(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】バイオガスプラントおよびバイオガス処理
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20220418BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20220418BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20220418BHJP
【FI】
B09B3/00 C ZAB
B01D53/86 100
B01D53/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553316
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 EP2020056093
(87)【国際公開番号】W WO2020182684
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521402170
【氏名又は名称】ヒタチ ゾウセン イノバ エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,ジェンス
(72)【発明者】
【氏名】ウィーガーズ,ジャン
【テーマコード(参考)】
4D004
4D006
4D148
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004BA03
4D004CA12
4D004CA18
4D004CB04
4D006GA41
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB64
4D006PB68
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
(57)【要約】
本発明は、発酵槽(12)、バイオガス処理ユニット(16)および熱機関(19)を備えるバイオガスプラント(10)に関する。バイオガス処理ユニット(16)は、発酵槽(12)からのバイオガス原料(26)を2つのガス流に分離するためのガス分離ユニット(32)および圧縮ユニット(33)を備え、それにより第1のガス流はバイオガス原料(26)の組成に関してバイオメタンが濃縮された生成ガス(28)を含み、第2のガス流は、バイオガス原料(26)の組成に関して二酸化炭素が濃縮され、かつ20%未満のバイオメタン濃度を有する残留ガス(30)を含む。熱機関(19)は圧縮ユニット(33)の運転のために使用されるエネルギー(39)を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-バイオマス(21)からバイオガス原料(26)を生成するための発酵槽(12)と、
-機械および/または熱エネルギー(39)を生成するために燃焼用の燃焼ガスが供給される熱機関(19)と、
-圧縮ユニット(33)および前記バイオガス原料(26)を第1および第2のガス流に分離するためのガス分離ユニット(32)を備えたバイオガス処理施設(16)であって、
前記第1のガス流は前記バイオガス原料(26)の組成に関してバイオメタンが濃縮された生成ガス(28)からなり、前記第2のガス流は20%未満のバイオメタンを含み、かつ前記バイオガス原料(26)の組成に関して二酸化炭素が濃縮された残留ガス(30)からなるバイオガス処理施設(16)と、
-処理される排ガスが供給される排ガス処理ユニット(18)と
を備え、
前記熱機関(19)において前記燃焼ガスの燃焼によって生成された前記エネルギー(39)の少なくとも一部は、前記圧縮ユニット(33)を運転させるために使用されることを特徴とする、
バイオガスプラント(10)。
【請求項2】
前記燃焼ガスおよび前記排ガスのうちの少なくとも一方は前記残留ガス(30)の少なくとも一部である画分(30a、30b)を含む、請求項1に記載のバイオガスプラント。
【請求項3】
前記残留ガスは15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは0.1%~3%の範囲内のバイオメタン濃度を有する、請求項1または2に記載のバイオガスプラント。
【請求項4】
前記燃焼ガスは、可変量の天然ガス(36)および/または前記発酵槽(12)のバイオガス原料(26)および/または生成ガス(28)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項5】
前記排ガスは前記熱機関(19)からの排ガス(31)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項6】
前記燃焼ガスおよび前記排ガスのうちの少なくとも一方は前記バイオガスプラント(10)からのガスからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項7】
前記排ガス処理ユニット(18)は触媒ガス処理ユニットである、請求項1~6のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項8】
前記熱機関(19)および前記圧縮ユニット(33)は固定連結部を介して機械的に接続されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項9】
前記ガス分離ユニット(32)は好ましくは多くとも2つの分離段階、好ましくはたった1つの分離段階を有する単純化された膜分離設備(34)を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項10】
前記ガス分離ユニット(32)は0.1%~5%の範囲内、好ましくは0.25%~3%の範囲内のメタンスリップを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項11】
前記燃焼ガスは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは約40%~50%のバイオメタン濃度を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項12】
前記ガス分離ユニット(32)からの全ての残留ガス(30)は好ましくは事前処理なしに、直接的または間接的に前記熱機関(19)および/または前記排ガス処理ユニット(18)に送られる、請求項1~11のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項13】
前記発酵槽(12)からのバイオガス原料(26)を前記バイオガス処理施設(16)に送るための第1のガスパイプライン(23)およびバイオガス原料(26)を前記発酵槽(12)から前記熱機関(19)に送るための第2のガスパイプライン(24)を特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項14】
前記バイオガス原料(26)の圧縮中および/または前記熱機関(19)によって生成された熱エネルギー(39)は、前記発酵槽(12)を運転させるために使用される、請求項1~13のいずれか1項に記載のバイオガスプラント。
【請求項15】
好ましくは請求項1~14のいずれか1項に記載のバイオガスプラントにおいてバイオガス原料からバイオメタンを得るための方法であって、
a)発酵槽(12)からのバイオガス原料(26)を圧縮ユニット(33)の助けを借りて圧縮する工程と、
b)前記圧縮されたバイオガス原料(26)をガス分離ユニット(32)の助けを借りて、前記バイオガス原料(26)に関してバイオメタンが濃縮された生成ガス(28)および20%未満のバイオメタン濃度を有し、かつ前記バイオガス原料(26)に関して二酸化炭素が濃縮された残留ガス(30)に分離する工程と、
c)熱機関(19)における燃焼ガスの燃焼により、前記圧縮ユニット(33)を運転させるために少なくとも部分的に使用されるエネルギー(39)を生成する工程と
を少なくとも含む方法。
【請求項16】
前記残留ガス(30)の少なくとも一部である画分(30a、30b)は燃焼ガスの一部として前記熱機関(19)に、および/または排ガスの一部として排ガス処理ユニット(18)に送られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱機関(19)および/または前記圧縮ユニット(33)内で生成される前記エネルギー(39)の少なくとも一部は、前記発酵槽(12)を運転させるために使用される、請求項15または16の1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の発酵槽およびバイオガス処理施設を備えたバイオガスプラントと、請求項15に記載のバイオガス原料からバイオメタンを得るための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガスという用語は通常、主としてバイオメタンおよび二酸化炭素の混合物を指し、これは酸素の非存在下で有機物質の発酵により生成される。埋め立て地または下水処理施設の消化塔から遊離するガスをバイオガスと呼ぶ場合もある。従ってバイオガスプラントは、有機基質からバイオガスを生成するためのプラントである。元々バイオガスは、電気エネルギーおよび熱を生成するためのローカルコージェネレーションユニットで使用されてきたものであり、生成された熱の一部はさらにバイオガス生成プロセスのために使用することができる。
【0003】
バイオガスがその元の位置から離れた位置で必要とされる場合、バイオガスのバイオメタンへの処理およびそのガスグリッドまたは貯蔵施設への供給が必要である。この目的のために、バイオガスをその成分、主にバイオメタンおよび二酸化炭素に分離するために使用されるバイオガス処理施設が開発された。その目的は本質的に純粋なバイオメタンガス流を得ることにあり、これはその後にガスグリッドに供給されるか、例えばモビリティ産業で使用することができる。
【0004】
バイオガス原料を精製してバイオメタンを得るためのいくつかの方法は、実際に使用することに成功してきた。公知の方法としては、水スクラビング、有機スクラブ(例えばアミン系溶媒を用いる)、圧力スイング吸着(PSA)および膜による気体分離方法が挙げられる。
【0005】
圧力スイング吸着法はバイオガスを高圧下で、吸着剤が充填された固定床反応器に供給することを含む。バイオガス混合物のいわゆる「重い成分」は吸着剤によって吸着され、いわゆる「軽い成分」は濃縮された形態で床の出口で回収することができる。吸着床が飽和した場合、重い成分の一部も床から逃げる。このような状態が起こるとすぐに、軽い成分のための出口が閉じられ、かつ重い成分のための別の第2の出口が開放されるように、当該プロセスは弁を用いて切り替えられる。この切り替えは減圧と共に行われる。この減圧下では重い吸収された成分は床から脱着し、かつ第2の出口で回収することができる。2種類の交互に負荷および脱負荷される吸着剤により連続的な運転が可能となる。大気圧未満の圧力が使用される場合、この方法をVSA(真空スイング吸着)とも呼ぶ。この圧力が部分的に大気圧を超え、かつ部分的に大気圧未満である場合、この方法をVPSA(真空圧スイング吸着)と呼ぶ。印加される圧力およびそれに関連する必要な注意事項を除いて、全てのこれらの方法は基本的に同じである。
【0006】
膜による気体分離方法は、膜の助けを借りてバイオガスから二酸化炭素を分離することを含む。その目的のために、バイオガス原料を予め浄化し、かつ通常は10~30バールの圧力まで圧縮する。この圧力下では二酸化炭素は、透過側を保持側から分離する膜を容易に透過することができる。バイオガス原料の他の成分、特にバイオメタンは膜をそのように容易に透過することができないため、二酸化炭素(「残留ガス」)を透過側で(すなわち「透過ガス」として)回収することができ、所望の浄化されたバイオメタンは元の圧縮の圧力下で保持側で「生成ガス」として(すなわち「保持ガス」として)提供され、ガスグリッド内に供給する準備が整った状態にある。多層膜が使用される場合、それらは通常、溶媒選択的無孔性ポリマーフィルム、微孔性キャリア膜および透過性フリースを含む。例えばゼオライト系の無機ガス分離膜は、ポリマーフィルム系の膜の代わりとして利用可能である。膜の種類に関わらず十分に高純度なバイオメタンおよび二酸化炭素のガス流を得るために、多段膜システムが使用されることが多い。
【0007】
国際公開第2012/000727A1号は、ガス混合物を分離するための3段階プロセスおよび装置を開示している。このプロセスおよび装置は、その両方が膜分離段階である供給流分離段階および保持ガス分離段階からなる。第1の保持ガス流を供給流の温度よりも高い温度まで加熱した後、それを保持ガス分離段階に導入し、保持ガス分離段階で使用される膜の総容量は供給流分離段階で使用される膜の総容量よりも大きい。このプロセスおよび装置は、低い再循環流量により比較的高い純度で透過ガスおよび保持ガスの両方を供給することができる。この方法は実際に使用されることが多く、過去に多くの供給者にライセンスが与えられてきた。
【0008】
現在のバイオガス処理方法の1つの課題は、多量のエネルギーを必要とすることである。例えば、上記スクラビング法は多くの熱エネルギーを必要とし、圧力スイング吸着法および膜を用いる分離方法はバイオガス原料の圧縮のために高いエネルギー要求を有する。今までのところ、必要とされる圧縮エネルギーは通常、もっぱら電気エンジンによって提供されてきたが、これにより生成コストは高くなる。バイオメタンおよびCO2の純度、ならびにその中の最大で容認可能な汚染物質の量に関する要求は絶えず増加しているため、多段分離および浄化システムは通常必要である。しかし各浄化工程は浄化プロセスの総エネルギー消費を増加させる。
【0009】
多かれ少なかれ純粋なバイオメタンの所望の生成ガス以外に、バイオガス原料は副生成物(残留ガス)として得られる可変量の二酸化炭素も含有する。これまでは二酸化炭素が濃縮されたこのガス流はほとんど価値のないものとみなされ、通常は環境中に放出されてきた。気候変動を考慮して、温室効果ガスおよび/または汚染物質を含むガスの排出に関してより厳しい規制が確立された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明によって解決される課題は、バイオガスを生成するためのバイオガス生成施設と、バイオガス原料をバイオメタンおよび二酸化炭素に分離するためのバイオガス処理施設とを備えるバイオガスプラントを提供し、それによりバイオガスプラントが向上したエネルギー・経済収支を有すると同時に、バイオガス原料の分離から得られるガス流の純度に関する要求を満たすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1に記載のバイオガスプラントおよび請求項15の特徴を有する方法によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【0012】
本発明に係るバイオガスプラントは、
-有機バイオ資源(または「バイオマス」)、特に有機廃棄物からバイオガス原料を生成するための発酵槽(または「消化槽」)と、
-バイオガス処理施設と、
-熱機関と
を備える。
【0013】
発酵槽はバイオマスをバイオガス原料に転換させることができ、一般に有機バイオ資源を消化することができる微生物を含む。発酵槽は、割り当てられた技術的ユニット(例えば装置)または施設(例えば廃棄物処分場)であってもよい。バイオ資源の消化すなわち「発酵」により、バイオメタンを含有するバイオガス原料が生成される。
【0014】
発酵槽によって生成されたバイオガス原料中のバイオメタンを他のバイオガス成分、特に二酸化炭素(CO2)から分離するために、バイオガス処理施設は、バイオガス原料を少なくとも第1および第2のガス流に分けるガス分離ユニットを備える。第1のガス流はバイオガス原料の組成に関してバイオメタンが濃縮された生成ガスからなり、第2のガス流はバイオガス原料の組成に関して二酸化炭素が濃縮された残留ガスからなり、かつ20%未満のバイオメタン濃度を有する。バイオガス処理施設は2つ以上の分離段階を含んでもよい。従って少なくとも1つの残留ガス流は、異なる分離段階から得られた異なる中間残留ガス流の混合物であってもよい。
【0015】
ガス流の分離は、本願の導入部分で言及されている公知の方法のうちの1つを使用することにより、特に膜分離または圧力スイング吸着によって達成することができる。これらの分離方法は一般に分離されるバイオガス原料の圧縮を必要とするため、バイオガス処理施設は、この作業を行うことができる圧縮ユニットを備える。
【0016】
熱機関はバイオガスプラントの一部であり、そこには熱エネルギーを生成する燃焼用の燃焼ガスが供給される。熱機関は、例えばガスピストンエンジンまたはマイクロガスタービンであってもよい。熱機関は排ガス処理ユニットに接続することができる。前記排ガス処理ユニットには、処理のための(通常は浄化される)排ガスが供給される。熱機関は好ましくは、前記熱エネルギーを利用するために少なくとも1つの熱交換器も備える。
【0017】
本発明の重要な態様は、燃焼ガスの燃焼によって生成されたエネルギーを圧縮ユニットを運転させるために使用することである。
【0018】
従って本発明のバイオガスプラントは、燃焼ガスの燃焼によって生成されたエネルギーをバイオガスプラントの運転のために、具体的にはガス分離ユニットの圧縮ユニットを運転させるために使用するのを可能にする。これによりバイオガスプラントの運転コストを著しく下げる。熱機関によって生成された熱エネルギーを発酵槽に移動させてもよく、これによりバイオガスプラントの運転コストを下げる。
【0019】
熱機関および圧縮ユニットは一般に、好ましくは固定連結部を介して機械的に接続されている。
【0020】
熱機関から圧縮ユニットへのエネルギー移動は、直接的(例えば固定もしくは可変連結部を介して)であっても、間接的(例えばその間にエネルギー変換器または貯蔵部を有する)であってもよい。その結果、圧縮ユニットの運転は外部で生成されるエネルギー(すなわち、バイオガスプラントの外部で生成される電気エネルギーまたは燃料)をあまり必要とせず、これにより全体的なバイオメタン生成コストを下げることができる。
【0021】
本発明の特に好ましい実施形態では、残留ガスの少なくとも一部は、燃焼ガスの一部として熱機関に、および/または排ガスの一部としてガス処理ユニットに供給される。
【0022】
言い換えると、好ましくは残留ガス(ガス分離ユニット内でのバイオガス原料の分離から得られる)の少なくとも一部は、熱機関および排ガス処理ユニットの一方または両方に送られる。熱機関および/または排ガス処理ユニットに供給される残留ガスのうち、画分X(Xは0%~100%である)は燃焼ガスの一部として送られ、別の画分「100%-X」は排ガスの一部として排ガス処理ユニットに送られてもよい。
【0023】
好ましくは排ガス処理ユニットによって処理される排ガスは、熱機関内での燃焼プロセスからの排ガスを含む。このようにして燃焼ガスの燃焼中に生成される排ガスは特に、例えばNMHC、一酸化炭素またはメタンなどの不完全燃焼した炭素化合物および/または亜酸化窒素の除去により浄化することができる。本実施形態では、排ガス処理ユニットに送られるあらゆる残留ガスは好ましくは、排ガス処理ユニットに供給される前に熱機関からの排ガスと混合される。
【0024】
上記好ましい実施形態では、残留ガス中に存在するあらゆるバイオメタン残留物は、排ガス処理施設において浄化し、かつ/または熱機関でのその燃焼中に二酸化炭素および水に変換することができ、従って強力な温室効果ガスとして環境中に放出されないため、本発明に係るバイオガスプラントは環境バランスの向上を可能にする。
【0025】
一般にガス分離ユニットの目標は、残留ガス中のバイオメタンの量、すなわちメタンスリップを最小限に抑えて、大気中へのバイオメタンの放出(これは温室効果ガスである)を回避することにある。メタンスリップの減少は通常、ガス分離ユニットのより複雑な構造(例えば、増加した数の分離段階、より大きい膜表面積など)と共に生じる。しかし本発明に係るバイオガスプラントは、エネルギー生成のために残留ガス中に残留するバイオメタンの燃焼を可能にするため(および/または排ガス処理ユニットの助けを借りて、例えば酸化により少なくともそれを除去するのを可能にするため)、本発明のバイオガスプラントのガス分離ユニットは、大気中に放出されるバイオメタンの排出の増加というリスクを冒すことなく著しく単純化することもできる。
【0026】
要約すると、外部エネルギーの必要性の低下および大気中に遊離するバイオメタンの量の顕著な減少のおかげで、本発明に係るバイオガスプラントは特にエネルギー効率が高く、かつ経済および環境に優しいバイオメタンの生成を提供する。単純化された分離ユニットを使用する場合、建物および維持費ならびにバイオガスプラントの運転コストをさらに下げることができる。
【0027】
好ましくは熱機関に供給されないあらゆる残留ガスは、大気中に放出される前に排ガス処理ユニットにおいて浄化される。
【0028】
バイオガスプラントの好ましい実施形態では、燃焼ガスは、可変量の天然ガスおよび/または発酵槽からのバイオガス原料および/または生成ガスを含む。これはこの好ましい実施形態では、燃焼ガスが理論上は残留ガスのみからなっていてもよいが、一般に挙げられる可燃性ガス(例えば、天然ガス、バイオガス原料またはバイオメタン)の一部をさらに含むことを意味する。燃焼ガスへの可燃性ガスの添加は通常必要とされるが、その理由は、ガス分離ユニットの分離効率(すなわち、ガス分離ユニットのメタンスリップ)に応じて、残留ガス中のバイオメタンの残留する部分は非常に少ない場合があり、従って後者はエネルギー生成のために熱機関における適切な燃焼を可能にするのに十分な可燃成分をもはや含んでいない場合があるからである。この場合、可変量の天然ガスおよび/またはバイオガス原料および/または生成ガス、好ましくはバイオガス原料を燃焼ガスに添加して、燃焼プロセスを駆動することができる。適用可能であれば、他の可燃物、例えばLPG(プロパン/ブタン)も燃焼ガスに添加することができる。これにより残留ガス中のバイオメタン濃度が低い場合にも確実に、熱機関の一定運転およびひいては一定のエネルギー生成を保証することができる。燃焼ガス中の可燃性ガスの最小濃度は、使用される熱機関の種類によって決定される。パイロット噴射エンジンはリーンガス、すなわち高濃度の二酸化炭素などの非可燃性ガスを含むガスの燃焼を可能にするエンジンの一例である。
【0029】
熱機関が特定の時点で圧縮ユニットによって利用することができないエネルギーを生成した場合、過剰なエネルギーは好ましくはバイオガスプラントの他のユニット、例えば発酵槽によって供給および利用される。あるいは、そのような過剰なエネルギーはエネルギー貯蔵部またはローカルエネルギー分配グリッドの中に供給されてもよい。
【0030】
好ましくは、残留ガスは15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは0.1%~3%の範囲内またはさらには0.1%~1%の範囲内のバイオメタン濃度を含む。
【0031】
好ましくは、熱機関に供給される燃焼ガスはもっぱらバイオガスプラント自体のガス、例えば分離ユニットからの生成ガス、分離ユニットからの残留ガスおよび/または発酵槽からのバイオガス原料を含む。これは本実施形態では、外部燃焼ガス(例えばローカル天然ガスグリッドから)が必要とされず、従ってバイオガスプラントは自立的に運転させることができ、かつ位置非依存的であってもよいことを意味する。ガスグリッド接続が存在しない場合、生成されるバイオメタンを直接使用するか、容器の中に充填して消費者または施設のいずれかに液状または気体状で輸送することができ、そこで天然ガスグリッドの中にそれを供給することができる。
【0032】
バイオガスプラントの排ガス処理ユニットは、好ましくは触媒ガス処理ユニットであり、残留ガスまたは他の排ガスの浄化のために使用することができる。具体的には、それは好ましくは大気中に放出する前に熱機関からの排ガスを浄化するためにも使用される。有害物質、特に窒素酸化物、未燃炭化水素および一酸化炭素を除去するための方法が当業者に知られている。炭化水素および一酸化炭素の除去のために一般的な酸化触媒が使用されることが多い(例えば、J.K.Lampertら,Applied Catalysis B:Environmental,第14巻,第3~4号,1997年12月29日,211~223頁を参照)。
【0033】
バイオガスプラントのガス分離ユニットは、好ましくは膜分離設備および/または圧力スイング吸着設備である。他の方法と比較して膜分離設備または圧力スイング吸収設備を用いるガス分離は、よりエネルギー効率が高く、かつコストを節約する。
【0034】
既に述べたように、本発明のバイオガスプラントの1つの利点は単純化された構造のガス分離ユニットを備えることができる点である。「単純化された」とは、一般的な分離ユニット、例えば一般的な膜分離設備と比較して、本発明のバイオガスプラントは少ない数の分離段階、少ない数の膜モジュールおよび/または全体的に減少したサイズの膜面積を有し得ることを意味する。このような分離段階または膜モジュールの数またはサイズの減少はより多くのメタンスリップを伴う。しかし上記のとおり、残留ガス中に残留するバイオメタンの量はエネルギー生成のために熱機関によって利用することができる。それにも関わらず一般に、残留ガス中のバイオメタン濃度は15%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満であることが好ましい。
【0035】
一実施形態では、分離ユニットは好ましくは多くとも2つの分離段階、特に好ましくはたった1つの分離段階を有する単純化された膜分離設備である。各さらなる分離段階により分離ユニットのエネルギー要求が高まるため、3つ以上の分離段階を有するユニットと比較して本発明の膜分離ユニットは実質的により少ないエネルギーを必要とする。さらに、たった2つまたはそれよりも少ない分離段階を有するガス分離ユニットの構造は通常はより単純であり、従ってコストの節約になり、保守に関する要求が少なくなる。
【0036】
一般的なガス(ピストン)モータが熱機関として使用される場合、燃焼ガスは一般に約40%~50%の可燃性物質、通常はバイオメタンを含有する。既に述べたように、特殊なリーンガスモータが利用可能であり、これは通常より高価であるが、燃焼ガス中のメタン濃度がはるかに低い状態で動くことができる。経済的な観点から、燃焼ガスは好ましくは、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも30%のバイオメタン濃度を含む。
【0037】
一実施形態では残留ガス中のバイオメタン濃度に関わらず、ガス分離ユニットで得られた全ての残留ガスは、好ましくは事前処理(ここで処理とは残留ガスの組成を変えるプロセスを指す)なしに、直接的または間接的に(例えば、発酵槽または中間貯蔵部を介して)熱機関および/または排ガス処理ユニットに送られることが好ましい。
【0038】
一実施形態では、全ての残留ガスが熱機関に供給される。残留ガスの直接利用はコストを節約し、従って経済的な観点から特に有利である。
【0039】
好ましい実施形態によれば、バイオガスプラントは2つのガスパイプラインを備え、その一方は発酵槽からのバイオガス原料をバイオガス処理施設に送る役割を担い、他方は発酵槽からのバイオガス原料を熱機関に送る役割を担う。2つのパイプラインは完全に分離されているか、あるいは後で2つの別個のパイプラインに分かれる共通の起点を有していてもよい。2つのパイプラインを設けることにより、それぞれの消費ユニット(消費ユニットとはこの関連では熱機関およびガス分離ユニットを指す)の占有率に応じて、バイオガス原料をガス分離ユニットおよび/または熱機関に送ることが可能になる。例えば、発酵槽からの全てのバイオガス原料をたった1つの消費ユニットに供給することができる。あるいは、バイオガス原料を2つの消費ユニット間で均等または非均等に分けてもよい。特定の消費ユニットに送られるバイオガス原料の量は好ましくは弁を用いて調整され、その処理量は、特定の時点で関係している消費ユニットのエネルギー要求に応じて制御ユニットの助けを借りて調整される。
【0040】
バイオガスプラントの特にエネルギー効率の高い運転を考慮して、バイオガス原料の圧縮中および/または熱機関によって生成される熱エネルギーの少なくとも一部は好ましくは発酵槽を運転するために使用される。結果として、そうしなければ発酵槽を加熱するために必要となるエネルギーを節約することができる。圧縮ユニットから生成された熱エネルギーは好ましくは発酵槽内で分配される。ガス圧縮および熱機関からの熱エネルギーが発酵槽の運転のために十分でない場合、さらなる外部熱エネルギーを発酵槽に供給してもよい。他方、発酵槽によって必要とされるものよりも多くの熱エネルギーが生成された場合、過剰なエネルギーは好ましくは熱貯蔵部または熱エネルギーグリッドに供給されるか、そうでなければバイオガスプラントの中またはその近くで使用される。
【0041】
さらなる態様では本発明は、少なくとも以下の工程を含むバイオガス原料からのバイオメタンの生成のための方法にも関する。
【0042】
最初に、発酵槽によって生成されたバイオガス原料を圧縮ユニットの助けを借りて圧縮する。次いで、圧縮されたバイオガス原料をガス分離ユニットの助けを借りて、バイオガス原料の組成に関してバイオメタンが濃縮された生成ガスとバイオガス原料の組成に関して二酸化炭素が濃縮された残留ガスとに分離する。残留ガスは20%未満のバイオメタンを含む。
【0043】
本発明によれば、熱機関内での燃焼ガスの燃焼によりエネルギーが生成され、前記エネルギーの少なくとも一部は圧縮ユニットの運転のために使用される。
【0044】
好ましくは、本方法は、残留ガスの少なくとも一部を燃焼ガスの一部として熱機関に、および/または排ガスの一部として排ガス処理ユニットに送る工程をさらに含む。
【0045】
好ましくは、熱機関は、熱機関によって生成された熱エネルギーを利用するために少なくとも1つの熱交換器を含む。
【0046】
本発明の運転方法に従うこのようなエネルギーの再利用により、バイオガスプラントの運転のために使用される外部エネルギーの量(例えば、バイオガスプラントの外部からの電気またはガス)を好ましくはゼロまで減少させることが可能になる。バイオメタンの生成は、上述のように好ましくはバイオガスプラント内で行われる。従ってバイオガス原料の分離は、好ましくは膜分離設備および/または圧力スイング吸着設備を含むガス分離ユニット内で行われる。本発明のバイオガスプラントの好ましい実施形態に関連して上に記載されているように、膜分離ユニットまたはPSAユニットの助けを借りたガス分離は、他の公知のガス分離方法と比較してよりエネルギー効率が高く、かつコストを節約する。
【0047】
向上したエネルギー収支を考慮して、熱機関によって生成されたエネルギー(電気または熱エネルギー)および/または圧縮ユニットにおいて生成された熱エネルギーの一部は、発酵槽の運転のためにも使用してもよい。
【0048】
熱機関は残留ガスのバイオメタン濃度に応じて、発酵槽からの可変量のバイオガス原料および/または分離ユニットからの可変量の生成ガスを受け取ることが好ましい。この場合、エネルギーは外部で生成されるエネルギーまたは燃料(例えば天然ガス)を利用せずに熱機関内で生成することができ、これにより、一般的な電気もしくはガスグリッドに接続されていない位置で本発明の方法を使用することが可能になる。
【0049】
以下では、本発明について
図1に示されている実施形態を参照しながらさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本発明のバイオガスプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1に示されている本発明に係るバイオガスプラント10の一実施形態は、バイオメタン17の生成のために発酵槽12、熱機関19およびバイオガス処理施設16を備える。熱機関19には燃焼ガスが供給される。バイオガスプラント10は、排ガスが供給される排ガス処理ユニット18をさらに備える。熱機関19からの排ガスを排ガス処理ユニット18に送ることができるように、熱機関19および排ガス処理ユニット18は好ましくは接続されている。
【0052】
「熱機関」という用語はここでは一般に、燃焼機関、例えばガス(ピストン)エンジン、マイクロガスタービンまたはパイロット噴射エンジンを指し、これは化学エネルギーを機械および/または熱エネルギーに変換するために液体燃料の代わりに、あるいはそれに加えて燃焼ガス、例えば天然ガス、バイオガスまたは水素を使用する。熱機関は一般に少なくとも1つの熱交換器(図示せず)も備える。
【0053】
図1のバイオガスプラント10の場合、基質調製ユニット20は発酵槽12に有機材料(バイオマス)21を供給する。バイオマス21は発酵槽12で発酵され、その後に基質後処理ユニット22に輸送される。
【0054】
発酵槽12内でのバイオマス21の発酵中に、バイオガス原料26が生成される。図示されている実施形態では、発酵槽12からのバイオガス原料26は第1のガスパイプライン23を通してバイオガス処理施設16に送られる。第2のガスパイプライン24は発酵槽12からのバイオガス原料26を熱機関19に送るために設けられている。2つのパイプライン23、24は完全に分離されているか、後で2つの別個のパイプラインに分かれる共通の起点を有していてもよい。熱機関19に供給されるバイオガス原料26の画分は一般にバイオガス処理施設16に供給される画分よりも小さい。
【0055】
バイオガス処理施設16内で、バイオガス原料26は生成ガス28および残留ガス30に分離される。この分離は、ガス分離ユニット32および分離されるバイオガス原料26の圧縮のための圧縮ユニット33の助けを借りて行われる。ガス分離ユニット32は膜分離設備34を備える。
【0056】
膜分離設備34は、バイオガス原料26を生成ガス28を含む第1のガス流と残留ガス30を含む第2のガス流とに分離する少なくとも1つの膜37を備える。この分離は、バイオメタンおよび二酸化炭素の膜に対する異なる透過性により生じる。生成ガス28はバイオガス原料26の組成に関してより高いバイオメタン濃度を含むが、残留ガス30はバイオガス原料26の組成よりも多くの二酸化炭素を含む。残留ガス30は20%未満のバイオメタンを含有する。
【0057】
ガス分離ユニット32はその構造において単純化されていてもよく、これは、残留ガス中に残留するバイオメタンの量、すなわちメタンスリップを最小限に抑えるように構築された当該技術分野で知られているガス分離ユニットと比較して、より少ない分離段階および/または減少した膜面積を含むことを意味する。本発明に係るバイオガスプラント10は、エネルギー生成のために残留ガス30中に残留するバイオメタンを使用することを可能にするので(次のパラグラフを参照)、本発明のバイオガスプラントのガス分離ユニット32は、所望であれば著しく単純化されていてもよい。
【0058】
バイオガスプラント10の図示されている実施形態では、分離ユニット32からの残留ガス30の一部が熱機関19および/または排ガス処理ユニット18に供給される。従って、前記残留ガス30の0%~100%の画分30aは熱機関19に供給され、熱機関19内で燃焼される燃焼ガスの一部を形成する。
図1に示されている図示されている実施形態では、残留ガス30の残りの画分30bは排ガス処理ユニット18に供給され、排ガス処理ユニット18において処理される(浄化される)排ガスの一部を形成する。ガス処理ユニット18を用いて浄化される排ガスは、熱機関19からの排ガス31をさらに含んでいてもよい。従って図示されている実施形態では、排ガス処理ユニット18、例えば触媒ガス処理ユニットは、i)熱機関19に供給されない残留ガス30の画分30b、およびii)熱機関19からの排ガス31を浄化する役割を担い、従って後者は、大気中に放出する前に特に不完全燃焼した炭素化合物(例えばNMHC、一酸化炭素またはメタン)および/または窒素酸化物から浄化することができる。
【0059】
熱機関19内での燃焼ガスの燃焼により、機械および/または熱エネルギー39は生成される。前記エネルギー39はバイオガス処理施設16、具体的には圧縮ユニット33の運転のために使用される。それはさらに他の目的、例えば発酵槽12の運転のために使用されてもよく、あるいは熱貯蔵部40に貯蔵されてもよい。残留ガス30中の可燃性物質(特にバイオメタン)の含有量が低すぎて熱機関19内での適切な燃焼および従ってエネルギー生成が可能でない場合、さらなる他の可燃物、例えば発酵槽12からのバイオガス原料26または外部源からの天然ガス36(例えば、公共ガスグリッド(図示せず))またはバイオガス処理施設16からの生成ガス28を熱機関19の燃焼ガスに添加することができる。さらに、熱機関19および/または圧縮ユニット33によって生成された熱エネルギー39の少なくとも一部を発酵槽12の加熱のために使用することもできる。
【国際調査報告】