(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】キナゾリノン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 239/95 20060101AFI20220415BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20220415BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220415BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220415BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220415BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20220415BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220415BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220415BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220415BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220415BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220415BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220415BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C07D239/95 CSP
A61K31/517
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/12
A61P11/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P27/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021549941
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020019942
(87)【国際公開番号】W WO2020176652
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520086494
【氏名又は名称】セレピュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ルー ビンウェイ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC46
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
新規キナゾリノン化合物、ならびに、キナゾリノンを含む薬学的組成物、ならびにミトコンドリア機能不全に関連する疾患および状態の処置のための方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩:
式中、
R
1は、C
1~6アルコキシ、C
1~6アルキル、およびハロゲンからなる群より選択され;
R
2およびR
3は独立して、ハロゲン、C
1~6アルキル、およびC
1~6アルコキシからなる群より選択され;
R
1~R
3のうち少なくとも1つはハロゲンであり;
R
4およびR
7は独立して、水素、ハロゲン、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択され;
R
5およびR
6は独立して、C
1~6アルコキシ、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、-N(R
b)
2、ハロゲン、および水素からなる群より選択され;
各R
aは独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-C(O)OR
a1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
a1は、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
a2は独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
各R
bは独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-SO
2R
b1、-C(O)OR
b1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
b1は、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
b2は独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
但し、R
1、R
2、およびR
3がハロゲンである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメチルであり、R
2がクロロであり、かつR
3がメトキシである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、かつR
3がクロロである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
5がメチルまたはクロロである場合、R
4、R
6、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
6がクロロである場合、R
4、R
5、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外である。
【請求項2】
R
1~R
3のうち少なくとも1つがC
1~6アルコキシである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R
1がC
1~6アルコキシであり、R
2がハロゲンである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R
1がC
1~6アルコキシであり、R
2がC
1~6アルコキシである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R
5およびR
6が独立して、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択される、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R
4およびR
7が水素である、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R
1がC
1~6アルコキシであり;
R
2およびR
3が独立して選択されるハロゲンであり;
R
4およびR
7が水素であり;
R
5が、C
1~6アルコキシ、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、-N(R
b)
2、および水素からなる群より選択され;
R
6がC
1~6アルコキシである、
請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R
1がC
1~6アルコキシであり;
R
2およびR
3が独立して選択されるハロゲンであり;
R
4およびR
7が水素であり;
R
5がハロゲンであり;
R
6が、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、-N(R
b)
2、ハロゲン、および水素からなる群より選択される、
請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
以下からなる群より選択される、請求項1記載の化合物:
およびその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項11】
ミトコンドリア機能不全に関連する疾患または状態を処置するための方法であって、それを必要とする対象に有効量の請求項1記載の化合物を投与する段階を含む、方法。
【請求項12】
疾患ががんである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
がんが、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCL)、膠芽腫、胆管がん、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)誘発性肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん、乳がん、または卵巣がんである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
疾患が神経変性疾患である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ゴーシェ病、筋萎縮性側索硬化症、またはハンチントン病である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
状態が脳状態である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
脳状態が、脳卒中、てんかん発作、神経障害性疼痛、神経精神状態、外傷性脳損傷、脊髄損傷、動脈瘤、またはくも膜下出血である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
疾患または状態が非神経障害である、請求項11記載の方法。
【請求項19】
非神経障害が、糖尿病、急性腎損傷、腎線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、特発性肺線維症、心線維症、強皮症、骨髄線維症、膵線維症、ミトコンドリア筋症、加齢黄斑変性(AMD)、先天性ミトコンドリア病、敗血症、心腎症候群、心虚血再灌流障害、肺動脈性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、または血管収縮である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
状態が、ミトコンドリア機能不全により引き起こされるヒトの加齢である、請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年2月27日出願の米国仮特許出願第62/811,471号の優先権を主張するものであり、この仮特許出願は全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ミトコンドリア機能不全はいくつかの様式で細胞機能に影響しうる。第一に、ミトコンドリアは細胞動力装置としてATPの主要な供給源となる。ミトコンドリア機能不全により細胞エネルギーが不足し、細胞生命力の維持が損なわれる。第二に、ミトコンドリアは酸化的リン酸化に関与する電子伝達系を保有する。このプロセスは、基本条件下で何らかのシグナル伝達機能を実現可能な活性酸素種(ROS)を生じさせるが、欠陥ミトコンドリアが電子移動プロセスにおいて非効率的であることから、ROS産生が上昇し、これにより種々の巨大分子(タンパク質、核酸、脂質など)の損傷が生じうる。この酸化的損傷は、疾患、特に加齢関連疾患に広範に関連している。第三に、ミトコンドリアは細胞カルシウム恒常性を維持する上で重要な細胞小器官である。ミトコンドリアは、細胞内ストア、特にERから放出されるカルシウム、または興奮により生じるカルシウムを取り込む。ミトコンドリア機能不全によって、細胞カルシウム恒常性が変化し、いくつかの疾患状態に関連しているERストレスなどの状態が引き起こされることがある。さらに、ミトコンドリアのカルシウムは、TCAサイクルおよび電子伝達系中での特定の酵素の活性に必須である。したがって、ミトコンドリアのカルシウム恒常性の変化によりミトコンドリアのエネルギー不足が生じることがある。最後に、ミトコンドリアは細胞生命および細胞死のゲートキーパーとしてアポトーシス細胞死および壊死性細胞死の両方を制御する。したがって、細胞の末端において、これらの経路に関わる障害により、早期の細胞死が誘発され、変性疾患が引き起こされることがある。逆に、適切な細胞死の欠如により、ミトコンドリア代謝の変化をしばしば特徴とする不適切な組織成長およびがん発生がもたらされることがある。
【0003】
その多くが喫緊のアンメットメディカルニーズである多数の主要なヒト疾患がミトコンドリア機能不全に関連している。これらは、がんならびに神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、およびALSから脳損傷、例えば脳卒中、てんかん発作、神経障害性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、動脈瘤、およびくも膜下出血まで)から特定の非神経障害(例えば敗血症、急性腎損傷、心腎症候群、心虚血再灌流障害、肺動脈性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、および血管収縮)までに及ぶ。
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な概要
式Iの化合物、およびその薬学的に許容される塩が本明細書において提供される:
式中、
R
1、R
2、およびR
3は独立してC
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され、ここでR
1~R
3のうち少なくとも1つはハロゲンであり;
R
4、R
5、R
6、およびR
7は独立して水素、ハロゲン、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択され;
各R
aは独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-C(O)OR
a1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
a1はC
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
a2は独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
各R
bは独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-SO
2R
b1、-C(O)OR
b1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
b1はC
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
b2は独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
但し、R
1、R
2、およびR
3がハロゲンである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメチルであり、R
2がクロロであり、かつR
3がメトキシである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、かつR
3がクロロである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
5がメチルまたはクロロである場合、R
4、R
6、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
6がクロロである場合、R
4、R
5、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外である。
【0005】
ミトコンドリア機能不全に関連する疾患または状態を処置するための方法も本明細書において提供される。本方法は、それを必要とする対象に有効量の本明細書に記載の化合物または薬学的組成物を投与する段階を含む。いくつかの態様では、疾患/状態はがん、神経変性疾患、非神経障害、または加齢である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書において使用される「アルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、指示された数の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の飽和脂肪族基を意味する。アルキルは任意の数の炭素、例えばC1~2、C1~3、C1~4、C1~5、C1~6、C1~7、C1~8、C1~9、C1~10、C2~3、C2~4、C2~5、C2~6、C3~4、C3~5、C3~6、C4~5、C4~6、およびC5~6を含みうる。例えば、C1~6アルキルとしてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられるがそれに限定されない。アルキルは、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどであるがそれに限定されない最大20個の炭素を有するアルキル基を意味することもある。アルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、「置換アルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシより選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。
【0007】
本明細書において使用される「アルコキシ」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、Rがアルキルである式-ORを有する基を意味する。
【0008】
本明細書において使用される「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。
【0009】
本明細書において使用される「シクロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、3~12個の環原子または指示された数の原子を含む飽和または部分不飽和の単環式、縮合二環式、または架橋多環式の環集合体を意味する。シクロアルキルは任意の数の炭素、例えばC3~6、C4~6、C5~6、C3~8、C4~8、C5~8、C6~8、C3~9、C3~10、C3~11、およびC3~12を含みうる。飽和単環式シクロアルキル環としては例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルが挙げられる。飽和二環式および多環式シクロアルキル環としては例えばノルボルナン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、およびアダマンタンが挙げられる。シクロアルキル基は部分不飽和であって、環中に1個または複数の二重結合または三重結合を有していてもよい。部分不飽和である代表的なシクロアルキル基としてはシクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-および1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-、および1,5-異性体)、ノルボルネン、ならびにノルボルナジエンが挙げられるがそれに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3~8シクロアルキルである場合、例示的な基としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられるがそれに限定されない。シクロアルキルが飽和単環式C3~6シクロアルキルである場合、例示的な基としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられるがそれに限定されない。シクロアルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、「置換シクロアルキル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシより選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。
【0010】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、少なくとも1個の二重結合を有する2~6個の炭素原子の直鎖または分岐炭化水素を意味する。アルケニル基の例としてはビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、ペンテニル、またはヘキサジエニルが挙げられるがそれに限定されない。アルケニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、「置換アルケニル」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシより選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。
【0011】
本明細書において使用される「アリール」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、任意の好適な数の炭素環原子および任意の好適な数の環を有する芳香環系を意味する。アリール基は任意の好適な数の炭素環原子、例えばC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、またはC16、およびC6~10、C6~12、またはC6~14を含みうる。アリール基は単環式であってもよく、縮合して二環式基(例えばベンゾシクロヘキシル)または三環式基を形成してもよく、結合により連結されてビアリール基を形成してもよい。代表的なアリール基としてはフェニル、ナフチル、およびビフェニルが挙げられる。他のアリール基としては、メチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。いくつかのアリール基、例えばフェニル、ナフチル、またはビフェニルは6~12個の環員を有する。他のアリール基、例えばフェニルまたはナフチルは6~10個の環員を有する。いくつかの他のアリール基、例えばフェニルは6個の環員を有する。アリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、「置換アリール」基は、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、アルキルアミノ、アミド、アシル、ニトロ、シアノ、およびアルコキシより選択される1個または複数の基で置換されていてもよい。
【0012】
本明細書において使用される「カルボニル」という用語は、それ自体で、または別の置換基の一部として、-C(O)-、すなわち、酸素に二重結合し、かつ該カルボニルを有する部分中の2個の他の基に結合している、炭素原子を意味する。
【0013】
本明細書において使用される「アミノ」という用語は、各R基が水素またはアルキルである-NR2部分を意味する。アミノ部分はイオン化されて対応するアンモニウムカチオンを形成してもよい。
【0014】
本明細書において使用される「スルホニル」という用語は、R基がアルキル、ハロアルキル、またはアリールである-SO2R部分を意味する。アミノ部分はイオン化されて対応するアンモニウムカチオンを形成してもよい。「アルキルスルホニル」とは、R基がアルキルであるアミノ部分を意味する。
【0015】
本明細書において使用される「ヒドロキシ」という用語は-OH部分を意味する。
【0016】
本明細書において使用される「シアノ」という用語は、窒素原子に三重結合した炭素原子(すなわち-C≡N部分)を意味する。
【0017】
本明細書において使用される「カルボキシ」という用語は-C(O)OH部分を意味する。カルボキシ部分はイオン化されて対応するカルボキシレートアニオンを形成してもよい。
【0018】
本明細書において使用される「アミド」という用語は、各R基が水素またはアルキルである-NRC(O)R部分または-C(O)NR2部分を意味する。
【0019】
本明細書において使用される「アシル」という用語は、各Rがアルキルである-C(O)R部分を意味する。
【0020】
本明細書において使用される「ニトロ」という用語は-NO2部分を意味する。
【0021】
本明細書において使用される「オキソ」という用語は、化合物に二重結合した酸素原子(すなわちO=)を意味する。
【0022】
本明細書において使用される「処置」という用語は、疾患、病理状態、または障害を治癒、寛解、安定化、または予防することを意図した、患者の医学的管理を意味する。この用語は、積極的処置、すなわち、疾患、病理状態、または障害の改善を具体的に目指す処置を含み、また、原因的処置、すなわち、関連する疾患、病理状態、または障害の原因の除去を目指す処置を含む。さらに、この用語は、対症的処置、すなわち、疾患、病理状態、または障害の治癒よりもむしろ症状の軽減のために設計された処置; 予防的処置、すなわち、関連する疾患、病理状態、または障害の発生を最小化または部分的もしくは完全に阻害することを目指す処置; および支持的処置、すなわち、関連する疾患、病理状態、または障害の改善を目指す別の特定の治療を補完するために使用される処置を含む。様々な局面では、この用語は、哺乳動物(例えばヒト)を含む対象のあらゆる処置を網羅するものであり、(i) 疾患に罹患しやすい可能性があるが疾患を有するとはまだ診断されていない対象において疾患の発生を予防すること; (ii) 疾患を阻害する、すなわちその発生を停止させること; または(iii) 疾患を軽減する、すなわち疾患の退行を引き起こすことを含む。一局面では、対象は霊長類などの哺乳動物であり、さらなる局面では、対象はヒトである。また、「対象」という用語は、飼育動物(例えばネコ、イヌなど)、家畜(例えばウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えばマウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエなど)を含む。
【0023】
本明細書において使用される「予防する」または「予防すること」という用語は、何かが起こることを特に事前措置によって防止し、回避し、不要にし、未然に防ぎ、停止し、または妨害することを意味する。「減少させる」、「阻害する」、または「予防する」が本明細書において使用される場合、別途具体的に指示がない限り、他の2つの単語の使用も明確に開示されると理解されよう。
【0024】
本明細書において使用される「診断されている」という用語は、当業者、例えば医師による診察に供されて、本明細書に開示される化合物、組成物、または方法で診断または処置可能である状態を有すると判断されたことを意味する。
【0025】
本明細書において使用される「障害の処置を必要とすると同定されている」などという語句は、障害の処置の必要性に基づく対象の選択を意味する。例えば、当業者による早期の診断に基づいて障害(例えばアルツハイマー病に関連する障害)の処置の必要性を有するものとして対象を同定した後、該障害の処置に供することができる。一局面では、診断を行った人物とは異なる人物が同定を行ってもよいと想定されよう。また、さらなる局面では、引き続いて投与を行った者が投与を行うことができると想定されよう。
【0026】
本明細書において使用される「投与すること」および「投与」という用語は、対象に薬学的製剤を与える任意の方法を意味する。これらの方法は当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、頬側投与、ならびに静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、および皮下投与などの注射投与を含む非経口投与が挙げられるがそれに限定されない。投与は連続的でも断続的でもよい。様々な局面では、製剤を治療的に投与することができ、すなわち、既存の疾患または状態を処置するために投与することができる。さらなる様々な局面では、製剤を予防的に投与することができ、すなわち、疾患または状態の予防のために投与することができる。
【0027】
本明細書において使用される「接触させること」という用語は、開示される化合物と細胞、標的受容体、または他の生物学的実体とを結びつけることを、該化合物が標的(例えば受容体、転写因子、細胞など)の活性に影響しうるように、直接的に、すなわち標的自体と相互作用することで、または間接的に、すなわち標的の活性がそれに依存する別の分子、補助因子、因子、もしくはタンパク質と相互作用することで行うことを意味する。
【0028】
本明細書において使用される「有効量(effective amount)」および「有効量(amount effective)」という用語は、所望の結果を得るためにまたは望ましくない状態に対して効果を示すために十分な量を意味する。例えば、「治療有効量」とは、所望の治療効果を得るためにまたは望ましくない症状に対して効果を示すために十分であるが、有害副作用を引き起こすには一般に不十分である量を意味する。任意の特定の患者に特有の治療有効量レベルは、処置される障害および該障害の重症度; 使用される特定の組成物; 患者の年齢、体重、全身的健康、性別、および食事; 投与時間; 投与経路; 使用される特定の化合物の排出速度; 処置の持続時間; 使用される特定の化合物と併用または同時使用される薬物、ならびに医学分野において周知である同様の要因を含む種々の要因に依存する。例えば、ある化合物の投与を所望の治療効果を得るために必要なレベルよりも低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることは、十分に当技術分野の技能の範囲内である。所望であれば、有効一日量を投与目的で複数用量に分割してもよい。したがって、一回量の組成物は、一日量を構成する量またはその分割量を含みうる。任意の禁忌に際しては、個々の医師が投与量を調整することができる。投与量は変動しうるし、毎日1回または複数回の投与で1日間または数日間投与可能である。所与のクラスの医薬品に適した投与量に関する指針は文献に見ることができる。さらなる様々な局面では、製剤を「予防有効量」で、すなわち疾患または状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0029】
本明細書において使用される「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、対象に対する有効剤の投与に役立つ物質を意味する。「薬学的に許容される」とは、賦形剤が製剤の他の成分と適合性があって、そのレシピエントに有害でないことを意味する。本発明において有用な薬学的賦形剤としては結合剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、滑剤、コーティング、甘味料、香料、および着色料が挙げられるがそれに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される「塩」という用語は、本発明の化合物の酸性塩または塩基性塩を意味する。薬学的に許容される塩の実例としては鉱酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、および第四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなど)の塩がある。薬学的に許容される塩は無毒であるものと理解されよう。
【0031】
本発明の酸性化合物の薬学的に許容される塩としては、塩基によって形成される塩、すなわち、カチオン性塩、例えばアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩(例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩)、ならびにアンモニウム塩(例えばアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、およびトリス-(ヒドロキシメチル)-メチル-アンモニウム塩)がある。
【0032】
同様に、酸付加塩、例えば鉱酸、有機カルボン酸、および有機スルホン酸、例えば塩酸、メタンスルホン酸、マレイン酸の塩も可能であるが、これはピリジルなどの塩基性基が構造の一部を構成することが条件である。
【0033】
本化合物の中性形態を、従来の様式で塩と塩基または酸とを接触させ、親化合物を単離することで再生することができる。本化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば極性溶媒中での溶解性に関して、様々な塩形態と異なるが、他の点では、塩は本発明の化合物の親形態と同等である。
【0034】
本明細書において使用される「任意的な」または「任意的に」という用語は、続いて記述される事象または状況が生じることもそうでないこともあること、ならびに、その記述が該事象または状況が生じる場合およびそれが生じない場合を含むことを意味する。
【0035】
II. キナゾリノン化合物
式Iの化合物、およびその薬学的に許容される塩が本明細書において提供される:
式中、
R
1、R
2、およびR
3は独立してC
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され、ここでR
1~R
3のうち少なくとも1つはハロゲンであり;
R
4、R
5、R
6、およびR
7は独立して水素、ハロゲン、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択され;
各R
aは独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-C(O)OR
a1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
a1はC
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
a2は独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
各R
bは独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-SO
2R
b1、-C(O)OR
b1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
b1はC
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
b2は独立して水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
但し、R
1、R
2、およびR
3がハロゲンである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメチルであり、R
2がクロロであり、かつR
3がメトキシである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、かつR
3がクロロである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
5がメチルまたはクロロである場合、R
4、R
6、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
6がクロロである場合、R
4、R
5、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外である。
【0036】
式Iの化合物中のR1~R3のうち少なくとも1つはハロゲンである。例えば、R1、R2、およびR3はそれぞれ独立してフルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)でありうる。いくつかの態様では、R2はハロゲンである。いくつかの態様では、R2およびR3はハロゲンである。いくつかの態様では、R2およびR3はクロロである。いくつかの態様では、R2はフルオロであり、R3はクロロである。いくつかの態様では、R1、R2、およびR3はハロゲンである。いくつかの態様では、R1はフルオロであり、R2およびR3はクロロである。
【0037】
いくつかの態様では、R1~R3のうち少なくとも1つはC1~6アルコキシである。例えば、R1、R2、R3はそれぞれ独立してメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、分岐ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、または分岐ヘキシルオキシでありうる。いくつかの態様では、R1およびR2はC1~6アルコキシである。いくつかの態様では、R1およびR3はC1~6アルコキシである。いくつかの態様では、R2およびR3はC1~6アルコキシである。いくつかの態様では、R1はC1~6アルコキシ(例えばメトキシ)であり、R2はハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、もしくはブロモ)またはC1~6アルコキシ(例えばメトキシ)である。
【0038】
いくつかの態様では、R1~R3のうち少なくとも1つはC1~6アルキルである。例えば、R1、R2、R3はそれぞれ独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、分岐ペンチル、n-ヘキシル、または分岐ヘキシルでありうる。いくつかの態様では、R1はC1~6アルキルである。いくつかの態様では、R2はC1~6アルキルである。いくつかの態様では、R3はC1~6アルキルである。いくつかの態様では、R1はC1~6アルコキシ(例えばメトキシ)であり、R2はハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、もしくはブロモ)またはC1~6アルコキシ(例えばメトキシ)であり、R3はC1~6アルキル(例えばメチル)である。
【0039】
R4、R5、R6、およびR7は独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、および-N(Rb)2からなる群より選択される。例えば、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、または-N(Rb)2でありうる。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、または-N(Rb)2である。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、または-N(Rb)2である。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C1~6アルケニル、-ORa、または-N(Rb)2である。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、-ORa、または-N(Rb)2である。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、または-N(Rb)2である。いくつかの態様では、R4、R5、R6、およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、または-ORaである。これらの態様のうちいずれかでは、R1、R2、およびR3を先に記載のいずれかの組み合わせに従って規定することができる。
【0040】
いくつかの態様では、R4は水素である。いくつかの態様では、R4は水素であり、R7はC1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、またはC1~6アルケニルである。R7は例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、分岐ペンチル、n-ヘキシル、分岐ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ビニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、ブタジエニルでありうる。いくつかの態様では、R7は水素、C3~8シクロアルキル(例えばシクロプロピル)、またはC1~6アルケニル(例えばビニル)である。
【0041】
いくつかの態様では、R6はC1~6アルコキシである。例えば、R6はメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、分岐ペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ、または分岐ヘキシルオキシでありうる。いくつかの態様では、R6はC1~6アルコキシであり、R5は水素、ハロゲン、-ORa、および-N(Rb)2より選択され; いくつかのこれらの態様では、R4は水素である。いくつかの態様では、R5およびR6は独立してC1~6アルコキシ、C3~8シクロアルキル、-ORa、および-N(Rb)2からなる群より選択され; いくつかのこれらの態様では、R4は水素である。いくつかの態様では、R6はC1~6アルコキシであり、R5は水素、ハロゲン、-OH、および-NH2より選択され; いくつかのこれらの態様では、R4は水素である。これらの態様のうちいずれかでは、R7を先に記載のいずれかの組み合わせに従って規定することができる。いくつかの態様では、R7は水素である。いくつかの態様では、R4およびR7は水素である。
【0042】
いくつかの態様では、
R1がC1~6アルコキシであり;
R2およびR3が独立して選択されるハロゲンであり;
R4およびR7が水素であり;
R5がC1~6アルコキシ、C1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、-N(Rb)2、および水素からなる群より選択され;
R6がC1~6アルコキシである、
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩が提供される。
【0043】
いくつかの態様では、R1はC1~6アルコキシであり; R2およびR3は独立して選択されるハロゲンであり; R4およびR7は水素であり; R5はハロゲン以外であり; R6はC1~6アルコキシである。いくつかの態様では、R1はC1~6アルコキシであり; R2およびR3は独立して選択されるハロゲンであり; R4およびR7は水素であり; R5はクロロ以外であり; R6はC1~6アルコキシである。
【0044】
いくつかの態様では、
R1がC1~6アルコキシであり;
R2およびR3が独立して選択されるハロゲンであり;
R4およびR7が水素であり;
R5がハロゲンであり;
R6がC1~6アルキル、C3~8シクロアルキル、C1~6アルケニル、-ORa、-N(Rb)2、ハロゲン、および水素からなる群より選択される、
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩が提供される。
【0045】
いくつかの態様では、R1はC1~6アルコキシであり; R2およびR3は独立して選択されるハロゲンであり; R4およびR7は水素であり; R5はハロゲンであり; R6はC1~6アルコキシ以外である。いくつかのこれらの態様では、R1はC1~6アルコキシであり; R2およびR3は独立して選択されるハロゲンであり; R4およびR7は水素であり; R5はハロゲンであり; R6はメトキシ以外である。
【0046】
式Iの化合物はさらに置換されていてもよい。一般に、「置換された」という用語は、「任意で(optionally)」という用語が先行する場合であれ、そうでない場合であれ、指定された部分の1個または複数の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。別途指示がない限り、「置換されていてもよい」基は、基の置換可能な各位置において好適な置換基を有しうるし、任意の所与の構造中の2つ以上の位置が特定の群より選択される2個以上の置換基で置換されていてもよい場合、置換基は各位置において同じでも異なっていてもよい。一般に、置換基の組み合わせは、安定な化合物または化学的に実行可能な化合物を形成させる組み合わせである。本明細書において使用される「安定な」という用語は、本明細書に開示される1つまたは複数の目的でのその生成、検出、ならびに特定の態様ではその回収、精製、および使用を可能にする条件に供される際に実質的に改変されない、化合物を意味する。一般に、本明細書において使用される「置換された」は、分子がそれにより同定される主要な官能基を、例えば「置換された」該官能基が置換を通じて異なる官能基になるように、置き換えかつ/または改変することを包含しない。例えば、「置換フェニル」基は、フェニル部分をなお含まなければならず、本定義においては、置換により改変されて例えばシクロヘキシル基になることはできない。
【0047】
「置換されていてもよい」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価の置換基の例としては独立してハロゲン; -(CH2)0~4Rα; -(CH2)0~4ORα; -O(CH2)0~4Rα、-O-(CH2)0~4C(O)ORα; -(CH2)0~4CH(ORα)2; -(CH2)0~4SRα; -(CH2)0~4Ph、ここでPhはRαで置換されていてもよいフェニルである; -(CH2)0~4O(CH2)0~1フェニル、ここでフェニルはRαで置換されていてもよい; -CH=CHPh、ここでPhはRαで置換されていてもよいフェニルである; -(CH2)0~4O(CH2)0~1-Py、ここでPyはRαで置換されていてもよいピリジルである; -NO2; -CN; -N3; -(CH2)0~4N(Rα)2; -(CH2)0~4N(Rα)C(O)Rα; -N(Rα)C(S)Rα; -(CH2)0~4N(Rα)C(O)NRα
2; -N(Rα)C(S)NRα
2; -(CH2)0~4N(Rα)C(O)ORα; -N(Rα)N(Rα)C(O)Rα; -N(Rα)N(Rα)C(O)NRα
2; -N(Rα)N(Rα)C(O)ORα; -(CH2)0~4C(O)Rα; -C(S)Rα; -(CH2)0~4C(O)ORα; -(CH2)0~4C(O)SRα; -(CH2)0~4C(O)OSiRα
3; -(CH2)0~4OC(O)Rα; -OC(O)(CH2)0~4SR-SC(S)SRα; -(CH2)0~4SC(O)Rα; -(CH2)0~4C(O)NRα
2; -C(S)NRα
2、-C(S)SRα; -SC(S)SRα、-(CH2)0~4OC(O)NRα
2; -C(O)N(ORα)Rα; -C(O)C(O)Rα; -C(O)CH2C(O)Rα; -C(NORα)Rα; -(CH2)0~4SSRα; -(CH2)0~4S(O)2Rα; -(CH2)0~4S(O)2ORα; -(CH2)0~4OS(O)2Rα; -S(O)2NRα
2; -(CH2)0~4S(O)Rα; -N(Rα)S(O)2NRα
2; -N(Rα)S(O)2Rα; -N(ORα)Rα; -C(NH)NRα
2; -P(O)2Rα; -P(O)Rα
2; -OP(O)Rα
2; -OP(O)(ORα)2; SiRα
3; -(C1~4直鎖もしくは分岐)アルキレン)-O-N(Rα)2; または-(C1~4直鎖もしくは分岐)アルキレン)C(O)O-N(Rα)2がある。各Rαは独立して水素; C1~6アルキル; -CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph; -CH2-(5~6員ヘテロアリール); C3~8シクロアルキル; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールであり; 各Rαは以下に記載のようにさらに置換されていてもよい。
【0048】
Rα上の好適な一価の置換基の例としては独立してハロゲン、-(CH2)0~2Rβ; -(CH2)0~2OH; -(CH2)0~2ORβ; -(CH2)0~2CH(ORβ)2; -CN; -N3; -(CH2)0~2C(O)Rβ; -(CH2)0~2C(O)OH; -(CH2)0~2C(O)ORβ; -(CH2)0~2SRβ; -(CH2)0~2SH; -(CH2)0~2NH2; -(CH2)0~2NHRβ; -(CH2)0~2NRβ
2; -NO2; SiRβ
3; -OSiRβ
3; -C(O)SRβ; -(C1~4直鎖もしくは分岐アルキレン)C(O)ORβ; または-SSRβがあり、ここで各Rβは独立してC1~4アルキル; -CH2Ph; -O(CH2)0~1Ph; C3~8シクロアルキル; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールより選択される。Rαの飽和炭素原子上の好適な二価の置換基としては=Oおよび=Sが挙げられる。
【0049】
「置換されていてもよい」基の飽和炭素原子上の好適な二価の置換基の例としては=O; =S; =NNRγ
2; =NNHC(O)Rγ; =NNHC(O)ORγ; =NNHS(O)2Rγ; =NRγ; =NORγ; -O(C(Rγ
2))2~3O-; または-S(C(Rγ
2))2~3S-が挙げられ、ここで、独立して出現する各Rγは、水素; 以下に定義のように置換されていてもよいC1~6アルキル; C3~8シクロアルキル; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールより選択される。「置換されていてもよい」基の隣接する置換可能な炭素に結合する好適な二価の置換基としては、-O(CRβ
2)2~3O-が挙げられ、ここで、独立して出現する各Rβは水素; 以下に定義のように置換されていてもよいC1~6アルキル; C3~8シクロアルキル; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールより選択される。
【0050】
Rγのアルキル基上の好適な置換基の例としてはハロゲン; -Rδ; -OH; -ORδ; -CN; -C(O)OH; -C(O)ORδ; -NH2; -NHRδ; -NRδ
2; または-NO2が挙げられ、ここで各Rδは独立してC1~4アルキル; -CH2Ph; -O(CH2)0~1Ph; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールである。
【0051】
「置換されていてもよい」基の置換可能な窒素上の好適な置換基の例としては-Rε; -NRε
2; -C(O)Rε; -C(O)ORε; -C(O)C(O)Rε; -C(O)CH2C(O)Rε; -S(O)2Rε; -S(O)2NRε
2; -C(S)NRε
2; -C(NH)NRε
2; または-N(Rε)S(O)2Rεが挙げられ、ここで各Rεは独立して水素; 以下に定義のように置換されていてもよいC1~6アルキル; C3~8シクロアルキル; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールである。
【0052】
Rεのアルキル基上の好適な置換基の例としては独立してハロゲン; -Rδ; -OH; -ORδ; -CN; -C(O)OH; -C(O)ORδ; -NH2; -NHRδ; -NRδ
2; または-NO2があり、ここで各Rδは独立してC1~4アルキル; -CH2Ph; -O(CH2)0~1Ph; C6~10アリール; 4~10員ヘテロシクリル; または6~10員ヘテロアリールである。
【0053】
いくつかの態様では、本化合物は以下の化合物:
およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される。
【0054】
本発明の化合物を調製する上で使用される出発原料および試薬は、商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis, Vol. 1-28 (Wiley, 2016); March's Advanced Organic Chemistry, 7th Ed. (Wiley, 2013); およびLarock's Comprehensive Organic Transformations, 2nd Ed. (Wiley, 1999)などの参考文献に記載の手順に従って当業者に公知の方法により調製される。所望であれば、出発原料および反応中間体を、濾過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むがそれに限定されない従来の技術を使用して単離および精製することができる。これらの材料を、物理定数の測定およびスペクトルデータの取得を含む従来の手段を使用して特性評価することができる。
【0055】
いくつかの態様では、式Iの化合物を、式IIのイソチオシアネート:
と、式IIIのアミノ安息香酸:
とを組み合わせ、得られた混合物を、式Iのキナゾリノンを形成するために十分な条件下に維持することにより調製することができる。式IIのイソチオシアネートを、対応するアニリンからチオホスゲンとの反応によって調製することができる。式IIIのアミノ安息香酸を、市販のアントラニル酸およびその置換類似体から以下に記載のように調製することができる。
【0056】
背反する指定がない限り、本明細書に記載の反応は大気圧で約-78℃~約250℃の温度範囲にわたって行われる。例えば、反応は約0℃~約125℃で、または室温(もしくは周囲温度)近傍、例えば約20℃で行われうる。いくつかの態様では、反応は約0℃、20℃、25℃、90℃、100℃、110℃、125℃、150℃、175℃、または200℃で行われる。いくつかの態様では、反応は、第1の温度(例えば約-78℃または約0℃)で開始して、それよりも高い第2の温度(例えば約20℃または約25℃)に昇温させて行われる。当業者は、本明細書に記載の手順に様々な修正を加えることができることを認識するであろう。
【0057】
III. 薬学的組成物
1つまたは複数の先に記載の化合物と1つまたは複数の薬学的に許容される担体または他の賦形剤とを含む薬学的組成物も、本明細書において提供される。薬学的組成物は、薬学および薬物送達の分野において周知であるいずれかの方法により調製可能である。一般に、本組成物を調製する方法は、有効成分と1種または複数の副成分を含む担体とを結合させる工程を含む。通常、薬学的組成物は、有効成分と液体担体もしくは微粉固体担体またはその両方とを均一かつ密接に結合させ、次に必要であれば生成物を所望の製剤に成形することで調製される。本組成物は単位剤形で好都合に調製および/または包装可能である。
【0058】
薬学的組成物は、滅菌注射用水性または油性溶液剤および懸濁液剤の形態でありうる。滅菌注射用製剤は、水、リンゲル液、および等張食塩水、ならびに1,3-ブタンジオールなどの許容される溶媒を含む無毒の非経口的に許容される媒体を使用して製剤化可能である。さらに、滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁媒として通常使用される。この目的で、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が注射液剤の調製において使用される。
【0059】
水性懸濁液剤は、有効成分と水性懸濁液剤の製造に好適な賦形剤との混合物を含む。これらの賦形剤としてはナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、油性プロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガントゴム、およびアラビアゴムなどの懸濁化剤; レシチン、ポリオキシエチレンステアレート、およびポリエチレンソルビタンモノオレエートなどの分散剤または湿潤剤; ならびにエチル、n-プロピル、およびp-ヒドロキシ安息香酸塩などの保存料が挙げられるがそれに限定されない。
【0060】
油性懸濁液剤は、有効成分を植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油、またはミネラルオイル、例えば流動パラフィンに懸濁させることで製剤化可能である。油性懸濁液剤は増粘剤、例えばミツロウ、固形パラフィン、またはセチルアルコールを含みうる。これらの組成物はアスコルビン酸などの抗酸化剤の添加により保存可能である。
【0061】
分散性散剤および顆粒剤(水の添加による水性懸濁液剤の調製に好適)は、有効成分と分散剤、湿潤剤、懸濁化剤、またはそれらの組み合わせとの混合物を含みうる。さらなる賦形剤が存在してもよい。
【0062】
本発明の薬学的組成物は水中油型乳剤の形態であってもよい。油相は植物油、例えばオリーブ油もしくはラッカセイ油、またはミネラルオイル、例えば流動パラフィン、あるいはこれらの混合物でありうる。好適な乳化剤はアラビアゴムまたはトラガントゴムなどの天然ゴム; ダイズレシチンなどの天然リン脂質; ソルビタンモノオレエートなどの、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されるエステルまたは部分エステル; ならびにポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどの、該部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物でありうる。
【0063】
本開示の化合物を含む薬学的組成物は、経口用に好適な形態であってもよい。経口投与に好適な組成物としては錠剤、トローチ剤、舐剤、水性または油性懸濁液剤、分散性散剤または顆粒剤、乳剤、硬または軟カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、溶液剤、頬側パッチ剤、経口ゲル剤、チューインガム、咀嚼錠剤、発泡散剤、および発泡錠剤が挙げられるがそれに限定されない。経口投与用組成物は、当業者に公知の任意の方法に従って製剤化可能である。これらの組成物は、薬学的に上品で口当たりの良い製剤が得られるように、甘味料、香味料、着色料、抗酸化剤、および保存料からなる群より選択される1つまたは複数の剤を含みうる。
【0064】
一般に、錠剤は、有効成分と、セルロース、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、グルコース、マンニトール、ソルビトール、乳糖、リン酸カルシウム、およびリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤; トウモロコシデンプンおよびアルギン酸などの造粒剤および崩壊剤; ポリビニルピロリドン(PVP)、セルロース、ポリエチレングリコール(PEG)、デンプン、ゼラチン、およびアラビアゴムなどの結合剤; ならびにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルクなどの潤滑剤を含む、無毒の薬学的に許容される賦形剤との混合物を含む。錠剤はコーティングされていなくてもよく、あるいは胃腸管での崩壊および吸収を遅延させることでいっそう長期間にわたって持続的作用を実現するための公知の技術により腸溶コーティングまたは別のやり方でコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質が使用可能である。錠剤は、制御放出用の浸透圧ポンプ組成物を形成するための公知の技術に従って、半透過膜および任意的なポリマーオスモジェントでコーティングされていてもよい。
【0065】
経口投与用組成物は、有効成分が不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくはカオリン)と混合された硬ゼラチンカプセル剤として、あるいは有効成分が水または油媒体(例えばピーナッツ油、流動パラフィン、もしくはオリーブ油)と混合された軟ゼラチンカプセル剤として製剤化可能である。
【0066】
本開示の化合物の経皮送達をイオン注入パッチなどによって実現することができる。本化合物は、薬物の直腸投与用坐薬の形態で投与してもよい。これらの組成物は、薬物と常温では固体であるが直腸温では液体である好適な非刺激性の賦形剤とを混合することで調製可能であり、したがって、直腸内で融解して薬物を放出する。これらの材料としてはカカオバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0067】
いくつかの態様では、薬学的組成物は、1つまたは複数の先に記載の化合物と、1つまたは複数のさらなる有効剤とを含む。いくつかの態様では、神経疾患の処置用の1つまたは複数のさらなる有効剤を含む薬学的組成物が提供される。これらの有効剤の例としてはコリンエステラーゼ阻害剤(例えばドネペジル、ドネペジル/メマンチン、ガランタミン、リバスチグミン、タクリンなど)、α-7ニコチン受容体モジュレーター(例えばエンセニクリンおよびAPN1125などのα-7アゴニスト)、セロトニンモジュレーター(例えばイダロピルジン(idalopirdine)、RVT-101、シタロプラム、エシタロプラム、フルオキセチン、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリンなど)、NMDAモジュレーター(例えばメマンチンなどのNMDA受容体アンタゴニスト)、Aβ標的治療薬(例えばピオグリタゾン、ベガセスタット(begacestat)、アトルバスタチン、シンバスタチン、エタゾレート、トラミプロセートなど)、ApoE標的治療薬(例えばレチノイドX受容体アゴニスト)、タウ標的治療薬(例えばメチルチオニニウム、ロイコメチルチオニニウムなど)、および抗炎症剤(例えばアパゾン、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、またはスリンダクなどのNSAID)が挙げられるがそれに限定されない。
【0068】
いくつかの態様では、1つまたは複数の本開示の化合物と、がんの処置用の1つまたは複数のさらなる有効剤とを含む、薬学的組成物が提供される。これらの有効剤の例としては血管新生阻害剤(例えばベバシズマブ、ラニビズマブなど)、免疫チェックポイント阻害剤(例えばCTLA-4抗体、OX40抗体、PD-L1抗体、PD1抗体、またはBY55抗体)、アントラサイクリン(例えばドキソルビシン、ダウノルビシンなど)、プラチン(例えばシスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチンなど)、代謝拮抗剤(例えば5-フルオロウラシル、メトトレキサートなど)、キナーゼ阻害剤(例えばエルロチニブ、ゲフィチニブなど)、ヌクレオシド類似体(例えばゲムシタビン、シタラビンなど)、およびタキサン(例えばパクリタキセル、ドセタキセルなど)が挙げられるがそれに限定されない。
【0069】
IV. 処置方法
本開示の化合物および薬学的組成物は、ミトコンドリア機能不全に関連する疾患および状態を処置するために有用である。これらの疾患としてはがん、神経変性疾患、脳状態、および非神経障害が挙げられるがそれに限定されない。
【0070】
いくつかの態様では、疾患または状態が神経変性疾患である方法が提供される。神経変性疾患の例としてはタウオパチー(例えばJosephs; Mayo Clinic Proceedings, 2017, 92(8) 1291-1303に記載の)、シヌクレイン病(例えばSavica, et al.; Mayo Clinic Proceedings, 2019, 94(9), 1825-1831に記載の)、パーキンソン病、アルツハイマー病、ゴーシェ病、筋萎縮性側索硬化症、およびハンチントン病が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、神経変性疾患はパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、またはハンチントン病である。
【0071】
いくつかの態様では、疾患または状態が脳状態である方法が提供される。脳状態の例としては脳卒中、てんかん発作、神経精神状態(うつ病、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、脆弱X症候群、および双極性障害を含むがそれに限定されない)、神経障害性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、動脈瘤、ならびにくも膜下出血が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、脳状態は脳卒中、てんかん発作、神経障害性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、動脈瘤、またはくも膜下出血である。
【0072】
いくつかの態様では、疾患または状態が非神経障害である方法が提供される。非神経障害の例としては糖尿病、急性腎損傷、腎線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、特発性肺線維症、心線維症、強皮症、骨髄線維症、膵線維症、ミトコンドリア筋症(筋症、脳症、乳酸アシドーシス、および脳卒中様エピソード(MELAS); ミオクローヌス(nyoclonus)、てんかん、および赤色ぼろ線維(MERRF); ならびにPfeffer and Chinery; Annals of Medicine, 2013 45:1, 4-16に記載の運動失調性神経障害症候群(ANS)を含むがそれに限定されない)、加齢黄斑変性(AMD; 例えば乾性(萎縮性)AMD)、先天性ミトコンドリア病(レーバー遺伝性視神経萎縮症(LHON)、リー症候群、およびバース症候群を含むがそれに限定されない)、敗血症、心腎症候群、心虚血再灌流障害、肺動脈性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、ならびに血管収縮が挙げられるがそれに限定されない。いくつかの態様では、非神経障害は敗血症、急性腎損傷、心腎症候群、心虚血再灌流障害、肺動脈性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、または血管収縮である。いくつかの態様では、状態は、ミトコンドリア機能不全により引き起こされるヒトの加齢である。
【0073】
例えばがんを有する個人において、例えば該がんを処置するために、がん細胞増殖を減少させるための方法および組成物も提供される。がんとは、制御されない細胞増殖を包含する疾患の群を意味する。がんにおいて、細胞は、制御不能に増殖、すなわち分裂することで、悪性腫瘍を形成し、身体の近傍部分に浸潤する。がんは、リンパ系または血流を通じて身体のより遠隔の部分に転移、すなわち伝播することもある。処置は、がんもしくはその症状の完全予防もしくは部分予防という点で予防的であってもよく、かつ/または、がんおよび/もしくは該がんに起因しうる有害作用の部分治癒もしくは完全治癒という点で治療的であってもよい。
【0074】
がんの処置は、(a) がんに罹患しやすい可能性があるがまだがんを有するとは診断されていない対象において、がんの発生を予防すること; (b) がんを阻害すること、すなわちがんの発生を停止させること; または(c) がんを軽減すること、すなわちがんの退行を引き起こすことを含みうる。治療剤はがんの発症前、発症中、または発症後に投与可能である。進行中のがんの処置は、該処置が患者の望ましくない臨床症状を安定化するかまたは減少させる場合、特に関心対象となる。この処置は、患部組織の機能の完全な喪失の前に行われることが望ましい。本治療薬は、がんの症状段階中に、いくつかの場合ではがんの症状段階後に投与されることが望ましい。「個人」、「対象」、「宿主」、および「患者」という用語は、本明細書中では互換的に使用されるものであり、診断、処置、または治療が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを意味する。いくつかの場合では、本方法および本組成物はがんの増殖を減少させ、例えば阻害する。いくつかの場合では、本方法および本組成物はがんの転移を減少させ、例えば阻害する。
【0075】
いくつかの態様では、がんはNotch関連がんであり、すなわち、活性Notchシグナル伝達に関連しており、すなわち少なくとも部分的にはそれを原因とする。「Notch」とは、短距離細胞間相互作用を通じて数多くの細胞運命決定に影響する、進化的に保存された一回膜貫通型受容体を意味する(Artavanis-Tsakonas and Muskavitch 2010)。Notchタンパク質(線虫(C. elegans)中のcLIN-12およびcGLP-1、ショウジョウバエ属中のNotch、哺乳動物中のNotch1-4)は、29~36個の上皮増殖因子(EGF)リピートを有するリガンド結合用の細胞外ドメイン(NECD)と、膜貫通ドメインと、転写活性を有する細胞内ドメイン(NICD)とからなる。「活性Notchシグナル伝達」とは、Notchタンパク質ががん細胞中で活性であり、例えばNotchタンパク質が活性化Notchまたは恒常的活性型Notchであり、例えばNotchタンパク質またはその1つのドメインが常に活性であるように該Notchタンパク質が変異していることを意味する。Notch関連がんの例としては血液悪性腫瘍、例えば急性リンパ芽性白血病(T-ALL); 乳線腫瘍、例えば乳がん; 脳腫瘍、例えば多形神経膠芽腫(GBM); 肺がん; および腸がんが挙げられる(Artavanis-Tsakonas and Muskavitch 2010)。恒常的活性型Notchを生じさせるNotch変異をがん性細胞中で、例えば腫瘍生検組織または細胞スメア中で検出することで、がんをNotch関連がんとして容易に同定することができる。例えば当技術分野において公知の染色体分散またはPCRによって検出可能な、恒常的活性型Notchシグナル伝達を生じさせるいくつかの変異が同定されている。あるいは、非がん性細胞に比べての、Notchシグナル伝達の下流エフェクターの活性の上方制御、例えば非標準Notchシグナル伝達タンパク質の活性の上方制御、例えばPINK1発現の上昇、mTORC2シグナル伝達の上昇(Aktリン酸化の増加)、および呼吸鎖複合体の集合性の上昇を検出することで、がんをNotch関連がんとして同定することもできる。
【0076】
Notchタンパク質は、標準経路および非標準経路によって細胞活性を調節する。標準Notch経路シグナル伝達では、Notchリガンド(DSL(Delta、Serrate、LAG-2)、DOS(DeltaおよびOSM-11様)、ならびにEGFリピート)という3つのモチーフを含む膜貫通タンパク質)が、隣接細胞のNotch細胞外ドメインのEGFリピートに結合する。リガンド-Notch相互作用により、α-セクレターゼ/メタロプロテアーゼファミリーのメンバー(ADAM10/Kuzmanian、ADAM17/TACE)がNotchの細胞外ドメインを切断し、続いてγ-セクレターゼ(プレセニリン(presenilin)(PS)、ニカストリン(nicastrin)(NCT)、Aph-1、Pen-2などで構成される多サブユニットプロテアーゼ複合体)がNotchの細胞内ドメインの細胞質切断を行う。遊離した細胞内ドメインは核に移動し、そこで細胞内ドメインは、そのRAMドメインを通じてDNA結合転写因子CSL(脊椎動物中の「CBF1/RBPjk」、ショウジョウバエ属中の「Suppressor of Hairless」、線虫中の「Lag-1」)と相互作用し、CSL、Mastermind様タンパク質(脊椎動物中の「MAML1」、ショウジョウバエ属中の「Mastermind」、線虫中の「Lag-3」)、およびCBP/p300などの他の補助因子のコアクチベーターとして作用することで、Notch標的遺伝子を転写活性化する(Kopan and Ilagan 2009)。遊離細胞内ドメインNotchの非存在下では、CSLは配列特異的リプレッサーとして機能する。したがって、標準Notchシグナル伝達を媒介する遺伝子(すなわち「標準Notchシグナル伝達遺伝子」)は、γ-セクレターゼ複合体、CSL(脊椎動物中の「CBF1/RBPjk」、ショウジョウバエ属中の「Suppressor of Hairless」、線虫中の「Lag-1」)のポリペプチドをコードする遺伝子、Mastermind様タンパク質(脊椎動物中の「MAML1」、ショウジョウバエ属中の「Mastermind」、線虫中の「Lag-3」)をコードする遺伝子、およびCBP/p300遺伝子を含むであろう。
【0077】
Notchは非標準経路を通じてシグナル伝達を行うこともある。非標準Notchシグナル伝達は、CSL非依存性であり、リガンド依存性であってもリガンド非依存性であってもよい(Kopan and Ilagan 2009)。いくつかの遺伝子は非標準Notch機能により影響されるが、大部分の場合では、非標準Notchシグナル伝達のメディエーターは不明である。非標準Notch機能の最もよく研究および保存されている効果はWnt/β-カテニンシグナル伝達の制御である。この非標準Notchシグナル伝達経路において、Notchは必須Wntシグナル伝達成分である活性β-カテニンに結合し、そのレベルを決定する(Takebe et al. 2011)。したがって、活性β-カテニン活性は非標準Notchシグナルの有用な読取値の役割を果たしうる。他の研究されている非標準Notchシグナル伝達経路としてはNF-κBを通じたシグナル伝達、JNK経路を通じたシグナル伝達、ならびにHES1およびMCKを通じたシグナル伝達が挙げられる(Andersen et al. 2012)。
【0078】
最近、mTORC2、Akt、ならびにミトコンドリアの発生または機能を促進するタンパク質、例えばPINK1、ミトコンドリア呼吸鎖複合体タンパク質、ミトコンドリア分裂タンパク質、およびミトコンドリア新生タンパク質が非標準Notchシグナル伝達を媒介することが発見されている(Lee et al. 2013)。例えばミトコンドリア呼吸鎖複合体Iのポリペプチド(例えば75kDaサブユニットND-75)、ミトコンドリア分裂タンパク質Dynamin-1様タンパク質(Drp1)、およびミトコンドリア新生タンパク質ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γコアクチベーター1-α(PGC-1α)。重要なことに、非標準Notchシグナル伝達経路中のこれらの遺伝子の多くは、ミトコンドリア機能を制御するタンパク質をコードする(Lee et al. 2013)。本開示の化合物を、Notch促進がん細胞増殖、例えばT-ALL(Molt-4、Jurkat細胞株)および膠芽腫(T98G、U118MG細胞株)の増殖を標的にするために使用することができる。
【0079】
Notchシグナル伝達は、神経細胞の発生および機能の重要な制御因子として脳の発生、機能、および維持の多くの局面に深く関与している。Notchシグナル伝達の制御不全は脳腫瘍、脳卒中、神経変性、神経障害性疼痛、外傷性脳損傷、うつ病、および神経精神障害の発病に関与している(Mathieu et al., 2013; Zhang et al., 2018; Alfred and Vaccari, 2018)。Notchシグナル伝達の結果が状況に大きく依存するという事実は、非標準Notch機能が例外というよりもむしろ通常である可能性があることを示唆している。標準的Notchシグナル伝達の効率的阻害が、望まれないオンターゲット効果が主な理由で、臨床的使用には毒性が高すぎることがわかっているという事実(Andersson and Lendahl, 2014)は、Notchシグナル経路を調節するための方法を標準的経路を超えて拡張することで治療オプションの利用可能な範囲が広がることを示唆している。非標準経路を通じた異常なNotch活性化を阻害し、広範な脳障害および脳状態を処置するために、本開示の化合物を使用することができる。
【0080】
いくつかの態様では、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCL)、膠芽腫、胆管がん、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)誘発性肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん、乳がん、および/または卵巣がんの処置のための方法が提供される。
【0081】
本開示の化合物を、本明細書において提供される方法において、任意の好適な用量で投与することができる。一般に、化合物を対象の体重1キログラム当たり約0.1ミリグラム~約1000ミリグラム(すなわち約0.1~1000mg/kg)の範囲の用量で投与する。該化合物の用量は、例えば約0.1~1000mg/kg、または約1~500mg/kg、または約25~250mg/kg、または約50~125mg/kgでありうる。該化合物の用量は約0.1~1mg/kg、または約1~50mg/kg、または約50~100mg/kg、または約100~150mg/kg、または約150~200mg/kg、または約200~250mg/kg、または約250~300mg/kg、または約350~400mg/kg、または約450~500mg/kg、または約500~550mg/kg、または約550~600mg/kg、または約600~650mg/kg、または約650~700mg/kg、または約700~750mg/kg、または約750~800mg/kg、または約800~850mg/kg、または約850~900mg/kg、または約900~950mg/kg、または約950~1000mg/kgでありうる。該化合物の用量は約1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000mg/kgでありうる。上記のいずれかの組成物を含む本化合物および本組成物を、好適な媒体を使用して経口投与、局所投与、非経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、病変内投与、鼻腔内投与、皮下投与、またはくも膜下腔内投与することができる。あるいは、本化合物および本組成物を坐薬によって、または緩徐放出装置、例えばミニ浸透圧ポンプの埋め込みによって投与することもできる。
【0082】
投与量は、患者の所要量、処置される疾患または状態の重症度、および投与される特定の製剤に応じて変動しうる。患者に投与される用量は、患者において有益な治療応答を得るために十分であるべきである。また、用量のサイズは、特定の患者における薬物の投与に伴う任意の有害副作用の存在、性質、および程度により確定される。特定の状況に適した投与量の確定は典型的開業医の技能の範囲内である。総投与量を分割し、疾患または状態を処置するために好適な時間にわたって数回に分けて投与することができる。
【0083】
本開示の化合物および組成物の投与を、特定の障害の性質、その重症度、および患者の全身的状態に応じて変動する時間にわたって行うことができる。投与は例えば1時間毎、2時間毎、3時間毎、4時間毎、6時間毎、8時間毎、もしくは12時間毎を含む1日2回、またはそれらの間の中間間隔で実行可能である。投与は1日1回、36時間毎もしくは48時間毎に1回、または毎月もしくは数ヶ月に1回実行可能である。処置後、患者を彼または彼女の状態の変化、および障害の症状の軽減に関してモニタリングすることができる。患者が特定の投与量レベルに対して有意に応答しない場合には、特定の化合物の投与量を増加させてもよく、症状の軽減が観察される場合には、または許容されない副作用が特定の投与量で見られる場合には、用量を減少させてもよい。投与レジメンは2つ以上の異なる間隔セットからなりうる。例えば、投与レジメンの第1の部分は対象に1日複数回、1日1回、2日に1回、または3日に1回実行されうる。投与レジメンは、対象に2日に1回、3日に1回、週1回、2週間に1回、または月1回投与することで開始しうる。投与レジメンの第1の部分は例えば最大30日間、例えば7日間、14日間、21日間、または30日間実行されうる。週1回、14日に1回、または月1回実行される、異なる実行間隔による投与レジメンの後続の第2の部分が続いてもよく、4週間~最大2年間以上、例えば4週間、6週間、8週間、12週間、16週間、26週間、32週間、40週間、52週間、63週間、68週間、78週間、または104週間続く。あるいは、症状が寛解に向かうかまたは徐々に改善される場合、投与量を最大量未満に維持または保持してもよい。状態または症状が悪化する場合、第1の投与レジメンを改善が見られるまで再開してもよく、第2の投与レジメンを再度実行してもよい。このサイクルを必要に応じて複数回繰り返してもよい。
【実施例】
【0084】
V. 実施例
実施例1
6-クロロ-3-(2-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(1)の合成
化合物1.1(5g、31.53mmol)およびK
2CO
3(13g、94.59mmol)のDMF(100mL)溶液にCH
3I(22.4g、157.77mmol)を室温で加え、室温で16時間攪拌した(TLCでモニタリング)。反応液を水(100mL)に注ぎ、溶液をEA(3x100mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=10:1~3:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物1.2を明黄色液体(5.4g、収率99%)として得た。
【0085】
化合物1.2(4.3g、24.91mmol)を無水酢酸50mLに溶解させた。溶液に硝酸(60%、5mL)を15℃で滴下した後、混合物を15℃で30分間攪拌した。反応液を氷水に注いだ。析出した結晶を濾取した。収集された結晶を水で洗浄し、減圧乾燥させて化合物1.3を明黄色固体(4.9g、収率90%)として得た。
【0086】
化合物1.3(1g、4.61mmol)の水(12mL)中攪拌溶液にSnCl
2(4.28g、18.43mmol)を加えた後、濃HClをゆっくりと加え、室温で3時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。反応液を0℃に冷却し、氷で反応停止させ、1N KOHで中和し、溶液をEA(3x50mL)で抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。濾過した。濾液を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=10:1~3:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物1.4を明黄色固体(550mg、収率63%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.230分、188.1[M+1]
+。
【0087】
化合物1.4(300mg、1.60mmol)のジオキサン(3mL)溶液にチオホスゲン(0.22mL、2.72mmol)を加え、溶液を還流温度に2時間加熱した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。反応混合物を濃縮して粗生成物を黄色固体(360mg、収率98%)として得た。以下に記載のように粗生成物1.5を精製せずに使用した。
【0088】
NaOH(1.48g、37.1mmol)の水(12mL)溶液中の化合物1.7(4g、18.55mmol)の混合物を室温で終夜攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。溶液を2N HClで酸性化し、濾過した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させて生成物1.8を白色固体(3g、収率80%)として得た。ESI LC-MS: Rt=1.321分、202.1[M+1]
+。
【0089】
化合物1.5(323mg、1.6mmol)および化合物1.8(367mg、1.6mmol)の2-プロパノール(6mL)中混合物にNaOMe(4mg、0.08mmol)を加え、還流温度で終夜攪拌した。混合物を濃縮し、得られた残渣をDCM(20ml)に懸濁させ、濾過した。濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物1を白色固体(60mg、収率10%)として得た。ESI/LC-MS: R
t=1.948分、413.1[M+1]
+。
【0090】
実施例2
6-クロロ-3-(2-クロロ-4-フルオロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(2)の合成
化合物2.1(5g、34.12mmol)およびTEA(10.6g、104.26mmol)のDCM(20mL)溶液に化合物2.2(4.44g、40.94mmol)を0℃で加え、室温で16時間攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣をPE:EA=10:1~3:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2.3を明黄色固体(6.17g、収率82%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.316分、219.2[M+1]
+。
【0091】
化合物2.3(6.17g、28.22mmol)を濃H
2SO
4(60mL)に溶解させた。溶液に硝酸(60%、50mL)を10℃で滴下し、混合物を10℃で2時間攪拌した。反応液を氷水に注いだ。析出した結晶を濾取した。収集された結晶を水で洗浄し、減圧乾燥させて化合物2.4を黄色固体(7.43g、収率99%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.456分、264.0[M+1]
+。
【0092】
化合物2.4(7.43g、28.19mmol)のMeOH(100mL)中攪拌溶液にNaHCO
3(5.92g、70.48mmol)を加え、溶液を60℃で16時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。反応液を1N HClで中和し、溶液を濃縮して粗生成物を得た。残渣をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。濾過した。濾液を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=10:1~5:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2.5を明黄色固体(5.23g、収率96%)として得た。ESI LC-MS: Rt=1.256分、191.9[M+1]
+。
【0093】
化合物2.5(5.23g、27.31mmol)のDMF溶液にCH
3I(5g、35.1mmol)を室温で加え、室温で16時間攪拌した。反応液をH
2Oに注いだ。析出した結晶を濾取した。収集された結晶を水で洗浄し、減圧乾燥させて化合物2.6を白黄色固体(5g、収率89%)として得た。
【0094】
化合物2.6(4.1g、19.94mmol)のAcOH溶液にFe末(4.47g、79.76mmol)を室温で加え、40℃で16時間攪拌した。TLCは化合物2.6が完全に反応したことを示した。混合物をEAで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。濾過した。濾液を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=10:1~5:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物2.7を明黄色固体(3.15g、収率90%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.306分、176.0[M+1]
+。
【0095】
化合物2.7(3.15g、16.79mmol)のジオキサン(30mL)溶液にチオホスゲン(2.31mL、28.54mmol)を加え、溶液を還流温度に2時間加熱した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。反応液を濃縮して粗生成物2.8を黄色固体(3.85g、収率100%)として得た。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0096】
化合物2.8(500mg、2.30mmol)および化合物1.8(464mg、2.3mmol)の2-プロパノール(6mL)中混合物にNaOMe(6mg、0.12mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(20ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物2を白色固体(120mg、収率13%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.656分、401.0[M+1]
+。
。
【0097】
実施例3
6-クロロ-3-(4-クロロ-2,5-ジメトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(3)の合成
化合物3.1(2g、10.66mmol)のジオキサン(22mL)溶液にチオホスゲン(1.4mL、18.12mmol)を加え、溶液を還流温度で2時間攪拌した。溶媒を濃縮して粗生成物3.2を黄色固体(468mg)として得た。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0098】
化合物3.2(294mg、1.28mmol)および化合物1.8(300mg、1.28mmol)の2-プロパノール(5mL)中混合物にNaOMe(4mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して化合物3(56mg、収率2%)を得た。ESI LC-MS: R
t=1.704分、413.0[M+1]
+。
【0099】
実施例4
6-クロロ-3-(2,4-ジクロロ-5-フルオロフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(4)の合成
化合物4.1(1g、5.56mmol)のジオキサン(11.2mL)溶液にチオホスゲン(0.73mL、9.44mmol)を加え、溶液を還流温度で2時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。反応液を濃縮して粗生成物4.2を黄色固体(1.12g、収率100%)として得た。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0100】
化合物4.2(617mg、2.78mmol)および化合物1.8(560mg、2.78mmol)の2-プロパノール(10mL)中混合物にNaOMe(8mg、0.14mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(10ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物4を白色固体(130mg、収率11%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.929分、402.8[M-1]
-。
【0101】
実施例5
3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(5)の合成
化合物5.1(1g、5.2mmol)のジオキサン(12mL)溶液にチオホスゲン(0.68mL、8.84mmol)を加え、溶液を還流温度で2時間攪拌した。溶媒を減圧除去して粗生成物5.2を黄色固体(1.1g、粗生成物)として得た。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0102】
化合物5.2(500mg、2.14mmol)および化合物3(357mg、2.14mmol)の2-プロパノール(10mL)中混合物にNaOMe(6mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して化合物5(128mg、2工程で収率14%)を得た。ESI LC-MS: R
t=1.717分、381.0[M-1]
-。
【0103】
実施例6
3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-6,7-ジメトキシキナゾリン-4(3H)-オン(6)の合成
化合物5.2(500mg、2.14mmol)および化合物6.1(422mg、2.14mmol)の2-プロパノール(10mL)中混合物にNaOMe(6mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して化合物6(45mg、2工程で収率4.6%)を得た。ESI LC-MS: R
t=1.639分、412.9[M+1]
+。
【0104】
実施例7
3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-6-ヒドロキシ-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(7)の合成
氷浴中で化合物7.1(3g、16.47mmol)およびK
2CO
3(6.8g、49.41mmol)のDMF(20mL)中混合物にBnBr(2mL、16.37mmol)を加え、室温で終夜攪拌した。TLCは、化合物7.1が消費されたことを示した。混合物をEtOAc(3x50mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させて生成物7.2を明黄色固体(3.9g、収率88%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.859分、273.0[M+1]
+。
【0105】
化合物7.2(3.9g、14.32mmol)のAc
2O(80mL)中混合物にHNO
3(1.56mL、21.48mmol)を0℃で滴下した。混合物を室温で2時間攪拌した。溶液を氷水に注ぎ、溶液をEtOAc(3x50mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させて生成物7.3を黄色固体(4.02g、収率88%)として得た。
【0106】
化合物7.3(4.02g、12.68mmol)の水(33ml)溶液に濃HCl(27mL)およびSnCl
2・2H
2O(11.45g、50.72mmol)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。混合物をEA(3x50mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=0%~30%で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物7.4を白色固体(440mg、収率12%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.788分、288.1[M+1]
+。
【0107】
化合物7.4(400mg、1.39mmol)およびNaOH(223mg、5.57mmol)の水(2.5mL)およびTHF(10mL)中混合物を100℃で終夜攪拌した。溶液を2N HClで酸性化し、濾過した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させて生成物7.5を黒色固体(340mg、収率89%、LCMSにより確認)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.479分、274.0[M+1]
+。
【0108】
化合物7.5(340mg、1.39mmol)およびPd/C(136mg、水50%)のMeOH(15ml)中混合物をH
2雰囲気下、50℃で終夜攪拌した。混合物をセライトで濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物7.6を黒色固体(220mg、収率96%、LCMSにより確認)として得た。ESI LC-MS: R
t=0.464分、184.0[M+1]
+。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0109】
化合物7.6(220mg、1.2mmol)および化合物5.2(337mg、1.44mmol)の2-プロパノール(10mL)中混合物にNaOMe(5mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して生成物7(55mg、収率9%)を得た。ESI LC-MS: R
t=1.290分、399.0[M+1]
+。
【0110】
実施例8
6-アミノ-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(8)の合成
化合物8.1(1g、5.98mmol)のCH
2Cl
2(12ml)中攪拌溶液にAcCl(563mg、7.18mmol)を0℃で滴下し、室温で2時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。溶媒を減圧除去した。残渣をPE:EA=10:1~3:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物8.2を白色固体(1.1g、収率87%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.043分、210.0[M+1]
+。
【0111】
化合物8.2(600mg、2.87mmol)のCH
3CN(12ml)中攪拌溶液にNO
2BF
4(457mg、3.45mmol)を室温で加えた。溶液を室温で3時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。溶媒を減圧除去し、残渣をPE中EtOAc 0%~10%で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物8.3を白色固体(520mg、収率71%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.183分、255.1[M+1]
+。
【0112】
化合物8.3(520mg、2.05mmol)およびPd/C(52mg)のCH
3OH(12mL)中混合物をH
2下、室温で16時間攪拌した。TLCは該化合物が完全に反応したことを示した。溶媒を減圧除去して粗化合物8.4を白色固体(425mg、収率91%)として得た。ESI LC-MS: R
t=0.905分、225.0[M+1]
+。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0113】
化合物8.4(425mg、1.87mmol)および化合物5.2(438mg、1.87mmol)の2-プロパノール(6mL)中混合物にNaOMe(5mg、0.09mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(20ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物8.5を白色固体(400mg、収率50%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.580分、440.0[M+1]
+。
【0114】
化合物8.5(400mg、0.94mmol)のH
2O(5ml)中攪拌溶液に濃HCl(5ml)を加え、溶液を100℃で16時間攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して生成物8を明黄色固体(50.54mg、収率14%)として得た。ESI LC-MS: Rt=1.318分、398.1[M+1]
+。
【0115】
実施例9
6-シクロプロピル-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(9)の合成
氷浴中で化合物9.1(8g、48mmol)のDMF(60mL)溶液にNBS(2.5g、56mmol)を加え、溶液を還流温度で2時間攪拌した。溶液を水200mLに注ぎ、溶液をEtOAc(3x200mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させて粗生成物を褐色固体(10g、収率85%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.357分、247.9[M+1]
+。粗生成物9.2を次の工程に直接使用した。
【0116】
化合物9.2(8.4g、34.15mmol)のDMF(40mL)溶液にK
2CO
3(14.1g、102.44mmol)およびCH
3I(2.7mL、44mmol)を室温で加えた。混合物を室温で2時間攪拌した。水100mLに注いだ。混合物をEtOAc(3x200mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させた。残渣をPE:EA=20:1~5:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物9.3を黄色固体(4.12g、収率46%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.658分、261.9[M+1]
+。
【0117】
化合物9.3(1.6g、6.16mmol)のトルエン/H
2O(50mL/5mL)中攪拌溶液にP(cy)
3(259mg、0.93mmol)、K
3PO
4(2.58g、12.32mmol)、Pd
2(dba)
3(282mg、0.31mmol)を加えた後、化合物9.4(794mg、9.24mmol)をゆっくりと加え、混合物を100℃で16時間攪拌した。混合物をセライトで濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。残渣をEA:PE=0%~20%で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物9.5を明黄色固体(709mg、収率52%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.743分、222.1[M+1]
+。
【0118】
化合物9.5(709mg、3.21mmol)およびLiOH(588mg、14.7mmol)の水(10mL)およびTHF(40mL)中混合物を室温で終夜攪拌した。溶液を2N HClで酸性化し、濾過した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させて生成物9.6を黄色固体(508mg、収率76%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.452分、208.1[M+1]
+。
【0119】
9.6(100mg、0.48mmol)および化合物5.2(113mg、0.48mmol)の2-プロパノール(4mL)中混合物にNaOMe(5mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して生成物9(45mg、収率22%)を得た。ESI LC-MS: R
t=1.966分、423.0[M+1]
+。
【0120】
実施例10
6-クロロ-3-(2,4-ジクロロ-5-メチルフェニル)-2-メルカプトキナゾリン-4(3H)-オン(10)の合成
化合物5.2(342mg、1.56mmol)および化合物10.1(268mg、1.56mmol)の2-プロパノール(5mL)中混合物にNaOMe(4mg、0.08mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(10ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物10を白色固体(79mg、収率13%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.853分、386.9[M+1]
+。
【0121】
実施例11
6-クロロ-7-シクロプロピル-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプトキナゾリン-4(3H)-オン(11)の合成
化合物11.1(600mg、2.27mmol)のトルエン/H
2O(20mL/2mL)中攪拌溶液にP(cy)
3(95mg、0.34mmol)、K
3PO
4(950mg、4.54mmol)、Pd
2(dba)
3(104mg、0.11mmol)を加えた後、化合物9.4(293mg、3.41mmol)をゆっくりと加え、混合物を100℃で16時間攪拌した。セライトで濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物11.2を明黄色油状物(695mg)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.930分、226.0[M+1]
+。粗生成物を次の工程に直接使用した。
【0122】
化合物11.2(695mg、3.28mmol)およびNaOH(525mg、13.13mmol)の水(5mL)およびTHF(20mL)中混合物を室温で終夜攪拌した。溶液を2N HClで酸性化し、溶液をEA(3x40mL)で抽出した。有機層を減圧濃縮した。残渣を逆相で精製して生成物11.3を黄色固体(243mg、収率35%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.615分、212.0[M+1]
+。
【0123】
化合物11.3(243mg、1.15mmol)および化合物5.2(269mg、1.15mmol)の2-プロパノール(4mL)中混合物にNaOMe(5mg、0.1mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣を分取HPLCで精製して生成物12(74mg、収率15%)を得た。ESI LC-MS: R
t=2.065分、427.1[M+1]
+。
【0124】
実施例12
6-クロロ-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシ-8-ビニルキナゾリン-4(3H)-オン(12)の合成
化合物12.1(750mg、2.20mmol)、Pd(dppf)Cl
2(225mg、0.3mmol)、化合物12.2(510mg、3.3mmol)、およびK
2CO
3(915mg、6.6mmol)のジオキサン(18mL)およびH
2O(3mL)中混合物を100℃で16時間攪拌した。溶液を水(100mL)に注いだ。溶液をEA(3x30mL)で抽出した。一緒にした有機画分を減圧蒸発させた。残渣をPE中EA 0%~20%で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物12.3を明黄色液体(280mg、収率52%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.761分、242.0[M+1]
+。
【0125】
化合物12.3(280mg、1.16mmol)およびNaOH(186mg、4.64mmol)のTHF/H
2O(6mL/6mL)中混合物を室温で終夜攪拌した。反応溶液を2N HClで酸性化した。濾過した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させて生成物12.4を白色固体(224mg、収率84%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.471分、228.0[M+1]
+。
【0126】
化合物12.4(224mg、0.98mmol)および化合物5.2(230mg、0.98mmol)の2-プロパノール(10mL)中混合物にNaOMe(4mg、0.08mmol)を加えた。溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(20ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物13を白色固体(41mg、収率9.43%、1H NMRおよびLCMSにより確認)として得た。ESI LC-MS: R
t=2.113分、443.0[M+1]
+。
【0127】
実施例13
6-クロロ-8-シクロプロピル-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オン(13)の合成
氷浴中で化合物1.7a(5g、27.6mmol)のCHCl
3(600ml)溶液にSO
2Cl
2(2.6mL、33.1mmol)を加え、溶液を還流温度で4時間攪拌した。溶媒を減圧除去した。残渣をPE/EA = 1:1(200mL)でのトリチュレーションにより精製して生成物1.7を白色固体(3.5g、収率60%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.705分、216.0[M+1]
+。
【0128】
化合物1.7(3.5g、16.23mmol)のDMF溶液にH
2SO
4を室温で加えた後、N-ヨードスクシンイミド(NIS)を室温で数回に分けて加えた。4時間後、溶液を砕氷に注いだ。析出した結晶を濾取した。収集された結晶を水で洗浄し、減圧乾燥させて化合物13.1を明黄色固体(4.5g、収率81%)として得た。ESI LC-MS: R
t=2.017分、341.9[M+1]
+。
【0129】
化合物13.1(550mg、1.61mmol)のトルエン/H
2O(6mL/6mL)中攪拌溶液にP(Cy)
3(66mg、0.23mmol)、K
3PO
4(682mg、3.21mmol)、Pd
2(dba)
3(77mg、0.077mmol)を加えた後、化合物9.4(209mg、2.41mmol)をゆっくりと加え、混合物を100℃で16時間攪拌した。溶液を減圧濃縮した。残渣をEAで抽出した。有機層を飽和NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。濾過した。濾液を減圧濃縮した。残渣をPE:EA=10:1~3:1で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーで精製して化合物13.2を明黄色固体(230mg、収率55%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.768分、256.0[M+1]
+。
【0130】
化合物13.2(230mg、0.89mmol)およびNaOH(72mg、1.8mmol)のTHF/H
2O(3mL/3mL)溶液を室温で終夜攪拌した。溶液を2N HClで酸性化した。濾過した。濾過ケークを水で洗浄し、乾燥させて生成物13.3を白色固体(200mg、収率92%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.348分、242.0[M+1]
+。
【0131】
化合物13.3(200mg、0.82mmol)および化合物5.2(194mg、0.82mmol)の2-プロパノール(5mL)中混合物にNaOMe(3mg、0.06mmol)を加え、溶液を還流温度で終夜攪拌した。濃縮し、残渣をDCM(20ml)に懸濁させ、濾過し、濾過ケークをDCM(5mL)で洗浄して生成物13を白色固体(28mg、収率7%)として得た。ESI LC-MS: R
t=1.666分、454.9[M-1]
-。
【0132】
実施例14
キナゾリノンの抗がん活性の評価
CellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイキットをPromegaから得た。RPMI 1640をInvitrogenから得た。ウシ胎仔血清(FBS)をCorningから得た。L-グルタミンをInvitrogenから得た。100Xペニシリン-ストレプトマイシンをHyCloneから得た。0.05%トリプシン-EDTA(T-E)をInvitrogenから得た。DPBSをCorningから得た。DMSOをSigmaから得た。黒色384ウェルプレートをGreinerから得た。96ウェルV字底プレートをAxygenから得た。
【0133】
「-1」日目の細胞播種において、Molt-4細胞の密度を供給業者推奨の情報に従って調整した。細胞50μLを4つの384ウェルプレート中に播種し、DPBS 50μLを縁部ウェルに加えた。0日目に、試験化合物をDMSOに溶解させ、窒素キャビネットに保管した。試験化合物のストック濃度は120mMとした。参照化合物のストック濃度は10mMとした。試験化合物(DMSO中125nL)をウェルに加え、3倍系列希釈して系列毎に10個の用量を最大濃度300μMで得た。試験化合物を含まない等量のDMSOをウェルプレート中の対照列に移した。この手順を使用して、ウェルプレート全体のDMSO濃度を0.25%(v/v)とした。3日目に(細胞を化合物で72時間処理した後)、プレートを室温で約30分間平衡化した。CellTiter Glo試薬25μLを各ウェルに加え、10分後に各ウェル中の発光をENVISION蛍光プレートリーダー(PerkinElmer)を使用して測定した。
【0134】
データ解析に使用した計算式は以下の通り: 阻害% = (最大-試料値)/最大*100。曲線をPrismによってS字形用量反応(可変勾配)モデルにフィッティングし、4パラメータ論理モデルまたはS字型用量反応モデルY=下部+(上部-下部)/(1+10^((logEC50-x)*ヒル勾配))により作成した。
【0135】
化合物の抗腫瘍活性を評価するために、化合物の増殖阻害効果を様々なヒトがん細胞株中で72時間のインキュベーション後に測定した。アッセイにおいて、初期細胞プレーティング中のMolt-4細胞の生存率は85%超であった。すべての細胞プレートは変動係数(CV)10%未満という判定基準を満たしていた。以下にIC
50観察値を、参照化合物6-クロロ-3-(2,4-ジクロロ-5-メトキシフェニル)-2-メルカプト-7-メトキシキナゾリン-4(3H)-オンのIC
50観察値と共に要約する。
【0136】
VI.例示的な態様
本明細書に開示される主題に従って提供される例示的態様としては、特許請求の範囲および以下の態様が挙げられるがそれに限定されない。
1.
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩:
式中、
R
1、R
2、およびR
3は独立して、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され、ここでR
1~R
3のうち少なくとも1つはハロゲンであり;
R
4、R
5、R
6、およびR
7は独立して、水素、ハロゲン、C
1~6アルキル、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択され;
各R
aは独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-C(O)OR
a1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
a1は、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
a2は独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
各R
bは独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
2~7アシル、-SO
2R
b1、-C(O)OR
b1、および-C(O)N(R
a2)
2からなる群より選択され、ここで
各R
b1は、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールからなる群より選択され、
各R
b2は独立して、水素、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、およびC
6~10アリールより選択され;
但し、R
1、R
2、およびR
3がハロゲンである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメチルであり、R
2がクロロであり、かつR
3がメトキシである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、かつR
3がクロロである場合、R
4~R
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
5がメチルまたはクロロである場合、R
4、R
6、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外であり;
R
1がメトキシまたはイソプロポキシであり、R
2がクロロであり、R
3がクロロであり、かつR
6がクロロである場合、R
4、R
5、およびR
7のうち少なくとも1つは水素以外である。
2.
R
1~R
3のうち少なくとも1つがC
1~6アルコキシである、態様1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
3.
R
1がC
1~6アルコキシであり、R
2がハロゲンである、態様1または態様2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
4.
R
1がC
1~6アルコキシであり、R
2がC
1~6アルコキシである、態様1または態様2の化合物またはその薬学的に許容される塩。
5.
R
5およびR
6が独立して、C
1~6アルコキシ、C
3~8シクロアルキル、-OR
a、および-N(R
b)
2からなる群より選択される、態様1~4のいずれか1つの化合物またはその薬学的に許容される塩。
6.
R
4およびR
7が水素である、態様1~5のいずれか1つの化合物またはその薬学的に許容される塩。
7.
R
1がC
1~6アルコキシであり;
R
2およびR
3が独立して選択されるハロゲンであり;
R
4およびR
7が水素であり;
R
5が、C
1~6アルコキシ、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、-N(R
b)
2、および水素からなる群より選択され;
R
6がC
1~6アルコキシである、
態様1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
8.
R
1がC
1~6アルコキシであり;
R
2およびR
3が独立して選択されるハロゲンであり;
R
4およびR
7が水素であり;
R
5がハロゲンであり;
R
6が、C
1~6アルキル、C
3~8シクロアルキル、C
1~6アルケニル、-OR
a、-N(R
b)
2、ハロゲン、および水素からなる群より選択される、
態様1の化合物またはその薬学的に許容される塩。
9.
以下からなる群より選択される、態様1の化合物:
およびその薬学的に許容される塩。
10.
態様1~9のいずれか1つの化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
11.
ミトコンドリア機能不全に関連する疾患または状態を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、有効量の態様1~9のいずれか1つの化合物もしくはその薬学的に許容される塩または有効量の態様10の組成物を投与する段階を含む、方法。
12.
疾患ががんである、態様11の方法。
13.
がんが、T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCL)、膠芽腫、胆管がん、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)誘発性肝細胞がん(HCC)、結腸直腸がん、乳がん、または卵巣がんである、態様12の方法。
14.
疾患が神経変性疾患である、態様11の方法。
15.
神経変性疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、ゴーシェ病、筋萎縮性側索硬化症、またはハンチントン病である、態様14の方法。
16.
状態が脳状態である、態様11の方法。
17.
脳状態が、脳卒中、てんかん発作、神経精神状態、神経障害性疼痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、動脈瘤、またはくも膜下出血である、態様16の方法。
18.
疾患または状態が非神経障害である、態様11の方法。
19.
非神経障害が、糖尿病、急性腎損傷、腎線維症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝線維症、特発性肺線維症、心線維症、強皮症、骨髄線維症、膵線維症、ミトコンドリア筋症、加齢黄斑変性(AMD)、先天性ミトコンドリア病、敗血症、心腎症候群、心虚血再灌流障害、肺動脈性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、または血管収縮である、態様18の方法。
20.
状態が、ミトコンドリア機能不全により引き起こされるヒトの加齢である、態様11の方法。
【0137】
以上の発明を、理解を明確にする目的で例証および例示を用いて若干詳細に説明してきたが、当業者は、特定の変更および修正を添付の特許請求の範囲内で実施することができることを認識するであろう。さらに、本明細書に示される各参考文献は、各参考文献が個々に参照により組み入れられる場合と同程度に、全体として参照により組み入れられる。本出願と本明細書に示される参考文献との間に矛盾が存在する場合は本出願が優先するものとする。
【国際調査報告】