(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-25
(54)【発明の名称】結腸直腸進行新生物、進行腺腫、及び/又は結腸直腸癌をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする改善された方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220418BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20220418BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220418BHJP
C12Q 1/689 20180101ALI20220418BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220418BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20220418BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220418BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z
C12Q1/06 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/689 Z
G01N33/50 N
G01N33/50 P
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553792
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(85)【翻訳文提出日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2020056575
(87)【国際公開番号】W WO2020182922
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518052289
【氏名又は名称】グッドガット エッセ.エッレ.
(71)【出願人】
【識別番号】516262103
【氏名又は名称】フンダシオ インスティトゥート ディンベスティガシオ ビオメディカ デ ジローナ ドクトル ジュゼップ トルエタ
(71)【出願人】
【識別番号】516262114
【氏名又は名称】ウニベルシタ デ ジローナ
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セッラ パジェス マリオーナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア-ジル ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】アルデゲール マンテ ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】マラゴン ロドリゲス マルタ
(72)【発明者】
【氏名】ラミオ プジョル サラ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB04
2G045DA13
2G045DA14
2G045FB02
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ03
4B063QQ06
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR32
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4B063QR66
4B063QS10
4B063QS14
4B063QS25
4B063QS39
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする改善された方法に関するものであり、ここで、ANはCRC及びAAを包含する。特に、上記方法は、細菌マーカーに基づくシグネチャーを使用して便潜血検査(FOBT)における偽陽性の結果を減らすことにより特異度の増加をもたらす。本発明は更に、探索的検査(例えば、結腸内視鏡検査)を実施する又は抗癌療法薬により治療する被験体を選択する際の上記方法の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体における結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする便潜血検査(FOBT)の特異度を高める又は偽陽性率を減らす方法であって、
a.前記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、前記FOBTは、前記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b.前記被験体から単離された糞便試料において、少なくとも以下の細菌マーカー:
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、及び、
バクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)、
を定量化することと、
を含み、ここで、結腸直腸進行新生物(AN)という前記用語は、CRC及び進行腺腫(AA)を包含する、方法。
【請求項2】
被験体における結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法であって、
a.前記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、前記FOBTは、前記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b.前記被験体から単離された糞便試料において、少なくとも以下の細菌マーカー:
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、及び、
バクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)、
を定量化することと、
を含み、ここで、結腸直腸進行新生物(AN)という前記用語は、CRC及び進行腺腫(AA)を包含する、方法。
【請求項3】
前記方法は、
c)b)で決定された前記細菌マーカーのレベルから組合せスコアを計算することと、
d)FOBT陽性被験体を、c)で得られた前記組合せスコアに従って、AN、AA、及び/又はCRCを有するとして分類することと、
を更に含む、請求項2に記載のヒト被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法。
【請求項4】
c)で計算された前記組合せスコアは、PTST及びBCTFの量に比例し、かつBCTTの量に反比例し、ここで、前記スコアが高いほど、AN、AA、及び/又はCRCを有する可能性が高い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程d)において、前記方法は、前記被験体の試料における前記組合せスコアと、参照値とを比較することを含み、前記参照値に対する前記被験体の試料における前記組合せスコアの増加は、AN、AA、及び/又はCRCの指標である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
i.前記糞便試料中のGMLL、PTST、及びBCTTの量と、対応する参照値とを比較すること、
を更に含み、ここで、
ii.前記対応する参照値に対するFOBT陽性被験体の試料におけるGMLL及びPTSTの量の増加、並びにBCTTの量の減少が、AN、AA、及び/又はCRCの指標である、請求項2に記載のヒト被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法。
【請求項7】
前記被験体は、CRCを有することが疑われる被験体、又は無症状の被験体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記FOBTは、ヒトヘモグロビン(hHb)を定量化する糞便免疫化学検査(FIT)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
FIT陽性被験体は、糞便1g当たり10μg以上のhHb(FIT50のカットオフ)又は糞便1g当たり20μg以上のhHb(FIT100のカットオフ)のhHbレベルを有し、好ましくは、FIT陽性被験体は、糞便1g当たり10μg以上のhHb(FIT50のカットオフ)のhHbレベルを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、B10(配列番号7)、B46(配列番号8)、B48(配列番号9)、ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、ロゼブリア・インテスティナリス(RSBI)、コリンセラ・インテスティナリス(CINT)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、及び/又はその系統群のいずれか、並びにエシェリキア・コリ(ECO)からなる群より選択される1種以上の細菌マーカーを定量化することを更に含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
PTST、BCTF、及びBCTT、並びに任意に請求項10の前記細菌マーカーのレベルの決定は、qPCRによって行われ、好ましくは、前記定量化のレベルはCt値として表現される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
PTST、BCTF、及びBCTTのレベル、並びに任意に請求項10の前記細菌マーカーのレベルは、好ましくは真正細菌(EUB)レベルに対する相対的存在量として表現される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、該方法の結果をデータ担体に格納することを更に含み、好ましくは、前記データ担体は、コンピューター可読媒体である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に規定される通りの方法である、コンピューター実装方法。
【請求項15】
PTST、BCTF、及びBCTTを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
配列番号24若しくは配列番号25のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、
配列番号26若しくは配列番号27のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、及び、
配列番号30若しくは配列番号31のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、及び、
任意に、真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド、好ましくは、配列番号5、配列番号6、配列番号14、若しくは配列番号15のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、
を含み、
任意に、被験体から単離された糞便試料中の細菌マーカーのレベルを決定する際の前記試薬の使用についての使用説明書を更に含む、キット。
【請求項16】
請求項1~14のいずれか一項に記載のAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法における、請求項15に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌診断の分野に関する。詳細には、本発明は、結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする改善された方法に関するものであり、ここで、ANはCRC及びAAを包含する。特に、上記方法は、細菌マーカーに基づくシグネチャーを使用して便潜血検査(FOBT)における偽陽性の結果を減らすことにより特異度の増加をもたらす。本発明は更に、探索的検査(例えば、結腸内視鏡検査)を実施する又は抗癌療法薬により治療する被験体を選択する際の上記方法の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CRCは、世界的に男性で3番目に多く、女性で2番目に多い癌であり、癌死亡の主な原因である(非特許文献1)。75歳までに6%の個体がCRCに冒され、罹患率は発展途上国よりも先進国の方がはるかに高い(非特許文献2)。癌は強い遺伝的要素を示すが、CRCのほとんどは散発性であり、その進行は遅い(非特許文献3)。ほとんどの患者では、進行疾患が現れるまで症候は見られない。定期的な腸癌スクリーニングにより、糞便検査を使用した場合にCRCによる死亡リスクが26%低下し、軟性S状結腸鏡検査を適用した場合に最大50%低下することが分かっている(非特許文献4、非特許文献5)。しかしながら、CRCスクリーニングプログラムは、世界中の一部の国々でしか実施されていない。
【0003】
ガイドラインでは、50歳で開始する無症状の成人におけるCRCの定期的なスクリーニングが推奨されている(非特許文献6)。現在のスクリーニングプログラムは、内視鏡検診に基づく侵襲的手法と、糞便検査に基づく非侵襲的手法との2つの方略を基礎としている(非特許文献7)。CRCスクリーニングには、軟性S状結腸鏡検査及び結腸内視鏡検査等の種々の内視鏡検査手法が存在する。結腸内視鏡検査の主な利点は、結腸全体の直接的な視覚化が可能であることから正確な診断を行うことができ、したがって前癌病変の早期検出を通じてCRCを予防することができることである(非特許文献8)。それにもかかわらず、この手法は腸管前処理及び鎮静を必要とし、腸穿孔のリスク及び他の悪影響があり、それには時間と費用がかかる(非特許文献9、非特許文献10)。軟性S状結腸鏡検査は、遠位結腸、つまり直腸、S状結腸、及び下行結腸を直接的に視覚化することができる代替的アプローチである。この方法では、鎮静が避けられ、腸穿孔のリスクが減る(非特許文献11)。糞便検査は、その非侵襲性及び内視鏡検査方略と比べてコストが低いため、ほとんどの国々で好ましいCRCスクリーニング手法となりつつある。代替的な糞便検査のいずれかで結果が陽性であった被験体は一般に、正確な診断を行うために結腸内視鏡検査を受ける。したがって、非侵襲的検査はしばしば、スクリーニングアプローチの予備段階として使用される。
【0004】
スクリーニングプログラムで使用される糞便検査の1つは、ヘムとα-グアヤコン酸との間の化学的酸化反応を基礎とするグアヤク法(グアヤク便潜血検査、gFOBT)を使用する便潜血検査である。これらの種類の検査の主な不利点は、特定の食品、アルコール、又は非ステロイド性抗炎症薬の摂取を原因として起こり得る偽陽性の結果を避けるために規定食を必要とすることである(非特許文献12)。その検査は、非侵襲性であるものの、CRC(25%~38%)及び前癌病変(16%~31%)に対して低い感度を有することが分かっている(非特許文献13)。糞便免疫化学検査(FIT)は、gFOBTの低感度を克服するべく開発された。この検査はヒト血中ヘモグロビンに特異的であり、食事制限を必要としない。幾つかの研究により、gFOBTと比較してFITスクリーニングの感度がより高いことが実証された(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16、非特許文献17)。FITの全体的な感度はCRCでは61%~91%程度であり、進行腺腫では27%~67%であるが(非特許文献13)、これらの数値は依然として高い偽陽性率を意味している。
【0005】
最近、CRC患者の腸粘膜における細菌群集が健康な個体の細菌群衆とは異なることが報告された(非特許文献18、非特許文献19)。腸内細菌叢がCRCの病因に重要な役割を担う可能性があることを証拠が示唆している(非特許文献20、非特許文献21)。これまでに、腸内細菌叢が腫瘍発生を誘発する可能性がある2つの考えられるメカニズムが記載されている。一方では、腸内細菌叢が慢性炎症を促進し、これが更に腫瘍形成を引き起こす場合がある(非特許文献22、非特許文献23)。他方では、赤身肉等の腸内細菌叢によって代謝される一部の食事成分が、発癌性化合物の生成をもたらすことが証明されている(非特許文献24)。さらに、CRC特有の腸内毒素症、又はCRC進行に関連付けることができる何らかの特定の種が存在するか否かを解明するのに、最近多くの研究が行われている(非特許文献25、非特許文献26、非特許文献27)。
【0006】
2012年に、60人の個体(41人のCRC患者及び19人の正常な結腸内視鏡検査を伴う患者)に関する本発明者らのグループにより行われた予備的前向き研究により、保有率がCRCリスクと相関する粘膜生検試料内の細菌クラスターが規定された(非特許文献28)。分析された55種の系統型の中でも、6種はコントロール被験体よりもCRC患者において有意に高い頻度を示した。その中の5種はヒト胃腸管又はヒト糞便から回収された培養されていない細菌配列と類似性を共有し、1種はパラバクテロイデス・メルダエ(Parabacteroides merdae)と97%の類似性を共有した。対照的に、B34(クロストリジウム・ネキシレ(Clostridium nexile)と99%の類似性)及びB35(ロゼブリア・フェカリス(Roseburia faecalis)と97%の類似性)の2種の系統型が存在し、これらはCRC患者よりも健康な被験体の方で多く見られた。
【0007】
その後、発明者らのグループは、これらの細菌マーカーを特異的に標的とした定量的ポリメラーゼ連鎖反応系(qPCR)を設計した(非特許文献28)。後に、便試料(健康なコントロールから7人及び9人のCRC患者)に対して細菌シグネチャーを検査し、種々の存在量を調べて、CRCスクリーニング用の非侵襲的ツールとして使用するのにどれが適しているかを確認した(特許文献1)。ドクター・ジョゼフ・トルエータ・ジローナ大学病院(Hospital Universitari de Girona Dr.Josep Trueta)(スペイン、ジローナ)の46人の患者を含む後ろ向き臨床研究により、幾つかの細菌シグネチャーがCRCマーカーとして適していることが確認された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Estimated Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide in 2012, http://globocan.iarc.fr/Pages/fact_sheets_population.aspx.
【非特許文献2】Wilson, 2005
【非特許文献3】Brenner et al, 2014
【非特許文献4】Zauber, 2015
【非特許文献5】Elmunzer et al, 2012
【非特許文献6】Rex et al, 2017
【非特許文献7】Quintero et al, 2012
【非特許文献8】Young & Womeldorph, 2013
【非特許文献9】Rutter et al, 2012
【非特許文献10】Sieg et al, 2001
【非特許文献11】Gatto et al, 2003
【非特許文献12】Sanford, 2009
【非特許文献13】Stracci, 2014
【非特許文献14】Brenner & Tao, 2013
【非特許文献15】Shapiro et al, 2017
【非特許文献16】Mousavinezhad et al, 2016
【非特許文献17】Goede et al, 2017
【非特許文献18】Borges-Canha et al, 2015
【非特許文献19】Mira-Pascual et al, 2014
【非特許文献20】Sobhani et al, 2011
【非特許文献21】Jun et al, 2010
【非特許文献22】Kostic et al, 2013
【非特許文献23】Zackular et al, 2014
【非特許文献24】Joshi et al, 2015
【非特許文献25】Dulal & Keku, 2014
【非特許文献26】Zeller et al, 2014
【非特許文献27】Marchesi et al, 2011
【非特許文献28】Mas de Xaxars Rivero, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最近の進歩にもかかわらず、CRC死亡を減らすために、集団を対象としたスクリーニング及びサーベイランスの方略を通じて進行結腸直腸新生物を早期検出する新しいツールを見出すことが依然として求められている。理想的な技術は、非侵襲的で、費用効果が高く、再現性があり、かつ腫瘍進行のリスクが高い前癌病変を高い感度値及び特異度値で検出することができるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、便潜血検査(例えば、FIT)を補完し、FOBTに関連する偽陽性の結果を減らし、こうして同様のレベルの感度を維持しながら、その特異度値及び陽性予測値(PPV:陽性適中率)を高めることができる新しい細菌シグネチャーを基礎とする、新しい非侵襲的なAA、CRC、及び/又はANのスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングの検査を提供する。
【0012】
本発明の第1の態様は、被験体における結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする便潜血検査(FOBT)の特異度を高める又は偽陽性率を減らす方法であって、
a)任意に、上記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、上記FOBTは、上記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b)上記被験体から単離された腸管試料(好ましくは糞便試料)において、以下の細菌マーカー:
ゲメラ・モルビロルム(Gemella Morbillorum)(GMLL)、
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(Peptostreptococcus stomatis)(PTST)、及び、
バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(BCTF)、
のうちの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを定量化することと、
を含む、方法に関する。
【0013】
関連の態様において、本発明は、被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法であって、
a)任意に、上記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、上記FOBTは、上記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む、
b)上記被験体から単離された腸管試料(好ましくは糞便試料)において、以下の細菌マーカー:
ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、及び、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、
のうちの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを定量化することと、
を含む、方法に関する。
【0014】
更なる態様において、本発明は、AN、AA、及び/又はCRCを有する被験体を治療する方法であって、上記被験体が、本発明の他の態様のスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングの方法によって選択されており、かつ上記方法が、被験体に抗癌療法薬を投与することを更に含む、方法を提供する。
【0015】
関連する態様において、本発明はまた、他の態様に記載されるいずれかの方法であって、上記患者に治療的有効量の抗癌療法薬を投与する工程を更に含む、方法を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、癌患者の治療方法で使用される抗癌療法薬であって、上記癌患者が、本発明の他の態様のスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングの方法によって選択されている、抗癌療法薬に関する。
【0017】
追加の態様において、本発明はまた、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、二重造影バリウム注腸、及びコンピューター断層撮影(CT)コロノグラフィーからなる群より選択される探索的検査を実施する、好ましくは結腸内視鏡検査を実施する被験体を選択する方法であって、上記被験体が、本発明の他の態様のスクリーニング、診断、又はモニタリングの方法によって選択されている、方法に関する。
【0018】
また更なる態様において、本発明は、被験体において探索的検査を実施する方法であって、上記被験体が、本発明の他の態様のスクリーニング、診断、又はモニタリングの方法によって選択されており、上記方法が、被験体に探索的検査を実施することを更に含み、該検査が、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、二重造影バリウム注腸、及びコンピューター断層撮影(CT)コロノグラフィーからなる群より選択される、好ましくは結腸内視鏡検査である、方法に関する。
【0019】
別の態様において、本発明は、GMLL、PTST、BCTF、又はBCTTのいずれかを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
i.GMLLゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号1に特異的なオリゴヌクレオチド、
ii.PTSTゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチド、
iii.BCTFゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチド、
iv.BCTTゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチド、及び、
v.任意に、本明細書において上記に規定された真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド、
のうちの1つ以上を含む、キットを提供する。
【0020】
更なる態様において、本発明はまた、本明細書に記載されるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法で使用される本明細書に記載されるキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】正常な結腸内視鏡検査(NC)、非進行腺腫(NAA)、進行腺腫(AA)、及び結腸直腸癌(CRC)を有する被験体についての分析された生物学的マーカー(B10(フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)についてのベストマッチBLAST)、B46(フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、サブドリグラニュラム・バリアビレ(Subdoligranulum variabil)についてのベストマッチBLAST)、B48(ルミノコッカス属、ロゼブリア属、コプロコッカス属についてのベストマッチBLAST)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella Morbillorum)(GMLL)、ペプトストレプトコッカス・ストマティス(Peptostreptococcus stomatis)(PTST)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)(BCTF)、コリンセラ・インテスティナリス(Collinsella intestinalis)(CINT)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)(BCTT)、及びロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)(RSBI))のパーセンテージでの相対的存在量を示す図である。
【
図2】異なる診断間でのバイオマーカーの存在量の比較を示す図である。NC、正常な結腸内視鏡検査;新生物、非進行腺腫+進行腺腫+結腸直腸癌;進行新生物、進行腺腫+結腸直腸癌;CRC、結腸直腸癌。有意水準:
*p値<0.05の場合、
**p値<0.01の場合、
***p値<0.001の場合。
【
図3】正常な結腸内視鏡検査(NC)、非進行腺腫(NAA)、進行腺腫(AA)、及び結腸直腸癌(CRC)を有する被験体についての分析された生物学的マーカー(酪酸産生種:B10、B46、B48、及びロゼブリア・インテスティナリス(RSBI);日和見病原体:ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、及びバクテロイデス・フラジリス(BCTF);H
2及びO
2の産生菌:コリンセラ・インテスティナリス(CINT);並びに糖分解性細菌:バクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT))のパーセンテージでの相対的存在量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
「被験体」又は「個体」という用語は、哺乳動物として分類される全ての動物を指すため本明細書において同じ意味で使用され、飼育動物及び家畜、霊長類及びヒト、例えば、人間、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、又は齧歯類を含むがこれらに限定されない。被験体は、あらゆる年齢又は人種の男性又は女性の人間であることが好ましい。
【0023】
本明細書において使用される「感度」という用語は、標的状態を有し(参照標準陽性)、かつ陽性の検査結果を示す被験体の割合(TP/(TP+FN))を指す。感度は、検査が疾患の検出にどれだけ良好であるかを示す。感度(「sens」)は、0(0%)<sens<1(100%)の範囲内であり得て、偽陰性の数はゼロに等しい又はゼロに近く、感度は1(100%)に等しい又は1(100%)に近いことが理想である。
【0024】
本明細書において検査に関連して使用される「特異度」という用語は、標的状態を有さず(参照標準陰性)、かつ陰性の検査結果を示す被験体の割合(TN/(TN+FP))を指す。特異度は、検査が正常(陰性)状態の特定にどれだけ良好であるかを示す。特異度(「spec」)は、0(0%)<spec<1(100%)の範囲内であり得て、偽陽性の数はゼロに等しい又はゼロに近く、特異度は1(100%)に等しい又は1(100%)に近いことが理想である。
【0025】
本明細書において使用される「精度(accuracy:正確度)」という用語は、母集団における真陽性又は真陰性のいずれかの真の結果の割合を指す。精度は、或る状態に対するスクリーニング検査の正確さの程度、つまり、所与の状態の決定及び除外がどれだけ正確であるかの尺度である(TN+TP)/(TN+TP+FN+FP)。精度(「acc」)は、0(0%)<acc<1(100%)の範囲内であり得て、偽陽性及び偽陰性の数はゼロに等しい又はゼロに近く、精度は1(100%)に等しい又は1(100%)に近いことが理想である。
【0026】
本明細書において使用される「受信者動作特性(ROC)曲線」という用語は、その判別閾値が変化する場合の二項分類器系の性能を示すグラフプロットを指す。この曲線は、様々な閾値設定で偽陽性率に対して真陽性率をプロットすることによって作成される。真陽性率は感度としても知られる。偽陽性率は1-特異度として算出される。したがって、ROC曲線は、カットオフの範囲全体にわたる真陽性率対偽陽性率(感度対(1-特異度))をグラフで表し、臨床使用に最適なカットオフを選択する方法である。ROC曲線下面積(AUC)として表現される精度は、検査性能を比較するのに有用なパラメーターを提供する。AUCが1に近づくと、検査の感度が高いだけでなく特異度も高いことを示し、一方で、AUCが0.5に近づくと、検査の感度も特異度も高くないことを示す。概して、検査は、AUCが0.6~0.75である場合に適切な判別器であり、AUCが0.75~0.9であると良好な判別能力を有し、AUCが0.9~1であると優れた判別器であるとみなされる。更なる詳細については、例えば、Zweig MH and Campbell G, Clinical Chemistry 1993; 39:561-577、又はGreiner et al. Preventive Veterinary Medicine 2000; 45:23-41を参照されたい。
【0027】
本明細書において使用される「プローブ」という用語は、所定の条件下で標的核酸配列への特異的及び選択的なハイブリダイゼーションを可能にする特定のヌクレオチド配列を含み、検出又はアッセイ性能の向上のための部分を任意に含む、長さが10塩基対~285塩基対の合成の又は生物学的に産生された核酸を指す。統計学的には、特異性を獲得して安定したハイブリダイゼーション産物を形成するためには、一般に最低10ヌクレオチドが必要であり、一般に最大285ヌクレオチドが、反応パラメーターを調整してミスマッチ配列及び選択的ハイブリダイゼーションを容易に決定することができる長さの上限となる。プローブには、任意に、或る特定のアッセイ条件下でそれらの適切な又は最適な機能に寄与する或る特定の構成要素が含まれてもよい。例えば、プローブを修飾することで、ヌクレアーゼ分解に対するそれらの耐性を改善し(例えば、末端封鎖によって)、検出リガンド(例えば、フルオレセイン)を保有し、純化又は濃縮目的のリガンド(例えば、ビオチン)を保有し、又は固体担体(例えば、ポリ-デオキシアデノシン「テール」)上へのそれらの捕捉を容易にすることができる。
【0028】
本明細書において使用される「プライマー」という用語は、ヌクレオチド配列を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)等の増幅方法で使用され得るオリゴヌクレオチドを指す。プライマーは、特定の標的配列のポリヌクレオチド配列、例えば或る特定の16S rDNA配列に基づいて設計される。
【0029】
ヌクレオチド配列に関連して本明細書において使用される「特異的(な)」という用語は、ヌクレオチド配列が所定の標的配列にハイブリダイズし/所定の標的配列を増幅し、アッセイ条件下で実質的に非標的配列にハイブリダイズしない/非標的配列を増幅しないことを意味し、一般的にはストリンジェントな条件が使用される。
【0030】
本明細書において使用される「ハイブリダイゼーション」という用語は、所定の反応条件下で、核酸の2つの部分的又は完全に相補的な鎖が、どの核酸塩基が互いに対となり得るかに関する明確な規則に従って、逆平行様式で一緒になって特異的で安定な水素結合により二本鎖核酸を形成させるプロセスを指す。
【0031】
「実質的なハイブリダイゼーション」という用語は、観察されるハイブリダイゼーションの量が、陽性コントロール及び陰性コントロールのハイブリダイゼーションデータに対して結果を観察する人がその結果を陽性とみなすような量であることを意味する。「バックグラウンドノイズ」と見なされるデータは、実質的なハイブリダイゼーションではない。
【0032】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という用語は、およそ0.9モルのNaClの塩溶液中においておよそ35℃~65℃を意味する。また、ストリンジェンシーは、ハイブリダイゼーション溶液に存在するイオン種の濃度及び種類、存在する変性剤の種類及び濃度、並びにハイブリダイゼーションの温度等の反応パラメーターによっても左右され得る。一般的には、安定したハイブリッドを形成するには、ハイブリダイゼーション条件がよりストリンジェントになるにつれて、より長いプローブが好ましい。原則として、ハイブリダイゼーションが行われる条件のストリンジェンシーが、用いられる好ましいプローブの或る特定の特質に影響する。
【0033】
本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、疾患、障害、又は病的状態の予防的又は治療的な処置において被験体(ヒト患者等)に単回又は複数回の用量が投与される際に有効な量を指す。
【0034】
本明細書において使用される「抗癌療法(薬)」という用語は、癌の治療に有用な療法(薬)を指す。抗癌療法(薬)の例としては、限定されるものではないが、例えば、外科手術、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、抗ホルモン剤、放射線療法で使用される作用物質、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療する他の作用物質、例えば、抗HER-2抗体(例、ハーセプチン(商標))、抗CD20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)拮抗薬(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ(タルセバ(商標)))、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、グリベック(商標)(メシル酸イマチニブ))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、以下の標的ErbB2受容体、ErbB3受容体、ErbB4受容体、PDGFRβ受容体、BlyS受容体、APRIL受容体、BCMA受容体、又はVEGF受容体の1つ以上に結合する拮抗薬(例えば、中和抗体)、TRAIL/Apo2、並びにその他の生物活性剤及び有機化学剤等が挙げられる。それらの組合せも本発明に含まれる。
【0035】
本明細書において使用される「細胞毒性剤」という用語は、細胞の機能を阻害若しくは妨害する及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位元素(例えば、At<211>、I<131>、I<125>、Y<90>、Re<186>、Re<188>、Sm<153>、Bi<212>、P<32>、及びLuの放射性同位体)、化学療法剤、並びに細菌、真菌、植物、又は動物に由来する、断片及び/又はその変異体を含む小分子毒素又は酵素活性毒素等の毒素を含むことが意図される。
【0036】
本明細書において使用される「化学療法剤」という用語は、癌の治療に有用な化学的化合物を指す。化学療法剤の例としては、チオテパ及びCYTOXAN(商標)のシクロホスファミド等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸エステル;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド、及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシンの合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体のKW-2189及びCB1-TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン等のニトロソウレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1及びカリケアマイシンω1;ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;クロドロン酸塩等のビスホスホン酸塩;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(商標)のドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、プロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン等の抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストトラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎(anti-adrenals);フロリン酸等の葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトレキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム(elliptinium acetate);エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサマイトシン等のメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標)多糖類複合体(JHS Natural Products、オレゴン州ユージーン);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラキュリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(商標)のパクリタキセル、ABRAXANE(商標)のクレモホール不含のアルブミン操作されたパクリタキセルのナノ粒子製剤、及びTAXOTERE(商標)のドキセタキセル;クロラムブシル;GEMZAR(商標)のゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチン等の白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(商標)のビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸塩;イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(イリノテカンとともに5-FU及びロイコボリンの治療レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸等のレチノイド;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)を含むオキサリプラチン;ラパチニブ(Tykerb(商標));細胞増殖を減少させるPKCα、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標)))及びVEGF-Aの阻害剤、並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体が挙げられる。
【0037】
本明細書において使用される「抗ホルモン剤」という用語は、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(商標)のタモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、及びFARESTON(商標)のトレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)等の腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害する働きがある作用物質;例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(商標)の酢酸メゲストロール、AROMASIN(商標)のエキセメスタン、ホルメスタン、ファドロゾール、RIVISOR(商標)のボロゾール、FEMARA(商標)のレトロゾール、及びARIMIDEX(商標)のアナストロゾール等の副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン等の抗アンドロゲン;並びにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えば、PKCα、Ralf及びH-Ras等の異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(商標)リボザイム)及びHER2発現阻害剤等のリボザイム;遺伝子療法ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(商標)ワクチン、LEUVECTIN(商標)ワクチン、及びVAXID(商標)ワクチン等のワクチン;PROLEUKIN(商標)のrIL-2;LURTOTECAN(商標)のトポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(商標)のrmRH;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸、又は誘導体を指す。
【0038】
「サイトカイン」という用語は、細胞間メディエーターとして別の細胞に作用する或る細胞集団によって放出されるタンパク質の総称である。そのようなサイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン、及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインには、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;サイロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン;表皮成長因子;肝細胞増殖因子;線維芽細胞増殖因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子α及び腫瘍壊死因子β;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGFα等の神経成長因子;血小板成長因子;TGFα及びTGFβ等のトランスフォーミング成長因子(TGF);インスリン様成長因子I及びインスリン様成長因子II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロンα、インターフェロンβ、及びインターフェロンγ等のインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF);顆粒球-マクロファージ-CSF(GM-CSF);並びに顆粒球-CSF(G-CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12等のインターロイキン(IL);TNFα又はTNFβ等の腫瘍壊死因子;並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が含まれる。本明細書において使用される場合に、サイトカインという用語は、天然源又は組換え細胞培養からのタンパク質、及び天然配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0039】
本明細書において使用される「成長阻害剤」という用語は、in vitro及び/又はin vivoで細胞の成長を阻害する化合物又は組成物を指す。したがって、成長阻害剤は、S期の細胞のパーセンテージを大幅に減少させるものであり得る。成長阻害剤の例としては、G1停止及びM期停止を誘発する作用物質等の細胞周期の進行を(S期以外の位置で)遮断する作用物質が挙げられる。古典的なM期遮断剤としては、ビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、TAXOL(商標)、並びにドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシン等のトポII阻害剤が挙げられる。G1を停止させる作用物質、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、及びara-C等のDNAアルキル化剤はS期停止にも波及する。更なる情報は、Murakamiら著のThe Molecular Basis of Cancer,Mendelsohn及びIsrael編,第1章、表題「Cell cycle regulation, oncogenes, and antineoplastic drugs」(WB Saunders:フィラデルフィア、1995年)の、特に第13頁に見出すことができる。
【0040】
本明細書において使用される「放射線療法」又は「放射線治療」という用語は、指向性ガンマ線又はベータ線を使用して、正常に機能するその能力を制限するように又は細胞を完全に破壊するように細胞に十分な損傷を誘発することを指す。放射線量及び治療の期間を決定するのに当該技術分野で知られる多くの方法が存在することが理解されよう。典型的な治療は、1回の適用として与えられ、典型的な放射線量は1日当たり10単位~200単位(グレイ)の範囲である。
【0041】
本明細書において使用される「腸疾患」という用語は、小腸、結腸、及び/又は直腸を冒すそれらの疾患又は障害を指す。
【0042】
本発明の方法
第1の態様において、本発明は、被験体における結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする便潜血検査(FOBT)の特異度を高める又は偽陽性率を減らす方法であって、
a)任意に、上記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、上記FOBTは、上記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b)上記被験体から単離された腸管試料(好ましくは糞便試料)において、以下の細菌マーカー:
ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、及び、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、
のうちの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを定量化することと、
を含む、方法に関する。
【0043】
関連の態様において、本発明は、被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法であって、
a)任意に、上記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、上記FOBTは、上記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b)上記被験体から単離された腸管試料(好ましくは糞便試料)において、以下の細菌マーカー:
ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、及び、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、
のうちの少なくとも1つ又はそれらの任意の組合せを定量化することと、
を含む、方法に関する。
【0044】
好ましい実施形態において、a)でのFOBT、及びb)での細菌マーカーの定量化は、糞便試料、好ましくは同じ糞便試料において行われる。
【0045】
GMLLの参考株は、ゲメラ・モルビロルムNCTC11323株(細菌界;フィルミクテス門;バシラス綱;バシラス目;バシラス目第XI所属不明科(Bacillales Family XI. Incertae Sedis);ゲメラ属)であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:LS483440.1を有する。特定の実施形態において、配列番号1に特異的なオリゴヌクレオチドは、GMLLの定量化に使用され得る。配列番号1は、GenBankアクセス番号:LS483440.1の領域:827110~827892に相当する。
【0046】
1 atggcgagtt tattacaaaa aacaagaaaa ataagtacaa ttttacaaga aggacgtcat
61 gataatgtcg attttgaagc aatggcaatg cgcttaagtc ctattttaga ttctgttgtc
121 tatattttag atgtagaagg taatattctt gggtatgatt ctattgtaga ttattctaac
181 gaacgtatgg aagaaattat tcgtgcgagg aaagtgccta aagcttattt agatgcaaca
241 ttaaaagtat atgctacgaa ggttaatatt ccatttcaag atccgctttc tattttccca
301 gatgaagaga aagaaagatt tgatgggaat acctatactg taattttacc aataagaggc
361 gggggagaac gccttggaac tcttgttata ggaagaatgg ataatgactt tcaagatgat
421 gatttggtgt tagcagaata tgcgtcaaca gtagtaggaa ttgaaattct tcacgaaaaa
481 caagataaag aaaaaaatct agctagagac aaagatatgg tgaatatggc tcttaattcg
541 ttatcatatt cagaaaaaga agcaattgaa catattttca gagaattaga tgggacagaa
601 ggactactta tcgcaagtaa aattgcagat agagtaggaa ttactcgctc agttattgtt
661 aatgcactta gaaaattaga aagtgcaggt attatagagt caaaatcatt aggtatgaaa
721 ggtacttata taaaagtact taaagaatat tttttagaat taatgttttc taatgaattt
781 taa
【0047】
PTSTの参考株は、ペプトストレプトコッカス・ストマティスDSM 17678株(細菌界;フィルミクテス門;クロストリジウム綱;クロストリジウム目;ペプトストレプトコッカス科;ペプトストレプトコッカス属)であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:ADGQ01000060.1を有する。特定の実施形態において、配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチドは、PTSTの定量化に使用され得る。配列番号2は、GenBankアクセス番号:ADGQ01000060.1の領域:相補(142796~143362)に相当する。
【0048】
1 atggatatta ttcaacttag caacagactt atagaataca gaaaaagtaa caacttaact
61 attaaagatt tctctgacat gtccggaatt agtactgctc tgcttagtca attagaaaga
121 ggtgttggaa accctagcct gagtgtattg aactctatag cagataccat gaatactagc
181 ctctcctctt tattagaaga acctgttgtt ttagaaaacc tggttagaag gtctgacacc
241 ctatccacta ttgtctaccc atgtaggaac aaccttgaat ttcagttgct cacaactagg
301 tctactactc agagcatcaa ccttgtaaga ataatatttc atgctcattc agaaactaat
361 taccagccac ttggaaaaac cgtttctgat gatataatcc acattgaaaa gggcagtatt
421 attgttcaaa ctgatgatgg taagtctatt caactaaaaa aaggtgatac tatgaggata
481 ccacctgacc ttaggtataa attcaagaat atttctgtac acaaggcaca tatgatttgt
541 gccactaata aacttgaagt aagataa
【0049】
BCTFの参考株は、バクテロイデス・フラジリスNCTC 9343株(細菌界;バクテロイデス門;バクテロイデス綱;バクテロイデス目;バクテロイデス科;バクテロイデス属)であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:CR626927.1を有する。特定の実施形態において、配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチドは、BCTFの定量化に使用され得る。配列番号3は、GenBankアクセス番号:CR626927.1の領域:417101~417817に相当する。
【0050】
1 atggcaaata ctaatatgga acacggagaa ataatactat accaaccaga caatactata
61 aaactggaag tgcgaataga gaatgaaacc gtttggttga cacaagcaca aattgttaac
121 ttattccagt caagtaaagc caatatcagt gagcatataa gaaatatata tgactcagat
181 gaattatctg ctgaatcaac tgttcggaaa ttccgaacag ttcgaatgga aggtaataga
241 aaggttaccc gcattcttga atattataat ctggatatga ttatttccgt aggttatcgt
301 gtgaattcca agcgaggagt ccagttccgc caatggtcaa caggagtact taaagaatat
361 ctattaaaag gctacgcaat caatcagcgc gtggagcagt tggaaaacaa agcaaacacc
421 catgaccggc aactggaaga gttaacaaac aaagtcgact ttttcgtccg gacttcatta
481 cctcctattg aaggtgtctt tttcaacgga cagattttcg atgcctatgt cttttccgct
541 cagttgataa agtctgcaaa gtcatcttta gtattgattg acaactttgt cgatgaaagc
601 gtgctcttac tattgagtaa acgtttgccc ggagtgactt ctatcatata taccaagcaa
661 gtaactccac agttagaatt agatttgaca aagcacaaca gtcaataccc ccaatag
【0051】
好ましい実施形態において、これらの特定のオリゴヌクレオチドは、それぞれGMLL、PTST、及びBCTFについて表3に列挙されたもののいずれか、並びにそれらのいずれかに対して少なくとも80%の同一性を有する配列である。
【0052】
実施例3に示されるように、PTSTは、新生物病変(非進行腺腫+進行腺腫+CRC;p<0.001)と相関性が高いことが判明した。さらに、GMLL、PTST、及びBCTFのそれぞれが、進行新生物(AN)病変を検出する潜在的なバイオマーカーとして特定された(それぞれp=0.006、p<0.001、及びp=0.030)。また、GMLL及びPTSTは、健康な被験体よりもCRCにおいて有意に豊富であることが判明した(それぞれp=0.004及びp<0.001)。
【0053】
本明細書において使用される「結腸直腸癌」、「CRC」という用語は、結腸又は直腸で始まる癌を指す。これらの癌は、始まる場所に応じて、結腸癌又は直腸癌と個別に呼ばれる場合もある。結腸癌及び直腸癌は、多くの共通の特徴を有する。ACSによれば、幾つかの種類の癌は結腸又は直腸で始まり得る。結腸直腸癌の95%超は、腺癌として知られる癌の一種である。これらの癌は、結腸及び直腸の内側を潤滑にする粘液を作る腺を形成する細胞で始まる。他のあまり一般的ではない種類の腫瘍も結腸及び直腸で始まる場合がある。これらとしては、カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、リンパ腫、及び肉腫が挙げられる。好ましい実施形態において、上記結腸直腸癌は腺癌である。
【0054】
腺腫は、結腸等の臓器の内壁にある異常な腺細胞の非癌性成長である。以下の特質:直径が10mm以上の大きさ、絨毛構造を伴うこと、高異型度異形成を伴うこと、又は粘膜内癌を伴うことのうちの1つ以上を満たす腺腫は、典型的には、進行腺腫として分類される(Quintero E., Castells A., et al., N Engl J Med. 2012, 366(8):697-706(非特許文献7)、Cubiella J. et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014, 23(9):1884-92、Muto T, Bussey HJR MB., Cancer 1975;36:2251-70)。
【0055】
本明細書において使用される結腸直腸進行新生物(AN)という用語は、CRC及び進行腺腫(AA)を包含する。ACSによれば、AA及びCRCの両方を発見する可能性が最も高い検査が好ましい。腺腫を有する患者を含むコホート研究により、ポリープ切除が結腸直腸癌のおよそ80%を予防することができることが示唆された(Citarda F, et al., Gut 2001, 48:812-5、Winawer SJ, et al., N Engl J Med 1993, 329:1977-81)。
【0056】
本明細書において使用される「診断」という用語は、被験体における考えられる疾患を決定及び/又は特定することを試みる過程、すなわち診断手法と、この過程によって至った意見、すなわち診断意見との両方を指す。したがって、診断はまた、個体の状態を、治療及び予後についての医学的決定を下すことを可能にする別個の異なるカテゴリーに分類する試みとみなすこともできる。好ましい実施形態において、この方法は、in vitroで実施される方法、すなわち、ヒト又は動物の身体に対して実行されない方法であることが理解されるべきである。特に、CRC患者、AA患者、及び/又はAN患者を決定する診断は、CRC患者、AA患者、及び/又はAN患者を特定及び分類する能力に関連し得る。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の診断方法は、CRCを有することが疑われる被験体において実施される。本明細書において使用される「CRCを有することが疑われる被験体」という用語は、CRCの指標となり得る1つ以上の徴候又は症状を呈する被験体を指す。CRCを有することが疑われる被験体は、予備診断を受けたが、確認検査(例えば、結腸内視鏡検査)がまだ行われていない個体を更に包含する。
【0058】
CRCの指標となり得る徴候又は症状としては、例えば、以下の、原因不明の体重減少、腹痛、原因不明の直腸出血、鉄欠乏性貧血、排便習慣の変化、及び糞便中の潜血の存在の1つ以上が挙げられる(例えば、Jellema et al, BMJ 2010, 340: c1269、又はAdelstein et al. BMC Gastroenterology 2011, 11:65を参照)。例示を目的として、現在のNICEガイドライン(NG12);https://www.nice.org.uk/guidance/ng12/chapter/1-Recommendations-organised-by-site-of-cancer#lower-gastrointestinal-tract-cancersでCRCが疑われる場合を本明細書において以下に示す:
【0059】
結腸直腸癌についての癌経路が疑われた紹介(suspected cancer pathway referral)(例えば、2週間以内の面会予約の場合)を使用して、
40歳以上で原因不明の体重減少及び腹痛を伴う場合に、又は、
50歳以上で原因不明の直腸出血を伴う場合に、又は、
60歳以上で:
鉄欠乏性貧血、若しくは、
排便習慣の変化、
を伴う場合に、又は、
検査で糞便中に潜血が見られる場合に、
成人を紹介する。
【0060】
直腸腫瘤又は腹部腫瘤を伴う成人においては、結腸直腸癌についての癌経路が疑われた紹介(例えば、2週間以内の面会予約の場合)を考慮する。
【0061】
直腸出血及び以下の原因不明の症状又は所見:
腹痛、
排便習慣の変化、
体重減少、
鉄欠乏性貧血、
のいずれかを伴う50歳未満の成人においては、結腸直腸癌についての癌経路が疑われた紹介(例えば、2週間以内の面会予約の場合)を考慮する。
【0062】
直腸出血を伴わず、
50歳以上で原因不明の、
腹痛、若しくは、
体重減少、
を伴う成人、又は、
60歳未満で:
排便習慣の変化、若しくは、
鉄欠乏性貧血、
を伴う成人、又は、
60歳以上で、かつ鉄欠乏状態でなくても貧血を有する成人、
においては、結腸直腸癌を評価する糞便中潜血についての検査を提供する。
【0063】
本発明の方法はまた、非進行腺腫に対する、CRC、進行腺腫、及び/又は進行新生物の間の鑑別診断にも使用され得る。
【0064】
CRCの罹患率及び死亡率を減らすのに最も効果的かつ経済的な手段は、CRCのリスクスクリーニング検査及びモニタリング検査である。スクリーニング検査は、主として癌を早期に検出する検査と、癌を早期に検出することができ、進行腺腫も検出することができる検査とに分類されるため、ポリープ切除(すなわち、ポリープ除去)による予防に関してより大きな可能性がもたらされる。American Cancer Society (ACS) 2008 screening and surveillance guidelines, Levin et al. (CA Cancer J Clinicians, 2008;58(3)130-160)を参照のこと。平均的なリスクの人々、及び高まったリスク又は高いリスクを有する人々には、異なるスクリーニングガイドラインが適用される(http://www.cancer.org/cancer/colonandrectumcancer/moreinformation/colonandrectumcancerearlydetection/colorectal-cancer-early-detection-acs-recommendations)。
【0065】
「スクリーニング」という用語は、本明細書において、一般集団に関係する無症状の個体の群、又は1つ以上のリスク因子を有する個体(例えば、疾患を発症する中程度の又は高いリスクを有する被験体)の群の、健康な個体と、疾患を有する個体又は疾患を有すると疑われる個体とを判別することを目的とする検診又は検査として理解される。疾患の「早期検出」には、一般的にスクリーニング方法が使用される。「早期発見」という表現は、臨床徴候を呈する前の検出を指す。
【0066】
癌スクリーニングの目標は、早期発見及び早期治療を通じて死亡率を低下させ、こうして一般に予後が悪い進行疾患の罹患率を低下させ得ることである。この目的のために、最新のCRCスクリーニングは、腺癌(好ましくは早期段階の腺癌)の検出、並びに進行腺腫の検出及び除去を通じてこの目標を達成することができる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、CRC及び/又は進行新生物の検出を通じてCRCに関連する死亡率を低下させる強力なツールであることが判明している。
【0067】
本発明のスクリーニング方法は、CRCの徴候及び/又は症状を呈しない個体(本明細書において「無症状の個体」と呼称される)において実施され得る。本発明のスクリーニング方法はまた、結腸新生物の個人歴若しくは家族歴、又は以下に記載されるCRCの他のリスク因子を有する被験体又はそれを有しない被験体においても実施され得る。
【0068】
特定の実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、中程度のCRCリスクを有する被験体において実施される。これらは典型的には、個人的又は家族的なCRCの経歴を有しない50歳以上の被験体である。50歳以上の平均的なリスクの女性及び男性は、結腸直腸癌のスクリーニング検査に従うことが推奨される(Levin et al., CA Cancer J Clinicians, 2008;58(3)130-160の表2を参照、これは引用することにより本明細書の一部をなす)。
【0069】
別の実施形態において、本発明のスクリーニング方法は、高まったリスクを有する被験体及び/又は高いリスクの被験体において実施される。ACS(Levin et al., CA Cancer J Clinicians, 2008;58(3)130-160の表3を参照、これは引用することにより本明細書の一部をなす)によれば、高まったリスク及び高いリスクの被験体としては、以下:
高まったリスクの被験体
以前の結腸内視鏡検査でポリープの病歴を有する被験体、
結腸直腸癌を有する被験体、及び、
結腸直腸癌又は腺腫性ポリープの家族歴を有する被験体、
であって、
i.60歳より若い第一度近親者若しくは任意の年齢の2人以上の第一度近親者においてCRC若しくは腺腫性ポリープのいずれかを含む、被験体、及び/又は、
ii.60歳以上の第一度近親者若しくはCRCを有する2人の第二度近親者においてCRC若しくは腺腫性ポリープのいずれかを含む、被験体、
高いリスク
遺伝子検査によって家族性大腸腺腫症(FAP)と診断された被験体、又は遺伝子検査なしでFAPが疑われる被験体、
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC又はリンチ症候群)を有する被験体、又は遺伝子検査なしで家族歴に基づいてHNPCCの高まったリスクの被験体、及び、
慢性潰瘍性大腸炎又はクローン病等の炎症性腸疾患を有する被験体、
が挙げられ得る。
【0070】
本発明の別の目標は、事前診断ツールを提供することであり得る。具体的には、本発明の方法は、例えば進行腺腫の存在を検出することによって、CRCを有する素因を伴う被験体又はその高まったリスクを有する被験体をスクリーニング及び/又は特定するのに使用され得る。
【0071】
本明細書において使用される「モニタリング」という用語は、疾患の進展及び/又は外科的治療及び/又は療法的治療の有効性を判断すること、例えば、疾患の寛解があるかどうかを判断すること、又は対照的に、疾患の進行若しくは再発があるかどうかを判断することを指す。本発明のモニタリングの方法の目標の1つは、再発を早期に検出することである。特定の実施形態において、本発明の方法は、任意にアジュバント療法及び/又はネオアジュバント療法と組み合わせて、外科的切除を受けた癌に罹患している被験体をモニタリングする方法である。
【0072】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、AN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法である。
【0073】
本明細書において使用される「試料」又は「生体試料」という用語は、被験体から単離された生体物質を指す。生体試料は、所望のバイオマーカーを検出するのに適したあらゆる生体物質を含有し得て、そして被験体からの細胞物質及び/又は非細胞物質を含み得る。好ましい実施形態において、試料は腸管試料である。これらは、例えば、結腸及び/又は直腸の粘膜組織からの生検試料であり得る。この腸管試料は、糞便試料であることが好ましい。糞便試料は、臨床業務で日常的に使用されており、当業者は、それらの取得及び保存の最も適切な手段を識別する方法を知っているであろう。試料が得られると、新鮮なものを使用してもよく、適切な手段を使用して凍結又は保存してもよい。
【0074】
本発明の方法は、任意に、工程a)において、被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することを含み、ここで、上記FOBTは、上記被験体から単離された糞便試料中の潜血の存在の判断を含む。糞便中の血液は、CRC又はより大きな(1cmより大きく2cmまでの)ポリープに起因し得る非特異的な所見である。小さな腺腫性ポリープは出血する傾向になく、癌又は大きなポリープからの出血は間欠性である又は便の単一の試料中で常に検出可能であるとは限らないため、便血検査を適切に使用するには、典型的には、検体(製品に応じて2つ又は3つ)を連続的排便から収集することからなる年次検査が必要となる。便血検査は、便中の潜血の存在を検出するように設計されているため、通常、便潜血検査(FOBT)として知られている。FOBTは、検出される分析物に基づいて、gFOBT及びFITの2つの主要なカテゴリーに属する。グアヤクベースの検査は、ヘム又はヘモグロビンのシュードペルオキシダーゼ活性を介して便中の血液を検出するが、免疫化学ベースの検査はヒトグロビンに反応する(Levin et al. (CA Cancer J Clinicians, 2008;58(3)130-160)。
【0075】
通常のgFOBTプロトコルは、3回の連続的排便のそれぞれから2つの試料を収集することからなる。gFOBTは定性的検査であるため、一般に、熟練の検査技師が肉眼を使用して視覚的に読み取り、視覚的な結果が解釈される。感度の高いグアヤクベースの検査で検査する前に、個体は通常、偽陽性及び偽陰性(具体的には、ビタミンC)の両方の結果のリスクを高め得る食物-検査相互作用のため、アスピリン及び他の非ステロイド性抗炎症薬、ビタミンC、赤身肉、鶏肉、魚、並びに一部の生野菜を避けるように指示される。市販のgFOBTの一例は、Hemoccult SENSA(Beckman Coulter、米国)である。
【0076】
FITは、ヘムとともにヒトヘモグロビンを構成するタンパク質であるヒトグロビンを検出する。したがって、FITは、ヒトの血液中のペルオキシダーゼの検出に依存し、かつ生の赤身肉、アブラナ科の野菜、及び一部の果物等の食事成分中に存在するペルオキシダーゼにも反応するグアヤクベースの検査よりもヒトの血液に特異的である。さらに、gFOBTとは異なり、FITは、ペルオキシダーゼ反応を遮断する高用量のビタミンCサプリメントの存在下で偽陰性の結果とならない。さらに、グロビンは上部消化管内の消化酵素によって分解されるため、FITは下部消化管出血に対してもより特異的であり、したがってCRCに対するその特異度が向上する。最後に、FITの一部の別形に関する試料収集は、gFOBTよりも患者の要求が少なく、必要とされる試料がより少なく、又は便の直接的な取り扱いがより少ない。種々の検出技術(例えば、逆受身血球凝集(RPHA)、ラテックス凝集、ELISA、及び免疫比濁法)に基づいて様々なFITが存在し、これらは本明細書に包含される(Levin B et al., Gastroenterology 2008;134:1570-95)。好ましくは、上記免疫学的検査は、実施例で使用されるOC-SENSORアッセイ(栄研化学株式会社、日本)等のラテックス凝集反応を基礎としている。
【0077】
好ましくは、上記FOBTは、ヒトヘモグロビン(hHb)を定量化する糞便免疫化学検査(FIT)である。糞便試料中のhHbのレベルが事前に規定された閾値を上回る場合に、被験体はFIT陽性であると判断される。例えば、hHbレベルが糞便1g当たり10μg以上のhHb(又は1mL当たり50ng以上のヘモグロビン;FIT50のカットオフ)である場合に、又はhHbレベルが糞便1g当たり20μg以上のhHb(又は1mL当たり100ng以上のヘモグロビン;FIT100のカットオフ)である場合に、被験体はFIT陽性であると判断され得る。FIT100のカットオフは、CRCスクリーニングにおけるFITのカットオフ値として、カタルーニャ及びスペインの他の地域で一般的に使用されているものである。表5に示されるように、本発明の方法において両方の閾値を使用する場合に、対応するFIT検査のみに対して特異度の改善が得られる。好ましい実施形態において、FIT陽性被験体は、わずかにより高い感度が得られる糞便1g当たり10μg以上のhHb(FIT50のカットオフ)のhHbレベルを有する。
【0078】
上述のように、本発明の方法は、工程b)において、GMLL、PTST、又はBCTFのいずれか、並びにi)GMLL及びPTST、ii)GMLL及びBCTF、iii)PTST及びBCTF、及び/又はiv)GMLL、PTST及びBCTFを含むそれらの任意の組合せを定量化することを含み得る。任意に、これらの実施形態のいずれかで規定される上記方法は、上記腸管試料(好ましくは、糞便試料)においてバクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)を定量化することを更に含み得る。BCTTの参考株は、バクテロイデス・テタイオタオミクロンVPI-5482株(細菌界;バクテロイデス門;バクテロイデス綱;バクテロイデス目;バクテロイデス科;バクテロイデス属)であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:AE015928.1を有する。特定の実施形態において、配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチドは、BCTTの定量化に使用され得る。配列番号4は、GenBankアクセス番号:AE015928.1の領域:326008~326649に相当する。好ましい実施形態において、これらの特定のオリゴヌクレオチドは、BCTTについて表3に列挙されたもののいずれか、並びにそれらのいずれかに対して少なくとも80%の同一性を有する配列である。
【0079】
1 atggcagtac aatttgaatt atataagact ccgatgccaa aggagaaaaa gaacaagacg
61 cgttatcatg cccgtccggt aagttttgag accgtcaata ccgagaaact ggcttatcgc
121 atccatgatc gctccacatt aagagtatcg gacattattt caaccttgga agaactgaaa
181 aatgaagtag ctcagtgcct cctggaaggt aaaaaggtgc atgtcgatgg attaggattc
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361 cacatgaaat tccagcgttc taaaatcaga ccgcactccg ccaatttatc agaagtagaa
421 atagacatga aactaactga atattttgct gaaaatcaga ttatcacccg gaaagatttt
481 caatatctct gcggaatgac acaaatcact gcatatcgcc atatcaagag gttaatggca
541 gaaaagaaat tgcaaaataa agggacgatc tatcaaccga tatatactcc ggttccgggt
601 aattacaggg tatcggtgga tttaaaatat aaagaacaat ga
【0080】
好ましくは、工程b)は、PTST、BCTF、及びBCTTを定量化することを含む又はそれのみからなる。
【0081】
標的核酸配列の量を測定する分子生物学的方法は、当該技術分野で既知である。これらの方法としては、限定されるものではないが、エンドポイントPCR、競合PCR、定量的PCR(qPCR)、PCRパイロシーケンシング、PCR-ELISA、DNAマイクロアレイ、次世代シーケンシング法等の核酸シーケンシング、ドットブロット又は蛍光In Situハイブリダイゼーションアッセイ(FISH)等のin situハイブリダイゼーションアッセイ、質量分析、分岐DNA(Nolte, Adv. Clin. Chem. 1998,33:201-235)、及び上記の方法のマルチプレックス型(例えば、Andoh et al., Current Pharmaceutical Design, 2009;15,2066-2073を参照)、並びに列記された技術のいずれかの次世代型及びそれらの組合せが挙げられ、これらは全て本発明の範囲内である。
【0082】
多様な次世代シーケンシング法が記載されており、これらは当業者に既知である。次世代シーケンシング法としては、例えば、循環可逆的終結(cyclic reversible termination)アプローチを用いた合成によるシーケンシング(例えば、Illumina、SEQLL、Qiagen)、単一ヌクレオチド付加(single-nucleotide addition)アプローチを用いた合成によるシーケンシング(例えば、Roche-454、Thermo Fisher-Ion Torrent)、ライゲーションによるシーケンシング(例えば、Thermo FisherのSOLiD及びBGI-Complete Genomics)、リアルタイムロングリードシーケンシング(real-time long-read sequencing)(例えば、Pacific Biosciences、Oxford Nanopore Technologies)、合成ロングリードシーケンシング(synthetic long-read sequencing)(例えば、Illumina、10X Genomics、iGenomeX)が挙げられる(例えば、Goodwin S, et al., Nat Rev Genet. 2016, 17(6):333-51を参照)。
【0083】
幾つかの実施形態において、上記分子生物学の定量化方法は、配列特異的増幅を基礎としている。このような増幅ベースのアッセイは、試料(好ましくは、単離されたDNA試料)を、標的核酸中の標的配列に特異的な2つ以上の増幅オリゴヌクレオチドと接触させて、標的核酸配列が試料中に存在する場合に増幅産物を産生することを含む増幅工程を含む。増幅産物は、標的配列に対応するcDNA配列を含むこととなる。適切な増幅方法としては、例えば、レプリカーゼ媒介増幅、リガーゼ連鎖反応(LCR)、鎖置換増幅(SDA)、転写媒介増幅(TMA)、及び定量的PCRを含むポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。
【0084】
1つの特に好ましい定量化方法は、リアルタイムPCRとしても知られる定量的PCR(qPCR)である。定量的PCRは、標的DNA分子を増幅すると同時に定量化するPCRの種類に関連している。その重要な特徴は、反応がリアルタイムで進行すると同時に増幅されたDNAが検出されることである。Applied BiosystemsからのABI Prism 7700 SDS、GeneAmp 5700 SDS、ABI Prism 7900 HT SDS;Bio-RadからのiCycler iQ;CepheidのSmart Cycler;Corbett ResearchからのRotor-Gene;Roche Molecular BiochemicalsからのLightCycler、AgilentからのAriaMx、及びStratageneからのMx4000 Multiplex等の種々の機器が利用可能である。qPCR法は、反応の指数関数的段階の非常に早期にPCR産物の蓄積を測定し、こうしてエンドポイントPCRで発生するPCR増幅効率に関連する定量化の偏りを減らすことによって、リアルタイムでPCR産物の正確な定量化を可能にする。リアルタイムPCRは当該技術分野で既知であるため、本明細書には詳細に記載していない。qPCRについての技術概要及びプロトコルは、例えば、上述の供給業者から入手可能である(例えば、http://www.sigmaaldrich.com/technical-documents/protocols/biology/sybr-green-qpcr.html又はhttp://www.sigmaaldrich.com/life-science/molecular-biology/pcr/quantitative-pcr/qpcr-technical-guide.html)。qPCR法の概要については、Wong ML y Medrano JF, Biotechniques 2005, 39(1):75-85を参照されたい。特定の実施形態において、定量化方法はマルチプレックスqPCRである。
【0085】
qPCRには種々の検出用化学物質が利用可能である。それらは全て上述のqPCR機器で使用され得る。「検出化学」という用語は、リアルタイムPCRで特定のPCR産物の増幅を報告する方法を指す。これらの検出用化学物質は2つの主要な群に分類され得る。1つ目の群にはSYBR Green I及びEvaGreen等の二本鎖DNA挿入分子が含まれ、一方で、2つ目の群には蛍光体標識オリゴヌクレオチドが含まれる。後者は更に、PCR反応で使用される蛍光分子の種類に従って3つの部分群:(i)プライマー-プローブ(Scorpions、Amplifluor(商標)、LUX(商標)、Cyclicons、Angler(商標));(ii)プローブ;加水分解(TaqMan、MGB-TaqMan、Snakeアッセイ)及びハイブリダイゼーション(Hybprobe又はFRET、モレキュラービーコン、HyBeacon(商標)、MGB-Pleiades、MGB-Eclipse、ResonSense(商標)、Yin-Yang又は置換);並びに(iii)核酸の類似体(PNA、LNA(商標)、ZNA(商標)、非天然塩基:Plexor(商標)プライマー、タイニーモレキュラービーコン(Tiny-Molecular Beacon))に分けられている(E. Navarro eta l., Clinica Chimica Acta, Volume 439, 15 January 2015, Pages 231-250を参照)。
【0086】
上記プローブは、加水分解プローブ又はモレキュラービーコン等の二重標識オリゴヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドの5’末端は典型的には、蛍光レポーター分子で標識され、一方で、3’末端はクエンチャー分子で標識される。プローブの配列は、増幅された標的分子内の対象領域に特異的である。より好ましい実施形態において、上記プローブは、配列の長さが5’蛍光体と3’クエンチャーとを蛍光を抑制するのに十分に近接して配置するように設計された加水分解プローブである。qPCRプローブで使用される幾つかのレポーター分子及びクエンチャーは、当該技術分野で既知である。
【0087】
一般に、ヌクレオチド配列の定量化には、プローブ及び/又はプライマー等の特定のオリゴヌクレオチドが使用される。「プライマー及び/又はプローブ」という用語は、特に「複数のプライマー及び/又は複数のプローブ」を含む。本明細書において、どちらの表現も区別なく使用され、例えば、プライマー;プローブ;プライマー及びプローブ;プライマーのペア;並びにプライマーとプローブとのペアを包含する。プライマー及びプローブの設計及び検証は、当該技術分野で既知である。定量的リアルタイムPCR法におけるプライマー及びプローブの設計については、例えば、Rodriguez Aら(Methods Mol Biol., 2015, 1275:31-56)を参照されたい。本発明の方法で使用され得る好ましいプライマー及び/又はプローブは、本明細書において以下に本発明のキットにおいて記載される。
【0088】
好ましくは、本発明の方法において有用なオリゴヌクレオチドは、約5ヌクレオチド~約50ヌクレオチドの長さ、約10ヌクレオチド~約30ヌクレオチドの長さ、又は約20ヌクレオチド~約25ヌクレオチドの長さである。或る特定の実施形態において、標的配列と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、約19ヌクレオチド~約21ヌクレオチドの長さである。特定の実施形態において、上記オリゴヌクレオチドは、本明細書に記載されるように、検出目的のために又はアッセイ性能を高めるように修飾されている。
【0089】
これらのオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドであり得る。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの化学修飾を有し得る。例えば、適切なオリゴヌクレオチドは、1つ以上の「立体配座的に制限された」又は二環式糖ヌクレオシド修飾、例えば「ロックド核酸」から構成され得る。「ロックド核酸」(LNA)は、リボース糖部分の2’炭素及び4’炭素の間に追加の橋架けを含むことで、LNAを含むオリゴヌクレオチドに熱安定性の向上を与える「ロックされた」立体配座がもたらされる修飾リボヌクレオチドである。他の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、糖-リン酸骨格ではなくペプチドベースの骨格を含むペプチド核酸(PNA)を含み得る。オリゴヌクレオチドが含み得る他の化学修飾としては、限定されるものではないが、2’-O-アルキル(例えば、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル)修飾、2’-フルオロ修飾、及び4’-チオ修飾等の糖修飾、並びに1つ以上のホスホロチオエート結合、モルホリノ結合、又はホスホノカルボキシレート結合等の骨格修飾が挙げられる。例えば、これらのオリゴヌクレオチド、特により短い長さ(例えば、15ヌクレオチド未満)のオリゴヌクレオチドは、限定されるものではないが、LNA、二環式ヌクレオシド、ホスホノホルメート、2’O-アルキル等のような1つ以上の親和性を高める修飾を含み得る。幾つかの実施形態において、オリゴヌクレオチドを化学修飾することで、例えば、ヌクレアーゼ分解に対するそれらの耐性を改善し(例えば、末端封鎖によって)、検出リガンド(例えば、フルオレセイン)を保有し、又は固体担体(例えば、ポリ-デオキシアデノシン「テール」)上へのそれらの捕捉を容易にすることができる。
【0090】
「定量化レベル」という用語は、濃度(単位体積当たりのDNA量)、細胞数当たりのDNA量、サイクル閾値(Ct値)、又はそれらのあらゆる数学的変換であり得る。好ましい実施形態において、上記細菌配列の定量化はqPCRによって実施され、定量化レベルはCt値として表現される。Ct値(サイクル閾値)は、蛍光シグナルが閾値を超えるのに必要とされるqPCRサイクルの数として定義される。Ctレベルは、試料中の標的核酸の量に反比例する(つまり、Ctレベルが低いほど、試料中の標的核酸の量は多くなる)。
【0091】
糞便試料中の標的核酸配列(例えば、配列番号1)の存在量の定量化は、絶対的又は相対的であり得る。相対的定量化は、1つ以上の内部参照遺伝子、すなわち、参考株からの16S rRNA遺伝子を基礎とし、例えば、ユニバーサルプライマーを使用した全細菌(真正細菌)の決定、及び真正細菌と比較した標的核酸配列の存在量の表現(例えば、配列番号1/真正細菌比)を基礎とする。絶対的定量化により、DNA標準との比較によって標的分子の正確な数が得られる。
【0092】
特定の実施形態において、任意に、本明細書に記載される実施形態又は特徴の1つ以上と組み合わせて、工程b)における細菌マーカーの定量化は、真正細菌に関連しており、対応する定量化値の比(例えば、Ct値の比)として表現される。真正細菌の定量化に使用され得る特定のオリゴヌクレオチドは、EUBについて表3に列挙されたもののいずれか、及びそれらのいずれかに対して少なくとも80%の同一性を有する配列である。代替的に、以下のオリゴヌクレオチド:
EUB2フォワード(配列番号5):ACTCCTACGGGAGGCAGCAGT
EUB2リバース(配列番号6):GTATTACCGCGGCTGCTGGCAC
のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列も使用され得る。
【0093】
本発明の方法の特定の実施形態において、上記細菌配列の定量化の前に、糞便試料からDNAを抽出する。糞便試料からの幾つかのDNA抽出方法が知られており、これらの全ての方法は、化学的破壊若しくは機械的破壊、界面活性剤を使用した溶解、又はこれらのアプローチの組合せに依存する(Kennedy A. et al., PLoS One, 2014;9(2):e88982)。糞便試料中の細菌DNAを抽出する方法は、例えば、M Corist et al., Journal of Microbiological Methods, 2002; 50(2):131-139、Whitney D et al., Journal of Molecular Diagnostics, American Society for Investigative Pathology, 2004;6(4):386-395、及び国際公開第2003/068788号から知られている。
【0094】
好ましい方法は、高速ビーズビーティング抽出等の機械的破壊、化学的溶解、及び好ましくは、市販のDNA抽出キット「MobioPowerSoil(商標)DNA extraction procedure」(Mo-Bio Laboratories Inc.)、土壌処理用のFastDNA(商標)SPINキット(MP biomedicals)、及びNucleoSpin(商標)Soil(Macherey-Nagel Gmbh & Co.KG)に含まれるようなシリカ膜カラムを使用した最終的な精製工程の組合せを使用する。糞便試料からのDNA抽出物中にビリルビン、胆汁酸塩、及び複合炭水化物等のPCR阻害剤が存在することが、糞便からのDNA抽出物中のDNAバイオマーカーを決定する際に直面する困難の1つである(Fleckna et al., Mol Cell Probes, 2007;21(4):282-7)。好ましいDNA抽出方法は、5%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、更により好ましくは0.5%未満、例えば0.25%未満、0.1%未満、0.05%未満、又は0.01%未満のような少量のPCR阻害剤を有する糞便抽出物をもたらす方法である。
【0095】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、
c)b)で決定された細菌マーカーのレベルから組合せスコア(combined score)を計算することと、
d)FOBT陽性被験体を、c)で得られた組合せスコアに従って、AN、AA、及び/又はCRCを有する又はそれらの高まったリスクを表すとして分類することと、
を更に含む。
【0096】
工程(c)の組合せスコアは、例えば、所与の数学的アルゴリズムに従って得られた値であり、ここで、工程b)で決定された細菌マーカーのそれぞれの定量化値が上記数学的アルゴリズムの変数である。好ましくは、上記細菌マーカーは、PTST、BCTF、及びBCTTである。
【0097】
特定の実施形態において、組合せスコアを計算する場合に、組合せスコアは、試料中のGMLL、PTST、又はBCTFのいずれかの絶対量又は相対量に比例し、かつBCTTの絶対量又は相対量に反比例し、ここで、このスコアが高いほど、CRC、AA、及び/又はANを有する可能性が高くなる。言い換えれば、高いスコアは疾患が存在することの指標である。
【0098】
例えば、上記組合せスコアは、各マーカーの回帰分析において、細菌マーカー値を変数として使用して得られた標準化されたベータ係数の積の和として計算され得る。特定の実施形態において、上記ベータ係数は、マーカーのGMLL、PTST、及び/又はBCTFについては正であり、BCTTについては負である。正の符号は、個々のマーカーの量の増加がCRC、AA、及び/又はANを有すること又はそれらを有する可能性がより高いことに関連していることを示し、負の符号は、個々のマーカーの量の減少がCRC、AA、及び/又はANを有すること又はそれを有する可能性がより高いことに関連していることを示す。
【0099】
典型的には、工程d)において、上記方法は、被験体の試料における組合せスコアと、参照値(例えば、参照組合せスコア)とを比較することを含み、上記参照値(例えば、参照組合せスコア)に対する被験体の試料における組合せスコアの増加は、AN、AA、及び/又はCRCの指標である。
【0100】
本明細書において使用される「参照組合せスコア」という用語は、所与の数学的アルゴリズムに従って得られた参照値であり、ここで、本発明の方法で使用される細菌マーカーのそれぞれの参照発現値が上記数学的アルゴリズムの変数である。
【0101】
本明細書において使用される「参照値」という用語は、被験体から収集された試料から得られた値又はデータを評価するのに参照として使用される予め決められた基準に関連している。この「参照値」は、「カットオフ値」又は「閾値」とも呼称され得る。
【0102】
参照値又は参照レベルは、絶対値、相対値、上限若しくは下限を有する値、値の範囲、代表値、中央値、平均値、zスコア値(例えば、平均値+又は-1SD)、三分位値、又は特定のコントロール値若しくはベースライン値と比較した値であり得る。特定の実施形態において、任意に、上記又は下記の実施形態又は特徴の1つ以上と組み合わせて、上記参照値は平均値又は三分位値である。
【0103】
さらに、発現の閾値又はカットオフレベルを確立する様々な統計的方法及び数学的方法が従来技術において知られていることに更に留意する。特定のバイオマーカーの閾値又はカットオフ発現レベルは、例えば、受信者動作特性(ROC)プロットからのデータに基づいて選択され得る。当業者は、例えば特定のバイオマーカー又はそれらの組合せについてのROCプロットに沿って動かすことによって、これらの閾値又はカットオフ発現レベルを変化させて種々の感度又は特異度の値を得ることにより、全体的なアッセイ性能に影響を与えることができることを理解するであろう。
【0104】
参照値は、個々の試料の値を基礎とし得るが、一般に、検査される試料を含む又はそれを除く多数の試料を基礎としている。例えば、この参照値は、本明細書において上記に規定されたスクリーニング集団の1つ(例えば、一般集団の無症状の成人、50歳を超える無症状の成人、又は1つ以上のリスク因子を有する無症状の成人)から、又はCRCに関連する症状を有する個体の集団から導き出され得る。また、この参照値は、対応する癌患者についての実際の臨床転帰に関連する履歴情報が利用可能な参照AN患者、参照AA患者、及び/又は参照CRC患者の集団からの一群の組織試料から導き出され得る。
【0105】
代替的には、本発明の方法による参照値を、CRC又は進行腺腫を有さず、胃腸疾患を有しない1人以上の被験体(すなわち、健康なコントロール被験体)、進行腺腫を患う被験体、無症状等の早期段階(前臨床段階)のCRCを患う被験体、又はCRC及び/又は進行腺腫を有すると診断されたが、より早期の時点で診断された同じ被験体から得ることができる。
【0106】
特定の実施形態において、本発明の方法は、AN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング又は診断する方法であり、参照値は、AN、AA、及び/又はCRCを有しない被験体、又は胃腸疾患を有しない被験体から得られる。別の実施形態において、本発明の方法はスクリーニングの方法であり、上記参照値は本明細書において規定されるスクリーニング集団から得られる。更なる実施形態において、本発明の方法は診断の方法であり、上記参照値はCRCに関連する症状を有する個体から得られる。
【0107】
また更なる特定の実施形態において、本発明の方法は、AN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング又は診断する方法であり、参照値は非進行腺腫を患う被験体から得られる。これは、例えば、非進行腺腫(NAA)に対するAN、AA、及び/又はCRCの間の鑑別診断が望まれる場合に当てはまり得る。
【0108】
追加の特定の実施形態において、本発明の方法は、AN、AA、及び/又はCRCをモニタリングする方法であり、参照値は、AN、AA、及び/又はCRCを有すると診断されたが、より早期の時点で診断された同じ被験体から得られる。
【0109】
他の実施形態において、本発明の方法は、本明細書において上記に記載された工程a)及び工程b)を含み得て、
e)糞便試料中のGMLL、PTST、BCTF、及び/又はBCTTのいずれかの量と、対応する参照値とを比較すること、
を更に含み得て、ここで、
f)対応する参照値に対するFOBT陽性被験体の試料におけるGMLL、PTST、及び/又はBCTFの量の増加、並びにBCTTの量の減少が、AN、AA、及び/又はCRCの指標である。
【0110】
好ましくは、対応する参照値に対するFOBT陽性被験体の試料におけるPTST及びBCTFの量の増加、並びにBCTTの量の減少が、AN、AA、及び/又はCRCの指標である。
【0111】
本発明の方法において、組合せスコア(すなわち細菌マーカー量)は、上記組合せスコア(すなわち細菌マーカー量)が参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも低い場合に「減少」とみなされる。好ましくは、組合せスコアは、これが参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上低い場合に、参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも低いとみなされる。
【0112】
同様に、本発明の方法の文脈において、組合せスコア(すなわち細菌マーカー量)は、上記組合せスコアが参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも高い場合に「増加」とみなされる。好ましくは、組合せスコア(すなわち細菌マーカー量)は、これが参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%、少なくとも140%、少なくとも150%以上高い場合に、参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも高いとみなされる。
【0113】
代替的に又は追加的に、本明細書に記載される参照組合せスコア(すなわち参照値)よりも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、又は20倍を超えるレベルの偏差(すなわち、増加又は減少)を有する被験体。
【0114】
本発明の方法は、当業者により理解されているように、分析された試料の100%で正しいとは主張していない。しかしながら、分析された試料の統計的に有意な量が正しく分類されていることが必要である。統計的に有意である量は、統計的検定によって得られた種々の統計的有意性の尺度を使用することによって当業者によって確立され得て、上記統計的有意性の尺度の例示的で非限定的な例としては、信頼区間の決定、p値の決定等が挙げられる。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1未満、0.05未満、0.01未満、0.005未満、又は0.0001未満である。本発明の教示により、好ましくは、分析される決定群又は決定集団の被験体の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%が正しく分類され得る。
【0115】
妥当性研究は、標的状態を特定する能力についての提案された(インデックス)検査と参照基準との間の一致を取り扱う(Florkowski M. C., Clin Biochem Rev. 2008, 29 (Suppl 1): 第83頁~第87頁を参照)。感度、特異度、精度、正の尤度比、負の尤度比、陽性予測値、及び陰性予測値は、検査性能を評価するのに規定され得る統計値である。頭字語の定義及び更なる詳細を以下の表1に示す。
【0116】
【0117】
検査は通常、臨床診療における検査の目標用途に応じて、望ましい特異度及び感度の点で較正される。高い感度は、高い陰性予測値に対応し、一般に、典型的には確認検査が続くスクリーニング検査等の「除外」検査のために望ましい特性とみなされる。高い特異度は、高い陽性予測値に対応し、一般に、比較診断検査等の「確定」検査のために望ましい特性とみなされる。
【0118】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、アッセイされた群若しくは集団の少なくとも60%において、又は好ましくはアッセイされた群若しくは集団の少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%において、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の感度、特異度、及び/又は精度の値を有する。
【0119】
他の遺伝子若しくは細菌マーカー、生化学的パラメーター、及び/又は患者の臨床的特質(例えば、年齢、性別、喫煙、及び/又は他のリスク因子)を更に考慮することによって本発明の方法の精度を更に高めることができることに更に留意する。これらの他のマーカー、パラメーター、及び/又は特質の決定は、本明細書に記載される本発明の方法の工程のいずれか又は全てに対して逐次的又はそれらと同時であり得る。
【0120】
特定の実施形態において、任意に、本明細書に記載される特徴又は実施形態の1つ以上と組み合わせて、本発明の方法は、B10、B46、B48、ロゼブリア・インテスティナリス(RSBI)、コリンセラ・インテスティナリス(CINT)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Duncan et al., Int. J. Syst. Evol. Microbiol 2002, 52:2141-2146)及び/又はその系統群のいずれか(国際公開第2017/025617号、及びLopez-Siles et al. Appl Environ Microbiol. 2012, 78:420-428を参照)並びにエシェリキア・コリ(Escherichia coli)からなる群より選択される1つ以上の細菌マーカーを定量化することを更に含む。
【0121】
B10は、培養されていない細菌分離株DGGEゲルバンドEub_10 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列(uncultured bacterium isolate DGGE gel band Eub_10 16S ribosomal RNA gene, partial sequence)(GenBank:GQ411118.1)に対応する配列番号7の配列(以下に示される)を有する。特定の実施形態において、配列番号7に特異的なオリゴヌクレオチドは、B10の定量化に使用され得る。
【0122】
1 cttcggattg taaactcctg ttgttgagga gataatgacg gtactcaaca aggtaagtga
61 cggctaacta cgtgccagca gccgcggtaa aacgtaggtc acaagcgttg tccggaatta
121 ctgggtgtaa agggagcgca ggcgggaaga caagttggaa gtgaaatcca tgggctcaac
181 ccatgaactg ctttcaaaac tgtttttctt gagtagtgca caggtaggcg gaattcccgg
241 tgtagcggtg gaatgcgtag atatcgggag gaacaccagt ggcgaaggcg gcctactggg
301 caccaactga cgctgaggct cgaaagtgtg ggtagcaaac aggattagat accctggtag
361 tccacactgt aaacgatgat tactaggtgt tggaggattg accccttcag tgccgcagtt
421 aacacaataa gtaatccacc tggggagtac gaccgcaagg ttgaaactca aaggaattga
481 cggac
【0123】
B46は、培養されていない細菌分離株DGGEゲルバンドEub_46 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank:GQ411150.1)に対応する配列番号8の配列(以下に示される)を有する。特定の実施形態において、配列番号8に特異的なオリゴヌクレオチドは、B46の定量化に使用され得る。
【0124】
1 gtaacatttc tgtaacaaga catacagcag tttctcagag ttcccaaact caaaggaatt
61 gacggaagcc gcggttccac gtaagtcaca agcgttgtcc ggaattactg ggtgtaaagg
121 gagcgcaggc gggaagacaa gttggaagtg aaatccatgg gctcaaccca taaactgctt
181 tcctaactgt ttttcttgag tagtgcacag gtaggcggaa ttcccggtgt agcggtggaa
241 tgcctagata tcgggaggaa caccattggc gaaggcggcc tactggactg caactgacgc
301 tgaggctcga aagtgtgggt agcaaacagg attagatacc ctggtagtcc actccgtaaa
361 ccatgattac tacgtgttgg aggattgacc ccttctgtgc cgcagataac acaataagta
421 atccacctgg ggagtacgac cgcccggttg agactcacag gaattgacgg actc
【0125】
B48は、培養されていない細菌分離株DGGEゲルバンドEub_48 16SリボソームRNA遺伝子、部分配列(GenBank:GQ411152.1)に対応する配列番号9の配列(以下に示される)を有する。特定の実施形態において、配列番号9に特異的なオリゴヌクレオチドは、B48の定量化に使用され得る。
【0126】
1 tctcttacgg ggagcagcag tggggaatat tgcacaatgg gggaaaccct gatgcagcga
61 cgccgcgtga gcgatgaagt atttcggtat gtaaagctct atcagcaggg aagaaaatga
121 cggtacctga ctaagaagcc ccggctaaat acgtgccagc agccgcggta atacgtatgg
181 tgcaagcgtt atccggattt actgggtgta aagggagcgt agacggagtg gcaagtctga
241 tgtgaaaacc cggggctcaa ccccgggact gcattggaaa ctgtgcatct agagtgtcgg
301 agaggtaagc ggaattccta gtgtagcggt gaaatgcgta gatattagga ggaacaccag
361 tggcgaaggc ggcttactgg acgataactg acgctgaggc tcgaaagcgt ggggagcaaa
421 caggattaga taccctggta gtccacgccg taaacgatga ctactaggtg tcggggagca
481 cagctcttcg gtgccgcagc aaacgcaata agtattccac ctggggagta cgttcgcaag
541 aatgaaactc acagaatttg acggag
【0127】
RSBIの参考株は、ロゼブリア・インテスティナリスL1-82株(細菌界;フィルミクテス門;クロストリジウム綱;クロストリジウム目;ラクノスピラ科;ロゼブリア属)であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:LR027880.1に示されている。特定の実施形態において、配列番号10に特異的なオリゴヌクレオチドは、RSBIの定量化に使用され得る。配列番号10は、GenBankアクセス番号LR027880.1の領域599208~600101に相当する。
【0128】
1 atgtcttttt caagtgaagt gaaacaggag ttagcaaagc agagtggaaa gagcagacat
61 tgtcagatcg ctgaacttgc ggcgttagtt gcttttgacg gaaagcgtca gcagctgatc
121 ggggatgcgg gagatgtgct ggattcggaa aatccgcttc tgcaggaaaa atatggactg
181 ttactggcac agctgttcca tgttaatata gaagagatag atacattgcc accggaacgc
241 attcttgaga caatcaagat gtggaatcag tctttaaggt gtgcagatat cacagagacg
301 gtaaatggta ttttactgca gcagacatgt tgcaggcggg catatatccg gggagcattt
361 ttagcaggtg gatcgatcag tgatccgaat aagtcttatc attttgagat tgtctgccgg
421 gaaattgcgc aggcgaaaca gcttcaggat gcaatcaaca gttttgagat ggaagcaaag
481 atcgtagaac gaaagaaaca ccaggtcgta tatttaaagg aaggtgccca gatcgtggat
541 atgttaaata tcatggaagc acatgtggca ctgatgaatc ttgaaaatgt gcgtatctta
601 aaagaaatga gaaattctgt caaccgaaag gtaaattgtg agacggcaaa tatcagcaag
661 actgtggcgg cagccgtaaa acagcttggc gatattgaat atattaaaca gaatgcaggc
721 ttagacagtc tgcctgaaaa cctaaaagaa atggcgttgc tgcggttaga gtatccggat
781 acaccgctta aggaactggg aacatatctc gatcctccgg tcggaaaatc gggagtgaac
841 cacaggctgc gcaggatcag tgagattgca gatgagctgc gtgaaaaaga ataa
【0129】
CINT(細菌界;アクチノバクテリア門;コリオバクテリウム綱;コリオバクテリウム目;コリオバクテリウム科;コリンセラ属)の参考株は、コリンセラ・インテスティナリスDSM 13280株であり、そのゲノム配列は、NCBI参照配列:GG692711.1を有する。特定の実施形態において、配列番号11に特異的なオリゴヌクレオチドは、CINTの定量化に使用され得る。配列番号11は、NCBI参照配列:GG692711.1の領域:297314~298120に相当する。
【0130】
1 atgtccggac actctaaatg ggcaactacc aagcaccgca agggtgcgca ggacgctaag
61 cgttccgccc tgttctccaa gctgagccgt aacatcaccg tcgcggcccg tcttggcaac
121 gaccccaacc cggacaacaa cgcctccctc gccgctgccg tggccaaggc caaggctcag
181 tccatgccca aggacaagat caaggccgcc atcgacaagg ccttcggttc cggcgccgac
241 gccgccgtgt acgagaacat cgtgtacgag ggctacggcc cggccggtgt tgccgtgtac
301 gtcgagtgcc tgaccgacaa ccgcaaccgc accgccgccg atgtccgctc cgccttctcc
361 cacgctggcg gcaacctggg caccaccggc tccgttgcct tccagttcga gcgcaagggc
421 caggtcgtgg tctccaagca gatcgtcgac ccgaacgaca agaaggagaa cctcatggcc
481 aacggcgctg ccggcgatga ggaagagttc atgatggtca tcgccgaggc cggtggcgac
541 gactacgagg acgccggtga cgagtgggtc gtgtggaccg ccgcgggcga cctcatggcc
601 gtgtccaagg gcatcgaggc tcagggcatc gaggtcaagg gtgccgagct caccatggtc
661 ccgaccaccc cgacggccgt ctccggcgcc gacgccaaga aggtccagcg cctcatcgac
721 cgcctcgagg acctggacga cgtccaggac gtgtactcca ccatggacat gaccgacgag
781 gtcatcgctg ccctcgaaga ggagtaa
【0131】
フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(細菌界;フィルミクテス門;クロストリジウム綱;クロストリジウム目;ルミノコッカス科;フィーカリバクテリウム属)の参考株は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイA2-165(GenBankアクセス番号:AJ270469.2)であり、これはその系統群II(PHGII)の代表的な株でもある。フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイM21/2(GenBankアクセス番号:DS483503.1)は、その系統群I(PHGI)の代表的な株である。特定の実施形態において、配列番号12に特異的なオリゴヌクレオチドは、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイの定量化に使用され得る。配列番号12(以下に示される)は、GenBankアクセス番号:AJ270469.2に相当する。
【0132】
1 gttgatcctg gctcaggacg aacgctggcg gcgcgcctaa cacatgcaag tcgaacgagc
61 gagagagagc ttgctttctc gagcgagtgg cgaacgggtg agtaacgcgt gaggaacctg
121 cctcaaagag ggggacaaca gttggaaacg actgctaata ccgcataagc ccacagctcg
181 gcatcgagca gagggaaaag gagcaatccg ctttgagatg gcctcgcgtc cgattagcta
241 gttggtgagg taatggccca ccaaggcaac gatcggtagc cggactgaga ggttgaacgg
301 ccacattggg actgagacac ggcccagact cctacgggag gcagcagtgg ggaatattgc
361 acaatggggg aaaccctgat gcagcgacgc cgcgtggagg aagaaggtct tcggattgta
421 aactcctgtt gttgaggaag ataatgacgg tactcaacaa ggaagtgacg gctaactacg
481 tgccagcagc cgcggtaaaa cgtaggtcac aagcgttgtc cggaattact gggtgtaaag
541 ggagcgcagg cgggaagaca agttggaagt gaaatctatg ggctcaaccc ataaactgct
601 ttcaaaactg tttttcttga gtagtgcaga ggtaggcgga attcccggtg tagcggtgga
661 atgcgtagat atcgggagga acaccagtgg cgaaggcggc ctactgggca ccaactgacg
721 ctgaggctcg aaagtgtggg tagcaaacag gattagatac cctggtagtc cacaccgtaa
781 acgatgatta ctaggtgttg gaggattgac cccttcagtg ccgcagttaa cacaataagt
841 aatccacctg gggagtacga ccgcaaggtt gaaactcaaa ggaattgacg ggggcccgca
901 caagcagtgg agtatgtggt ttaattcgac gcaacgcgaa gaaccttacc aagtcttgac
961 atcctgcgac gatgctggaa acagtatttt ccttcgggac gcagagacag gtggtgcatg
1021 gttgtcgtca gctcgtgtcg tgagatgttg ggttaagtcc cgcaacgagc gcaaccctta
1081 ctgtcagtta ctacgcaaga ggactctggc aggactgccg ttgacaaaac ggaggaaggt
1141 ggggatgacg tcaaatcatc atgcccttta tgacttgggc tacacacgta ctacaatggc
1201 gttaaacaaa gagaagcaag accgcgaggt ggagcaaaac tcagaaacaa cgtcccagtt
1261 cggactgcag gctgcaactc gcctgcacga agtcggaatt gctagtaatc gtggatcagc
1321 atgccacggt gaatacgttc ccgggccttg tacacaccgc ccgtcacacc atgagagccg
1381 gggggacccg aagtcggtag tctaaccgca aggaggacgc cgccgaaggt aaaactggtg
1441 attggggtga agtcgtaaca aggtac
【0133】
エシェリキア・コリ(細菌界;プロテオバクテリア門;ガンマプロテオバクテリア綱;エンテロバクター目;エンテロバクター科;エシェリキア属)の参考株は、エシェリキア・コリK-12株MG1655亜株であり、そのゲノム配列は、GenBankアクセス番号:CP032667.1を有する。特定の実施形態において、配列番号13(以下に示される)に特異的なオリゴヌクレオチドは、エシェリキア・コリの定量化に使用され得る。
【0134】
1 cgccctcccg aaggttaagc tacctacttc ttttgcaacc cactcccatg gtgtgacggg
61 cggtgtgtac aaggcccggg aacgtattca ccgtggcatt ctgatccacg attactagcg
121 attccgactt catggagtcg agttgcagac tccaatccgg actacgacgc actttatgag
181 gtccgcttgc tctcgcgagg tcgcttctct ttgtatgcgc cattgtagca cgtgtgtagc
241 cctggtcgta agggccatga tgacttgacg tcatccccac cttcctccag tttatcactg
301 gcagtctcct ttgagttccc ggccggaccg ctggcaacaa aggataaggg ttgcgctcgt
361 tgcgggactt aacccaacat ttcacaacac gagctgacga cagccatgca gcacctgtct
421 cacggttccc gaaggcacat tctcatctct gaaaacttcc gtggatgtca agaccaggta
481 aggttcttcg cgttgcatcg aattaaacca catgctccac cgcttgtgcg ggcccccgtc
541 aattcatttg agttttaacc ttgcggccgt actccccagg cggtcgactt aacgcgttag
601 ctccggaagc cacgcctcaa gggcacaacc tccaagtcga catcgtttac ggcgtggact
661 accagggtat ctaatcctgt ttgctcccca cgctttcgca cctgagcgtc agtcttcgtc
721 cagggggccg ccttcgccac cggtattcct ccagatctct acgcatttca ccgctacacc
781 tggaattcta cccccctcta cgagactcaa gcttgccagt atcagatgca gttcccaggt
841 tgagcccggg gatttcacat ctgacttaac aaaccgcctg cgtgcgcttt acgcccagta
901 attccgatta acgcttgcac cctccgtatt accgcggctg ctggcacgga gttagccggt
961 gcttcttctg cgggtaacgt caatgagcaa aggtattaac tttactccct tcctccccgc
1021 tgaaagtact ttacaacccg aaggccttct tcatacacgc ggcatggctg catcaggctt
1081 gcgcccattg tgcaatattc cccactgctg cctcccgtag gagtctggac cgtgtctcag
1141 ttccagtgtg gctggtcatc ctctcagacc agctagggat cgtcgcctag gtgagccgtt
1201 accccaccta ctagctaatc ccatctgggc acatccgatg gcaagaggcc cgaaggtccc
1261 cctctttggt cttgcgacgt tatgcggtat tagctaccgt ttccagtagt tatccccctc
1321 catcaggcag tttcccagac attactcacc cgtccgccac tcgtcagcaa agaagcaagc
1381 ttcttcctgt taccgttcga cttgcatgtg ttaggcctgc cgccagcgtt caatctgagc
1441 catgatcaaa ct
【0135】
好ましい実施形態において、表3に列挙される特定のオリゴヌクレオチドのいずれか、及びそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列は、それぞれB10、B46、B48、CINT、又はRSBIの定量化に使用され得る。また、好ましい実施形態において、国際公開第2017/025617号の表2に列挙される特定のオリゴヌクレオチドのいずれか、及びそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列は、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、その系統群(すなわち、PHGI及びPHGII)、及びエシェリキア・コリの定量化に使用され得る。
【0136】
本発明の方法、又はその工程のいずれかは、コンピューターによって実施され得る。本明細書において使用されるコンピューターという用語は、あらゆるプログラム可能な装置又はシステムを指し得る。特定の実施形態において、任意に、本明細書に記載される特徴又は実施形態のいずれかと組み合わせて、工程c)の組合せスコアはコンピューターを使用して計算され、及び/又は工程d)の選択、分類、及び/又は決定はコンピューターを使用して行われる。
【0137】
したがって、本発明の更なる態様は、コンピューター実装方法であって、該方法が、本明細書に開示される方法のいずれか、又はそれらの任意の組合せである、方法に関する。
【0138】
本発明の方法のいずれかを実施することができる、又はこれらの方法のいずれか若しくはそれらの任意の組合せを実施するのに使用されるあらゆるコンピュータープログラムも本発明の一部を形成することに留意する。
【0139】
このコンピュータープログラムは、典型的には、該製品がコンピューター上で実行される場合に、被験体の1つ以上の生体試料からの(例えば、本明細書に記載される1つ以上の標的マーカーのレベルから得られる)組合せスコアと、参照値(例えば、参照組合せ値)とを比較する工程と、上記被験体の診断を決定する工程とを実施するソフトウェアのコード部分を含むデジタルコンピューターの内部メモリに直接的にロード可能である。
【0140】
本発明の方法のいずれか若しくはそれらの任意の組合せの工程を実施する手段を含む、又は本発明の方法のいずれか若しくはそれらの任意の組合せを実施することができる若しくは実施するためのコンピュータープログラムを有するあらゆるデバイス又は装置は、本明細書の一部を形成するものとして含まれることも留意する。
【0141】
本発明の方法はまた、該方法の結果をデータ担体に格納することを含み得て、好ましくは、上記データ担体はコンピューター可読媒体である。本発明は更に、本発明のコンピュータープログラム又は本発明の方法のいずれかの結果が格納されたコンピューター可読記憶媒体に関する。
【0142】
本明細書で使用される「コンピューター可読媒体」は、本発明の方法の決定結果を含み、格納し、通信し、伝達し、又は転送することができるあらゆる装置であり得る。この媒体は、電子システム、磁気システム、光学システム、電磁システム、赤外線システム、若しくは半導体システム(すなわち装置又はデバイス)、又は伝達媒体であり得る。
【0143】
治療方法及び関連する医療用途
更なる態様において、本発明は、AN、AA、及び/又はCRCを有する被験体を治療する方法であって、上記被験体が、本明細書で上記に記載されるようにスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法によって選択されており、かつ上記方法が、被験体に抗癌療法薬を投与することを更に含む、方法を提供する。
【0144】
関連する態様において、本発明はまた、本明細書で上記に記載されるいずれかの方法であって、上記患者に治療的有効量の抗癌療法薬を投与する工程を更に含む、方法を提供する。
【0145】
別の態様において、本発明は、癌患者を治療する方法で使用される抗癌療法薬であって、上記癌患者が、本明細書に記載されるスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングの方法によって選択されている、抗癌療法薬に関する。
【0146】
追加の態様において、本発明はまた、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、二重造影バリウム注腸、及びコンピューター断層撮影(CT)コロノグラフィーからなる群より選択される探索的検査を実施する、好ましくは結腸内視鏡検査を実施する被験体を選択する方法であって、上記被験体が、本明細書に記載されるスクリーニング、診断、又はモニタリングの方法によって選択されている、方法に関する。
【0147】
また更なる態様において、本発明は、被験体において探索的検査を実施する方法であって、上記被験体が、本明細書に記載されるスクリーニング、診断、又はモニタリングの方法によって選択されており、上記方法が、被験体に探索的検査を実施することを更に含み、該検査が、結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、二重造影バリウム注腸、及びコンピューター断層撮影(CT)コロノグラフィーからなる群より選択され、好ましくは結腸内視鏡検査である、方法に関する。
【0148】
キット及び本発明の方法におけるキットの使用
別の態様において、本発明は、GMLL、PTST、BCTF、又はBCTTのいずれかを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
i.GMLLゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号1に特異的なオリゴヌクレオチド、
ii.PTSTゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチド、
iii.BCTFゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチド、
iv.BCTTゲノムに特異的なオリゴヌクレオチド、好ましくは配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチド、及び、
v.任意に、本明細書で上記に規定された真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド、
のうちの1つ以上を含む、キットを提供する。
【0149】
キットは、任意に、被験体から単離された糞便試料中の上記細菌マーカーのレベルを決定する際の上記試薬の使用についての使用説明書を更に含む。
【0150】
「キット」又は「検査キット」という用語は、分析に必要とされる試薬及びアジュバントの組合せを意味する。検査キットはほとんどの場合に幾つかの単位からなるが、一体式の分析要素も利用可能であり、これも同様に検査キットとみなされなければならない。
【0151】
好ましい実施形態において、上記キットは、PTST、BCTF、及びBCTTを定量化するのに適しており、上記キットは、本明細書で上記に規定される試薬ii)、試薬iii)、及び試薬iv)を含む。好ましくは、キットは、上記で規定された試薬v)を更に含む。
【0152】
特定の実施形態において、任意に、本明細書に記載される特徴又は実施形態の1つ以上と組み合わせて、
配列番号1に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号22若しくは配列番号23のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号24若しくは配列番号25のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号26若しくは配列番号27のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号30若しくは配列番号31のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号14、若しくは配列番号15のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである。
【0153】
好ましい実施形態は、PTST、BCTF、及びBCTTを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
配列番号24若しくは配列番号25のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、
配列番号26若しくは配列番号27のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、及び、
配列番号30若しくは配列番号31のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド、及び、
任意に、真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号5、配列番号6、配列番号14、若しくは配列番号15のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチド)、
を含み、
任意に、被験体から単離された糞便試料中の上記細菌マーカーのレベルを決定する際の上記試薬の使用についての使用説明書を更に含む、キットに関する。
【0154】
上記特定のオリゴヌクレオチドは、本明細書で上記に記載される通りである。好ましくは、上記オリゴヌクレオチドは、プライマー及び/又はプローブである。
【0155】
更なる好ましい実施形態は、PTST、BCTF、及びBCTTを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
配列番号24を含む若しくはそれのみからなるプライマー、配列番号25を含む若しくはそれのみからなるプライマー、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはそれのみからなるプライマー、
配列番号26を含む若しくはそれのみからなるプライマー、配列番号27を含む若しくはそれのみからなるプライマー、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはそれのみからなるプライマー、及び、
配列番号30を含む若しくはそれのみからなるプライマー、配列番号31を含む若しくはそれのみからなるプライマー、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはそれのみからなるプライマー、並びに、
任意に、真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド(好ましくは、配列番号5を含む若しくはそれのみからなるプライマー、配列番号6を含む若しくはそれのみからなるプライマー、配列番号14を含む若しくはそれのみからなるプライマー、又は配列番号15を含む若しくはそれのみからなるプライマー、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む若しくはそれのみからなるプライマー)、
を含み、
任意に、被験体から単離された糞便試料中の上記細菌マーカーのレベルを決定する際の上記試薬の使用についての使用説明書を更に含む、キットに関する。
【0156】
好ましい実施形態において、少なくとも80%の同一性を有する上記配列は、参照配列と少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列である。2つの配列間の同一性のパーセンテージは、当該技術分野で既知のあらゆる手段、例えば、ニードルマン及びブンシュのグローバルアラインメントアルゴリズムによって決定され得る。
【0157】
さらに、上記キットは、本明細書で上記に記載される他の遺伝子又は細菌マーカーに特異的なオリゴヌクレオチドを更に含み得る。例えば、ここで、上記他の細菌マーカーは、B10、B46、B48、CINT、RSBI、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ、F.プラウスニッツィイのPHGI、F.プラウスニッツィイのPHGII、及びE.コリからなる群より選択される。
【0158】
上記キットは、追加の試薬を含み得る。特定の実施形態において、上記キットは、典型的には、Taq DNAポリメラーゼ(例えば、ホットスタートTaq DNAポリメラーゼ)等のDNAポリメラーゼ、バッファー、マグネシウム、dNTP、及び任意に他の作用物質(例えば、ゼラチン及びウシ血清アルブミン等の安定剤)を含むリアルタイムPCR反応を実施する試薬を含む。さらに、リアルタイムPCR反応混合物はまた、本明細書で上記に記載される増幅産物をリアルタイム検出及び定量化する試薬を含む。
【0159】
任意に、キットはまた、DNA抽出用の適切なチューブ及び溶剤、例えばクロロホルム/メタノール溶液を含み得る。さらに、キットはまた、糞便試料を収集する容器、及び任意に試料保存に適切な任意のバッファー及び/又は添加剤、例えば、実施例で使用されるFIT収集チューブを含み得る。本発明のキットの他の好ましい特徴及び実施形態は、本明細書全体を通して本明細書に記載される通りである。
【0160】
更なる態様において、本発明はまた、本明細書に記載されるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法で使用される本明細書に記載されるキットを提供する。
【0161】
本明細書に記載される任意の特徴は、本発明の任意の方法、医学的使用、キット及びキットの使用の実施形態のいずれかと任意に組み合わせられてもよいことが企図され、本明細書で述べられる任意の実施形態を、これらのいずれに関して実施することができる。本明細書に記載される特定の実施形態は、本発明の限定としてではなく、実例として示されることが理解される。
【0162】
全ての出版物及び特許出願は、各個々の出版物又は特許出願が引用することで本明細書の一部をなすことが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、引用することで本明細書の一部をなす。
【0163】
数量を特定していない語(the word "a" or "an")の使用は「1つ」を意味する場合があるが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。「別の」という用語の使用は、1つ以上を指す場合もある。特許請求の範囲における「又は」の用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するため使用される。
【0164】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される「含む、含んでいる(comprising)(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の「含む」の任意の形態)、「有する、有している(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」等の「有する」の任意の形態)、「含む、含んでいる(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」等の「含む」の任意の形態)、又は「含有する、含有している(containing)」(及び「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」等の「含む」の任意の形態)の単語は、包括的又は無制限であり、追加の引用されていない要素又は方法の工程を除外しない。また、「含む(comprises)」という用語は、「のみからなる(consists of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」という用語も包含し、明示的に開示する。本明細書で使用される「から本質的になる」という語句は、特許請求の範囲を明示される材料又は工程、及び特許請求の範囲に記載される発明の基本的及び新規の特質(複数の場合もある)に実質的に影響しないものに限定する。本明細書で使用される場合に、「のみからなる」という語句は、例えば要素又は制限に通常関連する不純物を除き、特許請求の範囲で明示されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。
【0165】
本明細書で使用される「又はそれらの組合せ」という用語は、その用語に先立って列挙される項目の全ての順列及び組合せを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ」には、A、B、C、AB、AC、BC、又はABCの少なくとも1つが含まれ、特定の文脈で順序が重要な場合は、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABも含まれることを意図する。この例を続けると、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABB等の1つ以上の項目又は用語の繰り返しを含む組合せが明示的に含まれる。当業者は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、通常、任意の組合せにおける項目又は用語の数に制限がないことを理解する。
【0166】
本明細書で使用される「約(about)」、「程度(around)」、「およそ(approximately)」等の限定されない近似語は、そのように修飾される場合、必ずしも絶対的又は完全であると理解されるものではなく、その状態を存在すると指定する根拠を与えるように十分近いと当業者にみなされる状態を指す。説明が変化し得る程度はどの程度の変更を行うことができるかに依存し、当業者に、修飾された特徴が必要な特質及び修飾されていない特徴の能力をまだ持っていると認識させる。一般的に、前述の記述を条件として、「約」等の近似語によって修飾される本明細書の数値は、表示される値から±1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%異なってもよい。したがって、「約」という用語は、その値の表示値±5%、好ましくはその値の表示値±2%を意味し得て、最も好ましくは「約」という用語は表示値(±0%)を正確に意味する。
【0167】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たすものであり、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0168】
節
1.被験体における結腸直腸進行新生物(AN)、進行腺腫(AA)、及び/又は結腸直腸癌(CRC)をスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする便潜血検査(FOBT)の特異度を高める又は偽陽性率を減らす方法であって、上記FOBTは、被験体から単離された糞便試料中の潜血の存在の判断を含み、上記方法は、上記被験体から単離された糞便試料において、少なくとも以下の細菌マーカー:
ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、
バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、及び、
バクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)、
を定量化することとを更に含み、ここで、結腸直腸進行新生物(AN)という用語は、CRC及び進行腺腫(AA)を包含する、方法。
【0169】
2.ヒト被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法であって、
a)上記被験体から単離された糞便試料においてFOBTを実施することと、
ここで、FOBTは、上記糞便試料中の潜血の存在の判断を含む;
b)上記被験体から単離された糞便試料においてペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、及びバクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)からなる細菌マーカーを少なくとも定量化することと、
c)b)で決定された細菌マーカーのレベルから組合せスコアを計算することと、
d)FOBT陽性被験体を、c)で得られた組合せスコアに従って、AN、AA、及び/又はCRCを有することの高まったリスクを表すとして分類することと、
を含む、方法。
【0170】
3.c)で計算された組合せスコアは、PTST及びBCTFの量に比例し、かつBCTTの量に反比例し、ここで、スコアが高いほど、AN、AA、及び/又はCRCを有する可能性が高い、節1に記載の方法。
【0171】
4.工程d)において、上記方法は、被験体の試料における組合せスコアと、参照の組合せスコアとを比較することを含み、上記参照の組合せスコアに対する被験体の試料における組合せスコアの増加は、AN、AA、及び/又はCRCの指標である、節2又は3に記載の方法。
【0172】
5.上記方法は、節2に記載の工程a)及びb)を含み、上記方法は、
e)糞便試料中のPTST、BCTF、及びBCTTの量と、対応する参照値とを比較すること、
を更に含み、ここで、
f)対応する参照値に対するFOBT陽性被験体の試料におけるPTST及びBCTFの量の増加、並びにBCTTの量の減少が、AN、AA、及び/又はCRCの指標である、ヒト被験体におけるAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法。
【0173】
6.上記被験体は、CRCを有することが疑われる被験体である、節1~5のいずれかに記載の方法。
【0174】
7.上記被験体は、無症状の被験体である、節1~5のいずれかに記載の方法。
【0175】
8.上記被験体は、中程度の又は高いCRCのリスクを有する被験体であり、ここで、中程度のCRCのリスクを有する被験体は、50歳以上であり、個人的又は家族的なCRCの経歴を有さず、かつ高まった及び/又は高いCRCのリスクを有する被験体である、節7に記載の方法。
【0176】
9.上記CRCは、腺癌である、節1~8のいずれかに記載の方法。
【0177】
10.上記FOBTは、ヒトヘモグロビン(hHb)を定量化するグアヤクFOBT又は糞便免疫化学検査(FIT)である、節1~9のいずれかに記載の方法。
【0178】
11.上記FOBTは、ヒトヘモグロビン(hHb)を定量化する糞便免疫化学検査(FIT)である、節1~10のいずれかに記載の方法。
【0179】
12.FIT陽性被験体は、糞便1g当たり10μg以上のhHb(FIT50のカットオフ)又は糞便1g当たり20μg以上のhHb(FIT100のカットオフ)のhHbレベルを有し、好ましくは、FIT陽性被験体は、糞便1g当たり10μg以上のhHb(FIT50のカットオフ)のhHbレベルを有する、節11に記載の方法。
【0180】
13.上記方法は、B10(配列番号7)、B46(配列番号8)、B48(配列番号9)、ゲメラ・モルビロルム(Gemella morbillorum)(GMLL)、ロゼブリア・インテスティナリス(Roseburia intestinalis)(RSBI)、コリンセラ・インテスティナリス(Collinsella intestinalis)(CINT)、フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ(Faecalibacterium prausnitzii)、及び/又はその系統群のいずれか、並びにエシェリキア・コリ(Escherichia coli)(ECO)からなる群より選択される1種以上の細菌マーカーを定量化することを更に含む、節1~12のいずれかに記載の方法。
【0181】
14.PTST、BCTF、及びBCTTのレベル、並びに任意に節13の細菌マーカーのレベルの決定は、次世代シーケンシング、定量的PCR(qPCR)、PCRパイロシーケンシング、PCR-ELISA、DNAマイクロアレイ、分岐DNA、ドットブロット、蛍光In Situハイブリダイゼーションアッセイ(FISH)、及び上記の方法のマルチプレックス型からなる群より選択される分子生物学的方法によって行われる、節1~13のいずれかに記載の方法。
【0182】
15.上記分子生物学的方法は、qPCRであり、好ましくは、定量化レベルはCt値として表現される、節14に記載の方法。
【0183】
16.PTST、BCTF、及びBCTTのレベル、並びに任意に節12の細菌マーカーのレベルは、好ましくは真正細菌(EUB)レベルに対する相対的存在量として表現される、節1~15のいずれかに記載の方法。
【0184】
17.PTST、BCTF、及びBCTT、並びに任意に節12の細菌マーカーの定量化の前に、DNAを糞便試料から抽出する、節1~16のいずれかに記載の方法。
【0185】
18.FOBTと、PTST、BCTF、及びBCTT、並びに任意に請求項12の細菌マーカーの定量化とは、同じ糞便試料において行われる、節1~17のいずれかに記載の方法。
【0186】
19.上記方法は、該方法の結果をデータ担体に格納することを更に含み、好ましくは、上記データ担体は、コンピューター可読媒体である、節1~18のいずれかに記載の方法。
【0187】
20.節1~19のいずれかに規定される通りの方法である、コンピューター実装方法。
【0188】
21.節20の方法の工程を行う手段を含む、データ処理装置。
【0189】
22.PTST、BCTF、及びBCTTを定量化するのに適したキットであって、以下の試薬:
配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチド、
配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチド、及び、
配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチド、
任意に、真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチド、
を含み、
任意に、被験体から単離された糞便試料中の上記細菌マーカーのレベルを決定する際の上記試薬の使用についての使用説明書を更に含む、キット。
【0190】
23.
配列番号2に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号24若しくは配列番号25のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
配列番号3に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号26若しくは配列番号27のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
配列番号4に特異的なオリゴヌクレオチドは、配列番号30若しくは配列番号31のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、及び/又は、
真正細菌の定量化に適したオリゴヌクレオチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号14、若しくは配列番号15のいずれか、又はそれらのいずれかと少なくとも80%の同一性を有する配列を含む又はそれらのみからなるオリゴヌクレオチドである、節22に記載のキット。
【0191】
24.節1~20のいずれかに記載のAN、AA、及び/又はCRCをスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法における、節22又は23に記載のキットの使用。
【0192】
25.AN、AA、及び/又はCRCを有する被験体を治療する方法であって、上記被験体は、節1~20のいずれかに記載のスクリーニング、診断、及び/又はモニタリングする方法によって選択されており、かつ上記方法は、被験体に抗癌療法薬を投与することを更に含む、方法。
【0193】
26.結腸内視鏡検査、軟性S状結腸鏡検査、二重造影バリウム注腸、及びコンピューター断層撮影(CT)コロノグラフィーからなる群より選択される探索的検査を実施する、好ましくは結腸内視鏡検査を実施する被験体を選択する方法であって、上記被験体は、節1~20のいずれかに記載のスクリーニング、診断、又はモニタリングの方法によって選択されている、方法。
【実施例】
【0194】
実施例1.材料及び方法
研究集団
プライマリーヘルスケア及びセカンダリーヘルスケアからオウレンセ総合病院(Complexo Hospitalario de Ourense)(スペイン、オウレンセ)へと診断的結腸内視鏡検査のために紹介されたCRCに関連する症状を有する333人の継続患者からなるコホートを採用した(表1)。除外基準は、(1)CRCスクリーニングのために結腸内視鏡検査を受けている無症状の被験体、(2)サーベイランス結腸内視鏡検査を受けている結腸疾患の既往歴を有する患者、(3)入院を必要とする患者、(4)症状が評価前3ヶ月以内に止まった患者、及び(5)組み入れる前の前月以内に抗生物質治療を受けた患者であった。研究プロトコルは、ビーゴ大学総合病院のバイオバンク(Biobanco del Complexo Hospitalario Universitario de Vigo)(スペイン、ビーゴ)によって承認された。全ての研究患者から、書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0195】
【0196】
全ての被験体は、結腸直腸状態を判断するために結腸内視鏡検査を受けた。内視鏡検診及び病理学の結果に従って、診断を4つの群:正常な結腸内視鏡検査(結腸内視鏡検査により所見を有しない又は10mm未満のS状結腸及び/又は直腸の過形成性ポリープを伴う)と、非進行腺腫(低異型度異形成を伴う10mm未満の管状腺腫、及び異形成を伴わない10mm未満の鋸歯状ポリープ)と、進行腺腫(10mmを超える腺腫又は繊毛状成分若しくは高異型度異形成を伴う腺腫、10mmを超える又は異形成を伴う鋸歯状ポリープ、及びpTis腺癌)と、浸潤性CRCとに分類した。CRCと診断された患者も腫瘍の病期に従って分類した(表2)。また、臨床的データ及び疫学的データを記録するために個人に質問票に回答するよう求めた。
【0197】
【0198】
糞便試料収集
結腸内視鏡検査の前及び腸洗浄の前に、滅菌糞便容器内に1回の排便から便試料を収集するよう参加者に求めた。容器に入れた後すぐに試料を凍結した。次に、被験体は試料を病院に持ち込み、そこでは短期間の貯蔵のために-20℃で凍結させておき、ジローナ(スペイン)にあるGoodGut S.L.の施設に到着した後-80℃で貯蔵した。便試料の収集を誤っていたため、合計11人の被験体を研究から除外した。
【0199】
便試料からのDNA抽出
NucleoSpin Soilキット(Macherey-Nagel GMbH & Co.、ドイツ、デューレン)を使用して、均質化後に凍結糞便試料からゲノムDNAを抽出した。製造業者の使用説明書に従い、最終的にDNAを最終容量100μlのSE溶出バッファー中で溶出させ、使用するまで-20℃で貯蔵した。Qubit蛍光定量(ThermoFisher Scientific、米国、ウォルサム)を用いて、DNA濃度を決定した。全ての試料を8ng/μlの最終濃度に調整し、再度定量化した。
【0200】
CRCバイオマーカーについてのqPCRアッセイ
標的とされる特定の細菌配列は、真正細菌(EUB)、B10(ベストマッチBLAST フィーカリバクテリウム・プラウスニッツィイ)、B46(ベストマッチBLAST サブドリグラニュラム・バリアビレ)、B48(ベストマッチBLAST ルミノコッカス属の一種、ロゼブリア属の一種、コプロコッカス属の一種)、ロゼブリア・インテスティナリス(RSBI)、ゲメラ・モルビロルム(GMLL)、ペプトストレプトコッカス・ストマティス(PTST)、バクテロイデス・フラジリス(BCTF)、コリンセラ・インテスティナリス(CINT)、及びバクテロイデス・テタイオタオミクロン(BCTT)の10種であった。
【0201】
SYBR Greenマスターミックス(Promega、米国、マジソン)を使用して、各バイオマーカーにつき単一の反応を準備することにより、種々のバイオマーカーの定量化を行った。各反応は、1×GoTaq qPCRマスターミックスと、150nMから300nMの間の各プライマーと、最大20ngのゲノムDNA鋳型とを含む20μlからなっていた。この研究で使用された種特異的プライマーを表3に示す。これらは、Macrogen(Macrogen、韓国、ソウル)で購入した。
【0202】
【0203】
全ての定量的PCRを、AriaMxリアルタイムPCRシステム(Agilent Technologies、米国、サンタクララ)で実行した。分析されるバイオマーカーによって、熱プロファイルは異なっていた(表4)。各qPCRの終わりに融解曲線工程を追加することで、予想されるアンプリコンサイズの存在を確認するとともにプライマーダイマーの形成を抑えた。データを収集し、Ariaソフトウェアバージョン1.3(Agilent Technologies、米国、サンタクララ)を用いて分析した。全ての試料を2連で増幅させ、閾値サイクル(Ct)間の差が0.6未満の場合にこれらを有効とみなした。各バイオマーカーについて、10ゲノム単位/μLから108ゲノム単位/μLまでの8logからなるダイナミックレンジを確立し、これらを相対的存在量の計算に使用した。各PCRの実行には、鋳型なしでのコントロール反応が含まれていた。
【0204】
【0205】
FIT分析
CRC特異的なバイオマーカー分析で使用されたものと同じ試料を使用して、オウレンセ総合病院でFIT分析を実施した。Cubiella, J. et al., 2016で以前に記載されたように、OCセンサーの収集チューブを使用して糞便ヘモグロビン決定用の便試料を分析し、CRC、ポリープ、及び憩室炎等の障害に関連する消化管出血を検出する自動式OCセンサー(栄研化学株式会社、日本、東京)を使用してアッセイを行った。OCセンサーの試料チューブ内のサンプルバッファーは、収集から分析まで、試料の最適な安定性及び安全な輸送を保証する。陽性の検査は、100ng/mL(糞便1g当たり20μgのHb;FIT100)以上の糞便ヘモグロビン濃度を有する検査であった。
【0206】
統計分析
定性分析の観点から、得られたCt値がそのダイナミックレンジ内に含まれていない場合に、バイオマーカーが存在しないとみなした。全ての統計分析を、SPSS 23.0統計パッケージ(IBM、米国、ニューヨーク市)を使用して実施した。有意水準は、P値≦0.05の場合に確立された。
【0207】
データの正規性を、コルモゴロフ-スミルノフ検定によって評価した。ノンパラメトリックなクラスカル-ウォリス検定を使用して、3つ以上のカテゴリーを有する変数の差を検定した。マン-ホイットニー検定を使用して、これらの変数のサブカテゴリーのペアワイズ比較を分析した。ボンフェローニ補正を使用して、多重比較を補正した。細菌マーカーを使用した全ての比較は、各細菌マーカーのダイナミックレンジによって正規化された相対的存在量の間で実施された。
【0208】
受信者動作特性(ROC)曲線分析を適用して、種々の結腸新生物の状態を区別するための各バイオマーカーの有用性を調べた。判別の精度は、ROC曲線下面積(AUC)によって測定された。
【0209】
機械学習を使用して、研究対象のどの変数(性別、年齢、BMI、喫煙、細菌マーカー、FIT)を組み合わせて、進行新生物病変を有する被験体と、正常な結腸内視鏡検査又は非進行腺腫を有する被験体とを区別することができるかを調べた。特定の方法論は、データセットの100個の偶然のパーティション(aleatory partitions)での初期トレーニング反復と、4つの異なる機械学習アルゴリズム(ニューラルネットワーク、ロジスティック回帰、勾配ブースティングツリー、ランダムフォレスト)を使用して生成された予測モデルの更なる検証とからなっていた。最後に、FITの結果とともに分析された4つの細菌マーカーの組合せを使用して、RAID-CRCを設計した。
【0210】
実施例2.新生物進行における糞便バイオマーカー
各診断(正常な結腸内視鏡検査、非進行腺腫、進行腺腫、CRC)につき、各細菌マーカーの相対的存在量を決定した(
図1)。結腸内視鏡検査の診断にかかわらず、3種の異なる酪酸産生種(B10、B46、及びB48)が最も優勢なバイオマーカーであり、それぞれ20.4%、19.0%、及び20.0%の相対的存在量値を有した。GMLL及びPTSTは、CRC集団において、正常な結腸内視鏡検査の個体(それぞれ、p=0.006及びp<0.001)又は非進行腺腫の被験体(それぞれ、p=0.047及びp<0.001)よりも有意に豊富であった。有意差を有しないが、B46が進行腺腫を有する被験体よりもCRC患者において豊富である傾向が観察され得た(p=0.087)。興味深いことに、EUBの存在量は、新生物の状態にかかわらず一定に維持されていた。異なるCRC病期(0、I、II、III、及びIV)間の比較により、どの細菌マーカーの存在量にも有意差は示されなかった。
【0211】
実施例3.GMLL、PTST、及びBCTFは、進行新生物病変を検出することができる
被験体を以下のようにグループ分けした後に、細菌マーカーの相対的存在量を比較した:(1)正常な結腸内視鏡検査、(2)新生物(非進行腺腫+進行腺腫+CRC)、(3)進行新生物(進行腺腫+CRC)、及び(4)CRC(
図2)。PTSTは、新生物病変と相関性が高いことが判明した(p<0.001)。進行新生物病変の検出に関して、GMLL、PTST、及びBCTFは、それらを検出する潜在的なバイオマーカーであった(それぞれ、p=0.006、p<0.001、及びp=0.030)。保有率に関して、これらの3種の日和見病原体は、健康な被験体(GMLL、53.5%;PTST、26.1%;及びBCTF、29.8%)よりも進行新生物を有する患者(GMLL、64.9%;PTST、58.4%;及びBCTF、44.7%)においてより多く見られた。
【0212】
本発明者らの結果は、CRCを有する患者における細菌性腸内毒素症の存在を明確に示している。研究された細菌マーカーを、腸管の健康に関連する表現型に従って分類した:酪酸産生菌(B10、B46、B48、RSBI)、日和見病原体(GMLL、PTST、BCTF)、水素及び酸素の産生菌(CINT)、並びに糖分解性種(BCTT)(
図3)。これらの表現型の相対的存在量は、疾患状態の進行とともに徐々に変化することが分かった。特に、正常な結腸内視鏡検査を伴う被験体とCRCを有する被験体との間で、病原性細菌群に置き換わって酪酸産生菌の相対的存在量の減少が見られ、病原性細菌群は正常な結腸内視鏡検査を伴う被験体よりもCRC及び進行腺腫の個体において豊富であった。
【0213】
本発明者らの結果は、PTST及びBCTFの高い存在量が進行新生物と相関しているのに対して、BCTTの存在量が健康な個体と相関していることを示している。BCTTは、健康な個体の腸内細菌叢に一般的に見られる共生細菌である。共生細菌は、消化管炎症を軽減し、コロニー形成抵抗性に寄与することが認められている(Macfarlane & Macfarlane, 2012、Bauemler & Sperandio, 2016)。したがって、BCTTの高い存在量は良好な腸の健康と相関している。
【0214】
実施例4.CRC細菌マーカーとFITとの組合せにより、偽陽性の結果を大幅に減らすことができる
一方で、FIT100(糞便1g当たり20μgのHb)を使用した場合に、正常な結腸内視鏡検査を伴う又は非進行腺腫を有する被験体と進行新生物を有する被験体との間に有意差が観察された(p<0.001)。正常な結腸内視鏡検査を示した被験体の17.1%(19人)及び非進行腺腫を有した被験体の24.3%(27人)がFIT陽性値を示した。これらの結果は、進行新生物の検出について、それぞれ84.0%及び81.0%の感度及び特異度、並びにそれぞれ58.0%及び94.0%の陽性予測値及び陰性予測値(AUC=0.828、95.0%CI(0.773~0.883))を得ることにつながった。他方で、FIT50(糞便1g当たり10μgのHb)を使用した場合に、正常な結腸内視鏡検査を示した被験体の21.1%(27人)及び非進行腺腫を有した被験体の24.2%(31人)が偽陽性の結果を示した。FIT50は、進行新生物の検出について、それぞれ91.0%及び76.0%の感度及び特異度、並びにそれぞれ55.0%及び96.0%の陽性予測値及び陰性予測値(AUC=0.836、95.0%CI(0.787~0.886))を得ることにつながった。細菌マーカー単独の場合の感度値ははるかに低く、GMLLについて39.0%(AUC=0.622、95.0%CI(0.541~0.694))であり、PTSTについて53.0%(AUC=0.710、95.0%CI(0.628~0.776))であり、かつBCTFについて33.0%(AUC=0.571、95.0%CI(0.499~0.656))であったのに対して、特異度値は同等であった。
【0215】
FIT100及びFIT50の両方のFIT結果を糞便細菌マーカーと組み合わせて、進行新生物病変の検出について感度値及び特異度値の点でどちらがより高い性能をもたらすかを見分けた。細菌マーカーとFIT100との組合せ(RAID CRC-FIT100)は、76.0%の感度及び91.0%の特異度を得ることにつながった(表5)。それにもかかわらず、これらの結果は、進行新生物の検出について同様の特異度値で4.0%高い感度(80.0%)が示されたため、FIT50(RAID CRC-FIT50)によってわずかに改善された。したがって、これは最適なカットオフ値であった。このように、好ましい検査は、EUB、PTST、BCTF、及びBCTTと、50ng/μL(糞便1g当たり10μgのHb)以上の糞便ヘモグロビン濃度との組合せを基礎としている。BCTTは、正常な結腸内視鏡検査を伴う又は非進行腺腫を有する被験体と、進行新生物の被験体との間に有意差を示さなかったが、EUB、PTST、及びBCTFと組み合わせると、検査の特異度を高めることができた。
【0216】
【0217】
最終検査(RAID CRC-FIT50検査)は、FIT50と、真正細菌によって正規化された3種の細菌マーカーの定量化レベル(PTST/EUB、BCTF/EUB、BCTT/EUB)との組合せを含み、ここで、定量化レベルはCt値として表現される。
【0218】
比率を使用することで、データの正規化が可能となり、これはqPCRに関連する変数を制御して、実験的に誘発された変動から真の生物学的変化を識別するのに重要である(Vandesompele et al, 2002)。RAID CRC-FIT50検査において糞便ヘモグロビン濃度の閾値を100ng/μLから50ng/μLに下げることで、偽陽性率を高めることを犠牲として、そうでなければ100ng/μLのカットオフ値で偽陰性とみなされることとなる陽性被験体を捕らえることが可能となった。しかしながら、細菌マーカーと組み合わせるとこの効果は弱まった。それというのも、RAID CRC-FIT50検査は、FIT50及びFIT100に対して進行新生物の検出についての特異度が高まるため、偽陽性の結果の大幅な減少をもたらしたからである(表5)。
【0219】
進行新生物の検出にRAID CRC-FIT50検査を適用した結果、FIT100に対する偽陽性の結果の数の減少がもたらされ、被験体の9.7%が正常な結腸内視鏡検査を示し、被験体の11.7%が非進行腺腫を有する。全体として、RAID-CRC-FIT50検査は、それぞれ80.0%及び90.0%の感度及び特異度(AUC=0.837、95.0%CI(0.730~0.944))、並びにそれぞれ70.0%及び94.0%の陽性予測値及び陰性予測値をもたらすことが示された。より重要なことに、偽陽性率は50.0%減少し、FIT100では46人の被験体が偽陽性の結果であり、RAID-CRC検査-FIT50検査では23人の被験体であった。興味深いことに、RAID CRC-FIT50及びRAID CRC-FIT100の両方の検査で、CRC及びANについてFIT100プロトコルと同様の感度が達成されたが、特異度及び陽性予測値(PPV)はより高かった。
【0220】
本研究において、便試料を使用した全国的なCRCスクリーニングプログラムで使用するのに適した新しい方法論が開発された。本研究で使用される細菌シグネチャーは、もともと粘膜試料から取得された。したがって、糞便中のそれらの存在は、食事及び一部の外的要因によって引き起こされる変動に大きく影響されないが(Conlon & Bird, 2015、Vandeputte et al, 2015)、結腸粘膜における実際の存在量の尺度である。これは、便内に存在する巨大なバックグラウンドノイズを払拭するのに役立ち、バイオマーカーに生理学的な意味を与える。
【0221】
本発明者らのデータセットでは、ボディマス指数(BMI)、喫煙、又は摂食習慣に関するメタデータを利用することができなかった。これらのパラメーターは糞便試料の微生物叢組成に影響を与えることが報告されているが(Davis et al, 2017、Yun et al, 2017、Rogers et al, 2012、Capurso & Lahner, 2017、Baothman et al, 2016)、上述のように、本発明者らのバイオマーカーは、外的要因にそれほど依存しない粘膜試料に起因するものである(Watt et al, 2016、Durban et al, 2011)。Biedermannらにより、禁煙が微生物の多様性を増加させることが報告された(Biedermann et al, 2013)。他の研究では、慢性的なアルコール摂取がプロテオバクテリア門の増加、及びバクテロイデス門の減少につながることが認められた(Kakiyama et al, 2013、Rao et al, 2004)。BMIに関しては、微生物叢に対するその影響は議論の余地がある(Turnbaugh et al, 2006、Schwiertz et al, 2010、Santacruz et al, 2009)。本明細書に記載されるRAID-CRC検査は、スクリーニングされる集団が様々な条件及び習慣により影響され得るスクリーニングシナリオで使用される可能性が高いため、最大限の信頼性でCRCスクリーニングシナリオを再現するのに、非層別化方略が優れた方法であることが分かる。
【0222】
集団を対象としたスクリーニングにおいては、費用効果も重要な問題である(Sonnenberg et al, 2000、McGrath et al, 2002、Telford et al, 2010)。Wongとその同僚らは、このシナリオにおいてFITと結腸内視鏡検査とを比較したところ、平均リスクスクリーニングではFITの費用効果が高いのに対して、結腸内視鏡検査ではよりリスクが高い被験体の間で費用効果が高いことが示された(Wong, 2015)。したがって、RAID-CRCを使用すると、不必要な結腸内視鏡検査を最大30%削減することができるため、FITと糞便細菌マーカーとの組合せは費用効果の点で優れている可能性がある。より具体的には、CRCスクリーニングプログラムでRAID-CRCを実施すると、FOBTを基礎とするスクリーニングプログラムと比較した場合に、偽陽性の結果による33000回の結腸内視鏡検査の削減がもたらされることとなる(それぞれ55000回の偽陽性対22000回の偽陽性)(Garcia et al, 2012)。RAID-CRCの費用がFOBTの費用と同等であることを考慮すると、陽性のスクリーニング結果後の追跡結腸内視鏡検査の推定節約額は、スクリーニングプログラムにおける100000人の参加者当たり7700万ユーロとなる(表6)。さらに、本研究で示されたCRCバイオマーカーの使用は、先進地域及び結腸内視鏡検査施設が限られている資源不足地域の両方で目的を達し得る。それというのも、RAID-CRCは、CRCスクリーニングシナリオで実行可能と見込まれる費用効果の高いツールであるからである。
【0223】
結論として、RAID-CRCは、非侵襲性、低コスト、及びFOBT(例えば、FIT)の使用と関連付けられた偽陽性の結果の数を減らす能力のため、CRCスクリーニングに有望なツールである。
【0224】
【0225】
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【配列表】
【国際調査報告】