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  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図1
  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図2A
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  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図3A
  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図3B
  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図4
  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図5A
  • 特表-追跡アレイの位置精度の照合方法 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】追跡アレイの位置精度の照合方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20220419BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20220419BHJP
   A61B 17/58 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B17/16
A61B17/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543250
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(85)【翻訳文提出日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 US2020016763
(87)【国際公開番号】W WO2020163457
(87)【国際公開日】2020-08-13
(31)【優先権主張番号】62/801,252
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520104329
【氏名又は名称】シンク サージカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ズハース,ジョエル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL09
(57)【要約】
【解決手段】追跡基準装置の位置精度を照合するための方法が提供され、該方法は、骨に取り付けられた追跡基準装置を含む。その後、骨は、追跡基準装置の座標系に対して登録される。その後、骨に照合マークが作成され、照合マークの位置は、追跡システムによって追跡基準装置に対して記録される。追跡基準装置の位置精度は、ロボット支援手術装置のエンドエフェクタに、骨の照合マークに位置合わせするように指示することによって照合され、エンドエフェクタが照合マークに位置合わせされない場合は、追跡基準装置の位置精度が損なわれている。また、コンピュータ化された方法を実施するための手術システムも提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
追跡基準装置の位置精度を照合するための方法であって、該方法は、
追跡基準装置を骨に取り付ける工程と、
前記追跡基準装置の座標系に対して前記骨を登録する工程と、
前記骨に照合マークを作成する工程であって、前記照合マークの位置は、追跡システムによって前記追跡基準装置に対して記録される、工程と、
ロボット支援手術装置のエンドエフェクタに、前記骨の前記照合マークに位置合わせするように指示することによって、前記追跡基準装置の位置精度を照合する工程と、を含み、
ここで、前記エンドエフェクタが前記照合マークに位置合わせされない場合は、前記追跡基準装置の位置精度が損なわれている、方法。
【請求項2】
前記追跡基準装置の位置精度が損なわれている場合は、前記追跡基準装置の前記座標系に前記骨を再登録する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記追跡基準装置は、追跡アレイまたは電磁送信機をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記追跡アレイは、3つ以上の能動的または受動的な基準マーカをさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記追跡基準装置は、骨ピン、骨ネジ、鉗子または他の締結要素の少なくとも1つを使用して前記骨に固着され得ることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記追跡基準装置が前記骨に固着された後に、前記骨は、点対点のマッチング技法、点対表面のマッチング技法、レーザスキャン技法、画像対画像のマッチング技法、または画像を用いない登録技法のうちの少なくとも1つを使用して登録されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記骨は、前記追跡基準装置の前記座標系の骨データに登録されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記骨は、前記追跡基準装置の前記座標系に対して登録され、前記追跡基準装置は、光学式追跡システムによって追跡され、前記光学式追跡システムは、前記骨と、ロボット手術装置のエンドエフェクタとをさらに追跡することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記骨は、電磁式追跡システムに対して登録されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記照合マークは、前記骨に作成される物理的な孔、インプリントまたはノッチのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記照合マークは、前記骨に設置される骨ピンまたは他の装置のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記マークは、ハンドヘルド手術装置のエンドエフェクタによって作成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記エンドエフェクタは、ドリルビット、骨ピン、エンドミルまたはカッタのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記マークは、手術ロボットのエンドエフェクタによって作成され、前記エンドエフェクタは、多関節アームに取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エンドエフェクタは、ドリルビットまたは骨ピンのうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ユーザに、外科的処置全体を通して定期的に位置精度を照合するように促す手術システムをさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
ユーザが外科的処置中に位置精度を照合するように促す手術システムをさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
コンピュータ化された、請求項1~4に記載の方法を実施するための手術システムであって、該手術システムは、
エンドエフェクタツールを備えた手術ロボットまたはハンドヘルド手術装置と、
コンピュータ、ユーザ周辺機器、および、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するためのモニタを含むコンピュータシステムと、
機械式デジタイザまたは非機械式追跡システムのうちの少なくとも1つと、を含み、
前記コンピュータは、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法を実行するためにプロセッサ、非一時的な記憶メモリ、ならびに、他のハードウェア、ソフトウェア、データおよびユーティリティをさらに含み、
前記ユーザ周辺機器は、ユーザに前記GUIと相互作用させ、前記ユーザ周辺機器は、キーボード、マウス、ペンダント、ハンドヘルドコントローラ、モニタのタッチスクリーン機能のうちの少なくとも1つを含むユーザ入力機構、あるいは、手術ロボットまたはハンドヘルド手術装置と直接一体化されたユーザ入力機構を含む、手術システム。
【請求項19】
前記エンドエフェクタツールの位置と、外科的処置の対象となる前記骨の位置とを検知するための追跡システムをさらに含むことを特徴とする、請求項18に記載の手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ロボット支援整形外科手術の分野に関し、より詳細には、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生涯を通して、骨と関節は、通常の使用、疾患の状態、外傷的な出来事、またはそれらの組み合わせによって損傷したり、摩耗したりする。関節炎は、関節の損傷の主な原因であり、時間が経つにつれて、軟骨分解、疼痛、硬化および骨欠損を引き起こす。また、関節炎は、関節を連結している筋肉の筋力を衰えさせ、痛くなる場合もある。
【0003】
機能不全の関節に関連した疼痛が、それほど侵襲的でない療法によって軽減されない場合には、治療法の選択肢として、関節置換術処置が検討される。関節置換術は、関節炎または機能不全の関節面を整形外科人工器官と置換する整形外科処置である。
【0004】
このようなインプラントを精度よく留置して位置合わせすることが、関節置換術の成功を決める大きな要因となる。インプラントを配置する際には、僅かな位置ずれが、摩耗特性の悪化、機能性の低下、臨床結果の悪化、人工器官の寿命の短縮、またはそれらの組み合わせをもたらす場合がある。
【0005】
インプラントを精度よく留置して位置合わせするためには、通常は、患者の骨の3次元骨モデルと、所望のインプラントの1つ以上のインプラントモデルとを使用して、手術計画が生成される。ユーザは、骨モデルに対してインプラントモデルを配置し、患者の骨に対して所定のインプラントを全体的に最適に適合させ、充填させ、位置合わせするように指定する。その後、計画は、手術室(OR)にあるロボット支援手術装置に転送され、選択された計画が精度よく実施される。ある特定のロボット支援手術装置は、米国特許出願公開公報第2018/344409号に記載されているようなハンドヘルドコンピュータ支援手術装置であり、当該文献の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。ハンドヘルド装置は、ユーザが、骨に2つ以上のピンを精度よく位置合わせするのを支援し、ガイドスロットを有する切断ガイドは、そのピン上に組み立てられる。ピンは骨に配置され、それによって、切断ガイドがピン上に組み立てられると、ガイドスロットが位置合わせされ、計画された切断を行う上で外科用鋸刃がガイドされる。別のロボット支援手術装置は、鋸刃、カッタ(例えばエンドミル)またはリーマを制御することによって直接骨の切断を行うロボット手術システムである。如何なるロボット支援手術装置においても、計画に従って精度よく骨に切断を作成するために、骨の位置と方向(POSE)は、装置と手術計画に対して認識される必要がある。装置と計画に対する骨のPOSEは、最初は、登録と呼ばれる処理を使用して判断されてもよい。米国特許第6,033,415号と米国特許第5,951,475号に記載されているように、いくつかの登録方法が当該技術分野において周知である。登録後に、リアルタイムで手術装置に対する骨のPOSEを更新するために、骨は追跡される必要がある。
【0006】
従来の追跡システムは、光学式追跡システム、電磁式追跡システムおよび機械式追跡システムを含む。これらの追跡システムはそれぞれ、追跡システムに骨を追跡するためのリンクを設けるために、登録前に、追跡基準装置が患者の骨に固定される必要がある。そして、登録後に、追跡システムは、リアルタイムで精度よく骨を追跡することができる。例えば、光学式追跡システムは、患者の骨に固定された追跡アレイを利用し、電磁式追跡システムは、骨に固定された磁界送信機を利用し、機械式追跡システムは、骨に固定された1つ以上の多関節連結装置の遠位端部を利用する。
【0007】
しかし、システムに関連した問題の1つは、登録後の骨に対する基準装置の意図しない移動である。登録後に、基準装置が知らずに骨に対して移動してしまった場合は、骨と手術計画の間の相対的なPOSEは、移動量によって変わり、それによって、同様の移動量によって切断の形成やピンの位置合わせが変わる。これによって、骨のインプラントの位置合わせに大幅に影響する場合があり、臨床結果の悪化をもたらす場合がある。
【0008】
よって、ロボット支援整形外科の外科的処置中に骨に対する追跡基準装置の位置精度を効率的かつ効果的に照合するための方法が必要となる。
【発明の概要】
【0009】
追跡基準装置の位置精度を照合するための方法が提供され、該方法は、骨に取り付けられた追跡基準装置を含む。その後、骨は、追跡基準装置の座標系に対して登録される。その後、骨に照合マークが作成され、照合マークの位置は、追跡システムによって追跡基準装置に対して記録される。追跡基準装置の位置精度は、ロボット支援手術装置のエンドエフェクタに、骨の照合マークに位置合わせするように指示することによって照合され、エンドエフェクタが照合マークに位置合わせされない場合は、追跡基準装置の位置精度が損なわれている。
【0010】
以上に詳述されたコンピュータ化された方法を実施するための手術システムは、エンドエフェクタツールを備えた手術ロボットまたはハンドヘルド手術装置を含む。コンピュータシステムが設けられ、該コンピュータシステムは、コンピュータ、ユーザ周辺機器、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するためのモニタを含む。また、機械的デジタイザまたは非機械的追跡システムのうちの少なくとも1つが設けられる。コンピュータは、方法を実行するためにプロセッサ、非一時的な記憶メモリ、ならびに、他のハードウェア、ソフトウェア、データおよびユーティリティを含む。ユーザ周辺機器は、ユーザにGUIと相互作用させるものであって、ユーザ周辺機器は、キーボード、マウス、ペンダント、ハンドヘルドコントローラ、モニタのタッチスクリーン機能のうちの少なくとも1つのユーザ入力機構、あるいは、手術ロボットまたはハンドヘルド手術装置と直接一体化されたユーザ入力機構を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明について、本発明の特定の態様を示すことを意図した以下の図面に関してさらに詳述するが、本発明の実施に対する限定と解釈すべきものではない。
図1】本発明の実施形態に従ってロボット支援外科的処置中に追跡基準装置の位置精度を照合するための方法のフローチャートである。
図2A】ハンドヘルド手術装置を備えた手術室(OR)における手術システムを図示した概略図であり、手術システムは、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施することが可能である。
図2B図2Bは、最小の高さおよび回転(図2B)を示した図2Aのハンドヘルド手術装置の詳細図である。
図2C図2Cは、最大の高さおよび回転(図2C)を示した図2Aのハンドヘルド手術装置の詳細図である。
図3A図3Aは、ロボット支援外科的処置中に追跡基準装置の位置精度を照合するためのシナリオを図示し、図3Aは、追跡基準装置が大腿骨に対して移動していないことを図示する。
図3B図3Bは、ロボット支援外科的処置中に追跡基準装置の位置精度を照合するためのシナリオを図示し、図3Bは、追跡基準装置が大腿骨に対して移動していることを図示する。
図4】ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施することが可能なロボット手術システムの先行技術の実施形態を図示する。
図5A図5Aは、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施するために、エンドエフェクタを制御するための、図4のロボット手術システムのロボットアームの使用を例示し、図5Aは、追跡基準装置が大腿骨に対して移動していないことを図示する。
図5B図5Bは、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施するために、エンドエフェクタを制御するための、図4のロボット手術システムのロボットアームの使用を例示し、図5Bは、追跡基準装置が大腿骨に対して移動していることを図示する。
図6】骨ピンの形態の照合マークを使用して、ロボット支援外科的処置中に追跡基準装置の位置精度を照合するためのシナリオを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための方法としての有用性を有する。次に、本発明について、以下の実施形態を参照して説明する。これらの説明によって明白であるように、この発明は、異なる形態で具体化することができるが、本明細書に記載した実施形態に限定されるものと解釈されないものとする。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完全で欠落がなく、本発明の範囲を当業者に十分伝えるように提示される。例えば、ある実施形態に関して例示した特徴を他の実施形態に組み込むことができ、ある特定の実施形態に関して例示した特徴をその実施形態から削除することもできる。加えて、本明細書において示唆される、実施形態に対する多数の変更および追加は、本開示に鑑みて当業者に明白であり、これらは本発明から逸脱するものではない。従って、以下の明細書は、本発明のいくつかの特定の実施形態を例示することを意図しており、それらのすべての置き換え、組み合わせ、変更を網羅的に特定することを意図していない。
【0013】
さらに、本明細書に記載のシステムおよび方法は、近位大腿骨について言及しているが、システムおよび方法は、臀部、足首、肘、手首、頭蓋および脊椎を例示的に含む体内の他の骨または関節、ならびに、前述の骨または関節のいずれの最初の修復または置換の修正に適用することができることは理解されよう。
【0014】
本明細書で使用される場合は、用語「手術前の骨データ」は、実際の骨に修正を加えるのに先立ち、手術前に処置を計画するのに使用される骨データを指す。手術前の骨データは、以下、すなわち骨の画像データ一式(例えば、コンピュータ断層撮影、磁気共鳴画像、超音波、X線、レーザスキャン)、仮想汎用骨モデル、物理骨モデル、骨の画像データ一式から生成される患者固有の仮想骨モデル、または、画像を用いないコンピュータ支援装置で一般的に使用される、手術中に骨に直接収集されるデータ一式のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合は、用語「登録」は、2つ以上の物体または座標システムの間のPOSEおよび/または座標変換を判断することを指し、2つ以上の物体または座標システムには、コンピュータ支援装置、骨、手術前の骨データ、手術計画データ(すなわち、インプラントモデル、切断ファイル、仮想境界、仮想平面、手術前の骨データに関連した、または手術前の骨データに対して定められた切断パラメータ)、および、骨に関連した外部目印が存在する場合はそのような目印(例えば、基準マーカアレイ(本明細書では追跡アレイとも呼ばれる)または電磁センサ)が挙げられる。当該技術分野において周知の登録方法は、米国特許第6,033,415号、米国特許第8,010,177号および米国特許第8,287,522号に記載されている。
【0016】
本明細書で使用される場合は、用語「リアルタイム」は、計算開始後2秒以内に計算値が得られるように数ミリ秒以内で入力データを処理することを指す。
【0017】
また、本明細書には「ロボット支援手術装置」について記載されている。ロボット支援手術装置は、外科的処置の支援のためにエンドエフェクタによるコンピュータ制御を要する任意の装置/システムを指す。ロボット手術装置の一例として、例えば米国特許第5,086,401号、米国特許第7,206,626号、米国特許第8,876,830号、米国特許第8,961,536号、米国特許公開公報第2013/0060278号および米国特許出願公開公報第2018/344409号に記載されているように、能動的な触運動の1~N自由度を有するハンドヘルド手術装置およびシステム、自律的な直列連鎖のマニピュレータシステム、触運動の直列連鎖のマニピュレータシステム、並列のロボットシステムまたはマスタースレーブロボットシステムが挙げられる。ロボット手術システムの特定の実施形態について、以下でさらに説明する。
【0018】
次に、図を参照すると、図1は、ロボット支援手術中に追跡基準装置の位置精度を照合するための発明方法の実施形態のフローチャートを図示する。従来技術を使用して骨を露出させた後に、10で、追跡基準装置が固着された骨は、追跡システムの座標系に対して登録される。登録後はいずれの時点でも、ロボット支援手術装置のエンドエフェクタに、骨のマークに位置合わせするように指示することによって、追跡基準装置の位置精度が照合され、骨のマークの位置は、登録後かつ12の照合前に、追跡システムの座標系に定められた。エンドエフェクタがマークと位置合わせされない場合は、追跡基準装置の位置精度が損なわれており、14で、骨は、追跡システムの座標系に再登録される。本方法の特定の実施形態について、以下でさらに説明する。
【0019】
追跡システムが骨を追跡することができるようにするために、追跡基準装置は、追跡アレイ、電磁センサ、機械的追跡システムの遠位端部、または骨に固着される任意の他の装置を例示的に含む。追跡基準装置は、骨ピン、骨ネジ、鉗子または他の締結要素の使用を含む当該技術分野において周知の技術を使用して、骨に固定させてもよい。精度よく追跡することができるようにするために、追跡基準装置は骨にしっかり固着させることが重要である。追跡システムは、追跡アレイを追跡するための光学式追跡システム、リンクとジョイントからなる一式を有し、リンクの遠位端部を追跡するか、リンクの遠位に取り付けられたプローブを追跡する機械式追跡システム、または、電磁センサを追跡するために電磁場を放射する電磁発生器を指してもよい。
【0020】
追跡基準装置が骨に固定された後に、骨が登録される。骨は、当該技術分野において周知の登録技術を使用して登録されるが、登録技術は、点対点のマッチング技法、点対表面のマッチング技法、レーザスキャン技法、画像対画像のマッチング技法、または画像を用いない登録技法を例示的に含む。追跡システムが精度よく骨を追跡することができるように、骨は、追跡基準装置の座標系に対して登録される。骨は、通常は、手術前の骨データに登録され、手術前の骨データは、骨を修正する指示を受けた骨の仮想モデルを含む。特定の実施形態では、骨は、光学式追跡システムによって追跡される追跡アレイの座標系に対して登録され、それによって、光学式追跡システムは、骨を追跡することができる。光学式追跡システムは、ロボットに取り付けられた追跡アレイによってロボット手術装置のエンドエフェクタをさらに追跡し、それによって、骨に対するエンドエフェクタの位置を追跡することができる。他の実施形態では、骨は、機械式追跡システムの座標系または手術ロボットの座標系に対して登録される。手術ロボットのエンドエフェクタは、登録のため、骨の点をデジタル化するために使用されてもよく、あるいは、手術ロボットは、そこに機械式追跡システムが取り付けられてもよい。別の実施形態では、骨は、電磁式追跡システムに対して登録される。登録後、追跡システムは、追跡基準装置によって精度よく骨を追跡することができる。
【0021】
登録後はいずれの時点でも、ロボットシステムのエンドエフェクタを、以前作成/設置された骨の照合マークと位置合わせすることによって、追跡基準装置の位置精度が照合されてもよく、ここで、照合マークのPOSEは、追跡基準装置が骨に対して位置移動する可能性に先立ち、追跡基準装置の座標系に対して定められた。照合マークは、骨に形成される物理的な孔、インプリントまたはノッチの形態であってもよい。代わりに、照合マークは、骨に設置された装置(例えば骨ピン)の形態であってもよい。特定の実施形態では、以下でさらに説明するように、マークは、ロボットシステムによって形成される。
【0022】
図2Aを参照すると、ハンドヘルド手術装置(104)を備えた手術室(OR)における先行技術の手術システム(100)の特定の実施形態が示されており、この詳細については、米国特許出願公開公報第2018/344409号に記載されている。手術システム(100)は、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施することが可能である。簡単には、手術システム(100)は、コンピュータシステム(102)、多関節ハンドヘルド手術装置(104)および光学式追跡システム(106)を含む。コンピュータシステム(102)は、装置用コンピュータ(108)、計画用コンピュータ(110)、ならびに、マウス(112)、キーボード(114)、ジョイスティック(116)、ペンダント(118)、フットペタル(120)、および、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するための表示モニタ(122)等の周辺機器を含んでもよい。装置用コンピュータ(108)は、光学式追跡システム(106)のデータを使用してハンドヘルド手術装置(104)の操作を主に目的とし、一方、計画用コンピュータ(110)は、外科的処置の計画を主に目的としている。光学式追跡システム(106)は、2つ以上の光学カメラ/受光器(124)を含み、これらは、無影灯(126)、ブームまたはスタンドに組み立てられてもよい。また、追跡システム(106)は、追跡用コンピュータ(128)を含んでもよい。コンピュータ処理は、コンピュータシステム(102)内で共有されてもよく、例えば、追跡用コンピュータ(128)が、ハンドヘルド手術装置(104)を直接制御してもよく、あるいは、光学カメラ/受光器(124)から直接受信したデータに基づき、装置用コンピュータ(108)が、ORで物体のPOSEを判断してもよく、また、コンピュータ処理は、図1に関して詳述されるように本方法を実施することができることは理解されよう。加えて、コンピュータ間のデータ、および/または、ハンドヘルド手術装置(104)のデータは、有線接続または無線接続を介して転送されてもよい。特定の実施形態では、データは、米国特許公開公報第2017/0245945号に記載されているように、発光したLEDを介してハンドヘルド手術装置(104)との間で転送される。
【0023】
多関節ハンドヘルド手術装置(104)は、図2Bおよび図2Cに最もわかりやすく示されている。ハンドヘルド手術装置(104)は、作業部(130)、ハンドヘルド部(132)、エンドエフェクタ(134)および追跡基準装置(136)を含む。作業部(130)は、ハンドヘルド部(132)の中の2つのリニアアクチュエータによって作動する。したがって、図2Bおよび図2Cの間に示されているように、作業部(130)は、2自由度(並進運動「d」および回転運動「α」)で作動する。したがって、ハンドヘルド手術装置(104)は、作業部(130)の作業限度内であればどこでもエンドエフェクタ(134)を配置することができる。特定の実施形態では、エンドエフェクタ(134)はドリルビットであり、一方、他の実施形態では、エンドエフェクタ(134)は骨ピンである。作業部(130)は、エンドエフェクタ(134)を操作する(例えば、ドリルビットを回転させる、ないしは骨ピンを回転させる)ためのモータ(138)をさらに含む。追跡基準装置(136)は、3つ以上の能動的または受動的な基準マーカを有する追跡アレイである。基準マーカは、作業部に取り付けた剛体に配列されてもよく、あるいは、基準マーカは、ハンドヘルド手術装置(104)の作業部(130)に直接一体化されてもよい。
【0024】
図2Aの手術システム(100)は、大腿骨(F)、脛骨(T)およびデジタイザ(140)をさらに図示する。それぞれ、それぞれの骨に追跡基準装置(136b)、(136c)が固定された大腿骨(F)および脛骨(T)が示されている。また、デジタイザ(140)は、追跡基準装置(136d)を含む。ここで、追跡基準装置(136b)、(136c)、(136d)はすべて、剛体に3つ以上の基準マーカが配列された追跡アレイである。以上、ロボット支援手術中に追跡基準装置の位置精度を照合するための本発明方法の実施形態で記載されているように、追跡基準装置(136b)、(136c)が骨に固定された後に、骨の追跡基準装置(136b)、(136c)の位置精度を照合するのを支援する照合マークが骨に形成/設置される。
【0025】
手術システム(100)のハンドヘルド手術装置(104)を使用して、エンドエフェクタ(134)として機能するドリルビットまたは骨ピンを用いて、照合マークが骨に形成/設置されてもよい。ユーザは、コンピュータシステム(102)によって、骨に照合マークを作成するように促されてもよい。その後、ユーザは、ハンドヘルド手術装置(104)を骨の適切な位置に向け、ドリルビットまたは骨ピンを骨に挿入することによってマークを作成し、それによって、マークを骨に作成/設置する。特定の実施形態では、ユーザは、骨からドリルビットまたは骨ピンを取り除き、それによって、(図3Aおよび図3Bで示されているように)ドリル孔またはピン孔(142)の形態の照合マークを残す。他の実施形態では、図6に示されているように、ユーザは、照合マークとして使用するために、骨ピン(143)または他の装置を骨に残すか、あるいは設置してもよい。また、あるいは代わりに、照合マークは、骨ピン(143)(または他の装置)にある特徴、例えば骨ピン(143)の末端(145)またはディボットであってもよい。特徴(例えば骨ピン(143)の末端)は、好ましくは骨の表面から離れているが、骨ピン(143)または他の装置の全体が照合マークとして使用されてもよいことは理解されよう。いずれの場合も、将来、位置精度を照合するために、骨追跡基準装置(136b)、(136c)の座標に対する骨の照合マークのPOSEが、追跡システム(106)によって記録され、保存される。エンドエフェクタ(134)のPOSEおよび追跡基準装置(136b)、(136c)のPOSEが追跡システムによって追跡されるので、追跡基準装置(136b)、(136c)の座標に対する照合マークのPOSEが記録できる。他の実施形態では、手術装置を用いずに(例えば、手動工具または手術用標準ドリルを使用して)、骨に照合マークが作成/設置されてもよく、照合マークが作成/設置された後に、追跡デジタイザまたは追跡手術装置を用いて照合マークをデジタル化することによって、追跡基準装置に対する照合マークのPOSEが記録される。
【0026】
照合マークの生成後はいずれの時点でも、ユーザは、以下のように骨追跡基準装置の位置精度を照合することができる。図3Aおよび図3Bを参照すると、2つのシナリオが示されており、図3Aは、追跡基準装置(136b)が大腿骨(F)に対して移動していないことを図示し、図3Bは、追跡基準装置(136b)が大腿骨(F)に対して移動していることを図示する。位置精度を照合するために、ユーザは、手術システム(100)にそのように行うように促してもよく、その時点で、手術システム(100)は、エンドエフェクタ(134)に、照合マーク(この場合は骨に作成された孔(142))に位置合わせするように指示する。同様に、手術システム(100)は、ユーザに、処置全体を通して定期的に位置精度を照合するように促してもよい。照合が開始されると、その後、ユーザは、ハンドヘルド手術装置(104)を孔(142)に向け、ここで、作業部(130)が能動的に作動して、エンドエフェクタ(134)を孔(142)に位置合わせする。図3Aに示されているように、エンドエフェクタの軸(144)が孔(142)に位置合わせされることによって見られるように、エンドエフェクタ(134)は、孔(142)に位置合わせされている。ここで、追跡基準装置(136c)の位置精度が照合されると、基準装置(136b)と大腿骨(F)の間で移動は生じていない。逆に、図3Bで示されているように、エンドエフェクタ(134)が孔(142)に位置合わせされていない。追跡基準装置(136b)は、大腿骨(F)に対して推移しており、位置精度が明らかに損なわれている。位置精度が損なわれている場合は、骨が再登録され、その後は確実に精度よく追跡できるようにする。また、追跡基準装置(136b)は、骨に再度固定され、より良い固定が設けられてもよい。
【0027】
図6を参照すると、骨ピン(143)の形態の照合マークを使用して、位置精度が照合されてもよい。位置精度を照合するために、ユーザは、手術システム(100)にそのように行うように促してもよく、その時点で、手術システム(100)は、エンドエフェクタ(134)に、骨ピン(143)に位置合わせするように指示する。同様に、手術システム(100)は、ユーザに、処置全体を通して定期的に位置精度を照合するように促してもよい。照合が開始されると、その後、ユーザは、ハンドヘルド手術装置(104)を骨ピン(143)に向け、ここで、作業部(130)が能動的に作動して、エンドエフェクタ(134)を骨ピン(143)に位置合わせする。図6に示されているように、エンドエフェクタの軸(144)が骨ピン(143)に位置合わせされることによって見られるように、エンドエフェクタ(134)は、骨ピン(143)に位置合わせされている。ここで、追跡基準装置(136c)の位置精度を照合すると、基準装置(136b)と大腿骨(F)の間で移動は生じていない。逆に、エンドエフェクタ(134)が骨ピン(142)と位置合わせされていない場合は、追跡基準装置(136b)は大腿骨(F)に対して推移しており、位置精度が明らかに損なわれている。位置精度が損なわれている場合は、骨が再登録され、その後は確実に精度よく追跡できるようにする。
【0028】
他の実施形態では、位置精度を照合するために、エンドエフェクタ(134)が、骨ピン(143)の側面に位置合わせされるようにプログラムされてもよい。照合が開始されると、ユーザは、ハンドヘルド手術装置(102)を骨ピン(143)の周囲付近または側面に向け、ここで、作業部(130)が能動的に作動して、エンドエフェクタ(134)の軸を位置合わせして、骨ピン(143)の軸に合わせる。骨ピン(143)の側面にあるエンドエフェクタ(134)の軸が骨ピン(143)の軸に位置合わせされている場合は、追跡基準装置(136b)の位置精度は損なわれていない。反対に、両軸が位置合わせされていない場合は、位置精度は損なわれており、骨が再登録され、精度よく処置を実行するものとする。
【0029】
ハンドヘルド手術装置(104)の使用は、位置精度を照合するのに特に有利であるが、これは、ユーザが手で装置(104)を向け、エンドエフェクタ(134)が照合マークの領域に素早く配置できるからである。これは、患者の安全のためにゆっくり移動させる必要がある場合もある完全自律型ロボットアームとは対照的である。加えて、エンドエフェクタを照合マークに位置合わせするのは、任意の1~6自由度で行えることは理解されよう。エンドエフェクタを線状の照合マーク(例えば骨ピン(142))の側面に位置合わせすることによって、2自由度で位置合わせすることになる。同様に、点状の照合マーク(例えば孔(143)またはノッチ)の上を行き来させるが、実際に点状の照合マークに接触させることはないということも、2自由度で位置合わせすることになり、一方で、実際に点状の照合マークに接触させるということは、3自由度で位置合わせすることになる。特定の実施形態では、位置精度の照合は、実際に照合マークに接触させることなく実施する。
【0030】
直列連鎖のロボット手術システム
図4を参照すると、以上に記載した、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を遂行することが可能なロボット手術システム(200)の実施形態が示されている。
【0031】
手術システム(200)は、概して、手術ロボット(202)、コンピュータシステム(204)、ならびに、追跡システム(106)および/または機械式デジタイザアーム(208)を含む。
【0032】
手術ロボット(202)は、移動可能な台(210)、台(210)に接続されたマニピュレータアーム(212)、マニピュレータアーム(212)の遠位端部に位置したエンドエフェクタ(134)、および、エンドエフェクタ(134)で受けた力を感知するためにエンドエフェクタ(134)の近位に配置された力センサ(213)を含んでもよい。台(210)は、台(210)を上手く動かすために車輪一式(214)を含み、車輪一式(214)は、油圧ブレーキ等のブレーキ機構を使用して定位置に固定されてもよい。台(210)は、マニピュレータアーム(212)の高さを調節するためにアクチュエータをさらに含んでもよい。マニピュレータアーム(212)は、様々な自由度でエンドエフェクタ(134)を操作するために様々なジョイントやリンクを含む。例示的には、ジョイントは、直動ジョイント、回転ジョイント、球ジョイント、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、手術システム(200)は、追跡デジタイザ(140)、または台(210)に取り付けられた機械式追跡デジタイザ(208)のうちの少なくとも1つを含む。追跡デジタイザ(140)は、追跡システム(106)によって追跡される対象の追跡アレイ(136d)を含んでもよく、一方、デジタイザアーム(208)は、それ自体の追跡用コンピュータを有していても、装置用コンピュータ(218)に直接接続されてもよい。
【0033】
コンピュータシステム(204)は、概して、計画用コンピュータ(110)、装置用コンピュータ(108)、追跡用コンピュータ(128)および周辺機器を含む。計画用コンピュータ(110)、装置用コンピュータ(108)および追跡用コンピュータ(128)は、手術システムに応じて、別々の物であっても、同一物中で1つであっても、あるいはそれらの組み合わせであってもよく、また、図1に関して詳述された本方法を実施することが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、計画用コンピュータ(110)、装置用コンピュータ(108)および/または追跡用コンピュータ(128)の組み合わせは、有線通信または無線通信を介して接続される。周辺機器は、ユーザに、手術システムの構成部品と相互作用させるものであって、周辺機器は、マウス(112)、キーボード(114)、ジョイスティック(116)、ペンダント(118)、フットペタル(120)、および、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)を表示するための表示モニタ(122)を含んでもよい。
【0034】
計画用コンピュータ(110)は、いくつかの発明実施形態では、手術前または手術中のいずれかにおいて外科的処置の計画を主に目的としているハードウェア(例えばプロセッサ、コントローラおよび/またはメモリ)、ソフトウェア、データおよびユーティリティを含有する。これは、医用画像データの読み取り、画像データの切り出し、3次元(3D)仮想モデルの構築、コンピュータ支援設計(CAD)ファイルの保存、ユーザが外科的処置を計画するのを支援するための様々な機能またはウィジェットの提供、および、手術計画データの生成を含んでもよい。最終的な手術計画は、手術前の骨データ、患者データ、手術前の骨データに対して定められた点(P)のPOSEを含む登録データ、インプラントの位置データ、軌跡パラメータ、および/または操作データを含んでもよい。操作データは、骨の容積を自律的に修正するための切断ファイルの切断パラメータ一式(例えば切断経路、回転軸速度、送り速度)等、人体に対して定められた組織の容積を自律的に修正するための指示一式、骨を修正するために定められた境界内でツールを感覚的に抑制するように定められた仮想境界一式、または、骨の平面一式、もしくはドリル孔一式からドリルピン一式までを含んでもよい。特定の発明実施形態では、操作データは、骨の容積を自律的に修正するために、手術ロボットによって実行される切断ファイルを特に含んでもよく、これは、精度および使い勝手の観点から有利である。計画用コンピュータ(110)から生成された手術計画データは、手術室(OR)で、有線接続または無線接続を通して装置用コンピュータ(108)および/または追跡用コンピュータ(128)に転送されてもよく、あるいは、計画用コンピュータ(110)がORの外に位置する場合は、非一時的な記憶媒体(例えばコンパクトディスク(CD)、携帯型ユニバーサルシリアルバス(USB)ドライブ)を介して転送されてもよい。
【0035】
いくつかの発明実施形態では、装置用コンピュータ(108)は、移動可能な台(210)に内蔵され、好ましくはロボット手術装置(202)の操作を主に目的としたハードウェア、ソフトウェア、データおよびユーティリティを含有する。これは、手術装置の制御、ロボットマニピュレータの制御、運動学データおよび逆運動学データの処理、校正ルーチンの実行、操作データ(例えば切断ファイル、軌跡パラメータ)の実行、座標変換の処理、ユーザへのワークフロー指示の提供、および、追跡システム(106)からの位置と方向(POSE)データの利用を含んでもよい。装置用コンピュータ(108)は、本明細書に記載されているように、位置精度の照合ルーチンをさらに実行することができる。
【0036】
追跡システム(106)は、剛体に一意に配列された基準マーカ(例えば再帰反射球、能動的な発光ダイオード(LED))の位置を検知するために2つ以上の受光器(124)を含む光学式追跡システムであってもよい。剛体に配列された基準マーカは、総称して追跡アレイ(136b)、(136c)、(136d)、(136e)と呼ばれ、各追跡アレイ(136)は、固有の配列の基準マーカを有し、あるいは、マーカが能動的なLEDである場合は固有の転送波長/周波数を有する。同様に、基準マーカは、その装置の追跡アレイとして機能するように、装置と一体化されるか、直接取り付けられてもよい。光学式追跡システムの一例は、米国特許第6,061,644号に記載されている。追跡システム(106)は、ブーム、スタンド(220)に位置した無影灯に組み込まれるか、あるいは、ORの壁または天井に組み込まれてもよい。追跡システム用コンピュータ(128)は、局所座標系または全体座標系の物体(例えば骨(B)、手術装置(202))のPOSEを判断するために追跡ハードウェア、ソフトウェア、データおよびユーティリティを含んでもよい。物体のPOSEは、本明細書では総称してPOSEデータと呼ばれ、このPOSEデータは、有線接続または無線接続を通して装置用コンピュータ(108)に通信されてもよい。代わりに、装置用コンピュータ(108)は、受光器(124)から直接検知された標準マーカの位置を使用して、POSEデータを判断してもよい。加えて、追跡用コンピュータ(128)または装置用コンピュータ(108)は、骨追跡基準装置に対する骨の照合マークのPOSEを記録することや、保存することができる。
【0037】
手術ロボット(202)が精度よく手術計画を実行することできるように、マニピュレータアーム(212)および/または骨(B)が処置中に移動すると、骨(B)、手術計画および手術ロボット(202)のPOSEおよび/または座標変換を更新するために、POSEデータが、処置中にコンピュータシステム(204)によって使用される。また、追跡システム(106’)からのデータは、本明細書に記載のように位置精度照合方法を実行するために使用され、追跡された骨のPOSEおよび手術装置(202)のPOSEは、エンドエフェクタ(134)を照合マークに位置合わせして、追跡基準装置の位置精度を照合するために使用される。
【0038】
図4は、機械式追跡システム(222)をさらに図示する。機械式追跡システム(222)は、2つ以上の多関節連結装置を有し、ここで、機械式追跡システム(222)の遠位端部が骨に固定される。ここで、骨(B)を機械的に追跡すべき場合は、光学式追跡システム(106)に対向して、またはこれに加えて、機械式追跡システム(222)の遠位端部が骨の追跡基準装置として機能してもよい。
【0039】
図5Aおよび図5Bを参照すると、ロボット支援整形外科手術中に追跡アレイの位置精度を照合するための本発明方法の実施形態を実施するために、エンドエフェクタ(134)を制御するための図4のロボット手術システム(200)のロボットアーム(202)の使用を例示する。エンドエフェクタ(134)は、ドリルビット、骨ピン、あるいは、エンドミルまたはカッタ等の他の装置であってもよい。位置精度の照合が開始されると、ロボットアーム(202)は、エンドエフェクタ(134)を、事前に形成/設置された照合マーク(この場合は、骨に作成された孔(142))に位置合わせするように指示を受ける。図5Aは、エンドエフェクタの軸(144)が孔(142)に位置合わせされ、それによって、位置精度が照合されるシナリオを図示する。逆に、図5Bは、エンドエフェクタの軸(144)が孔(142)に位置合わせされず、それによって、基準追跡装置(136b)の位置精度が損なわれているシナリオを図示する。図5Bのシナリオでは、骨が再登録され、その後は確実に精度よく追跡できるようにする。また、追跡基準装置(136b)は、骨に再度固定され、より良い固着が設けられてもよい。
【0040】
また、あるいは代わりに、ロボットアーム(202)を使用した追跡基準装置(136b)の位置精度は、ハンドヘルド手術装置(104)に関して記載されているように、骨ピン(143)の形態の照合マークを使用して照合されてもよい。すなわち、エンドエフェクタ(134)は指示を受けて、骨ピン(143)の上を行き来させるか、骨ピン(143)の側面に合わせるかのいずれかによって、骨ピン(143)の軸に合わせる。同様に、両軸が位置合わせされる場合は、追跡基準装置(136b)の位置精度は照合され、両軸が位置合わせされない場合は、位置精度軸が損なわれている。
【0041】
他の実施形態
前述の詳細な説明には、少なくとも1つの例示的な実施形態が提示されているが、極めて多数の変形が存在することは理解されよう。また、1つまたは複数の例示的な実施形態は単なる例であり、記載されている実施形態の範囲、適用または構成をいかようにも限定するようには意図していないことも理解されよう。むしろ、前述の詳細な説明は、当業者に対し、1つまたは複数の例示的な実施形態を実施するための都合のよいロードマップを提供することになる。添付の特許請求の範囲およびその法的な均等物で定義される範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置において様々な変更を行い得ることを理解されたい。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】