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特表2022-523503脳内出血を処置することにおける使用のための多分化能成体前駆細胞
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  • 特表-脳内出血を処置することにおける使用のための多分化能成体前駆細胞 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】脳内出血を処置することにおける使用のための多分化能成体前駆細胞
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20220418BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20220418BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20220418BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K35/36
A61P7/04
A61P25/00
A61K35/545
A61K45/00
A61K35/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544340
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020015884
(87)【国際公開番号】W WO2020160274
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】16/265,373
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510012658
【氏名又は名称】エイビーティー ホールディング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】メイズ, ロバート
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA531
4C084ZB332
4C084ZB352
4C084ZC751
4C087AA01
4C087AA02
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA53
(57)【要約】
本明細書に記載される発明の局面は、脳内出血を処置するための多分化能成体前駆細胞の投与に関する。従来は、幹細胞は、ICHを処置するために有用であると考えられてはいなかった。本明細書で記載されるように、驚くべきことに、本明細書で記載されるとおりの多分化能成体幹細胞を投与して、ICHを処置することは、血腫容積、脳血流/灌流結果および機能的神経学的評価の尺度によって示されるように、ICHの転帰に対して予測外にかつ驚くほどに効果的な治療上の利益を有することが見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【請求項2】
被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、テロメラーゼを発現し、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【請求項3】
被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、oct3/4に関して陽性であり、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【請求項4】
被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、それらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けており、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【請求項5】
前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は、テロメラーゼを発現する、請求項3~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、それらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつoct3/4に関して陽性である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞は、oct3/4に関して陽性であり、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、oct3/4に関して陽性であり、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞は、正常核型を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞は、腫瘍形成性ではない、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞は、前記被験体において免疫原性ではない、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞は、哺乳動物細胞である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞は、ヒト細胞である、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、脾臓組織、胸腺組織、脊髄組織、脂肪組織、および肝臓組織のうちのいずれか1つから単離された細胞に由来する、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、骨髄に由来する、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記被験体は、ヒトである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体の質量1kgあたり10~10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体の質量1kgあたり10~5×10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはこれらの組み合わせが同時に使用される、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞は、1またはこれより多くの他の薬学的に活性な薬剤を含む製剤中にある、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞は、非経口的方法、静脈内的方法または定位固定的方法によって投与される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、静脈内的方法によって投与される、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【請求項27】
免疫抑制処置は、前記細胞の投与に付随して投与されない、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
被験体における脳内出血の処置のための医薬の製造における細胞の使用であって、ここで前記細胞は、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞である、使用。
【請求項29】
被験体における脳内出血の処置のための医薬の製造における細胞の使用であって、ここで前記細胞は、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、テロメラーゼを発現し、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞である、使用。
【請求項30】
被験体における脳内出血の処置のための医薬の製造における細胞の使用であって、ここで前記細胞は、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、oct3/4に関して陽性であり、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞である、使用。
【請求項31】
被験体における脳内出血の処置のための医薬の製造における細胞の使用であって、ここで前記細胞は、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、それらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けており、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞である、使用。
【請求項32】
前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、請求項29~31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
前記細胞は、テロメラーゼを発現する、請求項30~31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
前記細胞は、それらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項30に記載の使用。
【請求項35】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつoct3/4に関して陽性である、請求項28に記載の使用。
【請求項36】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項28に記載の使用。
【請求項37】
前記細胞は、oct3/4に関して陽性であり、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項28に記載の使用。
【請求項38】
前記細胞は、テロメラーゼを発現し、oct3/4に関して陽性であり、かつそれらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けている、請求項28に記載の使用。
【請求項39】
前記細胞は、正常核型を有する、請求項28~38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記細胞は、腫瘍形成性ではない、請求項28~39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
前記細胞は、前記被験体において免疫原性ではない、請求項28~40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、請求項28~41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
前記細胞は、哺乳動物細胞である、請求項28~42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
前記細胞は、ヒト細胞である、請求項28~43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項45】
前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、脾臓組織、胸腺組織、脊髄組織、脂肪組織、および肝臓組織のうちのいずれか1つから単離された細胞に由来する、請求項28~44のいずれかに記載の使用。
【請求項46】
前記細胞は、骨髄に由来する、請求項28~45のいずれかに記載の使用。
【請求項47】
前記被験体は、ヒトである、請求項28~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
前記被験体の質量1kgあたり10~10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、請求項28~47のいずれか1項に記載の使用。
【請求項49】
前記被験体の質量1kgあたり10~5×10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、請求項28~48のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはこれらの組み合わせが同時に投与される、請求項28~49のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
前記細胞は、1またはこれより多くの他の薬学的に活性な薬剤を含む製剤中にある、請求項28~50のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
前記細胞は、非経口的方法、静脈内的方法または定位固定的方法によって投与される、請求項28~51のいずれか1項に記載の使用。
【請求項53】
前記細胞は、静脈内方法によって投与される、請求項28~52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
前記医薬は、付随する免疫抑制剤の使用を伴わない使用のためである、請求項28~53のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、脳内出血および多分化能幹細胞に関する。
【0002】
政府資金提供
本明細書で開示される発明を行うにあたって、政府の資金は使用されなかった。
【0003】
関連出願
本出願は、2019年2月1日に出願され、発明の名称が同じである米国特許出願第16/265,373号(その全体は、本明細書に参考として援用される)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0004】

脳内出血(「ICH」)とは、脳実質および周囲の髄腔を含む、頭蓋内円蓋部内の任意の出血をいう。ICHは、米国および全世界で実質的な集団に影響を及ぼす破壊的疾患である(例えば、Caceres and Goldstein (2012): Emerg Med Clin North Am 30(3) 771-794を参照のこと)。全世界での自然発生的ICHの発生率は、100,000観察人年あたり24.6であり、米国で1年あたりおよそ40,000~67,000症例が存在する。その30日死亡率は、35%~52%の範囲に及ぶ。全死亡率のうちのおよそ半分が、最初の24時間以内に起こる。生存者のうちの20%が、6ヶ月で完全機能回復を有するに過ぎない。早期かつ効果的な処置が、極めて重要であると考えられる(例えば、van Aschら. (2010): The Lancet Neurology 9(2) 167-176; Aguilar and Freeman (2010): Semin Neurol 30(5) 555-64、Broderickら. (2007): Stroke 38(6) 2001-2023; Elliott and Smith (2010): Anesthesia & Analgesia 110(5) 1419-1427;およびFeiginら (2009): The Lancet Neurology 8(4) 355-369を参照のこと)。
【0005】
実質内出血はしばしば、穿通性頭部外傷から生じる。それらはまた、頭蓋骨陥没骨折から生じ得る。さらなる原因としては、動脈瘤破裂、動静脈奇形(AVM)、腫瘍内での出血および加速減速外傷が挙げられる。55歳齢を超える患者では、アミロイドアンギオパチーは、脳内出血の頻繁な原因である。脳静脈洞血栓症は、ICHの非常に小さな割合を占める。
【0006】
原発性ICHはしばしば、根底にある小血管病の表出である。第1に、長年の高血圧症は、小~中型の穿通血管の壁において顕微鏡的変性変化(脂肪硝子変性)を引き起こす高血圧性血管障害をもたらす。第2に、脳アミロイドアンギオパチーが発生し、これは、小さな軟髄膜血管および皮質血管の壁におけるアミロイドβペプチド(Aβ)の沈着によって特徴づけられる。アミロイドの蓄積をもたらす機構は未知である;しかし、結論は、十分に記録されている:平滑筋細胞の喪失、壁肥厚化、内腔の狭窄化、微小動脈瘤形成および微少出血によって特徴づけられる血管壁における変性変化(例えば、Fisher, CM. (1971): J Neuropathol Exp Neurol 30(3) 536-50; Vinters H. (1987): Stroke 18(2) 311-324;およびViswanathanら.(2011): Annals of Neurology 70(6) 871-880を参照のこと)。
【0007】
最初の血管破裂後に、血腫は、脳実質に対して直接的な機械的傷害を引き起こす。血腫周囲浮腫は、症状発生から最初の3時間以内に発生し、10日~20日の間にピークに達する。次に、血液および血漿生成物は、炎症応答、凝固カスケードの活性化、およびヘモグロビン分解からの鉄沈着を含む二次傷害プロセスを媒介する。最後に、血腫は、最初の24時間の間に患者のうちの38%までにおいて拡がり続け得る(例えば、Aronowski and Zhao (2011): Stroke 42(6): 781-6およびBrottら. (1997): Stroke 28(1) 1-5を参照のこと)。
【0008】
要するに、ICHは、脳への血液の漏出および脳実質における血液の蓄積から生じる脳傷害の1タイプである。ICHは、動脈瘤破裂、大脳動脈のまたは動静脈奇形(AVM)による損傷(例えば、穿孔)から生じ得る。ICHは、破壊的な神経学的傷害であり、それは、全世界では全ての脳卒中関連傷害のうちの約20%を、日本およびアジアではほぼ30%を占める。それは、死亡率が最も高く、全ての脳卒中関連傷害のうち、最悪の長期の転帰を有し、ICHは、全ての脳卒中関連死のうちのほぼ50%の原因である。血腫容積は、ICH患者転帰の独立した決定因子であることから、早期の血塊溶解(clot resolution)が主要な臨床上の目的である。しかし、ICHの転帰を改善する、FDAが承認した治療は存在しない。血塊を(可能であれば)除去する緊急手術およびリハビリテーションは、現行で唯一の標準治療である;しかし、外科的管理は有用性が制限されており、リハビリテーションは、損傷を防止または修復するのではなく、損傷に対処するということである。実際に、AHA/ASAからの最新のガイダンスおよびICHを有する患者に対して推奨される唯一の処置は、外科手術を行うことができるのであれば、血塊の外科的除去である。他の推奨される治療的介入は存在しない(例えば、Hemphill III, J.C.ら. (2015): AHA/ASA Guideline, Stoke 46: 2032-2060を参照のこと)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Caceres and Goldstein (2012): Emerg Med Clin North Am 30(3) 771-794
【非特許文献2】van Aschら. (2010): The Lancet Neurology 9(2) 167-176
【非特許文献3】Aguilar and Freeman (2010): Semin Neurol 30(5) 555-64
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
明らかに、ICH傷害に対処して、生じた脳傷害を低減し、修復する方法のニーズは極めて大きい。従って、本明細書で開示される発明の実施形態の目的の中には、ICHの症例における転帰を改善する手段および方法を提供することがある。
【0011】
従来は、幹細胞は、ICHを処置するために有用であると考えられてはいなかった。ICHの病態生理は、上記で言及されるように、脳の中に赤血球が存在し、その後分解し、ヘモグロビンおよびその神経毒性のヘム分解生成物を放出することによって駆動されると考えられる。脳への赤血球の溢出は、機械的組織破壊、浮腫形成、頭蓋内圧上昇、微小血管圧力の高まり、血流の減少および転帰不良と関連する、細胞療法による治療の傾向は認められないようである空間を占有する血腫/血塊を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で記載されるように、驚くべきことに、本明細書で記載されるとおりの多分化能成体幹細胞を投与して、ICHを処置することは、血腫容積、脳血流/灌流結果および機能的神経学的評価の尺度によって示されるように、ICHの転帰に対して予測外にかつ驚くほどに効果的な治療上の利益を有することが見出された。
【0013】
II
本記載によって包含される多くの実施形態のうちのいくらかは、以下の番号付けした段落においてまとめられる。その番号付けした段落は、自己言及である。特に、これらの段落において使用される語句「前記または下記のうちのいずれかに従う(in accordance with any of the foregoing or the following)」とは、他の段落にも言及する。その語句は、以下の段落において、本明細書で開示される実施形態が、単独で理解される個々の段落に記載される主題および組み合わせで理解される段落によって記載される主題の両方を含むことを意味する。この点において、以下の段落を示すにあたって、種々の局面および実施形態を、特に、単独でまたは任意の組み合わせで理解される段落によって記載することは、明示的に出願人の目的である。すなわち、その段落は、それらが個々におよび互いに任意の組み合わせで包含される全ての実施形態を示しかつ明示的な書面による説明を提供する簡潔な方法である。出願人は、具体的に、以下の段落のうちのいずれかにおいて示される任意の主題を、単独で、または他の段落のうちの任意の1もしくはこれより多くの任意の他の主題と一緒に、単独で、またはそこに示される任意の他の価値との任意の組み合わせで採用されても、そこに示される任意の価値の任意の組み合わせを含め、いかなるときでも特許請求する権利を保持している。必要とされるのであれば、出願人は、具体的に、本出願においてまたは本出願の利益を有する任意の後の出願において、本明細書に示される組み合わせの全てを完全に示す権利を保持している。
【0014】
p1. 被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【0015】
p2. 被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、テロメラーゼを発現し、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【0016】
p3. 被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、oct4に関して陽性であり、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【0017】
p4. 被験体において脳内出血を処置する方法であって、前記方法は、必要とする被験体に、胚性幹細胞でも、胚性生殖細胞でも、生殖細胞でもなく、それらの使用前に培養において少なくとも40細胞倍加を受けており、かつ前記被験体に対して同種異系または異種である多分化能成体前駆細胞を投与する工程を包含する方法。
【0018】
p5. 前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、前記および/または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0019】
p6. 前記細胞は、テロメラーゼを発現する、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。.
【0020】
p7. 前記細胞は、oct4に関して陽性である、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0021】
p8. 前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつoct4に関して陽性である、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0022】
p9. 前記細胞は、テロメラーゼを発現し、かつそれらの使用前に少なくとも40細胞倍加を受けている、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0023】
p10. 前記細胞は、oct4を発現し、かつそれらの使用前に少なくとも40細胞倍加を受けている、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0024】
p11. 前記細胞は、テロメラーゼを発現し、oct4に関して陽性であり、それらのそれらの使用前に少なくとも40細胞倍加を受けている、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0025】
p12. 前記細胞は、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちのいずれか1つまたはこれより多くを発現する、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0026】
p13. 前記細胞は、正常核型を有する、前記または下記のうちのいずれか1つに従う方法。
【0027】
p14. 前記細胞は、腫瘍形成性ではない、前記または下記のうちのいずれか1つに従う方法。
【0028】
p15. 前記細胞は、奇形腫を形成しない、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0029】
p16. 前記細胞は、遺伝的に変化されない、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0030】
p17. 前記細胞は、遺伝的に変化される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0031】
p18. 前記細胞は、前記被験体において免疫原性ではない、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0032】
p19. 前記細胞は、内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0033】
p20. 前記細胞は、哺乳動物細胞である、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0034】
p21. 前記細胞は、ヒト細胞である、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0035】
p22. 前記細胞は、胎盤組織、臍帯組織、臍帯血、骨髄、血液、脾臓組織、胸腺組織、脊髄組織、脂肪組織、および肝臓組織のうちのいずれか1つから単離された細胞に由来する、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0036】
p23. 前記細胞は、骨髄に由来する、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0037】
p24. 前記被験体は、ヒトである、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0038】
p25. 前記被験体の質量1kgあたり10~10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、前記ま
たは下記のうちのいずれかに従う方法。
【0039】
p26. 前記被験体の質量1kgあたり10~5×10の前記細胞の1またはこれより多くの用量が使用される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0040】
p27. 前記細胞に加えて、1またはこれより多くの増殖因子、分化因子、シグナル伝達因子、および/またはホーミングを増大させる因子が同時に使用される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0041】
p28. 抗微生物剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤またはこれらの組み合わせが同時に使用される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0042】
p29. 前記細胞は、1またはこれより多くの他の薬学的に活性な薬剤を含む製剤中にある、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0043】
p30. 前記細胞は、非経口投与される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0044】
p32. 前記細胞は、静脈内投与される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0045】
p33. 前記細胞は、定位固定的に投与される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0046】
p34. 前記細胞は、ICHの1分後、5分後、10分後、15分後、30分後、45分後、もしくは60分後、またはICHの60分後、90分後、120分後、150分後、もしくは180分後、またはICHの1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後、9時間後、10時間後、11時間後、もしくは12時間後、またはICHの12時間後、18時間後、24時間後、30時間後、36時間後、もしくは40時間後、またはICHの1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、もしくは7日後、またはICHの1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、5週間後、6週間後、7週間後、もしくは8週間後のうちのいずれか1もしくはこれより多く、または前述の任意の組み合わせおよび/もしくは任意の後の時間に投与される、前記または下記のうちのいずれかに従う方法。
【0047】
III
「1つの、ある(a)」または「1つの、ある(an)」とは、本明細書で使用される場合、1および1より多い;少なく
とも1を意味する。複数形が本明細書で使用される場合、それは、概して単数形をも含む。
【0048】
「細胞バンク(cell bank)」は、将来的な使用のために増殖および貯蔵されている細胞の産業上の名称である。細胞は、アリコートの状態で貯蔵され得る。それらは、貯蔵から外れて直接使用される可能性があるか、または貯蔵後に拡大されてもよい。これは、投与に利用可能な「容易に入手できる(off the shelf)」細胞が存在するように便宜を図るものである。上記細胞は、これらが直接投与され得るか、またはこれらが貯蔵から開放される場合に適切な賦形剤とともに混合され得るように、薬学的に受容可能な賦形剤中に既に貯蔵されていてもよい。細胞は、凍結されてもよいし、生存性を保存する形態で別の方法で貯蔵されてもよい。本発明の1つの実施形態において、細胞バンクが作られ、ここで上記細胞は、本出願において記載される効果を達成するために、増強された効力に関して選択されている。貯蔵からの開放後かつ投与の前に、上記細胞を効力に関して再びアッセイすることは好ましいことであり得る。これは、本出願において記載されるアッセイ(直接または間接)または当該分野で公知の別の方法のうちのいずれかを使用して行われ得る。次いで、望ましい効力を有する細胞が投与され得る。バンクは、自家細胞(器官ドナーまたはレシピエントに由来する)を使用して作られ得る。またはバンクは、同種異系による使用のための細胞を含み得る。
【0049】
「同時投与(co-administer)」とは、本明細書で使用される場合、2またはこれより多くの薬剤の同時または逐次的投与を含め、互いとともに、一緒に、協調して投与することを意味する。
【0050】
「含む、包含する(comprising)」とは、本明細書で使用される場合、他の限定なしに、言及されたものを、必然的に、他に何が含まれ得るかに対していかなる制限も排除もなしに含むことを意味する。例えば、「xおよびyを含む組成物(a composition comprising x and y)」は、どのような他の構成要素がその組成物の中に存在し得るとしても、xおよびyを含む任意の組成物を包含する。同様に、「xの工程を包含する方法(a method comprising the step of x)」とは、その方法においてxが唯一の工程であろうが、工程のうちの1つに過ぎなかろうが、どれだけ多くの他の工程が存在し得るとしても、およびそれらを比較してxがどれだけ単純であろうと複雑であろうと、xが行われる任意の方法を包含する。「から構成される(comprised of)」および語根「含む、包含する(comprise)」の文言を使用する類似の語句は、「含む、包含する(comprising)」の同義語として本明細書で使用され、同じ意味を有する。
【0051】
「から構成される得(comprised of)」は、本明細書で使用される場合、「含む、包含する(comprising)」の同義語である(上記を参照のこと)。
【0052】
「馴化細胞培養培地(conditioned cell culture medium)」とは、当該分野で周知の用語であり、細胞が増殖した培地に言及する。本明細書で使用される場合、その語句は、その培地が馴化されつつある特定のタイプの細胞増殖に対して効果的である因子を分泌するために十分な時間にわたって、その培地中で細胞が増殖することを意味する。
【0053】
「減少する(decrease)」および「減少する(decreasing)」および類似の用語は、一方の量、値または効果に対する比較によるとおり、もう一方の量または値または効果において小さくなることを概して意味するために本明細書で使用される。例えば、ICHの重篤度の減少は、血腫容積の減少および/または機能的障害の、それぞれ、ICHに起因する以前の容積または機能的障害との比較によるような減少を意味し得る。
【0054】
「有効量(effective amount)」とは、本明細書で使用される場合、一般に、所望の局所的または全身的な効果を提供する量を意味する。例えば、有効量は、有益なまたは所望の臨床上の結果を果たすために十分な量である。例えば、ICHを処置するための有効量は、血腫容積を減少させる、ならびに/または脳の循環および/もしくは灌流を改善するおよび/もしくは増大させる;ならびに/または神経学的および/もしくは機能的障害を減少させる、ならびに/または運動機能、平衡などのような機能を改善する量である。
【0055】
その有効量は、1回の投与において一度に全てを提供され得るか、または数回の投与において有効量を提供する分割量で提供され得る。何が有効量であると考えられるかの正確な決定は、各被験体に特有の因子(彼らのサイズ、年齢、傷害、および/または処置されている疾患もしくは傷害、ならびに傷害が起こってもしくは疾患が始まって以来の時間量が挙げられる)に基づき得る。当業者は、当該分野で慣用的であるこれらの考慮事項に基づいて、所定の被験体にとっての有効量を決定し得る。本明細書で使用される場合、「有効用量(effective dose)は、「有効量」と同じことを意味する。
【0056】
「効果的な経路(effective route)」とは、本明細書で使用される場合、一般に、所望の区画、系、または位置への薬剤の送達を提供する経路を意味する。例えば、効果的な経路は、薬剤が所望の作用部位において、有益なまたは所望の臨床上の結果を果たすために十分な薬剤の量を提供するために投与され得る経路である。
【0057】
「ICH」とは、本明細書で使用される場合、「脳内出血(intracerebral hemorrhage)」の頭字語であり、同じ意味を有する。
【0058】
「含む、包含する、が挙げられる(includes)」および「含む、包含する、が挙げられる(including)」は、本明細書で使用される場合、限定ではなく、「含む、包含する(comprises)」および「含む、包含する(comprising)」とほぼ同じことを意味する。
【0059】
「増大する(increase)」および「増大する(increasing)」とは、本明細書で使用される場合、生物学的事象または特性のようなサイズ、量、強度、または程度を、(ゼロまたは不活性状態からとして)より大きくすること(誘導することを含む)を意味する。例えば、ICHを処置するための有効量は、例えば、脳の循環および/もしくは灌流を増大させる;ならびに/または運動機能、平衡などのような機能を(例えば、以前のICH後機能との比較によって)改善する量である。
【0060】
「脳内出血」(「ICH」)は、脳組織、脳室、またはその両方への頭蓋内出血である。ICHの原因としては、動脈瘤、動静脈奇形、脳腫瘍および脳外傷のうちのいずれか1またはこれより多くからの出血、またはそれらの結果として、が挙げられるが、これらに限定されない。ICHはまた、「脳出血(brain bleed)」ともいわれる。
【0061】
用語「単離された(isolated)」とは、本明細書で使用される場合、1もしくはこれより多くの細胞または上記細胞とインビボで関連付けられた1もしくはこれより多くの細胞構成要素と関連付けられない細胞に言及する。「富化された集団(enriched population)」とは、インビボでまたは初代培養物において1もしくはこれより多くの他の細胞タイプに対する、所望の細胞の数の相対的増大を意味する。
【0062】
しかし、本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、幹細胞のみの存在を示さない。むしろ、用語「単離された」は、その細胞が、それらの天然の組織環境から取り出され、通常の組織環境と比較して、より高濃度で存在することを示す。よって、「単離された」細胞集団は、幹細胞に加えて、細胞型をさらに含んでいてもよく、さらなる組織構成要素を含んでいてもい。これはまた、例えば、細胞倍加に関して表現され得る。細胞は、インビボでまたはその元の組織環境(例えば、骨髄、末梢血、脂肪組織など)におけるその元の数と比較して富化されるように、インビボまたはエキソビボで10、20、30、40またはこれより大きい倍加を受けていてもよい。
【0063】
「MAPC」は、「多分化能成体前駆細胞(multipotent adult progenitor cell)」の頭字語である。それは、胚性幹細胞でも生殖細胞でもない細胞に言及する。MAPCは、多くの代わりの説明において特徴づけられ得、これらの各々は、それらが発見された時に、その細胞に対して新規性を付与した。従って、それらは、それらの説明のうちの1またはこれより多くによって特徴づけられ得る。第1に、それらは、遺伝子操作されることも形質転換される(腫瘍形成性)こともなく、正常核型を有し、培養物中で長期間の複製能を有する。これは、これら細胞がテロメラーゼを発現する(すなわち、テロメラーゼ活性を有する)ことを意味する。第2に、それらは、分化の際に、1より多くの胚葉(例えば、2つのまたは全3つの胚葉(すなわち、内胚葉、中胚葉および外胚葉)の細胞子孫を生じ得る。第3に、それらは胚性幹細胞でも生殖細胞でもないが、MAPCは、それらがoct4、rex-1、およびrox-1のうちの1またはこれより多くを発現し得るように、これらの始原細胞タイプ(primitive cell type)のマーカーを発現し得る。それらはまた、sox-2を発現し得る。rex-1は、oct4によって制御され、これは、rex-1の下流発現を活性化する。rox-1およびsox-2は、非ES細胞において発現される。よって、「MAPC」と称される細胞タイプは、その新規な特性のうちのいくつかを介して、上記細胞を記載する代替の基本的な特徴によって特徴づけられ得る。
【0064】
MAPCにおける用語「成体adult」」は、非制限的である。それは、非胚性体細胞(例えば、出生後の)に言及する。MAPCは、インビボで奇形腫を形成しない。この頭字語は、骨髄から単離された多能性細胞を記載するために米国特許第7,015,037号の中で最初に使用された。しかし、多能性マーカーおよび/または分化能を有する細胞が、その後発見され、本発明の目的に関しては、初めて称されたそれらの細胞「MAPC」に等価であり得る。細胞のMAPCタイプの本質的な説明は、上記の発明の要旨において提供される。
【0065】
MAPCは、MSCより原始的な前駆細胞集団を表す(Verfaillie, C.M., Trends Cell Biol 12:502-8 (2002); Jahagirdar, B.N.ら, Exp Hematol, 29:543-56 (2001); Reyes, M. and C.M. Verfaillie, Ann N Y Acad Sci, 938:231-233 (2001); Jiang, Y.ら, Exp Hematol, 30896-904 (2002);およびJiang, Y.ら, Nature, 418:41-9. (2002))。
【0066】
MAPCは、免疫原性でなくてもよい。MAPCは、免疫抑制性であってもよい。MAPCは、それらの特徴を改善するために、遺伝的に変化されていてもそうでなくてもよい。MAPCは、付随する免疫抑制処置ありまたはなしで使用されてもよい。MAPCのさらなる局面は、本明細書で記載される。
【0067】
「し得る、してもよい(may)」とは、本明細書で使用される場合、文言「し得る、してもよい」が、「必要に応じて(optionally)」と同じことを意味し、それが述べられていない場合でも、本明細書で使用される場合、「し得る、してもよい」は、「しなくてもよい、そうでない可能性がある(may not)」も含む。すなわち、何らかが存在し得るという陳述は、そらが存在しなくてもよいことも同様に意味する。すなわち、本明細書で使用される場合、「し得る、してもよい」は、明示的に「しなくてもよい、そうでない可能性がある」を含み、出願人は、それに従う主題を特許請求する権利を保持している。例えば、本明細書で使用される場合、MAPCが他の薬剤とともに投与され得るという陳述はまた、MAPCがいかなる他の薬剤もなしで投与されてもよいことを意味する。別の例に関しては、本明細書で使用される場合、MAPCが遺伝子操作され得るという陳述はまた、MAPCが遺伝子操作されていなくてもよいことを意味する。
【0068】
「多分化能(multipotent)」とは、本明細書で使用される場合のMAPCに関して、MAPCが、分化の際に、3つの始原胚葉:内胚葉、中胚葉および外胚葉のうちの1より多く(例えば、全3ちのうちの2つ)の細胞系統を生じる能力に言及する。
【0069】
「MultiStem(登録商標)」とは、米国特許第7,015,037号のMAPCに基づく細胞調製物(すなわち、上記で記載されるとおりの非胚性幹、非生殖細胞)の商標名である。MultiStem(登録商標)は、この特許出願に開示される細胞培養法、特に、より低酸素およびより高血清、に従って調製される。MultiStem(登録商標)は、高度に拡大可能で、核型が正常であり、インビボで奇形腫を形成しない。それは、1より多くの胚葉の細胞系統へと分化し得、テロメラーゼ、oct4、rex-1、rox-1、およびsox-2のうちの1またはこれより多くを発現し得る。
【0070】
「Oct-4」とは、転写因子のPOUファミリーのメンバーである(1)。マウスタンパク質が最初に同定され、Oct-3として分類された。ヒトホモログは、それが、マウスOct-3タンパク質とそのアミノ酸レベルにおいて87%相同性であることに基づいて、Oct-3として最初に分類された。その後、2つのヒトOct-3転写物が同定され(Takedaら, Nucleic Acids Research 20(17) 4613-20 (1992))、Oct-3Aおよび3Bは、同じ遺伝子の選択的スプライス生成物である。Oct-3Aは同定されており、いくつかのグループによってOct-4と、他のグループによってOct-3/4と新たに命名された。さらに他のグループは、選択的転写物として、oct 4をoct 4Aおよびoct4Bへと分けた。そのA転写物(すなわち、oct 4、oct3A、oct3/4)は、核タンパク質を生じ、多能性と関連しており、エキソン1の一部に制限される。そのB転写物は、細胞質タンパク質として多くの細胞タイプにおいて見出され、エキソン1の残り、およびエキソン2~5を網羅する。
【0071】
「必要に応じて」とは、本明細書で使用される場合、「し得る、してもよい」とほぼ同じことを意味する。Xが必要に応じてAを含むという陳述は、本明細書で使用される場合、XがAを含含むこと、およびXがAを含まないことの両方を包含する。
【0072】
「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、本発明において使用される細胞に対して任意の薬学的に受容可能な媒体である。このような媒体は、等張性、細胞代謝、pHなどを保持し得る。それは、インビボでの被験体への投与と適合性であり、従って、細胞送達および処置のために使用され得る。
【0073】
「前駆細胞(progenitor cell)」とは、それらの最終分化した子孫の特徴のうちのいくつか(しかし全てではない)を有する、幹細胞の分化の間に生成された細胞である。規定された前駆細胞(例えば、「心臓前駆細胞(cardiac progenitor cell)」)は、1つの系統に縛られているが、特定のまたは最終分化した細胞タイプに縛られているわけではない。頭字語「MAPC」において使用される場合の用語「前駆細胞(progenitor)」とは、これらの細胞を特定の系統に制限しない。
【0074】
用語「低減する(reduce)」とは、本明細書で使用される場合、防止すること、および減少することを意味する。処置の文脈において、「低減する」ことは、1またはこれより多くの臨床症状を防止または改善することの両方である。臨床上の症状は、処置されないままであれば、被験体のクオリティーオブライフ(健康状態)に対する負の影響を有するかまたは将来的に有する1つの(またはより多くの)症状である。
【0075】
所望のレベルの効力を有する細胞を「選択する(selecting)」とは、細胞を同定する(アッセイによる場合)、単離する、および拡大することを意味し得る。これは、上記細胞が単離された親細胞集団より高い効力を有する集団を作り出し得る。その「親(parent)」細胞集団は、その選択された細胞が分裂してきた親細胞に言及する。「親」とは、実際のP1→F1関係(すなわち、子孫細胞)に言及する。よって、細胞Xが、細胞XおよびYの混合集団(ここでXは発現者(expressor)であるが、Yはそうでない)から単離される場合、Xの単なる単離物を、増強された発現を有するとは分類しない。しかし、Xの子孫細胞がより高い発現者である場合、その子孫細胞を、増強された発現を有するとして分類する。
【0076】
「自己再生(self-renewal)とは、本明細書で使用される場合、複製娘肝細胞が生じてきた細胞に同一である分化能力を有するその複製娘幹細胞を生成する能力に言及する。この文脈において使用される類似の用語は、「増殖(proliferation)」である。
【0077】
「幹細胞(stem cell)」とは、本明細書で使用される場合、自己再生を受け得る細胞(すなわち、同じ分化能力を有する子孫)を意味し、分化能力がより制限されている子孫細胞をも生成する。
【0078】
「被験体(subject)」とは、本明細書で使用される場合、哺乳動物(例えば、ヒト)のような脊椎動物を意味する。哺乳動物としては、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、およびブタが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
用語「治療上有効な量(therapeutically effective amount)」とは、本明細書で使用される場合、被験体において任意の有益な治療応答を生じることが決定された量に言及する。例えば、治療用細胞または細胞関連薬剤の有効な量は、患者の生存可能性を長期化し得る、および/または明白な臨床上の症状を阻害し得る。その用語の意味内で治療上有効である処置は、本明細書で使用される場合、被験体が疾患転帰自体をたとえ改善しないとしても、被験体のクオリティーオブライフを改善する処置を含む。例えば、治療上有効とは、出血の容積を低減すること、脳血流を改善すること、ならびに/または神経学的および/もしくは行動機能を改善すること(例えば、ICH後に)を意味し得る。このような治療上有効な量は、当業者によって容易に確認される。
【0080】
「処置する(treat)」、「処置する(treating)」または「処置(treatment)」とは、本発明に関連して広く使用され、各々このような用語は、本質的には、本明細書で記載されるとおりの細胞の投与を意味し、特に、有利な実施形態において、欠陥、機能不全、疾患、または他の有害なプロセス(治療に干渉するおよび/または治療から生じるものを含む)を防止する、改善する、阻害する、または治癒することのうちの1またはこれより多く(しかし、必ずしもそのうちのいずれかまたは全てではない)の有益な効果を伴う。例えば、処置するは、出血の容積を低減する、脳血流を改善する、ならびに/または神経学的および/もしくは行動機能を改善する(例えば、ICH後に)、を意味し得る。処置のこのような局面は、当業者によって容易に確認される。
【0081】
「検証する(validate)とは、本明細書で使用される場合、確認することを意味する。本発明の文脈において、細胞が、所望の効力を有する発現者であることが確認される。これは、有効性の合理的な予測をもって、その細胞を後に(処置、バンクを作る、薬物スクリーニングするなどにあたって)使用され得るようにすることである。よって、検証することは、所望の活性を有すると元々見出された/所望の活性を有すると確立された細胞が、実際にその活性を保持することを確認することを意味する。従って、検証は、その元々の決定および追跡決定が関わる2事象プロセスにおける確認事象である。第2の事象は、本明細書において「検証」といわれる。
【0082】
III
本明細書で記載される実施形態の種々の特徴および利点は、その同じことが、添付の図面に照らして考慮される場合によりよく理解されることになると十分に認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1図1Aおよび図1B: MULTISTEM(登録商標)細胞は、コラゲナーゼ誘導性ICH後に血腫容積を低減する プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=11)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後にマウスに静脈内投与した。血腫容積を、7T小動物用MRIを使用して、MRI(T2W)によって評価した。3日目および7日目の代表的な冠状断脳画像が提供される 図1Aは、血腫容積に対するMultiStem(登録商標)細胞の劇的な利益を示す。 図1Bは、21日間の評価期間にわたる全てのマウスからのデータを示す。 データは、平均±SEMとして示され、各時点内のスチューデントt検定によって分析した。**プラシーボ処理ICHマウスに対してp<0.01。 詳細は、実施例3に提供される。
【0084】
図2図2Aおよび図2B: MULTISTEM(登録商標)細胞は、コラゲナーゼ誘導性ICH後の脳灌流を改善する プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=11)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後にマウスに静脈内投与した。脳灌流を、7T小動物用MRIを使用して、MRI(ASL; FAIR-RARE)によって評価した。 図2A - 代表的な冠状断脳画像。 図2B - 定量された灌流データ。 データは、MultiStem(登録商標)が、ICH後の最初の1週間にわたって脳灌流を改善することを示す。データは、平均±SEMとして示され、各時点内のスチューデントt検定によって分析した。プラシーボ処理ICHマウスに対して*p<0.05、**p<0.01。 詳細は、実施例4に提供される。
【0085】
図3図3A図3Bおよび図3C: MULTISTEM(登録商標)細胞は、コラゲナーゼ誘導性ICH後に運動機能を改善する プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=1)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後にマウスに静脈内投与した。運動機能の神経学的評価を、傷害後7日目に(またはシャム手術したマウスにおいて;n=8)評価した。 図3A - 握力試験結果。 図3B - 細梁課題試験結果。 図3C - 高架式身体動揺課題(Elevated Body Swing Task)試験結果。 データは、平均±SEMであり、一元配置ANOVA、続いて、テューキーの事後検定を使用して比較した。*p<.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない。 詳細は、実施例5に提供される。
【発明を実施するための形態】
【0086】

本明細書で記載されるように、本発明の局面は、MAPC(本明細書で定義されるとおり)を、脳内出血(他には出血性脳卒中として公知)を経験した被験体に投与することに関する。これらの患者は、脳の中の血塊のサイズおよび位置が、手術を受けられるものであれば、血塊の外科的排出以外には治療的介入を受けない。
【0087】
本発明の局面は、本明細書で記載される場合、脳内出血を被っているおよび/またはその処置の必要性がある被験体に、脳内出血を防止する、改善する、阻害する、または治癒することのうちの1またはこれより多く(しかし、必ずしもそのうちのいずれかまたは全てではない)の有益な効果を有するように、上記細胞を投与する方法を提供する。それに従う細胞および方法は、以下に記載される。
【0088】
本発明の実施形態は、ICH発生後に、例えば、亜急性時間枠(数時間)で、静脈内経路を介するMultiStem(登録商標)細胞の投与を提供する。投与は、効果的であると見出され得るとおりの種々の経路および時間によるものであり得る。
【0089】
いかなる特定の作用機構にも限定されることなく、MultiStem(登録商標)細胞は、他の前臨床上および臨床上の傷害における急性炎症応答を調節することが注記される。ICHを処置することにおけるMultiStem(登録商標)の作用は、ICH後に起こる急性炎症応答に対するMultiStem(登録商標)の類似の作用によって、いくつかの局面において媒介されることであり得る。
【0090】
上記細胞は、これらの効果を自然に達成し得る(すなわち、遺伝的でも薬学的に改変されてもいない)。しかし、上記細胞はまた、有効性を増大させるおよび/またはそれらの特性を改善するために、遺伝的にまたは薬学的に改変され得る。
【0091】
1つの実施形態において、上記細胞は、培養において所望の数の細胞倍加を受けている。例えば、上記細胞は、培養において少なくとも10~40細胞倍加(例えば、30~35細胞倍加)を受けており、ここで上記細胞は、形質転換されておらず、正常核型を有する。細胞が形質転換されるかまたは腫瘍形成性であり、注入のためにそれらを使用することが望ましい場合、このような細胞は、これらがインビボで腫瘍を形成できないように、細胞増殖が腫瘍になるのを防止する処置によるように、能力がなくされ得る。このような処置は、当該分野で周知である。
【0092】
Oct4(これは、他の点でES、EG、および生殖細胞に対して特異的である)は、広い分化能力を有する未分化細胞のマーカーであると考えられる。Oct4はまた、一般に、未分化状態にある細胞を維持するにあたって役割を有すると考えられる。Oct4は、転写因子のPOU(Pit Oct Unc)ファミリーに属し、プロモーターまたはエンハンサー領域内に「オクタマーモチーフ」といわれるオクタマー配列を含む、遺伝子の転写を活性化し得るDNA結合タンパク質である。Oct4は、卵筒(egg cylinder)が形成されるまで、受精した接合子の卵割ステージの時に発現される。Oct4の機能は、分化誘導遺伝子(すなわち、FoxaD3、hCG)を抑制すること、および多能性を促進する遺伝子(FGF4、Utf1、Rex1)を活性化することである。Sox2(高い移動度群(high mobility group)(HMG)ボックス転写因子のメンバー)は、Oct4と協同して、内部細胞塊において発現される遺伝子の転写を活性化する。胚性幹細胞におけるOct4発現が、ある特定のレベル間で維持されることは必須である。Oct4発現レベルの>50%の過剰発現またはダウンレギュレーションは、それぞれ、始原内胚葉/中胚葉または栄養外胚葉の形成を伴って、胚性幹細胞運命を変化させる。インビボでは、Oct4欠損胚は、胚盤胞期へと発生するが、内部細胞塊の細胞は多能性ではない。代わりにそれらは、胚体外栄養膜系統に沿って分化する。
【0093】
Sall4(哺乳動物のSpalt転写因子)は、Oct4の上流の調節因子であり、従って、発生学の早期の間にOct4の適切なレベルを維持するために重要である。Sall4レベルが、ある特定の閾値未満になる場合、栄養外胚葉細胞が、内部細胞塊へと異所性に拡大する。
【0094】
上記細胞は、以下の番号付けされた実施形態における特徴を含むが、これらに限定されない:
【0095】
pb1. 単離され、拡大された非胚性幹、非生殖細胞であって、前記細胞は、培養において少なくとも10~40細胞倍加を受けており、ここで前記細胞は、oct4を発現し、形質転換されておらず、正常核型を有する、非胚性幹、非生殖細胞。
【0096】
pb2. テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記1の非胚性幹、非生殖細胞。
【0097】
pb3. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記1の非胚性幹、非生殖細胞。
【0098】
pb4. テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記3の非胚性幹、非生殖細胞。
【0099】
pb5. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記3の非胚性幹、非生殖細胞。
【0100】
pb6. テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記5の非胚性幹、非生殖細胞。
【0101】
pb7. 非胚性、非生殖組織の培養によって得られる、単離され、拡大された非胚性幹、非生殖細胞であって、前記細胞は、培養において少なくとも40細胞倍加を受けており、ここで前記細胞は、形質転換されておらず、正常核型を有する、非胚性幹、非生殖細胞。
【0102】
pb8. oct4、テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くを発現する、上記7に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0103】
pb9. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つのうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記7に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0104】
pb10. oct4、テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くを発現する、上記9に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0105】
pb11. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記9に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0106】
pb12. oct4、テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くを発現する、上記11に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0107】
pb13. 単離され、拡大された非胚性幹、非生殖細胞であって、前記細胞は、培養において少なくとも10~40細胞倍加を受けており、ここで前記細胞は、テロメラーゼを発現し、形質転換されておらず、かつ正常核型を有する、非胚性幹、非生殖細胞。
【0108】
pb14. oct4、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記13に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0109】
pb15. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つのうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記13に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0110】
pb16. oct4、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記15に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0111】
pb17. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記15に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0112】
pb18. oct4、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くをさらに発現する、上記17に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0113】
pb19. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統のうちの少なくとも2つのうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、単離され、拡大された非胚性幹、非生殖細胞であって、前記細胞は、培養において少なくとも10~40細胞倍加を受けている、非胚性幹、非生殖細胞。
【0114】
pb20. oct4、テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くを発現する、上記19に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0115】
pb21. 内胚葉系統、外胚葉系統、および中胚葉系統の各々のうちの少なくとも1つの細胞タイプに分化し得る、上記19に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0116】
pb22. oct4、テロメラーゼ、rex-1、rox-1、またはsox-2のうちの1またはこれより多くを発現する、上記21に記載の非胚性幹、非生殖細胞。
【0117】
細胞の選択
MAPCは、本明細書で記載されるように、単離および拡大される場合に使用され得る。MAPCはまた、使用前に特定の特性に関して、遺伝子操作技術を使用することなしに、または使用して選択され得る。
【0118】
所望のレベルの効力を有する細胞の選択は、細胞を同定すること(アッセイによるような)、単離すること、および拡大することを意味し得る。これは、その細胞が単離されてきた親細胞集団より高い効力を有する集団を作り出し得る。その「親」細胞集団とは、その選択された細胞が分裂した親細胞に言及する。「親」とは、実際のP1→F1関係(すなわち、子孫細胞)に言及する。よって、細胞Xが、細胞XおよびYの混合集団(ここでXは発現者(expressor)であるが、Yはそうでない)から単離される場合、Xの単なる単離物を、増強された発現を有するとは分類しない。しかし、Xの子孫細胞がより高い発現者である場合、その子孫細胞を、増強された発現を有するとして分類する。
【0119】
所望の効果を達成する細胞を選択することは、その細胞が所望の効果を達成するか否かを決定するためのアッセイを含み、およびそれら細胞を得ることもまた含む。上記細胞は、所望の効果が外因性導入遺伝子/DNAによって達成されないという点で、その効果を天然に達成し得る。しかし、効果的な細胞は、その効果を増大させる薬剤とともにインキュベートされるかまたはその薬剤にに曝されることによって、改善され得る。その効果的な細胞が選択されてくる細胞集団は、上記アッセイを行う前に、その効力を有することが既知でなくてもよい。上記細胞は、上記アッセイを行う前に、その所望の効果を達成することが既知でなくてもよい。効果は、遺伝子発現および/または分泌に依存し得ることから、その効果を引き起こす遺伝子のうちの1またはこれより多くに基づいても選択され得る。
【0120】
選択は、組織中の細胞に由来し得る。例えば、この場合、細胞は、所望の組織から単離され、培養において拡大され、その所望の効果を達成するように選択され、その選択された細胞は、さらに拡大される。
【0121】
選択はまた、エキソビボでの細胞(例えば、培養における細胞)に由来し得る。この場合、その培養における細胞のうちの1またはこれより多くが、その所望の効果を達成するかに関してアッセイされ、その所望の効果を達成して得られた細胞は、さらに拡大され得る。
【0122】
細胞はまた、その所望の効果を達成する増強された能力に関して選択され得る。この場合、その増強された細胞が得られてくる細胞集団は、その所望の効果を既に有する。増強された効果は、1細胞あたり、親集団におけるより高い平均量を意味する。
【0123】
その増強された細胞が選択されてくる親集団は、実質的に均質(同じ細胞タイプ)であり得る。このような増強された細胞をこの集団から得る1つの方法は、1個の細胞または細胞プールを作り出し、これらの細胞または細胞プールをアッセイして、その増強された(より大きな)効果を天然に有する(その効果を誘導または増大させる調節因子で、その細胞を処置することとは対照的に)クローンを得、次いで、天然の増強されるそれら細胞を拡大することである。
【0124】
しかし、細胞は、その効果を誘導または増大させる1またはこれより多くの薬剤で処理され得る。従って、実質的に均質な集団は、その効果を増強するために処理され得る。
【0125】
その集団が実質的に均質でない場合、その処理されるべき親胞集団が、少なくとも100の、増強された効果が求められる所望の細胞タイプ、より好ましくは、少なくとも1,000のその細胞、およびさらにより好ましくは、少なくとも10,000のその細胞を含むことが好ましい。処理後に、この亜集団は、公知の細胞選択技術によって不均質集団から回収され得、所望である場合、さらに拡大され得る。
【0126】
従って、効果の所望のレベルは、所定の以前の集団におけるレベルより高いものであり得る。例えば、組織から初代培養物にされ、拡大され、その効果を生じるように特異的にデザインされていない培養条件によって単離された細胞は、親集団を提供し得る。このような親集団は、1細胞あたりの平均効果を増強するために処理され得るか、または故意の処理なしにより大きな効果の程度を表す集団内の細胞に関してスクリーニングされ得る。このような細胞は、拡大されて、次いで、より高い(所望の)発現を有する集団を提供し得る。
【0127】
使用および投与
いくつかの実施形態において、上記細胞は、治療の唯一の活性薬剤として使用される。本発明のいくつかの実施形態において、MAPCは、主要な治療モダリティーとして、1もしくはこれより多くの他の薬剤および/または治療モダリティーと一緒に使用される。本発明のいくつかの実施形態において、上記細胞は、付随的な治療モダリティーとして、すなわち、別の主要な治療モダリティーに対する付属として、使用される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、付随的な治療モダリティーの唯一の活性薬剤として使用される。他には、上記細胞は、1もしくはこれより多くの他の薬剤または治療モダリティーと一緒に、付随的な治療モダリティーとして使用される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、主要な、および付随的な治療薬剤および/またはモダリティーとしての両方で、使用される。両方の点に関して、上記細胞は、主要なおよび/または付随的なモダリティーにおいて、単独で使用され得る。それらはまた、他の治療薬剤またはモダリティーといっしょに、主要なモダリティーもしくは付属的なモダリティーにおいて、またはその両方で使用され得る。
【0128】
上記で考察されるように、主要な処置(例えば、治療薬剤、治療、および/または治療モダリティー)は、処置されるべき主要な機能障害(例えば、疾患)を標的とする(すなわち、その機能障害に対して作用することが意図される)。付随的な処置(例えば、治療および/または治療モダリティー)は、主要な処置(例えば、治療薬剤、治療、および/または治療モダリティー)と組み合わせて、その主要な機能障害(例えば、疾患)に対して作用し、その主要な処置の効果を補い、それによって、処置レジメンの全体的な有効性を増大させるために投与され得る。付随的な処置(例えば、薬剤、治療、および/または治療モダリティー)はまた、主要な機能障害(例えば、疾患)の合併症および/または副作用および/または処置(例えば、治療薬剤、治療、および/または治療モダリティー)によって引き起こされるものに対して作用するように投与され得る。これらの使用のうちのいずれかに関して、1つ、2つ、3つ、またはこれより多くの主要な処置が、1つ、2つ、3つ、またはこれより多くの付随的な処置といっしょに使用され得る。
【0129】
いくつかの実施形態において、MAPCは、ICHの開始前に被験体に投与される。実施形態において、上記細胞は、ICHおよび/または生じた機能障害が発生している間に投与される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、ICH後に、および/または生じた機能障害が確立された後に、投与される。MAPCは、ICHまたは関連する機能障害の発生、持続、および/もしくは伝播におけるいずれかのステージにおいて、またはそれが後退した後に、投与され得る。
【0130】
細胞は、ICHの前または後の1分、5分、10分、15分、30分、45分もしくは60分、またはICHの前または後の60分、90分、120分、150分もしくは180分、またはICHの前または後の1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間もしくは12時間、またはICH後の12時間、18時間、24時間、30時間、36時間もしくは40時間、またはICH後の1日、2日、3日、4日、5日、6日もしくは7日、またはICH後の1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間もしくは8週間、または前述のおよび/もしくは任意の後の時間の任意の組み合わせのうちのいずれか1またはこれより多くで投与され得る。
【0131】
細胞は、ICHの直後から60分後まで、ICHの30~90分後まで、ICHの1~6時間後まで、ICHの5~15時間後まで、ICHの10~20時間後まで、ICHの15~25時間後まで、ICHの20~40時間後まで、ICHの1~5日後まで、ICHの1日~1週間後まで、ICHの1~2週間後まで、ICHの1~数週間後まで、ICHの数週間~1ヶ月後まで、またはICHの1または数ヶ月後まで、ICH後のいずれの時にも、投与され得る。
【0132】
細胞はまた、ICHの前に、ICHに先立つ任意の時に、または前述の2段落で注記したICH前の時間もしくは間隔のうちのいずれかで、投与され得る。
【0133】
上記で考察されるように、本発明の実施形態は、主要なまたは付随的な治療のための細胞および方法を提供する。本発明のある特定の実施形態において、上記細胞は、同種異系の被験体に投与される(すなわち、上記被験体に対して同種異系である)。いくつかの実施形態において、それらは、上記被験体に対して自家である。いくつかの実施形態において、それらは、上記被験体に対して同一遺伝子型である。いくつかの実施形態において、上記細胞は、被験体に対して異種である。同種異系であろうが、自家であろうが、同一遺伝子型であろうが、異種であろうが、本発明の種々の実施形態において、上記MAPCは、上記被験体において、ごく弱い免疫原性であるかまたは非免疫原性である。実施形態において、上記MAPCは、これらが、同種異系および/または異種被験体に投与される場合に、概して有害な免疫応答を誘発せず、組織型決定およびマッチングを行うことなく、「ユニバーサル」ドナー細胞として使用され得るように、十分に低い免疫原性、非免疫原性である。
【0134】
さらに、この点において、種々の実施形態におけるMAPCは、付随的な免疫抑制処置なしで投与され得る。本発明の種々の実施形態によれば、上記MAPCはまた、細胞バンクにおいて貯蔵および維持され得るので、必要時の使用に対して利用可能に維持され得る。
【0135】
これらの点および他の全てにおいて、本発明の実施形態は、哺乳動物(1つの実施形態においてはヒトを、他の実施形態においては、非ヒト霊長類、ラットおよびマウス、ならびにイヌ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマおよびウシを含む)に由来するMAPCを提供する。上記で記載されるように哺乳動物から調製されるMAPCは、上記方法および本明細書で記載される発明の他の局面の全てにおいて使用され得る。
【0136】
本発明の種々の実施形態に従うMAPCは、それらが見出されたこのような哺乳動物の種々の区画および組織(骨髄、末梢血、臍帯血、血液、脾臓、肝臓、筋、脳、脂肪組織、胎盤および以下で考察される他のものが挙げられるが、これらに限定されない)から単離され得る。いくつかの実施形態におけるMAPCは、使用前に培養される。
【0137】
いくつかの実施形態において、MAPCは、骨髄から単離される。いくつかの特定の実施形態において、この点において、MAPCは、ヒト骨髄から単離され得る。
【0138】
多くの実施形態において、MAPCは、遺伝子操作されない。
【0139】
いくつかの実施形態において、MAPCは、遺伝子操作される。MAPCは、広範に種々の目的(当該分野で周知のもの)のために、遺伝子操作され得る。例えば、それらは、改善された増殖特徴を有するように、それらの治療有効性を改善するように、1またはこれより多くの異種遺伝子を発現して有益な物質を生成するように、およびそれらの免疫学的プロフィールを変えるように、操作され得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたMAPCは、インビトロ培養によって生成される。いくつかの実施形態において、遺伝子操作されたMAPCは、トランスジェニック生物から生成される。
【0141】
製剤
MAPCは、本明細書中の他の箇所でより詳細に考察されるように、種々の組織(例えば、骨髄細胞)から調製され得る。
【0142】
多くの実施形態において、被験体への投与のためのMAPCの純度は、約100%である。他の実施形態において、それは、95%~100%である。いくつかの実施形態において、それは、85%~95%である。特に、他の細胞と混合される場合には、MAPCのパーセンテージは、2%~5%、3%~7%、5%~10%、7%~15%、10%~15%、10%~20%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~95%であり得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、投与のための細胞の純度は、約100%(実質的に均質)である。他の実施形態において、それは、95%~100%である。いくつかの実施形態において、それは、85%~95%である。特に、他の細胞と混合される場合には、上記パーセンテージは、約10%~15%、15%~20%、20%~25%、25%~30%、30%~35%、35%~40%、40%~45%、45%~50%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、または90%~95%であり得る。または単離/純度は、細胞倍加に関連して表され得、ここで上記細胞は、例えば、10~20、20~30、30~40、40~50またはこれより大きな細胞倍加を受けている。
【0144】
障害または疾患などのMAPCでの処置は、未分化MAPCを伴い得る。処置はまた、それらが分化経路に縛られるように処置されているMAPCで行われ得る。処置はまた、制限された分化能力を有するそれほど強力でない幹細胞へと分化するように処置されているMAPCが関わり得る。それはまた、最終分化した細胞タイプへと分化するように処置されているMAPCが関わり得る。MAPCの最良のタイプまたは混合物は、それらの使用の特定の環境によって決定され、この点においてMAPCの効果的なタイプまたは組み合わせを決定することは、当業者にとって慣用的な設計事項である。
【0145】
所定の適用のためにMAPCを投与するための製剤の選択は、種々の因子に依存する。これらの中でも顕著なものは、被験体の種、処置中の脳内出血の性質、ならびに被験体における脳内出血の状態および分布、投与中の他の治療および薬剤の性質、MAPCの最適な投与経路、その経路を介するMAPCの生存可能性、投与レジメン、ならびに当業者に明らかな他の因子である。特に、例えば、適切なキャリアおよび他の添加剤の選択は、正確な投与経路および特定の投与形態の性質に依存する。
【0146】
細胞生存は、MAPCを使用する治療の有効性の重要な決定因子であり得る。これは、主要なおよび付随的な両方の治療にあてはまる。別の懸念は、標的部位が細胞播種および細胞増殖に不適切である場合に生じる。これは、その部位へのアクセスおよび/または治療用MAPCのそこでの生着を妨げ得る。実施形態において、本発明は、細胞生存を増大させる、ならびに/または播種および/もしくは増殖に対する障壁によって課される問題を克服する手段の使用を含む。
【0147】
種々の添加剤がしばしば、組成物の安定性、無菌性、および等張性を増強するために含まれる(例えば、とりわけ、抗微生物性保存剤、抗酸化剤、キレート化剤、および緩衝液)。
【0148】
微生物活動の防止は、例えば、種々の抗細菌剤および抗真菌剤によって確実にされ得る。
【0149】
薬学的に受容可能な保存剤または細胞安定化剤は、MAPC組成物の寿命を増大させるために使用され得る。
【0150】
このような添加剤が含まれる場合、MAPCの生存度または有効性に影響を及ぼさない組成物を選択することは、十分に当業者の範囲内である。
【0151】
標準テキスト(例えば、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCE」, 第17版, 1985(本明細書に参考として援用される)は、過度の実験なしに、適切な調製物を調製するために調べられ得る。
【0152】
好ましい実施形態の中には、注射用液剤(局所、I.V.注入および定位固定的注射のためのものが挙げられる)がある。
【0153】
いくつかの実施形態において、MAPCは、単位投与注射用形態において製剤化される。
【0154】
当業者は、本発明の方法において投与されるべき組成物中の細胞の量および選択肢的な添加剤、ビヒクル、および/またはキャリアを容易に決定し得る。
【0155】
さらなる活性薬剤
MAPCは、他の薬学的に活性な薬剤とともに投与され得る。いくつかの実施形態において、このような薬剤のうちの1またはこれより多くは、投与のためにMAPCとともに製剤化され得る。いくつかの実施形態において、上記MAPCおよび上記1またはこれより多くの薬剤は、別個に製剤中にある。いくつかの実施形態において、上記MAPCおよび/または上記1もしくはこれより多くの薬剤を含む組成物は、互いとの付随的な使用のために製剤化される。
【0156】
MAPCは、免疫抑制剤(例えば、コルチコステロイド、シクロスポリンA、シクロスポリン様免疫抑制剤、シクロホスファミド、抗胸腺細胞グロブリン、アザチオプリン、FK-506、およびマクロライド様免疫抑制剤のうちの任便の数の任意の組み合わせ)を含む製剤において投与され得る。
【0157】
このような薬剤はまた、本発明の実施形態に従って使用され得る、ごく少数の他の薬理学的に活性な物質および組成物を挙げるとすれば、抗生物質、抗真菌剤、および抗ウイルス剤が挙げられる。
【0158】
代表的な抗生物質および抗真菌化合物としては、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンホテリシン、アンピシリン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ミコフェノール酸、ナリジクス酸、ネオマイシン、ナイスタチン、パロモマイシン、ポリミキシン、ピューロマイシン、リファンピシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、タイロシン、ゼオシン、およびセファロスポリン、アミノグリコシド、およびエキノキャンディン(echinocandin)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
MAPCはまた、傷害部位;すなわち、ICHから生じた傷害部位へのその細胞のホーミングを増強する薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、MAPCは、増殖因子および栄養シグナル伝達因子(例えば、間質細胞由来因子-1(SDF-1)、幹細胞因子(SCF)、アンギオポエチン-1、胎盤由来増殖因子(PIGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および内皮接着分子の発現を刺激するもののようなサイトカインのような)とともに投与され得る。
【0160】
それらは、改善されたホーミングによるかまたは他の機構によるかのいずれかによって、所望の部位へのホーミングを促進するために、および改善された治療効果を達成するために、前処置として、MAPCとともに、またはMAPCが投与された後に、被験体に投与され得る。このような因子は、それらが一緒に投与されるのに適した製剤中で、MAPCと合わされ得る。あるいは、このような因子は製剤化され得、別個に投与され得る。
【0161】
他の活性薬剤およびMAPCの投与の順序、製剤、用量、投与頻度、ならびに投与経路は、中でもとりわけ、処置されているICH、その重篤度、被験体、投与されている他の治療、その障害もしくは疾患のステージ、ならびに予後因子に伴って概して変動する。他の処置のために確立された包括的レジメンは、MAPC媒介性の直接的または付随的な治療における適切な投与を決定するための枠組みを提供する。これらは、本明細書で提供されるさらなる情報と一緒に、当業者が過度の実験なしに、本発明の実施形態に従って適切な投与手順を決定することを可能にする。
【0162】
実施形態において、細胞は、脳傷害(本明細書で示される、脳傷害および/または機能障害および/または障害および/または疾患が挙げられる)を処置するために適切に製剤化される。実施形態において、上記製剤は、非経口投与のために効果的である。実施形態において、上記製剤は、I.V.注入のために効果的である。実施形態において、上記製剤は、定位固定的注射のために効果的である。
【0163】
投与経路
MAPCは、被験体に細胞を投与するために使用され得る、当業者に公知の種々の投与経路のうちのいずれかによって被験体に投与され得る。
【0164】
種々の実施形態において、上記MAPCは、細胞治療剤の効果的な送達のための任意の経路によって被験体に投与される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、注射(局所および/または全身性の注射が挙げられる)によって投与される。ある特定の実施形態において、上記細胞は、これらが処置されることが意図されるICHの部位内でおよび/またはその部位の近くに投与される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、機能障害の部位の近くではない位置での注射によって投与される。いくつかの実施形態において、上記細胞は、全身性の注射(例えば、静脈内注射)によって投与される。
【0165】
本発明の実施形態においてこの点において使用される方法の中には、全身性の注射によるMAPCの投与のための方法がある。全身性の注射(例えば、静脈内注射)は、最も単純かつ低侵襲性のMAPCの投与経路のうちの1つを提供する。いくつかの場合には、これらの経路は、最適な有効性および/または標的部位へのMAPCによるホーミングのために、高MAPC用量を必要とし得る。種々の実施形態において、MAPCは、標的部位での最適な効果を確実にするために、標的化および/または局所注射によって投与され得る。
【0166】
MAPCは、本発明のいくつかの実施形態において、シリンジによって皮下注射針を経て上記被験体に投与され得る。種々の実施形態において、MAPCは、カテーテルを経て上記被験体に投与される。種々の実施形態において、MAPCは、外科的移植によって投与される。さらにこの点において、本発明の種々の実施形態において、MAPCは、関節鏡手順を使用する移植によって、上記被験体に投与される。いくつかの実施形態において、MAPCは、定位固定的注射によって上記被験体に投与される。
【0167】
投与
組成物は、 医療および獣医学分野の当業者に周知の投与量においておよび技術によって、特定の患者の年齢、性別、体重、および状態、ならびに投与される製剤(例えば、固体 対 液体)のような因子を考慮して、投与され得る。ヒトまたは他の哺乳動物のための用量は、当業者によって、この開示、本明細書で飲用される文書、および当該分野の知識から、過度の実験なしに決定され得る。
【0168】
本発明の種々の実施形態に従って使用されるのに適したMAPCの用量は、多くの因子に依存する。それは、環境が異なることでかなり変動し得る。主要なおよび付随的な治療のために投与されるべきMAPCの最適な用量を決定するパラメーターは、概して、以下のうちのいくつかまたは全てを含む:処置されているICHおよびそのステージ;被験体の種、その体重、性別、年齢、体重、および代謝速度;被験体の免疫適格性;他の投与されている治療;ならびに被験体の履歴または遺伝子型から予測される可能性のある合併症。そのパラメーターとしてはまた、以下が挙げられ得る:MAPCが、同一遺伝子型であるか、自家であるか、同種異系または異種であるかどうか;それらの効力(比活性);MAPCが効果的であるように標的化されなければならない部位および/または分布;ならびにMAPCへのアクセス可能性および/またはMAPCの生着のような部位のこのような特徴。さらなるパラメーターとしては、MAPCと他の因子(例えば、増殖因子およびサイトカイン)との共投与が挙げられる。所定の状況における最適な用量はまた、上記細胞が製剤化される方法、それらが投与される方法、および上記細胞が投与後に標的部位に局在化される程度を考慮する。最終的には、最適な投与の決定は、最大の有益な効果の閾値を下回りも、MAPCの用量と関連する有害効果が増大した用量の利点より勝る閾値を上回りもしない有効用量を必然的に提供する。
【0169】
いくつかの実施形態のためのMAPCの最適用量は、自家の単核骨髄移植のために使用される用量の範囲にある。それは、サイズ(質量)および代謝因子の差異を考慮して、ならびに他の細胞療法(例えば、移植治療)のために確立された投与要件から、動物研究からの外挿によって予測され得る。
【0170】
実施形態において、最適用量は、投与1回あたり、10~10 MAPC 細胞/kg レシピエント質量の範囲に及ぶ。実施形態において、投与1回あたりの最適用量は、10~10 MAPC細胞/kgの間である。実施形態において、投与1回あたりの最適用量は、5×10~5.×10 MAPC細胞/kgである。実施形態において、投与1回あたりの最適用量は、1×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、または9×10のうちのいずれかから1×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、または9×10のうちのいずれかまでである。
【0171】
参照によって、前述における中~高用量のうちのいくつかは、自家単核骨髄移植において使用される有核細胞の用量に類似である。上記中~高用量のうちのいくつかは、自家単核骨髄移植において使用されるCD3+ 細胞/kgの数に類似である。
【0172】
単一用量は、一度に全て、分割して、または一定の期間にわたって連続的に送達され得ることが認識されるべきである。全体の用量はまた、単一の位置に、またはいくつかの位置にわたって分割して拡げて送達され得る。
【0173】
種々の実施形態において、MAPCは、初期用量で投与され得、その後、MAPCのさらなる投与によって維持され得る。MAPCは、1つの方法によって最初に投与され得、その後、同じ方法によってまたは1もしくはこれより多くの異なる方法によって投与され得る。被験体のMAPCレベルは、上記細胞の進行中の投与によって維持され得る。種々の実施形態は、上記MAPCを、最初に、または上記被験体におけるそれらのレベルを維持するかのいずれかのために、またはその両方のために、静脈内注射によって投与する。種々の実施形態において、患者の状態および他の因子(本明細書中の他の箇所で考察される)に依存して、他の投与形態が使用される。
【0174】
ヒト被験体は、実験動物より概して長く処置されることが注記される;しかし、処置は一般に、疾患プロセスの長さおよびその処置の有効性に比例した長さを有する。当業者は、このことをヒトおよび/または動物(例えば、ラット、マウス、非ヒト霊長類など)において行われる他の手順の結果を使用するにあたって考慮して、ヒトに適切な用量を決定する。このような決定は、これらの考慮事項に基づいて、ならびに本開示および先行技術によって提供されるガイダンスを考慮に入れて、当業者が過度の実験なしに決定することを可能にする。
【0175】
初期投与およびさらなる用量のための、または逐次的投与のための適切なレジメンは、すべて同じであってもよいし、変動してもよい。適切なレジメンは、当業者によって、本開示、本明細書で引用される文書および当該分野における知識から、確認され得る。
【0176】
MAPCは、広い時間範囲にわたって(例えば、所望の治療効果が達成されるまで)多くの頻度で投与され得る。いくつかの実施形態において、MAPCは、1日より短い期間にわたって投与される。他の実施形態において、それらは、2日、3日、4日、5日、または6日にわたって投与される。いくつかの実施形態において、MAPCは、数週間にわたって、1週間あたり1回またはこれより多くの回数、投与される。他の実施形態において、それらは、1~数カ月間の間に数週間にわたって投与される。種々の実施形態において、それらは、数ヶ月の期間にわたって投与され得る。他の実施形態において、それらは、1年またはより長い期間にわたって投与され得る。概して、処置の長さは、疾患プロセスの長さ、適用されている治療の有効性、ならびに処置されている被験体の状態および応答に比例する。
【0177】
いくつかの実施形態において、MAPCは、所望の治療効果が達成されるまでまたは投与がもはや被験体に利益を提供しない可能性が出てくるまで、1回、2回、3回、または3回より多く投与される。いくつかの実施形態において、MAPCは、一定の期間にわたって連続して(例えば、静脈点滴によって)投与される。MAPCの投与は、短期間、数日間、数週間、数カ月間、数年間、またはより長い期間にわたるものであり得る。
【0178】
実施形態において、単一ボーラスが投与される。実施形態において、単一ボーラスの2回またはこれより多くの投与が、1日またはこれより長く時間分離されて投与される。実施形態において、各用量は、数分から数時間までの任意の期間にわたってI.V.注入によって投与される。実施形態において、細胞の単一用量は、定位固定的注射によって投与される。実施形態において、2またはこれより多くの用量は、定位固定的注射によって脳の同じまたは異なる領域に投与される。この点において脳傷害を処置するためにボーラス、IV、および定位固定的注射が関わる実施形態において、投与1回あたりの細胞の用量は、投与1回あたり10~10 MAPC細胞/kg レシピエント質量である。実施形態において、上記用量は、10~10 MAPC細胞/kgである。実施形態において、上記用量は、5.×10~5.×10 MAPC細胞/kgである。実施形態において、上記用量は、1×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、または9.×10から1×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、または9.×10のうちのいずれかまでである。
【0179】
MAPCの単離および増殖
MAPC単離の方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第7,015,037号を参照のこと。そしてこれらの方法は、MAPCの特徴付け(表現型)とともに、本明細書に参考として援用される。MAPCは、多数の供給源(骨髄、胎盤、臍帯およびおよび臍帯血、筋、脳、肝臓、脊髄、血液または皮膚が挙げられるが、これらに限定されない)から単離され得る。従って、骨髄吸引物、脳または肝臓生検、および他の器官を得、これらの細胞において発現される(または発現されない)遺伝子に依拠して(例えば、上記で言及した出願(これらは、本明細書に参考として援用される)において開示されるもののような機能的または形態学的アッセイによって)当業者に利用可能な正の選択もしくは負の選択の技術を使用して細胞を単離することは、可能である。
【0180】
MAPCはまた、Breyerら, Experimental Hematology, 34:1596-1601 (2006)およびSubramanianら, Cellular Programming and Reprogramming: Methods and Protocols; S. Ding (編), Methods in Molecular Biology, 636:55-78 (2010)(これらの方法のために参考として援用される)に記載される改変法によって得られた。
【0181】
米国特許第7,015,037号に記載されるとおりのMAPCの単離および増殖
MAPC単離の方法は、例えば、ヒト、ラット、マウス、イヌおよびブタから、当該分野で公知である。例証的な方法は、例えば、米国特許第7,015,037号およびPCT/US02/04652(WO 02/064748として公開)に記載され、これらの方法は、例証および非限定的な例のみによって、その中で開示されるMAPCの特徴付けとともに、本明細書に参考として援用される。
【0182】
MAPCを、骨髄から最初に単離し、その後、他の組織(脳および筋を含む)から確立した(Jiang, Y.ら (2002): Nature 418: 41-49)。MAPCは、多くの供給源(骨髄、胎盤、臍帯および臍帯血、筋、脳、肝臓、脊髄、血液、脂肪組織および皮膚が挙げられるが、これらに限定されない)から単離され得る。例えば、MAPCは、骨髄吸引物から得られ得る。これは、当業者に利用可能な標準的な手段によって得られ得る(例えば、Muschler, G. F.ら. (1997) J Bone Joint Surg Am.;79(11):1699-709およびBatinic, D.ら. (1990): Bone Marrow Transplant 6(2): 103-7を参照のこと)。
【0183】
米国特許第7,015,037号に示される条件下でのヒトMAPC表現型
22~25細胞倍加後に得たヒトMAPCのFACSによる免疫表現型分析は、上記細胞が、CD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD50、CD62Eおよび-P、HLA-DR、Muc18、STRO-1、cKit、Tie/Tekを発現せず;低レベルのCD44、HLA-クラスI、およびβ2-ミクログロブリンを発現するが、CD10、CD13、CD49b、CD49e、CDw90、Flk1を発現することを示した(N>10)。
【0184】
いったん細胞が、約2×10/cmにおいて再播種した培養において>40倍加を受けた後、その表現型は、より均質になり、HLAクラス-IまたはCD44を発現する細胞は、なかった(n=6)。細胞をより高いコンフルエンスまで増殖させた場合、それらは、MSCに関して記載される表現型に類似である、高レベルのMuc18、CD44、HLAクラスI、およびβ2-ミクログロブリンを発現した(N=8)(Pittenger, 1999)。
【0185】
免疫組織化学によって、約2×103/cm 播種密度で増殖されたヒトMAPCが、EGF-R、TGF-R1および-2、BMP-R1A、PDGF-R1aならびに-Bを発現し、MAPCの小亜集団(1~10%の間)が、抗SSEA4抗体で染色されることが示された(Kannagi, R, 1983)。
【0186】
Clontech cDNAアレイを使用したところ、22細胞倍加および26細胞倍加に関して約2×10 細胞/cmの播種密度で培養されたヒトMAPCの発現された遺伝子プロフィールが決定された。
【0187】
A. MAPCは、CD31、CD36、CD62E、CD62P、CD44-H、cKit、Tie、以下に関するレセプター:IL1、IL3、IL6、IL11、G CSF、GM-CSF、Epo、Flt3-L、またはCNTFを発現せず、低レベルのHLA-クラス-I、CD44-EおよびMuc-18 mRNAを発現した。
【0188】
B. MAPCは、サイトカインであるBMP1、BMP5、VEGF、HGF、KGF、MCP1のmRNA;サイトカインレセプターであるFlk1、EGF-R、PDGF-R1α、gp130、LIF-R、アクチビン-R1および-R2、TGFR-2、BMP-R1A;接着レセプターであるCD49c、CD49d、CD29;ならびにCD10を発現した。
【0189】
C. MAPCは、以下を発現した: hTRTおよびTRF1のmRNA;POUドメイン転写因子であるoct-4、sox-2(ES/ECの未分化状態を維持するためにoct-4とともに必要とされる(Uwanogho, D. (1995): Mech Dev 49(1-2): 23-36);sox 11(神経発生)、sox 9(軟骨形成)(Lefebvre V.ら (1998): Matrix Biol 16(9): 529-40);ホメオドメイン転写因子であるHox-a4および-a5(頸部および胸部の骨格仕様(cervical and thoracic skeleton specification);呼吸器の器官形成)(Packer A I (2000): Dev Dyn 217(1): 62-74);Hox-a9(骨髄造血)(Lawrence H. (1997): Blood 89(6): 1922-30);Dlx4(前脳および頭部の末梢構造の仕様)(Akimenko M A (1994): J Neurosci (6): 3475-86)、MSX1(中胚葉、成体心臓および筋、軟骨形成および骨形成)(Foerst-Potts L. (1997) Dev Dyn 209(1): 70-84);PDX1(膵臓)(Offield M Fら (1996): Development. 122(3): 983-95)。
【0190】
D. oct-4、LIF-R、およびhTRT mRNAの存在を、RT-PCRによって確認した。
【0191】
E. さらに、RT-PCRによって、rex-1 mRNAおよびrox-1 mRNAはMAPCにおいて発現されることが示された。
【0192】
Oct-4、rex-1およびrox-1は、ヒトおよびマウス骨髄に、ならびにマウス肝臓および脳に由来するMAPCにおいて発現された。ヒトMAPCは、LIF-Rを発現し、SSEA-4で陽性染色された。最後に、oct-4、LIF-R、rex-1およびrox-1 mRNAレベルは、表現型としてより均質な細胞を生じた30細胞倍加を超えて培養されたヒトMAPCにおいて増大することが見出された。対照的に、高密度で培養されたMAPCは、これらのマーカーの発現を失った。このことは、40細胞倍加前の老化、ならびに軟骨芽細胞、骨芽細胞、および脂肪細胞以外の細胞への分化の喪失と関連する。従って、oct-4の存在は、rex-1、rox-1、およびsox-2と合わせて、MAPC培養物中の最も原始的な細胞の存在と相関する。
【0193】
MAPCの培養
MAPCを培養するための方法は、当該分野で周知である。(例えば、米国特許第7,015,037号(これは、MAPCを培養するための方法に関して本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。MAPCを培養するための密度は、約100 細胞/cmまたは約150 細胞/cm~約10,000 細胞/cm(約200 細胞/cm~約1500 細胞/cm~約2000 細胞/cmを含む)まで変動し得る。その密度は、種間で変動し得る。さらに、至適密度は、培養条件および細胞の供給源に依存して変動し得る。培養条件および細胞の所定のセットに関する至適密度を決定することは、当業者の技術範囲内である。
【0194】
また、約10%未満(約3~5%を含む)という効果的な雰囲気酸素濃度は、培養におけるMAPCの単離、増殖、および分化の間のいずれの時にも使用され得る。
【0195】
さらなる培養法
さらなる実験において、MAPCが培養される密度は、約100 細胞/cmまたは約150 細胞/cm~約10,000 細胞/cm(約200 細胞/cm~約1500 細胞/cm~約2000 細胞/cmを含む)まで変動し得る。その密度は、種間で変動し得る。さらに、至適密度は、培養条件および細胞の供給源に依存して変動し得る。培養条件および細胞の所定のセットに関する至適密度を決定することは、当業者の技術範囲内である。
【0196】
また、約10%未満(約1~5%および特に3~5%を含む)という効果的な雰囲気酸素濃度は、培養におけるMAPCの単離、増殖、および分化の間のいずれの時にも使用され得る。
【0197】
細胞は、種々の血清濃度(例えば、約2~20%)下で培養され得る。ウシ胎仔血清が使用され得る。より高濃度の血清が、より低い酸素分圧(例えば、約15~20%)と組み合わせて使用され得る。細胞は、培養ディッシュへの接着の前に選択される必要はない。例えば、Ficoll勾配の後、細胞は直接プレートされ得る(例えば、250,000~500,000/cm)。接着性のコロニーが拾い上げられ得、可能な限りプールされ得、拡大され得る。
【0198】
実施例における実験手順において使用される、1つの実施形態において、高血清(およそ15~20%)および低酸素(およそ3~5%)条件を、細胞培養のために使用した。具体的には、コロニーからの接着性細胞をプレートし、18% 血清および3% 酸素中で(PDGFおよびEGFとともに)、約1700~2300 細胞/cmの密度で継代した。
【実施例
【0199】
以下の実施例は、例証によって提供されるに過ぎず、決して、本明細書で開示される発明の多くの局面および実施形態を限定するものでも、除くものでも、網羅するものでもない。
【0200】
実施例1 - MAPCの調製
Athersys Inc.(Cleveland)のヒトMultiStem(登録商標) MAPCを、以下に記載される実験において使用した。これらは、健常ドナーから同意を得て骨髄吸引物から単離され、先に記載される方法に従って、本質的には、Penn, MSら, Circ Res 2012;110(2):304-11; Maziarz, RTら, Biology of Blood and Marrow Transplantation 2012;18(2 Sup):S264-S265; ならびにclinicaltrials.gov #NCT01436487、#NCT01240915および#NCT01841632に記載されるように処理したヒト骨髄由来MAPCである。簡潔には、MAPCを、低酸素分圧の下で、5% COの加湿雰囲気の中で、フィブロネクチンコーティングしたプラスチック組織培養フラスコ中で培養した。細胞を、FBS(Atlas Biologicals, Fort Collins, CO)、ITS液体培地補充物[Sigma]、MCDB[Sigma]、血小板由来増殖因子(R&D Systems, Minneapolis, MN)、上皮増殖因子(R&D Systems)、デキサメタゾン[Sigma]、ペニシリン/ストレプトマイシン[Life Technologies Invitrogen]、2-ホスホ-L-アスコルビン酸[Sigma, St. Louis, MO]、およびリノール酸-アルブミン(Sigma)を補充したMAPC培養培地(低グルコースDMEM[Life Technologies Invitrogen]中で培養した。細胞を、3~4日ごとに継代し、トリプシン/EDTA(Life Technologies Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用して採取した。その細胞は、CD49cおよびCD90に関して陽性であり、MHCクラスIIおよびCD45に関して陰性であった。その細胞を、その後、1ml(PlasmaLyte, 5% HSAおよび10% DMSO)中1~10×10の濃度において液体窒素の気相中にある凍結保存用バイアルの中で集団倍加30~35で凍結した。それらの使用直前にMAPCを融解し、次いで、直接使用した。
【0201】
実施例2 - ラットにおけるコラゲナーゼICH誘導
ICHのマウスコラゲナーゼモデルを、先に記載されるとおりの研究のために使用した(Sukumari-Rameshら, J Neurotrauma 29(18):2798-804 (2012)。簡潔には、成体雄性C57Bl/6Jマウス(8~10週齢)を、定位脳手術用フレームへと配置し、頭頂皮質の上、ブレグマに対して2.2mm側方に0.5mm直径の穿頭孔をドリルで開けた。26-G Hamiltonシリンジ(0.5μI 生理食塩水中0.04μIの細菌タイプIVコラゲナーゼを装填)を、頭蓋表面から左側の線条体に直接、3mmの深さで下ろした。そのシリンジを、450nl/分の速度で押し下げ、その手順後に数分間にわたってそのまま静置して、溶液の逆流および過剰な拡散を防止した。シリンジを除去した後、ボーンワックスを使用して、穿頭孔を閉じ、切開部を外科的にステープルで留め、正向反射が回復するまで、マウスを保温した。すべての研究に関して、同腹仔を使用して、実験変動性の原因を低減した。
【0202】
動物を無作為化して、静脈内(IV)生理食塩水(コントロール; n=10)またはMultiStem(登録商標)細胞(n=11)のいずれかを傷害後に受容させた。
【0203】
細胞または生理食塩水のIV投与を、出血の開始後2時間(コラゲナーゼ注射後2時間)で与えた。すべての細胞処置される動物に、100万個の細胞を受容させた。
【0204】
血腫容積および脳灌流を、以下に記載されるように、傷害後3週間にわたって、磁気共鳴画像化(MRI)によって評価した。
【0205】
神経行動学的転帰(握力試験、細梁試験、および高架式身体動揺課題を含む)を、以下に記載されるように、傷害後7日目に評価した。
【0206】
実施例3 - MAPCは、ICH後に血腫容積を低減する
MultiStem(登録商標)細胞のIV投与は、傷害後1日程度の早さで血腫容積を有意に低減した。この効果は、加速した血腫溶解と一致して、ICH後の第1週にわたって持続した。マウスを、イソフルラン(誘導に関しては3%、維持に関しては、N/Oの2:1混合物中1.5%)で麻酔し、12cm 自己遮蔽勾配セット(self-shielded gradient set)(45ガウス/cm 最大)を装備した水平7 Tesla BioSpec MRI分光計(Bruker Instruments)を使用して画像化した。無線周波数パルスを、動物の頭蓋の正中線上に配置した2チャンネルBruker直交位相受信コイルからアクティブに分離した標準的な送/受信ボリュームコイル(72mm 内径)を使用して印加した。定位固定用イヤーバー(Stereotaxic ear bar)を使用して、画像化手順の間の動きを最小にした。マウスの体温を、再循環式ウォーターバスによって加熱したパッドを使用して、37±0.5℃に維持した。3平面ファストローアングルショットシーケンス(tri-planar fast low angle shot sequence)を使用して配置した後、MR試験を、T2’強調MRIスキャンを使用して行った。以下のパラメーターを使用して、MRIを獲得した: T2* マッピングシーケンス(マルチエコーでの2Dグラジエントエコーシーケンス; TE・ 5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、および30ms;TR・ 3,000ms; FOV=32mm; 1mmスライス厚(ISスライス]; 256×256マトリクス; NEX=2)。獲得した画像を、ImageJソフトウェアを使用して容積に対してセグメント化し、血腫容積を算定した。T2*W画像を、Brukerソフトウェアを使用してさらに処理して、磁化率強調画像を得て(Sehgalら, 2006)、代替のセグメント化方法および血塊容積の品質コントロール参照を提供した。血腫および脳室容積の両方を、病変部/脳室を含むすべてのMRI断面上に目的の不規則領域(ROI)を描くことによって決定し、合計値(面積)にスライスの厚みを乗じて、容積を計算した。その分析を、ImageJソフトウェアを使用して行った。
【0207】
細胞処置した動物は、処置の1日以内に、血腫容積における統計的に有意な減少(およそ4倍の減少)を示した。その減少は、少なくとも最初の7日間にわたって、生理食塩水処置した動物に対して細胞処置した動物において統計的に有意であった。
【0208】
結果を図1に示す。プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=11)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後に、マウスに静脈内投与した。血腫容積を、7T小動物用MRIを使用して、MRI(T2W)によって評価した。3日目および7日目の代表的な冠状断脳画像を、血腫容積に対してMultiStem(登録商標)の劇的な利益を示すパネルAに提供する。パネルBは、21日の評価期間にわたる全マウスからのデータを示す。データは、平均±SEMとして示され、各時点内でスチューデントt検定によって分析した。プラシーボ処置ICHマウスに対して**p<0.01。
【0209】
実施例4 - MAPCは、ICH後の脳灌流を改善する。
MultiStem(登録商標)は、ICH後1週間にわたって傷害された線条体中およびその周囲の脳灌流を改善した。マウスを、イソフルラン(誘導に関しては3%、維持に関しては、N/Oの2:1混合物中1.5%)で麻酔し、12cm 自己遮蔽勾配セット(45ガウス/cm 最大)を装備した水平7 Tesla BioSpec MRI分光計(Bruker Instruments)を使用して画像化した。無線周波数パルスを、動物の頭蓋の正中線上に配置した2チャンネルBruker直交位相受信コイルからアクティブに分離した標準的な送/受信ボリュームコイル(72mm 内径)を使用して印加した。定位固定用イヤーバーを使用して、画像化手順の間の動きを最小にした。マウスの体温を、再循環式ウォーターバスによって加熱したパッドを使用して、37±0.5℃に維持した。3平面ファストローアングルショットシーケンスを使用して配置した後、MR試験を、T2’強調MRIスキャンを使用して行った。以下のパラメーターを使用して、MRIを獲得した: T2-流体減衰反転回復シーケンス(RARE-IR, Tl・ 2000;TR・ 10,000ms; TE・ 36ms; RARE係数=8; FOV=32mm; 256×256マトリクス; 1mmスライス厚; JSスライス。その分析を。ImageJソフトウェアを使用して行った。
【0210】
細胞処置した動物の血流は、生理食塩水処置した傷害動物と比較した場合、処置後の最初の7日間にわたって統計的に有意に改善した。これは、MultiStem(登録商標)細胞生成物のIV注入が、出血性脳卒中の発生後に、脳の血流の急激な回復を生じ、より少ない浮腫、組織損傷および神経回路の破壊をおそらく生じたことを示す
【0211】
結果を図2に示す。プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=11)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後に、マウスに静脈内投与した。脳灌流を、7T小動物用MRIを使用して、MRI(ASL; FAIR-RARE)によって評価した。代表的な冠状断脳画像をパネルAに提供するとともに、定量したデータをパネルBに示す。データは、MultiStem(登録商標)がICH後の最初の1週間にわたって脳灌流を改善することを示す。データは、平均±SEMとして示され、各時点内でスチューデントt検定によって分析した。プラシーボ処置ICHマウスに対して*p<0.05、**p<0.01。
【0212】
実施例5 - MAPCは、ICH後に、機能的欠陥を低減し、成績を改善する
梗塞容積の低減および改善された脳灌流において観察されてた変化は、握力試験での運動能力の機能的改善、梁を横断するまでの時間の短縮、および正規化した左/右動揺比によって反映された。
【0213】
行動試験
ぶら下がりワイヤ試験
握力を、2本の垂直な支柱の間に張った50cmのひもからなる装置にマウスを配置することによって評価した。マウスを、以下のとおりに評価した: 0:落下; 1:前脚2本でひもにぶら下がる; 2:1と同じであるが、ひもに登ろうとする; 3:前脚2本+後脚1本または2本でひもにぶら下がる; 4:前脚でひもにぶら下がり、尾をひもに巻き付ける;および5:逃げる。各時点での各動物に関して、3回連続試行のうちの最高を示したものを採用した。
【0214】
細梁歩行
運動協調性を、3日間連続で静止した細梁(6mm幅、1m長)に対して評価した。最初の2日間は訓練からなり、梁上での成績を、3日目に、梁を横断するために必要とされる時間を測定することによって定量した。各マウスを、盲検化した調査者が3回試験し、その平均を記録した。
【0215】
高架式身体動揺試験
動物を、尾の基部から1cmのところを持ち、平らな面から1~5cm上で吊り下げた。吊り下げるごとに1回の動揺を記録した。動揺を、身体の正中線から>10°ずれること、または垂直軸の周りを回転することとして定義した。吊り下げの間にマウスを表面に置き、片側への偏りが観察されないように、目視で姿勢を整えるようにし、その後、再度吊り下げた。評価者は、手および立ち位置を変更し、動揺の方向の偏りを回避するために、試験領域には目印をなくした。1回の試行あたり20回の動揺を記録し、片側への偏りを、片方への動揺/全動揺として計算した。
【0216】
これらのデータは、出血性脳卒中の発生後のMultiStem(登録商標)での急性処置が、生理食塩水のみで処置した動物と比較して、動物に投与した3つの試験にわたって証明されるように、歩行運動における顕著に有意な改善および神経学的利益を生じることを示唆する。
【0217】
結果を図3に示す。プラシーボ(PBS, n=10)またはMultiStem(登録商標)(n=11)を、コラゲナーゼ誘導性ICHの2時間後に、マウスに静脈内投与した。運動機能の神経学的評価を、傷害後(またはシャム手術マウスにおいて;n=8)7日目に評価した。(A)握力試験。(B)細梁課題。(C)高架式身体動揺課題。データは、平均±SEMであり、一元配置ANOVA、続いて、テューキーの事後検定を使用して比較した。*p<.05、**p<0.01、***p<0.001、ns=有意でない。
【0218】
上記で記載される転帰は、特に、血塊の位置およびサイズが手術に適している患者において、外科的排出以外に、出血性脳卒中を被る患者に対して現在承認されている処置が存在しないという事実に照らせば、驚くべきことに良好である。承認されている楽物の治療も存在しない。
【0219】
実験的治療を評価する最新の前臨床論文は、Dhandapaniのグループによって2018年9月に公開され、アデノシン一リン酸キナーゼα-1(AMPKa1)の阻害を介する血腫容積の低減に焦点を当てている(Vaibhav, 2018)、この論文において、同じタイプのMRI転帰および歩行運動および神経学的エンドポイントが、本出願のように評価された。
【0220】
MultiStem(登録商標)細胞の投与は、本出願において示される結果と比較した場合、血腫低減および血流転帰において一貫して良好であり、歩行運動転帰においてより良好とは言わないまでも同様に良好である。これらは、ICHの処置の研究において認められた最良の結果である。
【0221】
前述の説明および実施例は例証であるが、これらが属する分野の当業者によって認識されるように、本明細書で開示される発明によって包含される多くの局面および実施形態を網羅するものではない。
【0222】
前述の開示において言及される全ての刊行物は、それらの全体において、特に、それらが具体的に引用されている主題に対して最も関連する部分において、本開示に参考として援用される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】