(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】送信器と受信器
(51)【国際特許分類】
H01L 31/08 20060101AFI20220418BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
H01L31/08
G01J1/02 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553111
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 GB2020050475
(87)【国際公開番号】W WO2020178558
(87)【国際公開日】2020-09-10
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501484851
【氏名又は名称】ケンブリッジ・エンタープライズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE ENTERPRISE LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】521400062
【氏名又は名称】コンソルツィオ・ナツィオナレ・インテルウニベルシタリオ・ペル・レ・テレコミュニカツィオーニ・(チエンネイティ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・シー・フェラーリ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ロマニョーリ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・ミドリオ
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト・モンタナーロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィート・ソリアネッロ
【テーマコード(参考)】
2G065
5F849
【Fターム(参考)】
2G065AB03
2G065AB09
2G065AB16
2G065BA08
2G065BA11
2G065BA12
2G065BB04
2G065DA13
5F849AA20
5F849AB03
5F849BA03
5F849BB01
5F849DA21
5F849GA05
5F849LA04
5F849XB05
5F849XB15
5F849XB31
(57)【要約】
RF送信器は、RF搬送周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源を備える。送信器は、少なくとも二つの電気コンタクト部を有するグラフェン光検出器と、第一電気コンタクト部に結合された送信アンテナと、第二電気コンタクト部に接続された電気データ信号入力部とを備え得る。グラフェン光検出器は光源によって照らされ、グラフェン光熱電効果(PTE)光検出器又はボロメータ型光検出器を備え得る。対応の受信器も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF(無線周波)データ送信器であって、
RF搬送周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源と、
グラフェン層と少なくとも二つの電気コンタクト部とを備える光検出器と、
前記電気コンタクト部のうち第一電気コンタクト部に特に電気増幅器を介して結合された送信アンテナと、
前記電気コンタクト部のうち第二電気コンタクト部に接続された電気データ信号入力部と、を備え、
前記光検出器のグラフェン層が前記光源によって照らされる、RFデータ送信器。
【請求項2】
前記グラフェン層に隣接する光導波路を備える請求項1に記載のRFデータ送信器。
【請求項3】
前記光検出器が、前記光導波路の中心の両側の点に前記グラフェン層に対する電気コンタクト部を有する、請求項1又は2に記載のRFデータ送信器。
【請求項4】
前記光導波路と前記送信アンテナを保持する誘電体基板を備え、前記グラフェン層が前記光導波路上にあり、前記第一電気コンタクト部が、前記グラフェン層を前記送信アンテナの入力給電部に特に電気増幅器を介して結合させるように構成されている、請求項2又は3に記載のRFデータ送信器。
【請求項5】
前記光検出器が光熱電効果(PTE)光検出器であり、前記第一電気コンタクト部が光熱電効果(PTE)で発生した電圧を出力し、前記光熱電効果光検出器が少なくとも一つのゲート電極を有し、前記第二電気コンタクト部が、前記電気データ信号入力部が前記少なくとも一つのゲート電極に結合されるようにして、前記少なくとも一つのゲート電極に接続されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のRFデータ送信器。
【請求項6】
前記光導波路の中心の両側の点の電気コンタクト部が、前記第一電気コンタクト部と第三電気コンタクト部を備える、請求項5を介して請求項3に記載のRFデータ送信器。
【請求項7】
前記少なくとも一つゲート電極に結合され、前記光熱電効果光検出器のグラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように前記光熱電効果光検出器をバイアスするバイアス電圧発生器を更に備える請求項5又は6に記載のRFデータ送信器。
【請求項8】
前記光熱電効果光検出器が、前記光導波路の中心の両側にあり前記グラフェン層に隣接し且つ該グラフェン層から絶縁されている二つのゲート電極を備える、請求項5から7のいずれか一項に記載のRFデータ送信器。
【請求項9】
前記グラフェン層上の絶縁層を更に備え、前記少なくとも一つのゲート電極が前記絶縁層上に位置している、請求項5から8のいずれか一項に記載のRFデータ送信器。
【請求項10】
前記光検出器がボロメータ型光検出器を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のRFデータ送信器。
【請求項11】
前記光導波路の中心の両側の点の前記グラフェン層に対する電気コンタクト部が、前記第一電気コンタクト部と前記第二電気コンタクト部を備える、請求項10を介して請求項3に記載のRFデータ送信器。
【請求項12】
前記ボロメータ型光検出器が半導体基板上に支持されていて、前記電気データ信号入力部と前記半導体基板のうち一方又は両方をバイアスするバイアスシステムを更に備える請求項10又は11に記載のRFデータ送信器。
【請求項13】
RF(無線周波)信号を用いてデータを送信する方法であって、
RF搬送周波によって分離されている一対の光を備える光で光検出器のグラフェン層を照らすことと、
前記光検出器を用いて前記光を前記RF搬送周波の電気信号に変換することと、
前記グラフェン層に電気的に結合されている前記光検出器の出力電極から電気信号を発生させることと、
送信用のデータを備える変調電気信号を前記光検出器の第二電極に印加することによって前記光検出器の動作を変調することと、を備える方法。
【請求項14】
前記光検出器が、少なくとも一つのゲート電極を有する光熱電効果(PTE)光検出器を備え、前記出力電極から電気信号を発生させるため前記グラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように前記少なくとも一つのゲート電極をバイアスすることと、前記変調電気信号を前記少なくとも一つのゲート電極に印加することとを更に備える請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光検出器がボロメータ型光検出器を備え、前記光検出器の第二電極が前記グラフェン層に電気的に接続され、前記出力電極から電気信号を発生させるために前記変調電気信号を前記第二電極に印加することを更に備える請求項13に記載の方法。
【請求項16】
RF(無線周波)データ受信器であって、
受信動作用のRF周波を定める周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源と、
グラフェン層と少なくとも二つの電気コンタクト部とを備える光検出器と、
前記電気コンタクト部のうち第一電気コンタクト部に接続された電気データ信号出力部と、
前記電気コンタクト部のうち第二電気コンタクト部に特に電気増幅器を介して結合された受信アンテナと、を備え、
前記光検出器のグラフェン層が前記光源によって照らされる、RFデータ受信器。
【請求項17】
前記グラフェン層に隣接する光導波路を備える請求項16に記載のRFデータ受信器。
【請求項18】
前記光検出器が、少なくとも一つのゲート電極を有する光熱電効果(PTE)光検出器を備え、前記第一電気コンタクト部が前記グラフェン層に接続され、前記第二電気コンタクト部が前記光熱電効果光検出器の少なくとも一つのゲート電極に接続されている、請求項16又は17に記載のRFデータ受信器。
【請求項19】
前記少なくとも一つゲート電極に結合され、前記光熱電効果光検出器のグラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように前記光熱電効果光検出器をバイアスするバイアス電圧発生器を更に備える請求項18に記載のRFデータ受信器。
【請求項20】
前記光導波路の中心の両側の点に前記グラフェン層に対する電気コンタクト部を備え、前記光熱電効果光検出器が、前記光導波路の中心の両側にあり前記グラフェン層に隣接し且つ該グラフェン層から絶縁されている二つのゲート電極を更に備える、請求項18又は19に記載のRFデータ受信器。
【請求項21】
前記光導波路と前記受信アンテナを保持する誘電体基板と、前記グラフェン層上の絶縁層とを更に備え、前記グラフェン層が前記光導波路上に存在し、前記ゲート電極が前記絶縁層上に位置し、前記少なくとも一つのゲート電極が前記受信アンテナからの給電部に特に電気増幅器を介して結合されている、請求項20に記載のRFデータ受信器。
【請求項22】
前記光検出器がボロメータ型光検出器を備え、前記第一電気コンタクト部と前記第二電気コンタクト部がそれぞれ前記グラフェン層に電気的に接続されている、請求項16又は17に記載のRFデータ受信器。
【請求項23】
RF(無線周波)信号で搬送されるデータを受信する方法であって、
RF搬送周波によって分離された一対の光線を備える光で光検出器のグラフェン層を照らすことと、
前記グラフェン層に電気的に結合されている前記光検出器の出力電極から出力電気信号を発生させることと、
前記光検出器の第二電極を受信アンテナに結合させることと、
前記受信アンテナからの電気信号を前記光検出器において前記RF搬送周波と混合して、前記受信アンテナからの電気信号を、受信データを備える前記出力電気信号にダウンコンバートすることと、を備える方法。
【請求項24】
前記光検出器が、少なくとも一つのゲート電極を有する光熱電効果(PTE)光検出器を備え、前記方法が、光熱電効果を用いて電圧を発生させるため前記グラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように前記少なくとも一つのゲート電極をバイアスすることと、前記少なくとも一つのゲート電極を前記受信アンテナに結合させることと、光熱電効果で発生した電圧を出力することと更に備える、又は、
前記光検出器がボロメータ型光検出器を備え、前記光検出器の第二電極が前記グラフェン層に電気的に接続され、前記方法が、前記グラフェン層を照らす光を用いて前記グラフェン層の抵抗を変調することによって前記出力電気信号を発生させることを更に備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記グラフェン層が遷移金属ジカルコゲナイド層等の二次元物質層に置き換えられている、請求項1から12のいずれか一項に記載のRFデータ送信器、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法、請求項16から22のいずれか一項に記載のRFデータ受信器、又は請求項23若しくは24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ミリメートル波、サブミリメートル波、テラヘルツ周波等の高周波用のRF送信器と受信器に関する。本開示において、RF(無線周波,radio frequency)は、ミリメートル波(ミリ波)、サブミリメートル波(サブミリ波)、テラヘルツ周波を含む。
【0002】
本願に繋がるプロジェクトは、欧州連合のホライズン2020研究革新プログラム第649953号の助成を受けている。
【背景技術】
【0003】
電気通信サービスは、2020年までにユーザ当たりのデータ通信量が500Mb/s超なったことを反映して、今後数年内に帯域幅の増大を要求するものと予測されている。高速通信リンクは光ファイバ又は無線によって実現可能である。最近では、ユビキタス展開の容易性と安価な設置コストのため、無線リンクが好まれている。
【0004】
しかしながら、光ファイバに匹敵するデータレートを可能にする将来的な無線通信は、最良でも数GHzの搬送周波数を用いる現状使用されているシステムのと同じ比較的低い搬送周波数では、数Mb/sを超える伝送レートの余地が無く、実現不可能である。より大きな伝送レートには、搬送周波数の上昇が必要である。30GHzから300GHzの範囲の周波数の電磁波であるミリメートル波が、次世代無線システムの候補である。この広範な周波数内において、一部の帯域が、比較的小さな大気吸収のために電気通信に特に適している。こうした一部の帯域は、35GHz、90GHz、140GHz、220GHz程度に中心がある帯域であるが、応用に応じて、搬送周波数は220GHzを超えて、THz範囲に達し得る。
【0005】
既存の電気半導体デバイスは、数十ギガヘルツの利用可能な上限周波数を有する。より高周波用に、例えば、より高データレートをサポートするための新たな技術が必要とされている。
【0006】
非特許文献1からの
図1は、200GHzの搬送周波数を用いてデータ流を伝送するのに用いた実験を示す。二つの分布帰還型(DFB,distributed feedback)1.55mmレーザを用いて、200GHzの周波数分離で二重波長信号を生成する。10GHz帯域幅統合マッハ・ツェンダー変調器(MZM,Mach‐Zehnder modulator)によって二重波長信号を振幅変調する。変調段階後に、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA,erbium‐doped fibre amplifier)で信号を増幅し、二経路に分割し、一方の経路は波長計用であり、他方の経路はInGaAs/InP UTC‐PD(unitravelling carrier photodiode,単一走行キャリアフォトダイオード)を給電するためのものである。UTC‐PDが発生させる信号が送信アンテナ(
図1のTEM‐HA)を給電する。受信器において200GHz信号をまずは分数調波混合器(SHM,subharmonic mixer)で混合する。分数調波混合器を給電する局所的発振器(LO,local oscillator)は15.762GHzマイクロ波合成器であり、これにx6(6倍)アクティブ乗算器が続く。中間周波数(IF,intermediate frequency)は10.3GHzに等しいので、10.3GHz振幅偏移変調(ASK,amplitude shift keying)の変調信号が得られる。最後に、IF信号が、増幅され(50dB)、低バリアショットキーダイオードに基づいた包絡線検出器によって検出される。
【0007】
この技術の改善をいくつか開示する。背景となる従来技術は特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2018/060705号
【特許文献2】中国特許出願公開第109375390号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第108232462号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】G. Ducournau et al, “Optically power supplied Gbit/s wireless hotspot using 1.55 mm THz photomixer and heterodyne detection at 200 GHz”, Electron. Lett, 46 (2010)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は特許請求の範囲に記載されたものである。
【0011】
一態様によると、RF搬送周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源を備えるRFデータ送信器が開示される。送信器は、グラフェン層を備える光検出器を更に備え、その光検出器はグラフェン光熱電効果(PTE)光検出器又はボロメータ型検出器であり得る。一部実施形態では、グラフェン光検出器は少なくとも二つの電気コンタクト部を有する。送信アンテナが、それら電気コンタクト部のうち第一(特に出力)電気コンタクト部に電気的に結合され得る。電気データ信号入力部が、それら電気コンタクト部のうち第二(特に入力)電気コンタクト部に接続され得る。送信アンテナは、電気増幅器を介して第一電気コンタクト部に結合され得る。光検出器のグラフェン層は光源によって照らされる。
【0012】
一部実施形態では必須ではないが、グラフェン光検出器は光導波路に隣接したグラフェン層を備える。グラフェン光検出器は、導波路の中心の両側の点においてグラフェン層に対する電気コンタクト部を有し得る。電気増幅器は、広帯域低ノイズ電気増幅器を備え得る。電気増幅器の入力部は第一電気コンタクト部に結合され得て、電気増幅器の出力部は送信アンテナに結合され得る。
【0013】
RFデータ送信器は、導波路及び送信アンテナ並びに(存在する場合には)電気増幅器を保持する誘電体基板を含み得る。グラフェン層は導波路上に存在し得る。第一電気コンタクト部はグラフェン層を送信アンテナの入力給電部に接続し得る。誘電体基板は、半導体(例えば、シリコン)基板上に支持され得る。
【0014】
広義では、グラフェン光熱電効果(PTE)光検出器は、グラフェン層のドーピング及び/又はバイアスによって構成可能であり、局所的な加熱(光によって生じる)及びゼーベック効果によって電圧を発生させる。ボロメータ型グラフェン検出器は、局所的な加熱(光によって生じる)が(例えば、層の抵抗温度係数(TCR)を介して)光検出器の抵抗を変調するようにして構成され得る。どちらの場合でも、送信アンテナに対する出力部がグラフェン層に結合され得る。
【0015】
PTE光検出器として構成される場合、信号入力部はデバイスのゲート電極に接続され得て、導波路(又は他の光入射領域)上に少なくとも部分的に位置し得る。グラフェン層の第二接続部(つまり、第三光検出器電極)が基準(例えば、接地)接続部を与え得る。任意選択的に、第二ゲート電極がグラフェン層をバイアスするように設けられ得て、接地又はDC(直流)電圧レベルに接続され得る。任意選択的に、バイアス電圧は、例えばバイアスシステムによって、第一ゲート電極に印加され得る。
【0016】
ボロメータ型光検出器として構成される場合、信号入力部はグラフェン層に接続され得て、例えば、グラフェン層に対する第一電気接続部と第二電気接続部が導波路(又は他の光入射領域)の両側に在るようにする。この場合、光が二つの接続部間の抵抗を変調することができる。半導体基板が設けられる場合、これは、ボロメータ型光検出器用の基準(例えば、バイアス)接続部として採用され得るが、必須ではない。この場合も、このようなバイアス接続部はバイアスシステムから接地又はDC電圧レベルに接続され得る。
【0017】
従って、一部実施形態では、送信器は、光熱電効果(PTE)光検出器を備え、そのPTE光検出器は、PTEで発生する電圧を出力する二つの光検出器コンタクト部と、少なくとも一つのゲート電極を有する。送信器は、送信アンテナを更に備え得て、その送信アンテナは光検出器コンタクト部のうち少なくとも一つに結合され得る。送信器は、少なくとも一つのゲート電極に接続され得る電気データ信号入力部を更に備える。送信器は、グラフェン光検出器(特に、グラフェンPTE光検出器)が光源によって照らされるように構成され得る。
【0018】
一部実施形態では、上述のタイプの送信器は、10GHz以上、又は100GHz以上、例えば最大数THzのRF搬送周波での送信を可能にし、これは、部分的には優れた電輸送特性に因るものであるが、低ノイズと高効率を促進するPTE動作モードに因るものでもある。
【0019】
PTE型の一部実施形態では、少なくとも一つのゲート電極は、グラフェン光熱電効果光検出器のグラフェン層にゼーベック効果を生じさせるようにバイアスされる。そのバイアスは、少なくとも一つのゲート電極に結合されたバイアス電圧発生器によって与えられ得る。一部実施形態では、二つのゲート電極が使用されるが、バイアス構成に応じて代わりに、光検出器コンタクト部のうち一つが、ゲート電極用の対電極としても使用され得る。バイアスは、導波路に隣接するグラフェン層の領域にpn接合を生成し得る。より具体的には、この領域は、導波路からのエバネセント波の領域に存在し得る。
【0020】
PTE型とボロメータ型の両方の実施形態において、グラフェン層は単層又は多層のグラフェンを備え得て、グラフェンは化学的ドープされ得る。グラフェン層は、光源に結合された光導波路に隣接し、特に導波路のエバネセント波領域に位置し得る。従って、グラフェン層は導波路の上、下、又は、導波路内に挟まれて位置し得る。
【0021】
光検出器コンタクト部は、導波路の両側(導波路の中心の横方向の両側)の点においてグラフェンに対する電気コンタクト部を備え得る。
【0022】
PTE型の実施形態では、グラフェン光熱電効果光検出器は、導波路の中心の横方向両側に二つのゲート電極を備え得る。従って、バイアスによって形成されるpn領域も導波路、より具体的には、導波路のエバネセント波領域に隣接し得る。
【0023】
PTE型の実施形態では、バイアス構成の電気的構成に応じて、ゲート電極はグラフェン層から絶縁され得て、例えば酸化物の薄層(例えば、略10nm)によって絶縁されるが、これは必須ではない。ゲート電極はグラフェン製となり得るが、必須ではない。
【0024】
PTE型とボロメータ型の両方の実施形態において、導波路はあらゆる適切な物質又は物質の組み合わせで形成され得て、シリコン、二酸化シリコン、窒化シリコン、ポリマー、フォトニック結晶が挙げられるがこれらに限定されない。導波路は、スロット導波路等の導波路構造となり得て、この場合、スロットが、スロットの両側の導電性物質(シリコン等)のストリップによって画定され、これらストリップがゲート電極として作用し得る。一部実施形態では、クラッドはコアよりも低い屈折率(デバイス動作波長において)を有する。
【0025】
一部実施形態では、送信器は、シリカ等の誘電体基板上に統合され、又はシリコンオンインシュレータ(SOI)基板の埋め込み酸化物(BOX)層上に統合され得る。
【0026】
導波路は基板上に設けられるか又は基板内に埋め込まれ得て、導波路の上面は基板の上面と実質的に面一になるか又は基板の上方に存在し得る。導波路は基板上に形成され得る。また、送信アンテナも基板上に形成され得て、例えば、基板上の金属層中に形成され得る。一部実施形態では、グラフェン層は、導波路を覆い、送信アンテナの金属部、より具体的には送信アンテナの入力給電部に接触する縁のコンタクト領域を有する。酸化物又は他の電気絶縁体(例えばポリマー)の薄層等の絶縁層がグラフェン層上に設けられ得る。PTE型の実施形態では、ゲート電極は、絶縁層上に位置し、例えば金属やグラフェンのパターン化導電層として形成され得る。
【0027】
PTE型とボロメータ型の両方の実施形態において、光源は二つ(又はそれ以上)のレーザを備え得て、又は、単一のレーザが一対の光線(周波)を発生させるように採用され得る。例えば、マッハ・ツェンダー干渉計を用いて、単一の光周波を振幅変調して、一対の光線を発生させる。光源は、統合送信器の基板上に統合され得て、及び/又は、別の光入力接続部(光ファイバー接続部等)が、グラフェンPTEデバイスとは遠隔の一つ以上のレーザ用に設けられ得る。例えば、グラフェン型マッハ・ツェンダー干渉計が採用されて、光検出器と統合され得る。
【0028】
送信アンテナは、例えば、所望の指向性、利得、物理的サイズ/形状等に応じて、あらゆる適切な種類のものとなり得る。例えば、ダイポールアンテナが採用され得て、この場合、光検出器コンタクト部がダイポールの各アームに結合され得る。パッチアンテナの場合、一つの光検出器コンタクト部のみがパッチに接続され得て、他のコンタクト部は、接地に対する直接又は間接接続部を有し、例えば、接地面に対する接続部を有し得る。
【0029】
上述のものと極めて似た構造が、相補的な受信器においても使用可能であるが、これは特にシステムの高感度に因るものである。
【0030】
PTE型の実施形態では、受信アンテナはゲートのうち一方又は両方に接続され得て、電気出力は光検出器コンタクト部の一方(又は両方)から取られ得る。ボロメータ型の実施形態では、受信アンテナが、グラフェン層に対する一方の接続部と、グラフェン層に対する他方の接続部からの出力部に接続され得る。
【0031】
光源が与える一対の光線は、受信器が同調されるRF搬送周波に等しい分離を有し得て、この場合、受信信号はミキシングされて、ベースバンドにダウンコンバートされ得る。代替的に、その分離は、受信される信号のRF搬送周波と異なり得て、この場合、受信信号はミキシングされて、中間周波にダウンコンバートされ得る。いずれの場合でも、光線の分離は、受信器が動作するように設定されているRF周波を定め、受信器が「同調」される有効周波数を定める。
【0032】
従って、相補的な態様におけるRFデータ受信器は、受信器用の動作のRF周波を定める周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源を備える。受信器は、グラフェン層と少なくとも二つの電気コンタクト部とを備える光検出器を更に備える。電気データ信号出力部がこれら電気コンタクト部のうち第一電気コンタクト部に接続され、受信アンテナは、これら電気コンタクト部のうち第二電気コンタクト部に結合され、任意選択的に電気増幅器を介して結合され得る。光検出器のグラフェン層は光源によって照らされる。
【0033】
電気増幅器は広帯域低ノイズ電気増幅器を備え得る。電気増幅器の入力部が受信アンテナに結合され得て、電気増幅器の出力部が第二電気コンタクト部に結合され得る。追加的に又は代替的に、電気増幅器は電気データ信号出力部に結合され得る。
【0034】
RFデータ受信器は、導波路及び受信アンテナ並びに(存在する場合には)電気増幅器を保持する誘電体基板を含み得る。一部実施形態では、グラフェン層は導波路上に存在する。グラフェン層上に絶縁層が存在し得て、ゲート電極は絶縁層上に位置し得る。少なくとも一つのゲート電極は、受信アンテナからの給電部に結合され得て、特に電気増幅器を介して結合され得る。
【0035】
他の特徴は、上述の送信器に対応したものとなり得る。
【0036】
光検出器はPTE光検出器又はボロメータ型光検出器のいずれかとなり得る。例えば、PTE型の実施形態では、第一電気コンタクト部がグラフェン層に接続され得て、特に出力を与える。第二電気コンタクト部はグラフェン光熱電効果光検出器の少なくとも一つのゲート電極に接続され得る。任意選択的に、追加の基準電気コンタクト部がグラフェン層用に設けられる。任意選択的に、送信器について上述したように、グラフェン層はドーピング及び/又はバイアスされ得る。ボロメータ型グラフェン光検出器の実施形態では、第一電気コンタクト部と第二電気コンタクト部はそれぞれグラフェン層に電気的に接続され得る。
【0037】
従って、受信器用の動作のRF周波を定める周波によって分離された一対の光線を発生させるように構成された光源を備えるRFデータ受信器も開示される。受信器は光検出器を更に備え、例えば、PTEで生じた電圧を出力する二つの光検出器コンタクト部と少なくとも一つのゲート電極を有するグラフェン光熱電効果(PTE)光検出器である。受信器は、少なくとも一つのゲート電極に結合され得る受信アンテナを更に備える。受信器は、光検出器コンタクト部のうち少なくとも一つに接続され得る電気データ信号出力部を更に備える。グラフェン光検出器、特にグラフェンPTE光検出器は光源によって照らされ得る。
【0038】
統合PTE型データ受信器において、少なくとも一つのゲート電極は受信アンテナからの給電部に接続され得て、電気データ信号出力部は、複数の電気検出器コンタクト部のうち一つ又は各々に対する金属接続部を備え得る。統合ボロメータ型デバイスにおいて、グラフェン層は受信アンテナからの給電部に接続され得る。
【0039】
関連する態様において提供されるRF信号を用いてデータを送信する方法は、RF搬送周波によって分離された一対の光線を備える光で光検出器のグラフェン層を照らすことと、光検出器を用いて光をRF搬送周波の電気信号に変換することと、光検出器の出力電極から電気信号を与えること(出力電極はグラフェン層に電気的に結合される)と、送信用のデータを備える(エンコードする)変調電気信号を光検出器の第二電極に印加することによって光検出器の動作を変調することと、を備える。
【0040】
本方法は、少なくとも一つのゲート電極を有する光熱電効果(PTE)光検出器を用い得る。そして、本方法は、出力電極から電気信号を与えるためにグラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように少なくとも一つのゲート電極をバイアスすることと、変調電気信号を少なくとも一つのゲート電極に印加することとを更に備え得る。従って、PTE光検出器は、グラフェン層がゼーベック効果によって電圧を発生させるモードで動作し得る。これは、変調電気信号によって変調され、変調電気信号を光生成キャリアとミキシングして、つまりは変調電気信号を搬送周波にアップコンバートし得る。
【0041】
本方法はボロメータ型光検出器を用い得て、この場合、光検出器の第二電極はグラフェン層に電気的に接続され得る。そして、本方法は、出力電極から電気信号を与えるように変調電気信号を第二電極に印加することを更に備え得る。従って、ボロメータ型光検出器は、グラフェン層の抵抗を変調して、光生成キャリアとミキシングして、変調電気信号を搬送周波にアップコンバートするモードで動作し得る。
【0042】
相補的に関連する態様において提供されるRF信号で搬送されるデータを受信する方法は、RF搬送周波で分離された一対の光線を備える光で光検出器のグラフェン層を照らすことと、光検出器の出力電極から出力電気信号を与えること(出力電極はグラフェン層に電気的に結合される)と、グラフェン光検出器の第二電極を受信アンテナに結合させることと、受信アンテナからの電気信号を光検出器においてRF搬送周波とミキシングして、受信アンテナからの電気信号を出力電気信号にダウンコンバートすることとを備える。
【0043】
本方法は、少なくとも一つのゲート電極を有するグラフェン光熱電効果(PTE)光検出器を用い得る。そして、本方法は、光熱電効果を用いて電圧を発生させるためにグラフェン層にゼーベック効果を生じさせるように少なくとも一つのゲート電極をバイアスすることと、PTEで発生した電圧を出力することとを更に備え得る。従って、PTE光検出器は、グラフェン層がゼーベック効果によって電圧を発生させるモードで動作し得る。これは、印加ゲート電圧によって変調され、受信信号をミキシングして、つまりは中間周波又はベースバンドにダウンコンバートする混合器として作用し得る。
【0044】
本方法はボロメータ型グラフェン光検出器を用い得て、この場合、グラフェン光検出器の第二電極がグラフェン層に電気的に接続され得る。そして、本方法は、グラフェン層を照らす光を用いてグラフェン層の抵抗を変調することによって出力電気信号を与えることを更に備え得る。従って、ボロメータ型光検出器は、グラフェン層の抵抗が変調されて、受信信号をミキシングして、つまりは中間周波又はベースバンドにダウンコンバートする混合器として機能するモードで動作し得る。グラフェンに基づいたボロメータ型光検出器は、半導体に基づいたボロメータ型光検出器よりも線形性を改善し、つまりはダイナミックレンジを改善し、これは受信器にとって重要なものとなり得る。
【0045】
上述の方法を実行するための手段を備える光送信システムと光受信システムも提供される。
【0046】
広義では、上述の手法の動作は2D(二次元)物質を用いるものであり、光検出の応答速度が電場によって変調可能なものである。2D物質の使用は、低熱容量という利点を有し、つまりは光検出を促進する。
【0047】
上述の送信器、受信器、方法及びシステムにおいて、グラフェン層を他の2D物質の層に置き換えることができる。この場合、2D物質は結晶性物質であり得て、単原子層からなる2D結晶構造を有し得る。2D物質層は、一層又は多層、例えば複数の原子層を有し得て、例えば、1原子厚さの層が1~20層の範囲で積層し得る。2D物質層はヘテロ構造を有し得る。
【0048】
例えば、グラフェン層は、他の2D半導体の層で置き換えられて、例えば、一般式MX2(式中、MはMoやW等の遷移金属であり、Xはカルコゲン原子(S、Se、Te)であり、例えば、MoS2やWS2)の遷移金属ジカルコゲナイドの層で置き換えられ得る。これは、強力な光吸収性のため有利となり得る。
【0049】
本発明の上記の態様及び他の態様を、添付図面を参照して単に例示目的で以下更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】従来技術に係る200GHz搬送周波を用いてデータ流を伝送するために用いられる実験的システムを示す。
【
図2】
図2aと
図2bは、RF通信システムの送信器と受信器の概略図をそれぞれ示す。
【
図3】
図3a、
図3b、
図3cは、
図2の送信器と受信器用のPTEグラフェン型混合器の構造の3D斜視図、2D垂直断面図、概略図をそれぞれ示す。
【
図4】
図3に示されるタイプの統合された混合デバイスとアンテナの上面図と垂直断面図を示す。
【
図5】
図2の送信器と受信器用のボロメータグラフェン型混合器の構造の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図2aと
図2bは、RF通信システムの送信器200と受信器250の概略図をそれぞれ示す。送信器と受信器はどちらも同じデバイス220に基づいたものとなり得て、以下で詳細に説明するように、一つの光学的入力部222と一つの電気的入力部224を有する混合器を備える。
【0052】
送信器において、局所的発振として機能する光学的二重周波光ビームが混合器の光学的入力部に印加される一方、ベースバンド電気データ信号が混合器の電気的入力部に印加される。ミキシングは、電気的出力部226にミリメートル波放射を発生させ、そのミリメートル波放射は、局所的発振として用いられる二重波長レーザの周波数分離に対応している波長fLOの搬送波で入力電気データ流を備える。このマイクロ波信号が送信アンテナ210を給電する。
【0053】
受信器250において、受信アンテナ260がミリメートル搬送波に中心がある情報を受信する。同様の局所的発振を用いて、信号をベースバンド256に復調する。
【0054】
本願で開示されるのは、
図2の送信器と受信器の構成での使用に適したグラフェン型の混合デバイスである。一部実施形態では、こうしたデバイスは、光ビームを検出し、光熱電(PTE,photo‐thermoelectric)効果によって電圧を生じさせるグラフェンの性能を活用する。他の実施形態では、グラフェンのTCR(抵抗温度係数,temperature coefficient of resistance)を介したボロメータ効果を用いてグラフェンの抵抗を変調する。更に他の実施形態では、ハイブリッド法が採用可能である。
【0055】
光子がグラフェン層に入射して吸収されると、電子正孔対が生じる。PTE型のシステムでは、これらの電子と正孔が、ゼーベック効果によって局所的な光電圧を発生させる。光熱効果グラフェン検出器の利点は、その応答速度が、極めて低い暗電流で波長1550nmにおいて1A/Wに達することができる点である。
【0056】
グラフェンを電荷中性(ディラック)点近傍にバイアスすることによって、発生する光電圧の量を最大にすることができる。
図3a、
図3b、
図3cは、
図2の送信器と受信器用のグラフェン型混合器220の構造の3D(三次元)斜視図、2D(二次元)垂直断面図、概略図をそれぞれ示す。この例では、混合器は二つのグラフェン層を利用している。
【0057】
混合器は、酸化物305中に光導波路304(例えば、シリコンや窒化シリコン(後者はより広範な帯域幅動作を与える)、又はドープされたゲルマニウム製)を備える。導波路は、シリコン(シリコンオンインシュレータ)基板300の埋め込み酸化物層302上に支持される。混合器は、光電圧が発生する下部グラフェン層306を更に備える。光電圧は「負」の電気コンタクト部308と「正」の電気コンタクト部310にわたって現れる。図示の例では、コンタクト部308は基準(接地)電極に接続され、コンタクト部310が電気出力(OUT)を与える。
【0058】
誘電体層307(例えば、二酸化シリコン製)がグラフェン層306の上に設けられる。誘電体層307上の上部グラフェン層は、下部グラフェンチャネル306用のゲート312a、312bを画定するようにパターン化され、各ゲートは接続部314a、314bを備える。
【0059】
バイアス電圧発生器316からのバイアス電圧を二つのゲート312a、312bの一方(又は両方)に印加し得る。グラフェンチャネル306に対するバイアスは、ゼーベック効果を与えるように電界効果を介してグラフェン層306の化学ポテンシャルプロファイルを定める。光熱電(PTE)効果を最大にするようにバイアス電圧を調節し得る。
【0060】
広義では、ゲート電圧に対する電圧によってグラフェン層内のキャリア密度を調節する。この領域内の光励起電子がグラフェンを加熱して、ゼーベック効果によってPTE電圧が発生する。PTE電圧の大きさは、ドーピングレベルが異なる領域同士の間の電子温度差(ゲート電圧によって定められる)に特に依存する。典型的には、ゲート電極同士の間に印加されるバイアス電圧は、電荷中性点電圧(±1~10ボルトの範囲内となり得る)であるディラック電圧近傍にあるが、ディラック電圧そのものにはない。ディラック点電圧はドーピングに依存し、典型的には内因性(intrinsic)ドーピングであるが、外因性(extrinsic)ドーピングにもなり得て、有効なドーピングは、印加バイアスを変更することによって変更可能であり、負バイアスがグラフェンをnドープにし、また、その逆もでき(多数電荷キャリアのタイプを変更することによって)、ディラック点においてキャリア密度がゼロ近くになり、抵抗率が最大になる。
【0061】
特定のデバイスにおける特定の波長でのPTE効果の大きさを、例えば0~10ボルトの範囲にわたってゲート電圧差の変動に対して光電圧の変動をプロットすることによって、及び/又は、モットの式を用いてゼーベック係数を計算することによって、選択して最大にすることができる。広義では、この効果の大きさは、ゲート電圧差とディラック電圧との間の差の大きさに依存し、この差の符号が光電圧の符号を決める。
【0062】
図3を再び参照すると、例えば略100GHzで周波数間隔を空けた二重波長レーザビームが光導波路内を伝搬する。グラフェンチャネル内で検出されると、二つの周波数のビート(うねり)が、例えば100GHzの電気正弦波を発生させる。いくつかの実施形態において、光周波は、低位相ノイズと低ジッタを有し、ミリメートル波の搬送を定める。
【0063】
本デバイスが送信器で使用される場合、例えば、
図2aの送信器のグラフェン型混合器220として使用される場合、例えば、送信用のエンコードを備える電気データ信号が二つのゲート312a、312bのうち一方に印加される。この電気信号は、光熱電効果をもたらすジーベック係数を変更し、その光熱電効果が光検出器の応答速度を変調する。従って、データ信号と局所的(例えば100GHz)発振との間のミキシングが生じる。電気出力コンタクト部310における結果としての光電圧は、例えば略100GHzの搬送波上にデータを含み、送信アンテナ210に送信される。
【0064】
本デバイスが受信器で使用される場合、例えば、
図2bの受信器のグラフェン型混合器220として使用される場合、受信アンテナ260が二つのゲート312a、312bのうち一方に結合され、電気データ信号入力(IN
E)を与える。従って、略100GHzに中心がありアンテナにおいて受信される情報は、デバイスのゲートに供給され、光発振が送信等で光導波路に注入される。本デバイスは、上述のものと同じ物理的原理を用いて、受信信号をベースバンド電気データ信号(受信されるデータを備える)に復調する。
【0065】
デバイスが送信器又は受信器で使用される場合、電気(電子)増幅器がデバイスとアンテナとの間に含まれ得る。
【0066】
本手法は、グラフェンチャネルに沿ったジーベック係数プロファイルを変調するため(またミキシングを得るため)にゲートに印加しなければならない電圧が非常に低いため、有用である。これは、非常に小型になり得るアンテナから受信される信号にとって特に有益である。
【0067】
図4は、混合デバイスが上述のタイプのものである統合された混合デバイスと送信アンテナの上面図と垂直断面図を示す。統合された混合デバイスと送信アンテナは統合送信器の一部を形成し得て、局所的発振用のレーザ源も統合可能であるが、分離されて別ものであってもよい。統合された混合デバイスと受信アンテナ、つまりは統合受信器も同様に製造可能であるが、混合デバイスの接続が異なる点に留意されたい。しかしながら、他の一部実施形態では、アンテナは、例えば、個別/外部コパッケージで設けられ得る。
【0068】
図4において上述のものと同様の要素は同様の参照番号で示されている。図示されている例は、誘電体(例えば、シリカ)基板302によって支持された金属アーム210a、210bを備えるダイポールアンテナの使用を示す。
【0069】
本構造は、一部実施形態においては二重層グラフェン構造であり、例えば略100GHzの搬送で変調信号を備える電圧を生成し、
図1aの混合器220を実現している。この電圧は、ダイポールの二つのアーム210a、210bに印加され、又は他のアンテナの給電部に印加され、大気中に放射される。
【0070】
受信器の構成において、アンテナは一方のゲートに接続され、又は一方のゲートとグラフェンチャネルとの間に接続される。
【0071】
図示されているダイポールアンテナの代わりに他の種類のアンテナが使用可能であり、ボウタイアンテナや螺旋アンテナ(どちらも広帯域動作用に有用である)、パッチアンテナ(高利得動性能用に有用である)が挙げられるがこれらに限定されない。パッチアンテナには反射接地面が設けられ得て、その反射接地面は、例えば、基板302の上、下、又は、中に形成され得る。
【0072】
一部実施形態では上述のアンテナは、増幅器を介して混合デバイスに結合され得て、例えば、受信アンテナからの信号、又は送信アンテナに向かう信号を増幅する。こうした増幅器は、GaAs型増幅器やグラフェン型増幅器等の電気(電子)増幅器を備え得る。送信器においても同様の電気(電子)増幅器が混合器とアンテナとの間に結合され得る(図示されている構成を一部再構成する)。
【0073】
図5は、
図2の送信器と受信器用のボロメータグラフェン型混合器500の構造の概略図を示し、
図5でも同様の要素は同様の参照番号で示されている。
【0074】
そして、送信器用のボロメータグラフェン型混合器において、グラフェン層306に対する第一電気コンタクト部508が、電気データ信号入力(INE)を与え、グラフェン層306に対する第二電気コンタクト部510が送信アンテナに電気出力(OUT)を与える。受信器において、コンタクト部508(INE)は受信アンテナに結合され、ダウンコンバート電気データ信号出力がコンタクト部510(OUT)に与えられる。コンタクト部508とコンタクト部510との間の抵抗は、入射光によって変調され、より具体的には、二つの光線の間のRF差周波によって変調される。電気データ信号入力に対する電圧が、入射光に対するデバイスの応答を変調し、例えば、グラフェン層のTCRを変調する。電気データ信号はボロメータ型光検出器のバイアスを有効に変調する。
【0075】
電気入力は、例えば0ボルトに中心がある正弦波であり得る。一般的にはバイアスは必要とされないが、任意選択的に、半導体基板300は接地(例えば、入力正弦波の接地によって定められる)に対してバイアスされ得て、グラフェン層のフェルミ準位を調節して、例えば、フェルミ準位がディラック点外である場合に、基板を多少分極させることによって、ディラック点に対してフェルミ準位を上昇させ得る。
【0076】
図3~
図5の構造は、CMOS(相補型金属酸化物半導体)準拠の製造プロセスを用いて製造可能である。
【0077】
ウェーハスケールでの導波路の統合を用いて、光波長の対を誘導し得る。光検出器中にビート(うねり)を生じさせるのに用いられる一対のレーザは、送信器/受信器チップの近傍に配置されるか、又は遠隔配置されて、ファイバで送信器/受信器チップに結合される。代替的に、マッハ・ツェンダー干渉計を用いて単一のレーザを振幅変調させて、一対の光線を発生させ得る。
【0078】
受信器においては、RF振幅器が、混合器に続いて設けられ得て、混合デバイス及び受信アンテナと同じ基板上に統合され得る。送信器においては、RF増幅器が、送信用の電気信号を与えるゲート接続部を駆動するために設けられ得て、混合デバイス及び送信アンテナと同じ基板上に統合され得る。
【0079】
グラフェン型光検出器と、グラフェン型マッハツェンダー干渉計と、グラフェン型増幅器のうちの一つ以上を共通基板上に統合し得る。
【0080】
一部実施形態では、小電気信号で用いられる場合にPTE型デバイスはボロメータ効果型デバイスよりも効率的になり得る。これは、PTE型デバイスの最良の動作点が典型的には中性点に近く、例えば、中性点から略40mV(小電荷ドーピング)となり得る。従って、電圧の小さな変化が応答速度の有用な変化を生じさせることができる。暗電流ノイズ、ダイナミックレンジ、及び/又は感度も改善可能である。
【0081】
広義では、本開示の手法は、高搬送周波数、例えば、10GHz以上、任意で100GHz、最大数THzの使用を促進する。一部実施形態では、光熱電効果(ゼーベック効果)光検出器を用いた光生成が、搬送周波数に整合したスペクトル分離の二つの光波長のビート(うねり)を用いてRF局所的発振を提供するミキサとして機能する。他の実施形態では、ボロメータ光検出が用いられる。こうした手法は、他のグラフェンに基づいた手法と比較して応答速度を改善し、暗電流を低減することができ、情報を変調/復調するのに低電圧しか必要とされない。送信器としての一部実施形態では、データは追加の変調無しで混合器に適用され得て、同様に、受信器においても復調無しとなり得る。
【0082】
ボロメータ型とPTE型の光検出器を用いた実施形態について説明してきたが、電場を用いて光検出器の応答速度を変調するために他の手法を採用したデバイスと方法も想定される。例えば、PTE型の構造を用いると、デバイスの動作オードを、デバイスに対するバイアスを変化させることによってPTEモードとボロメータモードとの間で切り替えることができ、これを用いて、混合器を実現するように光検出器の応答を変調することができる。更に他の手法では、上述のデバイスは、ディアコノフ・シュール(Dyakonov‐Shur)検出器(入射放射がキャリアドリフト速度とキャリア密度を変調する)として動作するように構成可能であり、例えば、FET(電界効果トランジスタ)構造を画定するようにグラフェン層(又は他の2D物質)を分割して、発生した光起電効果電圧をゲートに印加される電圧によって変調する。
【0083】
他の多くの有用な代替案も当業者にも想起されるものである。本発明は、開示されている実施形態に限定されず、添付の請求項の要旨と範囲内に在り当業者に自明な修正を包含するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0084】
200 送信器
210 送信アンテナ
220 混合器
250 受信器
260 受信アンテナ
300 半導体基板
302 誘電体基板
304 光導波路
305 酸化物
306 グラフェン層
307 誘電体層
308 電気コンタクト部
310 電気コンタクト部
312 ゲート
314 接続部
316 バイアス電圧発生器
【国際調査報告】