(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】水系アルミニウムイオン電池、電池-キャパシタハイブリッド、前記電池および電池-キャパシタの組成物、ならびに製造および使用の関連方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/36 20100101AFI20220419BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220419BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220419BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220419BHJP
H01M 4/60 20060101ALI20220419BHJP
H01M 4/64 20060101ALI20220419BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220419BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220419BHJP
H01M 4/46 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
H01M10/36
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/58
H01M4/60
H01M4/64 A
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021553007
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 US2020021594
(87)【国際公開番号】W WO2020185631
(87)【国際公開日】2020-09-17
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518120658
【氏名又は名称】エバーオン24, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー, ラフール
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラナシ, クリパ キラン
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ, トレバー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャター, ムケシュ
(72)【発明者】
【氏名】コラトカー, ニクヒル アショク
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017CC05
5H017CC28
5H017DD05
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017EE06
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH06
5H017HH10
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK16
5H029AL11
5H029BJ12
5H029CJ03
5H029CJ22
5H029DJ07
5H029DJ08
5H029EJ01
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ16
5H029HJ17
5H029HJ19
5H050BA08
5H050CA01
5H050CA05
5H050CA20
5H050CB11
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA08
5H050DA11
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA19
5H050GA03
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA10
(57)【要約】
アルミニウムまたはアルミニウム合金/コンポジットアノード、水性電解質、および酸化マンガン、アルミノシリケートまたはポリマーをベースとするカソードを特徴とする水系アルミニウムイオン電池が本明細書に記載されている。電池は、アノードとカソードとの間にアルミニウムイオンの実際の輸送が必要である電気化学反応によって動作する。本明細書に記載されている組成および構造により、本明細書に記載されている水系アルミニウムイオン電池は、(1)電荷貯蔵容量の改善;(2)重量および/または容積エネルギー密度の改善;(3)レート能力および電力密度の向上(より短時間での充電および放電する能力);(4)サイクル寿命の向上;(5)電極の機械的強度の向上;(6)電極の電気化学安定性の改善;(7)電極の伝導性の向上;ならびに(8)電極および電解質におけるイオンの拡散動態の改善を実現することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアノード(例えば、請求項102から144のいずれか一項に記載のアノード)、
水性電解質(例えば、請求項153から157のいずれか一項に記載の電解質)、および
酸化マンガン、アルミノシリケートおよびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むカソード(例えば、請求項28から89のいずれか一項に記載のカソード)
を備える、アルミニウムイオン電池。
【請求項2】
前記アノード、前記水性電解質および前記カソードが、前記アノードと前記カソードとの間でのアルミニウムイオン(例えば、Al
3+)の輸送を促進するよう配列されている、請求項1に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項3】
前記電池が、25mAh/g~500mAh/g(単位は、前記電池における活材料1グラムあたりのミリアンペア-時間)の範囲の電荷貯蔵容量を有する、請求項1または2に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項4】
前記電池が、1C~0.01C(nCのレートは、1/n時間での充電または放電として定義される)の範囲のレートで電荷を流す、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項5】
少なくとも100回(例えば、少なくとも150回)の充電-放電ステップにわたり、安定なサイクル性能をもたらす(例えば、ここで、安定なサイクル性能は、粉状化、層間剥離、腐食または他の副反応の一因となり得るノイズが全くないまたは実質的にない、繰り返し可能な電圧プロファイルを有することを意味する)(例えば、ここで、1サイクルは、1回の充電および1回の放電に等しい)(例えば、ここで、前記アルミニウムイオン電池は、50サイクル、100サイクル、150サイクルまたは200サイクルの最低サイクル寿命を有する)、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項6】
外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al
+3)が、電極(例えば、前記カソードまたは前記アノード)から前記水性電解質に放出される、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項7】
前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質、膜セパレータを通過して、反対の電極(例えば、それぞれ前記アノードまたは前記カソード)(例えば、ここで、前記電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動する、請求項6に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項8】
前記反対の電極中またはその表面において、前記放出されたAl
+3イオンが、(i)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(ii)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(iii)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/またはその他の方法で反応し、これにより、前記反対の電極の構造の内部またはその表面に安定なアルミニウム相を形成する、請求項7に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項9】
前記反対の電極における1種または複数種の遷移金属は酸化状態が変化し、これにより前記電極の構造が安定化する、請求項8に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項10】
前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質(例えば、前記Al
+3イオンを含む電荷キャリア、例えばAl(OH)
4
-において)、前記膜セパレータを通過して、前記反対の電極に移動し、前記反対の電極の表面に蓄えられる、請求項7に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項11】
前記放出されたAl
3+イオンが、誘電電荷として前記表面に蓄えられる、請求項10に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項12】
外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al
+3)が、電極(例えば、前記カソードまたは前記アノード)から前記水性電解質に放出され、前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質中に存在するイオンと反応して、前記水性電解質を通過して(例えば、および膜セパレータを通過して)反対の電極(例えば、それぞれ前記アノードまたは前記カソード)(例えば、ここで、前記電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)にイオン(例えば、前記放出されたAl
3+を含む電荷キャリア)を輸送するための輸送相(例えば、安定な輸送相)を形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項13】
前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質中に存在するOH
-1イオンと反応して、Al(OH)
4
-1電荷キャリアを形成する(例えば、ここで、前記Al(OH)
4
-1電荷キャリアは、Al
+3イオンが前記水性電解質中でさらに反応する能力を防止するか、または前記能力を低下させる)、請求項12に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項14】
前記電荷キャリアの少なくとも一部が、前記反対の電極への輸送後に、(i)解離して、個々の陰イオンおよび陽イオンを形成すること、ならびに(ii)安定な電荷キャリア相に留まること、の一方または両方を経る、請求項13に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項15】
前記電荷キャリアの少なくとも一部が、前記反対の電極への輸送後に解離して、個々の陰イオンおよび陽イオンを形成し、前記個々の陰イオンおよび/または陽イオンが、(i)前記反対の電極において、(I)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(II)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(III)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/または反応する(例えば、これにより、前記反対の電極の構造の内部またはその表面に安定な相を形成する)こと、ならびに(ii)前記反対の電極の表面に蓄えられる(例えば、誘電電荷として)ことからなる群から選択される、1つまたは複数のプロセスを経る、請求項14に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項16】
前記電荷キャリアの少なくとも一部が、前記反対の電極への輸送後に安定な電荷キャリア相に留まり、前記電荷キャリアが、前記反対の電極において、(i)前記反対の電極の構造内でのインターカレート、ならびに(ii)アルミニウムと、酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとを含む非イオン性安定相への遷移、ならびに前記反対の電極構造内でのインターカレートおよび/もしくは前記非イオン性安定相の反応、の一方または両方を経る、請求項14に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項17】
以下の機構(A)と(B):
(A)外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al
+3)が、電極(例えば、前記カソードまたは前記アノード)から前記水性電解質に放出され、前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質[例えば、電荷キャリア(例えば、Al(OH)
4
-)において]、膜セパレータを通過して、反対の電極(例えば、それぞれ前記アノードまたは前記カソード)(例えば、ここで、前記電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動し、前記反対の電極内またはその表面において、前記Al
+3イオンが、(i)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(ii)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(iii)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/またはその他の方法でこれらと反応し、これにより、前記反対の電極の構造の内部またはその表面に安定なアルミニウム相を形成すること、
ならびに
(C)外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al
+3)が、電極(例えば、前記カソードまたは前記アノード)から前記水性電解質に放出され、前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質中に存在するイオンと反応して、前記水性電解質を通過して(例えば、および膜セパレータを通過して)反対の電極(例えば、それぞれ前記アノードまたは前記カソード)(例えば、ここで、前記電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)にイオン(例えば、電荷キャリア)を輸送するための輸送相(例えば、安定な輸送相)を形成すること、
のいずれか一方または両方が起こる、請求項1から5のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項18】
外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al
+3)が、電極(例えば、前記カソードまたは前記アノード)から前記水性電解質に放出され、前記放出されたAl
+3イオンが、前記水性電解質[例えば、電荷キャリア(例えば、Al(OH)
4
-)において]、膜セパレータを通過して、前記反対の電極(例えば、それぞれ前記アノードまたは前記カソード)(例えば、ここで、前記電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動し、前記反対の電極の表面に蓄えられる(例えば、誘電電荷として)、請求項1から5に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項19】
前記アノードが、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含むアルミニウム合金を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項20】
前記水性電解質が、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、スズ、亜鉛、銅およびマグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項21】
前記カソードが、酸化マンガン、アルミノシリケートおよびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーのシートを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項22】
前記カソードが、前記シート(例えば、前記シートは、酸化マンガンおよび/またはアルミノシリケートおよび/またはポリマーを含む)間に蓄えられた非アルミニウムゲストイオンおよび/または分子を含み、前記ゲストイオンおよび/または分子が、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、ビスマス、コバルト、銅およびプロトンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項21に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項23】
前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つが、外部負荷(例えば、充電または放電)がかかると、ならびに/または前記カソードと前記電解質との間および/もしくは前記アノードと前記電解質との間および/もしくは前記カソードと前記アノードとの間でのイオン交換プロセスにより、電気化学反応に関与する非アルミニウムイオンを含む、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項24】
前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)がコバルトを含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項25】
前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)が非毒性である、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項26】
前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)が非可燃性である、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項27】
前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、前記カソード、前記アノードおよび前記水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)が、いかなる重金属も含有しない(例えば、アンチモン、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ホルミウム、インジウム、ランタン、ルテチウム、ネオジウム、ニオブ、プラセオジム、サマリウム、タンタル、テルビウム、ツリウム、タングステン、ウラン、イッテルビウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、鉛、モリブデン、ニッケル、スズおよび亜鉛のいずれも含有しない)、前記請求項のいずれか一項に記載のアルミニウムイオン電池。
【請求項28】
電流コレクタ(例えば、伝導性基材)、および
各々が、酸化マンガン、アルミノシリケート(例えば、層化アルミノシリケート)およびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、1つまたは複数の構造(例えば、1つまたは複数の薄層フィルムまたは粒子)
を備える、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードであって、
前記1つまたは複数の構造が、前記電流コレクタ上に(例えば、直接)配設されており、前記電流コレクタと電気的に接触している(例えば、ここで、前記カソードの厚さは、10nm~1mm、例えば10μm~100μm、例えば1μm~10μm、例えば1μm~5μmであり、例えば±20%またはそれより良好な許容度を伴う)、
カソード。
【請求項29】
前記1つまたは複数の構造がそれぞれ、酸化マンガンを含む、請求項28に記載のカソード。
【請求項30】
前記1つまたは複数の構造が、1オングストローム以上(例えば、5オングストローム以上)(例えば、10オングストローム以上)(例えば、および100オングストローム以下)のシート間(例えば、層間)隔離距離(例えば、隣接[001]酸化マンガンシートのd層間隔)を伴って、少なくとも20重量%(例えば、20重量%~40重量%、例えば40重量%~60重量%、例えば60重量%~80重量%、例えば少なくとも80重量%)の酸化マンガンを含む(例えば、これからなる、これから実質的になる、またはこれを含む)複数のシートを含む、請求項28または請求項29に記載のカソード。
【請求項31】
前記1つまたは複数の構造が、スピネル構造、トンネル構造、サンドイッチ構造、カプセル封入構造、捕捉構造、またはそれらの組合せを含む、請求項28から30のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項32】
前記1つまたは複数の構造が乱層構造を含む、請求項28から31のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項33】
前記1つまたは複数の構造が、リシオフォライト構造(例えば、酸化マンガンおよび水酸化アルミニウムの交互シートを含む)(例えば、ここで、前記1つまたは複数の構造は、10nm~500マイクロメートルの範囲の寸法を有する酸化マンガンシートを含む)、フィロマンガン酸塩構造(例えば、水和されている金属酸化物を含む)、およびテクトマンガン酸塩構造のうちの1つまたは組合せを含み、これらの構造の1つまたは複数が、初期の状態であっても無秩序化されていてもよく、空孔を含んでもよい、請求項28から32のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項34】
前記1つまたは複数の構造が粒子を含み(例えば、粒子であり)、前記カソードの前記粒子の少なくとも80%が、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 50nm以上(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、40~60nm以上の寸法を有する)、
(ii) 100nm~250nm(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、80~120nmと200~300nmの間の寸法を有する)、
(iii) 500nm~5マイクロメートル(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、
(iv) 1マイクロメートル~10マイクロメートル、
(v) 5マイクロメートル~30マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する、
請求項28から33のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項35】
前記1つまたは複数の構造がシートを含み(例えば、シート子であり)、前記カソードの前記シートの少なくとも80%が、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 50nm以上(例えば、前記シートの少なくとも80%が、40~60nm以上の寸法を有する)、
(ii) 100nm~250nm(例えば、前記シートの少なくとも80%が、80~120nmと200~300nmの間の寸法を有する)、
(iii) 500nm~5マイクロメートル(例えば、前記シートの少なくとも80%が、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、
(iv) 1マイクロメートル~10マイクロメートル、
(v) 5マイクロメートル~30マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、厚さ)を有する、
請求項28から34のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項36】
前記酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む、請求項29から35のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項37】
酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/またはその空孔に配設された1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む、請求項29から36のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項38】
前記ゲストイオンが、プロトン、ナトリウム、リチウム、カリウム、亜鉛、ビスマス、銅、鉛、コバルト、ニッケル、カルシウム、カリウム、マグネシウム、水素、ヒドロニウム、水酸化物、酸化物-水酸化物、硫酸、硫化物、窒化物、硝酸、リン化物、リン酸、酢酸、ポリオキソメタレート(POM)および柱状体形成剤(例えば、脂肪族および/または芳香族化合物)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項36または請求項37に記載のカソード。
【請求項39】
酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種のアルミニウムゲストイオンを含む、請求項28から38のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項40】
前記酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の非アルミニウムゲスト分子を含む、請求項29から39のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項41】
酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/または空孔に配設された1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む、請求項29から40のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項42】
前記ゲスト分子が、酸化物、水酸化物、酸化物-水酸化物、スルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、塩化物、塩素酸塩、リン酸塩およびリン化物からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項40または請求項41に記載のカソード。
【請求項43】
前記ゲスト分子が1種または複数種のリン酸塩を含む、請求項40から42のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項44】
前記1種または複数種のリン酸塩が、ナトリウムのリン酸塩、リチウムのリン酸塩、カリウムのリン酸塩、カルシウムのリン酸塩、マグネシウムのリン酸塩およびマンガンのリン酸塩からなる群から選択されるメンバーである、請求項43に記載のカソード。
【請求項45】
酸化マンガンシート間に蓄えられたまたは酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/もしくは空孔に配設されたアルミニウムのリン酸塩を含む、請求項29から44のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項46】
酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の柱状体形成剤を含む、請求項29から45のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項47】
前記1種または複数種の柱状体形成剤が、ポリオキソメタレート(POM)、両親媒性分子、極性有機分子および非極性有機分子からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項46に記載のカソード。
【請求項48】
前記1つまたは複数の構造がそれぞれ、アルミニウム受容性ポリマーを含む、請求項28から47のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項49】
前記アルミニウム受容性ポリマーが、アリザリン、アルギネート、アミジネート、キノン、キノロン、ヒドロキシキノン、クラウンエーテルおよびヒドロキシキノリンからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項48に記載のカソード。
【請求項50】
前記アルミニウム受容性ポリマーが、リチウム、ナトリウム、鉛、クロム、銅、ビスマス、コバルト、亜鉛、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、チタン、スズ、バナジウムおよびタングステンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとの錯体として存在する[例えば、ここで、前記錯体は、充電/放電中の電池において、電解質および/またはアルミニウム源電極(例えば、アノード)からのアルミニウムイオンとのイオン交換プロセスによる電気化学反応に関与する]、請求項48または請求項49に記載のカソード。
【請求項51】
前記1つまたは複数の構造が、粒子(例えば、酸化マンガンを含む)(例えば、前記粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子とマイクロ粒子との組合せである)(例えば、前記粒子は、10nm~500マイクロメートルの範囲の直径を有する球体である)を含む、請求項28から50のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項52】
前記電流コレクタから突き出た複数の伝導性柱状体を備える請求項51に記載のカソードであって、前記粒子が前記複数の伝導性柱状体上に配設されている、カソード。
【請求項53】
前記1つまたは複数の構造が、薄層フィルム(例えば、パターン形成されている薄層フィルム)を含む、請求項28から50のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項54】
前記電流コレクタから突き出た複数の伝導性柱状体を備える請求項53に記載のカソードであって、前記薄層フィルムが、前記複数の伝導性柱状体上に配設されている(例えば、および前記薄層フィルムは、パターン形成されて、前記電流コレクタ上の前記柱状体の分布に対応する)、カソード。
【請求項55】
前記電流コレクタが、多孔質である(例えば、メッシュ、発泡体、複数の相互接続した繊維、複数の管およびシート、複数のナノチューブ、またはグラフェン様構造である)、請求項28から50のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項56】
前記1つまたは複数の構造が、前記電流コレクタの細孔内または細孔表面に配設(例えば、コーティング)されている、請求項55に記載のカソード。
【請求項57】
前記1つまたは複数の構造が、1つまたは複数の多孔質炭素構造上にコーティングされている、請求項28から54のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項58】
前記1つまたは複数の多孔質炭素構造が、炭素繊維、ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、部分還元型酸化グラフェン、エアロゲル、キセロゲル、および相互貫入性多相材料からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項57に記載のカソード。
【請求項59】
前記電流コレクタに接触して前記1つまたは複数の構造を物理的に維持する(例えば、接着する)バインダー(例えば、ポリマーバインダー)をさらに含む、請求項28から58のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項60】
前記バインダーが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、アルギネート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、二フッ化ポリビニリデン、ポリアニリン、エポキシ、ゴム、ポリアクリル酸およびポリビニルプロピレンからなる群から選択される、請求項59に記載のカソード。
【請求項61】
前記バインダーが、アルギネート、PVDF、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンからなる群から選択される、請求項59に記載のカソード。
【請求項62】
前記バインダーが、1つまたは複数の種の多価イオンにより事前処理されている、請求項59から61のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項63】
前記1つまたは複数の種の多価イオンが、マンガン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウムおよびアルミニウムのうちの1つまたは複数のイオンを含む、請求項62に記載のカソード。
【請求項64】
前記バインダーが、1つまたは複数の種の一価イオンにより事前処理されている、請求項59から63のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項65】
前記1つまたは複数の種の一価イオンが、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのうちの1つまたは複数のイオンを含む、請求項64に記載のカソード。
【請求項66】
前記バインダーが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーのイオンを含む、請求項59から65のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項67】
前記バインダーが、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルのうちの1つまたは複数、ならびに必要に応じて、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルからなる群から選択される共溶媒を含む溶液から堆積させたものである、請求項59から66のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項68】
前記カソードがバインダー不含である(例えば、ここで、前記1つまたは複数の構造が、化学蒸着、物理蒸着、原子層堆積、スピン-コーティングおよび電気化学堆積のうちの1つまたは複数を使用して、前記電流コレクタ上に形成されている)、請求項28から54のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項69】
前記電流コレクタおよび前記1つまたは複数の構造と電気的に接触している伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)をさらに含む、請求項28から68のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項70】
前記電流コレクタが、ステンレス鋼、銅、炭素、銀、金、白金、スズ、バナジウム、亜鉛、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロムおよびチタンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項28から69のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項71】
前記電流コレクタが、接着促進剤、伝導性促進剤または接着促進剤と伝導性促進剤の両方のコーティングを含む、請求項28から70のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項72】
前記電流コレクタが、炭素、金属(例えば、スズ、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、ジルコニウム、銀、金、白金)、金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム)またはポリマー(例えば、PEDOT、PAN、パリレン)のうちの1つまたは複数のコーティングを含み、前記コーティングが、接着促進剤、電子伝導性促進剤およびイオン伝導性阻害剤のうちの1つまたは複数として働く、請求項28から71のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項73】
イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から23のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードであって、
前記カソードは、ある量の溶液を電流コレクタ上に堆積させるステップを含む方法によって作製され、ここで、前記溶液は、
酸化マンガン、層化アルミノシリケートおよびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに
1つまたは複数の溶媒(例えば、水、N-メチルピロリドンおよびエタノールからなる群から選択される)
を含む、カソード。
【請求項74】
前記1つまたは複数のメンバーが、
酸素源(例えば、および必要に応じて酸化剤化学触媒)の存在下、1種または複数種の酸化マンガン前駆体を塩基と反応させるステップ、および
必要に応じて、前記反応ステップ後に酸化マンガンを水熱処理するステップ
を含む方法によって作製された酸化マンガンを含み、
前記1種または複数種の前駆体がそれぞれ、マンガン塩、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、無機酸および過マンガン酸塩からなる群から選択され、
ここで、前記マンガン塩が、硫酸塩、(i)硝酸塩、(ii)塩化物、(iii)酢酸塩、(iv)リン酸塩、(v)過塩素酸塩、(vi)フッ化物および(vii)臭化物のうちの1つまたは複数を含み、
前記過マンガン酸塩が、(i)ナトリウムおよび(ii)カリウムのうちの1つまたは複数を含む、
請求項73に記載のカソード。
【請求項75】
前記塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムを含む、請求項74に記載のカソード。
【請求項76】
前記酸素源が、溶存酸素ガスまたは過酸化物(例えば、過酸化水素)である、請求項74または請求項75に記載のカソード。
【請求項77】
前記溶液が、バインダー(例えば、ポリマーバインダー、例えば、1種または複数種のアルミニウム塩を含む電解質溶液により浸透可能なポリマーバインダー)および伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項73から76のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項78】
前記堆積させるステップが、ドクターブレード法、スピンコーティング法、コンマコーティング法またはスロット-ダイコーティング法を含む、請求項73から77のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項79】
前記方法が、前記堆積させた溶液および前記電流コレクタをカレンダー加工するステップをさらに含む、請求項73から78のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項80】
前記カソードが、1つまたは複数の相の酸化マンガンを含み、前記1つまたは複数の相が、アルファ相、ベータ相、ラムダ相、ラムスデライト相、アモルファス相、ガンマ相、デルタ相およびイプシロン相からなる群から選択される、請求項28から79のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項81】
前記1つまたは複数の相が、2つまたはそれより多い相(例えば、3つまたはそれより多い相)である、請求項80に記載のカソード。
【請求項82】
前記2つまたはそれより多い相のうちの主要な1つが、前記カソードの少なくとも40重量%であり、前記2つまたはそれより多い相の残りすべてが、前記カソードの50重量%以下である、請求項81に記載のカソード。
【請求項83】
前記酸化マンガンが、前記カソードの充電および放電(例えば、イオン挿入および除去)の間に、少なくとも1つの相変化を経るよう配設されている、請求項80から82のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項84】
前記カソードが、層化構造(例えば、フィロマンガン酸塩)、トンネル構造(例えば、テクトマンガン酸塩)、スピネル構造、ラムスデライト構造またはアモルファス構造を有する酸化マンガンを含む、請求項28から83のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項85】
前記カソードが酸化マンガンを含み、前記酸化マンガン中のマンガンが、Mn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)およびMn(VII-x)(xは、0~1の間である)からなる群から選択される1つまたは複数の酸化状態を有する、請求項28から84のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項86】
前記1つまたは複数の構造が酸化マンガンを含み、前記酸化マンガンは、大部分(例えば、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%)がデルタ相の酸化マンガンである、請求項28から85のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項87】
イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードであって、
電流コレクタ上に酸化マンガンおよび1種または複数種の犠牲材料を同時に堆積させるステップ、および
前記1種または複数種の犠牲材料を除去するステップ
を含む方法によって作製される、カソード。
【請求項88】
前記1種または複数種の犠牲材料が、アリザリン、アミジネート、キノン、アルギネート、ゼオライト、キノロン、ヒドロキシキノン、ヒドロキシキノリン、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、(例えば、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケルまたは鉄の)酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項87に記載のカソード。
【請求項89】
前記同時に堆積させるステップが、同時熱的蒸発、同時スパッタリング、共押出または同時コーティング(例えば、スピン-コーティング法、ドクターブレード法またはスロット-ダイコーティング法)を含む、請求項87または請求項88に記載のカソード。
【請求項90】
イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードを製造するための方法であって、
ある量の溶液を電流コレクタ上に堆積させるステップを含み、ここで、前記溶液は、
酸化マンガン、層化アルミノシリケートおよびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに
1つまたは複数の溶媒(例えば、水、N-メチルピロリドンおよびエタノールからなる群から選択される)
を含む、方法。
【請求項91】
酸素源(例えば、および必要に応じて酸化剤化学触媒)の存在下、1種または複数種の酸化マンガン前駆体を塩基と反応させるステップ、および
必要に応じて、前記反応ステップ後に酸化マンガンを水熱処理するステップ
によって酸化マンガンを製造するステップをさらに含み、
前記1種または複数種の前駆体がそれぞれ、マンガン塩、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、無機酸および過マンガン酸塩からなる群から選択され、
ここで、前記マンガン塩が、硫酸塩、(i)硝酸塩、(ii)塩化物、(iii)酢酸塩、(iv)リン酸塩、(v)過塩素酸塩、(vi)フッ化物および(vii)臭化物のうちの1つまたは複数を含み、
前記過マンガン酸塩が、(i)ナトリウムおよび(ii)カリウムのうちの1つまたは複数を含む、
請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記塩基が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムの1つまたは複数を含む、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記酸素源が、溶存酸素ガスまたは過酸化物(例えば、過酸化水素)である、請求項91または請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記溶液が、バインダー(例えば、ポリマーバインダー、例えば、1種または複数種のアルミニウム塩を含む電解質溶液により浸透可能なポリマーバインダー)および伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)のうちの1つまたは複数をさらに含む、請求項90から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
前記堆積させるステップが、ドクターブレード法、スピンコーティング法、コンマコーティング法またはスロット-ダイコーティング法を含む、請求項90から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記堆積させた溶液および前記電流コレクタをカレンダー加工するステップをさらに含む、請求項90から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
前記溶液が、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに必要に応じて、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルからなる群から選択される共溶媒を含む、請求項90から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記溶液が、(i)アルギネート、PVDF、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンからなる群から選択されるバインダー、ならびに(ii)ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群から選択されるイオン種を含む、請求項90から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードを製造するための方法であって、
電流コレクタ上に酸化マンガンおよび1種または複数種の犠牲材料を同時に堆積させるステップ、および
前記1種または複数種の犠牲材料を除去するステップ
を含む、方法。
【請求項100】
前記1種または複数種の犠牲材料が、アリザリン、アミジネート、キノン、アルギネート、ゼオライト、キノロン、ヒドロキシキノン、ヒドロキシキノリン、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、(例えば、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケルまたは鉄の)酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記同時に堆積させるステップが、同時熱的蒸発、同時スパッタリング、共押出または同時コーティング(例えば、スピン-コーティング法、ドクターブレード法またはスロット-ダイコーティング法)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項99または請求項100に記載の方法。
【請求項102】
1つまたは複数の構造(例えば、1つまたは複数のホイル、薄層フィルムまたは粒子)
を備える、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のためのアノードであって、
前記1つまたは複数の構造がそれぞれ、アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のアルミニウム含有メンバーを含み、前記アノードが、0.001重量%~100重量%のアルミニウムである(例えば、70重量%~100重量%のアルミニウム、例えば少なくとも95重量%のアルミニウム)(例えば、ここで、前記アノードは、少なくとも95重量%のアルミニウムおよび最大で5重量%の非アルミニウム種を含み、例えば、前記非アルミニウム種は、前記アノードに意図的に組み込まれた1種または複数種の合金化金属および/または酸化物を含む)(例えば、ここで、前記アルミニウムの純度は、少なくとも99.9原子%、例えば少なくとも99.99原子%、例えば99.99原子%~99.99999原子%であり、例えばここで、不純物は、0.01原子%~0.00001原子%の範囲で存在し、例えば、前記不純物は、鉄および/またはナトリウムおよび/またはマグネシウムおよび/またはシリカを含み、例えば、金属ホイル中に一般に見出される不純物)、アノード。
【請求項103】
前記アノードが、アルミニウム、酸素、水素、窒素、リチウム マンガンおよび炭素のうちの1つまたは複数を含む(例えば、からなる)表面層を含む、請求項102に記載のアノード。
【請求項104】
前記1つまたは複数の構造のそれぞれが、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含むアルミニウム合金または混合物を含む、請求項102または103に記載のアノード。
【請求項105】
前記1つまたは複数の構造を含むフィルムを含み、前記1つまたは複数の構造の各々が粒子である(例えば、ここで、前記粒子は、10nm~100マイクロメートルの範囲の直径を有する)(例えば、ここで、前記フィルムは、10nm~1mmの範囲の厚さを有する)、請求項102から104のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項106】
前記アノードの前記粒子の少なくとも80%が、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 50nm以上(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、40~60nm以上の寸法を有する)、
(ii) 100nm~500nm(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、80~120nmと400~600nmの間の寸法を有する)、
(iii) 250nm~1マイクロメートル(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、200~300nmと0.8~1.2マイクロメートルの間の寸法を有する)、
(iv) 500nm~5マイクロメートル(例えば、前記粒子の少なくとも80%が、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、
(v) 1マイクロメートル~10マイクロメートル、
(vi) 5マイクロメートル~25マイクロメートル
(vii) 10マイクロメートル~50マイクロメートル、および
(viii) 50マイクロメートル~100マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する、
請求項105に記載のアノード。
【請求項107】
前記フィルムが、前記複数の粒子と物理的に接触したポリマーバインダーをさらに含み、前記ポリマーバインダーが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される、請求項105または106に記載のアノード。
【請求項108】
前記フィルムが、1つまたは複数の伝導性炭素添加剤をさらに含む、請求項105から107のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項109】
前記1つまたは複数の構造が、1nm~1mmの範囲の厚さを有する薄層フィルムを含む、請求項102から108のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項110】
薄層フィルムが、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 50nm以上(例えば、40~60nm以上の厚さ)、
(ii) 100nm~500nm(例えば、80~120nmと400~600nmの間の厚さ)、
(iii) 250nm~1マイクロメートル(例えば、200~300nmと0.8~1.2マイクロメートルの間の厚さ)、
(iv) 500nm~5マイクロメートル(例えば、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の厚さ)、
(v) 1マイクロメートル~10マイクロメートル、
(vi) 5マイクロメートル~25マイクロメートル
(vii) 10マイクロメートル~50マイクロメートル、および
(viii) 50マイクロメートル~100マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する、
請求項109に記載のアノード。
【請求項111】
前記薄層フィルムが電流コレクタ(例えば、伝導性基材)上にコーティングされている(例えば、ここで、前記伝導性基材が、炭素、鋼、ニッケル、鉄、亜鉛、アルミニウム、チタン、タングステン、銅、銀、スズ、インジウムおよびクロムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)、請求項109または110に記載のアノード。
【請求項112】
前記薄層フィルムが、炭素、金属(例えば、スズ、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、ジルコニウム、銀、金、白金)、金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム)またはポリマー(例えば、PEDOT、PAN、パリレン)のうちの1つまたは複数のコーティングをさらに含む電流コレクタ(例えば、伝導性基材)上にコーティングされており、前記コーティングが、接着促進剤、電子伝導性促進剤およびイオン伝導性阻害剤のうちの1つまたは複数として働く、請求項109または110に記載のアノード。
【請求項113】
前記厚さが、前記アノードおよびカソードを備える電池における前記カソードの容量に見合う容量を有する前記アノードを提供するのに十分である、請求項109から111のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項114】
前記1つまたは複数の構造が、研磨された表面(例えば、機械的または電気化学的に研磨されている)を有するホイルを含む、請求項102から104のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項115】
前記1つまたは複数の構造が、多孔質構造を含む(例えば、前記多孔質構造は、円形断面または矩形断面を有する細孔を含む)、請求項102から114のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項116】
前記1つまたは複数の構造が、電流コレクタ(例えば、伝導性基材)から突き出た複数の柱状体を含む(例えば、ここで、前記伝導性基材が、炭素、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タングステン、銅およびクロムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)、請求項102から114のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項117】
非天然の遷移的酸化アルミニウム層(例えば、0.1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)(例えば、原子層堆積、化学蒸着、熱反応、水熱反応、エッチング、電気化学反応、酸素プラズマ反応または水酸化物処理により形成される)をさらに含む、請求項102から116のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項118】
前記非天然の遷移的酸化アルミニウム層が、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 1nm以上、
(ii) 1nm~10nm、
(iii) 5nm~20nm、
(iv) 20nm~50nm、
(v) 50nm~250nm、
(vi) 100nm~500nm、
(vii) 500nm~1マイクロメートル、および
(viii) 1マイクロメートル~10マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する、請求項117に記載のアノード。
【請求項119】
前記非天然の遷移的酸化アルミニウム層が、前記1つまたは複数の構造(例えば、薄層フィルムまたはホイルを含む)上に配設されている、請求項118に記載のアノード。
【請求項120】
前記1つまたは複数の構造上に配設されている酸化物フィルムをさらに備える(例えば、0.1nm~100マイクロメートルの範囲の厚さを有する)[例えば、ここで、前記酸化物フィルムが、パターン形成されている(例えば、前記酸化物フィルムが、前記電流コレクタ上の柱状体の分布に対応するようパターン形成されている)]、請求項102から119のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項121】
前記酸化物フィルムが、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 1nm以上、
(ii) 1nm~10nm、
(iii) 5nm~20nm、
(iv) 20nm~50nm、
(v) 50nm~250nm、
(vi) 100nm~500nm、
(vii) 500nm~1マイクロメートル、および
(viii) 1マイクロメートル~10マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する、請求項120に記載のアノード。
【請求項122】
前記酸化物フィルムが薄層フィルムである、請求項120または121に記載のアノード。
【請求項123】
前記酸化物フィルムが、複数の酸化物粒子を含むコーティングである、請求項120または121に記載のアノード。
【請求項124】
前記複数の酸化物粒子が、ナノ粒子、マイクロ粒子、またはナノ粒子とマイクロ粒子の両方を含む、請求項123に記載のアノード。
【請求項125】
前記酸化物粒子の少なくとも80%が、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 1ナノメートル~500マイクロメートル、および
(ii) 10ナノメートル~20マイクロメートル
のうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する、請求項124に記載のアノード。
【請求項126】
前記酸化物フィルムが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されるポリマーバインダーをさらに含む、請求項123から125のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項127】
前記酸化物フィルムが、1つまたは複数の伝導性炭素添加剤をさらに含む、請求項123から126のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項128】
複数の酸化物フィルムを含み、前記複数の酸化物フィルムの各々が異なる酸化物を含む、請求項102から127のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項129】
同じタイプまたは異なるタイプの複数の酸化物層を、必要に応じて前記酸化物層の間の1つまたは複数のアルミニウム層と共に、含む(例えば、アノードは、以下の順序の層:Al/Al
2O
3/ZrO
2/Al
2O
3という少なくとも1つの例を含む)(例えば、アノードは、以下の順序の層:Al/Al
2O
3/Al/Al
2O
3という少なくとも1つの例を含む)、請求項102から128のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項130】
前記1つまたは複数の構造が、薄層フィルムまたはホイルを含み、前記複数の酸化物フィルムの各々が、前記1つまたは複数の構造に接触している[例えば、前記薄層フィルムまたはホイル上に、列(例えば、規則正しい列)になって配列されている]、請求項128または129に記載のアノード。
【請求項131】
前記複数の酸化物フィルムが、前記1つまたは複数の構造上に層として配設されている、請求項128または129に記載のアノード。
【請求項132】
前記1つまたは複数の構造が、複数の薄層フィルムまたはホイルを含み、前記複数の薄層フィルムまたはホイルの1つまたは複数が、2つまたはそれより多くの前記酸化物フィルムの間に配設されている、請求項128または129に記載のアノード。
【請求項133】
前記1つまたは複数の構造から突き出た複数の酸化物柱状体を含む、請求項102から116のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項134】
前記複数の酸化物柱状体が多孔質である、請求項133に記載のアノード。
【請求項135】
前記複数の酸化物柱状体が、繊維、ナノチューブおよびナノカラムのうちの1つまたは複数を含む、請求項133または請求項134に記載のアノード。
【請求項136】
前記複数の酸化物柱状体が、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、水熱反応、電気化学反応、電気化学堆積または熱反応によって形成される、請求項133から135のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項137】
前記複数の酸化物柱状体が、フィルムを堆積させ前記フィルムをエッチングすることによって形成され、前記エッチングが、プラズマエッチング、湿式化学エッチング、反応性イオンエッチングまたは緩衝酸化物エッチングを含む、請求項133から136のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項138】
前記1つまたは複数の構造上に配設されている非酸化物フィルム(例えば、前記1つまたは複数の構造上に直接、または前記非酸化物フィルムと前記1つまたは複数の構造との間に配設されている1つまたは複数の酸化物フィルムを伴って)をさらに含む、請求項102から137のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項139】
前記非酸化物フィルムが、元素のスルフィド、前記元素の硫酸塩、前記元素の窒化物、前記元素の硝酸塩、前記元素のリン化物、前記元素のリン酸塩および前記元素のハロゲン化物からなる群から選択される1つまたは複数の非酸化物メンバーを含み、
前記元素が、ジルコニウム、タングステン、インジウム、クロム、コバルト、マグネシウム、鉄、ニッケル、バナジウム、チタン、亜鉛、マンガン、鉄、スズ、ケイ素、硫黄、銅、ハフニウムおよびコバルトからなる群から選択される、請求項138に記載アノード。
【請求項140】
前記非酸化物フィルムが薄層フィルムである、請求項138または請求項139に記載のアノード。
【請求項141】
前記非酸化物フィルムが、(例えば、前記1つまたは複数の非酸化物メンバーを含む)複数の非酸化物粒子を含むコーティングである、請求項138または請求項139に記載のアノード。
【請求項142】
前記複数の非酸化物粒子が、ナノ粒子、マイクロ粒子、またはナノ粒子とマイクロ粒子の両方を含む、請求項141に記載のアノード。
【請求項143】
前記1つまたは複数の構造上に配設されているポリマー層を含む(例えば、ここで、前記ポリマー層による前記1つまたは複数の構造の表面被覆率が1%~100%であり、例えば、前記1つまたは複数の構造の表面の少なくとも50%が、前記ポリマー層により被覆されている)(例えば、ここで、前記ポリマー層は、0.1nm~100マイクロメートルの範囲の厚さを有する)[例えば、ここで、前記ポリマー層は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上;(ii)1nm~10nm;(iii)5nm~20nm;(iv)20nm~50nm;(v)50nm~250nm;(vi)100nm~500nm;(vii)500nm~1マイクロメートル;および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する]、請求項102から142のいずれか一項に記載のアノード。
【請求項144】
前記ポリマー層が、パリレン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、PTFE、ポリエチレンオキシド、セルロース(およびその誘導体)、ポリスルホン(PES)、1つまたは複数のアクリレートのポリマー、アルギネート(例えば、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、カリウム、マグネシウムまたは亜鉛を含む)、キノン、ヒドロキノン、キノロン、ヒドロキシキノリンおよびアリザリン(例えば、アリザリンレッドSを含む)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項143に記載のアノード。
【請求項145】
イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のための電極(例えば、カソードまたはアノード、例えば、請求項28から89のいずれか一項に記載のカソードまたは請求項102から144のいずれか一項に記載のアノード)であって、電気活材料(例えば、酸化マンガン、アルミノシリケートおよびアルミニウム受容性ポリマーのうちの1つまたは複数を含む粒子またはフィルムとして配設されている)、ポリマーバインダー、ならびに伝導性炭素(例えば、炭素粒子または炭素リボンを含む)を含む、電極。
【請求項146】
前記ポリマーバインダーが、前記電極中、全固体の0.5重量%~50重量%である、請求項145に記載の電極。
【請求項147】
前記ポリマーバインダーが、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは酢酸セルロース)、スチレンブタジエンゴム、ポリスルホン、アルギネート(例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アルミニウム、アルギン酸亜鉛またはアルギン酸マグネシウム)、アリザリン、キノン、ヒドロキノン、キノロン、ヒドロキノリンおよびポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、請求項145または請求項146に記載の電極。
【請求項148】
電流コレクタをさらに含み、前記ポリマーバインダーが、電流コレクタ上の薄層フィルム(例えば、1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)として配設され、そうすることにより、前記ポリマーバインダーの前記薄層フィルムが、前記電気活材料と前記電流コレクタとの間に配設される[例えば、ここで、前記ポリマーバインダーの前記薄層フィルムは、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上;(ii)1nm~10nm;(iii)5nm~20nm;(iv)20nm~50nm;(v)50nm~250nm;(vi)100nm~500nm;(vii)500nm~1マイクロメートル;および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する]、請求項145から147のいずれか一項に記載の電極。
【請求項149】
伝導層(例えば、1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)をさらに含み、前記伝導層が、前記電気活材料および前記バインダーと電気的および/または物理的に接触して、前記電気活材料と前記バインダーとの間に配設されている、請求項145に記載の電極。
【請求項150】
前記伝導層が、炭素、スズ、酸化スズ、酸化インジウムスズ、チタン、クロム、ニッケル、金、銀および白金からなる群から選択されるメンバーを含む、請求項149に記載の電極。
【請求項151】
電流コレクタ、前記ポリマーバインダーの第1の薄層フィルム、第1の伝導層、前記電気活材料の第1の層、前記ポリマーバインダーの第2の薄層フィルム、第2の伝導層および前記電気活材料の第2の層を含む(例えば、ここで列挙した順序の位置で配列されている)、多層構造を含む、請求項145から150のいずれか一項に記載の電極。
【請求項152】
電流コレクタ、前記ポリマーバインダーの第1の薄層フィルム、前記電気活材料の第1の層、前記ポリマーバインダーの第2の薄層フィルム、および前記電気活材料の第2の層を含む(例えば、かつここで列挙した順序の位置で配列されている)、請求項145から150のいずれか一項に記載の電極。
【請求項153】
イオン電池(例えば、水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から27のいずれか一項に記載の電池)のための水性電解質であって、水(例えば、脱イオン水)およびアルミニウム塩(例えば、アルミニウムの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む[ここで、前記水は溶媒として働き、前記アルミニウム塩は、主要添加剤である(例えば、前記電解質は、0.01M~5M、例えば0.05M~1Mの範囲の全アルミニウム塩濃度を有する)(例えば、前記アルミニウム塩は前記水に溶解している)]、水性電解質。
【請求項154】
ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む添加剤をさらに含む(例えば、前記電解質は、合計で0.01M~5M、例えば1M~3Mの範囲のナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩の濃度を有する)(例えば、前記ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩は、前記水に溶解している)、請求項153に記載の水性電解質。
【請求項155】
ポリマー(例えば、前記ポリマーは、アルギネート、キノン、キノロン、ヒドロキシキノン、アリザリンおよびヒドロキシキノリンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)をさらに含む(例えば、前記電解質は、0.01~50重量%、例えば0.5~10重量%の範囲の全ポリマー重量%を有する)、請求項153または154に記載の水性電解質。
【請求項156】
前記カソードの湿潤性を増大させる湿潤剤(例えば、前記湿潤剤は、ケトン、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステルおよびシクロヘキサンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)をさらに含む(例えば、前記電解質は、0.01~50重量%、例えば0.5~10重量%の範囲の全湿潤剤重量%を有する)、請求項153から155のいずれか一項に記載の水性電解質。
【請求項157】
マンガン塩(例えば、マンガンの硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む(例えば、前記電解質は、0.01M~5M、例えば0.05M~1Mの範囲の全マンガン塩濃度を有する)(例えば、前記マンガン塩が、前記水に溶解している)、請求項153から156のいずれか一項に記載の水性電解質。
【請求項158】
アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアノード(例えば、請求項102から144のいずれか一項に記載のアノード)、
水性電解質(例えば、請求項153から157のいずれか一項に記載の電解質)、および
酸化マンガン、アルミノシリケートおよびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むカソード(例えば、請求項28から89のいずれか一項に記載のカソード)
を備える、アルミニウム電池-キャパシタハイブリッドであって、
前記アルミニウム電池-キャパシタハイブリッドの1つまたは複数の構成要素(例えば、前記アノードおよび/または前記カソード)が、疑似キャパシタ添加剤および誘電性添加剤からなる群から選択される1種または複数種の添加剤を含み、
前記疑似キャパシタ添加剤が、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素エアロゲル、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、ポリピロールおよびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含み、
前記誘電性添加剤が、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、パリレンまたは他の共役ポリマー、ポリスチレンおよびポリプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、
アルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項159】
前記1種または複数種の添加剤が、疑似キャパシタ添加剤を含み、前記疑似キャパシタ添加剤が、前記アノードおよびカソードの合わせた正味重量の約0.1重量%~約90重量%を構成する、請求項158に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項160】
前記1種または複数種の添加剤が、疑似キャパシタ添加剤を含み、前記疑似キャパシタ添加剤が、薄層フィルム、ナノ構造、マイクロ構造、粒子またはそれらの組合せの形態である、請求項158または159に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項161】
前記1種または複数種の添加剤が、誘電性添加剤を含み、前記誘電性添加剤が、前記アノードおよびカソードの合わせた正味重量の約0.1重量%~約90重量%を構成する、請求項158から160のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項162】
前記1種または複数種の添加剤が、誘電性添加剤を含み、前記誘電性添加剤が、薄層フィルム、ナノ構造、マイクロ構造、粒子またはそれらの組合せの形態である、請求項158から161のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項163】
前記アノードが、
アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む第1のアルミニウム層、
誘電性添加剤を含む誘電性層、
アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む第2のアルミニウム層、および
保護性酸化物層
を含む、請求項158から162のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項164】
前記第1のアルミニウム層がアルミニウムホイルを含む、請求項163に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項165】
前記誘電性層が金属酸化物を含む、請求項163または164に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項166】
前記金属酸化物が酸化ジルコニウムである、請求項165に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項167】
前記酸化ジルコニウムが、薄層フィルムの形態である、請求項166に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項168】
前記第2のアルミニウム層が、アルミニウムホイルの薄層フィルムを含む、請求項163から167のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項169】
前記誘電性添加剤が酸化アルミニウムである、請求項163から168のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項170】
前記酸化アルミニウムが薄層フィルムの形態である、請求項169に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項171】
前記カソードが、
ステンレス鋼基材、
アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアルミニウム層、
誘電性添加剤を含む誘電性層、および
酸化マンガン層
を含む、請求項158から170のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項172】
前記誘電性添加剤が金属酸化物を含む、請求項171に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項173】
前記金属酸化物が酸化ジルコニウムである、請求項172に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項174】
前記アノードおよびカソードが、前記アノードの前記第2のアルミニウム層から前記カソードへのアルミニウムイオンの輸送を促進するよう配列されている、請求項163から173のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項175】
前記アノードおよびカソードが、充電中、前記カソードの前記酸化マンガン層から前記アノードの前記第2のアルミニウム層へのアルミニウムイオンの輸送を促進するよう配列されている、請求項171から173のいずれか一項に記載のアルミニウム電池-キャパシタハイブリッド。
【請求項176】
前記1つまたは複数の構造が、形状およびサイズの1つまたは複数に関して、粒子(例えば、酸化マンガン粒子)の多峰性(例えば、二峰性)分布を含む、請求項28から34のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項177】
前記カソードの前記粒子の少なくとも80%が、以下の範囲(例えば、各峰性について、±20%またはそれより良好な許容度で):
(i) 50nm以上、
(ii) 100nm~250nm、
(iii) 500nm~5マイクロメートル、
(iv) 1マイクロメートル~10マイクロメートル、および
(v) 5マイクロメートル~30マイクロメートル
のうちの少なくとも2つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する[例えば、カソードは、粒子(例えば、酸化マンガン粒子)が約20マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する粒子の第1の部分および約0.5マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する粒子の第2の部分を有する二峰性分布を有し、前記第1の部分および第2の部分は、前記カソードの前記粒子の少なくとも80%を構成する]、請求項176に記載のカソード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願
本出願は、2019年3月8日出願の米国仮特許出願第62/815,770号の利益を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、一般に、水系アルミニウムイオン電池、電池-キャパシタハイブリッド、カソード組成物、アノード組成物、バインダー組成物、ならびにそれらの製造方法および使用方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、水系アルミニウムイオン電池、電池-キャパシタハイブリッド、カソード組成物、アノード組成物、バインダー組成物、ならびにそれらの製造方法および使用方法を含む。
【0004】
例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金/コンポジットのアノード、水性電解質、および酸化マンガンをベースとする[例えば、MnOもしくはMnO2もしくはMnxOy(例えば、Mn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)およびMn(VII-x)、xは0~1の間である)]カソード、アルミノシリケートをベースとする(例えば、Al2SiO5)カソードまたはポリマーをベースとするカソードを特徴とする、水系アルミニウムイオン電池が本明細書に記載される。電池は、アノードとカソードとの間にアルミニウムイオンの実際の輸送が必要である電気化学反応によって動作する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の組成および構造により、本明細書に記載されている水系アルミニウムイオン電池は、(1)電荷貯蔵容量の改善;(2)重量および/または容積エネルギー密度の改善;(3)レート能力および電力密度の向上(より短時間での充電および放電する能力);(4)サイクル寿命の向上;(5)電極の機械的強度の向上;(6)電極の電気化学安定性の改善;(7)電極の伝導性の向上;ならびに(8)電極および電解質におけるイオンの拡散動態の改善を実現することが可能となる。
【0005】
一態様では、本発明は、アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアノード;水性電解質;ならびに酸化マンガン[例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy(例えば、Mn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)およびMn(VII-x)、xは0~1の間である)]、アルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)およびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むカソードを備えるアルミニウムイオン電池を対象とする。ある特定の実施形態では、カソードは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択される1種または複数種の酸化マンガンを含む。
【0006】
ある特定の実施形態では、アノード、水性電解質およびカソードは、アノードとカソードとの間でのアルミニウムイオン(例えば、Al3+)の輸送を促進するよう配列されている。
【0007】
ある特定の実施形態では、電池は、25mAh/g~500mAh/g(単位は、電池における活材料1グラムあたりのミリアンペア-時間)の範囲の電荷貯蔵容量を有する。
【0008】
ある特定の実施形態では、電池は、1C~0.01C(nCのレートは、1/n時間での充電または放電として定義される)の範囲のレートで電荷を流す。
【0009】
ある特定の実施形態では、少なくとも100回(例えば、少なくとも150回)の充電-放電ステップにわたり、安定なサイクル性能をもたらす(例えば、ここで、安定なサイクル性能は、粉状化、層間剥離、腐食または他の副反応の一因となり得るノイズが全くないまたは実質的にない、繰り返し可能な電圧プロファイルを有することを意味する)(例えば、ここで、1サイクルは、1回の充電および1回の放電に等しい)(例えば、ここで、アルミニウムイオン電池は、50サイクル、100サイクル、150サイクルまたは200サイクルの最低サイクル寿命を有する)。
【0010】
ある特定の実施形態では、外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al+3)は、電極(例えば、カソードまたはアノード)から水性電解質に放出される。一部の実施形態では、放出されたAl+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過して、反対の電極(例えば、それぞれアノードまたはカソード)(例えば、ここで、電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動する。例えば、アノードは、完全に充電された電池(カソードは、この時点で無視できる程度のアルミニウムしか含まない)では、最大で100重量%のアルミニウムを含むことができる。放電された状態では、アノードおよびカソード中のアルミニウムの濃度は、放電の深さに依存する。
【0011】
ある特定の実施形態では、反対の電極中またはその表面において、放出されたAl+3イオンは、(i)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(ii)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(iii)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/またはその他の方法で反応し、これにより、反対の電極の構造の内部またはその表面に安定なアルミニウム相を形成する。ある特定の実施形態では、反対の電極における1種または複数種の遷移金属は酸化状態が変化し、これにより電極の構造が安定化する。
【0012】
ある特定の実施形態では、放出されたAl+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過して、反対の電極に移動し、反対の電極の表面に蓄えられる(例えば、誘電電荷として)。
【0013】
ある特定の実施形態では、外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al+3)は、電極(例えば、カソードまたはアノード)から水性電解質に放出され、放出されたAl+3イオンは、水性電解質中に存在するイオンと反応して、水性電解質を通過して(例えば、および膜セパレータを通過して)反対の電極(例えば、それぞれアノードまたはカソード)(例えば、ここで、電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)にイオン(例えば、電荷キャリア)を輸送するための輸送相(例えば、安定な輸送相)を形成する。例えば、アノードは、完全に充電された電池(カソードは、この時点で無視できる程度のアルミニウムしか含まない)では、最大で100重量%のアルミニウムを含むことができる。放電された状態では、アノードおよびカソード中のアルミニウムの濃度は、放電の深さに依存する。ある特定の実施形態では、完全に充電された状態では、アノード中のアルミニウムの好ましい範囲は、70~100重量%の間である一方、カソード中のアルミニウムの好ましい範囲は、0~20重量%の間である。ある特定の実施形態では、放出されたAl+3イオンは、水性電解質中に存在するOH-1イオンと反応して、Al(OH)4
-1電荷キャリアを形成する(例えば、ここで、Al(OH)4
-1電荷キャリアは、Al+3イオンが水性電解質中でさらに反応する能力を防止するか、または能力を低下させる)。ある特定の実施形態では、電荷キャリアの少なくとも一部は、反対の電極への輸送後に、(i)解離して、個々の陰イオンおよび陽イオンを形成すること、ならびに(ii)安定な電荷キャリア相に留まること、の一方または両方を経る。ある特定の実施形態では、電荷キャリアの少なくとも一部は、反対の電極への輸送後に解離して、個々の陰イオンおよび陽イオンを形成し、個々の陰イオンおよび/または陽イオンは、(i)反対の電極において、(I)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(II)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(III)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/または反応する(例えば、これにより、反対の電極の構造の内部またはその表面に安定な相を形成する)こと、ならびに(ii)誘電電荷として反対の電極の表面に蓄えられることからなる群から選択される、1つまたは複数のプロセスを経る。
【0014】
ある特定の実施形態では、電荷キャリアの少なくとも一部は、反対の電極への輸送後に安定な電荷キャリア相に留まり、電荷キャリアは、反対の電極において、(i)反対の電極の構造内でのインターカレート、ならびに(ii)アルミニウムと、酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとを含む非イオン性安定相への遷移、ならびに反対の電極構造内でのインターカレートおよび/もしくは非イオン性安定相の反応、の一方または両方を経る。
【0015】
ある特定の実施形態では、以下の機構(A)、(B)および(C):(A)外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al+3)は、電極(例えば、カソードまたはアノード)から水性電解質に放出され、放出されたAl+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過して、反対の電極(例えば、それぞれアノードまたはカソード)(例えば、ここで、電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動し、反対の電極内またはその表面において、Al+3イオンは、(i)酸素含有部分、例えば、(a)酸化物、(b)水酸化物、(c)硝酸塩、(d)硫酸塩、(e)酢酸塩、(f)リン酸塩、(g)塩素酸塩、(h)臭素酸塩または(i)ヨウ素酸塩;(ii)ハロゲン含有部分、例えば、(a)塩化物、(b)フッ化物、(c)臭化物、(d)ヨウ化物;および(iii)金属部分、例えば、(a)マンガン、(b)ナトリウム、(c)リチウム、(d)アルミニウム、(e)カリウム、(f)カルシウムまたは(g)マグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとインターカレートするおよび/またはその他の方法でこれらと反応し、これにより、反対の電極の構造の内部またはその表面に安定なアルミニウム相を形成すること;(B)アルミニウムイオン(Al+3)は、外部負荷がかかると、電極(例えば、カソードまたはアノード)から水性電解質に放出され、ここで、放出されたAl+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過して、反対の電極(例えば、それぞれアノードまたはカソード)(例えば、ここで、電極は、0.001~100重量%のアルミニウムである)に移動し、反対の電極の表面に蓄えられる(例えば、誘電電荷として);ならびに(C)外部負荷がかかると、アルミニウムイオン(Al+3)は、電極(例えば、カソードまたはアノード)から水性電解質に放出され、放出されたAl+3イオンは、水性電解質中に存在するイオンと反応して、水性電解質を通過して(例えば、および膜セパレータを通過して)反対の電極(例えば、それぞれアノードまたはカソード)(例えば、ここで、電極は0.001~100重量%のアルミニウムである)にイオン(例えば、電荷キャリア)を輸送するための輸送相(例えば、安定な輸送相)を形成すること、の任意の1つ、2つまたは3つ全てが起こる。例えば、アノードは、完全に充電された電池(カソードは、この時点で無視できる程度のアルミニウムしか含まない)では、最大で100重量%のアルミニウムを含むことができる。放電された状態では、アノードおよびカソード中のアルミニウムの濃度は、放電の深さに依存する。ある特定の実施形態では、完全に充電された状態では、アノード中のアルミニウムの好ましい範囲は、70~100重量%の間である一方、カソード中のアルミニウムの好ましい範囲は、0~20重量%の間である。
【0016】
ある特定の実施形態では、アノードは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含むアルミニウム合金を含む。
【0017】
ある特定の実施形態では、水性電解質は、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、スズ、亜鉛、銅およびマグネシウムからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含む。
【0018】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、アルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)およびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーのシートを含む。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。ある特定の実施形態では、カソードは、シート(例えば、シートは、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)および/またはアルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)および/またはポリマーを含む)間に蓄えられた非アルミニウムゲストイオンおよび/または分子を含み、ゲストイオンおよび/または分子は、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、ビスマス、コバルト、銅およびプロトンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0019】
ある特定の実施形態では、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つは、外部負荷(例えば、充電または放電)がかかると、ならびに/またはカソードと電解質との間および/もしくはアノードと電解質との間および/もしくはカソードとアノードとの間でのイオン交換プロセスにより、電気化学反応に関与する非アルミニウムイオンを含む。
【0020】
ある特定の実施形態では、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)はコバルトを含有しない。
【0021】
ある特定の実施形態では、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)は非毒性である。
【0022】
ある特定の実施形態では、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)は非可燃性である。
【0023】
ある特定の実施形態では、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ(例えば、カソード、アノードおよび水性電解質のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つまたは3つ全部)は、いかなる重金属も含有しない(例えば、アンチモン、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ガリウム、ゲルマニウム、ホルミウム、インジウム、ランタン、ルテチウム、ネオジウム、ニオブ、プラセオジム、サマリウム、タンタル、テルビウム、ツリウム、タングステン、ウラン、イッテルビウム、イリジウム、オスミウム、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、クロム、コバルト、銅、鉄、鉛、モリブデン、ニッケル、スズおよび亜鉛のいずれも含有しない)。
【0024】
別の態様では、本発明は、電流コレクタ(例えば、伝導性基材)、および各々は、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、アルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)(例えば、層化アルミノシリケート)およびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、1つまたは複数の構造(例えば、1つまたは複数の薄層フィルムまたは粒子)を備える、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池、例えば、請求項1から24のいずれか一項に記載の電池)のためのカソードであって、1つまたは複数の構造は、電流コレクタ上に(例えば、直接)配設されており、電流コレクタと電気的に接触している(例えば、ここで、カソードの厚さは、10nm~1mm、例えば10μm~100μm、例えば1μm~10μm、例えば1μm~5μmであり、例えば±20%またはそれより良好な許容度を伴う)、カソードを対象とする。
【0025】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、それぞれ、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)を含む。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0026】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、1オングストローム以上(例えば、5オングストローム以上)(例えば、10オングストローム以上)(例えば、および100オングストローム以下)のシート間(例えば、層間)隔離距離(例えば、隣接[001]酸化マンガンシートのd層間隔)を伴って、少なくとも20重量%(例えば、20重量%~40重量%、例えば40重量%~60重量%、例えば60重量%~80重量%、例えば少なくとも80重量%)の酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)を含む(例えば、これからなる、これから実質的になる、またはこれを含む)複数のシートを含む。ある特定の実施形態では、ゲストイオンおよび分子からの寄与が存在する(例えば、一部の例では、酸化マンガン結晶内に捕捉された水分子が15重量%も存在する)。さらに、ある特定の実施形態では、カソードスラリーの調製において、ポリマーバインダー(2~20重量%)および伝導性炭素添加剤(2~20重量%)が添加される。
【0027】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、スピネル構造、トンネル構造、サンドイッチ構造、カプセル封入構造、または捕捉構造を含む。
【0028】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は乱層構造を含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、リシオフォライト構造(例えば、酸化マンガンおよび水酸化アルミニウムの交互シートを含む)(例えば、ここで、1つまたは複数の構造は、10nm~500マイクロメートルの範囲の寸法を有する酸化マンガンシートを含む)、フィロマンガン酸塩構造(例えば、水和されている金属酸化物を含む)、およびテクトマンガン酸塩構造のうちの1つまたは組合せを含み、これらの構造の1つまたは複数は、初期の状態であっても無秩序化されていてもよく、空孔を含んでもよい。
【0030】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は粒子を含み(例えば、粒子であり)、カソードの粒子の少なくとも80%は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)50nm以上(例えば、粒子の少なくとも80%は、40~60nm以上の寸法を有する)、(ii)100nm~250nm(例えば、粒子の少なくとも80%は、80~120nmと200~300nmの間の寸法を有する)、(iii)500nm~5マイクロメートル(例えば、粒子の少なくとも80%は、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、(iv)1マイクロメートル~10マイクロメートル、(v)5マイクロメートル~30マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する。
【0031】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、形状およびサイズの1つまたは複数に関して、粒子(例えば、酸化マンガン粒子)の多峰性(例えば、二峰性)分布を含む。ある特定の実施形態では、カソードの粒子の少なくとも80%は、以下の範囲(例えば、各峰性について、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)50nm以上、(ii)100nm~250nm、(iii)500nm~5マイクロメートル、(iv)1マイクロメートル~10マイクロメートル、および(v)5マイクロメートル~30マイクロメートルのうちの少なくとも2つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する[例えば、カソードは、粒子(例えば、酸化マンガン粒子)が約20マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する粒子の第1の部分および約0.5マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する粒子の第2の部分を有する二峰性分布を有し、第1の部分および第2の部分は、カソードの粒子の少なくとも80%を構成する]。アノードおよび/またはカソードはまた、粒子サイズの二峰性分布または多峰性分布に加えて、粒子形状の二峰性分布または多峰性分布を含んでもよい。例えば、アノードおよび/またはカソードは、約20重量%の球状粒子の分布、および約80重量%のシートの分布からなることができる。
【0032】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造はシートを含み(例えば、シート子であり)、カソードのシートの少なくとも80%は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)50nm以上(例えば、シートの少なくとも80%は、40~60nm以上の寸法を有する)、(ii)100nm~250nm(例えば、シートの少なくとも80%は、80~120nmと200~300nmの間の寸法を有する)、(iii)500nm~5マイクロメートル(例えば、シートの少なくとも80%は、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、(iv)1マイクロメートル~10マイクロメートル、(v)5マイクロメートル~30マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、厚さ)を有する。
【0033】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む。
【0034】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/またはその空孔に配設された1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む。
【0035】
ある特定の実施形態では、ゲストイオンは、プロトン、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、亜鉛、ビスマス、銅、鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウム、水素、ヒドロニウム、水酸化物、酸化物-水酸化物、硫酸、硫化物、窒化物、硝酸、リン化物、リン酸、酢酸、ポリオキソメタレート(POM)および柱状体形成剤(例えば、脂肪族および/または芳香族化合物)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0036】
【0037】
一部の実施形態では、カソードは、酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の非アルミニウムゲスト分子を含む。
【0038】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/または空孔に配設された1種または複数種の非アルミニウムゲストイオンを含む。
【0039】
ある特定の実施形態では、ゲスト分子は、酸化物、水酸化物、酸化物-水酸化物、スルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、塩化物、塩素酸塩、リン酸塩およびリン化物からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、ゲスト分子は1種または複数種のリン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種のリン酸塩は、ナトリウムのリン酸塩、リチウムのリン酸塩、カリウムのリン酸塩、カルシウムのリン酸塩、マグネシウムのリン酸塩およびマンガンのリン酸塩からなる群から選択されるメンバーである。
【0041】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガンシート間に蓄えられたまたは酸化マンガン結晶格子の部位(例えば、格子間部位)および/もしくは空孔に配設されたアルミニウムのリン酸塩を含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガンシート間に蓄えられた1種または複数種の柱状体形成剤を含む。ある特定の実施形態では、1種または複数種の柱状体形成剤は、ポリオキソメタレート(POM)、両親媒性分子、極性有機分子および非極性有機分子からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0043】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造はそれぞれ、アルミニウム受容性ポリマーを含む。ある特定の実施形態では、アルミニウム受容性ポリマーは、アリザリン、アルギネート、アミジネート、キノン、キノロン、ヒドロキシキノンおよびヒドロキシキノリンからなる群から選択されるメンバーを含む。ある特定の実施形態では、アルミニウム受容性ポリマーは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、チタン、スズ、バナジウムおよびタングステンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーとの錯体として存在する[例えば、ここで、錯体は、充電/放電中の電池において、電解質および/またはアルミニウム源電極(例えば、アノード)からのアルミニウムイオンとのイオン交換プロセスによる電気化学反応に関与する]。
【0044】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、粒子(例えば、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)を含む)(例えば、粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子とマイクロ粒子との組合せである)(例えば、粒子は、10nm~500マイクロメートルの範囲の直径を有する球体である)を含む。ある特定の実施形態では、カソードは、電流コレクタから突き出た複数の伝導性柱状体を備え、粒子は複数の伝導性柱状体上に配設されている。
【0045】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、薄層フィルム(例えば、パターン形成されている薄層フィルム)を含む。ある特定の実施形態では、カソードは、電流コレクタから突き出た複数の伝導性柱状体を備え、薄層フィルムは、複数の伝導性柱状体上に配設されている(例えば、および薄層フィルムは、パターン形成されて、電流コレクタ上の柱状体の分布に対応する)。
【0046】
ある特定の実施形態では、電流コレクタは、多孔質である(例えば、メッシュ、発泡体、複数の相互接続した繊維、複数の管およびシート、複数のナノチューブ、またはグラフェン様構造である)。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、電流コレクタの細孔内または細孔表面に配設(例えば、コーティング)されている。
【0047】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、1つまたは複数の多孔質炭素構造上にコーティングされている。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の多孔質炭素構造は、炭素繊維、ナノ繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、部分還元型酸化グラフェン、エアロゲル、キセロゲル、および相互貫入性多相材料からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、カソードは、電流コレクタに接触して1つまたは複数の構造を物理的に維持する(例えば、接着する)バインダー(例えば、ポリマーバインダー)をさらに含む。ある特定の実施形態では、バインダーは、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、アルギネート、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択される。
【0049】
一部の実施形態では、バインダーは、アルギネート、PVDF、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンからなる群から選択される。
【0050】
一部の実施形態では、バインダーは、1つまたは複数の種の多価イオンにより事前処理されている。
【0051】
一部の実施形態では、1つまたは複数の種の多価イオンは、マンガン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウムおよびアルミニウムのうちの1つまたは複数のイオンを含む。
【0052】
一部の実施形態では、バインダーは、1つまたは複数の種の一価イオンにより事前処理されている。
【0053】
一部の実施形態では、1つまたは複数の種の一価イオンは、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのうちの1つまたは複数のイオンを含む。
【0054】
一部の実施形態では、バインダーは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーのイオンを含む。
【0055】
一部の実施形態では、バインダーは、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルのうちの1つまたは複数、ならびに必要に応じて、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルからなる群から選択される共溶媒を含む溶液から堆積させたものである。
【0056】
一部の実施形態では、カソードはバインダー不含である(例えば、ここで、1つまたは複数の構造は、化学蒸着、物理蒸着、原子層堆積、スピン-コーティングおよび電気化学堆積のうちの1つまたは複数を使用して、電流コレクタ上に形成されている)。
【0057】
ある特定の実施形態では、カソードは、電流コレクタおよび1つまたは複数の構造と電気的に接触している伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)をさらに含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、電流コレクタは、ステンレス鋼、銅、炭素、銀、金、白金、スズ、バナジウム、亜鉛、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロムおよびチタンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、電流コレクタは、接着促進剤、伝導性促進剤または接着促進剤と伝導性促進剤の両方のコーティングを含む。
【0060】
一部の実施形態では、カソードは、1つまたは複数の相の酸化マンガンを含み、1つまたは複数の相は、アルファ相、ベータ相、ラムダ相、ラムスデライト相、アモルファス相、ガンマ相、デルタ相およびイプシロン相からなる群から選択される。
【0061】
一部の実施形態では、1つまたは複数の相は、2つまたはそれより多い相(例えば、3つまたはそれより多い相)である。
【0062】
一部の実施形態では、2つまたはそれより多い相のうちの主要な1つは、カソードの少なくとも40重量%であり、2つまたはそれより多い相の残りすべては、カソードの50重量%以下である。
【0063】
一部の実施形態では、酸化マンガンは、カソードの充電および放電(例えば、イオン挿入および除去)の間に、少なくとも1つの相変化を経るよう配設されている。
【0064】
一部の実施形態では、カソードは、層化構造(例えば、フィロマンガン酸塩)、トンネル構造(例えば、テクトマンガン酸塩)、スピネル構造、ラムスデライト構造またはアモルファス構造を有する酸化マンガンを含む。
【0065】
一部の実施形態では、カソードは酸化マンガンを含み、酸化マンガン中のマンガンは、Mn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)およびMn(VII-x)(xは、0~1の間である)からなる群から選択される1つまたは複数の酸化状態を有する。
【0066】
一部の実施形態では、1つまたは複数の構造は酸化マンガンを含み、酸化マンガンは、大部分(例えば、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%)がデルタ相の酸化マンガンである。
【0067】
ある特定の実施形態では、電流コレクタは、炭素、金属(例えば、スズ、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、ジルコニウム、銀、金、白金)、金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム)またはポリマー(例えば、PEDOT、PAN、パリレン)のうちの1つまたは複数のコーティングを含み、コーティングは、接着促進剤、電子伝導性促進剤およびイオン伝導性阻害剤のうちの1つまたは複数として働く。
【0068】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のためのカソードであって、カソードは、ある量の溶液を電流コレクタ上に堆積させるステップを含む方法によって作製され、ここで、溶液は、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、層化アルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)およびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに1つまたは複数の溶媒(例えば、水、N-メチルピロリドンおよびエタノールからなる群から選択される)を含む、カソードを目的とする。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のメンバーは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択される酸化マンガンを含む。
【0069】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のメンバーは、酸素源(例えば、および必要に応じて酸化剤化学触媒)の存在下、1種または複数種の酸化マンガン前駆体を塩基と反応させるステップ、および必要に応じて、反応ステップ後に酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)を水熱処理するステップを含む方法によって作製された酸化マンガンを含み、1種または複数種の前駆体はそれぞれ、マンガン塩、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、無機酸および過マンガン酸塩からなる群から選択され、ここで、マンガン塩は、硫酸塩、(i)硝酸塩、(ii)塩化物、(iii)酢酸塩、(iv)リン酸塩、(v)過塩素酸塩、(vi)フッ化物および(vii)臭化物のうちの1つまたは複数を含み、過マンガン酸塩は、(i)ナトリウムおよび(ii)カリウムのうちの1つまたは複数を含む。
【0070】
ある特定の実施形態では、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムを含む。
【0071】
ある特定の実施形態では、酸素源は、溶存酸素ガスまたは過酸化物(例えば、過酸化水素)である。
【0072】
ある特定の実施形態では、溶液は、バインダー(例えば、ポリマーバインダー、例えば、1種または複数種のアルミニウム塩を含む電解質溶液により浸透可能なポリマーバインダー)および伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0073】
ある特定の実施形態では、堆積させるステップは、ドクターブレード法、スピンコーティング法、コンマコーティング法またはスロット-ダイコーティング法を含む。
【0074】
ある特定の実施形態では、方法は、堆積させた溶液および電流コレクタをカレンダー加工するステップをさらに含む。
【0075】
一部の実施形態では、溶液は、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに必要に応じて、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルからなる群から選択される共溶媒を含む。
【0076】
一部の実施形態では、溶液は、(i)アルギネート、PVDF、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンからなる群から選択されるバインダー、ならびに(ii)ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛からなる群から選択されるイオン種を含む。
【0077】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のためのカソードであって、電流コレクタ上に酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)および1種または複数種の犠牲材料を同時に堆積させるステップ、および1種または複数種の犠牲材料を除去するステップを含む方法によって作製される、カソードを目的とする。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0078】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の犠牲材料は、アリザリン、アミジネート、キノン、アルギネート、ゼオライト、キノロン、ヒドロキシキノン、ヒドロキシキノリン、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、(例えば、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケルまたは鉄の)酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0079】
ある特定の実施形態では、同時に堆積させるステップは、同時熱的蒸発、同時スパッタリング、共押出または同時コーティング(例えば、スピン-コーティング法、ドクターブレード法またはスロット-ダイコーティング法)を含む。
【0080】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のためのカソードを製造するための方法であって、ある量の溶液を電流コレクタ上に堆積させるステップを含み、ここで、溶液は、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、層化アルミノシリケート(例えば、Al2SiO5)およびアルミニウム受容性ポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバー、ならびに1つまたは複数の溶媒(例えば、水、N-メチルピロリドンおよびエタノールからなる群から選択される)を含む、方法を目的とする。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のメンバーは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択される酸化マンガンを含む。
【0081】
ある特定の実施形態では、酸素源(例えば、および必要に応じて酸化剤化学触媒)の存在下、1種または複数種の酸化マンガン前駆体を塩基と反応させるステップ、および必要に応じて、反応ステップ後に酸化マンガンを水熱処理するステップによって酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)を製造するステップをさらに含み、1種または複数種の前駆体はそれぞれ、マンガン塩、リチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、無機酸および過マンガン酸塩からなる群から選択され、ここで、マンガン塩は、硫酸塩、(i)硝酸塩、(ii)塩化物、(iii)酢酸塩、(iv)リン酸塩、(v)過塩素酸塩、(vi)フッ化物および(vii)臭化物のうちの1つまたは複数を含み、過マンガン酸塩は、(i)ナトリウムおよび(ii)カリウムのうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、酸素源は、溶存酸素ガスまたは過酸化物(例えば、過酸化水素)である。
【0082】
ある特定の実施形態では、溶液は、バインダー(例えば、ポリマーバインダー、例えば、1種または複数種のアルミニウム塩を含む電解質溶液により浸透可能なポリマーバインダー)および伝導性添加剤(例えば、炭素含有添加剤)のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0083】
ある特定の実施形態では、堆積させるステップは、ドクターブレード法、スピンコーティング法またはスロット-ダイコーティング法を含む。
【0084】
ある特定の実施形態では、方法は、堆積させた溶液および電流コレクタをカレンダー加工するステップをさらに含む。
【0085】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のためのカソードを製造するための方法であって、電流コレクタ上に酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)および1種または複数種の犠牲材料を同時に堆積させるステップ、および1種または複数種の犠牲材料を除去するステップを含む、方法を目的とする。ある特定の実施形態では、1種または複数種の犠牲材料は、アリザリン、アミジネート、キノン、アルギネート、ゼオライト、キノロン、ヒドロキシキノン、ヒドロキシキノリン、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、(例えば、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケルまたは鉄の)酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0086】
ある特定の実施形態では、同時に堆積させるステップは、同時熱的蒸発、同時スパッタリング、共押出または同時コーティング(例えば、スピン-コーティング法、ドクターブレード法またはスロット-ダイコーティング法)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0087】
別の態様では、本発明は、1つまたは複数の構造(例えば、1つまたは複数のホイル、薄層フィルムまたは粒子)を備える、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のためのアノードであって、1つまたは複数の構造はそれぞれ、アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のアルミニウム含有メンバーを含み、アノードは、0.001重量%~100重量%のアルミニウムである(例えば、70重量%~100重量%のアルミニウム、例えば少なくとも95重量%のアルミニウム)(例えば、ここで、アノードは、少なくとも95重量%のアルミニウムおよび最大で5重量%の非アルミニウム種を含み、例えば、非アルミニウム種は、アノードに意図的に組み込まれた1種または複数種の合金化金属および/または酸化物を含む)(例えば、ここで、アルミニウムの純度は、少なくとも99.9原子%、例えば少なくとも99.99原子%、例えば99.99原子%~99.99999原子%であり、例えばここで、不純物は、0.01原子%~0.00001原子%の範囲で存在し、例えば、不純物は、鉄および/またはナトリウムおよび/またはマグネシウムおよび/またはシリカを含み、例えば、金属ホイル中に一般に見出される不純物)、アノードを目的とする。一部の実施形態では、アノードは、アルミニウム、酸素、水素、窒素、リチウム マンガンおよび炭素のうちの1つまたは複数を含む(例えば、からなる)表面層を含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造のそれぞれは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンからなる群から選択される1つまたは複数の非アルミニウムメンバーを含むアルミニウム合金または混合物を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の構造を含むフィルムを含み、1つまたは複数の構造の各々は粒子である(例えば、ここで、粒子は、10nm~100マイクロメートルの範囲の直径を有する)(例えば、ここで、フィルムは、10nm~1mmの範囲の厚さを有する)。ある特定の実施形態では、アノードの粒子の少なくとも80%は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)50nm以上(例えば、粒子の少なくとも80%は、40~60nm以上の寸法を有する)、(ii)100nm~500nm(例えば、粒子の少なくとも80%は、80~120nmと400~600nmの間の寸法を有する)、(iii)250nm~1マイクロメートル(例えば、粒子の少なくとも80%は、200~300nmと0.8~1.2マイクロメートルの間の寸法を有する)、(iv)500nm~5マイクロメートル(例えば、粒子の少なくとも80%は、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の寸法を有する)、(v)1マイクロメートル~10マイクロメートル、(vi)5マイクロメートル~25マイクロメートル、(vii)10マイクロメートル~50マイクロメートル、および(viii)50マイクロメートル~100マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する。
【0090】
ある特定の実施形態では、フィルムは、複数の粒子と物理的に接触したポリマーバインダーをさらに含み、ポリマーバインダーは、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される。
【0091】
ある特定の実施形態では、フィルムは、1つまたは複数の伝導性炭素添加剤をさらに含む。
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、1nm~1mmの範囲の厚さを有する薄層フィルムを含む。ある特定の実施形態では、薄層フィルムは、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)50nm以上(例えば、40~60nm以上の厚さ)、(ii)100nm~500nm(例えば、80~120nmと400~600nmの間の厚さ)、(iii)250nm~1マイクロメートル(例えば、200~300nmと0.8~1.2マイクロメートルの間の厚さ)、(iv)500nm~5マイクロメートル(例えば、400~600nmと4~6マイクロメートルの間の厚さ)、(v)1マイクロメートル~10マイクロメートル、(vi)5マイクロメートル~25マイクロメートル、(vii)10マイクロメートル~50マイクロメートル、および(viii)50マイクロメートル~100マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する。
【0092】
ある特定の実施形態では、薄層フィルムは電流コレクタ(例えば、伝導性基材)上にコーティングされている(例えば、ここで、伝導性基材は、炭素、鋼、ニッケル、鉄、亜鉛、アルミニウム、チタン、タングステン、銅、銀、スズ、インジウムおよびクロムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)。一部の実施形態では、薄層フィルムは、炭素、金属(例えば、スズ、亜鉛、アルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、ジルコニウム、銀、金、白金)、金属酸化物(例えば、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム)またはポリマー(例えば、PEDOT、PAN、パリレン)のうちの1つまたは複数のコーティングをさらに含む電流コレクタ(例えば、伝導性基材)上にコーティングされており、コーティングは、接着促進剤、電子伝導性促進剤およびイオン伝導性阻害剤のうちの1つまたは複数として働く。
【0093】
【0094】
ある特定の実施形態では、厚さは、アノードおよびカソードを備える電池におけるカソードの容量に見合う容量を有するアノードを提供するのに十分である。
【0095】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、研磨された表面(例えば、機械的または電気化学的に研磨されている)を有するホイルを含む。ある特定の実施形態では、ホイルは、10ナノメートルおよびそれ未満の厚さを有する天然の酸化物層を有する研磨されたアルミニウムを含む。ある特定の実施形態では、研磨されたアルミニウムは、鏡面仕上げ(質的特性)を有する。
【0096】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、多孔質構造を含む(例えば、多孔質構造は、円形断面または矩形断面を有する細孔を含む)。
【0097】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、電流コレクタ(例えば、伝導性基材)から突き出た複数の柱状体を含む(例えば、ここで、伝導性基材は、炭素、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タングステン、銅およびクロムからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)。
【0098】
ある特定の実施形態では、アノードは、非天然の遷移的酸化アルミニウム層(例えば、0.1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)(例えば、原子層堆積、化学蒸着、熱反応、水熱反応、エッチング、電気化学反応、酸素プラズマ反応または水酸化物処理により形成される)をさらに含む。ある特定の実施形態では、非天然の遷移的酸化アルミニウム層は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上、(ii)1nm~10nm、(iii)5nm~20nm、(iv)20nm~50nm、(v)50nm~250nm、(vi)100nm~500nm、(vii)500nm~1マイクロメートル、および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する。ある特定の実施形態では、非天然の遷移的酸化アルミニウム層は、1つまたは複数の構造(例えば、薄層フィルムまたはホイルを含む)上に配設されている。
【0099】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の構造上に配設されている酸化物フィルムをさらに備える(例えば、0.1nm~100マイクロメートルの範囲の厚さを有する)[例えば、ここで、酸化物フィルムは、パターン形成されている(例えば、酸化物フィルムは、電流コレクタ上の柱状体の分布に対応するようパターン形成されている)]。ある特定の実施形態では、酸化物フィルムは、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上、(ii)1nm~10nm、(iii)5nm~20nm、(iv)20nm~50nm、(v)50nm~250nm、(vi)100nm~500nm、(vii)500nm~1マイクロメートル、および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する。
【0100】
ある特定の実施形態では、酸化物フィルムは薄層フィルムである。
【0101】
ある特定の実施形態では、酸化物フィルムは、複数の酸化物粒子を含むコーティングである。ある特定の実施形態では、複数の酸化物粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子、またはナノ粒子とマイクロ粒子の両方を含む。ある特定の実施形態では、酸化物粒子の少なくとも80%は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1ナノメートル~500マイクロメートル、および(ii)10ナノメートル~20マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の寸法(例えば、直径)を有する。
【0102】
ある特定の実施形態では、酸化物フィルムは、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択されるポリマーバインダーをさらに含む。
【0103】
ある特定の実施形態では、酸化物フィルムは、1つまたは複数の伝導性炭素添加剤をさらに含む。
【0104】
ある特定の実施形態では、アノードは、複数の酸化物フィルムを含み、複数の酸化物フィルムの各々は異なる酸化物を含む。
【0105】
ある特定の実施形態では、アノードは、同じタイプまたは異なるタイプの複数の酸化物層を、必要に応じて酸化物層の間の1つまたは複数のアルミニウム層と共に、含む(例えば、アノードは、以下の順序の層:Al/Al2O3/ZrO2/Al2O3という少なくとも1つの例を含む)(例えば、アノードは、以下の順序の層:Al/Al2O3/Al/Al2O3という少なくとも1つの例を含む)。
【0106】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、薄層フィルムまたはホイルを含み、複数の酸化物フィルムの各々は、1つまたは複数の構造に接触している[例えば、薄層フィルムまたはホイル上に、列(例えば、規則正しい列)になって配列されている]。
【0107】
ある特定の実施形態では、複数の酸化物フィルムは、1つまたは複数の構造上に層として配設されている。
【0108】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数の構造は、複数の薄層フィルムまたはホイルを含み、複数の薄層フィルムまたはホイルの1つまたは複数は、2つまたはそれより多くの酸化物フィルムの間に配設されている。
【0109】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の構造から突き出た複数の酸化物柱状体を含む。ある特定の実施形態では、複数の酸化物柱状体は多孔質である。ある特定の実施形態では、複数の酸化物柱状体は、繊維、ナノチューブおよびナノカラムのうちの1つまたは複数を含む。ある特定の実施形態では、複数の酸化物柱状体は、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、水熱反応、電気化学反応、電気化学堆積または熱反応によって形成される。ある特定の実施形態では、複数の酸化物柱状体は、フィルムを堆積させフィルムをエッチングすることによって形成され、エッチングは、プラズマエッチング、湿式化学エッチング、反応性イオンエッチングまたは緩衝酸化物エッチングを含む。
【0110】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の構造上に配設されている非酸化物フィルム(例えば、1つまたは複数の構造上に直接、または非酸化物フィルムと1つまたは複数の構造との間に配設されている1つまたは複数の酸化物フィルムを伴って)をさらに含む。ある特定の実施形態では、非酸化物フィルムは、元素のスルフィド、元素の硫酸塩、元素の窒化物、元素の硝酸塩、元素のリン化物、元素のリン酸塩および元素のハロゲン化物からなる群から選択される1つまたは複数の非酸化物メンバーを含み、元素は、ジルコニウム、タングステン、インジウム、クロム、コバルト、マグネシウム、鉄、ニッケル、バナジウム、チタン、亜鉛、マンガン、鉄、スズ、ケイ素、硫黄、銅、ハフニウムおよびコバルトからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、非酸化物フィルムは薄層フィルムである。ある特定の実施形態では、非酸化物フィルムは、(例えば、1つまたは複数の非酸化物メンバーを含む)複数の非酸化物粒子を含むコーティングである。ある特定の実施形態では、複数の非酸化物粒子は、ナノ粒子、マイクロ粒子、またはナノ粒子とマイクロ粒子の両方を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の構造上に配設されているポリマー層を含む(例えば、ここで、ポリマー層による1つまたは複数の構造の表面被覆率が1%~100%であり、例えば、1つまたは複数の構造の表面の少なくとも50%は、ポリマー層により被覆されている)(例えば、ここで、ポリマー層は、0.1nm~100マイクロメートルの範囲の厚さを有する)[例えば、ここで、ポリマー層は、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上;(ii)1nm~10nm;(iii)5nm~20nm;(iv)20nm~50nm;(v)50nm~250nm;(vi)100nm~500nm;(vii)500nm~1マイクロメートル;および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する]。ある特定の実施形態では、ポリマー層は、パリレン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、PTFE、ポリエチレンオキシド、セルロース(およびその誘導体)、ポリスルホン(PES)、1つまたは複数のアクリレートのポリマー、アルギネート(例えば、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、カリウム、マグネシウムまたは亜鉛を含む)、キノン、ヒドロキノン、キノロン、ヒドロキシキノリンおよびアリザリン(例えば、アリザリンレッドSを含む)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0112】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、アルミニウムイオン電池または水系アルミニウムイオン電池)のための電極(例えば、カソードまたはアノード)であって、電気活材料(例えば、酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、アルミノシリケートおよびアルミニウム受容性ポリマーのうちの1つまたは複数を含む粒子またはフィルムとして配設されている)、ポリマーバインダー、ならびに伝導性炭素(例えば、炭素粒子または炭素リボンを含む)を含む、電極を目的とする。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0113】
ある特定の実施形態では、ポリマーバインダーは、電極中、全固体の0.5重量%~50重量%である。
【0114】
ある特定の実施形態では、ポリマーバインダーは、セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースまたは酢酸セルロース)、スチレンブタジエンゴム、ポリスルホン、アルギネート(例えば、アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アルミニウム、アルギン酸亜鉛またはアルギン酸マグネシウム)、アリザリン、キノン、ヒドロキノン、キノロン、ヒドロキノリンおよびポリビニルアルコール(PVA)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む。
【0115】
ある特定の実施形態では、電極は、電流コレクタをさらに含み、ポリマーバインダーは、電流コレクタ上の薄層フィルム(例えば、1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)として配設され、そうすることにより、ポリマーバインダーの薄層フィルムは、電気活材料と電流コレクタとの間に配設される[例えば、ここで、ポリマーバインダーの薄層フィルムは、以下の範囲(例えば、±20%またはそれより良好な許容度で):(i)1nm以上;(ii)1nm~10nm;(iii)5nm~20nm;(iv)20nm~50nm;(v)50nm~250nm;(vi)100nm~500nm;(vii)500nm~1マイクロメートル;および(viii)1マイクロメートル~10マイクロメートルのうちの(少なくとも)1つの範囲内の厚さを有する]。ある特定の実施形態では、電極は、伝導層(例えば、1nm~10マイクロメートルの範囲の厚さを有する)をさらに含み、伝導層は、電気活材料およびバインダーと電気的および/または物理的に接触して、電気活材料とバインダーとの間に配設されている。ある特定の実施形態では、伝導層は、炭素、スズ、酸化スズ、酸化インジウムスズ、チタン、クロム、ニッケル、金、銀および白金からなる群から選択されるメンバーを含む。
【0116】
ある特定の実施形態では、電極は、電流コレクタ、ポリマーバインダーの第1の薄層フィルム、第1の伝導層、電気活材料の第1の層、ポリマーバインダーの第2の薄層フィルム、第2の伝導層および電気活材料の第2の層を含む(例えば、ここで列挙した順序の位置で配列されている)、多層構造を含む。
【0117】
ある特定の実施形態では、電極は、電流コレクタ、ポリマーバインダーの第1の薄層フィルム、電気活材料の第1の層、ポリマーバインダーの第2の薄層フィルム、および電気活材料の第2の層を含む(例えば、ここで列挙した順序の位置で配列されている)。
【0118】
別の態様では、本発明は、イオン電池(例えば、水系アルミニウムイオン電池)のための水性電解質であって、水(例えば、脱イオン水)およびアルミニウム塩(例えば、アルミニウムの硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む[ここで、水は溶媒として働き、アルミニウム塩は、主要添加剤である(例えば、電解質は、0.01M~5M、例えば0.05M~1Mの範囲の全アルミニウム塩濃度を有する)(例えば、アルミニウム塩は水に溶解している)]、水性電解質を目的とする。
【0119】
ある特定の実施形態では、水性電解質は、ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む添加剤をさらに含む(例えば、電解質は、合計で0.01M~5M、例えば1M~3Mの範囲のナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩の濃度を有する)(例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムまたはカルシウムの塩は、水に溶解している)。
【0120】
ある特定の実施形態では、水性電解質は、ポリマー(例えば、ポリマーは、アルギネート、キノン、キノロン、ヒドロキシキノン、アリザリンおよびヒドロキシキノリンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)をさらに含む(例えば、電解質は、0.01~50重量%、例えば0.5~10重量%の範囲の全ポリマー重量%を有する)。
【0121】
ある特定の実施形態では、水性電解質は、カソードの湿潤性を増大させる湿潤剤(例えば、湿潤剤は、ケトン、アルコール、アルデヒド、エーテル、エステルおよびシクロヘキサンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む)をさらに含む(例えば、電解質は、0.01~50重量%、例えば0.5~10重量%の範囲の全湿潤剤重量%を有する)。
【0122】
ある特定の実施形態では、水性電解質は、マンガン塩(例えば、マンガンの硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、硝酸塩およびハロゲン化物塩からなる群から選択される1つまたは複数のメンバー)を含む(例えば、電解質は、0.01M~5M、例えば0.05M~1Mの範囲の全マンガン塩濃度を有する)(例えば、マンガン塩は、水に溶解している)。
【0123】
別の態様では、本発明は、アルミニウム、アルミニウム合金およびアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアノード、水性電解質、および酸化マンガン(例えば、MnOまたはMnO2またはMnxOy)、アルミノシリケートおよびポリマーからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むカソードを備える、アルミニウム電池-キャパシタハイブリッドであって、アルミニウム電池-キャパシタハイブリッドの1つまたは複数の構成要素(例えば、アノードおよび/またはカソード)は、疑似キャパシタ添加剤および誘電性添加剤からなる群から選択される1種または複数種の添加剤を含み、疑似キャパシタ添加剤は、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素エアロゲル、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、ポリピロールおよびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含み、誘電性添加剤は、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、パリレンまたは他の共役ポリマー、ポリスチレンおよびポリプロピレンからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む、アルミニウム電池-キャパシタハイブリッドを目的とする。ある特定の実施形態では、酸化マンガンは、MnO[酸化マンガン(II)]、Mn3O4[酸化マンガン(II,III)]、Mn2O3[酸化マンガン(III)]、MnO2[二酸化マンガン、別名は酸化マンガン(IV)]、MnO3[酸化マンガン(VI)]およびMn2O7[酸化マンガン(VII)]からなる群から選択されるメンバーである。
【0124】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の添加剤は、疑似キャパシタ添加剤を含み、疑似キャパシタ添加剤は、アノードおよびカソードの合わせた正味重量の約0.1重量%~約90重量%を構成する。
【0125】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の添加剤は、疑似キャパシタ添加剤を含み、疑似キャパシタ添加剤は、薄層フィルム、ナノ構造、マイクロ構造、粒子またはそれらの組合せの形態である。
【0126】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の添加剤は、誘電性添加剤を含み、誘電性添加剤は、アノードおよびカソードの合わせた正味重量の約0.1重量%~約90重量%を構成する。ある特定の実施形態では、添加剤の濃度は、最終用途に基づいて決定される。例えば、高エネルギー密度電池-キャパシタハイブリッドは、可能性として、30重量%未満の誘電性添加剤濃度を有する。一方、高電力電池-キャパシタハイブリッドは、可能性として、50重量%を超える誘電性添加剤濃度を有する。
【0127】
ある特定の実施形態では、1種または複数種の添加剤は、誘電性添加剤を含み、誘電性添加剤は、薄層フィルム、ナノ構造、マイクロ構造、粒子またはそれらの組合せの形態である。
【0128】
ある特定の実施形態では、アノードは、アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む第1のアルミニウム層、誘電性添加剤を含む誘電性層、アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含む第2のアルミニウム層、および保護性酸化物層を含む。
【0129】
ある特定の実施形態では、第1のアルミニウム層はアルミニウムホイルを含む。
【0130】
ある特定の実施形態では、誘電性層は金属酸化物を含む。ある特定の実施形態では、金属酸化物は酸化ジルコニウムである。ある特定の実施形態では、酸化ジルコニウムは、薄層フィルムの形態である。
【0131】
ある特定の実施形態では、第2のアルミニウム層は、アルミニウムホイルの薄層フィルムを含む。
【0132】
ある特定の実施形態では、誘電性添加剤は酸化アルミニウムである。ある特定の実施形態では、酸化アルミニウムは薄層フィルムの形態である。
【0133】
ある特定の実施形態では、カソードは、ステンレス鋼基材、アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムコンポジットからなる群から選択される1つまたは複数のメンバーを含むアルミニウム層、誘電性添加剤を含む誘電性層、および酸化マンガン層を含む。ある特定の実施形態では、誘電性添加剤は金属酸化物を含む。ある特定の実施形態では、金属酸化物は酸化ジルコニウムである。
【0134】
ある特定の実施形態では、アノードおよびカソードは、アノードの第2のアルミニウム層からカソードへのアルミニウムイオンの輸送を促進するよう配列されている。
【0135】
ある特定の実施形態では、アノードおよびカソードは、充電中、カソードの酸化マンガン層からアノードの第2のアルミニウム層へのアルミニウムイオンの輸送を促進するよう配列されている。
【0136】
図面は、限定のためではなく、例示目的のために本明細書において示されている。本開示の上述の目的および他の目的、態様、特徴ならびに利点は、添付の図面を関連付けて以下の説明を参照することによって、一層明白になり、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【
図1】
図1は、本開示の例示的実施形態による、伝導性基材上に堆積させた、個々のまたは相互接続している多孔質アルミニウムまたはアルミニウムをベースとする合金または混成型アノード構造の例を示す図である。
【0138】
【
図2】
図2は、本開示の例示的実施形態による、下層のアルミニウム基材上の遷移的酸化アルミニウム領域の例を示す図である。
【0139】
【
図3】
図3Aおよび3Bは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード上の酸化物フィルムまたはコーティングの個々の層の例を示す図である。
【0140】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード上の、複数の酸化物フィルム、コーティングまたはフィルムと酸化物との組合せ物を示す図である。
【0141】
【
図5】
図5A~5Cは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとする下層のアノード、および酸化物フィルムまたは酸化物コーティングの層を備える繰り返し単位を示す図である。
【0142】
【
図6】
図6A~6Bは、本開示の例示的実施形態による、複数の酸化物によりコーティングされた下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードであって、複数の酸化物の各々が同一基材上に存在する、アノードの例を示す図である。
【0143】
【
図7】
図7は、本開示の例示的実施形態による、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード上に堆積した多孔質の酸化物の柱状様構造の例を示す図である。
【0144】
【
図8A】
図8Aは、本開示の例示的実施形態による、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとする合金(または、他の伝導性)基材から突き出た、パターン形成されたアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード構造上の酸化物フィルムまたはコーティングを示す図である。
【0145】
【
図8B】
図8Bは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとする合金構造(例えば、
図8Aに由来)上の単一酸化物フィルムまたはコーティングの例を示す図である。
【0146】
【
図8C】
図8Cは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとする合金構造(例えば、
図8Aに由来)上の複数の酸化物フィルムまたはコーティングの例を示す図である。
【0147】
【
図9A】
図9Aは、本開示の例示的実施形態による、伝導性基材(例えば、ホイルまたはプレート)および伝導性構造の列を備える、多孔質の伝導性マトリックス上にコーティングされている酸化マンガン粒子を示す図である。
【0148】
【
図9B】
図9Bは、本開示の例示的実施形態による、コア伝導性構造(例えば、
図9Aにあるように)上にコーティングされている酸化マンガン粒子の断面を示す図である。
【0149】
【
図9C】
図9Cは、本開示の例示的実施形態による、コア伝導性構造上にコーティングされている酸化マンガンフィルムの断面を示す図である。
【0150】
【
図10A】
図10Aは、本開示の例示的実施形態による、相互接続した多孔質基材上にコーティングされている酸化マンガンであって、細孔が規則的な円形細孔または不規則な円形細孔である、酸化マンガンの例を示す図である。
【0151】
【
図10B】
図10Bは、本開示の例示的実施形態による、相互接続した多孔質基材上にコーティングされている酸化マンガンであって、細孔が規則的な矩形細孔または不規則な矩形(例えば、編み込み)細孔である、酸化マンガンの例を示す図である。
【0152】
【
図11】
図11は、本開示の例示的実施形態による、カーボンナノチューブ(CNT)の外部表面または内部表面に堆積された酸化マンガンフィルムの例を示す図である。
【0153】
【
図12】
図12は、本開示の例示的実施形態による、スラリーをベースとする電極組成物に使用されるバインダーを示す図である。
【0154】
【
図13】
図13は、本開示の例示的実施形態による、バインダー-伝導層-活性カソードの構成的構造を作製するプロセス(上側)、およびバインダー-伝導層-活性カソードからなる複数の繰り返し単位の立体構成の一例(下側)を示す図である。
【0155】
【
図14-1】
図14は、本開示の例示的実施形態による、(A)実現可能な電池-キャパシタハイブリッドのアノードの構造組成、(B)実現可能な電池-キャパシタハイブリッドのカソードの構造組成を示し、(C)は、放電中の反応化学(アノードからカソードへのアルミニウムイオンの輸送を含む)を示し、(D)は、放電中の反応化学(カソードからアノードへのアルミニウムイオンの輸送を含む)を示す図である。
【
図14-2】
図14は、本開示の例示的実施形態による、(A)実現可能な電池-キャパシタハイブリッドのアノードの構造組成、(B)実現可能な電池-キャパシタハイブリッドのカソードの構造組成を示し、(C)は、放電中の反応化学(アノードからカソードへのアルミニウムイオンの輸送を含む)を示し、(D)は、放電中の反応化学(カソードからアノードへのアルミニウムイオンの輸送を含む)を示す図である。
【0156】
【
図15】
図15は、本開示の例示的実施形態による、研磨済みアルミニウムアノードに対して組み立てた、約20μA/cm
2の一定電流密度でサイクルした水和化ナトリウムを挿入した酸化マンガンカソードの電圧プロファイルを示す図である。
【0157】
【
図16】
図16は、本開示の例示的実施形態による、(a)合成したままの酸化マンガン中の塩化ナトリウム残留物の存在を示すX線回折の結果、および(b)シート間隔が大きい証拠を示す図である。
【0158】
【
図17】
図17は、本開示の例示的実施形態による、酸化マンガン構造内に水の結晶が存在する証拠を示す熱重量分析(TGA)の結果を示す図である。
【0159】
【
図18-1】
図18は、本開示の例示的実施形態による、(a)8時間の放電後、(b)20時間の放電後、(c)32時間の放電後および(d)40時間の放電後のカソードの走査型電子顕微鏡(SEM)画像の断面(左側)およびアルミニウムイオンのエネルギー分散型分光法(EDS)のマッピング(右側)を示す図である。
【
図18-2】
図18は、本開示の例示的実施形態による、(a)8時間の放電後、(b)20時間の放電後、(c)32時間の放電後および(d)40時間の放電後のカソードの走査型電子顕微鏡(SEM)画像の断面(左側)およびアルミニウムイオンのエネルギー分散型分光法(EDS)のマッピング(右側)を示す図である。
【0160】
【
図19】
図19は、本開示の例示的実施形態による、アルミニウム-マンガン合金アノードのサイクル指数の関数としての容量を示す図である。
【0161】
【
図20】
図20は、本開示の例示的実施形態による、(a)カリウムゲスト原子を有する酸化マンガンの、左から右の方向に上から見たSEM画像およびEDSマッピング、ならびに(b)活性カソード材料として、カリウムゲスト原子を有する酸化マンガンを含むセルの電圧プロファイルを示す図である。
【0162】
【
図21】
図21は、本開示の例示的実施形態による、(a)ポリビニルピロリドン(PVP)バインダー、(b)PVPおよびアルギネートバインダー、および(c)ポリアクリル酸バインダーを用いて合成されたカソードのSEM画像、ならびに(d)ポリアクリル酸バインダーおよび(e)PVP/アルギネートバインダーを用いた場合の時間の関数としての放電電圧プロファイルを示す図である。
【0163】
【
図22】
図22は、本開示の例示的実施形態による、(a)、(b)パターン形成されているアルミニウムアノードのSEM画像、(c)パターン形成されてない研磨済みアルミニウムアノードのSEM画像、(d)、(e)パターン形成されているアルミニウムアノードを有するセルの電圧プロファイル、および(f)パターン形成されていないアルミニウムアノードを有するセルの電圧プロファイルを示す図である。
【0164】
【
図23】
図23は、本開示の例示的実施形態による、アルミニウム/酸化ジルコニウム作用電極、酸化マンガン反対の電極およびAg/AgCl参照電極を備える、3電極系のサイクリックボルタンメトリーを示す図である。
【0165】
【
図24】
図24は、本開示の例示的実施形態による、酸化ジルコニウムによりスプレーコーティングされているアルミニウムアノードのサイクリックボルタンメトリーおよび充電-放電電圧プロファイルを示す図である。
【0166】
【
図25】
図25は、本開示の例示的実施形態による、充電を1.5Vとなる一定電圧で行った、15時間、6時間および3時間の充電-放電レートにおけるサイクル指数の関数としての容量を示すグラフである。
【0167】
【
図26】
図26は、本開示の例示的実施形態による、(a)C/2.5および(b)C/0.5のレートにおける、多孔質伝導性基材上にコーティングされている酸化マンガンカソードの充電-放電プロファイルを示すグラフである。
【0168】
【
図27】
図27は、本開示の例示的実施形態による、(a)ベータ(β)およびアルファ(α)相、(b)大部分(例えば、少なくとも70%)がデルタ(δ)相、および(c)大部分(例えば、少なくとも70%)がガンマ(γ)相にある酸化マンガンカソードの場合のサイクル指数の関数としての放電容量を示すグラフである。
【0169】
【
図28】
図28は、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムアノードに対するカリウム-酸化マンガンカソードの3電極設定(Pt参照電極)におけるサイクリックボルタンメトリーを示す図であり、この場合、一対の個別の反復可能なレドックスピークしか観察されない(0.7V対Ptおよび0.4V対Pt)。
【0170】
【
図29】
図29A~29Bは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウムイオンを充填した後でさえも、ナトリウム-酸化マンガンカソードにナトリウムが存在することを裏付けた元素分析を示す図である。
【0171】
【
図30A】
図30Aは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウム挿入が、熱分解グラファイトカソードの場合のゲストイオンの交換に依存しないことを示すEDSマッピングを示す図である。
【0172】
【
図30B】
図30Bは、本開示の例示的実施形態による、アルミニウム挿入は、ナトリウム-酸化マンガンカソードの場合のゲストイオンの交換に依存しないことを示すEDSマッピングを示す図である。
【0173】
【
図31】
図31は、本開示の例示的実施形態による、カソード粒子サイズ(例えば、20μmおよび0.5μm)の二峰性分布の例示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0174】
説明全体を通して、組成物およびデバイスが、特定の構成要素を有する、含むもしくは備えると記載されている場合、またはプロセスおよび方法が、特定のステップを有する、含む(including)もしくは含む(comprising)と記載されている場合、さらに、列挙されている構成要素から本質的になるか、またはこれからなる組成物およびデバイスが存在すること、ならびに列挙されているプロセスステップから本質的になるか、またはこれからなるプロセスおよび方法が存在することが企図されている。本発明が操作可能であり続ける限り、ステップの順序またはある特定の動作を実施するための順序は重要ではないことを理解すべきである。さらに、2つまたはそれより多いステップまたは動作が同時に行われてもよい。見出しは読み手の便宜をはかるために提示されており、特許請求されている主題に関する限定を意図するものではない。背景技術の項目において資料があることは、このような資料が先行技術であることを認めるものではない。見出しは読み手の便宜をはかるために提示されており、特許請求されている主題に関する限定を意図するものではない。
【0175】
本出願において、文脈から特に明白でない限り、または明示的に特に明記されていない限り、(i)用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味することを理解することができる;(ii)用語「または」は、「および/または」を意味することを理解することができる;(iii)用語「含む(comprising)」および「含む(including)」は、箇条書きされている構成要素またはステップそれら自体によって、あるいは1つもしくは複数の追加の構成要素またはステップと共に提示されているかに関わらず、箇条書きされている構成要素またはステップを包含することを理解することができる;(iv)用語「約」および「およそ」は、当業者により理解されると思われる標準偏差を許容することを理解することができる;および(v)範囲が提示されている場合、端点が含まれる。ある特定の実施形態では、特に明記しない限り、用語「およそ」または「約」とは、明記されている参照値のどちらか一方(それより大きくなる、またはそれより小さくなる)に、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれ未満に収まる値、またはそうでない場合、文脈から明白な値(このような数が、可能な値の100%を超える場合を除く)の範囲を指す。
【0176】
水系アルミニウムイオン電池、電池-キャパシタハイブリッド、カソード組成物、アノード組成物、バインダー組成物、ならびにそれらの製造方法および使用方法が本明細書において開示されている。
水系アルミニウムイオン電池
【0177】
本明細書に記載されている水系アルミニウムイオン電池のある特定の好ましい実施形態は、アルミニウムまたはアルミニウム合金/コンポジットアノード、水性電解質、および酸化マンガン、アルミノシリケートまたはポリマーをベースとするカソードを特徴とする。電気化学反応には、アノードとカソードとの間に、アルミニウムイオンの実際の輸送が必要である。アノードおよびカソードの様々な所望の組成および材料特性が、それらの構成的構造と共に本明細書に記載されている。これらの組成および構造により、本明細書に記載されている水系アルミニウムイオン電池は、(1)電荷貯蔵容量の改善;(2)重量および/または容積エネルギー密度の改善;(3)レート能力および電力密度の向上(より短時間での充電および放電する能力);(4)サイクル寿命の向上;(5)電極の機械的強度の向上;(6)電極の電気化学安定性の改善;(7)電極の伝導性の向上;ならびに(8)電極および電解質におけるイオンの拡散動態の改善を実現することが可能となる。
【0178】
本明細書に記載されている水系ベースのアルミニウムイオン電池は、1C~0.01C(ここで、nCのレートは、1/n時間での充電または放電として定義される)となる範囲のレートで25mAh/g~300mAh/gの間の容量を流すことが示される。サイクル寿命分析から、このセルは、150+回の充電-放電ステップにわたり、安定なサイクル性能をもたらすと考えられる。試験はすべて、2032コインセルのフォームファクタで行われ、Celgard(ポリプロピレン)およびガラスマイクロファイバーなどの標準セパレータを使用した。
【0179】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載されている電気化学セルのある特定の好ましい実施形態は、下記の反応機構(i)~(iv)のうちの1つまたは複数によると考えられる。
【0180】
反応機構(i):外部負荷がかかると、0.001重量%~100重量%のアルミニウムを含む電極から電解質中にアルミニウムイオン(Al+3)が放出される。Al+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過し、反対の電極に移動する。反対の電極では、アルミニウムイオンは、電極構造内部にインターカレートすることができるか、またはそれ以外の方法で、(i)酸化物、(ii)水酸化物、(iii)硝酸塩、(iv)塩化物、(v)硫酸塩、(vi)酢酸塩、(vii)リン酸塩、(viii)マンガン、(ix)ナトリウム、(x)リチウム、(xi)アルミニウムおよび(xii)カリウムのうちの1つまたは複数と反応して、反対の電極構造内部またはその表面に安定なアルミニウム相を形成することができる。さらに、反対の電極における1つまたは複数の遷移金属は、その酸化状態が変化し、その構造を安定化することができる。
【0181】
反応機構(ii):外部負荷がかかると、0.001重量%~100重量%のアルミニウムを含む電極から電解質中にアルミニウムイオン(Al+3)が放出される。Al+3イオンは、水性電解質、膜セパレータを通過し、反対の電極に移動する。反対の電極では、アルミニウムイオンは、誘電電荷として反対の電極の表面上に蓄えられる。
【0182】
反応機構(iii):外部負荷がかかると、0.001重量%~100重量%を含む電極から電解質中にアルミニウムイオン(Al+3)が放出される。Al+3イオンは水性電解質を通過し、電解質中に存在するイオンと反応して、安定な輸送相を形成する。例えば、このような相は、Al+3イオンとOH-1イオンとの組み合わせにより実現されて、Al(OH)4
-1電荷キャリアを形成することができる。これらの電荷キャリアは、Al+3イオンが、水性電解質中でさらに反応することを防止する。電荷キャリアは、反対の電極まで輸送されると、以下のプロセスの1つまたは両方を経る場合がある:(a)解離して、個々の陰イオンおよび陽イオンを形成する、および(b)安定な電荷キャリア相に留まる。個々の陰イオンおよび/または陽イオンは、解離した場合、以下のプロセスの1つまたは複数をさらに経る場合がある:(a)反応機構(i)に記載されている通り、反対の電極とインターカレートするおよび/または反応する、および(b)反応機構(ii)において記載されている通り、誘電電荷として、反対の電極の表面に蓄えられる。電荷キャリアが、その安定な相に留まる場合、電荷キャリアは、以下のプロセスの1つまたは複数を経る場合がある:(a)反対の電極構造内でのインターカレート、(b)アルミニウムと、酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムのうちの1つまたは複数とを含む非イオン性安定相への遷移、ならびに反応機構(i)に列挙されている機構の通りの反対の電極構造内でのインターカレートおよび/または反応。
【0183】
反応機構(iv):外部負荷がかかると、電解質からのアルミニウムイオン(Al+3)は、反対の電極に移動し、反応機構(i)、(ii)および(iii)に列挙されている機構の1つまたは複数の通り、反対の電極で相互作用する。
【0184】
電気化学反応の正確な性質は、(a)電解質のpH、(b)電圧ウィンドウ、(c)電荷状態、(d)放電の深さおよび(e)セル組成(アノード、カソード、ならびに電解質塩および溶媒)を含めた、いくつかの因子に依存する。
【0185】
一部の手法では、電気化学反応は、前述の相互作用に加えて、1種または複数種のイオンを伴ってもよい。追加的なイオンは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウムおよびマグネシウムのうちの1つまたは複数を含んでもよく、合金アルミニウムアノード、電解質の塩に由来する、または酸化マンガン、アルミノシリケートまたはポリマーのカソードのシート間に蓄えられたゲストイオンまたは分子に由来することができる。追加のイオンは、外部負荷(充電または放電)がかかると、またはカソードと電解質、アノードと電解質、カソードとアノードまたはそれらの組み合わせ間のイオン交換プロセスにより、電気化学反応に関与し得る。
電解質中の輸送機構(および電荷キャリアの特徴):
【0186】
一部の実施形態では、電気化学サイクルの間にアノードまたはカソードから放出されるAl3+イオンは、電極の表面においておよび/または電解質中で配位して、様々なサイズの錯体を形成することができ、具体的な一般例は、ポリオキソメタレートクラスターAl13およびAl30Keggin型錯体であるが、このサイズまたは次数に限定されない。
【0187】
これらの錯体は、AlxOyHzなどの専らアルミニウム、酸素および水素から;または他の金属と一緒になって、XnAlxOyHzの形態のどちらか一方からなることができ、ここで、Xは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンを含む群からのいずれかの金属または金属組合せであり得る。
【0188】
電解質中では、これらの錯体は、以下の状態:Al3+イオンが存在する完全に解離した状態、錯体分子の状態、または形態XnAlxOyHzの錯体クラスターの状態のいずれか1つで存在することができる。これらの錯体は、電荷輸送プロセス全体でその構造を維持してもよいし、またはセパレータ層の内側と外側のアノードとカソード間での変換を経てもよい。
カソードおよび/またはアノード内でのアルミニウム挿入、蓄積および輸送:
【0189】
一部の実施形態では、アノードまたはカソード内に拡散するAl3+イオンは、電解質中で、ならびに/またはアノードおよび/もしくはカソードの表面において、ならびに/またはアノード/カソード構造内で配位して、様々なサイズの錯体を形成することができ、具体的な一般例は、ポリオキソメタレートクラスターAl13およびAl30Keggin型錯体であるが、このサイズまたは次数に限定されない。
【0190】
これらの錯体は、AlxOyHzなどの専らアルミニウム、酸素および水素から;または他の金属と一緒になって、XnAlxOyHzの形態のどちらか一方からなることができ、ここで、Xは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンを含む群からのいずれかの金属または金属組合せであり得る。
【0191】
カソードでは、これらの錯体は、表面層を形成することができ、この表面層は、充電、放電および休止の間で様々な組成である。この層は、高度に規則正しい層およびクラスターから完全なアモルファスまでに及ぶ、様々な密度および結晶秩序であることができる。ポリマーバインダー、伝導性炭素添加剤および活性金属酸化物材料を含めたカソードの構成要素は、この表面層と相互作用でき、電荷キャリアとして電子および様々なアルミニウムイオン(例えば、Al+、Al2+、Al3+、Al(OH)4
1-)の両方の移動を可能とする。以下に限定されないが、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンを含む群を含め、他の金属イオンもまた存在してもよく、カソード表面のこのような層を通過して拡散することができる。
【0192】
これらの錯体は、カソード活材料の結晶格子内部またはその表面または縁部に存在することができる。これらの錯体は、カソード活材料内部で、アルミニウム電荷キャリアを輸送および/または安定化することができる。これらの錯体は、充電、放電および/または休止の状態全体を通して、カソード活材料の結晶格子内部またはその表面または縁部では、構造は変化していない(intact)か、または部分的に構造は変化していない状態となり得る。
アノード
【0193】
ある特定の好ましい実施形態では、アノードは、ホイル、フィルム、構造または粒子の形態のアルミニウム、アルミニウムコンポジットおよび/またはアルミニウム合金から主になる。ホイル、フィルム、構造または粒子の形態のアルミニウムコンポジットまたは合金アノードは、本明細書において、アルミニウムをベースとするアノードと称される。アノードは、性質が自立型(ホイルにおけるような)であってもよく、または伝導性基材上にコーティングされていてもよい。
【0194】
ある特定の実施形態では、アルミニウムアノードは、0.00001重量%~99.99999またはそれより多い重量%のアルミニウムを含むアルミニウムホイルを含み、純度は、50%~99.99999%またはそれより高い%の間の範囲である。さらに、ホイルは、炭素、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉄、ケイ素、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、リン、硫黄、亜鉛、銅、チタン、バナジウムおよびクロムのうちの1つまたは複数からなる合金または混合物をさらに含んでもよい。ある特定の実施形態では、存在する場合、合金または混合物を含めて、アルミニウムホイルの厚さは、10nm~100マイクロメートルの範囲とすることできる。
【0195】
一部の実施形態では、アルミニウムアノードは、アルミニウムナノ粒子および/またはマイクロ粒子からなるフィルムを含む。アルミニウム粒子は、10nm~50マイクロメートルの間の範囲の直径を有することができる。アルミニウム粒子は、炭素、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉄、ケイ素、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、リン、硫黄、亜鉛、銅、チタン、バナジウムおよびクロムのうちの1つまたは複数からなる合金組成または混合組成をさらに伴ってもよい。フィルムは、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ-テトラフルオロエチレンおよび伝導性炭素添加剤を含めたポリマーバインダーからさらになることができる。このようなフィルムは、以下に限定されないが、ドクターブレード、スロットダイ、電気化学堆積、共押出成形およびスピンコーティングを含めた様々な技法によりコーティングされ得る。前記フィルムは、以下に限定されないが、炭素、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タングステン、銅、クロムおよびアルミニウムを含めた伝導性基材にコーティングされ得る。存在する場合、合金または混合物を含めた、ナノ粒子/マイクロ粒子からなるアルミニウムフィルムの厚さは、10nm~1mmの範囲とすることができる。
【0196】
一部の実施形態では、アルミニウムアノードは、薄層フィルムとして堆積されてもよい。該フィルムは、炭素、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉄、ケイ素、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、ジルコニウム、リン、硫黄、亜鉛、銅、チタン、バナジウムおよびクロムのうちの1つまたは複数からさらになることができる。このようなフィルムは、以下に限定されないが、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積および熱的蒸発を含めた様々な技法によってコーティングされ得る。前記フィルムは、以下に限定されないが、炭素、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、タングステン、銅、クロムおよびアルミニウムを含めた伝導性基材にコーティングされ得る。存在する場合、合金または混合物を含めたアルミニウムフィルムの厚さは、1nm~1mmの範囲とすることができる。アルミニウムの厚さの範囲により、アルミニウムアノードと酸化マンガンカソードとの間に適合する容量が決まる。アルミニウムもしくはアルミニウムをベースとする合金、または混合物は、ナノ構造の形態でさらにパターン形成または堆積されてもよい。例えば、多孔質の構造鋳型(
図1に示されたような)は、以下に限定されないが、フォトリソグラフィー、反応性イオンエッチング、プラズマエッチングおよび斜め堆積法を含めた様々な技法によって得ることができる。いくつかの手法は、以下に限定されないが、ナノチューブ、繊維、発泡体およびメッシュを含めた、多孔質基材上に直接、アルミニウムおよびアルミニウムをベースとする合金および混合物を堆積することを含む。このような多孔質基材は、以下に限定されないが、炭素、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タングステン、銅、クロムおよびアルミニウムを含めた、1つまたは複数の伝導性組成物を含む。
【0197】
前述のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードは、例えば、
図2に示されている通り、0.1nm~10マイクロメートルの厚さの範囲に及ぶ、遷移的酸化アルミニウム層をさらに含むことができる。このような遷移的酸化物は、一様な薄層フィルムの形態であってもよく、またはパターン形成されていてもよく、下層のアルミニウムの構造にかなり類似していてもよい。このような遷移的酸化アルミニウム層は、組織的に形成されてもよく、またはそうでない場合、以下に限定されないが、化学蒸着、熱反応、水熱反応、エッチング、電気化学反応、またはとりわけ酸素プラズマおよび水酸化物処理を含むものなどの他の化学反応を含めた手法の1つまたは組合せにより形成され得る。
【0198】
アノードの必要に応じた二次組成:アノードの二次組成は、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マンガン、酸化鉄、酸化スズ、酸化ケイ素、酸化銅および/または酸化コバルトを含めた、1つまたは複数の酸化物からなる個別の層を含むことができる。これらの酸化物層の厚さは、0.1nm~100ミクロンの範囲とすることができ、この層は、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、電気化学堆積および化学反応などの手法により作製することができる。
【0199】
酸化物は、薄層フィルム(例えば、
図3Aに示されているような)、またはナノ粒子、マイクロ粒子のコーティング、またはナノ粒子とマイクロ粒子の組合せ物(例えば、
図3Bに示されているような)の形態で堆積されてもよい。酸化物の薄層フィルムは、以下に限定されないが、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積および熱的蒸発を含めた技法により堆積されてもよい。一方、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子のコーティングは、以下に限定されないが、ドクターブレード、スロットダイ、電気化学堆積、共押出成形およびスピンコーティングを含めた技法により堆積されてもよい。さらに、コーティングは、ポリマーバインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリ-テトラフルオロエチレンおよび/または伝導性炭素添加剤をさらに含んでもよい。
【0200】
一部の実施形態では、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードは、フィルム(例えば、
図4Aに示されているような)、コーティング(例えば、
図4Bに示されているような)またはそれらの両方の組合せを含めた、複数の酸化物層によりコーティングされていてもよい。
【0201】
一部の実施形態では、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード(この場合、アルミニウムをベースとするとは、アルミニウム合金、アルミニウムと不動態層、またはアルミニウムと複数の不動態層、アルミニウムと酸化物層、またはアルミニウムと複数の酸化物層、自然酸化物層を有するアルミニウム、遷移的酸化物層を有するアルミニウム、および他のこのような組合せ物のうちの1つまたは複数を指す)および酸化物フィルムまたはコーティングが、繰り返し単位として使用されてもよい。各単位は、同一または異なる組成物、および同一または異なる厚さを含むことができる。例は、
図5A~5Cに示されており、
図5Aは、同じ2つの単位を示しており、
図5Bは、2つの異なる単位(組成の異なるフィルムを有する)を示しており、
図5Cは、2つの異なる単位(一方は、酸化物コーティングを有し、一方は、酸化物フィルムを有する)を示している。一部のこのような手法は、規模拡大の一助となり、アノード組成物の機械的、化学的および電気化学的安定性を改善し、アノードの効率的な利用およびレート能力の改善を可能にする。
【0202】
一部の実施形態では、アルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードの下層表面は、複数の酸化物フィルム、酸化物粒子またはこれらの2つの組合せ物によりコーティングされていてもよく、例えば、
図6A~6Bに示されている通り、各酸化物は、同じ下層の基材を共有している。このようなコーティングは、以下に限定されないが、フォトリソグラフィー、および個々の酸化物を堆積している間のマスクの使用を含めた手法により効率的に実現することができる。
【0203】
コーティングはまた、酸化物粒子を含むフィルムおよびコーティングに加えて、例えば、
図7に示されている通り、繊維、ナノチューブおよびナノカラムなどの、多孔質酸化物構造を含むことができる。このような酸化物構造は、以下に限定されないが、斜め堆積法、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、リソグラフィー、フォトリソグラフィー、e-ビームリソグラフィー、ダイ-スタンプ法、焼成、ホットプレス、電気化学堆積および水熱反応を含めた技法により堆積させることができる。
【0204】
一部の実施形態では、酸化物はまた、例えば、
図8A~8Bに示されている通り、多孔質アルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード上に直接、コーティングおよび/または堆積させてもよい。このような堆積方法は、以下に限定されないが、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積、水熱反応、電気化学反応、電気化学堆積、熱反応および/または他の同様の化学反応を含めた、1つまたは複数の技法を含むことができる。一部の手法では、酸化物層は、ナノ粒子、マイクロ粒子またはそれらの両方の組合せ物からなるフィルムまたは層の形態で下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード上にコーティングされ、次に、以下に限定されないが、プラズマエッチング、反応性イオンエッチングおよび/または緩衝酸化物エッチングを含めた、ある形態のエッチングが施されてもよい。さらに、複数の酸化物層は、例えば、
図8Cに示されている通り、コアアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノード構造上にコーティングされ得る。一部の手法では、酸化物層は、多孔質アルミニウム基材上に遷移的酸化物として組織的に成長させてもよい。このような酸化物層は、酸化アルミニウムを主に含み、下層のアルミニウムアノードと共に存在する他の合金材料からなる酸化物を含んでもよく、または含まなくてもよい。このような遷移的酸化アルミニウム層は、組織的に形成されてもよく、またはそうでない場合、例えば、化学蒸着、熱反応、リソグラフィー、ダイ-スタンプ法、ホットプレス、水熱反応、エッチング、電気化学反応、ならびに/またはとりわけ酸素プラズマおよび水酸化物処理を含むものなどの他の化学反応を含めた手法の1つまたは組合せにより形成されてもよい。
【0205】
酸化物に勝る、提案されている水系アルミニウムイオン系に望ましいものとなり得るフィルムまたは粒子の他の層は、例えば、以下に限定されないが、ジルコニウム、タングステン、バナジウム、チタン、亜鉛、マンガン、鉄、スズ、ケイ素、銅およびコバルトを含めた元素のスルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、リン化物、リン酸塩およびハロゲン化物を含む。さらに、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードは、以下に限定されないが、ジルコニウム、タングステン、バナジウム、チタン、亜鉛、マンガン、鉄、スズ、ケイ素、銅およびコバルトを含めた元素のスルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、リン化物、リン酸塩およびハロゲン化物の1つまたは組合せ物を含む層によりコーティングされていてもよい。
【0206】
さらに、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードは、以下に限定されないが、パリレン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギネート(ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛)、キノン、ヒドロキノン、キノリン、ヒドロキシキノリン、アリザリン、および/またはアリザリンレッドS;および/または対応する誘導体からなるモノマー、オリゴマーおよびポリマーまたはコポリマーを含めた、ポリマーからなる1つまたは複数の層によりコーティングされていてもよい。これらのモノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーは、0.1nm~100マイクロメートルの範囲のポリマー層の厚さで、アルミニウムフィルムの表面に堆積することができる。このポリマー層は、下層のアルミニウムフィルムの面積の1%~100%の間の表面被覆率を有することができる。これらのポリマーを堆積するために使用される技法は、とりわけ、化学蒸着、スピン-コーティング、ドクターブレード、共押出成形およびスロット-ダイを含むことができる。
【0207】
さらに、下層のアルミニウムまたはアルミニウムをベースとするアノードは、酸化物、スルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、リン化物、リン酸塩、ハロゲン化物、パリレン、ポリビニルアルコール、アルギン酸、アルギネート(ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛)、キノン、ヒドロキノン、キノリン、ヒドロキシキノリン、アリザリン、および/またはアリザリンレッドS;および/または対応する誘導体からなるモノマー、オリゴマーおよびポリマーまたはコポリマーを含む1つまたは複数の層によりコーティングされていてもよい。
アルミニウムアノードの表面SEI層:
【0208】
アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウム化合物アノードは、酸素、水素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、炭素のうちの1つもしくは複数またはこれらの組合せ物、および1つまたは複数の金属(以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、チタン、インジウム、スズ、銅、バナジウム、ケイ素、コバルト、クロムのうちの1つまたは複数を含む)を含む(例えば、これらからなる)、表面層を含むことができる。ある特定の実施形態では、表面層は、アルミニウム、酸素および/または水素の錯体を含む(例えば、これらからなる)。一部の実施形態では、表面層は、アルミニウム、金属、酸素および水素の錯体を含み(例えば、これらからなり)、金属は、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンのうちの1つまたは複数を含むことができる。ある特定の実施形態では、この表面層は、充電、放電および休止を含めた電気化学サイクルの間、構造および組成が変わり得る。
【0209】
ある特定の実施形態では、アノード表面から放出されるAl3+イオンは、電解質中で配位して、様々なサイズの錯体を形成することができ、例えば、ポリオキソメタレートクラスターAl13およびAl30Keggin型錯体であるが、このサイズまたは次数に限定されない。これらの錯体は、AlxOyHzなどの専らアルミニウム、酸素および水素;または他の金属と一緒になって、XnAlxOyHzの形態のどちらか一方を含むことができ、ここで、Xは、ナトリウム、リチウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、鉛、ビスマス、チタン、バナジウム、スズ、銅、銀、金、白金、水銀、スカンジウム、硫黄、ケイ素、鉄、ケイ素、ニッケル、マンガン、クロム、セリウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、ハフニウム、インジウム、ロジウム、ルテニウム、モリブデン、パラジウム、ストロンチウム、イットリウム、バリウム、カドミウム、イリジウム、タンタル、コバルト、テルル、アンチモン、ヒ素、タングステンおよびセレンを含む群からのいずれかの金属または金属組合せであり得る。
【0210】
カソードでは、これらの錯体は、表面層を形成することができ、この表面層は、充電、放電および休止の間で様々な組成である。この層は、高度に規則正しい層およびクラスターから完全なアモルファスまでに及ぶ、様々な密度および結晶秩序であることができる。アノード内に蓄積された金属アルミニウムは、この表面層と相互作用でき、電荷キャリアとして電子および様々なアルミニウムイオン(例えば、Al+、Al2+、Al3+、Al(OH)4
1-)の両方の移動を可能とする。
【0211】
一般に、これらの錯体は、アノード、カソード、セパレータまたは電解質中のどこかの表面、内部またはそれらの任意の組合せ物に存在することができることに留意すべきである。これらのクラスターおよび/またはネットワークは、充電、放電およびもしくは休止、またはそれらの任意の組合せの間、存在することができる。
アノード向けの電流コレクタ基材:
【0212】
ある特定の実施形態では、アルミニウムおよび合金粒子、アルミニウムもしくはアルミニウム合金フィルム、またはアルミニウムをベースとする化合物を含む溶液を、例えば、ドクター-ブレードコーティング法、スロットダイコーティング法、コンマコーティング法、スプレーコーティング法またはスピンコーティング法により、電流コレクタ上に直接、堆積させてもよい。アルミニウム、アルミニウム合金またはアルミニウムをベースとする化合物はまた、物理蒸着技法もしくは化学蒸着技法により、または原子層堆積によって電流コレクタ上に堆積させてもよい。
【0213】
電流コレクタ基材は、炭素、または以下に限定されないが、スズ、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、タングステン、バナジウム、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銅、クロム、チタン、ビスマス、銀、金、白金、鉄、酸化鉄およびモリブデンを含めた、他の伝導性金属基材または伝導性金属酸化物基材とすることができる。ある特定の実施形態では、電流コレクタ基材は、1種または複数種のフィルムによりさらにコーティングされており、該フィルムは、炭素、金属および/またはそれらの対応する金属酸化物(以下に限定されないが、スズ、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、タングステン、バナジウム、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銅、クロム、チタン、ビスマス、銀、金、白金、鉄、酸化鉄およびモリブデンを含む)、およびポリマー(以下に限定されないが、PTFE、PVDF、パリレン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリプロピレンおよびセルロースを含む)からなる。ある特定の実施形態では、フィルムは、接着性を改善する。ある特定の実施形態では、フィルムは、電子伝導性を改善する。ある特定の実施形態では、フィルムは、1つまたは複数のイオンに非透過性であり、イオンは、以下に限定されないが、カルシウム、カリウム、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛および鉄などの金属イオンを含む。一部の実施形態では、フィルムは、酸素との錯体、水素との錯体(水酸化物および酸化物-水酸化物を含む)、窒素との錯体(窒化物、硝酸塩を含む)、リンとの錯体(リン化物、リン酸塩を含む)、硫黄との錯体(スルフィド、硫酸塩を含む)、およびハロゲン化物との錯体のうちの1種もしくは複数種、またはそれらの組合せ物を含めた、イオン性錯体に非透過性である。
カソード
【0214】
ある特定の好ましい実施形態では、カソードは、電荷分布および電流コレクタとの接触を改善するための伝導性添加剤、ならびに電流コレクタに電極を接着させて、電極および伝導性添加剤粒子の物理的な相互接続を維持するポリマーバインダー(同時に、電解質の透過を可能にする)と共に、酸化マンガン構造、層化アルミノシリケートまたはアルミニウム受容性ポリマーから主になる。カソード、バインダーおよび伝導性添加剤は、とりわけ、水、N-メチルピロリドン、エタノールなどの溶媒中で通常、混合され、以下に限定されないが、ドクターブレードおよびスロット-ダイを含めた手段により電流コレクタ基材上にコーティングされる。コーティングしたままのカソードを乾燥して、機械的強度および密度を向上させるため、カレンダー加工されてもよく、またはされなくてもよい。カソードの厚さは、10nm~1mmの間の範囲とすることができる。酸化マンガンは、MnO、MnO2、MnxOy、およびMn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)またはMn(VII-x)(xは、0~1の間である)の状態を有するマンガンのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0215】
酸化マンガンは、以下の前駆体:陰イオンが硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、フッ化物イオンまたは臭化物イオンであるマンガンの塩のうちの2つまたはそれより多くの間の反応により合成される。これらの前駆体はまた、ナトリウムまたはカリウムの過マンガン酸塩であってもよい。これらの前駆体は、溶存酸素ガス、過酸化水素、または他の過酸化物および酸素に富む分子などの酸素源と共に、以下に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの塩基の適切な混合物と反応させる。外部の酸化剤である化学触媒の存在が含まれてもよく、または含まれなくてもよい。この酸化還元化学反応に続いて、得られたままの生成物に水熱処理が施されてもよく、または施されなくてもよい。
【0216】
一部の実施形態では、バインダーフリーカソードは、以下に限定されないが、化学蒸着、物理蒸着、原子層堆積、スピン-コーティング、原子層堆積および/または電気化学堆積を含めた方法を使用して、電流コレクタ基材上に堆積される。このようなカソードの厚さは、1nm~1mmの間の範囲とすることができる。
酸化マンガンの材料特性:
【0217】
酸化マンガンは、乱層構造、またはいくつかの酸化マンガンシートを含む高度に向きの整ったレイアウトを有することができる。その粒子は、寸法が10nm~500マイクロメートルの範囲のシートからなることができる。これらのシート層は、様々なスピネル構造、トンネル構造、サンドイッチ構造またはカプセル封入構造および捕捉構造に変換され得、これらの構造は、ゲストイオンもしくはゲスト分子、またはゲストイオンとゲスト分子との組合せ物を含有してもよく、または含有しなくてもよい。可能なゲストイオンは、以下に限定されないが、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ビスマス、銅、鉛、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、水素、ヒドロニウムイオン、水酸化物イオン、酸化物-水酸化物イオン、硫酸イオン、硫化物イオン、窒化物イオン、硝酸イオン、リン化物イオン、リン酸イオンおよび酢酸イオンのうちの1つまたは複数を含む。可能なゲスト分子には、以下に限定されないが、水、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、マンガンの酸化物、水酸化物、酸化物-水酸化物、スルフィド、硫酸塩、窒化物、硝酸塩、リン化物および/またはリン酸塩のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0218】
さらに、これらのシートには、球状の構造的幾何形状が得られるよう、球状化工程が施され得る。その粒子は、直径が10nm~500マイクロメートルの範囲の球体からなることができる。酸化マンガンの球体幾何形状とシート様幾何形状との混合物を有する可能性もある。この材料は、ゲストイオン、ゲスト分子もしくはそれらの両方の組合せ物を受け入れる構造化材料、またはゲストイオン、ゲスト分子もしくはそれらの両方の組合せ物を受け入れる部位/空孔を含有する規則正しい結晶性材料のいずれか一方とすることができる。
【0219】
酸化マンガンの層間距離(d層間隔[001])は、1Å~50Åの間の範囲である。層間距離の剥離は、以下に限定されないが、以下のイオン:リチウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウム、マグネシウムおよびカリウムの1つ、複数または組合せ物を含めた、イオン交換プロセスによって達成される。以下に限定されないが、ポリオキソメタレート(POM)、両親媒性分子、および極性有機分子と非極性有機分子の両方を含めた、幅広い柱状体形成剤(pillaring agent)が使用され得る。前述のイオンおよび/または分子は、酸化マンガンシートの間に挿入されており、これにより、イオンを収容するため、層間であるd層間隔が広がり、ひいては、この材料の表面積が大きくなる。これらのイオン/原子/分子は、酸化マンガンとの弱い物理または化学結合によるそれらのイオン性形態で存在することができるか、または、以下に限定されないが、水酸化マンガン、酸化水酸化マンガン、水酸化マンガン、塩化マンガン、硫酸マンガン、酢酸マンガン、リン酸マンガンおよび硝酸マンガンを含む合成過程の間に形成される群の1つ、複数または組合せ物と反応し、層間であるd層間隔がさらに広がる。これらのイオンまたはそれぞれの安定な化合物は、酸化マンガンシート間に留まることができるか、またはそれらは、いくつかの洗浄サイクルにより除去されてもよい。これらのゲストイオン、柱状体形成剤および分子は、酸化マンガンの通常の結晶面において、縁部、3つの角を共有する空孔もしくは類似の空孔、またはどこかに存在することができる。
カソードの構成的構造:
【0220】
酸化マンガンは、ナノ粒子、マイクロ粒子またはナノ粒子とマイクロ粒子との組合せ物からなる薄層フィルムまたはコーティングとして、伝導性基材上に堆積されてもよい。酸化マンガンの薄層フィルムは、以下に限定されないが、物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積および熱的蒸発を含めた技法により堆積させてもよい。一方、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子のコーティングは、以下に限定されないが、ドクターブレード、スロットダイ、電気化学堆積、コンマコーティングおよびスピンコーティング、または他の類似の製造方法を含めた技法により堆積されてもよい。さらに、コーティングは、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、アルギネート、ポリプロピレン、ポリ-テトラフルオロエチレン、および/または伝導性炭素添加剤を含めた、ポリマーバインダーをさらに含んでもよい。
【0221】
カソードが堆積(またはコーティング)されてもよい伝導性基材には、以下に限定されないが、ステンレス鋼、銅、炭素、銀、金、白金、スズ、バナジウム、亜鉛、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロムおよびチタンのホイルならびにプレートが含まれる。さらに、ホイルおよびプレートは、接着促進剤、伝導性促進剤、または接着性促進剤と伝導性促進剤との組合せ物からなる薄層フィルムによりコーティングされていてもよい。
【0222】
ある特定の実施形態では、伝導性基材は、例えば、ステンレス鋼、炭素、銀、金、白金、スズ、バナジウム、亜鉛、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、銅、アルミニウム、ニッケル、タングステン、クロムおよびチタンのうちの1つまたは複数の、メッシュ、発泡体、繊維、またはナノ構造、および/またはマイクロ構造などの多孔質構造である。
図9A~9Cは、このようなカソードの例を示す。
図9Aでは、伝導性コア繊維またはナノ構造および/またはマイクロ構造のマトリックスは、酸化マンガン粒子(またはフィルム)によりコーティングされている。このようなマトリックスに由来する単一構造の詳細は、
図9B~9Cに示されている。
図10A~10Bもまた、コーティングされている多孔質構造の例を示している。
【0223】
一部の実施形態では、カソードは、以下に限定されないが、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェンおよび/または部分還元型酸化グラフェンのうちの1つまたは複数を含めた、高表面積多孔質炭素上にコーティングされていてもよい。高表面積多孔質炭素は、自立型フィルムおよび電流コレクタとして働くことができ、伝導性基材上で直接、成長されてもよく、または電流コレクタ基材にコーティングされるスラリーに添加されてもよい。酸化マンガンは、例えば、
図11に示されている形態で、スラリーに基づく手法または薄層フィルム堆積技法により、このような伝導性炭素添加剤上にコーティングされてもよい。
【0224】
一部の手法では、細孔が、以下に限定されないが、アリザリン、アミジネート、キノン、アルギネート、ゼオライト、キノリン、ヒドロキシキノン、クラウンエーテルおよびヒドロキシキノリンのモノマー、オリゴマーおよびポリマーもしくはコポリマー、または他の類似したキレート形成性錯体もしくは配位性錯体、ケイ素、銅、コバルト、クロム、ニッケル、鉄、およびケイ素、銅、コバルト、クロム ニッケルおよび鉄の酸化物、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩およびリン酸塩を含めた、1つまたは複数のポリマーなどの犠牲材料の使用により、カソードに実現されてもよい。犠牲材料は、酸化マンガン(同時熱的蒸発、同時スパッタリングおよび共押出成形など)と共堆積され得る、またはスラリー中で酸化マンガン、伝導性炭素およびポリマーバインダーと混合され得、次に、伝導性電流コレクタにコーティングされる。犠牲材料は、以下に限定されないが、エッチング、プラズマ、熱処理、イオン交換および化学反応を含めたプロセスにより、ex situで除去され得、この場合、犠牲ポリマーは、不溶性沈殿物を形成して、洗浄により除去され得る。一部の手法では、犠牲材料は、イオン-交換などのプロセスにより電気化学セルの保管または操作の間に、in situで除去され得る。
【0225】
アルミニウム受容性ポリマー:酸化マンガンまたはアルミノシリケートとは別に、ある種のポリマーもまた、電気化学セル用の実現可能な候補であることが本明細書においてやはり見出されている。このようなポリマーは、以下に限定されないが、アリザリン、アルギネート、アミジネート、キノン、キノリン、ヒドロキシキノン、クラウンエーテルおよびヒドロキシキノリンのモノマー、オリゴマーおよびポリマーまたはコポリマー、ならびに配位性錯体またはキレート形成性錯体を含むことができる。これらのポリマーは、以下に限定されないが、リチウム、ナトリウム、鉛、クロム、銅、ビスマス、コバルト、亜鉛、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、チタン、スズ、バナジウムおよびタングステンを含めた、1つまたは複数のイオンとの錯体の形態でさらに存在することができる。さらに、イオン形成性モノマー錯体、オリゴマー(olgiomeric)錯体、ポリマー錯体およびコポリマー錯体もまた、電解質に由来する、ならびに/または充電中およびその反対に放電中のアルミニウム源電極に由来するアルミニウムイオンとのイオン交換プロセスによる電気化学反応に関与することができる。
カソード材料の相:
【0226】
ある特定の実施形態では、カソードは、酸化マンガンの1つまたは複数の相を含み、1つまたは複数の相は、以下に限定されないが、アルファ、ベータ、ラムダ(λ)、ラムスデライト、アモルファス、ガンマ、デルタおよびイプシロン(ε)のうちの1つまたは複数を含む。一部の実施形態では、カソードは、酸化マンガンの一次相、ならびに(例えば、その)酸化マンガンの二次相および三次相のうちの1つまたは複数を含む。一部の場合、カソードは、酸化マンガンの4つまたはそれより多い相を含んでもよい。存在する各相の濃度は、単一相化組成物が100重量%とすることができるか、または例えば、多相組成物の場合、0.1重量%~99.9重量%の範囲とすることができる。例えば、ある特定の実施形態では、一次相は、カソードの少なくとも40重量%を構成する。一部の実施形態では、他の存在する相(例えば、二次、および必要に応じて三次)は、カソードの50重量%未満を構成する。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の相は、電気化学セルの充電および/または放電の間、1つまたは複数の他の相への遷移を経る。一部の実施形態では、カソードは、酸化マンガンを含む1つまたは複数の構造(例えば、粒子)を含み、酸化マンガンは、大部分(例えば、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%)がデルタ相酸化マンガンである。一部の実施形態では、デルタ相の酸化マンガンまたはデルタ相酸化マンガンを一層高い比率で使用するカソードは、酸化マンガンの別の相(例えば、ガンマ相)が、充電サイクルの間に可逆的に相を遷移する(例えば、ガンマ相とデルタ相との間)ものを含めた、他の相の酸化マンガンを使用するカソードよりも優れた性能を発揮する。
【0227】
酸化マンガンは、相に加えて、少なくとも部分的に、その構造によっても定義することができる。これは、層化構造(例えば、フィロマンガン酸塩)、トンネル構造(例えば、テクトマンガン酸塩(tectomanganate))、スピネル、ラムスデライトおよびアモルファスの1つまたは組合せを含んでもよい。一部の実施形態では、カソードは、マンガンが6個の酸素原子に八面で配位した酸化マンガンを含み、この場合、これらの酸素のいずれも、水酸化物またはReutschiの空孔(例えば、プロトン化されているMn空孔)により置き換えられ得ないか、または酸素のいずれかもしくはすべてが、水酸化物またはReutschiの空孔により置き換えられ得る。
【0228】
一部の実施形態では、カソードにおける酸化マンガンは、Mn(II)、Mn(II-x)、Mn(III)、Mn(III-x)、Mn(IV)、Mn(IV-x)、Mn(V)、Mn(V-x)、Mn(VI)、Mn(VI-x)、Mn(VII)およびMn(VII-x)(xは、0~1の間である)からなる群から選択される1つまたは複数の酸化状態のマンガンからなることができる。
カソード向けの電流コレクタ基材:
【0229】
一部の実施形態では、電流コレクタ基材は、炭素、または以下に限定されないが、スズ、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、タングステン、バナジウム、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銅、クロム、チタン、ビスマス、銀、金、白金、鉄、酸化鉄およびモリブデンを含めた、他の伝導性金属または金属酸化物基材である。ある特定の実施形態では、電流コレクタ基材は、1種または複数種のフィルムによりさらにコーティングされており、該フィルムは、炭素、金属および/またはそれらの対応する金属酸化物(以下に限定されないが、スズ、酸化スズ、インジウム、酸化インジウムスズ、タングステン、バナジウム、ステンレス鋼、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、銅、クロム、チタン、ビスマス、銀、金、白金、鉄、酸化鉄およびモリブデンを含む)、およびポリマー(以下に限定されないが、PTFE、PVDF、パリレン、PEDOT、ポリアニリン、ポリプロピレンおよびセルロースを含む)からなる。ある特定の実施形態では、フィルムは、接着性を改善する。ある特定の実施形態では、フィルムは、電子伝導性を改善する。ある特定の実施形態では、フィルムは、1つまたは複数のイオンに非透過性であり、イオンは、以下に限定されないが、カルシウム、カリウム、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、コバルト、クロム、ニッケル、亜鉛および鉄など金属イオンを含む。他の実施形態では、フィルムは、酸素との錯体、水素との錯体(水酸化物および酸化物-水酸化物を含む)、窒素との錯体(窒化物、硝酸塩を含む)、リンとの錯体(リン化物、リン酸塩を含む)、硫黄との錯体(スルフィド、硫酸塩を含む)、およびハロゲン化物との錯体のうちの1種もしくは複数種、またはそれらの組合せを含めた、イオン性錯体に非透過性である。
バインダー組成物
【0230】
一部の実施形態では、ポリマーバインダーは、例えば、
図12に示されている通り、活性電極粒子間の凝集と伝導性炭素粒子への接着の両方、および電極構造と電流コレクタ基材との間の接着を確実にするよう選択される。ポリマーバインダーの比は、通常、全電極固体の0.5~50重量%の間となる。
【0231】
使用可能なポリマーバインダーには、以下に限定されないが、カルボキシメチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースならびにその誘導体、スチレン、スチレンブタジエンゴムおよび他の類似のブタジエンゴム、ポリスルホン、アルギネート(アルギン酸、アルギン酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アルミニウム、アルギン酸亜鉛、アルギン酸マグネシウム、および同様に多価イオン架橋誘導体およびその組合せ物)、アリザリンレッドSなどのアリザリンおよびその誘導体、キノン、ヒドロキノン、キノリン、ヒドロキノリン、ならびにポリビニルアルコールのうちの1つまたは複数が含まれる。これらのモノマー、オリゴマーおよびポリマーおよびコポリマー(coploymer)バインダーは、以下に限定されないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、チタン、スズ、バナジウムおよびタングステンを含む、1つまたは複数のイオンとのイオン性錯体からさらになってもよい。イオン性錯体は、in situまたはex situのイオン交換ステップによりさらに形成されてもよい。in situイオン交換は、浸透圧力、電気泳動力または類似の推進力によるサイクル前、または電池化学の形成サイクルの間のどちらかでの、電解質、アルミニウム源電極およびアルミニウムホスト電極の1つまたは複数に由来するイオンの交換を含む。ex situイオン交換は、スラリー配合プロセスの間の溶液に由来するイオンの交換を含み、それにより、水性スラリーは、イオン交換プロセスを可能にする関連する塩を含有する。イオン交換プロセスの目的は、バインダー、したがって電極構造の機械的ロバスト性の改善を確実にすることである。
【0232】
一部の手法では、バインダーは、薄層フィルムとして伝導性基材上にコーティングされてもよく、厚さは、1nm~10マイクロメートルの間の範囲となる。次に、炭素、スズ、チタン、クロム、ニッケル、金、銀、白金および他の類似の材料などの伝導層が、バインダーフィルムの上にコーティングされ、厚さは、1nm~10マイクロメートルの間の範囲となる。次に、この組成物に、以下に限定されないが、圧縮力、引張力、剪断力、ホットプレス、焼成およびカレンダー加工を含めたプロセスによる加圧が施される。これに続いて、活性カソード材料(酸化マンガン、アルミノシリケート、ポリマー)が、炭素フィルムの上部に直接、コーティングされる。このような構成もまた、例えば、
図13に示されている通り(複数の繰り返し単位(下側)を作製する方法(上側)が示されていることを示している)、繰り返し単位として使用されて、規模拡大性を実現する、電極利用を改善する、およびレート能力を向上することができる。
【0233】
活性カソード材料と下層伝導性基材との間の接着が理想的ではない場合、バインダーの第2の層を使用して、伝導層をコーティングし、次いで、活性カソード材料をコーティングし、最後に、この多層構造に上記の加圧を施してもよい。
【0234】
上述の手法から伝導層の使用をなくし、バインダーの薄層フィルム上に直接、活性カソード材料をコーティングし、次いで、この構成体に上記の加圧を施すことも可能となり得る。
アルギネートバインダー:
【0235】
一部の実施形態では、カソードは、バインダーを含む。一部の実施形態では、カソードは、アルギネートバインダーを含む。アルギネートバインダーは、PVPなどの別のバインダーと一緒にされてもよい。一部の実施形態では、アルギネートが存在する場合(例えば、カソード中)、多価イオンが含まれる。使用可能な多価イオンには、以下に限定されないが、マンガン、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウムおよびアルミニウムのイオンが含まれる。一部の実施形態では、一価イオンが含まれる。例えば、バインダーは、アルギネート、ならびにリチウム、ナトリウムおよびカリウムのうちの1つまたは複数のイオンを含んでもよい。PVP-アルギネートなどのバインダーを含めた、カソードに対するイオン性前処理に使用することができるイオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛のイオンが含まれる。イオン(例えば、多価イオンまたは一価イオン)をバインダーと含ませると、機械的増強および/または電気化学安定性を誘発することができる。
【0236】
他のポリマーバインダーは、一価および/または多価イオンと共に使用されてもよい。一部の例には、以下に限定されないが、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンが含まれる。このようなバインダーが分散される溶媒(例えば、カソード製造の間)は、以下に限定されないが、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルを含むことができる。共溶媒がさらに使用されてもよい。使用可能な共溶媒には、以下に限定されないが、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルが含まれる。
電池-キャパシタハイブリッド
【0237】
電池-キャパシタハイブリッドは、アノード、カソードおよび/または電解質の前述の組成物のうちのいずれかを使用して実施され得る。このようなシステムは、以下に限定されないが、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンナノチューブ、フラーレン、炭素エアロゲル、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、ポリピロールおよびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含めた1つもしくは複数の疑似キャパシタ添加剤、および/または以下に限定されないが、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、パリレンもしくは他の共役ポリマー、ポリスチレンおよびポリプロピレンを含めた誘電性添加剤を含むことができる。疑似キャパシタまたは誘電性材料は、正味の電極重量の0.1重量%~90重量%を構成することができ、薄層フィルム、ナノ構造、マイクロ構造、粒子、またはこのような構造の1つもしくは複数の組合せの形態であることができる。
【0238】
このような電池-キャパシタハイブリッド概念の例は、以下の通りに説明される。
【0239】
アノード構造:アルミニウムホイルは、例えば、
図14のパネル(A)に示されている通り、酸化ジルコニウムの薄層フィルムにより、次いで、アルミニウムのフィルムにより、および最後に酸化アルミニウムのフィルムによりコーティングされている。
【0240】
カソード構造:ステンレス鋼電流コレクタ基材が、アルミニウムの薄層フィルムにより、次いで酸化アルミニウムの薄層フィルムによりコーティングされている。次に、酸化マンガンカソードの薄層フィルムが、例えば、
図14のパネル(B)に示されている通り、ステンレス鋼-アルミニウム-酸化ジルコニウム構造の上に堆積される。
【0241】
放電中のアノード反応(例えば、
図14のパネル(C)に示されている):アルミニウムイオンが、放電中にアノードからカソードまで輸送される場合、酸化ジルコニウムは、誘電体のアルミニウムイオン源として働くアルミニウム層-1を含む誘電性層として働く。アルミニウム層-2は、アノードからカソードへのこれらのイオンの輸送を含めた、電池-反応速度に関するアルミニウムイオン源として働く。酸化アルミニウム層は、保護性酸化物層として働き、腐食、および下層のアルミニウムとの望ましくない副反応を防止する。
【0242】
充電中のカソード反応(例えば、
図14のパネル(D)に示されている):アルミニウムイオンが、充電中に酸化マンガンカソードからアルミニウムアノードまで戻って輸送される場合、酸化ジルコニウム層は、誘電性層として作働き、下層のアルミニウムフィルムは、誘電体のアルミニウムイオン源として働く。
【0243】
誘電動力学により、電池動力学が高いエネルギー密度に寄与すると同時に、非常に高速の充電-放電が可能となる。したがって、このようなシステムは、高出力密度と高エネルギー密度の両方を併せ持つことが可能になる。
【実施例】
【0244】
本開示がより完全に理解され得るために、以下の実施例を説明する。これらの実施例は、例示の目的に過ぎないこと、および例えばいかなる請求項に関しても、決して限定として解釈されるべきではないことを理解すべきである。特に文脈から明白でない限り、実施例のいずれか1つまたは複数からの特徴は、他の実施例のいずれか1つまたは複数からの特徴と、および/または本明細書において開示されているいずれか1つまたは複数の他の特徴と組み合わせることができる。
(実施例1)
水系アルミニウムイオン電池に関する実験データ
【0245】
図15は、研磨済みアルミニウムアノードに対して組み立てた、約20μA/cm
2の一定電流密度でサイクルした水和化ナトリウムを挿入した酸化マンガンカソードの電圧プロファイルを示す図である。電解質組成物は、0.1M Al(NO
3)
3+2M LiNO
3であり、3~3.5の範囲のpHに相当する。酸化マンガンの粒子サイズが小さいほど、その後の電荷貯蔵容量およびレート能力の向上に対応する、一層目立つ電圧プラトーが明白になる。(a)45μm未満、および(b)20~45μmの間の範囲の寸法を有する粒子は、通常、C/4およびそれより遅いレートにおいて(C/nというレートは、n時間での充電または放電を示す)、50~150mAh/gの間の容量、時として、200mAh/gより高い容量を流す。粒子サイズが、(c)<1μmである場合、酸化マンガンカソードは、C/2およびそれより遅いレートでは、150mAh/gを超える容量、多くの場合、200mAh/gより高い容量を流すことができる。
【0246】
ある特定の実施形態では、本電池は、3~5のpH範囲で動作するが、かなり一層広いpH範囲に及ぶことも可能である。例えば、低いpH(0.1~3)およびより高いpH(>3)が、ある特定の実施形態の場合にある利点を有することがある。例えば、酸性電解質は、イオンの移動度およびアルミニウムの拡散速度を増大させる一方、塩基性電解質は、電解質中でのイオンの輸送速度およびイオンの安定性を改善すると考えられる。
【0247】
酸化マンガンは、過マンガン酸塩およびマンガン塩前駆体から合成し、ゲストイオンを導入し、塩基性前駆体および過酸化物前駆体を使用してホスト材料を剥離させる(この場合、酸化マンガンは、δ相である)。ゲストイオン(例えば、ナトリウム、カリウム、アルミニウムおよび/または他のゲストイオン)を湿式化学反応により挿入して、格子間位置を占有し、シート間間隔の増大により証拠となる、構造の剥離をもたらす。
図16のパネル(a)、(b)は、(a)マンガン塩と過マンガン酸ナトリウムとの間の反応により調製された合成したままの酸化マンガン中の塩化ナトリウム残留物の存在を示すx線回折の結果のグラフであり、(b)徹底的な洗浄ステップ後に、酸化マンガンの結晶構造に区別がつくようになり、非常に高度なシート間間隔の明白な証拠があることを示すx線回折の結果のグラフである。
【0248】
図17は、空気中および真空中の熱重量分析(TGA)の結果を示すグラフであり、酸化マンガン構造内部に有意な濃度の水の結晶が存在することが確認される。120℃における真空でのTGAは、7%の重量喪失があることが明らかとなった。さらに、TGAはまた、最大で800℃において不活性雰囲気中で酸素が喪失されることを示している。しかし、空気中では、TGAは、750℃において酸素を瞬間的に得て、次いで、800℃において迅速に水/酸素を喪失することを示している。
(実施例2)
両電極間のアルミニウムイオンの実際の輸送
【0249】
いくつかのコインセルを組み立て、各々は、以下の構成要素を構成する:(1)80重量%の酸化マンガン、10重量%の伝導性炭素および10重量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)-スチレンブタジエンゴム(SBR)バインダー(1:1重量/重量の比で)を含むカソード;(2)アルミニウムアノード;(3)ガラスマイクロファイバーセパレータ;およびグレードIIの脱イオン水に溶解した硝酸アルミニウムおよび硝酸リチウムの塩からなる電解質。各コインセルは、10~50回の充電-放電ステップのサイクルを行い、一様な電気化学平衡を得た。これに続いて、セルの1つの群を8時間、放電させて(酸化マンガンカソードにアルミニウムイオンを挿入)、セルの第2の群は、20時間、放電させて、セルの第3の群は、32時間、放電させて、セルの第4の群は、40時間、放電させた。セルはすべて、その放電時間の終わりに分解し、カソードを脱イオン水により洗浄して、その表面から微量の塩を除去した。走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型分光法(EDS)を使用して、酸化マンガンカソードへのアルミニウムイオンの透過深さを分析した。
【0250】
SEMおよびEDSの断面分析により、カソードにアルミニウムイオンが挿入されたことが明確に確認される。さらに、放電レートの関数として挿入の深さは目視で明白である。
図18のパネル(a)および(b)において示されている通り、放電時間が一層短いと(8時間、20時間など)、アルミニウムイオンがカソードの厚さ断面全体に拡散することができないことが理解可能であり、この場合、表面にアルミニウムイオンが蓄積している。しかし、
図18のパネル(c)および(d)に示されている通り、放電時間が32時間および40時間まで増大して、アルミニウムイオンがカソード内に一層深く、拡散することが可能となると、EDSプロファイルは、カソードのバルクを通じてアルミニウムイオンの段階的な挿入および分布があることを明確に図示している。放電時間の関数としてのカソード内部へのアルミニウムイオンの追跡およびマッピングにより、アルミニウムイオンのカソードへの実際の物理的輸送が最終的に証明される。
(実施例3)
アルミニウム合金アノード
【0251】
ある特定の実施形態では、アノードは、1つまたは複数の非アルミニウム元素を含むアルミニウム合金を含む。97原子%のアルミニウムおよび3原子%のマンガンを含むアルミニウムをベースとする合金のアノードをアノード材料として試験した。電解質は、水溶液中に13重量%の硫酸リチウム、1.6重量%の硫酸アルミニウム、0.2重量%の水酸化マグネシウム、3.1重量%のN-メチルピロリドンおよび0.1重量%のマグネシウムエトキシドからなる。アノードは、酸化マンガンカソードに対して試験し、ガラスマイクロファイバーセパレータを使用して、2本の電極を隔離した。
図19に示されている通り、このセルは、C/20の充電-放電レートにおいて、約50mAh/gの平均容量を示した。
(実施例4)
酸化マンガン構造内のゲストイオン/分子
【0252】
ある特定の実施形態では、カソードは、材料(例えば、酸化マンガン)のシート間に蓄えられた1種または複数種のゲストイオンおよび/または分子を含む。一方法では、カリウムを、化学的に浸出した酸化マンガンリチウムのカソードとのイオン交換プロセスによりゲストイオンとして導入した。最初に、1M HCl溶液を使用して、酸化マンガンリチウムからリチウムを化学的に浸出させた。これに続いて、化学的に浸出させた酸化マンガンリチウムのカソードを数回、洗浄した。最後に、0.1~5MのKOHの溶液をイオン交換プロセスの媒体として使用した。
図20のパネル(a)は、カリウムゲストイオンを含む合成したままの酸化マンガンのSEMおよびEDSによる元素濃度を示している。EDS結果が、以下の表1に要約されている。
【0253】
カリウムゲスト原子を含む酸化マンガンは、コインセル構成体におけるカソードとしてサイクルした。アノードは、電池グレードのアルミニウム金属ホイル(純度は、99.5%またはそれより高い)とし、電解質は、グレードIIの脱イオン水中の硝酸アルミニウムおよび硝酸リチウムからなった。ガラスマイクロファイバーをセパレータとして使用した。カソードは、4.5時間の充電-放電レートにおいて、約40mAh/gの可逆容量を流した(
図20のパネル(b)に示されている電圧プロファイル)。
【表1】
(実施例5)
バインダー組成物
【0254】
一部の実施形態では、カソードは、バインダーを含む。バインダーは、電流コレクタに接触した1つまたは複数の構造(例えば、粒子)を物理的に維持(例えば、接着)することができる。一実施例では、アルギネートとポリビニルプロピレン(PVP)バインダーとの組合せを使用して、酸化マンガンカソードを調製した。PVPバインダーのみを用いて調製したカソードコーティングは、対照実験として働いた。SEM画像は、
図21のパネル(a)に示されている通り、PVPバインダーによりコーティングされているカソードにミクロンスケールの細孔が存在することを示している。他方では、アルギネートがPVPと一緒にされる場合、
図21のパネル(b)に示されている通り、カソード構造は一層、高密度に見える。PVPおよびアルギネートは、それぞれ、伝導性炭素の分散性、および活性粒子と伝導性炭素との間の接着力および凝集力を改善するよう一緒に働くことが見出された。
【0255】
PVPバインダーおよびPVP-アルギネートバインダーを用いて調製した酸化マンガンを使用して組み立てたセルを、アルミニウムアノードに対して試験した。さらに、ポリアクリル酸をベースとする(PAAをベースとする)バインダーを組み込んだカソードであって、類似した高密度コーティング特性を有するカソードも、ベースラインとして試験した(
図21のパネル(c))。
図21のパネル(d)に示されている通り、PAAバインダーを組み込んだカソードは、1.2Vの安定な電圧においてサイクルされた一方、PVP-アルギネートバインダーを用いたカソードは、
図21のパネル(e)に示されている通り、約0.9V~1.1Vの平均動作電位で、段階的な傾きを有する放電電圧プロファイルを示した。
【0256】
この実験の展開として、PVP-アルギネートバインダーによりコーティングしたカソードを、3M硝酸マンガンを含む浴中に浸漬した。マンガンのイオンなどの多価イオンの存在下で、アルギネートは、機械的強度の改善を示すことが見出された。任意の特定の理論に拘泥されることを望むものではないが、機械的強度の改善は、アルギネートの、その構造内および鎖間の接合ネットワーク内でイオン性会合を形成する能力に起因し得る可能性が高い。他の使用可能な多価イオンには、以下に限定されないが、マグネシウムおよびアルミニウムのイオンが含まれる。同様の観察がやはり、リチウム、ナトリウムおよびカリウムのイオンを含むいくつかの一価イオンの場合にも実現された。PVP-アルギネートなどのバインダーを含めた、カソードに対するイオンによる前処理に使用することができるイオンには、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウムおよび亜鉛のイオンが含まれる。
【0257】
さらに、他のポリマーバインダーもまた、一価イオンおよび/または多価イオンと一緒になって、機械的増強および/または電気化学的安定性を誘発することが見出された。一部の例には、以下に限定されないが、二フッ化ポリビニリデン(PVDF)、PTFE、ポリアニリン、エポキシ、カルボキシメチルセルロース、ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコールおよびポリビニルプロピレンが含まれる。このようなバインダーが分散される溶媒は、以下に限定されないが、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびエステルを含むことができる。共溶媒が、さらに使用されてもよい。使用可能な共溶媒には、以下に限定されないが、水、n-メチルピロリドン、ケトン、グリコール、DMSOおよびエステルが含まれる。
(実施例6)
パターン形成されたアノード構造:
【0258】
アノードは、酸化物層(例えば、遷移的酸化アルミニウム層)を含んでもよい。一実施例において、酸化マンガン活材料、伝導性炭素およびCMC-SBRバインダーを含む標準カソードに、パターン形成されているアルミニウムアノード(
図22のパネル(a)、(b)におけるSEM画像)を使用する。アノードがパターン形成されていないアルミニウムアノード(
図22のパネル(c)におけるSEM画像)からなり、カソードが酸化マンガン活材料、伝導性炭素およびCMC-SBRバインダーからなる、対照実験を使用する。
【0259】
セルを10μA/cm
2の定電流密度でサイクルした。パターン形成されているアルミニウムアノードの電圧プロファイルは、サイクル69~77(
図22のパネル(d))、およびサイクル30~34(
図22のパネル(e))に関する、定常充電-放電挙動を示している。一方、パターン形成されていないアルミニウムアノードの電圧プロファイルは、サイクル91~99の間に目立つ電圧ヒステリシスおよびノイズがあることを示している(
図22のパネル(f))。これらのプロファイルは、サイクル範囲全体にわたり一定であり、簡単にするため、特定の範囲を図示している。
【0260】
パターン形成されているアルミニウムアノードは、構造を出入りする効率的かつ一様なイオンの拡散を容易にすることが見出された。任意の特定の理論によって拘泥されることを望むものではないが、パターン形成法および他の類似手法により実現される表面積が大きいと、一層大きな表面積の存在が一因となる、一層厚い固体電解質の界面フィルムがもたらされると一般に考えられる。このことは、ひいては、インピーダンスおよび内部抵抗の増大をもたらし、イオンの拡散速度および容量の総合的な低下をもたらす。しかし、予想外なことに、電気化学環境および精密なセル組成は、提案されている電池技術において、反応速度を促進することが代わりに観察された。
(実施例7)
アノードの二次組成
【0261】
アノードは、1つまたは複数の酸化物の薄層フィルムおよび/またはコーティング(例えば、ナノ粒子および/またはマイクロ粒子による)を含むことができる。一実施例では、アルミニウムアノードに、酸化ジルコニウムの60nmフィルムによりスパッタコーティングした。アルミニウム-酸化ジルコニウムコンポジットアノードは、酸化マンガン(この場合、MnO2)反対の電極およびAg/AgCl参照電極に対して3電極系において試験した。電解質は、グレードIIの脱イオン水に溶解したアルミニウムおよびリチウム塩からなった。
【0262】
サイクリックボルタンメトリーは、
図23に示されている通り、アノードからのアルミニウムの抽出、およびカソードへの挿入に相当する、±1V(対Ag/AgCl)において明確なレドックスピークがあることを示している。
(実施例8)
アノードの二次組成
【0263】
別の試験では、アルミニウムアノードは、エアゾールスプレーコーティング法を使用して、酸化ジルコニウムによりコーティングした。アノード-酸化ジルコニウムコンポジットは、厚さが約70μmと測定された。次に、アノード-酸化ジルコニウムコンポジットをカレンダー加工して、断面の厚さを約40μmに低下させた。セルを酸化マンガンカソードに対して組み立て、異なる電流密度でサイクルした。名目上の電圧を測定すると、20μA/cm
2において1.18V、25μA/cm
2において1.15Vおよび30μA/cm
2において1.16Vと読めた。
図24は、サイクリックボルタンメトリープロファイル(左上)、充電-放電プロファイル(右上)、電圧プロファイル対電流密度(左下)および電圧プロファイル対容量(右下)を含めた、酸化ジルコニウムのフィルムによりコーティングしたアルミニウムアノードの電気化学的性能の概略を示している。
(実施例9)
アノードの二次組成
【0264】
別の試験では、アルミニウムアノードをパリレン-Nの50nmのフィルムによりコーティングした。コーティングは、化学蒸着技法を使用して行い、パリレン-Nの70~100nmフィルムをコーティングし、次いで、熱アニーリングプロセスを行い、厚さを約50nmに低下させた。パリレンをコーティングしたアルミニウムアノードを、単一コインセル構成において、酸化マンガンカソードに対して試験した。
【0265】
パリレンをコーティングしたアルミニウムアノードをC/70の充電-放電レートにおいて最大で190mAh/gで流した。
図25に示されている通り、C/3、C/6およびC/15というより低いレートでは、容量分布は20mAh/g~40mAh/gの間の範囲となった。
(実施例10)
カソード用のパターン形成基材
【0266】
一部の実施形態では、カソードは、高表面積の多孔質炭素上にコーティングされている。一実施例では、酸化マンガンカソード(80重量%)を伝導性炭素(10重量%)およびCMC-SBRバインダー(正味10重量%)と一緒にして、水性スラリーにし、熱分解グラファイト発泡体にディップコーティングした。次に、このようなカソードをガラスマイクロファイバー膜によって隔離したアルミニウムアノードに対して組み立てた。
図26のパネル(a)、(b)に示されている通り、平均作動電位を約1Vに依然として維持しながら、セルをC/2.5およびC/0.5(それぞれ、2.5時間および30分間での放電-放電)でサイクルし、それぞれ、47mAh/gおよび21.5mAh/gで流した。
(実施例11)
結晶構造および相に応じたカソードの性能
【0267】
酸化マンガンカソードの構造の影響を評価するために、以下に限定されないが、ベータ(β)、デルタ(δ)およびガンマ(γ)、ならびにそれらの組合せを含めた、酸化マンガン(例えば、MnO2)のいくつかの相を試験した。通常、10重量%のバインダー(CMC-SBR)および10重量%の伝導性炭素を含む水性スラリー中で特定の相組成を有するカソードを混合した。次に、このスラリーを混合して、安定で一様な分散液にして、アルミニウム、グラファイトホイル、銅、ニッケルまたはステンレス鋼などの電流コレクタ基材上にコーティングした。カソードをアルミニウム金属ホイルのアノードに対して試験し、2本の電極をガラスマイクロファイバー膜によって隔離した。10μA/cm2~30μA/cm2の間の範囲の電流密度でセルを放電した。
【0268】
大部分(例えば、少なくとも70%)がベータ相からなる酸化マンガンカソードは、
図27のパネル(a)に示されている通り、C/6の充電-放電レートにおいて、160~180μAhの間の範囲の可逆容量を流した。
図27のパネル(b)は、大部分(例えば、少なくとも70%)がデルタ(δ)相である酸化マンガンは、C/8の充電-放電レートにおいて、約180μAhの可逆容量を流すことを示している。
図27のパネル(c)は、大部分(例えば、少なくとも70%)がガンマ(γ)相である酸化マンガンは、約C/10の充電-放電レートにおいて、約300μAhの可逆容量を流すことを示している。
他の手法からの実施例特徴
【0269】
本明細書に記載されている水系アルミニウムイオン電池の様々な実施形態のある種の特有の特徴がある-例えば、酸化マンガンカソード。本明細書において説明される通り、カソードの構造的な幾何形状には、例えば、とりわけ、その多孔度、湿潤性、粒子形状(例えば、球体、シート様など)、粒子寸法が含まれる。これらの特徴は、電池の総合的な性能に寄与する。例えば、湿潤性に乏しい電極は、誘電作用をもたらし、それにより、反応機構を著しく改変する恐れがあるので、湿潤性は重要である。ある特定の実施形態では、リシオフォライト構造および/またはバーネサイト構造が、カソードに使用される。
【0270】
様々な実施形態では、酸化マンガン構造は層化され、Na+、K+、Al+3などの1つまたは複数のゲストイオンを含有する。しかし、これらのゲストイオン(または、一部の場合、ゲスト分子)を酸化マンガンだけに挿入して、この酸化マンガン構造の膨張を容易にする(例えば、シート間間隔が、10Åより大きくなる)。ある特定の好ましい実施形態では、剥離の終了時に、ゲストイオン/分子のかなりの大部分が除去され(例えば、浸透作用による)、こうして、除去後にゲストイオンの目視可能な痕跡がなくなる。ある特定の実施形態では、酸化マンガン構造は、いかなる形態の銅イオンもビスマスイオンも取り込んでいない。
【0271】
一部のゲストイオン/分子が酸化マンガン構造に保持されるある特定の実施形態では、これらのゲストイオン/分子は、電気化学反応に能動的に関与しない。代わりに、これらのゲストイオン/分子は、アルミニウムイオン貯蔵容量を増大させるため、酸化マンガン構造を開放状態にする一助となる(例えば、一層大きなシート間間隔は、それに対応して、電荷貯蔵容量を増大させる場合)。ゲストイオンの関与がないことは、ナトリウム、カリウムおよび他のゲストイオンのいずれの有意な反応も排除する実験的に観察された電圧ウィンドウから明白である。他方では、作動ウィンドウは、アルミニウムイオンが関与した場合の既知の範囲内に明らかに収まる(約1.6V)。
【0272】
ある特定の実施形態では、酸化マンガン構造の拡散係数は、非常に高く、例えば、少なくとも1x10-12cm2/秒、例えば、少なくとも1x10-10cm2/秒、例えば、少なくとも1x10-9cm2/秒である。ある特定の実施形態では、酸化マンガン構造の拡散係数は、1.7x10-10cm2/秒~7x10-9cm2/秒の間にある。
【0273】
K
+およびNa
+を含めた、ホストの酸化マンガン構造から除去されなかった様々なゲストイオンを含む酸化マンガンカソードに対して行った実験により、サイクリックボルタンメトリーの間、単一のレドックスピークしかないことが示される(
図28)。さらに、エネルギー分散型x線分析(EDS)により、ゲスト元素は完全に「アルミニウム化された」(酸化マンガンに挿入されたアルミニウム)状態で存在することが確認される(
図29A~29B、表2)。初期の状態のナトリウム-酸化マンガンは、約7.1原子%となるナトリウム元素濃度であることを示しており、本明細書に記載されているナトリウム-酸化マンガンカソードのある特定の実施形態では、ゲストイオンは除去されずに、アルミニウムイオンを収容するという仮説にさらに一致する。
【表2】
【0274】
本明細書に記載されているカソードのある特定の実施形態では、アルミニウムイオンはゲストイオンまたは分子に置き換わらないことをさらに実証するため、部分的に剥離した熱分解グラファイトカソードを用いて試験を実施した。
図30A~30Bにおいて分かる通り、アルミニウムイオンは、首尾よく炭素に挿入し、これと相互作用することができるが、容量は、ナトリウム-酸化マンガンおよびカリウム-酸化マンガンを用いて得られた値よりもかなり低かった(容量が一層低いことは、熱分解グラファイトのシート間間隔がより小さいことに起因し得る)。ゲストイオンの交換により、アルミニウム挿入速度が支配されるなら、熱分解グラファイトカソードはこのような活性を示さない。電解質、pH、アノード-カソード組合せ(したがって、作動電圧ウィンドウ)、ならびにアノードおよびカソードの具体的なタイプの洗濯が、安定な水酸化物、酸化物-水酸化物(など)により誘導されるアルミニウム電荷が、2本の電極間で輸送されることに依存する固有の相互作用機構の確立に寄与し得るとやはり考えられる。水酸化物/酸化物-水酸化物に取り囲まれたアルミニウムイオン(Al(OH)
4
-1など)がカソードに一旦、到達すると、ナトリウムまたはカリウムゲストイオンは、酸化物/水酸化物と相互作用する(例えば、NaOH、KOH、NaOOHなどを形成する)一方、アルミニウムイオンは中和されて、酸化マンガンシート内に蓄えられ、これにより、電解質中にゲストイオンを放出する必要性が回避される可能性がある。
【0275】
様々な実施形態では、電解質中の過剰なアルミニウム塩が回避され(例えば、水1kgあたり375g以下、例えば、水1kgあたり200g以下、水1kgあたり100g以下、水1kgあたり50g以下または水1kgあたり約37.5g以下)、こうして、電解質に由来するアルミニウム塩は、電気化学反応に能動的に関与しない。むしろ、アルミニウムアノードからのアルミニウムイオンに依存し、電解質塩には依存しない。
【0276】
様々な実施形態では、例えば、アルミニウムが活性電極材料である場合(例えば、Al+3源)、アルミニウムアノードが利用される。ある特定の実施形態では、アルミニウムアノードを陽極酸化処理する。ある特定の実施形態では、例えば、酸化物層および/または不動態層を含めた、アルミニウムアノード上にバリア層が存在する。ある特定の実施形態では、グラフェン(または、一般に炭素)の不動態層を使用する。このバリア層は、電気化学環境では、アルミニウムイオンの拡散および/またはアルミニウムの安定化などの性能に影響を及ぼし得る。ある特定の実施形態では、アルミニウムアノードは、酸性電解質を有する電池に使用される。ある特定の実施形態では、アノードは、高度に研磨したアルミニウムホイルを含み、例えば、この場合、表面の欠損および不規則性がないことが、一様な反応を促進し、局所的な電荷の集中を回避する。
【0277】
ある特定の実施形態では、電解質はハロゲンイオンを含まない。このように、ハロゲンの腐食性質を回避することができ、水酸化物は、電荷キャリアとしてハロゲン化物イオンの代わりに使用することができる。
【0278】
ある特定の実施形態では、カソードは、二峰性分布の粒子(例えば、酸化マンガン粒子)を有する。例えば、カソードは、約20マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する第1の粒子の部分、および約0.5マイクロメートル(±20%)の粒子サイズを有する第2の粒子の部分を含有することができ、前記第1の部分および第2の部分は、カソードの粒子の少なくとも80%を構成する(例えば、
図31に示されている通り)。
【0279】
本開示のある特定の実施形態が、上に記載されている。しかし、本開示は、そのような実施形態に限定されず、むしろ、その意図は、本開示に明示的に記載されているものに対する追加および修正が、本開示の範囲内にやはり含まれるということを明確に留意されたい。さらに、本開示に記載されている様々な実施形態の特徴は、互いに排除するものではないこと、および様々な組合せおよび変形が、表現されていない場合でさえも、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、このような組合せおよび変形が存在し得ることを理解すべきである。水系アルミニウムイオン電池、電池-キャパシタハイブリッド、カソード組成物、アノード組成物、バインダー組成物、ならびにそれらの製造方法および使用方法のある特定の実施を説明してきたので、本開示の概念を組み込んだ他の実施を使用することができることは当業者にこれから明白になろう。したがって、本開示は、ある特定の実施に限定されるべきではなく、むしろ、以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲によってしか限定されるべきではない。
【国際調査報告】