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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】伸線監視システム
(51)【国際特許分類】
   B21C 1/00 20060101AFI20220415BHJP
   B21C 3/12 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
B21C1/00
B21C3/12 A
B21C3/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549439
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 US2020019128
(87)【国際公開番号】W WO2020172477
(87)【国際公開日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/807,834
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521370927
【氏名又は名称】パラマウント・ダイ・カンパニー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PARAMOUNT DIE COMPANY, INC
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】サーバー,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ナウマン,カール
(72)【発明者】
【氏名】ノローナ,ジョーオ
【テーマコード(参考)】
4E096
【Fターム(参考)】
4E096EA02
4E096EA06
4E096EA08
4E096EA12
4E096FA02
4E096FA11
4E096FA12
(57)【要約】
ダイスボックスの構成要素又はダイスボックスを通って伸線されるワイヤの種々の特性を測定する少なくとも2つのプローブを有する伸線ダイスシステム。このシステムは、多数のプローブが情報をデータ処理ユニットに送信するスマートダイスを備えている。データ処理ユニットは、種々のプローブから情報を採取し、ワイヤ伸線プロセスの種々のパラメータを制御する。1つのスマートダイスは、伸線ダイスホルダーから直接情報を収集するプローブを有している。このスマートダイスは、力センサも備え、ワイヤが伸線される方向と平行の軸に沿ってダイスボックスが移動されることを可能にするように構成されている。データ処理ユニットは、種々のワイヤ伸線パラメータ、例えば、ワイヤ伸線速度、冷却剤圧力、及び冷却剤がシステム内にポンプ送給される流量を制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸線ダイスホルダーであって、
伸線通路と、
前記伸線ダイスホルダーの外壁から内壁に延在するダイスプローブ通路と、
を備える、伸線ダイスホルダー。
【請求項2】
前記ダイスプローブ通路は、前記伸線通路と直交している、請求項1に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項3】
前記伸線ダイスホルダーは、第1のベース及びキャップを更に備える、請求項1に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項4】
前記伸線ダイスホルダーは、第1のベース及びキャップを更に備える、請求項2に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項5】
第2のベースを更に備える、請求項3に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項6】
前記ダイスプローブ通路は、前記第1のベース内に位置している、請求項3に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項7】
第2のベースを更に備える、請求項4に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項8】
前記ダイスプローブ通路は、前記第1のベース内に位置している、請求項4に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項9】
前記ダイスプローブ通路内に収容されたプローブを更に備える、請求項1に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項10】
前記プローブは、温度センサ、振動センサ、圧力センサ、赤外線センサ、パイロメーター、磁場センサの1つ又は複数である、請求項9に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項11】
前記温度センサは、熱電対である、請求項10に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項12】
ダイスを備える、請求項9に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項13】
前記ダイスは、圧力ダイス、伸線ダイス、及び二次ダイスの1つ又は複数である、請求項12に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項14】
前記プローブは、前記ダイスに接触している、請求項12に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項15】
前記プローブを前記ダイスに押し付けるバネを更に備える、請求項12に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項16】
前記プローブは、前記ダイスプローブ通路内において固定位置にあるか又は摺動可能になっている、請求項9に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項17】
前記ダイスプローブ通路は、導電性充填材料を含む、請求項9に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項18】
前記導電性充填材料は、ダイスに接触している、請求項17に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項19】
前記プローブは、前記導電性充填材料に接触している、請求項18に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項20】
前記プローブを前記導電性充填材料に押し付けるバネを更に備える、請求項18に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項21】
前記プローブは、前記ダイスプローブ通路内において固定位置にあるか又は摺動可能になっている、請求項18に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項22】
前記プローブは、ダイスに接触することなく前記ダイスから情報を収集するように構成されている、請求項9に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項23】
前記プローブは、前記プローブが収集する情報をデータ処理装置に送信するように構成されている、請求項22に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項24】
前記データ処理装置は、読取装置、送信機、又はデータロガーである、請求項23に記載の伸線ダイスホルダー。
【請求項25】
ダイスボックスであって、
前記ダイスボックスの構成要素又は前記ダイスボックスを通って伸線されるワイヤの種々の特性を測定する2つ以上のプローブを備える、ダイスボックス。
【請求項26】
伸線ダイスホルダーを更に備える、請求項25に記載のダイスボックス。
【請求項27】
ボックスプローブ通路及びダイスプローブ通路を更に備える、請求項26に記載のダイスボックス。
【請求項28】
前記ボックスプローブ通路及び前記ダイスプローブ通路は、互いに真っすぐに並んでいる、請求項27に記載のダイスボックス。
【請求項29】
前記ダイスボックス及び前記伸線ダイスホルダーは、位置合せ要素を備える、請求項28に記載のダイスボックス。
【請求項30】
前記ボックスプローブ通路及び前記ダイスプローブ通路は、半径方向において互いに真っすぐに並んでいる、請求項29に記載のダイスボックス。
【請求項31】
前記位置合せ要素は、前記ダイスボックスの凹部に適合する前記伸線ダイスホルダーのピンである、請求項30に記載のダイスボックス。
【請求項32】
ボックス位置合せ通路を更に備える、請求項30に記載のダイスボックス。
【請求項33】
前記ボックス位置合せ通路は、前記ボックスプローブ通路と平行である、請求項32に記載のダイスボックス。
【請求項34】
前記ボックス位置合せ通路の第1の部分は、前記伸線ダイスホルダー内にあり、前記ボックス位置合せ通路の第2の部分は、前記伸線ダイスホルダーに隣接している、請求項33に記載のダイスボックス。
【請求項35】
前記ボックス位置合せ通路の前記第1の部分は、矩形又は不規則形状を有する、請求項34に記載のダイスボックス。
【請求項36】
ジャケットを貫通する前記ボックス位置合せ通路の第3の部分を更に備える、請求項34に記載のダイスボックス。
【請求項37】
前記ボックス位置合せ通路の前記第3の部分は、前記ボックス位置合せ通路の前記第1の部分及び前記第2の部分と真っすぐに並んでいる、請求項36に記載のダイスボックス。
【請求項38】
前記ボックス位置合せ通路の前記第1の部分、前記第2の部分、及び前記第3の部分を貫通する位置合せピンを更に備える、請求項37に記載のダイスボックス。
【請求項39】
前記ジャケットの上面に位置する取り外し可能な安全ブロックを更に備える、請求項38に記載のダイスボックス。
【請求項40】
前記位置合せピンは、前記取り外し可能な安全ブロックに取り外し可能に取り付られている、請求項39に記載のダイスボックス。
【請求項41】
一次取り外し装置を更に備える、請求項39に記載のダイスボックス。
【請求項42】
前記一次取り外し装置は、枢動可能なレバーを備える、請求項41に記載のダイスボックス。
【請求項43】
二次取り外し装置を更に備える、請求項39に記載のダイスボックス。
【請求項44】
前記二次取り外し装置は、前記取り外し可能な安全ブロックの底側の通路である、請求項43に記載のダイスボックス。
【請求項45】
三次取り外し装置を更に備える、請求項39に記載のダイス装置。
【請求項46】
前記三次取り外し装置は、回転する時に前記ジャケットを押して前記取り外し可能な安全ブロックを分離するネジである、請求項45に記載のダイスボックス。
【請求項47】
摺動可能な支持体を更に備える、請求項39に記載のダイスボックス。
【請求項48】
前記ボックスプローブ通路及び前記ダイスプローブ通路は、軸方向において位置合せされるようになっている、請求項28に記載のダイスボックス。
【請求項49】
前記伸線ダイスホルダーは、先細の伸線通路を有する、請求項48に記載のダイスボックス。
【請求項50】
力変換器を更に備える、請求項25に記載のダイスボックス。
【請求項51】
前記力変換器は、非負荷状態にある、請求項50に記載のダイスボックス。
【請求項52】
前記伸線ダイスホルダーの間接冷却のためのジャケットを更に備える、請求項26に記載のダイスボックス。
【請求項53】
前記ジャケットは、水ジャケットである、請求項52に記載のダイスボックス。
【請求項54】
前記ジャケットは、前記伸線ダイスホルダーを支持するようになっている、請求項52に記載のダイスボックス。
【請求項55】
前記ジャケットは、水通路を備える、請求項52に記載のダイスボックス。
【請求項56】
前記ダイスボックスは、前記ダイスボックスが前記伸線ダイスホルダー内の伸線通路と平行の軸に沿って移動することを可能にするガイドロッドを備える、請求項52に記載のダイスボックス。
【請求項57】
前記ダイスボックスは、複数のガイドロッドを備える、請求項55に記載のダイスボックス。
【請求項58】
リニア軸受を更に備える、請求項56に記載のダイスボックス。
【請求項59】
複数のリニア軸受を更に備える、請求項46のダイスボックス。
【請求項60】
前記伸線ダイスホルダーは、直接冷却されるようになっている、請求項26に記載のダイスボックス。
【請求項61】
前記伸線ダイスホルダーの直接冷却を可能にするダイスホルダーOリング及びダイスボックスOリングを備える、請求項60に記載のダイスボックス。
【請求項62】
ダイスボックスナットを更に備える、請求項60に記載のダイスボックス。
【請求項63】
前記ダイスボックスナットは、前記伸線ダイスホルダー内の伸線通路と平行の軸に沿った前記伸線ダイスホルダーの移動を可能にする、請求項62に記載のダイスボックス。
【請求項64】
前記ダイスボックスナットは、設置時の軸方向予負荷を回避するように構成されている、請求項63に記載のダイスボックス。
【請求項65】
振動センサを更に備える、請求項52に記載のダイスボックス。
【請求項66】
振動センサを更に備える、請求項60に記載のダイスボックス。
【請求項67】
磁場センサ又はホール効果センサを更に備える、請求項52のダイスボックス。
【請求項68】
磁場センサ又はホール効果センサを更に備える、請求項60のダイスボックス。
【請求項69】
冷却剤流量調整装置を更に備える、請求項25のダイスボックス。
【請求項70】
前記ジャケットは、バックプレートに接続されている、請求項53のダイスボックス。
【請求項71】
前記ジャケットは、摺動体によって前記バックプレートに接続されている、請求項70に記載のダイスボックス。
【請求項72】
前記ジャケットは、複数の摺動体によって前記バックプレートに接続されている、請求項71に記載のダイスボックス。
【請求項73】
前記ジャケットは、4つの摺動体によって前記バックプレートに接続されている、請求項71に記載のダイスボックス。
【請求項74】
前記ジャケットと前記バックプレートとの間にスライドプレートを更に備える、請求項70に記載のダイスボックス。
【請求項75】
前記スライドプレートと前記バックプレートとの間に力センサを更に備える、請求項74に記載のダイスボックス。
【請求項76】
前記力センサと前記ジャケットとの間に力伝達プレートを更に備える、請求項75に記載のダイスボックス。
【請求項77】
ワイヤ伸線監視システムであって、
ワイヤ伸線装置の2つ以上の特性を測定する2つ以上のプローブを備えるワイヤ伸線ボックスであって、前記2つ以上の特性の1つは、ダイスホルダー表面と平行のダイス表面において測定されるようになっている、ワイヤ伸線ボックスと、
制御ユニットであって、前記2つ以上のプローブが情報を前記制御ユニットに送信するようになっている、制御ユニットと、
を備える、ワイヤ伸線監視システム。
【請求項78】
前記ワイヤ伸線ボックスは、伸線ダイスホルダーを備える、請求項77のワイヤ伸線監視システム。
【請求項79】
前記制御ユニットは、前記2つ以上のプローブから前記情報を受信し、かつ処理するように構成されている、請求項77に記載のワイヤ伸線監視システム。
【請求項80】
2つ以上のワイヤ伸線ボックスを更に備える、請求項77に記載のワイヤ伸線監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸線機によって金属ワイヤを製造する分野に関する。更に詳細には、本発明は、このような製造のためのダイス及びダイスホルダー並びに監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤの用途は、技術的及び商業的視点からますます要求が厳しくなってきている。これによって、ワイヤ製造業者は、生産速度を高め、これまで以上に厳しい仕上公差及び特定の機械的特性を有するワイヤを最小限の停止時間で伸線することが要求されてきている。いくつかの例として、超高張力鋼ワイヤ、超二相ステンレス鋼ワイヤ、チタンワイヤ、インコネルワイヤ等の製造が挙げられる。
【0003】
目標とする直径及び機械的特性を有する仕上げワイヤを製造するために、種々の金属合金のワイヤロッドが、その直径を縮小するために又はその形状を変化させるために、専用のワイヤ伸線機に用いられる1つ又は複数のワイヤ伸線ダイスを通して伸線される。必要とされるワイヤ径と機械的特性に到達するために、ワイヤは、わずか1回のステップ又は27回以上に及ぶ連続ステップによって冷間伸線される。
【0004】
業界の現在の状況では、殆どのワイヤ伸線ダイスニブは、炭化物又はダイヤモンドのようなニブ材料がその耐用年数を超えて摩滅すると廃棄される鋼又は他の金属ケース内に恒久的に収納されている。摩滅した時点で、ケース及びこれに恒久的に収納されたニブは、廃棄されて再利用される。ワイヤ伸線ダイスニブは、硬質材料の中でも、とりわけ、炭化タングステン、多結晶ダイヤモンド、又は天然又は合成ダイヤモンドから作製されたワイヤ伸線ダイスのコア材料である。いくつかの用途では、ダイスニブは、交換可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
伸線プロセスは、伸線システムの種々の構成要素に著しい応力を加えるという結果をもたらす。システムへのこの著しい応力に起因して、システムの構成要素は、通常、それらの予期される有効寿命の前に破損する。システムの物理的特性を測定することは、極めて困難である。種々のプローブ及びセンサをワイヤ伸線機の構成要素の外部に配置する先行技術が知られている。しかし、種々の構成要素の状態を明確に把握してそれらを組み合わせてワイヤ伸線プロセスの種々のパラメータを制御することを可能にする内部センサは、知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、ワイヤ伸線プロセスの制御を促進するワイヤ伸線監視システム及び構成要素に関する。一実施形態は、伸線ダイスホルダーであって、伸線通路と、伸線ダイスホルダーの外壁から内壁に延在するダイスプローブ通路とを備える、伸線ダイスホルダーである。他の実施形態は、ダイスボックスであって、ダイスボックスの構成要素又はダイスボックスを通って伸線されるワイヤの種々の特性を測定する2つ以上のプローブを有する、ダイスボックスである。更なる実施形態は、ワイヤ伸線ボックスと、制御ユニットとを有するワイヤ伸線監視システムから成るシステムである。ワイヤ伸線ボックスは、ワイヤ伸線装置の2つ以上の特性を測定する2つ以上のプローブを備えている。これらの2つ以上の特性の1つは、ダイスホルダー表面と平行のダイス表面において測定される。2つ以上のプローブは、情報を制御ユニットに送信するようになっている。
【0007】
本発明の他の及び更なる目的は、本明細書の全体を考察することによって明らかになるだろう。
【0008】
本発明の上記の及び他の特徴、態様、及び利点について、添付の図面に示される実施形態の以下の記載に関連してより詳細に検討する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】ダイスボックスの正面図である。
図1B】ダイスボックスの後方斜視図である。
図2A】ダイスの斜視図である。
図2B】ダイスのRR軸に沿った断面図である。
図2C】ダイスの底面図である。
図3A】2部品ダイスを有するダイスホルダーの断面図である。
図3B】3部品ダイスを有するダイスホルダーの断面図である。
図4A】ダイスボックスの正面図である。
図4B】ダイスボックスの軸AAに沿った断面図である。
図4C】ダイスボックスの軸BBに沿った断面図である。
図5A】ダイスボックスの上面図である。
図5B】ダイスボックスの軸FFに沿った断面図である。
図5C】ダイスボックスの軸JJに沿った断面図である。
図6A】軸GGに沿った断面図である。
図6B図6Aの区域Hの拡大図である。
図6C】ダイスボックスの後面図である。
図7A】ダイスプローブ通路内に充填材料を有する伸線ダイスホルダーの断面図である。
図7B】ダイスプローブ通路内に充填材料を有する伸線ダイスホルダーの断面図である。
図8】直接冷却されるダイスボックスの断面図である。
図9】冷却剤流量調整装置を備えるダイスボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
前述したように要約され、一連の請求項によって規定される本発明は、以下の説明を参照することによって、より良く理解される。以下の説明は、添付の図面と組み合わせて読まれたい。なお、添付の図面において、同様の参照番号は、同様の部品を指すものとする。この実施形態の説明は、本発明の実施を推進しかつ用いることを可能にするために以下に開示されるが、本発明を制限することを意図するものではなく、その特定の例として役立つことを意図するものである。当業者であれば、本発明の同一の目的を達成するように他の方法及びシステムを修正又は設計するための基礎として、開示された概念及び特定の実施形態を容易に用いることができることを理解されたい。また、当業者であれば、このような等価の組合せが、本発明の精神及び範囲からその最も広範な形態において逸脱しないことに留意されたい。
【0011】
本願は、単一又は多数の伸線機の構成要素の種々の特性を収集し、ワイヤ伸線機の効率を改良し、構成要素の故障による停止時間を軽減し、コストを節約する伸線監視システムを記載するものである。いくつかの実施形態では、ワイヤ伸線監視システムは、本明細書において記載されるようなスマートダイスシステム(Smart Die System)の構成要素を備えている。このシステムは、ワイヤ伸線機の構成要素、例えば、プロセスに用いられる種々のダイス、ダイスホルダー、ダイスボックス、ワイヤ自体の物理的特性を測定する1つ又は複数のプローブから情報を収集する。本明細書において用いられる「プローブ(probe)」という用語は、物理的プローブであろうとどのような形式のセンサーであろうと、システムによって用いられる情報を収集する任意の形式の装置を意味する。いくつかの実施形態では、システムは、ワイヤ伸線機の構成要素の物理的特性を測定する2つ以上のプローブから情報を収集する。いくつかの実施形態では、監視システムは、図1A及び図1Bに示されるダイスボックス200を備えている。
【0012】
ダイスボックス200は、図2A図2B及び図2Cに示されるようなダイス102を収容する伸線ダイスホルダー100を有している。業界において知られているように、ダイス102は、硬質材料、例えば、炭化タングステン、多結晶ダイヤモンド、天然ダイヤモンド又は任意の他の同様の材料から作製されている。ダイスは、特定の用途において「ニブ(nib)」と呼ばれることもある。図3A図3B及び図3Cに示されるように、ダイス102は、単一の構造体であってもよいし、又はいくつかの構成要素、例えば、圧力ダイス129若しくはニブ、伸線ダイス126、又は、二次ダイス131から構成されていてもよい。図3Aは、伸線ダイス126と圧力ダイス129若しくはニブとを備えた2部品ダイス102を収容する伸線ダイスホルダー100を示している。図3B及び図3Cは、伸線ダイス126と圧力ダイス129と二次ダイス131とを備えた3部品ダイス102を収容するダイスホルダーを示している。図3Cは、ダイスボックス200内の3部品ダイス102の拡大図である。伸線ダイスホルダー100は、ワイヤ伸線プロセス中に用いられるダイス102の1つ以上の特質又は物理的特性を測定するプローブ115を受け入れるように構成されている。伸線ダイスホルダー100は、ワイヤ伸線プロセス中にダイス102を支持する伸線通路103を有している。伸線通路103は、伸線プロセス中のワイヤの進行方向に沿って長手方向に延在している。伸線ダイスホルダー100は、伸線ダイスホルダー100のホルダー外壁109からホルダー内壁112に延在するダイスプローブ通路106も有している。ここに記載されるように、伸線通路103は、ダイス外壁110と伸線ダイスホルダー100との間の境界である。伸線通路103は、伸線ダイスホルダー100の内壁によって形成される通路である。伸線通路103は、ダイス内壁113によって形成される通路であるワイヤ形成通路105とは異なり、該ワイヤ形成通路105と平行に延在している。
【0013】
いくつかの実施形態では、ダイスプローブ通路106は、伸線通路103に対して垂直又は直交している。しかし、他の実施形態では、ダイスプローブ通路106は、プローブがダイス102にアクセス可能であるなら、伸線通路102に対して異なる角度の配向を有することも考慮されている。例えば、もし伸線通路103が先細になっていたなら、プローブ通路106は、伸線通路106に対して必ずしも垂直又は直交することなく、伸線通路106から離れる方に向かって垂直方向に延在するようになっていてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、ダイス102は、伸線ダイスホルダー100内に収納されている。他の実施形態では、ダイス102は、伸線ダイスホルダー100から分離されていてもよい。伸線ダイスホルダー100は、いくつかの実施形態では、第1のベース118とキャップ121とに分割可能である。第1のベース118は、第1のベース118から取り外し可能な伸線ダイス126を保持するものである。他の実施形態では、伸線ダイス126は、第1のベース118内に収納され、取り外し可能又は交換可能となっていない。伸線ダイスホルダー100のキャップ121は、キャップ121から取り外し可能な圧力ダイス129又はニブを保持する。いくつかの実施形態では、伸線ダイスホルダー100は、2つ以上の圧力ダイス129を保持する。他の実施形態では、圧力ダイス129は、キャップ121内に収納され、取り外し可能又は交換可能となっていない。更なる実施形態では、伸線ダイスホルダー100は、第2のベース123を備えている。第2のベース123は、取り外し可能又は交換可能な二次ダイス131を保持する。他の実施形態では、二次ダイス131は、第2のベース123内に収納され、取り外し可能又は交換可能となっていない。二次ダイス131は、伸線ダイス126及び圧力ダイス129によって与えられる特性に加えて特別の特性をワイヤに与えるために用いられる追加的なダイスである。いくつかの実施形態では、二次ダイス131は、伸線されるワイヤに対して小さなクリアランスを有するようになっている。二次ダイス131は、他の実施形態では、ワイヤの更なる縮径をもたらすようになっている。他の実施形態では、伸線ダイス131は、ワイヤの外面を硬化させるための小さなスキンパスをもたらすようになっている。
【0015】
ダイスプローブ通路106は、いくつかの実施形態では、第1のベース118内に配置されている。伸線ダイス126が第1のベース118内に恒久的に収納される(これは、伸線ダイス126をベース118から取り外すことができないことを意味する)実施形態では、ダイスプローブ通路106は、伸線ダイスホルダー100のうち、伸線ダイス126を収納する第1のベース118の一部であるホルダー内壁112まで延在している。伸線ダイス126が第1のベース118内に収納されずに第1のベース118から取り外し可能になっている他の実施形態では、ダイスプローブ通路126は、伸線ダイスホルダー100のうち、伸線ダイス126と接触する第1のベース118の一部であるホルダー内壁112まで延在している。
【0016】
ダイスプローブ通路106は、プローブ115を収容している。一実施形態では、プローブ115は、ダイス102の任意の部分、具体的には、伸線ダイス126、圧力ダイス129又は二次ダイス131のいずれかより情報を収集する。いくつかの実施形態では、プローブ115は、ダイスに接触するようになっている。プローブ115は、いくつかの実施形態では、情報をセンサーに送信する変換器である。いくつかの実施形態におけるプローブ115は、ダイス102、伸線ダイスホルダー100、又は、伸線ダイスホルダー100を通って引っ張られたワイヤ、から物理的特性を収集する、温度センサー、振動センサー、圧力センサー、赤外線センサー、パイロメータ、磁場センサー、又は、任意の形式のセンサのうち、1つ以上のための変換器又は情報収集装置である。センサが温度情報を収集するいくつかの実施形態では、温度センサは、熱電対又は赤外線センサであり、プローブ115は、温度情報を収集してデータ処理装置210に送信するようなセンサの一部である。いくつかの実施形態では、プローブ115は、ダイス102に物理的に接触するようになっている。他の実施形態では、プローブ115は、ダイスプローブ通路106を通ってダイス102にアクセスし、ダイス102と直接接触することなく、ダイス102から情報を収集する。
【0017】
プローブ115は、いくつかの実施形態では、ダイスプローブ通路106内に収納され、すなわち、ダイスプローブ通路106内に固定されて、ダイスプローブ通路106の内外へ摺動できないようになっている。他の実施形態では、プローブ115は、ダイスプローブ通路106から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、バネのような保持具がプローブ115をダイス102に押し付けるようになっている。
【0018】
他の実施形態では、図7A図7Bに示されるように、ダイスプローブ通路106は、導電性充填材料141を含んでいる。導電性充填材料141は、物理的特性を容易に伝達するものである。いくつかの実施形態では、導電性充填材料141は、ダイス102の温度の正確な読取りを可能にするために熱伝導性である。導電性充填材料141は、いくつかの実施形態では、ダイスプローブ通路106の底部に位置し、ダイス102に接触している。プローブ115は、いくつかの実施形態では、導電性充填材料141に接触し、ダイス102から間接的に情報を収集する。プローブ115は、いくつかの実施形態では、ダイスプローブ通路106内に収納され、すなわち、プローブ通路106内に固定され、プローブ通路106の内外への摺動が許容されず、導電性充填材料に接触している。他の実施形態では、プローブ115は、ダイスプローブ通路106から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、バネのような保持器がプローブ115を導電性充填材料141に押し付けるようになっている。
【0019】
プローブ115は、いくつかの実施形態では、ダイス102、伸線ダイスホルダー100又は他の構成要素からの情報をデータ処理装置210に送信する。データ処理装置210は、いくつかの実施形態では、読取装置、送信機、又はデータロガーである。いくつかの実施形態では、プローブ115は、データ処理装置210に物理的に接続されている。他の実施形態では、プローブ115は、データ処理装置21、0に無線通信するようになっている。無線通信によって、伸線機の操作中に又はワイヤ伸線の不良が生じた時に物理的な接続部が損傷する可能性、具体的には、高張力下において緩んだワイヤによって有線接続部が損傷する可能性が軽減されることになる。
【0020】
いくつかの実施形態では、図4A図4B図4Cに示されるように、伸線ダイスホルダー100は、ダイスボックス200内に収容されている。ダイスボックス200は、ボックスプローブ通路203を備えている。ボックスプローブ通路203は、ボックス外壁206から、(ホルダー外壁109に隣接してホルダー外壁109と平行に延在する)ボックス内壁209に延在している。
【0021】
ボックスプローブ通路203はプローブ115を収容している。一実施形態では、プローブ115は、伸線ダイスホルダー100の任意の部分から情報を収集するようになっている。いくつかの実施形態では、プローブ115は、伸線ダイスホルダー100に物理的に接触する。他の実施形態では、プローブ115は、ボックスプローブ通路203を通って伸線ダイスホルダー100にアクセスし、伸線ダイスホルダー100と直接接触することなく、伸線ダイスホルダー100から情報を収集する。更なる実施形態では、プローブ115は、伸線ダイスホルダー100を貫通し、ダイス102と接触し、ダイス102から情報を収集する。いくつかの実施形態では、プローブ115は、伸線ダイス126と接触する。更なる実施形態では、プローブ115は、伸線ダイスホルダー100を貫通するが、ダイス102と接触しない。プローブ115は、ダイス102と直接接触することなく、ダイス102から情報を収集する。
【0022】
プローブ115は、いくつかの実施形態では、ダイスボックスプローブ通路203内に収納され、すなわち、ボックスプローブ通路203内に固定され、ボックスプローブ通路203の内外へ摺動できないようになっている。他の実施形態では、プローブ115は、ボックスプローブ通路203から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、バネのような保持具が、プローブ115を伸線ダイスホルダー100に押し付けるようになっている。
【0023】
他の実施形態では、ダイスボックスプローブ通路203は、導電性充填材料141を含んでいる。導電性充填材料141は、いくつかの実施形態では、ボックスプローブ通路203の底部にあり、伸線ダイスホルダー100に接触している。プローブ115は、いくつかの実施形態では、導電性充填材料141に接触し、伸線ダイスホルダー100から間接的に情報を収集する。プローブ115は、いくつかの実施形態では、ボックスプローブ通路203内に収納され、すなわち、ボックスプローブ通路203内に固定され、ボックスプローブ通路203の内に又はボックスプローブ通路203の外に摺動することができず、導電性充填材料141に接触している。他の実施形態では、プローブ115は、ボックスプローブ通路203から取り外し可能である。いくつかの実施形態では、バネのような保持具が、プローブ115を導電性充填材料141に押し付けるようになっている。
【0024】
例示的な実施形態では、ダイスボックス200は、ダイスプローブ通路106を備える伸線ダイスホルダー100を収容している。ボックスプローブ通路203とダイスプローブ通路106とが互いに真っすぐに並ぶ図4Bのダイスボックスでは、プローブ115は、両方の通路を貫通することができる。いくつかの実施形態では、ダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100は、位置合せ要素213を有している。位置合せ要素213は、ダイスボックスプローブ通路203とダイスプローブ通路106とが適切に互いに真っすぐに並ぶのを助長する。いくつかの実施形態では、この位置合せは、半径方向において行われる。半径方向の位置合せのための位置合せ要素213は、いくつかの実施形態では、2つの構成要素、すなわち、位置合せピン216と位置合せピン216に適合する凹部219とを有している。いくつかの実施形態では、位置合せピン216は、ダイスボックス200の一部であり、凹部219は、伸線ダイスホルダー100にある。他の実施形態では、位置合せピン216は、伸線ダイスホルダー100の一部であり、凹部219は、ダイスボックス200の一部である。
【0025】
図5Bに示されるように、ダイスボックス200は、ダイスボックス位置合せ通路222を有している。ダイスボックス位置合せ通路222は、いくつかの実施形態では、ダイスボックスプローブ通路203と平行である。ダイスボックス通路222は、ダイスプローブ通路106とも平行である。いくつかの実施形態では、位置合せ通路222の第1の部分225は、伸線ダイスホルダー100にあり、ダイスボックス位置合せ通路222の第2の部分228は、伸線ダイスホルダー100に隣接している。位置合せ通路222の第1の部分225は、位置合せ通路222の第2の部分228に組み合わされ、位置合せピン216を収容する単一の位置合せ通路を形成する。いくつかの実施形態では、位置合せ通路の第1の部分225は、矩形又は不規則な形状を有している。他の実施形態では、ダイスボックス位置合せ通路222の第2の部分228も、矩形又は不規則な形状を有している。
【0026】
いくつかの実施形態では、ダイスボックス200は、伸線ダイスホルダー100の間接冷却のためのジャケット234を有している。ここで説明される間接冷却は、伸線ダイスホルダー100が冷却剤通路を備えたジャケット234によって取り囲まれて、その冷却剤通路を冷却剤が流れてジャケット234から熱を除去し、これによって、伸線ダイスホルダー100から熱を除去する、という冷却形式を意味している。ジャケット234は、いくつかの実施形態では、冷却剤ジャケットであり、いくつかの実施形態では、冷却剤は、水である。ジャケット234は、伸線ダイスホルダー100を支持している。ジャケット234は、冷却剤通路237を更に備え、これによって、伸線ダイスホルダー100及びダイス102を間接冷却する。
【0027】
ダイスボックス200は、いくつかの実施形態では、ジャケット234を貫通するボックス位置合せ通路222の第3の部分を備えている。ボックス位置合せ通路122の第3の部分240は、ボックス位置合せ通路222の第1の部分225及び第2の部分228と真っすぐに並んでいる。位置合せピン216は、いくつかの実施形態では、ボックス位置合せ通路122の第1の部分225、第2の部分228、及び第3の部分240を貫通している。
【0028】
ダイスボックス200は、取り外し可能な安全ブロック246を備える上面243を有している。取り外し可能な安全ブロック246は、「オーバーセンター(over center)」ラッチ式トグルクランプ252によってダイスボックス200に押し付けられている。いくつかの実施形態では、ダイスボックス200の取り外し可能な安全ブロック246は、ジャケット234の上、すなわち、ダイスボックス200の上面243上に配置されている。いくつかの実施形態では、ピン216が、取り外し可能な安全ブロック246に取り外し可能に取り付けられている。ラッチ式トグルクランプ252が係止位置に作動されると、取り外し可能な安全ブロック246及びピン216が固定される。ラッチ式トグルクランプ252が解除位置に作動されると、安全ブロック246及びピン216は、ダイスボックス246から自在に取り外し可能になる。場合によっては、ピン216及び安全ブロック246の少なくとも一方が陳腐化して、ダイスボックス200から取り外す必要がある。このような場合には、多くの取り外し選択枝がある。
【0029】
取り外し可能な安全ブロック246は、いくつかの実施形態では、安全ブロックが動かなくなった時に安全ブロックをこじ開けるための一次取り外し装置249を有している。一次取り外し装置249は、いくつかの実施形態では、取り外し可能な安全ブロック246の底面261上の平坦な通路258である。通路258は、いくつかの実施形態では、取り外し可能な安全ブロック246を第1の側から第2の側に貫通している。他の実施形態では、安全通路は、取り外し可能な安全ブロック246の全長を貫通せずに、各側に1つずつ設けられた2つの長孔から構成されている。これらの長孔は、安全ブロック246をダイスボックスの上面から離れる方にこじ開けるための間隙を設けるために、取り外し可能な安全ブロック246にフライス加工によって形成されている。他の例示的な実施形態では、ユーザーがダイスボックス200から位置合せピン216を取り外すのを更に支援するために、二次取り外し装置264が用いられる。例示的な実施形態では、二次取り外し装置264は、ネジである。このネジを回転させることによって、該ネジがジャケットを押し、取り外し可能な安全ブロックをダイスボックス200から分離することになる。更に他の実施形態では、三次取り外し装置が、ダイスボックス底面279からボックス位置合せ通路122に向かって延在する取り外し通路276を備えている。取り外し通路276は、位置合せピン216の直径よりも小さい直径を有している。取り外しピン(図示せず)が取り外し通路276内に挿入され、これによって、位置合せピン216をダイスボックス200の外に押し出すことができる。
【0030】
一実施形態では、ダイス102又は伸線ダイスホルダー100が取り外される間に安全ブロックが落下するのを防ぐために、安全ブロックの下に摺動することができる摺動可能な支持体267が設けられている。
【0031】
他の実施形態では、伸線ダイスホルダー100は、軸平面内においてダイスボックス200内に位置合せされる。いくつかの実施形態では、軸方向の位置合せは、先細のダイスボックス伸線通路105を介して達成される。伸線通路105の先細形状は、伸線通路105の一端の直径が伸線通路105の第2の端の直径と異なることを意味している。
【0032】
1つの例示的な実施形態では、ダイスボックス200は、力変換器303を備えている。いくつかの実施形態では、力変換器303は、無負荷状態にある。力変換器303の無負荷状態を達成するために、ダイスボックス200は、ダイスボックス200が伸線通路103と平行な軸に沿って移動することを可能にするガイドロッド306を有している。ダイスボックス200は、他の実施形態では、複数のガイドロッド306を備えている。ダイスボックス200は、1つ又は複数のリニア軸受309、又は複数のリニア軸受309を有しているとよい。
【0033】
間接冷却が用いられる一実施形態では、ダイスボックス200は、バックプレート270に接続されたジャケット234を備えている。力伝達プレート401が力変換器303に接続されている。力変換器303は、バックプレート270によって保持され、バックプレート270の耐久性は、力変換器303とバックプレート270との間に位置する硬化ワッシャ403によって強化されている。力変換器303は、保持リング402によって適所に保持されている。保持リング402が力変換器303の外側リングに圧力を加え、バネ圧が保持クリップ405によって保持された波形ワッシャー404によってもたらされる。この構成によって、力変換器303が予め負荷が加えられていない状態にあることが確実になる。スライドプレート330によって、力伝達プレート401の半径方向の位置合せが確実になり、これによって、ワイヤ伸線中に、ジャケット234によって直線移動が必要に応じて力変換器を圧縮することが可能になる。
【0034】
ジャケット234は、1つ又は複数のガイドロッド306又は複数のガイドロッド306によってバックプレート270に接続されている。他の実施形態では、ダイスボックス200は、ジャケット234とバックプレート270との間にスライドプレート330を有している。力変換器303は、スライドプレート330とバックプレート270との間に配置されている。他の実施形態では、力伝達プレート330が、力変換器303とジャケット234との間に配置されている。
【0035】
ダイスボックス200は、いくつかの実施形態では、直接冷却される。直接冷却の実施形態は、図8に示されている。ここで検討される直接冷却は、冷却剤が伸線ダイスホルダー100にアクセスすることができることを意味している。直接冷却をもたらすために、ダイスボックス200は、伸線ダイスホルダー100の直接冷却を可能にするダイスホルダーOリング309及びダイスボックスOリング312を備えている。冷却剤が、冷却剤入口803から伸線ダイスホルダー100と直接接触する冷却通路800に送達される。前述したように、ダイスボックス200内の伸線ダイスホルダー100は、直接冷却されてもよいし、又は間接冷却されてもよい。いずれの冷却形式においても、ダイスボックスは、図9に示されるような冷却剤流量調整装置327に接続されている。冷却剤流量調整装置327は、ホルダー126を特定の温度に冷却するためにシステム内に押し出される冷却剤の流量を変更するものである。ここに記載される種々のセンサからの情報を利用して、流量調整装置327の出力を調整することになる。
【0036】
ダイスボックス200は、いくつかの実施形態では、伸線通路103と平行の軸に沿った伸線ダイスホルダー100の移動を拘束するダイスボックスナット315を備えている。いくつかの実施形態では、ダイスボックスナット315の設置は、設置時の軸方向予負荷を避けるように構成されている。直接冷却が適用される場合、ダイスボックスナット315は、伸線ダイスホルダー空間を移動させることによって、力変換器303の負荷を阻止する所定位置までしかダイスボックス200内に進入しないようになっている。このような実施形態では、伸線ダイスホルダー100は、ワイヤ伸線軸に沿って移動することが可能である。伸線ダイスホルダー100は、ワイヤが伸線されない時、力変換器への予負荷、すなわち、加圧を回避するのに十分な距離だけ移動することが可能である。
【0037】
ダイスボックス200は、いくつかの実施形態において、以下のセンサ、すなわち、振動センサ318、磁気センサ321、ホール効果センサ324、及び任意の他のセンサのいずれかを備えている。ダイスボックス200がいくつかの実施形態において回転ダイスホルダーを備えることも考慮されている。回転ダイスホルダーは、ワイヤが伸線される時に回転することが可能である。回転ダイスホルダーは、無線によってダイスホルダーから制御ユニットに収集された情報を送達するセンサを備えている。
【0038】
ダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100は、伸線システムの一部である。伸線システムは、2つ以上のプローブ及び制御ユニットを備えている。2つ以上のプローブは、ダイスボックス200、伸線ダイスホルダー100、ダイス102、及びワイヤ伸線システムの他の構成要素の2つ以上の物理的特性を測定し、これらのプローブの少なくとも1つは、ダイスホルダー表面と平行のダイス表面において特性を測定するようになっている。本明細書に用いられる「物理的特性(physical properties)」という用語は、ダイスボックス200、伸線ダイスホルダー100、ダイス120、又はワイヤの測定可能な品質を意味している。このような「物理的特性」は、ダイスボックス200の構成要素、伸線ダイスホルダー100、ダイス102、及びワイヤを作製する材料の準永続的な特性、例えば、温度、導電率、等である。本明細書に用いられる他の「物理的特性」は、ワイヤ伸線プロセスに基づいて変化する測定可能な品質を意味している。例えば、伸線ダイスホルダー100又はダイス102の温度、ダイスボックス200の振動、及び他の同様の品質である。2つ以上のプローブは、情報を制御ユニットに送信する。次いで、制御ユニットは、情報をグラフィカルユーザーインターフェイスに送信する。グラフィカルユーザーインターフェイスは、ユーザーが評価するために用いられ、又は特定の作動を行うために機械のパラメータを管理するプログラムのために用いられる。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、情報を処理し、特定のワイヤ伸線パラメータに対する自動調整を行う。例えば、制御ユニットは、いくつかの実施形態では、種々のプローブから収集された情報を組合せ、プロセスの伸線速度、ダイスボックスに供給される冷却剤の流量、及び他の同様のパラメータを自動的に調整する。いくつかの実施形態では、制御ユニットは、ダイスボックスにおける冷却剤流量調整装置によって供給される冷却剤の流量を制御する。本明細書に記載されるシステムの1つの利点は、システムを停止させることなく、ワイヤ伸線プロセスの調整を行うことを可能にするために、「実時間(real time)」で、すなわち、ワイヤが機械を通して伸線されている間に、プローブが情報を制御ユニット又はデータ処理装置210に送信することにある。
【0039】
いくつかの実施形態では、システムは、複数のプローブ及びセンサを有する複数のダイスボックス200を備えている。複数のプローブ及びセンサは、情報を単一の制御ユニットに送信し、次いで、単一の制御ユニットが、ワイヤ伸線機のパラメータを調整する。システムは、ダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100においてプローブ115から収集された情報に基づき、機械のパラメータを調整する。システムの複数のダイスボックス200は、いくつかの実施形態では、単一のワイヤ伸線機内に配置されている。いくつかの実施形態では、複数のダイスボックス200は、同時に作動する多数のワイヤ伸線機内に配置されていてもよい。制御ユニットは、各ダイスボックス200の実時間の読取値に基づき種々の機械の種々のパラメータを変化させるように設計されている。
【0040】
ワイヤ伸線監視システムは、ワイヤ伸線装置の2つ以上の特性を測定する2つ以上のプローブを備えるワイヤ伸線ボックスを有している。前述したように、これらの2つ以上の特性の1つは、ダイスホルダー表面と平行のダイス表面において測定される。システムは、制御ユニットも有し、2つ以上のプローブは、情報をこの制御ユニットに送信する。ワイヤ伸線システムは、伸線ダイスホルダーも備えている。ワイヤ伸線システムは、2つ以上のプローブから情報を受信しかつ処理するように構成される制御ユニットを有している。ワイヤ伸線システムは、いくつかの実施形態では、2つ以上のワイヤ伸線ボックスを備えている。
【0041】
本システムは、前述したようにダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100においてプローブから収集された情報に基づきワイヤ伸線機のパラメータを制御する方法を実施する。この方法の第1のステップでは、1つ又は複数のダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100におけるプローブ及びセンサを有するワイヤ伸線機が、伸線ダイスホルダー100を通るワイヤ伸線を開始する。第2のステップでは、情報が、伸線ダイスホルダー100及びダイスボックス200におけるプローブ115から収集される。いくつかの実施形態では、プローブ115は、伸線ダイスホルダー100内にある。プローブ115は、ダイス102に接触し、他のプローブ又はセンサは、ダイスボックス200及び伸線ダイスホルダー100から直接追加的な情報を収集する。第3のステップでは、情報が、データ処理装置210に送信される。データ処理装置210は、種々のプローブから受信したデータを収集しかつ処理するようにプログラム化された処理ユニット又はコンピュータを備えている。更なるステップでは、収集された情報が処理される。更に他のステップでは、データ処理装置210は、ダイスボックス200又は伸線ダイスホルダー100における伸線機の種々のパラメータを制御する。
【0042】
好ましい実施形態を参照して、本発明について説明してきた。本発明の概念を説明するために特定の値、関係、材料、及びステップについて述べたが、当業者であれば、概括的に述べた本発明の基本概念及び操作原理の精神又は範囲から逸脱することなく、多くの変更形態及び/又は修正形態が特定の実施形態に示される本発明に対してなされ得ることを理解するだろう。上記の示唆に照らして、当業者がここに示唆される本発明から逸脱することなくこれらの詳細を修正することができることを認識されたい。好ましい実施形態及び本発明の概念のいくつかの修正形態を十分に説明してきたが、このような概念に精通する当業者であれば、種々の他の実施形態及び本明細書に図示かつ記載される実施形態のいくつかの変更形態及び修正形態を当然なし得ることだろう。このような修正形態、代替形態、及び他の実施形態は、いずれもそれらが添付の請求項又はその等価物の範囲内にある限り、本発明に含まれることが意図されている。従って、本発明が明細書において具体的に述べた以外にも実施され得ることを理解されたい。それ故、本実施形態は、あらゆる点において、単なる例示であって制限的ではないと見なされるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、伸線機によって金属ワイヤを製造することに関する。更に具体的には、本発明は、業界において用いられるこのような製造のためのダイス及びダイスホルダー並びに監視システムに関する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
【国際調査報告】