(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】栄養障害型表皮水疱症の治療に使用されるオリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20220419BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20220419BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20220419BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20220419BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220419BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220419BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220419BHJP
C07K 14/78 20060101ALN20220419BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/86 Z
A61K31/7105
A61P17/00
A61K31/7125
A61K31/712
A61K48/00
A61K47/32
A61K9/06
C07K14/78
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021550687
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020020541
(87)【国際公開番号】W WO2020176904
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521381901
【氏名又は名称】フェニシス セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スウィルデンズ, ジム
(72)【発明者】
【氏名】ハイスマ, エリザベス マリーン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076CC18
4C076EE09A
4C076FF68
4C084AA13
4C084MA27
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA891
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA27
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA89
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
(57)【要約】
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)及びヒト疾患の治療におけるAONの使用に関する。特に、本発明は栄養障害型表皮水疱症(DEB)の治療に適したAONに関する。より詳しくは、本発明はヒトCOL7A1前駆体mRNAからエクソン105スキッピングを誘導することができるAON及びエクソン105スキッピング効率において、従来技術で既知のAONより優れているAONに関する。さらに、本発明はCOL7A1遺伝子のエクソン105に突然変異を保有する患者のDEBの治療におけるこれら新規のAONの使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトコラーゲンVII型α1鎖(COL7A1)mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、前記mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)であって、
前記AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58、59、5~41、43、45、47、49、50及び53~57からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、前記AON。
【請求項2】
前記AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、請求項1に記載のAON。
【請求項3】
前記AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、請求項1に記載のAON。
【請求項4】
ヒトCOL7A1mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、前記mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONであって、
前記AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58、59、5~41、43、45、47、49、50及び53~57のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、前記AON。
【請求項5】
前記AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、請求項4に記載のAON。
【請求項6】
前記AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13に対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、請求項4に記載のAON。
【請求項7】
前記AONがオリゴリボヌクレオチドである、請求項1~6のいずれか1項に記載のAON。
【請求項8】
前記AONが少なくとも1つの非天然型結合修飾を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のAON。
【請求項9】
前記非天然型結合修飾がホスホロチオエート結合である、請求項8に記載のAON。
【請求項10】
前記糖部位の2’位、3’位及び/または5’位で1つまたは2つ置換している少なくとも1つのヌクレオチドを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のAON。
【請求項11】
前記置換が、-OH;-F;1つ以上のヘテロ原子により中断されてもよい置換または非置換の、直鎖または分枝鎖低級(C1-C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリルまたはアラルキル;O-アルキル、S-アルキルまたはN-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニルまたはN-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニルまたはN-アルキニル;O-アリル、S-アリルまたはN-アリル;O-アルキル-O-アルキル;-メトキシ;-アミノプロポキシ;-メトキシエトキシ;-ジメチルアミノオキシエトキシ;及び-ジメチルアミノエトキシエトキシからなる群から選択される、請求項10に記載のAON。
【請求項12】
(a)全ての糖部位が2’-O-メチル(2’-OMe)置換で修飾されるかもしくは全ての糖部位が2’-メトキシエトキシ(2’-MOE)置換で修飾されるか;
(b)5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換もしくは2’-MOE置換で修飾されるか;または
(c)2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換もしくは2’-MOE置換で修飾される、請求項11に記載のAON。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載のAONをコードするヌクレオチド配列を含むウイルスベクター。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載のAONまたは請求項13に記載のウイルスベクターを含み、キャリア、賦形剤、安定化剤、トランスフェクション試薬、希釈液、ゲル化剤またはバッファーの1つ以上を更に含む、医薬組成物。
【請求項15】
栄養障害型表皮水疱症(DEB)に罹患するヒト被検体の治療に使用される請求項1~12のいずれか1項に記載のAON。
【請求項16】
前記治療が前記AONの局所投与を含む、請求項15に記載の使用されるAON。
【請求項17】
前記AONがカルボマーヒドロゲル製剤中にある、請求項16に記載の使用されるAON。
【請求項18】
ヒト被検体のDEBの治療、予防、寛解または遅延のための薬剤の作製における請求項1~12のいずれか1項に記載のAONまたは請求項13に記載のウイルスベクターの使用。
【請求項19】
ヒトCOL7A1mRNAがヒト細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、前記mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減する方法であって、
インビトロ、インビボまたはエクスビボの設定で前記細胞を準備することと、
前記細胞に請求項1~12のいずれか1項に記載のAON、請求項13に記載のウイルスベクターまたは請求項14に記載の医薬組成物を投与することとを含む、前記方法。
【請求項20】
ヒト被検体のDEBの治療のための方法であって、
前記被検体に請求項1~12のいずれか1項に記載のAON、請求項13に記載のウイルスベクターまたは請求項14に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、前記方法。
【請求項21】
前記DEBが前記ヒト被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因である、請求項15~17のいずれか1項に記載のAON、請求項18に記載の使用または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記DEBが前記ヒト被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105におけるc.7864delC突然変異が原因である、請求項15~17のいずれか1項に記載のAON、請求項18に記載の使用または請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年2月28日出願の英国特許出願第1902735.8号の利益を主張し、その開示の全内容を参照することにより本明細書に援用する。
【0002】
配列表の組み入れ
本明細書によって、添付の配列表中の物質は参照により本出願に援用する。056520-503001WO_Sequence_Listing_ST25.TXTと名付けられた添付の配列表テキストファイルは、2020年2月28日に作成され、14KBのサイズである。
【0003】
本発明は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)及びヒト疾患の治療におけるAONの使用に関する。特に、本発明は栄養障害型表皮水疱症(DEB)の治療に適したAONに関する。より詳しくは、本発明はヒトCOL7A1前駆体mRNAからエクソン105スキッピングを誘導することができるAON及びCOL7A1遺伝子のエクソン105に突然変異を保有する患者のDEBの治療におけるAONの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
表皮水疱症(EB)は遺伝性皮膚疾患のグループであり、これらは表皮及び粘膜の慢性の脆弱性及び水疱形成を特徴とする。サブタイプに応じて、EBの症状の範囲は、最小の表皮の脆弱性から全身の合併症を伴う非常に重篤な症状まで非常に広い。世界中で約350,000人の患者が冒されている。EBのいくつかの型では、爪、髪及び歯が関連する場合がある。EBの主要な型としては、単純型EB(EBS)、接合型EB(JEB)、栄養障害型EB(DEB)及びキンドラー症候群(KS)が挙げられる。
【0005】
世界中で約44,000人の患者がDEBに冒されている。水疱形成及び表皮浸食は、少し触れるだけで発生するかまたは自発的にも発生する。症状としては、開放創、皮膚感染、ならびに指及び足指(疑似合指症)の融合が挙げられる。劣性DEB(RDEB;DEB患者の約50%)を有する患者は、一生を通して全身性の水疱形成、慢性潰瘍、ならびに複数の臓器病変、主要な病的状態、生命を脅かす合併症及び扁平上皮癌(SCC)をもたらす瘢痕後遺症に悩まされる。SCCを発症すると、RDEBを有する患者の期待寿命が減るため、患者は30年または40年の寿命を超えて生存しにくくなる。優性DEB(DDEB)の特徴としては、手、足、肘及び膝に局在し得るかまたは全身性になり得る水疱形成が挙げられる。一般的な所見としては、瘢痕、稗粒腫、粘膜病変及び異常な爪または爪がないことが挙げられる。通常、RDEBはDDEBより全身性であり、より重篤である。RDEBの一般的な症状発現としては、DDEBの症状に加えて、栄養失調症、貧血、骨粗鬆症、食道狭窄、成長遅延、ミトン変形の原因となる指及び足指のみずかき形成または癒着、筋拘縮の発症、歯の奇形、小口症及び目の瘢痕が挙げられる。
【0006】
高いアンメットメディカルニーズにもかかわらず、現在、DEB患者が利用できる疾患修飾治療は存在せず、緩和ケアだけが行われている。RDEBの重篤な型は社会の医療予算に高いコストを課し、包帯材及び薬の平均コストが患者1人当たり1年に約200,000ユーロである。
【0007】
DEBは、VII型コラーゲンα1タンパク質(C7)をコードするCOL7A1遺伝子中の1つ以上の突然変異が原因である。C7は真皮を表皮に繋ぐ係留線維(AF)の主成分である。AFはC7α鎖の三量体形成によって形成する。続いて、これらの三量体が集合して逆平行フィラメントを構築し、N末端ドメインで基底膜の緻密層領域内のラミニン332及びIV型コラーゲンと順に相互作用する。そのため、機能性C7のレベルが低下すると、係留線維がなくなるかまたは機能不全が生じ、これにより表皮脆弱性をもたらす。DEB重症度は、基底膜領域でVII型コラーゲン発現の量におおよそ相関する。
COL7A1遺伝子内で、ミスセンス変異及び「未成熟終止コドン(PTC)」を導く突然変異を含む400を超える異なる突然変異が知られている。ヒトCOL7A1遺伝子は118エクソンを含む。これらの大多数はインフレームであり、特定のエクソンが存在しない場合、隣接したエクソン(一緒になって連結される)がインフレームでまだ翻訳されることを意味する。エクソン1、2、3、4、6、7、24、25、27、113及び118はインフレームでない。インフレームエクソンはDEBの原因となる多くの突然変異を有しているため、タンパク質機能を保持しつつ突然変異を排除する潜在的に現実的な方法としてこのようなインフレームエクソンのエクソンスキッピングが確認され(Goto et al.2006.Targeted Skipping of a Single Exon Harboring a Premature Termination Codon Mutation:Implications and Potential for Gene Correction Therapy for Selective Dystrophic Epidermolysis Bullosa Patients.J Invest Dermatol 126(12):2614-2620)、この戦略はいくつかの研究グループによって更に調査されている。事実、AONを適用することによってCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソンスキッピングがエクソン13、73、74、80及び105に対して示唆され、かつ/または示されている(Bornert et al.2016.Analysis of the functional consequences of targeted exon deletion in COL7A1 reveals prospects for dystrophic epidermolysis bullosa therapy.Mol Ther 24(7):1302-1311;Bremer et al.2016 Antisense Oligonucleotide-mediated Exon Skipping as a Systemic Therapeutic Approach for Recessive Dystrophic Epidermolysis Bullosa.Mol Ther Nucleic Acids 5(10):e379;Goto et al.2006;Turczynski et al.2016.Targeted Exon Skipping Restores Type VII Collagen Expression and Anchoring Fibril Formation in an In Vivo RDEB Model.J Invest Dermatol 136(12):2387-2395;WO2013/053819;WO2016/142538;W02016/185041;WO2017/078526)。エクソン13または105が欠損するC7について、タンパク質の折り畳みは影響を受けず、細胞接着及び移入プロセス(C7が役割を果たす)が正常であることが証明された(Bornert et al.2016)。さらに、エクソン73及び80について、各エクソンのスキッピング後、患者細胞によって生産される少し短いC7Δ73及びC7Δ80タンパク質が表皮真皮接合部で組み込まれ、係留線維を形成することができることが示された(Turczynski et al.2016)。AON投与の意図されたルートは、ヒドロゲル媒体を用いる局所適用によるものである。
従来技術のエクソンスキッピングオリゴヌクレオチドは、この恐ろしい疾患に取り組む際に有望なステップを提供するが、エクソンスキッピングの効率を向上する他のオリゴヌクレオチドをまだ必要としている。注目すべきことに、2つのAONを併用すると、エクソン105のスキッピングが効率的になることが分かっているだけであった(Bornert et al.2016;Bremer et al.2016;WO2017/078526)。本発明は、COL7A1前駆体mRNAからのエクソン105スキッピングのために改良されたAONを同定し、使用することを目的とし、そのAONは従来技術のAONより優れ、単一の活性成分として使用することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2013/053819号
【特許文献2】国際公開第2016/142538号
【特許文献3】国際公開第2016/185041号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Goto et al.2006.Targeted Skipping of a Single Exon Harboring a Premature Termination Codon Mutation:Implications and Potential for Gene Correction Therapy for Selective Dystrophic Epidermolysis Bullosa Patients.J Invest Dermatol 126(12):2614-2620
【非特許文献2】Bornert et al.2016.Analysis of the functional consequences of targeted exon deletion in COL7A1 reveals prospects for dystrophic epidermolysis bullosa therapy.Mol Ther 24(7):1302-1311
【非特許文献3】Bremer et al.2016 Antisense Oligonucleotide-mediated Exon Skipping as a Systemic Therapeutic Approach for Recessive Dystrophic Epidermolysis Bullosa.Mol Ther Nucleic Acids 5(10):e379
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ヒトコラーゲンVII型α1鎖(COL7A1)mRNAが哺乳動物細胞(例えば、インビボでのヒト細胞)内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができる様々なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を提供する。一態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONであって、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58、59、5~41、43、45、47、49、50及び53~57からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、該AONに関する。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。本発明の好ましいAONは、配列番号24、配列番号26または配列番号14に従うヌクレオチド配列からなる。別の態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONであって、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58、59、5~41、43、45、47、49、50及び53~57のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、該AONに関する。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42または60に対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。好ましい実施形態では、本発明のAONの長さは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28ヌクレオチドである。より好ましくは、本発明によるAONの長さは24ヌクレオチドである。更に別の好ましい態様では、本発明によるAONが少なくとも1つの非天然型結合修飾、好ましくはホスホロチオエート結合を含む。特に好ましい一態様では、本発明によるAONの全ての糖部位が2’-O-メチル(2’-OMe)置換または2’-メトキシエトキシ(2’-MOE)置換で修飾される。別の態様では、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾される。更に別の態様では、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾される。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、本発明によるAONをコードするヌクレオチド配列を含むウイルスベクターに関する。本発明はまた、本発明によるAONまたはウイルスベクターを含む医薬組成物であって、該組成物がキャリア、賦形剤、安定化剤、トランスフェクション試薬、希釈液、ゲル化剤またはバッファーの1つ以上を更に含む、該医薬組成物に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAがヒト細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減する方法であって、インビトロ、インビボまたはエクスビボの設定で細胞を準備することと、細胞に本発明によるAON、本発明によるウイルスベクターまたは本発明による医薬組成物を投与することとを含む、該方法に関する。
【0013】
更に別の態様では、本発明は、栄養障害型表皮水疱症(DEB)に罹患するヒト被検体の治療に使用される本発明によるAONであって、DEBが被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因であることが好ましく、突然変異がc.7864delC突然変異であることがより好ましい、該AONに関する。治療は、例えば、カルボマーヒドロゲル製剤などのヒドロゲル製剤中のAONの局所投与を含むことが好ましい。別の態様では、本発明は、ヒト被検体のDEBの治療、予防、寛解または遅延のための薬剤の作製における本発明によるAONまたは本発明によるウイルスベクターの使用に関する。別の態様では、本発明は、ヒト被検体のDEBの治療のための方法であって、被検体に本発明によるAON、本発明によるウイルスベクターまたは本発明による医薬組成物を投与するステップを含む、該方法に関する。いくつかの実施形態では、DEBはヒト被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因である。いくつかの実施形態では、突然変異はc.7864delC突然変異である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1-1】上部に、ヒトCOL7A1遺伝子のエクソン105(5’から3’;大文字、太字;配列番号1)の野生型(ここではRNA)配列を上流及び下流のイントロン配列(小文字)の部分と共に示す。c.7864delC突然変異の位置に下線を引く。このイントロン-エクソン-イントロン配列(配列番号2)の下にアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)を3’から5’(左から右)でそれらの対応する識別子及び配列番号と共に示す。c.7864delC突然変異の位置に関して、野生型配列との重なりをAON12、15及び16の下線が引かれたグアノシンと共に示す。AONがその特定の位置に重なるが、グアノシンを欠損する場所はAON8、9、13、14、17、19、27及び28のように「-」で示す。
【
図2】2つの修飾変形における当該技術分野で知られる2つの異なるAON(本明細書では「UMCG-AON1」または「UMCG-1」及び「UMCG-AON2」または「UMCG-2」という)をトランスフェクトした野生型線維芽細胞から得られたmRNA由来のcDNAに関するPCR結果を示す。1つの変形はAONが糖部位において2’-OMe置換で完全に修飾されたものであり(本明細書では「2 o-ME」と示す)、もう1つの変形はAONが糖部位において2’-MOE修飾で完全に修飾されたものである(本明細書では「MOE」と示す)。これらのAONを本明細書に詳述する1つの新規なAON(AON8)と比較した。このAON8は完全に2’-MOE修飾されていた。右の矢印は使用されたプライマーを有するPCR産物の大きさを示し、wt産物(上の矢印)及びエクソン105がスキップされ、発生したcDNAに存在しない産物(下の矢印)の位置を示す。NTはトランスフェクトしなかった陰性対照であり、PEIはトランスフェクション試薬のみを使用した陰性対照である。
【
図3】2’-OMe(本明細書では「OMe」)及び2’-MOE(本明細書では「MOE」)変形の各々の5つの異なるAON(AON7、8、9、10及び11)をトランスフェクトした野生型線維芽細胞から得られたmRNA由来のcDNAに関するPCR結果を示す。矢印は使用されたプライマーを有するPCR産物の大きさを示し、wt産物(上の矢印)及びエクソン105がスキップされ、発生したcDNAに存在しない産物(下の矢印)の位置を示す。Mはマーカーであり、NTはトランスフェクトしなかった陰性対照であり、PEIはトランスフェクション試薬のみを使用した陰性対照である。
【
図4】2’-MOEで完全に修飾されたAON12、13、14、15、16、17、18、19及び20をトランスフェクトした野生型線維芽細胞から得られたmRNA及びcDNAからのPCR結果を示す。2’-MOE変形(本明細書では「MOE」)及び2’-OMe変形(本明細書では「2O-Me」;二重反復で実施した)のAON8が含まれた。右の矢印は得られたmRNAにおけるエクソン105の存在(上の矢印)またはエクソン105の不在(下の矢印)を示す。
【
図5】野生型ヒト線維芽細胞への2’-OMe変形(本明細書では「2oMe」)及び2’-MOE変形(本明細書では「MOE」)のAON8、12、15、16、18及び20全てのトランスフェクション後、ddPCRアッセイを用いてエクソン105スキッピングの割合を示す。NaClのみ、トランスフェクション試薬(MaxPEI)のみ、水のみ及び関連しない2’-MOE修飾を組み合わせたオリゴヌクレオチドを用いたトランスフェクション(MOE Scr)の4つの陰性対照が含まれた。
【
図6】野生型ヒト線維芽細胞(FD030)、c.7864delC突然変異を受けるDEB患者から得られた線維芽細胞(PLU002A)及びDEBを罹患していないが、1アレルにc.7864delC欠失を保有するヒト被検体から得られた線維芽細胞(PLU003A)への2’-OMe変形(本明細書では「2OMe」)及び2’-MOE変形(本明細書では「MOE」)のAON8、AON18及びAON20全てのトランスフェクション後、ddPCRアッセイを用いてCOL7A1(C7)エクソン105スキッピングの割合を示す。NaClのみ、トランスフェクション試薬(MaxPEI)のみ、逆転写対照(RT-CTRL)及び関連しない2’-MOE修飾を組み合わせたオリゴヌクレオチドを用いたトランスフェクション(MOE Scr)の4つの陰性対照が含まれた。
【
図7】二重反復で(P6及びP7)PLU002A線維芽細胞及びPLU003A線維芽細胞への2’-OMe(本明細書では「2OMe」)で完全に修飾されたAON21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32及び33全てのトランスフェクション後、ddPCRアッセイを用いてCOL7A1(C7)エクソン105スキッピングの割合を示す。陽性対照は2つの濃度(100及び250nM)の、2’-MOEで完全に修飾されたAON8及び2’-MOE及び2’-OMeの2つの変形のAON18であった。NaClのみ、トランスフェクション試薬(MaxPEI)のみ、逆転写対照(RT-CTRL)、関連しない2’-MOE修飾を組み合わせたオリゴヌクレオチドを用いたトランスフェクション(MOE Scr)及び水のみの対照の5つの陰性対照が含まれた。
【
図8】PLU002A及びPLU003A線維芽細胞へのAON8、AON18、AON20、AON23、AON29及びAON32の2’-OMe及び2’-MOE変形のトランスフェクション後、ddPCRアッセイを用いてエクソン105スキッピングの割合を示す。NaClのみ、MaxPEI及び組み合わされた2’-MOE修飾オリゴヌクレオチドの3つの陰性対照が含まれた。
【
図9】PLU002A線維芽細胞へのAON8、AON18及びAON20の2’-OMe(本明細書では「2OMe」)及び2’-MOE変形(本明細書では「MOE」)のトランスフェクション後、ddPCRアッセイを用いてエクソン105スキッピングの割合を示す。これらの3つの最良に機能するAONのスキッピング効率をUMCG-AON1及びUMCG-AON2(表1参照)の従来技術のAONのスキッピング効率と比較した。これらは単独または組み合わせてPLU002A細胞にトランスフェクトした。示されるように、完全な2’-OMe変形及び完全な2’-MOE変形でUMCG AONを両方とも試験した。陰性対照はNaCl及びトランスフェクション試薬(MaxPEI)のみであった。
【
図10-1】ddPCRで分析されるように、示されたAONの2’-OMe変異体をトランスフェクトしたヒト線維芽細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度を示す。1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。2xLNA:LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:NaCl及びトランスフェクション試薬(MaxPEI)のみ。
【
図11】ddPCRで分析されるように、示されたAONの2’-MOE変異体をトランスフェクトしたヒト線維芽細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度を示す。1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。2xLNA:LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:NaCl及びトランスフェクション試薬(MaxPEI)のみ。
【
図12】ddPCRで分析されるように、示されたAONの2’-OMe変異体のジムノシスによる取り込みの後の、HeLa細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度を示す。1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。2xLNA:LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:NaCl。
【
図13】ddPCRで分析されるように、示されたAONの2’-MOE変異体のジムノシスによる取り込みの後の、HeLa細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度を示す。1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。2xLNA:LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:NaCl。
【
図14】ddPCRで分析されるように、示されたAONのジムノシスによる取り込みの後の、HeLa細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度に関する様々な濃度(3μM、10μM、30μM及び50μM)の示されたAONに対する用量反応を示す。OMe:2’-OMe修飾された全てのヌクレオチド。OMe/1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。MOE/1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:未処理。
【
図15】ddPCRで分析されるように、カルボマーヒドロゲル製剤における示されたAONを用いた3週間の治療の後の創傷のヒト皮膚等価物(HSE)モデルの真皮、表皮または真皮及び表皮両方由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度を示す。OMe:2’-OMe修飾された全てのヌクレオチド。OMe/1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチド。MOE/1xLNA:LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド、2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチド。陰性対照:未処理。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、従来技術に開示されるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)に比べて、類似のまたは良好なエクソン105スキッピングの特徴を有しているように見えるAONを開示する。本発明のAONは活性薬剤物質としてヒト疾患、より特に表皮水疱症(EB)、更に特にヒトCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異と関連したEBを治療する療法に使用することができる。本発明のAONは唯一の活性薬剤物質として使用することが好ましいが、COL7A1エクソン105を標的とする他のAON(従来技術からのもの及び/または本明細書に開示されるものを含む)と組み合わせて、他のエクソンを標的とするAON(二重変異体の場合、同じアレルまたは異なるアレルに存在し、エクソン13、73、74または80に突然変異を含む)と組み合わせて及び/またはEB疾患を治療するための他の活性薬剤物質と組み合わせて使用してもよい。併用療法は単一組成または複数の組成の形で同時にまたは連続して投与されてもよい。
【0016】
いくつかのエクソン105突然変異は、当該技術分野において同定され、原理的にはその全ては明細書に初めて開示されるAONを用いるエクソン105スキッピングによって除去することができる。ヒトCOL7A1のエクソン105に存在すると以前に同定された突然変異の例としては、c.7795G>T、c.7804G>A、c.7805G>A、c.7828C>T、c.7856dell、c.7861_7865del5、c.7864C>T、c.7864delC、c.7865G>A、c.7868G>A、c.7868G>T及びc.7875+lG>Cが挙げられる(Escamez et al.2010.The first COL7A1 mutation survey in a large Spanish dystrophic epidermolysis bullosa cohort:c.6527insC disclosed as an unusually recurrent mutation.Br J Dermatol 163(1):155-161;Varki et al.2007.Epidermolysis bullosa.II.Type VII collagen mutations and phenotype-genotype correlations in the dystrophic subtypes.J Med Genet 44:181-192;col7al-database.info)。非限定的な例として、c.7864delC突然変異(タンパク質:p.Arg2622GlyfsX9)を本明細書において更に使用する。
【0017】
本明細書に開示されるように、ヒトCOL7A1mRNAが哺乳動物細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができ、オリゴヌクレオチド配列がエクソン105の内部部分に好ましくは100%相補的であることを特徴とするAONが同定されている。ヒトCOL7A1mRNAが哺乳動物細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONが記載されている。これらのAONは、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減するのに使用される良好な候補と考えられる。本発明のAONは、互いに組み合わせてまたはエクソン105(もしくはヒトCOL7A1mRNAにおける他のインフレームのエクソン)のスキッピングに有効な他のAONと組み合わせて使用されてもよいが、エクソン105における突然変異が原因であるDEBの治療のための薬剤に唯一の活性化合物として本発明のAONを使用することが好ましい。
【0018】
一態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONであって、AONが配列番号5~60からなる群から選択されるヌクレオチド配列及びその変異体であって、その変異体がエクソン105の包含を阻止または低減するために派生する親のヌクレオチド配列の活性の少なくともいくらか(例えば、全てまたは実質的に全て)を与えるその変異体を含むかまたはからなる、該AONに関する。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42、44、46、48、51、52、58、59及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42、48及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。好ましい実施形態では、本発明のAONの長さは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27または28ヌクレオチドである。より好ましくは、本発明のAONの長さは24ヌクレオチドである。本発明の非常に好ましいAONは、配列番号24、配列番号26または配列番号14に従うヌクレオチド配列からなり、これらの長さは全て24ヌクレオチドである。
【0019】
一実施形態では、本発明によるAONは、ヒトCOL7A1のエクソン105と相補性がある領域を含み、相補性がある領域の長さは多くとも30ヌクレオチドであり、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29ヌクレオチドである。本発明のAONによって標的とされるヒトCOL7A1遺伝子のエクソン105の(前駆体)mRNA中の好ましい領域は、5’-TTGGCTTCATGGG-3’(配列番号61)の配列である。したがって、発明の好ましいAONは5’-CCCAUGAAGCCAA-3’(配列番号62)の配列を含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAが細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減することができるAONであって、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58、59、5~41、43、45、47、49、50及び53~57のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる、該AONに関する。本文脈中、特定のヌクレオチド配列に対応する標的ヌクレオチド配列は、特定のヌクレオチド配列の逆相補である。例えば、配列番号62のヌクレオチド配列に対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列は、配列番号61のヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42または60に対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13のいずれか1つに対応するCOL7A1前駆体mRNA中の標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、オリゴリボヌクレオチドは、生理学的条件下でCOL7A1前駆体RNA分子中の標的ヌクレオチド配列にアニール化され、それによりエクソン105のスキッピングを促進することができるように、標的ヌクレオチド配列に相補的なオリゴリボヌクレオチド中のヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列に対して十分な相補性の程度を有する。いくつかの実施形態では、標的ヌクレオチド配列に相補的なオリゴリボヌクレオチド中のヌクレオチド配列は、標的ヌクレオチド配列に対して約80%以上(例えば、約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のいずれか)の相補性の程度を有する。
【0021】
本発明によるAONはオリゴリボヌクレオチドであることが好ましい。AONは少なくとも非天然型結合修飾を含むことがより好ましく、その非天然型結合修飾がホスホロチオエート結合であることが更により好ましい。好ましい態様では、本発明によるAONは、糖部位の2’位、3’位及び/または5’位で1つまたは2つ置換している少なくとも1つのヌクレオチドを含む。置換が、-OH;-F;1つ以上のヘテロ原子により中断されてもよい置換または非置換の、直鎖または分枝鎖低級(C1-C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリルまたはアラルキル;O-アルキル、S-アルキルまたはN-アルキル;O-アルケニル、S-アルケニルまたはN-アルケニル;O-アルキニル、S-アルキニルまたはN-アルキニル;O-アリル、S-アリルまたはN-アリル;O-アルキル-O-アルキル;-メトキシ;-アミノプロポキシ;-メトキシエトキシ;-ジメチルアミノオキシエトキシ;及び-ジメチルアミノエトキシエトキシからなる群から選択されることが好ましい。非常に好ましい態様では、本発明によるAONの全ての糖部位は2’-O-メチル(2’-OMe)置換で修飾されるかまたは全ての糖部位は2’-メトキシエトキシ(2’-MOE)置換で修飾される。いくつかの実施形態では、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドでの修飾を除く全ての糖部位は2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾され、この修飾はロック核酸(LNA)修飾などの異なる修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドでの修飾を除く全ての糖部位は2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾され、この修飾はLNA修飾などの異なる修飾を含み得る。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、配列番号5~60からなる群から選択される配列を有する、本発明によるAONをコードするヌクレオチド配列を表現形式で含むウイルスベクターに関する。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42、44、46、48、51、52、58、59及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42、48及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。本発明はまた、本発明によるAONまたは本発明によるウイルスベクターを含み、キャリア、賦形剤、安定化剤、トランスフェクション試薬、希釈液、ゲル化剤またはバッファーの1つ以上を更に含む医薬組成物に関する。
【0023】
更に別の態様では、本発明は、栄養障害型表皮水疱症(DEB)に罹患するヒト被検体の治療に使用される本発明によるAONであって、DEBが被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因であることが好ましい、突然変異がc.7864delC突然変異であることがより好ましい、該AONに関する。治療は、AONを含むヒドロゲル製剤(例えば、カルボマーヒドロゲル製剤)の使用などのAONの局所投与を含むことが好ましい。
【0024】
別の態様では、本発明は、DEBの治療、予防、寛解または遅延のための薬剤の作製における本発明によるAONまたは本発明によるウイルスベクターの使用であって、DEBがCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因であることが好ましく、突然変異がc.7864delC突然変異であることがより好ましい、該使用に関する。
【0025】
更に別の態様では、本発明は、ヒトCOL7A1mRNAがヒト細胞内で前駆体mRNAからスプライシングによって生産されるとき、ヒトCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または低減する方法であって、インビトロ、インビボまたはエクスビボの設定で細胞を準備することと、細胞に本発明によるAON、本発明によるウイルスベクターまたは本発明による医薬組成物を投与することとを含む、該方法に関する。別の態様では、本発明は、ヒト被検体のDEBの治療のための方法であって、被検体に本発明によるAON、ウイルスベクターまたは医薬組成物を投与するステップを含む、該方法に関する。DEBがヒト被検体のCOL7A1遺伝子のエクソン105における突然変異が原因であることが好ましい、突然変異がc.7864delC突然変異であることがより好ましい。
【0026】
本発明の全ての実施形態では、用語「エクソンの包含を阻止するかまたは少なくとも低減する」及び「エクソンスキッピング」は同義である。COL7A1に関して「エクソンの包含を阻止するかまたは少なくとも低減する」及び「エクソンスキッピング」は、ヒトCOL7A1前駆体mRNAからのエクソン105の排除として解釈されるものである。本明細書において用語エクソンスキッピングは、エクソンスキッピングなしで成熟mRNAに存在する特定のエクソンを含まない成熟mRNAの細胞内の導入として定義される。エクソンスキッピングは、例えば、スプライシングの生化学的プロセスを許容するために必要なスプライスドナーまたはスプライスアクセプター配列などの配列を妨げることができる分子または成熟mRNAに含まれるエクソンとしてヌクレオチドのストレッチの認識に必要なエクソン包含シグナルを妨げることができる分子を成熟mRNAの前駆体mRNAを発現する細胞に提供することによって達成される。このような分子はエクソンスキッピング分子を意味することもある。
【0027】
用語前駆体mRNAは、転写によって細胞中でDNAテンプレートから合成される、処理していないまたは部分的に処理された前駆体mRNAを意味する。
【0028】
用語「アンチセンスオリゴヌクレオチド」(本明細書において、一般的にAONと略記され、他でASOと略記されることもある)は、前駆体mRNA分子hnRNA(ヘテロ核RNA)またはmRNA分子における標的ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を意味することが理解され、それに対応する標的配列とアニール化されることが可能である。本発明のAONは一本鎖であることが好ましい。
【0029】
本明細書で用いられる用語「相補的」は「完全に相補的」及び「実質的に相補的」を含み、これらはオリゴヌクレオチドとそれに対応する標的配列の間の相補性の程度が通常80%を超え、好ましくは85%を超え、更により好ましくは90%を超え、最も好ましくは95%を超えることを意味する。例えば、長さが20ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドの配列とその標的配列との間に1つのミスマッチを有する当該オリゴヌクレオチドに対する相補性の程度は95%である。アンチセンス配列の相補性の程度は、生理学的条件下でアンチセンス配列を含む分子がRNA分子中の標的ヌクレオチド配列にアニール化され、それによりエクソンスキッピングを促進することができるようなものが好ましい。所定のミスマッチは、融解温度すなわちTmに関して発現されるAONと標的配列の間での結合の強度への影響が他のミスマッチよりも小さいため、所定のミスマッチが他のミスマッチより許容できることが当業者に周知されている。所定の非相補的な塩基対は、真のミスマッチより少ない程度まで全体の結合を破壊する、いわゆる「ゆらぎ」を形成する場合がある。AONの長さも結合の強度においてある役割を果たし、一般にAONは長い方が短いものより高い融解温度を有する。オリゴヌクレオチドのG/C含有量も結合の強度を決定する因子であり、G/C含有量が高いほど、任意の所定の長さに対して融解温度が高くなる。単一の突然変異がAONに相補的である領域内にあるエクソン105に存在する場合、AONは標的配列に完全に相補的であるとわけではない(例えば、AONが野生型配列に相補的である場合)が、エクソンスキッピングを引き起こすにはまだ効率的である。本発明によって考えられるように、核酸塩基または糖-リン酸主鎖の所定の化学修飾も結合の強度に影響する場合があるため、本発明によるオリゴヌクレオチドを設計する際、相補性の程度は考慮に入れるべき唯一の因子である。
【0030】
オリゴヌクレオチドにおける1つのCpGまたは複数(2以上)のCpGの存在は、通常オリゴヌクレオチドの免疫原性の上昇に関連する。治療されるべき組織、すなわち皮膚(真皮及び/または表皮)の創傷を誘発し得るため、免疫原性の上昇は望ましくない。したがって、本発明のAONは1つまたは2つ以下のCpGジヌクレオチド配列を含むことが好ましい。本発明のAONは多くても1つのCpGジヌクレオチド配列を含むことがより好ましい。本発明のAONはCpGジヌクレオチド配列を含まないことが更により好ましい。
【0031】
本発明は、許容できるRNA結合動力学及び/または熱力学的性質を有するオリゴヌクレオチドを設計することを可能にする。RNA結合動力学及び/または熱力学的性質は、AON標的エクソン複合体の基準Tm及び最も近い隣接モデル、ならびに/または自由エネルギーを使用して一本鎖RNAのためにオリゴヌクレオチドのTm(当業者に知られているオリゴヌクレオチド特性計算機で算出される)によって少なくとも部分的に決定される。Tmが高すぎる場合、オリゴヌクレオチドはより特異的ではないと考えられる。許容できるTm及び自由エネルギーは、オリゴヌクレオチドの配列、主鎖(ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホラミデート、ペプチド-核酸など)の化学的性質、糖部位(リボース、デオキシリボース、置換リボース及び分子内架橋)の性質及び核酸塩基の化学修飾に依存する。したがって、Tmの範囲はかなり広くなり得る。
【0032】
任意の所定のプライマーセットに対して、所定数のPCRサイクル後、増幅した野生型バンドの濃度を決定子、増幅した短縮(エクソン105なし)バンドの濃度で割り、100%をかけることによってエクソンスキッピングの割合または効率を計算してもよい。ただしサイクル数は増幅がまだ対数期にあるものとする。定量化は、DNA1000キットと組み合わせてAgilent 2100 バイオアナライザーを用いて行うことができる。
【0033】
本発明によるAONは、配列番号1に示すようにヌクレオチド配列と相補的な配列を含むことが好ましく、相補部分が標的配列に少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは約100%相補的になるものである。したがって、相補性がある領域における全ての塩基が反対の鎖の塩基と対になることができることが絶対に必要という訳ではない。例えば、オリゴヌクレオチドを設計する際、相補鎖上の塩基と塩基対にならない残基を組み込みたいと考えてもよい。細胞内の状況下でヌクレオチドのストレッチが相補部分に十分にハイブリダイズする場合、ミスマッチがある程度許容されてもよい。本文脈中、「十分に」は本発明によるAONがエクソン105のエクソンスキッピングを誘導することができることを意味する。好都合なことに、標的エクソンのスキッピングはPCR/バイオアナライザーまたはデジタルドロップレットPCR(ddPCR)で評価してもよい。相補領域を組み合わせる際、前駆体mRNA中のエクソンに特異的となるように相補領域を設計することが好ましい。このような特異性は系内の他の(前駆体)mRNA分子中の実際の配列に依存するため、相補領域の様々な長さを使用して作成してもよい。製造性、精製及び/または分析論に対する問題になるほどオリゴヌクレオチドの長さは長くないが、オリゴヌクレオチドが1つ以上の他の前駆体mRNA分子にもハイブリダイズすることを可能にするリスクは、オリゴヌクレオチドのサイズが増加するとともに減少する。
【0034】
本発明において、相補性領域にミスマッチを含むが、前駆体mRNA中の標的領域(複数可)にハイブリダイズ及び/又は結合する能力を保持するAONを使用可能なことは明らかである。しかし、少なくとも相補部分は、通常1以上の相補領域にこのようなミスマッチを有するAONよりも効率性が高くかつ特異性が高いため、この相補部分はこのようなミスマッチを含まないことが好ましい。ハイブリダイゼーション強度がより高いと(すなわち、反対の鎖と相互作用する数が増加すると)、系のスプライシング機構を妨げるプロセスの効率を上げる際に有利であると考えられる。相補性は90%から100%であることが好ましい。一般に、これは20ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドに1つまたは2つのミスマッチを許容している。
【0035】
本発明のエクソンスキッピング分子は単離された一本鎖(アンチセンス)オリゴヌクレオチドであることが好ましく、このオリゴヌクレオチドはエクソン105配列(配列番号1)に相補的であり、ヒトCOL7A1エクソン105DNAから転写されるRNA標的配列に向け相補性が求められる。
【0036】
オリゴヌクレオチドの相補部分の長さはオリゴヌクレオチドと同じ長さであり、標的RNAと塩基対を形成しないAONの5’末端または3’末端が存在しないことを意味することが好ましい。したがって、本発明のAONの好ましい長さは24ヌクレオチド以下であり、例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24ヌクレオチドである。特に良好な結果は、20、21、22、23または24ヌクレオチドの長さを有するAONを用いて得られている。
【0037】
本明細書に詳述されるように、本発明によるAONは、多くのDNA残基(結果的に、RNA「u」残基はDNA対応物として「t」残基となる)のうちの1つまたは1つ以上のRNA残基及び/または1つ以上のヌクレオチド類似体もしくは等価物を含んでもよい。
【0038】
本発明のAONがヌクレアーゼ耐性を上昇させ、かつ/または標的配列に対するAONの親和性を上昇させるために修飾される1以上の残基を含むことが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、アンチセンスヌクレオチド配列は少なくとも1つのヌクレオチド類似体または等価物を含み、ここでヌクレオチド類似体または等価物は(非天然型)修飾塩基及び/または(非天然型)修飾主鎖及び/または(非天然型)ヌクレオシド間の結合またはこれらの修飾の組み合わせを有する残基として定義される。「非天然型」は修飾が天然で出現しないことを意味し、非天然型修飾を本発明のAONに導入する場合、このようなAONが天然で出現するかまたは天然現象を示す産物であることを意味する(ことが好ましい)。
【0039】
好ましい実施形態では、ヌクレオチド類似体または等価物は修飾主鎖を含む。このような主鎖としては、モルフォリノ主鎖、カルバメート主鎖、シロキサン主鎖、スルフィド、スルホキシド及びスルホン主鎖、ホルムアセチル及びチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチル主鎖、リボアセチル主鎖、アルケン含有主鎖、スルファマート、スルホナート及びスルホンアミド主鎖、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ主鎖、ならびにアミド主鎖が挙げられる。ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴマーはアンチセンス薬としてこれまで検討されている修飾主鎖オリゴヌクレオチドである。モルフォリノオリゴヌクレオチドは、DNAのデオキシリボース糖が六員環で置換され、ホスホジエステル結合がホスホロジアミデート結合で置換される非電荷の主鎖を有する。モルフォリノオリゴヌクレオチドは酵素分解に耐性を有し、RNase Hを活性化するよりもむしろ翻訳を停止するかまたは前駆体mRNAスプライシングを妨げることによりアンチセンス薬として機能するように見える。モルフォリノオリゴヌクレオチドは物理的に細胞膜を破壊する方法で組織培養細胞へ適切に送達され、これらの方法のいくつかを比較する研究からスクレープ負荷が最も効率的な送達方法であることが分かった。しかし、モルフォリノ主鎖は非電荷のため、カチオン性脂質が細胞に取り込まれたモルフォリノオリゴヌクレオチドの有効なメディエーターではない。
【0040】
一実施形態では、好ましいヌクレオチド類似体または等価物は修飾ポリアミド主鎖を有するペプチド核酸(PNA)を含む。PNA系分子は塩基対の認識に関するDNA分子の典型的な擬態である。PNAの主鎖はペプチド結合で連結されるN-(2-アミノエチル)-グリシンユニットからなり、これは核酸塩基がメチレンカルボニル結合で主鎖に連結される。代替主鎖は1炭素延長ピロリジンPNAモノマーを含む。PNA分子の主鎖は荷電リン酸基を含まないため、PNA-RNAハイブリッドはそれぞれ通常RNA-RNAまたはRNA-DNAハイブリッドより安定している。
【0041】
本発明の一実施形態によると、主鎖中の残基間の結合はリン酸原子を含まず、例えば、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間の結合で形成される結合、混合ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間の結合または1つ以上の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環式ヌクレオシド間の結合である。
【0042】
更に別の実施形態では、本発明のヌクレオチド類似体または等価物はホスホジエステル結合中に非架橋酸素の1つの置換を含む。この修飾は塩基対形成をわずかに不安定にするが、ヌクレアーゼ分解に対する有意な耐性を追加する。好ましいヌクレオチド類似体または等価物は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホストリエステル、H-ホスホネート、メチルホスホネート及び3’-ルキレンホスホネート、5’-ルキレンホスホネート及びキラルホスホネートを含むアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホルアミデート及びアミノアルキルホスホルアミデートを含むホスホルアミデート、チオノホスホルアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェートまたはボラノホスフェートを含む。本発明は標的核酸に結合することができるAONを包含し、少なくとも1つのヌクレオシド間の結合がキラル中心(X-ホスホネート部位を含み、式中、Xがアルキル、アルコキシ、アリール、アルキルチオ、アシル、-NR1R1、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、-S-Z+、-Se-Z+もしくは-BH3-Z+であり、R1は独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール、Z+はアンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン、ヘテロ芳香族イミニウムイオンもしくはヘテロ環状イミニウムイオン、これらのうちいくつかは1次、2次、3次もしくは4次であり、Zは1価の金属イオンである)を含むことが好ましいことが理解されるべきである。計算モデリングを使用するこのような結合自体の忍容性の決定及びキラル中心を含む結合の好ましいSpまたはRp立体異性体の決定の両方により、本発明の部分が形成される。
【0043】
好ましい一実施形態では、本発明はAONに関し、ここでキラリティーを示すヌクレオシド間の結合がホスホロチオエート結合である。更に好ましい実施形態では、本発明のAONは所定のRpまたはSpホスホロチオエート構成を有する少なくとも1つのヌクレオシド間の結合を含み、これはAONの製造時、ホスホロチオエート結合のRpまたはSp構成が標的配列の方へのAONの安定性及び/または効率を向上するように選択されることを意味する。それに加え、AON中の全てのホスホロチオエート結合が予め選択されたRpまたはSp構成(またはAON全体にわたるそれらの組合せ)を有する点でAONは完全に立体化学的に純粋であってもよい。
【0044】
本発明の更に好ましいヌクレオチド類似体または等価物は、-OH;-F;1つ以上のヘテロ原子により中断されてもよい置換または非置換の、直鎖または分枝鎖低級(C1-C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリルまたはアラルキル;O-、S-またはN-アルキル;O-、S-またはN-アルケニル;O-、S-またはN-アルキニル;O-、S-またはN-アリル;O-アルキル-O-アルキル;-メトキシ;-アミノプロポキシ;-メトキシエトキシ;-ジメチルアミノオキシエトキシ;または-ジメチルアミノエトキシエトキシなどの2’位、3’位及び/または5’位で1つまたは2つ置換している1以上の糖部位を含む。
【0045】
本明細書に開示される非限定的な例に更に概説されるように、糖部位の特に好ましい修飾は2’-O-メチル(2’-OMe)及び2’-メトキシエトキシ(2’-O-メトキシエチル、すなわち2’-MOE)修飾である。糖部位はまた、フラノースもしくはその誘導体、またはデオキシフラノースもしくはその誘導体、好ましくはリボースもしくはその誘導体、またはデオキシリボースもしくはその誘導体であってもよい。好ましい誘導体化した糖部位はロック核酸(LNA)を含み、これは2’炭素原子が糖環の3’または4’炭素原子に結合し、2環式糖部位を形成する。好ましいLNAは2’-O,4’-C-エチレン架橋核酸を含む。これらの置換はヌクレオチド類似体または等価物RNase H及びヌクレアーゼ耐性を付与し、標的RNAに対する親和性を増大させる。いくつかの実施形態では、本発明のAONは1種類より多い糖部位修飾を含む。例えば、本発明のAONのいくつかの実施形態では、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾され、他の実施形態では、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換または2’-MOE置換で修飾される。
【0046】
アンチセンスオリゴヌクレオチド中のヌクレオシド間の全ての結合が修飾される必要がないことは当業者に理解される。例えば、いくつかのヌクレオシド間の結合は修飾されなくてもよいが、他のヌクレオシド間の結合は修飾される。AONの長さに沿って均一または不均一に分布する、(修飾)ヌクレオシド間結合の1つの型、(修飾)ヌクレオシド間結合の複数の型からなる主鎖を含むAONは全て本発明によって包含される。さらに、主鎖修飾(均一、不均一、1つの型または複数の型及びその全ての入れ替え)の任意の様式は、以下に記載の糖もしくはヌクレオチド修飾または類似体の任意の型と組み合わせてもよい。
【0047】
本発明によるAONのための特に好ましい主鎖は均一な(全て)ホスホロチオエート(PS)主鎖であり、それはキラリティー(予め選択されたRp及び/またはSp構成で)において立体化学的に純粋にしてもよい(上で概説されるように)。
【0048】
別の実施形態では、本発明のヌクレオチド類似体または等価物は1以上の塩基修飾または置換を含む。修飾塩基はイノシン、キサンチン、ヒポキサンチン及び当該技術分野において知られているまたは知られるであろうピリミジン及びプリン塩基の他の-アザ、-デアザ、-ヒドロキシ、-ハロ、-チオ、チオール、-アルキル、-アルケニル、-アルキニル、チオアルキル誘導体などの合成及び天然塩基を含む。
【0049】
AON中の全ての位置が均一に修飾される必要がないことは当業者に理解される。さらに、上記類似体または等価物の1つを超えるものが単独AONにまたはAON内の単独の位置で組み込まれてもよい。ある実施形態では、本発明のAONは少なくとも2種類の異なる類似体または等価物を有する。
【0050】
好ましい実施形態によると、本発明によるAONは2’-O-メチル(2’-OMe)修飾リボース(RNA)、2’-O-メトキシエチル(=2’-メトキシエトキシ;2’-MOE)修飾リボース、2’-O-エチル修飾リボース、2’-O-プロピル修飾リボース及び/またはハロゲン化誘導体などのこれらの修飾の置換誘導体などの2’-O(好ましくは低級)アルキルホスホロチオエートAONを含む。
【0051】
本発明による有効かつ好ましいAON型式はホスホロチオエート主鎖を有する2’-O-メチル(2’-OMe)修飾リボース部位を含み、ここで実質的に全てのリボース部位が2’-OMeであり、実質的に全てのヌクレオシド間の結合がホスホロチオエート結合であることが好ましい。本発明による更に別の有効かつ好ましいAON型式はホスホロチオエート主鎖を有する2’-O-メトキシエチル(2’-MOE)修飾リボース部位を含み、ここで実質的に全てのリボース部位が2’-MOEであり、実質的に全てのヌクレオシド間の結合がホスホロチオエート結合であること好ましい。
【0052】
いくつかの実施形態では、配列番号5~60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、全ての糖部位が2’-O-メチル(2’-OMe)置換で修飾される、本発明によるAONが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号60のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが完全なホスホロチオエート主鎖を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、配列番号5~60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、全ての糖部位が2’-メトキシエチル(2’-MOE)置換で修飾される、本発明によるAONが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号60のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが完全なホスホロチオエート主鎖を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、配列番号5~60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換もしくは2’-MOE置換で修飾される、本発明によるAONが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、全ての他の糖部位が2’-OMe置換で修飾される。いくつかの実施形態では、全ての他の糖部位が2’-MOE置換で修飾される。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号60のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが完全なホスホロチオエート主鎖を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、配列番号5~60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなり、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他の糖部位が2’-OMe置換もしくは2’-MOE置換で修飾される、本発明によるAONが本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、全ての他の糖部位が2’-OMe置換で修飾される。いくつかの実施形態では、全ての他の糖部位が2’-MOE置換で修飾される。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42、60、44、46、51、52、58及び59からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48、42及び60からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号48のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号42のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号60のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが配列番号24、26、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、25、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、5、6、8、9、10、11、12及び13からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含むかまたはからなる。いくつかの実施形態では、AONが完全なホスホロチオエート主鎖を有する。
【0056】
COL7A1遺伝子のエクソン105の効率的なスキッピングのために、異なるAONを組み合わせることができることは当業者にも理解されるだろう。少なくとも1つのAONが本発明によるものである限り、本発明の方法にエクソン105の同じまたは異なる領域を標的とする2つの異なるAON、3つの異なるAON、4つの異なるAONまたは5つの異なるAONなどの2つ以上の異なるAONの組合せを使用してもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるAONの組合せは、配列番号42のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第1AON及び配列番号44のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第2AONを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるAONの組合せは、配列番号45のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第1AON及び配列番号52のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第2AONを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上の異なるAONの組合せは配列番号48のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第1AON及び配列番号51のヌクレオチド配列を含むかまたはからなる本発明の第2AONを含む。
【0057】
AONは細胞、好ましくは皮膚細胞中AONの取り込みを増強する部位に連結することができる。このような部位としては、コレステロール、炭水化物、ビタミン、ビオチン、脂質、リン脂質、アンテナペディア、TAT、トランスポータンを含むが、これらに限定されない細胞透過性ペプチド、オリゴアルギニンン、ポリアルギニン、オリゴリシンまたはポリリシンなどの正に荷電したアミノ酸、抗原によって提供されるような抗原結合ドメイン、抗原のFabフラグメントまたはラクダ単一ドメイン抗原結合ドメインなどの単鎖抗原結合ドメインが挙げられる。好ましい投与方法はカルボマーヒドロゲルなどの本発明のAONを配合したヒドロゲルを利用する。
【0058】
本発明によるAONは、裸の(ジムノシスによる)AONまたは複合体の形態またはベクターから発現され(ベクトル化したAON)てもよい。AONは、当該技術分野において知られている適切な手段を使用して投与されてもよい。エクソンスキッピング分子がベクター化したAONであるとき、このAONは、例えば、発現ベクターがオリゴヌクレオチドを含む転写物をコードする発現ベクターの形態でエクソンスキッピング分子が個体または個体の細胞、組織もしくは器官に提供されてもよい。発現ベクターはウイルスベクターなどの遺伝子送達媒体を介して細胞、組織、器官または個体に導入されることが好ましい。好ましい実施形態では、本明細書において同定されるように、エクソンスキッピング分子の発現または転写を駆動する発現カセットまたは転写カセットを含むウイルス系発現ベクターが提供される。したがって、本発明は、エクソンスキッピング分子の発現につながる条件下に配置されるとき、本発明によるAONを発現するウイルスベクターを提供する。細胞はエクソン105の包含に必須または少なくともつながる配列を妨げることができるエクソンスキッピング分子を備え得るため、このような妨害では、例えば、アデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス系ベクターによって提供されるプラスミド由来AON発現またはウイルス発現によってCOL7A1mRNAへのエクソン105の包含を阻止または少なくとも低減する。発現はU1、U6またはU7RNAプロモーターなどのポリメラーゼIIIプロモーターによって駆動されてもよい。好ましい送達媒体はアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)などのウイルスベクターまたはレンチウイルスなどのレトロウイルスベクターなどである。また、本明細書に定義されるように、プラスミド、人工染色体、標的相同組換えに使用可能なプラスミド及び細胞の哺乳動物(好ましくはヒト)ゲノムの組込みをオリゴヌクレオチドの送達に好適に適用してもよい。転写がPol-IIIプロモーターから駆動され、かつ/または転写物がU1またはU7転写物との融合物の形態であるベクターが本発明にとって好ましく、これが小さい転写物の送達に関する良好な結果をもたらす。適した転写物を設計することは当業者の技術の範囲内である。Pol-III駆動転写物が好ましい。U1またはU7転写物との融合転写物の形態が好ましい。
【0059】
本発明はまた、COL7A1エクソン105のスキッピングを誘発するための本発明のAONの発現のため、PolIII-プロモーター駆動発現カセットを含むウイルス性ベクターを提供する。本明細書に他で示されるように、本発明によるAAVベクターは組換えAAVベクターであり、AAV血清型由来のキャプシドタンパク質のタンパク質シェルにキャプシド形成される本発明によるコードしたAONを含むAAVゲノムの一部を含むAAVベクターを意味する。AAVゲノムの一部はAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9などのアデノ随伴ウイルス血清型由来の逆方向末端反復(ITR)を含有してもよい。キャプシドタンパク質からなるタンパク質シェルはAAV1、2、3、4、5、6、7、8、9などのAAV血清型に由来してもよい。タンパク質シェルはキャプシドタンパク質シェルと呼ばれる場合もある。AAVベクターは1つまたは好ましくは全ての欠失した野生型AAV遺伝子を有していてもよいが、機能的なITR核酸配列をまだ含んでもよい。機能的なITR配列はAAVビリオンの複製、レスキュー及びパッケージングに必要である。ITR配列は野生型配列であってもよく、または野生型配列との少なくとも80%、85%、90%、95%もしくは100%の配列同一性を有してもよく、またはITR配列が機能的なままである限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、突然変異、欠失もしくは置換で変更されてもよい。本文脈中、機能性はキャプシドシェルにゲノムを直接パッケージングし、感染する宿主細胞または標的細胞中の発現を可能にする能力を示す。本発明に関連して、キャプシドタンパク質シェルはAAVベクターゲノムITRと異なる血清型であってもよい。したがって、本発明によるAAVベクターはキャプシドタンパク質シェル、すなわち正二十面体キャプシドからなってもよく、このキャプシドはAAV血清型、例えば、AAV血清型2のキャプシドタンパク質(VP1、VP2及び/またはVP3)である。一方、そのAAV5ベクターに含有されるITR配列はAAV2ベクターを含む上記AAV血清型のいずれかであってもよい。したがって、「AAV2ベクター」はAAV血清型2のキャプシドタンパク質シェルを含み、例えば、「AAV5ベクター」はAAV血清型5のキャプシドタンパク質シェルを含み、それによりAAV2ベクターまたはAAV5ベクターのいずれかは本発明による任意のAAVベクターゲノムITRをキャプシド形成してもよい。本発明による組換えAAVベクターがAAV血清型2、5、6、7、8または9のキャプシドタンパク質シェルを含み、このAAVベクターに存在するAAVゲノムまたはITRはAAV血清型2、5、8または9に由来することが好ましい。このようなAAVベクターはそれぞれAAV2/2、AAV2/5、AAV2/8、AAV2/9、AAV5/2、AAV5/5、AAV5/8、AAV5/9、AAV8/2、AAV8/5、AAV8/8、AAV8/9、AAV9/2、AAV9/5、AAV9/8またはAAV9/9ベクターを示す。本発明による組換えAAVベクターは真皮及び表皮細胞の指向性を有し、AAV血清型5または8のキャプシドタンパク質シェルを含むことがより好ましい。ベクターに存在するAAVゲノムまたはITRは、AAV血清型2などの同じまたは異なる血清型に由来し得る。このようなベクターはAAV2/5またはAAV2/8ベクターという。血清型5キャプシドを有するAAVは基底及び基底上のケラチノサイト及び皮膚線維芽細胞の指向性を有する。5型キャプシドを有するAAVベクターは、2型キャプシドを有するAAVに比べて、非常により高い形質導入効率を示す。同様に、血清型8のキャプシドを有するAAVは皮膚線維芽細胞及び(主に)基底上のケラチノサイトへの指向性を示す。さらに、哺乳動物、好ましくはヒト真皮及び表皮細胞を形質導入する際、AAV2/8はAAV2/5より効率的になる傾向がある。しかし、形質導入効率は創傷治癒中、投与のタイミングに依存するように見え、AAV2/2は後の時点のAAV2/5及びAAV2/8より高い形質導入効率を示す。したがって、AAV2/2、AAVx/5及びAAVx/8は本発明によるAONを送達するために好ましいAAVであり、投与時期及び標的とされる細胞型を考慮してその選択を決定し得る。前臨床または臨床試験において、当業者はこれらの詳細を容易に理解することができる。上記で同定されるように、選択した核酸配列によって表された本発明によるAONをコードする核酸分子はAAVゲノムまたはITR配列の間に、例えば、コード配列に動作可能に連結された発現調節エレメントを含む発現構築物と3’末端配列の間に挿入することが好ましい。
【0060】
「AAVヘルパー機能」は一般にトランスにAAVベクターに付与されるAAV複製及びパッケージングに必要な対応するAAV機能を意味する。AAVヘルパー機能はAAVベクター中欠けているAAV機能を補足するが、これらはAAVITR(AAVベクターゲノムによって提供される)を欠いている。AAVヘルパー機能はAAVの2つの主要なORF、すなわちrepコード領域及びcapコード領域またはその機能性がある実質的に同一の配列を含む。rep及びcap領域は当該技術分野において周知である。AAVヘルパー機能はAAVヘルパー構築物に付与されることができ、それはプラスミドであってもよい。本明細書において同定されるように、AAVベクターに存在するAAVゲノムの導入の前にまたは同時に、例えば、形質転換、トランスフェクションまたは形質導入によって宿主細胞へヘルパー構築物を導入することができる。したがって、本発明のAAVヘルパー構築物は、一方ではAAVベクターのキャプシドタンパク質シェルの血清型と他方ではAAVベクター複製及びパッケージングに存在するAAVゲノムの血清型の望ましい組合せを作成するように選択され得る。
【0061】
「AAVヘルパーウイルス」はAAV複製及びパッケージングに必要とされる付加機能を与える。適切なAAVヘルパーウイルスはアデノウイルス、単純ヘルペスウイルス(例えば、1型及び2型HSV)及びワクシニアウイルスを含む。US6,531,456に記載されるように、ヘルパーウイルスにより与えられる付加機能をベクターを介して宿主細胞に導入することができる。本発明による組換えAAVベクターに存在するAAVゲノムはAAVのrep(複製)またはcap(キャプシド)遺伝子などのウイルスタンパク質をコードする任意のヌクレオチド配列を含まないことが好ましい。AAVゲノムは、例えば、当該技術分野において知られている抗生剤耐性遺伝子をコードする遺伝子、蛍光タンパク質(例えば、gfp)または化学的に、酵素的にもしくは別の方法で検出可能な及び/もしくは選択可能な産物(例えば、lacZ、aphなど)をコードする遺伝子などのマーカーまたはレポーター遺伝子を更に含んでもよい。
【0062】
これまでのところ既に達成されている進歩を考慮すると、本発明によるエクソンスキッピング分子を個体または個体の細胞、組織、器官に提供する手段の改良が予測される。本発明の方法を用いるmRNAの再構築への言及された影響を達成するために、もちろん、このような将来の改良を組み込んでもよい。本発明によるAONをそのまま個体、個体の細胞、組織または器官に送達することができる。本発明によるAONを投与するとき、送達方法と相性が良い溶液に分子を溶解することが好ましい。
【0063】
ジムノシスによるAONはインビボで多数の細胞によって容易に取り込まれる。通常、等張(生理食塩)水への本発明によるAONの溶解は、皮膚(真皮及び表皮)細胞などの標的細胞に到達するのには十分である。あるいは、本発明のジムノシスによるAONは薬理学的に許容される賦形剤、添加剤、安定化剤、溶媒、着色剤などを使用して配合されてもよい。加えてまたはあるいは、ジムノシスによるAONは下記トランスフェクション助剤のいずれかと共に配合されてもよい。
【0064】
等張(生理食塩)水などの水溶液中にプラスミドを提供することによって、皮膚(真皮及び表皮)細胞はAON発現用プラスミドを備え得る。あるいは、プラスミドは既知のトランスフェクション試薬を使用するトランスフェクションによって提供され得る。
【0065】
静脈内、皮下、筋肉内、クモ膜下腔内及び/または心室内投与のために、溶液が等張(生理食塩)水であることが好ましい。本発明においては、細胞に及び/又は細胞内に、好ましくは皮膚(真皮及び表皮)細胞内に本明細書に定義される構成成分のそれぞれの送達に役立つであろう賦形剤またはトランスフェクション試薬の使用が特に好ましい。細胞膜を介して小胞もしくはリポソームにおいて組み合わせられるかまたは捕捉される、本明細書に定義される各構成成分を送達する複合体、ナノ粒子、ミセル、小胞及び/またはリポソームを形成することができる賦形剤またはトランスフェクション試薬が好ましい。これらの賦形剤の多くが当該技術分野において知られている。適切な賦形剤またはトランスフェクション試薬は、ポリエチレンイミン(PEI;ExGen500(MBI Fermentas))、リポフェクトAMINE(商標)2000(Invitrogen)もしくはその誘導体、ポリエチレンイミンまたはポリエチレンイミンコポリマー(PEC)及び誘導体を含む類似のカチオン性ポリマー、合成両親媒性試薬(SAINT-18)、リポフェクチン(商標)、DOTAP及び/または細胞、好ましくは皮膚(真皮または表皮)細胞に本明細書に定義される各構成成分を送達することができる粒子に自己集合化できるウイルス性キャプシドタンパク質を含む。このような賦形剤は、皮膚(真皮及び表皮)細胞を含む多種多様な培養細胞にAONなどのオリゴヌクレオチドを効率的に送達することが示されている。全細胞生存に関して許容できる低い毒性から中程度までの毒性とこれらの高いトランスフェクション力が組み合わされる。構造修飾の容易さを利用して、更なる修飾、ならびにそれらの(インビボでの)核酸導入特性及び毒性の分析を可能にすることができる。リポフェクチンはリポソーム型トランスフェクション試薬の一例を表す。リポフェクチンは、カチオン性脂質N-[1-(2,3ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)(メチル硫酸塩であるcp.DOTAP)及び中性脂質ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)の2つの脂質成分からなる。中性成分は細胞内放出を媒介する。送達システムの別のグループはポリマーナノ粒子である。ジエチルアミノエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランのようなポリカチオンはDNAトランスフェクション試薬として周知であり、これはブチルシアノアクリレート(PBCA)及びヘキシルシアノアクリレート(PHCA)と組み合わせ、細胞内で細胞膜を横切って本明細書に定義される各成分、好ましくはオリゴヌクレオチドを送達することができるカチオン性ナノ粒子を配合することができる。
【0066】
これらの一般のナノ粒子材料に加えて、カチオン性ペプチドプロタミンはコロイドとオリゴヌクレオチドを配合する代わりの手法を提供する。このコロイド状ナノ粒子系は、いわゆるプロティクルを形成することができ、これはパッケージングする簡便な自己集合プロセスによって調製され、オリゴヌクレオチドの細胞内放出を媒介することができる。当業者は、上記または他の市販の代替賦形剤、及びCOL7A1遺伝子における変異エクソン105に関連した疾患または症状の予防、治療または遅延のためエクソンスキッピング分子を送達するために、本発明に使用されるエクソンスキッピング分子をパッケージングし、送達する送達システムのいずれかを選択し、利用してもよい。
【0067】
本発明によるAONは、細胞(特に、皮膚(真皮)細胞)、細胞質及び/またはその核への取り込みを促進するように具体的に設計された標的リガンドに共有結合または非共有結合で連結することできた。このようなリガンドは、(i)細胞の取り込みを促進する細胞、組織または器官に特異的な要素を認識する化合物(ペプチド(様)構造を含むが、限定されない)、ならびに/または(ii)細胞への取り込み及び/もしくは小胞、例えば、エンドソームもしくはリソソームからのオリゴヌクレオチドの細胞内放出を促進することができる化学化合物を含むことができた。
【0068】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるAONは、組成または薬剤または組成物に配合され、それらは少なくとも賦形剤及び/または送達用標的リガンド及び/またはAONの細胞への送達デバイス及び/またはAONの細胞内送達の強化を備える。
【0069】
組成物が本明細書に後で定義される補助化合物などの追加成分を含む場合、組成物の各成分を単一の組合せまたは組成または製剤で配合してもよいことが理解される。それらの同一性に応じて、当業者はどのタイプの製剤が本明細書に定義される各成分に最も適切であるかが分かるだろう。一実施形態によれば、本発明は本発明によるAON及び本明細書に後で定義される更なる補助化合物を含む部品のキットの形態で組成または製剤を提供する。
【0070】
必要であれば、本発明によるAONまたは本発明によるAONを発現するベクター、好ましくはウイルスベクターを、薬学的に許容されるキャリアを添加することによって薬学的に有効な混合物に組み込むことができる。
【0071】
本発明はまた、ジムノシスによるAONなどの本発明によるAONまたは本発明によるウイルスベクター及び薬学的に許容される賦形剤を含む、組成物、好ましくは医薬組成物を提供する。このような組成物は本発明による単一のAONを含んでもよいが、本発明による複数の異なったAONも含んでもよい。このような医薬組成物は、キャリア、賦形剤、安定化剤、トランスフェクション試薬、ゲル化剤、バッファー、充填剤、防腐剤、アジュバント、可溶化剤及び/または希釈液を含む任意の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。例えば、このような薬学的に許容される成分はRemington,2000に見つけることができる。この組成物の各特徴は本明細書で先に定義されている。
【0072】
本発明による複数の異なったAONが使用される場合、本明細書に定義される濃度または用量は使用される全てのオリゴヌクレオチドの総濃度もしくは総用量または使用もしくは添加される各AONの濃度もしくは用量を意味していてもよい。したがって、一実施形態では、各量または全量の使用される本発明によるAONを0.0001~100mg/kg、好ましくは0.001~50mg/kg、更により好ましくは0.01~20mg/kgの範囲の量で投与する組成物が提供される。
【0073】
本発明による好ましいAONは、DEB、更に一般的には個体の変異COL7A1エクソン105関連疾患または症状の治療のためである。本発明の全ての実施形態では、用語「治療」は疾患または症状の予防及び/または遅延を含むと理解される。個体はDEBまたはCOL7A1エクソン105関連疾患または症状を有すると既に診断されていてもよく、この個体は本発明によるAONを使用して治療され得る。あるいは、本発明によるAONを使用して治療され得る個体はまだ診断されていない場合もあるが、未来の所定の個体の遺伝的背景においてDEB、COL7A1エクソン105関連疾患もしくは症状を発症するリスクの増加を有する個体である場合もある。
【0074】
本発明によるAONの好ましい投与方法は、AONを放出することができるAON被覆包帯の適用による。W02014/150074に開示されるような多層(レイヤーバイレイヤー、LbL)被覆包帯が特に有益である。siRNAを含有する多層フィルムで被覆された絆創膏からの創傷治癒促進siRNAの持続的で効果的な放出が開示されている。本発明によるAONと好適に併用してもよい包帯はTegaderm(登録商標)である。本発明によるAONと併用してもよいsiRNAの送達に適した多層コーティングは層状構造を含有するLaponite(登録商標)である。核酸治療薬を放出することができるTegaderm(登録商標)以外の包帯を使用してもよい。包帯が皮膚または創傷部位に密着する限り、絆創膏でないものが患者にとって苦痛がより少ないような場合、その絆創膏でないものを使用してもよい。包帯と組み合わせた本発明によるAONの送達のためのAON含有LBLフィルムはW02014/150074に記載されている。投与は、投与経路及び患者の必要に応じて毎日、毎週、毎月、年4回、1年1回であってもよい。
【0075】
疾患の早期発生のため、DEBを含むCOL7A1遺伝子の変異エクソン105が原因であるかもしくは関連する疾患、障害もしくは症状を有するかまたは発症させるリスクのある患者は、子宮内、生後すぐ、月齢1、2、3、6ヵ月から、1歳から、3歳から、5歳から、病徴の発症前または後に治療され、緩和し、発症を遅らせ、疾患の病徴などが停止もしくは逆転し得る。
【0076】
本発明による使用または方法の治療は、患者の一生涯の間も少なくとも1週、少なくとも1ヶ月、少なくとも数ヵ月、少なくとも1年、少なくとも2、3、4、5、6年または慢性的である。本発明による使用のための、本明細書で定義される各エクソンスキッピング分子またはAONまたはその等価物は、既に影響を受けているかまたは変異COL7A1エクソン105関連障害、疾患もしくは症状を発症するリスクのある個体のインビボでの細胞、組織及び/または器官への直接投与に好適であり、インビボ、エクスビボまたはインビトロで直接に投与されてもよい。本発明のAON、組成物、化合物または補助化合物の投与頻度は、患者の年齢、エクソンスキッピング分子(例えば、AAVまたはレンチウイルスベクター発現したAONなどのジムノシスによるAONまたはベクトル化したAON)の性質、用量、分子の処方などいくつかのパラメータに依存し得る。
【0077】
エクソンスキッピング分子、好ましくは本発明によるAONの用量範囲は、厳密なプロトコル必要条件が存在する臨床試験(インビボでの使用)における成長中の用量研究に基づいて設計することが好ましい。本明細書で定義されるAONは、0.0001~100mg/kg、好ましくは0.01~20mg/kgの用量範囲で使用してもよい。用量及び治療レジメは、投与経路(例えば、全身対局所に)、AONがジムノシスによるAONまたはベクトル化したAONとして投与されるか否か、投与レジメ、患者の年齢及び体重等を含むが、これらに限定されない多くの要因に応じて広く変化してもよい。
【0078】
好ましい実施形態では、本発明によるAON用送達媒体としてウイルスベクター、好ましくは本明細書に先に記載されるAAVベクターが注射当たり1×109~1×1017のウイルス粒子、より好ましくは注射当たり1×1010~1×1014のウイルス粒子、最も好ましくは注射当たり1×1010~1×1012のウイルス粒子の用量範囲で投与される。
【0079】
本発明が関係する当業者にとって、オリゴヌクレオチド(複数可)の配列及び化学的性質、投与経路、処方、用量、投与レジメ、型式(ウイルスベクターまたはジムノシスによるオリゴヌクレオチド)、患者の年齢及び体重、疾患のステージなどの要因に従ってかつ応じて治療の詳細が確立されなければならないことは明らかであり、これらは更なる非臨床の調査及び臨床の調査を必要とし得る。
【0080】
特に明記しない限り、本明細書に記載される各実施形態は、本明細書に記載される他の実施形態と組み合わせてもよい。
【0081】
本明細書における実験部分及び例で観察することができるように、RNAレベルでCOL7A1遺伝子のエクソン105を標的にする本発明による種々のAONの添加は実際にエクソン105を欠くmRNAになり、より短いが機能的なコラーゲンVIIタンパク質を生産する。
【0082】
(皮膚細胞に由来し得る)線維芽細胞においてコラーゲンVIIが大量に発現される。したがって、DEB患者からの培養線維芽細胞にAONを添加すると、ウエスタンブロットに検出可能である、短いが機能的なコラーゲンVIIタンパク質の量が増加し、AONに基づく療法がCOL7A1mRNAのスプライシングを再指示するだけでなく、コラーゲンVII機能性の回復にもなることが期待されるだろう。
【0083】
用語「アデニン」、「グアニン」、「シトシン」、「チミン」、「ウラシル」及びヒポキサンチン(イノシン内の核酸塩基)はこのように核酸塩基を意味する。用語アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、ウリジン及びイノシンは(デオキシ)リボシル糖に結合される核酸塩基を意味する。用語「ヌクレオシド」は(デオキシ)リボシル糖に結合される核酸塩基を意味する。
【0084】
本明細書及び特許請求の範囲において、動詞「to comprise」及びその活用形は非限定的な意味で使用され、その単語を伴うことが含まれるが、具体的に記述されないことが除かれないことを意味する。さらに、文脈が要素の1つ及び1つのみが存在することが明らかに必要ではない限り、不定冠詞「a」または「an」による要素の参照は1つより多くの要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味する。
【0085】
単語「含む(include)」、ならびにその時制及び活用形の全ては「含むが、それらに限定されない」と読むべきである。
【0086】
単語「エクソンスキッピング分子」はウイルスベクターを含み、相溶性細胞中にAONを発現することができるジムノシスによるAON及びベクター化したAONを含むことを意味する。
【0087】
数値(例えば、約10)に関連して使用されるとき、単語「約」または「およそ」はその数値が所定値(10)±その値の5%であってもよいことを意味することが好ましい。
【実施例】
【0088】
実施例1:ヒトCOL7A1前駆体mRNAからのエクソン105の排除のためのAONの設計及び使用
ヒトCOL7A1前駆体mRNAからのエクソン105スキッピングを証明するために、本発明の発明者らはBremer et al.(2016)及びWO2017/078526に先に開示された2つのAONと比較して、活性について評価された31の新規なAONを設計した。具体的に、糖部位において2’-OMeで完全に修飾されたAONまたは糖部位において2’-MOEで完全に修飾されたAONの2つの化学修飾に十分に取り組んだ。全てのAONはホスホロチオエート結合がヌクレオシドに接続される状態で修飾された。表1は、評価したAONをこれらの配列番号及びどのような2’置換変形でこれらが試験されたかを共に示す。
図1はエクソン105(上部)における相補配列に対して全てのこれらのAONの各位置を示す。
図1における下線は、当該技術分野で知られるc.7864del突然変異において欠失するC位置である(Escamez et al.2010)。AON12、15及び16は、エクソン105配列と100%相補的であり、野生型配列と重なる。AON8、9、13、14、17、19、27及び28はc.7864delC変異体配列と100%相補的であり、c.7864delC突然変異と重なる(これにより、対向するGを欠損させる)。他のAONはこの突然変異の外側にあり、野生型配列と100%相補的である。
表1:エクソン105のスキッピングについて試験したAON。各カラムに「X」で示されるように異なる化学修飾を使用して、AONを試験した。
【表1-1】
【表1-2】
1MOE+PS:PS主鎖を有し、完全に2’-MOE修飾された
2OMe+PS:PS主鎖を有し、完全に2’-OMe修飾された
【0089】
第1実験では、Bremer et al.(2016)及びWO2017/078526で知られる2つのUMCGAON(UMCG-AON1、配列番号3及びUMCG-AON2、配列番号4)を本発明の発明者らにより作成された2’-MOE変形のAON8と比較した。
【0090】
このため、次のように野生型線維芽細胞を培養し、設計したAONをトランスフェクトした。第1線維芽細胞を集密度80~90%に成長させ、PBSで洗浄し、トリプシン処理した。細胞を、EVE細胞カウンター(NanoEntek)を使用して計数し、生存度(生存度必要条件>80%)について確認した。細胞を6ウェルプレートに1.5×105個/ウェルで播種した。プレートを終夜インキュベートし、翌日、トランスフェクション試薬としてMaxPEI(Polysciences)を使用してUMCG-AON1及びUMCG-AON2及びこれら2つの組合せ(総最終濃度250nM)を含む、250nMの異なるAONを細胞にトランスフェクトした。充填比PEI:AONは100nMを用いるトランスフェクションに対して1.8μL:400ngであり、250nMを用いるトランスフェクションに対して1:2の重量比(AON:Pei)であった。24時間後、RNA単離のためにサンプルを回収した。これに対し、細胞をPBSで洗浄し、ReliaPrep(商標)RNA細胞ミニプレップシステムの250μLBL+TG溶解バッファーで溶解した。製造者プロトコルに従ってmRNAを単離した。RNAを25μLRNアーゼ遊離水に溶出し、Nanodrop2000(Thermo Fisher)でOD比260/280及び260/230を使用して濃度及び純度を測定した。300ngRNAを使用してcDNA合成を行った。製造者のプロトコル(Verso kit、Thermo Fisher)に従って反応混合物を添加した。42℃で30分間、cDNA合成を行った。ランダムヘキサマープライマー(the Verso kitより提供)を使用し、第1鎖cDNAを合成した。続いて、FWプライマー(5’-GT GAC AAAGGAC CTC GGGG-3’配列番号63)及びリバースプライマー(5’-CTC CAT C AAGGC C AC AGGC-3’配列番号64)を使用したcDNAテンプレート1μLを使用してマスターミックス(キット及びdNTP、両方ともThermo Fisher ScientificよりApplied Biosystemsから提供)でPCRを行った。62℃35サイクルでPCRを実行した。異なるフラグメントサイズを検出し、収率に基づいて定量分析を実行するチップ技術(DNA1000キット、バイオアナライザー、Agilent)に関する研究室を使用してPCR産物を分析した。DNA1000チップを使用した。Agilentバイオアナライザー2100を使用して可視化を行った。
【0091】
図2はバイオアナライザーに関するPCRの結果を示す。特に当該技術分野で知られるオリゴヌクレオチドUMCG-1 AON及びUMCG-2 AONの2’-MOE変形と比較して、AON8(2’-MOE変形)はエクソン105の有意なスキッピングを示した。Bremer et al.(2016)に示されたものを使用した列においては、AON1(2’-MOE)及びAON2(2’-MOE)は任意の検出可能なスキップを示さず、一方、AONを併用したとき、エクソン105スキッピングが観察された。2’-OMe変形を使用した効果が2’-MOE変形を使用した効果より顕著に見えたけれども、UMCG AONの2’-OMe変形を単独でまたは併用したとき、同じ効果が見られた。AON8(2’-MOE)を単独で使用したとき、AON8はUMCG-1(2’-MOE)化合物及びUMCG-2(2’-MOE)化合物より優れていた。本明細書に先に概説されるように、発症及び治療目的(製造、毒性、組織の侵入など)のため、エクソン105スキッピングを達成する単一の活性化合物を有することが好ましい。この最初の実験から、エクソン105スキッピングを得るために先に示された当該技術の2つのAONを組み合わせたとき、比較すると、AON8はより優れたスキッピング効率を有すると結論づけた。AON8はc.7864delC変異体mRNAと100%相補的である(欠損した「C」の反対の位置で「G」を欠失することにより)が、AON8がエクソン105mRNAと100%相補的でない野生型線維芽細胞における適当なエクソン105スキッピングをまだ示すことに留意されたい。
【0092】
追跡実験では、類似のPCR実験において(上記と同じ手順を使用する)AON7、8、9、10及び11(表1参照)のぞれぞれについて2’-OMe修飾を2’-MOEと比較した。AONは、各位置で2’-OMeで完全に修飾されるかまたは各位置で2’-MOEで完全に修飾された。
図3に結果を示す。ここで、いくつかのスキッピングはAON7(2’-MOE)で検出することできた。結果も、2’-OMeを用いるAON7はその2’-MOEの等価物よりも優れ、AON8についてはこれが反対であることを示す。
【0093】
次の実験において、全てAON8に基づきかつc.7864delC位置に野生型エクソン105mRNAと100%相補的であるAONを使用して新規な1セットのAONを作成した(AON12、15、16、
図1及び表1参考)。このために、野生型線維芽細胞にAON12、13、14、15、16、17、18、19及び20(全て完全に2’-MOE修飾を保持する)をトランスフェクトし、AON8の2’-MOE及び2’-OMe修飾した変形を比較した。
図4に結果を示す。最良に機能するAONはAON12、AON15、AON16、AON18及びAON20であった。
図1に見ることができるように、AON12、15及び16は野生型エクソン105mRNAと100%相補的である。他の実験において、c.7864delC突然変異したmRNAへのAON8、9、13、14、17及び19の効果を決定する。AON18はc.7864delC突然変異から離れた領域と相補的である。AON8、12、15、16、18及び20(2’-MOE修飾を有する)全てが従来技術からAONより優れていると結論づけた。
【0094】
実施例2:ddPCRを使用するヒトCOL7A1前駆体mRNAからのエクソン105の排除の定量化
本明細書に開示される異なるAONのトランスフェクション後、C7Δ105mRNAの量をより良く定量化するために、本発明の発明者らはドロップレットデジタルPCR(ddPCR)分析法を開発した。
【0095】
2種類の二重検定を使用して、エクソン105スキッピングを測定した。分析1において、サンプル中のCOL7A1の総量を測定し(FAMラベルを使用するCOL7A1参照アッセイ)、分析2において、スキップしたエクソン105に特異的なプライマー及びプローブセット(FAMラベルを使用するCOL7A1エクソン105スキッピングアッセイ)を使用した。サンプルを標準化するために、HEXラベルを使用する参照遺伝子としてGusBを使用して、両方のアッセイを二重に行った。以下のプライマー及びプローブ配列を使用した。
GusB
フォワードプライマー:5’-GTTTTT GAT C C AGAC C C AGAT G-3’(配列番号65)
リバースプライマー:5’-GCCCATTATTCAGAGCGAGTA-3’(配列番号66)
プローブ(HEX):5’-TGCAGGGTTTCACCAGGATCCAC-3’(配列番号67)
C7
フォワードプライマー:5’-TCGGTTGCTGGAAACTGC-3’(配列番号68)
リバースプライマー:5’-CACAGGCAGGAAGCTACC-3’(配列番号69)
プローブ(FAM):5’-ATCAAGGCATCTGCCCTGCGGGAG-3’(配列番号70)
C7-Δ105
フォワードプライマー:5’-GTGACAAAGGACCTCGGGG-3’(配列番号63)
リバースプライマー:5’-CTCCATCAAGGCCACAGGC-3’(配列番号64)
プローブ(FAM):5’-ACTCCCCGTTCACCCGGGTCAC-3’(配列番号71)
【0096】
cDNAテンプレート4μL、ならびに総容積20μLのプライマー及びプローブ(最終濃度0.2μM)を使用し、プローブ用ddPCR super mix(dUTP無し)(Biorad)を使用して二重式ddPCRを行った。QX200ドロップレットジェネレーター(Biorad)を使用して液滴を作成し、T100サーマルサイクラー(Biorad)を使用してアニーリング温度62℃でPCRを40サイクル行った。PCR後、QX200ドロップレットリーダー(Biorad)で液滴を分析し、単一ラベルの液滴、二重ラベルの液滴及び陰性の液滴から蛍光シグナルを計測した。以下の式を用いてエクソン105スキッピング%を計算した。
【数1】
【0097】
野生型線維芽細胞を使用して実験を最初に行った。最初に、AON8、12、15、16、18及び20をその2’-OMe及び2’-MOE変形で試験した。
図5はこの最初のddPCRスクリーンの結果を示し、2’-MOE変形をその2’-OMeの対応物との比較に使用するとき、各場合におけるより高いスキッピングの割合についてこの構成における2’-OMe修飾よりも2’-MOE修飾が優位であることを明らかに示す。AON8は依然として良好なものであったが、AON18及びAON20は更により高いスキップ割合、最大80%を与えた。2’-MOEによるAON8と2’-OMeによるAON8の明確な差は
図3及び4に示される結果を反映し、これらにおいて、2’-MOE変形も良好な結果を与えるように見えた。
【0098】
実施例3:患者由来の線維芽細胞を使用するエクソン105スキッピングの定量化
野生型線維芽細胞(FD030)、c.7864delC突然変異を保有するDEB患者から得られた線維芽細胞(PLU002A)及びDEBに罹患していないが、c.7864delC突然変異の保因者として特定されたヒト被検体から得られた線維芽細胞(PLU003A)におけるエクソン105スキッピングの割合を決定するために、ddPCRアッセイも使用した。この実験では、2’-OMe及び2’-MOE変形両方のAON8、AON18及びAON20を試験し、そして非トランスフェクション及び組み換えた2’-MOEAONを陰性対照として含んでいた。実験の構成は実施例2に説明した通りであった。
図6に結果を示す。これらの結果は、3つの細胞型全てにおいて2’-MOEで完全に修飾されたAON18及びAON20がそれらの2’-OMeの対応物及びAON8より優れていることを示した。患者材料対保因者材料において得られた結果において劇的な相違は観察されなかったが、AONのそれぞれに対して患者及び保因者の線維芽細胞におけるスキッピングの割合は野生型線維芽細胞におけるものより高かった。
【0099】
次に、更に他のセットのAON(AON21~33;表1及び
図1を参照)を作成した。これらは全てAON8~20の相補的領域を標的化することを判定した。AON21の配列はWO2017/078526に既に開示されているが、その配列中のエクソンスキッピング効率について特定のオリゴヌクレオチドが試験されていることは示されていなかった。PLU002A及びPLU003A線維芽細胞においてもAON21~33(全て、完全な2’-OMe修飾による)を試験した。2つの異なる濃度の2’-MOE及び2’-OMe修飾によるAON18を試験し、新規に作成されたAON及びAON8と比較した。
図7に結果を示す。AON32はAON8に相当するレベルに到達したが、新規に作成されたAON(全て、2’-OMe修飾を保有する)はいずれも、AON18が2’-MOE修飾を保有しながら得られたスキッピングの割合に届かなかったことを表している。
【0100】
…CAUCUCC-3’を有する3’末端で終わり、ヒトCOL7A1エクソン105スキッピングオリゴヌクレオチドにおける特定の末端を有することが優れた効率を提供することを示すAON23、AON29及びAON32に対して、PLU002A及びPLU003A線維芽細胞を使用する類似のddPCR実験において、2’-MOE変形を作成し、AON8、AON18及びAON20の2’-MOE変形と比較した。AON20も…CAUCUCC-3’末端を含む。
図8は実験の結果を示し、AON8、AON32、AON20及びAON18が最良に機能しながら、特にAON8、AON18、AON20、AON29及びAON32が良好なエクソン105スキッピング結果を与えることを示す。
【0101】
実施例4:DEB線維芽細胞における新規の及び既知のAONのトランスフェクション下でのエクソン105スキッピングの定量化
従来技術の2つの既知のAONと比較して、本発明のAONによるエクソン105スキッピングの効率を評価するために、2’-OMeまたは2’-MOEで完全に修飾されたAON8、AON18及びAON20を使用して、PLU002A線維芽細胞への類似のトランスフェクションを行い、共に2’-OMeまたは2’-MOEで完全に修飾されたUMCG-AON1及びUMCG-AON2を使用する別のトランスフェクション、ならびにUMCG-AON2(2’OMe)を使用してUMCG-AON1(2’-OMe)を同時トランスフェクトしたかまたはUMCG-AON2(2’-MOE)を使用してUMCG-AON1(2’-MOE)を同時トランスフェクトした組み合わせたトランスフェクションと比較した。全ての場合において、トランスフェクトした全AONの最終濃度が組み合わせた同時トランスフェクションでも250nMであった。細胞培養、トランスフェクション、mRNA単離及びddPCR手順は上記で記載された通りであった。
図9に結果を示す。明らかに、AON8、AON18及びAON20の2’-MOE変形はそれらの2’-OMeの対応物より優れていた。全てのこれらの3つのAONについて、それらの2’-MOE変形はまた、単独化合物としてトランスフェクトされるとき、2’-MOE変形、ならびにUMCG-AON1及びUMCG-AON2の2’-OMe変形より優れていた。AON18(2’-MOE)及びAON20(2’-MOE)の単独のトランスフェクションは2’-OMe及び2’-MOE変形でのUMCG-AON1/UMCG-AON2の組み合わせた同時トランスフェクション(各々、棒の下に示されるように二重で行われた)よりもより効率的なエクソン105スキッピングを与えることが重要であった。したがって、DEBに罹患するヒト患者から得られた細胞におけるヒトCOL7A1前駆体mRNAからの適切なエクソン105スキッピングに到達するために単一の活性化合物として使うことができる、本明細書に開示される新規なAONの有益性が明らかに示される。
【0102】
実施例5:ヒトCOL7A1前駆体mRNAからのエクソン105の排除のためのAONの設計及び特徴
ヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの媒介に有用なAONを更に同定するために、21の更なるAONをそれらの活性のために設計し、評価した。全てのAONはホスホロチオエート結合がヌクレオシドに接続される状態で修飾され、MOE(糖部位で完全に2’-MOE修飾された)、OMe(糖部位で完全に2’-OMe修飾された)、MOE/1xLNA(糖部位で5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-MOE修飾された)、OMe/1xLNA(糖部位で5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-OMeで修飾された)、MOE/2xLNA(糖部位で2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-MOE修飾された)、OMe/2xLNA(糖部位で2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-OMe修飾された)の1つ以上においてのように修飾された。表2は、評価した更なるAONをこれらの配列番号及びどのような修飾変形で試験されたかを共に示す。
図1はエクソン105(上部)における相補配列に対する全てのこれらのAONの各位置を示す。
表2:エクソン105のスキッピングについて試験された更なるAON。各カラムに「x」で示される異なる化学修飾を使用して、AONを試験した。
【表2-1】
【表2-2】
1MOE+PS:PS主鎖を有し、完全に2’-MOE修飾された
2OMe+PS:PS主鎖を有し、完全に2’-OMe修飾された
3MOE/1xLNA+PS:完全なPS主鎖を有し、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-MOE修飾された
4OMe/1xLNA+PS:完全なPS主鎖を有し、5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-OMeで修飾された
5MOE/2xLNA+PS:完全なPS主鎖を有し、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-MOE修飾された
6OMe/2xLNA+PS:完全なPS主鎖を有し、2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチドがLNA修飾され、全ての他のヌクレオチドが2’-OMe修飾された
【0103】
ヒト線維芽細胞におけるAONのトランスフェクションを媒介した送達
第1実験では、上述されるように、AONの2’-OMe変異体でトランスフェクトされたヒト線維芽細胞からヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度をddPCRで分析した(
図10)。試験したAON37、AON39、AON43、AON53、AON54及びAON55の変異体は、LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド(1xLNA)を2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。試験したAON37及びAON39の変異体は、LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド(2xLNA)を2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。NaCl及びトランスフェクション試薬(MaxPEI)のみの条件を陰性対照として含み、2’-OMe修飾されたUMCG-AON1(UMCG1)及びUMCG-AON2(UMCG2)を参考に含んでいた。以下の対のAON:AON37+AON39;AON40+AON47;AON43+AON46;及びUMCG1+UMCG2はまた、組み合わせて試験した。
図10に示すように、実験の2’-OMe修飾AONの多くは、UMCG1またはUMCG2と比較して、エクソン105スキッピングの頻度が向上した。1xLNA修飾を導入すると、試験した全てのAONについてエクソン105スキッピング頻度が向上し、少なくとも1つのAONについてエクソン105スキッピング頻度が2xLNA修飾で更に増加した(
図1中AON37、AON371xLNA及びAON372xLNAを参照)。特に、AON55(2-OMe修飾のみを有する)はエクソン105スキッピングに対する活性を示さなかったが、1xLNA修飾を更に導入すると、エクソン105の約20%のスキッピングを媒介することができるAONになり、これは本実験におけるUMCG1またはUMCG2について観察されるものより高い。最も高い活性を有する2つの単一のAONはAON43 1xLNA及びAON37 2xLNAであり、両方ともエクソン105の約35%のスキッピングを示した。エクソン105の約40%のスキッピングでAON43+AON46の組合せについて最も高い活性が観察された。
【0104】
他の実験において、上述するように、示されたAONの2’-MOE変異体をトランスフェクトするヒト線維芽細胞からヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度をddPCRで分析した(
図11)。試験したAON37、AON39、AON43、AON53、AON54及びAON55の変異体は、LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド(1xLNA)を2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。試験したAON37及びAON39の変異体は、LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド(2xLNA)を2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。NaCl及びトランスフェクション試薬(MaxPEI)のみの条件を陰性対照として含み、2’-MOE修飾されたUMCG-AON1(UMCG1)及びUMCG-AON2(UMCG2)を参考に含んでいた。以下の対のAON:AON37+AON39;及びUMCG1+UMCG2はまた、組み合わせて試験した。
図11に示すように、実験の2’-MOE修飾AONの多数は、UMCG1またはUMCG2と比較して、エクソン105スキッピングの頻度が向上した。1xLNA修飾を導入すると、試験した全てのAONのいくつかについてエクソン105スキッピング頻度が向上した(
図11中AON54 1xLNA及びAON53 1xLNAを参照)が、他のものは活性の減少(
図11中AON55 1xLNA及びAON39 1xLNAを参照)またはほとんど乃至まったく変化しないこと(
図11中AON37 1xLNA及びAON43 1xLNAを参照)が示された。2’-MOE修飾単独でまたは1xLNA修飾を組み合わせてほとんど乃至まったく活性がなかった場合、エクソン105スキッピング頻度は2xLNA修飾で40%を超えるまで増加し(
図11中AON37、AON37 1xLNA及びAON37 2xLNAを参照)、これは本実験におけるUMCG1またはUMCG2について観察されるものより高い。1xLNA修飾の導入で活性が減少した場合、エクソン105スキッピング頻度は2xLNA修飾で更に減少した(
図11中AON39 2xLNAを参照)。AON41単独について最も高い活性が観察され、これはエクソン105の約70%のスキッピングを示した。AON37+AON39の組み合せはエクソン105のわずか約70%未満のスキッピングで類似の活性を示した。
【0105】
HeLa細胞におけるAONのジムノシスによる送達
AONを更に特徴づけるために、ジムノシスによる送達の後の細胞におけるエクソン105のスキッピングを媒介するAONの能力を評価した。上述されるように、示されたAONの2’-OMe変異体のジムノシスによる取り込みの後の、HeLa細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度をddPCRで分析した(
図12)。簡潔には、12ウェルプレートに1ウェル当たり5.0×10
4のHeLa細胞を播種し、その後、37℃及び5.0%CO
2で10%FBS、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンで補充したDMEMに培養した。翌日、ウェルに直接AONを終濃度3~50μMまで添加することによって細胞を処理した。72時間、処理した後、細胞を回収し、上述するRNA分析前に-80℃で保存した。試験したAON37、AON39、AON43、AON53、AON54及びAON55の変異体は、LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド(1xLNA)を2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。試験したAON37及びAON39の変異体は、LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド(2xLNA)を2’-OMe修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。NaClのみの状態を陰性対照として含んでいた。以下の対のAON:AON37+AON39;AON40+AON47;及びAON43+AON46はまた、組み合わせて試験した。
図12に示すように、2-OMe修飾だけを有する実験のAONの多数は、1xLNAまたは2xLNA修飾を更に含む各AONと比較して、エクソン105スキッピングの頻度がかなり低い。1xLNA修飾を導入すると、AON55、AON53、AON39、AON43及びAON37についてエクソン105スキッピング頻度が向上した。2xLNA修飾を導入すると、AON37についてエクソン105スキッピング頻度が更に向上した。2’-OMeのみが修飾したAONはエクソン105の約0.5%を超えるスキッピングを媒介することができたが、場合によっては1xLNAまたは2xLNAでの更なる修飾はエクソン105の最大約3%のスキッピングを可能にした(
図12中AON43 1xLNA及びAON37 2xLNAを参照)。
【0106】
他の実験において、上述されるように、示されたAONの2’-MOE変異体のジムノシスによる取り込みの後の、HeLa細胞由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度をddPCRで分析した(
図13)。試験したAON37、AON39、AON43、AON53、AON54及びAON55の変異体は、LNA修飾された5’末端ヌクレオチド及び3’末端ヌクレオチド(1xLNA)を2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。試験したAON37及びAON39の変異体は、LNA修飾された2つの5’末端ヌクレオチド及び2つの3’末端ヌクレオチド(2xLNA)を2’-MOE修飾された全ての他のヌクレオチドと共に有するものを含んでいた。NaClのみの状態を陰性対照として含んでいた。以下の対のAON:AON37+AON39はまた、組み合わせて試験した。
図13に示すように、エクソン105スキッピングの頻度が1xLNA修飾の導入により約0.5%未満から約2%まで増加したAON43を除いて、2’-MOE AON変異体のLNA修飾についてエクソン105スキッピング活性に関して効果があまり見られなかった。2’-MOE修飾のみを有する実験のAONはいずれも少なくとも約1%のエクソン105スキッピングを促進することが可能でなかった。1つのAONのみ、すなわちAON43 1xLNAがこのような活性を示し、エクソン105の約2%のスキッピングを示した。
【0107】
ddPCRで評価されるように、前述の研究(AON37 OMe/1xLNA、AON43 OMe/1xLNA及びAON43 MOE/1xLNA)に示される最も活性化した変異体のいくつかを含む、サブセットのAONは、AONのジムノシスによる取り込みの後のHeLa細胞からヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度について様々な濃度(3μM、10μM及び50μM)でこれらの用量反応を評価することを更に特徴とした(
図14)。
図14に示すように、試験したAONの全ては陽性の用量反応曲線を示し、AONを用いた治療とエクソン105のスキッピングの因果関係に強い証拠が提供された。
【0108】
創傷のヒト皮膚等価(HSE)モデル
皮膚創傷の三次元モデルにおけるAONの活性を評価するために、ヒト皮膚等価(HSE)モデルを作成し、表在性創傷の後にAONを用いて治療した。
【0109】
HSEを作成するために、6ウェルフィルターインサートに8.0×104の主要な線維芽細胞(継代数4~6)を使用して20mM酢酸に約4mg/mLでラット尾コラーゲンを播種することによって第1皮膚等価物を生成し、浸水条件下、1週間、5%FBS、100U/mLペニシリン及びO.1mg/mLストレプトマイシンで補充された標準線維芽細胞媒体DMEMにインキュベートした。その後、皮膚等価物上に100μL播種媒体(DMEM:5%FBS、1μMヒドロコルチゾン、1μMイソプロテレノール、0.1μMインシュリン、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシンで補充されるハムF12媒体(3:1))に1.5×105または3.0×105(継代数1)のケラチノサイトを滴下して播種した。播種して2時間後、追加の播種媒体1.5mLを各モデルの上部に添加した。播種媒体中、37℃及び7.3%CO2で浸水条件下、HSEをインキュベートした。2日後、FBSは1%まで減少した。それから2日後、FBSを取り除き、創傷及び治療の前に12日間気液界面でHSEを培養した。この期間中、分化培地(DMEM:100U/mLペニシリン、0.1mg/mLストレプトマイシン、1μMヒドロコルチゾン、1μMイソプロテレノール、0.1μMインシュリン、10mM1-セリン、10μM1-カルニチン及び53nM亜セレン酸で補充されるハムF12媒体(3:1))でHSEを培養した。週2回、媒体をリフレッシュし、この時、次の補助剤:100μg/mLアスコルビン酸、β-デキストリン(終濃度)中の1μMDL-α-トコフェロール酢酸エステル、24μMウシ血清アルブミン及び25μMパルミチン酸、30μMリノール酸及び7μMアラキドン酸を含有する遊離脂肪酸補助剤を新たに添加した。
【0110】
表皮を除去することにより、HSEに表在性創傷を形成した。簡潔には、濾紙の幅5~6mmの無菌テンプレートの細片を各HSEの中心面に配置した。テンプレートの細片の両面に線状に切り込みを入れ、各テンプレートの細片の真下の表皮を無菌鉗子を用いて除去した。これにより、線維芽細胞を有する無処置の皮膚等価物上に表在性創傷が得られた。
【0111】
次に、10mgAON/gゲルの濃度で0.75%カルボマーヒドロゲルに配合されたAONを用いてHSEを治療した。合計9の治療に対して週に3回(月曜日、水曜日及び金曜日)3週間、HSEを治療した。その量の、AONを有するまたは有さないヒドロゲルの適用はできるだけ標準化されるように行われた。このために、各HSEに対してヒドロゲル50mg/cm2(創傷サイズに応じる;5mmの創傷に対して50μL(=50mg)及び6mmの創傷に対して75μL(=75mg)、D035及びD090)をパラフィルム1枚の上に秤量し、スパチュラで創傷したHSEに塗布するかまたは測定し、ジティブディスプレイスメント式ピペットを用いて創傷したHSEに塗布した。創面の全面上にスパチュラでヒドロゲルを広げ、創縁はヒドロゲルがないままにした。治療後、回収するまで全てのHSEを培養(37℃、7.3%CO2)に戻した。
【0112】
創傷及び治療開始後3週間でHSEモデルを回収した。RNA単離のため、RNAlaterに4つの異なるサンプルを収集した。表皮及び真皮を含有するサンプル(RNA D+E)、表皮のみを含有するサンプル(RNA E)、創床由来の皮膚サンプル(RNA DW)、ならびに無処置の表皮の真下の皮膚サンプル(RNA D)。サンプルを4℃で終夜保存し、その後-80℃に移した。Rneasyプラス汎用ミニキット(Qiagen)を使用してRNAを単離し、-80℃でRNAを保存した。300ngのRNAを使用してcDNA合成を行った。ランダムヘキサマー(Verso kitによって提供,Thermo Fisher)を使用して42℃で30分間cDNA合成を行って、第1鎖cDNAを合成した。-20℃でcDNAを保存した。上記と同様の方法でエクソン105スキッピングを測定した。
【0113】
上述されるように、カルボマーヒドロゲル製剤中、以前の研究(AON37 OMe/1xLNA、AON43 OMe/1xLNA及びAON43 MOE/1xLNA)で決定された最も活性化した変異体のいくつかを含む、示されたサブセットのAONを用いて3週間、治療を行った後の、創傷のHSEモデルの真皮、表皮または真皮+表皮由来のヒトCOL7A1前駆体mRNAにおけるエクソン105スキッピングの頻度をddPCRで分析した(
図15)。
図15に示すように、AONで治療した創傷のHSEモデルの真皮及び表皮の両方において、エクソン105のスキッピングを観察し、試験したAONの多くに対する真皮において頻度が約20%以上であった。これらの結果は、栄養障害型表皮水疱症(DEB)を罹患するヒトの皮膚創部への局所投与が皮膚の標的細胞に本明細書に記載のAONを送達する実行可能なアプローチであることを支持する。さらに、これらの所見は、EB標準治療に似ている処方がAONの送達に適しているように見えることを支持する。
配列表
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【手続補正書】
【提出日】2021-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】