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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】T細胞受容体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20220418BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20220418BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20220418BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220418BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220418BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220418BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220418BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/13
C12N15/31
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/866 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N5/0783
C12N5/10
A61K38/17
A61K35/17 Z
A61K39/00 H
A61P37/02
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552599
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2020051809
(87)【国際公開番号】W WO2020178740
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/813,644
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】平野 直人
(72)【発明者】
【氏名】村田 憲治
(72)【発明者】
【氏名】佐相 薫葉子
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084CA18
4C084DC50
4C084NA14
4C084ZB022
4C084ZB092
4C084ZB262
4C084ZB272
4C085AA03
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示は、NY-ESO-1エピトープ及びそれをコードする核酸分子に結合し得る組換えT細胞受容体に関する。いくつかの実施形態において、この核酸分子は、第2のヌクレオチド配列をさらに含み、この第2のヌクレオチド配列またはこの第2のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、内因性TCRの発現を阻害する。本開示の他の態様は、核酸分子を含むベクター、及び組換えTCR、核酸分子、またはベクターを含む細胞に関する。本開示のさらに他の態様は、これらを使用する方法に関する。いくつかの実施形態では、この方法は、それを必要とする対象でがんを治療することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)をコードする第1のヌクレオチド配列と;(ii)第2のヌクレオチド配列であって、前記第2のヌクレオチド配列または前記第2のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドが、内因性TCRの発現を阻害する、前記第2のヌクレオチド配列と、を含み、
前記抗NY-ESO-1 TCRが、アルファ鎖及びベータ鎖を含む参照TCRと、ヒトNY-ESO-1に対する結合について交差競合し、前記アルファ鎖が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記ベータ鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
(i)ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)をコードする第1のヌクレオチド配列と;(ii)第2のヌクレオチド配列であって、前記第2のヌクレオチド配列または前記第2のヌクレオチド配列によってコードされる前記ポリペプチドが、内因性TCRの発現を阻害する、前記第2のヌクレオチド配列と、を含み、
前記抗NY-ESO-1 TCRが、アルファ鎖及びベータ鎖を含む参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複するエピトープに結合し、前記アルファ鎖が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記ベータ鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、核酸分子。
【請求項3】
前記抗NY-ESO-1 TCRが、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記エピトープがHLAクラスI分子と複合体を形成している、請求項2または3に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記HLAクラスI分子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、またはHLA-G対立遺伝子である、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07対立遺伝子である、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*03:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、及びHLA-B*07:06対立遺伝子から選択される、請求項4~6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:02対立遺伝子である、請求項4~7のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記抗NY-ESO-1 TCRがアルファ鎖及びベータ鎖を含み、
前記アルファ鎖が、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変領域を含み;
前記ベータ鎖が、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記アルファ鎖CDR3が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項10】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR3が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の核酸分子。
【請求項11】
前記抗NY-ESO-1 TCRがアルファ鎖及びベータ鎖を含み、前記アルファ鎖がアルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変領域を含み;
前記ベータ鎖が、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR3が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR3が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR1が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項14】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR1が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~13のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR2が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項16】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR2が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~15のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項17】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖可変ドメインが、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖可変ドメインが、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項9~17のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が、定常領域をさらに含み、前記定常領域が、アルファ鎖の内因性定常領域とは異なる、請求項9~18のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が定常領域を含み、前記アルファ鎖定常領域が、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9~19のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記アルファ鎖定常領域が、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む、請求項19または20のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖が、定常領域をさらに含み、前記定常領域が、前記ベータ鎖の内因性定常領域とは異なる、請求項9~21のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖がさらに定常領域を含み、前記ベータ鎖定常領域が、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9~22のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記ベータ鎖定常領域が、配列番号2に示されるアミノ鎖配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む、請求項22または23のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~24のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項26】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9~25のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項27】
前記第2のヌクレオチド配列が、内因性TCRの発現を低下させる1つ以上のsiRNAである、請求項1~26のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項28】
前記1つ以上のsiRNAが、前記内因性TCRの定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である、請求項27に記載の核酸分子。
【請求項29】
前記1つ以上のsiRNAが、配列番号53~56からなる群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む、請求項27または28のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項30】
前記第2のヌクレオチド配列がCas9をコードする、請求項1~29のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項31】
前記抗NY-ESO-1 TCRが、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方を含み;ここで、前記アルファ鎖定常領域、前記ベータ鎖定常領域、またはその両方が、内因性TCRの前記対応するアミノ酸配列に対して前記標的配列内に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個の置換を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか1項に記載の前記核酸分子を含むベクター。
【請求項33】
ウイルスベクター、哺乳動物ベクターまたは細菌ベクターである、請求項32に記載のベクター。
【請求項34】
レトロウイルスベクターである、請求項32または33に記載のベクター。
【請求項35】
アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターからなる群より選択される、請求項32~34のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項36】
レンチウイルスである、請求項32~35のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項37】
請求項9~31のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖可変ドメイン及び請求項9~31のいずれか1項に記載の前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖可変ドメインを含むT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分。
【請求項38】
ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)であって、ヒトNY-ESO-1への結合について参照TCRと交差競合し;
前記参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、前記アルファ鎖は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記ベータ鎖は配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、前記アルファ鎖は定常領域を含み、前記ベータ鎖は定常領域を含み;ここで
(i) 前記アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示される前記アミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むか、または
(ii) 前記ベータ鎖定常領域は、配列番号2のアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、前記組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分。
【請求項39】
ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)であって、参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複するエピトープに結合し;
前記参照TCRはアルファ鎖及びベータ鎖を含み、前記アルファ鎖は配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、前記ベータ鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRはアルファ鎖及びベータ鎖を含み、前記アルファ鎖は定常領域を含み、前記ベータ鎖は定常領域を含み;ここで
(i) 前記アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、もしくは少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むか、または
(ii)前記ベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む、前記組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分。
【請求項40】
配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する、請求項38または39のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項41】
前記エピトープがHLAクラスI分子と複合体を形成している、請求項39または40のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項42】
前記HLAクラスI分子が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、またはHLA-G対立遺伝子である、請求項41に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項43】
前記HLAクラスI分子がHLA-B*07対立遺伝子である、請求項41または42のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項44】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*07:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、及びHLA-B*07:06対立遺伝子から選択される、請求項41~43のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項45】
前記HLAクラスI分子がHLA-B*07:02対立遺伝子である、請求項41または44のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項46】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖が、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR3が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項47】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR3が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項46に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項48】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖が、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR3が、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項49】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR3が、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む、請求項48に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項50】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR1が、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項51】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR1が、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む、請求項46~50のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項52】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖CDR2が、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む、請求項46~51のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項53】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖CDR2が、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む、請求項46~52のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項54】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖可変ドメインが、配列番号1に示される前記アミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項46~53のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項55】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖可変ドメインが、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む、請求項46~54のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項56】
前記アルファ鎖定常領域が、配列番号1に示される前記アミノ酸配列に存在する定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38~55のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項57】
前記ベータ鎖定常領域が、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38~56のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項58】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記アルファ鎖が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項38~57のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項59】
前記抗NY-ESO-1 TCRの前記ベータ鎖が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項38~58のいずれか1項に記載の抗NY-ESO-1 TCR。
【請求項60】
第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性TCRであって、前記第1の抗原結合ドメインは、請求項37に記載のTCRもしくはその抗原結合部分、または請求項38~59のいずれか1項に記載のTCRもしくはその抗原結合部分を含む、前記二重特異性TCR。
【請求項61】
前記第1の抗原結合ドメインが、単鎖可変フラグメント(「scFv」)を含む、請求項60に記載の二重特異性TCR。
【請求項62】
前記第2の抗原結合ドメインが、T細胞の表面に発現されるタンパク質に特異的に結合する、請求項60または61のいずれか1項に記載の二重特異性TCR。
【請求項63】
前記第2の抗原結合ドメインが、CD3に特異的に結合する、請求項60~62のいずれか1項に記載の二重特異性TCR。
【請求項64】
前記第2の抗原結合ドメインが、scFvを含む、請求項60~63のいずれか1項に記載の二重特異性TCR。
【請求項65】
前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインが、共有結合によって連結または結合されている、請求項60~64のいずれか1項に記載の二重特異性TCR。
【請求項66】
前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインが、ペプチド結合によって連結されている、請求項60~65のいずれか1項に記載の二重特異性TCR。
【請求項67】
請求項1~31のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項32~36のいずれか1項に記載のベクター、請求項37に記載のTCR、請求項38~59のいずれか1項に記載の組み換えTCR、または請求項60~66のいずれか1項に記載の二重特異性TCRを含む細胞。
【請求項68】
CD3をさらに発現する請求項67に記載の細胞。
【請求項69】
T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、またはILC細胞からなる群より選択される、請求項67または68に記載の細胞。
【請求項70】
それを必要とする対象においてがんを治療する方法であって、請求項67~69のいずれか1項に記載の前記細胞を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項71】
請求項70に記載の方法であって、前記がんが、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸癌、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、慢性または急性の白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発癌、その他のB細胞悪性腫瘍、及び前記がんの組み合わせからなる群より選択される、前記方法。
【請求項72】
前記がんが、難治性または再発性多発性である、請求項70または請求項71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記がんが、局所的に進行している、請求項70~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記がんが、進行している、請求項70~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記がんが、転移性である、請求項70~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記細胞が前記対象から得られる、請求項70~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記細胞が前記対象以外のドナーから得られる、請求項70~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記対象が細胞の投与前にプレコンディショニングされる、請求項70~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記プレコンディショニングが、化学療法、サイトカイン、タンパク質、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを前記対象に投与することを含む、請求項68~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記プレコンディショニングがインターロイキンを投与することを含む、請求項78または79に記載の方法。
【請求項81】
前記プレコンディショニングが、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、またはそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、請求項78~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記プレコンディショニングが、シクロホスファミド、フルダラビン、ビタミンC、AKT阻害剤、ATRA、ラパマイシン、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるプレコンディショニング剤を投与することを含む、請求項78~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記プレコンディショニングが、シクロホスファミド、フルダラビン、またはその両方を投与することを含む、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
T細胞治療を必要とする対象から収集された細胞に、請求項1~31のいずれか1項に記載の前記核酸分子または請求項32~36のいずれか1項に記載の前記ベクターを形質導入することを含む、抗原標的化細胞を操作する方法。
【請求項85】
前記抗原標的化細胞がCD3をさらに発現する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記細胞がT細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項84または85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
ペプチドと複合体を形成したHLAクラスI分子であって、前記HLAクラスI分子が、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン、及びβ2mを含み、前記ペプチドが、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなる、前記HLAクラスI分子。
【請求項88】
HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、またはHLA-Gである、請求項87に記載のHLAクラスI分子。
【請求項89】
HLA-Bである、請求項87または88のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項90】
HLA-B*07対立遺伝子である、請求項87~89のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項91】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*07:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、及びHLA-B*07:06対立遺伝子から選択される、請求項87~90のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項92】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:02対立遺伝子である、請求項87~91のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項93】
前記HLAクラスI分子が、HLA-B*07:03対立遺伝子である、請求項87~92のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項94】
単量体である、請求項87~93のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項95】
二量体である、請求項87~93のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項96】
三量体である、請求項87~93のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項97】
四量体である、請求項87~93のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項98】
五量体である、請求項87~93のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子。
【請求項99】
請求項87~98のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子を含む抗原提示細胞(APC)。
【請求項100】
前記HLAクラスI分子が、前記APCの前記表面上に発現される、請求項99に記載のAPC。
【請求項101】
ヒト対象から得られるT細胞の標的集団を濃縮する方法であって、前記T細胞を請求項87~98のいずれか1項に記載のHLAクラスI分子または請求項99もしくは100に記載のAPCと接触させることを含み、前記接触の後、前記濃縮されたT細胞集団は、前記接触前にHLAクラスI分子に結合し得るT細胞の数に対して、HLAクラスI分子に結合し得るT細胞をより多数含む、前記方法。
【請求項102】
ヒト対象から得られるT細胞の標的集団を濃縮する方法であって、インビトロで前記T細胞をペプチドと接触させることを含み、前記ペプチドは、配列番号13に記載されるアミノ酸配列からなり、前記接触に続いて、前記濃縮されたT細胞集団は、前記接触前に腫瘍細胞を標的し得るT細胞の数に対して、腫瘍細胞を標的し得るT細胞をより多数含む、前記方法。
【請求項103】
前記ヒト対象から得られた前記T細胞が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、請求項101または102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
それを必要とする対象において腫瘍を治療する方法であって、前記対象に請求項101~102のいずれか1項に記載の前記濃縮T細胞を投与することを含む、前記方法。
【請求項105】
配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを対象に投与することを含む、がんに罹患している前記対象におけるがん細胞の細胞傷害性T細胞媒介性標的を増強する方法。
【請求項106】
配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを含むがんワクチン。
【請求項107】
単離されたT細胞の集団を、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるペプチドとインビトロで接触させることを含む、腫瘍細胞を標的とし得るT細胞を選択する方法。
【請求項108】
前記T細胞が腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)である、請求項107に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2019年3月4日出願の米国仮特許出願第62/813,644号の優先権利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出された配列表への言及
電子的に提出された配列表の内容(名称:4285_003PC01_Seqlisting_ST25.txt,サイズ:28,117バイト;及び作成日:2020年3月3日)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示の分野
本開示は、ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組み換えT細胞受容体(「TCR」)及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
免疫療法は、がんを含む様々な疾患との戦いにおける重要なツールとして注目されている。T細胞療法は、免疫療法の開発の最前線にあり、抗腫瘍T細胞の養子移入は、がん患者に臨床反応を誘発することが示されている。多くのT細胞療法は、変異した腫瘍抗原を標的としているが、新抗原の大部分は共有されておらず、各患者に固有のものである。
【0005】
潜在的な非変異抗原は、変異抗原の数を数桁上回っている。共有抗原に由来するT細胞エピトープの解明は、がん患者のより大きなコホートが容易に利用できる、効果的かつ安全な養子T細胞療法の強力な開発を促進し得る。しかし、変異していない抗原の数が非常に多く、HLA遺伝子の多型が高いことで、変異していない抗原に対する抗腫瘍T細胞応答の特異性の包括的な分析が妨げられている場合がある。
【0006】
本開示は、エピトープに特異的に結合し得る非変異抗原NY-ESO-1及びTCRのための新規なエピトープを提供する。これらの新規エピトープは、特定のHLA対立遺伝子に関連している。これらの腫瘍反応性HLA制限NY-ESO-1 TCRの使用は、特に免疫腫瘍学における抗NY-ESO-1 TCR遺伝子治療の適用範囲を広げることになる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の特定の態様は、(i)ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)をコードする第1のヌクレオチド配列と;(ii)第2のヌクレオチド配列であって、この第2のヌクレオチド配列または第2のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドが、内因性TCRの発現を阻害し、この抗NY-ESO-1 TCRが、ヒトNY-ESO-1への結合について、アルファ鎖及びベータ鎖を含む参照TCRと交差競合し、このアルファ鎖が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、このベータ鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、第2のヌクレオチド配列と、を含む核酸分子に関する。
【0008】
本開示の特定の態様は、(i)ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)をコードする第1のヌクレオチド配列と;(ii)第2のヌクレオチド配列であって、この第2のヌクレオチド配列または第2のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドが、内因性TCRの発現を阻害し、この抗NY-ESO-1 TCRが、アルファ鎖及びベータ鎖を含む参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複エピトープに結合し、このアルファ鎖が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、このベータ鎖が配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む、第2のヌクレオチド配列と、を含む核酸分子に関する。
【0009】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、このエピトープは、HLAクラスI分子と複合体を形成している。いくつかの実施形態では、このHLAクラスI分子は、HLA-B*07対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、このHLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*07:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、及びHLA-B*07:06対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、このHLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。
【0010】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変領域を含み;ここで、このベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、このアルファ鎖CDR3は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR3は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変領域を含み;ここで、このベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR3は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR3は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR1は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR1は、配列番号8に記載されるようなアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR2は、配列番号6に示されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR2は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖可変ドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖可変ドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、定常領域をさらに含み、この定常領域は、アルファ鎖の内因性定常領域とは異なる。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、定常領域をさらに含み、このアルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、定常領域をさらに含み、この定常領域は、ベータ鎖の内因性定常領域とは異なる。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、定常領域をさらに含み、ベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、このベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、配列番号1に記載されるようなアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、内因性のTCRの発現を低下させる1つ以上のsiRNAである。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、内因性TCRの定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である。いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、配列番号53~56からなる群より選択される1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Cas9をコードする。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方を含み;ここで、このアルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方は、内因性TCRの対応するアミノ酸配列に対して標的配列内で、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個の置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0020】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターに関する。いくつかの実施形態では、このベクターは、ウイルスベクター、哺乳動物ベクターまたは細菌ベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、ハイブリッドベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、このベクターは、レンチウイルスである。
【0021】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖可変ドメイン及び本明細書に開示される抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖可変ドメインを含むT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分に関する。いくつかの実施形態では、ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)は、参照TCRとヒトNY-ESO-1への結合について交差競合する;ここで、参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、このベータ鎖は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み;ここで、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は定常領域を含み、このベータ鎖は定常領域を含み;ここで、(i)アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列セットに存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むか、または(ii)このベータ鎖定常領域は、配列番号2のアミノ酸配列に存在する定常領域に対して少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0022】
本開示の特定の態様は、参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複するエピトープに結合するヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)に関する;ここで、この参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、このベータ鎖は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含み;ここで、この抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、定常領域を含み、ベータ鎖は、定常領域を含み;ここで、(i)アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列セットに存在する定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含むか、または(ii)ベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域に対して少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する。
【0023】
いくつかの実施形態では、エピトープは、HLAクラスI分子と複合体を形成している。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、またはHLA-G対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*07:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、HLA-B*07:06対立遺伝子から選択される。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、この抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、この抗NY-ESO-1のアルファ鎖CDR3は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR3は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、この抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;ここで、この抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR3は、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、この抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR3は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR1は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR1は、配列番号8に記載されるようなアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR2は、配列番号6に示されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR2は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖可変ドメインは、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖可変ドメインは、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する可変ドメインのアミノ酸配列を含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、このベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在する定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、配列番号1に示されるようなアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、配列番号2に示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0031】
本開示の特定の態様は、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性TCRに関するものであり、この第1の抗原結合ドメインは、本明細書に開示されるTCRもしくはその抗原結合部、または本明細書に開示されるTCRもしくはその抗原結合部分を含む。いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(「scFv」)を含む。いくつかの実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、T細胞の表面に発現されるタンパク質に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、CD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、scFvを含む。いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、共有結合によって連結または結合されている。いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、ペプチド結合によって連結されている。
【0032】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示されるベクター、本明細書に開示されるTCR、本明細書に開示される組換えTCR、または本明細書に開示される二重特異性TCRを含む細胞に関する。いくつかの実施形態では、細胞はさらにCD3を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、またはILC細胞からなる群より選択される。
【0033】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される細胞を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、このがんは、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸癌、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、慢性または急性の白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発癌、その他のB細胞悪性腫瘍、及び前記がんの組み合わせからなる群より選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、がんは再発性または難治性である。いくつかの実施形態では、がんは、局所的進行性である。いくつかの実施形態では、がんは、進行癌である。いくつかの実施形態では、がんは、転移性である。
【0035】
いくつかの実施形態において、細胞は、対象から得られる。いくつかの実施形態において、細胞は、対象以外のドナーから得られる。いくつかの実施形態では、対象は、細胞の投与の前にプレコンディショニング(前処理)される。いくつかの実施形態では、このプレコンディショニングは、化学療法、サイトカイン、タンパク質、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、このプレコンディショニングは、インターロイキンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、このプレコンディショニングは、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、またはそれらの任意の組み合わせを投与することを含む。いくつかの実施形態では、このプレコンディショニングは、シクロホスファミド、フルダラビン、ビタミンC、AKT阻害剤、ATRA、ラパマイシン、またはそれらの任意の組み合わせからなる群より選択されるプレコンディショニング剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、このプレコンディショニングは、シクロホスファミド、フルダラビン、またはその両方を投与することを含む。
【0036】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸または本明細書に開示されるベクターを用いて、T細胞治療を必要とする対象から収集された細胞を形質導入することを含む、抗原標的化細胞を操作する方法に関する。いくつかの実施形態では、抗原標的化細胞は、CD3をさらに発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞である。
【0037】
本開示の特定の態様は、ペプチドと複合体を形成したHLAクラスI分子に関するものであり、このHLAクラスI分子は、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメイン、及びβ2mを含み、このペプチドは、配列番号14に示されるアミノ酸配列からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、またはHLA-Gである。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-Bである。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子、HLA-B*07:03対立遺伝子、HLA-B*07:04対立遺伝子、HLA-B*07:05対立遺伝子、HLA-B*07:06対立遺伝子から選択される。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B*07:03対立遺伝子である。
【0039】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、単量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、二量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、三量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、四量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、五量体である。
【0040】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示されるHLAクラスI分子を含む抗原提示細胞(APC)に関する。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、APCの表面上に発現される。
【0041】
本開示の特定の態様は、ヒト対象から得られるT細胞の標的集団を濃縮する方法であって、この方法が、このT細胞を本明細書に開示されるHLAクラスI分子または本明細書に開示されるAPCと接触させることであり、この接触した後、この濃縮されたT細胞集団が、接触前にHLAクラスI分子に結合し得るT細胞の数に対して、HLAクラスI分子に結合し得るT細胞をより多数含むこと、を含む方法に関する。
【0042】
本開示の特定の態様は、ヒト対象から得られたT細胞の標的集団を濃縮する方法であって、この方法が、インビトロでT細胞をペプチドと接触させることであり、このペプチドが、配列番号13に記載されるアミノ酸配列からなり、この接触した後、この濃縮されたT細胞集団が、接触前に腫瘍細胞を標的し得るT細胞の数に対して、腫瘍細胞を標的し得る、T細胞をより多数含むこと、を含む方法に関する。
【0043】
いくつかの実施形態では、ヒト対象から得られたT細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0044】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示されるT細胞の濃縮された集団を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の腫瘍を治療する方法に関する。
【0045】
本開示の特定の態様は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを対象に投与することを含む、がんに罹患している対象におけるがん細胞の細胞傷害性T細胞媒介性標的化を増強する方法に関している。
【0046】
本開示の特定の態様は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを含むがんワクチンに関する。
【0047】
本開示の特定の態様は、インビトロで単離されたT細胞の集団を、配列番号11に示されるアミノ酸配列からなるペプチドと接触させることを含む、腫瘍細胞を標的とし得るT細胞を選択する方法に関する。いくつかの実施形態では、T細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】A~Bは、黒色腫TILのB*07:02/NY-ESO-160-72多量体染色のグラフ表示である。Aは、B*07:02/NY-ESO-160-72多量体によるTILの染色を示す。B*07:02/HIVnef128-137(B)多量体を陰性対照として用いた。CD8T細胞における多量体細胞の割合を示す。
図2】B*07:02/NY-ESO-160-72多量体陽性黒色腫TILの機能的アセスメントを示す棒グラフである。B*07:02/NY-ESO-160-72特異的方式でのTILによるIFN-γの産生。TILを、IFN-γ ELISPOT分析のレスポンダー細胞として使用した。示されたペプチドでパルスされたB*07:02-人工APCを刺激細胞として使用した。HIVnef128-137ペプチドを対照として使用した。実験は3回行い、エラーバーは標準偏差(SD)を示している。*P<0.05
図3】A~Iは、同族の多量体を有するB*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子で形質導入されたJurkat 76/CD8細胞の陽性染色のグラフ表示である。B*07:02/NY-ESO-160-72TCRで形質導入されたJurkat 76/CD8細胞を(B、E及びH)、B*07:02/NY-ESO-160-72多量体で染色した(B)。B*07:02/MAGE-A1289-297多量体(D、E及びF)、B*07:02/非交換多量体(G、H、及びI)、ならびにB*07:02/MAGE-A1289-297TCR(C、F及びI)を、対照として使用し、同様に、TCRで形質導入しなかったJurkat 76/CD8も使用した(A、D、及びG)。多量体CD8細胞のパーセンテージを示す。
図4】A~Dは、同族の多量体を有するB*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子(B及びD)で形質導入されたヒト初代T細胞の陽性染色のグラフ表示である。B*07:02/NY-ESO-160-72TCRで形質導入された初代T細胞を、B*07:02/NY-ESO-160-72(B)またはB*07:02/HIV nef128-137対照多量体(D)で染色した。形質導入されていない初代T細胞を陰性対照として使用した(A及びC)。多量体CD8T細胞のパーセンテージを示している。
図5】B*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子で形質導入されたヒト初代T細胞が、標的クラスI分子によって提示される同族ペプチドと強く反応することを示す棒グラフである。B*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子で形質導入された初代T細胞または形質導入されていない初代T細胞(x軸)を、IFN-γ ELISPOT分析のレスポンダー細胞として使用した。HLA-B*07:02形質導入T2細胞(T2-B*07:02)を生成した。NY-ESO-160-72またはHIVnef128-137ペプチド(対照)でパルスされたT2またはT2-B*07:02細胞を、刺激細胞として使用した。実験は3回行われ、エラーバーはSDを示している。**P<0.01。
図6】A及びBは、B*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子で形質導入された初代T細胞が、腫瘍細胞を認識すること(A)及びその凡例(B)示すグラフ表示である。B*07:02/NY-ESO-160-72TCR遺伝子で形質導入された初代T細胞または形質導入されていない初代T細胞を、IFN-γ ELISPOT分析のレスポンダー細胞として採用した。B(Aの凡例)に示されるように、形質導入されていないか、またはHLA-B*07:02もしくはNY-ESO-1で形質導入されたA375、SK-MEL-37及びSK-MEL-21細胞を、刺激細胞として採用した。実験は3回行われ、エラーバーはSDを示している。**P<0.01、***P<0.001。
図7】A~Dは、内因性または形質導入された全長遺伝子に由来するNY-ESO-1の発現のグラフ表示である。標的細胞における内因性または形質導入された全長遺伝子に由来するNY-ESO-1の発現を、抗NY-ESO-1mAb(白抜きの曲線)及びアイソタイプ対照(黒塗りの曲線)で染色した後、細胞内フローサイトメトリーを介して分析した。
図8】A~Dは、ΔNGFRでタグ付けされた全長HLA-B*07:02遺伝子で形質導入された標的細胞におけるΔNGFRの発現のグラフ表示である(B及びD)。ΔNGFRでタグ付けされた全長HLA-B*07:02遺伝子で形質導入された標的細胞におけるΔNGFRの表面発現を、抗NGFRmAb(白抜きの曲線)及びアイソタイプ対照(黒塗りの曲線)で染色した後、フローサイトメトリーによって分析した。ΔNGFRのみを、対照として使用した(A及びC)。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本開示は、NY-ESO-1上のエピトープに特異的に結合するTCRまたはその抗原結合部分、それをコードする核酸分子、及びTCRまたは核酸分子を含む細胞に関する。本開示のいくつかの態様は、対象に細胞を投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを治療する方法に関する。本開示の他の態様は、NY-ESO-1のエピトープを含むペプチドと複合体を形成したHLAクラスI分子に関する。
【0050】
I.用語
本開示をより容易に理解し得るようにするために、特定の用語を最初に定義する。本出願で使用するとき、本明細書に別段に明記されない限り、次の用語の各々は、下記に示す意味を有するものとする。追加の定義は、本出願全体を通して記載される。
【0051】
用語「a(ある、1つの:不定冠詞)」または「an(ある、1つの:不定冠詞)」の実体は、その実体の1つ以上を指し;例えば、「a nucleotide sequence(ヌクレオチド配列)」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すと理解されることに留意されたい。したがって、「a」(または「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」という用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0052】
さらに、「及び/または」は、本明細書で使用する場合、2つの特定の特徴または構成要素の各々の具体的な開示として解釈され、他方の有無を問わないものとする。したがって、本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、「A及びB」、「AまたはB」、「A」(単独)、及び「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用する場合、「及び/または」という用語は、次の態様の各々を包含することを意図する:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0053】
「約」という用語は、本明細書では、おおよそ、大体、およそ、またはほぼの意味で使用される。「約」という用語が数値範囲と共に使用されるとき、それは、記載された数値の上下に境界を広げることによってその範囲を修飾する。一般的に、「約」という用語は、本明細書において、10%の変動値、上または下(以上または以下)で、明記されている値を超える、及びその値未満の数値を修飾するために使用される。
【0054】
本明細書において「含む(comprising)」という言葉で態様が記載されている場合は常に、「からなる(consisting of)」及び/または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載されている他の類似の態様も提供されることを理解されたい。
【0055】
別段に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する技術分野における当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press、The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press、及びthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0056】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で承認された形式で示される。数値範囲はその範囲を定義する数を含む。別段に示さない限り、ヌクレオチド配列は5’から3’の方向で左から右に書かれている。アミノ酸配列は、アミノからカルボキシの方向で左から右に書かれている。本明細書において提供する見出しは、本明細書全体を参照することにより得ることができる本開示の様々な態様を限定するものではない。したがって、すぐ下に定義されている用語は、本明細書全体を参照することにより、さらに完全に定義される。
【0057】
「投与すること」とは、当業者に公知である任意の様々な方法及び送達系を用いて、ある因子を対象に物理的に導入することを指す。本明細書に開示されている製剤の例示的な投与経路としては、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口の投与経路が挙げられる。「非経口投与」という語句は、本明細書で使用する場合、経腸投与及び局所投与以外の、通常は注射による投与方法を意味し、これには、限定するものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入、ならびにインビボのエレクトロポレーションが挙げられる。いくつかの実施形態では、この製剤は、非経口ではない経路、例えば、経口的に投与される。他の非経口ではない経路としては、局所、上皮、または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内に、膣内に、直腸に、舌下で、または局所的に、が挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回及び/または1つ以上の長い期間にわたって行うことができる。
【0058】
本明細書で使用される「T細胞受容体」(TCR)という用語は、標的抗原と特異的に相互作用し得るヘテロマー細胞表面受容体を指す。本明細書で使用される場合、「TCR」としては、限定するものではないが、天然に存在するTCR及び天然に存在しないTCR;全長TCR及びその抗原結合部分;キメラTCR;TCR融合構築物;及び合成TCRが挙げられる。ヒトでは、TCRはT細胞の表面に発現され、T細胞の認識及び抗原提示細胞の標的化を担っている。抗原提示細胞(APC)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC;本明細書ではHLA分子、例えば、HLAクラス1分子)と複合体を形成しているとも言われる)と複合体を形成した外来タンパク質(抗原)のフラグメントを表示する。TCRは、抗原:HLA複合体を認識して結合し、CD3(T細胞によって発現される)を動員して、TCRを活性化する。活性化されたTCRは、EPCの破壊を含む、下流のシグナル伝達と免疫応答を開始する。
【0059】
一般に、TCRは、ジスルフィド結合によって相互接続された2つの鎖、アルファ鎖及びベータ鎖(またはより一般的ではないがガンマ鎖及びデルタ鎖)を含み得る。各鎖は、可変ドメイン(アルファ鎖可変ドメイン及びベータ鎖可変ドメイン)及び定常領域(アルファ鎖定常領域及びベータ鎖定常領域)を含む。可変ドメインは、細胞膜の遠位に位置し、可変ドメインは抗原と相互作用する。定常領域は細胞膜の近位に位置している。TCRは、膜貫通領域及び短い細胞質尾部をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「定常領域」という用語は、存在する場合、膜貫通領域及び細胞質尾部、ならびに従来の「定常領域」を包含する。
【0060】
可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存されている領域が挟み込まれる、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に、さらに細分化され得る。各アルファ鎖可変ドメイン及びベータ鎖可変ドメインは、3つのCDR及び4つのFR(FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4)を含む。各可変ドメインには、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれている。各鎖の3つのCDRは全て抗原結合に関与しているが、CDR3が主要な抗原結合領域であると考えられている。CDR1は抗原とも相互作用するが、CD2は主にHLA複合体を認識すると考えられている。
【0061】
明示的に述べられていない場合、及び文脈が別段の指示をしない限り、「TCR」という用語はまた、本明細書に開示される任意のTCRの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分を含み、一価及び二価のフラグメントまたは部分、及び一本鎖TCRを含む。「TCR」という用語は、T細胞の表面に結合した天然に存在するTCRに限定されない。本明細書で使用される場合、「TCR」という用語はさらに、T細胞以外の細胞(例えば、本明細書に記載のように、CD3を自然に発現するかまたは発現するように改変される細胞)の表面に発現される本明細書に記載のTCR、または細胞膜を含まない本明細書に記載のTCR(例えば、単離されたTCRまたは可溶性TCR)を指す。
【0062】
「抗原結合分子」、「TCRの一部」、または「TCRフラグメント」とは、全体よりも少ないTCRの任意の部分を指す。抗原結合分子は、抗原の相補性決定領域(CDR)を含み得る。
【0063】
「抗原」とは、免疫応答を誘発するか、またはTCRによって結合され得る任意の分子、例えば、ペプチドを指す。本明細書で使用される「エピトープ」とは、免疫応答を誘発するか、またはTCRによって結合され得るポリペプチドの一部を指す。免疫応答には、抗体産生、もしくは特定の免疫学的コンピテントセルの活性化、またはその両方が含まれ得る。当業者は、事実上全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が抗原として機能し得ることを容易に理解するであろう。抗原及び/またはエピトープは、内因的に発現され得る、すなわち、ゲノムDNAによって発現されてもよいし、または組換え発現されてもよい。抗原及び/またはエピトープは、がん細胞などの特定の組織に特異的であってもよいし、またはそれは広範に発現されてもよい。さらに、より大きな分子のフラグメントは抗原として機能し得る。一実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。エピトープは、より長いポリペプチド(例えば、タンパク質)に存在してもよく、またはエピトープは、より長いポリペプチドのフラグメントとして存在してもよい。いくつかの実施形態では、エピトープは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC;本明細書では、HLA分子、例えば、HLAクラス1分子と複合体化されているとも呼ばれる)と複合体を形成している。
【0064】
本明細書で使用される「NY-ESO-1」、「ニューヨーク食道扁平上皮癌(New York esophageal squamous cell carcinoma)1」、「癌精巣抗原1B」、または「CTAG1B」とは、多数のがんタイプで発現する腫瘍抗原を指す。NY-ESO-1は、がん-精巣抗原ファミリーのメンバーであり、精巣生殖細胞及び胎盤栄養膜に主に限定された発現を特徴とし、健康な成体体細胞ではほとんど、または全く発現しない。NY-ESO-1の発現は、胚発生中に検出可能であり、NY-ESO-1の発現は、精原細胞及び初代精母細胞で維持される。女性では、NY-ESO-1の発現は、女性の卵祖細胞で急速に減少する。NY-ESO-1 RNAは、卵巣および子宮内膜組織で、低レベルで検出されている。ただし、NY-ESO-1タンパク質はこれらの組織では見つかっていない。NY-ESO-1タンパク質(配列番号52;表1)は、180アミノ酸の18kDaタンパク質である。例えば、Thomas et al.,Front.Immunol.9:947(2018)を参照のこと。
【表1】
【0065】
本明細書で使用される「HLA」という用語は、ヒト白血球抗原を指す。HLA遺伝子は、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質をコードする。MHCタンパク質は、細胞の表面に発現され、免疫応答の活性化に関与している。HLAクラスI遺伝子は、自己または非自己タンパク質のペプチドフラグメント(抗原)との複合体で細胞の表面に発現されるMHCクラスI分子をコードする。TCR及びCD3を発現するT細胞は、抗原:MHCクラスI複合体を認識し、免疫応答を開始して、非自己タンパク質を提示する抗原提示細胞を標的して破壊する。
【0066】
本明細書で使用される場合、「HLAクラスI分子」または「HLAクラスI分子」は、MHCクラスI分子をコードする野生型またはバリアントのHLAクラスI遺伝子のタンパク質産物を指す。したがって、「HLAクラスI分子」及び「MHCクラスI分子」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0067】
MHCクラスI分子は、2つのタンパク質鎖、すなわち、アルファ鎖及びβ2-ミクログロブリン(β2m)鎖を含む。ヒトβ2mは、B2M遺伝子によってコードされている。β2mのアミノ酸配列は、配列番号16に示されている(表2)。MHCクラスI分子のアルファ鎖は、HLA遺伝子複合体によってコードされている。HLA複合体は、ヒト6番染色体の短腕の6p21.3領域内にあり、220を超える多様な機能の遺伝子を含んでいる。HLA遺伝子は非常に多様であり、20,000を超えるHLA対立遺伝子及び関連する対立遺伝子、例としては、数千のHLAタンパク質をコードする、当技術分野で公知の15,000を超えるHLAクラスI対立遺伝子、例としては、10,000を超えるHLAクラスIタンパク質(例えば、hla.alleles.org、最後にアクセスしたのは2019年2月27日)がある。HLA複合体には、MHCクラスIアルファ鎖タンパク質をコードする少なくとも3つの遺伝子、HLA-A、HLA-B、及びHLA-Cがある。さらに、HLA-E、HLA-F、及びHLA-Gは、MHCクラスI分子に関連するタンパク質をコードする。
【表2】
【0068】
「自己由来」という用語は、それが後に個体に再導入される同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、自己T細胞療法は、同じ対象から単離されたT細胞を対象に投与することを含む。「同種異系」という用語は、ある個体に由来し、次に同じ種の別の個体に導入される任意の材料を指す。例えば、同種異系T細胞移植は、対象以外のドナーから得られたT細胞を対象に投与することを含む。
【0069】
「がん」とは、体内の異常細胞の成長が制御されないことを特徴とする様々な疾患の広範な群を指す。細胞の分裂及び成長が制御されないことによって悪性腫瘍が形成され、隣接組織に浸潤し、リンパ系または血流を通って身体の遠位部に転移する場合もある。「がん」または「がん組織」とは腫瘍を含み得る。本発明の方法によって治療され得るがんの例としては、限定するものではないが、リンパ腫、白血病、及び他の白血球悪性腫瘍を含む免疫系のがんが挙げられる。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、例えば、骨癌、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜癌、頸部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、慢性または急性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発がん、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記のがんの組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを縮小するために使用され得る。特定のがんは、化学療法もしくは放射線療法に反応する可能性があり、またはがんは難治性である可能性がある。難治性のがんとは、外科的介入で改正できないがんを指し、このがんは最初は化学療法もしくは放射線療法に反応しないか、またはこのがんは、時間の経過とともに反応しなくなる。
【0070】
本明細書で使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞の数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全生存期間または無増悪生存期間の延長、期待寿命の延長、または腫瘍に関連するさまざまな生理学的症状の改善として現れ得る生物学的効果を指す。抗腫瘍効果はまた、腫瘍の発生の予防、例えば、ワクチンを指すこともある。
【0071】
PFSと略される場合もある「無増悪生存期間」という用語は、本明細書で使用される場合、悪性リンパ腫または任意の原因による死亡に対する改訂IWG応答基準(the revised IWG Response Criteria for Malignant Lymphoma or death from any cause)による治療日から疾患進行日までの時間を指す。
【0072】
PDと略記し得る「疾患進行(disease progression)」または「進行性疾患(progressive disease)」とは、本明細書で使用される場合、特定の疾患に関連する1つ以上の症状の悪化を指す。例えば、がんに罹患している対象の疾患の進行には、1つ以上の悪性病変の数またはサイズの増加、腫瘍転移、及び死亡が含まれ得る。
【0073】
DORと略記され得る、「応答の期間」とは、本明細書において用いる場合、悪性リンパ腫または死亡の改訂IWG応答基準(the revised IWG Response Criteria for Malignant Lymphoma,or death)に従って、対象の最初の客観的応答から確認された疾患進行の日までの期間を指す。
【0074】
OSと略記され得る「全生存期間」という用語は、治療日から死亡日までの時間として定義される。
【0075】
本明細書で使用される「サイトカイン」とは、特定の抗原との接触に応答して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質であって、このサイトカインが、第2の細胞と相互作用して、この第2の細胞における応答を媒介する、非抗体タンパク質である。サイトカインは、細胞によって内因的に発現されてもよいし、または対象に投与されてもよい。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞などの免疫細胞から放出され、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞にさまざまな反応を誘発し得る。サイトカインとしては、恒常性サイトカイン、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン、エフェクター、及び急性期タンパク質が挙げられ得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15などの恒常性サイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは、炎症反応を促進し得る。恒常性サイトカインの例としては、限定するものではないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15、及びインターフェロン(IFN)ガンマが挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例としては、限定するものではないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-ベータ、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D、及び胎盤成長因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例としては、限定するものではないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)、及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例としては、限定するものではないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0076】
「ケモカイン」とは、細胞の走化性、または方向性のある動きを媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例としては、限定するものではないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDCまたはCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1またはCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導タンパク質10(IP-10)、ならびに胸腺及び活性化調節ケモカイン(TARCまたはCCL17)が挙げられる。
【0077】
本発明の分析物及びサイトカインの他の例としては、限定するものではないが、ケモカイン(CーCモチーフ)リガンド(CCL)1、CCL5、単球特異的ケモカイン3(MCP3またはCCL7)、単球化学誘引物質タンパク質2(MCP-2またはCCL8)、CCL13、IL-1、IL-3、IL-9、IL-11、IL-12、IL-14、IL-17、IL-20、IL-21、顆粒球コロニー刺激因子( G-CSF)、白血病抑制因子(LIF)、オンコスタチンM(OSM)、CD154、リンホトキシン(LT)ベータ、4-1BBリガンド(4-1BBL)、増殖誘導リガンド(APRIL)、CD70、CD153、CD178、グルココルチコイド誘導TNFR関連リガンド(GITRL)、腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14)、OX40L、TNF及びApoL関連白血球発現リガンド1(TALL-1)、またはTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)が挙げられる。
【0078】
薬物または治療剤の「治療有効量」、「有効用量」、「有効量」または「治療有効投薬量」とは、単独で、または別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発現に対して対象を保護するか、あるいは疾患症状の重症度の低下により証明される疾患退行、疾患の症状のない期間の頻度及び期間の増大、または疾患の苦痛に起因する機能障害もしくは障害の予防を促進する薬物の任意の量である。疾患退行を促進する治療剤の能力は、臨床試験中のヒト対象において、ヒトでの有効性を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイで薬剤の活性をアッセイすることによってなど、熟練した施術者に公知の様々な方法を使用して評価され得る。
【0079】
本明細書で使用される「リンパ球」という用語は、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、またはB細胞を含む。NK細胞は、細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種であり、固有の免疫系の主要な構成要素である。NK細胞は、腫瘍及びウイルスに感染した細胞を拒絶する。それはアポトーシスまたはプログラム細胞死のプロセスを通して機能する。それらは細胞を殺すために活性化を必要としないので「ナチュラルキラー」と呼ばれた。T細胞は細胞媒介性免疫(抗体の関与はない)において主要な役割を果たす。T細胞受容体(TCR)は、T細胞を他のリンパ球タイプから区別する。免疫系の特殊な器官である胸腺は、主にT細胞の成熟を担う。T細胞には6つのタイプがある。すなわち、ヘルパーT細胞(例えば、CD4+細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞傷害性T細胞、CD8+T細胞またはキラーT細胞としても公知)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のような幹メモリーTSCM細胞は、CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+及びIL-7Rα+であるが、それらはまた、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3、及びLFA-1を発現し、メモリー細胞に特有の多数の機能的属性を示す);(ii)セントラルメモリーTCM細胞はL-セレクチン及びCCR7を発現し、IL-2を分泌するが、IFNγまたはIL-4は分泌しない、ならびに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞は、L-セレクチンまたはCCR7を発現しないが、IFNγ及びIL-4などのエフェクターサイトカイン産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサ-T細胞、またはCD4+CD25+制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)、及びガンマデルタT細胞である。一方、B細胞は体液性免疫において主要な役割を果たす(抗体の関与を伴う)。B細胞は抗体及び抗原を作り、抗原提示細胞(APC)の役割を果たし、抗原相互作用による活性化後にメモリーB細胞に変わる。哺乳類では、未熟なB細胞が骨髄で形成され、その名前の由来となっている。
【0080】
「遺伝子操作された」または「操作された」という用語は、コード領域もしくは非コード領域またはその一部を削除すること、あるいはコード領域またはその一部を挿入することを含むがこれらに限定されない、細胞のゲノムを改変する方法を指す。いくつかの実施形態では、改変される細胞とは、リンパ球、例えば、T細胞またはCD3を発現する改変された細胞であり、これは、患者またはドナーのいずれかから得られ得る。細胞は、例えば、細胞のゲノムに組み込まれる、本明細書に開示されるT細胞受容体(TCR)などの外因性構築物を発現するように改変され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、CD3を発現するように改変される。
【0081】
「免疫応答」とは、免疫系の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞及び好中球)の作用、ならびに任意のこれらの細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子(抗体(Ab)、サイトカイン、及び補体を含む)であって、脊椎動物の体内からの侵入する病原体の排除、及び/または病原体に感染した細胞または組織、がん細胞または他の異常な細胞、あるいは自己免疫または病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞または組織に対して、選択的標的化、結合、損傷、破壊を生じるものを指す。
【0082】
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導、増強、抑制、または他の方法で改変することを含む方法による、疾患に罹患しているか、または疾患に罹患もしくは再発するリスクがある対象の治療を指す。免疫療法の例としては、限定するものではないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法には、養子T細胞療法、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)免疫療法、自己細胞療法、操作された自己細胞療法(eACT)、及び同種異系T細胞移植が挙げられる。
【0083】
本明細書に記載の免疫療法で使用される細胞は、当技術分野で公知の供給源に由来し得る。例えば、T細胞は、造血幹細胞集団からインビトロで分化されてもよく、またはT細胞は、対象から得てもよい。T細胞は、例えば、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られ得る。さらに、T細胞は、当該分野で利用可能な1つ以上のT細胞株由来であり得る。T細胞はまた、FICOLL(商標)分離及び/またはアフェレーシスなどの当業者に公知の多数の技術を使用して、対象から収集された血液の単位から得てもよい。T細胞治療のためにT細胞を単離する追加の方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2013/0287748号に開示されている。免疫療法はまた、改変された細胞を対象に投与することを含み得、ここで、この改変された細胞は、本明細書に開示されるCD3及びTCRを発現する。いくつかの実施形態では、改変された細胞は、T細胞ではない。
【0084】
本明細書で使用される「患者」としては、がん(例えば、リンパ腫または白血病)に罹患している任意のヒトが挙げられる。「対象」及び「患者」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0085】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基から構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドには少なくとも2つのアミノ酸が含まれている必要があり、タンパク質またはペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドとしては、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質が挙げられる。本明細書で使用される場合、この用語は、例えば、当技術分野で一般にペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーとも呼ばれる短鎖、ならびに多くの種類がある、当技術分野で一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、とりわけ、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。このポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される「刺激」とは、シグナル伝達事象を媒介する、刺激分子とその同族リガンドとの結合によって誘導される一次応答を指す。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、T細胞受容体(TCR)/ CD3複合体であり、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合する。「刺激性リガンド」とは、抗原提示細胞(例えば、aAPC、樹状細胞、B細胞など)上に存在する場合、T細胞上の刺激性分子と特異的に結合し、それによって、活性化、免疫応答の開始、増殖などを含むがこれらに限定されない、T細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとしては、限定するものではないが、ペプチド、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体がロードされたMHCクラスI分子が挙げられる。
【0087】
「コンディショニング」及び「プレコンディショニング」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、適切な状態のためにT細胞療法を必要とする患者を準備することを示す。本明細書で使用されるコンディショニングとしては、限定するものではないが、内因性リンパ球の数の減少、サイトカインシンクの除去、1つ以上の恒常性サイトカインまたは炎症誘発性因子の血清レベルの増大、コンディショニング後に投与されたT細胞のエフェクター機能の増強、抗原提示細胞の活性化及び/または利用可能性の増強、あるいはT細胞療法の前のそれらの任意の組み合わせが挙げられる。一実施形態では、「コンディショニング」は、1つ以上のサイトカイン、例えば、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン5(IL-5)、ガンマ誘導タンパク質10(IP-10)、インターロイキン8(IL-8)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)、胎盤成長因子(PLGF)、C反応性タンパク質(CRP)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、またはそれらの任意の組み合わせの血清レベルを増大させることを含む。別の実施形態では、「コンディショニング」は、IL-7、IL-15、IP-10、MCP-1、PLGF、CRP、またはそれらの任意の組み合わせの血清レベルを増大させることを含む。
【0088】
対象の「治療」または「治療すること」とは、症状、合併症もしくは状態、または疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、発達、症状の重症度もしくは再発を逆転、緩和、改善、阻害、減速、または予防する目的で、対象に対して行われる任意の種類の介入もしくはプロセス、または対象に対する活性剤の投与を指す。一実施形態では、「治療」または「治療すること」とは、部分的な寛解を含む。別の実施形態では、「治療」または「治療すること」とは、完全寛解を含む。
【0089】
選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢の一方、両方またはその任意の組み合わせのいずれかを意味することを理解されたい。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」とは、列挙または列挙された任意の構成要素の「1つ以上」を指すと理解されるべきである。
【0090】
「約」または「本質的に含む」という用語は、当業者によって決定される特定の値または組成物の許容誤差範囲内にある値または組成物を指し、これは、部分的には、値または組成がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの限界に依存する。例えば、「約」または「本質的に含む」とは、当技術分野における実践ごとに1標準偏差以内または1標準偏差を超えることを意味し得る。あるいは、「約」または「本質的に含む」とは、最大10%(すなわち、±10%)の範囲を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mgから3.3mg(10%の場合)の間の任意の数を含み得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、最大1桁または最大5倍の値を意味し得る。特定の値または組成物が本出願及び特許請求の範囲で提供される場合、特に明記しない限り、「約」または「本質的に含む」の意味は、その特定の値または組成物の許容誤差範囲内にあると想定されるべきである。
【0091】
本明細書に記載のとおり、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、特に指定のしない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値を含み、必要に応じて、その分数(整数の1/10及び1/100など)を含むものと理解されるべきである。
【0092】
本発明の様々な態様は、以下のサブセクションでさらに詳細に説明される。
【0093】
II.開示の組成物
本開示は、NY-ESO-1上のエピトープに特異的に結合するT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分、それをコードする核酸分子、及びTCRまたは核酸分子を含む細胞に関する。本開示のいくつかの態様は、対象に本明細書に記載のTCRを含む細胞を投与することを含む、それを必要とする対象においてがんを治療する方法に関する。本開示の他の態様は、TCRが結合するNY-ESO-1のエピトープ、及びNY-ESO-1のエピトープを含むペプチドと複合体を形成したHLAクラスI分子に関する。
【0094】
T細胞受容体、またはTCRは、T細胞、またはTリンパ球の表面に見られる分子であり、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドとして抗原のフラグメントを認識することに関与している。TCRと抗原ペプチドとの間の結合は、比較的親和性が低く、縮退している:すなわち、多くのTCRが同じ抗原ペプチドを認識し、多くの抗原ペプチドが同じTCRによって認識される。
【0095】
TCRは、2つの異なるタンパク質鎖から構成される(すなわち、それはヘテロ二量体である)。ヒトでは、T細胞の95%では、TCRは、アルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖(それぞれTRAとTRBによってコードされる)で構成されているが、T細胞の5%では、TCRはガンマ及びデルタ(γ/δ)鎖(それぞれTRG及びTRDによってコードされる)からなる。この比率は、個体発生中及び病的状態(白血病など)で変化する。これはまた、種によっても異なる。4つの遺伝子座のオルソログはさまざまな種でマッピングされている。各遺伝子座は、定常領域及び可変領域を有するさまざまなポリペプチドを生成し得る。
【0096】
TCRが抗原性ペプチド及びMHC(ペプチド/ MHC)と係合する場合、Tリンパ球は、シグナル伝達、すなわち、関連する酵素、共受容体、特殊なアダプター分子、及び活性化されるかまたは放出された転写因子によって媒介される一連の生化学的事象を介して活性化される。
【0097】
II.A. 核酸分子
本開示の特定の態様は、(i)ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えTCRまたはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)をコードする第1のヌクレオチド配列と;(ii)第2のヌクレオチド配列であって、この第2のヌクレオチド配列またはこの第2のヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドが、内因性TCRの発現を阻害する、第2のヌクレオチド配列と、を含む核酸分子に関する。いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、天然に存在しない配列である。他の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は合成である。さらに他の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、内因性TCRをコードするヌクレオチド配列を標的とする配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRとヒトNY-ESO-1への結合について交差競合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複するエピトープに結合する。
【0098】
いくつかの実施形態では、参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み;ここで、アルファ鎖は、相補性決定領域1(CDR1)、CDR2、及びCDR3を含み;ここで、ベータ鎖は、CDR1、CDR2、及びCDR3を含み;ここで、参照TCRは、配列番号7に示されるアルファ鎖CDR3及び配列番号10に示されるベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列に存在し、及び参照TCRは、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在するベータ鎖CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む。いくつかの実施形態では、参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、ここで、アルファ鎖は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含み、ベータ鎖は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
【表3-1】
【表3-2】
【0099】
II.A.1.第1のヌクレオチド配列によってコードされるTCR
本開示は、本明細書に記載される第1のヌクレオチド配列によってコードされるTCRに関する。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、このアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変領域を含み;ここで、このベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列(CVVSFSGNTPLVF)を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列(CASSSSYSNQPQHF)を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖及び/またはベータ鎖の非CDR領域は、さらに改変され、例えば、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、または6つのアミノ酸の置換または変異があり、そのためこのアルファ鎖及び/またはベータ鎖は自然に存在するものではない。いくつかの実施形態では、置換または突然変異は、様々な方法、例えば、結合親和性、結合特異性、安定性、粘度、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、本明細書に記載のTCRを改善し得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖CDR1を含み、この抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR1は、配列番号5に示されるアミノ酸配列(SSYSPS)を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、ベータ鎖CDR1を含み、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR1は、配列番号8に示されるアミノ酸配列(SEHNR)を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖CDR2を含み、この抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR2は、配列番号6に示されるアミノ酸配列(YTSAATLV)を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、ベータ鎖CDR2を含み、この抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR2は、配列番号9に示されるアミノ酸配列(FQNEAQ)を含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアルファ鎖可変ドメインを含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列に存在するアルファ鎖可変ドメインを含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するベータ鎖可変ドメインを含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるアミノ酸配列に存在するベータ鎖可変ドメインを含む。
【0104】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはアルファ鎖定常領域とベータ鎖定常領域の両方をさらに含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖定常ドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアルファ鎖定常ドメインを含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列に存在するアルファ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖の内因性(例えば、天然に存在する)定常領域とは異なるアルファ定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するベータ鎖定常領域を含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列に存在するベータ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、ベータ鎖の内因性、例えば、天然に存在する定常領域とは異なるベータ定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、このベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。
【0106】
特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖を含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖を含む。
【0107】
特定の実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖を含み、ここでこの抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方を含み;ここで、このアルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方は、内因性TCRの対応するアミノ酸配列に対して標的配列内で、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個の置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0109】
II.A.2.エピトープ類
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRと同じエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列(APRGPHGGAASGL)を含むNY-ESO-1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、このエピトープは、NY-ESO-1(配列番号52)のアミノ酸残基60-72、例えば、「NY-ESO-160-72」からなる。
【0110】
特定の実施形態では、エピトープは、HLAクラスI分子と複合体を形成している。ヒト白血球抗原(HLA)システム(ヒトの主要組織適合遺伝子複合体[MHC])は、免疫系の重要な部分であり、第6染色体にある遺伝子によって制御される。これは、T細胞上のT細胞受容体(TCR)に抗原ペプチドを提示することに特化した細胞表面分子をコードする。(免疫系の概要(Overview of the Immune System.)も参照してください。)抗原(Ag)を提示するMHC分子は、クラスIMHC分子及びクラスIIMHC分子という2つの主要なクラスに分類される。
【0111】
クラスI MHC分子は、全ての有核細胞の表面に膜貫通糖タンパク質として存在する。インタクトなクラスI分子は、ベータ2ミクログロブリン分子に結合したアルファ重鎖からなる。この重鎖は、2つのペプチド結合ドメイン、Ig様ドメイン、及び細胞質尾部を持つ膜貫通領域からなる。クラスI分子の重鎖は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-C遺伝子座の遺伝子によってコードされている。CD8分子を発現するT細胞は、クラスIMHC分子と反応する。これらのリンパ球は、細胞毒性機能を有する場合が多く、感染した細胞を認識できる必要がある。あらゆる有核細胞はクラスIMHC分子を発現するので、全ての感染細胞は、CD8 T細胞の抗原提示細胞として機能し得る(CD8は、クラスI重鎖の非多型部分に結合する)。一部のクラスIMHC遺伝子は、HLA-G(胎児を母体の免疫応答から保護する役割を果たし得る)及びHLA-E(ナチュラルキラー[NK]細胞上の特定の受容体にペプチドを提示する)などの非古典的なMHC分子をコードする。
【0112】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-C対立遺伝子から選択される。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-E、HLA-F、及びHLA-G対立遺伝子から選択される。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-C対立遺伝子である。
【0113】
多くのHLA-A、HLA-B、及びHLA-C対立遺伝子が当技術分野で公知であり、任意の公知の対立遺伝子を本開示で使用し得る。HLA対立遺伝子の更新されたリストは、hla.alleles.org/で入手可能である(最終訪問日は2019年2月27日)。いくつかの実施形態では、HLAクラス1分子は、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*13、HLA-B*14、HLA-B*15、HLA-B*18、HLA-B*27、HLA-B*35、HLA-B*37、HLA-B*38、HLA-B*39、HLA-B*40、HLA-B*41、HLA-B*42、HLA-B*44、HLA-B*45、HLA-B*46、HLA-B*47、HLA-B*48、HLA-B*49、HLA-B*50、HLA-B*51、HLA-B*52、HLA-B*53、HLA-B*54、HLA-B*55、HLA-B*56、HLA-B*57、HLA-B*58、HLA-B*59、HLA-B*67、HLA-B*73、HLA-B*78、HLA-B*79、HLA-B*81、HLA-B*82、及びHLA-B*83から選択されるHLA-B対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:03対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:04対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:05対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:06対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLAクラス1分子は、HLA-B*07:02:01:01、HLA-B*07:02:01:02、HLA-B*07:02:01:03、HLA-B*07:02:01:04、HLA-B*07:02:01:05、HLA-B*07:02:01:06、HLA-B*07:02:01:07、HLA-B*07:02:01:08、HLA-B*07:02:01:09、HLA-B*07:02:01:10、HLA-B*07:02:01:11、HLA-B*07:02:01:12、HLA-B*07:02:01:13、HLA-B*07:02:01:14、HLA-B*07:02:02、HLA-B*07:02:03、HLA-B*07:02:04、HLA-B*07:02:05、HLA-B*07:02:06、HLA-B*07:02:07、HLA-B*07:02:08、HLA-B*07:02:09、HLA-B*07:02:10、HLA-B*07:02:11、HLA-B*07:02:12、HLA-B*07:02:13、HLA-B*07:02:14、HLA-B*07:02:15、HLA-B*07:02:16、HLA-B*07:02:17、HLA-B*07:02:18、HLA-B*07:02:19、HLA-B*07:02:20、HLA-B*07:02:21、HLA-B*07:02:22、HLA-B*07:02:23、HLA-B*07:02:24、HLA-B*07:02:25、HLA-B*07:02:26、HLA-B*07:02:27、HLA-B*07:02:28、HLA-B*07:02:29、HLA-B*07:02:30、HLA-B*07:02:31、HLA-B*07:02:32、HLA-B*07:02:33、HLA-B*07:02:34、HLA-B*07:02:35、HLA-B*07:02:36、HLA-B*07:02:37、HLA-B*07:02:38、HLA-B*07:02:39、HLA-B*07:02:40、HLA-B*07:02:41、HLA-B*07:02:42、HLA-B*07:02:43、HLA-B*07:02:44、HLA-B*07:02:45、HLA-B*07:02:46、HLA-B*07:02:47、HLA-B*07:02:48、HLA-B*07:02:49、HLA-B*07:02:50、HLA-B*07:02:51、HLA-B*07:02:52、HLA-B*07:02:53、HLA-B*07:02:54、HLA-B*07:02:55、HLA-B*07:02:56、HLA-B*07:02:57、HLA-B*07:02:58、HLA-B*07:02:59、HLA-B*07:02:60、HLA-B*07:02:61、HLA-B*07:02:62、HLA-B*07:02:63、HLA-B*07:02:64、HLA-B*07:02:65、HLA-B*07:02:66、HLA-B*07:02:67、HLA-B*07:02:68、HLA-B*07:02:69、HLA-B*07:02:70、HLA-B*07:02:71、HLA-B*07:02:72、HLA-B*07:02:73、HLA-B*07:03、HLA-B*07:04:01、HLA-B*07:04:02、HLA-B*07:05:01:01、HLA-B*07:05:01:02、HLA-B*07:05:01:03、HLA-B*07:05:01:04、HLA-B*07:05:02、HLA-B*07:05:03、HLA-B*07:05:04、HLA-B*07:05:05、HLA-B*07:05:06、HLA-B*07:05:07、HLA-B*07:05:08、HLA-B*07:05:09、HLA-B*07:06:01、HLA-B*07:06:02、HLA-B*07:06:03、HLA-B*07:07:01、HLA-B*07:07:02、HLA-B*07:08:01、HLA-B*07:08:02、HLA-B*07:09:01、HLA-B*07:09:02、HLA-B*07:10、HLA-B*07:100、HLA-B*07:101、HLA-B*07:102、HLA-B*07:103、HLA-B*07:104、HLA-B*07:105、HLA-B*07:106、HLA-B*07:107、HLA-B*07:108、HLA-B*07:109、HLA-B*07:11、HLA-B*07:110、HLA-B*07:111、HLA-B*07:112、HLA-B*07:113、HLA-B*07:114、HLA-B*07:115、HLA-B*07:116、HLA-B*07:117、HLA-B*07:118、HLA-B*07:119、HLA-B*07:12、HLA-B*07:120、HLA-B*07:121、HLA-B*07:122、HLA-B*07:123、HLA-B*07:124、HLA-B*07:125、HLA-B*07:126、HLA-B*07:127、HLA-B*07:128、HLA-B*07:129、HLA-B*07:13、HLA-B*07:130、HLA-B*07:131、HLA-B*07:132、HLA-B*07:133、HLA-B*07:134、HLA-B*07:135、HLA-B*07:136:01、HLA-B*07:136:02、HLA-B*07:137、HLA-B*07:138、HLA-B*07:139:01、HLA-B*07:139:02、HLA-B*07:14、HLA-B*07:140、HLA-B*07:141、HLA-B*07:142、HLA-B*07:143、HLA-B*07:144、HLA-B*07:145、HLA-B*07:146、HLA-B*07:147、HLA-B*07:148、HLA-B*07:149、HLA-B*07:15、HLA-B*07:150、HLA-B*07:151:01、HLA-B*07:151:02、HLA-B*07:152、HLA-B*07:153、HLA-B*07:154、HLA-B*07:155、HLA-B*07:156、HLA-B*07:157、HLA-B*07:158、HLA-B*07:159、HLA-B*07:16、HLA-B*07:160、HLA-B*07:161、HLA-B*07:162、HLA-B*07:163、HLA-B*07:164、HLA-B*07:165、HLA-B*07:166、HLA-B*07:167、HLA-B*07:168、HLA-B*07:169、HLA-B*07:17、HLA-B*07:170、HLA-B*07:171、HLA-B*07:172、HLA-B*07:173、HLA-B*07:174、HLA-B*07:175、HLA-B*07:176、HLA-B*07:177、HLA-B*07:178、HLA-B*07:179、HLA-B*07:180、HLA-B*07:181、HLA-B*07:182、HLA-B*07:183、HLA-B*07:184、HLA-B*07:185、HLA-B*07:186、HLA-B*07:187、HLA-B*07:188、HLA-B*07:189、HLA-B*07:18:01、HLA-B*07:18:02、HLA-B*07:19、HLA-B*07:190、HLA-B*07:191、HLA-B*07:192、HLA-B*07:193、HLA-B*07:194、HLA-B*07:195、HLA-B*07:196、HLA-B*07:197、HLA-B*07:198、HLA-B*07:199、HLA-B*07:20、HLA-B*07:200、HLA-B*07:201、HLA-B*07:202、HLA-B*07:203、HLA-B*07:204、HLA-B*07:205、HLA-B*07:206、HLA-B*07:207、HLA-B*07:208、HLA-B*07:209、HLA-B*07:21、HLA-B*07:210、HLA-B*07:211、HLA-B*07:212、HLA-B*07:213、HLA-B*07:214、HLA-B*07:215、HLA-B*07:216、HLA-B*07:217、HLA-B*07:218、HLA-B*07:219、HLA-B*07:220、HLA-B*07:221、HLA-B*07:222、HLA-B*07:223、HLA-B*07:224、HLA-B*07:225、HLA-B*07:226、HLA-B*07:227、HLA-B*07:228:01、HLA-B*07:228:02、HLA-B*07:229、HLA-B*07:22:01、HLA-B*07:22:02、HLA-B*07:23、HLA-B*07:230、HLA-B*07:231、HLA-B*07:232、HLA-B*07:233、HLA-B*07:234、HLA-B*07:235、HLA-B*07:236、HLA-B*07:237、HLA-B*07:238、HLA-B*07:239、HLA-B*07:24、HLA-B*07:240、HLA-B*07:241、HLA-B*07:242、HLA-B*07:243、HLA-B*07:244、HLA-B*07:245、HLA-B*07:246、HLA-B*07:247、HLA-B*07:248、HLA-B*07:249、HLA-B*07:25、HLA-B*07:250、HLA-B*07:251、HLA-B*07:252、HLA-B*07:253、HLA-B*07:254、HLA-B*07:255、HLA-B*07:256、HLA-B*07:257、HLA-B*07:258、HLA-B*07:259、HLA-B*07:26、HLA-B*07:260、HLA-B*07:261、HLA-B*07:262、HLA-B*07:263、HLA-B*07:264、HLA-B*07:265、HLA-B*07:266、HLA-B*07:267、HLA-B*07:268、HLA-B*07:269、HLA-B*07:27、HLA-B*07:270、HLA-B*07:271、HLA-B*07:272、HLA-B*07:273、HLA-B*07:274、HLA-B*07:275、HLA-B*07:276:01、HLA-B*07:276:02、HLA-B*07:277、HLA-B*07:278、HLA-B*07:279
、HLA-B*07:28、HLA-B*07:280、HLA-B*07:281、HLA-B*07:282、HLA-B*07:283、HLA-B*07:284、HLA-B*07:285、HLA-B*07:286、HLA-B*07:287、HLA-B*07:288、HLA-B*07:289、HLA-B*07:29、HLA-B*07:290、HLA-B*07:291、HLA-B*07:292、HLA-B*07:293、HLA-B*07:294、HLA-B*07:295、HLA-B*07:296、HLA-B*07:297、HLA-B*07:298、HLA-B*07:299、HLA-B*07:30、HLA-B*07:300、HLA-B*07:301、HLA-B*07:302、HLA-B*07:303:01、HLA-B*07:303:02、HLA-B*07:304、HLA-B*07:305、HLA-B*07:306、HLA-B*07:307、HLA-B*07:308、HLA-B*07:309、HLA-B*07:31、HLA-B*07:310、HLA-B*07:311、HLA-B*07:312、HLA-B*07:313、HLA-B*07:314、HLA-B*07:315、HLA-B*07:316、HLA-B*07:317、HLA-B*07:318、HLA-B*07:319、HLA-B*07:32、HLA-B*07:320、HLA-B*07:321、HLA-B*07:322、HLA-B*07:323、HLA-B*07:324、HLA-B*07:325、HLA-B*07:326、HLA-B*07:327、HLA-B*07:328、HLA-B*07:329、HLA-B*07:330、HLA-B*07:331、HLA-B*07:332、HLA-B*07:333、HLA-B*07:334、HLA-B*07:335、HLA-B*07:336、HLA-B*07:337、HLA-B*07:338、HLA-B*07:339、HLA-B*07:33:01、HLA-B*07:33:02、HLA-B*07:33:03、HLA-B*07:34、HLA-B*07:340、HLA-B*07:341、HLA-B*07:342、HLA-B*07:343、HLA-B*07:344、HLA-B*07:345、HLA-B*07:346、HLA-B*07:347、HLA-B*07:348、HLA-B*07:349、HLA-B*07:35、HLA-B*07:350、HLA-B*07:351、HLA-B*07:352、HLA-B*07:353、HLA-B*07:354、HLA-B*07:355、HLA-B*07:356、HLA-B*07:357、HLA-B*07:358、HLA-B*07:36、HLA-B*07:37:01、HLA-B*07:37:02、HLA-B*07:38、HLA-B*07:39、HLA-B*07:40、HLA-B*07:41、HLA-B*07:42、HLA-B*07:43、HLA-B*07:44、HLA-B*07:45、HLA-B*07:46、HLA-B*07:47、HLA-B*07:48、HLA-B*07:49、HLA-B*07:50、HLA-B*07:51、HLA-B*07:52、HLA-B*07:53、HLA-B*07:54、HLA-B*07:55、HLA-B*07:56:01、HLA-B*07:56:02、HLA-B*07:57、HLA-B*07:58、HLA-B*07:59、HLA-B*07:60、HLA-B*07:61、HLA-B*07:62、HLA-B*07:63、HLA-B*07:64、HLA-B*07:65、HLA-B*07:66、HLA-B*07:67、HLA-B*07:68:01、HLA-B*07:68:02、HLA-B*07:68:03、HLA-B*07:69、HLA-B*07:70、HLA-B*07:71、HLA-B*07:72、HLA-B*07:73、HLA-B*07:74、HLA-B*07:75:01:01、HLA-B*07:75:01:02、HLA-B*07:76、HLA-B*07:77、HLA-B*07:78、HLA-B*07:79、HLA-B*07:80、HLA-B*07:81、HLA-B*07:82、HLA-B*07:83、HLA-B*07:84、HLA-B*07:85:01、HLA-B*07:85:02、HLA-B*07:86、HLA-B*07:87、HLA-B*07:88、HLA-B*07:89、HLA-B*07:90、HLA-B*07:91、HLA-B*07:92、HLA-B*07:93、HLA-B*07:94、HLA-B*07:95、HLA-B*07:96:01、HLA-B*07:96:02、HLA-B*07:97、HLA-B*07:98、及びHLA-B*07:99からなる群より選択されるHLA-B対立遺伝子である。
【0114】
II.A.3 第2のヌクレオチド配列
本明細書に開示される核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、任意の配列であってもよいし、または内因性TCRの発現を阻害し得る任意のポリペプチドをコードしてもよい。いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、1つ以上のsiRNAである。いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、内因性TCRの定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である。特定の実施形態では、1つ以上のsiRNAは、野生型、ヒトTCRの定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である。いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、野生型TCRのアルファ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である。いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、野生型TCRのベータ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である。いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、(i)野生型TCRのアルファ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である1つ以上のsiRNA、及び(ii)野生型TCRのベータ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である1つ以上のsiRNAを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つ以上のsiRNAは、配列番号53~56からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む(表4)。いくつかの実施形態では、核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、1つ以上のsiRNAをコードし、ここで、1つ以上のsiRNAは、野生型TCRのアルファ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的であり、ここで、1つ以上のsiRNAは、配列番号53及び54に示される核酸配列を含む。
【表4】
【0116】
いくつかの実施形態では、核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、1つ以上のsiRNAをコードし、ここで、1つ以上のsiRNAは、野生型TCRのベータ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的であり、ここで、1つ以上のsiRNAは、配列番号55及び56に示される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、1つ以上のsiRNAをコードし、ここで、1つ以上のsiRNAは、(i)野生型TCRのアルファ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である1つ以上のsiRNAであってここで、この1つ以上のsiRNAは、配列番号53及び54に示される核酸配列を含むsiRNAと、(ii)野生型TCRのベータ鎖の定常領域をコードするヌクレオチド配列内の標的配列に相補的である1つ以上のsiRNAであって、ここで、この1つ以上のsiRNAは、配列番号55及び56に示される核酸配列を含むsiRNAとを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、配列番号53~56を含む。いくつかの実施形態では、この第2のヌクレオチド配列は、配列番号53~56を含み、ここで配列番号53~56のうちの1つ以上は、siRNAをコードしない1つ以上の核酸によって隔てられる。特定の実施形態では、1つ以上のsiRNAは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国公開第2010/0273213 A1号に開示されているsiRNAから選択される。
【0118】
いくつかの実施形態では、核酸分子の第2のヌクレオチド配列は、タンパク質をコードし、ここで、このタンパク質は、内因性、例えば、野生型、TCRの発現を阻害し得る。いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、Cas9をコードする。
【0119】
II.A.3 ベクター
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸分子を含むベクターに関する。いくつかの実施形態では、このベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、ウイルス粒子またはウイルスである。いくつかの実施形態では、このベクターは、哺乳動物ベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、細菌ベクターである。
【0120】
特定の実施形態では、このベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルス、センダイウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタインバーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターからなる群より選択される。特定の実施形態では、このベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、レンチウイルスである。特定の実施形態では、このベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、このベクターは、センダイウイルスである。いくつかの実施形態では、このベクターは、ハイブリッドベクターである。本開示で使用し得るハイブリッドベクターの例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Huang and Kamihira,Biotechnol.Adv.31(2):208-23(2103)に見出され得る。
【0121】
II.B. 組み換えT細胞受容体(TCR)
本開示の特定の態様は、ヒトNY-ESO-1に特異的に結合する組換えT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合部分(「抗NY-ESO-1 TCR」)に関する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、本明細書に開示される核酸分子によってコードされる。
【0122】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRとヒトNY-ESO-1への結合について交差競合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRと同じヒトNY-ESO-1のエピトープまたは重複するエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、参照TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、そしてこのアルファ鎖は、参照TCRから構成され、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、参照TCRのベータ鎖は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、ここでこのアルファ鎖は定常領域を含み、このベータ鎖は定常領域を含み;ここで、アルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖の定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、ここでこのアルファ鎖は定常領域を含み、このベータ鎖は定常領域を含み;ここで、このベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖の定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖及びベータ鎖を含み、ここで、このアルファ鎖は定常領域を含み、このベータ鎖は定常領域を含み;ここで、(i)このアルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖の定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含み;そして(ii)ベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖の定常領域に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖は、アルファ鎖CDR1、アルファ鎖CDR2、及びアルファ鎖CDR3を含む可変ドメインを含み;この抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖は、ベータ鎖CDR1、ベータ鎖CDR2、及びベータ鎖CDR3を含む可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR1は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR1は、配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのアルファ鎖CDR2は、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRのベータ鎖CDR2は、配列番号9に示されるアミノ酸配列を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアルファ鎖可変ドメインを含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列に存在するアルファ鎖可変ドメインを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の可変ドメインと、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するベータ鎖可変ドメインを含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列に存在するベータ鎖可変ドメインを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはアルファ鎖定常領域とベータ鎖定常領域の両方をさらに含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアルファ鎖定常領域を含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列に存在するアルファ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチドによってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖の内因性の、例えば、天然に存在する定常領域とは異なるアルファ鎖定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖定常領域は、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列の定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するベータ鎖定常領域を含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列に存在するベータ鎖定常領域を含む。いくつかの実施形態では、第1のヌクレオチド配列によってコードされる抗NY-ESO-1 TCRは、ベータ鎖の内因性、例えば、天然に存在する定常領域とは異なるベータ定常領域をさらに含む。いくつかの実施形態では、このベータ鎖定常領域は、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列の定常領域のアミノ酸配列に対して、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個のアミノ酸置換を含むアミノ酸配列を含む。
【0132】
特定の実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアルファ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアルファ鎖を含み、この抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号7に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含むアルファ鎖を含む。
【0133】
特定の実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるベータ鎖アミノ酸配列と、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するベータ鎖を含み、ここでこの抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖CDR3を含む。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むベータ鎖を含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、アルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方を含み;ここで、このアルファ鎖定常領域、ベータ鎖定常領域、またはその両方は、内因性TCRの対応するアミノ酸配列に対して標的配列内で、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、または少なくとも5個の置換を有するアミノ酸配列を含む。
【0135】
II.B.2.エピトープ類
いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、参照TCRと同じエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むNY-ESO-1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、抗NY-ESO-1 TCRは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるNY-ESO-1のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、このエピトープは、NY-ESO-1(配列番号52)のアミノ酸残基60-72、例えば、「NY-ESO-160-72」からなる。
【0136】
いくつかの実施形態では、このエピトープは、HLAクラスI分子と複合体を形成している。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、及びHLA-C対立遺伝子から選択される。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-E、HLA-F、及びHLA-G対立遺伝子から選択される。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-B対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-C対立遺伝子である。
【0137】
多くのHLA-A、HLA-B、及びHLA-C対立遺伝子が当技術分野で公知であり、任意の公知の対立遺伝子を本開示で使用し得る。HLA対立遺伝子の更新されたリストは、hla.alleles.org/で入手可能である(最終訪問日は2019年2月27日)。いくつかの実施形態では、HLAクラス1分子は、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*13、HLA-B*14、HLA-B*15、HLA-B*18、HLA-B*27、HLA-B*35、HLA-B*37、HLA-B*38、HLA-B*39、HLA-B*40、HLA-B*41、HLA-B*42、HLA-B*44、HLA-B*45、HLA-B*46、HLA-B*47、HLA-B*48、HLA-B*49、HLA-B*50、HLA-B*51、HLA-B*52、HLA-B*53、HLA-B*54、HLA-B*55、HLA-B*56、HLA-B*57、HLA-B*58、HLA-B*59、HLA-B*67、HLA-B*73、HLA-B*78、HLA-B*79、HLA-B*81、HLA-B*82, and an HLA-B*83から選択されるHLA-B対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:03対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:04対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:05対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:06対立遺伝子である。
【0138】
特定の実施形態では、HLAクラス1分子は、以下からなる群より選択されるHLA-B対立遺伝子である:HLA-B*07:02:01:01、HLA-B*07:02:01:02、HLA-B*07:02:01:03、HLA-B*07:02:01:04、HLA-B*07:02:01:05、HLA-B*07:02:01:06、HLA-B*07:02:01:07、HLA-B*07:02:01:08、HLA-B*07:02:01:09、HLA-B*07:02:01:10、HLA-B*07:02:01:11、HLA-B*07:02:01:12、HLA-B*07:02:01:13、HLA-B*07:02:01:14、HLA-B*07:02:02、HLA-B*07:02:03、HLA-B*07:02:04、HLA-B*07:02:05、HLA-B*07:02:06、HLA-B*07:02:07、HLA-B*07:02:08、HLA-B*07:02:09、HLA-B*07:02:10、HLA-B*07:02:11、HLA-B*07:02:12、HLA-B*07:02:13、HLA-B*07:02:14、HLA-B*07:02:15、HLA-B*07:02:16、HLA-B*07:02:17、HLA-B*07:02:18、HLA-B*07:02:19、HLA-B*07:02:20、HLA-B*07:02:21、HLA-B*07:02:22、HLA-B*07:02:23、HLA-B*07:02:24、HLA-B*07:02:25、HLA-B*07:02:26、HLA-B*07:02:27、HLA-B*07:02:28、HLA-B*07:02:29、HLA-B*07:02:30、HLA-B*07:02:31、HLA-B*07:02:32、HLA-B*07:02:33、HLA-B*07:02:34、HLA-B*07:02:35、HLA-B*07:02:36、HLA-B*07:02:37、HLA-B*07:02:38、HLA-B*07:02:39、HLA-B*07:02:40、HLA-B*07:02:41、HLA-B*07:02:42、HLA-B*07:02:43、HLA-B*07:02:44、HLA-B*07:02:45、HLA-B*07:02:46、HLA-B*07:02:47、HLA-B*07:02:48、HLA-B*07:02:49、HLA-B*07:02:50、HLA-B*07:02:51、HLA-B*07:02:52、HLA-B*07:02:53、HLA-B*07:02:54、HLA-B*07:02:55、HLA-B*07:02:56、HLA-B*07:02:57、HLA-B*07:02:58、HLA-B*07:02:59、HLA-B*07:02:60、HLA-B*07:02:61、HLA-B*07:02:62、HLA-B*07:02:63、HLA-B*07:02:64、HLA-B*07:02:65、HLA-B*07:02:66、HLA-B*07:02:67、HLA-B*07:02:68、HLA-B*07:02:69、HLA-B*07:02:70、HLA-B*07:02:71、HLA-B*07:02:72、HLA-B*07:02:73、HLA-B*07:03、HLA-B*07:04:01、HLA-B*07:04:02、HLA-B*07:05:01:01、HLA-B*07:05:01:02、HLA-B*07:05:01:03、HLA-B*07:05:01:04、HLA-B*07:05:02、HLA-B*07:05:03、HLA-B*07:05:04、HLA-B*07:05:05、HLA-B*07:05:06、HLA-B*07:05:07、HLA-B*07:05:08、HLA-B*07:05:09、HLA-B*07:06:01、HLA-B*07:06:02、HLA-B*07:06:03、HLA-B*07:07:01、HLA-B*07:07:02、HLA-B*07:08:01、HLA-B*07:08:02、HLA-B*07:09:01、HLA-B*07:09:02、HLA-B*07:10、HLA-B*07:100、HLA-B*07:101、HLA-B*07:102、HLA-B*07:103、HLA-B*07:104、HLA-B*07:105、HLA-B*07:106、HLA-B*07:107、HLA-B*07:108、HLA-B*07:109、HLA-B*07:11、HLA-B*07:110、HLA-B*07:111、HLA-B*07:112、HLA-B*07:113、HLA-B*07:114、HLA-B*07:115、HLA-B*07:116、HLA-B*07:117、HLA-B*07:118、HLA-B*07:119、HLA-B*07:12、HLA-B*07:120、HLA-B*07:121、HLA-B*07:122、HLA-B*07:123、HLA-B*07:124、HLA-B*07:125、HLA-B*07:126、HLA-B*07:127、HLA-B*07:128、HLA-B*07:129、HLA-B*07:13、HLA-B*07:130、HLA-B*07:131、HLA-B*07:132、HLA-B*07:133、HLA-B*07:134、HLA-B*07:135、HLA-B*07:136:01、HLA-B*07:136:02、HLA-B*07:137、HLA-B*07:138、HLA-B*07:139:01、HLA-B*07:139:02、HLA-B*07:14、HLA-B*07:140、HLA-B*07:141、HLA-B*07:142、HLA-B*07:143、HLA-B*07:144、HLA-B*07:145、HLA-B*07:146、HLA-B*07:147、HLA-B*07:148、HLA-B*07:149、HLA-B*07:15、HLA-B*07:150、HLA-B*07:151:01、HLA-B*07:151:02、HLA-B*07:152、HLA-B*07:153、HLA-B*07:154、HLA-B*07:155、HLA-B*07:156、HLA-B*07:157、HLA-B*07:158、HLA-B*07:159、HLA-B*07:16、HLA-B*07:160、HLA-B*07:161、HLA-B*07:162、HLA-B*07:163、HLA-B*07:164、HLA-B*07:165、HLA-B*07:166、HLA-B*07:167、HLA-B*07:168、HLA-B*07:169、HLA-B*07:17、HLA-B*07:170、HLA-B*07:171、HLA-B*07:172、HLA-B*07:173、HLA-B*07:174、HLA-B*07:175、HLA-B*07:176、HLA-B*07:177、HLA-B*07:178、HLA-B*07:179、HLA-B*07:180、HLA-B*07:181、HLA-B*07:182、HLA-B*07:183、HLA-B*07:184、HLA-B*07:185、HLA-B*07:186、HLA-B*07:187、HLA-B*07:188、HLA-B*07:189、HLA-B*07:18:01、HLA-B*07:18:02、HLA-B*07:19、HLA-B*07:190、HLA-B*07:191、HLA-B*07:192、HLA-B*07:193、HLA-B*07:194、HLA-B*07:195、HLA-B*07:196、HLA-B*07:197、HLA-B*07:198、HLA-B*07:199、HLA-B*07:20、HLA-B*07:200、HLA-B*07:201、HLA-B*07:202、HLA-B*07:203、HLA-B*07:204、HLA-B*07:205、HLA-B*07:206、HLA-B*07:207、HLA-B*07:208、HLA-B*07:209、HLA-B*07:21、HLA-B*07:210、HLA-B*07:211、HLA-B*07:212、HLA-B*07:213、HLA-B*07:214、HLA-B*07:215、HLA-B*07:216、HLA-B*07:217、HLA-B*07:218、HLA-B*07:219、HLA-B*07:220、HLA-B*07:221、HLA-B*07:222、HLA-B*07:223、HLA-B*07:224、HLA-B*07:225、HLA-B*07:226、HLA-B*07:227、HLA-B*07:228:01、HLA-B*07:228:02、HLA-B*07:229、HLA-B*07:22:01、HLA-B*07:22:02、HLA-B*07:23、HLA-B*07:230、HLA-B*07:231、HLA-B*07:232、HLA-B*07:233、HLA-B*07:234、HLA-B*07:235、HLA-B*07:236、HLA-B*07:237、HLA-B*07:238、HLA-B*07:239、HLA-B*07:24、HLA-B*07:240、HLA-B*07:241、HLA-B*07:242、HLA-B*07:243、HLA-B*07:244、HLA-B*07:245、HLA-B*07:246、HLA-B*07:247、HLA-B*07:248、HLA-B*07:249、HLA-B*07:25、HLA-B*07:250、HLA-B*07:251、HLA-B*07:252、HLA-B*07:253、HLA-B*07:254、HLA-B*07:255、HLA-B*07:256、HLA-B*07:257、HLA-B*07:258、HLA-B*07:259、HLA-B*07:26、HLA-B*07:260、HLA-B*07:261、HLA-B*07:262、HLA-B*07:263、HLA-B*07:264、HLA-B*07:265、HLA-B*07:266、HLA-B*07:267、HLA-B*07:268、HLA-B*07:269、HLA-B*07:27、HLA-B*07:270、HLA-B*07:271、HLA-B*07:272、HLA-B*07:273、HLA-B*07:274、HLA-B*07:275、HLA-B*07:276:01、HLA-B*07:276:02、HLA-B*07:277、HLA-B*07:278、HLA-B*07:279、HLA-B*07:28、HLA-B*07:280、HLA-B*07:281、HLA-B*07:282、HLA-B*07:283、HLA-B*07:284、HLA-B*07:285、HLA-B*07:286、HLA-B*07:287、HLA-B*07:288、HLA-B*07:289、HLA-B*07:29、HLA-B*07:290、HLA-B*07:291、HLA-B*07:292、HLA-B*07:293、HLA-B*07:294、HLA-B*07:295、HLA-B*07:296、HLA-B*07:297、HLA-B*07:298、HLA-B*07:299、HLA-B*07:30、HLA-B*07:300、HLA-B*07:301、HLA-B*07:302、HLA-B*07:303:01、HLA-B*07:303:02、HLA-B*07:304、HLA-B*07:305、HLA-B*07:306、HLA-B*07:307、HLA-B*07:308、HLA-B*07:309、HLA-B*07:31、HLA-B*07:310、HLA-B*07:311、HLA-B*07:312、HLA-B*07:313、HLA-B*07:314、HLA-B*07:315、HLA-B*07:316、HLA-B*07:317、HLA-B*07:318、HLA-B*07:319、HLA-B*07:32、HLA-B*07:320、HLA-B*07:321、HLA-B*07:322、HLA-B*07:323、HLA-B*07:324、HLA-B*07:325、HLA-B*
07:326、HLA-B*07:327、HLA-B*07:328、HLA-B*07:329、HLA-B*07:330、HLA-B*07:331、HLA-B*07:332、HLA-B*07:333、HLA-B*07:334、HLA-B*07:335、HLA-B*07:336、HLA-B*07:337、HLA-B*07:338、HLA-B*07:339、HLA-B*07:33:01、HLA-B*07:33:02、HLA-B*07:33:03、HLA-B*07:34、HLA-B*07:340、HLA-B*07:341、HLA-B*07:342、HLA-B*07:343、HLA-B*07:344、HLA-B*07:345、HLA-B*07:346、HLA-B*07:347、HLA-B*07:348、HLA-B*07:349、HLA-B*07:35、HLA-B*07:350、HLA-B*07:351、HLA-B*07:352、HLA-B*07:353、HLA-B*07:354、HLA-B*07:355、HLA-B*07:356、HLA-B*07:357、HLA-B*07:358、HLA-B*07:36、HLA-B*07:37:01、HLA-B*07:37:02、HLA-B*07:38、HLA-B*07:39、HLA-B*07:40、HLA-B*07:41、HLA-B*07:42、HLA-B*07:43、HLA-B*07:44、HLA-B*07:45、HLA-B*07:46、HLA-B*07:47、HLA-B*07:48、HLA-B*07:49、HLA-B*07:50、HLA-B*07:51、HLA-B*07:52、HLA-B*07:53、HLA-B*07:54、HLA-B*07:55、HLA-B*07:56:01、HLA-B*07:56:02、HLA-B*07:57、HLA-B*07:58、HLA-B*07:59、HLA-B*07:60、HLA-B*07:61、HLA-B*07:62、HLA-B*07:63、HLA-B*07:64、HLA-B*07:65、HLA-B*07:66、HLA-B*07:67、HLA-B*07:68:01、HLA-B*07:68:02、HLA-B*07:68:03、HLA-B*07:69、HLA-B*07:70、HLA-B*07:71、HLA-B*07:72、HLA-B*07:73、HLA-B*07:74、HLA-B*07:75:01:01、HLA-B*07:75:01:02、HLA-B*07:76、HLA-B*07:77、HLA-B*07:78、HLA-B*07:79、HLA-B*07:80、HLA-B*07:81、HLA-B*07:82、HLA-B*07:83、HLA-B*07:84、HLA-B*07:85:01、HLA-B*07:85:02、HLA-B*07:86、HLA-B*07:87、HLA-B*07:88、HLA-B*07:89、HLA-B*07:90、HLA-B*07:91、HLA-B*07:92、HLA-B*07:93、HLA-B*07:94、HLA-B*07:95、HLA-B*07:96:01、HLA-B*07:96:02、HLA-B*07:97、HLA-B*07:98、及びHLA-B*07:99。
【0139】
II.B.3.二重特異性T細胞受容体(TCR)
本開示の特定の態様は、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性TCRに関するものであり、この第1の抗原結合ドメインは、本明細書に開示されるTCRまたはその抗原結合部を含む。いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(「scFv」)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、T細胞の表面に発現されるタンパク質に特異的に結合する。T細胞の表面に発現される任意のタンパク質は、本明細書に開示される二重特異性抗体によって標的され得る。特定の実施形態では、T細胞の表面に発現されるタンパク質は、他の細胞によって発現されない。いくつかの実施形態では、T細胞の表面に発現されるタンパク質は、1つ以上の他のヒト免疫細胞の表面に発現される。いくつかの実施形態では、T細胞の表面に発現されるタンパク質は、1つ以上の他のヒト免疫細胞の表面に発現されるが、ヒト非免疫細胞の表面には発現されない。いくつかの実施形態では、第2の抗原結合ドメインは、CD3、CD2、CD5、CD6、CD8、CD11a(LFA-1α)、CD43、CD45、及びCD53から選択されるT細胞の表面に発現されるタンパク質に特異的に結合する。特定の実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、CD3に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、この第2の抗原結合ドメインは、scFvを含む。
【0141】
いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、共有結合によって連結または結合されている。いくつかの実施形態では、この第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、ペプチド結合によって連結されている。
【0142】
II.C. TCRを発現する細胞
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示されるベクター、本明細書に開示される組換えTCR、本明細書に開示される二重特異性TCR、またはそれらの任意の組み合わせを含む細胞に関する。本開示では、任意の細胞を使用してもよい。
【0143】
特定の実施形態では、細胞は、CD3を発現する。CD3の発現は、自然に発生する場合があり、例えば、CD3は、細胞によって内因的に発現される核酸配列から発現される。例えば、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞は、CD3を自然に発現する。従って、いくつかの実施形態では、細胞は、T細胞またはナチュラルキラー細胞である。特定の実施形態では、細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞及び自然リンパ球(ILC)から選択されるT細胞である。
【0144】
いくつかの実施形態では、T細胞は、ヒト対象から単離される。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、最終的にT細胞療法を受けるであろう同じ対象である。他の実施形態では、この対象はドナー対象であり、ドナー対象は、T細胞療法を受けるであろう同じ対象ではない。
【0145】
いくつかの実施形態では、細胞は、CD3を自然に発現しない細胞であり、ここで、この細胞は、CD3を発現するように改変されている。いくつかの実施形態では、この細胞は、CD3をコードする導入遺伝子を含み、ここで、この導入遺伝子は、細胞によって発現される。いくつかの実施形態では、この細胞は、細胞による内因性CD3の発現を活性化するタンパク質をコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、この細胞は、細胞におけるCD3発現の阻害剤を阻害するタンパク質またはsiRNAをコードする導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、この導入遺伝子は、細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態において、この導入遺伝子は、細胞のゲノムに組み込まれない。
【0146】
いくつかの実施形態では、CD3を発現するように改変されている細胞は、ヒト対象から単離される。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、最終的に細胞療法を受けるであろう同じ対象である。他の実施形態では、この対象はドナー対象であり、このドナー対象は、細胞療法を受ける同じ対象ではない。
【0147】
II.D. HLAクラスI分子
本開示の特定の態様は、ペプチドと複合体を形成したHLAクラスI分子に関するものであり、このペプチドは、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、このペプチドは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなる。
【0148】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-A、HLA-B、またはHLA-Cである。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、HLA-E、HLA-F、またはHLA-Gである。いくつかの実施形態では、HLAクラス1分子は、HLA-B*07、HLA-B*08、HLA-B*13、HLA-B*14、HLA-B*15、HLA-B*18、HLA-B*27、HLA-B*35、HLA-B*37、HLA-B*38、HLA-B*39、HLA-B*40、HLA-B*41、HLA-B*42、HLA-B*44、HLA-B*45、HLA-B*46、HLA-B*47、HLA-B*48、HLA-B*49、HLA-B*50、HLA-B*51、HLA-B*52、HLA-B*53、HLA-B*54、HLA-B*55、HLA-B*56、HLA-B*57、HLA-B*58、HLA-B*59、HLA-B*67、HLA-B*73、HLA-B*78、HLA-B*79、HLA-B*81、HLA-B*82、及びHLA-B*83から選択されるHLA-B対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:02対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:03対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:04対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:05対立遺伝子である。特定の実施形態では、HLA-B対立遺伝子は、HLA-B*07:06対立遺伝子である。いくつかの実施形態では、HLA対立遺伝子は、本明細書、例えば、上記に開示される任意のHLA対立遺伝子である。
【0149】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、アルファ鎖及びβ2mを含む。いくつかの実施形態では、このアルファ鎖は、α1ドメイン、α2ドメイン、α3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、β2mは、配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、アルファ鎖の配列は、hla.alleles.org(最後にアクセスしたのは2019年2月27日)で利用可能な任意のHLAタンパク質配列から選択される。
【0150】
いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、単量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、二量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、多量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、三量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、四量体である。いくつかの実施形態では、HLAクラスI分子は、五量体である。
【0151】
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される任意のHLAクラスI分子を含む抗原提示細胞(APC)に関する。特定の実施形態では、APCは、APCの表面上にHLAクラスI分子を発現した。特定の実施形態では、APCは、本明細書に開示される2つ以上のHLAクラスI分子を含む。
【0152】
II.D. ワクチン
本開示の特定の態様は、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含むがんワクチンを開示する。いくつかの実施形態では、このがんワクチンは、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、1つ以上の賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、1つ以上の追加のペプチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、この1つ以上の追加のペプチドは、1つ以上の追加のエピトープを含む。
【0153】
III.本開示の方法
本開示の特定の態様は、それを必要とする対象においてがんを治療する方法に関する。本開示の他の態様は、抗原標的化細胞を操作する方法に関する。本開示の他の態様は、ヒト対象から得られたT細胞の標的集団を濃縮する方法に関する。
【0154】
III.A.がんの治療方法
本開示の特定の態様は、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示される組換えTCR、本明細書に開示される二重特異性TCR、本明細書に開示されるエピトープ、または本明細書に開示されるHLAクラスI分子、または上記のいずれかを含むベクターもしくは細胞を対象に投与することを含む、それを必要とする対象におけるがんを治療する方法に関する。
【0155】
いくつかの実施形態では、このがんは、黒色腫、骨癌、腎癌、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、皮膚または眼内悪性黒色腫、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管の癌、子宮内膜癌、頸部癌、膣癌、外陰部癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換濾胞性リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、慢性または急性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポシ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発がん、他のB細胞悪性腫瘍、及びこれらのがんの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、このがんは、黒色腫である。
【0156】
いくつかの実施形態では、このがんは、再発性である。いくつかの実施形態では、このがんは難治性である。いくつかの実施形態において、このがんは、進行性である。いくつかの実施形態では、このがんは、転移性である。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象のがんを治療する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、がんの1つ以上の症状の重症度を軽減する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、がんに由来する腫瘍のサイズまたは数を減少させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法を提供されない対象に対して、対象の全生存を延長させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法を提供しない対象に対して、対象の進行性のない生存を増大させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象において部分的な応答をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象において完全寛解をもたらす。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、それを必要とする対象におけるがんの治療を含み、これは、本明細書に記載の細胞を対象に投与することを含み、この細胞は、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示されるベクター、本明細書に開示される組み換えTCR、及び/または本明細書に開示される二重特異性抗体を含む。いくつかの実施形態において、細胞は、T細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、CD3を発現するように改変されている細胞である。
【0159】
いくつかの実施形態において、細胞、例えば、T細胞は、対象から得られる。いくつかの実施形態において、細胞、例えば、T細胞は、対象以外のドナーから得られる。
【0160】
いくつかの実施形態では、対象は、細胞を投与する前に前処理(プレコンディショニング)される。プレコンディショニングは、T細胞機能及び/または生存を促進する任意の物質を含み得る。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、化学療法、サイトカイン、タンパク質、小分子、またはそれらの任意の組み合わせを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、インターロイキンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15、IL-21、またはそれらの任意の組み合わせを投与することを含む。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、シクロホスファミド、フルダラビン、またはその両方を投与することを含む。いくつかの実施形態では、プレコンディショニングは、ビタミンC、AKT阻害剤、ATRA(ベサノイド、トレチノイン)、ラパマイシン、またはそれらの任意の組み合わせを投与することを含む。
【0161】
III.B.抗原標的細胞を操作する方法
本開示の特定の態様は、抗原標的化細胞を操作する方法に関する。いくつかの実施形態では、抗原は、NY-ESO-1抗原である。いくつかの実施形態では、この方法は、本明細書に開示される核酸分子または本明細書に開示されるベクターで細胞を形質導入することを含む。この細胞は、本明細書に記載の任意の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、この細胞は、本明細書に記載のT細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞は、本明細書に記載されるように、CD3を発現するように改変されている細胞である。いくつかの実施形態では、この細胞、例えば、T細胞は、T細胞治療を必要とする対象から得られる。いくつかの実施形態では、この細胞は、T細胞治療を必要とする対象以外のドナーから得られる。いくつかの実施形態では、この細胞は、T細胞またはナチュラルキラー細胞である。
【0162】
III.C.T細胞の標的集団を濃縮する方法
本開示の特定の態様は、ヒト対象から得られたT細胞の標的集団を濃縮する方法に関する。いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞を、本明細書に開示されるHLAクラスI分子と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、T細胞を、本明細書に開示されるAPCと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触後、T細胞の濃縮された集団は、接触前にHLAクラスI分子に結合し得るT細胞の数に対して、HLAクラスI分子に結合し得るT細胞をより多数含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、この方法は、インビトロでT細胞を、配列番号13に示されるアミノ酸配列を含むペプチドと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、インビトロでT細胞を、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるペプチドと接触することを含む。いくつかの実施形態では、接触後、T細胞の濃縮された集団は、接触前にHLAクラスI分子に結合し得るT細胞の数に対して、HLAクラスI分子に結合し得るT細胞をより多数含む。
【0164】
本開示のいくつかの態様は、腫瘍細胞を標的とし得るT細胞を選択する方法に関する。いくつかの実施形態では、この方法は、インビトロで単離されたT細胞の集団を、配列番号13に示されるアミノ酸配列からなるペプチドと接触させることを含む。いくつかの実施形態において、このT細胞は、ヒト対象から得られる。
【0165】
ヒト対象から得られるT細胞は、本明細書に開示される任意のT細胞であり得る。いくつかの実施形態では、ヒト対象から得られたT細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0166】
いくつかの実施形態では、この方法は、ヒト対象に濃縮されたT細胞を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、この対象は、本明細書に記載されるように、T細胞を受け取る前にプレコンディショニングされる。
【0167】
本明細書に記載の様々な態様、実施形態、及びオプションの全ては、任意のかつ全てのバリエーションで組み合わせられ得る。
【0168】
この本明細書に記述される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
本開示を一般的に説明したので、本明細書で提供される実施例を参照することにより、さらなる理解を得ることができる。これらの実施例は説明のみを目的としており、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0170】
実施例1
TILを、転移性黒色腫患者から単離し、次いで、インビトロでポリクローン的に増殖させ、HLA-B*07:02対立遺伝子に対するそれらのNY-ESO-1抗原特異性を調べた。ペプチド/HLA(pHLA)多量体を使用した構造ベースの分析と機能分析との組み合わせを、抗原特異的T細胞応答を測定するために使用している。本発明者らは、以前に既知のNY-ESO-160-72ペプチドを有するpHLA多量体を用いてT細胞を染色した(図1)。TILは、B*07:02/NY-ESO-160-72多量体に陽性を示した。多量体陽性T細胞は、ELISPOT分析によって、HLA制限ペプチド特異的方式で検出可能なIFN-γを分泌した。
【0171】
多量体陽性抗腫瘍T細胞を収集して、それらのTCR遺伝子を分子クローニングした(図3)。クローニングしたTCRの抗原特異性及び機能的反応性を、TCR再構成T細胞の多量体染色及びELISPOTアッセイによって検証した。初代T細胞で再構成した場合、B*07:02/NY-ESO-160-72TCR形質導入T細胞は、同族の多量体で首尾よく染色され(図4)、表面B*07:02分子によって示されるNY-ESO-160-72ペプチドと強く反応した(図5)。重要なことに、これらの細胞は、NY-ESO-1遺伝子を自然に発現するB*07:02が一致しペプチドがパルスされていない腫瘍細胞を認識できた(図6)。A375およびSK-MEL-37黒色腫細胞株は両方ともB*07:02が陰性であるが、NY-ESO-1遺伝子を内因的に発現している。B*07:02分子が異所的に発現された場合、両方の黒色腫細胞株がB*07:02/NY-ESO-160-72TCR形質導入T細胞によって首尾よく認識された。さらに、NY-ESO-1の内因性発現を欠くSK-MEL-21黒色腫細胞は、全長NY-ESO-1遺伝子が形質導入された場合、B*07:02/NY-ESO-160-72TCR形質導入T細胞に反応するようになった(図6~8)。これらの結果によって、B*07:02/NY-ESO-160-72TCRを形質導入したT細胞が腫瘍細胞を認識するのに十分な親和性であり、クローニングされたB*07:02/NY-ESO-160-72TCRが腫瘍反応性であったことが明確に実証される。
【0172】
新たにクローニングされた腫瘍反応性B*07:02制限NY-ESO-1 TCR遺伝子の使用は、HLA-A*02:01陽性のがん患者を超えて抗NY-ESO-1 TCR遺伝子治療の適用可能性を広げ得る。
【0173】
方法
【0174】
細胞試料
【0175】
末梢血試料は、治験審査委員会の承認後に健康なドナーから入手した。単核細胞は、密度勾配遠心分離(Ficoll-Paque PLUS;GE Healthcare)によって得た。K562は、HLA発現に欠陥のある赤白血病細胞株である。T2は、HLA-A*02:01T細胞白血病/B-LCLハイブリッド細胞株である。Jurkat 76は、TCR及びCD8の発現を欠くT細胞白血病細胞株である。A375、SK-MEL-37、及びSK-MEL-21は黒色腫細胞株である。黒色腫細胞株は、10%FBS及び50μg/mlゲンタマイシン(Invitrogen)を補充したDMEMで増殖させた。K562、T2及びJurkat 76細胞株は、10%FBS及び50μg/mlのゲンタマイシンを補充したRPMI 1640中で増殖させた。転移性黒色腫患者から単離されたTILを、インビトロで増殖した。
【0176】
ペプチド
【0177】
合成ペプチドをDMSO中に50μg/mlに溶解した。使用したペプチドは、B*07:02制限NY-ESO-160-72(APRGPHGGAASGL;配列番号13)、MAGE-A1289-297(RVRFFFPSL;配列番号62)、及びHIV nef128-137(TPGPGVRYPL;配列番号63)ペプチドであった。MAGE-A1289-297及びHIV nef128-137ペプチドを陰性対照として使用した。
【0178】
遺伝子
【0179】
HLA-B*07:02遺伝子を、内部リボソーム侵入部位を介して、ヒト神経成長因子受容体の短縮型(ΔNGFR)と融合した。ΔNGFR形質導入細胞は、抗NGFRモノクローナル抗体(mAb)を使用して単離した。全長NY-ESO-1遺伝子は、公開された配列に従ってRT-PCRによってMe275細胞からクローニングした。TCR遺伝子を、SMARTer RACE cDNA増幅キット(タカラバイオ)を使用したcDNA末端の5’-高速増幅(RACE)PCRによってクローニングした。TCRα遺伝子をクローニングするために、初回のPCRには、cDNAを、補充された5’-RACEプライマー及び3’-TCRα非翻訳領域プライマー(5’-GGAGAGTTCCCTCTGTTTGGAGAG-3’;配列番号57)を用いて増幅した。2回目のPCRは、改変5’-RACEプライマー(5’-GTGTGGTGGTACGGGAATTCAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT-3’;配列番号58)及び3’-TCRαプライマー(5’-ACCACTGTGCTGGCGGCCGCTCAGCTGGACCACAGCCGCAGCG-3’;配列番号59)を用いて行った。TCRβ遺伝子をクローニングするため、初回のPCRには、cDNAを、補充された5’-RACEプライマー及びβ C領域特異的リバースプライマー、3’-Cβ-1(5’-ATCGTCGACCACTGTGCTGGCGGCCGCTCGAGTTCCAGGGCTGCCTTCAGAAATCC-3’;配列番号60)及び3’-Cβ-2(5’-GACCACTGTGCTGGCGGCCGCTCGAGCTAGCCTCTGGAATCCTTTCTCTTGACCATTGC-3’;配列番号61)を用いて増幅した。2回目のPCRは、改変した5’-RACEプライマー及びβ C領域特異的リバースプライマーを用いて行った。TCRα及びβ遺伝子の対立遺伝子名は、International ImMunoGeneTics Information System固有の遺伝子命名法(http://www.imgt.org)に従う。全ての遺伝子を、pMXレトロウイルスベクターにクローニングして、293GPG細胞ベースのレトロウイルスシステムを用いて形質導入した36
【0180】
形質転換体(トランスフェクタント)
【0181】
Jurkat 76/CD8細胞は、個々のTCRα及びTCRβ遺伝子で形質導入された。Jurkat 76/CD8由来のTCR形質転換体は、CD3 Microbeads(Miltenyi Biotec)を使用して精製した(純度>95%)。CD80及びCD83と組み合わせて単一のHLA対立遺伝子としてさまざまなHLAクラスI遺伝子を個別に発現するK562ベースの人工APCは、以前に報告されている(Butler and Hirano,Immunol.Rev.257:191-209(2014);Hirano et al.,Clin.Cancer Res.12:2967-75(2006))。PG13由来のレトロウイルス上清を使用して、TCR遺伝子をヒト初代T細胞に形質導入した。TransIT293(Mirus Bio)を使用して、TCR遺伝子を、293GPG細胞株にトランスフェクトした。NY-ESO-1SK-MEL-21細胞に、全長NY-ESO-1遺伝子をレトロウイルスで形質導入して、SK-MEL-21/NY-ESO-1を生成した。形質導入されたNY-ESO-1の発現は、抗NY-ESO-1 mAb(クローン7D1Q2U;Cell Signaling Technology)で染色した後、フローサイトメトリーによって評価した。HLA-B*07:02A375及びSK-MEL-37細胞に、HLA-B*07:02をレトロウイルスで形質導入して、A375/B*07:02及びSK-MEL-37/B*07:02細胞を生成した。HLA-B*07:02遺伝子は、上記のようにΔNGFR遺伝子でタグ付けし、ΔNGFR細胞を精製し(>95%純度)、その後の実験で使用した。ΔNGFR遺伝子のみを対照としてレトロウイルスで形質導入した。
【0182】
フローサイトメトリー及び細胞選別
【0183】
細胞表面分子を、PC5結合抗CD8 mAb(クローンB9.11;Beckman Coulter)、FITC結合抗NGFR(クローンME20.4;Biolegend)、及びAPC/Cy7結合抗CD3(クローン UCHT1;Biolegend)で染色した。死細胞は、LIVE / DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stainキット(Life Technologies)で識別された。細胞内染色では、Cytofix /Cytopermキット(BD Biosciences)を使用して細胞を固定及び透過処理した。染色された細胞は、フローサイトメトリー(BD Biosciences)で分析し、データ分析は、FlowJo(Tree Star)を使用して実行した。細胞選別は、FACS Aria II(BD Bioscience)を使用して実施した。
【0184】
サイトカインELISPOT分析
【0185】
IFN-γ ELISPOTアッセイは、前に記載されたように実施した(例えば、Kagoya et al.,Nat.Commun.9:1915(2018);Anczurowski et al.,Sci.Rep.8:4804(2018);及びYamashita et al.,Nat Commun.8:15244(2017)を参照のこと)。PVDFプレート(Millipore,Bedford,MA)は、捕捉mAb(1-D1K;MABTECH,Mariemont,OH)でコーティングし、そしてT細胞を、ペプチドの有無のもとで1ウェルあたり2×10個の標的細胞と、37℃で20~24時間インキュベートした。続いてプレートを洗浄し、ビオチン結合した検出mAb(7-B6-1;MABTECH)とともにインキュベートした。次に、HRP結合したSA(Jackson ImmunoResearch)を追加して、IFN-γスポットを開発した。冷たい水道水で完全にすすぐことにより反応を停止させた。ELISPOTプレートは、ImmunoSpotプレートリーダー及びImmunoSpotバージョン5.0ソフトウェア((Cellular Technology Limited,Shaker Heights,OH)を使用してスキャン及びカウントした。
【0186】
クローニングされたTCRで形質導入された初代CD8T細胞の増殖
【0187】
CD8T細胞は、Pan T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotec)を使用したネガティブ磁気選択によって精製した。精製されたT細胞は、20:1のE:T比で200Gyを照射された人工APC/mOKT3で刺激された。翌日から開始して、連続3日間の32℃で1,000gで1時間の遠心分離によって、クローニングしたTCR遺伝子を、活性化T細胞にレトロウイルスで形質導入した。翌日、100IU/ml IL-2及び10ng/ml IL-15をTCR形質導入T細胞に添加した。培養培地は2~3日ごとに補充した。
【0188】
哺乳動物細胞ベースのpHLA多量体の生産
【0189】
親和性成熟HLAクラスI遺伝子は、α2ドメインの位置115でのGln(Q)残基の代わりにGlu(E)残基、及びHLAクラスIのα3ドメインの代わりにマウスK遺伝子由来のα3ドメインを保持するように操作した。親和性成熟HLAクラスI遺伝子の細胞外ドメインと、Gly-SER(GS)可塑性リンカーその後の6×Hisタグとの融合によって、本発明者らは、可溶性HLAクラスIQ115E-K遺伝子を生成した。HEK293T細胞を、293GPG細胞ベースのレトロウイルスシステムを用いβ2m遺伝子と共に様々な可溶性HLAクラスIQ115E-K遺伝子を用いて個々に形質導入した。可溶性アフィニティー成熟クラスIQ115E-Kを異所的に発現する安定したHEK293T細胞を、コンフルエントになるまで増殖させた後、その培地を交換した。48時間後、馴化培地を収穫し、すぐに使用するか、使用するまで凍結した。HEK293T形質転換体によって生成された可溶性HLAクラスIQ115E-K含有上清を、インビトロでペプチド交換のために、100~1000μg/mlの目的のクラスI制限ペプチドと37℃で一晩インキュベートした。ペプチドをロードした可溶性モノマークラスIQ115E-Kは、フィコエリトリン(PE)などの蛍光色素に結合した抗His mAb(クローンAD1.1.10;Abcam)を2:1のモル比で2時間、室温、または4℃で一晩使用して二量体化した。機能性可溶性HLAクラスIQ115E-K分子の濃度は、抗-汎クラスI mAb(クローンW6/32、社内)及び抗Hisタグビオチン化mAb(クローンAD1.1.10、R&D systems)をそれぞれキャプチャ及び検出Abとして使用する特定のELISAによって測定した。
【0190】
pHLA多量体染色
【0191】
T細胞(1×10)を、50nMのダサチニブ(LC laboratories)の存在下、37℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、5~10μg/ml の多量体とともに室温で30分間インキュベートし、R-フィコエリトリンに結合したAffiniPure Fabフラグメントヤギ抗マウスIgG1(Jackson ImmunoResearch Laboratories)を、4℃で15分間添加した。次に、細胞を3回洗浄し、抗CD8 mAbで4℃で15分間共染色した。死細胞は最終的に、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stainキットを用いて識別した。
【0192】
統計分析
【0193】
統計分析は、GraphPad Prism5.0eを使用して実行した。2つのグループが特定の変数に対して有意に異なるか否かを判断するために、ウェルチのt検定(両側)を使用して分析を実行した。0.05未満のP値は有意であるとみなした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2022523553000001.app
【国際調査報告】