(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ウイルス組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/765 20150101AFI20220419BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220419BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/7012 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20220419BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220419BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20220419BHJP
C12N 7/04 20060101ALN20220419BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
A61K35/765 ZNA
A61P35/00
A61P37/04
A61P31/12
A61K31/7012
A61K31/702
A61K31/715
A61K47/68
A61P43/00 121
C12N7/00
C12N7/04
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021541487
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051114
(87)【国際公開番号】W WO2020148422
(87)【国際公開日】2020-07-23
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】511294534
【氏名又は名称】ウニベルシテ カソリーク デ ルーベン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アルスティーン、デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー、メラニー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AC20
4B065CA44
4C076AA95
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4C076CC27
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4C086ZC75
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4C087AA02
4C087BC83
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4C087NA14
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4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
(57)【要約】
本発明の態様は、i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物またはキットオブパーツ、ならびに、それらの治療学的適用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物またはキットオブパーツ。
【請求項2】
前記レオウイルス科のウイルスが、少なくとも一つの脊椎動物種に対して宿主指向性を示す請求項1記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項3】
前記レオウイルス科のウイルスが、少なくとも一つの哺乳類種に対して宿主指向性を示す請求項1または2記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項4】
前記レオウイルス科のウイルスが、ヒトに対する宿主指向性を示す請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項5】
前記レオウイルス科のウイルスが、オルソレオウイルス、オルビウイルスまたはロタウイルスである請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項6】
前記レオウイルス科のウイルスが、外殻カプシドおよび内側コアを備えている請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項7】
前記レオウイルス科のウイルスが、宿主細胞表面レセプターに結合する能力のある外殻カプシドを含み、ここで前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子が、前記外殻カプシドタンパク質に、前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下におけるコンフォーメーションと比較して、前記レオウイルス科のウイルスにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションを取らせる請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項8】
前記外殻カプシドタンパク質が、シグマ-1タンパク質である請求項7記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項9】
前記シアル酸が、N置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部位が、N置換ノイラミン酸部位であり、ここで任意には、前記N置換ノイラミン酸または前記N置換ノイラミン酸部位がさらにO-置換されている請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項10】
前記シアル酸が、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)またはN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)であり、ここで任意には、前記Neu5Acまたは前記Neu5Gcの一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などで置換されていてもよく;または、前記少なくとも1つのシアル酸部位は、Neu5Ac部位またはNeu5Gc部位であり、ここで任意には、前記Neu5Ac部位または前記Neu5Gc部位の一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などでそれぞれ独立して置換されていてもよい請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項11】
前記シアル酸が、Neu5Acであり、または、前記少なくとも1つのシアル酸部位が、Neu5Acであり、好ましくは、前記組成物またはキットオブパーツがNeu5Acを含む請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項12】
前記分子が、末端部位として、前記少なくとも1つのシアル酸部位を含むオリゴ糖または多糖を含む、またはそれらから構成されている請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項13】
前記レオウイルス科のウイルスが、腫瘍溶解性のウイルスである請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項14】
腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスが、腫瘍性細胞に特異的に結合することができる例えば抗体などの結合剤に結合され、任意にはここで、前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子もまた前記結合剤に結合されている請求項13記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項15】
前記レオウイルス科のウイルスが、弱毒ウイルスである請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項16】
療法における使用のための、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項17】
腫瘍性疾患を処置する方法における使用のための、請求項13または14記載の組成物またはキットオブパーツ。
【請求項18】
前記レオウイルス科のウイルスに対する免疫化の方法における使用のための、請求項15記載の組成物またはキットオブパーツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は広く医学的分野にわたり、および具体的には、レオウイルス科(Reoviridae family)であるウイルスを含む組成物またはキットオブパーツに関する。開示されている組成物またはキットオブパーツは、例えば腫瘍性疾患を処置するための方法または免疫化方法においてなどの療法において特に有用である。本発明はまた、開示された組成物またはキットオブパーツを製造する方法または使用する方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、完全な細胞内寄生体であり、そしてそれらの単純性により、複製サイクルの事実上全てのステージにおいて宿主生物に依存している。進化および宿主への適応のあいだ、それらは、細胞機能を利用するおよび制御することができるための関連する分子「鍵(key)」または「入場券(entrance tickets)」を獲得した。ウイルス侵入は、ウイルス粒子と宿主細胞表面でのそれらの受容体とのあいだの相互作用によって大部分が規定される。これらの相互作用は、ウイルス付着、取り込み、細胞内輸送、および、細胞質基質への最終的な侵入の機構を決定する。
【0003】
レオウイルス科のウイルスは、リボ核酸(RNA)ウイルスであり、外側脂質エンベロープをもたず、球状の外観をもち、約60~100ナノメートル幅の大きさであり、2つのカプシド(または、通常外側カプシドおよび内部コアと称される、同心殻構造)を有し、セグメント化された、2本鎖RNAのコアを含む。レオウイルス科のウイルスは、現在のところ、2つの亜科、セドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae)およびスピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae)にグループ化されており、これは数多くの属を含んでおり、このうち、オルソレオウイルス(Orthoreovirus)、オルビウイルス(Orbivirus)、ロタウイルス(Rotavirus)が最も良く知られている。レオウイルス科のウイルスは、脊椎動物、無脊椎動物、植物、原生生物および真菌などを含む広宿主域を有する。例えば、ある種のオルソレオウイルス、オルビウイルス、コルチウイルスおよびロタウイルス種は、ヒトに感染し、ある種のオルソレオウイルス種は鳥に感染し、ファイトレオウイルスおよびフィジウイルス種は、植物および昆虫に感染し、サイポウイルス種は昆虫に感染し、および、アクアレオウイルスは魚類に感染する。
【0004】
哺乳類オルソレオウイルス(レオウイルス)による感染は、頻繁であるかもしれないが、典型的には軽度または無症状であるが、最近のヒトにおける研究は、グルテンに対する経口免疫寛容を働かなくさせることによりセリアック病の発症をトリガーすることにおけるレオウイルスの感染の役割を指示している(Bouziat, R. et al. Reovirus infection triggers inflammatory responses to dietary antigens and development of celiac disease. Science 2017, vol. 356, 44-50)。さらに、ロタウイルスは、感染性乳児下痢症を引き起こす主なヒト病原体であり、そして、乳児を守るために例えばRotarix(GlaxoSmithKline)またはRotaTeq(登録商標)(Merck Vaccines)などのロタウイルスワクチンの使用は珍しいものではない。
【0005】
レオウイルス感染は、商業的な家禽群に広がっている。大部分の株は、非病原性であり、および、腸内で無害に生き延びている。しかしながら、他の株は、いくつかの病状に関連付けられてきた。家禽において最も頻繁なレオウイルスに関連した疾患は、ウイルス性関節炎であり、これは、脛の腱および後脚くるぶしの上の腱の腫れに現れる。罹患した鳥は、屈曲不足の歩行となったり、または動かないことを好んだりする。トリにおけるレオウイルス感染に対するワクチンは市販されており、例えば、MSD Animal Health社によるNobilis(登録商標)REO 1133などが挙げられる。
【0006】
加えて、レオウイルスは選択的に、活性化されたRasシグナル伝達経路における形質転換細胞を標的とし、そして、少なくとも約30%のヒト腫瘍は、異常なRasシグナル伝達を示すため、レオウイルスは、有望な腫瘍溶解性剤である。Ras活性化された細胞を標的とすることにより、レオウイルスは直接的に腫瘍細胞を溶解し、腫瘍の免疫抑制メカニズムを遮断し、多脂肪免疫監視機構を再確立し、そして、強い抗腫瘍応答を生成することができる(Duncan et al. Differential sensitivity of normal and transformed human cells to reovirus infection. J. Virol. 1978, vol. 28, 444-449; Coffey et al. Reovirus therapy of tumors with activated Ras pathway. Science 1998, vol. 282, 1332-1334)。レオウイルスは、難治性のヒト癌に関する臨床試験においてその効果が示されてきた(Mahalingam et al. A phase II study of pelareorep (REOLYSIN((R))) in combination with Gemcitabine for patients with advanced pancreatic adenocarcinoma. Cancers (Basel) 2018, vol. 10, E160; Samson et al. Oncolytic reovirus as a combined antiviral and anti-tumour agent for the treatment of liver cancer. Gut 2018, vol. 67, 562-573; Samson et al. Intravenous delivery of oncolytic reovirus to brain tumor patients immunologically primes for subsequent checkpoint blockade. Science translational medicine 2018, vol. 10, eaam7577)。
【0007】
ウイルス外殻カプシドタンパク質のうち、シグマ-1(σ-1)タンパク質が、レオウイルス侵入に対する決定要因として浮かび上がってきている(Stencel-Baerenwald et al. The sweet spot: defining virus-sialic acid interactions. Nat. Rev. Microbiol. 2014, vol. 12, 739-749)。σ1タンパク質は、2つのドメイン、ウイルス粒子に結合している長いテイルおよびウイルス粒子表面から突き出ている球状のヘッドからなるフィブリン三量体である。両方の部分がレセプター結合ドメインを含んでいる。テイルドメインは、α結合シアル酸(α-SA)を含む細胞表面糖鎖と会合することができ、ヘッドドメインは、接合部接着分子A(JAM-A)と結合する(Danthi et al. Reovirus receptors, cell entry, and proapoptotic signaling. Adv. Exp. Med. Biol. 2013, vol. 790, 42-71)。最近の研究は、α-SA結合に関連するσ1テイル領域中の単一点突然変異がレオウイルス屈性における血清型依存性の相違の原因であり、より特には、血清型3のレオウイルスの神経毒性に影響し(Frierson et al. Utilization of sialylated glycans as coreceptors enhances the neurovirulence of serotype 3 reovirus. J. Virol. 2012, JVI. 01822-01812)、一方、JAM-Aレセプターは、3つ全てのレオウイルスの血清型のためのレセプターとして作用する(Stencel-Baerenwald et al. 2014, supra; Barton et al. Utilization of sialic acid as a coreceptor enhances reovirus attachment by multistep adhesion strengthening. J. Biol. Chem. 2001, vol. 276, 2200-2211 (‘Barton et al. 2001a’); Barton et al. Junction adhesion molecule is a receptor for reovirus. Cell 2001, vol. 104, 441-451 (‘Barton et al. 2001b’))ことを示した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、レオウイルスの細胞表面分子への結合のための分子メカニズムを明らかにするための発明者らの細心の注意を払った努力に少なくとも一部は基づくものであり、ウイルス侵入においてカギとなる段階である、シアル酸(SA)のレオウイルスシグマ1(σ1)タンパク質への結合が、JAM-A表面レセプターへのσ1結合能へのトリガーとして働くという予期せぬ発見を導いている。理論に束縛されることを意図するものではないが、発明者らは、より具体的にはSAのレオウイルスσ1タンパク質との相互作用が、σ1タンパクにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションへのコンフォーメーションの変化を積極的に促進すること、および、σ1タンパク質におけるこのコンフォーメーション変化がその細胞表面レセプター、特にはJAM-Aに結合するためのウイルスの増大された能力を結果としてもたらし、ウイルスと細胞表面とのあいだに確立される結合の数を顕著に増大させていることを発見した。この増大された結合は、したがって、ウイルスを細胞表面上に留め置くことを可能にし、そしてそれゆえ、細胞質基質へのその侵入をより起こりやすくする。
【0009】
これらの観察により初めて、シアル酸またはシアル酸部位または複数の部位を含む分子が、レオウイルスの細胞への結合および感染性の潜在的なエンハンサーとして同定され、レオウイルスの細胞侵入に依存する方法、例えばレオウイルスベースの療法など、例えば、レオウイルスの腫瘍溶解性特性を用いる療法、または、レオウイルスに対するワクチン接種を含む療法などの効率性を高めるための信頼のおける手段が提供される。
【0010】
したがって、一態様において、i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物が提供される。
【0011】
別の態様において、i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含むキットオブパーツが提供される。
【0012】
さらなる態様において、療法における使用のための組成物が提供される。関連する態様において、療法における組成物の使用が提供される。
【0013】
さらなる態様において、療法における使用のための組成物が提供される。関連する態様において、療法におけるキットオブパーツの使用が提供される。
【0014】
さらなる態様において、それらを必要とする対象を処置するための方法であって、対象に予防的または治療的に効果的な量のi)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を投与することを含む方法が提供される。
【0015】
さらなる態様において、レオウイルス科に属するウイルスを増殖させるためのインビトロの方法であって、i)該ウイルスによる感染に感作性である宿主細胞であってJAM-Aを過剰発現するように遺伝子組み換えされている宿主細胞を、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の存在下で該ウイルスを用いて、または、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を用いて前処理されているウイルスを用いて感染させること、ii)宿主細胞中でウイルスが増殖することを可能にすること、および任意にはiii)宿主細胞によって産生された増殖ウイルスを単離することを含む方法が提供される。
【0016】
本発明のこれらのおよびさらなる態様ならびに好ましい様態が続くセクションにおいて、および、添付の請求項において記載される。添付の請求項の主題は参照により本明細書中に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1a-1d】
図1は、生細胞へのレオウイルスの結合を調べるためのFDベースのAFMの原理を示す。(a)AFMは、光学顕微鏡に配置される。CHOまたはLec2細胞が、特別に設計された細胞培養チャンバーで維持され、これは、温度とガス雰囲気の制御を可能にし、培地の蒸発を防止する。(b)対象のウイルスで機能化された先端を備えたAFMカンチレバーが、サンプルに向かって接近および収縮運動を誘導する正弦波駆動運動でkHz範囲の周波数で振動される。(c、d)記録されたチップ-サンプルの相互作用が、力対時間(c)または力対距離(d)として表示され、これは生物学的サンプルに向けて確立された力の追跡を可能にする。(e)機械的特性(接着を含む)が、個々の力曲線から抽出され得、サンプル上のそれらの位置と直接相関され得る(たとえば、高さ画像および対応する接着マップなど)。
【
図1e】
図1は、生細胞へのレオウイルスの結合を調べるためのFDベースのAFMの原理を示す。(a)AFMは、光学顕微鏡に配置される。CHOまたはLec2細胞が、特別に設計された細胞培養チャンバーで維持され、これは、温度とガス雰囲気の制御を可能にし、培地の蒸発を防止する。(b)対象のウイルスで機能化された先端を備えたAFMカンチレバーが、サンプルに向かって接近および収縮運動を誘導する正弦波駆動運動でkHz範囲の周波数で振動される。(c、d)記録されたチップ-サンプルの相互作用が、力対時間(c)または力対距離(d)として表示され、これは生物学的サンプルに向けて確立された力の追跡を可能にする。(e)機械的特性(接着を含む)が、個々の力曲線から抽出され得、サンプル上のそれらの位置と直接相関され得る(たとえば、高さ画像および対応する接着マップなど)。
【
図2a】
図2は、実施例で使用された細胞株による細胞表面レセプター発現の特徴づけを示している。(a)JAM-A発現のフローサイトメトリープロファイル(左)および対応する蛍光強度中央値の定量化(右)。JAM-Aは、モノクローナル抗体および間接的免疫蛍光法を用いて検出された。(b)CHOおよびLec2細胞株が、蛍光レクチン(小麦胚芽凝集素、WGA)とのインキュベーションにより、細胞表面のシアル酸の発現について分析された。グラフは、示された細胞株に結合したWGAのサイトメトリープロファイル(左)および結合したレクチンの蛍光強度の中央値の定量化(右)を示している。
【
図2b】
図2は、実施例で使用された細胞株による細胞表面レセプター発現の特徴づけを示している。(a)JAM-A発現のフローサイトメトリープロファイル(左)および対応する蛍光強度中央値の定量化(右)。JAM-Aは、モノクローナル抗体および間接的免疫蛍光法を用いて検出された。(b)CHOおよびLec2細胞株が、蛍光レクチン(小麦胚芽凝集素、WGA)とのインキュベーションにより、細胞表面のシアル酸の発現について分析された。グラフは、示された細胞株に結合したWGAのサイトメトリープロファイル(左)および結合したレクチンの蛍光強度の中央値の定量化(右)を示している。
【
図3a-3b】
図3は、モデル表面上および生細胞上のシアル化グリカンに結合するT3レオウイルスのプロービングを示す。(a)単一ビリオンの結合が、α-SAグリカン誘導体:N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、シアリル-ラクト-N-テトラオースa(LSTa)、およびα-SAなしの誘導体(ラクト-N-ネオテトラオース[LNnT])の存在下または非存在下で、SAコーティングされた表面でプローブされる。(b)1mMグリカンの注入なしおよび注入後に決定された、ビリオンとα-SAとの間のAFMによって測定された特異的結合頻度の箱ひげ図。(c)T3SA+およびSAコーティングされた表面の間で測定された破壊力の分布(灰色の点)を示す動的力分光法(DFS)プロットであり、平均破壊力は、8つの異なる負荷率(LR)範囲で測定された。単一の相互作用に対応するデータは、単純な2状態モデル(I、黒い曲線)としてリガンド-レセプター結合を記述するBell-Evans(BE)モデルに適合される。破線は、2つ(II)および3つ(III)の同時の非相関的な相互作用の予測される結合力を表す(Williams-Evansモデル[WEM])。挿入:単純な2状態モデルとしてリガンド-レセプター結合を記述するBEモデル。結合状態は、距離x
uにあるエネルギー障壁によって非結合状態から分離されている。k
uとk
offは、それぞれ熱平衡での遷移率と遷移を表す。(d)細胞表面上にα-SAを発現している(CHO)または発現していない(Lec2)細胞に結合するT3SA+の組み合わされた光学顕微鏡およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光CHO細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)およびLec2細胞のコンフルエントな層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)およびプローブされた隣接細胞の対応する接着マップ(g)は、(e)の破線の四角中に示されている。接着マップは、主にCHO細胞(α-SA+細胞)(白いピクセル)上での相互作用を示す。(h)α-SAモデル表面(灰色の円、bから)および生細胞(赤い点)からのデータのDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=700)を備えた細胞上で観察された力分布のヒストグラムがサイドに示されている。(i)1mM Neu5Ac(赤)の注入後のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白)ビリオン、ならびにT3SA+ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーは標準偏差(s.d.)を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーによって測定されたウイルス結合に対するSAの影響。細胞はPBS(モック)またはAlexa Flour488標識されたT3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)のいずれかとインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーはs.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を使用して多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図3c-3g】
図3は、モデル表面上および生細胞上のシアル化グリカンに結合するT3レオウイルスのプロービングを示す。(a)単一ビリオンの結合が、α-SAグリカン誘導体:N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、シアリル-ラクト-N-テトラオースa(LSTa)、およびα-SAなしの誘導体(ラクト-N-ネオテトラオース[LNnT])の存在下または非存在下で、SAコーティングされた表面でプローブされる。(b)1mMグリカンの注入なしおよび注入後に決定された、ビリオンとα-SAとの間のAFMによって測定された特異的結合頻度の箱ひげ図。(c)T3SA+およびSAコーティングされた表面の間で測定された破壊力の分布(灰色の点)を示す動的力分光法(DFS)プロットであり、平均破壊力は、8つの異なる負荷率(LR)範囲で測定された。単一の相互作用に対応するデータは、単純な2状態モデル(I、黒い曲線)としてリガンド-レセプター結合を記述するBell-Evans(BE)モデルに適合される。破線は、2つ(II)および3つ(III)の同時の非相関的な相互作用の予測される結合力を表す(Williams-Evansモデル[WEM])。挿入:単純な2状態モデルとしてリガンド-レセプター結合を記述するBEモデル。結合状態は、距離x
uにあるエネルギー障壁によって非結合状態から分離されている。k
uとk
offは、それぞれ熱平衡での遷移率と遷移を表す。(d)細胞表面上にα-SAを発現している(CHO)または発現していない(Lec2)細胞に結合するT3SA+の組み合わされた光学顕微鏡およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光CHO細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)およびLec2細胞のコンフルエントな層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)およびプローブされた隣接細胞の対応する接着マップ(g)は、(e)の破線の四角中に示されている。接着マップは、主にCHO細胞(α-SA+細胞)(白いピクセル)上での相互作用を示す。(h)α-SAモデル表面(灰色の円、bから)および生細胞(赤い点)からのデータのDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=700)を備えた細胞上で観察された力分布のヒストグラムがサイドに示されている。(i)1mM Neu5Ac(赤)の注入後のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白)ビリオン、ならびにT3SA+ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーは標準偏差(s.d.)を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーによって測定されたウイルス結合に対するSAの影響。細胞はPBS(モック)またはAlexa Flour488標識されたT3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)のいずれかとインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーはs.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を使用して多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図3h-3j】
図3は、モデル表面上および生細胞上のシアル化グリカンに結合するT3レオウイルスのプロービングを示す。(a)単一ビリオンの結合が、α-SAグリカン誘導体:N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、シアリル-ラクト-N-テトラオースa(LSTa)、およびα-SAなしの誘導体(ラクト-N-ネオテトラオース[LNnT])の存在下または非存在下で、SAコーティングされた表面でプローブされる。(b)1mMグリカンの注入なしおよび注入後に決定された、ビリオンとα-SAとの間のAFMによって測定された特異的結合頻度の箱ひげ図。(c)T3SA+およびSAコーティングされた表面の間で測定された破壊力の分布(灰色の点)を示す動的力分光法(DFS)プロットであり、平均破壊力は、8つの異なる負荷率(LR)範囲で測定された。単一の相互作用に対応するデータは、単純な2状態モデル(I、黒い曲線)としてリガンド-レセプター結合を記述するBell-Evans(BE)モデルに適合される。破線は、2つ(II)および3つ(III)の同時の非相関的な相互作用の予測される結合力を表す(Williams-Evansモデル[WEM])。挿入:単純な2状態モデルとしてリガンド-レセプター結合を記述するBEモデル。結合状態は、距離x
uにあるエネルギー障壁によって非結合状態から分離されている。k
uとk
offは、それぞれ熱平衡での遷移率と遷移を表す。(d)細胞表面上にα-SAを発現している(CHO)または発現していない(Lec2)細胞に結合するT3SA+の組み合わされた光学顕微鏡およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光CHO細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)およびLec2細胞のコンフルエントな層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)およびプローブされた隣接細胞の対応する接着マップ(g)は、(e)の破線の四角中に示されている。接着マップは、主にCHO細胞(α-SA+細胞)(白いピクセル)上での相互作用を示す。(h)α-SAモデル表面(灰色の円、bから)および生細胞(赤い点)からのデータのDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=700)を備えた細胞上で観察された力分布のヒストグラムがサイドに示されている。(i)1mM Neu5Ac(赤)の注入後のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白)ビリオン、ならびにT3SA+ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーは標準偏差(s.d.)を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーによって測定されたウイルス結合に対するSAの影響。細胞はPBS(モック)またはAlexa Flour488標識されたT3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)のいずれかとインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーはs.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を使用して多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図4a-4b】
図4は、モデル表面上および生細胞上のJAM-Aに結合するレオウイルスのプロービングを示す。(a)モデル表面でプローブされたJAM-Aへの単一ビリオン(T3SA+またはT3SA-)の結合。(b)T3SA+(上のパネル)またはT3SA-(下のパネル)のビリオンをJAM-Aから分離するために必要な力を示すDFSプロットであり、BEモデルにフィットされている(c)JAM-Aモデル表面へのレオウイルスの結合頻度の箱ひげ図。T3SA+の相互作用は灰色で、T3SA-は白で示され、斜線のボックスは10μg/mLのJAM-A抗体(AB)の注入を表す。(d)生きているLec2細胞上のJAM-AとのT3SA+相互作用の組み合わせられた光学的およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光Lec2細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)と非標識Lec2-JAM-A細胞のコンフルエント層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)および(e)の破線の四角で示された隣接する細胞の対応する接着マップ(g)。接着マップは、主にT3SA+粒子とLec2-JAM-A細胞(白いピクセル)との間の相互作用を示す。(h)モデル表面(灰色の円、b-上部パネルから取得)および生細胞(赤い点)でのT3SA+とJAM-Aとの相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=600)を備えたセルで観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。(i)JAM-A AB(10μg/mL)を注入した場合としない場合(斜線)のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白色)ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーはs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーを使用して決定されたウイルス結合に対するJAM-Aの影響。細胞がビリオンなし(モック)またはAlexa Flour488標識化T3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)とともにインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーは、s.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。*、P<0.05; ****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を用いて多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図4c-4g】
図4は、モデル表面上および生細胞上のJAM-Aに結合するレオウイルスのプロービングを示す。(a)モデル表面でプローブされたJAM-Aへの単一ビリオン(T3SA+またはT3SA-)の結合。(b)T3SA+(上のパネル)またはT3SA-(下のパネル)のビリオンをJAM-Aから分離するために必要な力を示すDFSプロットであり、BEモデルにフィットされている(c)JAM-Aモデル表面へのレオウイルスの結合頻度の箱ひげ図。T3SA+の相互作用は灰色で、T3SA-は白で示され、斜線のボックスは10μg/mLのJAM-A抗体(AB)の注入を表す。(d)生きているLec2細胞上のJAM-AとのT3SA+相互作用の組み合わせられた光学的およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光Lec2細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)と非標識Lec2-JAM-A細胞のコンフルエント層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)および(e)の破線の四角で示された隣接する細胞の対応する接着マップ(g)。接着マップは、主にT3SA+粒子とLec2-JAM-A細胞(白いピクセル)との間の相互作用を示す。(h)モデル表面(灰色の円、b-上部パネルから取得)および生細胞(赤い点)でのT3SA+とJAM-Aとの相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=600)を備えたセルで観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。(i)JAM-A AB(10μg/mL)を注入した場合としない場合(斜線)のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白色)ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーはs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーを使用して決定されたウイルス結合に対するJAM-Aの影響。細胞がビリオンなし(モック)またはAlexa Flour488標識化T3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)とともにインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーは、s.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。*、P<0.05; ****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を用いて多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図4h-4j】
図4は、モデル表面上および生細胞上のJAM-Aに結合するレオウイルスのプロービングを示す。(a)モデル表面でプローブされたJAM-Aへの単一ビリオン(T3SA+またはT3SA-)の結合。(b)T3SA+(上のパネル)またはT3SA-(下のパネル)のビリオンをJAM-Aから分離するために必要な力を示すDFSプロットであり、BEモデルにフィットされている(c)JAM-Aモデル表面へのレオウイルスの結合頻度の箱ひげ図。T3SA+の相互作用は灰色で、T3SA-は白で示され、斜線のボックスは10μg/mLのJAM-A抗体(AB)の注入を表す。(d)生きているLec2細胞上のJAM-AとのT3SA+相互作用の組み合わせられた光学的およびFDベースのAFM。(e)共培養された蛍光Lec2細胞(アクチン-mCherryおよびH2B-eGFP)と非標識Lec2-JAM-A細胞のコンフルエント層のDIC、GFP、およびmCherryシグナルのオーバーレイ。(f、g)FDベースのAFMトポグラフィー画像(f)および(e)の破線の四角で示された隣接する細胞の対応する接着マップ(g)。接着マップは、主にT3SA+粒子とLec2-JAM-A細胞(白いピクセル)との間の相互作用を示す。(h)モデル表面(灰色の円、b-上部パネルから取得)および生細胞(赤い点)でのT3SA+とJAM-Aとの相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=600)を備えたセルで観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。(i)JAM-A AB(10μg/mL)を注入した場合としない場合(斜線)のT3SA+(灰色)およびT3SA-(白色)ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。エラーバーはs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくとも5つの独立した実験を表す。(j)フローサイトメトリーを使用して決定されたウイルス結合に対するJAM-Aの影響。細胞がビリオンなし(モック)またはAlexa Flour488標識化T3SA+またはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)とともにインキュベートされ、細胞結合ウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)がフローサイトメトリーで測定された。エラーバーは、s.d.を示す。実験は2回繰り返され、それぞれが重複サンプルを使用した。*、P<0.05; ****; P<0.0001; GraphPadPrismまたはOriginでTukeyの検定を用いて多重比較のために補正された双方向ANOVAによって決定される。
【
図5a-5c】
図5は、JAM-Aへのレオウイルスの結合におけるシアル化グリカンの影響を示す。(a)1mMα-SAグリカン(Neu5Ac[b、赤]およびLSTa[c、黄色])または非シアル化グリカン(LNnT[d、緑])の注入後、T3SA+もしくはT3SA-ビリオンまたはT3SA+ISVPのJAM-Aへの結合がモニターされた。)。(b~d)1mMグリカン(bにおけるNeu5Ac、cにおけるLSTa、およびdにおけるLNnT)の添加後、T3SA+およびJAM-Aの間で測定された相互作用力のDFSプロット。灰色の点は、注入前に測定された結合力を表す。(e)JAM-AおよびT3SA+ ISVPの間の相互作用力のDFSプロットであり、σ1タンパク質のより延伸されたコンフォーメーションを示している。遊離SAの注入なしで、T3SA+ビリオン(灰色)と比較して、T3SA+ ISVP(青色)では多価相互作用が観察される。(f)遊離グリカンを添加する前後の単一結合および多重結合の相対頻度が、力分布ヒストグラム内のそれぞれのピークの下の領域から決定された。(g)シアル化された(Neu5Ac-赤、LSTa-黄色)または非シアル化の(LNnT-緑色)グリカンの注入前(灰色)および注入後の、JAM-AおよびT3SA+(左パネル)もしくはT3SA-(中央パネル)ビリオンまたはT3SA+ ISVP(右パネル)の間に確立された結合の数。灰色(「前」)の曲線は、LNnT曲線と実質的に同じプロファイルに従っている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくともn=3回の独立した実験を表している。
【
図5d-5f】
図5は、JAM-Aへのレオウイルスの結合におけるシアル化グリカンの影響を示す。(a)1mMα-SAグリカン(Neu5Ac[b、赤]およびLSTa[c、黄色])または非シアル化グリカン(LNnT[d、緑])の注入後、T3SA+もしくはT3SA-ビリオンまたはT3SA+ISVPのJAM-Aへの結合がモニターされた。)。(b~d)1mMグリカン(bにおけるNeu5Ac、cにおけるLSTa、およびdにおけるLNnT)の添加後、T3SA+およびJAM-Aの間で測定された相互作用力のDFSプロット。灰色の点は、注入前に測定された結合力を表す。(e)JAM-AおよびT3SA+ ISVPの間の相互作用力のDFSプロットであり、σ1タンパク質のより延伸されたコンフォーメーションを示している。遊離SAの注入なしで、T3SA+ビリオン(灰色)と比較して、T3SA+ ISVP(青色)では多価相互作用が観察される。(f)遊離グリカンを添加する前後の単一結合および多重結合の相対頻度が、力分布ヒストグラム内のそれぞれのピークの下の領域から決定された。(g)シアル化された(Neu5Ac-赤、LSTa-黄色)または非シアル化の(LNnT-緑色)グリカンの注入前(灰色)および注入後の、JAM-AおよびT3SA+(左パネル)もしくはT3SA-(中央パネル)ビリオンまたはT3SA+ ISVP(右パネル)の間に確立された結合の数。灰色(「前」)の曲線は、LNnT曲線と実質的に同じプロファイルに従っている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくともn=3回の独立した実験を表している。
【
図5g】
図5は、JAM-Aへのレオウイルスの結合におけるシアル化グリカンの影響を示す。(a)1mMα-SAグリカン(Neu5Ac[b、赤]およびLSTa[c、黄色])または非シアル化グリカン(LNnT[d、緑])の注入後、T3SA+もしくはT3SA-ビリオンまたはT3SA+ISVPのJAM-Aへの結合がモニターされた。)。(b~d)1mMグリカン(bにおけるNeu5Ac、cにおけるLSTa、およびdにおけるLNnT)の添加後、T3SA+およびJAM-Aの間で測定された相互作用力のDFSプロット。灰色の点は、注入前に測定された結合力を表す。(e)JAM-AおよびT3SA+ ISVPの間の相互作用力のDFSプロットであり、σ1タンパク質のより延伸されたコンフォーメーションを示している。遊離SAの注入なしで、T3SA+ビリオン(灰色)と比較して、T3SA+ ISVP(青色)では多価相互作用が観察される。(f)遊離グリカンを添加する前後の単一結合および多重結合の相対頻度が、力分布ヒストグラム内のそれぞれのピークの下の領域から決定された。(g)シアル化された(Neu5Ac-赤、LSTa-黄色)または非シアル化の(LNnT-緑色)グリカンの注入前(灰色)および注入後の、JAM-AおよびT3SA+(左パネル)もしくはT3SA-(中央パネル)ビリオンまたはT3SA+ ISVP(右パネル)の間に確立された結合の数。灰色(「前」)の曲線は、LNnT曲線と実質的に同じプロファイルに従っている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。すべての実験で、データは少なくともn=3回の独立した実験を表している。
【
図6a-6c】
図6は、遊離SA化合物の、JAM-AへのT3SA結合における効果を試験した結果を示す。(a~c)1mM Neu5Ac(a、赤)、1mM LSTa(b、黄色)、または1mM LNnT(SAグループの欠如)(c、緑)の添加後の、モデル表面上でプローブされたT3SA-およびJAM-Aの間の相互作用のDFSプロット。重ねられた灰色の円は、化合物の注入前の結合事象を表す。単一のJAM-A-T3SA相互作用が、全ての4つの実験で観察され、Bell-Evansモデル(黒い線)でフィットされている。
図5に示されている結果とは対照的に、Neu5AcまたはLSTaの注入は、JAM-A-T3SA結合における変化または多価相互作用の確立を誘導せず、これは、T3SA+のシアル酸結合部位がこの観察の原因であることを証明している。(d)SA化合物を添加することなしの(T3SA+は灰色、T3SA-は白色、およびT3SA+ISVPは青)、および、Neu5Ac(赤)、LSTa(黄色)、またはLNnT(緑)の添加後、ならびに、レセプターブロッキング試薬としての10μg/mLJAM-A ABの注入後(それぞれのボックスにおける破線)の、JAM-A-T3SA+(左パネル)、JAMA-T3SA-(中央パネル)、およびJAMA-T3SA+ISVP(右パネル)相互作用において観察されたBFの箱ひげ図。ボックス内の水平線は中央値を示し、ボックスの境界は25パーセンタイルと75パーセンタイルを示し、ひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。JAM-A ABの存在下で観察された結合頻度の減少は、観察された相互作用の特異性を立証する。すべての実験で、データは少なくともn=3の独立した実験を表す。****、P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定された。エラーバーは平均値のs.d.を示す。
【
図6d】
図6は、遊離SA化合物の、JAM-AへのT3SA結合における効果を試験した結果を示す。(a~c)1mM Neu5Ac(a、赤)、1mM LSTa(b、黄色)、または1mM LNnT(SAグループの欠如)(c、緑)の添加後の、モデル表面上でプローブされたT3SA-およびJAM-Aの間の相互作用のDFSプロット。重ねられた灰色の円は、化合物の注入前の結合事象を表す。単一のJAM-A-T3SA相互作用が、全ての4つの実験で観察され、Bell-Evansモデル(黒い線)でフィットされている。
図5に示されている結果とは対照的に、Neu5AcまたはLSTaの注入は、JAM-A-T3SA結合における変化または多価相互作用の確立を誘導せず、これは、T3SA+のシアル酸結合部位がこの観察の原因であることを証明している。(d)SA化合物を添加することなしの(T3SA+は灰色、T3SA-は白色、およびT3SA+ISVPは青)、および、Neu5Ac(赤)、LSTa(黄色)、またはLNnT(緑)の添加後、ならびに、レセプターブロッキング試薬としての10μg/mLJAM-A ABの注入後(それぞれのボックスにおける破線)の、JAM-A-T3SA+(左パネル)、JAMA-T3SA-(中央パネル)、およびJAMA-T3SA+ISVP(右パネル)相互作用において観察されたBFの箱ひげ図。ボックス内の水平線は中央値を示し、ボックスの境界は25パーセンタイルと75パーセンタイルを示し、ひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。JAM-A ABの存在下で観察された結合頻度の減少は、観察された相互作用の特異性を立証する。すべての実験で、データは少なくともn=3の独立した実験を表す。****、P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定された。エラーバーは平均値のs.d.を示す。
【
図7】
図7は、生細胞へのレオウイルスの結合のプロービングを示す。(a)プロテアーゼ処理の前(ビリオン)および後(感染性サブビリオン粒子「ISVP」)に標識された外殻カプシドタンパク質を含むレオウイルス粒子の概略図。この図は、ビリオンの二層シェルにおける外殻カプシドタンパク質の配置、および、σ3の除去によるISVPの形成、マイクロ1の開裂によるδおよびφの生成、およびσ1のより細長いコンフォーメーションへの再配列を示す。(b)細胞表面グリカン(特には末端α結合シアル酸[α-SA]残基)および接合接着分子-A(JAM-A)に結合するウイルス付着タンパク質として機能する、レオウイルスσ1タンパク質の完全長モデル(Dietrich et al. Structural and Functional Features of the Reovirus σ1 Tail. J. Virol. 2018, JVI 00336-00318)。α-SAおよびJAM-Aが相互作用する分子の領域が示されている。(c)AFMを使用したレオウイルス侵入のプロービングの概略図。レオウイルスの細胞への最初の付着は、ウイルスのσ1タンパク質とレセプター、JAM-Aとの間の特異的結合を含む。細胞表のグリカンは、コレセプターとして機能する。
【
図8a-8o】
図8は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるSA添加の影響のモニタリングを示す。Lec2-JAM-A細胞へのT3SA+の結合が、1mM Neu5Ac(a~e)、1mM LSTa(f~j)、または1mM LNnT(k~o)の添加前後に見積もられた。(a、f、k)隣接するLec2およびLec2-JAM-A細胞のAFMトポグラフィー画像で、インセットとして、JAM-A発現を欠く蛍光タグ付きLec2細胞を示す蛍光画像(20×20μm)の挿入図。(b、g、l)グリカンの注入前に記録された対応する接着マップ。(c、h、m)Lec2-JAM-A細胞上で記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角ない)。上側の画像(薄い灰色のフレーム)は、より低い力の範囲(300~400pN)を示し、一方、下側の画像(暗い灰色のフレーム)は、おり高い力の範囲(400~500pN)を示し、接着事象は顕著に少ない。(d、i、n)遊離Neu5Ac(d)、LSTa(i)、またはLNnT(n)の注入後に記録された接着マップ。プローブされた領域は、グリカン注入前に記録された領域と同様である。(e、j、o)Lec2-JAM-A細胞上で記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部およびb、g、iにおける同じ領域は、シアル化グリカン[Neu5aおよびLSTa]の高力範囲でより多くの接着事象を示すが、非シアル化グリカン[LNnT]においては有意な変化は見られない。接着事象の頻度が示されている。(p~s)Neu5Ac(q)、LSTa(r)、およびLNnT(s)の添加前(p)および添加後のLec2-JAM-A細胞において抽出された力分布のヒストグラム(接着マップの破線の四角部)。ヒストグラムは、マルチピークのガウス分布を用いてフィットされた。(t)シアル化されたまたは非シアル化のグリカンの注入前(灰色)および注入後(色付き)の、JAM-A細胞表面レセプターおよびT3SA+の間に確立された結合の数。エラーバーは平均値のs.d.を示す。統計分析が表1に示されている。すべての実験において、データはn=5回の独立した実験からの少なくともn=15個の細胞を示している。
【
図8p-8t】
図8は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるSA添加の影響のモニタリングを示す。Lec2-JAM-A細胞へのT3SA+の結合が、1mM Neu5Ac(a~e)、1mM LSTa(f~j)、または1mM LNnT(k~o)の添加前後に見積もられた。(a、f、k)隣接するLec2およびLec2-JAM-A細胞のAFMトポグラフィー画像で、インセットとして、JAM-A発現を欠く蛍光タグ付きLec2細胞を示す蛍光画像(20×20μm)の挿入図。(b、g、l)グリカンの注入前に記録された対応する接着マップ。(c、h、m)Lec2-JAM-A細胞上で記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角ない)。上側の画像(薄い灰色のフレーム)は、より低い力の範囲(300~400pN)を示し、一方、下側の画像(暗い灰色のフレーム)は、おり高い力の範囲(400~500pN)を示し、接着事象は顕著に少ない。(d、i、n)遊離Neu5Ac(d)、LSTa(i)、またはLNnT(n)の注入後に記録された接着マップ。プローブされた領域は、グリカン注入前に記録された領域と同様である。(e、j、o)Lec2-JAM-A細胞上で記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部およびb、g、iにおける同じ領域は、シアル化グリカン[Neu5aおよびLSTa]の高力範囲でより多くの接着事象を示すが、非シアル化グリカン[LNnT]においては有意な変化は見られない。接着事象の頻度が示されている。(p~s)Neu5Ac(q)、LSTa(r)、およびLNnT(s)の添加前(p)および添加後のLec2-JAM-A細胞において抽出された力分布のヒストグラム(接着マップの破線の四角部)。ヒストグラムは、マルチピークのガウス分布を用いてフィットされた。(t)シアル化されたまたは非シアル化のグリカンの注入前(灰色)および注入後(色付き)の、JAM-A細胞表面レセプターおよびT3SA+の間に確立された結合の数。エラーバーは平均値のs.d.を示す。統計分析が表1に示されている。すべての実験において、データはn=5回の独立した実験からの少なくともn=15個の細胞を示している。
【
図9】
図9は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるSA添加の影響のモニタリングを示す。JAM-A AB(10μg/mL)の注入あり(破線)およびなし、ならびに、示されているグリカンの添加後、のT3SA+ビリオンで観察されたBFの箱ひげ図。データは、少なくとも5回の独立した実験を表している。
【
図10a-10b】
図10は、レオウイルスビリオンの多価固定をトリガーすることが、バルクにおける拡散能および結合挙動を変化させることを示す。(a、b)NTAコーティングされたバイオセンサー上に固定化されたJAM-Aレセプターへのレオウイルス(T3SA-、T3SA+およびT3SA+ ISVP)の結合に関するバイオレイヤー干渉分光法データ。溶液中の1mM Neu5Acの添加の効果が、T3SA-およびT3SA+の両方でテストされた。センサーグラムは、ベースライン(BL)測定から始まり、NTAバイオセンサーへのJAM-Aの固定化(ローディング)、ビリオンの追加(会合)、および最後に解離段階が続く。(c~g)1mM Neu5Acの非存在下(c、d)および存在下(e、f)で共培養されたCHO-JAM-AおよびLec2-JAM-A細胞上でインキュベートされたレオウイルス粒子(Alexa488色素で標識)のリアルタイム共焦点蛍光イメージング。(c、e)Alexa488(ビリオン)、Lec2-Jam-AのmCherry-アクチン、およびPMTシグナルのオーバーレイ画像。(d、f)T3SA+粒子のタイムラプス軌跡。白と黄色の軌跡は、それぞれ、Lec2-JAM-A細胞およびCHO-JAM-A細胞の動きを示す。各軌道の倍率は、対応する番号とともに右側に表示されている。(g)Neu5Acの非存在下(灰色)または存在下(赤)でのT3SA+結合に関する、ならびに、細胞混合物への吸着後のNeu5Acの非存在下(白色)または存在下(淡赤)でのT3SA-結合に関する平均トラベル距離(上のパネル)、平均トラベルスピード(真ん中のパネル)、および結合されたウイルス粒子(下のパネル)の分析。箱ひげ図(下のパネル)内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験を表しており、それぞれ少なくとも15個の分析された軌跡がある。***、P<0.001; ****;P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定。エラーバーは、平均値のs.d.を示す。(h)α-SAへの結合がどのようにσ1タンパク質においてコンフォーメーション変化を引き起こし、より延伸されたコンフォーメーションに導き、JAM-Aへの増大された親和性を結果としてもたらすのかを示すモデル。
【
図10c-10f】
図10は、レオウイルスビリオンの多価固定をトリガーすることが、バルクにおける拡散能および結合挙動を変化させることを示す。(a、b)NTAコーティングされたバイオセンサー上に固定化されたJAM-Aレセプターへのレオウイルス(T3SA-、T3SA+およびT3SA+ ISVP)の結合に関するバイオレイヤー干渉分光法データ。溶液中の1mM Neu5Acの添加の効果が、T3SA-およびT3SA+の両方でテストされた。センサーグラムは、ベースライン(BL)測定から始まり、NTAバイオセンサーへのJAM-Aの固定化(ローディング)、ビリオンの追加(会合)、および最後に解離段階が続く。(c~g)1mM Neu5Acの非存在下(c、d)および存在下(e、f)で共培養されたCHO-JAM-AおよびLec2-JAM-A細胞上でインキュベートされたレオウイルス粒子(Alexa488色素で標識)のリアルタイム共焦点蛍光イメージング。(c、e)Alexa488(ビリオン)、Lec2-Jam-AのmCherry-アクチン、およびPMTシグナルのオーバーレイ画像。(d、f)T3SA+粒子のタイムラプス軌跡。白と黄色の軌跡は、それぞれ、Lec2-JAM-A細胞およびCHO-JAM-A細胞の動きを示す。各軌道の倍率は、対応する番号とともに右側に表示されている。(g)Neu5Acの非存在下(灰色)または存在下(赤)でのT3SA+結合に関する、ならびに、細胞混合物への吸着後のNeu5Acの非存在下(白色)または存在下(淡赤)でのT3SA-結合に関する平均トラベル距離(上のパネル)、平均トラベルスピード(真ん中のパネル)、および結合されたウイルス粒子(下のパネル)の分析。箱ひげ図(下のパネル)内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験を表しており、それぞれ少なくとも15個の分析された軌跡がある。***、P<0.001; ****;P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定。エラーバーは、平均値のs.d.を示す。(h)α-SAへの結合がどのようにσ1タンパク質においてコンフォーメーション変化を引き起こし、より延伸されたコンフォーメーションに導き、JAM-Aへの増大された親和性を結果としてもたらすのかを示すモデル。
【
図10g】
図10は、レオウイルスビリオンの多価固定をトリガーすることが、バルクにおける拡散能および結合挙動を変化させることを示す。(a、b)NTAコーティングされたバイオセンサー上に固定化されたJAM-Aレセプターへのレオウイルス(T3SA-、T3SA+およびT3SA+ ISVP)の結合に関するバイオレイヤー干渉分光法データ。溶液中の1mM Neu5Acの添加の効果が、T3SA-およびT3SA+の両方でテストされた。センサーグラムは、ベースライン(BL)測定から始まり、NTAバイオセンサーへのJAM-Aの固定化(ローディング)、ビリオンの追加(会合)、および最後に解離段階が続く。(c~g)1mM Neu5Acの非存在下(c、d)および存在下(e、f)で共培養されたCHO-JAM-AおよびLec2-JAM-A細胞上でインキュベートされたレオウイルス粒子(Alexa488色素で標識)のリアルタイム共焦点蛍光イメージング。(c、e)Alexa488(ビリオン)、Lec2-Jam-AのmCherry-アクチン、およびPMTシグナルのオーバーレイ画像。(d、f)T3SA+粒子のタイムラプス軌跡。白と黄色の軌跡は、それぞれ、Lec2-JAM-A細胞およびCHO-JAM-A細胞の動きを示す。各軌道の倍率は、対応する番号とともに右側に表示されている。(g)Neu5Acの非存在下(灰色)または存在下(赤)でのT3SA+結合に関する、ならびに、細胞混合物への吸着後のNeu5Acの非存在下(白色)または存在下(淡赤)でのT3SA-結合に関する平均トラベル距離(上のパネル)、平均トラベルスピード(真ん中のパネル)、および結合されたウイルス粒子(下のパネル)の分析。箱ひげ図(下のパネル)内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験を表しており、それぞれ少なくとも15個の分析された軌跡がある。***、P<0.001; ****;P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定。エラーバーは、平均値のs.d.を示す。(h)α-SAへの結合がどのようにσ1タンパク質においてコンフォーメーション変化を引き起こし、より延伸されたコンフォーメーションに導き、JAM-Aへの増大された親和性を結果としてもたらすのかを示すモデル。
【
図10h】
図10は、レオウイルスビリオンの多価固定をトリガーすることが、バルクにおける拡散能および結合挙動を変化させることを示す。(a、b)NTAコーティングされたバイオセンサー上に固定化されたJAM-Aレセプターへのレオウイルス(T3SA-、T3SA+およびT3SA+ ISVP)の結合に関するバイオレイヤー干渉分光法データ。溶液中の1mM Neu5Acの添加の効果が、T3SA-およびT3SA+の両方でテストされた。センサーグラムは、ベースライン(BL)測定から始まり、NTAバイオセンサーへのJAM-Aの固定化(ローディング)、ビリオンの追加(会合)、および最後に解離段階が続く。(c~g)1mM Neu5Acの非存在下(c、d)および存在下(e、f)で共培養されたCHO-JAM-AおよびLec2-JAM-A細胞上でインキュベートされたレオウイルス粒子(Alexa488色素で標識)のリアルタイム共焦点蛍光イメージング。(c、e)Alexa488(ビリオン)、Lec2-Jam-AのmCherry-アクチン、およびPMTシグナルのオーバーレイ画像。(d、f)T3SA+粒子のタイムラプス軌跡。白と黄色の軌跡は、それぞれ、Lec2-JAM-A細胞およびCHO-JAM-A細胞の動きを示す。各軌道の倍率は、対応する番号とともに右側に表示されている。(g)Neu5Acの非存在下(灰色)または存在下(赤)でのT3SA+結合に関する、ならびに、細胞混合物への吸着後のNeu5Acの非存在下(白色)または存在下(淡赤)でのT3SA-結合に関する平均トラベル距離(上のパネル)、平均トラベルスピード(真ん中のパネル)、および結合されたウイルス粒子(下のパネル)の分析。箱ひげ図(下のパネル)内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくとも3つの独立した実験を表しており、それぞれ少なくとも15個の分析された軌跡がある。***、P<0.001; ****;P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定。エラーバーは、平均値のs.d.を示す。(h)α-SAへの結合がどのようにσ1タンパク質においてコンフォーメーション変化を引き起こし、より延伸されたコンフォーメーションに導き、JAM-Aへの増大された親和性を結果としてもたらすのかを示すモデル。
【
図11】
図11は、本発明のある実施形態において有用であり得る、脊椎動物系に一般的に見られるシアル酸部位構造を示す。
【
図12】
図12は、レオウイルス粒子の特性評価および先端と表面との固定化の検証を示す。(a、b)低倍率(a)および高倍率(b)での、新たに開裂されたHOPG基質上に配置されたレオウイルス粒子のAFM高さ画像。挿入:3D再構成。(c)レオウイルスに対する一次抗体およびAPC共役の二次抗体(赤)での染色後の、レーザー走査型光学顕微鏡により得られたレオウイルスで機能化されたAFMチップのZスタック画像。挿入画像は、先端の頂点にあるビリオンリンクを強調している。実験は、3回繰り返され、同様の結果が得られた。(d、e)付着した生体分子を除去するために、500×500nmの領域を高力(~18nN)でスキャン(「スクラッチング」実験と称される)した後のSA(d)またはJAM-A(e)でコーティングされた表面のAFMトポグラフィー画像。挿入図:dおよびeの白い破線に沿った断面図であり、正方形の側面での生物学的材料の蓄積を示している。正方形の内側の生体分子のない表面は、周囲の生体分子でコーティングされた表面と比較して、約1nm(d)または約2nm(e)低かった。これは、SA(d)またはJAM-A(e)積層層の厚さの推定値を提供する。
【
図13】
図13は、本研究で使用された細胞株による細胞表面レセプター発現の特徴、特に代表的なデータセットから作成されたフローサイトメトリー分析に使用されるゲーティング戦略を示す。最初の2つのゲーティングステップにおいて、単一細胞を選択するために前方散乱と側方散乱が使用され、続いてLIVE/DEAD固定可能なバイオレットデッドセル染色キット(Invitrogen)を使用して生細胞がゲーティングされた。目的のチャネル内の生細胞の蛍光強度の中央値(MFI)が続いて測定された。
【
図14a-14h】
図14は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるSAの寄与を研究するためのコントロール実験を示す。(a~d)細胞混合物へのT3SA+ウイルスの結合の連続マッピングは同様の結果を示している。(a)CHO細胞が蛍光標識されていることを強調する実験の模式図。FDベースのAFM高さ画像(b)(25μm×25μmの細胞の蛍光画像)および対応する接着チャネルは、2つの連続したマップ(c、d)で同様の結果を示しており、これは、ウイルスが先端に堅固に付着しており、および、時間の経過によって分解しなかったことを示している。(e~h)細胞上の同じ領域が、T3SA+およびT3SA-ビリオンを用いて連続的にプローブされた。(e)実験の模式図。(f)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(f、g)、続いてチップ上のT3SA-ビリオンを用いて同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。チップを非SA結合ウイルスに変更した後のCHO細胞上での接着(白いピクセル)の大幅な減少は、T3SA+を用いた細胞表面シアル酸相互作用のプロービングの特異性を支持するものである。SA特異的結合の別のコントロール実験として、T3SA+相互作用の阻害を試験するためにブロッキング実験が行われた(i~nに示されるように)。(i)実験の模式図。(j)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(j、k)、続いて細胞表面SAとのレオウイルスの相互作用に結合してブロックできる1mM Neu5Ac(l)の注入後に同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。接着事象の顕著な減少が観察され得る。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は5~10回繰り返された。視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。
【
図14i-14l】
図14は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるSAの寄与を研究するためのコントロール実験を示す。(a~d)細胞混合物へのT3SA+ウイルスの結合の連続マッピングは同様の結果を示している。(a)CHO細胞が蛍光標識されていることを強調する実験の模式図。FDベースのAFM高さ画像(b)(25μm×25μmの細胞の蛍光画像)および対応する接着チャネルは、2つの連続したマップ(c、d)で同様の結果を示しており、これは、ウイルスが先端に堅固に付着しており、および、時間の経過によって分解しなかったことを示している。(e~h)細胞上の同じ領域が、T3SA+およびT3SA-ビリオンを用いて連続的にプローブされた。(e)実験の模式図。(f)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(f、g)、続いてチップ上のT3SA-ビリオンを用いて同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。チップを非SA結合ウイルスに変更した後のCHO細胞上での接着(白いピクセル)の大幅な減少は、T3SA+を用いた細胞表面シアル酸相互作用のプロービングの特異性を支持するものである。SA特異的結合の別のコントロール実験として、T3SA+相互作用の阻害を試験するためにブロッキング実験が行われた(i~nに示されるように)。(i)実験の模式図。(j)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(j、k)、続いて細胞表面SAとのレオウイルスの相互作用に結合してブロックできる1mM Neu5Ac(l)の注入後に同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。接着事象の顕著な減少が観察され得る。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は5~10回繰り返された。視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。
【
図15a-15h】
図15は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるJAM-Aの寄与を研究するためのコントロール実験を示す。(a~d)Lec2およびLec2-JAM-A細胞混合物に結合するT3SA+ウイルスの連続マッピングは同様の結果を示す。(a)Lec2細胞が蛍光標識されていることを強調する実験の模式図。FDベースのAFM高さ画像(b)(細胞の25μm×25μm蛍光画像が挿入図に示される)および対応する接着チャネルは、2つの連続したマップ(c、d)で同様の結果を示し、これはウイルスがチップに堅固に付着しており、および、時間の経過によって分解しなかったことを示している。(e~h)細胞上の同じ領域が、最初にT3SA+ビリオンを用いて、および、次にT3SA-ビリオンを用いてプローブされた。(e)実験の模式図。(f)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(f、g)、続いてチップ上のT3SA-ビリオンを用いて同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。両方の接着画像は、同様の結果を示しており、これはJAM-Aが、ウイルス上のSA結合部位の存在とは独立してレオウイルス結合に関与していることを示す。(i~j)Lec2-JAM-A細胞上の接着領域から得られたJAM-AとのT3SA相互作用のDFS分析。(i)実験の模式図。(j)モデル表面上(灰色の点、
図4b-下側パネルから得られた)および生細胞上(赤い点)のJAM-AとのT3SA-相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=620データポイント)でフィットされた、細胞上で観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。(k~n)JAM-A特異的結合の別のコントロール実験として、T3SA+相互作用への細胞表面レセプターブロッキング試薬の効果が試験された。(k)実験の模式図。(l~n)ブロッキング試薬なしで、チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(l、m)、続いて細胞表面JAM-A分子をブロックするために10μg/mLのJAM-A Abの注入後に同じ領域をスキャンすることによって獲得される(n)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は5~10回繰り返された。視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。
【
図15i-15j】
図15は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるJAM-Aの寄与を研究するためのコントロール実験を示す。(a~d)Lec2およびLec2-JAM-A細胞混合物に結合するT3SA+ウイルスの連続マッピングは同様の結果を示す。(a)Lec2細胞が蛍光標識されていることを強調する実験の模式図。FDベースのAFM高さ画像(b)(細胞の25μm×25μm蛍光画像が挿入図に示される)および対応する接着チャネルは、2つの連続したマップ(c、d)で同様の結果を示し、これはウイルスがチップに堅固に付着しており、および、時間の経過によって分解しなかったことを示している。(e~h)細胞上の同じ領域が、最初にT3SA+ビリオンを用いて、および、次にT3SA-ビリオンを用いてプローブされた。(e)実験の模式図。(f)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(f、g)、続いてチップ上のT3SA-ビリオンを用いて同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。両方の接着画像は、同様の結果を示しており、これはJAM-Aが、ウイルス上のSA結合部位の存在とは独立してレオウイルス結合に関与していることを示す。(i~j)Lec2-JAM-A細胞上の接着領域から得られたJAM-AとのT3SA相互作用のDFS分析。(i)実験の模式図。(j)モデル表面上(灰色の点、
図4b-下側パネルから得られた)および生細胞上(赤い点)のJAM-AとのT3SA-相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=620データポイント)でフィットされた、細胞上で観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。(k~n)JAM-A特異的結合の別のコントロール実験として、T3SA+相互作用への細胞表面レセプターブロッキング試薬の効果が試験された。(k)実験の模式図。(l~n)ブロッキング試薬なしで、チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(l、m)、続いて細胞表面JAM-A分子をブロックするために10μg/mLのJAM-A Abの注入後に同じ領域をスキャンすることによって獲得される(n)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は5~10回繰り返された。視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。
【
図15k-15n】
図15は、生細胞へのレオウイルスの結合におけるJAM-Aの寄与を研究するためのコントロール実験を示す。(a~d)Lec2およびLec2-JAM-A細胞混合物に結合するT3SA+ウイルスの連続マッピングは同様の結果を示す。(a)Lec2細胞が蛍光標識されていることを強調する実験の模式図。FDベースのAFM高さ画像(b)(細胞の25μm×25μm蛍光画像が挿入図に示される)および対応する接着チャネルは、2つの連続したマップ(c、d)で同様の結果を示し、これはウイルスがチップに堅固に付着しており、および、時間の経過によって分解しなかったことを示している。(e~h)細胞上の同じ領域が、最初にT3SA+ビリオンを用いて、および、次にT3SA-ビリオンを用いてプローブされた。(e)実験の模式図。(f)チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(f、g)、続いてチップ上のT3SA-ビリオンを用いて同じ領域をスキャンすることによって獲得される(h)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。両方の接着画像は、同様の結果を示しており、これはJAM-Aが、ウイルス上のSA結合部位の存在とは独立してレオウイルス結合に関与していることを示す。(i~j)Lec2-JAM-A細胞上の接着領域から得られたJAM-AとのT3SA相互作用のDFS分析。(i)実験の模式図。(j)モデル表面上(灰色の点、
図4b-下側パネルから得られた)および生細胞上(赤い点)のJAM-AとのT3SA-相互作用のDFSプロット。マルチピークガウス分布(n=620データポイント)でフィットされた、細胞上で観察された力分布のヒストグラムが側面に示されている。エラーバーは平均値のs.d.を示す。(k~n)JAM-A特異的結合の別のコントロール実験として、T3SA+相互作用への細胞表面レセプターブロッキング試薬の効果が試験された。(k)実験の模式図。(l~n)ブロッキング試薬なしで、チップ上のT3SA+を用いて初めに獲得され(l、m)、続いて細胞表面JAM-A分子をブロックするために10μg/mLのJAM-A Abの注入後に同じ領域をスキャンすることによって獲得される(n)、FDベースのAFM高さ画像と対応する接着力。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は5~10回繰り返された。視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。
【
図16】
図16は、JAM-AへのT3SA-結合に対する遊離SA化合物の効果の試験、特にはモデル表面上にプローブされた1mM Neu5Ac(赤)を添加した後のT3SA+ ISVPおよびJAM-Aの間の相互作用のDFSプロットを示す。Neu5Acは、多価結合挙動に関して遊離グリカンの非存在下で観察されたものからの変化を全く誘導しない。
【
図17a-17j】
図17は、ノイラミニダーゼ処理後の生細胞へのレオウイルスの結合に対するSA添加の影響のモニタリングを示す。(a)実験の模式図は、Lec2細胞が蛍光標識されていることを強調しており、注入の順序を示している。(b~j)FDベースのAFM高さ画像(細胞の25μm×25μm蛍光画像が挿入図に示される)(b)、および、始めに培養液(c)中で獲得され、続いて細胞表面に残っているα-SAを除去するために、ノイラミニダーゼ処理(e)の後に同じ領域がスキャンされる。接着事象のわずかな減少(P<0.01)が観察され、これは、NA処理が細胞表面上の残渣SAを除去したことを示している。(d、f)Lec2-JAM-A細胞上に記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部)。上側の画像はより低い力の範囲(300~400pN)を示し、下側の画像はより高い力の範囲(400~500pN)を示しており、NA処理の前後の接着事象は顕著に少ない。接着事象の頻度が示される。NA処理後、遊離のNeu5Ac(1mM)が添加され、そして同じ領域が再スキャンされた(g)。Lec2-JAMA細胞上に記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部)、およびc、eにおけるものと同様の領域は、シアル化グリカンの注入後、高力範囲でより多くの接着事象を示す。この結果は、NA処理なしで細胞を使用して行った実験と一致している(
図8a~e)。最後のステップとして、細胞表面のJAM-A分子をブロックするために、10μg/mLのJAM-AAb(I、j)を注入後に、同じ領域がスキャンされた。接着事象の顕著な減少が観察された。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は3~5回繰り返された。明確さおよび視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。(k)最初に処理なし(灰色)、次にNA処理(青)、遊離Neu5Acの添加(赤)、および最後に、JAM-A Abの注入(茶)で、T3SA+ビリオンに関して観察されたBFの箱ひげ図。ボックス内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくともn=4の独立した実験を表す。**、P<0.01;****、<0.0001;Originの2標本t検定によって決定された。
【
図17k】
図17は、ノイラミニダーゼ処理後の生細胞へのレオウイルスの結合に対するSA添加の影響のモニタリングを示す。(a)実験の模式図は、Lec2細胞が蛍光標識されていることを強調しており、注入の順序を示している。(b~j)FDベースのAFM高さ画像(細胞の25μm×25μm蛍光画像が挿入図に示される)(b)、および、始めに培養液(c)中で獲得され、続いて細胞表面に残っているα-SAを除去するために、ノイラミニダーゼ処理(e)の後に同じ領域がスキャンされる。接着事象のわずかな減少(P<0.01)が観察され、これは、NA処理が細胞表面上の残渣SAを除去したことを示している。(d、f)Lec2-JAM-A細胞上に記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部)。上側の画像はより低い力の範囲(300~400pN)を示し、下側の画像はより高い力の範囲(400~500pN)を示しており、NA処理の前後の接着事象は顕著に少ない。接着事象の頻度が示される。NA処理後、遊離のNeu5Ac(1mM)が添加され、そして同じ領域が再スキャンされた(g)。Lec2-JAMA細胞上に記録された接着マップの拡大画像(接着マップの破線の四角部)、およびc、eにおけるものと同様の領域は、シアル化グリカンの注入後、高力範囲でより多くの接着事象を示す。この結果は、NA処理なしで細胞を使用して行った実験と一致している(
図8a~e)。最後のステップとして、細胞表面のJAM-A分子をブロックするために、10μg/mLのJAM-AAb(I、j)を注入後に、同じ領域がスキャンされた。接着事象の顕著な減少が観察された。すべてのAFM画像は、細胞培養条件下で、0.25kHzの発振周波数および750nmの振幅を用いて取得された。実験は3~5回繰り返された。明確さおよび視認性を高めるため、接着画像のピクセルサイズは2倍に拡大された。(k)最初に処理なし(灰色)、次にNA処理(青)、遊離Neu5Acの添加(赤)、および最後に、JAM-A Abの注入(茶)で、T3SA+ビリオンに関して観察されたBFの箱ひげ図。ボックス内の水平線は中央値を示し、箱の境界は25パーセンタイルおよび75パーセンタイルを示し、ならびにひげは結果の最高値と最低値を示す。ボックス内の四角は平均を示す。データは、少なくともn=4の独立した実験を表す。**、P<0.01;****、<0.0001;Originの2標本t検定によって決定された。
【
図18】
図18は、1mM Neu5Acの非存在下(a、b)および存在下(c、d)でのCHO-JAM-A細胞とLec2-JAM-A細胞の共培養上でインキュベートされたAlexa488標識T3SA-レオウイルスのリアルタイム共焦点蛍光イメージングを示す。(a、c)Alexa 488(ビリオン)、mCherry(Lec2-Jam-Aのアクチン)、およびPMT信号のオーバーレイ画像。(b、d)T3SA粒子のタイムラプス軌跡。白色(bの1および2;dの1~3)および黄色(bの3~5;dの4~5)の軌跡は、それぞれ、Lec2-JAM-A細胞上およびCHO-JAM-A細胞上でのビリオンの動きを表す。各軌道の倍率は、対応する番号(スケールバー:1μm)とともに右側に示されている。T3SA-によるSA結合の欠如により、T3SA-粒子は、両方の細胞型の上で同程度に拡散し、および、1mM Neu5Acの添加(右パネルではNeuAcを添加)とは無関係である。
【0018】
表1.種々の条件下での、JAM-A細胞表面レセプターおよびT3SA+ビリオンのあいだに確立された結合のカスの統計的分析。P値は、シアル化グリカン(Neu5Ac(、LSTs)または非シアル化グリカン(LNnT)の注入の前および後の比較から導かれた。非シアル化グリカンの注入前または後のデータと比較して、シアル化グリカンの注入後に確立された結合の数は、顕著に異なっている。ns、P>0.05;**、P<0.01;***、P<0.001;****、P<0.0001;Originの2標本t検定によって決定。すべての実験で、データはn=5回の独立した実験からの少なくともn=15個の細胞を示している。
【表1】
【0019】
対応する図面のカラーバージョンはまた、Koehler et al. Glycan-mediated enhancement of reovirus receptor binding. Nat Commun. 2019, vol. 10, 4460を参照できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中で使用される、単数形である「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」は、記載が明確にそうではないと定めていない限り、単数および複数の指示物の両方を含む。
【0021】
本明細書中で使用される用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprised of)」は、「含む(including)」、「含む(includes)」または「含む(containing)」、「含む(contains)」と同義であり、そして、包括的または非限定的であり、および、追加の、言及されていないメンバー、要素、または方法ステップを排除するものではない。用語はまた、特許用語における良好に確立された意味をもっている「からなる(consisting of)」および「本質的になる(consisting essentially of)」も含む。
【0022】
エンドポイントによる数値範囲の列挙は、それぞれの範囲内に包摂される全ての数字および端数、ならびに列挙されたエンドポイントを含む。これは、それらが「~から~まで(from … to …)」という表現または「~と~とのあいだ(between … and …)」という表現または別の表現によって導入されているかどうかに関わらず、数値範囲に適用される。
【0023】
本明細書中で使用される用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、例えばパラメーター、量、時間長などの測定可能な値を指している場合、特定の値のおよび特定の値からの変位、例えば特定の価のおよび特定の値から+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、およびさらにより好ましくは+/-0.1%以下の変位などを、そのような変位が開示された発明を行うために適切である限り、包含することを意味している。修飾語「約」または「およそ」が指している値は、それ自身もまた具体的におよび好ましく開示されているということが理解されるべきである。
【0024】
用語「一または複数の(one or more)」または「少なくとも一つ(at least one)」、例えば一または複数のメンバーまたはメンバーの群のうちの少なくとも一つのメンバーなどは、それ自体で明確であるが、さらなる例示として、用語は、とりわけ、該メンバーの任意の一つ、または任意の2以上の該メンバー、例えば、3以上の、4以上の、5以上の、6以上の、または7以上の任意の数など該メンバーなど、および全ての該メンバー、ありとあらゆる数の該メンバーへの参照を含む。別の例において、「一または複数の」または「少なくとも一つ」は1、2、3、4、5、6、7またはそれより大きな数を意味し得る。
【0025】
本明細書における本発明の背景の議論は、本発明の内容を説明することを含んでいる。これは、言及されている任意の題材が公開されていた、公知であった、または任意の請求項の優先日時点でどこかの国での技術常識の一部であったという自認として解釈されるべきではない。
【0026】
本開示を通じて、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、引用を特定することによって参照される。本明細書において引用される全ての書類は、参照によってその全体が組み込まれる。特に、本明細書中で具体的に参照されたような書類の教示または部分は参照によって組み込まれる。
【0027】
他に規定されていない限り、本発明を開示するために使用された、技術的および科学的用語を含む全ての用語は、本発明が属する当該技術分野における当業者によって通常理解されるような意味を有する。さらなるガイダンスによって、用語の定義は、本発明の教示をよりよく理解するように含む。本発明の特定の態様または本発明の特定の実施形態と関連して定義されている場合、そのような暗示または意味は、本明細書を通じて、すなわち、他に規定されていない限り、本発明の他の態様または実施形態の内容においても、適用されることを意味している。
【0028】
以下の文章において、本発明の種々の態様または実施形態がより詳細に定義される。そのように定義されるそれぞれの態様または実施形態は、そうではないと明確に示されていない限り、他の任意の態様または実施形態と組み合わせられ得る。特には、好ましいまたは優位であると示されている任意の特徴は、好ましいまたは優位であると示されている他の任意の特徴または複数の特徴と組み合わされてもよい。
【0029】
本明細書を通じての「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」との参照は、その実施態様と関連して記載されている特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味している。したがって、本明細書を通じて様々な箇所における「一実施形態において(in one embodiment)」または「一実施形態において(in an embodiment)」という表現の出現は、全てが同一の実施形態を参照しているわけではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造または特性は、当該技術分野における当業者にとって本開示から明らかであるように、一または複数の実施形態における任意の適切な様式で組み合わされてもよい。さらに、本明細書中で記載されるいくつかの実施形態が、他の実施形態に含まれる他の特徴ではないいくつかの特徴を含む一方、異なる実施形態の特徴の組み合わせも本発明の範囲内であり、そして、当該技術分野における当業者にとって理解され得るであろうように、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、添付の請求項において、任意のクレームされた実施形態は、任意の組み合わせで使用され得る。
【0030】
本発明のある代表的な実施形態を示している実験の部によって裏付けられるように、発明者らは、初めて、レオウイルスシグマ1(σ1)タンパク質に結合するシアル酸(SA)がσ1タンパク質における、より細長いまたは伸長したコンフォーメーションへのコンフォーメーション変化を積極的に促進し、これは、JAM-A表面レセプターへのσ1結合能をトリガーし、ウイルスと細胞表面とのあいだに確立される結合数を増加させ、ウイルスの細胞質基質への侵入を支持することを発見した。したがって、データは、レオウイルス感染性を増大させることのできる薬剤またはアジュバントとしてシアル酸またはシアル酸含有物質の使用を確証するものである。
【0031】
したがって、本発明の様態は、i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物またはキットオブパーツを提供する。したがって特には以下が提供される。
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる組成物、
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる組成物、
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる組成物、
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなるキットオブパーツ、
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなるキットオブパーツ、ならびに
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなるキットオブパーツ。
【0032】
さらなる態様は、療法における使用のための組成物を提供する。関連する態様は、療法における組成物の使用を提供する。さらなる態様は、療法における使用のためのキットオブパーツを提供する。関連する態様は、療法におけるキットオブパーツの使用を提供する。さらなる態様は、それらを必要とする対象を処置するための方法であって、対象に予防的または治療的に効果的な量のi)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を投与することを含む方法を提供する。
【0033】
さらなる態様は、レオウイルス科に属するウイルスを増殖させるためのインビトロの方法であって、i)該ウイルスによる感染に感作性である宿主細胞であってJAM-Aを過剰発現するように遺伝子組み換えされている宿主細胞を、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の存在下で該ウイルスを用いて、または、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を用いて前処理されているウイルスを用いて感染させること、ii)宿主細胞中でウイルスが増殖することを可能にすること、および任意にはiii)宿主細胞によって産生された増殖ウイルスを単離することを含む方法が提供される。過渡的にまたは安定的に、構成的にまたは誘導的に、宿主細胞中で対象のタンパク質を過剰発現させるための技術は、当業者にとって公知であり、詳細が述べられる必要はない。JAM-Aタンパク質およびそれをエンコードしている核酸もまた公知である。例としてであるが、例えばヒトJAM-A mRNA配列は、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で、accession number NM_016946.6でアノテートされている。例えば、ヒトJAM-A前駆タンパク質は、NCBI Genbankでaccession number NP_058642.1でアノテートされており、および、以下に再現されている(配列番号:1)(配列番号:1の1~27のアミノ酸は、成熟JAM-Aからプロセスによって取り除かれるシグナルペプチドを構成することが示されているまたは予想されている):
MGTKAQVERKLLCLFILAILLCSLALGSVTVHSSEPEVRIPENNPVKLSCAYSGFSSPRVEWKFDQGDTTRLVCYNNKITASYEDRVTFLPTGITFKSVTREDTGTYTCMVSEEGGNSYGEVKVKLIVLVPPSKPTVNIPSSATIGNRAVLTCSEQDGSPPSEYTWFKDGIVMPTNPKSTRAFSNSSYVLNPTTGELVFDPLSASDTGEYSCEARNGYGTPMTSNAVRMEAVERNVGVIVAAVLVTLILLGILVFGIWFAYSRGHFDRTKKGTSSKKVIYSQPSARSEGEFKQTSSFLV(配列番号:1)。
【0034】
JAM-Aの全てのアイソフォームが包含される。例として、例えば、JAM-Aの代替的なスプライシングアイソフォームであって、配列番号:1のアミノ酸81~129を欠いているアイソフォームが知られており、ここで、以下に示す(配列番号:2):
MGTKAQVERKLLCLFILAILLCSLALGSVTVHSSEPEVRIPENNPVKLSCAYSGFSSPRVEWKFDQGDTTRLVCYNNKITVPPSKPTVNIPSSATIGNRAVLTCSEQDGSPPSEYTWFKDGIVMPTNPKSTRAFSNSSYVLNPTTGELVFDPLSASDTGEYSCEARNGYGTPMTSNAVRMEAVERNVGVIVAAVLVTLILLGILVFGIWFAYSRGHFDRTKKGTSSKKVIYSQPSARSEGEFKQTSSFLV(配列番号:2)。
【0035】
過剰発現は、宿主細胞によって天然で提示されるすなわち遺伝子組み換えが無い場合に提示されるJAM-Aの発現レベルより上の、またはそれを超える発現の任意のレベルを包含する。
【0036】
用語「組成物(composition)」は、一般的に、2つまたはそれ以上の構成成分で構成されるものを意味し、および、より具体的には、特には2つまたはそれ以上の材料、例えば要素、分子、物質、生物学的分子、または微生物学的材料、ならびに、組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物の混合物またはブレンドなどを意味する。それらの使用を考慮して、本発明の組成物は、薬学的組成物として構成されてもよい。薬学的組成物は、典型的には、一または複数の薬理学的に活性な成分(一または複数の薬理学的効果を有する化学的および/または生物学的に活性な材料)と一または複数の薬学的に許容可能な担体とを含む。本明細書中で典型的に使用される組成物は、液体、半固体、または固体であってもよく、および、溶液または分散体を含んでいてもよい。
【0037】
用語「キット(kit)」または「キットオブパーツ(kit-of-parts)」は、置き換え可能であり、および、2または複数の成分(より特には、2または複数の材料、例えば要素、分子、物質、生物学的分子、または微生物学的材料、および/または、キットの材料から形成される反応生成物および分解生成物など)を含む組み合わせ(組み合わせられた製品)であって、組み合わせのうちの一または複数の成分が物理的に組み合わせの一または複数の他の成分と分離されて、しかし隣り合って、典型的には、同一の製品パッケージまたは分配装置の一部として、保存されている(例えば分離されたコンパートメント、コンテナ、またはバイアル中にある)ことを意味する。このようなアレンジメントは、消費者または開業医が使用の直前にキットの成分を混合すること、またはキットの物理的に分離されている成分を別々に、例えば同時に、または任意の順序で順番に、使用するまたは投与することを可能にする。
【0038】
限定ではなく例として、本明細書中に開示される組成物は、レオウイルスおよびシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる。組成物は、一または複数の薬学的に許容可能な担体も含む薬学的組成物であってもよい。組成物または薬学的組成物は、キットのなかに、キットの一または複数の他の成分と物理的に分離されて含まれていてもよい。限定ではなく例として、本明細書中に開示されているキットは、レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含んでいてもよく、ここで、レオウイルス科のウイルスは、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子から物理的に分離されている。例えば、キットは、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物から物理的に分離されているレオウイルス科のウイルスを含む組成物を含んでいてもよい。一または複数の組成物は、一または複数の薬学的に許容可能な担体を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の意味において、組成物またはキットオブパーツは、特に、人工の調製物、物体、または製造された製品を示す。このような組成物またはキットオブパーツは、例えば療法においてなどの例えば医学的分野において特に有用である。この観点から、条件は、レオウイルス科のウイルスと、その細胞表面にシアル酸または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を提示している(例えば、グリカンで修飾された細胞表面の糖タンパク質またはガングリオシドに含まれる)宿主細胞とのあいだの接触の単なる一環として、そのような接触がウイルスによる宿主細胞の自然に起こる感染のあいだで起ころうと、または、例えば細胞培養中などの研究室において再現されていようと、レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とが一緒にされている、または、近接にもってこられるような場合を排除していてもよい。したがって、特定の実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、例えば特にはレオウイルス科のウイルスの宿主細胞などの細胞、または、レオウイルス科のウイルスのための細胞表面レセプターを含む細胞を含まない。特定の実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、特にはレオウイルス科のウイルスの宿主細胞またはレオウイルス科のウイルスのための細胞表面レセプターを含む細胞から調製された細胞膜などの細胞膜を含まない。特定の実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、レオウイルス科のウイルスのための細胞表面レセプターを含まず、およびしたがって、ウイルスが組成物またはキットオブパーツの一部である場合に、レオウイルス科のウイルスは、そのレセプターとの相互作用を起こさない。特定の実施形態において、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、細胞の表面または細胞膜と結びつくまたは結合することはなく、例えば、細胞表面上の糖タンパク質またはガングリオシドのグリカン(例えば膜貫通型または細胞外糖タンパク質またはガングリオシドなど)に含まれない。特定の実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、例えば細胞または細胞膜が、それらと結びつくまたはそれらに結合するシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子、および任意にはレオウイルス科のウイルスのための細胞表面レセプターを含んでいる、細胞または細胞膜に結合しているレオウイルス科のウイルスを含む複合体を含まない。特定の実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、ウイルスが組成物またはキットオブパーツの一部である場合に、そのレセプターと相互作用しているレオウイルス科のウイルスを含む複合体を含まない。
【0040】
「レオウイルス科のウイルス(a virus which is a member of the Reoviridae family)」または「レオウイルス科のウイルス(Reoviridae family virus)」または「レオウイルス科のウイルス(Reoviridae virus)」とのフレーズは、ウイルス分類または分類法の確立された実施に基づいて、例えば、国際ウイルス分類委員会(ICTV)分類システムに基づいて、レオウイルス科に分類されるまたは分類されるであろう任意のウイルスを含む。限定ではなくさらなるガイダンスとして、レオウイルス科のウイルスは、セグメント化された(典型的には10~12本のセグメント)2本鎖RNAのコアを含むリボ核酸(RNA)ウイルスであり、外殻脂質エンベロープをもたず、および、同心状の外殻および内殻タンパク質シェルを含む正二十面体のカプシドを有する。
【0041】
特にはセドレオウイルス亜科(Sedoreovirinae)およびスピナレオウイルス亜科(Spinareovirinae)を含む、任意のレオウイルスの亜科のウイルスが、本明細書において包含される。
【0042】
レオウイルス属の任意のウイルス、例えば特には、カルドレオウイルス(Cardoreovirus)、ミモレオウイルス(Mimoreovirus)、オルビウイルス(Orbivirus)、ファイトレオウイルス(Phytoreovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、セドナウイルス(Seadornavirus)、アクアレオウイルス(Aquareovirus)、コルチウイルス(Coltivirus)、サイポウイルス(Cypovirus)、ジノベルナウイルス(Dinovernavirus)、フィジウイルス(Fijivirus)、イドノレオウイルス(Idnoreovirus)、ミコレオウイルス(Mycoreovirus)、オルソレオウイルス(Orthoreovirus)およびオリザウイルス(Oryzavirus)属に含まれるウイルスが本明細書において包含される。限定する意図なく、オルソレオウイルス、オルビウイルス、コルチウイルスおよびロタウイルス種がヒトに感染することが知られており、特定のオルソレオウイルス種が鳥類に感染することが知られており、ファイトレオウイルスおよびフィジウイルス種が植物および昆虫に感染することが知られており、サイポウイルス種が昆虫に感染することが知られており、アクアレオウイルスが魚類に感染することが知られている。
【0043】
チュウゴクモクズガニレオウイルス(Eriocheir sinensis reovirus(カルドレオウイルス種));マイクロモナスピューシラレオウイルス(Micromonas pusilla reovirus(ミモレオウイルス種));アフリカ馬疫ウイルス、ブルータングウイルス、チャングイノラウイルス、チェヌダウイルス、チョバー峡谷ウイルス、コリパルタウイルス、流行性出血性疾患ウイルス、ウマ脳症ウイルス、ユーベナンジーウイルス、グレートアイランドウイルス、イエリウイルス、レボンボウイルス、オルンゴウイルス、パリアムウイルス、ペルー馬疫ウイルス、セントクロア川ウイルス、ユマティラウイルス、ワドメダニウイルス、ウォーラルウイルス、ウォリゴウイルス、ウォンゴアウイルス、雲南オルビウイルス(すべてオルビウイルス種);イネ萎縮病ウイルス、イネこぶ萎縮病ウイルス、創傷腫瘍ウイルス(すべてファイトレオウイルス種);ロタウイルスA、B、C、D、E、F、G、H、I(すべてロタウイルス種);バンナウイルス、カディピロウイルス、遼寧ウイルス(すべてセドナウイルス種);アクアレオウイルスA、B、C、D、E、F、G(すべてアクアレオウイルス種);コロラドダニ熱ウイルス、アイアッハウイルス(すべてコルチウイルス種);サイポウイルス1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16(すべてサイポウイルス種);エデス プセウドスクデラリスレオウイルス(ジノベルナウイルス種);フィジー病ウイルス、ニンニク矮性ウイルス、メイズラフ矮性ウイルス、マルデリオクアルトウイルス、ニラパルヴァタルゲンスレオウイルス、オート滅菌矮性ウイルス、パンゴラスタントウイルス、ライスブラックストリークドワーフウイルス、サザンライスブラックストリークドワーフウイルス(全てフィジウイルス種);イドノレオウイルス1、2、3、4、5(全てイドノレオウイルス種);ミコレオウイルス1、2、3(すべてミコレオウイルス種);鳥類オルソレオウイルス、ヒヒオルソレオウイルス、マラピツィオルソレオウイルス、哺乳類オルソレオウイルス、ネルソンベイオルソレオウイルス、魚類オルソレオウイルス、爬虫類オルソレオウイルス(全てオルソレオウイルス種);エキノクロア不規則スタントウイルス、ライス不規則スタントウイルス(全てオリザウイルス種)を含む任意のレオウイルス種のウイルスが本明細書において包含される。レオウイルス科の種のうちの任意の血清型、株、クローンまたは単離株のウイルスもまた本明細書において包含される。
【0044】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、動物に対する宿主指向性を示す。宿主指向性とは、ウイルスの特定の宿主。宿主群、または宿主分類群にたいする感染特異性を意味している。ウイルスは、典型的には、一または複数の、宿主のセルタイプ、組織または器官を感染させ得る(宿主指向性)。これゆえ、ウイルスは、動物に感染し得るが、植物や寄生虫、真菌には感染しないかもしれない。ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの動物属に対して、例えば正確に1つの特定の動物属に対して、または正確に2以上の特定の動物属に対して、またはより広く、動物種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。
【0045】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの動物種に対して、例えば、正確に1つの特定の動物属に対して、または正確に2以上の特定の動物属であって、これは、典型的には同一の動物属に属していなくてもよい動物属に対して、またはより広く、動物種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの恒温動物種に対して、例えば、正確に1つの特定の恒温動物属に対して、または正確に2以上の特定の恒温動物属であって、これは、典型的には同一の恒温動物属に属していなくてもよい恒温動物属に対して、またはより広く、恒温動物種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。
【0046】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの脊椎動物種に対して、例えば、正確に1つの特定の脊椎動物属に対して、または正確に2以上の特定の脊椎動物属であって、これは、典型的には同一の動物属に属していなくてもよい脊椎動物属に対して、またはより広く、脊椎動物種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。用語「脊椎動物(vertebrate)」とは、確立された分類学的方法に基づいて、脊椎動物亜門内に分類される任意の動物を広く包含し、説明のため例示すると、魚類、ならびに、両生類、爬虫類、鳥類および哺乳類を含む。
【0047】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの鳥類種に対して、例えば、正確に1つの特定の鳥類種に対して、または正確に2以上の特定の鳥類種であって、これは、典型的には同一の鳥類属に属していなくてもよい鳥類種に対して、またはより広く、鳥類種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。用語「鳥類(birds)」は、確立された分類学的方法に基づいて、鳥綱内に分類される任意の脊椎動物を広く包含する。好ましい鳥類としては、例えば猟鳥およびキジ(Galliformes)および水鳥(Anseriformes)などを含む家禽、例えば鶏、ウズラ、七面鳥、ヤマウズラ、キジ、アヒル、ガチョウ、白鳥などが挙げられる。
【0048】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、少なくとも一つの哺乳類種に対して、例えば、正確に1つの特定の哺乳類種に対して、または正確に2以上の特定の哺乳類種であって、これは、典型的には同一の哺乳類属に属していなくてもよい哺乳類種に対して、またはより広く、哺乳類種または属の範囲に対して、宿主指向性を示す。用語「哺乳類(mammalian)」は、確立された分類学的方法に基づいて、哺乳類綱内に分類される任意の脊椎動物を広く包含し、説明のため例示すると、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えばマウスまたはラットなど)、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む。
【0049】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、ヒトに対する宿主指向性を示す。本明細書中において、任意の分類群、例えば種などに対する言及は、任意の性別またはジェンダー(例えば男性または女性)および任意の年齢の種である個人を含む。
【0050】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、例えば鳥類オルソレオウイルス、ヒヒオルソレオウイルス、マラピツィオルソレオウイルス、哺乳類オルソレオウイルス、ネルソンベイオルソレオウイルス、魚類オルソレオウイルス、または爬虫類オルソレオウイルスなどのオルソレオウイルスである。ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、任意のそれらの血清型または種を含む鳥類オルソレオウイルスである。鳥類オルソレオウイルスは、家禽の群れにおいて広く広がった事象であるため、特に経済的に重要なものである。
【0051】
ある好ましい形態において、レオウイルス科のウイルスは、哺乳類オルソレオウイルスである。哺乳類オルソレオウイルスは、ヒトを含む数多くの哺乳類種を感染させる。哺乳類またはヒトオルソレオウイルスはまた、通常簡易的に「レオウイルス(reovirus)」とも称され、これは、ウイルスがヒトの呼吸器および腸管の両方から単離され得るが、ヒトにおけるどんな公知の疾患の状態とも関連していないという歴史的な観察に基づく、「Respiratory and enteric orphan virus」の説明的な頭字語である(Sabin. Reoviruses: a new group of respiratory and enteric viruses formerly classified as ECHO type 10 is described. Science. 1959, vol. 130, 1387-1389)。したがって、ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、ヒトレオウイルスである。レオウイルスの任意の血清型または株が本明細書において包含される。現在のところ、レオウイルスは、4つの周知の血清型(または株)、すなわち、1型(Lang株、T1L)、2型(Jones株、T2J)、3型(Dearing株またはAbney株、T3D)および4型(Ndelle型、T4N)を含む。ある好ましい実施形態において、レオウイルスは、3型レオウイルスであり得る。血清型は、当該技術分野において知られているように、とりわけ、抗体中和および血球凝集素阻害アッセイに基づいて区別され得る。時には、レオウイルスとの指定は、例えば「鳥類レオウイルス」という表現中などにおいて、他のオルソレオウイルスを示すために当該技術分野ににおいて使用され得る。
【0052】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、アフリカ馬疫ウイルス、ブルータングウイルス、チャングイノラウイルス、チェヌダウイルス、チョバー峡谷ウイルス、コリパルタウイルス、流行性出血性疾患ウイルス、ウマ脳症ウイルス、ユーベナンジーウイルス、グレートアイランドウイルス、イエリウイルス、レボンボウイルス、オルンゴウイルス、パリアムウイルス、ペルー馬疫ウイルス、セントクロア川ウイルス、ユマティラウイルス、ワドメダニウイルス、ウォーラルウイルス、ウォリゴウイルス、ウォンゴアウイルス、または雲南オルビウイルスなどのオルビウイルスであり、これらの任意の血清型または株を含む。オルビウイルスは、これらに限定される訳ではないが、例えば牛、山羊および羊、野生の反芻動物、ウマ、ラクダ、有袋類、ナマケモノ、コウモリ、鳥類、大型の犬および猫の肉食動物、ならびにヒトなどを含む、広範な範囲の節足動物および脊椎動物の宿主に感染し得、およびその中で複製され得る。ある好ましい実施形態において、オルビウイルスは、任意のそれらの血清型または株を含むブルータングウイルス、アフリカ馬疫ウイルス、または流行性出血性疾患ウイルスであり、これは、例えば羊、牛、バッファロー、鹿、ウマ、ラバおよぶロバなどの経済的に重要な動物における事象であるため、特に経済的に重要なものである。
【0053】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、それらの任意の血清型または株を含む、ロタウイルス種A、B、C、D、E、F、G、H、Iなどのロタウイルスであり、これは、乳児および幼児における下痢性疾患の最も共通の原因を構成している。ある好ましい実施形態において、ロタウイルスは、それらの任意の血清型または株を含むロタウイルスAであり、これは、ヒトにおけるロタウイルス感染症のうちの90%より多い感染症を引き起こす、もっとも共通の種である。
【0054】
本明細書中で使用されるように、ウイルスへの参照は、その生活環の任意のステージにおけるウイルス、およびその生活環のあいだに生じる任意の形状または形態であるウイルスを包含していてもよく、特には、本用語によって、ウイルス粒子またはビリオン、より特には、完全なウイルス粒子またはビリオンが意図される。
【0055】
レオウイルス科のウイルスは、天然の、または非天然のものであってもよい。ウイルスは、自然の供給源から単離され、および任意には適切な生物学的システム(例えばウイルスによる感染を受けやすい培養細胞株など)で増殖され。および収集され、富化され、または精製されているが、ヒトの手によって意図的に改変されていない場合、「天然(naturally occurring)」であると考えられ得る。例えば、ウイルスは、例えばウイルスに感染した宿主個体、例えばヒト個体などのフィールドソースから単離されたものであってもよい。ウイルスは、対応する天然のウイルスと比較して改変されている場合に「非天然(non-naturally occurring)」として考えられ得る。このような改変としては、例えば、ウイルスの構造を実質的に変化させる化学的または生物学的処置などが挙げられ、例えば、限定される訳ではないが、外殻カプシドへの検出可能なラベルの結合、外殻カプシドの一または複数の成分のタンパク分解性のトランケートまたは除去、またはリポソームまたはミセル中へのウイルスのコーティング、および/またはウイルス拡散の遺伝子組み換えなどを含み得る。遺伝子組み換えは、一または複数のウイルスの遺伝子および/または一または複数のウイルス遺伝子を取り囲む拡散を変化させ得、および、例えばウイルスの感染性、ウイルスのDNA複製、ウイルスタンパク質合成、ウイルス粒子のアセンブリおよび成熟、およびウイルス粒子の遊離などのウイルスのプロセスに影響を与え得、または、異種核酸のウイルスへの挿入のための部位を導入し得る。このような異種核酸としては例えば、これらに限定される訳ではないが、宿主細胞に対して有害または毒性のある、例えば、腫瘍性細胞に対するウイルスの腫瘍溶解性形の毒性をさらに刺激するたなどの遺伝子的ペイロードなどが挙げられる。例えば、アポトーシスの誘導因子、メディエーターまたは実行因子をエンコードしている遺伝子、例えば腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)、インターロイキン-24、カスパーゼ、または、内因性抗アポトーシス性遺伝子のsiRNAもしくはmicroRNAサイレンサーの導入も選択肢であり得る。ウイルスはまた、異なる病原性表現型を有する、例えば2以上のレオウイルスサブタイプなどレオウイルス科のウイルス種の2つ以上のサブタイプの組み換えによって得られ(組み換えウイルス)、したがって、異なる抗原決定基を含み、そのためレオウイルス科のウイルスに以前に暴露されたことのある宿主、例えばレオウイルスサブタイプに以前に暴露されたことのある哺乳類などによる免疫応答を減少させるまたは防止する場合に「非天然」であるとみなされ得る。このような組み換えビリオンは、異なるサブタイプのレオウイルス科のウイルス、例えば異なるサブタイプのレオウイルスなどによって宿主細胞を共感染させることによって作成され得、結果として、異なるサブタイプのコートタンパク質を、結果として得られるビリオンカプシド内に取り入れ、組み込む。
【0056】
本明細書中で意図されるレオウイルス科のウイルスは、特には、ウイルスが、該ウイルスによる感染を受けやすい、例えばインビトロで培養された宿主細胞などの宿主細胞(このような細胞は、典型的には、ウイルスのための細胞表面レセプターを発現しており、ウイルス複製に対し許容状態である)を感染させることができるという意味で生存能力のあるまたは生きているウイルスであり得る。このような感染は典型的には、いくつかのステージまたは段階を含んでおり、例えば、宿主細胞表面のレセプターへのウイルス粒子の付着、それらの取り込み、細胞内運搬、および細胞質基質への侵入、脱殻、ウイルス拡散の複製およびウイルスタンパク質の産生、ならびに、新しく産生されたウイルス粒子のアセンブリおよび遊離などを含む。ある実施形態において、ウイルスは、宿主細胞を細胞溶解することなく宿主細胞を感染させ得る(非溶解性感染)。ある実施形態において、宿主細胞のウイルスによる感染は、宿主細胞の細胞溶解を導き得る(溶解性感染)。換言すると、このようなレオウイルス科のウイルスは、生育不能、不活性化されている、または死滅しているとはみなされない。
【0057】
レオウイルス科のウイルスは、例えばウイルスに感染した宿主細胞の生物学的サンプルからなど、フィールドソースから単離され得る。ウイルスの組織指向性に依存して、ウイルス粒子は、様々な生物学的サンプル中に与えられおよびそれらから回収され得、生物学的サンプルとしては、例えば、臓器または組織標本、全血、血漿、リンパ液、血清、血液細胞、唾液、尿、便(糞便)、涙、汗、皮脂、乳頭吸引液、乳管洗浄液、滑液、脳脊髄液、羊水、精液、膣分泌物、炎症液、またはその他の体液、滲出液、分泌液などが挙げられる。例として、サンプルは、必要に応じて適切なバッファー中での細分化や混合などの組織均質化の標準的な手法を用いて均質化され、および、デブリが遠心分離によってペレット化され、ウイルスを含む上清が収集され、および細胞を分離しウイルスを通すことのできる0.45μmまたは0.25μmに通されてもよい。結果として得られるろ液は、ウイルスを増殖させるために、懸濁液で、または単層培養で、ウイルスによる感染を起こしやすい適切な培養細胞株を播種するために使用され得る。例として、ヒトレオウイルスは、典型的にはマウス線維芽細胞L929細胞株(特には、European Collection of Cell Cultures, ECACC, Health Protection Agency - Porton Down Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, United Kingdom, cat. no. 85011425より入手可能)を用いて培養され得る。Berard & Coombs. Mammalian reoviruses: propagation, quantification, and storage. Curr Protoc Microbiol. 2009 Chapter 15: Unit 15C.1も参照のこと。増殖されたウイルスは、さらなる使用のために、塩化セシウム勾配遠心法によって感染細胞溶解物から精製され得る。本明細書における用語「精製された(purified)」は、絶対的な精製度を必要とするものではない。その代わり、それは、精製されたものが、他の成分に対するそのアバンダンスがもともとの材料中よりも大きい別の環境にあることを示している。別の環境とは、例えば単一の溶液、ゲル、沈殿物、凍結乾燥物などの単一の媒体を示している。精製に続いて、ウイルスタンパク質またはポリペプチドは、10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、例えば、60重量%以上、さらにより好ましくは70重量%以上、例えば8重量%以上、およびさらにより好ましくは90重量%以上、例えば95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、98重量%以上、99重量%以上、または100重量%の別の環境のタンパク質含有量を好ましくは構成する。タンパク質含有量は例えば、任意にはHartree 1972 Anal Biochem 48:422-427に記載されるような、ローリー法(Lowry et al. 1951 J Biol Chem 193:265)によって測定され得る。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の純度は、クマシーブルーまたは好ましくはシルバーステインを用いて還元性または非還元性の条件下でSDS-PAGEによって測定され得る。ウイルスの感染性は、例えばプラークアッセイまたは感染ドーズを計算することによって、またはウイルス感染後の宿主におけるウイルスのロード量の測定などの標準的な技術を用いたウイルス滴定を行うことによって確かめられ得る。必要な場合、ウイルスは、例えばグリセロールまたはDMSOなどの通常の凍結保存剤を用いた凍結保存、またはグルコース、スキンミルク、スクロース-リン酸塩-グルタミン酸-アルブミン(SPGA)などの通常の安定化剤を用いた凍結乾燥(フリーズドライ)などの標準の手順によって保存され得る。ウイルス認証もまた、例えばシークエンシング、例えば特徴的な表面抗原を検出するためなどのELISAなどの免疫アッセイ法など、通常の技法で行われる。
【0058】
代替的には、レオウイルス科のウイルスは、例えばアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection(ATCC))(10801 University Blvd. Manassas, Virginia 20110-2209, USA)またはNational Collection of Pathogenic Viruses(NCPV)(Public Health England - Porton Down Salisbury, Wiltshire SP4 0JG, United Kingdom)、によって維持されている欧州のコレクションから得られ得、限定する意図はないが、例えば、哺乳類レオウイルスATCC acc. no. VR-215、VR-231、VR-232、VR-824、VR-871、またはNCPVカタログ番号0006252v、または鳥類オルソレオウイルスATCC acc. no. VR-826、VR-857、VR-24、PTA-47などが挙げられる。
【0059】
完全なレオウイルス科のウイルスは、典型的には、2つの同心円状カプシドを含むが、ここでこれらの構造を示すために使用される用語は同一でないかもしれない(例えば、外殻カプシドと内殻カプシド;外殻カプシドと内側コア;外殻と内殻など)。サイポウイルスおよびジノベルナウイルス属は、単一のカプシドを含む例外である。さらに、いくつか属、例えばロタウイルスおよびオルビウイルスは、外側および内側のカプシドのあいだに挟まれている中間のカプシドを追加で含むと記載され得る。
【0060】
例として、鳥類および哺乳類オルソレオウイルスを含むオルソレオウイルス種においては、内殻カプシドは、内殻カプシドタンパク質ラムダ1およびシグマ2によって形成され、そして、外殻カプシドは、外殻カプシドタンパク質ラムダ2、ミュー1、シグマ1およびシグマ3によって形成される。例えばキモトリプシンなどによるレオウイルスのプロテアーゼ処理は、シグマ3の除去、デルタおよいファイを形成するミュー1の開裂、およびシグマ1のより細長いコンフォーメーションへの再配列によって、感染性サブビリオン粒子(ISVPs)を生成することが知られている。ある好ましい実施形態において、レオウイルス、例えば限定される訳ではないがオルソレオウイルス、例えば限定される訳ではないが鳥類または哺乳類のオルソレオウイルスなどは、外殻カプシドおよび内殻コアを含む。例えば、このようなウイルスは、ISVPを生成するためのプロテアーゼ処理に付されていない。
【0061】
理論に束縛されることを意図する訳ではないが、発明者らは、レオウイルスの外殻カプシドタンパク質シグマ1(σ1)タンパク質とのシアル酸の相互作用が、σ1タンパクにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションへのコンフォーメーションの変化を積極的に促進すること、これがウイルスの細胞表面レセプターへの結合能力およびその結果細胞を感染させる能力を増大させるという結果を優位にもたらすことを発見した。
【0062】
したがって、ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、宿主細胞表面レセプターに結合する能力のある外殻カプシドを含み、ここでシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、該外殻カプシドタンパク質に、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下におけるコンフォーメーションと比較して、レオウイルス科のウイルスにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションを取らせる。この意味において、「宿主細胞表面レセプターに結合することができる(capable of binding to a host cell surface receptor)」との表現は、外殻カプシドタンパク質とその細胞表面レセプターとのあいだの特別な相互作用を示している。タンパク質のこのような比較的より細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションの発生は、例えばX線結晶構造解析、低温電子顕微鏡法(cryo-EM)、および/または、例えば実施例に図示されているような原子間力顕微鏡法(AFM)などの適切なウイルス可視化方法を用いて測定され得る。
【0063】
したがって、ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、宿主細胞表面レセプターに結合することのできる外殻カプシドタンパク質を含み、ここで、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、該外殻カプシドタンパク質が、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下での結合と比較して、宿主細胞表面レセプターにより強く結合することをもたらす。結合の強度は、例えば、実施例において行われているように原子間力顕微鏡法(AFM)を用いることなどによって測定され得る。
【0064】
好ましい実施形態において、外殻カプシドタンパク質は、シグマ1タンパク質である、ある好ましい実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、オルソレオウイルス、例えば限定される訳ではないが、鳥類または哺乳類オルソレオウイルスなどであり、宿主細胞表面レセプターに結合することのできる外殻カプシドタンパク質シグマ1(例えば、レオウイルスによって認識される、接合部接着分子(JAM)タンパク質、およびより特には、JAM-Aタンパク質など)を含み、ここでシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、該シグマ1タンパク質に、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下におけるコンフォーメーションと比較して、レオウイルス科のウイルスにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションを取らせる。ある好ましい実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、オルソレオウイルス、例えば限定される訳ではないが、鳥類または哺乳類オルソレオウイルスなどであり、宿主細胞表面レセプターに結合することのできる外殻カプシドタンパク質シグマ1(例えば、レオウイルスによって認識される、接合部接着分子(JAM)タンパク質、およびより特には、JAM-Aタンパク質など)を含み、ここで、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、該シグマ1タンパク質が、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下での結合と比較して、宿主細胞表面レセプターにより強く結合することをもたらす。
【0065】
図7に示されるように、および、本明細書を通じて記載されているように、レオウイルスσ1タンパク質は、例えば特にはαヘリックスコイルドコイルおよびトリプルβスパイラルなどによって形成されるテールドメイン、および例えば特にはコンパクトな8本鎖βバレルなどによって形成されるヘッドドメインを含み得る。テールドメイン、特にトリプルβスパイラルはα-SAに結合し得、一方、ヘッドドメインはJAM-Aに結合し得る。したがって、ある実施形態において、本明細書中で意図されるσ1タンパク質は、α-SAに結合することができるテールドメインおよびJAM-Aに結合することができるヘッドドメインを含み得る。
【0066】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、腫瘍溶解性ウイルスである、用途「腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)」とは、分裂細胞中で、より好ましくは腫瘍性細胞(例えば、腫瘍細胞、癌細胞)中で、増殖を遅らせること、および/または、インビトロまたはインビボのいずれかで該細胞を溶解することを目的とする一方、非分裂細胞中、より好ましくは非腫瘍性細胞中では複製しないかまたは最小限の複製しか示さない、選択的に複製することのできるウイルスを広く意味している。腫瘍溶解性ウイルスの好ましい例は、哺乳類オルソレオウイルス3型、例えば哺乳類オルソレオウイルス3 Dearingなどであり、これは、形質転換細胞において優先的に細胞溶解および死を誘導し、およびしたがって内在性の腫瘍溶解特性を示す。より特には、レオウイルス3型 Dearingは、活性化されたRasシグナル伝達経路を有する形質転換細胞通での複製が可能であるが、正常な非形質転換細胞は、感染を維持することができない。したがって、ある実施形態において、本明細書中で意図される腫瘍溶解性レオウイルス科のウイルスによる感染を受けやすい腫瘍性細胞は、構成的ras-MAPシグナル伝達を含むか、またはそれによって特徴付けられ得る。
【0067】
したがって、ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、腫瘍溶解性の哺乳類オルソレオウイルス3型、より好ましくは3型 Dearingである。例として、これらに限定される訳ではないが、腫瘍溶解性レオウイルスのある実施形態は、Oncolytics Biotech Inc.(カナダ、アルバータ州カルガリー)による商標Reolysin(登録商標)のもとで製造されており、特には、固形腫瘍および血液悪性腫瘍の治療に適応されている。REOLYSINは、未改変レオウイルスの非病原性の占有単離株であり、例えば国際公開第2000/050051号において考慮されているように、選択的腫瘍溶解を誘導し、および、自然免疫および獲得免疫応答を通じて炎症性腫瘍の表現型を促進する。
【0068】
したがって、ある実施形態において、ウイルス感染性を高めるための、本明細書中において想定されるように、例えば腫瘍溶解性レオウイルス科のウイルスなどのレオウイルス科のウイルスに対するアジュバントとしての、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の、使用またはそれらを使用する方法が本明細書中において想定される。
【0069】
ある実施形態において、腫瘍溶解性のレオウイルス科ウイルスは、腫瘍細胞に特異的に結合することができる結合剤と同時投与されてもよく、例えば、同じ組成物中で同時投与されてもよく、または別々の組成物から同時にまたは任意の順序で連続して同時投与されてもよい。ある好ましい実施形態において、腫瘍溶解性のレオウイルス科ウイルスは、腫瘍性細胞に特異的に結合することができる結合剤に、結合され得、例えば共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得、好ましくは共有結合的に結合され得る。ある実施形態において、非共有結合的な結合は、それぞれが、例えばこれらに限定される訳ではないが、ビオチン-ストレプトアビジン親和性ペア、または、抗体-ハプテン親和性ペアなどの親和性ペアの異なる半分または成分を有するレオウイルス科のウイルスと結合剤とを提供することを含んでいてもよい。例えば、ストレプトアビジンは、レオウイルス科のウイルスに結合する、典型的には共有結合的に結合することができ、および、ビオチンは、結合剤に結合する、典型的には共有結合的に結合することができ、またはこの逆でもあり得る。
【0070】
用語「特異的に結合する(specifically bind)」とは、薬剤(本明細書中では「結合剤(binding agent)」または「特異的結合剤(specific-binding agent)」としても示される)が、ランダムまたは関連性のない他の実体を本質的に除外して、および、構造的に関連している他の分子を任意には本質的に除外して、一または複数の所望の標的(例えばペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、または細胞など)に結合することを意味している。「特異的に結合する」という用語は、薬剤がその意図された標的に排他的に結合することを必ずしも必要としない。例えば、薬剤は、結合条件下でのそのように意図された標的に対するその親和性が、非標的への親和性と比較して、少なくとも約2倍大きい、好ましくは少なくとも約5倍大きい、より好ましくは少なくとも約10倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約25倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約50倍大きい、さらにより好ましくは少なくとも約100倍大きい、または少なくとも約1000倍大きい、または少なくとも約104倍大きい、または少なくとも約105倍大きい、または少なくとも約106倍以上大きい場合に対象である標的に特異的に結合すると言うことができる。好ましくは、特異的結合剤は、その意図された標的に、そのような結合の親和性定数(KA)がKA≧1×106M-1、より好ましくはKA≧1×107M-1、さらにより好ましくはKA≧1×108M-1、さらに好ましくはKA≧1×109M-1、およびさらにより好ましくはKA≧1×1010M-1またはKA≧1×1011M-1またはKA≧1×1012M-1で結合してもよく、ここでKA=[SBA_T]/[SBA][T]であり、SBAは特異的結合剤を示し、Tは意図されるターゲットを示す。KAの測定は、例えば平衡透析およびスキャッチャードプロット分析などを用いて、当該技術分野において知られている方法によって実施され得る。
【0071】
ある実施形態において、結合剤は抗体であってもよい。本明細書中で使用されるように、用語「抗体(antibody)」は、その最も広い意味で使用され、および、一般的に任意の免疫性の結合剤を意味する。用語は特に、完全なモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全な抗体より形成される多価(例えば、2価、3価、またはそれ以上の多価など)および/または多特異性の抗体(例えば2、またはそれ以上に特異的な抗体など)、および、所望の生物学的活性を示す限り抗体のフラグメント(特には、興味の対象である抗原に特異的に結合する能力、すなわち抗原結合性フラグメント)、ならびに、そのようなフラグメントの多価および/または多特異性複合物を包含する。用語「抗体」は、免疫化を含む方法によって生成された抗体を含むだけでなく、興味の対象である抗原上のエピトープに特異的に結合することのできる少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を包含するように作製される任意のポリペプチド、例えば組み換えによって発現されたポリペプチドなども含む。したがって、用語は、それらがインビトロまたはインビボで産生されたかどうかに関わらずこのような分子に対して適用される。
【0072】
抗体は、IgA、IgD、IgE、IgE、IgG、およびIgMクラスの任意のものであってよく、および好ましくは、IgGクラス抗体である。抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、例えば、抗血清または免疫グロブリンから精製されるもの(例えばアフィニティ精製)であってもよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、また、モノクローナル抗体の混合物であってもよい。モノクローナル抗体は、高い選択制および再現性をもって、特定の抗原または抗原内の特定のエピトープを標的とし得る。例として、これらに限定される訳ではないが、モノクローナル抗体は、Kohlerらによって1975年に初めて記載された(nature 256: 495)ハイブリドーマ法によって作製されてもよく、組み換えDNA法によって(例えば米国特許第4,816,567号など)作製されてもよい。モノクローナル抗体は、また、例えば、Clacksonらによって1991年に記載された(Nature 352: 624-628)およびMarksらによって1991年に記載された(J Mol Biol 222: 581-597)技術によってファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。
【0073】
抗体結合剤は、抗体フラグメントであってもよい。「抗体フラグメント(antibody fragment)」は、完全な抗体の一部を含み、それらの抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、FvおよびscFvフラグメント、例えばVHドメイン、VLドメイン、VHHドメインなどの単一ドメイン(sd)Fv;二重特異性抗体;線状抗体;1本鎖抗体分子、特に重鎖抗体;および、例えばdibody型、tribody型、multibody型などの、抗体フラグメントから形成される多価および/または多重特異性抗体などが挙げられる。上記の呼称Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvなどは、それらの技術的に確立された意味を有することが意図されている。
【0074】
用語「抗体」は、動物種、好ましくは、例えば鳥類および哺乳類を含む脊椎動物種由来の一または複数の部分を起源とするまたは含む抗体を含む。これらに限定される訳ではないが、抗体は、ニワトリ、七面鳥、ガチョウ、アヒル、ホロホロチョウ、ウズラ、またはキジであってもよい。また、これらに限定される訳ではないが、抗体は、ヒト、ネズミ(例えばマウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ギニアピッグ、ラクダ(例えばフタコブラクダ(Camelus bactrianus)およびヒトコブラクダ(Camelus dromaderius))、ラマ(例えばアルパカ(Lama paccos)、リャマ(Lama glama)、またはビクーニャ(Lama vicugna))、ウマであってもよい。
【0075】
当業者であれば、抗体は、一または複数のアミノ酸欠失、付加および/または置換(例えば保存的置換)を、それらの改変がそれぞれの抗原への結合性を保持している限り、含み得ることが理解するであろう。抗原はまた、その構成的アミノ酸残基の一または複数の天然のまたは人工的な改変(例えばグリコシル化など)を含んでいてもよい。
【0076】
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体ならびにそれらのフラグメントを製造するための方法は、当該技術分野においてよく知られており、組み換え抗体またはそれらのフラグメントを製造するための方法のまたよく知られている(例えば、Harlow and Lane, “Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1988; Harlow and Lane, “Using Antibodies: A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1999, ISBN 0879695447; “Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques”, by Zola, ed., CRC Press 1987, ISBN 0849364760; “Monoclonal Antibodies: A Practical Approach”, by Dean & Shepherd, eds., Oxford University Press 2000, ISBN 0199637229; Methods in Molecular Biology, vol. 248: “Antibody Engineering: Methods and Protocols”, Lo, ed., Humana Press 2004, ISBN 1588290921などを参照のこと)。
【0077】
ある実施形態において、剤はNanobody(登録商標)であってもよい。用語「Nanobody(登録商標)」および「Nanobodies(登録商標)」は、Ablynx NV(ベルギー)の商標である。用語「Nanobody」は、当該技術分野において良く知られており、および、本明細書中で使用されるように、最も広い意味において、(1)重鎖抗体、好ましくはラクダ科の動物由来の重鎖抗体のVHHドメインを単離することによって、(2)VHHドメインをエンコードする核酸配列の発現によって、(3)天然のVHHドメインの「ヒト化(humanization)」によって、またはそのようなヒト化VHHドメインをエンコードしている核酸の発現によって、(4)任意の動物種から、および特には例えばヒトなどの哺乳類種からのVHドメインの「ラクダ化(camelization)」によって、またはそのようなラクダ化VHドメインをエンコードしている核酸の発現によって、(5)当該技術分野において記載されるような「ドメイン抗体(domain antibody)」または「dAb」のラクダ化によって、またはそのようなラクダ化されたdAbをエンコードしている核酸の発現によって、(6)それ自体が知られているタンパク質、ポリペプチド、または他のアミノ酸配列を調製するための合成的または半合成的な技術を使用することによって、(7)それ自体が知られている核酸合成のための技術を用いてNanobodyをエンコードしている核酸を調製することによって、(8)上述のもののうちの一または複数の任意の組み合わせによって、得られる免疫学的結合剤を包含する。本明細書中で使用されるように、「ラクダ科(Camelids)」は、旧世界のラクダ(Camelus bactrianusおよびCamelus dromaderius)ならびに新世界のラクダ(例えばLama paccos、Lama glamaおよびLama vicugna)を含む。
【0078】
例えば、例えば抗体などの結合剤は、腫瘍細胞によって発現されているタンパク質、例えば腫瘍抗原などに特異的に結合するように構成され得る。用語「腫瘍抗原(tumor antigen)」は、腫瘍細胞によって、正常のまたは非腫瘍細胞と比較して、独自にまたは異なって、細胞内または腫瘍細胞表面において、発現される抗原を意味している。例として、腫瘍抗原は、腫瘍細胞の中または腫瘍細胞上に存在し得、典型的には、正常細胞または非腫瘍細胞中やその上には存在していない(例えば、例えば精巣および/または胎盤など、限られた数の正常組織によってしか発現されていない)か、または、腫瘍抗原は、正常細胞または非腫瘍細胞の中またはその上よりも多くの量で腫瘍細胞中またはその上に存在しているか、または、腫瘍抗原は、正常細胞または非腫瘍細胞の中またはその上とは異なった形状で腫瘍細胞中またはその上に存在し得る。したがって、用語は、腫瘍特異的膜抗原を含む腫瘍特異的抗原(TSA)、腫瘍関連膜抗原を含む腫瘍関連抗原(TAA)、腫瘍上の胚性抗原、成長因子レセプター、成長因子リガンドなどを含む。この用語はさらに、癌/精巣(CT)抗原を含む。腫瘍抗原の例としては、例えば、これらに限定される訳ではないが、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)、糖タンパク質100(gp100/Pme117)、癌胚性抗原(CEA)、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(gp75/TRP1)、チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2)、NY-BR-1、NY-CO-58、NY-ESO-1、MN/gp250、イディオタイプ、テロメラーゼ、滑膜肉腫Xブレークポイント2(SSX2)、ムチン1(MUC-1)、メラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリーの抗原、高分子量メラノーマ関連抗原(HMW-MAA)、T細胞によって認識されるメラノーマ抗原1(MART1)、ウィルムス腫瘍遺伝子1(WT1)、HER2/neu、メソセリン(MSLN)、アルファフェトプロテイン(AFP)、癌抗原125(CA-125)、およびrasまたはp53の異常な形態などを含む。腫瘍性疾患におけるさらなる標的としては例えば、これらに限定される訳ではないが、CD37(慢性リンパ性白血病)、CD123(急性骨髄性白血病)、CD30(ホジキン/大細胞リンパ腫)、MET(NSCLC、胃食道癌)、IL-6(NSCLC)、およびGITR(悪性メラノーマ)が挙げられる。
【0079】
ある好ましい実施形態において、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子は、該結合剤に、結合され得、例えば共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得、好ましくは共有結合的に結合され得る。ある実施形態において、非共有結合は、それぞれが、ビオチン-ストレプトアビジン親和性ペア、または、抗体-ハプテン親和性ペアなどの親和性ペアの異なる半分または成分を有するシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子と結合剤とを提供することを含んでいてもよい。例えば、ストレプトアビジンは、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子に付加され、典型的には共有結合的に付加され、そして、ビオチンが、結合剤に付加され、典型的には共有結合的に付加されてもよく、またこの逆であってもよい。これは、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子と該結合剤に結合されているレオウイルス科のウイルスとのあいだの相互作用を可能にする。ある好ましい実施形態において、腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスは、腫瘍細胞に特異的に結合することのできる結合剤に連結されており、および、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子はまた、前記結合剤に連結されている、ある好ましい実施形態において、腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスは、腫瘍細胞に特異的に結合することのできる抗体に連結されており、そして、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子がまた、該抗体に連結されている。
【0080】
本明細書中において意図されている2つの分子のあいだの共有結合的な結合は、直接であってもよいし、または、当該技術分野において一般的に知られているような適切なリンカーを介するものであってもよく、このようなリンカーの性質および構造は特に制限されるものではない。リンカーは、例えば、ペプチドまたは非ペプチドリンカー、例えば非ペプチドポリマー、例えば非生物学的ポリマーなどであってもよい。好ましくは、結合は、加水分解的に安定な結合であり、すなわち、特には生理学的条件を含む有用なpH値において、例えば何日ものあいだなど延長された期間のあいだ水中で実質的に安定であり得る。
【0081】
ある実施形態において、非ペプチドリンカーは、非ペプチドポリマーを含む、それらからなる、または本質的にそれらからなる。用語「非ペプチドポリマー(non-peptide polymer)」とは、ペプチド結合を除く共有結合によって2つ以上の繰り返しユニットがお互いに連結している生体適合性のポリマーを広く意味している。例えば、非ペプチドポリマーは、2~200ユニット長、または2~100ユニット長、または2~50ユニット長、または2~45ユニット長、または2~40ユニット長、または2~35ユニット長、または2~30ユニット長、または5~25ユニット長、または5~20ユニット長、または5~15ユニット長であり得る。非ペプチドポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、ポリビニルアルコール、多糖類、デキストラン、ポリビニルエチルエーテル、例えばPLA(ポリ乳酸)およびPLGA(ポリ乳酸-グリコール酸)などの生分解性ポリマー、脂質ポリマー、キチン、ヒアルロン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択され得る。特に好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)である。非ペプチドポリマーの分子量は、好ましくは、1~100kDa、および、好ましくは1~20kDaの範囲であってもよい。非ペプチドポリマーは、1つのポリマーまたは異なるタイプのポリマーの組み合わせであってもよい。非ペプチドポリマーは、それによって連結される実体に結合することができる反応性官能基を有する。好ましくは、非ペプチドポリマーは、末端それぞれに反応性官能基を有する。好ましくは、反応性官能基は、反応性アルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、およびスクシンイミド誘導体からなる群より選択される。スクシンイミド誘導体は、プロピオン酸スクシンイミジル、ヒドロキシスクシンイミジル、カルボキシメチルスクシンイミジルまたは炭酸スクシンイミジルであってもよい。
【0082】
本明細書中で教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスと、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む組成物またはキットオブパーツは、療法において有用であり、および、特に腫瘍性疾患の処置において有用である。したがって、一態様において、本明細書中で教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスと、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む、療法における使用のための組成物またはキットオブパーツが提供される。
【0083】
さらなる態様において、本明細書中で教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスと、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む、腫瘍疾患を処置する方法における使用のための組成物またはキットオブパーツが提供される。関連する態様において、本明細書中で教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルス、およびシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の治療的にまたは予防的に有効な量を、対象に投与することを含む、対象における腫瘍性疾患を処置する方法が提供される。ある実施形態において、腫瘍性疾患は、ras-MAPシグナル伝達経路の調節不全によって、例えば、構成的なras-MAPシグナル伝達の存在などによって特徴付けられ得る。本明細書を通じて規定されるように、発明者らは、シアル酸(SA)のレオウイルスのシグマ1(σ1)タンパク質への結合がJAM-A細胞表面レセプターへのσ1結合能へのトリガーとして働き、これが細胞へのウイルス侵入の鍵となるステップであることを示してきた。JAM-Aは、多くの細胞型において比較的広範にわたって発現され得、したがって、様々な組織器官の例えば腫瘍または含細胞などの腫瘍性細胞によっても発現されているであろう。当該技術分野における当業者であれば、それらが本明細書中に記載されている効果および機構から少なくともある程度の利益を特に受けるであろうことから、少なくともいくつかの腫瘍細胞がJAM-Aタンパク質を発現している腫瘍性疾患が特に期待されることを即座に理解するであろう。
【0084】
「療法(therapy)」または「処置(treatment)」への参照は、治癒的なおよび予防的な処置を後半に包含するものであり、そして、用語は、例えば疾患または障害などの病理学的な症状の兆候または測定可能なマーカーのうちの一または複数の軽減または測定可能な緩和を特に意味し得る。用語は、一次治療、ネオアジュバント治療、アジュバント治療、および補助療法を包含する。用語「腫瘍性疾患を処置する(treating a neoplastic disease)」または「抗癌療法(anti-cancer therapy)」または「抗癌治療(anti-cancer treatment)」は、腫瘍性疾患の兆候または測定可能なマーカーのうちの一または複数の軽減または測定可能な緩和を広く意味するものである。測定可能な緩和としては、測定可能なマーカーまたは症状の統計的に有意な低下が挙げられる。一般的に、用語は、治癒的処置、および疾患の兆候を軽減することおよび/または進行を遅らせることを目的とした処置の両方を包含する。用語は、すでに発症した病理学的症状の治療的処置、および、病理学的症状の発生の可能性を予防または低減することを目的とする予防的または防止的措置を包含する。ある実施形態において、用語は、治療的処置に関連していてもよい。ある他の実施形態において、用語は、防止的措置に関連していてもよい。寛解期間のあいだの慢性的な病理学的症状の処置もまた、治療的処置を構成していると見なされ得る。用語は、本発明の意味において適切なエクスビボまたはインビボ処置を包含し得る。例として、対象から得られる細胞組成物から腫瘍性細胞を除去するための、および/または本発明の組成物またはキットオブパーツを使用して対象に導入または移植されることが意図されるエクスビボ治療が包含され得る。
【0085】
用語「対象(subject)」、「個体(individual)」または「患者(patient)」は、本明細書を通じて交換可能に使用され、および典型的かつ好ましくは、ヒトを示すが、非ヒト動物、好ましくは恒温動物、さらにより好ましくは哺乳類、例えば非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどへの参照もまた包含し得る。用語「非ヒト動物(non-human animals)」は、すべての脊椎動物、例えば哺乳類、例えば非ヒト霊長類(特には高等霊長類)、羊、犬、げっ歯類(例えばマウスまたはラットなど)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、牛、バッファロー、鹿、馬、ラバおよびロバなど、ならびに、鳥、鶏など、例えば鶏、ウズラ、七面鳥、パートリッジ、キジ、アヒル、ガチョウ、または白鳥、両生類、爬虫類などを含む非哺乳類を包含する。ある実施形態において、対象は非ヒト哺乳類である。ある好ましい実施形態において、対象はヒトである。ある好ましい実施形態において、対象はニワトリである。他の実施形態において、対象は、実験動物または疾患モデルとしての代用動物である。用語は、特定の年齢または性別を示さない。したがって、男性または女性を問わず、成人および新生児の対象、ならびに胎児が含まれるであろうことが意図される。用語対象はさらに、トランスジェニック非ヒト種を含むことが意図される。
【0086】
用語「治療学的に効果的な量(therapeutically effective amount)」は、一般的に、医師(medical doctor)、臨床医、外科医、獣医、または研究者などの医師(medical practitioner)が診ようとしている対象において薬理学的効果または薬物応答を引き出すために十分な量を意味しており、それは、特には、単回投与または複数回投与のいずれかで、処置される疾患の症状の軽減を含み得る。用語「予防的に効果的な量(prophylactically effective amount)」は、一般的に、単回投与または複数回投与のいずれかで、医師が診ようとしている対象において、例えば疾患の発症の抑止または遅延などの予防的な効果を引き出すために十分な量を意味している。本発明の組成物またはキットオブパーツの成分の、予防的または治療学的に効果的な適切な用量は、疾患の性質および深刻さ、および、患者の年齢および症状に正しい配慮を払う有資格の医師によって決定され得る。投与される本明細書に記載の組成物またはキットオブパーツの成分の効果的な量は、多くの種々の因子に依存し得、日常的な実験を通じて、当該技術分野における当業者によって決定され得る。考慮され得るいくつかの非限定的な因子としては、活性成分の生物学的活性、活性成分の性質、治療される対象の特徴などが挙げられる。用語「投与する(to administer)」は、一般的に、分配するまたは適用することを意味し、典型的には、組織へのインビボ投与およびエクスビボ投与の両方、好ましくはインビボ投与を含む。一般的に、組成物は全身的または局所的に投与され得る。
【0087】
用語「腫瘍性疾患(neoplastic disease)」は、良性(周囲の正常組織に浸潤していない、転移を形成していない)、前悪性(前癌性)、または悪性(隣接した組織に浸潤しており、および転移を形成し得る)であるかどうかにかかわらず、腫瘍細胞の増殖(growth)および増殖(proliferation)によって特徴付けられる任意の疾患または障害を意味する。用語「腫瘍性疾患」は、一般的に、すべての形質転換された細胞および組織、ならびにすべての癌性細胞および組織を包含する。腫瘍性疾患または障害としては、これらに限定される訳ではないが、異常な細胞増殖、良性腫瘍、前癌性(premalignant)または前癌性(precancerous)病変、悪性腫瘍、および癌が挙げられる。腫瘍性疾患または障害の例としては、例えば前立腺、結腸、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、目、頭頸部、神経(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、または泌尿生殖器などの任意の組織または器官内に位置する良性、前悪性、または悪性新生物が挙げられる。
【0088】
本明細書中で使用されるように、用語「腫瘍(tumor)」または「腫瘍組織(tumor tissue)」は、過剰な細胞分裂に起因する異常な組織の塊を意味する。腫瘍または腫瘍組織は、異常な増殖特性を有し、有用な体機能を持たない腫瘍性細胞である腫瘍細胞を含む。腫瘍、腫瘍組織および腫瘍細胞は、良性、前悪性または悪性であり得、または、癌性の可能性のない病変を示しているかもしれない。腫瘍または腫瘍組織はまた、腫瘍関連の非腫瘍細胞、例えば、腫瘍または腫瘍組織に供給するための血管を形成する血管細胞などを含み得る。非腫瘍細胞は、例えば、腫瘍または腫瘍組織における血管新生の誘導など、腫瘍細胞によって複製するおよび発育するように誘導され得る。
【0089】
本明細書中で使用されるように、用語「癌(cancer)」は、調節解除されたまたは未制御の細胞増殖によって特徴付けられる悪性新生物を指す。用語「癌」は、原発性悪性細胞または腫瘍(例えば、細胞が、当初の悪性腫瘍または腫瘍の部位以外の対象の体内の部位に移動していないもの)、および、続発性悪性細胞または腫瘍(例えば、転移、当初の腫瘍の部位とは異なる二次的な部位への悪性細胞または腫瘍細胞の移動から生じるもの)を含む。用語「転移性(metastatic)」または「転移(metastasis)」は、一般的に、一つの器官または組織からの別の非隣接の器官または組織への癌の広がりを意味している。他の非隣接の器官または組織における腫瘍性疾患の発生が、転移と称される。
【0090】
癌の例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、細胞腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられる。このような癌のより特定の例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、扁平上皮癌(例えば上皮扁平上皮癌など)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、肺の扁平癌および大細胞癌肺癌などを含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸癌を含む胃癌(gastric cancer)または胃癌(stomach cancer)、膵臓癌、神経膠腫、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、ならびにCNS癌、黒色腫、頭頸部癌、骨がん、骨髄がん、十二指腸がん、食道がん、甲状腺がん、または血液がんなどが挙げられる。
【0091】
癌または悪性腫瘍の他の非制限的な例としては、これらに限定される訳ではないが、急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、成人(原発性)肝細胞癌、成人(原発性)肝臓癌、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝癌、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門癌、星状細胞腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、腎盂腎癌および尿道がん、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、脳星状細胞腫、子宮頸がん、小児(原発性)肝細胞がん、小児(原発性)肝がん、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、神経膠芽細胞腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視経路および視床下部膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、小児松果体およびテント上原始神経外胚葉腫瘍、小児原発性肝がん、小児横紋筋肉腫、小児軟組織肉腫、小児視経路および視床下部膠腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、膵内分泌膵島細胞癌、子宮内膜癌、表皮腫、上皮癌、食道癌、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵臓癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、女性乳がん、胆嚢癌、胃癌、胃腸癌性腫瘍、胃腸腫瘍、生殖細胞腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭癌、腸癌、眼球内黒色腫、膵島細胞癌、膵島細胞膵臓癌、カポシ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、唇および口腔癌、肝臓癌、肺癌、リンパ増殖性疾患、マクログロブリン血症、男性乳癌、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽細胞腫、メラノーマ、中皮腫、転移性潜在性原発性頭頚部扁平上皮癌、転移性原発性頭頚部扁平上皮癌、転移性頭頚部扁平上皮癌、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、骨髄球性白血病、骨髄増殖性障害、鼻腔および傍鼻洞癌、上咽頭癌、神経芽細胞腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌、潜在性原発性転移性頭頚部扁平上皮癌、中咽頭癌、骨肉腫/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫骨がん、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性腫瘍、膵臓癌、傍タンパク血症、紫斑病、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝がん、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎盂および尿管がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、サルコイドーシス肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟組織肉腫、扁平上皮頸部がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、胸腺腫、甲状腺がん、腎盂および尿道の移行細胞がん、移行性腎盂および尿道がん、栄養芽細胞腫瘍、尿道および腎盂細胞がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、視経路および視床下部膠腫、外陰癌、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、またはウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0092】
ある実施形態において、腫瘍は固形腫瘍である。固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常含まない腫瘍性腫瘤を形成する任意の腫瘍を包含する。固形腫瘍は、良性、前悪性、または悪性であり得る。固形腫瘍の例としては、癌腫、肉腫、黒色腫、リンパ腫が挙げられる。ある実施形態において、腫瘍性疾患は、血液学的悪性腫瘍であってもよい。ある実施形態において、腫瘍性疾患は白血病であり得る。ある好ましい実施形態において、腫瘍性疾患は悪性神経膠腫である。
【0093】
ある実施形態において、本発明の組成物またはキットオブパーツは、一または複数の他の抗がん療法と組み合わせて行われてもよい(コンビネーション療法)。抗がん療法の非限定的な例としては、手術、放射線療法、化学療法、生物学的療法。およびそれらの組み合わせが挙げられる。抗がん療法が化学的または生物学的分子または薬剤の使用を含む場合、本発明の組成物またはキットオブパーツは、例えば特にはレオウイルス科のウイルスが腫瘍溶解性である場合、該一または複数の化学的または生物学的分子または薬剤をさらに含んでいてもよい。
【0094】
本明細書を通じて使用される用語「手術(surgery)」は、対象からの腫瘍性組織または細胞の外科的除去を含む処置を広範に意味している。がん手術は、腫瘍全体の除去、腫瘍の減量術、または痛みまたは圧を生じさせている腫瘍またはその一部の除去を行い得る。がん手術は、特には、従来の直視下手術、腹腔鏡下手術、凍結手術、レーザー手術、熱焼灼、例えば温熱レーザーアブレーションまたはラジオ波焼灼療法、光線力学的療法およびこれらの組み合わせなどを含む。
【0095】
本明細書を通じて使用される用語「放射線療法(radiotherapy)」は、例えばX線、ガンマ線、中性子、陽子、または他の線源からの放射線などの電離放射線への腫瘍性組織の曝露を含む処置を広範に意味している。放射線源は、外部装置(外部ビーム放射線療法)であってもよく、または、放射性材料が腫瘍性組織近くの体内に配置(内部放射線療法または近接照射療法)されてもよく、または、放射性材料が注射、注入または摂取によって全身的に送達(全身放射線同位体療法)され、および、腫瘍性組織内に自然に、または癌標的化抗体などの標的化部位を用いて濃縮されてもよい。
【0096】
本明細書中で使用されるように、用語「化学療法(chemotherapy)」は、広範に想定されており、および一般的に、化学物質または組成物を使用する処置を包含する。化学療法剤は、典型的には、細胞毒性または細胞増殖抑制効果を示し得る。
【0097】
ある実施形態において、化学療法剤は、アルキル化剤、細胞毒性化合物、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、テルペノイド、トポイソメラーゼ阻害剤、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0098】
用語「アルキル化剤(alkylating agent)」は、一般的に、生理学的条件下で求核性官能基をアルキル化することのできる薬剤を指す。アルキル化剤の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、シクロホスファミド、カルムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、メルファラン(塩酸塩)、クロラムブシル、イフォスファミド、ロムスチン、マイトマイシンC、チオTEPA、ブスルファン、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0099】
用語「細胞毒性化合物(cytotoxic compound)」は、一般的に、細胞に対して毒性である薬剤を指す。細胞毒性化合物の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、アクチノマイシン(ダクチノマイシンとしても知られている);例えばドキソルビシン、ダウノルビシン、バルビシン、イダルビシン、およびエピルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン;プリカマイシン;ミトキサントロン;マイトマイシン;およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0100】
用語「代謝拮抗剤(anti-metabolite)」は、一般的に、プリンまたはピリミジンなどの代謝物の使用を阻害することのできる薬剤を指す。代謝拮抗剤は、細胞周期のS期のあいだプリンおよびピリミジンがDNA中に組み込まれることを防止し、およびそれによって、正常な成長および分裂を停止させる。代謝拮抗剤の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、アザチオプリン、カペシタビン、シタラビン、5-フルオロウラシル、メルカプトプリン、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0101】
植物アルカロイドとテルペノイドは、植物由来であり、および、微小管機能を妨げることによって細胞分裂をブロックする。非限定的な例としては、ビンカアルカロイドおよびタキサン、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。ビンカアルカロイドの例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。タキサンの例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、パクリタキセル、ドセタキセル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
用語「トポイソメラーゼ阻害剤(topoisomerase inhibitor)」は、一般的に、DNAのトポロジーを維持する酵素を意味する。非限定的な例としては例えば、I型およびII型のトポイソメラーゼ阻害剤が挙げられる。I型トポイソメラーゼ阻害剤の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、イリノテカン、トポテカンなどのカンプトテシン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。II型トポイソメラーゼ阻害剤の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、アムサクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、リン酸エトポシド、ミトキサントロン、テニポシド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
ある実施形態において、化学療法剤は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、ボルテゾミブ、ジゴキシン、ジギトキシン、ハイペリシン、シコニン、ウォゴニン、ソラフェニブ、エベロリムス、イマチニブ、ゲルダナマイシン、パノビノスタット、カルムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、メクロレタミン、メルファラン(塩酸塩)、クロランブシル、イフォスファミド、ブスルファン、アクチノマイシン、ダウノルビシン、バルルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、アザチオプリン、メルカプトプリン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、パクリタキセル、ドセタキセル、イリノテカン、トポテカン、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、アナストロゾール、エキセメスタン、ボスチニブ、イリノテカン、バンデタニブ、ビカルタミド、ロムスチン、クロファラビン、カボザンチニブ、シタラビン、シトキサン、デシタビン、デキサメタゾン、ヒドロキシウレア、ダカルバジン、リュープロレリン、エピルビシン、アスパラギナーゼ、エストラムスチン、ビスモデギブ、アミフォスチン、フルタミド、トレミフェン、フルベストラント、レトロゾール、デガレリクス、フルダラビン、プララトレキサート、フロクスウリジン、ゲムシタビン、カルムスチンウエハー、エリブリン、アルトレタミン、トポテカン、アクシチニブ、ゲフィチニブ、ロミデプシン、イキサベピロン、ルキソリチニブ、カバジタキセル、カルフィルゾミブ、クロラムブシル、サルグラモスチム、クラドリビン、リュープロリド、ミトタン、プロカルバジン、メゲストロール、メスナ、ストロンチウム-89 クロライド、マイトマイシン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ソラフェニブ、ニルタミド、ペントスタチン、タモキシフェン、ペグアスパラガーゼ、デニロイキンジフチトックス、アリトレチノイン、カルボプラチン、プレドニゾン、メルカプトプリン、ゾレドロン酸、レナリドマイド、オクトレオチド、ダサチニブ、レゴラフェニブ、ヒストレリン、スニチニブ、オマセタキシン、チオグアニン、エルロチニブ、ベキサロテン、デカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、サリドマイド、BCG、テムシロリムス、ベンダムスチン塩酸塩、トリプトレリン、三酸化二ヒ素、ラパチニブ、膀胱内バルルビシン、トレチノイン、アザシチジン、パゾパニブ、テニポシド、ロイコボリン、クリゾチニブ、カペシタビン、エンザルタミド、ジブアフリベルセプト、ストレプトゾシン、ベムラフェニブ、ゴセレリン、ボリノスタット、ゾレドロン酸、アビラテロン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0104】
本明細書中で使用されるように、用語「生物学的療法(biological therapy)」は、広範に想定されており、および、一般的に、例えば生体分子などの生物学的物質もしくは組成物、または、例えばウイルスもしくは細胞などの生物学的薬剤を使用する処置を包含する。ある実施形態において、生物学的物質または組成物は、治療的利益の根底となす薬理学的作用または効果を発揮し得る。ある別の実施形態において、生物学的物質または組成物は、化学療法剤または放射性同位体を、腫瘍性組織または細胞に送達するまたは標的化するために使用されてもよく、例えば、生物学的物質または組成物は、化学療法剤または放射性同位体と結合され得る(限定する訳ではないが、例えば、癌を標的とするモノクローナル抗体と細胞毒性の化学化合物との複合体など)。
【0105】
ある実施形態において、生体分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、核酸、または低分子(例えば、一次代謝産物、二次代謝産物、または天然物など)、またはこれらの組み合わせであり得る。適切な生体分子の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、インターロイキン、サイトカイン、抗サイトカイン、腫瘍壊死因子(TNF)、サイトカイン受容体、ワクチン、インターフェロン、酵素、治療用抗体、抗体フラグメント、抗体様タンパク質の骨組み、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0106】
適切な生体分子の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アテゾリズマブ、ベバシズマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、カツマキソマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、デニロイキンジフチトックス、デノスマブ、ジヌツキシマブ、エロツズマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、90Y-イブリツモマブチウキセタン、イダルシズマブ、インターフェロンA、イピリムマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、オララタマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ラムシルマブ、リツキシマブ、fam-トラスツズマブ デルクステカン-nxki、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0107】
適切な腫瘍溶解性のウイルスの例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、タリモジンラヘルパレプベク(Talimogene Laherparepvec)(腫瘍溶解性単純ヘルペスウイルス)などが挙げられる。
【0108】
抗ガン療法のさらなるカテゴリーは、特には、ホルモン療法(内分泌療法)、免疫療法、および幹細胞療法などが挙げられ、これらは通常、生物学的療法内に属していると考えられている。
【0109】
ホルモン療法、または内分泌療法は、ホルモン依存性またはホルモン感受性の癌、例えば、特にはホルモン依存性またはホルモン感受性の乳癌、前立腺癌、卵巣癌、精巣癌、子宮内膜癌、または腎臓癌などの処置のために、ホルモンまたは抗ホルモン薬が投与される治療を包含する。
【0110】
適切なホルモン療法の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、タモキシフェン;アタナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールおよびこれらの組み合わせなどのアロマターゼ阻害剤;ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリンおよびこれらの組み合わせなどの黄体形成ホルモンブロッカー;ビカルタミド、酢酸シプロテロン、フルタミドおよびこれらの組み合わせなどの抗アンドロゲン;デガレリクスなどのゴナドトロピン放出ホルモンブロッカー;酢酸メドロキシプロゲステロン、メゲストロールおよびこれらの組み合わせなどのプロゲステロン処置;ならびにこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0111】
用語「免疫療法(immunotherapy)」は、対象の免疫系を調節する任意の処置を広く包含する。とりわけ、用語は、例えば液性免疫応答、細胞性免疫応答、またはその両方などの免疫応答を調節する任意の処置を含む。免疫応答は、典型的には、例えばB細胞、細胞傷害性T細胞(CTL)、Tヘルパー(Th)細胞、調節性T(Treg)細胞、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、単球、マクロファージ、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、または好中球などの免疫系の細胞による、刺激に対する応答包含し得る。抗癌治療の意味において、免疫療法は、好ましくは、例えば腫瘍細胞の死を達成するために、免疫応答、例えば腫瘍組織または細胞に対して特異的な免疫応答などを引き出す、誘導するまたは増強し得る。免疫療法は、例えばこれらに限定される訳ではないがT細胞(例えばCTLまたはTh細胞)、樹状細胞および/またはNK細胞などの任意の免疫細胞などの免疫系の任意の成分の個体数、機能および/または活性を調節する、例えば増大または増強し得る。
【0112】
免疫療法は、例えばT細胞および/または樹状細胞などの免疫細胞が、患者にトランスファーされる細胞ベースの免疫療法を含む。用語はまた、対象の免疫系を調節する、例えば化学的化合物および/または生体分子(例えば抗体、抗原、インターロイキン、サイトカインまたはこれらの組み合わせ)などの物質または組成物の投与を含む。
【0113】
癌免疫療法の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、モノクローナル抗体を用いる処置、例えば腫瘍細胞によって発現されるタンパク質に対するFc改変モノクローナル抗体、免疫チェックポイント阻害剤、予防的または治療的癌ワクチン、養子免疫細胞療法およびこれらの組み合わせを用いる処置が挙げられる。
【0114】
免疫チェックポイントは、免疫反応を減速または停止させ、そして、免疫細胞の制御されない活性からの過度の組織損傷を防ぐ阻害経路である。免疫チェックポイント標的の阻害は、腫瘍細胞に対する、例えばCTLsなどの免疫細胞による免疫応答を刺激し得る。
【0115】
阻害のための免疫チェックポイント標的の例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、PD-1(PD-1阻害剤の例としては、これらに限定される訳ではないが、ペンブロリズマブ、ニボルマブおよびこれらの組み合わせが挙げられる)、CTLA-4(CTLA-4阻害剤の例としては、これらに限定される訳ではないが、イピリムマブ、トレメリムマブおよびこれらの組み合わせが挙げられる)、PD-L1(PD-L1阻害剤の例としては、これらに限定される訳ではないが、アテゾリズマブが挙げられる)、LAG3、B7-H3(CD276)、B7-H4、TIM-3、BTLA、A2aR、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIRs)、IDO、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0116】
ある実施形態において、レオウイルス科のウイルスは、弱毒ウイルスである。用語「弱毒(attenuated)」は、ワクチン接種の分野でよく知られるものであり、および、ウイルスと組み合わせて使用される場合、意図されるレシピエント、例えばヒトまたは非ヒト動物などにおいて、野生型ウイルスと類似の免疫応答を刺激する能力を保持しながら、野生型ウイルスと比較して実質的により低い程度の毒性を示すウイルスバリアントまたは変異体、好ましくは、例えばより遅い増殖速度および/または野生型ウイルスと比較して低下された複製レベルに起因して、宿主中で(すなわちインビボで)低下された増殖性を示すウイルスバリアントまたは変異体を意味する。
【0117】
宿主中での(すなわち、インビボでの)弱毒ウイルスの増殖は、少なくとも約10倍、例えば少なくとも約25倍、または少なくとも約50倍、または少なくとも約75倍、好ましくは少なくとも約100倍、野生型ウイルスの増殖よりも少ないものであり得る。典型的には、このような弱毒ウイルスは、ウイルス感染の症状を誘導しないか、または、好ましくはワクチン接種を通じた対象への感染時、軽度の症状のみを誘導し、ウイルス感染の深刻な症状は、典型的には、感染した、好ましくはワクチン接種された対象では起こらないであろう。ウイルスの増殖性または毒性を測定するための適切な方法は、本明細書の他の場所に記載されている。ウイルスを弱毒化する標準的な方法は一般的に知られているものであり、および、外来宿主、例えば外来宿主のインビトロ培養細胞、肺発育卵もしくは生きている非ヒト動物などを用いたウイルスの継代、または、野生型ウイルスのランダムもしくは定方向突然変異などを含み得る。
【0118】
本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば弱毒レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む組成物またはキットオブパーツは、療法に有用であり、および特には、レオウイルス科のウイルスに対する免疫化に有用である。したがって、一態様において、療法における使用のための、本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば弱毒レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む組成物またはキットオブパーツが提供される。
【0119】
さらなる態様において、レオウイルス科のウイルスに対する免疫化の方法における使用のための、本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば特には弱毒レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む組成物またはキットオブパーツが提供される。関連する態様において、本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルス、例えば特には弱毒レオウイルス科のウイルス、およびシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の治療的または予防的に効果的な量を対象に投与することを含む、対象においてレオウイルス科のウイルスに対する免疫化を行う方法が提供される。
【0120】
したがって、このような態様および実施形態において、レオウイルス科のウイルスに対するワクチンとしての組成物またはキットオブパーツが提供される。用語「ワクチン(vaccine)」は、一般的に、それによって、免疫応答、好ましくは保護的免疫応答を高めるようにワクチン接種された対象が誘導される成分を含む、対象にインビボ投与するための治療的または予防的な薬学的組成物を意味する。
【0121】
任意には、ワクチンは、さらに、免疫応答を増強させる一または複数のアジュバントを含んでいてもよい。適切なアジュバントとしては、例えば、これらに限定される訳ではないが、サポニン、水酸化アルミニウムなどの無機ゲル(mineral gel)、リゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性または炭化水素乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、モノホスホリル脂質A(MPL)、コリネバクテリウム パルヴム(Corynebacterium parvum)、非メチル化CpGモチーフを含むオリゴデオキシヌクレオチド、およびQS-21などが挙げられる。ある例としては、フロイントアジュバントである。
【0122】
任意には、ワクチンはさらに、一または複数の免疫刺激分子を含んでいてもよい。このような分子の非制限的な例としては、様々なサイトカイン、リンホカインおよびケモカインが挙げられる。例えば、非限定的な例としては、例えばインターロイキン(例えばIL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-12、IL-13など)などの免疫刺激、免疫賦活および炎症誘発の活性を有する分子;成長因子(例えば顆粒球-マクロファージ(GM)-コロニー刺激因子(CSF)など);および、例えばマクロファージ炎症性因子、Flt3リガンド、B7.1などの他の免疫刺激性分子;B7.2などである。
【0123】
レオウイルス感染に対する例示的なワクチンは市販されており、および本発明の実施に有用な実施形態を構成しており、例えば、ニワトリ用のMSD Animal HealthからのNobilis(登録商標)REO 1333、またはロタウイルスワクチンRotarix(GlaxoSmithKline)またはRotaTeq(登録商標)(Merck Vaccines)などである。
【0124】
本明細書中に教示される、組成物およびキットオブパーツは、薬学的に許容可能な賦形剤、すなわち例えば緩衝液、担体、賦形剤、安定剤などの一または複数の薬学的に許容可能な担体物質および/または添加剤と共に薬学疫組成物またはキットオブパーツとして処方されてもよい。本明細書で使用される用語「薬学的に許容可能な(pharmaceutically acceptable)」は、従来技術と同質であり、および、医薬組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。したがって、一態様において、本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む医薬組成物が提供される。さらなる態様において、本明細書中に教示される、レオウイルス科のウイルスとシアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子とを含む医薬キットオブパーツが提供される。ある実施形態において、医薬組成物またはキットオブパーツは、本明細書中に記載のワクチンであってもよい。
【0125】
用語「医薬組成物(pharmaceutical composition)」および「医薬処方(pharmaceutical formulation)」は、交換可能に用いられ得る。本明細書中に教示される医薬処方またはキットオブパーツは、本明細書中で特に特定された成分に加えて、一または複数の薬学的に許容可能な賦形剤を含んでいてもよい。適切な薬学的賦形剤は、剤形および活性成分の特性に依存し、そして、当業者によって選択され得る(例えばHandbook of Pharmaceutical Excipients 7th Edition 2012、eds.Roweetらなどを参照することにより)。本明細書中で使用されるように、「担体(carrier)」または「賦形剤(excipient)」は、すべての溶媒、希釈剤、緩衝液(例えば中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水など)、可溶化剤、コロイド、分散媒体、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えばEDTAまたはグルタチオンなど)、アミノ酸(例えばグリシンなど)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色剤、香料、芳香剤、増粘剤、デポー効果を達成するための薬剤、コーティング、抗真菌剤、防腐剤、安定化剤、抗酸化剤、張性制御剤、吸収遅延剤などを含む。許容可能な希釈剤、担体および賦形剤は、典型的には、レシピエントの恒常性(例えば電解質バランスなど)に悪影響を与えない。薬学的活性物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において良く知られている。このような材料は無毒でなければならず、かつ、活性な薬学的成分の活性を妨げるべきではない。許容可能な担体としては、生体適合性、不活性または生体吸収性の塩、緩衝剤、オリゴまたは多糖、ポリマー、粘度向上剤、防腐剤などが挙げられ得る。1つの例示的担体は、生理食塩水(0.15M NaCl、pH7.0~7.4)である。別の例示的な担体は、50mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウムである。
【0126】
担体または他の材料の正確な特性は、投与経路に依存し得る。例えば、医薬組成物は、パイロジェンを含まず、かつ、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容される水溶液の形状であってもよい。
【0127】
薬学的処方は、生理学的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容可能な補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、保存剤、錯化剤、強壮剤、湿潤剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化水素、ベンジルアルコール、パラベン、EDTA、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなどを含んでいてもよい。好ましくは、製剤のpH値は生理学的pH範囲内、例えば特には、製剤のpHは、約5~約9.5の間、より好ましくは約6~約8.5の間、さらにより好ましくは約7~約7.5の間にある。このような製剤の調製は、当業者の通常の技能の範囲内である。
【0128】
医薬組成物の投与は、全身的または局所的であり得る。医薬組成物は、それらが非経口投与および/または経口投与に適しているように処方され得る。特定の投与方法としては、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、髄腔内、経口、直腸、頬、局所、鼻、眼、関節内、動脈内、くも膜下、気管支、リンパ、膣、および子宮内投与である。
【0129】
ある好ましい実施形態において、投与は、例えば静脈内注入または静脈内注射などの静脈内(IV)であり得る。
【0130】
ある好ましい実施形態において、投与は、例えば皮下注射などの皮下であり得る。
【0131】
ある好ましい実施形態において、投与は、例えばIP注射などの腹腔内(IP)であり得る。
【0132】
投与は、医薬組成物のボーラスの定期的な注射によってなされてもよく、または、外部(例えばIVバッグなど)または内部(例えば生体侵食性インプラント、バイオ人工臓器、または移植された宿主細胞のコロニーなど)であるリザーバーからの静脈内、皮下または腹腔内投与による途切れのないまたは連続的なものであってもよい。医薬組成物の投与は、例えば、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内の、または他の適切な部位への、ポンプ、マイクロカプセル化、連続放出ポリマーインプラント、マクロカプセル化、注射、または、カプセル、液体、錠剤、ピル、または徐放性製剤での経口投与などの適切な送達手段を使用して達成され得る。
【0133】
非経口送達システムの例としては例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達注射、無針注射、ネブライザー、エアロゾルライザー、エレクトロポレーション、および経皮パッチなどが挙げられる。
【0134】
非経口投与に適した製剤は、好都合には、薬学的に活性な成分の滅菌水性調製物を含み、これは、好ましくは、レシピエントの血液と等張である(例えば生理食塩水など)。製剤は、単位剤形または複数剤形で提示され得る。
【0135】
経口投与に適した製剤としては、それぞれが所定量の薬学的活性な成分を含む例えばカプセル、カシェ、錠剤またはロゼンジなどの個別のユニット、または、例えばシロップ、エリキシル、エマルジョン、または水薬などの水性液中のまたは非水性液体中の懸濁液が提示され得る。
【0136】
局所投与に適した製剤としては、例えばクリーム、スプレー、フォーム、ゲル、軟膏、軟膏剤、またはドライラブなどが提示され得る。ドライラブは、投与部位で再水和され得る。このような製剤はまた、包帯、ガーゼ、またはパッチの中に直接的に注入され得(例えばその中に浸漬されおよび乾燥される)、その後局所的に適用され得る。このような製剤はまた、局所投与のための包帯、ガーゼ、またはパッチにおいて、半液体、ゲル化、または完全液体の状態で維持され得る。
【0137】
ある実施形態において、薬学的に活性な成分は、凍結乾燥され得る。本明細書に記載の任意の医薬組成物は、投与説明書と共に、コンテナ、パック、またはディスペンサーの中に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、組成物は、例えば使い捨て注射器などの使い捨てバイアルとして包装される。
【0138】
ある実施形態において、組成物またはキットオブパーツの任意の成分は、凍結されるかまたは凍結冠されていてもよい。
【0139】
当該技術分野における当業者であれば、上記の説明が網羅的ではなく例示的であることを認識するであろう。実際、様々な治療レジメンにおいて、本明細書中に記載の特定の組成物を使用するための適切な投薬および治療レジメンの開発と同様に、多くの追加の製剤技術および薬学的に許容可能な賦形剤および担体溶液が、当該技術分野における当業者にはよく知られている。
【0140】
用語「シアル酸」は、当該技術分野において周知であり、および、さらなるガイダンスによって、ノイラミン酸(Neu)のN-および/またはO-置換誘導体の総称を構成する。Neuは、9炭素単糖((4S、5R、6R、7S、8R)-5-アミノ-4,6,7,8,9-ペンタヒドロキシ-2-オキソノナン酸)であり、以下の式で示される:
【化1】
【0141】
ある実施形態において、シアル酸は、N置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部位は、N置換ノイラミン酸部位である。ある実施形態において、シアル酸は、O置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部位は、O置換ノイラミン酸部位である。ある実施形態において、シアル酸は、N置換およびO置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部位は、N置換およびO置換ノイラミン酸部位である。ある実施形態において、シアル酸は、O-置換ノイラミン酸またはN-およびO-置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部分は、O-置換ノイラミン酸部分またはN-およびO-置換ノイラミン酸部分であり、ここで、ノイラミン酸またはノイラミン酸部位の2つ以上のヒドロキシル基、例えば2つ、3つ、4つまたは5つのヒドロキシル基が置換されている。特には、ヒドロキシル基は、C2、C4、C7、C8およびC9位に存在している。
【0142】
置換基の性質は異なり得る。典型的には、NeuのC5位のアミノ基は、アセチル基またはグリコリル基で置換され得るが、他の置換基、例えばヒドロキシル、アセトイミドイル、アセチル-O-グリコリル、メチル-O-グリコリルまたはN-グリコリルノイラミン酸-2-O-5-グリコリルなども開示されている。
【0143】
ある好ましい実施形態において、ノイラミン酸またはノイラミン酸部位は、アセチル基またはグリコリル基、好ましくはアセチル基でN置換されており、または、換言すると、シアル酸または少なくとも1つのシアル酸部位は、C5位に、N-アセチル基またはN-グリコリル基、好ましくはN-アセチル基を含んでいる。
【0144】
したがって、ある実施形態において、シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)またはN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)である。好ましい実施形態において、シアル酸は、Neu5Acである。さらにより好ましい実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、Neu5Acを含む。ある実施形態において、少なくとも1つのシアル酸部位は、Neu5Ac部位またはNeu5Gc部位である。好ましい実施形態において、少なくとも1つのシアル酸部位は、Neu5Ac部位である。ある実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、少なくとも1つのNeu5Ac部位を含む分子を含む。
【0145】
ある実施形態において、ノイラミン酸またはノイラミン酸部位は、N-置換されているが、O-置換されていない。
【0146】
ある実施形態において、ノイラミン酸またはN-置換ノイラミン酸の、または、ノイラミン酸部位またはN-置換ノイラミン酸部位の、一または複数のヒドロキシル基中の水素は、置換されている。シアル酸における典型的なO-結合置換基は、それぞれ独立して、アセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩、リン酸塩、D-ガラクトシル(Gal)、D-フコシル(Fuc)、D-グルコシル(Glc)、およびシアリルを含む、またはそれらからなる群より選択され得る。
【0147】
より典型的には、C4位におけるO-結合置換基(C4位の-OH基が置換されている場合)は、アセチル、FucおよびGalを含む、またはそれらからなる群より選択され得る。C7位におけるO-結合置換基(C7位の-OH基が置換されている場合)は、アセチル基であり得る。C8位におけるO結合置換基(C8位の-OH基が置換されている場合)は、アセチル、メチル、硫酸塩、SiaおよびGlcを含む、またはそれらからなる群より選択され得る。および/または、C9位におけるO結合置換基(C9位の-OH基が置換されている場合)は、アセチル、ラクチル、リン酸塩、硫酸塩およびSiaを含む、またはそれらからなる群より選択され得る。ある実施形態において、無水結合(C-O-C)が、C4位とC8位との間、および/または、C2位とC7位の間で形成されてもよい。
【0148】
ある実施形態において、シアル酸は、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)またはN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)であり、ここで任意には、該Neu5AcまたはNeu5Gcの一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などで置換されていてもよく;または、少なくとも1つのシアル酸部位は、Neu5Ac部位またはNeu5Gc部位であり、任意には、該Neu5AcまたはNeu5Gc部位の一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などでそれぞれ独立して置換されていてもよい。
【0149】
シアル酸または少なくとも1つのシアル酸部位は、遊離酸の形状(-COOH、または-COO-とH+とに解離されている)であってもよく、または、塩の形状、特には薬学的許容可能な塩、例えば、適切な有機および無機塩基を用いた処理による金属またはアミン付加塩に変換されていてもよい塩の形状であってもよい。適切な塩基付加塩の形状としては、例えば、アンモニウム塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩などのアルカリおよびアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、有機塩基との塩、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、4つのブチルアミン異性体、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、キヌクリジン、ピリジン、キノリンおよびイソキノリンなどの第一級、第二級および第三級の脂肪族または芳香族アミン;ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン塩、および、例えばアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などを含む。逆に、塩形態は、酸を用いた処理により遊離の酸形態に変換され得る。
【0150】
少なくとも1つのシアル酸部位を含む分子の性質または構造は、本発明の原則にしたがって、分子が少なくとも1つのシアル酸部位とレオウイルス科のウイルス(より特には、ウイルスの外殻カプシドタンパク質、さらにより特には、例えば鳥類または哺乳類レオウイルスなどのオルソレオウイルスのシグマ-1タンパク質)との間の接触または相互作用を可能にする限り、制限されない。さらなるガイダンスにより、および、これらに限定される訳ではないが、分子は、少なくとも1つのシアル酸部位が、少なくとも部分的または完全に、環境または溶媒に曝露され、および、分子の残りの部分は、シアル酸部位のウイルスとの接触または相互作用を立体的にまたはそうではなく障害とならないようなものであり得る。少なくとも1つのシアル酸部位を含み得る分子の例示的であるが非限定的な例としては、オリゴ糖、多糖、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、タンパク質ドメイン、タンパク質複合体、デキストラン、ポリエチレングリコール、低分子、またはこれらの組み合わせ(例えばペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に結合したオリゴ糖または多糖など)などが挙げられる。このような分子は、好ましくは、薬学的に許容可能であり得る。
【0151】
少なくとも1つのシアル酸部位は、分子の残りの部分に共有結合されていてもよく、および、より典型的には、ヒドロキシル基を含むC原子の1つを介して、さらにより典型的には、C2原子を介して、結合されていてもよい。結合は、少なくとも1つのシアル酸部位と分子の残りとの間のC-O-C結合を含んでいてもよい。
【0152】
ある実施形態において、分子は、少なくとも1つのシアル酸部位を含むオリゴ糖を含む、またはそれからなる。ある実施形態において、分子は、少なくとも1つのシアル酸部位を含む多糖を含む、またはそれからなる。
【0153】
用語「オリゴ糖(oligosaccharide)」は、2~20個の単糖ユニットがグリコシド結合によって結合されている化合物を広範に意味している。ユニットの数に応じて、それらは、二糖、三糖、四糖、五糖などと称される。例えば、オリゴ糖は、シアル酸部位と、1またはそれ以上のさらなる単糖ユニット、例えば1、2、3、4、5、6、7、8または9個のさらなる単糖ユニットとを含む、またはそれらからなる。例えば、オリゴ糖は、2つのシアル酸部位を含む、またはそれらから構成されていてもよい。例えば、オリゴ糖は、2つのシアル酸部位と、1つまたはそれ以上のさらなる単糖ユニットとを含む、またはそれらから構成されていてもよい。例えば、オリゴ糖は、3つ以上のシアル酸部位を含む、またはそれらから構成されていてもよい。例えば、オリゴ糖は、3つ以上のシアル酸部位と、1つまたはそれ以上のさらなる単糖ユニットを含む、またはそれらから構成されていてもよい。用語「多糖(polysaccharide)」は、グリコシド結合によって一緒に結合された、例えば20を超える単糖ユニットなどの単糖ユニットからなるポリマーまたは高分子を広く意味している。オリゴ糖または多糖は、直鎖状または分岐状であってもよい。
【0154】
本明細書中で意図されるオリゴ糖または多糖によって含まれ得る単糖ユニットの例示的であるが非限定的な例としては、D-グルコース、D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-マンノース、D-アロース、L-アルトロース、D-グロース、L-イドース、D-たろーす、D-リボース、D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、D-エリスローズ、D-スレオース、L-グリセロ-D-マンノ-ヘプトース、D-グリセロ-D-マンノ-ヘプトース、6-デオキシ-L-アルトロース、6-デオキシ-D-タロース、D-フコース、L-フコース、D-ラムノース、L-ラムノース、D-キノボース、2-デオキシグルコース、2-デオキシリボース、オリボース、チベロス、アスカリロース、アベクオース、パラトース、ジジトキソース、コリトース、D-グルコサミン、D-ガラクトサミン、D-マンノサミン、D-アロサミン、L-アルトロサミン、D-グロサミン、L-イドサミン、D-タロサミン、N-アセチル-D-グルコサミン、N-アセチル-D-ガラクトサミン、N-アセチル-D-マンノサミン、N-アセチル-D-アロサミン、N-アセチル-L-アルトロサミン、N-アセチル-D-グロサミン、N-アセチル-L-イドサミン、N-アセチル-D-タロサミン、N-アセチル-D-フコサミン、N-アセチル-L-フコサミン、N-アセチル-L-ラムノサミン、N-アセチル-D-キノボサミン、D-グルクロンサン、D-ガラクツロンサン、D-マンヌロンサン、D-アルロンサン、L-アルトルロン酸、D-グルロンサン、L-グルロンサン、L-イズロンサン、D-タルロン酸、およびこれらの組み合わせが挙げられる。用語はまた、例えばエリスリトール、アラビニトール、キシリトール、リビトール、グルシトール、ガラクチトールおよび/またはマンニトールなどの糖アルコールを含み得る。用語はまた、D-プシコース、D-フルクトース、L-ソルボース、D-タガトース、D-キシルロースおよび/またはD-セドヘプツロースなどのケトースを包含し得る。任意のこのような単糖ユニット、とりわけそれらの一または複数のヒドロキシル基は、これらに限定される訳ではないが、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩および/またはリン酸塩などの一または複数の他の官能基によって置換されていてもよい。
【0155】
ある実施形態において、分子は、オリゴ糖または多糖を含む、またはそれらから構成されていてもよく、ここで、少なくとも1つのシアル酸部位は、グリコシド結合によってシアル酸部位のC2炭素を介して、基礎となる単糖ユニットに結合される。ある好ましい実施形態において、分子は、オリゴ糖または多糖を含む、またはそれらから構成されていてもよく、ここで、少なくとも1つのシアル酸部位は、アルファグリコシド結合によってシアル酸部位のC2炭素を介して、基礎となる単糖ユニットに結合される(すなわち、α-結合されたシアル酸部位)。ある実施形態において、基礎となる単糖の1ユニットは、それぞれ独立して、ガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、N-アセチルグルコサミン、またはシアル酸である。ある実施形態において、シアル酸部位は、それぞれ独立して、そのC2炭素を介して、ガラクトースのC3位、C4位またはC6位へと、N-アセチルガラクトサミンのC6位へと、N-アセチルガラクトサミンのC4位またはC6位へと、またはシアル酸のC8位またはC9位へとグリコシド結合によって結合されている。
【0156】
ある実施形態において、分子は、末端部位として少なくとも1つのシアル酸部位を含むオリゴ糖または多糖を含む、またはそれらから構成されている。したがって、このようなオリゴ糖または多糖は、少なくとも1つの末端シアル酸部位、より特には少なくとも1つのα-結合末端シアル酸部位、より特にはシアル酸部位のC2炭素を介して、α-グリコシド結合によって基礎となる単糖ユニットに結合されている少なくとも1つの末端シアル酸部分を含む。このようなオリゴ糖または多糖は、末端である一または複数の(例えば分岐構造において)シアル酸部分を含み得、および任意には、末端ではない一または複数のシアル酸部位を含み得る。したがって、末端シアル酸部位は、オリゴ糖または多糖中の基礎となる単糖ユニットとグリコシド結合を形成する(例えばC2を介したα-グリコシド結合)が、基礎となる単糖ユニットと別の単糖ユニットとの間に介在せず、結果として単糖ユニットが続いている。例えば、末端のシアル酸部位のC7、C8およびC9は、グリコシド結合に関与しないであろう。
【0157】
ある実施形態において、少なくとも1つのシアル酸部位を含む分子は、シアリル-ラクト-N-テトラオース(LSTa)である。さらにより好ましい実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、LSTaを含む。
【0158】
ある実施形態において、少なくとも1つのシアル酸部位を含む分子は、α-2,3-シアリルラクトース、α-2,6-シアリルラクトース、またはα-2,8-ジシアリルラクトースである。ある実施形態において、組成物またはキットオブパーツは、α-2,3-シアリルラクトース、α-2,6-シアリルラクトース、またはα-2,8-ジシアリルラクトースを含む。
【0159】
ある実施形態において、シアル酸または少なくとも1つのシアル酸部位を含む分子は、例えばポリマー担体またはビーズまたは支持体、例えばアガロースビーズ、ラテックスビーズ、セルロースビーズ、磁気ビーズ、シリカビーズ、ポリアクリルアミドビーズ、またはガラスビーズなどの高分子構造に、任意にはリンカーを介して、結合され得る。
【0160】
シアル酸ならびに例えばオリゴ糖および多糖などの(末端)シアル酸を含む分子は、動物組織、ならびに真菌および酵母中(例えば、糖タンパク質およびガングリオシドのグリカン中など)に広く分布することが見いだされており、当該技術分野において知られているようにそれらから単離され得る。例として、例えばN-アセチルノイラミン酸は、市販で購入され得る(例えば、Sigma-Aldrichカタログ番号A0812)。
【0161】
本明細書中に記載の組成物またはキットオブパーツの意味において、レオウイルス科のウイルスの、例えば腫瘍溶解効果または免疫化効果などの所望の効果を達成するために適切な任意の量が想定されている。例として、これらに限定される訳ではないが、単回投与におけるレオウイルス科のウイルスの量は、102~1010 CCID50(50% cell culture infectious dose)のあいだ、例えば103~109 CCID50のあいだ、例えば104~108 CCID50のあいだ、例えば105~107 CCID50のあいだ、例えば少なくとも106 CCID50であり得る。
【0162】
さらに、シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の、レオウイルス科のウイルスの宿主細胞への結合を増強する、および/または、ウイルスの感染力を増加させるために適切な任意の量が想定されている。例として、これらに限定される訳ではないが、ウイルスは、1μM~1M、例えば10μM~100mM、例えば100μM~10mMの範囲の、例えば約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、または約10mMなどの濃度の、例えばNeuAcなどのシアル酸と接触されてもよい。例として、これらに限定される訳ではないが、ウイルスは、1μM~1M、例えば10μM~100mM、例えば100μM~10mMの範囲の、例えば約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、または約10mMなどの濃度の、例えばLSTaなどの、少なくとも1つのシアル酸部位を含む分子と接触されてもよい。例として、これらに限定される訳ではないが、ウイルスは、α結合末端シアル酸部位の濃度が1μM~1M、例えば10μM~100mM、例えば100μM~10mMの範囲の、例えば約1mM、約2mM、約3mM、約4mM、約5mM、約6mM、約7mM、約8mM、約9mM、または約10mMなどの濃度に結果としてなるような濃度の、少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子と接触されてもよい。
【0163】
本発明はまた、以下のステートメントに規定される態様および実施形態を提供する。
【0164】
ステートメント1.
i)レオウイルス科に属するウイルス、およびii)シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子を含む組成物またはキットオブパーツ。
【0165】
ステートメント2.
前記レオウイルス科のウイルスが、少なくとも一つの脊椎動物種に対して宿主指向性を示すステートメント1記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0166】
ステートメント3.
前記レオウイルス科のウイルスが、少なくとも一つの哺乳類種に対して宿主指向性を示すステートメント1または2記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0167】
ステートメント4.
前記レオウイルス科のウイルスが、ヒトに対する宿主指向性を示すステートメント1~3のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0168】
ステートメント5.
前記レオウイルス科のウイルスが、オルソレオウイルス、オルビウイルスまたはロタウイルスであるステートメント1~4のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0169】
ステートメント6.
前記レオウイルス科のウイルスが、外殻カプシドおよび内側コアを備えているステートメント1~5のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0170】
ステートメント7.
前記レオウイルス科のウイルスが、宿主細胞表面レセプターに結合する能力のある外殻カプシドを含み、ここで前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子が、前記外殻カプシドタンパク質に、前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子の非存在下におけるコンフォーメーションと比較して、前記レオウイルス科のウイルスにおけるより細長くまたはより延伸されたコンフォーメーションを取らせるステートメント1~6のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0171】
ステートメント8.
前記外殻カプシドタンパク質が、シグマ-1タンパク質であるステートメント7記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0172】
ステートメント9.
前記シアル酸が、N置換ノイラミン酸であるか、または、少なくとも1つのシアル酸部位が、N置換ノイラミン酸部位であり、ここで任意には、前記N置換ノイラミン酸または前記N置換ノイラミン酸部位がさらにO-置換されているステートメント1~8のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0173】
ステートメント10.
前記シアル酸が、N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)またはN-グリコリルノイラミン酸(Neu5Gc)であり、ここで任意には、前記Neu5Acまたは前記Neu5Gcの一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などで置換されていてもよく;または、前記少なくとも1つのシアル酸部位は、Neu5Ac部位またはNeu5Gc部位であり、ここで任意には、前記Neu5Ac部位または前記Neu5Gc部位の一または複数のヒドロキシル基は、それぞれ独立して、例えばアセチル、メチル、ラクチル、硫酸塩またはリン酸塩などでそれぞれ独立して置換されていてもよいステートメント1~9のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0174】
ステートメント11.
前記シアル酸が、Neu5Acであり、または、前記少なくとも1つのシアル酸部位が、Neu5Acであり、好ましくは、前記組成物またはキットオブパーツがNeu5Acを含むステートメント1~10のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0175】
ステートメント12.
前記分子が、末端部位として、前記少なくとも1つのシアル酸部位を含むオリゴ糖または多糖を含む、またはそれらから構成されているステートメント1~11のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0176】
ステートメント13.
前記レオウイルス科のウイルスが、腫瘍溶解性のウイルスであるステートメント1~12のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0177】
ステートメント14.
腫瘍溶解性のレオウイルス科のウイルスが、腫瘍性細胞に特異的に結合することができる例えば抗体などの結合剤に結合され、任意にはここで、前記シアル酸および/または少なくとも一つのシアル酸部位を含む分子もまた前記結合剤に結合されているステートメント13記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0178】
ステートメント15.
前記レオウイルス科のウイルスが、弱毒ウイルスであるステートメント1~12のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0179】
ステートメント16.
療法における使用のための、ステートメント1~15のいずれか一つに記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0180】
ステートメント17.
腫瘍性疾患を処置する方法における使用のための、ステートメント13または14記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0181】
ステートメント18.
前記レオウイルス科のウイルスに対する免疫化の方法における使用のための、ステートメント15記載の組成物またはキットオブパーツ。
【0182】
本発明は、その特定の実施形態と併せて説明されてきたが、前述の説明に照らして、多くの代替、改変および変形が当該技術分野における当業者にとっては明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲において、以下のようなすべてのそのような代替、改変および変形を包含することが意図されている。
【0183】
本明細書に開示される本発明の態様および実施形態は、以下の非限定的な実施例によってさらに支持される。
【実施例】
【0184】
実施例1-実施例2~5で使用された材料および方法
レオウイルスのストックの作製
T3SA+およびT3SA-レオウイルスのストックは、以前に記載されている(Frierson et al. 2012、上記)。T3SA+は、野生型株3型Dearing(T3D)に対応し、T3SA-は、シグマ-1(σ1)タンパク質中に点突然変異を有するT3D誘導体、すなわちR202W(すなわちT3D-σ1R202W)に対応し、ここで、σ1タンパク質の同じ領域に位置する他の点突然変異、およびより特には、N198、R202またはP204における変異は、T3σ1のシアル酸との結合を消失させ得る(Reiter et al. Crystal Structure of Reovirus Attachment Protein σ1 in Complex with Sialylated Oligosaccharides PLoS Pathog 2011, vol. 7(8), e1002166を参照のこと)。T3SA+およびT3SA-レオウイルスのストックは、プラーク精製およびL929細胞(ATCC、#CCL-1)中でのウイルスの3~4回の継代によって調製された。精製されたビリオンは、記載されているように、塩化セシウム勾配遠心分離によって感染したL929細胞溶解物から調製された(Furlong et al. Sigma 1 protein of mammalian reoviruses extends from the surfaces of viral particles. J. Virol. 1988, vol. 62, 246-256)。端的に、感染細胞が超音波処理によって細胞溶解され、ビリオンがvertrel-XFを用いて溶解物から抽出された(Furlong et al., 上記; Mendez et al. A comparative analysis of freon substitutes in the purification of reovirus and calicivirus. J. Virol. Methods 2000, vol. 90, 59-67)。抽出されたビリオンが、1.2~1.4g/cm3の塩化セシウムステップ勾配に積層されて、4℃で、25000rpmで18時間遠心分離された。レオウイルス粒子の密度(約1.36g/cm3)に対応するバンドが収集され、ビリオン保存バッファー(150mM NaCl、15mM MgCl2および10mM Tris[pH7.4])に対して十分に透析を行った。粒子濃度は、260nmでの光学密度から測定された(1 OD260=2.1×1012粒子/mL)(Smith et al. Polypeptide components of virions, top component and cores of reovirus type 3. Virology 1969, vol. 39, 791-810)。感染性サブビリオン粒子(ISVP)が、ビリオン(2×1012粒子/mL)を2mg/mLのα-キモトリプシン(Sigma-Aldrich)と共に37℃で60分間インキュベートすることによって作製された(Baer & Dermody. Mutations in reovirus outer-capsid protein sigma3 selected during persistent infections of L cells confer resistance to protease inhibitor E64. J. Virol. 1997, vol. 71, 4921-4928)。反応は、氷上でのインキュベーションおよび2mMの濃度にフェニルメチルスルホニルフルオリド(Sigma-Aldrich)を添加することにより、クエンチされた。新鮮な50mM重曹ナトリウム(pH8.5;6×1012粒子/mL)に希釈したレオウイルス粒子を、フルオレセイン化ビリオンを作製するために、20μMのAlexa Flour 488(Invitrogen)のスクシンイミジルエステルと、暗所で室温で90分間インキュベーションすることにより標識化された。未反応の色素は、4℃で一晩、PBSに対して透析することにより除去された(Mainou & Dermody. Transport to late endosomes is required for efficient reovirus infection. J. Virol. 2012, vol. 86)。フルオレセイン化されたISVPは、フルオレセイン化ビリオンのα-キモトリプシン処理によって調製された。ウイルス力価は、L929細胞を使用したプラークアッセイによって測定された(Virgin et al. Antibody protects against lethal infection with the neurally spreading reovirus type 3 (Dearing). J. Virol. 1988, vol. 62, 4594-4604)。
【0185】
細胞株
JAM-Aを発現する細胞株のエンジニアリングと特性評価。
CHO(ATCC、#CCL-61)およびLec2(ATCC、#CRL-1736)細胞の単層が、ピューロマイシン耐性遺伝子およびヒトJAM-Aをエンコードしているレンチウイルスまたはピューロマイシン耐性遺伝子のみをエンコードしているレンチウイルスを用いて形質導入された。20μgmL-1ピューロマイシンを含む培地で2回継代することにより、ピューロマイシン耐性の形質導入細胞が選択された。使用したピューロマイシンの濃度は、形質導入されていないCHOおよびLec2細胞を完全に死滅させる最小濃度であった。ピューロマイシン耐性での選択に続いて、細胞はさらに、蛍光活性化セルソーティング(FACS)を使用して、JAM-Aの細胞表面発現について選択された。JAM-Aの細胞表面発現は、モノクローナル抗体、J10.4を使用して検出され(Liu et al. Human junction adhesion molecule regulates tight junction resealing in epithelia. J. Cell Sci. 2000, vol. 113, 2363-2374)、および、高いJAM-Aの発現を示した細胞画分が収集され、および、ピューロマイシン選択を使用して増殖された。以下の実施例では、形質導入されおよびピューロマイシン耐性のみで選択された細胞は、CHOおよびLec2と称され、ならびに、ピューロマイシン耐性およびJAM-A発現で選択された細胞は、それぞれ、CHO-JAM-AおよびLec2-JAM-Aと称されるであろう。
【0186】
CHO細胞株の培養。
CHO細胞(CHO、CHO-JAM-A)は、10%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン(100UmL-1)、およびストレプトマイシン(100UmL-1)(Invitrogen)を含むように補充されたHam’s F12培地(Sigma-Aldrich)で、5%CO2の加湿雰囲気下、37℃で増殖された。それぞれの継代の間に、20μgmL-1ピューロマイシンが培地に加えられた。
【0187】
Lec2細胞株の培養。
Lec2細胞(Lec2、Lec2-JAM-A)は、10%FBS、ペニシリン(100UmL-1)、およびストレプトマイシン(100UmL-1)(Invitrogen)を含むように補充されたMem α ヌクレオシド培地(Gibco)で、5%CO2の加湿雰囲気下、37℃で増殖された。それぞれの継代の間に、20μgmL-1ピューロマイシンが培地に加えられた。
【0188】
CHOおよびLec2細胞の形質導入。
以下の例で使用された4つの細胞型が、記載のように(Salmon & Trono. Production and titration of lentiviral vectors. Current protocols in human genetics 2007, vol. 54, 12.10.11-12.10.24)、H2B-eGFP-発現およびアクチン-mCherry-発現レンチウイルスをそれぞれ使用して、核GFPおよび細胞質mCherryを発現するように形質導入された。GFPおよびmCherryの両方を発現している細胞がFACSで選択され、および、上記の培養条件を使用して増殖された。追加で、単一粒子追跡実験に使用される、mCherryのみを発現するLec2-JAM-Aもまた選択され、および、上述のように増殖された。
【0189】
形質導入された細胞のFACS。
GFPおよびアクチン-mCherry導入遺伝子で形質導入された細胞が、トリプシン処理され、そして、2mM EDTAおよび1%FBSを含むPBS中に収集された。細胞は、BD FACSARIA IIIセルソーターを使用して、85μmのノズル、45psiのシース圧、47kHzのドロップ周波数、および0-32-0のソート精度でソートされた。GFPは488nmレーザーで励起され、および、530/30バンドパスフィルターおよび505ロングパスミラーで吸収フィルター処置された。mCherryは、561nm(黄緑色)レーザーで励起され、および、610/20バンドパスフィルターで吸収フィルター処理された。GFPおよびmCherryの両方を発現している細胞が収集され、上述の培養条件を用いて増殖された。
【0190】
AFMチップの機能化
NHS-PEG27-アセタールリンカーが、(Gruber. Crosslinkers and Protocols for AFM Tip Functionalization. https://www.jku.at/institut-fuer-biophysik/forschung/linker/, 2018; Wildling et al. Linking of sensor molecules with amino groups to aminofunctionalized AFM tips. Bioconjug. Chem. 2011, vol. 22, 1239-1248)に説明されているように、AFMチップを機能化するために使用された。AFMチップ(PFQNM-LCおよびMSCTプローブ、Bruker)がクロロホルムに10分間浸漬され、エタノールを用いてリンスされ、ろ過された窒素流で乾燥され、紫外線およびオゾン(UV-O)クリーナー(Jetlight)を使用して10分間洗浄され、そして、エタノールアミン溶液(6.6mLのDMSO中、3.3gのエタノールアミン塩酸塩)に一晩浸漬された。カンチレバーがDMSOで3回、およびエタノールで2回洗浄され、そして窒素で乾燥された。AFMチップ上のリンカーの低いグラフト密度を確実とするために、1mgのアセタール-PEG27-NHSが30μLのトリメチルアミンを含む0.5mLのクロロホルム中に希釈された(Gruber、前出; Wildling et al.、前出)。エタノールアミンでコーティングされたカンチレバーが、本溶液に2時間浸漬され、クロロホルムで3回洗浄され、そして窒素で乾燥された。ついでカンチレバーは、milliQ水中の1%クエン酸中に10分間浸漬され、milliQ水で3回洗浄され、そして窒素で乾燥された。ウイルス溶液(80μLの約108~109粒子mL-1)を、アイスボックス内に保管された小さなプラスチック皿中のパラフィルム(Bemis NA)上に配置されたチップの上にピペッティングされた。新たに調製されたNaCNBH3溶液(0.1M NaOH(aq)中、約6%wtの溶液2μL)がウイルス溶液に穏やかに混合され、そして、カンチレバーチップが、ウイルスドロップ内に伸びるカンチレバーで静かに配置された。アイスボックスは、4℃で1時間インキュベートされた。次に、5μLの1Mエタノールアミン溶液(pH8)が、反応をクエンチさせるために、液滴で穏やかに混合された。アイスボックスは、4℃でさらに10分間インキュベートされ、そしてカンチレバーチップが取り出され、氷冷PBSで3回洗浄され、そして、1ウェル当たり2mLの氷冷ウイルスバッファー(150mM NaCl、15mM MgCl2、10mM Tris、pHは7.4に調整された)を含む、マルチウェルディッシュの個々のウェルに、AFM実験で使用するまで保存された。これらの機能化ステップの間、ウイルス機能化カンチレバーは決して乾燥されなかった。機能化されたAFMカンチレバーのウイルスバッファーへのトランスファー、およびその後のAFMへのトランスファーは迅速であり(≦20秒)、トランスファーのあいだ、カンチレバーおよびチップ上にはウイルスバッファーの液滴が残っていた。カンチレバーは、それらが機能化された日と同じ日に、AFM実験で使用された。共焦点イメージングを使用した対照実験は、ほとんどの場合に、AFM実験中にモデル表面または細胞表面と相互作用するAFMチップの頂点にウイルス粒子が1つしか存在しないことを示した。
【0191】
α-SA-コーティングされたモデル表面の調製
ビオチン化されたα2,3-結合シアル酸(SA)は、ビオチン-ストレプトアビジンシステム((Lee et al. Sensing discrete streptavidin-biotin interactions with atomic force microscopy. Langmuir 1994, vol. 10, 354-357)を使用して、(Dupres et al. Nanoscale mapping and functional analysis of individual adhesins on living bacteria. Nat. Methods 2005, vol. 2, 515)に記載されているように、プレートに固定化された。金でコーティングされたシリコン基質が、PBS中の25μgmL-1のビオチン化ウシ血清アルブミン(BBSA、Sigma-Aldrich)溶液中、4℃で一晩インキュベートされた。PBSでリンスされた後、BBSA表面が、PBS中の10μgmL-1のストレプトアビジン(Sigma-Aldrich)溶液に、2時間曝露され、続いてPBSでリンスされた。BBSA-ストレプトアビジン表面は、PBS中の10μgmL-1のビオチン化3’-シアリル-N-アセチルラクトサミン(α2,3-結合SA、Dextra)溶液中に2時間浸され、続いて、PBSでリンスされた。表面は、繰り返しのスキャン下、均一かつ安定的な形態を示し、約2nmの厚さが提示された。堆積層の厚さは、表面の小さな領域(0.5×0.5μm2)を生体分子を除去するための大きな力でスキャンして、続いて同じ領域のより広いスクエア(2.5×2.5μm2)をより小さな力でイメージングすることによって見積もられた。
【0192】
JAM-Aコーティングされたモデル表面の調製
His6-タグ付きのJAM-A(Bio-Connect Life Science)は、(Dupres et al. 2005, supra; Dufrene. Life at the nanoscale: atomic force microscopy of live cells. Pan Stanford Publishing, 2011)に記載されているように、NTA-His6結合化学を使用して固定化された。金でコーティングされた表面は、エタノールでリンスされ、緩やかな窒素流で乾燥され、15分間UVおよびオゾン処理により洗浄され、そして0.05 mMのNTA末端化された(10%)およびトリエチレングリコール(EG)末端化された(90%)アルカンチオールの0.05mLを含むエタノール中でに一晩浸漬された。エタノールでリンスされた後、アルカンチオールでコーティングされたサンプルが、NiSO4の40mM水溶液(pH7.2)に1時間浸漬され、そして水でリンスされ、2時間、his6タグ付きJAM-A(0.1mgmL-1)とインキュベートされ、そしてPBSでリンスされた。機能化された表面は、水和状態に保たれ、調製後直ちに使用された。表面は、繰り返しのスキャン下、均一かつ安定的な形態を示し、約3nmの厚さが提示された。厚さは、シアル酸コーティングされたモデル表面で記載されているように測定された。
【0193】
モデル表面上のFD-ベースのAFM
AFM Nanoscope Multimode 8(Bruker)が、FDベースのAFMを行うために使用された(Nanoscopeソフトウェア v9.1)。ウイルスで機能化されたMSCT-Dプローブ(0.024~0.043Nm
-1の範囲の、熱調整を使用して計算されたばね定数を備える)(Butt & Jaschke. Calculation of thermal noise in atomic-force microscopy. Nanotechnol. 1995, vol. 6, 1-7)が、力-体積(接触)モードで5×5μmアレイからの力曲線を記録するために使用された。アプローチ速度は、1μms
-1の一定に保たれ、収縮速度は、ウイルスとその受容体との間のエネルギー地形が幅の広いローディング速度に渡って調べられることを確実なものとするために0.1、0.2、1、5、10~20μmS
-1の範囲で変化された。引っ張り速度(v)および負荷率(LR)は、以下のように関連付けられ得る、LR=ΔF/Δt=k
eff・v、ここで、ΔF/Δtは、時間の経過とともに適応される力であり、および、k
effはシステムの有効ばね定数。ランプサイズは、500nmに設定され、および、最大の力は500pNに設定され、表面遅延はなかった。サンプルは、1Hzのライン周波数を使用してスキャンされ、および、32ピクセルがラインごとにスキャンされた(収縮速度あたり総計1024データポイント[FD曲線]中で32ライン)。全てのFDベースのAFM測定は、約25℃のウイルスバッファー中で取得された。力曲線は、Nanoscope分析ソフトウェアv1.7(Bruker)を使用して分析された。PEGスペーサーに結合した粒子とレセプターモデル表面との間に発生する接着事象に対応するピークを特定するために、結合開裂前の収縮曲線が、ポリマー伸長のためのみみず鎖モデルにフィットさせた(Bustamante et al. Entropic elasticity of lambda-phage DNA. Science 1994, vol. 265, 1599-1600)。後者は、セミフレキシブルポリマーにおける力-伸び(F-x)関係を表し、および、以下の式で表され、ここで、
lp持続長、
Lcは輪郭長、およびk
bTは熱エネルギーである:
【数1】
【0194】
Originソフトウェア(OriginLab)が、異なる負荷率範囲において破壊力分布のヒストグラムにフィットさせるため、および、記載されるように様々な力分光法モデルを適用するために、動的力分光法(DFS)プロットの結果を表示するため使用された(Alsteens et al. Nanomechanical mapping of first binding steps of a virus to animal cells. Nat Nanotechnol 2017, vol. 12, 177-183; Newton et al. Combining confocal and atomic force microscopy to quantify single-virus binding to mammalian cell surfaces. Nat. Protoc. 2017, vol. 12, 2275; Delguste et al. in Nanoscale Imaging, 483-514, Springer, 2018 (‘Delguste et al. 2018a’); Delguste et al. Multivalent binding of herpesvirus to living cells is tightly regulated during infection. Science advances 2018, vol. 4, eaat1273 (‘Delguste et al. 2018b’))。
【0195】
生存細胞におけるFD-ベースのAFMおよび蛍光顕微鏡学
相関画像が、FDベースのAFMを行うためのPeakForce QNMモード(Nanoscopeソフトウェア v9.2)において作動され、および倒立落射蛍光顕微鏡(Zeiss Observer Z.1)に連結されたAFM(Bioscope Catalyst and Bioscope Resolve, Bruker)上で、記載されているように得られた(Newton et al. 2017, supra; Knoops et al. Specific Interactions Measured by AFM on Living Cells between Peroxiredoxin-5 and TLR4: Relevance for Mechanisms of Innate Immunity. Cell chemical biology 2018, vol. 25, 550-559, e553)。40倍のオイル対物レンズ(NA=0.95)が使用された。AFMは、150μmの圧電スキャナー、および、説明されるように、温度、湿度、およびCO
2濃度を制御することを可能にするように細胞培養チャンバーが備えられていた(Alsteens et al. 2017、上記)。細胞表面の概観画像(20~30μm
2)が、17μmの先端長、65nmの先端半径、および15°の開口角を備えたPFQNM-LCプローブ(Bruker)を用いて、約500pNのイメージング力で記録された。すべての蛍光顕微鏡およびFDベースのAFMのイメージング実験は、細胞型に依存して、Mem α、ヌクレオシド、またはHam’s F12培地のいずれかの中で、37℃で、組み合わされたAFMと蛍光顕微鏡チャンバー(
図1a)を用いて、細胞培養条件下で行われた。ガス加湿器メンブレン(PermSelect silicone)を用いて、95%の相対湿度で5%CO
2を含む合成空気のガス混合物が、顕微鏡チャンバー内に、0.1 Lmin
-1で注入された。湿度は、湿度センサー(Sensirion)を用いて制御された。カンチレバーは、最初に熱雑音法を用いて較正され(Hutter & Bechhoefer. Calibration of atomic‐force microscope tips. Review of Scientific Instruments 1993, vol. 64, 1868-1873)、PFQNM-LCプローブとして0.095~0.135Nm
-1の範囲の値をもたらした。AFMチップは、PeakForce Tappingモードにおいて、750nmの振幅をもつ0.25kHzの正弦波状で振動した。サンプルは、0.125Hzの周波数および1ラインあたり256ピクセル(256ライン)を使用してスキャンされた。AFMイメージおよびFDカーブは、Nanoscope分析ソフトウェア(v1.7、Bruker)、Origin、およびImageJ(v1.52e)を使用して分析された。ウイルスと細胞表面との間の結合解除事象を検出している個々のFD曲線が、Nanoscope分析およびOriginソフトウェアを用いて分析された。収縮曲線のベースラインは、収縮曲線の最後の30%に線形フィットを用いて修正された。力-時間曲線を用いて、各破壊事象の負荷率(勾配)が測定された(
図1c)。光学画像は、Zen Blueソフトウェア(Zeiss)を用いて分析された(Alsteens et al.2017、Newton et al. 2017、Delguste et al.2018a、Delguste et al.2018b、すべて上記)。
【0196】
SA付加の効果のモニタリング
生細胞実験は、適切な細胞領域をスキャンし、続いて培地に1mMのそれぞれのグリカンを添加することによって、上記に記載される方法と同じ様式で行われた。グリカン添加後の可能な変化をモニタリングするために、同じ領域が再度スキャンされた。特異性を評価するため、ブロッキング剤(1mM Neu5Acまたは10μg/mL JAM-A Ab[Sigma、#SAB4200468])がその後添加された。
【0197】
ノイラミニダーゼ処理細胞への、レオウイルスの結合のモニタリング
Lec2細胞から残りの細胞表面SAを除去するために、生細胞実験が、以下の処理後に同じフィールドの2回目のスキャンを可能にするために、細胞の適切なフィールドをスキャンし、続いて顕微鏡ステージ上でのノイラミニダーゼを用いた処理することによって、上記で記載された方法と同じ様式で行われた。培地が除去され、そして細胞が、2mL PBS(Sigma-Aldrich)を用いて洗浄され、Arthrobacter ureafaciensノイラミニダーゼ(Sigma-Aldrich)を用いて、PBS中、40mUnit/mLの最終濃度で1時間処理され、そして2mL PBDSで洗浄された。実験は、SAの回復を抑制するためのサプリメントを含まない細胞培養培地を使用して行われた。追加で、3回目のスキャンのあいだに1mMのNeu5Acが、および、4回目のスキャンのあいだに10μg/mLのJAM-A Abが、SA介在の変化をモニタリングし、および観察された相互作用の特異性を評価するために、それぞれ、添加された。
【0198】
レオウイルスとレクチンとの結合の定量
CHOおよびLec2細胞(PuroおよびJAM-A細胞株)が、Cellstripper(Cellgro)を用いて、37℃で15分間、細胞培養皿から剥がされ、対応する細胞培養培地を用いてクエンチされ、そしてPBSで1回洗浄された。レオウイルス結合を定量化するために、細胞に、細胞あたり105個のフルオレセイン化レオウイルスビリオンまたはISVPを、4℃で1時間吸収させた。レオウイルス結合における遊離SAの影響を調べるために、細胞は、ウイルス吸収中に1μMのNeu5Acとともにインキュベートされた。細胞株間の細胞表面SA発現を比較するために、剥離した細胞に、5%BSAを含むPBS中1μg/mLの濃度のフルオレセイン標識小麦胚芽凝集素(WGA)を、4℃で1時間吸収させた。それぞれの処理後、細胞がFACSバッファー(2%FBSを含むPBS)で2回洗浄され、LIVE/DEAD Fixable Violet Dead Cell Stainキット(Invitrogen)で15分間染色され、FACSバッファーで再度2回洗浄され、そして1%パラホルムアルデヒドを含むPBSで固定された。細胞は、LSRIIフローサイトメーター(BD Bioscience)を用いて分析され、そして、生細胞に結合しているレオウイルスまたはレクチンがFlowJoソフトウェアを用いて定量された。
【0199】
BL1を用いたJAM-A-レオウイルス相互作用の速度論的分析
JAM-Aへのウイルスの結合が、Ni2+-NTAバイオセンサー(Pall ForteBio)を備えたBLItz(登録商標)(Pall ForteBio)バイオレイヤー干渉計で測定された。チップを10mM NiCl2溶液に2分間ロードし、およびmilliQ水で最初のベースラインステップを実行(1分)した後、JAM-A(0.2mgmL-1)が、5分間、結合シグナルがプラトー(バイオセンサーの完全な飽和)に達するまで、C末端His6タグを介して露出したNi2+イオン上に固定化された。1mM Neu5Acの非存在下または存在下での、ウイルス粒子(T3SA+、T3SA-またはISVP;16nM)の結合が、別のベースラインステップ(ウイルスバッファーで1分間)後の10分間の会合ステップのあいだ、測定された。解離は、ウイルス溶液がウイルス緩衝液と交換されている間の10分間の会合ステップの直後にモニタリングされた。チップは、バイオセンサーを10mMグリシンpH1.7に曝露した後、中和バッファー(Kinetics Buffer)に曝露することによって、数回再生され得る。結果として得られたセンサーグラム(時間の経過に伴う結合)が処理され、GraphPad Prismによって提供される会合およびその後の解離フィットを用いて、非線形回帰アプローチでフィットされた。ウイルス濃度および解離が開始される時間が、それぞれ16nMおよび17分の一定値に制限された。フィットから、koffおよびkonが抽出され、そしてKDが算出された。
【0200】
動的共焦点顕微鏡イメージングを用いた単一粒子追跡
Lec2-JAM-A mCherry細胞およびCHO-JAM-A細胞の共培養が、47mmガラス底ペトリ皿(WillCo Wells)上に、実験日のコンフルエントな単層の形成を確実なもとするために、実験の1日または2日前に播種された。細胞は、mCherryの場合561nmレーザーを用いて、およびAlexa488の場合は488nmレーザーを用いて、および40倍のオイル対物レンズ(NA=0.95)を備えたZeiss LSM880顕微鏡を用いたレーザー走査型共焦点顕微鏡によって画像化された。全ての実験は、HAm’s F12培地で維持された細胞、および、ガス加湿器メンブレン(PermSelect silicone)を用いて0.1 Lmin-1で顕微鏡チャンバー内に注入された、95%の相対湿度で5%CO2を含む合成空気のガス混合物を用いて、室温で、行われた。湿度は湿度センサー(Sensirion)を用いて制御された。ウイルスの結合を(および内在化ではないこと)を確実にするために、細胞は、実験を開始する前に、氷上に30分間静置された。両方の細胞タイプが隣接している領域を(蛍光によって誘導されて)見出した後、F12 Ham’sの培地または1mMのNeu5Ac溶液のいずれかで希釈された(氷上)Alexa488標識T3SA+またはT3SA-ウイルス(1012粒子/mL)が生細胞に添加された。両方の色素(mCherryおよびAlexa488)からの蛍光シグナル、およびPMTチャネルからのシグナルが、13.32秒ごとに1つの画像のフレームレートでウイルス注入直後、約30分間隔で記録された。記録のあいだ、焦点は細胞の上側表面で一定に保たれた。蛍光画像は、12ビットTIFFファイルとしてエクスポートされ、ムービーにマージされ、ImageJ(National Institutes of Health、Bethesda)を用いてさらに処理された。軌跡は、画像中で移動するウイルス粒子を追跡し、および追跡統計を取得するためのImageJプラグインであるMTrackJを用いて収集および分析された。後者は、さらに、Originを用いて処理された。
【0201】
カンチレバー先端のT3レオウイルス粒子の抗体染色
ウイルスで機能化された個々のAFMカンチレバーが、24ウェルプレート(Corning)のウェルに配置され、500μLのブロッキングバッファー(3%BSAを含むPBS)中で室温で1時間インキュベートされた。血清型3型のレオウイルスσ1タンパク質に対する抗体(9BG5、0.15mgmL-1)(Burstin et al. Evidence for functional domains on the reovirus type 3 hemagglutinin. Virology 1982, vol. 117, 146-155)が、ブロッキングバッファー中で1:200に希釈された。レオウイルス抗体は、T3Dレオウイルスで免疫化されたおよび追加免疫化されたウサギからの等量の血清を混合することによって調製された(Chappell et al. Mutations in type 3 reovirus that determine binding to sialic acid are contained in the fibrous tail domain of viral attachment protein sigma1. J. Virol. 1997, vol. 71, 1834-1841)。それぞれのカンチレバーが、室温で1時間、500μLの一次抗体溶液中でインキュベートされた。カンチレバーは、ブロッキングバッファーで3回洗浄された。二次抗体溶液が、アロフィコシアニン(APC)フルオロフォア(Thermo Fisher、カタログ番号17-4210-82)に結合したラット抗マウスIgG2a抗体をブロッキングバッファーで1:400に希釈して添加することにより調製された。カンチレバーは、室温で1時間、500μLの二次抗体溶液中でインキュベートされた。最後に、カンチレバーはPBSで3回洗浄され、そしてさらなる使用まで、暗所で4℃で保存された。カンチレバーは、倒立共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 880)の488nmレーザーラインを用いて画像化された。
【0202】
HOPG基質上に吸収されたレオウイルスビリオンのAFMイメージング
ウイルス溶液(約109粒子mL-1)の80μL液滴が、新たに開裂されたHOPG(高配向性熱分解グラファイト、NT-MDT機器)基質上に堆積され、室温で15分間インキュベートされた。AFMイメージングが、AC40 Biolever mini AFMチップ(公称ばね定数0.1Nm-1、Bruker)を用いてPeakForce Tappingモードで、PBSバッファー中で行われた。所望の解像度およびスキャンサイズに依存して、種々のイメージングパラメータが使用された:1~2kHzのあいだの範囲のチップ発振周波数、最大ピーク力は100pNであった、0.5~2kHzの範囲のスキャンレート、ピーク力の振幅は50~100nmのあいだであった、および、解像度はラインあたり256~512であった(それぞれ256または512ライン)。
【0203】
実施例2-外殻カプシドタンパク質シグマ1(σ1)は多価結合を介してα結合シアル酸(α-SA)グリカンに結合する
α結合シアル酸(α-SA)グリカンへのシグマ1(σ1)結合が細胞表面へのレオウイルス付着の最初のステップであるため(Barton et al. 2001a、上記)、我々は、モデル表面および生細胞の両方を用いてレオウイルスのα-SAへの結合強度を評価するために、原子間力顕微鏡(AFM)を使用した(
図1は、力距離ベースのAFMの原理を示す。
図12は、レオウイルスビリオンの形態、チップ機能化、およびモデル表面の化学を立証している。
図2および13は、使用された細胞株を示す)。インビトロで細胞表面のグリカンを模倣するために、ビオチン化-α-SAグリカンが、ウイルスがα-SAにアクセスすることを可能にするために、ストレプトアビジンでコーティングされた表面に固定化された(Lee et al. Sensing discrete streptavidin-biotin interactions with atomic force microscopy. Langmuir 1994, vol. 10, 354-357, Dupres et al. Nanoscale mapping and functional analysis of individual adhesins on living bacteria. Nat. Methods 2005, vol. 2, 515)。モデル表面が、AFMを用いて画像化され、そして、吸収層をスクラッチすることにより、約1.0±0.3nmの堆積層が現れることが確証された(
図12d)。α-SAに結合しているレオウイルスを定量化するために、我々は、α-SA結合レオウイルス株T3SA+の精製ビリオン(
図12c、チップの頂点に単一のビリオンを示す)をAFMチップに化学的結合されている長鎖のポリエチレングリコール(PEG)
27スペーサーの自由末端に共有結合的に付加させた(Alsteens et al. 2017, Newton et al. 2017, Delguste et al. 2018a, 全て上記)。T3SA+ビリオンとα-SAグリカンとのあいだの結合強度を評価するために、力-距離曲線(FD曲線)が記録された(
図3a~c)。特異的な接着事象が、5nmを超える開裂距離で収縮FD曲線の10~15%上で観察され、これは、PEGリンカーの伸長に対応している。これらの相互作用の特異性を確認するために、我々は、(i)σ1のα-SA結合部位中のP204Lの突然変異に起因してα-SAに結合することがない、非SA結合ウイルス株T3SA-(Reiter et al. Crystal structure of reovirus attachment protein σ1 in complex with sialylated oligosaccharides. PLoS Path. 2011, vol. 7, e1002166)に付着したAFMチップを用いた追加の独立したコントロール実験;および(ii)アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)、シアリル-ラクト-N-テトラオース(LSTa)、またはα-SAを欠くグリカンであるラクト-N-ネオテトラオース(LNnT)を含む可溶性α-SA分子との競合実験を行った。予想される通り、T3SA-はSAへの有意な結合を示さず、そして遊離のNeu5AcおよびLSTaの注入は、T3SA+のSAへの結合と強く競合し、しかしながら、LNnTでは競合は見られなかった(
図3b)。これらのコントロール実験は、相互作用の特異性、およびα-SA結合のためのσ1テール領域における特定の残基の決定的な重要性を立証している。
【0204】
σ1-α-SA相互作用のカイネティクスを得るために、我々は、様々な力負荷率での相互作用を強制プローブした(Merkel et al. Energy landscapes of receptor-ligand bonds explored with dynamic force spectroscopy. Nature 1999, vol. 397, 50-53)(
図3cおよび
図1c、d)。生理学的に適切なdirect-of-forceアプリケーションを使用して、σ1-α-SA複合体は、25~400pNの範囲の力に耐性があった。力のレジームは通常、タンパク質のコンフォメーションの安定性に関連しており、AFMチップに結合されたレオウイルスビリオンは時間の経過とともに損傷し得るかもしれないという懸念が生じた。カンチレバーの頂点の半径は約40nmであるため、それらは、レーザー走査型光学顕微鏡で証明されているように、少数のウイルス粒子しか迎え入れることはできない(
図12c)。先端の頂点にあるレオウイルスビリオンが、機械的に改変された場合、このような改変は、時間の経過とともに相互作用の頻度を急速に減少させたはずである。対照的に、単一のカンチレバーは、何千と言う相互作用およびいくつかのマップにわたって活性なままであり、これは、チップおよび表面の機能化が高い力を維持していたことを示している。
【0205】
Bell-Evans(BE)モデルによれば、σ1-α-SA複合体は、シンプルな2つの状態のモデルとして記載され得、ここで、結合状態は、非結合状態から、距離x
u=0.48±0.03nmにある単一のエネルギー障壁によって分離されており、遷移率k
off=0.09±0.04s
-1で交差する。我々はまた、2価および3価の相互作用も観察した。これらの多価相互作用は、予測的Williams-Evans(WE)モデルによって確認されるように、並行してロードされる相関していない結合として現れる(
図3c、破線の曲線IIおよびIII)。これらの多価相互作用は、AFMチップに取り付けられた単一のビリオン上のσ1分子と、表面に固定化された複数のα-SA分子との間で確立されていると思われる。この仮説は、以下の理由により支持される:(i)σ1は3つの結合部位を有する三量体である;(ii)各ビリオンはσ1三量体の複数のコピー(12まで、ビリオン二十面体頂点に対応する)を有する;(iii)先端の頂点は1つまたは2つのビリオンしか持たない;および(iv)結合解除は単一のステップで起こる(FDカーブにおいて単一の破裂ピークが観察される)。したがって、我々のインビトロ実験は、T3SA+ビリオンが、α-SAグリカンと特異的に相互作用すること、および、ビリオンが急速に(ミリ秒範囲で)α-SAグリカンと多価結合を確立することを立証している。露出された細胞表面グリカン内に埋もれているため、σ1-α-SA複合体の数の増加がビリオンに細胞表面への第1の安定した係留を提供するということが概念的に可能である。
【0206】
我々は、次に、α-SAを発現する生きたCHO細胞(核GFPおよびアクチン-mCherryを用いて蛍光標識されている)およびα-SA発現が欠損しているLec2細胞(それらの糖タンパク質およびガングリオシドにおいてSAが約70~90%欠損)を使用した実験で、我々のインビトロ結果を確認した(
図2a、b)。Lec2細胞は、シチジン-5’-一リン酸-SAのゴルジへの輸送における実質的な減少を示す親CHO細胞に由来する変異クローンである(Deutscher et al. Translocation across Golgi vesicle membranes: a CHO glycosylation mutant deficient in CMP-sialic acid transport. Cell 1984, vol. 39, 295-299)。T3SA+で機能化されたAFMチップを使用して、我々は、共培養されたCHO細胞およびLec2細胞のコンフルエントな単層を、両方の細胞タイプを増殖させる条件を用いて画像化した(Alsteens et al. 2017、上記)(
図3d~g)。蛍光をガイドとして、我々は、AFMイメージング中に直接内部コントロールとして用いるために、両方の細胞タイプが近接している領域を選択した(
図3e)。AFM高さ画像は、対応する付着画像と一緒に記録され、付着マップ上に明るいピクセルとして表示された特定の付着事象の場所を明らかにした(
図3f、g)。驚くべきことに、CHO細胞は、高密度の接着事象(~4%、
図3i)を示したが、一方、Lec2細胞はこれら事象のまばらな分布のみを示し(<1%、
図3i)、これは、生細胞上での特異的なT3SA+-α-SA結合の確立を立証している。我々はまた、同じT3SA+チップを用いて連続的なマップをずっと記録することにより、AFMチップの頂点上にあるビリオンの安定性を評価した。連続したマップのあいだのAFMチップ上のウイルスの存在は、我々のAFM実験のあいだにビリオンが内面化されているという可能性を排除する(
図14a~d)。実際、接触時間が短いため(~ミリ秒の範囲)、内面化事象を観察する可能性は、非常に低い。したがって、レオウイルスビリオンは、細胞表面への結合の初期段階の間(280~1500秒)、本質的に静止している。破壊力(
図3h、濃い灰色の点)は、50~400pNの範囲にあった。WE予測(インビトロデータによって確立されている)を用いて、我々は、T3SA+ビリオンが、並行して6つまでの相互作用、最尤推定で3~4の相互作用を確立していると推論する(
図3h、破線[IIからVI]およびヒストグラム)。これらの結果は、T3SA+ビリオンが、細胞表面との約1msという短い接触時間にも関わらず、並行して多数の相互作用を形成することができることを示唆している。σ1タンパク質はホモ三量体を形成し、理論的には3つまでのα-SAグリカンと同時に相互作用し得、いくつかのσ1三量体もまた、所定の時間で細胞表面SAと相互作用し得、観察された多価相互作用を生じさせる。これらの結果は、ビリオンが細胞表面への初期の付着に1つより多くのσ1タンパク質を使用していることを示唆している。T3SA+-α-SA相互作用の特異性は、3つの異なるアプローチを用いて検証された:(i)最初にT3SA+チップで、および続いてT3SA-チップで、同じCHO-Lec2細胞混合物をプローブすること(
図3iおよび14e~h)、(ii)1mM Neu5Acを用いて特異的なウイルス-グリカン相互作用をブロックすること(
図3iおよび14i~1)、および(iii)ビリオン結合のフローサイトメトリー分析(
図3j)。単一のウイルス粒子を用いて行われた観察は、フローサイトメトリーによってより大きなスケールで試験された。細胞が、ビリオンなし(モック)、または、Alexa Flour488標識T3SA+もしくはT3SA-ビリオン(細胞あたり10
5粒子)のどちらかと1時間インキュベートされ、そして、細胞に結合したウイルスの蛍光強度の中央値(MFI)が測定された(
図13)。
図3jに示されるように、T3SA+ビリオンは、主に、CHO細胞に結合したが、モックまたはT3SA-ビリオンでは結合はほとんど検出されなかった。結合力は、モデルα-SA表面上よりもCHO細胞上のほうがはるかに大きいと思われるが、上記のコントロールによって示された相互作用の特異性は、我々が細胞およびモデル表面の両方の上で同じ相互作用を調べていることを立証する。より大きな力は、同時に確立される結合の数の違いの結果であり得る。総合すると、これらの結果は、T3SA+ビリオンが、生細胞上のα-SAグリカンと複数の特異的な相互作用を確立していることを立証している。
【0207】
実施例3-σ1タンパク質は、JAM-Aレセプターと安定的かつ多価の複合体を形成している
α-SAの会合は、細胞表面上でのレオウイルスのための最初の足がかりを提供し得、例えばJAM-Aなどの特異的受容体と会合することは細胞の侵入を促進する。JAM-Aへのレオウイルスの結合を評価するために、我々は、まずJAM-Aでコーティングされた表面へのT3SA+またはT3SA-ビリオンの結合を強制的にプローブした(
図4a)。生理学的条件を模倣するために、his
6タグ付きJAM-A分子が、生理学的に配向された方法でNTA-Ni
2+コーティングされた金表面上に固定化され(Dupres et al. 2005, Dufrene 2011、すべて上記)(
図4a)、そして、表面化学が、AFMスクラッチ実験を用いて検証された(
図12eを参照のこと)。特異的結合力は、20~130pNの範囲で観察され、そして、JAM-A-T3SA+(
図4b、上のパネル)とJAM-A-T3SA-(
図4b、下のパネル)の両方の相互作用のDFSプロットに変換された。JAM-A-レオウイルス相互作用は、JAM-A-T3SA+結合に対してx
u=0.71±0.05nmおよびk
off=0.04±0.01s
-1、JAM-A-T3SA-結合に対してx
u=0.48±0.03nmおよびk
off=0.05±0.03s
-1である単一のエネルギー障壁をもつように定義され得る。オフレートは同等であるが、遷移状態までの距離はT3SA-において小さく、これは、エネルギーランドスケープが、より小さなコンフォーメーション変動に対応し得るより狭いエネルギー谷によって記述されていることを示している。JAM-AへのT3SA-結合に関して、我々は、複数の相互作用に対応するより大きな結合力を頻繁に観察した。より狭いエネルギー谷とともに、この観察は、T3SA-σ1における単一点突然変異が、タンパク質のより堅固なおよび/またはコンパクトなコンフォーメーションを導くことを示唆している。JAM-A抗体(AB)の注入が、結合頻度を減少させ、これは、ビリオン-JAM-A結合の特異性を立証している(
図4c)。
【0208】
生理学的条件下でのレオウイルスのJAM-Aとの相互作用を規定するために、我々は、生細胞上で発現したJAM-Aへのレオウイルスの結合を見積もった。組み合わされた光学的およびFDベースのAFMは、非標識化Lec2-JAM-A細胞と共培養された生きた蛍光標識Lec2細胞(核GFPおよびアクチン-mCherry)を用いて行われた(
図4d~g)。両方のタイプの細胞を用いたT3SA+結合のマッピングは、50~400pNの範囲の低い結合力(破壊力)をもつ、Lec2-JAM-A細胞上での接着事象のより高い密度に光を当てた(~3.5%、
図4g、i)。Lec2細胞は、まれな結合事象しか示さず(<0.8%、
図4g、i)、細胞表面のJAM-AとT3SA+との間の特異的な相互作用を立証した(
図15a~dの連続マッピングも参照のこと)。Lec2細胞上での最小限のSA発現への寄与を排除するために、我々はまた、T3SA-細胞およびLec2-JAM-A細胞のあいだの相互作用を調べ、そして、類似の頻度を観察した(~4.0%、
図4i)。追加で、相互作用の特異性が、(i)JAM-A抗体(AB)(
図4iおよび
図15k~n)、および(ii)フローサイトメトリー(
図4j)を用いて見積もられた。インビトロアプローチを用いて集められた結果と同様に、SA結合部位の変化は、JAM-Aへのレオウイルスの結合に影響を与えない(
図15e-h)。総合すると、これらの結果は、T3SA+が、SAの会合とは独立してJAM-Aとの安定した弱い(低い多価性)相互作用を確立していることを明らかにしている。
【0209】
生細胞上の特異的レセプターとしてのJAM-Aの機能をより明確に規定するために、我々は、JAM-A結合力を分析し、そして、データを、モデル表面上で先に得られていたDFSプロット上に重ねた(
図4h)。インビトロで取得されたデータと比較して、生細胞を使用した実験では、我々は、4つまでの同時の非相関性のウイルス-レセプター結合の確立を観察した(WE-モデル、破線の曲線)。同様に、Lec2-JAM-A細胞上でT3SA-ビリオンを用いて測定された結合力が得られ、そして、DFSプロット上に重ねられ(
図15i、j)、これは、結合頻度(
図4i)および生細胞上で確立された同時の非相関性ウイルス-レセプター結合の数(
図15j)に関して類似の結果を提供している。これらの発見は、JAM-Aへの結合が、同様の実験条件下で6つまでの結合が観察された細胞上のα-SAへの結合よりも速度論的または立体障害的に不利であることを示唆している。しかしながら、T3SA+およびT3SA-の両方において、接着事象の大部分は、1つまたは2つのJAM-Aレセプター相互作用の開裂に対応する破壊力を示し(
図4h、
図15j、ヒストグラム)、これは、同様の実験条件下で6つまでの結合が観察された細胞上のα-SAへの結合よりも速度論的または立体障害的に不利であることを示唆している。
【0210】
実施例4-α-シアル化グリカンへの結合は、JAM-Aへのレオウイルスの結合をトリガーする
α-SAおよびJAM-Aの両方が細胞表面へのレオウイルスの接着中に協調して作用するため、我々は、最初にモデル表面を用いて(
図5および
図6)、およびその後細胞を用いて(
図8)α-SAの存在下でのJAM-Aへのレオウイルスの結合を評価した。インビトロでのJAM-AへのT3SA+の結合を調べる一方、我々は、1mMの(Neu5AcおよびLSTa)末端ありのグリカン、および(LNnT)末端なしのグリカンα-SAを注入した。驚くべきことに、Neu5AcおよびLSTa両方の添加(
図5b、c)は、総計の結合力に強い影響を及ぼし(α-SAがない場合の130pNと比較して、400pNまで、
図4b)、これは、多価相互作用へのシフトを示している。α-SAの存在下では、T3SA+およびJAM-Aのあいだに、3つまたはそれ以上の同時の非相関性のウイルス-レセプター結合が観察され(
図5b)、全体の親和性の増加が起こった。対照的に、LNnTとのインキュベーションは、T3SA+のJAM-Aへの全体的な結合に全く影響を与えず(
図5d)、これは、観察された挙動にはシアリル基が必要であることを証明している。この挙動はT3SA-では観察されないため(
図6a~c)、α-SAによる多価相互作用のトリガリングは、シアル化グリカンと3型血清型σ1テールドメイン中のグリカン結合部位との間の複合体の形成に起因し得る(
図7b)。
【0211】
我々は、α-SAのσ1への結合がσ1におけるコンフォーメーション変化を誘発し得るとの仮説をたてた。この仮説を調査するために、T3SA+感染性サブビリオン粒子(ISVPs)の結合能を規定した(
図5e)。ISVPsを生成するためのビリオンのタンパク質分解処理の後、σ1は、cryoEM画像再構成によるとより延伸された状態を帯びているように見え、粒子表面から放射状に突出している(Dryden et al. Early steps in reovirus infection are associated with dramatic changes in supramolecular structure and protein conformation: analysis of virions and subviral particles by cryoelectron microscopy and image reconstruction. The Journal of cell biology 1993, vol. 122, 1023-1041)(
図7a)。この観察は、ISVP-JAM-A相互作用が、α-SAの存在下でビリオン-JAM-A相互作用およびより延伸したσ1のコンフォーマーの可能性を模倣するかどうかを試験するためのツールを提供する。驚くべきことに、我々は、T3SA+ ISVPとJAM-Aとの間の強い相互作用を観察し、これは、α-SAとのインキュベーション後のT3SA+ビリオンのJAM-Aとの相互作用に匹敵し、σ1へのα-SAの結合が、JAM-Aに対するその親和性を増大させるタンパク質におけるコンフォーメーション変化を誘導していることを示唆している。さらに、レオウイルスビリオンとJAM-Aとの間に確立された結合数の分析は、α-SAへの結合の後、レオウイルス-JAM-A結合能が、ISVPsの結合脳と同様の程度まで増加することを明らかにした(
図5f、g)。我々はまた、ISVPsのJAM-Aへの結合が、遊離α-SAを用いた処理によって増加し得るかどうかを試験した(
図5g、
図16、
図6d)。しかしながら、α-SA処置後のISVP-JAM-A相互作用に観察可能な変化はなかった。したがって、α-SAによるT3SA+の活性化後、σ1タンパク質はより延伸された形状へのコンフォーメーション変化を起こすようである。
【0212】
この活性化メカニズムが細胞状況で起こるかどうかを試験するために、我々は、Lec2-JAM-A細胞へのレオウイルスの結合を調べ、および、Neu5Ac、LSTa、またはLNnTの注入後の接着挙動をモニタリングした(
図8、
図9)。Lec2-JAM-A細胞は、シアル化グリカンを欠いており、および、レオウイルスのLec2細胞への結合はまれである(<1%、
図9)ため、我々は、レオウイルスのLec2-JAM-A細胞への相互作用の大部分はJAM-Aレセプターを介して確立されると仮定した。したがって、我々は、この細胞株を、注入されたグリカン誘導体のレオウイルス-JAM-A相互作用に及ぼす影響を研究するために用い、および、グリカン注入の前後における全体的な結合頻度を比較した。我々は、T3SA+結合効率は、末端α-SA(Neu5AcおよびLSTa)を有するグリカンが注入された場合のみ注入後に増加することを観察した。T3SA+ビリオンは、α-SA-グリカン(Neu5AcおよびLSTa)の注入後に、約20~25%の結合の有意な増加を示した(
図9;Neu5Acで3.9~4.9%、LSTaで3.8~4.8%)。対照的に、我々は、α-SAを欠くLNnTの注入後の結合の増加を観察しなかった(
図9;3.8から3.9%)。Lec2細胞上の残渣SAが我々の結果に影響を与えているのかどうかを評価するために、我々は、細胞表面の残渣α-SA-グリカンを開裂するために、Lec2細胞をノイラミニダーゼを用いて処理した(40mUnit/mL、1時間)(
図8)。未処理の細胞を用いて集めた結果と同様に、我々は、ノイラミニダーゼで処理されたLec2細胞上へのNeu5Acの注入後、約20%のT3SA+結合の増加を観察した。これらの結果は、SAとの相互作用が、細胞表面上のJAM-Aへのレオウイルスの結合を増大させること、および、Lec2細胞表面上の残渣SAは、レオウイルスとの相互作用に最小限にしか寄与していないことを示唆している。
【0213】
細胞表面レセプターに結合するレオウイルスの多価性を定量化するために、我々は、結合力分布を分析した(
図8p~s)。高力範囲内の結合事象を示している接着画像の検査(
図8c、e、h、j、m、o)は、これら事象の結合頻度が、α-SAとのインキュベーション後に顕著に増加したことを示した。この観察は、α-SAインキュベーションによってトリガーされるビリオン結合能における変化を実証した我々のインビトロデータと一致している。T3SA+ビリオンと細胞表面上のJAM-A分子とのあいだに確立された結合の数の分析(
図8t)は、この増大された多価性を立証した。α-SAによる活性化の後、結合の平均数は、グリカン注入前の1.8±0.3結合からグリカン注入後の4.5±1.2結合まで、2.5倍に増加した。総合すると、これらのデータは、σ1へのα-SAの結合が、おそらく(しかしいかなる仮説にも束縛される意図はなく)コンフォーメーション変化を誘導するという結果として、JAM-Aに対するσ1の親和性を高めていることを実証している。
【0214】
実施例5-レオウイルスの多価固定をトリガーすることは、ビリオンの結合および拡散能を変化させる
α-SAが、JAM-Aに結合するレオウイルスのダイナミクスにどのような影響を与えるかを評価するために、我々は、光学バイオレイヤー干渉法(BLI)およい蛍光顕微鏡ベースの単一粒子追跡(SPT)を用いた。
【0215】
BLIを用いて、我々は、JAM-AでコーティングされたNi
2+-NTA-バイオセンサーへのレオウイルスの結合を定量化し、および、全体的な親和力における遊離Neu5Acの影響もまた試験した。データは、T3SA+およびT3SA-が高い親和力で(KD~nM範囲)でJAM-Aに結合することを示している(
図10a、b)。予想されるように、遊離のNeu5Acは、T3SA-結合に影響を与えなかった。著しく対照的に、遊離Neu5AcおよびISVPsと共にインキュベートされたT3SA+ビリオンは、JAM-Aに対してはるかに高い親和力を持ち、非常に高い親和性(KD~pM範囲)に達した(
図10a)。これらの観察は、ISVPsの結合能に匹敵する、α-SA化合物とインキュベートされたT3SA+ビリオンの結合能を示す我々のAFMデータと一致している。
【0216】
生細胞の表面へのレオウイルスの結合もまた、高速共焦点顕微鏡を用いたSPTによって動的に評価された。蛍光標識されたT3SA+ビリオンは、CHO-JAM-A細胞と共培養された、mCherry標識されたLec2-JAM-A細胞と共にインキュベートされた。タイムラプスシリーズの画像が、1mM Neu5Acの存在下または非存在下で記録された(
図10c~f)。T3SA+粒子は、SAを欠く細胞(Lec2細胞)上でより迅速に拡散するが、粒子は、SAレセプターおよびJAM-Aレセプターの両方を発現している細胞(CHO-JAM-A)上ではより静的である。Neu5Acと一緒のウイルス粒子の注入は、それらの拡散能の顕著な低下を導く(
図10f)。各細胞型における少なくとも15の粒子軌跡の分析は、ビリオンがα-SAグリカンを欠く細胞上ではより長い距離にわたって、より増大された速さで拡散することを明らかにした(
図10g)。さらに、遊離SAの注入は、おそらくJAM-Aとの多価相互作用を媒介する能力によって、細胞表面上でのT3SA+の拡散を減少させ、および、CHO-JAM-A細胞に結合する粒子の数を顕著に増加させた(
図10g)。重要なことには、この効果は、非SA結合株T3SA-では観察されなかった(
図10g)。一緒に、これらの観察は、α-SAに結合するσ1が、細胞表面レセプターへのウイルスの多価付着の増加を導く、σ1におけるコンフォーメーション変化を誘導するという我々の結論を強化している。
【0217】
実施例2~5からの結論
我々は、レオウイルスの細胞への侵入を促進する細胞形質膜の必須成分を強制的にプローブし、および特性評価するために、共焦点顕微鏡と組み合わせてAFMを使用した。レオウイルス付着タンパク質σ1の結晶構造は、α-ヘリックスコイルドコイルおよびトリプル-βスパイラルによって形成されるテールドメインならびにコンパクトな8本鎖βバレルによって形成されるヘッドドメインを有する細長い繊維状を示している。レオウイルス侵入を開始する主な因子として、3型血清型のレオウイルスのσ1は、テールドメインおよびヘッドドメインの両方にレセプター結合領域を含む。テールドメインのトリプルβスパイラルがα-SAに結合する一方、ヘッドドメインは、JAM-Aに結合する。
【0218】
単一ウイルス力分光法を用いて、我々は、各レセプターへの結合強度を定量化することにより、および、単結合の速度論的パラメーターを求めることにより、α-SAおよびJAM-Aの両方へのレオウイルスの結合を調べた。モデル表面および生細胞を用いて行われたAFM実験は、我々が細胞状況における相互作用の多価性を決定することを可能にした。細胞表面へのレオウイルスの結合のあいだ、我々は、α-SAとの3つの並行した相互作用、およびJAM-Aとの2~3つの相互作用が好まれていることを観察した。この発見は、σ1三量体の各モノマー上のレセプター結合ドメインが、独立してレセプターα-SAおよびJAM-Aと結合できることを示唆している。これらの結果はまた、確立された結合の数が、ウイルス-レセプター結合の全体的な親和力に寄与することを立証している。いかなる理論や仮説にも束縛されることを望まないが、個々のレセプター分子に対する親和性は、非常に低い(単一タンパク質-グリカン相互作用においてmMの範囲)かもしれないが、多価相互作用の結果として、驚くべき親和力の値(nM範囲)に増大し得る。レオウイルスの場合、細胞表面上に着いて受容体に結合した後、ウイルスは限られた位置に接着し、そこからシグナル誘導的にエンドサイトーシスが行われであろう。結合の数を最大化することは、ビリオンの外側への拡散を減らすのに役立つかもしれない。これに関連して、本明細書で実施されるように、単一ビリオンレベルでのウイルス受容体結合の数の抽出は、感染プロセスの開始を理解することを可能にする。
【0219】
付着因子は、しばしば特異性を欠く弱い相互作用を媒介し、ウイルスを細胞表面につなぎとめて、特定の侵入メディエーターへのアクセスを可能にするように機能する。我々は、予期せぬことに、レオウイルスのσ1テールのα-SAへの結合が、σ1ヘッドのJAM-Aへの結合を増大させることを発見した。仮説に束縛されることを望む意図はないが、JAM-Aに対する、ビリオンのα-SAを介した増大された親和性は、σ1のより延伸されたコンフォーマーを含むISVPsのJAM-A親和性を模倣するため、我々のデータは、σ1のα-SAへの結合がσ1タンパク質におけるコンフォーメーション変化をトリガーすることを確証しており、これはJAM-A結合部位をよりアクセスしやすいものとしていると考えられる。分子的観点から、魅力的な仮説は、α-SAのσ1テールへの結合が、L203-P204結合のシスからトランスへの異性化を誘導し、結果としてタンパク質のより延伸された形状への重要なコンフォーメーション変化をもたらすというものである(
図10h)。より低い親和性で結合するα-SAへの結合は、最初の付着事象として機能し、および、高親和性JAM-Aレセプターとのさらなる特異的な相互作用を増大させる、σ1タンパク質におけるコンフォーメーション変化をトリガーする。我々の発見は、ワクチンおよび腫瘍溶解性適用のためのレオウイルスの結合効率および感染性を操作するユニークな機会を提供する。
【0220】
実施例6-レオウイルスによるインビトロ培養された細胞の感染
T3SA+およびT3SA-レオウイルスストックが、実施例1に記載のように、調製され、そして精製されたビリオンが得られた。Lec2、Lec2-JAM-A、CHOおよびCHO-JAM-A細胞は、実施例1に記載のように調製および培養される。
【0221】
細胞は、バッチ懸濁液でまたは単層で、適切な感染多重度(MOI)でレオウイルスを用いて感染させられ、および、感染度は、例えば感染細胞におけるウイルスタンパク質発現の定量化またはプラークアッセイなどの適切なアッセイによって分析される。
【0222】
T3SA+ウイルスの感染性は以下のように増加する。Lec2<CHO<<Lec2-JAM-A<CHO-JAM-A。
【0223】
T3SA-ウイルスの感染性は以下のように増加する。Lec2~CHO<<Lec2-JAM-A~CHO-JAM-A。
【0224】
抗JAM-A抗体は、T3SA+またはT3SA-ウイルスの感染性を中和する。
【0225】
さらなる実験は、Lec2-JAM-AおよびCHO-JAM-A細胞を用いて行われる。
【0226】
シアル化グリカンNeu5AcまたはLSTaはウイルスと同時投与され(ウイルスと混合されるか、または別のバイアルから細胞に添加される)、および、Neu5AcまたはLSTaなしのT3SA+と比較して、T3SA+のLec2-JAM-AおよびCHO-JAM-Aに対する感染力を顕著に増加させる。
【0227】
シアル化グリカンNeu5AcまたはLSTaは、T3SA-のLec2-JAM-AまたはCHO-JAM-Aに対する感染力に影響を与えない。
【0228】
非シアル化グリカンLNnTは、LNnTを含まないT3SA+と比較して、T3SA+のLec2-JAM-AおよびCHO-JAM-Aに対する感染力に影響を与えない。
【0229】
実施例7-レオウイルスによるマウスの感染
T3SA+およびT3SA-レオウイルスストックが、実施例1に記載のように、調製され、および精製されたビリオンが得られる。
【0230】
マウスが、107または1010プラーク形成単位(PFU)のウイルスを用いて経口的に播種され、そして、リアルタイムPCRが使用して感染後4~7日の小腸中のウイルス力価を定量化するために用いられた。
【0231】
ウイルス感染を検出する例としての方法は、PCR、蛍光イメージング、またはELISA(例えば、Bouziat et al. Reovirus infection triggers inflammatory responses to dietary antigens and development of celiac disease. Science 2017, vol. 356, pp. 44-50; Montufar-Solis and Klein. Experimental Intestinal Reovirus Infection of Mice: What We Know, What We Need to Know, Immunol Res. 2005, vol. 33, 257-265を参照のこと)または生物発光アッセイ(例えば Pan et al. Visualizing influenza virus infection in living mice. Nature Communications 2013, vol. 4, 2369を参照のこと)を含む。
【0232】
代替的には、マウスの気道が感染させられ、感染力がFlanoらに記載されているように実質的に決定される(Methods used to study respiratory virus infection. Curr Protoc Cell Biol. 2009, CHAPTER: Unit-26.3)。(i)マウス感染、組織のサンプリングおよび保存のための基本的な技術、(ii)ウイルス力価の決定、フローサイトメトリーを用いたリンパ球および樹状細胞の分離および分析、および(iii)肺組織学、免疫組織化学、およびin situハイブリダイゼーション、を含む標準的な手順が使用される。
【0233】
これらのモデルにおいて、T3SA+はT3SA-と比較してより感染性である。シアル化グリカンNeu5AcまたはLSTaは、ウイルスと共に同時投与され(ウイルスと混合されるか、または別のバイアルからマウスに与えられる)、Neu5AcまたはLSTaなしのT3SA+と比較して、T3SA+の感染性を顕著に増大させる。シアル化グリカンNeu5AcまたはLSTaは、T3SA-の感染性には影響を与えない。非シアル化グリカンLNnTは、T3SA+の感染性に影響を与えない。
【0234】
実施例8-ワクチン
以下の組成物は、本発明の原則を具体化するワクチンを示している。
【0235】
鳥類レオウイルスワクチンA.
ワクチン組成物は、弱毒生レオウイルスS1133株(MSDアニマルヘルスからNobilis(登録商標) REO1133として入手可能)を、0.2mLの用量あたり少なくとも103 CCID50で、1mM N-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)で補充されて、含む。
【0236】
鳥類レオウイルスワクチンB.
ワクチン組成物は、弱毒生レオウイルスS1133株を、0.2mLの用量あたり少なくとも103 CCID50で、10mM N-アセチルノイラミン酸で補充されて、含む。
【0237】
鳥類レオウイルスワクチンC.
ワクチン組成物は、弱毒生レオウイルスS1133株を、0.2mLの用量あたり少なくとも103 CCID50で、1mM シアリル-ラクト-N-テトラオースa(LSTa)で補充されて、含む。
【0238】
鳥類レオウイルスワクチンD.
ワクチン組成物は、弱毒生レオウイルスS1133株を、0.2mLの用量あたり少なくとも103 CCID50で、10mM LSTaで補充されて、含む。
【0239】
ヒトレオウイルスワクチンA.
弱毒生ヒトレオウイルス1型Lang株、1.5mLの経口用量あたり少なくとも106 CCID50、1mM Neu5Ac、または1mM LSTa、または10mM Neu5Ac、または10mM LSTaで補充される。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。
【0240】
ヒトレオウイルスワクチンB.
弱毒生ヒトレオウイルス2型Jones株、1.5mLの経口用量あたり少なくとも106 CCID50、1mM Neu5Ac、または1mM LSTa、または10mM Neu5Ac、または10mM LSTaで補充される。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。
【0241】
ヒトロタウイルスワクチンA.
弱毒生ヒトロタウイルスRIX4414株(GlaxoSmithKlineからRotarix(登録商標)として入手可能)、1.5mLの経口用量あたり少なくとも106 CCID50、1mM Neu5Ac、または1mM LSTa、または10mM Neu5Ac、または10mM LSTaで補充される。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。
【0242】
ヒトロタウイルスワクチンA.
弱毒生ヒト-ウシロタウイルス株再集合体G1型(2.2×106 感染単位以上)、G2型(2.8×106 IU以上)、G3型(2.2×106 IU以上)、G4型(2.0×106 IU以上)、およびPIA[8]型(2.3×106 IU以上)(Merck VaccinesからRotaTeq(登録商標)の一部として入手可能)、経口投与量2.0mLあたり、1mM Neu5Ac、または1mM LSTa、または10mM Neu5Ac、または10mM LSTaで補充される。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。懸濁液は、安定化剤としてスクロースを含む。
【0243】
実施例9-腫瘍溶解性調製物
以下の組成物は、本発明の原理を具体化する腫瘍溶解性調製物を示す。
【0244】
腫瘍溶解性調製物A。非病原性、腫瘍溶解性のヒト野生型レオウイルス3型Dearing株、用量あたり3×1010 CCID50、静脈内投与用に構成、1mM Neu5Ac、または1mM LSTa、または10mM Neu5Ac、または10mM LSTaで補充される。
【0245】
腫瘍溶解性調製物B。非病原性、腫瘍溶解性のヒト野生型レオウイルス3型Dearing株、腫瘍特異的抗原に対する単一ドメインVHH抗体に共有結合されている。抗体は、それらに共有結合的に結合されているNeu5AcまたはLSTaを含む。用量あたり3×1010 CCID50、静脈内投与用に構成。
【配列表】
【国際調査報告】