(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】神経障害の処置のための重水素化キサノメリンの化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/04 20060101AFI20220415BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220415BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220415BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220415BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C07D417/04 CSP
A61P43/00 111
A61K47/38
A61K47/26
A61P25/00
A61P25/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/18
A61K31/4439
A61K31/46
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549216
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(85)【翻訳文提出日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 US2020019193
(87)【国際公開番号】W WO2020172516
(87)【国際公開日】2020-08-27
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521128764
【氏名又は名称】カルナ セラピューティックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KARUNA THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】33 Arch Street, Suite 3110, Boston, MA 02110 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】デニス ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ジョージオ アッタード
(72)【発明者】
【氏名】クリフォード シュレヒト
【テーマコード(参考)】
4C063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC67
4C063DD11
4C063EE01
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB15
4C076BB31
4C076CC01
4C076DD67
4C076EE31
4C076FF31
4C076FF33
4C076FF67
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC85
4C086CB15
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA06
4C086ZA02
4C086ZA08
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZC42
4C086ZC75
(57)【要約】
式I
【化1】
の化合物及び/又はその塩が本明細書で提供され、式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、及びR
23は独立に、H及びDから選択される。R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
22、及びR
23のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮され、R19、R20、及びR21は独立に、H及びDから選択され;又はR
19、R
20、及びR
21のうちの2つは重水素で濃縮されている。これらの化合物を含む薬剤、及び中枢神経系障害を本明細書に記載の化合物及び薬剤で処置するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、及びR
23は独立に、H及びDから選択され;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
22、及びR
23のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮され、且つR
19、R
20、及びR
21は独立に、H及びDから選択され;又はR
19、R
20、及びR
21のうちの2つは重水素で濃縮されている)の化合物及び/又はその塩。
【請求項2】
式II
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は独立に、H及びDから選択され;
Rは、CH
3又はCD
3であり;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、又はR
13のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、
【化3】
【化4】
【化5】
から選択される、化合物。
【請求項4】
式IIA
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11は独立に、H及びDから選択され;
Rは、CH
3又はCD
3であり;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式IIB
【化7】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9は独立に、H及びDから選択され;
Rは、CH
3又はCD
3であり;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式IIC
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は独立に、H及びDから選択され;
Rは、CH
3又はCD
3であり;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式III
【化9】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
【化10】
から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
式IV
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
【化12】
から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
式V
【化13】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
【化14】
から選択される、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
式VI
【化15】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
【化16】
から選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式VII
【化17】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
【化18】
から選択される、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
式VIII
【化19】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
【化20】
から選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物及び/又はその塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む薬剤。
【請求項20】
5mg~300mgの前記化合物を含む、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
ムスカリン阻害剤をさらに含む、請求項20に記載の薬剤。
【請求項22】
前記ムスカリン阻害剤が塩化トロスピウムである、請求項21に記載の薬剤。
【請求項23】
10mg~150mgの塩化トロスピウムを含む、請求項22に記載の薬剤。
【請求項24】
即時放出製剤として製剤化された、請求項19~23のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項25】
徐放性製剤として製剤化された、請求項19~23のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項26】
前記化合物が制御放出製剤として製剤化され、前記塩化トロスピウムが即時放出製剤として製剤化される、請求項21又は22に記載の薬剤。
【請求項27】
単一の剤形中に5mg~300mgの前記化合物及び5mg~150mgの塩化トロスピウムを含む、請求項22に記載の薬剤。
【請求項28】
10ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項29】
20ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項30】
30ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項31】
40ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項32】
50ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項33】
75ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項34】
125ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項35】
200ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項36】
300ミリグラムの前記化合物を含む、請求項19~27のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項37】
10ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項38】
20ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項39】
30ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項40】
40ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項41】
80ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項42】
120ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項43】
150ミリグラムの塩化トロスピウムを含む、請求項27に記載の薬剤。
【請求項44】
50ミリグラムの前記化合物、10ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む単回投与製剤の形態である、請求項22に記載の薬剤。
【請求項45】
75ミリグラムの前記化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む単回投与製剤の形態である、請求項22に記載の薬剤。
【請求項46】
50ミリグラムの前記化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む単回投与製剤の形態である、請求項22に記載の薬剤。
【請求項47】
75ミリグラムの前記化合物、10ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む単回投与製剤の形態である、請求項22に記載の薬剤。
【請求項48】
前記薬学的に許容される担体がセルロース及びラクトースを含む、請求項19~47のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項49】
それを必要とする患者の疼痛又は中枢神経系障害を処置する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載の治療有効量の化合物を、前記それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項50】
前記化合物が、経口、筋肉内、経皮、頬側、又は舌下投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
中枢神経系障害が処置され、前記中枢神経系障害が、統合失調症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、精神病、及び認知欠損から選択される、請求項49又は50に記載の方法。
【請求項52】
それを必要とする患者の疼痛又は中枢神経系障害を処置する方法であって、請求項19~48のいずれか一項に記載の治療有効量の薬剤を、前記それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【請求項53】
前記薬剤が、経口、筋肉内、経皮、頬側、又は舌下投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
中枢神経系障害が処置され、前記中枢神経系障害が、統合失調症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、精神病、及び認知欠損から選択される、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
前記塩化トロスピウムが、もし存在する場合、使用されると、請求項1~18のいずれか一項に記載の化合物の使用に関連する副作用を軽減する、請求項49~54のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年2月22日に出願された米国仮特許出願第62/808,954号の優先権の利益を主張し、また、2019年11月15日に出願された米国仮特許出願第62/936,358号の優先権の利益を主張し、これらの開示は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、新規の化合物及び組成物、並びに疾患を処置するための医薬品としてのそれらの適用に関する。精神病及び統合失調症などの神経障害をヒト又は動物対象で処置する方法も提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
キサノメリン[3-(ヘキシルオキシ)-4-(1-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール]は、5つすべてのムスカリン受容体サブタイプ:
【化1】
にわたる混合ムスカリン部分アゴニストである。ムスカリンアゴニストを介してムスカリン系を活性化することは、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、運動障害、薬物中毒、疼痛、及びタウオパチー又はシヌクレイノパチーなどの神経変性を含むいくつかの疾患を処置することができる。統合失調症は、陽性症状(例えば、幻覚、妄想性思考など)、陰性症状(例えば、社会的孤立、無快感症など)、及び認知症状(例えば、情報を処理できない、作業記憶の低下など)に分けられる一連の症状によって特徴付けられる。しかしながら、ヒトの代謝プロファイル及びムスカリン受容体サブタイプ選択性の欠如は、この薬物の開発にとって問題であった。末梢の副作用を減らすために、キサノメリンは、末梢の有害事象を遮断するように末梢に制限された広域拮抗薬、トロスピウムと組み合わせてキサノメリンとして再調製され、忍容性が大幅に向上している。
【0004】
従って、本明細書に開示される特定の化合物は、薬物動態(PK)プロファイル、薬力学(PD)プロファイル、及び毒性プロファイルが改善された重水素化キサノメリンを提供する。これらの化合物を使用すると、薬物曝露の変動及び代謝物の発生率が低下する。理論に拘束されることを望むものではないが、初回通過代謝は、シトクロムp-450を介した酵素的酸化を受けやすい炭素位置でのキサノメリンの重水素化によって回避される。
【0005】
構造式I:
【化2】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、及びR
23は独立に、H及びDから選択され;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
22、及びR
23のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮され、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H及びDから選択され;又はR
19、R
20、及びR
21のうちの2つは重水素で濃縮されている)を含む化合物及び/又はその塩が本明細書に開示される。
【0006】
特定の実施形態では、化合物は、式II
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は独立に、H及びDから選択され;Rは、CH
3又はCD
3であり;R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、又はR
13のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0007】
特定の実施形態では、化合物は、式III
【化4】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0008】
特定の実施形態では、化合物は、式IV
【化5】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0009】
特定の実施形態では、化合物は、式V
【化6】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0010】
特定の実施形態では、化合物は式VI
【化7】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0011】
特定の実施形態では、化合物は、式VII
【化8】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0012】
特定の実施形態では、化合物は、式VIII
【化9】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、酒石酸キサノメリン、酒石酸キサノメリン-d
13、及び酒石酸キサノメリン-d
16を投与されたラットについての、正規化されたキサノメリン濃度(pg/mg)対時間(時単位)を示す。投与量は、mg/mL単位で実際の投与濃度に正規化した。
【
図2】
図2は、1分間当たりの活性カウント数(CPMA)で測定されたCHO細胞における[
3H]-NMS特異的結合(約14nM)を示す。
【
図3】
図3は、タンパク質1ミリグラム当たりのフェムトモル(フェムトモル/mg)に正規化された、
図2のCHO細胞における[
3H]-NMS特異的結合(約14nM)を示す。
【
図4】
図4は、ヒトムスカリン性AChR M1~M5を安定して発現する、酒石酸キサノメリン-d
13で処理されたCHO細胞におけるpERK用量応答(%FBS刺激)実験を示す(n=3~4)。
【
図5】
図5は、ヒトムスカリン性AChR M1~M5を安定して発現する、酒石酸キサノメリン-d
16で処理されたCHO細胞におけるpERK用量応答(%FBS刺激)実験を示す(n=3~4)。
【
図6】
図6は、ヒトムスカリン性AChR M1~M5を安定して発現する、アセチルコリンで処理されたCHO細胞におけるpERK用量応答(%FBS刺激)実験を示す(n=3~4)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載される開示の理解を助けるために、いくつかの用語を以下に定義する。一般に、本明細書で使用される命名法、並びに本明細書で説明される有機化学、医薬品化学、及び薬理学における実験手順は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されているものである。特段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、一般に、本開示が属する当技術分野で一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で使用される用語に複数の定義がある場合、特段の記載がない限り、このセクションの定義が優先する。
【0015】
本開示又はその実施形態に要素を導入する場合、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、及び「前記」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味するものとする。「含む(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という語は、包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味する。
【0016】
「及び/又は」という語は、2つ以上のアイテムのリストにある場合、列挙されたアイテムのいずれかを、単独で、又は列挙されたアイテムの1つ又は複数と組み合わせて使用できることを意味する。例えば、「A及び/又はB」という表現は、AとBのいずれか又は両方、即ち、Aのみ、Bのみ、又はAとBの組み合わせを意味する。「A、B、及び/又はC」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、BとCの組み合わせ、又はAとBとCの組み合わせを意味するものとする。
【0017】
値の範囲が開示され、「n1...~n2」又は「n1...とn2の間」という表記が使用され、n1及びn2は数値である場合、特段の記載がない限り、この表記は、数値自体とそれらの間の範囲を含むものとする。この範囲は、末端値の間及び末端値を含む整数又は連続値であり得る。例として、「2~6の炭素」の範囲は、炭素が整数単位であるため、2、3、4、5、及び6の炭素を含むものとする。例として、1μM、3μM、及びその間の全ての有効数字(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)を含むことを意図した「1~3μM(マイクロモル)」の範囲を比較されたい。
【0018】
「重水素濃縮」という語は、水素の代わりに分子内の所与の位置における重水素の取り込みのパーセンテージを指す。例えば、所与の位置での1%の重水素濃縮は、所与の試料内の分子の1%が指定された位置に重水素を含むことを意味する。重水素の天然に存在する分布は、約0.0156%であるため、濃縮されていない出発物質を使用して合成された化合物の任意の位置での重水素濃縮は約0.0156%である。重水素濃縮は、質量分析及び核磁気共鳴分光法などの従来の分析方法を使用して決定することができる。
【0019】
「重水素である」という語は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、及びR11又は記号「D」などの分子内の所与の位置を説明するために使用される場合、分子構造の図面における特定の位置を表すために使用される場合、指定された位置が、重水素の天然に存在する分布よりも重水素が濃縮されていることを意味する。一実施形態では、重水素濃縮は、指定された位置において約1%以上、別の場合は約5%以上、別の場合は約10%以上、別の場合は約20%以上、別の場合は約50%以上、別の場合は約70%以上、別の場合は約80%以上、別の場合は約90%以上、又は別の場合は約98%以上の重水素である。
【0020】
「同位体濃縮」という語は、元素のより一般的な同位体の代わりに、分子内の所与の位置における元素のあまり一般的でない同位体の取り込みのパーセンテージを指す。
【0021】
「同位体濃縮されていない」という語は、様々な同位体のパーセンテージが天然に存在するパーセンテージと実質的に同じである分子を指す。
【0022】
「実質的に純粋な」及び「実質的に均質な」という語は、限定されるものではないが、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴(NMR)、及び質量分析(MS)を含む標準的な分析方法によって決定されると、容易に検出可能な不純物がないように見えるほど十分に均質であること;或いは、さらなる精製が物質の物理的及び化学的特性、又は酵素活性及び生物学的活性などの生物学的及び薬理学的特性を検出可能に変化させないほど十分に純粋であることを意味する。特定の実施形態では、「実質的に純粋な」又は「実質的に均質な」は、分子の集合を指し、分子の少なくとも約50%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.5%が、標準的な分析方法によって測定すると、ラセミ混合物又はその単一の立体異性体を含む単一の化合物である。
【0023】
「約」という語は、それが修飾する数値に条件を付け、そのような値を誤差の範囲内の変動として示す。データのチャート又は表に示されている平均値の標準偏差などの誤差の範囲が記載されていない場合、「約」という語は、記載されている値を含み得る範囲、及び有効数字を考慮した、その数字の切り上げ又は切り捨てによって含まれ得る範囲を意味する。
【0024】
数字の指定がなく単独で現れるR又はR’という語は、特段の記載がない限り、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから選択される部分を指し、これらのいずれも任意に置換される。このようなR及びR’基は、本明細書で定義されるように任意に置換されると理解されるべきである。R基は、数字の指定があるかどうかにかかわらず、R、R’、及びRn(n=(1、2、3、...n))を含むすべてのR基、すべての置換基、及びすべての語は、群からの選択に関して互いに独立であると理解するべきである。変数、置換基、又は語(例えば、アリール、複素環、Rなど)が式又は一般構造で複数回現れる場合、各出現でのその定義は、他のすべての出現での定義とは無関係である。当業者であれば、特定の基が、親分子に結合し得る、又は記載されているようにいずれかの末端から元素の鎖の位置を占め得ることをさらに認識するであろう。例えば、-C(O)N(R)-などの非対称基は、炭素又は窒素のいずれかで親部分に結合し得る。
【0025】
本明細書で使用される「疾患」という語は、「障害」、「症候群」、及び「状態」(病状と同様)のすべてが、正常な機能を阻害するヒト又は動物の体又は体の一部の異常な状態を反映し、典型的には、兆候と症状を区別することによって明らかになり、且つヒト又は動物の生存期間又は生活の質を低下させるという点で、これらの語と、一般に同義であることが意図され、互換的に使用される。
【0026】
「併用療法」という語は、本開示に記載の治療状態又は障害を処置するための2つ以上の治療薬の投与を意味する。そのような投与は、例えば、一定の比率の活性成分を有する単一の投与量で、又は各活性成分についての複数の別個のカプセルで、これらの治療薬の実質的に同時の要領での同時投与を包含する。加えて、そのような投与はまた、連続的な要領での各種の治療薬の使用を包含する。いずれの場合も、治療計画は、本明細書に記載の状態又は障害の処置において、薬物の組み合わせの有益な効果を提供するであろう。
【0027】
「治療上有効な」という句は、疾患若しくは障害の処置で、又は臨床的エンドポイントの効果に関して使用される活性成分の量に条件を付けることを意図している。
【0028】
「治療上許容される」という語は、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応なしに患者の組織と接触して使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合い、且つそれらの意図された使用に効果的である化合物(又は塩、プロドラッグ、互変異性体、双性イオン型など)を指す。
【0029】
本明細書で使用される患者の「処置」への言及は、予防を含むことを意図している。処置はまた、本質的に先制的であり得る、即ち、疾患の予防を含み得る。疾患の予防は、例えば、病原体による感染の予防の場合のように、疾患からの完全な保護を含み得るか、又は疾患の進行の予防を含み得る。例えば、疾患の予防は、疾患に関連するあらゆる影響を任意のレベルで完全に抑え込むことを意味するのではなく、疾患の症状を臨床的に有意なレベル又は検出可能なレベルに予防することを意味し得る。疾患の予防はまた、疾患が後期に進行するのを防止することを意味し得る。
【0030】
「患者」という語は、一般に「対象」という語と同義であり、ヒトを含むすべての哺乳動物を含む。患者の例には、ヒト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、及びウサギなどの家畜、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウマなどのペットが含まれる。好ましくは、患者はヒトである。
【0031】
「プロドラッグ」という語は、インビボでより活性化される化合物を指す。本明細書に開示される特定の化合物は、プロドラッグとしても存在し得る。本明細書に記載の化合物のプロドラッグは、生理学的条件下で容易に化学変化して化合物を提供する構造的に修飾された形態の化合物である。加えて、プロドラッグは、エクスビボ環境で化学的又は生化学的方法によって化合物に変換することができる。例えば、プロドラッグは、適切な酵素又は化学試薬と共に経皮パッチリザーバーに入れられると、ゆっくりと化合物に変換され得る。プロドラッグは、状況によっては、化合物又は親薬物よりも投与が容易であり得るため、多くの場合有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、親薬物よりも改善された医薬組成物への溶解度を有し得る。プロドラッグの加水分解又は酸化的活性化に依存するものなど、多種多様なプロドラッグ誘導体が当技術分野で周知である。プロドラッグの例は、限定されるものではないが、エステルとして投与されるが、その後、代謝的に加水分解されて、活性実体であるカルボン酸になる化合物(「プロドラッグ」)である。追加の例には、化合物のペプチジル誘導体が含まれる。
【0032】
治療薬などの異物を、その循環系から除去するために、動物の体は、シトクロムP450酵素などの種々の酵素、又はCYP、エステラーゼ、プロテアーゼ、レダクターゼ、デヒドロゲナーゼ、及びモノアミンオキシダーゼを発現し、これらの異物と反応させて、これらの異物を腎排泄のためにより極性の高い中間体又は代謝物に変換する。医薬化合物の最も一般的な代謝反応のいくつかは、炭素-水素(C-H)結合の炭素-酸素(C-O)又は炭素-炭素(C-C)π結合のいずれかへの酸化を伴う。得られる代謝物は、生理学的条件下で安定又は不安定であり得、且つ親化合物と比較して実質的に異なる薬物動態プロファイル、薬力学プロファイル、及び急性及び長期の毒性プロファイルを有し得る。ほとんどの薬物では、そのような酸化は、一般に急速であり、最終的には複数用量又は高い日用量の投与につながる。
【0033】
活性化エネルギーと反応速度との関係は、アレニウスの式、k=Ae-Eact/RTによって定量化することができ、式中、Eactは活性化エネルギーであり、Tは温度であり、Rはモル気体定数であり、kは反応の速度定数であり、A(頻度因子)は、分子が正しい方向に衝突する確率に依存する、各反応に固有の定数である。アレニウスの式は、エネルギー障壁を克服するのに十分なエネルギーを有する分子の割合、即ち、少なくとも活性化エネルギーに等しいエネルギーを有する分子の割合は、活性化エネルギーと、特定の温度で分子が有する熱エネルギーの平均量である熱エネルギーとの比率(RT)に指数関数的に依存することを示している。
【0034】
反応における遷移状態は、元の結合がその限界まで伸びている、反応経路に沿った短命の状態(10-14秒のオーダー)である。反応の活性化エネルギーEactは、その反応の遷移状態に到達するために必要なエネルギーである。複数の工程を含む反応には、必然的にいくつかの遷移状態があり、これらの場合、反応の活性化エネルギーは、反応物と最も不安定な遷移状態との間のエネルギー差に等しい。遷移状態に達すると、分子は、元の状態に戻って元の反応物を再形成し得るか、又は新しい結合形態が生成物をもたらす。この二分法は、順方向と逆方向の両方の経路がエネルギーを放出するため可能である。触媒は、遷移状態をもたらすように活性化エネルギーを低下させることによって反応プロセスを促進する。酵素は、遷移状態を達成するために必要なエネルギーを低減する生物学的触媒の例である。
【0035】
炭素-水素結合は、本質的に共有化学結合である。このような結合は、電気陰性度が類似している2つの原子が、それらの価電子の一部を共有するときに形成され、それによって原子を結びつける力が生成される。この力又は結合強度は、定量化することができ、エネルギーの単位で表され、従って、様々な原子間の共有結合は、結合を切断する、又は2つの原子を分離するために結合に加えなければならないエネルギー量に応じて分類することができる。
【0036】
結合強度は、結合の基底状態の振動エネルギーの絶対値に正比例する。この振動エネルギーは、ゼロ点振動エネルギーとしても知られ、結合を形成する原子の質量に依存する。ゼロ点振動エネルギーの絶対値は、結合を形成する一方又は両方の原子の質量が増加するにつれて増加する。重水素(D)は、水素(H)の2倍の質量があるため、その結果、C-D結合は、対応するC-H結合よりも強くなる。C-D結合を有する化合物は、しばしばH2O中で永久に安定し、同位体研究に広く使用されている。化学反応の律速段階(即ち、遷移状態エネルギーが最も高い段階)でC-H結合が切断されると、その水素の代わりに重水素が使用されると、反応速度が低下し、プロセスが遅くなる。この現象は、重水素速度論的同位体効果(DKIE)として知られており、約1(同位体効果なし)から非常に大きな数値、例えば、50以上まで変動する可能性がある、即ち水素の代わりに重水素が使用されると、反応が50分の1以下に遅くなり得る。高いDKIE値は、不確定性原理の結果であるトンネリングとして知られる現象が一因であり得る。トンネリングは、水素原子のサイズが小さいことに起因し、陽子が関与する遷移状態が、必要な活性化エネルギーの非存在下で時々生じ得るため発生する。重水素は、より大きく、この現象が起きる可能性は統計的にはるかに低くなる。水素の代わりにトリチウムが使用されると、重水素よりも結合が強くなり、数値的に大きな同位体効果が得られる。
【0037】
1932年にUreyによって発見された重水素(D)は、水素の安定した非放射性同位体である。重水素は、純粋な形で元素から分離された最初の同位体であり、水素の2倍の質量であり、地球上の水素の総質量(この使用法では、すべての水素同位体を意味する)の約0.02%を占める。2つの重水素が1つの酸素と結合すると、酸化重水素(D2O又は「重水」)が形成される。D2Oは、H2Oのように見え、H2Oのような味がするが、物理的特性が異なる。重水素は、101.41℃で沸騰し、3.79℃で凍結する。重水素の熱容量、融解熱、気化熱、及びエントロピーはすべて、H2Oよりも高い。重水素はまた、より粘性であり、H2Oほど強力な溶媒ではない。
【0038】
純粋なD2Oがげっ歯類に与えられると、純粋なD2Oは容易に吸収され、通常は消費されたものの濃度の約80パーセントである平衡レベルに達する。毒性を誘発するのに必要な重水素の量は非常に多い。体内の水分の0%~15%もがD2Oに置き換えられた場合、動物は、健康であるが、対照(未処理)群ほど速く体重を増やすことができない。体内の水分の約15%~約20%がD2Oに置き換えられると、動物は興奮しやすくなる。体内の水分の約20%~約25%がD2Oで置換されると、動物は非常に興奮しているため、刺激されると頻繁に痙攣する。皮膚病変、足及び鼻口部の潰瘍、並びに尾の壊死が現れる。動物はまた、非常に攻撃的になり;雄はほとんど手に負えなくなる。体内の水分の約30%がD2Oに置き換えられると、動物は食べることを拒否し、昏睡状態になる。動物の体重は急激に減少し、動物の代謝率は通常よりはるかに低くなり、約30~約35%のD2Oへの置換で死に至る。D2Oによって以前の体重の30%超が失われない限り、効果は可逆的である。研究により、D2Oの使用は癌細胞の成長を遅らせ、特定の抗腫瘍薬の細胞毒性を高め得ることも示された。
【0039】
トリチウム(T)は、水素の放射性同位体であり、研究、核融合炉、中性子発生器、及び放射性医薬品で使用される。トリチウムをリン光体と混合すると、連続光源が提供され、これは、腕時計、コンパス、ライフル照準器、及び出口標識で一般的に使用されている技術である。トリチウムは、1934年にRutherford、Oliphant、及びHarteckによって発見され、宇宙線がH2分子と反応するときに上層大気で自然に生成される。トリチウムは、原子核に2つの中性子を持ち、原子量が3に近い水素原子である。トリチウムは、環境中で非常に低濃度で自然発生し、最も一般的には無色無臭の液体であるT2Oとして見られる。トリチウムはゆっくりと崩壊し(半減期=12.3年)、ヒトの皮膚の外層に浸透できない低エネルギーのベータ粒子を放出する。内部曝露は、この同位体に関連する主な危険であるが、大量に摂取しなければ重大な健康リスクを引き起こさない。重水素と比較して、より少ない量のトリチウムの摂取でも危険なレベルに達する。
【0040】
薬物動態(PK)プロファイル、薬力学(PD)プロファイル、及び毒性プロファイルを改善するための医薬品の重水素化は、以前にいくつかのクラスの薬物で実証されている。例えば、DKIEは、おそらくトリフルオロアセチルクロリドなどの反応性種の生成を制限することによって、ハロタンの肝毒性を低減するために使用された。しかしながら、この方法はすべての薬物クラスに適用できるとは限らない。例えば、重水素の取り込みは、代謝スイッチングを引き起こす可能性があり、活性化フェーズI酵素(例えば、シトクロムP450 3A4)からのオフ速度が速い酸化中間体を生じさせることさえある。代謝スイッチングの概念は、キセノゲンは、フェーズI酵素によって隔離されると、一時的に結合し、化学反応(酸化など)の前に様々なコンフォメーションで再結合し得ると主張している。この仮説は、多くのフェーズI酵素の比較的巨大なサイズの結合ポケット及び多くの代謝反応の雑多な性質によって裏付けられている。代謝スイッチングは、既知の代謝物及びまったく新しい代謝物の異なる割合をもたらす可能性がある。この新しい代謝プロファイルは毒性を与え得る。そのような落とし穴は自明ではなく、これまでどの薬物クラスでも事前に十分に予測可能ではなかった。
【0041】
キサノメリンは、前臨床試験で有望な治療プロファイルを示した機能選択的M1/M4アゴニストである(Shannon et al.、1994)。キサノメリンの炭素-水素結合は、水素同位体の天然分布、即ち、1H又はプロチウム(約99.9844%)、2H又は重水素(約0.0156%)、及び3H又はトリチウム(1018プロチウム原子当たり約0.5~67トリチウム原子の範囲)を含む。重水素取り込みレベルの増加は、天然に存在するレベルの重水素を有する化合物と比較して、そのようなムスカリンアゴニストの薬物動態プロファイル、薬理学プロファイル、及び/又は毒物学的プロファイルに影響を与え得る検出可能な速度論的同位体効果(KIE)をもたらし得る。
【0042】
キサノメリンは、ヒトでは肝臓によって代謝される可能性が高い(Nicholas D et al., 2001)。分子上の他の部位もまた、薬理学/毒物学がまだ知られていない代謝物をもたらす変換を受け得る。これらの代謝物の生成を制限することは、そのような薬物の投与の危険性を低減する可能性があり、投与量の増加及び付随する有効性の増加さえも可能にし得る。これらの変換はすべて、多様な形で発現される酵素を介して起こり得るため、患者間のばらつきが悪化する。さらに、多発性硬化症などの障害は、対象が24時間体制で長期間投薬されている場合に最もよく処置される。前述の理由により、半減期の長い薬剤は、これらの問題を軽減し、より大きな効果とコスト削減をもたらす可能性が高い。
【0043】
様々な重水素化パターンを使用して、(a)不要な代謝物を低減又は排除する、(b)親薬物の半減期を増加させる、(c)所望の効果を達成するために必要な投与回数を減らす、(d)所望の効果を達成するために必要な投与量を減らす、(e)活性代謝物が形成された場合、その形成を増加させる、且つ/又は(f)特定の組織における有害代謝物の生成を減少させる、且つ/又は多剤併用が意図的であるかどうかにかかわらず、多剤併用のためにより効果的な薬物及び/又はより安全な薬物を開発することができる。重水素化アプローチは、様々な酸化及びラセミ化メカニズムを介して代謝を遅らせる可能性が高い。
【0044】
一態様では、構造式I:
【化10】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
19、R
20、R
21、R
22、及びR
23は独立に、H及びDから選択され;且つ
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16、R
17、R
18、R
22、及びR
23のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮され、且つR
19、R
20、及びR
21は独立に、H及びDから選択され;又はR
19、R
20、及びR
21のうちの2つは重水素で濃縮されている)
を有する化合物及び/又はその塩が本明細書に開示される。
【0045】
特定の実施形態では、化合物は、式II
【化11】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、及びR
13は独立に、H及びDから選択され;Rは、CH
3又はCD
3であり;且つR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、又はR
13のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0046】
特定の実施形態では、化合物は、式IIA
【化12】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11は独立に、H及びDから選択され;Rは、CH
3又はCD
3であり;且つR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、及びR
11のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0047】
特定の実施形態では、化合物は、式IIB
【化13】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9は独立に、H及びDから選択され;Rは、CH
3又はCD
3であり;且つR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、及びR
9のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0048】
特定の実施形態では、化合物は、式IIC
【化14】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7は独立に、H及びDから選択され;Rは、CH
3又はCD
3であり;且つR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、及びR
7のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0049】
特定の実施形態では、化合物は、
【化15】
【化16】
【化17】
から選択される。
【0050】
特定の実施形態では、化合物は、
【化18】
から選択される。
【0051】
特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれDであり、且つRはCH3である。
【0052】
特定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、及びR5はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R1、R2、及びR3はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R1、R2、及びR3はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R8、R9、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R10、R11、R12、及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R12及びR13はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R12及びR13はそれぞれDであり、且つRはCD3である。
【0053】
特定の実施形態では、R4及びR5はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R4及びR5はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R6、及びR7はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R6及びR7はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R8及びR9はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R8及びR9はそれぞれDであり、且つRはCD3である。特定の実施形態では、R10及びR11はそれぞれDであり、且つRはCH3である。特定の実施形態では、R10及びR11はそれぞれDであり、且つRはCD3である。
【0054】
特定の実施形態では、化合物は、式III
【化19】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0055】
特定の実施形態では、化合物は、
【化20】
から選択される。
【0056】
特定の実施形態では、化合物は、式IV
【化21】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0057】
特定の実施形態では、化合物は、
【化22】
から選択される。
【0058】
特定の実施形態では、化合物は、式V
【化23】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択され;且つR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21のうちの少なくとも1つは重水素で濃縮されている)及び/又はその塩を含む。
【0059】
特定の実施形態では、化合物は、
【化24】
から選択される。
【0060】
特定の実施形態では、化合物は、式VI
【化25】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0061】
特定の実施形態では、化合物は、
【化26】
から選択される。
【0062】
特定の実施形態では、化合物は、式VII
【化27】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0063】
特定の実施形態では、化合物は、
【化28】
から選択される。
【0064】
特定の実施形態では、化合物は、式VIII
【化29】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
19、R
20、及びR
21は独立に、H又はDから選択される)及び/又はその塩を含む。
【0065】
特定の実施形態では、化合物は、
【化30】
から選択される。
【0066】
本開示はまた、それを必要とする患者の中枢神経系障害を処置する方法を提供し、この方法は、それを必要とする患者に本明細書に記載の治療有効量の薬剤を投与することを含む。特定の実施形態では、薬剤は経口投与される。特定の実施形態では、塩化トロスピウムの使用は、存在する場合、本明細書に記載の化合物又は組成物の使用に関連する副作用を軽減する。
【0067】
別の実施形態では、Dとして表される位置の少なくとも1つは独立に、約1%以上、約5%以上、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、又は約98%以上の重水素濃縮を有する。
【0068】
さらなる実施形態では、前記化合物は、実質的に単一のエナンチオマーであり、約90重量%以上の(-)-エナンチオマーと約10重量%以下の(+)-エナンチオマーとの混合物、約90重量%以上の(+)-エナンチオマーと約10重量%以下の(-)-エナンチオマー、実質的に個々のジアステレオマーとの混合物、又は約90重量%以上の個々のジアステレオマーと約10重量%以下のその他のジアステレオマーとの混合物である。
【0069】
特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約60重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約40重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約70重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約30重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約80重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約20重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約90重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約10重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約95重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約5重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約99重量%以上の(-)-エナンチオマー、及びその化合物の約1重量%以下の(+)-エナンチオマーを含む。
【0070】
特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約60重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約40重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約70重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約30重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約80重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約20重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約90重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約10重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約95重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約5重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。特定の実施形態では、本明細書に開示される化合物は、その化合物の約99重量%以上の(+)-エナンチオマー、及びその化合物の約1重量%以下の(-)-エナンチオマーを含む。
【0071】
本明細書に開示される重水素化化合物はまた、限定されるものではないが、炭素の13C又は14C、窒素の15N、及び酸素の17O又は18Oを含む、他の元素のあまり一般的ではない同位体を含み得る。
【0072】
一実施形態では、本明細書に開示される重水素化化合物は、対応する非同位体濃縮分子の有益な側面を維持する一方で、最大耐量を実質的に増加させ、毒性を低下させ、半減期(T1/2)を増加させ、最小有効量(MED)の最大血漿濃度(Cmax)を低下させ、有効量を低下させ、したがって機序に関連しない毒性を減らし、且つ/又は薬物間相互作用の可能性を低下させる。
【0073】
同位体水素は、取り込み速度を事前に決定する重水素化試薬を使用する合成技術によって;及び/又は取り込み速度が平衡条件によって決まり、反応条件によって大きく変動し得る交換技術によって本明細書に開示されるように本明細書に開示される化合物の化合物に導入することができる。トリチウム又は重水素が既知の同位体含有量のトリチウム化又は重水素化試薬によって直接且つ特異的に挿入される合成技術は、トリチウム又は重水素の存在量を多くし得るが、必要な化学的性質によって制限され得る。加えて、使用される合成反応の程度に応じて、標識される分子を変更することができる。一方、交換技術は、トリチウム又は重水素の取り込みを低下させる可能性があり、多くの場合、同位体は分子上の多くの部位に分布し得るが、個別の合成工程を必要とせず、標識されている分子の構造を破壊する可能性が低いという利点を提供する。同位体水素は、取り込み速度を事前に決定する重水素化試薬を使用する合成技術によって、及び/又は取り込み速度が平衡条件によって決まり、反応条件によって大きく変動し得る交換技術によって有機分子に導入することができる。トリチウム又は重水素が既知の同位体含有量のトリチウム化又は重水素化試薬によって直接且つ特異的に挿入される合成技術は、トリチウム又は重水素の存在量を多くし得るが、必要な化学的性質によって制限され得る。加えて、使用される合成反応の程度に応じて、標識される分子を変更することができる。
【0074】
本明細書に開示される化合物は、“Stereochemistry of Carbon Compounds”Eliel and Wilen,John Wiley & Sons,New York,1994,pp.1119-1190に記載されているように、1つ又は複数のキラル中心、キラル軸、及び/又はキラル平面を含み得ることを理解されたい。このようなキラル中心、キラル軸、及びキラル平面は、(R)又は(S)配置のいずれか、又はそれらの混合であり得る。
【0075】
少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を含む組成物を特徴づけるための別の方法は、偏光ビームに対する組成物の効果によるものである。平面偏光ビームがキラル化合物の溶液を通過すると、光が出射する偏光面が元の平面に対して回転する。この現象は、旋光性として知られ、偏光面を回転させる化合物は旋光性であると言われる。化合物の一方のエナンチオマーは偏光ビームを一方向に回転させ、もう一方のエナンチオマーは光線を反対方向に回転させる。偏光を時計回りの方向に回転させるエナンチオマーは(+)エナンチオマーであり、偏光を反時計回りの方向に回転させるエナンチオマーは(-)エナンチオマーである。本明細書に開示される化合物の(+)及び/又は(-)エナンチオマーを0~100%含有する組成物は、本明細書に記載の組成物の範囲内に含まれる。
【0076】
本明細書に開示される化合物がアルケニル基又はアルケニレン基を含む場合、本化合物は、幾何シス/トランス(又はZ/E)異性体の1つとして、又は混合物として存在し得る。構造異性体が低エネルギー障壁を介して相互変換可能である場合、本明細書に開示される化合物は、単一の互変異性体又は互変異性体の混合物として存在し得る。これは、例えば、イミノ基、ケト基、又はオキシム基を含む、本明細書に開示される化合物におけるプロトン互変異性形態;又は芳香族部分を含む化合物におけるいわゆる原子価互変異性形態をとり得る。従って、単一の化合物が複数のタイプの異性を示し得る。
【0077】
本明細書に開示される化合物は、単一のエナンチオマー又は単一のジアステレオマーなどの鏡像異性的に純粋であり得るか、又はエナンチオマーの混合物、ラセミ混合物、若しくはジアステレオマー混合物などの立体異性体混合物であり得る。従って、当業者は、その(R)型の化合物の投与が、インビボでエピマー化を受ける化合物では、その(S)型の化合物の投与と同等であることを認識するであろう。個々のエナンチオマーの調製/分離のための従来の技術には、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は、例えばキラルクロマトグラフィー、再結晶、分解、ジアステレオマー塩形成、若しくはジアステレオマー付加物への誘導体化とそれに続く分割を使用するラセミ体の分割が含まれる。
【0078】
本明細書に開示される化合物は、治療上許容される塩として存在し得る。本開示は、酸付加塩を含む塩の形態で上記列挙された化合物を含む。適切な塩には、有機酸と無機酸の両方で形成された塩が含まれる。このような酸付加塩は、通常は薬学的に許容される。しかしながら、薬学的に許容されない塩である塩は、問題の化合物の調製及び精製において有用であり得る。塩基性付加塩も形成することができ、塩基性付加塩は薬学的に許容され得る。
【0079】
本明細書で使用される「治療上許容される塩」という語は、水溶性又は油溶性又は分散性であり、本明細書で定義されるように治療上許容される、本明細書に開示される化合物の塩又は双性イオン型を表す。この塩は、化合物の最終的な分離及び精製中に調製する、又は遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって別々に調製することができる。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヒプル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、及びウンデカン酸塩が含まれる。また、本明細書に開示される化合物中の塩基性基は、塩化メチル、塩化エチル、塩化プロピル、及び塩化ブチル、臭化物、及びヨウ化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、及び硫酸ジアミル;塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ミリスチル、及び塩化ステリル、臭化物、及びヨウ化物;臭化ベンジル及び臭化フェネチルで四級化することができる。治療上許容される付加塩を形成するために使用できる酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、並びにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸などの有機酸が含まれる。塩はまた、化合物をアルカリ金属又はアルカリ土類イオンと配位させることによっても形成することができる。従って、本開示は、本明細書に開示される化合物のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩などを企図する。
【0080】
塩基性付加塩は、カルボキシ基を、金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩などの適切な塩基と、又はアンモニア若しくは有機一級、二級、若しくは三級アミンと反応させることによって化合物の最終的な分離及び精製中に調製することができる。治療上許容される塩のカチオンには、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、並びに非毒性の第四級アミンカチオン、例えば、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N、N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N、N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミンが含まれる。塩基付加塩の形成に有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、及びピペラジンが含まれる。
【0081】
化合物の塩は、遊離塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって形成することができる。
【0082】
本明細書に開示される化合物はまた、本明細書に開示される化合物の機能的誘導体であり、且つインビボで親化合物に容易に変換可能であるプロドラッグとして設計することができる。プロドラッグは、状況によっては、親化合物よりも投与が容易であり得るため、多くの場合有用である。プロドラッグは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親化合物はそうではない。プロドラッグはまた、親化合物よりも高い医薬組成物への溶解度を有し得る。プロドラッグは、酵素プロセス及び代謝加水分解を含む様々な機序によって親薬物に変換することができる。Harper,Progress in Drug Research 1962,4,221-294;Morozowich et al.in“Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,”Roche Ed.,APHA Acad.Pharm.Sci.1977;“Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,”Roche Ed.,APHA Acad.Pharm.Sci.1987;“Design of Prodrugs,”Bundgaard,Elsevier,1985;Wang et al.,Curr.Pharm.Design 1999,5,265-287;Pauletti et al.,Adv.Drug.Delivery Rev.1997,27,235-256;Mizen et al.,Pharm.Biotech.1998,11,345-365;Gaignault et al.,Pract.Med.Chem.1996,671-696;Asgharnejad in “Transport Processes in Pharmaceutical Systems,”Amidon et al.,Ed.,Marcell Dekker,185-218,2000;Balant et al.,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.1990,15,143-53;Balimane and Sinko,Adv. Drug Delivery Rev.1999,39,183-209;Browne,Clin.Neuropharmacol.1997,20,1-12;Bundgaard,Arch.Pharm.Chem.1979,86,1-39;Bundgaard,Controlled Drug Delivery 1987,17,179-96;Bundgaard,Adv.Drug Delivery Rev.1992,8,1-38;Fleisher et al.,Adv.Drug Delivery Rev.1996, 19,115-130;Fleisher et al.,Methods Enzymol.1985,112,360-381;Farquhar et al.,J.Pharm.Sci.1983,72,324-325;Freeman et al.,J.Chem.Soc.,Chem.Commun.1991,875-877;Friis and Bundgaard,Eur.J.Pharm.Sci.1996,4,49-59;Gangwar et al.,Des.Biopharm.Prop.Prodrugs Analogs,1977,409-421;Nathwani and Wood,Drugs 1993,45,866-94;Sinhababu and Thakker,Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,241-273;Stella et al.,Drugs 1985,29,455-73;Tan et al.,Adv.Drug Delivery Rev.1999,39,117-151;Taylor,Adv.Drug Delivery Rev.1996,19,131-148;Valentino and Borchardt, Drug Discovery Today 1997,2,148-155;Wiebe and Knaus,Adv.Drug Delivery Rev.1999,39,63-80;Waller et al.,Br.J.Clin.Pharmac.1989,28,497-507を参照されたい。
【0083】
開示される化合物は、生の化学物質として投与することができるが、それらを医薬製剤として提供することも可能である。従って、本明細書では、本明細書に開示される特定の化合物の1つ又は複数、又はそれらの1つ又は複数の薬学的に許容される塩、エステル、プロドラッグ、アミド、若しくは溶媒和物を、その1つ又は複数の薬学的に許容される担体及び任意の1つ又は複数の他の治療成分と共に含む医薬製剤が提供される。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容される」でなければならない。適切な製剤は、選択される投与経路によって決まる。周知の技術、担体、及び賦形剤のいずれも、当技術分野で適切であるように、且つ理解されているように使用することができる。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、粉末化、乳化、カプセル化、捕捉、又は圧縮プロセスによって、当技術分野で知られている任意の方法で製造することができる。
【0084】
製剤には、経口、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、及び髄内を含む)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、及び局所(皮膚、頬、舌下、及び眼内を含む)投与に適したものが含まれるが、最適な経路は、例えば、レシピエントの状態及び障害によって異なり得る。製剤は、便利な単位剤形で提供することができ、薬学の技術における周知の方法のいずれかによって調製することができる。典型的には、これらの方法は、本明細書に開示される化合物又はその薬学的に許容される塩、エステル、アミド、プロドラッグ、若しくは溶媒和物(「活性成分」)を、1つ又は複数の副成分を構成する担体と結合させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体又は細かく分割された固体担体、又はその両方と均一且つ密接に結合させ、次いで、必要に応じて、生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0085】
経口投与に適した本明細書に開示される化合物の製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、カシェ、又は錠剤などの個別の単位として;粉末又は顆粒として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルジョン若しくは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。活性成分は、ボーラス、舐剤、又はペーストとして提供することもできる。
【0086】
経口的に使用することができる医薬調製物には、錠剤、ゼラチンから形成されたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどの可塑剤から形成された柔らかく密封されたカプセルが含まれる。錠剤は、圧縮又は成形によって、任意に1つ又は複数の補助成分を用いて製造することができる。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を、任意に結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑剤、界面活性剤、又は分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿潤された粉末化合物の混合物を適切な機械で成形することによって形成することができる。錠剤は、任意にコーティングする、又は切れ目を入れることができ、且つその中の活性成分の徐放又は制御放出を提供するように製剤することができる。経口投与用のすべての製剤は、そのような投与に適した投与量でなければならない。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び任意の安定剤と混合した活性成分を含み得る。ソフトカプセルでは、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。加えて、安定剤を加えることができる。糖衣錠コアには適切なコーティングが施されている。この目的のために、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を任意に含み得る濃縮糖溶液を使用することができる。染料又は色素を、識別のため、又は活性化合物投与の様々な組み合わせを特徴づけるために錠剤若しくは糖衣錠コーティングに添加することができる。
【0087】
特定の実施形態では、単一の剤形は、酒石酸塩としての50mgのキサノメリン及び10mgの塩化トロスピウムを含む。遊離塩基としての50mgのキサノメリンが約76mgの酒石酸キサノメリンに相当するため、そのような製剤中の活性成分の比率は約7.6対1である。
【0088】
化合物は、注射、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与用に製剤することができる。注射用製剤は、防腐剤が添加された単位剤形、例えば、アンプル又は複数回投与容器で提供することができる。組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又は乳濁液などの形態をとることができ、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの配合剤(formulatory agent)を含み得る。製剤は、単位用量又は複数用量の容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提示することができ、粉末形態で、又は使用直前に滅菌液体担体、例えば、生理食塩水若しくは無菌のパイロジェンフリー水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即席注射液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製することができる。
【0089】
非経口投与用の製剤には、製剤を意図されたレシピエントの血液と等張にする、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、及び溶質を含み得る活性化合物の水性及び非水性(油性)滅菌注射溶液;並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含み得る。任意に、懸濁液はまた、化合物の溶解度を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする適切な安定剤又は薬剤を含み得る。
【0090】
前述の製剤に加えて、本化合物は、デポー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下若しくは筋肉内)又は筋肉内注射によって投与することができる。従って、例えば、本化合物は、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容可能な油中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂を用いて、又は難溶性の誘導体として、例えば、難溶性の塩として製剤化することができる。
【0091】
口腔内又は舌下投与の場合、組成物は、従来の方法で製剤化される錠剤、ロゼンジ、トローチ、又はゲルの形態をとることができる。そのような組成物は、スクロース及びアカシア又はトラガカントなどのフレーバーベースの活性成分を含み得る。
【0092】
化合物はまた、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、坐剤又は停留浣腸などの直腸組成物に製剤化することもできる。
【0093】
本明細書に開示される特定の化合物は、局所的に、即ち非全身投与によって投与することができる。これには、本明細書に開示される化合物の表皮又は頬腔の外部への適用、及び化合物が血流に有意に侵入しないように、そのような化合物を耳、眼、及び鼻に点眼することが含まれる。対照的に、全身投与は、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、及び筋肉内投与を指す。
【0094】
局所投与に適した製剤には、ゲル、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏、又はペーストなどの皮膚を介して炎症部位に浸透するのに適した液体又は半液体製剤、及び眼、耳、又は鼻への投与に適した点眼剤が含まれる。局所投与用の活性成分は、例えば、製剤の0.001%~10%w/w(重量)を構成し得る。特定の実施形態では、活性成分は、10%w/wも構成し得る。他の実施形態では、活性成分は、5%w/w未満を構成し得る。特定の実施形態では、活性成分は、2%w/w~5%w/wを構成し得る。他の実施形態では、活性成分は、製剤の0.1%~1%w/wを構成し得る。
【0095】
吸入による投与のために、化合物は、吹送器、ネブライザー加圧パック、又はエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から好都合に送達することができる。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを設けることによって決定することができる。別法では、吸入又は吹送による投与の場合、化合物は、乾燥粉末組成物、例えば、化合物と、ラクトース又はデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物であり得る。粉末組成物は、単位剤形で、例えば、吸入器又は吹送器の助けを借りて粉末を投与することができるカプセル、カートリッジ、ゼラチン、又はブリスターパックで提供することができる。
【0096】
好ましい単位投与製剤は、本明細書で以下に記載されるような有効用量又はその適切な割合の活性成分を含む製剤である。
【0097】
特に上で述べた成分に加えて、上記の製剤は、当該製剤の種類に関して当技術分野で従来型の他の薬剤を含み得、例えば、経口投与に適した製剤は、香味剤を含み得る。
【0098】
請求される組み合わせを投与する前に、患者は、1~14日間の導入期間を有し得、その期間中に塩化トロスピウムが単独で与えられる。一実施形態では、塩化トロスピウムは、体内に塩化トロスピウムが蓄積するように、又は塩化トロスピウムが定常状態の曝露レベルに到達若しくは接近するように、キサノメリンを投与する前に1つ又は複数の投与期間にわたって投与される。この蓄積、又は塩化トロスピウムのより高い曝露レベルは、脳外のムスカリン受容体の遮断を増強し、キサノメリンが投与されたときの有害事象を低減する。別の実施形態では、塩化トロスピウムは、キサノメリンの1日以上前に投与される。
【0099】
様々な時間のかかる資源集約的な方法は、キサノメリンと塩化トロスピウムとの組み合わせの有効性を実証した。例えば、動物モデルは、薬理学的モデル(例えば、ケタミンモデル)と遺伝子モデル(例えば、DISC1マウス)の両方を含み、統合失調症の新しい治療法の有効性を実証している。同様に、げっ歯類、イヌ、及び非ヒト霊長類を含む動物モデルは、薬理作用物質の副作用プロファイルを実証している。動物モデルは、ヒトの実験的代理であるが、ヒトと動物との間の生理学的な相違の欠如に難儀し得るため、ヒトの実験、特に中枢神経系障害に対する予測力が限定され得る。別法では、開示される組み合わせは、人々の管理された臨床試験で試すことができる。患者の自己報告に基づく標準的な測定は、消化管の不快感などの様々な副作用を評価するために当業者が使用することができる。別の例として、客観的な生理学的測定(例えば、EKG)も当業者が使用することができる。簡易精神症状評価尺度(BPRS:Brief Psychiatric Rating Scale)、陽性及び陰性症状尺度(PANSS:Positive and Negative Syndrome Scale)、及び臨床全般印象度(CGI:Clinical Global Impression)を含む統合失調症の症状を評価するための一連の標準的な尺度も開発された。典型的には、臨床試験は、二重盲検法で行われ、一方の患者群は不活性なプラセボを摂取し、他方の患者群は積極的な介入を受ける。
【0100】
本開示はまた、本明細書に記載の化合物及び/又はその塩及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む薬剤を提供する。特定の実施形態では、薬剤は、5mg~300mgの化合物、例えば、5mg~10mg、10mg~15mg、15mg~20mg、20mg~25mg、25mg~30mg、30mg~35mg、35mg~40mg、40mg~45mg、45mg~50mg、50mg~55mg、55mg~60mg、60mg~65mg、65mg~70mg、70mg~75mg、75mg~80mg、80mg~85mg、85mg~90mg、90mg~95mg、95mg~100mg、100mg~105mg、105mg~110mg、110mg~115mg、115mg~120mg、120mg~125mg、125mg~130mg、130mg~135mg、135mg~140mg、140mg~145mg、145mg~150mg、150mg~155mg、155mg~160mg、160mg~165mg、165mg~170mg、170mg~175mg、175mg~180mg、180mg~185mg、185mg~190mg、190mg~195mg、195mg~200mg、200mg~205mg、205mg~210mg、210mg~215mg、215mg~220mg、220mg~225mg、225mg~230mg、230mg~235mg、235mg~240mg、240mg~245mg、245mg~250mg、250mg~255mg、255mg~260mg、260mg~265mg、265mg~270mg、270mg~275mg、275mg~280mg、280mg~285mg、285mg~290mg、290mg~295mg、又は295mg~300mgの化合物を含む。
【0101】
特定の実施形態では、薬剤は、ムスカリン阻害剤をさらに含む。特定の実施形態では、ムスカリン阻害剤は、塩化トロスピウムである。特定の実施形態では、薬剤は、5mg~150mgの塩化トロスピウム、例えば、5mg~10mg、10mg~15mg、15mg~20mg、20mg~25mg、25mg~30mg、30mg~35mg、35mg~40mg、40mg~45mg、45mg~50mg、50mg~55mg、55mg~60mg、60mg~65mg、65mg~70mg、70mg~75mg、75mg~80mg、80mg~85mg、85mg~90mg、90mg~95mg、95mg~100mg、100mg~105mg、105mg~110mg、110mg~115mg、115mg~120mg、120mg~125mg、125mg~130mg、130mg~135mg、135mg~140mg、140mg~145mg、又は145mg~150mgの塩化トロスピウムを含む。
【0102】
特定の実施形態では、薬剤は、即時放出製剤として製剤化される。特定の実施形態では、薬剤は、制御放出製剤として製剤化される。特定の実施形態では、薬剤は、制御放出製剤として製剤化され、塩化トロスピウムは、即時放出製剤として製剤化される。
【0103】
特定の実施形態では、薬剤は、単一の剤形中に25mg~150mgの化合物及び10mg~40mgの塩化トロスピウムを含む。特定の実施形態では、薬剤は、単一の剤形中に50mg~150mgの化合物及び10mg~40mgの塩化トロスピウムを含む。特定の実施形態では、薬剤は、50ミリグラムの化合物を含む。特定の実施形態では、薬剤は、75ミリグラムの化合物を含む。特定の実施形態では、薬剤は、10ミリグラムの塩化トロスピウムを含む。特定の実施形態では、薬剤は、20ミリグラムの塩化トロスピウムを含む。特定の実施形態では、薬剤は、本質的に50ミリグラムの化合物、10ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体からなる単回投与製剤(single dosage formulation)の形態である。
【0104】
特定の実施形態では、薬剤は、75ミリグラムの化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬剤は、50ミリグラムの化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬剤は、75ミリグラムの化合物、10ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、セルロース及びラクトースを含む。
【0105】
特定の実施形態では、薬剤は、125ミリグラムの化合物、30ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬剤は、100ミリグラムの化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬剤は、125ミリグラムの化合物、20ミリグラムの塩化トロスピウム、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体から本質的になる単回投与製剤の形態である。特定の実施形態では、薬学的に許容される担体は、セルロース及びラクトースを含む。
【0106】
請求される組み合わせを投与する前に、患者は、1~14日間の導入期間を有し得、その期間中に塩化トロスピウムが単独で与えられる。一実施形態では、塩化トロスピウムは、体内に塩化トロスピウムが蓄積するように、又は塩化トロスピウムが定常状態の曝露レベルに到達若しくは接近するように、重水素化キサノメリンを投与する前に1つ又は複数の投与期間にわたって投与される。この蓄積、又は塩化トロスピウムのより高い曝露レベルは、脳外のムスカリン受容体の遮断を増強し、重水素化キサノメリンが投与されたときの有害事象を低減する。別の実施形態では、塩化トロスピウムは、重水素化キサノメリンの1日以上前に投与される。
【0107】
一実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に6回患者に投与される。別の実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に5回患者に投与される。別の実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に4回患者に投与される。一実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に3回患者に投与される。別の実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に2回患者に投与される。別の実施形態では、重水素化キサノメリン及び塩化トロスピウムは、24時間の期間中に1回患者に投与される。
【0108】
一実施形態では、塩化トロスピウムの徐放性製剤は、重水素化キサノメリンと組み合わせて使用される。別の実施形態では、徐放性塩化トロスピウムは、24時間の期間中に1回~5回患者に投与される。一実施形態では、徐放性塩化トロスピウムは、24時間の期間中に1回~3回投与される。別の実施形態では、5ミリグラム~400ミリグラムの徐放性塩化トロスピウムが、24時間の期間中に使用される。一実施形態では、20ミリグラム~200ミリグラムの徐放性塩化トロスピウムが、24時間の期間中に使用される。
【0109】
一実施形態では、250mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。一実施形態では、225mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。一実施形態では、225mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、100mgの重水素化キサノメリン及び20mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、125mgの重水素化キサノメリン及び20mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、125mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、125mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、200mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、200mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、250mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、250mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、300mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、300mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、300mgの重水素化キサノメリン及び120mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、300mgの重水素化キサノメリン及び150mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。
【0110】
一実施形態では、115mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、50mgの重水素化キサノメリン及び20mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、60mgの重水素化キサノメリン及び20mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、60mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、60mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、100mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、100mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、125mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、125mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、150mgの重水素化キサノメリン及び40mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、150mgの重水素化キサノメリン及び80mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、150mgの重水素化キサノメリン及び120mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。別の実施形態では、150mgの重水素化キサノメリン及び150mgの塩化トロスピウムが、24時間以内に患者に投与される。
【0111】
より少ない投与量で処置を開始することができる。その後、治療効果と副作用のバランスがとれるまで、投与量を少しずつ増やすことができる。対象が処置されている間、患者の健康は、処置期間中の所定の時間に1つ又は複数の関連する指標を測定することによって監視することができる。処置は、化合物、量、投与時間、及び製剤を含め、そのようなモニタリングに従って調整することができる。同じパラメータを測定することによって患者を定期的に再評価して、改善を決定することができる。投与される開示化合物、及び場合によっては投与時間の調整は、これらの再評価に基づいて行うことができる。
【0112】
特定の実施形態では、単一剤形は、50mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び20mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、50mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び10mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、75mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び20mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、75mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び10mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、125mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、125mgの重水素化キサノメリン遊離塩基及び40mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。
【0113】
特定の実施形態では、単一剤形は、10mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、10mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、25mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、25mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、50mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、50mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、100mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、100mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、125mgの重水素化キサノメリン及び30mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。特定の実施形態では、単一剤形は、125mgの重水素化キサノメリン及び60mgの塩化トロスピウムの用量強度を有する。単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主及び投与様式に応じて異なり得る。
【0114】
化合物は、様々な様式で、例えば、経口、局所、又は注射によって投与することができる。患者に投与される化合物の正確な量は、主治医に任せられる。あらゆる患者の特定の用量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせ、処置されている正確な障害、及び処置されている症状又は状態の重症度を含む様々な要因によって異なる。また、投与経路は、状態及びその重症度によって異なり得る。
【0115】
特定の場合には、本明細書に記載の化合物の少なくとも1つ(又はその薬学的に許容される塩、エステル、又はプロドラッグ)を別の治療薬と組み合わせて投与することが適切であり得る。ほんの一例として、本明細書の化合物の1つが投与されたときに患者が経験する副作用の1つが高血圧である場合、最初の治療薬と組み合わせて降圧剤を投与することが適切であり得る。或いは、ほんの一例として、本明細書に記載の化合物の1つの治療効果は、アジュバントの投与によって増強することができる(即ち、アジュバントは、それ自体は最小限の治療効果しか有していないが、別の治療薬と組み合わせると、患者への全体的な治療効果が増強される)。或いは、ほんの一例として、患者が得る利益を、本明細書に記載の化合物の1つを、同様に治療効果を有する別の治療薬(治療計画も含む)と共に投与することによって高めることができる。ほんの一例として、本明細書に記載の化合物の1つの投与を含む糖尿病の処置において、糖尿病の別の治療薬も患者に提供することによって、治療効果を高めることができる。いずれの場合も、処置される疾患、障害、又は状態に関係なく、患者が得る全体的な利益は、単に2つの治療薬の相加であり得る、又は患者は相乗的利益を受け得る。
【0116】
いずれの場合も、複数の治療薬(その少なくとも1つは本明細書に開示される化合物である)は、任意の順序で、又は同時であっても投与することができる。同時の場合、複数の治療薬は、単一の統合された形態で、又は複数の形態で(ほんの一例として、単一の錠剤又は2つの別個の錠剤として)提供することができる。治療薬の一方を複数回投与で与えてもよいし、又は両方を複数回投与で与えてもよい。同時でない場合、複数回の投与間のタイミングは、数分から4週間の範囲の任意の期間であり得る。
【0117】
本開示は、それを必要とする患者の中枢神経系障害を処置する方法をさらに提供し、この方法は、治療有効量の本明細書に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む。特定の実施形態では、化合物は経口投与される。
【0118】
「ムスカリン性障害」という語は、ムスカリン系を活性化することによって改善されるあらゆる疾患又は状態を指す。このような疾患には、ムスカリン受容体自体の直接活性化又はコリンエステラーゼ酵素の阻害が治療効果をもたらした疾患が含まれる。
【0119】
「統合失調症に関連する疾患」及び「統合失調症に関連する障害」という語には、限定されるものではないが、統合失調症感情障害、精神病、妄想障害、アルツハイマー病に関連する精神病、パーキンソン病に関連する精神病、精神病的なうつ病、双極性障害、精神病を伴う双極性障害、又は精神病性特徴を伴うその他の疾患が含まれる。
【0120】
「運動障害」という語には、限定されるものではないが、ギレス・デ・ラ・トゥレット症候群、フリーデリッヒ運動失調、ハンチントン舞踏病、むずむず脚症候群、及び症状が過度の運動、ダニ、及びけいれんを含む他の疾患又は障害が含まれる。
【0121】
「気分障害」という語は、大うつ病性障害、気分変調、反復性短期うつ病、小うつ病性障害、双極性障害、躁病、及び不安を含む。
【0122】
「認知障害」という語は、認知欠損によって特徴づけられる疾患又は障害(例えば、異常な作業記憶、問題解決能力などを有する)を指す。疾患には、限定されるものではないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症(限定されるものではないが、エイズ関連認知症、血管性認知症、加齢性認知症、レビー小体型認知症、及び特発性認知症を含む)、ピック病、タウオパチー、シヌクレイノパチー、混乱、疲労に関連する認知欠損、学習障害、外傷性脳損傷、自閉症、加齢に伴う認知機能低下、及び自己免疫疾患に関連する認知機能障害であるクッシング病が含まれる。
【0123】
「注意障害(attention disorder)」という語は、集中力の持続時間の異常又は低下によって特徴づけられる疾患又は状態を指す。疾患には、限定されるものではないが、注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠如障害(ADD)、デュボウィッツ症候群、FG症候群、ダウン症、インスリン様成長因子I(IGF1)欠乏による成長遅延、肝性脳症症候群、及びストラウス症候群が含まれる。
【0124】
「嗜癖性障害」という語は、Diagnostic & Statistical Manual V (DSM-5)によって定義される中毒又は薬物依存によって特徴づけられる疾患又は状態を指す。このような障害は、身体的依存、離脱症状、及び物質に対する耐性を特徴としている。このような物質には、限定されるものではないが、アルコール、コカイン、アンフェタミン、オピオイド、ベンゾジアゼピン、吸入剤、ニコチン、バルビツール酸塩、コカイン、及び大麻が含まれる。嗜癖障害には、明らかなマイナスの結果にもかかわらず、患者が脅迫的又は継続的に行う行動も含まれる。例えば、ルドマニア(ギャンブル依存症、又は強迫性賭博)は、しばしば壊滅的な結果をもたらす常習行為であると当業者によって認識されている。特定の実施形態では、常習行為は、DSM-5で定義されているように、インターネットゲーム障害(ゲーム依存症)であり得る。
【0125】
「疼痛」という語は、病気又は傷害によって引き起こされる身体的苦痛又は不快感を指す。疼痛は主観的な経験であり、疼痛の知覚は中枢神経系(CNS)の一部で行われる。通常は、有害な(末梢)刺激は、事前にCNSに伝達されるが、疼痛は必ずしも侵害受容と関連しているわけではない。様々な基本的な病態生理学的機序に由来し、様々な処置アプローチを必要とする、多種多様な臨床的疼痛が存在する。臨床的疼痛の3つの主要な種類:急性疼痛、慢性疼痛、及び神経因性疼痛が特徴づけられている。特定の実施形態では、重水素化キサノメリンは、ラット及びマウスモデルの両方において確立された神経障害性及び炎症性疼痛に関連する接触性アロディニア並びに熱痛覚過敏を強力且つ効果的に打ち消す。特定の実施形態では、疼痛は処置され、疼痛の種類は、異痛症、痛覚過敏、侵害受容性疼痛、炎症性疼痛、及び神経障害性疼痛から選択される。特定の実施形態では、疼痛は異痛症である。特定の実施形態では、疼痛は痛覚過敏である。特定の実施形態では、疼痛は侵害受容性疼痛である。特定の実施形態では、疼痛は炎症性疼痛である。特定の実施形態では、疼痛は神経因性疼痛である。
【0126】
特定の実施形態では、中枢神経系障害は、統合失調症、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、精神病、及び認知欠損から選択される。特定の実施形態では、中枢神経系障害は統合失調症である。特定の実施形態では、中枢神経系障害はアルツハイマー病である。特定の実施形態では、中枢神経系障害はハンチントン病である。特定の実施形態では、中枢神経系障害はパーキンソン病である。特定の実施形態では、中枢神経系障害はレビー小体型認知症である。特定の実施形態では、中枢神経系障害は精神病である。特定の実施形態では、中枢神経系障害は認知欠損である。
【0127】
ヒトの処置に有用であることに加えて、本明細書に開示される特定の化合物及び製剤は、ペット、珍しい動物、並びに哺乳動物及びげっ歯類などを含む家畜の獣医療にも有用であり得る。動物のさらなる例には、ウマ、イヌ、及びネコが含まれる。
【0128】
化合物を調製するための一般的な合成方法
以下のスキームは、本開示を実施するために一般的に使用することができる:
【化31】
【0129】
スキームIは、キサノメリンに重水素化エーテル鎖及び/又はジュウテロメチル基を導入するための一般的な合成を示す。3-クロロ-4-(ピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(1)を、トルエン中のn-ヘキサノール及び水素化ナトリウムを用いるウィリアムソンエーテル合成で反応させて、3-(ヘキシルオキシ)-4-(ピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(2)を得た。化合物2をアセトン及びピリジン中でヨードメタンと反応させて、3-(4-(ヘキシルオキシ)-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)-1-メチルピリジン-1-イウムヨージド(3)を生成し、これを、メタノール中の水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元して、キサノメリン遊離塩基(4)を得た。
【0130】
重水素化エーテル鎖を導入するために、n-ヘキサノールを重水素化ヘキサノール(5’)で置換して、3-((ジュウテロヘキシルオキシ(deutrohexyloxy))-4-(ピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(6’)を得た。化合物6’をヨードメタンと反応させると、3-(4-(ジュウテロヘキシルオキシ)-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)-1-メチルピリジン-1-イウムヨージド(7’)が生成され、次いで、これを還元して3-(ジュウテロヘキシルオキシ)-4-(1-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(8’)を得た。化合物6’をジュウテロヨードメタンと反応させると、3-(4-(ジュウテロヘキシルオキシ)-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)-1-(ジュウテロメチルピリジン-1-イウムヨージド(9’)が生成され、次いで、これを還元して3-(ジュウテロヘキシルオキシ)-4-(1-(ジュウテロメチル)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(10’)を得た。
【0131】
スキーム2において、各R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R19、R20、R21は独立に、H及びDから選択され、且つR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R19、R20、及びR21のうちの少なくとも1つは、重水素で濃縮されている。各遊離塩基生成物は、当技術分野で利用可能な方法を使用して、酒石酸塩などの薬学的に許容される塩に変換することができる。
【0132】
スキームIIは、過重水素化エーテル鎖及び/又はトリジュウテロメチル基をキサノメリンに導入するための合成を示す。
【化32】
【0133】
重水素化エーテル鎖を導入するために、n-ヘキサノールを、ペルジュウテロヘキサノール(1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ヘキサノール-d13、5)などの重水素化ヘキサノールで置換して、3-((ヘキシル-d13)オキシ)-4-(ピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(6)を得た。化合物6をヨードメタンと反応させると、3-(4-((ヘキシル-d13)オキシ)-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)-1-メチルピリジン-1-イウムヨージド(7)が生成され、次いで、これを還元して3-((ヘキシル-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-d13)オキシ)-4-(1-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(8、キサノメリン-d13、実施例番号1)を得た。化合物6をヨードメタン-d3と反応させると、3-(4-((ヘキシル-d13)オキシ)-1,2,5-チアジアゾール-3-イル)-1-(メチル-d3)ピリジン-1-イウムヨージド(9)が生成され、次いで、これを還元して3-((ヘキシル-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-d13)オキシ)-4-(1-(メチル-d3)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(10、キサノメリン-d16、実施例番号2)を得た。各遊離塩基生成物は、当技術分野で利用可能な方法を使用して、酒石酸塩などの薬学的に許容される塩に変換することができる。
【実施例】
【0134】
実施例1:3-((ヘキシル-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-d13)オキシ)-4-(1-メチル-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(8)
表題化合物を、スキーム1に記載した方法によって調製した。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:2.35(m,2H),2.5(s,3H),2.7(m,2H),3.5(m,2H),4.2(s,2H),7.1(m,1H).MS:C14H10D13N3OS(M+1)の計算m/z:295.42、実測値295.5。
【0135】
実施例2:3-((ヘキシル-1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-d13)オキシ)-4-(1-(メチル-d3)-1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-3-イル)-1,2,5-チアジアゾール(10)
表題化合物を、スキーム1に記載した方法によって調製した。1H-NMR(400MHz,DMSO-d6)δ:2.4(m,2H),2.8(m,2H),3.6(m,2H),4.2(s,2H),7.1(m,1H).MS:C14H7D16N3OS(M+1)の計算m/z:298.42、実測値298.4。
【0136】
表1の以下の化合物は、上記の方法:実施例番号1及び2を使用して製造又は調製される。表1の他の化合物は、上記の方法で調製することができる。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
上記開示された化合物のアルキルエステルも提供され、このアルキルエステルは、上記の方法によって調製することができ、とりわけ、プロドラッグとして有用であり得る。エチルエステルが示され、メチル、n-プロピル、及びイソプロピルなどの他のエステルも本明細書で提供される。
【0145】
雄SDラットへの経口投与後の薬物動態のインビボ評価
この研究の目的は、表2に示されているように、雄SDラットに水性製剤を単回経口投与した後の酒石酸キサノメリン分子(キサノメリン、キサノメリン-d16、及びキサノメリン-d13)の薬物動態(PK)を評価することであった。
【0146】
【0147】
血液試料は、投与の0.25、0.5、1、2、4、6、8、12及び24時間後に群1~3のすべての動物から採取し、各動物はすべての時点で出血させた。AUC0-t、AUC0-inf、Cmax、Tmax、及びT1/2を、可能な場合は、標準の非コンパートメント法を使用して、個々のキサノメリン、キサノメリン-d16、又はキサノメリン-d13の血漿濃度データから計算した。T1/2の計算に使用した濃度対時間曲線の消失相の勾配は、対数線形回帰によって決定した。
【0148】
キサノメリン-d16及びキサノメリン-d13がそれぞれ測定された群2及び3の結果を群1(キサノメリン)の結果と記述的に比較した。PK分析を、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン8.0を使用して実行して検証した。表3に示されているように、処置群全体のAUCを正規化するために、各製剤のキサノメリン濃度を、バイアスを考慮して再計算した。
【0149】
【0150】
全体として、重水素化キサノメリンにより、曝露が平均1.76倍増加した。酒石酸キサノメリンは、4210 h
*pg/mgの正規化AUCを有していた。キサノメリン-d
13は、8070 h
*pg/mgの正規化AUCを有し、キサノメリン-d
16は、6780 h
*pg/mgの正規化AUCを有していた(
図1)。キサノメリン、キサノメリン-d
16、及びキサノメリン-d
13の平均ピーク血漿濃度は、処置とは無関係に投与後30分以内に観察した。推定消失半減期(t
1/2)も処置群間で類似していた(投与後1.5~2.7時間の範囲)。25mg/kgのキサノメリン酒石酸の経口投与後のキサノメリンレベルは酒石酸キサノメリン-d
16及び酒石酸キサノメリン-d
13を同じ用量で投与した後に得られたキサノメリン-d
13のレベルとキサノメリン-d
16のレベルとのほぼ中間であった。
【0151】
インビトロ放射性リガンド結合アッセイ
キサノメリン-d16及びキサノメリン-d13を、ムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)ヒトM1~M5(hM1~hM5)を安定して発現するFlpIn(商標)チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に対するそれらのアゴニスト能力について試験した。Flp-In(商標)細胞株は、Flp-In(商標)発現ベクターから目的のタンパク質を発現する安定した細胞株を迅速に生成するように設計されている。Flp-In(商標)発現ベクターの標的統合により、mAChR hM1-hM5が高レベルで発現した。
【0152】
最初に、各CHO細胞株におけるmAChRの発現を、[
3H]-N-メチルスコポラミン([
3H]-NMS;
図2及び3を参照)に結合することによって分析した。
図2の単位は、Y軸上に1分間の活性当たりのカウント数(CPMA)として表され、次いで、
図3において、タンパク質1mg当たりのフェムトモルに正規化されている。
【0153】
次に、pERKアッセイを、異なる時間(2.5~60分)に異なる化合物又はアセチルコリン(10μM)を使用して行った。細胞外シグナル関連キナーゼ(ERK1/2又はp42/44)は、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)ファミリーのキナーゼである。ERKのリン酸化(pERK)は、多くのクラスのGタンパク質共役型受容体(GPCR)及びベータアレスチン結合シグナル伝達の活性化の一般的なエンドポイント測定として使用することができる。
【0154】
pERKアッセイのために、細胞を5~6時間、血清飢餓状態にした。曲線は、5分間の刺激に対応するウシ胎児血清(FBS)培地からの最大応答に正規化した。アゴニストとの5分間のインキュベーションを用量応答pERKアッセイ用に選択した(n=2)。
【0155】
pERK用量応答実験を行って、hM2、hM3、及びhM5を安定して発現するCHO細胞におけるキサノメリン-d
16及びキサノメリン-d
13のアゴニスト能力を試験した(n=3)。これらのpERK用量応答実験を繰り返して、hM1及びhM4を安定して発現するCHO細胞におけるキサノメリン-d
16及びキサノメリン-d
13のアゴニスト能力を試験した(n=4)。
図4~
図6に示されているように、値を最大FBS応答に正規化した。非線形回帰曲線を、制限なしで3つのパラメータの方法に従って計算した。薬効の違いを、pEC
50値を比較することによって評価し、化合物の有効性の違いを、最大応答(E
max)によって分析した。pEC50値を表4に列挙する。
【0156】
【0157】
全体として、キサノメリン-d16及びキサノメリン-d13は、mAChR hM3>hM5>hM2において適度に強い部分アゴニストであり、hM4>hM1において有効な部分アゴニストであった。これらの重水素化キサノメリン誘導体は、M4受容体で驚くほど低いピコモル活性を有している。この活性は、M1受容体よりも1桁大きく、M2受容体よりも数桁大きい。従って、これらの結果は、キサノメリン-d16及びキサノメリン-d13が、他の受容体サブタイプではhM1及びhM4に対して選択的であることを示した。
【0158】
凍結保存肝細胞の懸濁液における代謝安定性のインビトロ評価
多くの薬物の代謝の主要な部位は肝臓である。無傷の肝細胞は、シトクロムP450(CYP)、他の非P450酵素、並びにスルホ及びグルクロノシルトランスフェラーゼなどのフェーズII酵素が含み、従って、インビトロでの薬物動態を研究するための主要なモデルシステムである。凍結保存肝細胞が新鮮な肝細胞と同様の酵素活性を保持しているとすると、凍結保存肝細胞の有用性は他のモデルシステムと比較して有利である。
【0159】
培養培地を、肝細胞維持用サプリメントパック(無血清)をWilliams Medium Eと組み合わせることによって調製し、水浴で37℃に温める。化合物ストックを、メタノール又はDMSOなどの有機溶媒に溶解した被験物質及び陽性対照から、1mMなどの所望の濃度に調製する。肝細胞を、アッセイ直前に調製し、肝細胞維持培地が添加されたWilliams’ Medium Eで1×106生細胞/mLに希釈する。
【0160】
別個の円錐管において、試験化合物及び陽性対照を添加し、培養培地で加温して所望の作業濃度を得る。例えば、2μM溶液は、10μLの1mM被験物質ストック溶液を5mLの培養培地に加えることによって調製する。DMSOが溶媒の場合、濃度は、0.1%を超えてはならず、最終的な培養培地で最大1%になる。被験物質は、本明細書に記載の重水素化キサノメリンである。陽性対照の例には、ミダゾラム、フェナセチン、テストステロン、デキストロメトルファン、(S)-メフェニトイン、及び7-ヒドロキシクマリンが含まれる。
【0161】
次に、被験物質又は陽性対照を含む0.5mLの培養培地を、12ウェルのコーティングされていないプレートのそれぞれのウェルにピペットで移す。最終的な基質濃度は1μMである。プレートをオービタルシェーカーでインキュベートして、反応を開始する前に基質を約5~10分間温める。陰性対照の場合は、1.0×106の生肝細胞/mLを5分間沸騰させて、酵素活性を失わせる。
【0162】
基質を含む12ウェルのコーティングされていないプレートをインキュベーターから取り出す。反応は、0.5mLの1.0×106生細胞/mLをプレートの各ウェルに添加して、0.5×106生細胞/mLの最終細胞密度を得ることによって開始する。次に、0.5mLの不活化肝細胞を、ピペットで陰性対照のウェルに入れる。プレートをインキュベーター内のオービタルシェーカーに戻し、このシェーカーの速度を90~120rpmに調整する。ウェルの内容物を、0、15、30、60、90、及び120分に50mLのアリコートで除去する。180分及び240分の追加の時点を含めることができるが、健康で代謝的に能力のある肝細胞の場合は、高代謝回転化合物の検出に必要ないであろう。適切なクエンチング溶媒を含む管に試料アリコート(例:50μL)を加え、-70℃で凍結するか、又は直接抽出することによってインキュベーションを停止する。
【0163】
親化合物のインビトロ半減期(t1/2)を、パーセント親消失対時間曲線の回帰分析によって決する。インビトロでの固有クリアランスは、式:Clint=kV/Nで計算され、式中、k=0.693/t1/2であり、V=インキュベーション容量(1mL)であり、且つN=ウェル当たりの肝細胞数(0.5×106の生細胞)である。インビトロでのClintは、インビボ予測に合わせてスケーリングすることができる。
【0164】
本明細書に開示される化合物は、このアッセイで試験される場合、同位体濃縮されていない薬物と比較して、分解半減期の少なくとも5%以上の増加を示すことを予測することができる。
【0165】
ヒトシトクロムP450酵素を使用するインビトロ代謝
シトクロムP450酵素を、バキュロウイルス発現系(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して、対応するヒトcDNAから発現させる。100ミリモルのリン酸カリウム(pH7.4)中、1ミリリットル当たり0.8ミリグラムのタンパク質、1.3ミリモルのNADP+、3.3ミリモルのグルコース-6-リン酸、0.4U/mLのグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、3.3ミリモルの塩化マグネシウム、及び0.2ミリモルの対応する種の化合物、対応する同位体が濃縮されていない化合物又は標準又は対照を含む0.25ミリリットルの反応混合物を37℃で20分間インキュベートする。インキュベーション後、適切な溶媒(例えば、アセトニトリル、20%トリクロロ酢酸、94%アセトニトリル/6%氷酢酸、70%過塩素酸、94%アセトニトリル/6%氷酢酸)を添加して反応を停止させ、3分間遠心分離機にかける(10,000g)。上清をHPLC/MS/MSで分析する。各シトクロムP450酵素の基準物質を、表5に列挙する。
【0166】
【0167】
本明細書に開示される化合物は、陽性症状の特徴である幻覚及び妄想的思考などの症状、及び社会的孤立及び無快感症のような陰性症状を軽減するのに有効であることが期待される。最後に、軽減が予想される他の症状及び疾患は、統合失調症、アルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病、運動障害、薬物中毒、疼痛、神経変性を含む、情報を処理できず、作業記憶が低下するような認知症状及び疾患である。
【0168】
本出願に引用される米国又は外国のすべての参考文献、特許、又は出願は、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合、本明細書に文字通り開示される資料が管理する。
【0169】
前述の説明から、当業者であれば、本発明の本質的な特徴を容易に確認することができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明を様々な使用法及び条件に適合させるために本発明を様々に変更及び修正することができる。
【国際調査報告】