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特表2022-523927生体組織に接触するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】生体組織に接触するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20220420BHJP
   A61F 9/04 20060101ALI20220420BHJP
   A61F 11/08 20060101ALI20220420BHJP
【FI】
A61M16/06 A
A61F9/04 315
A61F11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021548650
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(85)【翻訳文提出日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 US2020022412
(87)【国際公開番号】W WO2020186069
(87)【国際公開日】2020-09-17
(31)【優先権主張番号】62/817,522
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520084526
【氏名又は名称】アイエスエル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】アアレスタッド,ジェローム ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガンドーラ,ケント アール.
(72)【発明者】
【氏名】フリッカー,ウォルター
(57)【要約】
本発明は、組織または同様の表面に接触する発泡エラストマー物質を使用して器具と生体組織との間の境界面を形成するための物質および方法を提供する。エラストマー物質は、生体組織または同様の表面に適用または埋め込まれたときに形状一致しないエリアへと移動または流動し、その結果、空気および/または水に対する緊密密閉が形成され、その接触表面から取り外されたときに元の形状へと実質的に回復する、耐久性および洗濯可能性を有する物質の形態である。器具は、治療装置の接触表面に沿った圧力変動を最少化することを通して達成される快適性、追従性、および密閉性を最適化するよう設計された構造要素も含み得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に接触するよう構成された器具であって、
(a)前記器具の組織接触表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体を含む組織境界部分であって、前記粘弾性発泡体は、以下の特性、すなわち、
Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、約10以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度、
約0.9g/cm以下の密度(比重)、および/または、
約9mJ/cm以下、好適には約7mJ/cm以下、最も好適には約5mJ/cm以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性のレベル、
約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、
約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、
のうちの1つまたは複数を含む、
組織境界部分と、
(b)前記組織境界部分を支持するよう、かつ、前記組織境界部分により前記組織から離間されるよう、構成された非接触部分と、
を含み、
項目(i)前記組織境界部分は、前記粘弾性発泡体上に被覆されるかまたは前記粘弾性発泡体へと成形されたシロキサン抗微生物物質を含むこと、
項目(ii)前記組織境界部分は前記非接触部分上にオーバーモールド加工されていること、
項目(iii)前記組織境界部分はシリコーン感圧性接着剤を使用して前記非接触部分に取り付けられていること、および、
項目(iv)前記組織境界部分は、複数の充填物質のうちの1つの充填物質を含み、前記充填物質は前記充填物質が存在しない場合における前記粘弾性発泡体物質よりも高い熱伝導率を有すること、
の4つの項目のうちの1つまたは複数の項目が真である、
器具。
【請求項2】
前記粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
粘弾性発泡体ではない第2組織接触表面をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の器具。
【請求項4】
前記粘弾性発泡体は、約10以下のショアA、約0.9g/cm以下の密度(比重)、および約9mJ/cm以下の粘性を含む、請求項1~請求項3のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
前記発泡体は約5以下のショアAを含む、請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項6】
前記発泡体は約1以下のショアAを含む、請求項1~請求項4のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項7】
前記粘弾性発泡体は粘着性付与剤も接着剤も含まず、前記粘性は前記粘弾性発泡体の固有の特性である、請求項1~請求項6のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項8】
前記粘弾性発泡体は、少なくとも約0.1mJ/cm、少なくとも約0.3mJ/cm、または少なくとも約0.5mJ/cmの粘性を示す、請求項1~請求項7のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項9】
前記粘弾性発泡体は、大気圧において、わずか約8mL/分の、前記密閉表面を越える空気漏出を提供する、請求項1~請求項8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項10】
前記粘弾性発泡体は、大気圧において、わずか約0.8mL/分の、前記密閉表面を越える空気漏出を提供する、請求項1~請求項8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項11】
前記粘弾性発泡体は、前記組織に対して密閉部を提供し、大気圧において、わずか約0.008mL/分の、前記密閉部を越える空気漏出を提供する、請求項1~請求項8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項12】
前記粘弾性発泡体は約0.5g/cm以下の密度を有する、請求項1~請求項11のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項13】
前記粘弾性発泡体は発泡シリコーンゴムであり、所望により前記粘弾性発泡体の前記シリコーンゴム成分は、医療グレードのソフトスキン粘着剤(SSA)シリコーンである、請求項1~請求項12のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項14】
前記粘弾性発泡体は強化用充填剤である、請求項1~請求項13のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項15】
前記強化用充填剤は、シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、二酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、石英、カルシウム、カルボナート、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラス繊維、ガラスミクロスフェア、ガラスマイクロバルーン、ガラスビーズ、炭素繊維、シリコンカーバイド、ポリスチレンビーズ、微晶質セルロース、ナノ粒子、および金属繊維からなる群より選択される、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
前記粘弾性発泡体は抗菌剤を含む、請求項1~請求項15のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項17】
前記抗菌剤は、銀塩、銀イオン、ガラス粒子内に封入された銀イオン、銀-ナトリウム-リン酸水素ジルコニウム、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシル塩化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびクロロキシレノール、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、およびクロルヘキシジンからなる群より選択された1つまたは複数の薬剤を含む、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
項目(i)は真である、請求項1~請求項17のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項19】
項目(ii)は真である、請求項1~請求項18のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項20】
項目(iii)は真である、請求項1~請求項19のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項21】
項目(iv)は真である、請求項1~請求項20のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項22】
前記器具は眼球保護マスクである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項23】
前記器具はスキューバマスクである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項24】
前記器具は水泳用ゴーグルである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項25】
前記粘弾性発泡体は、前記組織に対する密閉部を提供し、1atmの圧力において、前記器具が10分で前記器具の内部容積のわずか10%を漏出させるような前記密閉部を越える水漏出を提供する、請求項23または請求項24に記載の器具。
【請求項26】
前記器具は医療器具である、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項27】
前記器具は呼吸マスクである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項28】
前記医療器具はヒトまたは動物の身体の組織を覆うよう構成された負圧チャンバである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項29】
前記医療器具は負圧創傷治療装置である、請求項28に記載の器具。
【請求項30】
前記負圧チャンバは、ヒトの気道の1部分の上に覆い被さる組織に外部負圧を印加することにより、気道開存性を維持するための連続負外部圧力(cNEP)治療装置である、請求項28に記載の器具。
【請求項31】
前記器具は1組のヘッドフォン、耳栓、イヤバッド、またはイヤフォンである、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項32】
前記器具は、カテーテル、血管ステント、血管グラフト、血管ステントグラフト、またはこれらの構成要素である、請求項1~請求項21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項33】
請求項1~請求項32のうちのいずれか1項に記載の器具の組織接触表面を提供する粘弾性発泡体を形成する方法であって、
調合物を提供するために、シリコーン基部、発泡剤、および触媒を組み合わせることと、
前記粘弾性発泡体を提供するために選択された条件下で前記調合物を硬化することであって、前記粘弾性発泡体は、以下の特性すなわち、
いずれの場合もStandard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、約10以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度、
約0.9g/cm以下の密度(比重)、および/または、
約9mJ/cm以下、好適には約7mJ/cm以下、最も好適には約5mJ/cm以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性レベル、
約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、
約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、
のうちの1つまたは複数を有する、
硬化することと、
を含む、方法。
【請求項34】
前記硬化ステップは約100°C~約250°Cの範囲の温度で硬化することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記硬化ステップは少なくとも約120°Cの温度で硬化することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記硬化ステップは少なくとも約150°Cの温度で硬化することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化ステップは少なくとも約170°Cの温度で硬化することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記発泡剤はアンモニウム塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩を含む、請求項33~請求項37のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記触媒は、鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、白金触媒、または酸触媒からなる群より選択される、請求項33~請求項38のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む、請求項33~請求項39のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記粘弾性発泡体は、約10以下のショアA、約0.9g/cm以下の密度(比重)、および約9mJ/cm以下の粘性レベルを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記発泡体は約5以下のショアAを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記発泡体は約1以下のショアAを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記粘弾性発泡体は粘着性付与剤も接着剤も含まない、請求項33~請求項43のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記粘弾性発泡体は、少なくとも約0.1mJ/cm、少なくとも約0.3mJ/cm、または少なくとも約0.5mJ/cmの粘性を示す、請求項33~請求項44のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記粘弾性発泡体の外側表面は、前記粘弾性発泡体の独立気泡領域を形成するために皮膜で覆われる、請求項33~請求項45のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記粘弾性発泡体は、二重のデュロメータ構造が生成されるよう、40デュロメータより小さい薄いエラストマーで、1:10より小さい比で被覆される、請求項46に記載の器具。
【請求項48】
前記粘弾性発泡体は、二重のデュロメータ構造が生成されるよう、40デュロメータより小さい医療グレードSSAシリコーンで、1:10より小さい比で被覆される、請求項46に記載の器具。
【請求項49】
前記シリコーン基部はLSRである、請求項33~請求項48のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記シリコーン基部はHCRである、請求項33~請求項48のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
項目(i)前記組織境界部分は、前記粘弾性発泡体上に被覆されるかまたは前記粘弾性発泡体へと成形されたシロキサン抗微生物物質を含むこと、
項目(ii)前記組織境界部分は前記非接触部分上にオーバーモールド加工されていること、
項目(iii)前記組織境界部分はシリコーン感圧性接着剤を使用して前記非接触部分に取り付けられていること、および、
項目(iv)前記組織境界部分は、複数の充填物質のうちの1つの充填物質を含み、前記充填物質は前記充填物質が存在しない場合における前記粘弾性発泡体物質よりも高い熱伝導率を有すること、
の4つの項目のうちの1つまたは複数の項目が真である、請求項33~請求項50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
項目(i)は真である、請求項51に記載の器具。
【請求項53】
項目(ii)は真である、請求項51または請求項52に記載の器具。
【請求項54】
項目(iii)は真である、請求項51~請求項53のうちのいずれか1項に記載の器具。
【請求項55】
項目(iv)は真である、請求項51~請求項54のうちのいずれか1項に記載の器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年3月12日に出願された米国仮特許出願第62/817,522号の利益を主張し、米国仮特許出願第62/817,522号は、すべての表、図面、および請求項を含むその全体において参照することにより援用され、本願はこれら各特許出願の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景に関する以下の説明は、単に本発明の理解において読者を支援するために提供されたものであり、本発明の先行技術を説明または構成することを認めるものではない。
【0003】
米国特許第5,343,878号、米国特許第7,182,082号、および米国特許第7,762,263号は、患者の外部頚部表面に対して負圧を印加することを目的とする様々な装置について説明する。喉(「喉」という用語は、本明細書では、上部呼吸経路の1部分に重なる、およそ顎から胸骨の上部まで、および、横方向に外頚静脈の後方の地点まで、延長する頚部の前方部分を指すために使用される)の外部エリアを封入するよう構成された表面を有する治療器具が通常、提供される。特定の実施形態では、これらの器具は、チャンバの内側表面と喉との間にチャンバ(例えば、空気分子で充填された中空スペース)を提供し得る。治療器具は、このチャンバ内に部分的な負圧を生成するよう構成された真空源に対して動作可能に接続される。チャンバ内に治療レベルの負圧を印加することにより、上気道の動きが誘導され、例えば鼾、睡眠時無呼吸、および、(睡眠時、または、何らかのレベルの鎮静状態を要求する医療処置の際における)完全または部分的な気道虚脱などの症状が緩和され得る。
【0004】
患者上の所望の位置における負圧差(例えば大気圧に対する)を作りかつ維持するために係る装置と患者との間の適切かつ快適な嵌合を獲得することは困難であり得る。長時間にわたり日常的に使用することが意図された装置の場合には、ユーザの組織上における装置の密閉に起因する高接触圧力を受ける任意の点は、継続的な使用に対しては、すぐに快適性が大きく損なわれてしまう。さらに、これらの負圧療法の成功は、変動する解剖学的特徴を吸収(湾曲、屈曲、流動、その他)する能力(すなわち装置追従性)により決定され得る。治療に関するユーザコンプライアンスは、装置とユーザとの間の良好な快適性境界面により、および、装置が取り外された時に、隠そうとしても表れる治療後の赤い瘢を最少化または解消する境界面により、最大化される。最終的に、装置は、密閉を損なうことなく、無精ひげが伸びること、および/または、異なる睡眠姿勢への身動きを、最適な状態で吸収するべきである。
【0005】
同様に、流体(例えば気体)を患者(特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:obstructive sleep apnea)を患う患者)に注入するよう適応されたマスクは、好適には、流体を送達するのみではなく、患者の顔面に対して良好な密閉状態を保ち、患者のいかなる動きにも適応可能であり、快適性が保たれるよう設計される。快適性および追従性を有するが最適な密閉性を有さないマスクは効果的ではない。マスクのためのフレームが硬質プラスチックである場合、密閉性および追従性は顔面クッションにより提供されなければならない。密閉が通常は配置される顔面の非常に敏感なエリアは、鼻橋領域である。圧力におけるいかなる増加も鼻橋領域に直接的に伝達され得、嵌合が、不快感のみならず痛みさえをも生じさせることとなる。いくつかのマスクは流動性ゲルを皮膚境界面に有した。係るマスクは重く、膜が破れた際には破断が生じ、ゲルが気道内に漏出してしまい、潜在的な健康上の危険要因をもたらし得るものであった。
【0006】
封入されたゲルは圧力を良好に吸収する(例えば高接触圧力のエリアは再分配される)一方で、特に「追従性」に欠ける(例えば、自然な身体の動きにより経験されるものなどの軽微な相対運動のために患者の皮膚に対する密接接触状態に留まることができないことにより)場合には、必ずしも良好な密閉媒体であるとはかぎらない。追従性は、患者の顔面とクッションとの間で達成可能である移動のレベルであり、および/または、快適な密閉を維持するマスクの能力である。ResMed’s Activa(登録商標)クッションは非常に良好な追従性を提供するクッションの一例である。追従性および復元力の欠如は密閉性能に影響を及ぼし得、局部加圧点が、例えばより高い顔面上の目印となる箇所(特に鼻橋領域)に、作られ得る。
【0007】
同様に濾過式面体レスピレータ(FFR)は日々の生活において重要な役割を果たす。FFRは、多くの器材販売店において一般の人々に対して購入可能であり、多様な家庭、公共、および職業上の環境における、特に健康管理状況における、使用に対して推薦または要求される。FFRの主要な機能は非生物学的粒子および生物学的粒子の双方に対する呼吸保護を提供することである。
【0008】
実際には、FFRは全般的に装着者を保護するために使用される。しかし健康管理組織および公共的健康状況においては、FFRは、潜在的に有害な粒子状物質(生物学的病原体を含む)から装着者を保護すること、および/または、装着者が環境内に吐き出した病原体から患者および他者を保護すること、の双方の機能を果たさなければならない。手術手順の際、例えば、電気手術における使用から生成された煙プルームは、広範囲の、気化されたウイルス性微生物(HIVおよびヒトパピローマウイルス(HPV)を含む)を含むことが示されている。したがって係る状況におけるFFRは、手術室内の執刀医および職員を保護すると同時に、執刀医が吐き出した病原体が手術野に接触することがないよう患者を保護しなければならない。
【0009】
装着者の顔面にマスクを密着させることに関して、係る密閉を達成するための主要な理由は、フィルタ部分からではなくマスクのフィルタ部分の周囲から漏れ出ることを回避することである。このことは、吸入される粒子状物質および/またはユーザから出る発散される粒子状物質の両方に対して成り立つ。顔面密閉内部漏出(FSIL:Face Seal Inner Leakage)および顔面密閉外部漏出(FSOL:Face Seal Outer Leakage)(顔面密閉漏出(FSL:Face Seal Leakage)と総称される)は、ヒトの顔面の解剖学的組織に顕著な相違が存在するため、低減化が困難である。人体測定学に関する研究によれば、ヒトの顔面の解剖学的組織における多数の変数において実質的な相違が存在することが明らかにされている。これらは、顔面密閉漏出が発生しがちである3つのエリア、すなわち、1)鼻橋ならびに頬骨、2)頬骨から下あごの縁部まで、および、3)顎の角に向かって戻る下顎の下面との間のエリアの周囲ならびに下方、において、顕著である。顔面密閉漏出の問題は、FFRが、全般的な「スモール、ミディアム、ラージ」サイズで、さらに多くの場合には「フリーサイズ」のデザインで、作られていることによっても悪化され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、生体組織に対して接触するよう設計された器具を提供することである。なお、この器具の組織境界領域は、器具と組織との間に形状一致する密閉が形成されるよう適応されている。特定的な態様では、この器具は、顔面、頚部、創傷の周囲エリアなどの患者の外部組織または内部組織に取り付けられ、かつ密着するよう構成されている。
【0011】
後に説明されるように、組織境界領域は、密閉を、ならびに組織に対する摺動に対する抵抗を改善し、かつ、適正な密閉および/または嵌合が確保されるよう治療装置が適応するであろう解剖学的差異の幅を拡げるために、固有の粘着性または接着性の特質(本明細書では「粘性」と呼ぶこととする)を含み得る。粘性は、例えば、「2成分」出発物質の混合比により、または粘着性付与剤の添加により、影響され得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、動物(好適には哺乳動物、および最も好適にはヒト)の皮膚に接触するよう構成された器具であって、
(a)器具の組織接触表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体を含む組織境界部分であって、この粘弾性発泡体は以下の特性、すなわち、
いずれの場合もStandard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、約0以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度、
約0.9g/cm以下の密度(比重)、および/または、
約9mJ/cm以下、好適には約7mJ/cm以下、最も好適には約5mJ/cm以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性レベル、
約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、
約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、
のうちの1つまたは複数を含む、
組織境界部分と、
(b)組織境界部分を支持するよう、かつ、組織境界部分により組織から離間されるよう構成された非接触部分と、
を含む、器具を提供する。
【0013】
「粘弾性」という用語は、本明細書では、変形中に粘性特性および弾性特性の両方を示す物質を指すために使用される。純粋な弾性物質とは異なり、粘弾性物質は弾性成分および粘性成分を有する。粘弾性物質の粘性は、歪み速度時間依存性を物質に与える。純粋な弾性物質は、負荷が印加された後に除去されたとき、エネルギー(熱)を放出しない。しかし粘弾性物質は、負荷が印加された後に除去されたとき、エネルギーを損失する。
【0014】
粘弾性物質における貯蔵係数および損失係数は、貯蔵されたエネルギー(弾性部分を表す)と、熱として散逸されたエネルギー(粘性部分を表す)と、を示す。貯蔵(E’)係数および損失(E’)係数は、当該技術分野において周知の動的機械分析(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)法を使用してKPaを単位として測定される。特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む。
【0015】
本明細書で使用される「組織」という用語は細胞の集合を指す。組織は、成長および/または再生する細胞を含み得、いくつかの実施形態では、好適には係る細胞を含む。組織は、組織の生体細胞の上に重なる、角質層を含む例えば皮膚などの生きていない細胞の層を含み得る。組織は、好適には哺乳動物の、最も好適にはヒトの、身体部分である。
【0016】
本明細書で使用される「非接触部分」という用語は、ユーザの組織に対して直接的には接触しない器具の部分を指す。係る部分は例えば、ユーザの身体内に埋め込まれた器具の内部、または、身体上に装着された器具の外部であり得る。非接触部分は組織境界部分に対して単体化または一体化され得る。例えば、器具全体が粘弾性発泡体製である場合には、ユーザの組織に対して直接的に接触しない粘弾性発泡体の部分が非接触である。しかし好適な実施形態では、非接触部分は、粘弾性発泡体以外の物質を含み、したがって組織境界部分とは異なる部分であると概念的に考えられ得る。
【0017】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、約10以下、好適には約5以下、および、さらに好適には約1以下のショアAデュロメータ硬度、または、約30以下、より好適には約20以下、およびさらに好適には約10以下のショアOOデュロメータ硬度、または、50以下、および最も好適には30以下のショアOOデュロメータ硬度を示す。
【0018】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、少なくとも0.1mJ/cm、好適には少なくとも0.3mJ/cm、最も好適には少なくともmJ/cmの、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性を示す。したがって多様な実施形態では、粘性は、0.1~9mJ/cmの範囲、0.3~7mJ/cmの範囲、および0.5~5mJ/cmの範囲である。
【0019】
「固有の粘性」は、発泡体の生産後に粘性物質が発泡体の表面に付け加えられるのではなく、粘弾性発泡体物質自体が粘性を有することを意味する。特定的な実施形態では、固有の粘性は粘着性付与剤を加えることなく提供される。
【0020】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、高粘度ゴム(「HCR」)または液状シリコーンゴム(「LSR」)などの発泡シリコーンゴムを含むか、または係る発泡シリコーンゴムから構成される。係る粘弾性発泡体は、一緒に混合されたシリコーンゴムおよび発泡剤から形成され、硬化された後、追従性および耐久性を有するヒト境界層が生成される。粘弾性発泡体は、単一層として提供されてもよく、または、器具の組織境界部分の全部または一部上に配置された物質積層体の1構成要素として提供されてもよい。積層体の場合、粘弾性発泡体は、好適には、積層体の最外部層を提供する(したがって組織接触層を提供する)。
【0021】
他の発泡製品に対する境界面物質として発泡LSRを使用することの1つの実質的な利点は、シリコーンの熱伝導率が、ポリウレタン「記憶」発泡体などの物質に対して、本質的により高いことである。これにより発泡LSRは皮膚上でより冷たくなる。熱伝導率は、Si、AlおよびZnOなどの様々な充填剤成分、ならびにBNおよびグラファイトなどの非金属充填剤を添加することにより、さらに大きくすることが可能である。特定的な実施形態では、充填剤は、Zhou et al., J. Composite Materials 42: 173-87, 2008に記載されているように、窒化ケイ素(Si)粒子のみを用いた、または、炭化ケイ素ホイスカ(SiCw)と組み合わされた、強化されたビニル末端ブロック化ポリメチルシロキサンであり得る。熱伝導率は、実際の金属粒子(特に銅ナノワイヤなど)または様々な複合材料(銀で被覆された銅もしくはアルミニウム、ニッケル被覆されたグラファイトなど)を添加することにより、大きくすることも可能である。加えて、シリコーンポリマーの本質的な伝導率は、ポリマー鎖が硬化された物質内でより良好に整列される作製プロセスにより、大きくすることが可能である。
【0022】
シリコーンゴムの熱伝導率はおよそ0.2W/mKである。WACKER Semicosilなどの充填剤を有する市販のシリコーンゴムは、熱伝導率が1W/mKから4.3W/mKという高い値になり得る。Si粒子などの添加物を加えると、熱伝導率は1W/mKから1.8W/mKという高い値になり得る。Zhou et al., Composites Part A: Applied Science and Manufacturing 40: 830-836, 2009。それとは対照的に、m ポリウレタンフォームは0.022W/mKという低い値の熱伝導率を有し、典型的には0.060W/mKよりも低い熱伝導率を有する。WO2014/105690。
【0023】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、発泡体の生産時に追加された粘着性付与剤を含み得る。粘着性付与剤は、粘性(接着剤の表面の粘着性)を増加させるためにエラストマーを形成する際に使用される化学的化合物である。米国特許第4,073,776号および米国特許第7,772,345号を参照されたい。粘着性付与剤は、低い分子量、室温より高いガラス転移温度、および軟化温度を有し、そのため、好適な粘弾性特性を有する。粘着性付与剤は最大で全質量の約40%までを含み得る。粘着性付与剤の例としては、ロジンならびにその誘導体、テルペンならびに変性テルペン、脂肪族樹脂、脂環式樹脂、ならびに芳香族樹脂(C5脂肪族樹脂、C9芳香族樹脂、ならびにC5/C9脂肪族/芳香族樹脂)、水素添加炭化水素樹脂ならびにその混合物、テルペンフェノール樹脂(TPR。多くの場合、エチレン・ビニル・アセテート接着剤とともに使用される))が挙げられる。シリコーンゴム系の感圧性接着剤は、一般に、4つの官能基を有する(quadrafunctional)四塩化ケイ素または四酸化ケイ素(「Q」)と反応させた1つの官能基を有する(monofunctional)トリメチルシラン(「M」)からなる「MQ」ケイ酸塩樹脂に基づく特殊な粘着性付与剤を利用し得る。特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、粘着性付与剤も接着剤も含まない。
【0024】
粘着性付与剤は本発明において使用されてもよいが、好適な実施形態では、粘弾性発泡体は、粘着性付与剤も接着剤も含まない。粘性の特質はエラストマー自体の固有の特性である。
【0025】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体はシリコーン基部、発泡剤、および触媒を使用して形成される。係る発泡剤の例としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩が挙げられるが、多様な市販の化学発泡剤が当該技術分野で周知である。通常、これらの発泡剤は発泡過程の際にガス(例えば、N、CO)を放出する。触媒は、鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、白金触媒、または酸触媒からなる群より選択され得る。
【0026】
器具の組織境界部分の全体が粘弾性発泡体を含むと好適であるが、特定の実施形態では、組織境界部分の一部のみが粘弾性発泡体を含む。特定の実施形態では、粘弾性発泡体は1つの同心円環状リングであるか、または、複数の、当接するか、もしくは、互いの間に何らかのピッチ間隔の分離を有する、連続的または不連続的な同心円環状リングであり得る。他の実施形態では、粘弾性発泡体は1つであるか、または、複数の、当接するか、もしくは、互いの間に何らかの間隔の分離を有する、接続されるか、もしくは接続されていない、螺旋状リングであり得る。
【0027】
エラストマー成分(例えばシリコーンゴム)に対する発泡剤添加物の重量パーセントは、好適には1~10%、および、さらに好適には1~5%、および最も好適には1.5~3%であろう。様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質は、器具に対して塗布され、粘弾性発泡化物質が「皮膜で被覆」されるよう、硬化されるであろう。それにより、滑らかな独立気泡表面が粘弾性発泡体の組織接触表面に提供され、その結果、境界面密閉部の周囲において発生し得る漏出が緩和されるよう、発泡体基材に対する湿気(例えば、発汗)の吸収および/または粒子汚染(例えば、皮膚、無精ひげ、デブリ)が緩和されるよう、および、発泡体基材の表面上または発泡体基材内における製品損傷微生物(例えば、バクテリア、菌類、藻類)の成長が緩和されるよう、支援されることとなる。代替的に、発泡境界面物質の熱伝導率および通気性は、接触表面の「皮膜被覆」を小さくすること、および/または、独立気泡型の発泡構造よりもむしろ連続気泡型の構造となるよう発泡体の多孔率を大きくすること、などの製作技法により大きくなり得る。しかしこれらの手法により物質が水分を吸収・保持する能力は大きくなってしまい、耐水洗性の観点からは望ましくない結果がもたらされ得る。
【0028】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、二酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、アルミニウム酸化物、酸化亜鉛、石英、カルシウム、カルボナート、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラス繊維、ガラスミクロスフェア、ガラスマイクロバルーン、ガラスビーズ、炭素繊維、シリコンカーバイド、ポリスチレンビーズ、微晶質セルロース、ナノ粒子(例えばカーボンナノチューブ、層ケイ酸塩、その他)、および金属繊維などの強化用充填剤を含む。
【0029】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、バクテリア、真菌、およびウイルスなどの微生物の成長を抑制または防止するよう微生物細胞により代謝される、銀、銀イオン、ガラス粒子内に封入された銀イオン、銀-ナトリウム-リン酸水素ジルコニウム、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシル塩化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロロキシレノール、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、その他などの有効成分を有する抗菌剤添加物を含む。これらは、無機化合物の形で供給されてもよく、またはマイクロサイズ(>100nm)またはナノサイズ(<100nm)の粒子を含み得る。
【0030】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体はシロキサンポリマーを含む耐浸出性および非流動性の抗菌性添加剤を含む。係る物質は、微生物細胞によっては代謝されず、代わって、電荷を帯びた分子の網状組織を粘弾性発泡体基材の表面上に作り、この網状組織によりバクテリア、菌類、および藻類の微生物細胞壁が破壊される。
【0031】
特定の実施形態では、シーリング要素は、接触エリアの全部または一部に本来備わっているか、または接触エリアの全部または一部上に配置された、粘性物質を含み得る。例えば粘性物質は、室温加硫処理されるかまたは熱硬化性のシリコーンゴムを含み得る。粘性物質は、単一層であってもよく、または、接触エリアの全部または一部上に配置された物質積層体の1構成要素であってもよい。
【0032】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は流体的に密閉された表面を提供する。
【0033】
粘弾性発泡体の形成および硬化は室温で行われ得るが、特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、少なくとも約50°C~60°Cの範囲、より好適には少なくとも約120°C、さらに好適には少なくとも約150°C、さらに好適には少なくとも約170°Cの温度で硬化される。
【0034】
シリコーン発泡体の例およびシリコーン発泡体の製造過程については、例えば米国特許第8,410,239号、米国特許第8,173,717号、米国特許第7,393,879号、米国特許第6,022,904号、および米国特許第5,436,274号を参照されたい。これらの特許は参照することによりその全体が本願に援用される。特定の実施形態では、硬化は約100°C~約250°Cの範囲で起こり得る。
【0035】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、0.9g/cm以下、より好適には0.8g/cm以下、さらに好適には0.7g/cm以下、最も好適には0.5g/cm以下の密度を有する。
【0036】
様々な実施形態では、医療用または美容用の器具は、眼球保護マスク、スキューバ用マスク、水泳用ゴーグル、医療器具、呼吸マスク、身体の一部をカバーするよう構成された負圧チャンバ(例えば負圧創傷治療装置または連続外部負圧(cNEP:continuous Negative External Pressure)治療装置など)、ヘッドフォン、耳栓、イヤフォン、ブラジャー、水着などであり得る。
【0037】
後の部分で説明されるように、本明細書で記載の器具は、個人の外部組織または内部組織上の標的化された治療エリアに負圧、中立圧力、または正圧を印加するよう構成された密閉チャンバの形態における圧力格納構造体を提供するにあたり好適であり得る。
【0038】
本明細書で使用される「圧力格納構造体」という用語は、使用の際に負圧、正圧、または中立圧力を格納する治療装置の要素を指すために使用される。圧力格納構造体は、ドーム状のチャンバ要素を画成する硬質、半硬質、または可撓性の膜と、圧力格納構造体内のアパーチャであって、真空源が当該アパーチャを通って固定されるかまたは加えられ得るアパーチャと、チャンバ要素と個人との間に組織境界部分を形成するドーム状チャンバに固定されたシーリング要素と、を含み得る。
【0039】
係る圧力格納構造体は、生体組織(例えばヒト上の位置)に結合されたときに器具により形成される内部空間と外部大気圧との間に圧力差を作るために使用され得る。好適には、粘弾性発泡体が組織に対する密閉部を作り、その密閉部により圧力差が維持される。密閉部における特定量の漏出は、所望の圧力差が達成および維持されることが可能であるかぎり、許容され得る。好適には漏出は、わずか約0.008ml/分~約8ml/分の範囲であり、最も好適には約0.1ml/分~約1.6ml/分の範囲である。水中で使用するための眼球マスク(例えばスキューバマスク)の場合、粘弾性発泡体は、約1atmの圧力差による漏出が、10分、20分、または最も好適には30分において内部容積のわずか10%、好適には内部容積の5%以下となるよう、流体的に密閉されると好適である。
【0040】
特定の実施形態では、器具は、器具が個人に結合され、治療レベルの圧力(正圧または負圧)が器具内に印加されたとき、組織境界部分全体にわたり略一定で均等に分布された接触圧力を提供するよう、構成され得る。負圧器具の場合、このおよその接触圧力は、治療装置内の負圧の、0.9~1.5倍の範囲、好適には約1.1~1.3倍の範囲であり得る。
【0041】
特定の実施形態では、治療装置が個人に結合され、治療レベルの負圧がチャンバ内に印加されたとき、組織表面に印加されるおよその接触圧力はチャンバ内の負圧のおよそ1.2倍である。様々な実施形態では、チャンバ内に中立圧力または負圧を維持するよう設計された治療装置も、一定かつ均等な接触圧力を分布させるよう構成され得る。
【0042】
関連する態様では、本発明は、本明細書で記載の治療装置を個人に結合することと、治療レベルの負圧をチャンバ内に印加し、それにより個人の気道の開存性を高めることと、を含む、負圧治療を、係る治療を必要とする個人に適用する方法に関する。係る方法は、睡眠時無呼吸の治療、鼾の治療、(睡眠時、または、何らかのレベルの鎮静状態を要求する医療処置の際における)完全または部分的な上気道虚脱の治療、完全または部分的な上気道閉塞の治療、例えば損傷または手術により生じた創傷の負圧治療のために実施され得る。
【0043】
本明細書で使用される個人の「外部エリア」および「外部表面」という用語は、個人の外部皮膚表面の1部分を指すために使用される。本明細書で使用される個人の「内部エリア」および「内部表面」という用語は、個人の内部表面または部分的な内部表面の1部分を指すために使用される。例えば多様な実施形態では、治療装置は、造瘻術または創傷の部位に適用され係る部位を密閉するよう、または気道においてラリンゲルチューブの周囲を密閉するよう、構成され得る。内部における他の適用の例としては、埋入物とそれに近接する組織との間の機械的な硬さの不釣り合いを緩和するための埋入物の外部に対する適用、または、頬、胸部、ならびに臀部用の埋入物などの組織充填材物質の全部または一部としての適用を含むであろう。様々な実施形態では、治療装置は、全接触点にわたって最適化されたフィット性パラメータ(例えば密閉性、快適性、および局所的な装置追従性)を提供するよう構成される。このことは、好適には、追従性形状一致境界面の設計特徴を通して、および、負圧治療装置の密閉されたチャンバ要素の設計特徴を通して、患者の組織上の1つの接触点と他の接触点との間の接触圧力差を最少化することにより達成され得る。
【0044】
特定の実施形態では、チャンバ要素は、一体型構造として、単体構造として、または不連続的構造として、フランジ要素に固定され得る。フランジ要素は、装置とユーザの組織との間の境界面に対して機械的支持を提供する。本明細書で使用されるように、追従性形状一致境界面は、チャンバ要素とユーザとの間に略気密性密閉が形成されるよう、伸張、屈曲、および/または湾曲する能力を有する、可撓性、剪断力吸収性、および圧縮性を有する表面として定義される。
【0045】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面は、治療装置の周縁上の寸法の周囲における幅および/または厚さにおいて異なる。形状一致境界面の幅および/または厚さが異なることにより、個人の組織表面に印加される力の大きさは、連続的接触表面の周囲の地点ごとに異なり得る。このようにして、密封要素の周縁上の寸法に沿う任意の地点において個人の外部表面に対して印加される力を「一定」の値にすることが可能である。この文脈において、本明細書で使用される「一定」という用語は、密封要素の全周縁上の寸法に沿う力の平均の約20%内に、より好適には約10%内に、力を維持することを指す。ここで、密封要素の周縁上の寸法に沿う各地点における力は、密封要素がユーザに接触するフランジ要素の幅寸法上の位置において測定される。
【0046】
あらゆるすべての真空、ガス、または流体のポンプ種類が、所望レベルの流れが選択されたポンプにより達成可能であるかぎり、本発明において使用される。特定の実施形態では、ポンプはホースまたはチューブを介して装置に接続され得る。可搬性を最大化するために、ポンプが患者により装着可能でありかつバッテリー駆動式であると好適であり、空気ポンプが器具に一体化されるよう構成されると最も好適である。
【0047】
特定の実施形態では、真空ポンプは、手動で圧搾する球状部であってもよく、または電気的で、振動ポンプ圧送動作を提供するよう構成された圧電性物質を含んでもよい。振動ポンプ圧送動作が500Hzより高い周波数で動作すると最も好適である。
【0048】
ポンプが装置に対して一体的に構成されているこれらの実施形態では、ポンプと器具との間の密閉部品が気密密閉部を形成すると好適ある。例えば、追従性密閉リングまたはリップシールが、ポンプが係合する開口部内に提供されてもよい。係る密閉部品は、チャンバ要素に対して一体的に提供されてもよく、チャンバ要素に対する単体構造として提供されると最も好適である。代替的に追従性密閉リングおよびチャンバ要素は別個の構造体である。
【0049】
負圧装置の特定的な実施形態では、チャンバ要素は1つまたは複数のアパーチャを含み、その結果として、治療装置が個人に結合され、かつ、治療レベルの負圧が印加されたときに、制御された空気流をチャンバに提供する通気要素が形成される。これらのアパーチャは、ポンプ要素の吸気口に対して遠位に配置され、チャンバを通る空気の流れを提供する。係る空気の流れは、第1には、真空治療範囲を履歴現象的に制御することを促進し得、第2には、チャンバ内部の空気の交換を支援し得る。本明細書で使用される履歴現象的制御は、真空ポンプの流速を、負圧装置のチャンバ要素内の絶対気圧における感知される変化へと、変化させるための一定範囲内における制御システムの反応として定義される。この範囲は、2つの点、すなわち、ポンプが起動される「上昇」点、およびポンプが遮断される「下降」点、を提供する。アパーチャ(単数または複数)は、好適には約10mL/分~約300mL/分の範囲、および、最も好適には約20mL/分~約150mL/分の範囲、および、さらに好適には約40mL/分~約100mL/分の範囲の空気流を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、通気要素は、アパーチャと、アパーチャ内のフィルタ要素と、を含み得る。なお、フィルタ要素は、約1.0μm以下の細孔サイズ(例えば約0.7μmの細孔サイズなど)を含む。フィルタ要素は交換可能な要素として構成され得、サイズは、好適には約10mL/分~約300mL/分の範囲、最も好適には約20mL/分~約150mL/分の範囲、さらに好適には約40mL/分~約100mL/分の範囲の空気流を提供するよう調整され得る。
【0051】
さらに他の実施形態では、通気要素は、1つまたは複数の穴を含み得る。係る穴は、ポンプ要素の吸気口に対して遠位にあり、チャンバにデブリが進入することを防止するにあたり十分に小さいサイズを有する。穴の個数および穴サイズの直径は、好適には約10mL/分~約300mL/分の範囲、最も好適には約20mL/分~約150mL/分の範囲、さらに好適には約40mL/分~約100mL/分の範囲の所望の空気流を可能にする。なお、穴サイズは約25um~約200umの範囲であり、より好適には、穴サイズが約73ミクロン~約83ミクロンである状態で流速は約40mL/分である。
【0052】
代替的に、空気流のレベルは変動し得る。特定の実施形態では、空気流のレベルは治療レベルの真空に関連付けられる。すなわち、より真空のレベルが高いほど、通気要素の大気側とチャンバの内部との間の圧力における差異に起因する、より高いレベルの空気流がもたらされ得る。特定の実施形態では、真空源は、治療レベルの真空を、単一値よりもむしろ特定範囲内に維持するために、様々な様式で使用され得、空気流のレベルは真空のレベルと呼応して変動し得る。
【0053】
関連する態様では、本発明は、本明細書で記載の治療装置を個人に結合することと、治療レベルの負圧をチャンバ内に印加することと、を含む、負圧、正圧、または中立圧力の治療を、係る治療を必要とする個人に適用する方法に関する。cNEP(連続外部負圧)気道支持装置の場合は、治療装置は個人の気道の開存性を高め得る。係る方法は、睡眠時無呼吸の治療、鼾の治療、(睡眠時、または、完全または部分的な鎮静状態が施される医療処置の際における)完全または部分的な上気道虚脱の治療、完全または部分的な上気道閉塞の治療、例えば損傷または手術により生じた創傷の負圧治療のために実施され得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】粘弾性発泡化組織境界面表面110、非接触基板境界表面120、および発泡エラストマー内の1つまたは複数のガスポケット130を含む、開キャビティ皮膜済み発泡エラストマー100の断面を示す図である。
図2】発泡エラストマー100で完全に覆われた組織境界面表面を表す斜線エリアを示す、cNEP気道支持装置140を示す図である。
図3】発泡エラストマーが装置の皮膚接触エリアのうちの大部分を形成するよう発泡エラストマー100で部分的に覆われた組織境界面表面を表す斜線エリアを示す、cNEP気道支持装置140を示す図である。
図4】粘弾性発泡化された組織境界面表面110の幅の全域にわたって一定のピッチ間隔で隣接して配置された発泡エラストマー製の連続的な同心円ビーズ150を有するcNEP気道支持装置140を示す図である。
図5】粘弾性発泡化組織境界面110、空気ポンプのためのアパーチャ115、鼻梁の概略位置143、頬骨の概略位置147、および、顎骨の概略位置149を含む、部分顔面マスク140の後方表面を示す図である。
図6】外辺部顔面密閉表面153、顔面遮蔽体125、外辺部顔面密閉表面153の内部に配置された部分顔面マスク140、鼻梁の概略位置143、頬骨接触表面の概略位置147、(外辺部顔面密閉表面153の下方部分により覆い隠された顎骨接触表面の概略位置149)を含む、全顔面マスク150の後方表面を示す図である。
図7】鼻部カップおよび外側組織接触表面、粘弾性発泡化組織境界面表面110を含む、鼻部クッション160の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明、および、本発明の様々な特徴および有利な詳細は、添付の図面において図示され、かつ以下の記載において詳述される非限定的な実施形態を参照すると、より詳細に説明されるであろう。これらの図面で示されるすべての特徴物の縮尺率が必ずしも一定ではないことに注意すべきである。周知の構成要素および処理技術に関する説明は、本発明が不必要に不明瞭化されることを避けるために、省略した。本明細書で使用されるすべての事例は、単に、本発明が実施され得る方法の理解を支援し、当業者が本発明を実施することをさらに可能にすることを意図したものである。したがって、これらの事例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。これらの図面では、類似の参照符号は、いくつかの図面を通して、対応する部分を指す。
【0056】
本発明では、粘弾性発泡体を含む器具は生体組織または同様の表面に接触するよう構成される。理想的には、器具の接触表面は、物質が個人間の解剖学的差異に適応することを可能にする粘弾性特性と、所与の個人による動きの結果として発生し得る変化と、の間の適切なバランスを提供する。なお前者の粘弾性特性は、物質が流動/適応することを可能にする低い粘性係数を指し、後者の変化は、物質が回復することを可能にする低い弾性係数を指す。ショア000スケール範囲まで延長する非常に低い(組織のように)デュロメータ硬度、固有の粘性、閉じられた細胞表面、強化された洗浄可能性、および、強化された耐久性について、様々な実施形態において特に注目すべきである。
【0057】
加えて、接触表面は理想的には、器具が生体組織上で摺動しその結果として普通ならば皮膚に対する摩耗もしくは擦傷または内部埋入物移動が生じる事態を防止し、かつ、静的状態および動的状態の両方において器具と生体組織との間に気密性密閉が維持されることを支援するレベルの粘着性を含む。接触表面は、硬さの点において組織に類似し、皮膚の敏感さまたはアレルギー反応の点において極めて低く、かつ、微生物の成長を適度に防止するべきである。最終的に、反復使用される用途(例えば、皮膚接触などの外部適用)で使用された場合、洗浄は、境界面物質を劣化させないのみではなく、表面粘性が維持される状態で、汚損、汚れ、無精ひげ、化粧、および/または汗が除去されるよう、支援されるべきである。
【0058】
本発明の目的(すなわち、器具と生体組織との間の追従性境界面)を達成することに関して、弾性発泡体のデュロメータ硬度を減少させると、それに対応して粘弾性係数(貯蔵係数および損失係数により測定された係数)も減少することが確認されている。発泡剤濃度が増加すると、その結果として、粘弾性係数は、デュロメータ硬度ほどの影響はないにせよ、減少する。
【0059】
本明細書では、エラストマー材料の発泡化が、粘着性付与剤を添加することなく、表面粘性を達成するために使用され得ることも確認されている。低濃度(例えば5%未満、および好適には3%未満)の発泡剤は、装填されたときに発泡化されない変形体よりも高い表面粘性を有する追従性構造物を提供する。
【0060】
したがって洗浄可能性を高めるために、エラストマー発泡化物質は、製作時に「皮膜で覆われ」得る。皮膜で覆われることにより、通常は開かれているはずの表面の細胞構造が閉じられ、係る表面の開かれた構造が、抗汚染性を示す一体的に閉じられた連続的表面で置きかえられる。
【0061】
以下は、本発明において使用するための粘弾性発泡体の好適な粘弾性特性である。
【表1】
【0062】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、生体組織または同様の表面に接触し、かつ、快適性および密閉効率を最大化し、最終的に装置有効性およびユーザ追従性を最適化するよう設計された、正圧、負圧、または中立圧力の治療装置の1つまたは複数の表面を画成する。特定の実施形態では、器具の非組織接触部分(非接触部分)は、粘弾性発泡体要素、および、器具と生体組織に接触する粘弾性発泡体との間の境界面に対する支持を提供する。特定の実施形態では、粘弾性発泡体は、被術者の上気道におよそ対応する表面上の被術者の前方頸部領域上に配置されたときに個人の上気道を開く際に使用するために以下で説明するように身体の1部分を覆うよう構成された負圧チャンバに貼り付けられ得る。
【0063】
この技術の例示的な適用は限定されることを意図するものではない。粘弾性発泡体はさらに、例えば、ECG電極ならびにEKG電極などの生体データを収集するための生体組織接触の注入部位(単数または複数)、持続血糖モニタリング(CGM)システム、気管チューブ、カテーテル、医療用バルーン、部分顔面マスク(図5。なお図5は、発泡エラストマー組織境界面110、空気ポンプのためのアパーチャ115、鼻梁の概略位置143、頬骨の概略位置147、および顎骨の概略位置149を含む、部分顔面マスク140の後方表面を示す)、全顔面マスク(図6。なお図6は、外辺部顔面密閉表面153、顔面遮蔽体125、外辺部顔面密閉表面153の内部に配置された部分顔面マスク140、鼻梁の概略位置143、頬骨接触表面の概略位置147、(外辺部顔面密閉表面153の下方部分により覆い隠された顎骨接触表面の概略位置149)を含む全顔面マスク150の後方表面を示す)などの医療器具を含むがこれらに限定されない、組織部位に対する限定された接触もしくは長期的な接触または係る組織部位の治療のための追加的な器具の1つまたは複数の接触表面として使用され得る。なお外辺部顔面密閉表面153および部分顔面マスク140の密閉表面は、完全にまたは部分的にエラストマー物質110で覆われ得る。
【0064】
粘弾性発泡体はさらに、眼球保護マスク、人工肛門バッグ、耳栓、イヤフォン、ヘッドフォン、ゴーグル、スポーツ用品、ブラジャー、その他を含むがこれらに限定されない、組織部位に対する限定的もしくは長期的な接触または組織部位の治療のための追加的な器具の1つまたは複数の接触表面として使用され得る。粘弾性発泡体は、組織に優しい境界面が得られるよう当該粘弾性発泡体が接触する生体組織を細密に模倣する圧縮特性および剪断特性を含む、全方向における追従性を提供する。さらに、粘弾性発泡体要素は、耐久性、耐摩耗性、剪断吸収性、圧縮性、形状適合性、快適性、および洗濯可能性を有する。粘弾性発泡体は、スキューバ用またはその他のマスクとしても使用され得る。なお、ここでは粘弾性発泡体は、約1atmの圧力で少なくとも10分間でマスクの10%しか液体で充填されないよう、液体に対して流体的に密閉される。ただし、この液体は、真水、海水、オイル、または、自由に流動するが一定の体積を有する任意の物質であり得る。
【0065】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体要素は以下に示す密度、デュロメータ硬度、およびプローブ粘性特性を含む。
【表2】
【0066】
(EFMFP)は弾性発泡物質製造プロセス(Elastomeric Foam Material Fabrication Process)であり、粘弾性発泡体が硬化される様式により定義される。EFMFPは「開キャビティ」処理または「閉キャビティ」処理により分類される。本明細書で使用される開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスは、成形機能の外部で硬化するために物質上に粘弾性発泡体要素を塗布することにより定義される。開キャビティ処理では、粘弾性発泡体は、物質上に単に貼り付けられ、任意の所望の様式で(例えば、室温で、熱、UV光が印加される状況下で、または、これらの組み合わせで)硬化されることが許可される。本明細書で使用される閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスは、鋳型内の物質に対して粘弾性発泡体要素を硬化させるために物質を含む閉じられた鋳型に粘弾性発泡体要素を略真空下で塗布または注入すること(例えばオーバーモールド加工)により定義される。これらの処理における硬化は、任意の好適な様式で(例えば、触媒、熱、UV光、またはこれらの組み合わせを適用することにより)達成されることが可能である。
【0067】
密度は、単位体積あたりの物質の質量により測定される粘稠性の度合い(例えば、立方センチメートルあたりのグラム数(g/cm))として定義される。開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、粘弾性発泡化物質の密度は好適には0.1~0.8g/cmの範囲、より好適には0.2~0.7g/cmの範囲、および最も好適には0.3~0.5g/cmの範囲である。閉キャビティ粘弾性発泡化物質製造プロセスでは、粘弾性発泡化物質の密度は好適には0.4~0.9g/cmの範囲、より好適には0.5~0.8g/cmの範囲、および最も好適には0.6~0.7g/cmの範囲である。
【0068】
デュロメータ硬度は、ASTM D2240スケールにより測定された硬さの測定値として定義される。開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、デュロメータ硬度は、約10ショア00未満、より好適には約50ショア000未満、最も好適には約5~30ショア000の範囲である。閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、デュロメータ硬度は、約10ショア00未満、より好適には約80ショア000未満、および最も好適には約20~40ショア000の範囲である。
【0069】
プローブ粘性は、ASTM D2979 Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesivesにより測定された、接着剤状の要素と接着されたプローブとを分離させるにあたり要求される力として定義される。開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、プローブ粘性は、好適には約9mJ/cm未満、より好適には7mJ/cm未満、および最も好適には約5mJ/cmの範囲である。閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、プローブ粘性は、好適には約9mJ/cm未満、より好適には7mJ/cm未満、および最も好適には約5mJ/cmの範囲である。
【0070】
特定の実施形態では、粘弾性発泡化物質要素は、シリコーンゴムと発泡剤との組み合わせを混合させ、それにより発泡細胞構造が発生し、硬化時に、好適には50~300%の範囲、より好適には75~250%の範囲、最も好適には100~200%の範囲で厚さが増加することにより生成される発泡シリコーンゴム物質である。
【0071】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面は、厚さが、好適には0.030”~0.375”の範囲、より好適には0.050”~0.250”の範囲、または最も好適には0.075”~0.150”である、粘弾性発泡化物質層を含む。
【0072】
発泡剤は、室温においてシリコーン発泡体を、または熱硬化性シリコーンエラストマーシステムを生産するために使用される。発泡シリコーンゴム物質は形状適合性を有するよう設計される。触媒の添加(例えば、鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、白金触媒、または酸触媒)により、室内においてシリコーンゴム発泡体が高速で生成される。発泡体細胞構造は、硬化処理の際にガスを放出することにより作られ得る。発泡体は、特定の添加剤(例えばアンモニウムバイカルボナートなど)を使用することによっても作られることが可能である。係る添加剤は、熱を加えることを介して、高粘度ゴム(HCR)または液状シリコーンゴム(LSR)から細胞状の発泡体を作ることが可能である。
【0073】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、発泡体の本体全体を通じて見られるよりも高い密度の連続気泡型または独立気泡型の基材を表面上において促進するよう処理され得る。例えば、シート形成は、その連続的なポリマーシートフィルム担体上に被覆される表面上で生成されるよりも高い密度の皮膜被覆層を、開放雰囲気に曝露された表面上において生成する。係るより高い密度の基材は、湿気の吸収、粒子または湿気の汚染、および/または微生物の成長を緩和するにあたり望ましいものとなり得る。加えて表面が不浸透性を示す場合、洗浄はより容易となり、その悪影響はより小さくなる。
【0074】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、流体の侵入に対して不浸透性を示しかつ汚染または微生物の成長に対して耐性を有する粘弾性発泡体が生成されるよう、デュロメータ硬度が小さい追加的皮膜被覆層で被覆され得る。粘弾性発泡体上の皮膜被覆層は、全体として二重のデュロメータ硬度の構造を生成する。しかし全体的なデュロメータ硬度は、粘弾性発泡体と皮膜被膜層との比が10:1を越える場合には粘弾性発泡体により圧倒的に支配される。
【0075】
特定的な実施形態では、粘弾性発泡体のシリコーンゴム成分もしくは皮膜被膜層のいずれか、またはその両方は、創傷ケア療法における使用において一般的であるシリコーンの医療グレードのソフトスキン粘着剤(SSA)群の中から選択される。SSAシリコーンは、外傷性の皮膚除去が生じない、皮膚剥離が生じない、および皮膚もしくは毛髪が引っ張られる痛みが生じない、という利点を有する。他の利点は、SSAは、代替物とは異なり、低粘度の成分を有することである。その結果、SSAの流動性が制限され、それによりSSAは皮膚の表面上における角質層細胞および脂質の吸収が制限される。SSAの粘着表面は比較的清潔な状態を維持し、その完全性を損なうことなく繰り返して取り外し、再使用、および洗浄することが可能である。
【0076】
高粘度ゴムは、有用な最終製品へと成形、押出成形、またはカレンダ加工され得る物質を生成するために所望により充填剤(例えばシリカなど)が混合された高分子量シリコーンポリマーからなる。液状シリコーンゴム(LSR)は、HCRのように、シリカで強化され得るが、通常は、低分子量ポリマーを使用し得る。LSRは多くの場合、射出成形機械を用いてポンプ圧送、および硬化されて、形成済み部品が形成される。
【0077】
特定の実施形態では、粘弾性発泡体は強化用充填剤をさらに含み得る。強化用充填剤を添加することにより、例えば硬さ、引っ張り強度、引裂強さ、および湾曲疲労などの粘弾性発泡体の弾性機械特性が顕著に改善され得る。強化用充填剤は、例えばヒュームドシリカ、シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、二酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、石英、カルシウム、カルボナート、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラス繊維、ガラスミクロスフェア、ガラスマイクロバルーン、ガラスビーズ、炭素繊維、シリコンカーバイド、ポリスチレンビーズ、および金属繊維などの酸性充填剤を含む群より選択され得る。
【0078】
特定の実施形態では、組織境界部分は、組み合わされた状態でまたは部分的に、好適にはHCR物質であり、さらに好適にはLSR物質である、シリコーンゴム物質を含む。シリコーンゴムのデュロメータ硬度は、好適にはおよそ1~20ショアAデュロメータ硬度の範囲、およびより好適にはおよそ1~10ショアAデュロメータ硬度の範囲である。さらにシリコーンゴムを発泡化させると、物理的または化学的に架橋結合され得る3次元網状組織の疎水性ポリマー鎖が作られ得る。発泡化されたLSR物質の顕著なガス含有量のために、発泡化されたLSRは天然の軟組織に密接に類似し得る。発泡化特性は、シリコーンゴム物質に加えられる発泡体の添加(例えばビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンポリマーに分散されるアンモニウムバイカルボナート)により達成されることが可能である。これらの事例では、発泡剤とシリコーンゴムとの重量比率は、好適にはおよそ0.1%~10%の範囲、より好適にはおよそ0.5%~5%の範囲、および最も好適にはおよそ1.5%~3%の範囲である。発泡化されたLSRの形成において用いられる追加的な薬剤は、白金触媒および有機スズ化合物触媒を含み得るが、これらに限定されない。
【0079】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は、患者の組織と追従性形状一致境界面との間の摺動を緩和または排除するにあたり十分に高い表面張力を有する組織境界面を有する粘弾性発泡化物質を含む。組織境界面の粘性はさらに、より広い断面の解剖学的変化に対応すること、および必要な境界面密閉部を作ること、に対して寄与する。
【0080】
装置のさらに望ましい属性または側面は、例えば比重、引っ張り強度、伸長、引っ張り係数、引裂強さ、デュロメータ硬度、およびプローブ粘性を含むがこれらに限定されない追加的な物質特性を通して定められ得る。
【0081】
比重は、物質の密度と基準物質の密度との比(例えば、エラストマー物質と水の密度の比)として定義される。本装置の様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質の比重は約0.49g/cm~約0.72g/cmの範囲である。
【0082】
引っ張り特性(例えばASTM D412を使用して測定される値)は、例えば引っ張り強度、伸長、および引っ張り係数に対する値を得ることができる。
【0083】
引っ張り強度は、物質が伸長負荷に耐える能力として定義される。なお引っ張り強度(最大引っ張り強度力)は、伸長される物質が破裂する直前まで耐えることができる最大応力により測定される。本発明の様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質の引っ張り強度は、好適には約31psi~約114psiの範囲、および、より好適には約31psi~約62psiの範囲である。
【0084】
伸長は、破裂後に測定された粘弾性発泡化物質の長さにおける増加として定義され、元のゲージ長さのパーセンテージとして表現される。なおゲージ長さは、伸長計算が実施される標本にそった距離として定義される。本発明の様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質の伸長は、約438%~約817%の範囲、および、より好適には約438%~約747%の範囲である。
【0085】
引っ張り係数は、応力と歪みとの間の関係を定義する硬さの測定値として定義される。本発明の様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質の引っ張り係数は、約5MPa~約10MPaの範囲、およびより好適には約6MPa~約7MPaの範囲である。
【0086】
引裂強さ(例えばASTM D624を使用して測定された値)は、試料を破断または引き裂くにあたり要求される単位厚さあたりの力(インチあたりのポンドPpi)の測定値である。本発明の様々な態様では、粘弾性発泡化物質は、約8Ppi~約32Ppiの範囲、およびより好適には約9Ppi~約14Ppiの範囲の引裂強さを有する。
【0087】
本発明の様々な態様では、粘弾性発泡化物質のさらなる属性は、貯蔵、使用、および/または洗浄を含む一定の時間を越えて(例えば硬化の時間を越えて)維持される粘性特性を含み得る。特定の実施形態では、機材Polyken Probe tack PT-1000を使用してASTM D2979 Standard Test Method for Pressure Sensitive Tack of Adhesivesにより測定される粘弾性発泡化物質のプローブ粘性値は、約4週間以上の時間的期間において約65%以上のプローブ粘性を維持される状態で、好適には約4週間以上の期間にわたり約73%以上のプローブ粘性が維持される状態で、および、最も好適には約83%以上のプローブ粘性が維持される状態で、1週間以上の硬化に対して約0.43mJ/cm~約2.52mJ/cmの範囲で維持される。
【0088】
特定の実施形態では、抗微生物性組成物が粘弾性発泡体要素に添加される。抗菌特性、抗真菌特性、および抗ウイルス特性は、任意の好適な物質において、例えば硫酸銀、クエン酸銀、酢酸銀、炭酸銀、乳酸銀、およびリン酸銀の形における銀塩の添加により、伝えられ得る。加えて、およそ15重量%の銀イオンを含むゼオライトも使用され得る。好適な物質(例えばポリヘキサメチレンビグアニド)も当該技術分野において周知である。代替的に静菌特性、静真菌特性、および帯電防止特性は、例えば、粉末、溶媒、溶液の形態で被覆中に配合されるかまたは未硬化の粘弾性発泡体ポリマーとともに粉末形態において合成された、シロキサンポリマーの添加により、伝えられ得る。
【0089】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は、漏出しない組織境界面を形成するために器具の組織境界部分に対して、好適には機械的に固定されるか、または、より好適には接着層の差し挟むことにより接着されるか、または、最も好適には機械的手段もしくは追加的な接着剤をまったく用いることなく直接的に吐出もしくは硬化接着された、粘弾性発泡化物質を含む。特定の実施形態では、発泡体の取り付けおよび保持のための機械的特徴を器具に対して提供するためにオーバーモールド加工が用いられ得る。
【0090】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は、漏出しない組織境界面を形成するために、差し挟むための接着層(例えばRTV(室温加硫)シリコーンゴム)を使用して、器具の組織境界部分に対して、シート形成され、硬化され、その後に形状切断され、機械的に固定されるかもしくは接着ボンドされる、粘弾性発泡化物質を含む。
【0091】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は多層構成のシート形成および硬化された発泡シリコーンゴム物質を含み、この発泡シリコーンゴム物質は、薄くかつ加硫処理されない削合またはカレンダ加工されたHCR物質で被覆され得る。このHCR物質は、漏出を生じさせない境界面が形成されるよう、器具の組織境界部分上に加熱接着される接着層として機能する。
【0092】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は粘弾性発泡化物質を含み、この粘弾性発泡化物質は、薄い接着膜(例えば、シリコーン製の感圧性接着膜)が張り合わされ得る。この感圧性接着膜は、漏出を生じさせない境界面が形成されるよう、器具の組織境界部分上に加圧接着される接着層として機能する。
【0093】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は、漏出しない組織境界面を形成するために、環状部品のフランジ要素(図2、110)上に直接的にオーバーモールド加工され、硬化され得る、粘弾性発泡化物質を含む。本明細書で使用されるオーバーモールド加工は、すでにモールド成型された形状に物質を追加し、それにより最終生成物を作る過程である。なお最終生成物は、追加された物質により部分的または完全に覆われ、かつ、皮膚接触表面に相当する元の部品の縁部よりもわずかに大きいかまたは係る縁部に覆い被さる。
【0094】
特定の実施形態では、本発明は、器具の非接触表面120の幅(発泡シリコーンゴムの幅は、器具の基質の表面の全域にわたり一定であるか、または変化する)の全域にわたり連続的に吐出され、露出しない組織境界面を形成するために硬化される、粘弾性発泡化物質を含む。cNEP気道支持装置140を示す図2において見られるように、斜線エリアは、発泡エラストマー100で部分的に覆われた組織境界面表面を表す。
【0095】
特定の実施形態では、粘弾性発泡化物質は連続的に吐出され、器具の組織境界部分の形状に対応する1つまたは複数の離散的な同心円環状リングおよび/またはリボンにおいて硬化される(図4、150)。なお環状リングは、2つの同心円間のエリアまたは形状により囲まれ、係るエリアまたは形状を含む、パターンとして定義される。これらの離散的な同心円環状リングまたはリボンは、器具の非接触部分上において、同一または変化する厚さ、および/または同一または変化する幅、またはこれらの組み合わせを有し得る。前記のリングまたはリボンは、好適には、熱硬化の際に独立的かつ自立的となるようなピッチ間隔が係るリングまたはリボン間に含まれるよう吐出されてもよく、または、より好適には、係るリングおよび/またはリボンが熱硬化されると拡張および合体して、漏出しない組織境界面が形成されるような十分に狭いピッチ間隔が係るリングまたはリボン間に存在するよう吐出されてもよい。本明細書で使用される合体は、リングまたはボタンのうちの1つまたは複数の外側縁部が接触または一緒に流動し、その結果、リングまたはリボンの、均一な特徴が、および/または、山および谷の特徴が形成されることとして定義される。なお、山は、リングまたはボタンのより薄い領域である谷と比較して、リングまたはリボンのより厚い領域として定義される。本明細書で使用されるピッチ分離は、2つの反復する特徴間の寸法的差異(例えば、粘弾性発泡化物質の同心円環状リングの中心線間の寸法的分離)として定義される。
【0096】
特定の実施形態では、組織境界部分は、連続的に吐出され、器具の組織境界部分の形状に対応する連続的な螺旋状リングおよび/またはリボンにおいて硬化される粘弾性発泡化物質を含む。前記の連続的な螺旋状リングまたはリボンは、好適には、熱硬化の際に独立的かつ自立的となるようなピッチ間隔が連続的に吐出されたリング/リボン間に含まれるよう吐出されてもよく、または、より好適には、係る連続的なリングおよび/またはリボンが熱硬化されると拡張および合体して、漏出しない組織境界面が形成されるような十分に狭いピッチ間隔が係るリングまたはリボン間に存在するよう吐出されてもよい。
【0097】
特定の実施形態では、組織境界部分は、ドット2次元配列パターン(例えば熱硬化時に拡張および合体して連続的な漏出しない組織境界面が形成されるような十分に狭いピッチ間隔が存在する状態)において吐出された粘弾性発泡化物質を含む。
【0098】
特定の実施形態では、本発明の粘弾性発泡体は、必要な治療的境界面密閉性を損なうことなく、予め存在する無精ひげまたは無精ひげの夜間における成長が支援されるよう、十分な柔軟性および形状適合性を有するであろう。粘弾性発泡化物質において、好適なシリコーンゴムのデュロメータ硬度および発泡剤濃度の範囲はそれぞれ、1~10ショアAの範囲、および、1.5~3%の範囲である。結果的に生成される粘弾性発泡体は、10ショア00以下の最終的なデュロメータ硬度を有し、好適にはおよそ1~40ショア000の範囲の最終的なデュロメータ硬度範囲を有する。
【0099】
特定の実施形態では、追従性形状一致境界面要素は発泡シリコーンゴム物質を含み、係る発泡シリコーンゴム物質の発泡体細胞構造は、好適には、所与の粒径および濃度の塩がLSR調合物と均一に混合された後に洗浄(すなわち溶解または除去)されて細胞構造が残される除去過程により生産され、および、より好適には、所与の粒径および濃度の発泡剤がLSR調合物と均一に混合された後に熱の印加により膨張されて細胞構造が作られるガス膨張過程により生産される。
【0100】
所望により、接着層またはゲルが、ユーザと接触する追従性形状一致境界面要素の表面上に配置される。例えばシリコーンゲルが、軟性および形状適合性を有するよう設計される。これらのシリコーンゲルは、エラストマーの場合に一般的であるよりもより少ない架橋結合を有することによりゲル状の粘稠性を達成し、全般にシリカ強化されない。未硬化ゲルは容易に注入可能であり、手による混合が可能であり、仕上げパーツへのモールド成型が可能である。接着層またはゲル層は、装着者上での装置の移動を減少させるとともに、装着者に対する密閉性およびクッション性を高めるためのものである。これらの要素は、圧力変動が個人の組織に沿って患者に対する治療装置の全接触点にわたって最小となる状態で、およそ均一な接触圧力を維持するよう構成される。「最少化された圧力変動」は、密閉要素の接触表面と患者の組織と間の任意の地点における圧力が、接触表面の全域にわたり、平均圧力からわずか約20%だけ、および好適にはわずか約10%または約5%だけ、変動することを意味する。本明細書で使用される外側接触表面は、個人の組織と接触し、それにより接触点が形成され、器具の組織境界部分が密閉される、治療装置の密閉要素の表面である。
【0101】
特定の実施形態では、チャンバおよび密閉要素からなる治療装置は、チャンバとユーザとの間の接触表面となるよう構成される。密閉要素は、チャンバとユーザとの間の接触表面となるようよう構成され、本明細書で記載のように、負圧治療装置とユーザの3次元的に変動する組織表面との間の境界面上で、この領域における負荷が均等化され、それにより、略均一な接触圧力がこの不均一な表面上で維持されるよう、構成される。
【0102】
特に、本明細書で記載の治療装置は、上気道閉塞を緩和するための外的な治療器具に関するが、これらに限定されない。すべての表、図面、および請求項を含むその全体が参照することにより本願に援用される米国特許出願整理番号第12/002,515号、米国特許出願整理番号第12/993,311号、および米国特許出願整理番号第13/881,836号は、気道閉塞を緩和するための治療器具について説明する。個人の上気道の開存性を高めることは、鼾、睡眠時無呼吸、(睡眠時、または、何らかのレベルの鎮静状態を要求する医療処置の際における)完全または部分的な上気道虚脱などの諸症状を緩和する。本明細書で記載したように、装置は、ユーザの顎の下方で頚部の上部呼吸経路に重なる軟組織に対応する外部箇所において嵌まるよう構成される。
【0103】
様々な実施形態では、粘弾性発泡化物質特徴物は、多様な温度の範囲において所望の物質特性を維持する能力を含み得る。これらの特性は、さらに、装置の粘弾性発泡化物質の組織接触表面が、移動しかつ湾曲する組織境界面表面、組織状の境界表面、ならびに、非組織接触表面(例えば剛性または可撓性を有する装着可能な器具の表面、または係る器具の部品などの、移動または湾曲する表面である場合もあり、そうでない場合もある)に、形状一致することを可能にする。
【0104】
本明細書で記載のように、粘弾性発泡化物質は、生体組織表面と、組織状の表面、および/または、剛性もしくは湾曲性を有する装着可能な器具の非組織表面もしくは係る器具の部品と、の間の境界面として使用され得る。粘弾性発泡化物質は、装置の周期的または長期的な使用を可能にし、かつ、支援する、追従性および快適性を有する嵌合境界面を提供する。使用期間は、用途、必要とされる治療期間、保護、その他に依存し得るが、粘弾性発泡化物質は、粘弾性発泡化物質を含まない器具の嵌合および手触りの有害な制限を緩和することが可能である。
【0105】
粘弾性発泡化物質境界面から利益を受ける器具は、化学物質管理計画(CHP:Chemical Hygiene Plan)により規定および要求され得、医療装置および/または治療装置(補綴装置、正圧治療装置もしくは負圧治療装置、CPAP器具、cNEP器具、ラリンジアルマスク(LMA)、鼻カニューレ、鼻ピロー(図7)、気道挿入装置、カテーテル保護/密閉システム、など)とユーザとの間の境界面を含み得るが、これらに限定されない。さらなる用途は、個人防護具または軍用防護具(PPE)とユーザとの間の境界面を含み得るが、これらに限定されない。用途は、さらに、呼吸保護、粒子および/またはガス用マスクの境界表面、および/または、器具および組織、組織状表面および/または非組織表面の領域を密閉するために使用される防護服または防護壁の境界表面を含み得る。用途は、圧力要求自給式呼吸器(SCBA)、手袋、脚部および眼球保護、耳栓、イヤーマフ(雑音減衰および保護用)、ニーパッド、エルボーパッド、および/またはリストパッド、ヘルメット、ハット、全顔面型または部分顔面型の正圧式または負圧式呼吸器、および/または全身スーツ、面、カツラ、耳、鼻、額用の補装具、頬、顎、眉毛器具、および小型メイクアップFX小道具、その他を含む劇場用器具を含むがこれらに限定されない、レベルA、レベルB、レベルC、および/またはレベルD、労働安全衛生管理局により格付けられた防護も含み得る。
【0106】
様々な実施形態では、発泡化弾性物質は例えば、シワ、深いシワ、ニキビ跡を充填するための、または、唇および頬に、もしくは例えばより大きい構造においては胸部または臀部に、容積を追加するための、注入可能であるかまたは予成形済みの物質の形態であり得る。シリコーンゴムは、コラーゲンおよびレスチレンなどの充填剤と比較してより安価であり、加工が容易であり、副作用が患者の1%未満において発生する。さらに、コラーゲンおよびレスチレンなどの充填剤は、約6ヶ月以内で身体による吸収が可能であるため、シリコーンはより永久的な選択肢である。未制御またはフリーシリコーンは全般に身体内では良好に許容されず、したがって硬化済みコーティング、硬化注入、または事前硬化済み埋入物は好適となる。本明細書で使用される硬化済みコーティングは、未硬化の状態(液体またはゲル状であり得る)において所望の表面に対して貼り付けられた後、その最終的な粘弾性発泡化された形態へと、例えば熱、UV、または化学物質触媒を介して、硬化された粘弾性発泡化物質の層として定義される。本明細書で使用される硬化注入は、未硬化状態の粘弾性発泡化物質および触媒を所望の位置に注入することとして定義される。なお粘弾性発泡化物質は、注入を通して配置された位置において、その最終的な粘弾性発泡化された形態へと硬化することが可能である。本明細書で使用される事前硬化済み埋入物は、所望の形状へと硬化された後、所望の位置において利用または埋入される、粘弾性発泡化物質として定義される。
【0107】
特定の実施形態では、粘弾性発泡化物質は、挿入の際に血管壁を保護すること、装置の展開力または拡張力を低下させること、ならびに、装置の全体部分、部分的部分、または選択された部分間に組織状の境界面を提供することにより、カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、グラフト、および/またはステントグラフトのためのコーティングとして使用され得る。さらに粘弾性発泡化物質は、臨床転帰が改善されるよう再狭窄を低下させるために抗増殖剤と混合され得る。本明細書で使用される展開力は、その初期直径から作動直径に展開する際にステントなどの装置により作用される、外向きの力(正確な内径を有するガラス管内で測定された値)として定義される。好適な試験機(WL2100;Withlab、Gunpo、Gyeonggi-do、韓国)が当該技術分野で周知である。
【0108】
さらなる実施形態では、粘弾性発泡化物質は、尿管壁、腎臓、膀胱、および尿道を保護し、ステントの全体部分、部分的部分、または選択された部分間に組織状の構造および/または境界面を提供することにより、尿管ステントとして、または尿管ステントのためのコーティングとして、使用され得る。
【0109】
特定の実施形態では、粘弾性発泡化物質は、非破裂性の大動脈腸骨動脈瘤(AAA)または類似の症状の治療において使用され得る。なお係る治療では、例えば、大動脈壁に固定するためのステント部分と、導管の網状組織を含むグラフト部分と、を含むステントグラフトが動脈瘤を治療するために使用される。ステントグラフトは、圧縮状態においてカテーテル内で送達され、圧縮状態から開放されたとき、ステントは血管壁と係合し、グラントは拡張されて血液流を誘導する。次に動脈瘤は、充填物質を直接的に注入することにより、または、適切な充填物質(例えば粘弾性発泡化物質)を使用して密閉チャンバ、エンドバッグ、および/または他の支持タイプの構造体(例えばリング形状リブ)を膨張させることにより、グラフトと血管壁との間の空間を充填することを介して密閉される。粘弾性発泡化物質の成分が混合されると、架橋結合が開始され、粘弾性発泡化物質の充填が形成される。これらの成分の混合は、グラフトの充填の以前に行われてもよく、または充填時にグラフト内で混合されてもよい。粘度は、混合の後、充填を支援するために低い値に維持された後、粘度が大きくなり、液体から変化して、その結果、柔らかく、追従性を有し、しかも硬い固体が形成される。混合された粘弾性発泡化物質はさらに、医師が適切な展開を視認することを支援するためのコントラスト物質を含み得る。係るコントラスト物質はグラフトの膨張可能な密閉チャンバに注入される。
【0110】
特定の実施形態では、粘弾性発泡化物質は、生体組織と補綴装置との間の境界面として使用され得る。粘弾性発泡化物質は、生体組織の構造の支持、生体組織の維持、生体組織の治療に対して必要である重要な特徴を満足するとともに、補綴装置と生体組織との間のより好適な機能定関係を提供し得る。粘弾性発泡化物質は、粘弾性発泡化物質の物理的特性を生体組織の全部または一部と補綴物との間のより好適な境界面へと変化させることにより、複雑な組織の構造的階層を再現するよう設計され得る。粘弾性発泡化物質は、生体組織および補綴物における変動を吸収するために、均一な厚さまたは変動する厚さにおいて、および、均一なデュロメータ硬度または変動するデュロメータ硬度において、生体組織と補綴物との間の層を形成するために使用され得る。さらに、粘弾性発泡化物質のプローブ粘性は、生体組織に対する粘弾性発泡化物質の粘着を好適に付勢し、補綴物に対する粘弾性発泡化物質の粘着を好適に付勢し、それにより、より好適な境界面が補綴物とユーザとの間に提供される。さらに、粘弾性発泡化物質に固有の空気ポケットは、生体組織と粘弾性発泡化物質との間の湿気を捕捉または除去しつつ、粘弾性発泡化物質のプローブ粘性を実質的に保持することにより、発汗によるかまたは水との接触に起因する他の事例による水の飽和状態の際に、補綴物とユーザとの間の好適な粘着を提供し得る。
【0111】
本特許出願の目的のために、「約」という用語は所与の値の+/-10%を指す。
【0112】
本発明の負圧治療装置は、可撓性膜要素と、可撓性膜要素を通るアパーチャと、追従性組織境界部分と可撓性膜要素との間に気密性接続部を形成するために組織境界部分の周縁上の寸法に沿って可撓性膜要素の縁部または表面に沿って配置された組織境界部分と、を含む。チャンバ要素の非接触部分とチャンバ要素との間の接続部は、本明細書では接続部「根底部」と呼ぶこととする。接触表面の概略的形状において標的治療エリアは変動を吸収するための可撓性を有するが、本明細書で使用される追従性要素は、可撓性を有する要素(例えば追従性組織境界部分)として定義される。
【0113】
本明細書で使用される「周縁上の寸法」という用語は、組織境界部分の幅に沿った連続的位置を指し、いくつかの場合では、例えばチャンバ要素が器具の非接触部分に対して連続的に接触する箇所を指す。本明細書で使用される「根底部」という用語は、チャンバ要素が器具の非接触部分と接触する位置であり、チャンバ要素の厚さにより囲まれた幅を有する。チャンバ要素は、一体型構造体、単体構造体、または個別的構造体として、組織境界要素の非接触部分に固定され得る。「一体型構造体」は、2つ以上の構成要素を接合することにより構成された完全体であって、ひとたび接合された後は、装置を破壊しないかぎり分離不可能である単一片となる構造体を指す。「単体構造体」は、単一片として形成またはモールド成型された単一構造である構造体を指す。2つ(または3つ以上)の構造体が単一の作動構造体を形成するが、個々の特性を保持し、かつ、単一作動構造体の自然な使用の際に分離可能であり、分離後に再組立可能であるとき、2つの要素は「個別的構造体」である。
【0114】
治療部位の表面変動は、永久的および一時的の両方において(すなわち、下顎の形状、頚部から下顎までの遷移点、組織種類、瘢痕、顔面毛、および/または組織の欠陥、装着者の動きにより生じる密閉部の異なる部分に印加される差力、その他)、は負圧治療装置とユーザとの間の密閉を阻害してしまい得る。本発明、変動する顔面輪郭/特徴を吸収し、動きに適応し、それにより、より大きい快適性、減少した真空漏洩、および改善された治療効力をもたらし得る装置、システム、および使用方法を提供する。
【0115】
器具の可撓性膜要素および密閉要素は、硬さ、可撓性、および、個人の組織表面上における、均一な領域的追従性、および/または力負荷、を可能にする区域的特性を有するよう適応された、カンチレバー状の構造体、フープ負荷(hoop load)状の構造体、および/またはこれら2つの組み合わせを備える。本明細書で使用される「領域的追従性」は、装置が、装着者に対する接触表面上の表面および/または表面変動へと装置自体を「成型」することを可能にする、装置の特性を指す。後に説明されるように、均一な領域的追従性は、部分的には、チャンバ要素上の領域、密閉要素、またはその両方に関連付けられた区域的特性または構造的特徴により提供される。
【0116】
密封要素は、厚さおよび幅において均一であり得るが、治療装置の接触表面に沿った位置において望ましい構造特性を達成するために厚さおよび幅において変動することも可能である、可撓性を有する弾性物質を含むフランジの形態であり得る。さらに、密閉要素のフランジの根底部位置におけるチャンバ要素の位置は、治療レベルの負圧が印加されたときの治療装置の接触圧力を調整および均一化するために、変動され得る。「Device and Method for Opening an Airway」を発明の名称とし、2016年1月20日に出願され、参照することにより本願に援用される、米国仮特許出願第62/281,063号では、接触圧力を均衡化するためのフランジおよびチャンバ特性の変動について説明されている。
【0117】
特定の実施形態では、密閉要素は、クッション表面を提供するために発泡シリコーンゴムを含む1つの層または一連の層を含む追従性組織境界要素であり得る。フランジの内側表面は可撓性膜要素と接触し、追従性組織境界要素の外側表面はユーザの組織と接触する。2015年11月25日に出願され、「Chamber Cushion, Seal and Use Thereof」を発明の名称とし、参照することにより本願に援用される、米国仮特許出願第62/260,211号では、係るクッション性の密閉要素について論じられている。
【0118】
器具の組織境界部分は、可撓性および均一な領域追随性を可能にする区域的特性を有するよう適応される。本明細書で使用される「均一な領域追随性」は、追従性組織境界要素が装着者に対する接触表面上の表面および/または表面変動へと追従性組織境界要素自体を「成型」することを可能にする、追従性組織境界要素の特性を指す。本明細書で後に説明されるように、この均一な領域追随性は、部分的には、追従性組織境界要素上の領域に関連付けられた区域的特性または特徴により提供される。
【0119】
追従性組織境界要素は、流体的に密閉された発泡シリコーンゴム層を含む。「流体密閉」という用語は、チャンバの通常使用に対して要求される時間的期間にわたり空気が追従性組織境界要素を通過することを防止する発泡シリコーンゴム層を指す。例えばラテックス製風船は、係る風船の通常使用が6時間である場合、時間の経過とともにヘリウムが最終的には風船から漏出し得るという事実に関わらず、および、係る風船が以上な状況下におかれた場合には破裂し得るという事実に関わらず、「流体密閉」状態にある。
【0120】
特定の実施形態では、本発明の密閉要素は、頚部の前頸三角に概略的に対応する頚部の外部エリアにおける個人上の連続的接触表面に対して形状一致するよう構成された、負圧治療装置の接触境界面を提供する。解剖学的位置に「概略的に対応する」という用語は、実際の箇所、形状、またはサイズに対して密に接触するが、おそらく必ずしも完全、精密、または正確に接触するとは限らないことを指す。
【0121】
最も好適には、密閉要素は、個人に対して、概略的に、個人の下顎体の一方の側部上の第1顎角点に対応する第1場所から、個人のオトガイ隆起に対応する第2場所まで、個人の下顎体の他方の側部上の第2顎角点に対応する第3場所および個人の甲状軟骨に対応する第4場所まで、概略的に形状一致するよう設計され、第1顎角点に対応する概略的な第1場所まで戻るようさらに構成された治療装置の輪郭に従うよう構成される。
【0122】
本明細書で使用される顎角点は、下顎角における個人上の下あごの各側部上の概略位置を説明する。本明細書で使用される下顎隆起は、その中心が凹陥され得るがその両側が隆起して、オトガイ結節が形成される、顎の概略位置を説明する。本明細書で使用される甲状軟骨は、ヒトの喉頭の大きい軟骨の概略位置を説明する。
【0123】
密閉要素およびチャンバ要素は、治療レベルの圧力が印加されたときに装着者の組織に対して均一の接触圧力を作るよう設計される。密閉要素は、好適には、望ましい接触圧力特性を達成するための垂直幅(広さおよび狭さ)および厚さを有する。垂直幅成分は、密閉要素の外側縁部の先端部から根底部を経過して密閉要素の内側縁部の先端部までの密閉部の幅全体である。密封要素の幅は、楕円形の形状を有するチャンバを含み、さらに、概略的に上気道に対応する患者の頚部上の係合表面を収容するための中央湾曲を含み、負圧治療装置の一定の接触圧力を維持する、治療装置の不均一な形状に起因する箇所負荷変動を吸収するために、密閉要素の接触エリアの周辺軸に沿って変動し得る。
【0124】
密閉要素の様々な実施形態では、装置のフランジ要素上の位置は他の位置よりも実質的に広い幅であり得る。一態様では、全フランジ幅は概略的に28.0ミリメートル~概略的17.0ミリメートルまで変動し得る。本明細書で使用される「実質的に広い」は、1つの位置から他の位置まで、少なくとも約10%、より好適には少なくとも約20%、およびさらに好適には少なくとも約30%以上の、幅における増加を指す。例えば本発明の一実施形態では、ユーザの頚部の中央に概略的に対応する第4場所におけるフランジ要素の幅は、ユーザの下顎領域および顎角点領域に対応する第1場所および第3場所よりも、概略的に39%広い。より広い区域は、より大きい負荷の移動が必要とされる領域(例えば第2場所および第4場所)に見られ得、より狭い区域は、より小さい負荷の移動が必要とされる領域(例えばユーザ上の第1場所および第3場所)に見られ得る。
【0125】
フランジ要素の厚さも、解剖学的変動をおよび変動する真空断面積を吸収するために、治療装置の接触表面の周縁部に沿った垂直幅に沿って変動し得る。本明細書で使用される、厚いまたは狭いは、個人に接触するフランジの表面と、負圧治療装置の真空チャンバのチャンバ要素に接触するフランジ要素の(遠位)表面と、の間の距離を説明する。根底部におけるフランジ要素の厚さは、根底部の内部において概略的に4.5ミリメートルから1.0ミリメートルまで、根底部の外部において概略的に3.0ミリメートルから1.2ミリメートルまで、変動し得る。例えば、ユーザ上の第1場所および第3場所における接合部におけるフランジ要素の厚さは、根底部の内側において約1.6ミリメートルであり、根底部の外側において2.10ミリメートルであり得る。
【0126】
特定の態様では、装置のフランジ要素の場所は、いくつかの場所が他の場所よりも実質的に厚くなるよう、厚さにおいて変動し得る。例えばフランジ要素の場所は、1つの場所が他の場所よりも実質的に厚くなるよう、厚さにおいて変動し得る。本明細書で使用される「実質的により厚い」は、少なくとも約20%、より好適には少なくとも約30%、さらに好適には少なくとも約50%以上の、厚さにおける増加を指す。例えば、本発明の一実施形態では、概略的に第2場所における厚さは、第1場所および第3場所よりも概略的に64%厚く、第1場所および第3場所は第4場所よりも概略的に30%厚い。
【0127】
フランジ要素の厚さはさらに、根底部場所から、概略的に0.7ミリメートル~概略的に0.1ミリメートルの最終フランジ厚さまで、外向きにテーパし得る。テーパは根底部から始まりフランジの内側または外側縁部まで継続してもよく、または、テーパは、フランジ要素の先端部から、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%離間した地点において始まり、フランジ要素の内側または外側縁部まで、概略的に0.7~0.1ミリメートルの所望の最終厚さまで、継続してもよい。その内側または外側縁部におけるフランジのテーパは縁部効果の排除を支援し、その結果、最少化された組織の刺激および損傷を可能にする。本明細書で使用される「縁部効果」は、組織に対する鋭利な縁部の長期的な接触圧力により生じる組織の刺激(赤くなること、腫れ)を指す。縁部のテーパは、より大きい可撓性および柔軟性を有するフランジの縁部を提供する。
【0128】
チャンバ要素は、その長さに沿って硬く、フランジは長手方向には感知可能に湾曲しないであろう。したがって標的治療エリアの動的形状に対処することにおいて、治療装置の領域は、吸収的な設計特徴(例えば、ユーザ上に配置され、治療レベルの負圧が印加されたときに、高い加圧点を最少化し、その接触表面に沿った治療装置の圧力変動を解消するよう設計された、フランジ要素の幅および厚さにおける変動、および/または、追従性形状一致境界面の追加)を含む。
【0129】
フランジがユーザの実質的に平坦な表面に接触する領域では、チャンバ要素およびフランジ要素は「I字梁」として作用し得る。ここでは、ユーザに対してフランジにより示される力は、より線形の下向きの力であり、カンチレバー状である。チャンバ要素の根底部地点の内側および外側のフランジ要素は、フランジ要素のテーパ状の端部が最も湾曲する状態で、物質の厚さにしたがって湾曲し、その結果、ユーザの組織に対して穏やかな遷移が作られて、上記のように縁部効果が解消される。本明細書で使用されるカンチレバー状の力は、チャンバの下向きの力の測定値を所与の地点におけるフランジの面積により除算した値である。例えばフランジ要素が組織の全域にわたり平坦に横たわる領域では、カンチレバー力は、フランジの幅および厚さを変更させることにより、均衡されることが可能である。例えば高い真空断面積が存在し、より大きい負荷分布が望まれる(すなわち、より低い接触圧力)では、より大きい垂直方向幅を有するフランジが利用され得、同様に、より小さい負荷分布が望まれる(すなわち、より高い接触圧力)では、より小さい垂直方向幅を有するフランジが利用され得る。
【0130】
フランジ要素の厚さ寸法は、装置の部分において、フランジ要素が過剰に薄い場合は、フランジ要素は大きい可撓性を有し得るが、フランジ要素は、負荷分散特性をほとんどまたはまったく有さず、底値に達して、チャンバ要素の根底部から高接触圧力の地点(単数または複数)が作られ、その結果、漏出および/または不快感が生じることとなるような、フランジ要素特性を与え得る。フランジ要素が過剰に厚い場合は、フランジ要素が方向を変化させる能力に影響が及び、例えば、下顎の上方の頚部の表面から耳に向かう急激な変化に対して形状一致することが不可能となり、さらに、望ましくないレベルの剪断または横方向の動きを生じさせるであろう。同様に、フランジ要素の幅が過剰に小さい場合、高圧の地点(単数または複数)が生じ、幅が過剰に大きい場合、体積が不必要に大きくなり、嵌合および効果的な治療エリアに影響が及び得るであろう。幅における遷移は次第に漸減し、アスペクト比は、位置的不安定性を最少化し、可撓性を最適化する。
【0131】
フランジがユーザの湾曲表面に接触する領域(例えば、顎の周辺および下顎の上方)では、観察される力は、フランジがこれらの特徴物の周囲で湾曲するため、追加的なフープ状の力成分を含む。本明細書で使用される「フープ状の力」は、周方向に作用される力の分布を説明する。例えば、フランジ要素がユーザの場所4の周囲を移動する場合、曲率は、チャンバ要素の根底の内側および外側のフランジに対して追加的な硬さを追加する。追加されたフープ負荷の力成分が存在するこれらの領域では、治療レベルの負圧が印加されたとき、チャンバの負荷を効果的に分散させ、位置毎の接触圧力変動を最少化するために、フランジ要素の厚さは減少され得、フランジ要素の垂直方向幅は減少され得る。
【0132】
本明細書で使用される「接触圧力」という用語は、装置の接触表面により組織の表面上に印加される圧力を指す。接触圧力の値は、接触表面の垂直幅および表面積などのフランジの構造的特性のみならず、存在する真空に依存し得、フランジ上の異なる位置において変動し得る。
【0133】
より大きい接触表面の「垂直方向幅」(接触表面の最も長い軸に対して垂直である方向を意味する。なお係る最長の軸は湾曲していてもよい)は、同一の真空圧力の下では、接触表面のその特定の位置における増加された表面積のために、より小さい垂直方向幅を有する接触表面と比較して、より低い全体的接触圧力を有するであろう。したがって、ドーム位置圧力が低い領域では、フランジの接触表面は、接触圧力を効果的に増加および「均衡」させるために、より小さい垂直方向幅を有するよう設計され得、ドーム位置圧力が高い領域では、フランジの接触表面は、ドーム位置負荷が高い位置における接触圧力を効果的に減少および均衡させるために、より大きい垂直方向幅を有するよう設計され得る。
【0134】
特定の実施形態では、フランジ要素上のチャンバ要素の位置(根底部位置)は、治療レベルの負圧が印加されたときにユーザに対する治療装置の接触圧力を均一化することを、および、ユーザに対するフランジ要素の均衡点を維持することを、さらに支援するために、中間点から内向きまたは外向きに変動し得る。例えば、フランジ要素上でチャンバ要素の縁部の根底部がフランジ要素の中間点から外向きに移動した場合、治療レベルの負圧が印加されたとき、真空断面積が、したがって、当該地点における治療装置の効果的な接触圧力が、効果的に増加される。チャンバの縁部が内向きに移動した場合、逆の効果がもたらされ、フランジのより大きい部分が根底部位置の外側に露出され、治療装置は真空断面積を減少させる。より高い接触圧力が必要とされる領域(例えば装置がユーザの耳に近接する箇所)では、チャンバ位置をフランジ上で外側縁部に向って推移させると、真空断面積が、および、当該地点における効果的な接触圧力が、増加され得る。
【0135】
チャンバは、チャンバ要素内における治療レベルの負圧を生成するために、空気ポンプに対して動作可能に接続される。空気ポンプは、治療レベルの負圧を生成するための任意の好適な種類であり得、例えば、手動圧搾球状体、回転ポンプ、ローブポンプ、振動ポンプ、その他を含み得る、容積移送式ポンプ、脈動ポンプ、速度ポンプ、その他であり得る。特定の実施形態では、空気ポンプは、振動ポンプ圧送動作が500Hzを越える周波数で動作する振動ポンプ圧送動作を提供するよう構成された圧電性物質を含む。
【0136】
空気ポンプは、ホースまたはチューブを介してチャンバに接続された別個の構成要素であってもよく、またはチャンバに一体化されるよう構成されてもよい。空気ポンプは、任意の好適な様式でチャンバ要素に接続され得る。例えば空気ポンプは、チャンバ要素の外側に外的に配置され、ホースまたはチューブを介して接続されてもよく(例えば固定型の臨床用ポンプ)、またはチャンバに一体化され、バッテリー駆動式で、患者により装着されてもよい。特定の装着可能な態様では、空気ポンプはチャンバに一体化されるよう構成される。例えば、空気ポンプは、チャンバ上の密閉可能アパーチャに挿入されるよう構成され得、空気ポンプがアパーチャを通って緊密に嵌まり、密閉が形成される。本明細書で使用される密閉可能アパーチャは、装置の他の要素が気密性または水密性の密閉を作る状態で、一方の側から他方の側まで閉止および密閉され得る装置の要素を通り抜ける開口部である。
【0137】
特定の実施形態では、前述のうちの1つまたは複数と協働して、またはともに、治療装置のフランジ要素物質とユーザとの間の接着層として作用する物質がフランジ要素の外側接触表面に貼り付けられる。接着層の目的は密閉性、クッション性、および/または剪断吸収(すなわち耐摩耗性)要素をフランジ要素に提供することである。本明細書で使用される剪断は、平行な表面(例えばフランジ要素の接触表面、およびユーザの組織)が互いを通り過ぎて摺動することが可能である物質の変形である剪断歪みを指す。
【0138】
接着層はさらに好適には、ユーザの組織に対する治療装置の解放可能な機械的固定が達成されるよう、外側接触表面に対して付着し、十分なレベルの「粘性」を提供しなければならない。本明細書で使用される「粘性」は、接着層および装置と、ユーザと装置との間で作られる他方の境界面におけるユーザの組織と、の間で作られる境界面における機械的特性を指す。
【0139】
接着層は、例えば厚さ、硬さ、および粘性を含むがこれらに限定されない所望のクッション特性および密閉特性を達成するために、噴霧、塗装、配置、その他を含むがこれらに限定されない任意の好適な方法で、単一層または複数層において、負圧治療装置の接触表面に貼り付けられ得る。追加的な実施形態では、接着層は、負圧治療装置の接触表面を覆う、均一な厚さを有する単一層、または不均一な厚さを有する単一層であり得る。さらなる実施形態では、接着層は、負圧治療装置の接触表面の周縁部にわたって一連の平行な接着性ビーズを含み得る。これら接着性ビーズは、所望のクッション特性および密閉特性を達成するために、厚さが均一もしくは不均一であってもよく、接着性が同一もしくは異なってもよく、および/または、ゲル状物質であってもよい。
【0140】
特定の実施形態では、接着層は、概略的に0.005~0.060インチの範囲の厚さで、負圧治療装置の接触表面上に存在する。特定の実施形態では、接着層は、概略的に0.010~0.050インチの範囲の厚さで、負圧治療装置の接触表面上に存在する。さらなる実施形態では、接着層は、概略的に0.020~0.040インチの範囲の厚さで、負圧治療装置の接触表面上に存在する。
【0141】
接着層は、ゲル、エラストマー、粘性溶液、発泡体、および同様の物質を含むがこれらに限定されない多様な物質を使用することにより、達成され得る。これらの物質は、必要な最終用途特性(例えば、粘性、硬さ、メディカルクリアランス、その他)を提供する任意の化学組成であり得る。これらの物質は、ポリウレタン、シリコーン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ヒドロゲル、その他を含むがこれらに限定されない。好適な実施形態では、接着層は、0~50の範囲の、より好適には5~30の範囲の、最も好適には5~15の範囲の、ASTM-D2240-00(アメリカ材料試験協会)により測定された硬度を有するべきである。特定の実施形態では、接着層はシリコーンゲル物質から作られる。シリコーンは、所望の特性を提供する任意の有機シリコーンであり得るが、ポリジメチルシロキサン(PDMS:polydimethylsiloxane)が多くの場合、選択される。
【0142】
接着層は、フランジ要素の外側接触表面に対して所望の厚さに直接的に貼り付けられてもよく、または、物質の積層体を所望の厚さに作るために、1つまたは複数のプライマー層と、および/または、1つまたは複数の粘着もしくは結合層と組み合わされた1つまたは複数のプライマー層と、組み合わせて、貼り付けられてもよい。本明細書で使用される「プライマー」は、準備的なコーティングとして使用される物質であり、負圧治療装置および接着層または接着促進層の接触表面と、接着層と、の間の接合表面として機能する。さらに、接着促進層は、接着層を、負圧治療装置の接触表面に、および/または、負圧治療装置の外側表面に貼り付けられたプライマー層に、好適に接着するためのコーティングとして使用される物質である。
【0143】
例えば、プライマー層は、負圧治療装置の接触表面に約0.005インチの厚さに貼り付けられ、その後、接着促進層が概略的に0.005インチの厚さに、その後、接着層が概略的に0.040インチの厚さに貼り付けられ、概略的に0.050インチの最終厚さが達成される。プライマー層が負圧治療装置の外側接触表面に対して直接的に貼り付けられ、その後、接着層がプライマーに対して直接的に、概略的に0.050インチの所望の厚さに貼り付けられてもよい。追加的な実施形態では、接着促進剤が負圧治療装置の接触表面に貼り付けられ、その後、接着層が概略的に0.050インチの所望の厚さに貼り付けられてもよい。
【0144】
特定の実施形態では、接着層はゲル層である。本明細書で使用されるゲル層は、大部分が液体であるが、しかしその構造の架橋結合性により固体のように挙動する特性を有し得る物質の層である。ゲル層のために選択される物質は、複雑な形状(例えば組織における不完全性)へと成型および形状一致するために特定の凝集柔軟粘稠性を有し得る。本明細書で使用されるゲル層の凝集柔軟粘稠性、弾力性または堅牢性は、表面に対して貼り付けられていないときに、その元の形状へと流動、成型、伸長、および実質的に回復するゲル層の能力として定義される。ゲル層のために選択される物質は、接触エリアに対して機械的に固定するために、特定の粘性も有し得る。本明細書で使用される粘性は、ゲルの「粘着性」として定義され、他の表面に接触したときに接合の即時形成を可能にする特性である。
【0145】
接着層物質は、治療装置がユーザの組織から取り外されたときに装置に対する接着状態が保持されるよう、治療装置に対して十分に接着しなければならず、加えて、ユーザの組織境界面における適切な性能のために選択された粘性レベルを有さなければならない。すなわち、粘性レベルが過剰に大きい場合は、組織から装置を取り外すことが困難となり、痛みまたは創傷が生じ得る。一方、粘性が不十分である場合、使用中に装置が動いてしまい、または組織に対する密閉が開かれてしまい、それにより真空が損なわれることとなり得る。粘性レベルは、テクスチャアナライザにより測定可能である。例えば、7mm半径および1インチ直径球形ヘッドを有するTA.XT plusを使用すると、ピーク接着値は、200~400グラムピーク力、より好適には250~350グラムピーク力、最も好適には275~325グラムピーク力の範囲となり得る。
【0146】
上述のように、接着層の粘性は、解放可能であるが機械的である、患者に対する治療装置の固定が達成されるよう、最適化される。特定の実施形態では、フランジ要素の接触表面は、接着層をユーザの接触領域の上方で負圧治療装置に好適に固定するために、プライマーでコーティングされる。
【0147】
特定の実施形態では、接着層は、洗濯の後に乾燥されると接着層が当初の粘性が回復するよう、洗浄可能なシリコーンゲルから形成される。特定の実施形態では、シリコーンゲルは、断面厚さ、架橋結合の度合い(および架橋結合による堅牢性ならびに粘性)、および粘度(所望の状態下で処理可能となるために)を含むがこれらに限定されない、制御可能な特性を有する群から選択される。本明細書で使用される粘度は、センチポアズ(cps)を指すcpsにおいて測定される。なお1cps=0.01g/cm/sである。
【0148】
本発明の一実施形態では、ゲル層は、約31,000cpsの無触媒粘度を有するシリコーンゲル基部と等価である特性を有する二液型白金硬化有機シリコーン混合物(two-part platinum cured organosilicone mixture)と、約30,500cpsの無触媒粘度を有する架橋剤と、から準備される。硬化されたゲルの最終的な堅牢性(cps)は、混合物中の架橋剤の割合を増加させることにより増加され得、または、混合物中の架橋剤の割合を低下させることにより減少され得る。物質の粘性は、混合物中の架橋剤の割合を減少させることにより増加され得、または、混合物中の架橋剤の割合を増加させることにより減少され得る。31,000cpsのシリコーンゲル基部および0,500cpsの架橋剤を使用して所望の特性を達成するために、シリコーンゲル基部と架橋剤との比は約0.8:1~約1:0.8の範囲(重量部)であり得る。
【0149】
本発明の様々な実施形態では、31,000cpsシリコーンゲル基部と30,500cps架橋剤との比は、さらに約1:0.8~約1:1の範囲であり得る。本発明の他の実施形態では、31,000cpsシリコーンゲル基部と30,500cps架橋剤との比は、さらに約0.8:1~約1:1の範囲であり得る。本発明のさらなる実施形態では、31,000cpsシリコーンゲル基部と30,500cps架橋剤との比は、約0.88:1~約1:0.88の範囲であり得る。
【0150】
本発明の事例によれば、シリコーンゲル基部および架橋剤は、所望の比で混合され、混合溶液中の気泡を除去するために真空下に置かれる(脱ガス処理)。脱ガス処理の後、シリコーンゲル溶液はフランジ要素の接触表面に塗布され、硬化される。この混合物は室温において概略的に24時間で完全硬化を達成し得る。しかし、いくつかの実施形態では、シリコーンゲルの完全硬化は、シリコーンゲル層を含む治療装置を約150°Cに置くことにより、約5分で達成され得る。硬化温度は、治療装置の限定要素(例えば他の治療装置要素のより低い融点)に適合するよう調整され得る。
【0151】
特定の実施形態では、接着層はヒドロゲルから作られる。ヒドロゲルは、物理的または化学的に架橋結合され得る架橋結合された親水性ポリマー鎖の3次元網状組織である。さらなる実施形態では、ヒドロゲル層は、コロイド粒子が水に分散された親水性ポリマーである親水コロイドとして見出され得る。
【0152】
特定の実施形態では、接着層は、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面上に並列に塗布された異なる機械的特性(例えば異なるデュロメータ硬度)を有する物質または同様の物質の組み合わせから作られる。例えば、ヒドロゲル物質が、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面の中央部分の周縁部に塗布され得、シリコーンゲル物質が、ヒドロゲル物質の周辺の両側上に塗布され得る。物質の組み合わせがフランジ要素の外側接触表面上で並列に塗布されるさらなる実施形態では、シリコーンゲル層が、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面の中央部分の周縁部に塗布され得、ヒドロゲル物質が、シリコーンゲル物質の周辺の両側上に塗布され、その後、シリコーンゲル物質がヒドロゲル物質の周辺部に最終的に塗布され得る。
【0153】
特定の実施形態では、追従性接触層は、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面上で並列に塗布された物質の組み合わせから作られる。例えば、ヒドロゲル物質が、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面の中央部分の周縁部に塗布され得、シリコーンゲル物質が、ヒドロゲル物質の周辺の両側上に塗布され得る。物質の組み合わせがフランジ要素の外側接触表面上で並列に塗布されるさらなる実施形態では、シリコーンゲル層が、流体的に密閉されたチャンバの外側接触表面の中央部分の周縁部に塗布され得、ヒドロゲル物質が、シリコーンゲル物質の周辺の両側上に塗布され、その後、シリコーンゲル物質がヒドロゲル物質の周辺部に最終的に塗布され得る。
【0154】
本明細書で使用される「ユーザコンプライアンス」は、ユーザが治療装置の定められた使用法を遵守すること(例えば睡眠サイクルの全体を通して装置の使用法を遵守すること)である。
【0155】
本明細書で使用される「装置追随性」は、装置または装置の要素が、患者の解剖学的変動および/または動きを含む変動(例えば、装置の適用および使用に応答して装置に湾曲、ねじり、圧縮、および/または拡張すること)を吸収する能力を指す。
【0156】
装置の様々な側面は全般に剛性の物質から作られ得る。本明細書で使用される「全般に剛性」という用語は、対象となる特定の要素の完全性を維持するために充分な剛性を示す物質を指す。当業者は、熱可塑性物質、いくつかの熱硬化性物質、およびエラストマーを含む多数のポリマーが使用され得ることを理解するであろう。熱可塑性物質は、加熱されると流動性の液体となり、冷却されると固定となり、機械的特性を喪失することなく複数の加熱/冷却サイクルを経験する能力を多くの場合有する。熱硬化性物質は、反応すると不可逆的に固体ポリマー網状組織へと硬化するプレポリマーから作られる。エラストマーは、弾性特性および粘性特性の両方を示す粘弾性物質であり、熱可塑性または熱硬化性のいずれかを示し得る。一般的な熱可塑性物質は、PMMA、環状オレフィンコポリマー、エチレン・ビニル・アセテート、ポリアクリレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリブタジエン、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ナイロン、ポリエチレン、およびポリスチレンを含む。一般的な熱硬化性物質はポリエステル、ポリウレタン、デュロプラスト、エポキシ樹脂、およびポリイミドを含む。これらの一覧は限定的であることを意図するものではない。タルクおよび炭素繊維などの機能的な充填材物質が、剛性、作業温度、および部品収縮を改善する目的のために含まれ得る。
【0157】
装置の様々な側面は、注型成形、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形、被覆、機械加工、エッチング、3D印刷、その他を含むがこれらに限定されない、当業者に周知であるいくつかの方法を使用して形成され得る。好適な実施形態では、試験装置基部は射出成形される。射出成形は、熱可塑性物質および熱硬化性物質を、複雑な形状の成型された製品へと、高い生産速度で、良好な寸法精度をもって形成するための処理である。この処理は通常、計量された加熱および可塑化された物質を高圧下で比較的低温の型枠に注入することを含み、型枠内でプラスチック物質が凝固する。樹脂ペレットが高圧下で加熱されたネジおよびバレルを通して供給される。液化された物質はランナーシステムを通って型枠に移動する。型枠のキャビティが製品の外部形状を決定し、その一方で、コア部が内部を成形する。物質が冷却キャビティに進入すると、再可塑化され、固体状態および仕上げ済み部品の構成に戻る。次に機械が仕上げ済み部品または製品を放出する。
【0158】
以下は本発明の好適な実施形態を表す。
【0159】
実施形態1
組織に接触するよう構成された器具であって、
(a)前記器具の組織接触表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体を含む組織境界部分であって、前記粘弾性発泡体は、以下の特性、すなわち、
Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、約10以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ、
約0.9g/cm以下の密度(比重)、および/または、
約9mJ/cm以下、好適には約7mJ/cm以下、最も好適には約5mJ/cm以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性レベル、
約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、
約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、
のうちの1つまたは複数を含む、
組織境界部分と、
(b)前記組織境界部分を支持するよう、かつ、前記組織境界部分により前記組織から離間されるよう、構成された非接触部分と、を含み、
項目(i)前記組織境界部分は、前記粘弾性発泡体上に被覆されるかまたは前記粘弾性発泡体へと成形されたシロキサン抗微生物物質を含むこと、
項目(ii)前記組織境界部分は前記非接触部分上にオーバーモールド加工されていること、
項目(iii)前記組織境界部分はシリコーン感圧性接着剤を使用して前記非接触部分に取り付けられていること、および、
項目(iv)前記組織境界部分は、複数の充填物質のうちの1つの充填物質を含み、前記充填物質は前記粘弾性発泡体物質よりも高い熱伝導率を有すること、
の4つの項目のうちの1つまたは複数の項目が真である、
器具。
【0160】
実施形態2
前記粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む、実施形態1に記載の器具。
【0161】
実施形態3
粘弾性発泡体ではない第2組織接触表面をさらに含む、実施形態1または実施形態2に記載の器具。
【0162】
実施形態4
前記前記粘弾性発泡体は約10以下のショアA、約0.9g/cm以下の密度(比重)、および約9mJ/cm以下の粘性レベルを含む、実施形態1~実施形態3のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0163】
実施形態5
前記発泡体は約5以下のショアAを含む、実施形態1~実施形態4のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0164】
実施形態6
前記発泡体は約1以下のショアAを含む、実施形態1~実施形態4のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0165】
実施形態7
前記粘弾性発泡体は粘着性付与剤も接着剤も含まず、前記粘性は前記粘弾性発泡体の固有の特性である、実施形態1~実施形態6のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0166】
実施形態8
前記粘弾性発泡体は、少なくとも約0.1mJ/cm、少なくとも約0.3mJ/cm、または少なくとも約0.5mJ/cmの粘性を示す、実施形態1~実施形態7のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0167】
実施形態9
前記粘弾性発泡体は、大気圧において、わずか約8mL/分の、前記密閉表面を越える空気漏出を提供する、実施形態1~実施形態8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0168】
実施形態10
前記粘弾性発泡体は、大気圧において、わずか約0.8mL/分の、前記密閉表面を越える空気漏出を提供する、実施形態1~実施形態8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0169】
実施形態11
前記粘弾性発泡体は、前記組織に対する密閉部を提供し、大気圧において、わずか約0.008mL/分の、前記密閉部を越える空気漏出を提供する、実施形態1~実施形態8のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0170】
実施形態12
前記粘弾性発泡体は約0.5g/cm以下の密度を有する、実施形態1~実施形態11のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0171】
実施形態13
前記粘弾性発泡体は発泡シリコーンゴムであり、所望により前記粘弾性発泡体の前記シリコーンゴム成分は医療グレードのソフトスキン粘着剤(SSA)シリコーンである、実施形態1~実施形態12のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0172】
実施形態14
前記粘弾性発泡体は強化用充填剤を含む、実施形態1~実施形態13のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0173】
実施形態15
前記強化用充填剤は、シリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル、二酸化チタン、珪藻土、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、石英、カルシウム、カルボナート、酸化マグネシウム、カーボンブラック、グラファイト、ガラス繊維、ガラスミクロスフェア、ガラスマイクロバルーン、ガラスビーズ、炭素繊維、シリコンカーバイド、ポリスチレンビーズ、微晶質セルロース、ナノ粒子、および金属繊維からなる群より選択される、実施形態14に記載の器具。
【0174】
実施形態16
前記粘弾性発泡体は抗菌剤を含む、実施形態1~実施形態15のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0175】
実施形態17
前記抗菌剤は、銀塩、銀イオン、ガラス粒子内に封入された銀イオン、銀-ナトリウム-リン酸水素ジルコニウム、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシル塩化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、およびクロロキシレノール、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、およびクロルヘキシジンからなる群より選択された1つまたは複数の薬剤を含む、実施形態16に記載の器具。
【0176】
実施形態18
項目(i)は真である、実施形態1~実施形態17のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0177】
実施形態19
項目(ii)は真である、実施形態1~実施形態18のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0178】
実施形態20
項目(iii)は真である、実施形態1~実施形態19のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0179】
実施形態21
項目(iv)は真である、実施形態1~実施形態20のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0180】
実施形態22
前記器具は眼球保護マスクである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0181】
実施形態23
前記器具はスキューバ用マスクである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0182】
実施形態24
前記器具は水泳用ゴーグルである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0183】
実施形態25
前記粘弾性発泡体は、前記組織に対する密閉部を提供し、1atmの圧力において、前記器具が10分で前記器具の内部容積のわずか10%を漏出させるような前記密閉部を越える水漏出を提供する、実施形態23または実施形態24に記載の器具。
【0184】
実施形態26
前記器具は医療器具である、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0185】
実施形態27
前記器具は呼吸マスクである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0186】
実施形態28
前記医療器具はヒトまたは動物の身体の組織を覆うよう構成された負圧チャンバである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0187】
実施形態29
前記医療器具は負圧創傷治療装置である、実施形態28に記載の器具。
【0188】
実施形態30
前記負圧チャンバは、ヒトの気道の1部分の上に覆い被さる組織に外部負圧を印加することにより、気道開存性を維持するための連続負外部圧力(cNEP)治療装置である、実施形態28に記載の器具。
【0189】
実施形態31
前記器具は1組のヘッドフォン、耳栓、イヤバッド、またはイヤフォンである、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0190】
実施形態32
前記器具は、カテーテル、血管ステント、血管グラフト、血管ステントグラフト、またはこれらの構成要素である、実施形態1~実施形態21のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0191】
実施形態33
実施形態1~実施形態32のうちのいずれか1項に記載の器具の組織接触表面を提供する粘弾性発泡体を形成する方法であって、
調合物を提供するために、シリコーン基部、発泡剤、および触媒を組み合わせることと、
前記粘弾性発泡体を提供するために選択された条件下で前記調合物を硬化することであって、前記粘弾性発泡体は、以下の特性すなわち、
いずれの場合もStandard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、約10以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度、
約0.9g/cm以下の密度(比重)、および/または、
約9mJ/cm以下、好適には約7mJ/cm以下、最も好適には約5mJ/cm以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性レベル、
約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、
約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、のうちの1つまたは複数を有する、
硬化することと、
を含む、方法。
【0192】
実施形態34
前記硬化ステップは約100°C~約250°Cの範囲の温度で硬化することを含む、実施形態33に記載の方法。
【0193】
実施形態35
前記硬化ステップは少なくとも約120°Cの温度で硬化することを含む、実施形態34に記載の方法。
【0194】
実施形態36
前記硬化ステップは少なくとも約150°Cの温度で硬化することを含む、実施形態34に記載の方法。
【0195】
実施形態37
前記硬化ステップは少なくとも約170°Cの温度で硬化することを含む、実施形態34に記載の方法。
【0196】
実施形態38
前記発泡剤はアンモニウム塩、ナトリウム塩、またはカリウム塩を含む、実施形態33~実施形態37のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0197】
実施形態39
前記触媒は鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、白金触媒、または酸触媒からなる群より選択される、実施形態33~実施形態38のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0198】
実施形態40
前記粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む、実施形態33~実施形態39のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0199】
実施形態41
前記粘弾性発泡体は約10以下のショアA、約0.9g/cm以下の密度(比重)、および約9mJ/cm以下の粘性レベルを含む、実施形態40に記載の方法。
【0200】
実施形態42
前記発泡体は約5以下のショアAを含む、実施形態41に記載の方法。
【0201】
実施形態43
前記発泡体は約1以下のショアAを含む、実施形態41に記載の方法。
【0202】
実施形態44
前記粘弾性発泡体は粘着性付与剤も接着剤も含まない、実施形態33~実施形態43のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0203】
実施形態45
前記粘弾性発泡体は、少なくとも約0.1mJ/cm、少なくとも約0.3mJ/cm、または少なくとも約0.5mJ/cmの粘性を示す、実施形態33~実施形態44のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0204】
実施形態46
前記粘弾性発泡体の外側表面は、前記粘弾性発泡体の独立気泡領域を形成するために皮膜で覆われる、実施形態33~実施形態45のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0205】
実施形態47
前記粘弾性発泡体は、二重のデュロメータ構造が生成されるよう、40デュロメータより小さい薄いエラストマーで、1:10より小さい比で被覆される、実施形態46に記載の器具。
【0206】
実施形態48
前記粘弾性発泡体は、二重のデュロメータ構造が生成されるよう、40デュロメータより小さい医療グレードSSAシリコーンで、1:10より小さい比で被覆される、実施形態46に記載の器具。
【0207】
実施形態49
前記シリコーン基部はLSRである、実施形態33~実施形態48のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0208】
実施形態50
前記シリコーン基部はHCRである、実施形態33~実施形態48のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0209】
実施形態51
項目(i)前記組織境界部分は、前記粘弾性発泡体上に被覆されるかまたは前記粘弾性発泡体へと成形されたシロキサン抗微生物物質を含むこと、
項目(ii)前記組織境界部分は前記非接触部分上にオーバーモールド加工されていること、
項目(iii)前記組織境界部分はシリコーン感圧性接着剤を使用して前記非接触部分に取り付けられていること、および、
項目(iv)前記組織境界部分は、複数の充填物質のうちの1つの充填物質を含み、前記充填物質は前記粘弾性発泡体物質よりも高い熱伝導率を有すること、
の4つの項目のうちの1つまたは複数の項目が真である、実施形態33~実施形態50のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0210】
実施形態52
項目(i)は真である、実施形態51に記載の器具。
【0211】
実施形態53
項目(ii)は真である、実施形態51または実施形態52に記載の器具。
【0212】
実施形態54
項目(iii)は真である、実施形態51~実施形態53のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0213】
実施形態55
項目(iv)は真である、実施形態51~実施形態54のうちのいずれか1項に記載の器具。
【0214】
実施例1-液状シリコーンゴムおよび発泡剤
物質の準備は、10ショアAデュロメータ硬度の液状シリコーンゴム(Silbione(登録商標)LSR4310、Elkem Silicones、米国)およびアンモニウムバイカルボナート発泡剤(Med4-4900、Nusil Technology LLC)を使用して実施された。使用された液状シリコーンゴムは1:1の比で手動で混合された2成分白金触媒シリコーンエラストマーである。アンモニウムバイカルボナートが、液状シリコーンゴム混合物から1.5重量%において計り取られ、次に、それと組み合わされ、手動で混合された。
【0215】
実施例2-抗菌性添加剤が添加された液状シリコーンゴムおよび発泡剤
物質の準備は、5ショアAデュロメータの液状シリコーンゴム(Silbione(登録商標)LSR 4305,Elkem Silicones USA)と、アンモニウムバイカルボナート発泡剤(Med4-4900,Nusil Technology LLC)と、シリコーン系抗菌性添加剤(BIOSAFE(登録商標)HM 4001, Gelest, Inc.)と、を使用して行われた。使用された液状シリコーンゴムは1:1の比で、手動で混合された2成分白金触媒シリコーンエラストマーである。アンモニウムバイカルボナートは液状シリコーンゴム混合物重量の1.5%で、オルガノシラン抗菌剤は液状シリコーンゴム混合物重量の0.5%でそれぞれ計り取られた。これらが組み合わされ、液状シリコーンゴム混合物と一緒に手動で混合された。
【0216】
物質が実施例1に記載のように抗菌性添加剤を用いることなく混ぜ合わされた場合、または実施例2におけるように抗菌性添加剤を用いて混ぜ合わされた場合のいずれの場合においても、物質の形成はナイフコーティング機を使用して実施された。ナイフコーティングは、過剰なコーティング液が塗布された後、ウェブが前進する際に固定的に支持されたウェブに対してごく近傍に保持された硬いナイフにより測定されることにより、薄い液体コーティングが連続的ポリマーウェブ基材上で形成される処理である。コーティングの厚さは、主に、ナイフとウェブとの間の隙間または間隙に、および、間隙の幾何学的形状(ベベル角、長さ、その他)に、依存する。この実施形態では、上述の過剰な液状シリコーンゴムおよびアンモニウムバイカルボナートの混合物が、2.16mmの隙間に設定されたナイフの上流側で、前進するウェブに塗布された。ウェブが前進するにつれて、ウェブの測定された2.16mm厚さ部分が、発泡化の作動と、液状シリコーンゴムの硬化と、が同時に意図された150°Cの熱に曝露された。加熱は5分の最小期間にわたり維持された。その期間の間、アンモニウムバイカルボナート発泡化により、物質は厚さにおいて膨張した。5分間の加熱期間の後、硬化されたエラストマー発泡体は室温に戻され、室温において、結果的に生成された発泡体の厚さは公称3.05mmへと落ち着いた。
【0217】
物質塗布は、エラストマー発泡体シートを、負圧器具の組織接触フランジの3次元形状に対応する好適な2次元形状へと(すなわち、およそ25mm幅の環形を有する114mmx190mmの楕円形ドーナツ形状)型抜きすることにより達成された。特定の形状へと型抜きされた後、ポリマーウェブ裏材が、エラストマー発泡体ドーナツの背面から取り外され、シリコーンゴム接着剤(Sil-Poxy(登録商標),Smooth-On,Inc)の均一な薄いコーティングが、その環形全体に沿って定位置に手動で塗布された。シリコーンゴム接着剤の均一で薄い被覆も、負圧器具のフランジ上に手動で塗布された。被覆されたエラストマー発泡体ドーナツは、位置合わせするために手動で操作され、負圧器具のフランジ上の定位置に押圧された。シリコーンゴム接着剤は少なくとも12分間にわたり室温で硬化された。
【0218】
最終結果は、その組織接触フランジに対して連続的に形状一致された負圧器具であった。
【0219】
当業者は、本開示の基礎をなす概念が、本発明のいくつかの目的を実施するための他の構造体、方法、およびシステムを設計するための基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。したがって、本発明の趣旨および範囲から逸脱しないかぎり、請求項が係る均等な構成体を含むものとみなされることは重要である。
【0220】
当業者は、本発明が目的を実施し、本明細書において固有のものばかりではなく本明細書で説明される、結果および利点を達成するにあたり良好に適応されていることを、容易に理解するであろう。本明細書で提供される事例は、好適な実施形態を表し、例示的であって、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0221】
本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される本発明において様々な修正および変形が可能であり得ることは当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0222】
本明細書で記載のすべての特許および出版物は本発明の分野における当業者のレベルを示すものである。すべての特許および出版物は、あたかも各個別の出版物が特定的かつ個別的に参照することにより援用されることが示されている場合と同程度に、参照することにより本明細書に援用される。
【0223】
本明細書で好適に例示される本発明は、本明細書で特定的に開示されていない任意の要素(単数または複数)または制限(単数または複数)が存在しない場合も実施され得る。したがって、たとえば、本明細書における各事例では、「~を含む」、「~から本質的になる」、および「~からなる」という用語のうちのいずれの用語も、他の2つの用語のいずれとも置き換えられ得る。用いられた用語および表現は、限定の用語ではなく説明の用語として使用され、係る用語および表現の使用においては、図示および説明される特徴またはその一部の任意の均等物を排除する意図はないが、請求される本発明の範囲において様々な変更が可能であることが認識される。したがって、本発明が、好適な実施形態および所望の特徴により特に開示されているが、本明細書で開示される概念の変更および変化が当業者により用いられ得ること、および、係る変更および変化が、添付の請求項により定められる本発明の範囲に含まれるものと考えられること、が理解されるべきである。
【0224】
他の実施形態は、以下の請求項内で説明される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】