(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220418BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220418BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220418BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20220418BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220418BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220418BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220418BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220418BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220418BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220418BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220418BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220418BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/867 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/17 Z
A61K39/395 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544328
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2020073304
(87)【国際公開番号】W WO2020156335
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】201910094658.6
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508332634
【氏名又は名称】シャンハイ ジャオ トン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、シュエンミン
(72)【発明者】
【氏名】フー、ヤンシン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ファンリン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA16
4C085BB31
4C085CC22
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合する標的化部分、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合する標的化部分、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、
キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記標的化部分は、TCRの可変領域Vαまたはその断片に特異的に結合する、
請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記Vαまたはその断片は、Vα24またはその断片を含む、
請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
前記Vαまたはその断片は、さらに、Jαまたはその断片を含む、
請求項2~3のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項5】
前記Jαまたはその断片は、Jα18またはその断片を含む、
請求項4に記載のCAR。
【請求項6】
前記標的化部分は、TCRの可変領域Vβまたはその断片に特異的に結合する、
請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
前記Vβまたはその断片は、Vβ8またはその断片を含む、
請求項6に記載のCAR。
【請求項8】
前記TCR可変領域の断片は、TCR可変領域のCDR3を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項9】
前記TCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片は、SEQ ID NO:58-61のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項10】
前記標的化部分は、抗体またはその断片を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項11】
前記抗体は、前記TCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片にリファレンス抗体と競合的に結合し、
ここで、前記リファレンス抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、ならびにSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含有する軽鎖可変領域と、および
SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR1、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、ならびにSEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含有する重鎖可変領域と、を含む
請求項10に記載のCAR。
【請求項12】
前記リファレンス抗体は、軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項11に記載のCAR。
【請求項13】
前記リファレンス抗体は、Vα24Jα18抗体を含む、
請求項11~12のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項14】
前記抗体は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)を含む、
請求項10~13のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項15】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)を含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項16】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、
請求項10~15のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項17】
前記抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)を含む、
請求項10~16のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項18】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)を含む、
請求項10~17のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項19】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、
請求項10~18のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項20】
前記抗体は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、
請求項10~19のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項21】
前記抗体は、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、
請求項10~20のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項22】
前記抗体は、一本鎖抗体である、
請求項10~21のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項23】
前記抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:62およびSEQ ID NO:19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項10~22のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項24】
前記膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD137および/またはCD3から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項1~23のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:40で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~24のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項26】
前記共刺激ドメインは、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40L、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2および/またはCD226から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項27】
前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:42で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~26のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項28】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む、
請求項1~27のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項29】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:44で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~28のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項30】
前記CARは、さらに、前記抗体を前記膜貫通ドメインに連結するヒンジ領域を含む、
請求項1~29のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項31】
前記ヒンジ領域は、CD8aおよび/またはIgGから選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項30に記載のCAR。
【請求項32】
前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO:38で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項30~31のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項33】
SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:72およびSEQ ID NO:50のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~32のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載のCARをコード化する、
単離された核酸分子。
【請求項35】
SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:73またはSEQ ID NO:51で表される核酸配列を有する、
CARをコード化する単離された核酸分子。
【請求項36】
請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項37】
mRNAベクター、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターおよび/またはレンチウイルスベクターを含む、
請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
請求項1~33のいずれか1項に記載のCAR、請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項36~37のいずれか1項に記載のベクターを含むか、および/または発現可能である、
免疫エフェクター細胞。
【請求項39】
Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれる、
請求項38に記載の細胞。
【請求項40】
前記Tリンパ球および/またはナチュラルキラー細胞は、天然に由来するか、または幹細胞により誘導されるものである、
請求項39に記載の細胞。
【請求項41】
免疫エフェクター細胞に、請求項36~37のいずれか1項に記載のベクターを導入することを含む、
免疫エフェクター細胞の調製方法。
【請求項42】
請求項38~40のいずれか1項に記載の免疫エフェクター細胞を含む、
組成物。
【請求項43】
T細胞リンパ腫または白血病を治療するための医薬品の調製における請求項1~33のいずれか1項に記載のCAR、請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項36~37のいずれか1項に記載のベクター、または請求項38~40のいずれか1項に記載の免疫エフェクター細胞の使用。
【請求項44】
前記T細胞リンパ腫または白血病は、末梢T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、節外性NKT細胞リンパ腫、退形成性T細胞リンパ腫、ALK陽性退形成性細胞リンパ腫、ALK陰性退形成性細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫、細胞傷害性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞性前リンパ球白血病(T-PLL)、T細胞大顆粒リンパ球(T-LGL)白血病、肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)、セザリー症候群(SS)、皮下扁桃T細胞リンパ腫および型なしT細胞リンパ腫からなる群から選ばれる1種または複数種を含む、
請求項43に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオメディカル分野に関して、具体的に、標的化部分がT細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合するキメラ抗原受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞腫瘍は、よく見られる血液学的悪性疾患である。T細胞リンパ腫または白血病は、B細胞リンパ腫や白血病に比べて、予後が不良である。現在、T細胞リンパ腫または白血病の主な治療は、化学療法を主としており、特異的標的免疫療法がまだない。
【0003】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は、人工改変された腫瘍殺傷細胞であり、抗体の標的認識機能とT細胞の腫瘍殺傷機能が組み合わせられ、腫瘍免疫治療分野で画期的な進歩を遂げた。しかし、CAR-Tは、正常T細胞を殺傷する副作用があり、腫瘍患者に対して安全性に一定のリスクがある。
【0004】
多くの成熟T細胞腫瘍は、ともにTCRまたは複合体を発現させ、そのうち、TCRが多い。T細胞全体のグループは、非常に不均一であり、各種の占める比率が0.85%~8.3%などになっているVαサブタイプがある。一般的に、腫瘍細胞(例えばT細胞腫瘍細胞)を殺傷するための治療方法も、正常T細胞をある程度影響し、患者の免疫系に悪影響を与えることで、腫瘍の治療を妨げるために、正常T細胞グループへの影響が小さい新たなCARを早急に開発しなければならない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、標的化部分がT細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)およびその使用を提供する。本発明に係るCARは、1)T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合することができ、2)T細胞由来の腫瘍細胞を選択可能に殺傷することができ、3)正常T細胞集団への影響が小さく、4)T細胞リンパ腫の治療に用いられることができるという特性の1種または複数種を持つ。
【0006】
一方、本発明は、T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合する標的化部分、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、TCRの可変領域Vαまたはその断片に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、上記のVαまたはその断片は、Vα24またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記のVαまたはその断片は、さらに、Jαまたはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記のJαまたはその断片は、Jα18またはその断片を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、TCRの可変領域Vβまたはその断片に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、上記のVβまたはその断片は、Vβ8またはその断片を含む。いくつかの実施形態において、上記のTCR可変領域の断片は、TCR可変領域のCDR3を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記のTCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片は、SEQ ID NO:58-61のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、抗体またはその断片を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、上記のTCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片にリファレンス抗体と競合的に結合し、ここで、上記のリファレンス抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、ならびにSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含有する軽鎖可変領域と、および、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR1、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、ならびにSEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含有する重鎖可変領域とを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記のリファレンス抗体は、Vα24Jα18抗体を含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、上記の抗体は、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、一本鎖抗体である。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記の抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:62およびSEQ ID NO:19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記の膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD137および/またはCD3から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記の膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:40で表されるアミノ酸配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記の共刺激ドメインは、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40L、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2および/またはCD226から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記の共刺激ドメインは、SEQ ID NO:42で表されるアミノ酸配列を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:44で表されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記のCARは、さらに、上記の抗体を上記の膜貫通ドメインに連結するヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、上記のヒンジ領域は、CD8aおよび/またはIgGから選ばれるタンパク質のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態において、上記のヒンジ領域は、SEQ ID NO:38で表されるアミノ酸配列を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記のCARは、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:72およびSEQ ID NO:50のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する。
【0024】
他方、本発明は、本発明に記載のCARをコード化する単離された核酸分子を提供する。
【0025】
他方、本発明は、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:73またはSEQ ID NO:51で表される核酸配列を有するCARをコード化する単離された核酸分子を提供する。
【0026】
他方、本発明は、本発明に記載の核酸分子を含むベクターを提供する。いくつかの実施形態において、本発明に記載のベクターは、mRNAベクター、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターおよび/またはレンチウイルスベクターを含む。
【0027】
他方、本発明は、本発明に記載のCAR、本発明に記載の核酸分子、または本発明に記載のベクターを含むか、および/または発現可能である免疫エフェクター細胞を提供する。いくつかの実施形態において、上記の免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれる。いくつかの実施形態において、上記のTリンパ球および/またはナチュラルキラー細胞は、天然に由来するか、または幹細胞により誘導されるものである。
【0028】
他方、本発明は、免疫エフェクター細胞に、本発明に記載のベクターを導入することを含む免疫エフェクター細胞の調製方法を提供する。
【0029】
他方、本発明は、本発明に記載の免疫エフェクター細胞を含む組成物を提供する。
【0030】
他方、本発明は、T細胞リンパ腫または白血病を治療するための医薬品の調製における本発明に記載のCAR、本発明に記載の核酸分子、本発明に記載のベクター、または本発明に記載の免疫エフェクター細胞の使用を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、上記のT細胞リンパ腫または白血病は、末梢T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、節外性NKT細胞リンパ腫、退形成性T細胞リンパ腫、ALK陽性退形成性細胞リンパ腫、ALK陰性退形成性細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫、細胞傷害性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞性前リンパ球白血病(T-PLL)、T細胞大顆粒リンパ球(T-LGL)白血病、肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)、セザリー症候群(SS)、皮下扁桃T細胞リンパ腫および型なしT細胞リンパ腫からなる群から選ばれる1種または複数種を含む。
【0032】
当該技術分野における当業者は、以降の詳細な記載からの本開示のその他の側面や利点の把握が容易であろう。以下の詳細な記載では、本開示の例としての実施形態しか表現して記載していない。当該技術分野における当業者にとって、本開示の詳細によって、本発明に係る趣旨や範囲を逸脱しない限り、公開されている具体的な実施形態を変更しても良い。それに応じて、本発明において、図面や明細書の記載があくまでも例であり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明に係る具体的な特徴は、添付の請求項のように示されたものである。本発明に係る特徴やメリットは、以下詳しく記載されている例示的実施形態や図面を参照することによって、より確実的に把握されるだろう。図面に関しては、以下のように概略的に説明する。
【0034】
【
図1】本発明における標的TCR VαまたはVβサブタイプのCAR構造模式図を示す。
【0035】
【
図2】本発明におけるT120BBZレンチウイルスの力価測定結果を示す。
【0036】
【
図3】本発明におけるT120BBZ CAR-TのCAR発現分析検出結果を示す。
【0037】
【
図4】本発明におけるT120BBZ CAR-TによるVα24Jα18
+腫瘍細胞殺傷の検出結果を示す。
【0038】
【
図5】本発明におけるVα24Jα18
+腫瘍細胞がT120BBZ CAR-TによるTNFの分泌を特異的に誘導することができる検出結果を示す。
【0039】
【
図6】
図6A~6Bは、本発明におけるF231BBZ CAR-TがVβ8
+腫瘍細胞を特異的に殺傷すると共に、IFNを放出可能であることを示す。
【0040】
【
図7】
図7A~7Cは、本発明におけるT120BBZ CAR-Tのインビボ抗腫瘍活性分析を示す。
【0041】
【
図8】
図8A~8Cは、本発明におけるT120BBZ CAR-TのTCR発現分析を示す。
【0042】
【
図9】本発明における1168BBZレンチウイルスの力価分析検出結果を示す。
【0043】
【
図10】本発明における1168BBZCAR-TのCAR発現分析検出結果を示す。
【0044】
【
図11】本発明における1168BBZ CAR-TによるVβ8
+腫瘍細胞殺傷の検出結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本願発明の実施形態を、所定の具体的な実施例によって説明するが、当業者が、本明細書に公開された内容により、本願発明のその他のメリットや効果を容易に把握することができる。本発明は、T細胞由来の腫瘍細胞を選択可能に殺傷することができると共に正常T細胞集団への影響が小さいT細胞受容体の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合することができるCARを提供する。
【0046】
以下、本発明をより詳しく説明するが、本発明において、特に断りのない限り、本発明に用いられる科学や技術の用語は、当該技術分野における当業者が想到容易な意味を有する。また、本発明に用いられるタンパク質と、核酸化学、分子生物学、細胞ならびに組織培養、微生物学、免疫学関連用語および実験室操作ステップは、いずれも関連分野で広く使用されている用語と従来のステップである。また、本発明をよりよく把握するために、以下、関連用語の定義や解釈を提供する。
【0047】
本発明において、上記の「キメラ抗原受容体」(Chimeric Antigen Receptor、CAR)は、通常、抗原に結合可能な細胞外ドメインと、少なくとも1つの細胞内ドメインを含む融合タンパク質を指す。CARは、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)の必須因子であり、腫瘍関連抗原(tumor-associated antigen、TAA)結合ドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナルドメインを含みうる。いくつかの実施形態において、上記の細胞内ドメインは、上記の膜貫通ドメインと異なるタンパク質に由来してもよい。
【0048】
本発明において、上記の「標的化部分」は、通常、キメラ抗原受容体で標的タンパク質またはその断片に特異的に結合することができるいかなるオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。本発明において、上記の標的化部分は、抗原結合ドメイン、例えば、抗体の抗原結合部であってよい。いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、標的タンパク質(例えば、抗原)を特異的に認識する一本鎖抗体(scFv)またはその部分を含みうる。本発明において、上記の標的化部分は、腫瘍関連抗原結合ドメインであってよい。本発明において、上記の腫瘍関連抗原は、抗原性を持ち、かつ発現が腫瘍に関連する生体分子を指す。例えば、上記の腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞にしか存在なく、他の正常細胞に存在しない抗原の腫瘍特異的抗原を含んでよく、腫瘍細胞にでも、他の器官や組織、または異種や同種異型の正常細胞にでも存在する抗原、または、発育や分化の期間に発現する抗原を含んでよい。
【0049】
本発明において、上記の「膜貫通ドメイン」(Transmembrane Domain)は、通常、細胞膜を貫通しているドメインを指す。例えば、上記の膜貫通ドメインは、上記のキメラ抗原受容体における細胞膜を貫通しているドメインであってよい。本発明において、上記の膜貫通ドメインは、天然ポリペプチドに由来してよく、または、人工設計により取得されることができる。例えば、上記の膜貫通ドメインは、T細胞受容体αやβ鎖、3ζ鎖、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD154またはGITRから選ばれるタンパク質に由来する膜貫通ドメインであってよい。
【0050】
本発明において、上記の「共刺激ドメイン」は、通常、免疫共刺激分子を提供することができる細胞内ドメインを指す。上記の共刺激分子は、抗原に対するリンパ球による効果的応答に必要な分子であってよい。上記の共刺激ドメインは、CD28の共刺激ドメインを含んでよい。上記の共刺激ドメインは、例えば、OX40および4-1BBの共刺激ドメインなどのTNF受容体ファミリーの共刺激ドメインを含んでよい。
【0051】
本発明において、上記の「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、通常、細胞内に位置しシグナルを伝達することができるドメインを指す。本発明において、上記の細胞内シグナル伝達シグナルドメインは、シグナルを細胞に伝達することができる。例えば、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、上記のキメラ抗原受容体の細胞内シグナル伝達ドメインである。例えば、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD28、4-1BBまたはOX40から選ばれる細胞内ドメイン由来であってよい。また、例えば、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、GITR由来の細胞内ドメインであってよい。
【0052】
本発明において、上記の「T細胞受容体(TCR)」は、通常、T細胞の表面の特異的受容体を指す。上記のT細胞受容体は、ヘテロ二量体であり、2つの異なるサブユニットより構成されてよい。T細胞受容体のほとんど(例えば、95%およびそれ以上、96%およびそれ以上、97%およびそれ以上など)は、αサブユニットとβサブユニットから構成され、各ペプチド鎖が、さらに、可変領域(V領域)、定常領域(C領域)、膜貫通領域および細胞質領域などの部分に分けられてよい。いくつかの実施形態において、上記のT細胞受容体は、γサブユニットとδサブユニットから構成され、かつ、これらの両サブユニットの比率が個体の発育や疾患によるものである。
【0053】
本発明において、上記の「TCR可変領域」は、通常、TCRのα、βである二本のペプチド鎖のV領域、すなわちVαとVβを指す。上記のVαとVβは、抗原特異性を有してよい。上記のVαとVβは、それぞれ3つの超可変領域CDR1、CDR2およびCDR3を有してよい。ここで、TCR可変領域のCDR3は、変化度が一番大きく、TCRの抗原結合特異性を決定することができる。
【0054】
本発明において、上記の「Vα」は、通常、TCRのα鎖の可変領域を指す。該用語は、Vα全長配列および/またはVα機能性断片をさらに含んでよく、それを標的化する抗体で認識されればよい。例えば、本発明におけるVαは、GenBank登録番号がGene ID 6955(ヒト)であるVαおよびGene ID 21473(マウス)であるVαであってよい。本発明において、上記の「Vα24」は、通常、Vα断片の変異体の一つを指す。上記のVα24は、ヒト、アカゲザル、マウスまたはラットなどの異なる生殖系列に由来してよい。例えば、上記のVα24は、GenBank登録番号がABG76794.1であるアカゲザル由来であってよく、また、PDB番号が4EN3_Aであるヒト由来であってよい。
【0055】
本発明において、上記の「Jα」は、通常、様々な変異体を有するTCRのα鎖の可変領域のJα断片を指す。上記のJαは、Jα18であってよい。本発明において、上記の「Jα18」は、通常、Jα断片の変異体の一つを指す。上記のJα18は、ヒト、アカゲザル、マウスやラットなどの異なる生殖系列に由来してよい。例えば、本発明におけるJα18は、配列がSEQ ID NO:58で表されるヒト由来であってよい。
【0056】
本発明において、上記の「Vα24Jα18」は、通常、Vαの変異体Vα24とJα断片の変異体Jα18の組換えを介して産生される変異体を指す。例えば、本発明におけるVα24Jα18の配列は、SEQ ID NO:59で表されてよい。
【0057】
本発明において、上記の「Vβ」は、通常、TCRのβ鎖の可変領域を指す。該用語は、Vβ全長配列および/またはVβ機能性断片をさらに含んでよく、それを標的化する抗体で認識されればよい。例えば、本発明におけるVβは、GenBank登録番号がGene ID 6957(ヒト)およびGene ID 21577(マウス)であるVβであってよい。
【0058】
本発明において、上記の「Vβ8」は、通常、TCRのβ鎖の可変領域の変異体の一つを指す。例えば、本発明におけるVβ8は、ヒト、アカゲザル、マウスまたはラットなどの異なる生殖系列に由来してよい。例えば、本発明におけるVβ8は、配列がSEQ ID NO:61で表されるヒト由来であってよく、また、配列がSEQ ID NO:60で表されるマウス由来であってよい。
本発明において、上記の「変異体」は、通常、上記のタンパク質および/または上記のポリペプチド(例えば、TCR可変領域に特異的に結合する抗体またはその断片)のアミノ酸配列で1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失または付加されているタンパク質またはポリペプチドを指す。例えば、上記の機能性変異体は、少なくとも1つ、例えば1~30つ、1~20つまたは1~10つ、又例えば1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸が置換、欠失および/または挿入されることでアミノ酸変化を含むタンパク質またはポリペプチドを含む。上記の機能性変異体は、基本的に、変化(例えば置換、欠失または付加)される前の上記のタンパク質または上記のポリペプチドの生物学的特性を保持することができる。例えば、上記の機能性変異体は、変化される前の上記のタンパク質または上記のポリペプチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、または100%の生物学的活性(例えば抗原結合力)を保持することができる。例えば、上記の置換は、保存的置換であってよい。
【0059】
本発明において、上記の「相同体」は、通常、上記のタンパク質および/または上記のポリペプチド(例えば、TCR可変領域に特異的に結合する抗体またはその断片)のアミノ酸配列と少なくとも約85%(例えば、少なくとも約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上)の配列相同性を持つタンパク質またはポリペプチドを指す。
【0060】
本発明において、上記の相同性は、通常、2つまたは複数の配列間の同様性、類似性や関連性を指す。「配列相同性パーセント」は、2本の整列しようとする配列を比較ウインドウにわたって比較することにより、2本の配列において同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)或いは同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が存在する位置の数を勘定することで、マッチする位置の数を取得し、マッチする位置の数を比較ウインドウにおける位置総数(即ち、ウインドウの大きさ)で除算し、その結果に100を乗算して、配列相同性パーセントを得る。配列相同性パーセントを特定するための整列は、当該技術分野における周知の様々な手段、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNやMegalign(DNASTAR)ソフトウェアに従って実現される。当該技術分野における当業者は、比較している全長配列範囲や、対象配列領域における最大整列を達成するに必要な任意のアルゴリズムを含めて、配列整列のための適切なパラメータを決定可能である。上記相同性は、FASTAおよびBLASTのアルゴリズムで測定することもできる。FASTAアルゴリズムは、W.R.PearsonおよびD.J.Lipmanの「生物学的配列比較のために改善されたツール」、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci.)、85:2444-2448、1988、およびD.J.LipmanとW.R.Pearsonの「タンパク質相似性の高速高感度な検索」,Science,227:1435-1441,1989に記載されている。BLASTアルゴリズムは、S.Altschul,W.Gish,W.Miller,E.W.MyersとD.Lipmanの「基本的な局所的整列(alignment)検索ツール」、分子生物学誌、215:403-410、1990に記載されている。
【0061】
本発明において、上記の「TCR可変領域のCDR3」は、通常、TCRβ鎖相補性決定領域3を指す。上記のTCR可変領域のCDR3は、抗原ペプチドに直接に結合する部位であってよい。上記のTCR可変領域のCDR3の遺伝子は、V末端、D断片、J先端およびV~DとD~Jの間を再配列させる挿入配列(VnDnJ)より構成されてよい。
【0062】
本発明において、上記の「Vα24Jα18抗体」は、通常、Vα24Jα18に特異的に結合することができる抗体を指す。例えば、本発明において、上記のVα24Jα18抗体は、6B11(Invitrogen Product#25-5806-41)であってよい。例えば、本発明において、上記のVα24Jα18抗体は、scFv T120(その配列がSEQ ID NO:1で表されてよい)であってもよい。
【0063】
本発明において、上記の「Vβ8抗体」は、通常、Vβ8に特異的に結合することができる抗体を指す。例えば、本発明において、上記のVβ抗体は、scFvF231(その配列がSEQ ID NO:19で表されてよい)であってよい。又例えば、本発明において、上記のVβ抗体は、scFv1168(そのアミノ酸配列が、SEQ ID NO:62で表されてよく、その核酸配列が、SEQ ID NO:63で表されてよい)であってよい。
【0064】
本発明において、上記の「抗体」は、通常、特定の抗原を特異的に認識および/または中和可能なポリペプチド分子を指す。例えば、抗体は、ジスルフィド結合によりお互いに連結された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)からなる免疫グロブリンを含むと共に、その抗原結合部より構成されるいかなる分子を含む。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、抗体断片或いは抗体誘導体を含み、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、単一ドメイン抗体(例えば、dAb)、一本鎖抗体(例えば、scFv)、及び抗原に結合する抗体断片(例えば、Fab、Fab’および(Fab)2断片)を含むがこれに限定されない。「抗体」という用語は、さらに、抗体のあらゆる組換え体の態様、例えば、原核細胞に発現する抗体、グリコシル化されていない抗体、ならびに前述した抗原に結合するいかなる抗体断片およびその誘導体を含む。重鎖は、1本ごとに重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)より構成されてもよい。軽鎖は、1本ごとに軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)より構成されてもよい。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれたより保存された領域に散在している相補性決定領域(CDR)と呼ばれた超可変領域に更に細分することができる。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4といった順にアミノ末端からカルボキシ末端に配列された3つのCDRと4つのFR領域で構成されてよい。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一成分(Clq)を含む宿主組織または因子への該免疫グロブリンの結合を媒介しうる。
【0065】
本発明において、上記の「核酸分子」は、通常、その天然環境から単離され、または人工的に合成された任意長さである単離形態のヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、あるいはリボヌクレオチドまたはそのアナログを指す。本発明に記載の核酸分子は、単離されたものであって良い。例えば、(i)インビトロでの増幅、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅と、(ii)クローン組換えと、(iii)精製、例えば、酵素消化およびゲル電気泳動分画と、或いは、(iv)合成、例えば、化学合成とによって産生または合成されてよい。ある実施形態において、上記単離された核酸は、組換えDNAの技術で調製される核酸分子である。本発明において、当該技術分野における周知の様々な手法によって上記した抗体またはその抗原結合断片をコード化する核酸を調製することができ、それらの手法が、制限断片の操作または合成オリゴヌクレオチドによる重複伸長PCRを利用することを含むがこれに限定されなく、具体的な手引きは、Sambrookら,Molecular Cloning, A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N.Y. ,1989、およびAusubeらCurrent Protocols in Molecular Biology ,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York N.Y., 1993に見出すことができる。
【0066】
本発明において、上記の「ベクター」は、通常、挿入された核酸分子を宿主細胞中および/または宿主細胞間に運搬するために、適当な宿主で自己複製できる核酸分子を指す。上記ベクターは、主にDNAまたはRNAを細胞に挿入するためのベクター、主にDNAまたはRNAを複製するためのベクター、および主にDNAまたはRNAの転写および/または翻訳の発現のためのベクターを含む。上記ベクターは、さらに、上記機能を複数種類有するベクターを含む。上記ベクターは、適当な宿主細胞を導入する場合、ポリペプチドに転写して翻訳されることができるポリヌクレオチドでありうる。上記ベクターは、通常、上記ベクターからなる適当な宿主細胞を培養することによって、所望の発現産物を産生することができる。本発明において、上記ベクターに、上記核酸分子を1種類または複数種類含んで良い。なお、上記ベクターには、その他の遺伝子、例えば適合な宿主細胞中および適合な条件で該ベクターへの選択が許容される標識遺伝子をさらに含んで良い。なお、上記ベクターは、さらに、コード領域が適切な宿主中で正しく発現することが許容される発現調節因子を含んで良い。このような調節因子は、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子の転写やmRNAの翻訳を調節するその他の調節因子などを含めて、当該技術分野における当業者の周知のものである。ある実施形態において、上記発現調節配列が調節可能なものである。上記発現調節配列の具体な構造は、生物種や細胞種の機能により変化するが、通常、例えばTATAボックス、キャッピング配列、およびCAAT配列などそれぞれ転写および翻訳の開始を関与する5’非転写配列並びに5’および3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現調節配列は、機能的に連結された核酸を転写制御するためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を含んで良い。
【0067】
本発明において、上記の「mRNAベクター」は、通常、外来遺伝子または自身の遺伝子を宿主細胞に発現させることができるmRNA断片を指す。例えば、本発明において、上記のmRNAベクターは、F231mBBZ mRNAおよび20mBBZ mRNAを含んでよい。
【0068】
本発明において、上記の「プラスミドベクター」は、通常、天然プラスミドに基づき、研究所操作に適合するよう人工的に構築されるプラスミドを指す。プラスミドベクターは、天然プラスミドに比べて、通常、1つまたは1つ以上の選択可能な標識遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)および1つの人工的に合成される複数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位含有ポリクローナル部位配列を持ちながら、分子量をできるだけ少なくするためにほとんどの必須ではない配列が取り除かれることによって、遺伝子工学操作が便利になる。
【0069】
本発明において、上記の「レトロウイルスベクター」は、通常、遺伝子情報がリボ核酸に記憶され、逆転写酵素が含まれていることが多いRNAウイルスの一つを指す。逆転写ウイルスは、少なくとも、ウイルスの中心と構造を構成するタンパク質の遺伝子を含むgag、逆転写酵素の遺伝子を含むpol、および、ウイルス外被を構成する遺伝子を含むen vの3種類の遺伝子を有する。レトロウイルスベクターは、レトロウイルスのトランスフェクションによって、例えば、CAR分子を宿主細胞に組み込むなど、自体のゲノムとそれが持つ外来遺伝子を、宿主細胞ゲノムにランダムで安定に組み込むことができる。
【0070】
本発明において、上記の「レンチウイルスベクター」は、通常、レトロウイルスに属する二倍体RNAウイルスベクターを指す。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスのゲノムに基づき、生物学的安全性を持たせるように、そのうちのウイルス活性に関連する複数の配列構造を除去し、そして、このゲノム骨格に対して、実験に必要な標的遺伝子の配列および発現構造を導入することによって調製されるベクターである。レンチウイルスベクターは、その他のレトロウイルスよりも、より幅広い宿主を有し、分裂や非分裂細胞に対して、ともに感染力を持ち、例えば初代細胞、幹細胞、未分化細胞などのいくつかのトランスフェクションしにくい細胞に対して、標的遺伝子の伝達効率を大きく向上させることができる(万海粟ら、「レンチウイルスベクターおよびその検討進展、Chinese Journal of Lung Cancer 17.12 (2014): 870-876. PMC」参照)。レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターのトランスフェクションによって、例えば、CAR分子を宿主細胞に組み込むなど、自体のゲノムとそれが持つ外来遺伝子を、宿主の細胞ゲノムにランダムで安定に組み込むことができる。
【0071】
本発明において、上記の「免疫エフェクター細胞」は、通常、免疫応答において異物抗原の排除に参与したり、エフェクター機能を発揮する免疫細胞を指す。例えば、形質細胞、細胞傷害性T細胞、NK細胞、APSC多能性細胞、肥満細胞などである。
【0072】
本発明において、用語「薬学的に許容可能なアジュバント」は、通常、薬学的に許容可能な薬剤担体、溶液または薬剤の特性を向上させる添加剤を指す。このような添加剤は、当該技術分野における当業者の周知のものである。
【0073】
本発明において、「T細胞リンパ腫」は、通常、T細胞に影響を与えるリンパ腫を指す。上記のT細胞リンパ腫は、血管中心性リンパ腫(Angiocentric lymphoma)、皮膚T細胞リンパ腫(Cutaneous T cell lymphoma)、退形成性大細胞型リンパ腫(Anaplastic large-cell lymphoma)および血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(Angioimmunoblastic T-cell lymphoma)などの種類を含む。T細胞リンパ腫は、リンパ系組織、例えばリンパ節や脾臓の中、またはリンパ系組織外部(すなわち、胃腸管、肝臓、鼻腔、皮膚など)で進行する。
【0074】
本発明において、「白血病」は、通常、血液細胞がんの広義の定義である。例えば、上記の白血病は、白血病細胞の大量の増殖/蓄積による疾患を指す。上記の白血病は、通常、骨髄から発生する。本発明において、上記の白血病のタイプは、がんになっている血液細胞のタイプおよび/または該血液細胞の増殖速度によるものである。例えば、上記の白血病は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞性前リンパ球白血病(T-PLL)、T細胞大顆粒リンパ球(T-LGL)白血病などのサブタイプを含みうる。
【0075】
本発明において、上記の「天然に由来する」とは、通常、人工的に処理されていない野生型の取得態様を指す。本発明において、上記の「天然に由来する」とは、ドナーから直接に採取する細胞取得態様であってよい。例えば、人工的な遺伝子編集や改変がされていない細胞取得態様であってよい。本発明において、上記のドナーは、健康または疾患が罹っている哺乳動物であってよい。例えば、ヒト、マウス、サルなどであってよい。本発明において、上記の疾患とは、がんであってもよい。例えば、上記の疾患は、T細胞由来の白血病またはリンパ腫(例えば、T細胞リンパ腫)であってよい。
【0076】
本発明において、上記の「幹細胞による誘導」とは、通常、幹細胞をインビトロで人工的な誘導により分化させるプロセスを指す。本発明において、インビトロ誘導方法は、通常、インビトロで培養された成体幹細胞に、各種の細胞分化に影響を与える物質、例えば血清、グルコース、ビタミン、および各種のタンパク質因子などを含む誘導因子を加えることである。本発明において、幹細胞による誘導は、誘導される多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells、iPS cells)であってよい。上記の誘導される多能性幹細胞は、ウイルスベクターによって、4つの転写因子(Oct4、Sox2、Klf4およびc-Myc)の組合わせを分化体細胞に移入することによって得られる。本発明において、上記のiPS細胞は、胚性幹細胞および胚性APSC多能性細胞と同様の細胞タイプであってよい。
【0077】
本発明において、「および/または」という用語は、オプションにおけるいずれか1項または2項を意味することを理解されたい。
【0078】
本発明において、「約」という用語は、通常、指定された数から0.5%~10%以上または以下の範囲、例えば指定された数から0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、または10%以上または以下の範囲に変動するものを指す。
【0079】
本発明において、「含む」という用語は、通常、含むこと、備えること、含有することや、有することを指す。場合によって、「であること」、「からなる」という意味もある。
【0080】
1. キメラ抗原受容体
本発明において、上記のキメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合することができる標的化部分、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0081】
a. 標的化部分
いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、TCRの可変領域Vαまたはその断片に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態において、上記のVαまたはその断片は、Vα24またはその断片を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記のVαまたはその断片は、さらに、Jαまたはその断片を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記のJαまたはその断片は、Jα18またはその断片を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、標的Vα24Jα18の部分を含んでよい。本発明において、上記の標的Vα24Jα18の部分は、配列がSEQ ID NO:1で表されるscFvT120を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、TCRの可変領域Vβまたはその断片に特異的に結合する。いくつかの実施形態において、上記のVβまたはその断片は、Vβ8またはその断片を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記のTCR可変領域の断片は、TCR可変領域のCDR3を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の標的化部分は、標的Vβ8の部分を含んでよい。本発明において、上記の標的Vβ8の部分は、配列がSEQ ID NO:19で表されるscFvF231を含んでよい。又例えば、本発明において、上記の標的Vβ8の部分は、さらに、配列がSEQ ID NO:62で表されるscFv1168を含んでよい。
【0083】
本発明において、上記のTCRの可変領域Vα、Vβまたはその断片は、SEQ ID NO:58-61、Gene ID 21473、Gene ID 6955、Gene ID 21577およびGene ID 6957のいずれかで表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0084】
本発明において、上記の標的化部分は、抗体またはその断片を含んでよい。
【0085】
本発明において、上記の抗体は、上記のTCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片にリファレンス抗体と競合的に結合することができ、ここで、上記のリファレンス抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、ならびにSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含有する軽鎖可変領域と、および、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR1、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、ならびにSEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含有する重鎖可変領域とを含んでよい。
【0086】
本発明において、上記のリファレンス抗体は、軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有してよい。
【0087】
本発明において、上記のリファレンス抗体は、Vα24Jα18抗体を含んでよい。例えば、上記のVα24Jα18抗体は、配列がSEQ ID NO:1で表されるscFvT120であってよい。
【0088】
本発明において、上記の抗体は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)を含んでよい。本発明において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)を含んでよい。本発明において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含んでよい。
【0089】
本発明において、上記の抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)を含んでよい。本発明において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)を含んでよい。本発明において、上記の抗体は、さらに、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含んでよい。
【0090】
本発明において、上記の抗体は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含んでよい。本発明において、上記の抗体は、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含んでよい。
【0091】
本発明において、上記の抗体は、一本鎖抗体(scFv)であってよい。本発明において、上記の一本鎖抗体は、1つまたは複数のscFvを含んで連結される。例えば、上記の一本鎖抗体は、1つのscFvを含むか、または1つ以上のscFv(例えば、2つ、3つ、4つ、5つなど)を含んでよい。いくつかの実施形態において、上記の複数のscFvは、直接に繋がっている。いくつかの実施形態において、上記の複数のscFvは、連結ペプチドによって連結されている。
【0092】
例えば、上記の一本鎖抗体は、配列がSEQ ID NO:1で表されるscFv T120と、配列がSEQ ID NO:9で表される軽鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:3-5で表されるLCDR1-3と、配列がSEQ ID NO:17で表される重鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:11-13で表されるHCDR1-3と、配列がSEQ ID NO:52で表されるVLとVHの連結ペプチドとを含んでよい。
【0093】
例えば、上記の一本鎖抗体は、配列がSEQ ID NO:19で表されるscFv F231と、配列がSEQ ID NO:27で表される軽鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:21-23で表されるLCDR1-3と、配列がSEQ ID NO:35で表される重鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:29-31で表されるHCDR1-3と;配列がSEQ ID NO:52で表されるVLとVHの連結ペプチドとを含んでよい。
【0094】
例えば、上記の一本鎖抗体は、配列がSEQ ID NO:62で表されるscFv1168と、配列がSEQ ID NO:70で表される軽鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:64-66で表されるLCDR1-3と、配列がSEQ ID NO:71で表される重鎖可変領域と、配列がそれぞれ順次にSEQ ID NO:67-68で表されるHCDR1-3と、配列がSEQ ID NO:52で表されるVLとVHの連結ペプチドとを含んでよい。
【0095】
b. 膜貫通ドメイン
本発明において、上記の膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD137および/またはCD3から選ばれるタンパク質由来の膜貫通ドメインを含んでよい。本発明において、上記の膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:40で表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、本発明において、上記の膜貫通ドメインは、配列がSEQ ID NO:40で表されるCD8膜貫通領域であってよい。本発明において、CART120BBZおよびCAR1168BBZは、CD8の膜貫通ドメインを含んでよい。
【0096】
c. 共刺激ドメイン
本発明において、上記の共刺激ドメインは、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40L、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2および/またはCD226であるタンパク質の共刺激ドメインを含んでよい。本発明において、上記の共刺激ドメインは、SEQ ID NO:42で表されるアミノ酸配列を有する。例えば、本発明において、上記の共刺激ドメインは、配列がSEQ ID NO:42で表される4-1BBであってよい。本発明において、CAR T120BBZ、CAR1168BBZおよびCAR F231mBBZは、4-1BBの共刺激ドメインを含んでよい。
【0097】
d. シグナル伝達ドメイン
本発明において、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含んでよい。本発明において、上記の細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:44で表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、本発明において、上記のシグナル伝達ドメインは、配列がSEQ ID NO:44で表されるCD3ζであってよい。本発明において、CAR T120BBZ、CAR1168BBZおよびCAR F231mBBZは、CD3ζのシグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0098】
e. ヒンジ領域
本発明において、上記のCARは、さらに、上記の抗体を上記の膜貫通ドメインに連結可能なヒンジ領域を含んでよい。本発明において、上記のヒンジ領域は、CD8aおよび/またはIgGから選ばれるタンパク質に由来するヒンジ領域を含んでよい。本発明において、上記のヒンジ領域は、SEQ ID NO:38で表されるアミノ酸配列を有するCD8aである。例えば、本発明において、上記のヒンジ領域は、配列がSEQ ID NO:38で表されるCD8aであってよい。本発明において、CAR T120BBZ、CAR1168BBZおよびCAR F231mBBZは、CD8aのヒンジ領域を含んでよい。
【0099】
f. CAR
本発明におけるCARは、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:50のいずれかで表されるアミノ酸配列を有してよい。例えば、上記のCARは、配列がSEQ ID NO:46で表されるCAR T120BBZから選ばれてよい。又例えば、上記のCARは、配列がSEQ ID NO:50で表されるCAR F231mBBZから選ばれてよい。又例えば、上記のCARは、配列がSEQ ID NO:72で表されるCAR 1168BBZから選ばれてよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明におけるCARは、N端から順次に、標的化部分(配列がSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:19で表される)、膜貫通ドメイン(配列がSEQ ID NO:40で表される)、共刺激ドメイン(配列がSEQ ID NO:42で表される)および細胞内シグナル伝達ドメイン(配列がSEQ ID NO:44で表される)を含んでよい。
【0101】
例えば、本発明におけるCARは、標的化部分がアミノ酸配列がSEQ ID NO:46で表されるscFvT120であるCAR T120BBZであってよい。その膜貫通ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:40で表されるCD8aである。共刺激ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:42で表される4-1BBであってよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:44で表されるCD3ζであってよい。CAR T120BBZのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:46で表される。
【0102】
例えば、本発明におけるCARは、標的化部分がアミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表されるscFvF231であるCAR F231mBBZであってよい。その膜貫通ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:40で表されるCD8aである。共刺激ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:42で表される4-1BBであってよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:44で表されるCD3ζであってよい。CAR F231mBBZのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:50で表される。
【0103】
例えば、本発明におけるCARは、標的化部分がアミノ酸配列がSEQ ID NO:61で表されるscFv1168であるCAR 1168BBZであってよい。その膜貫通ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:40で表されるCD8aである。共刺激ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:42で表される4-1BBであってよい。細胞内シグナル伝達ドメインは、アミノ酸配列がSEQ ID NO:44で表されるCD3ζであってよい。CAR 1168mBBZのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:72で表される。
【0104】
本発明に係るタンパク質、ポリペプチド、アミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列は、少なくとも、該上記のタンパク質、ポリペプチド、または該ヌクレオチド配列のコード化するタンパク質、ポリペプチドと、同一または同様の機能を備える変異体または相同体という範囲を含むことを理解されたい。
【0105】
核酸、ベクター、細胞、組成物
他方、本発明は、本発明におけるCARをコード化する単離された核酸分子を提供する。本発明において、上記のCARをコード化する単離された核酸分子は、SEQ ID NO:47またはSEQ ID NO:51で表される核酸配列を有してよい。本発明における核酸分子は、単離されたものであってよい。例えば、それは、(i)インビトロでの増幅、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅と、(ii)クローン組換えと、(iii)精製、例えば、酵素消化およびゲル電気泳動分画と、或いは、(iv)合成、例えば、化学合成とによって産生または合成されてよい。いくつかの実施形態において、上記単離された核酸は、組換えDNAの技術で調製される核酸分子である。
【0106】
他方、本発明は、本発明における核酸分子を含むベクターを提供する。本発明において、上記のベクターは、mRNAベクター、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターおよび/またはレンチウイルスベクターを含んでよい。例えば、本発明におけるベクターは、SEQ ID NO:47またはSEQ ID NO:51で表される核酸配列を有するレンチウイルスベクターであってよい。なお、上記ベクターには、その他の遺伝子、例えば適合な宿主細胞中および適合な条件で該ベクターへの選択が許容される標識遺伝子をさらに含んで良い。なお、上記ベクターは、さらに、コード領域が適切な宿主中で正しく発現することが許容される発現調節因子を含んで良い。このような調節因子は、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子の転写やmRNAの翻訳を調節するその他の調節因子などを含めて、当該技術分野における当業者の周知のものである。ある実施形態において、上記発現調節配列が調節可能なものである。上記発現調節配列の具体な構造は、生物種や細胞種の機能により変化するが、通常、例えばTATAボックス、キャッピング配列、およびCAAT配列などそれぞれ転写および翻訳の開始を関与する5’非転写配列並びに5’および3’非翻訳配列を含む。例えば、5’非転写発現調節配列は、機能的に連結された核酸を転写制御するためのプロモーター配列を包含するプロモーター領域を含んで良い。上記のベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ウイルス、ファージミド、mRNAベクター、または例えば遺伝子工学に一般的に用いられるその他のベクターを含んで良い。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記のベクターは、例えば、pCDH-MSCVEFベクターを含むプラスミドベクターであってよい。いくつかの実施形態において、上記のベクターは、例えば、プラスミドベクターと一緒に宿主細胞(例えば、293X細胞)に同時形質移入された後プラスミドをロードしたレンチウイルスベクターが得られるVSV-g、pMD Gag/PolまたはRSV-REVでありうるレンチウイルスベクターであってよい。本発明において、プラスミドをロードしたレンチウイルスベクターは、T120BBZウイルスを含んでよく、さらに、20BBZウイルスを含んでよい。いくつかの実施形態において、上記のベクターは、例えば、プラスミドをロードしたmRNAベクターを作製するためのARCA-capped RNA(AM1345、Thermor Fisher)でありうるmRNAベクターであってよい。本発明において、プラスミドをロードしたmRNAベクターは、F231mBBZ mRNAを含んでよく、さらに、20BBZ mRNAを含んでよい。
【0108】
他方、本発明は、本発明におけるCAR、本発明における核酸分子、または本発明におけるベクターを含むか、および/または発現可能な免疫エフェクター細胞を提供する。本発明において、上記の免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれてよい。本発明において、上記のTリンパ球および/またはナチュラルキラー細胞は、天然に由来するか、または幹細胞により誘導されるものである。
【0109】
他方、本発明は、免疫エフェクター細胞に、本発明におけるベクターを導入することを含む免疫エフェクター細胞の調製方法を提供する。いくつかの実施形態において、細胞の1種や1個あたりに、1個や1種の本発明におけるベクターを含んでよい。いくつかの実施形態において、細胞の1種や1個あたりに、複数(例えば、2個またはそれ以上)または多種(例えば、2種またはそれ以上)の本発明におけるベクターを含んでよい。例えば、本発明におけるベクターを上記の細胞、例えば真核細胞(例えば哺乳動物細胞)に導入することができる。例えば、上記の哺乳動物細胞は、293T細胞であってよく、293X細胞でもあってよい。当該技術分野における周知の方法、例えばエレクトロポレーション、lipofectineトランスフェクション、lipofectaminトランスフェクションなどを用いて、本発明におけるベクターを上記の細胞に導入することができる。
【0110】
他方、本発明は、本発明における免疫エフェクター細胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、上記の免疫エフェクター細胞および薬学的に許容可能なアジュバントを含んでよい。上記の薬学的に許容可能なアジュバントは、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水ポリマー、アミノ酸、糖、キレート剤、対イオン、金属複合体および/又は非イオン界面活性剤などを含んでよい。本発明において、上記の医薬品組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位におけるin situ投与、吸入、直腸投与、膣内投与、経皮投与又は皮下貯蔵部による投与に用いられるように調製されることができる。
【0111】
製薬学的用途
他方、本発明は、上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞を、T細胞リンパ腫または白血病を治療するための医薬品の調製に用いることを提供する。
【0112】
他方、本発明は、T細胞リンパ腫または白血病を治療するための医薬品の調製における上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞の使用を提供する。
【0113】
他方、本発明は、患者に、上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞を投与することを含むT細胞リンパ腫または白血病の治療方法を提供する。
【0114】
本発明において、上記のT細胞リンパ腫または白血病は、末梢T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、節外性NKT細胞リンパ腫、退形成性T細胞リンパ腫、ALK陽性退形成性細胞リンパ腫、ALK陰性退形成性細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫、細胞傷害性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞性前リンパ球白血病(T-PLL)、T細胞大顆粒リンパ球(T-LGL)白血病、肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)、セザリー症候群(SS)、皮下扁桃T細胞リンパ腫および型なしT細胞リンパ腫からなる群から選ばれる1種または複数種を含む。
【0115】
いくつかの実施形態において、上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞は、腫瘍細胞に対するインビボ殺傷効果を顕著に増強することができる。例えば、腫瘍の体積を50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上など)減少することができる。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞は、腫瘍細胞に対するインビトロ殺傷効果を顕著に増強することができる。例えば、腫瘍の体積を50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上など)減少することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、上記のCAR、上記の核酸分子、上記のベクター、または上記の免疫エフェクター細胞は、基本的に正常T細胞(例えば、上記の正常T細胞がT細胞リンパ腫に属しない正常、健康のT細胞でありうる)を殺傷せずに、特定抗原付き腫瘍細胞を選択可能に殺傷することができる。例えば、基本的に正常T細胞に損害を与えずに(例えば、T細胞数を5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下など減少する)、特定抗原付き(例えばVα24Jα18+)腫瘍細胞に対する殺傷効果を50%以上(例えば、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上など)増強することができる。
【0118】
以下の実施例は、どんな理論にもよらず、本発明の装置、方法やシステムの操作形態などを釈明することに過ぎなく、本願発明の範囲を制限するものではない。
【0119】
実施例
本発明において、上記の結合ターゲット、標的化部分(scFv)、CAR、ベクター、細胞名における対応関係は、下記の表1で表される。
【表1】
【0120】
実施例1 抗Vα24Jα18 CAR-T細胞(T120BBZ CAR-T細胞)の調製
1.1 レンチウイルスベクターpCDH-MSCVEF-T120BBZ構築およびウイルス産生
本発明におけるCARを構築する(
図1を参照)。まず、標的Vα24Jα18のCARを調製し、scFv T120(SEQ ID NO:1)、ヒンジ領域(SEQ ID NO:38)、膜貫通領域(SEQ ID NO:40)、4-1BB共刺激因子(SEQ ID NO:42)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:44)の配列を人工的に合成した。ここで、4-1BB共刺激因子をCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインに端から端まで接続することによって、配列がSEQ ID NO:54で表されるBBZを得た。
【0121】
同時に、配列がSEQ ID NO:37で表されるscFv 20を対照として構築した。
【0122】
TCR Vα24Jα18に特異的に結合することができるscFv T120(アミノ酸配列SEQ ID NO:1、ヌクレオチド配列SEQIDNO:2)とBBZ(SEQ ID NO:54)を、overlap PCRを通って、両端にEcoRIおよびBamHI酵素サイトを付加して、pCDH-MSCVEFベクターにクローンした。PCR増幅を行いながら、伸長PCRによって5’端にEcoRI酵素サイト(保護基を含む)、ヒンジ領域、膜貫通領域、4-1BB共刺激因子、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、BamHI酵素サイトを順次に組み込んで、PCR増幅によって上記のCAR T120BBZを得た。正しくシーケンシングされたクローンを、NucleoBondXtra Midi Plus EFキットを用いてエンドトキシンフリーで大量抽出して、レンチウイルスパッケージングプラスミド(VSV-g、pMD Gag/PolまたはRSV-REV)と一緒に293X細胞に同時形質移入し、37℃、5%CO2で48時間培養後、上清を採取して、0.45μMでろ過後、ベックマン超遠心機およびSW28スウィングロータを用いて、25000RPMの回転数で2時間遠心させることによってウイルス、すなわちpCDH-MSCVEF-T120BBZウイルス(単にT120BBZウイルスと称する)を濃縮し、次のCAR-T細胞の産生に用いる。
【0123】
同時に、T120BBZウイルスの調製と同じの方法で、対照pCDH-MSCVEF-20BBZウイルス(単に20BBZウイルスと称する)を産生し、、
図2に示されるように、得られたウイルス感染293細胞に対して、anti-mouse Fab抗体(Jackson ImmunoResearch#115-605-006)を用いてフローサイトメトリー方法でウイルス力価を測定した。
図2は、ウイルスを加えていないものをブランク対照として、1μL、3μL、9μLの上記T120BBZウイルスを加えた場合のフローサイトメトリー結果を示した。
【0124】
結果から、上記のCAR T120BBZの発現量は、加えられたウイルス投与量の増加につき増えていくことを示した。
【0125】
1.2 T120BBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞の調製
ヒトPBMCを、Stemcell T細胞分離キット(stem cell Catlog#19671から購入で精製後、anti-hCD3(Bioxcell #BE0001-2から購入)およびanti-hCD28(Bioxcell#BE0248から購入)により被覆された96ウエル培養プレートに播種して2日後に、MOI=10-20で本実施例におけるステップ1.1で調製されたT120BBZウイルスおよび20BBZウイルスを感染して1日後に、液を交換して細胞培養を続け、培地を10%FBS含有RPMI完全培地として、IL2(50IU/ml)、IL21(4ng/ml)を、6日ごとに人工抗原提示細胞(X線を100Gray照射後のRaji細胞)またはanti-hCD3(0.1μg/ml)やanti-hCD28(0.25μg/ml)で刺激するように2ラウンド刺激後、得られた細胞がT120BBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞であって、T120BBZ CAR-T細胞は、フローサイトメトリー染色に従って、Alexa Fluor(R) 647 AffiniPure F(ab')
2 Fragment Goat Anti-Human IgG, Fab fragment specific二次抗体で染色され、その結果が
図3に示された。
【0126】
結果から、得られた細胞は、いずれもCAR陽性であったことを示した。
【0127】
実施例2 抗Vβ8 CAR-T(F231mBBZ)細胞の調製
2.1. 抗Vβ8 CAR-T(F231mBBZ)mRNA産生
実施例1と同様に、標的マウスVβ8のCARを調製し、scFvF231(SEQ ID NO:19)、mBBZ(SEQ ID NO:56)の配列を人工的に合成した。ここで、mBBZは、マウス由来4-1BB共刺激因子をCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインに端から端まで接続することによって構成された。
【0128】
TCR Vβ8に特異的に結合することができるscFv F231(SEQ ID 19)とmBBZ(SEQ ID NO:56)を、overlap PCRを通って、両端にEcoRIおよびBamHI酵素サイトを付加して、pCDH-MSCVEFベクターにクローンした。PCR増幅を行いながら、伸長PCRによって5’端にEcoRI酵素サイト(保護基を含む)、ヒンジ領域、膜貫通領域、4-1BB共刺激因子、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、BamHI酵素サイトを順次に組み込んで、PCR増幅によって上記のCAR F231mBBZ(SEQ ID NO:51)を得て、プライマーによって、5’端にT7RNAポリメラーゼプロモーター配列を導入し、PCR産物を回收して精製し、mMESSAGEmMACHINE(R) T7 Ultra KitによりF231mBBZ mRNAを産生した。同時に、同一の方法で対照20BBZmRNAを産生した。
【0129】
2.2 F231mBBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞の調製
マウス脾臓細胞を、Mouse CD3 T Cell Isolation Kit細胞分離キット(biolegend #480031から購入)で精製後、96ウエル培養プレートに播種し、ConA(sigma #C2010から購入)で2日間活性化後、ECM830エレクトロポレーションF231mBBZ mRNAと20BBZ mRNAによって得られた細胞が、F231mBBZ CAR-T細胞と20BBZ CAR-T細胞であった。
【0130】
実施例3 抗1168 CAR-T細胞(1168BBZ CAR-T細胞)の調製
3.1. レンチウイルスベクターpCDH-MSCVEF-1168BBZの構築およびウイルス産生
実施例1の方法のように、まず、標的ヒトVβ8のCARを調製し、scFv 1168(SEQ ID NO:62)、ヒンジ領域(SEQ ID NO:38)、膜貫通領域(SEQ ID NO:40)、4-1BB共刺激因子(SEQ ID NO:42)、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:44)の配列を人工的に合成した。ここで、4-1BB共刺激因子をCD3ζ細胞内シグナル伝達ドメインに端から端まで接続することによって、配列がSEQ ID NO:54で表されるBBZを得た。
【0131】
同時に、配列がSEQ ID NO:37で表されるscFv 20を対照として構築した。
【0132】
ヒトVβ8に特異的に結合することができるscFv 1168(SEQ ID NO:62)とBBZ(SEQ ID NO:54)を、overlap PCRを通って、両端にEcoRIおよびBamHI酵素サイトを付加して、pCDH-MSCVEFベクターにクローンした。PCR増幅を行いながら、伸長PCRによって5’端にEcoRI酵素サイト(保護基を含む)、ヒンジ領域、膜貫通領域、4-1BB共刺激因子、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、BamHI酵素サイトを順次に組み込んで、PCR増幅によって上記のCAR 1168BBZを得た。正しくシーケンシングされたクローンを、NucleoBondXtra Midi Plus EFキットを用いてエンドトキシンフリーで大量抽出して、レンチウイルスパッケージングプラスミド(VSV-g、pMD Gag/PolまたはRSV-REV)と一緒に293X細胞に同時形質移入し、37℃、5%CO2で48時間培養後、上清を採取して、0.45μMでろ過後、ベックマン超遠心機およびSW28スウィングロータを用いて、25000RPMの回転数で2時間遠心させることによってウイルス、すなわちpCDH-MSCVEF-1168BBZウイルス(単に1168BBZウイルス称する)を濃縮し、次のCAR-T細胞の産生に用いる。
【0133】
同時に、1168BBZウイルスの調製と同じの方法で、対照pCDH-MSCVEF-20BBZウイルス(単に20BBZウイルスと称する)を産生し、
図9に示されるように、得られたウイルス感染293細胞に対して、anti-mouse Fab抗体(Jackson ImmunoResearch #115-605-006)を用いてフローサイトメトリー方法でウイルス力価を測定した。
図9は、ウイルスを加えていないものをブランク対照として、1μL、3μL、9μLの上記の1168BBZウイルスを加えた場合のフローサイトメトリー結果を示した。
【0134】
結果から、上記のCAR 1168BBZの発現量は、加えられたウイルス投与量の増加につき増えていくことを示した。
【0135】
3.2. 1168BBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞の調製
ヒトPBMCを、Stemcell T細胞分離キット(stem cell Catlog#19671から購入)で精製後、anti-hCD3(Bioxcell # BE0001-2から購入)およびanti-hCD28(Bioxcell# BE0248から購入)により被覆された96ウエル培養プレートに播種して2日後に、MOI=10-20で本実施例におけるステップ1.1で調製された1168BBZウイルスおよび20BBZウイルスを感染して1日後に、液を交換して細胞培養を続け、培地を10%FBS含有RPMI完全培地として、IL2(50IU/ml)、IL21(4ng/ml)を、6日ごとに人工抗原提示細胞(X線を100Gray照射後のRaji細胞)またはanti-hCD3(0.1μg/ml)やanti-hCD28(0.25μg/ml)で刺激するように2ラウンド刺激後、得られた細胞が1168BBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞であって、フローサイトメトリー染色に従って、anti-mouse Fab抗体(Jackson ImmunoResearch #115-605-006)二次抗体で染色され、その結果が
図10に示された。
【0136】
結果から、得られた細胞は、いずれもCAR陽性であったことを示した。
【0137】
実施例4 腫瘍細胞に対するT120BBZ CAR-Tによるインビトロ殺傷およびエフェクター分子放出
実施例1で調製されたT120BBZ CAR-T細胞を取って、20BBZ CAR-T細胞を対照として、NALM6-Vα24Jα18
+細胞と一緒に37℃、5%CO
2で共培養して24時間後に、フローサイトメトリーでNALM6-Vα24Jα18
+の生存およびTNFの放出を検出したところ、T120BBZ CAR-TがVα24Jα18
+の腫瘍細胞を選択可能に殺傷すると共に、より多くのTNFを放出することができる。腫瘍に対する殺傷効果の検出は、
図4に示され、TNF放出の検出結果は、
図5に示された。
【0138】
結果から、T120BBZ CAR-T細胞は、対照CAR-T細胞に比べて、Vα24Jα18+に対する腫瘍殺傷効果がVα24Jα18-に対する腫瘍細胞殺傷効果よりも強かったことを示した。T120BBZ CAR-T細胞は、対照CAR-T細胞に比べて、投与後にVα24Jα18-腫瘍細胞が17.4%減少し、Vα24Jα18+腫瘍細胞が72.2%減少し、これによって、T120BBZ CARがVα24Jα18に対して特異性を有することが証明された。そして、T120BBZ CAR-T細胞は、対照CAR-T細胞に比べて、投与後にVα24Jα18-腫瘍細胞のTNF放出量がやや増加し(23.7%増加)、Vα24Jα18+腫瘍細胞のTNF放出量が有意に増加し(188.6%増加)、これによって、T120BBZ CARがVα24Jα18に対して特異性を有することも証明された。
【0139】
実施例5 腫瘍細胞に対するF231mBBZ CAR-T細胞によるインビトロ殺傷
実施例2におけるステップ2.2で調製されたF231mBBZ CAR-T細胞および20BBZ CAR-T細胞を96ウエルプレートに播種すると同時に、ウイルスにより感染されていないT細胞を陰性対照として、C1498Vβ8
-CD20
-またはC1498Vβ8
+CD20
-腫瘍細胞と37℃、5%CO
2で共培養して24時間後に、フローサイトメトリーによって、TCRVb8.1/8.2(Biolegend#118406)を染色すると、腫瘍細胞の生存割合およびIFNγの放出を比較し、結果が
図6A~6Bに示された。
【0140】
結果から、F231mBBZ CAR-T細胞は、Vβ8+の腫瘍細胞を選択可能に殺傷すると共に、より多くのIFNγを放出することができることを示した。
【0141】
実施例6 腫瘍細胞に対する1168BBZ CAR-Tによるインビトロ殺傷およびエフェクター分子放出
実施例3で調製された1168BBZ CAR-T細胞を取って、20BBZ CAR-T細胞を対照として、Vβ8
+Jurkat細胞と37℃、5%CO
2で共培養して24時間後に、フローサイトメトリーで腫瘍細胞の生存を検出したところ、1168BBZ CAR-TがVβ8
+の腫瘍細胞を選択可能に殺傷することができた。腫瘍に対する殺傷効果検出は、
図11に示された。
【0142】
結果から、1168BBZ CAR-T細胞は、対照CAR-T細胞に比べて、Vβ8+に対する腫瘍殺傷効果がVβ8+に対する20BBZによる腫瘍細胞殺傷効果よりも強かったことを示した。1168BBZ CAR-T細胞は、対照CAR-T細胞に比べて、投与後に腫瘍細胞の生存数が減少し、これによって、1168BBZ CARがVβ8に対して特異性を有することが証明された。
【0143】
結果から、1168BBZ CAR-T細胞は、ヒトVβ8+の腫瘍細胞を選択可能に殺傷することができることを示した。
【0144】
実施例7 T120BBZ CAR-T細胞対腫瘍細胞のインビボ殺傷能力分析
10
6個のNALM6 Vα24Jα18
+腫瘍細胞を、静脈注射によりB-NDGマウス(Biocytogen)に播種して6日後に、10
7個のT120BBZ CAR-T細胞を静脈注射して治療を行い、同時に、ウイルスに感染されていないT細胞を陰性対照とした。7日目に、5滴の末梢血(100μL)を採集してフローサイトメトリーでその末梢血における腫瘍細胞とCAR-T細胞の含有量を検出したところ、その結果がそれぞれ
図7A~7Cに示された。
【0145】
結果から、T120BBZ CAR-T細胞は、対照に比べて、マウス体内の腫瘍を82.9%(3.798 mm3~0.646 mm3)減少させたことを示した。T120BBZ CAR-T細胞は、マウスの腫瘍負荷を有意に延ばすと共に、インビボで増幅してマウスの生存を長くすることができる。
【0146】
実施例8 T120BBZ CAR-T細胞のTCR組成分析
実施例1で調製されたT120BBZ CAR-T細胞を取って、20BBZ CAR-T細胞を対照として、anti-TCRαβ(Biolegend#306708)、anti-CD3(Biolegend #317306)およびanti- Vα24Jα18
+(Biolegend #342912)で染色させ、フローサイトメトリーでその特定の標的TCR(Vα24Jα18
+)組成の変化を分析したところ、結果が
図8A~8Cに示された。結果から、T120BBZ CAR-Tは、対照CAR-T細胞に比べて、Vα24Jα18
+腫瘍細胞が有意に減少したため、T120BBZ CAR-TがVα24Jα18
+のT細胞を選択可能に特異的に殺傷することができることが証明され、また、TCRαβ細胞、CD3
+細胞に有意差がなく(NS、not siginificant)、他のTCRαβサブタイプのT細胞とTCR複合体におけるCD3組成部分が保たれていることが証明され、圧倒的多数のT細胞サブタイプを保持すると共に、T細胞免疫機能への影響が小さいことが示唆された。
【0147】
以上、解釈又は図示による説明を記載したが、添付の請求項範囲を限定するわけではない。これまで本明細書に記載の実施形態に、多様な変更などがあることが当業者に明らかであり、且つ、添付の請求項および相当する実施形態の範囲に属する。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞受容体(TCR)の可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片に特異的に結合する標的化部分、膜貫通ドメイン、共刺激ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含む、
キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記標的化部分は、TCRの可変領域Vαまたはその断片に特異的に結合する、
請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記Vαまたはその断片は、Vα24またはその断片を含む、
請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
前記Vαまたはその断片は、さらに、Jαまたはその断片を含む、
請求項2~3のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項5】
前記Jαまたはその断片は、Jα18またはその断片を含む、
請求項4に記載のCAR。
【請求項6】
前記標的化部分は、TCRの可変領域Vβまたはその断片に特異的に結合する、
請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
前記Vβまたはその断片は、Vβ8またはその断片を含む、
請求項6に記載のCAR。
【請求項8】
前記TCR可変領域の断片は、TCR可変領域のCDR3を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項9】
前記TCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片は、SEQ ID NO:58-61のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~8のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項10】
前記標的化部分は、抗体またはその断片を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項11】
前記抗体は、前記TCRの可変領域Vα、Vβおよび/またはそれらの断片にリファレンス抗体と競合的に結合し、
ここで、前記リファレンス抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、ならびにSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含有する軽鎖可変領域と、および
SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR1、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、ならびにSEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含有する重鎖可変領域と、を含む
請求項10に記載のCAR。
【請求項12】
前記リファレンス抗体は、軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有し、かつ、重鎖可変領域が、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項11に記載のCAR。
【請求項13】
前記リファレンス抗体は、Vα24Jα18抗体を含む、
請求項11~12のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項14】
前記抗体は、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:29のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域1(HCDR1)を含む、
請求項10~13のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項15】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:68およびSEQ ID NO:30のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域2(HCDR2)を含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項16】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:31のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域3(HCDR3)を含む、
請求項10~15のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項17】
前記抗体は、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:21のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)を含む、
請求項10~16のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項18】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:65およびSEQ ID NO:22のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)を含む、
請求項10~17のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項19】
前記抗体は、さらに、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:66およびSEQ ID NO:23のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、
請求項10~18のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項20】
前記抗体は、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:71およびSEQ ID NO:35のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む、
請求項10~19のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項21】
前記抗体は、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:70およびSEQ ID NO:27のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、
請求項10~20のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項22】
前記抗体は、一本鎖抗体である、
請求項10~21のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項23】
前記抗体は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:62およびSEQ ID NO:19のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項10~22のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項24】
前記膜貫通ドメインは、CD8、CD28、CD137および/またはCD3から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項1~23のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項25】
前記膜貫通ドメインは、SEQ ID NO:40で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~24のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項26】
前記共刺激ドメインは、ICOS、CD28、CD27、HVEM、LIGHT、CD40L、4-1BB、OX40、DR3、GITR、CD30、TIM1、SLAM、CD2および/またはCD226から選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項1~25のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項27】
前記共刺激ドメインは、SEQ ID NO:42で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~26のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項28】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ由来のシグナル伝達ドメインを含む、
請求項1~27のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項29】
前記細胞内シグナル伝達ドメインは、SEQ ID NO:44で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~28のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項30】
前記CARは、さらに、前記抗体を前記膜貫通ドメインに連結するヒンジ領域を含む、
請求項1~29のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項31】
前記ヒンジ領域は、CD8aおよび/またはIgGから選ばれるタンパク質に由来するポリペプチドを含む、
請求項30に記載のCAR。
【請求項32】
前記ヒンジ領域は、SEQ ID NO:38で表されるアミノ酸配列を有する、
請求項30~31のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項33】
SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:72およびSEQ ID NO:50のいずれかで表されるアミノ酸配列を有する、
請求項1~32のいずれか1項に記載のCAR。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載のCARをコード化する、
単離された核酸分子。
【請求項35】
SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:73またはSEQ ID NO:51で表される核酸配列を有する、
CARをコード化する単離された核酸分子。
【請求項36】
請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項37】
mRNAベクター、プラスミドベクター、レトロウイルスベクターおよび/またはレンチウイルスベクターを含む、
請求項36に記載のベクター。
【請求項38】
請求項1~33のいずれか1項に記載のCAR、請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項36~37のいずれか1項に記載のベクターを含むか、および/または発現可能である、
免疫エフェクター細胞。
【請求項39】
Tリンパ球およびナチュラルキラー(NK)細胞から選ばれる、
請求項38に記載の細胞。
【請求項40】
前記Tリンパ球および/またはナチュラルキラー細胞は、天然に由来するか、または幹細胞により誘導されるものである、
請求項39に記載の細胞。
【請求項41】
免疫エフェクター細胞に、請求項36~37のいずれか1項に記載のベクターを導入することを含む、
免疫エフェクター細胞の調製方法。
【請求項42】
請求項1~33のいずれか1項に記載のCAR、請求項34~35のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項36~37のいずれか1項に記載のベクター、または請求項38~40のいずれか1項に記載の免疫エフェクター細胞を含む、
医薬組成物。
【請求項43】
T細胞リンパ腫または白血病を治療するための
、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
前記T細胞リンパ腫または白血病は、末梢T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、節外性NKT細胞リンパ腫、退形成性T細胞リンパ腫、ALK陽性退形成性細胞リンパ腫、ALK陰性退形成性細胞リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫、細胞傷害性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、T細胞性前リンパ球白血病(T-PLL)、T細胞大顆粒リンパ球(T-LGL)白血病、肝脾T細胞リンパ腫(HSTL)、セザリー症候群(SS)、皮下扁桃T細胞リンパ腫および型なしT細胞リンパ腫からなる群から選ばれる1種または複数種を含む、
請求項43に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】