(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】ボディプライスキム用配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 71/03 20060101AFI20220418BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20220418BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220418BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20220418BHJP
C08L 63/08 20060101ALI20220418BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
C08L71/03
C08L7/00
C08K3/013
C08K3/34
C08L63/08
B60C1/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021552968
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 IB2020052547
(87)【国際公開番号】W WO2020188521
(87)【国際公開日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】102019000004047
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518333177
【氏名又は名称】ブリヂストン ヨーロッパ エヌブイ/エスエイ
【氏名又は名称原語表記】BRIDGESTONE EUROPE NV/SA
【住所又は居所原語表記】Kleine Kloosterstraat 10, B-1932 Zaventem (BE)
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】パオロ フィオレンツァ
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA14
3D131BA18
3D131BC02
3D131BC05
3D131BC31
3D131BC36
3D131BC55
3D131BC57
4J002AC01X
4J002AC11Y
4J002CH041
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4J002DE086
4J002DE147
4J002DJ017
4J002DJ037
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD207
4J002GN01
(57)【要約】
ボディプライスキム用ゴム配合物であって、(i)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能するエポキシ化天然ゴム;(ii)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能する天然ゴム;(iii)ポリエピハロヒドリンゴム、からなるゴムの混合物、充填剤材料および加硫系を含み、前記配合物が、70~90phrの前記ポリエピハロヒドリンゴム;5~25phrの前記エポキシ化天然ゴム(E-NR);および5~25phrの前記天然ゴム(NR)を含み、E-NRとNRの間のphr比が、0.2~5.0の範囲である、ボディプライスキム用ゴム配合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディプライスキム用ゴム配合物であって、
(i)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能するエポキシ化天然ゴム;(ii)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能する天然ゴム;(iii)ポリエピハロヒドリンゴム、からなるゴムの混合物、
充填剤材料、および
加硫系、
を含み、
前記配合物は、70~90phrの前記ポリエピハロヒドリンゴム;5~25phrの前記エポキシ化天然ゴム(E-NR);および5~25phrの前記天然ゴム(NR)を含み、E-NRとNRの間のphr比が、0.2~5.0の範囲である、ボディプライスキム用ゴム配合物。
【請求項2】
E-NRとNRの間の前記phr比が、1.0~3.0の範囲である、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
前記ポリエピハロヒドリンゴムが、エピクロロヒドリンのホモポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/グリシジルアリルエーテルコポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/エチレンオキシドコポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/エチレンオキシド/グリシジルアリルエーテルターポリマーに由来する、ゴムである、請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
本発明による前記ゴム配合物が、積層構造を有する不活性材料を0~40phr含む、前請求項のいずれかに記載の配合物。
【請求項5】
積層構造を有する前記不活性材料が、0.2~2mmの範囲の直径および5~30の範囲のアスペクト比を有する、請求項4に記載の配合物。
【請求項6】
積層構造を有する前記不活性材料が、8~20の範囲のアスペクト比を有する、請求項5に記載の配合物。
【請求項7】
積層構造を有する前記不活性材料が、カオリン、クレー、雲母、長石、シリカ、グラファイト、ベントナイトおよびアルミナからなる群より構成される、請求項4~6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前請求項のいずれか一項に記載の配合物を用いて製造された、ボディプライスキム部分。
【請求項9】
請求項8に記載のボディプライスキム部分を含む、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーライナーの厚さの大幅な減少またはその完全な除去さえも確実にするような不透過性の特徴を有するボディプライスキム用の配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、インナーライナー層という用語は、ゴム内層を表し、これは空気を実質的に透過しないため、カーカス内の空気に圧力がかかったままにするためにチューブレスタイヤに使用される。
【0003】
一般的に、インナーライナーの製造に使用される配合物は、ハロゲン化イソブチレン/イソプレンコポリマーに由来するゴムマトリックスで得られる。
【0004】
知られているように、タイヤ産業では、不透過性の観点からその性能を損なうことなく、インナーライナーの厚さを減らす強いニーズがある。実際、インナーライナー層の厚さが薄いことは、使用される材料の量が少ないことを必然的に意味し、生産性とタイヤの軽量化の両方の観点で明らかな利点が得られ、車両の総エネルギー消費量および転がり抵抗についてプラスの効果がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、インナーライナー層の厚さを大幅に減らすことができる、またはそれを完全になくすことさえできる解決策を提供することであり、したがって、転がり抵抗および生産性の観点で前述の利点を得る。
【0006】
タイヤの製造では、必要な耐性と耐久性の基準を満たすために、メーカーは熱可塑性材料(例えば、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、アラミドなど)で作られた補強プライを使用する。そのプライを覆うゴムは、一般に「ボディプライスキム」として知られている。当業者が知っているように、ボディプライスキム配合物によって満たされるべき特徴の1つは、プライに対する高い接着力に関する。実際、ボディプライスキムのプライへの接着力が低いと、タイヤの耐久性が短くなることに必然的につながる。
【0007】
ボディプライスキムが満たす必要のあるもう別の要件は、その強度に関係する。実際、ボディプライスキムの強度、したがって完全性は、タイヤの耐久性に直接影響する。
【0008】
補強プライは通常、カーカスの補強材として使用され、ボディプライのボディプライスキムは通常、インナーライナー層と直接接触している。
【0009】
出願人は、驚くべきことに、ボディプライスキム配合物を適切に変更することによって、後者は、その機械的特徴、したがってタイヤの耐久性を損なうことなく、空気透過性に関して理想的な特徴を得ることができることを発見した。このようにして、酸素不透過作用が全体的または部分的にボディプライスキムによって実行されるため、インナーライナー層の厚さを大幅に減らすか、または完全になくすことができる。
【0010】
本発明の主題は、ボディプライスキム用のゴム配合物であって、
-(i)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能するエポキシ化天然ゴム;(ii)架橋性不飽和鎖を有するポリマーベースとして機能する天然ゴム;(iii)ポリエピハロヒドリンゴム、からなるゴムの混合物、
-充填剤材料、および
-加硫系、
を含み、
前記配合物は、70~90phrの前記ポリエピハロヒドリンゴム;5~25phrの前記エポキシ化天然ゴム(E-NR);および5~25phrの天然ゴム(NR)を含み、E-NRとNRの間のphr比が、0.2~5.0の範囲である、ボディプライスキム用のゴム配合物である。
【0011】
数量は、phr、つまりゴム100部あたりの部数で定義され、そのゴムという用語は、ポリエピハロヒドリン、E-NRおよびNRによって形成される全体を指す。
【0012】
以下、加硫系という用語は、少なくとも硫黄および促進剤を含む成分の集合を指し、これらは、配合物の調製において、最終混合ステップで添加され、配合物が硬化温度にかけられるとポリマーベースの加硫をサポートするという目的を果たす。
【0013】
以下、「架橋性不飽和鎖を有するポリマーベース」という用語は、硫黄ベースの系を用いた架橋(加硫)後にエラストマーによって通常想定されるすべての化学的物理的および機械的特徴を呈し得る任意の天然または合成の非架橋ポリマーを指す。
【0014】
好ましくは、E-NRとNRの間のphr比は、1.0~3.0の範囲である。
【0015】
前記ポリエピハロヒドリンゴムは、好ましくは、エピクロロヒドリンのホモポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/グリシジルアリルエーテルコポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/エチレンオキシドコポリマーに由来する、またはエピクロロヒドリン/エチレンオキシド/グリシジルアリルエーテルターポリマーに由来する、ゴムである。
【0016】
本発明によるゴム配合物は、好ましくは、積層構造を有する不活性材料を0.0~40.0phr含む。
【0017】
積層構造を有する前記不活性材料は、好ましくは、0.2~2mmの範囲の直径および5~30の範囲、好ましくは8~20の範囲のアスペクト比を有する。
【0018】
積層構造を有する前記不活性材料は、好ましくは、カオリン、クレー、雲母、長石、シリカ、グラファイト、ベントナイトおよびアルミナからなる群より構成される。
【0019】
本発明のさらなる主題は、本発明による配合物を用いて製造されたボディプライスキム部分である。
【0020】
本発明のさらなる主題は、本発明による配合物を用いて製造されたボディプライスキム部分を含むタイヤである。
【0021】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解するための単なる説明的かつ非限定的な目的に役立つ。
【実施例】
【0022】
8つの配合物を製造した。そのうちの4つは、比較配合物(比較1~4)であり、他の4つは、本発明による配合物(A~D)である。
【0023】
4つの比較配合物(比較1~4)は、次のように分類できる:インナーライナー層の調製に一般的に使用される配合物のタイプを表す第1の比較配合物(比較1);ボディプライスキムの調製に一般的に使用される配合物のタイプを表す第2の配合物(比較2);本発明に記載されたものとは異なる量のポリエピハロヒドリン、E-NRおよび積層構造を有する不活性材料を使用する第3および第4の配合物(比較3および比較4)。
【0024】
本発明による4つの配合物(A~D)は、ポリエピハロヒドリンゴム、エポキシ化天然ゴムおよび天然ゴムの相対量が、常に本発明に記載の範囲内および条件下で、かつ、積層構造を有する不活性材料の存在下または不存在下で互いに異なる。
【0025】
比較配合物である比較1と比較2は、それぞれ、本発明のボディプライスキム配合物が、一般的なインナーライナー層およびボディプライスキム層のものと匹敵し得る酸素に対する不透過性および脆性の特徴を有するかどうかをチェックする目的を果たす。比較配合物である比較3と比較4は、エポキシ化天然ゴム、ポリエピハロヒドリンゴムおよび積層構造を有する不活性材料間の相対量の関連性をチェックするという目的を果たす。
【0026】
・配合物の調製
配合物を以下に説明する標準的な手順で製造したが、これは本発明の目的には関係しない。
【0027】
(第1混合ステップ)
混合の開始前に、接線ローター(一般にBanburyと呼ばれる)および230~270リットルの内部容積を有するミキサーに、ポリマーベース、補強性充填剤および充填剤材料(もしあれば、積層構造を有する材料と共に)を充填し、充填係数66~72%とした。
【0028】
そのミキサーを40~60回転/分の速度で操作し、形成された混合物を温度140~160℃に達したところで取り除いた。
【0029】
(第2混合ステップ)
前のステップから得られた混合物に加硫系を添加して、充填係数63~67%とした。
【0030】
そのミキサーを20~40回転/分の範囲の速度で操作し、形成された混合物を温度100~110℃に達したところで取り除いた。
【0031】
・配合物の組成
表IおよびIIは、上述した8つの配合物の組成をphrで示している。
【0032】
【0033】
【0034】
SBRは、乳化または溶液での重合プロセスによって得られたポリマーベースであり、20~45%のスチレン含量と、0~30%のオイル含量を有する。
【0035】
BR-IIRは、ブロモブチルゴムを表す。
【0036】
NRは、天然由来のシス-1,4-ポリイソプレンからなるポリマーベースからなる天然ゴムを表す。
【0037】
E-NRは、エポキシ化天然ゴムを表し、エポキシ化度は、25%である。
【0038】
使用したポリエピハロヒドリンゴムは、エピクロロヒドリン/エチレンオキシド/グリシジルアリルエーテルターポリマーに由来するゴムであり、日本ゼオン社からT3000として販売されている。
【0039】
CBは、クラスN6に属するカーボンブラックを表す。
【0040】
使用した積層クレーは、ASP(登録商標)NC X-1としてBASF社によって製造および販売されている鉱物充填剤である。
【0041】
MBTSは、加硫促進剤として使用されるメルカプトベンゾチアゾールジスルフィドを表す。
【0042】
TBBSは、加硫促進剤として使用されるN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドを表す。
【0043】
・ラボ試験結果
上述の配合物を使用してそれぞれのサンプルを製造し、脆性の観点および酸素に対する不透過性の観点から特性をチェックするため、それらを評価試験にかけた。
【0044】
さらに、本発明の溶液がこの特性に影響を与えるかどうかを検証するために、サンプルをゴム接着試験にかけた。
【0045】
酸素不透過性試験は、厚さ0.7mmの材料に対して、MOCON(登録商標)OX-TRAN(登録商標)(モデル2/61)などの従来の装置を使用して実施した。その値を25℃の温度で測定した。
【0046】
脆性試験は、ISO-812に従って実施した。
【0047】
強化プライへの配合物の接着は、荷重を加えてプライとゴムのアセンブリの2つの部分を分離した後もゴムで覆われたプライの割合として評価した。本文中で使用したプライは、PET製である。
【0048】
得られた結果をより簡単に解釈するために、表IIIおよびIVでは、値は、インナーライナー層の製造で一般的に使用される比較配合物(比較1)の結果に対して、指数化した形で表している。
【0049】
表IIIおよび表IVに示されている脆性および酸素不透過性の値に関しては、そこに示されている値が低いほど、特徴が優れている。
【0050】
ボディプライスキム層ではなくインナーライナー層に使用される比較配合物の比較1のプライ-ゴム接着値は、この特徴を有しないため、表には示していない。
【0051】
【0052】
【0053】
表IIIおよびIVに示されるデータに基づいて、本発明による配合物は、酸素不透過性値と脆性値との間のより良い折衷を特徴とする。
【0054】
本発明による配合物CおよびDの値は、積層構造を有する不活性材料の存在が、機械的特徴(脆性)を損なうことなく、不透過性の観点から配合物の性能をさらに改善できることを証明する。
【0055】
上に示したボディプライスキムに関する値は、脆性と不透過性の有利な組み合わせを保証するものであり、インナーライナー層の厚さを大幅に減らすことができるようなものである。
【0056】
そうすることによって、インナーライナー層の厚さを著しく減らすことができ、いずれにせよ、酸素がタイヤの他の部分に到達しないようにしてその既知の劣化現象を引き起こさないように酸素に対する必要な不透過性と、タイヤの耐久性を損なうことがないように必要な強度との両方を確保する。
【0057】
比較配合物の比較3と比較4に関する表IIIの値は、本発明によって課せられた条件が守られない場合、たとえ、積層構造を有する不活性材料が存在しても、エポキシ化ゴムとポリエピハロヒドリンゴム組み合わせだけでは、本発明の配合物の利点を保証できないことを示している。
【0058】
最後に、本発明のさらなる利点は、ポリエピハロヒドリンゴムが再生可能な供給源から得ることができるという事実にある。実際のところ、近年、天然由来のグリセロールからエピクロロヒドリンを製造可能なプロセスが考え出された。したがって、そうすることによって、製造業者は、従来技術のものよりも著しく低い環境影響でボディプライスキム部分を製造する機会を得るだろう。
【0059】
結論として、表IVに示したデータから、本発明の解決策がプライ-ゴム接着を悪化させないことが明らかである。
【国際調査報告】