(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】熱交換装置用冷却装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20220415BHJP
F28D 1/06 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
A61M1/16 120
F28D1/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553779
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2020056455
(87)【国際公開番号】W WO2020182856
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】102019203253.2
(32)【優先日】2019-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089121
【氏名又は名称】レスシテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グルドク,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ベンク,クリストフ
【テーマコード(参考)】
3L103
4C077
【Fターム(参考)】
3L103AA05
3L103BB45
3L103CC13
3L103CC35
4C077AA03
4C077BB06
4C077DD05
4C077DD18
4C077EE01
4C077JJ03
4C077JJ15
4C077KK09
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】本発明は、熱交換装置のための、好適には、体外血液回路に搬送される血液の温度制御を目的とする酸素供給器(人工肺)に一体化されている熱交換装置のための冷却装置であって、液体を貯留する貯留槽と、反応物を含み、液体とともに吸熱反応を開始させることが可能な反応槽と、貯留槽と反応槽との間に流体アクセスを形成する機能手段と、少なくとも部分的に反応槽内に延在し、熱交換装置のホースシステムにそれぞれが液密に接続可能または接続されている導入管および導出管を有し、熱交換装置のホースシステムとともに、少なくとも流体回路の一部を形成する流体導管とを備える。本発明は、オーバーフロー排水口を有する膨張タンクが設けられ、その内部へ貯留槽からの液体が貯留槽と反応槽との間に流体アクセスが形成された後に流れ、オーバーフロー排水口は反応槽に対する流体接続部を構成し、それを経由して貯留された液体の一部が反応物との吸熱反応を開始させるために、反応槽の中に入り、流体導管は、貯留槽からの貯留された液体の残余分が入る膨張タンクに流体的に接続され、流体ポンプは、流体導管に沿って配置され、これにより、膨張タンクからの液体が少なくとも部分的に反応槽内に延在する流体導管を通過することを特徴とする冷却装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換装置のための、好適には、体外血液回路に搬送される血液の温度制御を目的とする酸素供給器(O)に一体化されている熱交換装置(W)のための冷却装置であって、
液体を貯留する貯留槽(1)と、
反応物(11)を含み、前記液体とともに吸熱反応を開始させることが可能な反応槽(8)と、
前記貯留槽(1)と前記反応槽(8)との間に流体アクセスを形成する機能手段(4)と、
少なくとも部分的に前記反応槽内に延在し、前記熱交換装置(W)のホースシステム(18)に、それぞれが液密に接続可能または接続されている導入管および導出管(14、19)を有し、前記熱交換装置(W)の前記ホースシステム(18)とともに、少なくとも流体回路の一部を形成する流体導管(12)と、
を備え、
オーバーフロー排水口(6)を有する膨張タンク(3)が設けられ、その内部へ前記貯留槽(1)からの前記液体が、前記貯留槽(1)と前記反応槽(8)との間に流体アクセスが形成された後に流れ、前記オーバーフロー排水口(6)は前記反応槽(8)に対する流体接続部(7)を構成し、それを経由して前記貯留された液体の一部が前記反応物(11)との前記吸熱反応を開始させるために前記反応槽(8)の中に入り、前記流体導管(12)は、前記貯留槽(1)からの前記貯留された液体の残余分(26)が入る前記膨張タンク(3)に流体的に接続され、流体ポンプ(16)が前記流体導管(12)に沿って配置され、これにより、前記膨張タンク(3)からの液体が少なくとも部分的に前記反応槽(8)内に延在する前記流体導管(12)を通過することを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
逆止弁(10)が前記オーバーフロー排水口(6)の前記流体接続部(7)に沿って配置され、前記逆止弁は、前記反応槽(8)から前記膨張タンク(3)へ液体の帰還流を防ぐことを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記流体ポンプ(16)は、前記膨張タンクおよび前記反応槽(3、8)の外部に、前記流体導管(12)に沿って配置されている吸込部として構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記流体ポンプ(16)は、ペリスタルティックポンプとして構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記反応槽(8)内に延在する領域の下流の前記流体導管(12)は、前記導出管(14)を提供し、フィルタ部(15)が、前記反応槽の外部に延在する前記導出管(14)に沿って配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記フィルタ部(15)は、バクテリアフィルタ、とりわけ、レジオネラフィルタであることを特徴とする、請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記流体導管(12)の前記導入管(19)は、前記膨張タンク(3)に供給し、前記流体回路は、前記膨張タンク(3)、前記流体導管(12)および前記熱交換装置(W)の前記ホースシステムを有し、前記液体の前記残余分(26)は、前記熱交換装置(W)の熱伝達液として前記流体回路を循環することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記貯留槽(1)は、前記膨張タンク(3)の上方に垂直に配置され、
前記機能手段(4)は、前記貯留槽(1)の下方に垂直に配置されている鋭利なエッジを有する物体として構成され、
スペーサー(25)が前記貯留槽(1)および前記膨張タンク(3)間に配置され、前記スペーサーは前記機能手段(4)の上方の前記貯留槽(1)から垂直に離間され、
前記スペーサー(25)を除去した後、重力によって駆動される前記貯留槽(1)が前記機能手段(4)との接触によって前記貯留槽(1)を局所的に機械的に貫通し、前記貯留槽(1)に貯留された前記液体が膨張タンク(3)に全体的に供給されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記機能手段(4)は、前記膨張タンク(3)に固定して配置されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項10】
攪拌器(20)が、前記反応槽(8)内に配置され、前記攪拌器は、前記反応槽(8)の外部に配置されている駆動モータ(22)により機械的なインターフェースを介して駆動可能であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項11】
少なくとも前記貯留槽(1)、前記機能手段(4)および前記反応槽(8)は、使い捨て物品として構成されていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記フィルタ部(15)および前記攪拌器(20)は、使い捨て物品の部品であり、前記駆動モータ(22)および前記流体ポンプ(16)は、電気制御装置(23)および電気エネルギー供給源(24)に接続され、前記使い捨て物品に対して機械的に適合しているモジュール式ユニットとして構成されていることを特徴とする、請求項5、10、または11に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記熱交換装置(W)は、定置型または可搬型冷却システムに一体化されていることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記反応槽(8)の内部に結合剤が貯留され、前記結合剤は、前記反応槽(8)に供給される前記液体と接触する際に、それとともにゲルの形成が可能であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項15】
少なくとも前記貯留槽(1)および前記反応槽(8)は、プラスチックをベースとする軽量包装材料から製造されていることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項16】
前記液体と接触する前記反応槽の少なくとも内壁には、液密性の被覆が施されていることを特徴とする、請求項15に記載の冷却装置。
【請求項17】
前記反応槽(8)は、通気装置を提供することを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置のための、好適には、体外血液回路に搬送される血液の温度制御を目的とする酸素供給器(人工肺)に一体化されている熱交換装置のための冷却装置であって、液体を貯留する貯留槽と、反応物とを備え、液体とともに、吸熱反応を開始させることが可能な反応槽と、貯留槽と反応槽との間に流体アクセスを形成する機能手段と、少なくとも部分的に反応槽内に延在し、熱交換装置のホースシステムにそれぞれが液密に接続可能または接続されている導入管および導出管を有し、熱交換装置のホースシステムとともに、少なくとも流体回路の一部を形成する流体導管と、を備える。
【背景技術】
【0002】
発熱または吸熱化学反応において放出される熱または冷熱を、技術的手段である熱的結合により利用することが知られている。冷熱を放出する吸熱反応については複数の用途がある。以下に概要を簡潔に説明する。
【0003】
心臓手術または集中治療医学という状況下において、特に、急性心不全および/または肺不全の治療においては人工心肺が使用されるが、これにより心臓のポンプ機能および肺機能は限られた時間内に交換が可能である。この場合、血液は身体を離れ、ホースシステムとして体外血液回路を介して、人工心肺の一部である酸素供給器(人工肺)により酸素が豊富に補填されて身体に戻る。同時に酸素供給器(人工肺)は肺機能を請け負い、血液へ生命維持に必要な酸素を供給するのみでなく、また同時に代謝の過程で作られた二酸化炭素(CO2)を除去する。
【0004】
今日、使用されている酸素供給器(人工肺)の大半は、熱交換装置をさらに有し、それにより血流は温められるが、特に冷却することもできる。このように、心臓への医療処置は体温を下げることで細胞の代謝活動が抑制され、冒された組織および臓器の虚血耐性が増すことから、一般に低体温を条件として行われる。すなわち、程度の差はあれ血液が冷却されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
いわゆる低体温法装置は冷熱の供給源として機能する。熱交換装置を介して酸素供給器(人工肺)を流れる血液を冷却するため、すなわち、熱エネルギーを狙い通りに除去するために、一般に冷却水が冷却液として生成され用いられる。市販の低体温法装置は、大型で重量のある作動装置であり、一般にローラーが取り付けられる。その加熱および冷却システムは電気の送電線を介して供給されるため現場での使用に適していない。
【0006】
最近の低体温法装置はコンパクト設計でかつ実質的に自立して電力および冷却水を供給するため、電力および水の供給とは無関係に持ち運びによる使用が可能である。このような低体温法装置は酸素供給器(人工肺)に一体化されている熱交換装置と液密に接続される。このため、これらをモジュール式アッセンブリによりまたは一体化することにより、酸素供給器(人工肺)とともに使用することができる。
【0007】
このように実質的に自立作動型である最近の低体温法装置において、その冷却の原理は、一般に、硝酸アンモニウム、硝酸カルシウムアンモニウムまたは尿素と、水との間の吸熱化学反応に基づく。尿素は、急速な冷却効果を開始させるために、冷却パック用化学物質の構成要素として頻繁に利用される。冷却パックは、一般に仕切りのある2つの領域から構成され、その一つに尿素が、もう一つに水が存在する。仕切りが欠けると尿素は水で溶解する。尿素の格子エネルギーは、水和エネルギーより大きいことから、溶解過程で周囲からエネルギーが奪われ冷却が行なわれる(Robert T. Sataloff: Sataloffs Comprehensive Textbook of Otolaryngology. Jaypee Brothers, 2016, ISBN 978-93-5152745-9, p412.参照)。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0371552号明細書には、冷却装置、温度計測装置および赤外線検出器を備えた、患者の皮膚表層を非侵襲的に位置付けが可能な血糖測定装置が開示されている。血糖を測定するためには、皮膚表層は冷却装置を用いて所定温度に下げられ、皮膚表層より放出または吸収された赤外線が測定される。冷却装置は液密に封じられ、互いが直接的に隣接する2つの槽から構成され、1つの槽は尿素で満たされ、他の槽は水で満たされる。両方の槽を液密に分離している仕切りは、ばね荷重式のピンを用いて局所的に穿孔できるため、水が尿素の槽に流れ込み、周囲から熱エネルギーを引き込み、予め定められた方法で測定される皮膚表層の冷却を行う吸熱反応が開始される。
【0009】
化学反応に基づく熱交換用温度制御装置である温度制御用装置およびその利用は、独国特許出願公開第102017211671号明細書で開示されている。開示された装置は、部分的に粒状の尿素で満たされた容器と変形可能な容器壁を有し、そこに組み込まれた水で満たされた第2容器を使用する。冷却のため、水は第2容器から第1容器へ送り出され尿素と反応し、技術手段である熱的結合に利用可能な正の反応エンタルピーがもたらされる。
【0010】
本発明の目的は、熱交換装置のための冷却装置を構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱交換装置のため、好適には、体外血液回路に搬送される血液の温度制御を目的とする酸素供給器(人工肺)に一体化されている熱交換装置のための冷却装置であって、液体を貯留する貯留槽と、反応物を含み、前記液体とともに吸熱反応を開始させることが可能な反応槽と、前記貯留槽と前記反応槽との間に流体アクセスを形成する機能手段と、少なくとも部分的に前記反応槽内に延在し、前記熱交換装置のホースシステムにそれぞれが液密に接続可能または接続されている導入管および導出管を有し、前記熱交換装置の前記ホースシステムとともに、少なくとも流体回路の一部を形成する流体導管とを備え、手動で可搬して使用可能であるためにできるだけ小型、軽量および自立的に作動する。冷却装置は、使い捨て製品および/またはいわゆる使い捨て物品として、できるだけ簡易でかつ費用対効果が高くなるように実装が可能であり、少なくともモジュール方式で構成されているサブコンポーネントの形成を可能にするように設計される。できるだけ強力な冷却および/または加熱能力を開始させるために、この装置から放出できる熱および/または冷熱の量は最短時間で供給されるように設計される。
【0012】
本発明の基礎を成す本目的の解決手段は請求項1に規定されている。冷却装置を有利に形成する機能は、解決手段における従属請求項の主題を成し、かつ、特に図示する代表的な実施形態に照らして以下の説明から導くことができる。
【0013】
請求項1の前提部分の特徴に係る解決手段によれば、冷却装置には、オーバーフロー排水口を有する膨張タンクが設けられ、その内部へ貯留槽からの液体が貯留槽と反応槽との間に流体アクセスが形成された後に流れ込むことを特徴とする。この流体アクセスは貯留槽を局所的に穿孔および/または開口可能な機能手段により形成される。オーバーフロー排水口は反応槽に流体接続部を構成し、それを通じて、貯留された液体の一部、好適には大部分が、好適には粒状の尿素である反応物との吸熱反応を開始させるために反応槽の中に入る。流体導管は貯留槽からの貯留された液体の残余分が入る膨張タンクに流体的に接続される。貯留された液体の残余分とは、膨張タンクの保持能力に相関したオーバーフロー排水口の配置形状のために、反応槽に流れ込まない液体の量であるとして理解される。逆止弁および/または帰還流弁は、オーバーフロー排水口を通過した液体が反応槽から膨張タンクに逆流するのを防ぐために、好適にはオーバーフロー排水口の流体接続部に沿って配置されている。さらに、反応槽の外部に位置する流体ポンプは、反応槽内を少なくとも部分的に通過する流体導管に沿って配置され、したがって、膨張タンクからの液体は、少なくとも部分的に反応槽内に延在する流体導管の中へ引き込まれる。
【0014】
少なくとも部分的に反応槽内に延在する流体導管は、また、反応槽を外側に区画する反応槽の壁を液密に延出し、以下、導出管と称する可撓性のホース導管として構成されている流体導管部を形成する。反応槽内部に関わる媒体に考え得る最良の熱伝導を行うため、内部へ延在する流体導管は少なくとも部分的に金属製であり、好適にはアルミニウム製である。流体導管および反応槽の内部に存在する液体の中で熱伝導の接触面をできるだけ多く確保するために、反応槽の内部にある流体導管の導管路はできるだけ長くなるよう設定される。この目標を達成するために、反応槽内部に延在する流体導管は、好適には少なくとも部分的に螺旋巻きまたは螺旋状になるように構成されている。
【0015】
流体ポンプは反応槽の外部に通じる導出管に沿って配置され、好適にはペリスタルティックポンプとして構成されている。流体導管に膨張タンク内の液体が引き込まれるように、ホース導管に外から蠕動圧力を加えて流体導管内に流体を循環させる。また、流体ポンプは、反応槽の外部に通じる流体導管部に沿って、螺旋巻きまたは螺旋状に構成されている上述の流体導管部の上流に配置されている。
【0016】
フィルタ部は、好適にはバクテリアフィルタとして、反応槽の外部に通じる導出管に沿って任意に備え付けられる。これにより、酸素供給器(人工肺)の熱交換装置にレジオネラ等の細菌による雑菌の混入が回避される。
【0017】
流体導管の導出管は、また、ホースシステムの注入口に、好適には解放可能な流体密封継手を介して接続され、酸素供給器(人工肺)内に一体化されている熱交換装置に熱的に接続されている。
【0018】
熱交換装置に熱的に結合されるホースシステムの流体の排出口は、好適には解放可能な流体密封継手を介して、膨張タンクに供給する流体導管の導入管に接続されている。このように、膨張タンク、流体導管および熱交換装置のホースシステムも同様に自己完結型の流体回路を形成する。熱交換装置の熱伝達液として作用するこの液体はそれに沿って循環する。具体的には、熱伝達液として働く液体部分は、以下にさらに詳細を述べる貯留槽内の貯留された液体から生じ、機能手段によりそれに相当する局所的な穿孔および/または開口が貯留槽になされた後、膨張タンクに流れ込む。
【0019】
膨張タンク内の受容容積が限られ、貯留槽の保持能力よりも小容量なので、液体の大部分が流体接続部に沿ったオーバーフロー排水口を介し、好適には粒状の尿素としてある反応物が貯留されている反応槽に流れ込む。なお、これに代わる反応物も、また、液体、好適には水とともに、周囲から熱エネルギーを吸収し、吸熱化学反応を開始させるものとして適している。
【0020】
貯留槽内に貯留される液体は、その量にして少なくとも70%がオーバーフロー排水口および流体接続部を介して反応槽に流れ出るようにして、一方、残余分の液体は膨張タンク内に保持され、上述の通り、解決手段によって構成された冷却装置に流体的に接続される熱交換装置の熱伝達液として作用する。膨張タンクからおよび/またはその外部へ流体接続部を介して反応槽内に流入する液体の量は、特に、膨張タンク内に突出する流体接続部の導管の高さにより、事前に設定した配分にすることが可能である。
【0021】
通気開口部が無ければ反応槽内で発生すると考えられる圧力上昇に起因し、反応槽の充填および/または膨張タンクからの液体が流体接続部を介して反応槽に放出されるプロセスが妨げられないように、膨張タンクの近傍の上側領域に少なくとも1つの通気開口部が反応槽内の近傍に設けられる。この通気開口部は、好適には疎水性フィルタインサートを有し、それを通じての冷却装置に傾斜または移動に起因する未制御での液体の漏洩を防ぐことができる。
【0022】
攪拌器は、また、液体と粒状反応物間の化学吸熱反応を促進および均質化するために反応槽内に配置されている。この攪拌器は、機械的なインターフェース、たとえば反応槽の外部に配置されている歯車伝動装置を介して駆動モータで駆動可能である。とりわけ、膨張タンク内にある液体は汚染していると考えられることから、反応槽から膨張タンクへの液体部分が逆送しないことを確実にするように、逆止弁が流体接続部に沿って配置されている。
【0023】
解決手段によって構成された冷却装置をできるだけ簡易にかつ誤りなく取り扱うために、貯留槽は、好適には液体を含有する袋として構成されている。機械的に保護するため、液体を含む袋は、また、第1筐体内に配置され、少なくとも膨張タンクを囲む第2筐体の上方に垂直に配置されている。反応槽を含む第3筐体は、膨張タンクを囲む第2筐体の下方に垂直に配置されている。任意選択ではあるが、第2および第3筐体は一体的に構成してもよい。スペーサーは、さらに第1と第2筐体との間に配置されている。このスペーサーにより、第1筐体に含有される貯留槽と、好適には膨張タンクにまたはその内部に固定的に備え付けられる機能手段との間には、所定の垂直方向の距離が確保される。
【0024】
機能手段は鋭利なエッジを有する物体として構成され、好適には貯留槽の下方に垂直に配置されている。
【0025】
スペーサーは、膨張タンクに対して垂直方向へ貯留槽から垂直に離間され、貯留槽と鋭利なエッジを有する機能手段との間の直接的な接触を防ぎ、第1および第2筐体の間に、好適には、スペーサーを積載アセンブリから手で引き出すこと等により側方に分離可能となるように取り付けられている。スペーサーを除去した後、貯留槽は、その重みによる力および重力を受けて垂直に落下し、鋭利なエッジを有する機能手段に接触する。これにより、貯留槽は機械的および局所的に穿孔および/または開口される。このため、貯留槽に貯留された液体は膨張タンクに全体的に供給される。貯留槽が垂直に降下および/または落下すると同時に、それに連動して膨張タンクおよび反応槽が充填され、反応槽内の攪拌器を作動させるために流体ポンプおよび/または駆動モータが動作設定されている。
【0026】
貯留槽を囲む第1筐体およびその下方に垂直に配置されている第2筐体は、垂直かつ直接的に面している互いの側方を基準にして構成されている。スペーサーを除去した後、機械的に定められた方法で、たとえば定置型の機械的な接合部が形成される周辺を舌溝接続で接続して、双方の筐体を互いに摺動させる。
【0027】
解決手段による冷却装置は、極めて短い時間内に、強力な冷却能力を急速かつ効率的にもたらす役目を果たし、流体ポンプおよび駆動モータを作動させる他にさらなる電力の供給が不要になる。要求されるエネルギーが限られているため、必要な電気エネルギーはバッテリーとして供給できる。
【0028】
解決手段における冷却装置の好適な実施形態は、モジュール式アセンブリ構造を提供する。このため、流体ポンプおよび駆動モータに加え、それらに必須の制御装置および電気エネルギー供給源等の電気部品は、モジュール式アセンブリ構成の単一の筐体に収容される。貯留槽を含む第1筐体、スペーサー、膨張タンクを備える第2筐体および反応槽を備える第3筐体は、それぞれモジュール式ユニットとして構成され、互いの上端に垂直に積み上げられ、使い捨て物品として使用した後、廃棄することができる。好適には、少なくとも貯留槽および反応槽が、たとえば強く圧縮されたポリスチレンであり、その材料はリサイクル可能であるプラスチックをベースとする軽量包装材料から製造されることが有利である。液密な反応槽を実現するために、液体と接触する反応槽の内壁には液密性の被覆が施されている。さらに、コーティング材料として、生成された液体反応体の混合液およびそれから生成される化学物質製品に対して化学的に不活性であるものを選択してもよい。
【0029】
環境持続可能性および廃棄処分に配慮する目的でさらに有利であるのは、反応槽内に結合剤が供されることであり、この結合剤は、液体および/または生成された液体反応体の混合液と作用する際に、ゲルの形成過程を引き起こす。これにより、槽内部に発生したゲル状の塊はその廃棄処分に高額な費用を必要としないことから、冷却装置を使用後の反応槽は家庭系一般廃棄物として廃棄することができる。好適には、結合剤との化学反応は、液体および反応物間の吸熱反応に対して時間遅れをもって発生する設計とされているため、液体と反応物との間で確実に化学反応が完了する。この目標を達成するために有利なのは、結合剤が水溶性物質で包まれて反応槽の内部に貯えられること、または、反応槽に備えるさらなる機構を介して反応槽の内部に時間差をおいて供給されることである。液体が水である場合、好適には結合剤はキサンタンが適切である。
【0030】
原則として、冷却装置は、熱交換装置といかなる用途においても流体的に接続し併用することができる。用途のほんの数例を挙げるとすれば、冷却槽または冷却バレルであり、熱交換装置は冷却表層または冷却マットであることが考えられる。冷却装置は定置型または可搬型の冷却システムに一体化されている熱交換装置における冷熱供給源として適している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下に、本発明について、一般的概念を限定することなく、図に照らして実施の形態例を使用しながら例示として説明する。
【
図1】解決手段における酸素供給器(人工肺)に一体化されている熱交換装置の温度制御に構成された冷却装置の冷却機能作動前の状態における概略図である。
【
図2】冷却機能の作動後の冷却装置の概略図である。
【
図3】解決手段における冷却装置の他の実施例である。
【0032】
本発明の実施方法及び産業上の利用可能性
【0033】
図1は、好適には酸素供給器(人工肺)Oの一部である熱交換装置Wを作動させるために、冷却された熱伝達液を提供する解決手段によって構成された冷却装置Kの概略図を示している。
【0034】
冷却装置Kは、実質的に4つのモジュールM1からM4を有する。これらのうち、少なくともモジュールM1からM3は、モジュール方式の原理に従い、上下に垂直に取り付け可能である。モジュールM1は、好適には水である液体用の貯留槽1を有する。好適には、貯留槽1はプラスチック袋またはプラスチックキャニスタから構成され、水で満たされ、少なくとも部分的に第1筐体2に囲まれ、これにより、保護されるとともに、その下側に配置されているモジュールM2と機械的に結合される。
【0035】
第2モジュールM2は、第1モジュールM1の下方に垂直に配置され、膨張タンク3を備え、鋭いエッジに垂直上向きに先細りする物体、たとえば、ニードルやピンなどである機能手段4が固定的に配置されている。膨張タンク3は第2筐体5により囲まれる。オーバーフロー排水口6は、第3筐体9により囲まれる第3モジュールM3の反応槽8へ、垂直に上方から供給する流体接続部7を有し、垂直方向に下方から膨張タンク3の内部へ突出している。流体接続部7は、その両側が開いており、反応槽8から膨張タンク3への液体の侵入を防ぐ逆止弁10を有する導管として構成されている。粒状である反応物11は、好適には粒状の尿素から構成され、反応槽8に貯留される。
【0036】
さらに、流体導管12は膨張タンク3の底領域に吐出し、流体導管は反応槽11のさらに内部に延在し、反応槽8内にできるだけ多くの流体導管面を形成するために、好適には、コイル状導管13を形成する。流体導管12は液密に第3筐体9を通過して外側に導かれ、冷却装置Kの導出管14としても機能する。流体導管12は、反応槽9の内部に延在し、とりわけ、そこでコイル状導管13として配置され、非常に効率的に熱伝導を行う材料、好適には金属から製造されている。一方、導出管14における流体導管は、熱伝導性および弾力性が低い材料、たとえばプラスチックから構成されている。
【0037】
フィルタ部15は、好適にはバクテリアフィルタであり、導出管14に沿って挿入されている。流体ポンプ16は、好適にはペリスタルティックポンプ(蠕動ポンプ)であり、導出管14に沿ってフィルタ部15の下流に配置されている。流体ポンプ16の下流では、解放可能な流体密封継手17が熱交換装置Wに付属するホースシステム18を液密に接続している。
【0038】
同様に、ホースシステム18は解放可能な流体密封継手17’により流体導管に接続され、冷却装置Kの膨張タンク3の内部への導入管19として機能する。
【0039】
第3モジュールM3は、攪拌器20をも有し、解放可能な歯車装置21を介して駆動モータ22に接続される。駆動モータ22、流体ポンプ16および電子制御部23は、駆動モータ22および流体ポンプ15を作動させる電気エネルギー供給源24と組み合わされ、図示しない第4筐体で囲まれた第4モジュールM4を形成する。
【0040】
第1および第2モジュールM1、M2は、スペーサー25によって垂直に離間されている。このため、機能手段4は、上方に先細りしている物体であり、第1モジュールM1の内部に収容されている貯留槽1とは接触しない。スペーサー25は、第1および第2モジュールM1、M2の間に摺動可能に取り付けられ、図示しなしが、未制御での横滑りに対抗して、好適にはラッチ機構を用いて固定されている。
【0041】
冷却装置Kを作動させるためには、スペーサー25が垂直方向のモジュールアセンブリM1、M2の側方へ、たとえば手動で側方へ引き出すことにより取り外しが可能であることが必要である。矢印Pによる図示を参照されたい。
【0042】
図2は、スペーサー25がモジュール型の積層アセンブリから側方へ取り外された後の状態を示す。スペーサー25がなくなった結果、貯留槽1は、第1筐体2とともに垂直に落下し、これにより上向きに先細りとなっている機能手段4が局所的に貯留槽1を穿孔する。第1モジュールM1を特定の方法で確実に第2モジュールM2の上に落下および結合させるために、垂直に対向するそれぞれの側方で接する第1および第2筐体2、5は、側方に周囲接合外形Fを有する。
【0043】
機械的に開始される貯留槽1の穿孔の結果、貯留槽1の全ての液体内容物が膨張タンク3に流入する。貯留槽1に貯留された液体の量の約80%は、オーバーフロー排水口6および流体接続部7を介して反応槽8へ流入し、反応物11との吸熱化学反応を開始する。これにより、反応槽8内において冷却が発生する。液体の残余分26は、膨張タンク3内に残留し、熱交換装置Wを作動させる熱伝達液として作用する。スペーサー25が取り除かれ、その結果としての重力駆動による貯留槽1の穿孔と同時に、流体ポンプ16および歯車装置21を介して攪拌器20を駆動する駆動モータ22の双方は、電子制御部23によって作動する。吸込ポンプとして作動する流体ポンプ16により、残余分26である膨張タンク3の内部にある液体は、化学反応領域8の内部における冷却により冷却された流体導管12を通過して吸引される。吸熱反応の経路において、流体導管12の内部で搬送される液体から液体/反応物混合冷媒への熱伝導の最適化に必要なのは、熱伝導接触面が反応槽8の内部に存在する流体導管12と液体反応混合体との間においてできる限り大きくなるようにすることである。この目標を達成するために、反応槽8の内部にある流体導管12の導管路は、少なくとも部分的に螺旋巻き、または螺旋状となるよう構成されている。
【0044】
冷却された液体は、導出管14を介して、フィルタ部15を通過して熱交換装置Wに圧送される。熱交換装置Wから出た後、流出した熱伝達液は導入管19を経由して膨張タンク3に戻り、そこからこの液体の冷却のために流体導管12を介して吸引され、反応槽8の領域に戻る。
【0045】
有利には、第1、第2および第3モジュールM1、M2、M3は使い捨て物品として構成されている一方で、電気部品を備える第4モジュールM4は所望の回数だけ繰り返して再使用可能である。フィルタ部15は、好適には第3モジュールM3の一体構成要素であり、それゆえ、また、使い捨て物品の一部である。重量およびコストの理由から、モジュールM1、M2およびM3はプラスチックをベースとする軽量包装材料から作られ、この材料はまたリサイクルに出すことができる。さらに、膨張タンク3および反応槽8、すなわち、モジュール2および3は、内壁に液密性被覆が施されている。
【0046】
図3は、
図2に示す図と同様に、さらに好適な実施形態である冷却装置の構成として、モジュールM1、M2およびM3が直接的に垂直方向へ位置付けられている状態を示す。これらすべての構成要素は、すでに説明済みの構成要素と同一であり、すでに示した参照番号が与えられている。
【0047】
図2の図とは対照的に、流体導管12は、膨張タンク3との流体的な接続を外部、すなわち反応槽8の外部へ直接的に下流方向に導いている。そこでは、流体ポンプ16が流体導管12に沿って組み込まれ、液体が膨張タンク3から流体導管12へ吸い込まれる。反応槽8の外部に配置されている流体ポンプ16の下流では、流体導管12が再び反応槽8内に導かれ、そこでできるだけ多くの熱伝導接触面を形成して流体導管12の内部に搬送される液体の効率的な冷却を確保するために、流体導管12は螺旋状である。
【0048】
フィルタ部15は、反応槽8の外側に通じている導出管14に沿って配置されている。このフィルタ部は、バクテリアフィルタ、たとえばレジオネラフィルタとして、冷却された液体が無菌状態であることを確保する。このため、当該方法において、酸素供給器(人工肺)内の熱交換装置は、汚染されない。
【0049】
さらに、反応槽8の上側領域には、疎水性の濾過器を伴う通気装置27が設けられ、反応槽8を完全かつ急速に充填し、外部に液体が未制御で漏れることを防ぐ。
【0050】
冷却過程が完了した後、反応槽8に貯留される結合剤28、好適には、キサンタンにより液体反応混合体のゲル化が図られるため、モジュール1、2および3を、簡易に、たとえば家庭系一般廃棄物として廃棄処分が可能である。この目標を達成するために、結合剤28は、液体内で特定の時間滞留した後、完全に溶解する水溶性物質で包まれており、結合剤は反応槽内に放出される。
【符号の説明】
【0051】
1:貯留槽
2:第1筐体
3:膨張タンク
4:機能手段
5:第2筐体
6:オーバーフロー排水口
7:流体接続部
8:反応槽
9:第3筐体
10:逆止弁
11:反応物
12:流体導管
13:コイル状導管
14 導出管
15:フィルタ部
16:流体ポンプ
17、17':解放可能な流体密封継手
18:ホースシステム
19:導入管
20:攪拌器
21:歯車装置
22:駆動モータ
23:電気制御部
24:電気エネルギー供給源、バッテリー
25:スペーサー
26:液体の残余分
27:通気装置
28:結合剤
W:熱交換装置
O:酸素供給器(人工肺)
M1、M2、M3、M4:モジュール
P:矢印の方向
K:冷却装置
F:接合外形
【国際調査報告】