(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】可動梁式積載物ハンドリングシステムを備えた炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/20 20060101AFI20220418BHJP
C21D 1/00 20060101ALI20220418BHJP
F27B 9/40 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
F27B9/20
C21D1/00 112B
F27B9/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552638
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(85)【翻訳文提出日】2021-10-29
(86)【国際出願番号】 IB2020051357
(87)【国際公開番号】W WO2020178655
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102019000003151
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520378953
【氏名又は名称】エスエムエス・グループ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】SMS GROUP S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】ファブロ,ジミー
【テーマコード(参考)】
4K034
4K050
【Fターム(参考)】
4K034AA01
4K034BA08
4K034EA04
4K034EB41
4K050AA01
4K050AA02
4K050BA02
4K050BA03
4K050CA09
4K050CD01
4K050CF06
4K050CF16
4K050CG13
4K050CG14
4K050CG19
4K050EA04
(57)【要約】
鉄製の又は非鉄金属製の材料(M)を加熱又は熱処理するための可動梁式ハンドリングシステムを備える炉(1)であって、炉(1)は、長手方向(X-X)に沿って材料(M)の炉搬入部(2a)と炉搬出部(2b)との間に延びる炉室(2)と、炉室(2)の内部に配置され、炉室(2)内で処理される材料(M)のための複数の主支持体を形成する第1梁部(10)であって、炉搬入部(2a)と炉搬出部(2b)との間で長手方向に延び、横方向に互いに間隔を空けて配置され、炉室の炉床(3)から持ち上げられた材料(M)を炉搬入部(2a)内の異なる横方向の位置で支持する第1梁部(10)と、炉室内に配置され、材料(M)のための複数の一時的な支持体を形成する第2梁部(20)であって、炉搬入部(2a)と炉搬出部(2b)との間で長手方向に延び、横方向に互いに間隔を空けて主支持体と交互に配置される第2梁部(20)と、を備える。第2梁部(20)は、炉搬入部(2a)と炉搬出部(2b)との間において長手方向(X-X)に平行な動作成分を有する動作を材料(M)に与えるように、第1梁部(10)に対して周期的に移動する。第1梁部(10)、第2梁部(20)、又は第1梁部(10)及び第2梁部(20)の両方は、長手方向(X-X)に対する横方向(Y-Y)の動作成分を有する動作で炉室(2)に対して移動し、第1梁部(10)上の材料(M)の横方向の静止位置を周期的に変化させるように、長手方向(X-X)に対する横方向における材料(M)と第1梁部(10)との間の相対的な動作を生成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄製の又は非鉄金属製の材料(M)を加熱又は熱処理するための可動梁式ハンドリングシステムを備える炉(1)であって、
前記炉(1)は、
長手方向(X-X)に沿って前記材料(M)の炉搬入部(2a)と炉搬出部(2b)との間に延びる炉室(2)と、
前記炉室(2)の内部に配置され、前記炉室(2)内で処理される前記材料(M)のための複数の主支持体を形成する第1梁部(10)であって、前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間で長手方向に延び、横方向に互いに間隔を空けて配置され、前記炉室の炉床(3)から持ち上げられ、前記炉室(2)内の異なる横方向の位置で前記材料(M)を支持する第1梁部(10)と、
前記炉室の内部に配置され、前記材料(M)のための複数の一時的な支持体を形成する第2梁部(20)であって、前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間で長手方向に延び、横方向に互いに間隔を空けて、前記主支持体と交互に配置される第2梁部(20)と、
を備え、
前記第2梁部(20)は、前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間において前記長手方向(X-X)に平行な動作成分を有する動作を前記材料(M)に与えるように、前記第1梁部(10)に対して周期的に移動し、
前記第1梁部(10)、前記第2梁部(20)、又は前記第1梁部(10)及び前記第2梁部(20)の両方は、前記長手方向(X-X)に対する横方向(Y-Y)の動作成分を有する動作で前記炉室(2)に対して移動し、前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の横方向の静止位置を周期的に変化させるように、前記長手方向(X-X)に対する横方向における前記材料(M)と前記第1梁部(10)との間の相対的な動作を生成する、炉。
【請求項2】
前記第1梁部(10)及び/又は前記第2梁部(20)は、前記長手方向(X-X)に平行な動作成分を有する任意の動作から独立して、前記長手方向(X-X)に対する横方向(Y-Y)の動作成分を有する動作で移動する、請求項1に記載の炉。
【請求項3】
前記第2梁部(20)は、前記第1梁部(10)に対して、
前記第2梁部(20)が前記炉室(2)の炉床(3)に対して前記第1梁部(10)よりも低い高さに配置されて前記材料(M)が前記第1梁部(10)に載置される下降位置と、
前記第2梁部(20)が前記炉室(2)の炉床(3)に対して前記第1梁部(10)よりも高い高さに配置されて前記材料(M)を前記第1梁部(10)の支持面から持ち上げる上昇位置と
の間を垂直方向に移動する、請求項1又は2に記載の炉。
【請求項4】
前記第2梁部(20)は、前記長手方向(X-X)に平行な動作に対して、独立して垂直方向に移動する、請求項3に記載の炉。
【請求項5】
前記第1梁部(10)のみが、前記長手方向(X-X)に対する横方向(Y-Y)の動作成分を有する動作により前記炉室(2)に対して移動し、前記第2梁部(20)は、前記長手方向(X-X)に対する平行な動作成分及び/又は前記炉床(3)に対する垂直方向(Z-Z)の動作成分のみを有する動作により移動する、請求項1に記載の炉。
【請求項6】
前記第1梁部(10)は、前記長手方向(X-X)に対する横方向(Y-Y)の動作成分のみを有する動作で前記炉室(2)に対して移動する、請求項5に記載の炉。
【請求項7】
前記第1梁部(10)及び前記第2梁部(20)は、それぞれ第1支柱(11)及び第2支柱(21)によって支持され、それぞれ第1移動手段(100)及び第2移動手段(200)によって移動され、
前記第1支柱(11)及び前記第2支柱(21)は、それぞれ貫通開口部(11a,21a)において前記炉室(2)の前記炉床(3)と交差し、
前記第1移動手段(100)及び前記第2移動手段(200)は、前記炉室(2)の前記炉床(3)の下に設けられたテクニカルチャンバ(5)内に配置され、前記第1支柱(11)及び前記第2支柱(21)によって前記第1梁部(10)及び第2梁部(20)にそれぞれ運動学的に接続されている、請求項1~6のいずれか1つに記載の炉。
【請求項8】
前記第1移動手段(100)は、前記第1梁部(10)を前記長手方向に対する横方向にのみ移動させる、請求項6及び7に記載の炉。
【請求項9】
前記第1移動手段(100)は、前記第1梁部(10)に係る横方向の移動幅が前記第1梁部(10)の横方向の幅よりも小さくならないように制御される、請求項8に記載の炉。
【請求項10】
前記第2移動手段(200)は、
前記第2梁部(20)を前記長手方向(X-X)に平行に移動させる第1装置(201)と、
前記第2梁部(20)を垂直方向に移動させる第2装置(202)と、
を有し、
前記第1装置(201)及び前記第2装置(202)は、互いに独立して動作する、請求項6及び7に記載の炉。
【請求項11】
前記第2装置(202)は、前記第2梁部(20)に係る垂直方向の移動幅が前記下降位置と前記上昇位置との間の前記第2梁部の移動を周期的にさせるように制御される、請求項3及び10に記載の炉。
【請求項12】
前記材料(M)を前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間で前記長手方向(X-X)に平行に移動させること及び/又は、
前記材料(M)と前記第1梁部(10)との間で前記長手方向(X-X)に対する横方向の相対的な動作を発生させて前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の横方向の静止位置を周期的に変化させること
を目的とした予め規定された一連の動作に従って、前記第1移動手段(100)及び前記第2移動手段(200)を個別に又は互いに連携して動作させるようにプログラムされた制御ユニット(300)を備える、請求項8又は9、及び請求項9又は10に記載の炉。
【請求項13】
前記制御ユニット(300)は、前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の前記横方向の静止位置を変化させるために、少なくとも前記第2移動手段(200)の前記第2装置(202)と連携して前記第1移動手段(100)を動作させるように、
前記第2梁部(20)を前記下降位置に維持し又は移動させて、前記第1梁部(10)上に静止している前記材料(M)を第1横置き位置に載置するために第2装置(202)を動作させ、
前記第1梁部(10)を初期の横方向位置から最終の横方向位置まで第1横方向距離(ΔY1)だけ前記長手方向に対する横方向に移動させて、前記第1梁部(10)に載置されている前記材料(M)を前記長手方向に対する横方向に移動させるために前記第1移動手段(100)を動作させ、
前記第2梁部(20)を前記上昇位置に移動させて、前記材料(M)を前記第1梁部(10)の支持面から持ち上げるために前記第2装置(202)を動作させ、
前記第1梁部(10)を前記長手方向に対する横方向に第2横方向距離(ΔY2)だけ移動させて、前記最終の横方向位置から移動させるために前記第1移動手段(100)を動作させ、
前記第2梁部(20)を前記下降位置に戻して、前記第1梁部(10)上に静止している前記材料(M)を前記第1横置き位置から前記第2横方向距離(ΔY2)だけ横方向に離間した第2横置き位置に移動させるために前記第2装置(202)を動作させるようにプログラムされ、
前記第2横方向距離(ΔY2)は、前記第1横方向距離(ΔY1)と等しい又は異なっている、請求項12に記載の炉。
【請求項14】
前記制御ユニット(300)は、前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の前記横方向の静止位置を変化させるために、少なくとも前記第2移動手段(200)の前記第2装置(202)と連携して前記第1移動手段(100)を動作させるように、
前記第2梁部(20)を前記上昇位置に維持し又は移動させて、前記材料(M)を第1横置き位置における前記第1梁部(10)の支持面から持ち上げるために前記第2装置(202)を動作させ、
前記第1梁部(10)を初期の横方向位置から最終の横方向位置まで横方向距離(ΔY)だけ前記長手方向に対する横方向に移動させるために前記第1移動手段(100)を動作させ、
前記第2梁部(20)を前記下降位置に移動させて、前記材料(M)を前記第1横置き位置から前記横方向距離(ΔY)だけ横方向に離間した第2横置き位置で前記第1梁部(10)に載置させるために前記第2装置(202)を動作させるようにプログラムされている、請求項12に記載の炉。
【請求項15】
前記制御ユニット(300)は、前記第2移動手段(200)の前記第2装置(202)とのみ連携して前記第1移動手段(100)を動作させ、前記第2移動手段(200)の前記第1装置(201)を動作させず、前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間の前記長手方向(X-X)に平行な動作成分を有する動作を前記材料(M)に与えることなく前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の横方向の静止位置を変化させるようにプログラムされている、請求項13又は14に記載の炉。
【請求項16】
前記制御ユニット(300)は、前記長手方向(X-X)に平行な動作成分を有する前記炉搬入部(2a)と前記炉搬出部(2b)との間の動作を前記材料(M)に与えながら前記第1梁部(10)上の前記材料(M)の横方向の静止位置を変化させるために、前記第2装置(202)と、前記第2移動手段(200)の前記第1装置(201)との両方と連携して前記第1移動手段(100)を動作させるようにプログラムされている、請求項13又は14に記載の炉。
【請求項17】
前記第1梁部(10)の前記第1支柱(11)同士は、第1支持構造体(110)によって互いに全て接続され、
前記第1支持構造体(110)は、前記第1支柱(11)及び前記第1梁部(10)と共に前記炉室(2)の前記炉床(3)に対して並進する方向に移動するために前記第1移動手段(100)と運動学的に関連し、前記炉室(2)の前記炉床(3)と前記炉(1)の支持基部(4)との間に設けられた前記テクニカルチャンバ(5)に配置されている、請求項7~16のいずれか1つに記載の炉。
【請求項18】
前記第2梁部(20)の前記第2支柱(21)同士は、第2支持構造体(211)によって互いに全て接続され、
前記第2支持構造体(211)は、前記第2支柱(21)及び前記第2梁部(20)と共に第3支持構造体(212)に対して前記長手方向(X-X)に平行に移動するために前記第2移動手段(200)の前記第1装置(201)と運動学的に関連し、
前記第3支持構造体(212)は、前記第2支持構造体(211)と共に前記炉室(2)の前記炉床(3)に対して垂直方向に移動するために前記第2移動手段(200)の前記第2装置(202)と運動学的に関連し、
前記第2支持構造体(211)及び前記第3支持構造体(212)は、前記テクニカルチャンバ(5)に配置されている、請求項10及び17に記載の炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動梁式積載物ハンドリングシステムを備えた炉に関する。
【0002】
本発明に係る炉は、任意の鉄鋼の半製品又は完成品(スラブ、ビレット、ブルーム、チューブなど)に対して動作するように適応された炉である。
【0003】
本発明に係る炉は、製銑及び製鋼の材料と、非鉄金属の材料との加熱及び熱処理に特に適している。
【背景技術】
【0004】
既知の通り、加熱又は熱処理における炉室内での製品のハンドリングに関する主な問題の1つは、材料と材料が載置された支持体(「梁部」とも呼ばれる)との間の接触点における局所的な領域で、加熱/熱処理を受ける材料が冷却されることである。
【0005】
技術的にスキッドマーク(skid mark)と呼ばれるこの局所的な低温領域は、熱処理された材料を圧延するという次のステップで問題を引き起こす可能性がある。圧延は、材料の塊に塑性変形を加えるものである。そのため、材料の塊の中において温度の異なる部分があれば、同じ変形応力を受けたとき、材料の塊の中における温度の異なる部分の間に異なる残留張力状態が生じる。その結果、後続の作業工程や最終製品に深刻な影響を及ぼす可能性のあるクラックが形成される。
【0006】
局所的な冷却は、2つの異なる理由で発生する。
【0007】
1つは、材料と支持体(梁部)との直接接触である。加熱炉において、処理される材料の塊は一般的にかなり大きく、温度が高い場合には、構造的な健全性を維持するために、材料が載置されている構造体を冷却しなければならない。そのような構造体の冷却は、加熱される材料の塊の局所的な冷却を招くコールドスポットを必然的に生成する。
【0008】
1つは、支持体の影による輻射熱交換の減少である。加熱される材料の塊のための支持体の存在は、支持体によって塞がれる材料の塊の表面部が、残りの他と接していない材料の塊の表面部と同様に加熱されることを妨げる。これは、炉内の主な熱輸送メカニズムが輻射熱であり、支持体が遮蔽機能を果たしているためである。
【0009】
局所的な冷却の問題は、プッシャー炉及びウォーキングビーム炉に見られる。プッシャー炉及びウォーキングビーム炉は、炉に関する2つの主要な技術的解決策であり、左右両側を加熱すること、すなわち、材料の露出した左右の両表面を加熱することができる。
【0010】
プッシャー炉において、材料は、「プッシャー」と呼ばれる専用機からの圧力を受けて炉内を移動する。プッシャーは、炉内に存在する全ての材料に前進の動作を伝達する。この場合、支持体(梁部)は固定されており、材料は支持体上をスライドする。プッシャー炉では、処理される積載物が持つべき特性に関して制限がある。より正確な圧力を保証するために、隣接する2つの材料片の間における接触面は、類似していなければならない。
【0011】
それに対して、ウォーキングビーム炉では、加熱される材料は、可動式支持体の働きで炉内を前進する。この場合、材料は、固定式支持体の上に載置される。材料の前進時に、静止状態において固定式支持体よりも低い高さにある可動式支持体が上昇して、固定式支持体から材料を離す。その後、上昇したままの状態で、可動式支持体は、材料を前進動作させる。その前進が終わると、可動式支持体が下降し、材料は、より前進した位置で再び固定式支持体上に載置される。材料を固定式支持体にセットした後、可動式支持体は、このサイクルを再開するために、最初の位置に戻る。
【0012】
ウォーキングビーム炉がプッシャー炉と比較して優れている点は、基本的に2つある。
1つは、非常に異なる形状の材料を処理することができる点である。
1つは、炉を空にすること又は異なる生産ロットの間にギャップを設けることができるため、加熱条件の融通性及びメンテナンス時のアクセスが容易になる点である。
【0013】
ウォーキングビーム炉は、固定式梁部のみを装備したプッシャー炉と比較して、炉内の支持体の数が増えるという欠点がある。支持体の構造的な健全性を長期間に亘ってより確実なものにするために支持体を冷却しなければならないので、炉内の支持体の数の増加は、局所的に冷却される領域の増加を引き起こす。
【0014】
材料の局所的な冷却現象を最小限に抑えるために考案された様々な戦略は、主に2つの種類に分類され得る。
1つは、梁部の傾斜及びオフセットである。梁部は、搬入口から搬出口まで炉内を連続的に移動するのではなく、炉の長手方向の軸に対して傾斜した、相互に整列しない異なるセグメントで構成される。
1つは、処理される積載物と直接接触する構造体を熱伝導率の低い積載物を使用して構築すること、又はこれらの構造体を特定の形状で構築することである。
【0015】
第1の戦略は、梁部との接触が発生する材料の領域を交互に変えることで大きなコールドスポットの形成に必要な時間を提供しないので、コールドスポットの縮小をより確実なものにする。しかしながら、工場のダウンタイムにおいては、有効でなくなる。例えば、工場の下流(例えば圧延機)で問題が発生して生産を停止しなければならない場合、材料片はもはやその位置から動かされず、コールドスポットの形成は避けがたい。
【0016】
更に、材料と材料を支持する梁部との間の接触面積を交互に変化させる頻度は、炉の長手方向に沿った梁部間のミスアライメント(misalignment)、つまり炉の構造上の特性に結びついている。そのため、材料のコールドスポットの形成を制御する際の動作の融通性が損なわれる。
【0017】
第2の戦略は、膨大な数の解決策から構成されており、その中から以下のものを挙げる。
1つは、米国特許第3445050号明細書に記載された解決策であり、「ライダー」と呼ばれる特殊な構造を構築し、その上に処理される材料を載置し、低温の梁部との直接の接触を避けることができる。
1つは、米国特許第3642261号明細書に記載された解決策であり、米国特許第3445050号明細書に記載された解決策と同様のライダーを備えた低温の梁部を提供するが、これらは整列しておらず、オフセットされている。
1つは、米国特許第5007824号明細書に記載されている解決策であり、コールドスポットを低減するための専用の燃焼システムを有する。
【0018】
第2の戦略で提案された技術的解決策は、直接の接触による梁部の冷却効果を最小限にするが、梁部によって生成される影による梁部の冷却効果を減少させない。これは、加熱不足による冷却効果に変換される。
【0019】
現在、製銑及び製鋼の材料用及び非鉄金属の材料用の工業炉の分野では、コールドスポットの存在を減らすことが主要なニーズの1つである。コールドスポットの存在を減らすことは、それらのような材料を圧延するための後続の工程において不均一な温度分布が引き起こす多くの問題を解消することができるからである。
【発明の概要】
【0020】
従って、本発明の目的は、先行技術の前述の問題を解消する又は少なくとも減少させることであり、炉内での加熱/熱処理工程中に材料にコールドスポットが形成されるのを動作的により融通の利く方法で低減することができる可動梁式ハンドリングシステムを備えた炉を利用可能にすることである。
【0021】
本発明の更なる目的は、炉内で材料を前進させない場合でも、炉内での加熱/熱処理工程中に材料にコールドスポットが発生することを低減できる可動梁式ハンドリングシステムを備えた炉を利用可能にすることである。
【0022】
本発明の更なる目的は、操作することが動作的に簡単な可動梁式ハンドリングシステムを備えた炉を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の技術的特徴は、以下に示す特許請求の範囲の内容に明確に示されており、その利点は、純粋に非限定的な例として提供される1つ又は複数の実施形態を表す添付図面を参照して行われる以下の詳細な説明の中で、より容易に明らかになるであろう。
【
図1】本発明の好ましい実施形態に係る可動梁式の炉を上方から見た断面斜視図であって、その内部に処理される材料を配置した状態を、一部の詳細を省略して示す図である。
【
図2】
図1の炉の詳細を説明するための拡大斜視図であって、部分的に積載物が搬入されていない状態を示す図である。
【
図3】
図1の炉の一部を切り取った図であって、炉室の下に設けられたテクニカルチャンバ(technical chamber)内に配置された積載物ハンドリングシステムを強調するために一部を省略して示す図である。
【
図4】
図3において符号IVと表示されている一点鎖線枠内の詳細な拡大図である。
【
図5】
図3において符号Vと表示されている一点鎖線枠内の詳細な拡大図である。
【
図6】
図1の炉の長手方向に対する直交方向の断面図である。
【
図7a】
図1の炉のハンドリングシステムを炉の長手方向の断面から見た概略図であって、
図1の炉内の積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部の動作を示す図である。
【
図7b】
図1の炉のハンドリングシステムを炉の長手方向の断面から見た概略図であって、
図1の炉内の積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部の動作を示す図である。
【
図7c】
図1の炉のハンドリングシステムを炉の長手方向の断面から見た概略図であって、
図1の炉内の積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部の動作を示す図である。
【
図7d】
図1の炉のハンドリングシステムを炉の長手方向の断面から見た概略図であって、
図1の炉内の積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部の動作を示す図である。
【
図7e】
図1の炉のハンドリングシステムを炉の長手方向の断面から見た概略図であって、
図1の炉内の積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部の動作を示す図である。
【
図8a】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面でハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図8b】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面でハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図8c】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面でハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図8d】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面でハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図9a】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面ではなく、
図1の炉内で積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部によって持ち上げられた状態を維持されてハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図9b】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面ではなく、
図1の炉内で積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部によって持ち上げられた状態を維持されてハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【
図9c】
図1の炉のハンドリングシステムの断面に関する概略図であって、材料が支持面ではなく、
図1の炉内で積載物の長手方向への前進を提供する第2梁部によって持ち上げられた状態を維持されてハンドリングされる際の、
図1の炉内で積載物を支持して積載物の横方向の移動を提供する第1梁部の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照すると、数字の「1」は、本発明による可動梁式積載物ハンドリングシステムを備えた炉を全体的に示す。
【0025】
積載物は、鋳造作業(スラブ、ビレット、ブルーム、インゴット)、圧延作業、又は熱処理(プレート、バー、チューブ)に由来する、鉄製の又は非鉄製のあらゆる種類の半製品、又は金属製の材料Mとして規定され得る。
【0026】
炉1は、鉄製の又は非鉄金属製の材料を加熱又は熱処理して、その後の圧延作業に供する場合に特に適している。
【0027】
炉1は、長手方向X-Xに沿って材料Mの炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間に延びる炉室2を備える。
【0028】
特に、炉室2は、耐火性又は絶縁性の素材で形成され、炉床又は底部3を有する格納構造体6で囲まれている(図では、部分的にのみ図示されている)。好ましくは、格納構造体6は、(特に、金属製の)支持構造体9を介して、炉の支持基部4に対して持ち上げられた状態で維持され、炉床3の下にテクニカルチャンバ5が画定される。
【0029】
有利には、炉1は、積載物の材料Mを炉内に搬入するための、積載物の炉搬入装置7と、積載物の材料Mを炉内から取り出すための、積載物の炉搬出装置8とを備える。
図1に模式的に示されている炉搬入装置7及び炉搬出装置8は、それ自体が既知のものであり、詳細な説明は行わない。
【0030】
炉1は、燃料と他の熱源の両方を使用できる任意の加熱システム(図示せず)を備えることができる。
【0031】
特に
図2及び
図3に示されているように、炉1は、炉室2の内部に配置され、炉室2内で処理される材料Mのための複数の主支持体を形成する第1梁部10を備える。
【0032】
(それぞれ、単一の第1梁部で形成されることも、整列又は実質的に整列した2つ以上の第1梁部で形成されることもある)第1梁部10は、炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間で長手方向に延びる。第1梁部10は、横方向に互いに間隔を空けて配置され、炉室2内の横方向の異なる位置において材料Mを水平に支持し、炉室2の炉床又は底部3から持ち上げられた状態を維持して、材料Mの両方(すなわち、上方及び下方)からの加熱を可能にする。
【0033】
炉1は、炉室2内で処理される材料Mのための複数の一時的な支持体を形成し且つ炉室2の内部に配置される第2梁部20を更に備える。
【0034】
また、第2梁部20は、炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間に長手方向に延びている。(それぞれ、単一の第2梁部で形成されることも、整列又は実質的に整列した2つ以上の第2梁部で形成されることもある)第2梁部20は、互いに横に間隔を空けて、第1梁部10と交互に配置されている。
【0035】
第2梁部20は、炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間において長手方向X-Xに平行な動作成分を有する動作を材料Mに与えるように、第1梁部10に対して周期的に移動することができる。
【0036】
動作上、第2梁部20は、炉室2内の積載物の材料Mのハンドリングシステムを形成し、積載物の材料を炉搬出部2bに向かって前進させ、又は炉搬入部2aに向かって後退させることができる。積載物の材料の動作は、段階的に進むものである。単一の材料片は、炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間に配置された異なる第2梁部20によって複数回押されながら、炉室2全体を長手方向に横断する。
【0037】
特に、第1梁部10及び第2梁部20の両方は、通常は耐火物によってコーティングされた鋼製の構造体であり、冷却されてもよいし、冷却されなくてもよい。
【0038】
本発明によれば、第1梁部10、第2梁部20、又は第1梁部10及び第2梁部20の両方は、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分を有する動作(以下、横方向の動作ともいう)で、炉室2に対して移動することができる。
【0039】
「長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分」という表現は、長手方向X-Xに対して直交する方向を有し、第1梁部10によって規定される材料Mを支持する面と同一面における動作成分を意味する。好ましくは、使用時において、第1梁部の支持面は水平である。
【0040】
後述するように、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分は、長手方向の動作成分(すなわち、長手方向X-Xに平行)及び/又は垂直方向の動作成分Z-Z(すなわち、第1梁部の支持面に対する直交方向)と組み合わせることができ、又は、単独の動作成分とすることもできる。
【0041】
動作的には、前記横方向の動作は、第1梁部10上の材料Mの長手方向X-Xに対する横方向の静止位置を変化させるように、長手方向X-Xに対する横方向における材料Mと第1梁部10との間の相対的な動作を生成することができる。
【0042】
第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置の変化は、炉内の加熱/熱処理工程において材料Mにコールドスポットが形成されるのを低減することを可能にする。
【0043】
順番に変位を繰り返すことで、材料Mの表面と第1梁部10で規定される低温の支持体との間の接触点を増やすことができ、接触による冷却と構造体から発生する影を最小限に抑えることができる。
【0044】
従来のウォーキングビーム炉に比べて、本発明による炉は、オフセットされた梁部を備えているため、炉のどのような動作状態でもコールドスポットの形成を低減するために、動作的により融通の利く方法で管理することができる。第1梁部10、第2梁部20、又はその両方は、炉の長手方向のどのセクションでも、処理のどの時点でも、長手方向X-Xに対する横方向に移動することができる。そのため、設計段階で確立された梁部の特定の配置から切り離すことができ、空間的な位置と時間的な長さの両方の観点から、材料M上のコールドスポットの形成をより融通が利くように制御することができる。
【0045】
更に、第1梁部10、第2梁部20、又はその両方の動作によって横方向の静止位置の変化が得られる。そのため、炉1内の加熱/熱処理工程において材料Mにコールドスポットが形成されることをより最小限に抑えるように、積載物の材料Mの炉1内への搬入が継続する間、周期的に、又は一般的に予め規定された時間周波数に従って横方向の静止位置の変化を繰り返すことができる。
【0046】
好ましくは、第1梁部10及び/又は第2梁部20は、長手方向X-Xに平行な動作成分を有する任意の動作から独立して、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分を有する動作で移動することができる。
【0047】
言い換えれば、梁部は、長手方向の動作とは無関係に横方向に移動できるように構成されている。これにより、第1梁部上の材料の静止位置の変化を、炉1内の材料Mの動作(前後方向)から完全に切り離すことができる。オフセットされた梁部を備える従来のウォーキングビーム炉に対して、本発明による炉1は、工場のダウンタイムの場合、すなわち、材料Mを炉内で長手方向に移動させて炉搬出部2bに向かって前進させたり、炉搬入部2aに向かって後退させたりすることができない場合どころか、炉がどのような動作状態であってもコールドスポットの形成を減少させるように、動作的により融通の利く方法で操作することができる。
【0048】
好ましくは、
図7a~
図7eに示すように、長手方向X-Xに沿って材料に動作成分を与える(すなわち、材料を炉内で前後方向に移動させる)ことを特に意図した第2梁部20は、(炉内の材料の主な支持を提供する)第1梁部10に対して、以下の位置の間を垂直方向にも移動することができる。
- 第2梁部20が炉室2の炉床3に対して第1梁部10よりも低い高さに配置され、材料Mが第1梁部10に載置されている、下降位置(
図7a及び
図7e参照)。
- 第2梁部20が炉室2の炉床3に対して第1梁部10よりも高い高さに配置され、材料Mを第1梁部10の支持面から持ち上げている、上昇位置(
図7b、
図7c、
図7d参照)。
【0049】
好ましくは、材料Mは、第2梁部20が前記上昇位置にあるとき、すなわち、材料Mが第1梁部の支持面から上昇したときに第2梁部20によって長手方向に移動する(
図7b及び
図7c参照)。
【0050】
動作的には、第2梁部20は、長手方向の動作において、
図7aから
図7eまでの一連の図示のように、長手方向において予め規定された2つの位置の間で周期的な往復移動を行う。言い換えれば、各梁部20は、炉の特定の長手方向セクションにおける材料に長手方向の動作を与えるために設けられている。
【0051】
有利には、第2梁部20は、長手方向X-Xに平行な動作に対して、独立して垂直方向に移動することができる。
【0052】
有利には、既に上述したように、第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置を変化させるような、長手方向X-Xに対する横方向における材料Mと第1梁部10との間の相対的な移動は、以下の方法で得ることができる。それは、
第1梁部10のみを横方向に移動させる方法、又は、
第2梁部20のみを横方向に移動させる方法、又は、
第1梁部10及び第2梁部20の両方を横方向に移動させる方法である。
【0053】
「梁部を横方向に移動させる」という表現は、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yにおける1つ以上の動作成分を梁部に与えることを意味する。
【0054】
好ましくは、第1梁部10のみが、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分を有する動作により炉室2に対して移動することができる。一方、第2梁部20は、長手方向X-Xに対する平行な動作成分及び/又は炉室2の炉床3に対する垂直方向Z-Zの動作成分のみを有する動作により移動することができる。
【0055】
更に好ましくは、第1梁部10は、長手方向X-Xに対する横方向Y-Yの動作成分のみを有する動作で炉室2に対して移動することができる。
【0056】
添付の図に示されている好ましい実施形態によれば、第1梁部10は、横方向にのみ移動することができる。これに対して、第2梁部20は、長手方向及び垂直方向にのみ移動することができる。このようにして、後述するように、(材料と第1梁部との間における支持面の位置を横方向に変更することを対象とする)横方向の動作を(炉内の材料を前後方向に移動させることを対象とする)長手方向の動作から分離することができる。同時に、これらの動作を生成するために提供される手段の構造を単純化することができる。
【0057】
動作的には、前述したように、第2梁部20は、長手方向の動作において、
図7aから
図7eまでの一連の図示のように、長手方向において予め規定された2つの位置の間で周期的な往復動作を行う。同様に、第1梁部10は、横方向の動作において、
図8a及び
図8b、又は
図9a及び
図9bの一連の図示のように、横方向において予め規定された2つの位置の間で周期的な往復動作を行う。言い換えれば、各第1梁部10は、炉の特定の横方向セクションにある材料に横方向の動作を与えるために設けられている。
【0058】
添付の図に示す好ましい実施形態によれば、第1梁部10及び第2梁部20は、それぞれ第1支柱11及び第2支柱21によって支持されている。第1支柱11及び第2支柱21は、それぞれ貫通開口部11a,21aにおいて炉室2の炉床3と交差している。
【0059】
特に、
図2に示されているように、貫通開口部11a,21aは、それぞれの支柱がそれぞれの動作方向に従って自由に動くことができるような形状になっている。好ましい実施形態によれば、第1支柱11と関わる貫通開口部11aは、横方向Y-Yに細長いスロットによって規定され、一方、第2支柱21と関わる貫通開口部21aは、長手方向X-Xに細長いスロットによって規定される。
【0060】
図3及び
図6に示すように、第1梁部10及び第2梁部20は、それぞれ第1移動手段100及び第2移動手段200によって移動され得る。第1移動手段100及び第2移動手段200は、炉室2の炉床3の下に作られたテクニカルチャンバ5内に配置され、第1支柱11及び第2支柱21によって第1梁部10及び第2梁部20にそれぞれ運動学的に接続されている。
【0061】
好ましくは、第1移動手段100は、第1梁部10を長手方向X-Xに対する横方向にのみ移動させるのに適している。
【0062】
有利には、第1移動手段100は、第1梁部10に係る横方向の移動幅が第1梁部10の横方向の幅よりも小さくならないように制御され得る。このようにして、横方向における動作の結果、材料Mと第1梁部10との間の横方向の静止位置の変化が完了し、以前に形成されたコールドスポットを大幅に減少させることができることをより保証する。
【0063】
好ましくは、第2移動手段200は、
第2梁部20を長手方向X-Xに平行に移動させるのに適した第1装置201と、
第2梁部20を垂直方向に移動させるのに適した第2装置202と
を有する。
【0064】
有利には、第1装置201及び第2装置202は、互いに独立して動作させることができるので、第2梁部20に垂直方向の動作と長手方向の動作とを別々に与えることができる。
【0065】
有利には、第2装置202は、第2梁部20に係る垂直方向の移動幅が前記下降位置と前記上昇位置との間の第2梁部の移動を周期的にさせるように制御され得る。
【0066】
特に
図3に示されている好ましい実施形態によれば、炉は、
材料Mを炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間で長手方向X-Xに平行に移動させること及び/又は、
材料Mと第1梁部10との間で長手方向X-Xに対する横方向の相対的な動作を発生させて第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置を周期的に変化させること
を目的とした予め規定された一連の動作に従って、第1移動手段100及び第2移動手段200を個別に又は互いに連携して動作させるようにプログラムされた制御ユニット300を備える。
【0067】
制御ユニットは、電子機器など、どのようなタイプのものでもよい。
【0068】
好ましくは、制御ユニット300は、第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置を変化させるために、少なくとも第2移動手段200の第2装置202、すなわち、第2梁部20を垂直方向に移動させるために設けられた装置と連携して第1移動手段100を動作させるようにプログラムされている。このようにして、第1梁部10の横方向の移動は、第2梁部20の垂直方向の移動、ひいては、材料Mの垂直方向の移動に関連付けられ得る。
【0069】
制御ユニット300は、異なる一連の動作に従って第1移動手段100及び第1装置201を動作させるようにプログラムすることができる。有利には、制御ユニット300は、常に同じ一連の動作を実行するようにプログラムすることができ、又は任意に異なる時間に異なる一連の動作を実行するようにプログラムすることができる。
【0070】
より詳細には、(一連の
図8a~
図8dに模式的に示されている)第1の一連の動作は、以下のステップを有することができる。
a)第2梁部20を下降位置に維持し又は移動させて、第1梁部10上に静止している材料Mを第1横置き位置に載置するために第2装置202を動作させる(
図8a参照)。
b)第1梁部10を初期の横方向位置から最終の横方向位置まで第1横方向距離ΔY1だけ長手方向に対する横方向に移動させて、第1梁部10に載置されている材料Mを長手方向に対する横方向に移動させるために第1移動手段100を動作させる(
図8b参照)。
c)第2梁部20を上昇位置に移動させて、材料Mを第1梁部10の支持面から持ち上げるために第2装置202を動作させる(
図8c参照)。
d)第1梁部10を長手方向に対する横方向に第2横方向距離ΔY2だけ移動させて、前記最終の横方向位置から移動させるために第1移動手段100を動作させる(
図8c~
図8d参照)。
e)第2梁部20を下降位置に戻して、第1梁部10上に静止している材料Mを、第1横方向の静止位置から第2横方向距離ΔY2だけ横方向に離れた第2横方向の静止位置に移動させるために第2装置202を動作させる(
図8d参照)。
【0071】
第2横方向距離ΔY2は、偶発的な動作条件に応じて(例えば、材料Mの横方向の伸びに応じて、その端部で支持体を失わないようにする必要性に応じて)、第1横方向距離ΔY1と等しくすることもできるし、異なるようにすることもできる。
【0072】
動作的には、上述の第1の一連の動作は、材料M及び第1梁部10の両方を炉室に対して横方向に移動させることを提供する。
【0073】
あるいは、後述するように、第1梁部10のみを炉室に対して横方向に移動させ、代わりに材料Mを炉室に対して横方向に移動させないようにする別の操作手順を提供することができる。
【0074】
より詳細には、(一連の
図9a~
図9cに模式的に示されている)第2の一連の動作は、以下のステップを有することができる。
a)第2梁部20を維持し又は上昇位置に移動させて、材料Mを第1横置き位置における第1梁部10の支持面から持ち上げるために第2装置202を動作させる(
図9a参照)。
b)第1梁部10を長手方向に対する横方向に、初期の横方向位置から最終の横方向位置まで横方向距離ΔYだけ移動させるために第1移動手段100を動作させる(
図9b参照)。
c)第2梁部20を下降位置に移動させて、材料Mを第1横方向の静止位置から横方向距離ΔYだけ横方向に離れた第2横方向の静止位置で第1梁部10に載置させるために第2装置202を動作させる(
図9c参照)。
【0075】
有利には、上述した2つの一連の動作は、
(第2移動手段200の)第2装置202と関わらずに第2梁部20及び材料Mを長手方向に移動させ、又は、
(第2移動手段200の)第2装置202と関わって第2梁部20及び材料Mを長手方向に移動させることを実行し得る。
【0076】
より詳細には、制御ユニット300は、(垂直方向の動作のために設けられている)第2移動手段200の第2装置202とのみ連携して第1移動手段100を動作させ、(長手方向の動作のために設けられている)第2移動手段200の第1装置201を動作させず、炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間の長手方向の成分を有する動作を材料Mに与えることなく第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置を変化させるようにプログラムされている。このようにして、炉1の動作の融通性が向上し、炉のダウンタイムにおいても横方向の静止位置を変化させることができる。
【0077】
有利には、制御ユニット300は、材料Mに炉搬入部2aと炉搬出部2bとの間で長手方向成分を有する動作を与えながら、第1梁部10上の材料Mの横方向の静止位置を変化させるために、第2装置202と、第2移動手段200の第1装置201との両方と連携して第1移動手段100を動作させるようにプログラムすることもできる。
【0078】
既に説明したように、添付の図に示す好ましい実施形態によれば、第1梁部10及び第2梁部20は、第1支柱11及び第2支柱21によってそれぞれ支持されている。第1支柱11及び第2支柱21は、それぞれの貫通開口部11a,21aにおいて炉室2の炉床3と交差している。第1梁部10及び第2梁部20は、炉室2の炉床3の下に作られたテクニカルチャンバ5内に配置され且つ第1支柱11及び第2支柱21によって第1梁部10及び第2梁部20にそれぞれ運動学的に接続されている第1移動手段100及び第2移動手段200によって、それぞれ移動可能である。
【0079】
好ましくは、特に
図3及び
図6に示されているように、第1梁部10の第1支柱11同士は、第1支持構造体110によって互いに全て接続されている。第1支持構造体110は、第1支柱11及び第1梁部10と共に炉室2の炉床3に対して並進する方向に移動するために第1移動手段100と運動学的に関連している。
【0080】
特に、第1支持構造体110は、炉室2の炉床3と炉1の支持基部4との間に設けられたテクニカルチャンバ5に配置されている。
【0081】
より詳細には、第1支持構造体110は、複数の第1車輪111を下方に備えたフレームで構成することができる。各第1車輪111は、各第1車輪111の回転軸が長手方向X-Xに平行である。第1車輪111の各々は、第1支持構造体110と、第1支持構造体110と関連している第1支柱11及び第1梁部10とに求められる横方向の動作を可能にするのに十分な横方向の長さを有する第1ガイド部112上で、横方向Y-Yへの回転を実行する。
【0082】
第1支持構造体110は、特に、支持基部4から高さ方向に延びる複数の第1柱部113によって、炉室2の炉床3に関して垂直方向に、炉1の支持基部4から一定の高さに維持されている。各第1柱部113の上部には、第1ガイド部112が1つ配置されている。
【0083】
有利には、第1支持構造体110の移動は、第1車輪111の少なくとも一部を電動化して、その回転動作を制御することで得られる。特に、
図3に示すように、共通のギアモータシステム114に、それぞれの回転軸が長手方向に整列した複数の第1車輪111を接続することができる。残りの第1車輪は、電動化された車輪の動作に受動的に従うように空回りし得る。
【0084】
有利には、第1支持構造体110の移動は、車輪111を電動化することなく、炉1の格納構造体6と第1支持構造体110自体との間で作動する空気圧シリンダにより形成されているプッシャーのシステムなどによって得ることができる。
【0085】
好ましくは、特に
図3及び
図6に示されているように、第2梁部20の第2支柱21同士は、第2支持構造体211によって互いに全て接続されている。第2支持構造体211は、第2支柱21及び第2梁部20と共に第3支持構造体212に対して長手方向X-Xに平行に移動するために第2移動手段200の第1装置201と運動学的に関連している。
【0086】
より詳細には、
図3及び
図4に示されているように、第2支持構造体211は、第2支持構造体と第3支持構造体との間に挟まれている垂直方向のガイド201aと、横軸を有する車輪201bとのシステムによって、第3支持構造体212に対して移動することができる。好ましくは、車輪201bは全て空回りし、第3支持構造体212に対する第2支持構造体211の移動は、炉1の格納構造体6と第2支持構造体自体との間で動作する1つ以上の空気圧シリンダにより形成されているプッシャー204のシステムなどによって得られる。
【0087】
特に、第2支持構造体211及び第3支持構造体212は、テクニカルチャンバ5内に配置される。第2支持構造体211及び第3支持構造体212は、いずれもフレーム状に形成することができる。
【0088】
同様に、第3支持構造体212は、第2支持構造体211と共に炉室2の炉床3に対して垂直方向に移動するために第2移動手段200の第2装置202と運動学的に関連している。
【0089】
より詳細には、第3支持構造体212は、横方向Y-Yの回転軸を有する複数の車輪202bを有し、各車輪は、傾斜ガイド202a上で長手方向X-Xへの回転を実行する。前記傾斜ガイドは、前記下降位置と前記上昇位置との間で前記第2梁部を垂直方向に変位させるのに十分な傾斜と長さを有する。好ましくは、車輪202bは全て空回りし、傾斜ガイド202aに沿った移動は、炉1の格納構造体6と第3支持構造体自体との間で動作する1つ以上の空気圧シリンダにより形成されているプッシャー208のシステムなどによって与えられる。
【0090】
動作上、第3支持構造体212が傾斜ガイドに沿って移動する際に与えられる長手方向の動作は、空回りする車輪201bの存在により、第2支持構造体211には伝達されない。
【0091】
ホイール/傾斜ガイド/プッシャーのシステムは、油圧ジャッキのシステム(図示せず)で置き換えることができる。しかしながら、動作時の重量を考慮すると、車輪/傾斜ガイド/プッシャーのシステムの方が効率的且つ経済的である。
【0092】
本発明により、既に一部で説明したような多数の利点を得ることができる。
【0093】
本発明に係る可動梁式ハンドリングシステムを備える炉は、従来のウォーキングビーム炉と比較して、動作的に融通の利く方法で、炉内での加熱/熱処理工程中に材料にコールドスポットが発生することを低減させることができる。
【0094】
本発明に係る可動梁式ハンドリングシステムを備える炉は、工場のダウンタイムが発生した場合でも、すなわち、炉内で材料を前進又は後退させることができない場合でも、炉内での加熱/熱処理工程中に材料にコールドスポットの形成を減少させることができる。
【0095】
本発明に係る可動梁式ハンドリングシステムを備える炉は、動作的に操作がより容易である。
【0096】
このようにして考案された本発明は、その目的を達成している。
【0097】
言うまでもなく、実際に使用する際には、現在の保護範囲から逸脱することなく、上記例示されたものとは異なる形態及び構成をとることも可能である。
【0098】
また、全ての詳細を技術的に同等の要素に置き換えることができ、寸法、形状、採用する材料は、ニーズに応じて任意であってもよい。
【国際調査報告】