(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】チモキノン及び追加の生物活性化合物を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20220419BHJP
A61K 31/047 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220419BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220419BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20220419BHJP
A61K 36/71 20060101ALI20220419BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K31/047
A61K31/015
A61K31/01
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K31/336
A61K31/05
A61K31/353
A61K36/71
A61K36/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543529
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(85)【翻訳文提出日】2021-09-21
(86)【国際出願番号】 IL2020050102
(87)【国際公開番号】W WO2020157748
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521330150
【氏名又は名称】エヌ・エス・オイルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼイルカ,モル
(72)【発明者】
【氏名】ラパポート,ダン
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC75
4C088AB32
4C088AB38
4C088AC04
4C088CA03
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZB11
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA02
4C206BA04
4C206CA13
4C206CA19
4C206CB27
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB11
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、チモキノン(TQ)及び1種以上の追加の生物活性薬剤の組合せを含む組成物であって、前記生物活性薬剤が、カロテノイド、大麻関連化合物及びピクノジェノールからなる群から選択される、組成物に関する。好ましい一実施形態において、TQは、コールドプレスニゲラ・サティバ油中に含有されており、前記油は、TQ濃度が少なくとも1.5%(w/w)であり、遊離脂肪酸(FFA)含有量が3.5%(w/w)以下であることを特徴とする。本発明は、これらの組成物を投与することによって、炎症性状態を治療するか、又は予防するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チモキノン(TQ)及び1種以上の追加の生物活性薬剤の組合せを含む組成物。
【請求項2】
生物活性薬剤が、カロテノイド、大麻関連化合物及びピクノジェノールからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1種以上の追加の生物活性薬剤が、ルテイン、ベータ-カロテン、アスタキサンチン、リコピン、フィトエン、フィトフルエン、ゼータ-カロテン及びフコキサンチンからなる群から選択される1種以上のカロテノイドである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
カロテノイドが、合成カロテノイド、1種以上の植物供給源から抽出されたカロテノイド及び合成カロテノイドと植物供給源から得られたカロテノイドの組合せからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上の追加の生物活性薬剤が、1種以上の大麻関連化合物を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
1種以上の大麻関連化合物がカンナビノイドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
CBDが、大麻抽出物に含有されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1種以上の追加の生物活性薬剤がピクノジェノールを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項10】
TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度で遊離脂肪酸(FFA)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
TQが合成TQである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
TQが、ニゲラ・サティバ(Nigella sativa)、オリガヌム・ブルガレ(Origanum vulgare)及びティムス・ブルガリス(Thymus vulgaris)からなる群から選択される植物供給源中に存在するか、若しくは該植物供給源から得られるか、又は発酵TQである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
TQが、ニゲラ・サティバ(NS)油中に存在する、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
NS油がコールドプレス油である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
TQ濃度が、少なくとも2%(w/w)である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度で遊離脂肪酸(FFA)をさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
FFAのTQに対する重量比が、2.33:1以下である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
FFAのTQに対する重量比が、1:1以下である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
TQと追加の生物活性薬剤の間に、抗炎症活性に関する相乗的相互作用、相乗作用がある、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
抗炎症活性が、一酸化窒素(NO)産生の阻害である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
組成物が、TQ及びアスタキサンチンを含み、TQが、コールドプレスNS油中に存在し、組成物中のTQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
組成物が、TQ及びルテインを含み、TQが、コールドプレスNS油中に存在し、組成物中のTQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
組成物が、TQ及びリコピンを含み、TQが、コールドプレスNS油中に存在し、組成物中のTQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、TQ及びCBDを含み、TQが、コールドプレスNS油中に存在し、組成物中のTQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
組成物が、TQ及びピクノジェノールを含み、TQが、コールドプレスNS油中に存在し、組成物中のTQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
炎症性疾患又は障害を治療する、阻害するか、又は予防するための方法であって、このような治療を必要とする哺乳動物対象に、請求項1~26のいずれかに記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項28】
哺乳動物対象がヒトである、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チモキノン及び他の生物活性薬剤の組合せを含む組成物に関する。より具体的には、本発明は、チモキノンを含有するニゲラ・サティバ(Nigella sativa)油とカンナビノイド、カロテノイド又は海岸松樹皮抽出物ピクノジェノール(Pycnogenol)の組合せを含む組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
ニゲラ・サティバ(NS)は、ブラッククミン、ブラックシード及びブラックキャラウェイを含む様々な他の名称によっても知られており、南西アジアの中東及び他の地域に自生する一年生の顕花植物である。古来より、この植物体の種子及び他の部分は、多くの異なる病気の治療薬として使用されてきた。より最近では、多くの状態の治療及び良好な健康状態の維持に使用するサプリメントとして、NS種子並びに種々の油及びこれら由来の他の調製物を使用することに対する関心が復活している。
【0003】
NSに関連するか、又は起因する治療特性のうち、最も広く知られているものは、抗炎症活性、抗がん活性、抗菌活性、抗真菌活性、血圧降下活性及び血糖降下活性である。
【0004】
この薬理活性薬剤の全てではないが多くは、NS種子内に含有される油中に存在する。実際に、この植物体の種子は、不揮発性油及び精油といった2つの識別可能な油画分を含有し、後者は高活性な揮発性薬剤の混合物を含有する。これらの揮発性物質のうち、最も高活性な構成成分の1つはチモキノン(TQ)であり、NS油由来組成物の薬理活性の多くは、この薬剤に起因する。
【0005】
NS油が多くの生物活性物質を含有するとの事実はあるが、NS油と関連する薬理学的効果のうちのいくつかは、前記油が天然起源の特定の他の物質及び薬剤と組み合わされる場合に相乗的に増強される得ることを、本発明者らは予想外に発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(発明の要旨)
本発明者らは、NS油及び特定の追加の生物活性物質の組合せを含む組成物が、相乗的な抗炎症特性を有することを予期せず発見した。さらに、この相乗的相互作用は、組成物のチモキノン(TQ)濃度が、本明細書中の以下で記載される通り、特定のレベルを上回る場合にのみ認められることを、本発明者らは発見した。加えて、前記相乗的相互作用は、組成物が追加の生物活性物質及びTQの組合せを含む場合にも認められ、前記TQがNS油の構成成分の1つの形態で存在しない場合でさえも認められるが、むしろTQが合成TQ又はNSではない他の属種の油及び抽出物中に存在するTQなどの異なる形態で存在する場合にも認められる。
【0007】
このため、その最も一般的な形態において、本発明は、チモキノン(TQ)及び1種以上の追加の生物活性薬剤の組合せを含む組成物に関する。好ましくは、前記生物活性薬剤は、カロテノイド、大麻関連化合物及びピクノジェノールからなる群から選択される。
【0008】
一態様において、本発明は、TQ及び1種以上カロテノイドの組合せを含む組成物に関する。好ましくは、組合せは、TQ又はカロテノイド単独のいずれかによってもたらされる生物学的効果の相乗的増強が生じるように選択される。具体的には、相乗的増強は、抗炎症活性の相乗的増強である。一実施形態において、前記相乗的増強は、TQ(NS油中に含有されるTQ又は合成TQとして提供されるTQのいずれか)と1種以上のカロテノイドの間にある、炎症メディエータである一酸化窒素(NO)産生を阻害するこれらの薬剤の能力に関する相乗的相互作用によるものである。
【0009】
このため、一態様において、本発明はチモキノン(TQ)及び1種以上のカロテノイドの組合せを含む組成物に関する。TQは、NS油中に存在する主な生物活性化合物の1つである。しかし、本発明の目的のために、本明細書中に開示されている組成物に使用されるTQは、合成TQ又は植物供給源、特にニゲラ・サティバから得られる天然TQのいずれかであってよい。本発明のこの態様に対してTQを提供するために使用されてもよい他の適当な植物属種には、(以下に限定されないが)オリガヌム・ブルガレ(Origanum vulgare)(オレガノ)及びティムス・ブルガリス(Thymus vulgaris)(タイム)が含まれる。
【0010】
天然に存在するか、又は合成カロテノイドのいずれも本発明のこの態様で使用され得るが、好ましい一実施形態において、1種以上のカロテノイドは、ルテイン、ベータ-カロテン、アスタキサンチン、リコピン、フィトエン、フィトフルエン、フコキサンチン及びゼータ-カロテンからなる群から選択される。一実施形態において、1種以上のカロテノイドはルテインを含む。別の実施形態において、カロテノイドの構成成分はベータ-カロテンを含む。さらに別の実施形態において、カロテノイドの構成成分はアスタキサンチンを含む。
【0011】
本発明の組成物を調製するために使用されるカロテノイドは、合成カロテノイド又は種々の果実及び野菜(例えば、リコピン、フィトエン、フィトフルエン及びベータ-カロテンの場合はトマト)並びに他の植物体(例えば、ルテインの場合はアフリカンマリーゴールド植物体)などの天然供給源から得られたカロテノイドのいずれかであってよい。アスタキサンチンは、その合成形態又は種々の天然供給源、とりわけ微細藻類(例えば、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis))及び酵母(例えば、キサントフィロマイセス・デンドロロウス(Xanthophyllomyces dendrorhous))の特定の属種から単離された形態及び精製された形態のいずれかで使用され得る。フコキサンチンは、ヒバマタ属(Fucus)、アミジグサ属(Dictyota)及びコンブ属(Laminaria)のものを含む種々の褐藻類などの天然供給源から得られ得る。組成物が2種以上のカロテノイドを含む実施形態において、いくつかのカロテノイドの合成バージョンと植物属種又は微生物属種由来の他のカロテノイドの組合せが使用され得る。
【0012】
別の態様において、本発明は、NS油及び大麻植物体中に存在するか、又は大麻植物体と関連する1種以上の生物活性化合物の組合せを含む組成物に関する。
【0013】
好ましくは、組合せは、NS油又は大麻由来化合物単独のいずれかによってもたらされる生物学的効果の相乗的増強が生じるように選択される。具体的には、相乗的増強は、抗炎症活性の相乗的増強である。一実施形態において、前記相乗的増強は、NS油と大麻植物体中に存在する1種以上の生物活性化合物の間にある、炎症メディエータである一酸化窒素(NO)産生を阻害するこれらの薬剤の能力に関する相乗的相互作用によるものである。
【0014】
本発明は、チモキノン(TQ)及び1種以上の大麻関連生物活性化合物の組合せを含む組成物にも関する。TQは、NS油中に存在する主な生物活性化合物の1つである。しかし、本発明の目的のために、本明細書中に開示されている組成物に使用されるTQは、合成TQ又は植物供給源、特にニゲラ・サティバから得られる天然TQのいずれかであってよい。本発明のこの態様に対してTQを提供するために使用されてもよい他の適当な植物属種には、(以下に限定されないが)オリガヌム・ブルガレ(オレガノ)及びティムス・ブルガリス(タイム)が含まれる。
【0015】
好ましい一実施形態において、組成物中のTQ濃度は1.5%(w/w)以上である。
【0016】
本発明のこの態様の好ましい一実施形態において、1種以上の大麻由来生物活性化合物はカンナビノイドである。
【0017】
特に好ましい一実施形態において、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)である。CBDは、本発明の組成物にCBD油の形態で好都合に組み込まれる。しかし、例えば、本発明のこの態様の好ましい一実施形態に使用されているCBDの形態である大麻抽出物を含む、CBDの他の物理的形態は、本組成物を調製するために使用されてもよい。
【0018】
なお、簡潔にする目的で、CBD、他のカンナビノイド及び他の大麻関連化合物は、「大麻植物体中に存在する生物活性化合物」、「大麻関連化合物」、「大麻由来生物活性化合物」などとして本明細書で称されるが、本発明の組成物を調製するために使用される前記化合物は、必ずしも大麻植物体又は他の任意の植物属種に由来するものではない。このため、好ましい一実施形態において、カンナビノイド及び/又は他の大麻関連化合物は、アサ属(cannabis genus)の属種(例えば、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)又はカンナビス・インディカ(Cannabis indica))から抽出されるか、又は単離される。しかし、他の好ましい実施形態において、カンナビノイド及び他の大麻関連活性化合物は、合成起源であってよい。
【0019】
別の態様において、本発明は、NS油及び「ピクノジェノール」として知られる生物活性薬剤の組合せを含む組成物に関する。ピクノジェノールは、海岸松(ピヌス・ピナスター(Pinus pinaster))の樹皮抽出物に由来する栄養補助食品であり、プロシアニジンを70%含有するように標準化されている。TQは、NS油中に存在する主な生物活性化合物の1つである。しかし、本発明の目的のために、本明細書中に開示されている組成物に使用されるTQは、合成TQ又は植物供給源、特にニゲラ・サティバから得られる天然TQのいずれかであってよい。本発明のこの態様に対してTQを提供するために使用されてもよい他の適当な植物属種には、(以下に限定されないが)オリガヌム・ブルガレ(オレガノ)及びティムス・ブルガリス(タイム)が含まれる。
【0020】
好ましい一実施形態において、組成物中のTQ濃度は1.5%(w/w)以上である。
【0021】
TQ及び本明細書中の上記で開示された追加の生物活性薬剤を含む組成物のいずれかの好ましい一実施形態において、組成物中のTQ濃度は1.5%(w/w)以上である。別の好ましい実施形態において、組成物中のTQ濃度は2%(w/w)以上である。別の好ましい実施形態において、組成物中のTQ濃度は3%(w/w)以上である。さらに好ましい実施形態において、組成物中のTQ濃度は3%(w/w)である。また他の好ましい実施形態において、TQ濃度は3%(w/w)を上回ってよい。
【0022】
TQ及び本明細書中の上記で開示された追加の生物活性薬剤を含む組成物のいずれかの好ましい一実施形態において、TQは合成TQである。別の好ましい実施形態において、TQは、ニゲラ・サティバ、オリガヌム・ブルガレ及びティムス・ブルガリスからなる群から選択される植物供給源中に存在するか、若しくは該植物供給源から得られるか、又は発酵TQである。特に好ましい一実施形態において、TQは、ニゲラ・サティバ(NS)油中に存在し、最も好ましくは、コールドプレスNS油中に存在する。本発明の目的のため、NS油は、TQ濃度が少なくとも1.5%(w/w)であり、遊離脂肪酸(FFA)含有量が3.5%(w/w)以下である。適当なコールドプレスNS油の説明、その産生方法は、WO2019180719として公開された共有の国際特許出願に認められ、これらの内容は、それらの全体が本明細書に組み込まれている。
【0023】
いくつかの実施形態において、NS油のTQ濃度は、上記に開示された通り、少なくとも1.5%(w/w)である。他の実施形態において、TQ濃度は少なくとも2%(w/w)である。さらに本明細書中の上記で開示された通り、本発明を実施するために使用され得るNS油のFFA濃度は3.5%(w/w)以下であってよい。しかし、いくつかの好ましい実施形態において、FFA濃度は2%以下であってよい。特に好ましい一実施形態において、FFA濃度は1.7%(w/w)である。理論に束縛されるものではないが、NS油と本明細書中の上記で開示された追加の生物活性薬剤の間に認められる相乗的相互作用は、使用されたNS油が前述の高いTQ濃度及び低いFFA濃度を特徴とする場合にのみ認められると、本発明者らは考えている。このため、好ましい一実施形態において、FFAのTQに対する重量比は、2.33:1以下である。別の好ましい実施形態において、FFAのTQに対する重量比は、1:1以下である。またさらに好ましい実施形態において、FFAのTQに対する重量比は、約0.57:1である。
【0024】
好ましくは、上記に開示された本発明の組成物は、前記TQと前記薬剤の間にある、抗炎症活性に関する相乗作用を特徴とする。「相乗的相互作用」という用語は、TQ及び他の薬剤の組合せによる生物学的効果(この場合は抗炎症活性)であって、単独で試験された場合に各構成成分(すなわち、TQ及び追加の薬剤)によって生じる効果の合計を数字的に上回る生物学的効果をもたらす相互作用の種類を指すために本明細書で使用される。好ましい実施形態において、本発明で相乗的相互作用がみられる抗炎症活性は、一酸化窒素(NO)産生の阻害である。
【0025】
別の態様において、本発明は、炎症性疾患又は障害を治療する、阻害するか、又は予防するための方法であって、このような治療を必要とする哺乳動物対象に、本明細書で開示された組成物のいずれかを投与することを含む、方法を提供する。また、この方法は、その範囲内に、本質的には完全な炎症ではないが、とりわけ、炎症的態様を特徴とする疾患及び障害の炎症的態様の治療、予防及び/又は阻害も含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】NO産生に対するTG及びアスタキサンチンの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図2】NO産生に対するTG及びルテインの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図3】NO産生に対するTG及びベータ-カロテンの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図4】NO産生に対するTG及びアスタキサンチンの組合せの阻害効果に関する追加試験の結果を表した図である。
【
図5】NO産生に対するTG及びルテインの組合せの阻害効果に関する追加試験の結果を表した図である。
【
図6】NO産生に対するTG及びベータ-カロテンの組合せの阻害効果に関する追加試験の結果を表した図である。
【
図7】NO産生に対するTG及びリコピンの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図8】NO産生に対するTG及びCBDの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図9】NO産生に対するTG及びCBDの組合せの阻害効果に関する追加試験の結果を表した図である。
【
図10】NO産生に対するTG及びピクノジェノールの組合せの阻害効果を示す結果をグラフで表した図である。
【
図11】高濃度のFFAを有するNS油とアスタキサンチンの組合せの効果が試験された比較例の結果をグラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書中の上記で開示された通り、TQ及び追加の生物活性薬剤の組合せを含む多くの異なる抗炎症組成物は、本発明の範囲内に含まれる。これらは、(もちろん、限定されるものではないが)以下の組成物を含む。
【0028】
TQ及びアスタキサンチンを含む組成物であって、前記TQが、コールドプレスNS油中に存在し、前記組成物中の前記TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、前記組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、組成物。この組成物の好ましい一実施形態において、TQ濃度は約3%(w/w)であり、FFA濃度は1.7%であり、アスタキサンチン濃度は約15%(w/w)である。
【0029】
TQ及びルテインを含む組成物であって、前記TQが、コールドプレスNS油中に存在し、前記組成物中の前記TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、前記組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、組成物。この組成物の好ましい一実施形態において、TQ濃度は3%(w/w)であり、FFA濃度は1.7%である。
【0030】
TQ及びリコピンを含む組成物であって、前記TQが、コールドプレスNS油中に存在し、前記組成物中の前記TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、前記組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、組成物。この組成物の好ましい一実施形態において、TQ濃度は3%(w/w)であり、FFA濃度は1.7%である。
【0031】
TQ及びCBDを含む組成物であって、前記TQが、コールドプレスNS油中に存在し、前記組成物中の前記TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、前記組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、組成物。この組成物の好ましい一実施形態において、TQ濃度は3%(w/w)であり、FFA濃度は1.7%である。
【0032】
TQ及びピクノジェノールを含む組成物であって、前記TQが、コールドプレスNS油中に存在し、前記組成物中の前記TQ濃度が、少なくとも1.5%(w/w)であり、前記組成物が、3.5%(w/w)以下の濃度でFFAをさらに含む、組成物。この組成物の好ましい一実施形態において、TQ濃度は3%(w/w)であり、FFA濃度は1.7%である。
【0033】
本発明者らは、TQ及びFFA濃度が、本明細書で規定された限度内に収まるように管理されるという条件で、前記TQと追加の生物活性薬剤の間にある(抗炎症活性に関する)相乗的相互作用は、極めて広範囲の相互の重量比にわたってみられることを発見した。
【0034】
このため、本発明の一実施形態において、追加の生物活性薬剤はアスタキサンチンであり、TQの前記アスタキサンチンに対する重量比は、1:0.1~1:500の範囲内であり、好ましくは1:1~1:200の範囲内であり、より好ましくは1:3~1:100の範囲内である。この比の好ましい値には、1:3、1:5、1:40及び1:60が含まれる。
【0035】
本発明の別の実施形態において、追加の生物活性薬剤はルテインであり、TQの前記ルテインに対する重量比は、1:0.01~1:500の範囲内であり、好ましくは1:0.05~1:200の範囲内である。
【0036】
同様に、他のカロテノイド(リコピン及びベータ-カロテンなど)では、TQと前記カロテノイドの間の重量比は、1:0.01~1:500の範囲内である。
【0037】
本発明の別の実施形態において、追加の生物活性薬剤はCBDであり、TQの前記CBDに対する重量比は、1:0.01~1:100の範囲内であり、好ましくは1:0.1~1:50の範囲内である。
【0038】
本発明の別の実施形態において、追加の生物活性薬剤はピクノジェノールであり、TQの前記ピクノジェノールに対する重量比は、1:0.1~1:100,000の範囲内であり、好ましくは1:10~1:10,000の範囲内である。
【0039】
本明細書中の上記で開示された通り、本発明の組成物は、このような治療を必要とする哺乳動物対象における炎症性疾患、状態、様相若しくは障害を治療する、阻害するか、又は予防する方法において使用され得る。
【0040】
好ましい一実施形態において、前記炎症性疾患、状態、様相又は障害は、少なくとも一部が炎症メディエータである一酸化窒素(NO)によって媒介されるものである。
【0041】
本発明の方法を用いて治療され得るか、阻害され得るか、又は予防され得るこのようなNO関連炎症性状態の非限定的な例には、変形性関節症、関節リウマチ、喘息、鼻炎及び他の上気道の炎症性状態、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、心血管の炎症、再灌流傷害、腹膜炎、肝硬変、炎症性腸疾患、乾癬を含む炎症性皮膚障害、水胞性疾患、湿疹、皮膚におけるアレルギー反応、眼の炎症性状態、網膜症、敗血症などの感染由来の炎症性状態、外傷及び他の急性炎症性状態、慢性炎症性状態、種々の組織、器官及び器官系の全てにおけるアレルギー及び過敏反応が含まれる。多くの他のこのような炎症性状態も、本発明の方法を使用して治療され得るか、又は予防され得るため、特許請求されている本発明の範囲内である。
【0042】
本発明の方法によって治療され得るか、阻害され得るか、又は予防され得る、本質的には完全な炎症ではない状態及び障害の例には、(以下に限定されないが)良性の腫瘍性状態、悪性の腫瘍性状態、アテローム性動脈硬化症を含む心血管疾患、腎障害、代謝障害(例えば、糖尿病)などが含まれる。
【0043】
上記で開示された治療の方法における典型的な1日量は、500mgの組成物であって、そのうちの15mgがTQである組成物を含有する単一のカプセルである。TQとカロテノイドの組合せの場合、カロテノイドの1日量は、典型的には1~100mgの範囲内である。
【0044】
別の態様において、本発明は、本明細書中の上記で開示され、本明細書中の以下で主張される組成物であって、炎症性疾患、好ましくは、少なくとも一部が炎症メディエータである一酸化窒素(NO)によって媒介され、(以下に限定されないが)上記で列挙された疾患及び状態を含む炎症性疾患の治療、阻害又は予防において使用するための組成物のいずれかに関する。
【0045】
さらなる態様において、本発明は、炎症性疾患、好ましくは、少なくとも一部が炎症メディエータである一酸化窒素(NO)によって媒介され、(以下に限定されないが)上記で列挙された疾患及び状態を含む炎症性疾患の治療、阻害又は予防のための医薬の製造における本明細書中の上記で開示された組成物のいずれかの使用にも関する。
【0046】
本発明のNS油及び追加の生物活性薬剤の種々の組合せは、単一の組成物として投与されてよい。他の実施形態において、NS油及び追加の薬剤(すなわち、カロテノイド又は大麻関連化合物)は、異なる製剤で個別に投与されてよい。2つの構成成分のこのような個別の投与は、同時に又は(いずれかの順序で)連続してのいずれかで行われてよい。
【0047】
本発明の組成物は、(組成物が2つの異なる構成成分の組合せを含有していようと、前記構成成分が個別に投与されようと)全身的に又は局所的に投与され得る。好ましい一実施形態において、前記組成物は経口投与され、この目的のために、前記組成物は、カプセル、カプレット、錠剤、ハードキャンディー、グミ、液剤、味覚をマスキングした液剤、シロップ剤などとして製剤化されてよい。
【0048】
別の実施形態において、組成物は、局所投与のために、例えば、皮膚又は外部粘膜への塗布のためのクリーム剤、軟膏若しくはローション剤などとして又は直腸若しくは膣内投与のための膣坐剤として製剤化されてよい。
【0049】
本発明における使用のための適当な製剤のさらなる詳細は、当技術分野の当業者には周知であり、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co、Easton、Pa、USA(1980)のような標準的参考文献から得られることがある。
【0050】
以下の非限定的実施例は、本発明の組成物のうちのいくつかの抗炎症性効果を例証する。これらの実施例は、前記組成物中のNS油と他の生物活性構成成分の間の相乗的相互作用も実証する。
【実施例】
【0051】
実施例1
NS油及びルテイン、ベータ-カロテン、リコピン及びアスタキサンチンといったカロテノイドの種々の組合せによる一酸化窒素(NO)産生の阻害
【0052】
本試験の目的は、LPSで刺激された培養マウスマクロファージによる炎症メディエータであるNOのインビトロ産生に対するNS油及びカロテノイドの異なる組合せの効果を検討することであった。
【0053】
方法:
マクロファージ単離及び細胞培養-腹腔マクロファージを、収集4日前にチオグリコレートブロス(4%)1.5mLの腹腔内注射を行った6~8週齢の雄ICRマウス(Harlan、Israel)の腹膜腔から回収した。腹腔マクロファージをPBSで3回洗浄し、90~95%の純度で得た。腹腔マクロファージ及びマウスマクロファージ細胞株RAW264.7を、96-ウェルプレート(1×106細胞/ウェル)中の10%FCS、2mM L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Beit-Haemek、Israel)を含有するRPMI1640培地で、37℃、5%CO2雰囲気にて培養した。細胞を、NS油酸及び/又は以下のカロテノイド:アスタキサンチン、ルテイン及びベータ-カロテンのうちの1種以上の存在下又は非存在下において、LPS(0.1~1μg/mL)で刺激した。各活性薬剤の以下のストック溶液を使用して、試験用の種々の希釈液を調製した:
3%チモキノン及び1.7%遊離脂肪酸を含有するコールドプレスNS油(N.S.Oils、Israel)
20%ルテイン(Lycored Ltd.、Israel)
植物油中30%ベータ-カロテン(Lycored Ltd.、Israel)
10%アスタキサンチンを含有する微細藻類から抽出されたアスタキサンチン含油樹脂(Algatech、Israel)
リコピン(Lycored Ltd.、Israelから入手されたLyc-O-Matoとして知られている市販の製品中に濃度6.35%で存在する)
カロテノイドをDMSOに溶解した(最終濃度5mM)。混合物をボルテックスで撹拌し、37℃の水浴槽中で(振盪しつつ)10分間インキュベートし、その後、超音波処理槽で毎回15秒間にて3回超音波処理した。このストック溶液を使用し、その適切な容量を加温した培養培地に加えることで、望ましい濃度に調製した。
【0054】
適切な容量のDMSO(0.1~0.2%)を対照試験管に加え、その対照に対する各試験管中のNO産生の阻害率を算出した。
【0055】
NO産生アッセイ-細胞培養液の上清中のNOレベルは、Green,L.C.、Wagner,D.A.、Glogowski,J.、Skipper,P.L.、Wishnok,J.S.及びTannenbaum,S.R.(1982)Anal Biochem.126:131~138頁に記載されている通り、Griess試薬及び基準として亜硝酸ナトリウムを使用して、亜硝酸塩レベルを分析することによって決定された。
【0056】
結果:
(1)第1試験:
図1の左上のパネルは、NO産生のこのモデルにおいて、試験した2つの濃度(0.0015及び0.0030μg/mL)のNS油(この図及び続く図のうちのいくつかにおける説明文では「Ketzah」)は、いずれの場合においても対照値の5%未満と極めて低レベルの抗炎症活性を呈したことを示す。
【0057】
図1の右上のパネルは、アスタキサンチン(濃度0.298及び0.596μg/mL)は、NS油よりも活性であり、最大阻害の約20~25%のNO産生の阻害を生じることを示す。
【0058】
図1の中央のパネルは、アスタキサンチン0.298μg/mL及びNS油0.0015又は0.0030μg/mLのいずれかの組合せに関する結果を示す。この図で認められ得る通り、いずれの組合せもNO産生の相加的を上回る(すなわち、相乗的な)阻害を生じた。(組合せ中の2つの構成成分の予測される相加値は、グラフ中の各棒の陰影部分の上端にある横線によって表される。)
同様に、
図1の下のパネルに示された通り、より高用量のアスタキサンチン(0.596μg/mL)は、試験されたいずれの用量のNS油とも相乗的に相互作用することが認められた。
【0059】
ここで
図2に示された結果に目を向けると、上のグラフは、2つの異なる濃度のNS油(0.0015及び0.0030μg/mL)によるNO産生物の阻害に関する結果を示す。このグラフに示される通り、これらの濃度は、NO産生の測定可能ないかなる阻害ももたらさなかった。
【0060】
中央のグラフは、カロテノイドであるルテイン、本実験のためのルテインとして濃度80%の結晶性ルテインを用いて、濃度0.284μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された濃度のNS油と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度のルテイン単独では、測定可能な程度のいかなるNO阻害も生じなかったが、NS油との組合せでは(いずれの濃度においても)、有意な阻害を生じたことが認められ得る。この組合せ(すなわち、ルテイン及びNS油)の2つの構成成分のいずれも、単独で試験された場合には全く阻害を生じなかったことから、これは明らかに極めて顕著な相乗効果である。
【0061】
下のグラフは、カロテノイドであるルテインを用いて、濃度0.568μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された濃度(0.0015及び0.0030μg/mL)のNS油と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度のルテイン単独では、低レベルのNO阻害(<1-%)のみを生じたが、NS油との組合せでは(いずれの濃度においても)、予測される相加値(グラフの陰影部分の上縁にある横線によって表される)よりもはるかに大きい、有意な阻害を生じたことが認められ得る。この結果は、試験された濃度におけるルテインとNS油の間の顕著な相乗作用を明らかに示唆する。
【0062】
図3は、上のグラフにおいて、濃度0.0015及び0.0030μg/mLのNS油を単独で使用して得られた結果を示す。いずれの濃度においてもNO産生の阻害は認められなかった。
【0063】
中央のグラフは、カロテノイドであるベータ-カロテンを用いて、濃度0.269μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された濃度のNS油と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度のベータ-カロテン単独では、低レベルのNO阻害(<10%)を生じたことが認められ得る。しかし、NS油と組み合わせて使用された場合(いずれの濃度においても)、NO阻害量の極めて顕著な増加が認められ、これはNS油とベータ-カロテンの間の相乗的相互作用が極めて高い程度であることを示唆する。
【0064】
下のグラフは、ベータ-カロテンを用いて、濃度0.538μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された濃度(0.0015及び0.0030μg/mL)のNS油と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度のベータ-カロテン単独では、20%をわずかに下回る中レベルのNO阻害を生じたことが認められ得る。しかし、NS油と組み合わせて使用された場合(いずれの濃度においても)、阻害の程度が大幅に増強されていることが認められた(ベータ-カロテン単独によって生じた場合の約2倍)。この結果は、試験された濃度におけるベータ-カロテンとNS油の間の顕著な相乗作用を明らかに示唆する。
【0065】
(2)第2試験:
実験の第2セットは、第1試験に関する上記と同じ方法を使用して実施された。この第2セットにおいて、NS油と追加のカロテノイド-リコピン-の組合せも試験された。
【0066】
図4は、NS油及びアスタキサンチンの組合せに関する結果を示す。このため、この図の上部のグラフには、最終濃度0.298μg/mLで使用されたアスタキサンチンと最終濃度0.0015μg/mL(左棒)又は0.005μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の下部のグラフには、最終濃度0.596μg/mLで使用されたアスタキサンチンと最終濃度0.0030μg/mL(左棒)又は0.015μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。このグラフ(及び後に続く同様の棒グラフ)の棒のそれぞれは、3つの積み上げられたセグメント:NS油単独で処理した後のNO産生の阻害率の程度を示す下のセグメント、アスタキサンチン単独による阻害率を示す中央のセグメント、表示された濃度におけるNS油及びアスタキサンチンの組合せによって生じた阻害率を示す上端のセグメントを含有する。2つの活性薬剤の間に(相乗的ではなく)相加的相互作用のみ存在する場合、
図4の棒の上端は、中央のセグメントの上端と同じ高さとなることを理解されたい。すなわち、3番目(上端)のセグメントはみられない。しかし、2つの構成成分の間の相乗的相互作用の場合、2つの活性な構成成分の組合せによるNO阻害率は、個別の各阻害率の合計を上回り、このため、相加効果を上回る高さと同等である3番目(上端)のセグメントがみられる。この図の上及び下のグラフにプロットされた結果のそれぞれにおいて、上端のセグメントは存在しており、これはNS油とアスタキサンチンの間の相加的相互作用を上回る、すなわち相乗的相互作用を示唆することに注目するべきである。
【0067】
図4の上のグラフは、NO産生のこのモデルにおいて、試験された2つのTQ濃度(0.0015及び0.0050μg/mL)のNS油単独(各棒の下のセグメント)では、それぞれ2.67%及び21.57%と比較的低レベルの抗炎症活性を生じたことを示す。同様に、アスタキサンチン0.298μg/mLは、単独で使用された場合、NO産生のわずかな阻害を生じた(19.05%)。しかし、アスタキサンチン0.298μg/mL及び(いずれの濃度においても)NS油が、組み合わせて使用された場合、得られた加算結果を上回る明らかな相乗効果が認められた(各棒の上のセグメント)。組合せがより高濃度のアスタキサンチン(0.596μg/mL、
図4の下のグラフ)を含有する場合にも同様の相乗効果がみられた。
【0068】
図5は、NS油及びルテインの組合せに関する結果を示す。このため、この図の上部のグラフには、最終濃度0.284μg/mLで使用されたルテインと最終濃度0.0015μg/mL(左棒)又は0.005μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の下部のグラフには、最終濃度0.568μg/mLで使用されたルテインと最終濃度0.0030μg/mL(左棒)又は0.015μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の上及び下のグラフにプロットされた結果のそれぞれにおいて、上端(3番目)の棒のセグメントは存在しており、これは(本明細書中の上記で説明された通り)NS油とルテインの間の相加的相互作用を上回る、すなわち相乗的相互作用を示唆することが認められ得る。
【0069】
図5の上のグラフは、NO産生のこのモデルにおいて、試験された2つのTQ濃度(0.0015及び0.0050μg/mL)のNS油単独(各棒の下のセグメント)では、それぞれ9.69%及び21.57%と比較的低レベルの抗炎症活性を生じたことを示す。同様に、ルテイン0.284μg/mLは、単独で使用された場合、NO産生の低レベルの阻害を生じた(6.96%)。しかし、ルテイン0.284μg/mL及び(いずれの濃度においても)NS油が、組み合わせて使用された場合、得られた加算結果を上回る明らかな相乗効果が認められた(各棒の上のセグメント)。組合せがより高濃度のルテイン(0.568μg/mL、
図5の下のグラフ)を、濃度0.0030及び0.0150μg/mLのTQを有するNS油と共に含有する場合にも同様の相乗効果がみられた。
【0070】
図6は、NS油及びベータ-カロテンの組合せに関する結果を示す。このため、この図の上部のグラフには、最終濃度0.269μg/mLで使用されたベータ-カロテンと最終濃度0.0015μg/mL(左棒)又は0.005μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の下部のグラフには、最終濃度0.538μg/mLで使用されたベータ-カロテンと最終濃度0.0030μg/mL(左棒)又は0.015μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の上及び下のグラフにプロットされた結果のそれぞれにおいて、上端(3番目)の棒のセグメントは存在しており、これは(本明細書中の上記で説明された通り)NS油とベータ-カロテンの間の相加的相互作用を上回る、すなわち相乗的相互作用を示唆することが認められ得る。
【0071】
図6の上のグラフは、NO産生のこのモデルにおいて、試験された2つのTQ濃度(0.0015及び0.0050μg/mL)のNS油単独(各棒の下のセグメント)では、それぞれ9.69%及び21.57%と比較的低レベルの抗炎症活性を生じたことを示す。同様に、ベータ-カロテン0.269μg/mLは、単独で使用された場合、NO産生の低レベルの阻害を生じた(3.89%)。しかし、ベータ-カロテン0.269μg/mL及び(いずれの濃度においても)NS油が、組み合わせて使用された場合、得られた加算結果を上回る明らかな相乗効果が認められた(各棒の上のセグメント)。組合せがより高濃度のベータカロテン(0.538μg/mL、
図6の下のグラフ)を、濃度0.0030及び0.0150μg/mLのTQを有するNS油と共に含有する場合にも同様の相乗効果がみられた。
【0072】
図7は、NS油及びリコピンの組合せに関する結果を示す。このため、この図の上部のグラフには、最終濃度0.35μg/mLで使用されたリコピンと最終濃度0.0015μg/mL(左棒)又は0.005μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の下部のグラフには、最終濃度0.75μg/mLで使用されたリコピンと最終濃度0.0030μg/mL(左棒)又は0.015μg/mL(右棒)のいずれかでTQを含有するNS油の組合せに関する結果が示されている。この図の上及び下のグラフにプロットされた結果のそれぞれにおいて、上端(3番目)の棒のセグメントは存在しており、これは(本明細書中の上記で説明された通り)NS油とリコピンの間の相加的相互作用を上回る、すなわち相乗的相互作用を示唆することが認められ得る。
【0073】
図7の上のグラフは、NO産生のこのモデルにおいて、試験された2つのTQ濃度(0.0015及び0.0050μg/mL)のNS油単独(各棒の下のセグメント)では、それぞれ2.67%及び21.57%と比較的低レベルの抗炎症活性を生じたことを示す。同様に、リコピン0.35μg/mLは、単独で使用された場合、NO産生の低レベルの阻害を生じた(13.46%)。しかし、リコピン0.35μg/mL及び(いずれの濃度においても)NS油が、組み合わせて使用された場合、得られた相加的な結果を上回る明らかな相乗効果が認められた(各棒の上のセグメント)。組合せがより高濃度のリコピン(0.75μg/mL、
図7の下のグラフ)を、濃度0.0030及び0.0150μg/mLのTQを有するNS油と共に含有する場合にも同様の相乗効果がみられた。
【0074】
実施例2
NS油及びCBDの種々の組合せによる一酸化窒素(NO)産生の阻害
【0075】
本試験の目的は、LPSで刺激された培養マウスマクロファージによる炎症メディエータであるNOのインビトロ産生に対するNS油及びCBDの異なる組合せの効果を検討することであった。
【0076】
方法:
使用された方法は、実施例1に記載されたものと同じであった。CBDは、RAD Extracts USAから入手した15%CBDを含有する大麻油の形態で提供された。
【0077】
結果:
(1)第1試験:
図8の上のグラフは、希釈度が1:20,000及び1:10,000のNS油を単独で使用して得られた結果を示す。これらの希釈度のいずれにおいても、NO産生の低レベルの阻害(<10%)が認められた。
【0078】
中央のグラフは、CBDを用いて、濃度0.0075μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された希釈度のNS油と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度のCBD単独による処理では、検出可能なレベルのNO阻害を生じなかったことが認められ得る。しかし、NS油と組み合わせて使用された場合(いずれの希釈度においても)、NO阻害量の極めて顕著な増加が認められ、これはNS油とCBDの間の相乗的相互作用が極めて高い程度であることを示唆する。
【0079】
下のグラフは、CBDを用いて、濃度0.01μg/mLで単独で使用された場合及び2つの前述された希釈度のNS油(1:20,000及び1:10,000)と組み合わせて使用された場合に得られたNO阻害に関する結果を示す。これらの結果から、この濃度では、CBD単独ではあるものの、10%未満の低レベルのNO阻害を生じたことが認められ得る。しかし、NS油と組み合わせて使用された場合(いずれの希釈度においても)、阻害の程度が増強されていることが認められた。この結果は、試験された濃度におけるCBDとNS油の間の顕著な相乗作用を明らかに示唆する。
【0080】
(2)第2試験:
追加の試験は、上記で報告された最初の試験による発見を確認することを目的としており、本明細書中の上記で記載された同じ方法及び材料を使用して実施された。CBD(3つの異なる濃度)及びNS(4つの異なるTQ濃度)の組合せが試験され、結果はセグメント化された棒グラフの形式で
図9に示された。本明細書中の上記で説明された通り、実施例1において、各棒グラフの下のセグメントは、NS油単独によって生じたNO産生の阻害率を表し、中央のセグメントは、CBD単独によって生じた阻害率を示し、上のセグメントは、NS油及びCBD両方の組合せによって生じた相加的を上回る(すなわち、相乗的な)阻害を示す。
【0081】
図9の上のグラフは、CBD0.005μg/mLを含む組成物に関するデータを示す。このグラフから認められ得る通り、NS油単独(下のセグメント)及びCBD単独(中央のセグメント)では、いずれもNO産生の測定可能な阻害を生じた。しかし、試験された各TQ濃度において、TQ及びCBDの組合せを含む組成物は、相加的を上回る(すなわち、相乗的な)阻害を生じた(各グラフの上のセグメント)。より高濃度(0.0075μg/mL及び0.01μg/mL、それぞれ中央及び下のグラフ)のCBDが使用された場合にも同様の結果がみられた。
【0082】
実施例3
NS油及びピクノジェノールの種々の組合せによる一酸化窒素(NO)産生の阻害
【0083】
ピクノジェノールは、海岸松樹皮の抽出物に由来する栄養補助食品であり、プロシアニジンを70%含有するように標準化されている。いくつかの異なる状態の予防及び/又は治療のためのピクノジェノールの使用が提案されてきた。本試験の目的は、LPSで刺激された培養マウスマクロファージによる炎症メディエータであるNOのインビトロ産生に対するNS油及びピクノジェノールの異なる組合せの効果を検討することであった。
【0084】
方法:
使用された方法は、実施例1に記載されたものと同じであった。使用されたピクノジェノールは、Biolandesから入手した海岸松抽出物であった(カタログ番号F0400)。
【0085】
結果:
いずれも個別に使用された場合及び組み合わせて使用された場合のNO産生に対するピクノジェノール100μg/mL及び3つの異なる希釈度のNS油(濃度0.0015、0.003及び0.015μg/mLのTQを有する)の効果が試験された。この結果は、左から右に、それぞれ濃度0.0015、0.003及び0.015μg/mLのTQに対応する3つのセグメント化された(すなわち、積み上げ式)棒グラフの形式で
図10に示されている。
【0086】
図10に示された結果から、試験された3つのTQ濃度のそれぞれにおけるNS油単独(各グラフの下部のセグメント)では、NO産生の低レベルの阻害(1~3%)を生じたことは明らかである。試験された濃度のピクノジェノールは、NO産生の中等度の阻害を生じた(各グラフの中央のセグメント、18%)。しかし、ピクノジェノール100μg/mLと3つの希釈度のそれぞれにおけるNSの組合せは、それぞれTQ0.0015、0.003及び0.015μg/mLを含む組合せで認められる追加の9%、19%及び22%の阻害(各棒の上のセグメント)によって証明される通り、予測された相加値を上回るNO産生の阻害を生じた。
【0087】
実施例4
比較例:一酸化窒素(NO)産生の阻害に関する高FFAのNS油とアスタキサンチンの間の非相乗的相互作用
【0088】
選択されたNS油が、TQ濃度が高く(3%)、遊離脂肪酸(FFA)濃度が低い(1.7%)コールドプレス油である場合、本明細書中の上記の先行する実施例で報告されたNS油と他の生物活性薬剤の間の相乗的相互作用が認められた。理論に束縛されるものではないが、本発明者らは、使用されたNS油が前述の高TQ濃度及び低FFA濃度を特徴とする場合のみ、前記相乗的相互作用が得られると考えている。本比較試験は、アスタキサンチン及び比較的TQ濃度が低く(1.15%)、比較的FFA濃度が高い(5%)コールドプレスNS油の組合せによる抗炎症活性を測定することによって、この仮説を検討するために実施された。
【0089】
方法:
使用された方法及び材料は、この試験で使用されたコールドプレスNS油を除いて、実施例1に記載されたものと同じであった。この油は、Amazing Herbsから入手され、以下の組成を有していた:
【0090】
【0091】
結果:
NS油の2つの希釈液(濃度0.0015μg/mLのTQを有するもの及び濃度0.0030μg/mLのTQを有する他のもの)及び1つの濃度のアスタキサンチン(0.298μg/mL)に関して得られたNO産生の阻害率の結果は、以下の表に要約されている:
NO産生の阻害:
【0092】
【0093】
この表から、いずれの高FFAのNS油希釈液も、単独で使用された場合、NO産生の阻害を全く生じなかったことが認められ得る。なお、これらの希釈液のTQ濃度は、実施例1で試験された低FFA油のTQ濃度と同じであり、NO産生を阻害することが見出された(
図1参照)。しかし、アスタキサンチン単独では、NO産生の有意な阻害を生じた(約20%阻害)。この試験において、NS油単独では不活性であるため、この油とアスタキサンチンの組合せによって生じた阻害の予測される相加値は、アスタキサンチン単独で得られた値と同じであるはずである(上の表参照)。しかし、この組合せから得られた実際の結果は、実際には、この予測された相加的な結果よりも低かった(濃度0.0015及び0.003μg/mLのTQにおいてそれぞれ5.60%及び9.81%未満)。
【0094】
【0095】
我々は、これらの結果から、希釈液を調製するために使用されたNS油が、比較的TQ濃度が低く(すなわち、1.15%)、比較的FFA濃度が高い(すなわち、5%)ものである場合、前記NS油とアスタキサンチンなどの他の活性薬剤の間に相乗的な抗炎症性相互作用が全くないと結論付けることができる。
【0096】
以下の配合例は、本発明の組成物を含有するいくつかの特定の投与剤形を例証する。これらの例は、単に例示的な目的のためのものであり、いかなる点においても特許請求の範囲に記載された発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0097】
配合例1
アスタキサンチン及びNS油の組合せを含有するソフトゲルカプセル
1.1 主な有効成分:
アスタキサンチン 5mg
NS油(TQ3%) 500mg
他の成分:
修飾タピオカデンプン
ベニバナ油
グリセリン
精製水
アナトー
1.2 主な有効成分:
アスタキサンチン 5mg
NS油(TQ3%) 33mg
他の成分:
修飾タピオカデンプン
ベニバナ油
グリセリン
精製水
アナトー
配合例2
ルテイン及びNS油の組合せを含有するソフトゲルカプセル
2.1 主な有効成分:
ルテイン 20mg
NS油(TQ3%) 33mg
他の成分:
修飾タピオカデンプン
ベニバナ油
グリセリン
精製水
アナトー
2.2 主な有効成分:
ルテイン 20mg
NS油(TQ3%) 500mg
他の成分:
修飾タピオカデンプン
ベニバナ油
グリセリン
精製水
アナトー
【国際調査報告】