた取り付け部23を介して装置10に接続される。温度および圧力は、含浸キャビティ12の領域におけるセンサー22によって連続的に監視され得る。
【0062】
最後に、含浸された繊維ロービング21は、出口19bで外に案内される。
【符号の説明】
【0063】
10 装置、11 繊維束/ロービング、12 含浸キャビティ、13 高粘性プラスチック材料、14 振動発生器、15 振動発生器の表面、16 相対物/相対物要素、17 モード振動プレート構造、18 固有モードを有したモード振動管、19a 入口、19b 出口、20 案内要素、21 含浸された繊維ロービング、22 センサー、23 耐圧性に優れた取り付け部
【国際調査報告】