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特表2022-523543二機能性融合タンパク質及びその医薬的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】二機能性融合タンパク質及びその医薬的使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220418BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220418BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20220418BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C07K19/00
A61K38/16
A61K39/395 D
A61K31/7088
A61K48/00
A61P35/00
A61K47/55
A61P31/04
A61P31/12
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551978
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 CN2020077907
(87)【国際公開番号】W WO2020177733
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】201910168433.0
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910437477.9
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】グ シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】イェ シン
(72)【発明者】
【氏名】フー ビン
(72)【発明者】
【氏名】グォ フー
(72)【発明者】
【氏名】タオ ウェイカン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA41
4C084BA44
4C084CA17
4C084DA39
4C084DA41
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C084ZB35
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085AA21
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZB35
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
二機能性融合タンパク質及びその医薬的使用が提供される。具体的には、SIRPγペプチドバリアントと抗ヒトPD-L1抗体とを含む二機能性融合タンパク質、SIRPγペプチドバリアント及びそれらの医薬的使用が提供される。二機能性融合タンパク質は、PD-L1及びCD47に特異的に結合し、PD-L1又はCD47のそれらの受容体又はリガンドへの結合を阻害することができる。さらに、二機能性融合タンパク質の調製及び応用、並びにがん及び免疫関連疾患の治療も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIRPγペプチドバリアントと抗ヒトPD-L1抗体とを含む二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントがリンカーを介して直接又は間接的に前記抗ヒトPD-L1抗体のポリペプチド鎖に連結しており、
前記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してN51位に置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントであり、好ましくは、前記リンカーが、配列番号89~96、(GGGGS)n、(GGGES)n及び(GKPGS)n(nは2~7の整数)からなる群のいずれか1つから選択される、二機能性融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントのカルボキシル末端が前記抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域のアミノ末端に連結しているか、
又は前記SIRPγペプチドバリアントのカルボキシル末端が前記抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域のアミノ末端に連結しているか、
又は前記抗ヒトPD-L1抗体の重鎖のカルボキシル末端が前記SIRPγペプチドバリアントのアミノ末端に連結しているか、
又は前記抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖のカルボキシル末端が前記SIRPγペプチドバリアントのアミノ末端に連結している、二機能性融合タンパク質。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53、N101、L31、Q52、E54、H56、N70、M72及びM112からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換(単数又は複数)をさらに含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質であって、N51位に置換変異を有する前記SIRPγペプチドバリアントが赤血球表面上のCD47と実質的に結合せず、好ましくは、N51位に置換変異を有する前記SIRPγペプチドバリアントがN51F、N51I、N51L、N51M又はN51V置換変異を含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するN51R置換変異を含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、K53G及びN101D置換変異を含み;
好ましくは、前記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51V、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異を含むか;
前記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51M、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異を含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項7】
請求項6に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントがM6、V27、L30、V33、V36、L37、V42、E47、L66、T67、V92及びS98からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換(単数又は複数)をさらに含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項8】
請求項6に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが配列番号1に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項9】
請求項6に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが配列番号2に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項10】
請求項6に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40からなる群のいずれか1つに示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、JS-003、CS-1001、LY-3300054、KD-033、CK-301、CCX-4503、CX-072、KN-035、HRP00052、HRP00049、FAZ-053、GR-1405、KD-005、HLX-20、KL-A167、CBT-502、STI-A1014、REMD-290、BGB-A333、BCD-135及びMCLA-145からなる群より選択される、二機能性融合タンパク質。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
前記重鎖可変領域が、配列番号6に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号7に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
前記重鎖可変領域が、配列番号8に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号9に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
前記重鎖可変領域が、配列番号8に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号113に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
好ましくは、
前記重鎖可変領域が、配列番号97、98及び99にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号100、101及び102にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
前記重鎖可変領域が、配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号106、107及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
前記重鎖可変領域が、配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
前記軽鎖可変領域が、配列番号106、112及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含む、二機能性融合タンパク質。
【請求項13】
請求項12に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
前記重鎖可変領域が配列番号6に示される通りであり、
前記軽鎖可変領域が配列番号7に示される通りであるか;
前記重鎖可変領域が配列番号8に示される通りであり、
前記軽鎖可変領域が配列番号113に示される通りであるか;
前記重鎖可変領域が配列番号8に示される通りであり、
前記軽鎖可変領域が配列番号9に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が重鎖定常領域と軽鎖定常領域とをさらに含み、好ましくは、前記重鎖定常領域が配列番号10又は11に示される通りであり、前記軽鎖定常領域が配列番号12に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項15】
請求項14に記載の二機能性融合タンパク質であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が重鎖と軽鎖とを含み、前記重鎖が配列番号13又は15に示される通りであり、前記軽鎖が配列番号14に示される通りであるか;
前記重鎖が配列番号16又は18に示される通りであり、前記軽鎖が配列番号17又は111に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【請求項16】
請求項15に記載の二機能性融合タンパク質であって、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを含み、
前記第1ポリペプチドが配列番号41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61及び62からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、前記第2ポリペプチドが配列番号14に示されるポリペプチドから選択されるか;
前記第1ポリペプチドが配列番号63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82及び109からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、前記第2ポリペプチドが配列番号17に示されるポリペプチドから選択されるか;
前記第1ポリペプチドが配列番号63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82及び109からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、前記第2ポリペプチドが配列番号111に示されるポリペプチドから選択される、二機能性融合タンパク質。
【請求項17】
SIRPγペプチドバリアントであって、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してN51位に置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項18】
請求項17に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53、N101、L31、Q52、E54、H56、N70、M72及びM112からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換(単数又は複数)をさらに含む、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項19】
請求項17又は18に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、N51位に置換変異を有する前記SIRPγペプチドバリアントが赤血球表面上のCD47と実質的に結合せず、好ましくは、N51位に置換変異を有する前記SIRPγペプチドバリアントがN51F、N51I、N51L、N51M又はN51V置換変異を含む、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項20】
請求項17又は18に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するN51R置換変異を含む、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項21】
請求項17~20のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、K53G及びN101D置換変異を含む、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項22】
請求項17~21のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、M6、V27、L30、V33、V36、L37、V42、E47、L66、T67、V92及びS98からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換(単数又は複数)をさらに含む、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項23】
請求項21に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、配列番号1に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項24】
請求項21に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、配列番号2に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項25】
請求項21に記載のSIRPγペプチドバリアントであって、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40からなる群に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【請求項26】
SIRPγペプチドバリアントと抗体Fcフラグメントとを含む融合タンパク質であって、前記SIRPγペプチドバリアントが請求項17~25のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアントであり、好ましくは、前記抗体Fcフラグメントがヒト抗体Fcフラグメントであり、より好ましくは、前記抗体Fcフラグメントの配列が配列番号10又は11に示される重鎖定常領域のFcフラグメント配列と同じであり、最も好ましくは、前記融合タンパク質のアミノ酸配列が配列番号86、110、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130及び131からなる群に示される通りである、融合タンパク質。
【請求項27】
軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む抗ヒトPD-L1抗体であって、前記重鎖可変領域が配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、前記軽鎖可変領域が配列番号106、112及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含む、抗ヒトPD-L1抗体。
【請求項28】
前記重鎖可変領域が配列番号8に示されており、前記軽鎖可変領域が配列番号113に示されている、請求項27に記載の抗ヒトPD-L1抗体。
【請求項29】
請求項28に記載の抗ヒトPD-L1抗体であって、前記抗ヒトPD-L1抗体が抗体定常領域をさらに含む全長抗体であり、好ましくは、前記抗体定常領域の重鎖定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域から選択され、前記抗体定常領域の軽鎖定常領域がヒト抗体κ鎖及びλ鎖の定常領域から選択され、より好ましくは、前記全長抗体が、配列番号10又は11に示される重鎖定常領域と、配列番号12に示される軽鎖定常領域とを含む、抗ヒトPD-L1抗体。
【請求項30】
請求項28に記載の抗ヒトPD-L1抗体であって、配列番号16又は18に示される重鎖と、配列番号111に示される軽鎖とを含む、抗ヒトPD-L1抗体。
【請求項31】
治療有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質又は請求項17~25のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアント又は請求項26に記載の融合タンパク質又は請求項27~30のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-L1抗体と、1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、緩衝剤又は賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項32】
請求項1~16のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質又は請求項17~25のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアント又は請求項26に記載の融合タンパク質又は請求項27~30のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-L1抗体をコードする単離された核酸分子。
【請求項33】
請求項32に記載の単離された核酸分子を含む組換えベクター。
【請求項34】
被験体の免疫抑制関連疾患を除去する方法であって、被験体に治療有効量の請求項1~16のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質又は請求項17~25のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアント又は請求項26に記載の融合タンパク質又は請求項27~30のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-L1抗体又は請求項31に記載の医薬組成物又は請求項32に記載の単離された核酸分子を投与することを含む方法であり、好ましくは、前記治療有効量が、0.1~3000mgの請求項1~16のいずれか一項に記載の二機能性融合タンパク質又は請求項17~25のいずれか一項に記載のSIRPγペプチドバリアント又は請求項26に記載の融合タンパク質又は請求項27~30のいずれか一項に記載の抗ヒトPD-L1抗体を含む前記組成物の単位用量である、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の被験体の免疫抑制関連疾患を除去する方法であって、前記免疫抑制関連疾患には以下が含まれる、方法:がん、細菌感染又はウイルス感染であって、好ましくは、前記がんには癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれ、より好ましくは、以下が含まれる:扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、頭頸部扁平上皮細胞癌、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄細胞白血病-1タンパク質、骨髄異形成症候群、消化器がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸がん、子宮内膜がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形性膠芽腫、骨がん、ユーイング肉腫、子宮頸がん、脳腫瘍、膀胱がん、乳がん、結腸がん、肝細胞がん、明細胞腎細胞がん、頭頸部がん、咽頭喉頭がん、肝胆道がん、中枢神経系がん、食道がん、悪性胸膜中皮腫、全身性軽鎖アミロイドーシス、リンパ形質細胞性リンパ腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞腫、精巣がん及び皮膚がん。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PD-L1とCD47とに特異的に結合する二機能性融合タンパク質、該二機能性融合タンパク質を含む医薬組成物及び抗がん剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の記述は、本開示に関連する背景情報を提供するに過ぎず、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0003】
プログラム細胞死-l(PD-l)は、1992年に発見されたT細胞の表面に発現するタンパク質受容体であり、細胞アポトーシスのプロセスに関与している。PD-lはCD28ファミリーに属し、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)と23%のアミノ酸相同性を持つ。しかし、PD-lの発現は、CTLA-4とは異なり、主に活性化T細胞、B細胞及び骨髄性細胞上である。PD-1には、それぞれPD-L1とPD-L2という2つのリガンドがある。PD-L1は、主にT細胞、B細胞、マクロファージ及び樹状細胞(DC)に発現しており、細胞上の発現は活性化に伴ってアップレギュレートされる。PD-L2の発現は、主に活性化マクロファージ及び樹状細胞などの抗原提示細胞上に比較的限られている。
【0004】
PD-L1タンパク質の高発現は、乳がん、肺がん、胃がん、腸がん、腎臓がん、黒色腫などのヒト腫瘍組織で検出され、PD-L1の発現レベルが患者の臨床及び予後と密接に関連していることが新たな研究で明らかになった。PD-L1は、T細胞の増殖を抑制する第2シグナル経路の役割を果たしているため、PD-L1/PD-1の結合を遮断することは、腫瘍免疫療法の分野において非常に有望な新しい標的となっている。
【0005】
細胞表面タンパク質であるCD47は、急性骨髄性白血病、B細胞性非ホジキンリンパ腫の様々なサブタイプ及び多くのヒト固形腫瘍細胞を含む多くの腫瘍タイプで発現又は過剰発現している。CD47とマクロファージ上のシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との結合は、腫瘍細胞の表面における「私を食べないで(do not eat me)」シグナルである。最近のデータによると、抗CD47抗体は、免疫寛容マウスにおける効果的な抗腫瘍T細胞応答を改善するのにも役立つという。したがって、抗CD47抗体は、自然免疫系及び適応免疫系を調節する新しいクラスの免疫チェックポイント阻害剤である。
【0006】
現在、CD47の関連特許として、WO2016065329、WO2016109415、WO2014087248、WO2014093678、CN107849143A、CN108350048、CN106535914、WO2016023001A、CN107459578A、CN2017110167989などがある。例えば、WO2016023001Aには、高親和性PD-1模倣ペプチドとCD47に特異的に結合する高親和性SIRP-αとを含む多特異性PD-1模倣ペプチド及びその使用が記載されている;CN107459578Aには、CD47とPD-L1分子とを標的とするSIRPα変異体と抗PD-L1抗体とを含む組換え融合タンパク質が記載されている;CN201711016798.9には、SIRPαの細胞外部分とPD-1の細胞外部分とを含む多機能性融合タンパク質が開示されている。
【0007】
しかし、現在の前臨床試験及び臨床試験では、抗CD47抗体、SIRPα受容体タンパク質及び人工SIRPα受容体タンパク質、抗SIRPα抗体及び二重特異性抗体など、CD47/SIRPα相互作用に着目した治療法が多く、SIRPγペプチドを含む多特異性融合タンパク質に関する報告はない。
【0008】
SIRPγは、T細胞及び活性化NK細胞に発現しており、SIRPαと比較して、SIRPγは10分の1の親和性でCD47と結合する。CD47-SIRPγ相互作用は、抗原提示細胞とT細胞の接触に関与するとともに、T細胞の活性化を共刺激し、T細胞の増殖を促進する(Piccio et al.,Blood 2005,105,2421-2427)。さらに、CD47-SIRPγ相互作用は、T細胞の経内皮移動にも関与している(Stefanisakis et al.,Blood 2008,112,1280-1289)。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、SIRPγペプチドバリアントを含む二機能性融合タンパク質を提供するものである。野生型SIRPγペプチドと比較して、SIRPγペプチドバリアントは、CD47に対する親和性が著しく向上している。
【0010】
いくつかの実施形態では、SIRPγペプチドバリアントと抗ヒトPD-L1抗体とを含む二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアントが抗ヒトPD-L1抗体のポリペプチド鎖に連結しており、
当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してN51位に置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントである二機能性融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントは、腫瘍細胞の表面上のCD47に結合する活性を有する。好ましくは、SIRPγペプチドバリアントは、野生型SIRPγペプチドよりも腫瘍細胞の表面上のCD47に結合する活性がより増強されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、ヒトSIRPγペプチドバリアントと抗ヒトPD-L1抗体とを含む二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアントが抗ヒトPD-L1抗体のポリペプチド鎖に連結しており、
当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してN51位に置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントである二機能性融合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントは、腫瘍細胞の表面上のCD47に結合する活性を有する。好ましくは、SIRPγペプチドバリアントは、野生型SIRPγペプチドよりも腫瘍細胞の表面上のCD47に結合する活性がより増強されている。いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアントと抗ヒトPD-L1抗体のポリペプチド鎖とが、ペプチド結合によって直接連結しているか、又はリンカーを介して共有結合されている、二機能性融合タンパク質。好ましくは、リンカーは、配列番号89~96、(GGGGS)n、(GGGES)n及び(GKPGS)n(nは2~7の整数)からなる群に示されるリンカーのいずれか1つから選択され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアントのカルボキシル末端が抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域のアミノ末端に連結しているか、
又はSIRPγペプチドバリアントのカルボキシル末端が抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域のアミノ末端に連結しているか、
又は抗ヒトPD-L1抗体の重鎖のカルボキシル末端がSIRPγペプチドバリアントのアミノ末端に連結しているか、
又は抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖のカルボキシル末端がSIRPγペプチドバリアントのアミノ末端に連結している、二機能性融合タンパク質。
【0013】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53、N101、L31、Q52、E54、H56、N70、M72及びM112からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換(単数又は複数)をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0014】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53及びN101から選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0015】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するN51R置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、N51位に置換変異を有する上記SIRPγペプチドバリアントが赤血球表面上のCD47と実質的に結合せず、好ましくは、N51位に置換変異を有する上記SIRPγペプチドバリアントがN51F、N51I、N51L、N51M又はN51V置換変異を含むSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、K53G及びN101D置換変異をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51V、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異をさらに含む、二機能性融合タンパク質。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51M、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異をさらに含む、二機能性融合タンパク質。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、上記SIRPγペプチドバリアントがM6、V27、L30、V33、V36、L37、V42、E47、L66、T67、V92及びS98からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、二機能性融合タンパク質。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアント(一般式I)のアミノ酸配列が配列番号1:
【化1】

(XはL又はWから選択され、XはM、V、F、I又はLから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【0022】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアント(一般式II)のアミノ酸配列が配列番号2:
【化2】

(XはL又はWから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【0023】
さらに好ましい実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、SIRPγペプチドバリアントが配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40からなる群に示される通りであり、好ましくは配列番号26又は27に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【0024】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体が、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、JS-003、CS-1001、LY-3300054、KD-033、CK-301、CCX-4503、CX-072、KN-035、HRP00052、HRP00049、FAZ-053、GR-1405、KD-005、HLX-20、KL-A167、CBT-502、STI-A1014、REMD-290、BGB-A333、BCD-135及びMCLA-145からなる群より選択される、二機能性融合タンパク質。
【0025】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
重鎖可変領域が、配列番号6に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
軽鎖可変領域が、配列番号7に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
重鎖可変領域が、配列番号8に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
軽鎖可変領域が、配列番号9に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
重鎖可変領域が、配列番号8に示される重鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、
軽鎖可変領域が、配列番号113に示される軽鎖可変領域の配列と同じ配列(単数又は複数)のLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含む、二機能性融合タンパク質。さらに、いくつかの実施形態では、HCDR1、HCDR2及びHCDR3領域並びにLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域は、Kabatのナンバリング基準によって定義される。
【0026】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域が、配列番号97、98及び99にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域が、配列番号100、101及び102にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域が、配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域が、配列番号106、107及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含むか;
抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域が、配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域が、配列番号106、112及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含む、二機能性融合タンパク質。
【0027】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体が重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含み、
重鎖可変領域が配列番号6に示されており、軽鎖可変領域が配列番号7に示されているか;
重鎖可変領域が配列番号8に示されており、軽鎖可変領域が配列番号113に示されているか;
重鎖可変領域が配列番号8に示されており、軽鎖可変領域が配列番号9に示されている、二機能性融合タンパク質。
【0028】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体が重鎖定常領域と軽鎖定常領域とをさらに含み、好ましくは、重鎖定常領域が配列番号10又は11に示される通りであり、軽鎖定常領域が配列番号12に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【0029】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、抗ヒトPD-L1抗体が重鎖と軽鎖とを含み、重鎖が配列番号13又は15に示される通りであり、軽鎖が配列番号14に示される通りであるか;
重鎖が配列番号16又は18に示される通りであり、軽鎖が配列番号17に示される通りであるか;
重鎖が配列番号16又は18に示される通りであり、軽鎖が配列番号111に示される通りである、二機能性融合タンパク質。
【0030】
いくつかの実施形態では、前述の二機能性融合タンパク質であって、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを含み、
第1ポリペプチドが配列番号41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61及び62からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、第2ポリペプチドが配列番号14に示されるポリペプチドから選択されるか;
第1ポリペプチドが配列番号63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82及び109からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、第2ポリペプチドが配列番号17に示されるポリペプチドから選択されるか;
第1ポリペプチドが配列番号63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82及び109からなる群のいずれか1つに示されるポリペプチドより選択され、第2ポリペプチドが配列番号111に示されるポリペプチドから選択される、二機能性融合タンパク質。
【0031】
本開示のいくつかの他の実施形態では、SIRPγペプチドバリアントであって、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してN51位に置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントであるSIRPγペプチドバリアントが提供される。いくつかの実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントは、腫瘍細胞の表面上のCD47に結合する活性を有する。好ましくは、SIRPγペプチドバリアントは、野生型SIRPγペプチドよりも腫瘍細胞の表面上のCD47と結合する活性がより増強されている。
【0032】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53、N101、L31、Q52、E54、H56、N70、M72及びM112からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換を有するSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが、野生型SIRPγペプチドに対してK19、K53及びN101から選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するN51R置換変異を有するSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、N51位に置換変異を有する当該SIRPγペプチドバリアントが赤血球表面上のCD47と実質的に結合せず、好ましくは、N51位に置換変異を有する当該SIRPγペプチドバリアントがN51F、N51I、N51L、N51M又はN51V置換変異を含むSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγに対するK19E、K53G及びN101D置換変異を含むSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51V、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異を含む、SIRPγペプチドバリアント。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対するK19E、N51M、Q52S、K53G、E54R、M72K及びN101D変異を含む、SIRPγペプチドバリアント。
【0039】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントがM6、V27、L30、V33、V36、L37、V42、E47、L66、T67、V92及びS98からなる群より選択される1つ又は複数の位置にアミノ酸置換をさらに含むSIRPγペプチドバリアントである、SIRPγペプチドバリアント。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが配列番号1:
【化3】

(XはL又はWから選択され、XはM、V、F、I又はLから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【0041】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが配列番号2:
【化4】

(XはL又はWから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【0042】
いくつかの好ましい実施形態では、前述のSIRPγペプチドバリアントであって、当該SIRPγペプチドバリアントが配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39及び40からなる群に示される通りである、SIRPγペプチドバリアント。
【0043】
本開示の他の態様では、SIRPγペプチドバリアントと抗体Fcフラグメントとを含む融合タンパク質であって、当該SIRPγペプチドバリアントが前述のいずれか1つに記載のSIRPγペプチドバリアントである融合タンパク質も提供される;いくつかの実施形態では、当該抗体Fcフラグメントはヒト抗体Fcフラグメントである;いくつかの好ましい実施形態では、当該抗体Fcフラグメントの配列は配列番号10又は11に示される重鎖定常領域のFcフラグメント配列と同じである;いくつかの好ましい実施形態では、当該融合タンパク質のアミノ酸配列は配列番号86、110、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130及び131からなる群に示される通りである。
【0044】
本開示の他の態様では、抗体の軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含む抗ヒトPD-L1抗体も提供され、当該重鎖可変領域は配列番号103、104及び105にそれぞれ示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3領域を含み、当該軽鎖可変領域は配列番号106、112及び108にそれぞれ示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3領域を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、前述の抗ヒトPD-L1抗体であって、重鎖可変領域が配列番号8に示されており、軽鎖可変領域が配列番号113に示されている、抗ヒトPD-L1抗体。
【0046】
いくつかの実施形態では、前述の抗ヒトPD-L1抗体であって、当該抗ヒトPD-L1抗体が抗体定常領域をさらに含む全長抗体であり、好ましくは、当該抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域から選択され、当該抗体の軽鎖定常領域がヒト抗体κ鎖及びλ鎖の定常領域から選択され、より好ましくは、当該全長抗体が、配列番号10又は11に示される重鎖定常領域と、配列番号12に示される軽鎖定常領域とを含む、抗ヒトPD-L1抗体。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態では、前述の抗ヒトPD-L1抗体であって、配列番号16又は18に示される重鎖と、配列番号111に示される軽鎖とを含む、抗ヒトPD-L1抗体。
【0048】
他の態様では、本開示は、治療有効量の前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体と、1つ若しくは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、緩衝剤又は賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。いくつかの実施形態では、治療有効量は、0.1~3000mgの前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を含む組成物の単位用量である。
【0049】
他の態様では、本開示は、前述の二機能性融合タンパク質をコードするか、前述のSIRPγペプチドバリアントをコードする単離された核酸分子も提供する。
【0050】
他の態様では、本開示は、前述の抗ヒトPD-L1抗体をコードする単離された核酸分子も提供する。
【0051】
他の態様では、本開示は、前述の単離された核酸分子を含む組換えベクターも提供する。
【0052】
他の態様では、本開示は、原核細胞及び真核細胞、好ましくは真核細胞、より好ましくは哺乳動物細胞又は昆虫細胞から選択される前述の組換えベクターで形質転換された宿主細胞も提供する。
【0053】
他の態様では、本開示は、前述の二機能性融合タンパク質を製造する方法又は前述のSIRPγペプチドバリアントを製造する方法又は前述の融合タンパク質を製造する方法又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を製造する方法も提供し、本方法は、前述の宿主細胞を培養培地中で培養して、前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアントを形成して蓄積することと、当該二機能性融合タンパク質又はSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を培養物から回収することとを含む。
【0054】
他の態様では、本開示は、被験体の免疫抑制関連疾患を除去する方法であって、被験体に治療有効量の前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体又は前述の医薬組成物又は前述の単離された核酸分子を投与することを含む方法も提供し、好ましくは、当該治療有効量は、0.1~3000mgの前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を含む前述の組成物の単位用量である。
【0055】
いくつかの実施形態では、PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質、SIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を、約10μg/kg、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約300μg/kg、約400μg/kg、約500μg/kg、約600μg/kg、約700μg/kg、約800μg/kg、約900μg/kg、約1000g/kg、約1100g/kg、1200g/kg、1300g/kg、1400g/kg、1500g/kg、1600g/kg、1700g/kg、1800g/kg、1900g/kg、約2000g/kg、約3000g/kg、約4000g/kg、約5000g/kg、約6000g/kg、約7000g/kg、約8000g/kg、約9000g/kg、約10mg/kg、約20mg/kg、約30mg/kg、約40mg/kg、約50mg/kg、約60mg/kg、約70mg/kg、約80mg/kg、約90mg/kg、約100mg/kg、約200mg/kg、約300mg/kg、約400mg/kg、約500mg/kg、約600mg/kg、約700mg/kg、約800mg/kg、約900mg/kg又は約1000mg/kgの用量で、単回又は累積投与で個体に投与する。
【0056】
他の態様では、本開示は、被験体の免疫抑制関連疾患を除去するための医薬の調製における、前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体又は前述の医薬組成物又は前述の単離された核酸分子の使用も提供し、好ましくは、医薬組成物の単位用量は、0.1~3000mgの前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を含む。
【0057】
他の態様では、本開示は、被験体の免疫抑制関連疾患を除去するための医薬として使用される前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体又は前述の医薬組成物又は前述の単離された核酸分子も提供し、好ましくは、医薬組成物の単位用量は、0.1~3000mgの前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を含む。
【0058】
別の態様では、本開示は、医薬として使用される前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の融合タンパク質又は前述の抗ヒトPD-L1抗体又は前述の医薬組成物又は前述の単離された核酸分子も提供し、好ましくは、医薬組成物の単位用量は、0.1~3000mgの前述の二機能性融合タンパク質又は前述のSIRPγペプチドバリアント又は前述の抗ヒトPD-L1抗体を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前述の被験体の免疫抑制関連疾患の除去には、がん、細菌感染又はウイルス感染が含まれる。当該がんには癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。当該がんのより具体的な例には、以下が含まれる:扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、消化器(管)がん、腎臓がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸がん、子宮内膜がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形性膠芽腫、胃がん、骨がん、ユーイング肉腫、子宮頸がん、脳腫瘍、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、肝細胞がん(HCC)、明細胞腎細胞がん(RCC)、頭頸部がん、咽頭喉頭がん、肝胆道がん、中枢神経系がん、食道がん、悪性胸膜中皮腫、全身性軽鎖アミロイドーシス、リンパ形質細胞性リンパ腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞腫、精巣がん及び皮膚がん。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】いくつかの実施形態におけるPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の模式図である。
図2A】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のヒト赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す図であり、右側の陰性対照は細胞+二次抗体を表す。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質(10μg/ml)の赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す;
図2B】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のヒト赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す図であり、右側の陰性対照は細胞+二次抗体を表す。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質(10μg/ml)の赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す;
図2C】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のヒト赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す図であり、右側の陰性対照は細胞+二次抗体を表す。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質(10μg/ml及び1μg/ml)の赤血球表面上のCD47に対する結合能試験を表す。
図3】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質とRaji細胞表面上のCD47との結合能試験を表す図であり、右側の陰性対照は細胞+二次抗体を表す。
図4】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が媒介する赤血球の食作用を示す図である。
図5A】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が媒介する腫瘍細胞(Molp-8細胞)の食作用を示す図である。様々な実験バッチで検出された様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介される腫瘍細胞の食作用を表す。
図5B】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が媒介する腫瘍細胞(Molp-8細胞)の食作用を示す図である。様々な実験バッチで検出された様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介される腫瘍細胞の食作用を表す。
図6】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が媒介する赤血球凝固作用を示す図である。
図7A】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌を示す図である。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌の結果を表す。
図7B】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌を示す図である。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌の結果を表す。
図7C】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌を示す図である。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌の結果を表す。
図7D】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌を示す図である。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌の結果を表す。
図7E】PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌を示す図である。様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質によって媒介されるIFN-γ分泌の結果を表す。
図8】MC38/H-11-hCD47(#5-4)担がんB-hCD274/hCD47/hSIRPαマウスモデルの腫瘍体積に対する様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果を示す図である。
図9】MC38-hPD-L1-hCD47担がんC57/BL-6マウスモデルの腫瘍体積に対する様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果を示す図である。
図10】MC38-hPD-L1担がんC57/BL-6マウスモデルの腫瘍体積に対する様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果を示す図である。
図11】Molp-8担がんヌードマウスin vivoモデルの腫瘍体積に対する様々なPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果を示す図である。このモデルでは、CD47標的経路における二機能性融合タンパク質の抗腫瘍効果を調べることに焦点を当てている。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(用語)
本開示で使用されるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載されている通りである。
【0062】
「二機能性融合タンパク質」という用語は、2つの標的タンパク質又は標的抗原に結合することができるタンパク質分子を指す。本開示における二機能性融合タンパク質は、主に、細胞表面上のPD-L1及びCD47に結合することができるタンパク質を含み、これは抗PD-L1抗体とSIRPγポリペプチドバリアントとを連結して形成される融合タンパク質である。
【0063】
「PD-L1」という用語は、CD274又はB7H1としても知られているプログラム細胞死リガンド1を指す。ヒト完全長PD-L1のアミノ酸配列は、GenBankのアクセッション番号NP_054862.1で提供されている。ヒト以外の種に由来すると明記されていない限り、「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1を意味する。
【0064】
抗ヒトPD-L1抗体とは、ヒトPD-L1に結合することができ、PD-1とPD-L1の結合を遮断することができる抗体を指す。抗ヒトPD-L1抗体は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、JS-003、CS-1001、LY-3300054、KD-033、CK-301、CCX-4503、CX-072、KN-035、HRP00052、HRP00049、FAZ-053、GR-1405、KD-005、HLX-20、KL-A167、CBT-502、STI-A1014、REMD-290、BGB-A333、BCD-135、MCLA-145等から選択され得る。さらに、本開示における抗ヒトPD-L1抗体は、全長抗体h1830、h1831又はh1830抗体及びh1831抗体のCDR組み合わせと同じCDR組み合わせを有する抗PD-L1抗体若しくはその抗原結合フラグメントから選択することもできる。
【0065】
「SIRPγペプチド」とは、ヒトCD47に結合する活性を有するヒトSIRPγ-D1ドメインペプチド(野生型SIRPγペプチドのアミノ酸配列を配列番号20に示す)を指す。SIRPγペプチドには、野生型SIRPγペプチドに対して1つ又は複数の位置にアミノ酸置換を有するヒトSIRPγ-D1ドメインペプチド変異体、すなわち「SIRPγペプチドバリアント」を含むことができ、そのアミノ酸置換変異の数は20以下、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2であり、SIRPγペプチドバリアントは、野生型SIRPγペプチドよりも腫瘍細胞表面上のCD47に結合する活性が増強されている(野生型SIRPγのCD47との結合親和性はマイクロモルレベルである)。さらに、いくつかの特定の実施形態では、SIRPγペプチドバリアントは、ヒト赤血球表面上のCD47に結合しないという特性又は(腫瘍細胞表面上のCD47への結合活性に比べて)結合が減少するという特性を得る。以下の表1に示すように、例えば、S58ペプチドは、配列番号20に示される野生型SIRPγペプチドに対してK19位をK19Eに、N51位をN51Mに、Q52位をQ52Sに、K53位をK53Gに、E54位をE54Rに、及びN101位をN101Dに置換した変異体である。
【0066】
いくつかの特定の実施形態では、アミノ酸置換変異の代替位置は、K19、K53、N101、L31、N51、Q52、E54、H56、N70、M72、M112、M6、V27、L30、V33、V36、L37、V42、E47、L66、T67、V92又はS98から選択される1つ又は複数の位置(単数又は複数)でのアミノ酸置換変異を含み得る。
【0067】
いくつかの特定の実施形態では、SIRPγペプチドバリアントは、配列番号1:
【化5】

(XはL又はWから選択され、XはM、V、F、I又はLから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである。
【0068】
いくつかの特定の実施形態では、SIRPγペプチドバリアントは、配列番号2:
【化6】

(XはL又はWから選択され、XはQ、S又はTから選択され、XはE、T又はRから選択され、XはH又はRから選択され、XはD、N又はEから選択され、XはI、V、M、R又はKから選択され、XはM又はVから選択される)に示される通りである。
【0069】
以下の表は、野生型SIRPγペプチドに対する様々なSIRPγペプチドバリアントのアミノ酸置換変異位置及び例示的な置換アミノ酸残基を示している。
【表1】
【0070】
「抗体(Ab)」という用語は、特定の抗原(又はそのエピトープ、例えばPD-L1抗原又はそのエピトープ)と特異的に結合又は相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む抗原結合分子又は分子複合体を含む。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合(単数又は複数)で相互に連結された2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖との4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子及びそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)と重鎖定常領域(CH)とを含む。この重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つの領域(ドメイン)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)と軽鎖定常領域(CL)とを含む。軽鎖定常領域は、1つの領域(ドメイン、CL)を含む。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分化することができ、その間には、より保存的な領域(フレームワーク領域、FRと呼ばれる)が介在している。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本開示の異なる例では、抗PD-L1抗体(又はその抗原結合フラグメント)のFRは、ヒト生殖細胞系列と同じであり得るか、天然又は人工的に改変され得る。抗体は、異なるサブクラスの抗体、例えば、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4サブクラス)、IgA1、IgA2、IgD、IgE又はIgM抗体であり得る。
【0071】
「全長抗体」、「インタクト抗体」、「完全抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書において交換可能に使用され、以下に定義される抗原結合フラグメントとは区別される、実質的に無傷の形態の抗体を指す。これらの用語は、具体的には、重鎖がVH領域、CH1領域、ヒンジ領域及びFc領域をアミノ末端からカルボキシル末端に含み、軽鎖がVL領域及びCL領域をアミノ末端からカルボキシル末端に含む抗体を指す。
【0072】
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:(i)Fabフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント;(iii)Fdフラグメント;(iv)Fvフラグメント;(v)一本鎖Fv(scFv)分子;(vi)dAbフラグメント;及び(vii)抗体の超可変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最小認識単位(例えば単離された相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3ペプチド)又は制限的FR3-CDR3-FR4ペプチド。他の人工分子、例えば領域特異的抗体、単一ドメイン抗体、領域欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディ等)、小モジュール免疫医薬品(SMIP)及びサメ可変IgNAR領域も、本明細書で使用される「抗原結合フラグメント」という用語に包含される。
【0073】
抗体の抗原結合フラグメントは、通常、少なくとも1つの可変領域を含む。可変領域は、任意のサイズ又はアミノ酸組成の領域であり得、一般に、1つ若しくは複数のフレームワーク配列(単数若しくは複数)に隣接するか、又はフレームワーク内のCDRを含む。VH領域及びVL領域を有する抗原結合フラグメントでは、VH領域及びVL領域は、任意の適切な配置で互いに向かい合って配置され得る。例えば、可変領域は二量化され、VH-VL又はVL-VH二量体を含み得る。
【0074】
特定の例では、抗原結合フラグメントの可変領域及び定常領域の任意の構成において、可変領域と定常領域は互いに直接連結し得るか、又はインタクト若しくは部分的なヒンジ又はリンカー領域を介して連結し得る。ヒンジ領域は、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個又はそれ以上)のアミノ酸からなり得るため、単一のポリペプチド分子内の隣接する可変領域及び/又は定常領域の間に柔軟性及び半柔軟性のある接続を作り出す。その上、本開示の抗原結合フラグメントは、互いに非共有結合している、及び/又は1つ若しくは複数の単量体VH又はVL領域に(例えばジスルフィド結合によって)連結している可変領域と定常領域とを含むホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を生じさせる。
【0075】
本開示における「マウス抗体」という用語は、当該技術分野の知識と技能に従って調製されたマウス又はラット由来のモノクローナル抗体である。調製の際には、被験体に抗原を注射した後、所望の配列又は機能特性を有する抗体を発現するハイブリドーマを単離する。注射を受けた被験体がマウスの場合、産生される抗体はマウス由来の抗体であり、注射を受けた被験体がラットの場合、産生される抗体はラット由来の抗体である。
【0076】
「キメラ抗体」とは、第1種(マウス等)の抗体の可変領域と第2種(ヒト等)の抗体の定常領域とを融合して形成される抗体のことである。キメラ抗体を樹立するには、まず第1種のモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを樹立し、次にハイブリドーマ細胞から可変領域遺伝子をクローニングし、必要に応じて第2種の抗体定常領域遺伝子をクローニングし、第1種の可変領域遺伝子と第2種の定常領域遺伝子とを連結してキメラ遺伝子を形成し、これを発現ベクターに挿入し、最終的に真核生物系又は原核生物系でキメラ抗体分子を発現させる必要がある。本開示の好ましい実施形態では、キメラ抗体の抗体軽鎖は、ヒトκ、λ鎖又はそのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含む。キメラ抗体の抗体重鎖は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそれらのバリアントの重鎖定常領域、好ましくは、ヒトIgG1、IgG2若しくはIgG4の重鎖定常領域、又はアミノ酸変異(YTE変異、復帰突然変異、L234A及び/若しくはL235A変異又はS228P変異等)を含むIgG1、IgG2若しくはIgG4の重鎖定常領域バリアントをさらに含む。
【0077】
CDR移植抗体を含む「ヒト化抗体」という用語は、動物(例えばマウス)由来の抗体のCDR配列を、ヒト抗体の可変領域のフレームワーク領域に移植して産生された抗体を指す。ヒト化抗体は、多量の異種タンパク質成分を含むキメラ抗体によって引き起こされる不均一反応を克服することができる。そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は公開参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットhttp://www.vbase2.org/で入手可能)、並びにKabat,E.A.,et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th editionにおいて見つけることができる。免疫原性の低下による活性の低下を回避するために、ヒト抗体可変領域のFR配列に少量の復帰突然変異を加えて活性を維持することができる。また、本開示のヒト化抗体は、ファージによってさらに提示され、CDRに対する親和性成熟を受けたヒト化抗体を含む。
【0078】
抗原の接触残基のために、CDR移植化は、抗原と接触しているフレームワーク残基のために、生産された抗体又はその抗原結合フラグメントの抗原に対する親和性の低下をもたらす可能性がある。そのような相互作用は、体細胞の超変異の結果である可能性がある。したがって、そのようなドナーフレームワークアミノ酸をヒト化抗体のフレームワークに移植することが依然として必要である場合がある。抗原結合に関与する非ヒト抗体又はその抗原結合フラグメント由来のアミノ酸残基は、動物モノクローナル抗体の可変領域の配列及び構造を調べることによって同定することができる。生殖細胞系列と異なるCDRドナーフレームワークの残基は、関連性があると見なすことができる。最も近い生殖細胞系列を特定できない場合、その配列をサブクラスのコンセンサス配列又は類似度の高い動物抗体配列と比較することができる。希少なフレームワーク残基は、体細胞の超変異の結果であると考えられており、したがって結合において重要な役割を果たしている。
【0079】
本開示の一実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト若しくはマウスのκ鎖、λ鎖又はそのバリアントの軽鎖定常領域をさらに含み得るか、又はヒト若しくはマウスのIgG1、IgG2、IgG3、IgG4又はそのバリアントの重鎖定常領域をさらに含み得る。
【0080】
ヒト抗体重鎖定常領域及びヒト抗体軽鎖定常領域の「従来のバリアント」とは、従来技術で開示されているヒト由来の重鎖定常領域又は軽鎖定常領域のバリアントであって、抗体可変領域の構造及び機能を変更していないものを指す。例示的なバリアントとしては、重鎖定常領域に部位特異的修飾及びアミノ酸置換を施したIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域バリアントが挙げられる。具体的な置換としては、YTE変異、L234A及び/若しくはL235A変異、又はS228P変異、又は当該技術分野で知られているknob-into-hole構造を得るための変異(抗体重鎖がknob-Fcとhole-Fcの組み合わせを持つようにする)などが挙げられる。これらの変異は、抗体に新たな特性を持たせることが確認されているが、抗体可変領域の機能を変えるものではない。
【0081】
「ヒト抗体」及び「ヒト由来抗体」は、交換可能に使用することができ、ヒト由来の抗体又は抗原刺激に応答して特異的ヒト抗体を産生するように「操作」されたトランスジェニック生物から得られた抗体であり得、当該技術分野で知られている任意の方法で産生することができる。いくつかの技術では、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子座のエレメントを、内因性重鎖及び軽鎖遺伝子座が標的破壊された細胞株に導入する。このトランスジェニック生物は、抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、この生物を用いてヒト抗体分泌ハイブリドーマを産生することができる。ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖が1つ又は複数のヒトDNA起源に由来するヌクレオチド配列によってコードされている抗体でもあり得る。完全ヒト抗体は、遺伝子又は染色体トランスフェクション法及びファージディスプレイ技術によって構築することも、in vitroで活性化されたB細胞によって構築することもでき、これらは全て当該技術分野で知られている。
【0082】
「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、考え得るバリアント抗体(例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じた変異を含み、これらのバリアントは通常少量しか存在しない)を除いて、集団を構成する個々の抗体が同じものを認識し、及び/又は同じエピトープと結合する。モノクローナル抗体調製物(製剤)の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体の特性を示すものであり、抗体の製造に特定の方法を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、並びに完全又は部分的なヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技術によって調製することができる。モノクローナル抗体を調製するためのそのような方法及び他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0083】
さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子にコードされているが、組換え法を用いてそれらを合成リンカーで連結することにより、それらをVL領域とVH領域とが対になって一価分子を形成する単一タンパク質鎖として製造することができる(一本鎖Fv(scFv)と呼ばれる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85: 5879-5883を参照)。そのような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることが意図されている。そのような抗体フラグメントは、当業者に知られている従来技術を用いて得られ、そのフラグメントは、インタクト抗体のスクリーニングに用いられるのと同様の方法で機能についてスクリーニングされる。抗原結合部位は、組換えDNA技術によって、又はインタクトな免疫グロブリンの酵素的若しくは化学的フラグメント化によって製造することができる。
【0084】
抗原結合フラグメントは、一対のタンデムFvフラグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む一本鎖分子に組み込むこともでき、これは、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する(Zapata et al.,1995,Protein Eng.8(10):1057-1062;and U.S.Patent No.5,641,870)。
【0085】
Fabは、IgG抗体をプロテアーゼパパイン(H鎖の224位のアミノ酸残基を切断する)で処理することによって得られる、分子量約50,000Daの抗原結合活性を有する抗体フラグメントであり、N末端側のH鎖の約半分とL鎖全体がジスルフィド結合(単数又は複数)で結合している。
【0086】
F(ab’)2は、IgGのヒンジ領域にある2つのジスルフィド結合の下流部分をペプシンで消化することによって得られる、分子量約100,000Daの抗原結合活性を有する抗体フラグメントであり、ヒンジ位置で連結した2つのFab領域を含む。
【0087】
Fab’は、前述のF(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、分子量約50,000Daの抗原結合活性を有する抗体フラグメントである。Fab’は、抗原を特異的に認識して結合するF(ab’)2を、例えばジチオスレイトールなどの還元剤で処理することにより製造することができる。
【0088】
さらに、抗体のFab’フラグメントをコードするDNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、そのベクターを原核生物又は真核生物に導入することで、Fab’を発現させることができる。
【0089】
「一本鎖抗体」、「一本鎖Fv」又は「scFv」という用語は、リンカーで連結された抗体重鎖可変ドメイン(すなわち領域;VH)と抗体軽鎖可変ドメイン(すなわち領域;VL)とを含む分子を指す。そのようなscFv分子は、一般式:NH-VL-リンカー-VH-COOH又はNH-VH-リンカー-VL-COOHで表すことができる。先行技術の適切なリンカーは、反復GGGGSアミノ酸配列又はそれらのバリアント、例えば、1~4(1、2、3又は4を含む)の反復バリアントからなる(Holliger et al.(1993),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448)。本開示で使用することができる他のリンカーは、Alfthan et al.(1995),Protein Eng.8:725-731、Choi et al.(2001),Eur.J.Immunol.31:94-106、Hu et al.(1996),Cancer Res.56:3055-3061、Kipriyanov et al.(1999),J.Mol.Biol.293:41-56及びRoovers et al.(2001),Cancer Immunol Immunother.50:51-59に記載されている。
【0090】
「抗ヒトPD-L1抗体」には、ヒトPD-L1に特異的に結合することができる全長抗体のほか、全長抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗原結合フラグメントが挙げられ、一本鎖抗体(scFv)、Fabフラグメント又は全長抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含むscFv若しくはFabを含む他の抗原結合フラグメントが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
「SIRPγペプチドが抗ヒトPD-L1抗体のポリペプチド鎖に連結している」という表現で用いられる場合の「連結している」とは、ポリペプチド間の有効な接続を意味し、例えば、ペプチド結合を介した接続又はリンカーを介した接続などが挙げられる。この接続により、SIRPγペプチド及び抗ヒトPD-L1抗体のそれぞれの機能が失われることはない。
【0092】
「リンカー」は、通常、ある程度の柔軟性を持って、タンパク質ドメイン又は各種タンパク質又は各種ポリペプチドを接続するために使用される接続ポリペプチド配列を指す。リンカーを使用することで、タンパク質ドメインの本来の機能が失われることはない。例示的なリンカーを以下の表に示す。
【表2】
【0093】
いくつかの実施形態では、抗PD-L1抗体を、リンカー(単数又は複数)によってSIRPγペプチドバリアントに連結することができる。いくつかの例示的な二機能性融合タンパク質には、以下に示す融合タンパク質が挙げられる:
【表3】
【0094】
ダイアボディは、二量体化したscFvの抗体フラグメントを指し、二価の抗原結合活性を持つ抗体フラグメントである。二価の抗原結合活性では、2つの抗原は同じであっても異なっていてもよい。
【0095】
dsFvは、ポリペプチド(VH及びVLのそれぞれの1つのアミノ酸残基がシステイン残基で置換されている)を、システイン残基間のジスルフィド結合を介して接続することにより得られる。システイン残基で置換されるアミノ酸残基は、抗体の三次元構造予測に基づく既知の方法(Protein Engineering.7:697(1994))に従って選択することができる。
【0096】
本開示のいくつかの例における抗原結合フラグメントは、以下の工程によって製造することができる:抗原を特異的に認識して結合する本開示のモノクローナル抗体のVH及び/又はVL並びにその他の必要なドメインをコードするcDNAを取得し、抗原結合フラグメントをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物発現ベクター又は真核生物発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物又は真核生物に導入して抗原結合フラグメントを発現させる。
【0097】
「Fc領域」は、ネイティブ配列のFc領域又はバリアントのFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化する可能性があるが、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常Cys226位又はPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで延びていると定義される。Fc領域の残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスのナンバリングと同じである。Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition, Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1991。免疫グロブリンのFc領域は、通常CH2とCH3の2つの定常領域ドメインを持つ。
【0098】
「アミノ酸差」又は「アミノ酸変異」という用語は、元のタンパク質又はポリペプチドと比較して、バリアントのタンパク質又はポリペプチドにアミノ酸の変化若しくは変異があることを指し、元のタンパク質又はポリペプチドを基準として、1つ又は複数のアミノ酸の挿入、欠失若しくは置換が挙げられる。
【0099】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖可変領域(VL)又は抗体重鎖可変領域(VH)単独若しくは組み合わせたものを指す。当該技術分野で知られているように、重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)(超可変領域とも呼ばれる)によって連結された4つのフレームワーク領域(FR)で構成されている。各鎖のCDRはFRによって強固に保持されており、他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与している。CDRを決定する手法としては、少なくとも2つの手法を挙げることができる:(1)異種間配列変動性に基づく方法(すなわち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th edition,1991,National Institutes of Health,Bethesda MD));及び(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく方法(Al-Lazikani et al.,J.Molec.Biol.273:927-948(1997))。本明細書で使用される場合、CDRは、いずれかの方法又は2つの方法の組み合わせによって決定されるCDRを指すことができる。
【0100】
「抗体フレームワーク」又は「FR領域」という用語は、可変ドメインVL又はVHの部位を指し、これは可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)の足場として機能する。基本的に、これはCDRのない可変ドメインである。
【0101】
「相補性決定領域」及び「CDR」という用語は、抗体の可変領域に存在する6つの超可変領域のうち、主に抗原結合に寄与する領域を指す。一般に、各重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)が存在し、各軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)が存在する。様々な周知のスキームのいずれかを使用してCDRのアミノ酸配列境界を決定することができ、これには、「Kabat」のナンバリング基準(Kabat et al.(1991),“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,5th edition,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda, MDを参照)、「Chothia」のナンバリング基準(Al-Lazikani et al.,(1997) JMB 273:927-948)及びImMunoGenTics(IMGT)のナンバリング基準(Lefranc M.P.,Immunologist,7,132-136(1999);Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27,55-77(2003))などがある。例えば、古典的な形式では、Kabatの基準に従うと、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基番号は、31-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)であり;軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基番号は、24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)である。Chothiaの基準に従うと、VHのCDRアミノ酸番号は、26-32(HCDR1)、52-56(HCDR2)及び95-102(HCDR3)であり;VLのアミノ酸残基番号は、26-32(LCDR1)、50-52(LCDR2)及び91-96(LCDR3)である。Kabat、Chothiaの両方のCDR定義を組み合わせると、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26-35(HCDR1)、50-65(HCDR2)及び95-102(HCDR3)と、ヒトVLのアミノ酸残基24-34(LCDR1)、50-56(LCDR2)及び89-97(LCDR3)とからなる。IMGTの基準では、VHのCDRアミノ酸残基番号は、おおよそ26-35(CDR1)、51-57(CDR2)及び93-102(CDR3)であり、VLのCDRアミノ酸残基番号は、おおよそ27-32(CDR1)、50-52(CDR2)及び89-97(CDR3)である。IMGTの基準に従うと、IMGT/DomainGap Alignというプログラムを使って、抗体のCDR領域を決定することができる。
【0102】
「抗体定常領域ドメイン」は、抗体の軽鎖及び重鎖の定常領域に由来するドメインを指し、様々なタイプの抗体に由来するCL及びCH1、CH2、CH3及びCH4ドメインが含まれる。
【0103】
「エピトープ」又は「抗原決定基」は、免疫グロブリン又は抗体が特異的に結合する抗原上の部位を指す。エピトープは通常、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくは15個の連続又は非連続アミノ酸を含み、固有の空間的構造をしている。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照。
【0104】
「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、「選択的結合」及び「特異的結合」という用語は、抗体が所定の抗原上のエピトープに結合することを指す。
【0105】
「親和性」という用語は、単一エピトープにおける抗体と抗原間の相互作用の強さを意味する。各抗原部位内で、抗体「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を介して複数のアミノ酸位置で抗原と相互作用する;その相互作用が大きいほど、親和性は強くなる。本明細書で使用される場合、抗体又はその抗原結合フラグメント(例えばFabフラグメント)の「高親和性」という用語は、一般的にKが1E-9M以下(例えば、Kが1E-10M以下、Kが1E-11M以下、Kが1E-12M以下、Kが1E-13M以下、Kが1E-14M以下等)の抗体又は抗原結合フラグメントを指す。
【0106】
「KD」又は「K」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。一般的に、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いたBIACORE装置で測定した解離平衡定数(KD)が、例えば約1E-8M以下、例えば約1E-9M以下、約1E-10M以下又は約1E-11M以下の抗原に結合する。KD値が小さいほど、親和性が高いと言える。
【0107】
「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を指す。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖のDNA分子又はRNA分子であり得、例えば、二本鎖のDNA又はmRNAである。核酸が別の核酸配列と機能的関係に置かれると、その核酸は「作動可能に連結している」。例えば、プロモーター又はエンハンサーがコーディング配列の転写に影響を与える場合、プロモーター又はエンハンサーはコーディング配列に作動可能に連結している。
【0108】
「ベクター」という用語は、1つ又は複数の標的遺伝子又は配列を送達することができ、好ましくは宿主細胞内でそれを発現させることができる構築物を意味する。ベクターの例としては、ウイルスベクター、裸のDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性凝集剤と会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームにカプセル化されたDNA又はRNA発現ベクター及び産生細胞などの特定の真核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
抗体及び抗原結合フラグメントの製造・精製方法は、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,Chapters 5-8 and 15などの先行技術においてよく知られている。例えば、マウスを抗原又はそのフラグメントで免疫し、得られた抗体を復元して精製し、従来の方法を使用してアミノ酸配列決定を行うことができる。抗原結合フラグメントも、従来の方法を使用して調製することができる。本開示による抗体又は抗原結合フラグメントは、非ヒトCDR領域に1つ又は複数のヒトFR領域を付加するように遺伝子操作されている。ヒトFR生殖細胞系配列は、ウェブサイトhttp://www.imgt.org/からMOEソフトウェアを介してIMGTヒト抗体可変領域生殖細胞系列遺伝子データベースに対してアラインメントすることにより入手することができ、又はThe Immunoglobulin FactsBook,2001ISBN012441351から入手することができる。
【0110】
「宿主細胞」という用語は、発現ベクターが導入された細胞を指す。宿主細胞には、細菌、微生物、植物又は動物の細胞が含まれ得る。容易に形質転換できる細菌としては、腸内細菌科のメンバー、例えば大腸菌又はサルモネラ菌株;バシラス科、例えば枯草菌;肺炎球菌;連鎖球菌及びインフルエンザ菌などが挙げられる。適切な微生物には、サッカロミセス・セレビシエ及びピキア・パストリスが挙げられる。適切な動物宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞株)、HEK293細胞(HEK293E細胞などの非限定的な例)及びNS0細胞が挙げられる。
【0111】
改変抗体又は抗原結合フラグメントは、従来の方法で調製及び精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列をクローニングし、GS発現ベクターに組み替えることができる。組換え免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞に安定してトランスフェクトすることができる。代替となる先行技術として、哺乳動物の発現系は、特にFc領域の高度に保存されたN末端位置において、抗体のグリコシル化をもたらす可能性がある。抗原と特異的に結合する抗体を発現させることで、安定したクローンが得られる。陽性クローンは、バイオリアクターの無血清培地で増殖して抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、従来技法で精製することができる。例えば、精製には、調整された緩衝液を含むプロテインA又はプロテインGセファロースFFカラムを用いることができる。非特異的に結合した成分は洗い流される。その後、結合した抗体をpHグラジエントで溶出し、抗体フラグメントをSDS-PAGEで検出して回収する。この抗体を従来の方法で濾過し、濃縮することができる。可溶性混合物及び多量体も、例えばモレキュラーシーブ及びイオン交換などの従来の方法で除去することができる。得られた生成物は、-70℃などで直ちに凍結するか、凍結乾燥する必要がある。
【0112】
「投与する」、「投与」、「与える」及び「処理する」は、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官又は生体液に適用される場合、外因性医薬品、治療剤、診断薬、組成物又は手動操作(例えば、実施例では「安楽死」)を、動物、ヒト、被験体、細胞、組織、器官又は生体液と接触させることを意味する。「与える」及び「処理する」は、例えば、治療、薬物動態、診断、研究及び実験方法を意味し得る。細胞の処理には、試薬を細胞に接触させること、及び試薬を流体に接触させることが含まれ、その際、流体は細胞と接触する。「与える」及び「処理する」という用語は、例えば、試薬、診断薬、結合組成物によって、又は別の種類の細胞によってin vitro及びex vivoで細胞を処理することも意味する。「処理する」は、ヒト、獣医又は研究対象に適用される場合、治療的処理、予防又は予防措置、研究及び診断用途を意味する。
【0113】
「治療」は、内用又は外用治療剤、例えば本開示の化合物のいずれか1つを含む組成物を、治療剤が治療効果を有することが知られている1つ又は複数の疾患症状を有する(又は有することが疑われる、又は罹患しやすい)患者(又は被験体)に適用することを意味する。一般に、治療剤は、治療を受ける患者(若しくは被験体)又は集団の1つ又は複数の疾患症状を緩和するのに有効な量で投与され、そのような症状の退行を誘導するか、そのような症状の発現を臨床的に検出可能な程度まで抑制する。任意の特定の疾患症状を緩和するのに有効な治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、様々な要因、例えば患者(又は被験体)の病状、年齢及び体重並びに患者(又は被験体)において所望の治療効果をもたらす薬剤の能力などによって異なる場合がある。疾患の症状が緩和されたかどうかは、医師又は他の医療専門家によって一般的に使用されて、症状の重症度又は進行度を評価する任意の臨床試験方法によって評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、各標的疾患症状を緩和する効果はないが、スチューデントのt検定、カイ二乗検定、マン・アンド・ホイットニーのU検定、クラスカル・ウォリス検定(H検定)、ヨンクヒール・タプストラ検定及びウィルコクソン検定などの当該技術分野で知られている任意の統計的検定方法に従って決定される、統計的に有意な数の患者(又は被験体)において標的疾患症状を軽減するものとする。
【0114】
「アミノ酸の保存的修飾」又は「アミノ酸の保存的置換」とは、タンパク質又はポリペプチド中のアミノ酸を、同様の特性(例えば、電荷、側鎖のサイズ、疎水性/親水性、主鎖の構造及び剛性等)を有する他のアミノ酸で置換することで、タンパク質又はポリペプチドの生物活性又は他の必要な特性(例えば、抗原親和性及び/若しくは特異性)を変えることなく頻繁な変更を可能にすることを指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換が生物活性を実質的に変化させないことを知っている(例えば、Watson et al.,(1987)Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,Page 224,(4th edition)を参照)。さらに、類似の構造又は機能を有するアミノ酸の置換は、生物活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換は、以下の表「アミノ酸の例示的な保存的置換」に記載されている。
【表4】
【0115】
「有効量」、「有効用量」は、1つ又は複数の有益な若しくは所望の治療結果を得るために必要な薬剤、化合物又は医薬組成物の量を指す。予防的用途の場合、有益な又は所望の結果には、リスクの排除若しくは低減、重症度の低減又は疾患の生化学的、組織学的及び/若しくは行動学的症状、それらの合併症並びに疾患の発生過程で現れる中間的な病理学的表現型を含む疾患の発症の遅延が挙げられる。治療用途の場合、有益な又は所望の結果には、例えば、本開示の様々な標的抗原関連障害の発生率を低減させる、又は障害の1つ若しくは複数の症状を改善する、障害の治療に必要な他の薬剤の用量を低減させる、別の薬剤の治療効果を増強させる、及び/又は患者(若しくは被験体)における本開示の標的抗原関連障害の進行を遅らせる臨床結果が含まれる。
【0116】
「外因性」とは、状況に応じて生物、細胞又は人体の外部で生成される物質を指す。
【0117】
「内因性」とは、状況に応じて細胞、生物又は人間の内部で生成される物質を指す。
【0118】
「単離された」とは、精製された状態を意味し、この場合、指定の分子が他の生体分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物又は他の物質、例えば細胞残屑及び増殖培地を実質的に含まないことを意味する。一般に、「単離された」という用語は、本明細書に記載されている化合物の実験的又は治療的使用を著しく妨げる量で存在しない限り、これらの物質が完全に存在しないこと、又は水、緩衝剤若しくは塩が存在しないことを意味するものではない。
【0119】
「任意選択の」又は「任意選択で」とは、用語の後に続く事象又は環境が発生する可能性はあるが、必ずしも発生する必要はないことを意味し、本記述には、事象又は環境が発生する場合又は発生しない場合が含まれる。
【0120】
「医薬組成物」は、本開示に記載されている1つ又は複数の化合物、又はその生理学的/薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、並びにその他の化学組成物、例えば生理学的/薬学的に許容される担体及び賦形剤を含む混合物を意味する。医薬組成物の目的は、生物への投与を促進することで、有効成分の吸収を容易にし、それによって生物活性を発揮することである。
【0121】
「薬学的に許容される担体」という用語は、抗体又は抗原結合フラグメントの送達用製剤に使用するのに適した任意の不活性物質を指す。担体は、付着防止剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、充填剤又は希釈剤、防腐剤(酸化防止剤、抗菌剤若しくは抗真菌剤等)、甘味料、吸収遅延剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤等であり得る。適切な薬学的に許容される担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロパンジオール、ポリエチレングリコール等)、デキストロース、植物油(例えばオリーブオイル)、生理食塩水、緩衝剤、緩衝生理食塩水及び等張剤、例えばサッカライド、ポリオール、ソルビトール及び塩化ナトリウムが挙げられる。
【0122】
さらに、本開示の別の態様は、本開示のモノクローナル抗体若しくは抗体フラグメント、又は融合タンパク質、又は二機能性融合タンパク質(標的抗原を特異的に認識し結合する)を有効成分として用いる、標的抗原の免疫検出又は判定方法、標的抗原の免疫検出又は判定試薬、標的抗原を発現する細胞の免疫検出又は判定方法及び標的抗原陽性細胞に関連する疾患を診断するための診断薬に関するものである。
【0123】
「がん」、「がん性」又は「悪性腫瘍」という用語は、一般的に無秩序な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態を指す又は説明するものであり、本開示では交換可能に使用される。がん又は悪性腫瘍の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ系悪性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。当該がんのより具体的な例には、以下が含まれる:扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、消化器(管)がん、腎臓がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形性膠芽腫、胃がん、骨がん、ユーイング肉腫、子宮頸がん、脳腫瘍、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸がん、肝細胞がん(HCC)、明細胞腎細胞がん(RCC)、頭頸部がん、咽頭喉頭がん、肝胆道がん、中枢神経系がん、食道がん、悪性胸膜中皮腫、全身性軽鎖アミロイドーシス、リンパ形質細胞性リンパ腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成腫瘍、神経内分泌腫瘍、メルケル細胞腫、精巣がん及び皮膚がん。
【0124】
「炎症性疾患」は、過剰な若しくは制御不能な炎症反応により、過剰な炎症症状、宿主組織の損傷又は組織機能の喪失が生じる疾患、障害又は症候群を指す。「炎症性疾患」は、白血球又は好中球の走化性プールによって媒介される病理学的状態も指す。
【0125】
「炎症」は、組織の損傷又は破壊によって引き起こされる局所的な防御反応を指し、有害物質及び損傷した組織を破壊、弱体化又は排除(分離)するために利用される。炎症は、白血球又は好中球の走化性プールと大きく関係している。炎症は、病原体及びウイルスのほか、外傷又は心筋梗塞後の再灌流若しくは脳梗塞などの非感染性の原因、外来性抗原に対する免疫反応及び自己免疫反応などによっても引き起こされる。
【0126】
本開示のモノクローナル抗体又は抗体フラグメントを用いて、標的抗原を発現している細胞を検出又は測定することにより、標的抗原陽性細胞に関連する前述の疾患を診断することができる。
【0127】
ポリペプチドを発現している細胞を検出するために、既知の免疫検出法を用いることができ、好ましくは、免疫沈降法、蛍光細胞染色法、免疫組織化学的染色法などを用いる。さらに、FMAT8100HTSシステム(Applied Biosystem社製)を利用した蛍光抗体染色法を用いることもできる。
【0128】
本開示において、標的抗原の検出又は測定に用いるin vivoサンプルは、標的抗原を発現する細胞を含む可能性のあるものであれば特に限定されず、例えば、組織球、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液又は培養液などが挙げられる。
【0129】
必要な診断方法によれば、本開示のモノクローナル抗体又はその抗体フラグメントを含む診断薬は、抗原抗体反応を行うための試薬又は反応を検出するための試薬をさらに含み得る。抗原抗体反応を行うための試薬としては、緩衝剤、塩等が挙げられる。検出に用いる試薬としては、免疫検出法又は測定法に一般的に用いられる試薬、例えば、モノクローナル抗体、その抗体フラグメント又はそのコンジュゲートを認識する標識された二次抗体及びその標識に対応する基質等が挙げられる。
【0130】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、上記の明細書に示されている。本明細書に記載されたものと類似又は同一の任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲を通じて明らかになるであろう。本明細書及び特許請求の範囲において、文脈上明確に示されていない限り、単数形は複数形の場合を含む。別段の定義がない限り、本明細書で使用されている全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解される一般的な意味を有する。本明細書中で引用されている全ての特許及び刊行物は、参照により組み込まれる。以下の実施例は、本発明で開示される好ましい実施形態をより完全に説明するために提供される。これらの実施例は、本開示の範囲をいかなる方法でも限定するものと解釈されるべきではなく、本開示の範囲は、特許請求の範囲によって定義される。
【実施例
【0131】
(実施例1.CD47抗原及び検出用タンパク質の調製)
UniProt白血球表面抗原CD47(ヒトCD47タンパク質、Uniprot番号:Q08722)をCD47のテンプレートとして使用した。本開示に関わる抗原と検出用タンパク質のアミノ酸配列を設計し、あるいはCD47タンパク質をベースに様々なタグ(hisタグ又はFc等)を融合させた。
1.Hisタグ付きCD47タンパク質の細胞外ドメイン(CD47-ECD-His):(配列番号3)
QLLFNKTKSVEFTFCNDTVVIPCFVTNMEAQNTTEVYVKWKFKGRDIYTFDGALNKSTVPTDFSSAKIEVSQLLKGDASLKMDKSDAVSHTGNYTCEVTELTREGETIIELKYRVVSWFSPNEHHHHHH
注:下線部は6×hisタグである。
2.検出試薬としてのCD47細胞外ドメインとヒトIgG1Fcとの融合タンパク質(CD47-ECD-Fc):(配列番号4)
QLLFNKTKSVEFTFCNDTVVIPCFVTNMEAQNTTEVYVKWKFKGRDIYTFDGALNKSTVPTDFSSAKIEVSQLLKGDASLKMDKSDAVSHTGNYTCEVTELTREGETIIELKYRVVSWFSPNEEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
注:下線部はヒトIgG1-Fc部位である。
3.結合及び遮断検出試薬としてのヒトSIRPαとヒトIgG1Fcとの融合タンパク質(SIRPα-Fc):(配列番号5)
EEELQIIQPDKSVSVAAGESAILHCTITSLFPVGPIQWFRGAGPARVLIYNQRQGPFPRVTTVSETTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCIKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
注:下線部はヒトIgG1-Fc部位である。
4.Hisタグ付きSIRPαタンパク質の細胞外ドメイン(SIRPα-His)
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSHHHHHH(配列番号132)。
【0132】
(実施例2.CD47及びSIRPα関連組換えタンパク質の精製)
1.Hisタグ付き組換えタンパク質の精製工程:
細胞発現上清を高速遠心して不純物を除去し、緩衝液をPBSに置き換え、イミダゾールを最終濃度が5mMになるように添加した。ニッケルカラムを5mMイミダゾールを含むPBS溶液で平衡化し、カラム容量を2~5回洗浄した。置換後の上清サンプルをIMACカラムに充填した。A280の読み取り値がベースラインに下がるまで、5mMイミダゾールを含むPBS溶液でカラムを洗浄した。その後、クロマトグラフィーカラムをPBS+10mMイミダゾールで洗浄し、非特異的に結合したタンパク質不純物を除去して、流出液を回収した。続いて、300mMイミダゾールを含むPBS溶液で標的タンパク質を溶出し、溶出ピークを回収した。回収した溶出液を濃縮し、移動相をPBSとしたゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE社製、28-9893-35)でさらに精製した。多量体ピークを除去し、溶出ピークを回収した。得られたタンパク質を電気泳動、ペプチドマップ及びLC-MSで同定した後、分注して使用した。
【0133】
得られたHisタグ付きCD47-ECD-His(配列番号3)を、本開示の抗体の免疫原又は検出試薬として使用した。CD47-ECD-Hisは、in vitroでの化学的手法によりKLHタンパク質とカップリング反応させた後、マウスの免疫を刺激する免疫原として使用することもできる。
【0134】
2.CD47-ECD-Fc及びSIRPα-Fc融合タンパク質の精製工程:
細胞発現上清を高速遠心して不純物を除去した後、上清をMabSelect Sure(GE、17-5438-01)アフィニティクロマトグラフィーにかけた。MabSelect Sureカラムは、最初に0.1MのNaOHで再生し、純水で洗浄した後、PBSで平衡化した。上清を結合させた後、A280の読み取り値がベースラインに下がるまでPBSでカラムを洗浄した。標的タンパク質を0.1M酢酸緩衝液(pH3.5)で溶出し、1Mトリス-HClで中和した。溶出したサンプルを適切に濃縮した後、PBS平衡化ゲルクロマトグラフィーSuperdex200(GE社製、28-9893-35)でさらに精製した。標的タンパク質を含む収集チューブをプールし、適切な濃度に濃縮した。
【0135】
この方法を使用して、CD47-ECD-Fc(配列番号4)及びSIRPα-Fc(配列番号5)融合タンパク質を精製した。この方法を使用して、本開示に関わるヒト化抗体タンパク質を精製することも可能である。
【0136】
(実施例3.抗PD-L1ヒト化抗体(IgG4-S228P形態)の構築及び発現)
抗PD-L1抗体の軽鎖及び重鎖可変領域は、WO2017084495A1の抗PD-L1抗体から改変されており、その配列及び関連する特性は、出願番号PCT/CN2019/070982のPCT出願に記録されており、その内容全体が本出願に組み込まれている。
抗PD-L1抗体9-2 H5L11:
9-2 H5重鎖可変領域(配列番号6)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSISDGSAYWSWIRQHPGKGLEYIGFISRAGSTYNTPSLKGRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARSGGWLAPFDYWGRGTLVTVSS
9-2 L11軽鎖可変領域(配列番号7)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFYHSNQKHSLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYGYPYTFGGGTKVEIK
抗PD-L1抗体 24D5 H12L61:
24D5 H12重鎖可変領域(配列番号8)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRITPSSGFAMYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSS
24D5 L61軽鎖可変領域(配列番号9)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIK
注:上記の抗体9-2及び24D5に由来する軽鎖及び重鎖可変領域の下線が引かれたCDRは、Kabatのナンバリング基準で定義されたCDRである。
【表5】
【0137】
プライマーを設定した;各ヒト化抗体VH/VK遺伝子フラグメントをPCRで構築した後、発現ベクターpHr(シグナルペプチド及び定常領域遺伝子(CH1-FC/CL)フラグメントを含む)との相同組換えを行い、全長抗体を発現するベクターVH-CH1-FC-pHr/VK-CL-pHrを構築した。
【0138】
IgG4-S228P重鎖定常領域の配列は以下の通りであった:(配列番号10)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0139】
IgG1重鎖定常領域の配列は以下の通りであった:(配列番号11)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0140】
抗体の軽鎖(カッパ鎖)定常領域の配列は以下の通りであった:(配列番号12)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0141】
構築された完全長抗体は以下の通りであった:
抗PD-L1 IgG4抗体 h1830
h1830重鎖(配列番号13)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSISDGSAYWSWIRQHPGKGLEYIGFISRAGSTYNTPSLKGRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARSGGWLAPFDYWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
h1830軽鎖(配列番号14)
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFYHSNQKHSLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYGYPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
抗PD-L1 IgG4抗体 h1830G1
h1830G1重鎖:(配列番号15)
QVQLQESGPGLVKPSQTLSLTCTVSGGSISDGSAYWSWIRQHPGKGLEYIGFISRAGSTYNTPSLKGRVTISRDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARSGGWLAPFDYWGRGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
h1830G1軽鎖(h1830軽鎖のものと同じ、配列番号14):
DIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSQSLFYHSNQKHSLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYGYPYTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
PD-L1抗体h1831:
h1831重鎖(配列番号16)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRITPSSGFAMYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
h1831軽鎖(配列番号17)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
抗PD-L1 IgG1抗体 h1831G1
h1830G1重鎖:(配列番号18)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRITPSSGFAMYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
h1831G1軽鎖(h1831軽鎖のものと同じ、配列番号17)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASNLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0142】
(実施例4.SIRPγ変異体のスクリーニング及び調製)
(4.1 SIRPγの親和性成熟ファージライブラリの構築及びライブラリのスクリーニング)
高親和性CD47受容体を得るために、CD47受容体SIRPγのD1ドメインに対して、ファージディスプレイプラットフォーム技術により親和性成熟を行った。野生型SIRPγをベースに、CD47結合ドメインを指向する親和性成熟ファージライブラリを設計及び調製し、新たなSIRPγ変異体についてのスクリーニングを行った。野生型SIRPγのD1ドメインの特定の配列は以下の通りであった。
野生型SIRPγペプチドのDNAコーディング配列:(配列番号19)
GAGGAGGAGCTACAGATGATTCAGCCTGAGAAGCTCCTGTTGGTCACAGTTGGAAAGACAGCCACTCTGCACTGCACTGTGACCTCCCTGCTTCCCGTGGGACCCGTCCTGTGGTTCAGAGGAGTTGGACCAGGCCGGGAATTAATCTACAATCAAAAAGAAGGCCACTTCCCCAGGGTAACAACAGTTTCAGACCTCACAAAGAGAAACAACATGGACTTTTCCATCCGCATCAGTAGCATCACCCCAGCAGATGTCGGCACATACTACTGTGTGAAGTTTCGAAAAGGGAGCCCTGAGAACGTGGAGTTTAAGTCTGGACCAGGCACTGAGATGGCTTTGGGTGCCAAACCCTCT
野生型SIRPγペプチド:(配列番号20)
EEELQMIQPEKLLLVTVGKTATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYNQKEGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPENVEFKSGPGTEMALGAKPS。
【0143】
ファージライブラリの構築:縮重プライマーを設計し、設計した変異アミノ酸をPCRによりSIRPγファージ変異体ライブラリに導入し、各ライブラリのサイズを約10とした。
【0144】
SIRPγファージ変異体ライブラリのスクリーニング:パッケージ化されたSIRPγファージ変異体ライブラリ(1×1012 -1×1013)と100μlのストレプトアビジン・マイクロビーズ(Miltenyi Biotec、カリフォルニア州オーバーン)を、2%スキムミルクを含む1mlのリン酸緩衝生理食塩水(MPBSと略す)に加え、室温で1時間インキュベートした後、磁気スタンドに置き、上清を回収した。上清に10μg/mlのビオチン化ヒトCD47-ECD-hisタンパク質(Sino Biological社から購入)を加え、室温で1時間インキュベートした。ストレプトアビジンでコーティングした磁気ビーズ100μl(1mlのMPBSでプレインキュベートしたもの)を加え、室温で1時間インキュベートした。サンプルを磁気スタンドシステムに載せて選別し、上清を除去した。1mlのPBST(0.1%Tween-20を含むリン酸緩衝液)を加え、数回ひっくり返した。上清を完全に除去した後、新鮮な洗浄溶液を加え、この工程を11回繰り返して未結合の変異体を除去し、0.5mlの溶出溶液(450μlのPBSに50μlの10mg/mlトリプシンストック溶液を加えたもの)を加えた。サンプルを室温で15分間振とうした後、磁気スタンドに置き、上清を新しいEPチューブに移した。TG1を2YT培地に播種し、細菌密度がOD600=0.4になるまで増殖させた。1.75mlのTG1(OD600=0.4)を各チューブに加え、250μlの溶出ファージを加え、37℃の水浴で30分間インキュベートし、グラジエント希釈したプレートに広げて力価を測定した。残りのTG1溶液を遠心分離してプレートに広げ、37℃で一晩インキュベートした。
【0145】
SIRPγファージ変異体ライブラリには、ビオチン化したヒトCD47-ECD-hisタンパク質抗原を使用し、MACSスクリーニング(ストレプトアビジン磁気ビーズ、Invitrogen社)の第2~3ラウンドの後、野生型SIRPγよりも高い親和性を持つファージ変異体モノクローンを最終的に得て、配列決定検証にかけた。配列決定したクローンを比較及び分析した。冗長配列を除去した後、哺乳動物細胞において発現させるために非冗長配列をPDL1-CD47二機能性融合タンパク質に変換した。
【0146】
(4.2 SIRPγの親和性成熟酵母ライブラリの構築及びライブラリのスクリーニング)
より親和性の高いCD47受容体を得るために、CD47受容体SIRPγ-D1ドメインの親和性成熟化を酵母ディスプレイプラットフォーム技術によって実施した。SIRPγ-D1をベースに、CD47結合ドメインを指向した親和性成熟酵母ライブラリを設計及び調製し、新たなSIRPγ変異体についてのスクリーニングを行った。
【0147】
酵母ライブラリの構築:縮重プライマーを設計し、設計した変異アミノ酸をPCRによりSIRPγ変異体ライブラリに導入し、各ライブラリのサイズを約10とした。構築した酵母ライブラリの多様性を、第二世代配列決定法により確認した。
【0148】
スクリーニングの第1ラウンドでは、SIRPγ変異体ライブラリからの約5×1010個の細胞と、10μg/mlのビオチン化ヒトCD47-Fcタンパク質とを、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むリン酸緩衝液(PBSAと表記)50ml中で、室温で1時間インキュベートした。その後、混合液を0.1%PBSAで3回洗浄し、未結合の抗体フラグメントを除去した。次に、ビオチン化ヒトCD47-Fcタンパク質と結合したSIRPγ変異体ライブラリに、ストレプトアビジンビーズ(Milenyi Biotec、カリフォルニア州オーバーン)を100μl加え、AutoMACSシステムに載せて選別を行った。CD47-Fcに対して高い親和性を持つライブラリ細胞を回収した後、SDCAA培地(20gのデキストロース、6.7gのアミノ酸不含Difco酵母窒素源、5gのバクトカゼインアミノ酸、5.4gのNaHPO及び8.56gのNaHPO・HOを1Lの蒸留水に溶解したもの)において、30℃、250rpmで24時間増殖させた。その後、培養を、SGCAA培地(20gのガラクトース、6.7gのアミノ酸不含Difco酵母窒素源、5gのバクトカゼインアミノ酸、5.4gのNaHPO及び8.56gのNaHPO・HOを1Lの蒸留水に溶解したもの)に、20℃、250rpmで18時間誘導した。得られた濃縮ライブラリを、ビオチン化組換えヒトCD47-Fcとの結合についてスクリーニングの第2ラウンドにかけた。スクリーニングの第2及び/又は第3ラウンド用の抗体ライブラリの多様性を十分に確保するために、入力細胞数として前ラウンドの100倍のライブラリサイズを用いた。
【0149】
スクリーニングの第3及び第4ラウンドでは、前ラウンドのライブラリ細胞を、0.1%PBSA中の1μg/mlのビオチン化ヒトCD47-Fcタンパク質及び10μg/mlのマウス抗cMyc抗体(9E10、sigma)とともに、室温で1時間インキュベートした。この混合液を0.1%PBSAで3回洗浄し、未結合の抗体フラグメントを除去した。ヤギ抗マウスAlexa488(A-11001、life technologies)及びStrepavidin-PE (S-866、Life technologies)を加え、4℃で1時間インキュベートした。この混合液を0.1%PBSAで3回洗浄し、未結合の抗体フラグメントを除去した。最後に、親和性の高いSIRPγ変異体をFACSスクリーニング(BD FACSAriaTM FUSION)でスクリーニングした。
【0150】
ビオチン化ヒトCD47-Fc抗原をSIRPγ変異体ライブラリに使用した:MACSスクリーニング(ストレプトアビジン磁気ビーズ、Invitrogen)の第2~3ラウンド及びFACSスクリーニング(BD FACSAriaTM FUSION)の第2~3ラウンドを実施した。その後、約400個の酵母モノクローンを培養及び発現誘導用に選択した。酵母モノクローンのヒトCD47-Fc抗原への結合はFACS(BD FACSCanto II)を用いて検出し、野生型SIRPγよりも高い親和性を持つ酵母モノクローンを選択し、配列決定検証にかけた。配列決定したクローンを比較及び分析した。冗長配列を除去した後、哺乳動物細胞において発現させるために非冗長配列をPDL1-CD47二機能性融合タンパク質に変換した。
【0151】
スクリーニング後、最終的に得られたSIRPγペプチドバリアントは以下の通りであった:
S58(配列番号21)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S79(配列番号22)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLWPVGPVLWFRGVGPGRELIYRTGTGRFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEVALGAKPS
S15(配列番号23)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRENRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S12(配列番号24)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S19(配列番号25)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S85(配列番号26)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S37(配列番号27)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S38(配列番号28)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYFSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S22(配列番号29)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYISGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S29(配列番号30)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYLSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S34(配列番号31)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S41(配列番号32)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S42(配列番号33)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNIDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S43(配列番号34)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S44(配列番号35)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNVDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S45(配列番号36)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRDNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S46(配列番号37)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S47(配列番号38)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEVALGAKPS
S48(配列番号39)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS
S49(配列番号40)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS。
【0152】
(実施例5.PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の構築及び発現)
得られた抗PD-L1抗体をSIRPγに連結して融合タンパク質を形成し、PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質を従来の方法による発現及び精製によって得た。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【表6-12】
【表6-13】
【表6-14】
【表6-15】
【表6-16】
【表6-17】
【表6-18】
【表6-19】
【表6-20】
【0153】
陽性又は陰性対照として以下のタンパク質も従来の方法により調製し、精製した。
抗CD47抗体hu5F9(配列はUS09017675Bより)
Hu5F9重鎖(配列番号83)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYNMHWVRQAPGQRLEWMGTIYPGNDDTSYNQKFKDRVTITADTSASTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGGYRAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
Hu5F9軽鎖(配列番号84)
DIVMTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSIVYSNGNTYLGWYLQKPGQSPQLLIYKVSNRFSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCFQGSHVPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
SIRPα-CV(Engineered SIRPα Variants as Immunotherapeutic Adjuvants to Anticancer Antibodies,Science.2013 Jul 5;341(6141):88-91を参照して合成、配列番号85)
EEELQIIQPDKSVLVAAGETATLRCTITSLFPVGPIQWFRGAGPGRVLIYNQRQGPFPRVTTVSDTTKRNNMDFSIRIGNITPADAGTYYCIKFRKGSPDDVEFKSGAGTELSVRAKPSEPKSSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
TTI-621:(WO2014094122A1からの配列、配列番号133)
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
S58-Fc(配列番号86)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
抗CD47抗体Hu167-IgG4 AA(特許出願WO2018095428A1に開示されている方法に従って調製)
Hu167-IgG4 AA重鎖(配列番号87)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGNIDPSDSETHYNQKFKDRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARWGYLGRSAMDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
Hu167-IgG4 AA軽鎖(配列番号88)
DVQITQSPSSLSASVGDRVTITCRTSKSISKFLAWYQQKPGKAPKLLIYSGSTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHNEYPWTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
S37-Fc(配列番号110)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK。
【0154】
(抗体h1831K)
h1831抗体にCDR変異修飾を施し、36個の変異体を得て、最終的にN53K(Kabatのナンバリング基準に従って決定した位置)の変異体h1831Kを選択した。h1831の軽鎖LCDR2をAASLESからAASLESに変異させて、新規抗体h1831Kを得た。
h1831軽鎖:(配列番号111)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASKLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
(LCDR1はRASESVSIHGTHLMH(配列番号106)、LCDR2はAASKLES(配列番号112)、LCDR3はQQSFEDPLT(配列番号108)であった。)
h1831K軽鎖可変領域(配列番号113)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASKLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIK;
h1831K重鎖(h1831重鎖配列のものと同じ、配列番号16)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRITPSSGFAMYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG;
>h1831K-19-S37重鎖(h1831-19-S37重鎖配列のものと同じ、配列番号109)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGRITPSSGFAMYNEKFKNRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARGGSSYDYFDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGGGGGSGGGGSGGGGSGGGGEEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPS;
>h1831K-19-S37軽鎖(h1831K軽鎖配列のものと同じ、配列番号111)
DIVLTQSPASLAVSPGQRATITCRASESVSIHGTHLMHWYQQKPGQPPKLLIYAASKLESGVPARFSGSGSGTDFTLTINPVEAEDTANYYCQQSFEDPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
S79-Fc(配列番号114)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLWPVGPVLWFRGVGPGRELIYRTGTGRFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEVALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S15-Fc(配列番号115)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRENRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S12-Fc(配列番号116)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S19-Fc(配列番号117)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S85-Fc(配列番号118)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S38-Fc(配列番号119)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYFSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S22-Fc(配列番号120)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYISGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S29-Fc(配列番号121)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYLSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S34-Fc(配列番号122)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S41-Fc(配列番号123)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYVSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S42-Fc(配列番号124)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNIDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S43-Fc(配列番号125)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNRDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S44-Fc(配列番号126)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNVDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S45-Fc(配列番号127)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRDNMDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S46-Fc(配列番号128)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S47-Fc(配列番号129)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYMSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEVALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S48-Fc(配列番号130)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRNNKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK;
S49-Fc(配列番号131)
EEELQMIQPEKLLLVTVGETATLHCTVTSLLPVGPVLWFRGVGPGRELIYRSGRGHFPRVTTVSDLTKRENKDFSIRISSITPADVGTYYCVKFRKGSPEDVEFKSGPGTEMALGAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK。
【0155】
陰性対照としてのIgG4対照は、PD-L1にもCD47にも関連しない標的に対する抗体であった。IgG4-Fc及びIgG1-Fcは、それぞれFcセグメントのみを含み、抗原特異的な可変領域セグメントを含まない。
【0156】
(試験例)
(試験例1.CD47-hisタンパク質に結合するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のELISA実験)
PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の結合は、ELISAプレートに固定化されたヒトCD47又はcyno CD47に結合した二機能性融合タンパク質の量を測定することにより検出した。CD47-ECD-His(表7を参照)をPBSで1μg/mlに希釈し、96ウェルのELISAプレートにコーティングした。プレートの洗浄及びブロッキングの後、様々な濃度の二機能性融合タンパク質サンプルを加え、プレートを再度洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ-ヤギ抗ヒト(H+L)抗体( Jackson、カタログ番号109-035-088)を加えた。再度プレートを洗浄し、発色用のテトラメチルベンジジン溶液を加えた。最後に停止液を加え、マイクロプレートリーダーでOD450を測定し、EC50値を算出した。その結果を表8-1及び表8-2に示す。
【0157】
【表7】
【0158】
【表8-1】
【表8-2】
【0159】
その結果、各PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が遊離ヒトCD47タンパク質と非常に強い親和性を持ち、cyno CD47とも非常に強い交差親和性を持つことが示された。
【0160】
(試験例2.PD-L1-hisタンパク質に結合するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のELISA実験)
PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の結合は、ELISAプレートに固定化された異なる種のPD-L1と結合した抗体の量を測定することにより検出した。異なる生殖細胞系列のPD-L1-his抗原(表9を参照)をPBSで1μg/mlに希釈し、96ウェルELISAプレート(Costar社、カタログ番号3590)にコーティングした。プレートの洗浄及びブロッキングの後、様々な濃度のPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質サンプルを加え、プレートを再度洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ-ヤギ抗ヒト(H+L)抗体(Jackson、カタログ番号109-035-088)を加えた。再度プレートを洗浄し、発色用のテトラメチルベンジジン溶液を加えた。最後に停止液を加え、マイクロプレートリーダーでOD450を測定し、EC50値を算出した。その結果を表10に示す。
【表9】

【表10】
【0161】
その結果、各PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質が遊離ヒトPD-L1タンパク質と非常に強い親和性を持ち、cyno PD-L1とも非常に強い交差親和性を持つことが示された。h1830抗体を含むPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質はマウスPD-L1とも非常に強い交差親和性を持つ。
【0162】
(試験例3.PD-L1/PD1の結合及びPD-L1/B7.1の結合に対するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の遮断効果)
PD-L1-Fc(自社調製)をPBSで1μg/mlに希釈し、96ウェルプレートに100μl/ウェルで加え、4℃で16時間~20時間置いた。PBS緩衝液を96ウェルプレートから除去し、PBST(0.05%tween20を含むpH7.4のPBS)緩衝液で1回洗浄した。PBST/1%ミルクを120μl/ウェルで加え、室温で1時間インキュベートしてブロッキングした。ブロッキング液を除去し、プレートをPBST緩衝液で1回洗浄した。サンプル希釈液(5%BSA、0.05%Tween20を含むpH7.4のPBS)で適切な濃度に希釈した試験対象のPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質90μlを加え、4℃で1時間プレインキュベートした。10倍濃度のビオチン標識PD-1(Beijing Sino Biological社、10μg/ml)又はB7-1(Beijing Sino Biological社、10μg/ml)を10μl/ウェルの容量で加えた。シェーカーで振とうして混合した後、プレートを37℃で1時間インキュベートした。反応系を取り出し、プレートをPBSTで6回洗浄した。PBST緩衝液で希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼポリマー1:400を100μl/ウェル加え、室温で50分間振とうしながらインキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄した。TMBを100μl/ウェル加え、室温で5~10分間インキュベートした。1M HSOを100μl/ウェル加えて反応を停止させた。NOVOStarを用いてマイクロプレートリーダーでOD450を測定し、IC50値を算出した。その結果を表11に示す。
【表11】
【0163】
試験の結果、全ての二機能性融合タンパク質がPD-L1/PD-1及びPD-L1/B7.1経路も効果的に遮断し得ることが示された。
【0164】
(試験例4.ヒト赤血球に結合するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の実験)
健康なヒトの新鮮血を等量のPBSと混合し、300gで5分間遠心分離して細胞クラスターを得た。PBSで3~5回洗浄した後、赤血球を得た。細胞をFACS緩衝液(PBS+5%BSA)に再懸濁して細胞密度を2×10個/mlに調整し、96ウェル丸底プレート(3795#、corning)に100μl/ウェルで播種した。その後、様々な濃度の抗体と二機能性融合タンパク質を加え、4℃で1時間インキュベートした。FACS緩衝液(PBS+2%FBS)で2回洗浄した後、二次抗体(Alexa 488ヤギ抗ヒトIgG抗体(Invitrogen、カタログ番号A11013))を加え、氷上で暗所にて30分間インキュベートした。最後に、FACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を再懸濁した。プレートをFACSCanto IIで読み取った。
【0165】
FACS試験の結果、対照抗体hu5F9及びHu167 IgG4AAがヒト赤血球表面の天然CD47と強い結合能力を持つことが示された。関与する二機能性融合タンパク質のうち、ヒト赤血球表面のCD47と結合するS79、S34及びS49を含む二機能性融合タンパク質を除いて、他の二機能性融合タンパク質はヒト赤血球表面の天然CD47との結合能力を持たないことから、上記二機能性融合タンパク質の安全面での利点が示唆された。その結果を図2A図2B及び図2Cに示した(図2A図2B及び図2Cで行った実験には、異なるドナー細胞を用いた3バッチの実験が含まれる)。
【0166】
(試験例5.腫瘍細胞に結合するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の実験)
Raji細胞をRPMI培地(Hyclone、カタログ番号SH30809.01B)(10%ウシ胎児血清を含む)で培養した。1×10細胞/mlのRaji細胞を5%BSAでブロッキングし、二機能性融合タンパク質サンプルを10μg/mlの濃度になるように添加した。2回洗浄した後、Alexa Fluor 488-ヤギ抗ヒト(H+L)抗体(Invitrogen、カタログ番号A11013)を加えた。2回洗浄した後、フローサイトメーターで蛍光シグナル値を読み取った。
【0167】
FACS試験の結果、関与するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質がRaji細胞の表面にある天然CD47と非常に強い結合能力を持ち、これは対照抗体Hu5F9の結合能力と同等であることが示された。その結果を図3に示した。
【0168】
(試験例6.PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のin vitro細胞媒介性細胞食作用(ADCP)実験)
ヒトの新鮮血からPBMCを単離した後、ヒトCD14マイクロビーズ(130-050-201#、Miltenyi Biotec)を用いてCD14+単球を選別した。これらのCD14+単球を、マクロファージ分化培地(1640+10%FBS+50ng/mlのM-CSF)で9日間培養することにより、マクロファージに分化させた。これらの単球由来のマクロファージ(MDM)は接着性を持ち、触手を持つようになった。実験当日、このマクロファージをトリプシンで5分間消化し、スクレーパーで軽く削り取り、96ウェル丸底プレート(3795#)に広げた。ヒトRBC細胞(赤血球)を0.5μMのCFSE(BD、カタログ番号565082#)で、37℃の水浴中で13分間標識した。PBSで2回洗浄した後、マクロファージ1個につき5個のRBC細胞の割合でサンプルをマクロファージに添加し、PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質を様々な濃度で添加した。標的細胞を2.5時間かけて食作用に供した。食作用後、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、ヒトFcブロッカー(564219#、BD)を一定の割合で添加し、室温で10分間置いて非特異的結合を除いた。その後、APC標識CD14抗体(17-0149-42#、Ebioscience)を加えた。細胞を氷上で30分間インキュベートした。最後に2回の洗浄を行った後、フローサイトメトリーによる分析を行った。食作用は、APC+陽性生細胞ゲートでCFSE+陽性細胞を選択し、CSFE+陽性細胞の割合を評価することで測定した(図4を参照)。
【0169】
(試験例7.PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質のin vitro細胞媒介性細胞食作用(ADCP)実験)
ヒトの新鮮血からPBMCを単離した後、ヒトCD14マイクロビーズ(130-050-201#、Miltenyi Biotec)を用いてCD14+単球を選別した。これらのCD14+単球を、マクロファージ分化培地(1640+10%FBS+50ng/mlのM-CSF)で9日間培養することにより、マクロファージに分化させた。これらの単球由来のマクロファージ(MDM)は接着性を持ち、触手を持つようになった。実験当日、このマクロファージをトリプシンで5分間消化し、スクレーパーで軽く削り取り、96ウェル丸底プレート(3795#)に広げた。Molp-8細胞(Nanjing CoBioer)を0.1μMのCFSEで、37℃の水浴中で13分間標識した。PBSで2回洗浄した後、マクロファージ1個につき5個のMolp-8腫瘍細胞の割合でサンプルをマクロファージに添加し、PD-L1-CD47抗体を様々な濃度で添加した。標的細胞を2.5時間かけて食作用に供した。食作用後、細胞をPBSで2回洗浄した。その後、ヒトFcブロッカーを一定の割合で添加し、室温で10分間置いて非特異的結合を除いた。その後、APC標識CD14抗体を加えた。細胞を氷上で30分間インキュベートした。最後に2回の洗浄を行った後、フローサイトメトリーによる分析を行った。食作用は、APC+陽性生細胞ゲートで選択し、CSFE+陽性細胞の割合を評価することで測定した(図5A及び図5Bを参照)。
【0170】
試験例6及び7の結果は、図4及び図5A図5Bに示されており、添加された二機能性融合タンパク質が腫瘍細胞に対する食作用を効果的に促進し得ることが示された。しかしながら、二機能性融合タンパク質は、赤血球に対する食作用を持たず、本開示の二機能性融合タンパク質抗体の安全面での潜在的な利点を示唆している。一方、対照抗体hu5F9は、赤血球を効果的に食作用し得る。
【0171】
(試験例8.PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の赤血球凝集実験)
健康なヒトの新鮮血をPBS(B320#、Shanghai BasalMedia Technologies社)で100倍希釈した。希釈した全血を96ウェル丸底プレート(3795#、corning)に30μl/ウェルでプレーティングした。その後、様々な濃度勾配の抗体又は二機能性融合タンパク質を等量ずつ加えた。混合後、プレートを37℃で4~6時間置いた。赤血球の沈降は、ハイコンテント顕微鏡を用いて観察した。血液が凝固していない細胞は明瞭な赤い斑点となり、血液が凝固した細胞は拡散して見えた。
【0172】
各サンプルは第1カラム(0.5mg/ml)~第11カラム(1:3希釈)に希釈した。第12カラムは抗体を含まないPBSブランクウェルであった。
【0173】
その結果(図6を参照)、同じ条件下で、二機能性融合タンパク質h1830-S37、h1830-S19、h1830-S12、h1830-S15、h1831-19-S58及びh1831-19-S79が試験した様々な濃度下で赤血球凝集を引き起こさないことが示され、本開示の二機能性融合タンパク質の安全面での利点が示唆された。
【0174】
(試験例9.BIAcoreによって検出したPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の親和性実験)
様々な抗原に対する二機能性融合タンパク質の応答シグナルは、Biacore T200装置により、プロテインAバイオセンサーチップ(カタログ番号29127556、GE)を用いてIgGをアフィニティキャプチャし、様々な抗原(hCD47、cyno CD47、hPD-L1、cyno PD-L1及びmPD-L1、ソースは試験例3及び4を参照)をチップの表面に流し、結合・解離曲線を得ることにより、リアルタイムで検出した。各実験サイクルの解離が完了したら、バイオセンサーチップを洗浄し、10mMグリシン-HCl(pH1.5)緩衝液で再生した。実験用緩衝液系は、1×HBS-EP緩衝液(カタログ番号BR-1001-88、GE)であった。実験終了後、GE Biacore T200 Evaluationバージョン3.0ソフトウェアを用いてデータを(1:1)Langmuirモデルに当てはめ、親和性値を求めた。その結果を表12-1及び表12-2に示した。その結果、ヒトCD47に対する全ての修飾SIRPγペプチドバリアントの親和性が、野生型SIRPγペプチドの親和性と比較して劇的に改善されたことが示された。
【表12-1】

【表12-2】
【0175】
(試験例10.PBMC-Tリンパ球活性化実験におけるIFNγの細胞分泌に対するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果)
PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質がヒト初代Tリンパ球の機能に及ぼす影響を調べるために、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を採取及び精製し、in vitroで5日間ツベルクリン(TB)刺激し、サイトカインIFNγの分泌レベルを検出した。実験プロセスを以下に簡単に説明する:
【0176】
PBMCは、Ficoll-Hypaque(17-5442-02、GE)を用いて新鮮血から密度勾配遠心分離(Stem Cell Technologies)により得られ、10%(v/v)FBS(10099-141、Gibco)を添加したRPMI1640(SH30809.01、GE)培地で37℃、5%COで培養した。
【0177】
分離及び精製した新鮮なPBMCをRPMI1640培地で2×10細胞/mlの密度に調整した。20mLの細胞懸濁液に40μlのツベルクリン(97-8800、Synbiotics社)を加え、37℃、5%COのインキュベーターで5日間培養した。5日目に、前述の培養細胞を遠心分離により回収し、新鮮なRPMI1640培地に再懸濁し、1.1×10細胞/mlの密度に調整し、96ウェル細胞培養プレートに1ウェルあたり90μl播種した。同時に、PBSで希釈したグラジエント希釈抗体サンプル(B320、Shanghai BasalMedia Technologies社)を1ウェルあたり10μl添加した。この細胞培養プレートを37℃、5%COのインキュベーターに入れ、3日間培養した。細胞培養プレートを取り出し、遠心分離(4000rpm、10分)して細胞培養上清を回収した。IFN-γレベルは、ELISA法(ヒトIFN-γ 検出キット:EHC102g.96、Neobioscience社)を用いて検出した。具体的な操作は、試薬の説明書を参照した。
【0178】
その結果(図7A図7Eを参照)、試験した分子のうち、全ての二機能性融合タンパク質がIFN-γ分泌を活性化することができ、これは対照抗体HRP00052に匹敵することが示された。
【0179】
(試験例11.マウス結腸がんモデルMC38/H-11-hCD47におけるPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果)
この実験では、B-hCD274/hCD47/hSIRPαマウスを用い、人工的に改変したマウス結腸がんMC38細胞:MC38/H-11-hCD47(ヒトPD-L1及びヒトCD47をトランスフェクトし、マウスCD47及びPDL1をノックアウトしたもの)を接種して担がんマウスモデルを構築し、異なる用量のPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質h1830-S85、SIRPγタンパク質S58-Fc及びPD-L1モノクローナル抗体h1830のマウス結腸がん移植腫瘍の成長に対するin vivo阻害効果を評価した。B-hCD274/hCD47/hSIRPαマウスは、Biocytogen Experimental Animals社から購入したSPFグレード;体重:22.0±3.0g;性別:雌であった。
【0180】
MC38/H-11-hCD47(#5-4)細胞を、1×10細胞/100μl/マウスの接種量でB-hCD274/hCD47/hSIRPαマウスに皮下接種した。担がんモデルを確立した後、腫瘍体積を測定し、体重及び腫瘍サイズが大きすぎる動物と小さすぎる動物を除外した。担がんマウスは、腫瘍体積に応じて5つのグループ(n=7)に無作為に分けた:PBS対照グループ、h1830-S85高用量実験グループ、h1830-S85低用量実験グループ、h1830実験グループ及びS58-Fc実験グループ。グルーピングの日付はD0とした。
1)腫瘍の直径を測定する方法を使用して、腫瘍の成長を観察し、記録した。同時に、動物の体重を観察し、記録した。
2)週に2回、腫瘍の直径及び動物の体重を測定した。
3)投与後17日目に、PBS対照グループの動物の腫瘍が比較的大きくなったため、動物福祉の原則に従ってPBS実験グループの動物を屠殺した;投与後25日目に残りの実験グループの動物を屠殺した。
4)腫瘍体積(TV)の計算式:TV=1/2×a×b(式中、a及びbはそれぞれ測定された腫瘍の長径と短径を表す)。
5)相対腫瘍増殖率T/C%=(T-T0)/(C-C0)×100%
6)腫瘍増殖抑制率TGI%=1-T/C%
【0181】
実験データの統計解析は、ExcelとGraphPadを用いて行った。各グループの動物の体重、腫瘍体積及び腫瘍重量は全て平均±標準誤差(平均±SEM)で示し、Graphpad Prism 6ソフトウェアを使用してプロットした。
【0182】
この実験では、B-hCD274/hCD47/hSIRPαマウス結腸がん移植腫瘍モデルにおいて、異なる用量のPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の腫瘍増殖に対する抑制効果を評価することを目的とした。この実験では、グルーピングをする際に、様々な抗体又は二機能性融合タンパク質を同時に投与した。
【0183】
図8及び表13の結果に示すように、異なる用量の二機能性融合タンパク質(h1830-S85)実験グループ、PD-L1モノクローナル抗体(h1830)実験グループ及びSIRPγタンパク質S58-Fc実験グループでは、いずれもPBS対照グループよりも腫瘍体積が小さい;PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の高用量実験グループの腫瘍抑制効果は、同用量のPD-L1モノクローナル抗体実験グループ及びSIRPγタンパク質実験グループよりも良好である;異なるh1830-S85用量の実験グループ間には用量依存関係がある。
【0184】
実験中、投与グループと対照グループの間で体重に有意差はなく、マウスは投与された各抗体に対して耐性を持っていた。
【表13】
【0185】
(試験例12.マウスMC38-hPD-L1-hCD47結腸がんモデルにおけるPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果)
MC38-hPD-L1-hCD47細胞(ヒトPD-L1及びヒトCD47を導入し、マウスCD47をノックアウトしたMC38細胞)をC57/BL-6マウスに5.8×10細胞/100μl/マウスで皮下接種した。担がんモデルを確立した後、腫瘍体積を測定し、体重及び腫瘍サイズが大きすぎる動物と小さすぎる動物を除外した。担がんマウスは、腫瘍体積に応じて5つのグループ(n=7)に無作為に分けた:IgG4対照グループ、h1830-S58実験グループ、HRP00052実験グループ、h1830実験グループ及びTTI-621実験グループ。グルーピングの日付はD0とした。グルーピング後、各薬剤を週3回、計10回、18日間の投与サイクルで腹腔内投与した。投与を中止してから2日後に、担がんマウスの観察を終了した。週に2回、腫瘍体積を測定し、重量を測定し、データを記録した。グルーピング及び投与については下表を参照。この実験では、グルーピングの際に、異なる抗体を同時に投与した。投与後14日目からは全ての実験グループで用量を半分に減らした;投与後25日目からは全ての実験グループで投与を中止した。
【表14】
【0186】
各グループの動物の体重、腫瘍体積及び腫瘍重量は全て平均±標準誤差(平均±SEM)で示し、Graphpad Prism 6及びExcelソフトウェアを使用してプロットし、統計解析にはスチューデントのt検定を使用した。
腫瘍体積(TV)=1/2×L×L
腫瘍増殖率T/C%=(T-T0)/(C-C0)×100%
腫瘍増殖抑制率%TGI=1-T/C%
【0187】
図9の結果に示すように、PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質h1830-S58実験グループ及びPD-L1モノクローナル抗体(h1830)実験グループ(マウスPD-L1と交差反応する)の腫瘍体積は、対照グループ及びTTI-621実験グループの腫瘍体積よりも小さく、対照グループとの統計的差異は投与後約1週間で認められた;TTI-621実験グループは、この実験では腫瘍抑制効果を示さなかった。h1830-S58実験グループでは、投与後7日目に腫瘍抑制率が128.51%に達した。実験終了時には、腫瘍抑制率は比較的高いレベルで維持されていた。
【0188】
実験後、担がんマウスを安楽死させ、腫瘍を採取して重量を測定した。腫瘍重量の結果は、腫瘍体積の結果と同様であった。実験中、投与グループと対照グループの間で体重に有意差はなく、マウスは投与された各抗体に対して耐性を持っていた。
【0189】
(試験例13.マウスMC38-hPD-L1結腸がんモデルにおけるPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の効果)
MC38-hPD-L1細胞(ヒトPD-L1を導入したMC38細胞)をC57/BL-6マウスに3.5×10細胞/100μl/マウスで皮下接種した。担がんモデルを確立した後、腫瘍体積を測定し、体重及び腫瘍サイズが大きすぎる動物と小さすぎる動物を除外した。担がんマウスは、腫瘍体積に応じて5つのグループ(n=7)に無作為に分けた:IgG4対照グループ、h1830-19-S79実験グループ、h1830G1-19-S79実験グループ、SIRPα-CV実験グループ及びh1830実験グループ。グルーピングの日付はD0とした。グルーピング後、各薬剤を週3回、計12回、28日間の投与サイクルで腹腔内投与した。投与を中止してから2日後に、担がんマウスの観察を終了した。週に2回、腫瘍体積を測定し、重量を測定し、データを記録した。グルーピング及び投与については下表を参照。
【表15】
【0190】
各グループの動物の体重、腫瘍体積及び腫瘍重量は全て平均±標準誤差(平均±SEM)で示し、Graphpad Prism 5及びExcelソフトウェアを使用してプロットし、統計解析にはスチューデントのt検定を使用した。
腫瘍体積(TV)=1/2×L×L
腫瘍増殖率T/C%=(T-T0)/(C-C0)×100%
腫瘍増殖抑制率%TGI=1-T/C%
【0191】
この実験は、C57/BL-6マウス結腸がん移植腫瘍モデルにおいて、PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の異なるIgG形態の腫瘍増殖に対する阻害効果を評価することを目的とした。この実験では、グルーピングの際に異なる抗体を同時に投与した。投与後14日目からは、全ての実験グループで用量を半分に減らした;投与後25日目からは全ての実験グループで投与を中止した。
【0192】
図10の結果に示すように、投与後25日目まで、全ての二機能性融合タンパク質投与グループ及びPD-L1モノクローナル抗体h1830投与グループの腫瘍体積は、IgG4対照グループ及びSIRPα-CV(TTI-621)実験グループの腫瘍体積よりも小さく、対照グループと比較して統計的差異が見られた。
【0193】
投与後25日目に、腫瘍サイズが比較的大きかったため対照グループとSIRPα-CV(TTI-621)実験グループを安楽死させたが、残りの実験グループでは投与を中止して観察を続けた。その結果、PD-L1モノクローナル抗体h1830実験グループの腫瘍体積は時間とともに急速に増加する傾向を示し、二機能性融合タンパク質h1830-19-S79及びh1830G1-19-S79実験グループの腫瘍体積は大きく変化せず、二重特異性抗体のこれら2つの異なるIgG形態間にも有意差は認められなかった。
【0194】
実験後、担がんマウスを安楽死させ、腫瘍を採取して重量を測定した。腫瘍重量の結果は、腫瘍体積の結果と同様であった。実験中、投与グループと対照グループの間で体重に有意差はなく、マウスは投与された各抗体に対して耐性を持っていた。
【0195】
(試験例14.MOLP-8移植腫瘍ヌードマウスに対するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の有効性)
合計120匹のBalb/cヌードマウスの右肋骨部にMOLP-8細胞(5×10+50%マトリゲル/マウス)を皮下接種した。10日後、平均腫瘍体積は約214.89±6.75mmに達した。担がんマウスを無作為に7つのグループ(n=8)に分けた:PBS対照グループ、h1830-S37実験グループ、h1830-S58実験グループ、h1831K-19-S37、h1830実験グループ、S37-Fc及びHu167 IgG4AA実験グループ。グルーピングの日付はD0とした。グルーピング後、各薬剤を週に2回、3週間連続して腹腔内投与した。週に2回、腫瘍体積を測定し、重量を測定し、データを記録した。各グループの動物の体重、腫瘍体積及び腫瘍重量は全て平均±標準誤差(平均±SEM)で示し、Graphpad Prism 6及びExcelソフトウェアを使用してプロットし、統計解析にはスチューデントのt検定を使用した。
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L×L
相対腫瘍体積(RTV)=V/V
腫瘍増殖抑制率(%)=(CRTV-TRTV)/CRTV(%)
(式中、V及びVTは、それぞれ実験開始時及び実験終了時の腫瘍体積である。CRTV及びTRTVは、それぞれブランク対照グループ(ブランク)及び実験グループの実験終了時の相対腫瘍体積である。)
【0196】
この実験の結果は、マウスを1日おきに1回、10回連続して腹腔内注射したことを示した(図11を参照)。統計には、実験の21日目までのデータを用いた。PD-L1-CD47二機能性融合タンパク質h1830-S37(30mpk)の腫瘍抑制率は34.98%(P<0.05)である;二機能性融合タンパク質h1831K-19-S37(30mpk)の腫瘍抑制率は54.18%(P<0.01)である;h1830(25mpk)には腫瘍増殖抑制効果がなかった。
【0197】
投与中、各グループの動物の体重は正常であったことから、二機能性融合タンパク質には明らかな毒性及び副作用がないことが示された。
【0198】
(試験例15.CD47/SIRPαの結合に対するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の遮断効果)
CD47-FcをPBSで1μg/mlに希釈し、96ウェルプレートに100μl/ウェルで加え、4℃で16時間~20時間置いた。96ウェルプレートからPBS緩衝液を除去し、PBST(0.05%tween20を含むpH7.4のPBS)緩衝液で1回洗浄した。PBST/1%ミルクを120μl/ウェルで加え、室温で1時間インキュベートしてブロッキングした。ブロッキング溶液を除去し、プレートをPBST緩衝液で1回洗浄した。サンプル希釈液(5%BSA、0.05%Tween20を含むpH7.4のPBS)で適切な濃度に希釈した試験対象のPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質を90μl添加し、4℃で1時間プレインキュベートした。10倍濃度のビオチン標識SIRPα-his(10μg/ml)を10μl/ウェルの容量で加え、シェーカーでよく振って混合した後、37℃で1時間インキュベートした。反応系を取り出し、PBSTでプレートを6回洗浄した。PBST緩衝液で希釈したストレプトアビジン-ペルオキシダーゼポリマー1:400を100μl/ウェル加え、室温で50分間振とうしながらインキュベートした。プレートをPBSTで6回洗浄した。TMBを100μl/ウェル加え、室温で5~10分間インキュベートした。1M HSOを100μl/ウェル加えて反応を停止させた。マイクロプレートリーダーでNOVOStarを用いてOD450を測定し、IC50値を算出した。その結果を表16に示す。
【表16】
【0199】
結果は、二機能性融合タンパク質がCD47及びSIRPαの経路を効果的に遮断できることを示した。
【0200】
(試験例16.ヒト乳がん細胞MDA-MB-231移植腫瘍に対するPD-L1-CD47二機能性融合タンパク質の有効性)
NOD/SCIDマウスの右肋骨部にMDA-MB-231細胞(ATCC)を3×10細胞/200μl/マウス(50%マトリゲルを含む)で皮下接種した。担がんマウスの平均腫瘍体積が約145mmに達した時点で、マウスを無作為に4つのグループに分けた:PBS、h1831K-19-S37-30mpk、h1831K-19-S37-10mpk、h1831K-25mpk(h1831K-19-S37高用量の濃度と等モルの濃度に維持)、各グループ8匹のマウスを使用。グルーピングの日を実験の0日目とした。0日目に、CD3抗体で3日間刺激した2人のボランティアのPBMCを1:1の比率で混合し、マウス腫瘍組織に5×10細胞/100μl/マウスで注入した。残りのPBMCの刺激を止め、これらのPBMCを1週間培養し続け、5×10細胞/100μl/マウスで担がんマウスに腹腔内注射し、これを1回目の注射とした。実験終了時までに、合計2回のPBMCを注入した。0日目から週に3回、試験する各抗体を腹腔内注射した。週に2回、腫瘍体積及び動物の体重をモニターし、データを記録した。腫瘍体積が1000mmを超えたとき、又はほとんどの腫瘍に潰瘍が観察されたとき、又は体重が20%減少したとき、実験エンドポイントとして、担がん動物を安楽死させた。
【0201】
Excel及びGraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて全てのデータをグラフ化し、統計的に分析した。
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×a×b(式中、a及びbはそれぞれ長さ及び幅を表す。)
相対腫瘍増殖率T/C(%)=(T-T)/(C-C)×100(式中、T及びCは実験終了時の治療グループ及び対照グループの腫瘍体積である;T及びCは実験開始時の腫瘍体積である)。
腫瘍増殖抑制率(TGI)(%)=1-T/C(%)。
【0202】
実験の結果は、ヒト乳がんMDA-MB-231マウス皮下移植腫瘍モデルにおいて、PDL1-CD47二重特異性抗体h1831K-19-S37及びPDL1モノクローナル抗体h1831Kがともに良好な腫瘍抑制効果を示すことを示した(PBSに対してp<0.001)。
【0203】
PD-L1-CD47二重特異性抗体h1831K-19-S37(30、10mg/kg)は、ヒト乳がんMDA-MB-231マウス皮下移植腫瘍の増殖を有意に抑制することができ、高用量と低用量の間に用量依存性が見られた。投与3日後から実験終了時(23日目)まで、高用量グループ、低用量グループにかかわらず、h1831K-19-S37の腫瘍抑制効果は、高用量のPD-L1モノクローナル抗体対照h1831K(25mg/kg)の腫瘍抑制効果よりも常に良好であり(p<0.001)、高用量と低用量の間にも統計的差異が見られた(p<0.01)(表17)。
【0204】
実験終了時に、担がんマウスを安楽死させ、腫瘍を採取し、腫瘍重量を測定した。その結果、ex vivoの腫瘍重量は、腫瘍体積の傾向と一致していることが示された。全ての治療グループが対照グループよりも有意に良好であった(p<0.001)。二重特異性抗体h1831K-19-S37の高用量及び低用量グループの両方が高用量PDL1モノクローナル抗体対照h1831K(25mg/kg、p<0.001)よりも良好であり、h1831K-19-S37の高用量と低用量の間には用量依存的効果が見られた。
【0205】
担がんマウスは、PDL1-CD47二重特異性抗体及びそのモノクローナル抗体に対して耐性があった。投与プロセス全体で体重の変動はわずかであり、本薬剤による明らかな体重減少又はその他の症状は認められなかった。
【表17】
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022523543000001.app
【国際調査報告】