(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】てんかんと関連する併存症の処置におけるカンナビノイドの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20220418BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20220418BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20220418BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K31/352
A61P25/08
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542170
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(85)【翻訳文提出日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 GB2020050090
(87)【国際公開番号】W WO2020152438
(87)【国際公開日】2020-07-30
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ガイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルカー・クナッパーツ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ウォーリー
(72)【発明者】
【氏名】マリー・ウーリー-ロバーツ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA06
4C086ZC75
4C206AA01
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4C206ZA06
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、てんかんと関連する併存症の処置におけるカンナビジオール(CBD)の特定の組成物の使用に関する。一実施形態では、併存症は、驚くべきことに、発作が低減しない患者において改善されることが見出される。使用されるCBDは、CBDが全抽出物の98%(w/w)超で存在し、抽出物のその他の成分が特徴付けられている、高度に精製された大麻抽出物の形態である。特に、カンナビノイドテトラのヒドロカンナビノール(THC)は、0.02~0.1%(w/w)の量で存在する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
てんかんと関連する併存症の処置における使用のためのカンナビジオール(CBD)調製物であって、CBD調製物が、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含み、2%(w/w)以下の他のカンナビノイドが、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC);カンナビジオール-C1(CBD-C1);カンナビジバリン(CBDV);及びカンナビジオール-C4(CBD-C4)を含み、THCが、trans-THC及びcis-THCの混合物として存在する、カンナビジオール(CBD)調製物。
【請求項2】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して1.5%(w/w)以下のTHCを含む、請求項1に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項3】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.01%~約0.1%(w/w)のTHCを含む、請求項1に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項4】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.02%~約0.05%(w/w)のTHCを含む、請求項1に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項5】
trans-THC及びcis-THCの混合物が、約3.6:1のtrans-THC:cis-THCの比で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項6】
trans-THC及びcis-THCの混合物が、約0.8:1のtrans-THC:cis-THCの比で存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項7】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.1%~約0.15%(w/w)のCBD-C1を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項8】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.2%~約0.8%(w/w)のCBDVを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項9】
調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.3%~約0.4%(w/w)のCBD-C4を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項10】
処置されるてんかんと関連する併存症が、注意力/集中力;スティグマ項目;全体的な健康状態;言語及び社会活動の1つ又は複数である、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項11】
てんかんと関連する併存症が、発作の低減とは独立に改善される、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項12】
てんかんが、治療抵抗性てんかん(TRE)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項13】
治療抵抗性てんかんが、ドラベ症候群;ミオクロニー欠神てんかん;レノックス-ガストー症候群;病因不明の全般てんかん;CDKL5変異;アイカルディ症候群;結節性硬化症;両側多小脳回;Dup15q;SNAP25;及び熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES);良性ローランドてんかん;若年性ミオクロニーてんかん;点頭スパズム(ウエスト症候群);及びランドウ-クレフナー症候群のうちの1つである、請求項12に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項14】
CBDの用量が、5~50mg/kg/日である、請求項1から13のいずれか一項に記載の使用のためのCBD調製物。
【請求項15】
てんかんと関連するクオリティオブライフを処置する方法であって、てんかんと関連するクオリティオブライフドメインの処置における使用のためのカンナビジオール(CBD)調製物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、CBD調製物が、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含み、2%(w/w)以下の他のカンナビノイドが、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC);カンナビジオール-C1(CBD-C1);カンナビジバリン(CBDV);及びカンナビジオール-C4(CBD-C4)を含み、THCが、trans-THC及びcis-THCの混合物として存在する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、てんかんと関連する併存症の処置におけるカンナビジオール(CBD)の特定の組成物の使用に関する。一実施形態では、併存症は、驚くべきことに、発作が低減しない患者において改善されることが見出される。
【0002】
使用されるCBDは、CBDが全抽出物の98%(w/w)超で存在し、抽出物のその他の成分が特徴付けられている、高度に精製された大麻抽出物の形態である。特に、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC)は、0.02~0.1%(w/w)の量で存在する。
【背景技術】
【0003】
てんかんは、世界中の集団のおよそ1%において生じ(Thurmanら、2011)、そのうち70%は、利用可能な既存の抗てんかん薬物(AED)を用いててんかんの症状を適切に調節することができる。しかし、この患者群の30%(Eadieら、2012)は、利用可能なAEDから無発作を得ることができず、したがって、難治性又は「治療抵抗性てんかん」(TRE)に罹患しているとされる。
【0004】
難治性又は治療抵抗性てんかんは、2009年に国際抗てんかん連盟(ILAE: International League Against Epilepsy)によって、「持続的無発作を達成するように適切に選択され、使用される、耐容性が示された2つのAEDスケジュールの適切な試験(単剤療法としてであろうと組合せであろうと)の失敗」(Kwanら、2009)として定義された。
【0005】
生後最初の数年にてんかんを生じる個体は、しばしば処置が困難であり、したがって、しばしば治療抵抗性と呼ばれる。小児期に頻繁な発作を生じる子どもには、認知、行動及び運動の遅延を引き起こすおそれがある神経学的損傷がしばしば残る。
【0006】
小児期てんかんは、子ども及び若年成人において比較的よく見られる神経学的障害であり、有病率は100,000人当たりおよそ700人である。これは、集団当たりてんかんを有する成人の数の2倍である。
【0007】
子ども又は若年成人が発作を示す場合、普通は、原因を調査するために調査が行われる。小児期てんかんは、多くの異なる症候群及び遺伝子変異によって引き起こされる場合があり、したがって、こうした子どもについての診断が、時として(some time)行われうる。
【0008】
てんかんの主症候は、繰り返される発作である。患者が罹患しているてんかん又はてんかん症候群の型を決定するために、患者が経験している発作型の研究が行われる。臨床的観測及び脳波記録(EEG)試験が実施され、発作型は、下記のILAE分類に従って分類される。
【0009】
1981年に、ILAEによって提案された発作型の国際的分類が採用され、2010年に、ILAEによって改訂提案書が刊行されたが、1981年の分類がまだ入れ替わっていない。
図1は、改訂された用語について2010年の提案から適合させたものであり、部分という用語を焦点で置き換えるよう提案された変更を含む。更に、「単純部分発作」という用語は、「意識(awareness)/反応性が減損されていない焦点発作」という用語によって置き換えられ、「複雑部分発作」という用語は、「意識(awareness)/意識(consciousness)が減損されている焦点発作」という用語によって置き換えられている。
【0010】
発作が両側に分布しているネットワークにおいて生じ、急速に関与する全般発作は、強直間代発作(大発作);欠神発作(小発作);間代発作;強直発作;脱力発作及びミオクロニー発作の6つの亜型に分けることができる。
【0011】
また、発作が一方の半球のみに限定されるネットワークに由来する焦点(部分)発作は、下位分類に分けられる。ここで、発作は、前兆、運動性、自律神経性及び意識(awareness)/反応性を含む発作の1つ又は複数の特色に従って特徴付けられる。発作が局所発作として始まり、両側ネットワークに分布するように急速に進展する場合、この発作は、両側けいれん発作として公知であり、これは二次性全般発作(焦点発作から進展しており、もはや局所でない全般発作)を置き換えるよう提案された用語である。
【0012】
てんかん症候群は、しばしば多くの異なる発作型を示し、標準AEDの多くは、所与の発作型/亜型を処置することを標的とされているか、又はそれらに対してのみ有効であるため、患者が罹患している発作型を特定することが重要である。
【0013】
このような小児期てんかんの1つがドラベ症候群である。ドラベ症候群の発症は、ほとんど常に、以前は健康であり発達上は正常であった乳児において、生後1年以内に間代及び強直間代発作と共に生じる(Dravet、2011)。症状は、約5カ月齢にピークになる。長期的な焦点認知障害(dyscognitive)発作及び短時間の欠神発作等の他の発作は、1歳~4歳に生じる。
【0014】
ドラベ症候群の診断には、焦点発作及び全般発作の両方が必須であるとみなされており、ドラベ患者は、非定型欠神発作、ミオクロニー欠神発作、脱力発作及び非けいれん性てんかん重積症を経験する場合もある。
【0015】
発作は頻発し、治療抵抗性に進行するが、このことは、その発作が処置に対して十分に反応しないことを意味する。発作は長引き、5分を超えて継続する傾向もある。長期的な発作は、30分を超えて継続する発作又は次々に群発する発作であるてんかん重積症に至る場合がある。
【0016】
感染症が原因で、又は不確定の原因に起因して突然に、しばしば絶え間ない神経減少が原因で、予後は悪く、子どものおよそ14%が発作中に死亡する。患者は、知的障害及び生涯続く発作を発症する。知的機能障害は、50%の患者における重症から、それぞれ症例の25%を占める中程度及び軽度の知的障害まで、様々である。
【0017】
現在、ドラベ症候群に具体的に適応されるFDA承認処置は存在しない。標準ケアは、通常、以下の抗けいれん薬、クロバザム、クロナゼパム、レベチラセタム、トピラマート及びバルプロ酸の組合せを含む。
【0018】
スチリペントールは、クロバザム及びバルプロ酸との併用で、ドラベ症候群の処置について欧州で承認されている。米国では、スチリペントールは、2008年に、ドラベ症候群の処置のための希少疾病用医薬品(orphan designation)(Orphan Designation for the treatment of Dravet syndrome)の指定を受けたが、その薬物は、FDAでは承認されていない。
【0019】
てんかんを処置するために使用される強力なナトリウムチャネル遮断薬は、実際、ドラベ症候群を有する患者における発作頻度を増大する。最も一般的なものは、フェニトイン、カルバマゼピン、ラモトリギン及びルフィナミドである。
【0020】
管理には、ケトン食療法、並びに身体的及び迷走神経刺激も含まれうる。ドラベ症候群を有する多くの患者は、抗けいれん薬物に加えて、抗精神病薬物、刺激薬、及び不眠症を処置するための薬物で処置される。
【0021】
別のこのような小児期てんかん症候群が、レノックス-ガストー症候群(LGS)である。LGSは、てんかんの重症形態であり、ここで発作は、通常4歳未満に始まる。発作型は、患者ごとに様々であり、強直(身体の硬化、目の上方偏位、瞳孔の散大、及び呼吸パターンの変化)、脱力(突然の転倒を引き起こす筋緊張及び意識(consciousness)の短時間喪失)、非定型欠神(凝視発作(staring spell))、及びミオクロニー(急な筋肉の引きつり)が含まれる。比較的に短時間の無発作期間と組み合わさった頻繁な発作期間が存在する場合がある。
【0022】
LGSの発作は、しばしば「失立発作」と説明される。このような失立発作は、転倒した、傷害を受けた、椅子に崩れ落ちた又は表面で患者頭部を打ち付けた、又はそれらのおそれがあった、身体全体、体躯又は頭部を伴う発作(attack)又は発作(spell)(脱力、強直又は強直間代)と定義される。
【0023】
LGSを有するほとんどの患者は、発達遅延及び行動障害と共に、知的機能又は情報処理のある程度の減損を経験する。
【0024】
LGSは、脳形成異常、周産期仮死、重症の頭部損傷、神経系感染症、及び遺伝性変性又は代謝状態によって引き起こされうる。症例の30~35%では、原因を見出すことができない。
【0025】
LGSを有する患者における失立発作の処置を含む失立発作の第1選択処置は、通常、しばしばルフィナミド又はラモトリギンと組み合わされるバルプロ酸ナトリウム等の広域AEDを含む。考慮されうる他のAEDには、フェルバメート、クロバザム及びトピラマートが含まれる。
【0026】
併存症は、てんかん又はてんかん症候群と診断された多くの患者において生じる。
【0027】
併存症は、一次状態と同時に生じる1つ又は複数の更なる障害の存在として定義される。てんかんと関連する複数の併存状態が存在する。2007年のNINDSてんかん研究評価基準には、併存症は、評価基準(評価基準領域III:てんかん及びその処置と関連する併存症の防止、制限、及び逆転)の1つとして含まれ、医学研究所(Institute of Medicine)も、てんかんに関するIOM報告において、てんかん併存症を特定した。
【0028】
多くの状態がてんかんと併存しうるが、てんかんにおいて一般に生じる併存症には、精神疾患、認知障害、片頭痛、睡眠障害;心血管、呼吸器、炎症性障害及びてんかんにおける突然死(SUDEP)が含まれる。
【0029】
一部の抗てんかん医薬品は、認知機能障害、気分又は行動に悪影響をもたらすおそれがあり、これらの領域における既存の併存症を有する患者には、注意しながら使用されるべきである。AEDは、行動の有害効果を引き起こすおそれもあり、これらの効果は、共存の行動の併存症を有するヒトにおいてより一般に見ることができる。
【0030】
2009年に掲載された論文は、母集団の率よりもてんかんを有する集団における率が著しく高い、以下の併存状態を記載している(Seidenbergら、2009)。
【0031】
医学的:筋骨格系障害;胃腸管及び消化障害;呼吸器系障害;慢性疼痛障害;脳血管発作;片頭痛;腫瘍;関節炎;リウマチ;肥満;糖尿病;感染症;骨折及びアレルギー。
【0032】
精神医学的:うつ状態;不安;自閉症スペクトラム障害;発作間欠期の不快性障害;発作間欠期の行動症候群及びてんかんにおける精神病。
【0033】
認知的:注意欠陥多動性障害;学習障害;精神遅滞;アルツハイマー病及び認知症。
【0034】
Rosenbergら2017は、クオリティオブライフ(QOL)を、小児期てんかんにおけるクオリティオブライフ(QOLCE)の介護者により報告された質問票で測定した研究を記載している。てんかんを有する小児科患者が、CBDの12週間の前向きオープンラベル研究に登録された。活力/疲労;記憶;他の認知機能;支配感(control)/無力感(helplessness);社会的交流(social interaction);行動及び全体的クオリティオブライフの領域に改善が見られた。その群では、QOLの変化が、発作頻度又は有害効果の変化と相関していなかったことが報告されている。またその群では、このような質問票と関連する固有の偏りに加えて、対照薬群がない非盲検研究に関連する制限が認められている。
【0035】
本出願人は、てんかんを有する患者におけるCBDの特定組成物の投与が、てんかんと関連するある特定の併存症の処置に著しい影響を及ぼすことを示した。驚くべきことに、ある特定の併存症が、発作負荷の改善に関係なく患者において改善されたことが見出された。
【0036】
改善されることが見出された領域は、注意力及び集中力;スティグマ項目;全体的な健康状態;言語及び社会活動であった。これらの改善は、オープンラベル研究及び無作為化対照試験の両方で見られ、したがって、クオリティオブライフにおけるこのような改善の確かな証拠を提供する。
【0037】
使用されたCBDは、CBDが全抽出物の98%(w/w)超で存在し、抽出物のその他の成分が特徴付けられている、高度に精製された大麻抽出物の形態である。特に、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC)は、0.02~0.1%(w/w)の量で存在する。
【0038】
同時係属の国際特許出願第2019/207319号は、少量のカンナビノイドCBD-C1、CBDV、CBD-C4及びTHCを含む、植物から誘導された精製CBD調製物が、少量のカンナビノイドを含まない合成CBDよりも高い有効性を有するという驚くべき知見を記載している。
【0039】
これらのデータは、特に、植物から誘導された精製CBD調製物及び合成調製物におけるCBDの濃度が同じであったことを考慮すると、特に驚くべきことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】国際特許出願第2019/207319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、同じ植物から誘導された精製CBDが、てんかんと関連するある特定の併存症を改善する能力を実証する。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明の第1の態様によれば、てんかんと関連する併存症の処置における使用のためのカンナビジオール(CBD)調製物であって、CBD調製物が、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含み、2%(w/w)以下の他のカンナビノイドが、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC);カンナビジオール-C1(CBD-C1);カンナビジバリン(CBDV);及びカンナビジオール-C4(CBD-C4)を含み、THCが、trans-THC及びcis-THCの混合物として存在する、カンナビジオール(CBD)調製物が提供される。
【0043】
好ましくは、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して1.5%(w/w)以下のTHCを含む。
【0044】
より好ましくは、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.01%~約0.1%(w/w)のTHCを含む。
【0045】
更により好ましくは、CBDは、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.02%~約0.05%(w/w)のTHCを含む。
【0046】
更なる一実施形態では、trans-THC及びcis-THCの混合物は、約3.6:1のtrans-THC:cis-THCの比で存在する。
【0047】
より好ましくは、trans-THC及びcis-THCの混合物は、約0.8:1のtrans-THC:cis-THCの比で存在する。
【0048】
更なる一実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.1%~約0.15%(w/w)のCBD-C1を含む。
【0049】
更なる一実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.2%~約0.8%(w/w)のCBDVを含む。
【0050】
更なる一実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.3%~約0.4%(w/w)のCBD-C4を含む。
【0051】
好ましくは、処置されるてんかんと関連する併存症は、注意力/集中力;スティグマ項目;全体的な健康状態;言語及び社会活動の1つ又は複数である。
【0052】
より好ましくは、てんかんと関連する併存症は、発作の低減とは独立に改善される。
【0053】
更なる一実施形態では、てんかんは、治療抵抗性てんかん(TRE)である。
【0054】
好ましくは、治療抵抗性てんかんは、ドラベ症候群;ミオクロニー欠神てんかん;レノックス-ガストー症候群;病因不明の全般てんかん;CDKL5変異;アイカルディ症候群;結節性硬化症;両側多小脳回;Dup15q;SNAP25;及び熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES);良性ローランドてんかん;若年性ミオクロニーてんかん;点頭スパズム(ウエスト症候群);及びランドウ-クレフナー症候群のうちの1つである。
【0055】
好ましくは、CBDの用量は、5~50mg/kg/日である。
【0056】
本発明の第2の態様によれば、てんかんと関連するクオリティオブライフを処置する方法であって、てんかんと関連するクオリティオブライフドメインの処置における使用のためのカンナビジオール(CBD)調製物を、それを必要とする対象に投与する工程を含み、CBD調製物が、98%(w/w)以上のCBD及び2%(w/w)以下の他のカンナビノイドを含み、2%(w/w)以下の他のカンナビノイドが、カンナビノイドのテトラヒドロカンナビノール(THC);カンナビジオール-C1(CBD-C1);カンナビジバリン(CBDV);及びカンナビジオール-C4(CBD-C4)を含み、THCが、trans-THC及びcis-THCの混合物として存在する、方法が提供される。
【0057】
好ましくは、対象は、ヒトである。或いは、対象は、動物である。好ましくは、動物は、イヌである。
【0058】
本発明の実施形態を、添付の図を参照することにより以下に更に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】オープンラベル発作研究における症候ドメインの主成分分析を示すグラフである。
【
図2】無作為化対照試験における症候ドメインの主成分分析を示すグラフである。
【
図3】てんかんのラットモデルにおける発作指数比と認知能力の相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
定義
本明細書を説明するために使用される用語の一部の定義を、以下に詳説する。
【0061】
本願に記載されるカンナビノイドを、それらの標準的な略語と共に以下に列挙する。
【0062】
【0063】
先の表は、包括的なものではなく、参照のために本願において特定されるカンナビノイドを単に詳細に示す。今までに60種を超える異なるカンナビノイドが特定されており、これらのカンナビノイドは、以下の通り異なる群に分けることができる。植物性カンナビノイド;内在性カンナビノイド及び合成カンナビノイド(新規なカンナビノイド又は合成的に生成された植物性カンナビノイド又は内在性カンナビノイドでありうる)。
【0064】
「植物性カンナビノイド」は、自然に由来し、大麻植物に見出されうるカンナビノイドである。植物性カンナビノイドは、高度に精製された抽出物を生成するために植物から単離することができ、又は合成的に再生することができる。
【0065】
「高度に精製されたカンナビノイド抽出物」は、大麻植物から抽出され、高度に精製されたカンナビノイドが98%(w/w)以上の純度になるように、他のカンナビノイド及びカンナビノイドと共に同時抽出される非カンナビノイド成分が実質的に除去される程度まで精製されているカンナビノイドとして定義される。
【0066】
「合成カンナビノイド」は、カンナビノイド又はカンナビノイド様構造を有し、植物によってではなく化学的手段を使用して製造されている化合物である。
【0067】
植物性カンナビノイドは、カンナビノイドを抽出するために使用される方法に応じて、中性(脱炭酸形態)又はカルボン酸形態のいずれかとして得ることができる。例えば、カルボン酸形態の加熱は、カルボン酸形態のほとんどを中性形態に脱炭酸することが知られている。
【0068】
「治療抵抗性てんかん」(TRE)又は「難治性てんかん」は、2009年のILAE指針に従って、1つ又は複数のAEDの試験によって適切に調節されないてんかんとして定義される。
【0069】
「小児期てんかん」は、小児期にてんかんを引き起こすように生じるおそれがある多くの異なる症候群及び遺伝子変異を指す。これらの一部の例は、以下の通りである。ドラベ症候群;ミオクロニー欠神てんかん;レノックス-ガストー症候群;病因不明の全般てんかん;CDKL5変異;アイカルディ症候群;結節性硬化症;両側多小脳回;Dup15q;SNAP25;及び熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES);良性ローランドてんかん;若年性ミオクロニーてんかん;点頭スパズム(ウエスト症候群);及びランドウ-クレフナー症候群。多くの異なる小児期てんかんが存在するので、先の一覧は包括的ではない。
【0070】
「てんかんにおける併存症」は、てんかんに加えて生じる疾患又は状態を指す。これらには、以下が含まれる。医学的疾患又は状態:筋骨格系障害;胃腸管及び消化障害;呼吸器系障害;慢性疼痛障害;脳血管発作;片頭痛;腫瘍;関節炎;リウマチ;肥満;糖尿病;感染症;骨折及びアレルギー。精神医学的疾患又は状態:うつ状態;不安;自閉症スペクトラム障害;発作間欠期の不快性障害;発作間欠期の行動症候群及びてんかんにおける精神病。認知疾患又は状態:注意欠陥多動性障害;学習障害;精神遅滞;アルツハイマー病及び認知症。
【0071】
「クオリティオブライフ(QOL)尺度」は、患者の状態が、患者のクオリティオブライフにどのように影響するかに関して質問する、患者又は患者の介護者が受ける質問票又は調査である。これらは、患者の生活に対する疾患の影響をモニタリングし、処置がこのような領域の改善を可能にするかどうかを決定するために使用される。
【0072】
詳細な説明
高度に精製されたCBD抽出物の調製
以下は、以下の実施例で使用した公知の一定の組成を有する、植物から誘導された精製CBDの生成を記載する。
【0073】
つまり、使用した薬物物質は、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)Lの化学種を含有する高CBDの液体二酸化炭素抽出物であり、これを、溶媒結晶化法によって更に精製してCBDを得た。結晶化プロセスは、特に98%超のCBDを得るために、他のカンナビノイド及び植物成分を除去する。CBDは、合成的にではなく大麻植物から生成されるので、高度に精製されるが、CBDと同時に生成され、同時に抽出される少量の他のカンナビノイドが存在する。これらのカンナビノイド及びこれらのカンナビノイドが医薬品に存在する量の詳細は、以下の通りである。
【0074】
【0075】
一部の実施形態では、CBD調製物は、テトラヒドロカンナビノール(THC)を含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約1%、約2%、約3%、約4%、又は約5%までのTHCを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して0.15%以下のTHCを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.01%~約0.1%のTHCを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.02%~約0.05%のTHCを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して少なくとも約0.1%のTHCを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して少なくとも約0.02%のTHCを含む。一部の実施形態では、THCは、Δ9-THCを含む。
【0076】
一部の実施形態では、THCは、異なる異性体の混合物として存在する。一部の実施形態では、THCは、trans-THC及びcis-THCを含む。一部の実施形態では、trans-THC及びcis-THCは、約5:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、trans-THC及びcis-THCは、約3.5:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、trans-THC及びcis-THCは、約2:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、trans-THC及びcis-THCは、約1:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、trans-THC及びcis-THCは、約0.8:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在する。
【0077】
一部の実施形態では、cis-THCは、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCの混合物として存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約20:1~1:20((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約15:1~1:15((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約10:1~1:10((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約9:1~1:9((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約5:1~1:5((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約3:1~1:3((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約2:1~1:2((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約1:1((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。一部の実施形態では、(-)-cis-THC及び(+)-cis-THCは、約9:1((-)-cis-THC:(+)-cis-THC)の比で存在する。
【0078】
一部の実施形態では、CBD調製物は、THC以外の1つ又は複数のカンナビノイドを含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して2%以下のCBD以外のカンナビノイドを含む。
【0079】
一部の実施形態では、CBD調製物は、カンナビジバリン(CBDV)を含む。一部の実施形態では、CBDVは、(-)-trans-CBDVイソ型を含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.2%~約0.8%のCBDVを含む。
【0080】
一部の実施形態では、CBD調製物は、CBD-C4(CBD-C4)を含む。一部の実施形態では、CBD-C4は、(-)-trans-CBD-C4イソ型を含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.3%~約0.4%のCBD-C4を含む。
【0081】
一部の実施形態では、CBD調製物は、CBD-C1(CBD-C1)を含む。一部の実施形態では、CBD-C1は、(-)-trans-CBD-C1イソ型を含む。一部の実施形態では、CBD調製物は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約0.1%~約0.15%のCBD-C1を含む。
【0082】
一部の実施形態では、CBD調製物に存在するカンナビノイドの少なくとも1つの少なくとも一部が、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在するCBDの少なくとも一部が、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在するTHCの少なくとも一部が、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在するカンナビノイドの少なくとも1つの実質的にすべてが、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在する実質的にすべてのCBDが、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在する実質的にすべてのTHCが、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、CBD調製物に存在するカンナビノイドの実質的にすべてが、大麻植物材料から単離される。一部の実施形態では、大麻植物材料は、カンナビス・サティバ、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)、又はカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)植物に由来する。一部の実施形態では、大麻植物は、高CBDを含有する大麻化学種である。一部の実施形態では、大麻植物は、高CBDを含有するカンナビス・サティバLの大麻化学種である。一部の実施形態では、大麻植物材料は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約5%~約20%のCBDを含む。一部の実施形態では、大麻植物材料は、調製物におけるカンナビノイドの総量に対して約10%~約15%のCBDを含む。一部の実施形態では、大麻植物材料は、約3.5:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在するtrans-THC及びcis-THCを含む。一部の実施形態では、大麻植物材料は、約0.8:1(trans-THC:cis-THC)の比で存在するtrans-THC及びcis-THCを含む。
【実施例1】
【0083】
オープンラベル研究データの主成分分析(PCA)
主成分分析(PCA)は、可能な相関変数の一連の観測値を、主成分と呼ばれる線形的に無相関の変数の一連の値に変換するために直交変換を使用する統計手順である。
【0084】
この変換は、第1の主成分が、可能な最大の分散を有し(可能な限り多くのデータの変動性を占める)、続く各成分が順に、先行成分に直行するという制約の下で可能な最大の分散を有するようなやり方で定義される。
【0085】
PCAは、データ集団の間の関連性を可視化するための有用なツールであり、治療抵抗性てんかんを有する患者におけるカンナビジオール(CBD)のオープンラベル研究中に改善された症候ドメインを決定するために、本発明の実施例で使用した。
【0086】
材料及び方法
重症の小児期起始治療抵抗性てんかん(TRE)を有する子ども及び若年成人を、大麻植物から得られたカンナビジオール(CBD)の高度に精製された抽出物を用いて試験した。研究への参加は、CBDのための拡大アクセスコンパッショネート使用(expanded access compassionate use)プログラムの一部であった。
【0087】
すべての患者が、4週間のベースライン期間に登録し、その間に親/介護者は、前向き発作日誌を記し、すべての可算の運動発作型を記述した。
【0088】
次に患者は、患者のベースラインの抗てんかん薬物(AED)レジメンに加えて、ゴマ油中、公知の一定の組成の高度に精製されたCBD抽出物(98%w/w超のCBD)を5mg/kg/日の用量で受けた。
【0089】
1日用量は、不耐性が生じるか、又は50mg/kg/日の最大用量が達成されるまで、2~5mg/kgの増分で徐々に増大した。
【0090】
患者は、2~4週間の一定間隔で診察を受けた。血液、肝臓、腎機能、及び併用AEDレベルについての臨床検査が、ベースラインにおいて、及び12週間の研究を通して一定間隔で実施された。
【0091】
小児期てんかんにおけるクオリティオブライフ(QOLCE)調査を使用して、複数のQOLドメインを測定した。介護者は、ベースラインにおいて、及び12週間の研究後に調査を完了した。QOLCE質問票により、身体機能;認知機能;精神的安定;社会的機能及び行動の5つの下位ドメインに分けられた91項目を評価した。全体的な健康状態も記録した。
【0092】
PCAを、収集したQOLCEデータ及び発作の低減で行って、参加者が、発作の低減の結果としてある特定のQOL領域の低減を経験したかどうか、又は発作の低減として試験薬物への反応とは独立なQOLドメインの低減があったかどうかを決定した。
【0093】
結果
図1は、QOLCE調査から得られたデータの主成分分析を詳細に示す。
【0094】
F1軸上のゼロポイントの右にプロットされているQOLドメインは、ベースラインを上回る改善を示したドメインである。それとは逆に、F1軸上のゼロポイントの左にプロットされているQOLドメインは、ベースライン尺度を上回る改善を示さなかったドメインである。
【0095】
F2軸上のゼロポイントの上にプロットされているQOLドメインは、発作の低減を経験した参加者において改善されたドメインであり、F2軸上のゼロポイントの下にプロットされているQOLドメインは、発作の低減にもかかわらず改善された領域である。
【0096】
以下のTable 2(表3)は、観測の寄与百分率を更に詳細に示し、Table 3(表4)は、観測のコサイン二乗を提供する。
【0097】
【0098】
【0099】
これらのデータは、クオリティオブライフと関連するいくつかの領域において(F1軸のゼロから右に)改善があったことを実証している。これらの領域は、注意力及び集中力;QOL項目;活力/疲労;支配感/無力感及びスティグマ項目であった。
【0100】
支配感/無力感及びスティグマ項目の領域において、驚くべきことに、発作の改善なしに改善が観測された(バイプロットの右下領域)。
【0101】
結論
クオリティオブライフと関連するいくつかの改善領域が見出された。これらの非常に重要な領域の改善により、患者は、より良好なクオリティオブライフを享受することができよう。これらの領域のいくつかにおいて、発作の低減に関係なく改善が見られたことは、医薬品がこれらの患者の発作の低減において無効であるにもかかわらず、患者がクオリティオブライフの改善を享受することを意味する。このことは、これらの患者が治療抵抗性であり、研究前に少なくとも3種の抗てんかん薬物を試して失敗してきたことを考慮すると、特に驚くべきことである。
【実施例2】
【0102】
無作為化対照試験のプールされた研究データの主成分分析(PCA)
実施例1に記載される通り、先のPCAは、いくつかの変数を有するデータを精査するための有用なツールである。ドラベ症候群(1つの試験)及びレノックス-ガストー症候群(LGS)(2つの試験)と関連する治療抵抗性てんかんを有する子ども及び若年成人で3つの無作為化対照臨床試験からプールされたデータを使用して生成したデータで、類似の分析を行った。
【0103】
材料及び方法
LGSと関連する発作の処置としてのCBDの2つのプラセボ対照研究において、治療抵抗性と定義された患者にカンナビジオール(CBD)を付加型処置として使用した。患者は、中央値6のAEDの使用を既に試み、停止しており、中央値3のAEDで維持されていた。
【0104】
第1の研究は、カンナビジオール経口溶液(CBD-OS)対プラセボの1:1の無作為化二重盲検による14週間の比較であった。処置期間は、2週間の滴定期間に続く12週間の維持期間からなっていた。その処置期間に、10日間の漸減期間及び4週間の追跡期間が続いた。この研究は、20mg/kg/日のカンナビジオールの有効性、安全性及び耐用性をプラセボと比較して決定することを目的としていた。
【0105】
第2の研究は、2つの用量レベルのカンナビジオール(10mg/kg/日及び20mg/kg/日)対プラセボの1:1:1の無作為化二重盲検による14週間の比較であった。処置期間は、2週間の滴定期間に続く12週間の維持期間からなっていた。その処置期間に、10日間の漸減期間及び4週間の追跡期間が続いた。この研究は、2つの用量レベルのCBD-OSの有効性、安全性及び耐用性をプラセボと比較して決定することを目的としていた。プラセボ群の患者は、2つの等量コホートに分けられ、半分は10mg/kg/日の投薬体積を受け、半分は20mg/kg/日の投薬体積を受けた。
【0106】
ドラベ症候群と関連する発作の処置としてのCBDのプラセボ対照研究において、治療抵抗性と定義された患者にCBDを付加型処置として使用した。研究は、カンナビジオール経口溶液(CBD-OS)対プラセボの1:1の無作為化二重盲検による14週間の比較であった。処置期間は、2週間の滴定期間に続く12週間の維持期間からなっていた。その処置期間に、10日間の漸減期間及び4週間の追跡期間が続いた。この研究は、20mg/kg/日のカンナビジオールの有効性、安全性及び耐用性をプラセボと比較して決定することを目的としていた。
【0107】
小児期てんかんにおけるクオリティオブライフ(QOLCE)調査を使用して、複数のQOLドメインを測定した。介護者は、ベースラインにおいて、及び12週間の処置後に調査を完了した。QOLCE質問票により、身体機能;認知機能;精神的安定;社会的機能及び行動の5つの下位ドメインに分けられた91項目を評価した。全体的な健康状態も記録した。
【0108】
結果
図2は、QOLCE調査から得られたデータの主成分分析を詳細に示す。
【0109】
実施例1に記載される通り、QOLドメインの改善を示した領域は、F1軸上のゼロの右にプロットされており、更に発作の低減があった領域は、F2軸上のゼロポイントの上に見出される。
【0110】
以下のTable 4(表5)は、観測の寄与百分率を更に詳細に示し、Table 5(表6)は、観測のコサイン二乗を提供する。
【0111】
【0112】
【0113】
わかる通り、実施例1と比較して、クオリティオブライフと関連する改善が追加の領域に見られた。これらの領域は、クオリティオブライフ項目;全体的な健康状態;社会的交流;社会的活動;注意力/集中力;全体的クオリティオブライフ;記憶;言語;支配感/無力感;スティグマ項目及び認知であった。
【0114】
再び驚くべきことに、患者は発作負荷の改善を経験しなかったにもかかわらず、一部のQOL領域が改善された。このような改善が観測された領域は、記憶;言語;支配感/無力感;スティグマ項目及び認知であった。
【0115】
結論
実施例1に記載される拡大アクセスデータによって示唆される通り、ドラベ症候群及びレノックス-ガストー症候群を有する患者におけるCBDの無作為化対照臨床試験からのこれらのデータにおいて、特定のQOLドメインに発作の低減を除く改善があった。
【0116】
てんかんに罹患している患者においては、しばしば、発作負荷が最も甚大な被害をもたらす疾患部分というわけではない。言語及び記憶等のある特定のQOL領域の低減は、てんかん症候群に罹患している患者及び患者の介護者を苦しめる場合がある。これらの領域のドメインにおける改善は、まだ発作を経験しているにもかかわらず、患者及び患者の介護者がより通常に近い生活を送ることを可能にする。
【実施例3】
【0117】
無作為化対照試験のレノックス-ガストー研究データの生物統計学的分析
生物統計学的分析は、排他的に医薬品及び健康と関係する生物学、特に医学的生物統計学における広範な議論への統計の適用である。
【0118】
以下の実施例は、生物統計学的分析を使用して、レノックス-ガストー症候群を有する患者におけるカンナビジオールの無作為化対照試験で収集したQOLデータの傾向を探索する。
【0119】
方法
この研究は、カンナビジオール経口溶液(CBD-OS)対プラセボの1:1の無作為化二重盲検による14週間の比較であった。処置期間は、2週間の滴定期間に続く12週間の維持期間からなっていた。その処置期間に、10日間の漸減期間及び4週間の追跡期間が続いた。この研究は、20mg/kg/日のカンナビジオールの有効性、安全性及び耐用性をプラセボと比較して決定することを目的としていた。
【0120】
小児期てんかんにおけるクオリティオブライフ(QOLCE)調査を使用して、複数のQOLドメインを測定した。介護者は、ベースラインにおいて、及び12週間の処置後に調査を完了した。QOLCE質問票により、身体機能;認知機能;精神的安定;社会的機能及び行動の5つの下位ドメインに分けられた91項目を評価した。全体的な健康状態も記録した。
【0121】
結果
以下のTable 6(表7)は、変化がなかった領域(⇔によって示される)又は中央値の間に10ポイント超の差があった領域(↑によって示される)、及びこの変化が統計的に有意であったかどうか(*によって示される)について、詳細に示す。
【0122】
【0123】
わかる通り、記憶及び言語のQOLドメインにおいて、ベースラインを上回る著しい増大があった。このことは、実施例2のプールされたデータの分析において改善が見出された領域と一致している。
【0124】
興味深いことに、クオリティオブライフが低下したドメインはなかった。
【0125】
結論
この実施例に提示されたデータは、言語及び記憶のQOL領域の改善を裏付けている。より小さい組のデータのこの分析は、レノックス-ガストー症候群を有する患者における特定のQOLドメインの改善の証拠を強力に裏付けている。
【実施例4】
【0126】
オープンラベル研究データの症例研究分析
実施例1~3は、ドラベ症候群及びレノックス-ガストー症候群を有する患者における特定のクオリティオブライフドメインの改善の詳細を示す。
【0127】
本発明の実施例は、実施例1に記載される拡大アクセスプログラムの一部として研究した、更なるてんかん症候群に関する更なるデータを提供する。
【0128】
方法
重症の小児期起始治療抵抗性てんかん(TRE)を有する子ども及び若年成人を、大麻植物から得られたカンナビジオール(CBD)の高度に精製された抽出物を用いて試験した。研究への参加は、CBDのための拡大アクセスコンパッショネート使用プログラムの一部であった。
【0129】
すべての患者が、4週間のベースライン期間に登録し、その間に親/介護者は、前向き発作日誌を記し、すべての可算の運動発作型を記述する。
【0130】
次に患者は、患者のベースラインの抗てんかん薬物(AED)レジメンに加えて、ゴマ油中、公知の一定の組成の高度に精製されたCBD抽出物(98%w/w超のCBD)を5mg/kg/日の用量で受けた。
【0131】
1日用量は、不耐性が生じるか、又は50mg/kg/日の最大用量が達成されるまで、2~5mg/kgの増分で徐々に増大した。
【0132】
患者は、2~4週間の一定間隔で診察を受けた。血液、肝臓、腎機能、及び併用AEDレベルについての臨床検査が、ベースラインにおいて、及び12週間の研究を通して一定間隔で実施された。
【0133】
クオリティオブライフは、医師、患者/介護者又はその両方のいずれかによって記録され、各訪問時に、非常に悪化した;かなり悪化した;悪化した;変化なし;わずかに改善された;かなり改善された又は非常に改善された、の尺度によって示された。
【0134】
結果
以下のTable 7(表8)は、オープンラベル研究においててんかん症候群に罹患している患者から、研究期間(12~108週間後)の最後に得られた結果を詳細に示す。
【0135】
【0136】
【0137】
Table 7(表8)において観測される通り、結節性硬化症;CDKL5;スタージ-ウェーバー;ドーゼ症候群;アンジェルマン症候群;SNAP25;熱性感染症関連てんかん症候群(FIRES);DUP15Q及びアイカルディ症候群を有すると診断された患者において、クオリティオブライフの観測可能な改善があった。
【0138】
データが記録された患者39人のうち34人が、プラスの反応を示した(わずかに改善された;かなり改善された又は非常に改善された)。このようなデータは、オープンラベル手段を介して、したがって偏りの余地を残して収集されたが、より十分に研究されたドラベ症候群及びレノックス-ガストー症候群を除く更なるてんかん症候群においてクオリティオブライフが改善されるという証拠を提供する。
【0139】
結論
実施例において提示されたデータは、クオリティオブライフ尺度の改善が、特定のてんかん症候群に制限されず、様々な異なる小児期起始治療抵抗性てんかん症候群に罹患している患者集団に見られることを示唆している。
【実施例5】
【0140】
ラットの認知能力におけるカンナビジオールの有効性
CBDは、自然再発性発作を示すラットの認知能力の悪化を修復しうることが既に示されている。しかし、CBDは、これらの動物の発作率も改善した。
【0141】
認知能力の改善が、単にCBDによる発作重症度の低下の結果であるかどうかを理解するために、発作スコアと行動能力の相関を、本発明の実施例においてピアソンの相関係数によって評価した。
【0142】
方法
てんかんの誘導
ウィスター系雄ラット(Harlan Envigo社、UK;日齢:P21~28;体重>70g)において、リチウム-ピロカルピンによって誘導したてんかんの低強度のてんかん重積症(RISE)形態を使用した。
【0143】
動物を、12時間:12時間の暗:明サイクル、室温21℃及び湿度50±10%で、研究期間を通して自由に食餌及び水を摂取させて維持した。誘導日から4~8週以内にてんかんと分類された動物だけを、本発明の研究において使用して、任意の加齢に関連する変動性を最小限に抑えた。
【0144】
研究設計
発作負荷と認知能力の間に相関が存在するかどうか、並びにこの関係に対するCBDの影響を理解するために、てんかんラット20匹を2つの群に分け、動物10匹を、飲料水中200mg/kgのCBDで6週間処置し、動物10匹は、全研究期間中、ビヒクル(3.5%Kolliphor(登録商標)HS、Sigma-Aldrich社、Poole、UK)だけを受けた。
【0145】
ビヒクルで処置した健康なラット10匹の群も追加した。薬物/ビヒクル処置を、行動実験中継続した(7及び8週間の薬物処置)。
【0146】
薬物及び化学物質
植物起源の高度に精製されたCBD(>98%w/w)を、実験で使用した。
【0147】
発作のビデオモニタリング及び行動評価
すべての動物を、6週間の全研究期間中1日24時間、ビデオでモニタリングした。CCTVカメラ(TP-101BK、Topica社、Taiwan)20台を確立し、PCに接続し、ビデオ映像をZoneminder(v1.2.3;Triornis Ltd.社、Bristol、UK)ソフトウェアを使用して記録した。
【0148】
最初の4日(処置の開始時)及び最後の4日(行動実験の開始前)から、明期(07:00~19:00)中に得られたビデオ映像を、オフラインで符号化して、ラットの行動を分析した。
【0149】
盲検の独立な研究者を、修正Racineスケールを使用してけいれん性行動を特定し、符号化するように訓練した。スコア≧3は、明らかに特定可能な運動性けいれんを反映していたので、これらのスコアを記録し、結果に含めた。
【0150】
その後、動物の発作指数を、各重症度スコア(Racineスケール)に、観測期間中の対応する頻度(発生回数)を掛けることによって計算した。
【0151】
発作指数比は、式:発作比=(最後の瓶の平均発作指数)/(最初の瓶の平均発作指数)を使用することによって、発作指数から計算した。したがって、発作比が高いほど、疾患の悪化を示す。
【0152】
認知機能評価
床レベルから72cm上のテーブル上に乗せたPlexiglas製のホールボード装置(70×70×45cm)を使用して、動物の認知機能を評価した。その装置は、装置の床に等しい間隔で開けられた、それぞれ直径2.5cmのホール16個からなっていた。各ラットを、ホールボードの中心に入れ、その装置を10分間自由に探索させた。
【0153】
4個の到達可能な餌を、動物ごとに無作為に選択されるように4個のホールに保ち、すべての試験日にわたって一定に保った。すべての他のホールに到達できない餌を置くことによって、嗅覚の手がかりを無効にした。
【0154】
試験開始前に、動物をホールボードに4日間慣れさせた(2日間は、餌なしで動物に試験活動領域を使用させ、続く2日間は、餌を用いて動物をタスクのルールに慣れさせた)。タスクを完了させるためのモチベーションを増強するために、試験当日、試験開始の4~5時間前は、動物から食餌を取り上げた。
【0155】
3日連続で試験を実施して、動物で毎日5回の試験を実施した。ヘッドディップを、後の分析のためにビデオカメラによって記録した。頭部が、少なくともげっ歯類の目のレベルまでホールを覗いた場合、ヘッドディップを点数化した。
【0156】
誤差は、餌が一度も置かれていないホールへのヘッドディップ(参照記憶誤差)又は餌を取り終わったホールへの再ディップ(作業記憶誤差)からなっていた。3日間にわたる試験動物による参照記憶誤差及び作業記憶誤差の総数を、認知能力の尺度として使用した。15回の試験にわたる参照及び作業記憶誤差の平均数を、動物ごとに計算した。
【0157】
統計的分析
発作指数と参照及び作業記憶誤差の回数との間の線形相関を、+1~-1の値(+1は、全陽性相関であり、-1は、全陰性相関である)を有するピアソン相関係数を使用して、動物ごとに評価した。
【0158】
相関は、非線形性及び線形関係の方向を反映しているが、その関係の勾配も非線形関係の多くの態様も反映しないことに留意されたい。すべての場合、p<0.05を有意とみなした。
【0159】
結果
図3は、ホールボード試験における発作指数比と認知能力の間の相関を詳細に示す。
【0160】
グラフAでは、ビヒクルで処置したラットにおいて、発作指数比と参照記憶誤差の回数との間に有意な相関は見出されなかった(R2=0.05533、p=0.05749、n=8)。
【0161】
グラフBでは、ビヒクルで処置したラットにおいて、発作指数比は、作業記憶誤差の回数と有意に相関していなかった(R2=0.03884、p=0.6399、n=8)。
【0162】
グラフCでは、CBDで処置したラットにおいて、参照記憶誤差の回数は、発作指数比と有意に相関していなかった(R2=0.2486、p=0.2085、n=8)。
【0163】
グラフDでは、CBDで処置した動物において、作業記憶誤差と発作指数比との間に有意な相関はなかった(R2=0.04755、p=0.6039、n=8)。
【0164】
結論
相関分析は、ビヒクル及びCBDで処置したRISE-SRSラットの両方によって、発作負荷と認知能力の間に存在する線形関係が示されなかったことを示した。
【0165】
そのことは、発作負荷及び認知能力に対するCBDの有益な効果が互いに独立であることを示唆している。
【0166】
全体的結論
まとめると、本明細書で提示される5つの実施例からのデータは、クオリティオブライフの改善における、植物起源の高度に精製されたCBDの有効性の証拠を提供している。
【0167】
特に、注意力/集中力;スティグマ項目;全体的な健康状態;言語及び社会活動を含む特定のQOLドメインに、改善が見られた。
【0168】
このような改善は、発作の低減とは独立に観察されることがわかったが、そのことは、その利益が、患者が罹患している発作の回数が低下した結果として改善されたのではなく、これらの特定領域の実際の改善であったことを示唆している。
【国際調査報告】