(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】皮膚吸収増進のための多重層陽イオン性リポソーム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/14 20060101AFI20220415BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20220415BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20220415BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20220415BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20220415BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220415BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220415BHJP
B01J 13/04 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A61K8/14
A61K8/63
A61K8/42
A61K8/41
A61K8/55
A61K8/73
A61Q19/00
B01J13/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552808
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 KR2020012758
(87)【国際公開番号】W WO2021060797
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0117490
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517039760
【氏名又は名称】コスマックス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス ジ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュン ベ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ソン ユン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミョン サム
【テーマコード(参考)】
4C083
4G005
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA121
4C083AC491
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4G005DC56Z
4G005DE05Z
4G005EA03
(57)【要約】
皮膚吸収増進のための多重層陽イオン性リポソーム、それを含む化粧料組成物、及びその製造方法に係る。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン性脂質、コレステロール及びセラミドを含む、陽イオン性リポソーム組成物。
【請求項2】
陽イオン性脂質、コレステロール及びセラミドを含むリン脂質層と、
前記リン脂質層内部に担持され、水溶性皮膚活性物質または油溶性皮膚活性物質を含む被担持体と、を含む、陽イオン性リポソームを含む化粧料組成物。
【請求項3】
前記陽イオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC-Chol:3β-[N-(N’,N’-dimethylaminoethane)carbamoyl cholesterol)、1,2-ジオレオイルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリエチルアンモニウムプロパン(DOTMA:1,2-di-O-octadecenyl-3-trimethylammonium propane)、1,2-ジミリストレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(14:1 Etyle PC:1,2-dimyristoleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(16:0-18:1 Ethyl PC:1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(18:1 Ethyl PC:1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(18:0 Ethyl PC:1,2-distearoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(16:0 Ethyl PC:1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(14:0 Ethyl PC:1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(12:0 Ethyl PC:1,2-dilauroyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンザミド(MVL5:N1-[2-((1S)-1-[(3-aminopropyl)amino]-4-[di(3-amino-propyl)amino]butylcarboxamido)ethyl]-3,4-di[oleyloxy]-benzamide)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(14:0 DAP:1,2-dimyristoyl-3-dimethylammonium-propane)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(16:0 DAP:1,2-dipalmitoyl-3-dimethylammonium-propane)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(18:0 DAP:1,2-distearoyl-3-dimethylammonium-propane)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ:N-(4-carboxybenzyl)-N,N-dimethyl-2,3-bis(oleoyloxy)propane-1-aminium)、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(18:0 TAP:1,2-stearoyl-3-trimethylammonium-propane)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(16:0 TA:1,2-dipalmitoyl-3-trimethylammonium-propane)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(14:0 TAP:1,2-dimyristoyl-3-trimethylammonium-propane)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67:N4-cholesteryl-spermine)、ポリクオタニウム-10(polyquaternium-10)、ポリクオタニウム-7(polyquaternium-7)、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(guar hydroxypropyltrimonium chloride)、コカミドプロピルアミンオキシド(cocamidopropylamine oxide)、ステアラミドプロピルジメチルアミン(stearamidopropyl dimethylamine)、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記セラミドは、セラミドEOP、セラミドNS、セラミドNP、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドAP、セラミドNDS、グルコシルセラミド、オメガヒドロキシセラミド、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記コレステロールは、コレステロール、コレステリルクロリド、コレステリルオクタノエート、コレステリルノナノエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルイソステアリルカーボネート、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記セラミド及び前記コレステロールを、1ないし10:40ないし60の重量比で含む、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記陽イオン性リポソームは、多重層(multilayer)構造である、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記陽イオン性リポソームは、水溶性皮膚活性物質は、リン脂質層間に位置し、油溶性皮膚活性物質は、リン脂質層内部に位置する多重層構造である、請求項7に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記陽イオン性リポソームのゼータ電位は、10ないし60mVである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記水溶性皮膚活性物質は、ナイアシンアミド(niacinamide)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、アデノシン(adenosine)、植物抽出物、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
前記油溶性皮膚活性物質は、レチノール(retinol)、酢酸レチノール(retinyl acetate)、パルミチン酸レチノール(retinyl parmitate)、コエンザイムQ10(coenzyme Q10)、α-トコフェロール(α-tocopherol)、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、植物抽出物、植物抽出物エッセンシャルオイル、またはそれらの組み合わせである、請求項2に記載の化粧料組成物。
【請求項12】
陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを有機溶媒に溶解させて溶液を製造する段階と、
前記溶液から溶媒を除去して脂質膜を形成する段階と、
前記脂質膜を乾燥させて水和する段階と、を含む、陽イオン性リポソーム組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月24日に出願された大韓民国特許出願第10-2019-0117490号を優先権として主張し、前記明細書全体は、本出願の参考文献である。
【0002】
本発明は、皮膚吸収増進のための多重層陽イオン性リポソーム、それを含む化粧料組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
皮膚は、表皮、真皮及び皮下脂肪層によって構成されており、体の最外部の膜として、有害環境から体内を保護し、恒常性維持に重要な役割を行う。そのうち、表皮の最外層である角質層は、タンパク質成分である角質細胞(corneocyte)と、細胞間脂質とによって構成されている。特に、該細胞間脂質は、セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などによって構成されており、有害物質の経皮侵入遮断、及び皮膚内水分維持のような皮膚障壁の役割を行う。しかし、角質層のそのような皮膚障壁機能は、多様な有効成分の効果的吸収においては、障害要素になる。
【0004】
リポソームは、効能物質の皮膚吸収増進のために周知されている代表的な薬物伝達システムである。リポソームは、生体内物質であるリン脂質によって構成されており、生体親和性が高く、化粧品や医薬品の分野に汎用される。また、リポソームは、内部には、親水性の空間があり、二重層構造または多重層構造の間には、疎水性物質を担持することができる特徴を有しており、多様な効能物質の皮膚伝達に有利である。リポソームは、膜を形成する構成成分により、エトソーム、弾性リポソーム、高分子コーティングリポソーム、陽イオンリポソームなどにも製造され、それぞれのリポソームごとに、有効成分を皮膚に伝達する原理が異なる。そのうち、陽イオンリポソームは、陽イオン脂質によって構成されたリポソームであり、負電荷を帯びる皮膚表面と、静電気的引力によって接近が容易であり、皮膚内への有効成分吸収を増進させる。
【0005】
従って、有効成分の皮膚吸収率を高めるために、生体親和性にすぐれ、皮膚との高い付着力を有する陽イオンリポソームの開発が必要である。また、皮膚との類似性増大のために、セラミド及びコレステロールのような細胞間脂質成分を含むリポソームの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題の一つは、陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを含む陽イオン性リポソーム(cationic liposome)組成物を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題の一つは、また、陽イオン性脂質、コレステロール及びセラミドを含むリン脂質層と、前記リン脂質層内部に担持され、水溶性皮膚活性物質または油溶性皮膚活性物質を含む被担持体と、を含む陽イオン性リポソームを含む化粧料組成物を提供する。
【0008】
本発明が解決しようとする課題の一つは、また、陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを含む陽イオン性リポソーム組成物を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一様態は、陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを含む陽イオン性リポソーム(cationic liposome)組成物を提供するものである。
【0010】
他の様態は、陽イオン性脂質、コレステロール及びセラミドを含むリン脂質層と、前記リン脂質層内部に担持され、水溶性皮膚活性物質または油溶性皮膚活性物質を含む被担持体と、を含む陽イオン性リポソームを含む化粧料組成物を提供するものである。
【0011】
本明細書で使用される用語「リポソーム」とは、微細な球形膜で覆い包まれた約50~2,000nm径の小胞(vesicle)を意味するものであり、脂質二重層で覆い包まれた全区画を含む概念である。
【0012】
本明細書で使用される用語「陽イオン性脂質」とは、生理学的pHのような、選択されたpHにおいて、正値の正味電荷を有する脂質を意味するものであり、前記生理学的pHは、6ないし8、具体的には、6.5ないし8、さらに具体的には、7.5のpHを意味するものでもある。
【0013】
前記陽イオン性脂質は、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDA)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC-Chol:3β-[N-(N’,N’-dimethylaminoethane)carbamoyl cholesterol)、1,2-ジオレオイルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリエチルアンモニウムプロパン(DOTMA:1,2-di-O-octadecenyl-3-trimethylammonium propane)、1,2-ジミリストレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(14:1 Etyle PC:1,2-dimyristoleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(16:0-18:1 Ethyl PC:1-palmitoyl-2-oleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(18:1 Ethyl PC:1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(18:0 Ethyl PC:1,2-distearoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(16:0 Ethyl PC:1,2-dipalmitoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(14:0 Ethyl PC:1,2-dimyristoyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(12:0 Ethyl PC:1,2-dilauroyl-sn-glycero-3-ethylphosphocholine)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンザミド(MVL5:N1-[2-((1S)-1-[(3-aminopropyl)amino]-4-[di(3-amino-propyl)amino]butylcarboxamido)ethyl]-3,4-di[oleyloxy]-benzamide)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(14:0 DAP:1,2-dimyristoyl-3-dimethylammonium-propane)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(16:0 DAP:1,2-dipalmitoyl-3-dimethylammonium-propane)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(18:0 DAP:1,2-distearoyl-3-dimethylammonium-propane)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ:N-(4-carboxybenzyl)-N,N-dimethyl-2,3-bis(oleoyloxy)propane-1-aminium)、1,2-ステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(18:0 TAP:1,2-stearoyl-3-trimethylammonium-propane)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(16:0 TA:1,2-dipalmitoyl-3-trimethylammonium-propane)、1,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(14:0 TAP:1,2-dimyristoyl-3-trimethylammonium-propane)、N4-コレステリル-スペルミン(GL67:N4-cholesteryl-spermine)、ポリクオタニウム-10(polyquaternium-10)、ポリクオタニウム-7(polyquaternium-7)、グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド(guar hydroxypropyltrimonium chloride)、コカミドプロピルアミンオキシド(cocamidopropylamine oxide)、ステアラミドプロピルジメチルアミン(stearamidopropyl dimethylamine)、またはそれらの組み合わせでもある。
【0014】
本明細書で使用される用語「セラミド」とは、内部・外部のストレス(stress)によって損傷された細胞を除去することにより、ストレスから皮膚を保護する機能を遂行すると知られたスフィンゴ脂質(sphingolipids)の一種であり、前記セラミドは、セラミドEOP、セラミドNS、セラミドNP、セラミドAS、セラミドEOS、セラミドAP、セラミドNDS、グルコシルセラミド、オメガヒドロキシセラミド、またはそれらの組み合わせでもある。
【0015】
本明細書で使用される用語「コレステロール」とは、皮膚角質構造において、セラミド、脂肪酸と共に、細胞の膜系を構成する主要成分であり、前記コレステロールは、コレステロール、コレステリルクロリド、コレステリルオクタノエート、コレステリルノナノエート、コレステリルオレイルカーボネート、コレステリルイソステアリルカーボネート、またはそれらの組み合わせでもある。
【0016】
前記陽イオン性リポソーム組成物は、多重層(multilayer)構造でもある。前記用語「多重層構造」とは、外相と内相とを区分する層が3層以上によってなる構造を意味し、前記陽イオン性リポソーム組成物は、多重層構造を有することにより、有効成分担持、及び有効成分の皮膚透過において、さらに有利な効果を示すことができる。具体的には、前記陽イオン性リポソームは、水溶性皮膚活性物質は、リン脂質層間に位置し、油溶性皮膚活性物質は、リン脂質層内部に位置する多重層構造でもある。そのように、皮膚活性物質が多層構造の各層ごとに分離されて安定して存在することにより、皮膚の真皮層まで伝達体の損傷なしに、栄養分のような皮膚活性物質を安定して伝達することができる。一具体例において、透過電子顕微鏡を利用し、陽イオン性リポソーム及び一般リポソームの構造を観察した結果、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、コレステロール及びセラミドを含んで製造された陽イオン性リポソームは、多重層構造を示した一方、一般リポソームは、二重層(bilayer)構造を示すということを確認した。
【0017】
前記セラミド及び前記コレステロールの重量比は、1ないし10:40ないし60、例えば、1ないし10:45ないし60、例えば、1ないし8:40ないし55、例えば、1ないし6:40ないし55、例えば、1ないし6:45ないし55、例えば、1ないし4:40ないし55、例えば、1ないし4:45ないし55、例えば、1ないし3:40ないし55、例えば、1ないし3:45ないし55でもある。前記重量比において、セラミドの比率が増大すれば、結晶性により、析出現象が生じ、コレステロールの比率が増大すれば、膜が過度に堅固になり、有効成分放出に不利な問題が生じてしまう。
【0018】
前記陽イオン性リポソームのゼータ電位は、正の電位を示すことができる。前記陽イオン性リポソームのゼータ電位は、pHが中性である条件において、例えば、1ないし80mV、例えば、5ないし75mV、例えば、10ないし60mV、例えば、15ないし55mV、例えば、20ないし50mVでもある。一具体例において、陽イオン性脂質を含んでいない一般リポソームは、ゼータ電位が負の値に測定された一方、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、コレステロール及びセラミドを含んで製造された陽イオン性リポソームは、ゼータ電位が正の値に測定されることを確認した。
【0019】
前記陽イオン性リポソーム組成物は、当業界に知られた方法によっても製造され、例えば、薄膜水和法(thin film hydration method)によっても製造される。例えば、水溶性(親水性)物質の水和液体(hydrating fluid)として、それらの物質の水性溶液(aqueous solution)を使用するか、あるいはリポソームの製造過程のある段階において、薬物または薬物溶液を添加することにより、水溶性物質が捕集された(entrapped)リポソームを製造することができる。また、脂溶性(疎水性)物質は、構成脂質の有機溶液に溶解させ、その後、蒸発させて乾燥させた薬物含有脂質フィルムを形成した後、水和(hydration)させることによっても製造される。
【0020】
前記化粧料組成物は、陽イオン性リポソームを含むことにより、化粧料組成物に含まれた有効成分の皮膚透過及び皮膚吸収の程度が顕著に増大されうる。一具体例において、陽イオン性リポソームまたは一般リポソームに、有効成分としてナイアシンアミドをカプセル化させ、その皮膚透過程度を比較した結果、一般リポソームに比べ、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン、コレステロール及びセラミドを含んで製造された陽イオンリポソームに捕集されたナイアシンアミドの皮膚透過及び皮膚吸収の程度が顕著に増大されるということを確認した。
【0021】
前記水溶性皮膚活性物質または前記油溶性皮膚活性物質は、皮膚に肯定的な効果または作用を与えることができる物質を意味し、例えば、抗酸化、皮膚美白、皮膚障壁強化、皮膚弾力改善、皮膚しわ改善、紫外線からの皮膚保護、紫外線による皮膚損傷回復、皮膚保湿、皮膚再生促進、皮膚炎症改善、皮膚老化防止などを含む多様な皮膚改善効果を示すことができる。
【0022】
前記水溶性皮膚活性物質は、ナイアシンアミド(niacinamide)、アスコルビン酸(ascorbic acid)、アデノシン(adenosine)、植物抽出物、またはそれらの組み合わせでもある。
【0023】
前記油溶性皮膚活性物質は、レチノール(retinol)、酢酸レチノール(retinyl acetate)、パルミチン酸レチノール(retinyl parmitate)、コエンザイムQ10(coenzyme Q10)、α-トコフェロール(α-tocopherol)、酢酸トコフェロール(tocopherol acetate)、植物抽出物、植物抽出物エッセンシャルオイル、またはそれらの組み合わせでもある。
【0024】
前記化粧料組成物の剤形は、一般的な化粧料の剤形であるならば、制限されるものではないが、例えば、柔軟化粧水・収斂化粧水または栄養化粧水のようなスキン、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイルまたはボディーエッセンスでもある。
【0025】
前記化粧料組成物は、保存剤、安定化剤、界面活性剤、溶解剤、保湿剤、エモリエント剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機顔料及び無機顔料、香料、冷感剤または制汗剤などをさらに含んでもよい。前記保湿剤などの追加成分の配合量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内において、当業者が容易に選定可能である。
【0026】
さらに他の様態は、陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを含む陽イオン性リポソーム組成物を製造する方法を提供するものである。前記陽イオン性脂質、セラミド、コレステロール、陽イオン性リポソーム組成物などについては、前述のところと同一である。
【0027】
前記陽イオン性リポソーム組成物を製造する方法は、陽イオン性脂質、セラミド及びコレステロールを有機溶媒に溶解させて溶液を製造する段階と、前記溶液から溶媒を除去して脂質膜を形成する段階と、前記脂質膜を乾燥させて水和する段階と、を含むものでもある。
【0028】
前記方法は、前記乾燥されて水和された脂質膜を均質化させる段階をさらに含むものでもある。
【0029】
前記有機溶媒は、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロパノール(isopropanol)、ブタノール(butanol)、アセトン(acetone)、エーテル(ether)、ベンゼン(benzene)、クロロホルム(chloroform)、酢酸エチル(ethyl acetate)、塩化メチレン(methylene chloride)、ヘキサン(hexane)、シクロヘキサン(cyclohexane)、またはそれらの組み合わせでもあるが、それらに特に制限されるものではない。
【発明の効果】
【0030】
一様態による陽イオン性リポソーム組成物は、一般リポソームに比べ、リポソームに含有された有効成分の皮膚透過程度が有意的に高く示されるので、リポソーム組成物に含まれる有効成分の皮膚吸収増進のための用途にも利用される。
【0031】
他の様態による陽イオン性リポソーム組成物は、コレステロール及びセラミドを含むことにより、リポソーム膜安定性及び皮膚安全性が顕著に改善されるので、化粧料組成物として安全に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】陽イオン性リポソーム、一般リポソーム、並びにセラミド及びコレステロールを含んでいない陽イオン性リポソームの経時的な平均粒子サイズを示した図である。
【
図2】陽イオン性リポソーム、一般リポソーム、並びにセラミド及びコレステロールを含んでいない陽イオン性リポソームの経時的なゼータ電位(mV)を示した図である。
【
図3】セラミド及びコレステロール1:20の重量比で含む陽イオン性リポソームの粒子サイズの増大を示したグラフである。
【
図4A】セラミド及びコレステロールを1:30の重量比で含む陽イオン性リポソームの粒子サイズの増大を示したグラフである。
【
図4B】セラミド及びコレステロールを1:30の重量比で含む陽イオン性リポソームの析出現象を示した写真である。
【
図5】陽イオン性リポソームの多重層構造を確認した透過電子顕微鏡の観察写真である。
【
図6】陽イオン性リポソームの皮膚吸収能を確認した試験管内(in vitro)皮膚透過評価結果を示した図面である。
【
図7】陽イオン性リポソームの皮膚吸収能を確認した皮膚透過程度を比較するために、人工皮膚を利用した皮膚透過評価結果を示した蛍光顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかし、それら実施例は、例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1.陽イオン性リポソームの製造
薄膜水和法(thin film hydration method)を介し、陽イオン性リポソームを製造した。丸フラスコに、L-α-ホスファチジルコリン(Egg pc:L-α-phosphatidylcholine)、陽イオン脂質である1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP:1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)、セラミド、コレステロールを入れ、クロロホルム・メタノール(4:1)20mLに完全に溶解されるまで溶かした後、回転蒸発濃縮器(rotary evaporator)を利用し、溶媒を完全に除去し、フラスコ壁面に薄膜を形成させた。形成された脂質フィルム膜を、12時間真空で乾燥させ、残余溶媒を完全に除去した後、精製水10mLを添加して水和させた後、超音波破砕機(probe sonicator)を利用し、5分間均質化させた。そのようにして得られたリポソーム溶液は、0.45μmフィルタ(Minisart CA 26mm)に通過させて実験に使用した。
【0035】
比較例1.一般リポソームの製造
一般リポソームは、前述のような組成及び方法によって製造し、前述の組成から、陽イオン脂質である1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP:1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane)を除いて製造した。陽イオン性リポソームと一般リポソームとに使用されたセラミド及びコレステロールは、膜の安定度向上、生体との類似性、及び皮膚安全性を高めるために使用した。
【0036】
比較例2.セラミド及びコレステロールを含んでいない陽イオン性リポソームの製造
陽イオン性リポソームの皮膚吸収効能評価と共に、実施例のリポソーム製造に使用されたセラミドとコレステロールとが、リポソームの膜安定性及び皮膚安全性にいかなる影響を及ぼすものであるかということを知るために、セラミド及びコレステロールが含まれていない陽イオン性リポソームを比較例2として製造した。具体的な製造方法は、前記実施例1と同一である。
【0037】
下記表1に実施例1、比較例1及び2の組成を示した。
【0038】
【0039】
前記陽イオン性リポソームにおいて、陽イオン性脂質が0.1%以上であるか、あるいは、Egg PCが0.5以下または1.0%以上である場合、保管時、混濁(haze)が生じ、安定度が良好ではない。また、セラミド及びコレステロールの重量比が、1ないし10:40ないし60(w/w)である場合、膜安定性が最もすぐれていた。前記重量比において、セラミド比率が増大すれば、結晶性によって析出現象が生じ、コレステロールの比率が増大すれば、膜が過度に堅固になり、有効成分放出に不利にもなるために、適切な比率維持が重要である。
【0040】
比較例3~5.セラミド及びコレステロール含量変化による陽イオン性リポソームの製造
陽イオンリポソームの皮膚吸収効能の評価と共に、実施例のリポソーム製造に使用されたセラミドとコレステロールとが、リポソームの膜安定性及び皮膚安全性にいかなる影響を及ぼすかということを知るために、セラミドとコレステロールとの含量を異ならせたリポソームを製造した。具体的な製造方法は、前記実施例1と同一である。
【0041】
下記表2に、比較例3ないし5の組成を示した。
【0042】
【0043】
実験例1.リポソーム粒子の物性評価
1.1 粒子サイズ及びゼータ電位の確認
一般リポソームと陽イオン性リポソームとの粒子サイズ及びゼータ電位(zeta potential)測定のために、中性条件(pH7)において、動的光散乱装置(dynamic light scattering,DLS,SZ-100,HORIBA)を利用した。製造直後から一週間間隔で4週間、粒子サイズとゼータ電位とを測定した結果を、それぞれ
図1ないし
図4Aに示した。
【0044】
その結果、
図1に示されているように、一般リポソームの場合、粒子サイズ180ないし200nm、陽イオン性リポソームは、粒子サイズ100ないし120nmと測定され、
図2に示されているように、一般リポソームのゼータ電位は、-10~0mVであり、陽イオン性リポソームのゼータ電位は、20~50mVであり、表面電荷が陽イオンであるということを確認した。すなわち、コレステロール及びセラミドを含む実施例1の陽イオン性リポソームの粒子サイズ及びゼータ電位に係わる経時的な安定性観察の結果、4週間、安定した物性を維持するということを確認した。それとは異なり、セラミド及びコレステロールを含んでいない比較例2の陽イオン性リポソームは、時間が経過するほど、粒子サイズが増大する傾向を示した。そのような結果から、コレステロール及びセラミドは、陽イオン性リポソームの膜安定性向上に重要な役割があるということを確認することができる。
【0045】
図3は、比較例3の粒子サイズの増大を示したグラフであり、
図4は、比較例5の粒子サイズの増大を示したグラフ(
図4A)、及び析出現象を示した写真(
図4B)である。
【0046】
図3に示されているように、セラミド及びコレステロールを1:20の重量比で含む比較例3の陽イオン性リポソームの場合、目に見える析出現象は、ないものの、製造1週間後、約50nmから約100nmにサイズが2倍増大することを確認することができた。また、セラミド及びコレステロールを1:100の重量比で含む比較例4の陽イオン性リポソームの場合、回転蒸発濃縮器を利用し、フラスコ壁面に薄膜を形成させる段階において、析出現象が生じ、リポソーム製造が不可能であった。また、
図4Aに示されているように、セラミド及びコレステロールを1:30の重量比で含む比較例5の陽イオン性リポソームの場合、セラミド含量の増大により、製造1週間後、約100nmから約200nmにサイズが約2倍以上増大し、
図4Bに示されているように、脂質膜の崩壊現象及び析出現象が生じるということを確認することができた。従って、一様態による陽イオン性リポソームは、セラミド及びコレステロールを、1ないし10:30ないし60の重量比で含むことにより、結晶性による析出問題、及び膜が堅固になる問題を改善させることができる。
【0047】
1.2 粒子構造及び粒子外観の確認
リポソーム構造分析のために、リポソーム粒子を超低温状態に維持したまま、本来の構造観察が可能であるCryo-TEM(cryogenic transmission electron microscopy)を使用した。まず、リポソーム5μLを、200メッシュカーボンレーシーフィルムCu-grid(carbon lacey film Cu-grid)にローディングした後、ビットロボット(vitrobot)で液化された(約-170℃)エタン(ethane)に浸し、急激に凍結させた。作られた凍結試料を、加速電圧200kV下で、Cryo-TEM(Tecnai F20,FEI)で観察した。
【0048】
その結果、
図5に示されているように、陽イオン性リポソームは、有効成分担持と、有効成分の皮膚透過とに有利な多重層(multilayer)構造体を形成し、一般リポソームは、二重層(bilayer)構造体を形成するということを確認した。
【0049】
実験例2.試験管内(in vitro)皮膚透過評価
前記実施例1と比較例1とで製造した陽イオン性リポソームと一般リポソームとにつき、試験管内(in vitro)条件における有効成分の皮膚吸収効果を評価するために、フランツ細胞拡散システム(Franz diffusion cell system)を利用した皮膚透過実験を行った。具体的には、皮膚透過実験のために、人工膜(Strat-M,Merck)上に、美白機能性成分と知られたナイアシンアミド(niacinamide)を含む、一般リポソームと陽イオン性リポソームとをそれぞれ定量に塗布し、受容体相(receptor phase)としては、PBS:EtOH(8:2)を使用した。該実験は、32℃条件で実施され、塗布8時間経過後、受容体相を、サンプリングポート(sampling port)を介して採取し、HPLCを利用し、採取した試料からナイアシンアミドを分析した。
【0050】
8時間後、角質層と皮膚とに残っているナイアシンアミドの量を測定するために、人工皮膚をPBSで3回洗浄した後、テープストリッピング(tape stripping)法を利用し、角質層に残っているナイアシンアミドの量を測定した。皮膚の角質層は、テープを利用し、3回剥がした後、EtOH 10mLに入れ、超音波洗浄器を利用して抽出した。該テープストリッピング法を経た後、角質層が除去された皮膚は、洗浄後、前述のところと同一にEtOHに入れ、超音波洗浄器を利用して抽出した。そのようにして得られた試料中のナイアシンアミドは、HPLCを利用して定量化した。HPLC分析条件は、下記表3に示した。人工膜を利用した皮膚透過実験結果は、
図6に示した。
【0051】
【0052】
人工膜を利用した8時間後、皮膚吸収効果を確認した結果、
図6に示されているように、陽イオン性リポソームは、一般リポソームと比較し、角質層に存在するナイアシンアミドの量(テープ)、角質層を除いた表皮と真皮とに存在するナイアシンアミドの量(膜)、皮膚を透過した量(経皮)、及びそれらをいずれも合わせた透過総量において、顕著に増大された皮膚吸収能を示した。
【0053】
実験例3.人工皮膚への皮膚透過評価
前記実験例2の結果に加え、実施例1の陽イオン性リポソームの皮膚透過程度を視覚的に確認するために、人工皮膚(Neoderm,TEGO SCIENCE)を利用し、皮膚透過評価を進めた。具体的には、表皮層だけ存在する人工皮膚に、蛍光試薬ロダミンB(Sigma-aldrich)を担持させたリポソームを30μL滴下させ、2時間37℃でインキュベーションした。その後、人工皮膚が固定されている支持台を除去し、分離された人工皮膚を、OCT(optimal cutting temperature)溶液が入っているモールドに入れ、80℃で約20分間保管した後、冷凍組織切片器(Leica CM1850,Leica Microsystems)を利用し、20μmサイズに切片した。切片された組織は、共焦点走査顕微鏡(confocal laser microscopy LSM-700,Zeiss)で観察した。
【0054】
その結果、
図7に示されているように、一般リポソームに比べ、実施例1の陽イオン性リポソームを処理した皮膚断面において、蛍光強度がさらに高く示され、表皮下層部までさらに深く透過されているということを確認した。そのような結果は、実験例2のフランツ細胞拡散システムを利用した試験管内皮膚透過実験結果と相応する結果である。
【0055】
また、そのような結果は、前記実験で使用された蛍光試薬ロダミンBが、水溶性蛍光試薬においてリポソームコアに捕集されるが、捕集された蛍光試薬は、リポソーム粒子が細胞膜と融合した後、皮膚細胞内に分散されるとき、陽イオン性リポソームの表面電位が、負電荷を帯びる皮膚表面との親和力におり、一般リポソームより皮膚透過が強く示されたと分析されうる。
【0056】
実験例4.皮膚安全性の評価
セラミド及びコレステロールの含有いかんによる陽イオン性リポソームの皮膚安全性を比較するために、前記実施例1及び比較例2の皮膚安全性評価を行った。具体的には、皮膚疾患がない成人男女20人を対象にし、前記実施例1及び前記比較例2の陽イオン性リポソームの刺激程度を次のように評価した。試験者らの腕全般に、20μLの試料を塗布した後、試験部位を密閉した後、24時間貼布した。貼布を除去した後、30分後及び24時間後における皮膚での反応をCTFAガイドラインに提示された用語(terminology)に基づいて検査した。判定基準によって得られた試験者らの皮膚刺激指数(PII)点数を平均し、1未満であるならば、低刺激、2未満であるならば、軽刺激、3.5未満であるならば、中刺激、3.5以上であるならば、強刺激として評価した。
【0057】
【0058】
その結果、前記表4に示されているように、セラミドを含む陽イオン性リポソーム及び一般リポソームは、無刺激であり、化粧料組成物として安全に使用されうるということを確認したが、セラミドが含有されていない比較例2の陽イオン性リポソームは、刺激程度がさらに高い低刺激と示された。前記結果から、陽イオン性リポソームは、セラミドを含むことにより、リポソームの皮膚安全性が向上されうるということを確認した。
【0059】
以上の結果から、前記陽イオン性リポソームは、一般リポソームに比べ、リポソームに含有された有効成分の皮膚透過程度が有意的に高く示され、前記陽イオン性リポソームは、コレステロール及びセラミドを含むことにより、陽イオン性リポソームの膜安定性及び皮膚安全性が顕著に改善されるということを確認することができる。
【国際調査報告】