(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】神経認知障害を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20220420BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220420BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220420BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220420BHJP
A61K 35/545 20150101ALI20220420BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220420BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220420BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20220420BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20220420BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220420BHJP
C12N 15/86 20060101ALN20220420BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20220420BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K48/00
A61P25/00
A61P25/28
A61K35/545
A61K35/28
A61K35/76
C07K14/47 ZNA
C07K19/00
C12N15/113 Z
C12N15/86 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021544547
(86)(22)【出願日】2020-01-31
(85)【翻訳文提出日】2021-09-29
(86)【国際出願番号】 US2020016192
(87)【国際公開番号】W WO2020160458
(87)【国際公開日】2020-08-06
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520346572
【氏名又は名称】アブロバイオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイソン,クリス
(72)【発明者】
【氏名】クーパー,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】プラスチャート,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ディーンドレイド,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ティル,ニコ,ペーター
【テーマコード(参考)】
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA151
4C084ZA152
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB64
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA15
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
前頭側頭骨大葉変性または神経セロイドリポフスチン症などの神経認知障害を有するか、またはそれを発症するリスクのある対象を処置するための方法であって、プログラニュリン(PGRN)もしくはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子を含む細胞またはPGRNもしくはGRNを発現する細胞を前記対象に投与することによる方法が、本明細書において記載されている。PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞を含む組成物も開示されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経認知障害(NCD)を有すると診断されている対象を処置する方法であって、前記対象に、プログラニュリン(PGRN)またはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記NCDが重度NCDである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重度NCDが、前記対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記重度NCDが、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記NCDが軽度NCDである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記軽度NCDが、前記対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記軽度NCDが、基準集団の平均スコアから標準偏差1~2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記基準集団が、一般集団である、請求項4または7に記載の方法。
【請求項9】
前記認知検査が、Eight-item Informant Interview to Differentiate Aging and Dementia(AD8)、Annual Wellness Visit(AWV)、General Practitioner Assessment of Cognition(GPCOG)、Health Risk Assessment(HRA)、Memory Impairment Screen(MIS)、Mini Mental Status Exam(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、St. Louis University Mental Status Exam(SLUMS)、及びShort Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(Short IQCODE)からなる群から選択される、請求項4、7、または8に記載の方法。
【請求項10】
前記NCDが、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知のうちの1つまたは複数における機能障害と関連している、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記NCDが、せん妄または他の精神障害によるものではない、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記NCDが前頭側頭骨NCDである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記前頭側頭骨NCDが前頭側頭骨大葉変性(FTLD)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記NCDがリソソーム疾患によるものである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リソソーム疾患が神経セロイドリポフスチン症(NCL)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記PGRNまたは前記GRNが分泌シグナルペプチドを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記分泌シグナルペプチドがPGRN分泌シグナルペプチドである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞が、前記PGRNをコードする導入遺伝子を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記PGRNが少なくとも2つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも3つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも4つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも5つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも6つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも7つのGRNドメインを含む、または任意選択で、前記PGRNが少なくとも8つのGRNドメインを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PGRNが2~16のGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~12のGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~8つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~4つのGRNドメインを含む、または任意選択で、前記PGRNが2つのGRNドメインを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記PGRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記PGRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記PGRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記PGRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記PGRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記PGRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記PGRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記PGRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記PGRNが全長PGRNである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、前記GRNをコードする導入遺伝子を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記GRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインである、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記GRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインである、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記GRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインである、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記GRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインである、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記GRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインである、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記GRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインである、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記GRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインである、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記GRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインである、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記GRNが全長GRNを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、任意選択で、前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、任意選択で、前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、任意選択で、前記細胞が、配列番号10の核酸配列を有するPGRN導入遺伝子を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記細胞が、コドン最適化PGRN導入遺伝子を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、または任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が配列番号19の核酸配列を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記PGRNまたは前記GRNが、PGRNまたはGRN融合タンパク質である、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、アポリポタンパク質E(ApoE)の受容体結合(Rb)ドメインを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記Rbドメインが、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するApoEの部分を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記Rbドメインが、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する領域を含む、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、PGRNまたはGRN及びグリコシル化非依存性リソソームターゲティング(GILT)タグを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記GILTタグが、成熟ヒトIGF-II(配列番号12)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有し、かつインスリン受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比べて、インスリン受容体について低下した結合親和性を有するヒトIGF-IIムテインを含み、前記IGF-IIムテインが、フーリン切断に抵抗性があり、かつマンノース-6-リン酸依存的手法でヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記IGF-IIムテインが、配列番号12のアミノ酸30~40に対応する領域内に変異を含み、かつ前記変異が少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を破壊する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記変異が、アミノ酸置換、欠失、及び/または挿入である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記変異が、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置でのLysまたはAlaアミノ酸置換である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記変異が、配列番号12の31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、33~39、35~39、36~39、37~40、34~40からなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置換、及びそれらの組み合わせである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列を有する、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列を有する、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項48~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記PGRNまたは前記GRNをコードする前記導入遺伝子がさらに、マイクロRNA(miRNA)-126(miR-126)ターゲティング配列を3’-UTRに含む、請求項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記対象に前記組成物を投与すると、前記PGRNまたは前記GRNが前記対象の血液脳関門を透過する、請求項1~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記FTLDまたはNCLがPGRN関連FTLDまたはNCLである、請求項13~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記PGRN関連FTLDがFTLDの行動異常型前頭側頭型認知症異型である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記PGRN関連FTLDがFTLDの意味性認知症異型である、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
前記PGRN関連FTLDがFTLDの進行性非能弁性失語症異型である、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
前記PGRN関連NCLがバッテン病である、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が、万能性細胞または多能性細胞である、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記多能性細胞がCD34+細胞である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記CD34+細胞が、造血幹細胞(HSC)または骨髄性前駆細胞(MPC)である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記万能性細胞が、胚性幹細胞(ESC)または人工万能性幹細胞(iPSC)である、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記細胞が、血液系統前駆細胞(BLPC)、ミクログリア前駆細胞、単球、マクロファージ、またはミクログリアである、請求項1~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記BLPCが単球である、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物の投与前に、前記対象における内因性ミクログリアの集団を除去しておく、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記対象に前記組成物を投与する前に、前記対象における内因性ミクログリアの集団を除去することを含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記ミクログリアを、ブスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、トレオスルファン、及びクロドロネートリポソームからなる群から選択される薬剤を使用して、放射線療法により、またはそれらの組み合わせで除去する、請求項72または73に記載の方法。
【請求項76】
前記組成物を前記対象に、全身投与により、前記対象の中枢神経系への直接投与により、前記対象の骨髄への直接投与により、または前記組成物を含む骨髄移植により投与する、請求項1~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記対象に、細胞の集団を投与することをさらに含む、請求項1~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記組成物の投与前に、または前記組成物の投与後に、前記細胞の集団を前記対象に投与する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記細胞が万能性細胞または多能性細胞である、請求項77または78に記載の方法。
【請求項80】
前記多能性細胞がCD34+細胞である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記CD34+細胞が造血幹細胞(HSC)または骨髄性前駆細胞(MPC)である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記万能性細胞が胚性幹細胞(ESC)または人工万能性幹細胞(iPSC)である、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記細胞が、血液系統前駆細胞(BLPC)、ミクログリア前駆細胞、単球、マクロファージ、またはミクログリアである、請求項77~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記BLPCが単球である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNをコードする導入遺伝子を発現するように改変されていない、請求項77~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記対象への前記組成物の投与前に、内因性PGRNまたはGRNを、前記細胞において、前記対象において、または前記対象のニューロンの集団において破壊する、請求項1~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞を、前記細胞中の内因性PGRNまたはGRN核酸の切断を触媒するヌクレアーゼと接触させることにより、前記内因性PGRNまたはGRNを破壊する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ヌクレアーゼが、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連タンパク質9(Cas9)であり、CRISPR関連タンパク質が、CRISPR関連タンパク質12a(Cas12a)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記内因性PGRNまたはGRNを、阻害性RNA分子を前記細胞、前記対象、または前記ニューロンの集団に投与することにより破壊する、請求項86~88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記阻害性RNA分子が短鎖干渉RNA、短鎖ヘアピンRNA、またはmiRNAである、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞が自家細胞または同種異系細胞である、請求項1~90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトまたは形質導入されている、請求項1~91のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記細胞を、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びレトロウイルス科ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターで形質導入する、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記ウイルスベクターがレトロウイルス科ウイルスベクターである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、レンチウイルスベクター、アルファレトロウイルスベクター、またはガンマレトロウイルスベクターである、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、中央ポリプリン路、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント、5’-LTR、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位、デルタ-GAGエレメント、3’-スプライス部位、及び3’-自己不活性化LTRを含む、請求項94または95に記載の方法。
【請求項97】
前記ウイルスベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、及びAAVrh74からなる群から選択されるAAVである、請求項93に記載の方法。
【請求項98】
前記ウイルスベクターが偽型ウイルスベクターである、請求項93~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記偽型ウイルスベクターが、偽型AAV、偽型アデノウイルス、偽型パルボウイルス、偽型コロナウイルス、偽型ラブドウイルス、偽型パラミクソウイルス、偽型ピコルナウイルス、偽型アルファウイルス、偽型ヘルペスウイルス、偽型ポックスウイルス、及び偽型レトロウイルス科ウイルスからなる群から選択される、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記細胞を、a)カチオン性ポリマー、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ポリエチレンイミン、カチオン性脂質、リポソーム、リン酸カルシウム、活性化デンドリマー、及び磁気ビーズからなる群から選択される薬剤;またはb)エレクトロポレーション、Nucleofection、スクイーズ-ポレーション、ソノポレーション、光学トランスフェクション、Magnetofection、及びインペールフェクションからなる群から選択される技術を使用してトランスフェクトする、請求項92に記載の方法。
【請求項101】
前記細胞における前記PGRNまたは前記GRNの発現を、ユビキタスプロモーター、細胞系統特異的プロモーター、または合成プロモーターにより媒介する、請求項1~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
前記ユビキタスプロモーターが、伸長因子1-アルファプロモーター及びホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターからなる群から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記細胞系統特異的プロモーターが、PGRNプロモーター、CD11bプロモーター、CD68プロモーター、C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1プロモーター、同種移植炎症因子1プロモーター、プリン受容体P2Y12プロモーター、膜貫通タンパク質119プロモーター、及びコロニー刺激因子1受容体プロモーターからなる群から選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含み、1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、または添加剤をさらに含む、薬学的組成物。
【請求項105】
前記PGRNまたは前記GRNがPGRN分泌シグナルペプチドを含む、請求項104に記載の薬学的組成物。
【請求項106】
前記細胞が、前記PGRNをコードする導入遺伝子を含む、請求項104または105に記載の薬学的組成物。
【請求項107】
前記PGRNが少なくとも2つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが、少なくとも3つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも4つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも5つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも6つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが少なくとも7つのGRNドメインを含む、または任意選択で、前記PGRNが少なくとも8つのGRNドメインを含む、請求項106に記載の薬学的組成物。
【請求項108】
前記PGRNが2~16のGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~12のGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~8つのGRNドメインを含む、任意選択で、前記PGRNが2~4つのGRNドメインを含む、または任意選択で、前記PGRNが2つのGRNドメインを含む、請求項104~107のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項109】
前記PGRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項104~108のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項110】
前記PGRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項104~109のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項111】
前記PGRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項104~110のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項112】
前記PGRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項104~111のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項113】
前記PGRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項104~112のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項114】
前記PGRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項104~113のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項115】
前記PGRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項104~114のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項116】
前記PGRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項104~115のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項117】
前記PGRNが全長PGRNである、請求項104~116のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項118】
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記細胞が、前記GRNをコードする導入遺伝子を含む、請求項117に記載の薬学的組成物。
【請求項119】
前記GRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインである、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、請求項104~118のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項120】
前記GRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインである、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、請求項104~119のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項121】
前記GRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインである、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、請求項104~120のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項122】
前記GRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインである、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、請求項104~121のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項123】
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、請求項104~122のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項124】
前記GRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインである、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項104~123のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項125】
前記GRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインである、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、請求項104~124のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項126】
前記GRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインである、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、または任意選択で、前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、請求項104~125のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項127】
前記GRNが全長GRNである、請求項104~126のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項128】
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、任意選択で、前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、任意選択で、前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、または任意選択で、前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列を有する、請求項104~126のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項129】
前記細胞がコドン最適化PGRN導入遺伝子を含む、請求項104~128のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項130】
前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有する、任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、または任意選択で、前記コドン最適化導入遺伝子が配列番号19の核酸配列を有する、請求項129に記載の薬学的組成物。
【請求項131】
前記PGRNまたは前記GRNが、PGRNまたはGRN融合タンパク質である、請求項104~130のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項132】
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、ApoEのRbドメインを含む、請求項131に記載の薬学的組成物。
【請求項133】
前記Rbドメインが、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するApoEの部分を含む、請求項132に記載の薬学的組成物。
【請求項134】
前記Rbドメインが、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する領域を含む、請求項132または133に記載の薬学的組成物。
【請求項135】
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、PGRNまたはGRN及びグリコシル化非依存性リソソームターゲティング(GILT)タグを含む、請求項131に記載の薬学的組成物。
【請求項136】
前記GILTタグが、成熟ヒトIGF-II(配列番号12)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有し、かつインスリン受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比べて、インスリン受容体について低下した結合親和性を有するヒトIGF-IIムテインを含み、前記IGF-IIムテインが、フーリン切断に抵抗性があり、かつマンノース-6-リン酸依存的手法でヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合する、請求項135に記載の薬学的組成物。
【請求項137】
前記IGF-IIムテインが、配列番号12のアミノ酸30~40に対応する領域内に変異を含み、かつ前記変異が少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を破壊する、請求項136に記載の薬学的組成物。
【請求項138】
前記変異が、アミノ酸置換、欠失、及び/または挿入である、請求項137に記載の薬学的組成物。
【請求項139】
前記変異が、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置でのLysまたはAlaアミノ酸置換である、請求項138に記載の薬学的組成物。
【請求項140】
前記変異が、配列番号12の31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、33~39、35~39、36~39、37~40、34~40からなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置換、及びそれらの組み合わせである、請求項138に記載の薬学的組成物。
【請求項141】
前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列を有する、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項142】
前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列を有する、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項143】
前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列を有する、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項144】
前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項145】
前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項146】
前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも90%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも95%同一である核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、任意選択で、前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列を有するポリヌクレオチドによりコードされる、請求項135~140のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項147】
PGRNまたはGRNをコードする前記導入遺伝子がさらに、miR-126ターゲティング配列を3’-UTRに含む、請求項104~146のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項148】
前記細胞が万能性細胞または多能性細胞である、請求項104~147のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項149】
前記多能性細胞がCD34+細胞である、請求項148に記載の組成物。
【請求項150】
前記CD34+細胞がHSCまたはMPCである、請求項149に記載の組成物。
【請求項151】
前記万能性細胞がESCまたはiPSCである、請求項148に記載の組成物。
【請求項152】
前記細胞が、BLPC、ミクログリア前駆細胞、マクロファージ、またはミクログリアである、請求項104~147のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項153】
前記BLPCが単球である、請求項152に記載の組成物。
【請求項154】
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトまたは形質導入されている、請求項104~153のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項155】
請求項104~154のいずれか1項に記載の薬学的組成物と添付文書とを含むキット。
【請求項156】
前記添付文書が、前記キットのユーザーに、請求項1~103のいずれか1項に記載の方法を実行するように指示する、請求項155に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2020年1月29日に作成された前記ASCIIコピーの名称は「51182-019WO2_Sequence_Listing_1.29.20_ST25」であり、サイズは22,275バイトである。
【0002】
発明の分野
本開示は、前頭側頭骨大葉変性及び神経セロイドリポフスチン症などの神経認知障害を処置するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
神経変性は、前頭側頭骨大葉変性及び神経セロイドリポフスチン症などの進行性認知症と関連するいくつかの疾患において観察される病態生理学的プロセスである。このプロセスの重要な特徴は、脳組織の大規模な破壊及び随伴する、とりわけ認知低下、言語機能障害を含む全範囲の行動欠陥を引き起こす神経変性及びニューロン死である。
【0004】
前頭側頭骨大葉変性(FTLD)は、発語理解及び生成の欠陥、不十分な運動計画及び調整、及び/または衝動制御の欠如及び固執行動の優先により特徴づけられる実行機能の喪失を含み得る複合臨床症状により特徴づけられる神経変性障害である。FTLDの臨床記述は、3つの別個の異型に分かれる:1)行動、人格の顕著な変化、及び前頭葉の顕著な変性により特徴づけられる行動-前頭側頭型認知症;2)言語の潜行性崩壊及び前側頭葉の顕著な変性により特徴づけられる意味性認知症;ならびに3)発語及び文法の欠陥により特徴づけられ、かつ左シルビウス裂周囲皮質の変性に対応する進行性非能弁性失語症。FTLD患者からの死後脳組織の組織学的分析は、脳の前頭葉及び側頭葉における神経組織の変性の共通する表示を伴う、複雑で不均質性の神経病理学的プロファイルを示す。
【0005】
神経セロイドリポフスチン症(NCL)は、ニューロン、肝臓、脾臓、心筋層、及び腎臓細胞などの身体の細胞内でのリポフスチンの蓄積に起因する少なくとも8つのリソソーム貯蔵障害の臨床的に認識される集合についての総称である。リポフスチンは、脂肪及びタンパク質から構成される脂肪色素である。NCLを有する患者は、顕著な神経変性ならびに運動及び認知能力の進行性で不可逆的な喪失を示すが、疾患重症度及び臨床症状は、特定のNCL異型に依存し得る。NCLの既知の異型には、Santovuori-Haltia病(SHD)としても公知の小児性異型、Jansky-Bielschowsky病(JBD)としても公知の遅発型小児性異型、Finnish遅発型小児性異型(FLI)、変異遅発型小児性(VLI)、CLN7異型(CLN7)、CLN8異型(CLN8)、Turkish遅発型小児性異型(TLI)、9型異型(T9)、CLN10異型(CLN10)、CLN11異型(CLN11)、バッテン病(BD)としても公知の若年性異型、及びクーフス病(KD)としても公知の成人性異型が含まれる。SHDは、進行して2歳までに完全な網膜失明となる早期視力低下、続く、3歳での植物状態、及び4歳までの脳死と関連する。この異型は、てんかん発作の自然発生とも関連する。JBD異型は、2~4歳の間に発生し、運動失調、てんかん発作、進行性認知低下、及び異常な発語発達と関連し、典型的には、8歳までに死をもたらす。BDは典型的には、4~10歳の間に発生し、視力喪失、てんかん発作、認知機能障害、及び早期死亡などの症状を含む。KD異型を有するNCL患者は一般に、SHD及びBD異型よりも軽度な症状を示し、約40年の平均余命を有する。
【0006】
FTLD及びNCLのための既存の処置は、疾患症候を寛解するように努めているものであり、根底にある神経変性を標的とする治療は存在せず、したがって、新たな治療手段の必要性が強調されている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、前頭側頭骨大葉変性(FTLD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)などの神経認知障害(NCD)を処置するための方法であって、プログラニュリン(PGRN)またはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子を含む細胞、例えば、万能性細胞(pluripotent cells)(例えば、胚性幹細胞(ESC)または人工万能性幹細胞(ISPC))、多能性細胞(multipotent cells)(例えば、CD34+細胞、例えば、造血幹細胞(HSC)または骨髄前駆細胞(MPC))、血液系統前駆細胞(BLPCS;例えば、単球)、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリアを投与することによる前記方法を提供する。前記細胞は、とりわけ対象の中枢神経系に直接的に(例えば、脳室内注射により)または全身的に(例えば、静脈内投与により)を含む、1つまたは複数の様々な経路により、NCDを有する対象に投与することができる。本開示はまた、そのような細胞を含有する組成物、さらには、NCDを処置するためのこれらの細胞を含有するキットを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、本開示は、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)を有すると診断されている対象を処置する方法であって、前記対象に、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含有する組成物を投与することによる前記方法を提供する。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る。一部の実施形態では、NCDは、重度NCDである。一部の実施形態では、重度NCDは、対象の自立及び/または正常な日常機能(例えば、社会的、職業的、または学術的機能、個人衛生、身だしなみ、身支度、トイレ衛生、機能的運動性(例えば、歩行能力、ベッドへの出入り)、及び自己給仕を妨害する。一部の実施形態では、重度NCDは、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差2離れている、認知検査で対象により得られるスコアと関連している。一部の実施形態では、NCDは、軽度NCDである。一部の実施形態では、軽度NCDは、対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害しない。一部の実施形態では、軽度NCDは、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差1~2離れている、認知検査で対象により得られるスコアと関連している。一部の実施形態では、認知検査は、Eight-item Informant Interview to Differentiate Aging and Dementia(AD8)、Annual Wellness Visit(AWV)、General Practitioner Assessment of Cognition(GPCOG)、Health Risk Assessment(HRA)、Memory Impairment Screen(MIS)、Mini Mental Status Exam(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、St. Louis University Mental Status Exam(SLUMS)、及びShort Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(Short IQCODE)からなる群から選択される。一部の実施形態では、NCDは、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知のうちの1つまたは複数における機能障害と関連する。一部の実施形態では、NCDは、せん妄または他の精神障害(例えば、統合失調症、双極性障害、または大うつ病)によるものではない。一部の実施形態では、基準集団は、一般集団である。一部の実施形態では、基準集団は、対象の年齢、病歴、教育、社会経済的状況、及び生活様式に基づき選択される。一部の実施形態では、NCDは、前頭側頭骨NCDである。一部の実施形態では、前頭側頭骨NCDは、FTLDである。一部の実施形態では、NCDは、リソソーム疾患によるものである。一部の実施形態では、リソソーム疾患は、NCLである。
【0009】
一部の実施形態では、PGRNは、全長PGRN、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するPGRN、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、PGRNは、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有する少なくとも2つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインまたはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号2~9のいずれか1つに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも3つ(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも4つ(例えば、少なくとも4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも5つ(例えば、少なくとも5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも6つ(例えば、少なくとも6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも7つ(例えば、少なくとも7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも8つ(例えば、少なくとも8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~16(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~12(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~8(例えば、2、3、4、5、6、7、または8)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~4(例えば、2、3、または4)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2つのGRNドメインを含む。
【0010】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0011】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0012】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0013】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0014】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0015】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0016】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0017】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0018】
一部の実施形態では、GRNは、配列番号2~9のアミノ酸配列のいずれか1つを有するGRNなどの全長GRN、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号2~9のいずれか1つに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRNは、パラ-GRNまたは配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0019】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-1または配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0020】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-2または配列番号4に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0021】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-3または配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0022】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-4または配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0023】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-5または配列番号7に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0024】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-6または配列番号8に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0025】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-7または配列番号9に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0026】
一部の実施形態では、PGRNポリペプチド内のGRNドメインの順序は、野生型ヒトPGRNにおいて観察されるのと同じ順序で生じる。一部の実施形態では、PGRNポリペプチド内のGRNドメインの順序は、野生型ヒトPGRNにおいて見い出される順序とは異なる順序で生じる。
【0027】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードするコドン最適化導入遺伝子は、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、分泌シグナルペプチド(例えば、PGRN分泌シグナルペプチド)を含む。
【0028】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNは、PGRNまたはGRN融合タンパク質である。一部の実施形態では、PGRNまたはGRN融合タンパク質は、アポリポタンパク質E(ApoE)の低密度リポタンパク質受容体ファミリー(LDLRf)結合(Rb)ドメイン、またはその断片、バリアント、もしくはオリゴマーを含む。一部の実施形態では、ApoEのRbドメイン、またはその断片、バリアント、もしくはオリゴマーを、PGRNまたはGRNのN末端に作動可能に連結させる。一部の実施形態では、ApoEのRbドメイン、またはその断片、バリアント、もしくはオリゴマーを、PGRNまたはGRNのC末端に作動可能に連結させる。一部の実施形態では、PGRNまたはGRN融合タンパク質は、ApoEのRbドメインの少なくとも1つ(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)のオリゴマーを含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基25~185に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基50~180に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基75~175に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基100~170に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基125~160に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基130~150に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、残基148~173に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するApoEの領域、または配列番号11の残基159~167を含むその一部、または配列番号11の残基159~167に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する領域を含む。
【0029】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRN融合タンパク質は、PGRNまたはGRNと、グリコシル化非依存性リソソームターゲティング(GILT)タグとを含む。一部の実施形態では、GILTタグを、PGRNまたはGRNのN末端に作動可能に連結させる。一部の実施形態では、GILTタグを、PGRNまたはGRNのC末端に作動可能に連結させる。一部の実施形態では、GILTタグは、成熟ヒトIGF-IIのアミノ酸配列(配列番号12)に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するヒトIGF-IIムテインを含む。ムテインは、インスリン受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比べて、インスリン受容体についての結合親和性が低下していてもよく、及び/またはフーリン切断に対して抵抗性があってもよい。ムテインは、マンノース-6-リン酸非依存的な様式で、ヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合してよい。一部の実施形態では、IGF-IIムテインは、配列番号12のアミノ酸30~40に対応する領域内に変異を含み、その際、その変異は少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を無効にする。一部の実施形態では、変異は、アミノ酸の置換、欠失、及び/または挿入である。一部の実施形態では、変異は、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置でのLysまたはAlaアミノ酸置換である。一部の実施形態では、変異は、配列番号12の31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、33~39、35~39、36~39、37~40、34~40及びそれらの組み合わせからなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置換である。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する。一部の実施形態では、GILTタグは、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する。
【0030】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、マイクロRNA(miRNA)ターゲティング配列(例えば、miR-126ターゲティング配列)をさらに含む。一部の実施形態では、miRNAターゲティング配列は、導入遺伝子の3’-非翻訳領域(UTR)内に配置される。
【0031】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNは、対象の血液脳関門(BBB)を透過する。
【0032】
一部の実施形態では、NCDは、PGRN関連NCDである。一部の実施形態では、FTLDまたはNCLは、PGRN関連FTLDまたはNCLである。
【0033】
一部の実施形態では、PGRN関連FTLDまたはNCLに罹患している対象は、PGRN遺伝子に変異を持つ。PGRN遺伝子における変異は、フレームシフト変異であり得る。一部の実施形態では、フレームシフト変異は、p.C31LfsX35変異、p.C31LfsX35変異、p.S82VfsX174変異、p.L271LfsX174変異、またはp.T382NfsX32変異である。
【0034】
加えて、または別法では、PGRN遺伝子における変異は、例えば、ミスセンス変異であり得る。例えば、対象は、p.C521Y変異、p.A9D変異、p.P248L変異、p.R432C変異、p.C139R変異、p.C521Y変異、またはp.C139R変異を持っていてよい。
【0035】
加えて、または別法では、PGRN遺伝子における変異は、例えば、ナンセンス変異であってよい。例えば、対象は、p.Q125X変異を持っていてよい。一部の実施形態では、対象は、p.R493X変異を持っていてよい。
【0036】
加えて、または別法では、PGRN遺伝子における変異は、例えば、挿入型変異であってよい。例えば、対象は、c.1145insA変異を持っていてよい。
【0037】
加えて、または別法では、PGRN遺伝子における変異は、例えば、転換型変異であってよい。例えば、対象は、p.0(IVS1+5G>C)変異を持っていてよい。
【0038】
一部の実施形態では、PGRN関連FTLDまたはNCLに罹患している対象は、FTLDまたはNCLにおいて原因的役割を有することが公知の、PGRN遺伝子における任意の他の病原性変異を持っていてよい。例えば、PGRN遺伝子において病原性変異を有し、かつ本明細書に記載の組成物及び方法を用いて処置され得る対象には、その開示がヒトPGRN変異に関係するため、参照により本明細書に組み込まれるGijselinck et al.,Human Mutation 29(12),1373-1386,(2012)において論述されている変異のいずれか1つを有するものが含まれる。
【0039】
一部の実施形態では、PGRN関連FTLDに罹患している対象は、FTLDの行動異常型前頭側頭型認知症(BVFTD)異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連FTLDに罹患している対象は、FTLDの意味性認知症(SD)異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連FTLDに罹患している対象は、FTLDの進行性非能弁性失語症(PNA)異型を有し得る。
【0040】
一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、Santavuori-Haltia病異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、バッテン病異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、クーフス病異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、Jansky-Bielschowsky病異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、Finnish遅発型小児性異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、異型遅発型小児性異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、CLN7異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、CLN8異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、CLN10異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、CLN11異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、Turkish遅発型小児性異型を有し得る。一部の実施形態では、PGRN関連NCLに罹患している対象は、9型異型を有し得る。
【0041】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、野生型ヒトPGRNまたはGRN(例えば、配列番号1~9のいずれか1つ)をコードする。一部の実施形態では、PGRNをコードする導入遺伝子は、少なくとも2つのGRNドメイン(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のGRNドメイン)、例えば、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有するGRNドメインを有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、PGRNをコードする導入遺伝子は、野生型ヒトPGRNにおいて観察されるのと同じ順序で配置された少なくとも2つのGRNドメイン(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のGRNドメイン)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、PGRNをコードする導入遺伝子は、野生型ヒトPGRNとは別の順序で配置された少なくとも2つのGRNドメイン(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のGRNドメイン)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子は、配列番号1~8のいずれか1つの配列を有するポリペプチドのいずれかと比べて、少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上のアミノ酸置換、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10またはそれ以上の保存的アミノ酸置換)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0042】
一部の実施形態では、細胞は、万能性細胞である。一部の実施形態では、万能性細胞は、ESCである。一部の実施形態では、万能性細胞は、iPSCである。一部の実施形態では、細胞は、CD34+細胞である。一部の実施形態では、細胞は、多能性細胞である。一部の実施形態では、多能性細胞は、CD34+細胞である。一部の実施形態では、CD34+細胞は、造血幹細胞である。一部の実施形態では、CD34+細胞は、骨髄性前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞は、血液系前駆細胞(BLPC)である。一部の実施形態では、BLPCは、単球である。一部の実施形態では、細胞は、マクロファージである。一部の実施形態では、細胞は、ミクログリア前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ミクログリアである。
【0043】
一部の実施形態では、対象への組成物の投与前に、対象の内因性ミクログリアの集団を除去しておく。一部の実施形態では、前記方法は、組成物を対象に投与する前に、対象の内因性ミクログリアの集団を除去することを含む。一部の実施形態では、ミクログリアを、ブスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、トレオスルファン、及びクロドロネートリポソームからなる群から選択される薬剤を使用して、放射線療法またはそれらの組み合わせにより除去する。
【0044】
一部の実施形態では、前記組成物を対象に全身投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、静脈内注射により対象に投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、対象の中枢神経系に直接投与する。一部の実施形態では、前記組成物を対象に、脳脊髄液へと直接投与する。例えば、前記組成物を、脳室内注射、髄腔内注射、定位注射、またはそれらの組み合わせにより対象に投与することができる。一部の実施形態では、前記組成物を、実質内注射により対象に投与することができる。
【0045】
一部の実施形態では、前記組成物を、対象の骨髄に直接的に、例えば、骨内注射により投与する。
【0046】
一部の実施形態では、前記組成物を、骨髄移植により対象に投与する。
【0047】
一部の実施形態では、前記組成物を、脳室内注射により対象に投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、静脈内注射により対象に投与する。
【0048】
一部の実施形態では、前記組成物を、対象の中枢神経系への直接投与及び全身投与により対象に投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、脳室内注射及び静脈内注射により対象に投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、髄腔内注射及び静脈内注射により対象に投与する。一部の実施形態では、前記組成物を、実質内注射及び静脈内注射により対象に投与する。
【0049】
一部の実施形態では、前記方法は、細胞の集団を対象に投与することを含む。一部の実施形態では、細胞の集団を、前記組成物の投与前に対象に投与する。一部の実施形態では、細胞の集団を、前記組成物の投与後に対象に投与する。一部の実施形態では、細胞を、胚性幹細胞、人工万能性幹細胞、造血幹細胞、及び骨髄性前駆細胞からなる群から選択する。一部の実施形態では、細胞を、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を発現するように改変しない。一部の実施形態では、細胞を、対象に全身投与する。一部の実施形態では、細胞を、静脈内注射により対象に投与する。
【0050】
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、対象への前記組成物の投与前に、細胞で破壊する。
【0051】
一部の実施形態では、細胞を、細胞における内因性PGRNまたはGRN核酸の切断を触媒するヌクレアーゼと接触させることにより、内因性PGRNまたはGRNを破壊する。一部の実施形態では、ヌクレアーゼはCRISPR関連タンパク質である。一部の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質9である。一部の実施形態では、CRISPR関連タンパク質は、CRISPR関連タンパク質12aである。一部の実施形態では、ヌクレアーゼは、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼである。
【0052】
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、例えば、内因性PGRNまたはGRNの発現を破壊するために十分な時間及び量で、細胞を阻害性RNA分子と接触させることにより破壊する。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、短鎖干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、またはmiRNAである。
【0053】
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、対象への前記組成物の投与前に、対象において破壊する。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、阻害性RNA分子を対象に投与することにより破壊する。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、siRNA、shRNA、またはmiRNAである。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、対象への前記組成物の投与前に、対象のニューロンの集団において破壊する。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、例えば、内因性PGRNまたはGRNの発現を破壊するために十分な時間及び量で、ニューロンの集団を阻害性RNA分子と接触させることにより、ニューロンの集団において破壊する。一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、siRNA、shRNA、またはmiRNAである。
【0054】
一部の実施形態では、細胞は自家細胞である。一部の実施形態では、前記細胞は同種異系細胞である。
【0055】
一部の実施形態では、細胞を、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボで形質導入する。
【0056】
一部の実施形態では、細胞を、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びレトロウイルス科ウイルスを含む群から選択されるウイルスベクターで形質導入する。
【0057】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス科ウイルスベクターである。一部の実施形態では、レトロウイルス科ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。一部の実施形態では、レトロウイルス科ウイルスベクターは、アルファレトロウイルスベクターである。一部の実施形態では、レトロウイルス科ウイルスベクターは、ガンマレトロウイルスベクターである。一部の実施形態では、レトロウイルス科ウイルスベクターは、中央ポリプリン路、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント、5’-LTR、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位、デルタ-GAGエレメント、3’-スプライス部位、及び3’-自己不活性化LTRを含む。
【0058】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAVS、AAV9、AAV10、及びAAVrh74を含む群から選択されるAAVである。
【0059】
一部の実施形態では、ウイルスベクターは、偽型ウイルスベクターである。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、偽型AAV、偽型アデノウイルス、偽型パルボウイルス、偽型コロナウイルス、偽型ラブドウイルス、偽型パラミクソウイルス、偽型ピコルナウイルス、偽型アルファウイルス、偽型ヘルペスウイルス、偽型ポックスウイルス、及び偽型レトロウイルス科ウイルスである。
【0060】
一部の実施形態では、細胞を、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトする。
【0061】
一部の実施形態では、細胞を、カチオン性ポリマー、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ポリエチレンイミン、カチオン性脂質、リポソーム、リン酸カルシウム、活性化デンドリマー、及び磁気ビーズを含む群から選択される薬剤;またはエレクトロポレーション、Nucleofection、スクイーズ-ポレーション、ソノポレーション、光学トランスフェクション、Magnetofection、及びインペールフェクション(impalefection)を含む群から選択される技術を使用してトランスフェクトする。
【0062】
一部の実施形態では、細胞におけるPGRNまたはGRNの発現を、ユビキタスプロモーターを使用して媒介する。例示的なユビキタスプロモーターは、伸長因子1-アルファプロモーター及びホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターである。一部の実施形態では、細胞におけるPGRNの発現を、細胞系統特異的プロモーターを使用して媒介する。例示的な細胞系統特異的プロモーターは、PGRNプロモーター、CD11bプロモーター、CD68プロモーター、C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1プロモーター、同種移植炎症因子1プロモーター、プリン受容体P2Y12プロモーター、膜貫通タンパク質119プロモーター、及びコロニー刺激因子1受容体プロモーターである。
【0063】
一部の実施形態では、前記組成物を、対象の脳におけるM1ミクログリアの量と比べて、対象の脳においてM2ミクログリアの量を増加させるために、対象の脳における1種または複数の炎症誘発性サイトカインのレベルを低下させるために、対象の脳における1種または複数の抗炎症性サイトカインのレベルを上昇させるために、対象の認知処理能力を改善するために、対象の運動機能を改善するために、対象におけるニューロン喪失を減少させるために、及び/または対象におけるα-シヌクレインタンパク質、タウタンパク質、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)陽性封入体、サルコーマ融合(fused in sarcoma;FUS)陽性封入体、及び/またはユビキチン陽性封入体及び封入体、またはそれらの凝集体のレベルを低下させるために十分な量で、対象に投与する。
【0064】
一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0065】
別の態様では、本開示は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含有する薬学的組成物を提供する。
【0066】
先行する態様の一部の実施形態では、細胞は、万能性細胞である。一部の実施形態では、万能性細胞は、ESCである。一部の実施形態では、万能性細胞は、iPSCである。一部の実施形態では、細胞は、CD34+細胞である。一部の実施形態では、細胞は、多能性細胞である。一部の実施形態では、多能性細胞は、CD34+細胞である。一部の実施形態では、CD34+細胞は、造血幹細胞である。一部の実施形態では、CD34+細胞は、骨髄性前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞は、血液系前駆細胞(BLPC)である。一部の実施形態では、BLPCは、単球である。一部の実施形態では、細胞は、マクロファージである。一部の実施形態では、細胞は、ミクログリア前駆細胞である。一部の実施形態では、細胞は、ミクログリアである。
【0067】
一部の実施形態では、細胞を、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボで形質導入する。一部の実施形態では、細胞を、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトする。
【0068】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号1のアミノ酸配列を有するPGRNなどの全長PGRN、またはそれに対して少なくとも85%の配列同一性を有する(例えば、配列番号1に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を有する)そのバリアントである。一部の実施形態では、PGRNは、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有する少なくとも2つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNペプチドまたはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号2~9のいずれか1つに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも2つ(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも3つ(例えば、少なくとも3、4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも4つ(例えば、少なくとも4、5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも5つ(例えば、少なくとも5、6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも6つ(例えば、少なくとも6、7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも7つ(例えば、少なくとも7、8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、少なくとも8つ(例えば、少なくとも8またはそれ以上)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~16(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~12(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~8(例えば、2、3、4、5、6、7、または8)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~4(例えば、2、3、または4)のGRNドメインを含む。一部の実施形態では、PGRNは、2つのGRNドメインを含む。
【0069】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0070】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-1ドメインは、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0071】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-2ドメインは、配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0072】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-3ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0073】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-4ドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0074】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-5ドメインは、配列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0075】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-6ドメインは、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0076】
一部の実施形態では、PGRNは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)同一であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、GRN-7ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0077】
一部の実施形態では、GRNは、配列番号2~9のアミノ酸配列のいずれか1つを有するGRNなどの全長GRNまたはそれに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、配列番号2~9のいずれか1つに対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRNは、パラ-GRNまたは配列番号2に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、パラ-GRNは、配列番号2のアミノ酸配列を有する。
【0078】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-1または配列番号3に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-1は、配列番号3のアミノ酸配列を有する。
【0079】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-2または配列番号4に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-2は、配列番号4のアミノ酸配列を有する。
【0080】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-3または配列番号5に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-3は、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0081】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-4または配列番号6に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-4は、配列番号6のアミノ酸配列を有する。
【0082】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-5または配列番号7に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-5は、配列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0083】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-6または配列番号8に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-6は、配列番号8のアミノ酸配列を有する。
【0084】
一部の実施形態では、GRNは、GRN-7または配列番号9に対して少なくとも85%(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有するそのバリアントである。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9に対して少なくとも90%(例えば、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)の配列同一性を有する。一部の実施形態では、GRN-7は、配列番号9のアミノ酸配列を有する。
【0085】
一部の実施形態では、PGRNポリペプチド内のGRNドメインの順序は、野生型ヒトPGRNにおいて観察されるのと同じ順序で生じる。一部の実施形態では、PGRNポリペプチド内のGRNドメインの順序は、野生型ヒトPGRNにおいて見い出される順序とは異なる順序で生じる。
【0086】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNは、分泌シグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、分泌シグナルペプチドは、PGRN分泌シグナルペプチドである。
【0087】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNは、PGRNまたはGRN融合タンパク質である。一部の実施形態では、PGRNまたはGRN融合タンパク質は、ApoEのRbドメインを含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するApoEの部分を含む。一部の実施形態では、Rbドメインは、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する領域を含む。
【0088】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子はさらに、3’-UTRにmiRNAターゲティング配列を含む。一部の実施形態では、miRNAターゲティング配列は、miR-126ターゲティング配列である。
【0089】
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを細胞内で破壊する。
【0090】
一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、対象に全身投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、静脈内注射により対象に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、対象の中枢神経系に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、脳脊髄液へと対象に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、脳室内注射、髄腔内注射、定位注射、またはそれらの組み合わせにより対象に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、実質内注射により対象に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、対象の骨髄に直接投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、骨内注射により対象に投与するために製剤化する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、薬学的組成物を含む骨髄移植により対象に投与する。一部の実施形態では、前記薬学的組成物を、脳室内注射及び静脈内注射により対象に投与するために製剤化する。
【0091】
一部の実施形態では、対象(例えば、ヒト)は、NCDを有すると診断されている。一部の実施形態では、NCDは、重度NCDである。一部の実施形態では、重度NCDは、対象の自立及び/または正常な日常機能(例えば、社会的、職業的、または学術的機能、個人衛生、身だしなみ、身支度、トイレ衛生、機能的運動性(例えば、歩行能力、ベッドへの出入り)、及び自己給仕)を妨害する。一部の実施形態では、重度NCDは、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差2離れている、認知検査で対象により得られるスコアと関連している。一部の実施形態では、NCDは、軽度NCDである。一部の実施形態では、軽度NCDは、対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害しない。一部の実施形態では、軽度NCDは、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差1~2離れている、認知検査で対象により得られるスコアと関連している。一部の実施形態では、認知検査は、AD8、AWV、GPCOG、HRA、MIS、MMSE、MoCA、SLUMS、及びShort IQCODEからなる群から選択される。一部の実施形態では、NCDは、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知のうちの1つまたは複数における機能障害と関連する。一部の実施形態では、NCDは、せん妄または他の精神障害(例えば、統合失調症、双極性障害、または大うつ病)によるものではない。一部の実施形態では、基準集団は、一般集団である。一部の実施形態では、基準集団は、対象の年齢、病歴、教育、社会経済的状況、及び生活様式に基づき選択される。一部の実施形態では、NCDは、前頭側頭骨NCDである。一部の実施形態では、前頭側頭骨NCDは、FTLDである。一部の実施形態では、NCDは、リソソーム疾患によるものである。一部の実施形態では、リソソーム疾患は、NCLである。
【0092】
追加の一態様では、本開示は、上の態様及び実施形態のいずれかによる組成物と、添付文書とを含むキットを提供する。一部の実施形態では、添付文書は、キットのユーザーに、上の態様及び実施形態のいずれかによる方法を実行するように指示する。
【0093】
追加の本発明の実施形態を、下に列挙するパラグラフにおいて提供する。
【0094】
E1.
神経認知障害(NCD)を有すると診断されている対象を処置する方法であって、前記対象に、プログラニュリン(PGRN)またはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【0095】
E2.
前記NCDが重度NCDである、E1に記載の方法。
【0096】
E3.
前記重度NCDが、前記対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害する、E2に記載の方法。
【0097】
E4.
前記重度NCDが、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、E2またはE3に記載の方法。
【0098】
E5.
前記NCDが軽度NCDである、E1に記載の方法。
【0099】
E6.
前記軽度NCDが前記対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害しない、E5に記載の方法。
【0100】
E7.
前記軽度NCDが、基準集団の平均スコアから標準偏差1~2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、E5またはE6に記載の方法。
【0101】
E8.
前記基準集団が、一般集団である、E4またはE7に記載の方法。
【0102】
E9.
前記認知検査が、Eight-item Informant Interview to Differentiate Aging and Dementia(AD8)、Annual Wellness Visit(AWV)、General Practitioner Assessment of Cognition(GPCOG)、Health Risk Assessment(HRA)、Memory Impairment Screen(MIS)、Mini Mental Status Exam(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、St. Louis University Mental Status Exam(SLUMS)、及びShort Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(Short IQCODE)からなる群から選択される、E4、E7、またはE8に記載の方法。
【0103】
E10.
前記NCDが、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知のうちの1つまたは複数における機能障害と関連している、E1~E9のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
E11.
前記NCDが、せん妄または他の精神障害によるものではない、E1~E10のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
E12.
前記NCDが前頭側頭骨NCDである、E1~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
E13.
前記前頭側頭骨NCDが前頭側頭骨大葉変性(FTLD)である、E12に記載の方法。
【0107】
E14.
前記NCDがリソソーム疾患によるものである、E1~E11のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
E15.
前記リソソーム疾患が神経セロイドリポフスチン症(NCL)である、E14に記載の方法。
【0109】
E16.
前記PGRNまたは前記GRNが分泌シグナルペプチドを含む、E1~E15のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
E17.
前記分泌シグナルペプチドがPGRN分泌シグナルペプチドである、E16に記載の方法。
【0111】
E18.
前記細胞が、前記PGRNをコードする導入遺伝子を含む、E1~E17のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
E19.
前記PGRNが、少なくとも2つのGRNドメインを含む、E18に記載の方法。
【0113】
E20.
前記PGRNが、少なくとも3つのGRNドメインを含む、E19に記載の方法。
【0114】
E21.
前記PGRNが、少なくとも4つのGRNドメインを含む、E20に記載の方法。
【0115】
E22.
前記PGRNが、少なくとも5つのGRNドメインを含む、E21に記載の方法。
【0116】
E23.
前記PGRNが、少なくとも6つのGRNドメインを含む、E22に記載の方法。
【0117】
E24.
前記PGRNが、少なくとも7つのGRNドメインを含む、E23に記載の方法。
【0118】
E25.
前記PGRNが、少なくとも8つのGRNドメインを含む、E24に記載の方法。
【0119】
E26.
前記PGRNが、2~16のGRNドメインを含む、E1~E25のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
E27.
前記PGRNが、2~12のGRNドメインを含む、E26に記載の方法。
【0121】
E28.
前記PGRNが、2~8つのGRNドメインを含む、E27に記載の方法。
【0122】
E29.
前記PGRNが、2~4つのGRNドメインを含む、E28に記載の方法。
【0123】
E30.
前記PGRNが、2つのGRNドメインを含む、E29に記載の方法。
【0124】
E31.
前記PGRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む、E1~E30のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
E32.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E31に記載の方法。
【0126】
E33.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E32に記載の方法。
【0127】
E34.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、E33に記載の方法。
【0128】
E35.
前記PGRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む、E1~E34のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
E36.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E35に記載の方法。
【0130】
E37.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E36に記載の方法。
【0131】
E38.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、E37に記載の方法。
【0132】
E39.
前記PGRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む、E1~E38のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
E40.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E39に記載の方法。
【0134】
E41.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E40に記載の方法。
【0135】
E42.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、E41に記載の方法。
【0136】
E43.
前記PGRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む、E1~E42のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
E44.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E43に記載の方法。
【0138】
E45.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E44に記載の方法。
【0139】
E46.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、E45に記載の方法。
【0140】
E47.
前記PGRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む、E1~E46のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
E48.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E47に記載の方法。
【0142】
E49.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E48に記載の方法。
【0143】
E50.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、E49に記載の方法。
【0144】
E51.
前記PGRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む、E1~E50のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
E52.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E51に記載の方法。
【0146】
E53.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E52に記載の方法。
【0147】
E54.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、E53に記載の方法。
【0148】
E55.
前記PGRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む、E1~E54のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
E56.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E55に記載の方法。
【0150】
E57.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E56に記載の方法。
【0151】
E58.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、E49に記載の方法。
【0152】
E59.
前記PGRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む、E1~E58のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
E60.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E59に記載の方法。
【0154】
E61.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E60に記載の方法。
【0155】
E62.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、E61に記載の方法。
【0156】
E63.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、E1~E62のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
E64.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E63に記載の方法。
【0158】
E65.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E64に記載の方法。
【0159】
E66.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、E65に記載の方法。
【0160】
E67.
前記PGRNが全長PGRNである、E1~E66のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
E68.
前記細胞が、前記GRNをコードする導入遺伝子を含む、E1~E67のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
E69.
前記GRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインである、E1~E68のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
E70.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E69に記載の方法。
【0164】
E71.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E70に記載の方法。
【0165】
E72.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有するE71に記載の方法。
【0166】
E73.
前記GRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインである、E1~E72のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
E74.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E73に記載の方法。
【0168】
E75.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E74に記載の方法。
【0169】
E76.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、E75に記載の方法。
【0170】
E77.
前記GRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインである、E1~E76のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
E78.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E77に記載の方法。
【0172】
E79.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E78に記載の方法。
【0173】
E80.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、E79に記載の方法。
【0174】
E81.
前記GRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインである、E1~E80のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
E82.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E81に記載の方法。
【0176】
E83.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E82に記載の方法。
【0177】
E84.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、E83に記載の方法。
【0178】
E85.
前記GRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインである、E1~E84のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
E86.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E85に記載の方法。
【0180】
E87.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E86に記載の方法。
【0181】
E88.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、E87に記載の方法。
【0182】
E89.
前記GRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインである、E1~E88のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
E90.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E89に記載の方法。
【0184】
E91.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E90に記載の方法。
【0185】
E92.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、E91に記載の方法。
【0186】
E93.
前記GRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインである、E1~E92のいずれか1つに記載の方法。
【0187】
E94.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E93に記載の方法。
【0188】
E95.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E94に記載の方法。
【0189】
E96.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、E95に記載の方法。
【0190】
E97.
前記GRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインである、E1~E96のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
E98.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E97に記載の方法。
【0192】
E99.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E98に記載の方法。
【0193】
E100.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、E99に記載の方法。
【0194】
E101.
前記GRNが全長GRNを含む、E1~E100のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
E102.
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、E1~E101のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
E103.
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、E102に記載の方法。
【0197】
E104.
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、E103に記載の方法。
【0198】
E105.
前記細胞が、配列番号10の核酸配列を有するPGRN導入遺伝子を含む、E104に記載の方法。
【0199】
E106.
前記PGRNまたは前記GRNが、PGRNまたはGRN融合タンパク質である、E1~E105のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
E107.
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、アポリポタンパク質E(ApoE)の受容体結合(Rb)ドメインを含む、E106に記載の方法。
【0201】
E108.
前記Rbドメインが、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するApoEの部分を含む、E107に記載の方法。
【0202】
E109.
前記Rbドメインが、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する領域を含む、E107またはE108に記載の方法。
【0203】
E110.
前記PGRNまたは前記GRNをコードする前記導入遺伝子がさらに、マイクロRNA(miRNA)ターゲティング配列を3’-UTRに含む、E1~E109のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
E111.
前記miRNAターゲティング配列が、miR-126ターゲティング配列である、E110に記載の方法。
【0205】
E112.
前記対象に前記組成物を投与すると、前記PGRNまたは前記GRNが前記対象の血液脳関門を透過する、E1~E111のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
E113.
前記FTLDまたはNCLがPGRN関連FTLDまたはNCLである、E13~E112のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
E114.
前記PGRN関連FTLDがFTLDの行動異常型前頭側頭型認知症異型である、E113に記載の方法。
【0208】
E115.
前記PGRN関連FTLDがFTLDの意味性認知症異型である、E113に記載の方法。
【0209】
E116.
前記PGRN関連FTLDがFTLDの進行性非能弁性失語症異型である、E113に記載の方法。
【0210】
E117.
前記PGRN関連NCLがバッテン病である、E113に記載の方法。
【0211】
E118.
前記細胞がESCである、E1~E117のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
E119.
前記細胞がiPSCである、E1~E117のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
E120.
前記細胞がCD34+細胞である、E1~E117のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
E121.
前記CD34+細胞がHSCである、E120に記載の方法。
【0215】
E122.
前記CD34+細胞がMPCである、E120に記載の方法。
【0216】
E123.
前記組成物の投与前に、前記対象における内因性ミクログリアの集団を除去しておく、E1~E122のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
E124.
前記対象に前記組成物を投与する前に、前記対象における内因性ミクログリアの集団を除去することを含む、E1~E122のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
E125.
前記ミクログリアを、ブスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、トレオスルファン、及びクロドロネートリポソームからなる群から選択される薬剤を使用して、放射線療法により、またはそれらの組み合わせで除去する、E123またはE124に記載の方法。
【0219】
E126.
前記組成物を前記対象に全身投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
E127.
前記組成物を、静脈内注射により前記対象に投与する、E126に記載の方法。
【0221】
E128.
前記組成物を、前記対象の中枢神経系に直接投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
E129.
前記組成物を、脳脊髄液への直接投与により前記対象に投与する、E128に記載の方法。
【0223】
E130.
前記組成物を、脳室内注射、髄腔内注射、定位注射、またはそれらの組み合わせにより前記対象に投与する、E128またはE129に記載の方法。
【0224】
E131.
前記組成物を、実質内注射により前記対象に投与する、E128に記載の方法。
【0225】
E132.
前記組成物を、前記対象の骨髄に直接投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
E133.
前記組成物を、骨内注射により前記対象に投与する、E132に記載の方法。
【0227】
E134.
前記組成物を、前記組成物を含む骨髄移植により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
E135.
前記組成物を、脳室内注射により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
E136.
前記組成物を、髄腔内注射により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
E137.
前記組成物を、実質内注射により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
E138.
前記組成物を、静脈内注射により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
E139.
前記組成物を、前記対象の中枢神経系に直接的に投与することにより、及び全身投与により前記対象に投与する、E1~E125のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
E140.
前記組成物を、脳室内注射及び静脈内注射により前記対象に投与する、E139に記載の方法。
【0234】
E141.
前記組成物を、髄腔内注射及び静脈内注射により前記対象に投与する、E139に記載の方法。
【0235】
E142.
前記組成物に、実質内注射及び静脈内注射により前記対象に投与する、E139に記載の方法。
【0236】
E143.
細胞の集団を前記対象に投与することをさらに含む、E1~E142のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
E144.
前記組成物の投与前に、前記細胞の集団を前記対象に投与する、E143に記載の方法。
【0238】
E145.
前記組成物の投与後に、前記細胞の集団を、前記対象に投与する、E143に記載の方法。
【0239】
E146.
前記細胞が、万能性細胞、ESC、IPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、及びミクログリアからなる群から選択される、E143~E145のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
E147.
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNをコードする導入遺伝子を発現するように改変されていない、E143~E146のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
E148.
前記細胞を、前記対象に全身投与する、E143~E147のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
E149.
前記細胞を、静脈内注射により前記対象に投与する、E148に記載の方法。
【0243】
E150.
前記対象への前記組成物の投与前に、内因性PGRNまたはGRNを前記細胞において破壊する、E1~E149のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
E151.
前記対象への前記組成物の投与前に、前記内因性PGRNまたはGRNを前記対象において破壊する、E1~E150のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
E152.
前記対象への前記組成物の投与前に、前記内因性PGRNまたはGRNを、前記対象のニューロンの集団において破壊する、E151に記載の方法。
【0246】
E153.
前記細胞を、前記細胞中の内因性PGRNまたはGRN核酸の切断を触媒するヌクレアーゼと接触させることにより、前記内因性PGRNまたはGRNを破壊する、E150に記載の方法。
【0247】
E154.
前記ヌクレアーゼが、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)関連タンパク質である、E153に記載の方法。
【0248】
E155.
前記CRISPR関連タンパク質が、CRISPR関連タンパク質9(Cas9)である、E154に記載の方法。
【0249】
E156.
前記CRISPR関連タンパク質が、CRISPR関連タンパク質12a(Cas12a)である、E154に記載の方法。
【0250】
E157.
前記ヌクレアーゼが、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、またはジンクフィンガーヌクレアーゼである、E153に記載の方法。
【0251】
E158.
前記内因性PGRNまたはGRNを、阻害性RNA分子を前記細胞、前記対象、または前記ニューロンの集団に投与することにより破壊する、E150~E152のいずれか1つに記載の方法。
【0252】
E159.
前記阻害性RNA分子が短鎖干渉RNA、短鎖ヘアピンRNA、またはmiRNAである、E158に記載の方法。
【0253】
E160.
前記細胞が自家細胞である、E1~159のいずれか1つに記載の方法。
【0254】
E161.
前記細胞が同種異系細胞である、E1~159のいずれか1つに記載の方法。
【0255】
E162.
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボで形質導入されている、E1~161のいずれか1つに記載の方法。
【0256】
E163.
前記細胞を、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、ピコルナウイルス、アルファウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、及びレトロウイルス科ウイルスからなる群から選択されるウイルスベクターで形質導入する、E162に記載の方法。
【0257】
E164.
前記ウイルスベクターがレトロウイルス科ウイルスベクターである、E163に記載の方法。
【0258】
E165.
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、E164に記載の方法。
【0259】
E166.
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、アルファレトロウイルスベクターである、E164に記載の方法。
【0260】
E167.
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、ガンマレトロウイルスベクターである、E164に記載の方法。
【0261】
E168.
前記レトロウイルス科ウイルスベクターが、中央ポリプリン路、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント、5’-LTR、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位、デルタ-GAGエレメント、3’-スプライス部位、及び3’-自己不活性化LTRを含む、E164~E167のいずれか1つに記載の方法。
【0262】
E169.
前記ウイルスベクターが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、及びAAVrh74からなる群から選択されるAAVである、E163に記載の方法。
【0263】
E170.
前記ウイルスベクターが偽型ウイルスベクターである、E163~E169のいずれか1つに記載の方法。
【0264】
E171.
前記偽型ウイルスベクターが、偽型AAV、偽型アデノウイルス、偽型パルボウイルス、偽型コロナウイルス、偽型ラブドウイルス、偽型パラミクソウイルス、偽型ピコルナウイルス、偽型アルファウイルス、偽型ヘルペスウイルス、偽型ポックスウイルス、及び偽型レトロウイルス科ウイルスからなる群から選択される、E170に記載の方法。
【0265】
E172.
前記細胞を、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトする、E1~E161のいずれか1つに記載の方法。
【0266】
E173.
前記細胞を、a)カチオン性ポリマー、ジエチルアミノエチル-デキストラン、ポリエチレンイミン、カチオン性脂質、リポソーム、リン酸カルシウム、活性化デンドリマー、及び磁気ビーズからなる群から選択される薬剤;またはb)エレクトロポレーション、Nucleofection、スクイーズ-ポレーション、ソノポレーション、光学トランスフェクション、Magnetofection、及びインペールフェクションからなる群から選択される技術を使用してトランスフェクトする、E172に記載の方法。
【0267】
E174.
前記細胞における前記PGRNまたは前記GRNの発現を、ユビキタスプロモーターにより媒介する、E1~E173のいずれか1つに記載の方法。
【0268】
E175.
前記ユビキタスプロモーターが、伸長因子1-アルファプロモーター及びホスホグリセリン酸キナーゼ1プロモーターからなる群から選択される、E174に記載の方法。
【0269】
E176.
前記PGRNまたは前記GRNの発現を、細胞系統特異的プロモーターにより媒介する、E1~E173のいずれか1つに記載の方法。
【0270】
E177.
前記細胞系統特異的プロモーターが、PGRNプロモーター、CD11bプロモーター、CD68プロモーター、C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1プロモーター、同種移植炎症因子1プロモーター、プリン受容体P2Y12プロモーター、膜貫通タンパク質119プロモーター、及びコロニー刺激因子1受容体プロモーターからなる群から選択される、E176に記載の方法。
【0271】
E178.
前記細胞における前記PGRNまたは前記GRNの発現を、合成プロモーターにより媒介する、E1~E173のいずれか1つに記載の方法。
【0272】
E179.
前記組成物を、a)前記対象の脳におけるM1ミクログリアの量と比べて、前記対象の脳においてM2ミクログリアの量を増加させるために;b)前記対象の脳における1種または複数の炎症誘発性サイトカインのレベルを低下させるために;c)前記対象の脳における1種または複数の抗炎症性サイトカインのレベルを上昇させるために、;d)前記対象の認知性能を改善するために;e)前記対象の運動機能を改善するために;f)前記対象におけるニューロン喪失を減少させるために;及び/またはg)前記対象におけるα-シヌクレインタンパク質、タウ陽性ニューロン封入体、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)陽性封入体、サルコーマ融合(FUS)陽性封入体、及び/またはユビキチン陽性封入体、またはそれらの凝集体のレベルを低下させるために十分な量で前記対象に投与する、E1~E178のいずれか1つに記載の方法。
【0273】
E180.
前記対象がヒトである、E1~E179のいずれか1つに記載の方法。
【0274】
E181.
PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を含み、1種または複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、または添加剤をさらに含む、薬学的組成物。
【0275】
E182.
前記PGRNまたは前記GRNが分泌シグナルペプチドを含む、E181に記載の薬学的組成物。
【0276】
E183.
前記分泌シグナルペプチドがPGRN分泌シグナルペプチドである、E182に記載の薬学的組成物。
【0277】
E184.
前記細胞が、前記PGRNをコードする導入遺伝子を含む、E181~E183のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0278】
E185.
前記PGRNが、少なくとも2つのGRNドメインを含む、E184に記載の薬学的組成物。
【0279】
E186.
前記PGRNが、少なくとも3つのGRNドメインを含む、E185に記載の薬学的組成物。
【0280】
E187.
前記PGRNが、少なくとも4つのGRNドメインを含む、E186に記載の薬学的組成物。
【0281】
E188.
前記PGRNが、少なくとも5つのGRNドメインを含む、E187に記載の薬学的組成物。
【0282】
E189.
前記PGRNが、少なくとも6つのGRNドメインを含む、E188に記載の薬学的組成物。
【0283】
E190.
前記PGRNが、少なくとも7つのGRNドメインを含む、E189に記載の薬学的組成物。
【0284】
E191.
前記PGRNが、少なくとも8つのGRNドメインを含む、E190に記載の薬学的組成物。
【0285】
E192.
前記PGRNが、2~16のGRNドメインを含む、E181~E191のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0286】
E193.
前記PGRNが、2~12のGRNドメインを含む、E192に記載の薬学的組成物。
【0287】
E194.
前記PGRNが、2~8のGRNドメインを含む、E193に記載の薬学的組成物。
【0288】
E195.
前記PGRNが、2~4のGRNドメインを含む、E194に記載の薬学的組成物。
【0289】
E196.
前記PGRNが、2つのGRNドメインを含む、E195に記載の薬学的組成物。
【0290】
E197.
前記PGRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインを含む、E181~E196のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0291】
E198.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E197に記載の薬学的組成物。
【0292】
E199.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E198に記載の薬学的組成物。
【0293】
E200.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、E199に記載の薬学的組成物。
【0294】
E201.
前記PGRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインを含む、E181~E200のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0295】
E202.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E201に記載の薬学的組成物。
【0296】
E203.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E202に記載の薬学的組成物。
【0297】
E204.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、E203に記載の薬学的組成物。
【0298】
E205.
前記PGRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインを含む、E181~E204のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0299】
E206.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E205に記載の薬学的組成物。
【0300】
E207.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E206に記載の薬学的組成物。
【0301】
E208.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、E207に記載の薬学的組成物。
【0302】
E209.
前記PGRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインを含む、E181~E208のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0303】
E210.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E209に記載の薬学的組成物。
【0304】
E211.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E210に記載の薬学的組成物。
【0305】
E212.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、E211に記載の薬学的組成物。
【0306】
E213.
前記PGRNが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-4ドメインを含む、E181~E212のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0307】
E214.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E213に記載の薬学的組成物。
【0308】
E215.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E214に記載の薬学的組成物。
【0309】
E216.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、E215に記載の薬学的組成物。
【0310】
E217.
前記PGRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインを含む、E181~E216のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0311】
E218.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E217に記載の薬学的組成物。
【0312】
E219.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E218に記載の薬学的組成物。
【0313】
E220.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、E219に記載の薬学的組成物。
【0314】
E221.
前記PGRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインを含む、E181~E220のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0315】
E222.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E221に記載の薬学的組成物。
【0316】
E223.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E222に記載の薬学的組成物。
【0317】
E224.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、E223に記載の薬学的組成物。
【0318】
E225.
前記PGRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインを含む、E181~E224のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0319】
E226.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E225に記載の薬学的組成物。
【0320】
E227.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E226に記載の薬学的組成物。
【0321】
E228.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、E226に記載の薬学的組成物。
【0322】
E229.
前記PGRNが全長PGRNである、E181~E228のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0323】
E230.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、E181~E229に記載の薬学的組成物。
【0324】
E231.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E230に記載の薬学的組成物。
【0325】
E232.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E231に記載の薬学的組成物。
【0326】
E233.
前記PGRNが、配列番号1のアミノ酸配列を有する、E232に記載の薬学的組成物。
【0327】
E234.
前記細胞が、前記GRNをコードする導入遺伝子を含む、E181~E233のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0328】
E235.
前記GRNが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するパラ-GRNドメインである、E181~E234のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0329】
E236.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E235に記載の薬学的組成物。
【0330】
E237.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E236に記載の薬学的組成物。
【0331】
E238.
前記パラ-GRNドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を有する、E237に記載の薬学的組成物。
【0332】
E239.
前記GRNが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-1ドメインである、E181~E238のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0333】
E240.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E239に記載の薬学的組成物。
【0334】
E241.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E240に記載の薬学的組成物。
【0335】
E242.
前記GRN-1ドメインが、配列番号3のアミノ酸配列を有する、E241に記載の薬学的組成物。
【0336】
E243.
前記GRNが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-2ドメインである、E181~E242のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0337】
E244.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E243に記載の薬学的組成物。
【0338】
E245.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E244に記載の薬学的組成物。
【0339】
E246.
前記GRN-2ドメインが、配列番号4のアミノ酸配列を有する、E245に記載の薬学的組成物。
【0340】
E247.
前記GRNが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-3ドメインである、E181~E246のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0341】
E248.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E247に記載の薬学的組成物。
【0342】
E249.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E248に記載の薬学的組成物。
【0343】
E250.
前記GRN-3ドメインが、配列番号5のアミノ酸配列を有する、E249に記載の薬学的組成物。
【0344】
E251.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有する、E181~E250のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0345】
E252.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E251に記載の薬学的組成物。
【0346】
E253.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E252に記載の薬学的組成物。
【0347】
E254.
前記GRN-4ドメインが、配列番号6のアミノ酸配列を有する、E253に記載の薬学的組成物。
【0348】
E255.
前記GRNが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-5ドメインである、E181~E254のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0349】
E256.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E255に記載の薬学的組成物。
【0350】
E257.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E256に記載の薬学的組成物。
【0351】
E258.
前記GRN-5ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、E257に記載の薬学的組成物。
【0352】
E259.
前記GRNが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-6ドメインである、E181~E258のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0353】
E260.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E259に記載の薬学的組成物。
【0354】
E261.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E260に記載の薬学的組成物。
【0355】
E262.
前記GRN-6ドメインが、配列番号8のアミノ酸配列を有する、E261に記載の薬学的組成物。
【0356】
E263.
前記GRNが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するGRN-7ドメインである、E181~E262のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0357】
E264.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有する、E263に記載の薬学的組成物。
【0358】
E265.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有する、E264に記載の薬学的組成物。
【0359】
E266.
前記GRN-7ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列を有する、E265に記載の薬学的組成物。
【0360】
E267.
前記GRNが全長GRNである、E181~E266のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0361】
E268.
前記細胞が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するPGRN導入遺伝子を含む、E181~E267のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0362】
E269.
前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、E268に記載の薬学的組成物。
【0363】
E270.
前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、E269に記載の薬学的組成物。
【0364】
E271.
前記PGRN導入遺伝子が、配列番号10の核酸配列を有する、E270に記載の薬学的組成物。
【0365】
E272.
前記PGRNまたは前記GRNが、PGRNまたはGRN融合タンパク質である、E181~E271のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0366】
E273.
前記PGRNまたは前記GRN融合タンパク質が、ApoEのRbドメインを含む、E272に記載の薬学的組成物。
【0367】
E274.
前記Rbドメインが、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するApoEの部分を含む、E273に記載の薬学的組成物。
【0368】
E275.
前記Rbドメインが、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する領域を含む、E273またはE274に記載の薬学的組成物。
【0369】
E276.
PGRNまたはGRNをコードする前記導入遺伝子がさらに、miRNAターゲティング配列を3’-UTRに含む、E181~E275のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0370】
E277.
前記miRNAターゲティング配列がmiR-126ターゲティング配列である、E276に記載の薬学的組成物。
【0371】
E278.
前記細胞がESCである、E181~E277のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0372】
E279.
前記細胞がiPSCである、E181~E277のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0373】
E280.
前記細胞がCD34+細胞である、E181~E277のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0374】
E281.
前記CD34+細胞がHSCである、E280に記載の薬学的組成物。
【0375】
E282.
前記CD34+細胞がMPCである、E280に記載の薬学的組成物。
【0376】
E283.
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボでトランスフェクトされている、E181~E282のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0377】
E284.
前記細胞が、前記PGRNまたは前記GRNを発現するようにエクスビボで形質導入されている、E181~E282のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0378】
E285.
ヒト対象に全身投与するために製剤化されている、E181~E284のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0379】
E286.
静脈内注射によりヒト対象に投与するために製剤化されている、E285に記載の薬学的組成物。
【0380】
E287.
ヒト対象に、前記対象の神経系に直接投与するために製剤化されている、E181~E284のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0381】
E288.
脳脊髄液へとヒト対象に投与するために製剤化されている、E287に記載の薬学的組成物。
【0382】
E289.
脳室内注射、髄腔内注射、定位注射、またはそれらの組み合わせによりヒト対象に投与するために製剤化されている、E287またはE288に記載の薬学的組成物。
【0383】
E290.
実質内注射によりヒト対象に投与するために製剤化されている、E287に記載の薬学的組成物。
【0384】
E291.
ヒト対象の骨髄に直接投与するために製剤化されている、E181~E284のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0385】
E292.
骨内注射によりヒト対象に投与するために製剤化されている、E291に記載の薬学的組成物。
【0386】
E293.
前記組成物を含む骨髄移植によりヒト対象に投与するために製剤化されている、E181~E284のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0387】
E294.
ヒト対象に全身投与するために、及びヒト対象の中枢神経系に直接投与するために製剤化されている、E181~E284のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0388】
E295.
脳室内注射及び静脈内注射により投与するために製剤化されている、E294に記載の薬学的組成物。
【0389】
E296.
髄腔内注射及び静脈内注射により投与するために製剤化されている、E294に記載の薬学的組成物。
【0390】
E297.
実質内注射及び静脈内注射により投与するために製剤化されている、E294に記載の薬学的組成物。
【0391】
E298.
前記ヒト対象が、NCDを有すると診断されている、E285~E297のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0392】
E299.
前記NCDが重度NCDである、E298に記載の薬学的組成物。
【0393】
E300.
前記重度NCDが、前記対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害する、E299に記載の薬学的組成物。
【0394】
E301.
前記重度NCDが、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、E299またはE300に記載の薬学的組成物。
【0395】
E302.
前記NCDが軽度NCDである、E298に記載の薬学的組成物。
【0396】
E303.
前記軽度NCDが対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害しない、E302に記載の薬学的組成物。
【0397】
E304.
前記軽度NCDが、基準集団の平均スコアから少なくとも標準偏差1~2離れている、認知検査で前記対象により得られるスコアと関連している、E302またはE303に記載の薬学的組成物。
【0398】
E305.
前記基準集団が、一般集団である、E301またはE304に記載の薬学的組成物。
【0399】
E306.
前記認知検査が、AD8、AWV、GPCOG、HRA、MIS、MMSE、MoCA、SLUMS、及びShort IQCODEからなる群から選択される、E301、E304、またはE305に記載の薬学的組成物。
【0400】
E307.
前記NCDが、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知のうちの1つまたは複数における機能障害と関連している、E298~E306のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0401】
E308.
前記NCDが、せん妄または他の精神障害によるものではない、E298~E307のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0402】
E309.
前記NCDが前頭側頭骨NCDである、E298~E308のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0403】
E310.
前記前頭側頭骨NCDがFTLDである、E309に記載の薬学的組成物。
【0404】
E311.
前記NCDがリソソーム疾患によるものである、E298~E308のいずれか1つに記載の薬学的組成物。
【0405】
E312.
前記リソソーム疾患がNCLである、E311に記載の薬学的組成物。
【0406】
E313.
E181~E312のいずれか1つに記載の薬学的組成物と添付文書とを含むキット。
【0407】
E314.
前記添付文書が、前記キットのユーザーに、E1~E180のいずれか1つに記載の方法を実行するように指示する、E313に記載のキット。
【0408】
E315.
前記PGRNまたはGRN融合タンパク質が、PGRNまたはGRNと、GILTタグとを含む、E1~E180のいずれか1つに記載の方法。
【0409】
E316.
前記GILTタグを、前記PGRNまたはGRNのN末端に作動可能に連結させる、E315に記載の方法。
【0410】
E317.
前記GILTタグを、前記PGRNまたはGRNのC末端に作動可能に連結させる、E315に記載の方法。
【0411】
E318.
前記GILTタグが、成熟ヒトIGF-IIのアミノ酸配列(配列番号12)に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するヒトIGF-IIムテインを含む、E315~317のいずれか1つに記載の方法。
【0412】
E319.
前記IGF-IIムテインが、配列番号12のアミノ酸30~40に対応する領域内に変異を含み、かつ前記変異が、少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を破壊する、E315~318のいずれか1つに記載の方法。
【0413】
E320.
前記変異が、アミノ酸置換、欠失、及び/または挿入である、E319に記載の方法。
【0414】
E321.
前記変異が、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置でのLysまたはAlaアミノ酸置換である、E320に記載の方法。
【0415】
E322.
前記変異が、配列番号12の31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、33~39、35~39、36~39、37~40、34~40からなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置換、及びそれらの組み合わせである、E320に記載の方法。
【0416】
E323.
前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0417】
E324.
前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0418】
E325.
前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0419】
E326.
前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0420】
E327.
前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0421】
E328.
前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E315~E322のいずれか1つに記載の方法。
【0422】
E329.
前記細胞が、万能性細胞(例えば、ESC、iPSC)、多能性細胞(例えば、CD34+細胞、例えば、HSCまたはMPCなど)、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリアである、E1~E180またはE315~E328のいずれか1つに記載の方法。
【0423】
E330.
前記導入遺伝子が、マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る、E1~E180またはE315~E329のいずれか1つに記載の方法。
【0424】
E331.
前記導入遺伝子がコドン最適化導入遺伝子である、E1~E180またはE315~E330のいずれか1つに記載の方法。
【0425】
E332.
前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、E331に記載の方法。
【0426】
E333.
前記PGRNまたはGRN融合タンパク質が、PGRNまたはGRNとGILTタグとを含む、E181~E312のいずれか1つに記載の組成物。
【0427】
E334.
前記GILTタグが、前記PGRNまたはGRNのN末端に作動可能に連結している、E333に記載の組成物。
【0428】
E335.
前記GILTタグが、前記PGRNまたはGRNのC末端に作動可能に連結している、E333に記載の組成物。
【0429】
E336.
前記GILTタグが、成熟ヒトIGF-II(配列番号12)のアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するヒトIGF-IIムテインを含む、E333~E335のいずれか1つに記載の組成物。
【0430】
E337.
前記IGF-IIムテインが、配列番号12のアミノ酸30~40に対応する領域内に変異を含み、かつ前記変異が少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を破壊する、E333~E336のいずれか1つに記載の組成物。
【0431】
E338.
前記変異が、アミノ酸置換、欠失、及び/または挿入である、E337に記載の組成物。
【0432】
E339.
前記変異が、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置でのLysまたはAlaアミノ酸置換である、E338に記載の組成物。
【0433】
E340.
前記変異が、配列番号12の31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、33~39、35~39、36~39、37~40、34~40からなる群から選択される位置に対応するアミノ酸残基の欠失または置換、及びそれらの組み合わせである、E338に記載の組成物。
【0434】
E341.
前記GILTタグが、配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0435】
E342.
前記GILTタグが、配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0436】
E343.
前記GILTタグが、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0437】
E344.
前記GILTタグが、配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0438】
E345.
前記GILTタグが、配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0439】
E346.
前記GILTタグが、配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列を有する、E333~E340のいずれか1つに記載の組成物。
【0440】
E347.
前記細胞が、万能性細胞(例えば、ESC、iPSC)、多能性細胞(例えば、CD34+細胞、例えば、HSCまたはMPCなど)、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリアである、E181~E312またはE333~E346のいずれか1つに記載の組成物。
【0441】
E348.
前記導入遺伝子が、マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る、E181~E312またはE333~E347のいずれか1つに記載の組成物。
【0442】
E349.
前記導入遺伝子がコドン最適化導入遺伝子である、E1~E180またはE333~E348のいずれか1つに記載の組成物。
【0443】
E350.
前記コドン最適化導入遺伝子が、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む、E349に記載の組成物。
【図面の簡単な説明】
【0444】
【
図1A】ヒトプログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターでのヒト細胞の形質導入を示す一連のプロットである。10、50、100、または200の感染多重度(MOI)で、PGRN(MND.GRN)または緑色蛍光タンパク質(GFP;MND.GFP)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたヒト239T細胞から、細胞溶解産物を生成した。別のセットの対照細胞は形質導入しなかった(NTC)。デンシトメトリーを使用して、アクチンに対してPGRNレベルを定量化した。
【
図1B】ヒトPGRNに対して生じる抗体を用いるウェスタンブロットは、239T細胞における安定なPGRN発現を示し、最大の発現がMOI200で観察された。NTC細胞及びMOI10GFP細胞についてを除いて、すべての群が統計学的に有意な差で示された。統計的解析は、ANOVAを使用して行った。
【
図2】ヒトPGRNをコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクター(すなわち、MND.GRNベクター)で形質導入されたマウス系列陰性(Lin
-)細胞におけるヒトPGRNの発現を示すウェスタンブロットである。ヒトPGRNに対して生じる抗体を用いるウェスタンブロットを使用して、形質導入されていない(-)またはMND.GRNレンチウイルスベクターで形質導入されている(+)Lin
-マウス細胞から生成された馴化培地を分析すると、形質導入細胞による増殖培地へのヒトPGRNタンパク質の放出を示した。
【
図3】ヒトPGRNをコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで形質導入された不死化細胞系がN連結グリコシル化されることを示すウェスタンブロットである。形質導入されていない(NT1、NT2、NT3、及びNT4)、または4つの独立したラウンドの形質導入で生成されたヒトPGRNをコードするレンチウイルスベクター(MND.GRN-1、MND.GRN-2、MND.GRN-3、及びMND.GRN-4)で形質導入されたヒト239T細胞系から、細胞溶解産物を生成した。細胞溶解産物をEndoH(E.)もしくはPNGアーゼ(P.)酵素のいずれかで酵素的消化するか、または加熱(H.)し、かつヒトプログラニュリンに対して生じる抗体を用いるウェスタンブロットを使用して分析した。EndoH及びPNGアーゼによる酵素的消化は、形質導入された細胞により産生されるヒトPGRNタンパク質がN連結グリコシル化されていることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0445】
定義
本明細書で使用する場合、「除去する」、「除去すること」、「除去」などの用語は、インビボまたはエクスビボでの細胞の集団における1つまたは複数の細胞の枯渇を指す。本開示の一部の実施形態では、前記対象に治療用の細胞の集団を投与する前に、対象(例えば、本明細書に記載の疾患、例えば、神経認知障害(NCD;例えば、前頭側頭骨大葉変性(FTLD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)についての処置を受ける対象)内の内因性細胞を除去することが望ましいことがある。これは、例えば、新たに投与される細胞に、細胞が生着し得る環境を提供するために有利であり得る。細胞の集団の除去は、例えば、ターゲット細胞上に発現される抗原に結合し、続いて、ターゲット細胞の死滅を生じさせる抗体-薬物コンジュゲートを使用して、特異的細胞型を選択的に標的とする手法で行うことができる。加えて、または別法では、除去は、特定の細胞型に集中するのではなく、代わりに、様々な異なる細胞に、それらの細胞毒性作用を発揮し得る細胞毒素を使用する非特異的手法で行うことができる。対象における内因性細胞の集団、例えば、NCDの処置について治療を施される対象における内因性ミクログリアまたはミクログリア前駆体細胞の集団などを除去するために使用することができる例示的な薬剤は、ブスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、トレオスルファン、クロドロネートリポソーム、及びそれらの組み合わせである。除去の例には、インビボまたはインビトロでの細胞の集団における細胞の少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上)の枯渇が含まれる。細胞のサンプル内の細胞数の定量化は、様々な細胞計数技術を使用して、例えば、計数チャンバー、Coulterカウンター、フローサイトメトリー、または当技術分野で公知の他の細胞計数方法の使用により行うことができる。
【0446】
本明細書で使用する場合、「投与」は、任意の有効な経路により、治療薬(例えば、プログラニュリン(PGRN)またはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子(例えば、マクロファージまたはミクログリアにおいて発現し得る導入遺伝子)を含む細胞、例えば、万能性細胞(例えば、胚性幹細胞(ESC)または人工万能性幹細胞(ISPC))、多能性細胞(例えば、CD34+細胞、例えば、造血幹細胞(HSC)または骨髄前駆細胞(MPC)など)、血液系統前駆細胞(BLPCS;例えば、単球)、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を対象に提供または与えることを指す。例示的な投与経路を、本明細書において、及び以下に記載する(例えば、脳室内(ICV)注射、静脈内(IV)注射、髄腔内(IT)注射、実質内(IP)注射、及び定位注射)。
【0447】
本明細書で使用する場合、「同種異系」とは、同じ種の異なる対象から採取された、または由来する細胞、組織、DNA、または因子を意味する。例えば、形質導入されたPGRN発現またはGRN発現細胞がNCDを処置するために対象に投与される状況では、同種異系細胞は、その対象ではない対象から得られ、次いで、PGRNまたはGRNの発現を指示するベクターで形質導入またはトランスフェクトされた細胞であり得る。「発現を指示する」という語句は、発現される分子をコードする配列を含むポリヌクレオチドに関する。前記ポリヌクレオチドは、目的の分子の発現を増強する追加の配列を含み得る。
【0448】
本明細書で使用する場合、「自家」とは、個体自身の組織、細胞、またはDNAから採取された、または由来する細胞、組織、DNA、または因子に関する。例えば、形質導入されたPGRN発現またはGRN発現細胞がNCD(例えば、FTLDまたはNCL)を処置するために対象に投与される状況では、自家細胞は、その対象から得られ、次いで、PGRNまたはGRNの発現を指示するベクターで形質導入またはトランスフェクトされた細胞であり得る。
【0449】
本明細書で使用する場合、「ApoE」という用語は、脂質輸送に関与するタンパク質のクラスのメンバーであるアポリポタンパク質Eを指す。アポリポタンパク質Eは、キロミクロン及び中密度リポタンパク質(IDL)の一部である脂肪結合タンパク質(アポリポタンパク質)である。これらは、トリグリセリドに富むリポタンパク質の正常なプロセシング(異化作用)に必須である。ApoEはAPOE遺伝子によりコードされる。「ApoE」という用語はまた、野生型ApoEタンパク質のバリアント、例えば、配列番号11で示される野生型ApoEのアミノ酸配列に対して少なくとも85%の同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するタンパク質を指す。
【0450】
本明細書で使用する場合、「血液系統前駆細胞」または「BLPC」という用語は、造血性(すなわち、血液)細胞の1種または複数(例えば、2、3、4、5種またはそれ以上)の型に分化し得る任意の細胞(例えば、哺乳動物細胞)を指す。BLPCは、赤血球、白血球(例えば、顆粒球(例えば、好塩基球、好酸球、好中球、及び肥満細胞)または無顆粒球(例えば、リンパ球及び単球)など)、または血小板に分化し得る。BLPCには、別の血液細胞型(例えば、マクロファージ)にさらに分化し得る分化した血液細胞(例えば、単球)も含まれ得る。
【0451】
本明細書で使用する場合、「細胞型」という用語は、遺伝子発現データに基づいて統計的に区別可能な表現型を共有する細胞のグループを指す。例えば、細胞型が共通する細胞は、類似した遺伝子活性化パターン及び抗原提示プロファイルなどの類似した構造及び/または機能的特徴を共有し得る。細胞型が共通する細胞には、共通の組織(例えば、上皮組織、神経組織、結合組織、または筋肉組織)から単離されるもの、及び/または共通の臓器、組織系、血管、または生体の他の構造及び/または領域から単離されるものが含まれ得る。
【0452】
本明細書で使用する場合、「コドン最適化」は、コーディングDNAにおける同義コドン(例えば、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現頻度が異なる種では偏っているという原則に従って、核酸配列を改変するプロセスを指す。そのようなコドン縮重は、同一のポリペプチドが様々なヌクレオチド配列によりコードされることを可能にする。このようにして改変された配列は、本明細書では「コドン最適化」と称される。このプロセスは、発現または安定性を増強するために、本明細書に記載の配列のいずれで行われてもよい。コドン最適化は、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,561,972号、第7,561,973号、及び第7,888,112号に記載されているような様式で行うことができる。翻訳開始部位を取り巻く配列は、既知の方法に従ってコンセンサスコザック配列に変換することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるKozak et al, Nucleic Acids Res. 15: 8125-8148(1989)を参照されたい。複数の停止コドンを組み込むことができる。
【0453】
本明細書で使用する場合、「認知検査」という用語は、ヒト及び他の動物の認知能力を評価するために当業専門家が行うことができる検査を指す。認知検査は、帰納的推論スキル、知能指数、認知開発、記憶、知識組織化、メタ認知、思考、心的時間測定を評価するために使用することができる。認知検査は、限定されないが、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知を含む複数の認知ドメインにわたる対象の処理能力を評価するために使用することができる。認知検査の例には、限定されないが、Eight-item Informant Interview to Differentiate Aging and Dementia(AD8)、Annual Wellness Visit(AWV)、General Practitioner Assessment of Cognition(GPCOG)、Health Risk Assessment(HRA)、Memory Impairment Screen(MIS)、Mini Mental Status Exam(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、St. Louis University Mental Status Exam(SLUMS)、及びShort Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(Short IQCODE)が含まれる。当業専門家は、当技術分野で周知の他の認知検査も、対象において認知機能を評価するために使用することができることを認めるであろう。
【0454】
本明細書で使用する場合、「複雑性注意」という用語は、情報を記憶に短時間維持する、及びその情報を操作(例えば、暗算)する対象の(例えば、ヒト対象の)能力を説明する認知機能を指す。複雑性注意における機能障害は、会話に集中することについての困難、望ましくない情報の遮断についての困難、前方視的記憶(例えば、後で何かを思い出すための記憶)の問題、及び新たな情報についての非効率的記憶をもたらし得る。
【0455】
本明細書で使用する場合、「前処置」及び「前処置すること」という用語は、細胞を含む移植片を受け取るために対象が準備されるプロセスを指す。そのような手順は、例えば、内因性ミクログリアまたは造血幹細胞を選択的に枯渇させ、それにより外因性細胞移植片により満たされる空孔を作ることにより、細胞移植片の生着を促進する。本明細書に記載の方法によれば、対象を、細胞移植療法のために、内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞または前駆細胞を除去することができる1つまたは複数の薬剤(例えば、ブスルファン、トレオスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、及びクロドロネートリポソーム)、放射線療法、またはそれらの組み合わせを対象に投与することにより、前処置することができる。前処置は、骨髄破壊的または非骨髄破壊的であってよい。当技術分野で周知の他の細胞除去薬及び方法(例えば、抗体-薬物コンジュゲート)を使用することもできる。
【0456】
本明細書で使用する場合、「保存的変異」、「保存的置換」、及び「保存的アミノ酸置換」という用語は、極性、静電荷、及び立体体積などの類似の物理化学的特性を示す1つまたは複数の異なるアミノ酸で1つまたは複数のアミノ酸を置換することを指す。これらの特性を、20種の天然に存在するアミノ酸のそれぞれについて、下の表1にまとめる。
【0457】
【0458】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーには(i)G、A、V、L及びI;(ii)D及びE;(iii)C、S及びT;(iv)H、K及びR;(v)N及びQ;(vi)F、Y、及びWが含まれることが分かるであろう。したがって、保存的変異または置換は、同じアミノ酸ファミリーのメンバーを1つのアミノ酸で置換するものである(例えば、ThrをSerに、ArgをLysに置換)。
【0459】
本明細書で使用する場合、「せん妄または他の精神障害」という用語は、神経認知障害とは別個で、かつ認知機能障害を中核症状として示さない、せん妄(すなわち、短期間(例えば数時間から数日)で発症する注意、意識、及び認知の障害を含む症候群)または精神の別の障害(例えば、統合失調症、双極性障害、及び大うつ病)などの状態を指す。例えば、せん妄または別の精神障害などの状態は、認知機能障害が疾患と関連する症状ではあり得るが、その疾患の中核的な特徴ではないという点でNCDとは異なり得る。せん妄または別の精神障害は、発症までの時間(例えば、NCDでの数か月から数年に対して、せん妄では数時間から数日)、病因(例えば、物質誘導性せん妄)、症状の長さ(例えば、せん妄は数日から数時間であり得るが、NCDは数年間にわたって続き得る)、及び解消(例えば、せん妄は完全に解消し得るが、NCDは多くの場合に解消しない)に関してNCDとは異なり得る。
【0460】
本明細書で使用する場合、遺伝子に関して「破壊する」という用語は、機能的遺伝子産物の形成を阻止することを指す。遺伝子産物は、その正常な(野生型)機能を満たしていれば機能的である。遺伝子の破壊は、遺伝子によりコードされる機能的因子の発現を阻止し、遺伝子によりコードされる配列及び/または動物における遺伝子の発現に必要なプロモーター及び/またはオペレーターにおける1つまたは複数の塩基の挿入、削除、または置換を含む。破壊される遺伝子は、例えば、動物のゲノムからの遺伝子の少なくとも一部の除去、遺伝子によりコードされる機能的因子の発現を阻止するような遺伝子の改変、干渉RNA、または外因性遺伝子によるドミナントネガティブ因子の発現により破壊されてもよい。1つまたは複数の遺伝子の発現を破壊するための、細胞を遺伝子改変するための材料及び方法は、それぞれの開示がその全体で参照により本明細書に組み込まれる(矛盾する場合、本明細書が優先される)US8,518,701;US9,499,808;及びUS2012/0222143に詳述されている。
【0461】
本明細書で使用する場合、本明細書に記載の組成物、ベクター構築物、ウイルスベクター、または細胞の「有効量」、「治療有効量」、及び「十分量」という用語は、哺乳動物、例えばヒトを含む対象に投与したときに、臨床結果を含む有益または所望の結果をもたらすために十分な量を指す。したがって、「有効量」またはその同義語は、それが適用される状況に依存する。例えば、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)の処置の文脈では、それは、組成物、ベクター構築物、ウイルスベクター、または細胞を投与しなかった場合に得られる応答と比較して、処置応答を達成するために十分な組成物、ベクター構築物、ウイルスベクター、または細胞の量である。そのような量に対応する本明細書に記載の所与の組成物の量は、所与の薬剤、医薬製剤、投与経路、疾患もしくは障害の種類、対象のアイデンティティ(例えば、年齢、性別、体重)または処置される受容者などの様々な因子に応じて変化するが、それにもかかわらず、当業者はルーチン的に決定することができる。また、本明細書で使用する場合、本開示の組成物、ベクター構築物、ウイルスベクター、または細胞の「治療有効量」は、対照と比較して、対象において有益または所望の結果をもたらす量である。本明細書で定義されるとおり、本開示の組成物、ベクター構築物、ウイルスベクター、または細胞の治療有効量は、当業者により、当技術分野で公知のルーチン的な方法により容易に決定され得る。投薬計画を、最適な治療応答が得られるように調節することができる。
【0462】
本明細書で使用する場合、「胚性幹細胞」及び「ES細胞」という用語は、適切な条件下でインビトロ培養で維持することができる胚盤胞の内部細胞塊に由来する、胚由来の全能性または万能性幹細胞を指す。ES細胞は3つの脊椎動物の胚葉、例えば、内胚葉、外胚葉、及び中胚葉のいずれの細胞にも分化することができる。ES細胞は、適切なインビトロ培養条件下で無期限に増殖するその能力によっても特徴付けられる。例えば、Thomson et al., Science 282:1145 (1998)を参照されたい。
【0463】
本明細書で使用する場合、「内因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の場所(例えば、臓器、組織、またはヒト細胞などの細胞)において天然に見い出される分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を説明している。
【0464】
本明細書で使用する場合、「生着する」及び「生着」という用語は、造血幹細胞及び前駆細胞(そのような細胞は、身体内で内因性に産生されるか、または本明細書に記載の投与方法(例えば静脈内注射、脳室内注射、骨内注射、及び/または骨髄移植)のいずれかを使用して移植されるかのいずれか)を組織に再入植させるプロセスを指す。この用語は、生着に関するか、またはそれをもたらすすべての事象、例えば、細胞の組織ホーミング及び目的の組織内での細胞のコロニー形成を包含する。
【0465】
本明細書で使用する場合、「実行機能」という用語は、対象(例えば、ヒト)において行動の認知制御を容易にする一連の認知機能を指す。実行機能は、例えば、目標指向行動の選択及び監視、注意制御、認知抑制、抑制制御、作業記憶、ならびに認知柔軟性を包含する。個体は、生涯を通じて実行機能を正常に獲得するか、または完成させるが、このプロセスは、実行機能に不利な影響を与え得る対象におけるNCDの発症により脱線し得る。
【0466】
本明細書で使用する場合、「発現する」という用語は、次の事象のうちの1つまたは複数を指す:(1)(例えば転写による)DNA配列からのRNAテンプレートの産生;(2)(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’エンドプロセシングによる)RNA転写物のプロセシング;(3)RNAのポリペプチドまたはタンパク質への翻訳;及び(4)ポリペプチドまたはタンパク質の翻訳後修飾。対象における目的の遺伝子の発現は、例えば、対象から得られたサンプルにおける、対応するタンパク質をコードするmRNAの量または濃度の増加(例えば、本明細書に記載か、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)及びRNA seq技術などの当技術分野で公知のRNA検出手順を使用して評価される)、対応するタンパク質の量または濃度の増加(例えば、本明細書に記載か、またはとりわけ酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの当技術分野で公知のタンパク質検出方法を使用して評価される)、及び/または対応するタンパク質の活性の上昇(例えば、酵素の場合、本明細書に記載か、または当技術分野で公知の酵素活性アッセイを使用して評価される)を検出することにより明らかにすることができる。
【0467】
本明細書で使用する場合、「外因性」という用語は、特定の生物(例えば、ヒト)または生物内の特定の場所(例えば、臓器、組織、またはヒト細胞などの細胞)において天然には見い出されない分子(例えば、ポリペプチド、核酸、または補因子)を説明する。外因性物質には、外部供給源から生物または生物から抽出された培養物に提供されるものが含まれる。
【0468】
本明細書で使用する場合、造血幹細胞などの幹細胞に関連する「機能的可能性」という用語は、1)多能性(限定されないが、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)を含む複数の異なる血液細胞系に分化する能力を指す)、2)自己再生(母細胞と同等の能力を有し、さらにこの能力が消耗することなく個人の生涯を通じて繰り返し発生し得る娘細胞を生じさせる幹細胞の能力を指す)、及び3)幹細胞またはその後代が移植レシピエントに再導入されると、幹細胞ニッチェに帰着し、生産的で持続的な細胞の成長と分化を再確立する能力を含む幹細胞の機能的特性を指す。
【0469】
本明細書で使用する場合、「フーリン抵抗性IGF-IIムテイン」という用語は、野生型ヒトIGF-IIペプチドと比較して、フーリン切断が阻止、阻害、低減、または減速されるように、少なくとも1つの天然フーリンプロテアーゼ切断部位を無効にするか、または天然フーリンプロテアーゼ切断部位に近いか、または隣接する配列を変更する、野生型IGF-II(配列番号12)と比較して変化したアミノ酸配列を含むインスリン様成長因子II(IGF-II)ベースのペプチドを指す。本明細書で使用する場合、フーリン抵抗性IGF-IIムテインは、フーリンに対して抵抗性であるIGF-IIムテインとも称される。例示的なフーリン抵抗性IGF-IIムテインは、配列番号12のArg37及び/またはArg40に対応する位置にアミノ酸置換を含む。
【0470】
本明細書で使用する場合、「フーリンプロテアーゼ切断部位」(「フーリン切断部位」または「フーリン切断配列」とも称される)という用語は、フーリンまたはフーリン様プロテアーゼによる酵素的プロテアーゼ切断の認識配列として機能するペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列を指す。典型的には、フーリンプロテアーゼ切断部位は、コンセンサス配列Arg-X-X-Argを有し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。切断部位は、配列中のカルボキシ末端アルギニン(Arg)残基の後に位置する。一部の実施形態では、フーリン切断部位はコンセンサス配列Lys/Arg-X-X-X-Lys/Arg-Argを有し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。切断部位は、配列中のカルボキシ末端アルギニン(Arg)残基の後に位置する。
【0471】
本明細書で使用する場合、「フーリン」という用語は、フーリンまたはフーリン様プロテアーゼを含む、本明細書で定義するとおりのフーリンプロテアーゼ切断部位を認識及び切断することができる任意のプロテアーゼを指す。フーリンはまた、対塩基性アミノ酸切断酵素(PACE)としても知られている。フーリンはサブチリシン様プロタンパク質転換酵素ファミリーに属する。フーリンをコードする遺伝子は、FUR(FES Upstream Region)として知られている。
【0472】
本明細書で使用する場合、「グリコシル化非依存性リソソームターゲティング」または「GILT」という用語は、マンノース-6-リン酸(M6P)非依存性であるリソソームターゲティングを指す。GILTタグは、GILTタグ付き融合タンパク質(例えば、IGF-IIムテインに結合されたGBA融合タンパク質)として発現されるタンパク質(例えば、GBA)をリソソームにターゲティングするために使用することができる。
【0473】
本明細書で互換的に使用する場合、「カチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-MPR)」、「M6P/IGF-II受容体」、「CI-MPR/IGF-II受容体」、「IGF-II受容体」もしくは「IGF2受容体」という用語、またはそれらの略語は、M6P及びIGF-IIの両方に結合する細胞受容体を指す。
【0474】
本明細書で使用する場合、「前頭側頭骨大葉変性」及び「FTLD」という用語は、大脳皮質の前頭葉及び側頭葉内の脳組織の変性により特徴づけられる複合臨床症候群を指す。「前頭側頭骨大葉変性」及び「FTLD」という用語は、次を含むFTLDの3つの臨床的に別個の異型のうちのいずれか1つを指し得る:1)行動及び人格の変化、感情鈍麻、社会的離脱、固執行動、注意欠陥、抑制消失、及び前頭葉の顕著な変性により特徴づけられる行動異常型前頭側頭型認知症(BVFTD)。加えて、BVFTDは、筋萎縮性側索硬化症と強い関係を有する;2)意味性認知症(SD)は、能弁健忘性失語、言葉、物体、及び概念の意味的知識の進行性喪失ならびに前側頭葉の顕著な変性により特徴づけられる。さらに、FTLDのSD異型は、平坦な情動、社会性欠如、固執行動、及び抑制消失を示し;3)進行性非能弁性失語症(PNA)は、音声生成における運動障害、言語表現の減少、及びペリシルビアン皮質の顕著な変性により特徴づけられる。FTLD患者の組織病理学的プロファイルは一般に、(i)微小管関連タウタンパク質封入体;(ii)タウ陰性、ユビキチン及びTAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)陽性タンパク質封入体、または(iii)ユビキチン及びサルコーマ融合(FUS)陽性タンパク質封入体の凝集及び沈着を示すものを含む3つの幅広い表現型のうちの1つに該当する。FTLDの臨床症状及び組織病理学の包括的な説明については、その開示が全体で参照により本明細書に組み込まれるRabinovici and Miller, CNS Drugs 24:375-398(2010)を参照されたい。
【0475】
本明細書で使用する場合、「一般集団」という用語は、目的の特定の特徴(例えば、特に、年齢、病歴、教育、社会経済的状況、または生活様式)を有する個体の集団全体を指す。別法では、「一般集団」という用語は、例えば、規定のサンプルサイズを有する無作為サンプルなど、目的の特定の特徴を有する個体の集団全体のサブセットを指し得る。本明細書に開示の方法では、一般集団は、測定変項を比較することができる実用基準(例えば、基準集団)として役立ち得る。例えば、NCDを有すると診断されている対象をそれらの認知について、本明細書に開示の認知検査を使用して評価することができ、その試験で対象が得たスコアを、同じ検査での一般集団(例えば、一般集団全体または一般集団の無作為サンプル)における個体の成績と比較することができる。一般集団の無作為サンプルのサイズは、当技術分野で周知の方法を使用して当業専門家が決定することができる。例えば、当業専門家は、データを収集する前に(例えば、対象で認知検査を行う前に)検出力分析を行って、所望のレベルの信頼度で統計学的に有意な作用を検出するために必要な最小サンプルを決定することができる。
【0476】
本明細書で使用する場合、「グラニュリン」及び「GRN」という用語は、前駆タンパク質PGRNの切断から生じるペプチド生成物を指す。GRNペプチドは、発生、免疫、細胞生存及び増殖、ならびに腫瘍形成を含む様々な生物学的機能に関係する。全長野生型ヒトPGRNペプチドは、7.5のGRNドメイン(例えば、7つのGRNドメイン、それぞれ約60アミノ酸長)、及びプロテアーゼにより個々に切断され得る30アミノ酸パラグラニュリン(パラ-GRN)ドメインを有する。「グラニュリン」及び「GRN」という用語はまた、野生型ヒトグラニュリンペプチド及びそれをコードする核酸のバリアント、例えば、野生型GRNペプチドのアミノ酸配列のいずれか(例えば、配列番号2~9のいずれか1つ)に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するバリアントタンパク質を指すが、ただし、コードされるGRNバリアントは、野生型GRNの治療機能を維持することを条件とする。「グラニュリン」及び「GRN」という用語は、天然分泌シグナルペプチドが存在するGRNタンパク質も指し得る。加えて、「グラニュリン」及び「GRN」という用語は、GRNが別のポリペプチド、半減期改変薬、または治療薬、例えば、ApoE受容体結合(Rb)ドメイン(例えば、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するRbドメイン)に作動可能に連結しているタンパク質である「GRN融合タンパク質」を指し得る。本明細書で使用する場合、「GRN」という用語は、当業者には分かるであろうとおり、状況に応じてペプチドまたはこのタンパク質をコードする遺伝子を指し得る。
【0477】
本明細書で使用する場合、「造血幹細胞」及び「HSC」という用語は、限定されないが、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)を含む、自己複製し、かつ多様な細胞系の成熟血液細胞に分化する能力を有する未熟血液細胞を指す。そのような細胞はCD34+細胞を含んでも、または含まなくてもよいことが当技術分野で知られている。CD34+細胞は、CD34細胞表面マーカーを発現する未熟細胞である。ヒトでは、CD34+細胞には、前記で定義した幹細胞特性を持つ細胞の亜集団が含まれると考えられるが、マウスでは、HSCはCD34-である。加えて、HSCは、長期再増殖HSC(LT-HSC)及び短期再増殖HSC(ST-HSC)も指す。LT-HSC及びST-HSCは、機能的可能性及び細胞表面マーカーの発現に基づき区別される。例えば、ヒトHSCは、CD34+、CD38-、CD45RA-、CD90+、CD49F+、及びlin-(CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD10、CD11B、CD19、CD20、CD56、CD235Aを含む成熟細胞系マーカーについて陰性)である。マウスでは、骨髄LT-HSCは、CD34-、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamf1/CD150+、CD48-及びlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL-7raなどの成熟細胞系マーカーについて陰性)であるが、ST-HS Careは、CD34+、SCA-1+、C-kit+、CD135-、Slamf1/CD150+、及びlin-(Ter119、CD11b、Gr1、CD3、CD4、CD8、B220、IL-7raを含む成熟細胞系マーカーについて陰性)である。加えて、ST-HSCは、恒常性条件下でLT-HSCよりも静止しておらず(すなわち、よりアクティブであり)、より増殖性である。しかしながら、LT-HSCは、より高い自己再生能力(すなわち、成人期を通じて存続し、継代レシピエントを通じて連続して移植することができる)を有するが、ST-HSCは、限られた自己再生能力を有する(すなわち、限られた期間しか生存せず、かつ連続移植能力を持たない)。これらのHSCのいずれも、本明細書に記載の方法のいずれかで使用することができる。任意選択で、ST-HSCは、非常に増殖性が高く、したがって分化した後代をより迅速に生じさせることができるため、有用である。
【0478】
本明細書で使用する場合、「HLAマッチの」という用語は、造血幹細胞移植療法を必要とするレシピエントに造血幹細胞移植片を提供するドナーなど、ドナーとレシピエントとの間でHLA抗原のいずれもミスマッチしないドナー-レシピエントのペアを指す。HLAマッチの(すなわち、6つの対立遺伝子すべてがマッチする)ドナー-レシピエントのペアは、内因性T細胞及びNK細胞が外来移植片を異物として認識する可能性が低く、したがって移植片に対する免疫応答を開始する可能性が低いため、移植片拒絶のリスクが低い。
【0479】
本明細書で使用する場合、「HLAミスマッチの」という用語は、造血幹細胞移植療法を必要とするレシピエントに造血幹細胞移植片を提供するドナーなど、ドナーとレシピエントとの間で特にHLA-A、HLA-B、HLA-C、及びHLA-DRに関して、少なくとも1つのHLA抗原がミスマッチしているドナー-レシピエントのペアを指す。一部の実施形態では、一方のハプロタイプは一致し、他方はミスマッチする。HLAミスマッチのドナー-レシピエントのペアの場合には内因性T細胞及びNK細胞が、外来移植片を異物として認識する可能性が高く、したがってそのようなT細胞及びNK細胞が移植片に対する免疫応答を開始する可能性がより高いので、HLAミスマッチのドナー-レシピエントのペアは、HLAマッチのドナー-レシピエントのペアと比較して、移植片拒絶のリスクが高くなり得る。
【0480】
本明細書で使用する場合、「自立及び/または正常な日常機能」という語句は、介護者またはソーシャルワーカーの支援を伴わずに、毎日の活動を成功裏に行うことができる対象(例えば、ヒト)の能力を指す。個体が日常機能を自立して実施することを可能にする活動の非限定的例には、例えば、社会的、職業的、または学術的機能、個人衛生、身だしなみ、身支度、トイレ衛生、機能的運動性(例えば、歩行能力、ベッドへの出入り)、及び自己給仕が含まれる。重度NCDを有すると診断されている対象は、正常な日常機能を自立して実行することに困難を有し得るが、軽度NCDを有すると診断されている対象は、正常な日常機能を自立して実行することに困難を有さないこともある。
【0481】
本明細書で使用する場合、「人工万能性幹細胞」、「iPS細胞」、及び「iPSC」という用語は、分化した体細胞に直接由来し得る万能性幹細胞を指す。ヒトiPS細胞は、例えば、Oct3/4、Soxファミリー転写因子(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、Sox15)、Mycファミリー転写因子(例えば、c-Myc、1-Myc、n-Myc)、クルッペル様ファミリー(KLF)転写因子(例えば、KLF1、KLF2、KLF4、KLF5)、及び/またはNANOG、LIN28などの関連転写因子及び/またはGlis1が含まれ得る、特異的なセットの再プログラミング因子を非万能性細胞に導入することにより生成することができる。ヒトiPS細胞は、例えば、miRNA、転写因子の作用を模倣する小分子、または細胞系指定子の使用により生成することもできる。ヒトiPS細胞は、3つの脊椎動物の胚葉、例えば内胚葉、外胚葉、または中胚葉の任意の細胞に分化するそれらの能力により特徴づけられる。ヒトiPS細胞は、適切なインビトロ培養条件下で無期限に増殖するそれらの能力によっても特徴づけられる。例えば、Takahashi and Yamanaka, Cell 126:663 (2006)を参照されたい。
【0482】
本明細書で使用する場合、「IRES」という用語は、内部リボソーム進入部位を指す。一般に、IRES配列は、真核生物のリボソームがmRNA転写物に結合し、5’キャップ末端に結合せずに翻訳を開始することを可能にする機能である。IRES配列を含むmRNAは2つの翻訳産物を生成し、1つはmRNAの5’末端から開始し、もう1つはIRESにより媒介される内部翻訳機構から開始する。
【0483】
本明細書で使用する場合、「言語」という用語は、複雑なコミュニケーションのシステムを学習及び使用する、またはこれらのシステムを支配する規則、もしくはそのような規則から生成され得る発語の集合を説明する対象の認知能力を指す。NCDを有する対象が、とりわけ例えば、限られた語彙、複雑な文法を生成できない、頻繁な語彙の間違い、または失語を示す場合、その対象において言語能力が損なわれていることがある。
【0484】
本明細書で使用する場合、「学習及び記憶」という語句は、技能または知識の獲得及び獲得した技能または知識の表現(例えばそれぞれ、新たな言葉を言うための学習及び新たな言葉の発語)を包含する認知能力を指す。「学習及び記憶」は、1)新たな技能または知識の獲得(すなわち、学習);及び2)学習した技能または知識の処理、記憶、及び想起(すなわち、記憶)の2つの独立したプロセスを指し得て、これらは、時間尺度(学習は一般に、記憶の想起または学習した技能の実行よりも時間がかかり、努力を必要とする)及び神経生物学的基礎により異なり得る。NCDを有すると診断されている対象は、健康な対象と比べて、学習及び記憶が損なわれていることがある。
【0485】
本明細書で使用する場合、「リソソーム病」という用語は、異常なリソソーム機能に起因する約50の遺伝的代謝障害の大きなセットを指す。脂質(例えば、プログラニュリン遺伝子)、糖タンパク質、またはムコ多糖の代謝に関係する遺伝子の異常が、リソソーム病に共通する原因である。細胞におけるこれらの分子の蓄積が最終的に、細胞死をもたらす。リソソーム病の共通する症状は高度に可変的であり、特定の疾患に依存するが、発育遅延、運動障害、発作、認知症、聴覚及び/または視覚機能障害、肝臓または脾臓の肥大、肺及び心臓の問題、及び異常な骨発生が含まれ得る。リソソーム病の非限定的例には、神経セロイドリポフスチン症、スフィンゴ脂質症、ガラクトシアリドーシス、ガングリオシドーシス、ファーバー病、クラッベ病、ゴーシェ病、リソソーム酸リパーゼ欠損症、ニーマン-ピック病、スルファチドーシス、ムコ多糖症、ムコ多糖症、リポドーズ(lipodoses)、アルファ-マンノシドーシス、ベータ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、フコシドーシス、リソソーム転送疾患、糖原病、及びコレステリルエステル貯蔵疾患が含まれる。
【0486】
本明細書で使用する場合、「マクロファージ」という用語は、食作用と呼ばれるプロセスにおいて、細胞デブリ、外来物質、微生物、がん細胞、及び健康な体細胞に特異的なタンパク質の種類をその表面上に持たない他の任意のものを抱き込んで消化する白血球の1種を指す。マクロファージは本質的にすべての組織において見い出され、そこで、アメーバ状の運動により潜在的な病原体をパトロールしている。それらは、全身で様々な形態を(様々な名称で)(例えば、組織球、クッパー細胞、肺胞マクロファージ、ミクログリアなど)取っているが、すべて、単核食細胞系の一部である。食作用の他に、これらは、非特異的防御(先天免疫)において重要な役割を果たし、かつ他の免疫細胞、例えばリンパ球を動員することにより、特異的防御機構(適応免疫)の開始も助ける。例えば、これらは、T細胞に対する抗原提示因子として重要である。炎症の増大及び免疫系の刺激の他に、マクロファージはまた、重要な抗炎症性の役割を果たし、かつサイトカインの放出を介して免疫反応を低下させ得る。
【0487】
本明細書で使用する場合、「ミクログリア」または「小神経膠細胞」という用語は、定住マクロファージ細胞及び中枢神経系における免疫防御の主軸として機能する脳及び脊髄において見い出される神経膠細胞の1つの型を指す。小神経膠細胞の主要な機能には、免疫学的監視、食作用、細胞外シグナル伝達(例えば、サイトカイン、ケモカイン、プロスタグランジン、及び活性酸素種の産生及び放出)、抗原提示、ならびに組織修復及び再生の促進が含まれる。
【0488】
本明細書で使用する場合、「ミクログリア前駆細胞」という用語は、小神経膠細胞を生じさせる前駆細胞を指す。ミクログリア前駆細胞は、胚発生の限られた期間中の卵黄嚢で生じ、脳間葉に浸潤し、かつ生涯にわたって自身を永続的に更新する。
【0489】
本明細書で使用する場合、「miRNAターゲティング配列」という用語は、ハイブリダイズし得るように特異的miRNA分子(例えば、miR-126)と相補的であり、RNA誘導型サイレンシング複合体依存性及びダイサー依存性mRNA不安定化及び/または切断を促進し、それにより、mRNA転写物の発現を阻止する、ターゲットmRNA分子の3’-UTRに位置するヌクレオチド配列を指す。
【0490】
本明細書で使用する場合、「単球」という用語は、マクロファージ及び骨髄系列樹状細胞に分化し得る白血球(white blood cell)(すなわち、白血球(leukocyte))の1つの型を指す。単球は、脊椎動物適応免疫応答の重要な成分を構成している。3つの異なる型の単球が存在することが公知であり、CD14細胞表面受容体の強発現及びCD16無発現により特徴づけられる古典的単球(すなわち、CD14++CD16-)、低レベルのCD14発現及びC16の同時発現を示す非古典的単球(CD14+CD16++)、ならびに高レベルのCD14発現及び低レベルのC16発現を示す中間単球(CD14++CD16+)が含まれる。単球は、食作用、抗原提示、及びサイトカイン分泌を含む免疫系に役立つ様々な機能を実行する。
【0491】
本明細書で使用する場合、「多能性細胞」という用語は、すべてではないが、複数(例えば、2、3、4、5、またはそれ以上)の分化細胞型へと発展する能力を持つ細胞を指す。多能性細胞の非限定的例には、造血系統(例えば、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)の細胞が含まれる。多能性細胞の例は、CD34+細胞である。
【0492】
本明細書で使用する場合、「変異」という用語は、遺伝子のヌクレオチド配列の変化を指す。遺伝子における変異は、例えば、DNA複製の誤り、DNA修復、放射線、及び発がん物質への曝露の結果として自然に起こり得るか、または変異を、変異遺伝子を発現する導入遺伝子の投与の結果として誘導することができる。変異の例には、フレームシフト型、ナンセンス型、ミスセンス型、挿入型、欠失型、及び転換型変異が含まれ得る。フレームシフト型変異は、mRNA上のリボソームリーディングフレームの位置がシフトして、RNAの不適切な翻訳が生じるようなヌクレオチド配列における変化を指し得る。ナンセンス型変異は、転写物内に未成熟停止コドンをもたらす、遺伝子の単一ヌクレオチドにおける変化を指し得る。未成熟停止コドンは、短縮化タンパク質産物の翻訳または転写物のナンセンス媒介崩壊をもたらし得る。ミスセンス型変異は、タンパク質産物の物理化学的特性を変化させ得る、及び/またはそれを非機能性にし得る異なるアミノ酸をコードするコドンをもたらす、遺伝子内での単一ヌクレオチド変化を指し得る。挿入型変異は、フレームシフト及び典型的には、未成熟停止コドンの産生をもたらし得る、遺伝子のコード領域への1つまたは複数のヌクレオチドの導入を指し得る。欠失型変異は、フレームシフト、一般に未成熟停止コドンをもたらし得る、遺伝子のDNA配列からの1つまたは複数のヌクレオチドの除去を指し得る。転換型変異は、単一ピリミジンヌクレオチド(例えば、シトシン、チミン)への単一プリンヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン)の変化を指し得る。転換型変異は、翻訳されるタンパク質産物に変化をもたらし得ない(例えば、サイレント変異)か、または単一コドン内でアミノ酸同一性を変化させ得、それにより、翻訳されるタンパク質産物の物理化学的特性及び機能を変更する。変異及び配列多様性についての命名法は、「基準配列コード」形式を使用し、その際、基準配列は、コーディングDNAを表す「c」、ゲノムDNAを表す「g」、ミトコンドリアDNAを表す「m」、RNAを表す「r」、またはタンパク質を表す「p」であり得、コードは、置換を表す「>」、範囲を表す「_」、1つの対立遺伝子におけるさらなる変化を表す「;」、さらなる転写物/モザイク現象を表す「,」、不明の変化を表す「()」、対立遺伝子を表す「[]」、欠失を表す「del」、重複を表す「dup」、挿入を表す「ins」、逆位を表す「inv」、変換を表す「conv」、伸長を表す「ext」、停止コドンを表す「X」、停止コドンをもたらすフレームシフトを表す「fsX」、逆鎖を表す「o」、及び転座を表す「t」を含む記号を含み得る。例えば、PGRN遺伝子におけるp.T382NfsX32変異は、フレームシフト変異の結果としてアスパラギンがスレオニンによって置換されていて、フレームシフトの長さが、停止コドンを含めて32ヌクレオチド塩基対である、アミノ酸382でのタンパク質における変化に対応する。
【0493】
本明細書で使用する場合、「骨髄破壊的」または「骨髄破壊」という用語は、典型的には細胞毒性薬(例えば、ブスルファン)または放射線への曝露により、造血系を実質的に損傷または破壊する前処置レジメンを指す。骨髄破壊は、造血系を破壊する高用量の細胞毒性剤または全身照射によりもたらされる完全な骨髄破壊を含む。
【0494】
本明細書で使用する場合、「神経認知障害」または「NCD」という用語は、例えば、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知における欠陥など、主要な臨床的障害が認知機能である一連の臨床的障害または症候群を指す。NCDは、発育上の状態ではなく、後天的状態と特徴づけられる。例えば、NCDは、誕生または超若齢期以来、破壊された認知が明白でなかった状態であり、したがって、NCDにおける認知機能が既に獲得されていたレベルから減退したことを必要とする。NCDは、患者が認知機能障害を示す他の障害から識別され、NCDは、中核障害が認知である障害のみを含む。NCDは、「重度NCD」または「軽度NCD」であり得る。「重度NCD」は、個人の自立及び/または正常な日常機能を妨害し、かつせん妄または他の精神障害によるものではない著しい認知低下により特徴づけられる。軽度NCDは、個人の自立及び/または正常な日常機能を妨害せず、かつせん妄または他の精神障害によるものではない中等度の認知低下により特徴づけられる。重度及び軽度NCDは、前記の特異的認知機能のいずれか1つでの定量的認知検査に基づき区別することもできる。例えば、重度NCDは、NCDを有するか、または発症するリスクがあると同定されている対象により認知検査で得られたスコアが、基準集団の平均スコア(例えば、一般集団の平均スコア)から標準偏差2よりも離れていること、またはスコアが基準集団のスコアの分布の第3パーセンタイルにあることにより特徴づけられ得る。軽度NCDは、NCDを有するか、または発症するリスクがあると同定されている対象により認知検査で得られたスコアが、基準集団の平均スコア(例えば、一般集団の平均スコア)から標準偏差1~2離れていること、またはスコアが基準集団のスコアの分布の第3~16パーセンタイルの間にあることにより特徴づけられ得る。NCD患者を重度または軽度NCDのいずれかを有すると分類するために使用することができる認知検査の非限定的例には、AD8、AWV、GPCOG、HRA、MIS、MMSE、MoCA、SLUMS、及びShort IQCODEが含まれる。さらに、NCD(例えば、重度または軽度NCD)には、NCDの特定の病因、例えば、前頭側頭骨大葉変性(FTLD)またはリソソーム病(例えば、神経セロイドリポフスチン症(NCL)などを表す症候群サブタイプが含まれる。本明細書で使用する場合、「前頭側頭骨NCD」及び「リソソーム病によるNCD」という用語は、それぞれ前頭側頭骨大葉変性及びリソソーム病(例えば、NCL)に起因するNCDに対応する。
【0495】
本明細書で使用する場合、「神経セロイドリポフスチン症」及び「NCL」という用語は、ニューロン、肝臓、脾臓、心筋層、及び腎臓細胞などの身体の細胞内でのリポフスチンの蓄積に起因する少なくとも8つの臨床的に認識されるリソソーム貯蔵障害の集合を指す。NCLは臨床的に、顕著な神経変性ならびに運動及び認知能力の進行性及び不可逆的喪失を示すが、疾患重症度及び臨床症状は、特定のNCL異型に依存し得る。NCLの既知の異型には、Santovuori-Haltia病(SHD)としても公知の小児性異型、Jansky-Bielschowsky病(JBD)としても公知の遅発型小児性異型、Finnish遅発型小児性異型(FLI)、変異遅発型小児性(VLI)、CLN7異型(CLN7)、CLN8異型(CLN8)、Turkish遅発型小児性異型(TLI)、9型異型(T9)、CLN10異型(CLN10)、バッテン病(BD)としても公知の若年性異型、及びクーフス病(KD)としても公知の成人性異型が含まれる。SHDは、進行して2歳までに完全な網膜失明となる早期視力低下、続く、3歳での植物状態、及び4歳までの脳死と関連する。この異型は、てんかん発作の自然発生とも関連する。JBD異型は、2~4歳の間に発生し、運動失調、てんかん発作、進行性認知低下、及び異常な発語発達と関連し、典型的には、8歳までに死をもたらす。BDは典型的には、4~10歳の間に発生し、視力喪失、てんかん発作、認知機能障害、及び早期死亡などの症状を含む。KD異型を有するNCL患者は一般に、SHD及びBD異型よりも軽度な症状を示し、約40年の平均余命を有する。NCLの包括的な説明については、その開示が全体で参照により本明細書に組み込まれるMink et al., Journal of Child Neurology 28:1101-5(2013)、Nita et al., Epileptic Disorders 18:73-88(2016)、及びMole & Cotman,Biochimica et Biophysica Acta 1852:2237-41(2015)を参照されたい。
【0496】
本明細書で使用する場合、「非骨髄破壊性」または「骨髄抑制性」という用語は、宿主起源の実質的にすべての造血細胞を排除しない前処置レジメンを指す。
【0497】
本明細書で使用する場合、「万能性細胞」という用語は、造血細胞系(例えば、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)の細胞型などの1種よりも多い分化細胞型に成長する能力を有する細胞を指す。細胞の例は、ESC及びiPSCである。
【0498】
本明細書で使用する場合、「プラスミド」という用語は、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る染色体外環状二本鎖DNA分子を指す。プラスミドはベクターの1種であり、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子である。ある特定のプラスミドは、それらが導入された宿主細胞において自己複製することができる(例えば、細菌起源の複製を有する細菌プラスミド及びエピソーム性哺乳動物プラスミド)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)が、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれてもよく、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。ある特定のプラスミドは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。
【0499】
本明細書で使用する場合、「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、グラニュリンのための分泌型栄養因子及び前駆ペプチドを指す。遺伝子は染色体17q21.31に位置し、グラニュリン前駆体、プロエピテリン、PEPI、PC細胞由来成長因子、グラニュリン-エピテリン、CLN11、PCDFGF、GP88、GEP、グラニュリン、アクログラニンとしても公知である。「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、野生型ヒトPGRNペプチド及びそれをコードする核酸のバリアント、例えば、野生型PGRNペプチド(例えば、配列番号1)のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するバリアントタンパク質、または野生型PGRN遺伝子(例えば、配列番号2)の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%の同一性、またはそれ以上)を有するポリヌクレオチドも指すが、ただし、コードされるPGRNバリアントが野生型PGRNの治療上の機能を維持していることを条件とする。「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有する2つまたはそれ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)のグラニュリン(GRN)ドメインを有するPGRNのバリアントも指し得る。「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有する2~16(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16)のGRNドメインを有するPGRNのバリアントも指し得る。「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、天然分泌シグナルペプチドが存在するPGRNタンパク質も指し得る。加えて、「プログラニュリン」及び「PGRN」という用語は、PGRNが別のポリペプチド、半減期改変薬、または治療薬、例えば、ApoE受容体結合(Rb)ドメイン(例えば、配列番号11の残基25~185、50~180、75~175、100~170、125~160、または130~150のアミノ酸配列を有するRbドメイン)に作動可能に連結しているタンパク質である「PGRN融合タンパク質」を指し得る。本明細書で使用する場合、「PGRN」という用語は、当業者には分かるであろうとおり、状況に応じてペプチドまたはこのタンパク質をコードする遺伝子を指し得る。
【0500】
本明細書で使用する場合、「プログラニュリン関連FTLDまたはNCL」及び「PGRN関連FTLDまたはNCL」に罹患している患者は、FTLDまたはNCLを有すると診断されており、かつPGRN遺伝子に有害な変異も含む患者である。70を超える病原性変異がPGRN遺伝子において報告されており、その大部分が、未成熟停止コドン及び短縮化PGRN mRNAのナンセンス媒介崩壊をもたらす。PGRN変異は、その開示がヒトPGRN変異に関するので、参照により本明細書に組み込まれるGijselinck et al., Human Mutation 29:1373-1386(2012)及びPottier et al., Journal of Neurochemistry. 138:32-53(2016)に記載されている。
【0501】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、RNAポリメラーゼが結合するDNA上の認識部位を指す。ポリメラーゼは導入遺伝子の転写を駆動する。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するために適した例示的なプロモーターは、例えば、その開示が核酸調節エレメントに関係するため、参照により本明細書に組み込まれるSandelin et al., Nature Reviews Genetics 8:424 (2007)に記載されている。加えて、「プロモーター」という用語は、生物系に天然に存在しない制御DNA配列である合成プロモーターを指し得る。合成プロモーターは、天然に存在するプロモーターの一部を、天然に存在しないポリヌクレオチド配列と合わせて含み、かつ様々な導入遺伝子、ベクター、及びターゲット細胞種を使用して組換えDNAを発現するように最適化され得る。
【0502】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、配列をアラインさせ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一性パーセントを達成した後に、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列における核酸またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸のパーセンテージと定義される。核酸及びアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的でのアラインメントは、当業者の能力の範囲内である様々な方式で、例えばBLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公共利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを得るために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするために適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列同一性パーセント値を、配列比較コンピュータープログラムBLASTを使用して生成することができる。一例示として、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比した、所与の核酸またはアミノ酸配列Aの配列同一性パーセント(代替的に、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対する、それとの、またはそれと対比したある特定の配列同一性パーセントを有する所与の核酸またはアミノ酸配列Aとも表現され得る)は、次のように算出される:
100掛ける(分数X/Y)
ここで、Xは、A及びBのプログラムのアラインメントで、配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)により同一のマッチとしてスコア付けされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bの核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAの配列同一性パーセントは、Aに対するBの配列同一性パーセントに等しくないことは分かるであろう。
【0503】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題となる合併症を伴うことなく哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象の組織と接触させるために適した、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0504】
本明細書で使用する場合、強力な「ApoE由来の受容体結合ペプチド(Rb)」は、融合タンパク質として操作された場合、タンパク質をBBBを超えて脳に移動させる能力を有する。したがって、この方法は、融合タンパク質として操作された場合、治療薬(例えば、可溶性PGRNまたはGRN)のためにBBBを選択的に開けるように機能し得る。このペプチドは、ApoEタンパク質全体ではなく、ApoEのRbドメインを利用するため、生物学的機能を危険にさらしたり、またはApoEの重要な生物学的機能を妨害したりすることなく、診断薬または治療薬に容易に結合させることができる。この経路はまた、脳実質におけるLDLRfメンバーの広範な発現により、薬剤がCNSに到達した後のさらなる/二次的脳内分布を促進することができる代替の取り込み経路である。例示的なRbドメインは、ApoEのN末端において見い出され得る。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なRbドメインは、配列番号11の残基1~191のアミノ酸配列、配列番号11の残基25~185、配列番号11の残基50~180、配列番号11の残基75~175、配列番号11の残基100~170、または配列番号11の残基125~165を有するポリペプチド、さらにはこれらの配列のいずれかに関して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリペプチドなどのそのバリアントである。例示的なRbドメインは、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列を有するApoEの領域である。
【0505】
本明細書で使用する場合、「調節配列」という用語には、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。そのような調節配列は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPerdew et al., Regulation of Gene Expression (Humana Press, New York, NY, (2014))に記載されている。
【0506】
本明細書で使用する場合、「サンプル」という用語は、対象から単離された検体(例えば、血液、血液成分(例えば、血清または血漿))、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤または皮膚)、膵液、絨毛膜絨毛サンプル、及び細胞)を指す。
【0507】
本明細書で使用する場合、「分泌シグナルペプチド」という用語は、前駆体タンパク質の分泌物を宿主の細胞質から細胞周辺腔または細胞外腔へと向ける、前駆体タンパク質内の短い(通常は16~60アミノ酸)ペプチド領域を指す。そのような分泌シグナルペプチドは一般に、前駆体タンパク質のアミノ末端に配置される。一部の実施形態では、分泌シグナルペプチドは、アミノ末端に連結されている。典型的には、分泌シグナルペプチドは、細胞分泌経路を通過する間に切断される。分泌されたタンパク質がその望ましい活性を保持している限り、切断は必須ではない。例示的な分泌シグナルペプチドには、PGRN分泌シグナルペプチドが含まれる。
【0508】
本明細書で使用する場合、「社会的認知」という用語は、対象(例えば、ヒト)が他の同種対象(例えば、他のヒト)及び社会状況についての情報を処理し、記憶し、かつ適応する方法を決定する一連の技能を包含する認知機能を指す。社会的認知の非限定的例には、例えば、社会的刺激に対する情動応答、心の理論タスクに対する処理能力、顔を認識する能力、社会的状況における衝動制御、及び共同注意が含まれる。NCDを有すると診断されている対象は、健康な対象と比べて損なわれた社会的認知を示し得る。
【0509】
本明細書で使用する場合、「幹細胞」及び「未分化細胞」という用語は、複数の細胞型に分化する発生能を有する未分化または部分的に分化した状態の細胞を指す。幹細胞は、その機能的可能性を維持しながら増殖して、より多くのそのような幹細胞を生じさせることができる。幹細胞は非対称的に分裂することができ、これは義務的非対称分化として知られ、一方の娘細胞は親幹細胞の機能的能力を保持し、他方の娘細胞は、親細胞とは多少異なる他の特異的な機能、表現型及び/または発生能を発現する。親の発生能を有する1つまたは複数の細胞も保持しながら増殖し、かつ1つまたは複数の成熟した細胞タイプに後で分化する後代を生じるように、娘細胞そのものを誘導することができる。分化細胞は、それ自体が多能性細胞に由来する多能性細胞などに由来してもよい。別法では、集団中の幹細胞の一部は2つの幹細胞に対称的に分裂することができる。したがって、「幹細胞」という用語は、特定の状況下では、より特殊化または分化した表現型に分化する発生能を有し、ある特定の状況下では、実質的に分化することなく増殖する能力を保持している細胞の任意のサブセットを指す。一部の実施形態では、幹細胞という用語は一般的に、その子孫(子孫細胞)が、分化によって、例えば、胚細胞及び組織の徐々に進行する多様化において起こるように、完全にそれぞれ異なる特徴を獲得することによって特殊化する、多くの場合に種々の方向に特殊化する、天然に存在する親細胞を指す。一部の分化細胞は、より優れた発生能の細胞を生じる能力も持つ。このような能力は天然でもよいし、または様々な因子で処理することで人為的に誘導されてもよい。幹細胞として始まった細胞は、分化表現型に進み得るが、「逆戻り」させ、次いで、幹細胞表現型を再発現するように誘導することができ、この用語は、当業者によって「脱分化」または「リプログラミング」または「逆分化」と呼ばれることが多い。
【0510】
本明細書で使用する場合、「トランスフェクション」という用語は、外因性DNAを原核生物または真核生物の宿主細胞に導入するために一般に使用される多種多様な技術のいずれか、例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、Nucleofection、スクイーズ-ポレーション、ソノポレーション、光学トランスフェクション、Magnetofection、インペールフェクションなどを指す。
【0511】
本明細書で使用する場合、「導入遺伝子」という用語は、遺伝子産物(例えば、PGRNまたはGRN)をコードする組換え核酸(例えば、DNAまたはcDNA)を指す。遺伝子産物は、RNA、ペプチド、またはタンパク質であり得る。遺伝子産物のコード領域に加えて、導入遺伝子は、プロモーター、エンハンサー(複数可)、不安定化ドメイン(複数可)、応答エレメント(複数可)、レポーターエレメント(複数可)、インスレーターエレメント(複数可)、ポリアデニル化シグナル(複数可)及び/または他の機能エレメントなどの発現を促進または増強する1つまたは複数のエレメントを含むか、またはそれらに作動可能に連結していてもよい。本開示の実施形態は、任意の公知の適切なプロモーター、エンハンサー(複数可)、不安定化ドメイン(複数可)、応答エレメント(複数可)、レポーターエレメント(複数可)、インスレーターエレメント(複数可)、ポリアデニル化シグナル(複数可)、及び/または他の機能的エレメントを利用してもよい。
【0512】
本明細書で使用する場合、「対象」または「患者」という用語は、動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)を指す。本明細書に記載の方法に従って処置される対象は、NCDと診断されている対象、またはこれらの状態を発症するリスクのある対象であり得る。診断は、当技術分野で公知の任意の方法または技法により行うことができる。当業者は、本開示に従って処置される対象が、標準検査を受けていてもよいし、または検査なしに、病気や状態に関連する1つまたは複数のリスク因子の存在によってリスクのあるものとして同定されていてもよいことを理解するであろう。
【0513】
本明細書で使用する場合、「形質導入」及び「形質導入する」という用語は、ウイルスベクター構築物またはその一部を細胞に導入する方法、及びベクター構築物またはその一部によりコードされる導入遺伝子の細胞中でのその後の発現を指す。
【0514】
本明細書で使用する場合、「処置」または「処置する」は、有益または所望の結果、例えば臨床結果を得るためのアプローチを指す。有益または所望の結果には、限定されないが、検出可能または検出不可能にかかわらず、1つまたは複数の症状または状態の緩和または改善;疾患または状態の程度の縮小;疾患、障害、または状態の状況の安定化(すなわち、悪化しない);疾患または状態の進展の予防;疾患または状態の進行の遅延または減速;疾患または状態の改善または緩和;及び寛解(部分的か、または完全かにかかわらず)が含まれる。疾患または状態を「改善すること」または「緩和すること」は、処置がない場合の程度または時間経過と比較して、疾患、障害、または状態の程度及び/または望ましくない臨床兆候が減少し、及び/または進行の時間経過が減速または延長されることを意味する。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して、生存期間を延長することも意味し得る。処置を必要とする者には、状態もしくは障害を既に有する者、さらには状態もしくは障害を有しやすい者、または病態もしくは障害を予防する必要がある者が含まれる。
【0515】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語には、核酸ベクター、例えば、プラスミドなどのDNAベクター、RNAベクター、ウイルス、または他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)が含まれる。外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを原核細胞または真核細胞に送達するための様々なベクターが開発されている。そのような発現ベクターの例は、例えば、目的の遺伝子の発現に適したベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれるWO1994/011026に開示されている。本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適した発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、さらには例えば、タンパク質の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳動物細胞のゲノムへの組み込みに使用される追加の配列エレメントを含む。本明細書に記載のPGRNまたはGRNの発現に使用することができる、ある特定のベクターには、プロモーター及びエンハンサー領域など、遺伝子転写を指示する調節配列を含むプラスミドが含まれる。PGRNまたはGRNの発現のための他の有用なベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高める、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性もしくは核外輸送を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列エレメントには、例えば、発現ベクターで運ばれる遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域、内部リボソーム進入部位(IRES)、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するために適した発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。適切なマーカーの例は、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ヌーセオトリシン、またはゼオシンなどの抗生物質に対する抵抗性をコードする遺伝子である。
【0516】
詳細な説明
対象(哺乳動物対象、例えば、ヒトなど)において神経認知障害(NCD)、例えば、前頭側頭骨大葉変性(FTLD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)などを処置するための組成物及び方法を本明細書に記載する。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、PGRNまたはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子(例えば、マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る導入遺伝子)を含む細胞、例えば、万能性細胞、胚性幹細胞(ESC)、人工万能性幹細胞(iPSC)、多能性細胞、CD34+細胞、造血幹細胞(HSC)、骨髄性前駆細胞(MPC)、血液系前駆細胞(BLPC)、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリアを投与することにより、対象(例えば、ヒト対象)においてNCD(例えば、FTLDまたはNCL(例えば、プログラニュリン(PGRN)関連FTLDまたはNCL))を処置することができる。例えば、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボで改変されている細胞を含有する組成物を本明細書に記載する。次のセクションでは、NCDを処置するために有用な組成物及び方法をさらに詳細に記載する。
【0517】
神経認知障害
神経認知障害(NCD)は、中核症状として認知機能障害を特徴とし、かつ発達機能障害ではなく、以前のより高いレベルの認知と比べて認知低下(例えば、後天性機能障害)を示す障害の集合として定義される。NCDは、対象において診断されている機能障害の程度に基づき、重度または軽度の症候群(例えば、重度NCD及び軽度NCD)に大きく区分される。さらに、NCDは、それらの病因に基づき分類され得る。例えば、NCDの非限定的例には、前頭側頭骨NCD、リソソーム病によるNCD(例えば、NCL)、ADによるNCD、血管NCD、レビー小体を含むNCD、パーキンソン病によるNCD、前頭側頭骨NCD、外傷性脳損傷によるNCD、HIV感染によるNCD、物質/薬物誘導NCD、ハンチントン病によるNCD、プリオン病によるNCD、別の医学的状態によるNCD、複数の病因によるNCD、及び詳細不明NCDが含まれ得る。本明細書に開示の組成物及び方法は、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)を処置するために有用である。
【0518】
前頭側頭骨大葉変性
FTLDは、大脳皮質の前頭葉及び側頭葉内の進行性神経変性により特徴づけられる臨床症候群である。FTLDの症状発現は、複雑かつ不均質であり、かつ次を含むFTLDの3つの臨床的に別個の異型のうちのいずれか1つとして表れ得る:1)行動及び人格の変化、感情鈍麻、社会的離脱、固執行動、注意欠陥、抑制消失、及び前頭葉の顕著な変性により特徴づけられる行動異常型前頭側頭型認知症(BVFTD);2)能弁健忘性失語、言葉、物体、及び概念の意味的知識の進行性喪失ならびに前側頭葉の顕著な変性により特徴づけられる意味性認知症(SD)。さらに、FTLDのSD異型は、平坦な情動、社会性欠如、固執行動、及び抑制消失を示す;または3)音声生成における運動障害、言語表現の減少、及びペリシルビアン皮質の顕著な変性により特徴づけられる進行性非能弁性失語症(PNA)。FTLD患者の脳におけるニューロン喪失は、3つの別個の神経病理のうちの1つと関連している:1)タウ陽性ニューロン及び神経膠封入体の存在;2)ユビキチン(ub)陽性及びTAR DNA結合タンパク質43(TDP43)陽性、しかしタウ陰性の封入体;または3)ub及びサルコーマ融合(FUS)陽性、しかしtau及びTDP-43陰性の封入体。これらの神経病理は、FTLDの病因において重要であると判断される。
【0519】
FTLD患者のほぼ半数が、認知症、ALS、またはパーキンソン病を有する一親等の家族を有し、この疾患の原因に対する強い遺伝的関連を示唆している。染色体17q21のいくつかの変異が、FTLD提示に関連している。
【0520】
神経セロイドリポフスチン症
NCLは、ニューロン、肝臓、脾臓、心筋層、及び腎臓細胞などの身体の細胞内でのリポフスチンの蓄積に起因するリソソーム貯蔵障害の少なくとも8つの臨床的に認識される集合を指す総称である。NCLは臨床的に、顕著な神経変性ならびに運動及び認知能力の進行性及び不可逆的喪失を示すが、疾患重症度及び臨床症状は、特定のNCL異型に依存し得る。
【0521】
NCLの既知の異型には、Santovuori-Haltia病(SHD)としても公知の小児性異型、Jansky-Bielschowsky病(JBD)としても公知の遅発型小児性異型、Finnish遅発型小児性異型(FLI)、変異遅発型小児性(VLI)、CLN7異型(CLN7)、CLN8異型(CLN8)、Turkish遅発型小児性異型(TLI)、9型異型(T9)、CLN10異型(CLN10)、バッテン病(BD)としても公知の若年性異型、及びクーフス病(KD)としても公知の成人性異型が含まれる。SHDは、進行して2歳までに完全な網膜失明となる早期視力低下、続く、3歳での植物状態、及び4歳までの脳死と関連する。この異型は、てんかん発作の自然発生とも関連する。JBD異型は、2~4歳の間に発生し、運動失調、てんかん発作、進行性認知低下、及び異常な発語発達と関連し、典型的には、8歳までに死をもたらす。BDは典型的には、4~10歳の間に発生し、視力喪失、てんかん発作、認知機能障害、及び早期死亡などの症状を含む。KD異型を有するNCL患者は一般に、SHD及びBD異型よりも軽度な症状を示し、約40年の平均余命を有する。
【0522】
プログラニュリン関連前頭側頭型認知症及び神経セロイドリポフスチン症
染色体17q21とFTLDとの間の関連を調査する研究が、PGRN遺伝子におけるいくつかのFTLD関連変異を見出している。これらの変異は多くの場合に、FTLD患者の脳においてub陽性、TDP43陽性、tau陰性神経病理学的封入体の凝集及び蓄積をもたらす。PGRNは、いくつかの成熟GRNタンパク質に対する分泌型前駆ペプチドであり、かつ主に神経栄養成長因子として機能すると考えられ、ニューロン分化及び生存を促進する。PGRNは、抗炎症及び神経保護機能に役立つことも実証されている。PGRNは遍在発現されるが、FTLDとのその関連の結果として、PGRNが神経細胞、神経膠細胞、及び内皮細胞を含む複数の細胞型で発現される中枢神経系(CNS)に多大な注意が向けられている。FTLDでは、PGRN遺伝子において70を超える機能喪失型変異が同定されており、そのかなり大部分がハプロ不全及び50%超の血清中PGRNレベルの低下をもたらす。PGRN変異は、その開示がヒトPGRN変異に関係するため、参照により本明細書に組み込まれるGijselinck et al., Human Mutation 29:1373-86(2008)に記載されている。機能性PGRNタンパク質が完全に欠如した同型接合型患者がNCLを発症するので、PGRN変異の作用は用量依存的であり、正常なリソソーム機能におけるこのタンパク質の追加の役割を示唆している。NCL及び関連遺伝子変異の包括的な記載については、それらの開示が全体で参照により本明細書に組み込まれるMink et al. Journal of Child Neurology 28:1101-5(2013)、Nita et al. Epileptic Disorders 18:73-88(2016)、及びMole & Cotman, Biochimica et Biophysica Acta 1852:2237-41(2015)、及びWard et al.,Science Translational Medicine 9(385):eaah5642を参照されたい。
【0523】
FTLDの臨床管理では主に、FTLDに付随する情動及び行動の変化を管理するために、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)及び抗精神病薬を使用している。同様に、NCL病理をターゲティングする介入処置の大部分は、疾患症状、例えば、てんかん発作、運動障害の重症度の低下、免疫応答の増強、及び疼痛管理を目指している。しかしながら、この戦略は、その発症及び進行に対処することなく、疾患の症状を寛解することをターゲティングしている。これらの処置とは異なり、本明細書に記載の組成物及び方法は、NCD、例えば、FTLDまたはNCLの発症の根底にあり得る別の生化学的現象を処置するという利点を提供する。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法は、疾患の生理学的原因をターゲティングし、治癒的治療の可能性を表す。
【0524】
本明細書に記載の組成物及び方法は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子(マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る導入遺伝子など)を含む細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を投与することにより、NCDを処置するために使用することができる。これらの組成物及び方法を使用すると、いずれの病因、例えば、遺伝子変異、環境毒素、または散発性によるNCDも処置することができる。これらの組成物及び方法はまた、PGRN関連FTLDまたはNCLを有する対象を処置するために使用することもできる。本明細書に記載の組成物及び方法は、正常なPGRNまたはGRN活性、低下したPGRNまたはGRN活性を有する対象、及びそのPGRN変異状態及び/またはPGRNまたはGRN活性レベルが不明な対象を処置するために使用することができる。本明細書に記載の組成物及び方法は、NCDを発症するリスクのある対象、例えば、PGRN変異を有する対象、PGRNまたはGRN活性が低下した対象、及びNCD(例えば、FTLDまたはNCL)と関連する遺伝子のうちの1つまたは複数に変異を有する対象に予防的処置として投与することもできる。
【0525】
プログラニュリン及びグラニュリン構築物
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる導入遺伝子含有構築物は、野生型ヒトPGRN(そのアミノ酸配列は配列番号1として下に示されている)、またはそのバリアント、例えば、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、PGRNは、配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列を有する少なくとも2つのGRNドメイン(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上のGRNドメイン)を含む。一部の実施形態では、PGRNは、2~16のGRNドメイン(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16のGRNドメイン)を含む。
【0526】
一部の実施形態では、野生型PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドは、下に詳細に記載されるとおりの内因性PGRNまたはGRNを指向するヌクレアーゼ及び阻害性RNAによる分解に対する抵抗性を付与するようにコドン最適化されたポリヌクレオチドであってよい。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNをコードするコドン最適化導入遺伝子は、配列番号19の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリヌクレオチドを含む。
【0527】
野生型ヒトPGRNタンパク質は、以下のアミノ酸配列を有する(GenBankアクセッション番号:NP_002078.1):
MWTLVSWVALTAGLVAGTRCPDGQFCPVACCLDPGGASYSCCRPLLDKWPTTLSRHLGGPCQVDAHCSAGHSCIFTVSGTSSCCPFPEAVACGDGHHCCPRGFHCSADGRSCFQRSGNNSVGAIQCPDSQFECPDFSTCCVMVDGSWGCCPMPQASCCEDRVHCCPHGAFCDLVHTRCITPTGTHPLAKKLPAQRTNRAVALSSSVMCPDARSRCPDGSTCCELPSGKYGCCPMPNATCCSDHLHCCPQDTVCDLIQSKCLSKENATTDLLTKLPAHTVGDVKCDMEVSCPDGYTCCRLQSGAWGCCPFTQAVCCEDHIHCCPAGFTCDTQKGTCEQGPHQVPWMEKAPAHLSLPDPQALKRDVPCDNVSSCPSSDTCCQLTSGEWGCCPIPEAVCCSDHQHCCPQGYTCVAEGQCQRGSEIVAGLEKMPARRASLSHPRDIGCDQHTSCPVGQTCCPSLGGSWACCQLPHAVCCEDRQHCCPAGYTCNVKARSCEKEVVSAQPATFLARSPHVGVKDVECGEGHFCHDNQTCCRDNRQGWACCPYRQGVCCADRRHCCPAGFRCAARGTKCLRREAPRWDAPLRDPALRQLL
(配列番号1)
【0528】
野生型ヒトパラグラニュリン(パラ-GRN)は、以下のアミノ酸配列を有する:
TRCPDGQFCPVACCLDPGGASYSCCRPLLD
(配列番号2)
【0529】
野生型ヒトグラニュリン-1(GRN-1)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
GGPCQVDAHCSAGHSCIFTVSGTSSCCPFPEAVACGDGHHCCPRGFHCSADGRSCF
(配列番号3)
【0530】
野生型ヒトグラニュリン-2(GRN-2)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
AIQCPDSQFECPDFSTCCVMVDGSWGCCPMPQASCCEDRVHCCPHGAFCDLVHTRCI
(配列番号4)
【0531】
野生型ヒトグラニュリン-3(GRN-3)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
VMCPDARSRCPDGSTCCELPSGKYGCCPMPNATCCSDHLHCCPQDTVCDLIQSKCL
(配列番号5)
【0532】
野生型ヒトグラニュリン-4(GRN-4)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DVKCDMEVSCPDGYTCCRLQSGAWGCCPFTQAVCCEDHIHCCPAGFTCDTQKGTCE
(配列番号6)
【0533】
野生型ヒトグラニュリン-5(GRN-5)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
VPCDNVSSCPSSDTCCQLTSGEWGCCPIPEAVCCSDHQHCCPQGYTCVAEGQCQ
(配列番号7)
【0534】
野生型ヒトグラニュリン-6(GRN-6)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
IGCDQHTSCPVGQTCCPSLGGSWACCQLPHAVCCEDRQHCCPAGYTCNVKARSCE
(配列番号8)
【0535】
野生型ヒトグラニュリン-7(GRN-7)ペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する:
DVECGEGHFCHDNQTCCRDNRQGWACCPYRQGVCCADRRHCCPAGFRCAARGTKCL
(配列番号9)
【0536】
野生型ヒトPGRN(CCDS識別子:11483.1)は、以下の核酸配列を有する:
ATGTGGACCCTGGTGAGCTGGGTGGCCTTAACAGCAGGGCTGGTGGCTGGAACGCGGTGCCCAGATGGTCAGTTCTGCCCTGTGGCCTGCTGCCTGGACCCCGGAGGAGCCAGCTACAGCTGCTGCCGTCCCCTTCTGGACAAATGGCCCACAACACTGAGCAGGCATCTGGGTGGCCCCTGCCAGGTTGATGCCCACTGCTCTGCCGGCCACTCCTGCATCTTTACCGTCTCAGGGACTTCCAGTTGCTGCCCCTTCCCAGAGGCCGTGGCATGCGGGGATGGCCATCACTGCTGCCCACGGGGCTTCCACTGCAGTGCAGACGGGCGATCCTGCTTCCAAAGATCAGGTAACAACTCCGTGGGTGCCATCCAGTGCCCTGATAGTCAGTTCGAATGCCCGGACTTCTCCACGTGCTGTGTTATGGTCGATGGCTCCTGGGGGTGCTGCCCCATGCCCCAGGCTTCCTGCTGTGAAGACAGGGTGCACTGCTGTCCGCACGGTGCCTTCTGCGACCTGGTTCACACCCGCTGCATCACACCCACGGGCACCCACCCCCTGGCAAAGAAGCTCCCTGCCCAGAGGACTAACAGGGCAGTGGCCTTGTCCAGCTCGGTCATGTGTCCGGACGCACGGTCCCGGTGCCCTGATGGTTCTACCTGCTGTGAGCTGCCCAGTGGGAAGTATGGCTGCTGCCCAATGCCCAACGCCACCTGCTGCTCCGATCACCTGCACTGCTGCCCCCAAGACACTGTGTGTGACCTGATCCAGAGTAAGTGCCTCTCCAAGGAGAACGCTACCACGGACCTCCTCACTAAGCTGCCTGCGCACACAGTGGGGGATGTGAAATGTGACATGGAGGTGAGCTGCCCAGATGGCTATACCTGCTGCCGTCTACAGTCGGGGGCCTGGGGCTGCTGCCCTTTTACCCAGGCTGTGTGCTGTGAGGACCACATACACTGCTGTCCCGCGGGGTTTACGTGTGACACGCAGAAGGGTACCTGTGAACAGGGGCCCCACCAGGTGCCCTGGATGGAGAAGGCCCCAGCTCACCTCAGCCTGCCAGACCCACAAGCCTTGAAGAGAGATGTCCCCTGTGATAATGTCAGCAGCTGTCCCTCCTCCGATACCTGCTGCCAACTCACGTCTGGGGAGTGGGGCTGCTGTCCAATCCCAGAGGCTGTCTGCTGCTCGGACCACCAGCACTGCTGCCCCCAGGGCTACACGTGTGTAGCTGAGGGGCAGTGTCAGCGAGGAAGCGAGATCGTGGCTGGACTGGAGAAGATGCCTGCCCGCCGGGCTTCCTTATCCCACCCCAGAGACATCGGCTGTGACCAGCACACCAGCTGCCCGGTGGGGCAGACCTGCTGCCCGAGCCTGGGTGGGAGCTGGGCCTGCTGCCAGTTGCCCCATGCTGTGTGCTGCGAGGATCGCCAGCACTGCTGCCCGGCTGGCTACACCTGCAACGTGAAGGCTCGATCCTGCGAGAAGGAAGTGGTCTCTGCCCAGCCTGCCACCTTCCTGGCCCGTAGCCCTCACGTGGGTGTGAAGGACGTGGAGTGTGGGGAAGGACACTTCTGCCATGATAACCAGACCTGCTGCCGAGACAACCGACAGGGCTGGGCCTGCTGTCCCTACCGCCAGGGCGTCTGTTGTGCTGATCGGCGCCACTGCTGTCCTGCTGGCTTCCGCTGCGCAGCCAGGGGTACCAAGTGTTTGCGCAGGGAGGCCCCGCGCTGGGACGCCCCTTTGAGGGACCCAGCCTTGAGACAGCTGCTGTGA
(配列番号10)
【0537】
コドン最適化ヒトPGRNは、以下の核酸配列を有する:
ATGTGGACTCTGGTCTCATGGGTCGCTCTGACAGCAGGACTGGTCGCAGGAACAAGATGCCCCGATGGACAGTTTTGCCCCGTCGCTTGCTGTCTGGACCCAGGAGGAGCAAGCTACTCCTGCTGTAGGCCACTGCTGGATAAGTGGCCCACCACACTGTCCCGCCACCTGGGAGGACCATGCCAGGTGGACGCACACTGTTCCGCCGGACACTCTTGCATCTTCACAGTGTCTGGCACCAGCTCCTGCTGTCCATTTCCTGAGGCAGTGGCATGCGGCGACGGACACCACTGCTGTCCCAGGGGCTTCCACTGTAGCGCCGATGGCCGGTCCTGCTTTCAGAGAAGCGGCAACAATTCCGTGGGCGCCATCCAGTGTCCTGACAGCCAGTTCGAGTGCCCAGATTTTTCCACCTGCTGCGTGATGGTGGATGGCTCTTGGGGCTGCTGTCCAATGCCCCAGGCCAGCTGCTGTGAGGACAGGGTGCACTGCTGTCCTCACGGCGCCTTCTGTGATCTGGTGCACACACGCTGCATCACCCCCACAGGCACCCACCCTCTGGCCAAGAAGCTGCCAGCACAGAGGACCAACAGGGCAGTGGCCCTGTCTAGCAGCGTGATGTGCCCCGACGCCCGGTCTAGATGCCCTGATGGCAGCACCTGCTGTGAGCTGCCAAGCGGCAAGTACGGCTGCTGTCCTATGCCAAACGCCACATGCTGTTCCGACCACCTGCACTGCTGTCCTCAGGACACCGTGTGCGATCTGATCCAGTCTAAGTGCCTGAGCAAGGAGAATGCCACCACAGACCTGCTGACAAAGCTGCCTGCCCACACCGTGGGCGACGTGAAGTGTGATATGGAGGTGTCCTGCCCAGATGGCTATACATGCTGTCGGCTGCAGTCTGGAGCATGGGGATGCTGTCCCTTCACCCAGGCCGTGTGCTGTGAGGACCACATCCACTGCTGTCCTGCCGGCTTTACATGCGATACCCAGAAGGGCACATGCGAGCAGGGCCCTCACCAGGTGCCATGGATGGAGAAGGCACCAGCACACCTGTCCCTGCCCGACCCTCAGGCCCTGAAGAGAGACGTGCCTTGTGATAACGTGTCTAGCTGCCCATCCTCTGATACATGCTGTCAGCTGACCTCTGGCGAGTGGGGCTGCTGTCCAATCCCCGAGGCCGTGTGCTGTAGCGACCACCAGCACTGCTGTCCTCAGGGCTATACCTGCGTGGCAGAGGGACAGTGCCAGAGGGGCTCCGAGATCGTGGCAGGACTGGAGAAGATGCCAGCAAGGAGAGCATCTCTGAGCCACCCCAGAGACATCGGCTGTGATCAGCACACAAGCTGCCCAGTGGGACAGACCTGCTGTCCATCCCTGGGAGGCTCTTGGGCATGCTGTCAGCTGCCTCACGCCGTGTGCTGTGAGGATCGGCAGCACTGCTGTCCAGCCGGCTACACATGCAATGTGAAGGCCAGATCCTGCGAGAAGGAGGTGGTGTCTGCCCAGCCAGCCACCTTCCTGGCAAGGAGCCCTCACGTGGGAGTGAAGGACGTGGAGTGTGGCGAGGGCCACTTTTGCCACGACAACCAGACATGCTGTCGGGATAATAGACAGGGCTGGGCCTGCTGTCCATATAGGCAGGGCGTGTGCTGTGCAGATAGGCGCCACTGCTGTCCAGCAGGCTTTAGGTGCGCAGCAAGGGGAACCAAGTGCCTGAGAAGAGAAGCCCCCCGGTGGGACGCCCCCCTGAGAGACCCTGCCCTGAGACAGCTGCTGTGATGA
(配列番号19)
【0538】
本明細書に記載の方法によれば、対象に、配列番号1のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、または配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または配列番号1と比べて1つまたは複数の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10またはそれ以上の保存的アミノ酸置換)を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または配列番号2~9のいずれか1つのアミノ酸配列もしくは配列番号2~9のいずれか1つに対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するそのバリアントを有する1つまたはそれ以上のGRNドメインを含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を投与することができるが、ただし、コードされるPGRNまたはGRNバリアントが野生型PGRNまたはGRNの治療上の機能を維持していることを条件とする。野生型PGRNの神経栄養活性は、神経栄養サポート及びリソソーム機能の維持に重要である。PGRNの喪失は、用量依存的に神経変性及びリソソーム蓄積症をもたらす。
【0539】
宿主細胞
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる細胞には、細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、またはミクログリア前駆細胞)または分化細胞(例えば、マクロファージまたはミクログリア)が含まれる。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と組み合わせて使用することができる細胞の1つの型は、万能性細胞である。万能性細胞は、1種よりも多い分化した細胞型に成長する能力を有する細胞である。万能性細胞の例は、ESC及びiPSCである。ESC及びiPSCは、皮膚及び神経系を生じさせる外胚葉、消化管及び気道、内分泌腺、肝臓、及び膵臓を形成する内胚葉、ならびに骨、軟骨、筋肉、結合組織、及びほとんどの循環器系を形成する中胚葉の細胞に分化する能力を有する。本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる別の型の細胞は、多能性細胞である。多能性細胞は、すべてではないが、複数の細胞型に分化する能力を持つ細胞である。多能性細胞の非限定的例は、CD34+細胞(例えば、HSCまたはMPC)である。
【0540】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる細胞には、HSC及びMPCが含まれる。HSCは、自己再生し、かつ限定されないが、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、血小板)、単球(例えば、単球、マクロファージ)、樹状細胞、ミクログリア、破骨細胞、及びリンパ球(例えば、NK細胞、B細胞及びT細胞)を含む多様な細胞系を含む成熟血液細胞に分化する能力を有する未熟血液細胞である。ヒトHSCは、CD34+である。加えて、HSCはまた、長期再増殖HSC(LT-HSC)及び短期再増殖HSC(ST-HSC)も指す。これらのHSCのいずれも、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる。
【0541】
HSCは、CD34+でもある骨髄性前駆細胞に分化することができる。骨髄系前駆細胞はさらに、顆粒球(例えば、前骨髄球、好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球(例えば、網状赤血球、赤血球)、血小板(例えば、巨核芽球、血小板産生巨核球、及び血小板)、単球(例えば、単球及びマクロファージ)、樹状細胞、及びミクログリアに分化することができる。一般的な骨髄系前駆細胞は、細胞表面分子により特徴づけることができ、lin-、SCA1-、c-kit+、CD34+、及びCD16/32midであることが公知である。
【0542】
HSC及び骨髄前駆細胞は血液製剤から得ることができる。血液製剤は、造血起源の細胞を含む身体または身体の臓器から得られる製品である。そのような供給源には、分画されていない骨髄、臍帯、胎盤、末梢血、または動員末梢血が含まれる。前述の粗製または未分画の血液製剤はすべて、いくつかの方法で、HSCまたは骨髄系前駆細胞の特徴を有する細胞について富化することができる。例えば、それらが発現する細胞表面分子に基づき、より成熟した分化細胞を選択することができる。血液製剤は、CD34+細胞を正で選択することにより分画することができ、これには、自己再生、多分化能が可能で、移植レシピエントに再導入されると造血幹細胞ニッチェに帰着し得て、生産的かつ持続的な造血を再確立することができる造血幹細胞の亜集団が含まれる。このような選択は、例えば、市販の磁性抗CD34ビーズ(Dynal, Lake Success, NY)を使用して達成される。骨髄系前駆細胞は、それらが発現するマーカーに基づいて単離することもできる。未分画の血液製剤は、ドナーから直接入手するか、凍結保存保管庫から回収することができる。HSC及び骨髄前駆細胞を、ES細胞、iPS細胞、または他の再プログラムされた成熟細胞型の分化により取得することもできる。
【0543】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる細胞には、同種細胞及び自家細胞が含まれる。前述の細胞型はすべて、ミクログリアに分化し得る。本明細書に記載の細胞は、ミクログリア前駆細胞またはミクログリア幹細胞に分化することもある。分化は、エクスビボまたはインビボで起こってよい。ヒトESC及びiPSCのエクスビボ分化のための方法は当業者に知られており、その開示が細胞をミクログリアに分化させる方法に関するため、参照により本明細書に組み込まれるMuffat et al., Nature Medicine 22:1358-1367 (2016)及びPandya et al., Nature Neuroscience (2017)(印刷前にepub)に記載されている。
【0544】
ミクログリア
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用することができる細胞には、ミクログリアに分化することができるものまたは分化ミクログリアである細胞が含まれる。ミクログリアは、中枢神経系の免疫細胞または常在マクロファージとして機能する骨髄由来細胞である。ミクログリアは、遺伝的にも機能的にもマクロファージに非常に類似しており、炎症誘発性状態と抗炎症性状態との間を動的にシフトする能力を共有している。炎症誘発性状態は古典的活性化、またはM1として公知であり、抗炎症状態は代替活性化、またはM2と呼ばれる。ミクログリアは、細胞外シグナル、例えばとりわけ、隣接するニューロンまたは星状細胞、細胞片、毒素、感染症、虚血、及び外傷などからのシグナルにより、2つの状態の間でシフトされ得る。M1ミクログリアは多くの場合に、罹患した脳において、特にFTLDまたはNCLなどの神経炎症を伴う疾患において観察される。古典的活性化M1表現型は、プログラニュリンヌルマウス、CLN3(Δex7/8)マウス、及びCLN6nclfマウスなどのFTLD及びNCLのマウスモデルにおいても観察される。M1ミクログリアが神経炎症の原因または結果であるかどうかは不明であるが、ミクログリアが古典的に活性化されると、炎症誘発性サイトカイン、例えば、TNF-α、IL-1β、及びIL-6、ケモカイン、一酸化窒素を分泌し得て、これらが、持続的な炎症、ニューロンの損傷、及びM1ミクログリアのさらなる活性化につながり得る。この正のフィードバックループは、脳組織に有害であり得るので、したがって、M1活性化を低下させる、及び/またはM2活性化を上昇させる方法は、神経炎症を特徴とする疾患、例えば、NCDの患者の助けとなり得る。
【0545】
哺乳動物細胞におけるプログラニュリンまたはグラニュリンの発現
FTLD及びNCLの患者では、PGRN活性が低下しており、FTLD脳は、古典的活性化M1ミクログリアを含む。本明細書に記載の組成物及び方法は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子(例えば、マクロファージまたは小神経膠細胞において発現し得る導入遺伝子)を含む細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を投与することにより、これらの機能障害をターゲティングする。NCD(例えば、FTLDまたはNCL)の処置における治療用途でこれらの薬剤を利用するために、これらの薬剤は、細胞の内部に、特定の例では、特定のオルガネラに向けられ得る。そのようなタンパク質を哺乳動物細胞に送達するために、かつ哺乳動物細胞においてそのようなタンパク質をコードする遺伝子を安定発現させるために、幅広い方法が確立されている。
【0546】
プログラニュリンまたはグラニュリンをコードするポリヌクレオチド
哺乳動物細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)でPGRNまたはGRNの治療上有効な細胞内濃度を達成するために使用することができるプラットフォームの1つは、これらの薬剤をコードする遺伝子の安定発現によるものである(例えば、哺乳動物細胞の核またはミトコンドリアゲノムへの統合により)。これらの遺伝子は、対応するタンパク質の一次アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。そのような外来遺伝子を哺乳動物細胞に導入するために、これらの遺伝子をベクターに組み込むことができる。ベクターは、形質転換、トランスフェクション、直接取り込み、プロジェクタイル衝撃法(projectile bombardment)を含む様々な方法により、及びリポソーム中でのベクターの封入により、細胞に導入することができる。細胞をトランスフェクトまたは形質転換する適切な方法の例は、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、感染、リポフェクション、及び直接取り込みである。そのような方法は、例えば、それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれる Green et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition (Cold Spring Harbor University Press, New York (2014));及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York (2015))にさらに詳細に記載されている。
【0547】
PGRNまたはGRNは、そのような薬剤をコードする遺伝子を含むベクターを細胞膜リン脂質にターゲティングすることにより、哺乳動物細胞に導入することもできる。例えば、ベクター分子を、すべての細胞膜リン脂質に親和性を持つウイルスタンパク質であるVSV-Gタンパク質に連結させることにより、ベクターを細胞膜の細胞外表面上のリン脂質にターゲティングすることができる。そのような構築物は、当業者に周知の方法を使用して生成することができる。
【0548】
哺乳動物RNAポリメラーゼによるPGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドの認識及び結合が、遺伝子発現には重要である。したがって、これは、RNAポリメラーゼを動員する転写因子について高い親和性を示し、転写開始部位での転写複合体のアセンブリを促進する配列エレメントをポリヌクレオチド内に含むことができる。そのような配列エレメントには、例えば、その配列が特異的な転写開始因子及び最終的にはRNAポリメラーゼにより認識及び結合され得る哺乳動物プロモーターが含まれる。哺乳動物プロモーターの例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるSmith et al., Mol. Sys. Biol., 3:73(2007) online publicationに記載されている。
【0549】
本明細書に記載の組成物及び方法で使用するために適したポリヌクレオチドには、哺乳動物プロモーターの下流でPGRNまたはGRNをコードするものも含まれる。哺乳動物細胞におけるPGRNまたはGRNの発現に有用なプロモーターには、例えば、伸長因子1-アルファ(EF1α)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ1(PGK)プロモーター、CD68分子(CD68)プロモーター(PGRNを発現するためのPGK及びCD68プロモーターの使用に関連するため、参照により本明細書に組み込まれるDahl et al., Molecular Therapy 23:835 (2015)を参照されたい)、CD11bプロモーター、PGRNプロモーター、C-X3-Cモチーフケモカイン受容体1(CX3CR1)プロモーター、同種移植炎症因子1(AIF1)プロモーター、プリン作動性受容体P2Y12(P2Y12)プロモーター、膜貫通タンパク質119(TMEM119)プロモーター、及びコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)プロモーターが含まれる。別法では、ウイルスゲノムに由来するプロモーターも、哺乳動物細胞におけるこれらの薬剤の安定発現のために使用することができる。これらの薬剤の哺乳動物発現を促進するために使用することができる機能的ウイルスプロモーターの例は、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、シミアンウイルス40(SV40)プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)のtkプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、モロニーウイルスのプロモーター、エプスタインバーウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、及びサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。別法では、哺乳動物細胞において使用するために最適化された合成プロモーターを、PGRNまたはGRN導入遺伝子の安定発現のために使用することができる。
【0550】
PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドが哺乳動物細胞の核DNAに組み込まれたら、このポリヌクレオチドの転写を、当技術分野で公知の方法により誘導することができる。例えば、哺乳動物細胞を、転写因子、及び/またはRNAポリメラーゼの哺乳動物プロモーターへの結合を調節して、遺伝子発現を調節する薬剤などの外部化学試薬に曝露することにより、発現を誘導することができる。化学試薬は、例えばプロモーターに結合したリプレッサータンパク質を除去することにより、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子の哺乳動物プロモーターへの結合を促進するために役立つ。別法では、化学試薬は、RNAポリメラーゼ及び/または転写因子についての哺乳動物プロモーターの親和性を上昇させて、プロモーターの下流に配置された遺伝子の転写率が化学試薬の存在下で上昇するようにするために役立ち得る。前記の機構によりポリヌクレオチド転写を増強する化学試薬の例は、テトラサイクリン及びドキシサイクリンである。これらの試薬は市販されており(Life Technologies,Carlsbad,CA)、確立されたプロトコルに従って遺伝子発現を促進するように哺乳動物細胞に投与することができる。
【0551】
本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドに含めることができる他のDNA配列エレメントは、エンハンサー配列である。エンハンサーは、DNAが転写開始部位で転写因子及びRNAポリメラーゼの結合に好都合な3次元配向を採用するように、目的の遺伝子を含むポリヌクレオチドのコンフォメーション変化を誘導する調節エレメントの別のクラスを表す。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのポリヌクレオチドには、PGRNまたはGRNをコードし、追加的に哺乳動物エンハンサー配列を含むものが含まれる。多くのエンハンサー配列が哺乳動物遺伝子から現在公知であり、例は、哺乳動物グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン、及びインスリンをコードする遺伝子に由来するエンハンサーである。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するためのエンハンサーには、真核細胞に感染することができるウイルスの遺伝物質に由来するものも含まれる。例は、複製起点の後半側のSV40エンハンサー(bp100~270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後半側のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーである。真核生物の遺伝子転写の活性化を誘導する追加のエンハンサー配列は、Yaniv et al., Nature 297:17 (1982)に開示されている。エンハンサーは、例えば、この遺伝子の5’または3’位で、水形成NADHオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターにスプライシングされ得る。好ましい配向では、エンハンサーはプロモーターの5’側に位置し、次いでこれは、PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドに対して5’側に配置される。
【0552】
細胞特異的遺伝子発現
干渉RNA(RNAi)は、小分子干渉RNA(siRNA)を細胞に送達して相補的mRNAの分解を引き起こすことにより内因性遺伝子の発現をノックダウンするために広く使用されている。追加の適用は、人工miRNAターゲット配列でタグ付けされた外因的に導入された導入遺伝子の発現を負に調節するために、内因性マイクロRNA(miRNA)の多様性を利用することである。これらのmiRNAターゲットタグ付き導入遺伝子は、組織、細胞系、活性化、または分化段階に特異的であり得る所与のmiRNAの活性に応じて、負に調節され得る。これらの人工miRNAターゲット配列(miRT)は、特異的miRNAによりターゲットとして認識されて、転写後遺伝子サイレンシングを誘導し得る。ターゲティングされた細胞での強力な導入遺伝子発現は有益な治療結果をもたらし得るが、HSPCまたは他の前駆細胞での異所性または無秩序な導入遺伝子発現などのオフターゲット発現は、細胞毒性効果を有し得、細胞挙動の変化及び治療効果の低下につながる導入遺伝子含有細胞の対抗選択をもたらし得る。HSPC及び前駆細胞では広く発現しているが、骨髄細胞系の細胞には存在しないmiRNAのためのmiRTの組み込みにより、HSPC及び他の前駆細胞での導入遺伝子発現の抑制が可能になり、導入遺伝子含有造血後代のサイレントで長期の貯留が可能になる一方で、成熟分化ターゲット細胞での強力な導入遺伝子発現が可能になる。miR-126は、HSPC、他の前駆細胞、及び赤血球細胞系の細胞で高度に発現するが、骨髄細胞系の細胞(例えば、マクロファージ及びミクログリア)には存在しない(Gentner et al., Science Translational Medicine. 2:58ra34 (2010))。例えば、導入遺伝子内に組み込まれたmiR-126ターゲティング配列は、骨髄細胞系の細胞における導入遺伝子のターゲティングされた発現及びHSPC及び他の前駆細胞における発現の抑制を可能にし、したがって、オフターゲットの細胞毒性効果を最小限にする。一部の実施形態では、PGRNまたはGRN剤をコードする導入遺伝子はmiR-126ターゲティング配列を含んでもよい。
【0553】
分泌シグナルペプチド
PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドは、分泌シグナルペプチドをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含んでもよい。分泌シグナルペプチドは、5~30残基長のアミノ酸配列を有してよく、PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドの上流(すなわち、5’側)に配置されていてよい。これらの分泌シグナルペプチドは、シグナル認識粒子による合成中の新生ポリペプチドの認識を可能にし、ERへの移行、輸送小胞へのパッケージング、そして最後に分泌をもたらす。タンパク質分泌のための例示的な分泌シグナルペプチドは、PGRN、IGF-II、アルファ-1アンチトリプシン、IL-2、IL-6、CD5、免疫グロブリン、トリプシノーゲン、血清アルブミン、プロラクチン、エラスチン、組織プラスミノーゲン活性化シグナルペプチド(tPA-SP)、及びインスリンに由来するものである。一部の実施形態では、分泌型のPGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を、失ったタンパク質を血流に注入することによりタンパク質欠損(例えば、PGRNまたはGRN)を補正するための治療戦略として利用することができる。血液が患者の組織を灌流すると、PGRNまたはGRNが細胞により取り込まれ、その活動部位に輸送される。
【0554】
分泌型プログラニュリンまたはグラニュリンの血液脳関門透過のためのApoEタグ
一部の実施形態では、PGRNまたはGRN(例えば、PGRNまたはGRN融合タンパク質)を、血液脳関門(BBB)を透過するように改変する。BBB透過を媒介するための改変は、当技術分野で周知である。例示的な改変は、ApoEのRbドメイン(配列番号11のアミノ酸残基148~173)を含むタグの使用である。完全なApoEペプチド配列を下に示す。
MKVLWAALLVTFLAGCQAKVEQAVETEPEPELRQQTEWQSGQRWELALGRFWDYLRWVQTLSEQVQEELLSSQVTQELRALMDETMKELKAYKSELEEQLTPVAEETRARLSKELQAAQARLGADMEDVCGRLVQYRGEVQAMLGQSTEELRVRLASHLRKLRKRLLRDADDLQKRLAVYQAGAREGAERGLSAIRERLGPLVEQGRVRAATVGSLAGQPLQERAQAWGERLRARMEEMGSRTRDRLDEVKEQVAEVRAKLEEQAQQIRLQAEAFQARLKSWFEPLVEDMQRQWAGLVEKVQAAVGTSAAPVPSDNH
(配列番号11)
【0555】
ApoEは脂質輸送に関与する重要なタンパク質であり、その細胞内在化は、LDL受容体、超低密度リポタンパク質受容体(VLDLR)、及びLDL受容体関連タンパク質(LRP1、LRP2、及びLRP8を含むLRP)を含む、低密度リポタンパク質(LDL)受容体遺伝子ファミリーのいくつかのメンバーにより媒介される。LDL受容体は、脳毛細血管内皮細胞(BCEC)で高度に発現されることが見い出されており、末梢血管では発現の下方制御が観察されている。BCEC、ニューロン、グリア細胞で検出した場合、肝臓及び脳でも、LRPとVLDLRの発現の制限が顕著に示されている。LDLRを除いて、LRP1及びVLDLRを含む低密度リポタンパク質受容体ファミリー(LDLRf)タンパク質のいくつかのメンバーは、BBBを形成するBCECで高度に発現される。これらのタンパク質はApoEに結合して、BBBの反管腔側へのそれらのトランスサイトーシスを促進し得る。
【0556】
加えて、LRP1及びVLDLRの両方のアンタゴニスト及びリガンドである受容体関連タンパク質(RAP)は、インビボ及びインビトロでトランスフェリンよりもBBBを超えての透過性が高いことが示されており(Pan et al., J. Cell Sci. 117:5071-8 (2004))、これは、これらのリポタンパク質受容体(LDLRf)が、トランスフェリン受容体よりも発現が低いにもかかわらず、効率的なBBB送達ターゲットであり得ることを示している。本明細書に記載のとおり、ApoEに由来する強力な受容体結合ペプチド(Rb)は、融合タンパク質として操作された場合、タンパク質をBBBを超えて脳に移動させる能力を有する。したがって、この方法は、融合タンパク質として操作された場合、治療薬のためにBBBを選択的に開くように機能し得る。このペプチドは、ApoEタンパク質全体ではなく、ApoEのRbドメインを利用するため、それらの生物学的機能を危険にさらしたり、またはApoEの重要な生物学的機能を妨害したりすることなく、診断薬または治療薬に容易に結合させることができる。この経路はまた、脳実質におけるLDLRfメンバーの広範な発現により、薬剤がCNSに到達した後のさらなる/二次的脳内分布を促進することができる代替の取り込み経路である。投与戦略、例えば酵素補充療法または細胞ベース遺伝子ベースの治療にかかわらず、脳実質内の治療薬の量と分布の両方が、疾患処置の臨床成果に大きな影響を有するはずである。BBBを超えるタンパク質のターゲティング化送達におけるApoEのRbドメインの開発及び使用の詳細な説明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20140219974号において見出すことができる。
【0557】
一部の実施形態では、PGRNまたはGRN融合タンパク質は、配列番号11のLDLRf Rbドメインを含むペプチド配列、またはその断片、バリアント、もしくはオリゴマーを有する。例示的な受容体結合ドメインは、ApoEのN末端、例えば、配列番号11のアミノ酸残基1~191の間、配列番号11のアミノ酸残基25~185の間、配列番号11のアミノ酸残基50~180の間、配列番号11のアミノ酸残基75~175の間、配列番号11のアミノ酸残基100~170の間、または配列番号11のアミノ酸残基125~165の間で見出すことができる。例示的な受容体結合ドメインは、配列番号11の残基159~167のアミノ酸配列を有する。
【0558】
一部の実施形態では、ApoEの受容体結合ドメインを含むペプチド配列は、少なくとも1つのアミノ酸変異、欠失、付加、または置換を含んでよい。一部の実施形態では、アミノ酸置換は、2つ以上の変異、欠失、付加、または置換の組み合わせであってよい。一部の実施形態では、少なくとも1つの置換は保存的置換である。一部の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸付加は、ApoEのRbドメインに既に見出される選択された配列の付加を含む。当業者は、BBBを超えての輸送のために、ある程度の生化学的活性を保持しながら配列に対して行うことができる適切な改変を認識するであろう。
【0559】
グリコシル化非依存性リソソームターゲティング
グリコシル化非依存性リソソームターゲティング(GILT)技術を利用して、治療用酵素(例えば、PGRNまたはGRN)をリソソームにターゲティングすることができる。具体的には、GILT技術は、リソソームターゲティングでCI-MPRに係合するために、M6Pの代わりにペプチドタグを使用する。典型的には、GILTタグは、マンノース-6-リン酸非依存的な様式でCI-MPRに結合するタンパク質、ペプチド、または他の部分である。有利なことに、この技術は、リソソーム酵素を取り込むための通常の生物学的機構を模倣するが、マンノース-6-リン酸に非依存的な様式で模倣する。一部の実施形態では、PGRNまたはGRNは、PGRNまたはGRN及びGILTタグを含有するPGRNまたはGRN融合タンパク質として分泌される。一部の実施形態では、GILTタグは、PGRNまたはGRNタンパク質のN末端に融合している。一部の実施形態では、GILTタグは、PGRNまたはGRNタンパク質のC末端に融合している。一部の実施形態では、GILTタグは、ヒトインスリン様成長因子II(IGFII)に由来する。ヒトIGF-IIはCI-MPRの高親和性リガンドであり、IGF-II受容体とも称される。M6P/IGF-II受容体へのGILTタグ付き治療用酵素の結合は、エンドサイトーシス経路を介してタンパク質をリソソームにターゲティングする。GILT技術及びGILTタグの詳細な説明は、それらすべての教示が、その全体で参照により本明細書に組み込まれる米国公開番号20030082176、20040006008、20040005309、20050281805、及び2009043207において見い出すことができる。
【0560】
フーリン抵抗性GILTタグ
IGF-II由来のGILTタグは、哺乳動物細胞における産生中にフーリンによるタンパク質分解切断を受けることがある。フーリンプロテアーゼは典型的に、コンセンサス配列Arg-X-X-Argを有する切断部位を認識及び切断し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。切断部位は、配列のカルボキシ末端アルギニン(Arg)残基の後に位置する。一部の実施形態では、フーリン切断部位は、コンセンサス配列Lys/Arg-X-X-X-Lys/Arg-Argを有し、ここで、Xは任意のアミノ酸である。切断部位は、配列のカルボキシ末端アルギニン(Arg)残基の後に位置する。成熟ヒトIGF-IIペプチド配列を下に示す。
AYRPSETLCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSRRSRGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSE
(配列番号12)
【0561】
成熟ヒトIGF-IIは、残基34~40(太字)の間に2つの潜在的な重複するフーリン切断部位を含む。フーリンによる切断に抵抗性のある改変GILTタグは、マンノース-6-リン酸非依存的な様式でCI-MPRに結合する能力をまだ保持している。具体的には、フーリン抵抗性GILTタグは、その変異が少なくとも1つのフーリン切断部位を無効にするように、1つまたは複数のフーリン切断部位でアミノ酸配列を変異させることにより設計することができる。したがって、一部の実施形態では、フーリン抵抗性GILTタグは、フーリン切断が野生型IGF-IIペプチド(例えば、野生型ヒト成熟IGF-II)と比較して阻止される、阻害される、低減される、または減速されるように、少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を無効にするか、またはフーリンプロテアーゼ切断部位に隣接する配列を変更する変異を含むフーリン抵抗性IGF-IIムテインである。適切な変異は、フーリン抵抗性GILTタグがヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合する能力に影響を与えない。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したフーリン抵抗性IGF-IIムテインは、マンノース-6-リン酸非依存的な様式で、pH7.4で10-7以下(例えば、10-8、10-9、10-10、10-11、またはそれ以下)の解離定数で、ヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合する。一部の実施形態では、フーリン抵抗性IGF-IIムテインは、配列番号12のアミノ酸30~40(例えば、31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、32~39、33~39、34~39、35~39、36~39、37~40、34~40)に対応する領域内に変異を含む。一部の実施形態では、適切な変異は、少なくとも1つのフーリンプロテアーゼ切断部位を無効にする。変異は、アミノ酸の置換、欠失、または挿入であってよい。例えば、配列番号12の残基30~40(例えば、31~40、32~40、33~40、34~40、30~39、31~39、32~39、34~37、32~39、33~39、34~39、35~39、36~39、37~40、34~40)に対応する領域内の任意の1つのアミノ酸を、他の任意のアミノ酸で置換するか、または欠失させることができる。例えば、34位での置換は、最初の切断部位のフーリン認識に影響を及ぼし得る。各認識部位内に1つまたは複数の追加のアミノ酸を挿入すると、一方または両方のフーリン切断部位を無効にすることができる。縮重位置の残基のうちの1個または複数の残基を欠失させて、両方のフーリン切断部位を無効にすることもできる。
【0562】
一部の実施形態では、フーリン抵抗性IGF-IIムテインは、配列番号12のArg37またはArg40に対応する位置にアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、フーリン抵抗性IGF-IIムテインは、Arg37またはArg40位にLysまたはAla置換を含む。37位と40位の両方でのLys及び/またはAla変異の組み合わせ、またはLysもしくはAla以外のアミノ酸の置換を含む、他の置換が可能である。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したフーリン抵抗性IGF-IIムテインは、追加の変異を含んでもよい。例えば、配列番号12の残基のうちの最大30%またはそれ以上が変更されていてもよい(例えば、最大1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%またはそれ以上の残基が変更されていてもよい)。したがって、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したフーリン抵抗性IGF-IIムテインは、配列番号12と少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%を含めて少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有してよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したフーリン抵抗性IGF-IIムテインを、特異的にCI-MPRにターゲティングする。CI-MPRには高い親和性で(例えば、pH7.4で10-7M以下の解離定数で)結合するが、IGF-IIが結合することが公知の他の受容体には天然IGF-IIと比較して低い親和性で結合するタンパク質をもたらすIGF-IIポリペプチドの変異は、特に有用である。例えば、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したフーリン抵抗性IGF-IIムテインを、IGF-I受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比較して、IGF-I受容体についての結合親和性が低いように改変することができる。追加の変異戦略が利用されており、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009043207号において詳細に論述されている。例えば、IGF-II残基Tyr27をLeuで、Leu43をValで、またはSer26をPheで置換すると、IGF-I受容体についてのIGF-IIの親和性がそれぞれ94倍、56倍、及び4倍低下する(Torres et al., J. Mol. Biol. 248(2):385-401 (1995))。ヒトIGF-IIの残基1~7を欠失させると、ヒトIGF-I受容体についての親和性が30倍低下し、それに伴ってラットIGF-II受容体についての親和性が12倍上昇した(Hashimoto et al., J. Biol. Chem. 270(30):18013-8 (1995))。IGF-IIのNMR構造は、Thr7が残基48Phe及び50Serの近く、さらには9Cys-47Cysジスルフィド橋の近くに配置されていることを示している。Thr7とこれらの残基との相互作用が、IGF-I受容体結合に必要な柔軟なN末端ヘキサペプチドを安定化させ得ると考えられる(Terasawa et al., EMBO J. 13(23)5590-7 (1994))。同時に、この相互作用はIGF-II受容体への結合を調節することができる。IGF-IIのC末端の短縮化(残基62~67)も、IGF-I受容体についてのIGF-IIの親和性を5倍低下させるようである(Roth et al., Biochem. Biophys.Res. Commun. 181(2):907-14 (1991))。IGF-I及びカチオン非依存性M6P受容体の結合面は、IGF-IIの別々の面にある。構造及び変異データに基づき、ヒトIGF-IIよりも大幅に小さい機能的カチオン非依存性M6P結合ドメインを構築することができる。例えば、アミノ末端アミノ酸(例えば、1~7または2~7)及び/またはカルボキシ末端残基62~67を欠失させる、または置換することができる。加えて、ポリペプチドの残りのフォールディングを変更したり、またはカチオン非依存性M6P受容体に結合したりすることなく、アミノ酸29~40をおそらく削除または置き換えることができる。したがって、アミノ酸8~28及び41~61を含むターゲティング部分を構築することができる。アミノ酸のこれらのストレッチはおそらく、直接結合され得るか、またはリンカーにより分離され得るであろう。別法では、アミノ酸8~28及び41~61を別々のポリペプチド鎖上に提供することができる。IGF-IIと相同であり、IGF-IIの構造と密接に関連する三次構造を持つインスリンの比較可能なドメインは、別々のポリペプチド鎖に存在する場合でも適切な三次構造への適正なリフォールディングを許容する十分な構造情報を有する(Wang et al., Trends Biochem. Sci. 16(8):279-281 (1991))。したがって、例えば、アミノ酸8~28、またはその保存的置換バリアントをリソソーム酵素に融合させることができる;得られた融合タンパク質を、アミノ酸41~61、またはその保存的置換バリアントと混合し、患者に投与することができるであろう。IGF-II/GILT構築物の隔離を回避するために、IGF-IIを、血清IGF結合タンパク質への結合を最小限にするように改変することもできる(Baxter, Am. J. Physiol Endocrinol Metab. 278(6):967-76(2000))。多くの研究が、IGF結合タンパク質への結合に必要なIGF-II中の残基を位置特定している。これらの残基に変異を有する構築物を、M6P/IGF-II受容体に結合する高い親和性の維持、及びIGF結合タンパク質についての低い親和性についてスクリーニングすることができる。例えば、IGF-IIのPhe 26をSerに置き換えると、IGFBP-1及び-6についてのIGF-IIの親和性は低下するが、M6P/IGF-II受容体への結合については作用がないと報告されている。(Bach et al., J. Biol. Chem. 268(13):9246-54 (1993))。Glu9ではLysなどの他の置換も有利であり得る。IGF-IIと高度に保存されているIGF-Iの領域での類似の変異は、別々に、または組み合わせで、IGF-BP結合の大幅な減少をもたらす(Magee et al., Biochemistry 38(48):15863-70 (1999))。
【0563】
代替のアプローチは、M6P/IGF-II受容体に高い親和性で結合し得るIGF-IIの最小領域を同定することである。M6P/IGF-II受容体へのIGF-IIの結合に関係している残基はほとんど、IGF-IIの片面に集まっている(Terasawa et al., EMBO J. 13(23):5590-7 (1994))。IGF-II三次構造は通常3つの分子内ジスルフィド結合により維持されるが、IGF-IIのM6P/IGF-II受容体結合表面上のアミノ酸配列を組み込んだペプチドを、適正にフォールドし、結合活性を有するように設計することができる。そのような最小の結合ペプチドは、非常に好ましいリソソームターゲティングドメインである。例えば、好ましいリソソームターゲティングドメインは、ヒトIGF-IIのアミノ酸8~67である。M6P/IGF-II受容体に結合する、アミノ酸48~55の周りの領域に基づいて設計されたペプチドも、望ましいリソソームターゲティングドメインである。別法では、ペプチドのランダムライブラリーを、酵母ツーハイブリッドアッセイまたはファージディスプレイタイプアッセイのいずれかにより、M6P/IGF-II受容体に結合する能力についてスクリーニングすることができる。
【0564】
本明細書に記載の多くのフーリン抵抗性IGF-IIムテインは、インスリン受容体についての結合親和性が低下または減少している。したがって、一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適したペプチドタグは、インスリン受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比較して、インスリン受容体についての結合親和性が低下または減少している。一部の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法と併せて使用するために適した、インスリン受容体についての結合親和性が低下または減少しているペプチドタグには、野生型成熟ヒトIGF-IIの結合親和性よりも、インスリン受容体についての結合親和性が1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、12倍、14倍、16倍、18倍、20倍、50倍、100倍超低いペプチドタグが含まれる。インスリン受容体についての結合親和性は、当技術分野で公知の様々なインビトロ及びインビボアッセイを使用して測定することができる。
【0565】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号13のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
GGGGAGGGGAGGGGAGGGGAGGGPSLCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSARSRGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSE(配列番号13)
【0566】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
GAPGGGSPAPAPTPAPAPTPAPAGGGPSGAPLCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSARSRGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSE(配列番号14)
【0567】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%の配列同一性(例えば、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する。
GAPGGSPAGSPTSTEEGTSESATPESGPGTSTEPSEGSAPGSPAGSPTSTGPSGAPLCGGELVDTLQFVCGDRGFYFSRPASRVSARSRGIVEECCFRSCDLALLETYCATPAKSE(配列番号15)
【0568】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号16の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列によりコードされる。
GGCGGAGGCGGAGCTGGTGGCGGCGGAGCAGGCGGTGGTGGTGCAGGCGGCGGAGGTGCTGGCGGAGGACCATCTCTTTGTGGCGGAGAACTGGTGGACACCCTGCAGTTCGTGTGTGGCGACAGAGGCTTCTACTTTAGCAGACCCGCCAGCAGAGTGTCCGCCAGATCTAGAGGAATCGTGGAAGAGTGCTGCTTCAGAAGCTGCGACCTGGCACTGCTGGAAACCTACTGTGCCACACCAGCCAAGAGCGAGTGATG
(配列番号16)
【0569】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号17の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列によりコードされる。
GGAGCACCAGGCGGAGGATCTCCAGCTCCTGCTCCTACACCAGCTCCAGCACCGACGCCTGCTCCAGCTGGCGGAGGACCTTCTGGTGCACCTCTTTGTGGCGGAGAGCTGGTGGATACCCTGCAGTTCGTGTGTGGCGACCGGGGCTTCTACTTTAGCAGACCTGCCAGCAGAGTGTCCGCCAGATCTAGAGGCATCGTGGAAGAGTGCTGCTTCAGAAGCTGCGACCTGGCACTGCTGGAAACCTACTGTGCCACACCAGCCAAGAGCGAGTGATGA
(配列番号17)
【0570】
一部の実施形態では、GILTタグは、下に示すとおりの配列番号18の核酸配列に対して少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性)を有する核酸配列によりコードされる。
GGAGCACCAGGCGGATCTCCAGCAGGATCTCCAACCTCTACCGAGGAAGGCACAAGCGAGTCTGCCACACCTGAGTCTGGACCTGGCACAAGCACAGAGCCTAGCGAAGGATCTGCCCCAGGTTCTCCTGCCGGCTCTCCTACAAGTACAGGACCTTCTGGCGCTCCACTGTGTGGCGGAGAACTGGTGGATACCCTGCAGTTCGTGTGCGGCGACAGAGGCTTCTACTTTAGCAGACCCGCCAGCAGAGTGTCCGCCAGATCTAGAGGAATCGTGGAAGAGTGCTGCTTCAGAAGCTGCGATCTGGCACTGCTGGAAACCTACTGTGCCACACCAGCCAAGAGCGAGTGATGA
(配列番号18)
【0571】
プログラニュリンまたはグラニュリンの発現用ベクター
高い転写及び翻訳率を達成することに加えて、哺乳動物細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)における外因性遺伝子の安定発現を、遺伝子を含むポリヌクレオチドを哺乳動物細胞の核ゲノムに組み込むことにより達成することができる。外因性タンパク質をコードするポリヌクレオチドを哺乳動物細胞の核DNAに送達及び組み込むための様々なベクターが開発されている。発現ベクターの例は、例えば、WO1994/011026に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するための発現ベクターは、PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチド配列、さらには例えば、これらの薬剤の発現及び/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳動物細胞のゲノムへの組み込みに使用される追加の配列エレメントを含む。PGRNまたはGRNの発現に使用することができるある特定のベクターには、プロモーター及びエンハンサー領域などの遺伝子転写を指示する調節配列を含むプラスミドが含まれる。PGRNまたはGRNの発現に有用な他のベクターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高める、または遺伝子転写から生じるmRNAの安定性または核外輸送を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列エレメントには、例えば、発現ベクター上で運ばれる遺伝子の効率的な転写を指示するために、5’及び3’非翻訳領域、IRES、及びポリアデニル化シグナル部位が含まれる。本明細書に記載の組成物及び方法で使用するために適した発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細胞を選択するためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含んでもよい。適切なマーカーの例は、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ヌーセオトリシンなどの抗生物質に対する抵抗性をコードする遺伝子である。
【0572】
プログラニュリンまたはグラニュリンを発現させるためのウイルスベクター
ウイルスゲノムは、哺乳動物細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)への外因性遺伝子の効率的な送達に使用することができるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが典型的に、一般化または特殊化された形質導入により哺乳動物細胞の核ゲノムに組み込まれるため、遺伝子送達に特に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として生じ、遺伝子統合を誘導するために追加のタンパク質または試薬を必要としない。ウイルスベクターの例は、レトロウイルス(例えば、レトロウイルス科ウイルスベクター)、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、及びAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス)、コロナウイルス、オルソミクソウイルスなどのマイナス鎖RNAウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病及び水疱性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、麻疹及びセンダイ)、ピコルナウイルス及びアルファウイルスなどのプラス鎖RNAウイルス、ならびにアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス1型及び2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、及びポックスウイルス(ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘、カナリア痘)を含む二本鎖DNAウイルスである。他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、パポバウイルス、ヘパドナウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト泡沫状ウイルス、及び肝炎ウイルスが含まれる。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、トリC型ウイルス、哺乳動物C型、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLVグループ、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプマウイルスである(Coffin, J. M., Retroviridae: The viruses and their replication, Virology, Third Edition (Lippincott-Raven, Philadelphia, (1996)))。他の例は、マウス白血病ウイルス、マウス肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内因性ウイルス、ギボンサル白血病ウイルス、メイソンファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス及びレンチウイルスである。ベクターの他の例は、例えば、その教示が参照により本明細書に組み込まれるMcVey et al., (US 5,801,030)に記載されている。
【0573】
レトロウイルスベクター
本明細書に記載の方法及び組成物で使用される送達ベクターは、レトロウイルスベクターであってもよい。本明細書に記載の方法及び組成物で使用することができるレトロウイルスベクターの1つの型は、レンチウイルスベクターである。レトロウイルスのサブセットであるレンチウイルスベクター(LV)は、広範囲の分裂細胞型及び非分裂細胞型を高効率で形質導入し、導入遺伝子の安定した長期発現をもたらす。LVをパッケージング及び形質導入するための最適化戦略の概要は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるDelenda, The Journal of Gene Medicine 6: S125 (2004)に提示されている。
【0574】
レンチウイルスベースの遺伝子導入技術の使用は、目的の導入遺伝子が収容されている高度に欠失したウイルスゲノムを運ぶ組換えレンチウイルス粒子のインビトロ生成に依存している。特に、組換えレンチウイルスは、(1)パッケージング構築物、すなわち、Gag-Pol前駆体をRevと共に発現するベクター(代替では、トランスで発現);(2)一般に異種の性質のエンベロープ受容体を発現するベクター;及び(3)すべてのオープンリーディングフレームが除去されているが、複製、キャプシド形成、及び発現に必要な配列を維持し、発現されるべき配列が挿入されているウイルスcDNAであるトランスファーベクターの許容細胞株でのイントランス共発現により回収される。
【0575】
本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるLVは、5’-長末端反復(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位(SD)、デルタ-GAGエレメント、Revレスポンシブエレメント(RRE)、3’-スプライス部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーター及び3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)のうちの1つまたは複数を含んでもよい。レンチウイルスベクターは、その開示がWPREに関連するため参照により本明細書に組み込まれるUS6,136,597に記載されているとおり、中央ポリプリン路(cPPT)及びウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を任意選択で含む。レンチウイルスベクターは、例えば下に示すとおりのものを含み得るpHR’主鎖をさらに含んでもよい。
【0576】
Lu et al., Journal of Gene Medicine 6:963 (2004)に記載のレンチゲンLVを使用して、DNA分子を発現させる、及び/または細胞を形質導入することもできる。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるLVは、5’-長末端反復(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位(SD)、デルタ-GAGエレメント、Revレスポンシブエレメント(RRE)、3’-スプライス部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーター及び3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)を含んでもよい。任意選択で、これらの領域の1つまたは複数が、同様の機能を実行する別の領域で置換されることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0577】
PGRNまたはGRNは、十分に高いレベルで発現する必要がある。導入遺伝子の発現は、プロモーター配列により駆動される。任意選択で、LVは、CMVプロモーターを含む。プロモーターは、EF1αまたはPGKプロモーターであってもよい。別の実施形態では、プロモーターは、ミクログリア特異的プロモーター、例えば、CD68プロモーター、CX3CR1プロモーター、CD11bプロモーター、AIF1プロモーター、P2Y12プロモーター、TMEM119プロモーター、またはCSF1Rプロモーターである。任意選択で、LVは、哺乳動物細胞において使用するために最適化された合成プロモーターを含む。当業者は、本明細書に記載のベクター構築物において適切である多くのプロモーターに精通しているであろう。
【0578】
改変DNA分子の発現を増加させる、またはレンチウイルスの組み込み効率を高めるために、エンハンサーエレメントを使用することができる。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるLVは、nef配列を含んでもよい。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるLVは、ベクター統合を増強するcPPT配列を含んでもよい。cPPTは、(+)-鎖DNA合成の第2の起点として機能し、その天然HIVゲノムの中央に部分的なストランドオーバーラップを導入する。トランスファーベクター主鎖にcPPT配列を導入すると、核輸送及びターゲット細胞のDNAに組み込まれるゲノムの総量が大幅に増加した。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるLVは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含んでもよい。WPREは、転写物の核輸出を促進することにより、及び/または新生転写物のポリアデニル化の効率を高めることにより、転写レベルで機能し、したがって、細胞内のmRNAの総量を増加させる。LVにWPREを付加すると、インビトロ及びインビボの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現レベルが大幅に改善される。本明細書に記載される方法及び組成物において使用されるLVは、cPPT配列及びWPRE配列の両方を含んでもよい。ベクターはまた、単一のプロモーターからの複数のポリペプチドの発現を可能にするIRES配列を含んでもよい。
【0579】
IRES配列に加えて、複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用である。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるベクターは、1種よりも多いポリペプチドの発現を可能にする複数のプロモーターを含んでもよい。本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるベクターは、1種よりも多いポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位を含んでもよい。1種よりも多いポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位の例は、それらの開示が1種よりも多いポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位に関するため、参照により本明細書に組み込まれるKlump et al., Gene Ther.;8:811 (2001)、Osborn et al., Molecular Therapy 12:569 (2005)、Szymczak and Vignali Expert Opin Biol Ther. 5:627 (2005)、及びSzymczak et al. Nat Biotechnol. 22:589 (2004)に記載されている。当業者には、将来同定される複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用であり、本明細書に記載の組成物及び方法での使用に適したベクターで利用することができることは容易に明らかであろう。
【0580】
本明細書に記載の方法及び組成物で使用されるベクターは、臨床グレードのベクターであってもよい。
【0581】
ウイルス調節エレメント
ウイルス調節エレメントは、核酸分子を宿主細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)に導入するために使用される送達担体の成分である。ウイルス調節エレメントは任意選択で、レトロウイルス調節エレメントである。例えば、ウイルス調節エレメントは、HSC1またはMSCVからのLTR及びgag配列であってもよい。レトロウイルス調節エレメントはレンチウイルスに由来してもよいし、または他のゲノム領域から同定される異種配列であってもよい。当業者は、他のウイルス調節エレメントが同定されたとき、それらを本明細書に記載の核酸分子と共に使用することができることも理解するであろう。
【0582】
核酸送達のためのアデノ随伴ウイルスベクター
本明細書に記載の組成物及び方法の核酸を、細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)へのそれらの導入を容易にするために、rAAVベクター及び/またはビリオンに組み込むことができる。AAVベクターは中枢神経系で使用することができ、適切なプロモーター及び血清型は、その開示がCNS遺伝子治療において有用なプロモーター及びAAV血清型に関するため参照により本明細書に組み込まれるPignataro et al., J Neural Transm (2017)(印刷前にepub)において論述されている。本明細書に記載の組成物及び方法において有用なrAAVベクターは、(1)発現されるべき異種配列(例えば、PGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチド)及び(2)異種遺伝子の統合及び発現を促進するウイルス配列を含む組換え核酸構築物である。ウイルス配列は、ビリオンへのDNAの複製及びパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVの配列を含んでよい。そのようなrAAVベクターはまた、マーカーまたはレポーター遺伝子を含んでもよい。有用なrAAVベクターは、AAV WT遺伝子の1つまたは複数を全体的または部分的に欠失しているが、機能的隣接ITR配列は保持する。AAV ITRは、特定の用途に適した任意の血清型のものであってよい。rAAVベクターを使用する方法は、例えば、それぞれの開示が遺伝子送達のためのAAVベクターに関係するため、参照により本明細書に組み込まれる Tai et al., J. Biomed. Sci. 7:279 (2000)、及びMonahan and Samulski, Gene Delivery 7:24 (2000)に記載されている。
【0583】
本明細書に記載の核酸及びベクターを、細胞への核酸またはベクターの導入を容易にするために、rAAVビリオンに組み込むことができる。AAVのキャプシドタンパク質は、ビリオンの外側の非核酸部分を構成し、AAV cap遺伝子によりコードされる。cap遺伝子は、ビリオンのアセンブリに必要な3つのウイルスコートタンパク質、VP1、VP2、及びVP3をコードする。rAAVビリオンの構築は、例えば、それぞれの開示が遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれるUS5,173,414;US5,139,941;US5,863,541;US5,869,305;US6,057,152;及びUS6,376,237さらにはRabinowitz et al., J. Virol. 76:791 (2002)及びBowles et al., J. Virol. 77:423 (2003)に記載されている。
【0584】
本明細書に記載の組成物及び方法と併せて有用なrAAVビリオンには、AAV 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10及びrh74を含む様々なAAV血清型に由来するものが含まれる。中枢神経系に配置されている、または中枢神経系に送達される細胞をターゲティングするためには、AAV2、AAV9、及びAAV10が特に有用であり得る。種々の血清型のAAVベクター及びAAVタンパク質の構築及び使用は、例えば、それぞれの開示が遺伝子送達のためのAAVベクターに関連するため、参照により本明細書に組み込まれるChao et al., Mol. Ther. 2:619 (2000);Davidson et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:3428 (2000);Xiao et al., J. Virol. 72:2224 (1998);Halbert et al., J. Virol. 74:1524 (2000);Halbert et al., J. Virol. 75:6615 (2001);及びAuricchio et al., Hum. Molec. Genet. 10:3075 (2001)に記載されている。
【0585】
偽型rAAVベクターも、本明細書に記載される組成物及び方法と併せて有用である。偽型ベクターには、所与の血清型以外の血清型に由来するキャプシド遺伝子で偽型化された所与の血清型のAAVベクターが含まれる(例えば、とりわけAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、及びAAV10)。偽型rAAVビリオンの構築及び使用に関する技術は当技術分野で知られており、例えば、Duan et al., J. Virol. 75:7662 (2001);Halbert et al., J. Virol. 74:1524 (2000);Zolotukhin et al., Methods, 28:158 (2002);及びAuricchio et al., Hum. Molec. Genet. 10:3075 (2001)に記載されている。
【0586】
ビリオンキャプシド内に変異を有するAAVビリオンを使用して、非変異型キャプシドビリオンよりも効果的に特定の細胞型を感染させることができる。例えば、適切なAAV変異体は、特異的な細胞型へのAAVのターゲティングを容易にするためのリガンド挿入変異を有してもよい。挿入変異体、アラニンスクリーニング変異体、及びエピトープタグ変異体を含むAAVキャプシド変異体の構築及び特徴づけは、Wu et al., J. Virol. 74:8635 (2000)に記載されている。本明細書に記載の方法で使用することができる他のrAAVビリオンには、ウイルスの分子育種により、さらにはエクソンシャッフリングにより生成されるキャプシドハイブリッドが含まれる。例えば、Soong et al., Nat. Genet., 25:436 (2000)及びKolman and Stemmer, Nat. Biotechnol. 19:423 (2001)を参照されたい。
【0587】
ターゲット細胞に外因性核酸を送達するための方法
コドン最適化DNAまたはRNA(例えば、mRNA、tRNA、siRNA、miRNA、shRNA、化学改変RNA)などのポリヌクレオチドを哺乳動物細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)に導入するために使用することができる技術は、当技術分野で周知である。例えば、エレクトロポレーションを使用して、目的の細胞に静電位を印加することにより、哺乳動物細胞(例えば、ヒトターゲット細胞)を透過性にすることができる。この様式で外部電場にかけられたヒト細胞などの哺乳動物細胞はその後、外因性核酸を取り込みやすくなる。哺乳動物細胞のエレクトロポレーションは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるChu et al., Nucleic Acids Research 15:1311 (1987)に詳細に記載されている。同様の技術であるNucleofection(商標)は、真核細胞の核への外因性ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために、印加電場を利用する。Nucleofection(商標)及びこの技術を実行するために有用なプロトコルは、例えば、それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれるDistler et al., Experimental Dermatology 14:315 (2005)、さらにはUS2010/0317114に詳細に記載されている。
【0588】
ターゲット細胞のトランスフェクションに有用な追加の技術は、スクイーズ-ポレーション法である。この技術は、加えられたストレスに応答して形成される膜孔を通して外因性DNAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘導する。この技術は、ヒトターゲット細胞などの細胞への核酸の送達にベクターが必要とされないということにおいて有利である。スクイーズ-ポレーションは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるSharei et al., Journal of Visualized Experiments 81:e50980 (2013)に詳細に記載されている。
【0589】
リポフェクションは、ターゲット細胞のトランスフェクションに有用な別の技術である。この方法は、多くの場合に第4級またはプロトン化アミンなどのカチオン性官能基をリポソーム外部に向かって提示するリポソームに、核酸を負荷することを伴う。これは、細胞膜のアニオン性の性質により、リポソームと細胞との間の静電相互作用を促進し、最終的に、例えば、リポソームと細胞膜の直接融合により、または複合体のエンドサイトーシスにより、外因性核酸の取り込みにつながる。リポフェクションは、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,442,386号に詳細に記載されている。細胞膜とのイオン相互作用を利用して外来核酸の取り込みを誘発する同様の技術は、細胞をカチオン性ポリマー-核酸複合体と接触させることである。ポリヌクレオチドと会合して細胞膜との相互作用に好ましい正電荷を付与する例示的なカチオン性分子は、活性化デンドリマー(例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるDennig, Topics in Current Chemistry 228:227 (2003)に記載)ポリエチレンイミン、及びジエチルアミノエチル(DEAE)-デキストランであり、トランスフェクション剤としてのその使用は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるGulick et al., Current Protocols in Molecular Biology 40:1:9.2:9.2.1 (1997)に詳細に記載されている。磁気ビーズは、穏やかで効率的な様式でターゲット細胞をトランスフェクトするために使用することができる別のツールである。それというのも、この方法は、核酸の取り込みを指示するため印加された磁場を利用するためである。この技術は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS2010/0227406で詳細に説明されている。
【0590】
ターゲット細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、光トランスフェクションとも呼ばれるレーザーフェクションであり、これは細胞を穏やかに透過性にし、ポリヌクレオチドを細胞膜に透過させるために、細胞を特定の波長の電磁放射線に曝露することを含む技術である。この技術の生物活性は、エレクトロポレーションと同様であり、場合によっては、エレクトロポレーションより優れているとみられる。
【0591】
インペールフェクションは、遺伝物質をターゲット細胞に送達するために使用することができる別の技術である。これは、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、ナノワイヤーなどのナノ材料の使用に依存している。針状のナノ構造を、基質の表面に対して垂直に合成する。細胞内送達が意図されている遺伝子を含むDNAを、ナノ構造表面に付着させる。次いで、これらの針のアレイを備えたチップを細胞または組織に押し付ける。ナノ構造を突き刺された細胞は、送達された遺伝子(複数可)を発現することができる。この技術の例は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるShalek et al., PNAS 107:25 1870 (2010)に記載されている。
【0592】
マグネトフェクションも、核酸をターゲット細胞に送達するために使用することができる。マグネトフェクションの原理は、核酸をカチオン性磁性ナノ粒子と会合させることである。磁性ナノ粒子は、完全に生分解性である酸化鉄から作製され、用途に応じて変化する特異的なカチオン性独自の分子(proprietary molecules)でコーティングされる。遺伝子ベクター(DNA、siRNA、ウイルスベクターなど)とのそれらの会合は、塩誘導性コロイド凝集及び静電相互作用により達成される。次いで、磁石により生じる外部磁場の影響により、磁性粒子がターゲット細胞で濃縮される。この技術は、その開示が参照により本明細書に組み込まれるScherer et al., Gene Therapy 9:102 (2002)に詳細に説明されている。
【0593】
ターゲット細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、ソノポレーションであり、これは、細胞原形質膜の透過性を変更するために音(典型的には超音波周波数)を使用して細胞を透過性にし、ポリヌクレオチドが細胞膜を透過することを可能にする技術である。この技術は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるRhodes et al., Methods in Cell Biology 82:309 (2007)に詳細に説明されている。
【0594】
微小胞は、本明細書に記載の方法に従ってターゲット細胞のゲノムを改変するために使用され得る別の潜在的な担体を表す。例えば、糖タンパク質VSV-Gと、例えばヌクレアーゼなどのゲノム改変タンパク質との同時過剰発現により誘導される微小胞を使用して、後で内因性ポリヌクレオチド配列の部位特異的切断を触媒するタンパク質を細胞に効率的に送達して、遺伝子または調節配列などの目的のポリヌクレオチドの共有結合的組み込みのために細胞のゲノムを準備することができる。真核細胞の遺伝子改変ではジェシクルとも称されるそのような小胞の使用は、例えば、Quinn et al., Genetic Modification of Target Cells by Direct Delivery of Active Protein [abstract]: Methylation changes in early embryonic genes in cancer [abstract] : Proceedings of the 18th Annual Meeting of the American Society of Gene and Cell Therapy;2015 May 13, Abstract No. 122に詳細に記載されている。
【0595】
遺伝子編集技術を使用した遺伝子発現の調節
内因性プログラニュリンまたはグラニュリンの破壊
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを破壊する(例えば、処置中の対象のニューロンの集団においてなど、処置を受けている対象において、または対象に投与される細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)において)。内因性PGRNまたはGRN発現を破壊するための例示的な方法は、阻害性RNA分子を対象に投与するか、または対象のニューロンの集団または対象に投与される細胞の集団と接触させる方法である。阻害性RNA分子は、内因性PGRNまたはGRNを破壊するように機能し得る、例えば、RNA干渉(RNAi)経路を介して作用し得る。阻害性RNA分子は、内因性PGRNまたはGRNの発現レベル(例えば、タンパク質レベルまたはmRNAレベル)を低下させ得る。例えば、阻害性RNA分子には、全長の内因性PGRNまたはGRNをターゲティングする短鎖干渉RNA、短鎖ヘアピンRNA、及び/またはマイクロRNAが含まれる。siRNAは、典型的には約19~25塩基対の長さを持つ二本鎖RNA分子である。shRNAは、RNAiを介してターゲット遺伝子の発現を減少させるヘアピンターンを含むRNA分子である。shRNAは、プラスミド、例えば、ウイルスまたは細菌ベクターなどの形態で、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または形質導入により細胞に送達することができる。マイクロRNAは、典型的には約22ヌクレオチドの長さを有する非コーディングRNA分子である。miRNAは、mRNA分子上のターゲット部位に結合し、例えば、mRNAの切断、mRNAの不安定化、またはmRNAの翻訳の阻害を引き起こすことにより、mRNAをサイレンシングする。阻害性RNA分子は、改変ヌクレオチド、例えば、2’-フルオロ、2’-o-メチル、2’-デオキシ、アンロックド核酸、2’-ヒドロキシ、ホスホロチオエート、2’-チオウリジン、4’-チオウリジン、2’-デオキシウリジンを含むように改変することができる。理論に束縛されることはないが、ある特定の改変はヌクレアーゼ抵抗性及び/または血清安定性を上昇させることができるか、または免疫原性を低下させることができると考えられる。
【0596】
一部の実施形態では、阻害性RNA分子は、内因性PGRNまたはGRNのレベル及び/または活性もしくは機能を低下させる。実施形態では、阻害性RNA分子は、内因性PGRNまたはGRNの発現を阻害する。他の実施形態では、阻害性RNA分子は、内因性PGRNまたはGRNの分解を増加させる、及び/または内因性PGRNまたはGRNの安定性を低下させる。阻害性RNA分子を、化学的に合成するか、またはインビトロで転写することができる。
【0597】
一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集技術を使用して、PGRNまたはGRN導入遺伝子を含む細胞において破壊する。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集技術を使用して、対象において全体的に破壊する。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、例えば、本明細書に記載の遺伝子編集技術を使用して、対象のニューロンの集団で破壊する。一部の実施形態では、対象、ニューロン、及び/またはPGRNまたはGRN導入遺伝子を含む細胞における内因性PGRNまたはGRNの破壊を、細胞を対象に投与する前に行う。
【0598】
リボザイム、RNAse P、siRNA、miRNAなどの非コーディングRNAに基づく阻害性治療薬の作製及び使用も、例えば、Sioud, RNA Therapeutics: Function, Design, and Delivery (Methods in Molecular Biology), Humana Press (2010)に記載のとおり、当技術分野で公知である。
【0599】
ヌクレアーゼ媒介遺伝子調節
細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、または小神経膠細胞)のゲノムへのターゲット遺伝子の破壊及び/または統合のための別の有用なツールは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/Casシステムであり、これは、元々はウイルス感染に対する細菌と古細菌における適応防御機構として進化したシステムである。CRISPR/Casシステムは、プラスミドDNA及びCRISPR関連タンパク質(Cas;例えば、Cas9またはCas12a)内の回文リピート配列を含む。このDNA及びタンパク質の集合体は、最初に外来DNAをCRISPR遺伝子座に組み込むことにより、ターゲット配列の部位特異的DNA切断を指示する。次いで、これらの外来配列及びCRISPR遺伝子座のリピート-スペーサーエレメントを含むポリヌクレオチドを宿主細胞に転写してガイドRNAを作製し、その後これを、ターゲット配列にアニーリングし、Casヌクレアーゼをこの部位に局在化させることができる。このように、CasをターゲットDNA分子に近接させる相互作用はRNA:DNAハイブリダイゼーションに支配されるので、高度に部位特異的なCas媒介DNA切断を外来ポリヌクレオチドにおいて操作することができる。結果として、理論的にはCRISPR/Casシステムを、目的の任意のターゲットDNA分子(例えば、内因性PGRNまたはGRN)を切断するために設計することができる。この技術は、真核生物のゲノムを編集するために利用されており(その開示が参照により本明細書に組み込まれるHwang et al. Nature Biotechnology 31:227 (2013))、細胞ゲノムを部位特異的に編集して、ターゲット遺伝子をコードする遺伝子の取り込み前にDNA切断をするための効率的な手段として使用することができる。遺伝子発現を調節するためのCRISPR/Casの使用は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれるUS8,697,359に記載されている。細胞に目的の遺伝子を組み込む前に、ゲノムDNAを部位特異的に切断することによりターゲットDNSを破壊するための代替方法には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用が含まれる。CRISPR/Casシステムとは異なり、これらの酵素は、特異的なターゲット配列に局在化するための誘導ポリヌクレオチドを含まない。代わりに、ターゲット特異性は、これらの酵素内のDNA結合ドメインにより制御される。ゲノム編集用途でのZFN及びTALENの使用は、例えば、その両方の開示が参照により本明細書に組み込まれるUrnov et al. Nature Reviews Genetics 11:636 (2010);及びJoung et al. Nature Reviews Molecular Cell Biology 14:49 (2013)に記載されている。一部の実施形態では、内因性PGRNまたはGRNを、本明細書に記載のこれらの遺伝子編集技術を使用して、PGRNまたはGRN導入遺伝子を含む細胞において破壊することができる。
【0600】
トランスポゾン媒介遺伝子調節
ウイルスベクターに加えて、外因性遺伝子を細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)に組み込むために使用することができる様々な追加のツールが開発されている。ターゲット遺伝子をコードするポリヌクレオチドを細胞に組み込むために使用することができるそのような方法の1つは、トランスポゾンの使用を含む。トランスポゾンは、トランスポザーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドであり、目的のポリヌクレオチド配列または遺伝子を5’及び3’切除部位に隣接して含む。トランスポゾンが細胞に送達されると、トランスポザーゼ遺伝子の発現が始まり、トランスポゾンから目的の遺伝子を切断する活性酵素が生じる。この活性は、トランスポザーゼによるトランスポゾン切除部位の部位特異的認識により媒介される。ある特定の場合には、これらの切除部位は、末端リピートまたは逆位末端リピートであってもよい。トランスポゾンから切除されると、目的の遺伝子は、細胞の核ゲノム内に存在する同様の切除部位のトランスポザーゼ触媒切断により、哺乳動物細胞のゲノムに統合され得る。これにより、目的の遺伝子が相補的切除部位で切断された核DNAに挿入されることが可能になり、その後、目的の遺伝子を哺乳動物細胞ゲノムのDNAに結合するホスホジエステル結合の共有ライゲーションで、組み込みプロセスは完了する。ある特定の場合には、トランスポゾンはレトロトランスポゾンであってもよく、その結果、ターゲット遺伝子をコードする遺伝子は、最初にRNA産物に転写され、次いで、哺乳動物細胞ゲノムへの組み込み前にDNAに逆転写される。トランスポゾンシステムには、ピギーバックトランスポゾン(例えば、WO2010/085699に詳細に記載)及びスリーピングビューティートランスポゾン(例えば、US2005/0112764に詳細に記載)が含まれ、それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれる。
【0601】
診断方法
当技術分野で周知の方法、例えば、The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition and the International Classification of Diseases,11th Revisionに記載の方法などを使用して、対象を、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)を有すると診断することができる。例えば、対象におけるNCDの診断は、対象における認知機能障害の程度を評価する神経心理学的検査によりガイドされ得る。対象の認知機能を、限定されないが、複雑性注意、実行機能、学習及び記憶、言語、知覚運動機能、ならびに社会的認知を含む1つまたは複数の認知ドメインにわたる処理能力を評価する認知検査を実行することにより評価することができる。対象における認知機能を、対象の年齢、病歴、教育、社会経済的状況、及び生活様式に適した規格(例えば、基準集団、例えば、一般集団など)に対して比較して、対象におけるNCDに関する診断を決定することができる。対象を、重度NCDまたは軽度NCDを有すると診断することができる。重度NCDは、個人の自立及び/または正常な日常機能を妨害し、せん妄または他の精神障害によるものではない重大な認知低下により特徴づけられる。軽度NCDは、対象の自立及び/または正常な日常機能を妨害せず、せん妄または他の精神障害によるものではない中等度の認知低下により特徴づけられる。重度NCDは、対象により認知検査で得られたスコアが、基準集団の平均スコア(例えば、一般集団の平均スコア)から標準偏差2よりも離れていること、またはスコアが基準集団のスコアの分布の第3パーセンタイルにあることにより特徴づけられ得る。軽度NCDは、対象により認知検査で得られたスコアが、基準集団の平均スコア(例えば、一般集団の平均スコア)から標準偏差1~2離れていること、またはスコアが基準集団のスコアの分布の第3~16パーセンタイルであることにより特徴づけられ得る。認知検査の非限定的例には、Eight-item Informant Interview to Differentiate Aging and Dementia(AD8)、Annual Wellness Visit(AWV)、General Practitioner Assessment of Cognition(GPCOG)、Health Risk Assessment(HRA)、Memory Impairment Screen(MIS)、Mini Mental Status Exam(MMSE)、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)、St. Louis University Mental Status Exam(SLUMS)、及びShort Informant Questionnaire on Cognitive Decline in the Elderly(Short IQCODE)が含まれる。加えて、または別法では、F18-フルオロデオキシグルコースPETスキャンまたはMRIスキャンの使用も、NCDを有する対象における神経変性の存在を決定するために使用することができる。
【0602】
さらに、対象を、目的の特定のNCDに特異的なバイオマーカーの存在について検査することができる。例えば、対象を、対象がFTLDを有することを示すバイオマーカーの存在、例えば、タウ陽性ニューロン及びグリア封入体、ub陽性及びTDP43陽性、しかしtau陰性の封入体、ub及びFUS陽性、しかしtau陰性の封入体、本明細書に開示のPGRN遺伝子における変異及び/または本明細書に記載の染色体17q21での変異などの存在について検査することができる。対象がNCLを有するかどうかを決定するために、対象を、身体の細胞、例えば、ニューロン、肝臓、脾臓、心筋層、及び腎臓細胞内でのリポフスチン封入体の存在、ならびに1つまたは複数のCLN遺伝子またはPGRN遺伝子における変異について検査することもできる。
【0603】
処置の方法
対象の選択
本明細書に記載のとおりに処置することができる対象は、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)を有するか、または発症するリスクのある対象である。FTLDの型は、限定されないが、FTLDの行動異常型前頭側頭型認知症、意味性認知症、及び進行性非能弁性失語症異型を含むPGRN関連FTLDであり得る。NCLの型は、限定されないが、Santavuori-Haltia病、Jansky-Bielschowsky 疾患、バッテン病、クーフス病、Finnish遅発型小児性NCL、異型遅発型小児性NCL、CLN7 NCL、CLN8 NCL、Turkish遅発型小児性NCL、9型NCL、CLN10 NCL、及びCLN11 NCLを含むPGRN関連NCLであり得る。
【0604】
加えて、NCDの型は、環境毒素、例えば、除草剤もしくは殺虫剤に起因する散発性NCD、または非PGRN変異、例えば、NCDと関連する遺伝子のうちの1つもしくは複数の変異と関連するNCDであり得る。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して、正常なPGRNまたはGRN活性、低下したPGRNまたはGRN活性を有する対象、及びPGRN変異状態及び/またはPGRNまたはGRN活性レベルが不明である対象を処置することができる。本明細書に記載の組成物及び方法はまた、NCDを発症するリスクのある対象、例えば、PGRN変異を有する対象、PGRNもしくはGRN活性が低下した対象、NCDと関連する遺伝子のうちの1つまたは複数の変異を有する対象、またはNCDと関連する環境毒素に曝露された対象に予防的処置として投与することもできる。NCDのリスクのある対象は、初期症状を示し得るが、処置が施されたときにはまだ症状を示さない可能性がある。
【0605】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物を、例えば、フレームシフト型変異(例えば、p.C31LfsX35、p.C31LfsX35、p.S82VfsX174、p.L271LfsX174、及び/またはp.T382NfsX32変異)、ミスセンス型変異(p.C521Y、p.A9D、p.P248L、p.R432C、p.C139R、p.C521Y、及び/またはp.C139R変異)、ナンセンス型変異(例えば、p.Q125Xまたはp.R493X変異)、挿入型変異(例えば、c.1145insA変異)、及び/または転換型変異(例えば、p.0(IVS1+5G>C変異)を含むPGRN変異を有する対象に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物を、PGRN遺伝子において任意の他の病原性変異を持つ対象に投与することができる。例えば、PGRN遺伝子における病原性変異は、その開示がヒトPGRN変異に関するので、参照により本明細書に組み込まれるGijselinck et al., Human Mutation 29:1373-1386, (2012)において論述されている変異のいずれであってもよい。
【0606】
投与経路
本明細書に記載の細胞及び組成物は、脳室内、髄腔内、実質内、定位的、静脈内、骨内などの様々な経路により、または骨髄移植により、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)を有する対象に投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞及び組成物を、全身的に(例えば、静脈内)、中枢神経系(CNS)に直接(例えば、脳室内、髄腔内、実質内、または定位的)、または骨髄に直接(例えば、骨内)投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載の細胞及び組成物を大脳側脳室へと脳室内で、対象に投与する(この方法の説明は、マウスモデルの大脳側脳室への造血幹細胞及び前駆細胞の脳室内注入に関連するため、参照により本明細書に組み込まれるCapotondo et al., Science Advances 3:e1701211 (2017)において見い出すことができる)。任意の所与の症例における最適な投与経路は、投与される特定の細胞または組成物、対象、医薬製剤方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、対象の年齢、体重、性別、処置される疾患の重症度、対象の食事、及び対象の排泄速度に依存する。複数の投与経路を使用して、例えば、脳室内もしくは定位注射と静脈内注射、脳室内もしくは定位注射と骨内注射、脳室内もしくは定位注射と骨髄移植、脳室内もしくは定位注射と実質内注射、髄腔内注射と静脈内注射、髄腔内注射と骨内注射、髄腔内注射と骨髄移植、髄腔内注射と実質内注射、実質内注射と静脈内注射、実質内注射と骨内注射、または実質内注射と骨髄移植で、単一の対象を処置することができる。複数の投与経路を使用して、単一の対象を一度に処置することもできるし、または対象は、最初に1つの投与経路を介して処置を受け、2回目の受診時に、例えば1週間後、2週間後、1ヶ月後、6ヶ月後、または1年後に、別の投与経路を介して処置を受けてもよい。NCDの処置のために、細胞を対象に1回投与してもよいし、または細胞を対象に週、月、または年に1回または複数回(例えば2~10回)投与してもよい。
【0607】
前処置
細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)または組成物の投与前に、内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を枯渇または除去することが有利であり得る。ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞は、化学薬剤(例えば、ブスルファン、トレオスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、またはクロドロネートリポソーム)、照射、またはそれらの組み合わせを使用することで除去することができる。細胞除去に使用される薬剤は、BBB透過性であってもよいし(例えば、ブスルファン)、またはBBBを超える能力を欠いていてもよい(例えば、トレオスルファン)。例示的なミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞除去薬はブスルファン(その開示がミクログリアを除去するためのブスルファンの使用に関連するため、参照により組み込まれるCapotondo et al., PNAS 109:15018 (2012))、トレオスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、またはクロドロネートリポソームである。内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を枯渇させるための他の薬剤には、造血幹細胞により発現される抗原に結合することができる抗体またはその抗原結合断片に共有結合して抗体薬物複合体を形成することができる細胞毒素が含まれる。抗体薬物コンジュゲートに適した細胞毒素には、当技術分野で既知の中でも、DNA挿入薬(例えば、アントラサイクリン)、有糸分裂紡錘体を破壊することができる薬剤(例えば、ビンカアルカロイド、メイタンシン、メイタンシノイド、及びそれらの誘導体)、RNAポリメラーゼ阻害薬(例えば、a-アマニチン及びその誘導体などのアマトキシン)、タンパク質生合成を妨害することができる薬剤(例えば、サポリン及びリシンA鎖などのrRNA N-グリコシダーゼ活性を示す薬剤)が含まれる。除去はすべてのミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を排除してもよいし、またはミクログリア及び/または造血幹細胞と前駆細胞の数を少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)減少させてもよい。ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を除去する1種または複数の薬剤を、本明細書に記載の細胞または組成物の投与の少なくとも1週間(例えば、1、2、3、4、5、または6週間以上)前に投与することができる。本明細書に記載の方法で投与された細胞は、除去されたミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞に取って代わることができ、脳室内、定位的、静脈内、または骨内注射後に、または骨髄移植後に、脳で再増殖し得る。静脈内、骨内、または骨髄移植により投与された細胞は、血液脳関門を通過して脳に入り、ミクログリアに分化し得る。脳に投与された細胞、例えば、脳室内または定位的に投与された細胞は、インビボでミクログリアに分化し得るか、エクスビボでミクログリアに分化し得る。
【0608】
幹細胞の奪回
本明細書に記載の方法は、細胞の集団(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を対象に投与することを含み得る。これらの細胞は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を発現するように改変されていない細胞であってもよい。これらの細胞が内因性PGRNまたはGRNを破壊していてもよい。本明細書に記載のとおりの前処置後に、細胞を全身的に(例えば、静脈内)、または骨髄移植により投与して、骨髄区画を再構成することができる。例えば、これらの細胞は幹細胞ニッチェに移動し、そのような部位で造血細胞系の細胞の量を例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、35 17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、またはそれ以上増加させることができる。投与を、本明細書に記載の組成物の投与前または後に行うことができる。
【0609】
ドナー細胞の選択
一部の実施形態では、対象はドナーである。そのような場合、取り出された細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を(改変(例えば、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子の組み込み、及び/または内因性PGRNまたはGRNの破壊)後に)対象に再注入することができ、その後、細胞は、造血組織に帰着し、生産的造血を確立することとなり、それにより、対象において欠陥または欠損している細胞株(例えば、ミクログリアの集団)を増殖または再増殖することができる。このシナリオでは、注入される細胞が対象に由来し、対象が発現するのと同じHLAクラスme及びクラスII抗原を発現するので、移植された細胞は移植片拒絶を受ける可能性が最も低くなる。別法では、対象及びドナーは異なってもよい。一部の実施形態では、対象及びドナーは血縁があり、例えば、HLAマッチであってよい。本明細書に記載されているとおり、HLAマッチのドナー-レシピエントのペアは、移植レシピエント内の内因性T細胞及びNK細胞が外来造血幹細胞または前駆細胞を異物として認識する可能性が低く、したがって移植に対する免疫応答を開始する可能性が低いので、移植片拒絶のリスクが低い。例示的なHLAマッチのドナー-レシピエントのペアは、家族内ドナー-レシピエントペア(例えば、兄弟ドナー-レシピエントペア)などの遺伝的に関連するドナー及びレシピエントである。一部の実施形態では、対象及びドナーはHLAミスマッチであり、これは、特にHLA-A、HLA-B及びHLA-DRに関して、少なくとも1つのHLA抗原がドナーとレシピエントとの間でミスマッチである場合に起こる。例えば、移植片拒絶の可能性を低下させるために、一方のハプロタイプがドナーとレシピエントとの間でマッチしてもよく、かつ他方はミスマッチであってもよい。
【0610】
薬学的組成物及び用量
本明細書に記載のとおりにNCD(例えば、FTLDまたはNCL、例えば、PGRN関連FTLDまたはNCL)を処置するために対象に投与される細胞の数は、例えば、PGRNまたはGRNの発現レベル、対象、医薬製剤方法、投与方法(例えば、投与時間及び投与経路)、対象の年齢、体重、性別、処置を受ける疾患の重症度、及び対象が内因性ミクログリアを除去する薬剤で処置を受けたことがあるかどうかに依存し得る。投与される細胞の数は、例えば、1×106細胞/kg~1×1012細胞/kg、またはそれ以上(例えば、1×107細胞/kg、1×108細胞/kg、1×109細胞/kg、1×1010細胞/kg、1×1011細胞/kg、1×1012細胞/kg、またはそれ以上)であり得る。細胞を未分化状態で、またはミクログリアへの部分的もしくは完全な分化後に投与することができる。細胞の数を、前処置後に任意の適切な用量で投与することができる。用量の非限定的な例は、約1×105細胞/レシピエントkg~約1×107細胞/kg(例えば、約2×105細胞/kg~約9×106細胞/kg、約3×105細胞/kg~約8×106細胞/kg、約4×105細胞/kg~約7×106細胞/kg、約5×105細胞/kg~約6×106細胞/kg、約5×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約6×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約7×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約8×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約9×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、及び約1×106細胞/kg~約1×107細胞/kg)である。追加の例示的な用量は、とりわけ約1×1010細胞/レシピエントkg~約1×1012細胞/kg(例えば、約2×1010細胞/kg~約9×1011細胞/kg、約3×1010細胞/kg~約8×1011細胞/kg、約4×1010細胞/kg~約7×1011細胞/kg、約5×1010細胞/kg~約6×1011細胞/kg、約5×1010細胞/kg~約1×1012細胞/kg、約6×1010細胞/kg~約1×1012細胞/kg、約7×1010細胞/kg~約1×1012細胞/kg、約8×1010細胞/kg~約1×1012細胞/kg、約9×1010細胞/kg~約1×1012細胞/kg、及び約1×1011細胞/kg~約1×1012細胞/kg)である。
【0611】
本明細書に記載の細胞及び組成物は、NCDにおける1つまたは複数の病理学的特徴を改善するために十分な量で投与することができる。本明細書に記載の細胞または組成物の投与は、対象の脳におけるM1ミクログリアの量と比較して、対象の脳におけるM2ミクログリアの量を増加させる、対象の脳における炎症誘発性サイトカインのレベルを低下させる、対象の脳における抗炎症性サイトカインのレベルを上昇させる、対象の認知能力を改善する、対象の運動機能を改善する、対象におけるα-シヌクレインタンパク質レベル、tau陽性ニューロン封入体レベル、TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)陽性封入体レベル、サルコーマ融合(FUS)陽性封入体レベル、及び/またはユビキチン陽性封入体レベルまたはその凝集を低減する、対象における脳組織の喪失を減少させる、視力を改善する、言語能力を改善する、及び/またはてんかん発作レベルの重症度または発生頻度を減少させることができる。M1及びM2ミクログリアの数を、処置前後の対象の脳脊髄液(CSF)におけるサイトカイン、ケモカイン、ならびに他の炎症誘発性及び抗炎症性メディエーターのレベルを比較するためにELISAを使用して、処置の前後に古典的活性化M1ミクログリアで高度に発現されるタンパク質であるトランスロケータータンパク質(TSPO)を、例えばTSPO放射性リガンド11C-(R)-PK11195を使用して観察するためにPETイメージングを使用することにより、または標準的な技術、例えばウェスタンブロット分析、免疫組織化学分析、もしくは定量的RT-PCRを使用して組織サンプル中のM1及びM2関連遺伝子及びタンパク質のレベルを分析することにより評価することができる。認知と運動機能は、処置の前後に標準的な神経学的検査を使用して評価することができ、単量体及びオリゴマーのα-シヌクレインはELISAを使用して血漿とCSFで検出することができる。神経変性は、F18-フルオロデオキシグルコースPETスキャンまたはMRIスキャンを使用して評価することができる。対象を、処置に使用された投与経路に応じて、細胞の集団の投与から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上後に評価することができる。評価の結果に応じて、対象は追加の処置を受けることができる。
【0612】
キット
本明細書に記載の組成物を、NCD(例えば、FTLDまたはNCL)の処置において使用するためのキットで提供することができる。組成物は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子(例えば、マクロファージまたはミクログリアにおいて発現し得る導入遺伝子)を含み、かつ任意選択で、内因性PGRNまたはGRNが破壊されていてもよい本明細書に記載の宿主細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を含んでよい。細胞を、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、グリセロール、または別の凍結保護剤中で凍結保存することができる。前記キットは、医師などのキットのユーザーに本明細書に記載の方法を実施するように指示する添付文書を含むことができる。前記キットは任意選択で、組成物を投与するためのシリンジまたは他のデバイスを含んでもよい。
【実施例】
【0613】
以下の実施例は、本明細書に記載の組成物及び方法をどのように使用し、作製し、評価することができるかについての説明を当業者に提供するために記載するものであって、本開示を単に例示することを意図しており、本発明者らが本開示とみなす範囲を限定することを意図したものではない。
【0614】
実施例1.プログラニュリンまたはグラニュリンをコードする導入遺伝子を含む細胞の生成
本明細書に記載の組成物及び方法において使用するための、プログラニュリン(PGRN)またはグラニュリン(GRN)をコードする導入遺伝子を含む細胞(例えば、万能性細胞、胚性幹細胞(ESC)、人工万能性幹細胞(ISPC)、多能性細胞、CD34+細胞、造血幹細胞(HSC)、骨髄前駆細胞(MPC)、血液系統前駆細胞、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を作製するための例示的な方法は、形質導入によるものである。CD68プロモーターなどのミクログリア特異的プロモーター、及びPGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、アルファレトロウイルスベクター、またはガンマレトロウイルスベクター)を、当技術分野で公知の標準技術を使用して操作することができる。レトロウイルスベクターを操作した後、そのレトロウイルスを使用して細胞を形質導入すると、PGRNまたはGRNを発現する細胞の集団を生成することができる。
【0615】
本明細書に記載の組成物及び方法で使用するための、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞を作製するための追加の例示的な方法は、トランスフェクションである。当技術分野で公知の分子生物学技術を使用して、ミクログリア特異的プロモーター(例えば、CD68プロモーター)などのプロモーター、及びPGRNまたはGRNをコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドDNAを生成することができる。例えば、PGRN遺伝子を、当技術分野で公知のPCRベースの技術を使用してヒト細胞株から増幅することができるか、またはPGRNまたはGRN遺伝子を、例えば、固相ポリヌクレオチド合成手順を使用して合成することができる。次いで、PGRNまたはGRN遺伝子及びプロモーターを、例えば、適切な制限エンドヌクレアーゼ媒介切断及びライゲーションプロトコルを使用して、目的のプラスミドにライゲートすることができる。プラスミドDNAを操作した後、そのプラスミドを使用して、例えばエレクトロポレーションまたは本明細書に記載の別のトランスフェクション技術を使用して細胞をトランスフェクトし、PGRNまたはGRNを発現する細胞の集団を生成することができる。本明細書に記載の両方の例示的な方法で、PGRNまたはGRNを、PGRNまたはGRN融合タンパク質として発現させることができる。PGRNまたはGRN融合タンパク質は、血液脳関門を通過してのPGRNまたはGRN融合タンパク質の透過を可能にするように、ApoEのLDLRf Rbドメインを含むペプチド配列を含んでもよい。別法では、融合タンパク質は、PGRNまたはGRN及びグリコシル化非依存性リソソームターゲティング(GILT)タグを含んでもよい。例示的なGILTタグは、成熟ヒトIGF-IIのアミノ酸配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するヒトインスリン様成長因子II(IGF-II)に由来するムテインである。これらのIGF-IIムテインは、インスリン受容体についての天然に存在するヒトIGF-IIの親和性と比較して、インスリン受容体についての結合活性が低下しており、フーリン切断に抵抗性があり、マンノース-6-リン酸非依存的な様式でヒトカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体に結合する。GILTタグは、分泌型GBA融合タンパク質のリソソームへの送達を容易にする。
【0616】
実施例2.神経認知障害に罹患している対象への、プログラニュリンまたはグラニュリンをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団の投与
本明細書に開示の方法によれば、当業医師は、例えば、前頭側頭骨大葉変性(FTLD)または神経セロイドリポフスチン症(NCL)などの神経認知障害(NCD)の症状を軽減または緩和するように、ヒト対象などの対象を処置することができる。この目的のために、当業医師は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子(例えば、マクロファージまたはミクログリアにおいて発現し得る導入遺伝子)を含む細胞の集団(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)をヒト対象に投与することができる。本明細書に記載されているか、または当技術分野で公知の技術を使用して、細胞を、PGRNまたはGRNを発現するようにエクスビボで形質導入またはトランスフェクトすることができる。PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を、例えば、全身的に(例えば、静脈内)、中枢神経系(CNS)に直接的に(例えば、脳室内または定位的)、または骨髄に直接的に(例えば、骨内)対象に投与して、NCDを処置することができる。細胞を、複数の投与経路により、例えば静脈内及び脳室内で患者に投与することもできる。細胞を、1×106細胞/kg~1×1012細胞/kgまたはそれ以上(例えば、1×107細胞/kg、1×108細胞/kg、1×109細胞/kg、1×1010細胞/kg、1×1011細胞/kg、1×1012細胞/kg、またはそれ以上)などの治療有効量で投与する。
【0617】
細胞の集団を対象に投与する前に、1つまたは複数の薬剤、例えば、ブスルファン、トレオスルファン、PLX3397、PLX647、PLX5622、及び/またはクロドロネートリポソームを対象に投与して、対象の内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を除去することもできる。照射など、当技術分野で周知の他の細胞除去方法を、単独で、または前述の薬剤の1つまたは複数と組み合わせて使用して、対象のミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を除去することができる。これらの薬剤及び/または処置は、当技術分野で公知のPET画像化技術により評価した場合に、内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞を少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、またはそれ以上)除去し得る。ミクログリア除去後に、細胞の集団を対象に投与すると、細胞が脳で再増殖し、ミクログリアに分化する。細胞の集団を、例えば、ミクログリア除去から1週間から1ヶ月(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間)またはそれ以上後に対象に投与することができる。
【0618】
対象の内因性ミクログリア及び/または造血幹細胞及び前駆細胞の除去後に、細胞の集団を、対象に全身的に(例えば、静脈内)、または骨髄移植により投与して、骨髄区画を再構成することができる。細胞の数を、前処置後に任意の適切な用量で投与することができる。用量の非限定的な例は、約1×105細胞/レシピエントkg~約1×107細胞/kg(例えば、とりわけ約2×105細胞/kg~約9×106細胞/kg、約3×105細胞/kg~約8×106細胞/kg、約4×105細胞/kg~約7×106細胞/kg、約5×105細胞/kg~約6×106細胞/kg、約5×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約6×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約7×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約8×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、約9×105細胞/kg~約1×107細胞/kg、または約1×106細胞/kg~約1×107細胞/kg)である。投与は、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の投与の前、または後に行うことができる。細胞の集団を、NCDの病理学的特徴の1つまたは複数を処置するために十分な量で対象に投与することができる。例えば、PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団を、対象の脳のM1ミクログリアの量と比較して、対象の脳のM2ミクログリアの量を増加させるために十分な量で投与することができる。相対的な増加は、当技術分野で公知の従来の技術を使用して、例えば処置の前後に対象のCSFでELISAを実行して、両方の時点でM1及びM2ミクログリアにより分泌される炎症誘発性及び抗炎症性サイトカインのレベルを評価することにより測定することができる。認知能力と運動機能の変化を評価するために、医師が標準的な神経学的検査を処置前後に行うこともできる。対象を、処置に使用される投与経路に応じて、細胞の集団の投与から例えば1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上後に評価することもできる。PGRNまたはGRNをコードする導入遺伝子を含む細胞の集団の投与後の炎症誘発性サイトカインの減少、抗炎症性サイトカインの増加、認知または運動機能の改善、視力の改善、言語能力の改善、及び/またはてんかん発作の重症度または発生頻度の減少の所見は、処置がNCDを成功裏に処置していることを示す。
【0619】
実施例3.神経認知障害に罹患している対象への投与前の細胞における内因性プログラニュリンまたはグラニュリンの破壊
本明細書に開示の方法のいずれかにおいて、投与される細胞(例えば、万能性細胞、ESC、iPSC、多能性細胞、CD34+細胞、HSC、MPC、BLPC、単球、マクロファージ、ミクログリア前駆細胞、またはミクログリア)を、対象への投与前に内因性PGRNまたはGRNを破壊するように処理することができる。細胞の内因性PGRNまたはGRNを破壊する例示的な方法は、PGRN特異的ガイドRNA(gRNA)を含むCRISPR/Casシステム(例えば、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12a)を使用して、1つまたは複数の二本鎖切断(DSB)を誘導することである。DSBを修復するための非相同末端結合(NHEJ)に続いて、新しく形成されたインデル変異の存在により、内因性PGRNまたはGRNの破壊が生じる。万能性幹細胞にPGRNまたはGRN導入遺伝子を組み込む前にゲノムDNAを部位特異的に切断することにより内因性PGRNまたはGRNを破壊するための代替方法には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)及び転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)の使用が含まれる。CRISPR/Casシステムとは異なり、これらの酵素は、特異的なターゲット配列に局在化するガイドポリヌクレオチドは含まないが、代わりに酵素内の内部DNA結合ドメインに依存してターゲット特異性を媒介する。例示的な実施形態において、細胞は、内因性PGRNまたはGRNの発現を10%またはそれ以上低下または減少させるために、ヌクレアーゼによりエクスビボで操作される(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)。
【0620】
実施例4.プログラニュリンを発現する哺乳動物細胞株の生成
レンチウイルスでコードされるコドン最適化PGRN導入遺伝子の、哺乳動物細胞株で安定発現する能力を評価するために、ヒト及びマウス細胞をインビトロで形質導入した。第1の実験では、ヒト239T細胞を、10、50、100、または200の感染多重度(MOI)でヒトPGRNタンパク質(MND.GRN)または緑色蛍光タンパク質(GFP;MND.GFP)をコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで形質導入した。別のセットの対照細胞は形質導入しなかった(NTC)。デンシトメトリーを使用して、アクチンに対してPGRNレベルを定量化した(
図1A)。ヒトPGRNタンパク質に対して生じた抗体を使用してウェスタンブロットを行うと、ヒト細胞におけるヒトPGRNの安定発現が実証され、最高の発現はMOI200で観察された(
図1B)。
【0621】
別の実験では、マウス系列陰性(Lin-)細胞を、ヒトPGRNタンパク質をコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクター(すなわち、MND.GRNベクター)で形質導入した。MND.GRNレンチウイルスベクターで形質導入されていない、または形質導入されたLin-マウス細胞から生成した馴化培地を、ヒトPGRNタンパク質に対して生じた抗体を用いるウェスタンブロットを使用して分析すると、形質導入細胞による成長培地へのヒトPGRNタンパク質の放出を示した(
図2)。
【0622】
別の実験では、4つの独立したラウンドの形質導入で、ヒト239T細胞を、ヒトPGRNタンパク質をコードする導入遺伝子を含むレンチウイルスベクターで形質導入した。細胞溶解産物を、239T非形質導入細胞またはヒトPGRNをコードするレンチウイルスベクターで形質導入された細胞系から生成した。次いで、細胞溶解産物をEndoHまたはPNGアーゼ酵素で酵素的に消化するか、または加熱し、ヒトPGRNタンパク質に対して生じる抗体を用いるウェスタンブロットを使用して分析した(
図3)。EndoH及びPNGアーゼによる酵素的消化は、形質導入細胞により産生されたヒトPGRNタンパク質がN結合グリコシル化されていることを示す。
【0623】
まとめると、上の結果は、ヒトPGRNタンパク質をコードする導入遺伝子を含むヒト及びマウス細胞のレンチウイルス媒介形質導入が、そうでなければPGRN発現が存在しない細胞において、安定なPGRN発現を達成することを示している。レンチウイルスによりコードされるPGRNでのマウス一次Lin-細胞の形質導入は、成長培地へのPGRNタンパク質の放出をもたらす。さらに、前記レンチウイルスベクターにより産生されるPGRNタンパク質は、N結合グリコシル化されている。これらの所見は、前記PGRNコーディングベクターでのレンチウイルス形質導入がPGRNレベルを上昇させ、かつ造血細胞によるPGRNの放出を可能にすることを実証しており、それにより、PGRN遺伝子における変異に起因するか、または関係する疾患のための潜在的な治療アプローチを示唆している。
【0624】
他の実施形態
前記開示の様々な改変及び変形が、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本開示を、具体的な実施形態との関係において説明してきたが、特許請求の範囲に記載のとおりの本開示は、そのような具体的な実施形態に過度に限定されるべきでないことは理解されるべきである。実際に、当業者に明らかである、本開示を実施するための記載の様式の様々な改変が本開示の範囲内であることが意図されている。他の実施形態は、特許請求の範囲に見出される。
【配列表】
【国際調査報告】