(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】光重合性コンポジット樹脂組成物からステレオリソグラフィーで製造された歯科用成形品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 6/15 20200101AFI20220418BHJP
A61K 6/887 20200101ALI20220418BHJP
A61K 6/62 20200101ALI20220418BHJP
A61K 6/70 20200101ALI20220418BHJP
A61K 6/76 20200101ALI20220418BHJP
A61K 6/60 20200101ALI20220418BHJP
A61K 6/891 20200101ALI20220418BHJP
【FI】
A61K6/15
A61K6/887
A61K6/62
A61K6/70
A61K6/76
A61K6/60
A61K6/891
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552852
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2020000056
(87)【国際公開番号】W WO2020177921
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】102019105816.3
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514200420
【氏名又は名称】ミュールバウアー・テクノロジー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MUEHLBAUER TECHNOLOGY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100187584
【氏名又は名称】村石 桂一
(72)【発明者】
【氏名】トレーガー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ネフゲン,シュテファン
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA09
4C089BA13
4C089BC03
4C089BD02
4C089BD03
4C089BD05
4C089BD10
4C089BE09
(57)【要約】
本発明の目的は、ナノスケールの有機表面修飾フィラーを含む流動性を有する光重合性のコンポジット樹脂組成物を、歯科用成形品のステレオリソグラフィー製造に使用すること、および対応する歯科用成形品を製造する方法である。本発明の方法は、特に簡便であり、速く、安全で、費用対効果が高い。これにより、改良された歯科用成形品、特に改良されたブリッジおよびクラウンの製造が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物の使用であって、
前記流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
前記動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート-プレート・レオメーターを用いて測定された動的粘度であって、
前記コンポジット樹脂組成物に基づく歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンのステレオリソグラフィー生成のために
成分a)ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル光重合性モノマーとオリゴマーとの混合物、
成分b)有機的に表面修飾し、ならびに任意で、部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーであって、該ナノスケールフィラーはコンポジット樹脂組成物に組み込まれており、
-フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
-分散体中の前記フィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意で、フィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、
前記フィラー凝集体および/または前記フィラー集合体は、
-40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
-1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)少なくとも1つの光開始剤、
成分d)任意で、安定剤、ならびに
成分e)任意で、顔料粒子、
成分f)任意で、安定化ラジカル
を含んで成る、
流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物の使用。
【請求項2】
分散されることになる有機的に表面修飾したナノスケールフィラー、ならびに任意で、部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラー粒子が、以下のステップi)~iii)によって表面修飾されており、前記ステップi)~iii)は、
ステップi)コンポジット樹脂組成物の成分a)に従って、前記ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーを混合することにより、コンポジット樹脂組成物を供するステップ、
ステップii)前記混合物にシラン加水分解物を加えるステップ、
ステップiii)成分b)に従って、前記混合物中へ前記ナノスケールフィラー粒子、好ましくは焼成シリカを分散するステップ、であり、
ステップiii)で分散されることになる集合した粒子の粒子表面積に対するシラン加水分解物の比は、フィラーの単位表面積当たりに使用されるシランの物質量に基づき、好ましくは、0.005mmol/m
2~0.08mmol/m
2または0.01mmol/m
2~0.02mmmol/m
2である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
コンポジット樹脂組成物に組み込まれるナノスケールフィラー粒子が、200m
2/g未満、好ましくは100m
2/g未満、および特に好ましくは60m
2/g未満のBET法により決定される比表面積を有し、ならびに焼成シリカ、例えばアエロジル(登録商標)130、アエロジル(登録商標)90、アエロジル(登録商標)Ox50、アエロジル(登録商標)R7200、HDK(登録商標)S13、HDK(登録商標)C10、およびHDK(登録商標)D05を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
組成物全体の100重量%に基づき、コンポジット樹脂組成物が、
成分a)ラジカル重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル重合性モノマーとオリゴマーとの混合物を90~55重量%、好ましくは80~55重量%、より好ましくは75~60重量%、
成分b)コンポジット樹脂組成物に組み込まれ、有機的に表面修飾し、ならびに任意で、部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーを5~60重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%であって、
‐フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
‐分散体中の前記フィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意で、フィラー集合体および/またはフィラー凝集体を含んで成り、
前記フィラー集合体および/または前記フィラー凝集体は、
‐40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
‐1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)光開始剤を0.01~5重量%、
成分d)安定剤を0.001~5重量%、
成分e)顔料粒子を0~5重量%、好ましくは0.01~5重量%、
成分f)安定化ラジカルを0~5重量%、好ましくは0.0025~0.05重量%、
含んで成り、
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%含む、
ならびに好ましくは、
組成物全体の100重量%に基づき、コンポジット樹脂組成物が、
成分a)ラジカル重合性(メタ)アクリレートを75~60重量%、
成分b)150~350nmの平均粒子サイズ(動的光散乱のz平均)で、分散体中の個々の粒子ならびに/またはフィラー集合体および/もしくはフィラー凝集体が90~500nmの粒子サイズを有するシラン化ナノスケールフィラー粒子を25~40重量%、
成分c)光開始剤を0.1~2重量%、
成分d)安定剤を0.001~5重量%、
成分e)顔料を0.01~1重量%、
含んで成り、
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも96~99.89重量%含んで成る、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
コンポジット樹脂組成物が顔料を含んで成り、およびコンポジット樹脂組成部中の該顔料が沈降することなく、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月に亘って貯蔵安定性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンを製造するための方法であって、
前記方法は、
ステップi)流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物を供するステップであって、前記流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
前記動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート‐プレート・レオメーターで測定された動的粘度であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の成分a)~成分c)、ならびに任意で、成分d)および成分e)を含んで成り、および
ステップii)前記コンポジット樹脂組成物で満たされた槽中で、流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物から、ステレオリソグラフィーで積層して歯科用成形品を構築するステップ、を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で得ることが可能な歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンであって、ISO 4049:2009に従って測定された、
-少なくとも100MPa、好ましくは少なくとも130MPaの曲げ強度、および/または
-少なくとも3GPa、好ましくは少なくとも4GPaの曲げ弾性率を好ましくは有する、歯科用成形品。
【請求項8】
前記ナノスケールフィラーが
-焼成シリカの生成にて形成される一次粒子の凝集体から本質的になること、
-ナノスケールフィラー粒子の形状は、本質的に理想的な球形ではなく、不規則であり、特に凝集体であること、
-ナノスケールフィラー粒子は、本質的に1000nm未満の径を有する小さな集合体として分散体中に存在している、または非集合および/もしくは非凝集の形態で存在していること、
-分散体中の粒子は、少なくとも約40nm~1000nm、好ましくは600nm以下の連続的なサイズ範囲に亘って分布していること、
-分散体中のフィラー集合体および/もしくはフィラー凝集体ならびに/または非集合/非凝集のフィラー粒子を含んで成るナノスケールフィラー粒子の、動的光散乱のz平均として測定された平均粒子サイズ径は、90~500nm、好ましくは150~350nmであることから選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7に記載の歯科用成形品。
【請求項9】
コンポジット樹脂組成物が、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満のマイクロフィラーを含んで成り、特に好ましくはマイクロフィラーを含まず、
前記マイクロフィラーは、好ましくは粉砕フィラーまたは球状フィラーであり、および
1~50μmの粒子サイズを有し、
形状およびサイズが成分b)のナノスケールフィラーと異なる、
請求項1~5のいずれかに1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7もしくは8に記載の歯科用成形品。
【請求項10】
前記コンポジット樹脂組成物が、
-0.5重量%未満、好ましくは0.01重量%未満のチキソトロピー剤を含み、特に好ましくはチキソトロピー剤を含まない、および/または
-蛍光染料を含む、さらなる歯科用添加剤を含んで成る、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7~9のいずれか1項に記載の歯科用成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合性コンポジット樹脂組成物を使用して成形品を製造するためのステレオリソグラフィー印刷工程(以下、「3D印刷工程」とも呼ばれる)に関する。
【0002】
本発明の工程は、格段に単純で、迅速で、信頼性が高く、および安価である。これにより、改良された成形品、特にブリッジおよびクラウン等の改良された歯科補綴物の製造が可能になる。
【背景技術】
【0003】
従来の3D印刷工程は、たとえば、ステレオリソグラフィーSLAおよびDLP等の浴系の光重合である。この場合では、成形品は、コンピューター支援設計(CAD)に基づき、コンピューター制御(CAM)の下で積層して生成される。この点、液体光重合性コンポジット樹脂の薄層の所定の領域が層ごとに照射され、その結果、重合、すなわち硬化が、照射領域でその都度起こる。
【0004】
SLAやDLP等の3D印刷工程では、特に、ステレオリソグラフィー装置のドクターブレード等の追加の分散要素を使用して生成する必要のある樹脂層を用いずに、重合した層を次の薄い樹脂層で迅速かつ確実コーティングできるよう、十分な流動性を有する光重合性樹脂が必要とされる。それゆえ、好ましい樹脂は、室温(23℃)で約5Pa・s未満の動的粘度を有する。
【0005】
3D印刷工程に関連する課題は、特に、印刷速度、空間内の3方向すべての寸法精度、重合収縮、特に層の積層方向(z方向)での重合収縮、成形品の機械的強度、ならびに色彩設計および安定性である。
【0006】
用途に応じて、成形品は様々な要件を満たす必要がある。歯科補綴物として、それらは、適合の精度、硬度、摩耗、強度、特に曲げ強度および曲げ弾性率、破壊靭性、歯の色および生体適合性に関して特に厳しい要件を満たさなければならない。さらに、歯科補綴物は、特に一時的な手段としてのみ使用される場合、安価に製造できる必要がある。
【0007】
コンポジット樹脂から構成されている歯科補綴物、特に一時的なクラウンおよびブリッジは、現在でも主に、歯の痕跡、歯(残根)モデル、および重合性コンポジット樹脂を用いた複雑な工程によって歯科医によって生成されている。この種の方法は、例えば、EP1901676B1が知られている;対応する材料は、例えば、EP2034946B1、EP2070506B1、EP2198824B1、およびEP2512400B1に記載されている。一時的なクラウンおよびブリッジ用のコンポジット樹脂は、顕著な降伏点があり、即ち、せん断応力が加えられると流動するが、実際には、静止状態では流動しない。
【0008】
特に、クラウンおよびブリッジの所望の機械的特性を達成するために、一時的なクラウンおよびブリッジ材料は通常、ラジカル重合性モノマー、オリゴマー、およびポリマーに加えて、特に、微細な無機フィラーの混合物も通常含む。
【0009】
WO2005/084611には、バインダー、ナノスケールフィラー、およびマイクロフィラーを含む、充填された重合可能な歯科材料について記載されている。この材料は、一時的なクラウンおよびブリッジの材料としても使用できる。実施例の歯科材料は、70~85重量%のフィラー粒子を含む。ナノスケールフィラーは、市販の集合/凝集ナノフィラーの有機表面修飾によって得られ、バインダーに分散される。このようにして得られたバインダーと修飾ナノフィラーの混合物は、重合収縮度が高く、機械的強度が低いため、歯科材料としての一般的な使用には適さないと考えられる。これらの欠点は、マイクロフィラーと混合することによってのみ軽減される。上記実施例の歯科材料は流動性がなく、3Dプリンターでの使用には適していない。光重合された試験片の曲げ強度は最大130MPaである。
【0010】
WO2009/121337A2には、5~25重量%、好ましくは5~15重量%の表面修飾ナノ粒子を含む医療目的用、特に樹脂配合物に基づく耳型の成形品のステレオリソグラフィーの製造方法が記載されている。粒子は、好ましくは、100nm未満の粒子サイズを有する。ハイリンク(Highlink)という登録商標の下、クラリアント(Clariant)によって販売されている分散体が、適切な粒子として記載されている。この分散体は、すべての粒子がほぼ同じサイズを有する単分散SiO2ゾルである。そのようなゾルは製造が複雑であり、それに応じて高価である。実施例では、樹脂配合物には、9.6重量%のシラン化SiO2が含まれている。曲げ強度は135MPa、弾性率は2810MPaである。
【0011】
WO2013/153183には、歯科用成形品、特にコンポジット樹脂に基づくインレー、アンレー、クラウン、およびブリッジの形態の歯科用品のステレオリソグラフィーによる製造方法が記載されている。コンポジット樹脂は、好ましくは40~90重量%のフィラーを含むと記載されている。実施例のコンポジット樹脂はそれぞれ、焼成シリカ、ケイ酸バリウムアルミニウムガラス粉末、およびフッ化イッテルビウムのフィラー混合物を3:2:1の重量比で60重量%以上含む。コンポジット樹脂は、5Pa・Sをはるかに超える動的粘度を有する。光重合された試験片の曲げ強度は最大84MPa、曲げ弾性率は最大2.5GPaを有する。
【0012】
EP3040046A1には、コンポジット樹脂に基づく人工歯のステレオリソグラフィーによる製造方法が記載されている。コンポジット樹脂は、平均粒子径が0.01~50μmの球状フィラーを5~70重量%含むことが好ましいと記載されている。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、安価におよび改良された機械的特性または少なくとも従来の製造工程と同等の機械的特性を備える、ステレオリソグラフィーの成形歯科品、特にクラウンおよびブリッジを製造することである。別の目的は、ステレオリソグラフィー印刷工程を使用する際の技術設備費を可能な限り低く抑えることであり、特に、使用されるコンポジット樹脂組成物の分配要素(ドクターブレード)を省略することである。
【0014】
本発明は、独立請求項に記載されている主題によってこの目的を達成し、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。詳細には:
本発明への道筋において、以下のようなトレードオフをどのように克服するかが課題となる。
-ステレオリソグラフィー工程における光重合性コンポジット樹脂(thereof)の使用のための基本的な前提条件である、光重合性コンポジット樹脂の流動性。
-適合精度、硬度、摩耗、強度、特に曲げ強度と曲げ弾性率、および破壊靭性に関する上記要件等の十分な機械的特性。
【0015】
これは、特に冒頭で述べた背景に対して、特にクラウンおよびブリッジの場合に、所望の機械的特性を確保するために、ナノスケールのフィラーに加えてマイクロフィラーがコンポジット樹脂組成物に加えられることによるものである。しかし、このマイクロフィラーの混合により、ステレオリソグラフィー工程での使用がほとんど不可能と思われる程度に流動性が損なわれる。これは、ステレオリソグラフィー装置のコンポジット樹脂組成物用の追加の分配要素(スキージ)が不要な場合、つまり技術設備の費用を低く抑える必要がある場合に特に当てはまる。
【0016】
上記目的の矛盾、および冒頭で述べた先行技術の不利な点、および課題に対する解決策の探索において、驚くべきことに、偶然にも、WO2005/084611に記載されているナノ分散体の本発明による使用が、他のフィラーを用いず、特にマイクロフィラーを用いず、同等またはいっそう改良された特性、特に改良された機械的特性つながることがわかった。
【0017】
マイクロフィラーは、機械的特性、特に所望の曲げ弾性率および曲げ強度を達成するために本質的に重要であると考えられたため、これは特に驚くべきことであった。それゆえ、当業者は、これらの構成要素の省略を考慮にいれていなかったであろう。出願人は、マイクロフィラー成分がなくても歯科材料の所望の機械的特性を確保するのに十分である特定の表面修飾ナノスケールフィラー成分(特許請求の範囲による成分「b」)の使用によって、この現象を説明する。これにより、特許請求範囲によれば、23℃で5Pa・s未満であるべき動的粘度を介して定義される、ステレオリソグラフィー工程で使用するための基本的な前提条件として、コンポジット樹脂組成物の流動性を確保できる。換言すれば、本発明の上記の目的は、約5Pa・s未満の動的粘度を有する、好ましくは約3Pa・s未満であり、特許請求の範囲に記載の成分を含む、光重合性コンポジット樹脂を使用するステレオリソグラフィー工程(「3D印刷工程」、特にSLAまたはDLP工程)によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、特に、流動性を有する(または流動性の;flieBfahigen)光重合性(または光重合可能な;photopolymerisierbaren)コンポジット樹脂組成物(または樹脂流動組成物)の使用を供することに関する。流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度(または粘度、または粘性係数;dynamischen Viskositat)、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート-プレート・レオメーターを使用して測定された動的粘度であって、
コンポジット樹脂組成物に基づく歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンのステレオリソグラフィー(または立体光造形;stereolithographic)生成のために
成分a)ラジカル(またフリーラジカル;radikalisch)光重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル光重合性モノマーとオリゴマーとの混合物、
成分b)有機的に表面修飾(または表面変性、または表面改質;oberflachenmodifizierten)し、ならびに任意で、部分的に集合(または会合;agglomerierten)および/または凝集したナノスケール(またはナノサイズ;nanoskaliger)フィラー(または充填材;Fullstoffs)であって、該ナノスケールフィラーはコンポジット樹脂組成物に組み込まれており、
-フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
-分散体(または分散液;Dispersion)中のフィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意で、フィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、分散体中に存在する上記フィラーの好ましくは少なくとも95体積%、より好ましくは98体積%、より好ましくは99体積%は、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意でフィラー凝集体およびフィラー集合体を含んでなり、
フィラー凝集体および/またはフィラー集合体は、
-40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
-1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)少なくとも1つの光開始剤、
成分d)任意で、安定剤、および
成分e)任意で、顔料粒子、
成分f)任意で、安定化ラジカル
を含んで成る。
【0019】
本発明によると、特徴b)によるナノスケールのフィラーは、任意で、部分的に集合および凝集されている。すなわち、ナノ粒子のいくつかは、2つ以上の一次粒子が強い力(凝集(aggregates))によって結合され、これらが弱い力(集合(agglomerate))によって他の凝集体に部分的に結合されている集合-凝集粒子である。
【0020】
従って、一次粒子のみからなるナノフィラーの複雑な生成(例えば、ゾルゲル法)は不要であり、特に、安価な代替品、例えば、火炎熱分解によって得られる二酸化ケイ素を使用できる。火炎熱分解によって得られる二酸化ケイ素はナノスケールの一次粒子を含み、ナノスケールの一次粒子は強い凝集力(特に焼結結合)と弱い凝集力の両方の力により粒子同士互いに固定されて、より大きな凝集体および/または集合体を形成する。そのようなフィラーを本発明によるコンポジット樹脂組成物に機械的に組み込むことにより、集合体の結合を大部分破壊できる。特許請求の範囲によるナノスケールフィラー成分b)の有機表面修飾は、これらがコンポジット樹脂中に分散可能になり、コンポジット樹脂に組み込まれた後に一次粒子または凝集体/集合体が粘度の増加を伴うより大きな会合体に再び集合することを防止する効果がある。この有機表面修飾は、特にシラン化であってよい。有機表面修飾は、好ましくは、コンポジット樹脂と化学的に反応することができる、またはこのコンポジット樹脂に対して高い親和性を有する官能基をナノスケールフィラーの表面に導入する。
【0021】
10-2Hz~10-4Hzの周波数掃引試験において、流動性を有する重合性コンポジット組成物は、特に好ましくは、G'曲線とG''曲線との間に交点を有し(それぞれ周波数の関数としてプロットした場合において、G’=貯蔵弾性率、G’’=損失弾性率)、これにより、G'とG''との曲線の交点の周波数よりも高い周波数で、G''>G'が適用される。測定は23℃で、例えば、上部プレートが25mm径、ギャップが0.1mm、10Hz~10-4Hzの変形が1%のプレート-プレート・レオメーターを使用して行われる。定義については、トーマス・G・メズガー(Thomas G. Metzger)、レオロジーマニュアル(Das Rheologie Handbuch)、第4版、ヴィンセント・ネットワーク(Vincentz Network)、2012年を参照。
【0022】
上記コンポジット樹脂組成物は、特に405nmまたは385nmの波長で使用される光重合のために最適化された光学密度を有する。このようにして、特に、歯科用成形品の高い寸法精度が達成され、特に、z方向のさらなる硬化が低減される(z過硬化)。
【0023】
また、驚くべきことに、本発明による顔料含有コンポジット樹脂組成物の貯蔵試験において、着色のために組み込まれた顔料は、3ヶ月以上(さらには12ヶ月以上)の貯蔵の間に沈降しないことが見出された。3D印刷用のコンポジット樹脂組成物では、特にナノスケールサイズを超えて(使用した顔料のように)サイズが大きくなる粒子は、沈降する傾向があると想定されていたため、驚くべきことであった。このため、最適な結果を得るには、従来の着色コンポジット樹脂もステレオリソグラフィーデバイスで使用する前に均質化する必要がある。しかしながら、本発明によれば、貯蔵安定性(または貯留安定性;lagerstabile)のある均質なコンポジット樹脂を驚くべきことに供され得る。このコンポジット樹脂は、3、6、または12ヶ月の貯蔵時間の後、印刷された成形品の機械的特性または歯の色に悪影響を与えるような沈降を示さなかった。特に、本発明によれば、含まれている顔料微粒子が貯蔵中に沈降しない光重合性コンポジット樹脂が得られた。
【0024】
改良された歯科用成形品は、特に下記の重要な成分を含む光重合性コンポジット樹脂を用いて3D印刷法によって生成することができる。
成分a)ラジカル重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル重合性モノマーとオリゴマーとの混合物、
成分b)コンポジット樹脂組成物に組み込まれた、有機的に表面修飾され、ならびに任意で、部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーであって、
-フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
-分散体中のフィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意で、フィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、分散体中に存在する上記フィラーの好ましくは少なくとも95体積%、より好ましくは98体積%、より好ましくは99体積%は、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意でフィラー凝集体およびフィラー集合体を含んでなり、フィラー凝集体および/またはフィラー集合体は、
-40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
-1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)少なくとも1つの光開始剤、
および、23℃での光重合性コンポジット樹脂の動的粘度は、5Pa・s未満を有し、当該動的粘度は、好ましくは50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート-プレート・レオメーターを使用して測定された動的粘度である。
【0025】
本発明によるコンポジット樹脂組成物によって構成されるナノスケールフィラー粒子は、以下に簡単に要約される多くの特徴を有することができる。
【0026】
粒子b)は、焼成シリカの生成中に通常形成される一次粒子の凝集体から本質的になる。一次粒子のサイズは、例えば、透過型電子顕微鏡法によって決定することができる。粒子b)の形状は、特に凝集体では、本質的に理想的な球形ではなく不規則(またはふぞろい、またはでこぼこ;irregular)である。粒子b)は、本質的に、径が1000nm未満の小さな凝集体で分散して存在するか、または非集合体で存在する。粒子b)はヘテロ分散性の(または異種分散;heterodisperse)サイズ分布を有する。
【0027】
分散体中の粒子のサイズは、少なくとも約40nm~1000nm、好ましくは600nm以下の連続的なサイズ範囲に亘って分布している。粒子サイズの分布は、当業者に知られている様々な方法、例えば、動的光散乱を使用して決定することができる。
【0028】
フィラー集合体もしくは凝集体、および/または分散体中の個々の粒子の平均粒子サイズ径(z-動的光散乱の平均)は、好ましくは90~500nm、より好ましくは150~350nmである。フィラー集合体もしくは凝集体、および/または分散体中の個々の粒子の平均粒子サイズ径(z-動的光散乱の平均)は、例えば、2-ブタノンまたはラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーの混合物(成分a))中で動的光散乱によって決定することができる。散乱光強度に従って重み付けされた測定平均粒子サイズ径は、z平均と呼ばれる。分散体中のフィラー(フィラー集合体または凝集体、および非凝集/非集合フィラー粒子)の個々の粒子のサイズは、「測定値と方法」のセクションで説明されている方法を使用して、動的光散乱の測定データから決定される。
【0029】
大粒子(例えば、顔料やマイクロフィラーなど)が存在する場合でも、粒子サイズ分布を定量的にできる可能性があるのは、フローフィールド・フローフラクショネーション(フローFFF)に基づく分析システムである。このようなシステムは、例えば、ドイツのランツベルクにあるポストノヴァ・アナリティクス社(Postnova Analytics GmbH)からモデル名「AF2000AT」から得られる。分離範囲は、1nm~100μmの粒子サイズ範囲に及ぶ。粒子サイズに応じたサンプルの穏やかな分離は、例えばHPLCやGPCの分野において当業者に知られているように、固定相のないオープンな流路で異なるサイズの粒子の異なる拡散係数により起こる。適切な媒体は、光散乱測定について既に述べた溶媒または分散剤である。測定および評価ソフトウェアでは、FFF理論に基づく絶対粒子サイズの計算と、適切なサイズの粒子サイズ規格を使用したキャリブレーションに基づく計算の双方が可能になる。そのような粒子サイズ規格は、例えば、米国カリフォルニア州フリーモントのサーモ・フィッシャー・サイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)から「NISTトレーサブル・サイズ規格(NIST Traceable Size Standards)」という名称で入手可能である。分別装置を適切な検出器と結合することにより、粒子サイズ分布の定性的および定量的決定が可能である。
【0030】
分散体は、適切な孔サイズの膜を使用して、2つの粒子サイズの画分に分離することもできる。続いて、膜に保持された、または膜を通過した粒子量の重量分析が行われる。適切な膜は、例えば、適切な孔サイズを有するテフロン膜(例えば、ドイツのバート・ツヴィッシェンアーン(Bad Zwischenahn)にあるピーパー・フィルター社(Pieper Filter GmbH)から「フリース・サポートのPTFE(PTFE auf Stutzvlies)、タイプTM」という名称でさまざまなサイズで入手できる、孔サイズ1μmの膜フィルター)である。特定の膜の分離性能は、上記サイズ規格を用いてサンプルを分析する前に決定できる。膜の孔径より大きいサイズと小さいサイズの規格を1つずつ選択し、完全に保持されているか完全に通過しているかを確認する。
【0031】
冒頭で既に述べたように、コンポジット樹脂組成物に組み込まれたナノスケールフィラー、すなわち本発明による成分「b」は、WO2005/084611に既に基本的に記載されているように、有機的に表面修飾されている。例えば、分散された、有機的に表面修飾されたナノスケールおよび任意で部分的に集合および/または凝集されたナノスケールフィラー粒子は、分散工程の前に、好ましくはシランで有機的に表面処理され得るか、あるいは有機的に表面処理されないか、および/または以下の手順で表面に修飾され得る。
ステップi)コンポジット樹脂組成物の成分a)に従って、ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーを混合することにより、コンポジット樹脂組成物を供するステップ、
ステップii)混合物にシラン加水分解物を加えるステップ、
ステップiii)成分b)に従って、混合物中にナノスケールフィラー粒子、好ましくは焼成シリカ(またはヒュームドシリカ、または発熱性、または火成;pyrogener Kieselsaure)を分散するステップ、によって表面修飾され、
ステップiii)で分散されることになる集合した粒子の粒子表面積に対するシラン加水分解物の比は、フィラー表面積当たりに使用されるシランの物質量に基づき、好ましくは、0.005mmol/m2~0.08mmol/m2または0.01mmol/m2~0、02mmmol/m2である。
【0032】
高度に表面処理された、好ましくはシラン化された出発粉末の場合に使用できる、分散した有機表面修飾ナノスケールおよび任意で部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラー粒子の別の適切な製造工程は、以下のステップを含む。
ステップi)上記コンポジット樹脂組成物の成分a)に従って、上記ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーを混合することによってコンポジット樹脂組成物を供するステップ、
ステップii)成分b)に従って上記表面修飾ナノスケールフィラー粒子、好ましくは表面修飾焼成シリカを混合物中に分散させるステップ。
【0033】
この方法は、BET法に従って決定されるフィラー表面積を用いて、4.5・10-4g(炭素)/m2(フィラー表面積)を超える、好ましくは7.0・10-4g(炭素)/m2(フィラー表面積)を超える、特に好ましくは12.0・10-4g(炭素)/m2(フィラー表面積)を超える表面に基づく炭素含有量を有するシラン化焼成シリカの場合に特に適し得る。
【0034】
ステップiii)またはステップii)で分散される集合粒子は、200m2/g未満、好ましくは100m2/g、および特に好ましくは60m2/g未満のBET法(DIN66131またはDIN ISO9277に従って)によって決定される比表面積を好ましくは有する。適切な焼成シリカは、商業的に入手可能な、例えばアエロジル(登録商標)130、アエロジル(登録商標)90、アエロジル(登録商標)Ox50(それぞれドイツ、エッセンのエボニック・インダストリーズ製)、HDK(登録商標)S13、HDK(登録商標)C10、およびHDK(登録商標)D05(それぞれドイツ、ムニッチのワッカー・ケミ(Wxcker Chemie)製)である。さらなる実施形態では、分散される集合粒子は、分散工程前に、例えばシランで既に表面処理されている。シランで前処理された集合粒子は、例えば、アエロジル(登録商標)R202、アエロジル(登録商標)R805、アエロジル(登録商標)R972(ドイツ、エッセン、エボニック・インダストリーズ)である。特定の実施形態では、分散される集合粒子は、分散工程前に、少なくとも1つのラジカル重合性官能基を含む一定量のシランで既に表面修飾されている。適切な表面修飾焼成シリカは、例えば、アエロジル(登録商標)R7200(ドイツ、エッセンのエボニック・インダストリーズ)の名称で入手可能である。ステップiii)で分散される凝集粒子の粒子表面積に対するシラン化剤(ステップii))の比率は、好ましくは0.005mmol/m2~0.08mmol/m2または0.01mmol/m2~0.02mmol/m2である。
【0035】
歯科用成形品を積層構築するためのステレオリソグラフィー工程(例えば、SLA、DLP)で使用するために、本発明による好ましい光重合性コンポジット樹脂組成物は、組成物全体の100重量%に基づき、
成分a)ラジカル重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル重合性モノマーとオリゴマーとの混合物を90~55重量%、好ましくは80~55重量%、より好ましくは75~60重量%、
成分b)コンポジット樹脂組成物に組み込まれた、有機的に表面修飾され、ならびに任意で、部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーを5~60重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%であって、
‐フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
‐分散体中のフィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意で、フィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、分散体中に存在する上記フィラーの好ましくは少なくとも95体積%、より好ましくは98体積%、より好ましくは99体積%は、分散した一次フィラー粒子、ならびに任意でフィラー凝集体およびフィラー集合体を含んでなり、
フィラー凝集体および/またはフィラー集合体は、
‐40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
‐1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)光開始剤を0.01~5重量%、
成分d)安定剤を0.001~5重量%、
成分e)顔料粒子を0~5重量%、好ましくは0.01~5重量%、
成分f)安定化ラジカルを0~5重量%、好ましくは0.0025~0.05重量%、
含んで成り、
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%含む。
【0036】
歯科用成形品を積層構築するためのステレオリソグラフィー工程(例えば、SLA、DLP)で使用するための本発明による特に好ましい光重合性コンポジット樹脂組成物は、全組成物100重量%に基づき、成分a)~e)を以下のように含む:
成分a)ラジカル重合性(メタ)アクリレートを75~60重量%、
成分b)25~40重量%のシラン化ナノスケールフィラー粒子であって、当該シラン化ナノスケールフィラー粒子は、好ましくは90~500nm、より好ましくは150~350nmで分散体中に存在する個々の粒子および/またはフィラー集合体および/またはフィラー凝集体の粒子サイズ(動的光散乱のz平均)を有し、
成分c)光開始剤を0.1~2重量%、
成分d)安定剤を0.1~1重量%、
成分e)顔料を0.01~1重量%、および
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも96~99.89重量%含む。
【0037】
本発明は、歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンを製造するための方法をさらに供し、上記方法は、
ステップi)流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物を供するステップであって、前記流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で、25mm径の上部プレートを有するプレート‐プレート・レオメーターで測定された動的粘度であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の成分a)~成分c)、ならびに任意で、成分d)および成分e)を含んで成り、および
ステップii)コンポジット樹脂組成物で満たされた槽(またはバス、または浴、または浴槽;bath)中で、流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物から、ステレオリソグラフィーで積層して(または層毎;schichtweiser)に歯科用成形品を構築すること、を含む。
【0038】
本発明は、上記方法によって得ることが可能な歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンを提供する。上記方法によって得ることが可能な歯科用成形品は、好ましくは、ISO 4049:2009に従って測定された、少なくとも100MPa、好ましくは少なくとも130MPaの曲げ強度、および/または少なくとも3GPa、好ましくは少なくとも4GPaの曲げ弾性率を有する。前述のブリッジやクラウン以外にも、補綴や保存、予防歯科に使用される品も歯科用モールド品として考えることができる。網羅的であると主張することなく、いくつかの適用例を代表として以下に記載する。歯の詰め物、インレー、オンレー、コアビルドアップ、人工歯、およびベニヤ。
【0039】
本発明による光重合性コンポジットレジン組成物の適切な成分a)、b)、c)、d)、e)およびf)は、先行技術から当業者に知られている。念のために、これらを例として以下に説明する。
【0040】
成分a)
ラジカル重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはモノマーとオリゴマーとの混合物を有して成る成分a)は、23℃で0.05~5Pa・S、好ましくは0.1~3Pa・Sの動的粘度を有し、好ましくは50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート-プレート・レオメーターで測定される。あるいは、粘度は、DIN53019に記載されているような同軸シリンダーシステムC25を使用して測定することもできる。好ましいモノマー、オリゴマーおよびポリマーは、アクリレートおよびメタクリレートであり、より好ましくはこれらの混合物である。適切なモノマーおよびオリゴマーは、メチル、エチル、2-ヒドロキシエチル、ブチル、ベンジル、テトラヒドロフルフリル、またはイソボルニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス-GMA、3つのエトキシ基を有するエトキシまたはプロポキシル化ビスフェノールAジメタクリレート(例えばSR-348c(サートマー(Sartomer)))、または、2,2-ビス[4-(2-メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、ウレタンジメタクリレートUDMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレートおよび2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの付加生成物)、ジ-、トリ-、またはテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、およびグリセロールジ-およびトリメタクリレート、1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、または1,12-ドデカンジオール(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジメタクリレートの中から選択されるモノマーおよびオリゴマーである。好ましい(メタ)アクリレートモノマーは、ベンジル、テトラヒドロフルフリル、またはイソボルニルメタクリレート、p-クミルフェノキシエチレングリコールメタクリレート、2,2-ビス[4-(2-メタクリロキシプロオキシ)フェニル]プロパン、ビス-GMA、UDMA、SR-348cである。ラジカル重合性モノマーとして、N-一置換またはN-二置換アクリルアミド、例えば、N-エチルアクリルアミドまたはN、N-ジメチルアクリルアミド、またはビスアクリルアミド、例えば、N、N'-ジエチル-1,3-ビス(アクリルアミド)プロパン、1,3-ビス(メタクリラミド)プロパン、1,4-ビス(アクリルアミド)ブタン、または1,4-ビス(アクリロイル)ピペラジンも使用できる。上記のモノマーの混合物が好ましく使用される。
【0041】
成分b)
粒子b)を生成するために適する粒子は、焼成金属酸化物、半金属酸化物、または混合金属酸化物である。好ましくは焼成二酸化ケイ素(焼成シリカ)またはシリコンの焼成混合酸化物、好ましくはシリコンとアルミニウム、ジルコニウム、および/または亜鉛との焼成混合酸化物である。
【0042】
成分b)の粒子の表面修飾に適したシランは、次の一般式に対応する。
【化1】
Rは水素原子またはアルキル基、Xは加水分解性基(例:ClまたはOCH
3)、Yは炭化水素ラジカル、nは1から約20の整数、aは1から3の整数、bは0、1または2であり、およびcは1~3の整数であり、かつa+b+c=4である。
【0043】
成分c)
成分cとして使用できる光開始剤は、300nm~700nm、好ましくは350nm~600nm、特に好ましくは380nm~500nmの波長範囲の光の吸収によって、および任意で、1つ以上の共開始剤との追加反応によって、材料を硬化させることができる特徴がある。適切な光開始剤は、特に、ホスフィンオキシド、ベンゾイン、ベンジルケタール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン、およびそれらの混合物である。2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、またはビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドは特に適する。ジケトン、アシルゲルマニウム化合物、メタロセン、およびそれらの混合物は、可能な第2の光重合開始剤として使用することが特に適している。
【0044】
成分d)
適切な安定剤は、特に、ベンゾトリアゾール、トリアジン、ベンゾフェノン、シアノアクリレート、サリチル酸誘導体、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、およびそれらの混合物である。特に適切な安定剤は、O-ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、例えば、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-tert-ブチル-フェノール2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4、6-ジ-tert-ブチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4、6-ジ-tert-ペンチル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-ドデシル-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス-(1-メチル-1-フェニルエチル)-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール、または3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンゼンプロパン酸、o-ヒドロキシフェニルトリアジン、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ビフェニル、1,3,5-トリアジン、または2-(2-ヒドロキシ-4-[2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピルオキシ]フェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、o-ヒドロキシ-ベンゾフェノン、例えば、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、シアノアクリレート、例えば、エチル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、またはテトラキス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシメチル]メタン、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、例えば、N、N’-ビスホルミル-N、N’-ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)-ヘキサメチレンジアミン、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-セバケート、またはメチル-(1、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、サリチル酸エステル、およびそれらの混合物である。
【0045】
成分e)
好ましい顔料は、例えば、シコビット(Sicovit)ブランドで販売されている顔料である。好ましい顔料は、1~20μmの粒子径D50を有する。
【0046】
成分f)
適切な安定化ラジカルは、特に、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル(TEMPO)、特に好ましくは、セバケートビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1-オキシル)等である。安定化ラジカルは、特に好ましくは、光重合性コンポジット樹脂組成物中に0.005~0.01重量%で含まれる。
【0047】
さらなる成分
成分a)、b)、c)、d)、e)およびf)に加えて、光重合性コンポジット樹脂組成物は、さらなる添加剤、特に歯科で慣習的な添加剤、例えば蛍光染料を含むことができる。
【0048】
ここで、請求項に定義されているように本出願によるコンポジット樹脂組成物を使用した場合、冒頭で述べた目的の矛盾の解決(ステレオリソグラフィー工程で使用するための基本的な前提条件としての光重合性コンポジット樹脂の流動性に対する、十分に強い曲げ強度および曲げ弾性率等の十分な機械的特性)は、優れた機械的特性の原因であると考えられていたマイクロフィラーを大幅に省くことによって、驚くほど達成できることを再度明確に指摘しておく。
【0049】
この背景に鑑みて、本発明の好ましい実施形態における光重合性コンポジット樹脂は、本質的にマイクロフィラーを含まない。そのようなフィラーの最大比率は、5重量%、1重量%、または好ましくは0.5重量%である。本発明の目的のために、上記マイクロフィラーは、特に、粒子サイズが1~50μmの粉砕フィラーまたは球状フィラーであり、これらは、本発明によるコンポジット樹脂組成物の成分b)による凝集粒子の形状とは著しく異なる特徴的な粒子形状を有する。さらに、光重合性コンポジット樹脂組成物は、好ましくは、チキソトロピー剤(またはチキソトロピー誘発剤;thixotropy-inducing agent)、特に(凝集した)焼成シリカ、すなわち、記載された方法に従って表面修飾されていない焼成シリカを含まない。チキソトロピー剤が含まれる場合、その比率は、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.01重量%以下であるべきである。
【0050】
成分e)または他の添加剤の顔料が1000nmを超える粒子サイズを有する場合、光重合性コンポジット樹脂は粒子サイズ1000nmを超える粒子を10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に好ましくは1.0重量%未満含む。
【0051】
本発明は、例示的な実施形態に基づき以下に説明される。まず、使用される様々な測定および試験方法を説明し、それらは先行技術、例えばWO2005/084611の技術分野ですでに詳細に説明されており、続いて本発明による実施例を説明する。
【0052】
I.測定値と方法
1.粒子サイズと粒子サイズ分布
ナノ粒子の粒子サイズは、動的光散乱によって決定された。この目的のために、マルバーン・インストルメント・リミテッドカンパニー(Malvern InstrumentsLtd)のゼータサイザー・ナノ・ZS(Zetasizer Nano ZS)を使用した。後方散乱レーザー光は、レーザーの光軸に対して175°の角度で、いわゆる後方散乱配置で測定された。相関器から得られた情報は、PC上のゼータサイザーのソフトウェアによって評価された。分析モデルとして「汎用(通常解像度)」を選択した。本発明に従って生成されたナノ分散体は、使用されるシリカの量に基づき、約0.5重量%の固形分濃度に、それぞれの場合に使用される樹脂混合物または2-ブタノンで希釈された。樹脂混合物の希釈度の測定は、層の深さ(またはパス長)が10mmのPMMA(ポリメチルメタクリレート)製の使い捨てキュベット(ラボソリュート(LABSOLUTE)(登録商標)、ティーエイチ・ゲイヤー社(Th.Geyer GmbH&Co.KG)、カタログNo.7697102で実施した。2-ブタノンの希釈度の測定は、パスの深さが10mmの石英ガラスキュベット(110QS、ヘルマ(Hellma))で実行された。
【0053】
2.動的粘度(せん断速度)
動的粘度は、マルバーン・インストルメント・リミテッドカンパニー(Malvern InstrumentsLtd)のキネクサスDSR(KinexusDSR)を使用して測定した。上部プレートが25mm径のプレート‐プレート形状を使用した。測定中、1Pa~50Paのせん断応力範囲で掃引された。評価には、50Paのせん断応力での値を使用した。測定は23℃の一定のサンプル温度で行われ、デバイスの内部温度制御によって監視され、一定に保たれた。
【0054】
3.曲げ強度と曲げ弾性率
曲げ強度および曲げ弾性率は、ISO 4049:2009に従って決定された。この目的のために、40mm×2mm×2mmのロッドを、その長手方向がビルドスペース(または構築空間;construction space)のxまたはy方向になるように、ビルドプラットフォームに平らに印刷した(x軸とy軸はビルドプラットフォームが存在する平面、またはそれに平行なトレイの底面にまたがり、Z軸はx軸およびy軸に垂直である)。付着した樹脂残留物をエタノールで洗浄した後、試験片を再曝露した(ヘラエウス・クルツァーのヘラフラッシュ(HeraeusKulzer、Heraflash))。再曝露は180秒間行われ、試験片を長手方向を中心に180°回転させた後、さらに180秒間行われた。
【0055】
曲げ強度を測定する前に、試験片を37℃の水中に24時間保管した。測定は、ヅウィック(Zwick)のユニバーサルテスターZ 010またはZ 2.5で、0.8mm/分の一定の送り速度で破損するまで実行される。この目的のために使用される曲げ装置は、軸間20mmの距離で平行に取り付けられた2mm径の2つのスチールローラー、および2つのローラー間、かつそれらに平行に、中央に取り付けられた2mm径の第3のローラーから成り、これによって、3つのローラーが協働して試験片の3点荷重のために使用できる。
【0056】
曲げ強度σまたは曲げ弾性率Eの計算は、次式に従って測定ソフトウェアによって実行される。
【数1】
F ニュートン単位で試験片に加えられる最大力
f 0.25%の伸びにおける試験片のたわみ
l 支持点間の距離(mm)
b 試験前の試験片の幅(mm)
h 試験前の試験片の高さ(mm)
【0057】
4.3体摩耗
3体摩耗(three-medeia abrasion)は、ウィリーテック(Willytec)3体摩耗機で測定された。相対的な評価のために、試験片を本発明に従って3D印刷材料から印刷し、上記の「曲げ強度」で説明したように後処理した。カートリッジ(DMGのルクサテンプ・オートミックス・プラス(Luxatemp Automix Plus))の従来のクラウンおよびブリッジ材料から構成された試験片を参照として使用した。これらの試験片は、自動混合されたペーストを適切な金型で硬化させることによって生成された。測定前に、すべての試験片を37℃で24時間水中に保管した。試験片を化学硬化セメントで試験ホイールに接着し、試験片間の隙間を液状の光硬化性コンポジット材料で埋めた。次に、ホイールを研磨した。測定を15Nの圧力負荷で50,000サイクル実行した。左側のモーターは、130分-1の速度に設定し、右側のモーターは60分-1に設定した。使用した研磨媒体は、150gの粉砕雑穀であり、これを220gの蒸留水と混合してペーストを形成した。
【0058】
研磨工程の終了後、サンプルホイールを流水で完全にすすぎ、セルロースと圧縮空気で乾燥させた。次に、試験片のプロフィロメトリー測定をホイール上で実行した(プロフィロメーター・ウィリーテック(Profilometer Willytec)・DMA・メス(MESS)・V1.12)。
【0059】
5.z過硬化
z過硬化を測定するために、次の寸法の直方体試験片を印刷した。幅約50mm、高さ約25mm、厚さ約5mm。試験片のデジタルモデルには、10mm径、8mm径、5mm径、2.5mm径、および1mm径の円形の穴があいている。試験片は、円形平面の面積ベクトルがz軸に直交するように印刷される(x軸とy軸は、構築プラットフォームが配置されている平面と、それに平行なトラフ(または浴槽、またはタンク;Wannne)の底面にわたっており、z軸はx軸とy軸に垂直である)。上記「曲げ強度」で説明したように試験片を印刷して洗浄した後、ノギスを使用して穴の径を測定する。いくつかの測定は、z軸(印刷工程に関連する)に平行およびそれに垂直に行われる。穴の径の測定値の2つのグループから平均値がそれぞれ形成される。z軸に平行な径は、z軸に垂直な径から差し引かれる。μm単位で得られた値がz過硬化である。
【0060】
6.破壊靭性(K1c値)
破壊靭性を決定する手順は、先行規格のDINCEN/TS14425-5:2004「Vノッチを使用した試験片の曲げ手順(SEVNB法)」に基づく。K1c値を決定するための試験片は、50mm×4mm×3mm(長さ×高さ×幅)のロッドである。寸法のずれを除いて、試験片は上記の「曲げ強度と曲げ弾性率」で説明したのと略同じ方法で製造された。
【0061】
試験片を同様に、測定前に37℃で24時間水中に保管する。次に、幅3mmの側面の中央にペンで印を付け、ホルダーに固定した。このホルダーでは、スロット付きかみそりの刃でノッチ深さ1.0±0.2mmまで試験片にノッチを付けた。可能な限り最も鋭いノッチ角度を得るために、最後のカットは未使用のかみそりの刃で行われた。得られたノッチ角は約30°である。
【0062】
ノッチ付き試験片は、ヅウィック(Zwick)のユニバーサル試験機Z010またはZ2.5の4点荷重装置で、0.025mm/分の一定の送り速度で破損するまで荷重をかけた。4点曲げ試験の場合、支持体の距離は40.0mm(±0.5mm)、半径は5.0mm(±0.2mm)である。荷重ベアリングの距離は20.0mm(±0.52mm)、半径は5.0mm(±0.2mm)である。ジンバル・サスペンション(またはカーダニック・サスペンション;kardanische Aufhangung)により、曲げ試験時の荷重が均一になる。荷重ベアリングは中央に配置され、支持体上で平行に配置される。
【0063】
試験片に番号を付けることで、ユニバーサル試験機の測定結果を後で確実に特定の試験片に割り当てることができる。
【0064】
次に、破面の顕微鏡測定が行われる。破損した各試験片の半分を検査する。ダイを短くして、破断面が対物レンズに向くようにし、光学顕微鏡の下に配置する。2.5倍の倍率の対物レンズを選択する。顕微鏡に取り付けられたデジタルカメラによって記録されたデジタル顕微鏡画像を使用して、ソフトウェアのサポートによりさらなる評価を実施する。ノッチ深さは、調査した各破面の3点で測定し、これらから平均値を計算する。試験片の平均ノッチ深さaは0.8mm~1.2mmであることが好ましい。試験体の相対的なノッチ深さαは、平均ノッチ深さと試験体の厚さの比である。この値は0.2~0.3であることが好ましい。次いで、これらから、応力拡大係数Yと破壊靭性K
1cも計算できる。K
1c値は、MPa・m
1/2の単位で与えられる。
【数2】
F 試験片に加えられる最大力(MN)
B 試験体の幅(m)
W 試験体の厚さ(m)
S
1 支持体(サポート)の距離(m)
S
2 耐荷重間の距離(m)
a 平均ノッチ深さ(m)
a
1,a
2,a
3 測定したノッチ深さ(m)
α 相対的なノッチ深さ
Y 応力拡大係数
【0065】
平均ノッチ深さまたは相対ノッチ深さに関して公称値から外れている試験片は考慮されない。気泡などの不均一性がある試験片も考慮されない。
【0066】
7.周波数掃引試験
周波数掃引を、マルバーン・インストルメント・リミテッドカンパニー(Malvern Instruments Ltd)のキネクサスDSR(Kinexus DSR)で実行し、上部プレートが25mm径のプレート-プレート形状を使用した。サンプルを、0.1mmのギャップおよび1%の変形で、10Hz~0.0001Hzの周波数で振動させて測定した。ディケード毎に5つの測定ポイントを記録した。測定は23℃の一定のサンプル温度で行われ、デバイスの内部温度制御によってモニターされ、一定に保たれた。複素せん断弾性率G*、貯蔵弾性率G’(複素せん断弾性率の実数部)、損失弾性率G’’(複素せん断弾性率の虚数部)、および損失係数tanδ(G’’およびG’の比)を記録した。
【0067】
8.粒子分散体の調製
VMA-ゲッツマン社(VMA-Getzmann GmbH)のディスパーマット(登録商標)(Dispermat)、タイプAE04-C1を使用して、粒子分散体を生成した。12個の歯がディスク面の両側にほぼ直角に交互に配置された70mm径の歯付きディスク(D)を、内径約100mmおよび容量約1Lの二重壁のステンレス製撹拌容器とともに使用した。さらに、12個の歯がディスク面の両側にほぼ直角に交互に配置された90mm径(D)の歯付きディスクと、内径約180mmおよび容量約5Lの二重壁のステンレス製撹拌容器とともに使用した。
【0068】
基本的に、撹拌容器の内径が1.3D~3Dで、ディゾルバーディスクの主平面の撹拌容器底面からの距離が0.25D~0.5D(Dはディゾルバーディスクの径を示す)であることを確認した。
【0069】
【0070】
樹脂、すなわちラジカル重合性モノマーとオリゴマーとの混合物を生成した。均一な溶液が得られるまで、モノマーとオリゴマーを混合した。樹脂の組成は次の通りである。
ウレタンジメタクリレート 85重量部
ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリレート 24重量部
トリエチレングリコールジメタクリレート 40重量部
イソボルニルメタクリレート 23重量部
ヘキサンジオールジメタクリレート 28重量部
【0071】
100重量部のダイナシラン(登録商標)メモ(Memo)に1.4重量部の酢酸と10.6重量部の水を加えることによってシラン加水分解物を調製した。
【0072】
まず、樹脂混合物(上記の表を参照)を低速(300~500分-1)で攪拌した。
【0073】
9重量部のシラン加水分解物を100重量部の樹脂に加え、400rpmの速度で約1分間樹脂混合物に混合した。
【0074】
次に、55重量部のアエロジル(登録商標)Ox50を樹脂に少しずつ加えた。 ディゾルバーディスクの速度を、1000分-1から1800分-1まで変化させた。アエロジル(登録商標)Ox50の一部を追加する際には、アエロジルの粉落ちを防ぐために、速度を一時的に最低の600分-1に下げた。添加工程は1.5時間かかった。次に、混合物を2000分-1の速度で2時間15分間分散させた。35℃~37℃の温度に達した。全体として、この工程には4時間を要した。
【0075】
光重合性コンポジット樹脂を調製した(例示組成物1、表参照)。この目的のために、開始剤、安定剤、顔料を分散体に加え、その混合物を再び数分間ホモジナイズした。このようにして得られた光重合性コンポジット樹脂は、以下の組成を有していた。
成分[重量%] 実施例1
分散体 98.18
カラーペースト* 0.14
BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール) 0.08
ティヌビン622SF 0.2
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート 0.2
TPO 1.2
*カラーペーストは、50wt%のシコビット(Sicovit)顔料粒子、ウレタンジメタクリレートおよびトリエチレングリコールジメタクリレートの混合樹脂からなる均質な混合物である。
【0076】
光重合性コンポジット樹脂の動的粘度は、1.4Pa・sを有しており、ステレオリソグラフィーでの使用に最適であった。
【0077】
試験片は、以下の機械的特性を有していた。
-曲げ強度は127±8MPa(n=6/6)であった。
-曲げ弾性率は4.69±0.17GPa(n=6/6)であった。
-3体摩耗は-103.1±1.1μm(n=6/6)(ルクサテンプ・オートミックス・プラス:-120.8±3.2μm(n=6/6))であった。
-z過硬化は123μmであった。
-さらに、成形品は破壊靭性(K1C値:0.88±0.12MPam1/2)、ビッカース硬度(34.8±0.8HV0.3(n=5/5))、および長期色安定性(ΔE1.99(28d、60℃))が比較的改善されていた。
【0078】
3D印刷工程
このようにして製造されたコンポジット樹脂を使用して、DLPプリンター(ラピッド・シェイプ社ジェネレイティブ・プロダクション・システムズ(Rapid Shape GmbH Generative Production Systems)のD20 II)を使用してクラウンとブリッジを生成した。「DMG・ルクサプリント・クラウン(Luxaprint Crown)」は、スライシング・ソフトウェア・オートデスク・ネットファブ・スタンダート(the Slicing Software Autodesk Netfabb Standard)2019の材料として選択された。クラウンとブリッジの臨床的適合性は非常に良好であった。
【0079】
比較例
比較試験ではアドマフィン(登録商標)SO-C1を使用した。これは、球形で、本質的に凝集していない粒子から成る。製造業者によると、これらの粒子の平均粒子サイズ径は約200~400nmで、比表面積は約10~20m2/gである。
【0080】
手順:
100重量部のアドマフィン(登録商標)SO-C1を、US6890968B2の8ページに記載されているように、150重量部の水と300重量部のメトキシプロパノールの混合溶媒中で、3.8重量部(約0.01mmol/m2)のダイナシラン(登録商標)メモ(シラン加水分解物)でシラン化した後、乾燥させ、乳鉢でホモジナイズしました。
【0081】
次いで、本発明による実施例にしたがって、分散体を調製した。この目的のために、メタクリレートでシラン化されたアドマフィン(登録商標)SO-C1の55重量部を109重量部の樹脂に分散させたが、この樹脂は、本発明による実施例とは対照的に、今やシラン水和物を含んでいなかった。
【0082】
分散終了から16時間後には既に分離した相が形成されていた。わずかな質量分率の粒子は依然として分散体を形成しているが、粒子の大部分はすでに固体の堆積物を形成しています。保存安定性のある均一な分散体はなかった。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物の使用であって、
前記流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
前記動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート-プレート・レオメーターを用いて測定された動的粘度であって、
前記コンポジット樹脂組成物に基づく歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンのステレオリソグラフィー生成のために
成分a)ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル光重合性モノマーとオリゴマーとの混合物、
成分b)有機的に表面修飾し、ならび
に部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーであって、該ナノスケールフィラーはコンポジット樹脂組成物に組み込まれており、
-フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の
透過型電子顕微鏡によって測定された一次粒子サイズを有し、および
-分散体中の前記フィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならび
にフィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、
前記フィラー凝集体および/または前記フィラー集合体は、
-40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
-1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである、
動的光散乱によって測定された径を有し、
成分c)少なくとも1つの光開始剤、
成分d)任意で、安定剤、ならびに
成分e)任意で、顔料粒子、
成分f)任意で、安定化ラジカル
を含んで成る、
流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物の使用。
【請求項2】
分散されることになる有機的に表面修飾したナノスケールフィラー、ならび
に部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラー粒子が、以下のステップi)~iii)によって表面修飾されており、前記ステップi)~iii)は、
ステップi)コンポジット樹脂組成物の成分a)に従って、前記ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマーを混合することにより、コンポジット樹脂組成物を供するステップ、
ステップii)前記混合物にシラン加水分解物を加えるステップ、
ステップiii)成分b)に従って、前記混合物中に前記ナノスケールフィラー粒子、好ましくは焼成シリカを分散するステップ、であり、
ステップiii)で分散されることになる集合した粒子の粒子表面積に対するシラン加水分解物の比は、フィラーの単位表面積当たりに使用されるシランの物質量に基づき、好ましくは、0.005mmol/m
2~0.08mmol/m
2または0.01mmol/m
2~0.02mmmol/m
2である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
コンポジット樹脂組成物に組み込まれるナノスケールフィラー粒子が、200m
2/g未満、好ましくは100m
2/g未満、および特に好ましくは60m
2/g未満の
DIN 66131/DIN ISO 9277に従ってBET法により決定される比表面積を有し、ならびに焼成シリ
カを含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
組成物全体の100重量%に基づき、コンポジット樹脂組成物が、
成分a)ラジカル重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル重合性モノマーとオリゴマーとの混合物を90~55重量%、好ましくは80~55重量%、より好ましくは75~60重量%、
成分b)コンポジット樹脂組成物に組み込まれ、有機的に表面修飾し、ならび
に部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーを5~60重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~45重量%、より好ましくは25~40重量%であって、
‐フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の一次粒子サイズを有し、および
‐分散体中の前記フィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならび
にフィラー集合体および/またはフィラー凝集体を含んで成り、
前記フィラー集合体および/または前記フィラー凝集体は、
‐40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
‐1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満であり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである径を有し、
成分c)光開始剤を0.01~5重量%、
成分d)安定剤を0.001~5重量%、
成分e)顔料粒子を0~5重量%、好ましくは0.01~5重量%、
成分f)安定化ラジカルを0~5重量%、好ましくは0.0025~0.05重量%、
含んで成り、
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%含む、
ならびに好ましくは、
組成物全体の100重量%に基づき、コンポジット樹脂組成物が、
成分a)ラジカル重合性(メタ)アクリレートを75~60重量%、
成分b)150~350nmの平均粒子サイズ(動的光散乱のz平均)で、分散体中の個々の粒子ならびに/またはフィラー集合体および/もしくはフィラー凝集体が90~500nmの粒子サイズを有するシラン化ナノスケールフィラー粒子を25~40重量%、
成分c)光開始剤を0.1~2重量%、
成分d)安定剤を
0.1~1重量%、
成分e)顔料を0.01~1重量%、
含んで成り、
光重合性コンポジット樹脂は、成分a)および成分b)を合計で少なくとも96~99.89重量%含んで成る、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
コンポジット樹脂組成物が顔料を含んで成り、およびコンポジット樹脂組成部中の該顔料が沈降することなく、少なくとも3ヶ月、好ましくは少なくとも6ヶ月、より好ましくは少なくとも12ヶ月に亘って貯蔵安定性を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンを製造するための方法であって、
前記方法は、
ステップi)流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物を供するステップであって、前記流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物は、
23℃で5Pa・s未満の動的粘度、好ましくは23℃で3Pa・s未満の動的粘度、より好ましくは23℃で0.5~2.5Pa・sの動的粘度、より好ましくは23℃で1.0~2.0Pa・sの動的粘度を有し、
前記動的粘度は、好ましくは、50Paのせん断応力で25mm径の上部プレートを有するプレート‐プレート・レオメーターで測定された動的粘度であって、
以下の成分a)~成分c):
成分a)ラジカル光重合性モノマーおよび/またはオリゴマー、好ましくはラジカル光重合性モノマーとオリゴマーとの混合物、
成分b)有機的に表面修飾し、ならびに部分的に集合および/または凝集したナノスケールフィラーであって、該ナノスケールフィラーはコンポジット樹脂組成物に組み込まれており、
-フィラーの一次粒子は、100nm未満、好ましくは80nm未満、より好ましくは60nm未満、特に好ましくは40nm未満の透過型電子顕微鏡によって測定された一次粒子サイズを有し、および
-分散体中の前記フィラーは、分散した一次フィラー粒子、ならびに存在するフィラー凝集体および/またはフィラー集合体を含んで成り、
前記フィラー凝集体および/または前記フィラー集合体は、
-40nmより大きく、好ましくは90nmより大きく、および
-1000nm未満、好ましくは800nm未満、より好ましくは600nm未満、より好ましくは400nm未満、より好ましくは200nm未満、より好ましくは150nm未満あり、および、例えば、40~1000nm、好ましくは40~800nm、特に好ましくは40~600nmである、動的光散乱によって測定された径を有し、
成分c)少なくとも1つの光開始剤、
ならびに任意で、以下の成分d)および成分e):
成分d)安定剤、および
成分e)顔料粒子、
を含んで成り、
ならびに
ステップii)前記コンポジット樹脂組成物で満たされた槽中で、流動性を有する光重合性コンポジット樹脂組成物から、ステレオリソグラフィーで積層して歯科用成形品を構築するステップ、を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で得ることが可能な歯科用成形品、特にブリッジおよびクラウンであって、
-
ISO 4049:2009に従って測定された少なくとも100MPa、好ましくは少なくとも130MPaの曲げ強度、および/または
-
ISO 4049:2009に従って測定された少なくとも3GPa、好ましくは少なくとも4GPaの曲げ弾性率を好ましくは有する、歯科用成形品。
【請求項8】
前記ナノスケールフィラーが
-焼成シリカの生成にて形成される一次粒子の凝集体から本質的になること、
-ナノスケールフィラー粒子の形状は、本質的に理想的な球形ではなく、不規則であり、特に凝集体であること、
-ナノスケールフィラー粒子は、本質的に1000nm未満の径を有する小さな集合体として分散体中に存在している、または非集合および/もしくは非凝集の形態で存在していること、
-分散体中の粒子は、少なくとも約40nm~1000nm、好ましくは600nm以下の連続的なサイズ範囲に亘って分布していること、
-分散体中のフィラー集合体および/もしくはフィラー凝集体ならびに/または非集合/非凝集のフィラー粒子を含んで成るナノスケールフィラー粒子の、動的光散乱のz平均として測定された平均粒子サイズ径は、90~500nm、好ましくは150~350nmであることから選択される少なくとも1つの特徴を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7に記載の歯科用成形品。
【請求項9】
コンポジット樹脂組成物が、5重量%未満、好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満のマイクロフィラーを含んで成り、特に好ましくはマイクロフィラーを含まず、
前記マイクロフィラーは、好ましくは粉砕フィラーまたは球状フィラーであり、および
1~50μmの粒子サイズを有し、
形状およびサイズが成分b)のナノスケールフィラーと異なる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7もしくは8に記載の歯科用成形品。
【請求項10】
前記コンポジット樹脂組成物が、
-0.5重量%未満、好ましくは0.01重量%未満のチキソトロピー剤を含み、特に好ましくはチキソトロピー剤を含まない、および/または
-蛍光染料を含む、さらなる歯科用添加剤を含んで成る、請求項1~5のいずれか1項に記載の使用、請求項6に記載の方法、または請求項7~9のいずれか1項に記載の歯科用成形品。
【国際調査報告】