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特表2022-523908TNFα及びIL-17Aに対する特異性を有する多重特異性抗体、IL-17Aを標的とする抗体、及びそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】TNFα及びIL-17Aに対する特異性を有する多重特異性抗体、IL-17Aを標的とする抗体、及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220420BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220420BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20220420BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220420BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220420BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/46
C07K16/24
C07K16/18
A61P29/00
A61P37/06
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021543446
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020052481
(87)【国際公開番号】W WO2020157305
(87)【国際公開日】2020-08-06
(31)【優先権主張番号】19154852.8
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19154846.0
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19154850.2
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515310984
【氏名又は名称】ヌマブ セラピューティクス アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】ダービド ウレッヒ
(72)【発明者】
【氏名】テア グンデ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスチャン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘス
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085BB11
4C085CC21
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、TNFαに特異的に結合する第1ドメインと、IL-17Aに特異的に結合する第2ドメインと、任意選択的にヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含む単離された多重特異性抗体に関する。本発明はさらに、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体に関する。さらに本発明は、前記抗体の使用方法、前記抗体を含む医薬組成物、その使用方法、及びキットに関する。本発明はまた、前記抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、及び前記抗体を産生する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及び任意選択的に、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する第3ドメインを含む、単離された多重特異性抗体であって、ここで、
(a)前記第1ドメインは、(i)CDRのセット、すなわち、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は(ii)CDRのセット、すなわちそれぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み;及び
(b)前記第2ドメインは、CDRのセット、すなわち、それぞれ配列番号63、64、及び65のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号76、77、及び78のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み;及び
(c)前記第3ドメインは、存在する場合、CDRのセット、すなわち、(i)それぞれ配列番号90、91、及び92のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号100、101、及び102のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は(ii)それぞれ配列番号111、112、及び113のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号121、122、及び123のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、前記多重特異性抗体。
【請求項2】
抗体が、IL-17Aに特異的に結合する1つのみのドメイン、及び/又はTNFαに特異的に結合する1つのみのドメイン、及び/又は任意選択的に、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する1つのみのドメインを含む、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記ドメインがそれらの各抗原又は受容体に同時に結合することができる、請求項1又は請求項2に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
抗体が以下の特性を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体:
(a)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、セクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば5より大きい、10より大きい、15より大きい、20より大きい、25より大きい、30より大きい、35より大きい、40より大きい、45より大きい、好ましくは50より大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び
(b)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも1、例えば1より大きい、1.5より大きい、2より大きい、2.5より大きい、3より大きい、3.5より大きい、好ましくは4より大きい、より好ましくは4.5より大きい力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定された配列番号149(A13)の前記scDbのIC50値(nM)と、HT-29アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比である;及び
(c)任意選択的に、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、8より大きい、9より大きい、好ましくは10より大きい力価(相対力価)で、IL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、ELISAによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び
(d)任意選択的に、L929アッセイで決定された配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1の力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、L929アッセイによって測定された配列番号125の前記scDbのIC50値(nM)と、L929アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比である;及び/又は
(e)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満の解離定数(KD)で、ヒトIL-17Aに結合し、及び任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満のKDで、カニクイザルIL-17Aに結合する;及び
(f)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満、より好ましくは0.25nM未満の解離定数(KD)で、ヒトTNFαに結合する;及び
(g)任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、ヒト血清アルブミンに結合し、任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、カニクイザル血清アルブミンに結合する。
【請求項5】
抗体が以下の特性を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体:
(a)示差走査蛍光測定法によって決定すると、pH6.4、150mM NaClのリン酸-クエン酸緩衝液中で、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも58℃、より好ましくは少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有する;
(b)前記多重特異性抗体が、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、5回の連続した凍結融解サイクル後に、5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%以下のモノマー含有量の損失を有する;
(c)前記多重特異性抗体が、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、特に少なくとも4週間、4℃で保存した後、10%未満、好ましくは5%未満のモノマー含有量の損失を有する;及び/又は
(d)前記多重特異性抗体が、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、特に少なくとも4週間、37℃で保存した後、20%未満、好ましくは15%未満のモノマー含有量の損失を有する。
【請求項6】
前記第1ドメイン、及び/又は前記第2ドメイン、及び/又は任意選択的に前記第3ドメインが重鎖可変領域VHを含み、ここで、前記VHはVH3又はVH4、好ましくはVH3である、前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、ここで、前記第1ドメイン、及び/又は前記第2ドメイン、及び/又は任意選択的に前記第3ドメインが軽鎖可変領域VLを含み、ここで、前記VLは、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、特にVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、ここで、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、特にVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、特に配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4から選択される、前記多重特異性抗体。
【請求項8】
請求項6~7のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、ここで前記第1ドメインのVHが、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記第1ドメインのVLが、アミノ酸配列配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記第1ドメインのVHが、アミノ酸配列配列番号10及び11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記第1ドメインのVLが、アミノ酸配列配列番号21及び22から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、前記第1ドメインのVHが、配列番号10に記載されているものであり、及び/又は前記第1ドメインのVLが、配列番号21に記載されているものである、前記多重特異性抗体。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、ここで、前記第2ドメインのVHが、配列番号72、73、74、及び75から成る群から選択されるアミノ酸、好ましくは配列番号72と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は、前記第2ドメインのVLが、配列番号85、86、87、88、及び89から成る群から選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号85と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、好ましくは、ここで、前記第2ドメインのVHが、配列番号72、73、74、及び75から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は、前記第2ドメインのVLが、配列番号85、86、87、88、及び89から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、より好ましくは、ここで、前記第2ドメインのVHが配列番号72に記載されているものであり、及び/又は前記第2ドメインのVLが配列番号85に記載されているものである、前記多重特異性抗体。
【請求項10】
請求項6~9のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、ここで、前記第3ドメインが存在し、及び
(i)前記第3ドメインのVHが、アミノ酸配列配列番号99と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記第3ドメインのVLが、アミノ酸配列配列番号108と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、好ましくは、ここで、前記第3ドメインのVHが、配列番号99に記載されているものであり、及び/又は前記第3ドメインのVLが、配列番号108に記載されているものである;又は
(ii)前記第3ドメインのVHが、アミノ酸配列配列番号120と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又はVLが、アミノ酸配列配列番号130と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、好ましくは、ここで、前記第3ドメインのVHが、配列番号120に記載されているものであり、及び/又は前記第3ドメインのVLが、配列番号130に記載されているものである、前記多重特異性抗体。
【請求項11】
前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、1本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi-scFv)、タンデムtri-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジダイアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(重鎖と軽鎖の両方のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えばKnob-into-Hole抗体(KiH);Fv、scFv、scDb、タンデム-di-scFv、タンデムtri-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、ヘテロ二量体Fcドメイン又は任意の他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかの鎖のN末端及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH及びデュオボディ、好ましくはトリボディ又はscDb-scFvから成る群から選択される形式である、前記多重特異性抗体。
【請求項12】
前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体であって、ここで、前記抗体が、配列番号136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、及び148のいずれか、好ましくは143から選択される配列と、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記抗体が、
(i)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、及び
(ii)それぞれ配列番号63、64、及び65のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号76、77、及び78のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及び
(iii)それぞれ配列番号90、91、及び92のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号100、101、及び102のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含み、
好ましくは、前記抗体は、配列番号136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、及び148、好ましくは143のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、前記多重特異性抗体。
【請求項13】
前記請求項のいずれか1項に記載の多重特異性抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
薬剤として使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の多重特異性抗体、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の多重特異性抗体、又は請求項14に記載の医薬組成物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TNFαに特異的に結合する第1ドメインと、IL-17Aに特異的に結合する第2ドメインと、任意選択的にヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインとを含む、単離された多重特異性抗体に関する。本発明はさらに、前記抗体の使用方法、前記抗体を含む医薬組成物、その使用方法、及びキットに関する。本発明はまた、前記抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、及び前記抗体を産生する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体、本発明の前記単離された抗体を含む多重特異性分子、医薬組成物、及びその使用方法に関する。本発明はさらに、前記抗体を含むキット、前記抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸、前記核酸を含むベクター、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞、及び前記抗体を産生する方法を含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
TNFαは、免疫系の細胞によって放出され、前記細胞と相互作用するホモ三量体の炎症促進性サイトカインである。TNFαは、可溶性タンパク質並びに膜貫通型TNFαと呼ばれる前駆体として見いだされ、細胞表面のII型ポリペプチドとして発現される。膜貫通型TNFαは、TNFα変換酵素(TACE)などのメタロプロテイナーゼによって残基Ala76とVal77の間で処理され、157アミノ酸残基の可溶性型TNFαが放出される。可溶性TNFαは、17kDaの切断されたモノマーのホモ三量体である。膜貫通型TNFαは、26kDの非切断モノマーのホモ三量体としても存在する。膜TNFαと可溶性TNFαの両方とも生物学的に活性である。TNFαは、2つの受容体、TNF受容体1(TNFR1)と2(TNFR2)に結合することができ、ここで、膜貫通型TNFαは主にTNFR2を介して作用する。TNFR1は様々な細胞で広く発現され、その関与が炎症促進性応答を引き起こす。TNFR2の発現はほとんど免疫細胞に限定されており、その結合は細胞の生存と増殖を促進する(Bazzoni F, Beutler B, N Engl J Med (1996) 334(26):1717-25; Locksley RM, et al., Cell (2001) 104(4):487-501; Cabal-Hierro L, Lazo PS, Cell Signal (2012) 24(6):1297-305; Brenner D, et al., Nat Rev Immunol (2015) 15(6):362-74)。
【0004】
TNFαは、関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、多発性硬化症などの慢性疾患を含む炎症性疾患や自己免疫疾患などの多くのヒトの疾患でアップレギュレートされていることが証明されている。TNFαに対する抗体が、エンドトキシンショックの予防及び治療のために提案されている(Beutler et al., Science, 234, 470-474, 1985)。Bodmer et al., (Critical Care Medicine, 21, S441-S446, 1993) 及び Wherry et al., (Critical Care Medicine, 21, S436-S440, 1993) は、敗血症ショックの治療における抗TNFα抗体の治療的可能性を考察している。敗血症ショックの治療における抗TNFα抗体の使用は、Kirschenbaum et al., (Critical Care Medicine, 26, 1625-1626, 1998) によっても考察されている。コラーゲン誘発関節炎は、抗TNFαモノクローナル抗体を使用して効果的に治療することができる(Williams et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89, 9784-9788, 1992))。関節リウマチ及びクローン病の治療における抗TNFα抗体の使用は、Feldman et al. (Transplantation Proceedings, 30, 4126-4127, 1998)、Adorini et al. (Trends in Immunology Today, 18, 209-211, 1997)、及びFeldman et al. (Advances in Immunology, 64, 283-350, 1997) で考察されている。そのような治療で以前に使用されるTNFαに対する抗体は、一般に、米国特許第5,919,452号に記載されているようなキメラ抗体である。
【0005】
TNFαに対するモノクローナル抗体は、先行技術に記載されている。Meager et al. (Hybridoma, 6, 305-311, 1987) は、組換えTNFαに対するマウスモノクローナル抗体について記載している。Fendly et al. (Hybridoma, 6, 359-370, 1987) は、TNFα上の中和エピトープを定義する際の組換えTNFαに対するマウスモノクローナル抗体の使用について記載している。さらに、国際特許出願WO92/11383には、TNFαに特異的なCDR移植抗体を含む組換え抗体が開示されている。Rankin et al. (British J. Rheumatology, 34, 334-342, 1995) は、関節リウマチの治療におけるそのようなCDR移植抗体の使用を記載している。米国特許第5,919,452号は、抗TNFαキメラ抗体、及びTNFαの存在に関連する病状の治療におけるそれらの使用を開示している。さらに抗TNFα抗体は、Stephens et al. (Immunology, 85, 668-674, 1995)、GB-A-2 246570、GB-A-2 297145、US8,673,310、US2014/0193400、EP2390267B1、US8,293,235、US8,697,074、WO2009/155723A2、及びWO2006/131013A2に記載されている。
【0006】
現在承認されている抗TNFα生物製剤には、(i)キメラIgG抗ヒトモノクローナル抗体であるインフリキシマブ(Remicade(登録商標);Wiekowski M et al: “Infliximab (Remicade)"、Handbook of Therapeutic Antibodies、WILEY-VCH; Weinheim、2007-01-01、p.885-904);(ii)IgG1 FcとのTNFR2二量体融合タンパク質であるエタネルセプト(Enbrel(登録商標));(iii)完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)であるアダリムマブ(Humira(登録商標);Kupper H et al: “Adalimumab (Humira)”, Handbook of Therapeutic Antibodies, WILEY-VCH; Weinheim, 2007-01-01, p.697-732) );(iv)PEG化Fab断片であるセルトリズマブ(Cimzia(登録商標);Melmed G Y et al: “Certolizumab pegol”, Nature Reviews. Drug Discovery, Nature Publishing Group, GB, Vol. 7, No. 8, 2008-08-01, p.641-642);(v)ヒトIgG1Kモノクローナル抗体であるゴリムマブ(Simponi(登録商標);Mazumdar S et al: “Golimumab”, mAbs, Landes Bioscience, US, Vol. 1, No. 5, 2009-09-01, p.422-431)が含まれる。
【0007】
しかし、抗TNFα治療には一定の制限があることが示された。必ずしもすべての患者が十分な臨床応答を達成したり、抗TNFαに対する臨床応答を長期にわたって維持したりするわけではないため、疾患を制御するために新しい治療法に切り替える必要がある。例えば、関節リウマチ(RA)患者の抗TNFα治療では、約40%の患者は反応せず、疾患活性の大幅な低下を経験するのは患者の20%のみである。従って、炎症及び自己免疫障害などの障害の進行のより効果的な抑制に関する治療に対して、大きな満たされていない臨床的必要性が引き続き存在する。
【0008】
抗TNFα治療後の患者における補体生物学的経路の活性化は、おそらく、多くの患者が抗TNFα療法に反応しないか部分的な反応しか持たない理由の1つであり得る。最近明らかになった一連の証拠は、例えば関節リウマチにおける炎症性疾患及び自己免疫疾患の病因におけるIL-17Aの役割を示している。
【0009】
ヒト及びマウスのインターロイキン17(IL-17)ファミリーは、IL-17A、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E(IL-25とも呼ばれる)、及びIL-17Fの6つのサイトカインで構成されており、急性及び慢性の炎症応答で役割を果たす。インターロイキン17受容体(IL-17R)ファミリーは、IL-17RA、IL-17RB、IL-17RC、IL-17RD、及びIL-17REの5つのメンバーで構成されている。
【0010】
インターロイキン-17A(IL-17A又はIL17A、これはIL-17又は細胞障害性Tリンパ球関連抗原-8(CTLA-8)と同義)は、ホモ二量体の炎症促進性サイトカインである。IL-17Aは、メモリーCD4+T細胞(Th17と呼ばれる)、CD8+T細胞(Tc17)、不変NKT細胞、γδT細胞、非T非Bリンパ球(3型自然リンパ球と呼ばれる)、及び好中球のサブセットによって産生される。IL-17AとIL-17Fは、IL-17ファミリー内で別個のサブグループを形成する。それらはIL-17ファミリー内で最大の配列相同性と同一性を共有するが、IL-17ファミリーの他のメンバーはIL-17Aに対して有意に低い配列同一性を有する(Starnes, T., et al., J Immunol. 167(8):4137-40 (2001); Aggarwal, S. and Gurney, A. L., J. Leukoc Biol, 71(1): 1-8 (2002))。IL-17AとIL-17Fはどちらも、IL-17RAとIL-17RCで構成されるヘテロ二量体の受容体複合体を介してシグナルを伝達する(Toy D., et al., J Immunol. 2006; Wright JF., et al., J Immunol. 2008; 181(4):2799-2805)。IL-17A及びIL-17Fは、IL-17A/A又はIL-17F/Fジスルフィド結合ホモ二量体及びIL-17A/Fジスルフィド結合ヘテロ二量体を形成できる(Wright JF. et al., J Immunol. 2008; 181(4):2799-2805; Liang SC. et al., J Immunol. 2007; 179(11):7791-7799)。IL-17A及びIL-17Fは、炎症促進性サイトカイン及び抗菌ペプチドの発現を誘導する。
【0011】
ヒトIL-17A(CTLA-8、Swiss Prot Q16552、IL-17又はIL17とも呼ばれる;配列番号33)は、様々な炎症状態、例えば自己免疫疾患、代謝障害、及び癌に関与している(Ouyang W., et al., Immunity. 2008; 28(4):454-467;Milner JD., Curr Opin Immunol. 2011; 23(6):784-788;Kuchroo VK., et al., Nat Med. 2012; 18(1):42-47;Ahmed M. and Gaffen SL., Cytokine Growth Factor Rev. 2010; 21(6):449-453;Trinchieri G., Annu Rev Immunol. 2012; 30:677-706;Gallimore AM, Godkin A., N Engl J Med. 2013; 368(3):282-284;Ye P., et al., J Exp Med. 2001; 194(4):519-527;Chung DR., et al., J Immunol. 2003; 170(4):1958-1963;Huang W., et al., J Infect Dis. 2004; 190(3):624-631;Ishigame H., et al., Immunity. 2009; 30(1):108-119;総説については、Gu C., et al., Cytokine. 2013 Nov 64(2)を参照)。IL-17Aは、好中球動員のための他の炎症促進性サイトカイン及びケモカイン、急性相タンパク質、抗菌ペプチド、ムチン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、及び接着分子の誘導に役割を果たす。IL-17Aはまた、TNFα及びIL-1ベータを含む他のサイトカインと相乗作用して、ケモカイン発現をさらに誘導する(Chabaud M., et al., J. Immunol. 161(1):409-14 (1998))。
【0012】
IL-17Aの病理学的産生は、過度の炎症と組織損傷を引き起こす(総説については、Gu et al., Cytokine. 2013 November; 64(2)を参照)。高レベルのIL-17Aが多発性硬化症(MS)、乾癬、喘息、クローン病、及び関節リウマチの患者に見られた。動物をIL-17A中和抗体で治療すると、自己免疫性脳脊髄炎の発症率と重症度が低下する(Komiyama, Y. et al, J. Immunol. 177 (2006) 566-573)。さらに、IL-17A中和抗体は、コラーゲン誘発関節炎のマウス関節リウマチモデルの重症度と発症率を低下させ、関節リウマチ患者の炎症を起こした関節の滑液で高レベルのIL-17Aを検出することができる(Ziolkowska, M. et al, J. Immunol. 164 (2000) 2832-2838; Kotake, S. et al, J. Clin. Invest. 103 (1999) 1345-1352; Hellings P.W. et al, Am. J. Resp. Cell Mol. Biol. 28 (2003) 42-50)。
【0013】
ヒト及び動物モデルにおける実験的証拠の大部分は、IL-17Aを標的化治療法の開発を支持してきた。AIN457(セクキヌマブ(secukinumab);米国特許第7,807,155号及びWO2006/013107を参照)、LY2439821(イキセキズマブ(ixekizumab);米国特許第7,838,638号及び第8,110,191号、及びWO2007/070750を参照)、SCH900117(Merck)、RG4943(Roche)などを含むいくつかの抗IL-17抗体が開発された。抗IL-17A抗体の例は、WO2006/013107、WO2006/054059、WO2007/070750、WO2007/149032、WO2008/001063、WO2008/021156、WO2010/034443、WO2010/102251、WO2012/018767、WO2014/161570、WO2014/001368、WO2014/122613、WO2015/070697、WO2015/137843、WO2016/048188、WO2016/113557、WO2016/138842、WO2017/068472に開示されている。
【0014】
IL-17Aシグナル伝達を阻止する様々な分子を用いたいくつかの臨床試験が実施されているか、現在も進行中である。IL-17A又はその受容体を標的とする生物製剤とその有効性は、関節リウマチ、強直性脊椎関節症、クローン病、乾癬、多発性硬化症、オゾン誘発性好中球増加症などの炎症性又は自己免疫疾患の状況で評価されている。
【0015】
例えば、完全ヒトIgG1κ抗IL-17Aモノクローナル抗体であるセクキヌマブ(米国特許第7,807,155号及びWO2006/013107)は現在、乾癬、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎挙動の治療薬として承認されている(総説については、Wang et al., Eur J Rheumatol 2017 (4) 272-7を参照)。乾癬性関節炎の被験者におけるセクキヌマブの長期的な有効性と安全性を評価する第III相試験(FUTURE I及びFUTURE II)では、乾癬性関節炎の徴候と症状の改良において、セクキヌマブはプラセボよりも有意に有効であった(Mease PJ. et al. N Engl J Med 2015; 373: 1329-39; McInnes IB. et al. The Lancet; 386:1137-46)。
【0016】
ヒト化抗IL-17Aモノクローナル抗体であるイキセキズマブ(米国特許第7,838,638号及び第8,110,191号及びWO2007/070750)は、活動性乾癬性関節炎の生物製剤未経験患者で、24週間の第III相試験(SPIRIT-P1)で試験された(Mease PJ. Et al., Ann Rheum Dis. 2017 Jan;76(1):79-87)。活動性乾癬性関節炎の生物製剤未経験患者において、イキセキズマブ治療は、疾患活動性及び身体機能の改良、並びに構造的損傷の進行の阻害をもたらすことが証明された。イキセキズマブはまた、中等度から重度の尋常性乾癬の患者の治療にも有効であることが示された(Griffiths CEM, et al., The Lancet; 386: 541-51)。
【0017】
ブロダルマブ(Brodalumab)は完全ヒトIL-17受容体(IL-17RA)モノクローナル抗体であり(米国特許第7,767,206号を参照)、乾癬の治療に有効であることが証明されている(Papp KA. et al. N Engl J Med 2012; 366: 1181-9)。またこれは、プラセボ対照第II相試験で乾癬性関節炎患者に顕著で持続的な応答を示した(Mease PJ. et al., N Engl J Med 2014; 370: 2295-306)。しかしブロダルマブによる治療は、上気道感染症、倦怠感、下痢などの強い有害事象、及び報告された自殺念慮及び行動と結びついている(総説については、Wang et al., Eur J Rheumatol 2017 (4) 272-7を参照)。
【0018】
従って、IL-17Aは炎症性疾患及び自己免疫疾患の治療において有望な標的である。現在までに多くの抗IL-17A抗体が同定されているが、炎症応答や自己免疫疾患におけるIL-17A活性を効果的に低減又は排除でき、同時に改良された安全性プロフィールを有し開発に適している、改良された治療用抗体の開発が依然として必要である。治療用抗体は、有益な親和性、有効性、及び免疫原性に加えて、生物理学的特性が改良され、開発性、高収率での生産性、タンパク質の安定性が向上している必要がある。TNFαとIL-17Aの両方の生物学的経路が同時に阻止される治療は、応答率が大幅に改良され、TNFαとIL-17Aによって媒介される障害の治療における満たされていないニーズに対処する可能性がある。IL-17及びTNFαに特異的に結合するいくつかの生物学的治療薬がこれまでに提案されてきた。WO2010/102251(Abbvie Inc.)は、TNFαとIL-17の両方に結合する二重特異性四価抗体を開示している。WO2013/063110(Abbvie Inc.)は、TNF及びIL-17に結合することができる多価DVD-Ig結合タンパク質を開示している。WO2014/044758(Covagen ACJ)は、グリコシル化されたIL-17Aを阻害し、TNFαに結合することができる融合構築物を開示している。またWO2014/137961(Eli Lilly and Company)及びWO2017/132457(Janssen Biotech)は、抗TNF及び抗IL-17A二重特異性抗体を開示している。WO2017/102830(UCB Biopharma)は多重特異性抗体を開示しており、これは、TNFα、IL-17A、及びIL-17Fを阻害することができ、特に、ヒトTNFαに特異的な結合ドメインとヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに特異的な結合ドメインとを含む。Xu et al., Oncotarget, 8 (2017) 81860-81872は、IgG様分子の2つのアームがそれぞれTNFαとIL-17Aに向けられているIgG様二重特異性抗体(bsAb)を生成した。興味深いことに、WO2015/014979(Roche、Fischer et al., Arthritis & Rheumatology 67 (2015) 51-62も参照)は、二重特異性四価IL-17AxTNF抗体構築物を開示しており、これらは、2つの抗原のそれぞれについて、二価(「2+2」構築物)又は一価(「2+2」構築物)のいずれかである。WO2015/014979によれば、二価の構築物は一価の代替物よりも好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、炎症性疾患や自己免疫疾患などの障害、例えばいまだに大多数の患者が治療に適切に応答しない関節リウマチの治療のために、IL-17AとTNFαの両方の活性を効果的に中和できる改良された抗炎症薬の必要性が依然として存在する。IL-17AとTNFαの両方の活性を効果的に中和し、有益な親和性と有効性、及び改良された安全性プロフィール、例えば免疫原性がより低い、改良された治療用抗体の開発が依然として必要である。さらに、治療用抗体は、より良好な開発性、高収率の生産性、及び優れた抗体安定性につながる改良された生物理学的特性を有するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、炎症性及び自己免疫障害の治療を改良するための薬剤を提供することである。
【0021】
本発明の抗体は、満たされていない医学的ニーズを有する患者に新しい治療選択肢を提供する。本発明は新規の多重特異性抗体を提供し、これはIL-17A及びTNFαを同時に阻害することができ、治療に使用するのに有益なさらに改良された特性、例えばより高い親和性、改良された有効性、選択性、安全性、例えば低い免疫原性、及び改良された生物理学的特性、例えば開発性や安定性を有する。
【0022】
1つの態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインと、TNFαに特異的に結合する第2ドメインと、及び任意選択的に、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインとを含む、単離された多重特異性抗体に関する。
【0023】
1つの態様において本開示は、本発明の多重特異性抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物に関する。
【0024】
さらなる態様において本開示は、薬剤として使用するための本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0025】
さらなる態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療、特に炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための、本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0026】
1つの態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療、特に炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための、本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0027】
1つの態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療、特に炎症状態又は自己免疫疾患の治療のための薬剤の製造における、本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0028】
さらに別の態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害を治療する方法を提供し、ここで、前記方法は、有効量の本発明の多重特異性抗体又は本発明の医薬組成物を、必要な被験体に投与することを含む。
【0029】
1つの態様において本開示は、本発明の多重特異性抗体、又は本発明の医薬組成物を含むキットを提供する。
【0030】
さらなる態様において本開示は、本発明の多重特異性抗体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。さらなる態様において本開示は、前記核酸を含むベクターを提供する。さらなる態様において本開示は、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0031】
さらに別の態様において本開示は、本発明の多重特異性抗体又はその結合ドメイン又はその断片を製造する方法を提供し、ここで、前記方法は、本発明の多重特異性抗体又はその結合ドメイン又はその断片をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む。
【0032】
以下の項目で要約される、本開示の態様、有利な特徴、及び好適な実施態様は、それぞれ単独で又は組み合わせて、本発明の目的の解決にさらに寄与する:
【0033】
1. IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む単離された多重特異性抗体。
【0034】
2. 前記抗体が、IL-17Aに特異的に結合する1つのみのドメイン、及び/又はTNFαに特異的に結合する1つのみのドメインを含む、項目1に記載の多重特異性抗体。
【0035】
3. 前記抗体が、ヒトTNFα及びヒトIL-17Aの生物活性を中和することができる、項目1又は項目2に記載の多重特異性抗体。
【0036】
4. ELISAによって測定すると、前記抗体が、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fよりも、ヒトIL-17Aに選択的に結合する、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0037】
5. IL-17A又はTNFα以外の抗原に対して特異性を有する第3ドメインをさらに含む、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0038】
6. 前記抗体が、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する第3ドメインを含み、好ましくは、前記抗体がヒト血清アルブミンに特異的に結合する1つのみのドメインを含む、項目5に記載の多重特異性抗体。
【0039】
7. 前記ドメインが、それらの各抗原又は受容体に同時に結合することができる、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0040】
8. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、前記第1ドメインと前記第2ドメイン、並びに任意選択的に前記第3ドメインが、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び、特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれた結合部位(例えば、F-star's Modular Antibody Technology(商標))から成る群から独立して選択され、好ましくはFab、Fv、及びscFvから成る群から選択される、より好ましくは、ここで前記第1ドメイン及び/又は前記第2ドメイン及び/又は前記第3ドメインはFv又はscFvである、前記多重特異性抗体。
【0041】
9. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、前記多重特異性抗体が、1本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi-scFv)、タンデムtri-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジダイアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(重鎖と軽鎖の両方のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えばKnob-into-Hole抗体(KiH);Fv、scFv、scDb、タンデム-di-scFv、タンデムtri-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、ヘテロ二量体Fcドメイン又は任意の他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかの鎖のN末端及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH及びデュオボディ、好ましくはトリボディ又はscDb-scFvから成る群から選択される形式である、前記多重特異性抗体。
【0042】
10. 前記抗体が免疫グロブリンFc領域ポリペプチドを含まず、任意選択的に、CH1及び/又はCL領域を含まない、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0043】
11. 前記抗体がトリボディである、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0044】
12. 前記第1ドメイン、前記第2ドメイン、及び前記第3ドメインが、Fab及びscFvから成る群から独立して選択され、好ましくは、前記第2ドメインがFabであり、前記第1及び第3ドメインがscFvである、項目11に記載の多重特異性抗体。
【0045】
13. 前記抗体がscDb-scFvであり、好ましくは前記scFv部分がscDbにC末端で融合され、より好ましくは前記第1ドメイン及び前記第2ドメインがscDbを形成し、前記第3ドメインがscFvである、項目9に記載の多重特異性抗体。
【0046】
14. 項目13に記載の多重特異性抗体であって、前記抗体は、式:
VLA-L1-VHC-L2-VLC-L3-VHA-L4-VLB-L5-VHB、又はVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHC又はVLC-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHC-L4-VLA-L5-VHA又はVLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA-L4-VLC-L5-VHC、
好ましくは、VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHC、又はVLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA-L4-VLC-L5-VHC、
より好ましくは、VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHCで表され、
ここで、VLA及びVHAは、それぞれ第1ドメインの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり、VLB及びVHBは、それぞれ第2ドメインの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり、VLC及びVHCは、それぞれ第3ドメインの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり、及びここで、L1、L2、L3、L4、及びL5は、ポリペプチドリンカーである、前記多重特異性抗体。
【0047】
15. 前記L1及びL3が配列番号132に記載されるものである、項目14に記載の多重特異性抗体。
【0048】
16. 前記L2、L4、及びL5が配列番号23に記載されるものである、項目14~15のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0049】
17. 前記抗体が以下の特性を有する、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体:
【0050】
(a)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、セクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば5より大きい、10より大きい、15より大きい、20より大きい、25より大きい、30より大きい、35より大きい、40より大きい、45より大きい、好ましくは50より大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び
【0051】
(b)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも1、例えば1より大きい、1.5より大きい、2より大きい、2.5より大きい、3より大きい、3.5より大きい、好ましくは4より大きい、より好ましくは4.5より大きい力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定された配列番号149(A13)の前記scDbのIC50値(nM)と、HT-29アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比である;及び
【0052】
(c)任意選択的に、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、8より大きい、9より大きい、好ましくは10より大きい力価(相対力価)で、IL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、ELISAによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び
【0053】
(d)任意選択的に、L929アッセイで決定された配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1の力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、L929アッセイによって測定された配列番号149の前記scDbのIC50値(nM)と、L929アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比である;及び/又は
【0054】
(e)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満の解離定数(KD)で、ヒトIL-17Aに結合し、及び任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満のKDで、カニクイザルIL-17Aに結合する;及び
【0055】
(f)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満、より好ましくは025nM未満の解離定数(KD)で、ヒトTNFαに結合する;及び
【0056】
(g)任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、ヒト血清アルブミンに結合し、任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、カニクイザル血清アルブミンに結合する。
【0057】
18. 前記抗体が以下の特性を有する、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体:
(a)pH6.4、150mM NaClのリン酸-クエン酸緩衝液中で、示差走査蛍光測定法によって決定される融解温度(Tm)が、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも58℃、より好ましくは少なくとも60℃である;
(b)前記多重特異性抗体が、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、5回の連続した凍結融解サイクル後に、5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%以下のモノマー含有量の損失を有する;
(c)前記多重特異性抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間、4℃で保存した後、10%未満、好ましくは5%未満のモノマー含有量の損失を有する;及び/又は
(d)前記多重特異性抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間、37℃で保存した後、20%未満、好ましくは15%未満のモノマー含有量の損失を有する。
【0058】
19. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、各ドメインが重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、前記多重特異性抗体。
【0059】
20. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインがCDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含み、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[(i)HCDR1'は、配列番号1に記載されているものであり;HCDR2'は、配列番号2に記載されているものであり;HCDR3'は、配列番号3に記載されているものであり;LCDR1'は、配列番号12に記載されているものであり;LCDR2'は、配列番号13に記載されているものであり;LCDR3'は、配列番号14に記載されるものであるか、又は(ii)HCDR1'は、配列番号39に記載されているものであり;HCDR2'は、配列番号40に記載されているものであり;HCDR3'は、配列番号41に記載されているものであり;LCDR1'は、配列番号50に記載されているものであり;LCDR2'は、配列番号51に記載されているものであり;LCDR3'は、配列番号52に記載されるものである]からの、10個以下のアミノ酸置換を有する、前記多重特異性抗体。
【0060】
21. 項目20に記載の多重特異性抗体であって、
(i)
(a)前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(b)前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(c)前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(d)前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(e)前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;及び
(f)前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;又は
(ii)
(a)前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(b)前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(c)前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(d)前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(e)前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;及び
(f)前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである、前記多重特異性抗体。
【0061】
22. (i)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は、(ii)(i)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、項目21に記載の多重特異性抗体。
【0062】
23. IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインが重鎖可変領域VHAを含み、前記VHAがVH3又はVH4、好ましくはVH3である、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0063】
24. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、ここで、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは軽鎖可変領域VLAを含み、前記VLAは、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、ここで、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4から選択される。
【0064】
25. 項目23~24のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、前記VHAが、
(i)アミノ酸配列配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLAが、アミノ酸配列配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むか、又は
(ii)アミノ酸配列配列番号48と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLAが、アミノ酸配列配列番号59と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前記多重特異性抗体。
【0065】
26. 項目25に記載の多重特異性抗体であって、前記VHAが、
(i)配列番号10及び11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLAが、配列番号21及び22から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むか、又は
(ii)配列番号48及び49から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLAが、配列番号59及び60から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、前記多重特異性抗体。
【0066】
27. (i)配列番号10のVHA配列、及び/又は配列番号21のVLA配列、又は(ii)配列番号48のVHA配列、及び/又は配列番号59のVLA配列を含む、項目26に記載の多重特異性抗体。
【0067】
28. TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインがCDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含む、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、HCDR1'が配列番号63に記載されているに記載されているものであり;HCDR2'が配列番号64に記載されているものであり;HCDR3'が配列番号65に記載されているものであり;LCDR1'が配列番号76に記載されているものであり;LCDR2'が配列番号77に記載されているものであり;LCDR3'が配列番号78に記載されるものである]からの、10個以下のアミノ酸置換を有する、前記多重特異性抗体。
【0068】
29. (a)前記HCDR1は、配列番号63、66、及び69のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(b)前記HCDR2は、配列番号64、67、及び70のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(c)前記HCDR3は、配列番号65、68、及び71のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(d)前記LCDR1は、配列番号76、79、及び82のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;
(e)前記LCDR2は、配列番号77、80、及び83のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;そして
(f)前記LCDR3は、配列番号78、81、及び84のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである、項目28に記載の多重特異性抗体。
【0069】
30. それぞれ配列番号63、64、及び65のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号76、77、及び78のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、項目29に記載の多重特異性抗体。
【0070】
31. TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインが重鎖可変領域VHBを含み、前記VHBがVH3又はVH4、好ましくはVH3である、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0071】
32. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインが軽鎖可変領域VLBを含み、前記VLBが、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、このフレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4を含む、前記多重特異性抗体。
【0072】
33. 項目31~32のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、前記VHBが、配列番号72、73、74、及び75から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一で、好ましくは配列番号72と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;及び/又は、前記VLBが、配列番号85、86、87、88、及び89から成る群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一で、好ましくは配列番号85と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、前記多重特異性抗体。
【0073】
34. 前記VHBが、配列番号72、73、74、及び75から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は、前記VLBが、配列番号85、86、87、88、及び89から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目33に記載の多重特異性抗体。
【0074】
35. (i)配列番号72のVHB配列、及び/又は配列番号85のVLB配列;又は(ii)配列番号75のVHB配列、及び/又は配列番号88のVLB配列;又は
(iii)配列番号75のVHB配列、及び/又は配列番号89のVLB配列を含む、項目34に記載の多重特異性抗体。
【0075】
36. 項目6~35のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、HSAに特異的に結合する前記第3ドメインがCDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含み、ここで、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、
(a)HCDR1'は配列番号90に記載されているものであり;HCDR2'は配列番号91に記載されているものであり;HCDR3'は配列番号92に記載されているものであり;LCDR1'は配列番号100に記載されているものであり;LCDR2'は配列番号101に記載されているものであり;LCDR3'は配列番号102に記載されているものである;又は
(b)HCDR1'は配列番号111に記載されているものであり;HCDR2'は配列番号112に記載されているものであり;HCDR3'は配列番号113に記載されているものであり;LCDR1'は配列番号120に記載されているものであり;LCDR2'は配列番号121に記載されているものであり;LCDR3'は配列番号122に記載されるものである]からの、10個以下のアミノ酸置換を有する、前記多重特異性抗体。
【0076】
37. 項目36に記載の多重特異性抗体であって、
(a)前記HCDR1は、配列番号90、93、及び96のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記HCDR2は、配列番号91、94、及び97のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記HCDR3は、配列番号92、95、及び98のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR1は、配列番号100、103、及び106のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR2は、配列番号101、104、及び107のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR3は、配列番号102、105、及び108のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである;又は
(b)前記HCDR1は、配列番号111、114、及び117のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記HCDR2は、配列番号112、115、及び118のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記HCDR3は、配列番号113、116、及び119のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR1は、配列番号121、124、及び127のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR2は、配列番号122、125、及び128のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり;前記LCDR3は、配列番号123、126、及び129のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである、前記多重特異性抗体。
【0077】
38. 以下を含む項目37に記載の多重特異性抗体:
(a)それぞれ配列番号90、91、及び92のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号100、101、及び102のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は
(b)それぞれ配列番号111、112、及び113のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号121、122、及び123のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列。
【0078】
39. HSAに特異的に結合する前記第3ドメインが重鎖可変領域VHCを含み、前記VHCがVH3又はVH4、好ましくはVH3である、項目6~38のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0079】
40. 項目6~39のいずれか1つに記載の多重特異性抗体であって、HSAに特異的に結合する前記第3ドメインが軽鎖可変領域VLCを含み、前記VLCが、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、このフレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4を含む、前記多重特異性抗体。
【0080】
41. 前記VHCが、アミノ酸配列配列番号99と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;及び/又は前記VLCが、アミノ酸配列配列番号109と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目39~40のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0081】
42. 配列番号99のVHC配列及び/又は配列番号109のVLC配列を含む、項目41に記載の多重特異性抗体。
【0082】
43. 前記VHCが、アミノ酸配列配列番号110と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み;及び/又は前記VLCが、アミノ酸配列配列番号120と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目39~40のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0083】
44. 配列番号110のVHC配列及び/又は配列番号120のVLC配列を含む、項目43に記載の多重特異性抗体。
【0084】
45. 前記抗体がヒト化されている、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0085】
46. 前記抗体が、配列番号136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、及び148のいずれか、好ましくは143から選択される配列と、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、CDRが、項目22、30、及び38(a)の配列を有する、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0086】
47. 前記抗体が、配列番号136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、及び148のいずれか、好ましくは143から選択されるアミノ酸配列を含む、前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体。
【0087】
48. 前述の項目のいずれか1つに記載の多重特異性抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【0088】
49. 薬剤として使用するための、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物。
【0089】
50. L-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物。
【0090】
51. 炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物。
【0091】
52. 以下の疾患の治療に使用するための、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物:癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症。
【0092】
53. L-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物の医薬組成物の使用。
【0093】
54. 炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物の使用。
【0094】
55. 以下の疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物の使用:癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症。
【0095】
56. IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害を治療する方法であって、前記状態が緩和されるように、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、上記方法。
【0096】
57. IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される前記障害が炎症状態又は自己免疫疾患である、項目56に記載の方法。
【0097】
58. IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される前記障害が、癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症である、項目56に記載の方法。
【0098】
59. 項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体又はその断片をコードする核酸。
【0099】
60. 項目59に記載の核酸を含むベクター。
【0100】
61. 項目59に記載の核酸又は項目60に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0101】
62. 項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体又はその断片をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体を産生する方法。
【0102】
63. 項目1~47のいずれか1つに記載の多重特異性抗体、又は項目48に記載の医薬組成物を含むキット。
【0103】
本発明の別の目的は、改良された親和性、有効性、及び改良された生物理学的特性、例えば改良された溶解性、開発性、及び安定性を有する抗IL-17A抗体を提供することである。
【0104】
本発明の抗IL-17A抗体は、治療における使用に有益な改良された特性、例えばより高い親和性、改良された有効性、選択性、改良された生物理学的特性、例えば溶解性、開発性、及び安定性を有する。
【0105】
従って、1つの態様において本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する単離された抗体を提供し、特に、これは、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含み、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、HCDR1'は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、HCDR2'は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、HCDR3'は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR1'は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR2'は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR3'は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する]から10個以下の、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。1つの態様において本開示は、本開示の単離された抗体を含む多重特異性分子に関する。
【0106】
別の態様において本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する単離された抗体を提供し、特に、これは、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含み、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、HCDR1'は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、HCDR2'は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、HCDR3'は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR1'は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR2'は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、LCDR3'は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する]からの10個以下の、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。1つの態様において本開示は、本開示の単離された抗体を含む多重特異性分子に関する。
【0107】
1つの態様において本開示は、本開示の単離された抗体、又は本開示の単離された抗体を含む多重特異性分子、及び医薬的に許容し得る担体を含む医薬組成物に関する。
【0108】
別の態様において本開示は、薬剤として使用するための、本開示の抗体、又は前記単離された抗体を含む多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物に関する。
【0109】
1つの態様において本開示は、IL-17Aによって媒介される障害又はGRO-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための、本開示の抗体、又は前記単離された抗体を含む多重特異性分子、又は医薬組成物に関する。
【0110】
1つの態様において本開示は、IL-17Aによって媒介される障害又はGRO-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の抗体、又は前記単離された抗体を含む多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。
【0111】
別の態様において本開示は、IL-17Aによって媒介される障害を治療する方法に関し、この方法は、有効量の、本開示の抗体、又は本開示の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を、それを必要としている被験者に投与することを含む。さらに別の態様において本開示は、本開示の抗体をコードする核酸に関する。さらなる態様において本開示は、前記核酸を含むベクターに関する。さらなる態様において本開示は、前記核酸又は前記ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0112】
別の態様において本開示は、本開示の抗体を産生する方法に関し、この方法は、本開示の抗体をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む。
【0113】
それぞれ単独で又は組み合わせて、以下の項目に要約された本開示の態様、有利な特徴、及び好適な実施態様は、本発明の目的を解決することにさらに寄与する。
【0114】
1. CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含む、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する抗体であって、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、
(i)HCDR1'は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
HCDR2'は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
HCDR3'は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR1'は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR2'は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR3'は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;又は
(ii)HCDR1'は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
HCDR2'は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
HCDR3'は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR1'は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR2'は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列であり、
LCDR3'は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する]からの、10個以下のアミノ酸置換を有する、上記抗体。
【0115】
2. CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含む項目1の抗体であって、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、
(i)HCDR1'は、配列番号1に記載されているものであり、
HCDR2'は、配列番号2に記載されているものであり、
HCDR3'は、配列番号3に記載されているものであり、
LCDR1'は、配列番号12に記載されているものであり、
LCDR2'は、配列番号13に記載されているものであり、
LCDR3'は、配列番号14に記載されているものである;又は
(ii)HCDR1'は、配列番号39に記載されているものであり、
HCDR2'は、配列番号40に記載されているものであり、
HCDR3'は、配列番号41に記載されているものであり、
LCDR1'は、配列番号50に記載されているものであり、
LCDR2'は、配列番号51に記載されているものであり、
LCDR3'は、配列番号52に記載されるものである]からの、10個以下のアミノ酸置換を有する、上記抗体。
【0116】
3. 重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、項目1又は項目2の抗体であって、
(c)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び
(d)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、上記抗体。
【0117】
4. (i)
(g)前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(h)前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(i)前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(j)前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(k)前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、そして
(l)前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである;又は
(ii)
(a)前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(b)前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(c)前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(d)前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、
(e)前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、そして
(f)前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである、項目3の抗体。
【0118】
5. (i)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(ii)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む、項目4の抗体。
【0119】
6. 前記VHがVH3又はVH4、好ましくはVH3である、項目3~5のいずれか1つの抗体。
【0120】
7. 前記VLが、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4を含む、項目3~6のいずれか1つの抗体。
【0121】
8. (i)前記VHが、アミノ酸配列配列番号10と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLが、アミノ酸配列配列番号21と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む;又は(ii)前記VHが、アミノ酸配列配列番号48と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLが、アミノ酸配列配列番号59と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、項目3~7のいずれか1つの抗体。
【0122】
9. (i)前記VHが、配列番号10及び11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLが、配列番号21及び22から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む;又は(ii)前記VHが、配列番号48及び49から成る群から選択されるアミノ酸配列を含み、及び/又は前記VLが、配列番号59及び60から成る群から選択されるアミノ酸配列を含む、項目8の抗体。
【0123】
10. (i)配列番号10のVH配列及び/又は配列番号21のVL配列;又は(ii)配列番号48のVH配列及び/又は配列番号59のVL配列を含む、項目9の抗体。
【0124】
11. (i)配列番号11のVH配列及び/又は配列番号49のVL配列;又は(ii)配列番号11のVH配列及び/又は配列番号60のVL配列を含む、項目9の抗体
【0125】
12. 前記抗体がカニクイザルIL-17Aに対する結合特異性を有する、前述の項目のいずれか1つの抗体。
【0126】
13. ELISAによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17FよりもヒトIL-17Aに選択的に結合する、前述の項目のいずれか1つの抗体。
【0127】
14. IL-17Aへの結合が
(a)IL-17Aとその受容体(IL-17RA)の結合を阻害又は阻止し、
(b)IL-17A活性を低減又は中和する、前述の項目のいずれか1つの抗体。
【0128】
15. HT-29アッセイでインビトロで評価した場合、前記抗体がGRO-α分泌を阻害することができる、項目14の抗体。
【0129】
16. 前述の項目のいずれかの抗体であって、
(h)ELISAアッセイで決定された、セクキヌマブの力価と比較して、5より大きい、好ましくは10より大きい、より好ましくは15より大きい、さらにより好ましくは20より大きい力価(相対力価)で、IL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、ELISAによって測定されたscFv形式の本発明の抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び/又は
(i)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、セクキヌマブの力価と比較して、50より大きい、好ましくは100より大きい、より好ましくは150より大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって測定されたscFv形式の本発明の抗体のIC50値(ng/mL)との比である;及び/又は
(j)1ng/mL以下、好ましくは0.5ng/mL以下、より好ましくは0.2ng/mL以下の濃度で1ngのヒトIL-17Aの活性を50%阻害することができ、ここで前記阻害活性は、50pg/mlのTNFαの存在下でHT-29アッセイで、ヒトIL-17Aによって誘導されるGRO-α分泌を測定することによって決定される、上記抗体。
【0130】
17. 前述の項目のいずれかの抗体であって、
(a)表面プラズモン共鳴によって測定すると、詳細には表面プラズモン共鳴により直接設定で測定すると、ヒトIL-17Aに、5nM未満、詳細には1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、さらに詳細には100pM未満、より詳細には50pM未満の解離定数(KD)で結合し、そして
(b)任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、詳細にはキャプチャ設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、カニクイザルIL-17Aに、10nM未満、詳細には7nM未満、5nM未満、2nM未満、1nM未満、より詳細には0.5nM未満のKDで結合する、上記抗体。
【0131】
18. 前記抗体が、表面プラズモン共鳴によって測定すると、詳細には表面プラズモン共鳴により直接設定で測定すると、ヒトIL-17Aに、0.5nM未満、0.2nM未満、100pM未満、詳細には50pM未満の解離定数(KD)で結合する、項目17の抗体
【0132】
19. 前述の項目のいずれかの抗体であって、
(e)scFv形式である場合、詳細には前記抗体がpH6.4、150mM NaClのリン酸-クエン酸塩緩衝液中にある場合、示差走査蛍光測定法によって決定される融解温度(Tm)は、少なくとも60℃、詳細には少なくとも62℃、少なくとも65℃、より詳細には少なくとも70℃である;
(f)scFv形式である場合、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、詳細には前記抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中にある場合、5回の連続凍結融解サイクル後、モノマー含有量の損失は5%未満、詳細には3%未満、より詳細には1%未満である;
(g)scFv形式である場合、本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、詳細には前記抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中にある場合、4℃で少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間保存後、モノマー含有量の損失は5%以下、詳細には4%未満、3%未満、2%未満、より詳細には1%未満である、及び/又は
(h)本発明の抗体が10mg/mlの開始濃度である場合、37℃で少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間保存後、モノマー含有量の損失は5%未満である、上記抗体。
【0133】
20. 前記抗体が、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び、特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替の足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、F-star's Modular Antibody Technology(商標))、好ましくはscFVから成る群から選択される、前述の項目のいずれかの抗体。
【0134】
21. 前記scFvが、(i)配列番号24及び配列番号25から成る群から選択されるアミノ酸配列を有し、好ましくは前記scFvが配列番号24のアミノ酸配列を有する;又は(ii)配列番号61及び配列番号62から成る群から選択されるアミノ酸配列を有し、好ましくは前記scFvが配列番号61のアミノ酸配列を有する、項目20の抗体。
【0135】
22. 前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から成る群から選択されるIgGであり、好ましくは前記抗体がIgG1又はIgG4である、項目20の単離された抗体。
【0136】
23. 前記抗体がヒト化されている、前述の項目のいずれかの単離された抗体。
【0137】
24. 多重特異性分子である項目1~23のいずれか1つの抗体。
【0138】
25. 項目24の抗体であって、1本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi-scFv)、タンデムtri-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジダイアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(重鎖と軽鎖の両方のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたdsscFv)、ヘテロ二量体性Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えばKnob-into-Hole抗体(KiH);Fv、scFv、scDb、タンデム-di-scFv、タンデムtri-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、ヘテロ二量体Fcドメイン又は任意の他のヘテロ二量体化ドメインのN末端及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH、及びデュオボディから成る群から選択される、上記抗体。
【0139】
26. 項目1~25のいずれか1つの抗体と医薬的に許容し得る担体とを含む医薬組成物。
【0140】
27. 薬剤として使用するための、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物。
【0141】
28. IL-17Aによって媒介される障害、又はGRO-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物。
【0142】
29. 炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物。
【0143】
30. 以下の疾患の治療に使用するための、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物:癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症。
【0144】
31. IL-17Aによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物の使用。
【0145】
32. 炎症状態又は自己免疫疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物の使用。
【0146】
33. 以下の疾患の治療に使用するための薬剤の製造における、項目1~25のいずれか1つの抗体又は項目26の医薬組成物の使用:癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症。
【0147】
34. IL-17Aによって媒介される障害を治療する方法であって、状態が緩和されるように、有効量の項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物を投与することを含む上記方法。
【0148】
35. IL-17Aによって媒介される障害が炎症状態又は自己免疫疾患である、項目34の方法。
【0149】
36. 項目34の方法であって、IL-17Aによって媒介される障害が、癌、関節炎、関節リウマチ、変形性肘関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性疾患、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症性又は内毒素性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂質異常症である、上記方法。
【0150】
37. 項目1~25の抗体をコードする核酸。
【0151】
38. 項目37の核酸を含むベクター。
【0152】
39. 項目37の核酸又は項目38のベクターを含む宿主細胞。
【0153】
40. 項目1~25の抗体をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、項目1~25の抗体を産生する方法。
【0154】
41. 項目1~25のいずれか1つの抗体、又は項目26の医薬組成物を含むキット。
【0155】
本開示は、前述の態様及び/又は実施態様のいずれか1つ以上のすべての組み合わせ、並びに詳細な説明及び実施例に記載された実施態様のいずれか1つ以上との組み合わせを企図する。
【0156】
本明細書における組成物及び方法の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0157】
図1】標識されたIL-17Aが選別プロセスでの使用に適していることを示す。HT-29アッセイにおける標識IL-17Aの生物活性。標識及び非標識IL-17Aの3倍連続希釈物を、HT-29細胞でGRO-α分泌を誘導する可能性について並行して試験した。標識(IL-17A-RPE)及び非標識(IL-17A)IL-17AのEC50値は、それぞれ82.8ng/ml及び55ng/mlである。
図2】HT-29アッセイにおいてIL-17Aを中和するための、27-07-G02ウサギIgG(A)及び27-31-CO4 IgG(B)の力価を示す。
図3】IL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻害するための、27-07-G02ウサギIgG(A)と27-31-CO4 IgG(B)の力価を示す。
図4】HT-29アッセイにおいてIL-17Aを中和するための、ヒト化cFv A1及びA2(A)、並びにPRO571及びPRO592(B)の力価を示す。
図5】ヒトIL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻害するための、抗IL-17A scFv A1及びA2(A)、並びにPRO571及びPRO592(B)の力価(ELISA)を示す。
図6-I】scFv A1(A)、及びscFv PRO571、及びPRO592(B)の標的特異性を示す。ビオチン化IL-17AとscFvとの相互作用をIL-17B~IL-17Fにより阻害する可能性を競合ELISAにより分析した。IL-17A及びIL-17B~IL-17Fの用量依存性作用が示される。
図6-II】scFv A1(A)、及びscFv PRO571、及びPRO592(B)の標的特異性を示す。ビオチン化IL-17AとscFvとの相互作用をIL-17B~IL-17Fにより阻害する可能性を競合ELISAにより分析した。IL-17A及びIL-17B~IL-17Fの用量依存性作用が示される。
図7】scFv A1及びA2(A)、並びにscFv PRO571及びPRO592(B)のDSF測定値からの熱展開曲線を示す。得られるTm値は、データをボルツマン方程式にフィッティングして遷移の中点を得ることによって決定されている。
図8A】>10mg/mLの濃度で3つの温度(37℃、4℃、及び-80℃)で4週間実施されたscFvA1(A)とscFv PRO571、及びPRO592(B)の保存安定性試験を示す。様々な保存温度での経時的なモノマー含有量を左側に示し、様々な保存温度(4℃(左)と37℃(右))での経時的なタンパク質濃度を右側に示す。モノマー含有量はSE-HPLCピーク面積の積分によって決定され、タンパク質濃度はUV280測定によって計算された。
図8B】>10mg/mLの濃度で3つの温度(37℃、4℃、及び-80℃)で4週間実施されたscFvA1(A)とscFv PRO571、及びPRO592(B)の保存安定性試験を示す。様々な保存温度での経時的なモノマー含有量を左側に示し、様々な保存温度(4℃(左)と37℃(右))での経時的なタンパク質濃度を右側に示す。モノマー含有量はSE-HPLCピーク面積の積分によって決定され、タンパク質濃度はUV280測定によって計算された。
図9】5回にわたる凍結及び融解サイクルの繰り返しにおける、scFv A1(A)、及びscFv PRO571、及びPRO592(B)のモノマー含有量の追跡を示す。
図10】三重特異性形式を示す。A、Fab-(scFv)2分子の3つのドメインの並べ換え変種が設計された。トリボディ形式の位置CLとCH1でのScFv融合体は同等であると見なされ、この形式の3つの変種が得られる。B、3つのscDb-scFvドメイン並べ換え変種が設計された。ドメインの特異性は下部に示される。可変ドメインとドメイン間ジスルフィド結合を連結するGly-Serリンカーは、灰色のカギ型で示されている。
図11】リード化合物製造の一般的なプロセスを示す。A、最終的なA3~A5(左のグラフ)及びA6~A8(右のグラフ)試料のSE-HPLCトレースの重ね合わせ。保持時間が7~8分のピークは、それぞれの分子のモノマーの見かけの分子量に対応する。保持時間が10分より大きいピークは、緩衝液及び塩に関連するアーティファクトである。B、非還元(左)及び還元(右)緩衝液条件下でのA3~A8のSDS-PAGE分析。分子量標準物質は中央のレーンに添加された。非還元条件下のバンドは、A3~A5の場合は約100kDa、A6~A8の場合は約75kDaの予測分子量にそれぞれ対応する。予測通り、ヘテロ二量体のFab-(scFv)2抗体形式の場合、(A3~A5)バンドは還元条件下で約50kDaにシフトするが、分子量が約75kDaのA6~A8バンドは還元条件下でも観察できる。
図12図12は、L929アッセイにおいてTNFαを中和する力価を示す。細胞計数キット-8を使用して測定された吸光度は、三重特異性分子A3~A8濃度(nM単位)の関数として表される。A13(親の二重特異性、HSA結合剤及びTNFα阻止剤)を参照として使用した。
図13】ヒトTNFα及びカニクイザルTNFαを中和する力価の比較を示す。ヒトTNFα又はカニクイザルTNF-αの存在下で細胞計数キット-8を使用して測定された吸光度は、A5及びA7濃度に対して関数で示される。
図14】HT-29アッセイにおけるHSAの存在下でのTNF-α及びIL-17Aの同時阻止を示す。6つの三重特異性分子A3~A8によるTNFα及びIL-17Aのインビトロ同時阻止を、HT-29細胞ベースのアッセイを使用して1mg/mlのHSAの存在下で分析した。セクキヌマブ(IL-17A阻止剤)及びA13(親の二重特異性、HSA結合剤及びTNFα阻止剤)を参照として使用した。得られたGRO-α分泌データは、分子濃度nM(A、C、及びE)及びng/ml(B、D、及びF)の関数で表される。「TNFαなし」は、IL-17Aのみを添加した場合のGRO-α分泌を示し、TNFα阻止による最大の効果に対応する。「IL17aなし」は、TNFαのみを添加した場合のGRO-α分泌を示し、IL-17A阻止による最大の効果に対応する。「IL17aなし、TNFaなし」は、IL-17A及びTNFαが添加されていない場合のバックグラウンドGRO-α分泌を示し、TNFα及びIL-17Aの同時阻止による最大の効果に対応する。
図15】競合ELISAにおけるIL-17RAへのIL-17Aの結合の中和を示す。IL-17RAへのIL-17Aの結合を評価する競合ELISAによって測定された吸光度は、6つの三重特異性分子(A3~A8)の濃度の増加の関数で表される。参照としてセクキヌマブ(IL-17A阻止剤)を使用した。
図16】SPRによるヒトTNFα、ヒトIL-17A、及びHSAへの同時結合を示す。異なる分析物(ヒトTNFα、ヒトIL-17A、及びHSA)の6つの可能な順序の注入をMAAS-1 SPR装置で実施し、得られたセンサーグラムが示される。三重特異性分子をセンサーチップに固定化し(チャネル1BのA3、Ch1B、チャネル2BのA4、Ch2B、チャネル3BのA5、Ch3B、チャネル4BのA6、Ch4B、チャネル5BのA7、Ch5B、チャネル6BのA8、Ch6B)、抗原を順次注入した。
図17】37℃、4℃、及び-80℃の温度で、10mg/mLのタンパク質濃度で4週間実施した保存安定性試験を示す。モノマー含有量%及びモノマー損失%の経時変化を、d0、d2、d7、d14、d21、及びd28に記録した。
図18】A5(左)、A7(中央)、及びA8(右)のd0(黒、影付き)、及びd28(灰色)安定性試料のSE-HPLCトレースの重ね合わせを示す。
図19】静脈内(n=3)及び皮下(n=3)投与、及びADA分析後の、カニクイザルにおけるA7の薬物動態プロフィールを示す。
図20】モリソンL構築物A14及びA15の概略構造を示す。
図21】scDb-scFv A7について動的光散乱によって決定された可溶性複合体の平均サイズを示す。
図22】A14の動的光散乱によって決定された可溶性複合体の平均サイズを示す。
図23】A15の動的光散乱によって決定された可溶性複合体の平均サイズを示す。
図24】scDb-scFv A7の可溶性複合体のタンパク質濃度回収を示す。
図25】A14の可溶性複合体のタンパク質濃度の回収を示す。
図26】A15の可溶性複合体のタンパク質濃度の回収を示す。
【発明の詳細な説明】
【0158】
本開示は、IL-17A及びTNFαに特異的に結合し、改良された親和性、有効性、及び選択性を有する多重特異性抗体分子の発見に基づく。さらに本発明者らが、前記抗体はTNFαと免疫複合体を形成せず、従って潜在的に免疫原性が低いことを証明したように、本開示の多重特異性抗体は改良された安全性プロフィールを有する。他の多重特異性物(例えば、Covagen、Abbvieなど)の二価結合により、免疫原性又は他の悪影響をもたらす可能性のある免疫複合体形成の可能性が高い。対照的に、本開示の一価の二重及び三重特異性構築物は、そのような複合体を形成する可能性が低く、従って抗薬物抗体及び免疫関連の有害作用をもたらす可能性は低い。さらに、本開示の多重特異性抗体は、改良された生物理学的特性、例えば、開発可能性及び比較的不純物が少ない大量の生産性、並びに優れた安定性を有する。
【0159】
本開示はさらに、ヒトIL-17Aタンパク質に特異的に結合する抗体、並びに医薬組成物、製造方法、及びそのような抗体及び医薬組成物の使用方法を提供する。
【0160】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0161】
「含む(comprising)」及び「含む(including)」という用語は、特に他に明記しない限り、本明細書ではそれらの制限のない非限定的な意味で使用される。従って、そのような後者の実施態様に関して、「含む(comprising)」という用語は、より狭い用語「から成る(consisting of)」を含む。
【0162】
本発明を説明する文脈(特に以下の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の参照は、本明細書に別段の記載がない限り又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。例えば「細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。複数形が化合物、塩などに使用される場合、これは、単一の化合物、塩なども意味すると解釈される。
【0163】
本開示の多重特異性抗体
1つの態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む単離された多重特異性抗体を提供する。
【0164】
「TNFα」又は「TNF-α」又は「腫瘍壊死因子」という用語は、特にヒトTNFαを指す。TNFαは、可溶性タンパク質として、また細胞表面のII型ポリペプチドとして発現される膜貫通型TNFαと呼ばれる前駆体として見いだされる。膜貫通型TNFαは、残基Ala76とVal77の間でTNFα変換酵素(TACE)などのメタロプロテイナーゼによって処理され、157アミノ酸残基のTNFαの可溶型が放出される。可溶性TNFαは、17kDaの切断されたモノマーのホモ三量体である。膜貫通型TNFαは、26kDの非切断モノマーのホモ三量体としても存在する。本明細書で使用される「TNFα」という用語は、可溶型及び膜貫通型の両方を包含する。「TNFα」という用語は、特に本明細書で配列番号134として複製されたUniProt ID番号P01375を有するヒト膜貫通型TNFαを指す。「TNFα」という用語は、特に本明細書で配列番号135として複製されたUniProt ID番号P01375を有する可溶性膜貫通型TNFαを指す。
【0165】
適切には、本開示の抗体は単離された抗体である。本明細書で使用される「単離された抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、IL-17A及びTNFαのみに特異的に結合する単離された抗体は、IL-17A及びTNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、IL-17A及びTNFαに特異的に結合する単離された抗体は、他の種からのIL-17A及びTNFα分子などの他の抗原に対して交差反応性を有する可能性がある。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質及び/又は化学物質を実質的に含まない場合がある。
【0166】
適切には、本開示の抗体はモノクローナル抗体である。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、同じ遺伝的供給源に由来するアミノ酸配列と実質的に同一であるか又はそれに由来する抗体を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する結合特異性及び親和性、又は特定のエピトープに対する結合特異性及び親和性を示す。
【0167】
本開示の抗体には、特に限定されるものではないが、キメラ抗体及びヒト化抗体が含まれる。
【0168】
「キメラ抗体」という用語は、(a)定常領域又はその一部が、改変、置換、又は交換されており、従って抗原結合部位(可変領域)が、異なる又は改変されたクラス、エフェクター機能、及び/又は種の、又はキメラ抗体に新しい特性を与える完全に異なる分子、例えば酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などの定常領域に連結されているか;又は(b)可変領域又はその一部が、改変、置換、又は異なるか又は改変された抗原特異性を有する可変領域と交換されている、抗体分子である。例えば、マウス抗体は、その定常領域をヒト免疫グロブリンからの定常領域で置き換えることによって改変することができる。ヒト定常領域を用いる置換により、キメラ抗体は、元のマウス抗体と比較して、ヒトにおける抗原性を低下させながら、抗原を認識するその特異性を保持することができる。
【0169】
本明細書で使用される「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体の反応性を保持しながら、ヒトにおいて免疫原性が低い抗体である。これは、例えば非ヒトCDRを保持し、抗体の残りの部分をそれらのヒト対応物(すなわち、定常領域、及び可変領域のフレームワーク部分)で置き換えることによって達成することができる。追加のフレームワーク領域の修飾は、ヒトフレームワーク配列内、並びに別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列内で行うことができる。本開示のヒト化抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的突然変異誘発、又はインビボでの体細胞突然変異、又は安定性若しくは製造を促進するための保存的置換によって導入される突然変異)。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Morrison and Oi, Adv. Immunol., 44:65-92, 1988; Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536, 1988; Padlan, Molec. Immun., 28:489-498, 1991; 及び Padlan, Molec. Immun., 31: 169-217, 1994 を参照されたい。ヒト工学技術の他の例には、特に限定されるものではないが、米国特許第5,766,886号に開示されたXoma技術が含まれる。
【0170】
本明細書で使用される「組換えヒト化抗体」という用語は、組換え手段によって調製、発現、作成、又は単離された本開示のすべてのヒト化抗体、例えば動物(例えばウサギ)から単離された抗体、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成、又は単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域(存在する場合)を有する。しかしながら、そのような抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞突然変異誘発)を受けやすく、従って組換え抗体のVH(抗体重鎖可変領域)及びVL(抗体軽鎖可変領域)のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列のVH及びVL配列に由来し、関連しているが、ヒト抗体生殖系列内に自然に存在しない可能性がある配列である。
【0171】
適切には、本開示の抗体又はその結合ドメインはヒト化されている。適切には、本開示の抗体又はその結合ドメインはヒト化されており、ウサギ由来のCDRを含む。
【0172】
本明細書で使用される「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つ以上の異なる標的(例えば、IL-17A及びTNFα)上の2つ以上の異なるエピトープに結合するか、又は同じ標的の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。本開示の「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の結合ドメイン、例えば2つ又は3つの結合ドメインを有する。「多重特異性抗体」という用語は、二重特異性、三重特異性、四重特異性、五重特異性、及び六重特異性を含む。本明細書で使用される「二重特異性抗体」という用語は、例えば2つの異なる標的(例えば、IL-17A及びTNFα)上、又は同じ標的上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。本明細書で使用される「三重特異性抗体」という用語は、例えば3つの異なる標的(例えば、IL-17A、TNFα、及びHSA)上の、又は同じ標的上の3つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0173】
「多価抗体」という用語は、複数の原子価を有する単一の結合分子を指し、ここで「原子価」は、同一の標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数として説明される。「価」は、分子内の抗原に特異的な特定の数の結合ドメインの存在を指す。従って、「一価」、「二価」、「四価」、及び「六価」という用語は、それぞれ分子内の抗原に特異的な1つ、2つ、4つ、及び6つの結合ドメインの存在を指す。本明細書で使用される「一価抗体」という用語は、IL-17A又はTNFαなどの標的分子上の単一のエピトープに結合する単一の抗原結合部分を有する抗体を指す。本明細書で使用される「二価抗体」という用語は、それぞれが同一のエピトープに結合する2つの抗原結合部分を有する抗体を指す。
【0174】
本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに結合するために、一価又は多価、例えば、二価、三価、若しくは四価、好ましくは一価であり得る。
【0175】
本開示の多重特異性抗体は、TNFαに結合するために、一価又は多価、例えば、二価、三価、若しくは四価、好ましくは一価であり得る。TNFαは三量体を形成するため、潜在的に三価であり、TNFαに特異的に結合するいくつかのドメインを有する抗体、例えばTNFαに結合するための二価、三価、又は多価抗体と、三次元免疫複合体を形成することができる。説明のために、TNFとインフリキシマブ(キメラTNFα IgG抗体)及びエタネルセプト(IgG1 FcとのTNFR2二量体融合タンパク質)の間で、異なる抗原/抗体比で形成された免疫複合体のサイズの研究は、各抗体が、固有のサイズプロフィールを有する免疫複合体を生成することを示した(Kim MS, et al., J Mol Biol. 2007;374:1374-1388)。従って、潜在的な高い免疫原性は、TNFαを標的とする治療用抗体の懸念事項の1つである。従って、好適な実施態様において、本開示の多重特異性抗体はTNFαへの結合について一価である。
【0176】
適切には、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する1つのみのドメインを、及び/又はTNFαに特異的に結合する1つのみのドメインを含む。好適な実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、TNFαに特異的に結合する1つのみのドメインを含む。適切には、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する1つのみのドメインと、TNFαに特異的に結合する1つのみのドメインとを含む。特定の実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインと、TNFαに特異的に結合する第2ドメインと、及び任意選択的に、2つのドメイン間のポリペプチドリンカーとから成る。特定の実施態様において、任意のポリペプチドリンカーが存在し、4~25個のアミノ酸残基を有するポリペプチドから成る。
【0177】
適切には、本開示の多重特異性抗体は、有利には、ヒトTNFα及びヒトIL-17Aの生物活性を中和することができる。本明細書で使用される「中和する」という用語は、部分的又は完全であり得る生物学的シグナル伝達活性の低下を指すことが理解されるであろう。中和を決定するための適切なアッセイは当技術分野で知られており、そのようなアッセイのいくつかは本明細書の実施例に提供されている。
【0178】
1つの実施態様において、本開示の抗体又はその第1ドメインは、詳細にはELISAによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fよりも、ヒトIL-17Aに選択的に結合する。本明細書で使用される「選択的に結合する」という用語は、抗体、組成物、製剤などがIL-17B/C/D/E/Fに有意には結合しないが、IL-17Aには結合することを意味するものとする。選択的結合は、高親和性(又は低KD)と低~中程度のIC50によって特徴付けられ、これは、通常低親和性(又は高KD)で中程度~高IC50を有する非特異的結合とは区別される。典型的には、抗体が10-7M未満のKDで結合する場合、結合は選択的であると見なされる。適切には、本開示の抗体又はその第1ドメインは、SPRによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17Fに結合するより高い親和性又はより低いKDで、ヒトIL-17Aに結合する。適切には、本開示の抗体又はその第1ドメインは、ELISAによって測定すると、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fに対するIC50は、IL-17Aに対するIC50よりも少なくとも100倍大きく、例えば、少なくとも200倍大きく、少なくとも300倍大きく、少なくとも400倍大きいIC50値を有する。1つの実施態様において、本開示の抗体又はその第1ドメインは、詳細にはSPR及び/又はELISAによって測定すると、ヒトIL-17Aには結合するが、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fには結合しない。
【0179】
さらなる実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、IL-17A及びTNFαとは異なる抗原に対して特異性を有する第3ドメインをさらに含む。適切には、本開示の多重特異性抗体は、三重特異性抗体である。本明細書で使用される「三重特異性抗体」は、3つの抗原結合ドメインを有する抗体分子を指し、例えば、1つの結合ドメインはヒトTNFαに結合し、別の結合ドメインはヒトIL-17Aに結合し、さらに別の結合ドメインは、抗体分子の半減期を延長することができる抗原、例えばヒト血清アルブミンに結合する。
【0180】
詳細には、本開示の多重特異性抗体は、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する第3ドメインをさらに含む。
【0181】
本発明者らは、驚くべきことに、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む本開示の多重特異性抗体への、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインの付加が、以下の有益な効果を有することを見出した:
(i)ヒト血清アルブミンに特異的に結合する少なくとも1つのドメインを含む本開示の多重特異性抗体の血清半減期の延長;及び
(ii)本開示の多重特異性抗体へのヒト血清アルブミン結合ドメインの付加は、他の結合ドメインの機能、例えばIl-17A及びTNFα結合ドメインの中和活性と、適合性がある。
【0182】
「HSA」という用語は、詳細にはUniProt ID番号P02768のヒト血清アルブミンを指す。ヒト血清アルブミン(HSA)は、585個のアミノ酸から構成されるヒト血清中の66.4kDaの豊富なタンパク質(総タンパク質の50%)である(Sugio, Protein Eng, Vol. 12, 1999, 439-446)。多機能性HSAタンパク質は、脂肪酸、金属イオン、ビリルビン、及びいくつかの薬物などの多くの代謝物の結合と輸送を可能にするその構造に関連している(Fanali, Molecular Aspects of Medicine, Vol. 33, 2012, 209-290)。血清中のHSA濃度は約3.5~5g/dLである。アルブミン結合抗体は、例えば、薬物又はそこに結合したタンパク質のインビボ血清半減期を延長するために使用することができる。
【0183】
適切には、1つの実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及びヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含む。本開示の多重特異性抗体は、ヒト血清アルブミンに結合するために、一価又は多価、例えば二価、三価、又は四価、好ましくは一価であり得る。適切には、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する1つのみのドメイン、TNFαに特異的に結合する1つのみのドメイン、及びヒト血清アルブミンに特異的に結合する1つのみのドメインを含む。特定の実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメイン、及び任意選択的に、2つのドメイン間のポリペプチドリンカーから成る。特定の実施態様において、任意選択的なポリペプチドリンカーが存在し、4~25個のアミノ酸残基を有するポリペプチドから成る。
【0184】
有利には、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及び任意選択的に、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含み、ここで、前記ドメインはこれらの各抗原又は受容体に同時に結合することができる。
【0185】
本開示の多重特異性抗体のドメイン、例えば前記第1ドメイン、前記第2ドメイン、前記第3ドメインは、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチン、及び抗体の定常領域(例えば、-star's Modular Antibody Technology(登録商標))に組み込まれている結合部位を含む代替足場に基づく結合ドメインから成る群から、好ましくはFab、Fv、及びscFvから成る群から独立して選択され、より好ましくは、ここで、前記第1ドメイン及び/又は前記第2ドメイン及び/又は前記第3ドメインはFv又はscFvである。
【0186】
本開示の多重特異性抗体は、任意の適切な形式であり得る。1つの実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、1本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi-scFv)、タンデムtri-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジダイアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(重鎖と軽鎖の両方のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えばKnob-into-Hole抗体(KiH);Fv、scFv、scDb、タンデム-di-scFv、タンデムtri-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、ヘテロ二量体Fcドメイン又は任意の他のヘテロ二量体化ドメインのいずれかのN末端及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH及びデュオボディから成る群から選択される形式、好ましくはトリボディ又はscDb-scFvである。
【0187】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)内でVLに接続されたVHを含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、これらのドメインは別の鎖の相補的ドメインとの対合を強いられ、2つの抗原結合部位が作成される。ダイアボディは二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディは、より詳細には、例えばEP404097、WO93/01161、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003), 及び Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6444-6448 (1993)に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。二重特異性scDb、詳細には二重特異性モノマーscDbは、詳細には2つの可変重鎖ドメイン(VH)又はそれらの断片と、2つの可変軽鎖ドメイン(VL)又はそれらの断片を含み、これらは、リンカーL1、L2、及びL3によって、VHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB、又はVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHBの順に接続され、ここで、VLA及びVHAドメインは一緒に第1の抗原の抗原結合部位を形成し、VLB及びVHBは一緒に第2の抗原の抗原結合部位を形成する。リンカーL1は、詳細には2~10アミノ酸、より詳細には3~7アミノ酸、最も詳細には5アミノ酸のペプチドであり、リンカーL3は、詳細には1~10アミノ酸、より詳細には2~7アミノ酸、詳細には5アミノ酸のペプチドである。中間リンカーL2は、詳細には10~40アミノ酸、より詳細には15~30アミノ酸、そして最も詳細には20~25アミノ酸のペプチドである。
【0188】
1つの実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、免疫グロブリンFc領域ポリペプチドを含む。本明細書において「Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域及び変種Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。適切な天然配列Fc領域には、ヒトIgG1、IgG2(IgG2A、IgG2B)、IgG3、及びIgG4が含まれる。「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明する。好ましいFcRは、天然配列のヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体に結合するもの(ガンマ受容体)であり、FcγRI、FcyRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変種及び代替的にスプライシングされた形態を含み、FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含む(M. Daeron, Annu. Rev. Immunol. 5:203-234 (1997を参照)。FCRは、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-92 (1991);Capet et al, Immunomethods 4: 25-34 (1994);及び de Haas et al, J. Lab. Clin. Med. 126: 330-41 (1995) の総説に記載されている。将来同定されるものを含む他のFcRは、本明細書では「FcR」という用語に含まれる。「Fc受容体」又は「FcR」という用語はまた、新生児受容体FcRnを含み、これは母体のIgGの胎児への輸送に関与する。Guyer et al, J. Immunol. 117: 587 (1976) and Kim et al., J. Immunol. 24: 249 (1994)。FcRnへの結合を測定する方法は知られている(例えば、Ghetie and Ward, Immunol. Today 18: (12): 592-8 (1997); Ghetie et al, Nature Biotechnology 15 (7): 637-40 (1997); Hinton et al, J. Biol. Chem. TJI (8): 6213-6 (2004); WO2004/92219 (Hinton et al)を参照)。インビボでのFcRnへの結合及びヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばトランスジェニックマウス又はヒトFcRnを発現するトランスフェクトされたヒト細胞株において、又は変種Fc領域を有するポリペプチドが投与された霊長類においてアッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合を改良又は減少させた抗体変種を記載している。例えば、Shields et al, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)Shields et al, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)を参照されたい。
【0189】
同じ又はより小さい分子量で特異性/官能性の数を増やすために、Fv、Fab、Fab'、及びF(ab')2断片などの抗体断片、及び他の抗体断片を含む抗体を使用することが有利である。これらのより小さな分子は、抗体全体の抗原結合活性を保持し、免疫グロブリン分子全体と比較して、改良された組織浸透及び薬物動態特性を示すこともできる。このような断片は、免疫グロブリン全体に比べて多くの利点を示すように見えるが、インビボで長い半減期を与えるFcドメインを欠いているため、血清からのクリアランス速度が速くなる(Medasan et al., 1997, J. Immunol. 158:2211-2217)。低分子量の分子は、標的組織(固形癌など)により効率的に浸透するため、同じ又はより低用量で有効性が向上する可能性がある。適切には、本開示の抗体は、免疫グロブリンFc領域ポリペプチドを含まず、任意選択的に、詳細には前記多重特異性抗体がヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含む場合、CH1及びCL領域を含まない。
【0190】
適切には、本開示の抗体は、トリボディ形式(Fab-(scFv)2)であり得る。適切には、第1ドメイン及び/又は第2ドメイン及び/又は第3ドメインは、Fab又はscFvドメインである。特に、本開示の多重特異性抗体は、1つのFabドメイン及び2つのscFvドメインを有し、詳細には、scFvドメインはFabドメインの各鎖のカルボキシ末端に融合される。本発明者らは、薬力学的及び生物理学的特性の観点から、三重特異性形式における個々の結合ドメインの最適な相対位置を試験し、驚くべきことに、本開示の多重特異性抗体が、トリボディ形式の場合、TNFαに特異的に結合する第2ドメインがFabドメインであり、IL-17A及びHSAにそれぞれ特異的に結合する第1及び第3ドメインが、前記Fabドメインに融合されたscFvドメインである場合、有利な特性を有することを見出した。
【0191】
好ましくは、本開示の抗体は、scDb-scFv形式である。「scDb-scFv」という用語は、1本鎖Fv(scFv)断片が、柔軟なGly-Serリンカーによって1本鎖ダイアボディ(scDb)に融合されている抗体形式を指す。適切には、第1ドメイン及び/又は第2ドメイン及び/又は第3ドメインは、Fv又はscFvドメインである。詳細には、本開示の多重特異性抗体は、scDb-scFv形式である場合、他の2つのドメインを含むscDbにC末端で融合された1つのscFvドメインを有する。本開示の多重特異性抗体は、scDb-Fv形式である場合、以下の式で表すことができる:
【0192】
VLA-L1-VHC-L2-VLC-L3-VHA-L4-VLB-L5-VHB、又は
VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHC、又は
VLC-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHC-L4-VLA-L5-VHA、又は
VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA-L4-VLC-L5-VHC、
好ましくは、
VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHC、又は
VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA-L4-VLC-L5-VHC、
より好ましくは、
VLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHB-L4-VLC-L5-VHC、
【0193】
ここで、VLA及びVHAは、それぞれ第1ドメイン(IL-17Aに特異的に結合する)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり;VLB及びVHBは、それぞれ第2ドメイン(TNFαに特異的に結合する)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり;VLC及びVHCは、それぞれ第3ドメイン(HSAに特異的に結合する)の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域であり、ここで、L1、L2、L3、L4、及びL5は、ポリペプチドリンカーである。
【0194】
本開示の文脈において、「ポリペプチドリンカー」という用語は、それぞれがリンカーの一端に結合している2つのドメインを接続しているペプチド結合によって連結された、アミノ酸残基の鎖から成るリンカーを指す。ポリペプチドリンカーは、2つの分子が互いに正しいコンフォメーションをとり、こうして目的の活性を保持するように、2つの分子を連結するのに十分な長さを持たなければならない。特定の実施態様において、ポリペプチドリンカーは、2から30個のアミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30個のアミノ酸残基)の連続鎖を有する。さらに、ポリペプチドリンカーに含めるために選択されたアミノ酸残基は、ポリペプチドの活性を著しく妨害しない特性を示さなければならない。従って、リンカーペプチドは全体として、ポリペプチドの活性と一致しなかったり、内部折り畳みを妨害したり、モノマードメインの結合を大きく妨げるであろう1種以上のモノマーのアミノ酸残基と結合又は他の相互作用を形成したりする電荷を示してはならない。特定の実施態様において、ポリペプチドリンカーは非構造化ポリペプチドである。有用なリンカーには、グリシン-セリン又はGSリンカーが含まれる。「Gly-Ser」又は「GS」リンカーとは、直列のグリシンとセリンのポリマー(例えば、(Gly-Ser)n、(GSGGS)n(GGGGS)n及び(GGGS)nを含み、ここでnは、少なくとも1の整数)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、及びシェーカーカリウムチャネルのテザーなどの他の柔軟なリンカー、及び当業者には理解されるように、その他の様々な柔軟なリンカーである。グリシン-セリンポリマーのアミノ酸は両方とも比較的構造化されておらず、従って成分間の中性テザーとして機能することができる可能性があるため、グリシン-セリンポリマーが好ましい。第2に、セリンは親水性であるため、球状のグリシン鎖である可能性のあるものを可溶化することができる。第3に、同様の鎖は、1本鎖抗体などの組換えタンパク質のサブユニットを結合するのに有効であることが証明されている。
【0195】
適切には、本開示の前記L1及びL3は、配列番号132に記載されるものである。適切には、本開示の前記L2、L4、及びL5は、配列番号23に記載されるものである。
【0196】
本発明者らは、薬力学的及び生物理学的特性の観点から、三重特異性形式における個々の結合ドメインの最適な相対位置を試験し、驚くべきことに、本開示の多重特異性抗体は、scDb-scFv形式の場合、それぞれIL-17A及びTNFαに特異的に結合する第1ドメイン及び前記第2ドメインがscDbを形成し、HSAに特異的に結合する前記第3ドメインがscFvであることを見いだした。
【0197】
本開示の多重特異性抗体は、以下の有利な特性を有する:
(a)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、セクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば5より大きい、10より大きい、15より大きい、20より大きい、25より大きい、30より大きい、35より大きい、40より大きい、45より大きい、好ましくは50より大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって決定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって決定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比であり;及び
【0198】
(b)HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定された、配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも1、例えば1より大きい、1.5より大きい、2より大きい、2.5より大きい、3より大きい、3.5より大きい、好ましくは4より大きい、より好ましくは4.5より大きい力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって決定された配列番号149(A13)の前記scDbのIC50値(nM)と、HT-29アッセイによって決定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比であり;及び
【0199】
(c)任意選択的に、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば3より大きい、4より大きい、5より大きい、6より大きい、7より大きい、8より大きい、9より大きい、好ましくは10より大きい力価(相対力価)で、IL-17AとIL-17RAとの相互作用を阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって決定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、ELISAによって決定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比であり;及び
【0200】
(d)任意選択的に、L929アッセイで決定された配列番号149(A13)のscDbの力価と比較して、少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1の力価(相対力価)で、TNFαを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、L929アッセイによって測定された配列番号149の前記scDbのIC50値(nM)と、L929アッセイによって測定された前記多重特異性抗体のIC50値(nM)との比であり;及び/又は
【0201】
(e)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満の解離定数(KD)で、ヒトIL-17Aに結合し、及び任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満のKDで、カニクイザルIL-17Aに結合する;
【0202】
(f)表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満、より好ましくは025nMの解離定数(KD)で、ヒトTNFαに結合する;及び
【0203】
(g)任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、ヒト血清アルブミンに結合し、任意選択的に、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、例えば4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)で、カニクイザル血清アルブミンに結合する。
【0204】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、単一の抗原性部位での抗体と抗原との相互作用の強さを指す。各抗原性部位内で、抗体「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を介して多数の部位の抗原と相互作用する。相互作用が多いほど、親和性が強い。
【0205】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との非共有相互作用の合計の強さを指す。特に他に明記しない限り、本明細書で使用される「結合親和性」、「に結合する」、「に結合する」、又は「に結合している」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は一般に抗原にゆっくり結合し、容易に解離する傾向があり、高親和性抗体は一般に抗原に速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、それらのいずれも本開示の目的のために使用することができる。結合親和性すなわち結合強度を測定するための特定の説明的かつ例示的な実施態様を以下に記載する。
【0206】
本明細書で使用される「kassoc」、「ka」、又は「kon」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すことを意図し、一方、本明細書で使用される「kdis」、「kd」、又は「koff」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことを意図している。1つの実施態様において、本明細書で使用される「KD」という用語は解離定数を指すことを意図しており、これは、kd対kaの比(すなわち、kd/ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。本開示による「KD」若しくは「KD値」又は「KD」若しくは「KD値」は、1つの実施態様において、実施例に記載されるように、MAAS-1 SPR装置(SierraSensors)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって測定される。抗体の結合親和性は、例えば解離定数(KD)によって決定され得る。より強い親和性はより低いKDによって表され、より弱い親和性はより高いKDによって表される。
【0207】
従って、適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、1pM~10nM、1pM~7nM、1pM~5nM、1pM~4nM、1pM~3nM、1pM~2.5nM、1pM~2nM、1pM~1.5nM、1pM~1nM、好ましくは1pM~0.5nMの解離定数(KD)でヒトIL-17Aに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~500pMの解離定数(KD)でヒトIL-17Aに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満の解離定数(KD)でヒトIL-17Aに結合する。適切には、本開示の抗体は、1nM未満の解離定数(KD)でヒトIL-17Aに結合する。適切には、本開示の抗体は、0.5nM未満の解離定数(KD)でヒトIL-17Aに結合する。さらなる実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、10nM未満、例えば7nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満のKDでカニクイザルIL-17Aに結合する。
【0208】
適切には、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、1pM~10nM、1pM~7nM、1pM~5nM、1pM~4nM、1pM~3nM、1pM~2.5nM、1pM~2nM、1pM~1.5nM、1pM~1nM、好ましくは1pM~0.5nM、より好ましくは1pM~0.25nMの解離定数(KD)でヒトTNFαに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~500pM、好ましくは1~250pMの解離定数(KD)でヒトTNFαに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、好ましくは0.5nM未満、より好ましくは0.25nM未満の解離定数(KD)でヒトTNFαに結合する。適切には、本開示の抗体は、0.5nM未満の解離定数(KD)でヒトTNFαに結合する。適切には、本開示の抗体は、0.25nM未満の解離定数(KD)でヒトTNFαに結合する。
【0209】
適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、1pM~10nM、1pM~7nM、1pM~5nM、1pM~4nM、1pM~3nM、好ましくは1pM~2nMの解離定数(KD)でヒト血清アルブミンに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~2000pMの解離定数(KD)でヒト血清アルブミンに結合する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満の解離定数(KD)でヒト血清アルブミンに結合する。適切には、本開示の抗体は、2nM未満の解離定数(KD)でヒト血清アルブミンに結合する。さらなる実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、10nM未満、例えば7nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、好ましくは2nM未満のKDでカニクイザル血清アルブミンに結合する。
【0210】
適切には、本開示の抗体は有益な生物理学的特性を有する。
(a)示差走査蛍光測定法によって決定される、pH6.4、150mM NaClのリン酸-クエン酸緩衝液中で、少なくとも55℃、好ましくは少なくとも58℃、より好ましくは少なくとも60℃の融解温度(Tm)を有する;
(b)前記多重特異性抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、5回の連続した凍結融解サイクル後に、5%未満、例えば4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%以下のモノマー含有量の損失を有する;
(c)前記多重特異性抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間、4℃で保存した後、10%未満、好ましくは5%未満のモノマー含有量の損失を有する;及び/又は
(d)前記多重特異性抗体がリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中で10mg/mlの開始濃度であるとき、少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間、37℃で保存した後、20%未満、好ましくは15%未満のモノマー含有量の損失を有する。
【0211】
融解温度(Tm)は、既に記載されているように示差走査蛍光測定法(DSF)によって決定される(Egan, et al., MAbs, 9(1) (2017), 68-84; Niesen, et al., Nature Protocols, 2(9) (2007) 2212-2221)。熱展開の遷移の中点は、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orangeを使用した示差走査蛍光測定法(DSF)によって決定される(Wong & Raleigh, Protein Science 25 (2016) 1834-1840を参照)。pH6.4のリン酸-クエン酸緩衝液中の試料は、100μlの総量で50μg/mLの最終タンパク質濃度と5×SYPRO(登録商標)Orangeの最終濃度で調製される。25マイクロリットルの調製試料を白壁のAB遺伝子PCRプレートに三重測定で加える。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCR装置で実施され、蛍光発光はソフトウェアのカスタム色素較正ルーチンを使用して検出される。試験試料を含むPCRプレートを、25℃から96℃まで1℃刻みで温度勾配に付し、各温度上昇後に30秒休止する。総アッセイ時間は約2時間である。Tmは、ソフトウェアGraphPad Prismによって、数学的な2次導関数法を使用して計算され、曲線の変曲点が計算される。報告されたTmは、3回の測定の平均である。
【0212】
モノマー含有量の損失は、SE-HPLCによって決定される。SE-HPLCは、USPの第621章で概説されているように、固体固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法は、疎水性固定相と水性移動相を利用して、サイズと形状に基づいて分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムのボイド容量(V0)と総透過容量(VT)の間で発生している。SE-HPLCによる測定は、自動試料注入と検出波長280nmに設定されたUV検出器を備えたChromasterHPLCシステム(Hitachi High-Technologies Corporation)で実施される。この装置は、ソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies、バージョン3.3.2 SP2)によって制御され、これは、得られるクロマトグラムの分析もサポートする。タンパク質試料は遠心分離によって清澄化され、オートサンプラー内で6℃の温度に保たれた後、注入される。scFv試料の分析には、Shodex KW403-4Fカラム(昭和電工株式会社、#F6989202)が、標準化された緩衝化生理食塩水移動相(50mMリン酸ナトリウムpH6.5、300mM塩化ナトリウム)を用いて推奨流量0.35mL/分で使用される。注入あたりの標的試料負荷は5μgであった。試料は波長280nmのUV検出器で検出され、データは適切なソフトウェアスイートで記録される。得られたクロマトグラムは、V0~VTの範囲で分析されるため、溶出時間が10分を超える大きいマトリックス関連ピークは除外される。
【0213】
IL-17Aに特異的に結合する例示的ドメイン
本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインを含み、ここで、前記ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0214】
本開示の多重特異性抗体で使用するための、IL-17Aに特異的に結合する適切なドメインは、特に限定されるものではないが、以下を含む:
・ 以下のセクション「本開示の抗IL-17A抗体」に提示されるヒト化モノクローナル抗体又はその結合ドメインであり、その配列は表1に記載されている;
・ AIN457(セクキヌマブとも呼ばれ、米国特許第7,807,155号及びWO2006/013107に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)又はその抗原結合断片;
・ LY2439821(イキセキズマブとも呼ばれる;米国特許第7,838,638号及び第8,110,191号、及びWO2007/070750に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)又はその抗原結合断片;
・ SCH900117又はその抗原結合断片(Merck);
・ RG4943又はその抗原結合断片(Roche);
・ 抗IL-17A抗体又はその抗原結合断片は、WO2006/013107、WO2006/054059、WO2007/070750、WO2007/149032、WO2008/001063、WO2008/021156、WO2010/034443、WO2010/102251、WO2012/018767、WO2014/161570、WO2014/001368、WO2014/122613、WO2015/070697、WO2015/137843、WO2016/048188、WO2016/113557、WO2016/138842、WO2017/068472に開示されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0215】
本開示の多重特異性抗体で使用するための、IL-17Aに特異的に結合する好ましいドメインは、特に限定されるものではないが、以下に提示されるヒト化モノクローナル抗体又はその結合ドメインを含み、これらの配列は表1に記載される。
【0216】
従って、1つの実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを提供し、ここで、前記第1ドメインは、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含み、ここで、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、(i)HCDR1'は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つ、好ましくは配列番号1から選択される配列であり;HCDR2'は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つ、好ましくは配列番号2から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR3'は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つ、好ましくは配列番号3から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR1'は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つ、好ましくは配列番号12から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR2'は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つ、好ましくは配列番号13から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR3'は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つ、好ましくは配列番号14から選択されるアミノ酸配列を有する;又は(ii)ここで、HCDR1'は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つ、好ましくは配列番号39から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR2'は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つ、好ましくは配列番号40から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR3'は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つ、好ましくは配列番号40から選択されるアミノ酸配列あり;LCDR1'は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つ、好ましくは配列番号50から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR2'は、配列番号51、54、及び及び57のいずれか1つ、好ましくは配列番号51から選択されるアミノ酸配列であり;及びLCDR3'は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つ、好ましくは配列番号52から選択されるアミノ酸配列を有する]からの、10個以下のアミノ酸置換、例えば、9個以下のアミノ酸置換、8個以下のアミノ酸置換、7個以下のアミノ酸置換、6個以下のアミノ酸置換、5個以下のアミノ酸置換、4個以下のアミノ酸置換、3個以下のアミノ酸置換、2個以下のアミノ酸置換、1個又は0個のアミノ酸置換、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。
【0217】
特に本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に列記されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、前記ドメインは、表1に記載されたVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVH CDRを含む(又は、あるいは、それらから成る)。
【0218】
適切には、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、前記VHは、順に以下を含む:(i)3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3であって、前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む抗体を提供する;又は(ii)3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3であって、前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む抗体を提供する。
【0219】
本開示はまた、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVL CDRを含む(あるいは、それらから成る)。
【0220】
適切には、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、前記VLは、順に以下を含む:(i)3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3であって、前記LDCR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20いずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む抗体を提供する;又は(ii)3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3であって、前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LDCR3は配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む抗体を提供する。
【0221】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(i)ここで
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し;そして
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;又は
(ii)ここで
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し;そして
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0222】
特に、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、(i)(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、又は(ii)(a)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0223】
IL-17Aに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、そのCDR領域中で、表1に記載の配列に示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。適切には、IL-17Aに特異的に結合する本開示の他のドメインは、表1に記載の配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域中で1、2、3、4、5、又は10個以下のアミノ酸が、アミノ酸の欠失、挿入、又は置換によって変異されている変異アミノ酸配列を含む。変異、例えば置換がCDRのセット内の任意の残基で行われる可能性があり、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3内であってもよい。
【0224】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸、合成アミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝暗号によってコード化されたアミノ酸、並びに後で修飾されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、O-ホスホセリンなどである。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマー及び非天然アミノ酸ポリマーに適用される。特に他に明記しない限り、特定のポリペプチド配列はまた、その保存的に修飾された変種を暗黙のうちに包含する。
【0225】
CDR、抗体VH又はVLドメイン、及び抗体のアミノ酸配列内で、突然変異、例えば置換を行うために必要な技術は、一般に当技術分野で利用可能である。変異、例えば置換を用いて、活性に最小限の又は有益な効果をもたらすと予測される場合もされない場合もある変種配列を作製し、IL-17AあるいはTNFα又はヒト血清アルブミンに結合及び/又はそれを中和する能力、及び/又はその他の望ましい特性について試験するか又は試験されない。CDR内の適切な突然変異、例えば置換は、機能の喪失をもたらさないため、このように突然変異したアミノ酸配列を含む本開示の抗体又はその結合ドメインは、IL-17A、あるいはTNFα又はヒト血清アルブミンに結合及び/又は中和する能力を保持する。例えばそれは、例えば本明細書に記載のアッセイによって測定すると、改変されていない本開示のドメインと同じ定量的結合及び/又は中和能力を保持し得る。適切には、このように変異したアミノ酸配列を含む抗原結合断片の本開示のドメインは、IL-17A、あるいはTNFα又はヒト血清アルブミンに結合及び/又は中和する改良された能力を有し得る。適切には、IL-17Aに特異的に結合し、このように変異したアミノ酸配列を含む本開示の第1ドメインは、HT-29アッセイでGro-α分泌を測定することによって決定されるセクキヌマブの力価と比較して、2より大きい、例えば5より大きい、10より大きい、15より大きい、20より大きい、25より大きい、30より大きい、35より大きい、40より大きい、45より大きい、好ましくは50より大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって決定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって決定された前記多重特異性抗体のIC50値(ng/mL)との比である。
【0226】
さらに、CDR内の適切な突然変異、例えば置換は、本開示の多重特異性抗体の溶解性、安定性、及び高収率の生産性の損失をもたらさないため、こうして変異されたアミノ酸配列を含む本開示の多重特異性抗体又はその結合ドメインは、生物理学的特性を保持している。例えばそれは、例えば本明細書に記載のアッセイによって測定した場合、変更が行われない本開示の多重特異性抗体と同じ高収率の生産性及び/又は安定性で保持し得る。適切には、こうして変異されたアミノ酸配列を含む多重特異性抗体又はその結合ドメインは、改良された生物理学的特性を有し得る。
【0227】
「同一の」又は「同一性」という用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列との関連で、同じである2つ以上の配列又は部分配列を指す。核酸、ペプチド、ポリペプチド、又は抗体配列に関する「パーセント(%)配列同一性」及び「相同性」は、必要に応じて、最大のパーセント配列同一性を達成するために、配列を整列させ、ギャップを導入した後、保存的置換を配列同一性の一部として考慮しない場合の、特定のペプチド又はポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のヌクレオチド又はアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するための整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、又はALIGNソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の範囲内である様々な方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、整列を測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0228】
配列比較では、通常、1つの配列が参照配列として機能し、試験配列と比較される。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列がコンピューターに入力され、必要に応じてサブ配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが指定される。デフォルトのプログラムパラメーターを使用することも、別のパラメーターを指定することもできる。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
【0229】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムの2つの例は、BLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ Altschul et al., Nuc. AcidsRes. 25:3389-3402, 1977、及びAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1990に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationを通じて公開されている。
【0230】
2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4: 11-17, 1988) のアルゴリズムを使用して、PAM120重み付け表、ギャップ長ペナルティ12、ギャップペナルティ4を使用して、決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch (J. Mol, Biol. 48:444-453, 1970) アルゴリズムを使用して、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれか、及びギャップウェイト16、14、12、10、8、6、又は4、長さの重み1、2、3、4、5、又は6を用いて、決定することができる。
【0231】
適切には、本開示の多重特異性抗体のIL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(i)
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つ、好ましくは配列番号1と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つ、好ましくは配列番号2と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つ、好ましくは配列番号3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つ、好ましくは配列番号12と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つ、好ましくは配列番号13と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つ、好ましくは配列番号14と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;又は
【0232】
(ii)
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つ、好ましくは配列番号39と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つ、好ましくは配列番号40と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つ、好ましくは配列番号41と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つ、好ましくは配列番号50と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つ、好ましくは配列番号51と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つ、好ましくは配列番号52と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0233】
適切には、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、以下を含む:(i)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号12、13、及び14の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3;又は(ii)それぞれ配列番号39、40、及び41の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号50、51、及び52の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3。
【0234】
さらなる実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、重鎖可変領域VHA及び軽鎖可変領域VLAを含む。
【0235】
本開示の文脈において、用語「VH」(可変重鎖又は重鎖可変領域)、「VL」(可変軽鎖又は軽鎖可変領域)、「Vκ」、及び「Vλ」は、配列の同一性及び相同性に従ってグループ化された抗体重鎖及び軽鎖配列のファミリーを指す。例えば、BLOSUM(Henikoff, S. & Henikoff, J. G., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89 (1992) 10915-10919)などの相同性検索マトリックスを使用することによる配列相同性の決定方法、及び相同性による配列のグループ化の方法は、当業者によく知られている。VH、Vκ、及びVλについては、例えば、Knappik et al., J. Mol. Biol. 296 (2000) 57-86に示されているように、異なるサブファミリーを特定することができ、これは、VHをVH1A、VH1B、VH2~VH6に、VκをVκ1~Vκ4に、VλをVλ1~Vλ3にグループ化する。インビボでは、抗体Vκ鎖、Vλ鎖、及びVH鎖は、それぞれ生殖細胞系κ鎖のV及びJセグメント、生殖細胞系λ鎖のV及びJセグメント、並びに重鎖V、D、及びJセグメントのランダムな再配列の結果である。特定の抗体可変鎖がどのサブファミリーに属するかは、対応するVセグメント、詳細にはフレームワーク領域FR1~FR3によって決定される。従って本出願において、フレームワーク領域HFR1~HFR3のみの特定のセットによって特徴付けられる任意のVH配列は、任意のHFR4配列、例えば、重鎖生殖系列Jセグメントの1つから取られたHFR4配列、又は再配列されたVH配列から取られたHFR4配列と組合せることができる。
【0236】
適切には、本開示の多重特異性抗体のIL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、重鎖可変領域VHAを含み、ここで前記VHAは、VH1A、VH1B、VH3、又はVH4である。1つの実施態様において、本開示のIL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは重鎖可変領域VHAを含み、ここで、前記VHAはVH4である。好適な実施態様において、本開示のIL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、重鎖可変領域VHAを含み、ここで、前記VHAはVH3である。
【0237】
適切には、本開示の多重特異性抗体のIL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、軽鎖可変領域VLAを含み、前記VLAは、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、このフレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択される。適切なVλ FR4は、配列番号26~配列番号32に記載されるものである。1つの実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、配列番号26~配列番号32のいずれか、好ましくは配列番号26又は配列番号27、より好ましくは配列番号27から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。適切には、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26又は27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4を含む。
【0238】
従って、1つの実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは以下を含む:
(i)(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(i)(b)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメイン、好ましくはVH3ドメイン;そして
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含むVLフレームワークを含むVLドメインであり、ここで、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4から選択される。
【0239】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載されたVHを含む。適切には本開示はまた、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン及びTNFαに特異的に結合する第2ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載のVHアミノ酸配列を含み(又は、代替的に、それから成る)、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸、好ましくは10個以下のアミノ酸が変異されている(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。IL-17Aに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、VH領域中で、表1に記載の配列に示されているVH領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を有する。
【0240】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載されたVLドメインを含む。適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載されたVLアミノ酸配列を含み(又は、あるいは、それからなり)、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)において、約20個以下のアミノ酸、好ましくは約10個以下のアミノ酸が変異されている(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。IL-17Aに特異的に結合する本開示の他のドメインには、変異されているが、VL領域中で、表1に記載の配列に示されているVL領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸が含まれる。
【0241】
1つの実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、アミノ酸配列配列番号10又は配列番号11、好ましくは配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に、前記ドメインは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。さらなる実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、アミノ酸配列配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、Q14K、G16E、及びG56A(AHo番号付け)を含む。
【0242】
別の実施態様において本開示は、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、アミノ酸配列配列番号48又は配列番号49、好ましくは配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に、前記ドメインは、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。さらなる実施態様において、本開示はヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号49と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、R20T及びQ141P(AHo番号付け)を含む。
【0243】
別の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、(i)アミノ酸配列配列番号21又は配列番号22、好ましくは配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む;又は(ii)アミノ酸配列配列番号59又は配列番号60、好ましくは配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0244】
別の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、アミノ酸配列配列番号22と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記軽鎖可変領域はA51P(AHo番号付け)を含む。
【0245】
さらなる実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、(i)アミノ酸配列配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む;又は(ii)アミノ酸配列配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0246】
好ましくは、本開示の多重特異性抗体のIL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、(i)アミノ酸配列配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及びアミノ酸配列配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号12、13、及び14のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み;特に、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む;又は(ii)アミノ酸配列配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及びアミノ酸配列配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み;特に前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0247】
特定の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、(i)配列番号10及び11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVH;及び/又は配列番号21及び22から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVL,又は(ii)配列番号48及び19から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVH;及び/又は配列番号59及び60から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVL、を含む。
【0248】
特定の実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、(i)配列番号10のVH配列及び配列番号21のVL配列、又は(ii)配列番号48のVH配列及び配列番号59のVL配列を含む。さらに別の特定の実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインは、(i)配列番号11のVH配列及び配列番号22のVL配列、又は(ii)配列番号49のVH配列及び配列番号60のVL配列を含む。
【0249】
1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合するドメインは、表1に記載されるドメインである。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合するドメインは、(i)配列番号24及び25、好ましくは配列番号24から成る群から選択されるアミノ酸配列、又は(ii)配列番号61及び62、好ましくは配列番号61から成る群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合するドメインは、(i)配列番号24又は配列番号25、好ましくは配列番号24、又は(ii)配列番号61又は配列番号62、好ましくは配列番号61、に記載されるものである。
【0250】
ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する本開示の他のドメインには、前記アミノ酸又は前記アミノ酸をコードする核酸が変異されているが、表1に記載されている配列と少なくとも60、70、80、90、又は95%の同一性を有するドメインが含まれる。1つの実施態様において、これは、表1に記載の配列に示される可変領域と比較した場合、可変領域において1、2、3、4、又は5個以下のアミノ酸が変異されている変異アミノ酸配列を含むが、実質的に同じ活性は保持されている。本明細書で使用される「実質的に同じ活性」という用語は、親抗体、例えば本開示の多重特異性抗体、特に表1に記載のヒトIL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、及び/又は表1に記載のヒトTNFαに特異的に結合する第2ドメインを含む、本開示の多重特異性抗体について決定される活性の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも100%、又は少なくとも110%、又は少なくとも120%、又は少なくとも130%、又は少なくとも140%、又は少なくとも150%、又は少なくとも160%、又は少なくとも170%、又は少なくとも180%、又は少なくとも190%、例えば最大200%である実質的に同じ活性によって示される活性を指す。
【0251】
さらに別の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、表1に記載の配列に相同的なアミノ酸配列を含み、前記第1ドメインはヒトIL-17Aに結合し、表1に記載のドメインの望ましい機能特性を保持している。
【0252】
1つの実施態様において、IL-17Aに特異的に結合する本開示のドメインは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域と、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む軽鎖可変領域とを有し、ここで、これらのCDR配列のうちの1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。
【0253】
「保存的に修飾された変種」又は「保存的変種」という用語は、アミノ酸配列及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に修飾された変種は、同一又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、又はアミノ酸配列を本質的に同一の配列にコードしない核酸を指す。遺伝暗号の縮重のために、機能的に同一の多数の核酸が任意のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、GCUはすべてアミノ酸アラニンをコードしている。従って、アラニンがコドンによって指定されるすべての位置で、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンを、記載された対応するコドンのいずれかに変更することができる。そのような核酸変種は「サイレント変種」であり、これは保存的に修飾された変種の一種である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレント変種を説明する。当業者は、核酸の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を生成できることを認識するだろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変種は、記載された各配列に暗示されている。
【0254】
ポリペプチド配列の場合、「保存的に修飾された変種」又は「保存的変種」は、化学的に類似したアミノ酸によるアミノ酸の置換をもたらす、ポリペプチド配列への個々の置換、欠失、又は付加を含む。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。そのような保存的に修飾された変種(すなわち、1つ以上の「保存的修飾物」を有する)は、本開示の多型変種、種間相同体、及び対立遺伝子に追加され、それらを除外しない。次の8つのグループは、相互に保存的に置換されたアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照)。1つの実施態様において、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響を与えたり変更したりしないアミノ酸修飾物を指すために使用される。
【0255】
従って、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは、以下を含む(又はから成る):
【0256】
(i)
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号1又はその保存的変種であり;前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号2又はその保存的変種であり;前記HCDR3は、配列番号3のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はその保存的変種である;及び
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、ここで、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号12又はその保存的変種であり;前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号13又はその保存的変種であり;前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号14又はその保存的変種を有する;又は
(ii)
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号39又はその保存的変種であり;前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号40又はその保存的変種であり;前記HCDR3は、配列番号41のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はその保存的変種である;及び
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、ここで、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号50又はその保存的変種であり;前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号51又はその保存的変種であり;前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号52又はその保存的変種を有する;
ここで、前記抗体はヒトIL-17Aに特異的に結合し、及び/又はIL-17Aを中和する。
【0257】
本開示の抗IL-17A抗体
本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合し、改良された親和性、有効性、及び選択性を有する抗体分子の発見に基づいている。さらに、本開示の抗体は、改良された生物理学的特性、例えば、改良された溶解性、開発性、比較的不純物の少ない高い生産性(>98%、詳細にはSE-HPLCで検出した場合は>99%のモノマー)、及び安定性を有する。
【0258】
1つの態様において本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含む単離された抗体を提供し、ここで、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、
(i)HCDR1'は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つ、好ましくは配列番号1から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR2'は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つ、好ましくは配列番号2から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR3'は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つ、好ましくは配列番号3から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR1'は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号12から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR2'は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つ、好ましくは配列番号13から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR3'は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つ、好ましくは配列番号14から選択されるアミノ酸配列を有する;又は
(ii)HCDR1'は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つ、好ましくは配列番号39から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR2'は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つ、好ましくは配列番号40から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR3'は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つ、好ましくは配列番号40から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR1'は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つ、好ましくは配列番号50から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR2'は、配列番号51、54、及び及び57のいずれか1つ、好ましくは配列番号51から選択されるアミノ酸配列であり;及びLCDR3'は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つ、好ましくは配列番号52から選択されるアミノ酸配列を有する]からの、10個以下のアミノ酸置換、例えば、9個以下のアミノ酸置換、8個以下のアミノ酸置換、7個以下のアミノ酸置換、6個以下のアミノ酸置換、5個以下のアミノ酸置換、4個以下のアミノ酸置換、3個以下のアミノ酸置換、2個以下のアミノ酸置換、1個又は0個のアミノ酸置換、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。
【0259】
「IL-17A」又は「IL17A」という用語は、特に、本明細書で配列番号33として再生されたUniProt ID番号Q16552を有するヒトIL-17Aを指す。「カニクイザル(cynomolgus)IL-17A」又は「カニクイザル(cynomolgus monkey)IL-17A」という用語は、UniProt ID番号G1QUS7を有するカニクイザル(Macaca fascicularis)IL-17Aを指す。
【0260】
「IL-17B」という用語は、特に、配列番号34として本明細書で再生されたUniProt ID番号Q9UHF5を有するヒトIL-17Bを指す。「IL-17C」という用語は、特に、配列番号35として本明細書で複製されたUniProt ID番号Q9P0M4を有するヒトIL-17Cを指す。「IL-17D」という用語は、特に、配列番号36として本明細書で再生されたUniProt ID番号Q8TAD2を有するヒトIL-17Dを指す。「IL-17E」という用語は、特に、本明細書で配列番号37として再生されたUniProt ID番号Q9H293を有するヒトIL-17Eを指す。「IL-17F」という用語は、特に、本明細書で配列番号38として再生されたUniProt ID番号Q96PD4を有するヒトIL-17Fを指す。
【0261】
「エピトープ」という用語は、抗体が特異的に結合することができる抗原の局所領域を指す。エピトープは、例えばポリペプチドの隣接アミノ酸であり得るか、又はエピトープは、例えば、つ以上のポリペプチドの2つ以上の非隣接領域から一緒になり得る。
【0262】
本明細書で使用される「抗体」などの用語は、全抗体;全抗体の任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)又はその単鎖;及び抗体CDR、VH領域、又はVL領域を含む分子(特に限定されるものではないが、多特異的抗体を含む)を含む。天然に存在する「全抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3で構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域から成る。軽鎖定常領域は、CLという1つのドメインで構成される。VH領域とVL領域はさらに、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在している。各VHとVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0263】
本明細書で使用される「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によって提供される抗体クラス(例えば、IgM、IgE、IgD、IgA、IgY、及びIgG1又はIgG4などのIgG)を指す。アイソタイプは、これらのクラスの1つの改変バージョンも含み、ここでは、Fc機能を改変するために、例えばエフェクター機能又はFc受容体への結合を強化又は低減するために変更が加えられている。適切には、本開示の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から成る群から選択されるIgGである。より適切には、本開示の抗体は、IgG1又はIgG4である。
【0264】
本明細書で使用される「抗原結合断片」、「抗原結合部分」などの用語は、所定の抗原(例えばIL-17A)に特異的に結合する能力を保持する無傷の全抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例は、VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VHドメインとCH1ドメインから成るFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインから成るFv断片;VHドメインから成る単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);単離された相補性決定領域(CDR)、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替の足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、F-star's Modular Antibody Technology(商標))を含む。
【0265】
「相補性決定領域」(「CDR」)という用語は、いくつかの周知のスキームのいずれかを使用して決定された境界を有するアミノ酸配列であって、例えば、Kabat et al. (1991), “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (“Kabat”番号付けスキーム), 番号付けスキーム、Al-Lazikani et al., (1997) JMB 273, 927-948 (“Chothia”番号付けスキーム)、ImMunoGenTics (IMGT) 番号付け(Lefranc, M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999); Lefranc, M.-P. et al., Dev. Comp. Immunol., 27, 55-77 (2003) (“IMGT” numbering scheme) 、及びHonegger & Pluckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670(「AHo」番号付け)に記載された番号付けスキームが含まれる。例えば古典的な形式では、Kabatでは、重鎖可変ドメイン(VH)のCDRアミノ酸残基は、31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)に番号付けられ、軽鎖可変ドメイン(VL)のCDRアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)に番号付けられる。Chothiaでは、VHのCDRアミノ酸は、26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)に番号付けられ、及びVLのアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)に番号付けられる。KabatとChothiaの両方のCRR定義を合わせると、CDRは、ヒトVHのアミノ酸残基26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)、ヒトVLのアミノ酸残基は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、89~97(LCDR3)で構成される。IMGTでは、VHのCDRアミノ酸残基は、約26~35(HCDR1)、51~57(HCDR2)、及び93~102(HCDR3)に番号付けられ、VLのCDRアミノ酸残基は、約27~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)、及び89~97(LCDR3)に番号付けられる(「Kabat」による番号付け)。IMGTでは、抗体のCDRは、プログラムIMGT/DomainGap Alignを使用して決定することができる。
【0266】
本発明の文脈では、特に他に明記しない限り、Honegger & Pluuckthun(「AHo」)によって提案された番号付けシステムが使用される(Honegger & Pluuckthun, J. Mol. Biol. 309 (2001) 657-670)。さらに、以下の残基はAHo番号付けスキームに従ってCDRとして定義される:LCDR1(CDR-L1とも呼ばれる):L24~L42;LCDR2(CDR-L2とも呼ばれる):L58~L72;LCDR3(CDR-L3とも呼ばれる):L107~L138;HCDR1(CDR-H1とも呼ばれる):H27~H42;HCDR2(CDR-H2とも呼ばれる):H57~H76;HCDR3(CDR-H3とも呼ばれる):H108~H138。明確にするために、Honegger & Pluuckthunによる番号付けシステムでは、様々なVH及びVLサブファミリー、特にCDRの両方に自然に存在する抗体に見られる長さの多様性を考慮に入れており、配列におけるギャップを提供する。従って、所定の抗体可変ドメインでは、通常、1~149位のすべてがアミノ酸残基によって占有されるわけではない。
【0267】
好ましくは、「抗原結合領域」は、可変軽鎖(VL)の少なくともアミノ酸残基4~138、及び可変重鎖(VH)のアミノ酸残基5~138を含み(いずれの場合も、Honegger & Pluuchthunによる番号付け)、より好ましくは、VLの3~144及びVHの4~144のアミノ酸残基、そして特に好ましくは、完全なVL鎖及びVH鎖(VLの1~149及びVHの1~149のアミノ酸位置)である。抗原結合部分はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Holliger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1 Hel l 36を参照)。抗体の抗原結合部分は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場に移植することができる(米国特許第6,703,199号を参照、これはフィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載している)。抗原結合部分は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒になって、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む1本鎖分子に組み込むことができる(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8 (10): 1057-1062;及び米国特許第5,641,870号)。
【0268】
本明細書で使用される、抗体の「ドメイン」又は「Xに特異的に結合するドメイン」又は「結合ドメイン」、「その抗原結合断片」、「抗原結合部分」などの用語は、所定の抗原(IL-17A、TNFα、HSAなど)に特異的に結合する能力を保持する無傷の全抗体の1つ以上の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、無傷の抗体の断片によって行われる。いくつかの実施態様において、本開示の多重特異性抗体の結合ドメインは、VL、VH、CL及びCH1ドメインから成る一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;VHドメインとCH1ドメインで構成されるFd断片;抗体の単一アームのVL及びVHドメインから成るFv断片;VHドメインから成る単一ドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., 1989 Nature 341:544-546);単離された相補性決定領域(CDR)、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替の足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、F-star's Modular Antibody Technology(商標))を含む。適切には、本開示の結合ドメインは、Fv断片(Fv)である。適切には、本開示の結合ドメインは、1本鎖Fv断片(scFv)である。適切には、本開示の結合ドメインは、Fab断片である。
【0269】
好ましくは、「ドメイン」又は「Xに特異的に結合するドメイン」又は「結合ドメイン」、「その抗原結合断片」、「抗原結合部分」は、可変軽鎖(VL)の少なくともアミノ酸残基4~138及び可変重鎖(VH)のアミノ酸残基5~138(いずれの場合もHonegger & Pluckthunによる番号付け)を含み、より好ましくはVLのアミノ酸残基3~144及びVHのアミノ酸残基4~144、そして特に好ましいのは完全なVL鎖及びVH鎖である(VLのアミノ酸位置1~149及びVHのアミノ酸位置1~149)。抗原結合部分はまた、単一ドメイン抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v-NAR、及びbis-scFvに組み込むことができる(例えば、Holliger and Hudson, 2005, Nature Biotechnology, 23, 9, 1 Hel l 36を参照)。抗体の抗原結合部分は、フィブロネクチンIII型(Fn3)などのポリペプチドに基づく足場に移植することができる(フィブロネクチンポリペプチドモノボディを記載している米国特許第6,703,199号を参照)。抗原結合部分は、相補的な軽鎖ポリペプチドと一緒になって、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む1本鎖分子に組み込むことができる(Zapata et al., 1995 Protein Eng. 8 (10): 1057-1062; and U.S. Pat. No. 5,641,870;及び米国特許第5,641,870号)。
【0270】
本明細書で使用される「結合特異性」又は「特異的結合する」という用語は、異なる抗原決定基とではなく、1つの抗原決定基と反応する個々の抗体又は抗体ドメインの能力を指す。本明細書で使用される「に特異的に結合する」又は「に特異的である」という用語は、標的と抗体又は抗体ドメインとの結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指し、これは、生体分子を含む分子の不均一な分子集団の存在下での、標的の存在を決定する。例えば、標的(エピトープであり得る)に特異的に結合する抗体又は抗体ドメインは、他の標的に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、及び/又はそれよりも長い持続時間、この標的に結合する抗体又は抗体ドメインである。その最も一般的な形式(及び定義された参考文献が言及されていない場合)では、「特異的結合」は、例えば、当技術分野で公知の特異性アッセイ方法に従って決定されるように、目的の標的と無関係の分子とを区別する抗体又は抗体ドメインの能力を指す。このような方法には、特に限定されるものではないが、ウエスタンブロット、ELISA、RIA、ECL、IRMA、SPR(表面プラズモン共鳴)試験、及びペプチドスキャンが含まれる。例えば、標準的なELISAアッセイを実施することができる。スコア化は、標準的な発色(例えば、西洋ワサビペルオキシドを用いた2次抗体、及び過酸化水素を用いたテトラメチルベンジジン)によって実施することができる。特定のウェルでの反応は、例えば450nmでの光学密度によってスコア化される。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は約0.1ODである。典型的な陽性反応は約1ODであり得る。これは、正のスコアと負のスコアの比率が10倍以上になり得ることを意味する。さらなる例では、SPRアッセイを実施することができ、バックグラウンドとシグナルとの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の差が特異的結合を示す。典型的には、結合特異性の決定は、単一の参照分子ではなく、粉乳、トランスフェリンなどの約3~5個の無関係な分子のセットを使用して実施される。本開示の特定の抗体又は抗体ドメインは、ヒトIL-17A又はヒトTNFαに対する結合特異性を有する。
【0271】
本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含み、従ってIL-17A及びTNFαに対する結合特異性を有し、特にヒトIL-17A及びヒトTNFαに対する結合特異性を有する。1つの実施態様において、本開示の抗体は、ヒトIL-17A及びカニクイザル(Macaca fascicularis)(Cynomolgus monkey又は「Cynomolgus」としても知られている)IL-17Aに対する結合特異性を有する。1つの実施態様において、本開示の抗体は、ヒトTNFα及びカニクイザル(Macaca fascicularis)(Cynomolgus monkey又は「Cynomolgus」としても知られている)TNFαに対する結合特異性を有する。
【0272】
別の態様において本開示は、ヒトIL-17A及びカニクイザル(Macaca fascicularis)(Cynomolgus monkey又は「Cynomolgus」としても知られている)IL-17Aに対する結合特異性を有する抗体又は抗体ドメインに関する。
【0273】
適切には、本開示の抗IL-17A抗体は、単離された抗体である。
【0274】
適切には、本開示の抗IL-17A抗体はモノクローナル抗体である。
【0275】
本開示の抗IL-17A抗体は、特に限定されるものではないが、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。
【0276】
適切には、本開示の抗IL-17A抗体はヒト化されている。適切には、本開示の抗IL-17A抗体はヒト化されており、ウサギ由来のCDRを含む。
【0277】
本開示の抗体には、特に限定されるものではないが、実施例中のものを含む本明細書に記載の単離されたヒト化モノクローナル抗体が含まれる。そのような抗ヒトIL-17A抗体の例は、その配列が表1に記載されている抗体である。本明細書に記載の抗体の生成及び特性評価に関する追加の詳細は、実施例に提供されている。
【0278】
ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する本開示の単離された抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含む。
【0279】
本開示は、IL-17Aタンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に本開示は、IL-17Aタンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVH CDRを含む。
【0280】
本開示は、重鎖可変領域(VH)を含むヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する抗体を提供し、ここで、前記VHは順に以下を含む:(i)3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3であって、前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む抗体を提供する;又は(ii)3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3であって、前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む抗体を提供する。
【0281】
本開示はまた、IL-17Aタンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本開示は、IL-17Aタンパク質に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVL CDRを含む。
【0282】
本開示は、軽鎖可変領域(VL)を含むヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する抗体を提供し、ここで、前記VLは、順に以下を含む:(i)3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3であって、前記LDCR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20いずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む抗体を提供する;又は(ii)3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3であって、前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LDCR3は配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、それぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む抗体を提供する。
【0283】
適切には本開示は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する抗体を提供し、
【0284】
(i)ここで
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し;そして
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;又は
【0285】
(ii)ここで
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し;そして
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0286】
特に、本開示は、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有し、(i)(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(ii)(a)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列、を含む抗体を提供する。
【0287】
本開示の他の抗体は、変異されているが、そのCDR領域中で、表1に記載の配列に示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。適切には、本開示の他の抗体は、表1に記載の配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域において、1、2、3、4、5、又は10個以下のアミノ酸がアミノ酸の欠失、挿入、又は置換によって変異されている変異アミノ酸配列を含む。変異、例えば置換がCDRのセット内の任意の残基で行われる可能性があり、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3内であってもよい。
【0288】
適切には、変異アミノ酸配列を含む本開示の抗体は、1ngのヒトIL-17Aの活性を、50ng/ml、好ましくは20ng/ml、好ましくは10ng/ml、好ましくは5ng/ml、より好ましくは1ng/ml、より好ましくは0.5ng/ml、さらにより好ましくは0.2ng/ml以下の濃度で、50%阻害することができ、前記阻害活性は、50pg/mlのTNFαの存在下でのHT-29アッセイで、ヒトIL-17Aによって誘導されるGRO-α分泌を測定することによって決定される。
【0289】
適切には、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する本開示の単離された抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
【0290】
(i)
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号1、4、及び7のいずれか1つ、好ましくは配列番号1と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR2は、配列番号2、5、及び8のいずれか1つ、好ましくは配列番号2と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR3は、配列番号3、6、及び9のいずれか1つ、好ましくは配列番号3と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記LCDR1は、配列番号12、15、及び18のいずれか1つ、好ましくは配列番号12と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR2は、配列番号13、16、及び19のいずれか1つ、好ましくは配列番号13と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR3は、配列番号14、17、及び20のいずれか1つ、好ましくは配列番号14と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;又は
【0291】
(ii)
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つ、好ましくは配列番号39と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR2は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つ、好ましくは配列番号40と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記HCDR3は、配列番号41、44、及び47のいずれか1つ、好ましくは配列番号41と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、
前記LCDR1は、配列番号50、53、及び56のいずれか1つ、好ましくは配列番号50と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR2は、配列番号51、54、及び57のいずれか1つ、好ましくは配列番号51と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;
前記LCDR3は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つ、好ましくは配列番号52と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0292】
適切には、ヒトIL-17Aに対する結合特異性を有する本開示の単離された抗体は、以下を含む:(i)それぞれ配列番号1、2、及び3の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号12、13、及び14の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3;又は(ii)それぞれ配列番号39、40、及び41の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号50、51、及び52の配列と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有する、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3。
【0293】
さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、VHドメイン及びVLドメインを含む。
【0294】
適切には本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体を提供し、ここで、前記抗体は、VH1A、VH1B、VH3、又はVH4を含む。1つの実施態様において、本開示の単離された抗体はVH4ドメインを含む。好適な実施態様において、本開示の単離された抗体はVH3ドメインを含む。
【0295】
適切には本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択される。適切なVλ FR4は、配列番号26~配列番号32に記載されるものである。1つの実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、配列番号26~配列番号32のいずれか、好ましくは配列番号26又は配列番号27、より好ましくは配列番号27から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。適切には本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26又は配列番号27に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4を含む。
【0296】
従って、1つの実施態様において本開示は、以下を含む抗体を提供する:
【0297】
(i)(a)それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;又は(i)(b)それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VH3又はVH4ドメイン、好ましくはVH3ドメイン;及び
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含むVLフレームワークを含むVLドメインであって、ここで、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号26~配列番号32のいずれかから選択されるアミノ酸配列に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号27に記載のVλ FR4から選択される。
【0298】
適切には本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVHドメインを含む。
【0299】
適切には、本開示はまた、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVHアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約10個以下のアミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。
【0300】
適切には、本開示はまた、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVHアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。
【0301】
本開示の他の抗体は、変異されているが、表1に記載の配列に示されているVH領域と、VH領域中で、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0302】
適切には本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVLドメインを含む。
【0303】
適切には、本開示はまた、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約10個以下のアミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。
【0304】
適切には、本開示はまた、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、表1に記載されたVLアミノ酸配列を含み、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。
【0305】
本開示の他の抗体には、変異されているが、表1に記載の配列に示されているVL領域と、VL領域中で、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0306】
1つの実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号10又は配列番号11、好ましくは配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号11と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで、前記重鎖可変領域は、Q14K、G16E、及びG56A(AHo番号付け)を含む。
【0307】
別の実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号48は配列番号49、好ましくは配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号49と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、ここで、前記重鎖可変領域は、R20T及びQ141P(AHo番号付け)を含む。
【0308】
別の実施態様におい、本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、(i)アミノ酸配列配列番号21又は配列番号22、好ましくは配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む;又は(ii)アミノ酸配列配列番号59又は配列番号60、好ましくは配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に前記抗体は、それぞれ配列番号50、51、及び52のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0309】
さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号22と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記軽鎖可変領域は、A51P(AHo番号付け)を含む。
【0310】
さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体を提供し、ここで、(i)前記抗体は、アミノ酸配列配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、アミノ酸配列配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む;又は(ii)前記抗体は、アミノ酸配列配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び、アミノ酸配列配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0311】
従って、本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、
(i)前記抗体は、アミノ酸配列配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号12、13、及び14のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み;特に前記抗体は、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む;又は、
(ii)前記抗体は、アミノ酸配列配列番号48と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号59と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み;特に前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0312】
さらなる実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号49と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号60と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、特に前記重鎖可変領域は、R20T及びQ141P(AHo番号付け)を含む。
【0313】
従って、本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合する単離された抗体を提供し、ここで、前記抗体は、アミノ酸配列配列番号49と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号60と少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、特に前記重鎖可変領域は、R20T及びQ141P(AHo番号付け)を含み、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び/又は、それぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み、特に、ここで、前記抗体は、それぞれ配列番号39、40、及び41のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号50、51、及び52のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0314】
特定の実施態様において本開示は、ヒトIL-17Aに特異的に結合し、(i)配列番号10及び11から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号21及び22から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むそのVL;又は(ii)配列番号48及び49から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号59及び60から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むそのVLを含む単離された抗体を提供する。特定の実施態様において、本開示の抗体は、(i)配列番号10のVH配列及び配列番号21のVL配列;又は(ii)配列番号48のVH配列及び配列番号59のVL配列を含む。さらに別の特定の実施態様において、本開示の抗体は、(i)配列番号11のVH配列及び配列番号22のVL配列;又は(ii)配列番号49のVH配列及び配列番号60のVL配列を含む。
【0315】
1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体は、表1に記載される抗体である。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体は、(i)配列番号24及び25、好ましくは配列番号24、又は(ii)配列番号61及び62、好ましくは配列番号61から成る群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体は、(i)配列番号24又は配列番号25、好ましくは配列番号24、又は(ii)配列番号61又は配列番号62、好ましくは配列番号61、に記載されるものである。
【0316】
ヒトIL-17A対する結合特異性を有する本開示の他の抗体には、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が変異されているが、表1に記載されている配列と少なくとも60、70、80、90、又は95%の同一性を有するものが含まれる。1つの実施態様において、これは、表1に記載の配列に示される可変領域と比較した場合、可変領域において1、2、3、4、又は5個以下のアミノ酸が変異されているが、実質的に同じ活性を保持している変異アミノ酸配列を含む。本明細書で使用される「実質的に同じ活性」という用語は、親抗体、例えば本開示の抗体、特に表1に記載の本開示の抗体について決定された活性の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも100%、又は少なくとも110%、又は少なくとも120%、又は少なくとも130%、又は少なくとも140%、又は少なくとも150%、又は少なくとも160%、又は少なくとも170%、又は少なくとも180%、又は少なくとも190%、例えば最大200%である、実質的に同じ活性によって示される活性を指す。
【0317】
さらに別の実施態様において本開示は、表1に記載の配列に相同的なアミノ酸配列を含む抗体を提供し、ここで、前記抗体はヒトIL-17Aに結合し、表1に記載の抗体の所望の機能特性を保持しているる。
【0318】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む重鎖可変領域と、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、これらのCDR配列の1つ以上は、本明細書に記載の抗体に基づく特定のアミノ酸配列又はその保存的修飾物を有し、前記抗体は、本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。
【0319】
従って、本開示は、以下を含むモノクローナル抗体を提供する:
(i)
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号1又はその保存的変種であり、前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号2又はその保存的変種であり、前記HCDR3は、配列番号3のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はその保存的変種である;及び
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号12又はその保存的変種であり、前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号13又はその保存的変種であり、前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号14又はその保存的変種を有する;又は
(ii)
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号39又はその保存的変種であり、前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号40又はその保存的変種であり、前記HCDR3は、配列番号41のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はその保存的変種である;及び
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、ここで、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号50又はその保存的変種であり、前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号51又はその保存的変種であり、前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号52又はその保存的変種を有する;
ここで、前記抗体はヒトIL-17Aに特異的に結合し、及び/又はIL-17Aを中和する。
【0320】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有し、ここで、これらの配列の1つ以上は、本明細書に記載の抗体又はに基づく特定のアミノ酸配列を有し、及びここで、前記抗体は本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。従って、本開示は、哺乳動物細胞における発現に最適化されており、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むモノクローナル抗体を提供し、ここで、前記重鎖可変領域は、(i)配列番号10及び11のいずれか、及びその保存的修飾物、又は(ii)配列番号48及び49のいずれか、及びその保存的修飾物から選択されるアミノ酸配列を含み:前記軽鎖可変領域は、(i)配列番号21及び22のいずれか、及びその保存的修飾物、又は(ii)配列番号59及び60のいずれか、及びその保存的修飾物から選択されるアミノ酸配列を含み;ここで、前記抗体はヒトIL-17Aに特異的に結合し、及び/又はIL-17Aを中和する。
【0321】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、全長重鎖配列及び全長軽鎖配列を有し、これらの配列の1つ以上は、本明細書に記載の抗体又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、ここで、抗体は、本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。
【0322】
本明細書で使用される「最適化された」という用語は、産生細胞又は生物、一般に真核細胞、例えば、ピキアの細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はヒト細胞において好ましいコドンを使用して、アミノ酸配列をコードするように、ヌクレオチド配列が変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている開始ヌクレオチド配列によって最初にコードされたアミノ酸配列を、完全に又は可能な限り保持するように工学作成されている。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように工学作成されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現もまた、本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列もまた、最適化されたと言われる。
【0323】
別のタイプの可変領域修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させて、それによって「親和性成熟」として知られる目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改良することである。部位特異的変異誘発又はPCR介在変異誘発を実施して変異を導入することができ、抗体結合に対する効果、又は目的の他の機能特性を、本明細書に記載され実施例で提供されるようなインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。(上記で説明したように)保存的修飾を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換、付加、又は欠失であり得る。さらに典型的には、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以下の残基が変更される。
【0324】
「親和性成熟」抗体は、1つ以上の可変ドメインに1つ以上の改変を有するものであり、これは、それらの改変を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改良をもたらす。1つの実施態様において、親和性成熟抗体は標的抗原に対してナノモル又はピコモルの親和性さえも有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で知られている手順によって産生される。例えば、Marks et al, Bio/Technology 10:779-783 (1992)は、VHドメイン及びVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟について説明している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えば、Barbas et al. Proc Nat. Acad. Sci U.S.A. 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Jackson et al, J. Immunol. 154(7):3310- 9 (1995); 及び Hawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992)に記載されている。従って、本開示は、親和性成熟している前記抗体を提供する。
【0325】
本開示の抗体はさらに、修飾抗体を工学作成するための出発物質として本明細書に示される1つ以上のVH及び/又はVL配列を有する抗体を使用して調製することができ、その修飾抗体は、出発抗体から改変された特性を有し得る。抗体は、1つ又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内の、例えば1つ以上のCDR領域内の、及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の、1つ以上の残基を修飾することによって工学作成することができる。追加的又は代替的に、抗体は、定常領域内の残基を修飾することによって工学作成して、例えば抗体のエフェクター機能を変更することができる。
【0326】
実施できる可変領域の工学作成の1つのタイプは、CDR移植である。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)にあるアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列に移植された特定の天然抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522- 525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 10029-10033;Winterの米国特許第5,225,539号、及びQueenらの米国特許第5,530,101号、5,585,089号、5,693,762号、及び6,180,370号を参照)。
【0327】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系の抗体遺伝子配列又は再構成された抗体配列を含む公開DNAデータベース又は公開された参考文献から取得できる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットのwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)、並びにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798; 及び Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836中に見出され、これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列、及び再構成された抗体配列は、「IMGT」データベース(インターネットのwww.imgt.orgで入手可能;Lefranc, M.P. et al., 1999 Nucleic Acids Res. 27:209-212を参照;これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に見いだされる。
【0328】
本開示の抗体で使用するためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列、例えば、本開示のモノクローナル抗体によって使用されるコンセンサス配列及び/又はフレームワーク配列に構造的に類似するものである。VH CDR1、2、及び3の配列、及びVL CDR1、2、及び3の配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子に見られるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に移植することができるか、又は生殖細胞系配列と比較して、CDR配列を、1つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植することができる。例えば、特定の例において、抗体の抗原結合能力を維持又は増強するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出された(例えば、Queen et al. の米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号、及び第6,180,370号を参照)
【0329】
得られるポリペプチドが、IL-17Aに特異的に結合する少なくとも1つの結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワーク又は足場を使用することができる。そのようなフレームワーク又は足場は、ヒト免疫グロブリンの5つの主要なイディオタイプ、その抗原結合断片を含み、好ましくはヒト化された態様を有する他の動物種の免疫グロブリンを含む。
【0330】
1つの態様において本開示は、本開示のCDRを移植することができる非免疫グロブリン足場を使用して非免疫グロブリンベースの抗体を生成する方法に関する。既知の又は将来の非免疫グロブリンフレームワーク及び足場は、それらが標的IL-17Aタンパク質に特異的な結合領域を含む限り、使用することができる。既知の非免疫グロブリンフレームワーク又は足場には、特に限定されるものではないが、フィブロネクチン(Compound Therapeutics, Inc., Waltham, Mass.)、アンキリン(Molecular Partners AG, Zurich, Switzerland)、ドメイン抗体(Domantis, Ltd., Cambridge, Mass., and Ablynx nv, Zwijnaarde, Belgium)、リポカリン(Pieris Proteolab AG, Freising, Germany)、小型モジュラー免疫医薬品(Trubion Pharmaceuticals Inc., Seattle, Wash.)、マキシボディ(Avidia, Inc., Mountain View, Calif)、プロテインA(Affibody AG, Sweden)、及びアフィリン(ガンマクリスタリン又はユビキチン)(Scil Proteins GmbH, Halle, Germany)が含まれる。
【0331】
本開示による抗体は、ヒトIL-17A標的療法を必要とするヒト患者にとって有益であると予測される貴重な特性を有する。本開示による抗体は、以下の特性(実施例1及び2で決定される)のうちの1つ以上によって特徴付けられる:
【0332】
抗体はヒトIL-17Aに特異的に結合し、そして:
(a)カニクイザルIL-17Aに対する結合特異性を有する、
(b)ELISAによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fよりも、ヒトIL-17Aに選択的に結合する、
(c)IL-17Aとその受容体(IL-17RA)間の結合を阻害又は阻止する、
(d)IL-17A活性を低減又は中和する、
(e)HT-29アッセイでインビトロで評価した場合にGRO-α分泌を阻害することができる、
【0333】
(f)IL-17AとIL-17RAとの相互作用を、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、5より大きい、詳細には10より大きい、15より大きい、より詳細には20より大きい力価(相対力価)で阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって決定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)とELISAによって決定されたscFv形式の前記抗体のIC50値(ng/mL)との比である、
【0334】
(g)HT-29アッセイでGRO-α分泌を測定することによって決定されたセクキヌマブと比較した力価(相対力価)と比較して、50より大きい、詳細には100より大きい、より詳細には150より大きい力価(相対力価)でIL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)とHT-29アッセイによって測定されたscFv形式の本発明の抗体のIC50値(ng/mL)との比である、
【0335】
(h)1ngのヒトIL-17Aの活性を、1ng/mL以下、詳細には0.5ng/mL以下、より詳細には0.2ng/mL以下の濃度で50%阻害することができ、前記阻害活性は、50pg/mlのTNFαの存在下でHT-29アッセイでヒトIL-17Aによって誘導されるGRO-α分泌を測定することによって決定される、
【0336】
(i)表面プラズモン共鳴によって測定すると、好ましくは直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、詳細には1nM未満、0.5nM未満、0.2nM未満、詳細には100pM未満、より詳細には50pM未満の解離定数(KD)で、ヒトIL-17Aに結合する、
【0337】
(j)表面プラズモン共鳴によって測定すると、詳細にはキャプチャー設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、10nM未満、例えば7nM未満、5nM未満、2nM未満、1nM未満、詳細には0.5nM未満のKDで、カニクイザルIL-17Aに結合する、
【0338】
(k)scFv形式である場合、示差走査蛍光測定法によって決定される融解温度(Tm)は、少なくとも60℃、詳細には少なくとも62℃、より詳細には少なくとも65℃、さらにより詳細には少なくとも70℃であり、特にここで、前記抗体はpH6.4、150mM NaClのリン酸-クエン酸塩緩衝液中にある、
【0339】
(l)scFv形式である場合、5回の連続した凍結融解サイクル後、本発明の抗体の開始濃度が10mg/mlである場合、5%未満、詳細には3%未満、より詳細には1%未満のモノマー含有量の損失があり、特にここで、前記抗体はpH7.4のリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中にある、及び/又は
【0340】
(m)scFv形式である場合、4℃で少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間保存した後、本開示の抗体の開始濃度が10mg/mlである場合、モノマー含有量の損失は、5%以下、詳細には4%未満、3%未満、2%未満、詳細には1%未満であり、特にここで、前記抗体はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、pH7.4中にある;及び/又は
(n)本開示の抗体の開始濃度が10mg/mlである場合、37℃で少なくとも2週間、詳細には少なくとも4週間保存した後、5%未満のモノマー含有量の損失がある。
【0341】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、ELISAによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fよりも、ヒトIL-17Aに選択的に結合する。本明細書で使用される「選択的に結合する」という用語は、抗体、組成物、製剤などがIL-17B/C/D/E/Fに有意に結合しないが、IL-17Aに結合することを意味するものとする。選択的結合は、通常中程度~高IC50の低親和性を有する非特異的結合からは区別されるように、高親和性(又は低KD)と低~中程度のIC50によって特徴付けられる。典型的には、抗体が10-7M未満のKDで結合する場合、結合は選択的であると見なされる。適切には本開示の抗体は、SPRによって測定すると、ヒトIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17Fに結合するより高い親和性すなわちより低いKDで、ヒトIL-17Aに結合する。適切には本開示の抗体は、ELISAによって測定すると、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fに対して、IL-17Aに対するIC50よりも少なくとも100倍大きい、詳細には少なくとも200倍、少なくとも300倍、少なくとも400倍大きいIC50値を有する。
【0342】
本開示の抗体は、IL-17Aに特異的に結合し、ここで、IL-17Aへの結合は、(a)IL-17Aとその受容体(IL-17RA)との結合を阻害又は阻止し、及び(b)IL-17A活性を低減又は中和する。
【0343】
本明細書で使用される「中和抗体」という用語は、例えばIL-17Aから1つ以上のその受容体への結合を阻止することによって、詳細にはIL-17AからIL-17RAへの結合を阻止することによって、IL-17Aの生物学的シグナル伝達活性を中和することができる抗体を説明する。本開示の抗体は、IL-17A中和抗体である。本明細書で使用される「中和する」という用語は、部分的でも完全でもよい生物学的シグナル伝達活性の低減を指すことが理解されよう。IL-17Aの中和は、様々なアッセイで決定することができ、その例は本明細書の他の場所に記載されている。
【0344】
従って、本開示の抗体は、インビトロでHT-29アッセイ(実施例1及び2に記載)において評価される場合、GRO-α分泌を阻害することができる。1つの実施態様において、本開示の抗体は、HT-29アッセイでGRO-α分泌を測定することによって決定されるセクキヌマブの力価と比較して、50より大きい、好ましくは100より大きく、より好ましくは150よりより大きい力価(相対力価)で、IL-17Aを中和する能力を有し、ここで、前記相対力価は、HT-29アッセイによって決定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、HT-29アッセイによって決定されたscFv形式の本開示の抗体のIC50値(ng/mL)との比である。さらなる実施態様において、本開示の抗体は、1ngのヒトIL-17Aの活性を、1ng/mL以下、好ましくは0.5ng/mL以下、より好ましくは0.2ng/mL以下の濃度で、50%阻害することができ、前記阻害活性は、50pg/mlのTNFαの存在下でのHT-29アッセイにおいてヒトIL-17Aによって誘導されるGRO-α分泌を測定することによって決定される。
【0345】
1つの実施態様において、本開示の抗体は、IL-17AとIL-17RAとの相互作用を、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、5より大きい、好ましくは10より大きい、15より大きい、より詳細には20より大きい力価(相対力価)で阻止する能力を有し、ここで、前記相対力価は、ELISAによって測定されたセクキヌマブのIC50値(ng/mL)と、ELISAによって測定されたscFv形式の本開示の抗体のIC50値(ng/mL)との比である。
【0346】
本明細書で使用される「親和性」という用語は、単一の抗原性部位における抗体と抗原の相互作用の強さを指す。各抗原部位内で、抗体の「アーム」の可変領域は、弱い非共有結合力を介して、多数の部位で抗原と相互作用し、相互作用が多いほど、親和性が強くなる。
【0347】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有相互作用の合計の強さを指す。特に他に明記しない限り、本明細書で使用される「結合親和性」、「に結合する」、「に結合する」、又は「に結合している」は、結合対のメンバー(例えば抗体断片と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に解離定数(KD)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。一般に、低親和性抗体は抗原との結合が遅く、解離しやすい傾向があるが、高親和性抗体は一般に抗原との結合が速く、結合が長く維持される傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で知られており、それらのいずれも本発明の目的に使用することができる。結合親和性、すなわち結合強度を測定するための特定の例示的実施態様を以下に記載する。
【0348】
本明細書で使用される「Kassoc」、「Ka」、又は「Kon」という用語は、特定の抗体抗原相互作用の会合速度を指すことが意図され、一方、本明細書で使用される用語「Kdis」、「Kd」又は「Koff」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図されている。1つの実施態様において、本明細書で使用される「KD」という用語は、解離定数を指すことが意図され、これはKdとKaの比(すなわちKd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。本開示による「KD」若しくは「KD値」又は「KD」若しくは「KD値」は、1つの実施態様において、T200装置(Biacore, GE Healthcare)を使用して測定される。ヒトIL-17Aに対するヒト化scFvの親和性を測定するために、ビオチン化ヒトIL-17Aは、BiacoreのBiotin-CAPtureキットを使用して捕捉される。各分析物注入サイクルの後に、CAPセンサーチップが再生され、新しい抗原が捕捉される。scFvは、ランニング緩衝液で希釈された0.35~90nMの範囲の分析物の濃度で、用量応答マルチサイクル反応速度アッセイを使用して分析物として注入される。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用してフィッティングされる。代替的に又は追加的に、ヒト化scFvの親和性は、代替SPRアッセイ設定を使用して測定及び分析することができる:IL-17Aは、アミンカップリングによってCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定化され、scFvの0.35~90nMの連続希釈物が、固定化されたIL-17A上に再注入される。
【0349】
適切には、本開示の抗体のIL-17Aに対する親和性は、IL-17AのIL-17RAに対する親和性よりも高くてもよい。IL-17AのIL-17RAへの親和性と比較して、本開示の抗体のより高い親和性は、予備形成されたIL-17RA/IL-17A複合体を解離又は中和するために特に有用であり得ることが理解される。1つの実施態様において、本開示の抗体は、IL-17RA/IL-17A相互作用を中和する。別の実施態様において、本開示の抗体は、IL-17Aとその受容体(IL-17RA)との結合を阻害又は阻止する。1つの実施態様において、本開示の抗体は、IL-17A活性を中和する。
【0350】
適切には、本開示の抗体のIL-17Aに対する親和性は、セクキヌマブのIL-17Aに対する親和性に匹敵するか、又はより高い、好ましくはより高い場合がある。1つの実施態様において、本開示の抗体は、セクキヌマブと同等か又はより高い、好ましくはより高い力価でIL-17A活性を中和する。さらなる実施態様において、本開示の抗体は、セクキヌマブと同等か又はより高い、好ましくはより高い力価でIL-17RA/IL-17A相互作用を中和する。
【0351】
抗体の結合親和性は、例えば、解離定数(KD)によって決定され得る。より強い親和性はより低いKDによって表され、より弱い親和性はより高いKDによって表される。
【0352】
従って、適切な実施態様において、本開示の抗体は、好ましくは表面プラズモンによって測定すると、より好ましくは、直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~10000pM、1~7000pM、1~5000pM、1~2500pM、1~2000pM、1~1000pM、1~750pM、1~500pM、1~400pM、1~300pM、1~200pM、1~100pM、1~50pMのKDを有し得る。適切な実施態様において、本開示の抗体は、直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~200pM、詳細には1~100pMのKDを有する。特定の実施態様において、本開示の抗体は、直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、1~50pMのKDを有する。適切な実施態様において、本開示の抗体は、好ましくは表面プラズモンによって測定すると、より好ましくは直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、5nM未満、4nM未満、3nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.25nM未満、0.2nM未満、150pM未満、100pM未満、又は50pM未満のKDを有し得る。適切には、本開示の抗体は、1nM未満、詳細には100pM未満のKDを有する。適切には、本開示の抗体は、0.5nM未満、詳細には50pM未満のKDを有する。より適切には、本開示の抗体は、直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、0.2nM未満、詳細には50pM未満のKDを有する。
【0353】
さらなる実施態様において、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によりキャプチャ設定で測定すると、カニクイザルIL-17Aに、10nM未満、例えば7nM未満、5nM未満、2nM未満、1nM未満、詳細には0.5nM未満のKDで結合する。
【0354】
適切には、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、好ましくは直接設定で表面プラズモン共鳴によって測定すると、少なくとも103-1-1以上、少なくとも104-1-1以上、少なくとも5×104-1-1以上、少なくとも105-1-1以上、少なくとも5×105-1-1以上、少なくとも106-1-1以上のKon速度で、ヒトIL-17Aに結合する。好ましくは本開示の抗体は、SPRによって測定すると、好ましくは表面プラズモン共鳴によって直接設定で測定すると、少なくとも105-1-1以上、詳細には少なくとも5×105-1-1以上、より詳細には少なくとも106-1-1以上のKon速度を有する。
【0355】
適切には、本開示の抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定すると、好ましくは表面プラズモン共鳴によって直接設定で測定すると、ヒトIL-17Aに、5×10-3-1以下、3×10-3-1以下、10-3-1以下、5×10-4-1以下、3×10-4-1以下、10-4-1以下、5×10-5-1以下のKoff速度で結合する。好ましくは、本開示の抗体は、SPRによって測定すると、好ましくは表面プラズモン共鳴によって直接設定で測定すると、10-4-1以下、詳細には5×10-5-1以下のKoff速度を有する。
【0356】
適切には、本開示の抗体は有益な生物理学的特性を有する。
【0357】
適切には、本開示の抗体は、既に記載されている(Egan, et al., MAbs, 9(1) (2017), 68-84; Niesen, et al., Nature Protocols, 2(9) (2007) 2212-2221)示差走査蛍光測定法(DSF)によって決定されるように、scFv(1本鎖可変断片)抗体形式で表される場合、少なくとも60℃、好ましくは少なくとも62℃、より好ましくは少なくとも65℃、さらにより好ましくは少なくとも70℃の融解温度(Tm)を有する。scFv構築物の熱展開の遷移の中点は、示差走査蛍光測定法により、蛍光色素SYPRO(登録商標)Orange(Wong & Raleigh, Protein Science 25 (2016) 1834-1840を参照)を使用して決定される。pH6.4のリン酸-クエン酸緩衝液中の試料が、50μg/mLの最終タンパク質濃度で調製され、総量100μlに5×SYPRO(登録商標)Orangeの最終濃度が含まれている。25μlの調製試料を白壁AB遺伝子PCRプレートに三重測定で加える。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCR装置で実施され、蛍光発光はソフトウェアのカスタム色素較正ルーチンを使用して検出される。試験試料を含むPCRプレートを、25℃から96℃まで1℃刻みで温度勾配に付し、各温度上昇後に30秒休止する。総アッセイ時間は約2時間である。Tmは、ソフトウェアGraphPad Prismによって、数学的な2次導関数法を使用して計算され、曲線の変曲点が計算される。報告されたTmは、3つの測定値の平均である。
【0358】
本開示の抗体は、特にscFv(1本鎖可変断片)抗体形式で表される場合、特に本開示の抗体の開始濃度が10mg/mlである場合、5回の連続した凍結融解サイクル後のモノマー含有量の損失が、5%未満、詳細には3%未満、より詳細には1%未満であることを特徴とする。
【0359】
少なくとも2週間、詳細には4℃で少なくとも4週間保存した後、本開示の抗体は、特にscFv(1本鎖可変断片)抗体形式で表される場合、本開示の抗体の開始濃度が10mg/mlである場合、5%以下、詳細には4%未満、3%未満、2%未満、好ましくは1%未満のモノマー含有量の損失を特徴とする。モノマー含有量の損失は、SE-HPLCクロマトグラムの曲線下の面積の計算によって決定される。SE-HPLCは、USPの第621章で概説されているように、固体固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法は、疎水性固定相と水性移動相を利用して、サイズと形状に基づいて分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムのボイド容量(V0)と総透過容量(VT)の間で発生する。SE-HPLCによる測定は、自動試料注入と検出波長280nmに設定されたUV検出器を備えたChromaster HPLCシステム(Hitachi High-Technologies Corporation)で実施される。この装置は、ソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies、バージョン3.3.2 SP2)によって制御され、これはまた、得られるクロマトグラムの分析もサポートする。タンパク質試料は遠心分離によって清澄化され、注入前にオートサンプラー内で4~6℃の温度に保たれる。scFv試料の分析には、Shodex KW403-4Fカラム(Showa Denko Inc.、#F6989202)を、標準化された緩衝化生理食塩水移動相(50mMリン酸ナトリウムpH6.5、300mM塩化ナトリウム)を用いて、推奨流量0.35mL/分で使用される。注入あたりの目標試料の負荷量は5μgであった。試料は波長280nmのUV検出器で検出され、データは適切なソフトウェアスイートで記録される。得られたクロマトグラムは、V0からVTの範囲で分析されるため、溶出時間が10分より大きいマトリックス関連ピークは除外される。
【0360】
適切には、本開示の単離された抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、Fab、Fv、scFv、dsFv、scAb、STAB、単一ドメイン抗体(sdAb又はdAb)、単一ドメイン重鎖抗体、及び単一ドメイン軽鎖抗体、VHH、VNAR、サメのVNAR構造に基づく単一ドメイン抗体、及び特に限定されるものではないが、アンキリンベースのドメイン、ファイノマー、アビマー、アンチカリン、フィブロネクチンを含む代替の足場に基づく結合ドメイン、及び抗体の定常領域に組み込まれている結合部位(例えば、F-star's Modular Antibody Technology(商標))、好ましくはscFvから成る群から選択される。
【0361】
適切には、本開示の抗体はFvである。適切には、本開示の抗体は、scFv抗体断片である。「1本鎖Fv」又は「scFv」又は「sFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、Fvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、sFvが標的結合のための所望の構造を形成することが可能になる。「1本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる(例えば、Pluckthun, The pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York, 1994), pp. 269-315を参照)。特定の実施態様において、前記機能的断片は、配列番号23によるリンカーを含むscFv形式である。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体は、表1に記載の抗体である。1つの実施態様において、ヒトIL-17Aに特異的に結合する抗体は、(i)配列番号24及び配列番号25から成る群;又は(ii)配列番号61及び配列番号62から成る群、から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施態様において、本開示の抗体は、(i)配列番号24又は配列番号25に示されている、又は(ii)配列番号61又は配列番号62に示されているような、1本鎖可変断片(scFv)である。
【0362】
適切には、本開示の抗体はIgG抗体である。1つの実施態様において、本開示の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、好ましくはIgG1から成る群から選択されるIgGである。
【0363】
TNFαに特異的に結合する例示的なドメイン
本開示の多重特異性抗体は、TNFαに特異的に結合する第2ドメインを含み、前記ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を、及び(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含む。
【0364】
本開示の多重特異性抗体で使用するためにTNFαに特異的に結合する適切なドメインには、特に限定されるものではないが、以下が含まれる:
・ その配列が表1に記載されているヒト化モノクローナル抗体又はその結合ドメイン(WO2017/158101に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);
・ インフリキシマブ(Remicade(登録商標);米国特許第6,277,969号、第6,284,471号、第6,790,444号、及び第6,835,823号、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる);
・ アダリムマブ/D2E7(Humira(登録商標);米国特許第6,090,382号に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる);
・ セルトリズマブ、PEG化Fab断片(Cimzia(登録商標);米国特許第7,012,135号及び米国特許第7,186,820号に記載されており、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる);
・ ゴリムマブ(Simponi(登録商標);公開された米国出願第2009/214528号、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0365】
本開示の多重特異性抗体で使用するためのTNFαに特異的に結合する好ましいドメインには、特に限定されるものではないが、その配列が表1に記載されているヒト化モノクローナル抗体又はその結合ドメインが含まれる(WO2017/158101に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0366】
従って、1つの実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含み、ここで、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、HCDR1'は、配列番号25、28、及び31のいずれか1つ、好ましくは配列番号25から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR2'は、配列番号26、29、及び32のいずれか1つ、好ましくは配列番号26から選択されるアミノ酸配列であり;HCDR3'は、配列番号27、30、及び33のいずれか1つ、好ましくは配列番号27から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR1'は、配列番号38、41、及び44のいずれか1つ、好ましくは配列番号38から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR2'は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つ、好ましくは配列番号39から選択されるアミノ酸配列であり;LCDR3'は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つ、好ましくは配列番号40から選択されるアミノ酸配列を有する]からの、10個以下のアミノ酸置換、例えば、9個以下のアミノ酸置換、8個以下のアミノ酸置換、7個以下のアミノ酸置換、6個以下のアミノ酸置換、5個以下のアミノ酸置換、4個以下のアミノ酸置換、3個以下のアミノ酸置換、2個以下のアミノ酸置換、1個又は0個のアミノ酸置換、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。
【0367】
特に、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されるVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に、TNFαに特異的に結合する第2ドメインは、表1に記載されたVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVH CDRを含む(あるいは、それから成る)。
【0368】
適切には本開示は、TNFαに特異的に結合する第2ドメインを提供し、ここで、前記第2ドメインは、重鎖可変領域(VH)を含み、前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号25、28、及び31のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号26、29、及び32のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号27、30、及び33のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、前記第2ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。
【0369】
本開示はまた、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVL CDRを含む(あるいは、それから成る)。
【0370】
適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含み、前記LDCR1は配列番号38、41、及び44のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。特に、前記第2ドメインは、それぞれ配列番号38、39、及び40のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0371】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで:
【0372】
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号25、28、及び31のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号26、29、及び32のいずれか1つから選択されるアミノ酸を有し、前記HCDR3は、配列番号27、30、及び33のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;そして
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号38、41、及び44のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つから選択されるアミノ酸を有し、前記LCDR3は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0373】
特に、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、(a)それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0374】
TNFαに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、そのCDR領域中で、表1に記載の配列に示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する本開示の他のドメインは、表1に記載の配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域において、1、2、3、4、5、又は10個以下のアミノ酸がアミノ酸の欠失、挿入、又は置換によって変異されている変異アミノ酸配列を含む。変異、例えば置換は、CDRのセット内の任意の残基で行われる可能性があり、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3内であってもよい。
【0375】
適切には、本開示の多重特異性抗体のTNFαに特異的に結合する第2ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号25、28、及び31のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;前記HCDR2は、配列番号26、29、及び32のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;前記HCDR3は、配列番号27、30、及び33のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は、
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号38、41、及び44のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し;前記LCDR2は、配列番号39、42、及び45のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、;前記LCDR3は、配列番号40、43、及び46のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0376】
適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3、及び/又は、それぞれ配列番号38、39、及び40の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0377】
さらなる実施態様において、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、重鎖可変領域VHB及び軽鎖可変領域VLBを含む。
【0378】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、重鎖可変領域VHBを含み、前記VHBは、VH1A、VH1B、VH3、又はVH4である。1つの実施態様において、本開示のTNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、重鎖可変領域VHBを含み、ここで、前記VHBはVH4である。好適な実施態様において、本開示のTNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、重鎖可変領域VHBを含み、ここで、前記VHBはVH3である。
【0379】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、軽鎖可変領域VLBを含み、前記VLBは、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択される。適切なVλ FR4は、配列番号97~配列番号103に記載されるものである。1つの実施態様において、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、配列番号97~配列番号103のいずれか、好ましくは配列番号97又は配列番号98、より好ましくは配列番号97から選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、配列番号97~配列番号103のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号97又は配列番号98に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号98に記載のVλ FR4を含む。
【0380】
従って、1つの実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、以下を含む:
(a)それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(b)VHB、ここで、前記VHBはVH3又はVH4、好ましくはVH3である;そして
(c)VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含むVLフレームワークを含むVLBであって、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には、配列番号97~配列番号103のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号97~配列番号103のいずれかに記載のVλ FR4、好ましくは配列番号97又は98に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号98に記載のVλ FR4から選択される。
【0381】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されたVHを含む。適切には、本開示はまた、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されたVHアミノ酸配列を含み(又は、それからなり)、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸、好ましくは約10個以下のアミノ酸は変異されている(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。TNFαに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、表1に記載の配列に示されるVH領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0382】
適切には本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されたVLを含む。適切には、本開示はまた、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載されたVLアミノ酸配列を含み(又は、それからなり)、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)中の約20個以下のアミノ酸、好ましくは約10個以下のアミノ酸は変異されている(ここで、変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。TNFαに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、表1に記載の配列に示されるVL領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0383】
1つの実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、配列番号34、35、36、及び37、好ましくは配列番号34から成る群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。好適な実施態様において、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号34と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、G56A、R82L、S85A、K86Q(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号36と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができ、ここで、前記重鎖可変領域は、A24K、G56A、R82L(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号37と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含むことができ、ここで、前記重鎖可変領域は、G56A、R82L、S85A、K86Q(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。
【0384】
別の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、配列番号47、48、49、50、及び51、好ましくは配列番号47から成る群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0385】
好適な実施態様において、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号47と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記軽鎖可変領域は、T22N、A51R、F89Y(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号49と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができ、ここで、前記軽鎖可変領域は、T22N、D88E、S95G、E99A(AHo番号付け)を含み、及び特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号50と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができ、ここで、前記軽鎖可変領域は、T22N、A51R、F89Y、S95G、G141T、L145V(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号51と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むことができ、ここで、前記軽鎖可変領域は、T22N、K50Q、A51R、F89Y、G141T、L145V(AHo番号付け)を含み、特に、前記ドメインはそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0386】
さらなる実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号34と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号47と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0387】
好ましくは、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号34と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号47と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、ここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、好ましくは、前記ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0388】
適切には、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号37と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、アミノ酸配列配列番号50又は51と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含み、ここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、好ましくは、前記ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0389】
具体的な実施態様において、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、配列番号34、35、36、及び37から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVH、及び/又は配列番号47、48、49、50、及び51から成る群から選択されるアミノ酸配列を含むVLを含む。特定の実施態様において、TNFαに特異的に結合する第2ドメインは、配列番号34のVH配列、及び配列番号47のVL配列を含む。さらに別の特定の実施態様において、TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、配列番号37のVH配列及び配列番号50又は配列番号51のVL配列を含む。
【0390】
1つの実施態様において、ヒトTNFαに特異的に結合するドメインは、表1に記載されるドメインである。ヒトTNFαに対する結合特異性を有する本開示の他のドメインは、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸が変異されているが、表1に記載の配列と少なくとも60、70、80、90、又は95%の同一性を有するドメインが含まれる。1つの実施態様において、これは、表1に記載された配列に示される可変領域と比較した場合、1、2、3、4、又は5個以下のアミノ酸が、可変領域において変異されているが、実質的に同じ活性を保持している変異アミノ酸配列を含む。
【0391】
さらに別の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、表1に記載の配列に相同的なアミノ酸配列を含み、前記ドメインはヒトTNFαに結合し、表1に記載されているドメインの望ましい機能特性を保持している。
【0392】
1つの実施態様において、TNFαに特異的に結合する本開示のドメインは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域と、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む軽鎖可変領域とを有し、これらのCDR配列の1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。
【0393】
従って、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは、以下を含む(又はから成る):
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であり、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号25又はその保存的変種であり、前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号26又はその保存的変種であり、前記HCDR3は、配列番号27のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列又はその保存的変種である;そして
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であり、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号38又はその保存的変種であり、前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号39又はその保存的変種であり、前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号40又はその保存的変種を有する;
ここで、前記ドメインは、ヒトTNFαに特異的に結合し、及び/又はTNFαを中和する。
【0394】
ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する例示的ドメイン
本開示の多重特異性抗体は、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含み、前記ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含む。
【0395】
適切には、本開示の多重特異性抗体は、第1ドメイン及び第2ドメインの特異性とは異なる第3の特異性を有する第3結合ドメインを含み得る。適切には、本開示の多重特異性抗体は、ヒト血清アルブミン(HSA)に特異的に結合する第3ドメインを含み得る。従って、1つの実施態様において、本開示の多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及びヒト血清アルブミンに特異的に結合する第3ドメインを含む。
【0396】
本開示の多重特異性抗体で使用するためのヒト血清アルブミンに特異的に結合する適切なドメインには、特に限定されるものではないが、その配列が表1に記載されているヒト化モノクローナル抗体又はその結合ドメインが含まれる。
【0397】
1つの実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、CDRのセット(HCDR1、HCDR2、HCDR3、LDCR1、LDCR2、及びLDCR3)を含み、ここで、前記CDRのセットは、あるCDRのセット[ここで、
(a)HCDR1'は、配列番号52に記載されているものであり、HCDR2'は、配列番号53に記載されているものであり、HCDR3'は、配列番号54に記載されているものであり、LCDR1'は、配列番号62に記載されているものであり、LCDR2'は、配列番号63に記載されているものであり、LCDR3'は、配列番号64に記載されるものである;又は
(b)HCDR1'は、配列番号73に記載されているものであり、HCDR2'は、配列番号74に記載されているものであり、HCDR3'は、配列番号75に記載されているものであり、LCDR1'は、配列番号83に記載されているものであり、LCDR2'は、配列番号84に記載されているものであり、LCDR3'は、配列番号85に記載されるものである]からの、10個以下のアミノ酸置換、例えば9個以下のアミノ酸置換、8個以下のアミノ酸置換、7個以下のアミノ酸置換、6個以下のアミノ酸置換、5個以下のアミノ酸置換、4個以下のアミノ酸置換、3個以下のアミノ酸置換、2個以下のアミノ酸置換、1又は0個のアミノ酸置換、好ましくは0個のアミノ酸置換を有する。
【0398】
特に、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する前記ドメインは、表1に記載されたVH CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVH CDRを含む。特に本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記ドメインは、表1に記載されたVH CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVH CDRを含む(あるいは、それから成る)。
【0399】
適切には、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、重鎖可変領域(VH)を含み、ここで、前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、ここで、
(a)前記HCDR1は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記HCDR2は、配列番号53、56、及び59のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記HCDR3は、配列番号54、57、及び60のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである;又は
(b)前記HCDR1は、配列番号73、76、及び79のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記HCDR2は、配列番号74、77、及び80のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記HCDR3は、配列番号75、78、及び81のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである。
【0400】
好適な実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。別の実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。
【0401】
適切には、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれか1つのアミノ酸配列を有するVL CDRを含む。特に、本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記ドメインは、表1に記載されたVL CDRのいずれかのアミノ酸配列を有する1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のVL CDRを含む(又は、あるいは、それから成る)。
【0402】
適切には、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する前記ドメインは、軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含み、ここで、
(a)前記LCDR1は、配列番号62、65、及び68のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記LCDR2は、配列番号63、66、及び69のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記LCDR3は、配列番号64、67、及び70のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである;又は
(b)前記LCDR1は、配列番号83、86、及び89のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記LCDR2は、配列番号84、87、及び90のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものであり、前記LCDR3は、配列番号85、88、及び91のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載されているものである。
【0403】
好適な実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、それぞれ配列番号62、63、及び64のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。別の実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、それぞれ配列番号83、84、及び85のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0404】
適切には本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号53、56、及び59のいずれか1つから選択される配列を有し、前記前記HCDR3は、配列番号54、57、及び60のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;及び、前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含み、前記LSCR1は、配列番号62、65、及び68のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LDCR2は、配列番号63、66、及び69のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号64、67、及び70のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;又は
(b)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号73、76、及び79のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号74、77、及び80のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号75、78、及び81のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する;及び、前記VLは、順に3つの相補性決定領域LDCR1、LDCR2、及びLDCR3を含み、前記LSCR1は、配列番号83、86、及び89のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LDCR2は、配列番号84、87、及び90のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有し、前記LDICR3は、配列番号85、88、及び91のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を有する。
【0405】
好適な実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、(a)それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。別の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、(a)それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、及び(b)それぞれ配列番号83、84、及び85のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0406】
HSAに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、そのCDR領域中で、表1に記載の配列に示されるCDR領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。適切には、HSAに特異的に結合する本開示の他のドメインは、表1に記載の配列に示されるCDR領域と比較した場合、CDR領域において、1、2、3、4、5、又は10個以下のアミノ酸がアミノ酸の欠失、挿入、又は置換によって変異されている変異アミノ酸配列を含む。変異、例えば置換がCDRのセット内の任意の残基で行われる可能性があり、CDR1、CDR2、及び/又はCDR3内であってもよい。
【0407】
適切には、本開示の多重特異性抗体のHSAに特異的に結合する第3ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号52、55、及び58のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号53、56、及び59のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号54、57、及び60のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号62、65、及び68のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号63、66、及び69のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号64、67、及び70のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0408】
適切には、前記多重特異性抗体は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含み、ここで、前記第3ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の同一性を有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び/又は、それぞれ配列番号62、63、及び64の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0409】
適切には、本開示の多重特異性抗体のHSAに特異的に結合する第3ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VHは、順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、前記HCDR1は、配列番号73、76、及び79のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記HCDR2は、配列番号74、77、及び80のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記HCDR3は、配列番号75、78、及び81のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する;及び/又は
(b)前記VLは、順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記LCDR1は、配列番号83、86、及び89のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記LCDR2は、配列番号84、87、及び90のいずれか1つと、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有し、前記LCDR3は、配列番号85、88、及び91のいずれか1つと少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0410】
適切には、前記多重特異性抗体は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含み、前記第3ドメインは、それぞれ配列番号73、74、及び75の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性有するHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び/又は、それぞれ配列番号83、84、及び85の配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。
【0411】
さらなる実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、重鎖可変領域VHC及び軽鎖可変領域VLCを含む。
【0412】
適切には本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、重鎖可変領域VHCを含み、前記VHCは、VH1A、VH1B、VH3、又はVH4である。1つの実施態様において、HSAに特異的に結合する本開示の第3ドメインは重鎖可変領域VHCを含み、ここで、前記VHCはVH4である。好適な実施態様において、HSAに特異的に結合する本開示の第3ドメインは、重鎖可変領域VHCを含み、ここで、前記VHCはVH3である。
【0413】
適切には本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、軽鎖可変領域VLCを含み、前記VLCは、VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1フレームワークFR1~FR3、及びフレームワークFR4を含み、前記FR4は、Vλ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4から選択される。適切なVλ FR4は、配列番号97~配列番号103に記載されるものである。1つの実施態様において、前記第3ドメインは、配列番号97~配列番号103のいずれか、好ましくは配列番号97又は配列番号98、より好ましくは配列番号97のいずれかから選択されるアミノ酸配列と、少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4を含む。適切には、前記第3ドメインは、配列番号97~配列番号103のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号97又は98に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号98に記載のVλ FR4を含む。
【0414】
従って、好適な実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、以下を含む:
(a)それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(b)VHCであって、ここで、前記VHCはVH3又はVH4、好ましくはVH3であり;そして
(c)VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含むVLフレームワークを含むVLCであって、ここで、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号97~配列番号103のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号97~配列番号103のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載のVλ FR4、好ましくは配列番号97又は98に記載のVλ FR4、より好ましくは配列番号98に記載のVλ FR4から選択される。
【0415】
さらなる実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、以下を含む:
(i)それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号83、84、及び85のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列;
(ii)VHCであって、ここで、前記VHCはVH3又はVH4、好ましくはVH3であり;そして
(iii)VκフレームワークFR1、FR2、及びFR3、詳細にはVκ1又はVκ3 FR1~FR3、好ましくはVκ1 FR1~FR3、及びフレームワークFR4を含むVLフレームワークを含むVLCであって、前記フレームワークFR4は、Vκ FR4、詳細にはVκ1 FR4、Vκ3 FR4、及びVλ FR4、詳細には配列番号97~配列番号103のいずれかから選択されるアミノ酸配列と少なくとも60、70、80、90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むVλ FR4、好ましくは配列番号97~配列番号103のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列に記載のVλ FR4、好ましくは配列番号97又は98のVλ FR4、より好ましくは配列番号98に記載のVλ FR4から選択される。
【0416】
適切には本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは表1に記載されたVHを含む。適切には本開示はまた、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、表1に記載されたVHアミノ酸配列を含み(又は、あるいはそれからなり)、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)において、約20個以下のアミノ酸、好ましくは約10ア個以下のミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。HSAに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、VH領域において表1に記載の配列に示されているVH領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0417】
適切には本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、表1に記載されたVLドメインを含む。適切には本開示はまた、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、表1に記載されたVLアミノ酸配列を含み(又は、あるいはそれからなり)、ここで、フレームワーク配列(例えば、CDRではない配列)において、約20個以下のアミノ酸、好ましくは約10ア個以下のミノ酸が変異されている(変異は、様々な非限定的な例として、付加、置換、又は欠失である)。HSAに特異的に結合する本開示の他のドメインは、変異されているが、VL領域において表1に記載の配列に示されているVL領域と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性を有するアミノ酸を含む。
【0418】
1つの実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号61と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に、ここで前記ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。
【0419】
別の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号71と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特に、ここで前記ドメインは、それぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0420】
さらなる実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号61と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み;及び、アミノ酸配列配列番号71と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0421】
好適な実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号61と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み;及び、アミノ酸配列配列番号71と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み;ここで前記ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、好ましくは前記ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0422】
特定の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号61を含むVH、及び/又はアミノ酸配列配列番号71を含むVLを含む。好適な実施態様において、HSAに特異的に結合する第3ドメインは、配列番号61のVH配列、及び配列番号71のVL配列を含む。
【0423】
さらに別の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号82と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み、特に、前記ドメインは、それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む。
【0424】
別の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号92と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、特にここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号83、84、及び85のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0425】
さらなる実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号82と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号92と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0426】
好適な実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号82と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号92と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、及び、前記ドメインは、それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びに/又はそれぞれ配列番号83、84、及び85のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、好ましくは前記ドメインは、それぞれ配列番号73、74、及び75のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号83、84、及び85のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む。
【0427】
特定の実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号82を含むVH、及び/又はアミノ酸配列配列番号92を含むそのVLを含む。好適な実施態様において、HSAに特異的に結合する前記第3ドメインは、配列番号82のVH配列、及び配列番号92のVL配列を含む
【0428】
1つの実施態様において、ヒト血清アルブミンに特異的に結合するドメインは、表1に記載されているドメインである。1つの実施態様において、HSAに特異的に結合するドメインは、配列番号72及び93から成る群から選択されるアミノ酸配列、好ましくは配列番号72と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%と同一であるアミノ酸配列を含む。1つの実施態様において、HSAに特異的に結合ドメインは、配列番号72又は配列番号93、好ましくは配列番号72に記載されるものである。
【0429】
HSAに対する結合特異性を有する本開示の他のドメインは、アミノ酸又はアミノ酸をコードする核酸は変異されているが、表1に記載の配列と少なくとも60、70、80、90、又は95%の同一性を有するドメインを含む。1つの実施態様において、これは、表1に記載の配列に示される可変領域と比較した場合に、可変領域において1、2、3、4、又は5個以下のアミノ酸が変異されているが、実質的に同じ活性を保持している変異アミノ酸配列を含む。
【0430】
さらに別の実施態様において本開示は、特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、表1に記載の配列に相同的なアミノ酸配列を含み、前記ドメインは、ヒト血清アルブミンに結合し、表1に記載されているそれらのドメインの望ましい機能特性を保持している。
【0431】
1つの実施態様において、HSAに特異的に結合する本開示のドメインは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列を含む重鎖可変領域と、LCDR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含む軽鎖可変領域を有し、ここで、これらのCDR配列の1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示の抗体の所望の機能特性を保持している。
【0432】
従って、本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、以下を含む(又はから成る):
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号52又はその保存的変種であり、前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号53又はその保存的変種であり、前記HCDR3は、配列番号54のいずれか1つ、又はその保存的変種から選択されるアミノ酸配列である;そして
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号62又はその保存的変種であり、前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号63又はその保存的変種であり、前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号64又はその保存的変種を有する;
ここで、前記ドメインは、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する。
【0433】
本開示はまた、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは、以下を含む(又はから成る):
順に3つの相補性決定領域HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(VH)であって、前記HCDR1は、アミノ酸配列配列番号73又はその保存的変種であり、前記HCDR2は、アミノ酸配列配列番号74又はその保存的変種であり、前記HCDR3は、配列番号75のいずれか1つ、又はその保存的変種から選択されるアミノ酸配列である;そして
順に3つの相補性決定領域LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(VL)であって、前記LCDR1は、アミノ酸配列配列番号83又はその保存的変種であり、前記LCDR2は、アミノ酸配列配列番号84又はその保存的変種であり、前記LCDR3は、アミノ酸配列配列番号85又はその保存的変種を有する;
ここで、前記ドメインは、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する。
【0434】
本開示の多重特異性抗体のさらなるドメイン
さらに本開示の多重特異性抗体で使用するのに適したドメインは、特に限定されるものではないが、その配列が表1に記載され、さらに改変された(その改変バージョン)抗体又はその結合ドメインを含む。
【0435】
1つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含み、ここで、前記第1ドメインは、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有し、これらの配列の1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示のドメインの所望の機能特性を保持している。
【0436】
1つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含み、ここで、前記第2ドメインは、哺乳動物細胞における発現のために最適化されており、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有し、これらの配列の1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示のドメインの所望の機能特性を保持している。
【0437】
1つの実施態様において、前記多重特異性抗体は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含み、前記第3ドメインは、哺乳動物細胞における発現に最適化されており、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを有し、これらの配列の1つ以上は、本明細書に記載のドメイン又はその保存的修飾物に基づく特定のアミノ酸配列を有し、前記ドメインは、本開示のドメインの所望の機能特性を保持している。
【0438】
本明細書で使用される「最適化された」という用語は、産生細胞又は生物、一般に真核細胞、例えば、ピキア(Pichia)の細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、又はヒト細胞において好ましいコドンを使用して、ヌクレオチド配列がアミノ酸配列をコードするように変更されていることを意味する。最適化されたヌクレオチド配列は、「親」配列としても知られている開始ヌクレオチド配列によって最初にコードされたアミノ酸配列を、完全に又は可能な限り保持するように工学作成されている。本明細書の最適化された配列は、哺乳動物細胞において好ましいコドンを有するように工学作成されている。しかしながら、他の真核細胞又は原核細胞におけるこれらの配列の最適化された発現もまた、本明細書において想定される。最適化されたヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列もまた、最適化されたと呼ばれる。
【0439】
従って、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは哺乳動物細胞における発現用に最適化され、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号10及び11のいずれかから選択されるアミノ酸配列及びそれらの保存的修飾物を含み、軽鎖可変領域は、配列番号21及び22のいずれかから選択されるアミノ酸配列及びそれらの保存的修飾物を含み、ここで、前記第1ドメインは、ヒトIL-17Aに特異的に結合し、及び/又はIL-17Aを中和する。
【0440】
従って、本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第2ドメインは哺乳動物細胞における発現用に最適化され、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号34、35、36、及び37のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びそれらの保存的修飾物を含み、軽鎖可変領域は、配列番号47、48、49、50、及び51のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びそれらの保存的修飾物を含み、ここで、前記ドメインは、ヒトTNFαに特異的に結合し、及び/又はTNFαを中和する。
【0441】
従って、本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは哺乳動物細胞における発現用に最適化されており、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、配列番号61及び配列番号82のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びそれらの保存的修飾物を含み、軽鎖可変領域は、配列番号71及び配列番号92のいずれかから選択されるアミノ酸配列、及びそれらの保存的修飾物を含み、ここで、前記ドメインは、ヒト血清アルブミンに特異的に結合する。
【0442】
別のタイプの可変領域の修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2、及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させて、それによって「親和性成熟」として知られる目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改良することである。部位特異的変異誘発又はPCR介在変異誘発を実施して変異を導入することができ、抗体結合に対する効果、又は目的の他の機能特性を、本明細書に記載され実施例に提供されているインビトロ又はインビボアッセイで評価することができる。保存的修飾(前述)を導入することができる。突然変異は、アミノ酸の置換、付加、又は欠失であり得る。さらに、通常、CDR領域内の1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つ以下の残基が改変される。
【0443】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上の可変ドメインに1つ以上の改変を有するものであり、それらの改変を有さない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の改良をもたらす。1つの実施態様において、親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモル又はさらにはピコモルの親和性さえも有する。親和性成熟抗体は、当技術分野で知られている手順によって産生される。例えば、Marks et al, Bio/Technology 10:779-783 (1992) は、VHドメイン及びVLドメインのシャッフリングによる親和性成熟について説明している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘発は、例えば、Barbas et al. Proc Natl. Acad. Sci. U.S.A 91:3809-3813 (1994); Schier et al. Gene 169:147-155 (1995); Jackson et al, J. Immunol. 154(7):3310- 9 (1995); 及び Hawkins et al, J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992) に記載されている。従って本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメインとTNFαに特異的に結合する第2ドメインとを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第1ドメインは親和性成熟ドメインであり、及び/又は前記第2ドメインは親和性成熟ドメインである。さらなる実施態様において本開示は、HSAに特異的に結合する第3ドメインをさらに含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記第3ドメインは親和性成熟ドメインである。
【0444】
本開示の抗体はさらに、改変抗体を工学作成するための出発物質として本明細書に示される1つ以上のVH及び/又はVL配列を有する抗体を使用して調製することができ、この改変抗体は、出発抗体から改変された特性を有し得る。抗体は、例えば1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の、1つ又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内の1つ以上の残基を修飾することによって工学作成することができる。追加的又は代替的に、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することによって工学作成することができる。
【0445】
実施できる可変領域の工学作成の1つのタイプは、CDR移植である。抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)内にあるアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、CDR外の配列よりも個々の抗体間でより多様である。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列に移植された特定の天然抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al., 1998 Nature 332:323-327; Jones, P. et al., 1986 Nature 321:522- 525; Queen, C. et al., 1989 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 10029-10033; Winterの米国特許第5,225,539号, 及びQueen et al.の米国特許第5,530,101号、第5,第585,089号、第5,693,762号、及び第6,180,370号を参照)。
【0446】
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系抗体遺伝子配列又は再構成された抗体配列を含む公開DNAデータベース又は公開された参考文献から取得することができる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系配列データベース(インターネットのwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで入手可能)、並びにKabat, E. A., et al., 1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242; Tomlinson, I. M., et al., 1992 J. fol. Biol. 227:776-798; and Cox, J. P. L. et al., 1994 Eur. J Immunol. 24:827-836中に存在し、これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。例えば、ヒトの重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系DNA配列及び再構成された抗体配列は、「IMGT」データベース(インターネットのwww.imgt.orgで入手可能。Lefranc, M.P. et al., 1999 Nucleic Acids Res. 27:209-212を参照、これらのそれぞれの内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)中に存在する。
【0447】
本開示の多重特異性抗体の結合ドメインで使用するためのフレームワーク配列の例は、本開示の選択されたドメインによって使用されるフレームワーク配列に構造的に類似するもの、例えば、本開示のドメインによって使用されるコンセンサス配列及び/又はフレームワーク配列である。VH CDR1、2、及び3配列、及びVL CDR1、2、及び3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子に見られるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に移植することができるか、又は前記CDR配列は、生殖細胞系配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域に移植することができる。例えば特定の例において、抗体の抗原結合能力を維持又は増強するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出された(例えば、Queen et al.の米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号、及び第6,180,370号を参照)。
【0448】
本開示の例示的な多重特異性抗体
特定の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及び任意選択的にHSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、(i)前記第1ドメインは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み、及び(ii)前記第2ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLDCR1、LDCR2、及びLDCR3配列を含み、及び(iii)任意選択的に、前記第3ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0449】
より具体的な実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及び任意選択的にHSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、
(i)本開示の多重特異性抗体のIL-17Aに特異的に結合する前記第1ドメインは、アミノ酸配列配列番号10と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号21と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む;そして
(ii)TNFαに特異的に結合する前記第2ドメインは、アミノ酸配列配列番号34と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号47と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む;そして
(iii)任意選択的に、前記第3ドメインは、アミノ酸配列配列番号61と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号71と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%、好ましくは少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、ここで、前記ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む
【0450】
特定の実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及びHSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記多重特異性抗体は、配列番号112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、及び124のいずれか、好ましくは配列番号119から選択される配列と、少なくとも60、70、80、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の同一性、好ましくは少なくとも80%の同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、特に、ここで
(a)前記第1の結合ドメインは、それぞれ配列番号1、2、及び3のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号12、13、及び14のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み;
(b)前記第2の結合ドメインは、それぞれ配列番号25、26、及び27のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号38、39、及び40のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含み;そして
(c)前記第3の結合ドメインは、それぞれ配列番号52、53、及び54のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3配列、並びにそれぞれ配列番号62、63、及び64のLCDR1、LCDR2、及びLCDR3配列を含む。
【0451】
より具体的な実施態様において本開示は、IL-17Aに特異的に結合する第1ドメイン、TNFαに特異的に結合する第2ドメイン、及びHSAに特異的に結合する第3ドメインを含む多重特異性抗体を提供し、ここで、前記多重特異性抗体は、配列番号112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、及び124のいずれか、好ましくは配列番号119から選択される配列を含む(又は、から成る)。
【0452】
本開示の追加の多重特異性分子
本開示はまた、本開示の抗IL-17A抗体と、少なくとも別の特異性、例えば二重特異性分子、三重特異性分子、四重特異性、五重特異性、六重特異性分子とを含む多重特異性分子である抗体を提供する。
【0453】
本明細書で使用される「多重特異性分子」又は「多重特異性抗体」という用語は、少なくとも2つ以上の異なる標的(例えば、IL-17A及びIL-17Aとは異なる別の標的)上の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体、又は同じ標的の2つ以上の異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0454】
「多重特異性分子」という用語は、二重特異性、三重特異性、四重特異性、五重特異性、六重特異性抗体を含む。本明細書で使用される「二重特異性抗体」という用語は、2つの異なる標的又は同じ標的上の2つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。本明細書で使用される「三重特異性抗体」という用語は、3つの異なる標的又は同じ標的上の3つの異なるエピトープに結合する抗体を指す。
【0455】
本開示の抗体は、別の機能性分子、例えば別のペプチド又はタンパク質(例えば、別の抗体、又は受容体に対するリガンド)に誘導体化又は連結して、少なくとも2つの結合部位に及び/又は異なる標的に結合する多重特異性分子を生成することができる。本開示の抗体は、実際には、誘導体化、又は2つ以上の他の機能的分子に連結して、3つ以上の異なる結合部位に及び/又は標的分子に結合する多重特異性分子を生成し得る。本開示の多重特異性分子を作成するために、本開示の抗体は、別の抗体、ペプチド、又は結合模倣物などの1つ以上の他の結合分子に機能的に連結(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)して、多重特異性分子が生じることができる。
【0456】
従って、本開示は、IL-17Aに対する少なくとも1つの第1の結合特異性、及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む多重特異性分子を含む。例えば、第2の標的エピトープは、IL-17Aとは異なる別の標的分子に存在する。従って本開示は、IL-17Aに対する少なくとも1つの第1の結合特異性及び第2の標的エピトープに対する第2の結合特異性を含む多重特異性分子を含む。例えば第2の標的エピトープは、第1の標的エピトープとは異なるIL-17Aの別のエピトープである。多重特異性分子は、第1及び第2の標的エピトープに加えて、第3の結合特異性をさらに含むことができる。
【0457】
さらなる実施態様において本開示は、IL-17A特異性について一価、二価、又は多価、好ましくは一価の多重特異性分子を含む。
【0458】
本開示の別の具体的な実施態様において、本開示の抗体は、IL-17A特異性分子に対して一価又は多価、例えば二価、三価、四価、五価、六価である。
【0459】
本明細書で使用される「一価分子」又は「一価抗体」という用語は、IL-17Aなどの標的分子上の単一のエピトープに結合する単一の抗原結合部分を有する抗体を指す。
【0460】
「多価抗体」という用語は、複数の原子価を有する単一の結合分子を指し、「原子価」は、同一の標的分子上のエピトープに結合する抗原結合部分の数として説明される。従って、単一の結合分子は、エピトープの複数のコピーを含有する標的分子上の複数の分子又は複数の結合部位に結合することができる。多価抗体の例には、特に限定されるものではないが、二価抗体、三価抗体、四価抗体、五価抗体などが含まれる。本明細書で使用される「二価抗体」という用語は、それぞれが同一のエピトープに結合する2つの抗原結合部分を有する抗体を指す。
【0461】
適切には、本開示の多重特異性分子、例えば、二重特異性分子、及び/又は多価分子、例えば、IL-17Aに対して一価特異性分子、IL-17Aに対して二価特異性分子は、当技術分野で公知の任意の適切な多重特異性形式、例えば二重特異性形式から選択される抗体形式であり、例えば、非限定例として、1本鎖ダイアボディ(scDb)、タンデムscDb(Tandab)、線形二量体scDb(LD-scDb)、環状二量体scDb(CD-scDb)、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE;タンデムdi-scFv)、タンデムtri-scFv、トリボディ(Fab-(scFv)2)又はバイボディ(Fab-(scFv)1)、Fab、Fab-Fv2、モリソン(IgG CH3-scFv融合体(モリソンL)又はIgG CL-scFv融合体(モリソンH))、トリアボディ、scDb-scFv、二重特異性Fab2、ジミニ抗体、テトラボディ、scFv-Fc-scFv融合体、scFv-HSA-scFv融合体、ジダイアボディ、DVD-Ig、COVD、IgG-scFab、scFab-dsscFv、Fv2-Fc、IgG-scFv融合体、例えばbsAb(軽鎖のC末端に連結されたscFv)、Bs1Ab(軽鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs2Ab(重鎖のN末端に連結されたscFv)、Bs3Ab(重鎖のC末端に連結されたscFv)、Ts1Ab(重鎖と軽鎖の両方のN末端に連結されたscFv)、Ts2Ab(重鎖のC末端に連結されたdsscFv)、ヘテロ二量体Fcドメインに基づく二重特異性抗体、例えばKnob-into-Hole抗体(KiH)(KiHテクノロジーによって調製された二重特異性IgG);Fv、scFv、scDb、タンデム-di-scFv、タンデムtri-scFv、Fab-(scFv)2、Fab-(scFv)1、Fab、Fab-Fv2、ヘテロ二量体Fcドメイン又は任意の他のヘテロ二量体化ドメインのいずれか鎖のN末端及び/又はC末端に融合したCOVD、MATCH(WO2016/0202457;Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載)、及びデュオボディ(デュオボディ技術により調製された二重特異性IgG)(MAbs. 2017 Feb/Mar;9(2):182-212. doi: 10.1080/19420862.2016.1268307)に基づく形式が含まれる。本明細書における使用に特に適しているのは、1本鎖ダイアボディ(scDb)又はscDb-scFvである。
【0462】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内のVLに接続されたVH(VH-VL)を含む。 同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインとの対合を強制され、2つの抗原結合部位が作成される。 ダイアボディは二価又は二重特異性でもよい。ダイアボディは、例えばEP404097、WO93/01161、Nat. Med. 9:129-134 (2003), and Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 6444-6448 (1993)に、より詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。「scDb-scFv」という用語は、単鎖Fv(scFv)断片が柔軟なGly-Serリンカーに融合されて単鎖ダイアボディ(scDb)になる抗体の形式を指す。
【0463】
二重特異性scDb、詳細には二重特異性単量体scDbは、特に、リンカーL1、L2及びL3によって、VHA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VLA、VHA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VLA、VLA-L1-VLB-L2-VHB-L3-VHA、VLA-L1-VHB-L2-VLB-L3-VHA、VHB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VLB、VHB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VLB、VLB-L1-VLA-L2-VHA-L3-VHB、又はVLB-L1-VHA-L2-VLA-L3-VHBの順序で接続された、2つの可変重鎖ドメイン(VH)又はその断片と2つの可変軽鎖ドメイン(VL)又はその断片を含み、ここで、VLA及びVHAドメインは一緒に第1の抗原の抗原結合部位を形成し、VLB及びVHBは一緒に第2の抗原の抗原結合部位を形成する。
【0464】
リンカーL1は、詳細には2~10個のアミノ酸、より詳細には3~7個のアミノ酸、最も詳細には5個のアミノ酸のペプチドであり、リンカーL3は、詳細には1~10個のアミノ酸、より詳細には2~7個のアミノ酸、最も詳細には5個のアミノ酸のペプチドである。中間リンカーL2は、詳細には10~40個のアミノ酸、より詳細には15~30個のアミノ酸、そして最も詳細には20~25個のアミノ酸のペプチドである。
【0465】
1つの実施態様において、本開示の多重特異性及び/又は多価分子は、WO2013/0202457;Egan T., et al., mAbs 9 (2017) 68-84に記載されているMATCH形式である。
【0466】
本開示の多重特異性及び/又は多価分子は、当技術分野で知られている任意の便利な抗体製造方法を使用して生成することができる(例えば、二重特異性構築物の製造については、Fischer, N. & Leger, O., Pathobiology 74 (2007) 3-14;及び二重特異性ダイアボディ及びタンデムscFvについては、Hornig, N. & Farber-Schwarz, A., Methods Mol. Biol. 907 (2012)713-727、及びWO99/57150を参照)。本開示の二重特異性構築物を調製するための適切な方法の具体例には、特に、Genmab(Labrijn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110 (2013) 5145-5150を参照)及び Merus(de Kruif et al., Biotechnol. Bioeng. 106 (2010) 741-750を参照)技術がある。機能的抗体Fc部分を含む二重特異性抗体の製造方法も当技術分野で知られている(例えば、Zhu et al., Cancer Lett. 86 (1994) 127-134;及び Suresh et al., Methods Enzymol. 121 (1986) 210-228を参照)
【0467】
本開示の多重特異性及び多価分子で使用することができる他の抗体は、マウス、キメラ、及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0468】
本開示の多重特異性分子は、当技術分野で知られている方法を使用して、構成要素の結合特異性物を結合することによって調製することができる。例えば、二重特異性分子の各結合特異性物は、別々に生成し、次に互いに結合することができる。結合特異性物がタンパク質又はペプチドである場合、様々なカプリング剤又は架橋剤を共有結合に使用することができる。架橋剤の例には、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が含まれる(例えば、Karpovsky et al., 1984 J. Exp. Med. 160: 1686; Liu, M A et al., 1985 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:8648を参照)。他の方法には、Paulus, 1985 Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132; Brennan et al., 1985 Science 229:81-83, 及び Glennie et al., 1987 J. Immunol. 139: 2367-2375 に記載されたものがある。カプリング剤はSATA及びスルホ-SMCCであり、いずれも Pierce Chemical Co. (Rockford, 111.) から入手することができる。
【0469】
結合特異性物が抗体である場合、それらは、2本の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって結合することができる。具体的な実施態様において、ヒンジ領域は、結合の前に、奇数、例えば1つのスルフヒドリル残基を含むように修飾される。
【0470】
あるいは、2つ以上の結合特異性物を同じベクターにコードし、同じ宿主細胞で発現させ、組み立てることができる。この方法は、二重特異性分子がmAb X mAb、mAb X Fab、Fab X F(ab')2、又はリガンドX Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。適切には、本開示の多重特異性分子は、1つの1本鎖抗体及び結合決定基を含む1本鎖分子、又は2つの結合決定基を含む1本鎖多重特異性分子であり得る。多重特異性分子は、少なくとも2つの1本鎖分子を含み得る。多重特異性分子を調製するための方法は、例えば、米国特許第5,260,203号;米国特許第5,455,030号;米国特許第4,881,175号;米国特許第5,132,405号;米国特許第5,091,513号;米国特許第5,476,786号;米国特許第5,013,653号;米国特許第5,258,498号;及び米国特許第5,482,858号に記載されている。
【0471】
多重特異性分子のそれらの特異的標的への結合は、例えば酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(REA)、FACS分析、バイオアッセイ(例えば、増殖阻害)、又はウエスタンブロットアッセイによって確認することができる。これらの測定法のそれぞれは、一般に、目的の複合体に特異的な標識試薬(例えば抗体)を使用することによって、特に目的のタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0472】
本開示の核酸、ベクター、宿主細胞、及び製造方法
さらなる態様において本開示は、本開示の抗体又はその断片又は抗原結合断片をコードする核酸を提供する。本開示はまた、IL-17Aタンパク質に特異的に結合するCDR、VH、VL、及びそれらの抗原結合断片をコードする核酸配列を提供する。本開示はまた、TNFαタンパク質に特異的に結合するCDR、VH、VL、及びそれらの抗原結合断片をコードする核酸配列を提供する。本開示はまた、HSAタンパク質に特異的に結合するCDR、VH、VL、及びそれらの抗原結合断片をコードする核酸配列を提供する。このような核酸配列は、哺乳動物細胞における発現のために最適化することができる。
【0473】
「核酸」という用語は、本明細書では「ポリヌクレオチド」という用語と互換的に使用され、1本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを指す。この用語は、既知のヌクレオチド類似体又は修飾された骨格残基又は結合を含む核酸を包含し、これらは、合成物、天然物、及び非天然物であり、参照核酸と同様の結合特性を有し、そして参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。そのような類似体の例には、特に限定されるものではないが、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホレート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれる。他に明記しない限り、特定の核酸配列はまた、その保存的に修飾された変種(例えば縮重コドン置換物)及び相補的配列、並びに明示的に示された配列も暗黙的に包含する。具体的には、以下に詳述するように、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又はすべての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換される配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081, 1991; Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608, 1985; 及びRossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98, 1994)。
【0474】
本開示は、上記の多重特異性抗体鎖のセグメント又はドメイン、及び/又は上記のIL-17A結合抗体鎖のセグメント又はドメインを含むポリペプチドをコードする、実質的に精製された核酸分子を提供する。適切な発現ベクターから発現される場合、これらの核酸分子によってコードされるポリペプチドは、IL-17A及び/又はTNFα及び/又はHSA抗原結合能力を示すことができる。
【0475】
表1に示されるIL-17A結合抗体の、表1に示されるTNFα結合ドメインの、又は表1に示されるHSA結合ドメインの、重鎖又は軽鎖からの、少なくとも1つのCDR領域及び通常は3つすべてのCDR領域をコードするポリヌクレオチドもまた、本開示において提供される。いくつかの他のポリヌクレオチドは、表1に示されるIL-17A結合抗体の、表1に示されるTNFα結合ドメインの、又は表1に示されるHSA結合ドメインの、重鎖及び/又は軽鎖の可変領域配列のすべて又は実質的にすべてをコードする。コードの縮重のために、様々な核酸配列が免疫グロブリンアミノ酸配列のそれぞれをコードするであろう。
【0476】
ポリヌクレオチド配列は、表1に示されるIL-17A結合抗体、表1に示されるTNFα結合ドメイン、又は表1に示されるHSA結合ドメインをコードする既存の配列(例えば、以下の実施例に記載される配列)の、新規の固相DNA合成又はPCR突然変異誘発によって製造することができる。核酸の直接化学合成は、当技術分野で知られている方法、例えばNarang et al., 1979, Meth. Enzymol. 68:90のホスホトリエステル法;Brown et al., Meth. Enzymol. 68: 109, 1979 のホスホジエステル法;Beaucage et al., Tetra. Lett., 22: 1859, 1981のジエチルホスホルアミダイト法;及び、米国特許第4,458,066号の固体支持体法などによって達成することができる。PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異の導入は、例えば、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification, H. A. Erlich (Ed.), Freeman Press, NY, N.Y., 1992; PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Innis et al. (Ed.), Academic Press, San Diego, Calif, 1990; Mattila et al., Nucleic Acids Res. 19:967, 1991; 及び Eckert et al., PCR Methods and Applications 1:17, 1991に記載されているように実施することができる。
【0477】
本開示の抗体を産生するための発現ベクター及び宿主細胞もまた本開示において提供される。
【0478】
「ベクター」という用語は、それが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチド分子を指すことを意図している。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントが連結され得る環状二本鎖DNAループを指す。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、ここで、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムに連結され得る。いくつかのベクターは、それらが導入された宿主細胞において自律複製することができる(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。
【0479】
さらに、いくつかのベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(又は単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、多くの場合プラスミドの形態である。本明細書では、プラスミドが最も一般的に使用されるベクターの形式であるため、「プラスミド」及び「ベクター」を互換的に使用することができる。しかしながら、本開示は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠陥レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などのそのような他の形態の発現ベクターを含むことを意図している。
【0480】
「機能できる形で結合している」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド(例えば、DNA)セグメント間の機能的関係を指す。典型的には、これは、転写調節配列と転写された配列との機能的関係を指す。例えば、プロモーター又はエンハンサー配列は、それが適切な宿主細胞又は他の発現系におけるコード配列の転写を刺激又は調節する場合、コード配列に機能できる形で結合している。一般に、転写された配列に機能できる形で結合しているプロモーター転写調節配列は、転写された配列に物理的に隣接しており、すなわち、それらはシス作用性である。ただし、エンハンサーなどの一部の転写調節配列は、物理的に隣接している必要も、その転写が増強されるコード配列に近接して配置されている必要もない。
【0481】
本開示の抗体をコードするポリヌクレオチドを発現するために、様々な発現ベクターを使用することができる。ウイルスベースの発現ベクターと非ウイルス発現ベクターの両方を使用して、哺乳動物宿主細胞で抗体を産生することができる。非ウイルスベクター及びシステムには、プラスミド、典型的にはタンパク質又はRNAを発現するための発現カセットを有するエピソームベクター、及びヒト人工染色体が含まれる(例えば、Harrington et al., Nat Genet. 15:345, 1997を参照)。例えば、哺乳動物(例えばヒト)細胞における、IL-17A結合ポリペプチド及びポリペプチドを含む、本開示の多重特異性抗体又はそのドメインの発現に有用な非ウイルスベクターには、pThioHis A、B、及びC、pcDNA3.1/His、pEBVHis A、B、及びC(Invitrogen, San Diego, Calif.)、MPS Vベクター、及び他のタンパク質を発現するための当技術分野で知られている他の多数のベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、SV40に基づくベクター、乳頭腫ウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワクシニアウイルスベクター、及びセムリキ森林ウイルス(SFV)が含まれる。上記のBrent et al., 前述; Smith, Annu. Rev. Microbiol. 49:807, 1995; 及びRosenfeld et al., Cell 68: 143, 1992を参照されたい。
【0482】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される目的の宿主細胞に依存する。典型的には、発現ベクターは、IL-17A結合抗体を含む本開示の多重特異性抗体又はそのドメインをコードするポリヌクレオチドに機能できる形で結合しているプロモーター及び他の調節配列(例えば、エンハンサー)を含む。1つの実施態様において、誘導性条件下を除いて、挿入された配列の発現を防ぐために、誘導性プロモーターが使用される。誘導性プロモーターには、例えばアラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター、又は熱ショックプロモーターが含まれる。形質転換された生物の培養物は、その発現生成物が宿主細胞によってよりよく許容されるコード配列について集団にバイアスをかけることなく、非誘導条件下で拡大することができる。プロモーターに加えて、IL-17A結合抗体を含む本開示の抗体又はその断片の効率的な発現のために、他の調節要素も必要とされるか又は望まれ得る。これらの要素には、通常、ATG開始コドン及び隣接するリボソーム結合部位又は他の配列が含まれる。さらに、使用中の細胞系に適切なエンハンサーを含めることによって、発現の効率が増強され得る(例えば、Scharf et al., Results Probl. Cell Differ. 20: 125, 1994; 及び Bittner et al., Meth. Enzymol., 153:516, 1987を参照)。例えば、SV40エンハンサー又はCMVエンハンサーを使用して、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させることができる。
【0483】
発現ベクターはまた、IL-17A結合抗体コード配列を含む挿入された多重特異性抗体コード配列によってコードされるポリペプチドとの融合タンパク質を形成するための分泌シグナル配列位置を提供し得る。多くの場合、挿入された抗体配列、例えば多重特異性抗体コード配列又はIL-17A結合抗体コード配列は、ベクターに含まれる前にシグナル配列に連結される。IL-17A結合抗体を含む多重特異性抗体の軽鎖及び重鎖可変ドメイン又はその断片若しくはドメインをコードする配列を受け取るために使用されるベクターは、定常領域又はその一部をコードすることもある。そのようなベクターは、定常領域との融合タンパク質として可変領域の発現を可能にし、それにより無傷の抗体の産生をもたらす。通常、このような定常領域はヒト定常領域である。
【0484】
「組換え宿主細胞」(又は単に「宿主細胞」)という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を指す。そのような用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを意図していることを理解されたい。突然変異又は環境の影響のいずれかにより、後の世代で特定の修飾が起こり得るため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0485】
IL-17A結合抗体を含む多重特異性抗体又はその断片若しくはドメインの鎖を保持及び発現するための宿主細胞は、原核生物でも真核生物でもよい。大腸菌は、本開示のポリヌクレオチドをクローニング及び発現するのに有用な1つの原核生物宿主である。使用に適した他の微生物宿主には、枯草菌などの桿菌、並びにサルモネラ、セラチア、及び様々なシュードモナス種などの他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿主では、通常、宿主細胞と適合性のある発現制御配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターを作製することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータラクタマーゼプロモーター系、又はラムダファージ由来のプロモーター系など、任意の多数の様々な周知のプロモーターが存在するであろう。プロモーターは、典型的には、任意選択的にオペレーター配列を用いて発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び完了するためのリボソーム結合部位配列などを有する。酵母などの他の微生物もまた、IL-17A結合抗体を含む本開示の多重特異性抗体又はその断片若しくはドメインの鎖を発現するために使用することもできる。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用することができる。
【0486】
1つの実施態様において、哺乳動物宿主細胞を使用して、IL-17A結合抗体を含む本開示の多重特異性抗体又はその断片若しくはドメインの鎖が発現及び産生される。例えば、それらは、内因性免疫グロブリン遺伝子を発現するハイブリドーマ細胞株、又は外因性発現ベクターを保有する哺乳動物細胞株のいずれかであり得る。これらには、正常な不死ではない又は正常若しくは異常な不死の動物若しくはヒトの細胞が含まれる。例えば、無傷の免疫グロブリンを分泌することができる多くの適切な宿主細胞株が開発されており、これには、CHO細胞株、様々なCos細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換B細胞、及びハイブリドーマが含まれる。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養の使用は、例えば、Winnacker, FROM GENES TO CLONES, VCH Publishers, N.Y., N.Y., 1987で一般的に議論されている。哺乳動物宿主細胞の発現ベクターは、発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(例えば、Queen, et al., Immunol. Rev. 89:49-68, 1986を参照)、及び必要なプロセシング情報部位、例えばリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。これらの発現ベクターは通常、哺乳類の遺伝子又は哺乳類のウイルスに由来するプロモーターを含む。適切なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的、及び/又は変更可能又は調節可能であり得る。有用なプロモーターには、特に限定されるものではないが、メタロチオネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRPpolIIIプロモーター、構成的MPS Vプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(例えばヒト前初期CMVプロモーター)、構成的CMVプロモーター、及び当技術分野で知られているプロモーター-エンハンサーの組み合わせが含まれる。
【0487】
目的のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する方法は、細胞宿主のタイプに応じて異なる。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは一般的に原核細胞に利用されているが、リン酸カルシウム処理又は電気穿孔法は他の細胞宿主に使用され得る(一般に上記のSambrook et al.を参照)。他の方法には、例えば電気穿孔法、リン酸カルシウム処理、リポソーム介在形質転換、注入及び微量注入法、衝撃法、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸結合体、裸のDNA、人工ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22への融合(Elliot and O'Hare, Cell 88:223, 1997)、薬剤によって増強されたDNA摂取、及びエクスビボ形質導入が含まれる。組換えタンパク質の長期にわたる高収量の産生には、安定した発現がしばしば望まれる。例えば、IL-17A結合抗体を含む多重特異性抗体又はその断片若しくはドメインのポリペプチドを安定して発現する細胞株は、ウイルスの複製起点又は内因性発現要素及び選択可能なマーカー遺伝子を含む本開示の発現ベクターを使用して調製することができる。ベクターの導入後、濃縮培地で1~2日間増殖させた後、細胞を選択培地に切り替える。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、選択培地で導入された配列をうまく発現する細胞の増殖が可能になる。耐性があり、安定的にトランスフェクトされた細胞は、細胞タイプに適した組織培養技術を使用して増殖させることができる。従って本開示は、本開示の抗体を産生する方法を提供し、ここで、前記方法は、本開示の抗体をコードする核酸又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含み、それにより、本開示の抗体又はその断片が発現される。
【0488】
本開示の医薬組成物
さらなる態様において本開示は、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、及び医薬的に許容し得る担体を含む医薬組成物に関する。医薬的に許容し得る担体は、組成物を増強又は安定化するか、又は組成物の調製を容易にする。医薬的に許容し得る担体には、生理学的に適合性のある溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などが含まれる。
【0489】
本開示の医薬組成物は、当技術分野で知られている様々な方法によって投与することができる。投与経路及び/又は投与様式は所望の結果に応じて異なる。投与は、静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下で行うか、又は標的部位の近傍に投与することができる。医薬的に許容し得る担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に適しているべきである。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち抗体及び多重特異性分子を材料でコーティングして、化合物を不活性化する可能性のある酸及び他の自然条件の作用から化合物を保護することができる。
【0490】
本開示の医薬組成物は、当技術分野で周知で日常的に実施されている方法に従って調製することができる。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing Co., 20th ed., 2000;及び Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子の治療有効用量又は有効用量が、本開示の医薬組成物で使用される。本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子は、当技術分野で知られている従来の方法によって、医薬的に許容し得る剤形に処方される。投与計画は、最適な所望の応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、単一のボーラスを投与することができ、いくつかの分割された用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の緊急性によって示されるように、用量を比例して減少又は増加させることができる。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、単回投与剤形で非経口組成物を処方することは特に有利である。本明細書で使用される投与単位剤形は、治療される被験体の単一投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と共に所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0491】
本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性無しで、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量を得るように変動させることができる。選択される投与量レベルは、使用される本開示の特定の組成物、又はそのエステル、塩、若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康、及び病歴などを含む、様々な薬物動態学的要因に依存する。
【0492】
抗体は通常、複数回投与される。単回投与の間隔は、毎週、毎月、又は毎年にすることができる。患者の抗体の血中濃度を測定することによって示されるように、間隔も不規則である可能性がある。あるいは、抗体は徐放性製剤として投与することができ、その場合、より少ない頻度の投与が必要とされる。投与量と頻度は、患者中の抗体の半減期によって異なる。一般にヒト化抗体は、キメラ抗体や非ヒト抗体よりも長い半減期を示す。投与量及び投与頻度は、治療が予防的であるか治療的であるかによって異なり得る。予防的適用では、比較的低用量が比較的長い間隔で長期間にわたって投与される。一部の患者は、一生治療を受け続ける。治療適用では、疾患の進行が減少又は終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的又は完全な改良を示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要とされる場合がある。次に、患者は予防処方を投与することができる。
【0493】
本開示の使用と方法
本開示の抗体は、インビトロ及びインビボの診断的及び治療的有用性を有する。例えば、これらの分子は、培養中の細胞に、例えばインビトロ又はインビボで、又は被験体に、例えばインビボで投与して、様々な障害を治療、予防、又は診断することができる。
【0494】
「被験体」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。非ヒト動物には、すべての脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、及び爬虫類が含まれる。他に明記しない限り、「患者」又は「被験体」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0495】
本明細書で使用される「治療」、「治療している」、「治療する」、「治療される」などの用語は、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患及び/又は疾患に起因するかは疾患の進行を遅らせる有害作用の部分的又は完全な治癒の観点から治療的であり得る。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、例えばヒトにおける疾患の任意の治療をカバーし、以下を含む:(a)疾患を阻害する、例えばその発症を阻止する;(b)疾患を緩和する、例えば疾患の退行を引き起こす。
【0496】
「予防する」又は「予防」という用語は、疾患の発症、又は疾患の任意の2次的影響の完全な阻害を指す。本明細書で使用される「予防する」又は「予防」という用語は、疾患の素因を有する可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない個人において、疾患又は症状が発生することを予防することを包含する。
【0497】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、疾患を治療するために哺乳動物又は他の被験体に投与されたときに、疾患のそのような治療を行うのに十分である薬剤の量を指す。「治療有効量」は、薬剤、疾患とその重症度、及び治療される被験体の年齢、体重などによって異なる。
【0498】
1つの態様において本開示は、薬剤として使用するための、本開示の抗体、本開示の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物に関する。
【0499】
1つの態様において、本開示の多重特異性抗体又は本開示の医薬組成物は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGro-α分泌を阻害することで治療できる障害の治療、予防、又は診断、特に治療における使用に特に適している。
【0500】
別の態様において、本開示のIL-17A結合抗体又は本開示の医薬組成物は、IL-17Aによって媒介される障害、又GRO-α分泌を阻害することで治療できる障害の治療、予防、又は診断、特に治療における使用に特に適している。
【0501】
本開示において「IL-17Aによって媒介される障害」という用語は、直接的又は間接的に、疾患又は状態の原因、発症、進行、持続、又は病理を含む疾患又は病状において、IL-17Aが役割を果たすすべての疾患及び病状を包含する。従って、「IL-17Aによって媒介される障害」という用語は、異常なIL-17Aレベルに関連するか又はそれによって特徴付けられる状態、及び/又は標的細胞又は組織におけるIL-17A誘導活性、例えばIL-6又はGRO-αの産生を低減又は抑制することによって治療できる疾患又は状態を含む。本開示において「TNFαによって媒介される障害」という用語は、直接的又は間接的に、疾患又は状態の原因、発症、進行、持続、又は病理を含む疾患又は病状において、TNFαが役割を果たすすべての疾患及び病状を包含する。従って「TNFαによって媒介される障害」という用語は、異常なTNFαレベルに関連するか又はそれによって特徴付けられる状態、及び/又は標的細胞又は組織におけるTNFα誘導活性、例えば、IL-6又はGRO-αの産生を低減又は抑制することによって治療できる疾患又は状態を含む。IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害には、炎症状態及び自己免疫疾患、例えば関節炎、関節リウマチ、又は乾癬が含まれる。これらにはさらに、アレルギー及びアレルギー状態、過敏反応、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、及び臓器又は組織移植拒絶反応が含まれる。例えば、本開示の抗体は、心臓、肺、心-肺、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚、又は角膜移植物(同種移植片拒絶又は異種移植片拒絶を含む)の受容者の治療に、及び、骨髄移植後、及び臓器移植に関連する動脈硬化症などの移植片対宿主病の予防に使用することができる。
【0502】
1つの実施態様において、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物は、特に、炎症状態又は自己免疫疾患の治療、予防、又は診断、特に治療での使用に適している。
【0503】
本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物は、自己免疫疾患及び炎症状態、特に関節炎(例えば、関節リウマチ、慢性関節炎進行性関節炎、及び変形性関節炎)などの自己免疫成分を含む病因を伴う炎症状態、及び炎症状態を含むリウマチ疾患、及び骨量減少を含むリウマチ性疾患、炎症性疼痛、強直性脊椎炎を含む脊椎関節症、ライター症候群、反応性関節炎、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、及び腸障害性関節炎、腱付着部炎、過敏症(気道過敏症及び皮膚過敏症の両方を含む)及びアレルギーの、治療、予防、又は改善に使用するのに適している。本開示の抗体が使用され得る具体的な自己免疫疾患には、自己免疫血液障害(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、純赤血球貧血、及び特発性血小板減少症を含む)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、炎症性筋疾患(皮膚筋炎)、歯周炎、多軟骨炎、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、スティーブン-ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎、クローン病、及び過敏性腸症候群を含む)、内分泌眼症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、全身性硬化症、線維性疾患、原発性胆道肝硬変、若年性糖尿病(糖尿病I型、1型糖尿病)、ブドウ膜炎、乾性角結膜炎及びヴァーナル角結膜炎、間質性肺線維症、人工関節周囲炎、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群あり又はなし、例えば特発性腎症症候群又は最小変化腎症を含む)、多発性骨髄腫、他のタイプの腫瘍、皮膚及び角膜の炎症性疾患、筋炎、骨移植片の緩み、代謝障害(例えば、肥満、アテローム性動脈硬化症、及び拡張性心筋症、心筋炎、II型糖尿病、及び脂質異常症を含む他の心血管疾患)、及び自己免疫性甲状腺疾患(橋本甲状腺炎を含む)、中小血管原発性血管炎、巨大細胞動脈炎を含む大血管血管炎、化膿性汗腺炎、視神経脊髄炎、シェーグレン症候群、ベーセット病、アトピー性及び接触性皮膚炎、気管支炎、炎症性筋疾患、自己免疫性末梢神経障害、免疫性腎疾患、肝疾患及び甲状腺疾患、炎症及びアテローム血栓症、自己炎症性発熱症候群、免疫血液障害、及び皮膚及び粘膜の水疱性疾患が含まれる。解剖学的に、ブドウ膜炎は、前部、中間、後部、又は汎ブドウ膜炎であり得る。これは、慢性又は急性の場合がある。ブドウ膜炎の病因は、自己免疫性又は非感染性、感染性、全身性疾患関連、又はホワイトドット症候群である可能性がある。
【0504】
特定の実施態様において、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物は、多発性硬化症、乾癬、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びループス腎炎の治療に使用するのに適している。別の特定の実施態様において、本開示の抗体は、糖尿病、特にI型又はII型糖尿病の治療における使用に適している。
【0505】
「IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害」という用語は、炎症関連の癌も含む。特定の実施態様において本開示の抗体は、癌、特にIL-17A及び/又はTNFα媒介性癌の治療における使用に適している。特定の実施態様において、本開示の抗体は、炎症関連癌の治療における使用に適している。
【0506】
「癌」という用語は、異常な細胞の急速で制御されていない増殖を特徴とする疾患を指す。癌細胞は、局所的に、又は血流やリンパ系を介して体の他の部分に広がる可能性がある。様々な癌の例が本明細書に記載されており、特に限定されるものではないが、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌などが含まれる。「腫瘍」及び「癌」という用語は、本明細書では互換的に使用され、例えば両方の用語は、固体及び液体、例えばびまん性又は循環腫瘍を包含する。本明細書で使用される「癌」又は「腫瘍」という用語は、前悪性並びに悪性の癌及び腫瘍を含む。
【0507】
炎症関連癌の非限定的な例には、胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、及び腺癌が含まれる(Wu et al., 2014 Tumour Biol. 35(6):5347-56; Wu et al., 2012 PLoS One 7(12); Zhang et al. 2012 Asian Pac J Cancer Prev 13(8):3955-60; Liu et al., 201 1 Biochem Biophys Res Commun.407(2):348-54)。
【0508】
本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子もまた、特定の癌、例えば胃癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、肝細胞癌、及び腺癌などの炎症関連癌などの診断及び/又は予後における使用に適している。例えば、IL-17Aは、非小細胞肺癌(Chen et al., 2010 Lung Cancer 69(3):348-54)、結腸直腸癌、及び肝細胞癌(Punt et al., 2015 Oncoimmunology, 4(2): e984547)に苦しむ患者の予後と生存率の低下に関連している。
【0509】
従って、特定の実施態様において、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子は、以下での使用に適している。癌、関節炎、関節リウマチ、変形性関節症、反応性関節炎、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、自己免疫性炎症性腸疾患、喘息、多発性硬化症、嚢胞性線維症、骨量減少、気道過敏症、脱髄障害、皮膚過敏症、急性移植片拒絶反応、同種移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、全身性硬化症、泌尿器系炎症性障害、心血管疾患、血管炎、周期的発熱、グルコース代謝障害、肺疾患、歯周炎、肝間質性角膜炎、アレルギー、炎症性疼痛、脊椎関節症、敗血症、敗血症又は内分泌毒性ショック、髄膜炎、外科的外傷、自己免疫性血液疾患、アルツハイマー病、サルコイドーシス、肝硬変、肝炎、糸球体腎炎、又は脂肪血症の治療における使用に適している。
【0510】
1つの態様において本開示は、薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。
【0511】
別の態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害、又はGRO-α分泌を阻害することによって治療できる障害の治療、予防、又は診断、特に治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。1つの実施態様において本開示は、炎症状態又は自己免疫疾患の治療、予防、又は診断、特に治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。別の実施態様において本開示は、多発性硬化症、乾癬、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びループス腎炎の治療、予防、又は診断、特に治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。さらなる実施態様において本開示は、糖尿病、特にI型又はII型糖尿病の治療、予防、又は診断、特に治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。さらなる実施態様において本開示は、癌、特にIL-17A及び/又はTNFαに媒介される癌、特に炎症関連癌の治療、予防、又は診断、特に治療に使用するための薬剤の製造における、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の使用に関する。
【0512】
別の態様において本開示は、治療を必要とする被験体の治療方法に関し、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物の治療有効量を、被験体に投与することを特徴とする。
【0513】
さらなる態様において本開示は、IL-17A及び/又はTNFαによって媒介される障害の治療方法に関し、前記方法は、その症状が改善されるように、有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を投与することを含む。1つの実施態様において本開示は、炎症状態又は自己免疫疾患を治療する方法に関し、前記方法は、その症状が改善されるように、有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を投与することを含む。別の実施態様において本開示は、多発性硬化症、乾癬、喘息、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びループス腎炎を治療する方法に関し、前記方法は、その症状が改善されるように、有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を投与することを含む。さらなる実施態様において本開示は、糖尿病、特にI型又はII型糖尿病を治療する方法に関し、前記方法は、その症状が改善されるように、有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を投与することを含む。さらなる実施態様において本開示は、癌、特にIL-17A及び/又はTNFαに媒介される癌、特に炎症関連癌を治療する方法に関し、前記方法は、その症状が改善されるように、有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を投与することを含む。
【0514】
また、本開示の中には、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子、又は本開示の医薬組成物を含むキットがある。キットには、次のような1つ以上の他の要素を含めることができる:使用説明書;他の試薬、例えば、標識物、治療薬、又は抗体を標識物、治療薬、又は放射線防護組成物に、キレート化又は他の方法でカップリングするのに有用な薬剤;投与用の抗体分子を調製するための機器又は他の材料;医薬的に許容し得る担体;被験者に投与するための機器又はその他の材料。特定の実施態様において、キットは、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子を、医薬的に有効な量で含む。さらなる実施態様において、キットは、医薬的有効量の、本開示の多重特異性抗体、本開示の抗IL-17A抗体、又は本開示の抗IL-17A抗体を含む別の多重特異性分子を、凍結乾燥形態で、及び希釈剤中に、及び任意選択的に使用説明書を含む。前記キットは、復元用のフィルター針、及び注射用の針をさらに含み得る。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【0515】
明確にするために、別個の実施態様の文脈で説明される本発明の特定の特徴もまた、単一の実施態様で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施態様の文脈で説明される本発明の様々な特徴はまた、別個に又は任意の適切な部分的組合せで提供され得る。本発明に関連する実施態様のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、あたかもそれぞれの及びすべての組み合わせが個別に明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施態様及びそれらの要素のすべての部分的組合せもまた、本発明によって具体的に包含され、あたかもそのような部分的組合せのそれぞれ及びすべてが個別にかつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0516】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施態様によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
【0517】
それぞれの特許法の下で可能な範囲で、本明細書に引用されているすべての特許、特許出願、刊行物、試験方法、文献、及び他の資料は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0518】
以下の実施例は、上記の本発明を説明するが、いかなる方法でも本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業者に知られている他の試験モデルもまた、特許請求される発明の有益な効果を決定することができる。
【実施例
【0519】
実施例1:ヒトIL-17Aに対するウサギ抗体の生成
1.1 免疫
ウサギは、組換え法により産生及び精製されたIL-17A(Peprotech、カタログ番号200-17)で免疫された。免疫の過程で、抗原に対する体液性免疫応答の強さを、ポリクローナル血清抗体の抗原への検出可能な結合を依然としてもたらす各ウサギの血清の最大希釈率(力価)を決定することによって、定性的に評価した。固定化された抗原(組換えヒトIL-17A)に対する血清抗体価は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して評価された。
【0520】
IL-17Aの生物活性を阻害するウサギ血清の能力は、IL-17A刺激時にGRO-αを分泌するHT-29細胞を用いた細胞ベースのアッセイを使用して評価された。ウェルあたり5万個のHT-29細胞を96ウェルプレートに播種し、50ng/mlのIL-17Aで刺激した。IL-17A免疫化ウサギの最終出血血液の5回連続希釈物を、IL-17Aの生物学的機能を中和する力価について試験した。5つの血清すべてがHT-29細胞のGRO-α分泌を阻害した。リンパ球を免疫化された動物の脾臓から単離し、その後のHit同定操作の対象とした。
【0521】
1.2 抗IL-17A抗体の同定
1.2.1 抗IL-17A抗体を発現するB細胞の単離
IL-17A結合B細胞を同定するために、IL-17AをR-フィコエリスリン(RPE)で標識した。標識されたIL-17A上のIL-17受容体A結合部位は、かさばるRPE標識物によってブロックされる可能性があるため、エピトープのアクセス可能性を2つのアプローチによって確認した。最初のアッセイでは、RPE標識IL-17Aのセクキヌマブ及びIL-17受容体Aへの結合をフローサイトメトリーを使用して分析した。ヒトIgG1のFc部分に融合したセクキヌマブとIL-17受容体A細胞外ドメインをプロテインGビーズに捕捉し、RPE標識IL-17Aの結合をフローサイトメトリーで確認した。これにより、IL-17Aのセクキヌマブ及びIL-17受容体A Fcキメラへの結合が確認されたが、無関係のIgG又はサイトカイン受容体への結合は検出されなかった。第2のアプローチでは、標識IL-17Aの生物活性をHT-29アッセイで確認した。図1に示すように、RPE標識IL-17Aは、非標識IL-17Aと比較して、生物活性はほんのわずかにしか低下しなかった(IL-17A依存性GRO-α分泌の誘導については1.5倍高いEC50)。従って、標識されたIL-17Aが選別プロセスでの使用に適していることが確認された。
【0522】
1.2.2 IL-17A結合上清のスクリーニング
スクリーニング段階で得られた結果は、抗体分泌細胞(ASC)の培養上清からの精製されていない抗体を使用して実施されたアッセイに基づいている。ASC上清は、組換えヒトIL-17Aへの結合について高処理能力ELISAでスクリーニングされた。IL-17A結合上清は、それらの結合速度について及びIL-17Aの生物活性を中和する可能性について、細胞ベースのHT-29アッセイ及び競合ELISAで、さらに特性評価された。IL-17A結合上清は、カニクイザルIL-17Aへの結合についてELISAによってさらに特性評価された。
【0523】
1.2.2.1 ELISAによるIL-17A結合
ヒトIL-17Aに結合する抗体を産生するB細胞クローンを同定するために、B細胞クローンの細胞培養上清を、ヒトIL-17Aに対する抗体の存在についてELISAによって分析した。使用したELISA法は、組換えヒトIL-17Aに結合したIgGサブタイプの抗体の「量」を評価するが、抗体の親和性や濃度に関する情報は得られない。
【0524】
1.2.2.2 ヒトIL-17Aに対する親和性
1次スクリーニング中に陽性と認定された培養上清からのヒトIL-17Aに対するモノクローナルウサギ抗体の結合親和性を、表面プラズモン共鳴(SPR)によってMAAS-1 SPR装置(Sierra Sensors)を使用して決定した。親和性スクリーニングでは、ウサギIgGのFc領域に特異的な抗体を、標準的なアミンカップリング法を使用してセンサーチップ(SPR-2 Affinity Sensor, High Capacity Amine, Sierra Sensors)に固定化した。B細胞上清中のウサギモノクローナル抗体は、固定化された抗ウサギIgG抗体によって捕捉された。十分な捕捉を可能にするには、B細胞上清中の最小IgG濃度が必要である。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトIL-17Aをフローセルに90nMの濃度で3分間注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の解離を5分間進行させた。見かけの解離(kd)及び会合(ka)速度定数、及び見かけの解離平衡定数(KD)は、MAAS-1分析ソフトウェア(Analyzer, Sierra Sensors)を用いて1対1のラングミュア結合を使用して計算された。
【0525】
1.2.2.3 HT-29アッセイ及び競合ELISAによるIL-17Aの中和
力価を評価するために、細胞ベースのアッセイ(HT-29アッセイ)及び受容体リガンド競合-ELISAが開発された。
【0526】
IL-17Aの生物活性を阻害するB細胞上清中の抗体の能力を、IL-17A刺激によりGRO-αを分泌するHT-29細胞を用いた細胞ベースのアッセイを使用して評価した。ウェルあたり5万個のHT-29細胞を96ウェルプレートに播種し、5ng/mlのIL-17Aで刺激した。最終濃度50%のB細胞上清を、IL-17Aの生物学的機能を中和する力価について分析した。
【0527】
hIL-17RAへのhIL-17A結合の阻害を、競合ELISAによって評価した。hIL-17RAをELISAプレートに4μg/mlの濃度でコーティングした。ビオチン化hIL-17A(20ng/ml)をB細胞上清(95%)で1時間プレインキュベートし、混合物をELISAプレートに加えて、hIL-17RAに1.5時間結合させた。次に、ビオチン化したIL-17Aに使用したストレプトアビジン-HRPを、ストレプトアビジン-HRPによって検出した。
【0528】
1.2.2.4 種交差反応性(SPRによるカニクイザルIL-17Aへの結合)
選択されたヒットを、カニクイザルIL-17Aに対する種の交差反応性についてSPRによって分析した。結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)によってMAAS-1 SPR装置(Sierra Sensors)を使用して、ヒトIL-17Aについてセクション1.2.2.2で説明したものと同様に決定したが、ヒトIL-17Aの代わりに90nMのカニクイザルIL-17Aを使用した。
【0529】
1.2.2.5 ELISAによるIL-17F結合
抗IL-17A scFvの特異性を確認するために、すべてのIL-17ファミリーメンバー(IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17F、及びIL-17E)への結合を、最高のパフォーマンスを示すヒト化scFvについて評価した。IL-17FはIL-17Aと最も高い同一性を示すため(47%、表2を参照)、選別上清をELISAでIL-17Fへの結合についてスクリーニングした。結合は、2μg/mlセクキヌマブで得られたシグナルと比較して定量化された。
【表2】
【0530】
1.3 機能的特性評価
B細胞上清中のモノクローナル抗体の薬理学的特性に基づいて、いくつかのローンをヒット確認分析のために選択した。B細胞上清中の選択されたクローンのモノクローナル抗体の薬理学的特性を表3に示す。
【0531】
1.3.1 IL-17A結合動態(SPRによる)
多数の精製したモノクローナルウサギ抗体のヒトIL-17Aへの結合動態を、SPR(Mass-1)測定によって決定した。各IgGを、カルボキシルメチル化デキストラン表面(SPR-2親和性センサー、高容量アミン、Sierra Sensors)に結合した抗ウサギIgG(Bethyl Laboratories、カタログ番号A120-111A)を介して捕捉し、IL-17Aの用量応答を測定して、動態パラメーターの正確なフィッティングを可能にした。モノクローナル抗体を捕捉した後、ヒトIL-17A(Peprotech、カタログ番号200-17)をフローセルに3分間注入し、センサーチップに捕捉されたIgGからのタンパク質の解離を5分間進行させた。各注入サイクルの後、表面を10mMグリシン-HClを2回注入して再生した。見かけの解離(kd)と会合(ka)速度定数、及び見かけの解離平衡定数(KD)を、MASS-1分析ソフトウェア(Analyzer、Sierra Sensors)を使用して、1対1のラングミュア結合モデルを用いて計算し、フィッティングの品質を相対的Chi2(分析物の推定最大結合レベルに標準化されたChi2)(これはカーブフィッティングの品質の尺度である)に基づいて追跡した。
【0532】
ヒトIL-17Aへの高親和性結合を、ピコモル以下までの範囲(2.87×10-10から1.51×10-13M未満)の親和性のKD値を有するすべての抗体で確認した。選択されたクローン27-07-G02のモノクローナル抗体は、SPRによって測定すると、解離定数(KD)は1.88pM、オンレートのkaは2.44×106-1-1及びオフレートのkdは4.58×10-6-1を有する(表3を参照)。選択したクローン27-31-C04のモノクローナル抗体は、SPRによって測定すると、解離定数(KD)は0.5pM未満、オンレートのkaは1.99×106-1-1、オフレートのkdは1×10-6-1未満を有する(表3を参照)。
【0533】
1.3.2 カニクイザルIL-17Aに対する交差反応性(SPRによる)
カニクイザルIL-17Aの種の交差反応性は、選択した精製モノクローナルウサギ抗体について、上記と同様のSPR(Mass-1)測定により決定した。アッセイには、Trenzyme 社が特注したカニクイザルIL-17Aを使用した。選択したクローン27-07-G02のモノクローナル抗体は、SPRによって決定すると、解離定数(KD)は0.6pM、オンレートのkaは1.24×106-1-1、オフレートのkdは7.72×10-6-1であった(表3を参照)。SPRによって決定されたKDcynoIL-17A/KDhumanIL-17Aの比率は0.3であった(表3を参照)。選択したクローン27-31-C04のモノクローナル抗体の解離定数(KD)は25pM未満であり、オンレートのkaは1.69×106-1-1、オフレートのkdは4.22×10-5-1であった(表3を参照)。SPRによって決定されたKDcynoIL-17A/KDhumanIL-17Aの比率は、5より大きいと決定された(表3を参照)。
【0534】
1.3.3 ヒトIL-17Aの中和(HT-29アッセイによる)
ヒト結腸癌細胞株HT-29のIL-17A誘導GRO-α分泌に対する、精製ウサギモノクローナル抗体の効果を調べた。IL-17A誘導GRO-α分泌を中和する力価(IC50)(市販のELISAで定量)をすべての抗体の連続希釈物について分析し、セクキヌマブの力価と比較した。データは4パラメーターロジスティック曲線フィッティングを使用して分析され、GRO-α分泌を50%に減らすために必要なIL-17A阻害剤のモル濃度(IC50)を阻害曲線から得た。異なるアッセイプレートからのIC50値を互いに直接比較できるようにするために、各プレートの個々のIC50値を、各プレートに沿って採取した参照分子セクキヌマブのIC50に対して較正した(相対IC50:IC50セクキヌマブ/IC50試験抗体)。相対的なIC50値は、セクキヌマブとscFvの質量単位(ng/ml)で計算した。
【0535】
中和アッセイは、力価アッセイで使用される標的濃度よりも高い平衡結合定数(KD)で標的に結合する場合(KD>標的濃度)にのみ、標的ブロッキング抗体の力価を区別できる。HT-29アッセイでは、20ng/ml(=645pM)のIL-17A濃度を使用した。従って、理論的には、HT-29アッセイはKD>645pMのIgG間の力価を区別することができる。分析されたすべてのIgGが645pM未満のKD値を示したため、異なる親和性(ただし同様の作用機序)を有するIgG間の力価をこれで区別することはできない。従って、HT-29アッセイをさらに開発して、力価をよりよく分離するために50pg/mlのTNFαを含めた。このサイトカインはIL-17Aと相乗作用してGRO-α分泌を誘導し、その結果、TNFαの存在下でIL-17A濃度を1ng/ml(=32pM)に低下させることができるであろう。
【0536】
選択されたクローン27-07-G02は、セクキヌマブの50倍の力価を示した(表3、図2を参照)。より詳細には、クローン27-07-G02は、HT-29アッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、IC50については75、IC90については48の力価(相対力価)でIL-17Aを中和することが示され、ここで前記相対力価は、HT-29アッセイにおけるセクキヌマブのIC50又はIC90値(ng/mL)と、HT-29アッセイにおけるクローン27-07-G02のモノクローナル抗体のIC50又はIC90値(ng/mL)との比である(表3、図2を参照)。
【0537】
選択されたクローン27-31-C04は、セクキヌマブの100倍の力価を示した(表3、図2を参照)。より詳細には、クローン27-31-C04は、HT-29アッセイで決定されたセクキヌマブの力価と比較して、IC50については287、IC90については704の力価(相対力価)でIL-17Aを中和することが示され、ここで前記相対力価は、HT-29アッセイにおけるセクキヌマブのIC50又はIC90値(ng/mL)と、HT-29アッセイにおけるクローン27-31-C04のモノクローナル抗体のIC50又はIC90値(ng/mL)との比である(表3、図2を参照)。
【0538】
1.3.4 ヒトIL-17A/IL-17RA相互作用の阻止(競合ELISAによる)
hIL-17RAへのhIL-17A結合の阻害は、競合ELISAによって評価された。4μg/mlのIL-17RA(Sino Biological、カタログ番号10895-H08H)を含む50μlのPBSを4℃で添加することにより、hIL-17RAをELISAプレート上にコーティングした。ビオチン化hIL-17Aをウサギモノクローナル抗体と1時間プレインキュベートした後、混合物をELISAプレートに加えて、hIL-17RAに1.5時間結合させた。次に、ビオチン化IL-17Aの検出に使用した10ng/mlストレプトアビジン-ポリHRP40(SDT、カタログ番号SP40C)50μlを添加し、プレートを1時間インキュベートした。最後に、テトラメチルベンジジン溶液(KPL、カタログ番号53-00-00)を添加してプレートを5~10分間発色させ、1M HClで反応を停止させた。マイクロタイタープレートリーダー(Infinity reader M200 Pro, Tecan)を使用して、450nm及び570nm(参照波長)の波長でプレートを読み取った。
【0539】
選択されたウサギIgGについて得られた用量応答曲線を図3に示す。参照セクキヌマブと比較したIC50値及びIC90値を表3に要約する。前のセクションで述べたように、中和アッセイは、力価アッセイで使用される目標濃度よりも高い(KD>目標濃度)平衡結合定数(KD)でその標的に結合する場合にのみ、標的ブロッキング抗体の力価を区別することができる。HT-29アッセイでは、32pMのIL-17A濃度を使用したが、IL-17A/IL-17RA阻害ELISAでは、193pMのIL-17A濃度を使用した。従って、理論的には、HT-29アッセイは、KD>32pMのIgG間で力価を区別できるが、阻害ELISAは、KD>193pMのIgG間でのみ力価を区別できる。HT-29アッセイと同様に、クローン27-07-G02及びクローン27-31-C04は、セクキヌマブよりも高い力価を示した。クローン27-07-G02は、ELISAアッセイで決定されたセクキヌマブと比較して、IC50については5、IC90については14の力価(相対力価)で、IL-17A/IL-17RA相互作用を阻止することが示され、ここで前記相対力価は、ELISAアッセイにおけるセクキヌマブのIC50又はIC90値(ng/mL)と、ELISAアッセイにおけるクローン27-07-G02のモノクローナル抗体のIC50又はIC90値(ng/mL)との比である。同様に、クローン27-31-C04は、ELISAアッセイによって決定されたセクキヌマブと比較して、IL-17A/IL-17RA相互作用をIC50については8、IC90では21の力価で阻止することが示された(表3を参照)。
【0540】
1.3.5 カニクイザルIL-17Aに対する交差反応性(HT-29アッセイによる)
5万個のHT-29細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種した。ウサギモノクローナル抗体と内部参照セクキヌマブの連続希釈物に加えて、ヒトTNFα(50pg/ml)とヒト又はカニクイザルIL-17A(1ng/ml)の予備希釈物をそれぞれHT-29細胞に添加した。37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を採取し、GRO-α(CXCL1ケモカイン)分泌をELISAにより定量した。カニクイザルIL-17Aで得られたIC50値を互いに直接比較できるようにするために、各プレートの個々のIC50値を、各プレートで取得したヒトIL-17Aで得られたIC50に対して較正した(相対IC50:IC50、カニクイザルIL-17A/IC50、ヒトIL-17A)。選択したクローンの力価を表3に示す。クローン27-07-G02の場合、カニクイザルIL-17A誘導GRO-α分泌を中和する力価(IC50)は0.64ng/mlと決定され、クローン27-31-C04の場合、はカニクイザルIL-17A誘導GRO-α分泌に対する力価(IC50)は0.49ng/mlであると決定された(表3を参照)。
【表3】
【表4】
【0541】
1.3.6 IL-17AとIL-17Fの選択性
他のIL-17ファミリーメンバーに対するIL-17AへのIgG結合の選択性を、標的特異的結合を確実にするために決定した。抗IL-17A IgGのIL-17Fへの結合を測定するために、プレートをIL-17A又はIL-17F(Peprotech、カタログ番号200-25)でコーティングし、10μg/ml組換え抗IL-17A IgGでインキュベートする(対照としてセクキヌマブを含む)直接ELISAを開発した。IL-17F結合のOD(450~690nm)は、a)IL-17A結合のOD(450~690nm)、及びb)セクキヌマブ結合のOD(450~690nm)と比較して計算される。データは表4にまとめられている。
【0542】
実施例2:ヒト化とscFvの生成
2.1 ヒト化scFv抗体の生成
ヒット確認中に得られたデータに基づいて、クローン27-07-G02及び27-31-C04がヒト化のために選択された。選択されたクローンのヒト化は、WO2014/206561に記載されているように、Vκ1-λcap/VH3タイプのscFvアクセプターフレームワークへのウサギCDRの転移を含んでいた。このプロセスでは、6つのCDR領域のアミノ酸配列がドナー配列(ウサギmAb)で同定され、アクセプター足場配列に移植され、「CDRグラフト」と呼ばれる構築物が得られた(それぞれ配列番号24、A1;及び配列番号61、PRO571を参照)。さらに、第2のグラフトが両方のクローン27-07-G02及び27-31-CO4(それぞれ配列番号25、A2;及び配列番号62、PRO592)について設計され、これらは、特定のフレームワーク位置でウサギドナーからの追加のアミノ酸修飾を含み、従って、CDR位置に影響を与え、抗原結合及び/又は安定性に影響を与える可能性があると説明されている(Borras et al., 2010; J. Biol. Chem., 285:9054-9066)。これらのヒト化構築物は「構造(STR)グラフト」と呼ばれる。さらに、クローン27-07-G02の場合、4つの変異、すなわち可変軽鎖上のA51P、及び可変重鎖上のQ14K、G16E、及びG56A(AHo番号付けによる)が、親和性を改良するために構造ベースのグラフト(配列番号25、A2)に導入された。クローン27-31-C04の場合、親和性を改良するために2つの変異、すなわちR20T及びQ141P(AHo番号付けによる)が、構造ベースのグラフト(配列番号62、PRO592)の可変重鎖に導入された。
【0543】
これらの構築物の特性評価データの比較により、STR構築物の重要な利点が明らかになった場合、CDRグラフト化VLとSTRグラフト化VHを組み合わせた追加の変種を設計できる。この組み合わせは、STRグラフトの活性を保持するのにしばしば十分であることが証明されており(Borras et al. JBC. 2010;285:9054-9066)、ヒトアクセプター足場のより少ない非ヒト改変が、傷害された安定性のリスクと免疫原性の可能性を低下させるため、一般的に好ましい。
【0544】
2.2 ヒト化scFvの製造
インシリコ(in-silico)構築物の設計が完了した後、対応する遺伝子が合成され、細菌発現ベクターが構築された。発現構築物の配列はDNAのレベルで確認され、構築物は一般的な発現及び精製プロトコールに従って製造された。
【0545】
タンパク質の異種発現は、大腸菌中で不溶性封入体として、小規模(55mL)で一晩の誘導発現により行った。封入体は、均質化された細胞ペレットから、数回の洗浄工程を含む遠心分離プロトコールによって単離され、細胞破片及び他の宿主細胞不純物を除去した。精製された封入体を変性緩衝液(100mMトリス/HCl、pH8.0、6M Gdn-HCl、2mM EDTA)に溶解し、scFvを拡張性のある再折り畳みプロトコールにより再折り畳みをして、ミリグラム量の本来の折り畳まれたモノマーscFvを生成した。この時点で、標準化されたプロトコールを使用してscFvを精製した。再折り畳み後の生成物を親和性クロマトグラフィーで捕捉し、精製されたscFvを得た。さらにscFvの融解温度を示差走査蛍光測定法(DSF)測定によって決定して、次の段落で説明される薬力学的特性評価の完了後に、より広範な安定性評価に入る分子の選択をサポートした。選択した分子のDSF測定については、2.4.2項で詳しく説明する。
【0546】
2.3 ヒト化scFvの機能特性評価
以下では、ヒト化scFvを、ヒット確認フェーズで説明したのと同じアッセイシステムを使用して、しかしscFv分子の異なる形式に対応するために特定の適応を加えて、主要な薬力学特性について特性評価した。
【0547】
2.3.1 ヒトIL-17A及びカニクイザルIL-17Aに対する親和性
ヒトIL-17A及びカニクイザル(Macaca fascicularis)IL-17Aに対するヒト化scFvの親和性は、T200装置(Biacore, GE Healthcare)でSPR分析によって決定された。この実験では、ビオチン化ヒトIL-17Aを、BiocoreのBiotin-CAPtureキットを使用して捕捉した(「キャプチャ設定」)。各分析物注入サイクルの後、CAPセンサーチップが再生され、新しい抗原が捕捉された。scFvは、ランニング緩衝液で希釈された0.35~90nMの範囲の分析物の濃度で、用量応答マルチサイクル反応速度アッセイを使用して分析物として注入された。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用してフィッティングされた。さらに、scFvは代替のSPRアッセイ設定(「直接設定」)で分析された。IL-17Aは、アミンカップリングによってCM5センサーチップ(GE Healthcare)に固定化された。0.35~90nMの範囲のscFvの連続希釈物を、固定化されたIL-17Aに注入した。直接設定を使用した場合、キャプチャ設定と比較して、試験したscFvの親和性は2~50倍以上であった。キャプチャ設定を使用した場合の親和性の低下は、scFvの結合に対するビオチンの干渉が原因である可能性がある。
【0548】
カニクイザルIL-17Aへの交差反応性は、ヒトIL-17Aへの結合を測定するために使用されたものと同様のアッセイで、Trenzymeによって生成されたIL-17Aを用いて測定された。
【0549】
SPRキャプチャ設定によって測定すると、scFv A1(CDR)及びA2(STR)はヒトIL-17Aに、それぞれ2.5×10-10M及び3×10-9Mの親和性で結合した(表5)。直接SPR設定では、scFv A1(CDR)及びA2(STR)はヒトIL-17Aに、それぞれ1.4×10-10M及び5.5×10-11Mの親和性で結合した(表5)。scFv A1(CDR)及びA2(STR)はカニクイザルIL-17Aに、それぞれ9×10-10M及び5×10-9Mの親和性で結合した(表5)。
【0550】
SPRキャプチャ設定によって測定すると、scFv PRO571(CDR)及びPRO592(STR)はヒトIL-17Aに、それぞれ1.2×10-10M及び3.7×10-10Mの親和性で結合した(表5)。直接SPR設定では、scFv PRO571(CDR)及びPRO592(STR)はヒトIL-17Aに、それぞれ4×10-11M及び3.8×10-11Mの親和性で結合した(表5)。scFv PRO571(CDR)及びPRO592(STR)はカニクイザルIL-17Aに、それぞれ3.3×10-11M及び1.6×10-10Mの親和性で結合した(表5)。
【0551】
2.3.2 HT-29アッセイ(ヒトIL-17Aの中和)
HT29アッセイにより、ヒト結腸癌細胞株HT-29のIL-17A誘導GRO-α分泌を阻害するヒト化scFvの能力を試験した。上記のセクション1.3.3及び1.3.5で説明したように、アッセイの感度を上げるために、IL-17Aに加えてTNFαを添加した。96ウェルプレートの各ウェルに5万個のHT-29細胞を播種した。連続希釈したscFvと内部参照セクキヌマブに加えて、ヒトTNFα(50pg/ml)とヒトIL-17A(1ng/ml)の予備希釈物をHT-29細胞に添加した。37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を採取し、GRO-α(CXCL1ケモカイン)分泌をELISAで定量した。
【0552】
ヒト化されたscFvA1、PRO571、及びPRO592の阻害曲線が図4に示される。すべての力価データは表5及び表6に要約される。各分子について報告された相対的IC50値を参照抗体セクキヌマブに対して較正して、異なるアッセイプレートからのIC50値の直接比較を可能にした。相対的なIC50値はセクキヌマブとscFvの質量単位(ng/ml)で計算された。
【0553】
クローン27-07-G02、A1、及びA2に由来するヒト化scFv、並びにクローン27-31-C04、PRO571、及びPRO592に由来するヒト化scFvは、IL-17A誘導GRO-α分泌を、セクキヌマブよりも低いIC50で阻害し(表5及び表6を参照)、セクキヌマブと比較して100倍以上高い力価を示した(表5及び表6を参照)。
【表5】
【表6】
【0554】
2.3.3 競合ELISA(hIL-17-RAへのhIL-17A結合の阻害)
HT-29アッセイに加えて、ヒトIL-17AとヒトIL-17RAの相互作用を阻害する各ヒト化scFvの力価を、ELISAによって、セクション1.3.4で説明したのと同じ操作で評価した。HT-29アッセイと同様に、各プレートの個々のIC50値は、各プレートで使用される参照分子セクキヌマブのIC50及び相対的IC50(相対的IC50:IC50、セクキヌマブ/IC50、試験抗体)に対して較正される(表5及び表7)。このアッセイでは、6ng/mlのIL-17Aが使用され、これは、アッセイがKD>193pMのIgG間の力価のみを分離できることを意味する。A1、A2、PRO571、及びPRO592の阻害曲線を図5に示し、力価は表5及び表7に要約される。
【表7】
【0555】
2.3.4 IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fに対する選択性(競合ELISA)
各scFvへのIL-17Aの結合を最大の半分阻害するIL-17B~Fの相対的可能性を、IL-17Aと比較して、競合ELISAによって評価した。非標識IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fによるビオチン化IL-17AとscFvの相互作用を阻害する可能性を、競合ELISAで分析した。この目的のために、scFvを96ウェルELISAプレートにコーティングした。連続希釈されたIL-17A又はIL-17B~IL-17Fの存在下での、コーティングされたscFvへのビオチン化IL-17Aの結合は、HRPに結合したビオチン結合性ストレプトアビジンを使用して検出された。IL-17Aの用量応答曲線について、データを4パラメーターロジスティック曲線フィッティングを使用して分析し、ビオチン化IL-17AとコーティングされたscFvとの相互作用を50%阻止するために必要なIL-17Aの濃度(EC50)を計算した。IL-17B~IL-17Fは、ビオチン化TNFとscFvとの相互作用の有意な阻害を示さなかった(図6を参照)。各scFvへのIL-17Aの結合を阻害するIL-17Aと比較したこれらのIL-17ファミリーメンバーの相対的可能性を定量化するために、IL-17Aと比較してIL-17ファミリーメンバーによる相互作用を阻害するEC50を計算した。IL-17AのEC50よりも約100~40,000倍高い濃度でIL-17メンバーを使用しても、有意な阻害は観察されなかったため、IL-17ファミリーメンバーよりもIL-17Aに対する結合の選択性は、100~40,000倍よりも大幅に高いことが判明した。
【0556】
A1、PRO571、及びPRO592について図6に示し表8に要約されるように、scFv A1、PRO571、及びPRO592とビオチン化IL-17Aとの相互作用は、非標識IL-17Aによって阻止されたが、IL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E、及びIL-17Fは、試験したサイトカインの最高濃度(20~500μg/ml)でも有意な効果を示さなかった。従って、A1、PRO571、及びPRO592はIL-17Aに特異的に結合するが、最も近いホモログであるIL-17B~IL-17Fには結合しない。従って、本明細書に記載のscFvのオフターゲット結合は、非常に起きにくいと思われる。
【0557】
2.4 ヒト化scFvの生物理学的特性評価
2.4.1 安定性材料の製造
scFvは、上記と同じ製造プロセス(セクション2.2を参照)を使用して、再度さらに大規模(1.2L~2.4Lの発現量)で製造された。さらにタンパク質試料は、精製後に遠心濃縮チューブを使用して>10mg/mLに濃縮された。安定性評価のための材料の大規模製造を表9にまとめている。すべての分子は十分な量と純度(95%超のモノマー)で製造することができた。
【0558】
scFv構築物の生産性は、様々なレポートポイントによって特徴づけられた(表9)。生産性基準は、選択されたscFv本体が、十分な量で発現、再折り畳み、及び精製されて、リード化合物分子の後の開発をサポートできるものとする。定義された基準は、SDS-PAGEによって評価される発酵ブロス1リットルあたりのscFvの発現収量、及びUV分光法による精製タンパク質の量の測定によって評価される一般的な実験室規模のプロセスで達成された精製収量を、1リットルの再折り畳み溶液に戻して計算したものである。
【0559】
発現力価は、遠心分離による細胞の採取後の粗大腸菌溶解物のレベルで決定された。採取中、細胞のわずかな損失が予想されたが、発現収量の計算のためにこの要因は無視して、生産性のより控えめな推定を行った。溶解物中のscFv生成物の定量については、試料中の宿主細胞タンパク質から生成物を区別できる方法の特異性が高いため、クマシー染色還元SDS-PAGEを選択した
【0560】
生産性を評価するための第2の基準は、再折り畳み溶液1リットルあたりの計算されたscFvの精製収率である。このパラメーターは、タンパク質の再折り畳み工程を含む予想される製造プロセスの潜在的な障害に対処する。再折り畳み操作の効率が、同等の製造プロセスにおいて制限的であることが証明されているため、定義された再折り畳み容量に標準化された生産性に関して、様々な構築物の性能を比較することができる。収量を計算するために、各バッチからの最終タンパク質試料をUV吸光度で定量し、それぞれの精製の実際の再折り畳み量で割った。
【表8】
【表9】
【0561】
2.4.2 熱による展開
scFv構築物A1、PRO571、及びPRO592のDSF測定値から得られた熱展開曲線を図7に示す。DSF測定には、小規模発現で作成された材料が使用された。50mMリン酸クエン酸塩緩衝液、pH6.4、中の試料を、最終タンパク質濃度50μg/mL及び最終濃度5×SYPRO(登録商標)Orangeで総量100μlに調製した。25μlの調製試料を白壁のAB遺伝子PCRプレートに三重測定で加えた。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCR装置で実施され、蛍光発光はソフトウェアのカスタム色素較正ルーチンを使用して検出された。試験試料を含むPCRプレートを、25℃から96℃まで1℃刻みで温度勾配に付し、各温度上昇後に30秒間休止させた。総アッセイ時間は約2時間であった。Tmは、ソフトウェアGraphPadPrismによって、曲線の変曲点を計算するための数学的2次導関数法を使用して計算された。エラーバーで示されているように、測定はそれぞれ二重測定又は三重測定で行った。得られたTm値は、データをボルツマン方程式にフィッティングして決定されている。
【0562】
図7は、Tmの計算に使用された選択されたドメインの、データのボルツマン方程式へのフィッティングによる融解曲線を示す。表10は、A1、PRO571、及びPRO592のSE-HPLCによって測定され計算された融解温度と純度をまとめたものである。
【表10】
【0563】
2.4.3 保存安定性試験
scFv A1、PRO571、及びPRO592に、4週間の安定性試験などのさらなる安定性試験を実施した。この試験では、scFvを水性緩衝液に10mg/mlで調製し、-65℃未満、4℃、及び37℃で4週間保存した。1週間目、2週間目、及び各試験の最後に、調製物中のモノマーとオリゴマーの割合をSE-HPLCピーク面積の積分によって評価した。表11は、研究の28日目に得られたエンドポイント測定値を比較している。28日間の経時的なモノマー含有量(%)及びタンパク質濃度(mg/mL)を図8に示す。本発明のscFvは、4℃の温度及び>10mg/mlの濃度で保存時に、5%以下のモノマー損失、特にA1の場合1%未満のモノマー損失を有することが示された。さらに、本発明のscFv A1は、37℃の温度及び>10mg/mlの濃度で保存時に、モノマー損失は5%未満であることが示された。
【表11】
【0564】
2.4.4 凍結融解安定性試験
上記の保存安定性試験に加えて、scFv A1、PRO571、及びPRO592の適合性を、凍結融解(F/T)サイクル(コロイド安定性)に関して評価した。
【0565】
F/T安定性評価では、保存安定性試験(SE-HPLC、SDS-PAGE)と同じ分析方法とパラメーター(モノマー含有量%とモノマー損失%)を適用して、5回のF/Tサイクル後の分子の品質を追跡した。試料をPBSで調製し、VivaSpin濃縮装置を使用して10mg/mLに濃縮した後、試験を開始した。少量の試料(<20μL)により、急速な凍結融解の間隔が可能になった。試料の凍結融解サイクルを5回繰り返した。試料を-80℃の温度で凍結し、室温で融解した。A1、PRO571、及びPRO592の安定性を評価するために、各サイクルの後、タンパク質含有量や純度などの分析読み取り値を、SE-HPLC及びUV280測定によって様々な時点で記録した。データを表12に示す。図9は、5回繰り返しF/Tサイクルにわたるモノマー含有量(%)の経過を示している。
【0566】
2.4.5 pH安定性試験
scFv A1、PRO571、及びPRO592に短期間のストレス安定性試験を実施し、この試験では、scFv分子をpH値が3.5~7.5の一連の水性(リン酸-クエン酸塩)緩衝液系で20mg/mlで調製した。4℃で48時間及び25℃で8時間保存した後、モノマー含有量(%)及びモノマー損失(%)を分析した(表13)。A1、PRO571、及びPRO592は、試験された緩衝液系のいずれかで、測定された任意の時点で、5%未満のモノマー損失を示した(表13及び表14)。
【0567】
この評価の範囲内で提案された様々な試験が、タンパク質の安定性の明確な機構的側面に対処していることに注意することが重要である。どちらの方法も、潜在的な生成物の寿命と安定性を推定するように設計されているが、対処するメカニズムは大きく異なる。熱展開によって評価される遷移の中点(Tm)は、タンパク質ドメインの安定性の定性的尺度である(ΔGの熱力学的決定はできない)。非常に安定したタンパク質ドメイン(高Tm)は、周囲温度で自発的に展開する可能性が低く、従って、展開されたドメインの相互作用によって引き起こされる不可逆的な凝集/沈殿の傾向が小さくなる。高いドメイン安定性は、アミノ酸残基の密な充填を示し、これはプロテアーゼ切断に対する耐性とも相関している。一方、SE-HPLC評価は、モノマー画分の含有量と可溶性オリゴマー/凝集体の含有量を定量的に決定する。そのような可溶性オリゴマーはしばしば可逆的であり、正しく折りたたまれたタンパク質間の静電的又は疎水性相互作用によって比較的緩く会合する。熱変性によって評価されるTmとSE-HPLCによって評価されるオリゴマー/凝集体形成の傾向との間には、特に「境界線」安定性を有するタンパク質について、ある程度の相関関係がある。約60℃の特定の閾値Tmより大きいと、抗体可変ドメインは一般に十分に安定しており、周囲温度での部分的なドメインの展開による凝集/沈殿及びタンパク質分解に対して耐性がある。しかしながら、表面残基の疎水性及び/又は静電相互作用によって引き起こされるオリゴマー化は、依然として起こり得る。重要なことに、高温(例えば37℃)での加速(ストレス)安定性試験では、オリゴマーの形成と沈殿の様々なメカニズムが同時に発生する可能性がある。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0568】
2.4.6 方法
2.4.6.1 還元SDS-PAGE
ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)は、定性的な特性評価とタンパク質の純度の制御に使用される分析手法である。米国薬局方(USP)(USP第1056章)によると、分析的ゲル電気泳動は、原薬中のタンパク質の均一性を特定し評価するための適切で日常的な方法である。
【0569】
この方法は、大腸菌溶解物からのscFv生成物の量を定量して、発酵後の発現収量を得るために使用される。この方法の別の用途は、理論値に対する分子量に基づいて試験物質の本体を検証することである。支持的目的で、この方法は、プロセス関連の不純物(宿主細胞タンパク質)及び生成物関連の不純物(分解生成物又は付加物)に関して試験試料の純度を定量するために使用される。
【0570】
SDS-PAGE分析は、Bio-Rad Laboratories Inc.から入手した市販のプレキャストゲルシステム「MiniProtean」を使用して実施した。ヒト化scFvは「Any kD」分解ゲル(#456-9036)で分析した。どちらの場合も、製造業者が推奨するトリス/グリシン緩衝液系を使用した。タンパク質バンドの検出には、SimplyBlueTM染色液(Life Technologies Corp.、#LC6060)によるクマシー染色を使用した。染色操作については、供給業者のプロトコールに従った。
【0571】
染色されたタンパク質ゲルの記録及び分析は、記録システムChemiDoc XRSシステム(Bio-Rad Laboratories Inc.、#170-8265)及びソフトウェアImage Lab、バージョン4.0.1(Bio-Rad Laboratories Inc.、#170-9690)を使用して実施した
【0572】
2.4.6.2 280nmにおけるUV吸光度
280nmでのUV吸光度法は、USP第1057章に概説されている総タンパク質アッセイである。タンパク質溶液は、芳香族アミノ酸の存在により、280nmの波長のUV光を吸収する。UV吸収は、タンパク質中のチロシン及びトリプトファン残基の含有量の関数であり、タンパク質濃度に比例する。未知のタンパク質溶液の吸光度は、分光法に関するUSP第851章に従って、ベールの法則A=ε×l×cを適用することにより決定でき、式中、吸光度(A)はモル吸光係数(ε)と吸収経路の長さと物質の濃度の積に等しい。scFvのモル吸光係数は、ソフトウェアVectorNTI(登録商標)(Life Technologies Corporation)を使用して計算した。
【0573】
UV吸光度の測定は、Nanoquantプレート(Tecan Group Ltd.)を備えるInfinityreader M200Proを使用して行われる。タンパク質試料の吸光度は280nmと310nmで測定され、後者の波長は参照信号となり、280nmの信号から差し引かれる。試料マトリックスの潜在的な干渉を考慮して、測定ごとにブランク減算が実施される。得られたタンパク質試料の最終的な吸光度信号を使用して、ランベルトベールの法則を使用してタンパク質濃度が計算される。
【0574】
すべての測定は、0~4ODの測定範囲で、機器の仕様に指定された範囲内で実施され、再現性1%未満及び均一性3%未満が製造業者によって指定されている。
【0575】
2.4.6.3 SE-HPLC(サイズ排除高圧液体クロマトグラフィー)
SE-HPLCは、USP第621章で概説されているように、固体固定相と液体移動相に基づく分離技術である。この方法では、サイズと形状に基づいて、疎水性固定相と水性移動相を利用して分子を分離する。分子の分離は、特定のカラムのボイド容量(V0)と総透過容量(VT)の間で発生する。SE-HPLCによる測定は、自動試料注入と検出波長280nmに設定されたUV検出器を備えたChromasterHPLCシステム(Hitachi High-Technologies Corporation)で実施される。この装置は、ソフトウェアEZChrom Elite(Agilent Technologies、バージョン3.3.2 SP2)によって制御され、これはまた、得られるクロマトグラムの分析もサポートする。タンパク質試料は遠心分離によって清澄化され、注入するまでオートサンプラー内で4~6℃の温度に保たれる。scFv試料の分析には、Shodex KW403-4Fカラム(Showa Denko Inc.、#F6989202)が、標準化された緩衝生理食塩水移動相(50mM酢酸ナトリウムpH6.0、250mM塩化ナトリウム)を用いて推奨流量0.35mL/分で使用される。注入あたりの標的試料負荷量は5μgであった。試料は波長280nmのUV検出器で検出され、データは適切なソフトウェアスイートで記録される。得られたクロマトグラムは、V0~VTの範囲で分析されるため、溶出時間が10分より大きいマトリックス関連ピークは除外される。
【0576】
方法の中間精度を確保するために、各HPLC工程の開始時と終了時に参照標準物質がルーチンに測定される。このシステム適合性試験に使用される参照標準物質は、バッチ毎に生成され、各測定時点で使用されるように分注されたscFvである。
【0577】
2.4.6.4 DSF(示差走査蛍光測定法)
試験されたscFv構築物の熱展開の遷移の中点は、本質的にNiesen(Niesen et al., Nat Protoc. 2 (2007) 2212-21)によって説明されているように、示差走査蛍光測定法(DSF)によって決定された。DSF法は、温度依存性のタンパク質の展開を測定するための非公定法である。DSFによる熱展開温度の測定は、MX Proソフトウェアパッケージ(Agilent Technologies)で制御され、492/610nmの励起/発光フィルターセットを備えたMX3005P qPCR装置(Agilent Technologies)を使用して実施される。反応は、Thermo fast 96白色PCRプレート(Abgene;#AB-0600/W)で設定される。タンパク質の展開を検出するために、SYPRO orange色素の市販のストック溶液(Molecular Probes;#S6650)が最終希釈率1:1,000で使用される。タンパク質試料は、展開測定用に、標準化された緩衝化生理食塩水で最終濃度50μg/mLに希釈される。熱展開は、25℃で開始し30秒間の1℃工程で96℃まで上昇する温度プログラムによって実施される。温度プログラム中に、各試料の蛍光発光が記録される。記録された生データは、Microsoft Excelテンプレートのパッケージ(Niesen, Nature Protocols 2007, Vol. 2 No.9)で処理及び評価され、蛍光データは、プログラムGraphPad Prism(GraphPad Software, Inc.)を使用して、ボルツマン式にフィッティングされ、遷移の中間点(Tm)を取得する。
【0578】
展開の中間点の信頼性が高く堅牢な測定値を生成するために、少なくとも二重測定が実施される。中間精度の評価のために、参照標準物質(既知の特性評価されたscFv)がすべての測定に含まれ、異なる日のアッセイ性能の比較を可能にする。
【0579】
2.4.6.5 安定性試験
これらの分子の開発可能性のために、読み出しとしての様々なscFv構築物の安定性を評価するために、短期安定性試験プロトコールを設計することができる。タンパク質構築物は、単純な緩衝生理食塩水調製物(上記参照)で10mg/mLの目標濃度に濃縮される。モノマー含有量はSE-HPLCによって測定して、純度が成功基準の>95%であることが確認される。次に、タンパク質試料を-80℃未満、4℃、37℃で4週間保存し、アリコートを様々な時点で分析する。主な読み取り値は、SE-HPLCによる分析であり、これにより、可溶性の高分子量オリゴマー及び凝集体の定量が可能になる。裏付けとなる測定値として、タンパク質含有量は280nmでのUV吸光度によって決定される。これは、保存期間中に多量のタンパク質が沈殿によって失われたかどうかを示す。さらに、試験の終点での純度が、分解又は共有多量体化に関して構築物の安定性を示すSDS-PAGEによって決定される。
【0580】
実施例3:多重特異性構築物の生成
抗IL-17(27-07-G02-sc01、表1を参照)、抗TNFα(16-19-B11-sc06、表1を参照、WO2017/158101に記載)、及び抗HSA結合ドメイン(19-01-H04-sc03、表1を参照)を2つの異なる三重特異性抗体形式に組み合わせた:トリボディ及びscDb-scFv形式(表1)。トリボディ形式は、Fab断片と、Fabの各鎖のカルボキシ末端に融合した1つのscFv分子との融合体であり、三重特異性分子(Fab-(scFv)2)をもたらす。この形式は、1つのタンパク質鎖上の定常軽ドメイン(CL)に融合した可変軽ドメイン(VL)と、第2のタンパク質鎖上の定常重ドメイン(CH1)に融合した可変重ドメイン(VH)とから成る、Fab断片のヘテロ二量体アセンブリを使用している。カルボキシ末端では、定常ドメインはそれぞれ柔軟なGly-Serリンカーを介してscFv断片に接続されている。scDb-scFvは、scFv断片が柔軟なGly-Serリンカーによって、非常に安定した1本鎖ダイアボディ(scDb)形式に融合された形式である。Fab-scFv2(トリボディ)とscDb-scFvの両方の形式は、CHO-S宿主細胞で組換え発現させることができる。
【0581】
三重特異性形式における個々の結合ドメインの最適な相対位置を、薬力学的及び生物理学的パラメーターの観点から試験した。各形式は、異なる構成、つまりドメインの相互の相対的な配置を可能にする。
【0582】
トリボディ断片の位置CL及びCH1でのScFv融合は同等であると見なされ、この形式の3つの変種が得られる(図10、A)。分子の1本鎖ダイアボディ(scDb)コアドメインへのscFv部分のC末端融合は、N末端融合よりも優れているため、この形式のC末端融合変種のみを評価した。この形式のいくつかの並べ換え変種を分析した(図10、B)。すべての分子の配列を表1に示す。
【0583】
実施例4:リード化合物製造の一般的なプロセス
すべての三重特異性構築物の発現は、CHOgro一過性トランスフェクションキット(Mirus)を使用してCHO-S細胞で実施された。培養物は37℃で5~7日間(細胞生存率<70%)の発現後に遠心分離により採取され、タンパク質は清澄化された培養上清から、プロテインL親和性クロマトグラフィー、続いてサイズ排除クロマトグラフィーによる仕上げ工程によって精製された。製造された材料の品質管理には、SE-HPLC、SDS-PAGE、UV280などの標準的な分析方法が使用された。
【0584】
表16は、三重特異性形式の変種の作成と特性評価の概要を示す。図11は、A3~A8の産生と精製の概要を示す。抗体断片は、CHO細胞培養上清から、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)結合緩衝液で予備平衡化された充填プロテインLカラムを使用して直接捕捉された。試料を適用した後、カラムを結合緩衝液で洗浄し、タンパク質を一工程pH勾配で溶出した。タンパク質画分のモノマー含有量をサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって測定し、画分をプールし、緩衝液を透析によりpH6.4のリン酸クエン酸緩衝液(最終緩衝液)に交換した。後続の分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のために、画分プールを遠心濃縮機を使用して濃縮して総試料量を減少させ、ここで、前記分取サイズ排除クロマトグラフィーを、PBSで予備平衡化したGE Superdex 200 10/300カラムを使用して、タンパク質試料の仕上げのために行った。試料は、最終緩衝液を使用してアイソクラティックに溶出され、SE-HPLC、SDS-PAGE、及びUV280によってさらに特性評価された。
【表16】
【0585】
実施例5:薬理学的特性評価
5.1 pH5.5及びpH7.4でのHSA及びCSAへの親和性
ヒト血清アルブミン(HSA)及びカニクイザル血清アルブミン(CSA)への結合は、精製された三重特異性分子について、MASS-1装置(Sierra Sensors)でSPR分光測定を実施することにより評価された。HSAは大容量アミンセンサーチップ(Sierra Sensors)に直接固定化され、三重特異性分子は、用量応答マルチサイクル反応速度アッセイを使用して、pH5.5又はpH7.5のランニング緩衝液で0.35~90nMの範囲の分析物濃度を用いて、分析物として注入した。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用してフィッティングされた。CSAへの親和性は、同様のアプローチでCSA固定化センサーチップを使用して評価された。CSAへの結合は、pH5.5及びpH7.5のA5及びA7についてのみ測定された。以下の表(表17)は、HSA及びCSAに対して得られた親和性をまとめたものである。
【表17】
【0586】
5.2 ヒトTNFα並びにヒト及びカニクイザルIL-17Aへの親和性
ヒトTNFα並びにヒト及びカニクイザルIL-17Aへの親和性は、SPR分析を使用してT200装置(Biocore, GE Healthcare)で測定した。この実験では、ビオチン化抗原をBiocoreのBiotin-CAPtureキットを使用して捕捉した。各分析物注入サイクルの後、CAPセンサーチップが再生され、新しい抗原が捕捉された。三重特異性分子は、用量応答マルチサイクル反応速度アッセイを使用して、分析物としてランニング緩衝液で希釈された0.35~90nMの範囲の分析物濃度を用いて注入された。得られたセンサーグラムは、1:1結合モデルを使用してフィッティングされた。カニクイザルIL-17Aへの結合は、A5とA7についてのみ測定された。以下の表(表18)は、ヒトTNFα並びにヒト及びカニクイザルIL-17Aで得られた親和性をまとめたものである。この表に示されているように、いくつかの分子では、TNFα又はIL-17Aへの結合は10%未満であった。この知見は、ドメインのそれぞれの標的へのアクセス可能性が低下することで説明できる可能性がある。これらの低結合剤の測定された親和性は同様の範囲であり、より高い結合レベルに達する分子と比較して時には著しく高いが、TNFα及びIL-17Aの生物活性を阻害する分子の可能性は著しく低下した(表19及び表21を参照)。
【0587】
TNF誘導性の生物学的応答に対する精製された三重特異性分子の効果は、マウスL929線維芽細胞を使用して決定された。まず、L929細胞の増殖をアクチノマイシンDで停止させた。次に、ウェルあたり6万個の細胞を播種し、次にヒト(5pM)又はカニクイザル(5pM)TNFα、並びに3回連続希釈した三重特異性分子と内部参照A13、三重特異性分子(配列番号125)として同一の抗TNFドメインを含むscDbで処理した。20時間のインキュベーション後、細胞生存活性をSigma-Aldrichの細胞計数kit-8を使用して評価した。6つの三重特異性分子によるTNFαの中和について得られたデータが図12に示される。さらに、ヒト及びカニクイザルTNFαを中和するそれらの能力を比較するA5及びA7について得られた結果が図13に示される。ヒトTNFαについての参照A13に対する決定された相対IC50値、並びにヒト及びカニクイザルTNFαについて得られたIC50値間の比率が表19に要約される。
【表18】
【表19】
【0588】
5.3 HT-29アッセイ(ヒトTNF及びヒトIL-17Aの同時阻止)
結腸直腸腺癌細胞株HT-29におけるGro-α/CXCL1などのケモカイン及びサイトカインのサブセットの発現をアップレギュレートする際に、IL-17AはTNFと相乗作用する。従って、HT-29細胞によるGro-α/CXCL1分泌を分析することにより、ヒトTNFα及びヒトIL-17Aの同時阻止を評価した。HSA結合が力価に及ぼす影響を試験するために、IL-17A及びTNFαによって誘導されるGro-α/CXCL1分泌を阻害するIC50も、HSAの存在下で評価された。実験は、1mg/ml HSAの非存在下及び存在下で実施された。96ウェルプレートの各ウェルに5万個のHT-29細胞を播種した。力価測定された試験された三重特異性分子、内部参照A13(配列番号125)、及びセクキヌマブに加えて、ヒトTNFα(0.2ng/ml)及びヒトIL-17A(2ng/ml)の予備希釈物がHT-29細胞に加えられた。37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした後、上清を採取し、GRO-α(CXCL1ケモカイン)分泌をELISAで定量した。1mg/mlのヒト血清アルブミン(HSA)の存在下で、6つの三重特異性分子について作成された力価測定曲線を図14に示す。参照セクキヌマブとA13の両方に対する相対IC50値、並びにHSAの存在下又は非存在下で観察された阻害パーセントを表20に要約する。セクキヌマブに対する相対IC50は、セクキヌマブのIC50(ng/ml)を試験された三重特異性分子のIC50(ng/ml)で割ることによって計算された。A13に対する相対的IC50は、A13のIC50(ng/ml)を試験された三重特異性分子のIC50(ng/ml)で割ることによって計算された。
【0589】
最高の力価は、A5、A7、及びA8で観察された。三重特異性分子の力価は、セクキヌマブよりも50~90倍高く、A13よりも2~5倍高い。TNFα及びIL-17Aの同時阻止は、TNFα又はIL-17Aの単一阻止と比較して、効果量を劇的に増加させた。それぞれセクキヌマブとA13で達成される最大効果と同じ効果に達するためには、それぞれ約200倍と60倍低い濃度が必要である。
【表20】
【0590】
5.4 競合ELISA(hIL-17RAへのhIL-17A結合の阻害)
hIL-17RAへのhIL-17A結合の阻害は競合ELISAによって評価された。hIL-17RAをELISAプレートにコーティングした。ビオチン化hIL-17Aを三重特異性分子とともに1.5時間プレインキュベートした後、混合物をELISAプレートに加えて、hIL-17RAに1時間結合させた。次に、ビオチン化IL-17Aの検出に使用されたストレプトアビジン-HRPを添加し、プレートを1時間インキュベートした。最後に、テトラメチルベンジジン溶液を加えてプレートを5~10分間発色させ、反応を1M HClで停止させた。プレートを450nm及び570nm(参照波長)で読み取った。6つの三重特異性分子について得られた力価測定曲線を図15に示す。参照セクキヌマブに対する計算された相対IC50値を表21に要約する。
【表21】
【0591】
5.5 TNF、IL-17A、及びHSAへの同時結合
ヒトTNFα、ヒトIL-17A、及びHSAへの三重特異性分子の同時結合を証明するために、SPR実験を使用した。簡単に説明すると、6つの三重特異性分子(A3~A8)を大容量アミンセンサーチップ(Sierra Sensors)に直接固定し、抗原を分析対象物として2500nM(HSA)、180nM(TNFα)、及び90nM(IL-17A)の濃度で順次注入して、各結合が飽和状態に達したことを確認した。抗原注入のすべての可能な工程が試験され、6つの可能な工程が得られた。すべての三重特異性分子について、3つすべての抗原への同時結合が観察された。三重特異性分子への同時結合を証明するセンサーグラムが図16に示される。
【0592】
各抗原の三重特異性分子への同時結合を評価するために、理論上のRmaxに対する結合レベルを、各リガンド及び分析物の分子量と三重特異性分子の固定化レベルを使用して、各注入について計算した。各抗原の理論的Rmaxに対する最大結合の平均は、それぞれの抗原が最初の分析物として注入された2回の注入(他の結合抗原の非存在下で)で得られた理論的Rmaxに対する個々の最大結合を平均することによって得られた。次に、各分析物注入の理論的Rmaxに対する結合をその平均最大結合と比較して、他の結合抗原の存在下で得られた結合率を計算した。平均最大結合に対する各抗原の結合レベルを表12に示す。表12は、平均最大結合と比較した各抗原の相対結合レベルを示す。各抗原の理論的Rmaxに対する結合レベル及び最大結合の平均(他の抗原の非存在下での結合レベル)を計算した。他の結合抗原の存在下での各抗原の結合を評価するために、各分析物注入の理論的Rmaxに対する結合をその平均最大結合に標準化して、他の抗原の存在下での結合の程度を示す結合値を得た。
【表22】
【0593】
すべての組み合わせで、抗原結合は理論上のRmaxと比較して、平均最大結合の少なくとも70%であった(例えば、TNFαを2番目又は3番目の分析物として固定化A3に注入した場合、得られた相対結合レベルは、他の抗原の非存在下での結合レベルと比較した場合、わずかに減少して92.8%となるか、又はわずかに増加して126.6%になった)。注目すべきことに、HSAが最後の分析物として注入された場合、相対結合レベルは、A3を除くすべての三重特異性分子について約70%に減少した。要約すると、試験された分子間で実質的な差異なしで、すべての三重特異性分子で同時結合が観察された。
【0594】
5.6 基本的な開発可能性評価のための薬物動態学的特性評価と分子選択の要約
表23は、6つの三重特異性分子の薬理学的特評価性の概要を示し、開発可能性評価のための分子の選択の基礎を提供した。L929アッセイでのTNF中和と、HT29アッセイでのTNFαとIL-17Aの同時中和の観点から、A3、A4、及びA6よりも全体的に優れた性能に基づく開発可能性評価のために、3つの分子、すなわちA5、A7、及びA8が選択された。3つの分子はすべて、3つの標的のそれぞれに対して同様の親和性を示した。A7はIL-17AとTNFαの両方を中和する最も高い力価を示し、A5は約2倍低いIL-17A中和力価と示し、A8は、A7と比較して約2倍低いTNFα中和力価を示す。
【表23】
【0595】
実施例6:開発可能性評価
A3、A4、及びA6は、抗TNFドメインの結合と力価の大幅な低下を示したため、開発可能性の評価にはA5、A7、及びA8のみを選択した。
【0596】
6.1 探索的pH適合性
選択された精製三重特異性候補(A5、A7、及びA8)を>20g/Lに濃縮し、次に、調製プロセスの潜在的なpH範囲をカバーする緩衝液で調製した。pH3.5~7.5の範囲のこれらの条件で、分子を20℃で8時間又は4℃で48時間インキュベートした後、一般的安定性を示す方法であるSE-HPLC及びSDS-PAGEを適用して、潜在的なプロセス条件を有する分子の初期適合性プロフィールを確立し、分子の保存安定性評価のための緩衝液条件を規定した。
【0597】
探索的pH実験は、pH3.5~7.5の範囲の複数の50mMリン酸-クエン酸緩衝液中でA5及びA7を使用して実施された(表24)。さらに、A5、A7、及びA8を含むpH7.4のPBS緩衝液で、実験を行った(表25)。3つの分子はすべて、評価したどの緩衝液でも>5%のモノマー含有量の喪失はなかった。
【表24】
【表25】
【0598】
6.2 熱による展開
示差走査蛍光測定法(DSF)は、温度依存性のタンパク質の展開を測定するための非公定法であり、以下に記載のように測定された。
【0599】
pH6.4の50mMリン酸クエン酸塩緩衝液中の試料を、最終タンパク質濃度50μg/mL、及び最終濃度5×SYPRO(登録商標)Orangeで総量100μlに調製した。25マイクロリットルの調製試料を三重測定で白壁のAB遺伝子PCRプレートに加えた。アッセイはサーマルサイクラーとして使用されるqPCR装置で実施され、蛍光発光はソフトウェアのカスタム色素較正ルーチンを使用して検出された。試験試料を含むPCRプレートを、25℃から96℃まで1℃刻みの温度勾配に付し、各温度上昇後に30秒間休止させた。総アッセイ時間は約2時間であった。Tmは、ソフトウェアGraphPadPrismによって、曲線の変曲点を計算するための数学的2次導関数法を使用して計算された。報告されたTmは3回の測定の平均である。
【0600】
表26は、一般的な緩衝液(リン酸-クエン酸塩緩衝液、pH6.4、150mM NaCl)で調製された三重特異性分子の融解温度を示す。
【表26】
【0601】
6.3 保存安定性
選択された三重特異性分子の安定性と最終的な開発可能性の指標として、一般的な最適化されていない調製緩衝液(PBS、pH7.4)中で様々な温度とタンパク質濃度で、選択された分子(A5、A7、A8)を使用して短期安定性試験を実施した。
【0602】
試料をPBSで調製し、VivaSpin濃縮装置を使用して10mg/mLに濃縮した後、試験を開始した。この試験に適用されたインキュベーション条件は、-80℃、4℃、37℃の温度と10mg/mLのタンパク質濃度で4週間であった。分子の安定性を評価するために、タンパク質含有量及び純度などの分析読み取り値を、SE-HPLC、UV280測定、及びSDS-PAGEによって異なる時点で記録した(図17及び表27)。
【表27】
【0603】
37℃での経時的なモノマー含有量%の記録は、図18のd0及びd28安定性試料のSE-HPLCトレースの重なりによって示されるように、分子間の実質的な差異を明らかにした。A8は明らかに安定性が低く、A5及びA7と比較した場合、かなりの量の高分子量分子種を示し、これは、後者の分子が同じ抗体形式を共有し、A7と同じドメインで構成されているため(ドメイン配向は並べ替えられているが)、予想外である。
【0604】
6.4 凍結/融解の安定性
上記の保存安定性試験に加えて、5回の繰り返し凍結融解(F/T)サイクルに関して、分子の適合性が評価された(表28)。F/T安定性評価では、保存安定性試験と同じ分析方法を使用して、5回のF/Tサイクル後の分子の品質を追跡した。すべての分子は、1%未満のモノマー含有量の損失を示した(表28)。
【0605】
試料をPBSで調製し、VivaSpin濃縮装置を使用して10mg/mLに濃縮した後、試験を開始した。少量の試料(<20μL)により、急速な凍結と融解の間隔が可能になった。試料は5回の凍結融解サイクルを繰り返した。これらは-80℃の温度で凍結され、室温で融解された。各サイクル後の分子の安定性を評価するために、タンパク質含有量や純度などの分析読み取り値を、SE-HPLC及びUV280測定によって異なる時点で記録した。
【表28】
【0606】
6.5 基本的な開発可能性評価の要約
開発可能性評価は表29に要約される。
【表29】
【0607】
実施例7:カニクイザルにおける薬物動態(PK)の特性評価
抗HSAドメインを含む三重特異性形式の使用による半減期の延長を確認するために、カニクイザルにおける非GLP薬物動態試験を実施した。以下に簡単に概説される試験計画に従って、A7をカニクイザルに投与した(表30も参照)。A7の薬物動態を、オスのカニクイザルへの静脈内及び皮下投与後に決定した。合計6匹の投薬経験済み動物(各グループ3匹)に、3mg/kgの目標用量レベルでA7を単回投与した。タンパク質は、無菌1×リン酸緩衝化生理食塩水、150mM L-アルギニン、500mMスクロース、pH7.5で予備調製した(表30)。
【表30】
【0608】
血清は、以下の時点で採取された血液試料から調製された:投与前、投与後10分、30分、1、2、4、6、8、12、24、36、48、72、96、144、192、240、288、336、384、432、及び504時間。
【0609】
測定された血清濃度を図19に示す。192時間目以降にA7濃度の大幅な低下が観察された。288から504時間目時点までのすべての試料は、定量限界(BLQ)を下回った。この信号の低下は、サルによる抗薬物抗体(ADA)の出現を示唆した。ヒト可変ドメインに対するADAの形成が予想され、これは抗TNFα×HSA暫定抗体で以前観察されている。従って、A7をELISAプレートにコーティングし、血清試料とインキュベートするアッセイを実施した。A7に結合したカニクイザルIgGは、抗サルIgG抗体を使用して検出された。ADAの存在が確認され、結果は図19に示される。動物は192時間目以降にADAを発症したため、A7の半減期を過小評価しないために、PDパラメーターの推定では後の時点を省略した。
【0610】
次に、サルの血清試料をPK-ELISAで分析した。すべての処理動物からの血清試料を希釈した。ELISAプレートをヒトTNFαで一晩コーティングし、5%カニクイザル血清中のA7の連続希釈物をプレートに加えて、検量線を得た。TNFα結合A7は、ビオチン化ヒトIL-17A、続いてストレプトアビジンポリHRPにより検出された。濃度が不明な血清試料は、必要であれば20倍以上に希釈し、A7濃度を検量線から補間した。アッセイの適格性確認のために、定量及び品質管理の下限と上限を設定して、50~600ng/mlの分析範囲を規定した。アッセイは、希釈の直線性、フック効果、及び選択性について試験された。さらに、1~3回の凍結融解サイクルに付されたカニクイザル血清中のA7の安定性が、定量化の前に示された。
【0611】
次に、PK分析からのデータをPKパラメーターの計算に利用した。薬物動態パラメーターは、WinNonlin薬物動態ソフトウェア(Phoenixバージョン1.4)を使用して非コンパートメントアプローチを使用した推定された。
【0612】
様々な動力学的パラメーターを正確に評価するには、時間ゼロから無限大までのAUCが必要である。最後に測定された濃度(tlast)の時間からの外挿が、tlastから無限大までの曲線の数学的積分によって行われる。最後の試料から無限大までの外挿面積は、得られた動力学的パラメーターの正確性を確認するために、合計AUCの20%未満である必要がある。A7のIV投与とSC投与の両方で、AUCの無限大までの外挿は総面積の20%を超えている。その結果、計算されたデータ(表31)は注意して解釈する必要がある。おそらくこの効果は、アッセイを妨害する抗薬物抗体の出現が原因で発生するのであろう。このような干渉は、より高い投与量によって回避される可能性がある。
【表31】
【0613】
抗HSAドメインを含むscDb-scFvでは、明確な半減期の延長が観察された。A7の半減期(t1/2)は5日より長かった。これは表31に示すように、投与方法とは無関係に達成された。排除段階の最後のポイント(信号の低下前)の変動が大きいため、動物006Mで計算された436時間の半減期は、残りの動物について決定された半減期よりも精度が低い可能性がある。平均半減期は、皮下注射後の方がIV投与後よりも高く、平均半減期はそれぞれ237時間(9.9日)と153時間(6.4日)であった。
【0614】
実施例8:複合体形成分析
この試験では、様々な比率のscDb-scFv A7、モリソンL A14及びA15(図20を参照)、及び標的結合分子であるヒトIL-17A及びヒトTNFαを共培養し、生成された複合体を特性評価した。
【0615】
A14はモリソンL形式で、抗TNFα結合ドメインがFabアーム上に配置され、抗IL-17A結合ドメインがscFvとして軽鎖のC末端に結合している。
【0616】
A15はモリソンL形式で、抗IL-17A結合ドメインがFabアーム上に配置され、抗TNFα結合ドメインがscFvとして軽鎖のC末端に結合している。
【0617】
A7、A14、及びA15の発現は、一過性CHOgro発現システム(Mirus)を使用してFreeStyle CHO-S細胞で行った。目的の遺伝子は哺乳類での発現に最適化され、合成され、標準のpcDNA3.1ベクターにクローニングされた。シグナル配列はマウス重鎖IgGに由来する。発現培養物を、バッチで37℃で6~7日間(細胞生存率<70%)又は37℃で1日培養し、次に、温度を32℃にシフトさせて5~6日間培養した。遠心分離とそれに続く0.45μmろ過により、培養上清を分離した。清澄化された培養上清から、A7をプロテインL親和性クロマトグラフィーとそれに続く仕上げサイズ排除クロマトグラフィーによって捕捉した。
【0618】
組換えヒトIL-17Aは、Peprotech, Rocky Hill, NJ, USAから、大腸菌で発現され、SDS-PAGE及びHPLC(カタログ#200-17、ロット#061184)で純度98%以上に精製されたジスルフィド結合ホモダイマーとして購入した。
【0619】
組換えヒトTNFαは、Peprotech, Rocky Hill, NJ, USAから、大腸菌で発現され、SDS-PAGE及びHPLC(カタログ#300-001A、ロット#0906CY25)で純度98%以上に精製されたホモトリマーとして購入した。
【0620】
形成された複合体の特性評価は、遠心分離後に、動的光散乱(DLS)による流体力学的半径の決定、及び280nmでの吸光度測定によるタンパク質濃度の回収によって実施された。
【0621】
動的光散乱は、経時的な散乱光強度の変動を記録することにより、溶液中の粒子サイズ分布を決定するための高速で感度の高い方法である。データは、数学的に自己相関関数に変換されて、平行拡散係数(Dt)を与える。次に流体力学的半径(Rh)は、ストークス-アインシュタインの方程式から得られる:
【数1】
ここで、kbはボルツマン定数、Tはケルビン単位の温度、ηは溶媒の粘度である。
【0622】
流体力学的半径は、DynaPro(登録商標)Plate reader(商標)II及びDynamicsソフトウェアパッケージ(Wyatt Technology Corp., Santa Barbara, CA, USA)を使用して決定された。25μLを384ウェルの光学的透明底マイクロタイタープレート(例:Corning(登録商標)384ウェルマイクロプレート、Merck、CLS3540-50EA)に添加し、残りの気泡を遠心分離(1000g、4分)により除去した。試料は、25℃で5~10秒間の10回の取得によって測定された。粘度をPBSに設定した。
【0623】
複合体形成の実験中、A7は、その可溶性標的であるヒトIL-17A及びヒトTNFαのそれぞれと、表32に示す相対モル比(A7上の結合部位(パラトープ)及び各標的上のエピトープの相対数)、及びKDより少なくとも1000倍の濃度(表32)でインキュベートされた。各エピトープ/結合部位とA7の濃度範囲は0.5~5μMであった。
【表32】
【0624】
試験された結合パートナー比のそれぞれで形成された可溶性複合体の流体力学的半径は、図21図22、及び図23に要約されている。回収された可溶性タンパク質濃度のパーセントは、図24図25、及び図26に要約されている。
【0625】
1. ほとんどの条件で、タンパク質濃度の完全な回収が観察され、これは、A7の不溶性複合体の形成がないか又は限られていることを示す
2. 複合体サイズ形成中の流体力学的半径の増加が、A7について最大5倍に制限されている
3. A7について可溶性複合体形成とわずかなサイズ増加のため、免疫原性リスクの制限されている
4. A7による各標的の一価結合は、複合体形成時にわずかなサイズの増加で可溶性複合体のみの形成を促進する
【0626】
結論:
抗体を介した免疫複合体の形成は、免疫原性及び免疫関連の有害事象に関連している。そのような免疫複合体は、例えば多量体形態(すなわち、二量体、三量体、四量体など)で存在する標的分子を二価抗体が架橋する場合に形成される。三量体標的(例えばTNFα)の状況では、抗体はその2つのFabアームで2つの異なるTNF三量体に結合して、小さな可溶性複合体を生成することができる。複合体中の2つの結合したTNF三量体のそれぞれの2つの非結合単位は、次に他の抗体によって結合され得る。複数の抗体が同時に結合すると、これは高次の複合体と免疫沈殿物の形成につながる。このような大きな免疫複合体は治療用抗体の免疫原性を高め、抗薬物抗体の形成や免疫関連の有害事象を引き起こす可能性がある。免疫複合体形成のリスクは、分子がそれぞれ二価の相互作用によって複数の標的タイプに同時に関与できる場合にさらに明白になる。この例は、二重特異性抗TNFα/IL-17阻止剤ABT122及びCOVA322であり、これらは二価結合モードでそれぞれの標的と相互作用している。ABT122は高い頻度で抗薬物抗体の形成を引き起こすことが報告されたが、COVA322はさらに、おそらく免疫複合体の形成によって引き起こされる免疫関連の有害反応(皮膚の発疹)を引き起こした。
【0627】
ここで我々は、A7と同じ結合ドメインを含む標的(A14及びA15など)と二価で相互作用する二重特異性形式と比較した場合、A7によって例示される二重特異性一価scDb-scFvが免疫複合体形成を媒介する能力が著しく低下していることを示す。従って我々は、ADA形成のリスクが低く、リスク対利益プロフィールが良好であるため、一価二重特異性形式が二重特異性二価形式よりもの方が好ましいと結論する。
【0628】
多くの場合、標的への比較的低い親和性を補償するために、二価形式が選択される(例えば、IL-17へのCOVA322結合)。従って、多重特異的アプローチで一価形式を可能にするためには、それぞれの標的に対して非常に高い親和性が必要である。A7(及びその変種)中のFvドメインの高い親和性は一価形式の使用を可能にし、非常に強力な二重特異性治療薬が得られる。
【0629】
さらに、一価の二重特異性scDb-scFv形式中にFc領域が存在しないため、免疫細胞上のFc受容体への結合が回避され、これもまた、免疫関連の有害事象の発生に寄与する可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-I】
図6-II】
図7
図8A
図8B
図9
図10
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図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
図20
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図24
図25
図26
【配列表】
2022523908000001.app
【国際調査報告】