(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】ポリマーラテックスから作られた自己回復特性を有する自立型エラストマーフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 299/00 20060101AFI20220419BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C08F299/00
C08F265/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543353
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020051330
(87)【国際公開番号】W WO2020156869
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516286350
【氏名又は名称】シントマー(ユーケー)リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOMER (UK) LIMITED
【住所又は居所原語表記】Central Road,Temple fields,Harlow Essex CM20 2BH (GB)
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ショウ ピーター
【テーマコード(参考)】
4J026
4J127
【Fターム(参考)】
4J026AA45
4J026BA25
4J026BA27
4J026BA28
4J026BA30
4J026BA31
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4J127BG17X
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4J127BG26X
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4J127FA46
(57)【要約】
本発明は、ラテックス粒子のポリマー骨格から保留されたエチレン性不飽和基を有するポリマーラテックス粒子を含む組成物から作製された自立型エラストマーフィルムであって、エチレン性不飽和が少なくとも3つの化学結合によってポリマー骨格から分離されているフィルム、自立型エラストマーフィルムを含む物品、および、ポリマーラテックス粒子を含む組成物から自立型エラストマーフィルムを作製するための方法に関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス粒子のポリマー骨格から保留されたエチレン性不飽和基を有するポリマーラテックス粒子を含む組成物から作製された自立型エラストマーフィルムであって、
エチレン性不飽和が、少なくとも3つの化学結合によってポリマー骨格から分離されている、自立型エラストマーフィルム。
【請求項2】
ポリマーラテックス粒子が、式(1)で表される構造単位を含む、
請求項1に記載の自立型エラストマーフィルム:
-L-CR
1=CR
2R
3 (1)
式中、Lは、-CR
1=CR
2R
3とラテックス粒子のポリマー骨格との間の鎖中に少なくとも2個の原子を提供する直鎖もしくは分岐の二価基、または環状基を含む二価基であり、R
1、R
2およびR
3は、独立して水素および一価の有機基であり、好ましくはC
1-C
4-アルキル基から選択される。
【請求項3】
-L-が、二価の炭化水素基、および、前記ポリマー骨格に-CR
1=CR
2R
3を連結する鎖中に少なくとも1個のヘテロ原子を含む基から選択される、
請求項1または2に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項4】
-L-が、前記ポリマー骨格に-CR
1=CR
2R
3を連結する鎖中にある基であって、エステル、エーテル、ウレタン、チオウレタン、ウレア、アミドの基およびそれらの組み合わせから選択される基を含む、請求項3に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項5】
ポリマーラテックス粒子が、エチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって作製される、請求項1~4のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルムであって、エチレン性不飽和モノマーが以下を含む、自立型エラストマーフィルム:
(a) 共役ジエン、ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および、それらの組み合わせから選択されるモノマー;および
(b)(i) 水性乳化重合において異なる反応性を示す少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーであって、より低い反応性を有するエチレン性不飽和基の少なくとも一部が、水性乳化重合の終了後に未反応のまま残るモノマー;および/または
(b)(ii) ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有するモノエチレン性不飽和モノマー;および
(c) 任意で、(bi)とは異なる少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマー;
ここで、モノマー(bi)が存在しない場合、モノマー(bii)の前記官能基の少なくとも一部が水性乳化重合の終了後に反応して、エチレン性不飽和基を導入し、
重合は、任意に連鎖移動剤の存在下で行われる。
【請求項6】
- モノマー(a)は、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和酸の直鎖アルキルエステル、エチレン性不飽和酸の分岐アルキルエステル、エチレン性不飽和酸の直鎖アルキルアミド、エチレン性不飽和酸の分岐アルキルアミド、エチレン性不飽和ニトリル、エチレン性不飽和酸のビニルエステル、ビニルエーテル、エチレン性不飽和シラン、アルケンおよびそれらの任意の組み合わせから選択される;および/または
- モノマー(bi)は、アリル(メタ)アクリレートおよびアリルクロトネートから選択される;および/または
- モノマー(bii)は、エチレン性不飽和カルボン酸、エポキシ官能性エチレン性不飽和化合物、ヒドロキシル官能性エチレン性不飽和化合物、アミン官能性エチレン性不飽和化合物およびそれらの任意の組み合わせから選択される;および/または
- モノマー(c)は、2つのエチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはジビニルベンゼンから選択される)、ポリオールの(メタ)アクリレート、ポリカルボン酸のアリルエーテル、3つのエチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはジアリルマレエートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから選択される)、4つのエチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートから選択される)、およびそれらの任意の組み合わせから選択される、
請求項5に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項7】
- 共役ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレンおよび2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンから選択され、好ましくは1,3-ブタジエンである;および/または
- 芳香族ビニル化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレンおよびビニルトルエンから選択され、好ましくはスチレンである;および/または
- エチレン性不飽和酸のアルキルエステルは、アルキル基が1~20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のn-アルキルエステル、イソアルキルエステルまたはtert-アルキルエステル、メタクリル酸とネオ酸(好ましくはバーサチック酸、ネオデカン酸またはピバル酸)のグリシジルエステルとの反応生成物、およびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択され;および/または
- エチレン性不飽和酸のアミドは、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミドから選択され;および/または
- エチレン性不飽和ニトリルは、(メタ)アクリロニトリルおよびフマロニトリルから選択され;および/または
- エチレン性不飽和酸のビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルから選択され;および/または
- エチレン性不飽和シランは、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリメチルシリル(メタ)アクリレートおよびトリエチルシリル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートおよび3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートから選択され、および/またはビニルエーテルはアルキルビニルエーテルから選択され;および/または
- アルケンは、エテン、プロペン、ブテン、ヘキセンおよびシクロヘキセンから選択され;および/または
- エチレン性不飽和カルボン酸は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、ビニル酢酸およびビニル乳酸、ビニルスルホン酸、アミノプロピルスルホン酸から選択され;および/または
- ヒドロキシル官能性エチレン性不飽和化合物は、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートから選択され;および/または
- アミノ官能性エチレン性不飽和化合物は、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレートおよびアミノブチル(メタ)アクリレートから選択され;および/または
- エポキシ官能性エチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルアクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルメタクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルアクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルメタクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせから選択される、
請求項6に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項8】
- モノマー(a)、モノマー(bii)および任意にモノマー(bi)および任意にモノマー(c)を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって、モノマー(bii)の官能基に由来する第1の官能基を有するポリマーラテックス粒子を形成すること;および
- 続いて、第1の官能基を有する前記ポリマーラテックス粒子を、エチレン性不飽和に加えて、第1の官能基と反応性である第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応させることによって、
前記ポリマーラテックス粒子が調製されたものである、
請求項5~7のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項9】
(A) モノマー(bii)がエチレン性不飽和カルボン酸を含み、第1の官能基がカルボキシル基であり、第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物がエポキシ官能性エチレン性不飽和化合物から選択される;または
(B) モノマー(bii)がエポキシ官能性エチレン性不飽和化合物を含み、第1の官能基がエポキシ基であり、第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物がエチレン性不飽和カルボン酸から選択される;または
(C) モノマー(bii)は、ヒドロキシおよび/またはアミノ官能性エチレン性不飽和化合物を含み、その結果、ヒドロキシ基およびアミノ基から選択される第1の官能基が得られ、第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物が、イソシアネート-またはチオイソシアネート-官能性エチレン性不飽和化合物から選択される、
請求項8に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項10】
(a) 第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物が、請求項7に記載のエポキシ官能性エチレン性不飽和化合物から選択される;または
(b) 第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物が、請求項7に記載のエチレン性不飽和カルボン酸から選択される、
請求項9に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項11】
前記ポリマーラテックス粒子がコア-シェル粒子であり、
シェルを重合するための前記モノマー混合物が、モノマー(bi)および/または(bii)ならびにモノマー(a)および任意でモノマー(c)を含み、
コアを重合するための前記モノマー混合物が、モノマー(a)および任意でモノマー(bii)を含む、
請求項5~10のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項12】
シェルが架橋され、シェルを重合するためのモノマー混合物がモノマー(bi)および/または(c)および任意でモノマー(bii)を含む、
請求項11に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項13】
コアが架橋されておらず、コアを重合するためのモノマー混合物が2つ以上の非共役エチレン性不飽和基を含むモノマーを含まない、
請求項11または12に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項14】
1Hzの固定周波数かつ3℃/分の加熱速度での動的機械熱分析によって測定したときに、コアがシェルよりも低いガラス転移温度T
gを有し、好ましくは、1Hzの固定周波数かつ1分当たり3℃の加熱速度での動的機械熱分析によって測定したときに、コアのT
gが0℃未満、好ましくは-20℃未満であり、シェルのT
gが0℃超、好ましくは20℃超である、
請求項10~13のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項15】
コアを重合するためのモノマー混合物が、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、好ましくはn-ブチルアクリレートを含み、
シェルを重合するためのモノマー混合物が、
- (メタ)アクリル酸、好ましくはn-ブチルアクリレートのアルキルエステル、
- エチレン性不飽和ニトリル化合物、好ましくはアクリロニトリル、
- エチレン性不飽和酸、好ましくはメタクリル酸、および
- 非共役ジエン、好ましくは1,4-ブタンジオールジアクリレート、を含む、
請求項10~14のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項16】
前記フィルムが、硫黄架橋を実質的に含まず、かつイオノマー架橋を実質的に含まない、
請求項1~15のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルム。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の自立型エラストマーフィルムを含む物品。
【請求項18】
自立型エラストマーフィルムが、第1および第2の外側面と内側コアとを有し、
第1および第2の外側面におけるポリマー粒子間の架橋度が、物品の内側コアにおけるものよりも高い、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
手術用手袋、検査用手袋、工業用手袋、家庭用手袋、布地支持手袋を含む使い捨て手袋、医療機器、好ましくはカテーテル、コンドームおよびフェミドームから選択されるか、または、エネルギーセル(好ましくはリチウムイオン電池)用の活性成分用のバインダーを含む、請求項17または18に記載の物品。
【請求項20】
自立型エラストマーフィルムを作製するための方法であって、以下を含む方法:
(a) 請求項1~15のいずれか1項に記載のポリマーラテックス粒子を含む組成物を提供すること、
(b) 前記組成物を基材に適用してウェットフィルムを形成すること、
(c) 前記ウェットフィルムを乾燥および/または硬化させてエラストマーフィルムを形成すること、および
(d) エラストマーフィルムを基材から分離すること。
【請求項21】
前記提供するステップ(a)が、硫黄加硫のための硫黄および促進剤の添加も、前記組成物への亜鉛化合物の添加も含まない、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ステップ(a)における組成物が、多くとも8、好ましくは多くとも7のpHを有する、請求項20または21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記適用するステップ(b)が、キャスティング、ディップ成形、スプレーまたはナイフ塗布を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ステップ(d)の前または後にエラストマーフィルムを40℃~160℃、好ましくは60℃~100℃、より好ましくは75℃~100℃の温度で熱処理する、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、ポリマーラテックス粒子を含む水性分散液から製造された自立型エラストマーフィルム、および、上記水性分散液を使用する自立型エラストマーフィルムの製造方法に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
現在の産業標準によれば、エラストマーフィルム、特にディップ成形用途、例えば手術用手袋は、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックス(XNBR)を含有する化合物から製造される。これらのエラストマーフィルムの使用目的のために必要な機械的強度を得るために、エラストマーフィルムの製造中にフィルムのいくらかの架橋が達成される必要がある。
【0003】
このような架橋エラストマーフィルムを得るために、いくつかの異なる概念が先行技術において利用可能である。1つの可能性は、エラストマーフィルムを製造するための化合物が、チウラムおよびカルバメートおよび酸化亜鉛などの促進剤と組み合わせて、硫黄などの従来の硫黄加硫システムを含有することである。
【0004】
硫黄加硫システムはアレルギー反応を引き起こす可能性があるので、ラテックスフィルムを硬化性可能にするための代替概念が開発されている。別の可能性は、化学的架橋を達成するために、化合物中に、例えば、多価カチオン(例えば、酸化亜鉛)またはラテックス粒子上の官能基と反応するのに適した他の多官能性有機化合物などの架橋剤成分を含むことである。さらに、ポリマーラテックスが十分な量の自己架橋基、例えば、N-メチロールアミド基を有する場合、硫黄加硫システムおよび/または架橋剤は、完全に回避され得る。
【0005】
硫黄または架橋剤などの特定の添加剤を使用するシステムは、国際公開第2018/111087号および国際公開第2017/164726号に要約されている。
【0006】
国際公開第2017/209596号は、2つの異なる種類のラテックス粒子を含むディップ成形用途のためのポリマーラテックスを開示している。1つの種類のラテックス粒子はカルボキシル化されているが、第2の種類のラテックス粒子はオキシラン官能基を含有する。
【0007】
これら全ての異なる概念は、架橋されたエラストマーフィルムをもたらし、ここで、架橋は本質的に不可逆的であり、その結果、これらのエラストマーフィルムは、容易にリサイクルされ得ず、また、自己回復特性を示さない。例えば、フィルムの自己回復特性の欠如のために、エラストマーフィルムの製造中にピンホールのような何らかの種類の欠陥が生じた場合、これらの製品を廃棄する必要があり、その結果、再使用できない廃棄物が生じる。さらに、そのようなエラストマーフィルムがその使用中に開裂した場合、これは修理できず、その結果、エラストマーフィルムの不可逆的な廃棄を引き起こし、ひいては、このようなエラストマーフィルムを含む物品の故障が生じる。
【0008】
したがって、固有の自己回復特性を有し、そのようなエラストマーフィルムの使用不可能な廃棄物を減らし、そのようなエラストマーフィルムを含む物品の最終的な故障を回避するために、潜在的にリサイクルされ得るエラストマーフィルムに対する要望が産業界に存在する。これはまた、エラストマーフィルムを製造するための、より環境にやさしい技術につながるであろう。さらに、このようなシステムは、いわゆるIV型アレルギー反応を引き起こし得る材料を使用する必要性を回避する。
【0009】
US4,244,850、JPS6069178およびUS5,306,744は、ラテックス粒子上に存在する官能基と、ラテックス粒子上の官能基と反応性である官能基を有するエチレン性不飽和化合物とを反応させることによって導入され得るエチレン性不飽和基を有するポリマーラテックス粒子を含む、コーティング組成物または接着剤において使用されるポリマーラテックス組成物を開示している。US5,306,744およびJPS6069178は、2段階乳化重合によって得られるコア-シェル粒子を開示しているが、これらの粒子中のコアは架橋されており、外側シェルは架橋されていない。これらの文献はいずれも、エラストマーフィルムに関するものでも、エラストマーフィルムの自己回復性に関するものでもない。
【0010】
したがって、本発明は、自己回復特性を有する自立型エラストマーフィルムを提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、ラテックス粒子のポリマー骨格から保留されたエチレン性不飽和基を有するポリマーラテックス粒子を含む組成物から作製された自立型エラストマーフィルムであって、エチレン性不飽和が少なくとも3つの化学結合によってポリマー骨格から分離されているフィルムが提供される。
【0012】
ポリマーラテックス粒子を含む組成物は、エチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって作製することができ、エチレン性不飽和モノマーは以下を含む:
(a) 共役ジエン、ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および、それらの組み合わせから選択されるモノマー;および
(b)(i) 水性乳化重合において異なる反応性を示す少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーであって、より低い反応性を有するエチレン性不飽和基の少なくとも一部が、水性乳化重合の終了後に未反応のまま残るモノマー;および/または
(b)(ii) ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有するモノエチレン性不飽和モノマー;および
(c) 任意で、(bi)とは異なる少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマー、
ここで、モノマー(bi)が存在しない場合、モノマー(bii)の上記官能基の少なくとも一部が水性乳化重合の終了後に反応して、エチレン性不飽和基を導入し、重合は、任意に連鎖移動剤の存在下で行われる。
【0013】
さらに、第2の態様によれば、本発明は、以下を含む自立型エラストマーフィルムを製造する方法にも関する:
(a) 上記規定のポリマーラテックス粒子を含む組成物を提供すること、
(b) 上記組成物を基材に適用してウェットフィルムを形成すること、
(c) 上記ウェットフィルムを乾燥および/または硬化させてエラストマーフィルムを形成すること、および
(d) エラストマーフィルムを基材から分離すること、
(e) ステップ(d)の前または後に、20℃~160℃、好ましくは250℃~100℃、より好ましくは75℃~100℃の温度でエラストマーフィルムを任意に熱処理すること。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明による自立型エラストマーフィルムを含む物品に関する。
【0015】
さらに、本発明者らは驚くべきことに、自己回復特性に加えて、本発明の水性分散体から得られたエラストマーフィルムが、実施例においてより詳細に示されるように、エラストマーフィルムを適度な温度に付すと、形状保持特性を示すことを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、(a)切断前、(b)ダンベルを2個に切断し、ダンベルの上面に印をつける、(c)60秒間押して再接続する、(d)40℃で24時間焼鈍した後、を示す。
【
図2】
図2は、本発明のラテックスから製造されたキャストフィルムの形状記憶挙動を示す。
【
図3】
図3は、折り畳まれた試料およびばね状試料の両方の緩和を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
ポリマーラテックス粒子のポリマー骨格から保留されたエチレン性不飽和基を有するラテックス粒子を含む組成物から作製された自立型エラストマーフィルムであって、エチレン性不飽和が少なくとも3つの化学結合によってポリマー骨格から分離されているフィルムが示されている。
【0019】
それによって、ポリマーラテックス粒子は、ブタジエンのような共役ジエンを含有するモノマー混合物の重合によって形成されたラテックス粒子とは明確に区別される。その理由は、フリーラジカル乳化重合プロセスにおける共役ジエンの1つの二重結合の重合の結果から生じる残りの二重結合が、3つ未満の化学結合によってポリマーラテックス粒子のポリマー骨格から分離されるからである。
【0020】
特に、ポリマーラテックス粒子は、式(1)で表される構造単位を含んでもよい。
-L-CR1=CR2R3 (1)
式中、Lは、-CR1=CR2R3とラテックス粒子のポリマー骨格との間の鎖中に少なくとも2個の原子を提供する直鎖もしくは分岐の二価基、または環状基を含む二価基、ならびにR1、R2およびR3は、独立して、水素および一価の有機基、好ましくはC1~C4-アルキル基から選択される。
【0021】
式(1)において、-L-は、二価の炭化水素基、および、ポリマー骨格に-CR1=CR2R3を連結する鎖中に少なくとも1個のヘテロ原子を含む基から選択されてもよく、好ましくは、-L-は、ポリマー骨格に-CR1=CR2R3を連結する鎖中に、エステル、エーテル、ウレタン、チオウレタン、ウレア、アミドの基およびそれらの組み合わせから選択される基を含む。
【0022】
したがって、ポリマーラテックス粒子を作製することができる2つの異なる合成経路が原理的に存在する。1つの経路によれば、粒子を重合するためのモノマー混合物は、水性乳化重合において異なる反応性を示す少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーを含有してもよく、それによって、より低い活性を有するこれらのエチレン性不飽和基の少なくとも一部は、水性乳化重合の終了後も未反応のままである。それによって、ポリマーラテックス粒子のポリマー骨格からの必要な分離を有するエチレン性不飽和基が、本発明によるポリマーラテックス粒子の表面上に存在したままである。
【0023】
あるいは、ポリマーラテックス粒子は、モノエチレン性不飽和モノマーを含むモノマー混合物を重合することによって調製することができ、モノエチレン性不飽和モノマーは、ラテックス粒子の形成後に続いて反応してエチレン性不飽和基を導入し、次いで水性乳化重合の終了後に反応してエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有する。
【0024】
したがって、ラテックス粒子は、水性乳化重合によって作製することができる。ここで、
以下を含むモノマー混合物が重合される:
(a) 共役ジエン、ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有さないモノエチレン性不飽和モノマー、および、それらの組み合わせから選択されるモノマー;および
(b)(i) 水性乳化重合において異なる反応性を示す少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーであって、より低い反応性を有するエチレン性不飽和基の少なくとも一部が、水性乳化重合の終了後に未反応のままであるモノマー;および/または
(b)(ii) ラテックス粒子の形成後に続いて反応させてエチレン性不飽和基を導入することができる官能基を有するモノエチレン性不飽和モノマー;および
(c) 任意で、(bi)とは異なる少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマー、
ここで、モノマー(bi)が存在しない場合、モノマー(bii)の上記官能基の少なくとも一部が、水性乳化重合の終了後に反応してエチレン性不飽和基を導入する。
【0025】
モノマー(a)
本発明のラテックス粒子の重合のためのモノマー(a)は、共役ジエン、芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和酸の直鎖アルキルエステル、エチレン性不飽和酸の分岐アルキルエステル、エチレン性不飽和酸の直鎖アルキルアミド、エチレン性不飽和酸の分岐アルキルアミド、エチレン性不飽和ニトリル、カルボン酸のビニルエステル、エチレン性不飽和酸のジエステル、ビニルエーテル、エチレン性不飽和シラン、アルケンおよびそれらの任意の組み合わせから適切に選択され得る。
【0026】
適切な共役ジエンは、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、2-メチル-6-メチレン-1,7-オクタジエン、7-メチル-3-メチレン-1,6-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-アミル-1,3-ブタジエン、3,7-ジメチル-1,3,7-オクタトリエン、3,7-ジメチル-1,3,6-オクタトリエン、3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン、7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン、および1,3-シクロヘキサジエンから選択され得る。1,3-ブタジエン、イソプレンおよびそれらの組み合わせが好ましい共役ジエンである。1,3-ブタジエンが特に好ましい。
【0027】
ビニル芳香族モノマーの代表例としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、1,1-ジフェニルエチレンおよび置換の1,1-ジフェニルエチレン、1,2-ジフェニルエテンおよび置換の1,2-ジフェニルエチレンが挙げられる。1種以上のビニル芳香族化合物の混合物も使用することができる。好ましいモノマーは、スチレンおよびα-メチルスチレンである。
【0028】
エチレン性不飽和酸のアルキルエステルは、アルキル基が1~20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸のn-アルキルエステル、イソ-アルキルエステルまたは三級アルキルエステル、(メタ)アクリル酸とネオ酸(好ましくはバーサチック酸、ネオデカン酸またはピバル酸)のグリシジルエステルとの反応生成物、およびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択され得る。
【0029】
一般に、(メタ)アクリル酸の好ましいアルキルエステルは、C1~C20アルキル(メタ)アクリレート、好ましくはC1~C10アルキル(メタ)アクリレートから選択することができる。このようなアクリレートモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、secーブチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチル-ヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびセチルメタクリレートが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせからの(メタ)アクリル酸のエステルを選択することが特に好ましい。
【0030】
モノマー(a)として使用することができるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシブチルアクリレート、およびメトキシエトキシエチルアクリレートが挙げられる。好ましいアルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、エトキシエチルアクリレートおよびメトキシエチルアクリレートである。
【0031】
エチレン性不飽和酸のアミドは、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびジアセトンアクリルアミドから選択することができる。好ましいアミドモノマーは(メタ)アクリルアミドである。
【0032】
本発明によるポリマーラテックス粒子の作製のためのモノマー(a)のために使用することができるエチレン性不飽和ニトリルモノマーの例としては、アセチルまたは追加のニトリル基のいずれかによって置換されていてもよい、直鎖または分岐配列に2~4個の炭素原子を含有する重合性不飽和脂肪族ニトリルモノマーが挙げられる。このようなニトリルモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル、フマロニトリルおよびそれらの組み合わせが挙げられ、アクリロニトリルが最も好ましい。
【0033】
エチレン性不飽和酸の適切なビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、およびバーサチック酸のビニルエステルから選択され得る。最も好ましいビニルエステルは酢酸ビニルである。
【0034】
エチレン性不飽和酸の適切なジエステルは、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジ(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジ-n-オクチル、マレイン酸ジ(6-メチルヘプチル)、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジヘキシル、フマル酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-オクチル、フマル酸ジ(6-メチルヘプチル)から選択することができる。最も好ましいジエステルはマレイン酸ジブチルである。
【0035】
エチレン性不飽和シランは、トリアルコキシビニルエステル(例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン)、トリアルコキシ(メタ)アクリレート(例えば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートおよび3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート)、3-メタクリルアミドプロピルトリエトキシシラン、およびそれらの組み合わせから選択することができる;および/または、ビニルエーテルは、アルキルビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、およびシクロヘキシルビニルエーテルから選択される。
【0036】
モノマー(bi)
適切なモノマー(bi)は、アリル(メタ)アクリレート、アリルクロトネート、N,Nジアリル(メタ)アクリルアミド、2-アリルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-アリルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルオキシブチル(メタ)アクリレート、およびブテニル(メタ)アクリレートから選択される。
【0037】
モノマー(bii)
本発明によるラテックス粒子の調製のための適切なモノマー(bii)は、カルボン酸官能性エチレン性不飽和モノマー、オキシラン官能性エチレン性不飽和モノマー、ヒドロキシル官能性エチレン性不飽和モノマー、イソシアネート官能性モノマーおよびアミノ官能性エチレン性不飽和モノマーから選択され得る。
【0038】
本発明に係るモノマー(bii)として好適なエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとしては、モノカルボン酸およびジカルボン酸モノマー、ならびにジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。本発明を実施するには、3~5個の炭素原子を含有する、エチレン性不飽和脂肪族モノ-もしくはジカルボン酸または無水物を使用することが好ましい。モノカルボン酸モノマーの例としては、アクリル酸、アクリル酸無水物、メタクリル酸、4-ビニル安息香酸、トリクロロアクリル酸、クロトン酸、2-カルボキシエチルアクリレート、マレイン酸またはフマル酸のモノエステル(例えば、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノヘキシルエステル、マレイン酸モノ(2-エチルヘキシル)エステル、マレイン酸モノラウリルエステル、フマル酸モノメチルエステル、フマル酸モノエチルエステル、フマル酸モノブチルエステル、フマル酸モノヘキシルエステル、フマル酸モノ(2-エチルヘキシル)エステル、フマル酸モノラウリルエステル)が挙げられる;および、ジカルボン酸モノマーの例としては、フマル酸、イタコン酸、4-メタクリロキシエチルトリメリット酸無水物、マレイン酸および無水マレイン酸が挙げられる。他の適切なエチレン性不飽和酸の例としては、酢酸ビニル、乳酸ビニル、ビニルスルホン酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸およびそれらの塩が挙げられる。好ましくは、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、2-カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸およびそれらの組み合わせから選択される。
【0039】
適切なオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーは、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、2-エチルグリシジルアクリレート、2-エチルグリシジルメタクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルアクリレート、2-(n-プロピル)グリシジルメタクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルアクリレート、2-(n-ブチル)グリシジルメタクリレート、ジメチルグリシジルメタクリレート、グリシジルメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2,3-エポキシブチルメタクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルアクリレート、(3’,4’-エポキシヘプチル)-2-エチルメタクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)アクリレート、(6’,7’-エポキシヘプチル)メタクリレート、アリル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、6,7-エポキシヘプチルアリルエーテル、ビニル-3,4-エポキシヘプチルエーテル、3,4-エポキシヘプチルビニルエーテル、6,7-エポキシヘプチルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、α-メチルグリシジルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチル-2-メタクリレート、スチレングリシジルエーテル、2,4-ビニルフェニルグリシジルエーテル、およびこれらの組み合わせから選択され得る。グリシジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0040】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルモノマーとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および高アルキレンオキシドまたはこれらの混合物を基とする、ヒドロキシアルキルのアクリレートおよびメタクリレートが挙げられる。例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシポリエトキシ(10)アリルエーテル、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール由来の(メタ)アクリレート(例えば、平均6個のプロピレングリコール単位を含むポリプロピレングリコールモノメタクリレート)が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択する。
【0041】
追加的にまたは代替的に、ヒドロキシモノマーとしては、フェノール(メタ)アクリレート、ドーパミンメタクリルアミドまたは4-ビニルフェノールが挙げられる。
【0042】
イソシアネートモノマーの例としては、2-(アクリロイルオキシ)エチルイソシアネートおよび2-(メタクリロイルオキシ)エチルイソシアネートが挙げられる。
【0043】
アミノ官能性エチレン性不飽和化合物は、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド、およびそれらの塩から選択することができる。
【0044】
モノマー(c)
当業者は、モノマー(c)がフリーラジカル乳化重合中に存在する場合、ポリマーラテックス粒子のいくらかの架橋が生じることを理解するであろう。本発明のラテックス粒子の架橋を達成するために好適なモノマー(c)は、2つの非共役エチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはジビニルベンゼンから選択される)、ポリオールの(メタ)アクリレート、ポリカルボン酸のアリルエーテル、3つのエチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはジアリルマレエートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートから選択される)、4つのエチレン性不飽和基を含むモノマー(好ましくはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートから選択される)、およびそれらの任意の組み合わせから選択することができる。ポリオールの(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。適切なモノマーのさらなる例は、EP3119815に引用されているものである。少なくとも2つのエチレン性不飽和基を有するモノマーは、好ましくはジビニルベンゼン、1,2エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートから選択される。
【0045】
本発明によれば、ポリマーラテックス粒子は、モノマー(a)、モノマー(bii)および任意にモノマー(c)および任意にモノマー(bi)を含むエチレン性不飽和モノマーの混合物の水性乳化重合によって調製され、それによって、モノマー(bii)の官能基に由来する第1の官能基を有するポリマーラテックス粒子が形成され、続いて、上記第1の官能基を有する上記ポリマーラテックス粒子は、エチレン性不飽和に加えて第1の官能基と反応性である第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応することが好ましい。
【0046】
したがって、本発明によれば、モノマー(bii)は、存在してもよく、エチレン性不飽和カルボン酸を含んでもよい。その結果、第1の官能基がカルボキシル基であり、ポリマーラテックス粒子と反応させる第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、エポキシ官能性エチレン性不飽和化合物から選択される。これらのエポキシ官能性エチレン性不飽和化合物は、ポリマーラテックス粒子の調製のためのモノマー(bii)として上記で規定されたエポキシ化合物から選択され得る。
【0047】
あるいはモノマー(bii)は、上記規定のエポキシ官能性エチレン性不飽和化合物を含むことができ、第1の官能基はエポキシ基であり、第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物はエチレン性不飽和カルボン酸から選択される。これらのエチレン性不飽和カルボン酸は、ポリマーラテックス粒子を作製するために使用するために、上記で規定したようなカルボン酸官能性モノマーから選択することができる。
【0048】
あるいはモノマー(bii)は、ヒドロキシおよび/またはアミノ官能性エチレン性不飽和化合物を含んでもよく、その結果、ヒドロキシおよびアミノ基から選択される第1の官能基が得られ、ポリマーラテックス粒子と反応させる第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、カルボン酸、イソシアネート-またはチオイソシアネート-官能性エチレン性不飽和化合物から選択される。
【0049】
好適なカルボン酸は上記に列挙されており、好適なイソシアネート-またはチオイソシアネート-官能性エチレン性不飽和化合物は、アリルイソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレート、3‐イソプロペニル-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレート、アリルイソチオシアネート、4-ビニルベンジルイソチオシアネートから選択することができる。
【0050】
本発明によれば、ポリマーラテックス粒子を作製するために、モノマー(bii)のみを使用し、モノマー(bi)を使用しないことが好ましい。モノマー(bii)はエチレン性不飽和カルボン酸を含み、ポリマーラテックス粒子と反応させる第2の官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、エポキシ官能性エチレン性不飽和化合物、好ましくは上記規定のものから選択されることが特に好ましい。
【0051】
本発明のポリマーラテックス粒子を作製するために使用されるモノマーの相対量は、それらの好ましい実施形態に関しても上記で規定されたモノマー(b)が、モノマー(bi)を使用することによって最初に、またはモノマー(bii)が存在する場合には官能性エチレン性不飽和化合物とのその後の反応のいずれかによって、上記で規定されたような粒子のエチレン性不飽和を提供するのに充分な量で存在する限り、特に重要ではない。したがって、本発明のポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物は78~99.8重量%のモノマー(a)を含むことができ、好ましくはポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー組成物は、78~99重量%のモノマー(a)、0.5~16重量%のモノマー(b)および0~6重量%のモノマー(c)、より好ましくは80~98重量%のモノマー(a)、1~15重量%のモノマー(b)および0.1~6重量%のモノマー(c)、さらにより好ましくは85~98重量%のモノマー(a)、1~10重量%のモノマー(b)および1~5重量%のモノマー(c)、さらにより好ましくは88~96重量%のモノマー(a)、3~8重量%のモノマー(b)および0.1~4重量%のモノマー(c)、最も好ましくは90~97重量%のモノマー(a)、2~7重量%のモノマー(b)および0.5~3重量%のモノマー(c)を含むことができる。
【0052】
本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物中のモノマーの過半数を典型的に構成するモノマー(a)およびそれらの相対量は、ポリマーラテックス組成物およびそれから調製される自立型エラストマーフィルムの所望の特性を調整するために選択される。
【0053】
したがって、モノマー(a)は、以下を含んでもよい:
- アルコキシアルキル(メタ)アクリレートを含むアルキル(メタ)アクリレート 15~99重量%
- エチレン性不飽和ニトリル化合物 1~80重量%
- ビニル芳香族モノマー 0~50重量%
- 共役ジエン 0~90重量%
- カルボン酸エステルのビニルエステルおよび/またはビニルエーテル 0~18重量%
- シランを有するエチレン性不飽和化合物 0~10重量%、および
- アミド基を有するエチレン性不飽和化合物 0~18重量%、
ここで、重量パーセントはモノマー(a)の総重量に基づく。
【0054】
本発明によれば、本発明のポリマーラテックス粒子の調製のためのモノマー混合物(a)のための上記のモノマーの量は、合計で100重量%までであってもよい。
【0055】
典型的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むアルキル(メタ)アクリレートの量は、モノマーの総重量に基づいて、15~99重量%、好ましくは20~90重量%、より好ましくは40~80重量%、最も好ましくは50~75重量%の範囲である。したがって、共役ジエンは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも22重量%、少なくとも24重量%、少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%、少なくとも34重量%、少なくとも36重量%、少なくとも38重量%、または少なくとも40重量%の量で存在してもよい。
【0056】
従って、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むアルキル(メタ)アクリレートは、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、74重量%以下、72重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、64重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、58重量%以下、または56重量%以下の量で使用することができる。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するであろう。
【0057】
ニトリルモノマーは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、1~80重量%、好ましくは10~70重量%、または1~60重量%、より好ましくは15~50重量%、さらにより好ましくは20~50重量%、最も好ましくは20~40重量%の量で含むことができる。
【0058】
したがって、不飽和ニトリルは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも14重量%、少なくとも16重量%、少なくとも18重量%、少なくとも20重量%、少なくとも22重量%、少なくとも24重量%、少なくとも26重量%、少なくとも28重量%、少なくとも30重量%、少なくとも32重量%、少なくとも34重量%、少なくとも36重量%、少なくとも38重量%、または少なくとも40重量%の量で存在し得る。
【0059】
従って、不飽和ニトリルモノマーは、80重量%以下、75重量%以下、73重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、66重量%以下、64重量%以下、62重量%以下、60重量%以下、58重量%以下、56重量%以下、54重量%以下、52重量%以下、50重量%以下、48重量%以下、46重量%以下、または44重量%以下の量で使用することができる。当業者は、明示的に開示された下限と上限のいずれかの間の任意の範囲が本明細書に開示されていることを理解するであろう。
【0060】
ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、0~50重量%、好ましくは0~40重量%、より好ましくは0~25重量%、さらにより好ましくは0~15重量%、最も好ましくは0~10重量%の範囲で使用することができる。従って、ビニル芳香族化合物は、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。ビニル芳香族化合物はまた、完全に存在しなくてもよい。
【0061】
典型的には、共役ジエンモノマーは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0062】
典型的には、ビニルエステルおよび/またはビニルエーテルモノマーは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0063】
エチレン性不飽和シラン化合物は、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。特に、エチレン性不飽和シラン化合物は、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、0.05~5.0重量%、好ましくは0.3~2.0重量%、より好ましくは0.3~1.0重量%の量で存在し得る。
【0064】
典型的には、エチレン性不飽和酸のアミドは、エチレン性不飽和モノマー(a)の総重量に基づいて、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、または1重量%以下の量で存在することができる。
【0065】
さらに、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和基を有するモノマー(c)は、本発明のポリマーラテックス粒子の調製のためのモノマー混合物中に、エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、0.1~6.0重量%、好ましくは0.1~3.5重量%の量で存在することができる。典型的には、これらのモノマーは、本発明のポリマーラテックス粒子を調製するためのモノマー混合物中に、エチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下の量で存在することができる。
【0066】
本発明のポリマーラテックス粒子の調製のためのモノマー混合物において、モノマー(b)は、典型的には混合物中のモノマーの総重量に基づいて0.1~16重量%の量で存在する。モノマー(bi)は、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下の量で存在してもよい。上述のように、好ましくは、モノマー(bi)は、本発明によるポリマーラテックス粒子を調製するためのモノマー混合物中に存在しない。
【0067】
モノマー(bii)が、好ましくは上記規定のような、エチレン性不飽和カルボン酸およびオキシラン官能性エチレン性不飽和化合物から選択される場合、これらの化合物は、ポリマーラテックス粒子の調製のためのモノマーの総重量に基づいて、好ましくは0.05~10重量%、特に0.1~10重量%、または0.05~7重量%、好ましくは0.1~9重量%、より好ましくは0.1~8重量%、さらにより好ましくは1~7重量%、最も好ましくは2~7重量%の量で存在する。したがって、エチレン性不飽和カルボン酸モノマーまたはオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーは、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.4重量%、少なくとも1.6重量%、少なくとも1.8重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、または少なくとも3重量%の量で存在し得る。同様に、エチレン性不飽和酸モノマーまたはオキシラン官能性エチレン性不飽和モノマーは、本発明によるポリマーラテックス粒子の調製のためのエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、10重量%以下、9.5重量%以下、9重量%以下、8.5重量%以下、8重量%以下、7.5重量%以下、7重量%以下、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、または5重量%以下の量で存在してもよい。当業者は、明示的に開示された下限および明示的に開示された上限によって規定される任意の範囲が本明細書で開示されることを理解するであろう。
【0068】
モノマーbii)がヒドロキシル官能性および/またはアミノ官能性エチレン性不飽和モノマーから選択される場合、これらのモノマーは、0.05~18重量%、特に0.1~15重量%または0.05~10重量%、好ましくは0.1~12重量%、より好ましくは1~10重量%、さらにより好ましくは2~8重量%の量で存在し得る。したがって、ヒドロキシおよび/またはアミノ官能性エチレン性不飽和モノマーは、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、少なくとも0.1重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1重量%、少なくとも1.2重量%、少なくとも1.4重量%、少なくとも1.6重量%、少なくとも1.8重量%、少なくとも2重量%、少なくとも2.5重量%、または少なくとも3重量%の量で存在し得る。同様に、ヒドロキシ官能性および/またはアミノ官能性エチレン性不飽和モノマーは、本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのエチレン性不飽和モノマーの総重量に基づいて、18重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9.5重量%以下、9重量%以下、8.5重量%以下、8重量%以下、7.5重量%以下、7重量%以下、6.5重量%以下、6重量%以下、5.5重量%以下、または5重量%以下の量で存在してもよい。当業者は、明示的に開示された下限および明示的に開示された上限によって規定される任意の範囲が本明細書で開示されることを理解するであろう。
【0069】
ポリマーラテックス粒子は、コア-シェル粒子を生成する以下を含む多段階重合プロセスで調製することができる;
(I) コア-シェル粒子のコアを作製する工程において、エチレン性不飽和モノマーを重合させること、および
(II) シェルを作製するための工程において、モノマー混合物は、モノマーおよびそれらの相対量のすべての変更を含む本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物に関して上記で規定されたように重合される。
【0070】
特に、本発明によるコア-シェル粒子のシェルを作製するためのモノマー混合物は、必然的にモノマー(c)を含み得、コア-シェル粒子の内部架橋シェルを生じる。
【0071】
コア-シェル粒子のコアは、実質的に架橋されていなくてもよい。コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマー組成は、特に限定されない。好ましくは、モノマーがコアの内部架橋が実質的に起こらないように選択される。したがって、コアを作製するためのモノマー混合物は、分子中に複数の非共役エチレン性不飽和基を有するモノマーを含有しなくてもよい。共役ジエンは存在してもよいが、そのとき、好ましくは重合条件が好ましくは乳化重合プロセス中に分子量調節剤、例えばアルキルメルカプタンを使用することによって、コア部分のゲル化を回避するように選択される。
【0072】
特に、コア-シェル粒子のコアの調製のためのモノマーは、本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物について上述したようなモノマー(a)から選択され得る。コアを作製するためのモノマー混合物は、本発明によるコア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、50~100重量%のアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有することが好ましい。好ましくは、アルキル基は、1~20個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子、さらにより好ましくは3~10個の炭素原子、最も好ましくは4~8個の炭素原子を含有する。したがって、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも82重量%、少なくとも85重量%、少なくとも87重量%、少なくとも90重量%の量で、コア-シェル粒子のコアを重合するための混合物中に存在し得る。残りのモノマーは、本発明のポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー(a)として上述したような、共役ジエン、ビニル芳香族モノマー、エチレン性不飽和アミド、エチレン性不飽和ニトリル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルエステルおよびビニルエーテルから特に選択され得る。
【0073】
特に、共役ジエンは、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、2重量%以下の量で存在することができる。特に、共役ジエンは存在しなくてもよい。
【0074】
特に、ビニル芳香族化合物は、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下の量で存在することができる。特に、ビニル芳香族化合物は存在しなくてもよい。
【0075】
特に、エチレン性不飽和アミドは、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下の量で存在することができる。特に、エチレン性不飽和アミドは存在しなくてもよい。
【0076】
特に、ビニルエステルまたはエーテルは、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下の量で存在することができる。特に、ビニルエステルまたはエーテルは存在しなくてもよい。
【0077】
特に、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下、6重量%以下、4重量%以下、2重量%以下の量で存在することができる。特に、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは存在しなくてもよい。
【0078】
さらに、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマー混合物は、ポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物について上述したようなエチレン性不飽和酸から適切に選択される、少量のエチレン性不飽和酸を含有することができる。したがって、このようなエチレン性不飽和カルボン酸は、コア-シェル粒子のコアを作製するためのモノマーの総重量に基づいて、20重量%まで、16重量%まで、12重量%まで、8重量%まで、6重量%まで、4重量%まで、3重量%まで、2重量%まで、1重量%までの量で存在し得る。エチレン性不飽和酸はまた、完全に存在しなくてもよい。
【0079】
コア-シェル粒子のコアはまた、別個に作製されたシードラテックスから形成されてもよい。あるいは、このようなシードラテックスは、コアモノマーの重合前の乳化重合の開始時にその場で製造することもできる。あるいは、このようなシードラテックスは、シェルモノマーの重合前の乳化重合の開始時にその場で製造することもできる。
コア-シェル重合は、シード付きコア-シェル重合として行うことも可能であり、それにより、シードラテックスはコア-シェル乳化重合の開始時に、予備形成されるか、またはその場で形成されてもよい。
【0080】
コア-シェル粒子において、シェルはコア-シェル粒子の総重量の10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは20~50重量%、最も好ましくは25~45重量%を構成することができ、コアは90~10重量%、好ましくは80~20重量%、より好ましくは80~50重量%、最も好ましくは75~55重量%を構成することができる。コアが、予備形成のシードまたはその場形成のシードによって形成される場合、またはコア-シェル重合が、予備形成のシードまたはその場形成のシードの存在下で行われる場合、コア-シェル粒子のコアおよびシェルの相対量を規定するときには、シードは、コア-シェル粒子のコアの一部として計算される。シードは、コアの総重量の0~100重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは10~30重量%、さらにより好ましくは15~30重量%、最も好ましくは20~30重量%を構成することができる。
【0081】
コアを作製し、シェルを作製するためのモノマーは、コアがシェルよりも低いガラス転移温度Tgを有するように選択することができ、ここで、1Hzの固定振動数および3℃/分の昇温速度での動的機械的熱分析によって測定したときに、好ましくはコアのTgは0℃未満、好ましくは-20℃未満であり、シェルのTgは0℃超、好ましくは20℃超である。
【0082】
本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマーがモノマー(bii)を含む場合、乳化重合の終了後の本発明によるポリマーラテックス粒子は、モノマー(bii)の第1官能基と反応性である第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応し、ポリマーラテックス粒子の一部を構築し、好ましくはコア-シェル粒子のシェルを構築する。
【0083】
第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物の量は、第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応されるポリマーラテックス粒子の、本発明によるポリマーラテックス粒子に導入された第1官能基の総モルに基づいて、少なくとも20モル%を構成するように選択される。好ましくは、その量は、第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応したポリマーラテックス粒子中の第1官能基の総モルに対して、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも42モル%、少なくとも45モル%、少なくとも47モル%、少なくとも50モル%、少なくとも52モル%、少なくとも55モル%、少なくとも57モル%、または少なくとも60モル%を構成するように選択される。同様に、第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、第2官能基を有するエチレン性不飽和化合物と反応性を有するポリマーラテックス粒子中に存在する第1官能基の総モルの100モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、77モル%以下、75モル%以下、72モル%以下、70モル%以下、68モル%以下、65モル%以下、62モル%以下を構成する量で反応する。当業者は、上記で規定された下限または上限のいずれかによって規定されるすべての範囲が本明細書で開示されることを理解するであろう。
【0084】
驚くべきことに、本発明のポリマーラテックス粒子を、その後の二官能性モノマーとの反応により改質することによって自立型エラストマーフィルムを製造することが可能であることが判明した。その中の一つの官能基は、本発明のラテックス粒子上の適切な反応性基と反応することができ、他の官能基は、例えば、酸素、またはフリーラジカル開始剤、または当技術分野で公知の適切な制御ラジカル開始剤系(例えば、RAFT、ATRP、MADIXまたはNMP)の存在下で、例えば重合によって反応することができる。このような反応は、カルボン酸官能基を有する本発明のラテックスの選択によって例示することができ、好ましくは必ずしもそうではないが、この官能基はラテックス粒子の表面に位置し、適切なモノマー、例えば、グリシジルメタクリレートと反応させることができる。さらに、このエステル化反応は、8を超えるpH、または好ましくは8未満のpH、好ましくはpH7以下、より好ましくはpH6以下、最も好ましくはpH5以下のいずれかで行うことができることが見出された。さらに、このエステル化反応は、当技術分野で公知の触媒の存在下で行ってもよいし、行わなくてもよい。触媒としては、例えば金属イオン、好ましくは多価金属イオン、例えば酢酸亜鉛を使用することができ;または第四ホスホニウムまたはアンモニウムの塩を使用することができ、特に有用なのは、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムまたはテトラメチルグアニジンである。さらに、二官能性モノマーは、本発明のラテックス中の別のモノマーと反応してもよく、反応しなくてもよい。
【0085】
ラテックス粒子を官能化するために添加されるモノマーの量は、ラテックス粒子の利用可能な基の全てと反応するのに必要な化学量論量よりも少なくてもよく、あるいはラテックス粒子を官能化するために添加されるモノマーの量は、ラテックス粒子の利用可能な基の全てと反応するのに必要な化学量論量よりも多くてもよい。好ましくは過剰の官能性モノマーが使用され、この過剰は利用可能な基の2倍まで、3倍まで、または4倍以下であり得る。過剰の官能性モノマーが存在する場合、最終ラテックス中のこの過剰の未反応モノマーを最小限にするために努力を払うべきであり、これは、官能化モノマーが可溶性であるが、ラテックス粒子が可溶性ではない溶媒(このような溶媒はクロロホルムである)でラテックスを洗浄することによって達成され得る。あるいは、未反応の二官能性モノマーがラテックス中に残っていてもよい。
【0086】
本発明によるポリマーラテックス粒子は、標準的なシードまたは非シード乳化重合法によって製造することができる。国際公開第2017164726号(A1)に記載されているような方法が、シードを作製するのに特に適している。
【0087】
エマルジョン(またはラテックス)重合は、例えば窒素またはアルゴンによって提供される不活性雰囲気下で実施されてもよく、または不活性雰囲気下で実施されなくてもよい。シード粒子の分散液に、本発明によるポリマーラテックス粒子を作製するためのモノマー混合物について上記で規定したような遅延モノマー装填物を添加する。コア-シェル重合では、最初に、上記のようにコアを規定する遅延モノマー装填物(典型的には連鎖移動剤を含む)を添加し、このモノマー供給および後加熱期間の完了後、上記のようにシェルを規定するモノマー混合物を、次に、遅延添加法としても知られる連続モノマー添加を用いて添加する。あるいは、シェルが、所望のモノマー混合物の単一の分注物、または所望のモノマー混合物の多数の分注物の添加によって作製され得る。好ましくは、遅延モノマー混合物を含む成分が添加中に変化しない。
【0088】
シェルは、コアの周りに連続層を形成してもしなくてもよく、好ましくはシェルがコアの周りに連続層を形成する。シェルは、架橋構造を含むことができる。あるいはエマルジョン(またはラテックス)重合は、典型的には、重合可能なコアモノマーの分注物の添加によって作り出されるシードのその場形成と共に実施することができ、次いで、遅延モノマーはこの重合発熱の検出時に添加される。好ましい選択肢は、コア-シェルラテックス重合を、単一の容器中で、連続的な様式で実施することである。
【0089】
上述のポリマーラテックスの調製方法は、0~130℃、好ましくは0~100℃、特に好ましくは5~70℃、極めて特に好ましくは5~60℃の温度で、1種以上の乳化剤の存在下または不存在下で、1種以上のコロイドの存在下または不存在下で、かつ1種以上の開始剤の存在下で行うことができる。温度は、それらの間の全ての値および下位値を含み、特に5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120および125℃を含む。
【0090】
本発明を実施する際に使用することができる開始剤には、重合の目的に有効な水溶性および/または油溶性開始剤が含まれる。代替の開始剤は、当該技術分野において周知であり、例えば、アゾ化合物(例えば、AIBN、AMBNおよびシアノ吉草酸)および無機ペルオキシ化合物(例えば、過酸化水素、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムのペルオキソ二硫酸、ペルオキシカーボネートおよびペルオキシボレート)、ならびに有機ペルオキシ化合物(例えば、アルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、アシルヒドロペルオキシド、およびジアシルペルオキシド)、ならびにエステル(例えば、Tert-ブチルペルベンゾエート)、ならびに無機および有機開始剤の組み合わせを含む。
【0091】
開始剤は、所望の速度で重合反応を開始するのに十分な量で使用される。一般に、開始剤の量は、全ポリマーの重量を基準にして、0.01~5重量%、好ましくは0.1~4重量%で十分である。開始剤の量は、ポリマーの総重量に基づいて0.01~2重量%であることが最も好ましい。開始剤の量は、それらの間の全ての値および下位値を含み、ポリマーの総重量に基づいて、特に0.01、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4および4.5重量%を含む。
【0092】
上記の無機および有機ペルオキシ化合物はまた、当技術分野で周知のように、単独で、または1種以上の適切な還元剤と組み合わせて使用され得る。言及され得るこのような還元剤の例は、二酸化硫黄、アルカリ金属二亜硫酸塩、アルカリ金属および水素アンモニウムの亜硫酸塩、チオ硫酸塩、次亜硫酸塩およびホルムアルデヒドスルホキシレート、ならびにヒドロキシルアミン塩酸塩、硫酸ヒドラジン、硫酸鉄(II)、ナフタン酸銅、グルコース、スルホン酸化合物(例えばメタンスルホン酸ナトリウム)、アミン化合物(例えばジメチルアニリン)およびアスコルビン酸である。還元剤の量は、重合開始剤の重量部当たり0.03~10重量部であることが好ましい。
【0093】
開始剤は、シードを形成するために使用される最初のモノマー装填物の重合中に存在し、それは外部シードまたはその場シードであり、後者のアプローチは、これがラテックス重合反応に添加される追加の開始剤を必要としないことが見出されたので好ましい。あるいは、重合プロセス中に、または遅延モノマーの完了後に、開始剤のさらなる分注物を添加して、ラテックス中の遊離モノマーの最終レベルを低下させてもよい。
【0094】
ラテックス粒子を安定化するのに適した界面活性剤または乳化剤には、重合プロセスのための従来の界面活性剤が含まれる。界面活性剤は、水相および/またはモノマー相に添加することができる。シード方法における界面活性剤の有効量は、粒子のコロイドとしての安定化、粒子間の接触の最小化および凝固の防止をサポートするために選択された量である。非シード法では、界面活性剤の有効量は、粒子サイズに影響を及ぼすために選択された量である。
【0095】
界面活性剤の有効量は、シードラテックスのための適切な粒径を作り出すいずれかのプロセスのために選択された量であり、それは外部のものであってもその場形成のものであってもよく、さらに、コアを作り出すために使用されるモノマーおよび/またはシェルを作り出すために使用されるモノマーの両方のためのプレエマルジョンを作り出すために界面活性剤の一部も必要とされ、界面活性剤の総量はコアおよびシェルの両方の生成の間、さらにはラテックスの官能化の間、安定なラテックスを維持し、任意の新しい粒子の核生成を最小限にするようなものである。
【0096】
代表的な界面活性剤には、飽和およびエチレン性不飽和スルホン酸またはそれらの塩(例えば、不飽和炭化水素スルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸およびメタリルスルホン酸ならびにそれらの塩を含む);
芳香族炭化水素酸(例えば、p-スチレンスルホン酸、イソプロペニルベンゼンスルホン酸、およびビニルオキシベンゼンスルホン酸、ならびにこれらの塩);
アクリル酸およびメタクリル酸のスルホアルキルエステル(例えば、スルホエチルメタクリレートおよびスルホプロピルメタクリレート、ならびにこれらの塩、ならびに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびこれらの塩);
アルキル化ジフェニルオキシドジスルホネート、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、およびスルホサクシン酸ナトリウムのジヘキシルエステル、スルホン酸のアルキルエステルナトリウム、スルホン酸のアルキルエトキシエステルナトリウム、エトキシル化アルキルフェノール、およびエトキシル化アルコール;脂肪アルコール(ポリ)エーテルスルフェートが含まれる。
【0097】
界面活性剤の種類および量は、典型的には粒子の数、それらのサイズおよびそれらの組成によって支配される。典型的には、界面活性剤は、モノマーの総重量に基づいて、0~20、好ましくは0~10、より好ましくは0~5重量%の量で使用される。界面活性剤の量は、それらの間の全ての値および下位値を含み、モノマーの総重量に基づいて、特に0、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18および19重量%を含む。本発明の一実施形態によれば、重合は、界面活性剤を使用せずに行われる。
【0098】
上記の界面活性剤の代わりに、またはそれに加えて、様々な保護コロイドを使用することもできる。好適なコロイドとしては、ポリヒドロキシ化合物(例えば、部分的にアセチル化されたポリビニルアルコール、カゼイン、ヒドロキシエチルデンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、多糖類、および分解された多糖類)、ポリエチレングリコール、ならびにアラビアゴムが挙げられる。好ましい保護コロイドは、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースである。一般に、これらの保護コロイドは、モノマーの総重量に基づいて、0~10、好ましくは0~5、より好ましくは0~2重量部の内容で使用される。保護コロイドの量は、それらの間の全ての値および下位値を含み、モノマーの総重量に基づいて、特に1、2、3、4、5、6、7、8および9重量%を含む。
【0099】
ポリマーラテックス組成物がディップ成形用途に使用される場合、ポリマーラテックス組成物は、一定の最大電解質安定性を有することが好ましく、最大電解質安定性は、30mmol/l未満の塩化カルシウム、好ましくは25mmol/l未満、より好ましくは20mmol/l未満、最も好ましくは10mmol/l未満の臨界凝固濃度(pH10および23℃で0.1%の組成物の全固形分について決定される)として決定される。
【0100】
乳化重合を、緩衝物質およびキレート剤の存在下でさらに実施することがしばしば推奨される。適切な物質は例えば、アルカリ金属のリン酸塩およびピロリン酸塩(緩衝物質)、ならびにキレート化剤としてのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはヒドロキシル-2-エチレンジアミン三酢酸(HEEDTA)のアルカリ金属塩である。緩衝物質およびキレート剤の量は、通常、モノマーの総量に基づいて0.001~1.0重量%である。
【0101】
本発明の実施例において、緩衝液の存在は安定なラテックスを生成するために必要ではないことが見出され、従って、典型的にはラテックスの最終pHは5未満であり、典型的には約3であった。
【0102】
さらに、乳化重合において連鎖移動剤(調節剤)を使用することが有利であり得る。典型的な添加剤は例えば、有機硫黄化合物(例えば、チオエステル、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロピオン酸およびC1~C12アルキルメルカプタン)であり、nドデシルメルカプタンおよびt-ドデシルメルカプタンが好ましい。連鎖移動剤の量は、存在する場合、使用されるモノマーの総重量に基づいて、通常0.05~3.0重量%、好ましくは0.2~2.0重量%である。
さらに、重合プロセスに部分的中和を導入することが有益であり得る。当業者は、このパラメータの適切な選択によって、必要な制御が達成され得ることを理解する。
【0103】
本発明のラテックス組成物を調製するために、種々の他の添加剤および成分を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、消泡剤、湿潤剤、増粘剤、可塑剤、充填剤、顔料、分散剤、蛍光増白剤、架橋剤、促進剤、酸化防止剤、殺生物剤および金属キレート剤が挙げられる。公知の消泡剤には、シリコーンオイルおよびアセチレングリコールが含まれる。通常知られている湿潤剤には、アルキルフェノールエトキシレート、アルカリ金属ジアルキルスルホサクシン酸塩、アセチレングリコールおよびアルカリ金属アルキル硫酸塩が含まれる。典型的な増粘剤には、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、改質セルロースまたは粒状増粘剤(例えばシリカおよび粘土)が含まれる。典型的な可塑剤には、鉱油、液体ポリブテン、液体ポリアクリレートおよびラノリンが含まれる。酸化亜鉛は、適切なイオン性架橋剤である。二酸化チタン(TiO2)、炭酸カルシウムおよび粘土は、典型的に使用される充填剤である。公知の促進剤および二次促進剤には、ジチオカルバメート(例えば、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛(ZPD))、キサンテート、チウラム(例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(DPTT))、およびアミン(例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、o-トリルビグアニジン(OTBG))が含まれる。
【0104】
本発明の1つの利点は、本発明によるポリマーラテックス粒子によって、元素硫黄および適切な促進剤がポリマーラテックス粒子を含む化合物に添加されるという点で、従来の硫黄加硫を使用することなく、自立型エラストマーフィルムの調製が可能になることである。また、エラストマーフィルムを製造するために、亜鉛化合物のような多価カチオンを配合ラテックスに添加する必要もない。
【0105】
したがって、本発明の概要において上記のとおり規定されたような自立型エラストマーフィルムを製造するためのプロセスにおいて、提供ステップ(a)は、硫黄加硫のための元素硫黄および促進剤の組成物への添加、および亜鉛化合物の組成物への添加のいずれも含まず、それによって、好ましくはステップ(a)における組成物は、最大で8.5、好ましくは最大で8.0、好ましくは最大で7.5、より好ましくは最大で7のpHを有することが好ましい。
【0106】
エラストマーフィルムは、キャスティング、ディップ成形、スプレーまたはナイフ塗布によって得ることができる。エラストマーフィルムは、エラストマーフィルムを基板から分離する前または後に、40℃~180℃、好ましくは60℃~100℃、より好ましくは75℃~100℃の温度で熱処理することができる。したがって、本発明によれば、エラストマーフィルムは、好ましくは自立され、硫黄架橋を実質的に含まず、イオノマー架橋を実質的に含まない。
【0107】
さらに、本発明は、上記で規定された自立型エラストマーフィルムを含む物品にも関する。本発明によれば、エラストマーフィルムは、第1および第2の外側面と、第1および第2の外側面の間の内側コアとを有してもよく、第1および第2の外側面におけるポリマー粒子間の架橋度はフィルムの内側コアにおける架橋度よりも高い。
【0108】
本発明による物品は、手術用手袋、検査用手袋、工業用手袋、家庭用手袋、布地支持手袋を含む使い捨て手袋、医療機器、例えばカテーテル、コンドームおよびフェミドームから選択することができ、または物品は、エネルギーセル(好ましくはリチウムイオンを含有する電池)用のバインダー成分を含む。
【0109】
以下の実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0110】
物理的パラメータの決定:
ラテックス(エマルジョンまたは分散液としても知られている)を、全固形分(TSC)、pH値およびz-平均粒径の決定によって特徴付けた。さらに、最終フィルムを、切断および再接合の前後の両方で引張特性について試験した。フィルムを2つに切断し、次いで2つのフィルムを合わせておき、その後そのように接続した2つのフィルムを分離したときに、引張強度が発揮されれば、自己回復性であるとした。
【0111】
全固形分(TSC)の決定:
分散液試料のTSCを重量測定した。ラテックスを、内容物を手動で旋回させることによって穏やかに撹拌した。ラテックスの3つの分注物(~2.0g)を、予め秤量したアルミニウム皿にピペットで移し、秤量した後、80℃に設定した予熱オーブン中で24時間乾燥した。室温に冷却した後、最終重量を決定した。TSCは次のように計算される:
TSC(%)=(mo/mi)x100 (1)
ここで、moおよびmiは、それぞれ乾燥試料の重量およびラテックス試料の重量である。試験した3つの試料の平均値を使用した。
【0112】
pH値の決定:
pHメータのCyberScanモデルを使用して、分散液のpHを測定した。
【0113】
粒子サイズ(PS)の決定:
動的光散乱
Malvern Zetasizer Nanoを用いて動的光散乱(DLS)を行った。ZS90(マルバーン社(Malvern Instruments Ltd.))は、20mWのHe-Neレーザーを備えていた。典型的には、試料は、光子計数率が100~200kcps(キロカウント/秒)の間に維持されることを確実にするために、0.01重量%の最終濃度を有した。測定は25℃で行った。z-平均粒径(dz)として記録した。
透過電子顕微鏡
200kVで動作するフィリップスCM200装置を用いて透過型電子顕微鏡観察を行った。典型的な調製のために、0.4mLの0.2重量%のラテックスを、1.6mLの2重量%のリンタングステン酸(H3O40PW12)と室温で少なくとも15~20分間混合した。リンタングステン酸を、粒子見本の陰性染色剤として使用した。使用した最終混合物濃度は約0.04重量%であった。混合物の1滴(μL)を、300メッシュの銅製ホーリーカーボングリッド(アガーサイエンティフィック社(Agar Scientific Ltd.))上にピペットで移し、2分間放置した後、過剰の液体を排出した(過剰の液体を吸収するためにティッシュを使用して)。試料をデシケーター中で一晩乾燥させた。少なくとも100個の粒子を分析し、次の式を使用して数平均直径(dTEM)を計算した。
dTEM=Σnidi/Σni (2)
ここで、diはグループiの粒子の直径、niはグループiの粒子の数である。変動係数(CV)は、式(3)を用いた標準偏差(SD)から計算した。
CV=(100xSD)/dTEM (3)
以下の実施例において、CVは、平均粒子数の後に括弧内に与えられる。
【0114】
ラテックス試料の電位差滴定法
Mettler Toledo DL15滴定器を使用して、試料のカルボン酸含量を決定した。典型的な調製のために、1重量%(45重量%の0.88g)の分散液を0.1MのNaCl水溶液40mL中で混合した。希釈したラテックスを室温で15秒間機械的に撹拌した後、標準化NaOH(1.0M)溶液に対して滴定した。
【0115】
ゼータ電位測定
Malvern Zetasizer NanoZS90(マルバーン社製)計器を使用して、ゼータ電位を測定した。NaNO3(0.001重量%)を含有する0.01重量%のラテックス濃度を調製した。希釈混合物を、1mLプラスチックシリンジを用いて測定セルに移した。次いで、ソフトウェア由来の平均ゼータ電位および電気泳動移動度を、3回の測定から平均した。測定温度は25℃に設定した。
【0116】
動的機械的性質の決定
張力モードのTA-Q800装置動的機械的熱分析器を用いて、研究した材料の粘弾性挙動を測定した。フィルム試験片は、15mm×5.5mm×0.5mmの寸法を有する長方形のストリップの形状であった。温度-110℃~200℃、加熱速度3℃/分、周波数1Hzで測定を行った。得られたデータは、-110~200℃の温度の関数として貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ値(E”/E’)を測定した。
【0117】
引張特性の決定:
レーザー伸縮計を備えたハウンズフィールドH10KS引張装置(2000Nロードセル負荷)を用いて、試験片の引張特性を測定した。長さ75.0mm、最狭部の幅4.0mmの鋼製ダイスを用いて、フィルムをダンベル型に切断し、長さ25mmにわたって延伸した。フィルムは、測定前に、25℃(±2)、50%(±5)相対湿度で、24時間、気候制御された室内で調整した。延伸速度は、毎分500mmの一定のクロスヘッド速度で決定した。
測定は25℃、50%RHで行った。報告された結果は、3~5回の測定から平均した値である。
【0118】
重合装置
2L容量の5つ口反応ガラス容器を、温度制御装置を備えた水浴に浸漬し、反応器蓋は、機械的撹拌機、冷却システム用の凝縮器、アルゴンガスおよび反応物供給入口のための適切な入口点を有していた。撹拌速度インジケータを250rpmで一定に保った。重合温度を75℃に維持した。ワトソンマーローモデル505S蠕動ポンプを用いて、乳化重合のための反応物質を、~5.50g/分(コア成長のため)および~3.21g/分(シェル成長段階のため)の速度で供給した。
【0119】
BA=n-ブチルアクリレート
ACN=アクリロニトリル
BDDA=1,4-ブタンジオールジアクリレート
MAA=メタクリル酸
t-ddm=tert-ドデシルメルカプタン
GMA=グリシジルメタクリレート
KPS=過硫酸カリウム
TSC=全固形分
PS=粒子サイズ
DLS=動的光散乱
TEM=透過型電子顕微鏡
DMTA=動的機械的熱分析
【0120】
以下において、用語「ラテックス」の使用は、「分散液(dispersion)」、「エマルジョン(emulsion)」または「不均一(heterogenous)」と交換可能である。
【0121】
以下において、全ての部およびパーセンテージは特に明記しない限り、重量に基づく。
【0122】
実施例1:シードラテックスの調製
上記に詳述した装置において、脱イオン水(300g)を反応容器に添加し、アルゴンで20分間パージした。次いで、ここに、ソルベイ社製の界面活性剤Aerosol MA-80(登録商標)(ジヘキシルスルホサクシン酸ナトリウム)の水溶液(14gのAerosol MA-80(登録商標)を76gの脱イオン水に溶解して使用)を加えた。アルゴン流下において250rpmで一定に5分間撹拌した後、ブチルアクリレートモノマー(54.0g、0.42mol)を添加し、5分間撹拌した。最後に、過硫酸カリウム(54gの脱イオン水に溶解した1.37g)を含む開始剤溶液を添加した(時間=0)。75℃で60分間重合させた後、45nm(DLSによる)および43(15)nm(TEMによる)の平均粒径を有するシード粒子を得た。直径~100nmの単分散最終コア-シェル粒子の形成を得るためには、シードの目標粒径を~50nmに制御することが重要であることが見出された。シード粒子の結果を表1に示す。
【0123】
実施例2:コアラテックスの調製
コアナノ粒子は、実施例1のシードラテックスを用いて調製した。シード段階の完了直後に、界面活性剤(Aerosol MA-80)、ブチルアクリレート、tert-ドデシルメルカプタンおよび過硫酸カリウムを脱イオン水に溶解したプレエマルジョンの混合物を、5.50g/分の供給速度で計量ポンプを用いて連続的に添加した。コアラテックスを得るために、プレエマルジョンの反応容器への添加の完了後、135分間、重合を続けた。
プレエマルジョンは、以下の脱イオン水(171.45g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、Aerosol MA-80(2.97g)およびブチルアクリレート(237.50g、2.13mol)を含み、これらを混合し、遅延添加の開始前に30分間撹拌した。
得られたコア粒子は、平均粒径79nm(DLSによる)と80(28)nm(TEMによる)を有していた。コア粒子の結果を表1に示す。
【0124】
実施例3:架橋シェルを含むコア-シェル粒子の調製
実施例2のリピートラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(64重量%、152.00g)、アクリロニトリル(30重量%、71.25g)、メタクリル酸(5重量%、11.88g)、および1,4-ブタンジオールジアクリレート(1重量%、2.38g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度に設定した計量ポンプを用いて添加した。反応が完了した後(75℃で全体として4時間)、ラテックスを氷容器中で即座に冷却した。次いで、それを篩(28μm)に通して濾過し、凝塊を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、76nm(DLSによる)と63(16)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0125】
実施例4:シェルの架橋を伴わないコア-シェル粒子の調製
実施例2のラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(65重量%、154.38g)、アクリロニトリル(30重量%、71.25g)、およびメタクリル酸(5重量%、11.88g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度に設定した計量ポンプを用いて添加した。反応が完了した後(75℃で全体として4時間)、ラテックスを氷容器中で即座に冷却した。それを篩(28μm)に通して濾過し、凝塊を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、97nm(DLSによる)と93(20)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0126】
実施例5:架橋シェルを含むコア-シェル粒子の調製
実施例2のリピートラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(64重量%、154.38g)、アクリロニトリル(30重量%、71.25g)およびメタクリル酸(5重量%、11.88g)および1,4-ブタンジオールジアクリレート(1重量%、2.38g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度を有する計量ポンプを用いて添加した。反応が完了した後(75℃で全体として4時間)、ラテックスを氷容器中で即座に冷却した。それを篩(28μm)に通して濾過し、凝塊を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、95nm(DLSによる)と91(15)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0127】
実施例6:架橋シェルを含むコア-シェル粒子の調製
実施例2のリピートラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(66重量%、156.75g)、アクリロニトリル(28重量%、66.5g)およびメタクリル酸(5重量%、11.88g)および1,4-ブタンジオールジアクリレート(1重量%、2.38g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度を有する計量ポンプを用いて添加した。反応が完了した後(75℃で全体として4時間)、ラテックスを氷容器中で即座に冷却した。それを篩(28μm)に通して濾過し、凝塊を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、96nm(DLSによる)と84(14)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0128】
実施例7:架橋シェルを含むコア-シェル粒子の調製
実施例2のリピートラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(71重量%、168.63g)、アクリロニトリル(23重量%、54.63g)およびメタクリル酸(5重量%、11.88g)および1,4-ブタンジオールジアクリレート(1重量%、2.38g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度を有する計量ポンプを用いて添加した。反応が完了した後(75℃で全体として4時間)、ラテックスを氷容器中で即座に冷却した。それを篩(28μm)に通して濾過し、凝塊を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、93nm(DLSによる)と82(24)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0129】
実施例8:架橋シェルを含むコア-シェル粒子の調製
実施例2のリピートラテックスに、Aerosol MA-80(2.97g)、tert-ドデシルメルカプタン(0.085g)、およびシェルコモノマー溶液(237.51g。ブチルアクリレート(74重量%、175.75g)、アクリロニトリル(20重量%、44.5g)およびメタクリル酸(5重量%、11.88g)および1,4-ブタンジオールジアクリレート(1重量%、2.38g)を含む)を含むプレエマルジョンを、3.21g/分の供給速度を有する計量ポンプを用いて添加した。次いで、ラテックスを75℃でさらに55分間維持して、重合を完了させた。反応が完了した後、ラテックスを氷容器中で直ちに冷却し、次いで、それを篩(28μm)に通して濾過して、任意の凝固物を分離した。得られたコア-シェル粒子の平均粒径は、90nm(DLSによる)と83(20)nm(TEMによる)であった。コア-シェル粒子の結果を表1に示す。
【0130】
【0131】
a=100%転化率に基づいて存在するコアの公称体積分率。
b=pH5.0でDLSを用いて測定したz-平均直径。
c=TEMを用いて測定した粒子の数平均直径(括弧内の数は変動係数)。
d=シェルの厚さ、以下を用いてDLSデータから計算される:
(dz(cs)-dz(c))/2 (4)
ここで、dz(cs)およびdz(c)は、それぞれ最終的なコア-シェルおよびコアナノ粒子のz-平均直径である。
NA=該当なし
【0132】
実施例9:電位差滴定による利用可能なメタクリル酸の推定
測定されたメタクリル酸(MAA)(重量%)値は、以下の式を適用することによって滴定データから決定した。
MAA(重量%)=((VKOHxCKOH)/(mdispersionxTSC(wt%)dispersion)xMw(MAA) (3)
MAA(重量%)=(MAA中和質量)/固体ポリマー質量×100 (4)
ここで、VKOHおよびCKOHは、それぞれ、中和点におけるKOHの体積(添加されたKOHに対するPhのグラフの最高勾配の点から)およびKOH液の濃度である。Mdispersionは、滴定に使用したポリマー分散液の質量(使用したポリマー分散液の固形分の質量%)である。Mw(MAA)は、86.09g/molであるMAAの分子量である。
【0133】
【0134】
a=組成物に基づく全粒子中のMAAの公称濃度。
b=滴定データから計算した測定MAA濃度値。
【0135】
コア-シェルラテックスのシェルを官能化するための装置
1L丸底円錐形ガラス容器の3分の1を、40℃のパラフィン油浴に入れた。反応混合物を磁気撹拌し、磁気撹拌プレートを250rpmの一定速度に設定することによって撹拌速度を制御した。ナノ粒子分散液をグリシジルメタクリレートで官能化した。官能化されるラテックスに添加されるグリシジルメタクリレートの量(g)を表3に示す。
【0136】
酸塩基電位差滴定を用いて、得られた官能化コア-シェルラテックス中の検出可能なメタクリル酸の重量%の減少を通して、達成されたグリシジルメタクリレート官能化の程度を検出した。すなわち、グリシジルメタクリレート官能化とのエステル化反応を受けなかったメタクリル酸の量を検出した。滴定データ(表3)は、得られたメタクリル酸含有量の減少を示す。
【0137】
実施例10:実施例3の官能化
実施例3(300g、10重量%)を、0.5MのKOH水溶液を用いてpH5.0に調整した。混合物を最初に250rpmで15分間撹拌し、その後、1Lフラスコに添加した。次に、グリシジルメタクリレートの分注物(5.94g、4.18モル%)をフラスコに加え、混合物を40℃、250rpmで8時間加熱した。分液漏斗を用いて未反応のグリシジルメタクリレートを除去した。ナノ粒子分散液を200mlのクロロホルムで2回洗浄した。グリシジルメタクリレート官能化ラテックス中の残留クロロホルムを、25℃の温度でロータリーエバポレーターを使用する蒸着によって除去した。次いで、このようにして精製したラテックスを、ロータリーエバポレーターを用いて12重量%に濃縮した。官能化コア-シェル実施例9について得られたキャラクタリゼーションデータを表3に示し、非官能化コア-シェル前駆体ラテックス、実施例3と比較する。官能化後に検出されたメタクリル酸の重量%が、それぞれ3.8重量%から1.7重量%に減少したことが分かる。次いで、この差を用いて、ラテックス粒子上のカルボン酸基とグリシジルメタクリレート上のオキシラン基との間の反応後にラテックス粒子上に現在存在するグリシジルメタクリレートのモル%を計算し、実施例9の場合、これは2.5モル%である。
【0138】
実施例11:実施例5の官能化
実施例5(300g、10重量%)を、0.5MのKOH水溶液を用いてpH5.0に調整した。混合物を最初に250rpmで15分間撹拌し、その後、1Lフラスコに添加した。次に、グリシジルメタクリレートの分注物(53.42g、2.41モル%)をフラスコに加え、混合物を250rpmかつ40℃で8時間加熱した。分液漏斗を用いて未反応のグリシジルメタクリレートを除去した。ナノ粒子分散液を200mlのクロロホルムで2回洗浄した。次いで、このようにして精製したラテックスを、ロータリーエバポレーターを用いて12重量%に濃縮した。グリシジルメタクリレート官能化ラテックス中の残留クロロホルムを、25℃の温度でロータリーエバポレーターを使用する蒸着によって除去した。グリシジルメタクリレートでの官能化の前(すなわち、実施例5)および後の実施例10について得られた特性データを表3に示す。ラテックス粒子上に現在存在するグリシジルメタクリレートのモル%は1.5モル%である。
【0139】
実施例12
これは、実施例8のラテックスが実施例5のラテックスに取って代わることを除いて、実施例11の繰り返しである。
【0140】
【0141】
a=最終分散液のpH。
b=電位差滴定データに基づくMAA含有量。
c=ラテックス粒子に添加したGMA(モル%)。
【0142】
次いで、このように官能化されたラテックス粒子の安定性を、TEMからのz-平均直径(dz)、ゼータ電位(ζ)および数平均直径(dTEM)を測定することによって評価した。理論に束縛されることを望むものではないが、これらのパラメータの一定性は類似のフィルムの調製を可能にするために重要であると考えられる。表4は、それぞれ、グリシジルメタクリレートで官能化する前および後のラテックス粒子の特性データを示す。
【0143】
【0144】
a=DLSから決定された値。
b=TEMで測定した数平均直径(少なくとも100個の粒子)(括弧内の数は変動係数)。
c=pH5.0で測定したゼータ電位値。試料濃度は、0.001Mの硝酸ナトリウム、NaNO3の存在下で、0.01重量%である。
d=DLSから決定された値。
e=pH6.0で測定したゼータ電位値。試料濃度は、0.001Mの硝酸ナトリウム、NaNO3の存在下で、0.01重量%である。
【0145】
表4は、dzおよびdTEMの両方が官能化後に最小限にしか増加しなかったことを示し、理論に束縛されることを望むものではないが、これは表面カルボン酸基の官能化を反映すると考えられる。全ての官能化分散液について低い多分散性値が観察され、ゼータ電位値は官能化の前後で有意に異ならなかった。
炭素メッシュ上に堆積され(粒子が乾燥することにつれていくらかの変形が生じた可能性があることに留意されたい)、続いてリンタングステン酸で染色されたコア-シェルラテックス試料のTEM顕微鏡写真は、官能化手順がラテックス粒子の形態をあまり変化させなかったことを実証する。
【0146】
実施例13:キャストフィルムの調製およびそのガラス転移温度の測定
分散液(12重量%、60g)を200rpmで15分間撹拌した後、取り外し可能なステンレス鋼壁(高さ5mm)に囲まれたガラス鋳型(100×125mm)に注いだ。この金型表面は、予め洗浄され、次いで、アンバーシルドライPTFEフィルム 固着防止エアロゾルスプレー(CRC社製)を噴霧して、乾燥したフィルムが金型表面に付着するのを防止した。次いで、型表面を乾燥させて、アンバーシルがラテックスに混入するのを防止した。次いで、キャストしたラテックスフィルムを、25℃の循環空気オーブンに3日間入れた。フィルムを、湿度制御環境(50%RH)中、大気圧で乾燥させた。乾燥フィルムは、典型的には一組のカリパスで測定して550~600μmの平均厚さを有していた。
フィルムをアニールするために、フィルムを90℃の循環空気オーブン中で24時間さらに乾燥させた。
張力モードで作動するA TAーQ800 Instrument動的機械的熱分析器を用いて、キャストフィルムについて動的機械的熱分析(DMTA)実験を行った。試料は15mm×5.5mm×0.5mmの寸法を有する長方形ストリップの形状であり、測定は、-110℃~200℃の温度勾配にわたって、3℃/分の加熱速度および1Hzの周波数で行った。得られたデータは、温度の関数として貯蔵弾性率(E’)、損失弾性率(E”)およびtanδ値(=E”/E’)を測定した。
【0147】
コア-シェルポリマーについて得られたTg値を表5に示す。
【0148】
表5 ラテックスフィルムのキャラクタリゼーションデータ
【表5】
【0149】
a=フィルムがキャストされたラテックスpH
b=フィルムのアニール温度
c=Tg(c)およびTg(s)は、それぞれ、tan dの最大値から決定された、コアおよびシェルについてのGMA官能化フィルムの測定されたガラス転移温度である。
d=ヤング率
e=破断時応力
f=破断時歪
ND=検出なし、NM=測定なし
【0150】
実施例14:本発明のフィルムの自己回復特性
注意深く観察すると、キャストフィルムのサンプルを2片に切断した場合、2つの半体の界面を一緒に保持すると再結合することができ、自己回復プロセスは室温で数分しかかからないことがわかった。
自己回復過程を改善し、従って自己回復フィルムの物理特性を高めるために、切断した試料をラテックスフィルムのTg
(s)より上に加熱した。
図1Aは、ブレードを用いて非官能化実施例3および官能化実施例10のダンベルフィルムを半分に切断し、切断されたダンベルの上面にペンを用いて直ちに2ドットで印を付け、次いで2つの半分を室温で60秒間一緒にプレスし、次いで試料を40℃で24時間循環エアオーブン中でアニールすることによって再接合した場合に得られた結果を示す。
【0151】
図1Aは、(a)切断前、(b)ダンベルを2個に切断し、ダンベルの上面に印をつける、(c)60秒間押して再接続する、(d)40℃で24時間焼鈍した後、を示す。実施例3(非官能化フィルム)は、室温で再結合した後に破損したことに注意されたい。
【0152】
図1Bに示される応力-歪みデータは、ハウンズフィールドH10KS(200Nロードセル)を使用して、上記のプロトコルに従って切断され、再接合されたダンベルフィルムの実施例について得られた。
【0153】
以上のことから、40℃よりも高いアニール温度を用いることにより、フィルムの再回復過程がさらに促進されると考えられる。これらのフィルムの自己回復特性の観察は、エラストマーフィルム製品、例えば、手袋およびカテーテル;またはキャビテーションを有するフィルム、例えば、リチウムイオン電池中の活性成分を結合するために使用され、回復されずに放置された場合に樹枝状結晶を形成させ、電池を短絡させることができるエラストマーフィルムにおけるピンホール欠陥の治癒を可能にすることが期待される。
【0154】
実施例15:本発明のフィルムの形状記憶特性
注意深く観察すると、本発明のラテックスから製造されたキャストフィルムが形状記憶挙動を示すことも分かった。この観測をさらに説明するために、実施例3および10からのフィルムキャストのストリップを、熱い(60℃)水に30分間浸漬し(すなわち、T>Tg
(S))、除去し、直ちにシリンダーの周りに巻き付けて、
図2(a)および(b)に示すように、冷たい(15℃)水中で冷却する(すなわち、T<Tg
(S))前に、巻かれたばね状の形を形成した。実施例10からキャストされたフィルムのストリップは、認識を助けるためにインクストライプで装飾されていることに留意されたい。
【0155】
次いで、このように成形された試料を、60℃で保持された水浴中に1分間置き、それらが元の形状に戻ることが観察された(
図2(e)参照)。
このプロセスを繰り返したが、今度は冷却(
図2(c))および緩和の前に、試料をコイル形状に巻き付けた。同じプロトコル(
図2(d))を用いて、緩和されたフィルムをジグザグ配置に置いた後、60℃で緩和させた、さらなる実験を行った。
【0156】
実施例3および10から調製された成形フィルムの形状記憶緩和はまた、室温で保存された場合に明らかであり、
図3は上記の温度プロファイルに従って調製された、折り畳まれた試料およびばね状試料の両方の緩和を示すが、その後、形状の作製に続いて、15℃で1分間の保存から最初に温められた、保存期間に応じて、25℃で緩和させた。
【国際調査報告】