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特表2022-523365高い回折効率および低いヘイズを有するホログラフィック高分子分散液晶混合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】高い回折効率および低いヘイズを有するホログラフィック高分子分散液晶混合物
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/02 20060101AFI20220415BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20220415BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220415BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20220415BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20220415BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20220415BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
G03H1/02
G03H1/04
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/13 500
C09K19/34
C09K19/30
C09K19/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549321
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(85)【翻訳文提出日】2021-10-15
(86)【国際出願番号】 US2020019549
(87)【国際公開番号】W WO2020172681
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/808,970
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509325972
【氏名又は名称】ディジレンズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウォルダーン, ジョナサン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アブラハム, シブ
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2K008
4H027
【Fターム(参考)】
2H088EA48
2H088GA10
2H088KA05
2H189AA04
2H189BA04
2H189BA05
2H189CA08
2H189MA15
2K008BB04
2K008BB05
2K008DD12
2K008EE01
2K008HH03
4H027BB11
4H027BD07
4H027BD24
4H027BE02
4H027BE04
4H027CD04
4H027CG04
(57)【要約】
本発明の様々な実施形態によるホログラフィック高分子分散液晶材料系を例示する。一実施形態は、モノマーと、光開始剤と、テルフェニル化合物および非テルフェニル化合物を含む液晶混合物とを含むホログラフィック高分子分散液晶配合物であって、液晶混合物は、少なくとも1:10のテルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有し、光開始剤は、モノマーおよび液晶混合物の光重合誘起相分離プロセスを促進するように構成されている、ホログラフィック高分子分散液晶配合物を含む。別の実施形態では、液晶混合物がピリミジン化合物をさらに含み、液晶混合物が少なくとも1:10のテルフェニル化合物およびピリミジン化合物:非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有する。さらなる実施形態では、テルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の比が少なくとも1.5:10である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーと;
光開始剤と;
テルフェニル化合物および非テルフェニル化合物を含む液晶混合物と
を含むホログラフィック高分子分散液晶配合物であって、
前記液晶混合物は、少なくとも1:10の前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有し、
前記光開始剤は、前記モノマーおよび前記液晶混合物の光重合誘起相分離プロセスを促進するように構成されている、
ホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項2】
前記液晶混合物がピリミジン化合物をさらに含み、前記液晶混合物が少なくとも1:10の前記テルフェニル化合物およびピリミジン化合物:前記非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有する、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項3】
前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の前記比が少なくとも1.5:10である、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項4】
前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の前記比が少なくとも1:5である、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項5】
前記テルフェニル化合物が、フルオロ-テルフェニル化合物、シアノ-テルフェニル化合物、ならびにそのアルキル、アルコキシ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換基からなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項6】
前記非テルフェニル化合物が、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、シクロヘキシル化合物、およびビフェニルエステル化合物からなる群から選択される化合物を含む、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項7】
ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項8】
モノマーと;
光開始剤と;
1.7またはそれを超える550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する高屈折率液晶化合物および1.7未満の550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する他の液晶化合物を含む、液晶混合物と
を含むホログラフィック高分子分散液晶配合物であって、
前記液晶混合物が、少なくとも1:10の前記高屈折率液晶化合物:前記他の液晶化合物の重量パーセント比を有し、
前記光開始剤は、前記モノマーおよび前記液晶混合物の光重合誘起相分離プロセスを促進するように構成されている、ホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項9】
前記高屈折率液晶化合物:前記他の液晶化合物の前記比が少なくとも1.5:10である、請求項8に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項10】
前記高屈折率液晶化合物:前記他の液晶化合物の前記比が少なくとも1:5である、請求項8に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項11】
前記高屈折率液晶化合物が、置換テルフェニル化合物、置換ピリミジン化合物、置換トラン化合物、ならびにそのアルキル、アルコキシ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換基からなる群から選択される化合物を含む、請求項8に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項12】
前記他の液晶化合物が、ビフェニル化合物、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、およびビフェニルエステル化合物からなる群から選択される化合物を含む、請求項8に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項13】
ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項8に記載のホログラフィック高分子分散液晶配合物。
【請求項14】
ホログラフィック光学素子を形成する方法であって、前記方法が、
第1の透明基材を用意するステップと;
前記第1の基材上に光記録材料の層を堆積させるステップであって、前記光記録材料の層は、テルフェニル化合物および非テルフェニル化合物を含む液晶混合物を含み、前記液晶混合物は、少なくとも1:10の前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有する、ステップと;
前記光記録材料の堆積層上に第2の透明基材を配置するステップと;
少なくとも1つの記録ビームを使用して前記光記録材料の層を露光するステップと;
前記光記録材料の層内に少なくとも1つの格子構造を有する導波路を形成するステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の前記比が少なくとも1.5:10である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記テルフェニル化合物:前記非テルフェニル化合物の前記比が少なくとも1:5である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記テルフェニル化合物が、フルオロ、シアノ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換フェニル化合物からなる群から選択される化合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記非テルフェニル化合物が、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、およびビフェニルエステル化合物からなる群から選択される化合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記光記録材料の層が、ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤からなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記テルフェニル化合物が、1.7またはそれを超える550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有し、前記非テルフェニル化合物が、1.7未満の550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する、請求項14に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月22日に出願された「Holographic Polymer Dispersed Liquid Crystal Mixtures with High Diffraction Efficiency and Low Haze」と題する米国仮特許出願第62/808970号の利益および優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張する。米国仮特許出願第62/808970号の開示は、あらゆる目的で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、ホログラフィック高分子分散液晶材料に関し、より具体的には、高い回折効率および低いヘイズを有するホログラフィック高分子分散液晶材料に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
導波路は、波動を閉じ込めて指向する(すなわち、波動が伝播することができる空間領域を制限する)能力を有する構造と呼ぶことができる。1つのサブクラスには、電磁波、典型的には可視スペクトルの電磁波を指向することができる構造である光導波路が含まれる。導波路構造は、いくつかの異なる機構を使用して波動の伝搬経路を制御するように設計され得る。例えば、平面導波路は、結合光が内部全反射(TIR)を介して平面構造内を進行することができるように、回折格子を利用して入射光を回折させて導波路構造に結合するよう設計され得る。
【0004】
導波路の製造は、導波路内のホログラフィック光学素子の記録を可能にする材料系の使用を含むことができる。このような材料の1つのクラスには、光重合性モノマーおよび液晶を含有する混合物である高分子分散液晶(PDLC)混合物が含まれる。このような混合物のさらなるサブクラスには、ホログラフィック高分子分散液晶(HPDLC)混合物が含まれる。体積位相格子などのホログラフィック光学素子は、2つの相互にコヒーレントなレーザビームで材料を照射することによって、このような液体混合物に記録され得る。記録プロセス中、モノマーは重合し、混合物は光重合誘起相分離を受け、透明ポリマーの領域が散在する液晶微小液滴が密集した領域を生成する。交互の液晶リッチ領域と液晶枯渇領域が、格子の縞面を形成する。一般的に切り替え可能ブラッググレーティング(SBG)と呼ばれる、得られた格子は、体積格子またはブラッググレーティングに通常関連する全ての特性を有するが、回折効率(所望の方向に回折される入射光の割合)の連続的な範囲にわたって格子を電気的に調整する能力と組み合わされたはるかに高い屈折率変調範囲を有する。後者は、非回折(クリア)から100%に近い効率の回折まで及び得る。
【0005】
導波路光学系、例えば上記のものは、一定範囲のディスプレイおよびセンサ用途に考慮することができる。多くの用途では、複数の光学機能を符号化する1またはそれを超える格子層を含有する導波路は、様々な導波路アーキテクチャおよび材料系を使用して実現することができ、拡張現実(AR)および仮想現実(VR)用のニアアイディスプレイ、小型ヘッドアップディスプレイ(HUD)ならびに道路輸送、航空および軍事用途用のヘルメット装着型ディスプレイまたはヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ならびにバイオメトリックおよびレーザレーダ(LIDAR)用途用のセンサにおける新しい革新を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
本発明の様々な実施形態によるホログラフィック高分子分散液晶材料系を例示する。一実施形態は、モノマーと、光開始剤と、テルフェニル化合物および非テルフェニル化合物を含む液晶混合物とを含むホログラフィック高分子分散液晶配合物であって、液晶混合物は、少なくとも1:10のテルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有し、光開始剤は、モノマーおよび液晶混合物の光重合誘起相分離プロセスを促進するように構成されている、ホログラフィック高分子分散液晶配合物を含む。
【0007】
別の実施形態では、液晶混合物がピリミジン化合物をさらに含み、液晶混合物が少なくとも1:10のテルフェニル化合物およびピリミジン化合物:非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有する。
【0008】
さらなる実施形態では、テルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の比が少なくとも1.5:10である。
【0009】
さらに別の実施形態では、テルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の比が少なくとも1:5である。
【0010】
なおさらなる実施形態では、テルフェニル化合物が、フルオロ-テルフェニル化合物、シアノ-テルフェニル化合物、ならびにそのアルキル、アルコキシ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換基のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
さらに別の実施形態では、非テルフェニル化合物が、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、シクロヘキシル化合物、およびビフェニルエステル化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
なおさらなる実施形態では、配合物が、ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0013】
別の追加の実施形態は、モノマーと、光開始剤と、1.7またはそれを超える550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する高屈折率液晶化合物および1.7未満の550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する他の液晶化合物とを含むホログラフィック高分子分散液晶配合物であって、液晶混合物が、少なくとも1:10の高屈折率液晶化合物:他の液晶化合物の重量パーセント比を有し、光開始剤は、モノマーおよび液晶混合物の光重合誘起相分離プロセスを促進するように構成されている、ホログラフィック高分子分散液晶配合物を含む。
【0014】
さらなる追加の実施形態では、高屈折率液晶化合物:他の液晶化合物の比が少なくとも1.5:10である。
【0015】
また別の実施形態では、高屈折率液晶化合物:他の液晶化合物の比が少なくとも1:5である。
【0016】
またさらなる実施形態では、高屈折率液晶化合物が、置換テルフェニル化合物、置換ピリミジン化合物、置換トラン化合物、ならびにそのアルキル、アルコキシ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換基のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
なおさらに別の実施形態では、他の液晶化合物が、ビフェニル化合物、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、およびビフェニルエステル化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
なおまださらなる実施形態では、配合物が、ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0019】
さらに別の追加の実施形態は、ホログラフィック光学素子を形成する方法であって、第1の透明基材を用意するステップと、第1の基材上に光記録材料の層を堆積させるステップであって、光記録材料の層は、テルフェニル化合物および非テルフェニル化合物を含む液晶混合物を含み、液晶混合物は、少なくとも1:10のテルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の重量パーセント比を有する、ステップと、光記録材料の堆積層上に第2の透明基材を配置するステップと、少なくとも1つの記録ビームを使用して光記録材料の層を露光するステップと、光記録材料の層内に少なくとも1つの格子構造を有する導波路を形成するステップとを含む方法を含む。
【0020】
なおさらなる追加の実施形態では、テルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の比が少なくとも1.5:10である。
【0021】
またさらに別の実施形態では、テルフェニル化合物:非テルフェニル化合物の比が少なくとも1:5である。
【0022】
またなおさらなる実施形態では、テルフェニル化合物が、フルオロ、シアノ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換フェニル化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
さらに別の追加の実施形態では、非テルフェニル化合物が、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、およびビフェニルエステル化合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
なおさらなる追加の実施形態では、光記録材料の層が、ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、およびヘイズを減少させるための添加剤のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0025】
またさらに別の実施形態では、テルフェニル化合物が、1.7またはそれを超える550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有し、非テルフェニル化合物が、1.7未満の550nmおよび摂氏25℃での通常屈折率を有する。
【0026】
追加の実施形態および特徴は、以下の説明に部分的に示されており、部分的には、本明細書を検討すると当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって習得され得る。本発明の性質および利点のさらなる理解は、本開示の一部を形成する明細書の残りの部分および図面を参照することによって実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
説明は、本発明の例示的な実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない以下の図面およびデータグラフを参照してより完全に理解される。
【0028】
図1図1Aおよび図1Bは、本発明の様々な実施形態によるHPDLC SBGデバイスおよびSBGのスイッチング特性を概念的に示す。
【0029】
図2図2は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物での使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。
図3図3は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物での使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。
【0030】
図4図4は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物でのドーパントとしての使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。
図5図5は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物でのドーパントとしての使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。
【0031】
図6図6は、本発明の様々な実施形態による4つの化合物を含有する液晶混合物の例を概念的に示す。
【0032】
図7図7は、本発明の様々な実施形態によるHPDLC混合物でドーパントとして利用されるフッ素化テルフェニルの分子図を概念的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
詳細な説明
実施形態を説明する目的で、光学設計および表示装置の当業者に知られている光学技術のいくつかの周知の特徴は、本発明の基本原理を不明瞭にしないために省略または簡略化されている。特に明記しない限り、光線またはビーム方向に関する「軸上」という用語は、本発明に関連して説明される光学部品の表面に垂直な軸に平行な伝播を指す。以下の説明では、光、光線、ビームおよび方向という用語は、直線軌道に沿った電磁放射線の伝播方向を示すために互いに交換可能に、かつ関連して使用され得る。光および照明という用語は、電磁スペクトルの可視および赤外帯域に関連して使用され得る。以下の説明の一部は、光学設計の当業者によって一般的に使用される用語を使用して提示される。本明細書で使用される場合、格子という用語は、一部の実施形態では一組の格子で構成される格子を包含し得る。例示を目的として、特に明記しない限り、図面は縮尺通りに描かれていないことを理解すべきである。
【0034】
本発明の様々な実施形態によるホログラフィック高分子分散液晶材料および配合物は、様々な特性および品質を示すように考案することができる。多くの実施形態では、HPDLC材料が、以下に限定されないが、回折格子などの光学構造を形成するための光記録材料として実装される。一部の実施形態では、HPDLC材料が、高い回折効率(DE)および低いヘイズを提供するように配合され、実装される。典型的なHPDLC材料では、記録プロセス中のモノマーおよび液晶(LC)の効率的な相分離が両属性の根底にある。回折効率は、格子内で達成される屈折率変調に依存し、これは、以下に限定されないが、露光ビーム強度、温度、LC濃度、分子質量、HPDLC成分の化学的適合性、分子官能性などの形態および相分離に影響を及ぼす様々な因子に依存し得る。このような因子は、ポリマーマトリックス上の架橋度、したがってモノマーとLC成分との間の相分離度を決定し得る。相分離および形態が十分でない場合、格子は低いDEをもたらし得る。さらに、不十分な相分離および形態は、大きなLC液滴の形成またはLCの不完全な拡散をもたらし、散乱および結果としてヘイズを生じ得る。
【0035】
平均屈折率および屈折率変調要件は、以下に限定されないが、導波路ディスプレイ用途の所望の視野を達成するなどの、所与の用途の特定の要件に応じて変化し得る。多くの実施形態では、少なくとも約1.7~約1.8の高屈折率LCが、ある特定の導波路視野要件を満たすために利用される。一般的なLCは、典型的には低屈折率変調を有する。屈折率変調を増加させると、嵩高い分子による乏しい安定性(以下に限定されないが、光/熱分解など)および低下した化学的適合性をもたらし得る。多くの市販のLCは、スイッチング用途向けに設計される傾向がある。多くの場合、このようなLCは、以下に限定されないが、受動格子(または受動的に動作することを意図した格子)を実装するものを含む、他の多くのディスプレイ導波路用途にとって最適以下となり得る。
【0036】
本発明の多くの実施形態は、高い回折効率および低いヘイズを提供することができる高屈折率LC混合物を使用して受動および/または切り替え可能格子を実装するホログラフィック導波路用のHPDLCシステムに関する。一部の実施形態では、材料系が、少なくとも1つの高屈折率メソゲンドーパントを含む。いくつかの実施形態では、材料系が、高屈折率LCコアを達成するために、テルフェニル、安定なトランおよび/またはナノ粒子を含む。テルフェニルまたはトランは、一般にDEを増加させるための、より具体的には特定の用途のための屈折率および屈折率変調の調整を可能にするための高屈折率または変調ドーパントとして利用することができる。様々な実施形態では、テルフェニル、安定なトランおよび/またはナノ粒子が、ヘイズの明らかな増加なしに改善したDEをもたらす割合で添加され得る。さらなる実施形態では、材料系が、以下に限定されないが、インクジェット印刷などの堆積または印刷プロセスに適合性である。このようなプロセスに適合性の材料系は、導波路のよりハイスループットな製造および導波路内の特定の材料成分の空間変調を可能にすることができる。本発明の様々な実施形態による格子アーキテクチャ、材料調整およびHPDLC材料系を、以下の節でさらに詳細に論じる。
光導波路および格子構造
【0037】
導波路に記録された光学構造は、以下に限定されないが、回折格子などの多くの異なる種類の光学素子を含むことができる。格子は、以下に限定されないが、光の結合、光の指向、および光の透過の防止を含む様々な光学機能を実施するように実装され得る。多くの実施形態では、格子が、導波路の外面に存在する表面レリーフグレーティングである。他の実施形態では、実施される格子が、周期的な屈折率変調を有する構造である、ブラッググレーティング(体積格子とも呼ばれる)である。ブラッググレーティングは、様々な異なる方法を使用して製造することができる。1つのプロセスには、周期構造を形成するためのホログラフィックフォトポリマー材料の干渉露光が含まれる。ブラッググレーティングは、高次に回折される光がほとんどなく、高い効率を有することができる。回折およびゼロ次の光の相対量は、大きな瞳にわたって光を抽出するための損失性導波路格子を作製するために使用することができる特性である、格子の屈折率変調を制御することによって変えることができる。
【0038】
ホログラフィック導波路デバイスで使用されるブラッググレーティングの1つのクラスは、切り替え可能ブラッググレーティング(SBG)である。SBGは、最初に光重合性モノマーと液晶材料の混合物の薄膜を基材間に配置することによって製造することができる。基材は、ガラスおよびプラスチックなどの様々な種類の材料でできていてよい。多くの場合、基材は並列配置である。他の実施形態では、基材がくさび形を形成する。一方または両方の基材が、電界を膜中に印加するための電極、典型的には透明酸化スズ膜を支持することができる。SBGの格子構造は、空間的に周期的な強度変調による干渉露光を使用した光重合誘起相分離を通して液体材料(しばしばシロップと呼ばれる)に記録することができる。以下に限定されないが、照射強度の制御、混合物中の材料の成分体積分率、および曝露温度などの因子が、得られる格子の形態および性能を決定することができる。容易に理解できるように、所与の用途の特定の要件に応じて、多種多様な材料および混合物を使用することができる。多くの実施形態では、HPDLC材料が使用される。記録プロセス中、モノマーが重合し、混合物が相分離を受ける。LC分子は凝集して、光波長のスケールでポリマーネットワークに周期的に分布する個別のまたは合体した液滴を形成する。交互の液晶リッチ領域と液晶枯渇領域が格子の縞面を形成し、これにより、液滴中のLC分子の配向秩序化から生じる強い光分極を有するブラッグ回折が生成され得る。
【0039】
得られる体積位相格子は、非常に高い回折効率を示すことができ、これは膜中に印加される電界の大きさによって制御することができる。透明電極を介して格子に電界が印加されると、LC液滴の自然な配向が変化し、縞の屈折率変調を低下させ、ホログラム回折効率を非常に低いレベルに低下させ得る。典型的には、電極は、印加される電界が基材に対して垂直になるように構成される。いくつかの実施形態では、電極が酸化インジウムスズ(ITO)から製造される。電界が印加されていないオフ状態では、液晶の異常軸は一般に縞に対して垂直に整列する。したがって、格子は、P偏光に対して高い屈折率変調および高い回折効率を示す。電界がHPDLCに印加されると、格子はオン状態に切り替わり、液晶分子の異常軸が印加された電界に平行に、したがって基材に対して垂直に整列する。オン状態では、格子は、S偏光とP偏光の両方に対してより低い屈折率変調およびより低い回折効率を示す。したがって、格子領域はもはや光を回折しない。各格子領域は、HPDLCデバイスの機能に従って、例えばピクセルマトリクスなどの多数の格子素子に分割することができる。典型的には、一方の基材表面上の電極は均一かつ連続的であり、対向する基材表面上の電極は多数の選択的切り替え可能格子素子に従ってパターニングされる。
【0040】
典型的には、SBG素子は、オンに切り替えるためのより長い緩和時間を有し、30μsでクリアに切り替えられる。デバイスの回折効率は、印加電圧によって連続範囲にわたって調整することができる。多くの場合、デバイスは、電圧が印加されていない状態ではほぼ100%の効率を示し、十分に高い電圧が印加されている状態では本質的にゼロの効率を示す。ある特定の種類のHPDLCデバイスでは、磁場を使用してLCの配向を制御することができる。一部のHPDLC用途では、識別可能な液滴構造が生じない程度まで、ポリマーからのLC材料の相分離を達成することができる。SBGは受動格子としても使用することができる。このモードでは、その主な利点は、一意的に高い屈折率変調である。SBGは、自由空間用途のための透過または反射格子を提供するために使用することができる。SBGは、HPDLCが導波路コアまたは導波路に近接するエバネッセント結合層(evanescently coupled layer)のいずれかを形成する導波路デバイスとして実装することができる。HPDLCセルを形成するために使用される基材は、内部全反射(TIR)導光構造を提供する。切り替え可能格子がTIR条件を超える角度で光を回折させると、光をSBGから結合させることができる。いくつかの実施形態では、逆モード格子装置を実装することができる-すなわち、格子が、印加電圧がゼロになると、その非回折(クリア)状態となり、電圧が電極中に印加されると、その回折状態に切り替わる。
【0041】
図1Aおよび1Bは、本発明の様々な実施形態によるHPDLC SBGデバイス100、110およびSBGのスイッチング特性を概念的に示す。図1Aでは、SBG 100がオフ状態である。示されるように、LC分子101は、縞面に対して実質的に垂直に整列している。よって、SBG 100は高い回折効率を示し、入射光を容易に回折させることができる。図1Bは、オン位置にあるSBG 110を示す。印加電圧111は、液滴113内のLC分子112の光軸を配向させて、ポリマーの屈折率と一致する有効屈折率を生成し、本質的に入射光が回折されない透明セルを生成することができる。例示的な実施形態では、AC電圧源が示されている。容易に理解できるように、所与の用途の特定の要件に応じて、様々な電圧源を利用することができる。さらに、異なる材料およびデバイス構成も実装することができる。一部の実施形態では、デバイスが異なる材料系を実装し、印加電圧に対して逆に動作することができる-すなわち、デバイスが印加電圧に応答して高い回折効率を示す。
【0042】
一部の実施形態では、LCを表面レリーフグレーティング(SBG)から抽出または排出して、SRG構造の深さ(表面エッチングおよびSRGを製造するために一般的に使用される他の従来のプロセスを使用して実際に達成可能なものよりもはるかに大きい)によりブラッググレーティングに非常に類似した特性を有するSRGを提供することができる。LCは、以下に限定されないが、イソプロピルアルコールおよび溶媒によるフラッシングを含む様々な異なる方法を使用して抽出することができる。多くの実施形態では、SBGの透明基材の1つが除去され、LCが抽出される。さらなる実施形態では、除去された基材が交換される。SRGを、より高いまたはより低い屈折率の材料で少なくとも部分的に埋め戻すことができる。このような格子は、様々な導波路用途に適するように効率、角度/スペクトル応答、偏光および他の特性を調整するための範囲を提供する。
【0043】
本発明の様々な実施形態による導波路は、特定の目的および機能のために設計された様々な格子構成を含むことができる。多くの実施形態では、導波路が、コリメート光学系の射出瞳を有効に拡大することによってレンズサイズを縮小しながら、アイボックスサイズ(eyebox size)を維持することができる格子構成を実装するように設計される。射出瞳は、仮想開口を通過する光線のみがユーザーの目に入ることができる仮想開口として定義することができる。一部の実施形態では、導波路が、光源に光学的に結合された入力格子と、第1の方向のビーム拡大を提供するための折り畳み格子と、典型的には第1の方向に直交する第2の方向のビーム拡大およびアイボックスに向かうビーム抽出を提供するための出力格子とを含む。容易に理解できるように、格子構成実装導波路アーキテクチャは、所与の用途の特定の要件に依存し得る。一部の実施形態では、格子構成が複数の折り畳み格子を含む。いくつかの実施形態では、格子構成が、ビーム拡大およびビーム抽出を同時に実施するための入力格子および第2の格子を含む。第2の格子は、別々の重複格子層に配置された、または単一格子層に多重化された、異なる部分の視野を伝播するための異なる処方の格子を含むことができる。さらに、様々な種類の格子および導波路アーキテクチャも利用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、各層内の格子が、異なるスペクトルおよび/または角度応答を有するように設計される。例えば、多くの実施形態では、スペクトル帯幅を増加させるために、異なる格子層にわたる異なる格子が重複されるか、または多重化される。一部の実施形態では、フルカラー導波路が、各々が異なるスペクトル帯域(赤色、緑色および青色)で動作するように設計された3つの格子層を使用して実装される。他の実施形態では、フルカラー導波路が、赤-緑色格子層および緑-青色格子層の2つの格子層を使用して実装される。容易に理解できるように、このような技術は、導波路の角度帯幅動作を増加させるために同様に実装することができる。異なる格子層にわたる格子の多重化に加えて、複数の格子を単一格子層内に多重化することができる-すなわち、複数の格子を同じ体積内に重ね合わせることができる。いくつかの実施形態では、導波路が、同じ体積内に多重化された2つまたはそれを超える格子処方を有する少なくとも1つの格子層を含む。さらなる実施形態では、導波路が、各層が同じ体積内に多重化された2つの格子処方を有する2つの格子層を含む。同じ体積内の2つまたはそれを超える格子処方を多重化することは、様々な製造技術を使用して達成することができる。いくつかの実施形態では、多重マスタ格子が、多重格子を形成するために露光構成と共に利用される。多くの実施形態では、多重格子が、2つまたはそれを超える構成の露光光で光記録材料層を順次露光することによって製造され、各構成が格子処方を形成するように設計される。一部の実施形態では、多重格子が、交互の2つまたはそれを超える構成の露光光で光記録材料層を露光することによって製造され、各構成が格子処方を形成するように設計される。容易に理解できるように、当技術分野で周知のものを含む様々な技術を、多重格子を製造するために適宜使用することができる。
【0045】
多くの実施形態では、導波路が、角度多重格子、カラー多重格子、折り畳み格子、二重相互作用格子、ロールKベクトル格子、交差折り畳み格子、モザイク格子、チャープ格子、空間的に変化する屈折率変調を有する格子、空間的に変化する格子厚を有する格子、空間的に変化する平均屈折率を有する格子、空間的に変化する屈折率変調テンソルを有する格子、および空間的に変化する平均屈折率テンソルを有する格子のうちの少なくとも1つを組み込むことができる。一部の実施形態では、導波路が、半波長板、1/4波長板、反射防止コーティング、ビーム分割層、配向層、グレア低減のためのフォトクロミックバック層、およびグレア低減のためのルーバーフィルムのうちの少なくとも1つを組み込むことができる。いくつかの実施形態では、導波路が、異なる偏光に対して別々の光路を提供する格子を支持することができる。様々な実施形態では、導波路が、異なるスペクトル帯幅に対して別個の光路を提供する格子を支持することができる。いくつかの実施形態では、格子が、HPDLC格子、HPDLCに記録されたスイッチング格子(このような切り替え可能ブラッググレーティング)、ホログラフィックフォトポリマーに記録されたブラッググレーティング、または表面レリーフグレーティングであり得る。多くの実施形態では、導波路がモノクロ帯域で動作する。一部の実施形態では、導波路が緑色帯域で動作する。いくつかの実施形態では、赤色、緑色および青色(RGB)などの異なるスペクトル帯域で動作する導波路層を積層して、3層導波路構造を得ることができる。さらなる実施形態では、層が、導波路層間に空隙を有して積層される。様々な実施形態では、導波路層が、青-緑色および緑-赤色などのより広い帯域で動作して、2導波路層ソリューションを提供する。他の実施形態では、格子が、格子層の数を減らすために色多重化される。様々な種類の格子を実装することができる。一部の実施形態では、各層内の少なくとも1つの格子が切り替え可能格子である。
【0046】
上に論じられるものなどの光学構造を組み込んだ導波路は、以下に限定されないが、導波路ディスプレイを含む様々な異なる用途で実装することができる。様々な実施形態では、導波路ディスプレイが、25mmを超えるアイレリーフを有する10mmを超えるアイボックスで実装される。一部の実施形態では、導波路ディスプレイが、2.0~5.0mmの間の厚さを有する導波路を含む。多くの実施形態では、導波路ディスプレイが、少なくとも対角50°の画像視野を提供することができる。さらなる実施形態では、導波路ディスプレイが、少なくとも対角70°の画像視野を提供することができる。導波路ディスプレイは、多くの異なる種類の画像生成ユニット(PGU)を使用することができる。いくつかの実施形態では、PGUが、リキッドクリスタルオンシリコン(liquid crystal on Silicon)(LCoS)パネルまたは微小電気機械システム(MEMS)パネルなどの反射型または透過型空間光変調器であり得る。いくつかの実施形態では、PGUが、有機発光ダイオード(OLED)パネルなどの発光デバイスであり得る。一部の実施形態では、OLEDディスプレイが、4000 nitを超える輝度および4kx4kピクセルの解像度を有することができる。いくつかの実施形態では、導波路が、輝度4000nitのOLEDディスプレイを使用して400nitを超える画像輝度を提供できるように、10%を超える光学効率を有することができる。P回折格子(すなわち、P偏光に対して高い効率を有する格子)を実装する導波路は、典型的には、5%~6.2%の導波路効率を有する。P回折またはS回折格子は、OLEDパネルなどの無偏光源からの光の半分を浪費する可能性があるため、多くの実施形態は、導波路の効率を最大2倍増加させることを可能にするために、S回折とP回折格子の両方を提供することができる導波路に向けられる。一部の実施形態では、S回折およびP回折格子が、別個の重複格子層で実装される。あるいは、単一格子が、ある特定の条件下で、p偏光とs偏光の両方に対して高効率を提供することができる。いくつかの実施形態では、導波路が、格子厚(典型的には、2~5μmの範囲)の適切に選択された値についてある特定の波長および角度範囲にわたって高いSおよびP回折効率を可能にするために、上記のものなどのHPDLC格子からLCを抽出することによって生成されたブラッグ状格子を含む。
光記録材料システム
【0047】
HPDLC混合物は、一般に、LC、モノマー、光開始剤色素および共開始剤を含む。混合物(通常、シロップと呼ばれる)はしばしば、界面活性剤も含む。本発明を説明する目的で、界面活性剤は、液体混合物全体の表面張力を低下させる任意の化学薬剤として定義される。PDLC混合物における界面活性剤の使用は公知であり、PDLCの最も初期の研究に遡る。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、R.L Sutherlandら、SPIE 第2689巻、158-169、1996による論文は、モノマー、光開始剤、共開始剤、鎖延長剤、および界面活性剤を添加することができるLCを含むPDLC混合物を記載している。界面活性剤はまた、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Natarajanら、Journal of Nonlinear Optical Physics and Materials、第5巻 第l号 89-98、1996によって論文で言及されている。さらに、Sutherlandらの米国特許第7018563号明細書は、少なくとも1つのアクリル酸モノマー;少なくとも1種類の液晶材料;光開始剤色素;共開始剤;および界面活性剤を有する高分子分散液晶光学素子を形成するための高分子分散液晶材料を論じている。米国特許第7018563号明細書の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
特許および科学文献は、高い回折効率、速い応答時間、低い駆動電圧などを達成するためのこのような材料系の配合に関する調査を含む、SBGを製造するために使用することができる材料系およびプロセスの多くの例を含む。Sutherlandの米国特許第5942157号明細書とTanakaらの米国特許第5751452号明細書は共に、SBGデバイスを製造するのに適したモノマーと液晶材料の組み合わせを記載している。レシピの例は、1990年代初期まで遡る論文にも見出すことができる。これらの材料の多くは、以下を含むアクリレートモノマーを使用する:
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、R.L.Sutherlandら、Chem.Mater.5、1533(1993)は、アクリレートポリマーおよび界面活性剤の使用を記載している。具体的には、そのレシピは、架橋多官能性アクリレートモノマー;鎖延長剤N-ビニルピロリジノン、LC E7、光開始剤ローズベンガルおよび共開始剤N-フェニルグリシンを含む。界面活性オクタン酸をある特定の変形に添加した。
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Fontecchioら、SID 00 Digest 774-776、2000は、多官能性アクリレートモノマー、LC、光開始剤、共開始剤および連鎖停止剤を含む反射型ディスプレイ用途のためのUV硬化型HPDLCを記載している。
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Y.H.Choら、Polymer International、48、1085-1090、1999は、アクリレートを含むHPDLCレシピを開示している。
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Karasawaら、Japanese Journal of Applied Physics、第36巻、6388-6392、1997は、様々な官能次数のアクリレートを記載している。
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、T.J.Bunningら、Polymer Science:Part B:Polymer Physics、第35巻、2825-2833、1997も多官能性アクリレートモノマーを記載している。
・ その開示が参照により本明細書に組み込まれる、G.S.Iannacchioneら、Europhysics Letters 第36巻(6).425-430、1996は、ペンタアクリレートモノマー、LC、鎖延長剤、共開始剤および光開始剤を含むPDLC混合物を記載している。
アクリレートは、速い速度論、他の材料との良好な混合およびフィルム形成プロセスとの適合性の利点を提供する。アクリレートは架橋されているため、機械的に堅牢で可撓性である傾向がある。例えば、官能度2(ジ)および3(トリ)のウレタンアクリレートは、HPDLC技術に広く使用されている。ペンタおよびヘキサ官能性ステムなどのより高官能度の材料も使用することができる。
材料組成の調整
【0049】
高い輝度および優れた色忠実度は、AR導波路ディスプレイにおける重要な因子である。いずれの場合も、FOV中の高い均一性が望まれ得る。しかしながら、導波路の基本光学系は、導波路を跳ね返るビームのギャップまたは重複に起因する不均一性をもたらし得る。さらなる不均一性は、格子の不完全性および導波路基材の非平面性から生じ得る。SBGでは、複屈折格子による偏光回転のさらなる問題が存在し得る。適用可能な場合、最大の挑戦は、通常、ビームと格子縞の複数の交差から生じる数百万の光路がある折り畳み格子である。格子特性、特に屈折率変調の慎重な管理を利用して不均一性を克服することができる。
【0050】
多数の可能なビーム相互作用(回折またはゼロ次透過)のうち、サブセットのみがアイボックスで提示される信号に寄与する。アイボックスから逆方向にトレースすることにより、所与のフィールドポイントに寄与する折り畳み領域を特定することができる。次いで、出力照明の暗色領域により多くを送るために必要な変調に対する正確な調整を計算することができる。ある色の出力照明均一性を標的に戻して、他の色について手順を繰り返すことができる。屈折率変調パターンが確立されると、設計を堆積機構にエクスポートすることができ、各標的屈折率変調は、コーティング/堆積される基材上の各空間分解能セルの固有の堆積設定に変換される。堆積機構の分解能は、利用されるシステムの技術的限界に依存し得る。多くの実施形態では、空間パターンが、完全な再現性で30マイクロメートルの分解能まで実装され得る。
【0051】
表面レリーフグレーティング(SRG)を利用する導波路と比較して、本発明の様々な実施形態による製造技術を実装するSBG導波路は、以下に限定されないが、屈折率変調および格子厚などの効率および均一性に影響を及ぼす格子設計パラメータを、異なるマスタを必要とせずに堆積プロセス中に動的に調整することを可能にすることができる。変調がエッチング深さによって制御されるSRGでは、格子の各変形が複雑で高価なツーリングプロセスを繰り返すことを必要とするため、このようなスキームは実用的ではない。さらに、必要なエッチング深さ精度およびレジストイメージングの複雑度を達成することは非常に困難であり得る。
【0052】
本発明の様々な実施形態による堆積プロセスは、堆積される材料の種類を制御することによって格子設計パラメータの調整を提供することができる。本発明の様々な実施形態は、基材上の異なる領域に異なる材料または異なる材料組成物を堆積させるように構成され得る。例えば、堆積プロセスは、格子領域であることが意図されている基材の領域上にHPDLC材料を堆積させ、非格子領域であることが意図されている基材の領域上にモノマーを堆積させるように構成され得る。いくつかの実施形態では、堆積プロセスが、成分組成が空間的に変化する光記録材料の層を堆積させるように構成され、堆積された材料の様々な態様の変調を可能にする。異なる組成を有する材料の堆積は、いくつかの異なる方法で実装され得る。多くの実施形態では、1つを超える堆積ヘッドを利用して、異なる材料および混合物を堆積させることができる。各堆積ヘッドを、異なる材料/混合物リザーバに結合することができる。このような実装は、様々な用途に使用することができる。例えば、導波路セルの格子領域および非格子領域のために異なる材料を堆積させることができる。一部の実施形態では、HPDLC材料が格子領域上に堆積され、モノマーのみが非格子領域上に堆積される。いくつかの実施形態では、堆積機構が、異なる成分組成を有する混合物を堆積させるように構成され得る。
【0053】
一部の実施形態では、噴霧ノズルを実装して、複数の種類の材料を単一基材上に堆積させることができる。導波路用途では、噴霧ノズルを使用して、導波路の格子領域および非格子領域のための異なる材料を堆積させることができる。多くの実施形態では、噴霧機構が、少なくとも2つの選択可能な噴霧ヘッドを有する堆積装置を使用して、少なくとも1つの材料組成、複屈折および/または厚さを制御することができる格子を印刷するように構成される。一部の実施形態では、製造システムが、レーザバンディングの制御のために最適化された格子記録材料を堆積させるための装置を提供する。いくつかの実施形態では、製造システムが、偏光不均一性の制御のために最適化された格子記録材料を堆積させるための装置を提供する。いくつかの実施形態では、製造システムが、配向制御層に関連した偏光不均一性の制御のために最適化された格子記録材料を堆積させるための装置を提供する。いくつかの実施形態では、堆積作業セルが、ビーム分割コーティングおよび環境保護層などの追加の層を堆積させるように構成され得る。インクジェットプリントヘッドはまた、基材の異なる領域に異なる材料を印刷するために実装され得る。
【0054】
上に論じられるように、堆積プロセスは、成分組成が空間的に変化する光記録材料を堆積させるように構成され得る。材料組成の調整は、多くの異なる方法で実装することができる。いくつかの実施形態では、インクジェットプリントヘッドが、プリントヘッド内の様々なインクジェットノズルを利用することによって材料組成を調製するように構成され得る。組成を「ドットバイドット」ベースで変化させることにより、光記録材料の層を、層の平面にわたって変化する組成を有するように堆積させることができる。このようなシステムは、以下に限定されないが、インクジェットプリントヘッドを含む様々な装置を使用して実装され得る。プリンタにおけるCMYKシステムまたはディスプレイ用途における付加RGBシステムなど、カラーシステムがわずか数色のパレットを使用して数百万の離散色値のスペクトルを生成する方法と同様に、本発明の様々な実施形態によるインクジェットプリントヘッドは、わずか数個の異なる材料のリザーバのみを使用して様々な組成を有する光記録材料を印刷するように構成され得る。異なる種類のインクジェットプリントヘッドは、異なる精度レベルを有することができ、異なる解像度で印刷することができる。多くの実施形態では、300DPI(「ドット/インチ」)インクジェットプリントヘッドが利用される。精度レベルに応じて、所与の数の材料の様々な組成の離散化を所与の領域にわたって決定することができる。例えば、印刷される2種類の材料および300DPIの精度レベルを有するインクジェットプリントヘッドを考えると、各ドット位置が2種類の材料のいずれか1つを含有することができる場合、所与の体積の印刷材料に対して平方インチにわたる2種類の材料の組成比の90001個の可能な離散値が存在する。一部の実施形態では、各ドット位置が、2種類の材料のいずれか1つまたは両材料を含有することができる。いくつかの実施形態では、1つを超えるインクジェットプリントヘッドが、空間的に変化する組成を有する光記録材料の層を印刷するように構成される。2材料用途におけるドットの印刷は、本質的に二元系であるが、印刷されたドットをある領域にわたって平均化することにより、印刷される2材料の比のスライディングスケールの離散化が可能になり得る。例えば、単位正方形にわたる可能な濃度/比の離散レベルの量は、何個のドット位置を単位正方形内に印刷できるかによって与えられる。よって、100%の第1の材料~100%の第2の材料の範囲の異なる濃度の組み合わせの範囲が存在し得る。容易に理解できるように、この概念は実際のユニットに適用可能であり、インクジェットプリントヘッドの精度レベルによって決定され得る。印刷層の材料組成を調整する具体的例が論じられているが、インクジェットプリントヘッドを使用して材料組成を調整する概念は、2つを超える異なる材料リザーバを使用するように拡張することができ、精度レベルが変化し得、使用されるプリントヘッドの種類に大きく依存する。
【0055】
印刷される材料の組成を変えることは、いくつかの理由で有利となり得る。例えば、多くの実施形態では、堆積中に材料の組成を変化させることにより、格子の異なる領域にわたって空間的に変化する回折効率を有する格子を有する導波路の形成が可能になり得る。HPDLC混合物を利用する実施形態では、これが、材料を露光すると様々な回折効率を有する格子を生成することができる組成を生成する、印刷プロセス中のHPDLC混合物中の液晶の相対濃度を調節することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、ある特定の濃度の液晶を有する第1のHPDLC混合物および液晶を含まない第2のHPDLC混合物が、印刷材料に形成され得る格子の回折効率を調整するためのインクジェットプリントヘッドにおける印刷パレットとして使用される。このような実施形態では、離散化が、インクジェットプリントヘッドの精度に基づいて決定され得る。離散レベルは、ある特定の領域にわたって印刷された材料の濃度/比によって与えられ得る。この例では、離散レベルが、液晶なしから第1のPDLC混合物中の液晶の最大濃度までの範囲である。
【0056】
導波路を横切る回折効率を変化させる能力は、様々な目的に使用され得る。導波路は、典型的には、導波路の2つの平面間で光を何度も反射することによって光を内部に導くように設計される。これらの複数の反射は、光路が格子と複数回相互作用することを可能にすることができる。多くの実施形態では、形成された格子が、均一な出力強度を可能にするために格子との相互作用中の光の損失を補償するために空間的に変化する回折効率を有するように、材料の層を様々な組成の材料で印刷することができる。例えば、いくつかの導波路用途では、出力格子が、光を導波路から結合させながら一方向の射出瞳拡張を提供するように構成される。出力格子は、導波路内の光が格子と相互作用すると、光の一部のみが導波路から屈折するように設計され得る。残りの部分は同じ光路内で続き、TIR内に留まり、導波路内で反射され続ける。再び同じ出力格子との第2の相互作用時に、光の別の部分が導波路から屈折する。各屈折の間、導波路内を依然として進む光の量は、導波路から屈折する量だけ減少する。よって、各相互作用で屈折する割合は、総強度に関して徐々に減少する。伝搬距離と共に増加するように格子の回折効率を変化させることによって、各相互作用に沿った出力強度の減少を補償し、均一な出力強度を可能にすることができる。
【0057】
回折効率を変化させることを使用して、導波路内の光の他の減衰を補償することもできる。全ての物体は、ある程度の反射および吸収を有する。導波路内のTIRに閉じ込められた光は、導波路の2つの表面間で連続的に反射される。表面を構成する材料に応じて、光の一部は各相互作用中に材料によって吸収され得る。多くの場合、この減衰は小さいが、多くの反射が発生する広い領域にわたって相当であり得る。多くの実施形態では、導波路セルが、光記録材料層から形成された格子が基材からの光の吸収を補償するために様々な回折効率を有するように、様々な組成で印刷され得る。基材に応じて、ある特定の波長が、基材によって吸収されやすい場合がある。多層導波路設計では、各層がある特定の波長範囲の光で結合するように設計され得る。したがって、これらの個々の層によって結合された光は、層の基材によって異なる量で吸収され得る。例えば、いくつかの実施形態では、導波路が、各層が赤色、緑色および青色のうちの1つのために設計された、フルカラー表示を実装するための3層スタックで作られる。このような実施形態では、導波路層の各々の中の格子が、ある特定の波長の光の透過の損失による色の不均衡を補償することによってカラーバランス最適化を実施するために、様々な回折効率を有するように形成され得る。
【0058】
回折効率を変化させるために材料内の液晶濃度を変化させることに加えて、別の技術は、導波路セルの厚さを変化させることを含む。これは、スペーサの使用を通して達成することができる。多くの実施形態では、スペーサが、導波路セルの構築中に構造的支持のために光記録材料全体に分散される。一部の実施形態では、異なるサイズのスペーサが光記録材料全体に分散される。スペーサは、光記録材料の層の一方向にわたってサイズの小さい順に分散させることができる。導波路セルが積層によって構成される場合、基材は光記録材料を挟み込み、様々なサイズのスペーサからの構造的支持により、光記録材料のくさび形層を形成する。様々なサイズのスペーサを、上記の調整プロセスと同様に分散させることができる。さらに、スペーササイズの調整は、材料組成の調整と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、それぞれ異なるサイズのスペーサが懸濁されたHPDLC材料のリザーバを使用して、くさび形導波路セルを形成するために戦略的に分散された様々なサイズのスペーサを有するHPDLC材料の層を印刷する。いくつかの実施形態では、異なるサイズのスペーサの数と使用される異なる材料の数の積に等しい数のリザーバを用意することによって、スペーササイズ調整が材料組成調整と組み合わされる。例えば、一実施形態では、インクジェットプリントヘッドが、2つの異なるスペーササイズで様々な濃度の液晶を印刷するように構成される。このような実施形態では、4つのリザーバを調製することができる:第1のサイズのスペーサを有する液晶を含まない混合物懸濁液、第2のサイズのスペーサを有する液晶を含まない混合物懸濁液、第1のサイズのスペーサを有する液晶リッチ混合物懸濁液、および第2のサイズのスペーサを有する液晶リッチ混合物懸濁液。材料調整に関するさらなる議論は、「Systems and Methods for Manufacturing Waveguide Cells」と題する2018年11月18日に出願された米国特許出願公開第16/203071号明細書に見出すことができる。米国特許出願公開第16/203491号明細書の開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
高いDEおよび低いヘイズ材料系
【0059】
本発明による多くの実施形態は、高い回折効率および低いヘイズを提供することができるホログラフィック導波路用のHPDLC材料系を含む。一部の実施形態では、材料系が、LC混合物、モノマー、光開始剤色素および共開始剤を含む。材料系は、通常、界面活性剤も含む。容易に理解できるように、利用される材料成分の種類は、所与の用途の特定の要件に依存し得る。例えば、芳香族ポリマーは、典型的には、異なる視野に合わせて調整された高い屈折率および高い屈折率変調を提供するための微調整格子のための他のポリマーよりも優れている。いくつかの実施形態では、LC混合物が、DE性能、ヘイズ性能および/または屈折率について選択された成分を含有する。様々な実施形態では、材料系が、米国特許出願公開第16/203071号明細書に開示されるプロセスおよび技術などの、導波路を形成するための堆積/印刷プロセスに適合するように配合され得る。例えば、材料系は、混合物を導波路基材上に堆積させることができる印刷での使用によく適した粘度を有するように配合され得る。いくつかの実施形態では、材料系が、プラスチックを有する導波路で配合および利用される。いくつかの実施形態では、材料系が、湾曲した基材を有する導波路で配合および利用される。
【0060】
多くの実施形態では、材料系が、テルフェニル、安定なトランおよび/またはナノ粒子を含む。このような成分を利用して、高屈折率LCコアを達成することができる。LC混合物は、様々な性能特性に影響を及ぼし得る、ある特定の化合物の特定の相対濃度を有するように配合され得る。いくつかの実施形態では、LC混合物が最小の所定の重量パーセント比のテルフェニル化合物と非テルフェニル化合物を含有するように配合される。一部の実施形態では、LC混合物が少なくとも1:10の重量パーセント比のテルフェニル化合物とビフェニル化合物を含有するように、材料系が配合される。さらなる実施形態では、テルフェニル化合物:ビフェニル化合物の比が、重量パーセントで少なくとも1.5:10である。なおさらなる実施形態では、テルフェニル化合物:ビフェニル化合物の比が少なくとも1:5である。一部の実施形態では、LC混合物が最小の所定の重量パーセント比のトラン化合物と非トラン化合物を含有するように配合される。いくつかの実施形態では、LC混合物が最小の所定の比の550nmおよび25℃で1.7未満の通常屈折率を有する化合物と550nmおよび25℃で1.7を超える通常屈折率を有する化合物を含有するように、材料系が配合される。最小の所定の比は、広く変化し得る。いくつかの実施形態では、最小の所定の比が、1:10~1:2の範囲である。容易に理解できるように、最小の所定の比は変化し、化合物の種類ならびに所望の回折効率および/またはヘイズ性能を含む種々の因子に依存し得る。例えば、LC混合物に実装される様々なクラスのテルフェニル化合物およびビフェニル化合物は、適切な所定の比を指定することができる。いくつかの実施形態では、LC混合物がピリミジン化合物を含む。一部の実施形態では、LC混合物が、シアノテルフェニル化合物とシアノビフェニル化合物を含み、少なくとも1:5のシアノテルフェニル化合物:シアノビフェニル化合物の重量パーセント比を有するように配合される。多くの実施形態では、LC混合物が少なくとも1:2の比のトラン化合物:非トラン化合物を含有する。いくつかの実施形態では、配合物が様々な機能を提供することができる添加剤を含む。例えば、配合物は、ナノ粒子、低官能性モノマー、スイッチング電圧を低下させるための添加剤、スイッチング時間を短縮するための添加剤、屈折率変調を増加させるための添加剤、および/またはヘイズを減少させるための添加剤を含むことができる。
【0061】
上記のように、多くの異なる化合物を本発明の様々な実施形態によるLC混合物で利用することができる。多くの実施形態では、LC混合物が、以下に限定されないが、ビフェニルおよびテルフェニルを含む様々なフェニル化合物を含むことができる。一部の実施形態では、様々なクラスのビフェニル、ピリミジンおよびテルフェニル(その誘導体、例えばフルオロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、チオシアネートおよびイソチオシアネート置換基、ならびに他の官能基を含む)を適宜利用することができる。例えば、シアノビフェニル化合物、フェニルエステル化合物、シクロヘキシル化合物およびビフェニルエステルを利用することができる。いくつかの実施形態では、LC混合物が、アルキル-、アルコキシ-および他の置換基を有する化合物を含む。図2は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物での使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。示されるように、本発明の様々な実施形態によるLC混合物は、ビフェニル200および、以下に限定されないがテルフェニルを含む様々な他のフェニルクラス化合物201を含むことができる。例示的な実施形態では、LC混合物が、シクロヘキシル基および複素環基を有する化合物202も含有することができる。上記のフェニル化合物に加えて、本発明の様々な実施形態により利用されるLC混合物は、他のクラスの化合物を含むことができ、その特定の選択は、所与の用途の特定の要件に依存し得る。いくつかの実施形態では、トラン化合物を含有するLC混合物が材料系で利用される。図3は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物での使用に適したトランを含む一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。示されるように、このようなLC混合物は、様々なクラスの化学基を有する一般的な化合物300、301を含むことができる。例示的な実施形態では、LC混合物が、様々なクラスのトラン化合物302も含むことができる。図2および3は、LC混合物に利用される特定のクラスの化合物を示しているが、所与の用途の特定の要件に応じて、様々な異なる混合物および化合物のいずれかを適宜利用することができる。
【0062】
多くの実施形態では、材料系が、少なくとも1つのドーパントを含み、これは液晶シングルまたは液晶モノマーとも呼ばれ得る。さらなる実施形態では、材料系が、少なくとも1つの高屈折率メソゲンドーパントを含む。テルフェニル、トランおよび/またはナノ粒子は、一般にDEを増加させるための、より具体的には特定の用途のために屈折率および屈折率変調を調整することを可能にするための高屈折率または変調ドーパントとして利用することができる。材料系内の様々な化合物の濃度は、所望の性能特性を達成するためにこのようなドーパントを使用して制御することができる。例えば、いくつかの実施形態では、材料系が、所望の回折効率および/またはヘイズ性能を提供することを目指した濃度のドーパントを含有する。適用されるドーパントおよびドーパントの濃度は、LC混合物内の化合物の種類およびそれらの相対濃度に依存し得る。一部の実施形態では、LC混合物に、(元のLC混合物と比較して)ヘイズの明らかな増加なしに改善したDEをもたらす割合でテルフェニル、安定なトランおよび/またはナノ粒子をドープすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ある特定の具体的な成分のおよそ5%の添加が、ヘイズの明らかな増加なしに回折効率/性能を20~30%増加させることができる。いくつかの実施形態では、LC混合物に、ドープされていない混合物と比較して、回折効率の明らかな低下なしにヘイズの減少をもたらす割合でドープすることができる。一部の実施形態では、ドーパント濃度が、特定の視野に対して高効率に必要な比屈折率変調および屈折率を提供するように最適化される。
【0063】
図4は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物でのドーパントとしての使用に適した一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。例示的な実施形態では、ドーパントが、様々なクラスのフェニル化合物400および様々なクラスのピリミジン化合物401を含む。LC混合物中の化合物に応じて、適切なドーパントを利用することができる。例えば、一部の実施形態では、LC混合物がトラン化合物を含む。このような場合、ドーパントとしてトラン化合物を使用することがより有効であり得る。図5は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物でのドーパントとしての使用に適したトラン化合物500を含む一般的な化合物の分子構造図を概念的に示す。このような化合物は、図3に示されるものと同様のLC混合物のドーパントとして使用することができる。
【0064】
図4および5は、本発明の様々な実施形態によるLC混合物のドーパントとして使用するための特定のクラスの化合物を例示しているが、所与の用途の特定の要件に応じて、多くの他の種類の化合物を適宜利用することができる。
【0065】
多くの実施形態では、材料系が、以下に限定されないが、上記の成分のいずれかなどのある特定の成分をドープすることができる市販のLC混合物を利用して、所望の回折効率および/またはヘイズ性能を達成することができるある特定の成分濃度を提供する。図6は、4つの化合物を含有する液晶混合物600の例を提供する。第1の化合物601は、シアノビフェニルであり、5CBと称される。LC混合物600中のその濃度はおよそ51%である。分かりやすくするために、濃度パーセンテージは、混合物中の成分の重量パーセントを記載する。第2の化合物602は、シアノビフェニルであり、7CBと称される。LC混合物600中のその濃度はおよそ25%である。第3の化合物603は、シアノビフェニルであり、8OCBと称される。LC混合物600中のその濃度はおよそ16%である。第4の化合物604は、テルフェニルであり、5CTと称される。LC混合物600中のその濃度はおよそ8%である。シアノビフェニル化合物5CB、7CBおよび8OCBの通常屈折率は、550nmおよび25℃で1.7未満になると予想される。他方、テルフェニル化合物5CTの通常屈折率は、550nmおよび25℃で1.7を超えると予想される。
【0066】
LC混合物600をモノマーおよび光開始剤と混合して、HPDLC前駆体1号と称される、反応性モノマーと液晶の混合物を形成することができる。一部の実施形態では、HPDLC前駆体1号混合物が、約42%のLC混合物600および約58%のモノマーおよび光開始剤を含有するように配合される。このような混合物から形成されたホログラフィック光学素子は、10%未満の回折効率および0.5%未満のヘイズをもたらすことができる。HPDLC前駆体1号では、シアノビフェニル化合物の濃度が38.64%であり、シアノテルフェニル化合物の濃度が3.36%であり、およそ0.087:1のシアノテルフェニル化合物:シアノビフェニル化合物の比が得られる。テルフェニル化合物とビフェニル化合物の濃度および比に応じて、モノマーおよび液晶の相分離がそれに応じて影響され、その結果、回折効率およびヘイズに差が生じ得る。HPDLC前駆体1号に、以下に限定されないが、追加の液晶化合物などの追加の成分をドープすることができる。多くの実施形態では、ドーパントが、テルフェニル化合物とビフェニル化合物の濃度の比を、回折効率および/またはヘイズに所望の変化をもたらすことができる所望のレベルに変化させるために導入される。一部の実施形態では、テルフェニル化合物とビフェニル化合物の比を変化させて、ヘイズを増加させることなく、または明らかに増加させることなく回折効率の増加を提供する。例えば、改善されたHPDLC前駆体2号は、95%のHPDLC前駆体1号を5%の追加の液晶化合物、フッ素化テルフェニルと混合することによって形成することができる。図7は、本発明の様々な実施形態によるHPDLC混合物でドーパントとして利用されるフッ素化テルフェニルの分子図を概念的に示す。HPDLC前駆体2号では、シアノビフェニル化合物の濃度が36.71%であり、シアノテルフェニル化合物の濃度が8.19%であり、およそ0.223:1のシアノテルフェニル化合物:シアノビフェニル化合物の比が得られる。わずか5%の追加のフッ素化テルフェニル化合物を添加しただけにもかかわらず、液晶混合物中のテルフェニル化合物の濃度は、HPDLC前駆体1号の比から有意に増加した。HPDLC前駆体2号を使用して形成されたホログラフィック光学素子は、30%を超える回折効率および0.5%未満のヘイズをもたらすことができ、ヘイズの明らかな増加なしに回折効率の相当の増加を実証している。
【0067】
特定のドーパントが上に論じられているが、所与の用途の特定の要件に従って、いくつかの異なる種類のドーパントのいずれかを利用することができる。例えば、多くの実施形態は、クアテルフェニルの使用を含む。さらなる実施形態では、クアテルフェニルが、分子共役を維持するためにねじられる。他の実施形態では、ビフェニルが、材料系のドーパントとして利用される。容易に理解できるように、特定の用途の要件に適した様々な異なる種類の高屈折率メソゲンドーパントのいずれかを、本発明の様々な実施形態による材料系で利用することができる。
均等論
【0068】
上記の説明は本発明の多くの特定の実施形態を含むが、これらは本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろその一実施形態の例として解釈されるべきである。したがって、本発明は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、具体的に記載された以外の方法で実施され得ることを理解すべきである。よって、本発明の実施形態は、全ての点で、例示であって限定的なものではないとみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示される実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって決定されるべきである。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】