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特表2022-523397ステンレス鋼及びフェロクロム工場からの溶融スラグ及び残留物の組み合わせ溶解
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  • 特表-ステンレス鋼及びフェロクロム工場からの溶融スラグ及び残留物の組み合わせ溶解 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】ステンレス鋼及びフェロクロム工場からの溶融スラグ及び残留物の組み合わせ溶解
(51)【国際特許分類】
   C22B 34/32 20060101AFI20220415BHJP
   C22B 5/02 20060101ALI20220415BHJP
   C22C 33/04 20060101ALI20220415BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
C22B34/32
C22B5/02
C22C33/04 B
C22B7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551575
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 FI2020050129
(87)【国際公開番号】W WO2020178480
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】20195153
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロ、キモ
(72)【発明者】
【氏名】パルヴィアイネン、ティモ
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA08
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA04
4K001BA06
4K001BA12
4K001BA14
4K001FA10
4K001GA13
4K001HA01
4K001HA12
4K001KA02
4K001KA06
4K001KA13
(57)【要約】
【解決手段】 本発明は、ステンレス鋼及びフェロクロム工場で生成されたスラグ及び廃棄物などの中間留出物を含む金属及び金属酸化物を溶解する方法に関する。本発明の処理方法は、上述の産業界からの全ての中間留出物及び残留物の溶解プロセスである。留出物は、エネルギー節約のために主に液相で処理される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェロクロム合金を製造するための方法であって、
-電気アーク炉又は転換炉に、溶融ステンレス鋼スラグ及び溶融フェロクロムスラグを投入して、前記スラグを混合することを可能にする工程と、
-前記電気アーク炉内の前記溶融物に電気エネルギーを、又は前記転換炉内の前記溶融物に化学エネルギーを供給する工程と、
-前記電気アーク炉又は前記転換炉内の前記溶融物に、金属塩を含む少なくとも1つの粒子状物質及び少なくとも1つの還元剤を供給する工程と、
-前記金属酸化物の還元を可能にし、金属合金を形成し、前記金属合金を沈下させることを可能にする工程と、
-前記電気アーク炉又は前記転換炉から、金属合金及びスラグを回収する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記粒子状物質が、電気アーク炉の粉塵である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粒子状物質が、少なくとも1つの金属硫酸塩、硫化物、又は水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記粒子状物質が、冶金プロセスから生じる煙道ガス粉塵、スケール、沈殿物、又はスラッジである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの還元剤が、無煙炭を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一次材が、前記電気アーク炉又は前記転換炉に添加されない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼及びフェロクロム工場で生成されたスラグ及び廃棄物などの金属及び金属酸化物含有中間留出物を溶解するための方法に関する。本発明の処理方法は、上述の産業界からの全ての中間留出物及び残留物の溶解プロセスである。留出物は、エネルギー節約のために主に液相で処理される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
電気アーク炉を使用した鉄鋼産業では、実質的な量の金属酸化物含有粉塵が製造される。この粉塵は、ごみ処理地に投棄できない金属を大量に含むため、廃棄問題が発生している。加えて、廃棄金属は、経済的な損失を意味する。粉塵に加えて、金属を含有するいくらかの廃棄留出物が産業界で発生し、これらの留出物は、金属回収及び環境影響の低減の機会を提示する。
【0003】
1970年代初頭に、Enviroplasプロセスは、冶金産業からスラグ及び粉塵を処理するために、南アフリカで開発された。典型的なプロセスには、ステンレス鋼プラントの粉塵、無煙炭、溶剤、及び基本剤を投入する直流アーク炉を含む。製品は、例えば、投入されたCr並びにNiの90%超を含む合金、及び使い捨てのスラグである。
【0004】
欧州特許第1641946B号には、複数の後続工程で金属合金溶融物を製造し、それにより、粉塵及びスラグが、Cr及びNiを回収するためにこのプロセスに再利用される方法が開示されている。
【0005】
現在、ステンレス鋼製造及びフェロクロム製造からの中間留出物は、様々な指定されたプロセスで別々に処理されている。スラグは、金属回収プラントにおいて冷却された形で処理され、金属酸化物系廃棄物、例えば、バグフィルタの粉塵、ミルスケール、及びスラッジは、一般的に、別々の廃棄物溶解プラント又はごみ処理地で処理される。中間留出物の産出には常にいくらかの量の金属酸化物が存在するが、還元結果を改善するために、これらの留出物を再び溶融することは、一般的には有益ではない。スラグ留出物からの残留金属は、従来、機械的金属回収装置によって回収され、いくらかの金属は、処理後のスラグ中に残存する。
【0006】
ステンレス鋼製造及びフェロクロム製造からの液体スラグを同じ処理装置で処理するための最新の方法は存在しない。
【0007】
【表1】
【0008】
定義
本発明の文脈では、ステンレス鋼スラグとは、ステンレス鋼製造において、スクラップ溶融、AOD/VOD転換、及びレードル処理プロセスで生成されたスラグのことである。
【0009】
【表2】
【0010】
本発明の文脈では、フェロクロムスラグとは、クロム鉱石からのフェロクロム溶解動作で生成されたスラグのことである。フェロクロムスラグの典型的な組成範囲を表2に提示する。
【0011】
本発明は、独立請求項に開示されるものによって定義される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明によれば、フィルタの粉塵、ミルスケール、及びスラッジなどの金属酸化物系廃棄物は、電気アーク炉又は転換炉内のステンレス鋼及びフェロクロム製造からの液体スラグと共に溶融される。著しい特徴は、スラグ投入材料を液相に供給することであり、したがって、溶融及び還元のためのエネルギー要件を著しく減少させる。
【0013】
発明の詳細
スラグ留出物及び金属酸化物系廃棄留出物からの金属酸化物は、エネルギー節約のために既に溶融相中で乾式冶金することによって金属に還元され、これにより、溶解の利益が向上する。
【0014】
本発明に関連するスラグ留出物は全て、ステンレス鋼及びフェロクロム製造容器(電気アーク炉、転換炉、レードル処理)からのスラグであり、また、前述の金属製造施設からの他の金属又は金属酸化物含有中間留出物、例えば、使用後耐火物である。この技術革新に関連する金属酸化物含有中間留出物は、ステンレス鋼及びフェロクロム製造(例えば、溶解、溶融、粉砕、熱間並びに冷間圧延、及び酸再生施設)からの金属酸化物、硫酸塩、又は水酸化物含有ガス浄化粉塵、スケール、及びスラッジである。
【0015】
本発明の処理方法は、金属酸化物系廃棄物の溶解を溶融スラグ投入材料と組み合わせる。したがって、金属酸化物系廃棄留出物には別々の処理装置が必要とされない。この組み合わせプロセスにより、スラグ中の金属残渣に対する従来の機械的分離も不必要になる。現在の処理方法では、純粋な金属合金及び金属を含まないスラグを産出物として製造する。
【0016】
溶解(溶融留出物のエネルギー投入及び金属酸化物の還元)は、交流又は直流電気アーク炉内で実行することができる。また、転換炉容器が好ましい場合には、化学エネルギーを使用することができる。
【0017】
金属酸化物の還元は、還元剤で行われる。有用な還元剤の例としては、コークス、無煙炭、黒鉛、メタン、プラスチック、及びゴムである。また、他の炭素源も用いることができる。更に、ケイ素及びアルミニウム系還元剤を使用することができる。
【0018】
この文脈における粉塵はまた、ZnOを含んでもよい。本発明による方法で使用するための留出物には、最大寸法100mmの廃棄鋼プラントの粉塵及び粒子状物質を含んでもよい。
【0019】
本発明による方法が利用されるとき、金属としてクロム、鉄、及びニッケルの回収は、典型的には90%超である。
【0020】
本発明によれば、Cr還元のための最適なスラグ塩基度は、溶融ステンレス鋼スラグ(石灰源として作用する)及びフェロクロムスラグを混合することによって達成される。したがって、天然資源並びにエネルギーを節約する追加の石灰投入及び溶融が不要である。
【0021】
本発明によれば、Cr、Ni、及びMoを含むことが好ましい、複数の連続的かつ同期化された方法工程において、フェロクロム合金を製造するための方法が提供される。
・ 第1の方法工程では、溶融ステンレス鋼スラグ及び溶融フェロクロムスラグは、ステンレス鋼及びフェロクロム製造施設から、溶融スラグの処理プラントに移送される。溶融スラグは、電気アーク炉又は転換炉に投入され、続いて、液体ステンレス鋼スラグ及びフェロクロムスラグを自然混合する。
・ 第2の方法工程では、還元エネルギーは、転換炉を利用する実施形態では、電気又は化学エネルギーの形で溶融物に供給される。また、移送中にスラグがわずかに冷却されるので、所望の溶融温度に達するために、追加のエネルギーも必要とされる。
第3の方法工程では、金属酸化物系廃棄留出物及び還元剤、好ましくは無煙炭が溶融物に導入され、スラグ中の金属酸化物の還元は、最適な温度で行われる。
・ 第4の方法工程では、スラグ中の還元金属液滴は、金属ヒールに沈下させる。金属還元及び沈下の後、スラグ及び金属は、還元炉又は容器から引き出される。
・ 第5の方法工程では、引き出された金属及びスラグは、骨材の形に冷却されるか、又は小滴状粒子に顆粒化される。金属合金はまた、エネルギー節約のために、ステンレス鋼製造施設内の液体として直ちに使用することができる。製造された金属合金は、金属産業で更に使用されてもよく、製造されたスラグは、主として土工中の様々なスラグ製品用途において更に使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して、より詳細に例示される。
図1図1は、ステンレス鋼及びフェロクロム施設からの金属及び金属酸化物含有残留物の組み合わせ処理の原理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、容器を使用して、溶融スラグが金属製造施設から溶解施設に移送される方法を示す。液体スラグは、スラグ製造量に相当する量の位相で溶解炉に投入される。加えて、固体スラグ及び固体金属酸化物系廃棄留出物は、投入シュートを介して、サイロから炉内に投入される。余分なエネルギーは、所望の還元温度を達成するために電極によって提供される(金属に対して1500℃~1600℃及びスラグに対して1600℃~1700℃)。炭素系還元剤を添加して、スラグ層からの金属酸化物を金属ヒールに還元する。還元金属液滴又は他の冶金パラメータの沈下速度は、スラグ添加剤、例えば、石英及び石灰によって変更することができる。製造された金属合金の還元及び沈下の後、炉は引き出される。金属合金は、ステンレス鋼製造において液体として使用されるか、又は金属産業で使用するために金属顆粒に顆粒化される。溶解炉から製造されたスラグは、異なる用途のために、空気、水、又はガスによってスラグ製品に顆粒化される。また、スラグ骨材を製造するために、空気冷却を使用してもよい。製造されたスラグは、金属を含まないため、更なる金属分離は必要ではない。
図1
【国際調査報告】