(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】光送信機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/2513 20130101AFI20220418BHJP
G02F 1/01 20060101ALI20220418BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20220418BHJP
H04B 10/516 20130101ALI20220418BHJP
【FI】
H04B10/2513 170
G02F1/01 B
H04J14/02
H04B10/516
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553053
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 GB2020050476
(87)【国際公開番号】W WO2020178559
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】521400062
【氏名又は名称】コンソルツィオ・ナツィオナレ・インテルウニベルシタリオ・ペル・レ・テレコミュニカツィオーニ・(チエンネイティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・シー・フェラーリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ロマニョーリ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィート・ソリアネッロ
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA20
2K102BA02
2K102BA03
2K102BA11
2K102BA29
2K102BB01
2K102BB04
2K102BB05
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2K102EB12
5K102AA01
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5K102AH26
5K102AH27
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5K102MA01
5K102MB04
5K102MC01
5K102PB01
5K102PH03
5K102PH22
5K102PH23
5K102PH31
5K102RD15
(57)【要約】
送信されることになる波長分割多重(WDM)光信号の各波長のために1つの、一組の光入力、光入力からの光を変調する各光入力に対するグラフェン電界吸収型変調器(EAM)、および各グラフェン電界吸収型変調器を駆動する1つまたは複数のドライバを含む、光ファイバのための波長分割多重。ドライバは、データ入力、データ入力からのデータをローパスフィルタリングしてローパスフィルタデータを提供するローパスフィルタ、ならびにローパスフィルタデータおよびバイアス電圧の組合せで各グラフェン電界吸収型変調器を駆動する出力を有する。バイアス電圧は、例えばグラフェン電界吸収型変調器の伝送が増加すると調光に対する実効屈折率が減少し、逆もまた同様である領域へグラフェンEAMをバイアスし、調光にプリチャープしてファイバにおける分散を補償するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバに沿って波長分割多重(WDM)信号を送信するためのWDM光送信機であって、
送信されることになるWDM光信号の各波長のために1つの、一組の光入力と、
前記光入力からの光を変調する各光入力に対するグラフェン電界吸収型変調器(EAM)と、
各グラフェン電界吸収型変調器を駆動する1つまたは複数のドライバと、
を備え、
前記1つまたは複数のドライバが、データ入力、前記データ入力からのデータをローパスフィルタリングしてローパスフィルタデータを提供するローパスフィルタ、ならびに前記ローパスフィルタデータおよび、前記グラフェン電界吸収型変調器の伝送が第1の方向に変化すると調光に対する実効屈折率が第2の、反対方向に変化し、逆もまた同様である領域へ前記グラフェン電界吸収型変調器をバイアスするように構成されるバイアス電圧の組合せで各グラフェン電界吸収型変調器を駆動する出力を有し、
前記調光に第1の符号を有するチャープを提供して、前記光ファイバを通した前記調光の伝送による反対の第2の符号を有するチャープを補償する、WDM光送信機。
【請求項2】
前記グラフェン電界吸収型変調器の前記伝送が増加すると前記調光に対する前記実効屈折率が減少し、逆もまた同様であり、かつ前記第1の符号が正であり、前記第2の符号が負であって、前記調光に正のチャープを提供して、前記光ファイバを通した前記調光の伝送による負のチャープを補償する、請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記グラフェン電界吸収型変調器と直列に光学的に結合される少なくとも1つのグラフェン位相変調器を更に備え、前記1つまたは複数のドライバが、前記ローパスフィルタデータおよび、前記グラフェン位相変調器が実質的に透明なままである一方で前記ローパスフィルタデータが前記調光に対する前記グラフェン位相変調器の実効屈折率を変化させる領域へ前記グラフェン位相変調器をバイアスするように構成されるバイアス電圧の組合せで前記少なくとも1つのグラフェン位相変調器を駆動するように構成される、請求項1または2に記載の送信機。
【請求項4】
前記グラフェン電界吸収型変調器と直列に光学的に結合される少なくとも1つのグラフェン位相変調器を更に備え、前記1つまたは複数のドライバが、前記データ入力からの逆ローパスフィルタデータおよび、前記グラフェン位相変調器が透明なままである一方で前記ローパスフィルタデータが前記調光に対する前記グラフェン位相変調器の実効屈折率を変化させる領域へ前記グラフェン位相変調器をバイアスするように構成されるバイアス電圧の組合せで前記少なくとも1つのグラフェン位相変調器を駆動するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項5】
前記光入力からの光を変調する各光入力に対するグラフェン電界吸収型変調器(EAM)および前記光入力の選択されたものだけに対する前記グラフェン電界吸収型変調器と直列に光学的に結合される前記グラフェン位相変調器を備える、請求項4に記載の送信機。
【請求項6】
前記1つまたは複数のドライバが、異なる波長に対する前記グラフェン電界吸収型変調器を異なる駆動電圧で駆動し、異なる波長の前記調光に異なる正のプリチャープを提供して、波長に伴う前記光ファイバにおける分散の変化を整合させるように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項7】
前記光入力の各々に対して、前記光入力を2つ以上の分岐へ分割する光分割器、前記分岐における光を変調する各分岐に対するグラフェン電界吸収型変調器、および前記分岐からの前記調光を結合する光結合器を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項8】
前記1つまたは複数のドライバが、前記データ入力からのデータの2つ以上のビットの群で前記分岐における前記グラフェン電界吸収型変調器を駆動するように構成される、請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記分岐からの結合調光が2つの直交偏光の光から成るように前記分岐の1つまたは複数の光の偏光を回転させる光学偏光回転子を更に備える、請求項7または8に記載の送信機。
【請求項10】
前記光入力の各々がそれぞれの光学偏光回転子および光結合器を有し、前記送信機が、前記光結合器からの光出力を多重化する光波長合波器を更に備える、請求項9に記載の送信機。
【請求項11】
前記光入力が共用光学偏光回転子を有し、前記送信機が、各光入力からの前記分岐の第1の分岐を結合する第1の光結合器および各光入力からの前記分岐の第2の分岐を結合する第2の光結合器を更に備え、前記第1および第2の光結合器が、それぞれの第1および第2の光波長合波器を備え、前記共用光学偏光回転子が前記第1の光波長合波器の出力に結合され、前記送信機が、前記第1の光波長合波器の偏光回転出力を前記第2の光波長合波器の出力と結合して結合波長分割多重出力を提供する第3の光結合器を更に備える、請求項9に記載の送信機。
【請求項12】
前記グラフェン電界吸収型変調器およびグラフェン位相変調器の一方または両方が、導波路と集積される1つまたは複数のグラフェン層、前記1つまたは複数のグラフェン層の1つへの駆動電気接続および対向電極接続を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項13】
前記WDM光信号がCWDM8またはCWDM16光信号である、請求項1から12のいずれか一項に記載の送信機。
【請求項14】
グラフェン位相変調器と直列に光学的に結合されるグラフェン電界吸収型変調器を備え、前記グラフェン電界吸収型変調器が、変調光信号に正のチャープを加えるように構成され、前記グラフェン位相変調器が、前記変調光信号に負のチャープを加えるように構成される、光変調器。
【請求項15】
光ファイバに沿って波長分割多重(WDM)信号を送信する方法であって、
送信のためのデータを入力するステップと、
前記データをローパスフィルタリングするステップと、
それぞれのグラフェン電界吸収型変調器(EAM)を使用して前記WDM光信号の各波長をローパスフィルタデータの一部分で変調するステップと、
を備え、前記変調するステップが、
前記グラフェン電界吸収型変調器が、変調波長にプリチャープを加えて前記光ファイバにおけるチャープを補償する領域へ各グラフェン電界吸収型変調器をバイアスすることを含む、方法。
【請求項16】
グラフェン電界吸収型変調器を使用して前記波長の1つまたは複数を位相変調して前記波長に更なるチャープを加えるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
方法。
【請求項17】
前記更なるチャープが、前記グラフェン電界吸収型変調器の正のチャープを補償するために負のチャープである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記WDM光信号の異なる波長に対して異なるプリチャープを提供するステップを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記WDM光信号の各波長を2つ以上の分岐へ分割するステップを更に含み、前記変調するステップが、それぞれのグラフェン電界吸収型変調器を使用して各分岐を変調すること、および各分岐における調光を結合することを含み、前記方法が、前記分岐からの結合調光が2つの直交偏光の光から成るように前記分岐の1つの光の偏光をその他に関して回転させるステップを更に含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項15から19のいずれか一項の方法を実装するための手段を備える光伝送システム。
【請求項21】
前記光ファイバがフォトニック結晶光ファイバから成る、請求項1から14のいずれか一項に記載の送信機、または請求項15から19のいずれか一項に記載の方法、または請求項20に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例としてCWDM(低密度波長分割多重)のための光送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
低密度波長分割多重(CWDM)は、1つのシングルモードファイバにおいて多波長光信号の結合を可能にする技術である。CWDMにおいて「低密度」とは20nmのチャネル間波長分離を指す。したがって4つの波長が80nmを、そして8つの波長が160nmを占める。CWDMを使用して、各々25Gb/sで信号を搬送する波長を集約できる。したがって4つの波長の結合は100Gb/s(4x25Gb/s)光リンクに相当する。
【0003】
実用システムでは、各波長信号はPAM4形式(2ビットを符号化する4レベルのパルス振幅)に従って変調され得るため、波長当たり、データレートは50Gb/sであり得る。例えば4つの波長があれば実効データレートはそれ故200Gb/s(4x50Gb/s)であり得る。
【0004】
帯域幅要件の増大により400Gb/s、800Gb/sおよび1600Gb/sでの伝送が望ましくなる。第1段階の400Gb/sまでは8波長CWDM、CWDM8で実現できる。CWDM8仕様は、CWDM8マルチソースアグリーメントコンソーシアム(https://www.cwdm8-msa.org/)によって公表された2つの文書(非特許文献1および非特許文献2)に記載されている。CWDM8仕様の1つの重要な側面は、8つの波長1271~1411nmによってカバーされる大きなスペクトル範囲である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】400G CWDM8 MSA 2km技術仕様書
【非特許文献2】400G CWDM8 MSA 10km技術仕様書
【非特許文献3】「Chirp management in silicon-graphene electro absorption modulators」、Opt. Express 25、Sorianelloら、19371~19381(2017)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では光ファイバに沿って波長分割多重(WDM)信号を送信するためのWDM光送信機が記載される。WDM光送信機は、送信されることになるWDM光信号の各波長のために1つの、一組の光入力(送信機の内部であり得る)を備え得る。WDM光送信機は、光入力からの光を変調する各光入力に対するグラフェン電界吸収型変調器(EAM)を更に備え得る。WDM光送信機は、各グラフェン電界吸収型変調器を駆動する1つまたは複数のドライバを更に備え得るが、EAM間でドライバが共有されてもよく、または各EAMがそれぞれのドライバを有してもよい。同または各ドライバは、データ入力、データ入力からのデータをローパスフィルタリングしてローパスフィルタデータ(ここではバンドパスフィルタデータを含み得る)を提供するローパスフィルタ、およびグラフェン電界吸収型変調器を駆動する出力を有し得る。光入力からの調光は光合波器で結合されて結合WDM多重光出力を提供し得る。
【0007】
ドライバは、ローパスフィルタデータ、すなわちローパスフィルタデータから導出される変動電圧駆動、およびバイアス電圧の組合せ、例えば和でEAMを駆動するように構成される。バイアス電圧は、グラフェン電界吸収型変調器の伝送が第1の方向に変化すると調光に対する実効屈折率が第2の、反対方向に変化し、逆もまた同様である領域へグラフェン電界吸収型変調器をバイアスするように構成され得る。
【0008】
このように調光に第1の符号を有するチャープが加えられており、光ファイバを通した調光の伝送による第2の、反対符号のチャープを補償できる。
【0009】
一部の実装例ではバイアス電圧は、グラフェン電界吸収型変調器の伝送が増加するとグラフェン電界吸収型変調器を通過する調光に対する実効屈折率が減少し、逆もまた同様である領域へグラフェン電界吸収型変調器のグラフェンをバイアスするように構成される。このように調光に正のチャープが加えられており、光ファイバを通した調光の伝送による負のチャープを補償できる。
【0010】
光の変調は典型的に一形態のパルス変調から成っており、データは或る範囲の種類のコードのいずれか、例えばNRZ(非ゼロ復帰)コードによって光のパルスに符号化される。変調はPAM(パルス振幅変調)、例えば2ビットで4つの振幅レベルを符号化するPAM4から成ってもよい。
【0011】
下記するように、EAMを通って進行するパルスが正のチャープ(瞬時周波数が時間と共に増加)を得る。一部の実装例では、加えられるチャープの量は、駆動のピーク間振幅を制御することによって制御可能である。追加的または代替的に、加えられるチャープの量を制御するためにEAMへのバイアス電圧が制御されてもよい。実装例では、グラフェンの光電子特性の結果として大きな正かつほぼ線形のチャープになることができる。信号の正のプリチャーピングは、典型的にシリカから成るが、必ずしもそうとは限らない(以下参照)、光ファイバの分散、例えば異常分散を補償する。実質的にパルスは、分散が補償される距離に時間的に集束され得る。
【0012】
プリチャーピングは符号間干渉(ISI)も低減させる。これを変調器に加える前にデータをローパスフィルタリングすることにより、ISIを低減させるのを相乗的に助長する。
【0013】
グラフェンEAMの広帯域幅応答は、例えばCWDM8またはCWDM16システムにおける応用のために広範囲の波長を多重化するのを促進する。
【0014】
一部の実装例では波長の1つまたは複数のための信号経路におけるグラフェン電界吸収型変調器と直列にグラフェン位相変調器が光学的に結合される。これは、正のチャープの量およびそれ故に、分散が補償されるファイバの長さを増加させることができる。
【0015】
光信号を位相変調するために、バイアス電圧は、グラフェン位相変調器が変動印加電圧に関して透明なままである領域へそのグラフェンをバイアスするように選ばれる。ここで「実質的に透明なままである」とは、透明性が位相変調駆動電圧と共に3dBを超えて、好ましくは1dB以下で変動しないはずであることを意味するとみなされてよい。好ましくはバイアス電圧は、グラフェンから成る変調器の部分が3dBより小さい、好ましくは1dBより小さい光信号の関連波長での損失を有するはずであるようにグラフェン位相変調器をバイアスするべきである。グラフェン位相変調器に対するドライバは、バイアス電圧およびローパスフィルタデータから導出される変動電圧駆動の組合せで変調器を駆動するように構成され得る。ローパスフィルタデータから導出される変動電圧駆動が調光に対するグラフェン位相変調器の実効屈折率を変化させる一方で、バイアス電圧は、透明性が実質的に一定である領域に変調器を維持する。
【0016】
一部の実装例では、反直観的に調光に負のチャープを加えるためにグラフェン電界吸収型変調器と直列にグラフェン位相変調器が光学的に結合される。これは、上記したようにグラフェン位相変調器をバイアスするが、ローパスフィルタデータの逆形態から成る変動電圧駆動で位相変調器を駆動することによって達成できる。これは、例えば、データを逆にして次いで逆データをローパスフィルタリングすることによって、またはEAMのためのローパスフィルタデータを逆にすることによって導出され得る。この変動駆動(位相変調器のいずれかの構成用)のピーク間レベルがEAMのために使用されるそれと通常異なるであろうことが認識されるであろう。データの逆形態を使用してグラフェン位相変調器を駆動することによって、EAMによって適用される実効位相が増加しているとき、グラフェン位相変調器によって適用されるそれは減少していることになり、逆もまた同様である。したがってグラフェン位相変調器はEAMのそれと反対のチャープを加えることになる。これは、EAMによって加えられる過剰な正のチャープ寄与を補償するために使用できる。
【0017】
一部の実装例では過剰な正のチャープ補償は波長依存である。光ファイバの異常分散は典型的に波長依存であり、したがってWDM信号の異なる波長(すなわち波長帯域)に異なるプリチャーピングが適用され得る。プリチャーピングの量は、EAMのピーク間(Vpp)駆動電圧を調整することによって調整され得るが、したがって一部の実装例では波長の異なるものに異なるVppが印加され得る。追加的または代替的に波長(帯域)の一部に追加の負のチャープが加えられ得る。例えば光入力の選択されたものだけに、負のチャープを加えるグラフェン位相変調器が設けられてよい。
【0018】
一部の実装例では、負のチャープを加えるグラフェン位相変調器は、光ファイバの異常分散(屈折率が波長と共に増加)が正常分散(屈折率が波長と共に減少)に変化する限界波長未満の波長に適用される。CWDM16の場合、負のチャープを加えるグラフェン位相変調器は、約1300nm未満の波長、例えば1291nm、1271nmに対して使用されてよい。
【0019】
一部の実装例では、各光入力からの光路は、光入力を2つ以上の分岐へ分割する光分割器、分岐における光を変調する各分岐に対するグラフェン電界吸収型変調器、および分岐からの調光を結合する光結合器を備える。これは、PAM4、PAM8またはより高変調を実装するために使用され得る。したがって1つまたは複数のドライバは、データ入力からのデータの2つ以上のビットの群、例えばMSB(最上位ビット)およびLSB(最下位ビット)ビットで分岐におけるグラフェン電界吸収型変調器を駆動するように構成され得る。
【0020】
分岐の1つまたは各々が移相器(90度位相遅れなど)または1つの分岐(もしくは一組の分岐)の偏光をその他に関して回転させる他の素子を有し得る。このように2つの分岐の光に直交直線または円偏光が与えられ得る。これは、それが各分岐/偏光の位相およびチャープ特性をそれらの結合後に保持できるので有利である。偏光回転素子、すなわち1つの分岐(または一組の分岐)の偏光をその他に関して回転させる機能は結合器の一部であり/それによって実装され得る。
【0021】
一般に各光入力は、それぞれの光分割器を有し得る。しかしながら光学偏光回転子および光結合器は、WDM波長ごとに別々にまたは一組もしくは全てのWDM波長のために実装され得る。
【0022】
前者の場合、光入力の各々は、それぞれの光学偏光回転子および光結合器を有してよい。送信機は、光結合器からの光出力を多重化する光波長合波器を更に備え得る。
【0023】
後者の場合、同じ偏光またはビット重要性(例えばLSB、MSB)に対応する分岐が最初に光WDM多重によって結合されてよく、次いで2(以上の)組の多重、直交偏光信号が結合されて調光出力を提供する前に、結合波長の一方(または両方)が偏光回転されてよい。
【0024】
したがって送信機は、各光入力からの分岐の第1の分岐を結合する第1の光結合器および各光入力からの分岐の第2の分岐を結合する第2の光結合器を備え得る。第1および第2の光結合器は、それぞれの第1および第2の光波長合波器を備え得る。第1の光波長合波器の出力に共用光学偏光回転子が結合され得る。送信機は、第1の光波長合波器の偏光回転出力を第2の光波長合波器の出力と結合して結合波長分割多重出力を提供する第3の光結合器を更に備え得る。
【0025】
一部の実装例ではグラフェン電界吸収型変調器およびグラフェン位相変調器は1つまたは複数のグラフェン層を備え得る。これらは、例えば導波路を伝搬する光のエバネッセント波がグラフェンに結合するように導波路のコアに隣接して導波路と集積され得る。一部の実装例では導波路は、基板上の、例えば矩形横断面を有する長手構造を備え得、そしてグラフェン層がこの構造より上におよび/もしくは下に、または潜在的にスロット導波路に類似して広間隔か、例えばグラフェンが一体導波路構造を効果的に形成するのにちょうど十分な狭間隔かの一対のそのような導波路構造間に設けられ得る。同構造は、例えばシリコン、シリカ、窒化シリコンまたはポリマーから製作され得るが、導波路は導電(例えばSi)であり、グラフェンは薄酸化物層によって導波路から電気絶縁され得る。1つまたは2つ(以上)のグラフェン層が利用され得るが、グラフェンは単層または多層でありかつ任意選択でドープされ得る。
【0026】
一部の実装例ではグラフェン電界吸収型変調器およびグラフェン位相変調器は、同じ導波路の異なる長手領域に、例えば覆ってまたは下方に設けられるグラフェンによって実装され得る。これらの2つ(以上)の領域におけるグラフェンに、グラフェン電界吸収型変調器およびグラフェン位相変調器を実装するそれぞれの電極接続が設けられ得る。
【0027】
一部の実装例ではグラフェン電界吸収型変調器およびグラフェン位相変調器は、1つまたは複数のグラフェン層の1つへの駆動電気接続および第2のまたは対向電極接続を更に備え得る。対向電極接続は、導波路への(例えばシリコン導波路に対する)電気接続および/または1つもしくは複数のグラフェン層の第2への電気接続および/またはデバイスの更なる金属層への電気接続から成り得る。例えば1つの実装例ではシリコン導波路(S)、10nm SiO2絶縁層(I)およびグラフェン層(G)が、SおよびGへの接続があるSIGコンデンサを形成する。
【0028】
一部の実装例では波長分割多重(WDM)光送信機は、DFB(分布帰還)レーザなどの光信号源を含み、そして一組の光入力は、レーザから信号を受信する内部入力から成り得る。
【0029】
関連態様では、正常分散に対するプリチャープを提供するように構成されるグラフェンベースの変調器が提供される。したがって、グラフェン位相変調器と直列に光学的に結合されるグラフェン電界吸収型変調器を備える光変調器が提供され、グラフェン電界吸収型変調器は変調光信号に正のチャープを加え、そしてグラフェン位相変調器は、変調光信号に負のチャープを加えるように構成される。
【0030】
更なる関連態様では、光ファイバに沿って波長分割多重(WDM)信号を送信する方法が提供される。方法は、送信のためのデータを入力するステップを含み得る。任意選択で方法は、データをローパスフィルタリングするステップ(ここではデータをバンドパスフィルタリングすることを含み得る)も含み得る。方法は、次いでそれぞれのグラフェン電界吸収型変調器(EAM)を使用してWDM光信号の各波長(帯域)をローパスフィルタデータの一部分で変調し得る。変調するステップは、グラフェン電界吸収型変調器が、変調波長に(正の)プリチャープを加えて光ファイバにおける(負の)チャープを補償する領域へ各グラフェン電界吸収型変調器をバイアスすることを含み得る。
【0031】
方法は、グラフェン位相変調器を使用して波長の1つまたは複数を位相変調して波長に更なるチャープを加えるステップを更に含み得る。更なるチャープは、分散補償されたファイバの長さを延ばすためには正でよく、あるいはEAMからの過剰な正のチャープを低減させるためおよび/または波長の1つもしくは複数でファイバの正常分散を補償するためには負でよい。方法は、変調している波長に従って各EAMの駆動も調整し得る。したがって一般に方法は、WDM信号の異なる波長に対して異なるプリチャープ、正もしくは負かつ/または量的に異なる、を提供して、特に異なる波長でファイバの異なる分散を補償するステップを含み得る。
【0032】
方法は、WDM光信号の各波長を2つ以上の分岐へ分割するステップを更に含み得る。変調するステップは、それぞれのグラフェン電界吸収型変調器を使用して各分岐を変調し、そして各分岐における調光を結合することを含み得る。方法は、分岐からの結合調光が2つの直交偏光の光から成るように分岐(各波長に対する)の1つの(におけるまたはからの)光の偏光をその他に関して回転させるステップを更に含み得る。偏光回転は、1つまたは複数の光合波器を使用してWDM信号の波長を結合する前または後に行われ得る。
【0033】
更なる関連態様では、上記した方法を実装するための手段を備える光伝送システムが提供される。
【0034】
上記のデバイスおよび方法の一部の実装例では光ファイバはフォトニック結晶光ファイバから成ってよい。これは、特にファイバを構成する材料の吸収が大きなスペクトル領域で動作するときに、例えば1610nmより大きな波長に対して、動作波長範囲を拡大するのを助長できる。
【0035】
本発明のこれらおよび他の態様が、ここで添付の図を参照しつつ、単に例として更に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】先行技術によるグラフェンEAMおよびEAMの伝送特性を示す図である。
【
図2a】先行技術による、
図1のEAMのチャープ関連特性を例示する図である。
【
図2b】先行技術による、
図1のEAMのチャープ関連特性を例示する図である。
【
図2c】先行技術による、
図1のEAMのチャープ関連特性を例示する図である。
【
図4】
図3の送信機における光変調システムの詳細を示す図である。
【
図5】より長いファイバ長のための
図4の光変調システムのバージョンを示す図である。
【
図6】異常および正常分散を両方とも補償するための
図4の光変調システムのバージョンを示す図である。
【
図8】
図7のPAM4光変調システムの詳細例を示す図である。
【
図9】
図5の光変調システムに基づく
図8のPAM4光変調システムのバージョン例を示す図である。
【
図10】
図6の光変調システムに基づく
図8のPAM4光変調システムのバージョン例を示す図である。
【
図11】
図7~
図10の光変調システムを実装するためのCWDM光送信機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図中、類似の要素が類似の参照数字によって示される。
【0038】
電界吸収型変調器を実現するためにグラフェンを使用できる。非特許文献3には、グラフェンベースの電界吸収型変調器による1550nmでのファイバ分散の補償が記載されている。分散補償は840ps/nm程であり、2kmおよび10km長のリンクに対する要件をかなり越えていた。
【0039】
図1は、同論文から取られており、100μm長の単層グラフェン(SLG)領域を持つSLGオンシリコン導波路EAM(製作の詳細については同論文を参照)の1550nmでのシミュレートされた実効屈折率変化(左手の軸)および伝送(右手の軸)を示す。
【0040】
差込図はEAM100を通る鉛直横断面を示しており、シリコン導波路104が形成されるシリカの領域102を画定するシリコンオンインシュレータ基板を備えている。導波路の上に薄酸化物層106が設けられ、そして酸化物の上にグラフェンの単層108が設けられる。グラフェンおよびシリコンに対して電気接続110a,bが作られる。上から見ると、グラフェンは、この例では導波路に沿って長手方向に100μmにわたって延びる。
【0041】
同じ構造を使用して、下記する位相変調器を実装できる。
【0042】
使用に際して、EAMのグラフェン層は、
図1の陰影部分によって例示されるように、そのフェルミ準位がパウリブロッキング状態より大きい、すなわち(この例では)0.4eVより大きいように駆動される。
図1の水平な電圧軸はディラック点電圧、この例では約-7Vに対するものであり、したがってEAMは、例えば約-1Vでバイアスされ得る。(ディラック点電圧はドーピングに依存する:典型的に一部の内部ドーピングがあり、外部ドーピングもあり得、そして実効ドーピングは印加バイアスによって変動され得るが、ディラック点ではキャリア密度はゼロに近く、抵抗率は最大である)。
【0043】
図1から見て取ることができるように、この領域で動作する場合、グラフェンEAMに電圧が印加されると、伝送が増加する一方で光学モードの実効屈折率は減少する。それ故パルスが作成されると、変調器の出力における光学ビームの位相はパルステールにおいてよりパルスピークにおいて小さい。位相を微分することによって瞬時周波数偏移が決定され得るが、
図2aは1つのパルス例を例示して、左手の軸に振幅(電力)および右手の軸に瞬時周波数偏移(連続曲線が実験データであり、点はシミュレーションを表す)を示す。ほぼ線形であるパルス中の正の(上向きの)周波数チャープがあることを見て取ることができる。
【0044】
チャープは、以下の方程式によって与えられるチャープパラメータCによって定義できる:
【0045】
【0046】
式中Lは素子長(この例では100μm)である。屈折率の変化Δn
maxは、変調器を最小吸収に駆動するときに得られる実効屈折率の最大変動であり、それは、例えば
図1からまたは曲線を
図2aの理論バージョンに適合させる(Sorianelloら、同書に記載されている)ことによって決定でき、そしてλ
0は中心波長である。この例ではEAMは2.7Vのピーク間電圧で駆動され、チャープパラメータC=0.27。
【0047】
図2bは別のパルスを例示して、左手のグラフで振幅(左手の軸)および位相(右手の軸)を、ならびに右手のグラフで振幅(電力)およびチャープ(瞬時周波数シフト)を示す。位相時間プロファイルが振幅エンベロープと同じ形状および期間を有するが、符号が逆であることを見て取ることができる。
【0048】
図2cは、EAMに対するピーク間印加電圧に対して左手の軸にチャープの大きさ(単位:GHzの周波数の変化)を例示する。
図1に戻って参照すると、約0.45eVより上でグラフェンの伝送がほぼ一定にとどまる一方で位相が略線形に減少することを見て取ることができる。したがってピーク間電圧を変えることによって、位相変化およびそれ故にチャープの程度を変動させることができる。
【0049】
図3を参照すると、これは、各波長のために1つの、一組の光入力302と、各光入力に対するグラフェンEAM304と、EAMからの変調器光を結合する合波器と、シングルモード光ファイバなどの光ファイバに結合するために適切であり得る光出力308とを備えるCWDM16光送信機300の一例を示す。合波器306は、集積光学または自由空間微小光学を使用して実装され得る。
【0050】
EAMの各々のために実質的に同じグラフェンEAM設計が使用され得るため、したがって製造を容易にする。これは、グラフェンEAMが広範囲の波長にわたって動作することができるからである。電圧調整可能なチャープにより、同様に広範囲の波長にわたって光ファイバ色分散を補償することができる。例えば、CWDM8の場合ファイバ分散は-5ps/(nm km)から+7ps/(nm km)にわたり、そしてCWDM16では1610nmでの最大分散が約+20ps/(nm km)である。
図3の設計は1610nm以上の、例えばかなり越えて2000nmまたは2100nmより大きな波長まで適応することができる。標準シングルモードファイバのゼロ分散波長は約1310nmであり、分散ペナルティはこの波長からの距離の増加と共に増加する。
【0051】
参考として、CWDM16のための2組の中心波長の例が以下のTable 1(表1)およびTable 2(表2)に与えられる:
【0052】
【0053】
【0054】
Table 1(表1)中の星印は、異常よりむしろ正常分散がある波長を示す。
【0055】
図4は、
図3のシステムの光変調の詳細を例示する。したがって、グラフェンEAM304は、電気ローパスフィルタ402(LPB=ローパスバンド)を介してデータ入力400によって駆動される。データ400は、例えばPAM4またはNRZデータを提供する変調器404によって提供される。ローパスフィルタ402は符号間干渉(ISI)を低減させる。EAM304にバイアス電圧を提供するDCバイアス電圧発生器は、
図4に示されない。バイアス電圧は、例えばローパスフィルタ402とEAM304との間のバイアスティー(図示せず)を介して印加され得る。
【0056】
ローパスフィルタ402は、伝送のボーレートの0.4から0.8倍の範囲にカットオフ周波数を有し得る。グラフェンEAMの長さおよび駆動信号の振幅(またはピーク間電圧)は、補償されることになる光ファイバの長さに従って調整され得る。設計目標は、グラフェンEAMによって加えられる正のチャープおよびファイバの設計長でファイバによって加えられる負のチャープの和が変調器光の波長でゼロであるべきであるということである。
【0057】
上記したようなシステムは、例えばCWDM8かCWDM16かに関して2kmまたは10kmの光ファイバ長のために使用され得るが、NRZかPAM4変調が利用され得る。例えば、CWDM16送信機は、各光チャネル(波長)を100Gb/sで動作させ得るため、したがって1.6Tb/sの総生データレートを提供し得る。
【0058】
図5は、更なる長さのファイバを補償することができる
図4のシステムの変形例である光変調システム500を示す。前記したものに類似の要素が類似の参照数字によって示される。
【0059】
図5の配置では、追加の正のチャープを提供するために、グラフェンEAM304の前か後かにEAMと直列にグラフェン位相変調器502が結合される。位相変調器は、
図4におけるのと同じローパスフィルタデータ信号によって駆動されるが、異なってバイアスされる。より詳細には、位相変調器は、陰影領域を越えて、
図1の右手の部分へバイアスされる。これは、グラフェン集積導波路を通る伝送がほとんど変動しない所であるが、実効屈折率(すなわち位相)が、例えばほぼ線形に例示されるように依然として著しく変動する所である。バイアス配置は
図5に示されないが、
図1によって示されるように適切なバイアス電圧を設定することによって達成できる。例えば大きな負のバイアス電圧、すなわちグラフェンEAMに対して使用されるバイアス電圧より負であるバイアス電圧が利用され得る。
【0060】
例えば、一部の実装例ではグラフェンEAMは、前記したように-1Vでバイアスされ得るが、これに対して、EAMへの電圧が-1Vと正のチャープの所望の程度に依存している或る正の電圧との間で変動するように、データ変調が加えられてもよい。対照的にグラフェン位相変調器は、バイアスにデータ信号が加えられたときにグラフェン位相変調器への電圧が-1Vより小さいままであり、そしてグラフェンがその透明領域にとどまるように、-1Vよりはるかに小さなバイアス電圧でバイアスされ得る。
図5に例示されるようにEAMにも位相変調器にも同じ信号が提供されるが、これらのデバイスのために提供される信号は異なるピーク間振幅(の他にデバイスに印加される異なるバイアス電圧)を有し得る。
【0061】
図5の配置は、振幅変調に実質的に影響することなく調光に更なる正のチャープを加え、それ故より大きな長さにわたって光ファイバの異常分散を補償することができる、すなわちそれは、ファイバによって加えられるより大きな程度の負のチャープを補償することができる。
【0062】
図6は、異常および正常分散を両方とも補償するために適切な光変調システム600のバージョンを示す。再び、前記したものに類似の要素が類似の参照数字によって示される。したがって、
図5の配置におけるように、グラフェンEAM304と直列にグラフェン位相変調器502が光学的に結合されかつ前記したようにバイアスされる。
【0063】
しかしながら
図6において位相変調器502は、第2のローパスフィルタ604を介してデータの逆バージョン602によって駆動される。
図1に戻って参照すると、データ電圧に伴う屈折率変化(位相)の傾きは、それ故グラフェンEAMと比較して効果的に逆にされる。したがってグラフェン位相変調器502は信号に負のチャープを加える。この負のチャープは、グラフェンEAMおよび/または光ファイバにおける正常分散によって導入される過剰な正のチャープを補償するために使用され得る。再び、設計目標は、全チャープ、すなわちEAMからの正のチャープ、位相変調器からの負のチャープおよび光ファイバからの正または負のチャープがファイバの設計長さでゼロであるべきであるということである。
【0064】
図7は、各々前記したような一対のグラフェンEAMデバイスを備える、CWDM16送信機のための一組のPAM4変調器701、例では16の変調器を示す。これらは、
図3の一般配置に、波長(帯域)ごとに1つ使用され得る。
【0065】
より詳細に各光変調システムは、光信号を2つの分岐へ、例えば比率x:(1-x)、実装例では1:2(PAM4のため)で分割する光電力分割器702を備える。各分岐はそれぞれのグラフェンEAM706a,bを含み、そして2つの分岐からの調光は光電力結合器708において、例えばPAM4(MSB分岐がLSB分岐の信号レベルの2倍搬送する)のために等比で結合される。改良された実装例では、分岐の一方が90度偏光回転素子704(光遅延または波長板など)を含んでおり、これは結合器708の一部でもよい。結合データレートは各別々のEAMのデータレートの2倍である。電気信号はビットの対へ分類され得るが、対の最下位ビットがEAMの一方を変調してよく、対の最上位ビットが他方のEAMを変調してよい。
【0066】
一部の実装例では、偏光回転子および結合器は、少なくとも直交光学偏光をサポートする2つの入力導波路および少なくとも2つの直交光学偏光モードをサポートする1つの出力導波路を有する集積偏光回転子および結合器で実現される。偏光回転子および結合器は、同じ光学偏光の2つの入力において光をとり、そして出力において同じ導波路上であるが各々異なる直交偏光の2つの結合を提供する。
【0067】
例えば一部の実装例では偏光回転および結合器の機能性は、二重偏光格子結合器を用いて出力光ファイバ上に得られ得る。二重偏光格子結合器は、2つの入力導波路、およびチップ(結合器)の平面への法線に関して角度をなして向けられるチップからの光出力を有し得る。出力は、導波路上に形成される格子を備え得る。入力導波路における光は次いでチップから2つの直交偏光へ分離され得る。
【0068】
図8は、一対の偏光シフタ704a,bを略例示するために、
図7の配置のより詳細な例を示す。
図8は、MSBおよびLSBドライバ710a,b(実際にはこれらは一般に複合ドライバの一部である)およびそれぞれのローパスフィルタ712a,bも例示し、調光出力714を提供する。システムの他の態様は前記した通りであり、特にグラフェンEAMには、ファイバによって導入される(ファイバの長さに従う)チャープを補償するチャープが設計される。
【0069】
図9は、
図5を参照しつつ前記したように一対の移相器900a,bを統合する
図8のシステムのバージョンを示し、波長(帯域)に対して追加の正のチャープを提供する。
【0070】
図10は、
図6を参照しつつ前記したようにそれぞれの電気ローパスフィルタ1000a,bを介して逆MSBおよびLSBデータから駆動される一対の同様のグラフェンベースの移相器を含む
図8のPAM4光変調システムのバージョンを示す。これは負のチャープを提供して、光ファイバのための関連波長(帯域)でEAMおよび/または正常分散からの過剰な正のチャープを補償する。
【0071】
図7~
図10の光システムを参照すると、一部の実装例では各波長での調光は波長合波器において結合され得る。他の実装例では光システムは、LSBおよびMSB分岐が別々に保たれ、そして結合し、任意選択で1つの分岐の偏光をその他に関して回転させる前にそれぞれの波長合波器において共に別々に多重化されるように変更される。
【0072】
したがって
図11を参照すると、これは、各波長のためのMSBおよびLSB分岐が波長分割多重前に結合されるCWDM光送信機1100の一例を示す。したがってCWDM光送信機1100は、例えば
図7~
図10に示されるように光電力分割器、EAMおよび光電力結合器を備えるそれぞれのPAM4変調器701に各々結合される一組の異なる波長の連続波(CW)光源1102、例えばダイオードレーザを備える。各変調器701からの光は、波長分割多重調光出力1106を提供する波長合波器1104に提供される。実装例ではMSBおよびLSB偏光は直交であり、波長合波器1104は2つの直交偏光をサポートする。
【0073】
図12は、MSBおよびLSB分岐が、1つの分岐の偏光をその他に関して回転させ、そして結合する前に別々に多重化されるCWDM光送信機1200の一例を示す。これは、直交偏光をサポートする波長合波器の必要を回避できる。
図7~
図10のいずれかの光変調/補償システムは、
図12の光送信機に使用されるが、各分岐の波長を結合前に多重化するように変更できる。
【0074】
CWDM光送信機1200は、2つの出力をx:(1-x)比、例えば2:1(MSB:LSB)で提供するそれぞれの光電力分割器1204に各々結合される一組の連続波(CW)光源1202、例えばダイオードレーザを備える。各電力分割器からのMSB出力(実線)が、前記したようにグラフェンEAMデバイス1206に提供され、同様に各電力分割器からのLSB出力(破線)がグラフェンEAMデバイス1210に提供される。グラフェンEAMデバイス1206、1210は、前記したように任意の補償および電気フィルタリングと関連して、それぞれMSBドライバおよびLSBドライバと称され得る。変調MSB波長は第1の波長合波器1208に提供され、そして変調LSB波長は第2の波長合波器1212に提供される。各光合波器は各波長の同じ偏光成分を結合する-例えば各波長に対して2つの直交偏光を前提とすると、送信機は各偏光モードに対して1つの合波器を有する。波長多重後に2つの合波器1208、1212の各々からの調光出力は、調光出力1216を持つ前記したような偏光回転子および結合器1214(これは2つのデバイスまたは結合デバイスでもよい)に提供される。したがって、例えば変調MSBおよびLSB波長成分が直交偏光を有するように、一組の多重波長の偏光がその他に関して回転され得る。
【0075】
図4から
図10の光変調システムは、前記したようにPAM4変調を利用してデータレートを2倍にする一方で異常および/または正常分散の補償を可能にするCWDM8またはCWDM16光送信機と共に使用され得る。したがって
図8~
図10の光変調システムは送信機の各波長(帯域)に対して、または選択された波長だけで実装され得る。
【0076】
一部の実装例では負のチャープの付加による正常分散の補償は短波長、例えば1310nm未満の波長に対してのみ、例えばCWDM16の1270nmおよび1290nm波長に対して利用される。したがって、例えば、
図6および
図10の光変調システムは波長の一部、例えば1310nm未満の2つの波長だけに実装され得る。
【0077】
一部の実装例ではグラフェン電界吸収型アレイは、例えば直線導波路のアレイを備える。各導波路は、例えば0.1mm程の、例えば範囲0.05~0.150mmの長さを含み、グラフェンで覆われて電気変調される、または何らかの他の方法で導波路のエバネッセント波領域にグラフェンを有する。各導波路には波長特定のバイアス電圧および駆動信号が与えられ得るが、駆動信号はアレイにおける全ての変調器に対して振幅が等しくてよい。グラフェンEAMが1610を越えて動作できるので、アレイは例えば16のCWDM波長またはより多くの波長のために構成され得る。動作の全範囲は2100nmを越えて拡張され得る。
【0078】
電界吸収型変調器の一部は、ファイバの負の色分散に相当する波長(例えば1270nmおよび1290nm)を動作させ得る。グラフェンで覆われる同じ導波路の2つの導波路長およびグラフェンの2つの長さ上の2つの駆動電圧およびバイアスの組合せが与えられ得る。第1の長さが電界吸収型変調器を動作させる役目をする一方で、第2の長さも電界吸収型変調器であるが、吸収変調の付加的な寄与を最小化するためにグラフェンの透明性の近くでまたは透明性領域において動作されるものである。第2の電界吸収型変調器の役割は、信号に負のチャープを誘発することであり得る。負のチャープを得るために第2の変調器は、第1の変調器のドライバに対して逆転したドライバ信号で駆動され得る。
【0079】
記載されたシステムの帯域幅を増加させることが一般に望ましい。1つの手法は各送信機の帯域幅を増加させることであろうが、これは実際には困難であり、結果として伝搬距離短縮になり得る。別の方法は、上記したように、異なる波長の数を増加させて波長を単一のファイバへ結合することであろうが、シリカファイバはL帯域(1560~1610nm)を越えて損失が増していく。したがって一部の実装例ではシステムはグラフェン変調器およびフォトニック結晶光ファイバの組合せを利用して、1600nmより上、例えば2000nm以上で有用な性能を提供する。
【0080】
おそらく多くの他の有効な代替例が当業者に想到されるであろう。本発明が記載された実施形態に限定されず、本明細書に添付される請求項の趣旨および範囲内にある当業者に明らかな変更を包含することが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0081】
100 EAM
102 シリカの領域
104 シリコン導波路
106 薄酸化物層
108 グラフェンの単層
110a、110b 電気接続
300 CWDM16光送信機
302 光入力
304 グラフェンEAM
306 合波器
308 光出力
400 データ入力
402 ローパスフィルタ
404、404’ ドライバ
500 光変調システム
502 グラフェン位相変調器
600 光変調システム
602 逆データ
604 ローパスフィルタ
701 PAM4変調器
702 光電力分割器
704 90度偏光回転素子
704a、704b 偏光シフタ
706a、706b グラフェンEAM
708 光電力結合器
710a、710b MSB/LSBドライバ
712a、712b ローパスフィルタ
714 調光出力
900a、900b 移相器
1000a、1000b 電気ローパスフィルタ
1100 CWDM光送信機
1102 連続波光源
1104 波長合波器
1106 波長分割多重調光出力
1200 CWDM光送信機
1202 連続波光源
1204 光電力分割器
1206 グラフェンEAMデバイス
1208 第1の波長合波器
1210 グラフェンEAMデバイス
1212 第2の波長合波器
1214 偏光回転子および結合器
1216 調光出力
【国際調査報告】