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特表2022-523455遅延線変調器を備えるスイッチオン時間コントローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】遅延線変調器を備えるスイッチオン時間コントローラ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
H02M3/00 P
H02M3/00 K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540797
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2020013576
(87)【国際公開番号】W WO2020150286
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】62/791,921
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/544,061
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(71)【出願人】
【識別番号】390020248
【氏名又は名称】日本テキサス・インスツルメンツ合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン トーマス リンチ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ウラジミール ヴィクトル
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS01
5H730BB57
5H730EE57
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF06
5H730FG05
(57)【要約】
システム(100)は入力電圧供給(102)を含む。システムはまた、入力電圧供給(102)に結合され、スイッチオン時間(T_ON)に基づいて出力電圧を供給するように構成される、スイッチングコンバータ(104)を含む。システム(100)はまた、スイッチコンバータ(104)のためのスイッチオン時間コントローラ(108)を含む。スイッチオン時間コントローラ(108)は、アナログデジタルコンバータ(ADC)(110)と、ADC(110)に結合された遅延線(112)とを含む。スイッチオン時間コントローラ(108)はまた、遅延線(112)に結合され、スイッチオン時間(T_ON)を判定するために遅延線(112)が用いられる回数の量を判定するように構成された遅延線変調器(114)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
入力電圧供給、及び
前記入力電圧供給に結合され、スイッチオン時間に基づいて出力電圧を提供するように構成されるスイッチングコンバータであって、前記スイッチングコンバータがスイッチオン時間コントローラを含み、
前記スイッチオン時間コントローラが、
アナログデジタルコンバータ(ADC)と、
前記ADCに結合される遅延線と、
前記遅延線に結合され、前記スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる時間を判定するように構成される、遅延線変調器と、
を含む、
システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記遅延線変調器が、前記ADCへの入力信号を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるアナログ回路を含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、前記遅延線変調器が、前記ADCの出力を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるデジタル制御回路を含む、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記遅延線変調器が、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を追跡するように構成されるカウンタをさらに含む、システム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記遅延線変調器に結合されるスケーラを更に含み、前記スケーラが、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられた回数の量に基づいて、前記スイッチングコンバータのための周期信号を分割するように構成される、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、前記ADCが8ビットADCであり、前記遅延線が256個の遅延セルを有する、システム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムであって、前記スイッチオン時間コントローラが、スイッチングサイクル毎のスイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成される、システム。
【請求項8】
集積回路であって、
入力電圧供給ノード、及び
前記入力電圧供給ノードに結合されるスイッチングコンバータ回路、
を含み、
前記スイッチングコンバータ回路が、
スイッチドライバと、
前記スイッチドライバに結合され、前記スイッチドライバによって用いられるべきスイッチオン時間を判定するように構成されるスイッチオン時間コントローラと、
を含み、
前記スイッチオン時間コントローラが、
アナログデジタルコンバータ(ADC)と、
前記ADCに結合される遅延線と、
前記遅延線に結合される遅延線変調器回路であって、前記遅延線及び前記遅延線変調器回路が前記スイッチオン時間を判定する、前記遅延線変調器回路と、
を含む、集積回路。
【請求項9】
請求項8に記載の集積回路であって、前記遅延線変調器が、前記ADCへの入力を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるアナログコンパレータ回路を含む、集積回路。
【請求項10】
請求項8に記載の集積回路であって、前記遅延線変調器が、前記ADCの出力を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるデジタルコンパレータ回路を含む、集積回路。
【請求項11】
請求項8に記載の集積回路であって、前記遅延線変調器が、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられるべき回数の量を追跡するように構成されるカウンタをさらに含む、集積回路。
【請求項12】
請求項8に記載の集積回路であって、前記スイッチングコンバータ回路が、前記遅延線変調器に結合されるスケーラをさらに含み、前記スケーラが、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられた回数の量に基づいて、前記スイッチングコンバータ回路のための周期信号を分割するように構成される、集積回路。
【請求項13】
請求項8に記載の集積回路であって、前記スイッチドライバに結合されるハイサイドスイッチをさらに含む、集積回路。
【請求項14】
スイッチングコンバータ回路であって、
入力電圧供給ノード、
前記入力電圧供給ノードに結合される電圧レギュレータ回路、
前記電圧レギュレータ回路の出力に結合されるスイッチドライバ、及び
前記スイッチドライバに結合されるスイッチオン時間コントローラ、
を含み、
前記スイッチオン時間コントローラが、
複数の遅延セルを有する遅延線と、
前記遅延線に結合される遅延線変調器回路であって、前記遅延線変調器回路が、前記複数の遅延セルの各々がスイッチオン時間を提供するために用いられる調節可能な回数を判定するように構成される、前記遅延線変調器回路と、
を含む、
スイッチングコンバータ回路。
【請求項15】
請求項14に記載のスイッチングコンバータ回路であって、前記遅延線変調器が、前記ADCへの入力を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるアナログコンパレータ回路を含む、スイッチングコンバータ回路。
【請求項16】
請求項14に記載のスイッチングコンバータ回路であって、前記遅延線変調器が、前記ADCの出力を閾値と比較して、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられる回数の量を判定するように構成されるデジタルコンパレータ回路を含む、スイッチングコンバータ回路。
【請求項17】
請求項14に記載のスイッチングコンバータ回路であって、前記遅延線変調器が、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられるべき回数の量を追跡するように構成されるカウンタをさらに含む、スイッチングコンバータ回路。
【請求項18】
請求項14に記載のスイッチングコンバータ回路であって、
前記スイッチングコンバータ回路が、前記遅延線変調器に結合されるスケーラをさらに含み、
前記スケーラが、スイッチオン時間を判定するために前記遅延線が用いられた回数の量に基づいて、前記スイッチングコンバータ回路のための周期信号を分割するように構成される、
スイッチングコンバータ回路。
【請求項19】
請求項14に記載のスイッチングコンバータ回路であって、前記スイッチドライバに結合されるハイサイドスイッチをさらに含み、前記スイッチオン時間コントローラが、前記スイッチオン時間コントローラによって判定されるスイッチオン時間に対して、駆動信号を前記ハイサイドスイッチに供給するように前記スイッチドライバに指示する、スイッチングコンバータ回路。
【請求項20】
請求項19に記載のスイッチングコンバータ回路であって、前記スイッチオン時間コントローラが、前記ハイサイドスイッチのスイッチングサイクル毎のスイッチオン時間を判定するために前記遅延ラインが用いられる回数の量を判定するように構成される、スイッチングコンバータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
DC‐DCコンバータトポロジーは、用いられる構成要素、取り扱われる電力量、入力電圧、出力電圧、効率、信頼性、サイズ、及び/又は他の特徴に関して異なり得る。或るDC・DCコンバータトポロジーは、アナログデジタルコンバータ(ADC)エンコーダと遅延線とを備えるデジタルパルス幅変調(PWM)制御方式を用いて、スイッチオン時間を選択する。デジタルPWM制御方式は、小さなパルス幅(例えば、~1nsの最小パルス幅)が用いられる高周波動作に役立つ。しかしながら、最大パルス幅、従ってDC・DCコンバータの最小動作周波数は、遅延セルの数によって制限される。遅延セルの数を増大させることは技術的に可能であるが、このような遅延セルの数の増大は、ADC分解能、ADC変換時間、及びDC‐DCコンバータに必要とされる総面積も増大させる。また、他の構成要素(例えば、オンタイム電流を計算するために用いられる乗算器回路)のダイナミックレンジは、多数の遅延セルをプログラムする能力を制限する。コンバータトポロジーを改善すべく取り組みが進められている。
【発明の概要】
【0002】
或るシステムが入力電圧供給を含む。このシステムはまた、入力電圧供給に結合され、スイッチオン時間に基づいて出力電圧を提供するように構成されるスイッチングコンバータを含む。スイッチングコンバータは、スイッチオン時間コントローラを含む。スイッチオン時間コントローラは、アナログデジタルコンバータ(ADC)と、ADCに結合される遅延線とを含む。スイッチオン時間コントローラはまた、遅延線に結合され、スイッチオン時間を判定するために遅延線が用いられる頻度を判定するように構成される、遅延線変調器を含む。
【0003】
或る集積回路が入力電圧供給ノードを含む。この集積回路はまた、入力電圧供給ノードに結合されるスイッチングコンバータ回路を含む。スイッチングコンバータ回路は、スイッチドライバと、スイッチドライバに結合されるスイッチオン時間コントローラとを含む。スイッチオン時間コントローラは、ADCと、ADCに結合される遅延線と、遅延線に結合される遅延線変調器回路とを含む。
【0004】
スイッチングコンバータ回路が、入力電圧供給ノードと、入力電圧供給ノードに結合される電圧レギュレータ回路とを含む。スイッチングコンバータ回路は、電圧レギュレータ回路の出力に結合されるスイッチドライバも含む。スイッチングコンバータ回路はまた、スイッチドライバに結合されるスイッチオン時間コントローラを含む。スイッチオン時間コントローラは、ADC、ADCに結合される遅延線、及び遅延線に結合される遅延線変調器回路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】種々の例に従ったシステムを示すブロック図である。
【0006】
図2】種々の例に従ったスイッチオン時間コントローラを示すブロック図である。
【0007】
図3】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラの構成要素を示すブロック図である。
【0008】
図4】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラのためのバイナリ重み付けセルカウント回路を示すブロック図である。
【0009】
図5】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラのための別のバイナリ重み付けセルカウント回路を示すブロック図である。
【0010】
図6】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラの構成要素を示す概略図である。
【0011】
図7A】種々の例に従ったスイッチオン時間コントローラの構成要素を示す概略図である。
図7B】種々の例に従ったスイッチオン時間コントローラの構成要素を示す概略図である。
【0012】
図8】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラの動作及び構成要素を示すブロック図である。
【0013】
図9】種々の例に従った、別のスイッチオン時間コントローラの動作及び構成要素を示すブロック図である。
【0014】
図10A】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラに関連するタイミング図である。
図10B】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラに関連するタイミング図である。
図10C】種々の例に従った、スイッチオン時間コントローラに関連するタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、遅延線変調器(本明細書では遅延線再使用変調器と呼ぶことがある)に関与するスイッチオン時間コントローラオプションについて説明する。スイッチオン時間コントローラは、スイッチコンバータ又はスイッチを備える他のデバイスの一部であってもよい。いくつかの例において、スイッチオン時間コントローラは、アナログデジタルコンバータ(ADC)、遅延線、及び遅延線変調器を含む。動作において、遅延線変調器は、スイッチオン時間を生成するために遅延線の各遅延セルが用いられる回数の量を判定する。スイッチングコンバータのシナリオにおいて、遅延線変調器は、スイッチングコンバータのスイッチングサイクルごとに新しいスイッチオン時間を判定するために用いられる。遅延線変調器により、その遅延線で利用可能な遅延セルの数に対する、スイッチオン時間コントローラによりサポートされるオン時間(遅延量)が、遅延線変調器なしのスイッチオン時間コントローラと比べて拡張される。より理解を深めるために、種々のスイッチングコンバータのオプション及び関連する省電力モードのオプションについて、図面を用いて以下のように説明する。
【0016】
図1は、種々の例に従ったシステム100を示すブロック図である。図示されているように、システム100は、入力電圧供給回路102から入力電圧(VIN)を受け取るスイッチングコンバータ104を含む。図1の例では、スイッチングコンバータ104は、入力電圧供給102とスイッチドライバ116との間に結合される電圧レギュレータ106を含む。動作において、電圧レギュレータ106は、VINを用いて別の電圧(V1)を生成し、ここで、V1は、スイッチオン時間コントローラ108によって提供されるオン時間(T_ON)信号に基づいて駆動信号ノード117を介してスイッチ118を駆動するために、スイッチドライバ116によって用いられる。いくつかの例において、スイッチ118は、降圧コンバータのハイサイドスイッチに対応する。このような例では、スイッチ118からの出力信号が、スイッチノード119を介して出力構成要素120に供給される。例示の出力構成要素120は、出力インダクタ及び出力コンデンサを含む。図1に表わされるように、出力構成要素120は、出力ノード121を介して負荷122に結合され、出力電圧(VOUT)を負荷122に供給する。
【0017】
いくつかの例において、システム100は、バッテリ駆動デバイス(例えば、車両、タブレットコンピュータ、スマートフォン)に対応する。このような例において、VINはバッテリ又はAC/DCアダプタによって提供される。また、負荷122は、バッテリ駆動デバイスの電子機器に対応する。負荷の例には、処理構成要素、ディスプレイ構成要素、センサユニット、及び/又は他の負荷が含まれる。
【0018】
いくつかの例において、出力ノード121は、スイッチングコンバータ104を含むが負荷122を含まない集積回路(IC)のピンに対応する。他の例において、スイッチノード119は、少なくともスイッチオン時間コントローラ108、スイッチドライバ116、及びスイッチ118を含むが、出力構成要素120を含まないICのピンに対応する。他の例において、駆動信号ノード117は、少なくともスイッチオン時間コントローラ108及びスイッチドライバ116を含むが、スイッチ118又は出力構成要素120を含まないICのピンに対応する。他の例において、スイッチオン時間コントローラ108は、図1で表されるようにスイッチングコンバータ104の他の構成要素に結合されるスタンドアロンICに対応する。
【0019】
図1の例では、スイッチオン時間コントローラ108は、オン時間回路109、ADC110、遅延線112、及び遅延線再使用変調器114を含む。いくつかの例において、オン時間回路109は、VIN、VOUT、及びスイッチング周波数設定(Ts)に基づいて、オン時間を判定する。一例において、オン時間回路109は、判定されたオン時間を表すために電流(ITON)を生成する。この例では、ADC110は、遅延線再使用変調器114によって用いられるマルチビットワードにITONを変換して、遅延線112をどのように用いて、オン時間回路109によって判定されるオン時間に対応する信号(T_ON)を生成するかを判定する。一例として、遅延線112が256個の遅延セルを有し、オン時間回路109が400個の遅延セルに対応するオン時間を判定する場合、遅延線再使用変調器114は、256個の遅延セルのうちの200個を1回使用し、次いで、256個の遅延セルのうちの同じ200個を再び再使用することによって(例えば、毎回同じ数のセルが再び用いられる)、所望のT_ON信号を生成し得る。また、オン時間回路109によって用いられるスイッチング周波数設定Tsは、遅延線112に対して判定される再利用の量によってスケーリングされる(例えば、遅延線112が2回用いられる場合はTsが2で割られ、遅延線112が3回用いられる場合はTsが3で割られる等)。図1の例では、スケーラ115が遅延線再使用変調器114からのレンジ(RANGE)値に基づいてTs(例えば、Ts/n)をスケーリングし、レンジ値及びnは、遅延線112に対し遅延線再使用変調器114によって判定される再使用の量に対応する。異なる例において、遅延線112で利用可能な遅延セルの数は変化する。また、ADC110が出力するビット数は変化し得る。また、遅延線再利用変調器114によってサポートされる遅延線再利用の量は変化し得る。
【0020】
図2は、種々の例に従ったスイッチオン時間コントローラ200(図1のスイッチオン時間コントローラ108の一例)を示すブロック図である。図示のように、スイッチオン時間コントローラ200は、VIN、VOUT、及びTs/Nに基づいてオン時間電流(ITON)を供給するフィードフォワード回路202(図1のオン時間回路109の例)を含み、ここで、Nは遅延線が再び用いられる回数である。図2の例では、Ts/Nに対する値は、入力信号としてITONを受信する電流ADC204(IADC)から出力されるマルチビットワード(例えば、図2の8ビットワード)を監視することによって判定される。IADC204からのマルチビットワードアウトプットが256より大きい値を有する場合(判定ブロック206、ここで256は、図2の例についての遅延線における遅延セルの数である)、カウンタ208及び224はそれぞれのカウントを増大させる。カウンタ208のカウント値は、スケーラ210によってNの値として用いられる。一方、カウンタ224のカウント値は、遅延セル216及び全ての他の遅延セル(図示せず)が再び用いられるときを判定するために用いられる。IADC204からのマルチビットワードが256以下の値を有する場合(判定ブロック206)、ANDゲート212は、マルチビットワードをデマルチプレクサ214(例えば、図2の8ビットデマルチプレクサ)に渡す。デマルチプレクサ214の出力は、マルチビットワードに基づいて、遅延線(図示せず)のどの遅延セル(例えば、遅延セル216)が用いられるかを選択する(例えば、0から256までの遅延セルが選択可能である)。
【0021】
図2の例では、遅延セル216がインバータ218とANDゲート220とを含む。図示のように、インバータ218は、インバータ218に遅延線制御信号(VCTRL)を供給するように構成される電圧源226に結合されている。VCTRLは、個々の遅延セルの遅延時間の調整を可能にする。このようにして、デジタル量子化の影響を受けることなく、遅延時間の正確な制御が可能である(デジタル設定は「粗い」設定を提供し、VCTRLは「微細」調整を提供する)。また、インバータ218は、デマルチプレクサ214から信号219を受信し、ここで、信号219の高値(論理「1」)はインバータ218をイネーブルにし、信号219の低値(「論理「0」)はインバータ218をディセーブルにする。図2の例では、インバータ219への入力信号はORゲート222から来ており、ORゲート222の第1の入力ノードがトリガ信号(TRIG)を受け取り、ORゲート222の第2の入力ノードがカウンタ224からの信号を受け取る。ORゲート222からの出力及びインバータ218からの出力がハイであるとき、ANDゲート220は、カウンタ224によって追跡されるカウント値によって判定されるT_ON貢献度(contribution)230を提供する。図2の例では、TRIGは、遅延セルのトリガを開始するクロック信号である(例えば、TRIGは遅延線の第1の遅延セルのトリガを開始し、これが次の遅延セルをトリガし、以下同様に、所望のオン時間に対応する遅延セルの数に対してトリガしていく)。いくつかの例では、TRIGのためのクロック信号の周期は、I_Tsが本明細書に記載されるようにスケーリングされる前のI_Ts(例えば、図3の乗算器302への入力)に対応する。
【0022】
図3は、種々の例に従った、示された遅延セルがないスイッチオン時間コントローラ300(スイッチオン時間コントローラ300は、スイッチオン時間コントローラ108又は図2のスイッチオン時間コントローラ200の一部を表す)の構成要素を示すブロック図である。図示されるように、スイッチオン時間コントローラ300は、IADC204に結合される乗算器302(図2におけるフィードフォワード回路202の一例)を含む。いくつかの例において、乗算器302は、入力としてVIN、VOUT、及びTsを受信し、出力としてITONを提供する。図3の例では、ITON=K×Ts×VOUT/VINであり、Kは乗算器302によって印加される値である。いくつかの例において、K=K_adc/(T_cell×(RANGE+1))であり、ここで、K_adcは、ビット数及びADCへの最大電流(例えば、128μA/8ビット=0.5μA/ビット)によって判定されるスケーリング定数であり、T_cellは各遅延セルの遅延周期であり、RANGEは遅延線再使用の量に対応する。
【0023】
また、ITONがIADC204に提供されており、IADC204は、図3のITONから8ビットワードを生成する。他の例において、ITONとは異なるサイズのワードを生成するIADCが可能である。IADC204によって出力されるビット数にかかわらず、IADC204への入力又はIADC204からの出力は、本明細書に記載されるような遅延線変調動作のために用いられ得る。
【0024】
図4は、様々な例に従った、スイッチオン時間コントローラ(例えば、図1におけるスイッチオン時間コントローラ108、図2におけるスイッチオン時間コントローラ200、及び図3におけるスイッチオン時間コントローラ300)のためのバイナリ重み付けセルカウント回路400を示すブロック図である。図示のように、バイナリ重み付けセルカウント回路400は、複数のバイパス(BP)ブロック402A~402H及びそれぞれの遅延バンク404A~404Hとして表される遅延線を含む。バイパスブロック402A~402Hを用いると、セルが選択されない場合、トリガ信号は影響を受けずにバイナリ重み付けセクションを「通過」する。
【0025】
図4の例では、遅延バンク404Aは128個の遅延セルを有し、遅延バンク404Bは64個の遅延セルを有し、遅延バンク404Cは32個の遅延セルを有し、遅延バンク404Dは16個の遅延セルを有し、遅延バンク404Eは8個の遅延セルを有し、遅延バンク404Fは4個の遅延セルを有し、遅延バンク404Gは2個の遅延セルを有し、遅延バンク404Hは1個の遅延セルを有する。また、BPブロック402A~402H及びそれぞれの遅延バンク404A~404Hの各々は、マルチビットワードの値を用いて選択可能である。例えば、8ビットワード(例えば、ビット7が最も高い値を有するビット7、6、5、4、3、2、1、0を有する)では、ビット7がBPブロック402A又は遅延回路404Aを選択するために用いられ、ビット6は、BPブロック402B又は遅延回路404Bを選択するために用いられ、ビット5は、BPブロック402C又は遅延回路404Cを選択するために用いられ、ビット4は、BPブロック402D又は遅延回路404Dを選択するために用いられ、ビット3は、BPブロック402E又は遅延回路404Eを選択するために用いられ、ビット2は、BPブロック402F又は遅延回路404Fを選択するために用いられ、ビット1は、BPブロック402G又は遅延回路404Gを選択するために用いられ、ビット0は、BPブロック402H又は遅延回路404Hを選択するために用いられる。このようにして、異なる量の遅延セルが、マルチビットワードに基づいて選択可能であるか又はバイパスされる。また、図4の例では、BPブロック402A~402Hは、図2において導入されたTRIG信号を搬送するためにバスを用いて選択的にイネーブルされる。
【0026】
例えば、BPブロック402A~402Hを用いると、それぞれの遅延バンクが選択されない場合、トリガ信号は影響を受けていないバイナリ重み付けセクションを「通過」又はバイパスする。例えば、図4を参照すると、160個の遅延セルに対応する遅延が望ましいと仮定する。この遅延量のために、BPブロック402A及び402Cに対応する遅延バンクが、遅延を提供するように選択される。一例として、TRIGが、まずBPブロック402Aで受信され、次に遅延バンク404Aの128個の遅延セルに対応する遅延の後にBPブロック402Bに渡される。BPブロック402Bは、影響を受けていないTRIGをBPブロック402Cに渡す。次に、BPブロック402Cは、遅延ブロック404Cの32個のセルに対応する遅延の後、TRIGをBPブロック402Dに渡す。この例では、BPブロック402D~402Hが2バイナリ重み付けセルカウント回路400に対応する遅延線の末端に影響されていないTRIG信号を転送し、遅延線を介してTRIGを送るための総遅延によってスイッチのオン時間が決まる。
【0027】
図5は、様々な例に従った、スイッチオン時間コントローラ(例えば、図1におけるスイッチオン時間コントローラ108、図2におけるスイッチオン時間コントローラ200、及び図3におけるスイッチオン時間コントローラ300)のための別のバイナリ重み付けセルカウント回路500を示すブロック図である。図示のように、バイナリ重み付けセルカウント回路500は、それぞれの遅延回路404A~404Hを有する、複数のBPブロック402A~402Hを含む。図4に関して先に述べたように、BPブロック402A~402H及びそれぞれの遅延回路404A~404Hの各々は、マルチビットワードの値を用いて選択可能である。また、図5には、BPブロック402A~402Hにマルチビットワードを供給するバス508(例えば、IADC8ビットバス)が示されている。
【0028】
図5の例において、カウンタ/コンパレータブロック506が、BPブロック402A及びBPブロック402Hに結合される。カウンタ/コンパレータブロック506は、それぞれの遅延回路404A~404Hを有するBPブロック402A~402Hの再使用を可能にする。いくつかの例において、選択されたブロック(402A~402H/404A~404H)の再使用量がカウンタ/コンパレータブロック506に入力される制御信号(レンジ)によって判定される。図5の例では、レンジは、3ビット信号で選択されたブロック(402A~402H/404A~404H)の最大8の再使用を通知できる。他の例において、レンジがBPブロック402A~402Hの再使用をそれぞれの遅延回路404A~404Hに信号で通知するために、より多くの又はより少ないビットを有する。BPブロック506及びレンジを用いて、有効遅延セルカウントが拡張される。例えば、3ビットレンジ信号(最大8つの異なる値)を用いて、N=256のベース遅延セルカウントを拡張して、N=2048(8×256)の遅延セルカウントに対応する遅延を提供することができる。選択されたブロック(402A~402H/404A~404H)の1つ又は複数の再使用からの遅延の組合せは、カウンタ/コンパレータブロック506によってT_ONを出力するために用いられ、BPブロック402A~402Hの各々は、それぞれの遅延回路404A~404Hを介してトリガ信号を送るか、又はそれぞれの遅延回路404A~404Hをバイパスすることができる。
【0029】
いくつかの例において、レンジ及び関連する遅延ライン使用のための値が、アナログ制御回路を用いてIADCの入力を監視(例えば、ITONを監視)することによって判定される。他の例において、レンジ及び関連する遅延線使用量の値が、デジタル制御回路を用いてIADCの出力を監視する(例えば、遅延セルカウントを表す8ビットワードを監視する)ことによって判定される。これらのオプションの全てにおいて、監視は、(固定数の遅延セルを有する)利用可能な遅延線に対するベース遅延範囲を超えるかどうかを判定する。もし超える場合、ベース遅延範囲を超えた量が判定される。その後、遅延線に対するベース遅延範囲を超えた量に対応するために、遅延線変調が行われる。
【0030】
いくつかの例において、乗算器(例えば、乗算器302)の最大線形範囲は制限される(例えば、128μA)。また、スイッチングコンバータのVINとVOUTは回路パラメータによって設定されるため、その入力をスケーリングする必要はない。スイッチングコンバータのスイッチング周波数の範囲によって、周期(Ts)が決まる。例えば、400kHzから4MHzのスイッチング周波数範囲を有するスイッチングコンバータの場合、Tsは、250nsから2.5μs、つまり10:1の範囲になる。いくつかの例において、Tsが乗算器(例えば、乗算器302)に提供されて、レンジ値が変更するにつれて、オンタイム値(例えば、ITON)を調整する。
【0031】
図6は、種々の例に従ったスイッチオン時間コントローラ600(図1におけるスイッチオン時間コントローラ108、図2におけるスイッチオン時間コントローラ200、又は図3におけるスイッチオン時間コントローラ300の一例)の構成要素を示す概略図である。図示のように、スイッチオン時間コントローラ600は、入力電圧供給(VIN)ノードと、VINノードと接地ノードとの間に直列にR1及びR2によって形成される分圧器とを含む。いくつかの例において、分圧器がVINを15で分圧するように動作する。図6の例において、R1とR2との間のノード603が相互コンダクタンス段606に結合され、相互コンダクタンス段606は、ノード603に結合される第1の入力ノードと、接地に結合される第2の入力ノードとを有する。相互コンダクタンス段606はまた、入力電源(VDD)ノード604に結合される別の入力ノードを含む。相互コンダクタンス段606の出力は、乗算回路620への入力信号(IN3)として提供される。
【0032】
また、図6には、VDDノード、システム基準(SYSREF)ノード、乗算ノード(MULT)、基準ノード(RT)、開始ノード(START)、イネーブル信号(ENABLE)、接地信号(GND)を含む種々の入力ノードを有する周期スケーリング回路610が示されている。図6の例において、電流基準ソース608が基準電流(I2)をRTノードに供給する。周期スケーリング回路610はまた、Tsを表す電流(I_PERIOD)を提供する出力ノード(IT)を含む。図示するように、I_PERIODは、別の入力信号(IN2)として乗算回路620に供給される。また、周期スケーリング電流610は、レンジ信号(レンジ[0..2])を出力する。図6の例では、周期が(レンジ値+1)に従ってスケーリングされ、その結果、レンジ=0はスケーリングなし(例えば、1で除算される)、レンジ=1は2で除算される、以下同様、を意味する。スケーリングされた周期信号は、レンジ値と共に、スイッチオン時間計算に寄与する「動作の周波数」を判定する。
【0033】
乗算回路620のための他方の入力信号(IN1)は相互コンダクタンス段618によって提供され、これは、VDACノードに結合される第1の入力ノードと、接地ノードに結合される第2の入力ノードとを有する。図6の例では、VDACは出力電圧を表す電圧である。異なる例において、VDACは、出力電圧自体であってもよく、又は出力電圧と同等の独立した電圧(例えば、出力電圧をプログラムするために用いられる電圧)であってもよい。
【0034】
また、相互コンダクタンス段618は、VDDノード604によって電力供給され、乗算回路620に供給されるIN1値はVOUT値を表す。いくつかの例において、乗算回路620が、オン時間=IN1×IN2/IN3の関係を用いてオン時間値を計算する。乗算回路620によって出力されるオン時間値は、トランスコンダクタンス段622によってITON値に変換される。図6の例では、周期スケーリング回路610が、周期電流のスケーリングに加えてレンジ信号を出力する。
【0035】
図7A及び図7Bは、種々の例に従った周期スケーリング回路700(例えば、図6の周期スケーリング回路610の一例)の構成要素を示す概略図である。図示のように、周期スケーリング回路700は、レンジアップ閾値検出回路701及びレンジダウン閾値検出回路713(例えば、図2で判定ブロック206の動作を行うため)を含む。また、周期スケーリング回路700は、レンジアップ閾値検出回路701及びレンジダウン閾値検出回路713に結合されるレンジカウンタ740(図2のカウンタ208の一例)を含む。周期スケーリング回路700はまた、レンジカウンタ740の出力に結合されるデマルチプレクサ742を含む。周期スケーリング回路700はまた、レンジカウンタ740によって追跡されたカウントの関数としてスケーリングされた周期電流(I_PERIOD)を供給するように構成される周期電流スケーリング回路743(図2におけるスケーラ210の例)を含む。
【0036】
より具体的には、図7A及び図7Bの例において、レンジカウンタ740によって追跡されるカウントは、デマルチプレクサ742のどの出力ノード(A~H)が高信号を供給するかを制御するために用いられる。図示されるように、デマルチプレクサ742の出力ノードの各々は、電流スケーリング回路743の各々のスケーリングブロック750A~750Hに結合される。また、電流スケーリング回路743は、それぞれのノード746及び748からの制御信号SYSREF及びRTに基づいて、スケーリングブロック750A~750Hの各々に入力信号を供給するように構成される電流・電圧コンバータ744を含む。図7A及び図7Bの例では、SYSREFは固定基準電圧であり、RTは外部プログラミング抵抗器によって提供される。例えば、外部プログラミング抵抗器の値は、外部プログラミング抵抗器を介して流れる電流がPWM信号の周期(トリガするレート)を表すように選択される。従って、電流・電圧コンバータ744の出力は、動作の周期を表す。周期を表す信号は実用的なものよりも大きくなり得るので、電圧コンバータ744によって出力される信号は、スケーリングブロック750A~750Hを用いて分割される。結果として得られる出力は、a)スケーリングされた信号、及びb)スケーリングの量を示すレンジ変数である。
【0037】
動作において、レンジカウンタ740によって追跡されるレンジ値は、レンジアップ閾値検出回路701及びレンジダウン閾値検出回路713の動作に基づいて、時間の経過とともに更新される。より具体的には、レンジアップ閾値検出回路701は、電流・電圧コンバータ706、コンパレータ710、及びANDゲート712の動作に基づいて、レンジカウンタ740のカウントを増加させるように構成される。図示されるように、電流・電圧コンバータ706は、電流源704の出力と接地ノードとの間の差に基づいて、コンパレータ710の負の端子に出力を提供する。動作において、コンパレータ710は、乗算回路(例えば、図6の乗算回路620)の出力を、最大許容電流を表す信号と比較する。乗算回路の出力が、最大許容電流によって設定された閾値を上回る場合、レンジのための値が増分され、電流・電圧コンバータ744の出力が分割される。電流・電圧コンバータ744の出力を分割した結果、乗算回路出力が減少し、別の閾値が通過するまでレンジが維持される。
【0038】
コンパレータ710の出力は、ノード708によって提供されるMULT信号(例えば、図6の乗算回路620などの乗算回路から出力されるMULT信号)と電流・電圧コンバータ706の出力との差に基づいてANDゲート712に提供される。コンパレータ710の出力は、ANDゲート712に渡され、ANDゲートは、レンジカウンタ740のカウントが最大値でない限り、コンパレータ710の出力を通過させるように構成される。
【0039】
図7A及び図7Bの例では、レンジダウン閾値検出回路713は、入力電圧(VDD)ノード730に結合されるそれぞれの第1の側部を有する電流源716、720、724、及び728を含む種々の構成要素の動作に基づいて、レンジカウンタ740のカウントを低減させるように構成される。図示のように、ダイオードD1~D4はそれぞれの電流源の両端に結合される(例えば、D1は電流源716の両端に結合され、D2は電流源720の両端に結合され、D3は電流源724の両端に結合され、D4は電流源728の両端に結合され、D1~D4のカソードはVDDノード730に結合される。D1~D4のアノード及び電流源716、720、724及び728の第2の側部は、それぞれのスイッチ(S1~S4)に結合される)。図7A及び図7Bの例では、S1のための制御信号は、デマルチプレクサ742のE~H出力ノードに結合される入力ノードを有するORゲート714に基づく。また、S2のための制御信号は、デマルチプレクサ742のD出力ノードに結合されるバッファ718に基づく。また、S3のための制御信号は、デマルチプレクサ742のC出力ノードに結合されるバッファ722に基づく。また、S4のための制御信号は、デマルチプレクサ742のB出力ノードに結合されるバッファ726に基づく。
【0040】
図示されるように、S1~S4は、電流・電圧コンバータ732の入力ノードに結合される。電流・電圧コンバータ732の出力ノードは別のコンパレータ734に結合され、コンパレータ734の出力はORゲート736に供給され、コンパレータ734の反転出力は、レンジカウンタ740のカウント_アップ(CNT_UP)ピンに供給される。また、ORゲート736はレンジアップ閾値検出回路701の出力を受け取り、ORゲート736の出力は、レンジカウンタ740のカウント入力ノードに結合される。また、図7Aには、レンジカウンタ740のリセット(RST)ピンに結合されるバッファ/インバータ738が示されており、バッファ/インバータ738への入力は開始信号(START)であり、パワーオン事象に応答してレンジカウンタ740を初期化する。
【0041】
動作において、レンジアップ閾値検出回路701は、レンジアップカウントに対して固定最小値を使用するように構成される。また、レンジダウン閾値検出回路713は、レンジ設定に依存する複数の閾値を使用するように構成される。より具体的には、レンジダウン閾値検出回路のB、C、Dは、1>0、2>1、3>2からのレンジカウント調整を表す。より高いレンジのカウントから、閾値は数値的に非常に近いので、同じ閾値が用いられる(例えば、7>6、6>5、5>4、及び4>3は全て同じ閾値を使用する)。電流源716、720、724及び728は、図7A及び7Bの例で用いられる4つの閾値を表す。レンジ値に応じて、スイッチS1~S4のいずれか1つが閉じられる。これに応答して、電流・電圧コンバータ732は、受け取った電流をコンパレータ734と適合する電圧に変換し、コンパレータは、乗算器(例えば、図6の乗算回路620)からのMULT信号を電流・電圧コンバータ732の出力と比較する。MULT値が、電流・電圧コンバータ732によって提供される閾値よりも小さい場合、レンジは減少され、それに応じて、周期スケーリング回路743によって実施される周期スケーリングが調整される。いくつかの例において、ダイオードD1、D2、D3、及びD4は省略される。
【0042】
図7A及び図7Bの周期スケーリング回路700では、アナログ構成要素を用いて、遅延線変調を含むスイッチオン時間制御を提供する。他の例において、デジタル制御回路を用いて、遅延線変調を含むスイッチオン時間制御を提供する。周期スケーリング回路の例示のデジタル制御回路において、レンジアップ閾値検出回路701が、デジタル値(例えば、256)と比較されるIADC出力のデジタル比較によって置き換えられる。また、レンジダウン閾値検出回路713は、IADC出力を選択し、IADC出力をレンジダウン閾値を表すデジタルワード(例えば、4つのデジタルワード)と比較するデジタル等価物で置き換えられる。
【0043】
図8は、様々な例に従った、スイッチオン時間コントローラ800(例えば、図1のスイッチオン時間コントローラ108)の動作及び構成要素を示すブロック図である。スイッチオン時間コントローラ800では、アナログ監視及び調整動作が行われて、レンジ値を制御する(すなわち、遅延線変調を実施する)。図示のように、スイッチオン時間コントローラ800はブロック802で初期化される。ブロック804において、出力レンジ値が判定される。ブロック806において、レンジダウン閾値が判定される。判定ブロック808において、スイッチング周期I_Tsを表す電流が、レンジダウン閾値と比較される。図8の例では、ブロック822でI_Tsの初期値が提供され、ブロック824で、I_Tsの初期値が、ブロック804で判定された出力レンジ値に基づいてスケーリングされる。そのため、判定ブロック808によって用いられるのは、スケーリングされたI_Ts値である。スケーリングされたI_Ts値がレンジダウン閾値未満である場合(判定ブロック808)、レンジ値が0より大きいかどうかに関する判定が行われる(判定ブロック810)。レンジ値が0より大きい場合(判定ブロック810)、レンジ値はブロック814で減少される。そうではなく、レンジ値が0より大きくない場合、スイッチオン時間コントローラ800は、NOOP(動作なし)状態812に遷移する(レンジ値は以前と同じままである)。
【0044】
判定ブロック808に戻って、スケーリングされたI_Ts値がレンジダウン閾値よりも小さくない場合(判定ブロック808)、レンジ値が128μAよりも大きいかどうかに関する判定が行われる(判定ブロック816)。スケーリングされたI_Ts値が128μAより大きくない場合(判定ブロック816)、スイッチオン時間コントローラ800は、NOOP動作818に遷移する。一方、スケーリングされたI_Ts値が128μAより大きい場合(判定ブロック816)、スイッチオン時間コントローラ800は、ブロック820において、レンジ値を増加させる。時間の経過と共に、ブロック820からの増加されたレンジ値又はブロック814からの減少されたレンジ値は、出力レンジ値を調整するためにブロック804に提供される。
【0045】
図8の例では、ブロック804によって判定されたレンジ値(例えば、3ビット値RANGE0:3)は比較ブロック846によって用いられ、比較ブロックは、レンジ値を、カウンタ844(図2におけるカウンタ208、又は図7Aにおけるレンジカウンタ740の一例)によって提供されるカウント値(例えば、3ビット値COUNT0:3)と比較する。比較ブロック846の出力は、遅延セル(例えば、遅延セル838)によって反復信号として用いられ、遅延線(図示せず)の全ての遅延セルは、レンジ値及びカウント値に基づいて必要に応じて再び用いられる。
【0046】
図8の例では、乗算器832(図2のフィードフォワード回路202、図3の乗算回路302、又は図6の乗算回路620の一例)は、ブロック826からのスケーリングされたI_Ts、ブロック828からのVIN(I_VIN)を表す電流、及びブロック830からVOUT(I_VOUT)を表す電流を受け取る。乗算器832の出力は、ITON(例えば、ITON=I_Ts×I_VOUT/I_VIN)である。図示されるように、ITONは、IADC834(図2におけるIADC204の例)に提供され、IADC834の出力がデマルチプレクサ836に提供される。デマルチプレクサ836の出力は、所望のオン時間(T_ON)を生成するために必要な遅延セルを選択するために用いられ、ここで、レンジセルと遅延セルの組み合わせは、T_ONを生成するために用いられる。図8の例において、遅延セル838がインバータ840及びANDゲート842を含む。いくつかの例において、遅延セルは、各々がそれぞれのインバータ及びANDゲートを有する、多くの遅延セル(例えば、256個の遅延セル)の1つである。本明細書で説明するように、遅延線の再使用は、追加の遅延セルなしにスイッチオン時間(T_ON)を延長するように変調される。時間の経過とともに、図8において表されたプロセスが(例えば、スイッチングコンバータの各スイッチングサイクルに対して)反復される。
【0047】
図9は、種々の例に従った別のスイッチオン時間コントローラ900(例えば、図1のスイッチオン時間コントローラ108、又は本明細書に記載される他のスイッチオン時間コントローラ)の動作及び構成要素を示すブロック図である。スイッチオン時間コントローラ900では、デジタル制御回路監視及び調整動作が行われ、レンジ値を制御する(すなわち、遅延線変調を実施する)。図示のように、スイッチオン時間コントローラ900は、ブロック902において初期化される。ブロック904において、出力レンジ値が判定される。ブロック906において、レンジダウン閾値が判定される。判定ブロック908において、スイッチング周期I_Tsを表す電流が、レンジダウン閾値と比較される。図9の例では、ブロック922においてI_Tsの初期値が提供され、ブロック924において、I_Tsの初期値が、ブロック904で判定された出力レンジ値に基づいてスケーリングされる。
【0048】
ブロック924において、スケーリングされたI_Ts値が、乗算器932(図2のフィードフォワード回路202、図3の乗算回路302、又は図6の乗算回路620の一例)に提供される。乗算器932はまた、ブロック928からのI_VIN値、及びブロック930からのI_VOUT値を受信する。乗算器932の出力は、ITON(例えば、ITON=I_Ts×I_VOUT/I_VIN)である。図示のように、ITONは、IADC934(図2におけるIADC204の一例)に提供され、IADC934の出力は、デマルチプレクサ936及び判定ブロック908に提供される。デマルチプレクサ836の出力は、所望のオン時間(T_ON)を生成するために必要な遅延セルを選択するために用いられ、ここで、遅延セルとレンジ値の組み合わせは、T_ONを生成するために用いられる。図9において、遅延セル938がインバータ940とANDゲート942とを含む。いくつかの例において遅延セルは、各々がそれぞれのインバータ及びANDゲートを有する、多くの遅延セル(例えば、256個の遅延セル)の1つである。本明細書で説明するように、遅延線の再使用は、追加の遅延セルなしにスイッチオン時間(T_ON)を延長するように変調される。
【0049】
遅延線の再使用量を判定するために、スイッチオン時間コントローラ900は、判定ブロック908において、IADCコードを閾値と比較する。IADCコードが閾値より小さい場合、レンジ値が0より大きいかどうかに関する判定が行われる(判定ブロック910)。レンジ値が0より大きい場合(判定ブロック910)、レンジ値はブロック914で減少される。そうではなく、レンジ値が0より大きくない場合、スイッチオン時間コントローラ900は、NOOP(動作なし)状態812に遷移する(レンジ値は以前と同じままである)。
【0050】
判定ブロック908に戻って、IADCコードが閾値よりも小さくない場合、判定ブロック916において、IADCコードが閾値(例えば、256)に等しいかどうかに関する判定が行われる。IADCコードが閾値に等しくない場合(判定ブロック916)、スイッチオン時間コントローラ900はNOOP動作918に遷移する。一方、IADCコードが閾値に等しい場合(判定ブロック916)、スイッチオン時間コントローラ900は、ブロック920で、レンジ値を増加させる。時間の経過と共に、ブロック920からの増加されたレンジ値又はブロック914からの減少されたレンジ値は、出力レンジ値を調整するためにブロック904に提供される。
【0051】
図9の例では、ブロック904によって判定されたレンジ値(例えば、3ビット値RANGE0:3)は、比較ブロック946によって用いられ、比較ブロックは、レンジ値を、カウンタ944(図2におけるカウンタ208、又は図7Aにおけるレンジカウンタ740の一例)によって提供されるカウント値(例えば、3ビット値COUNT0:3)と比較する。比較ブロック946の出力は、遅延セル(例えば、遅延セル938)によって反復信号として用いられ、遅延線(図示せず)の全ての遅延セルは、レンジ値及びカウント値に基づいて必要に応じて再び用いられる。時間の経過とともに、図9において表されたプロセスが(例えば、スイッチングコンバータの各スイッチングサイクルに対して)反復される。
【0052】
図10A~10Cは、スイッチオン時間コントローラ(例えば、図1のスイッチオン時間コントローラ108、又は本明細書に記載される他のスイッチオン時間コントローラ)に関連する波形を示すタイミング図1000、1010、及び1020である。図10Aのタイミング図1000において、波形1002は、時間の関数としてスイッチコンバータ出力電圧(VOUTREF)を表す。波形1002に示すように、VOUTREFは時間1004まで平坦である。時間1004の後、VOUTREFは時間と共に線形に増加する。図10Bのタイミング図1010では、波形1012が、ITON(スイッチオン時間を表すために用いられる電流)を時間の関数として表す。波形1012で示されるように、ITONは、時間1004の後、閾値1016(例えば、図10Bの125μA付近)に達するまで増加する(例えば、VOUTREFが増加するにつれてITONが増加する)。閾値1016に到達するたびに(例えば、時間1014A、1014B、及び1014Cにおいて)、レンジ値は増加し、ITONはより低い値に減少する。本明細書で説明するように、レンジ値は、遅延線及び/又は遅延線の遅延セルが再び用いられる回数に対応する。
【0053】
図10Cのタイミング図1020において、波形1022は、時間の関数としての遅延セルカウント(スイッチオン時間を生成するために用いられる遅延セルの数)を表す。波形1022で示すように、遅延セルカウントは、時間1004の後、閾値1024(例えば、図10Cにおける256個の遅延セル)に達するまで増加する(例えば、遅延セルカウントは、VOUTREF及びITONが増加するにつれて増加する)。閾値1024に達すると、遅延セルが再び用いられる回数が増加する。図10Cのタイミング図1020に示すように、波形1022の異なる部分1026A、1026B、1026C、及び1026Dは、異なる量の遅延セル再使用に対応する。より具体的には、部分1026Aが最大256個の遅延セルに対する再使用なし(総使用数1回)に対応し、部分1026Bは、最大256個の遅延セルに対する1回の再使用(総使用数2回)に対応し、部分1026Cは、最大256個の遅延セルに対する2回の再使用(総使用数3回)に対応し、部分1026Dは、最大256個の遅延セルに対する3回の再使用(総使用数4回)に対応する。
【0054】
例えば、タイミング図1020は、256個の遅延セルに対する遅延が、2回用いられる128個の遅延セルに対する遅延と同じであることを示している。また、512(256×2=512)個の遅延セルに対する遅延は、3回用いられる170個の遅延セルに対する遅延(170×3=510)とほぼ同じである。また、768(256×3)個の遅延セルに対する遅延は、4回用いられる190個の遅延セルに対する遅延(190×4=760)とほぼ同じである。したがって、タイミング図1000、1010、及び1020は、異なる出力電圧レベルを説明するためにスイッチオン時間範囲を拡張する例を示し、限られた数の遅延セル(例えば、256個の遅延セル)が利用可能である。遅延線変調及び関連する構成要素を適切に管理することで、必要に応じて、固定数の遅延セルを有する遅延線の範囲を超えてスイッチオン時間範囲を拡張することが可能である。
【0055】
遅延線変調器(本明細書では遅延線再使用変調器と呼ぶことがある)に関与する記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、セルカウント及びレンジのような遅延線制御パラメータを判定するための新しいアルゴリズムを含む他のスイッチオン時間コントローラと関連して、様々な特有の特徴を提供する。また、説明されたスイッチオン時間コントローラオプションは、組み合わせ論理を用いて計算能力を提供することに関して特有である。また、説明されたスイッチオン時間コントローラオプションは、自動スケーリングを提供することに関して特有である。
【0056】
いくつかの例において、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、LADC、及び/又は、パルス幅を制限する制限を有する電圧フィードフォワード(VFF)乗算器と互換性がある。そのような場合、説明されたスイッチオン時間コントローラオプションは、IADC及び/又はVFF乗算器制限内で動作することができる。セルカウント及びレンジを選択する前にエンドポイントの知識を必要とする従来のレンジ拡張方式とは対照的に、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、到達するまでエンドポイントが未知であるという点で特有である。また、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは自己判定型であり、したがって、適切な動作条件を選択するためにユーザの介入は必要とされない。また、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、動作中に所望のオン時間を判定するために回路を使用するという点でユニークである。
【0057】
他のスイッチオン時間コントローラと比較して、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、利点を維持しつつ、デジタルパルス幅変調器(DPWM)の動作範囲を増大させる。また、説明したスイッチオン時間コントローラオプションの影響は、DPWMの特性にほとんど影響を与えない(すなわち、非侵入型)。また、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、DPWMが、セルカウント制限を超えるパルス幅で動作することを可能にする。異なる例において、記載されたスイッチオン時間コントローラオプションは、性能を損なうことなく、PWMコントローラが任意の実用周波数(10kHz~10MHz)で動作する能力を提供する。また、説明したスイッチオン時間コントローラオプションは、オン時間値の連続範囲(離散値設定なし)をサポートする。
【0058】
従来のランプベースのPWMを広い連続周波数範囲で動作するように設計するには、複雑な回路と、電源電圧、信号対雑音、最小制御可能パルス幅におけるトレードオフが必要である。「レンジ拡張」回路を含めることによって、DPWM(セルカウント制限)オン時間は、性能のトレードオフ、著しいダイサイズの増大、又はコストの不利益なしに延長され、その他の方式で実用的となり得る一層広い範囲の応用例において単一デバイスを使用することが可能になる。自動スケーリング機能は、システムを構成する負担を軽減し、DPWMを広範囲の応用例で使用することを可能にする。
【0059】
この説明では、「結合する」という用語は、本記載と一致する機能的関係を可能にする接続、通信、又は信号経路を網羅し得る。例えば、デバイスAが或る行為を行うためにデバイスBを制御するための信号を生成する場合、第1の例においてデバイスAはデバイスBに結合され、又は、第2の例において、介在構成要素CがデバイスAとデバイスBとの間の機能的関係を実質的に変更しない場合には介在構成要素Cを介してデバイスAがデバイスBに結合されて、デバイスBがデバイスAによって生成された制御信号を介してデバイスAによって制御されるようにされる。
【0060】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図10C
【国際調査報告】