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▶ コンセホ スペリオール デ インヴェスティガシオネス シエンティフィカス(シーエスアイシー)の特許一覧

特表2022-523944検眼に関する測定を実行するための装置及びシステム、並びに、調整可能レンズの屈折力を調整する方法
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  • 特表-検眼に関する測定を実行するための装置及びシステム、並びに、調整可能レンズの屈折力を調整する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(54)【発明の名称】検眼に関する測定を実行するための装置及びシステム、並びに、調整可能レンズの屈折力を調整する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/028 20060101AFI20220420BHJP
【FI】
A61B3/028
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551773
(86)(22)【出願日】2020-03-04
(85)【翻訳文提出日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 ES2020070161
(87)【国際公開番号】W WO2020178471
(87)【国際公開日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P201930198
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508014327
【氏名又は名称】コンセホ スペリオール デ インヴェスティガシオネス シエンティフィカス(シーエスアイシー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドロンソロ ディアス、カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ロペス、ヴィクター
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA13
4C316FA01
4C316FA18
4C316FY02
4C316FY05
4C316FY10
4C316FZ03
(57)【要約】
[検眼に関する測定を実行するための装置及びシステム、並びに、調整可能レンズの屈折力を調整するための方法]本発明は、検眼に関する測定を実行するための装置(100)に関連し、装置(100)は、光学的に調整可能なレンズ(11)であって、光学的に調整可能なレンズ(11)の屈折力は調整可能であり、レンズは、経時的に周期的な光出力波(200)を作り出すよう構成される周期信号によって制御される、光学的に調整可能なレンズ(11)と、周期的な光出力波(200)の平均値を調整する手段(12)とを備え、装置(100)は、光学的に調整可能なレンズ(11)の平面を、装置(100)の外部の平面上に投影する光学投影器システム(20)をさらに備え、周期信号は、光学的に調整可能なレンズ(11)を通過する可視光の第1の波長と第2の波長との間の焦点の色収差に対応する周期的な光出力波(200)の振幅を周期信号が作り出すような振幅を有することで特徴付けられる。本発明はまた、検眼に関する測定のパフォーマンスのためのシステム、及び調整可能レンズの屈折力を調整する方法に関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検眼に関する測定を実行するための装置であって、
光学的に調整可能なレンズであって、前記光学的に調整可能なレンズの屈折力は調整可能であり、前記光学的に調整可能なレンズは、経時的に周期的な光出力波を作り出すよう構成される周期信号によって制御される、光学的に調整可能なレンズと、
前記周期的な光出力波の平均値を調整する手段と
を備え、
前記装置は、
前記光学的に調整可能なレンズの平面を、前記装置の外部の平面上に投影する光学投影器システム
をさらに備え、
前記周期信号は、前記光学的に調整可能なレンズを通過する可視光の第1の波長と第2の波長との間の焦点の色収差に対応する前記周期的な光出力波の振幅を前記周期信号が作り出すような振幅を有する、
装置。
【請求項2】
前記装置の外部の前記平面は、被験者の目の瞳孔の平面であり、
前記焦点の色収差は、前記被験者が前記装置を見たときに、前記被験者の前記目に生じる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記周期的な光出力波の前記振幅を、可視光の前記第1の波長の値及び可視光の前記第2の波長の値の異なる組み合わせに調整する手段をさらに備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記周期的な光出力波は、フリッカー融合閾値より低い周波数を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記周波数は、10Hzから40Hzの間にある、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記周波数は15Hzである、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記周期的な光出力波の前記振幅は、0.25ジオプターから3ジオプターの間にある、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記周期的な光出力波の前記振幅は、0.75ジオプターから1.5ジオプターの間、又は0.25ジオプターから0.75ジオプターとの間にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記周期的な光出力波の前記振幅は、0.75ジオプターである、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、可変の虹彩絞りをさらに備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
被験者の目に対して検眼に関する測定を実行するためのシステムであって、
少なくとも2つの異なる色の要素を有する視覚的刺激と、
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置と
を備える、システム。
【請求項12】
前記視覚的刺激の前記少なくとも2つの異なる色のうちの一方は、前記第1の波長及び前記第2の波長の組み合わせである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の波長及び前記第2の波長は、青色及び赤色であり、前記視覚的刺激の前記要素の前記少なくとも2つの色のうちの一方は、マゼンタである、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記視覚的刺激の前記要素の前記少なくとも2つの色のうちの一方は、黒色である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
光学的に調整可能なレンズの屈折力を調整するための方法であって、
被験者に、光学的に調整可能なレンズを通して視覚的刺激を見させる段階であって、前記光学的に調整可能なレンズの前記屈折力は調整可能である、段階と、
前記光学的に調整可能なレンズの平面を、前記被験者の目の瞳孔に投影する段階と、
周期信号によって前記光学的に調整可能なレンズを制御し、周期的な光出力波を作り出す段階であって、前記周期的な光出力波の振幅は、可視光の第1の波長と第2の波長との間の、前記被験者の前記目に生じる焦点の色収差に対応し、前記視覚的刺激は、少なくとも2つの異なる色の要素を含み、前記少なくとも2つの色のうちの一方は、前記第1の波長及び前記第2の波長の組み合わせである、段階と、
前記周期的な光出力波の平均値を調整し、前記被験者によって知覚される前記視覚的刺激の色の効果及び変動を減らす又は除去する段階と
を備える、方法。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載の装置で実行される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記視覚的刺激で前記被験者によって知覚される前記色の効果は、青色又は赤色への色の変化を含む、請求項15又は16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科学の分野に関連する。より具体的には、本発明は、屈折異常を矯正するレンズを決定するための装置、システム、及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
屈折異常は、画像が不適切に網膜に焦点を合わせられることを引き起こす眼球異常であり、視力低下をもたらす。主な屈折異常は、近視及び遠視を含む。アメリカ及びヨーロッパの若者の半数、並びに、中国の若者の最大で90%が、近視になっていることが推定されている。2050年までに人口の半数が近視になるだろうと推定されている。自覚的屈折は、患者の屈折異常を矯正するレンズを決定するための手順である。
【0003】
従来の自覚的屈折は、あまり変化していないアイケアの分野で決まった手順であり、実際に、まだ、患者及び眼科医にとって退屈なプロセスを構成する。この手順では、患者は、異なるレンズを見て、知覚した画像が、彼又は彼女が以前に試した他のレンズと比較してぼやけがより少ないか否かを判断する。患者は、その後、知覚した画像が、ぼやけがより多いか少ないかを眼科医に知らせ、眼科医は、どのレンズを次に試すべきかを決定する。この方法は、眼科医が、患者によって伝えられる情報の彼又は彼女の解釈に基づいて、最適なレンズが発見されたと決定するまで繰り返される。
【0004】
通常は、この手順は、一対のテスト眼鏡、次第に変化する一対のテスト眼鏡のレンズ、又は、手動のフォロプター若しくはレンズの動きが自動化されるデジタルフォロプターへのその進化の一方である、フォロプター等の異なるデバイスを使用して実行され得、自動化もされている投影器と組み合わせて実行され得る。調整可能レンズを有するフォロプターも存在する。
【0005】
いずれの場合でも、患者によって実行されるタスクは、彼又は彼女が画像を知覚する際のぼやけの程度に関連している。患者は、前のレンズで知覚した画像がどれだけぼやけていたかを記憶しなければならず、この記憶を、現在のレンズで知覚した画像がどれだけぼやけているかと比較しなければならないので、それは困難なタスクである。これは、患者に一定の不安感を生成することに加えて、結果において高い割合で不確実性に変換し、これは、検眼医又は眼科医の存在をさらに必要とする、時間のかかる手順をもたらす。
【0006】
さらに、患者の視力を改善するためにレンズのシフトが実行されなければならない方向は、事前に知らず、よって、手順は、最初から最後までより一層時間がかかり得る。
【0007】
さらに、患者は、テスト中に、調節している(彼又は彼女自身の目の屈折力を変更する)場合があり、この調節が実際のテスト結果に干渉している。これは、調節によって完全に又は部分的に屈折異常を無意識に補う若い遠視の患者の場合に特に重要である。網膜上の他の焦点外の刺激に無意識に焦点を合わせた結果は、結果として生じる自覚的屈折が歪められることである。異なるタイプのレンズを用いて調節を緩和することに基づいて、自覚的屈折に対する調節の影響を減らすいくつかの方策が存在するが、調節を停止させる点眼液(drops)が、しばしば、用いられる。点眼液はまた、瞳孔を拡張させ、しばしば、数時間の間、視覚検査の後に視覚障害を引き起こすので、医薬物質を使用して調節を停止させることは、患者にとって好ましくない。
【0008】
言い換えれば、前述のデバイスのどれが自覚的屈折に使用されるかにかかわらず、従来の方法は、以下の課題を提示する。
-それは検眼医又は眼科医の介入及び監視を必要とする方法である。
-調節の結果として干渉が発生する場合があり、よって、瞳孔の調節を停止させる点眼液がしばしば必要とされる。
-それは、被験者にとって、及び、検眼医又は眼科医にとって困難であると判明している方法である。
-それは、異なるレンズの検査及び誤差に基づいている。
-全ての手順を実行するためには時間がかかる。
-格差が応答に生じる場合がある。
【0009】
特許文献US-2015/0216411-A1は、連続的に可変の光学レンズのインタラクティブな調整のための方法及びデバイスを提示する。この方法によれば、可変の光学レンズのパラメータが周囲で変調され、可変の光学レンズのこのパラメータの平均値が、被験者によって知覚されるフリッカーを最小化すべく調整される。
【0010】
この特許文献に記載される方法は、従来の自覚的屈折の方法に対して取得される結果の品質を改善するが、フリッカーを評価又は検出する視覚のタスクがぼやけを評価又は検出する視覚のタスクより容易なので、US-2015/0216411-A1で提案された方法は、従来の自覚的屈折の手順の多くの課題を依然として提起する。特に、この方法は、パラメータが修正されなければならない方向を被験者が知らないので、異なる条件の検査及び誤差に基づいており、したがって、全ての手順を実行するためには時間がかかり、格差が応答に生じる場合がある。
【0011】
したがって、より単純で、より正確で、且つ、患者及び眼科医にとってより直接的な自覚的屈折の手順の必要性が存在し、その結果は、患者の自覚的な応答における変動性による影響を最小限に抑えられる。
【発明の概要】
【0012】
最先端の欠点を克服すべく、本発明は、検眼に関する測定を実行するための装置及びシステム、並びに、光学的に調整可能なレンズの屈折力を調整するための方法を提案し、これらが、より単純で、より正確で、且つ、より直接的な評価を可能にし、その結果が患者の自覚的な応答における変動性による影響を最小限に抑えることを考慮して、既存のシステムによって提起された課題を解決する。
【0013】
本発明の第1の態様は、
光学的に調整可能なレンズであって、光学的に調整可能なレンズの屈折力は調整可能であり、光学的に調整可能なレンズは、周期的な光出力波を作り出すよう構成される周期信号によって制御される、光学的に調整可能なレンズと、
周期的な光出力波の平均値を調整する手段と
を備える、検眼に関する測定を実行するための装置を提案する。
【0014】
装置は、光学的に調整可能なレンズの平面を、装置の外部の平面上に投影する光学投影器システムをさらに備える。本発明によれば、周期信号は、光学的に調整可能なレンズを通過する可視光の第1の波長と第2の波長との間の焦点の色収差に対応する周期的な光出力波の振幅を周期信号が作り出すような振幅を有する。
【0015】
本発明の目的のために、入射光の2つの波長に関連する、焦点の色収差は、ジオプターにおける当該波長に対応する光出力の間の差として理解される。
【0016】
光学的に調整可能なレンズの平面が投影される装置の外部の平面が固定され、すなわち、それは、周期的な光出力波の平均値が調整されるときに変更されない。
【0017】
いくつかの実施形態において、装置の外部の平面は、被験者の目の瞳孔が位置している平面であり、焦点の色収差は、被験者が装置を見たときに、被験者の目に生じる。したがって、装置は、被験者の目の自覚的屈折が、従来の自覚的屈折と比較して、迅速で、より単純で、且つ、より正確な方法で測定されることを可能にする。
【0018】
提案の装置によれば、光学投影器システムは、光学的に調整可能なレンズの平面を、被験者の目の瞳孔等の装置の外部の他の平面上に投影し、この光学的に調整可能なレンズは、周期的な光出力波を作り出すよう調整された周期信号に従って変調され、周期信号の振幅は、被験者に見える2つの波長間の焦点の色収差と一致し、したがって、装置は、網膜の両側で変動するデフォーカスを伴う画像を生成する。被験者が本発明の装置を見るとき、彼又は彼女は、変動するデフォーカスを伴うが、光学投影器システムの結果としての倍率の変化がない画像を知覚する。提案の装置は、被験者によって知覚された画像の変動及び色の効果を修正することを可能にすべく、周期信号の平均値を調整する手段をさらに備える。
【0019】
周期的な光出力波は矩形波であり得、より急激な変化を引き起こし、これにより、色の効果を強調する。
【0020】
周期的な光出力波は、人間の視覚システムの閾値周波数又はフリッカー融合閾値より低い周波数を有する。融合閾値周波数より低い周波数を使用することによって、被験者は、フリッカーを知覚することができる。いくつかの実施形態において、フリッカーが10Hzから30Hzの範囲の周波数で人間の目に見えることを考慮すると、周波数は10Hzから30Hzの間にあり、周波数が15Hzであるときが好ましい。周期的な光出力波のこれらの周波数は、被験者の目の調節を防ぐほど十分に高く、すなわち、焦点の変動は、目が同じものを追うことができるには早過ぎであり、フリッカー融合閾値周波数を下回るほど十分に低い。
【0021】
被験者の目によって知覚される視覚的刺激の少なくとも2つの異なる色のうちの一方は、第1の波長及び第2の波長の組み合わせであり、いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なる色のうちの他の一方は、黒色(光の欠如)である。
【0022】
装置は、周期的な光出力波の振幅を、第1の波長の値及び第2の可視波長の値の異なる組み合わせに調整する手段をさらに備える。
【0023】
(山から谷まで測定された)周期的な光出力波の振幅は、0.25ジオプターから3ジオプターの間にあり得る。0.25ジオプターの光出力の振幅は、平均値に対して約0.125ジオプターの偏差と一致し、臨床診療において知覚し難い。3ジオプターの光出力の振幅は、比較することもし難い約1.5ジオプターの偏差と一致し、この場合、過度のぼやけに起因する。
【0024】
(山から谷まで測定された)周期的な光出力波の振幅は、0.75ジオプターから1.5ジオプターまでの間の範囲にあり得、第1の可視の赤色の波長と第2の可視の青色の波長との間の焦点の色収差と一致する。この場合、被験者に示される視覚的刺激は、少なくとも2つの異なる色を有する要素を含み、そのうちの一方はマゼンタ(赤色及び青色の組み合わせ)であり、他方は、通常、黒色である。
【0025】
(山から谷まで測定された)周期的な光出力波の振幅は、0.25ジオプターから0.75ジオプターまでの間の範囲にあり得、第1の可視の緑色の波長と第2の可視の赤色の波長との間の焦点の色収差と一致する。この場合、被験者に示される視覚的刺激は、少なくとも2つの異なる色を有する要素を含み、そのうちの一方は黄色(緑色及び赤色の組み合わせ)である。この範囲ジオプターはまた、第1の可視の緑色の波長と第2の可視の青色の波長との間の焦点の色収差と一致する。この場合、被験者に示される視覚的刺激は、少なくとも2つの異なる色を有する要素を含み、そのうちの一方は帯青緑色(緑色及び青色の組み合わせ)である。緑色/赤色又は緑色/青色のこれらの組み合わせのいずれかにおいて、刺激に使用される他の色は、黒色である。
【0026】
いくつかの実施形態において、装置は、可変の虹彩絞りをさらに備える。この可変の虹彩絞りは、視野を限定し、周期的な光出力波によって知覚的に影響を受けないソフトエッジを視野に提供し、したがって、タスクに対する知覚の影響を有さない。
【0027】
光学投影器システムは、光学的に調整可能なレンズの異なる屈折力の値を考慮して、被験者によって知覚される画像の倍率及び位置を一定に保つ。
【0028】
装置は、被験者の頭に固定される固定手段をさらに備え得る。
【0029】
被験者は、周期的な光出力波の平均値を調整する手段へのアクセスを有し得る。
【0030】
本発明の他の態様は、被験者の目に対して検眼に関する測定を実行するためのシステムに関連する。このシステムは、
少なくとも2つの異なる色の要素を有する視覚的刺激と、
記載された実施形態のいずれかに従って検眼に関する測定を実行するための装置と
を備える。
【0031】
視覚的刺激の少なくとも2つの異なる色のうちの一方は、被験者の目に焦点の色収差を作り出す、第1の波長及び第2の波長の組み合わせである。第1の波長及び第2の波長は、青色及び赤色であり得、視覚的刺激の要素の少なくとも2つの色のうちの一方は、マゼンタであり得る。第1の波長及び第2の波長は、緑色及び赤色、又は緑色及び青色であり得、視覚的刺激の要素の少なくとも2つの色のうちの一方は、黄色又は帯青緑色であり得、刺激の要素の少なくとも2つの色のうちの他方は、黒色であり得る。
【0032】
本発明の他の態様は、光学的に調整可能なレンズの屈折力を調整するための方法に関連する。方法は、
被験者に、光学的に調整可能なレンズを通して視覚的刺激を見させる段階であって、光学的に調整可能なレンズの屈折力は調整可能である、段階と、
光学的に調整可能なレンズの平面を、被験者の目の瞳孔に投影する段階と、
周期信号によって光学的に調整可能なレンズを制御し、周期的な光出力波を作り出す段階であって、周期的な光出力波の振幅は、可視光の第1の波長と第2の波長との間の、被験者の目に生じる焦点の色収差に対応し、視覚的刺激は、少なくとも2つの異なる色の要素を含み、少なくとも2つの色のうちの一方は、第1の波長及び第2の波長の組み合わせである、段階と、
周期的な光出力波の平均値を調整し、被験者によって知覚される視覚的刺激の色の効果及び変動を除去する、又は、当該色の効果のサイズ及び強度を最小にまで減らす段階
を備える。
【0033】
視覚的刺激が光学投影器システムの結果として同じ位置及び同じ倍率で保たれるので、この変動は空間的な変動ではなく、変動は、ぼやけ若しくはデフォーカス、又は色の効果のサイズ及び強度、又は前述したものの全てで同時に生じる。
【0034】
光学的に調整可能なレンズの屈折力を調整する方法は、前述の検眼に関する測定を実行するための装置で実行され得、光学的に調整可能なレンズは、当該装置の光学的に調整可能なレンズである。
【0035】
光学的に調整可能なレンズの平面を、被験者の目の瞳孔に投影する段階は、光学投影器システムによって実行され得る。
【0036】
方法は、二色性の刺激を使用して最適な球体等価物を測定する段階を備え得る。その目的で、デフォーカス波は、可変の平均値及び固定の振幅を有する。方法は、視覚的刺激において被験者によって知覚される色の効果が除去される、又は色の効果のサイズ及び強度が最小にまで減るまで、周期的な光出力波の平均値を調整する段階で構成されている。
【0037】
したがって、非点収差の存在下で有効であり、調節を停止させる必要がない、従来の方法より正確である最適な球体等価物の推定を取得するための迅速な方法が提供される。
【0038】
視覚的刺激がマゼンタの要素を含む場合には、視覚的刺激において被験者によって知覚される色の効果は、青色又は赤色への色の変化を含み得る。視覚的刺激が黄色の要素を含む場合、色の効果は、緑色又は赤色への色の変化を含み得、視覚的刺激が帯青緑色の要素を含む場合、色の効果は、緑色又は青色への色の変化を含み得る。
【0039】
記載された方法は、前述のように装置で実行され得る。
【0040】
本説明で提案される装置、システム、及び方法は、既知の方法及びシステムに対して以下の利点を有する。
-ぼやけを評価するタスクは、知覚された画像において変動及び色の効果を検出するタスクになる。したがって、それは、より正確であることに加えて、より単純で、且つ、より直感的なタスクである。
-変動及び色の効果を知覚することによって、焦点の方向の指示が取得され、よって、患者を検査するプロセスがより高速である。
-調節システムが光出力波を追う時間を有していないので、それは、調節の影響下にない。したがって、無意識の調節が無効化される。さらに、被験者に要求されるタスクは、画像品質に基づいておらず、したがって、被験者は、調節するよう意識的に努力しない。
-手順が、眼科医又は検眼医による最小限の(又はゼロでさえも)監視で実行され得る。装置を使用するための手順及び方法が被験者に説明され、被験者は、彼又は彼女が、最小の変動を有し、色の効果を有さない視覚的刺激がもはや見えなくなったときに停止するよう指示される。
【0041】
上で定義された本発明の異なる態様及び実施形態は、それらが相互に互換性がある、という条件で、お互いと組み合わされ得る。
【0042】
本発明のさらなる利点及び特徴は、以下の詳細な説明に基づいて明らかになり、特に、添付の請求項で特定されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
説明を補完し、本発明のいくつかの実際の例示的な実施形態に従って本発明の特徴のよりよい理解に役立つ目的のために、一連の図が説明の不可欠な部分として添付され、以下では、理解を助け、且つ、限定しない方法で描写される。
図1】目が利用位置に位置している場所がさらに示される、本発明の可能な実施形態に従って検眼に関する測定を実行するための装置の概略図である。
図2】光学投影器システムの特定の実施形態を示す。
図3】周波数が15Hzである、光出力波の例を示す。
図4】光学的に調整可能なレンズを通過する、可視光の第1の波長と第2の波長との間、赤色と青色との間、の焦点の色収差を示す。
図5A図6に示される光出力波200Aの効果を示す。
図5B図6に示される光出力波200Bの効果を示す。
図6】2つの光出力波200A及び光出力波200Bとそれぞれ関連している色の効果20A及び色の効果20Bを示す。
図7】本発明の装置と共に視覚的刺激として使用される画像の好適な例を示す。
図8】被験者が最適な自覚的屈折からさらに離れているときに、図7の視覚的刺激を使用して、自覚的屈折の手順の間、被験者によって知覚される色の効果及びフリッカーの効果を示す。
図9】被験者が最良な自覚的屈折より近いときに、図7の視覚的刺激を使用して、自覚的屈折の手順の間、被験者によって知覚される色の効果及びフリッカーの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の可能な好適な実施形態の説明において、さまざまな詳細が、本発明のより良好な理解を支持するべく、提供されなければならない。それでもなお、本発明がこれらの具体的詳細がなく実装され得ることが当業者には明らかだろう。さらに、不必要に説明を複雑にすることを防ぐべく、周知の特徴は詳細に記載されていない。
【0045】
図1は、本発明の可能な実施形態による、検眼に関する測定を実行するための装置を概略的に示す。この概略図は、被験者の検眼に関する測定のための装置100、及び患者の目10が装置100の利用位置に位置している場所を示す。
【0046】
この図1に示されるように、装置100は、光学的に調整可能なレンズ11であって、光学的に調整可能なレンズ11の屈折力は調整可能である、光学的に調整可能なレンズ11、及び、光出力波の平均値VMを調整することが可能なアクチュエータ12を備える。装置100はまた、光学的に調整可能なレンズ11の平面を、患者の目10の瞳孔が位置している特定の距離で、装置の外部の平面上に投影する光学投影器システム20を含む。
【0047】
装置100は、光学的に調整可能なレンズ11と、患者の目10が後ろに配置されなければならないのぞき穴又はブラインダとを光学的に接続する光路を有する。図1に示されるように、光学投影器システム20は、当該光路の中間位置に位置している。
【0048】
高速で、光学的に調整可能なレンズ11は、電気信号がそれに適用されることに応答して、ポリマー材料で作られている複数の面のうちの少なくとも1つの曲率を変更することが可能である。いずれの場合でも、この光学的に調整可能なレンズ11は、いくつかのジオプターの屈折力の間隔に及ぶことが可能である。
【0049】
装置100の示された実施形態において、光学的に調整可能なレンズ11に適用される電気信号は、それが、経時的に周期的な光出力波を作り出すような、周期信号である。この周期信号を光学的に調整可能なレンズ11に適用することによって、及び、光学投影器システム20によって、画像のぼやけの周期的変化が患者の網膜に生じる。
【0050】
示された実施形態において、装置100は、光学的に調整可能なレンズ11及び光学投影器システム20を収容する単一のケーシングを含む(概略的に、破線によって描写されている)。実際に、装置100は、2EyesVisionによって販売されている、Sim+Vis Technology(登録商標)を有するデバイスに実装され得る。したがって、前述の既知の方法及びシステムに対する利点を有する、コンパクトで、一体型で、且つ、安価なフォロプター(約1kgの重さであり得る)が提供される。
【0051】
図2は、光学投影器システム20の特定の実施形態を示す。投影器システム20は、第1のレンズ21と、鉛直に及び水平に画像を反転させるミラーインバータグループ22と、第2のレンズ23とを備える。第1のレンズ21及び第2のレンズ23は、ベイダル(Badal)システムと同様の構造を有する。第1のレンズ21は、光学的に調整可能なレンズ11から1焦点距離に配置され、第1のレンズ21と同一である第2のレンズ23は、第1のレンズ21から2焦点距離で配置される。目10の瞳孔は、第2のレンズ23から1焦点距離に位置する。これらの距離は、光軸に沿った測定を指す。
【0052】
結果として、光学的に調整可能なレンズの屈折力が変わるとき、光学投影器システムは、常に同じ位置及び同じ倍率で患者の目に画像を提供するが、その焦点の程度、したがって、そのぼやけが変化する。
【0053】
ミラーインバータグループ22は、地球観測用のプリズム望遠鏡に使用される一対のポロ(Porro)プリズムと同様であるが、鏡を用いて実装される。このインバータグループは、画像を鉛直に及び水平に反転させる画像反転を補う。
【0054】
前述したように、光学的に調整可能なレンズ11は、患者の網膜上に生じる画像のぼやけの周期的変化を順番に引き起こす、周期的な光出力波を経時的に作り出す、15Hzの周波数を有する周期信号によって制御される。言い換えれば、この周期的な光出力波は、周期的なデフォーカス波と見なされ得る。
【0055】
図2に示されていないが、最大で9mmのアパーチャーを有する可変の虹彩絞りが、(焦点外の)部品の端部に配置され得る。この可変の虹彩絞りは、視野絞りの機能を果たす。これにより、視野の周辺に位置している物体が隠され得る。刺激限界、スクリーンの端、テーブル等は、観測者の気をそらす場合があり、それらの突然の端を、これらの測定における望まれていない調節刺激に提供する場合がある。さらに、この可変の虹彩絞り(又は視野絞り)は、被験者のセンタリングを容易にし、最良の光学品質を有する光学システムの領域である、視野の中心に図を制限する。それは焦点外であるので、視野絞りは、非常にぼやけた端を有する。したがって、導入された視野の端は、刺激の内容よりはるかにソフトであり、デフォーカス波による影響を受けず、すなわち、それらは、タスクに対して知覚の影響を有さない。
【0056】
図3は、周波数が15Hzであり、且つ、振幅が0.75ジオプターである、このデフォーカス光出力波200の例を示す。この特定の例において、平均値はゼロであるが、これは、装置の使用中に可変のパラメータである。
【0057】
被験者によって知覚される画像に生じる色の効果について、光出力波200の振幅は、光学的に調整可能なレンズ11を通過する可視光の第1の波長と第2の波長との間の焦点の色収差と一致しなければならない。図3に示される光出力波200の振幅は0.75ジオプターであり、第1の可視の赤色の波長Rと第2の可視の青色の波長Aとの間の、被験者の目における焦点の色収差と一致する。さらに、光学的に調整可能なレンズ11を通過する可視光の第1の波長と第2の波長との間の差は、ぼやけた変動に加えて、色の効果も患者が知覚するのに十分でなければならない。
【0058】
図4は、光学的に調整可能なレンズ11を通過する可視光の第1の赤色の波長Rと第2の青色の波長Aとの間の焦点の色収差を示す。直線1-7は、網膜の可能な平面を表す。この焦点の色収差は、屈折力の観点から、可視光の第1の赤色の波長R及び第2の青色の波長Aの集合点間の差である。描写された第1の赤色の波長Rの集合点は、鉛直面6に位置している。描写された第2の波長Aの集合点は、鉛直面2に位置している。これらの2つの波長間の焦点の色収差は、平面2に対応するジオプターと平面6に対応するジオプターとの間の差である。この焦点の色収差は、目が異なる波長に対して異なる屈折率を有する、という事実に起因し、それは、画像における色の効果を引き起こし、この説明の装置オブジェクトによって強調され、周期的な光出力波の平均値を調整するときに被験者を導くため、及び、光学的に調整可能なレンズの屈折力が増加又は減少するよう平均値が調整されなければならない方向を決定するために使用される。
【0059】
光出力波200の平均値VMは、直線VMによって表され、示されている場合において、それは、最初は0ジオプターに中心がある。前述したように、平均値VMはアクチュエータ12を使用して調整され得、光出力波200のこの平均値VMは、この場合、-1ジオプターから+1ジオプターまでの間で可変であるが、それ以上であり得る。以下で説明されるように、(独りで又は検眼医の助けを借りてのいずれかで)患者が受けるタスクは、画像のぼやけの変動がもはや知覚されなくなるまで、又は、この変動が最小化されるまで、デフォーカス光出力波の平均値VMを調整するタスクであり、デフォーカス時に発生するものは、最良の自覚的屈折の両側で対称である。その目的で、アクチュエータは、平均値VMが0.25ジオプター間隔の粗い調整及び0.1ジオプター間隔の微細な調整で調整されることを可能にする。
【0060】
アクチュエータ12は、装置がインタフェースを有する電気信号に作用することによって、光学的に調整可能なレンズ11のジオメトリを調整する。インタフェースは、とりわけ、ユーザインタフェース又はコンピュータープログラムを用いるインタフェースであり得る。
【0061】
アクチュエータ12のインタフェースは、例えば、ケーシング又はその近くに配置され得、その結果、患者は、装置100を使用しながら、光出力波の平均値を調整するために同じものに快適にアクセスし得る。それはまた、光学的に調整可能なレンズ11及び光学投影器システム20から離れて配置され、その結果、眼科医はそれにアクセスし得、これにより、患者の知覚に基づいて、光出力波の平均値を快適に調整し得る。このアクチュエータは、いくつかのインタフェースを有し得る(例えば、1つの遠隔の固定インタフェース、2つのポータブルインタフェース、1つの近くの固定インタフェース、患者の2つの目のそれぞれに1つ等)。典型的には、このインタフェースは、患者が彼若しくは彼女の前に持っている、又は彼若しくは彼女の手に持っているキーボード又は押しボタン式のボックスである。
【0062】
図5A及び図5Bは、それぞれ、図6の光出力波200B及び光出力波200Aの効果を示す。図6においてOoptとして示されている値は、想定される患者に対するレンズの最適なジオプターと一致する。
【0063】
図5Aは、第1の波長λ及び第2の波長λが網膜101の後方に集中するので、屈折力が患者にとって必要である屈折力より小さいことを示す。これは、図6で描写された波200Bの平均値VMBが患者にとって必要である屈折力Ooptより小さい、という事実と一致する。第1の波長λが赤色に対応し、且つ、第2の波長λが青色に対応する特定の場合では、網膜において、黒色の背景上に2つの波長で照射されたディスクは、中心領域でマゼンタのディスクとして知覚される。ここで、両方の波長が加算され、背景と共に遷移領域において色の効果がある。当該色の効果は、この波長でより大きなぼやけに起因する赤色光を散乱させることによって生じ、内側のリング及び外側のリングを含む。ディスクに対して外側のリングは、暗くて赤みを帯びており、それは、ディスクがぼやけたときに、赤色光がディスクの周囲の背景に入り込んだ結果である。ディスクは、当該領域で赤色光を失うので、ディスクに対して内側のリングは、明るくて青みを帯びている。対照的に、図5Aで描写された同じ状況について、2つの波長で照射された背景上の黒色のディスクが、明るくて青みを帯びた外側のリング及び暗くて赤みを帯びた内側のリングで、中心の黒色のディスクとして網膜上で知覚されるだろう。
【0064】
対照的に、図5Bは、第1の波長λ及び第2の波長λが網膜101の前に集中するので、屈折力が被験者にとって必要である屈折力より大きいことを示す。これは、図6で描写された波200Aの平均値VMAが患者にとって必要である屈折力Ooptより大きい、という事実と一致する。色の効果は、図5Aの色の効果と反対であるだろう。
【0065】
図6は、刺激が、赤色である第1の波長λ及び青色である第2の波長λで照射された背景上の黒色のディスクである場合の、光出力波200A及び光出力波200Bとそれぞれ関連している色の効果20A及び色の効果20Bを示す。色の効果20Aは、より小さい波長、この場合、青色、の割合がより高い外側のリングを含む。色の効果20Bは、より大きい波長、この場合、赤色、の割合がより高い外側のリングを含む。色の効果はまた、図に示されていないが、色の効果20Aにおいて、より大きい波長、この場合、赤色、の割合がより高く、及び、色の効果20Bにおいて、より小さい波長、この場合、青色、の割合がより高い内側のリングを含む。
【0066】
色の効果は、目の長手方向の色の収差の結果として現れるが、静止状態では、視覚システムがこれらの効果に適応し、それらは、ほとんど知覚されない。しかしながら、周期的なデフォーカス光出力波は、色の効果と相互作用し、最良の自覚的屈折の外側でそれらを強調する。リング又は輪は、周期的にサイズ及び強度が変化し、したがって、かなりの知覚的な重要性を得る。例えば、屈折力の量、網膜の平均レベルの光への適応状態、又は、光出力波の周波数等の多くの要因に応じて、一部の被験者は、外側のリングのみ若しくは内側のリングのみ、又は両方の特定の組み合わせを知覚するだろう。
【0067】
刺激が赤色である第1の波長λ及び青色である第2の波長λで照射された背景上の黒色のディスクである図6の場合について、青色である変動する外側のリングが近視側に現れ、赤色である変動する外側のリングが遠視側に現れ、これは、最良の焦点の方向の強力な手掛かりを提供する。
【0068】
周期的なデフォーカス光出力波の平均値が患者にとって必要である屈折力Ooptと一致するとき、例外的な状況が生じる。その場合、網膜において、色の効果は、強度及びサイズがもはや変化しない。起こっていることは、同じ強度の反対の色の効果がお互いに繰り返し、それらの知覚的な関連性を失い、場合によっては、周波数に応じて、色の効果を欠いている中立的な状態にまとまる。
【0069】
色を変更しない、近視領域又は遠視領域における色の効果の強度及びサイズの変動が見えるように、デフォーカス光出力波200の周波数は、フリッカー融合閾値周波数より低い。さらに、デフォーカス光出力波200の周波数は、患者の目の調節を防ぐほど十分に高い。さらに、周期的なデフォーカス光出力波の平均値が患者にとって必要である屈折力Ooptと一致するとき、デフォーカス光出力波200の周波数は、色の融合に有利に働く。デフォーカス光出力波200の周波数は、1Hzから50Hzまでの間、より好ましくは10Hzから40Hzまでの間の範囲に入り得る。示された例において、15Hzの周波数が使用されている。
【0070】
図7は、本発明の装置100と共に視覚的刺激300として使用される可能な画像の好適な例を示す。画像は、一連の黒色の円Nによって形成される。図7において、画像の背景は白色であるが、示された例における視覚的刺激の背景はマゼンタMである。マゼンタ(青色+赤色)の背景上の黒色の円のクラスタに基づくこの視覚的刺激を使用することによって、色の効果を強調する。図7に示されていないが、光学的な水彩錯視を引き起こすことによって色の効果をさらに強化する、円のそれぞれのクラスタを囲む輪郭又は線が、含まれ得る。線は、円、六角形、又は不規則な線であり得る。
【0071】
全てのタスク、すなわち、色の効果の強度及びサイズを減らすこと、及び、その変動を引き起こすこと、が同時に実行され、相互に補強し、患者にとって直感的であり、それらは、目の起こり得る調節によって影響を受けず、これは、毛様体筋まひ薬を必要とすることなくデフォーカス波によって中断される。
【0072】
患者の自覚的屈折を測定するための手順は、以下の段階を含む。
i.患者は、平均レベルに対する特定のデフォーカス振幅、及び、特定の時間周波数を有する、この周期的なデフォーカス波を生成する装置100の前に、彼又は彼女自身を位置付ける。
ii.患者は、装置を通じて、周期的なデフォーカス波において特定の平均値VMを有する、さまざまな要素を含む視覚的刺激(図7に示されている1つ等)を観測する。
iii.視覚的刺激の1又は複数の要素の色の効果の(サイズ及び強度の両方の観点から)知覚された変動に基づいて、及び、患者によって知覚された輪の色に応じて、焦点の方向の指示が取得される。
iv.患者によって知覚された色の効果に基づいて、周期的なデフォーカス光出力波の平均値VMが再調整される。
v.患者によって知覚される色の効果の変動がなくなる、又は最小化されるまで、段階iii及び段階ivが繰り返され、その瞬間、デフォーカス波に対応する平均値VMが最終平均値になる。
vi.自覚的屈折が、デフォーカス波における最終平均値の値から取得される。
【0073】
周期的なデフォーカス光出力波200は、平均値VMが自覚的屈折と一致する場合を例外として、全ての平均値VMにおいて色の効果の変動を引き起こす。平均値VMが網膜に位置し、デフォーカス波が網膜の両側上に対称的なぼやけを引き起こすとき、変動は最小又は存在しない。
【0074】
図8及び図9は、図7の視覚的刺激を使用して、自覚的屈折の手順中に被験者によって知覚されるいくつかの色の効果(外側のリング)を示す。これらの2つの図において、マゼンタM(背景の色)がドットで表されており、その一方で、黒色N(円の色)が縞によって表わされている。それぞれの円を囲む黒色のリングRが赤色の色の効果であり、リングから投影している黒色の「歯」Aが青色の色の効果である、色の効果が黒色で表されている。
【0075】
図8の画像において、被験者は、最適な自覚的屈折からさらに離れており、より大きな変動及び色の効果を知覚する。図9において、段階ivの調整を実行した後、被験者は、最良の自覚的屈折により近く、より小さい変動及びより少ない色の効果を知覚し、被験者によって知覚される画像は、図7に示される視覚的刺激の実際の画像により近い。
【0076】
赤色-青色の二色性の刺激が記載された例において使用されているが、例えば、赤色-緑色、及び緑色-青色等の他の二色の組み合わせも使用され得る。示される刺激が一連の円又はドットによって形成されているが、それは、同様に、文字、数字、他の多角形の形状、若しくは、図、又は、これらの要素の組み合わせを含み得る。
【0077】
装置100は、特に、患者のそれぞれの目10に1つずつ、2つの光学的に調整可能なレンズ11を備え得る。そのような場合、装置100はまた、2つの光学投影器システムを備える。
【0078】
周期的なデフォーカス光出力波200は、矩形波の輪郭(図3に示される1つ等)、又は、正弦波の輪郭(図6に示される1つ等)を有し得る。周期的な光出力波の平均値は、調整方法、階段方法、いくつかの選択肢からの選択を強制する強制選択方法、適応方法、又は、一定刺激方法等、異なる方法に従う患者の応答に基づいて変化し得る。
【0079】
詳細な説明が自覚的屈折の手順における用途に重点を置いているが、当業者が、記載された装置、システム、及び方法を他の用途に使用できることが理解される。
【0080】
例えば、提案のシステムは、視覚訓練に使用され得る。さらに、提案の装置、システム、及び方法が、被験者の調節によって影響を受けないことを考慮すると、それは、意識的な調節を訓練することにも使用され得、これにより、老眼の影響を遅らせる。
【0081】
それは、視覚的刺激を位置Xに配置することによって、距離Xで光学的に調整可能なレンズの光出力波を調整すること、並びに、色及び変動の影響が最小化される又は存在しなくなるよう光学的に調整可能なレンズの焦点を調整することにも使用され得る。
【0082】
それは、彼又は彼女が装置を通してスクリーンを見たとき、ユーザによって知覚されるグラフィカル効果を修正することにも使用され得、被験者によって知覚される色の効果及び変動が調整されることを可能にする。この修正は、例えば、色の効果及び変動がなくなるときに、被験者が点を取得する又は特定のレベルを克服するビデオゲームに使用され得る。
【0083】
この説明及び図を考慮して、本発明がそのいくつかの好適な実施形態に従って記載されているが、請求されているような本発明の目的から逸脱することなく複数の変形が当該好適な実施形態に導入され得ることを当業者は理解し得る。
【0084】
本文章において、用語「備える(comprise)」及びその派生物(「備える(comprising)」等)は、除外する方法で理解されてはいけない。言い換えれば、これらの用語は、記載及び定義されているものが、より多くの要素、段階等を含み得る可能性を除外するものとして解釈されてはいけない。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】