IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スポーツ データ ラボズ,インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-心拍数測定システム 図1
  • 特表-心拍数測定システム 図2
  • 特表-心拍数測定システム 図3
  • 特表-心拍数測定システム 図4
  • 特表-心拍数測定システム 図5A
  • 特表-心拍数測定システム 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】心拍数測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20220419BHJP
【FI】
A61B5/352
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540503
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(85)【翻訳文提出日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020013461
(87)【国際公開番号】W WO2020150203
(87)【国際公開日】2020-07-23
(31)【優先権主張番号】16/246,923
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】521306948
【氏名又は名称】スポーツ データ ラボズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SPORTS DATA LABS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カーレ,ヴィヴェック
(72)【発明者】
【氏名】バハトカー,ヴィピラリ
(72)【発明者】
【氏名】ゴルスキー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ミモト,スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ヤダヴ,アニュロップ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG05
4C127GG18
(57)【要約】
心拍数を計算する方法は、Rピークの誤検出やRピークの見逃しに繋がる可能性のある、対象、センサ、伝送および/または他の変数に由来するノイズを補正する。この方法は、センサから配信されたデジタル化されたECG読取値の約10秒間のウィンドウに基づいて、更新された心拍数を計算する。新しい値は、連続する計算の間でECG読取値のウィンドウが大きく重なり合うように、約1秒毎に計算される。この方法は、以前に計算された心拍数値と閾値以上の差がある心拍数サンプルを破棄することで、ノイズの多いデータを補正する。この閾値は、心拍数サンプル間の差の標準偏差に基づいて調整される。心拍数値を計算する前に、生データの信号対雑音比が極端に低い状況では、前方プレフィルタロジックを適用することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心拍数を測定するシステムであって、
対象の体内の電気信号を測定し、1または複数のアナログ測定値を1または複数のデジタル読取値に変換し、前記1または複数のデジタル読取値を送信するように構成された少なくとも1のセンサと、
前記1または複数のデジタル読取値を受信し、前記1または複数のデジタル読取値の1または複数の重なり合うセグメント内のRピークを識別し、隣接するRピーク間の時間に基づいて1または複数のサンプル値を算出し、誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けた1または複数のサンプルを破棄し、残りのサンプル値の1または複数の平均値を算出することにより、前記1または複数の重なり合うセグメントに基づいて心拍数を算出するように構成されたサーバと、
前記残りのサンプル値の1または複数の平均値を表示するように構成された表示装置とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記サーバは、所与のサンプル値が以前の心拍数値と第1の閾値以上に異なることに応答して、前記1または複数のサンプルが、誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けていると判定することを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、
1または複数のサンプル間の差の標準偏差が第2の閾値よりも大きいことに応答して、前記サーバは、前記第1の閾値とは異なる第3の閾値以上に、サンプル値が以前の心拍数値と異なることに応答して、1または複数のサンプルが、誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けていると判定することを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記第3の閾値が、前記第2の閾値よりも小さいことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、
(1)1または複数の戦略を策定するために、(2)1または複数の賭け金を賭けることができる1または複数の市場を提供するために、(3)1または複数のユーザに行動を起こすように通知するために、(4)1または複数の賭け金が賭けられる1または複数の値として、(5)1または複数の確率またはオッズを計算、修正または評価するために、(6)1または複数の商品を作成、強化または修正するために、(7)1または複数のシミュレーション、アプリケーションまたは分析に利用される、1または複数のデータセットとして、または別の1または複数のデータセットの一部として、(8)出力が1または複数のユーザに直接的または間接的に関与する1または複数のシミュレーションにおいて、(9)1または複数のメディアまたはプロモーションの入力として、または(10)1または複数のリスクを軽減するために、1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部が使用されることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、
1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部が、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、1または複数のユーザの健康を監視するために、またはそれに直接的または間接的に関連するフィードバックを提供するために使用されることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記表示装置が、1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部に基づいて、1または複数のユーザが取るべき1または複数の行動について、1または複数の推奨、指示または命令を提供することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムにおいて、
対象の1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部に基づいて、1または複数の調整、変更、修正または行動が推奨、開始または実行されることを特徴とするシステム。
【請求項9】
心拍数を測定するシステムであって、
対象の皮膚、重要臓器、筋肉、静脈、血液、血管、組織または骨格系に固定されるか、それらに接触するか、またはそれらに関連する又はそれらから派生する電子情報を送信するようように適合された少なくとも1のセンサであって、対象の体内の1または複数の電気信号を測定し、アナログ測定値を1または複数のデジタル読取値に変換し、デジタル読取値を送信するように構成された少なくとも1のセンサと、
前記1または複数のデジタル読取値を受信し、前記1または複数のデジタル読取値の1または複数の重なり合うセグメント内のRピークを識別し、隣接するRピーク間の時間に基づいて1または複数のサンプル値を算出し、以前の心拍数値の第1の閾値内にある1または複数のサンプルを選択し、現在の心拍数値を選択したサンプルの平均値に設定することにより、前記1または複数の重なり合うセグメントに基づいて1または複数の心拍数値を算出するように構成されたサーバと、
1または複数の現在の心拍数値を表示するように構成された表示装置とを備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記表示装置が、それぞれの後続の心拍数値が計算される前に、現在の各心拍数値を表示することを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムにおいて、
前記少なくとも1のセンサが、後続の心拍数値を計算するために使用される1または複数のデジタル読取値の少なくとも一部の測定を完了する前に、前記サーバが、現在の各心拍数値を計算することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記サーバが、連続するサンプル間の差の標準偏差が第3の閾値より大きいことに応答して、以前の心拍数値の第2の閾値内のサンプルを選択することを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記サーバが、サンプル数が第4の閾値未満であることに応答して、現在の心拍数値を以前の心拍数値に等しく設定することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記サーバが、サンプルが選択されていないことに応答して、現在の心拍数値を以前の心拍数値に等しく設定することを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項9に記載のシステムにおいて、
各サンプル値が、隣接するRピーク間の時間の逆数に比例することを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項9に記載のシステムにおいて、
前記サーバが、前記1または複数の重なり合うセグメントよりも長いデジタル読取値の予備セグメントを受信し、前記予備セグメント内のRピークを識別し、隣接するRピーク間の時間に基づいてサンプル値を計算し、サンプルの平均値を計算することによって、初期心拍数値を計算することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項9に記載のシステムにおいて、
1または複数のサンプルが、以前に収集されたデータの少なくとも一部に基づいて、1または複数の人工知能または機械学習技術を利用して、人工的に生成されることを特徴とするシステム。
【請求項18】
人の心拍数を測定する方法であって、
少なくとも1のセンサからデジタル読取値の第1のセグメントを受信するステップと、
前記デジタル読取値の第1のセグメント内のRピークを識別するステップと、
隣接するRピーク間の時間に基づいて、第1の複数のサンプル値を計算するステップと、
以前の心拍数値の第1の閾値以内のサンプル値のみを含む、前記第1の複数のサンプル値の第1のサブセットを選択するステップと、
前記第1の複数のサンプル値の第1のサブセットの平均値に基づいて、第1の更新された心拍数値を計算するステップと、
前記第1の更新された心拍数値を表示するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法において、
少なくとも1のセンサからデジタル読取値の第2のセグメントを受信するステップと、
前記デジタル読取値の第1のセグメントに前記第2のセグメントを付加して、デジタル読取値の第3のセグメントを形成するステップと、
前記デジタル読取値の第3のセグメント内のRピークを識別するステップと、
隣接するRピーク間の時間に基づいて、第2の複数のサンプル値を計算するステップと、
前記第1の更新された心拍数値の前記第1の閾値内のサンプル値のみを含む、前記第2の複数のサンプル値の第2のサブセットを選択するステップと、
前記第2の複数のサンプル値の第2のサブセットの平均値に基づいて、第2の更新された心拍数値を計算するステップと、
前記第2の更新された心拍数値を表示するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18に記載の方法において、
少なくとも1のセンサからデジタル読取値の第2のセグメントを受信するステップと、
前記デジタル読取値の第2のセグメントを前記デジタル読取値の第1のセグメントに付加して、前記デジタル読取値の第3のセグメントを形成するステップと、
前記デジタル読取値の第3のセグメント内のRピークを識別するステップと、
隣接するRピーク間の時間に基づいて、第2の複数のサンプル値を計算するステップと、
連続するサンプル間の複数の差を計算するステップと、
前記差の標準偏差が第2の閾値を超えることに応答して、前記第1の更新された心拍数値の第3の閾値内のサンプル値のみを含む、前記第2の複数のサンプル値の第2のサブセットを選択するステップと、
前記第2の複数のサンプル値の第2のサブセットの平均値に基づいて、第2の更新された心拍数値を計算するステップと、
前記第2の更新された心拍数値を表示するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項18に記載の方法において、
前記第1の複数のサンプル値を計算することが、定数を隣接するRピーク間の時間で割ることを含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項18に記載の方法において、
デジタル読取値の予備セグメントを受信し、
前記デジタル読取値の予備セグメント内のRピークを識別し、
隣接するRピーク間の時間に基づいてサンプル値を計算し、かつ
前記サンプル値の平均値を算出することによって、
初期心拍数値を計算するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
1または複数のセンサから生成された1または複数の外れ値を検出して置き換える方法であって
前記1または複数のセンサによって直接的または間接的に生成された1または複数の値を受信するステップと、
1または複数の統計的検定を適用して、各値の許容可能な上限値および/または下限値を決定するステップと、
後方補間法を利用して、1または複数の外れ値を、現在のサンプルウィンドウで確立された許容範囲内にある次の利用可能な値に置き換えるステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、
1または複数の外れ値の検出および/または上限値および/または下限値の確立が、対象の1または複数の特性、センサのタイプ、1または複数のセンサパラメータ、1または複数のセンサ特性、1または複数の環境要因、または対象の1または複数の活動のうちの少なくとも1の変数を考慮に入れて行われることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法において、
以前に収集されたセンサデータおよび/またはその1または複数の派生データの少なくとも一部および少なくとも1の変数を使用する1または複数の人工知能または機械学習技術を少なくとも部分的に利用して、1または複数の外れ値の検出が行われるか、または上限値および/または下限値が作成または調整されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項23に記載の方法において、
1または複数の人工知能または機械学習技術を少なくとも部分的に利用して、以前に収集されたセンサデータおよび/またはその1または複数の派生データの少なくとも一部から得られる上限値および下限値内の1または複数の人工的な値を生成することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、人体データ監視システムの分野に関する。より詳細には、本開示は、例えば、スポーツや他の非常に活発で動きの多い活動に従事している人の心拍数を測定するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
心拍数(HR)は、様々な活動中の心臓の機能と性能の重要な指標である。リアルタイムのHR計算は、基礎となる肉体的および/または精神的活動によるHRの拍動毎の変化を反映する。このようなHRの変化は、心拍数変動(HRV)として捉えることができ、心臓の健康状態を診断および監視する上で非常に重要である。そのような活動中の瞬間的なHRを表示することで、心臓の健康だけでなく、基礎となる活動の影響に関する重要な情報を与えることができる。
【0003】
心拍数の計算は、体の動きによって心電図(ECG)信号に引き起こされるモーションアーチファクトによって悪影響を受けることがある。それらの変化の一部はフィルタリングで除去できるが、Rピークが識別されない場合、HRの急激な増加または減少が観察されることがある。生の信号のそのような頻繁なノイズの多い期間は、ノイズの多いHR波形に繋がる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、心拍数を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1のセンサ、サーバおよび表示装置を含む。少なくとも1のセンサは、対象の体内の電気信号を測定し、アナログ測定値をデジタル読取値に変換し、デジタル読取値を送信するように構成されている。サーバは、デジタル読取値を受信し、(i)デジタル読取値の重なり合うセグメント内のRピークを特定し、(ii)隣接するRピーク間の時間に基づいてサンプル値を計算し、(iii)誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けたサンプルを破棄し、(iv)残りのサンプル値の加重平均を計算することにより、重なり合うセグメントに基づいて1または複数の心拍数値を計算する。表示装置は、残りのサンプル値の計算を1または複数のユーザに伝える。サーバは、サンプル値が以前の心拍数値と第1の閾値以上異なることに応答して、サンプルが誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けていると判定することができる。サンプル間の差の標準偏差が第2の閾値よりも大きい場合、サーバは、サンプル値が以前の心拍数値と第1の閾値よりも小さい第3の閾値以上に異なることに応答して、サンプルが誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けていると判定することができる。
【0005】
別の態様では、心拍数を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1のセンサを含み、このセンサが、対象の体内の電気信号を測定し、1または複数のアナログ測定値を1または複数のデジタル読取値に変換し、1または複数のデジタル読取値を送信するように構成されている。サーバは、1または複数のデジタル読取値を受信し、1または複数のデジタル読取値の1または複数の重なり合うセグメント内のRピークを特定し、隣接するRピーク間の時間に基づいて1または複数のサンプル値を計算し、誤ったピーク検出または逃したピーク検出の影響を受けた1または複数のサンプルを破棄し、残りのサンプル値の1または複数の平均値を算出することにより、1または複数の重なり合うセグメントに基づいて心拍数を算出するように構成されている。また、本システムは、残りのサンプル値の1または複数の平均値を表示するように構成された表示装置を含む。
【0006】
別の態様では、心拍数を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1のセンサ、サーバおよび表示装置を含む。少なくとも1のセンサは、対象の皮膚に固定するように適合され、皮膚の電気信号を測定し、アナログ測定値をデジタル読取値に変換し、デジタル読取値を送信するように構成されている。サーバは、デジタル読取値を受信し、(i)デジタル読取値の1または複数の重なり合うセグメント内のRピークを識別し、(ii)隣接するRピーク間の時間に基づいて複数のサンプル値を計算し、(iii)以前の心拍数値の第1の閾値内のサンプルを選択し、(iv)現在の心拍数値を選択したサンプルの平均値に設定することにより、1または複数の重なり合うセグメントに基づいて1または複数の心拍数値を計算する。平均値は、重み付けされたものであってもよい。各サンプル値は、隣接するRピーク間の時間の逆数に比例し得る。サーバは、連続するサンプル間の差の標準偏差が第3の閾値よりも大きいことに応答して、以前の心拍数値の第2の閾値内のサンプルを選択することができる。サーバは、サンプル数が第4の閾値未満であることに応答して、またはサンプルが選択されなかったことに応答して、現在の心拍数値を以前の心拍数値と等しく設定することができる。表示装置は、1または複数の現在の心拍数値を1または複数のユーザに伝達する。本システムは、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで動作することができ、その場合、表示装置が、それぞれの後続の心拍数値が計算される前に現在の各心拍数値を表示するように構成され、サーバが、センサが後続の心拍数値を計算するために使用される読取値の少なくとも一部またはすべての測定を完了する前に、現在の各心拍数値を計算する。サーバは、重なり合うセグメントよりも長いデジタル読取値の予備セグメントを受信し、予備セグメント内のRピークを識別し、隣接するRピーク間の時間に基づいてサンプル値を計算し、サンプルの平均値を計算することによって、初期心拍数値を計算することができる。平均値は、重み付けされたものであってもよい。
【0007】
さらに別の態様では、心拍数を測定するシステムが提供される。このシステムは、少なくとも1のセンサを含み、このセンサが、対象の皮膚、重要臓器、筋肉、静脈、血液、血管、組織または骨格系に固定されるか、それらに接触するか、またはそれらに関連するか又はそれらから派生する電子情報を送信するようように適合され、対象の体内の1または複数の電気信号を測定し、アナログ測定値を1または複数のデジタル読取値に変換し、デジタル読取値を送信するように構成されている。サーバは、1または複数のデジタル読取値を受信し、1または複数のデジタル読取値を受信し、1または複数のデジタル読取値の1または複数の重なり合うセグメント内のRピークを特定し、隣接するRピーク間の時間に基づいて1または複数のサンプル値を算出し、以前の心拍値の第1の閾値内にある1または複数のサンプルを選択し、現在の心拍数値を選択したサンプルの平均値に設定することにより、1または複数の重なり合うセグメントに基づいて1または複数の心拍数値を算出するように構成されている。また、本システムは、1または複数の現在の心拍数値を表示するように構成された表示装置を含む。
【0008】
さらに別の態様では、1または複数の人の心拍数を測定する方法が提供される。本方法は、少なくとも1のセンサから読取値を受信するステップと、読取値を処理するステップと、1または複数の結果を表示するステップとを含む。1または複数のセンサから、読取値の第1のセグメントが受信される。その後、第1のセグメント内のRピークが識別される。次いで、隣接するRピーク間の時間に基づいて、第1の複数のサンプル値が計算される。例えば、定数は、隣接するRピーク間の時間で割ることができる。第1の複数のサンプル値の第1のサブセットは、以前の心拍数値の第1の閾値内のサンプル値のみを含むように選択される。その後、サンプル値の第1のサブセットの平均値に基づいて、第1の更新された心拍数値が算出される。その後、第1の更新された心拍数値が表示される。後の反復において、デジタル読取値の第2のセグメントが、1または複数のセンサから受信されるようにしてもよい。デジタル読取値の第3のセグメントは、第2のセグメントを第1のセグメントに追加することによって形成される。そして、第3のセグメント内のRピークが識別される。隣接するRピーク間の時間に基づいて、第2の複数のサンプル値が計算される。次いで、連続するサンプル間の複数の差が計算される。差の標準偏差が第2の閾値を超えることに応答して、第1の更新された心拍数値の第3の閾値内のサンプル値のみを含む、第2の複数のサンプル値の第2のサブセットが選択される。その後、サンプル値の第2のサブセットの平均値に基づいて、第2の更新された心拍数値が計算されて表示される。平均値は、重み付けされたものであってもよい。初期心拍数値は、デジタル読取値の予備セグメントに基づいて計算されるようにしてもよい。
【0009】
さらに別の態様では、信号品質に関する問題が扱われる。生のデータが極めて低い信号対雑音比を有する場合には、心拍数値を計算する前に追加のプレフィルタロジックを適用することができる。プレフィルタプロセスは、任意の外れ値を検出し、先読みアプローチ(look-ahead approach)を用いて、1または複数の外れ値を、時系列の生成された値において整列しかつ予め確立された閾値/範囲内に収まる値に置き換える。予め確立された閾値/範囲内に収まるそれらの生成された値は、1または複数の心拍数値のその計算のために、システムを介して引き渡される。
【0010】
さらに別の態様では、1または複数のセンサから生成された1または複数の外れ値を検出して置換する方法が提供される。この方法は、1または複数のセンサによって直接的または間接的に生成された1または複数の値を受信するステップを含む。各値の許容可能な上限値および/または下限値を決定するために、1または複数の統計的検定が適用される。1または複数の外れ値を、現在のサンプルウィンドウで確立された許容範囲内に入る次の利用可能な値で置き換えるために、後方補間法(backward filling method)が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、心拍数の測定および表示システムの概略図である。
図2図2は、心拍数が増加している人のECG測定値を示すグラフである。
図3図3は、図1のシステムにおいて、デジタル化されたECG測定値のストリームに基づいて心拍数値を計算する方法のフローチャートである。
図4図4は、図3の方法において初期化ステップを実行するためのフローチャートである。
図5A図5Aは、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用した、様々な肉体的活動に従事している人の心拍数測定を示している。
図5B図5Bは、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用した、様々な肉体的活動に従事している人の心拍数測定を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を本明細書で説明する。しかしながら、開示の実施形態は単なる例に過ぎず、他の実施形態は、様々な代替的な形式を取り得ることを理解されたい。図面は必ずしも縮尺通りではなく、特定の構成要素の詳細を示すために、一部の特徴が誇張されたり、最小化されたりする場合がある。したがって、本明細書に開示の特定の構造的および機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に、本発明を様々な形で採用できることを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。当業者であれば理解できるように、図面の何れか一つを引用して図示および記載した様々な特徴は、1または複数の他の図面に図示された特徴と組み合わせて、明示的に図示または記載されていない実施形態をもたらすことが可能である。図示された特徴の組合せは、典型的な用途の代表的な実施形態を提供する。しかしながら、本開示の教示に一致する特徴の様々な組合せおよび変更が、特定の用途または実行のために望まれる場合がある。
【0013】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確にそうでないことを示していない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。例えば、単数形の構成要素への言及は、複数の構成要素を含むことを意図している。
【0014】
「備える」という用語は、「含む」、「有する」、「含有する」または「によって特徴付けられる」と同義である。それらの用語は、包括的かつオープンエンドであり、言及されていない追加の要素または方法ステップを除外するものではない。
【0015】
「からなる」という句は、請求項で指定されていない要素、ステップまたは成分を除外するものである。この句が、プリアンブルの直後ではなく、請求項のボディの節に現れる場合、それは、その節に記載の要素のみを制限するものであり、他の要素は請求項全体から除外されることはない。
【0016】
「本質的に構成される」という句は、請求項の範囲を、請求された主題の基本的かつ新規な1または複数の特性に重要な影響を及ぼさないものに加えて、指定された材料またはステップに限定するものである。
【0017】
「備える」、「からなる」および「本質的に構成される」という用語に関して、それら3つの用語のうちの1つが本明細書で使用されている場合、本開示の主題および請求される主題は、他の2つの用語の何れかの使用を含むことができる。
【0018】
また、整数の範囲は、介在するすべての整数を明示的に含むことを理解されたい。例えば、整数範囲1~10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10を明示的に含む。同様に、1~100の範囲は、1、2、3、4....97、98、99、100を含む。同様に、任意の範囲が要求される場合、上限値と下限値の差を10で割った増分である介在する数値を、代替的な上限値または下限値とすることができる。例えば、範囲が1.1~2.1の場合、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9および2.0を下限値または上限値として選択することができる。
【0019】
「サーバ」という用語は、本明細書に記載の方法および機能を実行するように適合された任意のコンピュータ、コンピューティングデバイス、携帯電話、デスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータまたはラップトップコンピュータ、分散システム、ブレード、ゲートウェイ、スイッチ、処理デバイスまたはそれらの組合せを指している。
【0020】
図1は、対象10の心拍数を測定して表示するシステムを示している。典型的には、対象10はヒトである。しかしながら、対象は、ECG関連データを導出することができる任意の生物(例えば、動物)であってもよい。改良例では、対象は、生物の1または複数のデジタル表現(例えば、人工的に作成され、ヒトまたは動物と少なくとも1の共通特性を共有するヒトまたは動物を表すデータセット)と、ヒトまたは他の動物と1または複数の特性を共有する1または複数の人工的な創造物(例えば、ヒトまたは動物の心臓と同様の1または複数の電気信号を生成する実験室で育成された心臓)とを含む。有利には、対象は、スポーツや運動に従事している人など(例えば、建設作業員、兵士、歩いている人、フィットネスクラスの人など)、活動的である。しかしながら、心拍数を測定および表示するシステムは、任意の活動(例えば、睡眠、着席)をしている任意の対象に使用することができる。活動の性質に応じて、対象の心拍数は、比較的短い時間枠の中で大きく変化する可能性がある。少なくとも1のECGセンサ12および/またはその1または複数の付属品は、対象10に取り付けられるか、または対象に埋め込まれ、心臓機能に関連する対象の身体(例えば、皮膚)における電気的変化を測定する。改良例では、少なくとも1のECGセンサおよび/またはその1または複数の付属品が、対象の皮膚、眼球、重要臓器または骨格系を含む対象に、固定されるか、それら対象に接触するか、それら対象に関連する又はそれら対象から派生する電子情報を送信し、対象に埋め込まれ、対象によって摂取され、または直接または1または複数の仲介物を介して対象に接触する又は対象と通信する織物、布、生地、材料、固定具、物体または装置に一体化され、またはその一部として組み込まれ、固定され、またはその中に埋め込まれるものであってもよい。例えば、接着剤(センサと対象との間の中間物として機能する)により対象に貼り付けられたECGセンサ、対象が着用するシャツに組み込まれた又は埋め込まれたECGセンサ、対象が接触するステアリングホイールに組み込まれたECGセンサ、ビデオゲームのコントローラに組み込まれたECGセンサ、眼鏡に接続されて対象の耳に接触するECGセンサ、フィットネス機器に組み込まれたECGセンサなどがある。有利なことに、ECGセンサは、単一のセンサ内に複数のセンサを有することができる。改良例では、少なくとも1のECGセンサが、少なくとも1のセンサがECGに無関係のデータを提供することを可能にする他の検知能力を有する。例えば、ECGセンサは、XYZ座標を捕捉および提供することができるジャイロスコープ、加速度計および磁力計も有することができる。
【0021】
少なくとも1のセンサは、1または複数の測定値をデジタル化し、デジタル化した測定値をサーバ14に送信する。デジタル化した測定値は、1または複数の無線通信プロトコル16を使用してサーバに送信することができる。本発明は、センサがその信号を送信するために使用する技術によって限定されるものではないが、利用される可能性のあるそのような無線通信プロトコルには、Bluetooth、Zigbee、Ant+およびWifiが含まれる。改良例では、サーバは、単一のユニットまたは1または複数の付属品を備えたユニットとして、センサ内に又はその一部として統合され、センサに固定され、またはセンサと組み合わされ、有線または無線接続を介してデジタル化した測定値を送信することができる。例えば、1または複数のデジタル化した測定値を収集するセンサは、腕時計であってもよく、サーバは、腕時計の筐体の中に配置されるか、または腕時計を構成する1または複数の腕時計コンポーネントの中に組み込まれるものであってもよい。別の例では、1または複数のデジタル化した測定値を収集するセンサおよびサーバは、アイウェアの筐体の中に配置されるか、アイウェアに取り付けられるか、アイウェアを構成する1または複数のアイウェアコンポーネントの中に組み込まれるものであってもよい。
【0022】
1または複数の通信プロトコルは、測定値をリアルタイムまたはほぼリアルタイムにサーバに到達させるために、直接的である場合もあれば、1または複数の中間デバイスを含む場合もある。例えば、デジタル化した測定値をサーバ14に送信するために、1または複数の伝送サブシステムを利用することができる。伝送サブシステムは、送信機および受信機またはそれらの組合せ(例えば、トランシーバ)を含む。伝送サブシステムは、単一のアンテナまたは複数のアンテナを有する受信機、送信機および/またはトランシーバを含むことができ、それらがメッシュネットワークの一部であってもよい。改良例では、送信機、受信機またはトランシーバが、少なくとも1または複数のECGセンサに一体化されている。別の改良例では、1または複数の伝送サブシステムが、ウェアラブルであり、直接、または1または複数の中間物(例えば、衣服、人が着用する機器)を介して対象に取り付けられるか、または対象と接触することができる。さらに別の改良例では、1または複数の伝送サブシステムが、任意選択的に別のセンサとして機能するか、または少なくとも1のECGセンサ内に統合されるオンボディまたはインボディトランシーバ(「オンボディトランシーバ」)を含む。オンボディトランシーバは、標的となる対象上の少なくとも1のECGセンサまたは1または複数の標的となる対象にわたる少なくとも1のECGセンサと通信するように動作可能であり、ECG関連データに加えて、1または複数のタイプの他の生物学的データ(例えば、位置データ、水分補給データ、生体力学データ)を追跡することができる。改良例では、オンボディトランシーバが、対象の皮膚、重要臓器、筋肉、骨格系、衣類、物体または対象の身体上の他の装置に取り付けられ、一体化され、または接触する。有利には、オンボディトランシーバは、対象の身体上の1または複数のECGセンサからリアルタイムまたはほぼリアルタイムでデータを収集し、その特定のセンサの1または複数の伝送プロトコルを使用して各センサと通信する。変形例では、伝送サブシステムが、人または物体上の少なくとも1のECGセンサからの連続ストリーミングのための空中トランシーバで構成されるか、またはそれを含むことができる。空中ベースの伝送サブシステムの例には、トランシーバが取り付けられたドローンおよび/または通信衛星を含む、1または複数の無人航空機が含まれるが、これに限定されるものではない。無人航空機ベースのデータ収集および配信システムの追加の詳細は、2019年7月19日に出願された米国特許出願第16/517,012号に開示されており、その開示内容は、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0023】
好ましくは、毎秒250~1000のそのような測定値がブロードキャスト(例えば、送信)されるが、使用される少なくとも1のセンサに応じて測定値が増減し得る。それらの測定値から、サーバ14は、1秒あたり約1回、心拍数値を計算するが、これは調整可能なパラメータであってもよい。サーバ14は、プロトコル20を使用して、1または複数の心拍数値をディスプレイ18に伝える。典型的には、ディスプレイは、視覚的な形式で情報を伝達する。ディスプレイは、ディスプレイを構成する複数のディスプレイを含むことができる。ディスプレイは、対象10および/または他の人によって見られるように配置することができる。有利には、ディスプレイは、音声または聴覚形式(例えば、心拍数測定値の口頭での伝達)を介して、物理的ジェスチャ(例えば、1または複数の心拍数測定値に関連する情報を提供する物理的振動)を介して、またはそれらの組合せを含む1または複数の他のメカニズムを利用して情報を伝達することができる。プロトコル20は、無線プロトコルであっても、有線プロトコルであってもよい。いくつかの実施形態では、ディスプレイ18およびサーバ14を、処理および表示機能を有するスマートフォン、または他のコンピューティングデバイス(例えば、AR/VRヘッドセット)などの単一の物理デバイスに統合することができる。「コンピューティングデバイス」という用語は、一般に、別のコンピューティングデバイスとの通信を含む、少なくとも1の機能を実行できる任意のデバイスを指す。改良例では、コンピューティングデバイスが、プログラムステップを実行できる中央処理ユニットと、データおよびプログラムコードを格納するためのメモリとを含む。有利には、サーバ14および/またはディスプレイ18は、人10が着用可能なもの(例えば、スマートアイウェア、腕時計)であってもよい。
【0024】
図2は、ECG測定値の例示的な出力を示している。測定値は、拍動毎に繰り返される規則的なパターンに従っていることに留意されたい。繰り返しパターンにおける様々なポイントには、P、Q、R、S、Tという表示が付けられている。Rポイントは、局所的なピークによって示されている。Rピークの時刻は、1≦i≦nとして、R_locと表示される。連続したR_locの時刻の差は、1≦i<nとして、拍動間隔i(IBI)と表示される。(図2に示す出力では、n=6である。)Rピーク間の時間は、間隔の始まりよりも、図2の時間帯の終わりに近いほど短くなっていること留意されたい。これは、心拍数が増加していることを示している。心拍数が急激に変化しているときの心拍数の算出は、心拍数が安定しているときの心拍数の算出よりも困難である。図2のグラフではRピークがはっきりしているが、実際の測定では必ずしもそれ程明確ではない。図1のシステムでは、ECG信号に、人体の動きによる測定ノイズ、人または人の一部(例えば、体筋肉、体脂肪)のアーチファクトによるノイズ、センサの劣化、導電性、環境条件および伝送など、様々なノイズの原因がある。
【0025】
瞬間的なHRの異常を処理する方法の1つとして、ウィンドウイング法(windowing method)がある。この方法の詳細な説明は、以下のセクションで説明する。ECGデータを見るために、10秒(またはそれ未満)~5分(またはそれ以上)のようなある期間のスライディングウィンドウを使用することができる。その中には、検出された複数のRピーク(拍動)が含まれている。ノイズの多い信号では、それらの拍動の一部がノイズピークとなり、結果的に非常に高い又は低いHRの外れ値となる可能性がある。これらの値の分布を分析することで、HRの計算を行う前に、良好な拍動を受け入れるか、または拒否することができる。より細かい分解能のために、かつ過去のHR情報を使用するために、重なり合うスライディングウィンドウを使用することができる。この方法は、HRの急激な変化を避けるのに非常に有用で有効である。改良例では、スライディングウィンドウの正確な期間が調整可能なパラメータであり、過去に収集されたデータセットを見て将来の発生を予測する人工知能または機械学習技術に基づいて調整することができ、それは、対象、対象が従事している活動、センサ、および/またはそれらの組合せを含む1または複数のパラメータに基づいて行うことができる。
【0026】
図3は、デジタル化されたECG測定値の受信ストリームに基づいて心拍数値のストリームを計算する、サーバ14によって実行される方法を示している。この方法は、最も最近に計算された心拍数値を表すパラメータPast_HRを利用する。ステップ30では、このパラメータが初期化される。Past_HRを初期化する手順は、以下でより詳細に説明する。ステップ32では、この方法は、約10秒間、ECGデータを収集する。収集するデータの正確な期間は、調整可能なパラメータである。長い期間を使用すると、心拍数の急激な変化に対する方法の応答性が低下する可能性がある。また、期間が短すぎると、更新された心拍数を計算できない方法の頻度が高くなる可能性がある。改良例では、人工知能または機械学習技術を利用して、1または複数のパターンを識別したり、1または複数の値を重み付けしたりすることで、1または複数の心拍数値に影響を与えることなく、より長い期間又はより短い期間を利用することができる。ステップ34では、Rピークの位置が特定される。このステップに対しては、本発明者等が推奨する方法であるPan-Thompkinsアルゴリズムを含む、様々な方法が知られている。このステップの結果は、1≦i≦nとして、一連の時刻、R_locである。ステップ36では、本方法が、隣接するR_loc値間の時間に基づいて、複数のサンプル値を計算する。具体的には、1≦i<n-1として、各サンプル値HRは、60を、隣接するR_loc値間の時間差で割った値に等しい。HRサンプル値は、対象の心拍数と同じ単位(拍動/分)を持ち、同じ全体的な範囲に収まることが予想される。いくつかの実施形態では、報告前に適切な変換を行って、IBIなどの異なるが関連するサンプル値を使用することができる。ステップ38では、本方法は、サンプル数が10などの予め規定された最小値を超えるか否かをテストする。必要なサンプル数は、調整可能なパラメータである。サンプル数が不十分である場合、本方法はステップ40に分岐し、更新された値を計算することなく以前の値を報告する。改良例では、更新された値を計算するために、以前に収集されたデータの少なくとも一部に基づいて、1または複数のサンプルを人工的に生成(作成)することができる。人工的なデータは、1または複数の人工知能および/または機械学習技術を利用して生成することができ、それには1または複数のニューラルネットワークのトレーニングが含まれる。シミュレートされた動物データおよびモデルを生成するシステムの追加の詳細は、2019年9月6日に出願された米国特許出願第62/897,064号に記載されており、その開示全体は、引用により本明細書に援用され、本開示における1または複数の人工知能および機械学習技術を利用する他の引用および実施例に適用可能である。
【0027】
デジタル化されたECG測定値の受信した時系列のノイズに起因して、2タイプのピーク検出エラーが発生する可能性がある。第1のタイプのエラーは、真のピークが検出されない場合である。このタイプのエラーの結果は、2つの正しいIBI値の合計に等しいIBI値となる。結果として得られるHR値は正しい心拍数よりも大幅に小さくなる。第2のタイプのエラーは、誤ったピークが検出される場合である。このタイプのエラーの結果は、合計して正しいIBI値になる2つのIBI値である。結果として得られる2つのHR値はそれぞれ正しい心拍数よりも大きくなる。何れのタイプのエラーについても、結果として生じる偽の値は、報告される心拍数値の計算に含めるべきではない。
【0028】
サンプル数が十分であれば、本方法は、Past_HRの閾値内にあるサンプルのサブセットを選択する。閾値は、サンプルの差の標準偏差に依存する。ステップ42では、隣接するサンプル間の差、1≦i<n-2として、Diffが計算される。ステップ44では、HRサンプルの差の標準偏差が計算され、第1の閾値と比較される。本発明者等は、この第1の閾値として5拍動/分の値を推奨しているが、これは調整可能なパラメータである。標準偏差が第1の閾値よりも小さい場合、サンプルは、Past_HRの第2の閾値内にあるか否かに基づいてステップ46で選択される。本発明者等は、この第2の閾値として20拍動/分の値を推奨しているが、これは調整可能なパラメータである。ステップ44において標準偏差が第1の閾値以上である場合、ステップ48でサンプルがPast_HRの第3の閾値内にあるか否かに基づいて選択される。本発明者等は、この第3の閾値として12拍動/分の値を推奨しているが、これは調整可能なパラメータである。ステップ50では、本方法は、任意のサンプルが選択されたか否かをテストする。そうでない場合、本方法はステップ40に分岐し、更新された値を計算することなく以前の値を報告する。
【0029】
ステップ50でいくつかのサンプルが選択された場合、本方法はステップ52で、選択されたサンプルの平均を取ることにより、Current_HRを計算する。そして、この更新された心拍数値は、表示ユニットに送信することによって報告される。ステップ54では、Past_HRがCurrent_HRと等しく設定される。更新された値は、将来の反復においてサンプルを選択するための基礎となる。
【0030】
本方法は、ステップ54で更新された値を報告するか、またはステップ40で以前の値を報告した後、ステップ56で約1秒間、追加ECGデータを収集し、追加データを、セグメントと呼ばれる現在のECGデータウィンドウの最後に付加する。ステップ58では、ステップ56で追加されたデータと同じ長さのECGデータの最も古い部分が、ECGデータウィンドウから削除される。ステップ56とステップ58の時間間隔は、値が多かれ少なかれ頻繁に必要な場合に調整することができる。その結果、以前の反復からのデータの約90%が新しいECGデータウィンドウに含まれる。
【0031】
図4は、ステップ30の初期化手順を示している。ステップ60では、約2分間のECGデータがサーバによって収集される。しかしながら、これは調整可能なパラメータである。好ましくは、このデータは、心拍数が比較的一定であり、人の動きが信号ノイズの増加を引き起こさないように、人が安静にしている間に収集される。ステップ62では、本方法が、例えばPan-Thompkinsアルゴリズムを使用して、収集したECG測定値のストリームにおけるRピークを識別する。ステップ64では、複数のサンプルHR値が、Rピークの時刻、R_locから計算される。ステップ66では、初期Past_HR値が、HR値のサンプルの平均を取ることによって計算される。
【0032】
図5Aおよび図5Bは、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用した様々な肉体的活動に従事している人の心拍数測定値を示している。これらの例では、接着剤を介して対象の胸部に固定された単一のリードセンサが、毎秒250回のサンプリングレートで生データ(例えば、アナログ測定値)を生成し、これが本明細書に記載のシステムおよび方法を利用して心拍数測定値に変換される。図5Aは、人体の活動性の高い動きを伴うスポーツであるスカッシュの心拍数測定値の比較を示している。ライン70は、試合中にプロのスカッシュ選手の胸部ストラップベースの心拍数モニタから得た心拍数測定値を示しており、ライン72は、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用した、単一のリードセンサによる同じ試合中のプロのスカッシュ選手の心拍数測定値を示している。図5Bは、人体の活動性の高い動きを伴うスポーツであるテニスの心拍数測定値の比較を示している。ライン80は、トレーニングセッション中にプロのテニス選手の胸部ストラップベースの心拍数モニタから得た心拍数測定値を示し、ライン82は、本明細書に記載のシステムおよび方法を利用した、単一のリードセンサによる同じトレーニングセッション中にプロのテニス選手の心拍数測定値を示している。ライン84は、ライン80とライン82との間の1分あたりの心拍数のデルタ差を示している。
【0033】
改良例では、1または複数の心拍数測定値を計算するために必要なECG関連の読取値を提供するために、2以上のセンサを同時にまたは連続して利用することができる。例えば、心拍数測定値を計算する際に、1つのセンサをリードIの位置に配置し、別のセンサをリードIIの位置に配置し、別のセンサをリードIIIの位置に配置し、2つ以上のセンサがサーバと通信するか、互いに通信するか、またはその両方と通信するようにすることで、1または複数のセンサから送信されたデータの少なくとも一部から1または複数の心拍数測定値を計算することができる。
【0034】
殆どの場合、1または複数のセンサは、サーバに直接提供されるアナログ測定値(例えば、生のAFEデータ)を生成し、サーバは、前述した方法を適用してデータをフィルタリングし、1または複数の心拍数値を生成する。しかしながら、データの信号対雑音比が極めて低い場合には、プレフィルタロジックが必要になることがある。本発明者等は、プレフィルタ方法を提案するものであり、それにより、システムが、センサから生成したデータを「修正」するためにいくつかのステップを実行し、生成した1または複数のデータ値がクリーンで、予め設定された範囲内に収まるようにする。このプレフィルタロジックは、センサからのデータを消費し、外れ値または「悪い」値を検出し、それらの値を予想される値または「良い」値に置き換え、「良い」値を1または複数の心拍数値の計算に引き渡す。「修正」とは、本発明者等は、1または複数の代替的なデータ値(すなわち、「良い」値)を作成して、予め確立された閾値から外れる値を、1または複数の「良い」データ値であって、時系列の生成した値に整列しかつ予め確立された閾値内に収まるデータ値に置き換える能力を意味する。それらのステップは、心拍数ロジックが受信したデータに対してアクションを実行して1または複数のHR値を計算する前に行われる。
【0035】
有利なことに、1または複数のデータ値の識別および置換のためのプレフィルタロジックおよび方法は、生の出力および処理された出力の両方を含む、収集された任意のタイプのセンサデータに適用することができる。説明のために、アナログ測定値(AFE)などの生データは、筋電図(EMG)信号などの他の波形に変換することができるが、本発明者等は、ECGおよびHR値へのその変換に焦点を当てる。
【0036】
先に述べたように、プレフィルタロジックは、1または複数のセンサから生成された時系列のAFE値における信号対雑音比がゼロであるか、ゼロに近いか、または数値的に小さいというシナリオにおいて重要になる。この場合、1または複数の心拍数値を生成する本明細書に記載のシステムおよび方法は、1または複数のそのような値を無視することができ、その結果、心拍数値が生成されないか、または予め確立されたパラメータ、パターンおよび/または閾値から外れる心拍数値がもたらされることがある。そのようなAFE値は、対象が1または複数の他の生理学的パラメータ(例えば、筋肉活動)を増加させる行動をとることや、同じセンサからの競合信号が導入されたり接続を悪化させたりすること、あるいは他の変数から生じる可能性がある。これにより、一連のHRに一貫性がなくなる可能性がある。
【0037】
この問題を解決するために、本発明者等は、以前に生成された値ではなく、将来の値を見ることによって、1または複数のデータ値を作成することを可能にする方法を確立している。より具体的には、システムは、1または複数の外れ信号値を検出し、外れ値を、予想される範囲(例えば、確立された上限値および下限値)内に入る1または複数の信号値に置き換えることにより、系列を平滑化する効果を有すると同時に、各値間の分散を減少させることができる。確立された予想範囲は、個人、センサのタイプ、1または複数のセンサパラメータ、1または複数のセンサ特性、1または複数の環境要因、個人の1または複数の特性、個人の活動などを含む多くの様々な変数を考慮に入れることができる。予想される範囲は、以前に収集されたセンサデータおよび/またはその1または複数の派生データの少なくとも一部と、場合によっては前述した変数の1または複数を使用して、予想される範囲を予測する1または複数の人工知能または機械学習技術によって作成されるものであってもよい。予想される範囲は、一定期間にわたって変化し、本質的に動的であり、1または複数の変数(例えば、人が従事している活動や環境条件)に基づいて調整することができる。変形例では、1または複数の人工知能または機械学習技術を少なくとも部分的に利用して、1または複数のセンサからの収集されたセンサデータおよび/またはその1または複数の派生データの少なくとも一部から得られる予想される範囲(例えば、上限値および下限値)内の1または複数の人工的な信号値(例えば、上限値および下限値)を生成することができる。
【0038】
将来の値に基づいて1または複数の値を作成するという所望の結果を達成するために、本システムは、先ず、センサの「正常な」または「予想される」AFE値の1または複数をサンプリングし、統計的検定および探索的データ分析を適用して、センサによって生成された各AFE値の許容可能な上限値および下限値を決定する。これは、四分位範囲(IQR)、分布およびパーセンタイルカットオフ、尖度などのような外れ値検出技術を含むことができる。正常なまたは予想されるAFE値は、以前に収集されたセンサデータの少なくとも一部を利用することにより求めることができる。また、正常なまたは予想されるAFE値とみなされるものは、センサによって、センサパラメータによって、または正常または予想されると判定されるものに加味される他のパラメータ/特性(例えば、対象、対象が従事している活動)によって異なる場合がある。
【0039】
外れ値が識別されると、プレフィルタロジックは、後方補間法を使用して、1または複数の外れ値(すなわち、許容される下限値および上限値から外れるAFE値)を、サンプルの現在のウィンドウにおいて正常な範囲内に入る次の利用可能な値で埋める。これにより、処理不可能なノイズを含まない、よりクリーンで予測可能な時系列の値が得られる。改良例では、1または複数の値が、人工知能または機械学習技術を利用して生成され、モデルが、過去の一連のAFE値が与えられた場合に次のAFE値を予測するように訓練され、かつ/または、一連の値が正常な範囲内に収まるようにするために1または複数の外れ値に対する代替として使用される。変形例では、ユーザは、センサから生成されるAFE信号と同様の波形を記述するヒューリスティックまたは数式ベースの方法を利用することができる。
【0040】
心拍数値について、本システムは、生データを処理するプレフィルタロジックによって使用されるデータ量を増加させて、n秒間に相当するAFEデータを含むことができる。本システムによって収集および利用されるデータ量の増加により、QRS群を識別するために使用される間隔の数が増加するに連れて、本システムがHR生成値のより予測可能なパターンを作成することが可能になる。これは、HRが1秒間のサブインターバルで計算されたHR値の平均値であることから生じる。秒数のnは調整可能なパラメータであり、予め設定するようにしても、動的に設定するようにしてもよい。改良例では、人工知能または機械学習技術を利用して、1または複数の以前に収集されたデータセットに基づいて、所与の範囲内に入る1または複数の値を生成するために必要なAFEデータのn秒数を予測することができる。
【0041】
データの前処理は、QRS群の可能性のあるRピークを再現することができない可能性があるが、1または複数のノイズのある値を正常または予想される信号の範囲内に引き込むことにより、HR値を生成する下流のフィルタおよびシステムが、品質の高い信号がない場合に、予想される範囲内に入る1または複数のHR値を生成することが可能になる。
【0042】
過去何年にもわたって、心拍数は、消費者の健康モニタリングシステムだけでなく、医療においても広く使用されてきた。心拍数は、自律神経系(ANS)の非侵襲的な基準である。心拍数とそのモニタリングは、スポーツにおけるトレーニングや所与のパフォーマンスの評価に効果的に利用されている。また、エアロビクスフィットネスに関する情報も提供する。また、心拍数は、トレーニングや回復の最適化、病気のリスクの特定、健康モニタリング、死亡率や罹患率の把握など、様々な用途に使用されている。さらに、心拍数の測定値を他のデータセットや推論と組み合わせることで、心拍数の解釈に関連する付加価値を提供することができる。例えば、緊張や回復など数多くの要因が心拍数の測定値に影響を与えるため、同じデータの複数の解釈に繋がる可能性がある。さらに、心拍数の測定値が取得されたコンテキストに関連する情報(例えば、トレーニングプログラムの最初に取得された心拍数の測定値と途中で取得された心拍数の測定値、身体運動分布、トレーニング負荷)や、収集された他のセンサデータ(例えば、筋肉関連データ、水分補給関連データ)および観察結果(例えば、知覚された疲労)が関連する可能性がある。
【0043】
心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値のリアルタイムまたはほぼリアルタイムのモニタリングは、多くの用途で、航空および宇宙旅行、医療(例えば、病院)、製薬、自動車、軍事、スポーツ、フィットネス、自治体(例えば、警察、消防)、ヘルスケア、金融、保険、製造、通信、食品および飲料、ICT、石油およびガス、個人の健康、研究、企業のウェルネスなどを含む様々な産業で使用される可能性がある。例えば、トレーナやフィットネス技術(フィットネスマシンなど)は、計算された心拍数に基づいて、トレーニング中のアスリートの運動パターンを調整することができる。トレーニングや競技中に、疲労、最適でないパフォーマンス、または怪我のリスクを示す心拍数に基づいて、アスリートを休ませることができる。心拍数および/またはその1または複数の派生値は、エネルギー発揮やストレスなどのマーカーの指標の一部として利用されることがある。心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値は、スポーツ賭け用途において、少なくとも部分的に、賭け金/ベットとして、賭け金/ベットを賭けるために使用する情報として、賭け金/ベットに関連するオッズを調整するための情報として、賭け商品を作成するための入力として、確率(例えば、ある個人が心臓発作を起こす可能性)を評価または計算するための入力として、戦略を策定するための入力として(例えば、保険会社が心臓ベースの測定値に基づいて特定の人に保険をかけることを望むか否か)、リスクを軽減するための入力として(例えば、保険会社では、心臓ベースの測定値に基づいて誰かに保険をかけないことを決定するために、または保険料を引き上げるために、心臓ベースの測定値を利用すること、病院では、人が心臓発作を起こさないようにするために、心臓ベースの測定値をモニタリングすること、宇宙旅行では、対象が宇宙旅行に適しているか否かを判定するために心臓ベースのデータをモニタリングすること)、メディアコンテンツの入力として(例えば、自分のソーシャルメディアやフィットネス企業のオンラインコミュニティで共有するために、グループフィットネスクラスから得られた心臓ベースの測定値を使用すること、あるいはプロスポーツやビデオゲームコンテンツのライブ配信の一部として心拍数データを使用すること)、またはプロモーションのための入力として利用することができる。1または複数の心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値を利用することができるアプリケーションを備えた動物データ予測システムに関連する追加の詳細は、2019年4月15日に出願された米国特許出願第62/833,970号、および2019年10月9日に出願された米国特許出願第62/912,822号に開示されており、それらの開示内容は、全体が引用により本明細書に援用されるものとする。
【0044】
変形例では、1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部が、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで、1または複数のユーザの健康を監視し、またはそれに直接的または間接的に関連するフィードバックを提供するために使用される。例えば、1または複数の対象が、1日を通して様々な環境(自宅、職場、フィットネスクラス、睡眠中など)で自分の心拍数ベースの測定値を監視し、心拍数および/またはその1または複数の派生値(パフォーマンスゾーンなど)をリアルタイムまたはほぼリアルタイムで表示することを望む可能性がある。別の例では、航空会社がパイロットの心拍数やECGを監視して、飛行中のパイロットの生理的状態をよりよく理解することを望む可能性がある。宇宙旅行会社は、健康関連の飛行中の状態チェックの一環として、乗客または乗組員の心臓ベースの測定値をリアルタイムで監視することを望む可能性がある。保険会社は、保険に加入する個人の生理的特徴をよりよく理解するために、運動や他の活動中の心拍数を測定し、そのデータに基づいて保険料を調整することを望む可能性がある。建設会社や石油およびガス会社は、従業員の心臓の健康状態をリアルタイムで監視することを望む可能性がある。軍事組織は、兵士の健康状態をリアルタイムで監視することを望む可能性がある。老人ホームや介護施設は、患者の心拍数測定値を監視することを望む可能性がある。タクシー会社は、保険目的で運転手に関連する生理学的データを監視することを望む可能性がある。企業は、従業員の勤務中の心拍数をリアルタイムで監視することを望む可能性がある。モニタ/ディスプレイ付きの複合自転車、モニタ/ディスプレイ付きのトレッドミル、またはソフトウェア分析プラットフォームなどのフィットネスプラットフォームは、ワークアウト中、またはワークアウトの前後に、そのプラットフォームのユーザにリアルタイムの心拍数フィードバックを提供することを望む可能性がある。これらの例では、1または複数の場所でのモニタリングを、心臓ベースの測定値を導出する1または複数のセンサと、ウェブブラウザ内で実行されるアプリケーションとの間の直接通信を介して行うことができる。心拍数の測定値およびその1または複数の派生値を利用するブラウザベースの生体データ追跡システムおよび方法に関する追加の詳細は、2019年2月13日に出願された米国特許出願第16/274,701号に開示されており、その開示内容は、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。改良例では、1または複数の心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値を1または複数のユーザに伝達するディスプレイが、1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部に基づいて、1または複数のユーザが取るべき1または複数の行動について1または複数の推奨、指示または命令を提供する。例えば、ディスプレイは、データに基づいて、取るべき1または複数の行動について1または複数の推奨事項を提供することができる(例えば、心拍数測定値が高過ぎる場合には「活動を停止しなさい」、心拍数測定値またはECGが不規則である場合には「医師に相談しなさい」、対象の心拍数測定値が潜在的な健康問題を知らせる場合には、緊急番号に電話する行動が開始されるか、またはユーザに対して、例えば対象の配偶者または医師に対して、表示装置に「緊急番号に電話しなさい」というアラートが表示される)。
【0045】
改良例では、対象の1または複数の心臓に基づく測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部に基づいて、1または複数の調整、変更、修正または行動が、推奨され、開始され、または取られる。例えば、ユーザ(例えば、自動車会社)は、車両内の対象の状態または状況を判定するために、車両内の運転者または乗客の心拍数またはECG測定値を監視することを望む可能性がある。ユーザまたは車両自体は、1または複数の心拍数測定値が、運転手および/または乗客の1または複数の潜在的な問題を知らせると解釈された場合(例えば、乗客が心臓発作を起こした場合)、1または複数の修正行動を取ることができる(例えば、車を停止させる、車を路肩に止める)。別の例では、対象の心拍数を監視するフィットネスプラットフォーム(例えば、アプリケーション、相互に接続されたフィットネスハードウェアおよびソフトウェア)は、心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値に基づいて、リアルタイムまたはほぼリアルタイムで調整を行うことができる(例えば、トレッドミルは、心臓ベースの目標ゴールに基づいて自動的に減速または加速し、サイクリングマシンは、対象の心拍数に基づいて自動的に難易度を増減することができる)。別の例では、複合コンピューティング表示装置は、人が不規則な測定値を有することが検出された場合、911を呼び出すための行動をとることができる。さらに別の例では、保険会社は、上述したシステムの何れかを適用して、対象の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値に基づいて保険料を調整することができる。
【0046】
改良例では、1人または複数の対象が、心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部へのアクセスを提供することと引き換えに、対価を受け取ることができる。例えば、アスリートは、対価(例えば、金銭または価値のある何か)と引き換えに、自分の心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値へのアクセスを公開するために提供することができる(例えば、スポーツの生放送で自分の心拍数データを表示するとができる)。別の例では、特定のサブセットの人々(例えば、規定された年齢、体重、身長、病状、社会的習慣など)から心拍数測定値を収集することに関心のある研究組織の基準を満たす人が、対価と引き換えに、より大規模なグループ研究の一部として(例えば、研究では10,000人の個人が必要であり、この人が10,000人のうちの1人である場合)、自分の心拍数測定値へのアクセスを研究組織に提供することができる。別の例では、組み合わせた自転車/モニタ、トレッドミル/モニタ、フィットネスマシン、またはソフトウェア分析プラットフォームなどのフィットネスプラットフォームの1または複数のユーザが、ユーザ(例えば、データ作成者)またはデータ権利保有者(例えば、所有者)に提供される対価と引き換えに、その収集した心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値を、データの取得に関心のある1または複数の当事者(例えば、保険会社)に提供することができ、その対価は、本質的に金銭的なものであっても、別の形式(例えば、フィットネスプラットフォームへの割引または無料アクセス、保険料の引き下げ、他の無料または割引の特典)で与えられるものであってもよい。心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値を利用するヒトデータの収益化システムの追加の詳細は、2019年4月15日に出願された米国特許出願第62/834,131号、および2019年10月8日に出願された米国特許出願第62/912,210号に開示されており、それらの開示内容は、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0047】
改良例では、1または複数の心臓ベースの測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部は、(1)1または複数の戦略を策定するために、(2)1または複数の賭け金/ベットを賭けることができる1または複数の市場を提供するために、(3)1または複数のユーザに行動を起こすように通知するために、(4)1または複数の賭け金/ベットが賭けられる1または複数の値として、(5)1または複数の確率またはオッズを計算、修正または評価するために、(6)1または複数の商品を作成、強化または修正するために、(7)1または複数のシミュレーション、アプリケーションまたは分析に利用される、1または複数のデータセットとして、または別の1または複数のデータセットの一部として、(8)出力が1または複数のユーザに直接的または間接的に関与する1または複数のシミュレーションにおいて、(9)1または複数のメディアまたはプロモーションの入力として、または(10)1または複数のリスクを軽減するために、使用することができる。商品は、取得、購入、販売、取引、ライセンス供与、広告、評価、標準化、認証、リースまたは配布が可能なデータ商品を含むことができる。
【0048】
別の改良例では、心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値は、人工データを作成するために利用することができ、人工データは、1または複数のシミュレーションを介して、心拍数測定値および/またはその1または複数の派生値の少なくとも一部に基づいて生成することができる。人工データは、多くの用途で使用することができ、例えば、(1)1または複数の戦略を策定するために、(2)1または複数の賭け金/ベットを賭けることができる1または複数の市場(例えば、プロポジションベット)を提供するために、(3)1または複数のユーザに行動を起こすよう通知するために、(4)1または複数の賭け金/ベットが賭けられる1または複数の値として、(5)1または複数の確率またはオッズを計算、修正または評価するために、(6)1または複数の商品を作成、強化または修正するために、(7)1または複数のシミュレーション、アプリケーションまたは分析に利用される、1または複数のデータセットとして、または別の1または複数のデータセットの一部として、(8)出力が1または複数のユーザに直接的または間接的に関与する1または複数のシミュレーションにおいて、(9)1または複数のメディアまたはプロモーションの入力として、または(10)1または複数のリスクを軽減するために、使用することができる。有利なことに、少なくとも部分的に心拍数の測定値から得られる人工データは、将来の発生または傾向を予測するために利用することができる。人工データは、1または複数のニューラルネットワークのトレーニングを伴う、1または複数の人工知能および/または機械学習技術を利用して生成することができる。
【0049】
別の改良例では、1または複数の訓練されたニューラルネットワークが、心拍数測定値などの以前に収集されたECG由来のデータを利用して、より正確で精密な心拍数測定値を提供するために、データの1または複数の変動を識別および/または分類することができる(例えば、「有効な」Rピーク対「偽の」Rピークの検出)。例えば、1または複数のECGデータセットが、個人の所与の活動について収集された場合、有効なRピークおよび偽のRピーク(またはノイズの多いRピーク)を識別および区別するように、1または複数のニューラルネットワークを訓練することができる。さらに、収集された実際の心拍数測定値またはECG関連データに基づいて、人工的な心拍数測定値または他のECG関連データを生成するように、1または複数のニューラルネットワークを訓練することができる。例えば、心拍数測定に関連する1または複数のデータセットが所与の活動についてシステムにより収集された場合、1または複数の変数を調整する能力を有することにより、将来の発生を予測するための人工データ(例えば、心拍数測定値)を生成するように、1または複数のニューラルネットワークを訓練することができる。所与のアスリートの心拍数測定値を含む生理学的データセットが、1または複数の変数(例えば、85度の気温、65%の湿度、2000フィートの標高)とともに収集された場合、システムは、ユーザにより設定された1または複数の調整された変数を組み込んだ人工データ(例えば、人工心拍数測定値)を生成する能力を有することができる(例えば、アスリートの心拍数測定値が95度の暑さと85度の暑さでどのように見えるかを理解するためにシミュレーションを実行することができる)。ニューラルネットワークは、敵対的生成ネットワーク(GAN)など、様々な手法で訓練することができる。GANは、2つのニューラルネットワークで構成されるディープニューラルネットワークアーキテクチャであり、一方を他方(敵対者)に対抗させる。GANを利用して、ジェネレータは1または複数の新しいデータ値を生成し、これは1または複数の新しいデータセットを含むことができ、一方、ディスクリミネータは、1または複数のユーザ規定の基準に基づいて1または複数の新しい値を評価し、新しく作成された値を認証、検証または確認する。シミュレートされた動物データおよびモデルを生成するシステムの追加の詳細は、2019年9月6日に出願された米国特許出願第62/897,064号に開示されており、その開示内容は、引用によりその全体が本明細書に援用されるものとする。
【0050】
改良例では、1または複数のシミュレーションにおける1または複数の変数が、1または複数のユーザにより決定されるようにしてもよく、1または複数のシミュレーションの出力が、対価と引き換えに1または複数のユーザに分配されるようにしてもよい。
【0051】
例示的な実施形態を述べてきたが、それらの実施形態は、特許請求の範囲に包含されるすべての可能性のある形式を記載することを意図しているわけではない。本明細書で使用されている語は、限定ではなく説明用の語であり、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されよう。上述したように、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、明示的に記載または図示されていない本発明の更なる実施形態を形成することが可能である。様々な実施形態を、1または複数の望ましい特性に関して、他の実施形態または先行技術に比べて利点を提供するか、好ましいものとして説明している場合もあるが、当業者であれば、1または複数の特徴または特性を妥協して特定の用途および実行に依存する所望のシステム全体の属性を達成することができることを認識するであろう。そのため、1または複数の特性に関して、他の実施形態または従来技術よりも望ましくないと説明された実施形態は、本開示の範囲外ではなく、特定の用途において望ましいものとなる可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
【国際調査報告】