IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パルフィンガー アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-26
(54)【発明の名称】クレーン制御装置を備えたクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/42 20060101AFI20220419BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20220419BHJP
【FI】
B66C23/42 A
B25J9/06 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557412
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(85)【翻訳文提出日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 AT2020060127
(87)【国際公開番号】W WO2020191421
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】GM50057/2019
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518129329
【氏名又は名称】パルフィンガー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】PALFINGER AG
【住所又は居所原語表記】Lamprechtshausener Bundesstrasse 8, 5101 Bergheim bei Salzburg, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ダイマー
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド フィアリンガー
【テーマコード(参考)】
3C707
3F205
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707JU02
3C707WA16
3F205AA06
3F205CB02
(57)【要約】
複数のアームを有するアームシステムを備えたクレーン(1)、特に積卸しクレーンであって、クレーン(1)は、座標制御運転モードにおいてアームシステムの座標制御を実施するように設定された制御装置(6)を有しており、制御装置(6)はユーザインタフェースを有しており、ユーザインタフェースは、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能を有しており、該機能により、座標制御運転モードにおいてアームシステムの自由度(α,β,φ,L)のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアームを有するアームシステムを備えたクレーン(1)、特に積卸しクレーンであって、前記アームシステムは少なくとも:
構造的に設定されたクレーンコラム旋回範囲(φ1~φ2)にわたり旋回可能に支持されておりかつその旋回可能な支持に基づき1自由度(φ)を有する、回転軸線を中心として回転可能なクレーンコラム(2)と、
該クレーンコラム(2)に、構造的に設定された主アーム旋回範囲(α1~α2)にわたり旋回可能に支持されておりかつその旋回可能な支持に基づき1自由度(α)を有する主アーム(3)と、
前記主アーム(3)に、構造的に設定された屈曲アーム旋回範囲(β1~β2)にわたり旋回可能に支持されておりかつその旋回可能な支持に基づき1自由度(β)を有する屈曲アーム(4)と、
前記屈曲アーム(4)に、構造的に設定された摺動範囲(L1~L2)にわたり摺動可能に支持されておりかつその摺動可能な支持に基づき1自由度(L)を有する少なくとも1つの摺動アーム(5)と、
を有しており、
当該クレーン(1)は、座標制御運転モードにおいて前記アームシステムの座標制御を実施するように設定されたクレーン制御装置(6)を有している、クレーン(1)において、
前記クレーン制御装置(6)は、ユーザインタフェースを有しており、該ユーザインタフェースは、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能を有しており、該機能により、前記座標制御運転モードにおいて前記アームシステムの前記自由度(α,β,φ,L)のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されていることを特徴とする、クレーン(1)。
【請求項2】
前記アームシステムは、追加的に第2の屈曲アーム(7)を有しており、該第2の屈曲アーム(7)は前記摺動アーム(5)に、構造的に設定された第2の屈曲アーム旋回範囲(γ1~γ2)にわたり旋回可能に支持されておりかつその旋回可能な支持に基づき1自由度(γ)を有しており、前記第2の屈曲アーム(7)は、好適には少なくとも1つの第2の摺動アーム(8)を有しており、該第2の摺動アーム(8)は前記第2の屈曲アーム(7)に、構造的に設定された第2の摺動アーム摺動範囲(J1~J2)にわたり摺動可能に支持されておりかつその摺動可能な支持に基づき1自由度(J)を有しており、ユーザにより選択可能な前記少なくとも1つの機能により、前記アームシステムの前記自由度(α,β,φ,γ,L,J)のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている、請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
前記アームシステムは、追加的に少なくとも1つの主アーム用摺動アーム(18)を有しており、該主アーム用摺動アーム(18)は前記主アーム(3)に、構造的に設定された摺動範囲(H1~H2)にわたり摺動可能に支持されておりかつその摺動可能な支持に基づき1自由度(H)を有しており、ユーザにより選択可能な前記少なくとも1つの機能により、前記アームシステムの前記自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている、請求項1または2記載のクレーン。
【請求項4】
前記アームシステムに、作業器具(9)および/またはアーム延長部(10)、好適には静的な、場合により設定可能な角度(θ)で配置可能なアーム延長部(10)の形態の、少なくとも1つの補助装置(9,10)が配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項5】
前記ユーザインタフェースを介して、情報、好適には機能範囲および/または寸法指示および/または角度位置、前記少なくとも1つの補助装置(9,10)に関する情報を前記クレーン制御装置(6)に伝達することができ、前記情報は、前記クレーン制御装置(6)のメモリ(11)に記憶されたデータバンクから選出可能でありかつ/または前記ユーザインタフェースを介して、好適には設定マスク(13)を介して入力可能である、請求項4記載のクレーン。
【請求項6】
前記クレーン制御装置(6)は、クレーン先端部(14)または前記アームシステムの設定されたまたは設定可能な点または前記アームシステムにより支持された、設定されたまたは設定可能な点の座標制御を実施するように形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項7】
ユーザにより選択可能な前記少なくとも1つの機能により、前記アームシステムの少なくとも1の自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)が制限可能であるかまたは制限されており、これにより、前記アームシステムの過剰規定を解除するまたは減じることができる、請求項1から6までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項8】
回転可能な前記クレーンコラム(2)の前記自由度(φ)は、前記クレーンコラム(2)の旋回性を維持するために、制限可能なまたは制限される前記自由度(α,β,γ,L,J,H)の量から除外されている、請求項7記載のクレーン。
【請求項9】
ユーザにより選択可能な前記少なくとも1つの機能により、前記アームシステムの1の自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)が制限可能であるかまたは制限されている、または前記アームシステムの全ての自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)が2の自由度にまで制限可能であるかまたは制限されている、請求項7または8記載のクレーン。
【請求項10】
前記クレーン制御装置(6)は前記座標制御運転モードにおいて、前記アームシステムの前記座標制御を実施するために、前記アームシステムの前記アーム(2,3,4,5,7,8,18)の部分量の形態のアーム選択を利用するように設定されており、前記クレーン制御装置(6)は少なくとも1つの運転プロファイルを有しており、該運転プロファイルにおいては、少なくとも2つのアーム選択が設定されたまたは設定可能な順序で、優先順位の高い方から優先順位の低い方に記憶されているかまたは継続的に検出されるようになっており、前記クレーン制御装置(6)は、前記少なくとも1つの運転プロファイルに記憶された前記アーム選択を、その優先順位に相応して前記アームシステムの前記座標制御の実施に利用して制御するように形成されており、ユーザにより選択可能な前記少なくとも1つの機能により、前記少なくとも1つの運転プロファイルを選出することができる、請求項7から9までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項11】
前記クレーン制御装置(6)は、前記アームシステムの設定可能なかつ/または設定されたかつ/または有力な位置に応じて前記座標制御用のアーム選択を利用するように形成されている、請求項10記載のクレーン制御装置。
【請求項12】
前記クレーン制御装置(6)は、少なくとも2つの前記アーム選択から1つのアーム選択を利用して制御することが、追加的に、その時々のアーム選択による前記座標制御の実行性に応じて行われるように形成されている、請求項10または11記載のクレーン。
【請求項13】
前記少なくとも1の自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)の制限は、該自由度が、
設定されたまたは設定可能な値(α0,β0,φ0,γ0,L0,J0,H0)に規定可能であるまたは規定されていることおよび/または
設定可能なまたは設定された部分範囲(α1<α3~α4<α2;β1<β3~β4<β2;φ1<φ3~φ4<φ2;γ1<γ3~γ4<γ2;L1<L3~L4<L2;J1<J3~J4<J2;H1<H3~H4<H2)に制限可能であるまたは制限されていることおよび/または
その変化速度
【数1】
に関して制限可能であるまたは制限されていること
により行われる、請求項1から12までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項14】
前記少なくとも1の自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)を制限することにより、前記屈曲アーム(4)の前記自由度(β)が、設定可能なまたは設定された部分範囲(β1<β3~β4<β2)に、好適には設定可能なまたは設定された四分区間に制限可能であるかまたは制限されており、これにより、前記屈曲アーム(4)は前記座標制御運転モードにおいて、前記主アーム(3)の仮想の延長部の上側の過剰伸長された旋回位置に位置決め可能であるかまたは位置決めされている、請求項13記載のクレーン。
【請求項15】
前記設定可能なまたは設定された部分範囲(α1<α3~α4<α2;β1<β3~β4<β2;φ1<φ3~φ4<φ2;γ1<γ3~γ4<γ2;L1<L3~L4<L2;J1<J3~J4<J2;H1<H3~H4<H2)は2°以下、好適には0.5°以下である、もしくは10cm以下、好適には2.5cm以下であり、かつ/または前記変化速度
【数2】
は0.2°/秒以下、好適には0.05°/秒以下である、もしくは2cm/秒以下、好適には0.5cm/秒以下である、請求項13または14記載のクレーン。
【請求項16】
前記クレーン制御装置(6)は、好適には携帯可能な制御盤(15)を有しており、該制御盤(15)には前記ユーザインタフェースが形成されている、請求項1から15までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項17】
前記ユーザインタフェースはメニューガイド式でありかつ/または前記クレーン制御装置(6)の少なくとも1つの操作部材(17)を含む、請求項1から16までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項18】
前記ユーザインタフェースに、前記クレーン制御装置(6)の少なくとも1つの操作部材(17)が含まれており、選択可能な前記機能の選出は、ユーザにより前記少なくとも1つの操作部材(17)が操作されることにより行われる、請求項1から17までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項19】
前記クレーン制御装置(6)は、別の運転モードでは、前記アームシステムの自由な制御を実施するように設定されており、前記別の運転モードでは、前記少なくとも1つの操作部材(17)により前記アームシステムの自由な制御が行われ、操作部材(17)はそれぞれ、前記アームシステムのアームをそれぞれ所定の自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)に沿って動作させるための制御命令を入力するために設けられており、前記座標制御運転モード中は、ユーザにより前記少なくとも1つの操作部材(17)が操作されることにより、前記別の運転モードにおいて前記操作部材(17)に割り当てられていた前記アームシステムの前記自由度(α,β,φ,γ,L,J,H)が制限可能であるまたは制限される、請求項18記載のクレーン。
【請求項20】
前記クレーン制御装置(6)は、別の運転モードでは、ユーザにより入力された制御命令に基づき前記アームシステムの自由な制御を実施するように設定されており、前記座標制御運転モードから出発して、ユーザにより、前記クレーン制御装置(6)の設定可能なまたは設定された操作部材(17)、好適には前記クレーン制御装置(6)のデッドマンスイッチが操作され続ける間は、前記別の運転モードへの切り替えが行われる、請求項1から19までのいずれか1項記載のクレーン。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項記載のクレーン(1)を備えた車両(19)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のクレーンおよびこのようなクレーンを備えた車両に関する。
【0002】
上位概念に記載の、運転モードにおいてアームシステムの座標制御を実施するように設定されたクレーン制御装置を備えたクレーンは、従来技術において周知である。
【0003】
アームシステムの個々のアクチュエータが、ユーザもしくはオペレータから出された制御命令に基づきユーザもしくはオペレータにより個別に直接に制御される従来のクレーン操作の場合には、ユーザにより制御される個々の調整動作からアームシステムのクレーン先端部の動作が生じる。よって、例えば理想的な鉛直方向軌道に沿ったアームシステムのクレーン先端部の動作は、複雑な、ユーザによる個々の制御命令の発出を必要とする。
【0004】
これに対してアームシステムの座標制御の場合には、アームシステムの個々のアクチュエータがクレーン制御装置により制御され、これによりユーザは、個々のアクチュエータ自体を制御する代わりに、アームシステムのクレーン先端部の動作を制御することになる。座標制御の周知の実施において、クレーンは、実質的に2つだけの操作部材(例えばジョイスティック)、すなわちクレーンコラム旋回用の操作部材と、クレーン先端部の水平方向動作および鉛直方向動作実施用の操作部材とだけを用いてユーザにより制御される。
【0005】
例えばクレーンコラムと、クレーンコラムに旋回可能に配置された主アーム(リフティングアームとも呼ばれる)と、主アームに旋回可能に配置され、内部に摺動アームを摺動可能に支持する屈曲アームとを含んでいてよい、少なからぬアームシステムの高い複雑性に基づき、アームシステムは、空間内でクレーン先端部を位置決めしかつ方向付けるために少なくとも必要とされるよりも多くの自由度を有している場合がある。例えば、上位概念に記載のクレーンのクレーンコラムは、構造上設定されたクレーンコラム旋回範囲にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき1の自由度を有している。主アームはクレーンコラムに、構造上設定された主アーム旋回範囲にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき1の自由度を有している。屈曲アームは主アームに、構造上設定された屈曲アーム旋回範囲にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき1の自由度を有している。少なくとも1つの摺動アームは屈曲アーム内に、構造上設定された摺動範囲にわたり摺動可能に支持されており、その摺動可能な支持に基づき1の自由度を有している。したがって、上位概念に記載のクレーンのアームシステムは4の自由度を有している。従来技術においてこのようなアームシステムは、例えば冗長または過剰規定マニピュレータとして知られている。
【0006】
これにより、座標制御時にクレーン先端部が追従すべき軌道の如何なる設定においても、無限に多数のジョイント経路-つまりアームシステムのジョイントが追従すべき軌道-が可能であり得る。過剰規定による過剰な可動性は、例えばアームシステムの動作の流れを最適化するためまたは障害物を回避するために利用されることが多い。
【0007】
前記制御では一般に、クレーン先端部の所望の軌道の設定に基づき、つまりユーザによる相応する制御命令の発出に基づき(例えば直交座標におけるクレーン先端部の動作)、クレーン制御装置のプロセッサまたは演算ユニットにより、いわゆる逆変換または逆運動学が実施され、逆変換または逆運動学に基づき、所望の軌道に適した、アームシステムのアクチュエータを制御する制御命令が出される(例えばジョイントの自由度に沿ったアームシステムの動作)。過剰規定されたアームシステムに関するこのような逆変換の明確な解答を得るためには、最適化基準(例えば重み付け行列を有するいわゆるコスト関数等)を含めて、場合により近似を用いて、アームシステムの制御命令を生成する逆変換を行う必要があり、このことは高度な計算手間に結び付く。このようにして行われるアームシステムの制御は、オペレータがすぐには予測不能なクレーンのアームシステムの動作を生ぜしめる恐れがある。
【0008】
本発明の課題は、運転モードにおいてアームシステムの座標制御を実施するように設定されたクレーン制御装置を備えたクレーン、ならびにこのようなクレーンを備え、予測されない動作を回避するためにオペレータがアームシステムの動作に影響を及ぼすことができると共に、逆変換の計算の複雑さが減じられた車両を提供することにある。
【0009】
この課題は、請求項1記載の特徴を有するクレーンおよびこのようなクレーンを備えた車両により解決される。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項において規定されている。
【0010】
本発明によるクレーンでは、クレーン制御装置がユーザインタフェースを有している、ということが想定されており、この場合、ユーザインタフェースは、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能を有しており、この機能により、座標制御運転モードにおいて複数の自由度のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている。
【0011】
アームシステムの自由度のうちの少なくとも1つを制限することにより、座標制御運転モードにおいてアームシステムの予測不能な動作を防ぐことができると共に、逆変換の計算の複雑さを大幅に減じることができる。
【0012】
アームシステムの動作は、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により自由度のうちの少なくとも1つを制限することで、ユーザにとってより良好に予測可能であり得る。つまり例えば、ユーザは相応する機能を選出することにより、ユーザが座標制御運転モードにおいてアームシステムの動作に関与させたくないアームシステムの動作の自由度を、的確に制限および/または遮断することができる。
【0013】
ユーザがアームシステムの自由度のうちの少なくとも1つを制限するために少なくとも1つの機能を選出することができるということにより、アームシステムの動作が、計画された揚程に的確に適合され得る。このようにしてユーザにクレーンとの相互作用手段を与えることができ、これにより、ユーザはクレーンの作業形式に影響を及ぼすことができる。
【0014】
これにより本発明の1つの構成では、アームシステムの、座標制御に関与するアームを選出する手段をユーザに与えることができる。本発明のこの構成の改良ではさらに、アームシステムの、座標制御に関与するアームの異なる組合せを優遇または優先する手段をユーザに与えることもできる。
【0015】
ユーザインタフェースが設けられていることにより、少なくとも1つの機能を選出することが、ユーザにとって容易に可能になり得る。
【0016】
1つの好適な実施例では、アームシステムは、追加的に第2の屈曲アームを有しており、第2の屈曲アームは、構造的に設定された第2の屈曲アーム旋回範囲にわたり旋回可能に摺動アームに支持されておりかつその旋回可能な支持に基づき1自由度を有しており、第2の屈曲アームは、好適には少なくとも1つの第2の摺動アームを有しており、第2の摺動アームは、構造的に設定された第2の摺動アーム摺動範囲にわたり摺動可能に第2の屈曲アームに支持されておりかつその摺動可能な支持に基づき1自由度を有している、ということが想定されていてよい。第2の屈曲アームは、クレーン先端部の可能な位置決めスペースを拡張し、いわゆる「フライジブ」と呼ばれることも多い。
【0017】
好適には、アームシステムは、追加的に少なくとも1つの主アーム用摺動アームを有しており、主アーム用摺動アームは、構造的に設定された摺動範囲にわたり摺動可能に主アームに支持されておりかつその摺動可能な支持に基づき1自由度を有している、ということが想定されていてよい。少なくとも1つの主アーム用摺動アームにより、主アームは伸縮可能に形成され得る。
【0018】
1つの好適な実施形態では、アームシステムに、作業器具および/またはアーム延長部、好適には静的な、場合により設定可能な角度で配置可能なアーム延長部の形態の、少なくとも1つの補助装置が配置されている、ということが想定されていてよい。
【0019】
座標制御に関して、補助装置または取付け器具の幾何学形状データを考慮することは、基本的に問題ない。このためには、アームシステムに取り付けられた補助装置に関する情報(例えば機能範囲、寸法指示、角度位置に関する情報)を座標制御装置に供給するだけで済み、これにより、これらの情報を計算に入れることができる。
【0020】
したがって、ユーザインタフェースを介して、情報、好適には機能範囲および/または寸法指示および/または角度位置、少なくとも1つの補助装置に関する情報をクレーン制御装置に伝達することができる、ということが想定されていてよく、この場合、情報は、クレーン制御装置のメモリに記憶されたデータバンクから選出可能でありかつ/またはユーザインタフェースを介して、好適には設定マスクを介して入力可能である。つまり例えば、クレーン制御装置に既に記憶された、補助装置に関する情報を、メニューを介して選出することができるか、または設定マスクを介してユーザが情報を入力することができる。これにより、クレーンの準備状態を正しく設定することができると共に、座標制御運転モードにおいて補助装置の先端部の座標制御が実施されるということを可能にすることができる。クレーンの準備状態を保証するためには、安全照会が想定されていてよい。つまり、ユーザインタフェースの相応する機能を選出することにより、ユーザインタフェースを介して、ユーザがクレーンの準備状態を確認する必要がある、ということが想定されていてよい。
【0021】
好適には、クレーン制御装置は、クレーン先端部またはアームシステムの設定されたまたは設定可能な点またはアームシステムにより支持された、設定されたまたは設定可能な点の座標制御を実施するように形成されている、ということが想定されていてよい。座標制御運転モードでは大抵、クレーン先端部の座標制御が実施される。しかしまた、座標制御を行うためには、クレーン先端部の代わりにアームシステムの任意の別の点またはアームシステムにより支持された点も利用され得る。例えば、アームシステムにはケーブルウィンチが配置されていることがあり、座標制御は、アームシステムに配置されたケーブルウィンチの取付け点に対してまたはケーブルウィンチのケーブル終端部に設けられた荷物フックに対して行われてよい。これにより、ケーブルウィンチ運転では、座標制御は最早クレーン先端部自体に関してではなく、直接、ケーブル終端部の荷位置を制御する、ということが想定されていてよい。クレーン先端部の座標制御から、アームシステムの設定されたまたは設定可能な点あるいはアームシステムにより支持された、設定されたまたは設定可能な点の座標制御への変更は、クレーン制御装置により検出され得ると共にオペレータに提案され得、オペレータはこの変更を確認することができるまたは確認せねばならない。ユーザインタフェースの相応する機能を選出することにより、この変更をオペレータが実行開始させることができる、ということも想定されていてよい。
【0022】
上位概念に記載の、積卸しクレーンであってよいクレーンの運動学は、アームシステムの既存の自由度に基づく座標制御に関して過剰規定されているため、逆変換の明確な解答を得るためには、この過剰規定を解除するまたは減じるように制限および/または設定を行う必要がある。この場合に適した制限は、アームシステムの自由度の制限である。
【0023】
したがって1つの特に好適な実施形態では、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により、アームシステムの少なくとも1の自由度が制限可能であるかまたは制限されており、これにより、アームシステムの過剰規定を解除するまたは減じることができる、ということが想定されていてよい。アームシステムの過剰規定もしくは冗長を解除することにより、アームシステムのアクチュエータを制御する、所望の軌道に適した制御命令を得る逆変換の計算の複雑さを大幅に減じることができる。
【0024】
この場合、回転可能なクレーンコラムの自由度は、クレーンコラムの旋回性を維持するために、制限可能なまたは制限される自由度の量から除外されている、ということが想定されていてよい。このことは特に、クレーンがユーザにより2つの操作部材(例えばジョイスティック)でもって制御される座標制御の構成において有意であり、この場合、2つの操作部材のうちの一方はクレーンコラムの旋回に用いられ、他方の操作部材はクレーン先端部の水平方向動作および鉛直方向動作の実施に用いられる。
【0025】
クレーンコラムの旋回性の維持は、例えばアームシステムの動作のこの自由度が非冗長的である場合に望ましいことがある。
【0026】
クレーンコラムの旋回性を維持するために回転可能なクレーンコラムの自由度が制限可能なまたは制限された自由度の量から除外されている、ということは、特に旋回可能なクレーンコラムの回転軸線が鉛直線からはずれているクレーンの支持状態において有利であってよい。
【0027】
好適には、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により、アームシステムの1の自由度が制限可能であるかまたは制限されている、またはアームシステムの全ての自由度が2の自由度にまで制限可能であるかまたは制限されている、ということが想定されていてよい。主アーム、屈曲アームおよび摺動アームを制御することにより座標制御を行うことができるアームシステムの座標制御の場合、アームシステムの過剰規定を解除または減じるためには、1の自由度を制限すれば十分である。それというのも、1の自由度を制限した後はちょうど2の自由度が残されており、これにより、アームシステムの水平方向動作と鉛直方向動作とを行うことができるからである。アームシステムが追加的なアームを有している場合には(例えば第2の屈曲アーム)、アームシステムの過剰規定を解除するまたは減じるために、アームシステムの全ての自由度を2の自由度にまで制限すれば十分である。それというのも、自由度をこのように制限した後はちょうど2の自由度が残されており、これにより、アームシステムの水平方向動作と鉛直方向動作とを行うことができるからである。換言すると、これによりアームシステムの座標制御動作が2つのアームもしくはクレーン区分または自由度のみによって実施されることになり、これにより、これらの動作は一義的に決定されていると共に、ユーザにとって、より容易に再現可能である。さらに、望ましくないアームの1の自由度または複数の自由度を制限することにより、アームシステムの予測不能な動作を防ぐことができる。
【0028】
1つの特に好適な構成では、クレーン制御装置は座標制御運転モードにおいて、アームシステムの座標制御を実施するために、アームシステムのアームの部分量の形態のアーム選択を利用するように設定されている、ということが想定されていてよく、この場合、クレーン制御装置は少なくとも1つの運転プロファイルを有しており、運転プロファイルにおいては、少なくとも2つのアーム選択が設定されたまたは設定可能な順序で、優先順位の高い方から優先順位の低い方に記憶されているかまたは継続的に検出され、クレーン制御装置は、少なくとも1つの運転プロファイルに記憶されたアーム選択を、その優先順位に相応してアームシステムの座標制御の実施に利用して制御するように形成されており、この場合、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により、少なくとも1つの運転プロファイルを選出することができる。継続的な検出は、運転中、アームシステムの目下の位置あるいは実施されたまたは実施しようとするリフティング動作のためのアーム選択の適性に関して行われてよい。
【0029】
好適には、少なくとも2つのアーム選択はそれぞれ、アームシステムの2つのアームから成る、ということが想定されていてよい。
【0030】
複数の運転プロファイルのうちの1つは、例えばいわゆる標準優先順位であってよく、標準優先順位は常に、他の運転プロファイルが特別にまたは意図的に選出されない場合に使用される。以下の表1には、主アームと屈曲アームと摺動アームとに加えて第2の屈曲アームと第2の摺動アームとを有するアームシステムを備えたクレーンに関するこのような標準優先順位の一例が示されている。この表に示す運転プロファイルには、優先順位の異なる10のアーム選択が含まれる。表において、番号1の優先順位は最も高い優先順位であり、番号10の優先順位は最も低い優先順位である。
【0031】
以下の表においてアームシステムのアームは、次のように略されている。すなわち、HAは主アームに相当し、KAは屈曲アームに相当し、SAは(屈曲アームの)摺動アームに相当し、JKAは第2の屈曲アームに相当し、JSAは(第2の屈曲アームの)第2の摺動アームに相当する。
【0032】
【表1】
【0033】
1つの好適な実施形態では、クレーン制御装置は、アームシステムの設定可能なかつ/または設定されたかつ/または有力な位置に応じて座標制御用のアーム選択を利用するように形成されている、ということが想定されていてよい。
【0034】
好適には、クレーン制御装置は、少なくとも2つのアーム選択から1つのアーム選択を利用して制御することが、追加的に、その時々のアーム選択による座標制御の実行性に応じて行われるように形成されている、ということが想定されていてよい。
【0035】
つまり例えば、表1に例示した標準優先順位を使用する場合、アームシステムの位置と座標制御の実行性とに応じて、まず優先順位1のアーム選択(屈曲アームと摺動アーム)が座標制御に利用され得る。ユーザにより所望された動作がこのアーム選択では不可能な場合には、次に低い優先順位、つまり優先順位2のアーム選択(主アームと摺動アーム)が座標制御に利用されることになる。これが優先順位に沿って、ユーザにより所望された動作を実施可能なアーム選択が見つかるまで続く。
【0036】
既存のアームもしくはクレーン選択に関連して複数の異なる運転プロファイルが記憶されている、ということが想定されていてもよい。つまり、主アーム、屈曲アーム、摺動アーム、第2の屈曲アームおよび第2の摺動アームを含むアームシステムを備えたクレーンの場合には、例えばアーム選択に主アームおよび/または屈曲アームおよび/または摺動アームのみが含まれる第1の運転プロファイルが記憶されていてよいと共に、アーム選択が既存の全てのアームの部分量である第2の運転プロファイルが記憶されていてよい。
【0037】
以下に示す表2には第1の運転プロファイルが例示されており、以下に示す表3には第2の運転プロファイルが例示されている。
【0038】
表2に示された第1の運転プロファイルには、異なる優先順位の3つのアーム選択が含まれる。この表では、番号1の優先順位が最も高い優先順位であり、番号3の優先順位が最も低い優先順位である。表3に示された第2の運転プロファイルには、異なる優先順位の10のアーム選択が含まれる。この表では、番号1の優先順位が最も高い優先順位であり、番号10の優先順位が最も低い優先順位である。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
以下に、表2に示した第1の運転プロファイルに基づき、この運転プロファイルの可能な適用を例示的に説明する。ユーザにより所望されるアームシステムの動作が最も高い優先順位の、つまり優先順位1のアーム選択(主アームと屈曲アーム)でもって可能である限りは常に、このアーム選択がアームシステムの座標制御の実施に利用される。アーム選択のアームのうちの1つが最終位置に到達するかまたはその他の方法でロックされると、次に低い優先順位のアーム選択が適用される。アームシステムの動作中に優先順位1のアーム選択を再び適用可能にしようとすると(すなわちこのアーム選択でもってユーザにより所望される動作が再び可能になる)、それにもかかわらず目下適用されているアーム選択でもって引き続き動作するようになっており、これにより、座標制御の実施に利用されるアーム選択が常時切り替わることが回避される。(レバーのゼロ位置の後で)動作が再開された場合または最終位置またはロックに基づきアーム選択が再び切り替えられた場合に初めて、優先順位1のアーム選択が再び考慮される。よって、表2に示したこの第1の運転プロファイルの適用時には、例えば以下の流れが生じ得る:すなわち
1.優先順位1のアーム選択(主アームと屈曲アーム)でもって始動する。それというのも、運転プロファイルの全てのアーム選択が可能であり、このアーム選択が最も高い優先順位を有しているからである。
2.主アームが最終位置に到達する。
3.次に可能な優先順位、例えば優先順位2のアーム選択(屈曲アームと摺動アーム)に切り替えられる。
4.優先順位1のアーム選択(主アームと屈曲アーム)が再び適用可能になり、優先順位2のアーム選択(屈曲アームと摺動アーム)は作動し続ける。
5.摺動アームが最終位置に到達する。
6.可能な限り、停止しない場合には優先順位1のアーム選択(主アームと屈曲アーム)に切り替えられる。
【0042】
1つの運転プロファイルの少なくとも2つのアーム選択の順序は変更可能である、ということが想定されていてよい。特に、この順序は継続的に検出され得る。
【0043】
以下に示す表4には、別の運転プロファイルが例示されている。この運転プロファイルには、異なる優先順位の3つのアーム選択が含まれる。この表では、番号1の優先順位が最も高い優先順位であり、番号3の優先順位が最も低い優先順位である。
【0044】
【表4】
【0045】
表4に示した運転プロファイルの適用に対して補足的に、以下に説明する例では、例えば主アームの目標角度を規定する、ユーザインタフェースの相応する機能が選出されたことにより、主アームの旋回動作の自由度に関して20°の目標角度が規定された。
【0046】
クレーンは、表4に示した運転プロファイルのアーム選択を利用して座標制御されて動かされ、アームシステムの動作中に、主アームはその目標角度から離れ、50°の角度位置に位置する。次いで、動作の最終位置または再開に基づき、アーム選択が切り替えられる。次いでクレーン制御装置により、目下のユーザ設定でもって主アームの目標角度に再び接近可能か否かということについて、主アームを含む2つのアーム選択(つまり優先順位2のアーム選択と優先順位3のアーム選択)が評価される。この評価に基づき、主アームを最も速く再びその目標角度位置に移動させるアーム選択が、一時的に第1位に設定される(もしくは番号1の優先順位を得る)。主アームの目標角度に到達すると、一時的に第1位に設定されたアーム選択は再び、表4に示したその元の順位に設定される(もしくは再びその元の優先順位を得る)。
【0047】
1つの好適な実施形態では、少なくとも1の自由度の制限は、この自由度が、設定されたまたは設定可能な値に規定可能であるまたは規定されていることおよび/または設定可能なまたは設定された部分範囲に制限可能であるまたは制限されていることおよび/またはその変化速度に関して制限可能であるまたは制限されていることにより行われる、ということが想定されていてよい。
【0048】
したがって、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により、アームシステムの少なくとも1つのアームをロックすることができる、ということが想定されていてよい。換言すると、これによりアームシステムの少なくとも1つのアームが一時的にロックされ得、その結果、この少なくとも1つのロックされたアームは最早アームシステムの座標制御された動作に関与しない代わりにそのロック位置に留まる。ただし、少なくとも1つのロックされたアームが最早アームシステムの座標制御された動作に関与しないということは、このアームが例えば位置固定されて空間内に留まることを意味するのではなく、むしろ、少なくとも1つのロックされたアームの自由度は最早アームシステムの動作には利用されない、ということを意味する。
【0049】
クレーンに関しては、ユーザインタフェースに、クレーン制御装置の少なくとも1つの操作部材(例えば回転つまみ、リニアレバーまたは多軸ジョイスティックの軸)が含まれており、選択可能な機能の選出は、ユーザにより少なくとも1つの操作部材が操作されることにより行われる、ということが想定されていてよい。
【0050】
基本的に、クレーン制御装置は別の運転モードでは、アームシステムの自由な制御を実施するように設定されている、ということが想定されていてよい。このことは、アームシステムの個々のアクチュエータがユーザにより個別に、ユーザから出される制御命令に基づき直接に制御される従来のクレーン操作に相当し得る。
【0051】
このような別の運転モードでは、クレーン制御装置の少なくとも1つの操作部材によりアームシステムの自由な制御が行われてよく、この場合、操作部材はそれぞれ、アームシステムのアームをそれぞれ所定の自由度に沿って動作させるための制御命令を入力するために設けられている。つまり、各操作部材(例えば動作に割り当てられたリニアレバーまたは多軸ジョイスティックの軸)は、アームシステムのアームがそれぞれその自由度に沿って動作するようにアームシステムを自由に制御するために設けられていてよい。
【0052】
この場合、クレーン制御装置が座標制御運転モード中は、ユーザにより少なくとも1つの操作部材が操作されることにより(例えば所定の方向に動かされることにより)、上述した別の運転モードにおいて操作部材に割り当てられていたアームシステムの自由度が制限可能であるまたは制限される、ということが想定されていてよい。アームシステムを自由に制御する別の運転モードにおける少なくとも1つの操作部材の機能の割当ては、座標制御運転モードにおいて、アームシステムの動作の相応する自由度の制限の選出に利用され得る。
【0053】
これに対して同様に、制限は、操作部材の相応の操作により(例えば反対方向に動かすことにより)、再び解除され得る、ということが想定されていてよい。
【0054】
つまり例えば、ユーザにとって動作の流れを簡単にするために、主アーム(またはアームシステムのあらゆる任意の別のアーム)がロックされ得る。アームをロックするためならびにロックを解除するためには、ユーザインタフェースの入力装置、例えばメニューガイド式のユーザインタフェースのつまみまたは例えばレバー操作可能なユーザインタフェースのレバー等の操作部材等が使用され得る。座標制御運転モード用の入力装置の他に、クレーン制御装置のユーザインタフェースはクレーン用に、別の運転モードにおいてアームシステムを自由に制御するための個別の操作レバー(例えば2つの直交する軸を備えたジョイスティックまたは単軸リニアレバー等)を有していることが多い。座標制御運転モードではアームシステムの制御に使用されないこれらの操作レバーは、アームのロックまたはロックの解除に使用され得る。つまり例えば、主アームは、座標制御では使用されない主アーム動作用の操作部材(例えば主アームレバー)を介してロックされ得る。
【0055】
ユーザは、主アームを所望の位置に位置決めし、その後、主アーム角度を固定することができる。このためには、ユーザは主アーム動作に割り当てられた操作部材(例えば2つの直交する軸を備えたジョイスティックまたは単軸リニアレバー等)を所定の方向に変位させるだけで済み、これにより動作ロックを作動させることができる、ということが想定されていてよい。この場合、主アーム、屈曲アームおよび摺動アームを備えたクレーンの座標制御される他の全ての動作は、最早屈曲アームと摺動アームとによってしか行われなくなる。追加的に、クレーン制御装置のディスプレイ上で、ロックされたアームもしくはクレーン区間が相応して特徴付けられる視覚化が行われてよい。オペレータが主アーム動作に割り当てられた操作部材を(例えば反対方向に)再び操作すると、オペレータは極めて快適に、主アームのロックもしくは固定を再び解除することができる。このようなロックまたは固定は、その他の各アームもしくはアームシステムの動作の各自由度に対しても同様に行われてよい。
【0056】
例として、主アームは高所に位置決めされ(例えば70°~80°)、その後ロックされ得る。これにより、座標制御されるクレーン動作は最早屈曲アームと摺動アームとによってしか行われず、これにより極めて大きな動作スペースがカバーされ得る。このようにして追加的に、主アームが予測されない動作により、クレーンが取り付けられたキャリア車両またはトラックの車体にぶつかるということが防止され得る。
【0057】
好適には、少なくとも1の自由度を制限することにより、屈曲アームの自由度が、設定可能なまたは設定された部分範囲に、好適には設定可能なまたは設定された四分区間に制限可能であるかまたは制限されており、これにより、屈曲アームは座標制御運転モードにおいて、主アームの仮想の延長部の上側の過剰伸長された旋回位置に位置決め可能であるかまたは位置決めされている、ということが想定されていてよい。
【0058】
主アームの仮想の延長部(主アーム線)と、これに対して垂直に延びる、主アームに設けられた屈曲アームの旋回軸受を通る仮想の線(旋回軸受線)とが、4つのエリアもしくは四分区間を形成している。この場合、主アーム線と、主アーム線の上側の旋回軸受線との間の、主アームの仮想の延長部の方のエリアは、四分区間1と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の上側の旋回軸受線との間の、主アームの方のエリアは、四分区間2と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の下側の旋回軸受線との間の、主アームの方のエリアは、四分区間3と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の下側の旋回軸受線との間の、主アームの仮想の延長部の方のエリアは、四分区間4と呼ばれる。
【0059】
従来の座標制御の欠点は、屈曲アームが主アームの仮想の延長部の下側の旋回位置(四分区間4)から主アームの仮想の延長部の上側の旋回位置(四分区間1)に動かされるべき、屈曲アームのいわゆる過剰伸長に対する明確な解答の欠如にある。特に、計算では死点のところ(屈曲アーム角度は0°である、すなわち屈曲アームは主アームに対して正確に直線延長上に配置されている)に不連続性が生じる。
【0060】
1つの可能性は、ユーザインタフェースの相応する機能を選出することで、手動での過剰制御により屈曲アームを過剰伸長させることにある。
【0061】
しかしまた、クレーン制御装置は座標制御運転モードにおいて補助機能を提供するということが想定されていてもよく、補助機能により、屈曲アームは死点への接近時に四分区間4から四分区間1に動かされ、屈曲アームの自由度は四分区間1に制限される。屈曲アームが四分区間1に位置すると直ちに、屈曲アームは計算を一義的に守るために、最早この四分区間内でしか動かなくなる。屈曲アームの過剰伸長された旋回位置(主アームの仮想の延長部の上側の旋回位置)から主アームの仮想の延長部の下側の旋回位置への移行は、逆の形式で相応して行われてよい。ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能により、補助機能が選出可能である、ということが想定されていてよい。
【0062】
本発明の1つの実施例では、設定可能なまたは設定される部分範囲は2°以下、好適には0.5°以下である、もしくは10cm以下、好適には2.5cm以下であり、かつ/または変化速度は0.2°/秒以下、好適には0.05°/秒以下である、もしくは2cm/秒以下、好適には0.5cm/秒以下である、ということが想定されていてよい。つまり、アームシステムの自由度のうちの1つを制限することは、各自由度に沿った各アームの動作の大幅な減速に相当し得る。アームシステムを座標制御運転モードで制御する場合、これに相応してその運動が制限されたアームもしくはこれに相応して制限された自由度は、ユーザにより、実質的にアームシステムの動作に関与しないものと見なされてよい。つまり、ユーザの観点から予測不能な動作は実質的に生じない。
【0063】
1つの好適な構成では、クレーン制御装置は、好適には携帯可能な制御盤を有しており、制御盤にはユーザインタフェースが形成されている、ということが想定されていてよい。制御盤は、表示部と、例えば回転つまみ、リニアレバーおよび押ボタンの形態の操作部材とを有していてよい。操作部材は、メニューサポート式のユーザインタフェースの操作、ユーザにより選択可能な機能の選出またはユーザによる制御命令の発出に用いられてよい。
【0064】
携帯可能な制御盤とは、クレーンもしくは液圧式のリフティング装置の周りの特定の環境においてユーザが実質的に自由に動くことができる独立した操作ユニットを意味し得る。もちろん、このような制御盤とクレーンもしくは液圧式のリフティング装置との間では、例えば無線および/または有線接続を介してデータもしくは情報が交換され得る。
【0065】
好適には、ユーザインタフェースはメニューガイド式でありかつ/またはクレーン制御装置の少なくとも1つの操作部材を含む、ということが想定されていてよい。メニューガイド式のユーザインタフェースは、階層構造に従っていてよい。ユーザインタフェースの登録メニューは絵で作成され、表示され得るということが考えられる。メニューガイド式のユーザインタフェースは、例えば設定されたまたは設定可能な複数の機能のリストからユーザが異なる機能を選出することを可能にし得る。
【0066】
1つの好適な構成では、クレーン制御装置は表示部を有している、ということが想定されていてよい。クレーン制御装置の表示部がタッチディスプレイとして形成されている場合、ユーザインタフェースは直接タッチディスプレイ上に形成され得る。この場合は例えば、表示部に表示されたアームシステムの表示されたクレーンアームに一度タッチすることにより、相応する自由度が制限され得る。この場合、表示部上では自由度の制限を視覚化するために、例えば表示されるクレーンアームの色が白から黒に変わってよい。クレーンアームにもう一度タッチすると、前記制限は再び解除され得、クレーンアームの表示は例えば黒から白に再び変わってよい。表示部がタッチディスプレイ等として形成されていない場合には、場合により、クレーン制御装置の操作部材を介してメニューガイド式のユーザインタフェースを操作することができる。表示部は、オペレータに対する状態表示機能を引き受けることができ、表示部上で、制限されているクレーンアームもしくは自由度を一目で認識することができる。
【0067】
1つの好適な実施形態では、クレーン制御装置は別の運転モードでは、ユーザにより入力された制御命令に基づきアームシステムの自由な制御を実施するように設定されている、ということが想定されていてよく、この場合、座標制御運転モードから出発して、ユーザにより、クレーン制御装置の設定可能なまたは設定された操作部材、好適にはクレーン制御装置のデッドマンスイッチが操作され続ける間は、別の運転モードへの切り替えが行われる。つまりユーザにとって、このために設けられたクレーン制御装置の操作部材を操作することにより、座標制御運転モードから、アームシステムを自由に制御するための別の運転モードに一時的に切り替えることが可能であり得る。これにより、例えばアームシステムの個々のアームを所望の位置に的確にかつ自由にもたらすことができるかまたは障害物を手動で運搬することができる。
【0068】
アームシステムを自由に制御するための別の運転モードでは、クレーン幾何学形状、すなわち1つの平面内でのクレーンアーム相互の相対的な位置もしくはクレーンコラムに対するクレーンアームの相対的な位置と、クレーンアームの、クレーン基台に対して相対的な旋回位置とがクレーンコラムと共に、ユーザにより自由に変更され得る。ユーザは、例えば相応する操作部材を操作することにより、クレーンアームの相対的な位置を変更しかつクレーンアームをクレーンコラムと共に、クレーン基台に対して相対的に旋回させることができる。裏では一般に、クレーン運転は安全装置により監視され、安全装置は、安全上危機的な状態をもたらす操作部材がユーザにより操作されると介入する。例えば、クレーンの安定性が監視され得る。
【0069】
一般に、クレーン制御装置は複数の運転モードを有している、ということが想定されていてよい。つまり、座標制御運転モードおよびアームシステムを自由に制御するための別の運転モードの他に、例えばクレーンを所定の作業位置および/または所定のパーキング位置に簡単にもたらすためにクレーン幾何学形状がクレーン制御装置により所定の動作順序で変更可能な作業位置運転モードが存在していてもよい。クレーン制御装置は、クレーンをそのパーキング位置に折り畳む前の、最後に使用した運転モードを記憶するように設定されていてもよい。つまり、クレーンをそのパーキング位置に折り畳む前に最後に作動したのが座標制御運転モードである場合、作業位置運転モードによりクレーンがその作業位置に展開された後で自動的に座標制御運転モードに切り替えられる、ということが想定されていてよい。
【0070】
上述した形式のクレーンを備えた車両の保護も請求する。車両はトラックのことであってよく、クレーンは積卸しクレーンのことであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1a図1a~図1cは、車両に取り付けられた、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図1b図1a~図1cは、車両に取り付けられた、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図1c図1a~図1cは、車両に取り付けられた、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図2a図2a~図2cは、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図2b図2a~図2cは、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図2c図2a~図2cは、それぞれ異なる構成のクレーンを示す側面図である。
図3a図3a~図3eは、様々なアームシステムの異なるアームの動作の自由度に関する側面図である。
図3b図3a~図3eは、様々なアームシステムの異なるアームの動作の自由度に関する側面図である。
図3c図3a~図3eは、様々なアームシステムの異なるアームの動作の自由度に関する側面図である。
図3d図3a~図3eは、様々なアームシステムの異なるアームの動作の自由度に関する側面図である。
図3e図3a~図3eは、様々なアームシステムの異なるアームの動作の自由度に関する側面図である。
図4】長さ変更可能な主アームを備えたクレーンの構成を示す図である。
図5a図5aおよび図5bは、アームシステムに配置可能な補助装置の2つの構成を示す図である。
図5b図5aおよび図5bは、アームシステムに配置可能な補助装置の2つの構成を示す図である。
図6a図6aおよび図6bは、異なる構成のクレーンを示す側面図およびそれぞれがセンサシステムを備えたクレーン制御装置を示す概略図である。
図6b図6aおよび図6bは、異なる構成のクレーンを示す側面図およびそれぞれがセンサシステムを備えたクレーン制御装置を示す概略図である。
図7】運転モードの選択肢が表示された提案するクレーンのクレーン制御装置の例示的な表示を示す図である。
図8a】ユーザインタフェースの例示的な構成を示す図である。
図8b】ユーザインタフェースの例示的な構成を示す図である。
図8c】ユーザインタフェースの例示的な構成を示す図である。
図9a】運転プロファイルを使用する可能性のある適用例を示す図である。
図9b】運転プロファイルを使用する可能性のある適用例を示す図である。
図9c】運転プロファイルを使用する可能性のある適用例を示す図である。
図10a】ユーザインタフェースの構成を示す図である。
図10b】ユーザインタフェースの構成を示す図である。
図10c】ユーザインタフェースの構成を示す図である。
図10d】ユーザインタフェースの構成を示す図である。
図10e】ユーザインタフェースの構成を示す図である。
図11a】ユーザインタフェースの別の構成および入力マスクを示す図である。
図11b】ユーザインタフェースの別の構成および入力マスクを示す図である。
図11c】ユーザインタフェースの別の構成および入力マスクを示す図である。
図11d】ユーザインタフェースの別の構成および入力マスクを示す図である。
図12】屈曲アームの自由度βの可能な制限を示す図である。
図13a】提案するクレーンのクレーン制御装置の表示を示す図である。
図13b図13aに示したクレーン制御装置の制御盤を示す図である。
図14】ユーザインタフェースの別の構成を示す図である。
【0072】
図1a~図1cには、車両19に取り付けられた、それぞれ異なる構成のクレーン1の側面図が示されている。図2a~図2cには、図1a~図1cに示したクレーン1が分離された状態で示されている。図3a~図3eおよび図4には、クレーン1のそれぞれ異なるアームシステムの個々のアーム2,3,4,5,7,8,24の動作の自由度α,β,φ,γ,L,J,Hが示されている。
【0073】
図1aには、提案するクレーン1の第1の構成が示されており、この場合、クレーン1は積卸しクレーンもしくは屈曲アームクレーンとして形成されており、車両19上に配置されている。クレーン1は、図示のように回転装置20により第1の鉛直方向軸線v1を中心として回転可能なクレーンコラム2と、第1の水平方向旋回軸線h1を中心として旋回可能にクレーンコラム2に支持された主アーム3と、第2の水平方向旋回軸線h2を中心として旋回可能に主アーム3に支持されており、少なくとも1つの摺動アーム5を備えた屈曲アーム4とを有している。主アーム3をクレーンコラム2に対して相対的に旋回させる(自由度αの図示の屈曲角度位置a1)ためには、液圧式の主シリンダ21が設けられている。屈曲アーム4を主アーム3に対して相対的に旋回させる(自由度βの図示の屈曲角度位置b1)ためには、液圧式の屈曲シリンダ22が設けられている。クレーン1のこの構成では、クレーン先端部14は、摺動アーム5の先端部により形成されていてよい。
【0074】
したがって図示のクレーン1のアームシステムは、クレーンコラム2と、主アーム3と、屈曲アーム4と、少なくとも1つの摺動アーム5とを有している。
【0075】
クレーン1は、クレーン制御装置6(略示)を有しており、クレーン制御装置6は、座標制御運転モードにおいてアームシステムの座標制御を実施するように設定されている。クレーン制御装置6は、ユーザインタフェース(ここに詳細には図示せず)を有しており、この場合、ユーザインタフェースは、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能を有しており、この機能により、座標制御運転モードにおいて自由度α,β,φ,L(図3a~図3eおよび図4参照)のうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている。
【0076】
図1bには、提案するクレーン1の第2の構成が示されており、この場合、図1bに示すクレーン1は、図1aに示した構成の装備に加え、屈曲アーム4の摺動アーム5に第3の水平方向旋回軸線h3を中心として旋回可能に配置された第2の屈曲アーム7を有しており、第2の屈曲アーム7には第2の摺動アーム8が支持されている。第2の屈曲アーム7を屈曲アーム4に対して相対的に旋回させる(自由度γの図示の屈曲角度位置g1)ために、屈曲シリンダ23が設けられている。クレーン1のこの構成では、クレーン先端部14は、摺動アーム8の先端部により形成されていてよい。
【0077】
したがって、図1bに示すクレーン1のアームシステムは、クレーンコラム2と、主アーム3と、少なくとも1つの摺動アーム5を備えた屈曲アーム4と、少なくとも1つの摺動アーム8を備えた第2の屈曲アーム7とを有している。
【0078】
図1bに示した構成と同様、図1bに示したクレーン1に関しても、座標制御運転モードにおいてユーザにより選択可能な機能により、自由度α,β,φ,γ,L,J(図3a~図3eおよび図4参照)のうちの1つが制限可能であるまたは制限され得る。
【0079】
図1cには、提案するクレーン1の第3の構成が示されており、この場合、図1cに示すクレーン1は、図1bに示した構成の構造に加え、第2の屈曲アーム7の第2の摺動アーム8に第4の水平方向旋回軸線a4を中心として旋回可能に取り付けられた別の屈曲アーム24を有している。別の屈曲アーム24を第2の屈曲アーム7に対して相対的に旋回させる(別の屈曲アーム24の旋回動作の自由度の図示の屈曲角度位置d1)ために、屈曲シリンダ25が設けられている。クレーン1のこの構成では、クレーン先端部14は、別の屈曲アーム24の先端部により形成されていてよい。
【0080】
したがって、図1cに示すクレーン1のアームシステムは、クレーンコラム2と、主アーム3と、少なくとも1つの摺動アーム5を備えた屈曲アーム4と、少なくとも1つの摺動アーム8を備えた第2の屈曲アーム7と、(場合により長さ変更可能に形成されていてよい)別の屈曲アーム24とを有している。
【0081】
図1aおよび図1bに示した構成と同様、図1cに示したクレーン1に関しても、座標制御運転モードにおいてユーザにより選択可能な機能により、自由度α,β,φ,γ,L,J(図3a~図3eおよび図4参照)のうちの少なくとも1つと、別の屈曲アーム24の旋回動作の自由度とが制限可能であるまたは制限され得る。
【0082】
図示の全ての構成は当然、回転装置20を有していてよい。
【0083】
図2a~図2cにはそれぞれ、図1a~図1cに基づき形成されたクレーン1の詳細図が示されている。
【0084】
図3a~図3eには、様々なアームシステムのそれぞれ異なるアームの動作の自由度α,β,φ,γ,L,Jが側面図で示されている。
【0085】
図3a~図3cに示すクレーン1の構成は、図1aおよび図2aに示したクレーン1に相当する。図3dおよび図3eに示す屈曲アーム7は、図1bおよび図2bに示した第2の屈曲アーム7に相当する。図1cおよび図2cに示した別の屈曲アーム24も同様に、図3dおよび図3eに示す屈曲アーム7に相応して形成されていてよい。
【0086】
図3a~図3cを参照すると、第1の鉛直方向軸線v1の形態の回転軸線を中心として回転可能なクレーンコラム2は、構造的に設定されたクレーンコラム旋回範囲φ1~φ2にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき自由度φを有している。クレーンコラム旋回範囲は0°~360°の区間にわたり延在している、つまりクレーンコラムは無限に旋回可能に形成されている、ということが考えられる。主アーム3はクレーンコラム2に、構造的に設定された主アーム旋回範囲α1~α2にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき自由度αを有している。屈曲アーム4は主アーム3に、構造的に設定された屈曲アーム旋回範囲β1~β2にわたり旋回可能に支持されており、その旋回可能な支持に基づき自由度βを有している。摺動アーム5は屈曲アーム4に、構造的に設定された摺動範囲L1~L2にわたり摺動可能に支持されており、その摺動可能な支持に基づき自由度Lを有している。
【0087】
図3dおよび図3eには、屈曲アーム7が分離された状態で示されており、屈曲アーム7は、図3a~図3cに示したクレーン1の摺動アーム5に結合領域28を介して、構造的に設定された第2の屈曲アーム旋回範囲γ1~γ2にわたり旋回可能に支持可能であり、旋回可能な支持に基づき自由度γを有しており、かつ少なくとも1つの第2の摺動アーム8を有しており、第2の摺動アーム8は第2の屈曲アーム7に、構造的に設定された第2の摺動アーム摺動範囲J1~J2にわたり摺動可能に支持されており、その摺動可能な支持に基づき自由度Jを有している。
【0088】
図4には、クレーン1の1つの構成が示されており、そのアームシステムは上述した各構成とは異なり、追加的に少なくとも1つの主アーム用摺動アーム18を有しており、主アーム用摺動アーム18は主アーム3に、構造的に設定された摺動範囲H1~H2(略示のみ)にわたり摺動可能に支持されており、その摺動可能な支持に基づき自由度Hを有している。
【0089】
したがって、図4に示すクレーン1のアームシステムは、クレーンコラム2と、少なくとも1つの主アーム用摺動アーム18を備えた主アーム3と、少なくとも1つの摺動アーム5を備えた屈曲アーム4とを有している。
【0090】
上述した各構成と同様、図4に示したクレーン1に関しても、座標制御運転モードにおいてユーザにより選択可能な機能により、自由度α,β,φ,H,Lのうちの少なくとも1つが制限可能であってよいまたは制限され得る。
【0091】
この場合、図3a~図3eおよび図4に示すように、異なるアームの動作の自由度α,β,φ,γ,L,J,Hは、設定されたまたは設定可能な値α0,β0,φ0,γ0,L0,J0,H0に規定されていてよいまたは規定され得、かつ/または設定可能なまたは設定された部分範囲α1<α3~α4<α2;β1<β3~β4<β2;φ1<φ3~φ4<φ2;γ1<γ3~γ4<γ2;L1<L3~L4<L2;J1<J3~J4<J2;H1<H3~H4<H2に制限可能であってよいまたは制限され得る。
【0092】
図5aおよび図5bには、アームシステムに配置可能な補助装置の2つの構成が、例示的にブリックスタックグラップルとして形成された作業器具9の形態および静的なアーム延長部10の形態で示されている。
【0093】
図5aには、クレーンの摺動アームに配置され得る作業器具9の1つの構成が示されている。作業器具の寸法および機能範囲は、クレーン制御装置(ここには図示せず)に保存され、クレーン制御装置の計算に加えられてよい。
【0094】
図5bに示す静的なアーム延長部10は、相応する取付け手段を介してクレーンの摺動アームに配置され得る。変位可能に形成された取付け手段を介して、アーム延長部10は(ここでは仮想の鉛直方向線に対して書き込まれた)所定の角度θで摺動アームに配置され得る。アーム延長部10は、長さ変更可能に形成されていてよい。例えばアーム延長部10の長さや角度θ等の、アーム延長部10に関する情報は、クレーン制御装置(ここには図示せず)に保存され、特にクレーン先端部の位置に関するクレーン制御装置の計算に加えられてよい(これについては図11bおよび図11dを参照)。
【0095】
図6aには、図1aもしくは図2aに基づくクレーン1の1つの構成が示されている。さらに、座標制御運転モードにおいてアームシステムの座標制御を実施するように設定されたクレーン制御装置6の概略図も示されている。クレーン制御装置6は、ユーザインタフェース(ここに詳細には図示せず)を有しており、この場合、ユーザインタフェースは、ユーザにより選択可能な少なくとも1つの機能を有しており、この機能により、座標制御運転モードにおいて自由度α,β,φ,Lのうちの少なくとも1つが制限可能であるまたは制限されている。
【0096】
ここに略示したクレーン制御装置6は複数の信号入力部を有しており、これらの信号入力部には、クレーン1に取り付けられたセンサシステムの信号が供給され得る。さらにクレーン制御装置6は、例えばクレーン制御装置6の運転モードおよび計算モデルに関するプログラムデータならびに入力信号が記憶されていてよいメモリ11と、とりわけ入力信号およびメモリ11に記憶されたデータを処理することができる演算ユニット12とを有している。クレーン制御装置6は、表示部16も有していてよい。クレーン制御装置6と表示部16との通信は、有線および/または無線で行われてよい。クレーン1の幾何学形状を検出するセンサシステムには、図6aに示す構成では、クレーンコラム2の回転角度d1を検出する回転角度センサf1と、クレーンコラム2に対する主アーム3の屈曲角度a1を検出する屈曲角度センサk1と、主アーム3に対する屈曲アーム4の屈曲角度b1を検出する屈曲角度センサk2と、摺動アーム5の摺動位置x1を検出する摺動位置センサs1とが含まれる。
【0097】
図6bには図6aと同様に、図1bもしくは図2bに基づくクレーン1の1つの構成が示されている。このクレーン1の構成は、図示のように屈曲アーム4の摺動アーム5に配置された第2の屈曲アーム7を有している。クレーン1の運転パラメータを検出する追加的なセンサシステムとして、摺動アーム5に対する第2の屈曲アーム7の屈曲角度g1を検出する屈曲角度センサk3と、第2の摺動アーム8の摺動位置x2を検出する摺動位置センサs2とが設けられている。
【0098】
図1cもしくは図2cに基づくクレーン1とクレーン制御装置6とから成る、図6aおよび図6bに示したユニットと同様の構成も、やはり考えられる。
【0099】
図7には、提案するクレーン1のクレーン制御装置6の表示部16が例示されている。表示部16は、表示にのみ用いられてもよいが、しかしまた、タッチディスプレイとして形成されていてもよく、これにより同時に、クレーン制御装置6のメニューガイド式のユーザインタフェースを成していてもよい。ユーザにより選択可能な運転モード機能26a,26b,26cを介して、クレーン制御装置6の様々な運転モードが選択され得る。例えばこの例では、選択可能な第1の運転モード機能26aを介して、クレーン1のクレーン幾何学形状が所定の動作順序で所定の作業位置にもたらされる作業位置運転モードが選択され得る。選択可能な第2の運転モード機能26bを介して、クレーン1のクレーン幾何学形状が所定の動作順序で所定のパーキング位置にもたらされるパーキング位置運転モードが選択され得る。選択可能な第3の運転モード機能26cを介して、クレーン制御装置6がアームシステムの座標制御を実施するように設定された座標制御運転モードが選択され得る。運転モード機能26cを選択すると、場合により、図14に示すような、ユーザにより確認されるべき安全照会が行われることがある。選択可能な第4の運転モード機能26dを介して、座標制御運転モードの設定が変更され得る(例えば運転プロファイルの設定および/または順序、それぞれ異なる自由度の設定等)。
【0100】
図8a、図8bおよび図8cにはユーザインタフェースの構成が例示されており、ユーザインタフェースはそれぞれ、タッチディスプレイとして形成されていてもよいクレーン制御装置6の表示部16により形成されている。この場合、ユーザにより選択可能な図示の各機能27a,27b,27c,27d,27e,27f,27g,27h,27i,27j,27kは、それぞれ座標制御運転モードにおいて各機能27a,27b,27c,27d,27e,27f,27g,27h,27i,27j,27kに結び付けられたクレーン制御装置6の運転プロファイルの選択に用いられる。選択可能な各運転プロファイルにおいては、少なくとも2つのアーム選択が、クレーン1のアームシステムのアーム2,3,4,5,7,8,18の部分量の形態で、設定されたまたは設定可能な順序で優先順位の高い方から優先順位の低い方に記憶されているか、または運転中継続的に検出される。この場合、クレーン制御装置6は、アームシステムの座標制御を実施するために、選択された運転プロファイルに記憶されたアーム選択を、それらの優先順位に相応して利用しかつ制御するように形成されている。
【0101】
図8a~図8cにおいてそれぞれ選択された機能27a,27dおよび27hは、表示部16では黒点(埋められた円)により表示されており、これによりユーザは、どの運転プロファイルが選択されているのかを即座に認識する。図8aおよび図8bにピクトグラムで示すクレーンは、図1aもしくは図2aに基づくクレーン1の構成に関するものであってよく、図8cに示すクレーンは、図1bもしくは図2bに基づくクレーン1の構成に関するものであってよい。同様に、図1cもしくは図2cに基づくクレーン1の構成も考えられる。
【0102】
図8a~図8cに示すメニューは、例えばそれぞれ、図7に示したメニューにおいて機能26dを選択することにより到達可能な下位メニューに相当し得る。
【0103】
図8aに示す機能27a,27bおよび27cにより、クレーン1のアームシステムは座標制御運転モードにおいて好適なアーム位置に保持され得る。機能27aの選択は、例えばアームシステムが荷重および到達距離に関して最適化されたアーム位置に保持されるクレーン1の標準設定に相当し得る。これに関するさらなる詳細は、図9aから看取され得る。
【0104】
機能27bの選択は、例えばアームシステムがかさばる荷の運搬に理想的に適したアーム位置に保持されるクレーン1の設定に相当し得る。これに関する詳細は、図9bから看取され得る。
【0105】
機能27cの選択は、例えば特にアームシステムの主アーム3が好適な位置に保持されるクレーン1の設定に相当し得る。これに関する詳細は、図9cから看取され得る。
【0106】
図8bに示す機能27d~27gの選択は、図1aもしくは図2aに基づくクレーン1のアームシステムの座標制御の実施において、アームシステムのアーム量(3,4,5)の部分量(3,4,5;4,5;3,5;3,4)の形態でのアーム選択の利用を生ぜしめることができる。機能27dの選択は、座標制御の実施において主アーム3と屈曲アーム4、屈曲アーム4と摺動アーム5、または主アーム3と摺動アーム5とが、適性もしくは優先順位に応じて利用されるアーム選択に相当し得る。機能27eの選択は、座標制御の実施において屈曲アーム4と摺動アーム5とが利用されるアーム選択に相当し得る。機能27fの選択は、座標制御の実施において主アーム3と摺動アーム5とが利用されるアーム選択に相当し得る。機能27gの選択は、座標制御の実施において主アーム3と屈曲アーム4とが利用されるアーム選択に相当し得る。各機能の選択に基づき、アームシステムのアームの動作の残りの自由度が制限される。
【0107】
これと同様に、図8cに示す機能27h~27kの選択についても、図1bもしくは図2bに基づくクレーン1のアームシステムの座標制御の実施において、アームシステムのアーム量(3,4,5,7,8)の相応する部分量のアーム選択の利用が行われてよい。
【0108】
図9a~図9cには、運転プロファイルを使用する、可能な使用例が示されている。
【0109】
図9aに示す例では、例えば主アーム3の旋回運動の自由度αの目標角度α0を規定するためにユーザインタフェースの相応する機能が選択されたことにより、主アーム3の旋回運動の自由度αに対して目標角度α0が規定されており、目標角度α0は、荷重および到達距離に関して最適化された角度範囲(例えば20°)内に位置している。
【0110】
これにより、クレーン1は実質的に最大リフティング力と最大到達距離とを達成する。可能である限り、この使用例では常に、屈曲アーム4と摺動アーム5とを含むアーム選択が行われる。
【0111】
図9bに示す例では、屈曲アーム4に関して、例えば屈曲アーム4の旋回運動の自由度βを所定の部分範囲β1~β4<β2(これに関しては図3bも参照;β4=180°-WK)に制限することに相応したユーザインタフェースの機能が選択されたことにより、屈曲アーム4はその完全な伸長(180°)を回避するために、常に180°の、調整可能な値WKだけ手前で停止することが規定されている。このような設定は、かさばる荷を運搬するために理想的である。可能である限り、この使用例では常に、主アーム3と摺動アーム5とを含むアーム選択が優先的に行われる。
【0112】
図9cに示す例では、主アーム3が可能な限り長くその目標位置(例えば>60°)に保持される。このことは、主アーム3の旋回運動の自由度αを所定の部分範囲α3~α2(これについては図3aも参照)に少なくとも一時的に制限することに等しい。主アーム3が下方に向かって(0°の方向に)その目標位置を離れると、主アーム3は、動作が許す限りまたは動作が許すと直ちに何度でも、その目標角度に戻るように位置決めされる。これにより、急峻な位置での作業に際して主アーム3が持続的に下がることが防止され得る。主アーム3のこの戻し機能は例えば、可能な場合には常に優先順位1のアーム選択(屈曲アーム4と摺動アーム5)が行われる、表4に示した運転プロファイルのアーム選択を利用して達成され得る。クレーン1は、例えば表4に示した運転プロファイルのアーム選択を利用して座標制御されて動かされ、アームシステムの動作中に、主アーム3はその目標位置を離れて50°の角度位置に位置する。その後、動作の終了位置または再開に基づきアーム選択が切り替えられる。次いで、主アーム3を含む2つのアーム選択(つまり優先順位2のアーム選択と優先順位3のアーム選択)が、クレーン制御装置6により、目下のユーザ設定で主アーム3の目標位置に再び向かうことができるか否かを評価される。よって、主アーム3を最も速く目標位置に再び動かすアーム選択が、一時的に(動的に)第1位に設定される(もしくは番号1の優先順位を得る)。主アーム3の目標位置に達すると、一時的に第1位に設定されたアーム選択は、表4に示したその元の順位に再び設定される(もしくはその元の優先順位を再び得る)。
【0113】
図10a~図10eにはユーザインタフェースの構成が例示されており、ユーザインタフェースはそれぞれ、タッチディスプレイとして形成されていてもよいクレーン制御装置6の表示部16により形成されている。
【0114】
クレーン制御装置6の表示部16がタッチディスプレイとして形成されている場合、ユーザインタフェースはタッチディスプレイ上に直接に形成され得る。この場合、例えば表示部16に表示されたクレーンアーム2,3,4,5,7,8に一度タッチすることにより、相応する自由度が制限され得る。制限を視覚化するためには、相応して制限されたクレーンアーム2,3,4,5,7,8の色が、白から黒に変わってよい。クレーンアーム2,3,4,5,7,8にさらに触れると、制限は再び解除され得、クレーンアーム2,3,4,5,7,8の表示は黒から白に変わる。図10a~図10eに示すようなユーザインタフェースの構成は、特にタッチディスプレイ上にユーザインタフェースを構成する場合に有利である。
【0115】
この表示部16がタッチディスプレイ等として形成されていない場合には、メニューガイド式のユーザインタフェースが操作部材を介して操作され得る。このような構成のユーザインタフェースの場合には、図8a~図8cに示したような構成が有利である。図10a~図10eに示すような構成は、このようなケースでは例えば、制限されているクレーンアーム2,3,4,5,7,8もしくは自由度を一目で認識し得る、一種のユーザ用状態表示部として用いられてよい。
【0116】
図示の、座標制御運転モードにおいてユーザにより選択可能なクレーン制御装置6の機能27l,27m,27n,27o,27p,27qは、それぞれクレーン1のアームシステムのアームの選出に用いられ、その自由度は規定に基づき、設定されたまたは設定可能な値(または部分範囲)に制限されることが望ましい。換言すると、ユーザにより選択可能な機能27l,27m,27n,27o,27p,27qにより、アームシステムのどのアームがロックされるべきかが選び出されてよく、この場合、ロックされたアームは最早、アームシステムの座標制御される動作には関与しておらず、代わりにそれらのロック位置に残留する。これに関して、図10aおよび図10bに示す表示部16にはそれぞれ、図1aもしくは図2aに示した構成と類似の、クレーンコラム2と、主アーム3と、屈曲アーム4と、摺動アーム5とを有するクレーン1のアームシステムが絵で示されている。図10c~図10eに示す表示部16に表示されるクレーン1のアームシステムは、追加的に第2の屈曲アーム7と、第2の摺動アーム8とを有している。ユーザにより選択可能な機能27l,27m,27n,27o,27p,27qを介してロックされた各アームは、アームシステムのイラストにおいてそれぞれ黒で表されている。
【0117】
図11a~図11cにはユーザインタフェースの構成が例示されており、ユーザインタフェースはそれぞれ、タッチディスプレイとして形成されていてもよいクレーン制御装置6の表示部16により形成されている。この場合、ユーザにより選択可能な図示の機能27r,27s,27t,27u,27v,27w,27x,27y,27zは、それぞれクレーン1のアームシステムに取り付けられた補助装置に関する情報の入力に用いられる。図11aに示す選択可能な機能27rおよび27sを介して例えばメニューに到達し、メニューを介して、アーム延長部10または作業器具9の形態の補助装置(図5aおよび図5b参照)に関する情報をクレーン制御装置6のメモリ11に記憶されたデータバンクから選択することができる。図11aに示す選択可能な機能27tを介して例えば設定マスクに到達し、設定マスクを介して、クレーン制御装置6のメモリ11には記憶されていない補助装置に関する情報を入力することができる。図11bに示す選択可能な機能27u,27v,27w,27xを介して、アームシステムに取り付けられた、アーム延長部10(図5b参照)の形態の補助装置の角度位置(角度θ)を選択もしくは入力することができる。図11cに示す選択可能な機能27y,27zは、アームシステムに取り付けられた、例えば1つまたは複数の手動操作可能な突出し延長部の形態の補助装置の準備状態の選出に用いられる。
【0118】
図11dには、表示部16に表示される入力マスク13の1つの構成が示されており、入力マスク13を介して、少なくとも1つの補助装置9,10に対する機能範囲および/または寸法指示および/または角度位置に関する情報を選出または入力することができると共に、クレーン制御装置6に伝達することができる。
【0119】
図12には、屈曲アーム4のいわゆる過剰伸長を可能にするために、クレーン制御装置6が座標制御運転モードにおいて、ユーザにより選択可能なユーザインタフェースの機能を介して選出可能な支援機能を提供することにより、屈曲アーム4の自由度βが部分範囲β1<β3~β2に制限されていることが例示されている。
【0120】
主アーム3の仮想の延長部(主アーム線)と、これに対して垂直に延びる、主アーム3に設けられた屈曲アーム4の旋回軸受を通る仮想の線(旋回軸受線)とが、4つのエリアもしくは四分区間を形成している。この場合、主アーム線と、主アーム線の上側の旋回軸受線との間の、主アーム3の仮想の延長部の方のエリアは、四分区間1と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の上側の旋回軸受線との間の、主アーム3の方のエリアは、四分区間2と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の下側の旋回軸受線との間の、主アーム3の方のエリアは、四分区間3と呼ばれる。主アーム線と、主アーム線の下側の旋回軸受線との間の、主アーム3の仮想の延長部の方のエリアは、四分区間4と呼ばれる。
【0121】
左側の図において、屈曲アーム4は四分区間4内に位置している。屈曲アーム4が四分区間4から出発して死点(屈曲アーム角度は180°である、すなわち屈曲アーム4は主アーム3に対して正確に直線延長上に配置されている)に近づくと、屈曲アーム4は四分区間1内へ移動させられ、屈曲アーム4の自由度βは四分区間1に制限される(右側の図を参照)。
【0122】
屈曲アーム4が四分区間1に位置すると直ちに、屈曲アーム4は最早この四分区間内でしか移動せず、これにより、座標制御運転モードでの計算が一義的に守られる。
【0123】
図13aには、提案するクレーン1のクレーン制御装置6の表示部16が示されている。クレーン制御装置6の表示部16上の表示は、ユーザにより入力された制御命令に基づきクレーン1のアームシステムの自由な制御が可能な運転モード中の表示に相当し得る。図13aに示す表示には、この運転モードにおいて適用される機能の割当てを視覚化するために、複数のリニアレバー30を表す絵が含まれている。
【0124】
図13bには、クレーン制御装置6の制御盤15の1つの構成が示されている。制御盤15は、図示の構成では少なくとも1つの表示部16と、回転つまみ29、リニアレバー30および押ボタン31の形態の操作部材17とを有している。操作部材は、メニューサポート式のユーザインタフェースの操作、ユーザにより選択可能な機能の選出またはユーザによる制御命令の発出に用いられてよい。
【0125】
図13aに示したクレーン制御装置6の構成に基づく制御盤15の構成では、制御盤15は例えばデッドマンスイッチとして構成された押ボタン31の形態の、所定の操作部材17を有していてよい。クレーン制御装置6が座標制御運転モードにある場合、このように構成された押ボタン31の形態の操作部材17を操作することにより、別の運転モードに切り替えることができる。別の運転モードへのこの切替えは、例えば押ボタン31の形態の操作部材17がユーザにより操作され続ける限り続く。
【0126】
図13aに示した表示部16は、例えば座標制御運転モードにおいて上述したデッドマンスイッチが押された場合に表示され得、この場合、クレーン制御装置は、別の-自由に制御可能な-運転モードに切り替わる。このことは、表示部16上の表示に基づき、オペレータに明らかにされる。このことは、表示部16の構成態様(タッチディスプレイか否か)に関係無く行われてよい。
【0127】
図14には、安全照会が表示された表示部16が示されており、安全照会は、例えばユーザが座標制御運転モードに切り替えた場合にユーザにより確認されるべきものである。図7に示したように、この安全照会は、運転モード機能26cを選出した場合に座標妨害運転モードに変更するために行われることがある。
【符号の説明】
【0128】
1 クレーン
2 クレーンコラム
3 主アーム
4 屈曲アーム
5 摺動アーム
6 クレーン制御装置
7 第2の屈曲アーム
8 第2の摺動アーム
9 作業器具
10 アーム延長部
11 メモリ
12 プロセッサ
13 設定マスク
14 クレーン先端部
15 制御盤
16 表示部
17 操作部材
18 主アーム用摺動アーム
19 車両
20 回転装置
21 主シリンダ
22,23,25 屈曲シリンダ
24 別の屈曲アーム
26a~26d 選択可能な運転モード機能
27a~27z 選択可能な機能
28 結合領域
29 回転つまみ
30 リニアレバー
31 押ボタン
V1,h1,h2,h3 軸線
α,β,φ,γ,L,J,H 自由度 アームシステム
φ0,φ1,φ2,φ3,φ4 旋回角度 クレーンコラム
α0,α1,α2,α3,α4 旋回角度 主アーム
β0,β1,β2,β3,β4 旋回角度 屈曲アーム
γ0,γ1,γ2,γ3,γ4 旋回角度 第2の屈曲アーム
L0,L1,L2,L3,L4 摺動位置 摺動アーム
J0,J1,J2,J3,J4 摺動位置 第2の摺動アーム
H0,H1,H2,H3,H4 摺動位置 主アーム用摺動アーム
θ 角度 アーム延長部
a1,b1,g1,d1 角度
x1,x2 摺動位置
s1,s2 摺動位置センサ
k1,k2,k3 屈曲角度センサ
f1 回転角度センサ
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図11a
図11b
図11c
図11d
図12
図13a
図13b
図14
【国際調査報告】