(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(54)【発明の名称】リチウム電池およびその中の電解質添加剤としてのゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220415BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220415BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220415BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220415BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220415BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220415BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20220415BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220415BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220415BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220415BHJP
H01M 6/16 20060101ALI20220415BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/0565
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 B
H01M6/16 A
H01M6/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553796
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(85)【翻訳文提出日】2021-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2019058024
(87)【国際公開番号】W WO2020200399
(87)【国際公開日】2020-10-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】クレイン, スフェン
(72)【発明者】
【氏名】シュミーゲル, ジャン-パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ジア, ハオ
(72)【発明者】
【氏名】プラック, トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ライター, ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】テルボルク, リディア
(72)【発明者】
【氏名】ファン, クァン
【テーマコード(参考)】
5H024
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H024FF11
5H029AJ01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM01
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM06
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ10
5H050AA01
5H050BA06
5H050BA16
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA10
(57)【要約】
本発明はアノード活物質を含むアノードと、リチウムニッケルコバルトマンガンコバルト酸化物(NCM)を含むカソード活物質を含むカソードと、アノードおよびカソードを分離する電解質とを含み、電解質が溶媒または溶媒混合物およびヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、電解質がゲルマニウム有機ベース電解質添加剤をさらに含むリチウム電池に関する。
さらに、本発明は、可逆容量、クーロン効率、サイクル安定性およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの特性を高めるための、リチウム電池におけるゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-活性アノード材料を含むアノード
-リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNi
xCo
yMn
1-x-yO
2)(NCM)を含み、xおよびyの各々がゼロを含まず、x+yが1より小さい正極活物質を含む正極
-アノードとカソードを分離するセパレータ、および電解質を含み、
電解質は溶媒または溶媒混合物とヘキサフルオロリン酸リチウムとを含み、電解質は、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤をさらに含むことを特徴とする、
リチウム電池。
【請求項2】
ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤が式1の化合物である、
請求項1に記載のリチウム電池
【化21】
式中、XはGeであり、Y
1およびY
2は独立して(CH
2)
mであり、mは0、1または2であり、Z
1およびZ
2は独立して、ニトリル、置換または非置換のC6-~C14-アリール、およびO、N、およびSから選択されるヘテロ原子を有する置換または非置換のC5-C12ヘテロアリールからなる群から選択され、任意の置換基はC1~C9アルキル、およびC1~C9アルコキシルからなる群から選択される。
【請求項3】
ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤が次の式2~19からなる群から選択され、式中、XはGeであり、RはC1~C9アルキル、またはC1~C9アルコキシルである、請求項1または2に記載のリチウム電池:
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【請求項4】
前記ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤が、式2の3,3’-((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンニトリル(DGDP)である、請求項1~3のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【化40】
【請求項5】
前記正極活物質が、0.3≦x<1を含むNCMからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項6】
溶媒または溶媒混合物中にヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解質の総量に関して、0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.2~1重量%、特に0.25~0.75重量%のゲルマニウム有機ベース電解質添加剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項7】
ヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度が、0.1M~2M、好ましくは0.5M~1.5M、より好ましくは0.7M~1.2Mの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項8】
前記溶媒または溶媒混合物が、有機溶媒または溶媒混合物、イオン液体および/またはポリマーマトリックスから選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項9】
有機溶媒または溶媒混合物が、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ジメトキシエタン、1,3-ジオキサラン、酢酸メチルおよび/またはそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよび/またはそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項10】
有機溶媒混合物が、好ましくはエチレンカーボネートと少なくとも1つのさらなる溶媒、好ましくはエチルメチルカーボネートとの混合物を、好ましくは重量部で>1:99~<99:1、より好ましくは>1:9~<9:1、特に≧3:7~≦1:1の割合で含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項11】
前記電解質が、クロロエチレンカーボネート、フルオレチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、亜硫酸プロパン、亜硫酸塩、好ましくは亜硫酸ジメチルおよび亜硫酸プロピレン、硫酸塩、F、ClまたはBrで任意に置換されたブチロラクトン、フェニルエチレンカーボネート、ビニルアセテートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項12】
前記活アノード材料が、炭素、グラファイト、ケイ素と炭素/グラファイトとの混合物、ケイ素、スズ、リチウム金属酸化物、リチウムと合金を形成する材料、それらの複合混合物、好ましくは炭素、グラファイト、ケイ素と炭素/グラファイトとの混合物、およびそれらの複合混合物からなる群から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウム電池。
【請求項13】
可逆容量、クーロン効率(CEff)、サイクル安定性、容量保持性およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの特性を高めるための、請求項1~11のいずれか一項に記載のリチウム電池における添加剤としてのゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池およびその中の電解質添加剤としてのゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
概念的には、電解質中の電池の動作中に正味の化学変化があってはならず、すべてのファラデープロセスは電極内で実行されなければならない。したがって、電解質は電池中の不活性成分とみなすことができ、したがって、カソード表面およびアノード表面の両方に対して安定でなければならない。電解質のこの電気化学的安定性は通常、動力学的(不動態化)で実現され、実際のデバイスでは熱力学的な方法ではないが、充電式バッテリーシステムでは陰極および陽極の強い酸化および還元性のため、たとえこれらが果たすことが困難であるにしても、特に重要である。
【0003】
したがって、リチウムイオン電池用の電解質に使用される構成要素、特に溶媒の基本的な前提条件はそれらが無水であるか、またはより正確には非プロトン性であること、すなわち、溶媒は、リチウムおよび/または他の電池構成要素と反応することができる活性プロトンを含有してはならないことである。さらに、溶媒は、使用温度範囲において液体状態であるべきである。
【0004】
リチウムイオン電池用の炭酸塩中のヘキサフルオロリン酸リチウムをベースとする従来の電解質の欠点は特に、Li/Li+に対する4.5Vの低い酸化安定性である。
電解質はこの電位までのみ安定であるが、この範囲外では電解質の酸化分解および関連するカソード材料の劣化が生じる。
【0005】
「NMC」または「NCM」とも呼ばれるリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(「NCM」は以下で使用されるのであろう)は、高エネルギー密度または高出力密度を有するリチウムイオン電池のための1つの好ましい正極活物質である。しかしながら、この場合も、電解質の分解及びカソード材料の劣化は4.4Vで起こる。その結果、サイクルの安定性が低くなり、したがってバッテリーの寿命が長くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された安定性を有するリチウム電池を提供することである。
【0007】
この目的は本発明によれば、第1の態様において、請求項1に記載のリチウム電池によって達成され、第2の態様において、請求項10に記載の第1の態様に記載のリチウム電池におけるゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用によって達成される。好ましい実施形態は、従属請求項に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の定義は適用可能であれば、本発明のすべての態様に適用される。
【0009】
リチウム電池
本発明によれば、「リチウム電池」、「リチウムイオン電池」、「充電式リチウムイオン電池」、「リチウムイオン二次電池」という用語は同義語として使用される。「リチウムイオン蓄電池」および「リチウムイオン電池」、ならびにすべてのリチウムまたは合金電池という用語もまた含む。したがって、「リチウム電池」という用語は先行技術で使用される前述の用語の総称として使用される。充電式電池(二次電池)および非充電式電池(一次電池)の両方を意味する。特に、本発明の目的のための「電池」は単一または単独の「電気化学セル」も含む。好ましくは2つ以上のこのような電気化学セルが「電池」において、直列(すなわち、連続的に)または並列のいずれかで一緒に接続される。
【0010】
電極
本発明による電気化学セルは少なくとも2つの電極、すなわち、正極(カソード)および負極(アノード)を有する。
【0011】
両方の電極は、それぞれ少なくとも1つの活物質を有する。
これは、リチウムイオンを吸収または放出し、同時に電子を吸収または放出することができる。
【0012】
「正極」という用語はバッテリが例えば電気モータに負荷に接続されている場合に、電子を受け取ることができる電極を意味する。これは、この命名法におけるカソードである。
【0013】
「負極」という用語は、動作中に電子を放出することができる電極を意味する。これは、この命名法におけるアノードを表す。
【0014】
電極は無機材料または無機化合物または物質を含み、これらは、電極のために、または電極の中に、または電極上に、または電極として使用することができる。
これらの化合物または物質はリチウムイオン電池の作動条件下で、リチウムイオンを受容(挿入)し、またそれらの化学的性質のためにリチウムイオンを放出することができる。
【0015】
本明細書ではこのような材料を「正極活物質」または「負極活物質」または一般に「活物質」と呼び、電気化学セルまたは電池に使用する場合、この活物質は好ましくは支持体または担体、好ましくは金属支持体、好ましくは正極用のアルミニウムまたは負極用の銅に塗布される。この支持体が「集電体」または集電体フィルムとも呼ばれる。
【0016】
カソード(正極)
本発明によれば、正極活物質または正極活物質は一般式(LiNixCoyMn1-x-yO2)を有するニッケルマンガンコバルト酸化物(NCM)を含み、xおよびyの各々がゼロを含まず、x+yが1未満であることが好ましい。
各遷移金属の含有量を変えることにより、例えば、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM-111)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM-523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM-622)、LiNi0.7Co0.15Mn0.15O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM-811)、LiNi0.85Co0.075Mn0.075O2及びこれらの混合物からなる群から選択されるLiNixCoyMn1-x-yO2を使用することができる。
【0017】
活物質はまた、上記の正極活物質と、例えば、以下の正極活物質のうちの1つの第2またはそれ以上との混合物を含有する可能性がある。
【0018】
より具体的には、正極または正極活物質の第2活物質としては従来公知のものを全て用いることができる。
これらには、例えば、LiCoO2、NCA、高エネルギーNCMまたはHE―NCM、リン酸リチウム鉄(LFP)、Li-マンガンスピネル(LiMn2O4)、Li-マンガンニッケル酸化物(LMNO)またはリチウムリッチ遷移金属酸化物(Li2MnO3)x(LiMO2)1-x、リチウム遷移金属酸化物(以下、「リチウム金属酸化物」ともいう)、層状酸化物、スピネル、かんらん石化合物、ケイ酸塩化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料が例えば、BoXuら「先端的リチウムイオン電池のカソード材料研究における最近の進展」、Materials Science and Engineering R 73(2012)51-65に記載されている。
別の好ましいカソード材料は、HE-NCMである。
層状酸化物およびHE-NCMもまた、米国特許第6,677,082号明細書、米国特許第6,680,143号明細書およびアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)の米国特許第7,205,072号明細書に記載されている。
【0019】
かんらん石化合物の例は、X = Mn、Fe、CoもしくはNi、またはそれらの組み合わせを有する合計式LiXPO4のリン酸リチウムである。
【0020】
リチウム金属酸化物、スピネル化合物および層状酸化物の例は、マンガン酸リチウム、好ましくはLiMn2O4、コバルト酸リチウム、好ましくはLiCoO2、ニッケル酸リチウム、好ましくはLiNiO2、またはこれらの酸化物の2つ以上の混合物またはそれらの混合酸化物である。
【0021】
導電率を増加させるために、さらなる化合物、好ましくは炭素含有化合物、または炭素が、好ましくは導電性カーボンブラックまたはグラファイトの形態で活物質中に存在してもよい。カーボンは、カーボンナノチューブの形態で導入することもできる。
このような添加剤は、好ましくは支持体に適用される正極の質量に対して0.1~10重量%、好ましくは1~8重量%の量で適用される。
【0022】
アノード(負極)
負極活物質または負極活物質としては、従来公知の材料を用いることができる。したがって、本発明によれば、負極に関して制限はない。特に、異なる活性アノード材料の混合物を使用することも可能である。
【0023】
活性アノード材料はリチウムチタン酸化物などのリチウム金属酸化物、金属酸化物(例えば、Fe2O3、ZnO、ZnFe2O4)、グラファイト(合成グラファイト、天然グラファイト)、グラフェンなどの炭素質材料、メソカーボン、ドープ炭素、硬質炭素、軟質炭素、フラーレン、ケイ素と炭素の混合物、ケイ素、リチウム合金、金属リチウム、およびそれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
負極材のための電極材料として、五酸化ニオブ、スズ合金、二酸化チタン、二酸化スズ、シリコンまたはシリコン酸化物が使用できる。
【0024】
活物質アノード材料は、リチウムと合金化可能な材料であってもよい。これは、リチウム合金、またはこれに対する非リチウム化もしくは部分的にリチウム化された前駆体であり得、リチウム合金形成をもたらす。好ましいリチウム合金材料は、ケイ素系、スズ系およびアンチモン系合金からなる群から選択されるリチウム合金である。このような合金は例えば、レビュー論文W.-J.Zhang, Journal of Power Sources 196(2011)13-24に記載されている。
【0025】
電極結合剤
正極または負極に使用される材料、例えば活物質は、これらの材料を電極上または集電体上に保持する1つ以上のバインダーによって一緒に保持される。
【0026】
バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサ-フルオロ-プロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、および(ナトリウム-)カルボキシメチルセルロース(CMC)、ならびにそれらの混合物およびコポリマーからなる群から選択されてもよい。
スチレン-ブタジエンゴムおよび場合によりカルボキシメチルセルロースおよび/またはPVdFのような他のバインダーは、好ましくは正または負極に使用される活物質の総量に基づいて0.5~8重量%の量で存在する。
【0027】
セパレータ
本発明のリチウム電池は、正極と負極とを隔てる材料を有することが好ましい。この材料はリチウムイオンに対して透過性であり、すなわち、リチウムイオンを放出するが、電子に対しては非伝導性である。リチウムイオン電池に使用されるこのような材料は、セパレータとも呼ばれる。
【0028】
本発明の意味の範囲内の好ましい実施形態では、ポリマーがセパレータとして使用される。
一実施形態では、ポリマーがセルロース、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレート;ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン;ポリアクリロニトリル;ポリフッ化ビニリデン;ポリビニリデンヘキサフルオロプロピレン;ポリエーテルイミド;ポリイミド、ポリエーテル;ポリエーテルケトンまたはそれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
セパレータは、リチウムイオンに対して透過性であるように多孔性を有する。本発明の意味の範囲内の好ましい実施形態では、セパレータが少なくとも1つのポリマーからなる。
【0030】
電解質
用語「電解質」は好ましくはリチウム伝導性塩が溶解された液体を意味し、好ましくは液体が伝導性塩のための溶媒であり、Li伝導性塩は好ましくは電解質溶液として存在する。
本発明によれば、LiPF6は、リチウム導電性塩として使用される。LiBF4などの第2またはそれ以上の導電性塩を使用することが可能である。
【0031】
以下、本発明の2つの態様についてより詳細に説明する。
【0032】
第1の態様では、本発明が負極活物質を含む負極と、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物LiNixMnyCozO2(NCM)を含む正極活物質を含む正極を含み、ここで、0<x<1、0<y<1、0<z<1、およびx+y+z=1(代替的に、xおよびyのそれぞれがゼロを含まず、およびx+yが1より小さい一般式(LiNixCoyMn1-x―yO2)を使用することができる)、セパレータセパレータアノードおよびカソード、ならびに電解質を含み、電解質は溶媒または溶媒混合物およびリチウムヘキサフルオロホスフェートを含み、電解質はゲルマニウムオルガニル系電解質添加剤をさらに含む、リチウム電池に関する。
【0033】
驚くべきことに、活性カソード材料としてNCMおよびゲルマニウム有機ベース電解質添加剤を含む本発明によるリチウム電池は、添加剤を含まない電解質と比較して、より高いサイクル安定性および耐用年数を示すことが見出された。また、正極材料の劣化が抑制される。最後に、より低い自己放電が生じる。
【0034】
理論に束縛されるものではないが、電解質中のゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の存在は第1および進行中のサイクルにおける過電圧によって表される、カソードのリチウム化/脱リチウム化電位の増加をもたらすと考えられる。
4.55Vまでサイクルすると、0.05重量%のゲルマニウム有機ベース電解質添加剤を含有する電池は、普通の参照電解質と比較して優れたサイクル安定性を示す。
【0035】
したがって、ゲルマニウム有機基電解質添加剤は、NCM活性カソード材料をベースとする市販のリチウムイオン電池用のLiPF6含有電解質のための添加剤として有利に適している。
【0036】
好ましくは、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤が式1の化合物である。
【化1】
式中、XはGeであり、Y
1およびY
2は独立して(CH
2)mであり、mは0、1または2であり、Z
1およびZ
2は独立して、ニトリル、置換または非置換のC6-~C14-アリール、およびO、N、およびSから選択されるヘテロ原子を有する置換または非置換のC5-C12ヘテロアリールからなる群から選択され、任意の置換基はC1~C9アルキル、およびC1~C9アルコキシルからなる群から選択される。
【0037】
より好ましくは、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤が、XがGeであり、RがC1~C9アルキル、またはC1~C9アルコキシルで以下の式2~19からなる群から選択される:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0038】
特に、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤は、式2の3,3‘-((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンニトリル(DGDP)である。
【化20】
【0039】
好ましくは、本発明による電解質が有機溶媒に溶解されたゲルマニウム有機系電解質添加剤を含む。
電解質は例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウムおよびゲルマニウム有機ベース添加剤を溶媒または溶媒混合物に導入し、溶解させることによって得ることができる。あるいは、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤がカソードを製造する際にカソード活物質と混合することができる。これはまた、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の電解質への溶解、およびNCM活性カソード材料上のカソード不動態化層またはカソード-電解質-中間相(CEI)の形成をもたらす。
【0040】
好ましい実施形態では、溶媒または溶媒混合物中にヘキサフルオロリン酸リチウムを含む使用される電解質の量に関して、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%、好ましくは0.2~1重量%、特に0.25~0.75重量%である。
【0041】
好ましい実施形態では、電解質中のヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は、>0.1M~<2Mの範囲、好ましくは>0.5M~<1.5Mの範囲、特に好ましくは>0.7M~<1.2Mの範囲である。特に好ましい態様において、電解質中のヘキサフルオロリン酸リチウムの濃度は1Mである。
好ましい実施形態では、電解質が有機溶媒、イオン性液体および/またはポリマーマトリックスを含む。好ましくは、電解質がヘキサフルオロリン酸リチウム、ゲルマニウム有機系電解質添加剤、および有機溶媒を含む。
ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤は、有機溶媒、特に環状および/または線状カーボネートに良好な溶解性を有することが見出された。これは、有利にはLiPF6含有液体電解質におけるゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用を可能にする。
【0042】
好ましい実施形態では、有機溶媒がエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、ジメトキシエタン、ジオキサラン、酢酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ジメチルメチルホスホネート、および/またはそれらの混合物からなる群から選択される。
好適な有機溶媒は特に、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、ならびにジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートなどの直鎖カーボネート、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
好ましくは、有機溶媒がエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい溶媒は、エチレンカーボネートである。
エチレンカーボネートはIUPAC命名法によれば、1,3-ジオキソラン-2-オンとも呼ばれる。エチレンカーボネートは市販されている。エチレンカーボネートは、沸点が高く、火炎点が高い。また、エチレンカーボネートは、良好な塩解離のために高い導電率を可能にすることが有利である。
【0044】
好ましい実施形態では、有機溶媒がエチレンカーボネートと少なくとも1つのさらなる有機溶媒との混合物を含む。
炭酸塩、特にエチレンカーボネートと、さらなるカーボネート、例えばジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよび/またはエチルメチルカーボネート、特にエチルメチルカーボネートとの二成分混合物も好ましい。
【0045】
エチレンカーボネートと少なくとも1つのさらなる有機溶媒、好ましくはエチルメチルカーボネートとの比は、好ましくは>1:99~<99:1の範囲、好ましくは>1:9~<9:1:7~≦1:1の範囲である。別段の記載がない限り、示された比率は溶媒の重量部に関連する。-25℃~+60℃の温度範囲における高い導電性は、有利にはエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの3:7の比の溶媒混合物中で達成された。
【0046】
溶媒として少なくとも1種のカーボネートを含む三元混合物も好ましい。特に好ましいのは、エチレンカーボネートと、さらなる溶媒、例えばエチルメチルカーボネートと、いわゆる固体電解質中間相(SEI)を形成するのに適した化合物との混合物である。したがって、電解質は、添加剤、特に膜形成電解質添加剤を含むこともできる。
好ましい実施形態では、電解質がクロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、硫酸プロパン、亜硫酸塩、好ましくは亜硫酸ジメチルおよび亜硫酸プロピレングリコール、硫酸塩、ブチロラクトン、フェニルエチレンカーボネート、酢酸ビニルおよびトリフルオロプロピレンカーボネートからなる群から選択される化合物を含む。
カーボネートをベースとする化合物の中で、塩素置換またはフッ素置換カーボネートが好ましく、特にフルオロエチレンカーボネート(FEC)が好ましい。
添加剤は、電池性能、例えば容量またはサイクル寿命を改善することができる。特に、フルオロエチレンカーボネートは、電池の改善された長期安定性をもたらすことができる。
【0047】
好ましくは、電解質が少なくとも1つのさらなる添加剤、特に、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、亜硫酸エチレン、硫酸エチレン、プロパンスルホン酸塩、亜硫酸塩、好ましくは亜硫酸ジメチルおよび亜硫酸プロピレン、硫酸塩、F、Cl又はBrで任意に置換されたブチロラクトン、フェニルエチレンカーボネート、ビニルアセテート、トリフルオロプロピレンカーボネートおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物を、好ましくはフルオロエチレンカーボネートで、電解質の総重量に基づいて、>0.1重量%~<10重量%、好ましくは>1重量%~<5重量%、より好ましくは>2重量%~<3重量%の範囲で含有する。
【0048】
有機溶媒は好ましくはエチレンカーボネートと、少なくとも1つのさらなる有機溶媒との混合物を含み、好ましくは、直鎖状カーボネート、特にエチルメチルカーボネート、およびフルオロエチレンカーボネートからなる群から選択される。
【0049】
したがって、フルオロエチレンカーボネートはグラファイトアノード上に保護層を形成し、電極の過剰電位を低減することができる。
イオン性液体はまた、高い熱的および電気化学的安定性を高いイオン伝導率と組み合わせるので、非常に有望な溶媒であることが証明されている。特に、これは、リチウム-2-メトキシ-1、2,2-テトラフルオロ-エタンスルホネートと共に使用するのに有利である。
好ましいイオン性液体は、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム(DMPI+)、1,2-ジエチル-3,5-ジメチルイミダゾリウム(DEDMI+)、N-アルキル-N-メチルピペリジニウム(PIPIR+)、N-アルキル-N-メチルモルホリニウム(MORPIR+)およびそれらの混合物からなる群から選択されるカチオン、およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(ペンタフルオロメタンスルホニル)イミド(BETI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、2,2,2-トリフルオロ-N(トリフルオロメタンスルホニル)アセトアミド(TSAC)、テトラフルオロボレート(BF4-)、ペンタフルオロエタントリフルオロボレート(C2F5BF3
-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6
-)、トリス(ペンタフルオロエタン)、トリフルオロホスフェート((C2F5)3PF3
-)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを含む。
好ましいN-アルキル-N-メチルピロリジニウム(PYRIR+)カチオンは、N-ブチル-N-メチルピロリジニウム(PYR14+)、N-メチル-N-プロピルピロリジニウム(PYR13+)およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
好ましいイオン性液体は、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR14TFSI)、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR13TFSI)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
さらに適切な電解質材料はポリマー電解質であり、ここで、ポリマー電解質は、ゲルポリマー電解質または固体ポリマー電解質として存在することができる。
固体ポリマー電解質は、将来のアキュムレータ世代の要求に関して良好な特性を示す。それらは溶剤を含まない構造を可能にし、それは製造が容易であり、形状が多岐にわたる。
また、電解質セパレータ電解質からなる3層構造を省略し、電極間に高分子薄膜のみを必要とするため、エネルギー密度を高めることができる。
固体電解質は一般に、電極材料に対して化学的および電気化学的に安定であり、電池から逃げない。ゲルポリマー電解質は、通常、非プロトン性溶媒およびポリマーマトリックスを含む。
【0052】
固体ポリマー電解質およびゲルポリマー電解質のための好ましいポリマーは、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニリデンフルオロプロピレン(PVdF-HFP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリホファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、アクリロニトリル、シロキサンおよびそれらの混合物からなる群から選択される官能性側鎖を含むホモおよび(ブロック)コポリマーからなる群から選択される。
【0053】
本発明によれば、正極または正極活物質のための活物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物LiNixMnyCozO2(NCM)を含むか、または好ましくはそれからなり、ここで、0<x<1、0<y<1、0<z<1、およびx+y+z=1である。また、一般式(LiNixCoyMn1-x-yO2)において、x、yが0を含まず、x+ yが1より小さいものを用いることができる。
0.3≦x<1を有するLiNixCoyMn1-x―yO2材料としては、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM―111)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM―523)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM―622)、LiNi0.7Co0.15Mn0.15O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM―811)、LiNi0.85Co0.075Mn0.075O2、およびこれらの混合物からなる群から選択される材料などが好ましい。
より好ましくは、4.3V対Li/Li+の上限カットオフ電位で180~190mAhg-1の高い比容量のため、0.5?x<1を有するNiリッチNMCであり、NCM-622およびNCM-811がさらに好ましく、NCM-811が特に好ましい。
【0054】
さらに、LiPF6を含有する電解質に2-ペンタフルオロエトキシ-1,1,2-テトラフルオロエタンスルホン酸リチウムを添加することにより、NCM-カソード活物質中のマンガンならびに他の遷移金属の不均化および溶解をさらに動力学的に抑制することができる。
【0055】
好ましい実施形態では、アノードが炭素、グラファイト、ケイ素と炭素/グラファイトの混合物、ケイ素、リチウム、リチウム金属酸化物、リチウム合金材料、およびそれらの混合物からなる群から選択される活性アノード材料を含む。黒鉛が特に好ましい。
【0056】
本発明の第2の態様では、本発明が可逆容量、クーロン効率(CEff)、サイクル安定性、容量保持、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1つの特性を強化するための、本発明の第1の態様で定義されるようなリチウム電池における添加剤としてのゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の使用を対象とする。
【0057】
本発明によるリチウムイオンバッテリはその高電圧安定性のために、電気自動車及び特に自動車のエネルギー蓄積システムのようなあらゆる高エネルギー長寿命用途における全ての使用に適している。
【0058】
本発明を説明するのに役立つ実施例および図面を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図は示す:
【
図1】参照電解質(RE)と比較して、4.30V(サイクル1~3)および4.55 V(サイクル4から)の電池電圧を使用することによる、EC / EMC 3:7重量%(LP57)中の1M LiPF
6中の0.05重量%の3,3’-(((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンジプロパンニトリル(DGBP)を有するNCM523/グラファイト電池の充電/放電サイクル安定性データ。カットオフ電圧:2.80~ 4.55 V。
【
図2】第1の充電/放電サイクルにおけるREおよびRE + 0.05重量% DGDPを有するNMC532/グラファイト細胞のカソードおよびアノード電位プロファイル。カットオフセル電圧:3.00~4.55V。
【0060】
電解質添加剤として0.05重量% DGDPを用いた場合と用いない場合の、NMC111/グラファイト電池の充電/放電サイクル性能に関する3つの電池の平均値および標準偏差を
図1に示す。
【0061】
添加剤濃度は形成プロセス中に消費され、保護SEI(固体電解質中間相)/CEI層を形成するために、溶媒または溶媒混合物中にヘキサフルオロリン酸リチウムを含む電解質の総量に関して0.05重量%に設定した。この場合、より高い濃度は必要ではなく、場合によっては、電池性能に逆効果を及ぼすことさえある。
【0062】
すでに最初の3つの形成サイクルにおいて、DGDP含有電解質を有する電池は、RE含有電池と比較してより高い放電容量を示す。しかしながら、両方とも同様の第1のCEffを示した。したがって、可逆容量は改善されるが、REにDGDPを添加することによる形成サイクル内のCEffに関して区別できる改善はない。
【0063】
次のサイクルでは0.5C(1C = 200mA g-1)の充電/放電速度で、DGDP含有電池は容量保持を強く改善することによって、REを有する電池よりも電荷が優れている。
【0064】
長期サイクル性能に関するDGDPによる改善は、80サイクル後も維持され、より高いサイクル数でさらに顕著になる。
【0065】
本発明によれば、ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤、特に3,3’-((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンニトリル(DGDP)は、高電圧で動作するLIBにおけるNCMカソードのための非常に有効なカソード電解質相互相(CEI)電解質添加剤として作用することが示された。
0.05重量%のDGDPのみを使用すると、NCM523/グラファイトLIB電池は、カーボネートベースの参照電解質と比較して、高電圧(4.55V)でのサイクルで優れた充電/放電サイクル性能を示した。容量維持を向上させることができた。
さらに、DGDPは非常に有効であり、したがって、DGDPの0.05重量%のみが既に有効であるので、NCM/グラファイト電池における適用のための費用効率のよい化合物である。
【0066】
本発明は、電気化学的特性をカスタマイズすることを可能にする置換基の変化によってアクセス可能で種々の異なるゲルマニウム有機ベース系電解質添加剤を提供する。
【実施例】
【0067】
例
実施例1:ゲルマニウム有機ベース電解質添加剤の合成
実施例1.1:43,3’-((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンニトリル(DGDP)の合成
1.)5 mmol (0.34ml)の3-ヒドロキシプロピオニトリルを50mlの乾燥THFに溶解し、-78℃に冷却し、5mmolのn-BuLi(ヘキサン中2.5Mのn-BuLi、2ml)を30分間かけてゆっくりと添加した。次いで、冷却浴を取り外し、室温でさらに2時間撹拌した。
2.)1.)へ2.5mmol(0.53ml)の二塩化ジフェニルゲルマニウムを室温でゆっくり加え、室温でさらに48時間撹拌した。
3.)溶媒を真空中で除去し、白色固体が残渣として残った。この残渣を100mlのトルエンと混合し、次いで濾過した。濾液を25mlに濃縮し、-25℃で保存すると、無色のプリズムが形成され、収量は600mgであった。
これらを真空中40℃で乾燥させた。
【0068】
ESI-MS:理論: 368.06 M
測定値:391.05M+ Na+
1H―NMR (300 MHz, CDCl3, TMS): δ = 7.72(m, 4H, Ar-H), 7.56(m, 2H, Ar-H), 7.51(dd, 4H, Ar-H), 4.02(t, 4 H, CH2), 2.63(t, 4 H, CH2).
【0069】
実施例2:電極および電解質調製
電解質調製および貯蔵ならびに電池製造は、アルゴン充填グローブボックス(H2OおよびO2含有量<0.1ppm)中で実施した。全ての示された混合比は、質量比(重量%)に基づく。
【0070】
本発明による添加電解質の調製のために、3,3’-((ジフェニルゲルマンジイル)ビス(オキシ))ジプロパンニトリル(DGDP)をこの電解質混合物に添加した。
重量%で示される添加剤(A)の割合は添加剤を含む電解質混合物全体ではなく、添加剤(A)を含む電解質(E)、すなわち、W(A)=m(A)/(m(E)+ m(A))を指す。
【0071】
電極は、MEET研究所のバッテリーラインと協力して大規模に調製した。
カソードは、93重量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM-523;CATL)、4重量%のカーボンブラック(Super C65、Imerys)および3重量%のポリ二フッ化ビニリデン(PVdF、Solef 5130、Solvay)をバインダーとして含有する。N-メチルピロリドン(NMP、ALDRICH)を分散剤として使用した。
LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2粉末を篩にかけ(75μm)、60℃で24時間、真空下で乾燥させて、凝集物を防ぎ、残留水分を除去した。
PVdFおよびNMPを気密容器に添加し、2500rpmで剪断ミキサーにより一晩ホモジナイズした。
その後、カーボンブラックおよびNCM-523を溶液に均質化し、低真空および水冷下で1.5時間混合した。
粘度を最適化した後、固形分は50%に達した。
電極ペーストを、平均質量負荷1.5mAh cm-2のアルミニウム箔(Evonik Industries)上に鋳造した。
【0072】
アノードは94.5重量%の黒鉛(FSNC-1;Shanshan Technology; D50 = 15.0±2.0μm; BET表面積=1.3±0.3m2g-1)、1.0重量%のカーボンブラック(SuperC65、Imerys)、2.25重量%のスチレンブタジエンゴム(SBR、Lipaton SB 5521、Polymer Latex GmbH)および2.25重量%のナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC、WalocelCRT 2000 PPA 12、Dow Wolff Cellulosics)を含有し、脱塩水を分散剤として使用した。粘度に基づいて、固体負荷を54%に最適化した。
電極ペーストを、2.7mAh cm-2の質量負荷で銅箔(Evonik Industries)上にコーティングした。
電極は、1.5gcm-3の密度に達するようにカレンダー加工された。
LiB電池調査のために、黒鉛アノードでのリチウム金属メッキを避けるために、NCM523カソードとアノードの間の容量比を1:1.6と設定した。
【0073】
1M LiPF6を含有するエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)(重量で3:7、ソルビオン、純度:バッテリーグレード)との混合物を、参照電解質(RE;「LP57」とも呼ばれる)として使用した。
DGDPを、アルゴン充填グローブボックス中で、重量比で所望の量(0.05%)で参照電解質に添加した。
【0074】
実施例3:電池のセットアップおよび電気化学的特性決定
全ての電気化学的調査は、20℃の気候室中で3電極スワゲロックセルを用いて行った。
リチウム金属(AlbemarleCorporation;純度:電池グレード)を参照電極(REF;直径=5mm)として使用した。
ポリプロピレン不織布(Freudenberg2190、3層)をセパレータとして使用した。
各セルは合計240μL(REFについて160μL+80μL)の電解質を含み、アルゴン充填グローブボックス中で組み立てられた。
【0075】
完全電池の長期充放電サイクルを、電池試験機Series 4000(MACCOR)により評価した。
NMC532/グラファイトLIB細胞を、2.80V~4.55 Vの電圧範囲で、0.2CのCレート(3電極測定から得た4.55 V対Li/Li+、200 mAh g-1でのNCM523の比容量に基づく、3電極測定から得た)に等しい40mAg-1の充放電速度で3回の形成サイクルを行い、続いて100mA g-1の充放電速度(0.5Cに相当)でのサイクルを行った。
各充電ステップは、電流が0.05Cを以下に低下するまで、4.55Vでの一定電圧ステップを含んだ。
【国際調査報告】