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特表2022-523293負荷を取り扱う機械に吊り下げられる器具を安定化するためのジャイロスコープ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】負荷を取り扱う機械に吊り下げられる器具を安定化するためのジャイロスコープ装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/06 20060101AFI20220415BHJP
【FI】
B66C13/06 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541726
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2020050676
(87)【国際公開番号】W WO2020165673
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】102019000002099
(32)【優先日】2019-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521318620
【氏名又は名称】アール.エフ.グル ディ ロマーノ フェラーリ
【氏名又は名称原語表記】R.F. GRU DI ROMANO FERRARI
【住所又は居所原語表記】14 Viale Olimpia, 42122 Reggio Emilia Italian Republic
(71)【出願人】
【識別番号】521318631
【氏名又は名称】アリ モハメド ハッサン,ゲーバー
【氏名又は名称原語表記】ALI MOHAMED HASSAN, Gaber
【住所又は居所原語表記】22 Via Strada della Mirandola,42124 Reggio Emilia Italian Republic
(71)【出願人】
【識別番号】516008040
【氏名又は名称】テクノアルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ ロマーノ
(57)【要約】
本明細書では、負荷を移動させるための機械(500)から吊り下げられる器具(530)を安定化するためのジャイロスコープ装置(100)が記述される。当該ジャイロスコープ装置は、器具(530)に堅固に接続されるために適した剛性の支持構造(105)と、支持構造(105)を機械(500)に接続するように適合され、所定のピボット軸(B)まわりの少なくとも1つの回転自由度を与える継手(125)と、所定の回転軸(X、X’)に従って回転可能なように、支持構造(105)に設置された少なくとも1つのフライホイール(130、210)と、フライホイール(130、210)を上述の回転軸(X、X’)まわりに回転させるように適合された少なくとも1つの駆動モータ(140)と、を具備する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を取り扱う機械(500)に吊り下げられる器具(530)を安定化するためのジャイロスコープ装置(100)であって、
前記器具(530)に堅固に接続されるように適合された剛性の支持構造(105)と、
前記支持構造(105)を前記機械(500)に接続するように適合され、所定の旋回軸(B)まわりの少なくとも1つの回転自由度を与える関節継手(125)と、
所定の回転軸(X、X’)に従って回転可能なように、前記支持構造(105)に設置された少なくとも1つのフライホイール(130、210)と、
前記フライホイール(130、210)を前記回転軸(X、X’)まわりに回転させるように適合された少なくとも1つの駆動モータ(140)と
を具備する
ジャイロスコープ装置(100)。
【請求項2】
前記関節継手(125)は、互いに直交する2つの所定の旋回軸(B、C)に従って少なくとも2つの回転自由度を与えるように適合されている
請求項1に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項3】
前記支持構造(105)は、前記フライホイール(130、210)の前記回転軸(X)に平行な中心軸(A)を有する管状体(110)を備える
請求項1または2に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項4】
前記フライホイール(130)は、
前記回転軸(X)と同軸の支持リング(180)と、
前記回転軸(X)のまわりに放射状に配置された複数の揺動体(185)と
を備え、
前記複数の揺動体の各々は、前記フライホイール(130)の前記回転軸(X)に直交するそれぞれのヒンジ軸(Y)に従って前記支持リング(180)にヒンジ接続され、それぞれの前記ヒンジ軸(Y)との関係において偏心した質量中心を有する
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項5】
それぞれの回転軸(X ')に従って回転可能なように、前記支持構造(105)に設置された複数のフライホイール(210)を具備する
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項6】
前記複数のフライホイール(210)は全て、対応する回転軸(X')に関して同一の慣性モーメントを有し、かつ、前記支持構造(105)の中心軸(A)のまわりに分布配置されている
請求項5に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項7】
前記フライホイール(130、210)を停止させるように適合されたブレーキ(175)を具備する
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のジャイロスコープ装置(100)。
【請求項8】
負荷を取り扱うための機械(500)であって、
ベース構造(505)と、
前記ベース構造(505)に接続された可動構造(510)と、
器具(530)と、
前記器具(530)を前記可動構造(510)に接続するように配置された請求項1乃至7のいずれか一項に記載のジャイロスコープ装置(100)と
を具備する
機械(500)。
【請求項9】
前記可動構造(510)は、所定の関節運動軸(Z)に従って前記ベース構造(505)に関節接続されたラフィングジブ(515)を備え、
前記ジャイロスコープ装置(100)は、前記関節継手(125)によって前記ラフィングジブ(515)に接続され、
少なくとも1つの前記旋回軸(B)は、前記関節運動軸(Z)と平行である
請求項8に記載の機械(500)。
【請求項10】
前記器具(530)は、荷物把持部材、作業器具または照明ヘッドライト(560)からなる群から選択される
請求項8または9に記載の機械(500)。
【請求項11】
前記器具(530)は、リフティングウインチ(535)のケーブル(545)に固定され、前記リフティングウインチは、前記器具(530)を、上昇位置と下降位置との間で移動させるように適合されており、前記上昇位置では、前記器具(530)は前記ジャイロスコープ装置(100)の前記支持構造(105)に接触し且つ接続され、前記下降位置では、前記器具(530)は前記ジャイロスコープ装置(100)の前記支持構造(105)から離間される
請求項10に記載の機械(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷を移動させるための機械、例えば、クレーン、から吊り下げられる器具を安定化するためのジャイロスコープ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷を取り扱う機械は、一般的に、可動構造、例えば、ジブリフティングアームを備えることが知られており、当該可動構造は、固定ベース構造に接続され、少なくとも1つの器具を支持するように適合されている。
いくつかの場合、器具は、荷物運搬部材、例えば、バケット、グリッパーまたはフックであってもよく、荷物運搬部材は、時には、リフティングウインチと関連していてもよい。
他の場合には、器具は、機能的部材、例えば、作業器具または照明ビーコンであってもよく、機能的部材は、それ自体が移動されるべき負荷の一部である。
これらの移動機械に関連する欠点は、負荷またはリフティング器具が機械の可動構造から吊り下げられた時に、当該負荷またはリフティング器具が振動することにある。
これらの振動は、一般的に、複数の重大な状況の発生によって引き起こされ得る動的な力の作用によるものであり、そのうちのいくつかは、限定的ではなく例示的な目的で以下に説明される。
第1の重大な状況は、不均衡な負荷を持ち上げるとき、すなわち、負荷の取り付け点がその重心が位置する鉛直軸と整列していないとき、に生じる。
この場合、実際には、負荷が地面から離れる段階の間に、揺れが生じ得る。
バランスされた負荷を持ち上げる場合であるが当該負荷が機械の可動構造が位置している鉛直軸、例えば、リフティングジブの端部と整列していない場合にも、同様の振り子運動が発生し得る。
別の重大な状況が、機械の可動構造が横方向に移動する間に、例えば、リフティングジブの横方向への旋回中に、発生する。
この状況では、負荷の慣性効果が上述の横方向の移動に対抗する傾向があり、通常、多かれ少なかれ広範な振動を生じる。
3つ目の重大な状況は、負荷が、風や波運動のような外的要因の作用を受ける状況である。
後者の状況は、典型的には、負荷を取り扱う機械のベース構造がボートに設置されているときに発生し、当該機械は、例えば、港の固定ドックに対して物品を積んだり降ろしたりするのを許容するために、あるいは、ディンギーまたは救命ボートのような補助ボートを水面に落下させ、または、水面から回収するために、ボートに設置される。
この特定の場合には、ベース構造に作用する波運動の影響は、可動構造に吊り下げられた負荷に影響を及ぼし、したがって、当該負荷は振動する傾向がある。
【0003】
これらの状況および他の状況において、負荷の振動は、負荷の運動制御および負荷の位置決め制御に影響を及ぼす大きな不安定性を生み出す。
この不安定性は、時には、地上の人々や、上述の例で述べた救命ボートのように、これらの移動体に乗っている可能性のある人々にとって、危険をもたらすことがあり得る。
負荷の振動はまた、予期しない応力を発生させることもあり、当該予期しない応力は、やがては、負荷を取り扱う機械の機械的構造を害することがあり得る。
現在、これらの振動の補正は、負荷が変位している間に補償運動を実行するように可動構造を制御するオペレータの能力に委ねられている。
時には、機械の可動構造と荷物把持部材との間の接続継手の近傍に設置された、主として油圧式のリニアアクチュエータによって、振動を減衰させるように、システムが使用されることもある。
しかし、これらのリニアアクチュエータは、振動の機械的エネルギーを消散させるために、これらを振動部と固定部との間において接続しなければならず、したがって機械の可動構造に直接作用する機械的減衰作用を発生されるという重大な欠点を有する。取り扱い、例えば、リフティングジブなどでの。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に照らして、本発明の目的は、従来技術の上述の欠点を解決するかまたは少なくとも大幅に軽減することである。
更なる目的は、可能な限り低いコストで、単純な合理的な解決策の文脈で、この目的を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的および他の目的は、独立請求項1に記述されている本発明の特徴によって達成される。従属請求項は、本発明の好ましい、および/または、特に有利な態様を記述する。
特に、本発明の実施形態は、負荷を取り扱う機械に吊り下げられる器具を安定化するためのジャイロスコープ装置の利用を可能にする。当該ジャイロスコープ装置は、
前記器具に堅固に接続されるように設計された剛性の支持構造と、
前記支持構造を前記機械に接続するように適合され、所定のピボット軸、好ましくは前記ジャイロスコープ装置の使用中に水平であるピボット軸まわりの少なくとも1つの回転自由度を与えるピボット継手と、
所定の回転軸に従って回転可能なように、前記支持構造に設置された少なくとも1つのフライホイールと、
前記フライホイールを前記回転軸まわりに回転させるように適合された少なくとも1つの駆動モータと
を具備する。
このジャイロスコープ装置のおかげで、軸まわりを回転する質量はこの軸を傾斜させる任意の外力に対抗する傾向があるという既知のジャイロ原理を適用することにより、器具のいかなる振動も、移動機械と比較して、独立的且つ自律的に効果的に減衰される。
いくつかの実施形態では、ジャイロスコープ装置の関節継手は、シングルジョイント、すなわち、1つの回転自由度のみを与えるように適合されたジョイントであってもよい。
他の実施形態では、上述の関節継手は、所定の2つの直交ジョイントピボット軸に従って少なくとも2つの回転自由度を与えるように適合されたマルチピボットジョイントであることが好ましい。
このようにして、ジャイロスコープ装置は、移動機械に対して少なくとも2つの方向に自由に振動することができる。
フライホイールの回転軸は、フライホイール自体の質量中心または重心を通ることが好ましく、それにより、フライホイールがバランスされ、回転はアンバランスな遠心力を発生させない。
いくつかの実施形態では、フライホイールの回転軸は、上述のピボット軸と直交していてもよく、例えば、フライホイールの回転軸は、ジャイロスコープ装置の使用中に鉛直な回転軸であってもよい。
直交するとの用語はまた、完全な直交性から数度逸脱する方向も含み、例えば、完全な直交性から+/-5°逸脱する方向も含む。
ジャイロスコープ装置がマルチプルジョイントを備える場合、フライホイールの回転軸は、当該ジョイントによって規定されるピボット軸のうちの少なくとも1つと直交していてもよい。
本発明の一態様によれば、ジャイロスコープ装置の支持構造は、フライホイールの回転軸と平行な中心軸を有する管状体を備えていてもよい。
このようにして、管状体は、内部に自由空間を規定し、当該自由空間には、器具を支持するリフティングウインチのケーブルが通されてもよく、または、器具の機能部分に供給する油圧パイプおよび/または電気ケーブルが配置される。
支持構造は、フランジ、または、器具との他の任意の接続要素を更に備えていてもよく、フランジまたは接続要素は、上述の管状体の一端に固定される。
この実施形態によれば、関節継手は、上述の管状体の反対側の端部に固定されてもよい。
本発明の1つの実施形態によれば、ジャイロスコープ装置は、単一のフライホイールを備えていてもよい。
ジャイロスコープ装置がシングルジョイントを備える場合、この単一のフライホイールの回転軸は、当該ジョイントによって規定される単一の関節運動軸と同一平面上にあってもよい。
ジャイロスコープ装置がマルチプルジョイントを備える場合、単一のフライホイールの回転軸は、両方のピボット軸(明らかに、互いに垂直な複数の平面上にある)と同一の平面上にあることが好ましい(厳密には必要でないとしても)。
このようにして、ジャイロスコープ装置がバランスよく移動機械に吊り下げられ得ることが保証される。
この点に関して、支持構造が上述の管状体を備える場合、フライホイールの回転軸は管状体の中心軸と一致することが好ましい。
いくつかの実施形態では、フライホイールは、単一固体でモノリシックな本体、または、液体物質で満たされた容器を備えていてもよい。
別の実施形態によれば、フライホイールは、回転軸と同軸の支持リングと、回転軸のまわりに放射状に配置された複数の揺動体とを備えていてもよい。当該複数の揺動体の各々は、フライホイールの回転軸に直交するそれぞれのヒンジ軸に従って支持リングにヒンジ接続され、それぞれのヒンジ軸に対して偏心した質量中心を有する。
この解決策のおかげで、フライホイールの回転によって発生する遠心力は、揺動体の傾斜を修正する効果を有し、フライホイールの全体的な慣性モーメントを徐々に増大させる。
このようにして、出発点においてフライホイールをより少ない変位エネルギーで回転させることができ、一旦適切な動作速度に達すると、フライホイールは、高いジャイロ効果を発揮するのに十分に高い慣性モーメントを獲得する。
本発明の他の実施形態によれば、ジャイロスコープ装置は、それぞれの回転軸に従って支持構造に回転可能に設置された複数のフライホイールを備えていてもよい。
この解決策のおかげで、単一のフライホイールの使用と比較して、より小さな寸法およびより小さな重量で、高い安定化効果を得る可能性が確認された。
好ましくは、上述のフライホイールの全ては、対応する回転軸に関して同一の慣性モーメントを有する。
いくつかの実施形態では、上述のフライホイールの複数の回転軸は、互いに平行であってもよく、複数のフライホイールは互いに共通の同一平面上にあってもよい。
例えば、上述のフライホイールの複数の回転軸は、支持構造の中心軸に対して平行かつ等距離であってもよい。
しかし、他の実施形態では、フライホイールの回転軸が、支持構造の中心軸に対してわずかに傾斜していてもよいということは、排除されない。
例えば、フライホイールの複数の回転軸は、上述の中心軸上にある1点に全てが収束するように傾斜していてもよい。
いずれにせよ、複数のフライホイールは、互いに角度的に等間隔になるように支持構造の中心軸まわりに分布配置されることが好ましい。
ジャイロスコープ装置がシングルジョイントを備える場合、支持構造の中心軸は、当該ジョイントによって規定される単一の関節運動軸と同一平面上にあってもよい。
ジャイロスコープ装置がマルチプルジョイントを備える場合、支持構造の中心軸は、両方のピボット軸(明らかに、相互に垂直な複数の平面上にある)と同一平面上にあることが好ましい。
支持構造が上述の管状体を備える場合、支持構造の中心軸は、管状体の中心軸と一致していてもよい。
この実施形態の一態様によれば、各フライホイールは、それぞれの駆動モータによって回転駆動されてもよい。
代替的に、ジャイロスコープ装置は、単一の駆動モータと、全てのフライホイールを当該駆動モータと接続するように適合された機械的トランスミッションとを備えていてもよい。
上述の全ての実施形態において、駆動モータ(または各駆動モータ)は、油圧モータ、電気モータ、吸熱エンジン、風力タービンエンジン、圧縮空気モータ、電磁気モータまたは目的に適した他の任意のタイプのモータからなる群から選択されてもよい。
駆動モータ(または各駆動モータ)はまた、機械的トランスミッション、例えば、ギヤトランスミッション、伝動ベルト(例えば歯付きベルト付き)、チェーントランスミッションまたは目的に適した他の任意のタイプのトランスミッションからなる群から選択される機械的トランスミッションによって、適格なフライホイール(または適切な複数のフライホイール)に運動学的に接続されてもよい。
更に、いくつかの実施形態において、フライホイール(または各フライホイール)が対応する駆動モータの駆動シャフトに直接的に固定されてもよいことは、排除されない。
本発明の一態様によれば、ジャイロスコープ装置は、フライホイール(または複数のフライホイール)を制動するのに適したブレーキ(または複数のブレーキ)を備えていてもよい。
このブレーキは、ジャイロスコープ装置の作動停止の場合に、フライホイール(または複数のフライホイール)の回転運動を停止させることを可能にするという利点を有する。
いくつかの実施形態では、ブレーキは、フライホイール(または複数のフライホイール)を駆動する駆動モータ(または各駆動モータ)の駆動シャフトに設置されてもよい。
他の実施形態では、ブレーキは、フライホイールに直接的に作用するように、フライホイール(または各フライホイール)に直接的に設置されてもよい。
例えば、ブレーキは、オイル-バス、乾式または他の任意の適切なブレーキであってもよい。
【0006】
本発明はまた、負荷を取り扱うための機械の利用を可能にする。当該機械は、
ベース構造と、
前記ベース構造に接続された可動構造と、
器具と、
前記器具を前記可動構造に接続する上記概説されたジャイロスコープ装置と
を具備する。
ジャイロスコープ装置の動作を利用して、この機械は、それに吊り下げられた負荷を非常に安定且つ安全な方法で移動させるという利点を有する。
機械の好ましい実施形態によれば、可動構造は、ラフィングアームを備えていてもよく、当該ラフィングアームは、所定の関節運動軸、好ましくは機械の使用中に水平である関節運動軸に従ってベース構造に関節接続される。ジャイロスコープ装置は、ピボット軸(または少なくとも1つのピボット軸)が上述のピボット軸と平行になるように、関節継手を介して、上述のラフィングアームに接続されてもよい。
この解決策のおかげで、機械は、典型的なリフティング機械またはクレーン機械の性質を帯びる。
いくつかの実施形態では、ラフィングアームはまた、伸縮式、関節式、または、関節式および伸縮式であってもよい。
本発明の一態様によれば、ジャイロスコープ装置に接続されるように適合された器具は、荷物把持部材、例えば、バケット、オクトパス、グリッパー、または、フックであってもよい。
本発明の他の実施形態によれば、器具は、それ自体が移動されるべき負荷の一部を構成する機能的部材、例えば、作業器具または照明ビーコンであってもよい。
上述のように、いくつかの実施形態では、器具は、当該器具を上昇位置と下降位置との間で移動させるように適合されたリフティングウインチのケーブルに固定されていてもよい。上述の上昇位置では、器具は、ジャイロスコープ装置の支持構造に接触し且つ接続され、上述の下降位置では、器具は、ジャイロスコープ装置の支持構造から離間する。
このようにして、器具およびそれを用いて移動されるべき負荷を、機械の可動構造に対して有利に上下させることが可能となる。
当然のことながら、この場合、ジャイロスコープ装置は、器具がジャイロスコープ装置自体に接触し且つ接続される上昇位置にあるときにのみ、負荷を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の更なる特徴および利点は、添付のテーブルに示されている図を用いて、非限定的な例として提供されている以下の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
図1図1は、本発明の1つの実施形態におけるジャイロスコープ装置の正面図であり、部分的には、図2に示す平面I-Iによる断面で示されている。
図2図2は、図1のII-II断面図である。
図3図3は、本発明の変形例におけるジャイロスコープ装置の正面図であり、部分的には、図4に示す平面III-IIIによる断面で示されている。
図4図4は、図3のIV-IV断面図である。
図5図5は、本発明の第3の実施形態におけるジャイロスコープ装置の正面図であり、部分的には、図6に示す平面V-Vによる断面で示されている。
図6図6は、図5のVI-VI断面図である。
図7図7は、本発明の第4の実施形態におけるジャイロスコープ装置の正面図であり、図8に示す平面VII-VIIによる断面で示されている。
図8図8は、図7のVIII-VIII断面図である。
図9図9は、本発明のジャイロスコープ装置を備えたリフティング機械の一般的な例を示す。
図10図10は、本発明のジャイロスコープ装置と関連し得る器具の例を示す。
図11図11は、本発明のジャイロスコープ装置と関連し得る器具の例を示す。
図12図12は、本発明のジャイロスコープ装置と関連し得る器具の例を示す。
図13図13は、ごみ収集箱用のリフティング機械への本発明のジャイロスコープ装置の可能な適用を示す。
図14図14は、救命ボートの移動に使用される海洋クレーンへの本発明のジャイロスコープ装置の可能な適用を示す。
図15図15は、「ダビット」への本発明のジャイロスコープ装置の可能な適用を示す。
図16図16は、照明ビーコンと関連して使用される、本発明の更なる実施形態におけるジャイロスコープ装置の側面図である。
図17図17は、図16のXVII-XVII断面図である。
図18図18は、リフティング機械への、図16および図17に示されたような2つのジャイロスコープ装置の可能な適用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明によるジャイロスコープ装置100は、第1に、剛性の支持構造105を備える。
図1および図2に示される実施形態では、支持構造105は管状体110を備え、当該管状体は、所定の中心軸Aに沿って延在し、当該管状体は、当該中心軸に対して、円形の断面、長方形、正方形、および、多角形、あるいは、他の任意の形状を有することができる。
ジャイロスコープ装置100の使用中、管状体110の中心軸Aは、一般的には、鉛直方向を向く。
【0009】
支持構造105は、機械的接続要素115を更に備え、当該機械的接続要素は、管状体110の一端、典型的には下端に固定される。
機械的接続要素115は、一般的には、安定化されるべき器具と機械的に接続されるように適合されている。
この実施形態では、機械的接続要素115は、中心軸Aを横切る平面上にある接続フランジ120を利用可能にする。
他の実施形態では、機械的接続要素115は、他の任意のタイプの継手またはカップリングの半体、例えばピンを含んでいてもよい。
【0010】
機械的接続要素115に関して反対側の端部において、ジャイロスコープ装置100は、回転継手125を備え、当該回転継手は、一般的に、ジャイロスコープ装置100を吊り下げるべき移動機械との機械的な接続を行うように適合されている。
説明中の実施形態において、関節継手125は、支持構造105に、第1の継手軸Bのまわりにおよび第2のピボット軸Cのまわりにそれぞれ2つの回転自由度を与えるように適合された二重継手である。
ピボット軸BおよびCは、互いに直交している。
第2の関節運動軸Cは、好ましくは、中心軸Aと直交する。
このようにして、第2の関節運動軸Cは、ジャイロスコープ装置100の使用中に、水平に配向されていてもよい。
ジャイロスコープ装置100のバランスをとるために、管状体110の中心軸Aは、関節運動軸Bおよび関節運動軸Cの両方と同一平面上にあることも好ましい。当該中心軸は、明らかに、それぞれ相互に直交する2つの平面上にある。
関節継手125は、図に示されるようにフォーク継手であってもよく、または、上述の自由度を達成することができる他の任意のタイプの継手であってもよい。
しかし、他の実施形態では、関節継手125は、1つの回転自由度のみ、例えば関節運動軸Bに従う回転自由度のみ、を保証することができる継手、または、より多くの回転自由度を保証する継手、例えば、球継手で置き換えられてもよいことが排除されない。
全ての場合において、関節継手125は、いかなる場合でも、ジャイロスコープ装置100の支持構造105が、それが設置される機械から吊り下げられたままにできることを保証するものでなければならない。
【0011】
ジャイロスコープ装置100は、フライホイール130を更に備え、当該フライホイールは、フライホイール130自体の重心を通る所定の回転軸Xのまわりを回転できるように、支持構造105に回転可能に連結される。
図1および図2に示される実施形態では、フライホイール130は、回転軸Xと一致する重心対称軸を有する円盤形状、特に、環状を有する。
【0012】
その環状形状のおかげで、フライホイール130は支持構造105の管状体110上に同軸的に挿入され、その結果、回転軸Xは管状体110の中心軸Aと一致する。
フライホイール130はまた、管状体110上に軸方向には固定されており、その代わりに、フライホイール130は少なくとも1つのベアリング135を介在させることによって、管状体に対して回転自在である。
【0013】
一般的に、フライホイール130は、その回転軸Xに対して、高い回転慣性モーメントを有するボディである。
例えば、フライホイール130は、回転軸Xに直交する方向に外側(最大)半径を有する実質的に平坦な形状を有していてもよく、当該外側半径は、回転軸Xの方向におけるフライホイールの厚さよりも大きい。
本明細書において、平坦な形状とは、一般的に、厚さよりも大きな外径を有する形状を意味し、整形された形状好ましくは質量を外側に集中させるような形状を有するフライホイール130も排除されない。
一般的に、慣性モーメントは、質量が集中する平均半径が増加するにつれて、二次形式で増加する。
したがって、質量が集中する平均半径を増大させることによって、有利には、同じ集中質量で慣性モーメントを増大させること、または、同じ慣性モーメントで集中質量を減少させることが可能である。
【0014】
いずれの場合も、フライホイール130の寸法および質量、したがってその慣性モーメントは、得られるべきジャイロスコープ効果の大きさに応じて、場合によってはジャイロスコープ装置100の全体の重量および全体の寸法を考慮して、設定および選択されてもよい。
図示された例では、フライホイール130は、モノリシックで固体のマスとして、例えばスチール、鋳鉄または鉛などの金属材料で作られ、回転軸X上に重心を有する。
しかし、他の実施形態では、フライホイール130は、中空容器、例えば、環状形状から形成されてもよいことが排除されず、当該中空容器は、場合によっては内部分離隔壁を備え、液体物質、例えば水または油で満たされる。
【0015】
ジャイロスコープ装置100は、駆動モータ140を更に備え、当該駆動モータは、支持構造105に設置され、回転軸Xまわりにフライホイール130を回転させるように適合される。
駆動モータ140は、電気モータ、固定または可変容量型油圧モータ、圧縮空気モータ、電磁気モータ、風力モータ、吸熱エンジン、または目的に適した任意のタイプのモータであってもよい。
一般的に、駆動モータ140は、モータ本体と駆動シャフト145とを有する。モータ本体は、支持構造105に固定されるように適合され、駆動シャフトは、モータ本体の外側に突き出し、駆動モータ140の内部動作の結果として回転する。
フライホイール130を駆動するために、駆動シャフト145は、機械的トランスミッション150によって、フライホイール130に運動学的に接続されてもよい。
【0016】
図1および図2に示された例では、機械的トランスミッション150は、内歯を有する歯付きギヤクラウン155と歯付きピニオン160とを備える。歯付きギヤクラウンは、フライホイール130に同軸的かつ堅固に固定され(例えば、ねじ込まれ)、歯付きピニオンは、ギヤクラウン155内に配置され、駆動シャフト145に固定される。
【0017】
しかし、機械的トランスミッション150は、他の任意のタイプのギヤによって形成されてもよく、他の任意のタイプのギヤは、直線、ヘリカル、ベベルギヤまたは他の任意のタイプの歯であってもよい。
【0018】
他の実施形態では、機械的トランスミッション150は、ベルト式トランスミッション、歯付きベルト、チェーン、ローラ、摩擦板または他の任意の適切なシステムであってもよい。
しかし、一般的には、油浴中のギヤトランスミッションであることが好ましく、当該ギヤトランスミッションは、機械的効率、潤滑性(高回転時)を高め、騒音を減少させるという利点を有する。
【0019】
また、フライホイール130および機械的トランスミッション150は、保護ケーシング165内に囲繞されていることが常に好ましく、当該保護ケーシングは、支持構造105に固定され、塵埃の侵入を防ぎ、外部ボディと可動部品との間の偶発的な接触の防止を確実にする。
保護ケーシング165はまた、油浴中での上述の潤滑システムを達成するために、ギヤを潤滑するための適切な潤滑流体(オイル)で満たされてもよい。
保護ケーシング165にはまた、適切な開口ドア、または、内部検査および保守を可能にするための他の手段が設けられてもよい。
駆動モータ140は、モータ本体を外側に残した状態で、駆動シャフト145とともにガード165に固定されてもよく、当該駆動シャフトは、機械的トランスミッション150と接続されるように内側に向けて突出する。
【0020】
図示された実施形態では、ジャイロスコープ装置100はまた、速度センサ170を備えていてもよい。当該速度センサは、フライホイール速度130(例えば、単位時間当たりの回転数)を、ジャイロスコープ装置100のオペレーションのための有り得る電子制御ユニットに送信されるべき電気信号に変換するように適合される。
【0021】
図3および図4は、ジャイロスコープ装置100の第2の実施形態を示し、これは、上述したものと全体的に同様であるが、駆動シャフト145に連結されたブレーキ175が設けられている点のみにおいて異なる。
【0022】
ブレーキは、一般的には、駆動シャフト145の自由回転を可能にする非作動構成と、ブレーキが駆動シャフト145の回転に対抗する傾向のある摩擦を発生させる作動構成との間で選択的に動作可能な装置を意味する。
【0023】
図示された例では、ブレーキ175は、必ずしもそうである必要はないが、オイルまたは乾式ディスクを備えたラメラブレーキであることが好ましい。
【0024】
このように、ブレーキ175を作動させることによって、ジャイロスコープ装置100の動作を中断することが望まれる場合に、フライホイール130の回転運動を停止させることが有利に可能になるであろう。
ブレーキの作動は、例えば電子制御ユニットによって制御される電気機械的手段に割り当てられてもよい。
より安全を期すために、これらの電気機械的手段は、電気が供給されるとブレーキ175が非作動構成に保たれ、逆に電力供給が遮断されるとブレーキ175が自動的に作動構成に入るように構成されてもよい。
【0025】
図5および図6は、ジャイロスコープ装置100の第3の変形例を示し、当該変形例は、以下に概説されるいくつかの態様に関して図1および図2に示された例とは異なる。
【0026】
主な違いは、フライホイール130が遠心力可変形状を有するフライホイールであるという事実にある。
特に、フライホイール130は、回転軸Xと同軸の支持リング180を備え、当該支持リングは、軸方向には管状体110に固定され、ベアリング135によって管状体に回転可能に連結されている。
【0027】
フライホイール130は、複数の揺動体185を更に備える。複数の揺動体は、好ましくは、全て互いに同一であり、回転軸Xのまわりに放射状に配置される。複数の揺動体の各々は、それぞれのヒンジ軸に従って、支持リング180にヒンジ接続される。
各揺動体185のヒンジ軸Yは回転軸Xと直交しており、好ましくは、各揺動体のヒンジ軸は、他の全ての揺動体185のヒンジ軸Yと同一平面上にある。
【0028】
各揺動体185は、それぞれのヒンジ軸Yに対して偏心した質量中心(重心)を有する。
この効果を得るために、各揺動体185は、カウンターウェイト190、例えば、円筒形状のカウンターウェイト、を備えていてもよい。各揺動体は、実質的にコネクティングロッドとしての形状であってもよい。カウンターウェイトは、それぞれのヒンジ軸Yに対して偏心した位置で揺動体185に固定され、カウンターウェイトは、高密度の質量を有する材料(例えば鉛)で形成されてもよい。
【0029】
このようにして、回転軸Xが実質的に鉛直に配向され、且つ、フライホイール130が静止しているとき、全ての揺動体185は初期位置(図5において実線で示される)を維持する傾向がある。初期位置では、揺動体は、下を向くように配向され、揺動体の質量中心(重心)は回転軸Xの近傍になる。
フライホイール130を回転させることによって、揺動体185が最終位置(図5において破線で示される)に達するまで揺動体を外方に旋回させる遠心力が発生する。最終位置では、揺動体185は、半径方向またはほぼ半径方向を向き、揺動体の質量中心(重心)が回転軸Xからの距離がより大きくなるように導かれる。
得られる効果は、フライホイール130が比較的低い慣性モーメント(すなわち、静止しているとき)を有することであり、それによって駆動モータ140によって提供されなければならない初期トルクが低減される。トルクは、有効なジャイロ効果を獲得するために、回転速度の関数として徐々に増加する。
【0030】
各揺動体185の初期位置から最終位置への移動は、支持リング180に固定されたリミットスイッチ192によって制限されてもよい。当該リミットスイッチは、揺動体が最終位置に到達するときに、揺動体185の対応する突出歯195を受容するように適合される。
【0031】
図示された例では、各揺動体185の初期位置から最終位置までの角度変位は約90°であるが、他の実施形態では、より小さな角度でもよいことに留意すべきである。
【0032】
図1および図2に示された解決策と、図5および図6に示された解決策との間の他の相違点は、機械的トランスミッション150が、外歯付きギヤリング200と、歯付きピニオン205とを備えることである。当該外歯付きギヤリングは、支持リング180に同軸的かつ堅固に固定される。当該歯付きピニオンは、歯付きクラウン200と噛み合い、駆動モータ140の駆動シャフト145に固定される。
【0033】
しかし、この場合においても、機械的トランスミッション150は、他の任意のタイプのものであってもよい。
【0034】
ジャイロスコープ装置100の更なる実施形態が図7および図8に示されている。この変形例では、ジャイロスコープ装置100は、単一のフライホイール130の代わりに、3つの別々のフライホイール210を備えていてもよい。当該フライホイールは、それぞれの回転軸X’に従って支持構造105に回転可能に設置される。
【0035】
例えば、各フライホイール210は、保護ケーシング165内に収容されていてもよく、それぞれの支持シャフト215に固定されていてもよい。当該支持シャフトは、それぞれのベアリング220によって保護ケーシング165に回転可能に連結され、その結果、回転軸X’と一致する中心軸まわりに回転することができる。
【0036】
前の場合と同様に、各フライホイール210は、回転軸X'に直交する方向に、外側(最大)半径を有する実質的に平坦な形状を有していてもよい。当該外側半径は、上述の回転軸X'の方向におけるフライホイールの厚さよりも大きい。
【0037】
各フライホイール130の寸法および質量、したがってその慣性モーメントは、得られるべきジャイロスコープ効果の大きさに基づいて、場合によってはジャイロスコープ装置100の全体の重量および全体の寸法を考慮して、設定および選択されてもよい。
【0038】
いずれにせよ、フライホイール210は全て、対応する回転軸X'に関して同一の慣性モーメントを有していることが好ましく、フライホイールは、互いに相互に同一平面上にあることが好ましい。
【0039】
例えば、フライホイール210は全て同一のものであってもよい。
【0040】
図示された例では、各フライホイール210は、モノリシックで固体のマスとして、例えばスチール、鋳鉄または鉛などの金属材料で作られ、回転軸X’上に重心を有する。
しかし、他の実施形態では、フライホイール210が、中空容器、例えば、環状形状から形成されてもよいことが排除されず、内部に分離隔壁を備えていてもよい。当該中空容器は、液体物質、例えば水または油で満たされる。
【0041】
フライホイール210の回転軸X'は、管状体110の中心軸Aと平行であってもよいが、中心軸Aと一致はしない。
特に、図8から明らかなように、上述のフライホイール210の回転軸X'は全て中心軸Aから等距離にあることが好ましく、上述のフライホイールの回転軸は全て、互いに角度的に等間隔になるように中心軸Aのまわりに分布配置されることが好ましい。
例えば、3つのフライホイール210の回転軸X'は、中心軸Aに対して互いから120°の角度で角度的に分離されていてもよい。
【0042】
しかし、他の実施形態では、ジャイロスコープ装置100が異なる数、例えば2つまたは3より大きな数のフライホイール210を備えていてもよいことは、排除されない。
【0043】
この実施形態のフライホイール210は、それぞれの駆動モータ225によって個別に動作されてもよい。
【0044】
例えば、各駆動モータ225は、保護ケーシング165の外側に堅固に固定されたモータ本体と、駆動シャフト230とを備えていてもよい。当該駆動シャフトは、モータ本体から突出し、それぞれのフライホイール210に機械的に接続されるように保護ケーシング165の内側に挿入される。
【0045】
この接続は、直接接続とされてもよい。すなわち、駆動シャフト230は、フライホイール210の支持シャフト215に直接的に固定されてもよく、または、任意の機械的トランスミッションを介して固定されてもよい。
【0046】
他の場合では、図7および図8に示されたジャイロスコープ装置100は、単一の駆動モータ225を備えていてもよい。当該単一の駆動モータは、適切な機械的トランスミッションによって、運動学的に接続され、したがって全てのフライホイール210を同時に動作させることができる。
【0047】
また、この実施形態では、駆動モータ225、または、各駆動モータ225は、電気モータ、固定または可変容量型油圧モータ、圧縮空気モータ、電磁気モータ、風力モータ、吸熱エンジン、または目的に適した任意のタイプのエンジンであってよい。
【0048】
駆動モータ225または各駆動モータ225からフライホイール210に運動を伝達するために使用される機械的トランスミッションは、ギヤトランスミッション(例えば、直線、ヘリカル、円錐、または、他の任意のタイプの歯)、好ましくは、油浴中のギヤトランスミッションであってもよい。あるいは、上述の機械的トランスミッションは、機械的伝動ベルト、歯付きベルト、チェーン、ローラ、摩擦板または他の任意の適切なシステムであってもよい。
【0049】
上記の実施形態のいずれか1つに準拠するジャイロスコープ装置100は、主として、負荷を移動させるための機械、例えば、リフティング機械500に設置されることが意図される。
【0050】
一般的な意味では、リフティング機械500は、概略的に、ベース構造505と、ベース構造505に接続される可動構造510とを備える。
【0051】
図9に示されるようないくつかの実施形態では、ベース構造505は、地面にしっかりと固定されるのに適したベースを備えていてもよい。
【0052】
他の実施形態、例えば、図13に示される実施形態では、ベース構造505は、移動体、例えば、トラックまたは船、に設置または搭載されてもよい。
【0053】
いずれにせよ、ベース構造505は、リフティング機械500の一部を表す。当該リフティング機械は、それに対して負荷が移動する慣性基準システムを規定する。
【0054】
一般的な方式に戻ると、可動構造510は、ラフィングアーム515を備えていてもよい。当該ラフィングアームは、少なくとも1つの所定の関節運動軸Zまわりを回転することにより揺動可能なようにベース構造505に関節接続される。関節運動軸Zは、リフティング機械500の通常の使用中、一般的には、水平方向を向く。
【0055】
関節運動軸Zまわりのラフィングアーム515の動作は、油圧ジャッキ520または他の任意の公知の作動システムに割り当てられてもよい。
【0056】
ラフィングアーム515はまた、固定式、伸縮式、関節式、または、関節および伸縮式であってもよい。
例えば、図9に示されるラフィングアーム515は伸縮自在であり、その伸長または短縮は、更なる油圧ジャッキまたは他の任意の公知の作動システムに割り当てられる。
【0057】
リフティング機械500は、器具530を更に備える。当該器具は、例えば、フック、または、移動されるべき荷物を把持する他の任意の把持部材であってもよい。
器具530は、ピボット軸Zから離れた位置において、例えば、ラフィングアーム515の自由端において、ラフィングアーム515から吊り下げられてもよい。
詳細には、器具530は、上記で示された実施形態のいずれかにおけるジャイロスコープ装置100を介して、ラフィングアーム515から吊り下げられてもよい。
このことに関して、ジャイロスコープ装置100の関節継手125は、少なくとも1つの関節運動軸BまたはCが関節運動軸Zと平行になるように、支持構造105をラフィングアーム515に接続してもよい。
このようにして、ラフィングアーム515がどのように傾斜する場合でも、支持構造105の中心軸Aは、常に、鉛直方向を実質的に向くように維持される。
【0058】
図9に示される実施形態によれば、器具530は、支持構造105の機械的接続要素115に堅固に固定されてもよい。当該器具は、例えば、必ずしもそうである必要はないが、接続フランジ120にボルト固定される。
このようにして、ジャイロスコープ装置100のフライホイール130または複数のフライホイール210を適切な回転数で回転させることによって、鉛直方向を向く支持構造105の中心軸Aを継続的に維持する傾向があるジャイロスコープ効果が決定される。
機械500によって得られる運動中、例えば、ラフィングアーム515の上昇または下降中、および/または、横方向の変位中に、このジャイロスコープ効果は、支持構造105、ひいては、器具530および関連する荷物のあり得る振動と対照をなす。
【0059】
他の実施形態、例えば、図14および図15に示される実施形態では、器具530は、ウインチ535と関連付けられてもよい。
【0060】
特に、ウインチ535は、モータ駆動のドラム540を備えていてもよい。当該ドラムの周囲には、ケーブル545、例えば、スチールケーブルが巻き付けられ、その先端に器具530が引っ掛けられる。
適切なプーリーまたはリターンローラによって、ケーブル545がジャイロスコープ装置100の管状体110内を通過するようにされてもよく、その結果、モータ駆動のドラム540の一方向または反対方向への回転に伴い、器具530が、下降位置と上昇位置との間で移動されてもよい。当該下降位置では、器具530は、ジャイロスコープ装置100の支持構造105に対して離間し、当該支持構造に対して低いレベルに位置づけられる。当該上昇位置では、器具530は、ジャイロスコープ装置100の支持構造105に接触する(図に示されるように)。
【0061】
特に、一旦上昇位置に達すると、支持構造105と器具530との間の結合は、これら2つの構成要素が互いに強固に接続し、そして、往復運動が生じないような結合となる。
このようにして、ジャイロスコープ装置100のフライホイール130または複数のフライホイール210を回転させることによって決定されるジャイロスコープ効果は、少なくとも器具530が上述の上昇位置に配置されるときに、器具530およびそれに接続される荷物を効果的に安定させることができる。
【0062】
上記で概説された一般的な特徴のおかげで、本発明は多くの異なる分野に適用され得る。
例えば、図10に示される実施形態では、器具530は、スクラップ、特に、それだけに限定されないが鉄スクラップ、を収集しおよび取り扱うのに適したオクトパスであってもよい。
図11の変形例によれば、器具530は、ばらばらの物質を収集しおよび取り扱うためのヒンジ付きバケットまたは他の任意のタイプのバケットであってもよい。
図12の実施形態では、器具530は、グリッパー、例えば、丸太または棒を一般的に収集しおよび取り扱うためのグリッパーであってもよい。
図13に示される変形例は、器具530がゴミ箱550用の把持部材であって、リフティング機械500が、廃棄物処理区画内の上述のゴミ箱550を集めて空にするために使用されることに適する例を提供する。リフティング機械は、この場合には、好ましくはトラックに設置される。
【0063】
この場合、ジャイロスコープ装置100を用いて実現される器具530の振動の低減は、自動制御電子システムのポインティングセンサによってボックス550の把持ポイントを検出する際に、より高い精度を保証する。自動制御電子システムは、この種のアプリケーションにおいて一般的に使用される。
【0064】
ジャイロスコープ装置100のこの安定化効果はまた、ボックス550を初期位置に再配置するために、ならびに、ラフィングアーム515のあり得る横方向変位中の負荷制御を改善するために、非常に重要である。
【0065】
本発明の他の重要な応用分野は、図14および図15の例に示されるような海洋リフティング機械の分野である。
特に、しかし排他的ではないが、本発明は、通常「ダビット」と呼ばれるリフティング機械500上で使用されてもよく、当該ダビットは、一般的には、ボート555を水面に置くか、あるいは、水面からボート555を回収するために使用される。
このリフティング機械500は、例えば、港の固定ドックに設置されてもよく、代替的に、大きなボートに搭載されてもよく、例えば、銛またはボートを水に入れたり回収するために搭載されてもよい。
【0066】
この場合、リフティング機械500は、移動されるべきボートに結合されるように特に設計された器具530を備えるという相違点を有する他は、上記で概説された全ての一般的な特徴を実質的に備える。
【0067】
本発明の別の応用分野は、器具530が、荷物捕捉部材である代わりに、それ自体が移動されるべき負荷の一部を規定することができる機能的部材、例えば、作業器具または照明ヘッドライトであるような分野であってもよい。
【0068】
この可能性の一例が図16乃至図18に示されており、図16乃至図18において、器具530は、照明ヘッド560を備える。
【0069】
この場合、ジャイロスコープ装置100は、支持構造105を備え、当該支持構造は、実質的にフレームのような形状であってもよく、当該支持構造は、照明ヘッド560を支持する。
【0070】
照明ビーコン560に関して反対側では、ジャイロスコープ装置100は、回転継手125を備える。当該回転継手は、支持構造105に、所定の関節軸Bのまわりの回転自由度を保証するように適合されていてもよい。
フライホイール130は、支持構造105に回転可能に連結される。当該支持構造は、フライホイール130自体の重心を通る所定の回転軸Xまわりを回転することできる。
フライホイール130は、先の実施形態について説明された全ての特徴を有していてもよい。
【0071】
ジャイロスコープ装置100のバランスを保証するために、フライホイール130の回転軸Xは、関節運動軸Bと直交していてもよく、好ましくは、(これが必須の特徴ではないとしても)関節運動軸Bと同一平面上にあってもよい。
【0072】
ジャイロスコープ装置100は、駆動モータ140を更に備える。当該駆動モータは、支持構造105に設置され、フライホイール130を回転軸Xのまわりに回転させるように適合されている。
駆動モータ140は、上述した全てのタイプのうちのものとすることができる。この場合、駆動モータは、好ましくは、非常に低電圧の電気モータであってもよい。
【0073】
駆動モータ140は、(図に示されるように)直接的な方法で、または既に前述したタイプのうちの適切な機械的トランスミッションを介して、フライホイール130に運動学的に接続されてもよい。
【0074】
フライホイール130はまた、支持構造105に固定された保護ケーシング165内に囲繞される。
【0075】
図18に示されるように、このジャイロスコープ装置100は、任意のリフティング機械500に照明ヘッド560を吊り下げるために使用されてもよい。当該リフティング機械は、一般的に、ベース構造505と、可動構造510、例えば、実質的に水平な関節運動軸Zに従ってベース構造505に関節接続されたラフィングアーム515と、を備える。
ジャイロスコープ装置100の関節継手125は、関節運動軸Bが関節運動軸Zと平行になるようにラフィングアーム515に接続されてもよい。
【0076】
このようにして、夜間作業の間、ラフィングアーム515がどのように傾斜しても、照明ヘッドランプ560が常に鉛直に維持され、移動によって影響される荷物のピックアップ点およびその下にあるエプロンの領域の正しい照明が保証される。
【0077】
非常に速くラフィングアーム515が動く場合、または、風の作用下において、照明ビーコン560は振動する傾向があり、領域の照明の不均一性および不連続性が引き起こされる。
【0078】
しかし、フライホイール130を回転させることによって、ジャイロ効果を生み出すことが有利に可能であり、当該ジャイロ効果は、上述の振動を打ち消し、照明ビーコン560をその鉛直方向に向けて安定化する。
【0079】
明らかに、上記の全てについて、当業者は、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を放棄することなく、技術的に応用可能な性質の多数の修正を行うことができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】