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特表2022-523515硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220418BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20220418BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20220418BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20220418BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
C09K3/14 550F
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544761
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 US2020015908
(87)【国際公開番号】W WO2020160286
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/799,730
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521338639
【氏名又は名称】プレオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナイト、テリー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジェミル、ウィリアム ロリンズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョイ、キース ハリス
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、トニー ラッセル
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA01
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB05
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3C158ED26
5F057AA14
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5F057EA01
5F057EA06
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(57)【要約】
硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが開示されている。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、一般に、複数のダイヤモンド研磨剤を含む。複数のダイヤモンド研磨剤のダイヤモンド研磨剤のそれぞれは、粒径を有する。ここで、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、第1のダイヤモンド研磨剤及び第2のダイヤモンド研磨剤を含む。第1のダイヤモンド研磨剤は第1の粒径を有し、第2のダイヤモンド研磨剤は第2の粒径を有する。ここで、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径よりも小さい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーであって、複数のダイヤモンド研磨剤であって、前記複数のダイヤモンド研磨剤の各々の前記ダイヤモンド研磨剤が粒径を有する、複数のダイヤモンド研磨剤を含み、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、
第1の粒径を有する第1のダイヤモンド研磨剤と、
第2の粒径を有する第2のダイヤモンド研磨剤と、
を含み、
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が、前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径よりも小さい、硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項2】
前記スラリー中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷で、より高い材料除去速度を維持又は可能にするように構成されている、請求項1に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項3】
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、水系の環境に優しい組成物を維持している、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、改善された材料除去速度を得るために必要なダイヤモンドの濃度を低減することを可能にしながら、材料除去速度の改善を提供するように構成されている、
又は
それらの組み合わせである、
請求項2に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項4】
前記スラリー中のダイヤモンドの総濃度を比較的低く維持しながら、前記硬質基板の両面の材料除去の改善率を提供するように構成されている、請求項1に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項5】
前記スラリー中のダイヤモンドの前記比較的低い総濃度が約80ct/ガロン以下であり、前記スラリー中のダイヤモンドの前記ほぼ同じ総濃度における材料除去速度の前記提供される改善が約10%以上である、請求項4に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項6】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が0.01ミクロンから1.00ミクロンであり、及び
前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径が0.5ミクロンから10ミクロンである、
請求項1に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項7】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が0.5ミクロンであり、及び
前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径が1ミクロン又は3ミクロンである、
請求項6に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項8】
前記スラリー中のダイヤモンドの相対的に低い総濃度を維持しながら、炭化ケイ素ウェハの両面の材料除去速度の前記改善が提供され、前記スラリー中のダイヤモンドの前記相対的に低い総濃度が、
80ct/ガロンのスラリーを含み、ここで、0.5ミクロンの前記第1の粒径では17ct/ガロンであり、3ミクロンの前記第2の粒径では63ct/ガロンである、又は
50ct/ガロンのスラリーを含み、ここで、0.5ミクロンの前記第1の粒径では11ct/ガロンであり、3ミクロンの前記第2の粒径では39ct/ガロンである、請求項7に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項9】
前記80ct/ガロンのスラリー又は前記50ct/ガロンのスラリーの材料除去速度の前記改善が、160ct/ガロンの濃度の3ミクロンダイヤモンドを使用して観察される材料除去速度を上回る、請求項8に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項10】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径と前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径との比が60/40から10/90である、請求項1に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項11】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径と前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径との比が約20/80から10/90である、請求項10に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項12】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径と前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径との比が約20/80又はそれに等しい、請求項11に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項13】
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が0.5ミクロンであり、及び
前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径が1ミクロン又は3ミクロンである、
請求項10に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項14】
コスト削減を可能にするように構成されている、請求項1に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項15】
前記コスト削減が、材料除去速度の低下を最小限に抑えながら、高価な多結晶ダイヤモンド粉末を安価な単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えることによる、請求項14に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項16】
コスト削減の割合が、材料除去速度の低下の割合よりも大きい、請求項15に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項17】
前記コスト削減の割合が、材料除去速度の低下の割合よりも約3倍以上大きい、請求項16に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項18】
硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーであって、複数のダイヤモンド研磨剤であって、前記複数のダイヤモンド研磨剤の各々の前記ダイヤモンド研磨剤が粒径を有する、複数のダイヤモンド研磨剤を含み、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、
0.5ミクロンの第1の粒径を有する第1のダイヤモンド研磨剤と、
1ミクロン又は3ミクロンの第2の粒径を有する第2のダイヤモンド研磨剤と、
を含み、
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径と前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径との比が約20/80から10/90であり、
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が、前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径よりも小さく、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、前記スラリー中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷でより高い材料除去速度を維持又は可能にするように構成され、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、水系の環境に優しい組成物を維持し、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、改善された材料除去速度を得るために必要なダイヤモンドの濃度を低減することを可能にしながら、材料除去速度の改善を提供するように構成され、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、前記スラリー中のダイヤモンドの比較的低い総濃度を維持しながら、炭化ケイ素ウェハの両面の材料除去の改善率を提供するように構成され、前記スラリー中のダイヤモンドの前記比較的低い総濃度が約80ct/ガロン以下であり、前記スラリー中のダイヤモンドの前記ほぼ同じ総濃度における材料除去速度の前記提供される改善が約10%以上であり、
前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、材料除去速度の低下を最小限に抑えながら、高価な多結晶ダイヤモンド粉末を安価な単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えることによってコスト削減を可能にするように構成され、コスト削減の割合が、材料除去速度の低下の割合よりも約3倍以上大きい、硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項19】
前記スラリー中のダイヤモンドの相対的に低い総濃度を維持しながら、炭化ケイ素ウェハの両面の材料除去速度の前記改善が提供され、前記スラリー中のダイヤモンドの前記相対的に低い総濃度が、
80ct/ガロンのスラリーを含み、ここで、0.5ミクロンの前記第1の粒径では17ct/ガロンであり、3ミクロンの前記第2の粒径では63ct/ガロンであり、又は
50ct/ガロンのスラリーを含み、ここで、0.5ミクロンの前記第1の粒径では11ct/ガロンであり、3ミクロンの前記第2の粒径では39ct/ガロンであり、
前記80ct/ガロンのスラリー又は前記50ct/ガロンのスラリーの材料除去速度の前記改善が、160ct/ガロンの濃度の3ミクロンダイヤモンドを使用して観察される材料除去速度を上回る、請求項18に記載のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー。
【請求項20】
硬質基板の研磨方法であって、
前記硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを提供することであって、前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、
複数のダイヤモンド研磨剤であって、前記複数のダイヤモンド研磨剤の前記ダイヤモンド研磨剤の各々が粒径を有する、複数のダイヤモンド研磨剤を含み、前記マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが、
第1の粒径を有する第1のダイヤモンド研磨剤と、
第2の粒径を有する第2のダイヤモンド研磨剤と、
を含み、
前記第1のダイヤモンド研磨剤の前記第1の粒径が、前記第2のダイヤモンド研磨剤の前記第2の粒径よりも小さい、及び
前記提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを用いて前記硬質基板を研磨すること、
を含む、硬質基板の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬質基板(hard substrate)を研磨するための研磨スラリーに関する。より具体的には、本開示は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア、窒化ガリウム(GaN)、又は光学材料などの硬質基板を研磨するためのダイヤモンド研磨剤粒子を含む研磨スラリーに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア、又は窒化ガリウム(GaN)からなる加工物などの加工物をラッピング又は研磨するために使用することができる研磨用組成物に関する。典型的な研磨用組成物は、他の共溶媒、レオロジー調整剤、ダイヤモンド研磨剤、pH調整剤、SiO又はAlなどの他の研磨剤、又は界面活性剤及び分散剤を含有することができる水系組成物である。SiCウェハの製造には、SiCの大きな単結晶を成長させることが必要であり、単結晶から、薄いウェハブランクが単結晶をワイヤソーイングすることによって得られる。その後のプロセスは、ウェハの表面仕上げ及び幾何学的形状を改善するために必要であり、これはダイヤモンド系スラリーを用いた機械的研磨によって行われる。このダイヤモンド系スラリーは、集積回路などの電子デバイスの製造のための基板として最終的に使用するためにウェハを準備する化学機械平坦化(CMP)プロセスに必要な品質までウェハを研磨することができる。
【0003】
ダイヤモンド系研磨用組成物は、生産的な材料除去をもたらす加工物と比較して、ダイヤモンド研磨剤の高い硬度のために基板の機械的研磨に広く使用されている。ダイヤモンドスラリーの製造業者は数多くあり、ダイヤモンド研磨剤自体は、単結晶、多結晶、又は何らかのハイブリッドタイプのダイヤモンド研磨剤の形態をとることができる。一例として、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,980,113号は、ナノダイヤモンドを使用した化学機械平坦化を開示している。言い換えれば、米国特許第8,980,113号は、スラリー中のナノダイヤモンドを利用する硬質基板研磨用のスラリーを開示している。SiCウェハの機械的研磨に使用される典型的なダイヤモンド粒径は、0.01~10ミクロン程度であり、いくつかのプロセスステップは、所望のウェハ形状及び表面品質を達成するために除去速度を低下させながら表面品質を改善する漸進的により小さいダイヤモンド研磨剤である。プロセス時間の大部分は、ワイヤソーとCMPとの間の機械的研磨プロセスにあることが見出され、したがって、SiCウェハ並びに他の硬質材料の製造のためのプロセス時間を短縮するために高い材料除去速度(MRR)を提供するダイヤモンドを含有する研磨スラリーを開発することは、技術的に非常に興味深い。
【0004】
典型的なダイヤモンドスラリーは、100ct/ガロンを超えるダイヤモンド濃度のダイヤモンド研磨剤を含み、廃棄及び環境にとって負担となる油性であることがあり、また廃棄が困難な酸化剤などの他の化学成分を含むことがある。既存のダイヤモンド研磨スラリーの限界としては、材料除去速度(material removal rate)が遅いこと、ダイヤモンド濃度が高いためコストが高いこと、及び構成要素を処分するのが危険又は困難であることが挙げられる。
【0005】
硬質基板を研磨するためのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの本開示は、上述の問題の少なくとも特定の態様に対処するように設計することができる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ(multi-modal diamond abrasive package)の使用により、現在利用可能なダイヤモンドスラリーの上述の制限を解決する。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージの使用は、水系の環境に優しい組成物(water based environmentally friendly composition)を維持しながら、スラリー中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷で、予想されるよりも高い除去速度の実現を可能にする。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、硬質基板を研磨するために開示される。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、一般に、複数のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。複数のダイヤモンド研磨剤のダイヤモンド研磨剤のそれぞれが粒径を有してもよい。ここで、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、第1のダイヤモンド研磨剤及び第2のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。第1のダイヤモンド研磨剤は第1の粒径を有してもよく、第2のダイヤモンド研磨剤は第2の粒径を有してもよい。ここで、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径より小さくてもよく、又はその逆であってもよい。
【0007】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの1つの特徴は、スラリー中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷で、より高い材料除去速度を維持又は可能にするように構成できることであってもよい。
【0008】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの別の特徴は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーが水系の環境に優しい組成物を維持できることであってもよい。
【0009】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの別の特徴は、改善された材料除去速度を得るために必要なダイヤモンドの濃度を低減しながら、材料除去速度を改善するように構成できることであってもよい。
【0010】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの別の特徴は、スラリー中のダイヤモンドの総濃度を比較的低く維持しながら、硬質基板の両面の材料除去の改善率を提供するように構成できることであってもよい。
【0011】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの選択された実施形態では、スラリー中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、約80ct/ガロン以下である。スラリー中のダイヤモンドのほぼ同じ総濃度での材料除去速度の提供される改善は、約10%以上である。
【0012】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.01ミクロン~3.00ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は0.5ミクロン~10ミクロンであってもよい。選択される可能性のある好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.5ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は1ミクロン又は3ミクロンであってもよい。
【0013】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの別の特徴は、スラリー中のダイヤモンドの総濃度を比較的低く維持しながら、炭化ケイ素ウェハ(silicon carbide wafer)の両面の材料除去速度を改善することであってもよい。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの選択された実施形態では、スラリー中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、80ct/ガロンのスラリーを含むことができ、ここで、0.5ミクロンの第1の粒径では17ct/ガロンであり、3ミクロンの第2の粒径では63ct/ガロンである。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの他の選択された実施形態では、スラリー中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、50ct/ガロンのスラリーを含むことができ、ここで、0.5ミクロンの第1の粒径では11ct/ガロンであり、3ミクロンの第2の粒径では39ct/ガロンである。これらの実施形態では、80ct/ガロンのスラリー又は50ct/ガロンのスラリーの材料除去速度の改善は、160ct/ガロンの濃度の3ミクロンダイヤモンドを使用して観察される材料除去速度を上回ることができる。
【0014】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、60/40~10/90であってもよい。選択される可能性のある好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、約20/80~10/90であってもよい。選択される可能性のある最も好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、約20/80又はそれに等しくてもよい。
【0015】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.5ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は1ミクロン又は3ミクロンであってもよい。
【0016】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーの別の特徴は、コスト削減を可能にするように構成できることであってもよい。選択された実施形態では、コスト削減は、材料除去速度の低下を最小限に抑えながら、高価な多結晶ダイヤモンド粉末を安価な単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えることによるものであってもよい。コスト削減の割合は、材料除去速度の低下の割合よりも大きい場合がある。選択された実施形態では、コスト削減の割合は、材料除去速度の低下の割合よりも約3倍以上大きい場合がある。
【0017】
別の態様では、本開示は、本明細書に示される及び/又は記載される様々な実施形態のいずれか又は実施形態の組み合わせのマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを包含する。
【0018】
別の態様において、本開示は、硬質基板を研磨する方法を包含する。硬質基板を研磨する本方法は、一般に、本明細書に示される及び/又は記載される様々な実施形態のいずれか又は実施形態の組み合わせにおいて、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを提供するステップを含むことができる。したがって、硬質基板を研磨するための提供されるマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、複数のダイヤモンド研磨剤を含むことができ、複数のダイヤモンド研磨剤のダイヤモンド研磨剤のそれぞれが粒径を有する。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、第1の粒径を有する第1のダイヤモンド研磨剤、及び第2の粒径を有する第2のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。ここで、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径より小さくてもよい。提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又は基板を用いて、方法は、提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを用いて硬質基板を研磨するステップを更に含むことができる。
【0019】
前述の例示的な概要、並びに本開示の他の例示的な目的及び/又は利点、並びにそれらが達成される方法は、以下の詳細な説明及びその添付図面内で更に説明される。
【0020】
本開示は、必ずしも一定の縮尺で描かれておらず、同様の参照符号が同様の構造を示し、全体を通して同様の要素を指す添付の図面を参照して詳細な説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】2psiでのアリゾナ州スコッツデールEminess Technologies社製のSuba(商標)500研磨パッド(Suba(商標)はデラウェア州ウィルミントンのDuPont Corporation社の商標である。EminessはDupont Electronics&Imagingの権限を有する代表者である)上の炭化ケイ素(SiC)について、本開示の選択された実施形態による表1及び2に列挙されたスラリーの様々な組成物の材料除去速度のマイクロメートル/時間(μm/時)での棒グラフである。
【0022】
図2】2psiでのアリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)800研磨パッド上の炭化ケイ素(SiC)について、本開示の選択された実施形態による表3に列挙されたスラリーの様々な組成物の材料除去速度のマイクロメートル/時間(μm/時)での棒グラフである。
【0023】
図3】2psiでのアリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)500研磨パッド上の、本開示の選択された実施形態による様々な0.5マイクロメートル(μm)×3マイクロメートル(μm)比の、本開示の選択された実施形態による表4に列挙されたスラリーの様々な組成物の材料除去速度のマイクロメートル/時間(μm/h)での棒及び線グラフである。
【0024】
図4】4psiでの本開示の選択された実施形態によるマルチモーダル対応物を有する様々な1マイクロメートル(μm)スラリーの、本開示の選択された実施形態による表5に列挙されたスラリーの様々な組成物の材料除去速度のマイクロメートル/時間(μm/h)での棒グラフである。
【0025】
図5】様々な量の0.5マイクロメートル(μm)の単結晶ダイヤモンドで置き換えられた3マイクロメートル(μm)の多結晶ダイヤモンドスラリーの、本開示の選択された実施形態による表6に列挙されたスラリーの様々な組成の材料除去速度のマイクロメートル/時間(μm/h)での棒グラフである。
【0026】
図6】本開示の選択された実施形態による硬質基板を研磨する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
提示された図面は、例示のみを目的としており、したがって、特許請求される開示に必須であると考えられる場合を除いて、示された構造の正確な詳細のいずれか又は全てに本開示を限定することは望まれず意図もされないことに留意されたい。
【0028】
ここで図1図6を参照すると、本開示の例示的な実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用される。しかし、本開示は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図するものではなく、各特定の要素は、同様の機能を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことを理解されたい。しかし、特許請求の範囲の実施形態は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。本明細書に記載の例は非限定的な例であり、他の可能な例の中の単なる例である。
【0029】
ここで図1図6を参照すると、可能性のある好ましい実施形態では、本開示は、上述の欠点を克服し、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10、及び開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10で硬質基板を研磨するためのその使用方法200を提供することによって、そのような装置又は方法の認識された必要性を満たす。本開示は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の使用により、現在利用可能なダイヤモンドスラリーの上述の制限を解決する。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の使用は、水系の環境に優しい組成物を維持しながら、スラリー10中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷で、予想されるよりも高い除去速度の実現を可能にする。炭化ケイ素(SiC)、サファイア、又は窒化ガリウム(GaN)など、あるいはそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない硬質基板を研磨するための、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10が開示される。一例として、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10は、SiCウェハを研磨するために使用することができる。
【0030】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10は、一般に、複数のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。複数のダイヤモンド研磨剤のダイヤモンド研磨剤のそれぞれが粒径を有してもよい。ここで、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10は、第1のダイヤモンド研磨剤及び第2のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。第1のダイヤモンド研磨剤は第1の粒径を有してもよく、第2のダイヤモンド研磨剤は第2の粒径を有してもよい。ここで、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径より小さくてもよく、又はその逆であってもよい。
【0031】
図1図5を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の1つの特徴は、スラリー10中のより低いダイヤモンド研磨剤負荷で、より高い材料除去速度を維持又は可能にするように構成できることであってもよい。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の別の特徴は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10が水系の環境に優しい組成物を維持できることであってもよい。図1図5に示すように、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の別の特徴は、改善された材料除去速度を得るために必要なダイヤモンドの濃度を低減しながら、材料除去速度の改善を提供するように構成できることであってもよい。
【0032】
ここで特に図1図2を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の別の特徴は、スラリー10中のダイヤモンドの総濃度を比較的低く維持しながら、硬質基板の両面の材料除去の改善率を提供するように構成できることであってもよい。図1図2に示すように、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の選択された実施形態では、スラリー10中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、約80ct/ガロン以下であってもよい。スラリー10中のダイヤモンドのほぼ同じ総濃度での材料除去速度の提供される改善は、約10%以上である。
【0033】
開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.01ミクロン~3.000ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は0.5ミクロン~10ミクロンであってもよい。選択される可能性のある好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.5ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は1ミクロン(図4に示す)又は3ミクロン(図1図3及び図5に示す)であってもよい。
【0034】
図1図5に示すように、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の別の特徴は、スラリー10中のダイヤモンドの総濃度を比較的低く維持しながら、炭化ケイ素ウェハの両面の材料除去速度を改善することであってもよい。一例として、明らかにそれに限定されないが、特に図1及び図2を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の選択された実施形態では、スラリー10中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、80ct/ガロンのスラリー10を含むことができ、ここで、0.5ミクロンの第1の粒径では17ct/ガロンであり、3ミクロンの第2の粒径では63ct/ガロンである。別の例として、明らかにそれに限定されないが、ここで特に図1を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の他の選択された実施形態では、スラリー10中のダイヤモンドの比較的低い総濃度は、50ct/ガロンのスラリー10を含むことができ、ここで、0.5ミクロンの第1の粒径では11ct/ガロンであり、3ミクロンの第2の粒径では39ct/ガロンである。図1図2に示すように、これらの例示的な実施形態では、80ct/ガロンのスラリー10又は50ct/ガロンのスラリー10の材料除去速度の改善は、160ct/ガロンの濃度の3ミクロンダイヤモンドを使用して観察される材料除去速度を上回ることができる。
【0035】
ここで特に図3を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、60/40~10/90であってもよい。選択される可能性のある好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、約20/80~10/90であってもよい。選択される可能性のある最も好ましい実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径と第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径との比は、約20/80又はそれに等しくてもよい。開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10のこれらの選択された実施形態では、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は0.5ミクロンであってもよく、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径は1ミクロン又は3ミクロンであってもよい。
【0036】
ここで特に図5を参照すると、開示されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10の別の特徴は、コスト削減を可能にするように構成できることであってもよい。図5の例に示すように、選択された例示的な実施形態では、明らかにそれに限定されないが、コスト削減は、材料除去速度の低下を最小限に抑えながら、高価な多結晶ダイヤモンド粉末を安価な単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えることによるものであってもよい。表6に示すように、コスト削減の割合は、材料除去速度の低下の割合よりも大きくてもよい。選択された例示的な実施形態では、明らかにそれに限定されないが、図5に示すように、コスト削減の割合は、材料除去速度の低下の割合よりも約3倍以上大きくてもよい。
【0037】
ここで図6を参照すると、別の態様では、本開示は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア、又は窒化ガリウム(GaN)など、及びそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない硬質基板の研磨方法200を包含する。硬質基板の研磨方法200は、一般に、本明細書に示される及び/又は記載される様々な実施形態のいずれか又は実施形態の組み合わせにおいて、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10を提供するステップ202を含むことができる。したがって、硬質基板を研磨するための提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリー10は、一般に、複数のダイヤモンド研磨剤を含むことができ、複数のダイヤモンド研磨剤のダイヤモンド研磨剤のそれぞれが粒径を有する。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーは、第1の粒径を有する第1のダイヤモンド研磨剤、及び第2の粒径を有する第2のダイヤモンド研磨剤を含むことができる。ここで、第1のダイヤモンド研磨剤の第1の粒径は、第2のダイヤモンド研磨剤の第2の粒径より小さくてもよい。提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又は基板を用いて、方法200は、提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを用いて硬質基板を研磨するステップ204を更に含むことができる。提供されたマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ又はスラリーを用いて硬質基板を研磨するステップ204は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア、又は窒化ガリウム(GaN)など、及びそれらの組み合わせなどの、硬質基板を研磨するための公知の及び/又は後に発見される任意の手段によって実行することができる。
【0038】

図1図5に示すように、試料スラリー10を調製し、試験して炭化ケイ素(SiC)ウェハの材料除去速度(MRR)を決定した。SiCウェハのMRRは、以下の手順で測定した。中国北京のTanKeBlue Semiconductor社製の3インチSiCウェハを、以下に説明する実験のほとんどについて15分単位で研磨した。観察された材料除去速度の非常に高い結果として、大型ダイヤモンド(3μm以上)多結晶ダイヤモンド実験については、ウェハを10分単位で研磨した。研磨ツールは、ミズーリ州セントジョセフのLECO(登録商標)Corporationによって提供されたSpectrum System 2000グラインダー及びポリッシャーであった。
【0039】
全てアリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)500、Suba(商標)800、及びMHパッドを含む様々な直径12インチのパッドを様々な実験に使用した。全ての実験のSiCウェハは、アリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のE310バッカー材料であるNTA E310を備えたテンプレートアセンブリ内に含まれていた。ミズーリ州セントジョセフのLECO(登録商標)Corporationによって提供されたLECO(登録商標)ツールは、ヘッド及び圧盤の両方の回転速度を独立して設定することを可能にするが、しかし、これらの実験の目的のために、ヘッド及び圧盤の両方を時計回り(CW)に125RPMで動作するように設定した。実験を通してウェハの均一性を確保するために、各研磨単位後にウェハを90度回転させた。2psi及び4psiである2つの異なる操作ダウンフォース圧力を異なる実験に使用した。単結晶マルチモーダル(MM)スラリーを含む最初の実験では、スラリー10を25mL/分の滴下速度で適用したが、しかし、多結晶ダイヤモンドスラリーを含む他の全ての実験の滴下速度は20mL/分であった。
【0040】
各単位のMRRを決定するために、各研磨ステップの前後にウェハを秤量した。ウェハが半径1.5インチの完全円筒であるという仮定を使用して、各実行後に測定された質量差及びSiCの密度に基づいてMRRを計算した。質量及び密度を使用して、除去された総体積及びシリンダの対応する高さを決定した。次いで、各実験のそれぞれの時間単位(10分又は15分)で割ると、各スラリー組成について、Si面及びC面の両方について2~3つのデータ点が収集され、次いでそれらのデータ点が平均化された。平均データ点は、本開示の本明細書に示される様々な表及び図に示される。
【0041】
例1
例1は、モノモーダル(mono-modal)対マルチモーダル単結晶ダイヤモンドスラリー(multi-modal monocrystalline diamond slurry)10に関する。モノモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ(mono-modal diamond abrasive package)と比較したマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージの使用の独自性は、以下の実験によって例示される。5つのスラリー組成物を、ダイヤモンド研磨剤パッケージの同一性を除いて同一の仕様で製造した。5つの組成物のそれぞれについてのダイヤモンド研磨剤の選択及び濃度を以下の表1に列挙する。
【表1】
【0042】
各組成物の材料除去速度は、前述の研磨試験によって決定され、グラフ形式で図1に示され、以下の表2に列挙されている。この実験のための研磨パッドは、アリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)500であった。
【表2】
【0043】
別のタイプの研磨パッドでの観察を検証するために、アリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)800を使用して以下の実験を行った。組成物1~4の材料除去速度は、前述の研磨試験によって決定され、グラフ形式で図2に示され、以下の表3に列挙されている。
【表3】
【0044】
前述の実験は、マルチモーダル構成(multi-modal configuration)で0.5ミクロン及び3ミクロンの両方の単結晶ダイヤモンド粒子を含む開示された本発明の組成物であるIC 80ct/gal及びIC 50ct/galが、スラリー10中のダイヤモンドの総濃度を80cts/gal以下に比較的低く維持しながら、SiCウェハの両面の材料除去に著しい改善をもたらし、160cts/galの濃度の3ミクロンダイヤモンドを使用して観察された材料除去速度をさえも上回ることを示している。
【0045】
例2
例2は、0.5μm~3μmの単結晶ダイヤモンドスラリーの線形組成研究に関する。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ10の有用性は、以下の実験によって更に認識することができる。7つのスラリー組成物を、単結晶ダイヤモンド研磨剤パッケージの同一性を除いて同一の仕様で製造した。ガロン当たりのダイヤモンド濃度は一定に保たれたが、0.5μm及び3μmのダイヤモンドの相対量は、全て0.5μmから全て3μmまで変化した。材料除去速度をグラフ形式で図3に示し、以下の表4に列挙する。図3は、3μmの単結晶ダイヤモンドのみを含むスラリーと比較した、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤の組み合わせのMRRの相対的な増加を提供する。この実験では、アリゾナ州スコッツデールのEminess Technologies社製のSuba(商標)500研磨パッドを2psiの研磨圧力で使用した。
【表4】
【0046】
前述の実験は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージを含む開示された本発明の組成物が、モノモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージと比較してMRRの大幅な増加をもたらすこと、及び2つのダイヤモンドサイズの最適比が存在することを示している。しかし、本開示は、ダイヤモンド研磨剤の別の組み合わせの最適比は異なる可能性があると考える。
【0047】
例3
例3は、1μmの多結晶ダイヤモンドスラリーとマルチモーダルスラリー10の対応物との比較である。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ10の有用性は、以下の実験によって更に認識することができる。6つのスラリー組成物を、ダイヤモンド研磨剤パッケージの同一性を除いて同一の仕様で製造した。3つの異なる供給業者が1μmの多結晶ダイヤモンド粉末を提供した。1ガロン当たりのダイヤモンド濃度を一定に保持し、3つの1μmの多結晶ダイヤモンド研磨剤スラリーを、1μmの多結晶ダイヤモンドの一部を置き換えるために0.5μmの単結晶ダイヤモンドを使用したそれらのマルチモーダル対応物と比較した。材料除去速度をグラフ形式で図4に示し、以下の表5に列挙する。図4は、1μmの多結晶ダイヤモンドのみを含むスラリーと比較した、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤スラリー10の組み合わせの相対的な増加を提供する。この実験では、MH研磨パッドを4psiの研磨圧力で使用した。
【表5】
【0048】
前述の実験は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージを含む開示された本発明の組成物が、モノモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージと比較してMRRの大幅な増加をもたらすこと、及び幾分異なる1μmの多結晶ダイヤモンド粉末を提供する複数のベンダーにわたって適用できることを示している。
【0049】
例4
例4は、大きな3μmの多結晶ダイヤモンド粉末を小さな0.5μmの単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えて、研磨スラリー用のマルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージを作成することの有用性に関する。マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージの有用性は、以下の実験によって更に認識することができる。4つのスラリー組成物を、ダイヤモンド研磨剤パッケージの同一性を除いて同一の仕様で製造した。一方のスラリーは3μmの多結晶ダイヤモンドのみを利用し、他の3つのスラリー10は、多結晶ダイヤモンドの20、30、又は40%を0.5μmの単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えた。1ガロン当たりの総ダイヤモンド濃度は一定に保たれた。材料除去速度をグラフ形式で図5に示し、相対コスト分析と共に以下の表6に列挙する。図5は、多結晶の3μmダイヤモンドを0.5μmの単結晶ダイヤモンド粉末に置き換える際の相対的なコスト削減と共に、各スラリー組成物のMRRを示す。これらの実験は、MHパッド上で4psiのダウンフォースで行った。
【0050】
コスト分析は、カラット当たりそれぞれ2.00ドル及び0.2ドルの多結晶ダイヤモンド粉末及び単結晶ダイヤモンド粉末のコストを利用する。総カラット/ガロンを30に固定した。
【表6】
【0051】
この実験は、マルチモーダルダイヤモンド研磨剤パッケージ10を含む開示された本発明の組成物が、MRRの低下を最小限に抑えながら、高価な多結晶ダイヤモンド粉末を安価な単結晶ダイヤモンド粉末で置き換えることによって、大幅なコスト削減を可能にすることができることを示している。
【0052】
本明細書及び/又は図面では、本開示の典型的な実施形態が開示されている。本開示は、このような実施形態に限定されるものではない。「及び/又は」という用語の使用は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のありとあらゆる組み合わせを含む。図面は概略図であり、したがって必ずしも縮尺通りに描かれていない。特に明記しない限り、特定の用語は一般的かつ説明的な意味で使用されており、限定の目的で使用されていない。
【0053】
前述の説明及び図面は、例示的な実施形態を含む。このように例示的な実施形態を説明してきたが、当業者であれば、開示内は例示にすぎず、本開示の範囲内で様々な他の代替形態、適合形態、及び修正形態を行うことができることに留意されたい。方法のステップを特定の順序で単に列挙又は番号付けすることは、その方法のステップの順序に対するいかなる制限も構成しない。前述の説明及び関連する図面に提示された教示の利益を有する本開示が関係する当業者には、多くの修正及び他の実施形態が思い浮かぶであろう。本明細書では特定の用語を使用している場合があるが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的では使用されない。したがって、本開示は、本明細書に示される特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】