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特表2022-523703軽質炭化水素からカーボンナノファイバーを生産するための装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】軽質炭化水素からカーボンナノファイバーを生産するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/15 20170101AFI20220419BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20220419BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20220419BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20220419BHJP
   B01J 23/83 20060101ALI20220419BHJP
   B01J 23/40 20060101ALI20220419BHJP
   B01J 23/10 20060101ALI20220419BHJP
   B01J 23/78 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
C01B32/15
C01B3/38
C01B32/50
C01B3/56 Z
B01J23/83 M
B01J23/40 M
B01J23/10 M
B01J23/78 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543508
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 CA2020050097
(87)【国際公開番号】W WO2020154799
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】62/797,801
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521329431
【氏名又は名称】カーボノバ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザラビアン、ミーナ
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ アルマオ、ペドロ
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EA06
4G140EA07
4G140EB03
4G140EB43
4G140EB45
4G140EC01
4G140EC02
4G140EC04
4G140FA02
4G140FB04
4G140FB05
4G140FC01
4G140FE03
4G146AA11
4G146AB06
4G146BA08
4G146BA48
4G146BB06
4G146BB10
4G146BB22
4G146BB23
4G146BC09
4G146BC18
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC33B
4G146BC42
4G146BC43
4G146BC44
4G146DA03
4G146DA08
4G146DA28
4G146DA40
4G146JA02
4G146JB02
4G146JC11
4G146JD01
4G146JD10
4G169AA04
4G169BA01
4G169BB02
4G169BB06
4G169BC10
4G169BC16
4G169BC42
4G169BC43
4G169BC51
4G169BC66
4G169BC68
4G169BC70
4G169BC71
4G169BD02
4G169CB81
4G169CC04
4G169EA03
4G169EA06
4G169FA01
4G169FA06
4G169FB13
4G169FB60
4G169FB75
(57)【要約】
カーボンナノファイバーを生産するための方法及び装置。この方法は、2つの段階を含む。第1段階は、二酸化炭素若しくは水、又は酸素、又はそれらの組み合わせを用いて、軽質炭化水素を水素と一酸化炭素の混合物に酸化することを含む。第2段階は、生産された水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水蒸気に変換することを含む。このようにして、二酸化炭素及びメタン(及び/又は他の軽質炭化水素)を反応物として使用することによって、温室効果ガスを削減することができ、カーボンナノファイバー(CNF)などの有用な生成物を生産することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノファイバーを生産するための方法であって、
第1の反応器内で、軽質炭化水素流を酸化剤と反応させて改質反応を行い、水素及び一酸化炭素を含む中間ガス流を生産することと、
後続の第2の反応器内で、前記生産された水素及び前記一酸化炭素を、前記第2の反応器内に蓄積するカーボンナノファイバー及び前記第2の反応器を出る水蒸気に選択的に変換することと、を含む方法。
【請求項2】
セパレータを使用して、前記中間ガス流からCO及び前記軽質炭化水素の未反応部分を分離することと、CO及び前記軽質炭化水素の前記分離された未反応部分を前記第1の反応器に再循環させることとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の反応器からの変換ガス流からCO及び前記炭化水素の前記未反応部分を分離する工程が、膜セパレータを使用して行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の反応器が、前記炭化水素の乾式触媒改質を可能にするように構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の反応器における変換方法が、約480℃~約850℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の反応器における変換方法が、約5MPa以下の圧力で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素が、メタンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
方法が、前記第2の反応器から熱を回収することと、回収した熱を前記第1の反応器に供給することとを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
酸化剤が、二酸化炭素、水及び酸素のうちの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記酸化剤及び軽質炭化水素の未反応部分が、生産された水素及び一酸化炭素と共に前記第2の反応器を通過する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の反応器が、Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの1つ以上を含むナノ粒子の形態の触媒を含み、前記ナノ粒子が支持体に載置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記支持体が、前記支持体の表面を横切る前記ナノ粒子の動きを制限するように構成された繊維状アルミナウィスカーの障壁を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の反応器内の反応が、水素及び一酸化炭素を0.5~1.2の比率で提供するように構成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
カーボンナノファイバーを生産するための装置であって、
軽質炭化水素流及び二酸化炭素流を受け取り、前記受け取った軽質炭化水素流及び二酸化炭素流を変換方法に供して、水素及び一酸化炭素を含む中間ガス流を生産するように構成された第1の反応器と、
前記生産された水素及び前記一酸化炭素を、第2の反応器内の支持体表面上に蓄積するカーボンナノファイバー、及び前記第2の反応器を出る水蒸気に変換するように構成された第2の反応器と、
を含む装置。
【請求項15】
第2の反応器支持体が、前記カーボンナノファイバーが成長する金属Fe、Ni、Mg、Cr、Cu、Zn、Mo、Co、及びMnのナノ粒子、並びにそれらの組み合わせを含有する酸化物ウィスカーを含む、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記第2の反応器が、前記カーボンナノファイバーを配向させるように構成された磁場発生器を含む、請求項14~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記支持体の少なくとも一部が、前記第2の反応器の内表面に配置される、請求項14~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
装置が、
前記中間ガス流を受け取り、前記中間ガス流を水素及び一酸化炭素中間体並びにCO及び炭化水素反応物に分離し、
前記分離された中間体を前記第2の反応器に送り、
前記反応物を前記第1の反応器に再循環させるように構成されるセパレータを含む、請求項14~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記第2の反応器が波形支持体表面を含む、請求項14~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記第2の反応器が、前記カーボンナノファイバーの配向を制御するように構成される磁場発生器を含む、請求項14~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換するための触媒であって、
Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの1つ以上を含むナノ粒子であって、支持体上に載置されているナノ粒子を含む触媒。
【請求項22】
前記支持体が一連の障壁を含み、前記障壁が、前記支持体の表面を横切るナノ粒子の動きを制限するように構成されている、請求項21に記載の触媒。
【請求項23】
前記障壁が、繊維状アルミナウィスカーを含む、請求項22に記載の触媒。
【請求項24】
前記支持体が鉄-アルミニウム合金を含む、請求項21~23のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項25】
前記支持体が5%のアルミニウムを含む、請求項21~24のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項26】
前記支持体がFeCrAl合金を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項27】
前記支持体が波形である、請求項21~26のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項28】
前記ナノ粒子の直径が30~150nmである、請求項21~27のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項29】
前記支持体が、前記ナノ粒子を支持するための粗面を含む、請求項21~28のいずれか一項に記載の触媒。
【請求項30】
水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換するための触媒を作製する方法であって、
鉄-アルミニウム合金を熱処理して、表面にAlウィスカーを形成し、それによって支持体表面を形成することを可能にすることと、
Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの少なくとも1つを含む遷移金属酸化物のナノ粒子を前記支持体表面に含浸させることと、
前記遷移金属酸化物のナノ粒子を還元することと、を含む、方法。
【請求項31】
還元工程が、700~1000℃の温度で5~48時間行われる熱処理を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
方法が、
前記支持体上に触媒前駆体を沈着させることと、
前記触媒前駆体を、CO、H、又は不活性ガスのAr、He、及びNで希釈したそれらの組み合わせで、500~800℃の温度で2~48時間熱処理及び還元することと、を含む、請求項30~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの1つ以上を含むナノ粒子の触媒を使用して、水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換する方法であって、
前記ナノ粒子が支持体上に載置され、
前記触媒上に水素及び一酸化炭素を通過させてカーボンナノファイバーを生産することを含む、方法。
【請求項34】
一酸化炭素に対する水素の比が0.5~1.2である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記支持体が金属基材を含む、請求項33~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記支持体が、前記支持体表面を横切るナノ粒子の移動を制限する障壁を含む、請求項33~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記障壁がアルミナウィスカーである、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーボンナノファイバー(CNF)の大規模な選択的製造のための方法に関する。特に、本開示は、適切なH/CO比を有する合成ガスを生産するためにメタン及び酸化剤を含む流れで開始された触媒反応の選択的な組み合わせからCNFを生成すること、及び特定のトポグラフィー表面上にカーボンナノファイバーを順次生成すること、及び/又は磁場の生成によりCNF整列を強化することに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス(GHG)は、熱赤外領域内の放射エネルギーを吸収して放出するガスである。温室効果ガスは、温室効果の原因となる。地球の大気における主要な温室効果ガスには、二酸化炭素及びメタンが含まれる。
【0003】
カナダ政府は、温室効果ガスとして、メタンが20年間にわたって二酸化炭素(CO)の70倍を超える地球温暖化係数を有すると推定している。
【0004】
天然ガスは、メタンを主成分とする天然の炭化水素である。メタンの直接燃焼又はメタンをより価値の高い生成物に改質することは、メタンからエネルギーを抽出する2つの一般的方法である。
【0005】
触媒改質は、メタンを合成ガスに変換する一般に知られる方法である。合成ガスは、異なる比率の水素と一酸化炭素の混合物であり、フィッシャー・トロプシュ法によるメタノール、ジメチルエーテル、及び液体燃料などの多くの下流生成物の有用な構成要素である。
【0006】
最も下流の生産では、高いH/CO比を有する合成ガスが好ましい。例えば、メタノール生産のためのH対CO比の適切な比は2であり、水蒸気改質からの水素生産の目的のためには3超である。
【0007】
の有無にかかわらず、Fe及びFe-Ni系触媒上に様々な炭素生成物を生産するための一酸化炭素の触媒分解は、金属粉塵における厄介な現象又は繊維状炭素の合成における有利な現象のいずれかとして、多くの先行技術によって調査された(参考文献1~3-説明の最後の参考文献一覧を参照)。Hは、触媒を還元状態に保ち、方法効率を高めることが知られていた。
【0008】
炭素の結晶性、サイズ及び分布の制御は、触媒及び工程パラメータによって決定的な影響を受ける。触媒の組成、サイズ及び分布、炭素含有ガス、反応物のC:H:O比、温度、圧力及び空間速度は、認識されているパラメータの1つである。ほとんどの場合、触媒分解方法は、異なる炭素同素体の組み合わせをもたらした。炭素シェル、炭素アニオン、炭素球又は不規則炭素などの異なる炭素同素体の形成は、触媒のカプセル化及び被毒を引き起こし、その結果、方法の効率を低下させる。
【0009】
中実又は中空コアを有するカーボンナノファイバー(CNF)は、5~100nmの範囲の直径を有し、その長さは1μm~数mmで変化し得る。CNFは、エネルギー貯蔵及び強化プラスチックなどの多くの産業用途にとって非常に価値のある材料となる有利な特性を有する。温室効果ガスであるメタンとCOの両方を同時に利用する唯一の既知の反応は、フィッシャー・トロプシュによって1928年に発見されたメタンの乾式改質として知られている。この反応は、吸熱性が高く、燃料及び化学物質の生産のためのCOに対するHの割合が低く、厳しい反応条件に耐える工業的に実行可能な触媒がないため、工業的に十分に活用されていない。
【0010】
等モルの反応物(二酸化炭素及びメタン)を用いたメタンの乾式改質は、同時の逆水性ガスシフト反応により、1に近似するか又は1をわずかに下回る低いH/CO比をもたらす。
【0011】
周知のように、COを使用する固有の困難さは、CO分子の高い安定性に由来し、他の形態の炭素に変換することを困難にする。COは、最も酸化されたタイプの炭素であり、対称的な分子構造を有し、低い形成エンタルピー(ΔH298K=-393.53kJ.mol-1)を有する。これにより、COの他の化合物への分解又は変換は、非常にエネルギーを必要とする方法となり、その結果、COを他の生成物に変換するために使用される方法(すなわち、CO変換方法)は、この方法に動力を供給するために使用されるエネルギーの結果として、全体的により多くのCOを生産し得る(例えば、エネルギーが炭化水素系の発電所で生成する場合)。これは、意図される減少ではなく、カーボンフットプリントの全体的な増加をもたらす。
【0012】
CO利用の現在の傾向は、燃料、化学物質、CO放出遅延固体、及び固体炭素生成物の異なる同素体の低価値混合物の生産に焦点を当てている。しかしながら、現在、二酸化炭素に由来する低コスト及び経済的に有用な生成物を生産するための方法の数は比較的限られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、ナノファイバーを生産する方法であって、
第1の反応器内で、酸化剤を使用して軽質炭化水素流を酸化して、適切な比の水素及び一酸化炭素を含む中間ガス流を生産することと、
後続の第2の反応器内で、生産された水素及び一酸化炭素を、第2の反応器内に蓄積するカーボンナノファイバー、及び第2の反応器を出る水蒸気に選択的に変換することとを含む方法が提供される。
【0014】
この方法は、1日当たり0.5kgを超える大規模にカーボンナノファイバーを生産するように構成され得る。
【0015】
この方法は、高純度カーボンナノファイバーを生産するように構成され得る。
【0016】
第1の反応器は、適切なH:CO比で炭化水素の乾式触媒改質を可能にするように構成されてもよい。第1の反応器内の触媒及び方法条件は、ボッシュ反応による水形成を最小限に抑えるように構成され得、第2の反応器に入る前の中間ガス流の水凝縮及び熱損失を排除する。
【0017】
第1の反応器は、適切な比率の水素対一酸化炭素を生産するために、水蒸気触媒改質、乾式触媒改質、炭化水素の部分酸化、又はそれらの組み合わせを可能にするように構成されてもよい。これに関連して、中間ガス流の余分な水素含有量は膜によって調整され、燃料として別個の水素流を生産することができる。これに関連して、乾式改質は、第1の反応器に入る二酸化炭素に対する水の比が5体積%未満であることを意味し、水蒸気改質は、水の比が少なくとも10%であることを意味し得る。
【0018】
この方法は、セパレータを使用して、中間ガス流からCO、水及び軽質炭化水素の未反応部分を分離することと、CO、水及び軽質炭化水素の分離された未反応部分を第1の反応器に再循環させることとを含み得る。
【0019】
第1の反応器からの変換ガス流からCO及び炭化水素の未反応部分を分離する工程は、膜セパレータを使用して実施することができる。
【0020】
この方法は、第2の反応器から出る任意の非水性成分をセパレータに再循環させることを含んでもよい。
【0021】
第1の反応器の変換方法は、約480℃~約850℃の温度で実施されてもよい。
【0022】
第1の反応器の変換方法は、約5MPa以下の圧力で行うことができる。
【0023】
炭化水素はメタンであってもよい。
【0024】
この方法は、吸熱反応(第1の反応器)と発熱反応(第2の反応器)との統合を含み、したがって第2の反応器から熱を回収すること、及び回収した熱を第1の反応器に供給することを含み得る。
【0025】
この方法は、第2の反応器から生産した水蒸気を液体水に凝縮することを含んでもよい。
【0026】
さらなる態様によれば、カーボンナノファイバーを生産するための装置であって、
第1の反応器であって、軽質炭化水素流及び酸化剤の二酸化炭素、水蒸気、酸素又はそれらの組み合わせ流を受け取り、受け取った軽質炭化水素及び酸化剤流を触媒変換方法に供して、水素及び一酸化炭素を含む中間ガス流を生産するように構成された、第1の反応器と、
第2の反応器であって、生産された水素及び一酸化炭素を、第2の反応器内の支持体表面上に蓄積するカーボンナノファイバー、及び第2の反応器を出る水蒸気に変換するように構成された第2の反応器とを含む装置が提供される。
【0027】
第2の反応器は、触媒ナノ粒子(nP)が豊富に存在する支持構造体を含み得る。隣接するナノ粒子間の間隔は、ナノ粒子の直径と同程度であり得る。すなわち、隣接するナノ粒子間の平均最近接は、ナノ粒子の平均直径の0.1~10倍であり得る。
【0028】
基材は、十分に露出した反応物の経路に触媒を維持し、ガス流が最小圧力降下(50 psi未満)で流れることを可能にする。いくつかの実施形態では、支持体は、シートとして、折り畳まれたシートとして、円筒若しくは同軸円筒として、又は反応器内に同軸に配置された圧延箔若しくはメッシュとして形成されてもよい。支持体表面は、Fe、Ni、Mg、Cr、Cu、Zn、Mo、Co、及びMnなどの活性ナノ粒子を良好に分布させて保持する炭素形成に向けて非活性層を構成することができる。非活性層は、一般に、アルミナ、クロミア、ジルコニア、シリカ、又はそれらの組み合わせなどの酸化物材料で構成される。いくつかの実施形態では、この非活性層は、3Dでテクスチャ加工され、凹凸表面を形成するアルミナ及びジルコニアのウィスカーで構成される。テラシング(terracing)機能は、ナノ粒子(nP)間に物理的障壁を提供し、活性金属を分離し、熱処理及び反応中にそれらが焼結及び粒成長するのを防ぐことである。カーボンナノファイバーは、金属Fe、Ni、Mg、Cr、Cu、Zn、Mo、Co、及びMn、並びにそれらの組み合わせのナノ粒子を含む活性部位上で成長する。
【0029】
アルミナウィスカーは、ケージのように作用し、十分に分布した活性金属の沈着を確実にし、高温(タンマン温度)での移動及び焼結を回避する。アルミナウィスカーは、0.5~10μmの少なくとも1つの展開寸法及び10~500nmの少なくとも1つの厚さ寸法を有するプレートの形態であってもよい。これらのウィスカーは、バルク表面を横切る沈着した触媒ナノ粒子の移動を制限する約0.2~10μm未満のケージを形成する。
【0030】
タンマン温度(バルク拡散の場合)は、固体の原子又は分子がそれらのバルク移動度が認識可能になるのに十分なエネルギーを獲得した温度であると考えることができる(例えば、焼結を可能にする)。タンマン温度は、典型的には、ケルビンの融点の約2分の1である。表面拡散温度は、原子又は分子が表面上を移動することができる温度であると考えられ得る。
【0031】
活性金属のテラシング(terracing)はまた、CNFを個別に分離したままにし、抑制された絡み合い効果で伸長させることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒径は、10nm未満又は20nm未満、35nm未満又は50nm未満で変化する。いくつかの実施態様では、ナノ粒子は、100nm未満である。
【0032】
第2の反応器は、カーボンナノファイバーを配向させるように構成された磁場発生器を含み得る。ナノ粒子は、磁場で整列させることができるFe、Ni、及びCoなどの磁性材料を含み得る。
【0033】
支持体の少なくとも一部は、第2の反応器の内表面に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、反応器の内表面は、支持体の機能を果たすように調製されてもよく、ナノ粒子は、反応器の表面に直接着座してもよい。
【0034】
装置は、
中間ガス流を受け取り、中間ガス流を水素及び一酸化炭素中間体並びにCO(及び場合によっては水)及び炭化水素反応物に分離し、及び
分離された中間体を第2の反応器に送り、及び
反応物を第1の反応器に再循環させるように構成された分離器を含み得る。
【0035】
装置は、
第2の反応器から生産された水蒸気を凝縮させて、残りの反応物又は中間体から水成分を分離し、及び
残りの反応物又は中間体をセパレータに再循環させるように構成された乾燥器を含み得る。
【0036】
第2の反応器は、巨視的規模で波形の支持体表面である支持構造を含むことができ、これは触媒又は触媒前駆体のナノ粒子を担持するための過剰な表面を提供し、反応物へのナノ粒子の曝露を増加させるための経路を提供するであろう(図2Aを参照)。
【0037】
支持体は磁化されてもよい。
【0038】
第2の反応器は、カーボンナノファイバーの配向を制御するように構成された磁場発生器を含み得る。
【0039】
第2の反応器は、2Dマトリックスアレイ又は3Dマトリックスアレイに組み立てられた一群の交互のカートリッジを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カートリッジは、半連続フロー方法でCNF形成を最大にするために、直列、並列、又はそれらの組み合わせで配置される。
【0040】
さらなる態様によれば、水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換するための触媒であって、
支持体上に載置されたFe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn、Cr、K、Ca、Ti、Na及びMoのうちの1つ以上のナノ粒子、又はそれらを含むナノ粒子を含む触媒が提供される。
【0041】
支持体は、一連の障壁を含むことができ、障壁は、支持体の表面を横切るナノ粒子の動きを制限するように構成される。対向する障壁間の平均距離は、触媒ナノ粒子の平均直径と同等であってもよい(例えば、0.5~5倍)。障壁は、支持体表面からの突出部及び/又は支持体表面内の溝であってもよい。
【0042】
障壁は、繊維状酸化物ウィスカーであってもよい。ウィスカーはアルミナを含んでもよい。ウィスカーはジルコニアを含んでもよい。
【0043】
触媒は、支持体上に載置されてもよく、支持体は、繊維状アルミナウィスカー、クロミア、ジルコニア.イットリア、又はそれらの組み合わせなどの金属基材上に成長した酸化物ウィスカー及びリッジを含む。
【0044】
支持体は、鉄-アルミニウム合金を含んでもよい。
【0045】
支持体は、5重量%のアルミニウム(又はそうでなければ、10~20重量%未満のアルミニウム)を含んでもよい。
【0046】
支持体は、鉄-アルミニウム(例えば、FeCrAl)合金を含んでもよい。合金は、数で少なくとも1%のアルミニウムを含んでもよい。
【0047】
FeCrAlの使用は、いくつかの理由で有利であり得る。支持体を熱処理して、沈着したナノ粒子の運動を制限するために使用することができるアルミナウィスカーを形成し得る。これにより、触媒ナノ粒子のサイズ及び分布が制御されるため、触媒はナノファイバーを選択的に生産することができる。支持体はまた、支持体を形状に曲げる(例えば、表面積を増加させるために波形にする)ことを可能にし得る金属製である。支持体は、熱伝導性であってもよい。これは、発熱反応と組み合わせて使用するために重要であり得る。すなわち、熱を分配してホットスポットの形成を防止し、(第1の反応器に供給するために)第2の反応器から熱を回収することができる。支持体は、nPの担持を容易にするために磁性であってもよい(熱処理及び化学結合の形成の前に物理的結合を提供する)。
【0048】
支持体は、表面積を増加させるために波形化又は粗面化されてもよい。
【0049】
さらなる態様によれば、水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換するための触媒を作製する方法であって、
アルミニウム含有鉄合金を熱処理して、Al若しくはZr若しくはCr、又はY若しくはそれらの組み合わせの表面への移動を可能にし、これらの元素を酸化し、表面上にAl/ZrOなどの酸化物ウィスカーを形成し、テクスチャ化された表面を有する支持体を作製することと、
Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn、Cr、K、Ca、Ti、Na及びMoのうちの少なくとも1つを含む遷移金属酸化物のナノ粒子を支持体表面に含浸させること(及び/又はナノ粒子を支持体表面に沈着させること)と、
を含む方法が提供される。この方法は、例えば、金属ナノ粒子を生産するために、遷移金属酸化物のナノ粒子を還元することを含み得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物の代わりに、金属粒子を表面に沈着させることができる。いくつかの実施形態では、上述の金属を含むニトラート、クロリド、オキサラート、スルファイト、スルファート、カルボナート、アセタート、又はシトラートなどの触媒材料を沈着させることができる。熱処理は、500~700又は700~1000℃の温度で5~48時間行われてもよい。
【0050】
この方法は、
支持体上に触媒前駆体を沈着させることと、
CO、H、又は不活性ガスのAr、He、及びNで希釈したそれらの組み合わせを用いて、500~800℃の温度で2~48時間触媒前駆体を熱処理及び還元することと、を含み得る。いくつかの実施形態では、熱処理は、不活性雰囲気中でのみ行われてもよい。
【0051】
さらなる態様によれば、水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換するための触媒を作製する方法であって、
鉄-アルミニウム合金を熱処理して、表面にAlウィスカーを形成し、支持体表面を形成することを可能にすることと、
Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの少なくとも1つを含む遷移金属酸化物のナノ粒子を支持体表面に含浸させることと、
遷移金属酸化物のナノ粒子を還元することと、を含む方法が提供される。
【0052】
熱処理は、酸素(例えば、空気)の存在下で行うことができる。
【0053】
この方法は、表面に障壁を形成する他の化合物を形成し得る。これらの化合物はアルミニウムを含み得る。
【0054】
還元工程は、500~1000℃の温度で5~48時間行われる熱処理を含み得る。いくつかの実施形態では、還元工程は除外されてもよい。
【0055】
ナノ粒子の直径は、10~150nmであり得る。
【0056】
支持体は、ナノ粒子を支持するための粗面を含み得る。
【0057】
この方法は、
支持体上に触媒前駆体を沈着させることと、
CO、H、又は不活性ガスのAr、He、及びNで希釈したこれらの組み合わせを用いて、500~800℃の温度で2~48時間触媒前駆体を熱処理及び還元することと、を含み得る。
【0058】
さらなる態様によれば、Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMoのうちの1つ以上を含むナノ粒子の触媒を使用して、水素及び一酸化炭素をカーボンナノファイバー及び水に変換する方法が提供され、ナノ粒子は支持体上に載置され、
この方法は、触媒に水素及び一酸化炭素を通過させてカーボンナノファイバーを生産することを含む。
【0059】
一酸化炭素(例えば、第1の反応器によって生産され、及び/又は第2の反応器に入る)に対する水素の比は、0.5~1.2であり得る。一酸化炭素に対する水素の比は、0.3~1.2であり得る。
【0060】
支持体は、金属基材を含むことができる。
【0061】
支持体は、支持体表面を横切るナノ粒子の移動を制限する障壁を含み得る。
【0062】
障壁は、アルミナウィスカーであってもよい。
【0063】
この方法は、酸化剤(CO、O2、又は水蒸気)及び炭化水素のパルス流又はスイング流を使用するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、酸化剤は、CO2、水蒸気、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、軽質炭化水素は、吸着剤の表面に容易に吸着されたCOと反応し得る。
【0064】
二酸化炭素及び軽質炭化水素は、20~80%のCOを含む埋立地及びバイオマス又は化石燃料資源から第1の反応器のための供給物として得ることができる。
【0065】
炭化水素の燃焼熱を利用して、第1の反応器に必要な熱を供給することができる。
【0066】
カーボンナノファイバーを形成する反応は、形成された炭素の60質量%超が(例えば、グラファイト又は非晶質炭素ではなく)カーボンナノファイバーの形態である場合に選択的であると考えることができる。
【0067】
本発明は、図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】軽質炭化水素及び酸化剤(二酸化炭素、水蒸気又はO2など)を水及びカーボンナノファイバーに変換するためのシステムの一実施形態の模式図である。
図2a】Alウィスカーの模式的形成を示す。
図2b】空気中に900℃で22時間熱処理した後の基材及びAlウィスカーの画像である。
図3】500℃でFe-Ni触媒上で成長するカーボンナノファイバーのSEM画像である。
図4】4つの異なる触媒について比較した、カーボンナノファイバーに対する選択性対運転時間のグラフである。
図5a】本開示によるCNF生産の2つの可能な機構的工程を示す。
図5b】本開示によるCNF生産の2つの可能な機構的工程を示す。
図6a】3つの異なる倍率で本開示による第2の触媒を支持するためのアルミナ支持体表面を示す。
図6b】3つの異なる倍率で本開示による第2の触媒を支持するためのアルミナ支持体表面を示す。
図6c】3つの異なる倍率で本開示による第2の触媒を支持するためのアルミナ支持体表面を示す。
図7a】3つの異なる位置での図6cの支持体表面の化学分析のグラフである。
図7b】3つの異なる位置での図6cの支持体表面の化学分析のグラフである。
図7c】3つの異なる位置での図6cの支持体表面の化学分析のグラフである。
図8a】異なる一連の実験においてFe系触媒上で成長するカーボンナノファイバーのSEM画像であり、合成カーボンナノファイバーの異なる形態を示す。
図8b】異なる一連の実験においてFe系触媒上で成長するカーボンナノファイバーのSEM画像であり、合成カーボンナノファイバーの異なる形態を示す。
図8c】異なる一連の実験においてFe系触媒上で成長するカーボンナノファイバーのSEM画像であり、合成カーボンナノファイバーの異なる形態を示す。
図8d】異なる一連の実験においてFe系触媒上で成長するカーボンナノファイバーのSEM画像であり、合成カーボンナノファイバーの異なる形態を示す。
図10】グラファイト(無機結晶構造データベース(ICSD)カード番号1011060、空間群P63mc)と比較して、500℃で基材上に担持された異なるnP上のCO/H=1混合物の触媒反応によって形成された炭素の粉末XRDパターンである。
図11a】この提唱方法からのカーボンナノファイバーのラマン分析である。
図11b】参考文献4に基づくPyrografからの市販のカーボンナノファイバーとのId/Ig範囲の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
概要
上述したように、地球温暖化の影響が大きい二酸化炭素及びメタンは、安定な二酸化炭素分子及び対称的なメタン分子を他の形態の炭素に変換することが困難であるため、原料としての使用が制限されている。本発明者らは、特定の形態の純粋な炭素が、メタンなどの軽質炭化水素及び二酸化炭素、水蒸気、酸素、又はそれらの組み合わせなどの酸化剤を改質することから生産するための実行可能な標的生成物であり得ることを認識した。需要が高く、多数の用途を有する1つの分野は、ナノ材料産業である。特に、炭素由来ナノ材料は、工業量のCOを利用する有効な手段を提供することができ、したがって、大気中の炭素隔離の有効な手段を提供することができる。
【0070】
すなわち、以下に説明する方法は、下記のために用いることができる。
・反応物として二酸化炭素及びメタン(及び他の軽質炭化水素)を使用することによって温室効果ガスを削減するため。CHは、地球温暖化の影響においてCOよりも30倍強力であり、この提唱された経路は、両方の温室効果ガス(GHG)を同時に変換する。
・有用な生成物、特にカーボンナノファイバー(CNF)を生産するため。
【0071】
輸送車両及び他の大規模用途にCNFを利用することに対する関心が高まっている。これにより、車両の軽量化、燃費向上をもたらし、結果として、CO排出量の削減に寄与する。特に、CNFをポリマーと混合してカーボンナノファイバー強化ポリマー(CNFRP)を調製し、CNFRPを所望の部品形状に成形又は印刷することができる。CNFRPは、航空宇宙、スポーツ機器、風力タービン、圧力容器などで広く使用されている。
【0072】
システム
結合方法の模式図を図1に示す。二酸化炭素若しくは水蒸気又はそれらの組み合わせ102を含む酸化流は、高度に選択的な固体カーボンナノファイバー106及び水109の形成を促進する条件下で、一連の処理容器111~114内で軽質炭化水素101(C1~C4)と反応する。
【0073】
第1の反応器111は、酸化流(例えば、CO、水蒸気、酸素又はそれらの組み合わせ)102及び軽質炭化水素101(例えば、C1~C4)を変換して、CO及びH(例えば、1:1に近い体積割合で)を含む中間流103を生産するように構成されている。中間流103は、反応物の未反応部分(CO、水蒸気及び/又は未反応の軽質炭化水素)も含み得る。この第1の反応器は、反応を促進するように設計された触媒を含む。第1の反応器、反応条件及び反応物質の化学物質、及び反応物質の割合は、CO:Hを調整し、及び/又は第1の反応器から出る含水量を減少させるために制御されてもよい。これにより、第1の反応器の出力流をさらなる処理なしに第2の反応器で直接使用することができる。
【0074】
第2の反応器112は、CO及びH105(例えば、1:1の体積割合で)を固体カーボンナノファイバー106に変換するように構成されており、固体カーボンナノファイバー106は、所望の長さの繊維に達するまで第2の反応器112内で成長するように構成されており、この時点で、これらは多種多様な方法によって機械的に抽出することができる。この第2の反応ゾーンは、反応を促進するように設計された触媒を含む。CO及びHは比較的反応性の材料であるため、第2の反応器は、存在する他の材料(例えば、第1の反応器からの未反応のCO及び/又はCH)の存在に反応しない可能性がある。第2の反応器122は、代替的な入口及び出口又は多点入口を有するように構成されてもよい。第2の反応器122は、他の実施形態では、第1の反応器とは独立して動作するように構成されてもよい(例えば、CO及びHの代替供給源を用いて)。
【0075】
セパレータ113は、例えば、未反応のCO及び軽質炭化水素107を分離して第1の反応器111に再循環させるための膜を有するセパレータである。このようなセパレータを使用すると、CO及びHの全体的な収率を増加させることができ、したがって、第2の反応器112に向かって流れるCO及びHの含有量を濃縮することができる。いくつかの実施形態では、セパレータ113は存在しなくてもよい。すなわち、第1の反応の生成物(及び任意の残留反応物)を第2の反応器に直接注入することができる。
【0076】
乾燥器114は、水凝縮又は吸着トラップを備えてもよく、第1の反応器111からの重要な割合の未反応CO及び軽質炭化水素も含有し得るCO及びHの未反応流を乾燥させるように構成される。乾燥器114は、CO及び軽質炭化水素を反応ゾーン111に再循環させ、CO及びHを反応ゾーン112に再循環させて、CNFの全体的な収率を高めることを可能にする。乾燥器114は、さらなる使用のために全体的方法からの未反応乾燥ガス流の排出も提供する。いくつかの実施形態では、乾燥器114は存在しなくてもよい。
【0077】
COが豊富な流れ102(例えば工業起源のもの)は、第1の反応器111に導入される。COが豊富な流れ102は、典型的には、90体積%より高い、最も一般的には95体積%より高いCOの体積含有率を有する。
【0078】
CH又は軽質炭化水素が豊富な流れ101は、典型的には90体積%より高い、最も一般的には95体積%より高いCH又は軽質炭化水素の体積含有率のレベルを有する炭化水素を微量の無機ガスと共に含む。
【0079】
COが豊富な流れ102及びCH又は軽質炭化水素が豊富な流れ101は、反応器111で合流して、未分離の中間CO/H流103を生成する。このCO/H流103は、ある割合の未反応のCO、CH、水蒸気又は軽質炭化水素を含み得ることが理解されよう。
【0080】
この場合、未分離の中間体CO/H流103をセパレータ113に導入して、未反応の反応物(CO、CH、軽質炭化水素、水蒸気)を中間体(第1の反応の生成物、CO及びH)から分離する。未反応の反応物107(CO、CH、軽質炭化水素)は、第1の反応チャンバ111を通る別の流路のために第1の反応チャンバ111に再循環される。
【0081】
次いで、分離された中間CO/H流104は、第2の反応器112に通される。この反応器は、一酸化炭素及び水素を炭素及び水に変換するように構成される。炭素は、カーボンナノファイバー106としてチャンバ内で成長する一方、水はガス状流体流れに保持される。
【0082】
以下でさらに論じるように、この場合、第2の反応器は、カーボンナノファイバー106の成長を促進するために波形支持体に載置された触媒を含む。
【0083】
第2の反応器112からのガス状流体流れ105は、乾燥のために乾燥器114に通される。これにより、反応ゾーン112で生産され、分離ゾーン114で凝縮又は吸着された水から液体水流109が生産される。
【0084】
乾燥器114は、反応ゾーン112(CO及びH)及び/又は反応ゾーン111(CO及び軽質炭化水素)からの未反応の反応物を含む再循環流又は排気流108も生産する。この流れは、処理のためにセパレータ113に戻されてもよい。セパレータ113は、未反応のCO及びHを第2の反応ゾーン112から第2の反応ゾーン112に戻し、未反応のCO及び軽質炭化水素を第1の反応ゾーン111から第1の反応ゾーン111に戻す。
【0085】
以下でさらに論じるように、第2の反応ゾーン112で生産した熱110は回収され、第1の反応ゾーン111に注入される。
【0086】
化学反応
化学反応に関して、この装置は、2つの主な工程でCO(二酸化炭素)及び軽質炭化水素(例えば、メタン)を触媒的に変換するように構成されている。この場合に第1の反応器111で行われる第1工程は、軽質炭化水素ガス及びCO(二酸化炭素)などの酸化剤をCO及びHに高い選択性で変換する高酸素移動触媒を使用する。方法のこの部分は、メタンの乾式改質(DRM)として知られている。これは、フィッシャー-トロプシュ種の連鎖成長反応をより促進するH/CO比を生成するための公知の吸熱方法である。
【0087】
重要なことに、目標とする全体的方法は、これらの反応物を低形成エネルギー生成物である固体炭素及び液体水に変え、両方とも反応物よりも低い形成エネルギーを有する。
【0088】
総全体的方法は、わずかに発熱性の正味反応となり、電気化学(電気的仕事)を使用してCOから炭素生成物を生産する場合のように、(熱力学的な意味で)追加の熱源又は仕事を必要とせず、その結果、さらなるCO形成に寄与しない。方法の運動活性化エネルギーには依然としてエネルギーが必要であり、これは2つの連続反応からなる。
(1)CH+CO⇔2CO+2H,ΔH°298=+247kJ(メタンの乾式改質)
(2)2CO+2H⇔2C+2HO、ΔH°298=-264kJ
(3)CH+CO⇔2C+2HO、ΔH°298=-17kJ(正味反応)
【0089】
以下でさらに論じるように、第1の反応器の反応で生産されたH-COブレンドは、乾式改質反応器の排出物の温度と同じ又はそれよりわずかに低い温度範囲で、Fe、Ni、Mg、Cr、Cu、Zn、Mo、Co、及びMn、並びにそれらの組み合わせのナノ粒子を含むディスポジティブ(dispositive)又は装置(モノリス又は波形基材)を流れる。これらのナノ粒子は、H-CO混合物からの炭素繊維の成長を触媒し、したがって固体CNF材料を生産する。
【0090】
工業的条件下では、これらの反応はほとんど不可逆的に実施され、したがって、意図する生成物に向かう下の単一の矢印のみが示されることが理解されよう。それにもかかわらず、本発明の態様は、効率を改善するために未反応の反応物をどのように再処理及び再循環することができるかに関する。
【0091】
第1の反応器111は、式(1)に示すメタンの乾式改質(DRM)を行うように構成され、式中、CO及びCHは、CO:H比が1に近い合成ガスに変換される。H:CO比は、少なくとも0.3(例えば、少なくとも0.7又は0.8)であるように構成することができる。H:CO比は、最大1.3(例えば、最大1.2又は1.05)になるように構成することができ、H/CO比を高い値に変更すると、望ましくない炭素の種類が生じる可能性があり、それを低い値に移動させる機構(ブードア(Boudouard)反応は望ましくない)は水素を浪費する可能性がある。
【0092】
高いCO又はHの欠如は、ブードア(Boudouard)反応による高い割合のC析出物、したがってより低い選択性に有利に働く。すなわち、反応は主に非晶質形態に対するものであり、又はT及び滞留時間に応じて、繊維及びグラファイトに対するものである。高い割合のCOは、カーボンナノファイバーに対して選択性が低い方法に有利に働く。
【0093】
高いHの割合は、より遅い炭化をもたらし、典型的には、特に高いT(COの低い分圧を考慮すると、反応速度を加速するために必要である)での黒鉛化及び繊維生産に有利に働く。さらに、CO分圧が低いと、吸着したCの移動度が低下し(ナノ粒子の表面でのCOの分解による)、ナノ繊維を構築するのに必要な重要な因子であるナノ粒子を通るCの拡散速度が低下する。したがって、グラフェン/グラファイトは、Hの割合がより高い(カーボンナノファイバーではなく)好ましい生成物である。
【0094】
CNFを一次生産するための純度の定量化は、この段階では存在しないか、又は定義されておらず、利用可能な基準はなく、これは、知識が存在する場合には工業的に秘密に保たれているにもかかわらず、又はまさにそれ故に、科学としての分野の未熟さを示唆している。生産されたCNFが最高品質にどれだけ近いかを比較することによってのみ進めることができる。
【0095】
本発明者の考えでは、以前の技術に関する本発明者らのより深い理解についての特許審査官の承認を誘導すべきであり、より高品質のCNF、及び自己方法、すなわち、以前の特許取得方法は本発明者らが行う(ことができる)ように反映していない何か、のより良好な制御をもたらす。
【0096】
第2の反応器112では、合成ガスの中間流が炭素繊維及び水蒸気に変換される。
【0097】
正味の反応エネルギーバランスはわずかに発熱性であり、したがってエネルギー生産をもたらす。これは、COを変換するための潜在的に熱力学的にゼロの排出経路を、COを正味で消費する低下したGHG活性として世界的に定義する際の重要な要因である。さらに、発熱反応(2)からの熱を回収し、吸熱反応(1)を制御するために使用することができる。
【0098】
反応(1)及び(2)は、2つの反応の反応温度を低下させる安定な触媒を使用して実現される。重要なことに、安定な触媒の使用は、反応が起こるのに必要な運動エネルギーを減少させる。
【0099】
第1の反応器は、水蒸気改質(軽質炭化水素と反応する酸化剤としての水蒸気)、乾式改質と水蒸気改質の組み合わせ(軽質炭化水素と反応する二酸化炭素と混合された水蒸気)、メタンの部分酸化(メタンと反応する酸素)、又は部分酸化と改質の組み合わせを含み、適切な比のCO/Hを生成することができる。
【0100】
/CO/比並びに他の方法及び触媒条件は、合成ガスの高純度カーボンナノファイバーへの分解を最大にし、先行技術が教示するようにボッシュ反応、ブードア(Boudouard)反応、及びメタン還元反応の可能性を大幅に低減するように調整される。これらの反応の非選択的な性質は、一般に、炭素固体生成物の異なる同素体の大きな組み合わせの形成をもたらす。
【0101】
触媒I
反応(1)(例えば、メタンの乾式改質(DRM))については、多くの触媒配合物が当技術分野で公知である。
【0102】
以前の不均一系触媒は、典型的には、貴金属及び遷移金属、特にFe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir及びPtの活性に基づいており、貴金属元素は高い活性及びコークス抵抗率を提供するが、高コストのために好ましくない。Ni、Fe、及びCoなどの第1列遷移金属、並びにそれらの組み合わせは、よりコスト効率の高い選択肢を提供することができる。
【0103】
金属担持触媒は、メタンの乾式改質のための最も開発されたタイプの触媒である。金属は、典型的には活性部位を提供し、第VIII族元素から選択され得る。支持体は、通常、分布した活性部位を維持するための担持床として機能する金属酸化物である。さらに、反応物の吸着及び解離のための部位を提供し得る。支持体は、Al、SiO、ZrO、MgO、CeO、La、MnO、BaTiO及びTiOを含む1つ以上の異なる金属酸化物の組み合わせであってもよい。支持体は、LaZr、Ce1-xZrなどの固溶体の形態であってもよい。
【0104】
第1の触媒は、大気圧~3MPaの低圧及び550~900℃の温度を含む広範囲の条件で機能し得る。
【0105】
実験条件と共にメタンの乾式改質に使用されるいくつかの触媒例を以下に提供する。
【表1】
【0106】
この工程からの中間生成物は、H:CO比が1に近い合成ガスである。
【0107】
第1の触媒は、酸素のバルク輸送を容易にする基材上に支持されてもよい。第1の触媒支持体は半導体を含んでもよい。第1の触媒はセリウムを含んでもよい。第1の触媒は、希土類元素を含んでもよい。第1の触媒は、ランタニド、スカンジウム及び/又はイットリウムを含んでもよい。
【0108】
触媒II
工程2(すなわち、一酸化炭素と水素の反応によるカーボンナノファイバー(CNF)の形成)では、担持触媒を用いて反応を行う。この触媒にはいくつかの重要な特徴がある。
・支持体の空芯円筒形状は、反応経路を塞ぐことなくCNF形成の高負荷に達するためにガスを触媒に曝露することを可能にする。
・表面上の波形形状及び酸化物ウィスカーは、表面を凸凹にし、非常に良好な分布を有する触媒ナノ粒子の高負荷を可能にする。遷移金属のナノ粒子は、高温(ケルビンでのタンマン温度の60%)で移動する傾向が高く、隣接物とネックを形成し、焼結し、最終的には、より大きな粒子を形成する。ナノ粒子のためのテクスチャ加工された表面を提供することにより、活性ナノ粒子の距離の制御及び/又はカーボンナノファイバーの直径の制御がより容易になり得る。
・ウィスカー層は、適切な金属基材上に直接形成することができる。これにより、支持層をより可鍛性にすることができる。また、ウィスカーから熱を伝導する方法を改善することができる。
・基材をテラシング(terracing)又はテクスチャ加工することにより、基材に追加の寸法が加わり、触媒ナノ粒子をナノメートルレベルで基材部位に固定することが容易になる。平らな表面又はステンレススチールウール上でCNFを成長させると、カーボンナノファイバーの成長に対する選択性が低下し、CNFほど価値のないグラファイト、マイクロファイバー及び非晶質炭素を含む多種多様な炭素形態が生じる可能性がある。
・アルミナと触媒ナノ粒子との間の化学結合は、触媒ナノ粒子の還元プロファイルを変更し、ナノ範囲の活性部位サイズを保持する。
・支持体の組成は、それを磁性にし、したがって沈着段階中の磁性ナノ粒子(触媒前駆体)が表面に引き付けられるように設計され、これにより、支持体上の触媒の高負荷に達するのに必要な沈着数が減少する。
・触媒ナノ粒子(Ni及びMgでドープされたFe)は磁性であり、磁場中でのCNFの成長中にCNF成長を導き、それらを整列させる。
【0109】
触媒のいくつかの実施形態は、これらの特徴の一部又は全部を有し得ることが理解されよう。
【0110】
支持体は、5重量%のAlを含有する鉄合金で作られ、活性触媒は、Fe、Ni、Mg、Mn、Co、Cr、W、Ti及びZn又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、支持体は、10重量%未満のAlを含有し得る。
【0111】
図4は、4つの異なる触媒について比較した、カーボンナノファイバーに対する選択性対運転時間のグラフである。4つの触媒は、Fe、並びにNi、Mg、及びその両方でドープされたFeからなる。実験は、大気圧、773K、総流量:100ml/分、H:CO:Ar=0.4:0.4:0.2で行った。この場合の不活性ガスは、ガス分析用の基準として使用される。工業規模では、燃焼流(例えば、空気を使用する)がCOの供給源として利用される場合、Nが流れに存在し得る。
【0112】
純粋なFe触媒の結果を三角形で示し、Fe-Mg触媒の結果を円で示し、Fe-Ni触媒の結果を四角で示し、Fe-Ni-Mg触媒の結果を菱形で示す。図4に示すように、最初はFe、Fe-Ni及びFe-Ni-Mgが最も選択的である。Fe及びFe-Niは、時間の経過に伴う選択性の低下が少ないことを示す。選択性は、所望の生成物(炭素)を総変換で割ったものとして算出される。より高い選択性は、望ましくない副反応が限界レベルで起こっていることを意味する。
【0113】
この実施形態では、図2aに示すように、支持体は波形であり、円筒形に成形されている。次いで、これを700~1000℃の温度で5~48時間熱処理して、表面上にAlウィスカーを形成することを可能にし、支持体表面を凸凹にして、支持体上の触媒粒子を最大限に維持する。図2bは、基材及びAlウィスカーの画像である。図2aは模式図であり、図2bはSEMである。
【0114】
さらに、この場合、支持体は、磁力及び物理的力が支持体への前駆体の付着を可能にする触媒前駆体の溶液でコーティングされる。前駆体は、熱処理及び/又は還元工程を受け、雰囲気が還元しているときにCNF反応の前又はCNF反応中に金属系触媒に変換される金属酸化物系である。
【0115】
いくつかの実施形態では、触媒前駆体を支持体上に沈着させ、熱処理し、不活性ガスのAr、He及びNで希釈したCO、H、又はそれらの組み合わせで、500~800℃の温度で2~48時間還元した。
【0116】
別の態様によれば、担持触媒は、構造化要素がCNFで完全に充填され、生産されたCNF材料から回収され得るまで、炭素含有ガス(CO、CO及びC~Cの軽質炭化水素)が反応器のホットゾーン及び担持触媒をかなりの期間容易に通過することができるように設計される。図3は、生産されたCNFの構造を示す。
【0117】
この場合、この触媒を調製するために、FeCrAl合金の波形円筒(図2aを参照)が生産される。FeCrAlは、モノリスを生産するために好都合に成形及び波形化することができる工業用合金である。
【0118】
次いで、波形形状に熱処理を施して、構造化固体の表面にアルファ-アルミナウィスカーを生成する。当該繊維状アルミナウィスカーは、Fe、Ni、Cu、Zn、Co、Mg、Mn及びMo、並びにそれらの組み合わせで作られる遷移金属酸化物のナノ粒子で含浸され、所望の組成及びCNFの成長を推進する触媒ナノ粒子の数に達するまで連続含浸工程によってこれらのナノ粒子で飽和される。ナノ粒子は支持体上に着座し、基材の凹凸表面に物理的に付着する。
【0119】
触媒前駆体の粒径は、前駆体がウィスカー間の体積を満たさないように、ウィスカー間距離のサイズ未満に維持される。すなわち、ウィスカーは表面を凹凸にするため、前駆体のサイズが谷部を完全に満たすほど大きくなると、ウィスカーは表面を覆い、表面の凹凸特性が取り除かれる。これは、熱処理中に活性部位を近づけ過ぎ、それらを互いに付着させ、触媒が低い表面積を有することになる。熱処理後、触媒とウィスカーとの間に化学結合が形成され、ナノ粒子を強く保持する。CNFは、これらの触媒活性ナノ粒子によって構築され、該ナノ粒子は、成長する繊維の先端に留まることによって繊維を生産する。すなわち、CNFは、一端が支持構造体に固定されている。CNFの自由端には、典型的には磁性ナノ粒子が存在する。CNFの構造を図3のSEM画像に示す。
【0120】
CNFの多くは自由端に磁性ナノ粒子を有するため、磁場を使用して方位角配向を制御することができる。この場合、磁場は磁性ロッドによって生成され、CNF成長を1つのおおよその方向に整列させるために使用される。磁場は、永久磁石及び/又は電磁石を使用することによって提供及び制御され得ることが理解されよう。
【0121】
繊維は、典型的には、一方の初期端がアルミナウィスカーに付着した状態で成長する。モノリスがCNFで飽和されると、これらは、アルミナに付着した繊維の根元近くで繊維を切断する機械的工具の導入によりモノリスから切り離され、このようにしてモノリスは再含浸され、再使用され得る。モノリスから繊維を抽出するために、他の機械的装置、工具形状及び繊維分離技術を使用することができる。さらに、CNFを前後に動かすことによって分離を引き起こす時間依存性磁場を印加することによってCNFを取り外すことができる。
【0122】
CNFの直径は10nm~200nmであってもよく、長さは1μm~数cmであってもよい。中実コアを有するCNFは、繊維軸に対して平行、垂直、又は角度をつけて整列させることができるグラフェン層から構成される。あるいは並びにカーボンナノチューブと呼ばれる空芯繊維は、1つ又はいくつかの同軸に巻かれたグラフェン層で作られる。回収後、基材に再度触媒ナノ粒子を担持する必要があり得る。
【0123】
操作は、第2の反応器が実際にはそれらの一部にCNF成長を実行させる交互のカートリッジのグループであるように自動的に実行することができる一方、他のものは繊維を切り出し、モノリスを再含浸及び活性化してCNF成長に戻すことによってCNF回収及び再開始に供される。この第2の反応器装置のモノリスに含浸された触媒は、400~690℃の範囲、より好ましくは450~680℃の範囲の温度及び反応器1の同じ圧力範囲で既に高品質のカーボンナノファイバーの生産を可能にし、これにより方法全体が低統合コストになる。
【0124】
図5a及び図5bは、CNF生産の2つの可能な機構的工程を示す。図5aでは、触媒591の活性部位は、CNFが支持体592上で成長するにつれてCNF406の先端に移動する。図5bでは、触媒591の活性部位は支持体592上に留まる。図5a及び図5bは、Kumar M,Ando Y.’’Chemical Vapor Deposition of Carbon Nanotubes:A Review on Growth Mechanism and Mass Production’’,J.Nanosci.Nanotechnol.,2010;10,3739-3758から出典されている。
【0125】
図6a~図6cは、3つの異なる倍率で本開示による第2の触媒を支持するためのアルミナ支持体表面を示す。
【0126】
図7a~図7cは、3つの異なる位置668a~cでの図6cの支持体表面のエネルギー分散型X線分光化学分析のグラフである。エネルギー分散型X線分光法(EDS)分析を3点で実施し、668a、668b及び668cは、Fe系基材上に形成された酸化物被膜の化学組成を示す。分析が行われた位置に応じて、化学組成はわずかに異なり得る。酸化物層は、Al、Y、Zr、Cr及びHfを含む。668a、b、及びcでは、元素の濃度が異なる。
【0127】
図8a~図8eは、異なる実験セット中にFe系触媒上で成長させたカーボンナノファイバーの異なる微細構造、形態及びサイズを示し、豊富な細長いカーボンナノファイバーを示す。
【0128】
図9は、本方法に従って生産されたカーボンナノファイバーの化学組成を示す。
【0129】
図10は、本明細書に開示される手順から生産されたカーボンナノファイバーの粉末XRD回折を示し、高度の結晶性及び不規則な炭素生成物の欠如を実証している。
【0130】
図11aは、本明細書に開示される手順から生産されたCNFのラマン分析及びIg(Gバンド)を上回る高強度のId(Dバンド)を示す。図11bは、この手順から生産されたCNFと、参考文献4に報告されている市販のCNFとのId/Igの比較を示す。
【0131】
変形例及び他の用途
本明細書に記載の触媒方法は、メタン又は他の軽質炭化水素からのCO生産を含む様々な用途に使用することができる。
【0132】
例えば、水蒸気改質方法では、メタンが反応物として利用可能であり、COは、反応後に、主な工業的目的として生産される水素と共に副産物である。
(4)CH+2HO→CO+4H
【0133】
したがって、反応(3)を利用したCNFの生産
(3)CH+CO→2C+2H
工業用メタン水蒸気改質方法は、環境的に無害な全体的方法をもたらすであろう。
(5)2CH→4H+2C、
【0134】
一方、生産されるCは高品質の有価物である。
【0135】
この最終結果は、対象の触媒方法を組み込むことによって、工業用水素を生成する活性が、それをゼロCO排出にする潜在能力を有するか、又は少なくとも生産され得るCNF材料に比例してそれを低減することができることを意味する。
【0136】
式(4)で消費される水が式(3)で生産される水に匹敵するため、水消費量も削減する。CNFを生産する全方法はCHから生産したと考えられる。
【0137】
さらに、この方法は、主要なCO発生源である精製所で行うことができる。周知のように、精製所では、水素は、水蒸気改質を介して、並びに合成ガソリンの主要な供給源である流動接触分解方法(FCC)を介して生産される。
【0138】
流動接触分解(FCC)は燃焼してCOを生成し、これは世界で生産されるガソリン質量の約4~8%である。ほとんどの精製所は、燃料としてメタンを利用可能であり、本明細書に開示される方法を通してCO排出を削減するために、低級アルカン量を生産するか、又は生産し得るか、又は逸脱することがある。COを高量で生成する他の産業は、CO:H=1:1の適切な組成を生産するために活性化することができるならば、CH及び/又は他の軽質炭化水素が利用可能であり、この方法を使用して有用な材料を生産できることが理解されよう。
【0139】
例えば、低級アルカンを使用すると、方法は、
(6)C2n+2+(n+1)/2CO→(3 n+1)/2C+(n+1)H
となるであろう。
【0140】
炭化水素を触媒的に活性化するために必要なエネルギーがわずかに少ない乾式改質工程では、
(7)C2n+2+nCO→2n CO+(n+1)H
を用いる。
【0141】
したがって、合成ガスをCOに対して十分に低い割合のHで利用可能にすることができる軽質炭化水素流が利用可能であれば、方法は任意のCO源に使用可能である。
【0142】
CNF形成中の過剰な水素は、メタンを再構成するか、又はメタンの解離を少なくすることによって方法に影響を及ぼす可能性があり(ル・シャトリエの原理)、これにより方法はより高い温度条件を必要とする。したがって、H:COの化学量論的な1:1比又はそれに近い比率を維持することが好ましく、これは乾式改質の好ましい経路に価値を与える。メタン改質反応のみが、このような低い水素割合の合成ガスを生産する。他のアルカンを用いる他の実施形態では、過剰の水素を除去するか、又は方法のエネルギー源として使用することができる。
【0143】
過剰のCOは、より少量の水を生成し、通常の繊維又は非繊維状炭素を生成し、望ましくないブードア(Boudouard)反応が増加して優勢になり、反応:2CO→CO+Cによって非晶質炭素を生産する。
【0144】
反応:CO+H2⇔C+HOを使用する本方法は、ブードア(Boudouard)反応よりもエネルギー的に効率的であり得る。ブードア(Boudouard)反応は、生産される炭素材料の品質において選択性が低いため、水素の高価な分離を排除し、カーボンナノファイバーの排他的生産のための経路を確保することもできる。さらに、本方法は、ブードア(Boudouard)反応によってCOを再生産する代わりに、COの全体的な利用を可能にする。また、CNF生産のための適度な方法条件を可能にする触媒を使用してもよい。
【0145】
本発明は、好ましい実施形態及びその好ましい使用に関して説明及び例示されているが、当業者によって理解されるように、完全な意図された本発明の範囲内にある修正及び変更を行うことができるため、そのように限定されるべきではない。
【0146】
参考文献一覧
上記では以下の文献を参照した。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図8e
図9
図10
図11a
図11b
【国際調査報告】