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特表2022-523496治療セッションを生成する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】治療セッションを生成する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20220418BHJP
【FI】
A61M21/02 B
A61M21/02 C
A61M21/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543542
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020052025
(87)【国際公開番号】W WO2020157056
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】2019/5046
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521331010
【氏名又は名称】オンコンフォート エスエー
【氏名又は名称原語表記】ONCOMFORT SA
【住所又は居所原語表記】Chaussee de Louvain 172, 1300 Wavre, Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】ジョリス,ディアヌ
(72)【発明者】
【氏名】テッセ,ジュリアン
(57)【要約】
治療セッションを生成するための方法およびシステム
この発明は、臨床治療の分野に関する。特に、この発明は、グラフィカルな刺激および/または音響的な刺激などの感覚的な刺激を介して対象者を制御する治療セッションの少なくとも一部を生成するシステムおよび方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが少なくとも一部の治療セッションを生成する方法であって、
- それぞれが感覚情報を表し、好ましくはその全体が実行されるべき視覚的および/または音響的なセグメントを表す複数のブロックを備える第1のデータベースを提供するステップと、
- 少なくとも前記治療セッションの一部を定義するスクリプトであって、前記第1のデータベースから選択された少なくとも2つのブロックの全体を逐次実行するよう指示するスクリプトを生成するステップと、
- 前記治療セッションの間に前記感覚情報、好ましくは視覚的および/または音響的なセグメント、が患者に提示されて前記複数のブロックが順次実行されるようにスクリプトを格納するステップと、を備え、
格納された前記スクリプトの実行中に、
- 要求されたイベントのユーザー入力を受けるステップと、
- 前記第1のデータベースから、患者の知覚を誘導するように構成された感覚情報、好ましくは前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素である資産を備えた少なくとも1つのイベントクラスブロックを選択するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、選択されたイベントブロックを実行する命令を、格納されたスクリプトに挿入するステップと、
- 好ましくは、選択されたイベントブロックの実行までの残り時間をユーザーに通知するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
格納されたセッションに少なくとも1つのイベントクラスブロックを挿入するステップは、
- 選択されたイベントブロックを、現在のブロックの後に実行されるスクリプト中の2つの既存ブロックの間に挿入するステップ、および/または、
- 選択されたイベントブロックを、現在のブロックの実行中または以後に実行されるスクリプト中の1以上の既存のブロックに併合するステップ、
を備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択されたイベントブロックがセッションの進行に挿入されたことを示す出力をGUIに提供するステップ、および、好ましくはカウントダウンタイマーを介して、選択されたイベントブロックの実行までの残り時間を示すビジュアルインジケータを提供するステップを備える請求項1または2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
- 前記スクリプトを生成する前に、前記セッションの要求された結果に係るユーザーの入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記生成するステップは、患者に特定の治療効果を誘発するように構成された、感覚情報、好ましくは前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素である資産を備えた少なくとも1つの成果クラスブロックを、前記第1のデータベースから選択するステップを備える請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
- 前記スクリプトの実行中に、前記セッションの要求された結果に係るユーザー入力を受け付けるステップと、
- 患者に特定の治療効果をもたらすように構成された前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素のような感覚的情報である資産を備える少なくとも1つの成果ブロックを第1のデータベースから選択するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、選択された成果ブロックを実行する命令を、格納されたスクリプトに挿入するステップとをさらに備える請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
- 前記スクリプトを生成する前に、前記セッションの要求された総持続時間に係るユーザー入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記生成するステップは、選択されたブロックの持続時間の合計が、格納された前記セッションの要求された総持続時間に対応するように、前記第1のデータベースからブロックを選択するステップを備える請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
- 総持続時間が調整された前記セッションの現在のブロックの実行中にユーザーの入力を受け付けるステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、格納されたスクリプトに追加または格納されたスクリプトから削除するための1以上のブロックを選択するステップであって、選択されたブロックの持続時間の合計が、格納されたセッションの、要求され調整された前記総持続時間に応じてセッションの持続時間を延長または短縮するようにするステップとをさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記セッションの進捗状況および前記セッションの総持続時間を示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に提供するステップを備える請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のデータベース内のブロックの少なくとも1つが、患者の定義された呼吸パターン、好ましくは定義された呼吸数および/または吸気・呼気比、を誘発するように構成された前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素である資産を備える呼吸クラスブロックとして分類される請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、順次再生される少なくとも2つの呼吸クラスブロックを選択するものであって、第1の呼吸クラスブロックは患者の標準呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有するものであり、第2の呼吸クラスブロックは調整された呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有するものである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、順次再生される少なくとも2つからなる一連の呼吸クラスブロックを選択するものであって、一連の各呼吸クラスブロックは、一定の呼吸パターンを定義し、かつ隣り合う呼吸クラスブロックを発展させるものである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記発展は、吸気および/または呼気の持続時間の漸進的な増加であって、一例で10~50%、より好ましくは20~40%、最も好ましくは25~35%、例えば33%の増加である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記呼吸クラスブロックの資産は、少なくとも1つの視覚的または音響的な資産であり、前記資産またはその一部は、患者の呼吸パターンが同期する定義可能な動作レートであるDMRを有し、前記DMRは、設定された時間間隔内の第1の領域と第2の領域との間のグラフィック要素の位置の変化によって定義される請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記呼吸クラスブロックの資産は、設定された時間間隔で繰り返される少なくとも1つの音響的な資産であって、前記時間間隔に患者の呼吸パターンが同期する請求項9から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、現在の呼吸ブロックの呼吸パターンと進行状況を提供するステップを備え、次のブロックの呼吸パターンと実行時間を示すGUI用の出力を提供するステップを任意に備える請求項9から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療セッションが (i) 導入フェーズ、 (ii) 深化フェーズ、 (iii) 移行フェーズ、 (iv) 再覚醒フェーズのうち少なくとも2つのフェーズを含み、各フェーズは少なくとも部分的に異なるブロックから構成され、少なくとも前記深化フェーズと他の1つのフェーズを定義するスクリプトが生成される請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
各ブロックには、第1のデータベースにおいて固有の識別コードが割り当てられ、第2のデータベースは、第1のデータベースの固有の識別コードのリストを含み、それぞれの固有の識別コードは、ブロックに関する参照情報を提供するブロック参照パラメータに関連付けられており、前記選択するステップは、第2のデータベースを参照して第1のデータベースから選択されたブロックを決定し、前記治療セッションを生成するステップを備える請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記固有の識別コードに関連付けられたブロック参照パラメータは、
- ブロックのクラスを示すクラスインジケータ:ブロッククラスは患者への影響の有無を示す、
- フェーズ識別子:セッションのどのフェーズがブロックに含まれるのに適しているかを示す、
- フェーズ重要度インジケータ:セッションの各フェーズの重要性の度合いを示す、
- 持続時間インジケータ、
- ブロック頻度識別子、
- 任意の、クラス固有パラメータ:ブロッククラスに固有のパラメータを示す、
- 任意の、イベント識別子:ブロックを使用できるイベントを示す、
- 任意の、セッション頻度識別子、
- 任意の、イベント併合識別子:ブロックを他のブロックに統合できるか否かを示す、
- 任意の、テーマ識別子:ブロックが言語非依存の資産を含む場合にテーマを示す、
- 任意の、言語識別子:ブロックが言語依存の資産を含む場合に言語を示す、
- 任意の、文化識別子:フロックが文化依存の資産を含む場合に文化を示す、
- 任意の、年齢識別子:ブロックが年齢層に依存する資産を含む場合に年齢層を示す、
- 任意の、認知識別子:ブロックが認知に依存する資産を含む場合に認知グループを示す、
のうちの1つ以上である請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療セッションの少なくとも一部を生成するシステムであって、
a) 複数のブロックからなるブロックデータベースモジュールと、
b) 前記治療セッションのスクリプトの少なくとも一部を生成する方法を実行するように構成された制御モジュールと、
を備えるシステム。
【請求項20】
前記ブロックデータベースモジュールは、前記複数のブロックを含む第1のデータベースと、複数の固有の識別コードを含む第2のデータベースとを備え、各識別コードは、前記第1のデータベースの1以上のブロックに関連付けられている請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御モジュールは、ユーザー入力を受け付け、受け付けたユーザー入力に関して格納されたセッションを修正するように構成されている請求項19または20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記ユーザー入力は、
- 1以上の調整可能な初期化パラメータ、
- 動的なセッション持続時間の調整指示、
- 動的なイベントの挿入指示、
のうちの1つである請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
生成されたセッションをレンダリングするように構成されたメディアレンダラーをさらに備える請求項19から22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されている請求項19から23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法を実行するために構成された、コンピュータプログラム、またはコンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品、またはコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラム製品、またはそのようなコンピュータプログラムもしくはコンピュータプログラム製品の組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、臨床治療の分野に属する。特に、この発明は、グラフィカルな刺激および/または音響的な刺激などの感覚的な刺激を介して患者を制御する治療セッション(一連の処置)の少なくとも一部を生成するシステムおよび方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
治療セッションは、患者の意識変容状態(ASC)を誘起するために臨床環境で使用できる。意識変容状態に浸っている間は、患者の自己知覚と周辺知覚が影響を受け、患者の感覚、知覚、思考の経験が変化し、患者の生理的反応や動作が暗示的にコントロールされやすくなる。
患者の意識状態を変化させるには、さまざまな手法がある。その中でも、特に効果が高いとされているのが、患者に催眠状態を起こさせる方法である。催眠状態とは、暗示がかかった意識状態のことをいう。この状態では、感覚、知覚、思考、行動などが大きく変化することがある。催眠状態は、薬物、集中(特定の対象に注意を向けること)、イメージや音などの感覚情報を用いて誘発できる。イメージや音は、集中によるストレス(リラックスできない状態になる)や薬物による副作用がなく、望ましい意識状態(暗示性の高まり)を作り出すことができるため、これらのカテゴリーの中で最も有望だと考えられている。また、他の様々な心理学的手法も意識の変容に寄与する。
【0003】
臨床環境では、訓練を受けた医療従事者による臨床催眠療法を用いて催眠状態を引き起こすのが一般的である。この療法は、患者に一連の聴覚刺激と図やイメージの暗示を与えることで行われ、患者をリラックスさせ、動きの減少または不在、現実との解離を特徴とする没入状態にできる。没入状態になると,患者の自己知覚や周辺知覚が変化し,身体的反応を制御できるようになる。例えば,催眠状態では,不安や痛みを管理したり,呼吸数や吸気・呼気比などの呼吸運動に影響を与えたりできる。近年、医療処置中におけるこのような治療法の可能性を認識する研究が増えてきている。例えば、ある研究(Liu Y. et al.; Radiotherapy and Oncology 2018; 127: 390)では、臨床催眠を適用することで、肺がんの放射線治療のための患者の呼吸運動をよりよくコントロールすることができ、プローブの配置や医療画像の撮影が容易になった。
【0004】
しかし、このような療法を臨床環境で行うことは、専門の人材の存在を必要とする困難な作業であることが多い。患者の感覚や動作を十分にコントロールすることは、適切な指導なしには困難である。また、医療従事者は、他の医療行為に気を取られ、患者の意識状態に注意を払うことができない場合が多く、これらの作業は煩雑である。US 2010/010289には、音響的または視覚的な手段で催眠体験の投与を制御するための例示的な医療用催眠装置が記載されている。この装置は、ユーザーの生理的パラメータを測定する複数のセンサーを備えることができる。センサーからのデータは、患者の神経学的な状態を判断するために使用され、ユーザーの潜在意識に向けられた指示や提案が、催眠体験中の適切なタイミングで提供されるようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療処置中に使用される場合、臨床催眠の暗示は、医療処置の環境およびシーケンスに適合されてもよい。解離体験に医療行為の特定の出来事を含めるために、比喩、指示、暗示が加えられてもよい。しかし、患者に警告メッセージを提供するとしても、患者の近くで医療従事者が行う行為は、意識の変容状態を乱し、患者をストレス状態に置く可能性がある。例えば、施術者が患者の体をつかんだり、触ったり、(冷たさを感じる)消毒液で皮膚を消毒したり、大きな音の出る機械を使用したり、不快な臭いのする化学物質を使用したり、火傷の治療をしたりしなければならないことがある。意識変容状態を無秩序に中断すると、治療セッションのプラスの効果を否定するだけでなく、不安のレベルを高めたり、患者に混乱を感じさせたりするなど、患者に悪影響を及ぼす可能性がある。また、痛みや不安などの感情や身体的な不快感があると、セッションに没頭することができない場合がある。現在のシステムでは、これらの問題を解決することができない。
【0006】
したがって、臨床環境などの治療セッションにおいて、患者の意識変容状態の達成を支援するシステム、装置および/または方法が必要とされている。好ましくは、そのシステムは、治療セッション中の患者の知覚および反応の制御を支援できる。好ましくは、そのシステムは、外部からの作用や刺激によって意識変容状態が中断されるのを防ぐのに役立つ。また好ましくは、そのシステムは、患者のよりよい協力を得て、(医療)処置がスムーズに行われるようにする。
【0007】
近年、心拍変動に関する研究が盛んに行われている。心拍変動(HRV)とは、連続する2つの心拍の間の時間間隔(単位:ms)の変動であると定義されている。心拍変動は、健康問題の指標として有用であると考えられているだけでなく、自律神経系と直接関連していることが確認されている。たとえば、「休息と消化」のシステムとして知られる副交感神経系は、迷走神経を利用して心拍数を下げ、HRVを高めることができる。
【0008】
多数の呼吸パラメータがHRVに影響を与えることは広く認められている(Tripathi; Ind J Aerospace Med 2004; 48(1): 64-75)。これらのパラメータには、特に、呼吸数(Schipke JD, et al.; J Clin Basic Cardiol 1999; 2: 92-4)および呼気/吸気の相対的なタイミング(Strauss-Blasche G et al.; Clin Exp Pharmacol Physiol 2000; 27: 601-6)が含まれる。実際、ゆっくりとしたペースの呼吸法は、患者のHRVを増加させると同時に、リラックス感を与えることが観察された(Kromenacker BW et al. 2018; 80(6):581-587)。他の研究では、吸気と呼気の比率が自律神経系の重要な調整要素であることが確認されている(Van Diest I et al; Appl Psychophysiol Biofeedback 2014; 29(3-4):171-80)。言い換えれば、呼吸法はHRVに対して制御機能を発揮するだけでなく、副交感神経を刺激する可能性がある。
したがって、心拍数や呼吸パラメータなど、治療セッション中の患者の身体反応の制御を支援しうるシステムも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この明細書に記載されているのは、治療セッションの少なくとも一部を生成するためのコンピュータ実装された方法であって、
- それぞれが感覚情報を表し、好ましくはその全体が実行されるべき視覚的および/または音響的なセグメントを表す複数のブロックを備える第1のデータベースを提供するステップと、
- 治療セッションの少なくとも一部を定義するスクリプトを生成するステップであって、前記第1のデータベースから選択された少なくとも2つのブロックの全体を逐次実行するよう指示するステップと、
- ブロックを続けて実行することにより治療セッション中に視覚的および/または音響的なセグメントを患者に提示するためのスクリプトを格納するステップと、を備える。
前記第1のデータベースは、患者の知覚を導くように構成された視覚的および/または音響的な要素などの感覚情報である資産(asset)を含む1以上のイベントクラスブロックをさらに備えていてもよく、前記方法は、
- 要求されたイベントの治療セッションのスクリプトの実行中に、ユーザーの入力を受け取るステップと、
- 前記ユーザー入力に応答して、前記第1のデータベースから少なくとも1つのイベントブロックを選択するステップと、
- 格納されたスクリプトに、現在のブロックの実行を中断することなく、選択されたイベントブロックを実行する命令を挿入するステップと、を備える。
格納されたセッションに少なくとも1つのイベントクラスブロックを挿入するステップは、
- 選択されたイベントブロックを、現在のブロックの後に実行されるスクリプト中の2つの既存ブロックの間に挿入するステップ、および/または
- 選択されたイベントブロックを、現在のブロックの実行中または以後に実行されるスクリプト中の1以上の既存のブロックに併合するステップを備えていてもよい。
【0010】
前記方法は、
- 選択されたイベントブロックがセッションの進行に挿入されたことを示すGUI用の出力を提供するステップと、好ましくはカウントダウンタイマーを介し、選択されたイベントの実行までの残り時間を示すビジュアルインジケータを任意に提供するステップとを備えていてもよい。
【0011】
第1のデータベースは、患者に対する特定の効果を得るように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素などの感覚的情報である資産を含む1以上の成果クラスブロックをさらに備えていてもよく、
前記方法は、
- セッションの要求された結果のスクリプトを生成する前に、ユーザーからの入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記生成するステップが、前記セッションの要求された結果に対応する患者に対する特定の効果を達成するように構成された前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素などの感覚情報である資産を含む少なくとも1つの成果クラスブロックを前記第1のデータベースから選択するステップを備え、
および/または、前記方法は、
- セッションの要求された結果のスクリプトの実行中に、ユーザーの入力を受領するステップと、
- 前記ユーザー入力に応答して、前記第1のデータベースから少なくとも1つの成果ブロックを選択するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、選択された成果ブロックを実行する命令を、格納されたスクリプトに挿入するステップをさらに備える。
格納されたセッションに少なくとも1つの成果クラスブロックを挿入するステップは、
-選択された成果ブロックを、現在のブロックの後に実行されるスクリプト中の2つの既存ブロックの間に挿入するステップ、および/または
-選択された成果ブロックを、現在のブロックの実行中または以後に実行されるスクリプト中の1以上の既存のブロックと併合するステップを備えていてもよい。
前記方法は、
-前記スクリプトを生成する前に、要求されたセッションの合計時間に係るユーザー入力を受け付けるステップをさらに備え、
前記選択するステップは、前記選択されたブロックの持続時間の合計が、前記格納されたセッションの要求された総持続時間に対応するように、前記第1のデータベースからブロックを選択するステップを備えていてもよい。
【0012】
前記方法は、
-現在のブロックの実行中に、セッションの調整された総持続時間のユーザー入力を受領するステップと、
-現在のブロックの実行を中断することなく、格納されたスクリプトに追加または格納された1以上のブロックを選択するステップであって、選択されたブロックの持続時間の合計が、格納されたセッションの、要求され調整された前記総持続時間に応じてセッションの持続時間を延長または短縮するステップをさらに備えていてもよい。
【0013】
前記方法は、前記セッションの進捗状況および前記セッションの総持続時間を示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に提供するステップを備えていてもよい。
前記第1のデータベース内のブロックの少なくとも1つが、患者の定義された呼吸パターン、好ましくは定義された呼吸数および/または吸気・呼気比、を誘発するように構成された前記セグメントの視覚的および/または音響的な要素である資産を備える呼吸クラスブロックとして分類されてもよい。
前記方法は、順次再生される少なくとも2つの呼吸クラスブロックを選択するものであって、第1の呼吸クラスブロックは患者の標準呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有するものであり、第2の呼吸クラスブロックは調整された呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有するものであってもよい。
【0014】
前記方法は、順次再生される少なくとも2つからなる一連の呼吸クラスブロックを選択するものであって、一連の各呼吸クラスブロックは、一定の呼吸パターンを定義し、かつ隣り合う呼吸クラスブロックを発展させるものであってもよい。
前記発展は、吸気および/または呼気の持続時間の漸進的な増加であって、一例で10~50%、より好ましくは20~40%、最も好ましくは25~35%、例えば33%の増加であってもよい。
前記呼吸クラスブロックの資産は、少なくとも1つの視覚的または音響的な資産であり、前記資産またはその一部は、患者の呼吸パターンが同期する定義可能な動作レートであるDMRを有し、前記DMRは、設定された時間間隔内の第1の領域と第2の領域との間のグラフィック要素の位置の変化によって定義されてもよい。
【0015】
前記呼吸クラスブロックの資産は、設定された時間間隔で繰り返される少なくとも1つの音響的な資産であって、前記時間間隔に患者の呼吸パターンが同期してもよい。
前記方法は、現在の呼吸ブロックの呼吸パターンと進行状況を提供するステップを備え、次のブロックの呼吸パターンと実行時間を示すGUI用の出力を提供するステップを任意に備えていてもよい。
前記治療セッションが (i) 導入フェーズ、 (ii) 深化フェーズ、 (iii) 移行フェーズ、 (iv) 再覚醒フェーズのうち少なくとも2つのフェーズを含んでもよく、各フェーズは少なくとも部分的に異なるブロックから構成され、少なくとも前記深化フェーズと他の1つのフェーズを定義するスクリプトが生成されてもよい。
【0016】
各ブロックには、第1のデータベースにおいて固有の識別コードが割り当てられ、第2のデータベースは、第1のデータベースの固有の識別コードのリストを含み、それぞれの固有の識別コードは、ブロックに関する参照情報を提供するブロック参照パラメータに関連付けられており、前記選択するステップは、第2のデータベースを参照して第1のデータベースから選択されたブロックを決定し、前記治療セッションを生成するステップを備えていてもよい。
【0017】
前記固有の識別コードに関連付けられたブロック参照パラメータは、以下のうちの1つ以上である。
- ブロックのクラスを示すクラスインジケータ:ブロッククラスは患者への影響の有無を示す、
- フェーズ識別子:セッションのどのフェーズがブロックに含まれるのに適しているかを示す、
- フェーズ重要度インジケータ:セッションの各フェーズの重要性の度合いを示す、
- 持続時間インジケータ、
- 任意の、クラス固有パラメータ:ブロッククラスに固有のパラメータを示す、
- 任意の、イベント識別子:ブロックを使用できるイベントを示す、
- 任意の、イベント併合識別子:ブロックを他のブロックに統合できるか否かを示す、
- 任意の、テーマ識別子:ブロックが言語非依存の資産を含む場合にテーマを示す、
- 任意の、言語識別子:ブロックが言語依存の資産を含む場合に言語を示す。
【0018】
さらに、治療セッションの少なくとも一部を生成するシステムであって、
a) 複数のブロックからなるブロックデータベースモジュールと、
b) 前記治療セッションのスクリプトの少なくとも一部を生成する方法を実行するように構成された制御モジュールと、
を備えるシステムが提供される。

前記ブロックデータベースモジュールは、前記複数のブロックを含む第1のデータベースと、複数の固有の識別コードを含む第2のデータベースとを備え、各識別コードは、前記第1のデータベースの1以上のブロックに関連付けられていてもよい。
【0019】
前記制御モジュールは、ユーザー入力を受け付け、受け付けたユーザー入力に関して格納されたセッションを修正するように構成されていてもよい。
前記ユーザー入力は、
- 1以上の調整可能な初期化パラメータ、
- 動的なセッションの持続時間の調整指示、
- 動的なイベントの挿入指示、
のうちの1つであってもよい。
前記システムが、生成されたセッションをレンダリングするように構成されたメディアレンダラーをさらに備えていてもよい。
さらに、この明細書に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム、コンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品、コンピュータが読取可能な媒体に格納されたコンピュータプログラム製品、またはそのようなコンピュータプログラムもしくはコンピュータプログラム製品の組み合わせが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下のこの発明の図の説明は、例示のために与えられているだけであり、この説明、その適用または使用を制限することを意図するものでない。図面において、同一の参照数字は、同一または類似の部品および特徴を指す。
図1図1は、4つのフェーズからなる例示的な治療セッションの例示的な視覚化を示す。
図2図2は、進行中のセッションに対する動的なセッション持続時間の調整を示す。
図3図3は、呼吸クラスブロックによって患者の呼吸パターンがどのように調整されるかを示している。
図4図4は、進行中のセッションに対する動的なイベントの挿入を示す図である。
図5図5は、統合イベント挿入のより詳細な例を示す図である。
図6図6は、治療セッションの少なくとも一部を生成するためのシステムの概略図であり、システム(S)は、ブロックデータベースモジュール(1100)と制御モジュール(1000)とを備える。
図7図7は、ユーザー(U)からの入力を受け取るためのグラフィカルユーザーインタフェース(100)の概略図である。
図8図8では、例示的なブロックのビジュアルコンテンツのスナップショットが提示されている。
図9図9では、例示的なブロックのビジュアルコンテンツの第2のスナップショットが提示されている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本文中で以下に使用されるように、単数形の「a」、「an」、「the」は、文脈が明確に他を示さない限り、単数形と複数形の両方を含む。
以下で使用される用語「comprise」、「comprises」(備える)は、「including」、「include」(含む)または「contain」、「contains」(含む)と同義であり、包括的または開放的であり、追加の未記載の部品、要素または方法ステップを除外しない。この明細書が特定の特徴、部品またはステップを「備える」製品またはプロセスに言及する場合、これは他の特徴、部品またはステップも存在する可能性を指すが、記載された特徴、部品またはステップのみを含む実施形態を指すこともある。
数字の範囲による数値の列挙は、これらの範囲内のすべての値と分数、および引用された終点を含む。
【0022】
パラメータ、量、期間などの測定可能な値に言及する際に使用される「およそ」という用語は、この明細書に開示された発明に適用される限りにおいて、指定された値の±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、さらに好ましくは±0.1%以下の変動を含むことを意図している。また、「約」という言葉がそれ自体を指す値も開示されていることを理解すべきである。
この明細書で引用されているすべての文献は、参照によりその全体が組み込まれているものとみなされる。
他に定義されていない限り、技術的および科学的な用語を含む、この発明で開示されているすべての用語は、当業者が通常与える意味を有する。さらなる指針として、この発明の説明で使用されている用語をさらに説明するための定義が含まれている。
【0023】
この発明は、患者の意識変容状態(ASC)を誘発するための治療または治療セッション(この明細書では「セッション」とも呼ぶ)を生成する方法に関する。意識変容状態は、合理的な機能が自分の通常の意識状態から明らかに変化するような、自分の個人的な経験の一般的な構成の短期的な変化と定義できる。意識変容状態は、目覚めている状態や眠っている状態とは異なる。治療セッションは、患者に変容した意識状態を誘起するための好ましい方法である催眠療法を含んでいてもよい。しかし、他の心理学的手法でも意識変容状態を実現できる。催眠療法は、例えば、医療用(臨床用)催眠療法、家庭用催眠療法、あるいは、あらゆる治療やウェルネス環境で提供される催眠療法であってもよい。意識変容状態に浸っている間、患者の自己知覚と周辺知覚が影響を受け、患者の感覚、知覚、思考の経験が変化し、患者の生理的反応や動作が暗示的にコントロールされやすくなる。
【0024】
この治療法は、図1Aに例示されているように、典型的には4つの連続したフェーズから構成されている。
(i) 導入フェーズ:患者が変化した状態に浸る準備をするフェーズ。このフェーズでは、患者は、快適さ、安全性、およびリラックスした感覚を得られる。
(ii) 深化フェーズ:患者を変容した意識状態に置くフェーズ。この状態は、典型的には、現実からの解離と、治療で明示的に提案されていない限り、動きの欠如または減少を特徴とする。
(iii) 移行フェーズ:患者は示唆的な情報にさらされる。この情報は、治療中の特定の出来事を思い出したり、忘れたりするのを助けたり、患者特有の問題に対処するのを助けたりする。
(iv) 再覚醒フェーズ:患者の意識を通常の状態に戻すフェーズ。このフェーズでは、患者は通常の知覚に戻り、解離状態は終了する。
【0025】
しかし、当技術分野では、新しいフェーズを追加したり、特定の問題に対処するために現在のフェーズを修正したりするなど、治療のバリエーションが可能であることに留意すべきである。このように、記載されたフェーズは、治療を行うための最も基本的な要素を形成すると考えられるものの概要を示している。したがって、この発明の方法およびシステムは変更可能であり、本開示は、記載された4つのフェーズのみに限定されるものではないことが理解されるであろう。本開示では、(i) ~ (iv)の各フェーズは、少なくとも1つの「ブロック」、好ましくは複数の「ブロック」で構成されており、ブロックは、短い視覚的および/または音響的なセグメント(断片)であり、ブロックを順番に再生することで、治療セッションが生成される。ブロックで構成されるセッションの例を図2に示す。
【0026】
ここでいう「ブロック」(ビルディングブロック、ブロックパッケージ、ブロックインスタンスとも呼ばれる)とは、あらかじめ定義された一定の時間(例えば2~3分)の視覚的および/または音響的なセグメントなどの感覚的な情報を指す。実行されたブロックは、患者が体験できる視覚的なセグメントおよび/またはオーディオトラックを生成する。ブロックは、映画の短いシーンやオーディオトラックのセグメントのようなものである。ブロックには、あらかじめ定義された視覚的および/または音響的なセグメントが含まれている。視覚的なセグメントは、2次元または3次元で、非VR(バーチャルリアリティ)またはVRのいずれかである。非VRの視覚的なセグメントは、患者の頭部が患者の外部基準フレームに対して相対的に動いても静的なままである。VRビジュアルセグメント(視覚的なセグメント)は、VRヘッドセットで見たときに、外部基準フレームに対する患者の頭部の動きに応じて動的に調整される。音響的なセグメントは、モノラル、ステレオ、またはその他(没入型サウンド、バイノーラル、ダブルインダクション、サブリミナル、サラウンド、3Dオーディオエフェクトなど)であってもよい。また、非VRであっても、VR対応であってもよい。ブロックは、ここではビジュアルおよび/またはオーディオコンテンツの観点から説明されているが、ブロックには、メディアレンダーによってレンダリングされる前記ビジュアルおよび/またはオーディオコンテンツを表すデータが含まれていることが理解される。ブロックの持続時間に関するデータは、ブロックに関連付けられている。
【0027】
ブロックには、1以上の資産が含まれている。資産は、視覚的または音響的である。資産は、ブロックの視覚的および/または音響的なセグメント中のシーンの要素(視覚的および/または音響的)である。視覚的な資産とは、海底、海、植物、海の生き物など、シーン内のグラフィック要素であり、それぞれが視覚的な資産である可能性があるが、通常は動いている。ブロックに含まれるデータは、視覚的な資産を定義するデータまたはデータへのポインタを含んでいてもよい(例:外観の形状、色など)。音響的な資産とは、シーンに付随する、またはシーンとは無関係の音であり、例えば、効果音(風、海、鳥、波などの自然界の音)、音楽、セリフなどがあり、それぞれが音響的な資産となる。また、ブロックに含まれるデータは、音響的な資産を定義するデータまたはデータへのポインタを含んでいてもよい(例えば、MIDIまたはオーディオファイル)。
【0028】
視覚的および/または音響的な資産などの感覚情報は、それぞれ、視覚および/または聴覚を刺激することによって、患者の注意の焦点を引き出すように構成されている。視覚的な情報と音響的な情報は、同時かつ相乗的な刺激を与えるために同期させてもよいし、独立して構成してもよい。さらに、または代わりに、感覚情報は、体性感覚的な資産(例えば、暖かさ)、触覚的な資産(例えば、皮膚の圧力または接触によって機械受容器を刺激する)、運動感覚的な資産(例えば、身体の一部の動きによって固有受容器を刺激する)および/または嗅覚的な資産(例えば、匂いを刺激する)を含んでもよく、それぞれ固有受容器および/または嗅覚の刺激によって患者の注意を引くように構成される。視覚および/または聴覚について説明した任意の実施形態は、体性感覚的および/または嗅覚的な資産にも適用できることを理解されたい。
【0029】
資産は、患者が主に注目するように構成された「主位的な資産」であってもよい。視覚的な資産は、患者の注意を引く動く人工物(クジラ、イルカ、鳥など)またはその一部(尾や翼など)である主位的な視覚的資産であり、人工物は、例えば、異なる位置の間を一定の速度で移動できる。ブロックに含まれるデータは、主位的な視覚的資産(クジラ、イルカ、ハチ、鳥など)の外観形状を定義するデータまたはデータへのポインタ、主位的な視覚的資産の一部(クジラの尾、イルカの尾、ハチ、鳥など)の移動経路を定義するデータまたはデータへのポインタを含むことができる。クジラの尾、イルカの尾、ハチの針、鳥の翼など)、主位的な視覚的資産の移動軌跡(クジラやハチ、イルカや鳥全体のシーンの左右への移動など)、主位的な視覚的資産が行うアクション(イルカや鳥の着地など)を定義する。
【0030】
音響的な資産は、患者が注目すべき音響的な手がかりやスクリプトを提供する主位的な音響的資産であってもよい。ブロックに含まれるデータは、主位的な音響的資産を定義するデータまたはデータへのポインタ(例えば、MIDIまたはオーディオファイル)を含んでいてもよい。主位的な音響的資産には、治療セッションの特定の局面で患者が影響を受けやすくするための説明音声や示唆的な音が含まれていてもよい。音響的な資産は、視覚的な資産(特に視覚的な資産の人工物)に関連していてもよい。ブロックに含まれるデータには、主位的な視覚的資産の音(クジラやイルカの鳴き声、ハチや鳥の鳴き声など)や、主位的な視覚的資産の動きや動作(クジラやイルカの泳ぎ、ハチや鳥の飛び方など)を定義するデータが含まれる。
【0031】
主位的な視覚的資産および/または音響的資産の側面は、主位的な視覚的資産(例えば、クジラ、イルカ、または鳥の動きの速度/範囲)の一部(例えば、尾または翼の動きの速度/範囲)の動きの速度および範囲などのように、定義可能である。介入の側面を調整する能力は、この明細書で後述するイベントクラスのブロックに実装されてもよい。動きの側面を調整する機能は、後述する呼吸クラスのブロックに実装されてもよい。
資産は、没入感を高めるように構成された「副次的な資産」であってもよく、それは通常、患者の注意の主要な焦点となることは意図されていない。例えば、副次的な視覚資産は、患者がセッションを進めるにつれて移動する風景など、シーンの背景となる要素であってもよい。同様に、副次的な音響的資産は、BGMやリラックスサウンドを提供するものであってもよい。また、ブロックには、副次的な資産のみが含まれていてもよい。ブロックに含まれるデータは、副次的な視覚的資産(海底など)の外観形状を定義するデータまたはデータへのポインタを含んでいてもよい。ブロックに含まれるデータは、副次的な音響(背景音のミディやオーディオファイルなど)を定義するデータまたはデータへのポインタを含んでいてもよい。
ブロックには、シーンを構成する主位的な資産と副次的な資産が混在していてもよい。ブロックには、シーンを構成するための主位的な視覚的資産および音響的資産、ならびに副次的な視覚的資産および音響的資産が混在していてもよい。
【0032】
ブロックには、その機能や効果に応じてブロッククラスを割り当てることができる。ブロッククラスに関するデータは、ブロックに関連付けられている。
ブロッククラスの例としては、以下が挙げられる。
- 「休息クラス」が割り当てられたブロック(休息ブロック)は、患者が治療セッションに没頭することを維持するように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供する。休息クラスのブロックは、患者が治療セッションに没頭できるように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素である1以上の資産で構成される。通常、休息クラスのブロックは、患者の休息やリラクゼーションのための副次的な資産のみを含む。通常、休息クラスのブロックは、患者に追加の効果を与えることはない。
- 「生理的クラス」のブロック(生理的ブロック)は、患者の生理的な状態を刺激したり調節したりするように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供する。生理的クラスのブロックは、患者の生理的事象および/またはパターンを誘発または調節するように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素である1つ以上の資産を含んでいてもよい。典型的には、生理的クラスのブロックは、生理的事象および/またはパターンを誘発または調節するための少なくとも主位的な資産を含んでいる。例としては、呼吸の強さ、心拍数、脈拍、体や体の特定の部位の動き、目の開閉などを制御するものが挙げられる。
- 「心理的クラス」を割り当てられたブロック(心理的ブロック)は、患者の心理的状態を刺激または調節するように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供する。心理クラスブロックは、患者の心理的なイベントおよび/またはパターンを誘発または規制するように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素である1以上の資産を含んでいてもよい。典型的には、心理クラスブロックは、心理的なイベントおよび/またはパターンを誘発または規制するための少なくとも主位的な資産を含んでいる。例としては、不安、恐怖、ストレスなどの感情の強さ、および/または行動の変化が挙げられる。
- 「呼吸クラス」を割り当てられたブロック(呼吸ブロック)は、患者の呼吸パターン(例えば、吸気と呼気)を刺激または調節するように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供する。呼吸ブロックは、特定のタイプの生理的ブロックである。呼吸クラスブロックは、患者の呼吸パターンを調整または同期するように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素である1以上の資産で構成されてもよく、通常、呼吸クラスブロックは、呼吸パターンを同期するための少なくとも主位的な資産で構成される。呼吸クラスブロックの例については、この明細書でさらに説明する。
- 「イベントクラス」を割り当てられたブロック(イベントブロック)は、セッション中に患者の知覚を誘導するように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供する。例えば、患者の外部へのまたは内部でのエピソードの準備、予測、または促進を行う。エピソードとは、大きな音や冷たい感覚にさらされるなど、患者の近く、患者上、または患者に対して行われる外部からの介入のことを指する。エピソードは、陣痛や分娩など、患者の内部で発生するものであってもよい。イベントクラスブロックは、セッション中に患者の知覚を誘導するように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素である1以上の資産で構成されている。通常、イベントクラスブロックは、エピソードから注意の焦点を引き離したり、エピソードの特定の瞬間を比喩や提案によって治療セッションに統合したりするための少なくとも主位的な資産を含んでいる。イベントクラスのブロックの例については、この明細書でさらに説明する。
- 「成果クラス」に割り当てられたブロック(成果ブロック)は、セッション後に患者を刺激したり、特定の(治療)効果を誘発したりするように構成された視覚的および/または音響的なセグメントを(メディアレンダラーに)提供し、例えば、セッションから意図された結果を達成する。例えば、不安管理(吐き気、ストレス、疲労、睡眠障害など)、疼痛管理(慢性的な苦痛など)、鎮静管理(カタレプシー、不随意運動、反射の停止など)のための示唆的な情報(行動や感情の変化、特定のイベントの記憶や忘却など)が提供されるブロッククラスがある。成果クラスのブロックの例は、この明細書でさらに説明する。
- セッションの範囲および目的に応じて、他のブロッククラスを作成してもよい。当業者は、前記システムおよび前記方法が、他の目的のために構成された他のブロッククラスの統合を可能にすることを理解する。
【0033】
各ブロックには、ブロックの長さ、フェーズの互換性、組み合わせの互換性など、ブロックに関する操作情報および/または参照情報を提供する1以上のブロック参照パラメータ(BRP)がさらに割り当てられてもよい。1以上のBRPは、ブロックに関連付けられている。
BRPの例としては、以下が挙げられる。
- ブロックのクラスを示すクラスインジケータ:ブロックのクラスは、対象物に対する特定の効果またはその欠如を示すものであり(例えば、呼吸クラスのブロック、イベントクラスのブロック、休息クラスのブロック)、典型的には、クラスインジケータは、前記ブロックに含まれる主位的な資産および/または副次的な資産に基づいて割り当てられてもよい。
- フェーズ識別子:セッションのどのフェーズ((i)~(iv)のうち1つ以上)がブロックに含まれるのに適しているかを示すもので、ブロックには単一または複数のフェーズ識別子が割り当てられてもよい。
- 重要度識別子:セッションの特定のフェーズに対する重要度を示す。この識別子は、セッションの持続時間を短縮する際にどのブロックを削除するか、またはセッションを延長するためのパディングとして使用するかを決定するために使用できる。
- 持続時間インジケータ:ブロックの持続時間(秒または分)を示す。
- クラス固有のパラメータ:特定のクラスを割り当てられたブロックは、1つ以上のクラス固有のパラメータを必要とする場合がある(例:呼吸クラスのブロックの場合は呼吸パターン、イベントクラスのブロックの場合はイベントタイプ)。
- イベント識別子:そのブロックが使用できるイベントを示す。
- 例えば、言語に依存しない休息のオーディオコンテンツ(サウンドトラック)を含むブロックと、休息のビジュアルコンテンツを含むブロックを組み合わせることができる。通常、識別子は、当該ブロックに含まれる主位的な副次的な資産の有無に応じて決定される。
- ブロック頻度識別子:1つのセッションに含まれるブロックの頻度を示す。例えば、1回限り、複数回、例えば、ループ
- セッション頻度識別子:患者に対してセッションを行う頻度を示す。例えば、1回限りの処置、急性状態の繰り返し、慢性状態の繰り返し。
- テーマ識別子:ブロックに言語に依存しない資産が含まれている場合に、テーマ(海、空、森など)を示す識別子。この識別子は、視覚的な人工物(視覚的な資産の場合)またはサウンドトラック(音響的な資産の場合)に基づいて属性が定められてもよい。
- 言語識別子:言語に依存して使用されるビジュアル/オーディオコンテンツの指標であり、例えば、インストラクショントラックや提示可能なダイアログを含むブロックなどが該当する。
- 文化識別子:使用されるビジュアル/オーディオコンテンツのうち、文化に依存するものを示す指標であり、例えば、特定の文化的主題を参照する資産を含むブロックを示す。
- 年齢識別子:使用するビジュアル/オーディオコンテンツの年齢依存性を示すもので、例えば、子供向けまたは大人向けに構成された資産を含むブロック。
- 認知度識別子:認知度に応じて使用されるビジュアル/オーディオコンテンツの指標であり、患者の認知能力に応じて調整される。
【0034】
1以上の資産を含む各ブロックは、データベース、好ましくは第1のデータベースに格納されてもよい。各ブロックは、固有のIDコードと関連付けられていてもよい。固有のIDコードは、1つ以上のブロック参照パラメータ(BRP)にリンクされてもよい。
BRPは、ブロックと同じ(第1の)データベースに格納されていても、第2のデータベースに格納されていてもよく、固有のIDコードは、第1および第2のデータベースをリンクする。好ましくは、ブロックを選択するステップは、第2のデータベースを参照して第1のデータベースから選択されたブロックを決定し、セッションの少なくとも一部を生成するステップを備える。
【0035】
選択プロセスの効率を調整するために、または高度な機能を提供するために、より多くのブロック機能が含まれたり、削除されたりすることがあるため、上記のブロック機能は例示的かつ非網羅的なリストを形成していることを理解されたい。
前記方法は、ユーザーまたは患者がGUIの進捗バーと対話して、特定のブロックを選択またはハイライトすることを可能にしてもよい。これにより、ユーザーが、ブロックの1以上の固有のIDコードで見ることを可能にしてもよい。これは、一連のブロックを用いて格納されたスクリプトをカスタマイズするのに特に有用であろう。
【0036】
この明細書では、「データベース」という語は、コンピューティングデバイスに関連付けられた記憶媒体に典型的に格納されている構造化されたデータのセットを意味する。また、格納されたデータ(ブロック)のアクセス、管理、および更新など、さまざまな機能やタスクを実行できる。データベース内のデータは、リレーショナルモデル、階層モデル、ネットワークモデル、分析モデルなどのデータベースモデルに従って構造化されていてもよい。データベースは、さらに、少なくとも1つのアプリケーション(ソフトウェア)および/または少なくとも1つのコンピューティングデバイス(ハードウェア)を含むネットワークの一部であってもよい。ネットワークは、複数のコンピューティングデバイスおよび/またはメディアレンダラーからデータベースへのアクセスを提供してもよい。データベースは、インターネットによってメソッドに接続されたリモートデータベースであってもよい(テザードソリューションの可能性もある)。データベースは、ローカルの記憶媒体またはクラウド上に保持されていてもよい。
【0037】
ここでいう「メディアレンダラー」とは、治療セッション、特にセッションを構成するスクリプトで定義されたブロックを、患者が体験できるようにレンダリングしたり、再生したりできる装置を指す。ここでいう「再生」とは、患者に刺激を与えることのできるあらゆる種類のコンテンツを含むように広く解釈される。一般的に、映像を表示したり、音を発したりする機能は、あらゆるメディアレンダラーの機能である。映像を表示するデバイスとしては、ディスプレイパネル(LCD、LED、OLED、その他のピクセルを含むディスプレイパネル)、ビデオプロジェクタ(DLP、LED、LEDを含むものなど)などがある。音を発することが可能な装置としては、スピーカ、イヤホンなどがある。発せられる音は、モノラル、ステレオ、多次元などである。好ましくは、メディアレンダラーは、ヘッドセットなどのウェアラブルデバイスとして提供される。レンダリングされたメディアは、仮想現実ヘッドセットとして、拡大現実ヘッドセットとして、または複合現実ヘッドセットとして提供されてもよい。好ましくは、メディアレンダラーは、スクリーン、プロジェクタなどの表示パネルと、1以上のスピーカ、イヤーピースなどの音を出すデバイスとで構成される。最も好ましくは、メディアレンダラーは、仮想現実/拡張現実/複合現実/その他のリアリティを提供するウェアラブルデバイスとして提供される。このデバイスは、典型的には、ディスプレイまたはプロジェクタ、ステレオサウンド(モノラル、ステレオ、多次元)、および頭部運動追跡センサー(ジャイロスコープ、加速度計、構造化光システムなど)を含む。適切なヘッドセットの例は、Oculus(例:Oculus Rift、Oculus Go)、LG electronics(例:LG 360 VR)、HTC(例:HTC Vive)、Samsung(例:Samsung Gear VR)、Google(例:Google Cardboard)によって供給されるものである。メディアレンダラーは、振動(例えば、座席に装備された振動モジュール)などの体性感覚的コンテンツ、および/または嗅覚的コンテンツ(例えば、1以上の香りを鼻腔内に放出するもの)もレンダリングすることによって拡張されてもよい。オプションとして、メディアレンダラーは、データを実行または再生するためのコンピューティングユニットを備えていてもよいし、外部のメディアサーバーからデータを受領してもよい(すなわち、ストリーミング)。
【0038】
この明細書では、「患者」という用語は、メディアレンダラーによる治療セッションのレンダリングまたは再生を体験している人を指す。患者は、治療セッションの受益者である。「ユーザー」とは、治療セッションの少なくとも一部を変更するために使用されるか否かを問わず、ユーザー入力を提供する人を指す。ユーザーは、前記方法の操作者である。ユーザーは、医師や医療助手などのケア提供者であってもよい。状況によっては、ユーザーは、例えば、治療が自宅において自分で行われる場合など、患者であってもよい。レンダリングセッションは、(光学的および音響的またはその他の)感覚を刺激することで、患者の(視覚的および聴覚的な)注意を引く。それは、患者との相互作用を必要とせず、患者からの(感覚的な)入力や(生体的な)測定値に依存せず、患者に認知的な負担をかけることもない。言い換えれば、情報は、患者の生理的反応(集中や呼吸など)および/または心理的反応(行動や感情など)を引き起こす目的で患者に提示され、治療セッション中に測定システム(脳のイメージや身体的反応など)によって測定される。
【0039】
ここでいう「ユーザーインターフェース」とは、ユーザーとコンピュータシステムが相互に作用する手段のことで、入力装置や表示装置、それらを動かすソフトウェアなどが含まれる。好ましくは、ユーザーインターフェースはグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)であり、ユーザーが視覚的に対話できる方法を提供する。例えば、ユーザーインターフェースは、コンピュータの画面とマウス/キーボード、またはタブレットのタッチパッドなどである。ユーザーインターフェースとのインタラクションは、ユーザーに限定されており、患者からの入力を受け取ることはない。ユーザーインターフェースは、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなどのスマートデバイスのタッチスクリーン画面など、コンピューティングユニットの入力デバイスで構成されていてもよい。
【0040】
この明細書には、治療セッションの少なくとも一部を生成するためのコンピュータ実装された方法が記載されており、この方法は、
- 複数のブロックからなる第1のデータベースを提供するステップであって、各ブロックは、全体として実行される視覚的および/または音響的なセグメントを表すステップと、
- 治療セッションの少なくとも一部を定義するスクリプトを生成するステップであって、前記スクリプトは、前記第1のデータベースから選択された少なくとも2つのブロック全体を連続して実行するよう指示するステップと、
- 前記スクリプトを、治療セッション中に視覚的および/または音響的なセグメントが患者に提示されるブロックの後続の実行のために格納するステップと
を備える。
【0041】
生成されたスクリプトは、第1のデータベースから選択された少なくとも2つのブロック全体を順次実行するための命令を含んでいる。
生成されたスクリプトは、典型的には、前述のフェーズ (i) ~ (iv) に対応するブロックを順次実行するための命令を含んでおり、各フェーズは複数のブロックで構成されている。セッションの開始前に、ユーザーは、各フェーズで使用されるスクリプトに含まれるブロックを決定する1つ以上の調整可能な初期化パラメータを設定することにより、セッションを初期化できる。調整可能な初期化パラメータには、セッションの総持続時間および呼吸パターン(以下でさらに説明する)が含まれる。一般的に、スクリプトは、事前に定義された一連のブロックを有する、例えば25分程度のデフォルトセッションを定義できる。前記デフォルトセッションは、ユーザーが設定した調整可能な初期化パラメータに応じて、ブロックを追加または削除することで調整できる。
【0042】
前記方法は、スクリプトの少なくとも一部を生成する。セッションの一部を構成するフェーズ全体のスクリプトを生成してもよいし、セッションのフェーズの少なくとも一部のスクリプトを生成してもよいし、セッションまたはフェーズの少なくとも一部に挿入または結合されるシーケンスを生成してもよいし、セッション全体を生成してもよい。あるいは、セッションのさまざまな部分を生成し、生成後にそれらをシーケンス化してセッション全体を得ることもできる。一方、セッション・スクリプトの一部は、ユーザーの入力に応じて(オンデマンドで)生成され、セッション・スクリプトに挿入されたり、セッション・スクリプトの少なくとも一部を置き換えたりできる。最も一般的に使用されているセッションのように、事前に定義された期間のセッション用のスクリプトは、コンピューティングリソースを節約するために事前に生成されることがある。これらの事前に生成されたスクリプトは、ユーザーの入力によって同様に変更されることがある。
【0043】
スクリプトで定義されたブロックの選択は、ユーザーが設定した初期化パラメータに依存し、セッションの要件と条件に依存する。上述のとおり、1つのセッションは、少なくとも4つの連続したフェーズで構成される。各フェーズは、患者の没入/解離を誘発または維持すること、および/または患者の経験や生理的/行動的/感情的/心理的な反応を制御することを目的とした、異なるコンテンツによって特徴付けられる。したがって、ブロックの選択は、フェーズの選択に依存することになる。フルセッションが生成される場合、ブロックは、フェーズ (i) ~ (iv) の順序に合わせてスクリプト内で順序付けられます。さらに、フェーズはそれぞれ事前に定義された持続時間を持つことができ、その持続時間はセッションの総持続時間に対して異なる。したがって、ブロックの選択は、ブロックの持続時間、およびフェーズまたはセッションの持続時間に依存することになる。例えば、要求された持続時間が30分のフェーズは、順次実行される各3分の10個のブロックで構成されていてもよいし、各1分の30個のブロックで構成されていてもよい。また、ブロックは、2分ごとのブロック10個と1分ごとのブロック10個のように、異なる持続時間であってもよい。ブロックの持続時間は、対応するブロッククラス、識別子、ラベルなどの多様な特性化パラメータに応じて変化してもよい。したがって、ブロックの選択も、(ブロックの)前記特徴付けパラメータに依存することになる。
【0044】
生成後、スクリプトは、例えば、一時メモリ(キャッシュ)や記憶媒体(ハードドライブなど)に格納されてもよい。スクリプトは、スクリプトを生成するコンピューティングユニットの一時メモリ(キャッシュ)および/または記憶媒体に格納されてもよいし、スクリプトを実行するコンピューティングユニットの一時メモリ(キャッシュ)および/または記憶媒体に格納されてもよい(これらが異なる場合)。コンピューティングユニットの例としては、後述の制御モジュールがある。スクリプトは、代替として、メディアレンダラーに存在するメモリ内の別のデバイスに格納されてもよい。また、スクリプトは、遠隔地からアクセス可能なデータセンター(クラウドコンピューティングなど)に格納されていてもよい。
【0045】
セッションは、(i) 導入フェーズ、 (ii) 深化フェーズ、 (iii) 移行フェーズ、 (iv) 再覚醒フェーズの少なくとも4つのフェーズで構成されている。各フェーズは、少なくとも部分的に異なるブロックから構成され、少なくとも1つのフェーズのスクリプトが前記方法によって生成され、好ましくは少なくとも深化フェーズのスクリプトが生成され、好ましくはすべてのフェーズのスクリプトが前記方法によって生成される。生成される(または生成されない)フェーズの選択は、調整可能な初期化パラメータであってもよい。
スクリプトは、通常、実行のための複数のブロックと、ブロックの実行順序を定義するコードである。スクリプトを実行すると、スクリプトで定義されたブロックが実行される。ブロックの実行により、スクリプトで定義された視覚的および/または音響的なセグメントが、メディアレンダラーを介して患者に提示するために出力される。
【0046】
前記方法は、
- 治療セッションのためのスクリプトを生成する前に、セッションの合計時間を要求するユーザーの入力を受け取るステップをさらに備え、
前記生成するステップは、選択されたブロックの持続時間の合計が要求されたセッションの総持続時間と一致するように前記第1のデータベースからブロックを選択するステップをさらに含んでいてもよい。
セッションの総持続時間の設定は、ユーザーが設定する特定の調整可能な初期化パラメータであってもよい。短いセッションは、デフォルトのセッションよりも少ないブロック数で構成される。短いセッションは、長いセッションと比較して、例えば、より少ない休息ブロックで構成されてもよい。初期化されたセッションの合計時間は、デフォルトのセッションと比較して、少なくとも2つのフェーズ、好ましくはすべてのフェーズの時間が変更される可能性があるという側面がある。フェーズの持続時間を比例させることで、患者の没入感や体験を向上させることができる。前記フェーズの持続時間は、後述するセッションの要求された治療結果に応じて変更されてもよい。
【0047】
前記方法は、適切な期間のブロックを選択することで、セッションのスクリプトを生成する。重要度識別子を参照して、重要なブロックは保持され、重要でないブロックは削除されるか、セッションを延長するためのパディングとして使用される。ブロックのクラスも考慮されており、休息クラスのブロックは通常、必須ではなく、ほとんど影響を与えることなく削除または追加されることが可能である。
ユーザーの入力は、前述のユーザーインターフェースを通じて受け取ってもよい。前記方法は、範囲内の値を受け入れてもよい。値は自由に入力してもよいし、離散的な値のリストから選択してもよい(例えば、30分、35分、40分など)。値の離散的なリストは、ドロップダウンメニューによってユーザーインターフェースに表示されてもよい。ユーザーの入力を受けて、前記方法は、選択された持続時間のセッションを生成して格納するか、または、ユーザーに追加の確認を要求できる。
【0048】
前記方法は、
- 治療セッションの現在のブロックの実行中に、セッションの調整された合計期間のユーザー入力を受領するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、格納されているスクリプトに追加または削除する1以上のブロックを選択してスクリプトを修正し、選択されたブロックの持続時間の合計が、要求された調整されたセッションの総持続時間に応じてセッションの持続時間を延長または短縮するステップと、
をさらに備えていてもよい。
【0049】
修正されたスクリプトは格納されてもよく、特に以前に格納されたスクリプトを置き換えてもよい。ユーザーは、セッションが開始された後にセッションを延長または短縮できるが、これは動的なセッション持続時間の調整と呼ばれる。その例を、この明細書の図2に示す。動的なセッション持続時間の調整では、現在のブロックを完了まで実行しつつ、セッションに1つ以上の後続ブロックを追加したり、まだ実行されていないセッションの1つ以上の後続ブロックを削除したりできる。これにより、ユーザーによるセッション時間調整の要求を受けた瞬間に、既存のブロックが中断されることを避けることができる(患者の没入感が損なわれる可能性がある)。セッションを延長する場合は、既存のブロックの間または既存のブロックの後に、1以上の後続のブロックをセッションに挿入できる。セッションを短縮する場合は、1以上の後続ブロックをセッションから削除してもよい。
【0050】
前記方法は、重要性識別子を参照して、追加または削除するための適切な期間のブロックを選択してもよい。重要なブロックは保持され、重要でないブロックは削除されたり、セッションを延長したりするためのパディングとして使用され得る。ブロックのクラスもクラスインジケータを参照することによって考慮される。
【0051】
セッションは、(i) 導入フェーズ、 (ii) 深化フェーズ、 (iii) 移行フェーズ、および (iv) 再覚醒フェーズの少なくとも4つのフェーズで構成され、 (ii) 深化フェーズが最も長いフェーズであってもよい。深化フェーズ (ii) は、他の (i,iii,iv) フェーズの合計と同程度の長さであってもよく、好ましくは、他の (i,iii,iv) フェーズの合計と少なくとも同じ長さであってもよく、例えば2倍の長さであってもよい。深化フェーズ (ii) は、患者への刺激(例えば、呼吸制御、イベント)のほとんどが行われる可能性のあるフェーズであり、したがって、典型的には最も長いフェーズである。例えば、45分程度のセッションでは、深化フェーズの持続時間は30分程度になることがある。好ましくは、動的なセッション持続時間の調整により、現在のフェーズと残りのフェーズのうち少なくとも2つ、好ましくはすべてのフェーズの持続時間が変更されることがある。持続時間の変更は、比例してもよい。各フェーズの持続時間を比例させることで、患者の没入感を向上させることができる。例えば、深化フェーズ (ii) を受領する動的なセッション持続時間の調整は、現在のセッション(深化フェーズ(ii) )の持続時間の変化と、その後の各セッション-移行フェーズ (iii) および再覚醒フェーズ (iv) の持続時間の変化をもたらすことがある。
【0052】
前記方法は、セッションの進捗状況およびセッションの総持続時間を示すグラフィカルユーザーインターフェース用の出力を提供することを含んでもよい。タイミングの進捗状況は、進捗バーを介して視覚的に表示されてもよく、オプションとして、セッション終了までの進捗タイマーおよび/またはカウントダウンタイマーを用いてもよい。さらに、セッションの総時間および/またはセッション持続時間の調整要求に応じたセッション内の進行状況を、グラフィカル・ユーザー・インターフェース上に(動的に)表示できる。(動的な)ビジュアル表示は、ユーザーにより直感的な理解を提供するだけでなく、コンピューティングユニットでのリソース消費の削減を提供する。
【0053】
第1データベースは、1以上の「成果クラス」ブロック(この明細書では、成果クラスブロックまたは成果ブロック)をさらに含んでいてもよい。成果クラスブロックの視覚的および/または音響的なセグメントのような感覚情報は、治療セッションの間および/または後に、患者に特定の(治療)効果を誘発する。その効果は、臨床効果、すなわち臨床催眠に関するものであってもよい。成果クラスのブロックを選択することで、意識変容状態の崩壊のリスクを冒すことなく、意図した結果を患者にもたらすためにセッションを容易に調整できる。その結果、成果クラスブロックは、患者の特定のニーズに合わせて方法をカスタマイズし、セッションの成功率を向上させることに貢献できる。また、成果クラスブロックは、ユーザーにとってセッションをシンプルかつ直感的に保つことを可能にしてもよい。セッションの実行を不必要に複雑にすることなく、ユーザーはセッション中に実行されるタスクに集中できる。
セッションの成果は、スクリプトの生成に先立って設定できる。これは、典型的には、セッションの実行前に特定された、一次的な治療結果;すなわち、患者の治療セッションの必要性に関して予め計画されたもの、の選択を含むことができる。
【0054】
前記方法は、
- セッションの要求された結果のスクリプトを生成する前に、ユーザーの入力を受け取るステップをさらに備え、
前記生成するステップが、セッション中および/またはセッション後に患者に特定の効果をもたらすように構成されたセグメントの視覚的および/または音響的な要素などの感覚情報である資産を含む少なくとも1つの成果クラスブロックを、第1のデータベースから選択するステップを備えていてもよい。
治療結果が、スクリプトの実行中(すなわち、セッション中)に構成されてよい。これには、治療セッション中に特定された患者のニーズに対応した二次的な治療結果を選択することが含まれる。
【0055】
前記方法は、
- スクリプトの実行中に、セッションの成果を要求するユーザーの入力を受け付けるステップと、
- 前記ユーザーの入力に応答して、前記第1のデータベースから少なくとも1つの成果ブロックを選択するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、選択された成果ブロックを実行する命令を、格納されたスクリプトに挿入するステップと、
を備えていてもよい。
少なくとも1つの成果クラスブロックを格納されたセッションに挿入するステップが、
- 選択された成果ブロックを、現在のブロックの後に実行されるスクリプト内の2つの既存ブロックの間に挿入するステップ、および/または
- 選択された成果ブロックを、現在のブロックの間または後に実行されるスクリプト内の1以上の既存ブロックに統合するステップ
を備えていてもよい。
ブロックの挿入または統合の例は、この明細書でさらに示す。
【0056】
ユーザーの入力は、ユーザーが治療セッションを患者のニーズに合わせて構成することを可能にする選択段階を通じて提供されてもよい。治療結果の選択は、ブロックの選択を決定してもよく、その場合、標準的な治療セッションのクラスブロックの代わりに、要求されたクラスインジケータで示されるブロックが選択される。さらに、要求された治療結果を選択することで、スクリプトに追加のブロックを導入できる。スクリプトは、セッションの特定の部分を強化する効果がある。
【0057】
要求可能な治療結果の例として、以下のものが挙げられる。
- 不快感の管理:現在のセッションで提供される快適さの度合いを設定する。特に、施術前、施術中、または施術後に発生する可能性のある、不安、吐き気、疲労などの特定の障害による不安感や不快感を軽減し、または好ましくは取り除く。選択されたブロックは、患者に抗不安作用をもたらす。
- 感度管理:前記セッションで提供される脱感作の度合いを設定する。特に、現在の手順の間または後に起こる可能性のある物理的または感覚的なイベント(例えば、患者がさらされる可能性のある感覚)に対する反応を低減する。選択されたブロックは、患者に脱感作効果をもたらす。
- 解離の管理:前記セッションで提供される解離の度合いを設定する。特に、患者が現在のセッションに没頭すること、例えば、通常の思考、感情、記憶、または環境から切り離すことを制御する。選択されたブロックは、患者に解離効果をもたらす。
- 疼痛管理:現在のセッションで提供される鎮痛の程度を設定する。これには、患者の痛みや苦痛の強さを軽減すること、および/または患者の痛み刺激に対する反応を軽減することが含まれる。選択されたブロックは、患者に鎮痛効果をもたらす。
- 鎮静管理:前記セッションによって提供される鎮静の程度を設定するものであり、特に、患者の部分的または完全な動作範囲を制限することによって行われる。これには、頭部や腕などの特定の身体部位の動きの制限から、全身のカタレプシーまでが含まれる。選択されたブロックは、患者に鎮静効果をもたらす。
【0058】
特定の治療結果の選択は、他のブロッククラスの選択に影響を与える可能性がある。特定の成果ブロックは、他のブロッククラスと組み合わせられない場合がある。
第1データベースは、1以上の「呼吸クラス」ブロック(この明細書では、呼吸クラスブロックまたは呼吸ブロック)をさらに含んでもよい。第1データベース内のブロックの少なくとも1つは、呼吸クラスブロックとして分類されてもよい。「呼吸クラス」が割り当てられたブロック(呼吸クラスブロックまたはこの明細書の呼吸ブロック)は、患者の呼吸パターンを誘起するように構成された資産を含み、呼吸を誘起するための資産は、呼吸クラスブロックの主位的な資産と呼ばれる。主位的な資産は、患者の呼吸が同期可能な視覚的なもの(動くグラフィック要素など)および/または音響的なもの(繰り返しの音など)であってもよい。主位的な視覚的資産の例としては、クジラ、イルカ、鳥などがあり、尾や翼などの資産の一部は、所望の吸気および呼気の持続時間に応じて調整可能な規則的な動きを持っている。呼吸クラスブロックの視覚的および/または音響的なセグメントは、調節された呼吸パターンを誘起する。
【0059】
呼吸パターンとは、吸気と呼気の持続時間のことである。呼吸クラスブロックは、定義された吸気および呼気の持続時間の呼吸パターンを誘起してもよい。呼吸パターンは、ブロックの期間中、一定であってもよい。セッションの少なくとも一部に呼吸パターンを設定することは、他の特定の調整可能な初期化パラメータであってもよい。
このように、呼吸クラスブロックは、呼吸ペースの増減など、(患者の)標準的な呼吸パターンに合わせて使用できる。安静時の患者の標準的な呼吸パターンは、通常、約3.5秒の吸気と約3.5秒の呼気で構成される(3.5/3.5)。しかし、呼吸障害(不安や肺活量の低下など)を患っている患者は、2.0/2.0、2.5/2.5、またはそれ以下のように、多様な呼吸パターンを持つ可能性があることに留意されたい。また、小児の患者は肺活量が少ないため、より短い呼吸パターンを必要とする場合がある。
【0060】
以上のように、標準的な呼吸パターンの調整は、心拍変動(HRV)に影響を与え、それが自律神経系に影響を与える可能性がある。そこで、呼吸法ブロックでは、心理的な要因や認知的な要因に依存しない生理的な効果を得ることができる。生理的な反応(呼吸パターン、HRVなど)は、物理的なパラメータを用いて測定してもよい。
資産と、その資産を含む呼吸ブロックは、特に、治療セッション中の患者の呼吸パターンを制御するように構成された機能データとみなすことができる。好ましくは、呼吸パターンは、 (ii) 移行フェーズおよび/または (iii) 深化フェーズに制御される。呼吸クラスブロックは、 (ii) 移行フェーズおよび/または (iii) 深化フェーズに限定されていてもよい。
【0061】
呼吸クラスブロックは、呼吸数および/または吸気/呼気の比率を調節する。呼吸数とは、1分間の呼吸回数のことで、呼吸ペースともいう。吸気・呼気比は、吸気の持続時間と呼気の持続時間の比(秒)として定義される。例えば、3.5”/3.5”の呼吸パターン(すなわち、3.5秒の吸気/3.5秒の呼気)(比率1:1)を持つ患者は、1分間に8.5回の呼吸をすることになる。呼吸数を例えば3.5/3.5から5.0/5.0に減少させて呼吸パターンを変更することで、HRVを増加させ、副交感神経系を活性化させることができる。
【0062】
前記方法は、順次実行される少なくとも2つの呼吸クラスブロックを含むスクリプトを生成してもよく、第1の呼吸クラスブロックは、標準呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有し、第2の呼吸クラスブロックは、調整された呼吸パターンに対応する呼吸パターンを有していてもよい。例えば、呼吸数が3.5/3.5の患者の場合、第1の呼吸ブロックは、患者の呼吸が同期するように、3.5/3.5の対応する呼吸数を有し、第2の呼吸ブロックは、患者の呼吸数をそれに応じて減少させるように、5.0/5.0の呼吸数を有してもよい。一連の呼吸クラスブロックを提供し、第1の呼吸クラスブロックを患者の標準的な呼吸パターンと同期させ、第2の呼吸クラスブロックをより長い吸気および/または呼気の持続時間とすることで、患者はより効果的に深化フェーズに入ることができる。
【0063】
呼吸パターンは、順次実行される複数の呼吸ブロックを提供することによって調整されてもよく、各ブロックは、ブロックの持続時間の間、一定の呼吸パターンを定義し、隣接および/または近接するブロックに対して発展する。発展は、前の隣接ブロックと比較して、吸気および/または呼気の持続時間が長くなったり短くなったりすることである。好ましくは、後続のブロックは、前の隣接するブロックと比較して、より長い吸気および/または呼気の持続時間を有してもよい。しかし、後続のブロックは、前の隣接するブロックと比較して、吸気および/または呼気の持続時間が短くてもよい。一連の呼吸ブロックでは、呼吸パターンは、隣接するブロック間で増加または減少してもよい。
【0064】
例えば、第1の呼吸ブロックは、呼吸数が3.5/3.5であり、第2の呼吸ブロックは、呼吸数が4.0/4.0と漸増しており、第3の呼吸ブロックは、呼吸数が4.5/4.5と漸増しており、第4の呼吸ブロックは、呼吸数が5.0/5.0と漸増している場合がある。このシーケンスは、患者の呼吸数を段階的に減少させるように調節できる。呼吸パターンを段階的に調節することにより、患者はより効果的に深化フェーズに入ることができる。
【0065】
徐々に増加する発展が、パーセント(%)ベースであってもよい。順次の呼吸ブロックの呼吸パターンが、隣接および/または近接したブロックの%に基づいて増加または減少してもよい。後続のブロックは、前のブロックと比較して、吸気および/または呼気の持続時間にパーセンテージの差があってもよい。後続のブロックは、前のブロックと比較して、吸気および/または呼気の持続時間がパーセンテージで増加してもよい。後続のブロックは、前のブロックと比較して、吸気および/または呼気の持続時間がパーセンテージで減少していてもよい。好ましくは、割合は10~50%、より好ましくは20~40%、最も好ましくは25~35%、例えば33%である。患者が(一時的な)呼吸障害を患っている場合には、セッションの総持続時間を増加させることなく、%ベースの規制を実施できる。
【0066】
資産、特に主位的な資産、または呼吸クラスブロックの主位的な資産の一部は、定義可能な動作レート(DMR)を有する場合がある。DMRとは、資産や主位的な資産、またはその一部の規則的な動きのことである。例えば、イルカである主位的な資産の尾部は、定義可能なレートで動いてもよい。DMRは、設定された時間間隔内での、第1の領域と第2の領域との間の資産またはその一部の位置の変化によって定義されてもよい。DMRは、ブロックの期間中、一定であってもよい。患者の呼吸パターンは、DMRに同期する。DMRは、好ましくは、第1の呼吸ブロックの持続時間に対して一定であり、また、後続の呼吸ブロックの持続時間に対して一定であるが異なる。DMRは、後続の呼吸ブロックでは小さくても大きくてもよく、好ましくはより遅くなる。一例として、呼吸ブロックの主位的な資産は、尾を掃くイルカであり、イルカの尾の掃引速度は、DMRが3.5”に設定されており、3.5”の時間間隔で尾が左右に完全に振られる。最初の呼吸ブロックで、3.5”の間隔でイルカの尾のスイープ動作を表現することで、患者は自分の(標準的な)呼吸数をDMRに同期させることができる。次に、次の呼吸ブロックでは、尾の掃引間隔を5.0”(5.0秒間隔)に減少させることで、患者はより遅いDMRに合わせて呼吸数を減少させるよう刺激される。その結果、患者の呼吸数は視覚的な資産のDMRと同期して大幅に減少する。さらに、DMRを4.0”から4.5”、5.0”へと段階的に増加させることもできる。段階的に増加するDMRの一例を図3に示す。
【0067】
開始DMRおよび最終DMRは、デフォルト値(例えば、3.5/3.5の開始DMR、5/5の最終DMR)を有していてもよいし、ユーザー(ユーザー入力)によって調整可能であってもよい。調整可能な開始DMRは、患者が(一時的な)呼吸困難に陥った場合に実施される可能性があり、例えば、呼吸速度が速くなる。調整可能な開始DMRの機能を提供することにより、DMRを患者の呼吸パターンに同期させることができ、そこからより効果的に遅い呼吸パターンに移行させることができる。

呼吸クラスブロックの資産は、音響的な要素(音響的な資産、または主位的な音響的資産)を含んでいてもよい。音響的な資産または主位的な音響的資産は、患者の呼吸パターンが同期する設定時間間隔で繰り返してもよい。音響的な資産は、吸気と呼気の瞬間にキューが繰り返されるサウンドクリップであってもよい。上記の例では、オーディオキューは、水の湧き出る音や呼吸音であり、視覚的な資産のDMR(イルカの尻尾の動き)と同期していることが望ましい。主位的な音響的資産は、主位的な視覚的資産とは独立していてもよい。
【0068】
前記方法は、現在の呼吸ブロックの呼吸パターン(吸気および/または呼気の持続時間)および/または進行状況、ならびに任意に次のまたは残りの呼吸ブロックの呼吸パターンおよび実行時間を示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェースに提供することを含んでもよい。タイミングは、進捗バー、カウントダウンタイマー、または他のビジュアルインジケータを介して提示されてもよい。進捗状況を視覚的に示すことで、ユーザーは、呼吸パターンに関連するタスクの実行に向けてよりよい準備ができる。さらに、GUIは、吸気と呼気を視覚化するバーをユーザーに提供してもよい。例えば、呼吸パターンが患者の (ii) 深化フェーズを誘発するように意図されている場合、ユーザーは、深化フェーズが誘発されるとすぐに任意の手順を開始するためのツールを整理できる。このような概要により、セッションをより効率的に実行することができ、それにより、ユーザーと患者の双方の側で潜在的なストレスの発生を低減できる。
【0069】
第1データベースは、1以上の「イベントクラス」ブロック(この明細書では、イベントクラスブロックまたはイベントブロック)をさらに含んでもよい。イベントクラスブロックの視覚的および/または音響的なセグメントのような感覚情報は、患者の外部または内部のエピソードに対して患者を準備する。患者の注意をエピソードから遠ざけたり、エピソードの特定の瞬間をメタファーおよび/または暗示によって解離体験に統合したりできる。好ましくは、イベントクラスブロックの視覚的および/または音響的なセグメントを患者に提示することは、イベントの発生と同期していてもよい。イベントクラスブロックは、患者の変容した意識状態を中断することなくエピソードを実行することを可能にしてもよい。イベントクラスブロックは、このようにして、他の方法ではストレスや痛みを伴うイベントの際に、患者の精神的および肉体的な健康を改善することに貢献してもよい。
【0070】
前記方法は、
- 治療セッションのスクリプトの実行中に、要求されたイベントに関するユーザーの入力を受け付けるステップと、
- 第1のデータベースから、少なくとも1つのイベントクラスブロックを選択するステップと、
- 現在のブロックの実行を中断することなく、対応するイベントブロックを実行する命令を、格納されたスクリプトに挿入するステップと、
をさらに含んでもよい。
【0071】
イベントブロックは、エピソードに対する患者の準備、および/または、エピソードの発生中に患者を誘導したり気をそらしたりするように構成された1以上の資産または主位的な資産を含んでいてもよい。イベントブロックは、複数の視覚的な資産および/または複数の主位的な視覚的資産を含んでいてもよい。イベントブロックは、複数の音響的な資産および/または複数の主位的な音響的資産を含んでいてもよく、これらの音響的な資産は、患者の感覚を混乱させたり過負荷にしたりして、自己知覚および周辺知覚を変化させる。したがって、提示された(レンダリングされたセッションとしての)情報は、心理的または認知的な要因に体系的に依存するのではなく、(刺激的または抑制的な)生理的反応に依存する効果を患者の心にもたらす。したがって、刺激的または抑制的な資産、およびそれらの資産を含むイベントブロックは、特に治療セッション中の(患者の)生理的反応を制御するように構成された機能データとみなされるべきである。イベントブロックの感覚的な情報を患者に与えることで、エピソードの効率が向上する可能性がある。特に、ユーザーは患者の反応を気にせずにエピソードの実行に集中できる。また、ユーザーのパフォーマンスや成功率を高めることで、患者の安全性を向上させることができる。
【0072】
イベントの例としては、以下のものが挙げられる。
- 痛み:イベントブロックは、針や切開などの痛みに対する反応を最小限に抑えるために、(患者に)鎮痛効果を誘発する。
- 洗浄:イベントブロックは、患者の皮膚の洗浄など、患者の洗浄に対する反応を最小限に抑える効果を誘発する。
- プローブ:プローブや同様のデバイス、ケーブルの挿入に対する反応を最小化する効果を誘発する。
- 温度: 温感や冷感に対する反応を最小限にする効果を誘発する。
- 匂い:皮膚が焼けるような特定の匂いに対する反応を最小限に抑える効果をイベントブロックで誘発する。
- 深い呼吸:イベントブロックにより、深く息を吸ったり吐いたりする効果を誘発する。
- 呼吸の一時停止:放射線画像の撮影時などに呼吸を一時的に止める効果を誘発する。
- 陣痛:イベントブロックは、患者が陣痛と出産を経験する準備をする。
【0073】
イベントクラスブロックの1つ以上の資産または主位的な資産は、特定のイベントの性質に合わせて調整できる。例えば、痛みを伴うイベントで提示される音響的および/または視覚的な資産は、洗浄のイベントで提示されるものとは異なる場合がある。前述のように、特定の治療結果の選択など、特定の入力パラメータがイベントクラスブロックの選択に影響を与えることがある。例えば、患者が高いレベルの不安を感じているとユーザーが指摘した場合、イベントクラスブロックの長さを長くできる。また、より高いレベルの解離や疼痛管理が必要であるとユーザーが指摘した場合には、イベントクラスブロックの強度(使用する資産の量)を増加させてもよい。
【0074】
イベントブロックは、セッションが初期化された後、セッションがまだ実行されている間に、ユーザーの要求に応じてスクリプトに挿入されることがあり、これは動的なイベント挿入とも呼ばれる。図4に、動的なイベント挿入の例を示す。イベントブロックは、現在実行されているブロックの後にスクリプトに挿入され、現在実行されているブロックは完了まで実行される。これにより、ユーザーがイベントブロックの挿入を要求した瞬間に、既存のブロックが中断されることを避けることができる(没入感が損なわれる可能性がある)。システムは、イベントクラスのブロックを挿入する最適な時間を決定することもできる。例えば、治療セッションの特定の物語やメタファーに沿って、イベントクラスのブロックを挿入できる。イベントクラスのブロックの挿入は、現在の物語のブロックが終わるまで遅らせることができる。
【0075】
スクリプトの実行中、つまりスクリプトが初期化された後、セッションが継続している間にイベントを動的に挿入することで、ユーザー(例えば施術者)と患者の間にインタラクティブな治療セッションが形成される。これにより、ユーザーは、患者の没入感を損なうことなく、必要なリソースを準備したり、不測の事態に対応したりするための時間を確保できる。
挿入は、場合によっては、特定のイベントのために、既に実行されているブロックや将来のブロックと重ね合わせることがある。重ね合わせたイベントクラスのブロックが重ね合わせる機能を持っていると参照されている場合である。さらに、不要になったイベントや誤って入力されたイベントなど、追加されたイベントブロックをスクリプトから削除することも可能である。削除が要求された場合、前記方法は、削除されたイベントブロックを置き換えるために1以上の新しいブロックを選択することを含んでいてもよいし、以前に選択されたブロックを元に戻してもよい。
【0076】
ユーザーの入力を受け付けると、選択されたイベントブロックがスクリプトに挿入される。更新されたスクリプトが格納される。ユーザーは通常、イベントがいつ行われるかを事前に知ることはない。イベントブロックは、例えばフェーズ (ii) の間に要求を受けて、ある時間のウィンドウ内の任意の瞬間に挿入できる。ユーザーは、イベントの時間的な遅延を要求することはできず、イベントは可能な限り早く実行される。現在のブロックの実行は中断されず、要求されたイベントブロックは、現在のブロックの実行後、できるだけ早く挿入される。代わりに、ユーザーはイベントの時間遅延を設定することもできる。時間遅延は、例えば、イベントの準備のために必要な場合がある。現在のブロックと未来のブロックの実行は中断されず、要求されたイベントブロックはできるだけ早く挿入されるが、設定された時間遅延が経過する前ではない。さらに、特定のイベントでは、完全な没入感を維持するために、イベント前の(精神的な)準備期間や、イベント後の(精神的な)リラックス期間が必要になる場合がある。これは、一連のイベントがユーザーによって要求された場合に重要となる。この場合、イベントはさらに、次のイベントを挿入する前に続くリラックス期間を指示できる。
【0077】
選択されたイベントブロックは、既存の2つのブロックの間のブロックとしてスクリプトに挿入され、それら2つのブロックの間を分割してもよい(分割イベント挿入)。図4Bに分割イベント挿入の例を示す。分割イベントが挿入されると、イベントブロックは実質的にセッションの新しいブロックとなり、合計期間が延長される。延長された期間がユーザーに望まれない場合、分割挿入されたイベントは、同様の期間の1つ以上の後続ブロックの削除をトリガできる。例えば、このような場合には、1以上の休息ブロックをセッションから削除してもよいが、これは刺激的な悪影響をほとんど及ぼさない。結果的に延長されたセッションに関する情報や、結果的に得られたセッションの合計長さを短縮するためのオプションがユーザーに伝えられてもよい。
【0078】
選択されたイベントブロックは、統合イベント挿入と呼ばれる、既存のブロックに重ねられたブロックとしてスクリプトに挿入されることがある。統合イベントの挿入の例を図4Cおよび図5に示す。このようにして、イベントブロックの資産(複数可)は、既存のブロックの資産(複数可)と一緒に統合されることがある。場合によっては、分割挿入よりも統合の方が、セッションの総時間を延長することがないので、好ましい場合もある。しかし、すべてのブロックが統合に対応しているわけではない。例えば、既存のブロックに、イベントブロックの主位的な資産を妨害または阻害する可能性のある主位的な資産が含まれている場合、(患者の没入感を損なわずに)統合を実行することはできない。ブロックの互換性は、ブロック識別子、特に組合せの識別子を用いて示すことができる。好ましくは、統合は、副次的な資産を含み、したがって、悪影響を及ぼす刺激が少ない1以上の休息ブロック上で実行される。例えば、イベントブロックは、既存のブロックの上に重ねられた視覚的な資産を含むブロックとして挿入されてもよく(ビジュアル統合イベントブロック)、または音響的な資産を含むイベントブロックは、既存のブロックの上に重ねられてもよく(オーディオ統合イベントブロック)、または視覚的な資産および音響的な資産を含むイベントブロックは、既存のブロックの上に重ねられてもよい(ビジュアルおよびオーディオ統合イベントブロック)。イベントクラスブロックの挿入または統合に関連する実施形態は、他のクラスタイプのブロックの挿入または統合にも関連することが理解される。
【0079】
前記方法は、要求されたイベントブロックの実行までの時間をユーザーに通知すること(のステップ)を含んでもよい。要求されたイベントの実行までの時間をユーザーに通知することにより、イベントをイベントクラスブロックの主位的な資産とよりよく同期させることができる。これにより、没入感が高まり、患者の変容した意識状態が崩れる危険性を低減できる。実行までの時間は、視覚的な手段や音響的な手段など、様々な手段で提示されてもよい。視覚的な手段の例としては、後述するディスプレイに表示されるカウントダウンタイマーが挙げられる。音響的な手段の例としては、スピーカー(患者には聞こえない)によって生成される一連のオーディオキューが挙げられる。
【0080】
前記方法は、セッションの進行に(選択された)イベントブロックが挿入されたことを示す出力を、グラフィカルユーザーインターフェースに提供すること(のステップ)を含んでいてもよい。ユーザーは、GUIを介して、イベントの挿入までの残り時間を監視することができてもよい。例えば、GUIは、セッションの進捗状況の(視覚的な)概要と、どのタイミングでイベントブロックが挿入されるかを示すインジケータをユーザーに提供してもよい。進捗状況は、進捗バー、任意でカウントダウンタイマー、または他のタイミング手段を介して提示されてもよい。あるイベントに向けたセッションの進捗状況を視覚的に把握することで、ユーザーはそのイベントに関連するタスクの実行に向けてより良い準備ができる。例えば、患者にプローブを挿入する際の反応を最小限に抑えることを目的としたイベントであれば、ユーザーはプローブに潤滑剤を塗布するなど、挿入に必要なツールをすでに準備しておくことができる。
【0081】
この方法、特にイベントブロックのタイミングの視覚化は、必ずしもユーザーがタスクを実行することを支援するものではなく、タスクのタイミングをよりよく実行するためのガイドとなることが理解されよう。イベント発生の視覚化とそのリアルタイム調整(最も早い機会でのイベントブロックの実行を可能にする)により、ユーザーは基礎となる技術システムの内部状態を確認し、任意で対話ができる。リアルタイムに調整することで、イベントをより速く、より効率的に(つまり、より少ない処理リソースで)、より正確に(期間とタイミングを)コントロールしながら実行できる。これにより、ユーザーは、(イベントクラスブロックの一部が欠けたり拡張されたりすることで)患者の誤動作や望ましくない物理的反応を招くことなく、技術システムの基礎的な複雑さを動的に適切に操作できる。
【0082】
ユーザー入力を受け付けている間または受け付ける前に、GUIは、1以上のイベントクラスブロックに関連付けられている選択可能なイベントの概要を提示してもよい。(選択可能なイベントの)概要は、テキストベースか、視覚的に表現されたもの(例えば、アイコン、シンボル、トークン、モデルなど、任意にカラーコード化されたもの)、またはその両方の組み合わせであってもよい。視覚的な表現は、関連する入力に関連する画像を表示することで、より直感的な理解をユーザーにもたらす。また、競合するイベント(互換性のない一連のイベントやタイミングなど)を自動的に解決することで、コンピューティングユニットおよび/またはメディアレンダラーのリソース消費量を削減できる。イベントは、イベントタイプによってグループ化され、イベントタイプを選択すると、イベントのサブクラスまたはイベントのバリエーションを持つ二次リストが表示されることがある。これにより、選択可能なイベントをよりわかりやすく、直感的に表現できる。
【0083】
ユーザー入力を受け付けている間または後に、GUIは、選択されたイベントに特有の視覚的支援をユーザーに提示してもよい。視覚的支援は、テキストベースまたは視覚的に表現されたもの(例えば、アイコン、シンボル、トークン、モデルなど、任意にカラーコード化されたもの)、またはその両方の組み合わせであってもよい。視覚的支援は、例えば、表示装置の拡大部分での視覚化や、初期のGUI表示領域よりも大きい関心のある領域の概要を維持することによって、ユーザーに情報をより簡単に伝えるように設計されてもよい。視覚的支援は、継続的なおよび/またはガイド付きのヒューマンマシンインタラクションによって、ユーザーが(イベントに関連する)技術的タスクを実行するのを支援できる。好ましくは、視覚的支援は、選択されたイベントブロックのレンダリングの前または一緒に開始されるセッションの継続時間に結合される。
【0084】
この発明の好ましい実施形態において、前記方法は、その全体が実行されるべき視覚的および/または音響的なセグメントをそれぞれ表す複数のブロックを備えるデータベースであって、治療セッション中に患者の没入感を維持するように構成された資産を含む少なくとも1つ以上の休息クラスブロックと、治療セッション中に患者に特定の(治療)効果を誘発するように構成された資産からなる1以上のイベントクラスブロックとを含む第1のデータベースを提供するステップと、治療セッションの少なくとも一部を定義するスクリプトを生成するステップであって、前記第1のデータベースから選択された少なくとも2つのブロックの全体を逐次実行するよう指示するステップと、ブロックを続けて実行することにより治療セッション中に視覚的および/または音響的なセグメントを患者に提示するためのスクリプトを格納するステップとを備えていてもよく、
格納されたスクリプトの実行中、好ましくは治療セッション中に、前記方法は、要求されたイベントのユーザー入力を受け付けるステップと、そのユーザー入力に応答して前記第1のデータベースから少なくとも1つのイベントブロックを選択するステップと、現在のブロックの実行を中断することなく、選択されたイベントブロックを実行する命令を格納されたスクリプトに挿入するステップと、任意に、要求されたイベントブロックの実行までの時間をユーザーに通知するステップと、をさらに備えていてもよい。
【0085】
この発明の一側面は、治療セッションの少なくとも一部を生成するシステムを提供することであり、該システムは、
a) 複数のブロックからなるブロックデータベースモジュールと、
b) 治療セッションの少なくとも一部を定義するスクリプトを生成する前記方法を実行するように構成された制御モジュールとを備える。
好ましくは、ブロックデータベースモジュールは、複数のブロックを含む第1のデータベースと、複数の固有のIDコードを含む第2のデータベースとを備え、各IDコードは、第1のデータベースの1以上のブロックに関連付けられる。
【0086】
制御モジュールは、ブロックデータベースモジュール上の第1データベースから、順次実行されるべき少なくとも2つのブロックを選択することによりスクリプトを生成し、スクリプトを格納するように構成されている。制御モジュールは、セッションの少なくとも1つのフェーズ、好ましくはセッションのフェーズ (i) ~ (iv) に対応する、順次配置された複数のブロックを実行するための命令を含むデフォルトのスクリプトを生成するように構成されてもよい。
制御モジュールはさらに、格納されたスクリプトを読み取り、スクリプトに従って第1のデータベースにアクセスし、メディアレンダラーによるレンダリングのために音響的および/または視覚的なセグメントを出力してもよい。
【0087】
制御モジュールは、ユーザー入力を受け付け、受け付けたユーザー入力に応じて格納されたスクリプトを修正するように構成されていてもよい。ユーザー入力は、例えば以下のようなものであってもよい。
- 1以上の調整可能な初期化パラメータ(例えば、セッションの総持続時間、呼吸パターン)、
- 動的なセッション持続時間の調整(セッション持続時間の延長または短縮など)の指示
- 動的なイベントの挿入の指示(例えば、1つの挿入可能なイベント、任意で一連の挿入可能なイベント)。
【0088】
制御モジュールは、一度に複数の入力を受け付けてもよい。ユーザーの入力は、順次にまたは同時に、好ましくは順次に受け取ることができる。一連の挿入可能なイベントが要求された場合、各イベントは、入力順序に従って挿入されてもよい。制御部は、GUIを介して、選択されたイベントのフィードバックをユーザーに提供してもよく、これにより、ユーザーは要求されたイベントをキャンセルできる。また、挿入可能な一連のイベントが要求された場合には、その順序をユーザーが調整してもよい。これにより、ユーザーは、基礎となるマシンの内部システム状態を操作できる。
【0089】
制御モジュールは、選択されたセッションパラメータの視覚的な概要をユーザーに提供してもよく、好ましくはユーザーの入力に対するフィードバックを提供するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を生成してもよい。GUIでは、セッションの進捗状況(進捗バーなど)を視覚的に表示したり、オプションで1以上のビジュアルインジケータやタイマーを表示したりできる。例えば、GUIは、現在の呼吸パターンの概要と、呼吸パターンが変化するタイミングをユーザーに提供してもよい。例えば、GUIは、要求されたイベントの概要と、どのタイミングでイベントブロックが挿入されるかの指標をユーザーに提供してもよい。
【0090】
制御モジュールは、セッションの履歴ログを生成してもよい。このログは、セッション前またはセッション中に要求されたユーザー入力の概要を(時系列的に)構成してもよく、ログは要求のタイミングと実行のタイミングを示してもよい。さらに、このログは、セッションの総実行時間や特定のフェーズなど、セッションの一連の統計情報を含んでいてもよい。ログは、後から相談できるように、格納可能なデバイスに格納されてもよい。ログは、複数のセッションのデータを含むセッション・ログ・データベースに(インターネットを介して)転送されてもよい。
【0091】
システムは、セッションをレンダリングして患者に提示するように構成されたメディアレンダラーをさらに備えていてもよい。セッションの(視覚的および/または音響的な)資産は、仮想現実ヘッドセットなどのメディアレンダラー上でレンダリングされる。メディアレンダラーによって受領されるセッションの(視覚的および/または音響的な)資産に対応する信号は、制御モジュールに関連するコンピューティングデバイス(コンピュータなど)またはメディアレンダラー自体(スマートフォンなど)によって生成されてもよい。制御モジュールは通常、メディアレンダラーが現在のブロックをレンダリングできるように、ブロックの実行を規制する。制御モジュールは、メディアレンダラーが現在のブロックと次のリソースとの間でシームレスな移行を行うことができるように、次のブロックを事前に制御してもよい。メディアレンダラーは、仮想現実、拡張現実、複合現実などのために構成されたヘッドセットであってもよい。メディアレンダラーは、ウェアラブルデバイスに挿入されたスマートフォンであってもよい。メディアレンダラーは、制御モジュールに接続されているか、または接続可能であり、接続は、有線であってもよいし、無線(例えば、Bluetooth接続またはWiFi接続、または他の無線プロトコル)であってもよい。
【0092】
この発明の一側面は、この明細書に記載の方法を実行するために構成された、コンピュータプログラム、またはコンピュータの内部メモリに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品、またはコンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータプログラム製品、またはそのようなコンピュータプログラムもしくはコンピュータプログラム製品の組み合わせを提供することである。
この発明の一態様は、この明細書に記載された方法を実行するためのキットを提供することであり、このキットは
- メディアレンダラー
- この明細書に記載された方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム
を備える。
キットは、この明細書に記載されている方法を実行するためのコンピュータプログラムを用いて予め構成されたコンピューティングデバイスを含んでもよい。
【0093】
実施例
例1:治療セッション
図1Aは、x軸が経過時間(t)を表し、y軸が患者の変容した意識状態の深さ(状態の深さ(DoS)とも呼ばれる)を表す、連続して実行される4つのフェーズからなる典型的な催眠治療セッションの例示的な視覚化を示す。この例で、4つの連続したフェーズは、 (i) 誘起フェーズ、 (ii) 深化フェーズ、 (iii) 移行フェーズ、および (iv) 再覚醒フェーズを指す。治療セッションに没頭している間、患者の自己知覚と周辺知覚は影響を受け、 (i) のフェーズでは没頭の深さが増し、 (ii) のフェーズでは最大となる。 (ii) のフェーズでは,患者は暗示的なコントロールを受けやすくなる。例えば,呼吸クラスブロックを使って患者の呼吸パターンをコントロールしたり,イベントクラスブロックを使って患者の生理的な反応や動きをコントロールしたりする。その後、 (iii) と (iv) のフェーズを経て、患者は通常の意識状態に戻る。各フェーズの詳細については、上述の説明を参照されたい。
【0094】
図1Bは、治療セッションのためのスクリプト(100)が、複数のブロック(B)から構成され、各ブロックが、その全体が実行される固定期間の(視覚的および/または音響的な)資産を定義する様子を示している。この特定の例では、各ブロックは同じ固定持続時間(t)を有する。各フェーズ (i) ~ (iv) には、一連のブロックが含まれる。例えば、フェーズ (ii) には10個のブロックが含まれている。したがって,治療セッションの総持続時間(セッション持続時間,SD)は,各ブロックの持続時間の合計に相当し,この例では,22ブロックにtを乗じたものになる。
【0095】
例2:セッション時間の動的な調整
図2では、スクリプト(100)を修正することによって、セッションの合計時間をセッション中に動的に調整する方法の例を示している。動的なセッション持続時間の調整により、現在のブロックを完了まで実行しながら、まだ実行されていない1つ以上の後続ブロックをスクリプトに追加または削除できる。これにより、ユーザーによるセッション持続時間の調整要求を受けた瞬間に、実行中のブロックが中断されることを避けることができる(患者の没入感が損なわれる可能性がある)。この例では、 (ii)、 (iii)、 (iv) の各フェーズの3つのブロックに相当する時間でセッションを延長することにしている。
【0096】
パネルAには、順番に実行される22個のブロックに対応する最初のセッション期間(ISD)を有する、格納されたスクリプト(100)(例1に沿ったもの)が示されている。ユーザーは、7番目のブロックの実行とレンダリングの間に入力(U)を提供する。現在のセッションの進行状況が矢印で示されている。ユーザーの入力を受けたシステムは、スクリプト内の既存のブロックの間または後に追加のブロックを挿入するための最適な位置を決定する。パネルBは、スクリプト(100)の中で、実行中または未実行の各フェーズ、特にフェーズ (ii) ~ (iv) に対応する場所に、1つのブロック(黒い背景で表示)が追加されていることを示している。各フェーズの持続時間を比例させることで、患者の没入感や体験を向上させることができる。動的に調整されたセッション時間(DASD)は、初期の22ブロックに3つの追加ブロックを加えたものに相当する。簡略化のため、すべてのブロックは同じ実行時間(t)で示されている。もちろん、標準的なブロックの整数ではない値を含むように、より具体的なユーザーの入力に応じて変更できる。
【0097】
例3:呼吸クラスのブロック
図3は、治療セッションにおいて患者の呼吸パターン(呼吸数や吸気・呼気比など)を調整するための呼吸クラスブロックを含むスクリプト(100)の例である。患者の呼吸パターンは、パネルAに示したスクリプト(100)内の休息ブロック(BRC)の間に部分的に分散された6つの呼吸ブロック(BBR)の実行により、 (ii) フェーズで調整される。実行された呼吸ブロックは、患者の呼吸パターンを調整するための刺激を(レンダラーに)提供する。休息ブロックは、患者の没入感を維持するための刺激を与える。呼吸ブロックと休息ブロックを交互に実行することで、患者の疲労や過呼吸のリスクを軽減しながら、患者の呼吸パターンを制御できる。
【0098】
パネルBは、3つの呼吸ブロックを指定するスクリプト(100)を示しており、各呼吸ブロックの内容は、BBR1、BBR2、BBR3と、より詳細に示されている。患者の呼吸パターンは、患者の呼吸パターンが同期する定義可能な動作レート(DMR)を有するグラフィック要素(視覚的な資産)を用いて制御できる。この例では、呼吸ブロック1~3(BBR1~BBR3)のDMRは、徐々に増加し(3.5”/3.5”から4.0”/4.0”へ)、徐々に遅い呼吸パターン(吸気/呼気の持続時間の増加)になっている。
【0099】
例4:イベントクラスブロック
図4では、イベントクラスブロック(BEV)を治療セッションのスクリプト(100)に挿入する方法を例示している。パネルAでは、スクリプト(100)の実行が開始された後に、ユーザー(U)(例えば、医師、患者)がイベントを要求しており、この特定の例では、ユーザーは (ii) フェーズの間にイベントセッションを要求することを決定している。イベントクラスブロックは、セッションが初期化された後、スクリプトの実行中にユーザーの要求に応じてスクリプトに挿入されるが、これは動的なイベント挿入とも呼ばれている。動的なイベント挿入では、現在のブロックの実行中にイベントブロックをスクリプトに挿入し、現在のブロックを完了まで実行できる。この実施例では、動的なイベント挿入のための2つの方法が示されている。
【0100】
パネルBでは、イベントブロック(BEV)を、既存の2つのブロックの間に、ビジュアルコンテンツおよび任意にオーディオコンテンツを含むブロックとして挿入している。この第1の方法は、以前に隣接していた2つのブロックを分割する分割イベント挿入(SEI)と呼ばれている。スプリットイベントブロックの挿入要求は、フェーズ (ii) の現在のブロック(上部パネル)の実行中に受領される。現在のブロックの実行は中断されず、要求されたイベントブロック(BEV)は、現在のブロック(最初の下パネル)にできるだけ近い2つの既存ブロックの間に挿入(分割挿入)される。イベントブロックの分割挿入は、他の(オプションの)ブロックを削除して補い、ユーザーが定義したセッションの総時間を維持しない限り、セッションの実行時間が長くなる。
【0101】
また、パネルCに示すように、イベントブロックは、特定のイベントの場合、既に実行中のブロックや将来のブロックに重ねて挿入されることがある。この場合、(選択された)イベントブロックの(視覚的および/または音響的な)資産は、既存のブロックの資産に統合される。この第2の方法は、統合イベント挿入(MEI)と呼ばれる。場合によっては、分割挿入よりも統合の方が、セッションの総持続時間を延長することがないため、好ましい場合もある。しかし、すべてのブロックが統合に対応しているわけではない。例えば、イベントブロックの主位的な資産を妨害または阻害する可能性のある主位的な資産がブロックに含まれている場合、(患者の没入感を損なわずに)統合を実行することはできない。
【0102】
図5は、スクリプト(100)への統合イベント挿入(MEI)と、それに対応するブロックの内容のより詳細な例を示している。この例(パネルA)では、ブロック5の実行中に、ユーザー(U)が、特定のイベントをできるだけ早く実行するように要求している。現在のブロック(ブロック5)の実行は中断されず、システムはそのイベントブロックがブロック6に統合するのに適していると判断する。第1の可能性(パネルB)では、要求されたイベントブロック(BEV)にはオーディオコンテンツのみが含まれており、修正スクリプト(100)は、ブロック6のオーディオコンテンツがBEVのオーディオコンテンツと統合される結果となる実行を指示する。第2の可能性(パネルC)では、要求されたイベントブロック(BEV)にはビジュアルコンテンツのみが含まれており、修正されたスクリプト(100)は、ブロック6のビジュアルコンテンツがBEVのビジュアルコンテンツと統合される結果となるように実行を指示する。第3の可能性(パネルD)では、要求されたイベントブロック(BEV)にはオーディオコンテンツとビジュアルコンテンツの両方が含まれており、修正スクリプト(100)は、ブロック6とBEVのオーディオコンテンツとビジュアルコンテンツが統合されるように実行を指示する。
【0103】
治療セッションの実行中に(患者に)鎮痛効果をもたらすためのイベントブロック挿入の例を示す。患者は、一連の休息クラスブロックを使用して、意識変容状態に維持される。治療セッション中のある時点で、ユーザーは、患者が副作用を持つことが予想される針の使用を必要とするイベントがあると判断する。セッションのユーザーは、システムのGUIを介して「針のイベント」を要求する。システムは、患者の没入感を中断することなく、例えば、休息クラスのブロックのオーディオコンテンツまたはビジュアルコンテンツを中断することなく、対応するイベントブロックの挿入時刻を決定する。システムは、要求されたイベントブロックが正確に挿入されるまでの時間を計算し、システムのディスプレイに表示されるカウントダウンタイマーを介してユーザーにその旨を通知する。ユーザーは、残りの時間を使って必要なリソースを準備できる。カウントダウンタイマーが終了すると、ユーザーは、針の使用をイベントクラスブロックのオーディオコンテンツおよび/またはビジュアルコンテンツと同期させることができる。同様の例は、他のイベントクラスブロックの使用にも提供されることが理解される。例えば、洗浄アイテム、プローブ手段、温度、匂い、周囲の音などの変化に対応する例が挙げられる。
【0104】
例5:システム
図6は、治療セッションの少なくとも一部のためのスクリプト(100)を生成するためのシステムの概略図であり、システム(S)は、ブロックデータベースモジュール(1100)および制御モジュール(1000)を備える。図6は、システム(S)が、ユーザー入力(U)に応答して、治療セッションスクリプト(100、100’)を生成して格納する(St)方法をさらに示している。
【0105】
最初の上部パネル(A)には、セッションの初期化が示されている。システムは、ユーザー(U)から、セッションの持続時間やDMRなど、一連の調整可能な初期化パラメータを受け取る。入力された値は、ブロックデータベースモジュール(1100)から複数のブロックを選択する制御モジュール(1000)によって受領され、少なくとも4つのフェーズからなるセッションを生成し、受領したパラメータと一致させる。
【0106】
第2の中央パネル(B)では、セッションが実行されており、動的な持続時間の調整が示されている。システムは、ユーザー(U)からセッションの持続時間を延長する要求を受け取る。制御モジュール(1000)は、進行中のセッションの状態をチェックし、ブロックデータベースモジュール(1100)から選択された追加ブロックを挿入するための適切なポイントを決定する。修正されたスクリプト(100’)は、進行中のスクリプト(100)に取って代わるものとして格納される(St)。
【0107】
3番目の下のパネル(C)では、セッションが実行されており、動的なイベントの挿入が示されている。システムは、ユーザー(U)から、格納されたスクリプト(100)にイベントを挿入する要求を受け取る。制御モジュール(1000)(図6Cの誤記? 制御モジュールに記載されている1100)は、進行中のセッションの状態をチェックし、イベントブロックを挿入するのに適したポイントを決定する。要求された適切なイベントブロックは、ブロックデータベースモジュール(1100)から選択される。修正されたスクリプト(100’)は、実行中のスクリプト(100)に取って代わるものとして格納される。
【0108】
例6:GUI
図7は、ユーザー(U)からの入力を受け付けるためのグラフィカルユーザーインタフェース(120)の概略図である。
第1のパネル(A)では、セッションの初期化が示されている。GUIでは、言語(201)、セッション期間(202)、PMR(203)など、一連の調整可能な初期化パラメータを入力できる。また、GUIは、セッションのプレビューを提示し(300)、任意にセッションのテーマを選択できる。
【0109】
第2のパネル(B)では、セッションが進行中であり、レンダリングされたメディアがディスプレイ(350)に表示されている。ディスプレイの下には進捗バー(250)が表示され、セッションの経過した部分が黒く表示される。進捗状況は、任意でカウントダウンタイマーやその他のタイミング手段で補足できる。ユーザーは、(+)ボタンや(-)ボタンを押すなどして、GUIを操作することで、セッションを延長したり短縮したりできる。進捗バー(250)の下には、PMRインジケータがあり、患者の呼吸パターンを調整する現在の動作レートを示している。ユーザーは、GUIを操作して、例えば、(+)ボタンおよび(-)ボタンをそれぞれ押すことにより、PMRを増加または減少させることができる。
【0110】
第3のパネル(C)では、セッションが進行しており、レンダリングされたメディアが同様にディスプレイ(350)に表示されている。進捗バー(250)の下には、一連のインタラクティブ・ボタン(401、402、403、404)が表示され、それぞれが、痛み、クリーニング、プローブ、温度、匂いなどの特定のイベントに対応している。選択可能なイベントの)ボタンは、テキストベースであっても、視覚的に表現されていてもよい(例えば、アイコン、シンボル、トークン、モデルなど、任意に色分けされている)。ユーザーは、(402)などのイベントを1つ選択すると、システムが当該イベントに関連するイベントブロックをセッションに挿入するようになる。挿入は、交差した部分(252)で示されるように、進捗バー(250)上で視覚的に示されてもよい。
【0111】
第4のパネル(D)では、イベントが実行され、ディスプレイ(350)に表示されている。進捗バー(250)は、セッションの時点を示しており、イベント(252)の箇所が実行されていることを示している。以下では、拡大されたイベント(252’)の箇所が、イベント名のラベル(402’)とともに表示され、進捗バーは、イベントの経過時間(254)を示している。
【0112】
例7:資産
図8では、例示的なブロックのビジュアルコンテンツのスナップショットが示されている。このブロックは、患者の没入感を支援することを目的とした複数の副次的な資産で構成されている。この例では、水(504)、海底(506)、植物(508)、遺跡(510)、潜水艦の筐体(512)とダッシュボード(514)が含まれている。海底を動かすことで、潜水艦が映像の中で前進しているような印象を与える。いずれの補助資産も、被写体の注意を引くためのものではなく、没入感や落ち着いたリラックスした雰囲気を与えるためのものである。このスナップショットは、休息ブロックの一部である。このブロックが仮想現実ヘッドセットによってレンダリングされる場合、患者は頭の動きによって、あたかも球体の周りに投影されたかのようにシーン全体を見渡すことができる。また、このブロックには、海の音や、心を落ち着かせる音楽や声などの音響的な資産が提供されることもある。
【0113】
図9では、例示的なブロックのビジュアルコンテンツのスナップショットを示している。このブロックは、患者の注意を引くために中央に配置されたクジラのオブジェ(502)を主位的な資産としている。さらに、このブロックは、患者の没入感を高めるためのいくつかの副次的な資産で構成されている。副次的な資産には、水(504)、海底(506)、潜水艦のハウジング(512)とダッシュボード(514)が含まれる。海底を動かすことで、あたかもクジラが潜水艦の中の被写体に追われながら、映像の中で前に向かって泳いでいるような印象を与えることができる。
【0114】
この例では、クジラの尾の位置が第1の領域(上)から第2の領域(下)に向かって、あらかじめ定義された速度または時間間隔(あらかじめ定義された動作レート(PMR)として定義される)で移動し始めることがある。これにより、患者は呼吸パターンを尾の振りのPMRに同期させるように刺激される。さらに、ブロックには、尾の振りのPMRに同期した主位的な音響的資産(例えば、繰り返しのオーディオキュー)が用意されていてもよい。ブロックが、患者の呼吸パターンを調整するように構成されたそのような主位的な資産から構成されている場合、そのブロックは、呼吸クラスブロックとして分類される。
【0115】
なお、図8および図9に示した資産は、セッションのコアコンセプトを維持したまま、テーマごとに変化させてもよい。例えば、上述の水をテーマにしたセッションの代わりに、別の場所(例えば、森、空など)を資産に選択してもよい。自然に落ち着くテーマは、患者の没入感を刺激し、維持するのに適している傾向がある。例えば、空をテーマにしたセッションでは、副次的な資産として空や雲があり、主位的な資産として空を飛ぶ鳥がある。この鳥の羽ばたきをPMRと定義することもできる。例えば、森をテーマにしたセッションでは、副次的な資産として(やはり)木や植物があるが、主位的な資産は蝶々であってもよい。この蝶の羽ばたきをPMRと定義できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】